JP2017538451A - 補綴用ベース、補綴用ベースに少なくとも1つの人工歯を物質対物質結合させるための方法、補綴物、補綴物の製造方法及びワックスモデル - Google Patents

補綴用ベース、補綴用ベースに少なくとも1つの人工歯を物質対物質結合させるための方法、補綴物、補綴物の製造方法及びワックスモデル Download PDF

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Abstract

本発明は、全体又は一部が補綴材料及び/又はワックスで製造されており、人工歯(1)を領域で受容するための実質的にカスタムフィットしたリセス(3)をその上面に少なくとも1つ有する補綴用ベースに関する。本発明によれば、補綴用ベース(2)中に、リセス(3)内へと開口しているチャネル(5)が少なくとも1つ形成されている。更に、本発明は、補綴用ベース(2)に人工歯(1)を物質対物質結合させる方法に関する。補綴用ベース(2)は、補綴材料及び/又はワックスで全体又は一部が製造されており、人工歯(1)を領域で受容するための実質的にカスタムフィットしたリセス(3)を、その上面に少なくとも1つ有する。【選択図】図1

Description

本発明は、全体又は一部が補綴材料及び/又はワックスで製造されており、人工歯を領域で(zonally)受容するための実質的にカスタムフィットしたリセスを、その上面に少なくとも1つ有する補綴用ベース(prosthesis base)に関する。更に、本発明は、このような補綴用ベースに人工歯を物質対物質結合させる方法に関する。
本明細書で提案される補綴用ベースは、本明細書で提案される方法を行うのに特に適している。
本明細書で提案される方法は、好ましくは、部分補綴物又は全体補綴物(partial or total prosthesis)を製造する方法に使用される。本方法は、少なくとも1つの人工歯を、補綴材料で製造された補綴用ベースへ最終結合するため、又は少なくとも1つの人工歯を、ワックス製ベースへ一時的に結合(例えば、後に行われる補綴用のワックス製モデルを作製するため、又は、ワックス中に歯セットアップ(tooth set−up)を形成するため)するために使用され得る。
ワックス中に歯配列を製造することは、部分補綴物又は全体補綴物を製造する方法における中間工程を表わす。これは、臨床的に必要とされるその後の咀嚼機能を得るために、歯の正確な位置決めに使用される。その後、ワックスを補綴材料により置換することにより、補綴物が完成する。これは以下の方法で行うことができる:ワックス中のセットアップを硬化性鋳造材料(例えば石膏)に包埋し、鋳造材料が硬化した後に、(補綴材料で製造された補綴用ベースの形態にある)ワックス製モデルとしてのワックス製補綴用ベースを熱水による抽出により除去する。その後、残った空洞に、補綴用ベースを製造するための実際の補綴材料を充填する。補綴材料が硬化した後に、補綴材料への人工歯の必要とされる結合が確立される。ワックス中の歯セットアップは、補綴物の伝統的な製造に特に使用される。ワックス製ベースは、次いで患者の口腔内歯型の状況に基づいて加工される。
更に、歯のセットアップが仮想的にのみ行われる、補綴物を製造する方法が知られている。このような方法は、例として、特許文献1及び特許文献2に記載されている。まず、患者の口腔内状況がスキャンされ、仮想モデルが作製される。このモデルにおいて、先にスキャンされたか、又はデータセットとして既に利用可能な人工歯が、「仮想的に」当て嵌められる。この仮想歯セットアップのデジタルデータに基づいて、ラピッドマニュファクチャリング又はラピッドプロトタイピングにより、補綴用ベースの機能的モデルを製造することができ、これにより、機能的モデルは、人工歯を受容するためのカスタムフィットしたリセスを既に有している。この機能的モデルは、最終的な補綴用ベースを製造するために補綴材料が充填されるネガ型を製造するために利用される。機能的モデルに従って、補綴用ベースは、人工歯を受容するためにカスタムフィットしたリセスも有し、それにより、人工歯が補綴用ベース内に差し込まれて、当該補綴用ベースに連結するだけでよいようになる。
独国特許発明第10304757号 独国特許出願公開第102009037916号
人工歯の補綴用ベースへの結合は、一般的には、接着剤を使用して確立される。しかし、これには、補綴用ベースのリセス中に接着剤を収容するために十分な空間が存在する必要がある。そうでない場合には、人工歯を短くしなければならないか、又は、下側(すなわち、底部)が尖らせなければならない。このような場合、歯が補綴用ベースの各リセス内にもはやフィットしなくなるおそれがあり、人工歯及び/又は補綴用ベースを更に再加工しなければならなくなる。
これを避けるために、最初に、ワックス製補綴用ベースを仮想歯セットアップのデジタルデータに基づいて製造し、次いで、予め作製された人工歯をワックス製ベース内にはめ込むことができる。このようにして、仮想の歯セットアップが、実際の歯セットアップに置き換えられる。補綴物を完成させるためには、次いで、ワックスのみを、実際の補綴材料で置き換えなければならない。この場合の手順は、伝統的なプロセスに関して先に記載されたものと同じである。
最初に実際の補綴用ベースのワックス製モデルが作製される場合、同様に人工歯も、ワックス製ベースに結合されなければならない。理想的には、これは、ワックスを部分的に溶融させ、部分的に溶融したワックス内に歯を挿入することにより行われる。ワックスが再凝固した後に、固着した結合が形成される。しかし、市販のセットアップ又はベースプレート用ワックスは、部分的な溶融に際し、すぐに液体状態に変化してしまうという欠点を有する。ワックスが部分的に溶融するだけでなく、完全に溶融(すなわち、液化)してしまった場合、形状変化が起こり、現実モデルが仮想モデルから逸脱してしまうおそれがある。次いで、人工歯を受容するために設けられたリセスの嵌合における正確さは、もはや保証されなくなる。
部分補綴物又は全体補綴物を製造する方法における人工歯の補綴用ベースへの結合は、歯が完成補綴物を製造するための補綴材料で製造された補綴用ベースに結合されるか、又は予備的なワックス製モデルを製造するためのワックス製ベースに結合されるかにかかわらず、実施するのが難しい工程である。
従って、本発明は、人工歯の補綴用ベースへの結合を容易にするという目的に基づくものである。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の特徴を有する補綴用ベース及び請求項8に記載の特徴を有する方法が提案される。本発明の有益な実施形態は、各従属請求項に開示される。
図1は、本発明に係る補綴用ベースの模式断面を示す。 図2は、図1の補綴用ベースの模式平面図を示す。 図3は、注入装置による物質対物質結合中に補綴用ベース内にはめ込まれた人工歯を伴う、図1の断面を示す。 図4は、材料ベッドへの圧入による物質対物質結合中に補綴用ベース内にはめ込まれた人工歯を伴う、図1の断面を示す。 図5は、好ましくはリセス3と本発明に係るチャネルとを備え得る従来技術に基づく補綴用ベースを示す。 図6は、補綴用ベースの頬側(vestibular side)に通じる2つの例示チャネル5を有する補綴用ベースを示し、ここで、各チャネル5は、チャネル開口を有する。
本明細書で提案される補綴用ベースは、特に全体又は一部が補綴材料及び/又はワックスで製造されており、人工歯を領域で(zonally)受容するための実質的にカスタムフィットしたリセスを、その上面に少なくとも1つ有する。本発明によれば、補綴用ベース中に、リセス内に回想しているチャネルが少なくとも1つ形成されている。チャネルは、人工歯を補綴用ベースに結合させるための溶解性の硬化性材料(dissolving, curing or hardening material)を受容するために使用される。
本発明によれば、補綴用ベースは、補綴材料製の補綴用ベース、補綴材料製の実際の補綴用ベースワックスモデル、又は異なる材料で製造された機能的モデルであることを意味する。補綴用ベースは、着脱可能な補綴物の底面を形成している。また、補綴用ベースは、部分補綴物の一部、全体的補綴物若しくは完全補綴物、固定補綴物、又は部分補綴物における少なくとも1つの補綴用サドル(prosthetic saddle)となり得る。
通常、部分補綴物又は全体補綴物の製造では2本以上の人工歯を補綴用ベースに結合させる必要があるため、当該補綴物は、複数のリセスを有することが好ましい。ここで、リセスの数は、歯の数に対応することが更に好ましい。硬化性材料(curing or hardening material)をチャネル内に導入することによりリセス内にはめ込まれた人工歯を補綴用ベースに物質対物質結合させるために、チャネルは、各リセス内へと開口していることが有利である。従って、補綴用ベースは、歯列弓に沿って伸びる複数のこのようなチャネルを有することが好ましい。チャネル間の距離は、特に、歯間の各距離により決定される。
リセス内へと開口しているチャネルは、リセスから補綴用ベースの底面に向かって通じていることが好ましい。従って、リセス内に歯がはめ込まれた場合であっても、チャネルは、依然として硬化性材料が導入し易い状態に維持される。硬化性材料の導入を更に容易にするために、チャネルは真っ直ぐであることが更に好ましい。加えて、チャネルを硬化性材料で完全に充填する際に消費される材料が可能な限り少なくなるように、真っ直ぐなチャネルは、短く維持されてもよい。同時に、チャネルが短いと、上記材料の素早く、均一な硬化(curing or hardening)が促進される。更に、チャネルはいかなる形状でもよく、チャネルは好ましくは垂直でもあり得るが、所望により、少なくとも1つのチャネルは、傾斜して、角度を有して(斜めに)、又は湾曲して形成されてもよい。チャネルは、円筒形又は多角形及びいかなる不規則な形状を有してもよい。
本発明に係る補綴用ベースは、人工歯を領域で(zonally)受容するための実質的にカスタムフィットしたリセスを、その上面に少なくとも1つ有し、補綴用ベースは、最大で16個のリセスを有することが好ましい。ここで、各リセス内へと開口するチャネルが各リセス毎に少なくとも1つ、補綴用ベースに形成され、(a)チャネルは、上記リセスから補綴用ベースの底面(基部)に向かって(好ましくは真っ直ぐに、角度を有して(斜めに)、若しくは湾曲して)通じているか、(b)チャネルは、上記リセスから補綴用ベースの頬側に向かって(好ましくは真っ直ぐに、角度を有して(斜めに)、若しくは湾曲して)通じているか、又は、(c)チャネルは、リセスから補綴用ベースの舌側に向かって(好ましくは真っ直ぐに、角度を有して(斜めに)、若しくは湾曲して)通じている。このため、本発明に係るチャネルは、補綴用ベースの底面、頬側、又は舌側にチャネルの開口を有し得る。本発明によれば、上記の側(a)、(b)、又は(c)において各チャネル開口を有する連続的なチャネルはそれぞれ、各リセスに独立して割り当てられてもよい。或いは、上記リセスの少なくとも2つのチャネルを束ねて、上記の側(a)、(b)、又は(c)に、共通する開口を有することも好ましい。これにより、2つの隣接する人工歯が適切なリセス内にはめ込まれ、物質対物質結合を、共通する(好ましくは頬側に配置された)開口内に導入された硬化性材料により確立することが可能である。粘膜が炎症するおそれを避けるため、並びに、完全な嵌合及びこれによる補綴用ベースの良好な接着を確保するために、補綴用ベースの表面は、元のチャネルの開口において、その後に、後処理(特に、研磨)することができる。よって、代替手段によれば、下顎の歯肉及び上顎の歯肉に隣接し、補綴用ベースの良好な接着を担う補綴用ベースの外側面は、本発明に係る方法により、チャネルを開口させることなく製造することが可能である。補綴用ベースの粘膜(歯肉)に面する側は、粘膜に適合させるのに必須の非常にカスタムフィットした形状のために、歯科技工士により開口が設けられていない領域である。補綴用ベースの粘膜への適合を最適に確保するために、硬化性材料で密閉された全ての開口は、後処理(特に、研磨)されることが好ましい。これにより、底面、頬側、又は舌側においても、ほとんど炎症を起こすことのない均一な補綴表面も確保される。
チャネルは、リセスの実質的に中心にリセス内へと開口させることが有利である。これにより、リセスの周辺領域までのチャネルの距離が十分確保され、リセスの周辺領域における硬化性材料のあふれ出しが防止される。液体ワックスを硬化性材料として使用する場合、リセスの嵌合の正確さを得るために、リセスの周辺領域が部分的に溶融されず、硬い状態のままであることも確保される。
代替的に又は付加的に、チャネルが、少なくともチャネルがリセス内へと開口する領域において、広がり部(widening)を有することが提案される。広がり部は、硬化性材料で充填することが可能な体積を更に生じさせて、材料と人工歯との接触面積を広くし、その結果として、接着が改善される。この場合、材料もリセスに入る必要はない。従って、この手段は、リセスの嵌合の正確さを得ることにも寄与する。
特に好ましくは、物質対物質結合に加えて、硬化性材料は、補綴用ベースと人工歯との間で形状がフィットした結合(form−fitting connection)を確立することができ、これにより、歯を、補綴用ベースに機械的にも固定することができる。これは、例えば、補綴用ベース、及び/又は硬化性材料が未硬化の状態で流動することができる刻み(undercut)を有する人工歯により可能である。従って、本発明は、補綴物、特に、その外輪郭に少なくとも1つのリセス及び/又は刻みを有する人工歯にも関する。人工歯の頂部から根尖部において外輪郭に少なくとも1つのリセス又は刻みを有する人工歯が、特に好ましい。従って、少なくとも1つのリセス及び/又は刻みは、外輪郭において、歯頸側、及び/又は歯根側、及び/又は根尖側に設けられていることが好ましい。刻みは、細長く、波形であり、プロファイル(profile)を有するか又は任意の形状を有することが好ましく、ここで少なくとも1つの刻みは、歯の中心線から、少なくとも1°(好ましくは5°)傾斜している。刻みは、補綴用ベースとの結合時のより良好な固定を目的としている。このため、少なくとも1つのリセスにおいて、補綴用ベースは、材料の硬化後に歯との更なる機械的な固定を可能にする少なくとも1つの刻みを有することができる。リセス又は刻みは、穴(lumen)として、又はランダム若しくは規則正しいリセス及び/又は刻みパターンとしてのプロファイルを有するように形成され得る。リセス及び/又は刻みは、補綴物の基部領域に位置し、補綴用ベース中に配置され、その後見えなくなるであろう。
義歯(dental prosthesis)の場合には、補綴用サドルは、顎骨に隣接する補綴物の一部である。補綴用ベースにおいて、本発明に係るチャネルは、所定の配置を有することが好ましい。同配置において、少なくとも1つのチャネルは、補綴用ベースの補綴サドルの領域に形成され、特に、歯列弓の少なくとも一部を模倣している。1、2、3、4、5、6、8、9、10、16、20、28、最大50個、特に、1〜10個、最大14又は16個のチャネルが、補綴物の補綴サドルに配置されることが好ましい。
リセスの嵌合における正確さは、リセスが人工歯の外輪郭に少なくとも領域で(zonally)適合する内輪郭を有するという事実において実現されることが好ましい。人工歯は、通常、その基部領域を介して、補綴用ベースに結合されるため、リセスの内輪郭は、人工歯の基部領域の外輪郭に対応することが好ましい。リセスは、補綴用ベースと人工歯との形状フィット、圧入、又は密着結合を容易にするよう、人工歯の外輪郭に適合することが特に好ましい。
補綴用ベースは、CAD/CAMプロセスにより製造されたものであることが特に好ましい。CAD/CAMプロセスによる作製により、後でその内に人工歯がはめ込まれるカスタムフィットしたリセスを補綴用ベース中に単純な方法で形成することが可能となる。CAD/CAMプロセスによる補綴用ベースの作製の前に、仮想の歯セットアップが行われることが更に好ましい。ここで、データセットとして存在する少なくとも1つの予め作製された人工歯が、仮想モデルにフィットさせられ、これにより、歯を受容するために補綴用ベースに設けられたリセスの嵌合において、特に高い正確さを達成することが可能となる。この場合の補綴用ベースのリセスにおける内輪郭が、各結合領域において、人工歯の外輪郭に正確に対応するためである。
また、仮想の歯セットアップは、チャネルを補綴用ベースと共に作製できるように、チャネルの位置及びサイズを特定する可能性も提案する。ただし、補綴用ベースの作製の前得に仮想の歯セットアップが行われるかどうかにかかわらず、チャネルをその後に導入することも可能である。この目的で、好ましくはCAD/CAMプロセスにより製造された補綴用ベースを、その後の工程において、チャネルで貫通することが可能である。
理想的には、補綴用ベースのカスタムフィットしたリセスは、鋳造モデル又は仮想モデルによる対応するリセスに対して、100μm(好ましくは50μm、より好ましくは30μm)の最大寸法許容誤差を有する。
本発明に係る補綴用ベースは、(好ましくは上顎補綴用の)口蓋プレートと共に形成され得、又は、下顎補綴の場合において好ましいように、舌下面積が広げられるように形成され得る。
適切な補綴材料は、特に、重合性歯科用プラスチック等のプラスチックである。従来の重合性補綴材料(例えば、欧州特許第1702633号明細書、独国特許第19617876号明細書、欧州特許第2529762号明細書に記載されるもの)が、補綴用ベースを製造するために使用されることが好ましい。よって、補綴用ベースは、補綴材料としての重合補綴用ベース材料に基づいている。使用可能な補綴用ベース材料は、(A)液状モノマー成分、(B)特にPMMAを含む粉末状成分、(C)少なくとも1つの重合用開始剤又は開始剤系、を含有する重合性(特に、自家重合性又は低温重合性又は高温重合性又は放射線硬化性)組成物を含む。更に、成分(A)及び/又は(B)は、脂肪族ウレタンアクリレート類及び/又は脂肪族ウレタンメタクリレート類の少なくとも1種を含んでもよい。
上記目的を達成するために更に提案される、人工歯を補綴用ベースに密着結合する方法において、特に全体又は一部が補綴材料及び/又はワックスで製造された補綴用ベースが使用される。更に、補綴用ベースは、人工歯を領域で(zonally)受容するための少なくとも実質的にカスタムフィットしたリセスを、その上面に有している。本発明によれば、補綴用ベース中に形成されリセス内へと開口するチャネル内に導入される硬化性材料により、物質対物質結合が確立され、これにより、上記材料は、リセス内にはめ込まれた又はまだはめ込まれていない状態にある人工歯と接触する。
従って、本発明の方法に基づいて得ることができる補綴物も、本発明の対象である。
チャネルは、完全に又は部分的にのみ、溶解性の硬化性材料で充填され得る。後者の場合には、少なくともチャネルの開口領域が材料で満たされて、歯への物質対物質結合に必要とされる接触が確立されるか、又は、確立され得ることが確保されなければならない。次いで、物質対物質結合は、材料の硬化(curing or hardening)により達成される。
溶解性の硬化性材料をチャネル内に導入する際、材料は、リセスに入らないか、又は、ほとんど入らないことにより、リセスの嵌合における正確さが保持され、歯及び/又は補綴用ベースの再加工がもはや必要なくなる。このようにして、人工歯の補綴用ベースへの結合を、素早く且つ容易に達成することが可能である。
チャネル内に導入される際に、硬化性材料がリセスに入るかどうかは、特に、材料の粘度により決まる。非常に低い粘度を有する硬化性材料を、物質対物質結合に使用することが好ましい。これは、材料は次に、予めはめ込まれた人工歯と補綴用ベースとの間の隙間に入ることができ、これにより、材料と歯との接触面積が広くなるためである。接触面積が広くなることにより、接着が改善され、人工歯の補綴用ベースへの固着が達成される。加えて、リセスの嵌合における正確さが保持される。
代替的に又は付加的に、接触面積の拡大は、チャネルがその開口領域において広がり部を有することで達成されてもよい。この場合には、リセスの嵌合における正確さが変わらないように、リセスは硬化性材料を完全に含まない状態のままでもよい。
好ましい代替手段によれば、補綴用ベースは、CAD/CAMプロセスで製造され、少なくとも1つのチャネルを伴って提供される。
硬化性材料は、人工歯が補綴用ベースのリセス内にはめ込まれた後に、チャネル内に導入されることが好ましい。歯が予めはめ込まれることにより、通過する硬化性材料が所望されるよりも多量にリセスに入ることが防止される。これは、歯で塞がれた空間にはそれ以上の材料は入ることができないためである。その結果、嵌合の正確さが保持される。人工歯と補綴用ベースとの間に残っているあらゆる隙間に入り、当該隙間を満たすことができる点から、非常に低い粘度を有する硬化性材料を使用することが有利である。従って、歯と補綴用ベースとの間には空洞が残存しないことが、補綴物をきれいに維持する観点から望ましい。同時に、歯と補綴用ベースとの間の隙間に入る硬化性材料は、表面接着面積を広げる。
或いは、硬化性材料は、歯を補綴用ベースのリセス内にはめ込む前に、チャネル内に導入することもできる。材料が所望されるよりも多量にチャネルを通ってリセスに入った場合、歯をリセス内にはめ込む際に、過剰の材料をチャネル内に押し戻すことが可能である。このアプローチにより、人工歯と硬化性材料との最適な濡れ性が確保され、これにより良好な接着が確保される。この場合にも、重合性モノマー、溶媒、又はこれらの混合物等の、非常に低い粘度を有する硬化性材料を使用することが好ましい。
硬化性材料は、常に、補綴用ベースの底面から導入されることが理想的である。ここで、底面とは、補綴用ベースのリセスを有する上面とは反対側である。このようにすると、人工歯がリセス内に予めはめ込まれている場合であっても、チャネルは利用しやすい状態に維持される。
本発明の好ましい実施形態によれば、硬化性材料は、注入装置によりチャネル内に導入される。このような注入装置により、材料の正確に計量された導入が可能になる。更に、材料は、注入装置により(例えば、注入装置の塗布針をチャネル内に挿入することにより)正確に配置され得る。このようにして、硬化性材料の導入を、チャネルの局所的な領域に限定することが可能となり、チャネル全体を材料で充填する必要がない。
或いは、硬化性材料を、チャネルに圧入することも可能である。この目的で、例えば、補綴用ベースを、硬化性材料を有するベッドに圧入して、チャネルを硬化性材料で完全に充填することも可能である。
硬化性材料は、接着剤であることが好ましい。これは、人工歯を補綴材料製の補綴用ベースに結合させる必要がある場合に、特に当てはまる。歯科分野において、本明細書において提案される方法に使用可能な、数多くの接着剤が既に知られている。重合性モノマー等の特定のモノマー系の接着剤、特に、硬化性材料(4)として使用されるアクリレート又は液化ワックス系の接着剤が特に適切である。
液化ワックスは、人工歯をワックス製ベースに結合させる場合に、硬化性材料として利用されることが好ましい。ワックスは、液化するために加熱され、ワックス製ベースのチャネル内に導入される。これにより、加熱されたワックスにより、チャネルの領域において(すなわち、チャネルの開口がリセス内に入る箇所においても)、ワックス製ベースのワックスが部分的に溶融される。このことは、表面接着面積を広げ、その結果としての接着性の向上に寄与する。ただし、液化するために加熱されたワックスにより部分的に溶融される領域は、リセスの嵌合における正確さを確保するために、リセスの中心付近の領域に限定されるべきである。このことは、好ましくは、人工歯のソケットとして機能するリセスの周辺領域が、そのカスタムフィットした形状を保持するために、部分的に溶融、又は、軟化されないことを意味する。これを達成するために、少なくともチャネルの開口領域は、リセスに対して、実質的に中心に配置される。
また、中心に配置することは、人工歯を補綴用ベースへ物質対物質結合のために接着剤を使用する場合にも有益である。(好ましくはリセスの基部において)中心に配置することにより、過剰な接着剤がリセスの周辺領域を超えることが防がれる。これは、まず接着剤が導入され、次いで、歯がリセス内にはめ込まれる場合に、特に当てはまる。
本発明に係る補綴用ベースの好ましい実施形態を、添付の図面を参照して、以下に記載する。更に、本発明に係る方法は、図面を参照し、本発明に係る補綴用ベースを使用して説明される。
図面の詳細な説明
プラスチック製であり、図1において断面で模式的に例示される補綴用ベース2を、CAD/CAMプロセスによる仮想歯セットアップに基づいて作製した。補綴用ベース2は、湾曲した底面6を有する。底面6は、患者の上顎の実際の状況に適合している。上面は、リセス3を複数有しており、各リセス3は、人工歯1を受容するように機能する(図3及び図4を参照)。リセス3の内輪郭は、受容されるべき各人工歯1の外輪郭に適合している。従って、リセス3は、はめ込まれる人工歯1にカスタムフィットした座部(seat)を有する。人工歯1を補綴用ベース2へ物質対物質結合するための硬化性材料4を受容する機能を有するチャネル5が、各場合において、リセス3内の実質的に中心に開口している。材料4は、特に、接着剤でもよい。各チャネル5は、各リセス3の基部から補綴用ベース2の底面6に向かって、真っ直ぐに(例えば、垂直に、傾斜して、角度を有して(斜めに))又は湾曲して(好ましくは、真っ直ぐに)伸びている。これにより、硬化性材料4を、底面から各チャネル5内に導入可能である。同様に、図6に、補綴用ベースの頬側に向かうチャネル5を示す。特に好ましい代替手段によれば、図6に示されるように、少なくとも1つのチャネル5は、リセス3から補綴用ベース2の頬側に向かって、好ましくは真っ直ぐに、角度を有して(斜めに)、又は湾曲して伸びている。このため、この代替手段によれば、少なくとも1つのチャネル5は、補綴用ベース中において、好ましくは、頬又は唇の領域で終わっている。硬化性材料4を導入し、材料を硬化させた後、チャネルの元の頬側開口は、この位置においてほとんど炎症を伴わない補綴用ベースの均一な表面を確保するために、後処理(特に、研磨)され得る。同様の手法が、底面に元々存在する充填後開口にも適用される。
図1の図面の右側に例示されるように、チャネル5は、チャネル5がリセス3内へと開口する領域中に広がり部8を有してもよい。本件では、広がり部8は、円錐形をしており、リセス3に向かって広がっている。硬化性材料4をチャネル5内に導入する際に、広がり部8の領域は、材料4で完全に充填される。そのため、材料4とリセス3内にはめ込まれた人工歯1との接触が大きくなる。これによっても、より良好な接着が達成される。
図2は、図1の補綴用ベース2の非常に単純化された上面図を例示する。この上面図は、リセス3と、リセス3内の実質的に中心に開口するチャネル5と、を示す。図2から明らかなように、チャネル5を含むリセス3は、歯列弓に沿って配置されている。
図3で示されるように、人工歯1は、補綴用ベース2に結合することが可能である。まず、人工歯1を、補綴用ベース2のカスタムフィットしたリセス3内にはめ込む。次いで、硬化性材料を、注入装置7を用いて、関連するチャネル5を通って導入する。この目的で、材料4が人工歯1と接触することを確保するために、注入装置7はチャネル5内に挿入される。材料4をチャネル5内に導入する際に、次いで、注入装置7を引き抜く。これにより、チャネル5は、材料4で完全に充填される。
代替法として、図4に示されるアプローチを使用することができる。ここで、人工歯1がはめ込まれた補綴用ベース2を、チャネル5内に埋まっている筒状アプリケータ10を備えるプレート9に対して押し付ける。硬化性材料4は、プレート9の下に位置しており、補綴用ベース2及びプレート9を下方に移動させることにより、アプリケータ10を介してチャネル5内に押し出される又は圧入される。チャネル5が材料4で完全に充填されたら、補綴用ベース2を取り外す。
人工歯1を補綴用ベース2へ物質対物質結合するための更なる(示されていない)変形例は、硬化性材料4のベッド中に、補綴用ベース2を直接押し込むことである。この場合には、材料4をチャネル5中に導入するためのツールが必要ない。ただし、補綴用ベース2の底面6に付着した状態の材料4を、その後に除去する必要がある場合がある。
1 人工歯
2 補綴用ベース
3 リセス
4 硬化性材料
5 チャネル
6 補綴用ベースの底面
7 注入装置
8 広がり部
9 プレート
10 アプリケータ
人工歯1を補綴用ベース2へ物質対物質結合するための更なる(示されていない)変形例は、硬化性材料4のベッド中に、補綴用ベース2を直接押し込むことである。この場合には、材料4をチャネル5中に導入するためのツールが必要ない。ただし、補綴用ベース2の底面6に付着した状態の材料4を、その後に除去する必要がある場合がある。
以下、本発明の態様の例を記載する。
<1> 人工歯(1)を領域で受容するための実質的にカスタムフィットしたリセス(3)を上面に少なくとも1つ有する補綴用ベースであって、
前記補綴用ベース(2)中に、前記リセス(3)内へと開口しているチャネル(5)が少なくとも1つ形成されていることを特徴とする補綴用ベース。
<2> (a)前記チャネル(5)は、前記リセス(3)から前記補綴用ベース(2)の底面(6)に向かって(好ましくは真っ直ぐに、角度を有して(斜めに)、若しくは湾曲して)伸びているか、
(b)前記チャネル(5)は、前記リセス(3)から前記補綴用ベース(2)の頬側に向かって(好ましくは真っ直ぐに、角度を有して(斜めに)、若しくは湾曲して)伸びているか、又は、
(c)前記チャネル(5)は、前記リセス(3)から前記補綴用ベース(2)の舌側に向かって(好ましくは真っ直ぐに、角度を有して(斜めに)、若しくは湾曲して)伸びている
ことを特徴とする<1>に記載の補綴用ベース。
<3> 前記チャネル(5)は、前記リセス(3)へと、前記リセス(3)に対して実質的に中心に開口し、及び/又は、少なくとも前記チャネル(5)が前記リセス(3)へ開口している領域において広がり部(8)を有することを特徴とする<1>又は<2>に記載の補綴用ベース。
<4> 前記リセス(3)は、前記人工歯(1)の外輪郭に少なくとも部分的に適合する内輪郭を有することを特徴とする<1>〜<3>のいずれか一項に記載の補綴用ベース。
<5> 前記補綴用ベース(2)は、CAD/CAMプロセスにより製造されたものであることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか一項に記載の補綴用ベース。
<6> 前記補綴用ベース(2)の前記カスタムフィットしたリセス(3)は、鋳造モデル又は仮想モデルの対応するリセスに対して、100μm(好ましくは50μm、より好ましくは30μm)の最大寸法許容誤差を有することを特徴とする<1>〜<5>のいずれか一項に記載の補綴用ベース。
<7> 補綴材料及び/又はワックスで全体又は一部が製造されていることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか一項に記載の補綴用ベース。
<8> 前記補綴材料は、プラスチック又は重合補綴材料を含み、
前記プラスチック又は重合補綴材料は、液状モノマー成分及び粉末状成分の重合により得ることができることを特徴とする<1>〜<7>のいずれか一項に記載の補綴用ベース。
<9> 人工歯(1)を領域で受容するための実質的にカスタムフィットしたリセス(3)を上面に少なくとも1つ有する補綴用ベース(2)に、人工歯(1)を物質対物質結合させる方法であって、
前記物質対物質結合は、前記補綴用ベース(2)中に形成され、且つ前記リセス(3)内へと開口しているチャネル(5)に導入される硬化性材料(4)により確立され、前記硬化性材料(4)を、前記リセス(3)内にはめ込まれた又ははめ込まれていない状態にある前記人工歯(1)と接触させることを特徴とする前記方法。
<10> 前記人工歯(1)を前記補綴用ベース(2)の前記リセス(3)内にはめ込む前又は後に、前記硬化性材料(4)を前記チャネル(5)内に導入することを特徴とする<9>に記載の方法であって、
ここで、前記補綴用ベース(2)の底面(6)から導入することが好ましい、前記方法。
<11> 前記硬化性材料(4)を、注入装置(7)を用いて、前記チャネル(5)内に導入することを特徴とする<9>又は<10>に記載の方法。
<12> 前記硬化性材料(4)を、前記チャネル(5)に圧入することを特徴とする<10>又は<11>に記載の方法。
<13> 接着剤、重合性モノマー、又は液化ワックスを、硬化性材料(4)として使用することを特徴とする<9>〜<12>のいずれか一項に記載の方法。
<14> 少なくとも1つの歯(特に、人工歯)であり、前記歯が、その外輪郭に刻みを少なくとも1つ有することを特徴とする補綴物。
<15> <9>〜<13>のいずれか一項に記載の方法により得ることができる補綴物。
<16> <1>〜<7>のいずれか一項に記載の補綴物の状態で存在することを特徴するワックスモデル。

Claims (16)

  1. 人工歯(1)を領域で受容するための実質的にカスタムフィットしたリセス(3)を上面に少なくとも1つ有する補綴用ベースであって、
    前記補綴用ベース(2)中に、前記リセス(3)内へと開口しているチャネル(5)が少なくとも1つ形成されていることを特徴とする補綴用ベース。
  2. (a)前記チャネル(5)は、前記リセス(3)から前記補綴用ベース(2)の底面(6)に向かって(好ましくは真っ直ぐに、角度を有して(斜めに)、若しくは湾曲して)伸びているか、
    (b)前記チャネル(5)は、前記リセス(3)から前記補綴用ベース(2)の頬側に向かって(好ましくは真っ直ぐに、角度を有して(斜めに)、若しくは湾曲して)伸びているか、又は、
    (c)前記チャネル(5)は、前記リセス(3)から前記補綴用ベース(2)の舌側に向かって(好ましくは真っ直ぐに、角度を有して(斜めに)、若しくは湾曲して)伸びている
    ことを特徴とする請求項1に記載の補綴用ベース。
  3. 前記チャネル(5)は、前記リセス(3)へと、前記リセス(3)に対して実質的に中心に開口し、及び/又は、少なくとも前記チャネル(5)が前記リセス(3)へ開口している領域において広がり部(8)を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の補綴用ベース。
  4. 前記リセス(3)は、前記人工歯(1)の外輪郭に少なくとも部分的に適合する内輪郭を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の補綴用ベース。
  5. 前記補綴用ベース(2)は、CAD/CAMプロセスにより製造されたものであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の補綴用ベース。
  6. 前記補綴用ベース(2)の前記カスタムフィットしたリセス(3)は、鋳造モデル又は仮想モデルの対応するリセスに対して、100μm(好ましくは50μm、より好ましくは30μm)の最大寸法許容誤差を有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の補綴用ベース。
  7. 補綴材料及び/又はワックスで全体又は一部が製造されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の補綴用ベース。
  8. 前記補綴材料は、プラスチック又は重合補綴材料を含み、
    前記プラスチック又は重合補綴材料は、液状モノマー成分及び粉末状成分の重合により得ることができることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の補綴用ベース。
  9. 人工歯(1)を領域で受容するための実質的にカスタムフィットしたリセス(3)を上面に少なくとも1つ有する補綴用ベース(2)に、人工歯(1)を物質対物質結合させる方法であって、
    前記物質対物質結合は、前記補綴用ベース(2)中に形成され、且つ前記リセス(3)内へと開口しているチャネル(5)に導入される硬化性材料(4)により確立され、前記硬化性材料(4)を、前記リセス(3)内にはめ込まれた又ははめ込まれていない状態にある前記人工歯(1)と接触させることを特徴とする前記方法。
  10. 前記人工歯(1)を前記補綴用ベース(2)の前記リセス(3)内にはめ込む前又は後に、前記硬化性材料(4)を前記チャネル(5)内に導入することを特徴とする請求項9に記載の方法であって、
    ここで、前記補綴用ベース(2)の底面(6)から導入することが好ましい、前記方法。
  11. 前記硬化性材料(4)を、注入装置(7)を用いて、前記チャネル(5)内に導入することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の方法。
  12. 前記硬化性材料(4)を、前記チャネル(5)に圧入することを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の方法。
  13. 接着剤、重合性モノマー、又は液化ワックスを、硬化性材料(4)として使用することを特徴とする請求項9〜請求項12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 少なくとも1つの歯(特に、人工歯)であり、前記歯が、その外輪郭に刻みを少なくとも1つ有することを特徴とする補綴物。
  15. 請求項9〜請求項13のいずれか一項に記載の方法により得ることができる補綴物。
  16. 請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の補綴物の状態で存在することを特徴するワックスモデル。
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