JP2018002950A - ホットメルト接着剤及びホットメルト接着シート - Google Patents

ホットメルト接着剤及びホットメルト接着シート Download PDF

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Abstract

【課題】耐湿性に優れたホットメルト接着剤を提供し、高湿度雰囲気に晒されても接着性を低下させ難いホットメルト接着シートを提供すること。【解決手段】スチレン系ブロック共重合体を含むホットメルト接着剤においてエポキシ樹脂とフェノール系硬化剤と特定のイミダゾール系硬化促進剤とを含有させる。【選択図】 図1

Description

本発明は、ホットメルト接着剤及びホットメルト接着シートに関し、より詳しくは、スチレン系共重合体を含むホットメルト接着剤及びホットメルト接着剤からなる接着剤層を備えたホットメルト接着シートに関する。
従来、部材どうしを接着する用途などにおいて、不織布などからなる基材層の片面又は両面にホットメルト接着剤からなる接着剤層を形成させた積層構造を有するホットメルト接着シートや、ホットメルト接着剤からなる接着剤層単層のホットメルト接着シートが用いられている。
なお、前記ホットメルト接着剤としては、例えば、下記特許文献1に示すようにスチレン系ブロック共重合体を含むタイプのものが知られている。
ところでホットメルト接着シートは、従来、小型電子機器の筺体と蓋体との接着などに利用されている。
この種の用途における接着シートは、単に接着剤としての機能だけではなく、機器内への水や水蒸気の流入を防ぐシール材としての機能を発揮することが求められている。
この種の用途に利用されるホットメルト接着シートは、例えば、小型電子機器が高温多湿な環境下で用いられるような場合に接着剤層を構成するホットメルト接着剤が水蒸気の影響を受けて接着性を低下させ易い。
このようなことからホットメルト接着シートに対しては、接着性が湿度に影響され難く、高湿度雰囲気に晒されても接着性を低下させ難いことが求められている。
特開2014−043520号公報
上記のようにホットメルト接着シートの接着剤層を構成するホットメルト接着剤には、優れた耐湿性を有することが要望されている。
なお、優れた耐湿性については、シール材としての機能が期待されるホットメルト接着シートに利用される場合などの特定の用途においてのみ要望されるものではない。
即ち、優れた耐湿性については、各種の用途に利用されるホットメルト接着剤に広く共通して求められる特性の一つである。
しかしながら、従来のホットメルト接着剤においては、優れた耐湿性を有するものが見出されておらず上記のような要望を満足させることが困難であるという問題を有している。
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであり、耐湿性を有するホットメルト接着剤を提供し、ひいては高湿度雰囲気に晒されても接着性を低下させ難いホットメルト接着シートを提供することを課題としている。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ホットメルト接着剤を特定の成分によって構成させることによって当該ホットメルト接着剤に優れた耐湿性を発揮させ得ることを見出して本発明を完成させるに至ったものである。
すなわち、前記課題を解決するためのホットメルト接着剤に係る本発明は、スチレン系ブロック共重合体を含むホットメルト接着剤であって、エポキシ樹脂、該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤、及び、硬化促進剤をさらに含み、前記スチレン系ブロック共重合体100質量部に対する前記エポキシ樹脂の含有量が20質量部以上100質量部以下であり、前記硬化剤がフェノール系硬化剤で、前記硬化促進剤が1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールである。
また、前記課題を解決するための接着ホットメルトシートに係る本発明は、ホットメルト接着剤からなる接着剤層を備えたホットメルト接着シートであって、前記ホットメルト接着剤は、スチレン系ブロック共重合体、エポキシ樹脂、該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤、及び、硬化促進剤を含み、前記スチレン系ブロック共重合体100質量部に対する前記エポキシ樹脂の含有量が20質量部以上100質量部以下であり、前記硬化剤がフェノール樹脂系硬化剤で、前記硬化促進剤が1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールである。
本発明によれば、耐湿性に優れたホットメルト接着剤が提供され、高湿度雰囲気に晒されても接着性を低下させ難いホットメルト接着シートが提供され得る。
一実施形態のホットメルト接着シートを示す概略平面図。 図1におけるA−A’線矢視断面の様子を示した概略断面図。 ホットメルト接着シートをシール材として利用する態様を示した図。 他実施形態のホットメルト接着シートの断面の様子を示した概略断面図。
以下に、本発明の好ましい実施の形態について、ホットメルト接着シートが環状のシール材として利用される場合を例にして説明する。
図1は、本実施形態のホットメルト接着シートで形成されたシール材1を示すものであり、平面視における形状が矩形枠状となるように打抜加工されてなるシール材1を示すものである。
該シール材1は、図2にその断面構造を示したように単層構造となっている。
即ち、本実施形態のホットメルト接着シートは、ホットメルト接着剤によって形成された接着剤層10のみの単層構造を有している。
前記接着剤層10を構成するホットメルト接着剤は、スチレン系ブロック共重合体、エポキシ樹脂、及び、該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤を含み、前記スチレン系ブロック共重合体100質量部に対する前記エポキシ樹脂の含有量が20質量部以上100質量部以下であり、前記硬化剤がフェノール系硬化剤となっている。
前記ホットメルト接着剤に含有されるスチレン系ブロック共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン共重合体(SIS)、及び、これらの水素添加物であるスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)やスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)などが挙げられる。
前記ホットメルト接着剤に含有されるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
前記ホットメルト接着剤に含有されるフェノール系硬化剤は、例えば、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであれば特に限定されるものではなく、該フェノール系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。
前記スチレン系ブロック共重合体、前記エポキシ樹脂、及び、前記フェノール系硬化剤は、それぞれ1種単独でホットメルト接着剤に含有させる必要はなく、2種類以上をホットメルト接着剤に含有させても良い。
前記ホットメルト接着剤は、前記スチレン系ブロック共重合体を、主としてホットメルト接着剤にタック性や靱性を発揮させるためのベースポリマーとして含有し、前記エポキシ樹脂を、主として優れた接着性を発揮させるための成分として含有している。
ホットメルト接着剤は、スチレン系ブロック共重合体の含有量をP(質量%)とし、エポキシ樹脂の含有量をP(質量%)としたときに、PとPとの割合(P:P)が100:20〜100:100であることが重要である。
該割合(P:P)は、ホットメルト接着剤に優れた接着性と耐湿性とを顕著に発揮させる上において100:25〜100:80であることが好ましく、100:30〜100:60であることがより好ましく、100:40〜100:50であることがとりわけ好ましい。
なお、ここでスチレン系ブロック共重合体やエポキシ樹脂の含有量とは、これらがそれぞれホットメルト接着剤に複数種類含まれている場合には、その合計量がホットメルト接着剤全体に占める割合を意味する。
前記ホットメルト接着剤は、スチレン系ブロック共重合体の一部又は全部がスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)であることが好ましく、スチレン系ブロック共重合体の50質量%以上がスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)であることがより好ましく、スチレン系ブロック共重合体の80質量%以上がスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)であることがさらに好ましく、スチレン系ブロック共重合体の90質量%以上がスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)であることがとりわけ好ましい。
なかでも、前記ホットメルト接着剤に含有させるスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)は、スチレンコンテントが20質量%〜50質量%であることが好ましい。
なお、前記ホットメルト接着剤に複数種類のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)を含有させる場合は、それらの含有量は、スチレンコンテントの平均値(加重平均)が20質量%〜50質量%となるように調整されることが好ましい。
本実施形態においては、シール材1(ホットメルト接着シート)を熱接着させる際に接着剤層10の厚みがある程度確保されることが好ましいことから、前記スチレン系ブロック共重合体は、加熱状態において過度な流動性を示さないものが好ましい。
一方でシール材を熱接着させる際には、当該シール材にある程度のタック性が発揮されることが好ましいことから、前記スチレン系ブロック共重合体は、加熱状態においてある程度軟化して流動性を示すことが好ましい。
このような相反する要求事項を満足させる上において、ホットメルト接着剤は、加熱時において流動性を示すスチレン系ブロック共重合体と、当該スチレン系ブロック共重合体よりも流動性の低いスチレン系ブロック共重合体との2種類以上のスチレン系ブロック共重合体を含むことが好ましい。
この2種類以上のスチレン系ブロック共重合体の内、加熱時において相対的に高い流動性を示すスチレン系ブロック共重合体(以下、「高流動性成分」ともいう)としては、ISO1133のA法に基づき230℃、5kgfの条件で測定したメルトフローレイト(以下、単に「MFR」ともいう)の値が3g/10min〜8g/10minとなるものが好ましい。
また、このスチレン系ブロック共重合体(高流動性成分)に比べて加熱時における流動性が相対的に低いスチレン系ブロック共重合体(以下、「低流動性成分」ともいう)は、MFRが3g/10min未満であることが好ましい。
さらに、ホットメルト接着剤は、低流動性成分の一部又は全部として、前記メルトフローレイト(MFR)の値が1.5g/10min以下(0g/10min〜1.5g/10min)のスチレン系ブロック共重合体(以下、「超低流動性成分」ともいう)を含んでいることが好ましい。
そして、前記ホットメルト接着剤は、熱接着時における接着剤層10の厚みが過度に減少してしまうことを確実に防止する上において、前記低流動性成分を前記高流動性成分よりも多く含んでいることが好ましい。
また、前記低流動性成分は、50質量%以上が前記超低流動性成分であることが好ましく、80質量%以上が前記超低流動性成分であることがより好ましく、90質量%以上が前記超低流動性成分であることがとりわけ好ましい。
前記ホットメルト接着剤における低流動性成分の含有量をP1L(質量%)、高流動性成分の含有量をP1H(質量%)とした時に、低流動性成分と高流動性成分との割合(P1L:P1H)は、6:4〜9:1であることが好ましく、65:35〜80:20であることがより好ましい。
前記ホットメルト接着剤に含有させるエポキシ樹脂は、エポキシ基の存在割合が高く、優れた接着性をホットメルト接着剤に発揮させ易い点においてビスフェノール型のものよりもノボラック型のものが好ましく、クレゾールノボラック型のものが好ましい。
なかでも、前記ホットメルト接着剤に含有させるエポキシ樹脂は、その一部又は全部がo−クレゾールを主たる出発原料としたo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であることが好ましい。
前記ホットメルト接着剤は、含有するエポキシ樹脂の50質量%以上がo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であることが好ましく、80質量%以上がo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であることが特に好ましく、90質量%以上がo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であることがとりわけ好ましい。
前記ホットメルト接着剤に含有させるフェノール系硬化剤は、フェノールアラルキル樹脂であることが好ましい。
該フェノール系硬化剤は、フェノール性水酸基の数(NOH)が前記エポキシ樹脂によるエポキシ基の数(Nepx)に対して所定の割合となるようにホットメルト接着剤に含有されることが好ましい。
より具体的には、ホットメルト接着剤におけるフェノール性水酸基の数(NOH)とエポキシ基の数(Nepx)との割合(NOH:Nepx)は、1:1.5〜1.5:1の範囲内であることが好ましく、1:1.2〜1.2:1の範囲内であることが好ましい。
前記ホットメルト接着剤は、フェノール系硬化剤によるエポキシ樹脂の硬化反応を促進させるための硬化促進剤を含有する。
該硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類が挙げられる。
前記ホットメルト接着剤に含有させるイミダゾール類としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2−メチルイミダゾリルエチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2−ウンデシルイミダゾリルエチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2−エチル−4−メチルイミダゾリルエチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられる。
なかでも、ホットメルト接着剤の必須成分たるイミダゾール類は、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールである。
ホットメルト接着剤に含有させるイミダゾール類は、その活性水素の数(N)を前記フェノール性水酸基の数(NOH)と合計した値が、前記エポキシ基の数(Nepx)に対して所定量となるように含有されることが好ましい。
より具体的には、ホットメルト接着剤における活性水素の数(N)とフェノール性水酸基の数(NOH)との合計に対するエポキシ基の数(Nepx)の割合(NOH:〔N+Nepx〕)は、1:1.5〜1.5:1であることが好ましく、1:1.2〜1.2:1であることが好ましい。
前記ホットメルト接着剤には、上記以外に粘着付与剤などを含有させることができる。
該粘着付与剤としては、ロジン・テルペン系のものや石油樹脂系のものが挙げられ、前者であれば水添テルペンなどが好ましく、後者であれば、水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素)やポリアルファメチルスチレンなどが好ましい。
これらの粘着付与剤は、ホットメルト接着剤に含有させる場合、その合計量が前記スチレン系ブロック共重合体100質量部に対して、50質量部〜150質量部となるように含有させることが好ましい。
本実施形態のホットメルト接着剤は、その他に老化防止剤、酸化防止剤、難燃剤、充填剤、着色剤などといった一般的なプラスチック配合剤をさらに含んでいてもよい。
なお、ホットメルト接着シートは、例えば、前記スチレン系ブロック共重合体やエポキシ樹脂を溶解可能な有機溶媒とホットメルト接着剤とによってワニスを調製し、該ワニスを表面剥離処理されたセパレータフィルムに塗布してウェット塗膜を形成させ、該ウェット塗膜をセパレータフィルムとともに熱風循環オーブンなどの乾燥装置を通過させて乾燥させることによって作製することができる。
また、ホットメルト接着シートは、例えば、フラットダイを装着した押出機で前記ホットメルト接着剤を溶融混練して、前記フラットダイからシート状に押出し、押出されたシートを表面剥離処理された2枚のセパレータフィルムの間に挟み込んで一対の冷却ローラーの間を通過させて前記ホットメルト接着剤を冷却固化させるとともに前記冷却ローラーによってシート厚みを調整する方法によって作製することができる。
なお、ホットメルト接着シートは、部材の接着に利用されるまで前記エポキシ樹脂が反応性を有していることが好ましい。
従って、その作製時においてホットメルト接着剤が高温となってエポキシ樹脂の硬化反応が過度に進行してしまうことを抑制し得る点において、本実施形態のホットメルト接着シートは、上記に例示の2つの方法の内の前者の製法によって作製されることが好ましい。
ここでホットメルト接着シートに含まれるエポキシ樹脂の硬化反応が過度に進行していないことについては、エポキシ基が開環されずに残存していることにより確認することができ、エポキシ基が開環されずに残存していることは、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)を用いて確認することができる。
具体的には、エポキシ基が開環されずに残存していることは、ホットメルト接着剤をFTIRで測定した際に、エポキシ基の存在を示すピークが925〜899cm−1に現れることで確認することができる。
また、925〜899cm−1に現れるピークがエポキシ基によるものかどうかについて確認が必要であれば、その樹脂組成物をエポキシ樹脂の軟化点以上に加熱した後に改めてFTIRによる測定を実施すれば良く、当該ピーク高さと、3650〜3140cm−1に現れる水酸基によるピーク高さとが対応して変化することで前記ピークがエポキシ基によるものであると確認することができる。
このようにしてホットメルト接着剤によってホットメルト接着シートを得た後は、この接着シートを前記セパレータフィルムなどとともにトムソン刃型やパンチングプレスによって打抜き、所望の外形に加工して図1に示したような矩形枠状のシール材1とすることができる。
なお、ホットメルト接着シートの製造方法の内、一旦、ワニスを調製する前者の方法においては、用いる有機溶媒の種類、セパレータフィルムの種類、乾燥条件などによってホットメルト接着シートの一面側と他面側とに異なる性状を容易に付与することができる。
例えば、前記スチレン系ブロック共重合体及び前記エポキシ樹脂として、良好な相溶性を示さず、単に溶融混練等を行っただけではマトリックス相とドメイン相とのミクロ層分離構造(海島構造)を示すようなものを選択し、且つ、これらを溶解してワニス化する有機溶媒として、前記スチレン系ブロック共重合体よりも前記エポキシ樹脂に対する溶解性が高い第1の有機溶媒と、前記エポキシ樹脂よりも前記スチレン系ブロック共重合体に対する溶解性が高い第2の有機溶媒との混合溶媒を採用することで、前記ウェット塗膜が乾燥する過程において前記スチレン系ブロック共重合体を多く含んだ樹脂溶液と、前記エポキシ樹脂を多く含んだ樹脂溶液とが互いにハジキ合う状態を形成させることができる。
そして当該ウェット塗膜を乾燥させることで、例えば、セパレータに接する一面側に比べて他面側の方がエポキシ樹脂濃度が高いホットメルト接着シートを作製することができる。
また、このときセパレータフィルムとしてエポキシ樹脂よりもスチレン系ブロック共重合体に対して親和性の高いものを採用することで、一面側よりも他面側のエポキシ樹脂濃度が高いホットメルト接着シートをより確実に得ることができる。
さらには、無機フィラーなどの高比重な成分をワニスに含有させた場合には、当該ワニスを低粘度にすることで、重力の作用によって高比重成分を偏在化させ易くなる。
例えば、ウェット塗膜が上面側となるようにしてセパレータフィルムを水平搬送して乾燥装置を通過させる際に前記高比重成分を沈降させ、セパレータに接する一面側の方が他面側に比べて高比重成分の濃度が高いホットメルト接着シートを作製することができる。
なお、このようにして一面側と他面側とで成分の濃度が異なるホットメルト接着シートは、それぞれの面において異なる機能が求められるような用途に有用なものとなる。
例えば、前記のようなエポキシ樹脂の濃度が一面側と他面側とで異なるホットメルト接着シートは、通常、前記エポキシ樹脂がスチレン系ブロック共重合体などに比べると極性が高いため、極性の高いポリマーによって形成された部材と極性の低い部材によって形成された部材とを接着させるのに好適であると言える。
また、前記ホットメルト接着シートは、通常、エポキシ樹脂の方がスチレン系ブロック共重合体に比べて優れた接着性を示すことから、例えば、2つの部材間に介装されて当該部材どうしを接着するのに用いられる場合であれば、より高い接着性が求められる側にエポキシ樹脂の濃度が高い側を接着させるような用い方をすることができる。
なお、前記ホットメルト接着シートは、上記のように一面側と他面側とで異なる特性を発揮させる場合であっても、その両面に優れた耐湿性を発揮させる上において、前記スチレン系ブロック共重合体100質量部に対する前記エポキシ樹脂の含有量が両表面において20質量部以上100質量部以下となっていることが好ましい。
前記ホットメルト接着シートは、前記接着剤層10の厚み等に特に制限が加えられるものではないが、通常、シール材として利用されるような場合であれば、その厚みは、10μm〜1mm程度とされる。
該ホットメルト接着剤は、相手材を選ばず、広範囲な材質のものに良好なる接着性を示すとともに高湿度環境下においても加水分解等による接着力低下を生じ難い。
そのようなことから、前記シール材1は、その特性を有効活用することができる点において、高温高湿度環境下で使用される機器の形成に利用するのに好適である。
このようなシール材などとして利用されるに際し、本実施形態のシール材1は、通常、前記接着剤層10の両表面の内の一面側(以下、「第1表面10a」ともいう)と他面側(以下、「第2表面10b」ともいう)とをそれぞれ別の部材に接着させる形で利用される。
なお、図3は、平面視における形状がシール材1の外側輪郭線によって画定される形状に相当する矩形となる2枚のシート状の部材の間に前記シール材1が介装されている様子を示したもので、本実施形態に係るホットメルト接着シートのシール材1としての使用状態の一例を示した図である。
この図にも示されているように、本実施形態のホットメルト接着シートは、シール材1として利用されるのに際し、例えば、2つの部材を接着すべく該部材間に介装され、前記部材の内の第1の部材(以下、「第1シートA1」ともいう)に第1表面10aを接着させるとともに第2の部材(以下、「第2シートA2」ともいう)に第2表面10bを接着させて用いられる。
また、前記シール材1は、前記第1シートA1と前記第2シートA2とが僅かな距離を隔てて対面するように前記第1シートA1と前記第2シートA2とのそれぞれに接着される形で用いられ得る。
即ち、矩形枠状の前記シール材1は、その内側、且つ、前記第1シートA1と前記第2シートA2とに挟まれた空間Sを外部空間から隔離すべく用いられる。
このようなシールされた空間Sを備えた小型電子機器を熱帯地域での屋外や食品工場の作業場といった高温多湿な環境下で用いる場合、シール材1と第1シートA1や第2シートA2との接着界面は、水蒸気の侵入経路になり易い。
しかしながら、本実施形態のホットメルト接着シートは、接着剤層10を構成しているホットメルト接着剤が優れた接着性を示すとともに水蒸気による接着力低下を生じ難い。
従って、本実施形態のホットメルト接着シートは、シール材として用いられることで、優れたシール性を長期持続的に発揮させることができる。
なお、本実施形態のシール材1は、前記のように第1表面10aと第2表面10bとの性状を異ならせることが容易であることから、例えば、第1シートA1と第2シートA2とが、それぞれ第1表面10aと第2表面10bとに接着される表面が樹脂組成物で形成され、且つ、前記第1シートA1の前記表面を形成する第1の樹脂組成物と前記第2シートA2の前記表面を形成する第2の樹脂組成物とが極性を異ならせるような場合において好適に用いられ得る。
この第1の樹脂組成物と第2の樹脂組成物との内、極性の低い側については、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂といった低極性樹脂を主成分とするものが挙げられる。
また、極性の高い側については、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂、パーフルオロスルホン酸樹脂などの高極性樹脂を主成分とするものが挙げられる。
なお、本実施形態のシール材1は、金属製部材など樹脂製部材以外にも良好な接着性を示すものである。
そして、本実施形態におけるホットメルト接着剤やホットメルト接着シートは、その用途が上記例示のシール材に限定されるものではない。
また、上記においては、ホットメルト接着シートとして接着剤層単層のものを例示しているが、本発明のホットメルト接着シートは、積層シートであってもよく、接着剤層以外の層を有していてもよい。
本発明のホットメルト接着シートは、上記例示の単層構造のものに代わる変形例として、図4(a)や図4(b)に断面構造を示すような3層構造のものが挙げられる。
この3層構造のホットメルト接着シートについて説明すると、図4(a)に例示のホットメルト接着シート1’は、基材層20と、該基材層20の両面に積層された接着剤層10x,10yとを備えている。
前記基材層20は、例えば、樹脂フィルムや繊維シートによって形成させることができ、前記樹脂フィルムとしては、ホットメルト接着剤の軟化温度以上の軟化点を有する非結晶性樹脂からなるフィルムやホットメルト接着剤の軟化温度以上の融点を有する結晶性樹脂からなるフィルムが挙げられる。
該樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムなどが挙げられる。
該樹脂フィルムは、マット加工、ヘアライン加工などの機械的な表面処理、プラズマ処理、プライマー処理などによる表面処理により接着剤層10x,10yとの接着性を向上させたものであってもよい。
また、前記繊維シートとしては、例えば、有機繊維や無機繊維などからなる不織布や織布が挙げられる。
前記繊維シートとして、不織布を採用する場合、該不織布は、カーディング方式やエアレイド方式などの乾式法、湿式法、スパンボンド法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法(水流絡合法)、ステッチボンド法などのいずれの方式によって形成されたものでもよい。
前記繊維シートとして、織布を採用する場合、該織布は、平織、綾織、朱子織などのいずれの方法によって形成されたものでもよい。
前記繊維シートの形成材料たる前記有機繊維としては、例えば、合成樹脂繊維、半合成繊維、再生繊維、天然有機繊維などが挙げられる。
前記合成樹脂繊維としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シクロオレフィンポリマーなどのポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂などのポリエステル樹脂;脂肪族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などのポリアミド樹脂;ポリエーテルスルフィド樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリイミド樹脂;フッ素樹脂などからなるものが挙げられる。
前記再生繊維としては、例えば、レーヨン、アセテートなどが挙げられる。
前記天然有機繊維としては、例えば、パルプ、綿、麻、絹などが挙げられる。
前記無機繊維としては、例えば、ロックウール、ガラスウール、カーボンファイバー、ボロン繊維、アルミナ繊維、金属繊維などが挙げられる。
これらの繊維は、1種単独で前記繊維シートの形成に利用される必要はなく、複数が併用されて前記繊維シートの形成に用いられてもよい。
また、繊維は、モノフィラメントの状態で前記繊維シートの形成に利用されてもよく、マルチフィラメントの状態で前記繊維シートの形成に利用されてもよい。
このようなホットメルト接着シート1’は、基材層20を有することにより当該ホットメルト接着シート1’に適度なコシを付与することができるとともに接着に利用されるべく当該ホットメルト接着シート1’が加熱状態において厚み方向に圧力が加えられた場合であっても著しい厚みの減少が生じ難いという利点を有する。
また、図4(b)に例示のホットメルト接着シート1”は、接着剤層10の両面に多孔質シート30x,30yを備えている。
該多孔質シート30x,30yは、接着剤層10に比べて表面のタック性が低い素材によって形成され、ホットメルト接着シート1”の使用前に当該ホットメルト接着シート1”に異物が付着することを抑制するという機能を発揮するものである。
また、多孔質シート30x,30yは、ホットメルト接着シート1”に優れた表面滑性を付与し得るように備えられている。
さらに、多孔質シート30x,30yは、複数の貫通孔(図示せず)を有しており、ホットメルト接着シート1”による接着を行う際には、加熱されて軟化されたホットメルト接着剤が前記貫通孔を通じて表面に滲出されるため、接着作業を何等阻害するものではない。
このようなことから、図4(b)に例示のホットメルト接着シート1”は、比較的タック性が高く、且つ、加熱時において高い流動性を示すホットメルト接着剤を採用する際に好適なものであるといえる。
また、本発明に係るホットメルト接着シートは、上記のような変形例以外にも、各種の変更を加え得るものである。
即ち、本発明に係るホットメルト接着シートは、上記例示に何等限定されるものではない。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(ホットメルト接着剤)
ホットメルト接着剤を調製すべく、スチレン系ブロック共重合体として、分子量の異なる3種類のSEBS(スチレンコンテントは、全て約30%)を用意した。
下記表1に「SEBS1」の略称で示したものは、MFRを測定した際に殆どフローが見られない高分子量のもの(超低流動性成分)である。
また、下記表1に「SEBS2」の略称で示したものは、約5g/10minのMFRを示す低分子量のもの(高流動性成分)である。
さらに、下記表1に「SEBS3」の略称で示したものは、「SEBS1」と「SEBS2」との中間的な分子量のもので1g/10min以下のMFRを示すもの(超低流動性成分)である。
このスチレン系ブロック共重合体にブレンドすべく、2種類のエポキシ樹脂と、3種類の粘着付与剤とを用意した。
下記表1に「EPX1」の略称で示したものは、分子量が約3800のビスフェノールA型エポキシ樹脂で、「EPX2」の略称で示したものは、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である。
表1に「TF1」の略称で示したものは水素化石油樹脂(脂環族飽和炭化水素)、「TF2」の略称で示したものは水添テルペン樹脂、「TF3」の略称で示したものはポリ−α−メチルスチレン樹脂である。
なお、表1に「HDN1」の略称で示したものはフェノール系硬化剤(フェノールアラルキル樹脂)で、「ACC1」の略称で示したものはイミダゾール系硬化促進剤(1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール)である。
(評価)
前記の表1に示す配合により、厚み約20μmのホットメルト接着シート(接着剤層単層)を作製した。
次いで、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(m−PPE)とポリスチレン樹脂(PS)との混合樹脂(PPE/PS=50/50)からなる厚み約200μmのフィルムと、厚み約50μmのフッソ系樹脂フィルムとを用意した。
そして、ホットメルト接着シートをこれらの樹脂フィルムの間に挟み込み、130℃×30秒間の接着条件でこれらのフィルムどうしをホットメルト接着シートで貼り合わせ、積層シートを作製した。
この積層シートから幅10mm×長さ100mmの短冊状試料を切り出し、該短冊状試料を温度23℃、相対湿度50%RHの環境下に24時間放置した後、引張試験機を使って10mm/minの引張速度での180度ピール試験を実施し、短冊状試料の初期ピール強度を測定した。
なお、180度ピール試験に際しては試験開始後3mm〜18mmの剥離区間における引張応力の平均値を算出し、これを当該試料のピール強度とした。
また、180度ピール試験は、n=3で実施して算術平均値を算出し、この算術平均値によりホットメルト接着シートの接着性を評価した。
そして、前記短冊状試料を80℃の熱水に所定時間(24h、250h、500h)浸漬後、初期ピール強度と同様にして180度ピール試験を実施し熱水浸漬試験後のピール強度を測定した。
下記表2に、初期ピール強度、熱水浸漬試験後のピール強度の測定結果(算術平均値)を示す。
また、初期ピール強度に対する熱水浸漬試験後のピール強度の割合(接着力保持率)を算出した結果も併せて下記表2に示す。
以上のことからも、本発明によれば、耐湿性に優れたホットメルト接着剤が提供され、高湿度雰囲気に晒されても接着性を低下させ難いホットメルト接着シートが提供されることがわかる。
1 シール材(ホットメルト接着シート)
10 接着剤層
20 基材層

Claims (6)

  1. スチレン系ブロック共重合体を含むホットメルト接着剤であって、
    エポキシ樹脂、該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤、及び、硬化促進剤をさらに含み、前記スチレン系ブロック共重合体100質量部に対する前記エポキシ樹脂の含有量が20質量部以上100質量部以下であり、前記硬化剤がフェノール系硬化剤で、前記硬化促進剤が1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールであるホットメルト接着剤。
  2. 前記スチレン系ブロック共重合体の一部又は全部がスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)である請求項1記載のホットメルト接着剤。
  3. 前記スチレン系ブロック共重合体として、ISO1133のA法に基づき230℃、5kgfの条件で測定したメルトフローレイトの値が3g/10min未満となる第1のスチレン系ブロック共重合体と、前記メルトフローレイトの値が3g/10min以上8g/10min以下となる第2のスチレン系ブロック共重合体とが含まれており、該第2のスチレン系ブロック共重合体よりも前記第1のスチレン系ブロック共重合体の方が多く含まれている請求項1又は2記載のホットメルト接着剤。
  4. ホットメルト接着剤からなる接着剤層を備えたホットメルト接着シートであって、
    前記ホットメルト接着剤は、スチレン系ブロック共重合体、エポキシ樹脂、該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤、及び、硬化促進剤を含み、
    前記スチレン系ブロック共重合体100質量部に対する前記エポキシ樹脂の含有量が20質量部以上100質量部以下であり、前記硬化剤がフェノール樹脂系硬化剤で、前記硬化促進剤が1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールであるホットメルト接着シート。
  5. 前記スチレン系ブロック共重合体の一部又は全部がスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)である請求項4記載のホットメルト接着シート。
  6. 2つの部材を接着すべく該部材間に介装され、前記部材の内の第1の部材に一面側を接着させるとともに第2の部材に他面側を接着させて用いられ、
    2つの前記部材は、前記一面側及び前記他面側に接着される表面が樹脂組成物で形成されており、且つ、前記第1の部材の前記表面を形成する第1の樹脂組成物と前記第2の部材の前記表面を形成する第2の樹脂組成物とが極性を異ならせている請求項4又は5記載のホットメルト接着シート。
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