この発明に係るレーザ治療システムの実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態において、この明細書において引用されている文献に記載された技術を任意に援用することが可能である。
実施形態で使用される方向を定義する。装置光学系から患者に向かう方向を「前方向」とし、その逆方向を「後方向」とする。また、前方向に直交する水平方向を「左右方向」とする。左方向と右方向は任意に設定されていてよい(たとえば、患者の左眼側が左方向とされ、右眼側が右方向とされる)。さらに、前後方向と左右方向の双方に直交する方向を「上下方向」とする。上方向は実質的に鉛直上方と一致し、下方向は実質的に鉛直下方と一致する。
レーザ治療システムの構成例を図1Aに示す。レーザ治療システム1000の光学系は、照明光学系1100と、観察光学系1200と、照射光学系1300と、干渉光学系1400と、第1の合成部材1510と、第2の合成部材1520と、光走査ユニット1600とを含む。制御ユニット1800は、レーザ治療システム1000の各部を制御する。表示ユニット1900は、制御ユニット1800による制御を受けて情報を表示する。操作ユニット1950は、ユーザによる操作を受け付け、この操作に対応する信号(操作信号)を制御ユニット1800に入力する。制御ユニット1800は、この操作信号に基づき、システムの各部を制御する。
照明光学系1100は、患者眼Eの眼底Efを照明する。観察光学系1200は、照明光学系1100により照明されている眼底Efを観察するために用いられる。
観察光学系1200は、照明光学系1100により照明されている眼底Efからの戻り光を、接眼レンズおよび/または撮像装置に導くように構成されている。前者は眼底Efの肉眼観察に用いられ、後者は眼底Efの表示画像の観察に用いられる。この表示画像は、撮像装置からの信号を受けた制御ユニット1800が表示ユニット1900を制御することによって提供される。
なお、眼底Efからの戻り光は、反射ミラー1210の左右の位置を介して観察光学系1200に導かれる。そのための光学系の例を図1Bに示す。反射ミラー1210は、幅が広い部分と狭い部分とを有する。図1Bに示す例では、第2の合成部材1520側(上側)に幅が狭い部分が設けられている。照明光学系1100から出力された光は、第2の合成部材1520を透過して反射ミラー1210に到達し、幅が狭い部分において反射ミラー1210に反射されて患者眼Eに入射する。その眼底反射光は、反射ミラー1210の幅が狭い部分の両側(左右の位置)を通過して観察光学系1200に入射する。なお、図1Bに示す例においては、光走査ユニット1600を経由する光路は、反射ミラー1210の幅が狭い部分を通過して患者眼Eに導かれるように記載されているが、当該光路は幅が広い部分を通過するように構成されてもよい。また、当該光路は、幅が狭い部分と幅が広い部分の双方を通過できるように構成されてもよい。つまり、当該光路は、光走査ユニット1600による偏向方向に応じて、幅が狭い部分または幅が広い部分を通過するように構成されてもよい。
照射光学系1300は、治療用レーザ光を眼底Efに照射する機能と、治療用レーザ光の照準を合わせるための照準光を眼底Efに照射する機能とを有する。眼底Efに対する治療用レーザ光および照準光の照射位置は、光走査ユニット1600によって移動される。
干渉光学系1400は、光源からの光を測定光と参照光とに分割し、測定光の眼底Efからの戻り光と参照光とを重ね合わせて得られる干渉光を検出手段に導く。レーザ治療システム1000においては、たとえばスペクトラルドメインタイプまたはスウェプトソースタイプのOCTが適用される。なお、眼底Efに対する測定光の照射位置は、光走査ユニット1600によって移動される。
スペクトラルドメインタイプのOCTが適用される場合、光源は、低コヒーレンス光を発する低コヒーレンス光源を含み、かつ、検出手段は、低コヒーレンス光に基づき干渉光学系1400により生成される干渉光のスペクトル情報を取得する分光器を含む。分光器により取得されたスペクトル情報は、画像形成ユニット1700に入力される。画像形成ユニット1700は、分光器から入力されるスペクトル情報に基づいて、眼底Efの画像を形成する。この画像は、2次元断面像または3次元断面像である。制御ユニット1800は、画像形成ユニット1700により形成された画像を表示ユニット1900に表示させる。
スウェプトソースタイプのOCTが適用される場合、光源は、出力波長の掃引が可能な波長掃引光源を含み、かつ、検出手段は、波長掃引光源から出力された光に基づき干渉光学系1400により生成される干渉光を検出する光検出器を含む。光検出器は、干渉光の検出結果としての信号を画像形成ユニット1700に送る。画像形成ユニット1700は、出力波長の掃引に伴い光検出器によって順次に得られた検出結果に基づいて、眼底Ef画像を形成する。この画像は、2次元断面像または3次元断面像である。制御ユニット1800は、画像形成ユニット1700により形成された画像を表示ユニット1900に表示させる。
第1の合成部材1510および第2の合成部材1520は、照明光学系1100の光路と、照射光学系1300の光路と、干渉光学系1400により導かれる測定光の光路とを、実質的に同軸に合成する光路合成手段として機能する。光走査ユニット1600は、照射光学系1300の光路と測定光の光路との合成位置よりも患者眼E側に設けられる。本例では、第1の合成部材1510によって照射光学系1300の光路と測定光の光路とが実質的に同軸に合成される。第2の合成部材1520は、第1の合成部材1510よりも患者眼E側に設けられ、第1の合成部材1510による照射光学系1300と測定光との合成光路と、照明光学系1100の光路とを、実質的に同軸に合成する。光走査ユニット1600は、第1の合成部材1510と第2の合成部材1520との間に配置されている。つまり、光走査ユニット1600は、照射光学系1300と測定光との合成光路において、この合成光路が照明光学系1100の光路と合成される位置よりも第1の合成部材1510側に配置されている。
上記の構成では、第1の合成部材1510よりも患者眼E側に光走査ユニット1600が配置されている。すなわち、治療用レーザ光、照準光および測定光の偏向が、単一の光走査ユニット1600により行われる。なお、2以上の光走査手段が設けられた構成を適用することも可能である。たとえば、治療用レーザ光および照準光の偏向を第1の光走査手段により実行し、測定光の偏向を第2の光走査手段により実行するように構成することが可能である。
また、上記の構成では、治療用レーザ光および照準光の光路の一部と、測定光の光路の一部とが共通である。つまり、これら光路は、第1の合成部材1510よりも患者眼E側の部分において共通である。一方、これら光路を別々に設けることも可能である。或いは、治療用レーザ光の光路と照準光の光路と測定光の光路とを別々に設けることも可能である。
以上のような構成を有するレーザ治療システムによれば、治療用レーザ光の照射中またはその照射後に当該照射位置のOCT計測を行い、このOCT計測により得られたデータに基づいて治療用レーザ光の照射条件をリアルタイムで制御することが可能である。このOCT計測によれば、治療用レーザ光の照射位置における組織の変性状態を示す情報が得られる。この情報は、干渉光学系1400から出力される信号、またはこの信号を処理して得られる情報(たとえば画像形成ユニット1700により形成された画像)である。制御ユニット1800は、この情報に基づいて(つまり組織の変性状態に基づいて)、治療用レーザ光の照射条件を求め、照射光学系1300および/または光走査ユニット1600を制御する。なお、照射条件の具体例については後述する。
実施形態に係るレーザ治療システムは、所定配列のスポットパターンからなる照準光を眼底に投影し、それにより照準合わせがなされた複数の照射位置に対して順次に治療用レーザ光を照射することができる。さらに、このようなパターン照射と並行して上記のOCT計測および照射条件の制御を実行することが可能である。
ここで、一般に、一回のOCT計測を行う時間(Aスキャンに掛かる時間、つまり測定光の照射時間)は、各照射位置に対する治療用レーザ光の照射時間よりも十分に短い。OCT計測は、治療用レーザ光が照射されている間に、または治療用レーザ光の照射位置を変更している間に、実行される。
前者の場合、照射条件の制御は、現に治療用レーザ光が適用されている照射位置またはそれより後に治療用レーザ光が適用される照射位置に関する照射条件を調整するために行われる。後者の場合、照射条件の制御は、次に治療用レーザ光が適用される照射位置またはそれより後に治療用レーザ光が適用される照射位置に関する照射条件を調整するために行われる。
調整後の照射条件が適用されるタイミングは、OCT計測に掛かる時間と、新たな照射条件を求める処理に掛かる時間と、新たな照射条件に基づく照射光学系1300および/または光走査ユニット1600の制御に掛かる時間とに基づく。このような処理が照射条件のリアルタイム制御に相当する。
OCTの計測時間が治療用レーザ光の照射時間よりも十分に短い場合、治療用レーザ光の1の照射位置(スポット)に対してOCT計測を複数回実行し、これらOCT計測で得られたデータに基づいて照射条件の制御を行うことが可能である。この構成によれば、複数回のOCT計測で得られた複数のデータを統計的に処理することにより、照射条件の制御における確度や精度の向上を図ることができる。
また、一般に、測定光のビーム断面のサイズは、治療用レーザ光のビーム断面のサイズよりも十分に小さい。つまり、測定光が眼底Efに形成するスポットのサイズは、治療用レーザ光が眼底Efに形成するスポットのサイズよりも十分に小さい。この場合、治療用レーザ光のスポット内の複数の位置に対してそれぞれOCT計測を実行することが可能である。この構成によれば、治療用レーザ光の照射領域内を細かくOCT計測することにより、照射条件の制御における確度や精度の向上を図ることができる。
治療用レーザ光のスポット内の複数の位置をOCT計測する場合において、複数の位置のうちの1以上の位置についてOCT計測を2回以上行うことができる。
以下、上記のような照射条件のリアルタイム制御を実現するために適用可能なレーザ治療システムの具体例について説明する。
[具体例]
この実施形態に係るレーザ治療システムの具体例を図2に示す。レーザ治療システム1は、治療対象である患者眼Eの眼底Efに対してレーザ治療を施すために使用される。また、レーザ治療システム1は、眼底Efを正面から観察するための機能と、眼底Efの断面像を取得するための機能とを有する。
レーザ治療システム1は、レーザ光源ユニット2と、スリットランプ顕微鏡3と、光ファイバ4と、処理ユニット5と、操作ユニット6と、表示ユニット7と、OCTユニット8と、光ファイバ9とを有する。なお、スリットランプ顕微鏡3に代えて、手術用顕微鏡や眼底カメラなどの公知の観察装置を用いてもよい。
レーザ光源ユニット2とスリットランプ顕微鏡3は、光ファイバ4を介して光学的に接続されている。光ファイバ4は、1つ以上の導光路を有する。2以上の導光路が設けられる場合、光ファイバ4は、マルチコアファイバまたはファイババンドルであってよい。また、光ファイバ4は、イメージファイバ(画像伝送ファイバ)であってよい。
OCTユニット8とスリットランプ顕微鏡3は、光ファイバ9を介して光学的に接続されている。光ファイバ9は、たとえばシングルモードファイバである。
処理ユニット5は、レーザ光源ユニット2、スリットランプ顕微鏡3、操作ユニット6、表示ユニット7およびOCTユニット8のそれぞれに対して、信号を伝送可能に接続されている。信号の伝送形態は有線でも無線でもよい。
処理ユニット5は、ハードウェアとソフトウェアとの協働によって動作するコンピュータを含む。処理ユニット5が実行する処理については後述する。操作ユニット6は、各種のハードウェアキーおよび/またはソフトウェアキー(GUI)を含んで構成される。ハードウェアキーの例として、スリットランプ顕微鏡3に設けられたボタン・ハンドル・ノブや、スリットランプ顕微鏡3に接続されたコンピュータ(処理ユニット5等)に設けられたキーボード・ポインティングデバイス(マウス・トラックボール等)や、別途に設けられたフットスイッチ・操作パネルなどがある。ソフトウェアキーは、たとえばスリットランプ顕微鏡3や上記コンピュータに設けられた表示デバイスに表示される。
(レーザ光源ユニット2)
レーザ光源ユニット2は、眼底Efに照射される光を発生する。レーザ光源ユニット2は、照準光源2aと、治療用レーザ光源2bと、ガルバノミラー2cと、遮光板2dとを有する。なお、図2に示す部材以外の部材をレーザ光源ユニット2に設けることができる。たとえば、光ファイバ4の直前位置に、レーザ光源ユニット2により発生された光を光ファイバ4の端面に入射させるための光学素子(レンズ等)を設けることができる。
(照準光源2a)
照準光源2aは、レーザ治療を施す部位に照準を合わせるための照準光LAを発する。照準光源2aとしては任意の光源が用いられる。たとえば、眼底Efを肉眼で観察しつつ照準を合わせる構成が適用される場合、術者眼E0により認識可能な可視光を発する光源(レーザ光源、発光ダイオード等)が照準光源2aとして用いられる。また、眼底Efの撮影画像を観察しつつ照準を合わせる構成が適用される場合、撮影画像を取得するための撮像素子が感度を有する波長帯の光を発する光源(レーザ光源、発光ダイオード等)が照準光源2aとして用いられる。照準光LAは、ガルバノミラー2cに導かれる。照準光源2aの動作は、処理ユニット5により制御される。
(治療用レーザ光源2b)
治療用レーザ光源2bは、眼底Efのレーザ治療(光凝固、光切除等)に用いられる光(治療用レーザ光LT)を発する。治療用レーザ光LTは、その用途に応じて可視レーザ光でも不可視レーザ光でもよい。また、治療用レーザ光源2bは、異なる波長帯のレーザ光を発する単一のレーザ光源または複数のレーザ光源であってよい。治療用レーザ光LTは、ガルバノミラー2cに導かれる。治療用レーザ光源2bの動作は、処理ユニット5により制御される。
(ガルバノミラー2c)
ガルバノミラー2cは、反射面を有するミラーと、ミラーの向き(反射面の向き)を変更するアクチュエータとを含んで構成される。照準光LAと治療用レーザ光LTは、ガルバノミラー2cの反射面の同じ位置に到達するようになっている。なお、照準光LAと治療用レーザ光LTをまとめて「照射光」と呼ぶことがある。ガルバノミラー2c(の反射面)の向きは、少なくとも、照射光を光ファイバ4に向けて反射させる向き(照射用向き)と、照射光を遮光板2dに向けて反射させる向き(停止用向き)とに変更される。ガルバノミラー2cの動作は、処理ユニット5により制御される。
(遮光板2d)
ガルバノミラー2cが停止用向きに配置されている場合、照射光は遮光板2dに到達する。遮光板2dは、たとえば照射光を吸収する材質および/または形態からなる部材であり、遮光作用を有する。
この実施形態では、照準光源2aと治療用レーザ光源2bは、それぞれ連続的に光を発する。そして、ガルバノミラー2cを照射用向きに配置させることで、照射光を患者眼Eに照射させる。また、ガルバノミラー2cを停止用向きに配置させることで、患者眼Eに対する照射光の照射を停止させる。なお、このようなガルバノミラー2cの代わりに、照準光源2aおよび/または治療用レーザ光源2bの出力をオン/オフさせることによって、患者眼Eに対する照射光の照射/照射停止を切り替えるように構成することも可能である。
(スリットランプ顕微鏡3)
スリットランプ顕微鏡3は、患者眼Eの前眼部および眼底Efの観察に用いられる装置である。より詳しく説明すると、スリットランプ顕微鏡3は、患者眼Eをスリット光で照明し、この照射野を拡大観察するための眼科装置である。なお、「観察」には、肉眼での観察と撮影画像の観察の一方または双方が含まれる。この実施形態のスリットランプ顕微鏡3は、患者眼Eの肉眼観察と撮影の双方を実現可能な構成を有する。
スリットランプ顕微鏡3は、照明部3aと、観察部3bと、接眼部3cとを有する。照明部3aには、図3に示す照明光学系10が収容されている。また、詳細については後述するが、照明部3aには、レーザ光源ユニット2から延びる光ファイバ4と、OCTユニット8から延びる光ファイバ9とが接続されている。観察部3bと接眼部3cには、観察光学系30が格納されている。
図示は省略するが、スリットランプ顕微鏡3には、従来と同様に、レバー、ハンドル、ボタン、ノブ等の操作部材が設けられている。これら操作部材は、機能的に操作ユニット6に含まれる。なお、図2に示す構成では、操作ユニット6からの信号を受けた処理ユニット5がスリットランプ顕微鏡3を制御するようになっているが、このような電気的な駆動力を用いて動作する機構だけでなく、操作者が印加した力によって動作する機構を適用することもできる。
(スリットランプ顕微鏡3の光学系)
図3を参照してスリットランプ顕微鏡3の光学系について説明する。なお、図3には、眼底Efのレーザ治療に用いられるコンタクトレンズCLが示されている。スリットランプ顕微鏡3は、照明光学系10と、観察光学系30とを有する。
また、スリットランプ顕微鏡3の照明部3aには、レーザ光源ユニット2から入力された照射光の光路を照明光学系10に合成するための光学系と、OCTユニット8から入力された測定光の光路を照明光学系10に合成するための光学系とが設けられている。これら光学系を合成光学系と呼ぶ。
(照明光学系10)
照明光学系10は、患者眼Eを観察するための照明光を出力する。照明部3aは、照明光学系10の光軸(照明光軸)10aの向きを、左右方向、上下方向、回転方向および俯仰方向にそれぞれ変更可能に構成されている。それにより、患者眼Eの照明方向を任意に変更することができる。
照明光学系10は、光源11と、収束レンズ12と、フィルタ13、14および15と、スリット絞り16と、結像レンズ17、18および19と、偏向部材20とを有する。
光源11は照明光を出力する。なお、照明光学系10に複数の光源を設けてもよい。たとえば、定常光を出力する光源(ハロゲンランプ、LED等)と、フラッシュ光を出力する光源(キセノンランプ、LED等)の双方を光源11として設けることができる。また、角膜観察用の光源と眼底観察用の光源とを別々に設けてもよい。収束レンズ12は、光源11から出力された光を集めるレンズ(またはレンズ系)である。光源11の動作は、処理ユニット5により制御される。
フィルタ13〜15は、それぞれ、照明光の特定の成分を除去または弱める作用を持つ光学素子である。フィルタ13〜15としては、たとえば、ブルーフィルタ、無赤色フィルタ、減光フィルタ、防熱フィルタ、角膜蛍光フィルタ、色温度変換フィルタ、演色性変換フィルタ、紫外線カットフィルタ、赤外線カットフィルタなどがある。各フィルタ13〜15は、照明光の光路に対して挿脱可能とされている。フィルタ13〜15の挿脱は、処理ユニット5により制御される。
スリット絞り16は、スリット光(細隙光)を生成するためのスリットを形成する。スリット絞り16は、一対のスリット刃を有する。これらスリット刃の間隔を変化させることによりスリット幅が変更される。なお、スリット絞り16以外の絞り部材を照明光学系10に設けることができる。この絞り部材の例として、照明光の光量を変更するための照明絞りや、照明野のサイズを変更するための照明野絞りなどがある。また、これら絞り部材以外の部材を用いて照明光の光量や照射野のサイズを変更することが可能である。このような部材の例として液晶シャッタがある。スリット絞り16、照明絞り、照明野絞り、および液晶シャッタのそれぞれの動作は、処理ユニット5により制御される。
結像レンズ17、18および19は、照明光の像を形成するためのレンズ系である。偏向部材20は、結像レンズ17〜19を経由した照明光を偏向して患者眼Eに照射させる。偏向部材20としては、たとえば反射ミラーまたは反射プリズムが用いられる。
上記以外の部材を照明光学系10に設けることができる。たとえば、偏向部材20の後段に、拡散板を挿脱可能に設けることができる。拡散板は、照明光を拡散することにより、照明野の明るさを一様にする。また、照明光による照明野の背景領域を照明する背景光源を設けることができる。
(合成光学系)
合成光学系は、照明部3aに設けられ、レーザ光源ユニット2からの光路およびOCTユニット8からの光路を、照明光学系10に合成するように機能する。
この実施形態における合成光学系は、コリメータレンズ51と、ガルバノスキャナ52と、リレーレンズ53および54と、ダイクロイックミラー55と、ダイクロイックミラー91と、コリメータレンズ92とを有する。ダイクロイックミラー91は、レーザ光源ユニット2からの照射光の光路と、OCTユニット8からの測定光の光路とを実質的に同軸に合成する。ダイクロイックミラー91により得られる照射光と測定光との合成光路は、スリット絞り16と結像レンズ17との間に設けられたダイクロイックミラー55により、照明光学系10の光路と実質的に同軸に合成される。
光ファイバ4から出射した照射光は、コリメータレンズ51により平行光束とされ、ダイクロイックミラー91に反射されてガルバノスキャナ52に入射する。ガルバノスキャナ52は、照射光を2次元的に偏向する。ガルバノスキャナ52から出射した照射光は、リレーレンズ53および54を介してダイクロイックミラー55に到達する。ダイクロイックミラー55は、照射光を反射して照明光学系10に入射させる。照射光は、結像レンズ17、18および19、並びに偏向部材20を介して、患者眼Eに入射する。
光ファイバ9から出射した測定光は、コリメータレンズ92により平行光束とされ、ダイクロイックミラー91を透過してガルバノスキャナ52に入射する。ガルバノスキャナ52は、測定光を2次元的に偏向する。ガルバノスキャナ52から出射した測定光は、リレーレンズ53および54を介してダイクロイックミラー55に到達する。ダイクロイックミラー55は、測定光を反射して照明光学系10に入射させる。測定光は、結像レンズ17、18および19、並びに偏向部材20を介して、患者眼Eに入射する。
ガルバノスキャナ52は、たとえば、入射光を左右方向に偏向するためのガルバノミラーと、入射光を上下方向に偏向するためのガルバノミラーとを含む。これらガルバノミラーは、反射面の偏向可能方向が互いに直交している。これらガルバノミラーの向きをそれぞれ独立に変更することで、入射光の2次元的な偏向が実現される。ガルバノスキャナ52の動作は、処理ユニット5により制御される。
(観察光学系30)
観察光学系30は、患者眼Eによる照明光の反射光を術者眼E0に案内する光学系である。観察光学系30は、左右両眼での観察を可能とする左右一対の光学系を有する。左右の光学系は実質的に同一の構成を有するので、図3には一方の光学系のみが示されている。
観察部3bは、観察光学系30の光軸(観察光軸)30aの向きを左右方向および上下方向に変更可能に構成されている。それにより、患者眼Eを観察する方向を任意に変更することができる。
観察光学系30は、対物レンズ31と、変倍レンズ32および33と、保護フィルタ34と、結像レンズ35と、正立プリズム36と、視野絞り37と、接眼レンズ38とを有する。また、観察光学系30には後述の撮影系が設けられている。
対物レンズ31は、患者眼Eに対峙する位置に配置される。対物レンズ31は、左右の光学系に共通であってもよいし、左右別々に設けられていてもよい。
変倍レンズ32および33は、変倍光学系(ズームレンズ系)を構成する。各変倍レンズ32および33は、観察光軸30aに沿って移動可能とされている。それにより、患者眼Eの肉眼観察像や撮影画像の倍率(画角)を変更できる。倍率の変更は、たとえば、観察部3bに設けられた倍率変更ノブを手動で操作することにより行われる。また、処理ユニット5が、操作ユニット6に含まれるスイッチ等による操作に基づいて、倍率を制御するようにしてもよい。
また、変倍光学系として、観察光学系30の光路に対して選択的に挿入可能な複数の変倍レンズ群を設けてもよい。これら変倍レンズ群は、それぞれ異なる倍率を付与するように構成されている。観察光学系30の光路に配置された変倍レンズ群が変倍レンズ32および33として用いられる。倍率の変更、つまり観察光学系30の光路に配置される変倍レンズ群の切り替えは、たとえば、観察部3bに設けられた倍率変更ノブを手動で操作することにより行われる。
保護フィルタ34は、患者眼Eに照射されるレーザ光を遮蔽するフィルタである。それにより、術者眼E0をレーザ光から保護することができる。保護フィルタ34は、たとえば、レーザ治療(またはレーザ出力)の開始トリガに対応して光路に挿入される。通常の観察時には、保護フィルタ34は光路から退避される。保護フィルタ34の挿脱は、処理ユニット5により制御される。或いは、レーザ光(特に治療用レーザ光LT)のみを遮断するよう構成されたバンドパスフィルタを保護フィルタ34として用いることが可能である。この場合、バンドパスフィルタは、光路に常時配置されていてよい(つまり挿脱用の機構が設けられていなくてよい)。
結像レンズ35は、患者眼Eの像を結ばせるレンズ(レンズ系)である。正立プリズム36は、接眼レンズ38を介して観察される像を正立像にする光学部材であり、プリズム36aおよび36bを含んで構成される。接眼レンズ38は正立プリズム36と一体的に移動する。正立プリズム36と接眼レンズ38は接眼部3cに格納されている。観察光学系30を構成する他の部材は、観察部3bに格納されている。
患者眼Eを撮影するための撮影系について説明する。撮影系は、観察光軸30aから分岐した光路上に設けられた撮像装置42を含む。この分岐は、結像レンズ35と正立プリズム36との間に設けられたビームスプリッタ(ハーフミラー等)41により実現される。つまり、本例における撮影系は、対物レンズ31と、変倍レンズ32および33と、保護フィルタ34と、結像レンズ35と、ビームスプリッタ41と、撮像装置42とを含んで構成される。撮像装置42は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子を含む。また、撮像装置42は、レンズ等の光学素子を含んでいてもよい。
撮像装置42は、照射光(照準光LAおよび/または治療用レーザ光LT)の波長帯に感度を有する撮像素子を含む。よって、照射光を眼底Efに照射した状態で撮像装置42による撮影を行うと、その撮影画像には眼底Efに対する照射光の投影パターンが描出される。また、撮像素子は、照明光学系10による照明光の波長帯に感度を有していてもよい。その場合、撮影画像には、眼底Efの形態(つまり眼底Efの正面画像)と、照射光の投影パターンとが描出される。
撮像装置42を用いた撮影の対象は眼底Efには限定されず前眼部であってもよい。撮像装置42による撮影対象の選択は、たとえば、結像レンズ35や、撮像装置42内部のレンズを制御することにより行われる。
(光ファイバ4)
レーザ光源ユニット2とスリットランプ顕微鏡3とを光学的に接続する光ファイバ4の構成について説明する。さらに、光ファイバ4の構成に応じた照射光の制御について説明する。
光ファイバ4は、径が異なる複数のコアを有するマルチコアファイバであってよい。複数のコアは、患者眼Eに照射される光束の径(スポットサイズ)に関する複数の選択肢に対応している。光ファイバ4の入射端(レーザ光源ユニット2側のファイバ端)には、複数のコアの入射端が露出している。
処理ユニット5は、ガルバノミラー2cを制御することにより、複数のコアのうちの1つの入射端に照射光を入射させる。なお、処理ユニット5には、スポットサイズに関する複数の選択肢と、複数のコア(つまりガルバノミラー2cに対する制御の内容)とが一対一に対応付けられた情報(対応情報)が、あらかじめ記憶されている。ユーザまたは処理ユニット5は、患者眼Eに適用されるスポットサイズの指定を行う。処理ユニット5は、この対応情報を参照することにより、指定されたスポットサイズに対応する制御内容を取得し、この制御内容に基づいてガルバノミラー2cを制御する。それにより、指定されたスポットサイズの照射光が患者眼Eに適用される。
複数のコアの入射端の配置に応じて、ガルバノミラー2cの構成を決定することができる。たとえば複数のコアおよび遮光板2dが実質的に直線的に配置されている場合、ガルバノミラー2cは、その反射面の向きを1次元的に変更できるように構成されていればよい。複数のコアおよび遮光板2dが直線的に配置されていない場合、つまり、ガルバノミラー2cの側から見て、複数のコアおよび遮光板2dが2次元的に配置されている場合、ガルバノミラー2cは、その反射面の向きを2次元的に変更できるように構成される。なお、反射面の向きについては、たとえば、反射面の法線の方向として定義することが可能である。
光ファイバ4の構成例を図4に示す。図4は、光ファイバ4の入射端を示す。この光ファイバ4は、径が異なる複数のコア4a、4b、4cおよび4dを有する。たとえば、コア4a、4b、4cおよび4dの径は、それぞれ、50μm、100μm、200μmおよび400μmとされている。なお、コアの径と、眼底Efに投影されるスポットのサイズとが一致している必要はない。しかし、コアの径とスポットサイズとは既知の対応関係を有する。この対応関係は、たとえば、光ファイバ4と眼底Efとの間の光学系の設計により定義される。
複数のコア4a、4b、4cおよび4dは、光ファイバ4の中心軸4Aの周りに配置されている。この配置は、複数のコアおよび遮光板2dが2次元的に配置されている場合の一例に相当する。
また、本例において、光ファイバ4の中心軸4Aと、後述のOCT光学系の光軸とが同軸になるように、光学系を構成することができる。なお、図3に示すように、レーザ治療に関する照射光の光路と、OCT計測を行うための光(測定光)の光路は、ダイクロイックミラー91によって合成される。ダイクロイックミラー91は、たとえば、光ファイバ4から出射した光を透過させ、光ファイバ9から出射した光を反射するように構成されていてもよい。また、ダイクロイックミラー91の代わりにハーフミラーなどの合成部材を用いてこれら光路を合成するようにしてもよい。
(OCTユニット8)
OCTユニット8について説明する。図5は、OCTユニット8の構成例を示す。
OCTユニット8には、眼底EfのOCT画像を取得するための光学系が設けられている。この光学系は、たとえば、従来のスペクトラルドメインタイプのOCT装置と同様の構成を有する。すなわち、この光学系は、低コヒーレンス光を参照光と測定光に分割し、眼底Efを経由した測定光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル成分を検出するように構成されている。この検出結果(検出信号)は処理ユニット5に送られる。
レーザ治療システムに適用されるOCTのタイプはスペクトラルドメインタイプには限られない。たとえばスウェプトソースタイプのOCTが用いられる場合、波長掃引光源が光源ユニット81に設けられ、バランス型フォトダイオード等のバランス型光検出器が検出ユニット89に設けられる。一般に、OCTユニット8の構成については、OCTのタイプに応じた公知の技術が適用される。
光源ユニット81は、OCTを行うための光L0を出力する。本例ではスペクトラルドメインタイプのOCTが用いられるので、光源ユニット81から出力される光L0は、広帯域の低コヒーレンス光である。低コヒーレンス光L0は、たとえば、近赤外領域の波長帯(約800nm〜900nm程度)を含み、数十マイクロメートル程度の時間的コヒーレンス長を有する。なお、他の波長帯、たとえば1040〜1060nm程度の中心波長を有する近赤外光を低コヒーレンス光L0として用いてもよい。
光源ユニット81は、スーパールミネセントダイオード(Super Luminescent Diode:SLD)や、LEDや、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)等の光出力デバイスを含んで構成される。
光源ユニット81から出力された低コヒーレンス光L0は、光ファイバ82によりファイバカプラ83に導かれて測定光LMと参照光LRに分割される。測定光LMの光路は測定アームなどと呼ばれ、参照光LRの光路は参照アームなどと呼ばれる。
参照光LRは、光ファイバ84により導かれる。ファイバカプラ83とは反対側の光ファイバ84の端部には、光ファイバ84から出射した参照光LRを平行光束にするコリメータ85が設けられている。平行光束とされた参照光LRは、収束レンズ86により収束されて参照ミラー87に到達する。参照ミラー87の反射面は、参照アームの光軸に直交している。参照ミラー87により反射された参照光LRは、収束レンズ86により平行光束となり、コリメータ85により収束されて光ファイバ84に入射し、ファイバカプラ83に導かれる。
一方、ファイバカプラ83により生成された測定光LMは、光ファイバ9によってスリットランプ顕微鏡3の照明部3aに導かれる(図3を参照)。光ファイバ9から出射した測定光LMは、コリメータレンズ92により平行光束とされ、ダイクロイックミラー91を透過し、ガルバノスキャナ52により偏向され、リレーレンズ53および54を経由し、ダイクロイックミラー55により反射されて、照明光学系10の光路に入射する。さらに、測定光LMは、照明光学系10の光路を介して患者眼Eに照射される。ガルバノスキャナ52による偏向方向を変化させつつ測定光LMを順次に照射することにより、測定光LMによる眼底Efのスキャン(OCTスキャン)が実行される。
眼底Efに照射された測定光LMは、眼底Efの様々な深さ位置において散乱される。眼底Efによる測定光LMの後方散乱光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してダイクロイックミラー55に導かれる。さらに、測定光LMの後方散乱光は、ダイクロイックミラー55により反射され、リレーレンズ54および53、並びにガルバノスキャナ52を経由し、ダイクロイックミラー91を透過し、コリメータレンズ92により収束されて光ファイバ9に入射する。光ファイバ9に入射した測定光LMの後方散乱光は、ファイバカプラ83に導かれる。
ファイバカプラ83は、測定アームを経由した測定光LM(つまり測定光LMの後方散乱光)と、参照アームを経由した参照光LRとを重ね合わせる。それにより干渉光LCが生成される。干渉光LCは、光ファイバ88によって検出ユニット89に導かれる。
スペクトラルドメインタイプにおいて、検出ユニット89には、コリメータレンズと、分光素子と、収束レンズと、検出デバイスとが設けられる。分光素子は、たとえば回折格子である。また、検出デバイスは、たとえばラインセンサである。光ファイバ88から出射した干渉光LCは、コリメータレンズにより平行光束とされ、分光素子により分光(スペクトル分解)され、収束レンズにより収束されて検出デバイスの受光面に投影される。検出デバイスは、干渉光LCを光電変換して検出信号を生成する。この検出信号は、処理ユニット5内の画像形成部103に送られる。
この実施形態ではマイケルソン型の干渉計を採用しているが、たとえばマッハツェンダー型など任意のタイプの干渉計を適宜に採用することが可能である。また、検出デバイスとしては、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサが用いられる。
また、OCTユニット8は、光減衰器(アッテネータ)や偏波調整器(偏波コントローラ)などを含んでいてよい。光減衰器や偏波調整器は、たとえば参照アームに設けられる。光減衰器は、たとえば、公知の技術を用いて、処理ユニット5の制御の下、光ファイバ84を通過している参照光LRの光量を自動で調整する。また、偏波調整器は、たとえば、ループ状にされた光ファイバ84に対して外部から応力を与えることで、光ファイバ84内を通過している参照光LRの偏光状態を調整する。OCTユニット8は、他のデバイスを含んでいてもよい。
また、照射光や測定光LMによる走査に用いられるデバイスは、ガルバノスキャナ52に限定されない。たとえば、ポリゴンミラー、共振スキャナー、音響光学変調器、回転プリズム、振動プリズムなどを用いて走査を実行するように構成することが可能である。
[照射光のパターン]
照射光(照準光LA、治療用レーザ光LT)のパターンについて説明する。照射光のパターンには様々な条件(照射条件)がある。照射光の投影像(つまり眼底に対する照射光の照射範囲)をスポットと呼ぶ。照射条件としては、複数のスポットの配列(配列条件)、配列のサイズ(配列サイズ条件)、配列の向き(配列方向条件)、各スポットのサイズ(スポットサイズ条件)、スポットの間隔(スポット間隔条件)、スポットの個数(スポット数条件)などがある。
配列条件は、複数のスポットがどのように配列されているかを示す条件である。配列条件には、たとえば上記特許文献に記載されているように、様々なものがある。その具体例として、円状配列(図6A)、楕円状配列(図6B)、矩形状配列(図6C)、弧状配列(図6D)、直線状配列(図6E)、円板状配列(図6F)、楕円板状配列(図6G)、矩形板状配列(格子状配列:図6H)、扇形板状配列(図6I)、幅の有る円状配列(円環状配列(図6J))、幅の有る弧状配列(円環状配列の一部:部分円環状配列(図6K))、幅の有る直線状配列(帯状配列(図6L))などがある。また、ユーザが任意に配列を設定できるように構成することも可能である。また、2以上の配列を組み合わせて使用することも可能である。配列条件は、ガルバノスキャナ52の制御に用いられる。
配列サイズ条件は、或る配列において、その配列をどのようなサイズで投影するかを示す条件である。たとえば、円状配列において、そのサイズ(たとえば径)を示すパラメータが配列サイズ条件である。配列サイズ条件については、これを任意に設定できるように構成してもよいし、これの選択肢(たとえば大、中、小)を設けるように構成してもよい。配列サイズ条件は、ガルバノスキャナ52の制御に用いられる。
配列方向条件は、或る配列において、その配列をどのような向きで投影するかを示す条件である。たとえば、弧状配列の向きを示すパラメータが配列方向条件である。配列方向条件については、これを任意に設定できるように構成してもよいし、これの選択肢(たとえば上向き、下向き、左向き、右向き)を設けるように構成してもよい。配列方向条件は、ガルバノスキャナ52の制御に用いられる。
スポットサイズ条件は、各スポットをどの程度のサイズで投影するかを示す条件である。たとえば、円状配列において、各スポットの投影サイズ(径、面積、周囲長等)を変更することで、異なるパターンの円状配列を適用することができる。スポットサイズ条件については、これを任意に設定できるように構成してもよいし、これの選択肢(たとえば大、中、小)を設けるように構成してもよい。なお、或る配列において、全てのスポットサイズが同じである必要はない。その場合、或る配列を複数の部分に分け、各部分についてスポットサイズを個別に設定するように構成することができる。
スポットサイズを変更するための構成について説明する。光ファイバ4が単一の導光路からなる場合、スポットサイズを変更するための光学部材が照射光の光路に設けられる。この光学部材は、たとえば変倍レンズ(レンズ系)である。処理ユニット5は、照射光の光路の光軸(照射光軸)に沿って変倍レンズを移動させることにより、設定されたスポットサイズを実現する。
光ファイバ4が2つ以上の導光路を有する場合、これら導光路の径をそれぞれ異ならせることができる。この場合、2つ以上の導光路を択一的に使用することで、患者眼Eに照射される光のスポットサイズが変更される。処理ユニット5は、目的のスポットサイズに対応する導光路に照射光が入射される向きに、レーザ光源ユニット2のガルバノミラー2cを配置させる。このような構成の一例が、図4に示すマルチコアファイバが光ファイバ4として使用される場合である。なお、マルチコアファイバの各コアが導光路に相当する。
光ファイバ4は、パターンを保持しつつ光を伝送することが可能なイメージファイバであってもよい。この場合、光ファイバ4の前段または後段の任意の位置に、スポットサイズを変更するための光学部材(変倍レンズ等)が設けられる。この光学部材の制御は、光ファイバ4が単一の導光路からなる場合と同様である。また、レーザ光源ユニット2には、光ファイバ4(イメージファイバ)に所定パターンの照射光を入射するための、2次元的走査が可能なガルバノスキャナが設けられる。このガルバノスキャナは、たとえばガルバノミラー2cの代わりに設けられる。
スポット間隔条件は、隣接するスポットをどの程度の間隔(ピッチ)で投影するかを示す条件である。スポット間隔条件については、これを任意に設定できるように構成してもよいし、これの選択肢(たとえば疎、密)を設けるように構成してもよい。なお、或る配列において、全てのスポット間隔が同じである必要はない。その場合、或る配列を複数の部分に分け、各部分についてスポット間隔を個別に設定するように構成することができる。スポット間隔条件は、ガルバノスキャナ52の制御に用いられる。
照射条件には、照射光のパターン以外の事項に関するものも含まれる。たとえば、複数種別の照射光を選択的に使用可能な場合、照射光の種別を照射条件に含めることができる。照射条件の種別の具体例として、照準光LAや治療用レーザ光LTの種別(波長、用途等)がある。このような照射光種別条件は、照準光源2aおよび/または治療用レーザ光源2bの制御に用いられる。
また、照射条件は、照射光の強度に関する条件を含んでいてもよい。この照射強度条件の例として、照準光源2aや治療用レーザ光源2bによる照射光の出力強度を示す出力強度条件がある。出力強度条件は、照準光源2aおよび/または治療用レーザ光源2bの制御に用いられる。また、出力強度条件は、治療用レーザ光源2bから出力される治療用レーザ光(レーザ光)のエネルギーを示すパラメータを含んでいてもよい。
照射強度条件の他の例として、照射光の光量を減光部材によって調整するための条件(減光条件)がある。減光部材としては減光フィルタがある。より具体的には、1つの減光フィルタを光路に挿脱する構成や、透過率が異なる複数の減光フィルタを選択的に光路に配置可能な構成などがある。
また、照射条件は、照射光を照射する時間に関する条件を含んでいてよい。この照射時間条件の例として、照射光を連続的に照射する場合における照射の継続時間がある。また、照射光を断続的に照射する場合には、各回の照射の継続時間や、照射の反復回数などが照射時間条件に含まれていてよい。なお、照射強度条件と照射時間条件とを相互に考慮して照射条件を設定することができる。
[制御系]
レーザ治療システム1の制御系について、図7および図8を参照しながら説明する。図8は、図7に示す制御部101およびデータ処理部110の内部構成の例を示す。レーザ治療システム1の制御系は、処理ユニット5に設けられた制御部101を中心に構成される。
(制御部101)
制御部101は、レーザ治療システム1の各部を制御する。たとえば、制御部101は、レーザ光源ユニット2の制御、表示ユニット7の制御、照明光学系10の制御、観察光学系30の制御、OCTユニット8の制御などを行う。制御部101は、照射光学系制御部101aと、OCT光学系制御部101bとを有する。照射光学系制御部101aは、照射光(照準光LA、治療用レーザ光LT)の照射に関する制御処理を実行する。OCT光学系制御部101bは、OCT計測に関する制御処理を実行する。
レーザ光源ユニット2の制御として、制御部101(照射光学系制御部101a)は、照準光源2aの制御、治療用レーザ光源2bの制御、ガルバノミラー2cの制御などを行う。照準光源2aおよび治療用レーザ光源2bの制御は、照射光の出力のオン/オフ、照射光の出力強度(出力光量)の制御などを含む。また、1つ以上の治療用レーザ光源2bにより複数種別の治療用レーザ光LTを出力可能な構成が適用される場合、制御部101は、治療用レーザ光LTが選択的に出力されるように治療用レーザ光源2bを制御する。ガルバノミラー2cの制御は、ガルバノミラー2cの反射面の向きを変更する制御を含む。それにより、照射光の出力のオン/オフの切り替えや、照射光のスポットサイズの切り替えが実現される。
表示ユニット7は、制御部101の制御を受けて各種の情報を表示する。表示ユニット7は、LCD等のフラットパネルディスプレイ、またはCRTディスプレイなど、任意の表示デバイスを含んで構成される。表示ユニット7は、たとえばスリットランプ顕微鏡3または処理ユニット5(コンピュータ)に設けられる。或いは、表示ユニット7は、処理ユニット5に接続された外部ディスプレイである。操作ユニット6がGUIを含む場合、制御部101は、GUIの表示制御や、GUIに対する操作に基づく装置各部の動作制御を行う。
照明光学系10の制御として、制御部101は、光源11の制御、フィルタ13〜15の制御、スリット絞り16の制御、その他の絞り部材の制御などを行う。光源11の制御は、照明光の出力のオン・オフ、照明光の出力強度(出力光量)の制御などを含む。
フィルタ13〜15の制御は、照明光軸10aに対してフィルタ13〜15をそれぞれ独立に挿脱する制御を含む。フィルタ13〜15の制御は、フィルタ駆動部13Aを制御することにより行われる。フィルタ駆動部13Aは、ソレノイドやパルスモータ等のアクチュエータと、このアクチュエータにより発生された駆動力をフィルタ13〜15に伝達する機構とを含む。
スリット絞り16の制御は、一対のスリット刃の間隔を変更する制御や、一対のスリット刃を一体的に移動させる制御などを含む。前者の制御は、スリット幅の変更制御に相当する。後者の制御は、スリット幅を一定に保った状態で照明光(スリット光)の照射位置を変更する制御に相当する。その他の絞り部材には、前述のように、照明光の光量を変更するための照明絞りや、照明野のサイズを変更するための照明野絞りがある。スリット絞り16、照明絞り、照明野絞りの制御は、絞り駆動部16Aを制御することによりそれぞれ独立に行われる。絞り駆動部16Aは、パルスモータ等のアクチュエータと、このアクチュエータにより発生された駆動力を絞り部材に伝達する機構とを含む。
観察光学系30の制御として、制御部101は、変倍レンズ32および33の制御、保護フィルタ34の制御、結像レンズ35の制御などを行う。変倍レンズ32および33の制御は、変倍駆動部32Aを制御してこれらを観察光軸30aに沿って移動させるものである。それにより、観察倍率(画角)が変更される。変倍駆動部32Aは、パルスモータ等のアクチュエータと、このアクチュエータにより発生された駆動力を変倍レンズ32および33に伝達する機構とを含む。変倍光学系として複数の変倍レンズ群が設けられている場合、変倍駆動部32Aは、これら変倍レンズ群を観察光学系30の光路に対して選択的に挿入させる機構を含む。制御部101は、この変倍駆動部32Aを制御することで観察倍率(画角)の変更を行う。
保護フィルタ34の制御は、保護フィルタ駆動部34Aを制御して、保護フィルタ34を観察光軸30aに対して挿脱するものである。結像レンズ35の制御は、結像駆動部35Aを制御することにより、結像レンズ35を観察光軸30aに沿って移動させるものである。それにより、術者眼E0により観察される像のピント合わせがなされる。
制御部101は、撮影系の制御を行う。撮影系の制御としては、撮像装置42の制御がある。撮像装置42の制御には、撮像素子の蓄積時間の制御や、内蔵の光学素子による合焦制御などがある。また、撮像系の他の制御として、上記した観察光学系30の制御と同様に、変倍レンズ32および33の制御(撮影倍率・画角の変更制御)や、結像レンズ35の制御(ピント合わせ)などがある。また、ビームスプリッタ41を観察光学系30の光路に対して挿脱可能に構成する場合において、制御部101は、当該動作を行うための機構を制御する。
照射光を患者眼Eに適用するための制御として、制御部101(照射光学系制御部101a)は、前述したレーザ光源ユニット2の制御に加え、ガルバノスキャナ52の制御などを行う。ガルバノスキャナ52は、前述のように、左右方向への偏向を行うためのガルバノミラー(第1のガルバノミラー)と、上下方向への偏向を行うためのガルバノミラー(第2のガルバノミラー)とを含む。制御部101は、第1のガルバノミラーの反射面の向きと、第2のガルバノミラーの反射面の向きとを、それぞれ独立に変更する。それにより、レーザ光源ユニット2から光ファイバ4を介して入射した照射光を2次元的に偏向することができる。
OCTユニット8の制御として、制御部101(OCT光学系制御部101b)は、光源ユニット81の制御、収束レンズ86および参照ミラー87の制御、検出ユニット89の制御などを行う。光源ユニット81の制御は、光L0(低コヒーレンス光、波長掃引光など)の出力のオン/オフ、光L0の出力強度(出力光量)の制御などを含む。また、光源ユニット81に設けられた1つ以上の光源から複数種別の光L0を出力可能な構成が適用される場合、制御部101は、光L0を選択的に出力させるように光源ユニット81を制御する。
収束レンズ86および参照ミラー87の制御は、参照駆動部87Aを制御してこれらを参照アームの光軸に沿って一体的に移動させるものである。それにより、参照アームの光路長が変更される。参照アームの光路長の変更は、患者眼Eの眼軸長に応じた光路長の補正や、OCT計測における干渉状態の調整などに利用される。参照駆動部87Aは、パルスモータ等のアクチュエータと、このアクチュエータにより発生された駆動力を収束レンズ86および参照ミラー87に伝達する機構とを含む。
なお、この実施形態においては、参照ミラー87等の位置を変更することによって、参照アームの光路長と測定アームの光路長との間の差を変更している。しかし、この光路長差を変更するための構成は、これに限定されるものではない。たとえば、コーナーキューブとこれを移動するための機構とを、参照アームおよび/または測定アームに設けることによって、参照アームの光路長および/または測定アームの光路長を変更する構成を適用することができる。また、患者眼Eに対してレーザ治療システム1を移動させることによって測定アームの光路長を変更し、それにより光路長差の変更を行うように構成することも可能である。
検出ユニット89には、前述したように、コリメータレンズと、分光素子(回折格子など)と、収束レンズと、検出デバイス(ラインセンサなど)とが設けられている。収束レンズの制御は、図示しない駆動機構を制御してこれを光軸に沿って移動させるものである。それにより、検出デバイスの受光面に対する干渉光LCの収束状態を調整することができる。検出デバイスの制御は、蓄積時間の制御などを含む。
また、干渉光LCを導く光ファイバ88と検出ユニット89との間の位置調整を実行可能に構成することが可能である。一例として、光ファイバ88の出射端(検出ユニット89側の端部)、コリメータレンズ、分光素子、収束レンズ、および検出デバイスのうちの少なくとも1つに、制御部101の制御を受けて動作する駆動機構(図示せず)を設けることができる。
制御部101は、記憶部102に記憶されたデータの読み出し処理や、記憶部102に対するデータの書き込み処理を行う。
制御部101は、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ等を含んで構成される。このハードディスクドライブには、制御プログラムが予め記憶されている。制御部101の動作は、この制御プログラムと上記ハードウェアとが協働することによって実現される。また、制御部101は、外部装置と通信するための通信デバイスを含んでいてもよい。
(記憶部102)
記憶部102は各種のデータやコンピュータプログラムを記憶する。記憶部102に記憶されるデータとしては、たとえば、OCT画像の画像データ、眼底像の画像データ、患者眼情報などがある。患者眼情報は、患者IDや氏名などの患者に関する情報や、左眼/右眼の識別情報などの患者に関する情報を含む。
記憶部102は、たとえばRAM、ROM、ハードディスクドライブ等の記憶装置を含んで構成される。
(画像形成部103)
画像形成部103は、検出ユニット89の検出デバイスから入力される検出信号に基づいて、眼底Efの断面像を形成する。この処理には、従来のスペクトラルドメインタイプの光コヒーレンストモグラフィと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、分散補償、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれる。それにより形成される断面像は、走査線上の複数の走査点からz方向に延びる複数の1次元画像データ(Aラインデータ)を含んで構成される。また、各Aラインデータには、対応する走査点の位置に応じたxy座標が付与される。
他のタイプのOCT装置の場合、画像形成部103は、そのタイプに応じた公知の処理を実行する。画像形成部103は、専用の回路基板および/またはマイクロプロセッサを含んで構成される。
なお、z方向は測定光の進行方向(眼底Efの深さ方向)を示し、xy方向はz方向に直交する面に設定された2次元座標系を示す。換言すると、前述した方向の定義において、z軸は前後方向に、x軸は左右方向に、y軸は上下方向に、それぞれ設定される。
(操作ユニット6、表示ユニット7)
操作ユニット6は、前述のように、各種のハードウェアキーおよび/またはソフトウェアキーを含んで構成される。また、表示ユニット7は、各種の情報を表示する。
操作ユニット6は、照射光の照射条件の設定に用いられる。照射条件の設定操作は、たとえば、所定のハードウェアキーまたはソフトウェアキーを用いて行われる。前者の具体例として、配列条件、配列サイズ条件、配列方向条件、スポットサイズ条件、スポット間隔条件、スポット数条件、照射光種別条件、照射強度条件(出力強度条件、減光条件)など、任意の照射条件を設定するためのハードウェアキーが操作ユニット6に予め設けられる。ユーザは所望の照射条件に対応するハードウェアキーを操作することで、照射条件の設定を行う。後者の具体例として、上記のような照射条件を設定するための設定画面が、制御部101によって表示ユニット7に表示される。ユーザは、表示された設定画面に設けられたGUIを操作ユニット6によって操作することにより、照射条件の設定を行う。
なお、実施形態において、操作ユニット6を介して設定された照射条件は、たとえば、一連のレーザ治療の開示時に適用される(つまり初期条件として用いられる)。また、一連のレーザ治療を行っている間に、または、一連のレーザ治療と一連のレーザ治療との間に、操作ユニット6を介して照射条件を設定することができる。なお、一連のレーザ治療の例として、所定配列のスポットパターンに基づくレーザ治療がある。
また、操作ユニット6は、眼底Efに対する照射光の照射位置を移動するために用いられる。照射位置の移動操作についても、所定のハードウェアキーまたはソフトウェアキーを用いて行われる。なお、照射位置の移動は、たとえば、制御部101がガルバノスキャナ52を制御することにより、またはスリットランプ顕微鏡3の光学系を移動制御することにより行われる。なお、後者の場合、光学系を移動させるための移動機構(光学系移動機構)がスリットランプ顕微鏡3に設けられる。この光学系移動機構は、電動制御されるものであり、アクチュエータと、このアクチュエータにより発生された駆動力を伝達する機構とを含んで構成される。また、ユーザにより行われた操作を駆動力としてスリットランプ顕微鏡3の光学系を移動させることにより光学系を移動させるように構成することも可能である。
図7においては操作ユニット6と表示ユニット7とが別々に表されているが、これらを一体的に構成することも可能である。その具体例として、タッチパネル式のLCDを用いることができる。
(データ処理部110)
データ処理部110は各種のデータ処理を行う。このデータ処理の例として、レーザ治療に関する処理と、OCTに関する処理と、レーザ治療とOCTとの連係処理とがある。
レーザ治療に関する処理の例として、照準光LAの照射パターンに基づいて、治療用レーザ光LTの照射パターンを決定する処理がある。この処理は、たとえば、照準光LAが照射されている状態の眼底Efの撮影画像から照準光LAのスポット像を抽出し、抽出されたスポット像のパターンを治療用レーザ光LTの照射パターンとして設定することにより行われる。
OCTに関する処理の例として、画像形成部103により形成された画像に対して各種の画像処理や解析処理を施す。たとえば、データ処理部110は、画像の輝度補正等の各種補正処理を実行する。また、データ処理部110は、撮像装置42により得られた画像(眼底像、前眼部像等)に対して各種の画像処理や解析処理を施す。
データ処理部110は、複数の走査線に沿って得られた複数の断面像の間の画素を補間する補間処理などの公知の画像処理を実行することにより、眼底Efの3次元画像データを形成する。なお、3次元画像データとは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像データを意味する。3次元画像データとしては、3次元的に配列されたボクセルからなる画像データがある。この画像データは、ボリュームデータ或いはボクセルデータなどと呼ばれる。
ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、データ処理部110は、このボリュームデータに対してレンダリング処理(ボリュームレンダリング、MPR(Multi Planar Reconstruction:任意多断面再構成)、MIP(Maximum Intensity Projection:最大値投影)など)を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像データを形成する。この擬似的な3次元画像が表示ユニット7に表示される。
また、3次元画像データとして、複数の断面像のスタックデータを形成することも可能である。スタックデータは、複数の走査線に沿って得られた複数の断面像を、走査線の位置関係に基づいて3次元的に配列させることで得られる画像データである。すなわち、スタックデータは、元々個別の2次元座標系により定義されていた複数の断面像の画像データを、1つの3次元座標系により表現する(つまり1つの3次元空間に埋め込む)ことにより得られる画像データである。
レーザ治療とOCTとの連係処理の例を説明する。データ処理部110は、レーザ治療が施された眼底Efを撮像装置42で撮影して得られた眼底像と、眼底Efのボリュームデータとの位置合わせを行うことができる。この位置合わせ処理は、たとえば、ボリュームデータの少なくとも一部のボクセルをAラインに沿って加算して得られた2次元画像と、眼底像との画像マッチングを含む。さらに、データ処理部110は、この位置合わせ結果に基づいて、レーザ治療が施された部位に相当するボリュームデータ中の画像領域を特定することができる。また、データ処理部110は、ボリュームデータを解析することにより、実施されたレーザ治療の度合を示す情報を求めることができる。この情報は、たとえば、治療用レーザ光LTによる焼灼の程度や範囲(到達深度、広がり等)などを含む。さらに、データ処理部110は、焼灼の程度の分布状態を画像やグラフで表現した情報を作成することができる。
データ処理部110は照射条件設定部111を含む。照射条件設定部111には、照射位置選択部112と、照射順序設定部113とが設けられている。
(照射条件設定部111)
この実施形態に係るレーザ治療システムは、所定配列のスポットパターンからなる照準光LAを眼底Efに投影し、それにより照準合わせがなされた複数の照射位置に対して順次に治療用レーザ光LTを照射する。さらに、レーザ治療システムは、このようなパターン照射と並行してOCT計測と照射条件の制御とを実行する。このOCT計測は、治療用レーザ光LTが現に照射されている位置、または治療用レーザ光LTが既に照射された位置について実行される。
照射条件設定部111は、このOCT計測により得られた干渉光LCを検出した検出ユニット89からの出力に基づいて、治療用レーザ光LTの照射条件を設定する。この処理は、パターン照射と並行してリアルタイムで実行される。照射条件設定部111は、設定された照射条件を示す信号を照射光学系制御部101aに送る。照射光学系制御部101aは、この信号に基づいて、治療用レーザ光LTの照射条件を変更する。照射条件設定部111および照射光学系制御部101aの組み合わせは「照射条件制御手段」に相当する。照射条件設定部111が実行する処理の例の以下に説明する。
第1の例を説明する。制御部101は、検出ユニット89から出力された信号(検出信号)を照射条件設定部111に送る。照射条件設定部111は、この検出信号を解析することにより、治療用レーザ光LTの照射条件を設定する。この処理の具体例を説明する。照射条件設定部111は、検出信号の特性(強度、周波数、パターン等)と、照射条件とが対応付けられた対応情報をあらかじめ記憶している。照射条件は、配列条件、配列サイズ条件、配列方向条件、スポットサイズ条件、スポット間隔条件、スポット数条件、照射光種別条件、照射強度条件(出力強度条件、減光条件)など、1つ以上の照射条件を含む。照射条件設定部111は、この対応情報を参照することにより、検出信号に対応する照射条件を求める。
第2の例を説明する。画像形成部103は、検出ユニット89から出力された検出信号に基づいて画像データを形成する。制御部101は、画像形成部103により形成された画像データを照射条件設定部111に送る。照射条件設定部111は、この画像データを解析することにより、治療用レーザ光LTの照射条件を設定する。この処理は、たとえば、第1の例と同様に、画像データの特性(画素値、パターン等)と、照射条件とが対応付けられた対応情報を参照することにより実行される。
照射条件を設定する処理に供される画像データは、1次元画像データ、2次元画像データ、または3次元画像データである。1次元画像データは、測定光LMの進行方向(z方向)に沿う眼底Efの1次元領域からの測定光LMの反射強度分布を表す輝度画像データであり、Aラインデータ、Aスキャン像などと呼ばれる。この1次元画像データは、治療用レーザ光LTが現に照射されている位置、または治療用レーザ光LTが既に照射された位置における1次元領域を表す。
1次元画像データが用いられる場合、照射条件設定部111は、たとえば、治療用レーザ光LTの照射位置における焼灼の程度および/または範囲(深度)など、焼灼状態を表す情報を求める。この情報は、焼灼状態の1次元分布などの分布情報を含んでいてよい。対応情報には、焼灼状態と照射条件とがあらかじめ対応付けられている。照射条件設定部111は、入力された1次元画像データと対応情報とに基づいて照射条件を設定する。
2次元画像データは、眼底Efに対する測定光LMの照射位置を1次元的に移動させることにより得られる、この移動方向とz方向とにより張られる2次元領域を表す輝度画像データである。測定光LMの照射位置を1次元的に移動させて行われるOCT計測はBスキャンなどと呼ばれ、それにより得られる2次元画像データはBスキャン像などと呼ばれる。この2次元画像データは、治療用レーザ光LTが現に照射されている位置、または治療用レーザ光LTが既に照射された位置を含む2次元断面を表す。
2次元画像データが用いられる場合、照射条件設定部111は、たとえば、治療用レーザ光LTの照射位置における焼灼の程度および/または範囲(2次元分布等)など、焼灼状態を表す情報を求める。対応情報には、焼灼状態と照射条件とがあらかじめ対応付けられている。照射条件設定部111は、入力された2次元画像データと対応情報とに基づいて照射条件を設定する。
3次元画像データは、前述したように、データ処理部110によって形成される。3次元画像データは、眼底Efに対する測定光LMの照射位置を2次元的に移動させることにより得られる、この2次元的な移動方向とz方向とにより張られる3次元領域を表す輝度画像データである。測定光LMの照射位置を2次元的に移動させて行われるOCT計測は3次元スキャン、ボリュームスキャンなどと呼ばれ、それにより得られる3次元画像データはボリュームデータ、ボクセルデータ、スタックデータなどと呼ばれる。この3次元画像データは、治療用レーザ光LTが現に照射されている位置、または治療用レーザ光LTが既に照射された位置を含む3次元領域を表す。
3次元画像データが用いられる場合、照射条件設定部111は、たとえば、治療用レーザ光LTの照射位置における焼灼の程度および/または焼灼部位の範囲(3次元分布等)など、焼灼状態を表す情報を求める。対応情報には、焼灼状態と照射条件とがあらかじめ対応付けられている。照射条件設定部111は、入力された3次元画像データと対応情報とに基づいて照射条件を設定する。
(照射位置選択部112)
照射位置選択部112は、検出ユニット89からの出力(検出信号、これに基づく画像データなど)に基づいて、パターン照射における複数の照射位置の少なくとも一部を選択する。照射位置選択部112は、パターン照射において「予備的照射」が行われる場合に動作する。予備的照射とは、パターン照射における複数の照射位置の一部(1以上の照射位置)に対して治療用レーザ光LTを照射しつつOCT計測を実行することであり、このOCT計測により得られたデータに基づいてパターン照射(複数の照射位置の一部または全部)が行われる。照射位置選択部112は、このOCT計測により得られたデータに基づいて、後者のパターン照射における治療用レーザ光LTの照射位置、つまり前者のパターン照射における複数の照射位置の一部または全部を選択する。
照射位置選択部112が実行する処理の例を説明する。まず、照射位置選択部112は、予備的照射におけるOCT計測により得られたデータに基づいて、焼灼状態を示す情報(焼灼の程度、範囲など)を求める。この処理は、たとえば、照射条件設定部111に関する上記処理と同様にして実行される。
次に、照射位置選択部112は、求められた焼灼状態を示す情報に基づく判定処理を行う。この判定処理は、たとえば、予備的照射が適用された照射位置における焼灼の程度が閾値以上であるか判定する閾値処理、および/または、焼灼の範囲が閾値以上であるか判定する閾値処理を含む。このような判定処理は、予備的照射におけるそれぞれの照射位置について実行される。なお、閾値はあらかじめ設定される。
予備的照射における照射位置の個数が2つ以上である場合、照射位置選択部112は、判定結果を統計的に処理することができる。この統計処理の例として、閾値に対する差分の統計値(平均値、総和、標準偏差、分散、最大値、最小値など)を求める演算処理がある。
照射位置選択部112は、上記の判定処理(または統計処理)の結果に基づいて、照射位置の選択を行う。この処理の一例として、照射の程度および範囲が閾値以上である場合、照射位置選択部112は、予備的照射で適用された照射位置を全ての照射位置から除いた部分を選択することができる。照射の程度および範囲が閾値以上である場合における他の例として、照射位置選択部112は、照射の程度および範囲が閾値以上である照射位置を全ての照射位置から除いた部分を選択することができる。また、照射位置を選択するためのパラメータは、照射の程度および範囲のうち一方のみであってよい。また、照射位置の選択処理において、照射の程度および/または範囲が閾値よりも所定値以上大きい場合、当該照射位置の近傍の照射位置を除外することができる。
照射位置選択部112は、選択された照射位置を示す情報を照射光学系制御部101aおよび/または照射順序設定部113に送る。また、選択された照射位置を示す情報は、焼灼状態を示す情報を含んでいてもよい。照射光学系制御部101aに情報が送られた場合、照射光学系制御部101aは、照射条件設定部111により設定された照射条件の治療用レーザ光LTが、照射位置選択部112により選択された照射位置に対して順次に照射されるように、照射光学系(治療用レーザ光源2b、ガルバノミラー2c、ガルバノスキャナ52等)の制御を行うことができる。照射順序設定部113に情報が送られた場合、照射順序設定部113は以下に説明する処理を実行する。
(照射順序設定部113)
照射順序設定部113は、検出ユニット89からの出力(検出信号、これに基づく画像データなど)に基づいて、照射位置選択部112により選択された照射位置に対して治療用レーザ光LTを照射する順序(照射順序)を設定する。
照射順序を設定する処理の例を説明する。まず、照射順序設定部113は、照射の程度および/または範囲が閾値よりも所定値以上大きいか否か判定する。なお、同様の判定処理を照射位置選択部112が実行する場合、照射順序設定部113は、照射位置選択部112による判定結果を受ける。
照射の程度(照射の範囲)が閾値より所定値以上大きいと判定された場合、照射順序設定部113は、この判定結果に対応する照射位置が後回しになるように照射順序を設定する。ここで、「後回し」とは、予備的照射後のパターン照射における当該照射位置の順序を、デフォルトの順序よりも後に変更するものであり、たとえば当該パターン照射の最後の順序に変更される。
一方、照射の程度(照射の範囲)が閾値より所定値以上大きいと判定された場合、照射順序設定部113は、たとえば、予備的照射後のパターン照射におけるデフォルトの順序を適用する。
照射順序設定部113は、照射位置選択部112により選択された照射位置について設定された照射順序を示す情報を、照射光学系制御部101aに送る。照射光学系制御部101aは、選択された照射位置に対する治療用レーザ光LTの照射がこの照射順序に応じて実行されるように、照射光学系(治療用レーザ光源2b、ガルバノミラー2c、ガルバノスキャナ52等)を制御することができる。
(入出力部120)
入出力部120は、外部装置や記録媒体から情報の入力を受ける機能と、外部装置や記録媒体に情報を出力する機能とを有する。入出力部120は、通信回線を介して外部装置(サーバ、コンピュータ端末、眼科装置等)と情報通信を行うための通信インターフェイスを含んでいてよい。また、入出力部120は、記録媒体に記録されている情報を読み取る処理や、記録媒体に情報を書き込む処理を行うためのドライブ装置を含んでいてよい。
入出力部120は、外部装置によって過去に取得されたデータを受け付けることができる。このデータとしては、眼科撮影装置(OCT装置、眼底カメラ、スリットランプ顕微鏡、走査型レーザ検眼鏡など)を用いて過去に実施された撮影により取得された患者眼Eの画像がある。また、このデータは、当該医療機関に記録されている当該患者の診療情報(電子カルテ情報など)や、他の医療機関から送信された当該患者の診療情報を含んでいてよい。入出力部120が受け付けるデータはこれらに限定されるものではない。制御部101は、入出力部120により受け付けられたデータを表示ユニット7に表示させることができる。このような構成によれば、たとえばフォローアップ撮影や術前術後観察において、過去に取得されたデータを参照することが可能となる。なお、このレーザ治療システム1を用いて過去に取得されたデータを表示ユニット7に表示可能であることは言うまでもない。
[動作]
実施形態に係るレーザ治療システムの動作について説明する。以下、レーザ治療システムの動作についていくつかの例を説明する。実施形態に係るレーザ治療システムは、以下の動作例のいずれかを実行可能に構成されていてよい。なお、レーザ治療システムは、実行可能な動作例に関する構成要素のみを含んでいればよい。また、以下の動作例のうち任意の2つ以上を組み合わせることが可能である。
[動作例1]
図9に示す動作例について説明する。この動作例では、照射位置選択部112および照射順序設定部113は使用されない。
(ステップS1:眼底の観察を開始する)
まず、眼底Efの観察を開始する。具体的には、制御部101が、光源11を点灯させ、かつ撮像装置42から出力される信号に基づく画像を表示ユニット7に表示させる。この画像(観察画像)は、たとえばリアルタイム赤外動画像である。
(ステップS2:眼底に照準光を照射する)
制御部101(照射光学系制御部101a)は、照射光学系(照準光源2a、ガルバノミラー2c、ガルバノスキャナ52等)を制御することにより、眼底Efに照準光LAを照射させる。このとき、所定配列のスポットパターンからなる照準光LAが照射される。適用されるスポットパターンはあらかじめ設定される。ステップS1で表示が開始された観察画像には、眼底Efに投影されている照準光LAの像、つまりスポットパターンに応じた複数のスポット像が描出される。
(ステップS3:ユーザが照準合わせを行う)
ユーザ(術者)は、この観察画像を観察しつつ、または接眼レンズ38を介した肉眼観察を行いつつ、照準合わせを行う。この照準合わせは、たとえば、眼底Efに対する複数のスポット像の投影位置を、操作ユニット6を用いて変更することによって行われる。
(ステップS4:治療用レーザ光の照射とOCT計測を開始する)
ステップS3の照準合わせが完了したら、ユーザは、操作ユニット6を介して、治療用レーザ光LTの照射(予備的照射)を開始させるための指示を入力する。このトリガを受けた制御部101は、治療用レーザ光LTの照射とOCT計測を開始させる。治療用レーザ光LTの照射は照射光学系制御部101aにより実行され、OCT計測はOCT光学系制御部101bにより実行される。
ここで、治療用レーザ光LTの照射パターンと、予備的照射に適用される当該照射パターンの一部(サブパターン)は、あらかじめ設定される。なお、治療用レーザ光LTの照射パターンは、照準光LAのそれと同じでもよいし、異なってもよい。後者の場合、治療用レーザ光LTの照射パターンは、たとえば、照準光LAのそれの一部である。また、OCT計測における測定光LMのスキャンパターンもあらかじめ設定される。
(ステップS5:照射条件を設定する処理を開始する)
ステップS4でOCT計測が開始されたことに対応し、照射条件設定部111は、このOCT計測により逐次に得られたデータに基づき照射条件を設定する処理を開始する。
(ステップS6:照射条件を設定する)
照射条件設定部111は、予備的照射と並行して行われたOCT計測により得られたデータに基づいて、治療用レーザ光LTの照射条件を設定する。設定された照射条件を示す情報は、照射光学系制御部101aに送られる。
(ステップS7:照射条件を変更する)
照射光学系制御部101aは、治療用レーザ光LTの照射条件を、ステップS6で設定された照射条件に変更する。
(ステップS8:所定パターンでのレーザ照射の完了)
照射光学系制御部101aは、あらかじめ設定された照射パターンと、ステップS7で変更された照射条件とに基づいて、治療用レーザ光LTを照射する。この段階における治療用レーザ光LTの照射は、たとえば、予備的照射に引き続く一連のレーザ治療として行われる。
この段階におけるレーザ照射は、あらかじめ設定された照射位置に対して実行される。たとえば、この段階におけるレーザ照射は、予備的照射が適用されなかった照射位置に対するパターン照射であってよい。つまり、この段階におけるレーザ照射は、照射パターンにおける全ての照射位置から予備的照射が適用された部分を除いた照射位置(残りの照射位置と呼ぶ)に対するレーザ照射であってよい。この場合、制御部101は、ステップS6で設定された照射条件の治療用レーザ光LTが、残りの照射位置に対して順次に照射されるように照射光学系の制御を行う。
或いは、この段階におけるレーザ照射の対象となる照射位置は、予備的照射が適用された照射位置の少なくとも一部を含んでいてよい。その場合、この段階のレーザ照射における全ての照射位置に対して同じ照射条件を適用することもできるし、予備的照射が適用された照射位置と残りの照射位置とに対して異なる照射条件を適用することもできる。
(ステップS9:レーザ治療をさらに行うか?)
ユーザは、レーザ治療をさらに行うか判断する。さらなるレーザ治療が行われる場合(ステップS9:Yes)、ステップS2に戻る。一方、さらなるレーザ治療が行われない場合(ステップS9:No)、レーザ治療は終了となる(エンド)。
[動作例2]
図10に示す動作例について説明する。この動作例では、照射位置選択部112が使用され、かつ照射順序設定部113は使用されない。
(ステップS1〜ステップS6)
ステップS1(眼底観察の開始)〜ステップS6(照射条件の設定)は、動作例1と同様であってよい。
(ステップS11:照射位置を選択する)
照射位置選択部112は、予備的照射と並行して行われたOCT計測により得られたデータに基づいて、照射パターンにおける全ての照射位置のうちの少なくとも一部を選択する。
(ステップS12:照射条件を変更する)
照射光学系制御部101aは、ステップS11で設定された照射位置に対する治療用レーザ光LTの照射条件を、ステップS6で設定された照射条件に変更する。
(ステップS13:所定パターンでのレーザ照射の完了)
照射光学系制御部101aは、ステップS12で変更された照射条件の治療用レーザ光LTを、ステップS11で設定された照射位置に対して照射する。
(ステップS9:レーザ治療をさらに行うか?)
動作例1と同様に、ユーザは、レーザ治療をさらに行うか判断する。さらなるレーザ治療が行われる場合(ステップS9:Yes)、ステップS2に戻る。一方、さらなるレーザ治療が行われない場合(ステップS9:No)、レーザ治療は終了となる(エンド)。
[動作例3]
図11に示す動作例について説明する。この動作例では、照射位置選択部112および照射順序設定部113が使用される。
(ステップS1〜ステップS6)
ステップS1(眼底観察の開始)〜ステップS6(照射条件の設定)は、動作例1と同様であってよい。
(ステップS11:照射位置を選択する)
動作例2と同様に、照射位置選択部112は、予備的照射と並行して行われたOCT計測により得られたデータに基づいて、照射パターンにおける全ての照射位置のうちの少なくとも一部を選択する。
(ステップS21:照射順序を設定する)
照射順序設定部113は、予備的照射と並行して行われたOCT計測により得られたデータに基づいて、ステップS11で選択された照射位置に対する治療用レーザ光の照射順序を設定する。
(ステップS12:照射条件を変更する)
動作例2と同様に、照射光学系制御部101aは、ステップS11で設定された照射位置に対する治療用レーザ光LTの照射条件を、ステップS6で設定された照射条件に変更する。
(ステップS22:所定パターンでのレーザ照射の完了)
照射光学系制御部101aは、ステップS12で変更された照射条件の治療用レーザ光LTを、ステップS11で設定された照射位置に対して照射する。これら照射位置に対する治療用レーザ光LTの照射は、ステップS21で設定された照射順序にしたがって実行される。
(ステップS9:レーザ治療をさらに行うか?)
動作例1と同様に、ユーザは、レーザ治療をさらに行うか判断する。さらなるレーザ治療が行われる場合(ステップS9:Yes)、ステップS2に戻る。一方、さらなるレーザ治療が行われない場合(ステップS9:No)、レーザ治療は終了となる(エンド)。
[動作例4]
この動作例に係るレーザ治療システムは、照射条件を設定するための予備的照射において2以上の異なる照射条件を適用し、この予備的照射と並行して行われたOCT計測により得られたデータに基づいて照射条件の制御を行うように構成される。
ここで適用される照射条件は、たとえば、眼底Efの組織の焼灼状態に影響を与え得る照射条件を含む。このような照射条件の例として、単一のスポットに対する焼灼状態に影響を与え得る照射条件(スポットサイズ条件、照射光種別条件、照射強度条件(出力強度条件、減光条件)、照射時間条件など)や、近傍のスポットにおける焼灼状態に影響を与え得る照射条件(スポット間隔条件など)がある。
このように2以上の異なる照射条件を用いて予備的照射を行うことにより、単一の照射条件で予備的照射を行う場合よりもバラエティに富んだデータを収集することができ、その結果、照射条件の制御の確度や精度の向上を図ることが可能となる。
なお、動作例4において、照射位置選択部112および照射順序設定部113の使用は任意である。つまり、動作例4は、これらを使用しなくてもよいし、これらのうち一方のみを使用してもよいし、これら双方を使用してもよい。たとえば、動作例4に係る予備的照射の動作および照射条件の制御を、動作例1、動作例2および動作例3のいずれかに適用することが可能である。以下、動作例4における特徴的な動作を動作例1に適用した場合について、図12を参照しつつ説明する。
(ステップS1〜ステップS3)
ステップS1(眼底観察の開始)〜ステップS3(照準合わせ)は、動作例1と同様にして実行される。
(ステップS31:異なる照射条件の治療用レーザ光の照射とOCT計測を開始する)
ステップS3の照準合わせが完了し、ユーザがトリガ操作を行うと、制御部101は、治療用レーザ光LTの照射とOCT計測を開始させる。
治療用レーザ光LTの照射は予備的照射から始まる。この予備的照射では、2以上のスポットに対して治療用レーザ光LTが照射される。さらに、この予備的照射では、2以上の異なる照射条件が適用される。たとえば2つのスポットに対して予備的照射が行われる場合、第1のスポットに適用される治療用レーザ光LTの照射条件と、第2のスポットに適用される治療用レーザ光LTの照射条件とが異なるように、照射光学系制御部101aは動作する。
ここで、動作例1と同様に、治療用レーザ光LTの照射パターンと、予備的照射に適用されるサブパターン(2以上のスポットを含む)は、あらかじめ設定される。
(ステップS32:照射条件を設定する処理を開始する)
ステップS31でOCT計測が開始されたことに対応し、照射条件設定部111は、このOCT計測により逐次に得られたデータに基づき照射条件を設定する処理を開始する。
この動作例の予備的照射では2以上の異なる照射条件が適用される。制御部101は、予備的照射が実行される各スポットについて、そのスポットに適用された照射条件と、そのスポットに対するOCT計測で得られたデータとを関連付けて、照射条件設定部111に送る。照射条件設定部111は、この照射条件とOCTデータとに基づいて、照射条件を設定する処理を実行する。
(ステップS33:照射条件を設定する)
照射条件設定部111は、予備的照射と並行して行われたOCT計測により得られたデータに基づいて、治療用レーザ光LTの照射条件を設定する。設定された照射条件を示す情報は、照射光学系制御部101aに送られる。
この動作例における照射条件設定処理の例を説明する。2以上の異なるスポットサイズ条件が適用される場合、少なくともサイズが異なる焼灼領域が得られる。照射条件設定部111は、これら焼灼領域に関するOCTデータに基づいて、新たな照射条件(たとえばスポットサイズ条件を含む)を設定する。この処理は、たとえば、十分な領域(1次元領域(Aスキャン方向の深さ)、2次元領域(Bスキャン方向の広がり)、3次元領域)が焼灼されているか判定する処理、隣接する焼灼領域が干渉しているか判定する処理を含む。
2以上の異なる照射強度条件が適用される場合、少なくとも焼灼の程度が異なる焼灼領域が得られる。照射条件設定部111は、これら焼灼領域に関するOCTデータに基づいて、新たな照射条件(たとえば照射強度条件を含む)を設定する。この処理は、たとえば、焼灼の程度が十分であるか判定する処理を含む。
2以上の異なる照射光種別条件が適用される場合、少なくとも焼灼の程度および/または特に焼灼されている組織の種別が異なる焼灼領域が得られる。照射条件設定部111は、これら焼灼領域に関するOCTデータに基づいて、新たな照射条件(たとえば照射光種別条件を含む)を設定する。この処理は、たとえば、焼灼の程度が十分であるか判定する処理、特に焼灼されている組織が適当であるか判定する処理を含む。
2以上の異なる照射時間条件が適用される場合、少なくとも焼灼の程度および/または焼灼範囲が異なる焼灼領域が得られる。照射条件設定部111は、これら焼灼領域に関するOCTデータに基づいて、新たな照射条件(たとえば照射時間条件を含む)を設定する。この処理は、たとえば、焼灼の程度が十分であるか判定する処理、焼灼範囲が適当であるか判定する処理を含む。
2以上の異なるスポット間隔条件が適用される場合、少なくとも間隔が異なる2以上の焼灼領域が得られる。照射条件設定部111は、これら焼灼領域に関するOCTデータに基づいて、新たな照射条件(たとえばスポット間隔条件を含む)を設定する。この処理は、たとえば、隣接する焼灼領域が干渉しているか判定する処理を含む。
予備的照射において変更される照射条件の個数は1つには限定されない。たとえば上記した例示のうち2以上の照射条件をそれぞれ変更しつつ予備的照射を行うことが可能である。その場合、照射条件設定部111は、2以上の照射条件の組み合わせに基づいて、新たな照射条件を設定することができる。
(ステップS34:照射条件を変更する)
照射光学系制御部101aは、治療用レーザ光LTの照射条件を、ステップS33で設定された照射条件に変更する。
(ステップS35:所定パターンでのレーザ照射の完了)
照射光学系制御部101aは、ステップS34で変更された照射条件の治療用レーザ光LTを用いてレーザ治療を実行する。
(ステップS9:レーザ治療をさらに行うか?)
動作例1と同様に、ユーザは、レーザ治療をさらに行うか判断する。さらなるレーザ治療が行われる場合(ステップS9:Yes)、ステップS2に戻る。一方、さらなるレーザ治療が行われない場合(ステップS9:No)、レーザ治療は終了となる(エンド)。
[動作例5]
広範囲のレーザ治療が行われる場合などにおいて、一連のパターン照射を繰り返し行うことがある。このような場合、パターン照射ごとに予備的照射を行うこともできるが(たとえば動作例1のステップS9において「Yes」の場合)、1のパターン照射における予備的照射に基づき設定された照射条件を、その後に行われるパターン照射において適用することも可能である。動作例5は後者の場合に相当する。
なお、動作例5において照射位置選択部112および照射順序設定部113の使用は任意である。たとえば、動作例1(図9のフローチャート)のステップS9において「Yes」の場合、ステップS6で設定された照射条件が、引き続き実施されるパターン照射において適用される。この動作は、たとえば、照射光学系制御部101aが、ステップS7で変更された照射条件を維持しつつパターン照射を引き続き実行することによって実現される。
なお、このような反復的なパターン照射における任意の段階において、予備的照射およびOCT計測を再度実行し、照射条件の設定および変更を再度行うように構成することも可能である。このような再制御を実行するためのトリガとしては、パターン照射が所定回数繰り返されたこと、ユーザがそれの実行を指示したこと、パターン照射の対象部位が変わったこと(たとえば眼底周縁部から黄斑近傍に対象部位が移動したこと)などがある。
[動作例6]
予備的照射における治療用レーザ光LTの1のスポットに対してOCT計測を複数回行い、それにより得られた複数のOCTデータに基づいて照射条件を設定することが可能である。この処理には、次の2つの態様が含まれる。
第1の態様として、測定光LMのビーム断面のサイズが、治療用レーザ光LMのビーム断面のサイズよりも十分に小さい場合に、治療用レーザ光LMのスポット内の複数の位置に対してそれぞれOCT計測を実行することができる。この態様によれば、治療用レーザ光LTの照射領域内を細かくOCT計測することにより、照射条件の制御における確度や精度の向上を図ることができる。
また、第2の態様として、治療用レーザ光LMのスポットにおける実質的に同じ位置について、OCT計測を複数回実行することができる。この態様によれば、複数回のOCT計測で得られた複数のOCTデータを統計的に処理することにより、照射条件の制御における確度や精度の向上を図ることができる。
[効果]
この実施形態に係るレーザ治療システムの効果について説明する。
実施形態に係るレーザ治療システムは、照射光学系と、干渉光学系と、光学系制御手段と、照射条件制御手段とを有する。
照射光学系は、患者眼のレーザ治療を行うための構成を有する。照射光学系は、治療用レーザ光(LT)を第1の光走査手段を介して患者眼(E)に照射する。図1A等に示す例において、照射光学系は、照射光学系1300と、光走査ユニット1600(第1の光走査手段)とを含む。また、図2等に示す具体例において、照射光学系は、レーザ光源ユニット2と、ガルバノスキャナ52(第1の光走査手段)とを含む。
干渉光学系は、OCT計測を行うための構成を有する。干渉光学系は、光源からの光(L0)を測定光(LM)と参照光(LR)とに分割し、第2の光走査手段を介して測定光を患者眼に照射し、患者眼からの測定光の戻り光と参照光とを重ね合わせて得られる干渉光(LC)を検出手段に導く。図1A等に示す例において、干渉光学系は、干渉光学系1400と、光走査ユニット1600(第2の光走査手段)とを含む。また、図2等に示す具体例において、干渉光学系は、OCTユニット8と、ガルバノスキャナ52(第2の光走査手段)とを含む。図2等に示す具体例において、検出ユニット89は検出手段の例である。
光学系制御手段は、照射光学系の制御と、干渉光学系の制御とを行う。照射光学系の制御は、あらかじめ設定されたパターンの複数の位置に対して治療用レーザ光(LT)が照射されるように照射光学系を制御することを含む。干渉光学系の制御は、次の制御の一方または双方を含む:治療用レーザ光が現に照射されている位置に測定光が照射されるように干渉光学系を制御すること;治療用レーザ光が既に照射された位置に測定光が照射されるように干渉光学系を制御すること。図1A等に示す例において、光学系制御手段は、制御ユニット1800を含む。また、図2等に示す具体例において、光学系制御手段は、制御部101(照射光学系制御部101a、OCT光学系制御部101b)を含む。
照射条件制御手段は、治療用レーザ光の照射条件をリアルタイムで制御する。照射条件制御手段は、光学系制御手段による制御により得られた干渉光を検出した検出手段からの出力に基づいて、治療用レーザ光の照射条件をリアルタイムで制御する。図1A等に示す例において、光学系制御手段は、制御ユニット1800を含む。また、図2等に示す具体例において、光学系制御手段は、制御部101(照射光学系制御部101a)およびデータ処理部110を含む。
このような実施形態によれば、治療用レーザ光の照射とともに実行されるOCT計測により得られたデータに基づいて、治療用レーザ光の照射条件を制御することができる。したがって、患者眼の対象部位にレーザ光を適度に照射することが可能である。
以下、この実施形態に係るレーザ治療システムにおいて適用可能な構成の例を示す。
あらかじめ設定されたパターンにおける複数の位置のうちの第1の部分に治療用レーザ光が照射されている間に、光学系制御手段は、干渉光学系に対する上記制御(OCT計測)を行うことができる。この処理は、予備的照射とOCT計測との並行的な実施に相当する。この場合、次の処理をさらに実行することが可能である:照射条件制御手段が、このOCT計測における検出手段からの出力に基づいて、照射条件の制御を行う;光学系制御手段が、この制御による照射条件の治療用レーザ光が上記複数の位置の少なくとも一部に対して照射されるように、照射光学系の制御を行う。
この構成によれば、一連のパターン照射のサブプロセス(予備的照射)を利用して照射条件の制御を行うことができ、レーザ治療の円滑化を図ることが可能である。
予備的照射を実施する場合において、光学系制御手段は、照射条件制御手段により制御された照射条件の治療用レーザ光が、あらかじめ設定されたパターンにおける複数の位置から上記第1の部分を除外した第2の部分に対して照射されるように、照射光学系の制御を行ってよい。ここで、第1の部分は予備的照射が適用される位置の集合に相当し、第2の部分はパターン全体から第1の部分を除いた補集合に相当する。また、上記具体例で説明した「残りの照射位置」は第2の部分に相当する。
予備的照射を実施する場合において、光学系制御手段は、以下に示す第1および第2の制御を行ってよい。
第1の制御:照射条件制御手段により制御された第1の照射条件の治療用レーザ光が、第1の部分の少なくとも一部に対して照射されるように、照射光学系を制御すること。
第2の制御:照射条件制御手段により制御された第2の照射条件の治療用レーザ光が、パターン全体からから第1の部分を除外した第2の部分に対して照射されるように、照射光学系を制御すること。
ここで、第1の照射条件と第2の照射条件とは異なっていてよい。それにより、予備的照射が適用された第1の部分の一部または全部に対して再度照射される治療用レーザ光の照射条件(第1の照射条件)と、残りの照射位置(第2の部分)に対して照射される治療用レーザ光の照射条件とを違えることができる。具体例として、照射強度条件が適用される場合、第1の照射条件における照射強度は、第2の照射条件における照射強度よりも低く設定される。これは、第1の照射条件によるレーザ照射は2度目のレーザ照射であり、第2の照射条件によるレーザ照射は1度目のレーザ照射であることによる。
予備的照射を実施する場合において、照射条件制御手段は、検出手段からの出力に基づいて、パターン全体(上記複数の位置)の少なくとも一部を選択する照射位置選択手段を含んでいてよい。この場合、光学系制御手段は、照射条件制御手段により制御された照射条件の治療用レーザ光が、照射位置選択手段により選択された位置に対して照射されるように、照射光学系の制御を行う。なお、図1A等に示す例において、照射位置選択手段は制御ユニット1800を含む。また、第3等に示す例において、照射位置選択手段は照射位置選択部112を含む。
この構成によれば、予備的照射とともに取得されたOCTデータにより認識可能な焼灼状態を参照することにより、治療用レーザ光の照射対象となる位置を好適に選択することが可能である。
予備的照射を実施する場合において、照射条件制御手段は、検出手段からの出力に基づいて、照射位置選択手段により選択された位置に対する治療用レーザ光の照射順序を設定する照射順序設定手段を含んでいてよい。この場合、光学系制御手段は、照射順序設定手段により設定された照射順序に応じて治療用レーザ光が、照射位置選択手段により選択された位置に対して照射されるように、照射光学系の制御を行うことができる。なお、図1A等に示す例において、照射順序設定手段は制御ユニット1800を含む。また、第3等に示す例において、照射順序設定手段は照射順序設定部113を含む。
この構成によれば、予備的照射とともに取得されたOCTデータにより認識可能な焼灼状態を参照することにより、治療用レーザ光の照射対象である複数の位置に対する照射順序を好適に設定することが可能である。
予備的照射を実施する場合において、第1の部分は2以上の位置を含んでいてよい。その場合、光学系制御手段が、異なる照射条件の治療用レーザ光を2以上の位置に対して照射し、さらに、照射条件制御手段が、2以上の位置に対応する検出手段からの出力に基づいて照射条件の制御を行うように構成することが可能である。
この構成によれば、予備的照射において2以上のスポットに異なる照射条件を適用することができるので、照射条件制御手段により得られる照射条件の確度や精度の向上を図ることが可能である。
予備的照射を実施し、かつ、パターン照射を複数回実施する場合、次の第1〜第3の制御を実行することが可能である。なお、第1のパターンの複数の位置に対して治療用レーザ光を照射するための第1の照射制御を行った後に、第2のパターンの複数の位置に対して治療用レーザ光を照射するための第2の照射制御を行うとする。
第1の制御:光学系制御手段が、第1の照射制御(予備的照射)と並行して、干渉光学系に対する制御(OCT計測)を行う。
第2の制御:照射条件制御手段が、このOCT計測における検出手段からの出力に基づいて照射条件の制御を行う。
第3の制御:光学系制御手段が、第2の制御による照射条件の治療用レーザ光によって第2の照射制御を行う。
この構成によれば、既に実施されたパターン照射で得られた照射条件を準用してさらなるパターン照射を実行することができる。それにより、レーザ治療の円滑化を図ることが可能である。
予備的照射の実施の有無に関わらず、次の第1および第2の制御を実行することが可能である。
第1の制御:光学系制御手段が、治療用レーザ光の1の照射位置に対して測定光が複数回照射されるように干渉光学系の制御を行う。つまり、治療用レーザ光の1つのスポットについて複数回のOCT計測が実行される。
第2の制御:照射条件制御手段が、このOCT計測における検出手段からの出力に基づいて照射条件の制御を行う。
この構成によれば、治療用レーザ光のスポット内の異なる複数の位置をOCT計測することや、同じ位置を繰り返しOCT計測することができるので、照射条件の制御における確度や精度の向上を図ることが可能である。
実施形態に係るレーザ治療システムは、検出手段からの出力に基づいて画像データを形成する画像データ形成手段を有していてよい。この場合、照射条件制御手段は、画像データ形成手段により形成された画像データに基づいて照射条件の制御を行うことができる。なお、図1A等に示す例において、画像データ形成手段は画像形成ユニット1700を含む。また、図2等に示す例において、画像データ形成手段は、画像形成部103(およびデータ処理部110)を含む。
この構成は、OCTによって得られた画像データに基づいて照射条件を制御する実施形態に相当する。これに対し、画像データ以外のデータ、たとえば、検出手段から出力されたデータ(信号)に基づいて照射条件の制御を行うように構成することも可能である。
画像データに基づいて照射条件の制御を行う場合において、当該制御に供される画像データは、1次元画像データでも、2次元画像データでも、3次元画像データでもよい。1次元画像データは、測定光の進行方向に沿う1次元領域を表す画像データである。2次元画像データは、1次元的に配列された複数の位置に対して測定光が照射されるように干渉光学系を制御することにより得られる画像データであり(つまりBスキャンを行うことにより得られる画像データであり)、当該複数の位置が配列されたラインと測定光の進行方向とにより張られる2次元領域を表す。3次元画像データは、2次元的に配列された複数の位置に対して測定光が照射されるように干渉光学系を制御することにより得られる画像データであり(つまり3次元スキャンを行うことにより得られる画像データであり)、当該複数の位置が配列された面と測定光の進行方向とにより張られる3次元領域を表す。照射条件制御手段は、このような画像データに基づいて照射条件の制御を行う。なお、3次元画像データが取得された場合、MPRによって得られる任意の断面の2次元画像データに基づいて照射条件の制御を実行することも可能である。
実施形態に係るレーザ治療システムは、治療用レーザ光の光路と測定光の光路とを合成する光路合成手段を有していてよい。この場合、光路合成手段による光路の合成位置よりも患者眼側の位置に、レーザ治療用の第1の光走査手段と、OCT計測用の第2の光走査手段とを兼ねる光走査手段を設けることが可能である。なお、図1A等に示す例においては、第1の合成部材1510が光路合成手段に相当し、光走査ユニット1600が光走査手段に相当する。また、また、第3等に示す例においては、ダイクロイックミラー91が光路合成手段に相当し、ガルバノスキャナ52が光走査手段に相当する。
この構成によれば、治療用レーザ光の照射位置に対して測定光を確実に照射することができるので、治療用レーザ光による焼灼状態を把握するためのOCTデータを確実に取得することが可能である。
なお、治療用レーザ光の光路と測定光の光路とが実質的に同軸になるように光路合成手段を構成することにより、当該効果の向上を図ることができる。ここで、「実質的に同軸」には、完全に同軸な場合だけでなく、所定の誤差を有する場合も含まれる。この誤差は、上記効果が確保される範囲に含まれていればよい。当該範囲は、たとえば、治療用レーザ光のビーム径(スポットサイズ)、測定光のビーム系(スポットサイズ)などに基づいて、あらかじめ決定される。
実施形態において適用されるOCTは、スペクトラルドメインタイプであってよい。その場合、OCT用の光源(光源ユニット81)は、低コヒーレンス光を発する低コヒーレンス光源を含む。検出手段(検出ユニット89)は、低コヒーレンス光に基づき干渉光学系により生成される干渉光のスペクトル情報を取得する分光器を含む。
また、実施形態において適用されるOCTは、スウェプトソースタイプであってよい。その場合、OCT用の光源(光源ユニット81)は、出力波長の掃引が可能な波長掃引光源を含む。検出手段(検出ユニット89)は、波長掃引光源から出力された光に基づき干渉光学系により生成される干渉光を検出する光検出器を含む。
実施形態に係るレーザ治療システムは、照明光学系と、観察光学系を有していてよい。照明光学系は、患者眼を照明する。観察光学系は、照明光学系により照明されている患者眼を観察するために用いられる。この構成が適用される場合、照射光学系は、治療用レーザ光の照準を合わせるための照準光(LA)を第1の光走査手段を介して患者眼に照射する。
さらに、観察光学系は、照明光学系により照明されている患者眼からの戻り光と、照射光学系により照射された照準光の患者眼からの戻り光とを接眼レンズ(38)に導くように構成されていてよい。
また、観察光学系は、照明光学系により照明されている患者眼からの戻り光と、照射光学系により照射された照準光の患者眼からの戻り光とを撮像装置(42)に導くように構成されていてよい。この場合、レーザ治療システムは、撮像装置により取得された画像を表示手段に表示させる表示制御手段を有する。図1等に示す例においては、制御ユニット1800が表示制御手段として機能する。また、図2等に示す例においては、制御部101が表示制御手段として機能する。なお、表示手段は、レーザ治療システムに含まれていてもよいし、外部に設けられていてもよい。
このような構成によれば、患者眼に対する照準光の照射位置(つまり治療用レーザ光の照射ターゲット)を肉眼で観察したり、画像で観察したりすることができる。
以上に示した実施形態は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。