JP2018004615A - 溶液成分分析キット、溶液成分分析方法、及び溶液成分分析装置 - Google Patents

溶液成分分析キット、溶液成分分析方法、及び溶液成分分析装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2018004615A
JP2018004615A JP2016221892A JP2016221892A JP2018004615A JP 2018004615 A JP2018004615 A JP 2018004615A JP 2016221892 A JP2016221892 A JP 2016221892A JP 2016221892 A JP2016221892 A JP 2016221892A JP 2018004615 A JP2018004615 A JP 2018004615A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
adsorbent
concentration
bsa
solution
solution component
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2016221892A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6857347B2 (ja
Inventor
隆聡 礒田
Takasato Isoda
隆聡 礒田
勲己 市原
Hiroki Ichihara
勲己 市原
智明 小島
Tomoaki Kojima
智明 小島
茂 内田
Shigeru Uchida
茂 内田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ulvac Seimaku KK
Kyushu University NUC
Original Assignee
Ulvac Seimaku KK
Kyushu University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ulvac Seimaku KK, Kyushu University NUC filed Critical Ulvac Seimaku KK
Publication of JP2018004615A publication Critical patent/JP2018004615A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6857347B2 publication Critical patent/JP6857347B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)

Abstract

【課題】精度及び再現性の高い溶液成分分析キット、溶液成分分析方法、及び溶液成分分析装置を提供すること。【解決手段】基板3、電極対4、及びウェルを備えた溶液成分センサ2と、基板3の厚さ方向から見たときにウェルによって囲まれる領域に配置可能であり分析対象物を物理吸着可能な吸着材11と、前記分析対象物に結合する酵素を含む感応物質と、感応物質と酸化還元反応可能な基質を含む液性試薬16と、を備える。【選択図】図4

Description

本発明は、溶液成分分析キット、溶液成分分析方法、及び溶液成分分析装置に関する。
従来、イオン、糖、脂質、タンパク質、抗体、抗抗体、抗原などの分析対象物を含んだ液体における分析対象物の濃度を電圧変化や電流変化に基づいて検知する技術が知られている。
例えば、半導体製造技術の利用により基板上に電極が形成された小型の溶液成分センサが特許文献1に開示されている。
また、特許文献2は、溶液成分センサの電極の表面及び基板の表面に、感応物質が固定化された微細な粒子が分散された流動体を保持することによって、分析対象物の濃度測定の再現性を高めることができることを開示している。
また、特許文献3は、マイクロ波照射によってメンブレンに抗体を固定し、抗体が固定されたメンブレンを二次抗体に接触させた後にメンブレンの電気特性を測定することによって、抗原抗体反応の有無を評価することができることを開示している。
特許第4859226号公報 特開2013−113627号公報 特開2015−014542号公報
特許文献1に開示された技術では、分析対象物を含む液体を電極に接触させた後、電極に対して液体の位置がずれると、電極を用いて検出される信号に変動が生じる場合がある。
また、特許文献2に開示された技術では、分析対象物と相互作用可能な表面積を広くするために、微小な粒子を多数分散させた流動体が用いられている。しかしながら、流動体の流動性を適切に維持する必要があるために、分散可能な粒子の数を極端に多くすることはできず、分析対象物と相互作用可能な表面積には限界がある。さらに、粒子の表面に抗体等を固定して利用する場合には、粒子に固定化できる抗体の量に限度があり、固定化された抗体と反応する抗原を検出する際の感度が不十分となる場合がある。
また、特許文献3に開示された技術では、マイクロ波照射を利用しているので、メンブレンへの固定に利用した抗体のうち、抗原抗体反応が適切に起こりうる状態でメンブレンに固定されていない抗体が存在し得るので、高い再現性が得られない可能性がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、精度及び再現性の高い溶液成分分析キット、溶液成分分析方法、及び溶液成分分析装置を提供することを目的とする。
本発明の第一の態様は、基板、前記基板の外面に所定距離だけ離間して対向配置された一組の電極、及び前記一組の電極の各々において外部に露出された部分を囲む絶縁性の流動体保持部を備えた溶液成分センサと、前記基板の厚さ方向から見たときに前記流動体保持部によって囲まれる領域に配置可能であり分析対象物を物理吸着可能な吸着材と、前記分析対象物に結合する酵素を含む感応物質と、前記感応物質と酸化還元反応可能な基質を含む液性試薬と、を備えることを特徴とする溶液成分分析キットである。
前記溶液成分センサは、前記電極を3組以上有していてもよく、前記電極は、溶液成分を独立して分析できるように互いに離間した位置に配されていてもよい。
前記溶液成分センサは、前記電極を4組以上有していてもよい。
前記吸着材は、多孔質膜であってもよい。
前記吸着材は、セルロース繊維からなっていてもよい。
本発明の第二の態様は、上記態様の溶液成分分析キットを用いた溶液成分分析方法であって、前記分析対象物を含む溶液に前記吸着材を接触させる吸着工程と、前記吸着工程の後に前記領域に前記感応物質を添加する添加工程と、前記添加工程の後に前記吸着材を前記領域内に配置する配置工程と、前記領域内に配置された前記吸着材と前記液性試薬とを反応させる反応工程と、前記反応工程における酸化還元反応を電流変化又は電圧変化として前記電極を用いて計測する計測工程と、前記計測工程において計測された電流変化又は電圧変化に基づいて前記溶液中の前記分析対象物の濃度を算出する算出工程と、を備えることを特徴とする溶液成分分析方法である。
本発明の第三の態様は、上記態様の溶液成分分析キットを用いた溶液成分分析方法であって、前記分析対象物を含む溶液に前記吸着材を接触させる吸着工程と、前記吸着工程の後に前記吸着材に前記感応物質を添加する添加工程と、前記添加工程の後に前記吸着材を前記領域内に配置する配置工程と、前記領域内に配置された前記吸着材と前記液性試薬とを反応させる反応工程と、前記反応工程における酸化還元反応を電流変化又は電圧変化として前記電極を用いて計測する計測工程と、前記計測工程において計測された電流変化又は電圧変化に基づいて前記溶液中の前記分析対象物の濃度を算出する算出工程と、を備え、前記算出工程は、前記電流変化又は前記電圧変化に基づいて算出された複数の検出値のうち、最高値及び最低値を除いた他の値の平均値を採用し、前記平均値に基づいて前記分析対象物の濃度を算出する、ことを特徴とする溶液成分分析方法である。
本発明の第四の態様は、上記態様の溶液成分分析キットと共に使用される溶液成分分析装置であって、前記電極と電気的に接続可能であり電流変化又は電圧変化を計測可能な計測部と、前記計測部と接続され、前記電流変化又は前記電圧変化に基づいて前記溶液中の前記分析対象物の濃度を算出する算出部と、を備え、前記算出部は、複数の前記電極を用いて計測され算出された複数の検出値の値のうち、最高値及び最低値を除いた他の値の平均値を前記溶液中の前記分析対象物の濃度測定に利用する、ことを特徴とする溶液成分分析装置である。
本発明によれば、精度及び再現性の高い溶液成分分析キット、溶液成分分析方法、及び溶液成分分析装置を提供することができる。
本発明の一実施形態の溶液成分分析システムの全体図である。 同実施形態の溶液成分センサの平面図である。 図2のA−A線における断面図である。 溶液成分センサに吸着材及び液性試薬が収容された状態を示す模式図である。 吸着材に対する物質の物理吸着状態を示す概念図である。 吸着材に対する物質の物理吸着状態を示す概念図である。 吸着材上の分析対象物に対する感応物質の特異的結合状態を示す概念図である。 吸着材上の分析対象物に対する感応物質の特異的結合状態の別の例を示す概念図である。 吸着材に対する感応物質の吸着または結合の例を示す概念図である。 吸着材に対する感応物質の吸着または結合の例を示す概念図である。 溶液成分センサに接続される測定系装置のブロック図である。 測定系装置の回路図である。 溶液成分分析方法を示すフローチャートである。 吸着材を使用した溶液成分の分析におけるバックグラウンドの吸光度を示すグラフである。 吸着材を使用した溶液成分の分析におけるバックグラウンドのセンサ電圧を示すグラフである。 本発明の実施例1における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例1における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例2における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例2における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例3における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例3における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例4における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例4における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例5における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例5における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例6における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例7におけるセンサ電圧測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例8における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例9におけるセンサ電圧測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例9におけるセンサ電圧測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例10における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例10における吸光度測定結果を示すグラフである。 実施例9,10に基づく吸光度測定の特異性を示すグラフである。 実施例9,10に基づくセンサ電圧測定の特異性を示すグラフである。 本発明の実施例11における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例11における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例12における低BSA濃度条件での吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例12における低HSA濃度条件での吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例12における中BSA濃度条件での吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例12における中HSA濃度条件での吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例12における低BSA濃度条件でのセンサ電圧測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例12における低HSA濃度条件でのセンサ電圧測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例12における中BSA濃度条件でのセンサ電圧測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例12における中HSA濃度条件でのセンサ電圧測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例12における低中BSA濃度条件での吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例12における低中HSA濃度条件での吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例12における低中BSA濃度条件でのセンサ電圧測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例12における低中HSA濃度条件でのセンサ電圧測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例13における検出電圧値を示す表である。 本発明の実施例13におけるセンサ電圧の算出条件ごとの相関係数を示す表である。 本発明の比較例1における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の比較例1における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の比較例2における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の比較例2における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の比較例3における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の比較例4におけるセンサ電圧測定結果を示すグラフである。 本発明の比較例5におけるセンサ電圧測定結果を示すグラフである。 本発明の比較例5におけるセンサ電圧測定結果を示すグラフである。 本発明の比較例6における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の比較例6における吸光度測定結果を示すグラフである。 同実施形態の溶液成分分析キットの他の構成例を示す図で、溶液成分センサに吸着材及び液性試薬が収容された状態を示す模式図である。 同実施形態の溶液成分分析キットのさらに他の構成例を示す図で、溶液成分センサに吸着材及び液性試薬が収容された状態を示す模式図である。 同実施形態の溶液成分分析キットのさらに他の構成例を示す図で、溶液成分センサに吸着材及び液性試薬が収容された状態を示す模式図である。 本発明の実施例14における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例14における吸光度測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例14におけるセンサ電圧測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例14におけるセンサ電圧測定結果を示すグラフである。
本発明の一実施形態について説明する。
まず、本実施形態の溶液成分分析キット1の例について、溶液成分分析キット1を備えた溶液成分分析システム100とともに、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の溶液成分分析システムの全体図である。
図1に示す本実施形態の溶液成分分析システム100は、分析対象物を含む液体(以下、被検体液という)中の分析対象物の濃度を測定し、被検体液の構成成分を分析するシステムである。
本実施形態の溶液成分分析システム100における分析対象物は、たとえば、生体由来の物質としては、イオン、糖、脂質、タンパク質、抗体、抗抗体、及び抗原等である。これらの物質は、たとえば、血液、尿、体液、動植物の組織、細胞、食品、及び飲料などから得ることができる。また、生体由来ではない油脂、化粧品、塗料等を本実施形態の溶液成分分析システム100における分析対象物とすることもできる。
被検体液の組成は特に限定されない。すなわち、全血や血漿、尿、大便、唾液、汗、精液、膣液、鼻汁、涙、痰などの生体由来の未精製若しくは粗精製の液体、これらの液体の希釈物、及びこれらの液体に対して試薬などを用いて前処理をした試料などを、被検体液とすることができる。また、被検体液は必ずしも生体由来の成分を含んでいなくてもよい。
本実施形態の溶液成分分析システム100は、溶液成分分析キット1と、測定系装置101(溶液成分分析装置101)とを備える。
まず、溶液成分分析キット1の構成について説明する。図2は、同実施形態の溶液成分センサ2の平面図である。図3は、図2のA−A線における断面図である。図4は、溶液成分センサ2に吸着材11及び液性試薬16が収容された状態を示す模式図である。
図1から図4までに示すように、本実施形態の溶液成分分析キット1は、溶液成分センサ2と、吸着材11と、液性試薬16とを備えている。なお、本実施形態の溶液成分分析キット1は、吸着材11に分析対象物を吸着させる過程で使用されるブロッキング液を含んでいてもよい。
図2及び図3に示すように、溶液成分センサ2は、基板3と、電極対4と、ウェル7が形成された絶縁膜9と、配線部8とを備える。
基板3は、絶縁性を有する板状部材である。基板3は、分析対象となる被検体液によって侵されず、電極対4及び配線部8を固定することができる材料によって構成される。たとえば、基板3は、ガラス、水晶、窒化ケイ素、ダイアモンド、陶器等のセラミックス、あるいはエポキシ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、テフロン(登録商標)などのフッ素樹脂、生分解性プラスチック、紙、木材等の有機材料などによって形成されている。本実施形態では、基板3はガラスによって形成されている。また、基板3は、光透過性を有していてもよい。基板3が光透過性を有する場合には、光学顕微鏡等を用いた被検体液の観察が容易にできる。なお、基板3が光透過性を有していなくても、例えば実体顕微鏡などを用いて基板3上の被検体液を観察することもできる。基板3の形状は、厚さ方向から見たときの輪郭形状が矩形状となっている。なお、基板3の厚さ方向から見たときの基板3の形状は、円形、半円形、多角形状など、種々の形状とすることができる。
また、基板3は可撓性を有していてもよい。例えば、可撓性を有する基板3は、薄板状、シート状、フィルム状、若しくは膜状であってよい。また、可撓性を有する基板3の材料としては、樹脂材料から好適に選択することができる。この場合、基板3の材料がロール状に巻かれた原反を用いて基板3を形成することができるので、製造効率がよい。さらに、基板3が可撓性を有していると、外力によって基板3が変形されても基板3が割れたり塑性変形したりせず元の形状に復元するので、溶液成分センサ2及び溶液成分分析キット1の製造時、流通過程、及びユーザによる使用時における取り扱いが容易となる。
また、基板3はアルカリに対する耐性を有していることが好ましい。これにより、後述する電極対4及び配線部8の形成を好適に行うことができる。
電極対4は、陽極及び陰極を構成する一組の電極からなる。電極対4は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Au、Ag、Pt、Mo、Ru、Ir、Al等の金属材料、PやSをドープしたシリコン等の半導体材料によって形成されている。電極対4に適用される電極材料は、液性試薬16による酸化や腐食に対する耐性が高い材料が選択されることが好ましい。これにより、分析時における後述する検出電圧の意図しない変動を低く抑えることができる。なお、電極対4を構成する一組の電極の各々の材料は、同じであることが好ましい。
さらに、電極対4は、一種類の金属若しくは半導体による単層構造であることが特に好ましい。なお、電極対4には上記混合液が接するので、電極対4が複数種類の金属の積層構造であると、複数種類の金属がともに上記混合液と接する場合に、互いに接する異種金属の間で電蝕が生じる可能性がある。
また、電極対4は、基板3に対する密着性が高い材料であることが好ましい。
これらの観点に基づいて、本実施形態では、基板3の材料としてガラスが採用されている場合には、電極対4としては、クロムの単層構造であることが好ましい。なお、本明細書において、クロムの単層構造とは、クロム原子が基板3に接し基板3の厚さ方向に成長するように成膜された構造体を指す。
また、電極対4において陽極となる電極の材料と陰極となる電極の材料とが互いに異なっている構成とすることもできる。
なお、電極対4として、複数種類の金属の積層構造を採用することもできる。この場合には、下地となる金属の全体に対して傷やピンホールの発生を低く抑えた状態で他の金属材料による被覆をしたり、当該他の金属材料にさらに酸化皮膜を形成するなどの処理によって、被検体液の分析操作中に電極対4が腐食する可能性を低く抑えることができる。
具体例としては、例えば、電極対4は、基板3側にクロムからなる下層を有し、下層上が金からなる上層に被覆された二層構造を有する層状の導体であってもよい。これにより、クロムからなる下層がガラスからなる基板3に密着し、基板3に対する電極対4の密着性が高められ、且つ電極対4の電気抵抗を下げることができる。
基板3の厚さ方向から見たときに、電極対4は、略半円形を有する2つの電極4A,4Bが一組となっている。一組の電極4A,4Bは、直線状の辺部4Ax,4Bx同士が対向するように所定距離だけ離間して配置されている。したがって、電極対4を構成する一組の電極4A,4Bは、互いに電気的に絶縁された状態で基板3上に配されている。一組の電極4A,4Bの離間距離は、電極対4の種類や被検体液の組成に応じて最適な距離が適宜設定される。例えば、一組の電極4A,4Bの離間距離は、各辺部4Ax,4Bxの間の最短距離が1μm以上10mm以下の範囲となるように設定される。
本実施形態の溶液成分センサ2は、複数の電極対4を備えている。たとえば、溶液成分センサ2は、5組の電極対4を備えている。また、一組の電極4A,4Bの各々の形状は、辺部4Ax,4Bx同士が対向しうる形状であれば、互いに同形や対称形でなくてもよい。また、対向する辺部4Ax,4Bxの長さ寸法が互いに異なっていてもよい。また、辺部4Ax,4Bx同士が対向していれば、辺部4Ax,4Bx同士が正対していなくても構わない。
配線部8は、測定系装置101と電極対4とを電気的に接続する目的で基板3上に設けられている。配線部8は、クロムと金とからなる二層の導体によって形成されていてもよい。また、本実施形態では、配線部8と電極対4とは、同一工程にて一体に形成される。なお、配線部8は、電極対4とは異なる材料によって形成されていてもよい。
例えば電極対4がクロムの単層構造である場合には、配線部8は、下地として当該クロムの単層構造を有し、下地の上に金等の良導体が積層された構造となっていてもよい。これにより、配線部8の電気抵抗を下げることができる。
また、配線部8は、電極対4とは異なる形成方法によって形成されてもよい。
本実施形態では、電極対4の数に対応して電極対4の数と同数の配線部8が基板3上に設けられている。すなわち、5組の電極対4に対して1つずつ計5つ配線部8が接続されている。
絶縁膜9は、基板3、電極対4、及び配線部8を覆う膜状部材である。また、一組の電極4A,4Bの各々において外部に露出された部分を囲むような円形の貫通孔部が絶縁膜9に形成されている。本実施形態では、電極対4の数と同数となる複数の貫通孔部が絶縁膜9に形成されている。絶縁膜9に形成されたこれらの貫通孔部は、吸着材11及び液性試薬16を収容するための絶縁性のウェル7(流動体保持部)の内周面を構成する。
ウェル7は、絶縁膜9の材料となる疎水性の材料をフォトリソグラフィーを用いて基板3上に形成することによって、形成される。なお、スクリーン印刷等その他の方法を用いてウェル7を形成することもできる。たとえば、数μm以上の厚い膜を形成してもクラック等の発生しない有機物を、絶縁膜9の材料として使用することができる。具体的に、絶縁膜9の材料として、エポキシ樹脂系、ノボラック樹脂系を主成分とする厚膜フォトレジスト、シートレジストなどが好適である。たとえば、SU−8、KMPR(登録商標、化薬マイクロケム社製)、KI1000TF、KI1000TF4(日立化成製)、TFRシリーズ(AZエレクトロニックマテリアルズ社製)などを使用して、ウェル7を基板3上にパターン形成することができる。厚膜フォトレジスト、シートレジストは、最適な形状のウェル7構造をフォトリソグラフィー技術により容易に作製することができるため、好ましい。
ウェル7は、吸着材11及び液性試薬16を収容可能な容器形状をなしている。ウェル7は、基板3の面に交差する方向へ向かって電極対4から立ち上げられた壁部7Aを有している。ウェル7において壁部7Aによって囲まれた空間(以下、「流動体保持空間10」と称する。)内に、電極対4を構成する一組の電極4A,4Bの各辺部4Ax,4Bxの一部が配されている。本実施形態では、一組の電極4A,4Bの各辺部4Ax,4Bxにおいてそれぞれ一部が流動体保持空間10内に配置されている。また、流動体保持空間10内において、一組の電極4A,4Bにおける各電極の露出面積は互いに等しい。
ウェル7の壁部7Aは、液性試薬16に対する濡れ性が低い材料によって形成されていることが好ましい。例えば、液性試薬16として水系液体が採用される場合、ウェル7は疎水性の材料によって形成されていたり、疎水性の表面処理が施されていたりすることが好ましい。例えば、ウェル7の壁部7Aは、液性試薬16に対する接触角が80度以上となるように構成されていてもよい。
本実施形態におけるウェル7の壁部7Aの高さは、絶縁膜9の膜厚と等しい。ウェル7の壁部7Aの高さ(本実施形態では絶縁膜9の膜厚)が10μm以上であると、ウェル7内に収容される液性試薬16をウェル7において特に好適な液滴状態で保持することができる。なお、液性試薬16の量は、ウェル7において液滴状となる量に満たない少量でもよい。この場合には、ウェル7の壁部7Aの高さは特に限定されない。
また、疎水性の表面処理が施されたウェル7としては、非極性物質によって外面(ウェル7の内周面やウェル7の開口周辺部の面を含む)に疎水性皮膜が形成されてなるウェル7を挙げることができる。
なお、ウェル7の壁部7Aは、液性試薬16に対するメニスカスを相殺して液性試薬16の液面高さを一定にするように内面が傾斜していてもよい。
ウェル7は、複数の電極対4に対して個別に設けられ、電極対4毎に異なる分析を行なうことができる。なお、「異なる分析」とは、同一の分析対象物に対する互いに独立した分析であることを含むものであり、同一の被検体液を接触させた吸着材11を複数のウェル7にそれぞれ収容することも、「異なる分析」の一例である。
本実施形態では、吸着材11が収容されたウェル7が液性試薬16によって満たされた状態で使用される場合と、後述する吸着材11に液性試薬16が染み込んだ状態で吸着材11がウェル7内に収容される場合とがありうる。
次に、上記溶液成分センサ2の製造方法について説明する。
溶液成分センサ2の製造方法としては、まず、互いに対向する一組の電極4A,4Bと、一組の電極4A,4Bの各々を測定系装置101に接続するための配線部8とを基板3上に形成する。
一組の電極4A,4Bと配線部8とは、例えばスパッタリング等の成膜方法を用いて製造したり、エッチングによってパターン形成したりすることによって形成することができる。また、一組の電極4A,4Bは、金属粒子を含有するペーストの印刷によりパターン形成されその後焼成されることによって形成されてもよい。
次に、一組の電極4A,4Bにおいて互いに対向する部分の少なくとも一部を含む領域を囲む絶縁性のウェル7(流動体保持部)を一組の電極4A,4B上に形成する。ウェル7は、貫通孔部を有する絶縁膜9を一組の電極4A,4B上に形成することによって生じる。ウェル7は、例えば液状の樹脂などをスクリーン印刷によって一組の電極4A,4B上に印刷した後に樹脂を硬化させたり、貫通孔部を有する絶縁性の膜状部材を一組の電極4A,4B上に接着したりすることで形成できる。なお、ウェル7は、基板3上の一部に形成されていてもよい。本実施形態では、基板3上においてウェル7の外側領域が絶縁膜9によって被覆される。
以上が溶液成分センサ2の製造工程である。
次に、吸着材11(図4参照)の構成について説明する。図5は、吸着材11に対する物質の物理吸着状態を示す概念図である。図6は、吸着材11に対する物質の物理吸着状態を示す概念図である。図7は、吸着材11上の分析対象物に対する感応物質12の特異的結合状態を示す概念図である。図8は、吸着材11上の分析対象物に対する感応物質12の特異的結合状態の別の例を示す概念図である。図9は、吸着材11に対する感応物質12の吸着または結合の例を示す概念図である。図10は、吸着材11に対する感応物質12の吸着または結合の例を示す概念図である。
図4から図7までに示すように、吸着材11は、被検体液中の分析対象物20を物理吸着可能な構造体である。吸着材11は、分析対象物に対する特異性を有していなくてもよい。
吸着材11の材質は、たとえば、プラスチック、ゴム、ガラス、セラミックス、紙、タンパク質、動植物由来の組織、細胞を含む構造体等である。吸着材11は液性試薬16と化学反応したり、液性試薬16に溶解したりしにくい素材であることが好ましい。吸着材11の材質として上記のように例示された材質は、溶液成分センサ2とともに吸着材11を使用した測定中における意図しない電圧変化を少なく抑えることができる。また、これらの材質は、電極を劣化や破損が起こりにくい材質である。吸着材11は導電性の低い素材であることが好ましい。より好ましくは、吸着材11は、実質的に絶縁体からなる。吸着材11の導電性が低いと、溶液成分センサ2とともに吸着材11を使用した測定中における信号のバックグラウンドを低く抑え、計測精度を高めることができる。また、吸着材11が実質的に絶縁体からなると、電極対4における電極間の短絡を防止できる。
吸着材11の形状は、たとえば、板状やフィルム状(膜状,シート状)である。なお、吸着材11の形状は、繊維状や粒子状であってもよい。たとえば、吸着材11は、多数の繊維を含むフィルム状(膜状,シート状)や、多数の粒子が結合されたフィルム状(膜状,シート状)であってもよい。
以下では、一例として、セルロース繊維からなるシート状の吸着材11について説明する。
セルロース繊維からなるシート状の吸着材11は、セルロース繊維が絡み合って構成されたシート状の部材である。このため、本実施形態において例示される吸着材11は多孔質である。多孔質の吸着材11は、分析対象物が物理吸着し得る表面を広く有しているので、本分析方法において多くの分析対象物を保持することができる。
なお、吸着材11が高い導電性を有していると後述する電極間が短絡する可能性があるので、吸着材11は、絶縁体であることが好ましい。また、吸着材11は、絶縁体によって被覆されていてもよい。
また、被検体液中の特定物質を選択的に検出する機能を付与するために、表面を化学修飾した吸着材11を使用することも可能である。この場合上記吸着材11に、イオン交換性の官能基、イオノフォア類、酵素、タンパク、抗体、抗原等の認識物質を、化学吸着あるいは有機合成手法により共有結合で結合させて用いることができる。
たとえば、吸着材11を構成するセルロース表面は、アミノ基等の官能基によって修飾されていてもよい。アミノ基によって表面が修飾された吸着材11は、アミノ基の塩基性(電子供与性)に対して酸性物質(電子受容性)の高い組み合わせとなるので、化学吸着が生じることが予想される。この性質を利用することによって、アミノ基によって表面が修飾された吸着材11の表面に電子受容性の物質を吸着させることができる。アミノ基によって表面が修飾された吸着材11に化学吸着され得る分析対象物の例として、例えば、核酸、DNA、錯体化合物や、pHの調製等で表面が正電荷を帯びたタンパク質、細胞、組織などがある。
図7及び図8に示すように、感応物質12は、分析対象物20に結合された、又は分析対象物に結合可能な物質である。感応物質12は、液性試薬16に含まれる基質の存在下で酸化還元反応を生じさせる酵素13を含む。たとえば、感応物質12は、酸化還元反応を生じさせる酵素13が結合した標識抗体である。この標識抗体は、分析対象物に対して特異的に結合可能である。たとえば、ペルオキシダーゼ標識IgG抗体や、アルカリフォスファターゼ標識IgG抗体などは、上記の標識抗体として好適に利用可能である。たとえば、感応物質12に含まれるペルオキシダーゼは、液性試薬16の酸化還元反応(本実施形態ではフェントン反応)を促進する。
図8に示すように、感応物質12を含んだ液体として、分析対象物20に対して特異的な一次抗体14を含む第一溶液と、一次抗体に特異的な酵素標識二次抗体15を含む第二溶液とが用いられてもよい。この場合、第一溶液に吸着材11を浸漬した後に吸着材11を緩衝液によって洗浄し、その後吸着材11を第二溶液に浸漬することによって、感応物質12となる酵素13を一次抗体14を介して分析対象物20に特異的に結合させることができる。
なお、図9に示すように、感応物質12は、酵素13のみからなっていてよい。この場合、酵素13は、吸着材11に対して物理吸着可能である。なお、酵素13が吸着材11に吸着された状態であっても酵素活性を有している場合には、酵素13は、後述する液性試薬16と反応し得る。本実施形態では、酵素13と吸着材11とが物理吸着により吸着されているので、共有結合による結合や、加熱や化学反応を伴う結合方法と比較して、酵素活性が維持されやすい。
また、図10に示すように、感応物質12自体も、吸着材11に対して物理吸着し得る。たとえば図10に示すように酵素標識抗体が吸着材11に吸着される場合には、必ずしも抗原認識部位が吸着材11に結合するわけではない。
次に、液性試薬16(図4参照)の組成について説明する。
図4に示すように、液性試薬16は、吸着材11とともにウェル7に収容されて使用される液性の試薬である。液性試薬16は、感応物質12に含まれる酵素13の存在下で酸化還元反応を生じさせる基質を含む。
感応物質12の化学反応部位と反応基質の組み合わせの例としては、ペルオキシダーゼと過酸化水素/o−フェニルジアミンや過酸化水素/フェリシアン化鉄、アルカリフォスファターゼとo−ニトロフェニルリン酸等が挙げられる。これらの場合には、液性試薬16に含まれる基質の濃度は、少なくとも最終濃度において感応物質12と適切に反応できる濃度範囲にあることが好ましい。
本実施形態では、液性試薬16は、過酸化水素とフェリシアン化カリウムとを含有する。本実施形態の液性試薬16と感応物質12との化学反応では、フェントン反応により、鉄(II)イオンを酸化して鉄(III)イオンとする。鉄(III)イオンは電極対4から電子を受け取ることによって鉄(II)イオンに還元される。また、フェントン反応により、過酸化水素からヒドロキシラジカルと水酸化物イオンが生じ、電極対4に電子を放出する。これにより、液性試薬16がウェル7に収容された状態では電極対4と液性試薬16との間で電子の授受が起こる。電極対4と液性試薬16との間での電子の授受は、フェントン反応の速度が高くなるにしたがって増加する。また、感応物質12に含まれる酵素13は、フェントン反応を促進する。このため、ウェル7内に感応物質12が存在する場合には、感応物質12の濃度が高くなるにしたがって電極対4と液性試薬16との間での電子の授受も促進される。
次に、測定系装置101の一例について説明する。図11は、測定系装置101のブロック図である。図12は、測定系装置101の一部の構成を示す回路図である。
図11に示すように、測定系装置101は、溶液成分センサ2の配線部8に電気的に接続される機器であり、測定系回路102と、コンピュータ108とを備える。
測定系回路102は、電圧計測部103、電流計測部106、及び電源部107と接続されている。
図12に示すように、電圧計測部103は、溶液成分センサ2の電極対4に対して所定の電圧Vccを印加し、溶液成分センサ2の電極対4上に配されたウェル7内に吸着材11及び液性試薬16が収容された状態で測定された抵抗値Rに基づいた検出電圧Voutを出力する。本実施形態では、ウェル7内における酸化還元反応によって電極対4と液性試薬16との間での電子の授受が活発となれば抵抗値Rは低い値となる。
検出電圧Voutは、差動増幅回路104によって例えば2倍に増幅されて出力される。
また、電圧計測部103は、センサ感度調節用可変抵抗105を有する。センサ感度調節用可変抵抗105の抵抗値R1の大きさは、溶液成分センサ2における抵抗値Rが既知である校正用デバイスを用いて予め設定されることが好ましい。これにより、溶液成分センサ2における抵抗値Rの変化のレンジに最適化された出力電圧Voutのレンジを設定することができる。
電流計測部106は、測定系回路102における電流の大きさを検出する。
このように、測定系装置101の測定系回路102は、電極対4を用いて、ウェル7内における酸化還元反応を、検出電圧Voutの変化として測定可能となるように出力することができる計測部である。
コンピュータ108は、GP−IBやUSB等のインターフェースを介して測定系回路に接続された電子計算機である。また、コンピュータ108は、コンピュータ108によって演算された結果を表示する表示部109と、当該結果その他の情報を記録する記録部110とを有している。
コンピュータ108は、電源部107に対して、出力する電圧及び電流の大きさを制御し、また、電圧計測部103及び電流計測部106において測定された値の入力を受け付ける。コンピュータ108は、インターフェースを介して測定系回路102から取り込んだ値を用いて被検体液中の所望の成分の濃度を算出するプログラムを有している。
たとえば、本実施形態のコンピュータ108が有するプログラムは、電流変化又は電圧変化に基づいて被検体液中の分析対象物の濃度を算出する算出部としてコンピュータ108を動作させるプログラムである。
なお、測定系装置101の構成は、これに限られるものではない。例えば、測定系装置101は、上述の各構成が一体化された携帯型装置であってもよい。また、測定系装置101は、溶液成分センサ2が取り付けられる子機と、子機に対して無線あるいは有線により通信可能な親機とを有していてもよい。この場合には、子機が電圧を測定して検出電圧Voutを親機に出力し、親機がコンピュータ108にインターフェースを介して接続されるようになっている。また、測定系装置101における電子回路の回路配置及び回路構成についても上述の配置及び構成には限られない。
また、測定系装置101において、測定系回路102とコンピュータ108とは無線通信をするようになっていてもよい。
また、上記の測定系装置101は、検出電圧Voutを出力するようになっているが、これに限らず、測定系装置101は、ウェル7内に吸着材11及び液性試薬16が収容された状態における電流の変化(検出電流Iout)を出力するようになっていてもよい。
次に、本実施形態の溶液成分分析方法について、上記の溶液成分センサ2、吸着材11、及び液性試薬16を用いた場合を例として説明する。
本実施形態の溶液成分分析方法は、分析対象物を含む液体(被検体液)中の分析対象物の濃度を測定し、被検体液の構成成分を分析する方法である。
本実施形態の溶液成分分析方法は、分析対象物に適した温度条件下(たとえば、室温、37℃、あるいは4℃など)で行われることが好ましい。
図13は、本実施形態の溶液成分分析方法を示すフローチャートである。
本分析方法においては、まず、絶縁性を有する吸着材11に被検体液を接触させる(吸着工程、ステップS1、図13参照)。
ステップS1では、吸着材11が被検体液に浸漬される。ステップS1において被検体液に吸着材11が浸漬されると、被検体液に含まれる分析対象物が吸着材11に物理的に吸着される。吸着材11を被検体液に浸漬している間に、吸着材11が入った被検体液の撹拌や振とうが行われてもよい。なお、ステップS1では、吸着材11を被検体液に浸漬することに代えて、被検体液を吸着材11に塗布したり被検体液を吸着材11に滴下したりすることで被検体液を吸着材11に接触させてもよい。
本実施形態では、多孔質状の吸着材11の内部に被検体液が浸透して、吸着材11の内部にある表面にも分析対象物が物理的に吸着される。分析対象物に対する特異的吸着能が吸着材11に付与されていないので、本実施形態の吸着材11は、被検体液に含まれる様々な物質を、分析対象物20及びその他の物質21を区別することなく、吸着可能である(図5参照)。また、分析対象物に対する特異的吸着能が吸着材11に付与されていないので、吸着材11に吸着される物質のうちの分析対象物の割合は、被検体液中の分析対象物の存在比を概ね反映している。
ステップS1において吸着材11を被検体液に浸漬する時間の長さ(吸着材11に対する被検体液の接触時間の長さ)は、一般的なELISAにおける抗原のコーティング時間よりも短くて良い。これは、吸着材11の表面積が、一般的なELISA用マイクロプレートにおける抗原吸着可能面積よりも広いことによる。たとえば、ステップS1における浸漬時間の長さは、15分以下とすることができる。なお、ステップS1における浸漬時間が15分を超えてもよい。たとえばステップS1における浸漬時間を60分としても、分析対象物の濃度を好適に測定することができる。
ステップS1における浸漬時間が経過したら、被検体液から吸着材11を取り出す。
これでステップS1は終了し、ステップS2へ進む。
ステップS2は、ステップS1において被検体液から取り出された吸着材11をブロッキングするステップである(図6参照)。
上記のステップS1では、吸着材11の表面に様々な物質が吸着されているので、吸着材11の表面に吸着された分析対象物に対して特異的な感応物質12を使用したとしても、分析対象物以外の物質に対して感応物質12が非特異的に結合する場合がある。このような非特異的な結合は濃度測定の精度及び再現性を悪化させる可能性がある。このため、ステップS2において、吸着材11の表面に吸着された物質に対する感応物質12の非特異的な結合を減らす目的で、吸着材11がブロッキングされる。
ステップS2におけるブロッキングは、吸着材11に物理吸着可能なブロッキング剤22(図6参照)を含む液体(ブロッキング液)に、ステップS1において被検体液から取り出された吸着材11を浸漬することによって行われる。ブロッキング液は、感応物質12に対して特異的結合をしないことが確認されたブロッキング剤を含む。ブロッキング液は、分析対象物に対応して、ブロッキング剤としてスキムミルクや血清(たとえばアルブミンなどを含む)などを含んでいる。ブロッキング剤の溶媒は、例えば緩衝液である。公知のブロッキング液をステップS2において適宜選択して利用可能である。また、感応物質12に含まれる酵素13の種類に対応して好適なブロッキング液が選択されてもよい。ブロッキング液は、酸化還元反応(本実施形態ではフェントン反応を含む)を阻害しないことが好ましい。たとえば、ブロッキング液は、液性試薬16と化学反応したり、液性試薬16に溶解することで液性試薬16の組成を著しく変化させたりすることのないものが好ましい。また、吸着材11の表面に残留するブロッキング剤が後述の電圧変化の検知(ステップS5)に与える悪影響を軽減するために、ブロッキング剤の導電性が低いことが好ましい。
また、ブロッキング液を使用しないブロッキングの例として、高分子を有機合成手法で吸着材11上に化学結合させる方法が挙げられる。
ブロッキング液中におけるブロッキング剤の濃度は、感応物質12と吸着材11との非特異的結合のしやすさを考慮して決定される。また、ブロッキング剤の濃度の決定のために分析対象物の組成が考慮されていてもよい。
ステップS2において吸着材11をブロッキング液に浸漬する場合には、ステップS1において吸着材11を被検体液から取り出した後吸着材11が乾燥しないようにすることが好ましい。ステップS2において吸着材11をブロッキング液に浸漬する時間の長さは、一般的なELISAにおけるブロッキング時間と同等であってもよいし、一般的なELISAにおけるブロッキング時間より短くてもよい。一例として、ステップS2における浸漬時間は、5分以上60分以下とすることができる。なお、ステップS2における浸漬時間は、15分以上60分以下であるとさらに好ましい。ステップS2において60分を超えてブロッキングを行っても構わない。ステップS2において吸着材11をブロッキング液に浸漬している間に、吸着材11が入ったブロッキング液のゆるやかな振とうが行われてもよい。
ステップS2における浸漬時間が経過したら、ブロッキング液から吸着材11が取り出される。なお、必要に応じて、ブロッキング液から取り出した吸着材11が緩衝液等によって洗浄されてもよい。
これでステップS2は終了し、ステップS3へ進む。
ステップS3は、ブロッキング液から取り出された吸着材11に感応物質12を接触させるステップ(添加工程)である。
ステップS3では、感応物質12を含んだ液体に吸着材11が浸漬される。感応物質12を含んだ液体に吸着材11が浸漬されることにより、感応物質12は分析対象物に特異的に結合する(図7参照)。その結果、ステップS3では、吸着材11に吸着された分析対象物の数に対応する数の感応物質12が、分析対象物を介して吸着材11に結合する。なお、ステップS3において、吸着材11に感応物質12が添加されるものであれば、感応物質12を含んだ液体に吸着材11を浸漬することに代えて、感応物質12を含んだ液体を吸着材11に塗布したり、感応物質12を含んだ液体を吸着材11に滴下したりしてもよい。
ステップS3において、感応物質12を含んだ液体に吸着材11を浸漬する時間の長さは、一般的なELISAにおける酵素標識抗体との反応時間と同程度であってもよいし、この反応時間よりも短くてもよい。なお、ステップS3において、感応物質12を含んだ液体として、分析対象物に対して特異的な一次抗体14を含む第一溶液と、一次抗体に特異的な酵素標識二次抗体15を含む第二溶液とが用いられてもよい(図8参照)。この場合、第一溶液に吸着材11を浸漬した後に吸着材11を緩衝液によって洗浄し、その後吸着材11を第二溶液に浸漬することによって、感応物質12となる酵素13を一次抗体14を介して分析対象物に特異的に結合させることができる。
感応物質12を含んだ液体に対する吸着材11の浸漬時間が経過したら、この溶液から吸着材11を取り出す。
これでステップS3は終了し、ステップS4へ進む。
ステップS4は、溶液成分センサ2のウェル7に吸着材11を配置する(配置工程)ステップである。
ステップS4では、上記のステップS3において感応物質12を分析対象物に結合させた吸着材11が、溶液成分センサ2のウェル7に配置される。ステップS4における吸着材11の配置は、たとえばピンセットを用いて手作業で行うことができる。ステップS4では、電極対4を構成する各電極に吸着材11が接触するように、吸着材11が電極対4上に載置される。その後、ウェル7内に所定量の液性試薬16が添加される。液性試薬16の添加後、ウェル7内では、酸化還元反応(本実施形態ではフェントン反応を含む)により電極対4との間での電子の授受が生じ得る状態となる。フェントン反応の速度は、吸着材11に結合している感応物質12の数と正の相関を有する。
これでステップS4は終了し、ステップS5へ進む。
ステップS5は、ウェル7に液性試薬16(図4参照)を添加するステップである。
ステップS5では、ウェル7に液性試薬16が添加され(反応工程)、その後、測定系装置101が電極対4を用いてウェル7内における電圧変化を検知する(計測工程)。なおステップS5のウェル7に液性試薬16を添加した後に、ステップS4の吸着材11をウェル7内に配置してもよい。またステップS3で感応物質12を接触させた吸着材11に、液性試薬16を浸透、塗布、滴下などの方法で接触させたものを、ステップS4でウェル7に配置することでステップS5における液性試薬16の接触を省略することも可能である。
ステップS5において、電極対4と液性試薬16との間での電子の授受が活発であれば抵抗値Rは低い値となるので、電圧計測部103において測定される電圧(検出電圧Vout)は高値となる。ステップS5において、検出電圧Voutは、電極対4と液性試薬16との間での電子の授受の頻度、すなわち、酸化還元反応の速度を反映している。言い換えると、ステップS5において、検出電圧Voutは、ウェル7内にある感応物質12の量を反映している。ウェル7内の感応物質12の量は吸着材11に吸着された分析対象物の量を反映しているから、ステップS5において測定される検出電圧Voutは、ウェル7内にある分析対象物の量を反映している。
これでステップS5は終了し、ステップS6へ進む。
ステップS6は、測定系装置101のコンピュータ108が上記ステップS5における検出電圧Voutに基づいて被検体液中の分析対象物の濃度を算出するステップ(算出工程)である。
ステップS6において、コンピュータ108は、溶液成分センサ2に配された5つのウェル7を用いて取得された5つの検出電圧Voutの値(実測データ)を用いて、センサ電圧を算出する。本明細書における「センサ電圧」は、取得された5つの検出電圧Voutに基づく検出電圧値(検出値)のうち、最高値及び最低値を除いた他の3つの値の平均値である。コンピュータ108は、センサ電圧を、表示部109に表示させたり、記録部110に記録したりする。
分析対象物の濃度をセンサ電圧から算出する場合には、濃度既知の物質におけるセンサ電圧を、コンピュータ108が事前に取得している必要がある。たとえば、濃度既知の物質を含む液体を溶液成分センサ2を用いて測定して得られたセンサ電圧を参照用データとしてコンピュータ108が予め記憶している。
ステップS6において、分析対象物の濃度をセンサ電圧から算出する場合には、コンピュータ108は、参照用データとして記憶されたセンサ電圧と実測データに基づいて算出されたセンサ電圧との比較によって、被検体液に含まれる分析対象物の濃度を算出する。コンピュータ108は、分析対象物の濃度を、表示部109に表示させたり、記録部110に記録したりする。
本実施形態の溶液成分分析方法の作用及び効果について説明する。
吸着材11が多孔質である場合には、吸着材11の体積に比して表面積が大きくなるように吸着材11が構成されているので、単位時間当たりに吸着材11に吸着可能な分析対象物の量を、吸着材11が多孔質でない場合と比較して高めることができる。さらに、吸着材11が多孔質である場合には、少量の感応物質12及び少量の液性試薬16を吸着材11表面に素早く浸透させることができるので、素早い濃度測定が可能である。
また、5つのウェル7を用いて得られた検出電圧Voutの値に基づいて、最高値及び最低値を除いた他の複数の検出電圧値の平均値を利用して分析対象物の濃度を算出するので、ウェル7ごとに検出電圧Voutの値にばらつきがあっても、信頼性の高い濃度測定が可能である。たとえばウェル7が微細になると、ウェル7に収容可能な吸着材11は小さくなり、ウェル7に収容可能な液性試薬16の量も少なくなる。このような微細化は、被検体液の必要量を減少させるという点及び溶液成分分析センサを小型化するという点で有利であるが、電極対4も小型になり、ウェル7内での反応もごく小規模な反応となる点で、ウェル7単体では測定精度及び再現性が低下する点で不利となる。これに対して、本実施形態では、コンピュータ108が、5つのウェル7を用いて得られた検出電圧Voutの値から、信頼性が低いと考えられる検出電圧値(極端に高い値及び極端に低い値)を除外した上でさらにその残りの検出電圧値の平均値を算出する。その結果、本実施形態の溶液成分分析方法によれば、ウェル7ごとのばらつきがあっても、検出対象物の濃度を精度よく、高い再現性を有して測定することができる。
本実施形態の溶液成分分析キット1の作用及び効果について説明する。
本実施形態の溶液成分分析キット1は、複数の電極対4が互いに離間した位置に配され、複数の電極対4に対して個別にウェル7を構成する絶縁膜9が基板3上に形成されている。このため、本実施形態の溶液成分分析キット1における電極対4において、ウェル7内に露出する部分の面積は、複数のウェル7において実質的に互いに等しい。また、貫通孔部を有する絶縁膜9によりウェル7が形成されているので、ウェル7の形状も実質的に互いに等しい。このため、溶液成分センサ2を用いた濃度測定時に吸着材11と液性試薬16の接触状態を複数のウェル7で互いに同等とすることができる。すなわち、液性試薬16と吸着材11との接触面積や、ウェル7内における吸着材11の位置などが、複数のウェル7において略同等となっている状態で、複数のウェル7に対して電圧変化(あるいは電流変化)の検出をすることができる。また、本実施形態の溶液成分分析キット1によれば、測定者の操作によって吸着材11と液性試薬16との位置関係がずれることが起こりにくい。これらの結果、本実施形態の溶液成分分析キット1によれば、測定の精度が高く、測定の再現性が高い。
電極に溶液を接触させて測定する溶液成分センサ2では、電極表面の酸化や有機物の汚染に由来する劣化状態の違いによって測定誤差が生じ、測定再現性や精度低下を招くことが考えられる。これに対して、本実施形態の溶液成分分析キット1の溶液成分センサ2は、5組の電極対4を利用して電圧変化(または電流変化)を同時に測定し、最大値、最小値を省いた平均値を算出する方法で、測定再現性と精度を向上させることができる。
なお、電極対4の数が4つであっても、最大値、最小値を省いた平均値を算出することができる。また、電極対4の数が3つの場合には、最大値、最小値を省いた残りの値は、上記の測定誤差の少ない値であって分析対象物の濃度を正しく反映していると考えられる。
電極対4の数は、溶液成分センサ2の寸法を考慮して、5組以上であってもよい。電極対4の数が多い方が、最大値、最小値を省いた平均値の信頼性が高いと言える。
また、本実施形態の溶液成分センサ2は、電極対4、配線部、及び絶縁膜9を、既存の半導体マスク製造ラインにてフォトリソグラフィー法を用いて製造することができる。このため、本実施形態の溶液分析センサは、電極対4の形状、ウェル7の開口形状、及びウェル7の開口面積を、製品ロット間で一定にすることができる。すなわち、本実施形態の溶液成分センサ2は、ロット間誤差が少ないので、測定再現性が高い測定をすることができる。
また、本実施形態の溶液成分分析キット1は、吸着材11を有しているので、夾雑物等の多い被検体液を使用する場合に、被検体液を粗精製するような前処理をしなくてもよい。また吸着材11に吸着された分析対象物は感応物質12と迅速かつ定量的に反応し、既存の計測法と比較して時間が大幅に短縮される。
さらに、本実施形態の溶液成分分析キット1によれば、液性試薬16との反応によって、検出電圧あるいは電流が増幅されるので、微量な分析対象物の測定再現性と精度を向上させることができる。
また、本実施形態の吸着材11は、被検体液に含まれるタンパクや抗体のような熱や化学物質で劣化しやすい分析対象物を、吸着材11に簡便かつ迅速に保持できる。すなわち、本実施形態では、吸着材11に分析対象物を物理的に吸着させるので、分析対象物を吸着材11に吸着させた際の分析対象物の構造が正しく維持されやすい。このため、感応物質12と分析対象物との結合が阻害されにくいので、分析対象物の濃度測定の精度及び再現性に優れる。
また、たとえばセルロース繊維からなる吸着材11は、低コストで加工しやすい吸着材である。このような吸着材11を溶液成分分析キット1が備えていることによって、食品、医薬、化粧品等の製造業や医療、臨床検査等の幅広い分野において、高精度で再現性の高い分析を実現することができる。
(バックグラウンドの測定)
まず、本発明の溶液成分分析キット及び溶液成分分析方法において使用される吸着材の特性について説明する。
バックグラウンドの測定及び以下の実施例では、セルロースシートからなる吸着材が使用される。具体的には、吸着材として、直径3mmに裁断された無蛍光不溶性紙(王子製紙製)が使用される。
バックグラウンドの測定では、分析対象物を含まない溶液として、炭酸水素ナトリウム/リン酸緩衝液(以下、コーティングバッファーという)が、被検体液の代わりに使用される。
感応物質として、ペルオキシダーゼ標識化抗ウシ血清アルブミン抗体(以下、HRP標識化抗BSA抗体という)が使用される。HRP標識化抗BSA抗体は、ウシ血清アルブミン(以下、BSAという)を抗原として特異的に認識する抗体である。感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体を含む溶液は、リン酸緩衝生理食塩水(以下PBSという)を用いてHRP標識化抗BSA抗体を500ng/mlに希釈した溶液である。
ブロッキング剤として、スキムミルクが使用される。ブロッキング液は、Tween20含有PBS溶液(以下PBST)でスキムミルクを5%に希釈した溶液である。
バックグラウンドの測定として、一般的なELISAを模した吸光度測定における吸光度のバックグラウンドと、上記実施形態に開示された溶液成分センサを使用した電圧変化の測定における検出電圧値のバックグラウンドとのそれぞれが測定される。
吸光度のバックグラウンドの測定では、上記実施形態に開示された液性試薬に代えて、HRPの存在下で橙黄色の反応産物を生じる発色液が使用される。発色液は、o−フェニルジアミン(以下OPDという)/炭酸ナトリウム/クエン酸緩衝液の1%溶液と、過酸化水素の0.3%溶液との混合物である。OPDは、過酸化水素及びHRPの存在下で橙黄色の反応産物を生じる。バックグラウンドの測定では、マイクロプレートリーダー(TECAN製)を使用して発色反応の検出(吸光度測定)が行われる。
また、検出電圧値のバックグラウンドの測定では、以下の構成の溶液成分センサ及び測定系装置が使用される。
溶液成分センサの製造方法及び構成について説明する。まず、ガラス基板(15×45mm、1mm厚)に1000Å厚のクロムがスパッタリング法により成膜され、フォトリソグラフィー、エッチングを用いて所定の形状の電極対及び配線部がパターニング加工される。電極対は1基板上に5ヶ×2箇所とされている。次に、各電極対の上部に直径3mmの開口を有するように絶縁膜がパターニング加工されることによって、各電極対の位置にウェルが形成される。
検出電圧値のバックグラウンドの測定及び以下の各実施例において溶液成分センサを取付けることができる測定系装置の一例として、携帯型センサ電圧測定器(アーズ製、バイオセンサモジュール2010モデル)が使用される。携帯型センサ電圧測定器は、溶液成分センサを取付けて電圧値を測定する子機と、有線若しくは無線により子機と接続される親機とを有する。
携帯型センサ電圧測定器の子機は、携帯電話サイズの電圧測定器であり、5つの電極対の電圧値を同時測定できる。携帯型センサ電圧測定器の子機は、電圧値をA/D変換して親機へと出力する。
携帯型センサ電圧測定器の親機は、スマートフォンその他のコンピュータと接続することができる。携帯型センサ電圧測定器の親機は、コンピュータに記録された所定のプログラムに従って、電圧値の経時変化を表示または記録する。電圧値の経時変化は、たとえば、CVS形式のデータとして記録される。携帯型センサ電圧測定器の検出電圧上限は約3000mVである。
バックグラウンドの測定における操作手順について説明する。
まず、500μLのコーティングバッファーに吸着材である5枚のセルロースシートが浸漬される。コーティングバッファーに浸漬されたセルロースシートは、37℃で15分間インキュベート(静置)される。インキュベートの後、セルロースシートがコーティングバッファーから取り出される。コーティングバッファーから取り出されたセルロースシートは、蒸留水で数回すすぎ洗いされる。
続いて、すすぎ洗いが終了したセルロースシートは、ブロッキング液に浸漬される。ブロッキング液に浸漬されたセルロースシートは、37℃で15分間インキュベートされる。ブロッキング液中でのインキュベートの後、セルロースシートはブロッキング液から取り出される。ブロッキング液から取り出されたセルロースシートは、蒸留水で数回すすぎ洗いされる。
ブロッキング及びその後のすすぎ洗いが行われたセルロースシートは、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体を含む溶液に浸漬される。HRP標識化抗BSA抗体を含む溶液に浸漬されたセルロースシートは、室温20℃で15分間インキュベートされる。HRP標識化抗BSA抗体が特異的に結合する対象となる抗原が存在する場合には抗原にHRP標識化抗BSA抗体が結合するが、バックグラウンドの測定では、HRP標識化抗BSA抗体の特異的抗原がセルロースシート上に存在しないので、セルロースシートに対するHRP標識化抗BSA抗体の結合は、HRP標識化抗BSA抗体が結合する抗原決定基とは無関係な結合または物理吸着による。HRP標識化抗BSA抗体を含む溶液中でのインキュベートの後、セルロースシートが溶液から取り出される。HRP標識化抗BSA抗体を含む溶液から取り出されたセルロースシートは、蒸留水で数回すすぎ洗いされる。
次に、HRP標識化抗BSA抗体を結合させる工程まで終了したセルロースシートに対して発色反応をする操作手順について説明する。
複数のマイクロチューブに、HRP標識化抗BSA抗体を結合させる工程まで終了したセルロースシートが1枚づつ収容される。これらのセルロースシートがマイクロチューブに収容された後、マイクロチューブに150μLの発色液が添加される。発色液が添加された後のマイクロチューブは、室温(20℃)で10分間インキュベートされる。このインキュベートの間に、発色反応が生じる。インキュベート後、複数のマイクロチューブ内の発色液のうち100μLが、公知の96穴マイクロプレートの各1ウェルに分注される。発色液が分注された96穴マイクロプレートにおいて呈色した溶液の吸光度が、マイクロプレートリーダーによって測定される。
図14は、吸光度測定の結果について、独立した2試行の結果か並べて示されている。
図14に示すように、コーティングバッファーに吸着材が浸漬された場合には、吸光度は0.07である。なお、上記のマイクロプレートリーダー(TECAN製)における検出限界は0.04であるので、吸光度0.07は、検出対象物の濃度が検出限界の下限にほぼ等しいことを示している。
次に、HRP標識化抗BSA抗体を結合させる工程まで終了したセルロースシートを用いてセンサ電圧の測定をする操作手順について説明する。
まず、携帯型センサ電圧測定器の子機に溶液成分センサが取り付けられる。続いて、HRP標識化抗BSA抗体を結合させる工程が行われたセルロースシート(本例では上記の吸光度の測定が終了した後に蒸留水に5分間浸漬されたセルロースシートである)が、溶液成分センサの各ウェルに1つずつ収容される。HRP標識化抗BSA抗体を含む液体に浸漬される工程を経た5つのセルロースシートが、同時に測定される5つのウェルに1つずつ収容される。
さらに、液性試薬5μLが各ウェルに例えば手作業によって収容される。液性試薬5μLが各ウェルに収容された後に、電圧測定が開始される。電圧の測定は10秒間行われる。電圧の測定の開始から500msごとに電圧を測定して検出電圧Voutの変化を記録する。
携帯型センサ電圧測定器の親機に接続されたコンピュータによる検出電圧値の解析は、以下のように行われる。
まず、5つの電極対から得られた10秒間の検出電圧Voutの平均値が、コンピュータ108によって、検出電圧値(検出値)としてそれぞれ算出される。続いて、5つの電極対から得られた5つの検出電圧値の中から最大値、最小値を示した電極対のデータを除き、残り3つの電極対における検出電圧値の平均値をセンサ電圧とする。
図15は、センサ電圧の測定結果について、独立した2試行の結果か並べて示されている。
図15に示すように、コーティングバッファーに吸着材が浸漬された場合には、センサ電圧は約2250mVである。
次に、本発明の溶液成分分析キット及び溶液成分分析方法の実施例について説明する。
(実施例1)
本実施例は、吸着材に対する分析対象物の吸着能及び分析対象物に対する感応物質の結合能を示すための実施例である。本実施例では、感応物質の存在下で発色反応を生じる反応系を使用する。
吸着材に吸着させる分析対象物として、ウシ血清アルブミン(陽性抗原、以下、BSAという)が使用される。また、対照実験として、ヒト血清アルブミン(陰性抗原、以下、HSAという)が使用される。BSA又はHSAを含む被検体液は、炭酸水素ナトリウム/リン酸緩衝液(上記のコーティングバッファーである)を用いて上記のBSA又はHSAを500μg/mlに希釈した溶液からなる。
以下の各実施例及び比較例において、メーカーの指定のない試薬は、全て和光純薬製である。
感応物質としてHRP標識化抗BSA抗体が使用される。感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体を含む溶液は、リン酸緩衝生理食塩水(以下PBSという)を用いてHRP標識化抗BSA抗体を所定濃度に希釈した溶液である。本実施例におけるHRP標識化抗BSA抗体の濃度は、5ng/ml以上250ng/ml以下の範囲である。本実施例では、HRP標識化抗BSA抗体の濃度について、5ng/ml、50ng/ml、及び250ng/mlの3例が示される。本実施例におけるHRP標識化抗BSA抗体の濃度は、BSA又はHSAの濃度である500μg/mlよりも十分低い濃度である。このため、本実施例では、吸着材にBSAが吸着されていれば感応物質に含まれるHRP標識化抗BSA抗体の全量が吸着材上のBSAに特異的に結合することが期待される。
本実施例では、吸光度測定が行われるので、上記実施形態に開示された液性試薬に代えて、上記の発色液が使用される。本実施例では、マイクロプレートリーダー(TECAN製)を使用して発色反応の検出(吸光度測定)が行われる。
本実施例における操作手順について説明する。
まず、吸着材にBSA又はHSAを吸着させる操作手順について説明する。
BSAを含む被検体液に第一の吸着材が浸漬され、また、HSAを含む被検体液に第二の吸着材が浸漬される。具体的には、一条件あたり5枚のセルロースシートが、500μLの被検体液に浸漬される。本実施例では、2種の抗原(BSA又はHSA)について、感応物質の濃度が異なる3例を示すので、計6条件で30枚のセルロースシートが使用される。被検体液に浸漬されたセルロースシートは、37℃で15分間インキュベート(静置)される。インキュベートの後、セルロースシートが被検体液から取り出される。被検体液から取り出されたセルロースシートは、蒸留水で数回すすぎ洗いされる。これにより、BSA又はHSAは、吸着材であるセルロースシート上に物理吸着によって保持される。
続いて、すすぎ洗いが終了したセルロースシートは、ブロッキング液に浸漬される。ブロッキング液に浸漬されたセルロースシートは、37℃で15分間インキュベートされる。ブロッキング液中でのインキュベートの後、セルロースシートはブロッキング液から取り出される。ブロッキング液から取り出されたセルロースシートは、蒸留水で数回すすぎ洗いされる。
ブロッキング及びその後のすすぎ洗いが行われたセルロースシートは、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体を含む溶液に浸漬される。HRP標識化抗BSA抗体を含む溶液に浸漬されたセルロースシートは、室温20℃で15分間インキュベートされる。HRP標識化抗BSA抗体が特異的に結合する対象となる抗原が存在する場合には、このインキュベートの間に抗原抗体反応が生じる。HRP標識化抗BSA抗体を含む溶液中でのインキュベートの後、これらのセルロースシートが溶液から取り出される。HRP標識化抗BSA抗体を含む溶液から取り出されたセルロースシートは、蒸留水で数回すすぎ洗いされる。以下、この状態のセルロースシートを、「標識済みシート」という。
次に、標識済みシートに対して発色反応をする操作手順について説明する。
複数のマイクロチューブに、標識済みシートが1枚づつ収容される。マイクロチューブに標識済みシートが収容された後、マイクロチューブに150μLの発色液が添加される。標識済みシートが収容されているとともに発色液が添加されたマイクロチューブは、室温(20℃)で10分間インキュベートされる。このインキュベートの間に、発色反応が生じる。インキュベート後、複数のマイクロチューブ内の発色液のうち100μLが、公知の96穴マイクロプレートの各1ウェルに分注される。本実施例では、発色液が分注された96穴マイクロプレートにおいて呈色した溶液の吸光度が、マイクロプレートリーダーによって測定された。
図16は、実施例1においてBSAを吸着材に吸着させた場合の吸光度を示すグラフである。図16における横軸は、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図16における縦軸は、吸光度の大きさを示す。図17は、実施例1においてHSAを吸着材に吸着させた場合の吸光度を示すグラフである。図17における横軸は、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図17における縦軸は、吸光度の大きさを示す。
本実施例の結果から、BSAが吸着された標識済みシートについて測定された吸光度は、HRP標識化抗BSA抗体の濃度が5ng/ml以上250ng/mlである範囲において、HRP標識化抗BSA抗体の濃度に正の相関を有する。BSAが吸着された標識済みシートに関する1次近似式の相関係数は0.99である。すなわち、HRP標識化抗BSA抗体の濃度と吸光度との間に高い濃度相関性が確認された。これに対して、HSAが吸着された標識済みシートについて測定された吸光度は、HRP標識化抗BSA抗体の濃度との相関は見られない。
(実施例2)
本実施例では、上記の実施例1と比較して、感応物質を含んだ液体へのセルロースシートの浸漬時間が異なっている。本実施例では、感応物質を含んだ液体へのセルロースシートの浸漬時間は30分である。
図18は、実施例2においてBSAを吸着材に吸着させた場合の吸光度を示すグラフである。図18における横軸は、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。縦軸は、図18における吸光度の大きさを示す。図19は、実施例2においてHSAを吸着材に吸着させた場合の吸光度を示すグラフである。図19における横軸は、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図19における縦軸は、吸光度の大きさを示す。
本実施例では、上記の実施例1と同様に、BSAが吸着された標識済みシートについて測定された吸光度は、HRP標識化抗BSA抗体の濃度が5ng/ml以上250ng/mlである範囲において、HRP標識化抗BSA抗体の濃度に正の相関を有する。BSAが吸着された標識済みシートに関する1次近似式の相関係数は0.99である。すなわち、HRP標識化抗BSA抗体の濃度と吸光度との間に高い濃度相関性が確認された。これに対して、HSAが吸着された標識済みシートについて測定された吸光度は、HRP標識化抗BSA抗体の濃度との相関は見られない。
本実施例及び上記の実施例1によれば、感応物質を含んだ液体へのセルロースシートの浸漬時間は、15分であってもよいし、30分であってもよい。すなわち、感応物質を含んだ液体へのセルロースシートの浸漬時間が15分であっても30分であっても、同様の結果を得ることができる。
(実施例3)
本実施例では、上記の実施例1と比較して、被検体液へのセルロースシートの浸漬時間、ブロッキング液へのセルロースシートの浸漬時間、及び感応物質を含んだ液体へのセルロースシートの浸漬時間が異なっている。本実施例では、被検体液へのセルロースシートの浸漬時間、ブロッキング液へのセルロースシートの浸漬時間、及び感応物質を含んだ液体へのセルロースシートの浸漬時間は、それぞれ60分である。
図20は、実施例3においてBSAを吸着材に吸着させた場合の吸光度を示すグラフである。図20における横軸は、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。縦軸は、図20における吸光度の大きさを示す。図21は、実施例3においてHSAを吸着材に吸着させた場合の吸光度を示すグラフである。図21における横軸は、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図21における縦軸は、吸光度の大きさを示す。
本実施例では、上記の実施例1と同様に、BSAが吸着された標識済みシートについて測定された吸光度は、HRP標識化抗BSA抗体の濃度が5ng/ml以上250ng/mlである範囲において、HRP標識化抗BSA抗体の濃度に正の相関を有する。BSAが吸着された標識済みシートに関する1次近似式の相関係数は0.91である。すなわち、HRP標識化抗BSA抗体の濃度と吸光度との間に高い濃度相関性が確認された。これに対して、HSAが吸着された標識済みシートについて測定された吸光度は、HRP標識化抗BSA抗体の濃度との相関は見られない。
本実施例及び上記の実施例1によれば、被検体液へのセルロースシートの浸漬時間、ブロッキング液へのセルロースシートの浸漬時間、及び感応物質を含んだ液体へのセルロースシートの浸漬時間は、それぞれ15分であってもよいし、60分であってもよい。すなわち、被検体液へのセルロースシートの浸漬時間、ブロッキング液へのセルロースシートの浸漬時間、及び感応物質を含んだ液体へのセルロースシートの浸漬時間がそれぞれ15分であっても60分であっても、同様の結果を得ることができる。
(実施例4)
本実施例では、上記の実施例3と比較して、被検体液へのセルロースシートの浸漬時間が異なっている。本実施例における被検体液へのセルロースシートの浸漬時間は、30分若しくは15分である。ブロッキング液へのセルロースシートの浸漬時間及び感応物質を含んだ液体へのセルロースシートの浸漬時間は、それぞれ60分である。なお、本実施例では、BSAを含む被検体液を使用した例のみ開示される。
図22は、実施例4においてBSAを吸着材に30分間吸着させた場合の吸光度を示すグラフである。図22における横軸は、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図22における縦軸は、吸光度の大きさを示す。図23は、実施例4においてBSAを吸着材に15分間吸着させた場合の吸光度を示すグラフである。図23における横軸は、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図23における縦軸は、吸光度の大きさを示す。
本実施例では、被検体液へのセルロースシートの浸漬時間が30分である場合及び15分である場合のいずれにおいても、BSAが吸着された標識済みシートについて測定された吸光度は、HRP標識化抗BSA抗体の濃度が5ng/ml以上250ng/mlである範囲において、HRP標識化抗BSA抗体の濃度に正の相関を有する。BSAが吸着された標識済みシートに関する1次近似式の相関係数は0.99以上1.00以下の範囲にある。すなわち、HRP標識化抗BSA抗体の濃度と吸光度との間に高い濃度相関性が確認された。
本実施例及び上記の実施例3によれば、被検体液へのセルロースシートの浸漬時間は、15分であってもよいし、30分であってもよいし、60分であってもよい。すなわち、被検体液へのセルロースシートの浸漬時間が15分であっても30分であっても60分であっても、同様の結果を得ることができる。したがって、被検体液へのセルロースシートの浸漬時間は15分で十分である。
(実施例5)
本実施例では、上記の実施例4と比較して、感応物質を含んだ液体へのセルロースシートの浸漬時間が異なっている。本実施例における感応物質を含んだ液体へのセルロースシートの浸漬時間は、30分若しくは15分である。被検体液へのセルロースシートの浸漬時間は15分であり、ブロッキング液へのセルロースシートの浸漬時間は60分である。
図24は、実施例4において感応物質を吸着材に30分間接触させた場合の吸光度を示すグラフである。図24における横軸は、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図24における縦軸は、吸光度の大きさを示す。図25は、実施例4において感応物質を吸着材に15分間接触させた場合の吸光度を示すグラフである。図25における横軸は、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図25における縦軸は、吸光度の大きさを示す。
本実施例では、感応物質を含んだ液体へのセルロースシートの浸漬時間が30分である場合及び15分である場合のいずれにおいても、BSAが吸着された標識済みシートについて測定された吸光度は、HRP標識化抗BSA抗体の濃度が5ng/ml以上250ng/mlである範囲において、HRP標識化抗BSA抗体の濃度に正の相関を有する。BSAが吸着された標識済みシートに関する1次近似式の相関係数は0.98以上0.99以下の範囲にある。すなわち、HRP標識化抗BSA抗体の濃度と吸光度との間に高い濃度相関性が確認された。
上記の実施例4において感応物質を含んだ液体へのセルロースシートの浸漬時間が60分である場合では吸光度の最大値が約0.4であるのに対して、本実施例における吸光度の最大値は、感応物質を含んだ液体へのセルロースシートの浸漬時間が30分である場合には約0.15、感応物質を含んだ液体へのセルロースシートの浸漬時間が15分である場合には、約0.1である。すなわち、感応物質を含んだ液体へのセルロースシートの浸漬時間が減少することによって、吸光度も減少する傾向がある。なお、本実施例における吸光度の検出限界となる最小感度は、約0.04であり、感応物質を含んだ液体へのセルロースシートの浸漬時間が15分である場合にも、検出限界を上回る発色反応が生じている。したがって、感応物質を含んだ液体へのセルロースシートの浸漬時間は15分で十分である。
(実施例6)
本実施例では、BSA又はHSAを含む被検体液に代えて、HRP標識化抗BSA抗体を含む被検体液が使用される。すなわち、本実施例では、感応物質を吸着材に直接吸着させる。HRP標識化抗BSA抗体を含む被検体液へのセルロースシートの浸漬時間は60分である。なお、本実施例では、被検体液に含まれるHRP標識化抗BSA抗体が感応物質そのものであるので、上記の実施形態におけるブロッキング液への浸漬及びそれに引き続くHRP標識化抗BSA抗体を含む溶液への浸漬は行われず、HRP標識化抗BSA抗体を含む被検体液へのセルロースシートの浸漬時間の経過後に発色反応が行われる。
HRP標識化抗BSA抗体を吸着材に直接吸着させた場合の吸光度は、HRP標識化抗BSA抗体の濃度が5ng/ml以上250ng/ml以下である範囲において、HRP標識化抗BSA抗体の濃度に正の相関を有する。HRP標識化抗BSA抗体が吸着された吸着材に関する1次近似式の相関係数は0.95であり、高い濃度相関性が確認された。
図26は、実施例6における吸光度を示すグラフである。図26における横軸は、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図26における縦軸は、吸光度の大きさを示す。
本実施例によれば、HRP標識化抗BSA抗体もBSAと同様に吸着材に物理吸着される。この結果から、セルロースシートからなる吸着材は3mmφ(約0.32mm)でも、吸光度測定を行うのに十分な量のタンパクを物理吸着する素材であることが示された。これは、カルボキシル基や水酸基、エーテル構造のような負電荷を持つ構造が純粋なセルロースに多く含まれているために、正電荷を持つタンパクを強く吸着するものと推察される。
なお、HRP標識化抗BSA抗体もBSAと同様に吸着材に物理吸着されるので、ブロッキング液にセルロースシートを浸漬する工程において吸着材に対するHRP標識化抗BSA抗体の非特異的結合を防ぐことが、分析対象物の濃度測定の精度を高める効果を奏することが示唆される。
(実施例7)
本実施例では、上記実施形態に開示された溶液成分センサと上記実施形態に開示された吸着材を使用して、電圧変化の検出を利用した分析対象物の濃度測定を行った例が示される。
本実施例における吸着材は、上記の実施例1と同様に、セルロースシートである。また、吸着材に対するHRP標識化抗BSA抗体の吸着は、上記の実施例6と同様に行われた。すなわち、本実施例は、セルロースシートにHRP標識化抗BSA抗体が直接吸着された例である。
本実施例では、上記の実施例1から実施例6までとは異なり、発色液ではなく、上記の実施形態に開示された液性試薬が使用される。具体的には、液性試薬は、フェリシアン化カリウム(K[Fe(III)(CN)])水溶液(1×10−3mol/L)に過酸化水素水(0.3%)を1:1で希釈したものである。
本実施例における操作手順について以下に示す。
まず、携帯型センサ電圧測定器の子機に溶液成分センサが取り付けられる。続いて、HRP標識化抗BSA抗体の吸着が行われたセルロースシートが、溶液成分センサの各ウェルに1つずつ収容される。本実施例では、HRP標識化抗BSA抗体を含む液体に浸漬される工程を経た5つのセルロースシートが、同時に測定される5つのウェルに1つずつ収容される。
さらに、液性試薬5μLが各ウェルに例えば手作業によって収容される。たとえば、操作者は、子機の電源がオフで電極対に通電されていない状態で液性試薬5μLを各ウェルに収容する。液性試薬が収容されてから約15秒後に電極対への通電が開始され、同時に、電圧測定が開始される。電圧の測定は10秒間行われる。本実施例では、電圧の測定の開始から500msごとに電圧を測定して検出電圧Voutの変化を記録した。
携帯型センサ電圧測定器の親機に接続されたコンピュータによる検出電圧Voutの解析は、以下のように行われる。
まず、5つの電極対から得られた10秒間の検出電圧Voutの平均値が、コンピュータによって検出電圧値としてそれぞれ算出される。続いて、5つの電極対から得られた5つの検出電圧値の中から、最大値、最小値を示した電極対のデータを除き、残り3つの電極対における検出電圧値の平均値がセンサ電圧として算出される。
図27は、実施例7におけるセンサ電圧を示すグラフである。図27における横軸は、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図27における縦軸は、センサ電圧の大きさを示す。
本実施例によれば、センサ電圧は、抗体の濃度が5ng/ml以上250ng/ml以下である範囲において、HRP標識化抗BSA抗体の濃度と正の相関を有する。HRP標識化抗BSA抗体が吸着されたセルロースシートに関する1次近似式の相関係数は0.98である。すなわち、HRP標識化抗BSA抗体の濃度とセンサ電圧との間に高い濃度相関性が確認された。
(実施例8)
本実施例では、上記の実施例7においてセンサ電圧の測定に使用されたセルロースシートを用いて、上記の実施例6と同様の方法で吸光度が測定された。
図28は、実施例8における吸光度を示すグラフである。図28における横軸は、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図28における縦軸は、吸光度の大きさを示す。
本実施例によれば、上記の実施例7においてセンサ電圧の測定に使用されたセルロースシートを吸光度測定に用いた場合の吸光度は、抗体の濃度が5〜250ng/mlの範囲である範囲において、HRP標識化抗BSA抗体の濃度と正の相関を有する。HRP標識化抗BSA抗体が吸着されたセルロースシートに関する1次近似式の相関係数は0.99である。すなわち、HRP標識化抗BSA抗体の濃度と吸光度との間に高い濃度相関性が確認された。
なお、本実施例における吸光度の最大値は0.1である。本実施例における吸光度の最大値は、吸光度の検出限界(最小感度)である0.04を上回っている。
上記の実施例7及び本実施例によれば、吸着材にHRP標識化抗BSA抗体を吸着させた場合におけるHRP標識化抗BSA抗体の濃度に関して、センサ電圧と吸光度とは互いに同様の傾向を示すことが確認された。
(実施例9)
本実施例では、上記の実施例7におけるセンサ電圧の測定と同様の方法によって、上記の実施例1に記載の標識済みシートを用いてセンサ電圧の測定が行われる。
図29は、実施例9においてBSAが吸着材に吸着された場合のセンサ電圧を示すグラフである。図29における横軸は、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図29における縦軸は、センサ電圧の大きさを示す。図30は、実施例9においてHSAが吸着材に吸着された場合のセンサ電圧を示すグラフである。図30における横軸は、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図30における縦軸は、センサ電圧の大きさを示す。
BSAを含む被検体液に浸漬された標識済みシートを用いたセンサ電圧の測定では、HRP標識化抗BSA抗体の濃度が5ng/ml以上250ng/ml以下である範囲において、センサ電圧は、2900mVとほぼ一定となった。BSAを含む被検体液に浸漬された標識済みシートを用いたセンサ電圧の測定では、電圧測定器の検出電圧上限に近いセンサ電圧が出力されている。
また、HSAを含む被検体液に浸漬された標識済みシートを用いたセンサ電圧の測定では、HRP標識化抗BSA抗体の濃度が5ng/ml以上250ng/ml以下である範囲において、センサ電圧は、2000mVから2500mVまでの範囲で、HRP標識化抗BSA抗体の濃度と正の相関を有する。
BSAを含む被検体液に浸漬された標識済みシートを用いた場合には、HSAを含む被検体液に浸漬された標識済みシートを用いた場合よりも高いセンサ電圧が出力されている。すなわち、本実施例によれば、溶液成分センサ及び吸着材は、分析対象物の濃度を選択的に測定できることが示唆される。
なお、HSAを含む被検体液に浸漬された標識済みシートを用いたセンサ電圧の測定においてHRP標識化抗BSA抗体の濃度とセンサ電圧とが正の相関を有するのは、HRP標識化抗BSA抗体の濃度に相関する非特異的結合によるものと考えられる。また、上記の実施例1と本実施例との比較において、BSA又はHSAを含む被検体液に浸漬された標識済みシートを用いたセンサ電圧の測定結果によれば、本実施例の溶液成分センサ及び吸着材は、吸光度測定を利用した測定系と比較して非常に高い感度を有している。
(実施例10)
本実施例では、上記の実施例9において使用された標識済みシートを使用して、上記の実施例1と同じ方法で吸光度が測定された。
図31は、実施例10においてBSAが吸着材に吸着された場合の吸光度を示すグラフである。図31における横軸は、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図31における縦軸は、吸光度の大きさを示す。図32は、実施例10においてHSAが吸着材に吸着された場合の吸光度を示すグラフである。図32における横軸は、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図32における縦軸は、吸光度の大きさを示す。
本実施例において、BSAを含む被検体液に浸漬された標識済みシートを用いた吸光度の測定結果は、実施例1と同様の傾向を示した。本実施例において、HSAを含む被検体液に浸漬された標識済みシートを用いた吸光度の測定結果は、実施例1と同様の傾向を示した。このようにセンサ測定で使用した標識済みシートは、センサ測定後にELISA法による吸光度測定が可能である。この応用としては、センサ測定の携帯性を生かして作業者が現場でスクリーニング検査を行い、その中から選別した標識済みシートを専門機関で検査するダブルチェックが可能となる。たとえば人工透析や手術の際、器具や水に混入するグラム陰性菌由来の内毒素(エンドトキシン)量は毎回厳密に把握しなければならないが、現状では定期的なELISA検査に留まっている。医療現場でセンサ測定によって日常的にスクリーニングを行い、定期的に回収した標識済みシートを別の検査機関で行うという使い方で、安全性のダブルチェックが可能となる。また食品、薬品、化粧品等の開発現場では、製品開発段階で常にアレルゲン量を把握する必要性があるが、時間とコストの関係で現状では開発最終段階でのELISA検査に留まっている。センサ測定では、開発や生産現場で迅速、簡便にスクリーニングができ、さらに選別した標識済みシートを別の機関でELISA検査することができるため、開発コストの大幅な削減につながる。
上記の実施例9では、BSAを含む被検体液に浸漬された標識済みシートを用いたセンサ電圧の測定ではセンサ電圧が高く、HSAを含む被検体液に浸漬された標識済みシートを用いたセンサ電圧の測定ではBSAの場合よりもセンサ電圧が低い。このことから、上記実施形態に開示された溶液成分センサ及び吸着材を用いた測定は、分析対象物に対して特異性の高い濃度測定をすることが可能であることが明らかになった。
また、実施例9において使用された標識済みシートを使用した吸光度の測定結果(実施例10)も、上記実施形態に開示された溶液成分センサ及び吸着材によって分析対象物に対して特異性の高い濃度測定をすることが可能であることを示している。
図33及び図34は、実施例9及び実施例10において得られた吸光度測定及びセンサ電圧測定の結果を基に、検出の特異性を解析したグラフを示す。
吸光度測定において、陽性試験における吸光度と陰性試験における吸光度の差が、吸光度測定における特異性と定義される。図33は、吸光度測定における特異性を、感応物質の濃度毎に示したものである。
センサ電圧の測定において、BSAを含む被検体液に浸漬された標識済みシートを用いた測定(陽性試験)におけるセンサ電圧と、HSAを含む被検体液に浸漬された標識済みシートを用いた測定(陰性試験)におけるセンサ電圧の差が、センサ電圧測定における特異性と定義される。図34は、センサ電圧測定における特異性を、感応物質の濃度毎に示したものである。
すると、センサ電圧測定では、抗体(感応物質)の濃度が低い範囲ほど陽性試験と陰性試験におけるセンサ電圧の差(特異性)が大きくなる傾向があることが分かる(図34参照)。
一方、吸光度測定では、抗体(感応物質)の濃度が増加するほど陽性試験と陰性試験における吸光度の差(特異性)が大きくなる傾向があることが分かる(図33参照)。
これらの結果は、感応物質の濃度が低い場合に、センサ電圧の測定は吸光度測定よりも高い特異性を有していることを示している。すなわち、これらの結果は、上記実施形態の溶液成分センサ及び吸着材を用いて行われるセンサ電圧測定は、低濃度の感応物質による分析対象物への特異的結合(本実施例の場合には抗原抗体反応)を判別可能であることを示している。
(実施例11)
本実施例では、上記の実施例1と比較して、被検体液中のBSA又はHSAの濃度が異なっている。また、本実施例では、感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度は500ng/mlで一定である。
BSA及びHSAは、コーティングバッファーによって5ng/ml、50ng/ml、又は250ng/mlに希釈された状態で、被検体液として使用される。
本実施例では、上記の実施例1と同様に吸光度の測定が行われる。
図35は、実施例11においてBSAを吸着材に吸着させた場合の吸光度を示すグラフである。図35における横軸は、BSAの濃度を示す。図35における縦軸は、吸光度の大きさを示す。図36は、実施例11においてHSAを吸着材に吸着させた場合の吸光度を示すグラフである。図36における横軸は、HSAの濃度を示す。図36における縦軸は、吸光度の大きさを示す。
本実施例によれば、BSAを含む被検体液に浸漬された標識済みシートを用いた場合の吸光度は、BSAの濃度が5ng/ml以上250ng/ml以下である範囲において、被検体液中のBSAの濃度に対して正の相関を有する。BSAが吸着された標識済みシートに関する1次近似式の相関係数は0.95である。すなわち、BSAの濃度と吸光度との間に高い濃度相関性が確認された。これに対して、HSAが吸着された標識済みシートについて測定された吸光度は、HSAの濃度との相関は見られない。
(実施例12)
本実施例では、BSA又はHSAの濃度と吸光度及びセンサ電圧の関係が示される。
本実施例では、上記の実施例1と同様の方法によって標識済みシートが作製される。本実施例では、BSA又はHSAの濃度が低い群(0.25ng/ml、0.5ng/ml、5ng/ml)、BSA又はHSAの濃度が中程度の群(5ng/ml、50ng/ml、250ng/ml)、BSA又はHSAの濃度が高い群(500ng/ml、50,000ng/ml、500,000ng/ml)の三群に分けて、吸光度測定及びセンサ電圧の測定が行われる。
本実施例では、標識済みシートを用いた吸光度測定が最初に行われる。吸光度測定の後に、標識済みシートは蒸留水に5分間浸漬され、上記の実施例9と同様の方法でセンサ電圧の測定に使用される。
本実施例では、上記の全ての群において、HRP標識化抗BSA抗体(感応物質)の濃度は500ng/mlである。
まず、吸光度測定の結果に関する考察を示す。
図37は、実施例12において低濃度のBSAを吸着材に吸着させた場合の吸光度を示すグラフである。図37における横軸は、BSAの濃度を示す。図37における縦軸は、吸光度の大きさを示す。図38は、実施例12において低濃度のHSAを吸着材に吸着させた場合の吸光度を示すグラフである。図38における横軸は、HSAの濃度を示す。図38における縦軸は、吸光度の大きさを示す。
BSA又はHSAの濃度が低い群では、BSAの場合とHSAの場合との間における吸光度の差が小さく、吸光度測定による特異的な濃度測定が困難となる。
図39は、実施例12において中濃度のBSAを吸着材に吸着させた場合の吸光度を示すグラフである。図39における横軸は、BSAの濃度を示す。図39における縦軸は、吸光度の大きさを示す。図40は、実施例12において中濃度のHSAを吸着材に吸着させた場合の吸光度を示すグラフである。図40における横軸は、HSAの濃度を示す。図40における縦軸は、吸光度の大きさを示す。
BSA又はHSAの濃度が中程度の群では、BSAの場合にHSAの場合よりも吸光度が高い。BSAの濃度が中程度の群におけるBSA濃度に対する吸光度の相関係数はR=0.95である。すなわち、BSAの濃度が中程度の場合には、吸光度測定によって精度の高い測定結果が得られた。
次に、センサ電圧測定の結果に関する考察を示す。
図41は、実施例12において低濃度のBSAを吸着材に吸着させた場合のセンサ電圧を示すグラフである。図41における横軸は、BSAの濃度を示す。図41における縦軸は、センサ電圧の大きさを示す。図42は、実施例12において低濃度のHSAを吸着材に吸着させた場合のセンサ電圧を示すグラフである。図42における横軸は、HSAの濃度を示す。図42における縦軸は、センサ電圧の大きさを示す。
BSA又はHSAの濃度が低い群では、BSAの場合とHSAの場合との間におけるセンサ電圧に有意な差が見られる。本実施例における吸光度測定の結果と比較すると、本実施例におけるセンサ電圧測定は、吸光度測定よりも検出感度に優れている。
図43は、実施例12において中濃度のBSAを吸着材に吸着させた場合のセンサ電圧を示すグラフである。図43における横軸は、BSAの濃度を示す。図43における縦軸は、センサ電圧の大きさを示す。図44は、実施例12において中濃度のHSAを吸着材に吸着させた場合のセンサ電圧を示すグラフである。図44における横軸は、HSAの濃度を示す。図44における縦軸は、センサ電圧の大きさを示す。
BSA又はHSAの濃度が中程度の群では、BSAの場合にHSAの場合よりもセンサ電圧が高い。
図45及び図46は、抗原(BSA及びHSA)の濃度が0.25ng/ml以上250ng/ml以下の範囲にある条件におけるBSA(図45)又はHSA(図46)の濃度に対する吸光度を示したグラフである。図45及び図46における横軸はBSA及びHSAの濃度を示す。図45及び図46における縦軸は吸光度の大きさを示す。
抗原濃度が5ng/ml以下のピコオーダーの濃度範囲になると、BSAの場合とHSAの場合との間の吸光度の差が小さくなり、吸光度測定では検出が困難である。BSAの濃度に対する吸光度の相関係数はR=0.521であり、低濃度域から中濃度域において測定精度が低いと言える。
図47及び図48は、抗原(BSA及びHSA)の濃度が0.25ng/ml以上250ng/ml以下の範囲にある条件におけるBSA(図47)又はHSA(図48)の濃度に対するセンサ電圧を示したグラフである。図47及び図48における横軸はBSA及びHSAの濃度を示す。図47及び図48における縦軸はセンサ電圧の大きさを示す。
抗原濃度が5ng/ml以下のピコオーダーの濃度範囲では、BSAの場合とHSAの場合との間のセンサ電圧に有意な差が見られる。この場合のBSAの濃度に対するセンサ電圧の相関係数はR2=0.85である。これにより、溶液成分センサ及び吸着材を用いたセンサ電圧の測定は、低濃度域から中濃度域において、吸光度測定よりも測定精度が高いと言える。
このように、上記実施形態の溶液成分センサ及び吸着材は、一般的なELISA測定における検出限界近傍及び検出限界以下の領域においても精度よく、高い再現性を有して分析対象物の分析を行うことができる画期的な検出系を提供することができる。
(実施例13)
本実施例では、コンピュータが取得した検出電圧Voutの値に基づいて、コンピュータがセンサ電圧を算出する例が示される。
まず、溶液成分センサが電極対を1組だけ有している場合、あるいは溶液成分センサの電極対を1組だけ利用する場合には、コンピュータは、検出電圧値(10秒間の検出電圧Voutの平均値)をセンサ電圧として出力する。また、溶液成分センサが電極対を2組以上有している場合、あるいは溶液成分センサの電極対を2組以上利用する場合には、コンピュータは、複数の検出電圧値の平均値をセンサ電圧として出力する。
図49は、本実施例の説明のために、BSAを吸着材に吸着させて検出電圧値の測定を5ウェルについて行った結果を示す表である。本実施例では、BSAの濃度は、5ng/ml、50ng/ml、及び250ng/mlである。また、図49におけるウェル番号は、溶液成分センサに設けられた5つのウェルにランダムに付された番号である。検出電圧値の単位はmVである。
図50は、本実施例におけるセンサ電圧の算出条件と相関係数とを示す表である。図50におけるウェル番号は、図49におけるウェル番号と対応している。
図50に示すように、本実施例では、使用したウェルにおける5組の電極対を備えた溶液成分センサを用いて取得した5つの検出電圧値について、5つ全て利用する場合(条件1)、条件1からランダムに1つの検出電圧値を除外して他の検出電圧値を利用する場合(条件2)、条件1からランダムに2つの検出電圧値を除外して他の検出電圧値を利用する場合(条件3)、条件1からランダムに3つの検出電圧値を除外して他の検出電圧値を利用する場合(条件4)、条件1からランダムに4つの検出電圧値を除外して他の検出電圧値を利用する場合(条件5)で、BSA濃度に対するセンサ電圧の相関係数を求めた。
図50に示すように、利用可能なウェル(電極対)が多い方が、BSA濃度に対するセンサ電圧の相関係数が高まる傾向がある。
次に、センサ電圧を算出する別の例として、コンピュータは、3以上の検出電圧値を利用し、検出電圧値の最大値と最小値を除外して残りの検出電圧値を用いてセンサ電圧を算出する。
たとえば、3つの検出電圧値を用いる場合には、コンピュータは、検出電圧値の最大値と最小値を除外して残りの検出電圧値をセンサ電圧として出力する。
また、4つ以上の検出電圧値を用いる場合には、コンピュータは、検出電圧値の最大値と最小値を除外して残りの検出電圧値の平均値をセンサ電圧として出力する。
図50に示すように、本実施例では、5組の電極対を備えた溶液成分センサを用いて取得した5つの検出電圧値について、5つ全て利用する場合(条件6)、条件1からランダムに1つの検出電圧値を除外して他の検出電圧値を利用する場合(条件7)、条件1からランダムに2つの検出電圧値を除外して他の検出電圧値を利用する場合(条件8)で、BSA濃度に対するセンサ電圧の相関係数を求めた。
条件6は、5つの検出電圧値を利用するが、センサ電圧の算出のために平均される検出電圧値の数は3つである。上記の条件3は、3つの検出電圧値の平均をセンサ電圧としているので、条件6は条件3と対応する。ここで、条件6における相関係数は、条件3における相関係数よりも高い。同様に、条件7は条件4と対応するが、条件7における相関係数は、条件4における相関係数よりも高い。また、条件8は条件5と対応するが、条件8における相関係数は、条件5における相関係数よりも高い。このように、複数の検出電圧値から最大値及び最小値を除外することによって、相関係数を高めることができる。
条件6,7,8における相関係数を比較すると、条件6,7における相関係数が特に高い。すなわち、複数の検出電圧値から最大値及び最小値を除外した後に複数の他の検出電圧値がある条件では、相関係数を高めることができる。
上記実施形態の溶液成分センサのようなバイオセンサの電極の表面は空気中にさらされているので、ナノレベルで考察すると、電極の表面に有機物による汚染があったり、電極の表面において酸化が進行していたりする場合がある。また、検出電圧値の測定時に電極の表面に電解質溶液が接するので、このような測定初期の電極電位の違いが、検出電圧値に大きく影響する。これに対して、上記実施形態及び上記各実施例の溶液成分センサは、5個の電極対を用いて独立した測定を同時に行うことができるので、個別の電極対に関して検出電圧値を変動させる要因がある場合にも、最終的に出力されるセンサ電圧は分析対象物の濃度を高精度に反映することができる。
(実施例14)
本実施例では、吸着材に吸着させる分析対象物としてHSAが使用され、HSAを使用する例に対応する対照実験としてBSAが使用される点で上記の実施例1と異なっている。さらに、本実施例では、感応物質の組成が上記の実施例1と異なっている。
BSA又はHSAを含む被検体液は、炭酸水素ナトリウム/リン酸緩衝液(上記のコーティングバッファーである)を用いて上記のBSA又はHSAを希釈した溶液からなる。
BSA及びHSAは、コーティングバッファーによって0.25ng/ml、0.5ng/ml、5ng/ml、50ng/ml、又は250ng/mlに希釈された状態で、被検体液として使用される。
本実施例において使用される感応物質は、分析対象物を抗原として特異的に認識する一次抗体と、一次抗体に特異的な酵素標識二次抗体とを含んでいる。
一次抗体は、HSAに特異的に結合する抗HSAマウスIgGモノクローナル抗体である。一次抗体は、PBSによって250ng/mlに希釈されて使用される。
二次抗体は、HRPによって標識され、上記の抗HSAマウスIgGモノクローナル抗体に特異的に結合するHRP標識化抗マウスIgGヤギポリクローナル抗体である。二次抗体は、PBSによって250ng/mlに希釈されて使用される。
本実施例における操作手順について説明する。
HSAを含む被検体液1mLが第一の吸着材(セルロースシート)に滴下され、BSAを含む被検体液1mLが第二の吸着材(セルロースシート)に滴下される。これにより、被検体液に各セルロースシートが浸漬される。被検体液に浸漬されたセルロースシートは、37℃で15分間インキュベート(静置)される。これにより、BSA又はHSAは、吸着材であるセルロースシート上に物理吸着によって保持される。
インキュベートの後、被検体液は取り除かれ、ブロッキング液として5%スキムミルク/PBST溶液1mLが各セルロースシートに滴下される。これにより、ブロッキング液に各セルロースシートが浸漬される。ブロッキング液に浸漬されたセルロースシートは、37℃で15分間インキュベート(静置)される。
ブロッキング液を用いたインキュベートの後、ブロッキング液は取り除かれ、HSAに特異的に結合する一次抗体がPBSによって250ng/mlに希釈された溶液1mLがセルロースシートに滴下される。これにより、一次抗体を含む溶液に各セルロースシートが浸漬される。一次抗体を含む溶液に浸漬されたセルロースシートは、室温(20℃)で15分間インキュベート(静置)される。一次抗体を含む溶液にセルロースシートが浸漬された状態でインキュベートされると、セルロースシートに物理吸着されたHSAに一次抗体が特異的に結合する。また、一次抗体はBSAへの結合能が低いので、セルロースシートに物理吸着されたBSAへの一次抗体の結合は少ない。
一次抗体を含む溶液を用いたインキュベートの後、一次抗体を含む溶液は取り除かれ、二次抗体がPBSによって250ng/mlに希釈された溶液1mLがセルロースシートに滴下される。これにより、二次抗体を含む溶液に各セルロースシートが浸漬される。二次抗体を含む溶液に浸漬されたセルロースシートは、室温(20℃)で15分間インキュベート(静置)される。
二次抗体を含む溶液を用いたインキュベートの後、実施例1と同様に、発色反応及び吸光度の測定が行われる。本実施例では、セルロースシート上に二次抗体が存在していれば、発色反応が起こる。発色反応における吸光度は、セルロースシート上の二次抗体の量と相関する。二次抗体は、一次抗体を介して抗原(HSA)に特異的に結合するので、発色反応における吸光度はセルロースシート上に物理吸着された抗原の量と相関する。
本実施例における一次抗体及び二次抗体を用いた方法は、分析対象物を物理吸着させたセルロースシートに対して、一次抗体を分析対象物に特異的に吸着させる一段階目の吸着工程と、二次抗体を一次抗体に特異的に吸着させる二段階目の吸着工程とを含む2段階吸着法である。これに対して、上記の実施例1及び実施例12におけるHRP標識化抗BSA抗体を用いた方法は、分析対象物を物理吸着させたセルロースシートを使用し、標識済み抗体を分析対象物に特異的に吸着させる吸着工程を含む1段階吸着法である。
図64は、実施例14においてHSAを吸着材に吸着させた場合の吸光度を示すグラフである。図64における横軸は、HSAの濃度を示す。図64における縦軸は、吸光度の大きさを示す。図65は、実施例14においてBSAを吸着材に吸着させた場合の吸光度を示すグラフである。図65における横軸は、BSAの濃度を示す。図65における縦軸は、吸光度の大きさを示す。
図64に示すように、本実施例における分析対象物であるHSAの濃度と、発色反応による吸光度とは、正の相関を有している。HSAの濃度に対する吸光度の相関係数はR=0.6971であった。すなわち、本実施例では、HSAの濃度と吸光度との間に高い濃度相関性が確認された。図65に示すように、本実施例における対照実験として使用されたBSAの濃度に対する吸光度の相関係数はR=0.5469であり、HSAの場合よりも低かった。すなわち、本実施例では、分析対象物に対して高い特異性を有して濃度測定をすることができる。
また、本実施例では、吸光度の測定の後に、吸光度の測定が終了したセルロースシートを用いて、実施例1と同様にセンサ電圧の測定が行われた。
図66は、実施例14においてHSAを吸着材に吸着させた場合のセンサ電圧を示すグラフである。図66における横軸は、HSAの濃度を示す。図66における縦軸は、センサ電圧の大きさを示す。図67は、実施例14においてBSAを吸着材に吸着させた場合のセンサ電圧を示すグラフである。図67における横軸は、BSAの濃度を示す。図67における縦軸は、センサ電圧の大きさを示す。
図66に示すように、本実施例における分析対象物であるHSAの濃度とセンサ電圧とは、正の相関を有している。HSAの濃度に対するセンサ電圧の相関係数はR=0.8990であった。すなわち、本実施例では、HSAの濃度とセンサ電圧との間に高い濃度相関性が確認された。図67に示すように、本実施例における対照実験として使用されたBSAの濃度に対するセンサ電圧の相関係数はR=0.8211であり、HSAの場合よりも低かった。
本実施例における2段階吸着法における上記の測定結果と、実施例1における1段階吸着法を用いた実施例12の測定結果とを比較して本実施例の2段階吸着法について説明する。図67と図68で、HSAならびにBSAが同濃度の条件における電圧値の差は、抗原濃度0.25ng/mlでは684mV、抗原濃度0.5ng/mlでは586mV、抗原濃度5ng/mlでは586mV、抗原濃度50ng/mlでは566mV、抗原濃度250ng/mlでは540mVであり、低い抗原濃度の測定領域でも大きな検出電圧差が得られた。これに対し、図47と図48で抗原にHSAならびにBSAを用い、1次抗体である抗BSA標識化抗体で反応させたセルロースシートを用いたセンサ測定例(1段階吸着法:この場合はBSAが陽性、HASが陰性)では、HSAならびにBSAが同濃度の条件における電圧値の差は、抗原濃度0.25ng/mlでは196mV、抗原濃度0.5ng/mlでは155mV、抗原濃度5ng/mlでは220mV、抗原濃度50ng/mlでは322mV、抗原濃度250ng/mlでは476mVであり、抗原濃度が低濃度になる程、両者の電圧差が小さくなる。
すなわち、本実施例の2段階吸着法では、実施例1に示す1段階吸着法によって調製されたセルロースシートを用いた実施例12の測定結果と比較して、分析対象物に対して高い特異性を有して濃度測定をすることができる。
本実施例による分析対象物の濃度測定は、一次抗体及び二次抗体を使用するサンドイッチ法で分析対象物が標識されるので、濃度測定の精度や再現性が高い。
なお、参考として、上記の実施例と異なる構成又は方法によって分析対象物の濃度測定を行った比較例を以下に示す。
(比較例1)
本比較例では、上記実施形態の吸着材を使用せずに分析対象物の濃度を測定する例が示される。図51は、比較例1におけるBSAの濃度と吸光度との関係を示すグラフである。図51における横軸はBSAの濃度を示す。図51における縦軸は吸光度の大きさを示す。図52は、比較例1におけるHSAの濃度と吸光度との関係を示すグラフである。図52における横軸はHSAの濃度を示す。図52における縦軸は吸光度の大きさを示す。
市販のプラスチック製マイクロプレートに抗原(BSA又はHSA)が物理吸着され、マイクロプレート内でHRP標識化抗BSA抗体が添加される。抗原の濃度は、0.78μg/ml以上50μg/ml以下の範囲にある。本比較例では、抗原濃度は0.78μg/ml、1.56μg/ml、3.13μg/ml、6.25μg/ml、12.5μg/ml、25μg/ml、50μg/mlである。
本比較例では、HRP標識化抗BSA抗体が添加されたマイクロプレートに発色剤が添加され、呈色した溶液の吸光度がマイクロプレートリーダーによって測定される。すなわち、本比較例は、一般的なELISA法である。
なお、ブロッキング液、発色剤ならびに各々の希釈液は実施例1と同じものである。
本比較例における操作手順について説明する。
まず、マイクロプレートの各ウェルに抗原溶液が150μLづつ分注される。抗原溶液が分注されたマイクロプレートは、37℃で60分間インキュベートされる。インキュベートの終了後、マイクロプレート内の液体が廃棄され、さらに、マイクロプレートの各ウェルはPBSTによって数回すすぎ洗いされる。
すすぎ洗いの後、マイクロプレートの各ウェルにブロッキング液が150μLづつ分注される。ブロッキング液が分注されたマイクロプレートは、室温20℃で60分間インキュベートされる。ブロッキング後のマイクロプレートは、PBSTで数回すすぎ洗いされる。
ブロッキング及びすすぎ洗いの後、マイクロプレートの各ウェルに、感応物質(HRP標識化抗BSA抗体)を含む液体が150μLづつ分注される。その後、マイクロプレートは、室温20℃で60分間インキュベートされる。インキュベートの間、ウェル内で抗体抗原反応が起こっている。インキュベートの終了後、マイクロプレートはPBSTで数回すすぎ洗いされる。
抗原抗体反応及びすすぎ洗いの終了後、マイクロプレートの各ウェルに発色液が150μLづつ添加される。その後、マイクロプレートは、室温20℃で10分間インキュベートされる。この間にウェル内では発色反応が起こっている。
発色反応のためのインキュベートの終了後、発色液の入ったマイクロプレートは、マイクロプレートリーダーに取り付けられ、吸光度測定が行われる。
比較例1の結果から、陽性抗原(BSA)濃度を変化させたマイクロプレートでは吸光度は抗原濃度に依存しているが、陰性抗原(HSA)では依存性は見られない。陽性反応においては1次近似式の相関係数は0.95であり、高い濃度相関性が確認された。
しかしながら、比較例1では、6.25μg/ml未満の抗原では検出限界を下回った。また、比較例1では、吸光度測定が可能となるまでに必要な調製時間3時間であった。
(比較例2)
本比較例では、上記の実施例3と比較して、ブロッキング工程を省いた点が異なっている。被検体液に吸着材を浸漬する時間及び感応物質を含んだ液体に吸着材を浸漬する時間は、ともに60分間である。図53は、比較例2におけるBSAの濃度と吸光度との関係を示すグラフである。図53における横軸は感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図53における縦軸は吸光度の大きさを示す。図54は、比較例2におけるHSAの濃度と吸光度との関係を示すグラフである。図54における横軸は感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図54における縦軸は吸光度の大きさを示す。
本比較例では、陽性抗原(BSA)、陰性抗原(HSA)のいずれを吸着させた吸着材においても、その吸光度はHRP標識化抗BSA抗体の濃度に依存している。本比較例によれば、上記の実施例3におけるブロッキングの工程は、陽性抗原(BSA)に対する特異性を高めることができる。
すなわち、被検体液に対する吸着材の浸漬後、この吸着材を感応物質に接触させる前に、ブロッキング剤を吸着材に接触させることによって、吸着材への感応物質の非特異的吸着を低く抑えて濃度測定の精度を高めることができる。
(比較例3)
本比較例では、吸着材であるセルロースシートの表面が、アミノシランカップリング法で化学修飾されている。本比較例では、アミノシランカップリング法で化学修飾されたセルロースからなる吸着材を用いて、上記の実施例6と同様の操作を行った。図55は、比較例3における感応物質の濃度と吸光度との関係を示すグラフである。図55における横軸は感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図55における縦軸は吸光度の大きさを示す。
その結果、本比較例では、1次近似式の相関係数は0.90であり、上記の実施例6における相関係数よりもわずかに小さい。これは、正電荷を持つアミノ基とBSAの静電的な反発のため、結果としてBSAの吸着現象が阻害されたと推察される。
なお、分析対象物がBSAでない場合には、アミノシランカップリング法で化学修飾されたセルロースからなる吸着材により精度及び再現性の高い濃度測定が可能となる場合がある。たとえば、アミノシランカップリング法で化学修飾されたセルロース表面は、アミノ基の塩基性(電子供与性)に対して酸性物質(電子受容性)の高い組み合わせで、化学吸着が生じることが予想される。この性質を利用して電子受容性の物質を表面に吸着させることができる。例えば核酸、DNA、錯体化合物や、pHの調製等で表面が正電荷を帯びたタンパク、細胞、組織などでは、表面が修飾されていないセルロースと比較してアミノシランカップリング法で化学修飾されたセルロースの方が吸着能が高い場合がありうる。
(比較例4)
本比較例では、上記の実施例7と同様の方法で、液性試薬に含まれるK[Fe(III)(CN)]水溶液の濃度を、1×10−3mol/Lから1×10−2mol/Lへと10倍増加させた。図56は、比較例4における感応物質の濃度とセンサ電圧との関係を示すグラフである。図56における横軸は感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図56における縦軸はセンサ電圧の大きさを示す。
本比較例では、上記の実施例7の結果と同様、センサ電圧は抗体の濃度に依存した。また、HRP修飾化抗BSA抗体の濃度が5ng/ml以上250ng/ml以下の範囲である場合において、BSA濃度に対するセンサ電圧の1次近似式の相関係数は0.89であり、上記の実施例7における相関係数よりも低い。すなわち、液性試薬の組成には適正範囲があることが確認された。なお、液性試薬に含まれるK[Fe(III)(CN)]水溶液の濃度が1×10−2mol/Lを超えて極端に高い場合には、電気分解による電極の劣化が進行し計測困難となる可能性が考えられる。すなわちセンサ電圧の良好な検出のためには、液性試薬の組成に上限があるとことが示唆される。
(比較例5)
本比較例では、上記の実施例9と比較して、液性試薬に代えて蒸留水を溶液成分センサのウェルに添加した点が異なっている。図57は、比較例5においてBSAが吸着材に吸着された場合における感応物質の濃度とセンサ電圧との関係を示すグラフである。図57における横軸は感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図57における縦軸はセンサ電圧の大きさを示す。図58は、比較例5においてHSAが吸着材に吸着された場合における感応物質の濃度とセンサ電圧との関係を示すグラフである。図58における横軸は感応物質であるHRP標識化抗BSA抗体の濃度を示す。図58における縦軸はセンサ電圧の大きさを示す。
本比較例では、陽性抗原(BSA)、ならびに陰性抗原(HSA)のどちらを保持したセルロースシートが使用された場合であっても、HRP標識化抗BSA抗体の濃度とセンサ電圧との間に正の相関は見られなかった。また、本比較例では、BSAとHASでのセンサ電圧の差も見られなかった。
本比較例と上記の実施例9とによれば、液性試薬の添加によってウェル内で酸化還元反応を生じさせて電極対との間で電子の授受を媒介することによって、陽性抗原(BSA)を介して吸着材に結合したHRP標識化抗BSA抗体の数(すなわち陽性抗原の数)に応じて検出電圧値を劇的に変化させ、この変化をセンサ電圧の変化として検出できることが確認された。
(比較例6)
本比較例では、上記の比較例3と同様の方法で市販の96穴プラスチック製プレートに抗原(BSA又はHSA)を物理吸着で保持し、これに酵素標識化抗体を反応させた後、発色液で溶液を呈色させた。この溶液をマイクロプレートリーダーで吸光度測定し、検量線を得た。本比較例が上記の比較例3と異なる点は、本比較例では、上記の実施例11と同様に、抗原(BSA又はHSA)の濃度に関して複数の濃度(5ng/ml、50ng/ml、250ng/ml)のそれぞれについて吸光度の測定が行われている点である。また、本比較例では、上記の実施例11と同様に、HRP標識化抗BSA抗体の濃度は500ng/mlである。
図59は、比較例6におけるBSAの濃度と吸光度との関係を示すグラフである。図59における横軸は、BSAの濃度を示している。図59における縦軸は、吸光度の大きさを示している。図60は、比較例6におけるHSAの濃度と吸光度との関係を示すグラフである。図60における横軸は、HSAの濃度を示している。図60における縦軸は、吸光度の大きさを示している。
本比較例では、陽性抗原(BSA)ならびに陰性抗原(HSA)のどちらも発色反応は観測されずバックグラウンドレベルであった。また、抗原の濃度と吸光度との間に正の相関は見られなかった。本比較例では、96穴プラスチック製プレートのウェルにおけるプラスチック材料表面が官能基に乏しく、かつウェル内面の面積が小さいので、BSAやHSA等のタンパク分子が吸着平衡に到達するためには長い時間を要する。
これに対し、上記の実施例11に示すように、吸着材を使用した場合には、被検体液にわずか15分間浸漬するだけで、その後の感応物質の結合(抗原抗体反応)に十分な量の抗原が吸着材に吸着される。これはセルロースが水酸基、カルボキシル基等の電気陰性度の高い官能基を有する材料であるため、正電荷を持つタンパクとの静電的な相互作用により、短時間で吸着平衡に達するものと推察される。
このように、本比較例と上記の実施例11とによれば、吸着材を使用することによって、濃度測定の精度及び再現性を高めることができる。
以上、本発明の実施形態及び実施例について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、吸着材は、ウェル7の内部に収容可能であれば、ウェル内のどの位置に配置されてもよい。たとえば、吸着材は、図4に示すように電極対に接触していてもよいし、図61から図63に示すように電極対に接触していなくてもよい。たとえば、吸着材は、図61に示すように基板に接触していてもよいし、基板に接触していなくてもよい。また、たとえば、吸着材は、図62に示すように、液性試薬中で浮遊した状態となっていてもよいし、液性試薬に浮かんだ状態でもよい。
また、吸着材は、基板の板厚方向から見たときのウェルの外形の外側にはみ出す形状であって図63に示すようにウェルを覆うようになっていてもよい。この場合、吸着材と電極対との間の空間が液性試薬によって満たされた状態で使用されることが特に好ましい。
また、上記実施形態では、感応物質として酵素標識抗体が例示されているが、感応物質を用いた反応系として、アビジンとビオチンの特異的結合、錯体と配位子の結合、相補関係にあるDNAや核酸類等の結合等を利用してもよい。
また、溶液成分センサに配置する電極対の数が多すぎると、吸着材を最初のウェルに入れる作業の開始から吸着材を最後のウェルに入れ終わるまでの時間や、各ウェルに液性試薬を入れる時間などの影響を受けてばらつきが増加することがありうる。このため、各ウェルに同時に吸着材を収容するための治具や、各ウェルに同時に同量の液性試薬を供給するための供給装置等が用いられてもよい。一例として、ウェルの配置は、マルチチャンネルピペットのピペットチップの間隔と同じ間隔をあけて複数のウェルが配置されていると、微量の液性試薬を複数のウェルに同時に注入することができる。この場合、公知の8連ピペットや12連ピペットの利用より、8ウェルの同時測定や12ウェルの同時測定を精度よくおこなうことができる。
また、上記実施形態において、5つの電極対を用いて得られた5つの検出電圧値から最大値と最小値を除いた残りの検出電圧値の平均をセンサ電圧として算出することに代えて、5つの電極対を用いて得られた5つの検出電圧値に明らかに異常値を示すものを除外したうえでさらに最大値と最小値を除外し、その後に残った複数の検出電圧値の平均をセンサ電圧として算出することもできる。この場合の明らかな異常値とは、配線部の断線は電極対の短絡によって生じる低電圧や高電圧が想定される。たとえば5つの電極対を使用する場合には、5つの電極対及び配線部のうちの1つに上記の断線や短絡があった場合にも、残りの4つの電極対及び配線部が正常であれば、高精度の測定をすることができる。
1 溶液成分分析キット
2 溶液成分センサ
3 基板
4 電極対
4A 電極
4Ax 辺部
4B 電極
4Bx 辺部
7 ウェル
7A 壁部
8 配線部
9 絶縁膜
10 流動体保持空間
11 吸着材
12 感応物質
13 酵素
14 一次抗体
15 酵素標識二次抗体
16 液性試薬
100 溶液成分分析システム
101 測定系装置(溶液成分分析装置)
102 測定系回路
103 電圧計測部
104 差動増幅回路
105 センサ感度調節用可変抵抗
106 電流計測部
107 電源部
108 コンピュータ
109 表示部
110 記録部

Claims (8)

  1. 基板、前記基板の外面に所定距離だけ離間して対向配置された一組の電極、及び前記一組の電極の各々において外部に露出された部分を囲む絶縁性の流動体保持部を備えた溶液成分センサと、
    前記基板の厚さ方向から見たときに前記流動体保持部によって囲まれる領域に配置可能であり分析対象物を物理吸着可能な吸着材と、
    前記分析対象物に結合する酵素を含む感応物質と、
    前記感応物質と酸化還元反応可能な基質を含む液性試薬と、
    を備えることを特徴とする溶液成分分析キット。
  2. 前記溶液成分センサは、前記電極を3組以上有し、
    前記電極は、溶液成分を独立して分析できるように互いに離間した位置に配されている、
    請求項1に記載の溶液成分分析キット。
  3. 前記溶液成分センサは、前記電極を4組以上有している、
    請求項2に記載の溶液成分分析キット。
  4. 前記吸着材は、多孔質膜であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の溶液成分分析キット。
  5. 前記吸着材は、セルロース繊維からなることを特徴とする請求項4に記載の溶液成分分析キット。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の溶液成分分析キットを用いた溶液成分分析方法であって、
    前記分析対象物を含む溶液に前記吸着材を接触させる吸着工程と、
    前記吸着工程の後に前記領域に前記感応物質を添加する添加工程と、
    前記添加工程の後に前記吸着材を前記領域内に配置する配置工程と、
    前記領域内に配置された前記吸着材と前記液性試薬とを反応させる反応工程と、
    前記反応工程における酸化還元反応を電流変化又は電圧変化として前記電極を用いて計測する計測工程と、
    前記計測工程において計測された電流変化又は電圧変化に基づいて前記溶液中の前記分析対象物の濃度を算出する算出工程と、
    を備えることを特徴とする溶液成分分析方法。
  7. 請求項2または請求項3に記載の溶液成分分析キットを用いた溶液成分分析方法であって、
    前記分析対象物を含む溶液に前記吸着材を接触させる吸着工程と、
    前記吸着工程の後に前記吸着材に前記感応物質を添加する添加工程と、
    前記添加工程の後に前記吸着材を前記領域内に配置する配置工程と、
    前記領域内に配置された前記吸着材と前記液性試薬とを反応させる反応工程と、
    前記反応工程における酸化還元反応を電流変化又は電圧変化として前記電極を用いて計測する計測工程と、
    前記計測工程において計測された電流変化又は電圧変化に基づいて前記溶液中の前記分析対象物の濃度を算出する算出工程と、
    を備え、
    前記算出工程は、前記電流変化又は前記電圧変化に基づいて算出された複数の検出値のうち、最高値及び最低値を除いた他の値の平均値を採用し、前記平均値に基づいて前記分析対象物の濃度を算出する、
    ことを特徴とする溶液成分分析方法。
  8. 請求項2または請求項3に記載の溶液成分分析キットと共に使用される溶液成分分析装置であって、
    前記電極と電気的に接続可能であり電流変化又は電圧変化を計測可能な計測部と、
    前記計測部と接続され、前記電流変化又は前記電圧変化に基づいて前記溶液中の前記分析対象物の濃度を算出する算出部と、
    を備え、
    前記算出部は、複数の前記電極を用いて計測され算出された複数の検出値の値のうち、最高値及び最低値を除いた他の値の平均値を前記溶液中の前記分析対象物の濃度測定に利用する、
    ことを特徴とする溶液成分分析装置。
JP2016221892A 2016-06-24 2016-11-14 溶液成分分析キット、溶液成分分析方法、及び溶液成分分析装置 Active JP6857347B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016125992 2016-06-24
JP2016125992 2016-06-24

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018004615A true JP2018004615A (ja) 2018-01-11
JP6857347B2 JP6857347B2 (ja) 2021-04-14

Family

ID=60949028

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016221892A Active JP6857347B2 (ja) 2016-06-24 2016-11-14 溶液成分分析キット、溶液成分分析方法、及び溶液成分分析装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6857347B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018128382A (ja) * 2017-02-09 2018-08-16 公立大学法人北九州市立大学 溶液分析装置及びその製造方法、並びに溶液分析方法
JP2019152626A (ja) * 2018-03-06 2019-09-12 公立大学法人北九州市立大学 センサチップ及びその製造方法、分析装置、並びに分析方法
JP2021518547A (ja) * 2018-03-20 2021-08-02 グラフウェア テクノロジーズ インコーポレイテッド 交換可能センサシステムおよび方法

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11101771A (ja) * 1997-09-29 1999-04-13 Matsushita Electric Ind Co Ltd バイオセンサおよびそれを用いた基質の定量法
JP2009002939A (ja) * 2007-05-18 2009-01-08 Mitsubishi Kagaku Iatron Inc アンペロメトリック型バイオセンサ
JP4859226B2 (ja) * 2006-11-27 2012-01-25 財団法人北九州産業学術推進機構 溶液成分センサ
JP2013170887A (ja) * 2012-02-20 2013-09-02 Micro Blood Science Co Ltd 発電酵素を用いた電荷測定による高感度分子検出装置のための測定用カートリッジ、及び該測定用カートリッジを用いて標的分子を検出する方法
US20130306493A1 (en) * 2010-12-31 2013-11-21 Lifescan, Inc. Systems and methods for high accuracy analyte measurement
JP2014505556A (ja) * 2011-02-07 2014-03-06 マルチ−センス テクノロジーズ リミテッド マイクロ流体アッセイ装置
JP2015014542A (ja) * 2013-07-05 2015-01-22 国立大学法人九州工業大学 抗体抗原反応評価方法
WO2016035197A1 (ja) * 2014-09-05 2016-03-10 株式会社日立製作所 電気化学免疫センサ用カートリッジ及びそれを用いた測定装置

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11101771A (ja) * 1997-09-29 1999-04-13 Matsushita Electric Ind Co Ltd バイオセンサおよびそれを用いた基質の定量法
JP4859226B2 (ja) * 2006-11-27 2012-01-25 財団法人北九州産業学術推進機構 溶液成分センサ
JP2009002939A (ja) * 2007-05-18 2009-01-08 Mitsubishi Kagaku Iatron Inc アンペロメトリック型バイオセンサ
US20130306493A1 (en) * 2010-12-31 2013-11-21 Lifescan, Inc. Systems and methods for high accuracy analyte measurement
JP2014505556A (ja) * 2011-02-07 2014-03-06 マルチ−センス テクノロジーズ リミテッド マイクロ流体アッセイ装置
JP2013170887A (ja) * 2012-02-20 2013-09-02 Micro Blood Science Co Ltd 発電酵素を用いた電荷測定による高感度分子検出装置のための測定用カートリッジ、及び該測定用カートリッジを用いて標的分子を検出する方法
JP2015014542A (ja) * 2013-07-05 2015-01-22 国立大学法人九州工業大学 抗体抗原反応評価方法
WO2016035197A1 (ja) * 2014-09-05 2016-03-10 株式会社日立製作所 電気化学免疫センサ用カートリッジ及びそれを用いた測定装置

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018128382A (ja) * 2017-02-09 2018-08-16 公立大学法人北九州市立大学 溶液分析装置及びその製造方法、並びに溶液分析方法
JP2019152626A (ja) * 2018-03-06 2019-09-12 公立大学法人北九州市立大学 センサチップ及びその製造方法、分析装置、並びに分析方法
JP7062272B2 (ja) 2018-03-06 2022-05-06 公立大学法人北九州市立大学 センサチップ及びその製造方法、分析装置、並びに分析方法
JP2021518547A (ja) * 2018-03-20 2021-08-02 グラフウェア テクノロジーズ インコーポレイテッド 交換可能センサシステムおよび方法
JP7402391B2 (ja) 2018-03-20 2023-12-21 グラフウェア テクノロジーズ インコーポレイテッド 交換可能センサシステムおよび方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6857347B2 (ja) 2021-04-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN109863396B (zh) 用于样品分析的装置和方法
JP5922153B2 (ja) マイクロ流体アッセイ装置
Li et al. A microfluidic paper‐based origami nanobiosensor for label‐free, ultrasensitive immunoassays
CN109061190B (zh) 基于纸芯片的多通道生物传感器阵列制备及免疫检测应用
Tayyab et al. Potential microfluidic devices for COVID-19 antibody detection at point-of-care (POC): A review
US20150047978A1 (en) Biosensor having nanostructured electrodes
JP2010534831A (ja) 微細流路型センサー複合構造物
JP7174065B2 (ja) マルチウェル電極基盤のバイオセンサー
WO2014060454A1 (en) Immunoassay using electrochemical detection
KR20160034434A (ko) 교차전극 바이오센서
JP6857347B2 (ja) 溶液成分分析キット、溶液成分分析方法、及び溶液成分分析装置
Mahmoodi et al. Single-step label-free nanowell immunoassay accurately quantifies serum stress hormones within minutes
Tang et al. based electrochemical immunoassay for rapid, inexpensive cancer biomarker protein detection
US7931788B1 (en) Method and apparatus for the detection of pathogens, parasites, and toxins
Ceylan et al. A hand-held point-of-care biosensor device for detection of multiple cancer and cardiac disease biomarkers using interdigitated capacitive arrays
Han et al. Label-free biomarker assay in a microresistive pulse sensor via immunoaggregation
WO2014196606A1 (ja) 抗体または抗原を固定化した膜型表面応力センサとその製造方法並びにこれを用いた免疫測定方法
Ochoa‐Ruiz et al. Electrochemical immunosensors: The evolution from ELISA to EμPADs
WO2012090960A1 (ja) 検体検出用チップ、それを用いたセンサ、及び検体検出方法
JPWO2007122943A1 (ja) 免疫学的測定法およびチップ
JP5837808B2 (ja) 溶液成分分析キット及びその製造方法、溶液成分分析システム、並びに被検体液の濃度測定方法
US20210332405A1 (en) Methods for immunoassays using electrochemical measurement
KR20200140165A (ko) 플렉서블 바이오 센서 및 이의 제조 방법
WO2016035197A1 (ja) 電気化学免疫センサ用カートリッジ及びそれを用いた測定装置
US20220065811A1 (en) ISFET Biosensor

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161222

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20181214

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20181214

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190920

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200826

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200908

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201109

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20201208

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210112

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210224

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210312

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6857347

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350