JP2018006327A - 誘導加熱装置及び誘導加熱方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ワークを温度ムラ無く均一に誘導加熱可能とする。
【解決手段】回転可能なワークWを直線状の案内搬送路Pに沿って搬送する搬送装置10と、案内搬送路Pに沿って搬送されているワークWを誘導加熱する加熱コイルとを備えた誘導加熱装置であり、搬送装置10は、相互に離間して平行に配置された第1軸部材11及び第2軸部材12と、両軸部材11、12の少なくとも一方(第2軸部材12)をその軸線回りに回転駆動させる回転機構6とを備え、第2軸部材12が、その外周に沿って設けられた螺旋状の凸部13を有するねじ軸からなり、螺旋状の凸部13によって第2軸部材12に画成される螺旋溝14の溝底面15で案内搬送路Pを形成する。
【選択図】図4
【解決手段】回転可能なワークWを直線状の案内搬送路Pに沿って搬送する搬送装置10と、案内搬送路Pに沿って搬送されているワークWを誘導加熱する加熱コイルとを備えた誘導加熱装置であり、搬送装置10は、相互に離間して平行に配置された第1軸部材11及び第2軸部材12と、両軸部材11、12の少なくとも一方(第2軸部材12)をその軸線回りに回転駆動させる回転機構6とを備え、第2軸部材12が、その外周に沿って設けられた螺旋状の凸部13を有するねじ軸からなり、螺旋状の凸部13によって第2軸部材12に画成される螺旋溝14の溝底面15で案内搬送路Pを形成する。
【選択図】図4
Description
本発明は、ワークを誘導加熱する際に用いられる誘導加熱装置及び誘導加熱方法に関する。
例えば、転がり軸受を構成するころ等の転動体のように、高い機械的強度や硬度を要求されるワークの製造過程においては、ワークに必要とされる機械的強度等を付与するための熱処理(焼入硬化処理)が実施される。この熱処理は、熱処理対象のワークを狙い温度に加熱する加熱工程や、加熱されたワークを冷却する冷却工程などを含む。加熱工程は、例えば、メッシュベルト型連続炉などの雰囲気加熱炉を用いて実施することができるが、雰囲気加熱炉は、雰囲気も併せて加熱する必要があるためにエネルギー効率が低い、熱処理装置大掛かりになる、などという問題がある。
そこで、例えば下記の特許文献1に記載されているように、上記の加熱工程を、高周波誘導加熱装置を用いて実施する場合がある。誘導加熱であれば、ワークのみを直接加熱することができるために高いエネルギー効率を達成できることに加え、コンパクトな熱処理設備を実現できる、という利点がある。
特許文献1の誘導加熱装置は、ワークを案内移動させる案内部材としての案内管と、案内管の外周に配置され、案内管内を移動するワークを誘導加熱する加熱コイルと、案内管の入口側に配置され、案内管内にワークを順次押し込む押し込み手段とを備える。この場合、後続のワークが案内管内に押し込まれるのに伴って案内管内のワークに送り力が付与される。
特許文献1の誘導加熱装置では、ワークが一定姿勢で案内管内を移動しながら誘導加熱されるため、ワークのうち、案内管との接触領域と、それ以外の領域との間で加熱温度に差が生じ易い。このため、加熱完了後のワークに温度ムラが発生し易く、その結果、ワークに所望の機械的強度を付与することができない可能性がある。
上記の問題は、例えば、特許文献2に記載されているように、ワークを案内移動させる案内部材に振動を与えることによって可及的に解消し得るとも考えられる。しかしながら、案内部材に振動を与えたとしても、ワークの姿勢を適切に変化させながらワークを誘導加熱できるとは限らない。
以上の実情に鑑み、本発明の目的は、ワーク(特に回転可能なワーク)を温度ムラ無く均一に誘導加熱することができる技術手段を提供し、もって、ワークを適切にかつ効率良く狙い温度に加熱可能とすることにある。
上記の目的を達成するために創案された本発明は、回転可能なワークを直線状の案内搬送路に沿って搬送する搬送装置と、案内搬送路に沿って搬送されているワークを誘導加熱する加熱コイルとを備えた誘導加熱装置であって、搬送装置は、相互に離間して平行に配置され、相手側と協働して案内搬送路を形成する第1軸部材及び第2軸部材と、両軸部材のうち少なくとも一方の軸部材をその軸線回りに回転駆動させる回転機構とを備え、少なくとも上記一方の軸部材が、その外周に沿って設けられた螺旋状の凸部を有するねじ軸からなり、凸部によって上記一方の軸部材に画成される螺旋溝の溝底面と他方の軸部材の前記溝底面との対向面とで案内搬送路が形成されることを特徴とする。
なお、本発明でいう「回転可能なワーク」としては、例えば、転がり軸受の転動体を挙げることができる。ここでいう転がり軸受とは、玉軸受、円筒ころ軸受、円すいころ軸受、針状ころ軸受などを含む概念である。従って、転動体とは、玉(ボール)、円筒ころ、円すいころおよび針状ころなどを含む概念である。
上記の構成を有する誘導加熱装置を使用する場合、加熱対象のワークは、搬送装置に設けられた案内搬送路に導入され、その後、案内搬送路に沿って搬送される。案内搬送路は、相互に離間して平行に配置された第1軸部材および第2軸部材のうち、少なくとも一方の軸部材(ねじ軸)に画成される螺旋溝の溝底面と、他方の軸部材の上記溝底面との対向面とで形成されることから、加熱対象のワークは、螺旋溝内に配置され、その一部が螺旋溝の溝底面に接触する。螺旋溝は螺旋状の凸部によって区画形成されることから、螺旋溝内(案内搬送路上)にワークが配置された状態でねじ軸がその軸線回りに回転駆動されると、ワークには、これを案内搬送路に沿って搬送するための送り力と、これを回転させる回転力(詳細には、ねじ軸の回転方向とは反対方向の回転力)とを同時にかつ連続的に付与することができる。そのため、案内搬送路に沿って搬送されるワークを、回転させながら誘導加熱することができる。これにより、ワークを効率良く、しかも温度ムラ無く均一に誘導加熱することができる。
また、上記の構成を有する搬送装置であれば、特許文献1のように、後続のワークによる押し込みがなくてもワークを案内搬送路に沿って搬送することができるため、加熱対象のワークが一個又は数個程度の小ロットである場合にも好ましく適用することができる。これにより、誘導加熱装置の適用対象を拡大し、汎用性を高めることも可能となる。
また、特許文献1のように、各ワークがその搬送方向で隣り合うワークと接触した状態で誘導加熱が実行されると、ワーク同士が溶着し、加熱完了後のワークを製品として使用できなくなる可能性がある。また、ワーク同士が溶着しないまでも、各ワークが隣り合うワークの熱影響等を受けるため、各ワークを所定態様で加熱できない可能性もある。このため、複数のワークを案内搬送路に沿って搬送する際には、隣り合う2つのワークを相互に離間した状態で搬送するのが好ましい。この点、本発明に係る誘導加熱装置では、案内搬送路が螺旋溝の溝底面で形成されることから、凸部のピッチ(螺旋溝の溝底面の案内搬送路に沿う方向の寸法)を適切に設定しておけば、隣り合う2つのワークを確実に相互に離間した状態で搬送することが可能となる。従って、この点からも、ワークを精度良く加熱することができる。
第1軸部材及び第2軸部材のうち、他方の軸部材は、一方の軸部材と同様のねじ軸で構成することができる他、径一定の円柱軸で構成することもできる。他方の軸部材を円柱軸で構成すれば、他方の軸部材の形状を簡素化してその作製コストを抑制することができるので、前述した作用効果を奏し得る誘導加熱装置を低コストに実現することができる。なお、この場合、案内搬送路は、螺旋溝の溝底面と円柱軸の外径面とで形成される。
第1軸部材の軸線と第2軸部材の軸線とを同一高さ(同一平面上)に位置させれば、ワークが案内搬送路から脱落する可能性を効果的に低減することができる。
回転機構は、第1軸部材及び第2軸部材を同一速度で同一方向に回転駆動させるように構成することもできる。このようにすれば、案内搬送路に沿って搬送されるワークを滑らかに回転させることができる。
第1軸部材及び第2軸部材のうち、一方の軸部材(ねじ軸)を相対的に上方に配置し、他方の軸部材を相対的に下方に配置しても良い。この場合、案内搬送路は、螺旋溝の溝底面と上記他方の軸部材に設けられたワーク支持面とで形成することができる。
以上の構成において、第1軸部材及び第2軸部材は非磁性材料で形成するのが好ましい。両軸部材を金属等の磁性材料で形成すると、ワークだけでなく軸部材も誘導加熱されてしまうため、軸部材が軟化・溶融等して軸部材の形状精度、ひいてはワークの支持・搬送精度に悪影響が及ぶからである。
以上の構成を有する本発明に係る誘導加熱装置と、この誘導加熱装置から排出されたワーク(加熱完了後のワーク)を冷却する冷却装置とを備える熱処理設備であれば、ワークに適切に焼入れ硬化処理が施され、所望の機械的強度を具備するワークを容易かつ確実に得ることができる。
また、上記の目的は、本発明に係る誘導加熱方法、すなわち、回転可能なワークを直線状の案内搬送路に沿って搬送しながら、案内搬送路の外側に配置した加熱コイルに通電することにより、ワークを狙い温度に誘導加熱するに際し、案内搬送路に順次導入したワークのそれぞれを、回転させつつ搬送することを特徴とする誘導加熱方法、によっても達成することができる。
上記構成において、案内搬送路に順次導入したワークのそれぞれを、隣り合うワークとは非接触の状態で回転させつつ搬送するのが好ましい。
以上から、本発明によれば、加熱対象のワークを温度ムラ無く均一に誘導加熱することができる。これにより、複数のワークのそれぞれを、適切にかつ効率良く狙い温度に誘導加熱することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る誘導加熱装置1を備えた熱処理設備Aの全体構造を示す模式図、図2は、誘導加熱装置1の概略側面図、図3は、誘導加熱装置1の概略正面図(図2を同図中の矢印C方向から見た図)である。図1に示す熱処理設備Aは、導電性金属製のワークWに焼入硬化処理を施すために使用されるものであって、ワークWを直線状の案内搬送路Pに沿って搬送しながら狙い温度に誘導加熱し、その後、ワークWを冷却するように構成されている。なお、以下では、転がり軸受の一種である円すいころ軸受の転動体(円すいころ)に焼入硬化処理を施す場合を代表例にとり、本発明の実施形態を説明する。要するに、本実施形態のワークWは、図4及び図5(a)(b)等に示すような円すいころ(円すいころ用の基材)である。
図1に示すように、熱処理設備Aは、ワークWを直線状の案内搬送路Pに沿って搬送しながら狙い温度に誘導加熱する誘導加熱装置1と、誘導加熱装置1から排出されたワークWを冷却する冷却装置としての冷却部23とを備える。冷却部23は、例えば、焼入油等の冷却液が貯留された冷却液漕で構成される。
図1及び図2に示すように、誘導加熱装置1は、直線状の案内搬送路Pに沿ってワークWを搬送する搬送装置10と、案内搬送路Pに沿って搬送されているワークWを誘導加熱する加熱コイル2と、加熱コイル2及び搬送装置10(の一部)を支持した枠体3と、加熱コイル2に高周波電流を供給する高周波電源20と、高周波電源20の出力等を制御する制御装置21とを備える。本実施形態の枠体3は、軸線方向に離間した三箇所に立設された第1〜第3の基枠3a〜3cと、軸線方向に延び、一端及び他端が第2の基枠3b及び第3の基枠3cにそれぞれ固定された横桟3dとを備える。詳細な図示は省略しているが、横桟3dは、加熱コイル2の周方向に離間した3箇所に等配されている。
加熱コイル2は、導電性金属からなる管状体(例えば、銅管)を螺旋状に巻き回した螺旋コイル(多巻きコイル)であり、ボルト部材4を介して枠体3の横桟3dに支持されている。加熱コイル2としては、複数のワークWを同時に誘導加熱することができるように、全長寸法がワークWの全長寸法よりも十分に長寸のものが使用される。例えば、全長寸法(軸方向寸法)Y[図5(a)参照]が15mm程度のワークWを誘導加熱する場合、加熱コイル2としては、全長寸法が600mm以上のものを使用することができる。加熱コイル2の一端および他端は、それぞれ、図1に示す高周波電源20と電気的に接続されている。高周波電源20は、図1に示す制御装置21と電気的に接続されており、制御装置21から出力される信号に基づいて、加熱コイル2に対して所定の大きさ・タイミングで高周波電流を供給する。
詳細な図示は省略しているが、誘導加熱装置1には、加熱コイル2を冷却する冷却回路を設けることができる。このような冷却回路を設けておけば、加熱コイル2の温度を適切かつ効率良く制御することができるので、ワークWを精度良く、しかも効率良く狙い温度に誘導加熱することができる。加熱コイル2が管状体で形成されていることにより、冷却回路は、例えば、加熱コイル2(の中空部)と冷却液を貯留した冷却液タンクとを配管を介して接続すると共に、配管上にポンプを設けることで構築することができる。
図2及び図4に示すように、搬送装置10は、加熱コイル2の内周に相互に離間して平行に配置された第1軸部材11及び第2軸部材12と、両軸部材11,12の少なくとも一方(本実施形態では双方。詳細は後述する。)をその軸線回りに回転させる回転機構6とを備える。図5(b)に示すように、両軸部材11,12は、その軸線(回転中心)を同一高さ(同一平面上)に位置させた状態で枠体3に対して回転自在に支持されている。両軸部材11,12は、加熱コイル2よりも長寸であり、その一端及び他端は加熱コイル2の外側に突出している。
図4及び図5(a)に示すように、第1軸部材11は、外径面11aが径一定の円筒面に形成された円柱軸からなり、第2軸部材12は、その外周に沿って螺旋状の凸部13が設けられたねじ軸からなる。第1及び第2軸部材11,12は、何れも、非磁性材料で形成される。非磁性材料としては、例えば、高硬度で耐熱性に優れたセラミックス(例えば、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素等)が好ましく使用される。
図4及び図5(a)(b)に示すように、螺旋状の凸部13によって第2軸部材12の外周に画成される螺旋溝14の溝底面15は、これに対向する第1軸部材11の外径面11aと協働して、ワークWを案内搬送するための案内搬送路P及びワーク支持部16を形成する。本実施形態では、ワーク支持部16でワークWの外周面が接触支持される。凸部13のピッチ及び幅寸法は、螺旋溝14の溝幅X1とワークWの全長寸法Yとの間に、Y<X1の関係式が成立するように設定されている。以上から、搬送装置10には、第1軸部材11と第2軸部材12の協働により、直線状の案内搬送路Pが形成されると共に、それぞれがワークWを接触支持可能なワーク支持部16が案内搬送路Pの延在方向に離間した複数箇所に形成される。
図2〜図4に示すように、回転機構6は、電動モータ(例えばサーボモータ)22と、電動モータ22の回転動力を両軸部材11,12に伝達する動力伝達機構7とを備える。動力伝達機構7は、小ギヤ7aを有し、連結ピン17を介して第1軸部材11の一端に連結されたギヤ軸18Aと、小ギヤ7bを有し、連結ピン17を介して第2軸部材12の一端に連結されたギヤ軸18Bと、枠体3に回転自在に支持され、両小ギヤ7a,7bに噛合した大ギヤ7cと、電動モータ22の出力軸に連結された駆動プーリ7dと、大ギヤ7cに連結された従動プーリ7eと、両プーリ7d,7eの外周面に架け渡された無端状のベルト部材(チェーンでも良い)7fとで構成される。小ギヤ7a,7bの歯面のピッチは同一であり、また、大ギヤ7cのうち、小ギヤ7aに噛合する歯面のピッチと小ギヤ7bに噛合する歯面のピッチは同一である。以上の構成を有する動力伝達機構7(回転機構6)により、電動モータ22が駆動されると、第1軸部材11及び第2軸部材12は同一速度で同一方向に回転駆動される。電動モータ22は、図示外の電源及び図1に示す制御装置21と電気的に接続されており、制御装置21から出力される信号に基づいて所定の速度で回転駆動される。
以上の構成を有する熱処理設備Aを用いた場合、ワークWに対する焼入硬化処理は以下の態様で実施される。
まず、電動モータ22を駆動することにより、第1軸部材11及び第2軸部材12をその軸線回りに回転駆動させ(図4中の白抜き矢印参照)、併せて、加熱コイル2に通電する。そして、図4中に示すワーク投入位置から搬送装置10に対してワークWを投入し、ワークWの外周面をワーク支持部16で接触支持する。前述のとおり、ワーク支持部16(及び案内搬送路P)は、ねじ軸からなる第2軸部材12に画成された螺旋溝14の溝底面15で形成されることから、搬送装置10(電動モータ22)が駆動されて両軸部材11,12がその軸線回りに回転している間、ワーク支持部16で接触支持されたワークWには、これを案内搬送路Pに沿って搬送するための送り力が連続的に付与される。これにより、ワークWは、案内搬送路Pに沿って搬送(第1軸部材11の外径面11aに沿って案内移動)されながら、通電状態の加熱コイル2によって狙い温度に誘導加熱される。そして、図1に示すように、加熱コイル2から排出されたワークWは、自由落下により冷却部23に貯留された冷却液中に投入され、所定の温度域に冷却されて焼入硬化する。
上記態様でワークWを搬送する際、ワークWの外周面を接触支持した両軸部材11,12が同一方向に回転駆動されることから、ワークWには、図5(a)(b)中に黒塗り矢印で示すように、ワークWをその軸線回りに回転させる回転力が連続的に付与される。
以上より、搬送装置10の駆動中、ワーク支持部16で接触支持されたワークWには、案内搬送路Pの延在方向に沿った送り力に加え、ワークWをその軸線回りに回転させるための回転力が連続的に付与される。このため、案内搬送路Pに沿って搬送される棒状ワークWは、その軸線回りに回転しながら誘導加熱されることになる。これにより、ワークWの各部を均一に誘導加熱することができ、加熱完了後のワークWに温度ムラが発生するのを効果的に防止することができる。従って、加熱完了後のワークWを冷却すると、周方向及び断面方向の各部で機械的強度に差がない高品質のワークWを得ることができる。
特に、本実施形態の回転機構6は、第1及び第2軸部材11,12を同一方向に同一速度で回転駆動させるように構成されていることから、ワーク支持部16で接触支持されたワークWをその軸線回りに滑らかに連続回転させることができる。また、両軸部材11,12が非磁性材料の一種であるセラミックスで形成されることから、両軸部材11,12自体が誘導加熱されて軟化・溶融等するのを防止して、ワークWを精度良く支持・搬送することができる。従って、加熱完了後のワークWに温度ムラが生じるのを一層効果的に防止してワークWの加熱精度を一層高めることができる。
本実施形態では、図4中に示すワーク投入位置から、搬送装置10に対して所定の間隔を空けてワークWを一個ずつ投入することにより、複数のワークWを相互に離間した状態で搬送しながら、複数のワークWを同時に誘導加熱するようにしている。この場合、搬送中(誘導加熱中)のワークWが相互に接触してワークW同士が溶着する、各ワークWが隣接するワークWの熱影響を受ける、などといった問題発生を可及的に防止することができるので、ワークWを一層精度良く加熱することができる。なお、例えば、螺旋溝14の溝幅X1とワークWの軸方向寸法Yとの間に、X1<2Yの関係式が成立するようにしておけば、各ワーク支持部16では単一のワークWのみが接触支持されることになる。この場合、複数のワークWを確実に相互に離間した状態で搬送・加熱することができるので、各ワークWが隣接するワークWの熱影響を受ける可能性を一層効果的に低減することができる。
また、以上で説明した搬送装置10であれば、特許文献1のように後続のワークによる押し込みがなくても、ワークWを搬送することができる。そのため、この搬送装置10を備えた誘導加熱装置2は、加熱対象のワークWが一個又は数個程度の小ロットである場合にも好ましく適用することができる汎用性に優れたものであり、しかも各ワークWを精度良く加熱することができる。
以上で説明した実施形態では、図5(a)(b)に示すように、ワーク支持部16でワークWの外周面を接触支持し、ワークWをその軸方向に沿って搬送するようにしたが、ワーク支持部16によるワークWの支持態様(搬送時のワークWの姿勢)はこれに限られない。
すなわち、ワークWは、例えば図6(a)(b)に示すように、その一端面を第2軸部材12の螺旋溝14の溝底面15で接触支持すると共に、その外周面を第1軸部材11の外径面11aで接触支持するようにしても構わない。この場合、ワークWは、その軸線を案内搬送路Pの延在方向に対して交差(直交)させた状態で案内搬送路Pに沿って搬送されることになる。
図5(a)(b)に示すように、ワーク支持部16でワークWの外周面を接触支持した場合、ワークWは、その外周面が第1軸部材11の外径面11aおよび第2軸部材12の溝底面15に対して滑りを伴いながら転がり接触により搬送される。これに対し、図6(a)(b)に示す態様でワークWを支持・搬送する場合には、ワークWは、その外周面が第1軸部材11の外径面11a及び第2軸部材12の螺旋状の凸部13に対して滑りを伴うことなく転がり接触しながら搬送される。従って、加熱完了後のワークWの外周面に温度ムラが発生するのを防止する上で、また、ワークWの外周面にキズ等の微小欠陥が生じるのを防止する上で有利となる。特に、ワークWが、本実施形態のように円すいころ(の基材)である場合、あるいは円筒ころ(の基材)である場合などには、図6(a)(b)に示す態様でワークWを支持・搬送するのが好ましい。円すいころや円筒ころの外周面は、転がり軸受を構成する内輪および外輪の軌道面に沿って転動する面であり、高い形状精度や機械的強度を要求される面であるからである。
以上、本発明の一実施形態に係る誘導加熱装置1について説明を行ったが、誘導加熱装置1には、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
例えば、特に、搬送装置10を構成する第1軸部材11及び第2軸部材12として長寸のものを用いる場合には、図7に示すように、両軸部材11,12の外周面のうち、ワーク支持部16を形成する領域以外の領域を接触支持する支持部材(サポートローラ)19を設けても良い。このようなサポートローラ19を設けておけば、両軸部材11,12に撓みが生じるのを可及的に防止することができるので、ワークWを精度良く支持・搬送することが可能となり、ワークWを精度良く加熱することができる。なお、詳細な図示は省略するが、図2に示す誘導加熱装置1においては、第2及び第3の基枠3b,3cにサポートローラ19を設けることができる。
また、以上で説明した実施形態のように、両軸部材11,12を回転駆動させる場合、両軸部材11,12の軸線回りの回転速度は必ずしも同一とする必要はなく、互いに異ならせても構わない。両軸部材11,12の回転速度を互いに異ならせるには、例えば、第1軸部材11に設けられる小ギヤ7aおよびこれに噛合う大ギヤ7cの歯面のピッチと、第2軸部材12に設けられる小ギヤ7bおよびこれに噛合う大ギヤ7cの歯面のピッチとを互いに異ならせれば良い。また、両軸部材11,12を回転駆動させる場合でも、上述した回転機構6とは異なる構成の回転機構6を採用しても構わない。例えば、電動モータを2つ設け、一方の電動モータの出力軸に第1軸部材11を連結すると共に、他方の電動モータの出力軸に第2軸部材12を連結することも可能である。
また、以上で説明した実施形態では、第1軸部材11及び第2軸部材12を同一方向に同一速度で回転駆動(同期回転)させることにより、案内搬送路Pに沿って搬送されるワークWに回転力を付与するようにしたが、このような回転力は、ねじ軸からなる軸部材(以上で説明した実施形態では第2軸部材12)のみを回転駆動させることによってもワークWに付与することができる。従って、回転機構6は、ねじ軸からなる軸部材のみを回転駆動させるものであっても構わない。この場合、回転機構6には、両軸部材11,12を同期回転させるための複雑な機構(動力伝達機構8)を設けずとも足りるので、搬送装置10の簡素化・低コスト化を図ることができる。
また、以上で説明した実施形態では、両軸部材11,12のうち、一方の軸部材(第2軸部材12)のみをねじ軸で構成したが、他方の軸部材(第1軸部材11)を上記一方の軸部材と同様のねじ軸で構成することも可能である(図示省略)。この場合、両軸部材11,12のそれぞれに形成される螺旋溝14の溝底面15で案内搬送路P及びワーク支持部16が形成される。
また、加熱コイル2は、1つのみならず、案内搬送路Pの延在方向に沿って複数配置することも可能である。
さらに、以上で説明した実施形態では、第1軸部材11及び第2軸部材12を両者の中心が同一高さに位置するように配置したが、両軸部材の配置高さは、例えば図8に示すように、相互に異ならせても構わない。図8では、ねじ軸からなる第2軸部材12を相対的に上方に配置すると共に断面略L字状をなした第1軸部材11’を相対的に下方に配置している。この場合、第2軸部材12に設けられた螺旋溝14の溝底面15と第1軸部材11’のワーク支持面11a’とで案内搬送路Pが形成され、ワーク支持部16は第1軸部材11’のワーク支持面11a’で構成される。このような構成によれば、ワーク支持部16を構成する第1軸部材11’のワーク支持面11a’(より詳細には、ワーク支持面11a’のうち、螺旋溝14の溝底面15と対向する領域)でワークWを接触支持し、その状態で第2軸部材12がその軸線回りに回転駆動されると、ワークWに対し、案内搬送路Pに沿う方向の送り力と、図中黒塗り矢印で示す方向の回転力とが付与される。なお、この場合、第1軸部材11’のワーク支持面11a’に対するワークWの接触面積を極力減じる観点から、ワーク支持面11a’を図示例のような凹凸形状とし、ワークWの複数箇所を点接触支持するようにするのが好ましい。
以上では、本発明の実施形態に係る誘導加熱装置1による加熱対象のワークWとして、円すいころ軸受を構成する円すいころを例示したが、誘導加熱装置1は、玉軸受を構成する玉(ボール)、円筒ころ軸受を構成する円筒ころ、あるいは針状ころ軸受を構成する針状ころ等、その他の転がり軸受の転動体を誘導加熱する場合にも好ましく用いることができる。また、本発明の実施形態に係る誘導加熱装置1は、上述した各種転動体等の中実のワークWのみならず、中空のワークWを誘導加熱する場合にも好ましく用いることができる。要するに、本発明に係る誘導加熱装置1は、搬送装置10を構成する両軸部材11,12の何れか一方又は双方がその軸線回りに回転駆動されるのに伴って回転可能なワークWを誘導加熱する場合であれば、ワークの種類を問わず用いることができる。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得る。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
1 誘導加熱装置
2 加熱コイル
3 枠体
6 回転機構
7 動力伝達機構
10 搬送装置
11 第1軸部材
12 第2軸部材
13 螺旋状の凸部
14 螺旋溝
15 溝底面
16 ワーク支持部
20 高周波電源
23 冷却部(冷却装置)
A 熱処理設備
P 案内搬送路
W ワーク
2 加熱コイル
3 枠体
6 回転機構
7 動力伝達機構
10 搬送装置
11 第1軸部材
12 第2軸部材
13 螺旋状の凸部
14 螺旋溝
15 溝底面
16 ワーク支持部
20 高周波電源
23 冷却部(冷却装置)
A 熱処理設備
P 案内搬送路
W ワーク
Claims (10)
- 回転可能なワークを直線状の案内搬送路に沿って搬送する搬送装置と、前記案内搬送路に沿って搬送されている前記ワークを誘導加熱する加熱コイルとを備えた誘導加熱装置であって、
前記搬送装置は、相互に離間して平行に配置され、相手側と協働して前記案内搬送路を形成する第1軸部材及び第2軸部材と、両軸部材のうち少なくとも一方の軸部材をその軸線回りに回転駆動させる回転機構とを備え、
少なくとも前記一方の軸部材が、その外周に沿って設けられた螺旋状の凸部を有するねじ軸からなり、前記凸部によって前記一方の軸部材に画成される螺旋溝の溝底面と他方の軸部材の前記溝底面との対向面とで前記案内搬送路が形成されることを特徴とする誘導加熱装置。 - 前記他方の軸部材が径一定の円柱軸からなり、前記案内搬送路が、前記螺旋溝の溝底面と前記円柱軸の外径面とで形成される請求項1に記載の誘導加熱装置。
- 前記第1軸部材の軸線と前記第2軸部材の軸線とが同一高さに位置している請求項1又は2に記載の誘導加熱装置。
- 前記回転機構は、前記第1軸部材及び前記第2軸部材を同一速度で同一方向に回転駆動させるように構成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の誘導加熱装置。
- 前記一方の軸部材が相対的に上方に配置されると共に前記他方の軸部材が相対的に下方に配置され、
前記案内搬送路が、前記螺旋溝の溝底面と前記他方の軸部材に設けられたワーク支持面とで形成される請求項1に記載の誘導加熱装置。 - 前記第1軸部材及び前記第2軸部材が、非磁性材料で形成されている請求項1〜5の何れか一項に記載の誘導加熱装置。
- 前記ワークが、転がり軸受を構成する転動体である請求項1〜6の何れか一項に記載の誘導加熱装置。
- 請求項1〜7の何れか一項に記載の誘導加熱装置と、該誘導加熱装置から排出された前記ワークを冷却する冷却装置とを備える熱処理設備。
- 回転可能なワークを直線状の案内搬送路に沿って搬送しながら、前記案内搬送路の外側に配置した加熱コイルに通電することにより、前記ワークを狙い温度に誘導加熱するに際し、
前記案内搬送路に順次導入した前記ワークのそれぞれを、回転させつつ搬送することを特徴とする誘導加熱方法。 - 前記案内搬送路に順次導入した前記ワークのそれぞれを、隣り合う前記ワークとは非接触の状態で回転させつつ搬送する請求項9に記載の誘導加熱方法。
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