JP2018003454A - 斜面の補強構造及び斜面の補強方法 - Google Patents

斜面の補強構造及び斜面の補強方法 Download PDF

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【課題】本発明は、災害時等における土地の斜面の崩壊を抑制できる斜面の補強構造を提供することを課題とする。【解決手段】本発明の補強構造は、土地の斜面の少なくとも一部を補強する構造であって、上記斜面の補強部分に段状に載置される複数の土嚢と、複数の上記土嚢のテラス面に水平に配設され、複数の上記土嚢を上下方向に圧縮する1又は複数の押さえ板と、地盤に対して上記土嚢を固定するための1又は複数のアンカーとを備える。当該補強構造は上記斜面に沿って多段に形成されることが好ましい。当該補強構造は、斜面の法先に設けられることが好ましい。1又は複数のアンカーが下方の地盤まで打ち込まれていることが好ましい。複数の土嚢が非圧力負荷状態で略円柱状であることが好ましい。非圧力負荷状態で略円柱状の複数の上記土嚢が、その軸方向が上記斜面の等高線と沿う方向に載置されていることが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、斜面の補強構造及び斜面の補強方法に関する。
豪雨や地震などの自然災害に際して、道路盛土の法面等の土地の斜面の崩壊という被害が発生することがある。このような被害が発生した場合、法面の再構築といった復旧がなされ、この復旧に際して複数の土嚢を用いる法面構築方法が提案されている(特開2011−94443号公報参照)。
しかし、上記公報所載の法面構築方法にあっては、再度の災害に対する防災について十分な検討がなされておらず、上記法面構築方法によって施工された法面は、再度の災害によって崩壊するおそれがある。
特開2011−94443号公報
上記不都合に鑑みて、本発明は、災害時等における土地の斜面の崩壊を抑制できる斜面の補強構造及び補強方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の斜面の補強構造は、土地の斜面の少なくとも一部を補強する構造であって、上記斜面の補強部分に段状に載置される複数の土嚢と、複数の上記土嚢のテラス面に水平に配設され、複数の上記土嚢を上下方向に圧縮する1又は複数の押さえ板と、地盤に対して上記土嚢を固定するための1又は複数のアンカーとを備えることを特徴とする。
当該補強構造は、テラス面に載置された複数の土嚢が押さえ板によって上下方向に圧縮されることで、複数の土嚢が一体構造的な状態となる。このため、当該補強構造に水平方向に外力が作用しても、その外力に抗して当該補強構造の状態を維持し、斜面の崩壊を抑制することができる。特に、当該補強構造は、盛土の法面の補強に適しており、盛土の法面の崩壊を効果的に抑制できる。
当該補強構造を土地の斜面の補強したい部分に一段のみ設けることも可能であるが、斜面に沿って多段に当該補強構造が形成されることが好ましい。これにより多段に形成された当該補強構造によって、斜面の崩壊をより確実に抑制することができる。
当該補強構造を斜面の中腹に設けることも可能であるが、当該補強構造は斜面の法先に設けられることが好ましく、これにより法先の崩壊を抑制することができ、さらにこの法先の崩壊の抑制によって斜面全体の崩壊をより確実に抑制することができる。なお、既述のように当該補強構造を多段に設ける場合にあっては、一段が上述のように斜面の法先に設けられ、その他の段がこの法先の段に連続し設けられていることが好ましい。
上記1又は複数のアンカーが下方の地盤まで打ち込まれていることが好ましい。これにより、当該補強構造を地盤に対して固定させることができるので、災害時等における斜面の崩壊をより確実に抑制することができる。
複数の上記土嚢は、いわゆる枕型のものを採用することも可能であるが、非圧力負荷状態で略円柱状であることが好ましい。これにより、土嚢を多段に並べ、鉛直下方への押圧力が作用した際に、枕型の土嚢に比べて、略円柱状の土嚢は他の土嚢の隙間に嵌まり込むように変形しやすい。このように土嚢が他の土嚢に嵌まり込むよう変形することで、複数の土嚢が一体構造的な状態となりやすく、これにより斜面の崩壊をより確実に抑制することができる。
上述のような略円柱状の複数の土嚢が、その軸方向が上記斜面の等高線と沿う方向に載置されていることが好ましい。このように略円柱状の複数の土嚢が同方向に沿って段状に載置されることで、鉛直下方への押圧力によって土嚢が他の土嚢同士の隙間に嵌まり込むように変形しやすく、複数の土嚢がより一体構造的な状態となりやすい。さらに、この複数の土嚢の軸方向が斜面の等高線に沿う方向であることで、斜面が崩壊する方向(等高線に対して垂直な方向)の力に対して、複数の土嚢の一体構造的な状態が維持されやすい。つまり、斜面が崩壊する際には、土嚢の集合体がせん断変形するために土嚢同士が互いに乗り上げて(相対的な位置がずれて)斜面下方向に移動する必要があるが、土嚢には上述のように押圧力が作用しているので斜面下方向に移動することを的確に抑制でき、複数の土嚢の一体構造的な状態が維持されやすい。
当該補強構造は、複数の上記土嚢の鉛直面に配設される1又は複数の鉛直板をさらに備えることが好ましい。このように鉛直板によって複数の土嚢の鉛直面を覆うことで、複数の上記土嚢の紫外線や風雨等による劣化等を抑制することできる。
当該補強構造は、複数の上記土嚢の下面及び/又は背面に排水層をさらに備えることが好ましい。これにより、複数の土嚢付近の水を、上記排水層を介して外部に排出することができ、例えば豪雨時等における当該補強構造の安定性に優れる。なお、背面とは、複数の土嚢よりも斜面側の箇所を意味する。
上記課題を解決するために、本発明に係る斜面の補強方法は、土地の斜面の少なくとも一部を補強する方法であって、上記斜面の補強部分に段状に複数の土嚢を載置する工程と、複数の上記土嚢のテラス面に1又は複数の押さえ板を水平に配設し、この押さえ板によって複数の上記土嚢を上下方向に圧縮する工程と、地盤に対して上記土嚢を固定するための1又は複数のアンカーを打ち込む工程とを備えることを特徴とする。
当該補強方法によって、上述した構成を具備する当該補強構造を得ることができ、このため斜面の崩壊を抑制することができる。
当該補強方法は、上記土嚢載置工程後かつ上記土嚢圧縮工程前に、上記土嚢を締め固める工程をさらに備えることが好ましい。これにより、複数の土嚢が一体構造的な状態がより強固となり、盛土の法面の崩壊をより効果的に抑制できる。
上記土嚢圧縮工程が、最終圧縮力よりも大きい超過圧縮力で上記土嚢を圧縮する手順と、この手順の後に圧縮力を緩めることで上記最終圧縮力による土嚢の圧縮状態を得る手順とを有することが好ましい。これにより、複数の土嚢の一体構造的な状態がより長期的かつ安定的に維持され、盛土の法面の崩壊をより効果的に抑制できる。
上記アンカーを打ち込む工程において、上端を上記押さえ板に係合させた上記アンカーを用いることで、テラス面と押さえ板との間の複数の上記土嚢を上下方向に圧縮することが好ましい。これにより、上記アンカーの打ち込むことで、土嚢の圧縮工程とアンカーの打ち込み工程とを同時に完了させることができる。
また、当該補強方法は、上記土嚢載置工程前に、上記土嚢を載置する土地の表層に対して表層改質処理を行う工程をさらに備えることが好ましい。これにより、上述した構成を具備する当該補強構造が上記表層改質処理の施された面に設置されるので、当該補強構造によってより確実に法面の崩壊を抑制することができる。
なお、複数の土嚢が「段状に載置」されるとは、複数の土嚢が重畳状態で積み重ねられることを意味し、その積み重ね方法は特に限定されない。また、「テラス面」とは、上述のように段状に載置された複数の土嚢の集合体の上面を意味する。さらに、「法先」とは、斜面の最下端の部分を意味する。また、土嚢が「非圧力負荷状態で略円柱状である」とは、土嚢がいわゆる枕型の場合を含まず、土嚢が土嚢袋に中詰め材料が入れられた状態かつ押さえ板からの押圧力を受けていない状態で略円柱状の形態となり得る形状であるものを意味する。さらに、「斜面の等高線」とは、当該補強構造の上方に近接する斜面の箇所における同じ高さの点の集まりでできる線を意味する。
以上のように、本発明の補強構造及び補強方法は、土地の斜面の崩壊を抑制することができる。
本発明の一実施形態の法面の補強構造の模式的断面図である。 図1の補強構造の模式的要部拡大図である。 本発明の一実施形態の法面の補強方法を説明する模式的断面図である。 本発明の一実施形態の法面の補強方法を説明する模式的断面図である。 本発明の一実施形態の法面の補強方法を説明する模式的断面図である。 図1と異なる本発明の実施形態の法面の補強構造の模式的断面図である。 図1及び図6と異なる本発明の実施形態の法面の補強構造の模式的断面図である。 図1、図6及び図7と異なる本発明の実施形態の法面の補強構造の模式的断面図である。 図1、図6〜図8と異なる本発明の実施形態の法面の補強構造の模式的断面図である。 図1、図6〜図9と異なる本発明の実施形態の法面の補強構造の模式的断面図である。 図1、図6〜図10と異なる本発明の実施形態の法面の補強構造の模式的断面図である。 図1、図6〜図11と異なる本発明の実施形態の法面の補強構造の模式的断面図である。
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
[法面の補強構造]
本発明の一実施の形態に係る補強構造10は、土地の斜面の少なくとも一部を補強する構造であり、具体的には図1に示すように、盛土1の法面Sの法先に設けられている。上記盛土1は、地盤3の上に土砂を盛り上げることで形成されている。盛土1は、道路等が施工されるよう上面(図示省略)が平坦に形成され、その上面まで上記法面Sが形成される。この盛土1には、法面Sの下端である法先の箇所に平坦面5が整地によって形成され、この平坦面5に当該補強構造10が設けられている。なお、地盤3の表層が軟弱である場合、事前に表層の力学特性を改良することが好ましい。具体的には、軟弱な表層が薄い場合には、この表層を良質な地盤材料に置換した後に当該補強構造10を設置することが好ましい。また、軟弱表層が厚い場合には、セメントや石灰等の固化材を混合する表層混合処理公報などにより地盤改良を行った後に当該補強構造10を設置することが好ましい。これにより、当該補強構造10によってより確実に法面の崩壊を抑制することができる。
当該補強構造10は、図1に示すように土地の斜面の少なくとも一部を補強する構造であって、上記法先に段状に載置される複数の土嚢20と、複数の土嚢20のテラス面に水平に配設され、複数の上記土嚢を上下方向に圧縮する押さえ板30と、地盤3に対して上記土嚢を固定するための1又は複数のアンカー40と、複数の土嚢20の鉛直面に配設される鉛直板50とを備えている。
(土嚢)
当該補強構造10にあっては、複数の土嚢20は、後述する鉛直下方への押圧力(上下方向の圧縮力)によって変形し、一体構造的な状態となっている。なお、この一体構造的な状態の複数の土嚢20を「土嚢20の集合体」ということがある。
上記土嚢20は、非圧力負荷状態で略円柱状である。この土嚢20は、一方が開口し他方が閉塞する筒状の袋体(図示省略)と、この袋体に詰められる中詰め材(図示省略)とを有している。上記袋体は、可撓性を有し、従来から公知の土嚢20に用いられる袋体から構成することができ、中詰め材が詰められた後に上記開口が閉塞される。
上記中詰め材の材質等は特に限定されないが、中詰め材としては、現地発生土等の土、鉄鋼スラグ等の産業廃棄物等を用いることができる。なお、中詰め材は、上記袋体の最大容量の80%程度詰めることが好ましい。
上記土嚢20の大きさは、特に限定されるものではないが、複数の土嚢20の大きさ及び形状が略同一であることが好ましい。特に、土嚢20の集合体の中央部分を構成する複数の土嚢20は、略同一形状かつ略同一大きさであることが好ましい。具体的には、土嚢20の集合体の中央部分を構成する複数の土嚢20は、同一形状かつ同一サイズの袋体が用いられることが好ましい。なお、土嚢20の集合体の端部に位置する土嚢20として、上述した中央部分の土嚢20と形状及び/又はサイズの異なる土嚢20を用いることも可能である。
上述したように土嚢20の大きさは特に限定されず、人力で土嚢20を設置する場合と重機を用いて土嚢20を設置する場合とで好ましい大きさは異なる。人力で設置する場合にあっては、土嚢20の長さ(軸方向の長さ)としては30cm以上70cm以下が好ましい。この土嚢20の長さの下限は40cmがより好ましい。土嚢20の長さの上限は60cmがより好ましい。土嚢20の長さが上記下限を満たさない場合、補強構造10に必要な土嚢20が多くなり過ぎるおそれがある。土嚢20の長さが上記上限を超えると、土嚢20が大きくなり過ぎ、取り扱い性に劣るおそれがある。なお、重機を用いて設置する場合の土嚢の長さは上述した数値範囲よりも長くても良い。
人力で設置する場合の土嚢20の径としては、10cm以上40cm以下であることが好ましい。この土嚢20の径の下限は15cmがより好ましい。土嚢20の径の上限は30cmがより好ましい。土嚢20の径が上記下限を満たさない場合、補強構造10に必要な土嚢20が多くなり過ぎるおそれがある。土嚢20の径が上記上限を超えると、土嚢20が大きくなり過ぎ、取り扱い性に劣るおそれがある。なお、上記土嚢20の径は、土嚢20を軸方向から見た外形の面積と同一の仮想円の直径を意味する。なお、重機を用いて設置する場合の土嚢の径は上述した数値範囲よりも大きくても良い。
人力で設置する場合の土嚢20のアスペクト比(土嚢20の上記平均径に対する上記長さの比)としては、1.5以上4以下が好ましい。この土嚢20のアスペクト比の下限は2がより好ましい。土嚢20のアスペクト比の上限は3がより好ましい。土嚢20のアスペクト比が上記範囲内であることで、取り扱い性が良好となる。なお、重機を用いて設置する場合の土嚢のアスペクト比は上述した範囲であっても良い。
人力で設置する場合の土嚢20の質量としては、10kg以上40kg以下であることが好ましい。この土嚢20の質量の下限は20kgがより好ましい。土嚢20の質量の上限は30kgがより好ましい。土嚢20の質量が上記範囲内であることで、取り扱い性が良好となる。なお、重機を用いて設置する場合の土嚢の質量は上述した数値範囲よりも大きくても良い。
土嚢20の集合体において、複数の土嚢20は、その軸方向が同一の方向に沿うよう法先の上記平坦面5に載置されている。この複数の土嚢20の軸方向は、上記法面Sの等高線と沿う方向(図1において紙面を貫く方向)とされている。つまり、複数の土嚢20は、その軸方向が上記法面Sの等高線と沿う方向に載置されている。なお、当該補強構造10において、全ての土嚢20の軸方向が法面Sの等高線と沿う方向に向く構成を有することが好ましいが、少なくとも土嚢20の集合体の中央部分の複数の土嚢20が上記構成を有することか好ましい。
複数の土嚢20は、上述のように軸方向が同一の方向に沿いつつ、各段で水平方向(土嚢20の軸方向及び径方向)に隙間なく配されている。上段の土嚢20は、その軸が下段の隣接する一対の土嚢20の軸の間に来るよう積まれている。つまり、上段の土嚢20は下段の土嚢20に対して半ピッチずらして積まれている。複数の土嚢20は、後述するように鉛直下方への押圧力(鉛直方向に圧縮される力)によって、図2に示すように他の土嚢20の隙間に嵌まり込むよう変形する。具体的には、上の土嚢20の下面が下の一対の土嚢20の間に嵌まり込むよう変形すると共に、下の土嚢20の上面が上の一対の土嚢20の間に嵌まり込むように変形し、各土嚢20が略正六角形となるよう変形する。なお、軸方向(径方向から見た方向)における土嚢20の積み方は特に限定されず、上段と下段とでピッチをずらして複数の土嚢20を積むことも可能であり、またピッチをずらさずに複数の土嚢20を積むことも可能である。
(押さえ板)
上記押さえ板30は、図1に示すように土嚢20の集合体の最上段の土嚢20に載置される。この押さえ板30は、硬質の板材から構成され、後述するようにアンカー40が打ち込まれることで複数の土嚢20に対して鉛直下方の押圧力を与える部材である。
この押さえ板30は、十分な強度を有するものであればその材質を特に問わないが、プレキャストRC床板が好適に用いられる。
(アンカー)
アンカー40は、棒状の硬質の部材であって、上記押さえ板30に対して鉛直下方への力を作用させる部材である。アンカー40は、その一端(上端)が上記押さえ板30に係合され、他端(下端7)が地盤3に打ち込まれ、この下端7(定着部分)が地盤3に固定される(図1参照)。上述のようにアンカー40によって押さえ板30に鉛直下方への力が作用することで、押さえ板30とテラス面との間に配設される複数の土嚢20を上下方向に圧縮される。このアンカー40は、下端7が地盤表層よりも下方の安定地盤まで打ち込まれ固定されている。一の押さえ板30に対して一のアンカー40のみを用いることも可能であるが、一の押さえ板30に対して複数のアンカー40が用いられることが好ましい。アンカー40の配設箇所は、押さえ板30によって土嚢20の集合体に対して平面方向の各位置における押圧力が均一となる位置であることが好ましい。具体的には、押さえ板30の平面視の図心と、複数のアンカー40によって区画される仮想平面の図心(二つのアンカー40の場合には、二つのアンカーの中心)とが一致するようアンー40が配設されることが好ましい。なお、全てのアンカー40が地盤3まで打ち込まれていることが好ましい。
このアンカー40は、十分な強度を有するものであればその材質を特に問わず、従来公知のものを採用できるが、鉄や鋼等の金属製であることが好ましい。
(鉛直板)
この鉛直板50は、土嚢20の集合体の鉛直面に立設固定され、土嚢20の集合体の鉛直面を覆う部材である。この鉛直板50によって、紫外線や風雨等に土嚢20の集合体が晒されることを抑制でき、土嚢20の劣化を抑制できる。この鉛直板50は、土嚢20の集合体の鉛直面を覆うことができれば、その材質及び形状を特に問わないが、上記押さえ板30と同様にプレキャストRC床板70等を用いることができる。なお、この鉛直板50の固定手段は特に限定されず、例えば押さえ板30に固定具によって固定させる方法を採用できる。
<補強方法>
次に、本発明の斜面の補強方法の一実施の形態について、上述した図1及び図2の補強構造10を構築する方法について説明する。
当該補強方法は、補強部分である法先を整地する工程(整地工程)、この法先に段状に複数の土嚢20を載置する工程(土嚢載置工程)、複数の土嚢20のテラス面に押さえ板30を水平に配設し、この押さえ板によって複数の上記土嚢を上下方向に圧縮する工程(土嚢圧縮工程)、地盤3に対して上記土嚢を固定するための1又は複数のアンカー40を打ち込む工程(アンカー打ち込み工程)、及び複数の土嚢20の鉛直面に鉛直板を配設する工程(鉛直板配設工程)を備えている。
上記整地工程では、図3に示すように、盛土1を切土することで、盛土1に凹部を形成する工程である。つまり、この整地工程によって、法先に上記平坦面5(凹部の底面)及びこの平坦面5に垂直な垂直面(背面)を有する凹部が形成される。この平坦面5は、水平に形成される。なお、土嚢20を載置する表面側の層が軟弱である場合、この整地工程前に上述した表層混合処理工法を行うことが好ましい。
上記土嚢載置工程では、まず上記袋体に上記中詰め材を入れることで複数の土嚢20を形成し、この複数の土嚢20を図4に示すように各段でピッチをずらしながら積む工程である。なお、この工程において、中詰め材として上記整地工程での切土を用いることが好ましい。
上記土嚢圧縮工程は、上記土嚢載置工程後になされる工程であり、土嚢載置工程で段状に積まれた複数の土嚢20を上下方向に圧縮する工程である。この土嚢圧縮工程においては、まず段状に積まれた複数の土嚢20の最上段の土嚢20の上面に、図5に示すように押さえ板30を配設する。そして、上端が押さえ板30に係合されるアンカー40を、その下端が地盤3まで到達するように打ち込み、土嚢20を地盤3に固定する。このようにアンカー40が打ち込まれることで、当該補強構造10が地盤3に対して固定されると共に、複数の土嚢20が上下方向に圧縮される。つまり、当該実施形態においては、アンカー打ち込み工程によって、上記土嚢圧縮工程が完了する。上述のように複数の土嚢20が押さえ板30及びテラス面間で上下方向に圧縮されることによって、土嚢20が他の土嚢20の隙間に嵌まり込むように変形して(図2参照)、複数の土嚢20が一体構造的な状態となる。
上記鉛直板配設工程は、上述のように一体構造的な状態の土嚢20の集合体の鉛直面に鉛直板50を配設することで、土嚢20の集合体の鉛直面を上記鉛直板50で覆う工程である。
<利点>
当該補強構造10は、土嚢20の集合体のテラス面に載置された押さえ板30がアンカー40によって固定される構造であるため、押さえ板30から土嚢20の集合体に対して鉛直下方への押圧力(上下方向の圧縮力)が作用し、この押圧力によって複数の土嚢20が一体構造的な状態となる。このため、当該補強構造10の性状(形状及び力学特性)を維持すると共に当該補強構造10と地盤3との滑りを防止することができ、これにより法面Sの崩壊を抑制することができる。
さらに、複数の略円柱状の土嚢20が、その軸方向が同方向かつ段ごとにピッチをずらして載置されるので、鉛直下方への押圧力によって図2のような略六角形状で互いに嵌まり込むように変形しやすく、複数の土嚢20がより一体構造的な状態となりやすい。
また、複数の土嚢20の軸方向が斜面の等高線に沿う方向であることで、法面Sが崩壊する方向の力(当該補強構造10に対して盛土1から斜面下方向に作用する力)は土嚢20に軸に垂直方向に作用し、この土嚢20が斜面下方向に移動するためには、この土嚢20が嵌まり込んでいる下方の土嚢20を乗り上げて移動する必要があるが、土嚢20には鉛直下方に押圧力が作用しているので、土嚢20が斜面下方向に移動することを的確に抑制でき、複数の土嚢20の一体構造的な状態が維持されやすく、これによって法面Sの崩壊をより確実に抑制できる。
さらに、アンカー40が下方の地盤3まで打ち込まれているので、当該補強構造10を地盤3に対して固定させることができるので、地震時における法面Sの崩壊をより確実に抑制することができ、耐震性が高い。
また、鉛直板50が土嚢20の集合体の鉛直面(盛土1側と反対側の面)に配設され、この鉛直版によって土嚢20の集合体の鉛直面が覆われているので、土嚢20の紫外線や風雨等による劣化等を抑制することでき、当該補強構造10の経年劣化を的確に抑制することができ、長期間に亘って耐久性に優れる。
さらに、当該補強構造10及び補強方法は、上述のように土嚢20、押さえ板30及びアンカー40によって上述したように法面Sの崩壊を的確に抑制できるものであるので、低コストで耐震性及び耐久性に優れた構造を得ることができ、経済的にも優れる。
<その他の実施形態>
上記実施形態は上述の構成を有し、上述の利点を有するものであったが、本発明はこれに限定されず、本発明の意図する範囲内において適宜設計変更可能である。
つまり、上記実施形態では当該補強構造10を法面Sの法先にのみ設けたものについて説明したが、本発明はこれに限定されず、当該補強構造を斜面の中腹に設けることも可能である。しかし、当該補強構造を、斜面の法先に少なくとも設けられることが好ましく、これにより法先の崩壊を抑制し、法先の崩壊による斜面全体の崩壊をより確実に抑制できる。
また、上記実施形態では当該補強構造10を一段形成したものについて説明したが、本発明はこれに限定されず、当該補強構造を斜面に沿って多段に形成することも可能である。特に、上述のように斜面の法先に当該補強構造10を形成し、さらに図6のように法先の当該補強構造10に連接する箇所に他の当該補強構造10を形成することも可能である。なお、図6では当該補強構造10を3段形成したものを図示しているが、この段数は特に限定されるものではなく、2段であっても4段以上であっても良い。なお、他の実施形態において、上記実施形態(図1〜図5)と同様の構成を有する部材についてはその部材の符号と同一の符号を用い、その詳細な説明を省略する。
さらに、図6の例では、多段の当該補強構造10それぞれが互いに重なり合わないよう設置したものを図示しているが、図7及び図8に示すように多段の当該補強構造10が互いに重なり合うように設置することが好ましい。これにより、多段の当該補強構造10全体によってより効果的に法面を補強できる。なお、図7に示す例では、一の当該補強構造10の一部が他の当該補強構造10と上下方向に重なっている。図8に示す例では、一の当該補強構造10の一部が他の当該補強構造10と水平方向に重なっている。
また、図6、図7及び図8の例では、多段の当該補強構造10それぞれに、土嚢20の集合体が載置される平坦面5を段違いに形成したものを図示しているが、図9に示すように、多段の当該補強構造10の土嚢20が載置される一つの平坦面5を形成することも可能である。
さらに、当該補強構造は、土嚢20の集合体に隣接する部位に排水層60をさらに備えることが好ましい。具体的には、図10に示すように、上記排水層60は、土嚢20の集合体の下面及び背面(土嚢20の集合体の盛土1側)に設けることが好ましい。これによって、豪雨時等において水を外部に排水層60から確実に排出でき、当該補強構造10及び隣接する盛土の安定性を向上させることができる。なお、図10では土嚢20の集合体の下面及び土嚢20の集合体の盛土1側の双方に排水層60を設けるものを説明したが、土嚢20の集合体の下面及び土嚢20の集合体の盛土1側のいずれか一方のみに排水層60を設けることも可能である。この排水層60は、図10に示すように、土嚢20の集合体の下方全面に亘って設けることが好ましく、また、土嚢20の側方の全面に亘って設けることが好ましい。さらに、図10では図9に示した構造のものに排水層60を設けたものについて説明したが、図1、図6、図7、図8等に示した構造のものに排水層を設けることも可能である。また、上述のよう排水層を形成する場合には、当該補強方法の上記整地工程において上記排水層が形成される。排水層の形成手法は、従来公知の方法を採用可能であり、砕石等のドレーン用の部材の敷設及び積層等によって上記排水層を形成することができる。
また、図11に示すように、当該補強構造10は、土嚢20の下面に敷設される床板70をさらに備えることも可能である。図11に示す床板70は、平坦面5に水平に載置され、その上面に上記土嚢20が載置されるものである。この図11の補強構造10は、上端が床板70に係合されるアンカー40aは、その下端7(定着部分)が下方の地盤3まで到達するように打ち込まれ地盤3に固定されている。また、図11の補強構造10は、上端が押さえ板30に係合され、下端が床板70に係合されるタイ材40bによって、押さえ板30と床板70との間の複数の土嚢20が上下方向に圧縮されている。なお、このような床板70は、図10のように下面に排水層60を設けた場合、この排水層60の上面に載置される。また、このような床板70を配設する場合には、当該補強方法の上記整地工程において平坦面5又は排水層60に上記床板70が載置される。
図11の補強構造10の設置方法(当該補強方法)は、例えば以下の工程を備える。つまり、この補強方法は、補強部分を整地する工程と、この整地された箇所に床板70を配設する工程と、この床板70に上端が係合するアンカー40aを地盤3まで打ち込む工程と、この床板70上に複数の土嚢20を載置する工程と、複数の土嚢20のテラス面(平坦面5)に押さえ板30を水平に配設し、この押さえ板30に上端が係合される上記アンカー40bによって複数の土嚢20を上下方向に圧縮する工程とを備えている。つまり、図3〜図5を用いて説明した上記実施形態の補強方法にあっては、当該補強構造10を固定するためのアンカーを打ち込むことで土嚢圧縮工程が完了するものについて説明したが、本発明の補強方法はこれに限定されない。具体的には、本発明の補強方法にあっては、図11の補強構造による補強方法のように、複数の土嚢20を固定するためのアンカー40aを打ち込む工程が、土嚢20の載置工程の前に行われても良い。さらに詳述すると、図11の補強構造による補強方法は、地盤3への固定のためのアンカー打ち込み工程、土嚢載置工程、及び土嚢圧縮工程がこの順に行われるものである。
また、当該補強構造は、土嚢の集合体の上面及び/又は鉛直面を被覆する保護シートをさらに備えることが好ましく、これにより紫外線や風雨等による土嚢の劣化をより的確に抑制することができる。保護シートとしては、特に限定されるものではないが合成樹脂製シートが好適に用いられる。なお、この保護シートを配設する場合には、当該補強方法の上記土嚢20の載置工程において、土嚢が積み重ねられた後に土嚢の上面及び/又は鉛直面を覆うように保護シートが配設され、その後に押さえ板の配設工程がなされる。
さらに、当該補強構造10にあって、上述のように鉛直板50を設けることで上記利点を奏するものであったが、この鉛直板50は必須の構成ではない。また、鉛直板50を設ける場合にあっても、上記実施形態のものに限定されるものではなく、例えば図12に示すように鉛直板50が押さえ板30と一体で形成され、全体として逆L字状に設けられているものも採用可能である。なお、鉛直板と押さえ板とを一体に形成する場合、かつ上述のように当該補強構造を多段に設ける場合にあっては、下段の補強構造の押さえ板と、上段の補強構造の鉛直板とを一体に形成し、全体としてL字状に設けられたものも採用可能である。
上記実施形態では、整地工程において盛土1を切土して、盛土1に凹部を形成して、当該補強方法を施工するものについて説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば崩壊した法面の修復作業に際して当該補強方法を用いることも可能である。つまり、崩壊した法面に対して整地を行うことで土嚢が載置される部分を形成し、その後、上記実施形態のような土嚢の載置工程、押さえ板の配設工程及びアンカー工程を行うことで、法面を修復すると共に補強を行うことも可能である。
また、当該補強方法は、上記土嚢圧縮工程前に、テラス面に載置された複数の土嚢20を締め固める工程をさらに備えることが好ましい。このように圧縮前の複数の土嚢20を締め固めておくことで、土嚢圧縮工程によってより強固に複数の土嚢20を一体構造的にすることでき、法面Sの崩壊をより効果的に抑制できる。なお、この締固める手法としては、振動や衝撃等を利用して間隙空気を追い出す従来公知の手法を種々採用できる。
さらに、上記土嚢圧縮工程で、いわゆるプレロードを行うことが好ましい。つまり、土嚢圧縮工程において、最終圧縮力よりも大きい超過圧縮力で上記土嚢20を圧縮する手順と、この手順の後に圧縮力を緩めることで上記最終圧縮力での上記土嚢20の圧縮状態を得る手順とを行うことが好ましい。これにより、上記土嚢圧縮工程によって所望の最終圧縮力で圧縮された土嚢20の状態を長期的かつ安定的に維持することができ、複数の土嚢20の一体構造的な状態をより長期的かつ安定的に維持でき、盛土Sの法面の崩壊をより効果的に抑制できる。なお、上記超過圧縮力と最終圧縮力との差又は比は、補強構造の目的や構造等に応じて適宜設計変更される。
本発明の補強構造及び補強方法は、上述のように災害時等における土地の斜面の崩壊を抑制できるので、特に、道路、鉄道、堤防、宅地等の盛土構造物の補強に好適に用いることができる。
1 盛土
3 地盤
5 平坦面
10 補強構造
20 土嚢
30 押さえ板
40,40a,40b アンカー
50 鉛直板
60 排水層
70 床板
S 法面

Claims (13)

  1. 土地の斜面の少なくとも一部を補強する構造であって、
    上記斜面の補強部分に段状に載置される複数の土嚢と、
    複数の上記土嚢のテラス面に水平に配設され、複数の上記土嚢を上下方向に圧縮する1又は複数の押さえ板と、
    地盤に対して上記土嚢を固定するための1又は複数のアンカーと
    を備えることを特徴とする補強構造。
  2. 上記斜面に沿って多段に形成される請求項1に記載の補強構造。
  3. 上記斜面の法先に設けられる請求項1又は請求項2に記載の補強構造。
  4. 1又は複数の上記アンカーが下方の地盤まで打ち込まれている請求項1、請求項2又は請求項3記載の補強構造。
  5. 複数の上記土嚢が非圧力負荷状態で略円柱状である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の補強構造。
  6. 複数の上記土嚢が、その軸方向が上記斜面の等高線と沿う方向に載置されている請求項5に記載の補強構造。
  7. 複数の上記土嚢の鉛直面に配設される1又は複数の鉛直板をさらに備える請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の補強構造。
  8. 複数の上記土嚢の下面及び/又は背面に排水層をさらに備える請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の補強構造。
  9. 土地の斜面の少なくとも一部を補強する方法であって、
    上記斜面の補強部分に段状に複数の土嚢を載置する工程と、
    複数の上記土嚢のテラス面に1又は複数の押さえ板を水平に配設し、この押さえ板によって複数の上記土嚢を上下方向に圧縮する工程と、
    地盤に対して上記土嚢を固定するための1又は複数のアンカーを打ち込む工程と
    を備えることを特徴とする補強方法。
  10. 上記土嚢載置工程後かつ上記土嚢圧縮工程前に、上記土嚢を締め固める工程をさらに備える請求項9に記載の補強方法。
  11. 上記土嚢圧縮工程が、最終圧縮力よりも大きい超過圧縮力で上記土嚢を圧縮する手順と、この手順の後に圧縮力を緩めることで上記最終圧縮力による土嚢の圧縮状態を得る手順とを有する請求項9又は請求項10に記載の補強方法。
  12. 上記アンカーを打ち込む工程において、上端を上記押さえ板に係合させた上記アンカーを用いることで、テラス面と押さえ板との間の複数の上記土嚢を上下方向に圧縮する請求項9、請求項10又は請求項11に記載の補強方法。
  13. 上記土嚢載置工程前に、上記土嚢を載置する土地の表層に対して表層改質処理を行う工程をさらに備える請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の補強方法。
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