具体的な製剤又は工程パラメータは、当然ながら変化しうるので、本出願がこれらに限定されないことを理解されたい。また、本明細書で用いられる用語法は、具体的な実施形態を説明することだけを目的とするものであり、限定を意図するものではないことも理解されたい。さらに、本発明を実施するには、本明細書で説明される方法及び材料と類似又は同等である、多数の方法及び材料を用いうることも理解される。
本出願に従い、当技術分野の範囲内にある従来の分子生物学、微生物学、及び組換えDNAの技法を用いうる。このような技法は、文献において十分に説明されている。例えば、それらの各々が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」、I〜III巻[Ausubel,R.M.編(1994)];「Cell Biology:A Laboratory Handbook」、I〜III巻[J.E.Celis編(1994))];「Current Protocols in Immunology」、I〜III巻[Coligan,J.E.編(1994)];「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.Gait編、1984);「Nucleic Acid Hybridization」[B.D.Hames及びS.J.Higgins編(1985)];「Transcription And Translation」[B.D.Hames及びS.J.Higgins編(1984)];「Animal Cell Culture」[R.I.Freshney編(1986)];「Immobilized Cells And Enzymes」[IRL Press(1986)];B.Perbal、「A Practical Guide To Molecular Cloning」(1984)を参照されたい。
I.抗エンドグリン抗体
本明細書では、エンドグリンに結合するヒト化抗体、並びにそれらの抗原結合断片が提供される。
本明細書に記載のヒト化及び脱免疫化抗体は、それらの特異性を維持及び/又向上させながら、低下した免疫原性を示す。これらのヒト化及び脱免疫エンドグリン抗体は、線維症の治療、阻害または改善のために、ならびにエンドグリンの精製および検出、インビトロアッセイ、および線維症に罹患している対象の治療に有用である。
本発明者らは、特異的にエンドグリンと結合する中和抗体またはその抗原結合断片が、エンドグリンに結合し、TGFβ受容体へのBMP9の結合を阻害することができることを同定した。
本発明者らはまた、エンドグリンへのBMP9の結合をブロックする抗体またはその断片によってBMPシグナル伝達を阻害する方法を新たに記載する。
また、本明細書に記載されたものは、特異的にエンドグリン受容体に結合し、Smad 1/5/8シグナル伝達を阻害する抗体またはその抗原結合フラグメントを投与することにより線維症を阻害する方法である。
A.抗体についての用語法
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、天然の場合であれ、部分的又は完全な合成により作製された場合であれ、免疫グロブリン(Ig)を指す。この用語はまた、抗原結合ドメインであるか、又はこれと相同的である結合ドメインを有する任意のポリペプチド又はタンパク質も対象とする。この用語は、以下で説明される用語など、「抗原結合断片」並びに類似の結合断片についての他の互換可能な用語をさらに包含する。また、相補性決定領域(CDR)移植抗体並びに他のヒト化抗体(CDR修飾並びにフレームワーク領域修飾を含めた)も、この用語により意図される。
本明細書では以後、「抗体(単数又は複数)」という用語への参照を、本明細書で説明される抗原結合断片のうちのいずれかを包含すると考えるものとし、該用語は、必要に応じて互換可能であるものとする。
天然抗体並びに天然免疫グロブリンは通常、2つの同一の軽(L)鎖並びに2つの同一の重(H)鎖からなる、約150,000ドルトンのヘテロ四量体の糖タンパク質である。各軽鎖は、共有結合による1つのジスルフィド結合を介して重鎖に連結されることが典型的であるが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変化する。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的な間隔を置いた、鎖間ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端部において、可変ドメイン(「VH」ドメイン)に続いて、複数の定常ドメイン(「CH」ドメイン)を有する。各軽鎖は、一方の端部における可変ドメイン(「VL」ドメイン)、並びにその他方の端部における定常ドメイン(「CL」ドメイン)を有するが、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと並行し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと並行する。特定のアミノ酸残基が、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとのインターフェースを形成すると考えられている。
本明細書で用いられる「合成ポリヌクレオチド」、「合成遺伝子」、又は「合成ポリペプチド」という用語は、対応するポリヌクレオチド配列若しくはその部分、又はアミノ酸配列若しくはその部分が、同等の天然配列と比較して、新規にデザインされているか、新規に合成されているか、又は修飾されている配列に由来することを意味する。合成ポリヌクレオチド(抗体又は抗原結合断片)又は合成遺伝子は、核酸配列又はアミノ酸配列の化学合成が含まれるがこれらに限定されない、当技術分野で知られている方法により調製することができる。合成遺伝子は、アミノ酸レベル又はポリヌクレオチドレベル(又はこれらの両方のレベル)で天然遺伝子とは異なることが典型的であり、合成の発現制御配列との関連で配置されることが典型的である。例えば、合成遺伝子配列は、例えば、1又は複数のアミノ酸又はヌクレオチドの置換、欠失、又は付加により変化しており、これにより、供給源の配列とは異なる、抗体のアミノ酸配列又は配列をコードするポリヌクレオチドを提供する、アミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列を包含しうる。合成遺伝子のポリヌクレオチド配列は、天然遺伝子と比較して異なるアミノ酸を伴うタンパク質を必ずしもコードしうるわけではない;例えば、それらはまた、異なるコドンではあるが、同じアミノ酸をコードする(すなわち、ヌクレオチドの変化が、アミノ酸レベルではサイレントの突然変異を表す)コドンを組み込む合成ポリヌクレオチド配列も包含しうる。
抗体に関する「可変ドメイン」という用語は、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合及び特異性に関して用いられる抗体の可変ドメインを指す。しかし、その可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたり一様に分布しているわけではない。そうではなくて、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインのいずれにおいても、可変性は、超可変領域(また、CDRとしても知られる)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのうちのより高度に保存的な部分を、「フレームワーク領域」又は「FR」と称する。修飾されていない重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、大半がβシートの立体構造をとり、且つ、3つずつのCDR(該βシート構造を連結するループ、並びに場合によって、該βシート構造の部分を形成する)を散在させる、4つずつのFR(FR1、FR2、FR3、及びFR4)を含有する。各鎖内のCDRは、FRにより、併せて密接する形で近傍に保持され、他の鎖に由来するCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991)、647〜669ページを参照されたい)。
本明細書で用いられる「超可変領域」及び「CDR」という用語は、抗原結合の一因となる抗体のアミノ酸残基を指す。CDRは、相補的な形で抗原に結合する3つの配列領域に由来するアミノ酸残基を含み、VH鎖及びVL鎖の各々について、CDR1、CDR2、及びCDR3として知られている。Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991)によれば、軽鎖可変ドメインでは、CDRが、ほぼ、残基24〜34(CDRL1)、50〜56(CDRL2)、及び89〜97(CDRL3)に対応することが典型的であり、重鎖可変ドメインでは、CDRが、ほぼ、残基31〜35(CDRH1)、50〜65(CDRH2)、及び95〜102(CDRH3)に対応することが典型的である。異なる抗体のCDRは、挿入を含有する可能性があり、したがって、アミノ酸の番号付けが異なりうることが理解される。Kabatによる番号付けシステムは、特定の残基に対する添え字(例えば、軽鎖では、CDRL1の27A、27B、27C、27D、27E、及び27F)を使用して異なる抗体間における番号付けへの任意の挿入を反映する番号付けスキームで、このような挿入に対処している。代替的に、Chothia及びLesk、J.Mol.Biol.、196:901〜917(1987)によれば、軽鎖可変ドメインでは、CDRが、ほぼ、残基26〜32(CDRL1)、50〜52(CDRL2)、及び91〜96(CDRL3)に対応することが典型的であり、重鎖可変ドメインでは、CDRが、ほぼ、残基26〜32(CDRH1)、53〜55(CDRH2)、及び96〜101(CDRH3)に対応することが典型的である。
本明細書で用いられる「フレームワーク領域」又は「FR」とは、抗原結合ポケット又は抗原結合グルーブの一部を形成するフレームワークのアミノ酸残基を指す。一部の実施形態では、フレームワーク残基が、抗原結合ポケット又は抗原結合グルーブの一部であるループを形成し、このループ内のアミノ酸残基が、抗原と接触する場合も接触しない場合もある。フレームワーク領域は一般に、CDR間の領域を構成する。Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991)によれば、軽鎖可変ドメインでは、FRが、ほぼ、残基0〜23(FRL1)、35〜49(FRL2)、57〜88(FRL3)、及び98〜109に対応することが典型的であり、重鎖可変ドメインでは、FRが、ほぼ、残基0〜30(FRH1)、36〜49(FRH2)、66〜94(FRH3)、及び103〜133に対応することが典型的である。軽鎖のKabatによる番号付けについて上記で論じた通り、重鎖への挿入もまた、同様の形で対処されている(例えば、重鎖では、CDRH1の35A、35B)。代替的に、Chothia及びLesk、J.Mol.Biol.、196:901〜917(1987)によれば、軽鎖可変ドメインでは、FRが、ほぼ、残基0〜25(FRL1)、33〜49(FRL2)、53〜90(FRL3)、及び97〜109(FRL4)に対応することが典型的であり、重鎖可変ドメインでは、FRが、ほぼ、残基0〜25(FRH1)、33〜52(FRH2)、56〜95(FRH3)、及び102〜113(FRH4)に対応することが典型的である。
FRのループアミノ酸は、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖の三次元構造を検討することにより評価及び決定することができる。溶媒に接触可能なアミノ酸位置は、ループを形成し、且つ/又は抗体可変ドメインにおいて抗原を接触させる可能性が高いので、このような位置について三次元構造を解析することができる。溶媒に接触可能な位置のうちのある位置は、アミノ酸の多様性を許容することが可能であり、他の位置(例えば、構造的位置)は一般に、多様性が低度である。抗体可変ドメインの三次元構造は、結晶構造に由来する場合もあり、タンパク質モデリングに由来する場合もある。
抗体の定常ドメイン(Fcドメイン)は、抗体の抗原に対する結合には直接関与せずに、例えば、Fc受容体(FcR)との相互作用を介して、抗体依存性細胞傷害作用への抗体の関与など、各種のエフェクター機能を呈示する。Fcドメインはまた、患者への投与後において循環する抗体のバイオアベイラビリティーも増大させる。
それらの重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。これらは、免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMであり、これらのうちのいくつかを、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2へとさらに分割することができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメイン(Fcドメイン)を、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと称する。異なる免疫グロブリンのクラスのサブユニットの構造並びに三次元の立体構造はよく知られている。
任意の脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(又は「κ」若しくは「K」)及びラムダ(又は「λ」)と称する2つの明確に異なる類型のうちの1つに割り当てることができる。
本明細書では、「抗体の抗原結合部分」、「抗原結合断片」、「抗原結合ドメイン」、「抗体断片」、又は「抗体の機能的断片」という用語を互換的に用いて、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1又は複数の断片を指す。このような用語の範囲内に包含される抗体断片の非限定的な例には、(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、及びCH1ドメインからなる一価断片である、Fab断片;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含有する二価断片である、F(ab’)2断片;(iii)VHドメイン及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一のアームのVLドメイン及びVHドメインを含有するFv断片;(v)VHドメインを含有するdAb断片(Wardら(1989)、Nature 341:544〜546);並びに(vi)単離CDRが含まれるがこれらに限定されない。加えて、この定義には、単一の重鎖並びに単一の軽鎖を含む「半」抗体も包含される。本明細書にはまた、ダイアボディーなど、単鎖抗体の他の形態も包含される。
「F(ab’)2」部分及び「Fab」部分は、Igを、ペプシン及びパパインなどのプロテアーゼで処理することにより作製することができ、2本の重鎖の各々のヒンジ領域間に存在するジスルフィド結合の近傍で免疫グロブリンを消化することにより生成される抗体断片を包含する。例えば、パパインは、2本の重鎖の各々のヒンジ領域間に存在するジスルフィド結合の上流でIgGを切断して、VL及びCL(軽鎖定常領域)からなる軽鎖と、VH及びCHγ1(重鎖定常領域内のγ1領域)からなる重鎖断片とが、ジスルフィド結合を介してそれらのC末端領域で連結されている、2つの相同的な抗体断片を生成させる。これらの2つの相同的な抗体断片の各々を、Fab’と称する。ペプシンもまたIgGを切断するが、2本の重鎖の各々のヒンジ領域間に存在するジスルフィド結合の下流においてであり、上記で言及した2つのFab’をヒンジ領域で連結させた、Fab’断片よりやや大型の抗体断片を生成させる。この抗体断片を、F(ab’)2と称する。
Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメイン並びに重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体のヒンジ領域に由来する1又は複数のシステインを含め、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端において、数個の残基が付加されていることにより、Fab断片とは異なる。本明細書では、Fab’−SHを、定常ドメインのシステイン残基(単数又は複数)が、遊離チオール基を保有するFab’の呼称とする。F(ab’)2抗体断片は元来、それらの間にヒンジ領域のシステインを有するFab’断片の対として作製された。また、抗体断片の他の化学的な連結についても知られている。
「Fv」とは、完全な抗原認識部位及び抗原結合部位を含有する抗体断片を指す。この領域は、非共有結合又は共有結合により密に会合する、1つの重鎖可変ドメイン並びに1つの軽鎖可変ドメインによる二量体からなる(当技術分野では、ジスルフィド結合により連結されたFv’が説明されている;Reiterら(1996)、Nature Biotechnology 14:1239〜1245)。各可変ドメインの3つずつのCDRが相互作用してこのVH−VL二量体の表面上における抗原結合部位を規定するのは、この構成においてである。VH鎖及びVL鎖の各々に由来するCDRのうちの1又は複数の組合せにより集合的に、該抗体に抗原結合特異性が付与される。例えば、レシピエント抗体又はその抗原結合断片のVH鎖及びVL鎖へと導入される場合なら、CDRH3及びCDRL3でも、抗体に抗原結合特異性を付与するには十分でありうるであろうし、このCDRの組合せを、本明細書で説明される技法のうちのいずれかを用いて、結合、アフィニティーなどについて調べることができることを理解されたい。第2の可変ドメインと組み合わせた場合より低度のアフィニティーにおいてである可能性が高いが、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRだけを含む、Fvの半分)もなお、抗原を認識し、これに結合する能力を有する。さらに、Fv断片の2つのドメイン(VLドメイン及びVHドメイン)は、個別の遺伝子によりコードされるが、そこにおいてはVL領域及びVH領域が対合して一価分子を形成する(単鎖Fv(scFv)として知られる;Birdら(1988)、Science 242:423〜426;Hustonら(1988)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879〜5883;並びにOsbournら(1998)、Nat.Biotechnol.16:778)単一のタンパク質鎖としてこれらを作製することを可能にする、合成リンカーを介する組換え法を用いてこれらを接合することもできる。抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内にはまた、このようなscFvも包含されることが意図される。完全なIg(例えば、IgG)分子又は他のアイソタイプをコードする発現ベクターを生成させるためには、特定のscFvのうちの任意のVH配列及びVL配列を、Fc領域のcDNA配列又はゲノム配列に連結することができる。VH配列及びVL配列はまた、タンパク質化学反応法又は組換えDNA法を用いて、Fab、Fv、又は他のIg断片を生成させるのにも用いることができる。
「単鎖Fv」抗体断片又は「sFv」抗体断片は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、これらのドメインを、単一のポリペプチド鎖内に存在させる。一部の実施形態では、Fvポリペプチドが、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、該sFvが、抗原に対する結合に所望される構造を形成することを可能とする。sFvの総説については、例えば、Plueckthun、「The Pharmacology of Monoclonal Antibodies」、113巻、Rosenburg及びMoore編、Springer−Verlag、New York、269〜315ページ(1994)を参照されたい。
「AVIMER(商標)」という用語は、ヒト由来の治療用タンパク質のクラスを指すが、抗体並びに抗体断片とは類縁でなく、Aドメイン(また、クラスAモジュール、補体型の反復配列、又はLDL受容体クラスAドメインとも称する)と称する、複数のモジュール型結合ドメイン並びに再使用可能な結合ドメインからなる。これらは、in vitroにおけるエクソンシャフリング及びファージディスプレイ(Silvermanら、2005、Nat.Biotechnol.23:1493〜1494;Silvermanら、2006、Nat.Biotechnol.24:220)により、ヒト細胞外受容体ドメインから開発された。結果として得られるタンパク質は、単一のエピトープに結合するタンパク質と比較して、アフィニティー(場合によって、ナノモル未満)及び特異性の改善を呈示しうる、複数の個別の結合ドメインを含有しうる。例えば、それらの各々が参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2005/0221384号;同第2005/0164301号;同第2005/0053973号;及び同第2005/0089932号;同第2005/0048512号;及び同第2004/0175756号を参照されたい。
既知である217のヒトAドメインの各々は、約35アミノ酸(約4kDa)を含み、これらのドメインは、平均5アミノ酸の長さのリンカーにより隔てられている。天然のAドメインは、主にカルシウム結合並びにジスルフィド結合の形成を介して、迅速且つ効率的に均一で安定的な構造へとフォールドする。この共通の構造に必要とされるのは、わずかに12アミノ酸の保存的な足場モチーフである。この最終結果として、それらの各々が個別の機能を表す複数のドメインを含有する、単一のタンパク質鎖がもたらされる。これらのタンパク質の各ドメインは個別に結合し、各ドメインのエネルギー的な寄与は相加的である。これらのタンパク質は、アビディティー多量体にちなんで「AVIMER(商標)」と命名された。
「ダイアボディー」という用語は、同じポリペプチド鎖(VH−VL鎖)において、軽鎖可変ドメイン(VLドメイン)に連結された重鎖可変ドメイン(VHドメイン)を含む、2つの抗原結合部位を伴う低分子抗体断片を指す。同じ鎖上の2つのドメイン間における対合を可能とするには短すぎるリンカーを用いることにより、該ドメインを、別の鎖の相補的ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を創出する。ダイアボディーは、例えば、EP404,097;WO93/11161;並びにHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444〜6448(1993)においてより十分に説明されている。
抗原結合ポリペプチドにはまた、例えば、ラクダ及びサメに由来する抗体などの重鎖二量体も含まれる。ラクダ抗体及びサメ抗体は、V様ドメイン及びC様ドメインの2本の鎖(いずれも軽鎖を有さない)によるホモ二量体対を含む。ラクダにおける重鎖二量体であるIgGのVH領域は、軽鎖と疎水性相互作用する必要がないので、通常なら軽鎖に接触する重鎖の領域を、ラクダにおける親水性アミノ酸残基へと変化させることができる。重鎖二量体によるIgGのVHドメインを、VHHドメインと称する。サメのIg−NARは、1つの可変ドメイン(V−NARドメインと称する)と、5つのC様定常ドメイン(C−NARドメイン)によるホモ二量体を含む。ラクダでは、VH領域又はVHH領域内のCDR1、2、及び3により抗体レパートリーの多様性が決定される。ラクダVHH領域内のCDR3は、その比較的長い16アミノ酸の長さを特徴とする(Muyldermansら、1994、Protein Engineering 7(9):1129)。これは、他の多くの種の抗体のCDR3とは対照的である。例えば、マウスVHのCDR3は、平均9アミノ酸である。ラクダ可変領域のin vivoにおける多様性を維持する、ラクダに由来する抗体可変領域のライブラリーは、例えば、米国特許出願第20050037421号で開示される方法により作製することができる。
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態には、非ヒトIgに由来する最小限の配列を含有するキメラ抗体が含まれる。大部分において、ヒト化抗体は、その中のレシピエントCDRのうちの1又は複数が、所望の特異性、アフィニティー、及び結合機能を有する、マウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長動物など、ヒト以外の種の抗体(ドナー抗体)に由来するCDRにより置換されているヒトIg(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒトIgの1又は複数のFRアミノ酸残基も、対応する非ヒトアミノ酸残基により置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含有する場合がある。必要な場合は、これらの修飾を施して、抗体の効能を洗練させることができる。ヒト化抗体は、少なくとも1つであり、場合によっては2つである可変ドメインのうちの実質的に全部を含むことが可能であり、この中の超可変領域のうちの全部又は実質的に全部が、非ヒト免疫グロブリンの超可変領域に対応し、FRのうちの全部又は実質的に全部が、ヒト免疫グロブリン配列によるFRである。ヒト化抗体は、場合によってまた、免疫グロブリン定常領域(Fc領域)、典型的にはヒト免疫グロブリンのFc領域のうちの少なくとも一部も包含しうる。詳細については、Jonesら、Nature 321:522〜525(1986);Reichmannら、Nature 332:323〜329(1988);並びにPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593〜596(1992)を参照されたい。
ヒト化抗体はまた、その中の重鎖及び軽鎖のCDRのうちの一部又は全部が、非ヒトモノクローナル抗体に由来し、該可変領域の残りの部分の実質的にすべてが、ヒト可変領域(重鎖可変領域及び軽鎖可変領域)に由来し、定常領域が、ヒト定常領域に由来する抗体も包含する。一実施形態では、重鎖及び軽鎖のCDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域が、非ヒト抗体に由来する。さらに別の実施形態では、重鎖及び軽鎖のうちの少なくとも1つのCDR(例えば、CDR3)が、非ヒト抗体に由来する。CDR1、CDR2、及びCDR3による多様な組合せが非ヒト抗体に由来することが可能であり、本明細書ではこれらが意図されている。非限定的な一例では、重鎖及び軽鎖の各々のCDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域のうちの1又は複数が、マウスキメラモノクローナル抗体クローンであるTRC105に由来する。
本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、わずかな量で存在しうる可能な天然の突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原部位を指向するので、高度に特異的である。さらに、異なる決定基(エピトープ)を指向する異なる抗体を包含しうる従来の(ポリクローナル)抗体の調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原における単一の決定基を指向する。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られるものとしての抗体の特徴を示唆するものであり、何らかの特定の方法による抗体の作製を要請するものとしては見なされないものとする。例えば、モノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature 256:495(1975)により最初に説明されたハイブリドーマ法により作製することもでき、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)により作製することもできる。ある実施形態では、例えば、Clacksonら、Nature 352:624〜628(1991);並びにMarksら、J.Mol.Biol.222:581〜597(1991)において説明されている技法を用いて、ファージ抗体ライブラリーからモノクローナル抗体を単離することもできる。
抗体は、飽和硫酸アンモニウム沈殿、ユーグロビン沈降法、カプロン酸法、カプリル酸法、イオン交換クロマトグラフィー(DEAE又はDE52による)、或いは以下でより詳細に説明されるカラムなど、抗Igカラム又はプロテインAカラム、プロテインGカラム、若しくはプロテインLカラムを用いるアフィニティークロマトグラフィーを介して、上記で言及した培養物上清又は腹水から単離及び精製することができる。
本明細書で説明される組成物及び方法において用いられる例示的な抗体は、例えば、ヒト化抗体などの完全免疫グロブリン分子、又はFab、Fab’、F(ab)’、F(ab’)2、Fd、scFv、重鎖可変ドメイン、軽鎖可変ドメイン、可変NARドメイン、二重特異性scFv、二重特異性Fab2、三重特異性Fab3、及び単鎖結合ポリペプチド、並びにまた抗原結合断片とも称される他のポリペプチドなど、当技術分野で知られるヒト化Ig分子の部分を含めた、抗原結合部位(すなわち、パラトープ)若しくは単一の重鎖並びに単一の軽鎖を含有するヒト化Ig分子の部分である。免疫グロブリン分子又はその断片を構築する場合は、可変領域又はそれらの部分を、1又は複数の定常領域又はそれらの部分に融合させるか、連結するか、又は他の形で接合して、本明細書で説明される抗体又はそれらの断片のうちのいずれかを作製することができる。これは、分子クローニング法、又は該分子をコードする核酸の直接的な合成が含まれるがこれらに限定されない、当技術分野で知られる各種の方法により達成することができる。また、本明細書で説明される例においても、これらの分子を構築するための、非限定的な例示的方法を見出すことができる。
例示的な一実施形態では、本出願が、エンドグリンに結合し、且つ、場合によって、免疫グロブリンのFc領域を有する重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を有する、単鎖結合ポリペプチドを意図する。例示的な一実施形態では、本出願が、エンドグリンに結合して、且つ、場合によって、免疫グロブリンのFc領域を有する重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を有する、単鎖結合ポリペプチドを意図する。このような分子は、場合によって、免疫グロブリンのFc領域が存在することを介して、エフェクター機能を有するか、又は半減期が延長された、単鎖可変領域断片である。当技術分野では、単鎖結合ポリペプチドを調製する方法が知られている(例えば、米国特許出願第2005/0238646号)。
「生殖細胞系列の遺伝子セグメント」又は「生殖細胞系列の配列」という用語は、生殖細胞系列(生殖細胞系列がそれに由来して形成される配偶子並びにこれらの二倍体細胞)に由来する遺伝子を指す。生殖細胞系列のDNAは、単一のIg重鎖又はIg軽鎖をコードする複数の遺伝子セグメントを含有する。これらの遺伝子セグメントは、胚細胞内に保有されるが、それらが機能的遺伝子へと構成されるまでは、重鎖及び軽鎖へと転写及び翻訳される可能性がない。骨髄においてB細胞が分化するときに、これらの遺伝子セグメントは、108通りを超える特異性を生成させることが可能な動的遺伝子システムにより無作為にシャフリングされる。これらの遺伝子セグメントの大半は、生殖細胞系列のデータベースにより公表及び収集されている。
本明細書で用いられる「免疫反応性」とは、結合剤、抗体又はその断片が、アミノ酸残基の配列(「結合部位」又は「エピトープ」)に特異的であり、さらにまた、他のペプチド/タンパク質と交差反応性であっても、それらをヒトへの投与用に製剤化するレベルでは毒性でないことを指す。「結合」という用語は、例えば、生理学的条件下における共有結合による相互作用、静電相互作用、疎水性相互作用、並びにイオン性相互作用及び/又は水素結合による相互作用に起因する、2つの分子間における直接的な会合を指し、これには、塩架橋及び水架橋などの相互作用、並びに他の任意の従来の結合手段が含まれる。「優先的に結合する」という用語は、結合剤が、非類縁のアミノ酸配列に結合する場合のアフィニティーを超えるアフィニティーで結合部位に結合することを意味する。このようなアフィニティーは、非類縁のアミノ酸配列に対する該結合剤のアフィニティーの少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍であるか、10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍であるか、又は少なくとも1000倍であることが好ましい。本明細書では、「免疫反応性」という用語と、「優先的に結合する」という用語とを互換的に用いる。
本明細書で用いられる「アフィニティー」という用語は、2つの薬剤の可逆的結合についての平衡定数を指し、KDとして表す。抗体のエピトープに対するアフィニティーなど、結合タンパク質のリガンドに対するアフィニティーは、例えば、約100ナノモル(nM)〜約0.1nM、約100nM〜約1ピコモル(pM)、又は約100nM〜約1フェムトモル(fM)でありうる。本明細書で用いられる「アビディティー」という用語は、2つ以上の薬剤の複合体が、希釈後の解離に対して示す抵抗性を指す。みかけのアフィニティーは、ELISA(酵素免疫測定アッセイ)、又は当業者によく知られる他の任意の技法などの方法により決定することができる。アビディティーは、スカチャード解析、又は当業者によく知られる他の任意の技法などの方法により決定することができる。
「エピトープ」とは、抗体の可変領域結合ポケットと結合相互作用を形成することが可能な、抗原又は他の高分子の部分を指す。このような結合相互作用は、1又は複数のCDRの1又は複数のアミノ酸残基との分子間接触として顕在化されうる。抗原の結合は、例えば、VH鎖及びVL鎖のうち、CDR3若しくはCDR3対、又は、場合によって、最大で6つのCDRすべてによる相互作用を伴いうる。エピトープは、直鎖状のペプチド配列(すなわち、「連続」エピトープ)の場合もあり、不連続的なアミノ酸配列(すなわち、「立体構造」エピトープ又は「不連続」エピトープ)の場合もある。抗体は、1又は複数のアミノ酸配列を認識することが可能であり、したがって、エピトープは、複数の異なるアミノ酸配列を規定しうる。抗体により認識されるエピトープは、当業者によく知られるペプチドマッピング法及び配列解析法により決定することができる。結合相互作用は、CDRのうちの1又は複数のアミノ酸残基との分子間接触として顕在化される。TRC105は、米国特許第5,928,641号;同第6,200,566号;同第6,190,660号;及び同第7,097,836号においてY4−2F1又はSN6jとして説明されたマウス抗体と同じ可変領域のアミノ酸配列を有するキメラ抗体である。Y4−2F1及びSN6jにより認識されるエピトープ、したがって、TRC105によって認識されるエピトープは、既に同定されている。
「特異的な」という用語は、抗体が、それにより認識されるエピトープを含有する抗原以外の分子に対して著明な結合を示さない状況を指す。この用語はまた、例えば、抗原結合ドメインが、多数の抗原により保有される特定のエピトープに対して特異的である場合にも適用可能であり、この場合、該抗原結合ドメインを保有する抗体又はその抗原結合断片は、該エピトープを保有する多様な抗原に結合することが可能である。「優先的に結合する」又は「特異的に結合する」という用語は、抗体又はそれらの断片が、非類縁のアミノ酸配列に結合する場合のアフィニティーを超えるアフィニティーでエピトープに結合し、且つ、該エピトープを含有する他のポリペプチドと交差反応性の場合であっても、それらをヒトへの投与使に製剤化するレベルでは毒性でないことを意味する。一態様では、このようなアフィニティーが、非類縁のアミノ酸配列に対する該抗体又はその断片のアフィニティーの少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍であるか、10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍であるか、又は少なくとも1000倍であることが好ましい。本明細書では、「免疫反応性」、「結合する」、「優先的に結合する」、並びに「特異的に結合する」という用語を互換的に用いる。「結合」という用語は、例えば、生理学的条件下における共有結合による相互作用、静電相互作用、疎水性相互作用、並びにイオン性相互作用及び/又は水素結合による相互作用に起因する、2つの分子間における直接的な会合を指し、これには、塩架橋及び水架橋などの相互作用、並びに従来の他の結合手段が含まれる。
「保存的アミノ酸置換」という語句は、ある共通の特性に基づくアミノ酸の群分けを指す。個々のアミノ酸間における共通の特性を規定する機能的な方法は、同種生物の対応するタンパク質間におけるアミノ酸変化の標準化頻度を解析することである(Schulz,G.E.及びR.H.Schirmer、「Principles of Protein Structure」、Springer−Verlag)。このような解析によれば、ある群内のアミノ酸が、互いと優先的に交換され、したがって、全体的なタンパク質構造に対するそれらの影響において互いに類似し合うアミノ酸群を規定することができる(Schulz,G.E.及びR.H.Schirmer、「Principles of Protein Structure」、Springer−Verlag)。このような形で規定されるアミノ酸群の例には、
(i)Glu及びAsp、Lys、Arg及びHisからなる帯電基
(ii)Lys、Arg及びHisからなる正帯電基
(iii)Glu及びAspからなる負帯電基
(iv)Phe、Tyr及びTrpからなる芳香環基
(v)His及びTrpからなる窒素環基
(vi)Val、Leu及びIleからなる高分子の脂肪族の非極性基
(vii)Met及びCysからなる弱極性基
(viii)Ser、Thr、Asp、Asn、Gly、Ala、Glu、Gln及びProからなる低分子残基
(ix)Val、Leu、Ile、Met及びCysからなる脂肪族基、並びに
(x)Ser及びThrからなる低分子のヒドロキシル基
が含まれる。
上記で提示された群に加え、各アミノ酸残基は、その固有の群を形成することが可能であり、個々のアミノ酸により形成される群を、上記で説明した通りに当技術分野で一般的に用いられる、このアミノ酸に対する一文字及び/又は三文字の短縮形により簡潔に指し示すことができる。
「保存的残基」とは、ある範囲にわたる類似のタンパク質を通じて比較的不変であるアミノ酸である。保存的残基の変化は、「保存的アミノ酸置換」について上記で説明した類似のアミノ酸による置換だけによる。
「非保存的アミノ酸置換」は、上記で説明したグループ内の1個のアミノ酸が異なるグループに変化することを指す。
本明細書のアミノ酸配列で用いられる「x」又は「xaa」という文字は、別段に具体的に言及しない限り、20の標準的アミノ酸のうちのいずれかをこの位置に配置しうることを示唆する。ペプチド模倣体をデザインする目的では、アミノ酸配列中の「x」又は「xaa」を、標的配列中に存在するアミノ酸の模倣体で置換することもでき、該ペプチド模倣体の活性に干渉しない、本質的に任意の形態のスペーサーで該アミノ酸を置換することもできる。
「相同性」又は「同一性」又は「類似性」とは、2つのペプチド間における配列類似性、又は2つの核酸分子間における配列類似性を指す。比較を目的として配列決定しうる、各配列内の位置を比較することにより、相同性及び同一性の各々を決定することができる。比較される配列内の同等の位置が、同じ塩基又はアミノ酸で占有されている場合は、該分子がその位置で同一であり、同じアミノ酸残基又は類似のアミノ酸残基(例えば、立体的性質及び/又は電子的性質において類似するアミノ酸残基)により同等の部位が占有されている場合は、該分子がその位置で相同である(類似する)と称することができる。相同性/類似性又は同一性の百分率としての表現は、比較される配列により共有される位置において同一であるか又は類似するアミノ酸の数の関数を指す。「非類縁」又は「非相同」である配列が共有する同一性は40%未満であるが、本発明の配列との同一性は25%未満であることが好ましい。2つの配列を比較するときはまた、残基(アミノ酸又は核酸)が存在しなくても、過剰な残基が存在しても、同一性及び相同性/類似性が低下する。
「相同性」という用語は、類似の機能又はモチーフを伴う遺伝子又はタンパク質を同定するのに用いられる、数学的計算に基づく配列類似性の比較について述べる。本発明の核酸(ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド)配列及びアミノ酸(タンパク質)配列は、例えば、他のファミリーメンバー、類縁配列、又は相同体を同定する目的で、公共のデータベースに対する検索を実施するための「探索配列」として用いることができる。このような検索は、Altschulら(1990)、J.Mol.Biol.215:403〜10によるNBLASTプログラム及びXBLASTプログラム(version 2.0)を用いて実施することができる。本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得るためには、スコア=100、ワード長=12のNBLASTプログラムにより、BLASTヌクレオチド検索を実施することができる。本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得るためには、スコア=50、ワード長=3のXBLASTプログラムにより、BLASTアミノ酸検索を実施することができる。比較を目的として、ギャップを伴う配列決定を行うためには、Altschulら(1997)、Nucleic Acids Res.25(17):3389〜3402において説明される通りに、Gapped BLASTを使用することができる。BLASTプログラム及びGapped BLASTプログラムを使用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTプログラム及びBLASTプログラム)のデフォルトのパラメータを用いることができる(world wide web site.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい)。
本明細書で用いられる「同一性」とは、2つ以上の配列を、配列マッチングを最大化するように、すなわち、ギャップ及び挿入を考慮に入れて配列決定するときに、これらの配列の対応する位置において同一なヌクレオチド又はアミノ酸残基の百分率を意味する。同一性は、「Computational Molecular Biology」、Lesk,A.M.編、Oxford University Press、New York、1988;「Biocomputing:Informatics and Genome Projects」、Smith,D.W.編、Academic Press、New York、1993;「Computer Analysis of Sequence Data」、I部、Griffin,A.M.及びGriffin,H.G.編、Humana Press、New Jersey、1994;「Sequence Analysis in Molecular Biology」、von Heinje,G.、Academic Press、1987;並びに「Sequence Analysis Primer」、Gribskov,M.及びDevereux,J.編、M Stockton Press、New York、1991;並びにCarillo,H.及びLipman,D.,SIAM、J.Applied Math.、48:1073(1988)において説明されている方法が含まれるがこれらに限定されない既知の方法により容易に計算することができる。調べる配列間に最大のマッチを与えるように、同一性を決定する方法をデザインする。さらに、同一性を決定する方法を、一般に入手可能なコンピュータプログラムにより体系化することができる。2つの配列間における同一性を決定するコンピュータプログラムによる方法には、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.ら、Nucleic Acids Research 12(1):387(1984))、BLASTP、BLASTN、及びFASTA(Altschul,S.F.ら、J.Molec.Biol.215:403〜410(1990);並びにAltschulら、Nuc.Acids Res.25:3389〜3402(1997))が含まれるがこれらに限定されない。BLAST Xプログラムは、NCBI並びに他の供給源(「BLAST Manual」、Altschul,S.ら、NCBI NLM NIH、Bethesda、Md.20894;Altschul,S.F.ら、J.Molec.Biol.215:403〜410(1990))から一般に入手可能である。同一性を決定するにはまた、周知のSmith Watermanによるアルゴリズムも用いることができる。
ポリペプチドに対して適用される場合の「単離」(「実質的に純粋」と互換的に用いられる)とは、その由来又は操作により、(i)発現ベクターの部分による発現産物として宿主細胞内に存在するか、又は(ii)天然においてそれが連結されているタンパク質若しくは他の化学的部分以外のタンパク質若しくは他の化学的部分に連結されているか、又は(iii)天然では存在しない、例えば、それが、天然では見出されない形態にあるように、それに少なくとも1つの疎水性部分を添加又は付加することを介して化学的に操作されているタンパク質である、ポリペプチド又はその部分を意味する。「単離」とはさらに、(i)化学的に合成されているタンパク質、又は(ii)宿主細胞内で発現し、且つ、会合及び夾雑するタンパク質から精製されているタンパク質も意味する。該用語は一般に、天然ではそれが共に存在する他のタンパク質及び核酸から分離されているポリペプチドを意味する。ポリペプチドはまた、それを精製する目的で用いられる抗体又はゲルマトリックス(ポリアクリルアミドゲルマトリックス)などの物質からも分離されていることが好ましい。
「宿主免疫反応の誘導」とは、患者が、疾病の徴候又は症状の緩和又は軽減を経験することを意味し、限定なしに述べれば、具体的に、生存の延長がこれに含まれる。本発明による方法のある好ましい実施形態では、該アンタゴニストを投与された患者において、IFN−γを生成させるCD8+ T細胞が活性化されて、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)による免疫反応が誘導される。本発明による方法のある実施形態では、該組成物を投与された患者において、IFN−γを生成させるCD4+ T細胞が活性化されて、ヘルパーT細胞による免疫反応が誘導される。これらのIFN−γを生成させる活性化CD4+ T細胞(すなわち、ヘルパーT細胞)は、CTLだけでなく、B細胞を介する体液性免疫反応も誘導及び維持するのに必要な免疫的支援(例えば、サイトカインの放出を介する)をもたらす。したがって、本発明による方法のある実施形態では、該組成物を投与された患者において、抗原に対する体液性免疫反応が活性化される。一態様では、該組成物にアジュバントを添加して、免疫反応を増大させることができる。当技術分野ではアジュバントがよく知られている。
CD8+ T細胞及び/又はCD4+ T細胞の活性化とは、サイトカイン(例えば、IFN−γ)を生成させる能力を有するT細胞に、1若しくは複数のサイトカインを実際に生成させるか、又はそれらによる1若しくは複数のサイトカインの生成を増大させることを意味する。「CTL反応の誘導」とは、潜在的な細胞傷害性Tリンパ球に、抗原特異的な細胞傷害作用を呈示させることを意味する。「抗原特異的な細胞傷害作用」とは、がんと関連する抗原を提示する細胞に対する細胞傷害作用が、がんと関連しない抗原を提示する細胞に対する細胞傷害作用より大きいことを意味する。「細胞傷害作用」とは、細胞傷害性Tリンパ球が、標的細胞を死滅させる能力を指す。このような抗原特異的な細胞傷害作用は、がんと関連しない抗原を提示する細胞に対する細胞傷害作用の少なくとも約3倍、少なくとも約10倍、少なくとも約100倍以上でありうる。抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)はまた、抗体の結合を介して細胞の殺滅を媒介するナチュラルキラー細胞(「NK細胞」)の活性化も包含する。本明細書で説明される抗体並びに抗原結合断片は、エンドグリンへの結合を介して、NK細胞によるADCCを媒介しうる。
B.ヒト化抗エンドグリン抗体を作製し、発現させる方法
エンドグリンに結合するキメラモノクローナル抗体が開発されている。この抗体は、TRC105(また、c−SN6jとしても知られている)と命名されている。
一態様では、キメラモノクローナル抗体であるTRC105抗体のVL配列及びVH配列(それぞれ、配列番号1及び39)をヒト化することにより、本明細書で説明される抗体並びにそれらの抗原結合断片を創出した。
ヒト化抗体を含めたヒト化免疫グロブリンは、遺伝子操作により構築されている。既に説明されている大半のヒト化免疫グロブリンは、特定のヒト免疫グロブリン鎖(すなわち、アクセプター又はレシピエント)のフレームワークと同一のフレームワークと、非ヒト(すなわちドナー)免疫グロブリン鎖に由来する3つのCDRとを含んでいる。本明細書で説明される通り、ヒト化はまた、ヒト化免疫グロブリン鎖を含む抗体のアフィニティーを増大させるか又は維持するために、それにより、ヒト化免疫グロブリン鎖のフレームワーク内の限定された数のアミノ酸を同定し、アクセプターではなくドナーにおけるこれらの位置のアミノ酸と同じアミノ酸であるようにこれらを選択するための基準も包含しうる。
本発明は、ヒト化抗体を作製する先行手段(例として述べると、マウス抗体をCDRの供給源として用いる手段)において、アフィニティーの喪失に寄与する2つの原因が、(1)マウスCDRをヒトフレームワークと組み合わせると、該フレームワーク内の、CDRに近接するアミノ酸が、マウスアミノ酸ではなく、ヒトアミノ酸となること;理論により拘束されることを意図せずに述べると、これらのアミノ酸の変化は、CDRをわずかながら歪ませる可能性があること(例えば、アミノ酸の変化は、ドナーのマウス抗体における静電相互作用力又は疎水性相互作用力とは異なる静電相互作用力又は疎水性相互作用力を創出する可能性があり、CDRがドナー抗体においてもたらした抗原との接触と同程度に有効な接触を、該歪んだCDRはもたらさない可能性があること)であり;(2)また、CDRに近接するが、その一部ではない(すなわち、やはりフレームワークの一部である)元のマウス抗体内のアミノ酸も抗原と接触し、これがアフィニティーに寄与することである、というモデルに部分的に基づいている。抗体をヒト化すると一般に、フレームワークのアミノ酸がすべてヒトアミノ酸となるため、これらのアミノ酸は失われる。これらの問題を回避し、所望の抗原に対するアフィニティーが極めて強力なヒト化抗体を作製するために、以下の原理のうちの1又は複数を用いて、ヒト化抗体並びにそれらの抗原結合断片を構築することができる。
非限定的な一原理は、例えば、通常とは異なり、ヒト化されるドナー免疫グロブリンと相同である特定のヒト免疫グロブリンに由来するフレームワークをアクセプターとして用いるか、又は多くのヒト抗体に由来するコンセンサスフレームワークをアクセプターとして用いるということである。例えば、マウス重鎖(又は軽鎖)可変領域を、データバンク(例えば、National Biomedical Research Foundation Protein Identification Resource;又はNational Center for Biotechnology Information(NCBI)のタンパク質配列データベース)内のヒト重鎖(又は軽鎖)可変領域と対比すると、異なるヒト領域に対する相同性の程度は、大幅に、例えば、約40%〜約60%、約70%、約80%以上異なりうることが示される。ドナー免疫グロブリンの重鎖可変領域と最も相同的なヒト重鎖可変領域のうちの1つをアクセプター免疫グロブリンとして選択することにより、ドナー免疫グロブリンからヒト化免疫グロブリンへの移行において変化するアミノ酸が減少する。ドナー免疫グロブリンの軽鎖可変領域と最も相同的なヒト軽鎖可変領域のうちの1つをアクセプター免疫グロブリンとして選択することにより、ドナー免疫グロブリンからヒト化免疫グロブリンへの移行において変化するアミノ酸が減少する。一般に、このような技法を用いると、CDRのうちの1又は複数に近接するアミノ酸を変化させることによりそれらの立体構造を歪ませる可能性が低減される。さらに、ヒト化免疫グロブリン鎖を含むヒト化抗体全体の正確な形状を、ドナー抗体の形状に、より酷似させることができ、これによってもまた、CDRを歪ませる可能性が低減される。
また、同じヒト抗体に由来する軽鎖及び重鎖をアクセプター配列として用いて、該ヒト化軽鎖及びヒト化重鎖が互いと好ましい接触をもたらし合う可能性を向上させることもできる。代替的にまた、ヒト生殖細胞系列による異なる抗体配列に由来する軽鎖及び重鎖をアクセプター配列として用いることもでき、このような組合せを用いると、VH及びVLが対象のエピトープに結合するかどうかを、従来のアッセイ(例えば、ELISA)を用いて容易に決定することができる。一例では、軽鎖可変領域配列及び重鎖可変領域配列を併せた全体が、ドナーの軽鎖可変領域配列及び重鎖可変領域配列と極めて相同的となるヒト抗体を選択する。場合によっては、重鎖配列に、より大きな重みをつける。アクセプター免疫グロブリンをどのようにして選択するかとは関わりなく、ヒト化免疫グロブリン鎖のフレームワークにおける少数のアミノ酸を、アクセプターではなくドナーにおけるこれらの位置のアミノ酸と同じアミノ酸となるように選択することにより、場合によっては、より高度なアフィニティーを達成することができる。当技術分野では、アフィニティー成熟の方法が知られている。
ヒト化抗体は一般に、ヒト治療に用いるのに、マウス抗体又はキメラ抗体を上回る、少なくとも3つの潜在的な利点を有する。抗体のエフェクター部分がヒト抗体であるため、ヒト化抗体は、ヒト免疫系の他の部分とより良好に相互作用する(例えば、補体依存性細胞傷害作用(CDC)又は抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)により、より効率的に標的細胞を破壊する)と考えられる。加えて、ヒト免疫系は、ヒト化抗体のフレームワーク領域又は定常領域を異物としては認識しないはずであり、したがって、このような注射抗体に対する抗体反応は、完全に異物のマウス抗体又は部分的に異物のキメラ抗体に対する抗体反応より低度なはずである。最後に、マウス抗体のヒト循環における半減期は、ヒト抗体の半減期よりはるかに短いことが知られている。ヒト化抗体の半減期は、天然のヒト抗体の半減期により近似しうると推測され、これにより、施される投与をより少数回であり、且つより低頻度とすることができる。
抗体並びにそれらの抗原結合断片のヒト化は、当技術分野において知られており、本明細書でも説明される各種の方法により達成することができる。同様にまた、ヒト化抗体の作製も、当技術分野において知られており、本明細書でも説明される各種の方法により達成することができる。
フレームワーク領域を修飾する方法は、当技術分野において知られており、本明細書でも意図される。変化させる1又は複数のフレームワークアミノ酸の位置の選択は、各種の基準に依存する。変化に関与するフレームワークアミノ酸を選択するための1つの基準は、ドナー分子とアクセプター分子とのアミノ酸フレームワーク残基の相対的な差違でありうる。この手法を用いる、変化に関与するフレームワークの位置の選択は、残基の決定における任意の主観的バイアス、又は該残基によるCDRの結合アフィニティーへの寄与における任意のバイアスを回避する利点を有する。
変化に関与するアミノ酸位置を決定するのに用いられうる別の基準は、例えば、CDRの立体構造にとって重要であるか、又はこれに寄与することが知られているフレームワーク残基の選択でありうる。例えば、カノニカルフレームワーク残基が、CDRの立体構造及び/又は構造にとって重要である。カノニカルフレームワーク残基を変化に関与する位置として標的化することを用いて、それと関連するドナーCDR配列に照らして、より適合性のアミノ酸残基を同定することができる。
特定のフレームワーク位置におけるアミノ酸残基の頻度は、変化に関与するフレームワークのアミノ酸位置を選択するのに用いうる別の基準である。例えば、選択されたフレームワークを、そのサブファミリー内の他のフレームワーク配列と比較することにより、1又は複数の特定の位置において低頻度で生じる残基を明らかにすることができる。存在度が低度である残基を保有する位置も同様に、アクセプター可変領域のフレームワークにおいて変化させる位置としての選択に適用可能である。
変化に関与するアミノ酸位置はまた、例えば、CDRに対する近接性に基づいても選択することができる。ある文脈では、FR残基が、CDRの立体構造並びに/又は抗原との結合に関与する可能性がある。さらに、この基準は同様に、本明細書で説明される他の基準によって選択される関与性の位置を優先するのにも用いることができる。したがって、1又は複数のCDRに対して近位の残基と遠位の残基とを差別化することは、変化に関与する位置の数を低減するための一方法を表す。
変化に関与するフレームワークのアミノ酸位置を選択するための他の基準には、例えば、三次元空間において抗原−CDR間インターフェースに近接して存在することが知られるか又はそのように予測されている残基、又はCDRの活性を調節することが予測されている残基が含まれる。同様に、重(VH)鎖可変領域と軽(VL)鎖可変領域との間のインターフェースにおいて接触を形成することが知られているか、又はそのように予測されているフレームワーク残基も選択することができる。このようなフレームワーク位置は、CDR結合ポケット、抗原(エピトープ)との相互作用、又はVH鎖とVL鎖との相互作用を調節することを介して、CDRの立体構造及び/又はアフィニティーに影響を及ぼしうる。したがって、これらのアミノ酸を選択して、結合活性をスクリーニングするための多様な集団を構築すると、CDRの立体構造に対して有害な作用を及ぼす残基を置換するか、又はフレームワークの他の位置で生じる残基の有害な作用を補正するフレームワークの変化を同定するのにこれを用いることができる。
変化させるのに選択しうる他のフレームワーク残基には、溶媒と接触不可能であるアミノ酸位置が含まれる。このような残基は一般に、可変領域内に包埋されており、したがって、CDRの立体構造又はVH鎖とVL鎖との相互作用に影響を及ぼすことが可能である。溶媒との接触可能性は、例えば、ポリペプチドのアミノ酸側鎖により創出される環境の相対的な疎水性から予測することもでき、且つ/又は既知の三次元構造データを介して予測することもできる。
ドナーCDRにおける関与性のアミノ酸位置、並びに変化が所望されるフレームワーク領域内の任意の関与性のアミノ酸位置を選択した後では、選択された位置のうちの一部又は全部におけるアミノ酸変化を、アクセプターの可変領域フレームワーク並びにドナーのCDRをコードする核酸に組み込むことができる。変化させたフレームワーク配列又はCDR配列は、個別に作製及び検査することもでき、逐次的又は同時的に組み合わせて検査することもできる。
変化させた位置のうちのいずれか又はすべてにおけるばらつきは、20の天然アミノ酸すべて又はこれらの機能的同等物及び類似体を含め、数個から多数個の異なるアミノ酸残基の範囲にわたりうる。場合によってはまた、非天然アミノ酸も考慮することが可能であり、当技術分野ではこれらが知られている。
変化させるアミノ酸位置の数及び配置の選択は柔軟であり、ドナー可変領域と比較して実質的に同じであるかこれを超える結合アフィニティーなど、所望の活性を有する改変可変領域を同定するのに意図される使用並びにこれに所望される効率に依存しうる。この点では、改変可変領域集団に組み込まれる変化の数が増大するほど、所望の活性、例えば、ドナーと実質的に同じであるか又はこれを超える結合アフィニティーを呈示する少なくとも1つの分子種を同定することがより効率的となる。代替的に、あるアミノ酸残基又はアミノ酸位置が、結合アフィニティーに大きく寄与するような経験的データ又は実際的なデータを使用者が有する場合は、これらの同定された残基又は位置の範囲内又はこれらの近傍における変化に焦点を絞る改変可変領域の限定された集団を作製することが望ましい場合がある。
例えば、CDRを移植させた可変領域を所望する場合は、改変可変領域の大規模で多様な集団が、ドナーフレームワークとアクセプターフレームワークとの間の、すべての同一でないフレームワーク領域位置と、すべての単一のCDRアミノ酸位置の変化とを包含しうる。代替的に、多様性が中間的な集団には、例えば、ヒト化抗体又は抗原結合断片のアフィニティーを増大させるすべての単一のCDRアミノ酸位置の変化と併せて組み込まれる、同一でない近位のフレームワーク位置だけのサブセットが含まれうる。例えば、すべてのCDRアミノ酸位置の対様変化を加えて組み入れることにより、上記の集団の多様性をさらに増大させることができる。これに対し、1つのフレームワークのアミノ酸位置並びに/又は1つのCDRのアミノ酸位置という少数の位置において変異体残基を組み込む、所定の残基又は位置に焦点を当てる集団も同様に、改変抗体可変領域をスクリーニング及び同定する目的で構築することができる。上記の集団と同様に、フレームワーク領域及びCDR領域の一方又は両方における他の関与性の位置を包含するように、変化させるのに選択される位置をさらに拡大することにより、このように焦点を絞った集団の多様性をさらに増大させることもできる。数個の変化〜多数個の変化の範囲にわたる多数の他の組合せを、フレームワーク領域及びCDRの一方又は両方でさらに使用することができ、これらのすべてにより、所望の活性、例えば、エンドグリンに対する結合活性を有する、CDRを移植した少なくとも1つの改変可変領域を同定するのにスクリーニングしうる、改変可変領域の集団が結果としてもたらされる。本明細書で示される教示及び指針を踏まえるなら、当業者は、フレームワーク若しくはドナーCDRにおいて選択された残基位置又はそれらのサブセットのうちのいずれを変化させて、本発明の改変抗体をスクリーニング及び同定するための集団を作製しうるかを知るか、又は決定することができる。当技術分野では、アミノ酸をコードするコドンが知られている。
抗体をヒト化する別の方法には、「超ヒト化」と称する方法が含まれる。超ヒト化は、非ヒト成熟抗体遺伝子によりコードされる対象可変領域のペプチド配列を得るステップと、該非ヒト抗体可変領域内の少なくとも2つのCDRについて、カノニカルCDR構造型の第1のセットを同定するステップとを伴う。カノニカルCDR構造型とは、Chothiaにより命名された構造型(CITE)である。Chothiaらは、多くの抗体のCDRの最重要部分が、アミノ酸配列レベルにおける多様性の大きさにもかかわらず、ほぼ同一のペプチド骨格の立体構造を採用していることを見出した。これにより、Chothiaは、各鎖における各CDRについて、1個又は数個の「カノニカル構造」を定義した。各カノニカル構造は、主に、ループを形成するアミノ酸残基の隣接セグメントについて、ペプチド骨格のねじれ角のセットを指定する。
カノニカルCDR構造型を同定した後ではまた、ヒト抗体のヒト抗体可変領域についてのペプチド配列ライブラリーも得られる。このライブラリーは、ヒト生殖細胞系列の核酸セグメントによりコードされる生殖細胞系列可変領域の配列を含有し、且つ、成熟ヒト抗体配列も包含しうる。いずれの場合にも、該方法は、ヒト可変領域配列のライブラリー内の各配列につき、少なくとも2つずつのCDRのカノニカルCDR構造型(すなわち、カノニカルCDR構造型の第2のセット)を同定するステップを包含する。カノニカルCDR構造型の第1のセットを、カノニカルCDR構造型の第2のセットと比較(すなわち、マウスカノニカルCDR構造型を、ヒトカノニカルCDR構造型と、可変領域内の対応する位置において比較)し、且つ、非ヒト可変領域及びヒト可変領域のそれぞれの内部の対応する位置のCDR配列について、カノニカルCDR構造型の第2のセットが、カノニカルCDR構造型の第1のセットと同じであるヒト配列を選択することにより、このライブラリーから候補配列のサブセットを選択する。該方法は、候補ヒト可変領域配列に由来するフレームワーク領域と組み合わせた、非ヒト可変領域に由来するCDR配列のうちの(例えば、マウスCDRのうちの)少なくとも2つを包含するキメラ分子を構築するための基盤として、これらの候補ヒト可変領域配列を用いる。構築の結果として、該キメラ抗体のフレームワーク配列は、候補ヒトフレームワーク配列と異なるように、可変領域内の対応する位置において、ヒトCDR配列の各々を置換する非ヒトCDR配列の各々を含有する。
各ドメインについて、候補ヒト抗体配列の対象CDRとの類似性を2つのレベルで評価する。第1に、CDRペプチド骨格について同一の三次元立体構造が求められる。実験により決定された対象CDRの原子座標が得られることはまれであり、よって、対象CDRのChothiaによるカノニカル構造型を決定し、且つ、さらなる考察により、異なるカノニカル構造を保有する候補配列を除外することにより、三次元における類似性を近似する。第2に、対象CDRと残りのヒト候補CDRとの残基間相同性を考察し、相同性が最も大きな候補配列を選択する。
最も大きな相同性の選択は、対象の非ヒト可変領域と同じカノニカル構造を有する候補ヒト可変領域をランク付けするのに用いられる各種の基準に基づく。選択されるセットのメンバーをランク付けするための基準は、アミノ酸配列の同一性の場合もあり、アミノ酸の相同性の場合もあり、これらの両方の場合もある。アミノ酸の同一性とは、アミノ酸残基の位置のマッチによる単純な位置のスコアである。アミノ酸の相同性による類似性とは、特徴的な残基構造における位置の類似性による位置のスコアである。相同性は、例えば、Henikoff及びHenikoff(1992)、「Amino acid substitution matrices from protein blocks」、Proc.Natl.Acad.Sci 89:10915〜10919により説明されている表及び手順に従いスコア付けすることもでき、Henikoff及びHenikoff(1996)により説明されているBLOSUMシリーズによりスコア付けすることもできる。そのステップは、以下の通りである。
a)対象抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインのペプチド配列を決定する。これらは、従来のcDNAクローニング後におけるそれぞれの遺伝子に対するDNA配列決定;ポリメラーゼ連鎖反応により逆転写物から増幅されたクローニング産物、若しくは対象のハイブリドーマ細胞系のDNAに対するDNA配列決定;又は精製された抗体タンパク質のペプチド配列決定など、複数の方法のうちのいずれかにより決定することができる。
b)Kabatによる番号付けシステム(Kabatら、前出、1991)を、対象非ヒト抗体の重鎖配列及び軽鎖配列に適用する。対象の非ヒト抗体のCDRの各々について、カノニカル構造型を決定する。Chothia及びLesk(1987);Chothiaら(1992);Tomlinsonら(1995);Martin及びThornton(1996);並びにAl−Lazikaniら(1997)において論じられている指針に照らしてペプチド配列を検討することにより、この決定を行う。
CDRの各々についてカノニカル構造を決定することの際立った特色は、以下の通りである。重鎖CDR1については、現在のところ、3つのカノニカル構造型が知られている。各カノニカル構造型の残基数が異なるため、新たな配列の割り当ては単純である。Al−Lazikaniら(1997)において説明されている通り、Kabatによる番号付けを該配列に割り当てる場合、残基31〜35に対する番号付けは、それぞれのカノニカル構造について、以下の通りである。
1型のカノニカル構造:31、32、33、34、35。
2型のカノニカル構造:31、32、33、34、35、35a。
3型のカノニカル構造:31、32、33、34、35、35a、35b。
重鎖CDR2については、現在のところ4つのカノニカル構造型が知られている。いくつかの構造型の残基数は固有であり、位置52〜56に対するそれらの固有のKabatによる番号付けにより容易に識別される、すなわち、
1型のカノニカル構造:52、53、54、55、56。
4型のカノニカル構造:52、52a、52b、52c、53、54、55、56。
重鎖CDR2の2型のカノニカル構造の残基数と、重鎖CDR2の3型のカノニカル構造の残基数とは等しく、よって、Chothiaら(1992)により論じられている通り、それらの配列内の鍵残基により識別しなければならない。これらの鍵残基を含有するセグメントに対するKabatによる番号付けは、52、52a、53、54、55である。2型のカノニカル構造は、52a位においてPro又はSerを有し、55位においてGly又はSerを有し、他の位置においては制約を伴わない。3型のカノニカル構造は、54位においてGly、Ser、Asn、又はAspを有し、他の位置においては制約を伴わない。大半の場合には、適正な割り当てを決定するのにこれらの基準で十分である。加えて、2型のカノニカル構造では、フレームワーク残基71が一般に、Ala、Val、Leu、Ile、又はThrであり、3型のカノニカル構造では、フレームワーク残基71が一般に、Argである。
重鎖CDR3が、CDRすべてのうちで最も多様である。CDR3は、その一部が無作為的な性質である、リンパ球に固有の遺伝子過程により生成される。その結果、CDR3のカノニカル構造は、予測が困難である。いずれの場合においても、ヒト生殖細胞系列のV遺伝子セグメントは、Kabatによる94位で終始するが、CDR3をコードするのは95〜102位であるため、該V遺伝子セグメントは、CDR3のどの部分もコードしない。これらの理由で、CDR3のカノニカル構造は一般に、候補ヒト配列を選択するためには考慮されない。
軽鎖CDR1については、カッパ鎖のCDR1について、現在のところ、6つのカノニカル構造型が知られている。各カノニカル構造型の残基数は異なり、よって、新たな配列に対するカノニカル構造型の割り当ては、残基27〜31位に対するKabatによる番号付けから明らかである。
1型のカノニカル構造:27、29、30、31。
2型のカノニカル構造:27、28、29、30、31。
3型のカノニカル構造:27、27a、27b、27c、27d、27e、27f、28、29、30、31。
4型のカノニカル構造:27、27a、27b、27c、27d、27e、28、29、30、31。
5型のカノニカル構造:27、27a、27b、27c、27d、28、29、30、31。
6型のカノニカル構造:27、27a、28、29、30、31。
軽鎖CDR2については、カッパ鎖のCDR2について知られているカノニカル構造型が1つだけであり、よって、例外的な対象抗体配列を禁じると、割り当ては自動的である。軽鎖CDR3については、カッパ鎖のCDR3について最大6つのカノニカル構造型が説明されているが、これらのうちの3つはまれである。一般的な3つの構造型は、残基91〜97位に対するKabatによる番号付けに反映されているそれらの長さにより識別することができる。
1型のカノニカル構造:91、92、93、94、95、96、97(また、95位において必須のPro、並びに90位において必須のGln、Asn、又はHisも伴う)。
3型のカノニカル構造:91、92、93、94、95、97。
5型のカノニカル構造:91、92、93、94、95、96、96a、97。
対象非ヒト抗体のカノニカルCDR構造型を同定した後では、対象抗体と同じ組合せのカノニカル構造型を有する同じ種類の鎖(重鎖又は軽鎖)のヒト遺伝子を同定して、ヒト配列の候補セットを形成する。これらの遺伝子断片の大半は発見されており、既に、カノニカル構造型に割り当てられている(Chothiaら、1992;Tomlinsonら、1995)。
重鎖では、マウスカノニカル構造型に対するCDR1及びCDR2の適合性が評価され、適合しない遺伝子は除外されている。軽鎖では、先ず、対象抗体のカノニカル構造型に対する各ヒト配列のCDR1及びCDR2の適合性を評価する。候補Vk遺伝子のJ領域との融合体の存在を仮定し、且つ、該融合配列にCDR3のカノニカルCDR構造型を決定するための基準を適用することにより、該遺伝子の残基89〜95が、対象抗体と同じカノニカル構造型のCDR3を形成する可能性を評価し、適合しない配列を除外する。
代替的に、対象抗体の可変ドメインが、ヒトゲノム内では得られないカノニカル構造型である場合は、カノニカル構造型が同一ではないが三次元的に類似するヒト生殖細胞系列のV遺伝子を、比較のために考慮することができる。以下で説明される例のうちの2つを含め、このような状況は、マウス抗体におけるカッパ鎖CDR1について生じることが多い。マウス抗体のこのCDRにおいては、6つの可能なカノニカル構造型のすべてが観察されているが、ヒトゲノムがコードするカノニカル構造は、2、3、4、及び6型だけである。これらの状況では、アミノ酸残基長が、対象非ヒト配列のアミノ酸残基長の2残基以内であるカノニカルCDR構造型を比較のために選択することができる。例えば、対象の抗体において1型のカノニカル構造が見出される場合は、2型のカノニカル構造を伴うヒトVk配列を比較に用いることができる。マウス抗体において5型のカノニカル構造が見出される場合は、3型又は4型のカノニカル構造を伴うヒトVk配列を比較に用いることができる。
成熟し、再構成されたヒト抗体配列も、配列を比較するのに考慮することができる。このような考慮が保証されうるとすればそれは、成熟ヒト配列が、(1)生殖細胞系列と酷似する場合;(2)ヒトにおいて免疫原性でないことが知られる場合;又は(3)ヒト生殖細胞系列においては見出されないが、対象抗体のカノニカル構造型と同一のカノニカル構造型を含有する場合が含まれるがこれらに限定されない多様な状況下においてであろう。
マッチするカノニカル構造型を伴う候補V遺伝子の各々についてはまた、対象配列との残基間の配列同一性及び/又は残基間の配列相同性も評価して、該候補ヒト配列をランク付けする。例えば、評価される残基は、以下の通りである:(1)カッパ(κ)軽鎖CDRのアミノ酸残基位置では、CDR1(26〜32)、CDR2(50〜52)、CDR3(91〜96)が評価され;(2)重鎖CDRのアミノ酸残基位置では、CDR1(31〜35)及びCDR2(50〜60)が評価される。加えてまた、重鎖CDR3のアミノ酸残基95〜102位も考慮されうる。
先ず、対象配列と候補ヒト配列との間で同一のアミノ酸残基数により、残基間の相同性をスコア付けする。その後の転換抗体の構築に用いられるヒト配列は、スコアが最高である25パーセントの候補配列の間から選択する。複数の候補配列の同一性スコアが同等である場合など、適切な場合は、必要に応じて、同一でないアミノ酸残基間における類似性をさらに考慮することができる。スコアには、対象の残基と目的の残基との間における、脂肪族残基対脂肪族残基、芳香族残基対芳香族残基、又は極性残基対極性残基のマッチも加味する。別の例では、Henikoff及びHenikoffによるBLOSUM62マトリックスなどのアミノ酸置換マトリックスを用いて、配列相同性の定量的評価を実施することができる。
CDR3配列のC末端におけるフレームワーク領域の目的配列は、既知のヒト生殖細胞系列のJセグメントのセットから選択することができる。上述の通り、候補V遺伝子を評価する目的で指定されたスコア付けの基準を用いて、CDR3とJセグメントとが重複する配列位置について、各Jセグメントに対する残基間の相同性を評価することにより、Jペプチド配列を選択することができる。その後の転換抗体の構築に用いられるJ遺伝子セグメントのペプチド配列は、スコアが最高である25パーセントの候補配列の間から選択する。
例として述べると、キメラ可変鎖は、対象の非ヒト配列に由来する少なくとも2つのCDRと、候補ヒト配列に由来するフレームワーク配列とを含有する。別の例では、キメラ軽鎖が、対象の非ヒト配列に由来する3つのCDRと、候補ヒト配列に由来するフレームワーク配列とを含有する。さらなる例では、キメラ重鎖が、対象の重鎖による少なくとも2つのCDRと、候補ヒト重鎖によるフレームワーク配列とを含有するか、又はキメラ重鎖が、対象の重鎖に由来するCDRの各々と、候補ヒト重鎖によるフレームワーク配列とを含有する。さらに別の例では、キメラ抗体の重鎖が、対象の非ヒト配列に由来するCDR1及び2と、CDR3の残基50〜60と、候補ヒト重鎖に由来するCDRの残基61〜65を、候補ヒト配列のフレームワーク配列と共に含有する。別の例では、キメラ重鎖配列が、対象の非ヒト配列に由来する各CDRと、対象配列に由来するフレームワーク配列27〜30と、候補配列に由来するフレームワーク配列とを含有する。しかし、いずれの場合においても、キメラ抗体分子がそのフレームワーク配列内に含有する、候補ヒト可変領域のフレームワーク配列内のアミノ酸残基と異なるアミノ酸残基は10以下である。
ヒト化抗体のアフィニティーの増大を所望する場合は、転換抗体のCDR内の残基を、他のアミノ酸によりさらに置換することができる。最大10残基を変化させうる重鎖CDR2を除き、CDR内で変化させるアミノ酸残基は4以下であることが典型的であり、CDR内で変化させる残基は2以下であることが最も典型的である。アフィニティーの変化は、本明細書で説明される方法(例えば、Biacore法)など、従来の方法により測定することができる。
抗体を超ヒト化する方法は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第6,881,557号においてより詳細に説明されている。
当技術分野で知られている従来の技法を用いて、ヒト化抗体並びに抗原結合断片を構築及び作製することができる。加えて、特に、高レベルの発現ベクターを使用する場合は、組換えにより調製された抗体を大量に作製しうることが多い。
当技術分野において知られる従来の技法を用いて、抗体を配列決定することができる。一態様では、CDRのうちの1又は複数のアミノ酸配列を、例えば、ヒト抗体(又はその抗原結合断片)の合成配列に挿入して、非ヒト抗体によりヒト患者を治療することの有害な副作用を制限しうるヒト抗体を創出する。また、CDRのうちの1又は複数のアミノ酸配列を合成配列、例えば、AVIMER(商標)などの結合タンパク質に挿入して、ヒト患者に投与するための構築物を創出することもできる。治療される動物の種に応じて、このような技法を改変することができる。例えば、獣医学的治療に使用する場合は、抗体、抗原結合断片、又は抗原結合タンパク質を、ヒト以外(例えば、霊長動物、ウシ、ウマなど)の治療用に合成することができる。
別の態様では、本明細書で提供され、且つ、本明細書に組み込まれる技法など、当技術分野で認知されている技法を用いて、例えば、組換え法を介して、CDRのうちの1又は複数のアミノ酸配列をコードするヌクレオチドを、抗体、抗原結合断片、又は抗原結合タンパク質をコードする既存のポリヌクレオチドの制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入することができる。
発現させる場合、発現系は、グルタミンシンターゼ遺伝子を選択マーカーとして用いるGSシステム(Lonza)を使用する発現系である。略述すると、グルタミンシンターゼ遺伝子を選択マーカーとして用いるGSシステム(Lonza)を用いる電気穿孔(250V)により、CHO細胞へのトランスフェクションを実施する。2mMのグルタミンと共に10%の透析ウシ胎仔血清(FCS)を含有するDMEM(Sigma)中で、野生型のCHO細胞を増殖させる。電気穿孔により、6×107個のCHO細胞に、直鎖化させたDNA300μgをトランスフェクトする。電気穿孔後、細胞を、グルタミンを伴うDMEM中に再懸濁させ、36×96ウェルプレート(ウェル1個当たり50μl)へと播種し、5%CO2中37℃でインキュベートする。翌日、ウェル1個当たり150μlの選択培地(グルタミンを伴わないDMEM)を添加する。約3週間後、非関与抗体を陰性対照として用いるELISAにより、コロニーをスクリーニングする。>20μg/mlを生成させるすべてのコロニーを24ウェルプレートで増殖させ、次いで、2連のT25フラスコで増殖させる。
高レベルで生成させる場合、最も広く用いられている哺乳動物発現系は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損(「dhfr−」)チャイニーズハムスター卵巣細胞によりもたらされる遺伝子増幅手順を使用する発現系である。この発現系は、当業者によく知られている。この系は、ジヒドロ葉酸のテトラヒドロ葉酸への転換を触媒するDHFR酵素をコードするジヒドロ葉酸レダクターゼ(「dhfr」)遺伝子に基づく。高量の生成を達成するためには、dhfr− CHO細胞に、所望のタンパク質をコードする遺伝子と併せて、機能的なDHFR遺伝子を含有する発現ベクターをトランスフェクトする。この場合、所望のタンパク質は、組換え抗体の重鎖及び/又は軽鎖である。
競合的DHFR阻害剤であるメトトレキサート(MTX)の量を増大させることにより、組換え細胞は、dhfr遺伝子を増幅することを介して耐性を発生させる。標準的な場合には、使用される増幅単位が、dhfr遺伝子のサイズよりはるかに大きく、その結果、抗体重鎖が共増幅される。
抗体鎖などのタンパク質を大スケールで作製することを所望する場合、発現レベル並びに使用される細胞の安定性の両方を考慮する。長期間にわたる培養では、単一の親クローンから派生する場合であっても、増幅するうちに、組換えCHO細胞集団が、それらの特異的抗体生成に関する均一性を失う。
本出願は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片をコードする単離ポリヌクレオチド(核酸)、このようなポリヌクレオチドを含有するベクター、並びにこのようなポリヌクレオチドをポリペプチドへと転写及び翻訳するための宿主細胞及び発現系を提供する。
本出願はまた、少なくとも1つの上記のポリヌクレオチドを含むプラスミド、ベクター、転写カセット、又は発現カセットの形態にある構築物も提供する。
本出願はまた、上記の1又は複数の構築物を含む組換え宿主細胞も提供する。本明細書で説明される抗体又はその抗原結合断片を作製する方法であって、コード核酸からの発現を含む該方法が本出願の態様を形成するのと同様に、それ自体として提供される、本明細書で説明される任意の抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸も、本出願の態様を形成する。該核酸を含有する組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することにより、発現を達成することができて簡便である。発現を介する作製の後、任意の適切な技法を用いて抗体又は抗原結合断片を単離及び/又は精製することができ、次いで、必要に応じて用いることができる。本明細書に記載の抗体は、特異性と親和を維持しながら、ヒト抗マウス抗体(HAMA)反応を防ぐために、それらの免疫原性を減らすために念頭に置いて、特定の特徴をもって設計されている。
本明細書で説明される特異的抗体、抗原結合断片、並びにコード核酸分子及びベクターは、例えば、実質的な純粋形態又は均一形態で、それらの天然の環境から単離及び/又は精製して、提供することができる。核酸の場合は、必要とされる機能を伴うポリペプチドをコードする配列以外の、元の核酸又は遺伝子を含ませずに、又はこれらを実質的に含ませずに、これを提供することができる。核酸は、DNAを含む場合もあり、RNAを含む場合もあり、且つ、完全に合成の場合もあり、部分的に合成の場合もある。当技術分野では、精製法がよく知られている。
各種の異なる宿主細胞におけるクローニング系及び発現系がよく知られている。適切な宿主細胞系には、細菌、哺乳動物細胞、酵母系、及びバキュロウイルス系が含まれる。異種ポリペプチドを発現させるための、当技術分野で利用可能な哺乳動物細胞系には、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、並びに他の多くの細胞系が含まれる。一般的な細菌宿主は、大腸菌(E.coli)である。
当技術分野では、大腸菌などの原核細胞における抗体及び抗体断片の発現が十分に確立されている。総説については、例えば、Plueckthun,A.、Bio/Technology 9:545〜551(1991)を参照されたい。また、培養物中の真核細胞における発現も、本明細書で説明される抗体及び抗原結合断片を作製するための選択肢として当業者に利用可能であり、近年における総説については、例えば、それらの各々が参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、Raff,M.E.(1993)、Curr.Opinion Biotech.4:573〜576;Trill J.J.ら(1995)、Curr.Opinion Biotech 6:553〜560を参照されたい。
プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、並びに必要に応じた他の配列を含めた、適切な制御配列を含有する適切なベクターを選択又は構築することができる。ベクターは、必要に応じて、プラスミドの場合もあり、例えば、ファージ又はファージミドなど、ウイルス性の場合もある。さらなる詳細については、例えば、「Molecular Cloning:a Laboratory Manual」:2版、Sambrookら、1989、Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。例えば、核酸構築物の調製、突然変異誘発、配列決定、細胞内へのDNAの導入並びに遺伝子発現、並びにタンパク質解析において核酸を操作するための多くの既知の技法及びプロトコールについては、「Short Protocols in Molecular Biology」、2版、Ausubelら編、John Wiley & Sons、1992において詳細に説明されている。Sambrookら;及びAusubelらによる方法の開示は、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれ、当技術分野においてもよく知られている。
したがって、さらなる態様は、本明細書で開示される核酸を含有する宿主細胞を提供する。またさらなる態様は、このような核酸を宿主細胞へと導入するステップを含む方法を提供する。導入は、任意の利用可能な技法を使用しうる。真核細胞の場合、適切な技法には、例えば、リン酸カルシウムによるトランスフェクション、DEAEデキストラン法、電気穿孔、リポソームを介するトランスフェクション、並びにレトロウイルス又は他のウイルス、例えば牛痘ウイルス、又は昆虫細胞の場合はバキュロウイルスを用いる形質導入が含まれうる。細菌細胞の場合、適切な技法には、例えば、塩化カルシウムによる形質転換、電気穿孔、並びにバクテリオファージを用いるトランスフェクションが含まれうる。
導入に続き、例えば、遺伝子を発現させるための条件下で宿主細胞を培養することにより、核酸からの発現を引き起こすか、又はこれを可能とする。
一実施形態では、核酸を、宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)内に組み込む。組込みは、標準的な技法に従う、ゲノムの組換えを促進する配列を組み入れることにより促進されうる。必要に応じて、Igエンハンサーを上流に組み入れることにより、発現を最大化させることができる。
本出願はまた、上記の通りに抗体又はそれらの抗原結合断片を発現させるために、上記で言及した構築物を発現系内で用いるステップを含む方法も提供する。
本出願はまた、エンドグリンに結合する、本明細書で説明される抗体又は抗原結合配列をコードする、組換えDNA分子若しくはクローニングされた遺伝子、又はそれらの縮重変異体、突然変異体、類似体、又はこれらの断片などの単離核酸にも関する。
一態様では、本出願が、エンドグリンに結合する、本明細書で説明される抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を提供する。
さらなる実施形態では、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片の組換えDNA分子又はそのクローニングされた遺伝子の完全なDNA配列を、発現制御配列へと作動的に連結し、これを適切な宿主内に導入することができる。したがって、本出願は、抗体のVH鎖及び/若しくはVL鎖、又はこれらの部分をコードするDNA配列を含む、クローニングされた遺伝子又は組換えDNA分子により形質転換された、単細胞宿主へと拡張される。
別の特色は、本明細書で開示されるDNA配列の発現である。当技術分野においてよく知られている通り、DNA配列を適切な発現ベクター内の発現制御配列へと作動的に連結し、且つ、この発現ベクターを使用して適切な単細胞宿主を形質転換することにより、DNA配列を発現させることができる。
DNA配列を発現制御配列へとこのように作動的に連結することは、当然ながら、既に該DNA配列の一部というわけではないにせよ、開始コドンであるATGを、該DNA配列の上流における適正なリーディングフレーム内に施すことを包含する。
ポリヌクレオチド及びベクターは、単離形態及び/又は精製形態(例えば、必要とされる機能を伴うポリペプチドをコードするポリヌクレオチド以外の、元のポリヌクレオチドを含まないか又は実質的に含まない形態)で提供することができる。本明細書で用いられる「実質的に純粋な」並びに「実質的に〜を含まない」とは、例えば、含有する外来物質が約20%以下であるか、含有する外来物質が約10%以下であるか、含有する外来物質が約5%以下であるか、含有する外来物質が約4%以下であるか、含有する外来物質が約3%以下であるか、含有する外来物質が約2%以下であるか、又は含有する外来物質が約1%以下である溶液又は懸濁液を指す。
本発明によるDNA配列を発現させるには、多種多様な宿主/発現ベクターの組合せを使用することができる。例えば、有用な発現ベクターは、染色体のDNA配列のセグメント、染色体以外のDNA配列のセグメント、並びに合成DNA配列のセグメントからなることが可能である。適切なベクターには、SV40ウイルスの派生物;並びに既知の細菌プラスミド、例えば、大腸菌プラスミドであるcol El、Pcr1、Pbr322、Pmb9、並びにこれらの派生物;RP4などのプラスミド;ファージDNA、例えば、ファージλの多数の派生物、例えば、NM989;並びに他のファージDNA、例えば、M13、並びに線維状一本鎖ファージDNA;2uプラスミド又はその派生物などの酵母プラスミド;昆虫細胞又は哺乳動物細胞において有用なベクターなど、真核細胞において有用なベクター;ファージDNA又は他の発現制御配列を使用するように修飾されたプラスミドなど、プラスミドとファージDNAとの組合せに由来するベクターなどが含まれるがこれらに限定されない。
本明細書ではまた、1又は複数のポリヌクレオチド構築物を含む組換え宿主細胞も提供される。抗体又はその抗原結合断片を作製する方法であって、ポリヌクレオチドからの発現を含む該方法が本出願の態様を形成するのと同様に、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドも、本出願の態様を形成する。例えば、該ポリヌクレオチドを含有する組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することにより、発現を達成することができる。次いで、任意の適切な技法を用いて抗体又は抗原結合断片を単離及び/又は精製することができ、必要に応じて用いることができる。
これらのベクターにおいて、任意の多種多様の発現制御配列(それに作動的に連結されたDNA配列の発現を制御する配列)を用いて、DNA配列を発現させることができる。このような有用な発現制御配列には、例えば、SV40ウイルス、CMVウイルス、牛痘ウイルス、ポリオーマウイルス、又はアデノウイルスの早期プロモーター又は後期プロモーター;lac系;trp系;TAC系;TRC系;LTR系;ファージλの主要なオペレーター領域及びプロモーター領域;fdコートタンパク質の制御領域;3−ホスホグリセリン酸キナーゼ又は他の糖分解酵素のプロモーター;酸ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5);酵母接合因子のプロモーター;並びに原核細胞若しくは真核細胞又はそれらのウイルスの遺伝子発現を制御することが知られている他の配列;並びにこれらの各種の組合せが含まれる。
各種の異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローニング系及び発現系がよく知られている。適切な宿主細胞系には、細菌、哺乳動物細胞、酵母系、及びバキュロウイルス系が含まれる。異種ポリペプチドを発現させるための、当技術分野で利用可能な哺乳動物細胞系には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、並びに他の多くの細胞系が含まれる。一般的な細菌宿主は、例えば、大腸菌でありうる。
当技術分野では、大腸菌などの原核細胞における抗体又は抗原結合断片の発現が十分に確立されている。総説については、例えば、Plueckthun,A.、Bio/Technology 9:545〜551(1991)を参照されたい。また、培養物中の真核細胞における発現も、当業者に利用可能である(Raff,M.E.(1993)、Curr.Opinion Biotech.4:573〜576;Trill J.J.ら(1995)、Curr.Opinion Biotech 6:553〜560)。
また、多種多様な単細胞の宿主細胞も、DNA配列を発現させるのに有用である。これらの宿主には、大腸菌、シュードモナス(Pseudomonas)属、バチルス(Bacillus)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属の菌株;酵母などの真菌;並びに組織培養物中のCHO細胞、YB/20細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、R1.1細胞、B−W細胞、及びL−M細胞;アフリカングリーンモンキー腎細胞(例えば、COS1細胞、COS7細胞、BSC1細胞、BSC40細胞、及びBMT10細胞);昆虫細胞(例えば、Sf9細胞);及びヒト細胞などの動物細胞;並びに植物細胞など、よく知られた真核生物宿主及び原核生物宿主が含まれる。
すべてのベクター、発現制御配列、及び宿主がDNA配列を発現させるのに同等に良好に機能するわけではないことが理解されるであろう。すべての宿主が同じ発現系と共に同等に良好に機能するわけでもない。しかし、当業者は、本出願の範囲から逸脱することなく、所望の発現を達成するのに不要な実験を行うことなく、適正なベクター、発現制御配列、及び宿主を選択することができるであろう。例えば、ベクターを選択するときは、その中でベクターが機能しなければならないため、宿主についても考慮しなければならない。また、ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、並びに抗生剤マーカーなど、該ベクターによりコードされる他の任意のタンパク質の発現についても考慮する。当業者は、本出願の範囲から逸脱することなく、適正なベクター、発現制御配列、及び宿主を選択して、所望の発現を達成することができる。例えば、ベクターを選択するときは、その中でベクターが機能するため、宿主についても考慮する。また、ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、並びに抗生剤マーカーなど、該ベクターによりコードされる他の任意のタンパク質の発現についても考慮する場合がある。
本出願はまた、少なくとも1つの上記のポリヌクレオチドを含む、本明細書の別の箇所で説明されるプラスミド、ベクター、転写カセット、又は発現カセットの形態にある構築物も提供する。プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、選択マーカー遺伝子、並びに必要に応じた他の配列を含め、適切な制御配列を含有する適切なベクターを選択又は構築することができる。ベクターは、必要に応じて、プラスミドの場合もあり、例えば、ファージ、ファージミドなど、ウイルス性の場合もある。さらなる詳細については、例えば、「Molecular Cloning:a Laboratory Manual」:2版、Sambrookら、1989、Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。例えば、核酸構築物の調製、突然変異誘発、配列決定、細胞内へのDNAの導入並びに遺伝子発現、並びにタンパク質解析において核酸を操作するための多くの既知の技法及びプロトコールについては、「Short Protocols in Molecular Biology」、2版、Ausubelら編、John Wiley & Sons、1992において詳細に説明されている。Sambrookら;及びAusubelらによる方法の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
発現制御配列を選択するときは通常、各種の因子について考慮する。これらには、例えば、系の相対的な強度、その制御可能性、並びに発現させる特定のDNA配列又は遺伝子とのその適合性、特に、潜在的な二次構造に関するその適合性が含まれる。適切な単細胞宿主は、例えば、選択されるベクターとのそれらの適合性、それらの分泌特徴、タンパク質を適正にフォールドするそれらの能力、並びにそれらの発酵に対する要件のほか、発現させるDNA配列によりコードされる産物の宿主に対する毒性、並びに発現産物を精製する容易さを考慮することにより選択する。
さらなる態様は、本明細書で開示される1又は複数のポリヌクレオチドを含有する宿主細胞を提供する。またさらなる態様は、このような1又は複数のポリヌクレオチドを宿主細胞へと導入する方法である、任意の利用可能な技法を提供する。真核細胞の場合、適切な技法には、例えば、リン酸カルシウムによるトランスフェクション、DEAEデキストラン法、電気穿孔、リポソームを介するトランスフェクション、並びにレトロウイルス又は他のウイルス(例えば牛痘ウイルス)、又は昆虫細胞の場合はバキュロウイルスを用いる形質導入が含まれうる。細菌細胞の場合、適切な技法には、例えば、塩化カルシウムによる形質転換、電気穿孔、並びにバクテリオファージを用いるトランスフェクションが含まれうる。
導入に続き、例えば、1又は複数のポリヌクレオチドから1又は複数のポリペプチドを発現させるための条件下で宿主細胞を培養することにより、1又は複数のポリヌクレオチドからの発現を引き起こすか、又はこれを可能とすることができる。誘導系を使用し、アクチベーターの添加により発現を誘導することができる。
一実施形態では、ポリヌクレオチドを、宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)内に組み込むことができる。組込みは、標準的な技法に従う、ゲノムの組換えを促進する配列を組み入れることにより促進されうる。別の実施形態では、宿主細胞内のエピソームベクター上で核酸を維持する。
本明細書では、特定のポリペプチドを発現させるために、上記で言及した構築物を発現系内で用いるステップを包含する方法が提供される。
これらの因子並びに他の因子を考慮すれば、当業者は、発酵により、又は大スケールの動物培養物中において、DNA配列を発現させる各種のベクター/発現制御配列/宿主の組合せを構築することができるであろう。
抗体、抗原結合断片、又は抗原結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、クローニングに加えて、又はクローニングではなくて、組換え/合成により調製することができる。抗体、抗原結合断片、又は結合タンパク質に適切なコドンにより、ポリヌクレオチドをデザインすることができる。一般に、その配列が発現に用いられる場合は、意図される宿主に好ましいコドンを選択する。標準的な方法により調製される重複オリゴヌクレオチドから完全なポリヌクレオチドを構築し、完全なコード配列へと構築することができる。例えば、Edge、Nature、292:756(1981);Nambairら、Science、223:1299(1984);Jayら、J.Biol.Chem.259:6311(1984)を参照されたい。
タンパク質への非天然アミノ酸の部位特異的な組込みの一般的な方法は、Christopher J.Noren、Spencer J.Anthony−Cahill、Michael C.Griffith、Peter G.Schultz、Science、244:182〜188(1989年4月)において説明されている。この方法を用いて、非天然アミノ酸を伴う類似体を創出することができる。
上述の通り、抗体またその抗原結合断片をコードするDNA配列は、クローニングではなくて、合成により調製することができる。抗体又は抗原結合断片のアミノ酸配列に適切なコドンにより、DNA配列をデザインすることができる。一般に、その配列が発現に用いられる場合は、意図される宿主に好ましいコドンを選択する。標準的な方法により調製される重複オリゴヌクレオチドから完全な配列を構築し、完全なコード配列へと構築することができる。例えば、それらの各々が参照によりその全体において本明細書に組み込まれるEdge、Nature、292:756(1981);Nambairら、Science、223:1299(1984);Jayら、J.Biol.Chem.259:6311(1984)を参照されたい。
C.in silicoにおける免疫原性の解析
必要な場合は、本明細書で説明される抗体又はその抗原結合断片を免疫原性について評価し、必要に応じて脱免疫化する(すなわち、1又は複数のT細胞エピトープを変化させることにより、抗体の免疫反応性を低下させる)ことができる。本明細書で説明されるヒト化抗エンドグリン抗体並びに抗原結合断片に存在する免疫原性及びT細胞エピトープについての解析は、ソフトウェア並びに特定のデータベースを用いることにより実施することができる。例示的なソフトウェア及びデータベースには、Cmbridge、EnglandのAntitopeにより開発されたiTope(商標)が含まれる。iTope(商標)は、ヒトMHCクラスIIの対立遺伝子に対するペプチドの結合を解析するための、in silicoにおける技術である。
iTope(商標)ソフトウェアは、ヒトMHCクラスII対立遺伝子に対するペプチドの結合を予測し、これにより、このような「潜在的なT細胞エピトープ」の位置についての最初のスクリーンを提供する。iTope(商標)ソフトウェアは、ペプチドのアミノ酸側鎖と、34のヒトMHCクラスII対立遺伝子による結合グルーブ内の特異的な結合ポケットとの好ましい相互作用を予測する。鍵となる結合残基の位置特定は、被験抗体可変領域配列にわたり、1アミノ酸だけ重複する9merのペプチドをin silicoで生成させることにより達成する。各9merのペプチドは、34のMHCクラスIIアロタイプの各々と対比させて調べることができ、それらのMHCクラスII結合グルーブとの潜在的な「フィット」及び相互作用に基づきスコア付けすることができる。MHCクラスII対立遺伝子のうちの>50%に対して平均結合スコアが高い(iTope(商標)によるスコア付け関数で>0.55)ペプチドを、潜在的なT細胞エピトープと考える。このような領域において、MHCクラスIIグルーブ内部のペプチド結合のコアとなる9アミノ酸による配列を解析して、MHCクラスIIポケット残基(P1、P4、P6、P7、及びP9)、並びにT細胞受容体(TCR)との接触が可能な残基(P−1、P2、P3、P5、P8)を決定する。
任意のT細胞エピトープを同定した後で、アミノ酸残基の変化、置換、付加、及び/又は欠失を導入して、同定されたT細胞エピトープを除去することができる。同定されたエピトープをなお除去しながら、抗体の構造及び機能を保存するように、このような変化をもたらすことができる。例示的な変化には、保存的アミノ酸変化が含まれるがこれらに限定されない。
組換えMHC分子を、合成ペプチドと組み合わせた可溶性複合体を利用する技法が用いられるようになった。これらの試薬及び手順を用いて、ヒト対象又は実験動物対象に由来する末梢血試料から、特定のMHC−ペプチド複合体に結合することが可能であり、多種多様なMHCアロタイプに対する複数の潜在的なエピトープをスクリーニングするのには適合しないT細胞クローンの存在を同定することができる。
T細胞の活性化についての生物学的アッセイは、依然として、被験ペプチド/タンパク質配列が免疫反応を引き起こす能力についてのリーディングをもたらす最も実践的な選択肢である。この種の手法の例には、細菌タンパク質であるスタフィロキナーゼに対してT細胞増殖アッセイを用いた後で、合成ペプチドを用いてT細胞系を刺激するエピトープマッピングを行うことが含まれる。同様に、テタヌス毒素タンパク質による合成ペプチドを用いるT細胞増殖アッセイの結果として、該毒素の免疫優性エピトープ領域が規定されている。一実施形態では、ヒト免疫細胞の単離サブセットを用い、in vitroにおけるそれらの分化を促進し、対象の合成ペプチドの存在下において該細胞を培養し、該培養されたT細胞の増殖が誘導されればそれを測定することにより被験タンパク質内のT細胞エピトープを決定することができる。また、他の技法も用いることができる。このような技法は、細胞単離法、並びに複数のサイトカインサプリメントを伴う細胞培養物を適用して、所望の免疫細胞のサブセット(樹状細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞)を得ることを伴う。別の実施形態では、抗体を、単離されたヒト免疫細胞のサブセットへと添加し、in vitroにおけるそれらの分化を評価し、該培養されたT細胞の増殖が誘導されるとそれを測定することにより、抗体におけるT細胞エピトープの存在を決定することができる。
また、治療的関心の対象である複数のタンパク質に対するMHCクラスIIリガンドを規定するin silicoにおける技法も使用することができる。しかし、タンパク質分解性のプロセシング並びにin vivoにおいて免疫原性ペプチドを提示させる他の生理学的段階などのために、コンピュータベースのスキームにより規定可能なペプチドの全レパートリーのサブセットが、最終的な生物学的関与性を有しうる。したがって、ex vivoにおけるヒトT細胞活性化アッセイを用いて、ポリペプチドのタンパク質配列内で、T細胞の活性化を支援することが可能であり、これにより、このタンパク質における免疫原性の問題に最も生物学的に関与性の領域を同定することができる。本明細書で用いられる「T細胞エピトープ」とは、MHCクラスII分子に結合することが可能であり、T細胞を刺激することが可能であり、且つ/又はMHCクラスII分子と複合したT細胞に結合する(測定可能な形での活性化を必ずしも伴わずに)ことも可能であるアミノ酸配列を指す。
本明細書で開示される方法により、合成ペプチド又は全抗体を、それらが、in vitroで培養されるヒトT細胞の増殖反応を引き起こす能力について調べる。T細胞は、よく知られた手段により全血液試料から容易に得られる、末梢血単核細胞(PBMC)層内に存在する。さらに、PBMC調製物は、生理学的比率のT細胞及び抗原提示細胞を含有し、したがって、それにより、in vitroにおけるサロゲートの免疫反応をもたらすのに適する材料の供給源である。このようなアッセイを実施するときは、2.0に近接するか、又はこれを超える刺激指数が、増殖の誘導についての有用な測定値である。しかし、この刺激指数は、抗体又はその抗原結合断片に応じて異なる可能性があり、各抗体又はその抗原結合断片、並びに対応するペプチドライブラリーのベースラインとの関連で確立することができる。このような検査の一例では、被験ペプチドに対して測定された増殖スコア(例えば、3H−チミジンの取込みを用いる場合は、例えば、1分間当たりの放射能カウント)を、被験ペプチドと接触させていない細胞において測定されるスコアで除することにより、刺激指数(SI)を導出することができて簡便である。反応を引き起こさないペプチドは、SI=1.0をもたらしうるが、また、0.8〜1.2の範囲にあるSI値も注意するに及ばない。記録されるスコアの信頼性を保証するためには、多数の技法手順をこのようなアッセイの実施に組み込むことができる。すべての決定を少なくとも3連で行い、平均スコアを計算しうることが典型的である。計算されたSI≧2.0の場合は、三連のうちの個々のスコアを、異常値データの証拠について検証することができる。被験ペプチドを、少なくとも2つの異なる濃度で細胞と接触させるときは、該濃度を、最小で2倍の濃度差の範囲にわたらせることが典型的であろう。このような濃度範囲は、アッセイに反応速度次元のオフセットをもたらし、単一時点における決定を、例えば、7日目に実施する場合に有用でありうる。一部のアッセイでは、時間経過において複数回の決定を行うことも可能であり、これらもまた、最小で2つの異なる濃度で供給されるペプチド免疫原を用いて行うことができる。同様に、それに対してドナーのPBMC試料の大半が反応性であると予測される対照ペプチドを各アッセイプレートに組み入れることも可能である。インフルエンザウイルス赤血球凝集素ペプチド307〜309である配列PKYVKQNTLKLA(配列番号104) 並びにクラミジア(Chlamydia)属HSP 60ペプチドである配列KVVDQIKKISKPVQH(配列番号105)が、このようなアッセイにおいて用いられる対照ペプチドの例である。代替的に、又は加えて、アッセイではまた、それに対してすべてのPBMC試料が2.0を著明に超えるSIを呈示することが予測されるスカシガイに由来するヘモシアニンなど、強力な全タンパク質抗原も用いうるであろう。当技術分野では、このように用いられる他の対照抗原がよく知られているであろう。
本明細書で開示される方法は、抗体又はそれらの抗原結合断片についてのエピトープマップであって、広範なスペクトルにわたる可能なMHCアロタイプに関与する該エピトープマップを提供しうる。マップは、そのタンパク質が投与される可能性が高い患者の大半について、T細胞により駆動される免疫反応をそのタンパク質が引き起こす能力を消失させるか、又は少なくとも緩和させうる修飾のデザイン又は選択を可能とするのに十分な程度に代表的でありうる。緩和とは、非修飾タンパク質と比較した免疫反応の低減(すなわち、免疫原性の低減)(例えば、約1.5分の1、約2分の1、約5分の1、約10分の1、約20分の1、約50分の1、約100分の1、約200分の1、約500分の1若しくはこれを超える低減、又はこれらのうちの任意の範囲の低減)を指す場合がある。代替的に、免疫原性を低減された抗体又はそれらの抗原結合断片とは、非修飾タンパク質と比較して、それが免疫反応を誘発する能力の百分率による低減(例えば、約1%の低減、約2%の低減、約3%の低減、約4%の低減、約5%の低減、約10%の低減、約20%の低減、約50%の低減、約100%の低減、並びにこれらのうちの任意の範囲の低減)を指す場合がある。したがって、スクリーニング工程を実施するときは、ヒト集団内に現存するMHCクラスII分子のレパートリー(HLA−DR)のうちの少なくとも90%を超える試料をもたらすのに十分な免疫学的多様性を有するドナーのプールから、ナイーブドナーによるPBMC由来T細胞を回収する。所与の合成ペプチド(又は抗体)に対するナイーブT細胞の反応を検出する場合は、実際のペプチド(又は抗体)を、複数のドナーに由来する、単離されたPBMC調製物と接触させるが、ドナーの数(又は「ドナープール」のサイズ)は、実際的な目的で、20未満の非類縁個体ではない可能性が高く、該ドナープール内のすべての試料は、それらのMHCクラスIIハプロタイプに従って予め選択することができる。
本明細書で用いられる「ナイーブドナー」という用語は、環境によってであれ、ワクチン接種によってであれ、例えば、輸血など他の手段によってであれ、本明細書で説明される抗体又はそれらの抗原結合断片にいまだ曝露されていない対象を指す。
T細胞エピトープについてスクリーニングする場合、複数の異なる健康なドナーであるが、治療的にタンパク質を施されてはいないドナーに由来する末梢血試料からT細胞を供給することができる。必要な場合は、抗体を用いて1又は複数のポリペプチドの存在又は非存在を同定する、ELISAなどの従来のアッセイを用いて、患者の血液試料を、特定のポリペプチドの存在について調べることができる。アッセイは、当技術分野で知られる従来の手順を用いて、in vitroにおいて培養されたPBMCを用いて実施され、且つ、該PBMCを、抗体など、対象のタンパク質(すなわち、ライブラリー)又は全タンパク質を表す合成ペプチド分子種と接触させるステップと、適切なインキュベーション期間を追跡するステップと、細胞増殖など、T細胞活性化の誘導を測定するステップとを伴う。測定は、任意の適切な手段を介することが可能であり、例えば、実験用計器を用いて細胞物質への3Hの蓄積が容易に測定される3H−チミジンの取込みを用いて実施することができる。PBMC試料と合成ペプチド又は全タンパク質との各混合物についての細胞増殖の程度を、非処理PBMC試料中において見られる細胞増殖の程度と比べて検証することができる。また、それらについて増殖作用が予測されている、1若しくは複数のペプチド又は全タンパク質による処理後において見られる増殖反応も参照することができる。この点では、既知の広範なMHC制限を伴うペプチド又は全タンパク質、並びにとりわけ、DPアイソタイプ又はDQアイソタイプに対するMHC制限を伴うペプチドエピトープを用いることが有利であるが、本発明は、このような制限ペプチド又は制限タンパク質の使用に限定されない。このようなペプチドについては、例えば、インフルエンザウイルス赤血球凝集素ペプチド並びにクラミジア属HSP60ペプチドについて上記で説明した。
非限定的な一例では、T細胞エピトープをマップし、その後、本明細書で説明される方法を用いてこれらを修飾することができる。エピトープマップの構築を容易とするため、合成ペプチドのライブラリーを作製する。ペプチドの各々は15アミノ酸残基の長さであり、各々は、連鎖する次のペプチドと12アミノ酸残基だけ重複する、すなわち、逐次的に連鎖する各ペプチドは、さらなる3アミノ酸を増分として解析に付加する。このようにして、所与の任意の隣接するペプチド対は、18アミノ酸の連続配列としてマップされる。ナイーブT細胞アッセイを用いてT細胞マップを規定する一方法を、以下の実施例で例示する。T細胞マップを規定する方法を介して同定されるペプチドの各々は、MHCクラスII分子に結合し、且つ、アッセイシステムにより検出可能な増殖バーストを引き起こすのに十分なアフィニティーで、少なくとも1つの同族TCRと係合することが可能であることが示唆される。
別の非限定的な例では、抗体がプロセシングされて、MHCクラスII分子に結合し、且つ、アッセイシステムにより検出可能な増殖バーストを引き起こすのに十分なアフィニティーで、少なくとも1つの同族TCRと係合するT細胞エピトープを生成させる可能性を評価する。
本明細書で説明される分子は、組換え法の使用を含めた複数の方法のうちのいずれかにより調製することができる。本明細書で示されるタンパク質の配列及び情報を用いて、アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド(DNA)を推測することができる。これは、例えば、DNAstarソフトウェアシリーズ[DNAstar Inc、Madison、Wis.、USA]などのコンピュータソフトウェアツール又はこれに類似するコンピュータソフトウェアツールを用いて達成することができる。本明細書では、ポリペプチド又は重要な相同体、変異体、切断型、延伸型、又はこれらのさらなる改変型をコードする任意のこのようなポリヌクレオチドが意図される。
本明細書では、修飾配列が、ヘルパーT細胞反応の誘導を(部分的に、又は完全に)低減するように、T細胞エピトープをマップ(同定)し、且つ、これらのエピトープを修飾する方法が提供される。修飾には、同様の変化を及ぼす修飾ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのコドンにもたらされる、アミノ酸の置換、欠失、又は挿入が含まれる。当技術分野では、アミノ酸残基をコードするコドンがよく知られている。組換えDNA法を用いて、標的配列を指向する突然変異誘発を達成することが可能であり、本明細書で説明される多くのこのような技法が利用可能であり、当技術分野では、上記で説明した技法などが知られている。一般に、部位特異的突然変異誘発法がよく知られている。略述すると、オリゴヌクレオチドを指向するPCRによる突然変異誘発のための一本鎖鋳型を生成させるバクテリオファージベクターを使用する。ファージベクター(例えば、M13)は市販されており、当技術分野では、それらの使用が一般によく知られている。部位指向突然変異誘発ではまた、二本鎖プラスミドも同様に日常的に使用され、これにより、対象のポリヌクレオチドをファージからプラスミドへと導入するステップが廃される。所望の突然変異配列を保有する合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、この鋳型からの修飾(所望の突然変異体)DNAのin vitroにおける合成を誘導することができ、且つ、このヘテロ二重鎖DNAを用いて、コンピテントの大腸菌を形質転換し、所望のクローンの増殖による選択及び同定を行うことができる。代替的に、プライマー対を二本鎖ベクター鎖の2つの個別の鎖へとアニールさせて、所望の突然変異(単数又は複数)を伴う、対応する相補鎖の両方を、PCR反応において同時に合成することができる。
一実施形態では、プラスミドDNA鋳型を用いる、Quick Change部位指向突然変異誘発法を使用することができる。対象の挿入標的遺伝子を含有するプラスミド鋳型のPCRによる増幅は、所望の突然変異を含有する2つの合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて達成する。各々がベクターの対向鎖と相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを、突然変異誘発グレードのPfuTurbo DNAポリメラーゼを介して、温度サイクリングにより伸長させる。オリゴヌクレオチドプライマーを組み込むと、スタガードニックを含有する突然変異プラスミドが生成される。増幅された非メチル化産物をDpn Iで処理して、メチル化親DNA鋳型を消化させ、突然変異を含有する新たに合成されたDNAについて選択する。大腸菌株から単離されるDNAは、DAMメチラーゼによりメチル化されており、メチル化DNA及び半メチル化DNAに特異的であるDpn I消化を受け易い。反応生成物を高効率の大腸菌株へと形質転換して、所望の突然変異を含有するプラスミドを得る。当技術分野では、ポリペプチド内にアミノ酸修飾を導入するさらなる方法がよく知られており、これらはまた、本発明でも用いることができる。
タンパク質に適する修飾には、特定の残基又は残基の組合せに対するアミノ酸置換が含まれうる。T細胞エピトープを消失させるためには、該T細胞エピトープの活性の低減若しくは消失を達成することが予測されるアミノ酸配列内の適切な地点又はアミノ酸残基においてアミノ酸置換をもたらす。実際には、適切な地点又はアミノ酸残基が、MHCクラスII結合グルーブ内に備えられるポケットのうちの1つにおいてアミノ酸残基の結合が生じる地点又はアミノ酸残基と一致することが好ましい。このような修飾は、該クレフトの第1ポケット内で生じる結合を、ペプチドのいわゆる「P1」位又は「P1アンカー」位において変化させうる。ペプチドのP1アンカー残基と、MHCクラスII結合グルーブの第1ポケットとの結合相互作用の質が、全ペプチドの全体的な結合アフィニティーの主要な決定因子であると認められている。一般に、ポケット内への収容がそれほど容易でないアミノ酸残基を組み込む置換(例えば、より親水性の残基への置換)が、アミノ酸配列のこの位置においては適切であろう。また、ペプチド内で、MHC結合クレフト内の他のポケット領域における結合位置と一致する位置にあるアミノ酸残基についても考慮し、これらも本発明の範囲内とする。
所与の潜在的なT細胞エピトープにおける単一のアミノ酸修飾は、1又は複数のT細胞エピトープを消失させうる1つの方途を表す。単一のエピトープにおける修飾の組合せを意図することができるが、これらは、個別に規定されるエピトープが互いと重複する場合に適切でありうる。さらに、MHCクラスII結合グルーブとの関連では「ポケット残基」の位置と一致しない位置であるが、該アミノ酸配列内では任意の地点において、アミノ酸の修飾(所与のエピトープ内における単独の修飾、又は単一のエピトープ内における組合せによる修飾)をもたらすこともできる。相同的構造に関して修飾をもたらすこともでき、当技術分野で知られ、且つ、本明細書で説明されるin silicoの技法を用いて実施される構造的方法を、ポリペプチドの既知の構造的特徴に基づいて実施することもできる。変化(修飾)は、変異体分子の構造又は生物学的活性を保存することを意図しうる。このような1又は複数の代償的変化にはまた、ポリペプチドに由来する特定のアミノ酸残基の欠失又は付加(挿入)も含まれうる。加えて、分子の構造を変化させ、且つ/又は分子の生物学的活性を低減し、また、T細胞エピトープも消失させ、これにより、該分子の免疫原性を低減する修飾ももたらすことができる。本明細書では、あらゆる種類の修飾を意図する。
タンパク質分子からエピトープを除去するさらなる手段は、本明細書で概観されるナイーブT細胞活性化アッセイのスキームを、参照によりその全体が本明細書にもまた組み込まれる、WO02/069232において説明されるスキームに従い開発されたin silicoのツールと併せて、協同的に用いることである。該ソフトウェアは、抗原提示の過程を、ポリペプチド−MHCクラスII分子間結合相互作用のレベルでシミュレートして、所与の任意のポリペプチド配列の結合スコアを示す。集団内に現存する主要なMHCクラスIIアロタイプのうちの多くについて、このようなスコアを決定する。このスキームは、任意のポリペプチド配列を調べることが可能なので、ポリペプチドが、MHCクラスII結合グルーブと相互作用する能力に関して、アミノ酸の置換、付加、又は欠失の帰結を予測することができる。結果として、MHCクラスII分子と相互作用し、これにより、免疫原性のT細胞エピトープとして機能することが可能なアミノ酸を、それらの数を低減して含有する新たな配列構成をデザインすることができる。所与の任意の1つのドナー試料を用いる生物学的アッセイでは、評価しうるDRアロタイプへの結合が最大4つであるが、in silicoの過程では、>40のアロタイプを同時に用いて同じポリペプチド配列を調べることができる。実際に、この手法は、複数のMHCアロタイプと相互作用するそれらの能力が変化している新たな配列変異体のデザインを方向づけることが可能である。当業者には明らかである通り、そこにおいて望ましくないエピトープを除去する目的を達成するための、複数の代替的な置換のセットももたらすことができるであろう。しかし、結果としてもたらされる配列は、本明細書で開示され、したがって、本出願の範囲内に収まる、特定の組成物と密接に相同であることが認識されるであろう。
MHCクラスIIリガンドを同定し、且つ、MHCクラスIIリガンドを欠く配列類似体をデザインするためのin silicoのツールを、エピトープマッピング、並びに、場合によって、T細胞活性化についての生物学ベースのアッセイを用いる再検査と協同させて用いる組合せ法が、本出願のさらなる方法及び実施形態である。この実施形態による一般的な方法は、以下のステップ:
i)ナイーブT細胞活性化アッセイ、並びに対象のタンパク質配列を集合的に包含する合成ペプチドを用いて、T細胞を活性化させることが可能なエピトープ領域を同定するステップ、
ii)ペプチドリガンドの、1又は複数のMHCアロタイプとの結合をシミュレートする計算スキームを用いて、ステップ(i)において同定されたエピトープ領域を解析し、これにより、該エピトープ領域内のMHCクラスIIリガンドを同定するステップ、
iii)ペプチドリガンドの、1又は複数のMHCアロタイプとの結合をシミュレートする計算スキームを用いて、MHCクラスII分子にはもはや結合しないか、又は結合するMHCアロタイプがより少数であり、これに伴うアフィニティーもより低度であるエピトープ領域(単数又は複数)内に包含されるMHCリガンドの配列類似体を同定ステップ、並びに、場合によって、
iv)ナイーブT細胞活性化アッセイ、並びに対象のタンパク質において同定されるエピトープ領域を全体的に又は集合的に包含する合成ペプチドを用い、ナイーブT細胞活性化アッセイにおいて野生型(親)配列と並列的に配列類似体を調べるステップを含む。
一実施形態では、非修飾抗体又はその抗原結合断片と比較して、免疫原性を低減する修飾抗体又はその抗原結合断片を作製する方法が、抗体又はその抗原結合断片のアミノ酸配列内の少なくとも1つのT細胞エピトープを同定するステップと、同定された少なくとも1つのT細胞エピトープ内の少なくとも1つのアミノ酸残基を修飾するステップとを含む。
別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片のアミノ酸配列内の少なくとも1つのT細胞エピトープを同定する工程と、同定された少なくとも1つのT細胞エピトープ内の少なくとも1つのアミノ酸残基を修飾する工程とを介して、非修飾抗体又はその抗原結合断片と比較して、免疫原性を低減する修飾抗体又はその抗原結合断片を作製する。
さらに別の実施形態では、非修飾抗体又はその抗原結合断片と比較して、免疫原性を低減する修飾抗体又はその抗原結合断片を選択する方法が、該抗体又はその抗原結合断片のアミノ酸配列内の少なくとも1つのT細胞エピトープを同定するステップと、同定された少なくとも1つのT細胞エピトープ内の少なくともエピトープで1つのアミノ酸残基を修飾するステップと、非修飾抗体又はその抗原結合断片と比較して、免疫原性を低減する修飾抗体又はその抗原結合断片を選択するステップとを含む。
本明細書で説明されるT細胞エピトープは、その領域によりさらに特徴付けることができる。このような領域は、エピトープコア、N末端、及びC末端を包含する。本明細書で用いられる「エピトープコア」とは、T細胞エピトープのコアとなる9merのアミノ酸配列を指す。該エピトープコアは、N末端及び/又はC末端において、コアとなる9merのアミノ酸配列に隣接する0、1、2、又は3アミノ酸残基をさらに包含しうる。したがって、ある実施形態では、エピトープコアが、約9アミノ酸〜約15アミノ酸の長さの範囲でありうる。
本明細書で用いられる「N末端」とは、エピトープコアのN末端に隣接するアミノ酸を指し、該エピトープコアのN末端に隣接し、且つこれの上流にある、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、又は9アミノ酸を包含する。
本明細書で用いられる「C末端」とは、エピトープコアのC末端に隣接するアミノ酸を指し、該エピトープコアのC末端に隣接し、且つこれの下流にある、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、又は9アミノ酸を包含する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、1又は複数の修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、2つの修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、3つの修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、4つの修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、5つの修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、6つの修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、7つの修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、8つの修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、9つの修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、10の修飾を含有する。
一実施形態では、修飾抗体、又はその抗原結合断片が、20までの修飾を含有する。
本明細書では、アミノ酸配列が配列番号93(VK1AA)として示される軽鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号89(VH1A2)として示される重鎖可変領域とを含む抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
本明細書では、アミノ酸配列が配列番号88、89、90、91、及び92のいずれか1つとして示される重鎖可変領域を含むヒト化及び脱免疫化抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
本明細書では、アミノ酸配列が配列番号93、94、95、96、97、100、102、及び103のいずれか1つとして示される軽鎖可変領域を含むヒト化及び脱免疫化抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
本明細書では、エンドグリンに結合するヒト化及び脱免疫化抗体、又はその抗原結合断片であって、アミノ酸配列が配列番号89として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号93として示される軽鎖可変領域とを含み、
(i)重鎖可変領域が、Kabatによる番号付けシステムを使用する、49位におけるグリシン(G)のアラニン(A)又はセリン(S)による置換;51位におけるアラニン(A)のイソロイシン(I)による置換;52b位におけるリシン(K)のアルギニン(R)又はアスパラギン(Q)による置換;78位におけるロイシン(L)のバリン(V)による置換からなる群から選択される1又は複数の修飾をさらに含み、且つ、
(ii)軽鎖可変領域が、Kabatによる番号付けシステムを使用する、4位におけるメチオニン(M)のロイシン(L)による置換;19位におけるアラニン(A)のバリン(V)による置換;22位におけるトレオニン(T)のセリン(S)による置換;48位におけるアラニン(A)のイソロイシン(I)による置換;51位におけるトレオニン(T)のセリン(S)による置換からなる群から選択される1又は複数の修飾をさらに含む、該抗体、又はそれらの抗原結合断片が提供される。
本明細書では、アミノ酸配列が配列番号88、89、90、91及び92として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号93、95、96、97、100、102、又は103として示される軽鎖可変領域とを含む、ヒト化及び脱免疫化抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
本明細書では、前述の例及び実施形態に加えて、1又は複数のT細胞エピトープにおいて1又は複数のアミノ酸修飾を伴う修飾ヒト化及び脱免疫化抗体又はその抗原結合断片を意図する。本明細書の非限定的な一例では、少なくとも1つのT細胞エピトープにおいて少なくとも1つの修飾を有する抗体又はそれらの抗原結合断片が提供される。本明細書の非限定的な別の例では、本明細書で説明されるT細胞エピトープのうちの1、2、3、4、5、6、又は7つにおいて少なくとも1つのアミノ酸修飾を有する抗体又はそれらの抗原結合断片が提供される。さらなる非限定的な例は、複数のT細胞エピトープにおいて複数のアミノ酸修飾を有する抗体又はそれらの抗原結合断片を包含する。本明細書では、上記で説明した、任意の数の抗体又はそれらの抗原結合断片、T細胞エピトープにおける任意のアミノ酸修飾の組合せを意図する。
T細胞エピトープ及びアロタイプの頻度
抗原内に見出される個々のエピトープは、特定のMHCクラスIIアロタイプにより優先的に提示される可能性があり、且つ同様に、同じ抗原内の他の特異的なエピトープは、MHCクラスII分子上に提示されない可能性もある。特定のエピトープが、特定のMCHクラスII分子とこのように会合することは、個体のMHCクラスIIアロタイプに依存することが示されている。また、T細胞エピトープを除去するために、抗体又はそれらの抗原結合断片を修飾するときにも、特定のエピトープの、特定のアロタイプとの会合を考慮する場合がある。このような考慮により、特定のアロタイプ(例えば、あるMHCクラスIIアロタイプを有する特定の対象集団)に対して高度に特異的な修飾を、抗体又はその抗原結合断片に対してもたらすことが可能となりうる。1又は複数の対象のMHCクラスIIアロタイプは、当技術分野において知られる遺伝子型決定法により容易に決定することができ、これにより、このアロタイプに合わせて抗体又はそれらの抗原結合断片を修飾するときに考慮される、T細胞エピトープの、所与のアロタイプとの会合を容易に同定することができる。T細胞エピトープとMHCクラスIIアロタイプとの会合を同定することについては、以下の実施例でより詳細に説明される。本明細書では、所与のエピトープについて同定されたMHCクラスIIとの会合に合わせてT細胞エピトープを修飾した修飾抗体又はそれらの抗原結合断片が意図される。
D.抗エンドグリン抗体
FR及び/又はCDRをコードする核酸のすべて、並びに選択されたアミノ酸位置の変化のすべてを同時的に組み込むことは、例えば、組換え及び化学合成を含めた、当業者に知られる各種の方法により達成することができる。例えば、同時的な組込みは、例えば、アクセプター可変領域のヌクレオチド配列を、ドナーCDRをコードする核酸と併せて融合させる形で化学合成し、且つ、変化可能なアミノ酸残基を保有させるために選択した位置に複数の対応するアミノ酸コドンを組み込むことにより達成することができる。
本明細書で説明される方法を用いて生成される、エンドグリンに特異的に結合するヒト化及び脱免疫化抗体並びにそれらの抗原結合断片を、ELISAが含まれるがこれに限定されない従来の方法を用いる、本明細書で提供されるか、又は当技術分野において知られているアッセイを用いて、エンドグリンに結合する能力について調べることができる。また、本明細書で説明される抗体のアフィニティーも、Biacore又は表面プラズモン共鳴が含まれるがこれらに限定されない従来の方法を用いて決定することができる。抗体の活性は、抗体は、実施例に記載のような競合アッセイを用いて試験され、BMP9の機能を阻害するかどうかを決定される。例えばSmad 1/5/8の活性を評価するための細胞シグナル伝達経路は、当技術分野で知られており、本明細書で使用するために企図される。
本明細書で説明される抗体並びにそれらの抗原結合断片は、TRC105抗体のVH配列及びVL配列をヒト化することにより構築した。このヒト化を達成するために、TRC105のVH鎖及びVL鎖の三次元モデルを創出及び解析した。次いで、VH鎖及びVL鎖を、TRC105のVH鎖及びVL鎖とのそれらの相同性に基づいてそこからヒトVH鎖及びVL鎖を選択したヒト生殖細胞系列の配列データベースと個別に比較した。ヒト化するのに選択されたヒトVL配列は、O2/O12(VK1−39)(配列番号2)であった。O2/O12は、TRC105との配列同一性が65%であり、その遺伝子はヒト生殖細胞系列のレパートリーにおいて高度に発現している。ヒト化するのに選択されたヒトVH配列は、VH3−15(配列番号40)であった。VH3−15は、TRC105との配列同一性が70%であり、ヒト生殖細胞系列のレパートリーにおいてかなりの頻度で発現している。TRC105とヒト配列との間で異なっていたアミノ酸位置を、TRC105の3Dモデルにおいて検討し、修飾する場合にどの置換を考慮するかを決定した。3Dモデル解析に基づくアミノ酸の選択基準には、例えば、アミノ酸と関連する立体効果、アミノ酸の相対電荷、並びに可変重鎖及び/又は可変軽鎖内のアミノ酸の位置が含まれるがこれらに限定されない。ヒトフレームワーク領域について同定及び提起される置換を、O2及びVH3−15のヒトフレームワーク領域に組み込み、TRC105のCDRを、対応するO2及びVH3−15のヒトフレームワーク領域に移植する結果として、多数のヒト化抗体又は抗原結合断片が得られる。加えて、軽鎖のFR−4は、ヒト生殖細胞系列Jセグメントの配列であるJk4から派生させる。同様に、重鎖のFR−4は、ヒト生殖細胞系列Jセグメントの配列であるJH4から派生させる。
抗体並びにそれらの抗原結合断片は、可変重(VH)鎖、可変軽(VL)鎖、これらの両方、又はこれらの結合部分を有しうる。一実施形態では、VH鎖が、配列番号41〜43のうちのいずれかとして示されるアミノ酸配列、又はこれらの結合部分を有する。このようなVH鎖は、フレームワーク領域配列が配列番号44〜62のうちのいずれかとして示されうる。別の実施形態では、VL鎖が、配列番号3〜5のうちのいずれかとして示されるアミノ酸配列、又はこれらの結合部分を有する。このようなVL鎖のフレームワーク領域配列は、配列番号6〜38のうちのいずれかとして示されうる。
本明細書では、アミノ酸配列が配列番号3として示される軽鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号41として示される重鎖可変領域とを含む、抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
本明細書では、抗体、又はその抗原結合断片であって、アミノ酸配列が配列番号3として示される軽鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号41として示される重鎖可変領域とを有し;重鎖可変領域が、Kabatによる番号付けシステムを使用する、49位におけるグリシン(G)のアラニン(A)による置換;76位におけるアスパラギン(N)のセリン(S)による置換;77位におけるトレオニン(T)のアルギニン(R)による置換;78位におけるロイシン(L)のバリン(V)による置換;82a位におけるアスパラギン(N)のイソロイシン(I)による置換;89位におけるバリン(V)のイソロイシン(I)又はロイシン(L)による置換;94位におけるトレオニン(T)のアルギニン(R)又はグリシン(G)による置換;108位におけるロイシン(L)のトレオニン(T)による置換;109位におけるバリン(V)のロイシン(L)による置換;並びに113位におけるセリン(S)のアラニン(A)による置換からなる群から選択される1又は複数の修飾をさらに含み;且つ、該軽鎖可変領域が、Kabatによる番号付けシステムを使用する、1位におけるアスパラギン酸(D)のグルタミン(Q)による置換;3位におけるグルタミン(Q)のバリン(V)による置換;4位におけるメチオニン(M)のロイシン(L)による置換;5位におけるトレオニン(T)のセリン(S)による置換;36位におけるチロシン(Y)のフェニルアラニン(F)による置換;46位におけるロイシン(L)のプロリン(P)による置換;47位におけるロイシン(L)のトリプトファン(W)による置換;60位におけるセリン(S)のバリン(V)又はアラニン(A)による置換;70位におけるアスパラギン酸(D)のセリン(S)による置換;71位におけるフェニルアラニン(F)のチロシン(Y)による置換;100位におけるグルタミン(G)のアラニン(A)による置換;並びに106位におけるイソロイシン(I)のロイシン(L)による置換からなる群から選択される1又は複数の修飾をさらに含む、該抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
本明細書では、アミノ酸配列が配列番号41、42、又は43として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号3、4又は5として示される重鎖可変領域とを含む、エンドグリンに結合する抗体、又はその抗原結合断片が提供される。抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号41として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号3として示される軽鎖可変領域とを含みうる。抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号41として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号4として示される軽鎖可変領域とを含みうる。抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号41として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号5として示される軽鎖可変領域とを含みうる。抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号42として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号3として示される軽鎖可変領域とを含みうる。抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号42として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号4として示される軽鎖可変領域とを含みうる。抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号42として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号5として示される軽鎖可変領域とを含みうる。抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号43として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番3として示される軽鎖可変領域とを含みうる。抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号43として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号4として示される軽鎖可変領域とを含みうる。抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号43として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号5として示される軽鎖可変領域とを含みうる。
このような実施形態のうちのいずれかでは、重鎖可変領域が、76位におけるアスパラギン(N)のセリン(S)による置換;77位におけるトレオニン(T)のアルギニン(R)による置換;82a位におけるアスパラギン(N)のイソロイシン(I)による置換;89位におけるバリン(V)のイソロイシン(I)又はロイシン(L)による置換;94位におけるトレオニン(T)のグリシン(G)による置換;108位におけるロイシン(L)のトレオニン(T)による置換;109位におけるバリン(V)のロイシン(L)による置換;並びに113位におけるセリン(S)のアラニン(A)による置換からなる群から選択される1又は複数の修飾をさらに含むことが可能であり、且つ、該軽鎖可変領域が、Kabatによる番号付けシステムを使用する、1位におけるアスパラギン酸(D)のグルタミン(Q)による置換;3位におけるグルタミン(Q)のバリン(V)による置換;5位におけるトレオニン(T)のセリン(S)による置換;36位におけるチロシン(Y)のフェニルアラニン(F)による置換;60位におけるセリン(S)のバリン(V)又はアラニン(A)による置換;70位におけるアスパラギン酸(D)のセリン(S)による置換;100位におけるグリシン(G)のアラニン(A)による置換;並びに106位におけるイソロイシン(I)のロイシン(L)による置換からなる群から選択される1又は複数の修飾をさらに含みうる。
本明細書では、エンドグリンに結合する抗体、又はその抗原結合断片であって、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有し、
前記重鎖可変領域が、
(i)配列番号66のCDR1、配列番号67のCDR2、並びに配列番号68のCDR3;
(ii)配列番号44のアミノ酸配列、又は1若しくは複数の保存的置換を除き、配列番号44のアミノ酸配列を有する重鎖FR1;
(iii)配列番号45のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、49位におけるグリシン(G)のアラニン(A)による置換を除き、配列番号45のアミノ酸配列を有する重鎖FR2;
(iv)配列番号47のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)76位におけるアスパラギン(N)のセリン(S)による置換と;
(b)77位におけるトレオニン(T)のアルギニン(R)による置換と;
(c)78位におけるロイシン(L)のバリン(V)による置換と;
(d)82a位におけるアスパラギン(N)のイソロイシン(I)による置換と;
(e)89位におけるバリン(V)のイソロイシン(I)若しくはロイシン(L)による置換と;
(f)94位におけるトレオニン(T)のアルギニン(R)若しくはグリシン(G)による置換と
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号47のアミノ酸配列を有する重鎖FR3;並びに
(v)配列番号56のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)108位におけるロイシン(L)のトレオニン(T)による置換と;
(b)109位におけるバリン(V)のロイシン(L)による置換と;
(c)113位におけるセリン(S)のアラニン(A)による置換と
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号56のアミノ酸配列を有する重鎖FR4を含み;
且つ、前記軽鎖可変領域が、
(i)配列番号63のCDR1、配列番号64のCDR2、並びに配列番号65のCDR3;
(ii)配列番号6のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)1位におけるアスパラギン酸(D)のグルタミン(Q)による置換と;
(b)3位におけるグルタミン(Q)のバリン(V)による置換と;
(c)4位におけるメチオニン(M)のロイシン(L)による置換と;
(d)5位におけるトレオニン(T)のセリン(S)による置換と;
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖FR1;
(iii)配列番号20のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)36位におけるチロシン(Y)のフェニルアラニン(F)による置換と;
(b)46位におけるロイシン(L)のプロリン(P)による置換と;
(c)47位におけるロイシン(L)のトリプトファン(W)による置換と;
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖FR2;
(iv)配列番号28のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)60位におけるセリン(S)のバリン(V)又はアラニン(A)による置換と;
(b)70位におけるアスパラギン酸(D)のセリン(S)による置換と;
(b)71位におけるフェニルアラニン(F)のチロシン(Y)による置換と;
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号28のアミノ酸配列を有する軽鎖FR3;並びに
(v)配列番号35のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)100位におけるグリシン(G)のアラニン(A)による置換と;
(b)106位におけるイソロイシン(I)のロイシン(L)による置換と;
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号35のアミノ酸配列を有する軽鎖FR4;
を含む、該抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号66として示される重鎖可変領域CDR1、アミノ酸配列が配列番号67として示される重鎖可変領域CDR2、アミノ酸配列が配列番号68として示される重鎖可変領域CDR3、アミノ酸配列が配列番号63として示される軽鎖可変領域CDR1、アミノ酸配列が配列番号64として示される軽鎖可変領域CDR2、アミノ酸配列が配列番号65として示される軽鎖可変領域CDR3を含みうる。
一実施形態では、抗体、又はその抗原結合断片がエンドグリンに結合し、且つ、はアミノ酸配列が配列番号44として示される重鎖可変領域FR1と、アミノ酸配列が配列番号45として示される重鎖可変領域FR2と、アミノ酸配列が配列番号47として示される重鎖可変領域FR3と、アミノ酸配列が配列番号56として示される重鎖可変領域FR4とを含む。
別の実施形態では、抗体、又はその抗原結合断片がエンドグリンに結合し、且つ、アミノ酸配列が配列番号44として示される重鎖可変領域FR1と、アミノ酸配列が配列番号46として示される重鎖可変領域FR2と、アミノ酸配列が配列番号48として示される重鎖可変領域FR3と、アミノ酸配列が配列番号56として示される重鎖可変領域FR4とを含む。
別の実施形態では、抗体、又はその抗原結合断片が、アミノ酸配列が配列番号6として示される軽鎖可変領域FR1と、アミノ酸配列が配列番号20として示される軽鎖可変領域FR2と、アミノ酸配列が配列番号28として示される軽鎖可変領域FR3と、アミノ酸配列が配列番号35として示される軽鎖可変領域FR4とを含む。
別の実施形態では、抗体、又はその抗原結合断片がエンドグリンに結合し、且つ、アミノ酸配列が配列番号6として示される軽鎖可変領域FR1と、アミノ酸配列が配列番号21として示される軽鎖可変領域FR2と、アミノ酸配列が配列番号29として示される軽鎖可変領域FR3と、アミノ酸配列が配列番号35として示される軽鎖可変領域FR4とを含む。
別の実施形態では、抗体、又はその抗原結合断片がエンドグリンに結合し、且つ、アミノ酸配列が配列番号7として示される軽鎖可変領域FR1と、アミノ酸配列が配列番号21として示される軽鎖可変領域FR2と、アミノ酸配列が配列番号29として示される軽鎖可変領域FR3と、アミノ酸配列が配列番号35として示される軽鎖可変領域FR4とを含む。
本明細書では、アミノ酸配列が配列番号42として示される重鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号4として示される軽鎖可変領域とを含む抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
本明細書では、エンドグリンに結合する抗体、又はその抗原結合断片であって、アミノ酸配列が配列番号4として示される軽鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号42として示される重鎖可変領域とを有し;前記重鎖可変領域が、Kabatによる番号付けシステムを使用する、49位におけるグリシン(G)のアラニン(A)による置換;76位におけるアスパラギン(N)のセリン(S)による置換;77位におけるトレオニン(T)のアルギニン(R)による置換;78位におけるロイシン(L)のバリン(V)による置換;82a位におけるアスパラギン(N)のイソロイシン(I)による置換;89位におけるバリン(V)のイソロイシン(I)又はロイシン(L)による置換;94位におけるアルギニン(R)のトレオニン(T)又はグリシン(G)による置換;108位におけるロイシン(L)のトレオニン(T)による置換;109位におけるバリン(V)のロイシン(L)による置換;並びに113位におけるセリン(S)のアラニン(A)による置換からなる群から選択される1又は複数の修飾をさらに含み;且つ、該軽鎖可変領域が、Kabatによる番号付けシステムを使用する、1位におけるアスパラギン酸(D)のグルタミン(Q)による置換;3位におけるグルタミン(Q)のバリン(V)による置換;4位におけるメチオニン(M)のロイシン(L)による置換;5位におけるトレオニン(T)のセリン(S)による置換;36位におけるチロシン(Y)のフェニルアラニン(F)による置換;46位におけるプロリン(P)のロイシン(L)による置換;47位におけるトリプトファン(W)のロイシン(L)による置換;60位におけるセリン(S)のバリン(V)又はアラニン(A)による置換;70位におけるアスパラギン酸(D)のセリン(S)による置換;71位におけるチロシン(Y)のフェニルアラニン(F)による置換;100位におけるグルタミン(G)のアラニン(A)による置換;並びに106位におけるイソロイシン(I)のロイシン(L)による置換からなる群から選択される1又は複数の修飾をさらに含む、該抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
本明細書では、エンドグリンに結合する抗体、又はその抗原結合断片であって、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域が、
(i)配列番号66のCDR1、配列番号67のCDR2、並びに配列番号68のCDR3;
(ii)配列番号44のアミノ酸配列、又は1若しくは複数の保存的置換を除き、配列番号44のアミノ酸配列を有する重鎖FR1;
(iii)配列番号45のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、49位におけるグリシン(G)のアラニン(A)による置換を除き、配列番号45のアミノ酸配列を有する重鎖FR2;
(iv)配列番号47のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)76位におけるアスパラギン(N)のセリン(S)による置換と;
(b)77位におけるトレオニン(T)のアルギニン(R)による置換と;
(c)78位におけるロイシン(L)のバリン(V)による置換と;
(d)82a位におけるアスパラギン(N)のイソロイシン(I)による置換と;
(e)89位におけるバリン(V)のイソロイシン(I)若しくはロイシン(L)による置換と;
(f)94位におけるアルギニン(R)のトレオニン(T)若しくはグリシン(G)による置換と
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号47のアミノ酸配列を有する重鎖FR3;並びに
(v)配列番号56のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)108位におけるロイシン(L)のトレオニン(T)による置換と;
(b)109位におけるバリン(V)のロイシン(L)による置換と;
(c)113位におけるセリン(S)のアラニン(A)による置換と
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号56のアミノ酸配列を有する重鎖FR4を含み;
且つ、前記軽鎖可変領域が、
(i)配列番号63のCDR1、配列番号64のCDR2、並びに配列番号65のCDR3;
(ii)配列番号6のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)1位におけるアスパラギン酸(D)のグルタミン(Q)による置換と;
(b)3位におけるグルタミン(Q)のバリン(V)による置換と;
(c)4位におけるメチオニン(M)のロイシン(L)による置換と;
(d)5位におけるトレオニン(T)のセリン(S)による置換と;
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖FR1;
(iii)配列番号21のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)36位におけるチロシン(Y)のフェニルアラニン(F)による置換と;
(b)46位におけるプロリン(P)のロイシン(L)による置換と;
(c)47位におけるトリプトファン(W)のロイシン(L)による置換と;
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖FR2;
(iv)配列番号29のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)60位におけるセリン(S)のバリン(V)又はアラニン(A)による置換と;
(b)70位におけるアスパラギン酸(D)のセリン(S)による置換と;
(b)71位におけるチロシン(Y)のフェニルアラニン(F)による置換と;
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号28のアミノ酸配列を有する軽鎖FR3;並びに
(v)配列番号35のアミノ酸配列、又はKabatによる番号付けシステムを使用する、
(a)100位におけるグリシン(G)のアラニン(A)による置換と;
(b)106位におけるイソロイシン(I)のロイシン(L)による置換と;
からなる群から選択される1若しくは複数の置換を除き、配列番号35のアミノ酸配列を有する軽鎖FR4;
を含む、該抗体、又はその抗原結合断片が提供される。
可変ドメインのうちの実質的部分は、それらに介在するフレームワーク領域と併せて、3つのCDR領域を包含する。また、該部分は、第1のフレームワーク領域並びに第4のフレームワーク領域の一方又は両方のうちの少なくとも約50%ずつも包含し、この50%は、該第1のフレームワーク領域のC末端側の50%、並びに該第4のフレームワーク領域のN末端側の50%である。可変ドメインの実質的部分のN末端又はC末端におけるさらなる残基は、天然の可変ドメイン領域とは通常関連しない残基でありうる。例えば、組換えDNA法により作製される、本明細書で説明されるヒト化エンドグリン抗体並びに抗原結合断片の構築は、クローニングステップ又は他の操作ステップを容易にする目的で導入されるリンカーによりコードされるN末端残基又はC末端残基の導入を結果としてもたらしうる。他の操作ステップには、可変ドメインを、免疫グロブリン重鎖、他の可変ドメイン(例えば、ダイアボディーを作製する場合)、又は以下でさらに詳細に論じられるタンパク質標識を含めたさらなるタンパク質配列へと接合するためのリンカーの導入が含まれる。
アミノ酸配列が、本明細書で説明される抗体のCDR3領域として実質的に示されるヒト化エンドグリンCD3領域は、エンドグリンに対する該CDR3領域の結合を可能とする構造内に保有される。CDR3を保有する構造とは、該CDR3領域が、再構成された免疫グロブリン遺伝子によりコードされる天然のVH抗体可変ドメイン及びVL抗体可変ドメインのCDR3領域に対応する位置に配置される、抗体の重鎖配列若しくは軽鎖配列又はこれらの実質的部分の構造でありうる。
本発明の非限定的な一例では、アミノ酸配列が配列番号68として示されるCDR3を有する可変重鎖、並びに/又はアミノ酸配列が配列番号65として示されるCDR3を有する可変軽鎖を含有する抗体又はそれらの抗原結合断片が提供される。一実施形態では、可変重鎖のアミノ酸配列が、配列番号68として示されるCDR3のアミノ酸配列によるCDR3の置換を除き、配列番号40として示される。別の実施形態では、可変軽鎖のアミノ酸配列が、配列番号65として示されるCDR3のアミノ酸配列によるCDR3の置換を除き、配列番号2として示される。加えて、このようなCDR3を含有する可変領域/鎖は、例えば、上記で説明した通りに示される1又は複数のFRアミノ酸配列(又は1若しくは複数のさらなる修飾を含有するこのようなFR)を含むことが可能であり、この場合、抗体又は抗原結合断片は、VH領域及びVL領域の各々において3つずつのCDR並びに4つずつのFRを有し、エンドグリンに特異的な結合活性を有する。加えてまた、多様な抗体Jセグメントも、これらの可変領域内で置換し、可変領域内のさらなる変化をもたらすことができる。
さらに本明細書では、代替的に、「超ヒト化」抗エンドグリン抗体又はそれらの抗原結合断片とも称する、抗エンドグリン抗体のヒト化形も提供される。このような超ヒト化抗体又はそれらの抗原結合断片は、アミノ酸配列が配列番号71又は72として示される軽鎖可変領域と、アミノ酸配列が配列番号75として示される重鎖可変領域とを含みうる。
別の態様では、本出願が、そのVH配列及びVL配列を有する抗体のうちの少なくとも5%が、このような抗体との競合によりエンドグリンとの結合を遮断される条件下にあるELISAアッセイにおいて、本明細書で説明されるヒト化抗エンドグリン抗体又は抗原結合断片と競合することが可能なヒト化抗体を提供する。
本明細書では、エンドグリンに結合し、又はBMP9の結合を阻害する、エンドグリンの活性を調節する中和抗体又は抗原結合断片が提供される。該中和抗体は、エンドグリンに結合することにより、例えば、血管新生を阻害する。
一態様では、上記で説明したヒト化抗体のうちのいずれか1つの抗原結合断片が、本明細書で説明されるFab断片、Fab’断片、Fd断片、F(ab’)2断片、Fv断片、scFv断片、単鎖結合ポリペプチド(例えば、Fc部分を伴うscFv)、又はこれらの他の任意の機能的断片である。
本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片は、以下でより詳細に説明される検出適用又は診断適用において有用である。
本明細書で説明される抗体又はそれらの抗原結合断片は、必要な場合、所望の機能性を保持しながら、該抗体の特異的な特性を変化させるようにさらに修飾することができる。例えば、一実施形態では、化合物を修飾して、in vivoにおける安定性、可溶性、バイオアベイラビリティー、又は半減期など、該化合物の薬物動態特性を変化させることができる。本明細書で説明される抗体又はそれらの抗原結合断片は、診断適用及び/又は治療適用で用いられる、治療用部分、検出可能部分、又はこれらの両方をさらに含みうる。
本明細書で説明される抗体又はそれらの抗原結合断片はまた、免疫コンジュゲートとしても用いることができる。明細書及び特許請求の範囲を目的として本明細書で用いられる免疫コンジュゲートとは、本発明によるヒト化抗エンドグリン抗体又はそれらの断片と、少なくとも1つの治療標識とからなるコンジュゲートを指す。当技術分野では、このような抗腫瘍剤が知られており、これらには、毒素、薬物、酵素、サイトカイン、放射性核種、及び光力学療法剤が含まれるがこれらに限定されない。毒素には、リシンA鎖、突然変異体のシュードモナス属外毒素、ジフテリアトキソイド、ストレプトニグリン、ボアマイシン、サポリン、ゲロニン、並びにブタクサの抗ウイルス性タンパク質が含まれるがこれらに限定されない。薬物には、ダウノルビシン、メトトレキサート、及びカリケアマイシンが含まれる。放射性核種には、放射性金属が含まれる。サイトカインには、形質転換増殖因子(TGF)β、インターロイキン、インターフェロン、及び腫瘍壊死因子が含まれるがこれらに限定されない。光力学療法剤には、ポルフィリン並びにそれらの誘導体が含まれるがこれらに限定されない。当技術分野では、さらなる治療用標識が知られており、本明細書でもまた、これらが意図されている。当業者には、抗エンドグリンmAb又はそれらの断片を、少なくとも1つの抗腫瘍剤と共に複合体化する方法が知られている(すなわち、Ghetieら、1994、Pharmacol.Ther.63:209〜34により総説されている抗体コンジュゲート)。このような方法は、分子を結合させるか又は連結するのに用いられる、複数の利用可能なヘテロ二官能性試薬のうちの1つを使用しうる。本明細書ではさらに、治療用標識などの連結分子についてのさらなる方法と共に、さらなる放射性核種も説明されている。
抗体又はそれらの抗原結合断片は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を添加することによるなど、当技術分野において各種の目的について知られる技法を用いて修飾することができる。PEG修飾(PEG化)は、循環時間の改善、可溶性の改善、タンパク質分解に対する耐性の改善、抗原性及び免疫原性の低減、バイオアベイラビリティーの改善、毒性の低減、安定性の改善、並びに製剤化の容易さのうちの1又は複数をもたらしうる(総説については、Francisら、International Journal of Hematology 68:1〜18、1998を参照されたい)。
Fc部分を含有しない抗原結合断片の場合、該断片にFc部分を付加(例えば、組換えにより)して、例えば、患者に投与された場合の血液循環中における抗原結合断片の半減期を延長することができる。当技術分野では、適切なFc領域の選択、並びにこのような断片を組み込む方法について知られている。その循環における半減期を延長するように、しかし、その生物学的活性は失わないように、対象のポリペプチドにIgGのFc領域を組み込むことは、例えば、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる米国特許第6,096,871号において説明されている技法など、当技術分野で知られている従来の技法を用いて達成することができる。患者に投与されたとき、血液循環中における抗原結合断片の半減期を延長させるように、抗体のFc部分をさらに修飾することができる。修飾は、例えば、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる米国特許第7,217,798号において説明されている手段など、当技術分野における従来の手段を用いて決定することができる。
また、例えば、それらの各々が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,091,321号及び同第6,737,056号において説明される方法など、循環における抗体ベースの融合タンパク質の半減期を改善する他の方法も知られている。加えて、それらの複合体のN−グリコシド結合型糖鎖にフコースが含有されないように、抗体並びにそれらの抗原結合断片を作製するか又は発現させることもできる。複合体のN−グリコシド結合型糖鎖からフコースを除去することは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)及び補体依存性細胞傷害作用(CDC)が含まれるがこれらに限定されない、抗体並びにそれらの抗原結合断片のエフェクター機能を増大させることが知られている。同様に、エンドグリンに結合しうる抗体又はそれらの抗原結合断片を、それらのC末端において、任意の抗体アイソタイプ、例えば、IgG、IgA、IgE、IgD、及びIgM、並びに該アイソタイプのサブクラス、特に、IgG1、IgG2b、IgG2a、IgG3、及びIgG4に由来する免疫グロブリン重鎖の全部又は一部に結合させることができる。
加えて、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片はまた、それらが血液脳関門を越えることが可能となるように修飾することもできる。本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片に対するこのような修飾は、多形性神経膠芽細胞腫(GBM)などの脳疾患を治療することを可能とする。抗体又は抗原結合断片などのタンパク質が、血液脳関門を越えることを可能とする例示的な修飾については、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2007/0082380号において説明されている。
免疫グロブリンのグリコシル化は、それらのエフェクター機能、構造的安定性、並びに抗体生成細胞からの分泌速度に対して著明な効果を及ぼすことが示されている(Leatherbarrowら、Mol.Immunol.22:407(1985))。これらの特性の一因となる炭水化物基は一般に、抗体の定常(C)領域に結合する。例えば、CH2ドメインのアスパラギン297におけるIgGのグリコシル化はIgGが、補体依存性細胞傷害作用の古典的経路を活性化させる能力を十全化するのに必要とされる(Tao及びMorrison、J.Immunol.143:2595(1989))。CH3ドメインのアスパラギン402におけるIgMのグリコシル化は、抗体の適正な構築並びに細胞溶解活性に必要である(Muraoka及びShulman、J.Immunol.142:695(1989))。IgA抗体のCH1ドメイン及びCH3ドメインにおける162位及び419位などのグリコシル化部位を除去すると、細胞内分解並びに少なくとも90%の分泌阻害がもたらされる(Taylor及びWall、Mol.Cell.Biol.8:4197(1988))。加えて、それらの複合体のN−グリコシド結合型糖鎖にフコースが含有されないように、抗体並びにそれらの抗原結合断片を作製するか又は発現させることもできる。複合体のN−グリコシド結合型糖鎖からフコースを除去することは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)及び補体依存性細胞傷害作用(CDC)が含まれるがこれらに限定されない、抗体並びに抗原結合断片のエフェクター機能を増大させることが知られている。これらの「脱フコース化」抗体並びに抗原結合断片は、複合体のN−グリコシド結合型糖鎖にフコースが組み入れられるのに必要な酵素経路及び生化学経路をそれらがもはや含有しないように遺伝子操作されたトランスジェニック動物、トランスジェニック植物、又は細胞系(また、フコシルトランスフェラーゼノックアウト動物、フコシルトランスフェラーゼノックアウト植物、フコシルトランスフェラーゼノックアウト細胞としても知られる)が含まれるがこれらに限定されない、当技術分野において知られている分子クローニング法を使用する各種の系を介して作製することができる。フコシルトランスフェラーゼノックアウト細胞となるように操作されうる細胞の非限定的な例には、CHO細胞、SP2/0細胞、NS0細胞、及びYB2/0細胞が含まれる。
また、可変(V)領域における免疫グロブリンのグリコシル化も観察されている。Sox及びHoodは、ヒト抗体のうちの約20%が、V領域においてグリコシル化されていることを報告している(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 66:975(1970))。Vドメインのグリコシル化は、V領域配列において、N結合型グリコシル化シグナルであるAsn−Xaa−Ser/Thrが偶然に発生することから生じると考えられているが、当技術分野では、免疫グロブリンの機能において役割を果たすと認識されていない。
可変ドメインのフレームワーク残基におけるグリコシル化は、抗体による抗原との結合相互作用を変化させうる。本発明は、抗体のアフィニティーを増大させる目的で、ヒト化免疫グロブリン鎖のフレームワーク又はCDRにおける限定された数のアミノ酸を選択して突然変異させる(例えば、残基の置換、欠失、又は付加により)ための基準を包含する。
一般に、1又は複数の突然変異を、V領域のフレームワーク、典型的には、1若しくは複数のCDR領域に隣接する領域、並びに/又は1若しくは複数のフレームワーク領域に導入することにより、所定のポリペプチド抗原に対する結合アフィニティーを調節することができる。このような突然変異は、該ポリペプチドのグリコシル化部位の配列を破壊又は創出するが、疎水性構造特性には実質的に影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換の導入を伴うことが典型的である。プロリン残基を導入する突然変異は回避することが典型的である。抗体並びにそれらの抗原結合断片のグリコシル化については、グリコシル化に関する参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,350,861号においてさらに説明されている。
抗体又はそれらの抗原結合断片は、短期送達用に製剤化することもでき、持続(長期)送達用に製剤化することもできる。
以下でより詳細に説明される通り、抗体又はそれらの抗原結合断片はまた、エンドグリンを精製するのにも用いることができ、且つ/又は試料若しくは患者におけるエンドグリンレベルを検出して、エンドグリンと関連する疾患若しくは障害を検出若しくは診断するのにも用いることができる。
このような方法を用いて生成される、エンドグリンに結合するヒト化抗体、抗原結合断片、及び抗原結合タンパク質は、それらの結合アフィニティー、アビディティー、及び中和能のうちの1又は複数について調べることができる。有用なヒト化抗体、抗原結合断片、及び抗原結合タンパク質は、患者に投与して、線維症の状態、疾患、又は障害を予防、阻害、管理、又は治療するのに用いることができる。
本明細書では、エンドグリンに結合するヒト化抗体又はそれらの抗原結合断片を同定する方法が提供される。抗体並びに抗原結合断片は、結合アフィニティー、会合速度、解離速度、及びアビディティーのうちの1又は複数について評価することができる。一態様では、抗体を、それらがエンドグリン又はその中にエンドグリン結合配列が存在するポリペプチドの活性を中和する能力について評価することができる。結合アフィニティー、会合速度、解離速度、及びアビディティーの測定は、ELISA(酵素結合免疫測定アッセイ)、スカチャード解析、BIACORE解析などのほか、一般的に用いられ、且つ、当業者に知られている他のアッセイが含まれるがこれらに限定されない、当技術分野で認知されているアッセイ(表面プラズモン共鳴法)を用いて達成することができる。
エンドグリンに対する抗体の結合、並びに/又は抗体並びにそれらの抗原結合断片が、例えば、線維症を阻害する能力の測定は、例えば、ELISA(酵素免疫測定アッセイ)、競合的結合アッセイ、ELISPOTアッセイ、又は当技術分野において知られる他の任意の有用なアッセイを用いて決定することができる。これらのアッセイは一般に用いられており、当業者によく知られている。
非限定的な一実施形態では、ELISAアッセイを用いて、エンドグリンに結合する特異的な抗体又はそれらの抗原結合断片の結合能を測定することができる。
ELISAなどのアッセイはまた、他の抗体又はそれらの抗原結合断片と比較して、特異性の増大を呈示する抗体又はそれらの抗原結合断片を同定するのにも用いることができる。ELISAなどのアッセイはまた、1又は複数のポリペプチドにわたるエピトープ、並びに1又は複数のエンドグリン分子種にわたるエピトープに結合する抗体又はそれらの抗原結合断片を同定するのにも用いることができる。個別のアッセイチャンバーにおいて同時に、被験抗体又はそれらの抗原結合断片を、エンドグリンのエピトープを含有するポリペプチドの異なる分子種における1又は複数のエピトープに結合する能力についてスクリーニングして、エンドグリンに結合する抗体又はそれらの抗原結合断片を同定する並列的ELISAを行うことにより、特異性アッセイを実施することができる。当業者によく知られる、みかけの結合アフィニティーを測定する別の技法は、表面プラズモン共鳴法(BIACORE 2000システムにより解析する)(Liljebladら、Glyco.J.2000、17:323〜329)である。標準的な測定並びに従来の結合アッセイについては、Heeley,R.P.、Endocr.Res.2002、28:217〜229により説明されている。
実施例に記載されるように、TGF−β受容体へのBMP9の結合の遮断を評価するための競合結合アッセイはまた、線維症を治療、抑制、又は改善するそれらの能力を評価するために使用することができる。
本明細書におけるエンドグリンに対するヒト化及び脱免疫化抗体はまた、それらが、線維症を治療する能力についてアッセイすることもできる。当業者に知られている任意の適切なアッセイを用いて、このような効果をモニタリングすることができる。本明細書では、このような技法のうちのいくつかが説明されている。一例では、本明細書で説明される抗体並びに抗原結合断片を、エンドグリンに結合するそれらの能力についてアッセイする。別の例では、表面プラズモン共鳴(SPR)により、本明細書で説明される抗体並びに抗原結合断片のアフィニティー定数を決定する。
II.組成物
本明細書で説明される化合物の各々は、許容される担体又は賦形剤と共に組み合わせて、組成物として用いることができる。このような組成物は、in vitro若しくはin vivoにおいて解析するか、又はin vivo若しくはex vivoにおいて対象に投与して、開示される化合物により対象を治療するのに有用である。
したがって、医薬組成物は、有効成分に加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定化剤、又は当業者によく知られる他の物質を包含しうる。このような物質は非毒性であるものとし、有効成分の有効性に干渉しないものとする。担体又は他の物質の正確な性質は、投与経路に依存する。
本明細書で説明される方法により同定される対象のタンパク質、例えば、抗体又は抗原結合断片を含む医薬製剤は、乾燥凍結製剤又は水溶液の形態で、所望の純度を有する該タンパク質を、生理学的に許容される任意選択の担体、賦形剤、又は安定化剤(「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、16版、Osol,A.編(1980))と混合することにより、調製して保存することができる。許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、使用される用量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、且つ、リン酸、クエン酸、並びに他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含めた抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコール、又はベンジルアルコール;メチルパラベン又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含めた、単糖、二糖、並びに他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、又はソルビトールなどの糖;ナトリウムイオンなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);並びに/又はTWEEN(登録商標)、PLURNICS(登録商標)、若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる担体、賦形剤、又は安定化剤である。
本明細書に記載の組成物中に含めることができる他の試薬は、2013年9月5日に出願された国際出願番号PCT/US2013 /058265に意図され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
許容される担体は、投与される患者に対して生理学的に許容可能であり、それらと共に/それらにより投与される化合物の治療特性を保持する。許容される担体並びにそれらの製剤は一般に、例えば、「Remington’s pharmaceutical Sciences」(18版、A.Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990)において説明されている。例示的な1つの担体は、生理学的食塩液である。本明細書で用いられる「薬学的に許容される担体」という語句は、対象化合物を、1つの器官若しくは体内の1つの部分の投与部位から、別の器官若しくは体内の別の部分へと、又はin vitroのアッセイシステムにおいて保有又は移動させることに関与する、液体又は固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又は封入材料など、薬学的に許容される物質、組成物、又は媒体を意味する。各担体は、製剤の他の成分に適合的であり、且つ、それが投与される対象に対して傷害性でないという意味において許容可能である。また、許容される担体は、対象化合物の特異的な活性を変化させることもないものとする。
本発明の一態様では、医薬投与に適合的な溶媒(水性溶媒又は非水性溶媒)、溶液、エマルジョン、分散媒体、コーティング、等張剤並びに吸収促進剤又は吸収遅延剤を含めた、薬学的に許容される組成物又は生理学的に許容される組成物が提供される。したがって、医薬組成物又は医薬製剤とは、対象における医薬使用に適する組成物を指す。医薬組成物及び医薬製剤は、本明細書で説明される量の化合物と、薬学的に許容される担体又は生理学的に許容される担体を包含する。
組成物は、特定の投与経路(すなわち、全身投与経路又は局所投与経路)に適合するように製剤化することができる。したがって、組成物は、各種の経路を介して投与するのに適する担体、希釈剤、又は賦形剤を包含する。
別の実施形態では、組成物中の化合物の安定性を改善するために、且つ/又は組成物の放出速度を制御するために、必要な場合は、該組成物が、許容される添加剤をさらに含みうる。許容される添加剤は、対象化合物の特異的な活性を変化させない。例示的な、許容される添加剤には、マンニトール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、トレハロース、ソルボース、スクロース、ガラクトース、デキストラン、デキストロース、フルクトース、ラクトースなどの糖、並びにこれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。許容される添加剤は、デキストロースなど、許容される担体及び/又は賦形剤と組み合わせることができる。代替的に、例示的な、許容される添加剤には、ペプチドとの安定性を増大させ、且つ、溶液のゲル化を減少させる、ポリソルベート20又はポリソルベート80などの界面活性剤が含まれるがこれらに限定されない。界面活性剤は、溶液の0.01%〜5%の量で組成物に添加することができる。許容されるこのような添加剤の添加は、保管時における組成物の安定性を増大させ、且つ、保管寿命を延長する。
医薬組成物は、例えば、皮下注射、皮下注射、硝子体内注射、皮内注射、静脈内注射、動脈内注射、腹腔内注射、又は筋肉内注射が含まれるがこれらに限定されない注射を介して投与することができる。本明細書では、各種の注射用の組成物製剤において用いられる賦形剤及び担体が意図される。以下の説明は、例だけを目的とするものであり、組成物の範囲を限定することを意図しない。注射用組成物には、水性溶液(水に可溶性である場合)又は分散液、並びに滅菌注射溶液又は滅菌注射分散液を即時調製するための滅菌粉末が含まれる。静脈内投与に適する担体には、生理的食塩液、静菌水であるCremophor EL(商標)(BASF、Parsippany、N.J.)、又はリン酸緩衝生理食塩液(PBS)が含まれる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、並びにこれらの適切な混合物を含有する溶媒又は分散媒体でありうる。例えば、レシチンなどのコーティングを用いることにより、分散液の場合には必要とされる粒子サイズを維持することにより、並びに界面活性剤を用いることにより、流体性を維持することができる。抗菌剤及び抗真菌剤には、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、及びチメロサールが含まれる。等張剤、例えば、糖;マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール;並びに塩化ナトリウムを、組成物中に組み入れることができる。結果として得られる溶液は、そのままで用いるようにパッケージ化することもでき、乾燥凍結することもできる;乾燥凍結調製物は、その後の投与前に滅菌溶液と混合することができる。静脈内注射又は罹患部位における注射では、有効成分が、発熱物質を含まず、且つ、pH、等張性、及び安定性が適切である、非経口投与に許容される水溶液の形態である。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸加リンゲル注射液などの等張性媒体を用いて、適切な溶液を調製することが十分に可能である。必要に応じて、防腐剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤、並びに/又は他の添加剤も組み入れることができる。必要に応じて、上記で列挙した成分のうちの1つ又はこれらの組合せを伴う適切な溶媒中に必要量で有効成分を組み込み、次いで濾過滅菌することにより、滅菌注射溶液を調製することができる。一般に、基盤となる分散媒体、並びに上記で列挙した成分のうちで必要とされる他の成分を含有する滅菌媒体に有効成分を組み込むことにより、分散液を調製することができる。滅菌注射溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製法は、有効成分に、既に滅菌濾過されたその溶液に由来する、任意のさらなる所望の成分を加えた粉末をもたらす真空乾燥及び凍結乾燥である。
組成物は、従来通り、硝子体内投与することもでき、皮下投与することもでき、硝子体内インプラントを介して投与することもできる。
組成物は、従来通り、例えば、単位用量を注射することによるなど、静脈内投与することができる。注射では、有効成分が、発熱物質を実質的に含まず、且つ、pH、等張性、及び安定性が適切である、非経口投与に許容される水性溶液の形態でありうる。例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸加リンゲル注射液などの等張性媒体を用いて、適切な溶液を調製することができる。必要に応じて、防腐剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤、並びに/又は他の添加剤も組み入れることができる。加えて、組成物は、エアゾール化を介して投与することもできる(Lahnら、「Aerosolized Anti−T−cell−Receptor Antibodies Are Effective against Airway Inflammation and Hyperreactivity」、Int.Arch.Allegery Immuno.、134:49〜55(2004))。
一実施形態では、組成物を乾燥凍結して、例えば、保存時の保管寿命を延長する。組成物を、薬物又は本明細書で示される方法のうちのいずれかにおいて用いることを考慮する場合、それが、ヒト患者に投与された場合に、炎症反応又は安全でないアレルギー反応を引き起こさないように、該組成物が発熱物質を実質的に含まないことが可能であることを意図する。組成物を発熱物質について検査し、発熱物質を実質的に含まない組成物を調製することは、当業者に十分に理解されており、市販のキットを用いてこれを達成することが可能である。
許容される担体は、吸収又はクリアランスを安定化させるか、増大させるか、又は遅延させる化合物を含有しうる。このような化合物には、例えば、グルコース、スクロース、又はデキストランなどの炭水化物;低分子量のタンパク質;ペプチドのクリアランス若しくは加水分解を低減する組成物;又は賦形剤若しくは他の安定化剤及び/若しくは緩衝剤が含まれる。吸収を遅延させる薬剤には、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンが含まれる。また、洗浄剤も用いて、リポソーム担体を含めた医薬組成物を安定化させることもでき、その吸収を増大又は減少させることもできる。消化から保護するために、化合物を組成物と複合体化させて、それを、酸及び酵素による加水分解に対して耐性とすることもでき、該化合物を、リポソームなど、適切な形で耐性の担体中に複合体化させることもできる。当技術分野では、化合物を消化から保護する手段が知られている(例えば、治療的作用剤の経口送達用液体組成物について記載している、Fix(1996)、Pharm Res.13:1760〜1764;Samanen(1996)、J.Pharm.Pharmacol.48:119〜135;並びに米国特許第5,391,377号を参照されたい)。
「薬学的に許容される」という語句は、ヒトに投与されたときに、生理的に忍容され、且つ、急性胃蠕動、めまいなどのアレルギー反応又は同様の望ましくない反応をもたらさないことが典型的である分子的実体及び組成物を指す。
治療用組成物との関連で用いられる「単位用量」という用語は、各単位が、必要とされる希釈剤、すなわち、担体又は媒体と共に所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性物質を含有する、ヒトに対する単位用量として適切な、物理的に個別の単位を指す。
組成物は、用量製剤と適合する形で、且つ、治療有効量で投与することができる。投与される量は、治療される対象、対象の免疫系が有効成分を使用する能力、並びに所望の結合能の程度に依存する。投与されるのに必要とされる有効成分の正確な量は、医師の判断に依存し、各個人に固有である。また、初回投与及び追加投与に適するレジメンも変化しうるが、初回投与の後、後続の注射又は他の投与を介して、1時間又は複数時間の間隔で反復投与を行うことが典型的である。代替的に、血中濃度を維持するのに十分な持続的静脈内注入も意図される。
一実施形態は、本明細書で説明される組成物を用いて、本明細書で説明される状態、疾患、又は障害を治療するための薬物を作製することを意図する。薬物は、治療を必要とする患者/対象の身体的特徴に基づき製剤化することができ、且つ、状態、疾患、又は障害の病期に基づき、単一の製剤に製剤化することもでき、複数の製剤に製剤化することもできる。薬物は、病院及び診療所への販売に適切な表示であって、本明細書で説明される疾患を有する対象の治療適応についての該表示を伴う、適切な医薬パッケージにパッケージングすることができる。薬物は、単一のユニットとしてパッケージングすることもでき、複数のユニットとしてパッケージングすることもできる。以下で説明される通り、組成物の用量及び投与についての指示書は、パッケージ内に組み入れることができる。本発明は、本明細書の上記で説明したヒト化及び脱免疫化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片、並びに薬学的に許容される担体による薬物をさらに対象とする。
本明細書では、エンドグリンに結合し、本明細書の別の箇所で説明した物質などの物質を包含するヒト化及び脱免疫化抗体並びにそれらの抗原結合断片による組成物が提供される。本明細書で説明される、エンドグリンに結合するヒト化及び脱免疫化抗体並びにそれらの抗原結合断片は、線維症の治療、抑制、又は改善に用いることが出来る。
組成物(本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片)は、単独で投与することもでき、治療される状態に応じて、第2の組成物と組み合わせて同時に投与することもでき、逐次的に投与することもできる。一実施形態では、第2の治療処置が、線維症阻害剤(本明細書で説明される)である。2つ以上の組成物を投与する場合、組成物は、組合せで(逐次的に又は同時的に)投与することができる。例えば、併用療法はピルフェニドン(perfmedone)又はVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤を含むことができる。当該技術分野で認識される他の薬物または化合物は、併用療法において本明細書に記載の抗体と一緒に投与できることが理解されるであろう。組成物は、単回投与で投与することもでき、複数回投与で投与することもできる。
本発明の一実施形態では、それらがヒト患者への投与について許容されるように、発熱物質を含まないように組成物を製剤化する。組成物を発熱物質について検査し、発熱物質を含まない医薬組成物を調製することは、当業者に十分に理解されている。
本発明の一実施形態は、本発明の組成物のうちのいずれかを用いて、本発明による、障害を治療するための薬物を作製することを意図する。薬物は、治療を必要とする患者/対象の身体的特徴に基づき製剤化することができ、且つ、障害に基づき、単一の製剤に製剤化することもでき、複数の製剤に製剤化することもできる。本発明の薬物は、病院及び診療所への販売に適切な表示であって、対象における、本明細書で説明される障害の治療適応についての該表示を伴う、適切な医薬パッケージにパッケージングすることができる。薬物は、単一のユニットとしてパッケージングすることもでき、複数のユニットとしてパッケージングすることもできる。本発明の医薬組成物の用量及び投与についての指示書は、医薬パッケージ内に組み入れることができる。
III.使用方法
本明細書では、患者(ヒト又は非ヒト)に、エンドグリンに優先的に結合するヒト化及び脱免疫化抗体又はその抗原結合断片の組成物を投与することによって患者における応答を誘導する方法が提供される。抗体が結合する結合部位は、連続的であってよい、又はコンフォメーション/不連続なエピトープであってよい。
本発明の有効な応答は、患者が疾病の徴候又は症状の部分的な又は完全な軽減又は低下を経験する場合に実現され、詳細には、これらに限定することなく、生存の延長が挙げられる。予測無増悪生存時間は、再発数、疾患の病期、及び他の因子を含めた予後因子に応じて、数カ月から数年の単位で測定することができる。生存の延長は、これらに限定することなく少なくとも1カ月(mo)、少なくとも約2mos、少なくとも約3mos、少なくとも約4mos、少なくとも約6mos、少なくとも約1年、少なくとも約2年、少なくとも約3年などの期間が挙げられる。全生存も、数カ月から数年の単位で測定することができる。或いは、有効な応答は、患者の症状に変化がないままであることであってよい。適応症の治療の別の指標は、以下でより詳細に記載されている。
本明細書に記載の抗体及び抗原結合断片の組成物は、非治療的作用剤として(例えば、親和性精製剤として)使用することができる。一般に、そのような実施形態の1つでは、対象のタンパク質を、セファデックス(Sephadex)樹脂又は濾紙などの当技術分野で公知の従来の方法を使用して固相上に固定化する。固定化したタンパク質を、精製される対象の標的(又はその断片)を含有する試料と接触させ、その後、支持体を、固定化された抗体に結合している標的タンパク質を除く試料中の材料の実質的にすべてを除去する適切な溶媒で洗浄する。最終的に、支持体を、グリシン緩衝液、pH5.0などの標的タンパク質を放出する別の適切な溶媒で洗浄する。組成物は、精製に加えて、線維症の治療のために使用することができる。
本明細書で使用される用語「接触させること」は、化合物の溶液又は組成物と生物体に由来するポリペプチド、細胞、組織又は器官が入っている液体培地を加え合わせることを指す。或いは、「接触させること」は、化合物の溶液又は組成物を、生物体から得られた血液、血清、又は血漿などの液体と混ぜ合わせることを指す。in vitroでの適用に関して、組成物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの別の構成成分も含んでよい。DMSOは、化合物の取込み又は化合物の溶解を容易にする。試験化合物を含む溶液を、細胞、組織又は器官が入っている培地に加えることができる、又は、ピペットベースのデバイス又はシリンジベースのデバイスなどの送達装置を利用することによって、血液などの別の液体と混合することができる。in vivoでの適用に関して、接触は、例えば、組成物を任意の適切な手段によって患者に投与することによって起こりうる;薬学的に許容される賦形剤及び担体を伴う組成物は、上でより詳細に記載されている。
本出願の一実施形態による「対象」(例えば、哺乳動物、例えばヒト又は霊長類、げっ歯類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジなどの非ヒト動物など)は、線維症の症状を示す哺乳動物である。ある特定の状況では、患者は無症候性でありうるが、それでも線維症の臨床的な顕在化を有する。抗体又はその抗原結合断片は、治療的部分とコンジュゲートすることができる、又は治療的部分を含有する融合タンパク質であってよい。例えば、His6タグ(配列番号85)などのアフィニティータグは、当技術分野で慣習的なものである。
本明細書において提供される抗体又はその抗原結合断片は、治療的部分及び/又はアフィニティータグとコンジュゲート又は連結することができるものである。ポリペプチドをコンジュゲート又は連結するための方法は当技術分野で周知である。化合物と標識との間を結びつけること(結合させること)は、これらに限定されないが、共有結合性の相互作用及び非共有結合性の相互作用、化学的なコンジュゲーション並びに組換え技法を含めた、当技術分野で公知の任意の手段を含む。
A.エンドグリンの結合及び線維症
エンドグリン(CD105)は、細胞表面で180kDaのホモ二量体膜貫通タンパク質として発現される。外部ドメインは、TGF−β1アイソフォーム及びTGF−β−3アイソフォームに高い親和性(50nM)で結合し、CD105の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインは、ベータグリカンと71%の配列類似性を共有する。ヒトCD105遺伝子は、9q34染色体に位置することが蛍光in situハイブリダイゼーションを使用して同定され、コード領域は、14個のエクソンを含有し、TGF−βに結合する能力を持つCD105の2つの異なるアイソフォーム(L及びS)が特徴付けられている。細胞質尾部に14アミノ酸を有する600アミノ酸残基からなるS−CD105とは対照的に、L−CD105は、細胞質尾部に47アミノ酸残基を有する633アミノ酸残基からなる。しかし、L−CD105が優性型である。CD105は、内皮細胞において、主にセリン残基及びトレオニン残基で構成的にリン酸化されており、このリン酸化は、細胞内の構成的に活性なTGF−β RIIによるものである。ヒトCD105のアミノ酸配列は、細胞外ドメインの露出した領域に位置するアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)のトリペプチドを含有する。RGDペプチドは、フィブロネクチン、ビトロネクチン、フォンヴィルブランド因子(vWF)、I型コラーゲン、及びフィブリノーゲンなどのECMタンパク質において見出される重要な認識構造であり、細胞表面インテグリンによって認識される。
CD105は、増殖している内皮細胞によって発現されるTGF−β受容体ファミリーのメンバーである。内皮細胞の増殖のために正常なレベルのCD105が必要である。CD105の発現は、細胞低酸素症により、低酸素誘導因子−1−α(HIF−1−α)が産生されことによって増加し、低酸素の細胞をアポトーシスから保護する。CD105のいくつかの機能は、TGF−βシグナル伝達と関連する。TGF−βは、セリンキナーゼ、受容体I型(RI)及び受容体II型(RII)からなるヘテロ二量体受容体を通じてシグナル伝達する。TGF−βが受容体の外部ドメインに結合することにより、TGF−β RIをリン酸化する細胞質のRIIキナーゼ活性が表に現れ、次いでそれがSmadタンパク質などの下流のシグナル伝達物質(signaler)と相互作用しうる。CD105は、TGF−β受容体複合体の一部を形成するが、細胞表面に独立して存在する場合もある。内皮細胞において、エンドグリンおよびRI及びRII受容体へのTGF−βの結合はSMAD 2及び3細胞内タンパク質のリン酸化を介して細胞増殖を阻害する(Nolan−Stevaux、2012)。したがって、CD105によりTGF−β RIとTGF−β RIIが相互作用することによってTGF−βの機能が調節され、下流のSmadタンパク質のリン酸化が修飾される。
CD 105はまた、アクチビンAおよび骨形態形成タンパク質(BMP)−10、−9、−7及び−2などの他の成長因子に結合する。エンドグリン、BMPレセプターII 及びALK1からなる複合へのBMP−9の結合は、血管へ内皮細胞の増殖に必要とされるSMAD 1/5/8リン酸化の過程に重要である(すなわち、血管新生のプロセス、[Nolan −Stevaux、2012])。エンドグリンに結合し、血管新生を阻害する抗体は、BMPの結合を阻害する。エンドグリンのオーファンドメインに結合するTRC105は競争的にBMP結合を阻害し、SMAD 1/5/8リン酸化を阻害し、血管新生を阻害する。阻害しない抗体BMP結合を阻害しない抗体は、初代内皮細胞において血管新生を阻害しない。
ヒト及びマウスCD 105の配列は同一ではない。TRC105は、人間のエンドグリンに結合し、結合を競合的にヒトBMPを阻害します。TRC105はまた、マウスエンドグリンと結合する。しかし、TRC105は、マウスエンドグリンとマウスBMPの結合を妨げない。抗体M1043がマウスエンドグリンと特異的に結合し、競争力のあるマウスBMP結合を阻害する。M1043は、したがって、ヒトでのTRC105の期待される効果を模倣するマウスモデルで使用することができる。
エンドグリンを精製するためのそれらの使用に加えて、これらのヒト化及び脱免疫化抗体は、検出及び診断的な目的並びに治療目的のために有用である。本明細書において提供される抗体は、種々の線維症の状態及び疾患を治療するための医薬品の製剤化、に使用することができる。
エンドグリンの活性を調節し、エンドグリンに対するマウスモノクローナル抗体(mAb)が作製されている。これらのマウスモノクローナル抗体は、それらの各々が全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第5,928,641号;同第6,200,566号;同第6,190,660号;及び同第7,097,836号において説明されている。加えて、これらの抗体のうちの多数について、ex vivo及びin vivoにおける有効性も裏付けられている;エンドグリンに結合するモノクローナル抗体は、エンドグリンを調節する化合物として、対象の抗体となる。しかし、マウス抗体の投与は、例えば、ヒト抗マウス抗体(HAMA)の形態における免疫原性を含め、多数の限界を有するので、マウス抗体の治療的使用は実施可能ではない。
「線維症」は、損傷組織における創傷治癒過程の一部として起こり得る線維性組織の異常な蓄積を指すために本明細書中で使用される。このような組織の損傷は、物理的な損傷、炎症、感染、毒素への曝露、および他の原因から生じ得る。線維症の例としては、これらに限定されないが、皮膚瘢痕形成、ケロイド、肝線維症、肺線維症、腎線維症、心臓線維症、強皮症、及び糸球体硬化を含む。他の線維性状態および疾患は、以下でより詳細に議論される。
用語「線維化抑制組成物」は、線維症媒介性プロセスを阻害する組成物を指す。
線維芽細胞の分化は、これに限定しないが、強皮症、ケロイド瘢痕、関節リウマチ、狼瘡、腎性線維化皮膚障害、および特発性肺線維症を含む様々な線維性疾患に関連する。それらは、マウスにおける日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)感染後の線維性病変の形成における役割を果たしており、また、自己免疫疾患に関連する線維症に関与している。線維芽細胞はまた、放射線損傷、ライム病および肺線維症に関連した病原性線維症、ならびに膵炎及び間質線維症における間質の再構築に関与している一方、このような線維芽細胞の欠如は、膵臓腫瘍および腺癌に関連している。線維症はさらに喘息患者に起こり、並びに線維細胞が筋線維芽細胞へのさらなる分化を受ける場合、慢性閉塞性肺疾患のような他の肺疾患で起こり得る。線維症は、線維芽細胞の抑制のない増殖および分化に関与する。
C.ヒト化及び脱免疫化アンチエンドグリン抗体による線維症の治療、抑制または改善
CD 105は、TGF−β受容体(TGF−βR)、BMP受容体、アクチビン受容体様キナーゼ(ALK)およびアクチビン受容体を含むTGF−βスーパーファミリーの複数キナーゼ受容体複合体のシグナル伝達を調節するために機能する。内皮細胞において、TRC105は、BMPのヒトCD 105への結合をブロックし、SMAD 1/5/8経路を遮断またはダウンレギュレートする。リン酸化SMAD 1/5/8が減少することにより、対立しないリン酸SMAD 2/3シグナルが、ヒト内皮細胞における静止表現型を復元する。
これらの観察から、本願発明者は、BMPシグナル伝達経路を阻害エンドグリンに対する抗体が、線維芽細胞においてSMAD 1/5/8シグナリングを中断し、線維化を抑制することが出来ると考察した。線維症の過程を促進するBMPシグナル伝達の重要性は、M1043抗体を用いたマウスモデルにおいて実証することができた。ヒトの線維症の治療には、抗体を用いたるヒト化および脱免疫化抗体TRC205(配列番号89/配列番号93;IgG4)を使用し、ヒト線維芽細胞においてSMAD 1/5/8シグナル伝達を遮断して、線維症を阻害することができた。
本明細書では、明細書で記載する、疾患または障害に関連したエンドグリンに結合し、線維症を防止する(すなわち、線維症の予防、治療、改善、または重症度を軽減)ヒト化および脱免疫化抗体又は抗原結合断片を含む組成物を投与することを含む、線維化を処置、阻害または改善するための方法を提供する。
本明細書では、明細書で記載する、エンドグリンに結合し、線維症を治療するヒト化および脱免疫化抗体又は抗原結合断片を含む組成物を投与することを含む、治療する線維症を処置、阻害または改善するための方法を提供する。
本明細書では、エンドグリン受容体に結合し、BMP9のエンドグリンへの結合を阻害する、明細書で記載するヒト化および脱免疫化抗体又は抗原結合断片を含む組成物を投与することを含む、治療する線維症を処置、阻害または改善するための方法を提供する。
本明細書では、エンドグリン受容体に結合し、SMAD 1/5/8シグナルを阻害する、明細書で記載するヒト化および脱免疫化抗体又は抗原結合断片を含む組成物を投与することを含む、治療する線維症を処置、阻害または改善するための方法を提供する。
本明細書において、「改善」、「阻害」、「治療」(treatment)及び「治療すること」(treating)とは、例えば、症状の停滞、生存の延長、症状の部分的または完全な改善、および部分的または完全な線維症に関連する状態、疾患または障害の根絶を指す。
一実施形態において、ヒト化および脱免疫化抗体で1回の以上の用量で処理した後、プラセボによる治療に比べて、または任意の治療を受けていない対象と比較して、線維症は約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%阻害される。
別の実施形態において、ヒト化および脱免疫化抗体で1回の以上の用量で処理した後、プラセボによる治療に比べて、または任意の治療を受けていない対象と比較して、線維症の症状は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%で処理した後、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%)、約95%)、または約100%改善することができる。
「治療」(treatment)は、線維症の1つ以上の症状の解決を指します。「治療」(treatment)はまた、被験体における線維症が進行しない、症状の停滞を指す。
ヒト化および脱免疫化抗体で1回の以上の用量で処理した後、プラセボによる治療に比べて、または任意の治療を受けていない対象と比較して、線維症に関連する疼痛は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%低減することができる。
様々な線維性状態および疾患について患者を評価する他の手段は、以下に議論される。いくつかの例では、記載した試験は、治療の程度を決定するためにほどこされてもよい。医師は、治療の継続または中止、抗体の投与量を増加または減少させる、またはそれらの任意の組み合わせについて、テストの結果に基づいて決定してもよい。
組成物は、有効な治療有効量で、すなわちエンドグリンと関連づけることができる本明細書に記載の線維症を阻害することによっていくつかの所望の治療効果をもたらすために有効な治療有効量で、任意の医学的処置に適用可能な妥当なリスク対効果比で患者に投与することができる。本組成物をヒト対象に投与するために、組成物を当業者に公知の方法体系によって製剤化することができる。治療有効量は、器官又は組織において所望の治療効果又は予防効果を少なくとも部分的に実現する量である。疾患又は障害の予防及び/又は治療的な治療をもたらすために必要なヒト化及び脱免疫化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片の量は、それ自体は固定されていない。投与されるヒト化抗エンドグリン抗体又はその抗原結合断片の量は、線維症の種類、線維症の広範さ及び線維症に罹患している哺乳動物のサイズに伴って変動してよい。一実施形態では、本明細書に記載のヒト化抗エンドグリン抗体の2種以上を組み合わせて患者に投与する。組合せは、抗体に随伴して投与すること、又は抗体の後に投与することを含む。
「投与すること」は、本明細書では、組成物を、結果として組成物が患者の体内に存在するように患者に提供する手段と定義される。そのような投与は、これらに限定することなく、皮下投与、硝子体内投与、皮内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、又は筋肉内投与(例えば、注入)による局所的、局部的又は全身的な投与を含めた任意の経路によってよい。「同時発生的な投与」は、互いの投与から比較的短い期間内に投与することを意味する;そのような期間は、2週間未満、7日未満、1日未満であってよく、同時にさえ投与してよい。
組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、特定の患者、組成物、及び投与形態について、患者に対して有毒になることなく所望の治療反応を実現するために有効なある量の活性成分を得るために変動してよい。選択された投薬レベルは、使用する特定の化合物の活性、投与経路、投与時間、使用されている特定の化合物の排出速度、治療の持続時間、使用する特定の組成物と組み合わせて使用する他の薬物、化合物及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康及び以前の病歴、同様に医学の分野で周知の因子を含めた種々の因子に左右される。本明細書に記載の抗体及び抗原結合断片は、様々な投薬量で、様々な時間枠にわたって対象に投与することができる。非限定的な用量は、患者あたり、約0.01mg/kg、約0.05mg/kg、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約20mg/kg、約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、約60mg/kg、約70mg/kg、約80mg/kg、約90mg/kg、約100mg/kg、約125mg/kg、約150mg/kg、約175mg/kg、約200mg/kg、又はその間の任意の整数を含む。さらに、抗体又は抗原結合断片の用量(単数又は複数)は、週2回、毎週、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、6週間ごと、8週間ごと、12週間ごと、又はその中の週の任意の組合せで投与することができる。例えば、抗体又はその抗原結合断片を4週間にわたって、週1回又は週2回投与し、その後2週間は療法なし、などの投薬サイクルも考えられている。追加的な投薬サイクルとしては、例えば、本明細書に記載の用量及び週ごとのサイクルの異なる組合せも、本発明の範囲内で考えられている。
「接触させること」は、本明細書では、本明細書において提供される組成物を、本明細書に記載の細胞、器官、組織又は体液に物理的に近接させる手段と定義される。接触させることは、本明細書において提供される組成物のいずれかを全身的に、又は局所的に投与することを包含し、これらに限定することなく、in vitro、in vivo及び/又はex vivoでの手順及び方法を包含する。「混ぜ合わせること」及び「接触させること」は本明細書では互換的に使用され、同じように定義されるものとする。
応答は、患者が疾病の徴候又は症状の部分的な又は完全な軽減、又は低下、及び詳細には、これに限定することなく、生存の延長を経験する場合に実現される。予測無増悪生存時間は、再発数、疾患の病期、及び他の因子を含めた予後因子に応じて数カ月から数年の単位で測定することができる。生存の延長としては、これらに限定することなく、少なくとも1カ月(mo)、少なくとも約2カ月(mos.)、少なくとも約3カ月(mos.)、少なくとも約4カ月(mos.)、少なくとも約6カ月(mos.)、少なくとも約1年、少なくとも約2年、少なくとも約3年、又はそれ以上の時間が挙げられる。全生存も、数カ月から数年の単位で測定することができる。患者の症状は、変化がないままであってよい、又は減少してよい。
当技術分野における通常の技術を有する医師又は獣医師は、必要な組成物の有効量(ED50)を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師又は獣医師は、組成物中に使用する化合物の用量を、所望の治療効果を実現するために必要なレベルよりも低いレベルで開始することができ、所望の効果が実現されるまで徐々に投与量を増加させることができる。或いは、用量を一定に保つことができる。
組成物は、例えば上記のものなどの任意の都合のよい経路によって患者に投与することができる。選択された投与経路にかかわらず、適切な水和物の形態で、及び/又は組成物で使用することができる本発明の化合物を、下記のように又は当業者に公知の他の従来の方法によって、許容できる剤形に製剤化する。
抗体は、例えば、化学的なコンジュゲーション、共有結合若しくは非共有結合、又は下でより詳細に記載されているようなコンジュゲート若しくは融合タンパク質を創出するための組換え技法などの当技術分野で公知の方法を使用して、治療的部分と組み合わせることができる。或いは、抗体及び/又は他の作用剤は、組み合わせて、同時に又は逐次的に投与するための別々の組成物にすることができる。
そのような成分の毒性及び治療効果を、細胞培養物又は実験動物において、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するための標準の薬学的手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は治療指数であり、比率LD50/ED50として表すことができる。毒性の副作用を示す化合物を使用することができるが、健康な細胞に対する潜在的な損傷を最小限にし、それによって、副作用を低下させるために、そのような化合物を、患部組織の部位にターゲティングする送達系を設計するように注意を払うべきである。
細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータを、ヒトにおいて使用するための様々な投与量の策定において使用することができる。そのような化合物の投与量は、毒性がほとんどなく、又は毒性なく、ED50を含む様々な循環濃度の範囲内にあることが好ましい。投与量は、使用する剤形及び利用する投与経路に応じて、この範囲内で変動してよい。本発明の方法において使用する任意の化合物について、最初に細胞培養アッセイから治療有効量を推定することができる。用量は、動物モデルにおいて、細胞培養物において決定されたIC50(すなわち、最大半量の阻害が実現される試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度アレンジが実現されるように策定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。そのような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。
エンドグリン上のエピトープを認識 (例えば、それに結合)する抗体の独特の特異性が本明細書に記載のような線維症のための治療的使用を提供する。
別の態様において、方法は、被験体に本明細書に記載の抗エンドグリン抗体の有効量を投与することを含む、in vivoで被験体において線維症を阻害、治療、または改善するための方法が提供される。
肝臓(肝)線維症
肝臓の線維症は、多くの肝疾患の病理に関与している。先に述べたように、線維症は、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、アルコール依存症、住血吸虫症、ウイルス性肝炎、胆管閉塞、毒素への曝露、および代謝障害の合併症として起こる。肝線維症は、検査を受けないでいると、肝硬変(封入された結節の存在により定義される)、肝不全、および死へと進行する。
肝臓(肝)線維症は、例えば、慢性肝傷害に対する創傷治癒反応の一部として生じる。線維症は、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、アルコール依存症、住血吸虫症、ウイルス性肝炎、胆管閉塞、毒素への曝露、および代謝性疾患の合併症として起こる。この瘢痕組織の形成は、損傷した組織をカプセル化する身体の試みを表すと考えられている。肝線維症は、正常な肝臓におけるものと定性的に区別することができる細胞外マトリックスの蓄積によって特徴付けられる。肝線維症は、検査を受けないでいると、肝硬変(封入された結節の存在により定義される)、肝不全、および死へと進行する。
肝線維症は、限定されないが、硬変(例えば、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、胆汁性肝硬変)、および慢性ウイルス性肝炎、C型肝炎ウイルス(HCV)感染、B型肝炎ウイルス(HBV)感染、アルコール性肝疾患(ALD)、原発性硬化性胆管炎、遺伝性ヘモクロマトーシス、ウィルソン病のような関連状態、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、住血吸虫症並びに自己免疫性肝炎を含む。
寄生虫およびウイルス感染(例えば、HBV、HCV、HIV、住血吸虫症)、またはアルコール消費からの長期のストレスのような原因からの肝臓への慢性傷害は、典型的には、おそらく損傷領域をカプセル化し、損傷から残りの肝臓組織を保護するために、肝臓のリモデリングをもたらす。(Li and Friedman, Gastroenterol. Hepatol. 14:618−633, 1999)。肝線維症は、総コラーゲン含有量の3−10倍の増加と高密度マトリックスによる低密度基底膜の置換を含む細胞外マトリックスの変化をもたらし、肝細胞、肝星状細胞および内皮細胞の代謝および合成機能を損なう。(Girogescu, M., Non−invasive Biochemical Markers of Liver Fibrosis, J. Gastrointestin. Liver Dis., 15(2):149−159(2006))。
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、共通の、しばしば「サイレントな」肝疾患である。これは、アルコール性肝疾患に似ているが、ほとんど、あるいは全くアルコールを飲まない人に起こる。NASHの主要な特徴は、炎症や損傷とともに、肝臓脂肪である。NASHを有する多くの人は健康だと感じており、彼らは肝臓に問題があることを認識しない。それにもかかわらず、NASHは深刻で、肝臓が恒久的に損傷を受け、もはや正常に動作することができない肝硬変につながりうる。
NASHの治療、阻害または改善のために本明細書に記載の組成物の投与の有効性は、当該技術分野で認識される試験、例えばそれらは実施例11に記載されている、を用いて評価することができる。
肝硬変の治療、阻害または改善のために本明細書に記載の組成物の投与の有効性は、例えば、超音波エラストグラフィ技術、腹部CTスキャン、肝臓/胆管MRI(MRCP)、肝炎ウイルスのための血清学的試験、自己抗体の検査、及び内視鏡(胃)を含む、当該技術分野で認識される試験を用いて評価することができる。肝硬変の重症度は、ビリルビン、アルブミン、INR、存在および腹水の重症度、及び脳症を使用するチャイルド・ピュースコアで分類でき、患者をクラスA、B又はCに分類する。クラスAは良好な予後を有するが、一方クラスCは、死亡の危険性が高い。末期肝疾患(MELD)スコアと小児末期肝疾患(PELD)のスコアのためのモデルも肝硬変の重症度の等級付けに使用することができる。
本明細書に記載の組成物は、従って本明細書に記載されているような線維性肝疾患を阻害、治療又は改善するのに有用である。
腎線維症
肝線維症と同様に、腎線維症は、腎臓への種々の疾患および傷害に起因し得る。そのような疾患および傷害の例としては、慢性腎臓病、メタボリック症候群、膀胱尿管逆流、尿細管間質性腎線維症、(糖尿病性腎症を含む)糖尿病、限定されないが巣状分節性糸球体硬化症および膜性腎症を含む糸球体腎炎(GN)ならびに膜性増殖性GNを含む。
代謝症候群は、インスリン抵抗性のような糖尿病の顕著な特徴、ならびに中枢または内臓肥満及び高血圧を含む一群の異常であると認識されるようになっている。ほぼすべての場合において、グルコースの調節不全が、サイトカイン放出の刺激と細胞外マトリックスの沈着の増加という結果をもたらす。慢性腎臓病、糖尿病、メタボリックシンドローム、および糸球体腎炎に寄与する他の要因には、高脂血症、高血圧、蛋白尿が含まれ、これらのすべてが腎臓へのさらなる損傷をもたらし、さらに、細胞外マトリックスの沈着を刺激する。したがって、要因にかかわらず、腎臓への傷害は、腎線維症および腎機能の同時喪失をもたらし得る(Schena, F. and Gesualdo, L., Pathogenic Mechanisms of Diabetic Nephropathy, J. Am. Soc. Nephrol., 16: S30−33 (2005); Whaley−Connell, A., and Sower, J. R., Chronic Kidney Disease and the Cardiometabolic Syndrome, J. Clin. Hypert., 8(8):546−48(2006))。本明細書に記載の組成物は、従って線維性腎疾患(慢性腎疾患、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、メタボリックシンドローム)の予防、治療及び/又は改善に有用であり、そのような使用は、本明細書で企図される。
腎線維症は、限定されないが、糖尿病性腎症、膀胱尿管逆流、尿細管間質性腎線維症、糸球体腎炎又は糸球体腎炎(GN)、巣状分節性糸球体硬化症、膜性腎症、または膜性増殖性 GNを含む。
糖尿病性腎症などの阻害、治療または改善のための、本明細書に記載の組成物の投与の有効性は、当技術分野において認識されている試験、例えば、尿中アルブミンの測定を用いて評価することができる。
正常アルブミン尿は、尿中アルブミン排泄量 <30mg/24時間を指し、それは生理的状態である。微量アルブミン尿は、30〜299mg/ 24時間の範囲内の尿中アルブミン排泄量を指す。臨床(明白な)アルブミン尿は、尿中アルブミン排泄 >300mg/24時間を意味する。
結果として生じる糸球体腎炎(GN)の治療、阻害または改善のための本明細書に記載の組成物の投与の有効性は、当技術分野で認識される試験、例えば、尿中タンパク質が増加し、血液中の脂肪の増加と、血液中のタンパク質を減少を伴う対象における浮腫を監視することを用いて評価することができる。尿中のタンパク質の濃度及び血液や高脂血症の浸透圧は、治療を評価するために監視することができる。
膀胱尿管逆流の治療、阻害または改善のための本明細書に記載の組成物の投与の有効性は、当技術分野で認識される試験、例えば、核種膀胱造影(RNC)、透視排尿膀胱尿道造影(VCUG)、超音波膀胱造影;及び超音波を用いて評価することができる。
尿細管間質性腎線維症の治療、阻害または改善のための本明細書に記載の組成物の投与の有効性は、当技術分野で認識される試験、例えば、高カリウム血症、代謝性アシドーシス、および腎不全を評価するための試験を用いて評価することができる。血液を収集し、患者の約23%が好酸球増加症を有するとして好酸球増加症について試験することができる。尿サンプルも好酸球尿症、等張尿、血尿、滅菌膿尿そして、ネフローゼ域蛋白尿について評価することができる。
本明細書に記載の組成物は、従って本明細書に記載されているような線維性腎疾患の阻害、治療又は改善するのに有用である。
肺線維症
肺線維症は、例えば、深刻な呼吸困難をもたらす傷が肺組織に形成された呼吸器疾患を指す。瘢痕形成および過剰な線維性結合組織の蓄積は、壁の肥厚をもたらし、血液中の低酸素の供給を引き起す。例示的な疾患としては、これに限定されないが、特発性肺線維症(IPF)、特発性間質性肺炎、急性呼吸器窮迫症候群(ARDS)を含む。肺線維症は、これに限定されないが、特発線維性肺胞炎、慢性線維化間質性肺炎、間質性肺疾患(ILD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性喘息、およびびまん性実質性肺疾患(DPLD)を含む。
既知および特発性起源の慢性肺線維症は、治療の選択肢は限られた有効性または毒性を示し、数多の臨床的課題を提しており (Flaherty et al., Am.J.Med.,110:278−282(2001); Hampton et al., Am.J.Respir.Crit.Care Med.,149:A878 (1994))、診断の後の平均生存率はほとんど変わらない(Ryu et al.,Mayo Clin. Proc.,73:1085−1101(1998);Lasky et al.,Environ.Health Perspect.,108 Suppl 4:751−762(2000))。既知の線維化の刺激は、放射線、吸入鉱物及び有機粒子、ガス状酸化剤、医薬品および感染性生物を含む、一方特発性間質性肺炎(IIP)の臨床病理学的状態を促進する病因の同定については議論が残っている。IIPは多数の特徴を共有し、末梢肺実質を含む様々な疾患の多様な群であるが、十分に別の疾患としての指定を正当化するのに十分に異なると感じされる(Travis et al., Am. J. Surg. Path., 24:19−33 (2000))。その病因は不明のままであるが、肺損傷(または複数の外傷)と続いての損傷の治癒に中心があると考えられている。線維芽細胞の病巣、活発に増殖した線維芽細胞の小さな凝集体は、傷害の前に病巣の組織を表すと考えられ、線維化の活性化され、進行中であることを示している。
慢性炎症過程(サルコイドーシス、ヴェーゲナー肉芽腫症)、感染、環境因子(アスベスト、シリカ、特定のガスへの曝露)、電離放射線への曝露(放射線胸の腫瘍を治療するための治療)、慢性疾患(狼瘡、関節リウマチ)、さらには特定の薬剤などを含む多くの条件によって引き起こされる肺全体の瘢痕から、慢性肺線維症は生じる。過敏性肺炎として知られている状態では、肺の線維症は、有機ダストまたは産業化学物質を吸入に対する、高められた免疫反応に続いてが起こる。この状態は、ほとんどの場合、細菌、真菌、または動物製品で汚染された粉塵の吸入に起因する。
本明細書に記載の組成物は、従って本明細書に記載するような線維性肺疾患の治療、阻害、又は改善に有用である。
本明細書に記載の組成物の投与の有効性は、当技術分野で認識される試験、例えば、スパイロメトリーを用いて評価することができる。修正英国医学研究評議会のアンケート(mMRC)またはCOPDアセスメントテスト(CAT)は、症状の重症度を決定するために使用することができるアンケート(questionnaire)である。CATのスコアが、0−40から高いスコアに及ぶ場合、より重篤な疾患である。スパイロメトリーは、気流制限の重症度を判断するために役立ちうる。これは通常、人の年齢、性別、身長と体重の予測「通常」のパーセンテージで表されるFEV1や肺活量(FVC)に基づいている。アメリカやヨーロッパのガイドラインはどちらも、部分的にFEV1の治療勧告を基づくことを推奨していた。GOLDガイドラインは、症状の評価と気流制限に基づいて、4つのカテゴリーに人々分割することを示唆しています。体重減少及び筋力低下、ならびに他の疾患の存在は、また評価することができる。
特発性肺線維症(IPF)の症状の認識および監視は、本明細書に記載の組成物の有効性を決定するために使用することができる。胸部X線は、処理の様々な段階で利用されてもよい。
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を有する対象には、動脈血ガス分析および胸部X線を監視のために使用することができる。
心臓線維症
心臓線維症は、これに限定されないが、うっ血性心不全、保存駆出率を有する心不全、心筋症、心機能における心筋梗塞後の欠陥;アテローム性動脈硬化症;関節リウマチ;緑内障;加齢黄斑変性症(ウェットAMDおよび乾燥AMD);肺気腫、多発性硬化症を含み; 慢性喘息もまた、本明細書に記載の組成物を用いて予防、治療、または改善することができる。病的な心臓状態又は疾患は、高血圧症、高血圧性心疾患(HHD)、心筋梗塞(MI)、急性心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、または再狭窄であってもよい。
心臓線維症の治療、抑制または改善のための、本明細書に記載の組成物の投与の有効性は、以下の1つ以上を用いて評価することができる:対象における心拍出量を測定;被験体における脳卒中の容積を測定;対象の平均収縮期吐出量を測定;被験者における収縮期血圧を測定;対象の左室駆出率を測定;被験体における脳卒中の指標を決定するステップ;被験体における心係数を決定;被験体における左心室のパーセント短縮率を測定;対象における短縮周繊維の平均速度を測定;被験体における左心室流入速度パターンを測定;被験体における肺静脈の流速パターンを測;および/または対象の僧帽弁輪のピーク拡張早期の速度を測定。
本明細書に記載の試験組成物のための典型的な実験動物モデルは、圧負荷誘発性肥大、イソプロテレノール誘発性心肥大モデル、運動誘発性心肥大モデル、高塩食誘導性心肥大モデル、およびホルモン誘発心肥大モデルを含むが、これらに限定されない。
本明細書に記載の組成物は、従って本明細書に記載するような心腎臓疾患を治療、阻害、又は改善するのに有用である。
皮膚傷やケロイド形成
皮膚瘢痕及びケロイド形成は、過剰なコラーゲン沈着及び/又はコラーゲン沈着の調節不全を伴うことが知られている。傷ついた皮膚組織の正常な線維芽細胞リモデリングからのこの逸脱が厚くて見苦しい瘢痕化につながりうる。ケロイドは、部分的には、調節不全の創傷治癒とその後の高いコラーゲン沈着の結果であることが知られている。ケロイドは、正常な創傷治癒で見られる傷とは異なり、消えないかしないか、時間をかけて退行する。ケロイドは、一般的に良性の皮膚腫瘍であるが、彼らは見苦しいであり、より問題のある皮膚の変形および/または病変に蓄積しうる(Appleton,I.,etal.,Am.J.Pathol.,149(5):1441−1447(1996))。皮膚のコラーゲンの蓄積はまた、強皮症(線維芽細胞による皮膚組織におけるコラーゲンの過剰産生または調節不全が共通の要素である皮膚組織の肥厚や硬化の多数の条件のための一般的な用語)に関与している(Akagi,A.etal.,J.Invest.Dermatol.,113:246−250(1999))。
本明細書に記載の組成物は、従って、皮膚の傷跡やケロイドの形成治療、阻害、又は改善するのに有用である。
併用療法
線維症を治療するために抗エンドグリン抗体が有効でありうることが理解されると思われ、本明細書では、対象を、1又は複数の追加的な線維症阻害剤を用いて治療することもできることが考えられている。
用語「線維阻害剤」または「抗線維症剤」は、明細書および特許請求の範囲において、これに限定されないが、市販の阻害剤を含む化合物または分子を意味するように、本明細書で使用される。一実施形態では、1つ以上の追加の抗線維化薬または抗線維化治療は、これらに限定されないが、根本的な原因(例えば、毒素または感染性物質)の除去、炎症の抑制(例えば、コルチコステロイドなどプレドニゾン、IL-1受容体アンタゴニスト、または他の薬剤を使用して)、例えば、ガンマインターフェロンまたは抗酸化剤を用いた星状細胞活性化の下方制御、マトリックス分解の促進、または星状細胞のアポトーシスの促進を含む。
V.パッケージ及びキット
さらに追加の実施形態では、本出願は、上記の化合物を用いる使用のためのキットに関する。エンドグリンに結合するヒト化及び脱免疫化抗体又は抗原結合断片をキットで提供することが可能である。キットは、任意に、1つ以上の抗線維性試薬を含むことができる。したがって、前記キットは、適切な容器手段で、エンドグリンに結合する抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を含むことになる。前記キットは、適切な容器手段でエンドグリンに結合する抗体又はその抗原結合断片を含みうる。
前記キットの容器手段は、少なくとも1つの試薬を入れる、及び/又は好ましくは適切にアリコットすることが可能な少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ビン、注射器及び/又は他の容器手段を一般に含むことになる。前記キットは、市販用に密封された任意の試薬容器を含有するための手段を含むことが可能である。そのような容器は、注射及び/又は所望のバイアルが保持されるブロー成形プラスチック容器を含みうる。キットは、前記キット中の材料の使用のための印刷物も含むことが可能である。
パッケージ及びキットは、さらに緩衝剤、保存剤及び/又は安定化剤を医薬製剤中に含むことが可能である。前記キットの各成分は個々の容器内に封入されることが可能であり、様々な容器のすべてが単一パッケージ内に存在することが可能である。発明キットは冷温貯蔵又は室温貯蔵用に設計することが可能である。
さらに、前記調製物はキットの有効期間を増加させ、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)を含む安定化剤を含有することが可能である。組成物が凍結乾燥される場合は、キットは凍結乾燥調製物を再構成するための溶液の調製物をさらに含有することが可能である。許容可能な再構成溶液は当技術分野では周知であり、例えば、薬学的に許容されるリン酸緩衝食塩水(PBS)が含まれる。
パッケージ及びキットは、例えば、ELISAアッセイなどのアッセイのための1又は複数の成分をさらに含むことが可能である。本出願において試験される試料には、例えば、血液、血漿及び新鮮な又は凍結した組織切片(たとえば、肺、肝臓、腎臓、心臓など) 並びに分泌物、尿、リンパ液及びその生成物が含まれる。パッケージ及びキットは、試料を収集するための1又は複数の成分(例えば、注射器、カップ、スワブ等)をさらに含むことが可能である。
パッケージ及びキットは、例えば、製品説明、投与様式及び/又は治療の指示を明記するラベルをさらに含むことが可能である。本明細書に提供されるパッケージは、本明細書に記載される組成物のうちのいずれでも含むことが可能である。前記パッケージは、線維症を治療するためのラベルをさらに含むことが可能である。
用語「包装材料」とは、キットの成分を収納する物理的構造体のことである。包装材料は成分を無菌で維持することが可能であり、そのような目的に一般に使用されている材料(例えば、紙、段ボール線維、ガラス、プラスチック、ホイル、アンプル等)で作製することが可能である。ラベル又は添付文書は適切に書かれた使用説明書を含むことが可能である。したがって、キットは、本発明のいかなる方法においてもキット成分を使用するためのラベル又は使用説明書をさらに含むことが可能である。キットは、パックされた又はディスペンサー内の化合物を、本明細書に記載される方法で前記化合物を投与するための使用説明書と一緒に含むことが可能である。
使用説明書は、治療法を含む本明細書に記載される方法のうちのいずれかを実行するための指示書を含むことが可能である。使用説明書は、十分な臨床エンドポイント又は起こりうるどんな有害な症状も又はヒト対象に使用するための食品医薬品局などの規制当局により要求される追加の情報の表示をさらに含むことが可能である。
前記使用説明書は、「印刷物」上、例えば、キット内の若しくはキットに添付された紙若しくは厚紙上に、或いはキット若しくは包装材料に添付された、又はキットの成分を含有するバイアル若しくはチューブに貼り付けられたラベル上にあってもよい。使用説明書は、例えば、CD−ROM、DVD、フラッシュメモリデバイス、固体メモリ、磁気ディスクドライブ、磁気テープドライブ、光ディスクドライブ、クラウドコンピューティングシステムおよびサービスのような、コンピュータ可読媒体に含まれていてもよい。いくつかのケースでは、プログラムおよび使用説明書は、永久的であり、実質的に永久的、半永久的、または非一時凌ぎに媒体上に符号化された。
本出願の化合物及び方法の実施形態は、説明的であることを目的とし限定するものではない。当業者であれば、上記教唆、特に記載された改変物を取り囲むエンドグリンに結合する抗体又は抗原結合断片の改変に関連する可能性がある教唆に照らして、エンドグリンの結合に関して天然に近い機能性を維持しつつ改変及び変動を加えることができる。したがって、記載されていることの範囲内にある開示された特定の実施形態において変化を加えうることは理解されるべきである。
本出願は以下の非限定的実施例を参照することによりさらによく理解されうるものであり、これら実施例は本出願の例となる実施形態として提供されている。以下の実施例は、本発明の実施形態をさらに完全に説明するために提供されるものであるが、決して本出願の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
(例1)
抗CD105ヒト化及びヒト化/脱免疫化抗体の作製及び結合
抗体の構築、発現及び精製
変性され、ライゲートされ、PCR増幅されて完全長合成V領域を与える一連の重複オリゴヌクレオチドを使用して、ヒト化/脱免疫化VH及びVK領域遺伝子はすべて合成された。次に、組み立てられたバリアントは、IgG1重鎖及びカッパ軽鎖のためのAntitope社製pANT発現ベクターシステムに直接クローニングされた。
ヒト化/脱免疫化重及び軽鎖の組合せ(すなわち、計24対合)すべてが、エレクトロポレーションを介してNS0細胞に安定的にトランスフェクトされ、200nMメトトレキサート(Sigma、カタログ番号M8407)を使用して選択された。構築物ごとのメトトレキサート耐性コロニーは、IgG1 ELISAを使用してIgG発現レベルについて試験された。最もよく発現している系統が選択され、液体窒素下で凍結された。成功したトランスフェクション及びクローン選択はすべてのバリアントについて達成され、飽和静置培養物中のヒト化及びヒト化/脱免疫化抗体バリアントの発現レベルは表1に示されている。
したがって、24のIgG1バリアントは、プロテインAセファロースカラム(GE Healthcare、カタログ番号110034−93)上でNS0細胞培養上清から精製され、予想されるアミノ酸配列に基づいて、消衰係数、Ec(0.1%)=1.62を使用してOD280nmにより定量された。約500μgの各抗体バリアントが精製され、主なバリアントは還元SDS−PAGEにより解析された。手短に言えば、クーマシーブルーが主な抗体バリアントの還元SDS−PAGEゲルを染色した。1μgの各試料はNuPage 4〜12%Bis−Trisゲル(Invitrogen、カタログ番号NP0322BOX)上に充填され200Vで30分間流された。マーカーはBio−Rad Precision Plus(カタログ番号161−073)であった。予想されるサイズの重及び軽鎖に対応するバンドが観察され、どのレーンでもどんな汚染の証拠もなかった(データは示されていない)。
ELISA法
ELISAを使用して、ヒト化及びヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体のエンドグリンへの結合をアッセイした。手短に言えば、ELISAは、以下のステップに従って実施された。
1.Nunc MaxisorpプレートをPBS中1500ng/mlのMAB9811−01(ポリクローナル抗エンドグリン抗体)を用いて100μl/ウェルで被膜する。プレートをシール材で覆い、4℃で一晩(16〜24時間)インキュベートする。
2.プレートを200μlのPBS(Tweenなし)で2回洗浄する。
3.200μl/ウェルのBSAブロッキング溶液(1%BSA)を添加し、室温で60分間インキュベートする。
4.BioTekプレートウォッシャーを使用してTween(PBS−T)を含有するPBSを用いてプレートを3回洗浄する。
5.0.1%BSAを有するPBS−T中100ng/mlのCD105(R&D Systems、カタログ番号1097−EN)を100μl/ウェルで添加し、室温で60分インキュベートする。
6.BioTekプレートウォッシャーを使用してPBS−Tを用いてプレートを3回洗浄する。
7.試験ウェルでは、20、10、4、2、1、0.5及び0.2ng/ml(0.1%BSAを有するPBS−T中に希釈される)の抗エンドグリン抗体を100μl/ウェルで添加し、室温で60分インキュベートする。陰性対照ウェルでは、アイソタイプ適合対照抗体を100μl/ウェルで添加する。
8.BioTekプレートウォッシャーを使用してPBS−Tを用いてプレートを3回洗浄する。
9.0.1%BSAを有するPBS−T中1対10000に希釈されたHRP(Jackson Immunoresearch)にコンジュゲートされたヤギ抗ヒトIgGを100μl/ウェルですべてのウェルに添加し、室温で30〜60分インキュベートする。
10.BioTekプレートウォッシャーを使用してPBS−Tを用いてプレートを5回洗浄する。
11.TMB基質溶液の100μl/ウェルを添加し、暗所で15分間覆いなしでインキュベートする。
12.TMB停止溶液の100μl/ウェルを添加することにより反応を停止する。
試料は3通り流され、光学密度を読み取って標準曲線を構築し結合定数を決定する。統計的解析は、スチューデントt−検定又は他の標準検定を使用して行われる。
競合ELISA
抗体は、競合ELISAにおいてビオチン化キメラ抗CD105に対するCD105への結合について試験された。手短に言えば、キメラ抗CD105は、製造業者の使用説明書に従ってマイクロビオチン化キット(Sigma、カタログ番号BTAG−1KT)を使用してビオチン化された。Nunc Immuno MaxiSorp 96ウェル平底マイクロタイタープレートは、リン酸緩衝食塩水(PBS)中1.5μg/mLのマウス抗ヒトCD105(Southern Biotechnologies、カタログ番号9811−01)を用いて4℃で一晩被膜された。次の日、PBS/2%BSA中100ng/mlヒトCD105(R&D Systems、カタログ番号1097−EN)は、前被膜されたプレートに添加され、室温で1時間インキュベートされた。変化する濃度のヒト化/脱免疫化抗CD105抗体のいずれか(3倍希釈液中4μg/mLから0.0018μg/mL)は、固定された濃度のビオチン化キメラ抗CD105抗体(6.25ng/ml)と混合され、プレートに添加された。ビオチン化キメラ抗体の結合は、ストレプトアビジンHRP(Sigma、カタログ番号S5512)及びTMB基質(Sigma、カタログ番号T0440)を介して検出された。OD450nm値は、Dyner MRX TCIIプレート読取り機上で測定された。競合解析の結果は図6に図示されている。曲線は、対数試料濃度に対するそれぞれの吸光度プロットの直線部分を通してフィットされ、前記直線の方程式を使用して、ビオチン化キメラ抗体のCD105への結合を50%阻害するのに必要なヒト化又はヒト化/脱免疫化抗体の濃度(IC50)を計算した。実験内及び実験間の比較を可能にするために、ヒト化又はヒト化/脱免疫化バリアントのIC50値は、倍差の値を与えるために各プレート上に含まれた基準抗体に対して正規化された。IC50値はキメラ抗CD105に相対的であり3つの実験を代表している。要約ELISAデータは米国特許8221753号の表1に示されており、飽和静置培養においてアッセイされた抗体発現レベル(μg/ml)を含む。
米国特許8221753号の表1はヒト化及びヒト化脱免疫化抗体バリアントの特徴を示した。IC50価はキメラ抗エンドグリン抗体に相対的であり3つの実験を代表している。抗体発現レベル(μg/ml)は飽和静置培養においてアッセイされた。脱免疫化のレベルは、エピトープにおける変異の位置に基づいて任意目盛により表されている。従って、本願発明者らは、ヒト化および脱免疫抗エンドグリン抗体の調製に成功したことを証明している。
(例2)
ヒト化及びヒト化/脱免疫化抗エンドグリン抗体結合のBIAcore(表面プラズモン共鳴:SPR)解析
抗体のアフィニティーは、例えば、標準プロトコールを使用するBIAcore解析を使用して評価することが可能である。手短に言えば、プロテインAはBIAcore CM5チップに化学的にカップリングされ、約2000RUに対応する量のプロテインAが固定化される。その後のステップは、10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%TWEEN、pH=7.4のランニング緩衝液において25℃で10Hzデータ収集速度を使用して実施される。抗エンドグリン抗体(10nM)は、BIAcoreチップ上の固定化されたプロテインAにより10μL/分の流速で捕捉され、典型的には、20、40及び80秒の捕捉時間で、それぞれ130RU、330RU及び570RUに相当する抗体密度の捕捉が可能になる。起動サイクルは、流速40μL/分、接触時間90秒及び解離時間90秒でランニング緩衝液を使用して実施される。試料サイクルは、0から40nMの範囲の濃度で組換えエンドグリンを使用して実施される。エンドグリンは、流速40μL/分、接触時間525秒及び解離時間2500秒で捕捉された抗体を含有するBIAcoreチップ全体を通される。8試料サイクルは、典型的には各抗体捕捉密度で実施される。前記チップの再生は、10mMグリシン pH=1.7を使用して実現される。データ解析は、BIAcore T100評価ソフトウェアv1.1を使用して実施される。捕捉抗体密度が異なるBIAcoreチップを使用して生じるシグナルは比較され、組換えエンドグリン非存在下で生じるデータを使用してアッセイ内ブランクシグナルについて調整する。データのフィッティングでは、R
maxは、各サイクルにおける各抗体の捕捉レベルの変動を説明するために浮遊させる。各捕捉密度からのデータは、各抗体の解析中に同時にフィットさせる。BIAcoreデータは、K
a(1/Ms)、K
d(1/s)、K
D(M)及びChi
2(RU
2)を含むキメラ、ヒト化及び脱免疫化抗エンドグリン抗体について表2に示されている。
(例3)
エンドグリン発現細胞上の利用可能なエピトープの抗体結合活性及び数
エンドグリン発現細胞上の利用可能なエピトープの抗体結合活性及び数は、標準プロトコールを使用するScatchardプロット解析を利用して評価することが可能である。
手短に言えば、放射性標識されたヒト化抗エンドグリン抗体の、エンドグリン発現KM−3白血病細胞及びサブコンフルエント増殖HUVECへの直接結合のScatchardプロット解析が実施される。精製された抗エンドグリン抗体は、Iodo−Genを使用し当業者には公知の標準法に従って125Iで個々に放射標識される。放射標識されたヒト化抗エンドグリン抗体は、IgG分子あたりのヨウ素原子の平均数についてアッセイされる。一定量(0.1μg)の各125I標識mAb及びエンドグリン発現HUVEC細胞の2倍連続増加を使用して滴定実験は実施されて、抗原結合活性を決定する。結合データのScatchardプロットの解析は、公知の方法に従って実施される。mAb結合細胞の平衡定数及び平均最大数はこの解析により推定される。
(例4)
ヒト化抗エンドグリン抗体におけるT細胞エピトープの同定
ヒト化可変領域の配列が、iTope(商標)解析により試験された。ヒト化可変領域配列は重複する9〜15merペプチドに分割された。可変領域配列は、コンピュータ分析によるMHCクラスIIに対するペプチドのアフィニティーを決定するin silico解析ツールであるiTope(商標)を使用してヒトMHCクラスII(潜在的T細胞エピトープ)への乱雑な高アフィニティー結合について解析された。iTope(商標)解析からの潜在的T細胞エピトープの頻度が最も低い配列は、ヒト化抗体の作製のためのリードとして同定される。選択されたヒト化可変領域配列は、潜在的T細胞エピトープを取り除くために変異の包含を通じて再設計されうる。変異は、MHCクラスII結合を減少する又は除去するためにiTope(商標)を使用して設計される。代わりに、生殖系列ヒト配列は、潜在的T細胞エピトープの部位で置換することが可能であり、又は代わりの配列が置換されうる。
参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、米国特許221753号の図19〜23は、本願の図3Bに記述される軽鎖HuVK_v0と重鎖HuVH_v0を含有するヒト化抗エンドグリン抗体について9merペプチドの予想される結合を表している。
(例5)
抗CD105ヒト化/脱免疫化抗体の設計
本例は、減少した免疫原性を示すヒトCD105を標的にする治療モノクローナルヒト化脱免疫化抗体の設計を説明する。
iTope(商標)を使用して同定された乱雑な高アフィニティーMHCクラスII結合配列(データ見せず)は、ペプチドのMHCクラスIIへの結合を減少する又は除去すると考えられるキーとなるMHCクラスIIポケット位置でのアミノ酸置換を同定するためにiTope(商標)によりさらに解析された。すべての配列がCDRに重なっていたために、変化(潜在的抗原接触残基)のCDR位置並びに元の及び置換アミノ酸の物理化学的特徴も検討された。TCR接触並びにペプチド/MHCクラスII−TCR相互作用の安定化に関与する主要結合グルーブの外側の残基も置換について検討された。
VHV1では、完全にCDR内部にあり残基51で開始する9−merペプチドは、乱雑な高アフィニティーMHCクラスII結合ペプチドとして同定された。MHCクラスII結合の除去の最も成功した方法は、疎水性側鎖を除去する又は親水性側鎖で置換するとMHCクラスII結合が取り除かれる9−merの最初のアミノ酸(ポケット1又はp1位)を標的にすることである。しかし、この種の根本的なアミノ酸置換は抗体アフィニティーを保持するのに必ずしも成功しないことがあり、したがって、二次ポケット位置(p4、p6、p7又はp9)も、単独で又は組み合わせて評価された。iTope(商標)解析により、K52bをQ又はRに変えることによりこのペプチドのp4位を標的にすると、MHCクラスII結合が著しく減少すると予想され、p1でI51をAで置き換えると結合を完全に取り除くと予想されることが明らかになった(米国特許221753号の表5参照)。
抗体/抗原複合体の結晶構造は、I51は抗原とまれに接触しうるが、この位置でのIからAへの根本的変化(p1アンカー位を破壊するための置換)はCDRの全体的立体構造に影響を与える可能性があることを示唆している。したがって、この残基が溶媒曝露であり抗原と接触しないことがあるために、K52b(p4アンカー位)での比較的保存された変化も含まれた。最後に、CDRの外側にある追加の変異も、ペプチド/MHCクラスII/TCR相互作用に対する不安定化効果を評価するために設計された(G49からA又はS)。米国特許221753号公報の 表6は、構築されたヒト化及びヒト化/脱免疫化バリアントVH領域を収載している。対応するヌクレオチド及びアミノ酸配列の配列番号は、構築物の隣に示されている。
2つの乱雑な高アフィニティーMHCクラスII結合ペプチドがVKV2及びVKV1において同定された。第一のV19にp1アンカーを有するペプチドはCDR1に部分的に重なっており、第二のI48にp1アンカーを有するペプチドはCDR2に重なっている。両p1アンカーはCDRの外側にあり、Aへの変異によって標的にされており、この変異はMHCクラスII結合を完全に取り除きうる(表7)。しかし、これらの残基は両方ともCDR1及び2の立体構造の維持に関与している可能性があり、したがって、MHCクラスII結合を著しく減少させる追加の変異が設計された(表7)。どちらの場合も、p4残基は、TのSへの変異により標的にされた。T22SもCDRの外側にあり、V19AよりもCDR立体構造に影響を与える可能性は少ない。T51はCDR2の内側にあるが、抗原と複合体化している抗体の結晶構造からの証拠によれば、この残基は抗原とはめったに接触しないことが示唆される。米国特許221753号公報の表6は、構築されたヒト化及びヒト化/脱免疫化VK領域を収載している。
(例6)
この例は、T細胞エピトープを求めて抗エンドグリン抗体をスクリーニングする方法を説明している。MHC、ポリペプチド及びT細胞受容体(TCR)間の相互作用は、T細胞認識の抗原特異性に構造基盤を与える。T細胞増殖アッセイは、抗体からプロセッシングされるポリペプチドのMHCへの結合及びTCRによるMHC/ポリペプチド複合体の認識を試験する。本例のin vitro T細胞増殖アッセイでは、抗原提示細胞(APC)及びT細胞を含有する末梢血単核球(PBMC)を刺激する。刺激は、無傷の抗エンドグリン抗体を使用してin vitroで行われる。刺激されたT細胞増殖は3Hチミジン(3H−Thy)を使用して測定され、取り込まれた3Hチミジンの存在は洗浄され固定された細胞のシンチレーション測定を使用して評価される。
ヒト化及びヒト化/脱免疫化VH及びVK領域遺伝子のすべては、アニールされ、ライゲートされ、PCR増幅されて完全長合成V領域を与える一連の重複するオリゴヌクレオチドを使用して合成された。次に、組み立てられたバリアントは、IgG重鎖及びカッパ軽鎖のためのAntitope社のpANT発現ベクターシステムに直接クローニングされた。
抗体の精製
抗エンドグリン抗体は、プロテインAクロマトグラフィーにより、哺乳動物培養物の上清から精製された。緩衝液交換及びタンパク質濃度は、PBS pH=7.4を使用して行われた。抗エンドグリン抗体は、Sephacryl S200カラム(GE Healthcare、AMersham、UK)を使用してサイズ排除クロマトグラフィーによりさらに精製された。主要ピークは収集され、フィルター減菌され、Endosafe−PTS(Charles River、Margate、UK)を使用して内毒素レベル<5EU/mgを有することが明らかにされた。精製された抗体は4℃で保存される。最終濃度は、計算されたモル吸光係数を使用してUV吸収により決定され、A280 1.0=1.62mg/mLであった。次に、各抗体はAIMV培養液で100μg/mLまで希釈された。
ドナーPBMCの調製及び選択
末梢血単核球(PBMC)は、Addenbrooke病院地域研究倫理委員会により与えられた認可に従って英国国立輸血サービス(Addenbrook病院、Cambridge、UK)から得られる健康なコミュニティードナーバフィーコート(24時間以内の採血由来)から単離される。PBMCは、Lymphoprep(Axis−shield、Dundee、Scotland)密度遠心分離によりバフィーコートから単離され、CD8+T細胞はCD8+RossetteSep(商標)(StemCell Technologies、Inc.)を使用して枯渇される。ドナーは、Biotest HLA SSP−PCRベースの組織分類キット(Biotest、Landsteinerstraβe、Denmark)を使用してHLA−DRハプロタイプを同定することにより特徴付けられる。対照抗原のキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)(Pierce、Rockford、IL、USA)に対するT細胞応答が、陽性対照について判定される。次に、PBMCは凍結され必要となるまで液体窒素中で保存された。使用するのに必要になると、細胞は37℃の水浴中で急速に解凍され、その後10mlの予め温められたAIM V培地に移される。
世界人口に現れるHLA−DRアロタイプの数及び頻度を最もよく代表する20ドナーのコホートが選択される。世界人口に現れるアロタイプに対するコホートに現れるアロタイプの解析により、>80%のカバレッジが達成されており、主要HLA−DR対立遺伝子はすべて(>5%の頻度で世界人口に現れる個々のアロタイプ)が十分代表されていることが明らかにされた。ドナーハプロタイプの要約は図23に与えられており、本研究で使用されるドナーアロタイプ対世界人口に存在するアロタイプの頻度の比較が行われる。
各ドナー由来のPBMCは解凍され、計数され、生存率評価される。細胞は生き返らせ、4〜6×106PBMC/mLまでAIMV培養液に再懸濁させた。ドナーごとに、合計で1mL増殖細胞保存液が24ウェルプレートに添加されるバルク培養液が確立された。合計で1mLの各希釈試験試料は、抗体試料あたり50μg/mLの最終濃度になるまでPBMCに添加された。ドナーごとに、陽性対照(100μg/mL KLHと一緒にインキュベートされた細胞)及び陰性対照(培養液のみと一緒にインキュベートされた細胞)も含まれた。最初の4ドナーでは、試験試料によるT細胞応答の調節について試験するために追加の対照が含まれ、ここでは試験試料及びKLHがPBMCに添加された。これらの試料とKLH単独との比較を使用して、増殖に対する試験試料の効果を評価することが可能である。培養物は、37℃で合計8日間5%CO2と一緒にインキュベートされた。5、6、7及び8日目、各ウェル中の細胞はゆっくりと再懸濁され、3つの100μLアリコットは丸底96ウェルプレートの個別のウェルに移される。培養物は100μL AIMV培養液中1μCi3[H]−Thy(Perkin Elmer、Waltham、MA)と一緒にパルスされ、さらに18時間インキュベートされて、その後TomTec MachIII細胞収穫器を使用してフィルターマット上に収穫される。ウェルごとの分あたり計数(cpm)は、パラルクス低バックグラウンド計数モードのMicroplate Beta Counter(Perkin Elmer(登録商標)、Waltham、Massachusetts、USA)上での、Meltilex(商標)(Perkin Elmer(登録商標)、Waltham、Massachusetts、USA)シンチレーション計数により決定される。
結果は、刺激指数として表され、刺激指数(SI)は、試験抗エンドグリン抗体に合わせて測定された増殖スコア(例えば、分あたりの放射能のカウント)を、試験抗エンドグリン抗体を接触させなかった細胞で測定されたスコアで割ることにより導かれる。対照ウェルの全基本cpmは、150cpmのアッセイの最小閾値より上である。
増殖アッセイでは、2に等しい又はよりも大きい刺激指数(SI)(SI≧2)の経験的閾値は既に確立されており、それによりこの閾値より上の増殖応答を誘導する試料は陽性と見なされる(ここでは、ボーダーラインSI≧1.90は強調されている、が含まれている)。広範なアッセイ開発及び既往研究により、これは多数の偽陽性応答を検出せずに最大感度を可能にするノイズ閾値の最小シグナルであることが明らかにされている。陽性応答は、以下の統計的経験的閾値により定義される。
1.不対2試料スチューデントt−検定を使用してメディアム対照ウェルに対して試験ウェルのcpmを比較することによる応答の有意性(p<0.05)。
2.2より大きな刺激指数(SI≧2)、SI=試験ウェルの平均(cpm)/平均メディア対照ウェル(cpm)。
さらに、アッセイ内変動は、同型培養物からの生データの変異係数及び標準偏差(SD)を計算することにより評価される。
抗エンドグリン抗体を用いるEpiScreen時間経過増殖アッセイの結果は米国特許221753号公報の図24に示されており、表形式で要約されている(米国特許221753号公報の表8)。キメラ抗体は20ドナーのうちの4ドナー(研究コホートの20%)において応答を刺激し、ドナー応答のうちの2つはボーダーラインであったが(ドナー11及び17でそれぞれ1.92及び1.95)、バックグラウンドとは有意に異なっていた(p<0.05)。ヒト化抗体VK1VH1は、バックグラウンドとは有意に異なっている(p<0.05)1つのボーダーライン応答(ドナー20で1.91)を含む20ドナーのうちの2ドナー(研究コホートの10%)において応答を刺激した。ドナー11及び20がこれらの抗体の両方に応答し、共有されたT細胞エピトープが存在しうることを示唆していることは注目に値する。これとは対照的に、研究コホート中のドナーは一人も脱免疫化抗エンドグリン抗体VK1AAVH1A2に陽性応答しなかった。対照抗原KLHを用いた結果は、陽性結果と陰性結果の間には良好な相関関係が存在していたことを明らかにしており、アッセイにおける高レベルの再現性を示している。
(例7)
EpiScreen(商標)T細胞エピトープマッピング
EpiScreen(商標)は、全抗体におけるT細胞エピトープの測定のための又は下により詳細に記載されているようなT細胞エピトープの配列位置をマッピングするためのex vivo技術である。
EpiScreenドナー選択
末梢血単核球(PBMC)は、Addenbrooke病院地域研究倫理委員会により与えられた認可に従って英国国立輸血サービス(Addenbrook病院、Cambridge、UK)から得られる健康なコミュニティードナーバフィーコート(24時間以内の採血由来)から単離される。PBMCは、Lymphoprep(Axis−shield、Dundee、Scotland)密度遠心分離によりバフィーコートから単離され、CD8+T細胞はCD8+RossetteSep(商標)(StemCell Technologies、Inc.)を使用して枯渇される。ドナーは、Biotest HLA SSP−PCRベースの組織分類キット(Biotest、Landsteinerstraβe、Denmark)を使用してHLA−DRハプロタイプを同定することにより特徴付けられる。対照抗原、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)(Pierce、Rockford、USA)に対するT細胞応答も陽性対照について判定される。世界人口に現れるHLA−DRアロタイプの数及び頻度を最もよく代表する54ドナーのコホートが選択される。世界人口に現れるアロタイプに対するコホートに現れるアロタイプの解析により、>80%のカバレッジが達成されており、主要HLA−DR対立遺伝子はすべて(>5%の頻度で世界人口に現れる個々のアロタイプ)が十分代表されていることが明らかにされた。ドナーハプロタイプの要約が提供されており、本研究で使用されるドナーアロタイプ対世界人口に存在するアロタイプの頻度の比較が行われる。
ドナー詳細及びハプロタイプ。KLHに対するドナー応答(SI)は2つの独立した実験において試験される。試験1は新たに単離されたPBMCで実施され、抗体は現試験では再試験である。両方の試験において同じ結果(すなわち、陽性又は陰性)を生まない応答は強調されている。基礎cpmが非常に低い(<150cpm)ドナーは解析から除外される。
EpiScreen解析:増殖アッセイ
EpiScreen(商標)を使用して、キメラ、ヒト化及びヒト化/脱免疫化抗体の配列由来の重複ペプチドを試験する。重複ペプチドは設計される。12アミノ酸重なっている一連の128×15merペプチドは、1×14mer及び1×11merと一緒に合成され、EpiScreen(商標)T細胞エピトープマッピングを使用して51人の健康なドナーのコホート由来の末梢血単核球細胞(PBMC)を刺激するのに使用される。個々のペプチドは同型培養物において試験され、応答はT細胞増殖アッセイを使用して評価され、エピトープの正確な位置を同定する。各ドナー由来のPBMCは解凍され、計数され、生存率について評価される。細胞は室温のAIM V培養液(Invitrogen、Carlsbad、California)中で生き返らせ、その後細胞密度を2.5×106PBMC/ml(増殖細胞保存液)に調整する。ペプチドは最終濃度10mMまでDMSO(Sigma−Aldrich、St Louis、MO、USA)中に溶解させる。次に、ペプチド培養保存液は、最終濃度5μMまでAIM V培養液に希釈することにより調製される。ペプチドごとに及びドナーごとに、平底96ウェルプレートにおいて100μlのペプチド培養保存液を100μlの増殖細胞保存液に添加することにより、6通りの培養物が確立される。陽性対照培養物も陰性対照培養物も6通りに確立する。ドナーごとに合計で9×96ウェルプレートが使用され、各プレートで1つの陰性対照(担体のみ)を用いて15ペプチドを6通りに試験するのに十分である。最後のプレート上では、陽性対照が添加される。
培養物は合計で6日間インキュベートされ、その後0.5μCi3[H]−チミジン(Perkin Elmer(登録商標)、Waltham、Massachusetts、USA)が各ウェルに添加される。培養物はさらに18時間インキュベートされ、その後TomTec MachIII細胞収穫器を使用してフィルターマット上に収穫される。ウェルごとの分あたりの計数(cpm)は、パラルクス低バックグラウンド計数モードのMicroplate Beta Counter(Perkin Elmer(登録商標)、Waltham、Massachusetts、USA)上での、Meltilex(商標)(Perkin Elmer(登録商標)、Waltham、Massachusetts、USA)シンチレーション計数により決定される。
増殖アッセイでは、2に等しい又はよりも大きい刺激指数(SI)(SI≧2)の経験的閾値は既に確立されており、それによりこの閾値より上の増殖応答を誘導する試料は陽性と見なされる(ここでは、ボーダーラインSI≧1.90は強調されている、が含まれている)。広範なアッセイ開発及び既往研究により、これは多数の偽陽性応答を検出せずに最大感度を可能にするノイズ閾値の最小シグナルであることが明らかにされている。陽性応答は、以下の統計的経験的閾値により定義される。
1.不対2試料スチューデントt−検定を使用してメディアム対照ウェルに対する試験ウェルのcpmを比較することによる応答の有意性(p<0.05)。
2.2より大きな刺激指数(SI≧2)、SI=試験ウェルの平均(cpm)/平均メディア対照ウェル(cpm)。
さらに、アッセイ内変動は、同型培養物からの生データの変異係数及び標準偏差(SD)を計算することにより評価される。
増殖アッセイは6通りの培養物において開始される(「調整されていないデータ」)。アッセイ内可変性が低いことを確かめるために、データは最大及び最小cpm値(「調整されたデータ」)を除いた後も解析され、ドナー応答のSIは両方のデータセットを使用して比較される。調整されたデータセットと非調整データセット両方由来のドナーSIの詳細が作成される。T細胞エピトープは、本研究におけるすべてのペプチドに対する応答の平均頻度+2×SD(バックグラウンド応答速度)を計算することにより同定される。この閾値より上の増殖を誘導するどんなペプチド(単数又は複数)もT細胞エピトープを含有すると見なされる。
ペプチドのin silico iTope(商標)解析
増殖アッセイで陽性であるペプチドの配列は、Antitope社の予測iTope(商標)ソフトウェアを使用して解析される。このソフトウェアは、ペプチドのアミノ酸側鎖とMHCクラスII結合グルーブ内の特異的結合ポケット間の有利な相互作用を予測する。キーとなる結合残基の位置は、1つのアミノ酸が重なり長いペプチド配列にまたがる10merペプチドを作製することにより決定される。各10merは、MHCクラスIIアロタイプのAntitope社のデータベースに対して試験され、MHCクラスII分子とのそのフィット及び相互作用に基づいてスコア化される。多数の対立遺伝子に対して高結合スコアを生じたペプチドはコア9−merを含有すると見なされる。
T細胞エピトープの同定
上記のEpiScreen(商標)解析を使用して同定されるペプチドはすべて、51人の健康なドナーに対して試験するために首尾よく合成される(54人のドナーが最初に選択される;ドナーは、低基礎cpm、すなわち、150cpmのカットオフ値よりも下であるために解析から除外されうる)。陽性応答は任意のペプチドに対してSI≧2の有意な(p<0.05)応答を生じたドナーにより定義される。ボーダーライン応答(SI≧1.90の有意な(p<0.05)応答)も含まれる。非調整及び調整されたデータ解析からの出力は、アッセイ内可変性が低いこと及び陽性応答は個々のウェルの偽増殖の結果ではないことを確かめるために比較される。各解析からの結果は方法間でほとんど差を示さず、したがって、T細胞エピトープマップは調整されたデータ解析を使用して編集される。非調整と調整された解析の両方からのドナー刺激指数が作成される。T細胞エピトープは、本研究におけるすべてのペプチドに対する応答の平均頻度及び標準偏差の2倍(「バックグラウンド応答速度」と呼ばれる)を計算することにより同定される。これは5.6%であると計算され、3人又はそれ以上のドナーにおいて陽性応答を誘導する等価物である。この閾値より上の増殖応答を誘導するペプチドは、T細胞エピトープを含有すると見なされる。
EpiScreen(商標)を使用するリードバリアントの免疫原性試験
リードバリアントは精製され、EpiScreen(商標)時間経過T細胞アッセイを使用して野生型ポリペプチドに対して比較される。HLAアロタイプの発現に従って世界人口を代表する多数の健康なドナーは、上記の通りにドナーライブラリーから選択される。ドナーは、2〜4×106CD8+T細胞枯渇PBMCを含有する別々のバルク培養物において各タンパク質を用いて刺激される。同型培養物(T芽球の)は5〜8日目にバルク培養物から取り除かれ、IL−2分泌(ELISPOT)と一緒の増殖が評価される。野生型とバリアント間の評価をさらに検証するために、研究コホートは、EpiScreen(商標)T細胞エピトープマッピング研究由来の応答ドナーを補充される(提供された十分な数のCD8+T細胞枯渇PBMCが残っている)。
リードバリアントにおける免疫原性の消失を確認するために、EpiScreen(商標)時間経過T細胞アッセイによるT細胞免疫原性の解析が以下の通りに着手される。
(i)健康なドナー由来のバフィーコート(世界人口に対して>80%DRBIアロタイプカバレッジを有する)を使用して、生理学的レベルのAPC及びCD4+T細胞を含有するPBMCを単離する;
(ii)各ドナーは、キーホールリンペットヘモシアニン(強力なネオ抗原)を含む陽性対照抗原に対して試験される;
(iii)CD8+T細胞は、MHCクラスI制限T細胞応答の検出を排除するために枯渇される;
(iv)リードバリアント及び野生型ポリペプチドは、T細胞CD4+T細胞を活性化する相対的能力を評価するために互いに対して比較される;
(v)データは、統計的及び頻度解析を含む追加の情報により支持されるSI>2の陽性応答を有する既に確認されたアッセイパラメータを使用して解析される;
(vi)EpiScreen(商標)時間経過T細胞アッセイからのデータは、個々の分子に対するT細胞応答の大きさ及び速度論に関する情報を提供する;
(vii)陽性応答を生じるドナー由来のどんな残っているPBMCも記録され、繰返し試験研究において使用するために利用可能である;
(viii)ドナーアロタイプと野生型ポリペプチドに対する応答及びバリアントリードに対する任意の応答間の関連について評価が行われる。
(例8)
四塩化炭素誘発肝線維症モデルにおけるM1043のインビボ有効性研究
この実施例の目的は、四塩化炭素誘発肝線維症モデルにおいて、マウスエンドグリンに結合するM1043抗体が、マウスBMPのマウスエンドグリンと結合を競合的に阻害する効果を調べることである。
M1043の重鎖可変領域
QVQLQQSGAELVKPGSSVKISCKASGYTFTSYDMHWIKQQPGNGLEWIGWIYPGNGNTKYNQKFNGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYFCARGKFGVGDYWGQGVMVTVSS(配列番号124)
M1043の軽鎖可変領域
DTVLTQSPALAVSPGERVSISCRASEGVNSYMHWYQQKPGQQPKLLIYIASNLASGVPARFSGSGSGTDFTLTIDPVEADDTATYFCQQSWNDPYTFGAGTKLELKR(配列番号125)
材料および方法
試験物質
M1043抗体はトラコン(TRACON)ファーマシューティカルズ株式会社によって提供される。アイソタイプ適合抗体(ラットIgG1)はBio X cell社(カタログ#BE0088)から購入しました。投薬溶液は、アイソタイプ適合抗体又はM1043抗体のストック溶液を、ビヒクル(滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS))で希釈することによって調製した。
動物
7週齢のメスのC57BL/6Jマウス(17〜21グラム)を日本SLC(日本)から入手した。
通常の条件下で動物を飼育し、通常の食餌を与えた(CE−2;日本クレア、日本)。本研究で用いた全ての動物は、以下のガイドラインで世話をされた:
1. 福祉と動物の管理に関する法律(10月1日環境省、法律番号105、1973)
2. 実験動物のケアと管理及び痛みの救済に関する規格(環境省のNo.88通知、2006年4月28日)に関連
3. 動物実験の適正な実施のためのガイドライン(日本学術会議、2006年6月1日)
環境
動物は、温度(23±2℃)、湿度(45±10%)、照明(12時間の人工光と暗サイクル;光8:00から20:00)及び空気交換の制御された条件下で特定の病原体フリー(SPF)施設で維持された。から。施設の汚染を防止するために、実験室は高い気圧で維持した。
動物の収容
動物は、ポリカーボネートケージKN−600(夏目製作所、日本)内で、ケージ当たり最大4匹のマウスで飼育した。滅菌Paper−Clean(日本SLC)を寝わらとして使用して、1週間ごとに交換した。
飲食
滅菌正常食餌をケージの上に金属製の蓋内に配置し、自由に与えた。蒸留水はまた、ゴム栓とシッパー管を備えた水ボトルから自由に与えた。水のボトルは週一回交換し、清掃し、オートクレーブ滅菌して再使用した。
動物やケージ識別
マウスは、イヤリングに刻印番号で識別された。各ケージはまた、固有の識別コードが与えられた。
ランダム化
マウスを処置(13日目)の開始前日にそれらの体重に基づいて、8匹のマウスの3つの群に分けた。
CCl4−誘発性肝線維症モデルの誘導
順化後、マウスを腹腔内にミネラルオイル(Sigma−Aldrich社)中5%CCl4(Sigma−Aldrich社、USA)を100μΙの体積で週二回(0、4、7、11、14、18、21及び25日目)投与した。
薬物投与経路
アイソタイプ適合抗体およびML1043抗体を5mL/kgの容量で静脈内経路により投与した。
治療用量
アイソタイプ適合抗体およびML1043抗体を、10mg/kgの用量で週二回マウスに投与した。
個々の体重を毎日測定した。生存率、臨床徴候およびマウスの動作は、毎日モニターした。
プラズマ検体採取
血液試料を抗凝固剤(ノボ・ヘパリン;持田製薬、日本)を用いてポリプロピレンチューブに集め、そして4℃で15分間1,000×gで遠心分離した。上清を回収し、−80℃で保存した。
組織検体採取
新鮮及び凍結肝臓試料は、従来の技術を用いて収集した。
組織学的解析
コラーゲン沈着を可視化するために、切片をブアン液中で前固定した左横肝臓組織のパラフィンブロックから切り出し、そしてpicro−シリウスレッド溶液(ヴァルデック、ドイツ)で染色した。線維化領域の定量分析のために、シリウスレッド染色切片の明視野画像はランダムにデジタルカメラ(DFC280;ライカマイクロシステムズ、ドイツ)を用いて100倍の倍率で捕捉し、そして5フィールド/セクションのシリウスレッド染色陽性領域は、Image Jソフトウェア(国立衛生研究所、USA)を用いて測定しました。定量は盲検様式で行われた。
統計的検定
統計分析は、GraphPad Prism 4(GraphPad Software、USA)上でボンフェローニ多重比較検定を用いて行った。P値<0.05は統計的に有意であると考えられた。結果は、平均±SDとして表した。
実験計画と治療
次のように治療群を分離しました。
グループ1:疾病管理
8匹のCCl4誘発性肝線維症モデルマウスは、28日まで任意の処理をせずに維持した。
グループ2:アイソタイプ適合抗体
8匹のCCl4誘発性肝線維症モデルマウスの静脈内に毎週二回、14、17、21及び24日目に10mg/kgの用量でアイソタイプ適合抗体を追加したビヒクルを投与した。
グループ3:抗体A
8匹のCCl4誘発性の肝線維症モデルマウスの静脈内に毎週二回、14、17、21及び24日目に10mg/kgの用量でM1043抗体を追加したビヒクルを投与した。全ての動物は28日目に屠殺した。
動物のモニタリングと犠牲
生存率、臨床徴候および行動は、毎日モニターした。体重は治療期間中毎日記録した。動物をエーテル麻酔(和光純薬工業、日本)下で心臓穿刺を介して放血により屠殺した。
結果
体重変化および一般状態(図10)
アイソタイプ適合抗体および疾患対照群の間又はアイソタイプ適合抗体およびML1043抗体群間のいずれも有意差はなかった。
本研究では、動物のどれも一般的な条件の低下を示さなかった。
屠殺の日の体重(図11Aおよび表4)
アイソタイプ適合抗体および疾患対照群の間又はアイソタイプ適合抗体およびML1043抗体群間のいずれも有意差はなかった。
肝臓重量(図11Bおよび表4)
アイソタイプ適合抗体群は、疾患対照群と比較して平均肝臓重量の有意な減少を示した。アイソタイプ適合抗体グループおよびML1043抗体群との間で平均体重に有意差は認められなかった。
組織学的解析
シリウスレッド染色(図12A〜F、図13および表5)は、上記のプロトコルを用いて行われた。
広範囲のコラーゲン沈着及び架橋線維症は、アイソタイプ適合抗体と疾患対照群の肝臓切片において明らかだった。M1043抗体群は、アイソタイプ適合抗体と疾患コントロール群よりも架橋線維症のより低い頻度の形成と低いコラーゲン沈着を示した。
線維化面積(シリウスレッド陽性領域)の割合は有意にアイソタイプ適合抗体群と比較してのM1043抗体群で減少した(P<0.05)。
結論
本研究では、抗体M1043による治療は、シリウスレッド陽性領域によって証明されるように、コラーゲン沈着の有意な減少を示した。さらに、異常な所見は、抗体処置群で観察されなかった。これらの結果は、M1043抗体治療は、重大な副作用のない抗線維化効果を持っていることが示唆された。
(例9)
ブレオマイシン誘発肺線維症におけるM1043とTRC105のインビボ有効性研究
本研究の目的は、拮抗的にマウスBMPのマウスエンドグリンへの結合を阻害するM1043の効果並びにマウスエンドグリンに結合するが、マウスBMPのマウスエンドグリンへの結合を阻害しない抗体TRC105の効果を、ブレオマイシン(BLM)誘発肺線維症のモデルで検証することである。
プロトコール
無病原体7週齢の雌C57BL/6Jマウスは日本SLC(日本)から入手した。0日目に、60匹のマウスはMicrosprayer(登録商標)(Penn−Century,USA)を用いて動物あたり、50μL、3mg/kgの用量で生理食塩水中ブレオマイシン硫酸塩(BLM、日本化薬、日本)の単回気管内投与により肺線維症を発症するように誘導した。
BLM誘導性肺線維症モデルマウスは、治療開始前日に体重に基づいて12匹のマウスの4つの群に無作為化した。
個々の体重は、実験期間中、毎日測定した。
生存、臨床徴候およびマウスの行動を毎日モニターした。
グループ:
グループ1(疾患対照):12匹のBLM誘導性肺線維症モデルマウスは、20日目までの任意の処理をせずに維持した。
グループ2(アイソタイプ適合抗体):12匹のBLM誘導性肺線維症モデルマウスの静脈内に毎週二回、7、10、14及び17日目に10mg/kgの用量でアイソタイプ適合抗体[BioExcel カタログBE0088(25mg)のラットIgG1]を追加したビヒクル(リン酸緩衝生理食塩水)を投与した。
グループ3(M1043抗体):12匹のBLM誘導性肺線維症モデルマウスの静脈内に毎週二回、7、10、14及び17日目に10mg/kgの用量でM1043を追加したビヒクルを投与した。
グループ4(TRC105ヒト/マウスキメラ抗体):12匹のBLM誘導性肺線維症モデルマウスの静脈内に毎週二回、7、10、14及び17日目に10mg/kgの用量でTRC105を追加したビヒクルを投与した。
グループ5(特発性肺線維症のためのBIBF1120阻害剤−陽性対照、ベーリンガーインゲルハイム):12匹のBLM誘導性肺線維症モデルマウスに経口で7日目から21日目まで一日一回100mg/kgの用量でBIBF1120を追加した1%CMCを投与した。
すべての群のマウスは21日目で、以下のアッセイのために終了した。
サンプル採取および結果
(処置の割り当てを知らない審査官による)生化学分析。肺のヒドロキシプロリンは、加水分解法により定量した。図14Aを参照。
肺切片の組織学的分析は、グループの同定を認識していない専門家によって行われた。マッソントリクローム(Masson’s Trichrome)染色を行い、アシュクロフトスコア(Ashcroft Score)の推定値が決定された。図14Bを参照。
ボンフェローニ多重比較テストによって5つの処理群間の体重に有意差はなかった(P>0.05、互いにグループに対するアイソタイプ対照抗体群を比較)。図14Cを参照。
ボンフェローニ多重比較テストによって5つの処理群間の生存率に有意差はなかった(P>0.05、それぞれの他のグループに対するアイソタイプ対照抗体群を比較)。図14Dを参照。
アシュクロフトスコアは、図14Eに示されている。アイソタイプ対照抗体グループと疾患コントロール群との間アシュクロフトのスコアに有意差は認められなかった。アイソタイプ対照抗体グループおよびML1043処置群の間のアシュクロフトのスコアに有意差は認められなかった。TRC105抗体処置群におけるアシュクロフトスコアは、アイソタイプ対照抗体群よりも有意に低かった。BIBF1120処置群におけるアシュクロフトスコアによる統計的検定は、ボンフェローニの多重比較検定を用いて行ったアイソタイプ対照抗体群よりも有意に低かった。P値<0.05を統計学的に有意とみなされる。
(例10)
非アルコール性脂肪性肝炎のモデルにおけるM1043、TRC105及びTRC205のインビボ有効性研究
本研究の目的は、拮抗的にマウスBMPのマウスエンドグリンへの結合を阻害するM1043の効果並びにマウスエンドグリンに結合するが、マウスBMPのマウスエンドグリンへの結合を阻害しない抗体TRC105及びTRC205の効果を、非アルコール性脂肪性肝炎のモデルで検証することである。
プロトコール
無病原体14日妊娠C57BL/6マウスは日本エスエルシー株式会社(日本)から得られる。
NASHは出産後にSTZ(Sigma、米国)の単回皮下注射、並びに生後4週間後(28日目±2日)、高脂肪食(HFD;日本クレア、日本)を自由給餌により雄マウスに確立される。
9週齢(63日目±2日)で、マウスは治療開始前日に10匹のマウスの4つの群に無作為化する。
個々の体重は、治療期間中、毎日測定される。
生存、臨床徴候およびマウスの行動は毎日監視される。
グループ:
グループ1(非罹患対照):10匹のマウスは自由に給餌され、ビヒクル(リン酸緩衝生理食塩水)を毎週2回、63、66、70、73、77、80日目に静脈内投与する。
グループ2(疾患対照):10匹のNASHマウスはHFDを自由給餌され、ビヒクル(リン酸緩衝生理食塩水)を毎週2回、63、66、70、73、77、80日目に静脈内投与する。
グループ3(ビヒクルコントロール):10匹のNASHマウスに63日目から84日目まで一日一回10mg/kgの用量でテルミサルタンを補充された純水を経口投与する。
グループ4(抗体M1043):10匹のNASHマウスに、抗体M1043を補充したビヒクルを10mg/kgの用量で週二回、63日目、66、70、73、77、80日目に、静脈内に投与する。
グループ5(抗体TRC105):8匹のNASHマウスに、抗体TRC105を補充したビヒクルを、10mg/kgの用量で、週二回63、66、70、73、77、80日目に、静脈内投与する。
グループ6(抗体TRC205):10匹のNASHマウスに、抗体TRC205を補充したビヒクルを、10mg/kgの用量で、週二回63、66、70、73、77、80日目に静脈内投与する。
全てのグループのマウスは生後12週で、以下のアッセイのために終了する。
サンプルの収集と分析
以下のサンプルは、さらなる分析のために収集され、保存される:凍結した血清標本、ならびに凍結した肝臓標本及び新鮮な肝臓標本。
血清はアラニンアミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、およびアルカリホスファターゼについて評価される。肝臓トリグリセリドが評価される。
腫瘍壊死因子-アルファ、アルファ平滑筋アクチン、単球走化性タンパク質−1、メタロプロテイナーゼ1の組織阻害剤の遺伝子発現は、肝臓から得られた全RNAを用いて評価される。
組織学的肝臓切片の解析は、従来のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色技術を用いて行われる。
H&E染色は、NAFLD活動スコアを推定するために行われる。
シリウスレッド染色
シリウスレッド染色は、線維化領域の割合を推定するために、上記のプロトコールを用いて行われる。
免疫組織化学
アルファ−SMAのための免疫組織化学を行う(アルファSMAの半定量)。
統計的検定
統計的検定は、ボンフェローニの多重比較検定を用いて行われる。P値<0.05を統計学的に有意とみなす。
(例11)
ELISAは、マウスエンドグリンへM1043抗体の結合を決定するため、以下のように行われた:
Nunc Immuno MaxiSorp 96ウェル平底プレート(フィッシャー、カタログ番号DIS−971−030J)をPBS中1μg/mlマウスエンドグリン(R&Dシステムズ、カタログ番号1320−EN−025)で一晩4度で被覆した。翌日、プレートをPBSTで3回洗浄しから、室温で1時間PBST/3%マーベルでブロッキングした。ブロッキング後、プレートをPBSTで3回洗浄し、そして様々な濃度(三倍連続希釈で10μg/mlから0.014μg/ml)の、PBST/3%マーベル中のM1043または無関係ラットIgG1(Affymetrix社、カタログ番号14−4301)のいずれかをプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。抗体の結合は、抗ラットIgGペルオキシダーゼ(Sigma、カタログ番号A9037)及びTMB単一溶液基質(Invitrogen社、カタログ番号00−2023)を介して検出した。反応を3 M HC1を加えて停止させ、OD450nm値はDynex MRX TCIIプレートリーダーで測定した。結合ELISAの結果は、図15に示されている。結果は、無関係のアイソタイプ適合抗体で結合は全く観察されなかったので、M1043抗体がマウスエンドグリンと特異的に結合することを示している。
マウスエンドグリンへの結合についてラット抗体M1043と競合するマウスBMP9の能力は、競合ELISAによって以下のように決定した:200μgのM1043抗体はLightning−Linkビオチン化キットで製造業者の推奨に従ってビオチン化した(Innova Biosciences社、カタログ番号704−0010)。Nunc Immuno MaxiSorp 96ウェル平底プレート(Fisherカタログ番号DIS−971−030J)をPBS中1μg/mlマウスエンドグリンで一晩4℃で被覆した(R&Dシステムズ、カタログ番号1320−EN−025)。翌日、プレートをPBSTで3回洗浄しから、室温で1時間PBST/3%マーベルでブロッキングした。三倍連続希釈のマウスBMP9(30μg/mlから0.004μg/ml)又は無関係ラットIgG1(R&D Systems、カタログ番号5566−BP−010)を固定濃度のビオチン化のM1043(40ng/ml)と混合し、プレートに加え1時間室温でインキュベートした。ビオチン化抗体の結合は、ストレプトアビジンHRP(Sigma、カタログ番号S5512)とTMB基質(Sigma、カタログ番号T0440)を介して検出した。OD450nm値はDynex MRX TCIIプレートリーダーで測定した。この競合ELISAの結果は、図16に示されている。結果は、マウスエンドグリンへ結合について、マウスBMP9はビオチン化のM1043と競合したのに対し、無関係な分子はしなかったことを示す。
(例12)
ELISAは、ヒトCD105に対するビオチン化TRC205抗体の結合を決定するために以下のように行われた:TRC205抗体(配列番号89/配列番号93; IgG4)をLightning−Linkビオチンコンジュゲーションキットを用いて製造業者の説明書に従ってビオチン化した(タイプA)(Innova Biosciences社カタログ番号704−0010)。Nunc Immuno MaxiSorp 96ウェル平底プレート(Fisherカタログ番号DIS−971−030J)をPBS中1.5μg/mlマウス抗ヒトCD 105で一晩4°Cで被覆した(Southern Biotechnologies カタログ番号9811−01)。次の日、PBS/2%BSA中100ng/mlヒトCD 105(R&D Systemsカタログ番号1097−EN)を、プレコーティングしたプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。PBSTで3回洗浄した後、PBST/2%BSA中のビオチン化TRC205抗体の三倍希釈系列(10μg/ml から0.014μg/ml)をプレートに二連で添加した。室温で1時間インキュベーション後、プレートをPBSTで3回洗浄し、ビオチン化TRC205抗体の結合をストレプトアビジンHRP(Sigmaカタログ番号S5512)とTMB基質(Sigmaカタログ番号T0440)を用いて検出した。OD450nm値はDynex MRX TCIIプレートリーダーで測定した。結合曲線から、EC50値は、46ng/mlであると計算された(図17)。
ヒトCD105への結合についてTRC205抗体と競合するヒトBMP9の能力は、以下のように競合ELISAによって決定した:Nunc Immuno MaxiSorp 96枚のウェル平底プレート(Fisherカタログ番号DIS−971−030J)をコーティングしたPBSにおけるPBS中1.5μg/mlマウス抗ヒトCD105(Southern Biotechnologiesカタログ番号9811−01)で一晩+4℃でコーティングした。次の日、PBS/2%BSA中100ng/mlのヒトCD105(R&D Systemsカタログ番号1097−EN)を、プレコーティングしたプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。PBSTで3回洗浄した後、ヒトBMP9(R&D Systems カタログ番号3209−BP−010)の三倍希釈系列(413nMから0.56nm)又は非標識TRC205抗体の三倍希釈系列(40nMから0.05nM)、或いは単一濃度の無関係の抗体(66nM)のいずれかと固定濃度のビオチン化TRC205抗体(55ng/ml)を混合し、プレートに添加した。室温で1時間インキュベーション後、プレートをPBSTで3回洗浄し、ビオチン化TRC205抗体の結合をストレプトアビジンHRP(Sigmaカタログ番号S5512)とTMB基質(Sigmaカタログ番号T0440)を用いて検出した。OD450nm値はDynex MRX TCIIプレートリーダーで測定した。得られた競合曲線(図18)から、IC 50値はTRC205抗体およびBMP9に対して各々1.7nM(0.26μg/ml)及び14.6nM(0.35μg/mlの)として算出された。
(例13)
細胞ベースのアッセイを抗体TRC205は、ヒト線維芽細胞におけるSMAD 1/5/8のリン酸化を阻害することを実証するために行われた。Meso Scale Discovery(MSD)捕捉ELISAアッセイをタンパク質抽出物中のリン酸化SMAD1および全SMAD1を検出するために開発された。
50枚の高密度96ウェルプレートを、500mgのモノクローナル抗SMADl抗体(Santa Cruz#sc−81378)を使用してMSDにより注文被覆する。二つの異なる検出抗体は、リン酸化されたSMAD 1/5/8(Cell Signaling Technology #9511)および全SMAD1(Cell Signaling Technology #9743)を検出するために使用される。検出は、MSD推奨のプロトコールおよびバッファを使用して実施される。簡単に説明すると、線維芽細胞をAccutase(インビトロジェン#A1110501)で剥離し、PBSで2回洗浄し、培地25ml中2500細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種した。血清飢餓の3時間後に、抗体を、25ml培地中でウェルに添加した。1時間後、2.5mlのBMP9(2ng/ml)を各ウェルに添加する。30分後、細胞を、50mlのMSD溶解緩衝液2x(150mM NaCl、20mM Tris、pH7.5、1 mM EDTA、1mM EGTA、1%Triron(登録商標)X−100、ホスファターゼおよびプロテアーゼ阻害剤を補充)で溶解し、摂氏−20度で凍結保存した。
40mlの溶解物を(製造業者の説明書に従って)MSDアッセイに使用される。MSDプレートは、ELx405 Select CWプレートウォッシャー(Biotek)で洗浄し、信号は、Sector Imager 6000(Meso Scale Discovery)で読まれる。
プライマリーエンドポイントは、ヒトエンドグリンと結合しない抗体で処理した線維芽細胞と比較して、抗体TRC105または抗体TRC205で処理した線維芽細胞との間で、BMP−9刺激に応答して、総SMAD1で割ったリン酸化SMAD 1タンパク質の比率の変化である。
(例14)
第3相試験は、特発性肺線維症の約600人の患者に対して無作為に52週間経口ピルフェニドン(一日あたり2403mg)、または抗エンドグリン抗体のいずれかを割り当てされる。主要エンドポイントは、52週目の強制肺活量(FVC)、または死亡の変化である。副次的エンドポイントとしては、例えば、6分間歩行距離、無増悪生存期間、生活の延長、呼吸困難、および/またはあらゆる原因からか、特発性肺線維症による死亡が挙げられる。他の評価は、2つの治療群間の有害事象の発生を含めることができる。
本出願のある種の実施形態が本明細書に示され記載されてきたが、そのような実施形態は例としてのみ提供されることは明白である。本発明から逸脱することなく当業者は数多くの変動、変化及び置換物を思い付くことがある。本明細書に記載される実施形態の様々な代替物を本明細書に記載される方法を実行する際に用いうることは理解されるべきである。