ここで、本発明の好ましい実施形態を示す添付の図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は、種々の形態で実施することができるため、本明細書に示す実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完璧におよび完全になるように、ならびに本開示によって当業者に本発明の範囲が十分に伝えられるように提供するものである。
別様に定義しない限り、本明細書において用いるすべての専門および科学用語は、本発明が属する技術分野の通常の技術者が一般に理解しているのと同じ意味を有する。本明細書での本発明の説明において用いる専門用語は、特定の実施形態の説明のみを目的とするので本発明を限定するためのものではない。本明細書に引用するすべての出版物、特許出願、特許、特許公報および他の参考文献は、その参考文献を提示する文および/または段落に関連した技術についてそれら全体が参照により援用されている。
本明細書では、特に別の指示がない限り、核酸配列を左から右へ5’から3’方向に1本の鎖だけによって提示する。本明細書では、ヌクレオチドおよびアミノ酸を、IUPAC−IUB生化学命名法委員会(Biochemical Nomenclature Commission)によって推奨されている様式で、または(アミノ酸については)一文字コードもしくは三文字コードのいずれかによって、両方とも米国特許法施行規則1.822条および確立されている使用法に従って表す。
別の指示がある場合を除き、遺伝子のクローニング、核酸の増幅および検出、ならびにこれらに類するものには、当業者に公知の標準的な方法を用いることができる。そのような技術は、当業者に公知である。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd Ed.(Cold Spring Harbor,NY,1989);Ausubel et al.Current Protocols in Molecular Biology(Green Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.,New York)を参照のこと。
I.定義
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「上記の(the)」は、その文脈が明示しない限り、複数形を含むものと解釈する。
本明細書において用いる場合、「および/または」は、付随して列挙する用語1つ以上の任意のおよびすべての可能な組み合わせ、ならびに択一(「または」)的に解釈されるときには組み合わせの欠如を指し、およびそれらを包含する。
本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に適用される場合の用語「から本質的に成る」(および文法的変形)は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドであって、説明されている配列(例えば、配列番号)と、そのポリヌクレオチドまたはポリペプチドが機能を著しく改変されないようなその説明されている配列の5’および/もしくは3’またはN末端および/もしくはC末端上の合計10以下(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)の追加のヌクレオチドまたはアミノ酸の両方から成るものである、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。上記合計10以下の追加のヌクレオチドまたはアミノ酸は、両末端の追加のヌクレオチドまたはアミノ酸を互いに足した合計数を含む。本発明のポリヌクレオチドに適用される場合の用語「著しく改変される」は、説明されている配列から成るポリヌクレオチドの発現レベルと比較して少なくとも約50%以上の、コードされた核酸を発現する能力の増加または減少を指す。本発明のポリペプチドに適用される場合の用語「著しく改変される」は、説明されている配列から成るポリペプチドの活性と比較して少なくとも約50%以上の、血管新生刺激活性の増加または減少を指す。
用語「調節する(regulate)」、「調節する(regulates)」または「調節」は、指定レベルまたは活性の向上(例えば、増加)または阻害(例えば、減少)を指す。
用語「向上させる」または「増加させる」は、指定パラメーターの少なくとも約1.25倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、8倍、10倍、12倍、またはさらに15倍の増加を指す。
本明細書において用いる場合の用語「阻害する」もしくは「低下させる」またはそれらの文法的変異は、指定レベルまたは活性の少なくとも約15%、25%、35%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、95%以上の減少または縮小を指す。特定の実施形態において、阻害または低下は、結果として、検出可能な活性を殆どまたは本質的にまったく(多くとも、有意でない量、例えば約10%またはさらに5%未満)生じさせない。
本明細書において用いる場合の「治療有効」量は、被験者に何らかの改善または利益をもたらす量である。言い換えると、「治療有効」量は、被験者における少なくとも1つの臨床症状の何らかの緩和、軽減、または減少(例えば、がんの場合、腫瘍量の低下、さらなる腫瘍成長の予防、転移の予防、または生存時間の増加)をもたらす量である。治療効果は、何らかの利益を被験者にもたらすのであれば、完全または治癒的である必要がないことは、当業者には理解されるはずである。
用語「治療する」、「治療すること」、または「の治療」とは、被験者の状態の重症度を低下させるまたは少なくとも部分的に改善もしくは修飾すること、および少なくとも1つの臨床症状の何らかの緩和、軽減または減少を達成することと解釈する。
「造腫瘍性」という表現は、細胞または細胞集団の正常状態から悪性状態への変化を表す、細胞(単数または複数)の腫瘍状態(例えば、細胞の悪性形質転換の程度、細胞の悪性度、細胞が腫瘍を形成するおよび/もしくは腫瘍の特徴を有する傾向、または単に、患者もしくは組織/器官における腫瘍細胞の存在もしくは不在)を主として指す。造腫瘍性は、腫瘍細胞がサンプル中に存在することおよび/または正常細胞から腫瘍細胞への細胞の形質転換が進行中であることを示し、これは、腫瘍発現の任意の測定基準によって確認することができる。上記変化は、同じ条件下で正常な細胞について観察される成長より急速である速度であって、次の形質の1つ以上によって概して特徴づけられる速度での細胞増殖を概して含む:誘発因子(例えば、発がん性物質、ウイルス)がもはや存在しなくなった後の継続的成長、正常組織との構造的構成および/または協調の欠如、ならびに概して、組織塊(すなわち腫瘍)の形成。従って、腫瘍は、最も一般的には、新生物成長に起因する細胞の増殖(例えば、新形成、成長、ポリープ)と説明され、最も典型的には、悪性腫瘍である。悪性形質転換の場合、新生物は、悪性であり、または悪性になる素因を有する。悪性腫瘍は、概して、未分化である(分化の欠如によって特徴づけられる原始細胞成長)、浸潤性である(周囲組織に移動して破壊する)および/または転移性である(体の他の部分に広がる)ことを特徴とする。
本明細書において用いる場合の「過剰なまたは望ましくない血管新生に関連した障害」という表現は、望ましくない血管新生が発生する任意の疾患、障害または状態を指す。そのような障害の例としては、限定ではないが、がん、感染症、自己免疫異常、血管奇形、ディジョージ症候群、HHT、海綿状血管腫、アテローム性動脈硬化症、移植後動脈症、肥満、乾癬、いぼ、アレルギー性皮膚炎、瘢痕ケロイド、発熱性肉芽腫、水疱形成性疾患、カポジ肉腫、硝子体過形成遺残症候群、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性、脈絡膜新生血管形成、原発性肺高血圧症、喘息、鼻ポリープ、炎症性腸疾患、歯周病、腹水、腹膜癒着、子宮内膜症、子宮出血、卵巣嚢胞、卵巣過剰刺激、子宮外妊娠、関節炎、滑膜炎、骨髄炎および/または骨増殖体形成が挙げられる。
本明細書において用いる場合の用語「がん」は、細胞の任意の良性または悪性異常成長を指す。例としては、限定ではないが、乳がん、前立腺がん、リンパ腫、皮膚がん、膵臓がん、大腸がん、黒色腫、悪性黒色腫、卵巣がん、脳のがん、脳の原発性がん腫、頭頸部がん、神経膠腫、膠芽腫、肝臓がん、膀胱がん、非小細胞肺がん、頭部または頸部のがん腫、乳房がん腫、卵巣がん腫、肺がん腫、小細胞肺がん腫、ウィルムス腫瘍、子宮頚がん腫、精巣がん腫、膀胱がん腫、膵臓がん腫、胃がん腫、結腸がん腫、前立腺がん腫、尿生殖器がん腫、甲状腺がん腫、食道がん腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、副腎がん腫、腎細胞がん腫、子宮内膜がん腫、副腎皮質がん腫、悪性膵臓インスリノーマ、悪性カルチノイドがん腫、絨毛上皮腫、菌状息肉腫、悪性高カルシウム血症、頚管過形成、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性顆粒球性白血病、ヘアリー細胞白血病、神経芽腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、真性赤血球増加症、本態性血小板増加症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、軟部組織肉腫、骨原性肉腫、原発性マクログロブリン血症、および網膜芽細胞腫が挙げられる。一部の実施形態において、がんは、腫瘤形成性がんから選択される。
本明細書において用いる場合の用語「乳がん」は、被験者の乳房の細胞から発生するがんを指す。この用語は、浸潤性および非浸潤性がんを含み、ならびに基底サブタイプ(ER陰性およびHer1/neu陰性)、Her2/neuサブタイプ(Her2/neu陽性およびER陰性)および管腔サブタイプ(ER陽性)をはじめとする乳がんのすべてのすべてのサブタイプを包含する。
本明細書において用いる場合の用語「対照サンプル」は、表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性のレベルを関心のあるサンプルにおける発現および/または活性のレベルと比較するために用いられる組織または細胞サンプルを指す。対照サンプルは、例えば、被験者における同じ組織もしくは細胞タイプの正常(すなわち非罹病)部分からのものである場合もあり、被験者の異なる組織もしくは細胞タイプからのものである場合もあり、照合する個体からのものである場合もあり、または被験者集団からとった測定値の平均から誘導した標準である場合もある。もう1つの実施形態において、対照サンプルは、被験者の罹病組織からのもの、例えば、診断時、治療前または治療期後のものである場合がある。
本明細書において用いる場合、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」および「ポリヌクレオチド」は、相互に代替して使用され、cDNA、ゲノムDNA、mRNA、合成(例えば化学合成)DNAもしくはRNA、ならびにRNAおよびDNAのキメラを含めて、RNAとDNAの両方を包含する。用語ポリヌクレオチド、ヌクレオチド配列、または核酸は、ヌクレオチド鎖を、その鎖長に関係なく、指す。核酸は、二本鎖である場合もあり、または一本鎖である場合もある。一本鎖である場合、その核酸は、センス鎖である場合もあり、またはアンチセンス鎖である場合もある。核酸は、オレゴヌクレオチドアナログまたは誘導体(例えば、イノシンもしくはホスホロチオエートヌクレオチド)を使用して合成することができる。そのようなオレゴヌクレオチドは、例えば、塩基対合能力が改変されたまたは耐ヌクレアーゼ性が増加された核酸を調製するために使用することができる。本発明は、本発明の核酸、ヌクレオチド配列またはポリヌクレオチドの相補鎖である(完全な相補鎖である場合もあり、または部分的な相補鎖である場合もある)核酸をさらに提供する。
「単離されたポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド配列(例えば、DNAまたはRNA)であって、それが由来する生物の自然に発生するゲノムにおいてそれが隣接している(5’末端上のものおよび3’末端上のもの)ヌクレオチド配列と隣接していないヌクレオチド配列である。従って、1つの実施形態において、単離された核酸は、コーディング配列に隣接する5’非コーディング(例えば、プロモーター)配列の一部またはすべてを含む。従って、この用語は、例えば、ベクターに、自立複製プラスミドもしくはウイルスに、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれている、あるいは他の配列とは関係なく別分子(例えば、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理によって生産されたcDNAまたはゲノムDNAフラグメント)として存在する、組換えDNAを含む。追加のポリペプチドまたはペプチド配列をエンコードするハイブリッド核酸の一部である組換えDNAも含む。遺伝子を含むポリヌクレオチドは、そのような遺伝子を含む染色体のフラグメントではなく、むしろ、上記遺伝子に随伴する随伴するコーディング領域および調節領域を含むが、天然では上記染色体上で居つけられる追加の遺伝子を含まない。
用語「単離された」は、細胞材料、ウイルス材料、および/もしく培養基(組換えDNA技術によって生産されるとき)、または前駆化学物質もしくは他の化学物質(化学合成されるとき)が実質的にない、核酸、ヌクレオチド配列またはポリペプチドを指すことができる。さらに、「単離されたフラグメント」は、フラグメントとして自然に発生せず、天然状態では見つけられない、核酸、ヌクレオチド配列またはポリペプチドのフラグメントである。「単離された」は、その調製物が厳密に純粋(均一)であるという意味でないが、ポリペプチドまたは核酸を所期の目的のために使用できる形態で提供するために十分純粋である。
単離された細胞は、天然状態で通常は伴っている他の成分から分離されている細胞を指す。例えば、単離された細胞は、培養基中の細胞である場合があり、および/または本発明の医薬的に許容される担体中の細胞である場合がある。従って、単離された細胞を被験者に送達および/または導入することができる。一部の実施形態において、単離された細胞は、被験者から除去され、本明細書において説明するようにex vivoで処理され、その後、その被験者に戻される細胞である場合がある。
ポリヌクレオチドに適用される場合の用語「フラグメント」は、参照核酸またはヌクレオチド配列に比べて低減された長さのヌクレオチド配列であって、参照核酸またはヌクレオチド配列と同一またはほぼ同一(例えば、90%、92%、95%、98%、99%同一)の連続したヌクレオチドのヌクレオチド配列を含むこと、から本質的に成る、および/または、から成るヌクレオチド配列を意味することは理解されるはずである。本発明によるそのような核酸フラグメントは、適切な場合には、それが構成要素である、より大きなポリヌクレオチドに含まれている場合がある。一部の実施形態において、そのようなフラグメントは、本発明による核酸またはヌクレオチド配列の少なくとも約8、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200、またはそれ以上の連続ヌクレオチド長を有するオレゴヌクレオチドを含むこと、から本質的に成る、および/または、から成る場合がある。
ポリペプチドに適用される場合の用語「フラグメント」は、参照ポリペプチドまたはアミノ酸配列に比べて低減された長さのアミノ酸配列であって、参照ポリペプチドまたはアミノ酸配列と同一またはほぼ同一(例えば、90%、92%、95%、98%、99%同一)の連続したアミノ酸のアミノ酸配列、を含む、から本質的に成る、および/またはから成るアミノ酸配列を意味することは理解されるはずである。本発明によるそのようなポリペプチドフラグメントは、適切な場合には、それが構成要素である、より大きなポリペプチドに含まれている場合がある。一部の実施形態において、そのようなフラグメントは、本発明によるポリペプチドまたはアミノ酸配列の少なくとも約4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200、またはそれ以上の連続アミノ酸長を有するペプチドを含むこと、から本質的に成る、および/または、から成る場合がある。
「ベクター」は、細胞への核酸のクローニングおよび/または移送のための任意の核酸分子である。ベクターは、別の核酸配列を付けて、その付けたヌクレオチド配列の複製を可能にすることができるレプリコンである場合がある。「レプリコン」は、in vivoで核酸複製の自立単位として機能する、すなわちそれ自体の制御下で複製できる、任意の遺伝要素(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルスゲノム)であることができる。用語「ベクター」は、in vitroで、ex vivoで、および/またはin vivoで細胞に核酸を導入するための、ウイルス核酸分子と非ウイルス(例えば、プラスミド)核酸分子の両方を指す。核酸の操作、応答要素およびプロモーターの遺伝子への組み込み、などのために、当該技術分野において公知の多数のベクターを使用することができる。例えば、相補付着端を有する選択されたベクターに適切な核酸フラグメントを接続することによって、応答要素およびプロモーターに相当する核酸フラグメントの適するベクターへの挿入を果たすことができる。あるいは、酸分子の末端を酵素により修飾することができ、またはそれらの核酸分子の末端にヌクレオチド配列(リンカー)を接続することによって任意の部位を生成することができる。そのようなベクターを、そのベクターを含有する細胞の選択および/またはそのベクターの核酸が細胞ゲノムに組み込まれた細胞の選択に備える選択マーカーをエンコードする配列を含有するように、遺伝子工学で作り変えることができる。そのようなマーカーは、そのマーカーによってコードされたタンパク質を受け入れるおよび発現する宿主細胞の同定および/または選択を可能にする。「組換え」ベクターは、1つより多くの異種核酸配列(すなわち、トランスジーン)、例えば、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の異種ヌクレオチド配列を含む、ウイルスまたは非ウイルスベクターを指す。
ウイルスベクターは、生きている動物被験者ばかりでなく、細胞における様々な遺伝子送達用途において使用されている。使用することができるウイルスベクターとしては、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ関連ウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン−バー・ウイルス、およびアデノウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。非ウイルスベクターとしては、プラスミド、リポソーム、荷電脂質(サイトフェクチン)、核酸−タンパク質複合体、および生体高分子が挙げられる。関心のある核酸に加えて、ベクターは、1つ以上の調節領域、ならびに/または核酸移送結果(特定の組織への送達、発現期間など)の選択、測定および調査に有用な選択マーカーも含むことができる。
ベクターは、当該技術分野において公知の方法、例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿法、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子銃の使用、または核酸ベクター輸送体によって、所望の細胞に導入することができる(例えば、Wu et al.,J.Biol.Chem.267:963(1992)、Wu et al.,J.Biol.Chem.2(55:14621(1988)、および1990年5月15日出願のHartmut et al.,カナダ特許出願第2,012,311号を参照のこと)。
一部の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、リポフェクションによってin vivoで細胞に送達することができる。リポソーム媒介トランスフェクションで遭遇する困難および危険を制限するように設計された合成カチオン脂質を使用して、本発明のヌクレオチド配列のin vivoトランスフェクション用のリポソームを作製することができる(Feigner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 54:7413(1987)、Mackey,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:8027(1988)、およびUlmer et al.,Science 259:1745(1993))。カチオン性脂質の使用は、負電荷を有する核酸の封入を促進し、負電荷を有する細胞膜との融合も促進する(Feigner et al.,Science 337:387(1989))。核酸の移送に特に有用な脂質化合物および組成物は、国際特許公報WO95/18863およびWO06/17823に、ならびに米国特許第5,459,127号に記載されている。外来核酸配列を特定の器官にin vivoで導入するためのリポフェクションの使用は、一定の実益を有する。特定の細胞へのリポソームの分子ターゲッティングは、恩恵の一領域の代表である。特定の細胞にトランスフェクションを向けることが、細胞不均一性を有する組織、例えば膵臓、肝臓、腎臓および脳、において特に好ましいことは、明白である。脂質をターゲッティングのために他の分子と化学的にカップリングさせることができる(Mackey,et al.,1988,上記文献)。ターゲッティングされたペプチド、例えばホルモンまたは神経伝達物質、およびタンパク質、例えば抗体、または非ペプチド分子をリポソームに化学的にカップリングさせることができる。
様々な実施形態において、核酸のin vivoでの送達を助長するために、他の分子、例えば、カチオン性オリゴペプチド(例えば、WO95/21931)、核酸結合タンパク質から誘導されたペプチド(例えば、WO95/21931)、および/またはカチオン性ポリマー(例えば、WO95/21931)を使用することができる。
ベクターを裸の核酸としてin vivoで導入することもできる(米国特許第第5,693,622号、同第5,589,466号および同第5,580,859号参照)。受容体媒介核酸送達アプローチも用いることができる(Curiel et al.,Hum.Gene Ther.3:147(1992)、Wu et al.,J.Biol.Chem.262:4429(1987))。
用語「トランスフェクション」または「形質導入」は、細胞による外来または異種核酸(RNAおよび/またはDNA)の取り込みを意味する。細胞は、外来または異種核酸がその細胞内部に導入または送達されているとき、そのような核酸で「トランスフェクトされている」または「形質導入されている」。トランスフェクトされたまたは形質導入された核酸が、細胞の表現型変化および/または細胞の活性もしくは機能の変化をもたらすとき、その細胞は、その外来または異種核酸によって「形質転換されている」。形質転換核酸は、細胞のゲノムを構成する染色体DNAに組み込まれる(共有結合される)場合があり、または安定なプラスミドとして存在する場合がある。
本明細書において用いる場合、用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、交換可能に用い、別の指示がない限り、ペプチドとタンパク質の両方を包含する。
「融合タンパク質」は、自然界では互いに融合している状態を見いだせない2つ(またはそれ以上)の異なるポリペプチドをエンコードする2つの異種ヌクレオチド配列またはそれらのフラグメントが、正しい翻訳リーディングフレーム内で互いに融合したとき生成されるポリペプチドである。実例となる融合ポリペプチドとしては、本発明のポリペプチド(またはそのフラグメント)と、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質またはレポータータンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、β−グルクロニダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなど)のすべてまたは一部、ヘムアグルチニン、c−myc、FLAGエピトープなどとの融合体が挙げられる。
本明細書において用いる場合、「機能性」ポリペプチドまたは「機能性フラグメント」は、そのポリペプチドに通常付随する少なくとも1つの生物活性(例えば、血管新生活性、タンパク質結合、リガンドまたは受容体結合)を実質的に保持するものである。特定の実施形態において、「機能性」ポリペプチドまたは「機能性フラグメント」は、未修飾ペプチドが有する活性のすべてを実質的に保持する。生物活性を「実質的に保持する」とは、そのペプチドが、天然ポリペプチドの生物活性の少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、75%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、またはそれ以上を保持する(および天然ポリペプチドより高レベルの活性を有する場合さえある)ことを意味する。「非機能性」ポリペプチドは、そのポリペプチドに通常付随する検出可能な生物活性を殆ど、または、本質的にまったく(例えば、多くとも、有意でない量、例えば約10%またはさらに5%未満)示さないものである。タンパク質結合および血管新生活性などの生物活性は、当該技術分野において周知であるおよび本明細書において説明するようなアッセイを用いて測定することができる。
ポリヌクレオチドコーディング配列を「発現する」またはポリヌクレオチドコーディング配列の「発現」という用語は、その配列が転写される、および場合によっては、翻訳されることを意味する。概して、本発明によると、本発明のコーディング配列の発現は、本発明のポリペプチドの生産を生じさせる結果となる。発現されるすべてのポリペプチドまたはフラグメントは、精製されていないインタクト細胞においても機能し得る。
ポリペプチドの量、用量、時間、温度、酵素活性または他の生物活性およびこれらに類するものなどの測定可能な値を指すときに本明細書において用いる場合の用語「約」は、指定量の±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、またはさらに±0.1%の変動を包含することを意味する。
II.腫瘍血管細胞においてアップレギュレートされるポリヌクレオチドおよびポリペプチド
本発明者らは、腫瘍血管細胞において非腫瘍細胞血管と比較して有意にアップレギュレートされるポリペプチドおよび該ポリペプチドをエンコードするヌクレオチドを同定し、特性づけした。表1は、乳房腫瘍血管に随伴する細胞において少なくとも4倍アップレギュレートされる55のポリヌクレオチドを一覧表にしたものである。これらのアップレギュレートされるポリヌクレオチドおよびポリペプチドのそれぞれは、血管新生、腫瘍形成、成長および転移の研究の有用なターゲットの代表である。さらに、これらのターゲットは、血管新生に関連した疾患および障害(例えばがん、虚血など)の診断および治療に有用である。加えて、これらのターゲットは、血管新生関連疾患および障害を診断および治療するために使用することができる薬剤をスクリーニングするために使用することができる。遺伝子の核酸配列およびそれらによってコードされたポリペプチドのアミノ酸配列を含めて、表1中の公的に利用できる識別子およびアクセッション番号に対応付けられるすべての情報は、その全体が参照により本明細書に援用されている。
III.血管新生の阻害
従って、1つの態様として、本発明は、細胞における血管新生を阻害する方法を提供し、これらの方法は、上記細胞における表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を減少させることを含む。
さらなる態様において、本発明は、被験者の組織における血管新生を阻害する方法を提供し、これらの方法は、上記被験者の組織における表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を減少させることを含む。
もう1つの態様において、本発明は、被験者におけるがんを予防または治療する方法に関し、これらの方法は、上記被験者における表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を減少させることを含む。
本発明は、被験者における転移を治療または予防する方法にさらに関し、これらの方法は、上記被験者における表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を減少させることを含む。
追加の態様において、本発明は、被験者における造腫瘍性を低下させる方法に関し、これらの方法は、上記被験者における表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を減少させることを含む。
本発明は、女性被験者における受胎能を調節する(例えば、受胎防止または妊娠中絶)方法にさらに関し、これらの方法は、上記被験者における表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を減少させることを含む(米国特許第6,017,949号参照)。
これらの態様のそれぞれについての1つの実施形態において、上記被験者は、がん、例えば乳がんと診断された者である場合がある。もう1つの実施形態において、上記被験者は、がんを発現するリスクがある(例えば、遺伝要因、喫煙、ウイルス感染、化学物質への暴露などのため素因を有する)者である場合がある。もう1つの実施形態において、上記被験者は、過剰なまたは異常な血管新生を随伴する別の疾患または障害、例えば、感染症、自己免疫疾患、血管奇形、ディジョージ症候群、HHT、海綿状血管腫、アテローム性動脈硬化症、移植動脈症、肥満、乾癬、いぼ、アレルギー性皮膚炎、瘢痕ケロイド、発熱性肉芽腫、水疱形成性疾患、カポジ肉腫、硝子体過形成遺残症候群、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、脈絡膜新生血管形成、原発性肺高血圧症、喘息、鼻ポリープ、炎症性腸疾患、歯周病、腹水、腹膜癒着、子宮内膜症、子宮出血、卵巣嚢胞、卵巣過剰刺激、関節炎、滑膜炎、骨髄炎および/または骨増殖体形成と診断された者である場合がある。
1つの実施形態では、表1に記載のポリペプチドの2、3、4、5、またはそれ以上についての発現および/または活性を減少させることができる。上記リスト上の任意のポリペプチドまたはポリペプチドの組み合わせを阻害することができる。表1に記載の任意の1つ以上のポリペプチドを除外すること(例えばSFRP2を、表に記載の任意のポリペプチドから除外して用いて実施することができる方法)がさらに考えられる。1つの実施形態において、上記ポリペプチドは、SFRP2、JAK3およびFAP、またはこれらの任意の組み合わせから成る群より選択される。もう1つの実施形態において、上記1つ以上のポリペプチドは、SFRP2を含まない。もう1つの実施形態において、上記1つ以上のポリペプチドは、JAK3を含まない。もう1つの実施形態において、上記1つ以上のポリペプチドは、FAPを含まない。
本発明の1つの実施形態において、表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を減少させるステップは、上記ポリペプチドをエンコードする核酸(DNAもしくはRNA)のレベルまたは上記核酸からの上記ポリペプチドの発現のレベルを減少させるステップを含む。in vitroまたはin vivoでのポリヌクレオチドのレベルおよび/または発現を低下させるための非常に多数の方法が公知である。例えば、表1に記載のポリペプチドについてのコーディングおよび非コーディングヌクレオチド配列は、当業者に公知であり、GenBankなどの配列データベースにおいて容易に入手することができる。公知の技術に従って、それらの任意の部分に、アンチセンスヌクレオチド配列またはアンチセンスヌクレオチド配列をエンコードする核酸を生じさせることができる。
本明細書において用いる場合の用語「アンチセンスヌクレオチド配列」または「アンチセンスオレゴヌクレオチド」は、指定DNAまたはRNA配列に相補的であるヌクレオチド配列を指す。アンチセンスオレゴヌクレオチドおよびそれらを発現する核酸は、従来の技術に従って作ることができる。例えば、Tullisの米国特許第5.023,243号、Pederson et al.の米国特許第5,149,797号参照。アンチセンスヌクレオチド配列は、ポリペプチドをエンコードする全ヌクレオチド配列に相補的である場合もあり、または少なくとも10、20、40、50、75、100、150、200、300もしくは500の連続した塩基であるその一部に相補的である場合もあり、およびポリペプチド生産レベルを低下させる。
配列類似度が、アンチセンスヌクレオチド配列がそのターゲットにハイブリダイズしてポリペプチドの生産を低下させるために十分なものであるのであれば、アンチセンスヌクレオチド配列はターゲット配列に対して完全に相補的である必要がないことは、当業者には理解されるはずである。当該技術分野において公知であるように、短いアンチセンスヌクレオチド配列には、一般に、より高い配列類似度が必要とされるのが、アンチセンスヌクレオチド配列が長いほど、大きな塩基ミスマッチ度を許容する。
例えば、そのようなヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションを、本明細書に具体的に開示するヌクレオチド配列に対して、低減されたストリンジェンシー条件下で、中等度ストリンジェンシー条件下で、またはストリンジェントな条件下ででさえ行うことができる(例えば、それぞれ、37℃で35〜40%ホルムアミドと5×Denhardt溶液、0.5%SDSおよび1×SSPEでの洗浄ストリンジェンシーによって代表される条件、42℃で40〜45%ホルムアミドと5×Denhardt溶液、0.5%SDSおよび1×SSPEでの洗浄ストリンジェンシーによって代表される条件、および/または42℃で50%ホルムアミドと5×Denhardt溶液、0.5%SDSおよび1×SSPEでの洗浄ストリンジェンシーによって代表される条件)。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd Ed.(Cold Spring Harbor,NY,1989)参照。
他の実施形態において、本発明のアンチセンスヌクレオチド配列は、本明細書に具体的に開示するコーディング配列の相補鎖と少なくとも70%、80%、90%、95%、97%、98%以上の配列類似性を有し、およびポリペプチド生産レベルを低下させる。
他の実施形態において、上記アンチセンスヌクレオチド配列は、任意のコーディング配列に対するものであり得、そのコーディング配列のサイレンシングにより、表1に記載のポリペプチドが調節される結果となる。
上記アンチセンスヌクレオチド配列の長さ(すなわち、その中のヌクレオチドの数)は、それが所期の位置に選択的に結合し、ターゲット配列の転写および/または翻訳を低下させるのであれば重要ではなく、常例的な手順に従って決定することができる。一般に、上記アンチセンスヌクレオチド配列は、約8、10または12ヌクレオチドの長さから、約20、30、50、75もしくは100ヌクレオチドまで、またはそれ以上の長さである。
当該技術分野において公知の手順による化学合成および酵素的ライゲーション反応を用いて、アンチセンスヌクレオチド配列を構築することができる。例えば、アンチセンスヌクレオチド配列は、自然に発生するヌクレオチドまたは様々な修飾ヌクレオチド(それらの分子の生体安定を増大させるようにまたはそのアンチセンスヌクレオチド配列とセンスヌクレオチド配列とで形成される二本鎖の物理的安定性を増大させるように設計されたもの)を使用して化学的に合成することができ、例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる。上記アンチセンスヌクレオチド配列を生成するために使用することができる修飾ヌクレオチドの例としては、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルキュェオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニンン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルキュェオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キュェオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリンが挙げられる。あるいは、核酸がアンチセンス配向でクローニングされた発現ベクターを使用して、上記アンチセンスヌクレオチド配列を生成することができる(すなわち、挿入した核酸から転写されるRNAは、関心のあるターゲット核酸に対してアンチセンス配向のものである)。
本発明のアンチセンスヌクレオチド配列は、ヌクレオチド間架橋リン酸残基の少なくとも1つまたはすべてが修飾ホスフェート、例えば、メチルホスフェート、メチルホスホノチオエート、ホスホロモルホリデート、ホスホロピペラジデートおよびホスホラミデートである、ヌクレオチド配列をさらに含む。例えば、1つおきのヌクレオチド間架橋リン酸残基を、説明したように修飾することができる。もう1つの非限定的な例では、上記アンチセンスヌクレオチド配列は、ヌクレオチドの1つまたはすべてが2’低級アルキル部分(例えば、C1〜C4線状または分岐、飽和または不飽和アルキル、例えば、メチル、エチル、エテニル、プロピル、1−プロペニル、2−プロペニル、およびイソプロピル)を含有する、ヌクレオチド配列である。例えば、1つおきのヌクレオチドを、説明したように修飾することができる。Furdon et al.,Nucleic Acids Res.17:9193(1989)、Agrawal et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 57:1401(1990)、Baker et al.,Nucleic Acids Res.18:3537(1990)、Sproat et al.,Nucleic Acids Res.17:3373(1989)、Walder and Walder,Proc.Natl.Acad.Sci.USA55:5011(1988)も参照のこと。これらは、修飾ヌクレオチド塩基を含有する物をはじめとするアンチセンス分子の製造方法のそれらの教示について、それら全体が参照により本明細書に援用されている)。
表1に記載のポリペプチドの生産を阻害するために、三重らせん塩基対合法も利用することができる。三重らせん対合は、ポリメラーゼ、転写因子、または調節分子の結合のために十分に開くことができる二重らせんの能力を阻害することによって作用すると考えられる。三本鎖DNAを使用する最近の治療法の進歩は、文献(例えば、Gee et al.,(1994)In:Huber et al,Molecular and Immunologic Approaches,Futura Publishing Co.,Mt.Kisco,NY)に記載されている。
RNA干渉(RNAi)分子としても公知である短鎖干渉(si)RNAは、表1に記載のポリペプチドの発現を調節するためのもう1つのアプローチである。siRNAは、表に記載のペプチドをエンコードするポリヌクレオチド配列に対するものであることもでき、または表に記載のポリペプチドの発現を調節する結果となる任意の他の配列に対するものであることもできる。
siRNAは、関心のあるコーディング配列に対応する二本鎖RNA(dsRNA)を細胞または生物に導入し、その結果、対応するmRNAの分解を生じさせる、翻訳後遺伝子サイレンシングのメカニズムである。siRNAが遺伝子サイレンシングを達成するメカニズムは、Sharp et al.,Genes Dev.15:485(2001)、およびHammond et al.,Nature Rev.Gen.2:110(2001)に概説されている。siRNA効果は、遺伝子が回復されるまで何回もの細胞分裂にわたって持続する。従って、siRNAは、RNAレベルでターゲッティングされたノックアウトすなわち「ノックダウン」を生じさせるための強力な方法である。siRNAは、ヒト胚性腎およびHeLa細胞をはじめとするヒト細胞においてうまくいくことが証明されている(例えば、Elbashir et al.,Nature 411:494(2001)参照)。1つの実施形態では、RNAヘアピンを内因性発現させることによって哺乳動物細胞においてサイレンシングを誘導することができる(Paddison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:1443(2002)参照)。もう1つの実施形態において、短鎖(21〜23nt)dsRNAのトランスフェクションは、核酸発現を特異的に阻害する(Caplen,Trends Biotechnol.20:49(2002)に概説されている)。
siRNA技術は、標準的な分子生物学法を利用する。不活性化すべきターゲットコーディング配列のすべてまたは一部に対応するdsRNAを、標準的な方法によって、例えば、(ターゲット配列に対応する)テンプレートDNAの両方の鎖をT7−RNAポリメラーゼで同時に転写することによって、生成することができる。siRNAにおいて使用するためのdsRNAの生成用キットは、例えばNew England Biolabs,Inc.から、市販されている。dsRNA、またはdsRNAを作るように遺伝子工学で作り変えられたプラスミドのトランスフェクション法は、当該技術分野では常例的である。
遺伝子発現を調節するために、マイクロRNA(miRNA)、長さが約21〜23ヌクレオチドの一本鎖RNA分子、をsiRNAと同様に用いることができる(米国特許第7,217,807号を参照のこと)。
siRNAが生じさせるものに類似したサイレンシング効果が、哺乳動物において、mRNA−cDNAハイブリッド構築物のトランスフェクションで報告され(Lin et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.281:639(2001))、これは、関心のあるコーディング配列をサイレンシングするためのさらにもう1つの戦略を提供する。
表1に記載のポリペプチドの発現を、リボザイムを使用して阻害することもできる。リボザイムは、部位特異的に核酸を切断するRNA−タンパク質複合体である。リボザイムは、エンドヌクレアーゼ活性を有する特異的触媒ドメインを有する(Kim et al.,Proc.NatlAcad.Sci.USA 54:8788(1987)、Gerlach et al.,Nature 525:802(1987)、Forster and Symons,Cell 49:211(1987))。例えば、多数のリボザイムが、オレゴヌクレオチド基質中の幾つかのリン酸エステルのうちの1つだけを、多くの場合、切断する高い特異度で、リン酸エステル交換反応を促進する(Michel and Westhof,J.Mol.Biol.2/6:585(1990)、Reinhold−Hurek and Shub,Nature 357:173(1992))。この特異性は、基質が化学反応の前に特異的塩基対合反応によってリボザイムの内部ガイド配列(「IGS」)に結合する必要のためだと考えられている。
リボザイム触媒は、核酸が関係する配列特異的切断/ライゲーション反応の一部として主として観察されている(Joyce,Nature 338:217(1989))。例えば、米国特許第5,354,855号は、一定のリボザイムが、公知リボヌクレアーゼのものより大きいおよびDNA制限酵素のものとほぼ等しい配列特異性でエンドヌクレアーゼとして作用できることを報告している。従って、遺伝子発現の配列特異的リボザイム媒介阻害は、治療用途に特に適する(Scanlon et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:10591(1991)、Sarver et al.,Science 247:1222(1990)、Sioud et al.,J.Mol.Biol.223:831(1992))。
本発明のもう1つの実施形態において、表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を減少させることは、上記ポリペプチドの活性を減少させることを含む。ポリペプチド活性は、抗体または抗体フラグメントとの相互作用によって変調することができる。上記抗体または抗体フラグメントは、上記ポリペプチドに結合することができ、またはその抗体または抗体フラグメントとそのターゲットポリペプチドとの結合が上記表に記載のポリペプチドの活性の調節を生じさせる結果となるのであれば、関心のある任意の他のポリペプチドに結合することができる。
本明細書において用いる場合の用語「抗体(単数または複数)」は、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEをはじめとするすべてのタイプの免疫グロブリンを指す。抗体は、モノクローナルである場合があり、またはポリクローナルである場合があり、および(例えば)マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ラクダもしくはヒトをはじめとする任意の起源種のものである場合があり、またはキメラ抗体である場合がある。例えば、Walker et al.,Molec.Immunol.26:403(1989)参照のこと。上記抗体は、米国特許第4,474,893号または米国特許第4,816,567号に開示されている方法に従って生産された組換えモノクローナル抗体である場合がある。米国特許第4,676,980号に開示されている方法に従って化学的に抗体を構築することもできる。
本発明の範囲内に含まれる抗体フラグメントとしては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvフラグメント、ドメイン抗体、ダイアボディー、ワクシボディー(vaccibodies)、線状抗体、一本鎖抗体分子、ならびに抗体フラグメントから成る多重特異性抗体が挙げられる。そのようなフラグメントは、公知の技術によって生成することができる。例えば、抗体分子のペプシン消化によってF(ab’)2フラグメントを生成することができ、およびそのF(ab’)2フラグメントのジスルフィド結合を還元することによってFabフラグメントを生成することができる。あるいは、Fab発現ライブラリーを構築して、所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速で容易な同定を可能にすることができる(Huse et al.,Science 254:1275(1989))。
本発明の抗体を、その抗体を生産する種以外の主との適合性のために、改変するまたは突然変異させることができる。例えば、抗体をヒト化またはラクダ化することができる。ヒト化形態の非ヒト(例えばマウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそれらのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、もしくは抗体の他の抗原結合部位)である。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置換されている。ヒト化抗体は、レシピエント抗体においても、移入されるCDRまたはフレームワーク配列においても見つけられない残基も含む場合がある。一般に、上記ヒト化抗体は、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに対応する、およびFR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、実質的にすべて、少なくとも1つ、および概して2つの可変ドメインを含む。最適には、上記ヒト化抗体は、概してヒト免疫グロブリンのものである、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分も含む(Jones et al.,Nature 321:522(1986)、Riechmann et al.,Nature,332:323(1988)、およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593(1992))。
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該技術分野において周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、「移入」残基と呼ばれ、これは、概して、「移入」可変ドメインから取られる。ヒト化は、本質的には、Winterおよび共同研究者の方法(Jones et al.,Nature 321:522(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323(1988)、Verhoeyen et al.,Science 259:1534(1988))に従って、齧歯動物CDRまたはCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置換することによって行うことができる。従って、そのような「ヒト化」抗体は、インタクトヒト可変ドメインより実質的に少ないドメインが非ヒト種からの対応する配列によって置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、概して、一部のCDR残基およびことによると一部のFR残基が齧歯動物抗体における類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
ファージ・ディスプレイ・ライブラリー(Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.227:381(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581(1991))をはじめとする、当該技術分野において公知の様々な技術を用いて、ヒト化抗体を生産することもできる。Cole et al.およびBoerner et al.の技術もヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)およびBoerner et al.,J.Immunol.747:86(1991))。同様に、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活性化されたマウスに導入することによって、ヒト抗体を作ることができる。チャレンジすると、ヒト抗体生産が観察され、これは、遺伝子再配列、構築、および抗体レパートリーをはじめとするすべての態様に関してヒトにおいて観察されるものと近似している。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号に、および次の科学刊行物に記載されている。Marks et al.,Bio/Technology 10:119(1992)、Lonberg et al.,Nature 565:856(1994)、Morrison,Nature 365:812(1994)、Fishwild et al.,Nature Biotechnoh 14:845(1996)、Neuberger,Nature Biotechnoh 74:826(1996)、Lonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.73:65(1995)。
本発明を実行するために使用するポリクローナル抗体は、ターゲットに対するモノクローナル抗体が結合する抗原で適する動物(例えば、ウサギ、ヤギなど)を免疫することと、上記動物から免疫血清を採取することと、および公知の手順とに従って上記免疫血清からポリクローナル抗体を分離することによって生産することができる。
本発明を実行するために使用するモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,Nature 265:495(1975)の技術に従って、ハイブリドーマ細胞系において生産することができる。例えば、適切な抗原を含有する溶液をマウスに注射し、十分な時間の後、そのマウスを犠牲にし、脾臓細胞を得ることができる。その後、上記脾臓細胞を、概してポリエチレングリコールの存在下で、それらを骨髄種細胞とまたはリンパ腫細胞と融合させてハイブリドーマ細胞生じさせることによって固定化する。その後、上記ハイブリドーマ細胞を適切な培地で成長させ、所望の特異性を有するモノクローナル抗体についてその上清をスクリーニングする。当業者に公知の組み換え技術により大腸菌(E.coli)においてモノクローナルFabフラグメントを生産することができる。例えば、Huse,Science 246:1275(1989)参照のこと。
ターゲットポリペプチドに特異的な抗体を、当該技術分野において公知のファージディスプレイ技術によって得ることもできる。
本発明のポリペプチドに対して所望の特異性を有する抗体を同定するためのスクリーニングに様々なイムノアッセイを用いることができる。確立された特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかを使用する競合結合アッセイまたは免疫放射定量測定法についての非常に多くのプロトコルが当該技術分野において周知である。そのようなイムノアッセイは、抗原とその特異的抗体の間での複合体形成(例えば、抗原/抗体複合体形成)の測定を概して含む。本発明のポリペプチドまたはペプチド上の2つの非干渉エピトープに反応性のモノクローナル抗体を利用する二部位、モノクローナルベースのイムノアッセイも競合結合アッセイとして用いることができる。
公知の技術に従って、抗体を固体支持体(例えば、ラテックスまたはポリスチレンなどの材料から作られたビーズ、プレート、スライドガラスまたはウェル)にコンジュゲートさせることができる。同様に、公知の技術に従って、抗体を検出可能な基、例えば、放射性標識(例えば、35S、125I、131I)、酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)および蛍光標識(例えば、フルオレセイン)にコンジュゲートさせることができる。本発明の方法における抗体/抗原複合体の形成の判定は、当該技術分野において周知であるように、例えば、沈殿、凝集、フロキュレーション、放射活性、発色または変色、蛍光、発光などの検出によるものであり得る。
1つの実施形態において、上記抗体は、SFRP2に特異的に結合する抗体(例えば、モノクローナル抗体)である。上記抗体は、SFRP2活性の阻害を引き起こすSFRP2上の特定のエピトープ、例えばWNT結合ドメイン(約アミノ酸30〜160)またはNTRドメイン(約アミノ酸169〜295)に結合する場合がある。抗体の産生に適するエピトープとしては、ヒトSFRP2のアミノ酸29〜40(GQPDFSYRSNC(配列番号:1))、85〜96(KQCHPDTKKELC(配列番号:2))、119〜125(VQVKDRC(配列番号:3))、138〜152(DMLECDRFPQDNDLC(配列番号:4))、173〜190(EACKNKNDDDNDIMETLC(配列番号:5))、202〜220(EITYINRDTKIILETKSKT−Cys(配列番号:6))、または270〜295(ITSVKRWQKGQREFKRISRSIRKLQC(配列番号:7))が挙げられるが、これらに限定されない。もう1つの実施形態において、上記エピトープは、約アミノ酸156から約アミノ酸295のタンパク質のフラグメントである。上記アミノ酸の番号づけは、参照により本明細書に援用されている、ヒトSFRP2についてのGenBankリスト(アクセッション番号AAH08666)に基づく。
1つの実施形態では、アプタマーを使用して、表1に記載の1つ以上のポリペプチドの活性を阻害する。最近、RNAアプタマーとして公知の短鎖構造の一本鎖RNAが、小分子および抗体ベースの療法に対する実行可能な代案として浮上した(Que−Gewirth et al.,Gene Ther.74:283(2007)、Ireson et al.,Mol.Cancer Ther.5:2957(2006))。RNAアプタマーは、高い親和性でターゲットタンパク質に特異的に結合し、実に安定であり、免疫原性がなく、および生体応答を惹起する。SELEX(指数関数的富化によるリガンドの系統的進化(systematic evolution of ligands by exponential enrichment))と呼ばれる反復選択法によって、アプタマーを、明確に定義された相補三次元構造によりそれらのターゲットを特異的に認識してしっかりと結合するように進化させる。
RNAアプタマーは、ユニークな新しい種類の治療薬の代表である(Que−Gewirth et al.,Gene Ther.14:283(2007)、Ireson et al.,Mol.Cancer Ther.5:2957(2006))。それらは、選択されたタンパク質ターゲットをしっかりとおよび特異的に結合して生体応答を惹起するような安定した三次元形状を呈する、比較的短い(12〜30ヌクレオチド)一本鎖RNAオレゴヌクレオチドである。アンチセンスオレゴヌクレオチドとは対照的に、RNAアプタマーは、細胞外ターゲットに有効にターゲッティングすることができる。抗体と同様に、アプタマーは、結合親和性を低ナノモルからピコモルの範囲で有する。加えて、アプタマーは、熱安定性であり、免疫原性がなく、および最低限のバッチ間のばらつきしか有さない。ピリミジンの2’位置でのアミノまたはフルオロ置換などの化学的修飾は、ヌクレアーゼによる分解を低下させることができる。アプタマーの生体分解性およびクリアランスも、ポリエチレングリコールおよびコレステロールなどの部分の化学的付加によって改変することもできる。さらに、SELEXは、精製された生化学的ターゲットに対する高親和性オレゴヌクレオチドリガンドを生成するための1015以下のリガンドから成るライブラリーからの選択を可能にする。
もう1つの実施形態において、表1に記載のポリペプチドの活性を減少させる方法は、表1に記載のポリペプチドの活性を減少させる化合物を細胞にまたは被験者に送達することを含み、上記化合物は、表1に記載のポリペプチドの活性を変調するために有効な量で投与される。上記化合物は、表1に記載のポリペプチドと直接相互作用して、該ポリペプチドの活性を減少させることができる。あるいは、上記化合物は、任意の他のポリペプチド、核酸または他の分子と相互作用することが、そのような相互作用が表1に記載のポリペプチドの活性の減少を生じさせる結果となる場合にできる。
本明細書において用いる場合の用語「化合物」は、広く解釈されることを意図し、有機および無機分子を包含する。有機化合物としては、小分子、ポリペプチド、脂質、炭水化物、補酵素、アプタマーおよび核酸分子(例えば、遺伝子送達ベクター、アンチセンスオレゴヌクレオチド、siRNA(すべて、上で説明したとおり))が挙げられるが、これらに限定されない。
ポリペプチドとしては、抗体(より詳細に上で説明したもの)および酵素が挙げられるが、これらに限定されない。核酸としては、DNA、RNAおよびDNA−RNAキメラ分子が挙げられるが、これらに限定されない。適するRNA分子としては、siRNA、アンチセンスRNA分子およびリボザイム(これらのすべてをより詳細に上で説明している)が挙げられる。上記核酸は、任意のポリペプチドを、該核酸の投与および該ポリペプチドの生産が表1に記載のポリペプチドの活性の減少を生じさせる結果となるように、さらにエンコードすることができる。
さらに、上記化合物は、下で説明するスクリーニング方法のいずれかによって同定される化合物である場合がある。
本発明の1つの実施形態において、表1に記載のポリペプチドは、SFRP2であり、これは、非カノニカルWnt経路の活性化によって血管新生を刺激するようである。SFRP2の血管新生活性は、この経路の阻害剤、例えばカルシニューリン、あるいはNF−ATc阻害剤、例えば、NF−ATcのカルシニューリン脱リン酸化を阻害する薬剤、脱リン酸化FN−ATcの核内転移を阻害する薬剤(NF−ATc3およびNF−ATc4の核移入を阻止する薬剤、NF−ATcによるDNA結合を阻害する薬剤およびNF−ATcとそれらの核パートナータンパク質との相互作用を防止する薬剤を含めて、NF−ATc−パートナータンパク質結合複合体のDNA結合を、例えばNF−ATCのDNA結合部分および/もしくは上記パートナータンパク質結合領域に結合することによって、阻害する薬剤、細胞内NF−ATcの量を減少させる薬剤、例えば、FN−ATC発現を阻害する薬剤(例えば、アンチセンスまたはsiRNA)、またはGSK2、PKAもしくは他のNFATキナーゼを活性化することによって核移出率を向上させる薬剤、を被験者に送達することによって、阻害することができる。本発明において使用することができる阻害剤の例としては、限定ではないが、タクロリムス、ピメクロリムス、シクロスポリン、ラパマイシン、ならびに米国特許第7,323,439号、同第7,160,863号、同第7,084,241号、同第7,019,028号、同第6,967,077号、同第6,875,571号、同第6,780,597号、同第6,686,450号、同第6,537,810号、同第6,399,322号、および同第5,807,693号(それぞれ、その全体が参照により本明細書に援用されている)に開示されている阻害剤が挙げられる。
本発明の化合物を、場合によっては、他の治療薬と共に送達することができる。追加の治療薬を本発明の化合物と同時に送達することができる。本明細書において用いる場合、「同時に」という語は、併用作用を生じさせるために時間の点で十分に近いという意味である(すなわち、同時には、同時発生的である場合もあり、または互いの前もしくは後、短時間のうちに発生する2つ以上の事象である場合もある)。1つの実施形態において、本発明の化合物は、抗がん剤、例えば、1)ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン)、2)エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシドおよびテニポシド)、3)抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン;ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、およびマイトマイシン(マイトマイシンC))、4)酵素(例えば、L−アスパラギナーゼ)、5)生体応答修飾剤(例えば、インターフェロン−アルファ)、6)白金配位錯体(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン)、7)アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン)、8)置換尿素(例えば、ヒドロキシ尿素)、9)メチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン(N−メチルヒドラジン;MIH))、10)副腎皮質抑制剤(例えば、ミトタン(o,p’−DDD)およびアミノグルテチミド)、11)副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン)、12)プロゲスチン(例えば、ヒドロキシプロゲステロンカプロン酸エステル、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、およびメゲストロール酢酸エステル)、13)エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール)、14)抗エストロゲン薬(例えば、タモキシフェン)、15)アンドロゲン(例えば、テストステロンプロピオン酸エステルおよびフルオキシメステロン)、16)抗アンドロゲン薬(例えば、フルタミド)、ならびに17)ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(例えば、ロイプロリド)と共に投与される。もう1つの実施形態において、本発明の化合物は、抗血管新生薬、例えば、VEGFに対する抗体(例えば、ベバシズマブ(AVASTIN)、ラニビズマブ(LUCENTIS))、および血管新生の他のプロモーター(例えば、bFGF、アンジオポエチン−1)、アルファ−v/ベータ−3血管インテグリンに対する抗体(例えば、VITAXIN)、アンギオスタチン、エンドスタチン、デルテパリン、ABT−510、CNGRCペプチドTNFアルファコンジュゲート、シクロホスファミド、コンブレタスタチンA4ホスフェート、ジメチルキサンテノン酢酸、ドセタキセル、レナリドマイド、エンザスタウリン、パクリタキセル、パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤(Abraxane)、大豆イソフラボン(Genistein)、タモキシフェンクエン酸塩、サリドマイド、ADH−1(EXHERIN)、AG−013736、AMG−706、AZD2171、ソラフェニブトシル酸塩、BMS−582664、CHIR−265、パゾパニブ、PI−88、バタラニブ、エベロリムス、スラミン、スニチニブリンゴ酸塩、XL184、ZD6474、ATN−161、シレニグチド、ならびにセレコキシブと共に投与される。
IV.血管新生の刺激
本発明の1つの態様は、細胞における血管新生を増加させる方法に関し、これらの方法は、細胞における表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を増加させることを含む。
本発明のもう1つの態様は、被験者の組織における血管新生を増加させる方法に関し、これらの方法は、上記被験者の組織における表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を増加させるステップを含む。1つの実施形態において、上記被験者は、血管欠損症を有する者、心血管疾患を有する者、または喫煙、心筋梗塞もしくは他のタイプの虚血などのために内皮細胞活性化の刺激および新たに形成された微小血管もしくは他の血管の安定化の恩恵を受ける者、または創傷治癒の必要がある被験者、例えば、潰瘍、床ずれ、やけどなどを有する被験者である。
本明細書において用いる場合、表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を増加させるステップは、上記ポリペプチドをエンコードする核酸またはそのフラグメントもしくはホモログを細胞または組織に送達するステップを含む。もう1つの実施形態において、表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を増加させるステップは、上記ポリペプチドそれ自体またはそのフラグメントもしくはホモログを細胞または組織に送達するステップを含む。本明細書において用いる場合、用語「ホモログ」は、自然に発生するポリペプチドとはその自然に発生するポリペプチドに対する小さな修飾により異なるが、その自然に発生するポリペプチドの生物活性を有意に保持するポリペプチドを指すために用いている。小さな修飾としては、限定ではないが、1つもしくは少数のアミノ酸側鎖の変更、1つしくは少数のアミノ酸に対する変更(欠失、挿入および置換を含む)、1つもしくは少数の原子の立体化学の変更、およびメチル化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミチン化、アミド化、およびグリコシルホスファチジルイノシトールの付加をはじめとする(しかし、これらに限定されない)小さな誘導体化が挙げられる。本明細書において用いる場合の用語「実質的に保持する」は、自然に発生するポリペプチドの活性の少なくとも約20%、例えば、約30%、40%、50%以上を保持するポリペプチドのフラグメント、ホモログまたは他の変異体を指す。血管新生活性は、例えば、細胞増殖、血管新生での萌出、細管形成、または移動および浸潤能力を測定することなどによって、測定することができる。上記ポリペプチドに依存して。他の生物活性としては、酵素活性、受容体結合、リガンド結合、増殖因子の誘導、および細胞シグナル伝達事象などを挙げることができる。
1つの実施形態において、上記方法は、表1に記載の単離されたポリペプチドを被験者に送達することを含む。例示的実施形態において、上記ポリペプチドは、(表1中のGenBankアクセッション番号で開示されている)上記ポリペプチドの公知アミノ酸配列、またはその機能性フラグメント、を含む、から本質的に成る、またはから成る。もう1つの実施形態において、上記単離されたポリペプチドは、公知アミノ酸配列またはその機能性フラグメント(およびそれらをエンコードするポリヌクレオチド配列)と少なくとも70%同一、例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む、から本質的に成る、または、から成る。
本発明のポリペプチドは、機能性部分またはフラグメント(およびそれらをエンコードするポリヌクレオチド配列)も含む。上記フラグメントの長さは、それがそのポリペプチドの生物活性(例えば、血管新生活性)を実質的に保持するのであれば、重要ではない。実例となるフラグメントは、表1に記載のポリペプチドの少なくとも約4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200、またはそれ以上の連続したアミノ酸を含む。
同様に、本発明が、表1に記載するポリペプチド(またはその機能性フラグメント)を含む融合ポリペプチド(およびそれらをエンコードするポリヌクレオチド配列)も包含することは、当業者には理解されるはずである。例えば、市販の抗体(例えば、FLAGモチーフ)によって認識され得る融合タンパク質として、または別の方法で(例えば、ポリ−Hisテールの付加により)より容易に精製され得る融合タンパク質として、上記ポリペプチド(または機能性フラグメント)を発現させることは有用である場合がある。加えて、上記ポリペプチドの安定性を強化する融合タンパク質、例えば、マルトース結合タンパク質(MBP)またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼを含む融合タンパク質を生成することができる。もう1つの代案として、上記融合タンパク質は、受容体分子を含む場合がある。他の実施形態において、上記融合タンパク質は、上記ポリペプチドの活性と同じまたは異なる活性である機能または活性、例えば、ターゲッティング、結合、または酵素活性または機能を提供するポリペプチドを含む場合がある。
同様に、本明細書に具体的に開示するポリペプチドが、アミノ酸配列に関する置換を概して許容し、生物活性を実質的に保持することは、理解されるはずである。本明細書に具体的に開示するもの以外の本発明のポリペプチドを同定するためのアミノ酸置換は、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性または差異をはじめとする、当該技術分野において公知の任意の特性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズおよびこれらに類するものに基づく。
本明細書に開示するもの以外のアミノ酸置換は、次のコドン表に従って、DNA配列(またはRNA配列)のコドンを変更することによって達成することができる。
本明細書に具体的に開示するもの以外のポリペプチドをエンコードするアミノ酸配列を同定する際、アミノ酸のハイドロパシー指数を考慮することができる。タンパク質に相互作用性生体機能を付与する際のハイドロパシーアミノ酸指数の重要性は、当該技術分野において一般に理解されている(Kyte and Doolittle,J.Mol.Biol.157:105(1982)参照、その全体は参照により本明細書に援用されている)。アミノ酸の相対ハイドロパシー特性が、結果として生ずるタンパク質の二次構造の一因となり、そしてまたその二次構造が、そのタンパク質と他の分子、例えば酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原およびこれらに類するもの、との相互作用を規定することは、認められている。
それぞれのアミノ酸は、その疎水性および電荷特性に基づいてハイドロパシー指数が割り当てられ(Kyte and Doolittle,同上)、これらは、イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(−0.4)、トレオニン(−0.7)、セリン(−0.8)、トリプトファン(−0.9)、チロシン(−1.3)、プロリン(−1.6)、ヒスチジン(−3.2)、グルタメート(−3.5)、グルタミン(−3.5)、アスパルテート(−3.5)、アスパラギン(−3.5)、リシン(−3.9)、およびアルギニン(−4.5)である。
従って、本明細書に具体的に開示するポリペプチドを修飾するとき、アミノ酸(またはアミノ酸配列)のハイドロパシー指数を考慮することができる。
アミノ酸置換を親水性に基づいて行うことができることも当該技術分野において理解されている。米国特許第4,554,101号(その全体が参照により本明細書に援用されている)には、その隣接アミノ酸の親水性によって決まるようなタンパク質の最大局所平均親水性が、そのタンパク質の生物学的特性と相関すると述べられている。
米国特許第4,554,101号において詳述されているように、次の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている。アルギニン(+3.0)、リシン(±3.0)、アスパルテート(+3.0±1)、グルタメート(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、トレオニン(−0.4)、プロリン(−0.5±1)、アラニン(−0.5)、ヒスチジン(−0.5)、システイン(−1.0)、メチオニン(−1.3)、バリン(−1.5)、ロイシン(−1.8)、イソロイシン(−1.8)、チロシン(−2.3)、フェニルアラニン(−2.5)、トリプトファン(−3.4)。
従って、本明細書に具体的に開示するもの以外の追加のポリペプチドを同定するとき、アミノ酸(またはアミノ酸配列)の親水性を考慮することができる。
本発明の実施形態において、表1に記載のポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチド(または機能性フラグメント)は、本明細書に具体的に開示する核酸配列またはそれらのフラグメントに、当業者に公知であるような標準的な条件下でハイブリダイズし、および機能性ポリペプチドまたはその機能性フラグメントをエンコードする。
例えば、そのような配列のハイブリダイゼーションを、本明細書に具体的に開示する表1に記載のポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチド配列またはそれらの機能性フラグメントに対して、低減されたストリンジェンシー条件下で、中等度ストリンジェンシー条件下で、またはストリンジェントな条件下ででさえ行うことができる(例えば、それぞれ、37℃で35〜40%ホルムアミドと5×Denhardt溶液、0.5%SDSおよび1×SSPEでの洗浄ストリンジェンシーによって代表される条件、42℃で40〜45%ホルムアミドと5×Denhardt溶液、0.5%SDSおよび1×SSPEでの洗浄ストリンジェンシーによって代表される条件、および/または42℃で50%ホルムアミドと5×Denhardt溶液、0.5%SDSおよび1×SSPEでの洗浄ストリンジェンシーによって代表される条件)。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd Ed.(Cold Spring Harbor,NY,1989)参照のこと。
他の実施形態において、表1に記載のポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチド配列は、公知核酸配列(表1中のGenBankアクセッション番号で開示されている)またはそれらの機能性フラグメントとの少なくとも約70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有し、および機能性ポリペプチドまたはその機能性フラグメントをエンコードする。
さらに、遺伝子コードの縮重のため本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに変異性が存在し得ることは当業者には理解されるはずである。異なる核酸配列が同じポリペプチドをコードし得る遺伝子コードの縮重は、文献において十分に知られている(例えば、表2参照)。
同様に、本発明のポリペプチド(およびそれらのフラグメント)は、公知ポリペプチド配列と少なくとも約70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有するポリペプチドを含む。
当該技術分野において公知であるように、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、公知の配列との配列同一性または類似性を有するかどうかを確認するために、多数の異なるプログラムを使用することができる。配列同一性または類似性は、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所配列同一性アルゴリズム、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の配列同一性アラインメントアルゴリズムによるもの、Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索法によるもの、これらのアルゴリズムのコンピュータインプリメンテーション(the Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によるもの、Devereux et al.,Nucl.Acid Res.72:387(1984)によって記載されたBest Fit配列プログラム(好ましくは、デフォルト設定を用いる)、または点検によるものをはじめとする(しかし、これらに限定されない)当該技術分野において公知の標準的な技術を用いて判定することができる。
有用なアルゴリズムの一例は、PILEUPである。PILEUPは、漸進的ペアワイズアラインメントを用いて関連配列の群から多数の配列アラインメントを作り出す。このアラインメントを作り出すために用いられるクラスタリング関係を示すツリーをプロットすることもできる。PILEUPは、Feng & Doolittle,J.Mol.Evol.35:351(1987)の漸進的アラインメント法の単純化形を用いる。この方法は、Higgins & Sharp,CABIOS 5:151(1989)によって記載されたものに類似している。
有用なアルゴリズムのもう1つの例は、Altschul et al.,J.Mol.Biol.275:403(1990)およびKarlin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873(1993)に記載されているBLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、Altschul et al.,Meth.Enzymol,266:460(1996)、blast.wustl/edu/blast/README.htmlから得られたWU−BLAST−2プログラムである。WU−BLAST−2は、幾つかの検索パラメーターを使用し、好ましくは、それらをデフォルト値に設定する。上記パラメーターは、動的な値であり、特定の配列の組成および関心のある配列を検索することとなる特定のデータベースの構成に依存してプログラムそれ自体によって確立されるが、それらの値を調整して感度を増すことができる。
追加の有用なアルゴリズムは、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389(1997)によって報告されたようなギャップ付きBLASTである。
アミノ酸配列同一性百分率の値は、アラインした領域内の「より長い」配列の総残基数でマッチする同一残基の数を割ることによって決定する。上記「より長い」配列は、アラインした領域内で実際の残基を最も多く有するものである(アラインメントスコアを最大にするためにWU−Blast−2によって導入されるギャップは無視される)。
同様に、本明細書に開示するポリペプチドのコーディング配列についての核酸配列同一性パーセントは、本明細書に具体的に開示するポリヌクレオチド中のヌクレオチドと同一である候補配列内のヌクレオチド残基の百分率と定義する。
上記アラインメントは、アラインする配列へのギャップの導入を含むことができる。加えて、本明細書に具体的に開示するポリペプチドより多いまたは少ないアミノ酸を含有する配列について、1つの実施形態では、その配列同一性百分率がアミノ酸の総数に対する同一アミノ酸数に基づいて決定されることとなることは理解されるはずである。従って、例えば、1つの実施形態では、本明細書に具体的に開示する配列より短い配列の配列同一性は、そのより短い配列内のアミノ酸の数を用いて決定されることとなる。同一性パーセント計算では、相対重量は、配列変異、例えば挿入、欠失、置換など、の様々な発現に割り当てられない。
1つの実施形態において、同一性だけをプラスに採点し(+1)、ギャップを含む配列変異のすべての形態に「0」の値を割り当て、それによって、配列類似性計算について下で説明するような重み付きスケールまたはパラメーターの必要が無くなる。配列同一パーセントは、例えば、アラインする領域内の「より短い」配列の残基の総数でマッチする同一残基の数を割り、それに100をかけることによって計算することができる。「より長い」配列は、アラインする領域内で実際の残基を最も多く有するものである。
本発明のポリペプチドをエンコードする単離されたポリヌクレオチドが、概して、適切な発現制御配列、例えば、転写/翻訳制御シグナルおよびポリアデニル化シグナルを随伴することは、当業者には理解されるはずである。
所望のレベルおよび組織特異的発現に依存して、様々なプロモーター/エンハンサー要素を使用することができることは、さらに理解されるはずである。上記プロモーターは、所望の発現のパターンに依存して、構成的である場合もあり、または誘導性である場合もある。上記プロモーターは、天然のものである場合もあり、または外来のものである場合もあり、ならびに天然配列である場合もあり、または合成配列である場合もある。外来のものとは、転写開始領域が、その転写開始領域を導入する野生型宿主では見つけられないものと解釈される。上記プロモーターは、対照となるターゲット細胞(単数または複数)において機能するように選択される。
実例を挙げると、ポリペプチドコーディング配列を、サイトメガロウイルス(CMV)主要最初期プロモーター、アルブミンプロモーター、伸長因子1−α(EF1−α)プロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーターまたはラウス肉腫ウイルスプロモーターと作動可能に会合させることができる。
誘導性プロモーター/エンハンサー要素としては、ホルモン誘導性および金属誘導性要素、ならびに外因的に供給される化合物によって調節される他のプロモーターが挙げられ、それらとしては、限定ではないが、亜鉛誘導性メタロチオネイン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳がんウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系(例えば、WO98/10088参照)、エクジソン昆虫プロモーター(No et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:3346(1996))、テトラサイクリン抑制性酵素(Gossen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547(1992))、テトラサイクリン誘導性系(Gossen et al.,Science 268:1866(1995)、Harvey et al.,Curr.Opin.Chem.Biol.2:512(1998)、RU476誘導性系(Wang et al.,Nat.Biotech.15:239(1997)、Wang et al.,Gene Ther.,4:432(1997))、およびラパマイシン誘導性系(Magari et al.,J.Clin.Invest.100:2865(1997))が挙げられる。
他の組織特異的プロモーターまたは調節プロモーターとしては、内皮細胞において組織特異性を概して付与するプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。これらとしては、VE−カドヘリン、PPE−I、PPE−l−3x、TIE−1、T1E−2、エンドグリン、フォン・ヴィレブレンド、KDR/flk−1、FLT−1、Egr−1、ICAM−1、ICAM−2、VCAM−1、PECAM−1、および大動脈カルボキシペプチダーゼ様タンパク質(ACLP)についてのプロモーターが挙げられるが、それらに限定されない。
さらに、挿入されたポリペプチドコーディング配列の効率的な翻訳には、一般に、特定の開始シグナルが必要とされる。これらの翻訳制御配列は、ATG開始コドンおよび隣接配列を含む場合があり、天然と合成、両方の様々な起源のものである場合がある。
本発明は、本発明の単離されたポリヌクレオチドおよびポリペプチドを含む細胞をさらに提供する。上記細胞は、例えば、治療方法、診断方法、スクリーニング方法、表1に記載のポリペプチドの生物活性を研究するための方法において、上記ポリペプチドの生産方法において、または本発明のポリヌクレオチドを維持もしくは増幅する方法、などにおいて使用するための、培養細胞またはin vivoでの細胞である場合がある。もう1つの実施形態において、上記細胞は、被験者から単離されたex vivo細胞である。上記ex vivo細胞を修飾し、その後、診断または治療のために被験者に再び導入することができる。
特定の実施形態において、上記細胞は、非形質転換内皮細胞であるか、内皮細胞系からの細胞である。内皮細胞および細胞系としては、限定ではないが、HUVEC、HCEC、HGEC、HMEC−1、HUV−ST、ECY304、ECV304、およびEA.hy926が挙げられる。他の実施形態において、上記細胞は、周皮細胞、または血管に関連した他の細胞タイプである。
単離されたポリヌクレオチドを発現ベクターに組み込むことができる。宿主細胞と適合性の発現ベクターは、当該技術分野において周知であり、ならびに核酸の転写および翻訳に適する要素を含有する。概して、発現ベクターは、5’から3’への方向で、プロモーターと、該プロモーターと作動可能に会合している、表1に記載のポリペプチドをエンコードするコーディング配列またはその機能性フラグメントと、場合によっては、RNAポリメラーゼのための停止シグナルおよびポリアデニラーゼのためのポリアデニル化シグナルをはじめとする停止配列とを含む、「発現カセット」を含有する。
本発明のプロモーターの非限定的な例としては、CYC1、HIS3、GAL1、GAL4、GAL10、ADH1、PGK、PHO5、GAPDH、ADC1、TRP1、URA3、LEU2、ENO、TP1、およびアルカリホスファターゼプロモーター(サッカロミセス属における発現に有用)、AOX1プロモーター(ピチア属における発現に有用)、β−ラクタマーゼ、lac、ara、tet、trp、IPL、IPR、T7、tac、およびtrcプロモーター(大腸菌(Escherichia coli)における発現に有用)、光調節性、種子特異的、花粉特異的、子房特異的、病因または疾病関連プロモーター、カリフラワー・モザイク・ウイルス35S、CMV35S最小、キャッサバ葉脈モザイクウイルス(CsVMV)、クロロフィルa/b結合タンパク質、リブロース1,5−二リン酸カルボキシラーゼ、苗条特異的プロモーター、根特異的プロモーター、キチナーゼ、ストレス誘導性プロモーター、イネツングロ桿状型ウイルス、植物スーパープロモーター、ジャガイモ・ロイシン・アミノペプチダーゼ、硝酸レダクターゼ、マンノピンシンターゼ、ノパリンシンターゼ、ユビキチン、ゼインタンパク質、およびアントシアニンプロモーター(植物細胞における発現に有用)が挙げられる。
当該技術分野において公知の動物および哺乳動物プロモーターのさらなる例としては、SV40初期(SV40e)プロモーター領域、ラウス肉腫ウイルス(RSV)の3’末端反復配列(LTR)に含まれているプロモーター、アデノウイルス(Ad)のE1Aまたは主要後期プロモーター(MLP)遺伝子のプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーター、単純疱疹ウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)プロモーター、バキュロウイルスIE1プロモーター、伸長因子1アルファ(EF1)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、ユビキチン(Ubc)プロモーター、アルブミンプロモーター、マウスメタロチオネイン−Lプロモーターおよび転写制御領域の調節配列、ユビキタスプロモーター(HPRT、ビメンチン、α−アクチン、チューブリンおよびこれらに類するもの)、中間フィラメント(デスミン、ニューロフィラメント、ケラチン、GFAP、およびこれらに類するもの)のプロモーター、(MDR、CFTRまたは第VIII型因子、およびこれらに類するものの)治療用遺伝子のプロモーター、病因および/または疾病関連プロモーター、および膵腺房細胞において活性である、エラスターゼI遺伝子制御領域などの、組織特異性を示すプロモーター、膵ベータ細胞において活性のインスリン遺伝子制御領域、リンパ球様細胞において活性の免疫グロブリン遺伝子制御領域、精巣、乳房、リンパ球様および肥満細胞において活性のマウス乳がんウイルス制御領域、アルブミン遺伝子プロモーター、肝臓において活性のApo AIおよびApo AII制御領域、肝臓において活性のアルファ−フェトプロテイン遺伝子制御領域、肝臓において活性のアルファ1−アンチトリプシン遺伝子制御領域、骨髄細胞において活性のベータ−グロビン遺伝子制御領域、脳内の乏突起膠細胞において活性のミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域、骨格筋において活性のミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域、および視床下部において活性のゴナドトロピン放出ホルモン遺伝子制御領域、ピルビン酸キナーゼプロモーター、ビリンプロモーター、脂肪酸結合腸内タンパク質のプロモーター、骨格筋細胞α−アクチンのプロモーター、ならびにこれらに類するものが挙げられるが、それらに限定されない。加えて、本発明のこれらのいずれの発現配列も、エンハンサーおよび/または調節配列ならびにこれらに類するものによって修飾することができる。
本発明の実施形態において使用することができるエンハンサーとしては、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー、伸長因子I(DF1)エンハンサー、酵母エンハンサー、ウイルス遺伝子エンハンサー、およびこれらに類するものが挙げられるが、それらに限定されない。
停止制御領域、すなわちターミネーターまたはポリアデニル化配列、は、好ましい宿主に生得の様々な遺伝子に由来する場合がある。本発明の一部の実施形態において、末端制御配列は、合成配列、合成ポリアデニル化シグナル、SV40後期ポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル、ウイルスターミネーター配列、またはこれらに類するものを含むまたはそれらに由来する場合がある。
上記ポリヌクレオチドを細胞または被験者に送達するために任意の適するベクターを使用できることは、当業者には理解されるはずである。上記ベクターを細胞にin vivoで送達することができる。他の実施形態では、上記ベクターをex vivoで細胞に送達することができ、その後、そのベクターを含有する細胞を被験者に送達する。送達ベクターの選択は、ターゲット宿主の年齢および種、in vitro対in vivo送達、所望の発現のレベルおよび持続性、所期の目的(例えば、治療またはスクリーニングのため)、ターゲット細胞または器官、送達経路、単離されたポリヌクレオチドのサイズ、安全性の問題、ならびにこれらに類するものをはじめとする、当該技術分野において公知の多数の要因に基づいて行うことができる。
適するベクターとしては、プラスミドベクター、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アルファウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルスおよび他のパルボウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、または単純疱疹ウイルス)、脂質ベクター、ポリ−リシンベクター、合成ポリアミノポリマーベクター、ならびにこれらに類するものが挙げられる。
当該技術分野において公知である任意のウイルスベクターを本発明において使用することができる。組換えウイルスベクターを生産するためのプロトコルおよび核酸送達のためにウイルスベクターを使用するためのプロトコルは、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(Green Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.,New York)および他の標準的な実験マニュアル(例えば、Vectors for Gene Therapy.In:Current Protocols in Human Genetics.John Wiley and Sons,Inc.:1997)において見つけることができる。
非ウイルス移送法も利用することができる。多くの非ウイルス核酸移送法は、哺乳動物細胞が高分子の取り込みおよび細胞内輸送のために用いる通常のメカニズムに基づく。特定の実施形態において、非ウイルス核酸送達システムは、ターゲットとなる細胞による核酸分子の取り込みのためのエンドサイトーシス経路に基づく。このタイプの例示的核酸送達システムとしては、リポソーム由来のシステム、ポリ−リシンコンジュゲート、および人工ウイルスエンベロープが挙げられる。
特定の実施形態では、本発明の実施の際にプラスミドベクターを使用する。例えば、裸のプラスミドを組織への注入によって筋肉細胞に導入することができる。発現は、何か月にもわたる場合があるが、陽性細胞の数は、概して低い(Wolff et al.,Science 247:247(1989))。カチオン性脂質が培養中の多少の細胞への核酸の導入を助長することは立証されている(Felgner and Ringold,Nature 337:387(1989))。マウスの循環血へのカチオン性脂質プラスミドDNA複合体の注射が肺においてDNAの発現を生じさせる結果となることは証明されている(Brigham et al.,Am.J.Med.Sci.298:278(1989))。プラスミドDNAの1つの利点は、それを非複製細胞に導入できる点である。
代表的な実施形態では、その表面に正電荷を有する脂質粒子であって、ターゲット組織の細胞表面抗原に対する抗体で場合よっては標識された脂質粒子内に、核酸分子(例えば、プラスミド)を捕捉することができる(Mizuno et al.,No Shinkei Geka 20:547(1992)、PCT公報WO 91/06309日本特許出願第1047381号および欧州特許公開EP−A−43075)。
両親媒性カチオン性分子から成るリポソームは、in vitroおよびin vivo核酸送達のための非ウイルスベクターとして有用である(Crystal,Science 270:404(1995)、Blaese et al.,Cancer Gene Ther.2:291(1995)、Behr et al.,Bioconjugate Chem.5:382(1994)、Remy et al.,Bioconjugate Chem.5:647(1994)、およびGao et al.,Gene Therapy 2:710(1995)に概説されている)。正電荷を有するリポソームは、負電荷を有する核酸と静電相互作用によって複合体を形成して、脂質:核酸複合体を形成すると考えられる。脂質:核酸複合体は、核酸移送ベクターとして幾つかの利点を有する。ウイルスベクターとは異なり、脂質:核酸複合体を使用して、本質的に無限のサイズの発現カセットを移送することができる。上記複合体にはタンパク質がないので、より少ない免疫原性および炎症性応答しか誘発しないはずである。さらに、それらは、複製してまたは組み換わって感染性物質を形成することができず、低い組み込み頻度を有する。両親媒性カチオン性脂質がin vivoおよびin vitro核酸送達を媒介できることは、多数の出版物により論証されている(Feigner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 54:7413(1987)、Loeffler et al.,Meth.Enzymol 217:599(1993)、Feigner et al.,J.Biol.Chem.269:2550(1994))。
幾つかのグループにより、動物においてもヒトにおいてもin vivoトランスフェクションのための両親媒性カチオン脂質:核酸複合体の使用が報告されている(Gao et al.,Gene Therapy 2:710(1995)、Zhu et al.,Science 261:209(1993)、およびThierry et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:9742(1995)に概説されている)。米国特許第6,410,049号には、長期保存寿命を有するカチオン性:核酸複合体の作製方法が記載されている。
原核細胞または真核細胞におけるポリペプチドの発現のための発現ベクターを設計することができる。例えば、ポリペプチドを細菌細胞、例えば大腸菌、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス系)、酵母、植物細胞または哺乳動物細胞において発現させることができる。一部の適する宿主細胞は、Goeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)においてさらに論じされている。細菌ベクターの例としては、pQE70、pQE60、pQE−9(Qiagen)、pBS、pDIO、Phagescript、psiX174、pBluescript SK、pBSK、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Stratagene)、ptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、およびpRIT5(Pharmacia)が挙げられる。S.セレビジエ(S.cerevisiae)における発現のためのベクターの例としては、pYepSecl(Baldari et al.,EMBO J.6:229(1987))、pMFa(Kurjan and Herskowitz,Cell 30:933(1982))、pJRY88(Schultz et al.,Gene 54:113(1987))、およびpYES2(Invitrogen Corporation,San Diego,Calif)が挙げられる。培養昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)においてタンパク質を生産するための核酸の発現に利用することができるバキュロウイルスベクターとしては、pAcシリーズ(Smith et al.,Mol Cell Biol.5:2156(1983))およびpVLシリーズ(Lucklow and Summers,Virology 170:31(1989))が挙げられる。
哺乳動物発現ベクターの例としては、pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene)pSVK3、PBPV、pMSG、PSVL(Pharmacia)、pCDM8(Seed,Nature 329:840(1987))およびpMT2PC(Kaufman et al.,EMBO J.6:187(1987))が挙げられる。哺乳動物細胞において使用されるとき、発現ベクターの制御機能は、多くの場合、ウイルス調節要素によってもたらされる。例えば、一般に用いられているプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびシミアンウイルス40に由来する。
ウイルスベクターは、生きている動物被験者ばかりでなく、細胞における多種多様な遺伝子送達用途において使用されている。使用することができるウイルスベクターとしては、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ関連ウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン−バー・ウイルス、アデノウイルス、ジェミニウイルス、およびカリモウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。非ウイルスベクターとしては、プラスミド、リポソーム、荷電脂質(サイトフェクチン)、核酸−タンパク質複合体、および生体高分子が挙げられる。関心のある核酸に加えて、ベクターは、1つ以上の調節領域、ならびに/または核酸移送結果(特定の組織への送達、発現継続期間など)を選択、測定および調査に有用な選択マーカーも含むことができる。
上で論じた調節制御配列に加えて、組換え発現ベクターは、追加のヌクレオチド配列を含有することができる。例えば、組換え発現ベクターは、ベクターが組み込まれた宿主細胞を同定するための選択マーカー遺伝子をエンコードすることができる。
従来の形質転換またはトランスフェクション技術によってベクターDNAを原核または真核細胞に導入することができる。本明細書において用いる場合、用語「形質転換」および「トランスフェクション」は、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈法、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、DNA負荷リポソーム、リポフェクタミン−DNA複合体、細胞音波処理、高速マイクロプロジェクタイルを用いる遺伝子衝撃、およびウイルス媒介トランスフェクションをはじめとする、外来核酸(例えばDNAおよびRNA)を宿主細胞に導入するための当該技術分野において認知されている様々な技術を指す。宿主細胞の適する形質転換またはトランスフェクション方法は、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd Ed.(Cold Spring Harbor,NY,1989)および他の実験マニュアルにおいて見つけることができる。
適切な組み込みが望まれる場合には、多くの場合、ごく一部の細胞(特に、哺乳動物細胞)についてのゲノムに外来DNAが組み込まれる。組み込まれているものを同定および選択するために、選択マーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)をエンコードする核酸を、関心対象の核酸と共に宿主細胞に導入することができる。好ましい選択マーカーとしては、薬物耐性を付与するもの、例えばG418、ヒグロマイシンおよびメトトレキサートが挙げられる。選択マーカーをエンコードする核酸は、関心のある核酸を含むものと同じベクターを用いて宿主細胞に導入することができ、または別のベクターを用いて導入することができる。導入された核酸で安定的にトランスフェクトされている細胞を薬物選択によって同定することができる(例えば、選択マーカー遺伝子が組み込まれている細胞は生き残るが、他の細胞は死滅する)。
本発明のポリペプチドおよびフラグメントは、適切なポリペプチドのin vivoでの生き残りを促進する遮断薬を、アミノおよび/またはカルボキシル末端へ付加することにより、in vivo用に修飾することができる。これは、ペプチド末端が細胞取り込み前にプロテアーゼによって分解される傾向がある状況では有用であり得る。そのような遮断薬としては、限定ではないが、投与すべきペプチドのアミノおよび/またはカルボキシル末端残基に付けることができる追加の関連または非関連ペプチド配列を挙げることができる。これは、上記ペプチドの合成中に化学的に行うことができ、または普通の技能の技術者によく知られている方法による組換えDNA技法によって行うことができる。あるいは、遮断薬、例えば、ピログルタミン酸または当該技術分野において公知の他の分子を、アミノおよび/またはカルボキシル末端残基に付けることができ、またはアミノ末端のアミノ基もしくはカルボキシル末端のカルボキシル基を異なる部分で置換することができる。同様に、上記ペプチドを、投与前に、医薬的に許容される「担体」タンパク質に共有結合でまたは非共有結合でカップリングさせることができる。
本発明のもう1つの実施形態は、機能性ポリペプチドフラグメントのアミノ酸配列に基づいて設計されるペプチドミメティック化合物である、本発明のポリペプチドのホモログに関する。ペプチドミメティック化合物は、選択されたペプチドの三次元配座と実質的に同じである三次元配座(すなわち、「ペプチドモチーフ」)を有する合成化合物である。上記ペプチドモチーフは、ペプチドミメティック化合物に、そのペプチドミメティック化合物を誘導し機能性フラグメントのものと質的に同じように血管新生を増進する能力を備えさせる。ペプチドミメティック化合物は、それらの治療上の有用性を増進する追加の特性、例えば、増加された細胞透過性および延長された生物学的半減期を有する場合がある。
上記ペプチドミメティックは、概して、部分的にまたは完全に非ペプチドである主鎖を有するが、側基は、そのペプチドミメティックが基づくペプチド中に存在するアミノ酸残基の側基と同一である。幾つかのタイプの化学的結合、例えば、エステル、チオエステル、チオアミド、逆アミド、還元炭素A、ジメチレンおよびケトメチレン結合が、一般に、プロテアーゼ耐性ペプチドミメティックの構築の際のペプチド結合に対する有用な置換基であることは、当該技術分野において公知である。
1つの実施形態では、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはそれらのホモログを被験者に直接投与する。一般に、本発明の化合物を医薬的に許容される担体(例えば、生理食塩水)に懸濁させ、経口投与する、静脈内注射により投与する、または皮下、筋肉内、クモ膜下、腹腔内、直腸内、膣内、鼻腔内、胃内、気管内もしくは肺内注射することとなる。好ましくは、腫瘍細胞などの疾患または障害の部位に、例えば、腫瘍の外科的切除後に腫瘍または腫瘍床に直接それらを送達して、残存した腫瘍細胞を死滅させる。必要な投薬量は、投与経路の選択、製剤の性質、患者の疾病の性質、被験者のサイズ、体重、表面積、年齢および性別、投与される他の薬物、ならびに担当医の判断に依存する。適切な投薬量は、0.01〜100.0μg/kgの範囲である。利用できるペプチドおよびフラグメントの多様性ならびに様々な投与経路の効率の相違にかんがみて、必要投薬量の幅広い変動を予想することができる。例えば、経口投与は、静脈内注射による投与より高い投薬量を必要とすることが予想される。これらの投薬レベルの変動は、当該技術分野において十分に理解されているように、最適化のための標準的・経験的・日常的な操作手順を用いて調整することができる。投与は、単回である場合もあり、または多回(例えば、2、3、4、6、8、10、20、50、100、150倍、もしくはそれ以上)である場合もある。適する送達ビヒクル(例えば、ポリマー微粒子または埋め込み型装置)内へのポリペプチドの封入は、特に経口送達について、送達効率を増加させることができる。
一定の実施形態によると、上記ポリヌクレオチドまたはベクターをin vivoで特定の細胞または組織にターゲッティングすることができる。リポソームおよびウイルスベクターシステムをはじめとするターゲッティング送達ビヒクルは、当該技術分野において公知である。例えば、リポソームは、そのリポソームと共に組み込まれるターゲッティング剤、例えば抗体、可溶性受容体またはリガンド、であって、そのターゲッティング分子が結合できる特定の細胞または組織をターゲットにするものであるターゲッティング剤を使用して、特定のターゲット細胞または組織に向けることができる。ターゲッティングリポソームは、例えば、Ho et al.,Biochemistry 25:5500(1986)、Ho et al.,J.Biol.Chem.262:13979(1987)、Ho et al.,J.Biol.Chem.262:13973(1987)、およびHuang et al.の米国特許第4,957,735号(これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用されている)に記載されている。エンベロープ・ウイルス・ベクターは、ウイルスが特定の細胞タイプを感染させるようにエンベロープタンパク質を修飾または置換することにより、ターゲット細胞に核酸分子を送達するように修飾することができる。アデノウイルスベクターの場合、付属繊維をエンコードする遺伝子を、細胞特異的受容体に結合するタンパク質ドメインをエンコードするように修飾することができる。ヘルペスウイルスベクターは、中枢または抹消神経系の細胞を自然にターゲットにする。あるいは、特定の細胞または組織をターゲットにするような投与経路を用いることができる。例えば、アデノウイルスベクターの冠動脈内投与が遺伝子心筋細胞の送達に有効であることは証明されている(Maurice et al.,J.Clin.Invext.104:21(1999))。コレステロール含有カチオン性リポソームの静脈内送達が、優先的に肺組織をターゲットにすること(Liu et al.,Nature Biotechnol.15:167(1997))、およびin vivoでの遺伝子の移入および発現を有効に媒介することは証明されている。核酸分子の成功したin vivoターゲット送達の他の例は、当該技術分野において公知である。最後に、ターゲット細胞では選択的に誘導され、非ターゲット細胞では実質的に不活性のままである転写制御配列、および好ましくはプロモーター、を選択することによって、組換え核酸分子をターゲット細胞において選択的に(すなわち、優先的に、実質的に排他的に)発現させることができる。
V.血管新生関連疾患の診断および調査リング
腫瘍血管においてアップレギュレートされるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの同定により、血管新生の検出ならびに血管新生関連疾患および障害の診断に用いられるターゲットが得られる。
本発明の1つの態様は、被験者の組織における血管新生を検出する方法であり、これらの方法は、上記組織からサンプルを得ること、および上記サンプルにおける表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を判定することを含み、この場合、対照サンプルにおける発現および/または活性レベルに対する発現および/または活性の増加は、血管新生を示す。1つの実施形態において、上記組織は、がん組織、例えば乳がん組織などの罹病組織である。もう1つの実施形態において、上記組織は、罹病組織ではない。
本発明のもう1つの態様は、被験者におけるがんを診断する方法に関し、これらの方法は、上記被験者から組織サンプルを得るステップと、上記サンプルにおける表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を判定するステップとを含み、この場合、対照サンプルにおける発現および/または活性レベルに対する発現および/または活性の増加は、がんを示す。
本発明のさらなる態様は、被験者における組織の血管新生の可能性を判定する方法に関し、これらの方法は、上記被験者の組織からサンプルを得るステップと、上記サンプルにおける表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を判定するステップとを含み、この場合、対照サンプルにおける発現および/または活性レベルに対する発現および/または活性の増加は、上記組織の血管新生の可能性増加を示す。
本発明のもう一つの態様は、被験者におけるがんの転移の可能性を判定する方法に関し、これらの方法は、上記被験者のがんから組織サンプルを得るステップと、上記サンプルにおける表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を判定するステップとを含み、この場合、対照サンプルにおける発現および/または活性レベルに対する発現および/または活性の増加は、上記がんの転移の可能性増加を示す。
これらの態様のそれぞれにおいて、表1に記載の1つ以上のポリペプチド、例えば2、3、4、5、10、15、20、25、またはそれ以上のポリペプチド、の発現および/または活性を判定することができる。1つの実施形態において、上記1つ以上のポリペプチドは、SFRP2、JAK3およびFAP、またはこれらの組み合わせから成る群より選択される。もう1つの実施形態において、上記1つ以上のポリペプチドは、SFRP2を含まない。もう1つの実施形態において、上記1つ以上のポリペプチドは、JAK3を含まない。もう1つの実施形態において、上記1つ以上のポリペプチドは、FAPを含まない。上記組織サンプルは、当該技術分野において公知の任意の方法、例えば、外科手術、生検、洗浄法、吸引術などによって得ることができる。上記サンプルは、体液、例えば血液、血清、血漿、唾液、尿、脳脊髄液、汗などであることができる。上記対照サンプルは、上記被験者における同じ組織もしくは細胞タイプの正常な(すなわち、非罹病)部分からのものであることもでき、上記被験者における異なる組織もしくは細胞タイプからのものであることもでき、照合する個体からのものであることもでき、または被験者集団からとった測定値の平均から誘導した標準であることもできる。1つの実施形態において、上記組織サンプルは、単離された血管または単離された内皮細胞である。血管は、当該技術分野において公知のおよび本明細書において説明するような任意の手段によって単離することができる。内皮細胞は、当該技術分野において公知の任意の手段、例えば、細胞選別、免疫沈降法などによって単離することができる。
1つの実施形態において、上記被験者は、がん、例えば乳がんを有する。
1つの実施形態において、表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を判定することは、上記1つ以上のポリペプチドをエンコードする核酸のレベルを判定することを含む。核酸のレベルの判定は、当該技術分野において公知のおよび本明細書において説明するような任意の手段、例えば、ノーザンブロット、ドットブロット、PCR、RT−PCR、定量的PCR、配列分析、遺伝子マイクロアレイ分析、in situハイブリダイゼーション、およびレポーター遺伝子の検出によって行うことができる。発現および/または活性についてのアッセイは、例えばコンピュータ援用法を用いて、そのようなアッセイを行うように設計された機械または装置において自動的にまたは一部自動的に行うことができる。それらのアッセイの結果をコンピュータデータベースでソートし、分析して、診断結果を生じさせることができる。一部の実施形態では、患者内の結果を継時的にもしくは治療前と後とで比較することにより、または集団内でのベースラインおよび/もしくは異常値を決定するために患者間の結果を比較することにより、診断データを分析することができる。
もう1つ実施形態において、表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を判定することは、上記1つ以上のポリペプチドのレベルを判定することを含む。ポリペプチドのレベルの判定は、当該技術分野において公知のおよび本明細書において説明するような任意の手段、例えば、ウエスタンブロット、免疫ブロット、免疫沈降法、免疫組織化学、免疫蛍光法、酵素結合イムノソルベントアッセイ、およびラジオイムノアッセイによって行うことができる。
さらなる実施形態において、表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を判定することは、上記1つ以上のポリペプチドの活性を判定することを含む。上記活性は、限定ではないが血管新生活性、酵素活性、タンパク質相互作用、受容体結合、リガンド結合、成長因子の誘導、細胞シグナル伝達事象などを含む、上記ポリペプチドに付随する任意の活性であり得る。
本発明は、乳がんサブタイプ間で区別する方法にも関し、これらの方法は、被験者から乳がん細胞を得ること、上記サンプルにおける表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を判定すること、ならびにその発現および/または活性パターンに基づいてがんのサブタイプを判定することを含む。1つの実施形態において、上記方法は、ER陰性乳がんとER陽性乳がんとを区別するために用いられる。もう1つの実施形態において、上記方法は、基底サブタイプとHer2/neuサブタイプと管腔サブタイプとを区別するために用いられる。
本発明は、非浸潤性乳がんと浸潤性乳がんとを区別する方法にさらに関し、これらの方法は、被験者から乳がんサンプルを得るステップと、上記サンプルにおける表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を判定するステップと、その発現および/または活性パターンに基づいてがんのタイプを判定するステップとを含む。
本発明の1つの態様は、疾患またはその疾患の治療に起因する血管新生の調節を調査するための、血管新生の識別可能マーカーの使用に関する。1つの態様において、本発明は、被験者におけるがん治療の有効性を調査する方法に関し、これらの方法は、がんの治療を受けた被験者からサンプルを得るステップと、上記サンプルにおける表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を判定するステップと、その発現および/または活性レベルを対照サンプルにおける発現および/または活性レベルと比較するステップとを含み、この場合、上記サンプルにおける発現および/または活性レベルの上記対照サンプルに対する増加は、上記治療の有効性を示す。
本発明のもう1つの態様は、被験者におけるがんの進行を調査する方法に関し、これらの方法は、がんを有する被験者からサンプルを得るステップと、上記サンプルにおける表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を判定するステップと、その発現および/または活性レベルを対照サンプルにおける発現および/または活性レベルと比較するステップとを含み、この場合、上記サンプルにおける発現および/または活性レベルの上記対照サンプルに対する増加は、上記がんの進行を示す。
上記対照サンプルは、上記被験者における同じ組織もしくは細胞タイプの正常な(すなわち、非罹病)部分からのものであることができ、上記被験者における異なる組織もしくは細胞タイプからのものであることができ、照合する個体からのものであることができ、または被験者集団からとった測定値の平均から誘導した標準であることができる。もう1つの実施形態において、上記対照サンプルは、例えば診断時、治療前、または治療期の後の、被験者の罹病組織からのものであることができる。
これらの態様のそれぞれにおいて、発現および/または活性のベースラインレベルを、がんの最初の診断時または初回治療前に決定することができる。ベースラインを確立した後、上記1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を、反復的に、例えば、規則正しいスケジュール(例えば、2、3、4、5もしくは6日、1、2、もしくは3週間、またはそれ以上に1回)で、または所望に応じて(例えば、それぞれの治療的処置後に)判定することができる。発現および/または活性は、上で説明したように判定することができ、ならびに核酸またはポリペプチドレベルである場合がある。上記調査リングから得られた情報を用いて、被験者が受けている治療を変更することができる。
本発明の1つの態様は、本発明の方法を実施するために有用なキットに関する。1つの実施形態は、血管新生を評定するためのキットに関し、これらのキットは、表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を判定するための試薬を含む。もう1つの実施形態は、がんを診断するためのキットに関し、これらのキットは、表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を判定するための試薬を含む。それぞれの実施形態において、上記キットは、表1に記載の2、3、4、5、10、15、20、25、またはそれ以上のポリペプチドの発現および/または活性を判定するための試薬を含有する場合がある。上記試薬は、核酸(例えば、表1に記載のポリペプチドをエンコードする核酸に当為的にハイブリダイズし、ハイブリダイゼーションプローブもしくは増幅プライマーとして使用できるオレゴヌクレオチド)である場合もあり、抗体(例えば、表1に記載のポリペプチドに特異的に結合するもの)である場合もあり、または本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドを特異的に認識する他の試薬である場合もある。
上記試薬を検出可能なタグまたは検出可能な標識とコンジュゲートさせることができる。そのようなタグは、試薬の検出を可能にするいずれの適するタグであってもよく、そのようなタグとしては、顕微鏡検的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、工学的または化学的手段によって検出可能な任意の組成物または標識が挙げられるが、これらに限定されない。本発明において有用な標識としては、標識ストレプタビジンコンジュゲートで染色するためのビオチン、磁性ビーズ(例えば、Dynabeads(商標))、蛍光染料(例えば、フルオロセイン、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質およびこれらに類するもの)、放射性標識(例えば、3H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAにおいて一般に使用されている他のもの)、ならびに比色標識、例えばコロイド金または着色ガラスもしくはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズが挙げられる。
加えて、上記試薬を基材に固定化することができる。そのような基材は、前に説明した任意の検出方法のいずれかにおいて使用されるものなど検出試薬の固定化に適する任意の基材を含むことができる。簡単に言うと、検出試薬の固定化に適する基質としては、その検出試薬と結合を形成することができるがその検出試薬の活性および/または所望のターゲット分子を検出する能力に有意な影響を及ぼさない任意の固体支持体、例えば、任意の固体有機、生体高分子または無機支持体が挙げられる。例示的有機固体支持体としては、ポリマー、例えば、ポリスチレン、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、アクリル系コポリマー(例えば、ポリアクリルアミド)、安定化されたインタクト細胞、および安定化された未精製の全細胞/膜ホモジネートが挙げられる。例示的生体高分子支持体としては、セルロース、ポリデキストラン(例えば、Sephadex(登録商標))、アガロース、コラーゲンおよびキチンが挙げられる。例示的無機支持体としては、ガラスビーズ(多孔質および無孔質)、ステンレス鋼、金属酸化物(例えば、多孔質セラミック、例えばZrO2、TiO2、Al2O3、およびNiO)ならびに砂が挙げられる。
上記キットは、発現または活性の検出に有用な他の成分、例えば、緩衝液、細胞、培養基、酵素、標識試薬、容器などをさらに含むことができる。
1つの実施形態において、上記キットは、発現および/または活性を判定するための試薬のアレイを含む。上記アレイは、多数のアドレスを有する基材を含む場合がある。上記多数のうちの少なくとも1つアドレスは、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドに特異的に結合するキャプチャープローブを含む。上記アレイは、表1に記載のポリポリペプチドの5、10、15、20、25、またはそれ以上のポリペプチドに対応するキャプチャープローブを含む場合がある。上記アレイは、少なくとも10、20、50、100、200、500、700、1000、2,000、5,000もしくは10,000以上のアドレス/cm2の密度を有することができ、または10、20、50、100、200、500、700、1000、2,000、5,000もしくは10,000以上のアドレス/cm2より低い密度を有することができ、およびこれらの間の範囲を有することができる。上記基材は、二次元基材、例えばスライドガラス、ウェーハ(例えば、シリカもしくはプラスチック)、質量分析プレート、である場合もあり、または三次元基材、例えばゲルパッド、である場合もある。上記多数のアドレスに加えて、アドレスが上記アレイに割り付けられることができる。
1つの実施形態において、上記複数のうちの少なくとも1つのアドレスは、本発明のポリヌクレオチド、例えばセンスまたはアンチセンサ鎖、に特異的にハイブリダイズする核酸キャプチャープローブを含む。上記サブセットのそれぞれのアドレスが、ポリヌクレオチドの異なる領域にハイブリダイズするキャプチャープローブを含むことができる。様々な方法のいずれによってアレイを生成してもよい。適切な方法としては、例えば、フォトリソグラフィー法(例えば、米国特許第5,143,854号、同第5,510,270号、および同第5,527,681号)、機械的方法(例えば、米国特許第5,384,261号に記載されているような有向フロー法)、ピンに基づく方法(例えば、米国特許第5,288,514号に記載されているようなもの)、およびビーズに基づく技法(例えば、PCT US/93/04145に記載されているようなもの)が挙げられる。
もう1つの実施形態において、上記多数のうちの少なくとも1つのアドレスは、本発明のポリペプチドまたはそのフラグメントに特異的に結合するポリペプチド・キャプチャー・プローブを含む。上記ポリペプチド・キャプチャー・プローブは、表1に記載のポリペプチドの自然に発生する相互作用パートナー、例えば、上記ポリペプチドが受容体である場合、または上記ポリペプチドがリガンドである場合は受容体である場合がある。1つの実施形態において、上記ポリペプチドは、抗体、例えば、表1に記載のポリペプチドに特異的な抗体、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、または一本鎖抗体である。
VI.スクリーニングアッセイおよび動物モデル
腫瘍血管においてアップレギュレートされるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの同定によって、血管新生を調節する薬剤についてスクリーニングするために使用することができるターゲットと、in vitroでの、もしくは動物における血管形成プロセスを研究するためのモデルも得ることができる。
本発明の1つの態様は、血管新生を調節する化合物を同定する方法に関し、これらの方法は、試験化合物の存在下および不在下で表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を判定するステップと、その化合物の不在下でのレベルに対して上記1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性レベルを増加または減少させる化合物を、血管新生を調節する化合物として選択するステップとを含む。
本発明のもう1つの態様は、腫瘍成長または転移の阻害に有用な化合物を同定する方法に関し、これらの方法は、試験化合物の存在下および不在下で表1に記載の1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性を判定するステップと、その化合物の不在下でのレベルに対して上記1つ以上のポリペプチドの発現および/または活性レベルを増加または減少させる化合物を、腫瘍成長または転移の阻害に有用な化合物として選択するステップとを含む。
上記それぞれの態様におけるアッセイは、細胞ベースのアッセイであることができ、または無細胞アッセイであることもできる。1つの実施形態において、上記細胞は、初代細胞、例えば、内皮細胞または腫瘍細胞、例えば乳房腫瘍細胞、であることができる。もう1つの実施形態において、上記細胞は、細胞系、例えば、内皮細胞系または腫瘍細胞系からのものである。内皮細胞および細胞系としては、限定ではないが、HUVEC、HCEC、HGEC、HMEC−1、HUV−ST、ECY304、ECV304、およびEA.hy926が挙げられる。上記細胞を上記化合物とin vitroで(例えば、培養皿の中で)接触させることもでき、または動物(例えば、トランスジェニック動物もしくは動物モデル)体内で接触させることもできる。1つの実施形態において、発現および/または活性の検出される増加または減少は、統計的に有意であり、例えば、少なくともp<0.05、例えば、p<0.01、0.005または0.001である。もう1つの実施形態において、上記検出される増加または減少は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%以上である。
任意の所望の終点、例えば、上記ポリペプチド、遺伝子もしくはRNAへの結合、上記ポリペプチドの活性の変調、血管新生関連経路の変調、および/またはポリヌクレオチドもしくはポリペプチドの公知調節因子による結合への干渉を、スクリーニングアッセイにおいて検出することができる。上述の活性を検出する方法は、当該技術分野では公知であり、本明細書で開示する方法を含む。
関心のある任意の化合物を本発明に従ってスクリーニングすることができる。適する試験化合物としては、有機および無機分子が挙げられる。適する有機分子としては、小分子(約1000ダルトン未満の化合物)、ポリペプチド(酵素、抗体およびFabフラグメントを含む)、炭水化物、脂質、補酵素、ならびに核酸分子(DNA、RNA、およびそれらのキメラおよびアナログ)ならびにヌクレオチドおよび核酸類似体を挙げることができるが、それらに限定されない。特定の実施形態において、上記化合物は、表1に記載のポリペプチドの生産を阻害するアンチセンス核酸、siRNAまたはリボザイムである。
さらに、化合物ライブラリー、例えば、小分子ライブラリー、コンビナトリアル化合物ライブラリー、ポリペプチドライブラリー、cDNAライブラリー、アンチセンス核酸のライブラリー、およびこれらに類するもの、または化合物の配列されたコレクション、例えばポリペプチドおよび核酸アレイをスクリーニングするために、本発明の方法を実施することができる。
1つの代表的な実施形態において、本発明は、試験化合物をスクリーニングして、表1に記載のポリペプチドまたはその機能性フラグメントに結合する試験化合物を同定する方法を提供する。上記ポリペプチドまたは機能性フラグメントに結合すると同定されたえ化合物は、本明細書において説明する方法または他の適する技術を用いる(例えば、血管新生の調節についての)さらなるスクリーニングに付すことができる。
表1に記載のポリペプチドまたはその機能性フラグメントの活性を変調するものを同定するための化合物のスクリーニング方法も提供する。用語「変調する」は、上記ポリペプチド(または機能性フラグメント)の活性を向上させる(例えば、増加させる)または阻害する(例えば、減少させる)化合物を指すためのものである。例えば、上記ポリペプチドまたは機能性フラグメントと結合パートナーの相互作用を評価することができる。もう1つの代案として、NMRなどの物理的方法を用いて、生物学的作用を評定することができる。表1に記載のポリペプチドまたは機能性フラグメントの活性は、本明細書に開示する方法をはじめとする、当該技術分野において公知の任意の方法によって評価することができる。
活性のモジュレーターとして同定された化合物を、本明細書に記載する方法を用いて、例えば、表1に記載のポリペプチドもしくはその機能性フラグメント、ポリヌクレオチドまたはRNAへの結合、石灰化作用の変調、およびこれらに類するものについて、場合によってはさらにスクリーニングすることができる。上記化合物は、上記ポリペプチドもしくは機能性フラグメント、ポリヌクレオチドまたはmRNAと直接相互作用し、それによってその活性を変調することができる。あるいは、上記化合物は、任意の他のポリペプチド、核酸または他の分子と相互作用することが、その相互作用が上記ポリペプチドまたは機能性フラグメントの活性の変調を生じさせる結果となる限りにおいてできる。
もう1つの態様として、本発明は、血管新生を調節する化合物を同定する方法を提供する。1つの代表的な実施形態において、上記方法は、表1に記載のポリペプチドまたはその機能性フラグメントを試験化合物と接触させるステップと、上記試験化合物が、上記ポリペプチドもしくは機能性フラグメントに結合するかどうか、または上記ポリペプチド(もしくはフラグメント)の活性を変調するかどうかを検出するステップとを含む。もう1つの例示的実施形態において、上記方法は、表1に記載のポリペプチドまたは機能性フラグメントを含む細胞に試験化合物を導入するステップと、上記化合物が、上記ポリペプチドもしくは機能性フラグメントに結合するかどうか、または細胞における上記ポリペプチドもしくは機能性フラグメントの活性を変調するかどうかを検出するステップとを含む。上記ポリペプチドは、上記細胞において内因的に生産される場合がある。あるいは、または加えて、上記ポリペプチドまたはその機能性フラグメントをエンコードするおよび場合によっては発現する単離されたポリヌクレオチドを含むように、上記細胞を修飾することができる。
上記スクリーニングアッセイは、細胞ベースのアッセイ、または無細胞アッセイであることもできる。さらに、表1に記載のポリペプチド(もしくはその機能性フラグメント)またはポリヌクレオチドは、溶解状態で遊離していることもでき、固体支持体に取り付けられていることもでき、細胞表面で発現されることもでき、または細胞内に位置することもできる。
無細胞結合アッセイについては、試験化合物を合成することができ、または固体支持体、例えば、プラスチックピン、スライドガラス、プラスチックウェルおよびこれらに類するものに別様に取り付けることができる。例えば、当該技術分野において周知の技術によるビオチンとストレプトアビジンのコンジュゲーションを用いて、試験化合物を固定化することができる。上記試験化合物を上記ポリペプチドまたはその機能性フラグメントと接触させ、洗浄する。当該技術分野における標準的な技法を用いて(例えば、上記ポリペプチドまたは機能性フラグメントの放射性または蛍光標識により、ELISAなどにより)、結合したポリペプチドを検出することができる。
あるいは、上記ターゲットを固体基材に固定化し、結合したポリペプチドまたはその機能性フラグメントと試験化合物を接触させることができる。表1に記載のポリペプチドまたは機能性フラグメントに結合するおよび/またはそれらを変調する試験化合物の同定は、常例的技法を用いて行うことができる。例えば、当該技術分野において周知の技法によるビオチンとストレプトアビジンのコンジュゲーションを用いて、試験化合物を固定化することができる。もう1つの実例となる例として、上記ポリペプチドまたは機能性フラグメントと反応性の抗体をプレートのウェルに結合させ、抗体コンジュゲーションによってそれらのウェルに上記ポリペプチドを捕捉することができる。上記ポリペプチド(または機能性フラグメント)を提示するウェルの中で試験化合物の調製物をインキュベートし、そのウェルに捕捉された複合体の量を定量することができる。
もう1つの代表的な実施形態では、上記ポリペプチドのマトリックスへの結合を助長するドメインを含む融合タンパク質を提供することができる。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合タンパク質を、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical,St.Louis,MO)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレート上に吸着させ、その後、それらを細胞溶解産物(例えば、35Sで標識したもの)および試験化合物と併せ、その混合物を、複合体形成を助長する条件下で(例えば、塩およびpHについて生理条件で)インキュベートすることができる。インキュベーション後、それらのビーズを洗浄して任意の未結合標識を除去し、マトリックスに固定し、放射標識を直接検出するか、複合体を解離させた後にその上清中の放射標識を検出する。あるいは、上記複合体を上記マトリックスから解離させ、SDS−PAGEによって分離し、標準的な電気泳動技術を用いて、そのビーズ画分中で見つけられる表1に記載のポリペプチドまたはその機能性フラグメントのレベルをそのゲルから定量する。
もう1つの化合物スクリーニング技術は、PCT公開出願WO84/03564に記載されているような、関心のあるポリペプチドに対する適切な結合親和性を有する化合物のハイ・スループット・スクリーニングに備えるものである。この方法では、多数の異なる小さな試験化合物を、プラスチックピンまたは何らかの他の表面などの固体基材上で合成する。それらの試験化合物を、表1に記載のポリペプチドまたはその機能性フラグメントと反応させ、洗浄する。その後、結合したポリペプチドを、当該技術分野において周知の方法によって検出する。精製されたポリペプチドまたは機能性フラグメントを、上述の薬物スクリーニング技術で使用するためのプレートに直接コーティングすることもできる。あるいは、非中和抗体を用いて上記ペプチドを捕捉し、固体支持体上にそれを固定化することができる。
細胞ベースのアッセイについては、細菌、酵母、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を伴う)、鳥類の細胞、哺乳動物細胞、または植物細胞をはじめとする、任意の適する細胞を使用することができる。例示的実施形態において、上記ポリヌクレオチドを自然に発現するまたは上記ポリペプチドを生産する細胞系、例えば、内皮細胞または周皮細胞において上記アッセイを行うことができる。さらに、他の実施形態では、形質転換が上記ポリペプチドの機能を改変する場合があるので、非形質転換細胞(例えば、初代細胞)を使用することが望ましい。
上記スクリーニングアッセイは、表1に記載の天然ポリペプチド(例えば、細胞によって正常に生産されるポリペプチド)に結合するまたは該天然ポリペプチドを変調する化合物を検出するために用いることができる。あるいは、細胞を、組換えポリペプチドまたはその機能性フラグメントを発現する(例えば、過剰発現する)ように修飾することができる。この実施形態によると、上記細胞を、表1に記載のポリペプチドまたは機能性フラグメントをエンコードするポリヌクレオチドで、一過的に形質転換させることができ、または安定的に形質転換させることができるが、好ましくは、例えば、その生物のゲノムへの安定な組み込みにより、または安定して維持されるエピソーム(例えば、エプステイン・バー・ウイルス由来のエピソーム)からの発現により、安定的に形質転換させる。もう1つの実施形態では、レポーター分子をエンコードするポリヌクレオチドを、表1に記載のポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチドの調節要素に連結させ、それを用いて、上記ポリペプチドの発現を調節する化合物を同定することができる。
細胞ベースのアッセイにおいて、スクリーニングされることとなる化合物は、表1に記載のポリペプチドまたはその機能性フラグメントと直接相互作用し(すなわち、結合し)、活性を変調することができる。あるいは、上記化合物は、核酸レベルでポリペプチド活性(または機能性フラグメントの活性)を変調するものであることができる。実例を挙げると、上記化合物は、遺伝子(またはトランスジーン)の転写を変調することができ、mRNAの蓄積を(例えば、そのmRNAの転写および/または代謝回転率に影響を及ぼすことにより)変調することができ、および/またはmRNA転写産物の翻訳率および/または量を変調することができる。
細胞ベースのアッセイのさらなるタイプとして、表1に記載のポリペプチドまたはその機能性フラグメントを、ツー・ハイブリッドまたはスリー・ハイブリッドアッセイ(例えば、米国特許第5,283,317号、Zervos et al.,Cell 72:223(1993)、Madura et al.,J.Biol.Chem.265:12046(1993)、Bartel et al,Biotechniques 14:920(1993)、Iwabuchi et al,Oncogene 5:1693(1993)、およびPCT公報WO94/10300参照)において「釣り餌(bait)タンパク質」として使用して、本発明のポリペプチドまたはその機能性フラグメントに結合するまたはそれらと相互作用する他のポリペプチドを同定することができる。
ツーハイブリッドシステムは、分離可能なDNA結合および活性化ドメインから成る、大部分の転写因子のモジュラー性に基づく。簡単に言うと、上記アッセイは、2つの異なるDNA構築物を利用する。一方の構築では、表1に記載のポリペプチドまたはその機能性フラグメントをエンコードするポリヌクレオチドを、公知転写因子(例えば、GAL−4)のDNA結合ドメインをエンコードする核酸に融合させる。他方の構築では、未同定タンパク質(「プレイ」または「サンプル」)をエンコードする、場合によってはDNA配列のライブラリーからの、DNA配列を、公知転写因子の活性化ドメインをエンコードする核酸に融合させる。上記「ベイト」タンパク質と「プレイ」タンパク質がin vivoで相互作用すると、上記転写因子のDNA結合ドメインと活性化とメインが極めて接近する。この近接によって、転写因子に応答する転写調節部位に作動可能に連結されているレポーター配列(例えば、LacZ)の転写が可能になる。レポーターの発現を検出することができ、機能性転写因子を含有する細胞コロニーを単離し、それらを用いて、表1に記載のポリペプチドまたは機能性フラグメントへの結合を示すポリペプチドをエンコードする核酸を得ることができる。
もう1つの細胞ベースのアッセイとして、本発明は、血管新生の調節について化合物をスクリーニングする方法を提供する。特定の実施形態において、上記細胞は、表1に記載のポリペプチドまたはその機能性フラグメントをエンコードする単離されたポリヌクレオチドを含む。この実施形態によると、上記ポリペプチドまたは機能性フラグメントをエンコードする単離されたポリヌクレオチドを安定的に(すなわち、その生物のゲノムへの安定な組み込みによって、または安定して維持されるエピソーム、例えばエプステイン・バー・ウイルス由来のエピソームからの発現によって)細胞に組み込むことが好ましい。
動物においてin vivoでスクリーニングアッセイを行うこともできる。従って、尚、さらなる態様として、本発明は、当該技術分野において周知の方法に従って生産することができる、表1に記載のポリペプチドまたはその機能性フラグメントをエンコードする単離されたポリヌクレオチドを含むトランスジェニック非ヒト動物を提供する。上記トランスジェニック非ヒト動物は、鳥類および非ヒト哺乳動物をはじめとする任意の種からのものであり得る。本発明のこの態様によると、適する非ヒト哺乳動物としては、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギ、ヒツジ、ブタおよびウシが挙げられる。適する鳥類としては、ニワトリ、カモ、ガチョウ、ウズラ、シチメンチョウ、およびキジが挙げられる。
上記ポリペプチドまたは機能性フラグメントをエンコードするポリヌクレオチドを、トランスジェニック動物体内の細胞に安定的に(概して、そのゲノムへの安定な組み込みによって、または安定して維持されるエピソーム構築物によって)組み込むことができる。すべての細胞がトランスジーンを含有する必要はなく、ならびに上記動物は、上記動物が有用なスクリーニングツールであるために十分な数の細胞が上記ポリペプチドまたは機能性フラグメントをエンコードするポリヌクレオチドを含むのであれば、修飾細胞と未修飾細胞のキメラであってもよい。
血管新生、腫瘍成長、転移、および/または表1に記載のポリペプチドの活性を変調する化合物のin vivoスクリーニングのために本発明のトランスジェニック非ヒト動物を使用する例示的方法は、そのゲノムに安定的に組み込まれた表1に記載のポリペプチドまたはそのこれらに類するものをエンコードする単離されたポリヌクレオチドを含むトランスジェニック非ヒト動物(例えば、マウスなどの哺乳動物)に試験化合物を投与するステップと、上記試験化合物が、血管新生、腫瘍成長、転移、および/またはポリペプチド活性(または機能性フラグメントの活性)を変調するかどうかを検出するステップとを含む。
これらの応答をin vivoで測定する方法は、当該技術分野において公知である。実例となるアプローチとしては、肉眼での検査(細管および血管の形成)、組織検査、細胞マーカー、および酵素活性によって調査ことができる変化の観察が挙げられる。
トランスジェニック動物を作る方法は、当該技術分野において公知である。DNAまたはRNA構築物を鳥類または哺乳動物の生殖細胞系に導入してトランスジェニック動物を作ることができる。例えば、上記構築物の1つまたは幾つかのコピーを標準的なトランスジェニック技術によって胚のゲノムに導入することができる。
例示的実施形態では、非ヒト動物の生殖細胞系にトランスジーンを導入することによってトランスジェニック非ヒト動物を生産する。トランスジーンを様々な発育段階の胚性ターゲット細胞に導入することができる。その胚性ターゲット細胞の発育段階に依存して様々な方法が用いられる。使用する任意の動物の特定の系統を、可能であれば、良好な総合的健康状態、良好な胚収量、胚における良好な前核明視度、および良好な生殖適応度について選択すべきである。
胚へのトランスジーンの導入は、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポフェクションまたはウイルスベクターなどの、当該技術分野において公知の様々な方法のいずれによって遂行してもよい。例えば、トランスジーンは、その構築物を哺乳動物の受精卵(単数または複数)の前核にマイクロインジェクションにより導入して、その構築物の1つ以上のコピーを発育中の哺乳動物(単数または複数)の細胞内に保持させることによって、哺乳動物に導入することができる。受精卵へのトランスジーン構築物の導入後、その卵を様々な時間量にわたってin vitroでインキュベートする、代理宿主に再移植する、または両方を行う。1つの一般的な方法は、種に依存して約1〜7日間、in vitroでのそれらの胚のインキュベーション、およびその後、代理宿主への再移植である。
トランスジェニック操作された胚の後代について、組織切片のサザンブロット分析により、その構築物の存在について検査することができる。外因的にクローニングされた構築物の1つ以上のコピーがそのゲノムに安定的に組み込まれている胚を使用して、永久トランスジェニック動物系統を樹立することができる。
トランスジェニック改変動物は、出生後、その子孫のゲノムへのその構築物の組み込みについてアッセイすることができる。これは、上記ポリペプチドまたはその断片をエンコードするポリヌクレオチド配列に対応するプローブを後代からの染色体物質にハイブリダイズすることによって行うことができる。それらのゲノム内に上記構築物の少なくとも1つのコピーを含有することが判明した後代を成体まで成長させる。
トランスジェニック鳥類を生産する方法も当該技術分野において公知である。例えば、米国特許第5,162,215号参照のこと。
特定の実施形態では、表1に記載のポリペプチドの活性または発現を減少させる動物モデルを作るために、胚性幹細胞を使用するトランスジーンの相同組み換えにより上記ポリペプチドをエンコードする内在性遺伝子を不活性化、置換、またはノックアウトすることが望ましい。これに関連して、トランスジーンは、遺伝子内または付近に挿入したときに遺伝子発現またはポリペプチド量または活性の減少または不活性化を生じさせる結果となる異種核酸を指すものとする。
遺伝子のノックアウトは、好ましくは遺伝子発現またはポリペプチド量または活性が検出できないか、または有意でないような、遺伝子機能の低下を生じさせる結果となる、遺伝子配列の改変を意味する。本明細書において用いる場合のノックアウトは、遺伝子の改変が、例えば、遺伝子改変を促進する物質(例えば、テトラサイクリンもしくはエクジソン)への動物の暴露、ある遺伝子部位(例えば、Cre−lox系におけるCre)での組換えを促進する酵素の導入、または出生後に遺伝子改変を指示する他の方法に基づいて発生する、条件付きノックアウトも含む。当業者に公知の方法を用いて、ノックアウト動物を作製することができる。例えば、Hogan,et al.(1986)Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照のこと。
ノックアウト構築物は、細胞に導入されたときにその細胞内の内在性DNAによってコードされたポリペプチドの発現の(部分的または完全)抑制を生じさせる結果となる核酸配列(例えばDNAまたはRNA構築物)である。本明細書において用いる場合のノックアウト構築物は、表1に記載のポリペプチドをエンコードする遺伝子の5’末端からの第一のフラグメントと、上記遺伝子の3’末端からの第二のフラグメントと、上記第一のフラグメントと第二のフラグメントの間に位置する選択マーカーをエンコードするDNAフラグメントとを含有する構築物を含む場合がある。その対応する遺伝子の発現がそのトランスジーンの挿入によって部分的にまたは完全に抑制されるのであれば、遺伝子の任意の適する5’および3’フラグメントを用いることができることは、当業者には理解されるはずである。適する選択可能マーカーとしては、ネオマイシン、ピューロマイシンおよびヒグロマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。加えて、上記構築物は、正しくターゲッティングされた細胞の獲得頻度を増加させるためにマーカー、例えばジフテリア毒素Aまたはチミジンキナーゼ、を含有する場合がある。適するベクターとしては、pBLUESCRIPT、pBR322、およびpGEM7が挙げられるが、これらに限定されない。
あるいは、ノックアウト構築物は、表1に記載のポリペプチドをエンコードする遺伝子の発現を減少させるためにRNA分子(例えばアンチセンスRNA、siRNAおよびこれらに類するもの)を含有する場合がある。概して、適する発現のために、上記RNA分子は、プロモーターの制御下に置かれる。関心のあるタンパク質の欠失が、致死性表現型をもたらすことがある場合、上記プロモーターを調節することができ、または上記プロモーターは、関心のある遺伝子がすべての成長条件下でサイレンシングされるように、RNA分子を構成的に発現させることができる。ノックアウト構築物と関心のある遺伝子との相同組み換えは、遺伝子発現を減少させるためにRNA分子を用いるときには必要とされないが、意図されたものでない表現型がノックアウト構築物のランダム挿入によって生成されないように宿主生物のゲノム内の特定の位置にノックアウト構築物をターゲッティングすることは、有利である。
その後、ノックアウト構築物を、宿主動物への送達のためのウイルスもしくは非ウイルスベクターに組み込むことができ、または胚性幹(ES)細胞に導入することができる。ES細胞は、発達中の胚の生殖細胞系に組み込まれてその一部になるそれらの能力について選択されて、ノックアウト構築物の生殖細胞伝播を生じさせる。従って、そのようにできるいずれのES細胞系も本明細書における使用に適する。使用できる、適した細胞系としては、129J−ES細胞系またはJI−ES細胞系が挙げられるが、これらに限定されない。当業者に周知の方法を用いてDNA挿入のために上記細胞を培養および調製する(例えば、obertson(1987)In:Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach,E.J.Robertson,ed.IRL Press,Washington,D.C.、Bradley et al.,Curr.Topics Develop.Biol.20:357(1986)、Hogan et al.,(1986)Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照のこと)。
ES細胞へのノックアウト構築物の挿入は、例えばエレクトロポレーション、マイクロインジェクション、およびリン酸カルシウム処理をはじめとする、当該技術分野において周知の様々な方法を用いて、遂行することができる。DNAまたはRNA配列の挿入のために、ノックアウト構築核酸を、選択された挿入方法に適する条件下で、ES細胞に添加する。細胞をエレクトロポレーションに付す場合、エレクトロポレーションマシン(エレクトロポレーター)をその製造業者の使用ガイドラインに従って使用して、それらのES細胞および構築核酸を電気パルスに暴露する。エレクトロポレーション後、それらの細胞を適するインキュベーション条件下で回復させる。その後、それらの細胞をノックアウト構築物の存在についてスクリーニングする。
細胞に導入することとなるそれぞれのノックアウト構築物は、そのノックアウト構築物がベクターに挿入されている場合には、一般に、先ず直鎖化される。直鎖化は、ノックアウト構築物を、そのベクター配列内でのみ切断し、そのノックアウト構築物配列内では切断しないように選択された、適する制限エンドヌクレアーゼで消化することによって、果たすことができる。
ノックアウト構築物(相同組み換え体)を含有する細胞についてのスクリーニングは、様々な方法を用いて行うことができる。例えば、本明細書に記載するように、細胞を必要に応じて処理して、それらの中のDNAを、上記構築物を含有する細胞だけにハイブリダイズするように設計された核酸プローブでのハイブリダイゼーションに利用できるようにすることができる。例えば、ターゲッティングフラグメントの外部に位置する32P標識DNAで細胞DNAをプローブすることができる。この技術は、ノックアウト構築物が正しく組み込まれている細胞を同定するために用いることができる。標準的な方法(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd Ed.(Cold Spring Harbor,NY,1989)を参照のこと)を用いて、それらの細胞からDNAを抽出することができる。その後、そのDNAを、1つ以上の特定の制限酵素で消化されたゲノムDNAに特異的パターンでハイブリダイズするように設計されたプローブ(単数または複数)を用いるサザンブロットによって、分析することができる。
適切なES細胞が同定されたら、標準的な方法を用いてそれらを胚に導入する。例えばマイクロインジェクションを用いて、それらを導入することができる。発生するES細胞に組み込むための適切な発育期の胚は、例えば、妊娠した雌の子宮の潅流によって得られる。例えば、発生3〜4日目のマウス胚を得、マイクロピペットを使用してそれらにES細胞を注射することができる。胚へのES細胞の導入後、偽妊娠雌マウスの子宮にその胚を導入する。着床成功の機会を高めるように偽妊娠期を選択する。マウスの場合、2〜3日偽妊娠した雌が適切である。
ノックアウト構築物の生殖細胞系列移行は、標準的な方法を用いて判定することができる。上で説明したES細胞を含有する胚の着床の結果として生ずる子孫を、所望の改変(例えば、表1に記載のポリペプチドのノックアウト)の存在についてスクリーニングする。これは、例えば、子孫からDNA(例えば、テールDNA)を得て、公知の方法(例えば、サザン分析、ドットブロット分析、PCR分析)を用いてノックアウト構築物について評定することにより、行うことができる。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd Ed.(Cold Spring Harbor,NY,1989)を参照のこと。キメラとして同定された子孫を互いに交雑させて、同型接合ノックアウト動物を生産することもできる。
マウスは、飼育が容易であり、比較的安価であり、繁殖が容易であるため、動物モデルとして使用されることが多い。しかし、他のノックアウト動物、例えば、サル、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギおよびラット(しかし、これらに限定されない)も、本発明に従って作ることができる。従って、当該技術分野において周知の適切なベクターおよびプロモーターを選択し、使用して、表1に記載のポリペプチドの発現を欠くトランスジェニック動物を産生することができる。
もう1つの実施形態では、トランスジェニックでない動物を使用して動物モデルを作ることができる。例えば、腫瘍モデル(例えば、免疫減弱状態の動物に腫瘍形成性細胞を送達することによって作られたもの)を使用して、血管新生の調節剤の腫瘍成長および転移に対する効果を研究することができる。もう1つの例では、表1に記載のポリペプチドを過多発現または過少発現する腫瘍形成性細胞を、それらの細胞から腫瘍が発生する条件下で、動物に送達することができる。それらの動物における腫瘍成長を、上記ポリペプチドを過剰発現または過少発現しない細胞を含有する動物における腫瘍成長と比較することができる。
VIII.医薬組成物
さらなる態様として、本発明は、上で論じた治療効果(例えば、血管新生の阻害または刺激)のいずれかを達成するための医薬製剤およびそれらの投与方法を提供する。上記医薬製剤は、医薬的に許容される担体中の上で論じた試薬のいずれか、例えば、表1に記載のポリペプチドもしくはその断片をエンコードするポリヌクレオチド、表1に記載のポリペプチドもしくはその断片、表1に記載のポリペプチドに対する抗体、アンチセンスオレゴヌクレオチド、siRNA分子、リボザイム、アプタマー、ペプチドミメティック、小分子、または表1に記載のポリペプチドの活性を調節する任意の他の化合物(本明細書に記載するスクリーング方法によって同定される化合物を含む)を含むことができる。
「医薬的に許容される」とは、生物学的にまたは別様に望ましくないものでない材料、すなわち、毒性などの望ましくない生物学的作用を生じさせることなく被験者に投与できる材料を意味する。
本発明の製剤は、医薬、医薬品、担体、アジュバント、分散剤、希釈剤などを選択的に含むことができる。
本発明の化合物は、公知の技術に従って製薬用担体中での投与のために調合することができる。例えば、Remington,The Science And Practice of Pharmacy(9th Ed.1995)を参照のこと。本発明による医薬製剤の製造では、上記化合物(生理的に許容されるその塩を含む)を、とりわけ許容される担体と概して混合する。上記担体は、固体もしくは液体、または両方であることができ、好ましくは、0.01または0.5重量%から95重量%または99重量%の上記化合物を含有する単位用量製剤、例えば錠剤、として上記化合物と共に調合される。周知の調剤技術のいずれかによって調製することができる本発明の製剤に1つ以上の化合物を組み込むことができる。
本発明のさらなる態様は、医薬的に許容される担体中の本発明の化合物を含む医薬組成物を被験者に投与することを含み、この場合、上記医薬組成物は、治療有効量で投与される。その必要があるヒト被験者または動物への本発明の化合物の投与は、化合物の投与について当該技術分野において公知のいずれの手段によるものであることができる。
本発明の製剤は、経口、直腸内、局所、口腔内(例えば、舌下)、膣投与、非経口(例えば、皮下、骨格筋、心筋、横隔膜筋および平滑筋を含む筋肉内、皮内、静脈内、腹腔内)、局所(すなわち、気道表面を含めて、皮膚表面と粘膜表面の両方)、鼻腔内、経皮、関節内、クモ膜下および吸入投与、門脈内送達による肝臓への投与、ならびに直接器官注射(例えば、肝臓へのもの、中枢神経系への到達のための脳へのもの、膵臓へのもの、または腫瘍へのもしくは腫瘍を包囲する組織へのもの)に適するものを含む。いずれの所定の所与の症例に関しても、最も適する経路は、治療することとなる状態の性質および重症度に、ならびに使用することとなる特定の化合物の性質に依存する。
注射のための担体は、概して、液体、例えば発熱物質を含まない滅菌水、発熱物質を含まないリン酸緩衝食塩溶液、静菌水、またはCremophor EL(登録商標)(BASF,Parsippany,N.J.)である。他の投与方法のための担体は、固体であることもでき、または液体であることもできる。
経口投与については、上記化合物を固体剤形、例えばカプセル、錠剤および粉末で、または液体剤形、例えばエリキシル、シロップおよび懸濁液で投与することができる。化合物を、不活性成分および粉末担体、例えばガラクトース、ラクトース、スクロース、マンニトール、デンプン、セルロースまたはセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、サッカリンナトリウム、滑石、炭酸マグネシウムなどと共に、ゼラチンカプセルに封入することができる。所望の色、味、安定性、緩衝能力、分散または他の所望の特徴をもたらすために添加することができる追加の不活性成分の例は、酸化鉄、シリカゲル、ラウリル硫酸ナトリウム、二酸化チタン、可食白色インクなどである。類似の希釈剤を使用して、圧縮錠剤を作ることができる。長時間にわたる薬物の継続的放出に備えるために、錠剤も、カプセルも、徐放性製品として製造することができる。圧縮錠剤は、望ましくない味を隠ぺいするためおよび雰囲気からその錠剤を保護するために糖衣もしくはフィルムコーティングされることができ、または胃腸管の中で選択的に崩壊するように腸溶コーティングされることができる。経口投与のための液体剤形は、患者による受け入れを増すように着色剤および着香剤を含有することができる。
口腔内(舌下)投与に適する製剤としては、風味を付けた基剤、通常はラクトースおよびアラビアゴムまたはトラガカントゴム、中の上記化合物を含むロゼンジ、ならびに不活性基剤、例えばゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアラビアゴム、中の上記化合物を含む香錠が挙げられる。
非経口投与に適する本発明の製剤は、上記化合物の滅菌水性および非水性注射溶液を含み、この調製品は、好ましくは、所期のレシピエントの血液と等張性である。これらの調製品は、抗酸化物質、緩衝剤、静菌剤、およびその製剤を所期のレシピエントの血液と等張にさせる溶質を含有する場合がある。水性および非水性滅菌懸濁液は、懸濁化剤および増粘剤を含む場合がある。上記製剤を単回投与用または多回投与用容器、例えば密封アンプルおよびバイアル内で保存することができ、ならびに使用直前に滅菌液体担体、例えば食塩水または注射用蒸留水を添加するだけでいいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管することができる。
即時調合注射溶液および懸濁液は、前に説明した種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。例えば、本発明の1つの態様では、密封容器内の単位剤形で、本発明の化合物を含む注射用安定滅菌組成物を提供する。上記化合物または塩を、被験者にそれを注射するために適する液体組成物を形成するように医薬的に許容される適切な担体で再構築することができる凍結乾燥物の形態で提供する。上記単位剤形は、概して、約10mgから約10グラムの上記化合物または塩を含む。上記化合物または塩が実質的に水不溶性であるときには、医薬的に許容される乳化剤の十分な量を、水性担体に上記化合物または塩を乳化するために十分な量で用いることができる。1つのそのような有用な乳化剤は、ホスファチジルコリンである。
直腸内投与に適する製剤は、好ましくは、単位用量坐剤として提供される。これらは、1つ以上の従来の固体担体(例えばカカオ脂)と上記化合物を混合し、その後、その得られた混合物を成形することによって調製することができる。
皮膚への局所塗布に適する製剤は、好ましくは、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー剤、エアロゾルまたはオイルの形態をとる。使用することができる担体としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、経皮吸収促進剤、およびこれらの2つ以上のものの組み合わせが挙げられる。
経皮投与に適する製剤は、長期間にわたってレシピエントの真皮と密着した状態のままであるように改造された個別のパッチとして提供することができる。経皮投与に適する製剤は、イオン泳動によって送達することもでき(例えば、Tyle,Pharm.Res.3:318(1986)を参照のこと)、概して、上記化合物の場合によっては緩衝された水溶液の形態をとる。適する製剤は、クエン酸塩またはビス−トリスバッファー(pH6)またはエタノール/水を含み、ならびに0.1から0.2Mの上記化合物を含有する。
あるいは、上記化合物を鼻投与用に調合することができ、または任意の適する手段によって被験者の肺に別様に投与することができ、例えば、被験者が吸入する、上記化合物を含む呼吸用粒子のエアロゾル懸濁物によって投与することができる。上記呼吸用粒子は、液体である場合もあり、または固体である場合もある。用語「エアロゾル」は、細気管支または鼻腔に吸入され得る任意のガス輸送懸濁相を含む。具体的には、エアロゾルは、定量吸入器もしくはネブライザーにおいてまたはミスト噴霧器において生成され得るような、液体粒子のガス輸送懸濁物を含む。エアロゾルは、例えば吸入装置からの吸入によって送達され得る、空気または他の担体ガスに懸濁された乾燥粉末組成物も含む。Ganderton & Jones,Drug Delivery to the Respiratory Tract,Ellis Horwood(1987)、Gonda(1990)Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 6:273−313、およびRaeburn et al.,J.Pharmacol.Toxicol.Meth.27:143(1992)を参照のこと。上記化合物を含む液体粒子のエアロゾルは、当量者に公知であるような任意の適する手段によって、例えば、圧力駆動式エアロゾルネブライザーまたは超音波ネブライザーを用いて、生成することができる。例えば、米国特許第4,501,729号参照。同様に、上記化合物を含む固体粒子のエアロゾルを、製薬技術分野において公知の技術により、任意の固体粒状薬物エアロゾル生成装置を用いて生成することができる。
あるいは、例えばデポー製剤または徐放性製剤で、全身的にではなく局所的に上記化合物を投与することができる。
さらに、本発明は、本明細書に開示する化合物およびそれらの塩のリポソーム製剤を提供する。リポソーム懸濁液を形成するための技術は、当該技術分野において周知である。上記化合物またはその塩が水溶性の塩であるときには、従来のリポソーム技術を用いて、それらを脂質小胞に封入することができる。そのような場合、上記化合物または塩の水溶性のため、上記化合物または塩は、リポソームの親水性中心またはコアの中に実質的に捕捉されることとなる。用いることができる脂質層は、任意の従来の組成のものであってよく、ならびにコレステロールを含有する場合もあり、またはコレステロール不含である場合もある。関心のある化合物または塩が水不溶性であるときには、従来のリポソーム形成技術をまた利用して、リポソームの構造を構成する疎水性脂質二重層の中に上記塩を実質的に捕捉することができる。いずれの場合も、生成されるリポソームは、例えば標準的な音波処理および均質化技術の使用により、サイズを縮小することができる。
本明細書に記載する化合物またはそれらの塩を含有するリポソーム製剤を凍結乾燥させて、水などの医薬的に許容される担体で再構成してリポソーム懸濁液を再生することができる凍結乾燥物を製造することができる。
水不溶性化合物の場合、例えば水系エマルジョン中のものなどの水不溶性化合物を含有する医薬組成物を調製することができる。そのような場合、その組成物は、所望の量の上記化合物を乳化させるために十分な量の医薬的に許容される乳化剤を含有する。特に有用な乳化剤としては、ホスファチジルコリンおよびレシチンが挙げられる。
特定の実施形態では、上記化合物を治療有効量(この用語は、上で定義したとおりである)で被験者に投与する。医薬活性化合物の投薬量は、当該技術分野において公知の方法によって決定することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co.,Easton,Pa)を参照のこと。いずれの特定の化合物の治療有効量も、化合物によっておよび患者によって多少変わり、ならびにその患者の状態および送達経路に依存する。一般的な提案として、(塩を利用する場合を含めてその化合物の重量に基づいてすべての重量を計算して)約0.1から約50mg/kgの投薬量が治療効力を有する。より高いレベルでの毒性の懸念が、静脈内投薬量をより低いレベル、例えば(塩を利用する場合を含めてその化合物の重量に基づいてすべての重量を計算して)約10mg/kg以下に制限することができる。経口投与には、約10mg/kgから約50mg/kgの投薬量を用いることができる。概して、筋肉内注射には、約0.5mg/kgから5mg/kgの投薬量を用いることができる。個々の投薬量は、静脈内または経口投与について、それぞれ、上記化合物約1μmol/kgから50μmol/kgまで、およびさらに特に22μmol/kgまでおよび33μmol/kgまでである。
本発明の特定の実施形態では、1回以上の投与(例えば、2、3、4回、またはそれ以上の投与)を様々な時間間隔(例えば、1時間に1回、1日1回、週1回、月1回など)で用いて、治療効果を達成することができる。
本発明は、獣医学的用途および医療用途で使用することができる。適する被験者としては、鳥類と哺乳動物の両方を挙げられるが、哺乳動物のほうが好ましい。本明細書において用いる場合の用語「鳥類」は、ニワトリ、カモ、ガチョウ、ウズラ、シチメンチョウ、およびキジを含むが、これらに限定されない。本明細書において用いる場合の用語「哺乳動物」は、ヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、ウサギなどを含むが、これらに限定されない。ヒト被験者は、新生児、乳児、少年少女、および成人を含む。他の実施形態において、被験者は、骨疾患の動物モデルである。
本発明を以下の実施例においてさらに詳細に説明するが、本発明の非常に多数の変更および変形が当業者には明らかであるため、以下の実施例は、単に実例となるものと解釈される。
<実験方法>
乳房組織源:使用した凍結組織および腫瘍は、Lineberger Comprehensive Cancer Center Tissue Procurement and Analysis Coreから得たものであり、ならびに適切に情報を与えられた患者であって彼らの組織を研究のために入手することに同意している患者から入手したものであった。この組織は、ネオアジュバント化学療法での治療を受けていない患者における原発性乳房腫瘍から、または乳房縮小術を受けるがんを有さない患者から得た。マイクロダイセクションのために使用した乳房腫瘍は、ER+、Her2/neu−(管腔A免疫表現型)であった。
レーザー・キャプチャー・マイクロダイセクションについての免疫組織化学:急速凍結した乳房組織の部分をOCT化合物中で固定し、クライオスタットを用いて−35℃で8μmに切断し、ポリエチレンナフタレート膜スライドガラス(Arcturus Bioscience,Mt View,CA,カタログ#LCM0522)に載せた。RNAseフリー技術をこの手順を通して用い、緩衝液およびアルコール溶液は、毎回、新しいものを使用した。スライドガラスをアセトン中で2分間、4℃で固定し、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)(Gibco,Grand Island,NY)中ですすいだ。それらのスライドガラスを第VIII因子関連抗原に対するマウス抗ヒト抗体(BioGenex,San Ramon,CA,カタログ#MU016−UC)と共に1:6希釈で7分間、4℃でインキュベートした。次の変更を加えて、DakoCytomation LSAB2システム(Carpinteria,CA)、3段階ストレプタビジン−ビオチンシステム、を用いてIHCを行った。HBSS中で洗浄後、ビオチニル化リンクを5分間、室温でインキュベートした。BCIP/NBTアルカリホスファターゼ顕色剤(Vector Labs,Burlingame,CA)を非常に高い濃度(3滴/200μL緩衝液)で使用し、10〜15分間、4℃でインキュベートした。スライドガラスを75%ETOH中で30秒間、95%ETOH中で30秒間、そして100%ETOH中で2分間、脱水した(Arcturus,Mountain View,CA)。この染色プロセスにおいて使用したすべての緩衝液に、プロテクターRNAse阻害剤(Roche,Indianapolis,IN)を1:10希釈で添加した。このスライドをマイクロダイセクションまでドライアイス上に置いておき、そのマイクロダイセクションは、免疫組織化学(IHC)と同じ日に行った。
レーザー・キャプチャー・マイクロダイセクション:組織調製直後にマイクロダイセクションを行った。レーザー・キャプチャー・マイクロダイセクションは、Leica Laser Microdissection Systemを用いて行った。マイクロダイセクションする組織をビデオ顕微鏡で見て、所望の細胞がターゲッティングライトの下になるようにスライドガラスの位置を調整した。UVレーザーの活性化によって、関心のある細胞群の周囲の組織を切断した。その後、その切断した組織を、Picopure RNA Extraction Kit(商標)(Arcturus,Mountain View,CA)からの25μLのRNA抽出緩衝液が入っているエッペンドルフチューブに重力によって移動させた。RNA完全性を維持するために、マイクロダイセクションまでスライドガラスをドライアイス上に保持し、スライドガラス1枚につき15分以下でマイクロダイセクションを行った。サンプル1つにつき15枚のスライドガラスをマイクロダイセクションした。その後、Arcturus Picopure RNA Extraction Kit(商標)(Arcturus,Mountain View,CA)を、その製造業者の指示書に記載されているとおりに用いてRNAを抽出し、DNAse Iで処理した。
RNAの増幅:2ラウンド増幅システムを使用して、RNA増幅を行った。第1ラウンドは、RiboAmp(登録商標)HS RNA Amplification Kit(Arcturus,Mountain View,CA)を用いた。その後、第1増幅ラウンドからの500ngをAgilent Low−Imput Fluorescent Linear RNA Amplification Kit(商標)(Palo Alto,CA)に入れた。この第2ラウンドは、マイクロアレイ分析のために調製の際に蛍光プローブを組み込むT7ポリメラーゼ増幅を用いた。
RNA完全性の分析:第1ラウンド後、それぞれのマイクロアレイ実験前に、異なる存在度レベルの遺伝子のRT−PCR検出およびcDNA Integrity Kit(KPL,Gaithersburg,Maryland)でのインタクト完全長cDNA調製の立証を用いてRNA完全性を確認した。後述のシステムは、完全長および伸長cDNA転写産物の存在についてのインプロセスおよび2本鎖cDNAの評価を可能にする、プライマーセットとターゲット遺伝子を用いる。プライマーセットが、ハウスキーピング遺伝子GAPDHおよび低発現ADPリボシル化因子I遺伝子の3’領域および5’末端領域を増幅する。上記3’プライマーセットを用いる産物の産生は、その遺伝子がその系で発現されること示し、および上記5’プライマーセットを用いるアンプライマー生産は、完全長インタクトcDNAを示す。
増幅バイアスの測定:MDA−MB−435乳がん細胞を75cm2フラスコまたは10mmプレートにおいて、10%ウシ胎仔血清および10Uのペニシリン−ストレプトマイシン(Gibco)を伴うDMEMにプレーティング(2.5x106細胞)した。48時間後、Quageb RNeasy Kitを使用して全RNAを抽出し、QIAquick PCR Purification Kit(Qiagen,Valencia,CA)で精製した。サンプルは、1ラウンドだけの増幅を経た(グループA)か、2ラウンドの増幅を経た(グループB)。アレイ間の相関係数をクラス間相関と比較した(Hu et al.,Biotechniques 38:121(2005))。
マイクロアレイ実験:Cy3−dUTPで標識したStaratagene Human Universal Referenceである参照cDNA(Hu et al.,Biotechniques 38:121(2005))およびCy5−dUTPで標識したサンプルcDNAを用いて以前に説明されているように標識cDNAの合成を行った。マイクロアレイハイブリダイゼーションは、以前に説明されている(Hu et al.,Biotechniques 38:121(2005))ようにAgilent Humanオレゴヌクレオチド(細胞系については個別設計Agilent 1Av1に基づくものおよび血管切開試料についてはAgilent 44k)マイクロアレイを使用して行った。すべての血管切開試料についてテクニカルレプリケート(これは、1つの腫瘍からの同じRNAを2つのマイクロアレイで使用することを指す)を行った。
データ正規化、前処理、および統計:赤色チャンネル強度を緑色チャンネル強度に対して正規化するLowessのlog2比を用いて遺伝子発現値を定量した(Yang et al.,Nucleic Acids Res.30:e15(2002))。UNC Microarrayデータベース(genome.unc.edu)を用いて、フィルタリングおよび前処理を行った。すべてのデータは、UMDから入手し、GSE7413のアクセッション番号のもとでGEOに寄託されたものである。2クラスSAM(Significance Analysis of Microarrays,www−stat.stanford.edu/〜tibs/SAM)(Storey,J.R.Stat.Soc.Series 5:479(2002)、Tusher et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:5116(2001))を行って、5つすべての正常血管サンプルに対する5つすべての腫瘍血管サンプル間の有意に差次的に発現される遺伝子を同定した。それぞれのサンプルは、テクニカル・レプリケート・アレイを有し、従って、SAMのために用いたそれぞれのグループには10のアレイが存在した。可能性のある膜または分泌タンパク質をエンコードする、差次的に発現される遺伝子を同定するために、Gene Cards(www.genecards.org/index.shtml)を検索して、発現が4倍より大きく増加した遺伝子についての可能性のある細胞内位置を同定した。
SAMの結果から誘導された遺伝子リストを翻訳し、その遺伝子リストを生物学的テーマに変換するために、EASE(the Expression Analysis Systematic Explorer,david.abcc.ncifcrf.gov)分析を適用した。
マイクロダイセクションした血管細胞における細胞タイプのアイデンティティー:特定の細胞集団(内皮細胞、造血細胞、周皮細胞、および上皮細胞)において選択的に発現されることが知られている遺伝子についての遺伝子発現を分析し、血管細胞試料からの遺伝子発現プロフィールと内皮細胞in vitro培養物および乳房腫瘍由来細胞のin vitro培養物とを比較することによって、マイクロダイセクションした血管を含む細胞タイプを同定した。ヒト内皮細胞全RNAをCell Application Incorporation(San Diego,CA)から購入した。Qiagen RNAeasy Kitを使用して乳がん細胞系から全RNAを精製した。RNA 6000 Nano LabChip KitおよびAgilent 2100 Bioanalyzerを使用してRNA完全性を判定した。内皮、以前に特性づけされているTEM、造血性マーカー、周皮細胞マーカー、および管腔上皮に特異的な遺伝子を分析し、Java(登録商標) Treeviewを使用してデータを表示した(Saldanha,Bioinformatics 20:3246(2004))。
血管マーカー遺伝子の血管起源の確認:免疫LCMによって得られた腫瘍内皮に随伴する遺伝子の血管起源を検証するために、抗体を用いる免疫組織化学を行って遺伝子転写産物を選択し、パラフィン包埋DR+、Her2/neu−乳房腫瘍において第VIII因子関連抗原に対する抗体で染色する後続セクションでの染色と比較した。
市販の抗体:SFRP−2(H−140)に対するウサギポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA,カタログ#sc−13940)を1:150希釈で使用し、FAP/線維芽細胞活性化タンパク質、アルファ−Stalk領域、に対するウサギポリクローナル抗体(Abcam,Cambridge,MA,カタログ#Ab28244)を1:600希釈で使用し、JAK3に対するマウスモノクローナル抗体(Genetex Inc.,San Antonio,TX,カタログ#GTX23301)を1:100希釈で使用し、マウス抗Hep27(17)(DHRS2)抗体、Dr.Franco Gabrielli(Universita di Pisa,Pisa,Italy)からの贈呈品、を1:1000希釈で使用し、第VIII因子関連抗原に対するマウス抗ヒト抗体(BioGenex,San Ramon,CA,カタログ番号#MU016−UC)を1:100希釈で使用し、マウスモノクローナル抗ヒトCD−19(AbD Serotec,Raleigh,NC,カタログ#MCA2454T)を1:200で使用した。
抗体産生方法:SLTRK6(Cys−SRPRKVLVEQTKNEYFELKANLHAEPDYLEVLEQQT(配列番号:8))およびSMPD3(TSKSSGQKGRKELLKGNGRRIDYMLHC(配列番号:9))タンパク質に対するペプチドを合成し、ウサギの免疫処置のためにキーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)にコンジュゲートさせた。初回免疫処置のためにフロイント完全アジュバントと混合したそのペプチドコンジュゲート200μgでニュージーランド・ホワイト・ラビット(5〜6lb)に3回免疫処置を施した。すべての追加免疫処置には不完全アジュバントを使用した。注射経路は、多数の部位での皮下および筋肉内経路であった。3回目の免疫処置後にサンプリングした血液から血清を回収した。SLITRK6抗体を1:5000希釈で使用し、SMPD3抗体を1:1000希釈で使用した。
パラフィン包埋乳房腫瘍サンプルおよび正常サンプルに関する免疫組織化学:組織を8μmに切断してSuperfrost plusスライドガラスに載せた。キシレンへの5分間の浸漬2回によってスライドガラスからパラフィンを除去した。スライドガラスを100%ETOH、95%ETOH中でそれぞれ3分間水和した。スライドガラスを10分間、3%H2O2(DakoCytomation,LSAB2 HRP Kit,Carpinteria,CA)中で失活させ、70%ETOHで3分間、そしてその後、PBSで3分間すすいだ。Citraバッファー(BioGenex,San Ramon,CA)を60℃のオーブンで温め、炊飯器の中で30分間、100℃でそのCitraバッファーにスライドガラスを浸漬した。スライドガラスをPBS中で3分間すすぎ、その後、PAPペンでマークを付けた。100μL〜200μLの一次抗体を塗布し、スライドガラスを4℃の冷蔵室内の密封ボックスの中に一晩置いた。その後、スライドガラスをPBS中で3分間すすぎ、1〜2滴のビオチニル化二次抗体(DakoCytomation,LSAB2 HRP Kit)をそれぞれのスライドガラスに20分間添加した。スライドガラスをPBS中で3分間すすぎ、1〜2滴のストレプタビジン−HRP(DakoCytomation,LSAB2 HRP Kit)を20分間塗布した。1〜2滴のDAB複合体を塗布し、スライドガラスをおおよそ10分間、暗い引出しの中に置いた。スライドガラスを蒸留水中で3分間すすぎ、トリパンブルー(Sigma,St Louis,MO)で30〜40秒間、対比染色した。スライドガラスをPBS中ですすぎ、等級付きアルコールおよびキシレンならびにCytoseal XYL(Richard−Allan,Kalamazoo,MI)によって脱水し、カバーガラスをかぶせた。一次抗体のない陰性対照をすべての実験について行い、および陽性対照は、第VIII因子関連抗原であった。
乳房腫瘍組織と正常乳房組織の間の血管遺伝子の差次的タンパク質発現の評価:血管遺伝子が内皮に局在していることを確認したら、次に、パラフィン包埋乳房腫瘍組織および正常乳房組織を使用して差次的mRNA発現が差次的タンパク質発現と相関するかどうかを評価した。
乳房手法の選択:ホルマリン固定パラフィン包埋乳房腫瘍の3つのグループを使用し、それらの免疫表現型に基づいて管腔A、基底、またはHer2/neuと指定し(Livasy et al.,Mod.Pathol.19:264(2005))(「管腔A」ER陽性、Her2/neu因子絵、「基底」ER陰性、PR陰性、HER2/neu陰性、ck5/6陽性またはEGFR陽性、および「Her2/neu」ER陰性、PR陰性、Her2/neu陽性)、乳房縮小術からの正常乳房組織も使用した。正常乳房組織を、先ず、第VIII因子関連抗原に対する抗体で染色し、そのサンプル中に血管を有した組織のみを使用した。ER陰性、PR陰性、HER2/neu陰性腫瘍は、以前に記載されているようなCK5/6抗体(Livasy et al.,Mod.Pathol.19:264(2005))およびEGFR抗体(clone pharmDx,DakoCytomation Carpinteria,CA)について製造業者の指示書に従って染色して、基底表現型をさらに規定した。
免疫組織化学採点:1人の認定病理専門医(CAL)が、内皮細胞における染色強度を測定する採点システムに基づいてFAP、SFRP2、JAK3、SMPD3、SLITRK6、DHRS2およびCD19についてのそれぞれの組織切片を(血管強度スコア)0、なし;1、幅広線;2、弱;3、中等度/強として採点し、ならびに陽性内皮細胞染色パー然とを、0、なし;1、1〜24%;2、25〜49%;3、50〜74%;4、75〜100%として採点した。その後、腫瘍組織と正常組織の間の血管強度スコアの差を二種類に分けて評価した。この場合は、「高」スコアが3であり、低スコアが0〜2であった。血管新生発現をさらに定義するために、発現を高いもの(強度3+および陽性細胞≧75%)と高くないもの(強度0、1または2および/または陽性細胞<75%)の二種類に分け、これを血管新生スコアとして診断した。フィッシャー正確確率検定を用いて発現の割合(または百分率)の起こり得る差について検定し、管腔A対正常組織、Her2neu対正常組織、および基底対正常組織間の血管新生スコアと血管強度スコアの両方について「高」または「低」のいずれかとしてカテゴリー分けした。SAS統計ソフトウェア、バージョン9.1、SAS Institute Inc.,Cary,NCを用いて統計解析を行った。
<乳房腫瘍血管において差次的に発現される遺伝子の同定>
血管単離およびマイクロアレイ分析:腫瘍血管と正常血管の間の遺伝子発現の差を研究するために、第VIII因子関連抗原に対する抗体を用いて迅速IHCを行い、その後、5つの管腔A乳房腫瘍および乳房縮小術からの5つの正常乳房組織試料からの血管細胞のレーザー・キャプチャー・マイクロダイセクション(LCM)を行った。迅速IHCプロトコルによる免疫染色は、固定からLCMまで30〜35秒しか必要としない。染色の質は優れ、血管細胞を容易に同定し、LCMを首尾よく行った(図1)。
2ラウンド増幅システムを用いてRNA増幅を行った。第1の増幅ラウンド後にRNA完全性を評価した。抽出されたRNAは、異なる存在度レベルの遺伝子のRT−PCR検出によって証明されるように、その完全性を維持していた(図2)。陰性対照(マイクロダイセクションしたサンプルを伴わないRNA抽出緩衝液、データは示さない)の増幅後にシグナルは一切観察されなかった。マイクロアレイハイブリダイゼーション前にすべてのサンプルに関してRNA完全性を確認し、RNA完全性を維持していたサンプルのみをマイクロアレイ分析のために使用した。
増幅バイアスを推定するために、in vitroで成長させたヒトNDA−MB−435乳がん細胞から抽出したRNAの2ラウンドの増幅と1ラウンド増幅したRNAを比較した。増幅したRNAと増幅していないRNAの両方を44,000エレメントAgilent長ポリヌクレオチドDNAマイクロアレイにハイブリダイズさせたとき、テクニカルレプリケート間の相関係数は0.95〜0.96にわたった。
血管細胞アイデンティティーおよび純度の確認:内皮に特異的な遺伝子は、血管細胞試料および内皮細胞系において均一におよび高度に発現されたが、有意に低い発現が乳房腫瘍細胞系において観察され、血管細胞サンプルには内皮が非常に豊富であることが確認された(図3)。
腫瘍内皮マーカー1、2、4、5、6、7、7R、8(結腸腫瘍と正常上皮の間で差次的に発現されることが以前に報告されている)(St.Croix,Science 289:1197(2000))は、乳房腫瘍細胞系において観察される低い発現に対して比較したとき、腫瘍血管細胞と正常血管細胞の両方において高度に発現された(図3)。以前に報告された乳房特異的腫瘍血管遺伝子HEY1、Col4A2、C4A、SPARCL1、SNAIL1(Parker et al.,Cancer Res.64:1851(2004))も、腫瘍血管細胞と正常血管細胞の両方のサンプルにおいて高度に発現されたが、乳房腫瘍細胞系での発現は低かった(図3)。これらの結果は、これらが乳房内皮のマーカーであるが、それらの発現が正常血管細胞に対して腫瘍血管細胞におけるほうが一貫して高くないことを示唆している。
血小板由来成長因子受容体ベータ(PDGFR−β)、周皮細胞マーカー、は、血管細胞サンプルにおいて高度に発現され、これは周皮細胞の存在によって確認された(図3)。乳がん細胞系において管腔乳房腫瘍上皮に特異的な遺伝子の高い発現があったが、血管細胞サンプルおよび内皮細胞系での発現は低かった(図3)。これは、上皮関連遺伝子の高い発現レベルを伴わない内皮細胞および周皮細胞の富化を裏付けた。
血管細胞サンプルにおける造血細胞マーカーの発現は、in vitroでの内皮細胞系における発現と類似していた(図3)。CD45(白血球)およびCD22(B細胞)は、LCM血管および内皮細胞系において低い発現を有した。CD14(マクロファージ)およびCD5(T細胞)は、血管細胞サンプルと内皮細胞系の両方において増加された。これは、血管細胞サンプルにおけるマクロファージおよびT細胞からのRNAの存在によって説明することができよう。あるいは、CD14およびCD5は、内皮細胞上で発現され可能性がある。血管細胞前駆体の単球起源(Coukos et al.,Br.J.Cancer 92:1182(2005))および内皮細胞におけるCD14の発現(Jersmann,Immunol.Cell Biol.83:462(2005))についての証拠が以前にあり、マイクロダイセクションされた卵巣腫瘍内皮の以前の報告(Buckanovich et al.,Cancer Biol.Ther.5:635(2006))においてもCD14は高く、ならびにCD5が血管内皮上に存在することも以前に報告されている(Gogolin−Ewens et al.,Eur.J.Immunol.19:935(1989))からである。
腫瘍対正常血管の監視分析:マイクロアレイの有意性分析(SAM)を用いて、腫瘍血管細胞と正常血管細胞の間で差次的に発現される遺伝子を同定した。差次的に発現される1176の遺伝子が、誤った有意性の数の中央値=7.76で見つかり、それらのうちの368が増加された。SAMから誘導された遺伝子リストを翻訳し、その遺伝子リストを生物学的テーマに変換するために、Expression Analysis Systematic Explorer(EASE)を適用した。ボンフェローニ(Bonferonni)修正結果を調査すると、細胞外マトリックス・オンコロジー・カテゴリーが腫瘍血管細胞では増加されるが、リボソーム・オンコロジー・カテゴリーでは減少されることが判明した。これは、異なる生体応答を明示している。
血管マーカー遺伝子の血管起源の確認:免疫LCMによってえら得る腫瘍内皮に随伴する遺伝子の血管起源を検証するために、パラフィン包埋管腔Aヒト乳房腫瘍に関するIHCを行った。目的は、非常に差次的に発現される遺伝子を同定することであったので、最初の焦点を、腫瘍血管細胞において発現が4倍より大きく増加された55の遺伝子(表1)に合わせた。このリストから、Gene Cards(www.genecards.org/index.shtml)を検索して、発現が4倍より大きく増加した遺伝子についての可能性のある細胞内位置を同定し、膜タンパク質(FAP、JAK3、SMPD3、SLITRK6、CD19)、および分泌タンパク質(SFRP2)をエンコードする可能性を秘めている遺伝子の一部に焦点を合わせた。これらは、それらの利用しやすさのため、特に良好な薬物ターゲットもたらす。in vitroで内皮において発現されると細菌記載された遺伝子(DHRS2)も選択される(Shafqat et al.,Cell.Mol.Life Sci.63:1205(2006))。
内皮を同定するための陽性対照のために第VIII因子関連抗原に対する抗体を使用し、後続の選択に関しては、FAP(線維芽細胞活性化タンパク質、アルファ、SFRP2(分泌性フリズルド関連タンパク質2)、JAK3(ヤーヌスキナーゼ3)、SMPD3(中世スリンゴミエリナーゼ2)、SLITRK6、DHRS2(デヒドロゲナーゼ/レダクターゼ(SDRファミリー)メンバー2(Hep27としても公知))、およびCD19に対する抗体を用いてIHCを行った。
FAP、SFRP2、JAK3、SMPD3、SLITRK6およびDHRS2に対する抗体は、すべて、腫瘍間質および腫瘍上皮ばかりでなく、内皮においても細胞局在に関する染色を示した(図4)。CD19、B細胞マーカー、は、内皮に局在しなかった。従って、研究した、免疫−LCMにより同定された血管マーカー遺伝子の6/7が、血管起源のものと実証されたことは明白である。
<乳房腫瘍血管と正常乳房血管の間の血管遺伝子の差次的タンパク質発現の評価>
血管起源のものであると検証された6つの遺伝子について、次に、パラフィン包埋正常、管腔A、Her2/neu、および基底腫瘍に関するIHCに関して差次的nRNA発現が異なるタンパク質発現と相関するかどうかを評価した。SLTRK6およびDHRS2については有意な差次的タンパク質発現が検出されなかった。これは、腫瘍内皮と正常内皮の両方において非常に高度に染色されたためである可能性がある(データは示さない)。SMPD3については、管腔A対正常についての血管新生スコアに差はなかったが、管腔A対正常を比較すると血管強度スコアの増加があった(15/16(94%)対6/10(60%)p=0.05)。JAK3は、管腔AおよびHer2/neu腫瘍において正常と比較して高度な染色を有し(それぞれ、p=0.01およびp=0.006、図5D)、血管スコアは、ほぼ統計的に有意であった(p=0.11、図5C)。基底腫瘍は、JAK3の非常に低い発現を有した(図5C、5D)。FAPについては、血管新生スコアが、管腔A、Her2/neuおよび基底腫瘍において正常と比較して有意に高かった(それぞれ、p=0.04、p=0.03、p=0.03、図5Aを参照のこと)。SFRP2については、血管新生スコアが、管腔A腫瘍および基底腫瘍において正常と比較して有意に高く(それぞれ、p=0.03およびp=0.02)、Her2/neu腫瘍においてほぼ有意であった(***p=0.10)。これが、異なるプラットホーム(IHC)を用いた第二サンプルに関する管腔A対正常血管細胞における差次的遺伝子発現の最初の発見を実証することは明らかである。
<SFRP2の血管新生効果>
ヒヨコ漿尿膜(CAM)アッセイ:SFRP2がin vivoで血管新生を誘導するかどうかを判定するために、受精鶏卵(NC State University Chicken Research Farm)を、卵反転器を用いて4日間、100°Fでインキュベートした。第4日に卵を滅菌ペトリ皿に割り、99°F、3%CO2、湿度65%でインキュベートした。CAMに薬物を塗布するために、Whatman等級1濾紙を直径6mmのペーパーパンチで円形に切断し、オートクレーブで処理した。そのディスクの炎症作用を減少させるために、そのディスクを無水ETOH中の3.0mg/mLの酢酸コルチゾン(1mL)に浸漬し、層流フード内で60分間、空気乾燥させた。第8日に卵1個につき5枚のディスクを、CAMの外側1/3、容器から2〜3mmの上に置いた。対照CAMについてはディスクに対照PBS7μLを添加し、処理したCAMについてはディスクにSFRP2の100ng/7μLのPBSを添加した(対照ディスクn=5、およびSFRP2処理ディスク5)。ディスク配置後3日の時点でそれらのCAMを立体顕微鏡で評価した。Wild M−4 70 Macrosystemで写真を撮り、Metamorph Softwearと血管新生モジュールを用いて血管新生を定量した。SFRP2がin vivoで血管新生を誘導するかどうかを調査するために、SFRP2含浸ペットを、第8日の発育中のCAMに移植した。3日後、SFRP2は、CAMに対して血管新生を誘導し、分岐点(0.010)、セグメント(0.013)、管の被覆面積パーセント(0.004)、全管面積(0.008)および全管長(0.008)の数を統計学的に有意に増加させた(図6)。
スクラッチ創傷アッセイ:スクラッチ創傷アッセイを用いて、マウス内皮細胞(MEC)細胞に関するSFRP2の移動特性を評価した。マウス内皮細胞を10,000細胞/ウェルで96ウェルプレートにプレーティングし、10%FBSを伴うDMEM中で集密にならせた。血清を伴わないDEME中で18時間、それらの細胞を静止させた。1mLピペット先端を用いて傷を作り、0.7M〜700pM用量曲線のマウス組換えSFRP2(US Biologicals,Swampscott)をそれらの細胞に添加した。それぞれの濃度を三重重複で実行し、実験を3回繰り返して同様の結果を得た。16から32時間、移動を測定した。それぞれの時点で移動距離を測定した。p<0.05が有意である、対応のない両側スチューデントt検定を用いて、SFRP2と対照の間の統計的な差を評価した。SFRP2は、ピコモル濃度で内皮細胞移動を増加させた(16時間でp<0.01、19時間でp<0.001)(図7参照)。
管形成アッセイ:内皮細胞管形成アッセイを用いて、マウス内皮細胞(MEC)細胞に対するSFRP2の管形成特性を評価した。ECMatrix(Chemicon)を製造業者の指示書に従って96ウェルプレート内で解凍し、希釈し、凝固させた。10%FBS(HyClone)を伴う150μLのDEME(cellgro)中の1x104細胞/ウェルおよび濃度範囲(7〜7000pM)のSFRP2(US Biologicals)をマトリックス上に播種し、8時間、5%CO2で37℃に戻した。Nikon CoolPix 995デジタルカメラと4倍の倍率でNikon Eclipse TS100顕微鏡を使用して画像を獲得した。内皮管形成が、8時間時点でSFRP2により濃度依存的に誘導された(7nMでp=0.0006)(図8)。
マトリゲル・プラグ・アッセイ:マウス・マトリゲル・プラグ血管新生アッセイにおいて血管新生を刺激するマウス組換えSFRP2の能力を評価した。雌C57BL/6マウス(週齢8週)に、マウス組換えSFRP2(800ng/mL)と30U/mLヘパリンまたは陰性対象としてPBSと30U/mLヘパリンのいずれかを含有する0.5mLの成長因子低減基底膜マトリックス(マトリゲル)を皮下注射した。7日後、マウスを犠牲にし、マトリゲルプラグを除去し、ドラブキン試薬でヘモグロビン濃度により血管新生について評価した。ヘモグロビン含量の測定による血管新生応答の評価は、ビヒクル対照と比較してSFRP2プラグにおいて3.3倍の増加を示した(SFRP2プラグn=25、対照プラグn=26、p=0.01、図9)。
内皮細胞アポトーシスアッセイ:MEC細胞においてアポトーシスを誘導できないので、ヒト冠動脈内皮細胞(HACEC)をアポトーシスアッセイのために用いた。内皮細胞用基本培地−2(EGM−2)BulletKit培地(Clonetics,Dan Diego,CA)を用いて10cm皿(Becton Dickinson,Fraklin Lakes,NJ)においてHCAECを80%集密まで成長させた。その後、培地を、異なるアッセイに従って最適な培地で置換した。5%CO2/95%N2の雰囲気を有する低酸素チャンバ内で、37℃で、BulletKit成長因子のないEGM−2培地中でHCAECをインキュベートすることにより、低酸素状態を作った。そのチャンバ内の酸素を1.0%に制御した。Caspase 3 Assay Kit(Sigma)についてのプロトコルに従ってカスパーゼ特異的蛍光原基質を使用することにより、切断されたカスパーゼ3の活性を測定することによって、アポトーシスを判定した。低酸素下で36時間、濃度(70pMおよび700pM)のSFRP2で処理した後、HCAECを溶解した。その後、5μLの細胞抽出物を室温で1時間、反応緩衝液中でインキュベートした。7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC)の酵素触媒放出を蛍光マイクロプレートリーダーによって測定した。低酸素に対して保護されたSFRP2は、内皮細胞アポトーシスを誘導することが判明した(p<0.02)(図10)。
遺伝子発現分析:オレゴヌクレオチドマクロアレイを用いて、遺伝子発現プロフィールに対するSFRP2の下流効果を評価した。SFRP2(700pM)と共におよびSFRP2(700pM)なしで、16時間、MEC細胞を培養した。Qiagen RNeasy Kit(Qiagen)を使用して、RNAを抽出し、精製した。全RNAの濃度および純度を蛍光分光分析により判定し、RNA 6000 Nano LabChip(Agilent Technogolies)およびAgilent 2100バイオアナライザー(Agilent Technologies)を使用して強度を検証した。それぞれの遺伝子の平均実験強度対対照強度比についての信頼度を向上させるためにそれぞれのグループについて生物学的レプリケート(n=3)が存在した。Low−Input Linear RNA Amplification System(Aligen)を使用して、細胞からのRNAをCy5−CTPで標識し、等モル濃度のCy3標識マウス共通参照RNAでハイブリダイズした。Agilent Mouse Whole Genome 44Kオレゴヌクレオチドマイクロアレイを使用して、マイクロアレイハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション後、それらのアレイをAxon Gene Pix 4000bスキャナー(Axon Instruments,Inc.,Foster City,CA)でスキャンした。Feature Extraction V 9.1ソフトウェア(Agilent)を使用して画像を分析した。赤色チャンネル強度対緑色チャンネル強度(サンプル対参照)のLog2比によって遺伝子発現値を定量し、その後、Loess正規化を行って、強度依存性色素バイアスおよび変動を除去した。カスタムPealスクリプトを用いてデータのフィルタリングおよび前処理を行った。この研究に関連するデータは、genome.unc.edu/pubsup/breastTumorで入手できる。異分散(両側、タイプ3)t検定(0X0.01)および1.3より大きい絶対平均配列変化についてのその後の選択を用いて、有意に差次的に発現された遺伝子を同定した。遺伝子リストを翻訳し、それらを生物学的テーマに変換するために、GATHERウェブインターフェース(Gene Annotation Tool to Help Explain Relationships;gather.genome.duke.edu)を分析に使用した。この技術を用いて、33の差次的に発現されるmRNAを見つけた(図11)。
Wnt系に対するSFRP2の効果:SFRP2は、WntアンタゴニストとしてもWntアゴニストとしても記載されているが、内皮におけるWntシグナリングに対するその効果は解明されていない。SFRP2が、内皮細胞においてカノニカルWntシグナリングを媒介するかどうかを判定するために、SFRP2処理内皮細胞において細胞質および核β−カテニンレベルを測定した。マウス内皮細胞を12ウェルプレートにプレーティングし、一晩放置して付着させる。翌日、培地を交換し、それらのウェルにSFRP2(700pM)と共におよびSFRP2(700pM)なしで添加した。16時間、細胞をインキュベートし、PIERCE(Pierce Biotechnology)からのNE−PER(商標)核および細胞質抽出試薬をその製造業者のマニュアルに記載されているとおりに使用することにより核および細胞質タンパク質を抽出した。標準的な方法を用いて、脱リン酸化(活性)β−カテニン抗体に対する一次抗体(Snta Cruz,Clone BD1480,カタログ#sc−59893)で、ウエスタンブロット分析を行った。SFRP2刺激細胞における核β−カテニンには変化がなかった。これは、SFRP2の血管新生特性が、カノニカルWntシグナリング経路によって媒介されないことを示唆している(図12)。
SFRP2誘導血管新生における非カノニカルWnt/Ca11経路の役割を検証するために、核脱リン酸化NFATc3タンパク質レベルを対照およびSFRP2処理内皮細胞において比較した。MEC細胞を12ウェルプレートにプレーティングし、一晩放置して付着させた。翌日、培地を交換し、それらのウェルにSFRP2(700pM)と共におよびSFRP2(700pM)なしで添加した。細胞を1、2、4、8および16時間インキュベートし、PIERCE(Pierce Biotechnology)からのNE−PER(商標)核および細胞質抽出試薬をその製造業者のマニュアルに記載されているとおりに使用することにより核タンパク質を抽出した。標準的な方法を用いて、脱リン酸化(活性)β−カテニン抗体またはNFATc3も対する一次抗体で、ウエスタンブロット分析を行った。上のように、SFRP2刺激細胞における核β−カテニンには変化がなかった(p=4、図13)。これは、SFRP2の血管新生特性が、カノニカルWntシグナリング経路によって媒介されないことを示唆している。SFRP2処理内皮細胞の核画分において30分でNFATc3が増加されることが判明した(図13)。
タクロリムスが、SFRP2誘導管形成を阻害するかどうかを検証するために、タクロリムス100μMを伴うまたは伴わないSFRP2(7nM)で、8時間、MEC細胞を上のように処理し、上で説明したように分岐点を判定した。タクロリムスが、樹立された管を逆転させるかどうかを評価するために、細胞をSFRP2(7nM)と共に8時間インキュベートし、その後、BSAまたはタクロリムス(100μM)をSFRP2処理細胞にさらに4時間にわたって添加し、その後、分岐点の数をカウントした。タクロリムスは、MEC細胞におけるSFRP2誘導管形成を阻害した(図14)。タクロリムスは、タクロリムス処理細胞の5%しかトリパンブルー色素を取り込まなかった(データは示さない)ので、MEC細胞に対して細胞毒性でなかった。加えて、SFRP2での処理で管が形成された後、タクロリムスは、SFRP2誘導管形成を逆転した(図15)。
血管肉腫過発現のマウスモデルはSFRP2タンパク質を過発現する:SFRP2の阻害が腫瘍成長を阻害するかどうかを研究するために、本発明者らは、SFRP2を過発現する腫瘍モデルの同定を企てた。これを行うために、形質転換マウス内皮細胞を研究した。温度感受性の大きなT抗原(Dr.Jack Arbiser,Emory Universityの寄贈品)を発現させることによりマウス内皮細胞を不朽化することによって、Ms1細胞を産生させた。マウスに移植すると、これらの細胞は、休眠状態の血管腫を形成する。その後、Ms1細胞をRas(SVR細胞系)でトランスフェクトした。この細胞系は、ヌードマウスに注射すると、血管肉腫を形成する。タンパク質溶解産物をMS1およびSVR細胞系から回収し、SFRP2についてプローブするウエスタンブロット分析を用いて、SVR細胞においてSFRP2が増加されることが判明した(図16)。この細胞系は、進行性血管肉腫を形成するので、SFRP2の阻害剤による腫瘍成長の阻害を研究するために理想的なマウスモデルである。
管形成アッセイ:内皮細胞管形成アッセイを用いて、MEC細胞に対するSFRP2の管形成特性を評価した。ECMatrix(Chemicon)を製造業者の指示書に従って96ウェルプレート内で解凍し、希釈し、凝固させた。10%FBS(HyClone)を伴う150μLのDEME(cellgro)中の1×104細胞/ウェルおよび濃度範囲(3〜3000pM)のSFRP2(US Biologicals)をマトリックス上に播種し、8時間、5%CO2で37℃に戻した。Nikon CoolPix 995デジタルカメラと4倍の倍率でNikon Eclipse TS100顕微鏡を使用して画像を獲得した。分岐点の数をカウントすることにより、結果を定量した。タクロリムスがSFRP2誘導管形成を阻害するかどうかを評価するために、タクロリムス(1μM〜100μM)を伴うまたは伴わないSFRP2(30nM)でMEC細胞を8時間処理し、上で説明したように分岐点の数を判定した。SFRP2媒介血管新生の阻害剤が、SVR腫瘍細胞の成長を阻害するかどうかを評価するために、管形成アッセイにおいて、SVR細胞をタクロリムス(1μM〜100μM)で、またはSFRP−2に対するウサギポリクローナル抗体抗体(H−140)(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA,カタログ#sc−13940)で処理した。
上に示したように、8時間の時点でMEC内皮管形成がSFRP2により濃度依存的に誘導された(7nMでp=0.0006)(図17A)。SFRP2の血管新生効果がFNATによって媒介されるかどうかを評価するために、管形成アッセイにおいて、カルシニューリン阻害剤タクロリムスと共におよびカルシニューリン阻害剤タクロリムスを伴わずにSFRP2(30nM)で内皮細胞を処理した。タクロリムス(1μM)は、SFRP2誘導管形成を64%±(0.002)阻害した(図17B)。タクロリムスは、タクロリムス処理細胞の5%しかトリパンブルー色素を取り込まなかった(データは示さない)ので、MEC細胞に対して細胞毒性でなかった。SVR血管肉腫細胞における管形成は、タクロリムスによっても阻害され(図17C)、およびSVR管形成は、SFRP2に対するポリクローナル抗体によって阻害された。これは、この血管肉腫腫瘍細胞系における管形成にはSFRP2が必要とされることを示唆している(図17D)。
SVRP2およびVEGF刺激2H11内皮管形成をin vitroで阻害するタクロリムスの能力を、マトリゲル管形成アッセイにおいて研究した。タクロリムスは、SFRP2刺激内皮細胞(図18)においても、VEGF刺激内皮細胞(図19)においても内皮管形成を阻害した。
内皮管形成へのSFRP2の寄与についてのさらなる検査として、SFRP2の機能の喪失が、SVR血管肉腫管形成を阻害するかどうかを評価した。これは、第一にSFRP2に対する遮断抗体を用い、および次にSFRP2に対するsiRNAを用いる、2つの異なる方法を研究するものである。管形成アッセイにおいてSVR細胞をマトリゲルにプレーティングし、SFRP2に対するポリクローナル抗体で処理した。SVR管形成は、SFRP2に対するポリクローナル抗体で濃度依存的に阻害された(図20A〜B)。次に、Sant CruzからのSFRp2に対するsiRNAおよび擬似対照でSVR細胞をトランスフェクトした。SVR細胞をSFRP2に対する72μMのsiRNA(FRp−2 siRNA(sc−40001、Santa Cruz Biotechnology)は、SFRP2遺伝子発現をノックダウンするように設計された3つのターゲット特異的20〜25nt siRNAのプールである)でトランスフェクトした。上記3つの配列は、5’−GAGAUAACGUACAUCAACA−3’(配列番号:10)、5’−CAAGCUGCAAUGCUAGUUU−3’(配列番号:11)、5’−CCAUGUCAGGCGAAUUGUU−3’(配列番号:12)である。使用した対照siRNA(sc−36869、Santa Cruz Biotechnology)は、いずれの公知細胞mRNAの特異的分解ももたらさないスクランブル配列を含有する。10%ウシ胎仔血清を補足したダルベッコ変性イーグル培地においてSVR細胞を維持した。Lipofectamine(商標)RNAiMAXトランスフェクション試薬(Invitrogen)をその製造業者のプロトコルに従って使用する72時間のトランスフェクションの後、細胞を回収し、ウエスタンブロット分析および管形成アッセイのための準備をした。4時間の管形成アッセイのために細胞を播種した。SFRP2に対するsiRNAでトランスフェクトした細胞は、擬似トランスフェクト細胞と比較して管形成の70%減少を有した(図21)。これらの研究は、血管肉腫管形成にはSFRP2が必要とされることを示唆している。
SFRP2は、Wntシグナリングカスケードに関連づけられる分泌性フリズル関連タンパク質(SFRP)の大きなファミリーに属する。このタンパク質は、推定Wnt結合ドメインと相同である高システインドメインを含有する。このWntシグナリングネットワークは、発育細胞の運命から細胞付着およびアポトーシスまでの様々な生物学的プロセスに影響を及ぼす。最近のデータは、Wntシグナリング経路が血管の形成および再構築に関与することを示唆している。
Wntタンパク質は、2種類、カノニカルおよび非カノニカルに分類されている。カノニカルWntは、β−カテニンを安定させ、それによってTcf/LEFターゲット遺伝子の転写を活性化する。SFRp2は、Wntに直接結合し、それによってそのWnt受容体複合体に結合するそれらの能力を改変することにより、カノニカルWntシグナリング経路のアンタゴニストであると報告されている。しかし、本発明者らの研究において、本発明者らは、SFRP2処理内皮細胞において管形成および移動を誘導する濃度および時点で細胞質または核β−カテニンレベルに変化がないことを発見した。これは、SFRP2が、カノニカルWntシグナリング経路により血管新生を媒介しないことを示している。
非カノニカルWntは、他のシグナリング経路、例えば、NFATcを調節するWnt/Ca2+経路を活性化する。NFATファミリーは、4つのメンバー(NFATc1〜c4)から成り、それらは、転写不活性、サイトゾルリンタンパク質として存在する。NFAT核局在は、Ca2+/カルモジュリン依存性ホスファターゼ、カルシニューリン、の活性とセリン/トレオニンキナーゼの活性との動的移入−移出バランスに依存する。機能喪失型突然変異体は、NFATシグナリングが、胚形成中の正常な心臓弁および血管発達に重要であることを示した。出生後に、この経路は、様々な細胞タイプにおいて細胞成長、分化、および細胞周期進行の調節に寄与し、ならびに血管新生応答の媒介におけるNFATの重要な役割を裏付けるデータは益々増えている。
Wnt5aは、非カノニカルWnt経路の媒介因子であることが証明され、ならびにSFRP2は、ナノモル範囲でWnt5aに結合することが以前に証明されている。これに基づき、SFRP2が内皮細胞における非カノニカルWnt経路を活性化するかどうかを評価した。タクロリムス、カルシニューリン阻害剤、は、SFRP2誘導管形成を阻害した。これは、SFRP2が、非カノニカルWnt−Ca2+シグナリング経路による管形成を誘導し、その結果、NFATcの核移行を生じさせることを示唆している。
<SFRP2に対する抗体>
ヒトSFRP2配列のアミノ酸配列の分析を行って、ヒトSFRP2に対するモノクローナル抗体を発生させるために動物に注射する合成ペプチドを作るための候補エピトープを決定した。7つの候補配列をそれらの予測免疫原性に基づいて同定した。AA29−40:GQPDFSYRSNC(配列番号:1)、AA85−96:KQCHPDTKKELC(配列番号:2)、AA119−125:VQVKDRC(配列番号:3)、AA138−152:DMLECDRFPQDNDLC(配列番号:4)、AA173−190:EACKNKNDDDNDIMETLC(配列番号:5)、AA202−220EITYINRDTKIILETKSKT−Cys(配列番号:6)、AA270−295:ITSVKRWQKGQREFKRISRSIRKLQC(配列番号:7)。上のペプチド配列の最初の5つに対する免疫処置をマウスに施し、1か月後に第2の免疫ラウンドを施し、2週間後に瀉血した。ELISAを行って、それらのペプチドに対するマウスの力価を判定し、それにより、マウスが様々な免疫原に応答することが立証された。アミノ酸AA202−AA220(これをAbBと呼ぶ)およびAA270−AA925(これをAbCと呼ぶ)に対応するエピトープとして使用した免疫原に対する免疫処置を施したマウスからの血清は、対照マウス血清と比較してSVR管形成を阻害した(図22)。これは、これらのペプチド配列が機能的に活性であることを示唆している。これら2つのペプチドをモノクローナル抗体の生産用に選択した。
AbB(AA202−AA220)に対応するエピトープに対するモノクローナル抗体を調製した。第三の抗原注射を行い、単回腹腔内注射によってマウスに追加免疫を施した。注射したマウスにおける免疫原に対する力価を評価し、2匹のマウスを脾臓回収用に選択した。最後の免疫処置の3週間後、それらの選択したマウスに最終腹腔内免疫処置を施した。その最終追加免疫の3日後にこれらのマウスを犠牲にし、血液を採取した。脾臓を除去し、ハイブリドーマ形成のために骨髄腫細胞と融合させた。上記脾臓細胞の融合は、50%PEG溶液を使用するP3X63−Ag8.653(ATCC CRL−1580)とのものであった。その融合体を95ウェルプレートに、HAT選択培地中、1ウェルにつき〜1.5×105細胞の全細胞濃度でプレーティングした。7日後、その融合プレートにHAT培地を供給した。融合を行った14日後に融合プレートをスクリーニングした。このスクリーニングは、マトリゲル管形成アッセイの際にSVR血管肉腫細胞を96ウェルプレートにプレーティングすることによって行った。90の異なるサンプルのための150μLの抗体含有成長培地および対照培地に、血管肉腫細胞を懸濁させた。6時間後、写真を撮り、それぞれのウェルについて分岐の数をカウントした。対照は、39の分岐を形成した。管形成の50%より大きい阻害を有したサンプルが61あった。それぞれが4未満の分岐を有する8つのサンプル(図23)を選択して、さらなるサブクローニングのために使用し、ならびに50%より大きな阻害を有した32のサンプルを冷凍しなおした。
<乳がん細胞についてのバイオマーカーとしてのSFRP2>
SFRP2が、乳がんについてのバイオマーカーであるかどうかを調査するために、乳がんを有する患者からの血清中のSFRP2タンパク質の存在を正常対照と比較して検査した。UNC組織調達施設から血清を得、この血清は、IRB承認プロトコルのもとで採取されたものであった。患者血清を1:14希釈し、濾過した。Bio−Rad Proteinアッセイを用いて、全タンパク質レベルを測定した。等量のタンパク質を負荷し、標準的な方法に従ってウエスタンブロットを行った。そのブロットをSFRP2抗体でプローブした。SFRP2は、対照および乳がん患者血清中に存在するが、後述のものにおけるほうが高度に発現されることが判明した(p<0.0001、図24)。
<SFRP2は広域スペクトル血管ターゲットである>
パラフィン包埋ヒト腫瘍に関するSFRP2に対する抗体でのIHCを用いて、血管肉腫、大腸がん、前立腺がん、肺がん、卵巣がん、肝細胞がん腫、腎細胞がん腫、および膵臓がんにおけるSFRP2の血管発現を評価した。SFRPWは、すべての腫瘍において強く発現されることが判明し、このことが、SFRP2を広域スペクトル血管ターゲットにする(図25)。
<タクロリムスは血管新生をin vivoで阻害する>
血管新生をin vivoで阻害するタクロリムスの能力を検査するために、SVRマウス血管肉腫細胞(0.5×106)を、Charles River Breeding Laboratoriesから得た週齢6週の雄ヌードマウスの側腹部に注射した。接種後、その日に治療を開始した。20%Intralipid(Baxter Healthcare,Deerfield,IL)に懸濁させた3mg/kg/日のタクロリムスまたはビヒクル対照を合計0.3mLの容量でマウスに腹腔内(i.p.)投与し、および19日間、毎日治療した。垂直径の連続的ノギス測定を用いて、次の式を用いて腫瘍容積を計算した。(最短径)2×(最長径)×0.52。継時的な腫瘍容積の差を二元配置ANOVAで分析した。0.05以下のP値は、対照グループと比較して治療グループの腫瘍成長の統計的に有意な低下を示す。19日間のタクロリムスでの治療(n=14)は、ヌードマウスにおけるSVR血管肉腫腫瘍の成長を対照グループ(n=14)と比較して抑制する点で有効であった。タクロリムスでの治療は、第19日の時点で平均腫瘍容積を46%低下させた(589±129mm3対315±93mm3、二元配置ANOVA、p=0.04、図26)。19日の治療後、毒性の徴候はなかった(すなわち、下痢、感染、嗜眠または体重減少なし)。
第2の研究では、MMTV−neuトランスジェニックマウスをタクロリムス(3mg/kg/日)で治療した、または治療しなかった。腫瘍が触知可能になったときに治療を開始し、21日間継続した。連続超音波で腫瘍容積を調査した。両側t検定を用いて、治療した腫瘍と未治療の腫瘍の腫瘍成長速度間の差を判定した。これらのグループは、第21日の研究終了時に有意に異なり(P=0.04、両側t検定)、成長速度が59%低下した(図27)。治療後に毒性の徴候はなかった(すなわち、下痢、感染、嗜眠または体重減少なし)。
<Jak3の血管新生作用>
細胞培養:BulletKit成長サプリメント(Clonetics,SanDiego,CA)を伴う上皮細胞用基本培地−2(EGM−2)においてヒト冠動脈細胞(HCAEC)を培養した。EDTAを伴わないトリプシン(Invitrogen,Carlsbac,CA)を使用して集密度80〜90%で細胞を継代させた。3〜9継代を実験において用いた。
ヒヨコ漿尿膜(CAM)アッセイ:受精鶏卵(NC State University Chicken Research Farm)を、卵反転器(Model #1588 Genesis Hova−Bator,GQF Mfg.Co.,Inc.)で3日間、104°Fでインキュベートした。第3日に卵を滅菌100x25mm皿に割り、99°F、5%CO2、湿度65%でインキュベートした。CAMに薬物を塗布するために、Whatman等級1濾紙を直径6mmのペーパーパンチで円形に切断し、オートクレーブで処理した。そのディスクの炎症作用を減少させるために、それらを無水ETOH中の3.0mg/mLの酢酸コルチゾン(1mL)に浸漬し、層流フード内で60分間、紫外線下で空気乾燥させた。第8日に、対照CAMについてはPBS中の0.1%BSA(7μL)、またはJak3処理CAMについてはPBS中の100ng Jak3(7μL)、0.1%BSAをディスクに接種した(対照ディスクn=16およびJak3処理ディスクn=16)。その後、ディスクを、CAMの外側1/3、主容器から2〜3mm、の上に置いた。ディスク配置後3日の時点でCAMを立体顕微鏡で評価した。Wild M−4 70 Macrosystemで写真を撮り、Metamorph Softwearと血管新生モジュールを用いて血管新生を定量した。3日後、Jak3は、CAMに対して血管新生を誘導し、分岐点(0.0001)、セグメント(0.0001)、管の被覆面積パーセント(0.0001)、および全管長(0.0001)の数を統計学的に有意に増加させた(図28)。
スクラッチ創傷アッセイ:HCAECを10,000細胞/ウェルで96ウェルプレートにプレーティングし、BulleKit成長サプリメントを伴うEGM−2中で集密にさせた。BulleKit成長サプリメントを伴わない0.1%FBSを伴うEGM−2中で18時間、それらの細胞を静止させた。1mLピペット先端を用いて傷を作り、20nM〜200pM用量曲線の組換えヒトJak3(Millipore,Temecula,CA)をそれらの細胞に添加した。それぞれの濃度を三重重複で実行し、実験を3回繰り返して同様の結果を得た。すべてのウェルにおいて、12時間の時点で移動を測定し、その後は傷が閉鎖するまで4時間ごとに測定した。それぞれの時点で閉鎖された傷のパーセントとしてデータを記録した。Jak3は、ナノモル濃度で内皮細胞移動を増加させた(20時間でp<0.03、28時間でp<0.001)(図29参照)。
管形成アッセイ:ECMatrix(Chemicon)を製造業者の指示書に従って96ウェルプレート内で解凍し、希釈し、凝固させた。BulleKit成長サプリメントを伴わない0.1%FBSを伴う150μLのEGM−2中、2,000細胞/ウェルでHCAECをマトリックス上に播種した。20nM〜200pM用量曲線の組換えヒトJak3をそれらの細胞に添加し、それらのプレートを8時間、5%CO2で37℃に戻した。それぞれの濃度を三重重複で実行し、実験を3回繰り返して同様の結果を得た。Nikon Eclipse TS100顕微鏡で4倍の倍率でウェルを評価し、Nikon CoolPix 995デジタルカメラで写真を撮った。得られた画像中の分岐点をカウントすることによって血管新生を定量した。内皮管形成が、8時間時点でJak3により濃度依存的に誘導された(200pMでp=0.04、20nMでp=0.0001)(図30)。
内皮細胞アポトーシスアッセイ:BulleKit成長サプリメントを伴うEGM−2中、2,000細胞/ウェルでHCAECを96ウェルプレートに播種した。細胞を18時間成長させ、BulleKit成長サプリメントを伴わないEGM−2で培地を置換し、20nM〜200pM用量曲線の組換えヒトJak3をそれらの細胞に添加した。そのプレートを低酸素状態(1.0%の酸素レベルと5%CO2/95%N2の雰囲気を有する低酸素チャンバ内、37℃)で36時間インキュベートした。Apo−ONE(登録商標)Homogeneous Caspase−3/7 Assay(Promega,Madison,WI)についてのプロトコルに従ってカスパーゼ特異的蛍光基質を使用することにより、切断されたカスパーゼ3の活性を測定することによって、アポトーシスを判定した。簡単に言うと、対照および処理したHCAECを100μLのApo−ONE(登録商標)Caspase−3/7試薬に溶解し、室温で1時間、その試薬中でインキュベートした。プロ蛍光(profluorescent)基質ローダミン110、ビス−(N−CBZ−L−アスパルチル−L−グルタミル−L−バリル−L−アスパラギン酸アミド(Z−DEVD−R110)のカスパーゼ3活性化を蛍光マイクロプレートリーダーによって測定した。低酸素に対して保護されたJak3は、内皮細胞アポトーシスを誘導することが判明した(p<0.05)(図31)。
内皮細胞増殖アッセイ:HCAECを2,000細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種し、BulleKit成長サプリメントを伴うEGM−2中で24時間、放置して増殖させた。その後、BulleKit成長サプリメントを伴わないEGM−2中で18時間、それらの細胞を静止させた。BulleKit成長サプリメントを伴う新たなEGM−2で培地を置換し、細胞を三重重複で、PBSのみ、組換えマウスVEGF(60ng/mL)、またはJak3(20nM〜200pMの濃度で)で処理した。48時間後、10μLの比色用化合物3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)(5mg/mL)をそれぞれのウェルに添加し、4時間、37℃でインキュベートさせておいた。それぞれのウェル中のすべてだが25μLの培地を除去し、50μLのジメチルスルホキシド(DMSO)を添加した。37℃での10分のインキュベーションの後、マイクロプレートリーダーを使用してA540を測定した。血球計算法によって決定して濃度がわかっている細胞を96ウェルプレートに播種し、MTTと共に4時間インキュベートした後にそれらのA540を測定することによって作成した標準曲線に基づいて、A540を細胞数に変換した。Jak3は、48時間の時点で細胞増殖を増加させた(20nMでp=0.007)(図32)。
管形成に対するSTAT3の効果:リン酸化STAT3(P−STAT3)の短鎖ペプチド阻害剤を使用して、Jak3媒介管形成におけるSTAT3の役割を評価した。96ウェルプレート内でECMatrixを凝固させた。BulleKit成長サプリメントが添加されていない5%FBSを伴う150μLのEGM−2中、2,000細胞/ウェルで、HCAECをそのマトリックスに播種した。ウェルを、三重重複で、PBSのみ、PBS+100μMのP−STAT3阻害剤、20nMのJak3、または20nMのJak3+100μMのP−STAT3阻害剤で処理した。8時間の時点でウェルを撮影し、得られた画像中の分岐点をカウントすることによって管形成を定量した。STAT3阻害剤の添加は、Jak3媒介管形成を防止した。これは、Jak3シグナルがSTAT3経路によって媒介されることを示している(図33)。
上述は、本発明の実例となるものであるが、本発明の限定と解釈すべきではない。本発明は、後続の特許請求の範囲によって定義されるものであり、本特許請求の範囲と等価のものは本発明に包含される。