JP2018002773A - 発光用材料及び発光成型体 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性に優れ、高温環境に晒された後でも近赤外発光特性を充分に発揮できる発光用材料及びその発光成型体を提供する。【解決手段】700〜800nmに発光極大波長を有するスクアリリウム系化合物と樹脂成分とを含む樹脂組成物からなる発光用材料。【選択図】なし

Description

本発明は、発光用材料及び発光成型体に関する。
植物は一般に、光受容体としてフィトクロムを含むことが知られている。フィトクロムは、赤色光(波長約660nm)を吸収すると活性化し、遠赤色光(波長約730nm)を吸収すると不活性化される性質を有するため、芽生えや茎の成長等に影響を与えるものと考えられている。フィトクロムを利用した技術として、例えば近赤外線吸収色素を用いて赤色光/遠赤色光の比を変化させた被覆材料が開示されている(特許文献1、2参照)。
ところで、可視・近赤外領域に吸収特性を有する吸収色素として、スクアリリウム骨格を有する新規なオキソカーボン系化合物が開発されており(特許文献3参照)、また近赤外領域に発光特性を有する発光色素として、アザ多環芳香族系化合物が開発されている(非特許文献1参照)。
特開平11−178444号公報 特開平7−79649号公報 特開2016−74649号公報
Aoife Gorman、外5名、「In Vitro Demonstration of the Heavy-Atom Effect for Photodynamic Therapy」、Journal of the American Chemical Society、(米国)、2004年8月10日、第126巻、第34号、p.10619−10631
上記のように特許文献1、2には、近赤外線吸収色素を用いて赤色光/遠赤色光の比を変化させた環境に被覆材料が開示されている。だが、この被覆材料は、特定波長域の近赤外線を吸収することで光質を変化させるため、近赤外線の光量を減少させてしまうという課題があった。そこで、光量を最大限利用すべく、近赤外領域に発光特性を持つ発光色素を活用する技術が検討されつつある。
だが一般に、市場に置かれる製品は製造段階で高温環境に晒されることが多いため、熱的安定性(耐熱性とも称す)を有することが求められるが、非特許文献1等に記載の従来の発光色素は耐熱性が充分でなく、例えば成型(成形とも称す)温度に耐えられず製造途中で色素が分解するため、発光色素を用いた成型体の実現は困難であった(後述の比較例1参照)。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、耐熱性に優れ、高温環境に晒された後でも近赤外発光特性を充分に発揮できる発光用材料及びその発光成型体を提供することを目的とする。
本発明者は、色素として利用可能な様々な化合物について種々検討するうち、スクアリリウム系化合物が近赤外発光特性を有するとともに、耐熱性に優れることを見いだし、700〜800nmの波長領域に発光極大波長を有するスクアリリウム系化合物と樹脂成分とを含む樹脂組成物からなる発光用材料とすれば、成型時の高温環境に晒された後でも近赤外発光特性を充分に発揮でき、従来は実現が困難であった樹脂成型体(発光成型体とも称す)を与えることができることを見いだした。この成型体は近赤外発光特性を有するため、農業用途、中でも特にフィトクロムを利用した植物栽培用途に有用である。このようにして上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明の完成に至った。
ここで、特許文献3には、スクアリリウム骨格を有する新規なオキソカーボン系化合物と樹脂成分とを含む樹脂組成物が記載されている。この樹脂組成物はオキソカーボン系化合物の吸収特性を利用したもので、可視光及び近赤外線を吸収・カットする機能を有する光学フィルター等の各種用途に有用なものである。しかし、特許文献3に記載されたスクアリリウム骨格を有するオキソカーボン系化合物が近赤外発光特性を有することは知られておらず、吸収特性と発光特性との関連性も見いだされていなかった。これに対し、本発明者は、このたび初めてスクアリリウム系化合物が発光特性を有し、発光用材料用途に特に有用であることを見いだし、上述のとおり発明を完成するに至ったものであるが、このような本発明の発光用材料は、特許文献3には記載されておらず、かつ特許文献3から当業者が容易に想到できるものでもない。
本発明は、700〜800nmに発光極大波長を有するスクアリリウム系化合物と樹脂成分とを含む樹脂組成物からなる発光用材料である。
上記スクアリリウム系化合物は、下記式(1):
Figure 2018002773
(式中、Ra1及びRa2は、同一又は異なって、複素環、芳香族環又は水素原子を表し、Ra1及びRa2のうち少なくとも一方は、複素環又は芳香族環を表す。複素環及び芳香族環は、置換基を有していてもよい。)で表されることが好ましい。
上記Ra1及びRa2のうち少なくとも一方は、下記式(2):
Figure 2018002773
(式中、環Aは、構成員数が4〜9員である不飽和炭化水素環を表す。X及びYは、同一又は異なって、有機基又は極性官能基を表す。nは、0〜6であり、かつm以下の整数を表す。mは、環Aの構成員数から3を引いた値である。*は、前記式(1)におけるスクアリリウム骨格との結合部位を表し、スクアリリウム骨格に結合する炭素原子(式(2)中、矢印で示す炭素原子)が、炭化水素環(環A)を形成している。環Bは、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はこれら環構造を含む縮合環を表し、置換基を有していてもよい。)を表すことが好ましい。
上記環Bは、置換基として塩素原子を少なくとも1個以上有することが好ましい。
上記スクアリリウム系化合物の含有量は、樹脂成分100質量部に対し、0.001〜0.1質量部であることが好ましい。
上記発光用材料は、成型用途に用いられることが好ましい。
上記発光用材料は、農業用途に用いられることが好ましい。
本発明はまた、上記発光用材料を硬化してなる発光成型体でもある。
上記発光成型体は、面状又はビーズ状成型体であることが好ましく、中でも農業用の面状又はビーズ状成型体であることがより好ましい。
本発明の発光用材料は、上述の構成よりなり、耐熱性に優れ、高温環境に晒された後でも近赤外発光特性を充分に発揮することができ、近赤外発光特性に優れる樹脂成型体(発光成型体)を容易に与えることができる。それゆえ、本発明の発光用材料を硬化してなる発光成型体、すなわち具体的には面状成型体(平板、フィルム、シート等)やビーズ状成型体(ビーズ、ペレット)は、農業用途、中でもフィトクロムを利用した植物栽培用途に特に有用である。
実施例1で得たフィルムの吸収スペクトル及び発光スペクトルである。
以下、本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も本発明の好ましい形態である。
1、発光用材料
まず本発明の第一の態様である発光用材料について説明する。
本発明の発光用材料は樹脂組成物からなり、該樹脂組成物は、700〜800nmに発光極大波長を有するスクアリリウム系化合物と、樹脂成分とを含む。必要に応じ、更に他の成分を含んでもよい。各含有成分は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。以下、樹脂組成物の含有成分について説明する。
(1)スクアリリウム系化合物
本発明で使用するスクアリリウム系化合物は、700〜800nmに発光極大波長を有する。この波長域に発光極大を有することで、発光用材料が、例えばフィトクロムを利用した植物栽培用途に有用なものとなる。発光極大の波長域は、好ましくは700〜780nm、より好ましくは700〜750nmである。
本明細書中、「発光極大」とは、波長と発光強度との関係を、X軸を波長とし、Y軸を発光強度とする二次元グラフで表した場合に、発光強度が増加から減少に転じる頂点を意味する。
上記スクアリリウム系化合物は、近赤外線の波長域に吸収極大を有するものであってもよい。具体的には、発光極大波長よりも吸収極大波長が短波長側にあり、かつ吸収極大の波長域が600〜750nmにあることが好ましい。吸収極大の波長域は、より好ましくは650〜750nm、更に好ましくは670〜730nmである。また、発光極大波長と吸収極大波長との差(発光極大波長−吸収極大波長)は、10〜100nmであることが好ましく、より好ましくは20〜50nmである。
本明細書中、「吸収極大」とは、波長と吸光度との関係を、X軸を波長とし、Y軸を吸光度とする二次元グラフで表した場合に、吸光度が増加から減少に転じる頂点を意味する。
上記スクアリリウム系化合物は、例えば、下記式(1)で表される化合物が好適である。これにより、耐光性及び耐熱性がより一層優れた樹脂組成物や樹脂成型体を与えることが可能になる。なお、1分子内に、式(1)中の主骨格(スクアリリウム骨格)を2個以上有する化合物であってもよい。
Figure 2018002773
式中、Ra1及びRa2は、同一又は異なって、複素環、芳香族環又は水素原子を表し、Ra1及びRa2のうち少なくとも一方は、複素環又は芳香族環を表す。複素環及び芳香族環は、置換基を有していてもよい。なお、Ra1及びRa2はそれぞれ、複素環と芳香族環との両方を含むものであってもよい。
上記複素環としては、芳香族複素環、脂環式複素環が挙げられる。
上記芳香族複素環としては、例えば、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員又は6員の単環性芳香族複素環;3〜8員の環が縮合した二環又は三環性で窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性芳香族複素環;等が挙げられ、より具体的にはピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、ナフチリジン環、シンノリン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チオフェン環、フラン環、チアゾール環、オキサゾール環、インドール環、イソインドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンズトリアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、プリン環、カルバゾール環等が挙げられる。
上記脂環式複素環としては、例えば、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員又は6員の単環性脂環式複素環;3〜8員の環が縮合した二環又は三環性で窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性脂環式複素環;等が挙げられ、より具体的にはピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、ホモピペリジン環、ホモピペラジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、ジヒドロベンゾフラン環、テトラヒドロカルバゾール環等が挙げられる。
上記芳香族環としては、炭素数5〜14の芳香族環が好ましく、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。
上記複素環及び芳香族環は、1個又は2個以上の置換基を有してもよいが、当該置換基の数は5個以下が好ましい。各環が2個以上の置換基を有する場合、同一の置換基であってもよいし異なる置換基であってもよい。このような置換基として具体的には、例えば、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、アルキル基、アリール基−Ar、アラルキル基、シアノ基、ハロゲン原子、−R=R−Ar(Rは、N又はCHを表す。Arは、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、ハロゲン基で置換されていてもよいアルキル基、シアノ基及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基で置換されていてもよいアリール基を表す。)等が挙げられる。アルキル基及びアルコキシ基は、1個又は2個以上の置換基を有してもよく(当該置換基の数は3個以下が好ましい。)、この置換基として、例えば、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
上記式(1)中、Ra1及びRa2として好ましくは、この少なくとも一方が、下記式(2)を表すことである。
Figure 2018002773
式中、環Aは、構成員数が4〜9員である不飽和炭化水素環を表す。X及びYは、同一又は異なって、有機基又は極性官能基を表す。nは、0〜6であり、かつm以下の整数を表す。mは、環Aの構成員数から3を引いた値である。*は、上記式(1)におけるスクアリリウム骨格との結合部位を表し、スクアリリウム骨格に結合する炭素原子(式(2)中、矢印で示す炭素原子)が、炭化水素環(環A)を形成している。環Bは、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はこれら環構造を含む縮合環を表し、置換基を有していてもよい。
上記環Aは、構成員数が4〜9員である不飽和炭化水素環を表すが、スクアリリウム骨格に結合する炭素原子(式(2)中、矢印で示す炭素原子)とピロール環を構成する炭素原子との間に少なくとも1個の二重結合を有する不飽和炭化水素環であればよい。環Aは、この二重結合以外にも不飽和結合(好ましくは二重結合)を有するものであってもよいが、環Aが有する二重結合は1個であることが好ましい。環Aとして好ましくは5〜8員環であり、より好ましくは6〜8員環である。環Aの構造としては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロヘプタトリエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロノネン、シクロノナジエン、シクロノナトリエン、シクロノナテトラエン等のシクロアルケン構造が挙げられる。中でも、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のシクロアルカンモノエンが好ましい。
上記X、Yが表し得る有機基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオオキシ基(アルキルチオ基)、アルキルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオオキシ基(アリールチオ基)、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アミド基(−NHCOR)、スルホンアミド基(−NHSO)、カルボキシ基(カルボン酸基)、シアノ基等が挙げられる。Rは、任意の1価の有機基を表す。また、極性官能基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基(スルホン酸基)等も挙げられる。
上記Xが表す有機基又は極性官能基として好ましくは、アルキル基、アルキルオキシカルボニル基又はアリール基であり、より好ましくはアルキル基又はアリール基である。この場合、アルキル基の炭素数は、直鎖状又は分岐状のアルキル基であれば1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4であり、脂環式のアルキル基であれば4〜7が好ましく、より好ましくは5〜6である。アリール基の炭素数は6〜10が好ましく、より好ましくは6〜8である。具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はフェニル基等が好適である。
上記Yが表す有機基又は極性官能基として好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基、アルコキシカルボニル基(エステル基)、アミド基、スルホンアミド基又は水酸基であり、より好ましくはアルキル基又は水酸基である。この場合、アルキル基の炭素数は1〜5が好ましく、より好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2である。具体的には、メチル基、エチル基、水酸基等が好適である。
上記nは、0〜6であり、かつm以下の整数を表すが、好ましくは0〜5の整数、より好ましくは0〜3の整数、更に好ましくは0〜2の整数である。nが1以上である場合、環Aを構成する炭素原子に結合する水素原子は、Yで置換されることになる。nが2以上であり、Yが複数存在する場合には、各Yは同じであってもよいし異なっていてもよい。また、nが2以上である場合、複数のYは各々別の炭素原子に結合していてもよいし、2個のYが1個の炭素原子に結合していてもよい。
上記環Bは、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はこれら環構造を含む縮合環を表し、置換基を有していてもよい。置換基を有する場合、置換基の数は1個でもよいし2個以上でもよい。環Bとしては、例えば、下記式(A−1)〜(A−12)の構造を有する環や、これら環の水素原子の1つ以上が任意の置換基で置換された環等が挙げられる。中でも、ベンゼン環(A−1)、ナフタレン環(A−2、A−3)又はこれらに置換基が置換した環が好ましく、ベンゼン環(A−1)又はベンゼン環(A−1)に置換基が置換した環がより好ましい。ここで置換基としては、X及びYが表す有機基として上述した基が挙げられ、その中でも特に、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基)、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜2のアルキルチオ基)、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基、等の電子供与性基;ハロゲン原子(好ましくは、塩素原子又は臭素原子等)、アルコキシカルボニル基(エステル基とも称す)、カルボキシ基(カルボン酸基とも称す)、スルホ基(スルホン酸基とも称す)、ニトロ基等の電子吸引性基;が好ましく、特に電子吸引性基が好ましい。中でも塩素原子が最も好適である。環Bが塩素原子を含むことで、樹脂組成物の耐熱性が顕著に向上し、より強度の高い成型体を得ることができる。このように環Bが置換基として塩素原子を少なくとも1個以上有する形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。環Bにおける塩素原子の数(置換数)は特に限定されないが、例えば、1〜4個が好ましく、より好ましくは1〜3個である。
Figure 2018002773
上記式(A−1)〜(A−12)は、環Bをピロール環の一部を含んで表したものであり、例えば式(A−1)は、下記構造式中、aの矢印で示されるピロール環のβ位の炭素原子と、下記構造式中、bの矢印で示されるピロール環のα位の炭素原子とを含んで表記されている。
Figure 2018002773
ここで、上記式(2)で表される構造単位が上記式(1)中のスクアリリウム骨格に結合してなるスクアリリウム系化合物には、互変異体が存在する。すなわち例えば、上記式(2)で表される構造単位が式(1)におけるスクアリリウム骨格に結合した場合には、下記式(1−1)で表される化合物の他、下記式(1−0)又は(1−2)で表される互変異体が存在する。従って、本発明のスクアリリウム系化合物として上記式(1)で表される化合物を少なくとも用いる場合、上記式(1)で表される化合物のみならず、それぞれに対応する互変異体も包含するものとする。
Figure 2018002773
上記スクアリリウム系化合物の製造方法は特に限定されないが、例えば、ピロール環含有化合物を中間原料とし、これをスクアリン酸と反応させることにより製造することができる。この製造には、公知の合成手法を適宜採用することができ、例えば、特開2016−74649号公報の他、特開2002−286931号公報、特開2007−31644号公報、特開2007−31645号公報、特開2007−169315号公報に記載の方法で合成することができる。また、得られた化合物は、必要に応じて、濾過、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、アルミナカラムクロマトグラフィー、昇華精製、再結晶、晶析等の公知の精製手段によって適宜精製してもよい。
上記ピロール環含有化合物としては、例えば、下記式(3)で表される化合物が好ましい。下記式(3)中、環A、環B、X、Y及びnは、それぞれ上記式(2)における各記号と同じである。
Figure 2018002773
上記ピロール環含有化合物として具体的には、例えば、4a−メチル−2,3,4,4a−テトラヒドロ−1H−カルバゾール、6−メチル−4a−メチル−2,3,4,4a−テトラヒドロ−1H−カルバゾール、6−フルオロ−4a−メチル−2,3,4,4a−テトラヒドロ−1H−カルバゾール、6,8−ジフルオロ−4a−メチル−2,3,4,4a−テトラヒドロ−1H−カルバゾール、6−クロロ−4a−メチル−2,3,4,4a−テトラヒドロ−1H−カルバゾール、5,7−ジクロロ−4a−メチル−2,3,4,4a−テトラヒドロ−1H−カルバゾール、5,6,8−トリクロロ−4a−メチル−2,3,4,4a−テトラヒドロ−1H−カルバゾール、6−ブロモ−4a−メチル−2,3,4,4a−テトラヒドロ−1H−カルバゾール、6,8−ジブロモ−4a−メチル−2,3,4,4a−テトラヒドロ−1H−カルバゾール、6−トリフルオロメチル−4a−メチル−2,3,4,4a−テトラヒドロ−1H−カルバゾール、4a−メチル−2,3,4,4a−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−8−カルボン酸、4a−メチル−2,3,4,4a−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−6−カルボン酸、6−フェニル−4a−メチル−2,3,4,4a−テトラヒドロ−1H−カルバゾール、8−フェニル−4a−メチル−2,3,4,4a−テトラヒドロ−1H−カルバゾール、6b−メチル−7,8,9,10−テトラヒドロ−6bH−ベンゾ[a]カルバゾール、10a−メチル−6,7,8,9,10,10a−ヘキサヒドロシクロヘプタ[b]インドール、11a−メチル−7,8,9,10,11,11a−ヘキサヒドロ−6H−シクロオクタ[b]インドール等が挙げられる。
上記ピロール環含有化合物は、公知の合成手法を適宜採用することによって合成できる。例えば、Sami Sajjadifar等著の論文(「New 3H-Indole Synthesis by Fischer’s Method. Part I.」、Molecules 2010、Volume 15、2010年4月、p.2491−2498)や、Ian Collins等著の論文(「A convenient synthesis of highly substituted 2-pyridones」、Tetrahedron Letters、Volume 40、 Issue 21、1999年5月、p.4069−4072)に記載の合成法によって合成することができる。
本発明ではまた、上記式(1)中のRa1及びRa2の少なくとも一方が、下記式(4)を表すことも好適である。
Figure 2018002773
式中、*は、上記式(1)におけるスクアリリウム骨格との結合部位を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基若しくはアルコキシ基、又は、−NRを表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は、−C(=O)−Rを表す。Rは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基若しくはアルアリール基を表す(当該アルキル基、アリール基又はアルアリール基は置換基を有していてもよい)。なお、R及びRのいずれか一以上が−NRを表す場合、当該式(4)は上記式(2)に該当することもある。
とR、RとR、及び、RとRは、それぞれ独立して、互いに連結してそれぞれ環C、環D及び環Dを形成していてもよい。環構造を形成しない場合、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリル基、又は、炭素数6〜20のアリール基若しくはアルアリール基を表し(当該アルキル基、アリル基、アリール基又はアルアリール基は置換基を有していてもよい。)、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜20のアルキル基若しくはアルコキシ基を表す。環構造を形成しない場合のR、R、R及びRは、耐熱性の観点から、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。
上記式(4)では、環C、環D及び環Eのうち少なくとも一以上の環構造を有することが好ましい。環C、環D及び環Eが形成される場合、これらはいずれも、窒素原子をヘテロ原子とする複素環となるが、それぞれ5員又は6員の複素環であることが好ましい。
環Cが形成される場合、R及びRは、これらが結合した2価の基(−Q−)として、アルキレン基又はアルキレンオキシ基を表すことが好ましい。これらの基は、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基で置換されていてもよい。
環Dが形成される場合、RとRは、これらが結合した2価の基(−B−C−)として、このうちBが下記式(B−1)又は(B−2)を表し、Cが下記式(C−1)〜(C−5)のいずれかを表すことが好ましい。ここで、Bが下記式(B−2)を表す場合、Cは単結合であってもよい。また、環Eが形成される場合、RとRは、これらが結合した2価の基(−B−C−)として、このうちBが下記式(B−1)又は(B−2)を表し、Cが下記式(C−1)〜(C−5)のいずれかを表すことが好ましい。ここで、Bが下記式(B−2)を表す場合、Cは単結合であってもよい。
Figure 2018002773
上記式(B−1)中、4個のZは、同一又は異なって、水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルキル基若しくはアルコキシ基、又は、−NR1718を表す。R17及びR18は、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1〜20のアルキル基を表す。
上記式(B−2)中、R10〜R13は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基を表す。式(C−1)中、R14及びR15は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基を表す。式(C−2)中、R16は、同一又は異なって、炭素数1〜20のアルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基を表す。
ここで、R、R、R、R、R、R10〜R16、並びに、環構造を形成していない場合のR〜R及びRは、これらのうち他のいずれかと互いに結合して5員環又は6員環構を形成していてもよい。またR10とR15、R10とR16は、直接結合していてもよい。
上記式(4)において、R及びRとして好ましくは、いずれか一方が水素原子を表し、他方が−NRを表すことが好適である。式(4)が環Cのみを有する場合、環D及びEを有する場合、又は、環C〜Eを有する場合には、−NRは、R及びRのいずれに導入させてもよい。一方、式(4)が環Dのみを有する場合、又は、環C及びDを有する場合には、−NRは、Rに導入させることが好ましく、式(4)が環Eのみを有する場合、又は、環C及びEを有する場合には、−NRは、Rに導入させることが好ましい。
上記−NRは、耐熱性及び耐光性の観点から、−NH−C(=O)−Rであることが好ましい。Rは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基若しくはアルアリール基を表す(当該アルキル基、アリール基又はアルアリール基は置換基を有していてもよい)が、この中でも、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基が好ましい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシルオキシ基等が挙げられる。
本発明で使用するスクアリリウム系化合物として特に好ましくは、下記化学式で表される化合物である。なお、式中のRは、炭素数1〜20のアルキル基を表す。
Figure 2018002773
Figure 2018002773
本発明の発光用材料において、スクアリリウム系化合物の含有量は、例えば、樹脂成分100質量部に対して0.001質量部以上であることが好ましい。これにより、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。より好ましくは0.002質量部以上、更に好ましくは0.003質量部以上である。また、濃度消光の観点から、0.1質量部以下であることが好ましく、これによって、より充分な発光強度を示す樹脂組成物や成型体を与えることが可能になる。より好ましくは0.08質量部以下、更に好ましくは0.05質量部以下である。
(2)樹脂成分
本発明で使用する樹脂成分は特に限定されず、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。例えば、ポリ(アミド)イミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂)、ポリシクロオレフィン樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ポリスルホン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、EVA樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体);(メタ)アクリルシリコーン樹脂、アルキルポリシロキサン樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンウレタン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル樹脂等の変性シリコーン樹脂;フッ素化芳香族ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、フッ素化ポリアリールエーテルケトン(FPEK)、フッ素化ポリイミド(FPI)、フッ素化ポリアミド酸(FPAA)、フッ素化ポリエーテルニトリル(FPEN))、ETFE樹脂(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)等のフッ素樹脂;等が挙げられ、種々様々な樹脂を使用することができる。
上記樹脂成分の中でも、成型工程に耐え得る脆性や柔軟性を有するものが好ましく、具体的には、ポリ塩化ビニル系樹脂、スチレン樹脂、EVA樹脂、ETFE樹脂、ポリカーボネート樹脂及びポリオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂が好適である。これらの樹脂は、低コストで取扱い性が良好で、耐光性や耐熱性にも優れるため好ましい。また、透明性(透過性)が要求される用途では、透明樹脂を用いることが好ましい。
(3)その他の成分
上記樹脂組成物は、必要に応じ、溶媒や添加剤を1種又は2種以上含んでもよい。
溶媒としては特に限定されないが、有機溶媒が好適であり、例えば、モノアルコール類;グリコール類;環状エーテル類;グリコールモノエーテル類;グリコールエーテル類;グリコールモノエーテルのエステル類(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等);アルキルエステル類;ケトン類;芳香族炭化水素類;ハロゲン化芳香族炭化水素類;脂肪族炭化水素類;アミド類;等が好ましい。中でも、オキソカーボン系化合物を溶解又は分散できるものが好適である。また、オキソカーボン系化合物は、双極子モーメントが小さい溶媒中で高い耐久性を有するので、双極子モーメントが4D以下である溶媒が好ましく、双極子モーメントが3.5D以下である溶媒がより好ましく、3D以下である溶媒が特に好ましい。このような溶媒の具体例として、例えば、o−ジクロロベンゼン、シクロペンタノン、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、リモネン等が好ましい。
上記溶媒の使用量は特に限定されないが、例えば、発光用材料を成型用途に用いる場合は、樹脂組成物の総量(溶媒を含む全量)100質量%に対し、0〜50質量%とすることが好ましい。より好ましくは0〜20質量%である。
上記添加剤としては特に限定されず、例えば、硬化剤、離型剤、レベリング剤、顔料、顔料分散剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、酸素補足剤、粘性改質剤、耐光安定剤、金属不活性化剤、過酸化物分解剤、充填剤、補強材、可塑剤、潤滑剤、防食剤、防錆剤、乳化剤、鋳型脱型剤、蛍光性増白剤、有機防炎剤、無機防炎剤、滴下防止剤、溶融流改質剤、静電防止剤、すべり付与剤、密着性付与剤、防汚剤、界面活性剤、消泡剤、重合禁止剤、光増感剤、表面改良剤、(近)赤外線カット剤(又は吸収剤)、密着向上剤、熱安定剤、防菌・防カビ剤、難燃剤等が挙げられる。
本発明の発光用材料の製造方法は特に限定されず、これを構成する樹脂組成物の含有成分を通常の方法で混合することにより得ることができる。含有成分を混合する際には、必要に応じて、各成分又は混合物を加熱して、均一組成になるように混合することもできる。加熱温度としては、好ましくは30〜350℃、より好ましくは50〜300℃である。混合方法も特に限定されず、例えば、各種の混合機や分散機を用いて混合分散することによって樹脂組成物を調製することができる。また、各成分の添加混合順序は適宜選択できる。例えば、スクアリリウム系化合物及び樹脂成分とともに溶媒を含む場合、樹脂成分にスクアリリウム系化合物を添加混合した後に溶媒を添加して混合してもよいし、溶媒に樹脂成分及びスクアリリウム系化合物を添加して混合してもよい。また、樹脂成分のペレットにスクアリリウム系化合物を練り込むことで調製してもよい。
本発明の発光用材料は、上述の構成よりなり、近赤外発光特性を有するため、農業用途、中でも特にフィトクロムを利用した植物栽培用途に有用である。また、成型時の高温環境に晒された後でも近赤外発光特性を著しく低下することなく保持できるため、成型用途に特に好適に適用できる。
2、発光成型体
次に、本発明の第二の態様である発光成型体について説明する。
本発明の発光成型体(樹脂成型体とも称す)は、上述した本発明の発光用材料を硬化してなるものである。形状は特に限定されず、平板状やフィルム状、シート状等の面状の他、波板状、球面状、ドーム状、ビーズ状(ペレット状を包含する)等の様々な形状が挙げられ、また、基板等上に形成された膜形状であってもよい。中でも、平板、フィルム、シート等の面状成型体や、ビーズ、ペレット等のビーズ状成型体であることが好ましい。このように本発明の発光成型体が面状又はビーズ状成型体である形態は、本発明の好適な形態の一つである。中でも、農業用の面状又はビーズ状成型体であることがより好ましい。
上記発光成型体が面状成型体である場合、その厚み(最も厚みの大きい部分の厚み)は特に限定されないが、取扱い性や強度等の観点から、本発明の発光用材料から形成される部分の厚みが5μmを超えて1mm以下であることが好ましい。より好ましくは10μm〜1mm、更に好ましくは20μm〜1mmである。
上記発光成型体の製造方法は特に限定されず、本発明の発光用材料を成形(成型)すればよい。この成型工程は、例えば、熱プレス成形、熱ラミネート成形、押出成形、射出成形、注型重合、プレス成形、カレンダー成形、注型製膜等のいずれであってもよい。成型工程は加熱下で行うことが好ましいが、その際の温度は、例えば、30〜350℃とすることが好ましく、この温度範囲内で段階的に変化させてもよい。より好ましくは50〜300℃である。加熱時間も特に限定されないが、製造効率を考慮すると、例えば、1分間〜30時間とすることが好適である。より好ましくは1分間〜10時間である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
製造例1
特許文献3(特開2016−74649号公報)段落〔0172〕実施例1−10に記載された手順に従って、下記表1記載のスクアリリウム色素Aを合成した。
得られた色素Aについて、クロロホルム溶媒(色素濃度:5μM)を用い、吸収スペクトルを紫外可視近赤外分光光度計UV−1800(島津製作所社製)にて、発光スペクトルを分光蛍光高度計FP−6600ST(日本分光社製)にて、蛍光量子収率を絶対PL量子収率測定装置C9920−02(浜松ホトニクス社製)にてそれぞれ測定し、極大吸収波長、極大蛍光波長(発光極大波長とも称す)及び蛍光量子収率(発光量子収率とも称す)を求めた。結果を表1にまとめた。
製造例2
非特許文献1(Aoife Gorman、外5名、「In Vitro Demonstration of the Heavy-Atom Effect for Photodynamic Therapy」、Journal of the American Chemical Society、(米国)、2004年8月10日、第126巻、第34号、p.10619−10631)に記載の合成手順(特に、第10623頁左上欄Scheme2に記載の式18a−dに記載の化合物を得るための合成手順)に従って、下記表1記載のAza−BODIPY色素Bを合成した。
得られた色素Bの吸収特性及び発光特性を製造例1と同様の手法にて測定し(色素濃度:0.2μM)、極大吸収波長、極大蛍光波長及び蛍光量子収率をそれぞれ求めた。結果を表1にまとめた。
実施例1
ポリカーボネートペレット(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、「ユーピロン E−2000」)100gと、製造例1で合成したスクアリリウム色素A50mgを混ぜて、ペレット表面に色素を付着させた。次いで、当該ペレットをラボプラストミルに投入し、設定温度270℃で10分間溶融混練した。その後、溶融混練された色素含有樹脂を270℃に熱した鉄板で挟みながら5分間加熱し、当該鉄板を冷却しながら5〜10mPaでプレスして厚み100μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの吸収スペクトルを紫外可視近赤外分光光度計UV−1800(島津製作所社製)にて、発光スペクトルを分光蛍光高度計FP−6600ST(日本分光社製)にて、蛍光量子収率を絶対PL量子収率測定装置C9920−02(浜松ホトニクス社製)にてそれぞれ測定し、極大吸収波長、極大蛍光波長及び蛍光量子収率を求めた。結果を表1に、得られたフィルムの吸収スペクトル及び発光スペクトルを図1に示す。
比較例1
用いた色素をスクアリリウム色素AからAza−BODIPY色素Bに変更したこと以外は実施例1に記載の方法でフィルム化を行った。
得られたフィルムの吸収特性及び発光特性を実施例1と同様の手法にて測定したが、吸収特性及び発光特性はともに確認できなかった(検出限界以下)。
Figure 2018002773
実施例及び比較例の結果より、以下の事項を確認した。
比較例1は、従来の近赤外発光色素であるAza−BODIPY色素Bを用いた点で、実施例1とは相違する。Aza−BODIPY色素Bは、実施例1で用いたスクアリリウム色素Aと同じく700〜800nmの波長域に発光極大波長を有するもので、スクアリリウム色素Aに比較して溶液状態での発光量子収率には優れるものの、ポリカーボネート樹脂を用いたフィルム成型においては、Aza−BODIPY色素B由来と認められる発光特性は確認できなかった。これは、成型温度によって色素が分解してしまったことが要因と考えられる。一方で、スクアリリウム色素Aを含むフィルムではやや発光量子収率は劣化するものの、良好な発光特性を維持していることが確認された。
以上より、700〜800nmに発光極大波長を有するスクアリリウム系化合物と樹脂成分とを含む樹脂組成物が高い耐熱性を有し、成型後も近赤外発光特性を有するため、発光用材料として極めて有用であることが確認された。

Claims (10)

  1. 700〜800nmに発光極大波長を有するスクアリリウム系化合物と樹脂成分とを含む樹脂組成物からなる
    ことを特徴とする発光用材料。
  2. 前記スクアリリウム系化合物は、下記式(1):
    Figure 2018002773
    (式中、Ra1及びRa2は、同一又は異なって、複素環、芳香族環又は水素原子を表し、Ra1及びRa2のうち少なくとも一方は、複素環又は芳香族環を表す。複素環及び芳香族環は、置換基を有していてもよい。)で表される
    ことを特徴とする請求項1に記載の発光用材料。
  3. 前記Ra1及びRa2のうち少なくとも一方は、下記式(2):
    Figure 2018002773
    (式中、環Aは、構成員数が4〜9員である不飽和炭化水素環を表す。X及びYは、同一又は異なって、有機基又は極性官能基を表す。nは、0〜6であり、かつm以下の整数を表す。mは、環Aの構成員数から3を引いた値である。*は、前記式(1)におけるスクアリリウム骨格との結合部位を表し、スクアリリウム骨格に結合する炭素原子(式(2)中、矢印で示す炭素原子)が、炭化水素環(環A)を形成している。環Bは、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はこれら環構造を含む縮合環を表し、置換基を有していてもよい。)を表す
    ことを特徴とする請求項2に記載の発光用材料。
  4. 前記環Bは、置換基として塩素原子を少なくとも1個以上有する
    ことを特徴とする請求項3に記載の発光用材料。
  5. 前記スクアリリウム系化合物の含有量は、樹脂成分100質量部に対し、0.001〜0.1質量部である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の発光用材料。
  6. 成型用途に用いられる
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の発光用材料。
  7. 農業用途に用いられる
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の発光用材料。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の発光用材料を硬化してなる
    ことを特徴とする発光成型体。
  9. 面状又はビーズ状成型体である
    ことを特徴とする請求項8に記載の発光成型体。
  10. 農業用の面状又はビーズ状成型体である
    ことを特徴とする請求項8に記載の発光成型体。
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