JP2022500382A - 膵炎を処置するための方法 - Google Patents

膵炎を処置するための方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2022500382A
JP2022500382A JP2021513309A JP2021513309A JP2022500382A JP 2022500382 A JP2022500382 A JP 2022500382A JP 2021513309 A JP2021513309 A JP 2021513309A JP 2021513309 A JP2021513309 A JP 2021513309A JP 2022500382 A JP2022500382 A JP 2022500382A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
antibody
pancreatitis
functional fragment
seq
residues
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021513309A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2020055768A5 (ja
Inventor
ダニエル ディー. エングル,
デイビッド エー. トゥベソン,
Original Assignee
コールド スプリング ハーバー ラボラトリー
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by コールド スプリング ハーバー ラボラトリー filed Critical コールド スプリング ハーバー ラボラトリー
Publication of JP2022500382A publication Critical patent/JP2022500382A/ja
Publication of JPWO2020055768A5 publication Critical patent/JPWO2020055768A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/18Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans
    • C07K16/28Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants
    • C07K16/2896Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants against molecules with a "CD"-designation, not provided for elsewhere
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P1/00Drugs for disorders of the alimentary tract or the digestive system
    • A61P1/18Drugs for disorders of the alimentary tract or the digestive system for pancreatic disorders, e.g. pancreatic enzymes
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K2039/505Medicinal preparations containing antigens or antibodies comprising antibodies
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/20Immunoglobulins specific features characterized by taxonomic origin
    • C07K2317/24Immunoglobulins specific features characterized by taxonomic origin containing regions, domains or residues from different species, e.g. chimeric, humanized or veneered
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/50Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments
    • C07K2317/56Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments variable (Fv) region, i.e. VH and/or VL
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/50Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments
    • C07K2317/56Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments variable (Fv) region, i.e. VH and/or VL
    • C07K2317/565Complementarity determining region [CDR]
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/60Immunoglobulins specific features characterized by non-natural combinations of immunoglobulin fragments
    • C07K2317/62Immunoglobulins specific features characterized by non-natural combinations of immunoglobulin fragments comprising only variable region components
    • C07K2317/626Diabody or triabody
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/70Immunoglobulins specific features characterized by effect upon binding to a cell or to an antigen
    • C07K2317/76Antagonist effect on antigen, e.g. neutralization or inhibition of binding
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2319/00Fusion polypeptide
    • C07K2319/30Non-immunoglobulin-derived peptide or protein having an immunoglobulin constant or Fc region, or a fragment thereof, attached thereto
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2319/00Fusion polypeptide
    • C07K2319/32Fusion polypeptide fusions with soluble part of a cell surface receptor, "decoy receptors"

Abstract

膵炎の予防、処置、改善または管理を必要とする対象において膵炎を予防、処置、改善または管理するための方法であって、CA19−9に結合する治療有効量の抗体またはその機能的断片を対象に投与することを含む方法が、本明細書で提供される。一態様では、膵炎の予防、処置、改善または管理を必要とする対象において膵炎を予防、処置、改善または管理するための方法であって、シアリルルイスaに結合する治療有効量の抗体またはその機能的断片(抗sLea)を対象に投与することを含む方法が本明細書で提供される。

Description

1.分野
膵炎を予防及び処置するための方法が、本明細書で提供される。具体的には、CA19−9に結合する分子を使用して膵炎を処置及び/または予防するための方法が、本明細書で提供される。
2.配列表
本出願には、EFS−Web経由で提出されたASCIIテキストフォーマットの配列表のコンピュータ可読形式(CRF)が、参照により組み込まれる。EFS−Web経由で提出された12967−046−999_Sequence_Listing.txtという名称の配列表テキストファイルは、2018年9月10日に作成され、サイズは22,963バイトである。
3.本発明の背景技術
膵炎は、米国において毎年275,000件の入院の原因となっている(Forsmark CE,et al.,N Engl J Med.2016;375(20):1972−81)。膵炎には、慢性膵炎及び急性膵炎が含まれ、重度の腹痛を伴う場合がある。慢性膵炎を有する患者の死亡率は一般集団の死亡率よりも高く、診断後の10年生存率は69〜80%と推定されている(Seicean A.et al.,J Gastrointestin Liver Dis.2006;15(1):21−6.)。慢性膵炎に伴う合併症及び病的状態の結果として、慢性膵炎の患者の平均余命は、一般集団の平均余命よりもおよそ8年短い(Bang UC.et al.,Gastroenterology.2014;146(4):989−94)。重度の急性膵炎では、死亡率は16.3%もの高さになる可能性があり、死亡の40%超が入院から14日以内に発生する(Fu C.et al.,World J Gastroenterol.2007;13(13):1966−1969)。
膵炎に関連する死亡率の上昇及び著しい病的状態にもかかわらず、この衰弱性疾患の処置方法にはほとんど進歩が見られていない。本開示以前は、急性膵炎は、患者のボリュームステータスに応じた治療の基礎として、様々な速度の輸液蘇生による静脈内水分補給からなる一般的な支持療法で処置されることが多い(Chapter 37−Acute Pancreatitis,GI/Liver Secrets Plus,4th edition,edited by McNally PR,2010)。重度の膵炎に伴う疼痛は、静脈内鎮痛と同時に管理される(Chapter 37−Acute Pancreatitis,GI/Liver Secrets Plus,4th edition,edited by McNally PR,2010)。慢性膵炎は、膵炎の疼痛または合併症を処置するための薬物でのみ処置されることが多く、根底にある慢性膵炎自体は直接処置されないままである(Chapter 38−Chronic Pancreatitis,GI/Liver Secrets Plus,4th edition,edited by McNally PR,2010)。
膵炎を直接処置、予防、管理もしくは改善するため、または膵炎発症の根底にある機序を標的とするためにこれまでに開発された治療剤は、成果に乏しい。したがって、慢性及び急性膵炎を含む膵炎を処置、予防、管理または改善することができる治療剤の同定が必要とされている。
Forsmark CE,et al.,N Engl J Med.2016;375(20):1972−81 Seicean A.et al.,J Gastrointestin Liver Dis.2006;15(1):21−6 Bang UC.et al.,Gastroenterology.2014;146(4):989−94
4.概要
一態様では、膵炎の予防、処置、改善または管理を必要とする対象において膵炎を予防、処置、改善または管理するための方法であって、シアリルルイスに結合する治療有効量の抗体またはその機能的断片(抗sLe)を対象に投与することを含む方法が本明細書で提供される。
別の態様では、膵炎の予防、処置、改善または管理を必要とする対象において膵炎を予防、処置、改善または管理するための方法であって、
(1)シアリルルイスに結合する抗体またはその機能的断片(抗sLe)を第1の用量で対象に投与すること、
(2)前記対象の膵炎の重症度を判定すること、及び
(3)抗sLeの投与前の対象の膵炎の重症度と比較して対象の膵炎の重症度が低減する場合に、抗sLeに結合する抗体もしくはその機能的断片の第2の用量を第1の用量と同じかもしくはそれよりもより少量で投与すること、または対象の膵炎の重症度が低減しない場合に、抗sLeの第2の用量を第1の用量よりもより多量で投与することを含む方法が本明細書で提供される。
特定の態様では、膵炎の予防、処置、改善または管理を必要とする対象において膵炎を予防、処置、改善または管理するための方法であって、CA19−9に結合する治療有効量の治療剤を対象に投与することを含む方法が本明細書で提供される。
一態様では、膵炎の予防、処置、改善または管理を必要とする対象において膵炎を予防、処置、改善または管理するための方法であって、
(1)CA19−9に結合する治療剤を第1の用量で対象に投与すること、
(2)前記対象の膵炎の重症度を判定すること、及び
(3)薬剤の投与前の対象の膵炎の重症度と比較して対象の膵炎の重症度が低減する場合に、治療剤の第2の用量を第1の用量と同じかもしくはそれよりもより少量で投与すること、または対象の膵炎の重症度が低減しない場合に、治療剤の第2の用量を第1の用量よりもより多量で投与することを含む方法が、本明細書で提供される。
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、抗sLe抗体またはその機能的断片は、可変重鎖(VH)ドメインを含み、前記VHドメインは、配列番号2の残基20〜142、配列番号6の残基20〜142、配列番号10の残基20〜142及び配列番号14の残基20〜145からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
本明細書で提供される方法の特定の実施形態では、抗sLe抗体またはその機能的断片は、可変軽鎖(VL)ドメインを含み、前記VLドメインは、配列番号4の残基20〜130、配列番号8の残基20〜129、配列番号12の残基20〜130及び配列番号16の残基23〜130からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
本明細書で提供される方法の他の実施形態では、抗sLe抗体またはその機能的断片は、可変重鎖(VH)ドメイン及び可変軽鎖(VL)ドメインを含み、前記VHドメイン及び前記VLドメインはそれぞれ、配列番号2の残基20〜142及び配列番号4の残基20〜130、配列番号6の残基20〜142及び配列番号8の残基20〜129、配列番号10の残基20〜142及び配列番号12の残基20〜130、ならびに配列番号14の残基20〜145及び配列番号16の残基23〜130からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、抗sLe抗体またはその機能的断片は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体のKabat付番に従う3つの重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を有する、3つのCDRを含む重鎖可変領域、及びATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体のKabat付番に従う3つの軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を有する、3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含む。
本明細書で提供される方法の特定の実施形態では、抗sLe抗体またはその機能的断片は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及びATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む。
本明細書で提供される方法の他の実施形態では、抗sLe抗体またはその機能的断片は、ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の重鎖のアミノ酸配列からなる重鎖、及びATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の軽鎖のアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、抗sLe抗体の機能的断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、scFV、ダイアボディ、トリアボディ、ミニボディ及び単一ドメイン抗体(sdAB)からなる群から選択される。特定の実施形態では、抗sLe抗体またはその機能的断片は、ダイアボディである。さらなる実施形態では、ダイアボディは、配列番号18または配列番号20のアミノ酸配列を含む。
本明細書で提供される方法の特定の実施形態では、抗sLe抗体またはその機能的断片は、モノクローナル抗体である。本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、抗sLe抗体またはその機能的断片は、IgGまたはIgMアイソタイプである。特定の実施形態では、IgG抗体は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブクラスである。
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、抗sLe抗体またはその機能的断片は、薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物として製剤化される。特定の実施形態では、抗体またはその機能的断片は、非経口的投与経路により対象に投与される。いくつかの実施形態では、非経口的投与は、皮下注射、筋肉内注射及び静脈内注射からなる群から選択される。
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、抗体またはその機能的断片は、約0.1mg/kg/用量〜約10mg/kg/用量の用量範囲で対象に投与される。特定の実施形態では、抗体またはその機能的断片は、対象に毎週、隔週、毎月、または隔月投与される。いくつかの実施形態では、抗体またはその機能的断片は、約1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間または6ヶ月間投与される。
本明細書で提供される方法の特定の実施形態では、治療剤は、シアリルルイスに結合する抗体またはその機能的断片(抗sLe)である。
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、治療剤は、ペプチドまたはペプチド模倣分子である。特定の実施形態では、ペプチドまたはペプチド模倣物は、シアリルルイスに特異的に結合する特性を有する。
本明細書で提供される方法の特定の実施形態では、膵炎は、1つ以上のマーカーによって特徴付けられる。本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、膵炎の重症度は、1つ以上のマーカーにより判定される。本明細書で提供される方法の特定の実施形態では、対象は、1つ以上の膵炎のマーカーのレベルが上昇している。本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、治療剤の投与は、対象における1つ以上の膵炎のマーカーのレベルを低減させる。特定の実施形態では、1つ以上のマーカーは、生理学的マーカー、組織学的マーカー、血清学的マーカー及びシグナル伝達マーカーからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、組織学的マーカーは、免疫細胞浸潤、コラーゲン沈着、線維性組織、脂肪壊死、間質浮腫、腺房及び血管の破壊、間質出血、導管拡張、腺房細胞の均質化、ならびにCA19−9の発現レベルからなる群から選択される。特定の実施形態では、1つ以上のマーカーは、CA19−9の発現レベルを含む。他の実施形態では、1つ以上のマーカーは、免疫組織化学によって判定される。特定の実施形態では、血清学的マーカーは、血清リパーゼレベル、血清アミラーゼレベル及び血清C反応性タンパク質レベルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上のマーカーは、200U/Lを超える血清リパーゼレベルである。特定の実施形態では、1つ以上のマーカーは、200U/Lを超える血清アミラーゼレベルである。いくつかの実施形態では、1つ以上のマーカーは、対照対象の正常血清アミラーゼレベルの上限を3倍上回る血清アミラーゼレベルである。特定の実施形態では、1つ以上のマーカーは、対照対象の正常血清リパーゼレベルの上限を3倍上回る血清リパーゼレベルである。いくつかの実施形態では、生理学的マーカーは、体重減少、食物の吸収不良、膵萎縮、膵腫大、膵炎症及び胆汁逆流からなる群から選択される。
一態様では、膵臓のsLeが上昇している対象において膵炎を予防、処置、改善または管理するための方法であって、sLeに特異的に結合する治療有効量の治療剤を対象に投与することを含む方法が、本明細書で提供される。
本明細書で提供される方法の特定の実施形態では、膵炎は、慢性膵炎及び急性膵炎からなる群から選択される膵炎である。いくつかの実施形態では、慢性膵炎は、軽度の慢性膵炎、中等度の慢性膵炎及び重度の慢性膵炎からなる群から選択される。特定の実施形態では、急性膵炎は、軽度の急性膵炎、中等度の急性膵炎及び重度の急性膵炎からなる群から選択される。
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。本明細書で提供される方法の特定の実施形態では、哺乳動物はヒトである。
高レベルの膵組織のCA19−9を呈するヒト慢性膵炎患者のパーセンテージ(左パネル)及び主に膵管に存在するCA19−9を示す代表的な免疫組織化学(IHC)(右の2つのパネル、白抜き矢印で示す)を示す。 除外(左)、CA19−9高値(中央)及びCA19−9低値/陰性(右)のヒト慢性膵炎標本からのCA19−9のIHCの例を示す。スケールバー=100μm。 ルイス抗原産生の概略図を示す。 フローサイトメトリー分析により、マウス膵管腺癌(PDAC)細胞において、異所性FUT3がLewis(Le)の発現を誘導するがCA19−9/シアリルルイス(SLe)の発現を誘導しないことを示す。 親KPC細胞対照と比較して、β3GALT5とともに安定的かつ構成的にFUT3を発現するマウスPDAC細胞のCA19−9のフローサイトメトリーを示す。FUT3及びβ3GALT5の両方の発現は、ヒトがん細胞株(Colo205)で観察されたレベルと同等のレベルでのCA19−9の細胞表面発現をもたらした。 安定的かつ構成的にFUT3及びβ3GALT5を発現する、ヒトPDAC細胞株Suit2(上部パネル)及びマウスPDAC細胞(下部パネル)、または空ベクター対照を発現するPDAC細胞のCA19−9の免疫蛍光評価を示す。スケールバー=25μm。 CA19−9陰性ヒトPDAC細胞株であるMiaPaCa2を移植したヌードマウス、CA19−9陽性ヒトPDAC細胞株であるSuit2を移植したヌードマウス、空ベクター対照をトランスフェクトしたマウスPDAC細胞株、ならびに安定的かつ構成的にFUT3及びβ3GALT5を発現するマウスPDAC細胞における循環CA19−9レベルを示す。 安定的かつ構成的にFUT3及びβ3GALT5を発現するマウスPDAC細胞の免疫沈降/質量分析(IP/MS)戦略(左パネル)、CA19−9のIPの有効性の免疫ブロット検証(中央パネル)、ならびに3つの生物学的複製系統間(FC1199、FC1242及びFC1245)(右パネル)のCA19−9タンパク質キャリアのオーバーラップを示す。 ヒトPDAC細胞のIP/MS戦略(左パネル)、CA19−9のIPの有効性の免疫ブロット検証(中央パネル)、ならびに3つの生物学的複製系統間(Capan2、hM1−2D及びSuit2)(右パネル)のCA19−9タンパク質キャリアのオーバーラップを示す。 3つのヒトPDAC細胞株(n=936)のうちの3つで同定されたCA19−9タンパク質キャリアと、FUT3及びβ3GALT5を発現する3つの独立したマウスPDAC細胞株との間のオーバーラップを示す。 CA19−9遺伝子操作マウスモデルの設計、検証及び作製を示す。誘導可能なCA19−9マウスモデルの概略図を示す。 CA19−9遺伝子操作マウスモデルの設計、検証及び作製を示す。Creトランスフェクション及びDox処置後の、mES細胞クローンにおけるCA19−9産生の免疫スロットブロット確認を示す。 CA19−9遺伝子操作マウスモデルの設計、検証及び作製を示す。ゲノムあたり1〜5コピーで加えた標的化ベクターを含む陽性対照である野生型mES細胞gDNA、及びmES細胞標的化クローンにおけるeGFPのサザンブロットを示す。正確な組み込みサイズは5.548kb(非標的化=4.04kb)であった。 CA19−9遺伝子操作マウスモデルの設計、検証及び作製を示す。以前に検証されたColA1標的化ベクターの単一かつ正確な組み込みを保有する標的化mES細胞クローン(P12)と比較した、標的化mES細胞クローンのeGFPのqPCRコピー数評価を示す。 全身CA19−9マウスモデルを示しており、未処置R;Fマウスからのマウス組織のヘマトキシリン・エオジン(H&E)組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 全身CA19−9マウスモデルを示しており、7日間Doxで処置したR;Fマウスからのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 全身CA19−9マウスモデルを示しており、28日間Doxで処置したR;Fマウスからのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 全身CA19−9マウスモデルの遺伝的陰性の対照同腹仔を示しており、未処置R;Fの遺伝的に陰性の対照同腹仔からのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 全身CA19−9マウスモデルの遺伝的陰性の対照同腹仔を示しており、7日間Doxで処置したR;Fの遺伝的に陰性の対照同腹仔からのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 全身CA19−9マウスモデルの遺伝的陰性の対照同腹仔を示しており、28日間Doxで処置したR;Fの遺伝的に陰性の対照同腹仔からのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 膵臓限局性PDX1−Cre駆動型CA19−9マウスモデルを示しており、未処置CPDX;RLSL;FLSLマウスからのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 膵臓限局性PDX1−Cre駆動型CA19−9マウスモデルを示しており、7日間Doxで処置したCPDX;RLSL;FLSLマウスからのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 膵臓限局性PDX1−Cre駆動型CA19−9マウスモデルを示しており、28日間Doxで処置したCPDX;RLSL;FLSLマウスからのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 膵臓限局性CA19−9マウスモデルの遺伝的陰性の対照同腹仔を示しており、遺伝的に陰性の対照同腹仔の未処置CPDX/p48;RLSL;FLSLからのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 膵臓限局性CA19−9マウスモデルの遺伝的陰性の対照同腹仔を示しており、7日間Doxで処置したCPDX/p48;RLSL;FLSLの未処置の遺伝的に陰性の対照同腹仔からのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 膵臓限局性CA19−9マウスモデルの遺伝的陰性の対照同腹仔を示しており、28日間Doxで処置したCPDX/p48;RLSL;FLSLの遺伝的に陰性の対照同腹仔からのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 膵臓限局性p48−Cre駆動型CA19−9マウスモデルを示しており、未処置CP48;RLSL;FLSLマウスからのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 膵臓限局性p48−Cre駆動型CA19−9マウスモデルを示しており、7日間Doxで処置したCP48;RLSL;FLSLマウスからのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 膵臓限局性p48−Cre駆動型CA19−9マウスモデルを示しており、28日間Doxで処置したCP48;RLSL;FLSLマウスからのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 膵臓全体CA19−9マウスモデルを示しており、未処置CPDX;RLSL;Fマウスからのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 膵臓全体CA19−9マウスモデルを示しており、7日間Doxで処置したCPDX;RLSL;Fマウスからのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 膵臓全体CA19−9マウスモデルを示しており、28日間Doxで処置したCPDX;RLSL;Fマウスからのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 膵臓全体CA19−9マウスモデルの遺伝的陰性の対照同腹仔を示しており、未処置CPDX;RLSL;Fの遺伝的に陰性の対照同腹仔からのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 膵臓全体CA19−9マウスモデルの遺伝的陰性の対照同腹仔を示しており、7日間Doxで処置した未処置CPDX;RLSL;Fの遺伝的に陰性の対照同腹仔からのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 膵臓全体CA19−9マウスモデルの遺伝的陰性の対照同腹仔を示しており、28日間Doxで処置した未処置CPDX;RLSL;Fの遺伝的に陰性の対照同腹仔からのマウス組織のH&E組織学的評価における全身組織構造を示す。スケールバー=100μm。 Aは、Doxによる処置後のH&E染色及びマッソントリクローム染色(MT、青色はコラーゲン沈着を示す)によるCPDX;RLSL;F膵臓の組織学的評価、ならびにIHCによるCA19−9の発現(白抜き矢印はCA19−9+導管;塗り潰し矢印はCA19−9+膵島)を示す。スケールバー=50μm。Bは、CPDX;RLSL;FマウスをDoxで処置した後の、膵炎の組織学的徴候を呈する膵臓領域のパーセンテージの定量化を示す。n=それぞれ5、4、5、3、9、(F(4,21)=22.46、p<0.0001)。Cは、CPDX;RLSL;FマウスをDoxで処置した後のアミラーゼ(F(5,61)=74.44、p<0.0001)及びリパーゼ(F(5,61)=27.59、p<0.0001)の循環レベル(U/L)を示す。点線は、膵炎の診断に必要とされる閾値の高さを示す。破線は検出の最大レベルを示す。n=それぞれ14、12、19、8及び9。中央の赤色水平線は平均値を表し、エラーバーは標準偏差を表す。各データ点は個々のマウスからの測定値を表す。一元配置分散分析後、Holm−Sidak法を使用した多重比較については、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。 Doxで処置した遺伝的に陰性の対照同腹仔、R;F、CPDX;RLSL;FLSLまたはCP48;RLSL;FLSLマウスからのマウス膵臓のH&E組織学的評価を使用した、膵炎重症度のマウスモデルの比較を示す。スケールバー=50μm。 Doxで処置した遺伝的に陰性の対照同腹仔、R;FまたはCPDX;RLSL;FLSLマウスからのマウス膵臓のマッソントリクローム染色(青色、コラーゲン沈着)を使用した、間質存在量に関するマウスモデルの比較を示す。スケールバー=50μm。 遺伝子操作マウスにおける膵炎重症度のマウスモデルの比較を示す。Doxで処置(日)した遺伝的に陰性の対照同腹仔、R;F、CPDX;RLSL;FLSLまたはCP48;RLSL;FLSLマウス。相対的比較のため、図25B〜25CからのC;RLSL;Fモデルのデータを含む。Aは、膵炎の組織学的徴候の影響を受けた膵臓領域のパーセンテージを示す(F(4,22)=0.5589;(4,12)=16.02;(4,21)=22.46;(3,19)=2.705)。B〜Cは、Doxによる処置(日)後の膵酵素アミラーゼ(B)(F(4,71)=8.828;(4,22)=25.07;(5,61)=74.44;(4,58)=6.343)及びリパーゼ(C)(F(4,71)=2.967;(4,22)=7.108;5,61)=27.59;(4,58)=5.637)の循環レベル(U/L)を示す。点線は、膵炎の診断に必要とされる閾値の高さを示す。破線は、アミラーゼの検出が可能な最大レベルを示す。直線は平均値を表し、各データ点は個々のマウスからの測定値を表す。多重比較とともに一元配置分散を使用し、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。 各CA19−9マウスモデルの膵臓におけるeGFPのIHCを示す。0日間または7日間Doxで処置したR;F、CPDX;RLSL;F、CPDX;RLSL;FLSLまたはCP48;RLSL;FLSLマウスからのマウス膵臓のeGFP IHCを示す。白抜き矢印は陽性膵島細胞を示し、塗り潰し矢印は陽性導管を示し、*は陰性血管を示し、「a」は陽性腺房細胞を示す。スケールバー=50μm。 各CA19−9マウスモデルの膵臓におけるCA19−9のIHCを示す。Doxで処置した遺伝的に陰性の対照同腹仔、R;F、CPDX;RLSL;FLSLまたはCP48;RLSL;FLSLマウスからのマウス膵臓のCA19−9 IHCを示す。白抜き矢印は陽性膵島細胞を示し、塗り潰し矢印は陽性導管を示し、オレンジ色の矢印は陽性腺房細胞を示す。挿入図は、塗り潰し矢印で示された陽性導管の拡大像を示す。スケールバー=50μm。 全身(R;F)CA19−9マウスモデルの膵臓系統の免疫蛍光(IF)を示す。0日間、7日間または28日間Doxで処置したR;Fマウスからのマウス膵臓における導管マーカーCK19、ならびにeGFP(Dox依存性組換えマーカー)、DAPI及びCA19−9のIFを示す。 全身(R;F)CA19−9マウスモデルの膵臓系統の免疫蛍光(IF)を示す。注釈を付したAのIF画像を示す。スケールバー=50μm。 全身(R;F)CA19−9マウスモデルの膵臓系統の免疫蛍光(IF)を示す。28日間Doxで処置したR;Fマウスからのマウス膵臓における線維芽細胞マーカーポドプラニン、ならびにeGFP(Dox依存性組換えマーカー)、DAPI及びCA19−9のIF。CA19−9+、ポドプラニン+、eGFP−細胞をピンク色の白抜き矢印で示す。CA19−9−、ポドプラニン+、eGFP−細胞を塗り潰した赤い矢印で示す。スケールバー=50μm。 全身CA19−9マウスモデル:膵臓以外の組織におけるeGFPの発現を示す。未処置R;Fからのマウス組織のeGFP IHCを示す。スケールバー=100μm。 全身CA19−9マウスモデル:膵臓以外の組織におけるeGFPの発現を示す。Doxで処置したR;Fマウスからのマウス組織のeGFP IHCを示す。スケールバー=100μm。 膵臓全体CA19−9マウスモデル:膵臓以外の組織におけるeGFPの発現を示す。未処置CPDX;RLSL;Fマウスからのマウス組織のeGFP IHCを示す。スケールバー=100μm。 膵臓全体CA19−9マウスモデル:膵臓以外の組織におけるeGFPの発現を示す。Doxで処置したCPDX;RLSL;Fマウスからのマウス組織のeGFP IHCを示す。スケールバー=100μm。 膵臓限局性PDX1−Cre駆動型CA19−9マウスモデル:膵臓以外の組織におけるeGFPの発現を示す。未処置CPDX;RLSL;FLSLマウスからのマウス組織のeGFP IHCを示す。スケールバー=100μm。 膵臓限局性PDX1−Cre駆動型CA19−9マウスモデル:膵臓以外の組織におけるeGFPの発現を示す。Doxで処置したCPDX;RLSL;FLSLマウスからのマウス組織のeGFP IHCを示す。スケールバー=100μm。 膵臓限局性p48−Cre駆動型CA19−9マウスモデル:膵臓以外の組織におけるeGFPの発現を示す。未処置CP48;RLSL;FLSLマウスからのマウス組織のeGFP IHCを示す。スケールバー=100μm。 膵臓限局性p48−Cre駆動型CA19−9マウスモデル:膵臓以外の組織におけるeGFPの発現を示す。Doxで処置したCP48;RLSL;FLSLマウスからのマウス組織のeGFP IHCを示す。スケールバー=100μm。 全身CA19−9マウスモデル:膵臓以外の組織におけるCA19−9の発現を示す。未処置R;Fマウスからのマウス組織のCA19−9 IHCを示す。スケールバー=100μm。 全身CA19−9マウスモデル:膵臓以外の組織におけるCA19−9の発現を示す。7日間Doxで処置したR;Fマウスからのマウス組織のCA19−9 IHCを示す。スケールバー=100μm。 全身CA19−9マウスモデル:膵臓以外の組織におけるCA19−9の発現を示す。28日間Doxで処置したR;Fマウスからのマウス組織のCA19−9 IHCを示す。スケールバー=100μm。 全身CA19−9マウスモデル:膵臓以外の組織におけるCA19−9の発現を示す。未処置R;Fの遺伝的に陰性の対照同腹仔からのマウス組織のCA19−9 IHCを示す。スケールバー=500μmである心臓を除き、スケールバー=100μm。 膵臓限局性CA19−9マウスモデル:膵臓以外の組織におけるCA19−9の発現を示す。未処置CPDX;RLSL;FLSL及び未処置CP48;RLSL;FLSLマウスからのマウス組織のCA19−9 IHCを示す。スケールバー=100μm。 膵臓限局性CA19−9マウスモデル:膵臓以外の組織におけるCA19−9の発現を示す。7日間Doxで処置したCPDX;RLSL;FLSL及びCP48;RLSL;FLSLマウスからのマウス組織のCA19−9 IHCを示す。スケールバー=100μm。 膵臓限局性CA19−9マウスモデル:膵臓以外の組織におけるCA19−9の発現を示す。28日間Doxで処置したCPDX;RLSL;FLSL及びCP48;RLSL;FLSLマウスからのマウス組織のCA19−9 IHCを示す。スケールバー=100μm。 膵臓限局性CA19−9マウスモデル:膵臓以外の組織におけるCA19−9の発現を示す。未処置CPDX;RLSL;FLSL及び未処置CP48;RLSL;FLSLの遺伝的に陰性の対照同腹仔からのマウス組織のCA19−9 IHC。スケールバー=100μm。 体重及び膵臓重量のマウスモデルの比較を示す。Aは、Doxで処置(週)した遺伝的に陰性の対照同腹仔、R;F、CPDX;RLSL;FまたはCPDX;RLSL;FLSLマウスの体重の変化パーセンテージを示す。各データ点の線は、同じ個別のマウスの時間経過を表す。一致したSDを推定せずに多重t検定(Holm−Sidak)よりp値を決定した。Bは、遺伝的に陰性の対照同腹仔、R;F、CPDX;RLSL;FまたはCPDX;RLSL;FLSLマウスに12週間Dox処置した後の、体重に対して正規化した膵臓重量のパーセンテージを示す。対応のないパラメトリック両側t検定によりp値を決定した(t=1.225、5.874、0.7731、1.059;df=29、4、10、4)。直線は平均値を表し、各データ点は個々のマウスからの測定値を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。 自己免疫、膵外分泌機能不全、グルコース恒常性及びCA19−9分泌の指標の評価を示す。R;F全身CA19−9マウスモデルから、及びCA19−9で直接免疫したマウスからの、マウスの血漿中のCA19−9を対象とする抗体の血清学的測定値を示す。 自己免疫、膵外分泌機能不全、グルコース恒常性及びCA19−9分泌の指標の評価を示す。0日間または7日間のDox処置後のR;Fマウスにおいて測定したキモトリプシン及びエラスターゼの糞便レベルを示す。 自己免疫、膵外分泌機能不全、グルコース恒常性及びCA19−9分泌の指標の評価を示す。スクロース溶媒水またはDoxスクロース水で7日間処置し、続いてDoxまたは通常の固形飼料に切り替えた後の、R;F及びCPDX;RLSL;Fモデルからの無作為給餌マウスにおいて測定した血糖値を示す。 自己免疫、膵外分泌機能不全、グルコース恒常性及びCA19−9分泌の指標の評価を示す。遺伝的に陰性の対照同腹仔、R;F、C;RLSL;FまたはC;RLSL;FLSLマウスをDoxで処置(日)した後のCA19−9の循環レベル(U/ml)を示す。多重比較とともに一元配置分散を使用することによりp値を決定した(F(3,30)=2.305;(3,14)=13.46;(3,24)=35.36;(3,35)=4.667)。直線は平均値を表し、各データ点は個々のマウスからの測定値を表す。37U/ml(点線)を超える値は上昇していると見なされる。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。 Aは、DoxでCPDX;RLSL;Fマウスを処置した後のCA19−9の循環レベル(U/ml)を示す。37U/ml(点線)を超える値は上昇している(F(3,24)=35.36、p<0.0001)。n=それぞれ5、5、8及び10。Bは、セルレインで処置したマウス(C57Bl/6j、n=それぞれ5、5及び5)、ならびにDoxで処置したCPDX;RLSL;Fマウス(n=それぞれ4、4及び6)における、遺伝的に陰性の対照(GN、n=それぞれ3及び3)と比較したフローサイトメトリーにより評価した免疫細胞浸潤を示す(F(7,26/27/26)=41.06、14.38、41.23、すべてについてp<0.0001)。A〜Bについて、中央の赤色水平線は平均値を表し、エラーバーは標準偏差を表す。各データ点は個々のマウスからの測定値を表す。一元配置分散分析後、Holm−Sidak法を使用した多重比較については、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。 マウスにおける膵炎誘発時の免疫細胞の表現を示す。免疫細胞型の表現は、遺伝的に陰性の同腹仔対照(GN)と比較した、0日間、1日間または3日間、急性膵炎の誘発のためにセルレインで処置したマウス(C57Bl/6j)及びDoxで処置したCPDX;RLSL;Fマウスの脾臓、末梢リンパ節、腸間膜リンパ節及び膵臓におけるフローサイトメトリーにより決定した。データをCD45陽性細胞のパーセンテージとして表す。 遺伝的に陰性の同腹仔対照(GN)と比較した、0日間、1日間または3日間、急性膵炎の誘発のためにセルレインで処置したマウス(C57Bl/6j)及びDoxで処置したCPDX;RLSL;Fマウスの膵臓におけるフローサイトメトリーにより決定した免疫細胞型の表現を示す。直線は平均値を表し、各データ点は個々のマウスからの測定値を表す。多重比較とともに一元配置分散を使用し、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、(F(8,30)=2.709;2.034;3.049;3.784;4.739;6.46;3.986;4.688)。 Aは、CA19−9の発現が導管増殖を引き起こすことを示す。EdUの取り込みを、Doxによる処置後のCPDX;RLSL;Fマウス(n=それぞれ3、3及び4)ならびに遺伝的に陰性の同腹仔対照(GN、n=それぞれ3及び2)におけるフローサイトメトリーにより評価した。膵臓全体(F(4,10)=14.48、p<0.0004)、浸潤性免疫区画(CD45、F(4,10)=14.82、p<0.0003)または導管上皮系統(CK19、F(4,9)=48.35、p<0.0001)におけるEdU陽性細胞のパーセンテージを示す。直線は平均値を表し、各データ点は個々のマウスからの測定値を表す。B〜Cは、Dox処置後の初代腺房培養物におけるタンパク質毒性ストレスマーカーの評価を示す。Bは、溶媒(PBS)、Doxまたはセルレインで12時間処置したCPDX;RLSL;F腺房細胞外植片からの条件培地中のアミラーゼ及びリパーゼレベルを示す。多重比較とともに一元配置分散を使用し、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001(F(2,3)=92.37;37.17)。Cは、溶媒(PBS)、Doxまたはセルレインで12時間処置したCPDX;RLSL;F腺房細胞外植片からの全細胞溶解物の免疫ブロットにより、ローディング対照であるコフィリン及び未処置の時点に対して定量化したAtf4及びBipのレベルを示す。 マウスにおける膵炎誘発時の増殖パターンを示す。Aは、Doxで処置(日)した遺伝的に陰性の対照同腹仔、R;F、CPDX;RLSL;FまたはCPDX;RLSL;FLSLマウスのKi67 IHCを示す。Bは、動物1匹あたり5つの高倍率視野をカウントする少なくとも3匹のマウスからのKi67 IHCの定量化を示す。多重比較とともに一元配置分散を使用し、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001(F(3,91)=5.097;(4,75)=57.28;(7,197)=113.1;(4,86)=12.16)。スケールバー=50μm。 PDX;RLSL;FオルガノイドのRNAseq解析を示す。MAプロット(Bland−Altman、平均発現量対倍率変化)を示す。著しく差次的に発現された遺伝子に青色で注釈を付し、最も差次的に発現された遺伝子にさらに注釈を付した。 PDX;RLSL;FオルガノイドのRNAseq解析を示す。ボルケーノプロット(倍率変化対q値)を示す。著しく差次的に発現された遺伝子に青色で注釈を付し、最も差次的に発現された遺伝子にさらに注釈を付した。 PDX;RLSL;FオルガノイドのRNAseq解析を示す。遺伝子操作マウスモデルに導入された導入遺伝子の100万個あたりの転写物を示す。 PDX;RLSL;FオルガノイドのRNAseq解析を示す。HPRT1に対して正規化し、正常または悪性のヒト膵臓から単離されたオルガノイドとDox処置後のCPDX;RLSL;Fマウスの正常オルガノイドとの間で比較した、Fut3及びβ3GalT5の発現レベルを示す。 PDX;RLSL;FオルガノイドのRNAseq解析を示す。CPDX;RLSL;Fオルガノイドと遺伝的に陰性の対照オルガノイドとの間のオーバーラップを示すアプセットプロット(upset plot)を示す。CA19−9の非存在下でDoxに応答して差次的に発現した遺伝子を、CPDX;RLSL;Fオルガノイドの差次的に発現した遺伝子リストから除いた。 PDX;RLSL;FオルガノイドのRNAseq解析を示す。Doxにより誘導された遺伝子発現変化を除去後の、24時間処置したCPDX;RLSL;Fオルガノイドに対して0時間処置したCPDX;RLSL;Fオルガノイドにおいて差次的に発現した遺伝子のヒートマップを示す。 ERBBシグナル伝達においてエンリッチメントが確認されたCPDX;RLSL;FオルガノイドのGSEAを示す。 PDX;RLSL;FオルガノイドのRNAseq解析からの差次的に発現された遺伝子のGSEAを示す。p<0.05及びFDR<0.15である経路の正規化したエンリッチメントスコア(NES)の棒グラフ、ならびにCPDX;RLSL;FオルガノイドのDox処置後にエンリッチしたがんの特徴(Hallmarks of Cancer)遺伝子セットからの選択したGSEAプロットを示す。 同上。 同上。 同上。 同上。 PDX;RLSL;FオルガノイドのRNAseq解析からの差次的に発現された遺伝子のGSEAを示す。p<0.05及びFDR<0.15である経路の正規化したエンリッチメントスコア(NES)の棒グラフ、ならびにCPDX;RLSL;FオルガノイドのDox処置後に枯渇したがんの特徴遺伝子セットからの選択したGSEAプロットを示す。 同上。 同上。 同上。 同上。 PDX;RLSL;FオルガノイドのRNAseq解析からの差次的に発現された遺伝子のGSEAを示す。p<0.05及びFDR<0.15である経路の正規化したエンリッチメントスコア(NES)の棒グラフ、ならびにCPDX;RLSL;FオルガノイドのDox処置後にエンリッチしたKEGG経路遺伝子セットからの選択したGSEAプロットを示す。 同上。 同上。 同上。 同上。 PDX;RLSL;FオルガノイドのRNAseq解析からの差次的に発現された遺伝子のGSEAを示す。p<0.05及びFDR<0.15である経路の正規化したエンリッチメントスコア(NES)の棒グラフ、ならびにCPDX;RLSL;FオルガノイドのDox処置後に枯渇したKEGG経路遺伝子セットからの選択したGSEAプロットを示す。 同上。 同上。 同上。 同上。 Doxによる処置後にシグナル伝達経路の活性化について免疫ブロットにより評価した、CPDX;RLSL;Fオルガノイド(n=3回の生物学的反復試験)及び遺伝的に陰性のオルガノイド(GN、n=2回の生物学的反復試験)を示す。ブロットは、CPDX;RLSL;Fオルガノイドの3回の技術的反復試験及び3回の生物学的反復試験、ならびにGNオルガノイドの2回の生物学的反復試験を表す。コフィリンに対して正規化した後の未処置の時点と比較して定量化を実施した。 CA19−9の発現誘導後のオルガノイド経路の活性化を示す。Doxによる処置(時間)後に免疫ブロットによって評価した、CPDX;RLSL;F及び遺伝的に陰性の同腹仔対照(GN)からの正常導管オルガノイドを示す。 CA19−9の発現誘導後のオルガノイド経路の活性化を示す。EGF及びNACを欠くオルガノイド培地中でのDoxによる処置(時間)後に免疫ブロットによって評価した、CPDX;RLSL;F(n=2)及び遺伝的に陰性の同腹仔対照(GN、n=2)からの正常導管オルガノイドを示す。 Doxで0日間処置した(n=4)または3日間処置した(n=5)CPDX;RLSL;Fマウスにおける、代表的なリン酸化EGFR免疫組織化学(IHC)を示す。挿入図は膵管の高拡大像である。スケールバー=50μm。 CA19−9の発現誘導後のオルガノイドの増殖状態を示す。数日間、増殖を評価するためにCell Titer Gloにより毎日評価したCPDX;RLSL;Fを示す。遺伝的陰性の対照は、CPDX;RLSL;F(218、223)及びR;F(3384)オルガノイド系統に含まれる。 CA19−9の発現誘導後のオルガノイドの増殖状態を示す。数日間、増殖を評価するためにCell Titer Gloにより毎日評価したR;Fを示す。遺伝的陰性の対照は、CPDX;RLSL;F(218、223)及びR;F(3384)オルガノイド系統に含まれる。 CA19−9の発現誘導後のオルガノイドの増殖状態を示す。数日間、増殖を評価するためにCell Titer Gloにより毎日評価したCPDX;RLSL;FLSLを示す。遺伝的陰性の対照は、CPDX;RLSL;F(218、223)及びR;F(3384)オルガノイド系統に含まれる。 CA19−9の発現誘導後のオルガノイドの増殖状態を示す。数日間、増殖を評価するためにCell Titer Gloにより毎日評価した構成的にCA19−9を発現するマウス正常オルガノイドを示す。遺伝的陰性の対照は、CPDX;RLSL;F(218、223)及びR;F(3384)オルガノイド系統に含まれる。 PDX;RLSL;FオルガノイドのEGFRでCA19−9が検出されないことを示す。0〜8時間のDox処置後のCPDX;RLSL;F及び遺伝的に陰性(GN)の正常導管オルガノイドからのタンパク質溶解物を使用した、EGFRのIP、その後のCA19−9の免疫ブロッティングを示す。 PDX;RLSL;FオルガノイドのEGFRでCA19−9が検出されないことを示す。CA19−9の発現は、エルロチニブまたはネラチニブのいずれかを使用したErbBキナーゼ阻害に対する、C;RLSL;F及び遺伝的に陰性(GN)の正常導管オルガノイドの感受性に影響を及ぼさないことを示す。GNオルガノイド:A218、A223。CPDX;RLSL;Fオルガノイド:A217、A220、A225。 同上。 同上。 同上。 同上。 PDX;RLSL;FオルガノイドのEGFRでCA19−9が検出されないことを示す。 同上。 同上。 免疫ブロットにより評価した、アイソタイプ対照(MOPC21)またはCA19−9遮断mAb(NS19−9)の存在下でのDoxによる処置(時間)後のCPDX;RLSL;Fオルガノイド(n=3回の生物学的反復試験)におけるシグナル伝達を示す。コフィリンに対して正規化した後の未処置の時点と比較して定量化を実施した。ブロットは、2回の技術的反復試験及び3回の生物学的反復試験を表す。 CA19−9媒介性膵炎が可逆的であることを示す。Aは、Doxで3日間パルスし、4日間追跡したCPDX;RLSL;Fマウスのアミラーゼ及びリパーゼの血清学的レベルを示す。アミラーゼ及びリパーゼの血清学的レベルを、比較のために示す図25Cからのデータとともに示す。Bは、Doxで3日間パルスし、4日間追跡したCPDX;RLSL;FマウスのH&E染色を示す。スケールバー=100μm。 ヒトアイソタイプ対照(n=5)または5B1(n=5)で8日間処置し、かつ最後の7日間Doxで処置した後のCPDX;RLSL;Fマウスにおける血清アミラーゼ及びリパーゼレベル、ならびに膵炎の組織学的徴候を呈する膵組織領域のパーセンテージを示す。中央の赤色水平線は平均値を表し、エラーバーは標準偏差を表す。各データ点は個々のマウスからの測定値を表す。アミラーゼ及びリパーゼの比較については対応のないパラメトリック両側t検定を使用して(t=4.611、2.981;df=8)、影響を受けた膵臓のパーセンテージについてはWelchの補正を含む対応のないパラメトリックt検定を使用して(t=2.935、df=4.065)p値を決定した;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。 前述の通りにアイソタイプまたは5B1で処置したマウスからの代表的な領域のH&E染色を示す。スケールバー=100μm。 前述の通りにアイソタイプで処置した代表的なマウスでのpEGFR IHCを示す。スケールバー=100μm。 前述の通りに5B1で処置した代表的なマウスでのpEGFR IHCを示す。スケールバー=100μm。 CA19−9媒介性膵炎をin vivoでCA19−9抗体によって減弱させることができることを示す。図中、MOPC21またはNS19−9で96時間処置し、かつ最後の24時間Doxで処置した後のCPDX;RLSL;Fマウスにおける、H&E染色(A)、血清アミラーゼ及びリパーゼレベル(B)及びpEGFR IHC(C)を示す。スケールバー=100μm、挿入図のスケールバー=50μm。Bでは、サンプルサイズはMOPC21(n=5)またはNS19−9(n=5)であった。直線は平均値を表し、各データ点は個々のマウスからの測定値を表す。対応のないパラメトリック両側t検定を使用してp値を決定した(t=4.108、2.961、3.216;df=8、8、7)。 CA19−9媒介性膵炎をin vivoでCA19−9抗体によって減弱させることができることを示す。Aは、MOPC21(n=5)またはNS19−9(n=5)で96時間処置し、かつ最後の24時間Doxで処置した後のCPDX;RLSL;Fマウスにおいて膵炎の組織学的徴候を呈する膵組織領域のパーセンテージを示す。Bは、アイソタイプ対照であるMOPC21、またはCA19−9抗体であるNS19−9の存在下でDoxで処置した正常マウスまたはCPDX;RLSL;Fマウスからの代表的な膵臓全体の組織構造(H&E)を示す。オレンジ色の挿入図は、膵炎領域の代表的な高拡大像である。黒色の挿入図は、導管構造を含む正常膵臓領域の代表的な高拡大像である。スケールバー=100μm。Cは、飲料水中の低用量のDox(0.5g/L)で処置後の、CPDX;RLSL;Fマウスのアミラーゼ及びリパーゼレベルを示す。直線は平均値を表し、各データ点は個々のマウスからの測定値を表す。対応のないパラメトリック両側t検定を使用してp値を決定した。 Dox及びエルロチニブまたは溶媒のいずれかによる処置後の、CPDX;RLSL;Fマウスの膵臓のH&E染色を示す。スケールバーは、左から右へ200μm、200μm、100μm及び50μmである。 Dox及びエルロチニブまたは溶媒のいずれかによる処置後の、CPDX;RLSL;Fマウスのアミラーゼ及びリパーゼの血清学的レベルを示す。 スクロースまたはDoxスクロースのいずれか、及び溶媒またはエルロチニブのいずれかによる処置後の、C57Bl/6Jマウスの膵臓のH&E染色を示す。スケールバー=100μm。 スクロースまたはDoxスクロースのいずれか、及び溶媒またはエルロチニブのいずれかによる処置後の、C57Bl/6Jマウスの膵臓のアミラーゼ及びリパーゼの血清学的レベルを示す。 CA19−9リガンドの分泌がEGFRを活性化させることを示す。Aは、先にDoxまたは溶媒で処置(24時間)したCPDX;RLSL;Fオルガノイドからの条件培地とともにインキュベートした、遺伝的に陰性(GN)の同腹仔からのオルガノイドの免疫ブロット評価を示す。コフィリンに対して正規化した後の未処置の時点と比較して定量化を実施した。Bは、先にFc対照またはEGFRコンジュゲートFcの存在下でDoxで処置(24時間)したCPDX;RLSL;Fオルガノイドからの条件培地とともにインキュベートした、GN同腹仔からのオルガノイドの免疫ブロット評価を示す。コフィリンに対して正規化した後の未処置の時点と比較して定量化を実施した。 フローサイトメトリー実験のための例示的なゲーティング戦略を示す。図1Dのフローサイトメトリーのバックゲーティングを示す。 フローサイトメトリー実験のための例示的なゲーティング戦略を示す。図1Eのフローサイトメトリーのバックゲーティングを示す。 フローサイトメトリー実験のための例示的なゲーティング戦略を示す。図50Bのフローサイトメトリーのバックゲーティングを示す。 同上。 同上。 同上。 同上。 フローサイトメトリー実験のための例示的なゲーティング戦略を示す。図52Aのフローサイトメトリーのバックゲーティングを示す。 同上。
6.本発明の詳細な説明
6.1.定義
本明細書で使用する場合、シアリルLe、シアリルルイスA、シアル化ルイスaとも知られているか、または称される「シアリルルイス」(sLe)という用語は、分子式がC315223、モル質量が820.74g/molの四糖類の化合物を意味することを意図している。sLeの構造には、Neu5Acα2−3Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAcβ及びNeu5Gcα2−3Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAcβが含まれ得る。sLeは、内皮白血球接着分子(ELAM)としても知られるE−セレクチンの既知のリガンドでもある。シアリルルイスという用語には、生物活性のある立体構造及び生物活性のない立体構造を含む、考えられるすべての立体構造を持つものが含まれる。
本明細書で使用する場合、「CA19−9」、「CA 19−9」、「CA−19.9」または「CA 19.9」という用語は、シアリルルイスのエピトープを保有する任意の抗原を指す。CA19−9は、1つ以上のシアリルルイス部分で修飾されたタンパク質、例えば糖タンパク質を包含する。例えば、CA19−9には、C2、CD59、F5、SPARC、MUC1、MUC5AC、MUC16、アポリポタンパク質、キニノーゲン、A2M、ADAM9、AFP、B3GNT5、CD44、CSF3、CTBS、CTSL2、EFNB3、EPHA3、FGFBP1、IGFBP5、IL18RAP、INHBC、MSLN、NPY、PDGFA、PROM1、RAF1、S100A7、TFF3、TGFB2、TNFRSF10A,WISP1及びWNT9Bなどのシアリルルイスを保持する糖タンパク質が含まれる。CA19−9はまた、1つ以上のシアリルルイスで修飾され、それによりシアリルルイスのエピトープを保有する脂質、例えば糖脂質を含む。例示的な糖脂質CA19−9には、Uozumi,N et al.,J.Proteome Res.2010,9,6345−6353(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている正常な胆汁によって分泌される膜小胞である、胆汁の球状膜(bile globular membrane)と関連する糖脂質が含まれる。CA19−9のさらなる例は、Rho J et al.,J Proteomics.2014 Jan 16;96:291−299、及びTrinchera M et al.,Biology(Basel).2017 Feb 23;6(1).pii:E16に記載されており、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
「予防すること」、「予防する」または「予防」という用語は、膵炎、及び/または膵炎の損傷(例えば、身体的もしくは機能的な損傷)、影響もしくは症状に関して使用するとき、膵炎または膵炎の損傷、影響もしくは症状の発症の遅延、それらの進行の妨害、それらの出現の妨害、それらに対する保護、それらの発生の阻害または排除、それらの発病率の低減を意味することを意図している。例えば、本明細書で提供される抗体または抗体断片で処置される患者集団中の一部の患者が膵炎を発症したとしても、その抗体または抗体断片で処置される患者集団が、未処置の集団と比較したときに膵炎の損傷、影響、発病率、発生率または症状の低減を示す限り、その抗体または抗体断片は、依然として膵炎を「予防」する。
本明細書で使用する場合、「処置する」または「処置」という用語は、膵炎に関して使用するとき、例えば、膵炎に起因する身体的もしくは機能的な損傷、及び/または影響または症状を含む、膵炎または障害、損傷の排除、低減、管理または制御を意味することを意図している。
本明細書で使用する場合、「改善する」という用語は、膵炎に関して使用するとき、膵炎、または膵炎に起因する障害、例えば身体的もしくは機能的な損傷を含む損傷、及び/または影響または症状を低減、軽減または緩和することを意味することを意図している。例えば、当業者は、膵炎の症状をより忍容できるものにすることにより膵炎の症状を改善することができ、疾患の進行を遅延させることができ、または対象を膵炎のない状態へと回復させることができる。
本明細書で使用する場合、「管理する」、「管理すること」または「管理」という用語は、膵炎に関して使用するとき、本明細書で提供される抗体または抗体断片の投与を通じて患者に1つ以上の有益な効果をもたらすことを意味することを意図している。有益な効果は、例えば、膵炎の縮小、進行の停止またはより緩慢な進行、膵炎の症状または影響の悪化の緩和、維持または遅延、及び膵炎に伴う損傷の回復、維持またはその拡散の遅延であり得る。特定の実施形態では、膵炎の症状の進行または悪化の予防を目的として膵炎の症状を限定または制御するために、本明細書で提供される抗体または抗体断片を患者に投与する。
本明細書で使用する場合、「対象(複数可)」という用語は、動物、例えば、哺乳動物を意味することを意図している。「対象」という用語に包含される哺乳動物には、例えば、雌ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット及びマウスなどの非霊長類哺乳動物、ならびにサル、類人猿及びヒトなどの霊長類哺乳動物が含まれる。「患者」は、本明細書で提供される方法の適切な標的であるヒトを指す。
本明細書で使用する場合、「膵炎」という用語は、膵臓が炎症を起こし損傷する疾患を意味することを意図している。膵炎には、急性膵炎及び慢性膵炎が含まれる。急性膵炎は、短時間持続する膵臓における突発性炎症を指す。慢性膵炎は、膵臓の持続性炎症を指す。慢性膵炎は、急性膵炎のエピソードの後に生じ得る。慢性膵炎にはさらに、軽度、中等度及び重度の慢性膵炎が含まれる。
本明細書で使用する場合、「治療剤」という句は、CA19−9及びsLeの発現に関連する膵炎及び/またはそれに関連する症状の予防、処置、管理または改善に使用することができる任意の薬剤を意味することを意図している。本明細書で提供される治療剤には、抗体(以下でさらに定義されるもの)、タンパク質、ペプチド、核酸、ペプチド模倣物、ペプトイドなどが含まれる。タンパク質には、天然タンパク質、デノボ設計されたタンパク質、及び刺激時もしくは操作時に、またはその両方において動物または細胞によって産生されるタンパク質が含まれる。タンパク質の例には、リガンド、受容体の可溶性部分、及び主にアミノ酸で形成される他の生物学的産物が含まれる。治療剤としての核酸には、アプタマー、または所望の機能特性(結合もしくは遮断など)のための特定の二次構造を実現するための核酸配列を有するものであって、その配列が、核酸配列のライブラリーをスクリーニングすることによって設計もしくは同定することができるものが含まれる。ペプチドには、所望の機能特性(結合または遮断など)を実現するための特定の配列を有するものであって、その配列が、ペプチド配列のライブラリーをスクリーニングすることによって設計または同定することができるものが含まれる。例えば、治療剤は、本開示の抗体または機能的断片であり得る。別の例では、治療剤は、本開示の抗体または機能的断片以外の分子であり得る。治療剤はまた、CA19−9及びsLeの発現に関連する疾患及び/またはそれに関連する1つ以上の症状の予防、処置、管理または改善に有用であるとして本開示により提供される、任意の分子であり得る。
本明細書で使用する場合、「膵炎マーカー」または「膵炎のマーカー」という用語は、判定可能及び/または観察可能な膵炎の任意の指標を意味することを意図している。膵炎マーカーには、膵臓における物理的変化または損傷、膵臓における機能的または生理学的変化、膵臓の機能的測定値、膵臓における組織学的変化、イメージング検査における膵臓の異常、膵臓における糖タンパク質を含む1つ以上のタンパク質の発現または構造の異常、膵臓における1つ以上の炭水化物の発現または構造の異常、DNA、RNA、マイクロRNA配列または構造の異常、膵炎症の血清指標の異常、ならびに膵炎症及び/または膵機能の任意の測定値または指標が含まれ得る。膵炎マーカーの例としては、組織学的マーカー、例えば、免疫細胞浸潤、コラーゲン沈着、線維性組織の存在及びレベル、脂肪壊死、間質浮腫、腺房及び血管の破壊、間質出血、導管拡張、腺房細胞の均質化、ならびにCA19−9の発現レベルが挙げられる。膵炎マーカーにはまた、生理学的マーカー、例えば、体重減少、食物の吸収不良、膵萎縮、膵腫大、膵炎症及び胆汁逆流が含まれる。膵炎マーカーには、血清リパーゼレベル、血清アミラーゼレベル及び血清C反応性タンパク質(CRP)レベルがさらに含まれ得る。
本明細書で使用する場合、「シグナル伝達マーカー」という用語は、膵臓または膵炎に関して使用するとき、膵臓または膵細胞中のシグナル伝達カスケード(例えば、カスケードの成分の一連の相互に連結された生化学的反応、生物物理学的反応、量の変化(発現レベルの変化など)及び/または位置変化)における分子を意味することを意図しており、このシグナル伝達カスケードの活性化、刺激、遮断、阻害または変化は、膵炎の疾患機序の根底をなす。そのようなシグナル伝達マーカーとしては、例えば、膵臓内のAktリン酸化の上昇、膵臓内のEGFRリン酸化の上昇、膵臓内のErk1/2リン酸化の上昇、及びCA19−9発現の上昇が挙げられる。
本明細書で使用する場合、「アミラーゼ」という用語は、デンプン及びグリコーゲンを加水分解する酵素群を指す。アミラーゼによって加水分解される例示的な化学結合としては、デンプンに存在するグルコシド結合が挙げられる。アミラーゼには、例えば、3つ以上の(1→4)−アルファ結合D−グルコースユニットを含有する多糖中の(1→4)−アルファ−D−グルコシド結合の内部加水分解を触媒する、α−アミラーゼ(酵素番号として知られる酵素に関する数値的分類スキームによるEC 3.2.1.1。以下、EC番号は、酵素番号による酵素分類スキームを同様に示す。別名:1,4−α−D−グルカングルカノヒドロラーゼ、グリコゲナーゼ)が含まれる。アミラーゼにはまた、連続するマルトース単位を鎖の非還元末端から除去するために、多糖中の(1→4)−アルファ−D−グルコシド結合の加水分解を触媒するβ−アミラーゼ(EC 3.2.1.2、別名:1,4−α−D−グルカンマルトヒドロラーゼ、グリコゲナーゼ、サッカロゲンアミラーゼ)が含まれる。アミラーゼにはさらに、例えば、ベータ−D−グルコースの放出を伴う、鎖の非還元末端からの連続的な末端(1→4)結合アルファ−D−グルコース残基の加水分解を触媒する、γ−アミラーゼ(EC 3.2.1.3、別名:グルカン1,4−α−グルコシダーゼ、アミログルコシダーゼ、エキソ−1,4−α−グルコシダーゼ、グルコアミラーゼ、リソソームα−グルコシダーゼ、1,4−α−D−グルカングルコヒドロラーゼ)が含まれる。「血清アミラーゼ」または「血清学的アミラーゼ」は、血清中の総合または総アミラーゼを指す。正常な血清アミラーゼのおよそ35%〜45%が、膵臓由来である。膵臓が炎症を起こしたとき、上昇したレベルのアミラーゼが血中に放出されるため、血清アミラーゼレベルの上昇は膵炎のマーカーとなり得る。健常ヒト対象におけるアミラーゼの正常血清レベルは0〜137U/Lであり、これは、方法及び集団に依存する。したがって、いくつかの実施形態では、正常血清アミラーゼレベルは、検査室ごとに及びヒト集団ごとに変化し得る。
本明細書で使用する場合、「リパーゼ」という用語は、脂肪(脂質)の加水分解を触媒するエステラーゼのサブクラスを指す。リパーゼという用語は、例えば、トリアシルグリセロールのグリセロール、ジアシルグリセロール、モノグリセロール及び遊離脂肪酸への加水分解を触媒するトリアシルグリセロールリパーゼ(EC 3.1.1.3)を含み得る。リパーゼという用語には、例えば、長鎖脂肪酸のグリセロールモノエステルの加水分解を触媒するアシルグリセロールリパーゼ(EC 3.1.1.23)も含まれる。「血清リパーゼ」または「血清学的リパーゼ」は、血清中の総合または総リパーゼを指す。膵臓由来のリパーゼは、血清リパーゼの大幅かつ重要な割合を占めている。膵臓が炎症を起こしたとき、上昇したレベルのリパーゼが血中に放出されるため、血清リパーゼレベルの上昇は、膵炎のマーカーとなり得る。健常ヒト対象におけるリパーゼの正常血清レベルは12〜70U/Lであり、これは、方法及び集団に依存する。したがって、いくつかの実施形態では、正常血清リパーゼレベルは、検査室ごとに及びヒト集団ごとに変化し得る。
本明細書で使用する場合、マーカーに関する「レベルの上昇」という用語は、マーカーのレベルが、正常基準範囲のレベルまたは正常な膵臓の組織構造、生理及び/または機能を有する対応する対照対象のレベルよりも高いことを意味することを意図している。そのようなレベルの上昇は、正常な膵臓の組織構造、生理及び/または機能を有する対照対象のレベルまたは正常基準範囲のレベルの110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、250%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、1000倍、2000倍、3000倍、4000倍または5000倍以上であり得る。そのような基準範囲については、以下にさらに説明する。
本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、特定の分子抗原に結合することができ、2つの同一のポリペプチド鎖の対からなり、各対は1本の重鎖(約50〜70kDa)及び1本の軽鎖(約25kDa)を有し、各鎖の各アミノ末端部分は約100個〜約130個またはそれを上回るアミノ酸の可変領域を含み、各鎖の各カルボキシ末端部分は定常領域を含む、ポリペプチドの免疫グロブリンクラス内のB細胞のポリペプチド産物、または合成もしくは組換えにより産生されるその等価物を意味することを意図している(Borrebaeck(ed.)(1995)Antibody Engineering,Second Edition,Oxford University Press.、Kuby(1997)Immunology,Third Edition,W.H.Freeman and Company,New Yorkを参照されたい)。本開示の文脈において、本開示の抗体によって結合され得る特定の分子抗原には、標的炭水化物であるsLeが含まれる。抗体という用語は、例えば、個々の抗sLeモノクローナル抗体及び抗CA−19−9モノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、中和抗体、全長またはインタクトモノクローナル抗体を含む)、ポリエピトープ特異性またはモノエピトープ特異性を有する抗sLe抗体及び抗CA−19−9抗体組成物、ポリクローナル抗体、一価抗体、多価抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、但しそれらが所望の生物学的活性を示す場合に限る)を以下に記載の通りに包含する。抗体は、ヒト、ヒト化、キメラ及び/または親和性成熟したもの、ならびに他の種、例えばマウス及びウサギなどに由来する抗体であり得る。本明細書で提供される抗体は、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD及びIgA)または任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)の抗体であり得る。本明細書で提供される抗体には、生物学的に産生される、組換えにより産生される、または合成により産生される抗体が含まれる。
「ヒト」という用語は、抗体またはその機能的断片に関して使用するとき、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に対応するヒト可変領域及び/またはヒト定常領域またはそれらの一部を有する抗体あるいはその機能的断片を指す。そのようなヒト生殖系列免疫グロブリン配列は、Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242によって記載されている。本開示の文脈において、ヒト抗体は、sLeに結合し、ヒト生殖系列免疫グロブリン核酸配列の天然に存在する体細胞変異体である核酸配列によってコードされる抗体を含み得る。ヒト抗体を生成する例示的な方法が実施例Iに示されているが、当業者に周知の任意の方法を使用することができる。
「モノクローナル抗体」という用語は、単一細胞クローンもしくはハイブリドーマの産物である抗体、または単一細胞に由来する細胞集団である抗体を指す。モノクローナル抗体はまた、免疫グロブリン遺伝子をコードする重鎖及び軽鎖から組換え法によって産生され、単一分子の免疫グロブリン種を産生する抗体を指すことが意図される。モノクローナル抗体調製物内の抗体のアミノ酸配列は実質的に均一であり、そのような調製物内の抗体の結合活性は、実質的に同じ抗原結合活性を示す。対照的に、ポリクローナル抗体は、特定の抗原に結合する免疫グロブリン分子の組み合わせである、集団内の異なるB細胞から得られる。ポリクローナル抗体の各免疫グロブリンは、同じ抗原の異なるエピトープに結合することができる。モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体の両方を生成する方法は、当該技術分野において周知である(Harlow and Lane.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)及びBorrebaeck(ed.),Antibody Engineering:A Practical Guide,W.H.Freeman and Co.,Publishers,New York,pp.103−120(1991))。
本明細書で使用する場合、「機能的断片」という用語は、抗体に関して使用するとき、断片が由来する抗体と同様の結合活性の一部またはすべてを保持する重鎖または軽鎖ポリペプチドを含む、抗体の一部を指すことを意図している。そのような機能的断片には、例えば、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)、F(ab’)、一本鎖Fv(scFv)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ及びミニボディが含まれ得る。他の機能的断片には、例えば、重鎖もしくは軽鎖ポリペプチド、可変領域ポリペプチドもしくは相補性決定領域(CDR)ポリペプチドまたはそれらの一部が、そのような機能的断片が結合活性を保持する限り含まれ得る。そのような抗体結合断片は、例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1989)、Myers(ed.),Molec.Biology and Biotechnology:A Comprehensive Desk Reference,New York:VCH Publisher,Inc.、Huston et al.,Cell Biophysics,22:189−224(1993)、Pluckthun and Skerra,Meth.Enzymol.,178:497−515(1989)、及びDay,E.D.,Advanced Immunochemistry,Second Ed.,Wiley−Liss,Inc.,New York,NY(1990)に記載されているのを見出すことができる。
「重鎖」という用語は、抗体に関して使用するとき、約50〜70kDaのポリペプチド鎖を指し、そのアミノ末端部分は約120個〜130個超のアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分は定常領域を含む。定常領域は、重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいて、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)及びミュー(μ)と称される5つの異なるタイプの1つであり得る。異なる重鎖はサイズが異なっており、α、δ及びγはおよそ450個のアミノ酸を含み、μ及びεはおよそ550個のアミノ酸を含む。軽鎖と組み合わせた場合、これらの異なるタイプの重鎖は、IgGの4つのサブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMの5つの周知のクラスの抗体をそれぞれ生じさせる。重鎖は、ヒト重鎖であり得る。
「軽鎖」という用語は、抗体に関して使用するとき、約25kDaのポリペプチド鎖を指し、そのアミノ末端部分は約100個〜約110個超のアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分は定常領域を含む。軽鎖はおおよそ、211個〜217個のアミノ酸の長さである。定常領域のアミノ酸配列に基づいて、ラムダ(λ)またはカッパ(κ)と称される2つの異なるタイプが存在する。軽鎖のアミノ酸配列は、当該技術分野において周知である。軽鎖は、ヒト軽鎖であり得る。
「可変ドメイン」または「可変領域」という用語は、一般に軽鎖または重鎖のアミノ末端に位置しており、重鎖では約120〜130アミノ酸長及び軽鎖では約100〜110アミノ酸長を有し、その特定の抗原に対するそれぞれの特定の抗体の結合及び特異性に使用される、抗体の軽鎖または重鎖の一部を指す。可変ドメインは、異なる抗体間で配列が大きく異なる。配列の可変性はCDRに集中しており、一方、可変ドメイン中の可変性がより低い部分は、フレームワーク領域(FR)と称される。重鎖及び軽鎖のCDRは、抗体の抗原との相互作用を主として担っている。本明細書で使用されるアミノ酸位置の付番は、Kabat et al.(1991)Sequences of proteins of immunological interest(U.S.Department of Health and Human Services,Washington,D.C.)5th edにおけるようなEUインデックスに従う。可変領域は、ヒト可変領域であり得る。
CDRは、免疫グロブリン(Igもしくは抗体)VHβシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(H1、H2、もしくはH3)のうちの1つ、または抗体VLβシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(L1、L2、もしくはL3)のうちの1つを指す。したがって、CDRは、フレームワーク領域配列内に散在する可変領域配列である。CDR領域は当業者に周知であり、例えば、Kabatによって、抗体可変(V)ドメイン内の最も超可変性である領域として定義されている(Kabat et al.,J.Biol.Chem.252:6609−6616(1977)、Kabat,Adv.Prot.Chem.32:1−75(1978))。CDR領域配列はまた、保存されたβシートフレームワークの一部ではなく、それにより様々な立体構造に適応することができる残基として、Chothiaによって構造的に定義されている(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。両方の術語は当該技術分野で十分に認識されている。標準的な抗体可変ドメイン内のCDRの位置は、多数の構造の比較によって決定されている(Al−Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927−948(1997)、Morea et al.,Methods 20:267−279(2000))。超可変領域内の残基の数は異なる抗体において異なるため、標準的な位置に対する追加の残基は、標準的な可変ドメイン付番スキームにおいて、通常、残基番号の横にa、b、cなどで付番される(Al−Lazikani et al.,上掲(1997))。そのような命名法は、同様に当業者に周知である。
例えば、Kabat(超可変)またはChothia(構造的)の命名のいずれかに従って定義されたCDRは、以下の表1に記載されている。
表1:CDR定義
Figure 2022500382
残基の付番は、Kabat et al.,上掲の命名法に従う
残基の付番は、Chothia et al.,上掲の命名法に従う
1つ以上のCDRを共有結合でまたは非共有結合的に分子に組み込み、その分子をイムノアドヘシンとすることもできる。イムノアドヘシンは、比較的大きなポリペプチド鎖の一部としてCDR(複数可)を組み込むことができ、CDR(複数可)を別のポリペプチド鎖に共有結合させることができ、またはCDR(複数可)を非共有結合的に組み込むことができる。CDRにより、イムノアドヘシンが目的の特定の抗原に結合することが可能となる。
単離は、言及される分子が、少なくとも1つの成分を、それが自然界において見られるように含んでいないことを指す。この用語には、その自然環境において見られる一部またはすべての他の成分から取り除かれた抗体または抗体の機能的断片が含まれる。抗体の自然環境の成分には、例えば、赤血球、白血球、血小板、血漿、タンパク質、核酸、塩及び栄養素が含まれる。抗体の機能的断片の自然環境の成分には、例えば、脂質膜、細胞小器官、タンパク質、核酸、塩及び栄養素が含まれる。本明細書で提供される抗体または抗体の機能的断片はまた、これらの成分のすべてまたはそれが単離されるもしくは組換えにより産生される細胞からの任意の他の成分を含まないか、または完全に実質的に含まないことができる。
本明細書で使用する場合、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラスを指す。所与の抗体または機能的断片の重鎖は、その抗体または機能的断片のクラス、すなわち、IgM、IgG、IgA、IgDまたはIgEを決定する。各クラスは、κ軽鎖またはλ軽鎖のいずれかを有し得る。「サブクラス」という用語は、サブクラスを区別する重鎖のアミノ酸配列のわずかな違いを指す。ヒトにおいては、IgAの2つのサブクラス(サブクラスIgA1及びIgA2)が存在し、IgGの4つのサブクラス(サブクラスIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)が存在する。そのようなクラス及びサブクラスは、当業者に周知である。
本明細書で使用する場合、「結合する」または「結合」という用語は、複合体を形成するための分子間の相互作用を指す。相互作用は、例えば、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、及び/またはファンデルワールス相互作用を含む非共有結合的相互作用であり得る。複合体はまた、共有結合または非共有結合性の結合、相互作用または力により一緒に保持された2つ以上の分子の結合を含み得る。抗体またはその機能的断片の結合は、例えば、酵素結合免疫吸着測定法、セクション6.3.1に示される方法、または当業者に周知のいくつかの方法のうちのいずれか1つを使用して検出することができる。
抗体または機能的断片上の単一の抗原結合部位と、sLeなどの標的分子の単一のエピトープとの間における非共有結合性相互作用の全体の強度は、抗体または機能的断片のそのエピトープに対する親和性である。抗体またはその機能的断片の一価抗原に対する、解離(k−1)に対する会合(k)の比(k/k−1)は、親和性の尺度である会合定数Kである。Kの値は、異なる抗体または機能的断片及び抗原の複合体によって異なり、k及びk−1の両方に依存する。本開示の抗体または機能的断片の会合定数Kは、本明細書で提供される任意の方法、または当業者に周知の他の任意の方法を使用して決定することができる。
1つの結合部位における親和性が、抗体または機能的断片と抗原との間の相互作用の真の強度を常に反映するわけではない。多価sLeなどの複数の反復する抗原決定基を含む複雑な抗原が複数の結合部位を含む抗体と接触する場合、ある部位での抗体または機能的断片と抗原の相互作用は、別の部位での反応の可能性を高めることになる。多価抗体と抗原との間のそのような複数の相互作用の強度は、結合力と称される。抗体または機能的断片の結合力は、その個々の結合部位の親和性よりも、その結合能力のより良好な尺度となり得る。例えば、IgGよりも低い親和性を有し得るが、その多価性に起因するIgMの高い結合力によって抗原に効果的に結合することができる五量体IgM抗体で時折見られるように、高い結合力は低い親和性を補うことができる。
抗体またはその機能的断片の特異性は、1つの抗原のみと反応する個々の抗体またはその機能的断片の能力を指す。抗体または機能的断片は、抗原の一次、二次もしくは三次構造または抗原の異性体形態における差異を識別できる場合、特異的であると見なすことができる。
本明細書で使用する場合、「治療有効量」という用語は、治療剤、例えば、本明細書で提供される抗体もしくは機能的断片、または本明細書で提供される他の任意の治療剤の量であって、有益なまたは意図された治療アウトカム、例えば、疾患の処置、所与の疾患及び/またはそれに関連する症状の重症度及び/または持続時間の低減及び/または改善を達成するのに十分な量を意味することを意図している。治療剤の治療有効量は、疾患の縮小、低減もしくは改善、所与の疾患の進展もしくは進行の低減もしくは改善、所与の疾患の再発、発症もしくは発病の低減もしくは改善、及び/または別の治療法(例えば、本明細書で提供される抗体もしくは機能的断片の投与以外の治療法)の予防効果もしくは治療効果を向上もしくは増強させるために必要な量であり得る。本開示は、治療有効量の本明細書で提供される抗体及び抗体断片を提供する。
本明細書で使用する場合、用量をより多い量、例えば、「より多量」での用量として言及する場合、「量」は、「より多量」での用量が、有益なまたは意図された効果を達成するためにより多くの量の抗体または抗体断片を含むことを意味することが意図される。「より多量」でのそのような用量には、例えば、規定の期間にわたって投与される抗体または抗体断片の総量が、同じ期間の対照または基礎用量と比較して増加しているかまたはより多い用量が含まれる。「より多量」でのそのような用量は、規定の時間ウィンドウ内でのより高頻度の投与の用量を含む。例えば、1日あたり4回の注射の用量は、1日あたり3回の注射の用量と比較して、他のすべてが等しい場合、より多量の用量である。「より多量」での用量はまた、投与頻度を同じに保ちながら、増加したまたはより多い量の1回投与あたりの抗体または抗体断片(例えば、1日あたり1mgの抗体の3回の注射と比較した、1日あたり2mgの抗体の3回の注射)を含む。「より多量」での用量は、所与のウィンドウにおける投与頻度と1回投与あたりの量の積が、対照または基礎用量におけるそれらの積よりも大きい限り、所与の時間ウィンドウにおける投与頻度の変化と1回投与あたりの量の変化の両方をさらに含む。例えば、1日に1mgの抗体を6回注射する用量は、1日に1.5mgの抗体を3回注射する用量よりも、「より多量」の用量である。同様に、連続投与において、「より多量」の用量は、投与速度及び投与期間の積が対照用量のそれらの積よりも大きい用量を含む。用量をより少ない量、例えば、「より少量」での用量として言及する場合、「量」は、本明細書で提供される「より多量」での用量の逆を意味することを意図している。
本明細書で使用する場合、「エフェクター」という用語は、CA19−9に関して使用するとき、膵炎の疾患機序の根底をなすシグナル伝達カスケードにおける膵臓または膵細胞の分子であって、例えば、生化学的、生物物理学的、発現レベルまたは位置の変化を受けて、CA19−9の存在または刺激に対する応答を有する分子を意味することを意図している。CA19−9エフェクターの例には、EGFR、Akt及びErkなどのEGFRシグナル伝達経路内の分子、CA19−9に直接または間接的に結合することができる分子、ならびに観察可能な生物学的作用を伴ってCA19−9によって直接または間接的に影響を受け得る分子が含まれる。
本明細書で使用する場合、「ペプチド模倣分子」または「ペプチド模倣物」という用語は、それが構造的に基づいているペプチドの活性を有するペプチド様分子を意味することを意図している。そのようなペプチド模倣物は、化学修飾ペプチド、天然に存在しないアミノ酸を含むペプチド様分子及びペプトイドを含み、ペプチド模倣物が由来するペプチドの選択的結合活性などの活性を有する(例えば、Goodman and Ro,Peptidomimetics for Drug Design in “Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery” Vol.1(ed.M.E.Wolff;John Wiley & Sons(1995),pages 803−861)を参照されたい)。ペプチド模倣分子には、ピペラジンコア分子、ケト−ピペラジンコア分子及びジアゼピンコア分子を含むがこれらに限定されない、アミノ酸残基の模倣物(アミノ酸模倣物)を含む分子が含まれる。そのようなアミノ酸模倣物は、カルボキシル基とアミノ基の両方、及びアミノ酸側鎖に対応する基を含むことができ、またはグリシンの模倣物の場合には、水素以外の側鎖を含まないことができる。
6.2 膵炎の処置方法
本明細書で提供されるのは、膵炎の予防、処置、改善または管理を必要とする対象において膵炎を予防、処置、改善または管理するための方法であって、シアリルルイスに結合する治療有効量の抗体またはその機能的断片(抗sLe)を対象に投与することを含む方法である。また、本明細書では、膵炎の予防、処置、改善または管理を必要とする対象において膵炎を予防、処置、改善または管理するための方法であって、(1)シアリルルイスに結合する抗体またはその機能的断片(抗sLe)を第1の用量で対象に投与すること、(2)前記対象の膵炎の重症度を判定すること、及び(3)抗sLe抗体の投与前の対象の膵炎の重症度と比較して対象の膵炎の重症度が低減する場合に、抗sLeに結合する抗体もしくはその機能的断片の第2の用量を第1の用量と同じかもしくはそれよりもより少量で投与すること、または対象の膵炎の重症度が低減しない場合に、抗sLeに結合する抗体もしくはその機能的断片の第2の用量を第1の用量よりもより多量で投与することを含む方法も提供される。本方法で使用することができる抗sLe抗体は、セクション6.2.1.1に記載されている。
また、本明細書では、膵炎の予防、処置、改善または管理を必要とする対象において膵炎を予防、処置、改善または管理するための方法であって、CA19−9に結合する治療有効量の治療剤を対象に投与することを含む方法も提供される。
本明細書でさらに提供されるのは、膵炎の予防、処置、改善または管理を必要とする対象において膵炎を予防、処置、改善または管理するための方法であって、(1)CA19−9に結合する治療剤を第1の用量で対象に投与すること、(2)前記対象の膵炎の重症度を判定すること、及び(3)薬剤の投与前の対象の膵炎の重症度と比較して対象の膵炎の重症度が低減する場合に、薬剤の第2の用量を第1の用量と同じかもしくはそれよりもより少量で投与すること、または対象の膵炎の重症度が低減しない場合に、薬剤の第2の用量を第1の用量よりもより多量で投与することを含む方法である。
本明細書で提供されるすべての方法及び特に段落[00139]〜[00141]に記載されている[訳者注:PCT/US2019/050262では[00139]〜[00141]に記載されており、本明細書では段落0062〜0064に該当]方法において、使用することができる治療剤はセクション6.2.1に記載されており、処置の対象の患者の選択はセクション6.2.2に記載されており、薬剤を投与するための投与レジメンは以下のセクション6.2.3に記載されており、治療剤を同定するため、患者を選択するため、これらの方法のアウトカムを判定するため、及び/またはこれらの方法について何らかの方法で基準として機能するために使用することができるバイオマーカーは、以下の6.2.2に記載されており、治療アウトカムは、以下の6.2.2に記載されている。したがって、当業者は、本明細書で提供される方法が、前述及び後述の患者、治療剤、投与レジメン、バイオマーカー及び治療アウトカムのすべての順列及び組み合わせを含むことを理解するであろう。
患者集団に関する以下のセクション6.2.2に記載されるように、本明細書に記載の方法によって処置可能、予防可能、管理可能及び改善可能な膵炎には、定義ならびに前述及び後述の患者集団のセクションに詳細に記載されている様々な病期の慢性膵炎を含む慢性膵炎及び急性膵炎が含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、軽度の慢性膵炎、中等度の慢性膵炎及び/または重度の慢性膵炎に適用可能である。本明細書で提供される方法はまた、軽度の急性膵炎、中等度の急性膵炎及び/または重度の急性膵炎にも使用することができる。急性膵炎を有する患者は回復するが慢性膵炎を発症するおそれがあり、慢性膵炎を有する患者は急性膵炎を発症するおそれがあり、患者はある病期の慢性または急性膵炎から別の病期の慢性及び急性膵炎のいずれかを発症するおそれがあることから、本明細書で提供される方法は、本明細書に記載の様々な病期の慢性または急性膵炎の、任意の順列または組み合わせの病歴を有する患者に使用することができる。
治療剤に関するセクション6.2.1で後述するように、本明細書で提供される薬剤には、抗シアリルルイス抗体、シアリルルイスに結合する及び/またはシアリルルイス活性を調節するペプチドまたはペプチド模倣物、あるいは本開示により提供される適切な治療剤のいずれかの任意の順列または組み合わせが含まれる。
本明細書で提供される治療剤には、また、抗CA19−9抗体、CA19−9に結合する及び/またはCA19−9活性を調節するペプチドまたはペプチド模倣物、あるいは本開示により提供される適切な治療剤のいずれかの任意の順列または組み合わせが含まれる。
治療剤に関する以下のセクション6.2.1に記載されるように、膵炎を処置する方法において本明細書で提供される薬剤は、様々な純度及び不純物のレベルで単離または精製することができ、本明細書で提供される薬剤はまた、様々な医薬組成物中に存在することもでき、様々な投与経路用に製剤化され得る。したがって、本明細書で提供される方法は、本開示により提供される、様々な純度及び不純物のレベルで単離または精製される薬剤、様々な医薬組成物中に存在する薬剤、及び様々な投与経路用に製剤化される薬剤の使用を含む。
本明細書で提供される方法は、哺乳動物を含む本明細書に開示される様々な対象に使用することができる。一実施形態では、本明細書で提供される方法は、ヒトに使用することができる。
患者集団及びバイオマーカーに関する以下のセクション6.2.2に開示されているように、様々な患者が本明細書で提供される方法を受けることができ、様々なバイオマーカーを、患者の選択及びここに提供される方法のアウトカムの評価のために使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、軽度、中等度または重度の慢性膵炎の患者、及び軽度、中等度または重度の急性膵炎の患者を含む患者の選択的集団に使用することができる。他の実施形態では、本明細書で提供される方法は、膵萎縮、膵炎症の増加、膵炎における免疫細胞浸潤の増加、膵炎におけるコラーゲン沈着の増加、膵炎における線維性組織の増加、膵炎における脂肪壊死の増加、膵炎における間質浮腫の増加、膵炎における腺房及び血管の破壊の増加、膵炎における間質出血の増加、膵炎における導管拡張の増加、膵炎における腺房細胞の均質化の増加、膵炎におけるsLeの発現レベルの上昇、CA19−9の発現レベルの上昇、血清リパーゼレベルの上昇、血清アミラーゼレベルの上昇、血清C反応性タンパク質レベルの上昇、または本明細書に列挙される患者基準の任意の順列もしくは組み合わせを有する患者を含む患者の選択的集団に使用することができる。本明細書で提供される方法は、また、本明細書に記載される様々な患者集団及び様々なバイオマーカーとのすべての順列及び組み合わせで使用することができる。
他の実施形態では、本明細書で提供される方法は、膵萎縮の低減、膵炎症の低減、膵炎における免疫細胞浸潤の低減、膵炎におけるコラーゲン沈着の低減、膵炎における線維性組織の低減、膵炎における脂肪壊死の低減、膵炎における間質浮腫の低減、膵炎における腺房及び血管の破壊の低減、膵炎における間質出血の低減、膵炎における導管拡張の低減、膵炎における腺房細胞の均質化の低減、膵炎におけるsLeの発現レベルの低下、CA19−9の発現レベルの低下、血清リパーゼレベルの低下、血清アミラーゼレベルの低下、血清C反応性タンパク質レベルの低下、または本明細書に列挙されるアウトカムの任意の順列もしくは組み合わせを含み得る、セクション6.2.2に示されているこれらの方法の治療アウトカムのために、様々な患者において、または様々なバイオマーカーとともに使用することができる。本明細書で提供される方法は、さらに、本明細書で提供される様々な患者集団、様々なバイオマーカー及び/または治療アウトカムとのすべての順列及び組み合わせで使用することができる。
6.2.1 膵炎の処置方法に使用するための治療剤
記載した特性を有する様々な種類の分子を、本明細書で提供される方法に使用することができる。本開示は、膵臓におけるCA19−9の発現の上昇が、膵炎の惹起、発症及び悪化の根底をなすシグナル伝達及び/または病理学的経路を引き起こすことを示す。したがって、本開示は、CA19−9の発現の上昇、シアリルルイスのレベルの上昇またはそれらの組み合わせを阻害するか、遮断するか、元に戻すか、低減させるかまたは減弱させることができ、膵炎を予防、処置、改善または管理するために本明細書で提供される方法に使用することができる、治療剤を提供する。本開示はさらに、CA19−9の発現の上昇がEGFRシグナル伝達経路の活性化をもたらすことを示す。いくつかの特定の実施形態では、本明細書で提供される方法に使用することができる治療剤には、膵臓の1つ以上のシグナル伝達マーカーを低減させる活性を有する薬剤が含まれ、このシグナル伝達マーカーは、膵臓内のAktリン酸化、膵臓内のEGFRリン酸化、膵臓内のErk1/2リン酸化、膵臓内のCA19−9レベル、及び膵臓内のシアリルルイスレベルからなる群から選択される。
前述の通り、CA19−9は、シアリルルイスのエピトープを保有する糖タンパク質などのタンパク質、及び糖脂質などの脂質を包含する。本開示は、抗CA19−9抗体(実施例1、2及び3の5B1及びNS19−9など)を用いた免疫沈降アッセイにより同定されたCA19−9のリストを提供する。本開示はまた、前述のCA19−9の定義に記載されているものなどの、シアリルルイスを保有することが当業者に公知である糖タンパク質などのタンパク質、及び糖脂質などの脂質を含むCA19−9を提供する。
前述の通り、本明細書で提供される方法に使用することができる治療剤には、様々な分類の薬剤、例えば、セクション6.2.1.1に記載の抗CA19−9などの抗体薬剤及びセクション6.2.1.2に記載のペプチドまたはペプチド模倣物などが含まれる。
治療剤は、CA19−9の活性を調節し得る。分子の活性を「調節する」とは、分子の活性を変化させることを指す。例えば、CA19−9の活性を調節することは、CA19−9の特定の活性の程度を、そのような調節がない場合のCA19−9のその活性の程度と比較して増加または減少させることを含む。特定の例では、CA19−9の活性を調節することは、1つ以上のCA19−9の活性の程度を減少させることを含む。いくつかの例では、CA19−9の活性を調節することは、1つ以上のCA19−9の活性を完全に予防することを含む。他の例では、CA19−9の活性を調節することは、少なくとも1つのCA19−9の活性の程度を増加させることを含む。別の例では、CA19−9の活性を調節することは、そのような調節がない場合には通常生じないCA19−9の活性を誘導することを含む。調節されている標的分子に関する「モジュレーター」は、この段落で記載されているように、標的分子の活性を「調節」することができる分子を指す。
CA19−9の活性は、細胞、組織、器官、生物または任意の生体系における、例えば膵臓または膵細胞におけるCA19−9の活性を指す。CA19−9の作用は、細胞、組織、器官、生物または任意の生体系における、例えば膵臓または膵細胞におけるCA19−9活性の結果を指す。CA19−9のそのような活性には、CA19−9に直接結合するか、または別の方法で相互作用する別の分子に対する生化学的、生物物理学的、位置的または量的変化の誘導などのCA19−9の即時活性が含まれる。そして、CA19−9の対応する作用には、CA19−9に直接結合するか、または別の方法で相互作用する別の分子の、CA19−9により誘導される生化学的、生物物理学的、位置的または量的変化などの結果が含まれる。そのような活性にはまた、CA19−9に直接結合すること、または別の方法で相互作用することはないが、CA19−9により誘導される活性カスケード(例えば、シグナル伝達カスケード)のさらに下流のCA19−9の存在または刺激に応答する別の分子に対する、生化学的、生物物理学的、位置的または量的変化を誘導するような活性が含まれる。そして、CA19−9の対応する作用には、CA19−9に直接結合すること、または別の方法で相互作用することはないが、CA19−9の活性カスケード(例えば、シグナル伝達カスケード)のさらに下流のCA19−9の存在または刺激に応答する別の分子の、CA19−9により誘導される生化学的、生物物理学的、位置的または量的変化などの結果が含まれる。CA19−9活性の例としては、EGFR、Akt及びErkなどの分子のリン酸化の増加をもたらすEGFRシグナル伝達経路の活性化、E−セレクチンを含むセレクチンなどの、CA19−9と直接または間接的に相互作用することができる分子との結合、ならびに観察可能な生物学的作用を伴ってCA19−9によって直接または間接的に影響を受け得る分子のレベルを変化させることが挙げられる。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される治療剤は、CA19−9またはCA19−9活性に拮抗することができる。そのような治療用CA19−9アンタゴニストは、CA19−9の生物学的活性のうちの1つ以上を阻害するか、減少させるか、またはそうでなければ完全に遮断することができる。CA19−9活性のアンタゴニストには、CA19−9を発現する細胞内またはCA19−9受容体などのCA19−9リガンドを発現する細胞内で、CA19−9媒介性またはCA19−9依存性のシグナル伝達を遮断するか、阻害するかまたは減少させることができる分子が含まれる。CA19−9活性のアンタゴニストには、また、CA19−9シグナル伝達を遮断するか、阻害するかまたは減少させることができる分子が含まれる。いくつかの実施形態では、CA19−9活性のアンタゴニストには、さらに、CA19−9に結合する天然の分子へのCA19−9の結合を遮断するか、阻害するかまたは減少させることができる分子が含まれる。他の実施形態では、CA19−9活性のアンタゴニストには、CA19−9受容体などのCA19−9リガンドへのCA19−9の結合を遮断するか、阻害するかまたは減少させることができる分子が含まれる。別の実施形態では、CA19−9活性のアンタゴニストには、また、CA19−9結合分子またはCA19−9エフェクターのリモデリング、プロセシング、立体構造の変化または修飾を遮断するか、阻害するかまたは減少させることができる分子が含まれる。標的分子の「アンタゴニスト」は、標的分子に対して「拮抗性」である。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される治療剤は、CA19−9またはCA19−9活性に対する遮断抗体、中和抗体またはアンタゴニスト抗体であり得、これらの抗体は、CA19−9に結合し、前述の段落[00156]で定義したように[訳者注:PCT/US2019/050262では[00156]で定義されており、本明細書では段落0079に該当]CA19−9またはCA19−9活性に対するアンタゴニストとして作用する。
6.2.1.1.本方法における治療剤としての抗体
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法に使用することができる治療剤は、膵臓におけるCA19−9の発現の上昇、膵臓におけるシアリルルイスのレベルの上昇、またはそれらの任意の組み合わせを阻害するか、遮断するか、元に戻すか、低減させるかまたは減弱させる活性を有する抗体である。本方法に適した例示的な抗体には、抗CA19−9抗体及び抗シアリルルイス抗体が含まれる。一実施形態では、本方法に適した例示的な抗体は、遮断抗体または中和抗体である。
いくつかの特定の実施形態では、本明細書で提供される方法に使用することができる治療剤は、抗CA19−9抗体または抗シアリルルイス抗体である。他の特定の実施形態では、本明細書で提供される方法に使用することができる治療剤は、抗CA19−9遮断抗体または抗シアリルルイス遮断抗体である。
当業者には理解されるように、抗シアリルルイス抗体は、抗CA19−9抗体のサブセットであり得、両方の抗体は、本明細書で提供される方法に使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法に使用することができる抗体は、CA19−9及び/またはシアリルルイスに結合する抗体またはその機能的断片であり得、この抗体は、配列番号2の残基20〜142、配列番号6の残基20〜142、配列番号10の残基20〜142及び配列番号14の残基20〜145からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む。
別の実施形態では、本明細書で提供される方法に使用することができる抗体は、CA19−9及び/またはシアリルルイスに結合する抗体またはその機能的断片であり得、この抗体は、配列番号4の残基20〜130、配列番号8の残基20〜129、配列番号12の残基20〜130及び配列番号16の残基23〜130からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む。
別の実施形態では、本明細書で提供される方法における抗CA19−9抗体は、抗体またはその機能的断片であり得、その抗体重鎖もしくは軽鎖またはその機能的断片は、図1〜8に示されるまたは表2に記載される相補性決定領域(CDR)のうちの1つ以上を有する。別の態様では、本明細書で提供される方法における抗CA19−9抗体は、米国特許第9,475,874号(その全体が参照により組み込まれる)に記載されているクローン分離株5B1、9H3、5H11または7E3のいずれか1つの補体依存性細胞傷害(CDC)活性及び/または抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を含み得る。抗体またはその機能的断片の特異性、親和性及び/または結合力を評価するための方法は、当該技術分野で周知であり、例示的な方法が本明細書で提供される。
表2:クローン分離株のCDR
Figure 2022500382
Figure 2022500382
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法における抗CA19−9抗体は、6つ未満のCDRを有する抗体またはその機能的断片を含み得る。いくつかの実施形態では、治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片は、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2及び/またはVL CDR3からなる群から選択される1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのCDRを含む。特定の実施形態では、治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片は、米国特許第9,475,874号(その全体が参照により組み込まれる)に記載されているクローン分離株5B1、9H3、5H11または7E3のVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2及び/またはVL CDR3からなる群から選択される1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのCDRを含む。
いくつかの実施形態では、本開示は、治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片を提供し、この抗体または機能的断片は、米国特許第9,475,874号に記載されているクローン分離株5B1、9H3、5H11または7E3のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を有する可変重(VH)鎖ドメインを含む。そのようなVHドメインは、配列番号2のアミノ酸残基55〜62、70〜77及び116〜131、または代わりに配列番号6のアミノ酸残基45〜52、70〜77及び116〜131、または代わりに配列番号10のアミノ酸残基45〜52、70〜77及び116〜131、または代わりに配列番号14のアミノ酸残基45〜52、70〜77及び116〜134を含み得る。
別の実施形態では、本開示は、治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片を提供し、この抗体は、米国特許第9,475,874号に記載されているクローン分離株5B1、9H3、5H11または7E3のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を有する可変軽(VL)鎖ドメインを含む。そのようなVLドメインは、配列番号4のアミノ酸残基45〜52、70〜72及び109〜120、または代わりに配列番号8のアミノ酸残基45〜52、70〜72及び109〜119、または代わりに配列番号12のアミノ酸残基45〜52、70〜72及び109〜120、または代わりに配列番号16のアミノ酸残基49〜53、72〜74及び111〜120を含み得る。
いくつかの実施形態では、本開示は、sLeに結合する治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片を提供する。したがって、いくつかの態様では、本開示は、sLeに結合する単離された抗体またはその機能的断片であって、配列番号2の残基20〜142、配列番号6の残基20〜142、配列番号10の残基20〜142及び配列番号14の残基20〜145からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む抗体またはその機能的断片を提供する。
いくつかの実施形態では、本開示は、sLeに結合する治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片であって、配列番号4の残基20〜130、配列番号8の残基20〜129、配列番号12の残基20〜130及び配列番号16の残基23〜130からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む抗体またはその機能的断片を提供する。
いくつかの実施形態では、本開示は、sLeに結合する治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片であって、VHドメイン及びVLドメインの両方を含み、このVHドメイン及びVLドメインがそれぞれ、配列番号2の残基20〜142及び配列番号4の残基20〜130、配列番号6の残基20〜142及び配列番号8の残基20〜129、配列番号10の残基20〜142及び配列番号12の残基20〜130、ならびに配列番号14の残基20〜145及び配列番号16の残基23〜130からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能的断片を提供する。
いくつかの実施形態では、本開示は、sLeに結合する治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片であって、表2に示され記載されているCDRのうちの1つ以上を有する抗体または機能的断片を提供する。いくつかのさらなる実施形態では、本開示は、CDRのうちの1つ以上(特にCDR3)を含み、米国特許第9,475,874号に記載されているようにsLeに特異的に結合することができる治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片を提供する。いくつかの態様では、本明細書で提供される方法における治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片は、米国特許第9,475,874号に記載されているクローン分離株5B1、9H3、5H11または7E3のいずれか1つのCDC活性及び/またはADCC活性を含み得る。
いくつかの実施形態では、本開示は、本方法における治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片を提供し、この抗体は、米国特許第9,475,874号に記載されているクローン分離株5B1、9H3、5H11または7E3のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を有するVH鎖ドメインを含む。そのようなVHドメインは、配列番号2のアミノ酸残基55〜62、70〜77及び116〜131、または代わりに配列番号6のアミノ酸残基45〜52、70〜77及び116〜131、または代わりに配列番号10のアミノ酸残基45〜52、70〜77及び116〜131、または代わりに配列番号14のアミノ酸残基45〜52、70〜77及び116〜134を含み得る。
いくつかの実施形態では、本開示は、本方法における治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片を提供し、この抗体は、米国特許第9,475,874号に記載されているクローン分離株5B1、9H3、5H11または7E3のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を有するVL鎖ドメインを含む。そのようなVLドメインは、配列番号4のアミノ酸残基45〜52、70〜72及び109〜120、または代わりに配列番号8のアミノ酸残基45〜52、70〜72及び109〜119、または代わりに配列番号12のアミノ酸残基45〜52、70〜72及び109〜120、または代わりに配列番号16のアミノ酸残基49〜53、72〜74及び111〜120を含み得る。
いくつかの実施形態では、本方法における治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、本方法における治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片は、IgGまたはIgMアイソタイプである。さらなる実施形態では、本方法における治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブクラスの抗体である。
いくつかの実施形態では、本方法における治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、Fabc、scFV、ダイアボディ、トリアボディ、ミニボディまたは単一ドメイン抗体(sdAB)であり得るが、これらに限定されない。いくつかの態様では、本開示は、配列番号18または配列番号20のアミノ酸配列を含むダイアボディを本方法に提供する。そのような本開示のダイアボディは、いくつかの態様では、配列番号17または19の核酸配列を有するポリヌクレオチドによってコードされ得る。抗体及びその機能的断片に関して、様々な形態、変更及び改変が当該技術分野で周知である。本開示のsLeまたはCA19−9特異的抗体断片は、そのような様々な抗体形態、変更及び改変のいずれかを含み得る。当該技術分野において公知であるそのような様々な形態及び用語の例を以下に示す。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法に使用することができる抗体は、CA19−9及び/またはシアリルルイスに結合する抗体またはその機能的断片であり得、この抗体は、ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の重鎖のアミノ酸配列からなる重鎖を含む。別の実施形態では、本明細書で提供される方法に使用することができる抗体は、CA19−9及び/またはシアリルルイスに結合する抗体またはその機能的断片であり得、この抗体は、ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の軽鎖のアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。さらなる実施形態では、本明細書で提供される方法に使用することができる抗体は、CA19−9及び/またはシアリルルイスに結合する抗体またはその機能的断片であり得、この抗体は、ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の軽鎖のアミノ酸配列からなる軽鎖、及びATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の重鎖のアミノ酸配列からなる重鎖を含む。
別の実施形態では、本明細書で提供される方法における抗CA19−9抗体は、抗体またはその機能的断片であり得、抗体重鎖もしくは軽鎖またはその機能的断片は、ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の相補性決定領域(CDR)のうちの1つ以上を有する。別の態様では、本明細書で提供される方法における抗CA19−9抗体は、ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の補体依存性細胞傷害(CDC)活性及び/または抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を含み得る。抗体またはその機能的断片の特異性、親和性及び/または結合力を評価するための方法は、当該技術分野で周知であり、例示的な方法が本明細書で提供される。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法における抗CA19−9抗体は、6つ未満のCDRを有する抗体またはその機能的断片を含み得る。いくつかの実施形態では、治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片は、ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体のVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2及び/またはVL CDR3からなる群から選択される1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのCDRを含む。特定の実施形態では、治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片は、米国特許第4,471,057号(その全体が参照により組み込まれる)に記載されたクローン分離株番号SW−1116−19−9(1116−NS−19−9、NS−19−9またはNS19−9としても知られる)のVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2及び/またはVL CDR3からなる群から選択される1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのCDRを含む。
いくつかの実施形態では、本開示は、治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片を提供し、この抗体または機能的断片は、ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の可変重(VH)鎖ドメインCDR1、CDR2及びCDR3配列のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を有するVH鎖ドメインを含む。別の実施形態では、本開示は、治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片を提供し、この抗体は、ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の可変軽(VL)鎖ドメインCDR1、CDR2及びCDR3配列のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を有するVL鎖ドメインを含む。さらなる実施形態では、本開示は、治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片を提供し、この抗体は、ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体のVL鎖ドメインCDR1、CDR2及びCDR3配列のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を有するVL鎖ドメイン、ならびにATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体のVH鎖ドメインCDR1、CDR2及びCDR3配列のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を有するVH鎖ドメインを含む。
いくつかの実施形態では、本開示は、sLeに結合する単離された抗体またはその機能的断片を提供し、この抗体またはその機能的断片は、ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の可変重鎖のアミノ酸配列を有するVHドメインを含む。いくつかの実施形態では、本開示は、sLeに結合する治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片を提供し、この抗体またはその機能的断片は、ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の可変軽鎖のアミノ酸配列を有するVLドメインを含む。別の実施形態では、本開示は、sLeに結合する治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片を提供し、この抗体またはその機能的断片は、ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の可変軽鎖のアミノ酸配列を有するVLドメイン、及びATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の可変重鎖のアミノ酸配列を有するVHドメインを含む。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法に使用することができる抗体は、CA19−9及び/またはシアリルルイスに結合する抗体またはその機能的断片であり得、この抗体は、クローン分離株NS19−9の重鎖のアミノ酸配列からなる重鎖を含む。別の実施形態では、本明細書で提供される方法に使用することができる抗体は、CA19−9及び/またはシアリルルイスに結合する抗体またはその機能的断片であり得、この抗体は、クローン分離株NS19−9の軽鎖のアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。さらなる実施形態では、本明細書で提供される方法に使用することができる抗体は、CA19−9及び/またはシアリルルイスに結合する抗体またはその機能的断片であり得、この抗体は、クローン分離株NS19−9の軽鎖のアミノ酸配列からなる軽鎖、及びクローン分離株NS19−9の重鎖のアミノ酸配列からなる重鎖を含む。
いくつかの実施形態では、本開示は、本方法における治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片を提供し、この抗体は、クローン分離株NS19−9のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を有するVH鎖ドメインを含む。いくつかの実施形態では、本開示は、本方法における治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片を提供し、この抗体は、クローン分離株NS19−9のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を有するVL鎖ドメインを含む。別の実施形態では、本開示は、本方法における治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片を提供し、この抗体は、クローン分離株NS19−9のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を有するVH鎖ドメイン、ならびにクローン分離株NS19−9のCDR1、CDR2及びCDR3アミノ酸配列を有するVL鎖ドメインを含む。
いくつかの追加の態様では、本開示は、sLeに結合する単離された抗体またはその機能的断片を提供し、この抗体またはその機能的断片は、クローン分離株NS19−9の可変重鎖のアミノ酸配列を有するVHドメインを含む。いくつかの実施形態では、本開示は、sLeに結合する治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片を提供し、この抗体またはその機能的断片は、クローン分離株NS19−9の可変軽鎖のアミノ酸配列を有するVLドメインを含む。別の実施形態では、本開示は、sLeに結合する治療用抗CA19−9抗体またはその機能的断片を提供し、この抗体またはその機能的断片は、クローン分離株NS19−9の可変軽鎖のアミノ酸配列を有するVLドメイン、及びクローン分離株NS19−9の可変重鎖のアミノ酸配列を有するVHドメインを含む。
いくつかの実施形態では、本方法における治療用抗体またはその機能的断片を、米国特許第9,475,874号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、適切な手段により(例えば、組換えにより、生物学的に、または合成により)生成することができ、適切な手段(例えば、クロマトグラフィー、遠心分離、タグによるアフィニティー分離または溶解度差)により精製することができる。
本明細書で提供される方法における治療用抗体には、Fab断片が含まれる。Fab断片は、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価の断片を指し、F(ab’)断片は、ヒンジ領域でジスルフィドブリッジによって連結した2つのFab断片を含む二価の断片であり、Fd断片は、VH及びCH1ドメインからなり、Fv断片は、抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなり、dAb断片(Ward et al.,Nature 341:544−546,(1989))はVHドメインからなる。
本明細書で提供される方法における治療用抗体は、1つ以上の結合部位を有し得るものを含む。複数の結合部位がある場合、結合部位は互いに同一であっても、または異なっていてもよい。例えば、天然免疫グロブリンは2つの同一の結合部位を有し、一本鎖抗体またはFab断片は1つの結合部位を有しているが、一方で、「二重特異性」または「二機能性」抗体は2つの異なる結合部位を有する。
本明細書で提供される方法における治療用抗体は、また、一本鎖抗体であり得る。一本鎖抗体(scFv)は、VL領域及びVH領域がリンカー(例えば、アミノ酸残基の合成配列)を介して連結し、連続的なポリペプチド鎖を形成する抗体であって、このリンカーが、タンパク質鎖自体が折り返って一価の抗原結合部位を形成するのに十分な長さである抗体を指す(例えば、Bird et al.,Science 242:423−26(1988)及びHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−83(1988)を参照されたい)。ダイアボディは、2つのポリペプチド鎖を含む二価抗体であって、各ポリペプチド鎖がVHドメイン及びVLドメインを含み、このVHドメイン及びVLドメインが、同一鎖上で2つのドメイン間が対形成するには短すぎるリンカーによって連結されており、それにより各ドメインが別のポリペプチド鎖上の相補的ドメインと対合できる、二価抗体を指す(例えば、Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−48(1993)及びPoljak et al.,Structure 2:1121−23(1994)を参照されたい)。ダイアボディの2つのポリペプチド鎖が同一である場合、それらの対合から生じるダイアボディは、2つの同一の抗原結合部位を有することになる。異なる配列を有するポリペプチド鎖を使用して、2つの異なる抗原結合部位を有するダイアボディを作製することができる。同様に、トリボディ及びテトラボディは、それぞれ3つ及び4つのポリペプチド鎖を含み、同じであってもまたは異なっていてもよいそれぞれ3つ及び4つの抗原結合部位を形成する抗体である。
本開示はまた、米国特許第9,475,874号に記載されている5B1、9H3、5H11及び/または7E3の誘導体、ならびに米国特許第4,471,057号に記載されているNS19−9の誘導体である抗体またはその機能的断片を提供し、この抗体または機能的断片は、CA19−9及びsLeに結合する。当業者に周知の標準的技術を使用して、本開示の抗体またはその機能的断片をコードするヌクレオチド配列に突然変異を導入することができ、それらとしては、例えば、アミノ酸置換を引き起こす部位特異的変異導入及びPCR媒介変異導入が含まれる。いくつかの態様では、誘導体は、元の分子と比較して、25個未満のアミノ酸置換、20個未満のアミノ酸置換、15個未満のアミノ酸置換、10個未満のアミノ酸置換、5つ未満のアミノ酸置換、4つ未満のアミノ酸置換、3つ未満のアミノ酸置換または2つ未満のアミノ酸置換を含む。
いくつかの実施形態では、本開示は、天然アミノ酸の修飾形態、保存的置換、天然に存在しないアミノ酸、アミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物を有する治療用抗体またはその機能的断片(但し、そのような抗体または機能的断片が本明細書に定義する機能的活性を保持する場合に限る)を提供する。一実施形態では、誘導体は、1つ以上の予測される非必須アミノ酸残基で行われる保存的アミノ酸置換を有する。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる置換である。類似の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されている。それらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。あるいは、飽和変異導入などにより、突然変異をコード配列のすべてまたは一部に沿ってランダムに導入することができ、得られた突然変異体を生物学的活性についてスクリーニングして、活性を保持する突然変異体を同定することができる。変異導入後、コードされた抗体またはその機能的断片を発現させることができ、抗体または機能的断片の活性を判定することができる。
いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の抗体または機能的断片に含まれるFc断片の修飾されたフコシル化、ガラクトシル化及び/またはシアリル化を有する治療用抗体またはその機能的断片を提供する。Fc断片のそのような修飾は、Peipp et al.,Blood,112(6):2390−2399(2008)で論じられているように、Fc受容体に媒介される活性に影響を及ぼす可能性がある。例えば、FcのN−グリカンからのコアフコース残基を欠く糖鎖改変された治療用抗体は、フコシル化された治療用抗体と比較してはるかに高い有効性で、低濃度で強力なADCCを示す。Shields et al.,J.Biol.Chem.,277(30):26733−40(2002)、Okazaki et al.,J Mol Biol.,336:1239−1249(2004)、Natsume et al.,J.Immunol.Methods.,306:93−103(2005)。抗体のフコシル化、ガラクトシル化及び/またはシアリル化をその機能的断片について修飾するための方法は、当該技術分野において周知である。例えば、脱フコシル化手法は、Yamane−Ohnuki et al.,MAbs.,1(3):230−236(2009)に記載されているように、(1)非哺乳動物細胞のN−グリコシル化経路の「ヒト化」非フコシル化経路への変換、(2)哺乳動物細胞のN−グリカンフコシル化経路の不活性化、及び(3)非フコシル化N−糖タンパク質のin vitroでの化学合成またはN−グリカンの非フコシル化形態への酵素的修飾の3つの方法論に分類することができる。これらの方法のいずれか1つまたは当該技術分野において周知の任意の他の方法を使用して、修飾されたフコシル化、ガラクトシル化及び/またはシアリル化を有する抗体またはその機能性断片を生成することができることが理解される。
6.2.1.2.本方法における治療剤としてのペプチド及びペプチド模倣物
ペプチド及びペプチド模倣物は、標的タンパク質との選択的かつ高親和性の相互作用に必要な構造的多様性を与える。本開示は、本方法における治療剤としてのペプチド及びペプチド模倣物を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法に使用することができる治療剤は、膵臓におけるCA19−9の発現の上昇、膵臓におけるEGFRシグナル伝達経路の増加、膵臓におけるシアリルルイスのレベルの上昇、またはそれらの任意の組み合わせを阻害するか、遮断するか、元に戻すか、低減させるかまたは減弱させる活性を有するペプチドまたはペプチド模倣物である。本方法に適した例示的なペプチドまたはペプチド模倣物には、CA19−9及びシアリルルイスからなる群から選択される標的に特異的に結合するものが含まれる。一実施形態では、本方法に適した例示的なペプチドは、遮断ペプチドまたは中和ペプチドである。別の実施形態では、本方法に適した例示的なペプチド模倣物は、遮断ペプチド模倣物または中和ペプチド模倣物である。
本方法における治療用ペプチドは、2つのタンパク質間の結合領域の配列に基づき得る。線形配列は、構造化ドメイン内のループ、またはタンパク質末端の無秩序な領域、または所定のドメインの間に由来し得る。所望の有効性を達成するために、治療用ペプチドを、標的配列との融合を介して生物、組織または細胞の適切な部位に標的化させることができ、治療用ペプチドは、in vivoで目的のタンパク質標的に結合する。一実施形態では、治療用ペプチドは短いペプチド配列、例えば、3つ以下、4つ以下、5つ以下、6つ以下、7つ以下、8つ以下、9つ以下、10個以下、11個以下、12個以下、13個以下、14個以下、15個以下、16個以下、17個以下、18個以下、19個以下、20個以下、21個以下、22個以下、23個以下、24個以下、25個以下、26個以下、27個以下、28個以下、29個以下、30個以下、35個以下、40個以下、45個以下、50個以下、55個以下、60個以下、65個以下、70個以下、75個以下、80個以下、85個以下、90個以下、95個以下、100個以下のアミノ酸のペプチドであり、これは、標的タンパク質に結合してその機能を遮断し、本明細書で提供される必要な活性をもたらす。これらの線形配列は、標的タンパク質に関する利用可能な構造情報、例えば、ペプチドまたはペプチド模倣物の構造に基づく設計に従って決定することができる。さらに、治療用ペプチド及びペプチド模倣物を、セクション6.2.1.2に記載されているペプチドライブラリー及びアレイ技術を使用して、段落[00189]に記載の[訳者注:PCT/US2019/050262では[00189]に記載されており、本明細書では段落0112に該当]膵炎に関連する標的を予防、処置、改善または管理するためにスクリーニング及び選択することができる。
治療用ペプチドまたはその変異体の活性は、ペプチドまたはペプチド模倣物のライブラリーから、セクション6.3及び実施例に記載されているアッセイのいずれかで同定、試験及び検証することができる。治療用ペプチドは、ペプチドまたはペプチド模倣物のライブラリーから、セクション6.3及び6.2.1.2に記載されているアッセイに従ってスクリーニング及び同定することができる。ペプチドは、当業者に周知の方法、例えば、WO2007/019545、WO2015/009820A2及びWO2009/094172A2(これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている方法に従って組換えによりまたは合成により生成することができる。
治療用ペプチドを同定及び選択することができるペプチドライブラリー及びペプチド模倣物ライブラリーは、当業者に周知である。例えば、適切なペプチドライブラリーは、ライブラリーの通常構造の一部としてペプチドの発現に関連する遺伝子型またはペプチド配列をコードするDNA配列を有する、生物学的ペプチドライブラリーであり得る。例示的な生物学的ペプチドライブラリーには、ファージ、細菌、リボソーム、mRNA、酵母、cDNA、レトロウイルス、バキュロウイルス及び哺乳動物細胞ディスプレイのものが含まれる。適切なペプチドライブラリーはまた、合成により生成される化学的ペプチドライブラリーであり得る。例示的な化学的ペプチドライブラリーには、1ビーズ1化合物(one−bead one−compound)(OBOC)ライブラリー及び位置スキャン合成ペプチドコンビナトリアルライブラリー(PS−SPCL)などのコンビナトリアルペプチドライブラリーが含まれる。例えば、ポリペプチドライブラリーなどの線形コンビナトリアル化学的ライブラリーは、一組の化学的構成要素(アミノ酸)を、所与の化合物の長さ(すなわち、ポリペプチド化合物中のアミノ酸の数)について考えられるすべての方法で組み合わせることにより形成される。化学的構成要素のそのようなコンビナトリアル混合を介して、何百万個もの化学的化合物を合成することができる。ペプチドライブラリーを作製するための、ならびに様々なペプチドライブラリーから標的結合ペプチド及び/または標的遮断ペプチドを選択するための詳細なプロトコルは、Kehoe JW,et al.,Chem.Rev.2005;105:4056、Hill HR,et al.,Mol.Microbiol.1996;20:685、Smith GP,et al.,Chem.Rev.1997;97:391;Cabilly S.Mol.Biotechnol.1999;12:143、Fukunaga K,et al.,J.Nucleic Acids.2012;2012:9、Gray BP,et al.,Chem Rev.2014;114(2):1020−1081に記載されており、これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
特定の実施形態では、本方法で使用するためのペプチドは、特定の構造または機能モチーフ(複数可)を含み得る。ペプチドのモチーフは、ペプチド鎖のアミノ酸配列内の一組の連続するアミノ酸、及び/または前記ペプチドの二次構造及び/または三次構造内の一組の直線的または空間的に隣接するアミノ酸のいずれかを指す。モチーフは、すべてまたは一部がタンパク質フォールディングの結果として形成され得るため、記載されたモチーフ中で隣接するアミノ酸は、ペプチドの線形アミノ酸配列内で0個、1つ以上、5つ以上、10個以上、15個以上または20個以上のアミノ酸により分離される場合がある。例えば、治療用ペプチドは、本明細書で提供される抗CA19−9のいずれかのCDR配列のいずれかのペプチドまたはその変異体であり得る。
特定の実施形態では、本方法で使用するためのペプチドは、本明細書で提供される任意の治療用ペプチドに対して、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%の配列同一性を有するペプチドを含む。2つのアミノ酸配列の同一性パーセントを決定するために、最適な比較を目的として配列をアラインメントする。次に、対応するアミノ酸位置のアミノ酸残基を比較する。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基によって占有される場合、分子は、その位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、それらの配列によって共有される同一の位置の数の関数(すなわち、同一性パーセント=同一の重複する位置の数×100/位置の総数)である。一実施形態では、2つの配列は同じ長さである。代替的実施形態では、配列は異なる長さであり、それにより、同一性パーセントは、より短い配列のより長い配列の一部分との比較を指し、ここで、前記一部分は前記より短い配列と同じ長さである。
さらなる修飾を含むペプチドもまた、膵炎を予防、処置、改善または管理するために本明細書で提供される方法で使用することができる。例えば、上記の構造モチーフのペプチドは、1つ以上の(D)−アミノ酸を用いて合成することができる。本明細書で提供される方法において有用なペプチドに(L)−アミノ酸または(D)−アミノ酸を含めることの選択は、部分的に、ペプチドの所望の特性に依存する。例えば、1つ以上の(D)−アミノ酸の組み込みは、in vitroまたはin vivoでペプチドに安定性の増加を付与することができる。1つ以上の(D)−アミノ酸の組み込みはまた、例えば、本明細書に記載のバイオアッセイ、または当該技術分野において周知の他の方法を使用して判定されるように、ペプチドの結合活性を増加または減少させることができる。
(L)−アミノ酸配列の全部または一部を鏡像異性の(D)−アミノ酸のそれぞれの配列によって置換すると、ペプチド鎖のそれぞれの部分に光学異性体構造が生じる。(L)−アミノ酸配列の全部または一部の配列の反転により、ペプチド鎖の逆類似体(retro−analogue)が生じる。鏡像異性的(LからD、またはDからL)置換と配列の反転との組み合わせにより、ペプチドの逆反転類似体(retro−inverso−analogue)が生じる。鏡像異性ペプチド、それらの逆類似体及びそれらの逆反転類似体が親ペプチドとの顕著な位相幾何学的関係を維持し、親及びその逆反転類似体について、しばしば特に高度の類似性が得られることは、当業者には公知である。この関係及び類似性は、ペプチドの生化学的特性、特に、受容体タンパク質への各ペプチド及び類似体の高い結合性に反映され得る。ペプチドの逆反転類似体の特性の合成は、例えば、Methods of Organic Chemistry(Houben−Weyl),Synthesis of Peptides and Peptidomimetics−Workbench Edition Volume E22c(Editor−in−chief Goodman M.)2004(George Thieme Verlag Stuttgart,New York)及びその中に引用されている参照文献に論じられており、これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書で提供される治療用ペプチドには、アミノ酸修飾を有するペプチドも含まれる。アミノ酸の「修飾」とは、天然に存在するアミノ酸を改変し、天然に存在しないアミノ酸を生成することを指す。天然に存在しないアミノ酸を有する、本明細書で提供される方法で使用することができるペプチドの誘導体は、Christopher J.Noren,Spencer J.Anthony−Cahill,Michael C.Griffith,Peter G.Schultz,1989 Science,244:182−188(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、化学合成によって、または生合成の際に非天然アミノ酸をペプチドへ部位特異的に組み込むことによって生成することができる。
治療的に有用なペプチドと構造的に類似しているペプチド模倣物(peptidomimetic、peptide mimetic)を使用して、同等の治療的または予防的効果を生み出すことができる。一般に、ペプチド模倣物は、ヒト抗体などのパラダイムポリペプチド(すなわち、生化学的特性または薬理学的活性を有するポリペプチド)と構造的に類似しているが、−−CH−NH−−、−−CHS−−、−−CH−CH−−、−−CH=CH−(シス及びトランス)、−−COCH−−、−−CH(OH)CH−−、及び−CHSO−−からなる群から選択される結合に、当該技術分野において公知であり以下の参照文献にさらに記載されている方法によって任意に置換されている1つ以上のペプチド結合を有する:Spatola,AF.in “Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides,and Proteins,” B.Weinstein,eds.,Marcel Dekker,New York,p267(1983)、Spatola,AF.,Vega Data(March 1983),Vol.1.Issue 3,“Peptide Backbone Modifications”(一般的概説)、Morely,J.S.,Trends Pharma Sci(1980)pp.463−468(一般的概説)、Hudson,D.et al.,(1979)Int J Pept Prot Re 14:177−185(−−CH−NH−−、−−CH−CH−−)、Spatola,AF.et al.,(1986)Life Sci 38:1243−1249(−−CH−S−−)、Hann,M.M.,(1982)J Chem Soc Perkin Trans I 307−314(−−CH=CH−−、シス及びトランス)、Almquist,R.G.et al.,(1980)J Med Chem 23:1392(−−COCH−−)、Jennings−White,C et al.,(1982)Tetrahedron Lett 23:2533(−−COCH−−)、Szelke,M et al.,European Appln.EP 45665(1982)CA:97:39405(1982)(−−CH(OH)CH−−)、Holladay,M.W.et al.,(1983)Tetrahedron Lett 24:4401−4404(−−C(OH)CH−−)、及びHruby,VJ.,(1982)Life Sci 31:189−199(−−CH−S−−)(これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる)。
ペプチド模倣物の別の実施形態では、非ペプチド結合は、−−CHNH−−である。そのようなペプチド模倣物は、ペプチドの実施形態に対して、例えば、より経済的な生成、より高い化学的安定性、より増強された薬理学的特性(半減期、吸収、効力、有効性など)、特異性の変化(例えば、広範な生物学的活性)、抗原性の低下、及びその他のものを含む著しい利点を有し得る。
ペプチド模倣物の様々な設計が可能である。例えば、必要な立体構造が非ペプチドによって安定化されている環状ペプチドが、Loblらの米国特許第5,192,746号、Aversaらの米国特許第5,576,423号、Shashouaの米国特許第5,051,448号及びGaetaらの米国特許第5,559,103号に具体的に企図されており(これらはすべて、参照により本明細書に組み込まれる)、そのような化合物を生成するための複数の方法が記載されている。ペプチド配列を模倣する非ペプチド化合物の合成もまた、当該技術分野において公知である。Eldred et al.,J.Med.Chem.37:3882(1994)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に、ペプチド配列を模倣する非ペプチドアンタゴニストについて記載されている。同様に、Ku et al.,J.Med.Chem 38:9(1995)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、さらに、そのような化合物の一連の合成を明らかにしている。
さらに、治療用ペプチドは、ペプチド配列に突然変異を有するペプチドであり得る。本明細書で示される突然変異は、内部または末端アミノ酸残基の保存的または非保存的置換を含む置換、内部欠失及び末端残基の欠失を含む欠失、内部付加及びペプチドの2つの末端への付加を含む付加であり得、これらのすべては、当業者に周知の方法、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Fourth Edition);ISBN 978−1−936113−42−2に記載されている方法に従って行うことができる。
保存的または非保存的アミノ酸置換のいずれかを、治療用ペプチドの1つ以上のアミノ酸残基において行うことができる。保存的置換及び非保存的置換の両方を行うこともできる。保存的置換は、アミノ酸のファミリー内で起こる、それらの側鎖に関連する置換である。非保存的置換は、あるファミリーのアミノ酸を別のファミリーからのアミノ酸で置換することである。遺伝的にコードされたアミノ酸は4つのファミリー、すなわち(1)酸性=Asp(D)、Glu(G)、(2)塩基性=Lys(K)、Arg(R)、His(H)、(3)非極性(疎水性)=Cys(C)、Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Met(M)、Trp(W)、Gly(G)、Tyr(Y)、及び(4)非荷電極性=Asn(N)、Gln(Q)、Ser(S)、Thr(T)に分類することができる。非極性は、強力な疎水性=Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Met(M)、Phe(F)、及び中程度の疎水性=Gly(G)、Pro(P)、Cys(C)、Tyr(Y)、Trp(W)に細分することができる。別の方法では、アミノ酸レパートリーは、(1)酸性=Asp(D)、Glu(G)、(2)塩基性=Lys(K)、Arg(R)、His(H)、(3)脂肪族=Gly(G)、Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Ser(S)、Thr(T)
(Ser(S)及びThr(T)は、任意選択で脂肪族ヒドロキシルとして別個にグループ化される)、(4)芳香族=Phe(F)、Tyr(Y)、Trp(W)、(5)アミド=Asn(N)、Glu(Q)、ならびに(6)硫黄含有=Cys(C)及びMet(M)としてグループ化することができる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Biochemistry,4th ed.,Ed.by L.Stryer,WH Freeman and Co.,1995を参照されたい)。
特定の実施形態では、本方法で使用するためのペプチドは、単離または精製されたペプチドであり得る。単離または精製されたペプチドは、言及されるペプチドがそのペプチドを産生した細胞もしくは微生物中で見られるような少なくとも1つの成分を実質的に含まないか、または言及されるペプチドが最初に合成されたときに混合物中で見られるような少なくとも1つの成分を実質的に含まないペプチドを指す。したがって、ペプチドは、細胞物質(脂質、DNA及び/または炭水化物など)またはタンパク質もしくはペプチドが由来する細胞源もしくは組織源からの他の混入タンパク質を実質的に含まなくてもよく、あるいは、化学的に合成された場合に化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まなくてもよい。「実質的に含まない」という言葉は、ペプチドが単離される混合物の1つ以上の成分から、ペプチドが分離されているペプチドの調製物を含む。したがって、細胞物質を実質的に含まないペプチドには、約30%未満、約20%未満、約10%未満または約5%未満(乾燥重量による)の異種タンパク質(本明細書において「混入タンパク質」とも称される)を有するペプチドの調製物が含まれる。ペプチドが組換えにより産生される場合、ペプチドは培地を実質的に含まなくてもよく、例えば、培地は、タンパク質調製物の量の約20%未満、約10%未満または約5%未満に相当する。ペプチドが化学合成によって生成される場合、ペプチドは化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まなくてもよく、例えば、ペプチドはタンパク質の合成に関与する化学前駆体または他の化学物質から分離される。したがって、ペプチドのそのような調製物は、目的のペプチド以外に、約30%未満、約20%未満、約10%未満または約5%未満(乾燥重量による)の化学的前駆体または化合物を有する。例えば、本明細書で提供されるペプチド及び/または本明細書で提供される方法において有用なペプチドは、単離もしくは精製されたペプチド、または単離もしくは精製されていないペプチドであり得る。
6.2.2 患者集団、バイオマーカー及び治療アウトカム
前述の通り、膵炎は慢性膵炎と急性膵炎に分類することができる。いくつかの実施形態では、急性膵炎と慢性膵炎との違いは、膵炎症及び膵損傷の持続期間及び持続性にある。急性膵炎は、しばしば鋭い腹痛を伴う膵炎の単独の(突然または短いこともある)エピソードを指す。慢性膵炎は、膵臓の外分泌及び/または内分泌機能の長期にわたる障害につながる、膵臓における持続性の不可逆的な炎症及び線維化状態を指す。したがって、慢性膵炎は、炎症が膵臓で持続する膵炎を含み得、または、たとえ炎症が消失したとしても、線維化、石灰化及び導管損傷を特徴とするような結果として生じる膵臓への損傷は、膵機能に影響を及ぼし続ける。前述及び後述の考察から明らかなように、急性膵炎及び慢性膵炎を発症する原因及び機序は重複している。したがって、当業者は、急性膵炎が慢性膵炎につながるおそれがあり、慢性膵炎患者が急性膵炎のエピソードを発症するおそれがあることを理解するであろう。さらに、患者は、急性膵炎の1つ以上のエピソードが消失してから、慢性膵炎を発症するおそれがある。
急性膵炎は、本明細書に記載の様々なマーカーに従って、異なる病期にさらに分類することができる。例えば、急性膵炎は、アトランタ分類(Edward L.Bradley,Arch Surg.1993;128(5):586−590。これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に従って、軽度の急性膵炎と重度の急性膵炎にさらに分類することができる。軽度の急性膵炎は、臓器障害が最小限であり、膵組織壊死がなく、臓器不全がなく、及び/または自然治癒の経過を伴う急性膵炎を指す。重度の急性膵炎は、臓器不全、偽嚢胞などの膵局所合併症、及び/または組織壊死(壊死性膵炎)を伴う膵炎を指す。急性膵炎をさらに分類するために、Chapter 37 on Acute Pancreatitis,GI/Liver Secrets Plus,4th edition,edited by McNally PR,2010及びCarroll JK et al.,Am Fam Physician 2007;75:1513−20(これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように、Ranson基準、Glasgow−Imrie予後基準、CT重症度指数、APACHE II分類システム及びBalthazar造影CTスコアリングシステムを含む、様々なスコアリングシステムが採用されている。いくつかの実施形態では、様々な急性膵炎スコアリングシステムからのスコアを使用して、急性膵炎を分類することができる。例えば、Ransonシステムの11個の基準のうち3つ未満の基準への合致は、軽度の急性膵炎を示し得、一方、Ransonシステムの11個の基準のうち3つ以上の合致は、重度の急性膵炎を示し得る。一実施形態では、Glasgow−Imrieスコアリングシステムの8つの基準のうち3つ以上の合致は、重度の急性膵炎を示し得、一方、同システムの3つ未満の基準への合致は、軽度の急性膵炎を示し得る。別の実施形態では、APACHE IIスコアリングシステムの14個の基準のうち8点以上の得点は、重度の急性膵炎を示し得、一方、同システムの8点未満の得点は、軽度の急性膵炎を示し得る。さらなる実施形態では、基準及びスコアリングシステムは当業者に周知であり、Chapter 37 on Acute Pancreatitis,GI/Liver Secrets Plus,4th edition,edited by McNally PR,2010、Carroll JK et al.,Am Fam Physician 2007;75:1513−20、及びMatull WR et al.,J Clin Pathol 2006;59:340−344に詳細が記載されており、これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で提供される方法は、本明細書に開示される任意の分類システムによって分類される急性膵炎の任意の病期の患者に使用することができる。
あるいは、急性膵炎を、改訂アトランタ分類(Banks PA et al.,Gut 2013;62:102−111。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に従って、軽度の急性膵炎、中等度の急性膵炎及び重度の急性膵炎にさらに分類することができる。改訂アトランタ分類では、軽度の急性膵炎は、患者に臓器不全がなく、局所または全身性合併症のない急性膵炎を指し、中等度の急性膵炎は、患者が一過性の臓器不全(48時間以内に回復する臓器不全)、及び/または持続性の臓器不全を伴わない局所もしくは全身性合併症を有する急性膵炎を指し、重度の急性膵炎は、患者が持続性の臓器不全(48時間を超える単一臓器不全または多臓器不全)を有する急性膵炎を指す。本明細書で提供される方法は、本明細書で開示及び引用される改訂アトランタ分類に従って、軽度の急性膵炎、中等度の急性膵炎及び重度の急性膵炎の患者に使用することができる。
軽度の急性膵炎、中等度の急性膵炎及び重度の急性膵炎の分類はまた、スコアリングシステムで決定することができる。急性膵炎の分類のためのそのようなスコアリングシステムの一実施形態では、コンピュータ断層撮影重症度指数(CTSI)で患者を評価する。CTSIでは、まず、患者をBalthazarスコアで評価し、ここで、正常な膵臓はスコア0、膵腫大はスコア1、膵臓及び膵周囲脂肪における炎症性変化はスコア2、境界不鮮明な単一の膵周囲液体貯留はスコア3、2箇所以上の境界不明瞭な膵周囲液体貯留はスコア4である。患者を膵壊死スコアでさらに評価し、ここで、膵壊死なしはスコア0、30%以下の膵壊死はスコア2、30%超50%以下の膵壊死はスコア4、50%超の膵壊死はスコア6である。いくつかの実施形態では、次に、Balthazarスコアと膵壊死スコアの合計を急性膵炎の分類に使用することができ、総スコア0〜3は軽度の急性膵炎に分類され、総スコア4〜6は中等度の急性膵炎に分類され、総スコア7〜10は重度の急性膵炎に分類される。本明細書で提供される方法は、本明細書で開示されるCTSIに従って分類された、軽度の急性膵炎、中等度の急性膵炎及び重度の急性膵炎の患者に使用することができる。
さらに、急性膵炎は、Banks PA et al.,Gut 2013;62:102−111に従って間質性浮腫性膵炎と壊死性膵炎の2つのタイプに細分することができる。間質性浮腫性膵炎は、炎症性浮腫による膵臓のびまん性(または場合により限局性)の腫大を有する急性膵炎を指す。壊死性膵炎は、膵実質、膵周囲組織またはその両方の壊死を有する急性膵炎を指す。本明細書で提供される方法は、本明細書に開示される間質性浮腫性膵炎または壊死性膵炎の患者に使用することができる。
同様に、Sai JK,et al.,World J Gastroenterol.2008 Feb 28;14(8):1218−21、Sarner M,et al.,Gut.1984 Jul;25(7):756−9、Axon AT,et al.,Gut.1984 Oct;25(10):1107−12(これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているケンブリッジ分類システムに従って、慢性膵炎を、軽度の慢性膵炎、中等度の慢性膵炎及び重度の慢性膵炎(それぞれ、ケンブリッジクラスまたはケンブリッジステージI、II及びIIIとしても知られる)にさらに分類することができる。軽度の慢性膵炎は、内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(ERCP)所見で3つ以上の異常分枝、ならびに超音波またはコンピュータ断層撮影(CT)所見で以下の群:<10mmの空洞、導管不整、限局性急性壊死、実質の不均質性、導管壁のエコー輝度の上昇、及び膵頭部または膵体部の輪郭不整のうちの1つから、2つ以上を有する膵炎を指す。中等度の慢性膵炎は、ERCP所見で3つ以上の異常側枝及び異常主膵管、ならびに超音波またはCT所見で以下の群:<10mmの空洞、導管不整、限局性急性壊死、実質の不均質性、導管壁のエコー輝度の上昇、及び膵頭部または膵体部の輪郭不整のうちの1つから、2つ以上を有する膵炎を指す。重度の慢性膵炎は、少なくとも軽度及び中等度の慢性膵炎の異常を有し、さらに、ERCP所見における>10mmの大型の空洞、導管内の充填欠損、導管閉塞(狭窄)及び導管拡張もしくは不整から選択される1つ以上を有し、加えて、>10mmの大型の空洞、導管内の充填欠損、導管閉塞(狭窄)、導管拡張もしくは不整、結石及び/または膵石灰化、ならびに隣接臓器浸潤から選択される1つ以上を有する膵炎を指す。本明細書で提供される方法は、本明細書で開示される軽度の慢性膵炎、中等度の慢性膵炎及び重度の慢性膵炎の患者に使用することができる。
前述及び後述の通り、本明細書で提供される方法は、膵炎患者において、本明細書に記載される任意の1つ以上の膵炎マーカーを向上させることができる。膵炎マーカーに言及する場合の「向上させる」、「向上させること」、または「向上」という用語は、膵炎マーカーのあらゆる変化を含む(但し、その変化が膵炎を有する対象のマーカーから、膵炎を有さない対象のマーカーまたは正常基準範囲への方向である場合に限る)。したがって、膵炎の重症度と相関する膵炎マーカーの場合、膵炎マーカーのそのような「向上」は、膵炎マーカーの低減を意味する。そのような相関マーカーの例としては、免疫細胞浸潤、コラーゲン沈着、線維性組織、脂肪壊死、間質浮腫、腺房及び血管の破壊、間質出血、導管拡張、腺房細胞の均質化、sLeの発現レベル、CA19−9の発現レベル、血清リパーゼレベル、血清アミラーゼレベル、血清C反応性タンパク質レベル、体重減少、食物の吸収不良、膵萎縮、膵腫大、膵炎症、胆汁逆流及び膵炎の浸透率が挙げられる。膵炎の重症度と逆相関する膵炎マーカーの場合、膵炎マーカーのそのような「向上」は、膵炎マーカーの上昇を意味する。逆相関性の膵炎マーカーの例としては、膵機能のパーセンテージ、膵腺房の数、及び腺房細胞の数が挙げられる。マーカー及び治療アウトカムに関するさらなる開示が本明細書に提供される。
いくつかの特定の実施形態では、本開示は、本明細書で提供される方法が、患者の膵炎を消失させることにより、または例えば、本明細書に記載の任意の分類システムにより分類した場合に、重度の急性/慢性膵炎から中等度の急性/慢性膵炎へ、重度の急性/慢性膵炎から軽度の急性/慢性膵炎へ、もしくは中等度の急性/慢性膵炎から軽度の急性/慢性膵炎へ膵炎の病期を戻すことにより、患者の治療アウトカムを向上させることができることをさらに示す。本明細書で提供される方法の結果としてのそのような向上はまた、患者の膵炎病期の進行の遅延、例えば、処置されていないかもしくはプラセボで処置された同様の患者と比較した、ある病期から別の病期へのより緩慢な進行、または患者の膵炎病期の安定化、例えば疾患を次の病期へと悪化させることなく、患者の膵炎が軽度、中等度、もしくは重度の膵炎にとどまることであり得る。
あるいは、慢性膵炎を、Sarlesasによって修正されたマルセイユ−ローマ分類に従って分類することができる。この分類は、慢性膵炎を疫学、分子生物学及び形態学に基づいて4つの群に分類する。このような分類システムでは、慢性膵炎は、不規則な線維化、導管内蛋白栓、導管内結石及び/または導管損傷を特徴とする石灰化慢性膵炎;腺の変化、均質な線維化、導管拡張、腺房萎縮及び/または膵管閉塞の除去による向上を特徴とする閉塞性慢性膵炎;単核細胞浸潤、外分泌実質の破壊、びまん性線維化及び/または萎縮を特徴とする炎症性慢性膵炎;ならびに無症候性の小葉周囲のびまん性線維化を特徴とする無症候性の膵線維化に分類される。本明細書で提供される方法は、Chapter 38 on Chronic Pancreatitis,GI/Liver Secrets Plus,4th edition,edited by McNally PR,2010で論じられている、マルセイユ−ローマ分類スキームに従って分類された慢性膵炎の任意の病期の患者に使用することができる。
様々な生理学的、生物学的、組織学的、血清学的及び/またはシグナル伝達パラメータをバイオマーカーとして使用して、処置の経過をモニタリングし、本明細書に記載の治療剤(セクション6.2.1に記載の治療剤など)の投与を調整することができる。それに加えて、またはその代わりに、バイオマーカーを使用して、本明細書に開示される方法により処置する患者を選択することができる。このセクションには、本明細書で提供される方法で使用することができる様々なそのようなバイオマーカーが記載される。
上で開示した通り、膵炎の基礎症状は、膵炎症及び膵組織の損傷である。膵炎患者における例示的な膵組織の損傷としては、ランゲルハンス島、腺房細胞、膵血管、膵管、膵管細胞、膵器官系の外分泌成分、膵器官系の内分泌成分、及び/または他の膵組織への損傷が挙げられる。膵損傷は、微視的またはさらには巨視的な構造的徴候を伴い得る。
前述の通り、膵炎には、例えば、急性膵炎及び慢性膵炎が含まれ、それぞれが様々な要因及び/または病態生理によって引き起こされ得るか、またはそれらに関連し得る。例えば、急性膵炎は、胆石、微石症(胆泥)、膨大部腫瘍または膵腫瘍、乳頭部狭窄、膨大部を閉塞する虫または異物、Oddi括約筋の機能障害、総胆管瘤、十二指腸憩室及び膵管癒合不全の可能性を含むがこれらに限定されない、組織または器官の閉塞によって引き起こされ得る。急性膵炎はまた、アルコール(エチルアルコール、メチルアルコール)、サソリ毒、有機リン系殺虫剤及びその他の薬物などの毒素によっても誘発され得る。さらに、急性膵炎は、腹部への偶発的な鈍的外傷及び医原性外傷(例えば、術後の外傷)などの外傷によって引き起こされ得る。急性膵炎の他の原因には、高トリグリセリド血症及び高カルシウム血症などの代謝異常;嚢胞性線維症及び遺伝性膵炎などの遺伝性疾患;寄生虫感染症、ウイルス感染症、細菌感染症などの感染症;虚血(例えば心臓手術後)、アテローム硬化性塞栓、血管炎(例えば全身性エリテマトーデス及び結節性多発動脈炎)などの血管疾患;消化性潰瘍疾患、クローン病、ライ症候群及び低体温症などの他の種々のまたは特発性の原因が含まれ得る。様々な原因の中で、胆石及びアルコールが急性膵炎の最も一般的な原因である。本明細書で提供される方法は、本明細書で開示される原因のいずれかまたは任意の組み合わせによって引き起こされる急性膵炎を含む膵炎を予防、処置、改善または管理するために使用することができる。
同様に、慢性膵炎は、様々な要因及び/または病態生理、例えば、アルコールの使用またはアルコールの乱用、自己免疫疾患、代謝異常(副甲状腺機能亢進症(高カルシウム血症)、糖尿病もしくは高トリグリセリド血症など)、栄養性または熱帯性の要因、狭窄による組織または器官の閉塞(外傷もしくは膵炎の以前のエピソードなど)または悪性腫瘍、遺伝性膵炎及び嚢胞性線維症を含む遺伝性疾患、ならびに他の特発性の原因によって引き起こされ得るか、またはそれらに関連し得る。本明細書で提供される方法は、本明細書で開示される原因のいずれかまたは任意の組み合わせによって引き起こされる慢性膵炎を含む膵炎を予防、処置、改善または管理するために使用することができる。
膵炎には様々な原因が伴い得るため、本明細書で提供される方法は、選択的原因または選択的原因群の結果である急性及び慢性膵炎の両方を含む膵炎を予防、処置、改善または管理するために使用することができる。同様に、本明細書で提供される方法は、任意の特定の要因もしくは原因を除外した、または選択的要因群もしくは原因群を除外した原因の結果である急性及び慢性膵炎の両方を含む膵炎を予防、処置、改善または管理するために使用することができる。例えば、本明細書で提供される方法は、いかなるがんまたは腫瘍性障害にも起因しない、またはそれらに関連しない急性及び慢性膵炎の両方を含む膵炎を予防、処置、改善または管理するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、膵炎を有する患者であって、がん(例えば、膵癌)または腫瘍性障害(例えば、膵腫瘍性障害)を有していないか、またはこれらに進行していない患者の膵炎を予防、処置、改善または管理するために使用することができる。
膵炎は、膵炎症及び膵損傷の様々なマーカーを判定、測定または観察することにより測定及び観察することができる。そのようなマーカーには、膵臓の組織学的変化を示す組織学的マーカー、血中の異常を示す血清学的マーカー、膵炎の病理学的機序の根底をなすシグナル伝達経路の変化もしくは膵炎の病態の表現型であるシグナル伝達経路の変化を示すシグナル伝達マーカー、または膵炎患者の生理学的徴候もしくは変化(例えば、侵襲的手技もしくは採血なしで容易に観察可能な生理学的徴候)を示す生理学的マーカーが含まれ得る。
6.2.2.1.膵炎の血清学的マーカー、尿中マーカー及び糞便マーカー
膵炎患者の血中もしくは尿中の1つ以上の特定の物質、血中もしくは尿中のある物質の別の物質に対するレベルの比、血中もしくは尿中のある種類の物質の総合レベル(例えば、特定の酵素の総合レベル)またはそのような総合レベルに関する比を、膵炎のバイオマーカーとして使用することができる。マーカーとして機能する物質は、細胞、組織、タンパク質(酵素など)、DNA、RNA、マイクロRNA、脂質、代謝物、または膵炎の炎症もしくは損傷を反映し得る任意の他の物質であり得る。そのような血清学的膵炎マーカーの例としては、血清リパーゼレベル、血清CA19−9レベル、血清アミラーゼレベル(アミラーゼ、イソアミラーゼ及び総アミラーゼのレベルを含む)、血清C反応性タンパク質レベル、糖鎖欠損トランスフェリン、トリプシノーゲン活性化産物(例えば、トリプシノーゲン活性化ペプチドを含む)、トリプシン−1、トリプシン−2、トリプシン−1またはトリプシン−2のα−アンチトリプシンとの複合体(トリプシン−1−AAT及びトリプシン−2−AATとしても知られる)、エラスターゼ−1、ホスホリパーゼA2、プロカルシトニン(カルシトニンの前駆体)、脂質、炎症性サイトカイン及びケモカイン、マイクロRNA、ペプチド(Walgren JL et al.,Toxicol Sci.2007 Mar;96(1):184−93(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で開示されているRA1609及びRT2864)、アルコール及びアルコール代謝物(脂肪酸エチルエステル)、ならびに毒素または毒素の代謝物が挙げられる。本明細書に開示される血清学的マーカーのいずれかまたは血清学的マーカーの任意の組み合わせのレベルの上昇を、本明細書で提供される方法で使用することができる。
膵炎のマーカーとしての例示的な尿異常には、アミラーゼ、イソアミラーゼ、トリプシノーゲン活性化ペプチド、カルボキシペプチダーゼ活性化ペプチド及びホスホリパーゼA2が含まれ得る。尿中マーカーのいずれかのレベルの上昇を、本明細書で提供される方法において単独で、または本明細書に開示される任意のマーカーとの任意の順列または組み合わせで使用することができる。
さらに、膵炎のマーカーには、糞便エラスターゼ1、糞便キモトリプシン及び糞便脂肪含有量を含む糞便マーカーも含まれる。糞便マーカーのいずれかのレベルの上昇を、本明細書で提供される方法において単独で、または本明細書に開示される任意のマーカーとの任意の順列または組み合わせで使用することができる。
他の体液源からの他のマーカーも、同様に膵炎のマーカーとして使用することができる。いくつかの実施形態では、CA19−9、カテプシンB、カテプシンL、カテプシンS、リソソーム加水分解酵素及びカルボキシペプチダーゼB活性化ペプチド(CACAP)を含む膵液からのマーカーを、膵炎のマーカーとして使用することができる。膵液マーカーのいずれかのレベルの上昇を、本明細書で提供される方法において単独で、または本明細書に開示される任意のマーカーとの任意の順列または組み合わせで使用することができる。
前述の通り、血清学的マーカーのうちの1つは血清アミラーゼのレベルである。健常なヒトの正常血清アミラーゼは、アミラーゼの測定に使用される方法、及びアッセイを実施する検査室によって異なり得る。血清アミラーゼレベルを測定するための幅広い市販のキット、例えば、AbcamのAmylase Assay Kit(Colorimetric)(ab102523)及びSigma−Aldrich,Inc.のAmylase Activity Assay Kit(MAK009−1KT)が利用可能である。健常個体における例示的な血清アミラーゼの正常範囲は23〜85U/Lであるが、いくつかの検査室では、例示的な正常血清アミラーゼは0〜140U/Lであり得る。様々なレベルの血清アミラーゼを、膵炎の指標として使用することができる。いくつかの実施形態では、≧140U/L、≧150U/L、≧160U/L、≧170U/L、≧180U/L、≧190U/L、≧200U/L、≧210U/L、≧220U/L、≧230U/L、≧240U/L、≧250U/L、≧260U/L、≧270U/L、≧280U/L、≧290U/L、≧300U/L、≧350U/L、≧400U/L、≧450U/L、≧500U/L、≧600U/L、≧700U/L、≧800U/L、≧900U/L、≧1000U/L,1500U/L、≧2000U/L、≧3000U/Lまたはそれより高いレベルの血清アミラーゼを、本明細書で提供される方法でマーカーとして使用することができる。ある特定の実施形態では、≧200U/Lのレベルの血清アミラーゼを、膵炎マーカーとして使用する。別の実施形態では、≧140U/Lのレベルの血清アミラーゼを、膵炎マーカーとして使用する。
血清アミラーゼレベルは、アッセイ方法及びアッセイを実施する検査室によって異なり得るため、膵炎患者の血清アミラーゼと健常対照対象の血清アミラーゼとの間の比を、膵炎の代替マーカーとして使用することができる。例えば、膵炎患者の血清アミラーゼと健常対照対象の血清アミラーゼの上限との間の比を、本明細書で提供される方法でマーカーとして使用することができる。いくつかの実施形態では、膵炎マーカーは、≧1、≧1.5、≧2、≧2.5、≧3、≧3.5、≧4、≧4.5、≧5、≧6、≧7、≧8、≧9、≧10またはそれより高い(健常個体の上限を超える膵炎患者における)例示的なアミラーゼ比を含む。ある特定の実施形態では、≧3の比が膵炎マーカーとして使用される。別の実施形態では、≧5の比が膵炎マーカーとして使用される。
前述の通り、別の血清学的マーカーは、血清リパーゼのレベルである。健常なヒトの正常血清リパーゼレベルは、リパーゼの測定に使用される方法、及びアッセイを実施する検査室によって異なり得る。血清リパーゼレベルを測定するための幅広い市販のキット、例えば、AbcamのLipase Activity Assay Kit(Colorimetric)(ab102524)、Diazyme Laboratories,Inc.のLipase Assay Kit(DZ132A−K)、及びSigma−Aldrich,Inc.のLipase Activity Assay Kit(MAK046−1KT)が利用可能である。健康な個体における正常血清リパーゼの例示的な範囲は12〜70U/Lであるが、いくつかの検査室では、例示的な正常血清リパーゼは、0〜160U/Lもの高さであり得る。様々なレベルの血清リパーゼを、膵炎の指標として使用することができる。いくつかの実施形態では、≧140U/L、≧150U/L、≧160U/L、≧170U/L、≧180U/L、≧190U/L、≧200U/L、≧210U/L、≧220U/L、≧230U/L、≧240U/L、≧250U/L、≧260U/L、≧270U/L、≧280U/L、≧290U/L、≧300U/L、≧350U/L、≧400U/L、≧450U/L、≧500U/L、≧600U/L、≧700U/L、≧800U/L、≧900U/L、≧1000U/L、1500U/L、≧2000U/L、≧3000U/Lまたはそれより高いレベルの血清リパーゼを、本明細書で提供される方法でマーカーとして使用することができる。ある特定の実施形態では、≧200U/Lのレベルの血清リパーゼを、膵炎マーカーとして使用する。別の実施形態では、≧140U/Lのレベルの血清リパーゼを、膵炎マーカーとして使用する。
血清リパーゼレベルは、アッセイ方法及びアッセイを実施する検査室によって異なり得るため、膵炎患者の血清リパーゼと健常対照対象の血清リパーゼとの間の比を、膵炎の代替マーカーとして使用することができる。例えば、膵炎患者の血清リパーゼと健常対照対象の血清リパーゼの上限との間の比を、本明細書で提供される方法でマーカーとして使用することができる。いくつかの実施形態では、膵炎マーカーは、≧1、≧1.5、≧2、≧2.5、≧3、≧3.5、≧4、≧4.5、≧5、≧6、≧7、≧8、≧9、≧10またはそれより高い(健常個体の上限を超える膵炎患者における)例示的なリパーゼ比を含む。ある特定の実施形態では、≧3の比が膵炎マーカーとして使用される。別の実施形態では、≧5の比が膵炎マーカーとして使用される。
さらなる血清学的マーカーは、血清CA19−9のレベルである。血清CA19−9レベルを測定するための幅広い市販のキット、例えば、Thermo Fisher ScientificのCA19−9 Human ELISAキット(カタログ番号EHCA199)、Diagnostic Automation/Cortez Diagnostics Inc.のHuman CA−19−9 ELISA Testキット(商品番号6909−16)、及びAbcamのHuman Cancer Antigen CA19−9 ELISA Kit(ab108642)が利用可能である。血清CA19−9はまた、当業者に公知のように、CA 19−9ラジオイムノアッセイにおいて日常的に判定される。
健常個体における血清CA19−9の例示的な正常範囲は、0〜37U/mlである。様々なレベルの血清CA19−9を、膵炎の指標として使用することができる。いくつかの実施形態では、≧37U/ml、>37U/ml、≧40U/ml、≧50U/ml、≧60U/ml、≧70U/ml、≧80U/ml、≧90U/ml、≧100U/ml、≧110U/ml、≧120U/ml、≧130U/ml、≧140U/ml、≧150U/ml、≧160U/ml、≧170U/ml、≧180U/ml、≧190U/ml、≧200U/ml、≧210U/ml、≧220U/ml、≧230U/ml、≧240U/ml、≧250U/ml、≧260U/ml、≧270U/ml、≧280U/ml、≧290U/ml、≧300U/ml、≧350U/ml、≧400U/ml、≧450U/ml、≧500U/ml、≧600U/ml、≧700U/ml、≧800U/ml、≧900U/ml、≧1000U/mlまたはそれより高いレベルの血清CA19−9を、本明細書で提供される方法でマーカーとして使用することができる。ある特定の実施形態では、37U/ml超40U/ml以下のレベルの血清CA19−9を、膵炎マーカーとして使用する。別の実施形態では、40U/ml超100U/ml以下のレベルの血清CA19−9を、膵炎マーカーとして使用する。別の実施形態では、100U/mlを超えるレベルの血清CA19−9を、膵炎マーカーとして使用する。
当業者には公知のように、C−反応性タンパク質(CRP;高感度C−反応性タンパク質(hs−CRP)または超高感度C−反応性タンパク質(us−CRP)としても知られている)は、血漿中に見られ、炎症に応答して肝臓によって産生されるタンパク質である。したがって、前述の通り、膵臓の炎症及び損傷の疾患である膵炎のマーカーとしてCRPを使用することができる。CRPのレベルは、体内の炎症レベルと相関し得る。したがって、CRPレベルが高いほど体内の炎症が多い。健常ヒト対象における血清CRPの正常範囲は、1mg/L未満である。1〜2.9mg/Lの血清CRPのレベルは、ヒト対象における中等度のレベルの炎症を示し得、3〜10mg/Lの血清CRPのレベルは、ヒト対象における高レベルの炎症を示し得、10mg/Lを超える血清CRPのレベルは、ヒト対象における重度のレベルの炎症を示し得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法における膵炎マーカーは、1mg/L超、2mg/L超、3mg/L超、4mg/L超、5mg/L超、6mg/L超、7mg/L超、8mg/L超、9mg/L超、10mg/L超、11mg/L超、12mg/L超、13mg/L超、14mg/L超、15mg/L超、16mg/L超、17mg/L超、18mg/L超、19mg/Lまたは20mg/L超の血清CRPの例示的なレベルを含む。血清CRPレベルを測定するための幅広い市販のキット、例えば、R&D Systems Inc.のHuman C−Reactive Protein/CRP Quantikine ELISAキット(カタログ番号DCRP00)、Enzo Life Sciences,Inc.のCRP(ヒト)ELISAキット(ENZ−KIT102−0001)、及びSigma−Aldrich,Inc.のHuman C−Reactive Protein ELISAキット(RAB0096−1KT)が利用可能である。
当業者はさらに、様々な他の血清学的マーカーまたは体液からの他のマーカーを、治療剤の同定、膵炎の特性決定、膵炎患者の同定及び膵炎に対する処置方法の治療アウトカムの判定に使用することができることを理解するであろう。したがって、当業者は、他の様々な既知の膵炎マーカーを本明細書で提供される方法に使用できることを理解するであろう。そのような膵炎マーカーは、GI/Liver Secrets Plus,4th edition,edited by McNally PR,2010のChapter 37(Acute Pancreatitis)及びChapter 38(Chronic Pancreatitis)のそれぞれ、Matull WR et al.,J Clin Pathol 2006;59:340−344、Basnayake C.et al.,Aust Prescr 2015;38:128−30、Carroll JK et al.,Am Fam Physician 2007;75:1513−20、Kaphalia BS,Chapter 16 in Biomarkers in Toxicology,ISBN:978−0−12−404630−6,(2014)、Jasdanwala Set al.,Integr Mol Med,2015;2(3):189−195、Buchler MW et al.,BMC Gastroenterology 2009,9:93、Duggan SN et al.,World J Gastroenterol 2016;22(7):2304−2313、Etemad Bet al.,Gastroenterology 2001;120:682−707などの出版物に開示されており、これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。当業者は、上で及び以下に開示するマーカーの任意の順列または組み合わせを、本明細書で提供される方法に使用することができることをさらに理解するであろう。
したがって、本開示は、本方法に適した患者には、段落[00219]〜[00230]に記載されている[訳者注:PCT/US2019/050262では[00219]〜[00230]に記載されており、本明細書では段落0142〜0153に該当]列挙されたマーカーを含む、1つ以上の血清学的マーカー、尿中マーカー、及び糞便マーカーが上昇している患者が含まれることを示す。より具体的には、本明細書で提供される方法は、段落[00219]〜[00230]に記載されている[訳者注:PCT/US2019/050262では[00219]〜[00230]に記載されており、本明細書では段落0142〜0153に該当]列挙された値のマーカーのいずれか1つ以上を有する患者に使用することができる。
本開示はさらに、本明細書で提供される方法が、段落[00219]〜[00230]に記載されている[訳者注:PCT/US2019/050262では[00219]〜[00230]に記載されており、本明細書では段落0142〜0153に該当]これらの膵炎血清学的マーカー、尿中マーカー及び糞便マーカーのいずれか1つ以上または任意の組み合わせを元に戻すかまたは向上させることによって、例えば、血清アミラーゼを低下させるか、血清リパーゼを低下させるか、または血清CRPを低下させることによって、患者の治療アウトカムを向上させることができることを示す。
6.2.2.2.組織学的マーカー
前述の通り、膵組織構造の異常に基づくマーカー(例えば、膵組織試料の組織学的染色またはIHC染色からのもの)もまた、本明細書で提供される方法で使用することができる。そのような組織学的マーカーには、膵臓内の1つ以上のタンパク質の発現の異常、膵臓内の特定のタイプの非膵細胞(例えば、白血球、マクロファージ及び好中球を含む免疫細胞)の存在または異常な数、膵臓内の特定の細胞の存在量または数の異常な変化、ならびに膵細胞または膵組織の構造の異常(例えば、膵実質、膵管、ランゲルハンス島及び腺房細胞/組織の異常)が含まれる。膵臓の構造異常は、特定の膵臓領域または構造、例えば、膵実質、膵管、ランゲルハンス島、腺房細胞/組織、膵臓の外分泌成分、膵臓の内分泌成分または嚢胞に局在し得る。
膵臓または膵組織の組織学的染色またはIHC染色に示される膵臓の組織学的マーカーの例としては、実質の線維化、腺房萎縮、導管の歪み、導管内の石灰化、免疫細胞の浸潤(invasion)または浸潤(infiltration)(例えば、マクロファージ、好中球、及び白血球の浸潤(invasion/infiltration))、コラーゲン沈着、線維性組織、脂肪壊死、間質浮腫、腺房細胞破壊、腺腫大(浮腫)、不整硬化、膵実質の喪失、膵血管破壊、間質出血、導管拡張、膵周囲の大型の融合性病巣(large confluent foci)の脂肪壊死、限局性出血、腺房細胞壊死、腺房細胞の均質化、sLeの発現レベルならびにCA19−9の発現レベルが挙げられる。これらの組織学的マーカーを、急性または慢性膵炎の様々な病期に使用することができる。組織学的マーカーのいずれかのレベルの上昇を、本明細書で提供される方法において単独で、または本明細書に開示される任意のマーカーとの任意の順列または組み合わせで使用することができる。
いくつかの実施形態では、慢性膵炎の組織学的マーカーは、膵臓における不整硬化、膵臓における外分泌実質の喪失を含み得る。他の実施形態では、脂肪壊死、腺腫大(浮腫)、膵周囲の大型の融合性病巣の脂肪壊死、限局性出血及び腺房細胞壊死を急性膵炎のマーカーとして使用することができる。
当業者に周知であるように、組織学的マーカーのための様々な組織学的検査またはIHCアッセイ、例えば、Matull WR et al.,J Clin Pathol 2006;59:340−344、Basnayake C.et al.,Aust Prescr 2015;38:128−30、Carroll JK et al.,Am Fam Physician 2007;75:1513−20、Kaphalia BS,Chapter 16 in Biomarkers in Toxicology,ISBN:978−0−12−404630−6,(2014)、Jasdanwala S et al.,Integr Mol Med,2015;2(3):189−195、Buchler MW et al.,BMC Gastroenterology 2009,9:93、Duggan SN et al.,World J Gastroenterol 2016;22(7):2304−2313、Etemad B et al.,Gastroenterology 2001;120:682−707に開示されているアッセイ(これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)が開発されており、ここに提供される方法で使用することができる。
イメージング技術は組織学的構造を測定することが多いため、当業者は、組織学的マーカーが、膵炎症及び膵損傷のマーカーとして使用することができるイメージングによって検出される構造異常としばしば相関することを理解するであろう。したがって、マーカー、例えば、様々なイメージング技術で検出される異常は、本明細書で提供される方法で膵炎の組織学的マーカーとして使用することができる。膵臓の構造は、セクション6.2.2.2及び6.3.2.2で以下にさらに説明するようにイメージングすることができる。イメージングによって検出される膵炎症及び膵損傷の例示的な組織学的マーカーとしては、膵萎縮、胆管または膵管の閉塞(胆石など)、膵管拡張、膵石灰化、胆管狭窄、膵臓内の実質及び導管の瘢痕化、膵管狭窄、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法における組織学的マーカーには、膵炎に起因する炎症もしくは損傷を反映するか、または膵炎に伴う合併症を反映する、コンピュータ断層撮影(CT)に示される膵臓形態異常が含まれる。例えば、膵炎を反映するCTイメージングで観察可能な組織学的マーカーには、膵管または実質内の石灰化などの膵石灰化、主膵管などの膵管の拡張、及び膵実質萎縮などの膵萎縮が含まれる。膵炎合併症を反映するCTイメージングで観察可能な組織学的マーカーには、偽嚢胞、総胆管拡張、脾静脈血栓症、胃静脈瘤、偽動脈瘤、十二指腸狭窄、悪性腫瘍及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。
同様に、本明細書で提供される方法における組織学的マーカーには、膵炎に起因する炎症もしくは損傷を反映するかまたは膵炎に伴う合併症を反映する、内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(ERCP)に示される膵臓形態異常が含まれる。例えば、膵炎を反映するERCPイメージングで観察可能な組織学的マーカーには、軽度の膵炎については膵臓の小管及び分枝の拡張及び不整、中等度の膵炎については膵臓の主膵管の拡張及び不整、ならびに重度の膵炎については膵臓内の蛇行、狭窄、石灰化及び嚢胞が含まれる。いくつかの実施形態では、導管異常、拡張性側枝、導管内の充填欠損及び小管異常(狭窄、拡張、不整の分枝導管及び導管内結石の複数の領域など)の数を含む、ERCPで見られる膵臓組織学的マーカーを、本明細書で提供される方法で膵炎のマーカーとして使用することができる。
他の実施形態では、本明細書で提供される方法における組織学的マーカーには、膵炎に起因する炎症もしくは損傷を反映するか、または膵炎に伴う合併症を反映する、超音波内視鏡検査(EUS)に示される膵臓における異常が含まれる。いくつかの特定の実施形態では、軽度の膵炎を反映するEUSで観察可能な組織学的マーカーには、主膵管の軽度の不整及び拡張、高エコーの管辺縁、ならびに膵実質内の索状高エコーが含まれる。重度の膵炎を反映するEUSで観察可能な組織学的マーカーには、膵臓の小葉状の輪郭及び主膵管の拡張が含まれる。EUSで観察可能な他の膵炎マーカーには、Rosemont基準に記載されているもの、例えば、索状高エコー病巣、蜂巣状分葉、高エコー病巣、分葉、嚢胞、索状高エコー、結石、主膵管の輪郭不整、高エコーの主膵管辺縁、側枝の拡張またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。
さらなる実施形態では、本明細書で提供される方法における組織学的マーカーには、膵炎に起因する炎症もしくは損傷を反映するか、または膵炎に伴う合併症を反映する、磁気共鳴胆道膵管造影法(MRCP)などの磁気共鳴イメージングに示される膵臓における異常が含まれる。膵臓のMRCPで観察可能なそのような組織学的マーカーには、導管拡張、偽嚢胞の交通、短い狭窄、膵石または導管石またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。
イメージング検査で示されるさらなる組織学的マーカーには、Etemad B et al.,Gastroenterology 2001;120:682−707、Duggan,SN,et al.,World J Gastroenterol 2016;22(7):2304−2313、及びGI/Liver Secrets Plus,4th edition,edited by McNally PR,2010のChapter 37(Acute Pancreatitis)及びChapter 38(Chronic Pancreatitis)のそれぞれに記載されているものがさらに含まれ、これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。1つ以上の組織学的マーカーを、単独でまたは本明細書で開示される任意数の他のマーカーの任意の組み合わせで、本明細書で提供される方法のために使用することができる。
したがって、本開示は、本方法に適した患者には、段落[00233]〜[00242]に記載されている[訳者注:PCT/US2019/050262では[00233]〜[00242]に記載されており、本明細書では段落0156〜0165に該当]列挙された組織学的マーカーを含む、任意の1つ以上の組織学的マーカーを有する患者が含まれることを示す。
本開示はさらに、本明細書で提供される方法が、段落[00233]〜[00242]に記載されている[訳者注:PCT/US2019/050262では[00233]〜[00242]に記載されており、本明細書では段落0156〜0165に該当]これらの膵炎組織学的マーカーのいずれか1つ以上または任意の組み合わせを元に戻すかまたは向上させることによって、患者の治療アウトカムを向上させることができることを示す。
6.2.2.3.機能的マーカー
膵炎の重症度は膵臓の機能性に反映され得るため、膵炎のマーカーには、機能的マーカーも含まれる。機能的マーカーは、膵機能と正相関または逆相関する任意のマーカーを指す。当業者が理解するように、膵臓の2つの主要な機能は、膵外分泌機能及び膵内分泌機能である。したがって、本開示は、膵外分泌機能の欠損、膵内分泌機能の欠損またはその両方を、本明細書で提供される方法において膵炎のマーカーとして使用することができることを示す。同様に当業者に公知のように、膵外分泌物は炭酸水素塩を多く含む。したがって、コレシストキニン(CCK)の投与の有無を問わないセクレチン刺激試験を使用して、セクレチン注射後のこれらの膵分泌物の量及び炭酸水素塩の濃度をモニタリングすることにより、膵機能を直接測定することができる。いくつかの実施形態では、セクレチン刺激試験(CCK投与の有無を問わない)における50mEq/L未満の炭酸水素塩レベルは、膵炎患者のマーカーとなり得、本明細書で提供される方法で使用することができる。他の実施形態では、セクレチン刺激試験(CCK投与の有無を問わない)における5mEq/L未満、10mEq/L未満、15mEq/L未満、20mEq/L未満、25mEq/L未満、30mEq/L未満、35mEq/L未満、40mEq/L未満、45mEq/L未満、50mEq/L未満、55mEq/L未満、60mEq/L未満、65mEq/L未満、70mEq/L未満、75mEq/L未満または80mEq/L未満の炭酸水素塩レベルは、膵炎患者のマーカーとなり得、本明細書で提供される方法で使用することができる。
あるいは、化合物を経口投与した後、血清及び糞便中の膵酵素または血清もしくは尿中の酵素の任意の代謝物を測定することにより、膵機能を判定することができる。これらのマーカーは膵臓の消化不良のレベルを反映しているため、疾患が進行するほど、膵炎を検出または診断するためのマーカーの感度が高くなり得る。本明細書で提供される方法に使用することができるそのような機能的マーカーには、血清トリプシノーゲン(患者における非常に低い値(例えば、20ng/mL以下)は、進行した慢性膵炎及び脂肪便を示す)、糞便キモトリプシン(糞便の3U/g未満の糞便キモトリプシンは、進行した慢性膵炎を示唆する)、糞便エラスターゼ(糞便の100mcg/g未満の糞便エラスターゼは重度の膵機能不全を示す)、ならびに糞便脂肪(7g/dを超える糞便脂肪は膵炎を示し、20g/dを超える糞便脂肪は重度の膵炎を示す)が含まれる。膵炎の機能的マーカーとしての他の例示的な値には、5ng/mL未満、10ng/mL未満、15ng/mL未満、20ng/mL未満、25ng/mL未満、30ng/mL未満、35ng/mL未満もしくは40ng/mL未満の血清トリプシノーゲン;糞便の1U/g未満、2U/g未満、3U/g未満、4U/g未満、5U/g未満、6U/g未満、7U/g未満、8U/g未満、9U/g未満もしくは10U/g未満の糞便キモトリプシン;糞便の10mcg/g未満、20mcg/g未満、30mcg/g未満、40mcg/g未満、50mcg/g未満、60mcg/g未満、70mcg/g未満、80mcg/g未満、90mcg/g未満、100mcg/g未満、110mcg/g未満、120mcg/g未満、130mcg/g未満、140mcg/g未満もしくは150mcg/g未満の糞便エラスターゼ;糞便脂肪の5g/d超、6g/d超、7g/d超、8g/d超、9g/d超、10g/d超、11g/d超、12g/d超、13g/d超、14g/d超、15g/d超、16g/d超、17g/d超、18g/d超、19g/d超、20g/d超、21g/d超、22g/d超、23g/d超、24g/d超、25g/d超、26g/d超、27g/d超、28g/d超、29g/d超もしくは30g/d超の糞便脂肪;またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。
当業者は、本明細書に記載のものを含む、膵炎と相関し得る任意の機能的マーカーを、本明細書で提供される方法に使用できることを理解するであろう。本明細書で提供される方法に使用することができる他の機能的マーカーには、John G Lieb II and Peter V Draganov,World J Gastroenterol.2008 May 28;14(20):3149−3158、Clain JE,et al.,Surg Clin North Am 1999;79:829−845、Couper R.Can J Gastroenterol 1997;11:153−156、Layer P,et al.,J Clin Gastroenterol 1999;28:3−10、Toskes PP.Curr Gastroenterol Rep 1999;1:145−153、Chapter 38 on Chronic Pancreatitis,GI/Liver Secrets Plus,4th edition,edited by McNally PR,2010に記載されているものがさらに含まれ、これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。1つ以上の機能的マーカーを、単独で、または本明細書で開示される任意数の他のマーカーの任意の組み合わせで、本明細書で提供される方法のために使用することができる。
したがって、本開示は、本方法に適した患者には、段落[00245]〜[00247]に記載されている[訳者注:PCT/US2019/050262では[00245]〜[00247]に記載されており、本明細書では段落0168〜0170に該当]列挙された機能的マーカーを含む、任意の1つ以上の機能的マーカーを有する患者が含まれることを示す。
本開示はさらに、本明細書で提供される方法が、段落[00245]〜[00247]に記載されている[訳者注:PCT/US2019/050262では[00245]〜[00247]に記載されており、本明細書では段落0168〜0170に該当]これらの膵臓の機能的マーカーのいずれか1つ以上を元に戻すかまたは向上させることによって、患者の治療アウトカムを向上させることができることを示す。いくつかの特定の実施形態では、本開示は、本明細書で提供される方法が、セクレチン刺激試験における炭酸水素塩レベルを増加させることにより、血清トリプシノーゲンを増加させることにより、糞便キモトリプシンを増加させることにより、糞便エラスターゼを増加させることにより、糞便脂肪を減少させることにより、またはそれらの任意の組み合わせにより患者の治療アウトカムを向上させることができることを示す。
6.2.2.4.シグナル伝達マーカー
本開示は、膵炎が膵臓のCA19−9及びシアリルルイスのレベルと相関し、CA19−9及びシアリルルイスの上昇が、膵炎を引き起こす根底にある機序における要因であることを示す。
さらに、本開示は、膵臓内のCA19−9の上昇が、膵臓内の上皮成長因子受容体(EGFR)シグナル伝達経路を活性化させることを示す。EGFRシグナル伝達の活性化は、リガンド誘導性の受容体二量体化により引き起こされ、続いて、一方の受容体の内因性キナーゼドメインがパートナー受容体のC末端テールの特定の残基を交差リン酸化し、それにより、EGFRシグナル伝達経路内の他のタンパク質(エフェクター及びアダプタータンパク質)の動員のための足場がもたらされる。これは、エフェクタータンパク質のSrc相同性2(SH2)及びリン酸化チロシン結合(PTB)ドメイン、ならびに、EGFRの細胞内チロシンキナーゼドメインに存在するリン酸化チロシンモチーフを介して生じる。活性化されたアダプター及びエフェクタータンパク質は、シグナル伝達経路のRAS、RAF、MEK及びERK系、ホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)、シグナル伝達経路のホスホリパーゼCガンマタンパク質系、ならびにPKB/Aktキナーゼ経路、ならびに細胞増殖、血管新生、遊走、生存及び接着をはじめとする様々な生物学的応答を引き起こすSTATシグナル伝達経路を含む、それらの対応するシグナル伝達カスケードをさらに刺激する。
したがって、本開示は、膵炎のマーカーが、EGFRシグナル伝達経路内の分子に関する発現レベルの変化、位置の変化、結合パートナーの変化または任意の生化学的もしくは生物物理学的変化(例えば、リン酸化、ユビキチン化及び立体構造の変化)を含む、活性化されたEGFRシグナル伝達経路に関するすべての指標を含み得ることを示す。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法に適した膵炎のマーカーは、膵臓内のAktリン酸化、膵臓内のEGFRリン酸化、膵臓内のErk1/2リン酸化、膵臓内のRASの活性化(例えば、RASのGTPローディング)、膵臓内のRAFのリン酸化及び膵臓内のMEKのリン酸化であり得る。本明細書で提供される方法に適した活性化されたEGFRシグナル伝達経路の他のマーカーは、Seshacharyulu,P et al.,Expert Opin Ther Targets.2012 Jan;16(1):15−31、Normanno N et al.,Gene.2006 Jan 17;366(1):2−16、Oda K et al.,Mol Syst Biol.2005;1:2005.0010、Lurje G et al.,Oncology.2009;77(6):400−10、Yarden,Y et al.,2007;131(5):1018−1018にさらに記載されており、これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
さらに、本開示が、膵炎が膵臓内のCA19−9のレベルと相関し、CA19−9の上昇が膵炎を引き起こす根底にある機序の要因であると示していることから、当業者は、CA19−9のレベルの上昇に応答して誘導され得る膵炎におけるCA19−9及び他の任意のシグナル伝達マーカーが、本明細書で提供される方法におけるマーカーとして使用され得ることを理解するであろう。さらに、CA19−9は、単独で、または上で及び以下に開示する任意のマーカーとの組み合わせのいずれかで、本明細書で提供される方法に使用することができる。
したがって、本開示は、本方法に適した患者には、段落[00250]〜[00253]に記載されている[訳者注:PCT/US2019/050262では[00250]〜[00253]に記載されており、本明細書では段落0173〜0176に該当]列挙されたシグナル伝達マーカーを含む、任意の1つ以上のシグナル伝達マーカーを有する患者が含まれることを示す。本開示はさらに、本明細書で提供される方法が、段落[00250]〜[00253]に記載されている[訳者注:PCT/US2019/050262では[00250]〜[00253]に記載されており、本明細書では段落0173〜0176に該当]これらの膵炎のシグナル伝達マーカーのいずれか1つ以上を元に戻すかまたは向上させることによって、患者の治療アウトカムを向上させることができることを示す。
6.2.2.5.生理学的マーカー
膵炎は生理機能に影響を及ぼし、対象における他の観察可能な症状を引き起こし得るため、膵炎患者の生理学的症状を反映する任意のマーカーを、本明細書で提供される方法に使用することができる。そのような生理学的マーカーには、体重減少、腹痛などの疼痛、食物の吸収不良、膵萎縮、膵腫大、膵炎症及び胆汁逆流が含まれる。そのような生理学的マーカーは、患者の症状の感覚の説明に基づいて直接観察または判定することができる。したがって、本開示は、本方法に適した患者には、これらの生理学的マーカーのいずれか1つ以上を有する患者が含まれること、及び本明細書で提供される方法が、これらの膵炎のシグナル伝達マーカーのいずれか1つ以上を元に戻すかまたは向上させることによって、患者の治療アウトカムを向上させることができることを示す。
特定の実施形態では、本明細書に記載のマーカーの任意の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個または50個以上を、本明細書で提供される方法に任意の順列または組み合わせで使用することができる。他の実施形態では、本明細書で提供される任意数のマーカーを、アッセイ、患者集団の選択(例えば、患者選択基準として任意の1つ以上のマーカーを使用する)、投与レジメン(例えば、1つ以上のマーカーの向上もしくは悪化に基づいて用量を増加もしくは減少させる)、治療アウトカム(例えば、1つ以上のマーカーの向上を評価する)、及び/または治療剤(例えば、1つ以上のマーカーを使用して治療剤の機能特性を確認する)との任意の順列または組み合わせで、本明細書で提供される方法に使用することができる。
6.2.3 投与レジメン、医薬組成物及び投与経路
一実施形態では、本明細書で提供される方法は、膵炎を予防、処置、改善または管理するために全身投与することができる治療剤を含む医薬組成物を使用する。そのような投与は、非経口的または経粘膜的、例えば、経口、頬側、経鼻、舌下、粘膜下または経皮的であり得る。いくつかの実施形態では、投与は、例えば、静脈内注射または腹腔内注射、動脈内投与、筋肉内投与、皮内投与及び皮下投与を介する非経口である。
他の投与経路、例えば、灌流液の使用、器官への注射または他の局所投与による場合、以下でさらに説明するのと同様のレベルの治療剤をもたらす医薬組成物が提供される。
本明細書で提供される治療剤の医薬組成物は、治療有効量の治療剤、及び薬学的に許容可能な担体を含み得る。ある特定の実施形態では、「薬学的に許容可能な」という用語は、動物、より詳細にはヒトにおける使用を対象として、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されているか、または米国薬局方もしくは他の一般に認識されている外国の薬局方に記載されていることを意味する。「担体」という用語は、治療剤とともに投与される希釈剤、補助剤、賦形剤またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの石油、動物、植物または合成由来のものを含む、水中及び油中の生理食塩水溶液などの滅菌液体であり得る。医薬組成物を静脈内投与する場合、生理食塩水溶液が担体となり得る。生理食塩水溶液ならびにデキストロース及びグリセロールの水溶液はまた、液体担体として、特に注射溶液用の液体担体として用いられ得る。好適な医薬賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが含まれる。本組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有してもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの形態を取ることができる。本組成物は、従来の結合剤及びトリグリセリドなどの担体とともに坐剤として製剤化することができる。本明細書で提供される治療剤は、中性または塩の形態として製剤化することができる。薬学的に許容可能な塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどの遊離アミノ基で形成されるもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどの遊離カルボキシル基で形成されるものが含まれる。好適な医薬担体の例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、E.W. Martinによる“Remington’s Pharmaceutical Sciences”に記載されている。そのような組成物は、患者に適切に投与するための形態をもたらすように、治療有効量の治療剤を、例えば、精製形態または未精製形態で、適量の担体とともに含む。当業者は、製剤を投与様式に適合するように選択することができることを知っているであろう。
ペプチドなどの治療剤の経粘膜吸着を増加させるための製剤も本明細書で提供される。経口投与に適合した医薬組成物を、カプセル剤もしくは錠剤として、散剤もしくは顆粒剤として、溶液、シロップ剤もしくは(水性もしくは非水性液体中の)懸濁液として、食用の泡もしくはホイップとして、またはエマルションとして提供することができる。錠剤または硬ゼラチンカプセルは、ラクトース、デンプンまたはその誘導体、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム、ステアリン酸またはそれらの塩を含み得る。軟ゼラチンカプセルは、植物油、ワックス、脂肪類、半固体または液体ポリオールなどを含み得る。溶液及びシロップ剤は、水、ポリオール及び糖類を含み得る。
経口投与を目的とした治療剤を、消化管で活性物質の分解及び/または吸収を遅延させる物質でコーティングするか、またはそれらの物質と混合することができる(例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルを使用することができる)。したがって、何時間にもわたって活性物質の徐放を実現することができ、必要に応じて、胃での分解から活性物質を保護することができる。経口投与用の医薬組成物を、特定のpHまたは酵素条件による胃腸の特定位置での活性物質の放出を促進するように製剤化することができる。
経皮投与に適合した医薬組成物を、レシピエントの表皮と長期間密接に接触し続けることを目的とした個別のパッチとして提供することができる。局所投与に適合した医薬組成物を、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、散剤、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾルまたは油として提供することができる。皮膚、口、眼または他の外部組織への局所投与用に、局所軟膏またはクリームを使用することができる。軟膏に製剤化する場合、有効成分を、パラフィン系または水混和性の軟膏基剤のいずれかとともに用いることができる。あるいは、活性成分を、水中油型基剤または油中水型基剤とともにクリームに製剤化することができる。眼への局所投与に適合した医薬組成物には、点眼薬が含まれる。これらの組成物では、有効成分を、適切な担体、例えば水性溶媒に溶解または懸濁させることができる。
非経口的投与に適合した医薬組成物には、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び/または組成物を目的のレシピエントの血液と実質的に等張にする溶質を含み得る、水性及び非水性の滅菌注射用溶液または懸濁液が含まれる。そのような組成物中に存在し得る他の成分には、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセリン及び植物油が含まれる。非経口的投与に適合した組成物を、単位用量または複数用量の容器、例えば密封アンプル及びバイアルで提供することができ、注射のために、使用直前に滅菌液体担体、例えば滅菌生理食塩水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時注射溶液及び懸濁液を、滅菌散剤、顆粒剤及び錠剤から調製することができる。一実施形態では、治療剤の注射用溶液を含む自動注射器を、救急車、緊急治療室による緊急使用のために、さらには在宅膵臓患者などの家庭環境での自己投与のために提供することができる。
一実施形態では、日常的手順に従って、組成物をヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成物として製剤化する。通常、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、組成物はまた、可溶化剤及び注射部位の痛みを和らげるためのリドカインなどの局所麻酔薬を含むことができる。一般に、成分を、単位剤形で、例えば、活性物質の量を示すアンプルもしくはサシェなどの気密封止容器内に乾燥した凍結乾燥粉末または水不含濃縮物として、別々に供給するか、あるいは一緒に混合して供給する。組成物を注入によって投与する場合、滅菌の医薬品グレードの水または生理食塩水を含む輸液ボトルで組成物を分注することができる。組成物を注射によって投与する場合、成分が投与前に混合され得るように、滅菌生理食塩水のアンプルを提供することができる。
坐剤は、一般に0.5重量%〜10重量%の範囲の有効成分を含み、経口製剤は、10%〜95%の有効成分を含むことができる。
本開示はまた、本明細書で提供される1つ以上の治療剤の医薬組成物の成分のうちの1つ以上を充填した、1つ以上の容器を含む薬学的パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が定めた形式の通知が、そのような容器(複数可)に任意に付随してもよく、この通知は、ヒトへの投与に対する製造、使用または販売の政府機関による承認を表す。
別の実施形態では、例えば、治療剤を、制御放出系で送達することができる。例えば、治療剤を、静脈内注入、植え込み型浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、または他の投与様式を使用して投与することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる(例えば、Langer,Science 249:1527−1533(1990)、Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201、Buchwald et al.,1980,Surgery 88:507、Saudek et al.,1989,N.Engl.J.Med.321:574を参照されたい。これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。別の実施形態では、治療剤を、小胞、例えばリポソームで送達することができる(Langer,Science 249:1527−1533(1990)、Treat et al.,in Liposomes in the Therapy of lnfectious Disease and Cancer,Lopez−Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353−365(1989)、WO91/04014、米国特許第4,704,355号、Lopez−Berestein,同書,pp.317−327を参照されたい)。別の実施形態では、高分子材料を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Press:Boca Raton,Florida,1974、Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley:New York(1984)、Ranger and Peppas,J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61,1953を参照されたい。また、Levy et al.,1985,Science 228:190、During et al.,1989,Ann.Neurol.25:351、Howard et al.,1989,J.Neurosurg.71:105も参照されたい。これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
さらに別の実施形態では、制御放出系を、治療標的、すなわち、標的細胞、組織または器官に近接して配置することができ、それにより、全身用量の一部分のみが必要となり得る(例えば、Goodson,pp.115−138 in Medical Applications of Controlled Release,vol.2,1984を参照されたい。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。他の制御放出系が、Langerによる概説(1990,Science 249:1527−1533。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)において考察されている。
別の実施形態では、治療剤は、適切に製剤化された場合、経鼻投与、頬側投与、経口投与、直腸投与、点眼、経皮投与、非経口的投与、吸入投与、または舌下投与によって投与することができる。
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される治療剤を、処置を必要とする領域に局所的に投与することが有用であり得、これは、例えば、限定するものではないが、手術中の局所注入、局所適用によって、例えば、注射によって、カテーテルによって、坐剤によって、またはインプラントによって実現することができ、前記インプラントは、シラスティック膜などの膜または繊維を含む、多孔質、無孔質またはゼラチン状材料のインプラントである。そのような実施形態の非限定的な例としては、血管系、管の一部などに埋め込まれている、本明細書で提供される治療剤でコーティングされたステントまたは他の足場が挙げられる。
有効用量の選択は、当業者に公知のいくつかの要因の考慮に基づいて、当業者によって容易に決定される。そのような要因には、治療剤の特定の形態及びその薬物動態パラメータ、例えば、バイオアベイラビリティ、代謝作用、半減期などが含まれ、これらは、治療剤の規制当局の承認を取得する際に典型的に使用される通常の開発手順中に確立される。用量を検討する際のさらなる要因には、処置される疾患の状態もしくは病期、または正常個体で達成される利点、患者の体重、投与経路、投与が急性であるか慢性であるか、併用薬、及び投与される医薬品の有効性に影響を及ぼすことが周知である他の要因が含まれる。
本明細書全体にわたる目的のための治療剤の意図されるレシピエントはヒトであるが、本明細書の方法は他の哺乳動物、特に家畜化動物、家畜、コンパニオン及び動物園の動物に等しく適用される。しかしながら、本明細書で提供される方法は限定的ではなく、その利点は任意の哺乳動物に適用することができる。本明細書で提供される方法のさらなる態様では、セクション6.2.1に記載されている任意の治療剤を、本明細書で提供される製剤との任意の組み合わせまたは順列で用いることができる。
特定の実施形態では、本開示は、本明細書で提供される方法に適合した単位剤形の医薬組成物を提供し、これは、約0.1pg〜30mg、0.5pg〜25mg、1pg〜20mg、500pg〜10mg、1ng〜10mg、500ng〜10mg、1μg〜10mg、500μg〜10mg、1mg〜5mg、または1mg〜10mgの治療剤の範囲内の量の治療剤、及び薬学的に許容可能な担体を含む。一実施形態では、治療剤の量は、約0.5pg〜1mgの範囲内である。
ある範囲の用量を、本明細書で提供される方法で企図されるように、疾患のタイプ及び重症度に応じて患者に投与することができる。一実施形態では、約1mg〜12mgの用量の治療剤が患者に投与される。特定の実施形態では、用量は、約2mg〜約12mg、約2mg〜約11mg、約3mg〜約10mg、約4mg〜約9mg、約5mg〜約8mgまたは約6mg〜約7mgの範囲である。特定の実施形態では、用量は、約2mg〜約8mgである。特定の実施形態では、用量は、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mgまたは約12mgである。特定の実施形態では、用量は、4mgである。
治療剤が患者に投与される用量は、患者の体重に基づき得る。そのような一実施形態では、約0.1μg/kg体重〜約120μg/kg体重の用量の治療剤が対象に投与される。特定の実施形態では、用量は、約0.4μg/kg体重〜約110μg/kg体重、約0.5μg/kg体重〜約100μg/kg体重、約1μg/kg体重〜約95μg/kg体重、約5μg/kg体重〜約90μg/kg体重、約10μg/kg体重〜約85μg/kg体重、約15μg/kg体重〜約80μg/kg体重、約20μg/kg体重〜約75μg/kg体重、約25μg/kg体重〜約70μg/kg体重、約30μg/kg体重〜約65μg/kg体重、約35μg/kg体重〜約60μg/kg体重または約40μg/kg体重〜約50μg/kg体重の範囲である。特定の実施形態では、治療剤の用量は、約0.2μg/kg体重〜約120μg/kg体重の範囲である。特定の実施形態では、用量は、約1μg/kg〜約60μg/kg、約10μg/kg〜約30μg/kg、約20μg/kg〜約50μg/kgまたは約30μg/kg〜約60μg/kgである。特定の実施形態では、用量は、約1μg/kg、約2μg/kg、約3μg/kg、約4μg/kg、約5μg/kg、約6μg/kg、約7μg/kg、約8μg/kg、約9μg/kg、約10μg/kg、約11μg/kg、約12μg/kg、約13μg/kg、約14μg/kg、約15μg/kg、約16μg/kg、約17μg/kg、約18μg/kg、約19μg/kg、約20μg/kg、約21μg/kg、約22μg/kg、約23μg/kg、約24μg/kg、約25μg/kg、約26μg/kg、約27μg/kg、約28μg/kg、約29μg/kg、または約30μg/kgである。特定の実施形態では、用量は、約80μg/kg未満、約50μg/kg未満、約30μg/kg未満、約20μg/kg未満、約15μg/kg未満または約10μg/kg未満である。特定の実施形態では、用量は、10μg/kgである。特定の実施形態では、用量は、30μg/kgである。他の実施形態では、本明細書で提供される治療剤は、1回投与あたり、約1ng〜約300μg/kg体重、約5〜150μg/kg体重、または約10〜100μg/kg体重の投与量で全身投与することができる。
本明細書で提供される方法の他の実施形態では、治療剤は、約0.1mg/kg/用量〜約10mg/kg/用量の用量範囲で投与される。いくつかの実施形態では、治療剤は、約0.1mg/kg/用量、約0.2mg/kg/用量、約0.3mg/kg/用量、約0.4mg/kg/用量、約0.5mg/kg/用量、約0.6mg/kg/用量、約0.7mg/kg/用量、もしくは約0.8mg/kg/用量、約0.9mg/kg/用量、約1mg/kg/用量、約2mg/kg/用量、約3mg/kg/用量、約4mg/kg/用量、約5mg/kg/用量、約6mg/kg/用量、約7mg/kg/用量、もしくは約8mg/kg/用量、約9mg/kg/用量、約10mg/kg/用量またはそれより多い用量で投与される。
特定の実施形態では、本方法で使用するための治療剤を、予防的有効量で投与することができる。予防的有効量は、膵炎、及び/または膵炎に起因する損傷、影響もしくは症状を予防するのに十分な治療剤の量を指す。治療剤の量に関連して使用する場合、予防的有効量は、全体的な予防を向上させるか、または膵炎を予防する予防有効性を増強するか、または膵炎を予防することができる別の予防剤との相乗効果を提供する量を包含することができる。
さらに、本明細書で提供される方法における治療剤を、経時的に一定の間隔で投与することができる。特定のそのような実施形態では、治療剤を、毎日、隔日、毎週1回、10日に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、6週間に1回または8週間に1回投与する。他の実施形態では、治療剤の投与を、臨床的に必要である限り、1時間ごと、毎日、または適切な間隔の後、例えば、1〜12時間ごと、6〜12時間ごと、2〜6日ごと、2〜4日ごと、1〜12週間ごと、1〜3週間ごとに繰り返すことができる。追加の実施形態では、治療剤を、毎月1回(毎月)、2ヶ月に1回(隔月)、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回、または6ヶ月に1回投与する。
いくつかの実施形態では、本方法における本明細書で提供される治療剤を、約1週間〜約48週間投与する。特定の実施形態では、本方法における本明細書で提供される治療剤を、約1週間〜約44週間、約1週間〜約40週間、約1週間〜約36週間、約1週間〜約32週間、約1週間〜約28週間、約1週間〜約24週間、約1週間〜約20週間、約1週間〜約16週間、または約1週間〜約12週間投与する。他の実施形態では、本方法における本明細書で提供される治療剤を、約1週間〜約48週間、約4週間〜約44週間、約8週間〜約40週間、約12週間〜約36週間、約16週間〜約32週間、または約20週間〜約28週間投与する。特定の実施形態では、本方法における本明細書で提供される治療剤を、約1週間〜約24週間、約2週間〜約24週間、約4週間〜約24週間、約6週間〜約24週間、約8週間〜約24週間、約10週間〜約24週間、約12週間〜約24週間、約14週間〜約24週間、約16週間〜約24週間、約18週間〜約24週間、約20週間〜約24週間、または約22週間〜約24週間投与する。
いくつかの特定の実施形態では、本方法における本明細書で提供される治療剤を、長期投与に使用することができる。特定の実施形態では、膵炎が患者に存在する限り投与を継続することができる。
他の実施形態では、有効量の治療剤及び薬学的に許容可能な担体を、単回用量バイアルまたは他の容器に包装することができる。追加の実施形態では、本明細書に記載の活性を発揮することができる治療剤を、慢性膵炎に対処するために長期間使用する。
当業者に周知のように、治療用抗体及び治療用ポリペプチドを含む治療用タンパク質の製剤、投与経路及び用量は異なり得る。治療用抗体及び治療用ポリペプチドを含む治療用タンパク質に特異的な様々な製剤、投与経路及び用量は、当該技術分野において周知である。治療用抗体の例示的な製剤、投与経路及び用量は、WO2015112886及びWO2017019957に記載されており、治療用ポリペプチドの例示的な製剤、投与経路及び用量は、WO2007019545、WO2009094172及びWO2015009820に記載されており、これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
6.3 治療剤を試験するためのアッセイ
様々なアッセイを使用して、本明細書で提供される治療法で使用するためのセクション6.2.1に記載の治療剤の活性及び有効性を判定することができる。様々なマーカーについてのアッセイも、本明細書で提供される。本開示は、セクション6.2.1に記載されている様々な治療剤の活性、有用性及び有効性を、セクション6.2.2に記載されているバイオマーカーまたは患者の治療アウトカムに従ってアッセイすることができることをさらに示す。さらに、当業者は、本明細書で提供される方法における様々な治療剤の適合性を、当該技術分野において公知のまたは本明細書で提供される様々なin vitro及びin vivo膵炎アッセイを通して確認することができることを認識するであろう。
6.3.1 結合アッセイ
様々な日常的なアッセイを使用して、本明細書で提供される方法において、治療剤とCA19−9もしくはシアリルルイスとの間、または任意の2つの分子間(例えば、2つのタンパク質間)の結合を容易に判定することができる。例示的な日常的な結合アッセイには、免疫組織化学アッセイ、酵素免疫アッセイ(EIA)またはELISA、FACSアッセイ、免疫ブロッティングアッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ、共免疫沈降アッセイ、クロマトグラフィーまたはゲルシフトアッセイ、等温滴定熱量測定、様々な蛍光アッセイ(蛍光相関分光法及び蛍光偏光/異方性など)、競合結合アッセイ、平衡透析、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、ならびに当業者に公知の2つの分子間の結合を試験するための他の任意のアッセイが含まれる。これらの日常的なアッセイの詳細は、以下及びWu,Ge.Chapter 5,General Protein Binding Assay Formats,in Assay Development:Fundamentals and Practices,Online ISBN:9780470583128;Print ISBN:9780470191156(2010)、Wan H et al.,Journal of Liquid Chromatography & Related Technologies,(2007)30:681−700(これらは両方とも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
当業者に周知であるように、免疫組織化学アッセイを使用して治療剤(例えば、抗体などのタンパク質)と細胞または組織中の標的間の相互作用を判定することは日常的である。IHCアッセイの例では、IHCアッセイは一般に、最終測定として当該技術分野において周知の発色シグナルまたは蛍光シグナルを使用することにより、in situで細胞または組織中の標的分子へのタンパク質(抗体など)の結合を判定する。いくつかの実施形態では、組織試料を、タンパク質−標的結合が生じるのに十分な期間、特定の標的へ結合することが意図されるタンパク質(一次抗体など)と接触させる。結合したタンパク質(結合した一次抗体など)を、タンパク質自体への直接標識、例えば、放射性標識、蛍光標識、ビオチンなどのハプテン標識、または西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼなどの酵素によって検出することができる。あるいは、非標識タンパク質(非標識一次抗体など)を、タンパク質(一次抗体など)に特異的な抗血清、ポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体を含む標識二次抗体と組み合わせて使用する。このように、タンパク質を特異的に認識する(例えば、一次抗体の抗体アイソタイプを認識する)酵素標識二次抗体を適用することができる。二次抗体は、試料に結合したタンパク質(例えば、試料に結合した一次抗体)と反応し、その後シグナルが発生し、及び/またはシグナルを検出する。第二層の検出抗体をペルオキシダーゼなどの酵素で標識することができ、ペルオキシダーゼは、色素原3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)と反応し、反応部位で褐色の沈降物を生成する。発色シグナル、蛍光及び放射能などの二次抗体上の標識からの最終シグナルを使用して、タンパク質(一次抗体など)と細胞または組織中の標的との間の結合のレベル、強度及び特異性を判定することができる。IHC処理用の自動システムは市販されており、中スループットから高スループット形式でアッセイを日常的に実施することができる。Leica BOND Autostainer及びLeica Bond Refine Detectionシステムは、そのような自動システムの一例である。
あるいは、酵素免疫アッセイ(EIA)またはELISAを日常的に使用して、治療剤とCA19−9などの2つのタンパク質間の結合を判定することができる。EIA及びELISAアッセイのいずれも、当該技術分野において公知である。幅広いELISAアッセイ形式が利用可能であり、例えば、米国特許第4,016,043号、同第4,424,279号及び同第4,018,653号を参照されたい(これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。これらは、非競合型の単一部位及び二部位の両方または「サンドイッチ」アッセイ、ならびに従来の競合結合アッセイを含む。これらのアッセイはまた、標識抗体の標的タンパク質への直接結合を含む。サンドイッチアッセイもまた、一般的に使用されているアッセイである。ELISAアッセイ法の多くの変法が利用可能である。例えば、タンパク質Xとタンパク質Yとの間の結合を試験するために、タンパク質Xを固体基質に固定化することができ、タンパク質Yまたはタンパク質Yを含む試料を固定化したタンパク質Xと接触させることができる。タンパク質Xとタンパク質Yの結合複合体の形成を可能にするのに十分な時間である適切なインキュベーション期間の経過後、次に、検出可能なシグナルを生成することができるレポーター分子で標識した、タンパク質Yに特異的な二次抗体を加えてインキュベートし、タンパク質X、タンパク質Yと標識二次抗体との別の複合体の形成に十分な時間をとる。あらゆる未反応物質を洗い流し、タンパク質Xとタンパク質Y間の結合を、レポーター分子によって生成されたシグナルを観察することにより判定する。結果は、可視シグナルの単純な観察による定性的なものであるか、または、タンパク質Xもしくはタンパク質Yのいずれかの一連の増加する濃度における結合レベルを判定して、当業者に公知のように結合曲線に適合させることにより定量化されるかのいずれかである。
EIAまたはELISAアッセイのいくつかの実施形態では、酵素が二次抗体にコンジュゲートしている。他の実施形態では、酵素標識二次抗体の代わりに蛍光標識二次抗体を使用して、ELISAアッセイ形式で検出可能なシグナルを生成することができる。特定の波長の光を用いた照射によって活性化されると、蛍光色素標識抗体は、光エネルギーを吸収して分子の励起状態を誘導し、続いて、検出装置で検出可能な特有の色の光を放射する。EIA及びELISAの場合と同様に、蛍光標識抗体を、試験する結合タンパク質の対によって形成された複合体に結合させる。未結合試薬を洗い流した後、次に、残存する三次複合体を適切な波長の光に曝露させ、当業者に公知の適切な対照を用いると、観察された蛍光は結合のレベル、強度及び特異性を示す。免疫蛍光及びEIA法のいずれも、当該技術分野で極めて十分に確立されており、また本明細書に開示されている。当業者に周知のように、2つの分子間の結合を試験するためにEIAまたはELISAアッセイを実施することは日常的であり、高スループット形式のためにそのようなアッセイを採用することは日常的である。
同様に、免疫ブロッティングアッセイを使用して、治療剤とCA19−9などの2つのタンパク質間の結合を判定することができる。免疫ブロッティングアッセイの詳細を、セクション6.3.2.5にさらに記載した。一実施形態では、CA19−9は膜上にあり得、治療用抗体とCA19−9との間の結合を、セクション6.3.2.5に記載されている任意の免疫ブロッティングアッセイで判定することができる。
さらに、FACSアッセイを使用して、治療剤とCA19−9などの2つのタンパク質間の結合を判定することができる。FACSアッセイの詳細を、セクション6.3.2.5にさらに記載した。一実施形態では、通常CA19−9を発現しない細胞を、1つ以上のCA19−9を発現するように操作することができ、治療剤(治療用抗体、治療用タンパク質または治療用ペプチドなど)とCA19−9との間の結合を、CA19−9を発現していない対照細胞と比べたCA19−9を発現している細胞への治療剤の結合の増加を測定することにより、セクション6.3.2.5に記載されている任意のFACSアッセイで判定することができる。
治療剤とCA19−9のとの間の結合はまた、免疫沈降アッセイ、共沈アッセイまたは共免疫沈降アッセイで判定することができる。免疫沈降アッセイでは、特定の標的タンパク質(CA19−9など)に対する抗体(治療用抗体など)が、細胞溶解物などの試料中のその標的と免疫複合体を形成する。次に、免疫複合体は、抗体結合タンパク質が固定化されているビーズ支持体(プロテインAまたはGなど)上に捕捉されるかまたは沈降し、ビーズ上に沈降していない一切のタンパク質は洗い流される。最後に、標的タンパク質(ならびに、抗体がビーズに共有結合していない場合及び/または変性緩衝液を使用する場合は、抗体)を支持体から溶出させ、質量分析法(酵素消化を用いるかもしくは用いないもの)またはドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)(多くの場合ウエスタンブロッティングと組み合わせる)などの様々な手段により分析する。
共免疫沈降は、一次標的(CA19−9など)及び試料溶液中で相互作用により一次標的に結合する他の高分子を捕捉及び精製する免疫沈降反応の能力に基づく免疫沈降の拡張である。例えば、タンパク質Xがタンパク質Yに結合できる場合、前述の通りにタンパク質Xを免疫沈降すると、タンパク質Yがタンパク質Xに結合するため一部のタンパク質Yの共免疫沈降が生じる。タンパク質Yを、免疫沈降した複合体から溶出させることができ、質量分析法(酵素消化を用いるかもしくは用いないもの)またはドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)(多くの場合ウエスタンブロッティングと組み合わせる)などの様々な手段により分析することができる。このように、タンパク質Xとタンパク質Y間の結合を判定することができる。共沈アッセイは、抗体が共沈アッセイで使用されないことを除いて、免疫沈降アッセイまたは共免疫沈降アッセイと本質的に同じ原理及び形式に従って実施される。例えば、グルタチオン−アガロースビーズを使用して、GST融合タンパク質Xを沈降させることができる。タンパク質Xに結合したタンパク質Yを、免疫沈降と同様に様々な手段により、沈降剤中のタンパク質Xとともに同定することができ、タンパク質Xとタンパク質Yのそのような共沈は、2つのタンパク質が相互作用できることを示す。
免疫沈降アッセイ、共免疫沈降アッセイまたは共沈アッセイでは、1つのアッセイで数千の結合パートナーを同定するために、沈降した標的タンパク質の結合パートナーを質量分析法(液体クロマトグラフィーと質量分析法の組み合わせ(LC−MS)を含む)により検出または判定することもできる。例えば、CA19−9が本明細書で提供される沈降アッセイのいずれかで沈降する標的タンパク質である場合、CA19−9に結合したあらゆるすべての相互作用パートナーを溶出させ、同定のために質量分析法(LC−MSを含む)に供することができる。そのため、CA19−9を分子のライブラリーと接触させた場合、CA19−9に結合することができるライブラリーのすべての分子を1つのアッセイで一度に同定することができる。当業者に周知のように、2つの分子間の結合を試験するために免疫沈降アッセイ、免疫沈降アッセイまたは共沈アッセイを実施することは日常的であり、高スループット形式のためにそのようなアッセイを採用することは日常的である。
さらに、治療剤とCA19−9のとの間の結合はまた、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイで判定することができる。SPRアッセイでは、標的分子、最も頻繁にはタンパク質を、調製した金センサー表面に固定化し、一連のフローセルを介して溶液中の潜在的な相互作用パートナーを含む試料を表面上に注入する。相互作用の過程の間、偏光がセンサー表面に向けられ、最小強度の反射光の角度が検出される。この角度は分子が結合及び解離するにつれて変化するため、これにより、相互作用プロファイルがセンサーグラムにリアルタイムで記録される。シアリルルイスと治療用抗体間の結合のためのそのようなSPRアッセイの例では、ビオチン標識した一価sLe(カタログ番号02−044)または多価sLe−PAA−ビオチン(カタログ番号01−044)を、製造業者の指示に従ってSPAバイオセンサーチップの別個のフローセルに結合させることができる。HSAでブロックしたフローセル及び遊離ビオチン含有培地を参照セルとして使用する。結合キネティックパラメータを、sLe−PAA−ビオチンでコーティングしたフローセルを使用して、HBS−EP緩衝液(10mmol/L HEPES(pH7.4)、150mmol/L NaCl、3.4mmol/L EDTA、0.005%界面活性剤P20)で希釈した抗体のいくつかの既知の濃度から決定することができる。次に、Biacore装置が提供するカーブフィッティングソフトウェアを使用して、親和性を算出する会合率及び解離率の推定値を生成する。Biacore3000(GE Healthcare)などの市販のSPRアッセイ系が利用可能である。実施されたSPRアッセイの例は、米国特許第9,475,874号に記載されている。当業者に周知のように、2つの分子間の結合を試験するためにSPRアッセイを実施することは日常的である。
さらに、Hellman LM et al.,Nat Protoc.2007;2(8):1849−1861、Mallik R et al.,J Chromatogr A 2010 Apr 23;1217(17):2796−2803、Koeplinger KA et al.,Analytical Biochemistry(1996)243(1):66−73、Chan Jet al.,Mol Cell Proteomics.2012 Jul;11(7):M111.016642、Bloustine J,et al.,Biophys J.2003 Oct;85(4):2619−2623に記載されているように(これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、クロマトグラフィーまたはゲルシフトアッセイを使用して、治療剤とCA19−9(またはシアリルルイス)との間の相互作用を測定することは日常的である。Freyer MW et al.,Methods Cell Biol.2008;84:79−113に記載されているように(このすべては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、治療剤とCA19−9(またはシアリルルイス)との間の相互作用を測定するために等温滴定熱量測定を使用することもまた、日常的である。
さらに、Langowski J,Methods Cell Biol.2008;85:471−84、Lagerkvist AC et al.,Protein Science(2001),10:1522−1528、Melo AM,et al.,Quantifying Lipid−Protein Interaction by Fluorescence Correlation Spectroscopy(FCS).In:Engelborghs Y.,Visser A(eds)Fluorescence Spectroscopy and Microscopy.Methods in Molecular Biology(Methods and Protocols),vol 1076.Humana Press,Totowa,NJ、Hall MD et al.,Methods and Applications in Fluorescence,2016;volume 4,number 2,022001、Gijsbers A et al.,J Vis Exp.2016 Oct 21;(116)、James NG et al.,Methods Mol Biol.2014;1076:29−42、Jameson DM et al.,Methods Mol Biol.2005;305:301−22に記載されているように(これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、蛍光アッセイ(蛍光相関分光法及び蛍光偏光/異方性など)を使用して治療剤とCA19−9(またはシアリルルイス)との間の相互作用を測定することは日常的である。
当業者はまた、Hu L et al.,Anal Chem.2013 May 21;85(10):5071−7、Crolla LJ et al.,Clinical Chemistry,Chapter 3,pp 57−68,ACS Symposium Series,Vol.36,ISBN13:9780841203457、Schmidt KJ et al.,Laboratory Medicine,October 1972 page 42−45に記載されているように(これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、日常的な競合結合アッセイを使用して、治療剤とCA19−9(またはシアリルルイス)との間の相互作用を測定することができる。
同様に、Margineanu A et al,Sci Rep.2016 Jun 24;6:28186、Vercruysse T et al.,RNA Biology,8:2,316−324、Du Y et al.,Assay Drug Dev Technol.2013 Jul;11(6):367−381に記載されているように(これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を使用して治療剤とCA19−9(またはシアリルルイス)との間の相互作用を測定することもまた、日常的である。同様に、Cui B,et al.,MBio,5(3),e01050−14、Dimri S et al.,Methods Mol Biol.2016;1443:57−78、Mild JG,et al.,Mol Biotechnol(2018).pp 1−11に記載されているように(これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、本明細書で提供される方法において、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)を使用して治療剤とCA19−9(またはシアリルルイス)との間の相互作用を測定することは日常的である。
その他の利用可能な周知の日常的な結合アッセイは、Ligand−Binding Assays:Development,Validation,and Implementation in the Drug Development Arena,Edited by Khan MN and Findlay JW,ISBN:9780470041383、Golemis E Protein−protein interactions:A molecular cloning manual.Cold Spring Harbor(NY):Cold Spring Harbor Laboratory Press.p ix,682.(2002)、Phizicky EM,et al.,Protein−protein interactions:Methods for detection and analysis Microbiol Rev(1995)59:94−123に記載されており、これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
6.3.2 膵炎に対する治療活性に関するアッセイ
上で開示した通り、膵炎の根本原因は、膵炎症及び膵損傷である。したがって、膵炎を予防、処置、改善または管理するために本明細書で提供される方法の有効性を評価するための有用なアッセイには、本明細書で提供される方法の1つ以上のステップ、例えば、様々な投与レジメンにより本明細書で提供される治療剤をアッセイ系に投与すること、アッセイ系からの1つ以上の読み取り値を判定すること、及び治療剤処置群と対照(プラセボ)処置群(または基準範囲)間で読み取り値を比較することを用いることが含まれ得る。読み取り値の変化を、膵炎を予防、処置、改善または管理するための治療剤の活性を判定するために使用する。
セクション6.2.2に開示されているように、膵炎は、様々な指標及び/またはマーカーを判定、測定または観察することによって判定及び観察することができる。したがって、本セクションに記載されるアッセイ系は、セクション6.2.2のバイオマーカーで前述した1つ以上のマーカーに基づく1つ以上の読み取り値を使用することができる。
6.3.2.1.膵炎に関する免疫組織化学(IHC)または組織学的染色アッセイ
セクション6.2.2に開示されているように、膵炎のマーカーには、膵組織構造の異常(例えば、膵組織試料の組織学的染色またはIHC染色からのもの)が含まれる。そのような組織学的マーカーには、膵臓内の1つ以上のタンパク質の発現の異常、膵臓内の特定のタイプの非膵細胞(例えば、白血球、マクロファージ及び好中球を含む免疫細胞)の存在または異常な数、膵臓内の特定の細胞の存在量または数の異常な変化、ならびに膵細胞または膵組織の構造の異常(例えば、膵実質、膵管、ランゲルハンス島及び腺房細胞/組織の異常)が含まれる。したがって、膵炎を予防、処置、改善または管理するための本明細書で提供される方法の有効性を評価するための有用なアッセイには、膵組織構造におけるそのような異常を検出するための病理組織学的染色及び/またはIHCアッセイが含まれる。
本明細書で提供される方法におけるアッセイのいくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法に従って、セクション6.3.3で以下にさらに論じるモデルアッセイ系に治療剤を投与し、1つ以上の組織学的マーカーを本セクションに記載するアッセイにより判定する。膵炎の組織学的マーカーの異常を元に戻すか、または組織学的マーカーを正常基準レベルもしくは健常対照対象のレベルの方向に変化させる治療剤を、本明細書で提供される方法に使用することができる。
当業者に周知のように、IHCアッセイを実施して、膵炎の組織学的マーカーのいずれかを判定することは日常的である。IHCアッセイに関して、一般に発色法または蛍光法によって、in situで細胞抗原を探索及び可視化するために抗体を利用するIHC技術が当該技術分野において周知である。標的タンパク質に特異的に結合するポリクローナル抗血清及びモノクローナル抗体などの一次抗体または抗血清を使用して、IHCアッセイで標的のレベルを検出することができる。いくつかの実施形態では、抗体−標的結合が生じるのに十分な期間、組織試料を特定の標的に対する一次抗体に接触させる。抗体を、抗体自体への直接標識、例えば、放射性標識、蛍光標識、ビオチンなどのハプテン標識、または西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼなどの酵素によって検出することができる。あるいは、非標識一次抗体を、一次抗体に特異的な標識二次抗体、例えば、抗血清、ポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体と組み合わせて使用する。次に、一次抗体の抗体アイソタイプを特異的に認識する酵素標識二次抗体(第二層)を適用することができる。二次抗体は一次抗体と反応し、基質−色素原の適用などの検出シグナルの発生がそれに続き得る。第二層の抗体をペルオキシダーゼなどの酵素で標識することができ、ペルオキシダーゼは、色素原3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)と反応し、反応部位で褐色の沈降物を生成する。この方法は、シグナル増幅系の適用による潜在的なシグナル増幅に起因して、感度が高く、かつ用途が広い。IHCプロトコル及びキットは当該技術分野で周知であり、市販されている。スライドの調製及びIHC処理のための自動システムは市販されている。Leica BOND Autostainer及びLeica Bond Refine Detectionシステムは、そのような自動システムの一例である。
本明細書で提供されるアッセイはまた、抗体以外の分子を利用する日常的な病理組織学的染色を使用し、膵臓の組織学的構造を可視化して膵組織構造の異常を検出することができる。病理組織学的染色では、膵組織構造の顕微鏡検査を補助するために、1つ以上の染色色素を使用して細胞、組織、核酸、タンパク質、脂質及び/または他の細胞もしくは組織成分を標識する。病理組織学的染色の典型的な手順には、Alturkistani et al.,Histological Stains:A Literature Review and Case Study,Glob J Health Sci.,(March 2016),8(3):72−79に開示されているように、またはLeica Biosystemsから市販されているように(例えば、LeicaのInfinity Stain Kit System)、固定、処理、包埋、切片化、染色、洗浄/発色が含まれる。例示的な病理組織学的染色は、基礎をなす組織構造及び状態を明らかにするためにすべての組織標本とともに日常的に使用される、ヘマトキシリン・エオシン染色(H&E)である。当業者には明らかであるように、本開示により企図されるアッセイのために、病理組織学的染色及びIHCを様々な順列及び組み合わせで組み合わせることができる。
したがって、本明細書で提供される治療剤または方法に関するアッセイのいくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法に従って、セクション6.3.3で以下にさらに論じるモデルアッセイ系に治療剤を投与し、膵臓の異常を本セクションに記載する病理組織学的染色及び/またはIHC染色により判定する。膵組織構造の異常を、正常基準の膵組織構造または健常対照対象の膵組織構造の方向に低減させるか、変化させるかまたは元に戻す治療剤を、本明細書で提供される方法に使用することができる。
6.3.2.2.イメージングによる膵炎に関するアッセイ
前述の通り、膵炎マーカーはイメージングアッセイによっても検出することができる。膵臓構造の異常は、当業者に周知のように、例えば、超音波(EUSなど)、コンピュータ断層撮影、内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(ERCP)及びコントラスト増強を伴うかまたは伴わない磁気共鳴イメージング(MRCPなど)でイメージングすることができる。イメージングにより検出される例示的な膵炎マーカーは、セクション6.2.2.2に前述した。したがって、本明細書で提供される治療剤の活性に関するアッセイのいくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法に従って、セクション6.3.3で以下にさらに論じるモデルアッセイ系に治療剤を投与し、膵臓の異常を本セクションに記載するイメージングアッセイにより判定する。イメージングアッセイにより検出された膵炎マーカーの異常(セクション6.2.2及び6.2.1に記載)を、マーカーの正常基準範囲または健常対照対象の範囲の方向に低減させるか、向上させるか、変化させるかまたは元に戻す治療剤を、本明細書で提供される方法に使用することができる。
当業者に周知のように、イメージングアッセイを実施して本明細書で提供される膵炎マーカーのいずれかを判定することは日常的である。イメージングアッセイのための詳細なプロトコルは当業者に周知であり、Etemad B et al.,Gastroenterology 2001;120:682−707、Duggan,SN,et al.,World J Gastroenterol 2016;22(7):2304−2313、ならびにGI/Liver Secrets Plus,4th edition,edited by McNally PR,2010のChapter 37(Acute Pancreatitis)及びChapter 38(Chronic Pancreatitis)のそれぞれ、Sai JK et al,World J Gastroenterol 2008 February 28;14(8):1218−1221、Banks PA et al.,Gut 2013;62:102−111、Iglesias−Garia J et a.,Gut 2006;55:1661−1684に記載されており、これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
6.3.2.3.血清学的マーカーに基づく膵炎に関するアッセイ
セクション6.2.2.1で提供された血清学的マーカー、尿中マーカー及び糞便マーカーは、当業者に周知のように、免疫学的アッセイなどの生化学的アッセイによって検出することができる。そのようなアッセイの形式には、ELISAアッセイ、ストリップ試験、ビーズベースのFACSアッセイ、ウエスタンブロッティングアッセイ、クロマトグラフィーアッセイ(例えば、FPLC及びHPLC)、分光アッセイ、比色アッセイ及び質量分析法が含まれ得る。
本明細書で提供される方法におけるアッセイのいくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法に従って、セクション6.3.3で以下にさらに論じるモデルアッセイ系に治療剤を投与し、1つ以上の血清学的マーカーを本セクションに記載するアッセイにより判定する。膵炎の血清学的マーカーの異常を元に戻すか、または血清学的マーカーのレベルを正常基準範囲もしくは健常対照対象のレベルの方向に変化させる治療剤を、本明細書で提供される方法に使用することができる。
セクション6.2.2.1に示されている血清アミラーゼ、リパーゼ、CRPまたは他のマーカーを、酵素免疫アッセイ(EIA)またはELISAなどの免疫アッセイを使用して検出することができる。EIA及びELISAアッセイの両方、例えば、血液、尿、血清または膵臓組織を含む多種多様な組織及び試料をアッセイするためのものが、当該技術分野において公知である。幅広いELISAアッセイ形式が利用可能であり、例えば、米国特許第4,016,043号、同第4,424,279号及び同第4,018,653号を参照されたい(これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。これらは、非競合型の単一部位及び二部位の両方または「サンドイッチ」アッセイ、ならびに従来の競合結合アッセイを含む。これらのアッセイはまた、標識抗体の標的タンパク質への直接結合を含む。サンドイッチアッセイは、一般的に使用されているアッセイである。サンドイッチアッセイ技術の多くの変法が存在する。例えば、典型的なフォワードアッセイでは、非標識抗体を固体基質上に固定化させ、試験する試料を、固定化させた抗体と接触させる。抗体−抗原複合体の形成を可能にするのに十分な時間である適切なインキュベーション期間の経過後、次に、検出可能なシグナルを生成することができるレポーター分子で標識した、抗原に特異的な二次抗体を加えてインキュベートし、抗体−抗原−標識抗体の別の複合体の形成に十分な時間をとる。あらゆる未反応物質を洗い流し、抗原の存在を、レポーター分子によって生成されたシグナルを観察することにより判定する。結果は、可視シグナルの単純な観察による定性的なものであるか、または既知量の標的タンパク質を含有する対照試料と比較することにより定量化されるかのいずれかである。
EIAまたはELISAアッセイのいくつかの実施形態では、酵素が二次抗体にコンジュゲートしている。他の実施形態では、酵素標識二次抗体の代わりに蛍光標識二次抗体を使用して、ELISAアッセイ形式で検出可能なシグナルを生成することができる。特定の波長の光を用いた照射によって活性化されると、蛍光色素標識抗体は、光エネルギーを吸収して分子の励起状態を誘導し、続いて、検出装置で検出可能な特有の色の光を放射する。EIA及びELISAの場合と同様に、蛍光標識抗体を、一次抗体−標的タンパク質複合体に結合させる。未結合試薬を洗い流した後、次に、残存する三次複合体を適切な波長の光に曝露させると、観察された蛍光は、目的の標的タンパク質の存在または量を示す。免疫蛍光及びEIA法のいずれも、当該技術分野で極めて十分に確立されており、また本明細書に開示されている。
一実施形態では、本明細書で提供されるアッセイは、定量的サンドイッチ酵素免疫アッセイ技術を用いる。本明細書で提供される膵炎マーカーに特異的なモノクローナル抗体は、マイクロプレート上に予めコーティングされている。標準物質及び試料(例えば、血液または血清試料)をピペットでウェルに入れ、存在するあらゆるマーカーは固定化された抗体によって結合する。あらゆる未結合物質を洗浄後、マーカーに特異的な酵素結合ポリクローナル抗体をウェルに添加する。洗浄し未結合の抗体−酵素試薬を除去した後、基質溶液をウェルに添加すると、最初のステップで結合したマーカーの量に比例して発色し、これは、試料(例えば、血液または血清試料)中のマーカーレベルと相関する。発色を停止させ、色の強度を測定する。測定値を、試料(例えば、血液または血清試料)のマーカーレベルの代わりとして使用する。
当業者に周知のように、EIAまたはELISAアッセイを実施して、本明細書で提供される膵炎マーカーのいずれかを判定することは日常的である。血清アミラーゼ、血清リパーゼ、CRP及び他の膵炎マーカーを測定するための例示的な市販のアッセイは、セクション6.2.2.1に示されている。したがって、本明細書で提供される方法におけるアッセイのいくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法に従って、セクション6.3.3で以下にさらに論じるモデルアッセイ系に治療剤を投与し、アミラーゼ、リパーゼまたはCRPなどの血清学的マーカーのレベルを本セクションに記載するアッセイにより判定する。マーカーレベルを低減させるか、またはマーカーのレベルを正常基準範囲もしくは健常対照対象のレベルに向けて変化させる治療剤を、本明細書で提供される方法で使用することができる。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、当業者に周知のように、いくつかの特定のアミラーゼアッセイ、リパーゼアッセイ及びCRPアッセイとともに使用することができる。アミラーゼ、リパーゼ、CRP及び他の血清学的マーカーに関するそのような特定のアッセイの例は、Kaphalia BS,Chapter 16,Biomarkers of acute and chronic pancreatitis in Biomarkers in Toxicology,edited by Gupta R.,ISBN:978−0−12−404630−6(2014)、Sutton PA,et al.,Ann R Coll Surg Engl 2009;91:381−384、Matull WR,et al.,J Clin Pathol 2006;59:340−344、Basnayake C et al.,Aust Prescr 2015;38:128−30、及びJasdanwala S et al.,Integr Mol Med,2015;2(3):189−195に記載されており、これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
6.3.2.4.膵臓の機能に関するアッセイ
本明細書で提供される方法におけるアッセイのいくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法に従って、セクション6.3.3で以下にさらに論じるモデルアッセイ系に治療剤を投与し、膵臓の機能を本セクションに記載するアッセイにより判定する。膵臓の機能を回復させるか、または膵臓の機能のレベルを正常基準範囲もしくは健常対照対象のレベルに向けて変化させる治療剤を、本明細書で提供される方法で使用することができる。膵機能をアッセイするための様々な詳細なプロトコルは、例えば、John G Lieb II and Peter V Draganov,World J Gastroenterol.2008 May 28;14(20):3149−3158、Clain JE,et al.,Surg Clin North Am 1999;79:829−845、Couper R.Can J Gastroenterol 1997;11:153−156、Layer P,et al.,J Clin Gastroenterol 1999;28:3−10、Toskes PP.Curr Gastroenterol Rep 1999;1:145−153、Chapter 38 on Chronic Pancreatitis,GI/Liver Secrets Plus,4th edition,edited by McNally PR,2010に記載されているように(これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、当業者に周知であり、日常的に実施されている。
6.3.2.5.シグナル伝達マーカーに関するアッセイ
本明細書で提供される方法におけるアッセイのいくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法に従って、セクション6.3.3で以下にさらに論じるモデルアッセイ系に治療剤を投与し、1つ以上のシグナル伝達マーカーを本セクションに記載するアッセイにより判定する。シグナル伝達マーカーのレベルを低減させるか、またはシグナル伝達マーカーのレベルを正常基準範囲もしくは健常対照対象のレベルに向けて変化させる治療剤を、本明細書で提供される方法で使用することができる。アッセイで使用することができるシグナル伝達マーカーは、セクション6.2.2.4で前述されている。
いくつかの実施形態では、シグナル伝達マーカーを、免疫ブロッティングアッセイを使用して本明細書に記載の抗体で検出することができる。免疫ブロッティングアッセイのいくつかの実施形態では、例えば、ウエスタンブロッティングアッセイにおいて、タンパク質を電気泳動により分離することができ(但し、分離する必要はない)、膜(通常はニトロセルロース膜またはPVDF膜)に転写することができる。IHCアッセイと同様に、シグナル伝達マーカーを特異的に標的とするポリクローナル抗血清及びモノクローナル抗体などの一次抗体または抗血清を使用して、シグナル伝達マーカーのレベルを検出することができる。いくつかの実施形態では、膜を、抗体−抗原結合が生じるのに十分な期間、特定の標的に対する一次抗体と接触させ、結合した抗体を、一次抗体自体への直接標識、例えば、放射性標識、蛍光標識、ビオチンなどのハプテン標識、または西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼなどの酵素によって検出することができる。他の実施形態では、IHCアッセイについて前述したような間接的アッセイにおいて、非標識一次抗体を、一次抗体に特異的な標識二次抗体と組み合わせて使用する。本明細書に記載されているように、二次抗体を、例えば、酵素、または蛍光標識、発光標識、比色標識もしくは放射性同位体などの他の検出可能な標識で標識することができる。免疫ブロッティングプロトコル及びキットは当該技術分野で周知であり、市販されている。イムノブロッティング用の自動システム、例えばウエスタンブロッティング用のiBind Western System(ThermoFisher,Waltham,MA USA 02451)が市販されている。免疫ブロッティングには、ウエスタンブロット、細胞内ウエスタンブロット及びドットブロットが含まれるが、これらに限定されない。ドットブロットは、タンパク質試料を電気泳動で分離せず、膜に直接スポットする簡易化された手法である。細胞内ウエスタンブロットは、マイクロタイタープレートに細胞を播種し、細胞を固定/透過処理し、続いて本明細書に記載されている標識一次抗体または非標識一次抗体で、次いで標識二次抗体で検出することを含む。
他の実施形態では、シグナル伝達マーカーのレベルはまた、蛍光活性化セルソーティング(FACS)アッセイを含むフローサイトメトリーアッセイにおいて本明細書に記載の抗体で検出することができる。IHCアッセイまたは免疫ブロッティングアッセイと同様に、FACSアッセイにおいて、シグナル伝達マーカーを特異的に標的とするポリクローナル抗血清及びモノクローナル抗体などの一次抗体または抗血清を使用して、シグナル伝達マーカーのレベルを検出することができる。いくつかの実施形態では、細胞を、抗体−抗原結合が生じるのに十分な期間、特定のシグナル伝達マーカーに対する一次抗体で染色し、結合した抗体を、一次抗体への直接標識、例えば、一次抗体の蛍光標識またはビオチンなどのハプテン標識によって検出することができる。他の実施形態では、IHCアッセイについて前述したような間接的アッセイにおいて、非標識一次抗体を、一次抗体に特異的な蛍光標識二次抗体と組み合わせて使用する。FACSは、各細胞の特定の光散乱特性及び蛍光特性に基づいて、1度に1細胞ずつ、蛍光標識した生体細胞の混合物を選別または分析する方法を提供する。これにより、フローサイトメーターは、各細胞内のシグナル伝達マーカーのレベルを示す蛍光色素標識抗体の強度を検出して報告する。したがって、シグナル伝達マーカーのレベルを、シグナル伝達マーカーに対する抗体を使用して検出することができる。細胞質シグナル伝達マーカーはまた、透過処理した細胞を染色することにより観察することもできる。FACS染色及び分析を実施するための方法は、当業者に周知であり、Teresa S.Hawley and Robert G.Hawley in Flow Cytometry Protocols,Humana Press,2011(ISBN 1617379506,9781617379505)により記載されている。当業者にとって、FACSアッセイ及び免疫ブロッティングアッセイを実施して本明細書で提供されるシグナル伝達マーカーのいずれかを判定することは日常的である。
当業者に公知のように、シグナル伝達マーカーのレベルはまた、セクション6.3.2.3で前述した酵素免疫アッセイ(EIA)またはELISAなどの免疫アッセイを使用して、日常的に検出することができる。
6.3.3 アッセイのためのモデル系
6.3.3.1.動物モデル
本開示は、動物モデル(例えば、トランスジェニックマウスモデル)を提供し、この動物(例えば、マウス)は、膵臓でCA19−9を発現し、膵炎を発症するように遺伝子操作されている。以下の開示は、例示的な動物モデルとしてマウスを使用して提供されるが、当業者は、本開示が他の動物、例えば、サル、ブタ、イヌ、ラット及び/またはウサギを含み、またそれらに適用可能であることを理解するであろう。本開示はさらに、CA19−9が、1型前駆体鎖への様々な糖部分の段階的付加により生成され、最終的にフコースのGlcNAcへのα1,4結合が生じることを示す。本明細書で使用する場合、Fut3は、α1,4結合を介してフコース部分を付加する能力を有するフコシルトランスフェラーゼを指す。トランスジェニックマウス膵炎モデルの一実施形態では、マウス胚性幹細胞(mESC)を作製することができ、このmESCは、Creの組織特異的発現に依存する誘導性プロモーター、LoxP隣接ストップカセット(LSL)の組換え及びドキシサイクリン(Dox)の投与を介してFut3及びβ3GalT5を発現する。CreをトランスフェクトしたmESC及びCreをトランスフェクトしていないmESCからマウスを作製して、Cre発現依存性または非依存性のいずれかの系統を作製することができる。これらのトランスジェニックマウスでは、Fut3及びβ3GalT5の発現、したがってCA19−9の発現は、Doxの投与により誘導することができる。したがって、本開示は、CA19−9の発現をマウスの膵臓全体で誘導することができるマウス、CA19−9の発現をマウスの膵臓の限局的領域で誘導することができるマウス、及びCA19−9の発現をマウスの全身で誘導することができるマウスを提供する。これらのマウスはCA19−9マウスモデルと称され、それぞれが本明細書で提供される方法に使用することができる。
CA19−9の発現が膵臓で誘導されたすべてのCA19−9マウスモデルにおいて、膵臓以外の組織は、Dox処置の時間経過後、遺伝的に陰性の同腹仔対照と比較して正常な組織構造を示す。マウスモデルの膵臓におけるCA19−9の発現の誘導は、複数の膵炎の生理学的、組織学的及び血清学的徴候(例えば、腺房萎縮、免疫細胞浸潤、コラーゲン沈着、リパーゼ及びアミラーゼの上昇)を含む膵炎を生じさせるが、他方、Dox処置した遺伝的陰性の対照または未処置マウスにおいては、膵炎は認められない。さらに、マウス全体でCA19−9の発現を誘導したCA19−9マウスは、CA19−9の発現後に体重減少及び膵萎縮を示し、場合によっては、20%を超える体重の減少、及びそれに続く安楽死に至る。マウス全体でCA19−9の発現を誘導したCA19−9マウスにおいて、膵臓以外の組織は健常を維持しており、これは、CA19−9発現後のCA19−9マウスの膵炎は自己免疫介在性ではないことを示している。
膵臓全体でCA19−9の発現を誘導したCA19−9マウスは、体重または膵臓重量の減少を伴わずに、浸透性が非常に高い膵炎ならびにアミラーゼ及びリパーゼレベルの上昇が生じる。膵臓全体でCA19−9の発現を誘導したCA19−9マウスの脾臓、リンパ節及び膵臓に存在する免疫細胞型は、急性膵炎のセルレインモデル(以下で論じる)と同等である。膵臓全体でCA19−9の発現を誘導したCA19−9マウスとセルレインモデルのいずれも、脾臓またはリンパ節の免疫細胞型の表現を一切変化させずに、膵臓内の炎症性単球及びマクロファージの処置依存的な流入を示す。膵臓の限局的領域でCA19−9の発現を誘導したCA19−9マウスは、体重または膵臓重量の減少を伴わずに、遺伝的対照及び未処置対照と比較してより小さな膵炎病巣ならびにアミラーゼ及びリパーゼレベルの上昇を生じ、予想されたCA19−9発現パターンを示す。すべてのCA19−9マウスモデルは、慢性膵炎の複数の組織学的マーカーを伴う慢性膵炎を示す。CA19−9はまた、マウスの全身でCA19−9を発現するCA19−9マウスモデル及びマウスの膵臓全体でCA19−9を発現するCA19−9マウスモデルの血漿中で検出可能である。一実施形態では、膵臓全体でCA19−9を発現するCA19−9マウスは、体重減少を伴わずに膵炎表現型の高い浸透度を示す。本明細書で使用する場合、膵炎の浸透度は、膵炎によって影響を受ける膵臓の領域のパーセンテージを指しており、影響を受ける領域のパーセンテージが高いほど、浸透度は高くなる。
さらに、本明細書で提供される方法に適した膵炎モデルには、臨床ヒト膵炎患者が含まれる。臨床試験のためのそのような患者を、セクション6.2.2で前述した通り、膵炎マーカー及び分類スキームに従って同定することができる。
6.3.3.2.細胞モデル
あるいは、膵炎におけるシグナル伝達経路または機序の一部またはすべてを再現する細胞モデルを、治療剤の同定、前述の通りにシグナル伝達マーカーを低下または上昇させる治療剤の活性の確認、膵炎における治療剤の治療アウトカムの判定、及び膵炎における治療剤の有効性の試験のために本明細書で提供される方法に使用することができる。さらに、前述の通り、本明細書で提供される細胞モデルのいずれも、本明細書で開示されるアッセイと任意の順列または組み合わせで使用することができる。本明細書で提供される方法に適したこれらの細胞モデルには、(例えば、マウス膵管腺癌(PDAC)細胞にFut3及び/またはβ3GalT5の発現を導入することにより)CA19−9を発現するように操作したマウスPDAC細胞株、ならびにヒトPDAC細胞株(Suit2など)が含まれる。本開示は、天然にまたは組換えによりCA19−9を発現するPDAC細胞が、ヒト膵炎の根底をなすシグナル伝達経路及び機序の一部またはすべてを再現し、これら細胞を、本明細書で提供される方法及びアッセイで使用できることを示す。
さらに、動物(ブタ、サル、もしくはヒトなど)または腺房細胞株(ラット膵腺房細胞株AR42Jなど)から単離された初代腺房細胞を、治療剤の同定、前述の通りにシグナル伝達マーカーを低下または上昇させる治療剤の活性の確認、膵炎における治療剤の治療アウトカムの判定、及び膵炎における治療剤の有効性の試験のために、本明細書で提供される方法における細胞モデルとして使用することができる。単一、二重及び大型クラスター腺房細胞を、Burnham DB,et al.,J Physiol 349:475−482,1984、Criddle DN,et al.,J Gastroenterol Hepatol 21 Suppl 3:S14−17,2006、Peikin SR,et al.,Am J Physiol 235(6):E743−749,1978、Schultz GS,et al.,Exp Cell Res 130(1):49−62,1980、Williams JA,et al.,Am J Physiol 235(5):517−524,1978(これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているコラゲナーゼ消化プロトコルを使用して入手した。本開示は、腺房細胞がヒト膵炎の根底をなすシグナル伝達経路及び機序の一部またはすべてを再現し、これら細胞を、本明細書で提供される方法及びアッセイで使用できることを示す。
in vitro三次元(3D)培養物または動物の膵臓から単離された3D構造物のいずれかである3D細胞培養物もまた、前述の本明細書で提供される方法において、細胞モデルとして使用することができる。そのような3D培養物は、細胞内シグナル伝達及び細胞間シグナル伝達の両方を含む、ヒト膵炎の根底をなすシグナル伝達経路及び機序の一部またはすべてを再現し、これらを、本明細書で提供される方法及びアッセイで使用することができる。動物の膵臓から単離された3D構造物には、膵小葉、膵オルガノイド及び膵切片が含まれる。
当業者には公知であるように、膵小葉は、クレブス−リンゲル炭酸水素緩衝液を膵臓の疎性結合組織に注入することによりそれらを離して広げ、次に、実体顕微鏡下での顕微解剖により小葉を個々に切除することによって調製することができる。外科的外傷の大部分は導管及び血管に限られるため、この手順は腺房細胞への損傷を最小化する。切除した小葉は、組織の全体的な腺房構造及びそれらの小さなサイズを維持し、インキュベーション培地から酸素及び溶質を容易に浸透させる。この方法に続いて、小葉を培養液中に数時間維持し、高スループットアッセイを含むサブシーケンスアッセイに使用することができる。アッセイ及び方法に適した膵小葉を単離するための手順は、Barreto SG,et al.,Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 299(1):G10−22,2010、Barreto SG,et al.,Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 297(2):G333−339,2009、Flowe KM,et al.,Pancreas 9(4):513−517,1994、Linari G,et al.,Pharmacol Res Society 43(3):219−223,2001、Scheele GA et al.,J Biol Chem 250(7):2660−2670,1975、Schloithe AC,et al.,Neurogastroenterol Motil 20(9):1060−1069,2008に詳細が記載されており、これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
公知の通り、オルガノイドは、三次元の細胞、組織または器官培養物を指す。膵オルガノイドは、コラゲナーゼXIで消化し、成長因子低減マトリゲルに播種した後の切除した膵腫瘍、膵組織及び膵生検から迅速に作製することができる。培地を成長因子R−スポンジンでコンディショニングすると、主に導管細胞集団が促進される。これらの膵オルガノイドは凍結保存に耐え、導管特異的及び病期特異的な特性を呈する。さらに、マウスの膵オルガノイドは、in vitroで疾患進行の生理学的に関連する状況を正確に再現した。同所移植後、膵オルガノイドは正常導管構造を再生することができた。膵オルガノイドを調製するための特定の実施形態では、単離した膵オルガノイドを維持するために、膵臓からの導管を1%FBS(GIBCO)含有DMEM中の0.012%コラゲナーゼXI(Sigma)及び0.12%ディスパーゼ(GIBCO)による酵素消化後に回収し、100%成長因子低減(GFR)マトリゲル(BD)に包埋することができる。膵オルガノイドの単離及び培養のための詳細な手順は、Boj SF,et al.,Cell 160(1−2):324−338,2015、Huch M,et al.,EMBO J 32(20):2708−2721,2013に記載されており、これらは両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
膵切片を得るために、経十二指腸穿刺及び総胆管のカニューレ挿入を介して、低融点アガロースゲルを麻酔したマウスの膵管に注入することができる。その後、膵臓を切除してトリミングすることができる。アガロースは、膵臓を後にビブラトームを使用して80〜140μmの厚さにスライスするのに十分なほど硬くさせる。さらに、アガロースは多孔質であり、それにより組織と緩衝液との自由交換がもたらされ、最大2日間、培養液中の最適な健康状態が確保される。膵切片の単離及び培養のための詳細な手順は、Huang YC,et al.,J Physiol 589(Pt 2):395−408,2011、Huch M,et al.,EMBO J 32(20):2708−2721,2013に記載されており、これらは両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
これらの細胞及び3D細胞構造物を、本明細書で提供される任意の膵炎マーカーまたはその任意の組み合わせ、例えば、シグナル伝達マーカー、組織学的マーカー、生理学的マーカー、機能的マーカー及び血清学的マーカーを測定するための本明細書で提供される任意のアッセイで使用することができる。いくつかの特定の実施形態では、細胞及び3D細胞構造物を、EGFRシグナル伝達、例えば、EGFRのリン酸化、Erk1/2のリン酸化、Aktのリン酸化またはそれらの任意の組み合わせをアッセイの測定値として使用する治療剤の試験のために使用する。他の特定の実施形態では、細胞及び3D細胞構造物を、CA19−9、シアリルルイスまたはそれらの任意の組み合わせをアッセイの測定値として使用する治療剤の試験のために使用する。
6.3.4 高スループットスクリーニングアッセイ
細胞及び3D細胞構造物を使用するアッセイは、高スループットアッセイであり得る。当業者には公知であるように、セクション6.3.1、6.3.2及び実施例に記載されているアッセイのいずれも、細胞または3D細胞構造物をモデル系として使用する場合、高スループットアッセイに採用することができる。本明細書に記載のシグナル伝達マーカー、組織学的マーカー及び血清学的マーカーのいずれか1つを測定することにより、36ウェル、64ウェル、96ウェル、384ウェル及び1536ウェルプレートスクリーニングを使用するようにアッセイを設計することができる。そのような高スループットアッセイの設定に関して、治療剤及び他のアッセイ試薬を移すための液体取扱システム、例えば、Matrix(Hudson,NH)のPlateMate PlusシステムならびにPerkinElmerシステムのMiniTrak及びMultiprobe II HTEXが、当該技術分野において公知である。本明細書に記載のシグナル伝達マーカー、組織学的マーカー及び血清学的マーカーのいずれか1つの測定に基づくデータを、ViewLux Imaging System(PerkinElmer)などの市販のイメージングシステムを使用して収集することができる。ある特定の実施形態では、野生型細胞、野生型3D細胞構造物、健常対象からの細胞、または健常対象からの3D細胞構造物を、高スループットアッセイにおける対照として使用して、シグナル伝達マーカー、組織学的マーカー及び血清学的マーカーのいずれか1つの測定値の正常範囲または基準範囲を示すことができる。
いくつかの特定の実施形態では、本明細書で提供される結合アッセイのいずれも、数千対の結合パートナーの結合、例えば、治療剤とCA19−9(もしくはシアリルルイス)との間の結合を容易に試験するため、CA19−9(もしくはシアリルルイス)に結合する治療剤について分子ライブラリーをスクリーニングするため、またはCA19−9のライブラリーを同定もしくはスクリーニングするために、高スループットアッセイ形式で日常的に採用することができる。
あるいは、本明細書で提供されるアッセイのいずれかをLC−MSなどの質量分析法と組み合わせて、可能性のある分子のライブラリーからCA19−9または治療剤を同定することができる。例えば、免疫沈降アッセイ、共免疫沈降アッセイまたは共沈アッセイを、質量分析法(MS)または液体クロマトグラフィー−質量分析法(LC−MS)と組み合わせて、抗シアリルルイス抗体を沈降させることによりCA19−9を同定するか、またはCA19−9を沈降させることによりCA19−9に結合する分子を同定することができる。そのような適合された高スループットアッセイの一実施形態では、抗シアリルルイス抗体との共免疫沈降をLC−MSと組み合わせて、CA19−9のリストを同定する。
当業者に周知のように、本明細書で提供される1つ以上のアッセイを高スループット形式で採用して治療剤とCA19−9(またはシアリルルイス)との間の結合を試験すること、及び本明細書で提供されるモデル系における1つ以上のマーカーに対する治療剤の効果を試験することは日常的である。アッセイを高スループットアッセイに適合させるための詳細なプロトコル及び様々な形式は、Szymanski P et al.,Int J Mol Sci.2012;13(1):427−452、Klumpp,M.,et al.,Journal of biomolecular screening,11(6),617−633、Mayr,L.M.,et al.,Journal of Biomolecular Screening,2008;13(6),443−448、Mayr,L.M.,et al.,2009;9(5),580−588、D Cronk,D,Chapter 8,in Drug Discovery and Development(Second Edition),2013,edited by Hill RG,ISBN:978−0−7020−4299−7に記載されており、これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
7.実施例
実施例1
実施例における実施形態で使用される材料を、以下の通り調製し、製造し、入手し、購入し、判定し、評価し、検証し、及び/または得た。
ヒト標本
ヒト標本を、ヒト倫理委員会であるEthikkommission an der Technischen Universitat Dresden(Institute of Pathology,University Hospital Dresden,Dresden,Germany)及びCold Spring Harbor LaboratoryのInstitutional Review Board(IRB)の承認を得た後に得た。正常膵組織を、University of Illinois at Chicago及びUniversity of Miami Miller School of Medicineでの膵島移植プログラムより得た。組織マイクロアレイを、Dresden(Institute of Pathology,University Hospital Dresden)における適切なインフォームドコンセントの後に得た慢性膵炎患者の試料から調製した。ヒト倫理委員会:Ethikkommission an der Technischen Universitat Dresden(EK59032007)による審査後に、各患者についてインフォームドコンセントを得た。慢性膵炎の試料を、1993年から2009年に手術を受けた患者から採取した。慢性膵炎の診断は病理医(D.A.)によって確認された。最終診断は組織学的検査に基づいて病理医によって確立され、24ヶ月の中間追跡期間によって、PDACを疾患群において除外した。膵炎患者の場合、すべてのコホートの選択基準には、患者による書面のインフォームドコンセント及び既存の慢性膵炎が含まれた。慢性膵炎の診断は、以下の基準:1年を超える期間にわたるアミラーゼ及びリパーゼ活性の上昇の記録を伴う再発性の膵痛の発作、ならびに診断を裏付ける放射線学的証拠、膵石灰化、慢性膵炎の組織学的証拠、膵管形態の明白な変化、消化不良を伴う重度に異常な膵機能検査、のうちの1つ以上に合致し、より可能性の高い他の診断がない場合になされた(Mayerle,J.et al.,Dtsch Arztebl Int 110,387−393,(2013)。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。石灰化をCTスキャンで同定し、糖尿病をWHOの定義により提唱されているように診断し、外分泌機能不全を糞便エラスターゼ測定または膵酵素の同時補充のいずれかによって判定した。除外基準は、他の随伴性悪性疾患、募集前の過去2年以内の悪性疾患の治癒的処置、膵臓の随伴性の嚢胞性疾患、妊娠、またはインフォームドコンセントが提供できない患者であった。CA19−9の判定を、認可された臨床検査室にて一元的に実施した。
抗体
CD4(100428、クローンGK1.5)、CD8(100714、クローン53.6.7)、TcRベータクローン(109222、クローンH57−597)、TcRガンマデルタ(118106、クローンGL3)、CD19(152406、クローン1D3)、CD45(103138、クローン30−F11)、NKp46(137716、クローン29A1.4)、CD11b(101224、クローンM1/70)、CD11c(117318、クローンN418)、Ly6C(128016、クローンHK1.4)、Ly6G(27606、クローン1A8)、PDGFRa(APA5)、抗ラットBV421(4054)及びストレプトアビジン(405214)をBiolegendから購入した。CA19−9(r5B−1、Mabvax(Sawada,R.et al.Clin Cancer Res 17,1024−1032,(2011)、Viola−Villegas,N.T.et al.Journal of nuclear medicine:official publication,Society of Nuclear Medicine 54,1876−1882,(2013)。これらは両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる))、CA19−9(ATCCハイブリドーマ 1116−NS−19−9 HB8059)、ホスホ−EGFR(8G6.2、EMD Millipore、IHC)、ホスホ−ERK1/2(4370、Cell Signaling)、ERK1/2(4695、Cell Signaling)、ホスホ−Akt(4060、2965、Cell Signaling)、Akt(4685、Cell Signaling)、ホスホリボソームS6(phosphor−ribosomal S6)(4858、Cell Signaling)、及びS6リボソームタンパク質(2317、Cell Signaling)、ホスホ−EGFR(3777、Cell Signaling)、EGFR(71655、Cell Signaling)、EGFR(4267、Cell Signaling)、組換えマウスEGFR−Fc(RnD)、Ki67(Spring Bioscience M3062)、CK19(TROMA III、DSHB)、eGFP(A−11122、Thermofisher)、FLAG(Sigma、F7425)、ヒトアイソタイプ対照(Synagis)、マウスアイソタイプ対照(MOPC21)。
実施例2
クローニング:
ヒトFUT3 cDNAをPCR増幅し、pBabe−Neoにサブクローニングし、サンガーシーケンシングを使用して確認した。ヒトFUT3及びβ3GalT5(Dharmacon、CCSB−broadレンチウイルス発現 OHS6085−213580074)をPCR増幅し、T2A融合体(Fut3−T2A−β3GalT5)として、pBabe−Neo及びColA1標的カセットにサブクローニングした(Beard C,et al.,Genesis.2006;44(1):23−8)。
胚性幹細胞の標的化:
リコンビナーゼ媒介性カセット交換のためにColA1に予め標的化したFRT部位を含有するD34 mES細胞(129/C57Bl/6J F1ハイブリッド)(Beard,C.,Genesis 44,23−28,(2006)。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、及びCAGS−LSL−rtTA3−IRES−mKate2(Dow LE,et al.,PLoS One.2014;9(4):e95236。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)対立遺伝子を使用して、TRE駆動型Fut3−T2A−β3GalT5−IRES−eGFPコンストラクトを導入した。簡潔に述べると、ゼラチンコートした組織培養プレート中の照射したDR4マウス胚線維芽細胞フィーダー上で、mES細胞株D34を、LIF含有mES細胞培地中で継代3で解凍し、48時間後、2i条件に切り替えた(Ying,Q.L.et al.,Nature 453,519−523(2008)。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。mES細胞をトリプシン処理し、照射したDR4フィーダーを37℃で45分間再付着させた。エレクトロポレーションを、2.5μgのFlpE及び5μgのTRE−Fut3−T2A−β3GalT5−IRES−eGFP導入遺伝子を含有する標的化カセットを使用して実施した。600,000個のmES細胞をエレクトロポレーション緩衝液(P3、LonzaのAmaxa)に再懸濁させ、DNAと混合し、エレクトロポレーションストリップウェルに移し、mES細胞に最適化したAmaxaエレクトロポレーションプログラムを使用してエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後、照射したDR4フィーダーを含有する6cmプレートにmES細胞を移した。ハイグロマイシンB選択(140μg/ml、Roche)を48時間後に開始し、11日後に、増殖及び評価のために生存コロニーを採取した。mES細胞クローンを別のプレート中でジェネティシンで処置し、正しい組換え364及びネオマイシン感受性の回復を確認した。さらに、追加のプレート中で、mES細胞にCREをトランスフェクトし、ドキシサイクリンで処置して、Cre依存性のmKate蛍光ならびにCre及びDox依存性のeGFP蛍光を確認した。
CreをトランスフェクトしたmES細胞及びCreをトランスフェクトしていないmES細胞からマウスを作製し、Cre発現依存性または非依存性のいずれかの系統を作製した。Rosa26:CAGGS−rtTA−mKate、及びColA1:TRE−Fut3−β3GalT5−GFP(R;F−全身)、Pdx1−OR p48−Cre、Rosa26:CAGGS−LSL−rtTA371 mKate、及びColA1:TRE−LSL−Fut3−β3GalT5−GFP(CPDX/p48;RLSL;FLSL−膵臓限局性)、ならびにPdx1−Cre、Rosa26:CAGGS−LSL−rtTA−mKate、及びColA1:TRE−Fut3−β3GalT5−GFP(CPDX;RLSL;F−膵臓全体)を保有するマウスを作製した。
サザンブロッティング用のgDNAの単離:
mES細胞のgDNAを、15個のクローン(Gentra,Puregene)から回収した。簡潔に述べると、細胞をPBSで2回洗浄し、ウェルごとに300μlの細胞溶解液を添加して、セルリフターを使用して細胞を擦り取った。溶解物を新しいチューブに移し、37℃で45分間インキュベートした。100μlのタンパク質沈殿溶液を添加して、チューブを10回反転させた。溶解物を最大速度で2分間遠心分離し、上清を新しいチューブに移した。300μlのイソプロパノールを添加して、チューブを50回反転させた後、最大速度で2分間遠心分離した。上清を慎重にデカントし、吸収紙にブロットして風乾させた。DNAペレットを50μlの水に再懸濁させ、65°Cで1時間、穏やかに振盪しながら室温で4時間インキュベートした後、−20°Cで保存した。
サザンブロッティング及びPCR:
ES細胞のgDNAを、EcoRI(NEB)で37℃で18時間、穏やかに振盪しながら消化させた。消化したgDNAを、0.8%TAEアガロースゲルで22時間、20〜35Vで泳動させた。ゲルを10分間回転させながら臭化エチジウムで染色し、水で洗浄する前にイメージングした。ゲルを変性溶液(0.5N NaOH、1.5M NaCl)中で30分間回転させながらインキュベートした後、水で洗浄した。ゲルを中和溶液(1M Tris、3M NaCl、pH7.0)中で30分間回転させながらインキュベートした後、水で洗浄した。ゲルを20×SSCで一晩、室温で毛細管流動によりナイロンメンブレン(Schleicher & Schuell Nytran)に転写した。膜を2×SSCですすぎ、ワットマン紙の上に置き風乾させた後、60秒間UV架橋させた。膜をRobbinsチューブ内の10mlのPre−Hyb溶液に入れ、回転させながら68℃で30分間インキュベートした。Pre−hybの洗浄を42℃で回転させながら繰り返した。次に、適切なプローブを含むハイブリダイゼーション溶液中で、42℃で回転させながら膜を一晩インキュベートした。プローブは、eGFP(482958CPM、Rediprime)及びピューロマイシン(186409CPM、Rediprime)に対して作製した。次に、膜を68℃で30分間、回転させながら3×SSC/0.5%SDSで2回洗浄してから、−80°Cで一晩フィルムに感光させた。検証済みの単一コピー挿入物よりもシグナルが高いクローンを除外するため、gDNAをeGFPの遺伝子型同定のためにTransnetyxにも送った。クローンFB8及びFB12を、四倍体補完(NYU)のために選択し、両方とも生殖細胞系列が伝達したファウンダーを産生した。両方のクローンは同じCA19−9発現パターンを示し、クローンFB12のファウンダーをさらなる評価のために選択した。
マウス:
KPCマウス(Kras+/LSL−G12D;Trp53+/R172H;Pdx1−Cre)は、以前に説明されており(Hingorani SR,et al.,Cancer Cell.2003;4(6):437−50、Hingorani SR,et al.,Cancer Cell.2005;7(5):469−83)、これを、C57Bl/6Jバックグラウンド(The Jackson Laboratory、000664系統)に戻し交配した。すべての動物実験を、Cold Spring Harbor LaboratoryのIACUCによって承認された手順に従って実施した。マウスを、6〜8週齢で実験的試験に組み入れた。マウスに、10mg/mlのスクロースを補充した飲料水(0.5〜2mg/ml)を介して、最大1週間の試験期間中にドキシサイクリンを投与した。1週間を超える実験的試験については、ドキシサイクリンを固形飼料により投与し、マウス1匹あたり4〜5g/日の消費に基づいて、1日あたり2〜3mgのドキシサイクリンを送達するように設計した(Harlan Teklad、dietTD.01306、ドキシサイクリン625mg)。EdU(300μg、Santa Cruz)を3日間連続で1日2回腹腔内投与した。セルレインを200μl(10μg/ml)の8時間ごとの用量で48時間腹腔内投与して、C57Bl/6Jマウスを24時間または72時間回復させた。血糖値を、414外側伏在静脈でACCU−CHECK Nano(Roche)を使用して測定した。
レトロウイルスの産生及び感染:
同種指向性のPhoenix細胞(ATCC)を、10cmの組織培養プレートあたり4×10細胞で播種した。24時間後、細胞は70〜80%コンフルエントであった。トランスフェクションの1時間前に、培地をDMEM中の10%FBS、クロロキン25μmと交換した。総量438μlの水中の10μgのプラスミドDNAを、62μlのCaCl2に添加した。DNA/CaCl2混合物を500μlの2×HBSに滴加しながら、同時に溶液全体に空気をバブリングした。混合物を室温で30分間インキュベートした。溶液をボルテックスした後、組織培養プレートに滴加した。16時間後、培地を10%FBSを補充したDMEMに交換した。ウイルス上清を24時間及び48時間で回収し、濾過した(0.45μm)。1容量のRetro−Xコンセントレータ(Clontech)を3容量のウイルス上清に添加して、4℃で一晩インキュベートした。1500×gで45分間、4°Cで遠心分離した後、ウイルスペレットを感染に適した培地で再懸濁させた。単層細胞の感染用に、10μg/mlのポリブレンを含有する10%FBSを補充したDMEM中に、ウイルスを再懸濁させた。感染の48時間後に選択を開始した。オルガノイドの感染用に、ウイルスペレットを、10μg/mlのポリブレン及び10.5μMのRhoキナーゼ阻害剤Y−27632(Sigma)を含有するオルガノイド培地に再懸濁させた。オルガノイドの感染を、単一細胞を室温で600RCFで1時間スピノキュレーション(spinoculation)を使用して解離させた後(100,000〜250,000細胞)、続いて、マトリゲルに再懸濁させ、最初の72時間、10.5μMのRhoキナーゼ阻害剤Y−27632(Sigma)の存在下でオルガノイドとして増殖させて実施した。感染の2日後、オルガノイドを選択のために1mg/mlのジェネティシン(Life technologies)またはブラストサイジン(10μg/mL、最終濃度)で処置した。
免疫組織化学:
ホルマリン固定しパラフィン包埋したブロックを薄片にし、脱パラフィンした。別途明記しない限り、抗原の回復を、圧力鍋にてクエン酸緩衝液中で6分間実施した。30分間のクエン酸緩衝液の抗原回復に続いて、ホスホ−EGFR IHCを、以前に説明されている通り(Ardito CM,et al.,Cancer Cell.2012;22(3):304−17)に実施した。内因性ペルオキシダーゼを、室温で20分間、TBS中の3%過酸化水素水でクエンチした。次に、スライドを水道水ですすぎ、Cadenzaシステムに移した。スライドを、室温で1時間、TBST中の3%BSAでブロッキングし、一次抗体で一晩インキュベートした。スライドをTBSTで3回洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体で室温で1時間インキュベートした。スライドをTBSTで3回洗浄し、Cadenzaシステムから取り外した。ImmPACT DAB(Vector)を1〜10分間インキュベートし、続いて水で洗浄し、ヘマトキシリン対比染色剤でインキュベートした。次に、スライドを脱水し、cytoseal60でカバースリップした。
Plus Slides(Fischer Scientific)上に採取し室温で保存した、ホルマリン固定しパラフィン包埋した5μmの切片で、自動免疫組織化学を実施した。染色前に、スライドを60℃の対流式オーブンで1時間インキュベートした。発色性免疫組織化学を、オンライン脱パラフィンを備えたVentana Medical Systems Discovery XTプラットフォームで、別段の記載のない限りVentanaの試薬及び検出キットを使用して、以前に記載されている通り(Perez−Aso M,et al.,FASEB J.2016;30(1):457−65)に実施した。簡潔に述べると、切片をキシレンで脱パラフィンし(3回交換)、段階的なアルコール(100%エタノールを3回交換、95%エタノールを3回交換)で再水和させ、蒸留水ですすいだ。熱誘導エピトープ回復を、1200ワットの電子レンジで100%の電力で、10mMのクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)中で20分間実施した。切片を30分間冷却後、蒸留水ですすいだ。内因性ペルオキシダーゼ活性をブロックした。一次抗体を、Tris緩衝生理食塩水(25mM Tris、0.15M NaCl)で1:1000〜1:10000に希釈して、室温で10時間インキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートした二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を、Tris緩衝液で1:200に希釈して、37℃で1時間インキュベートした。複合体を3,3ジアミノベンジジンで可視化して、硫酸銅で増強させた。スライドを蒸留水で洗浄し、ヘマトキシリンで対比染色し、脱水して、永続性の封入剤でマウントした。陰性対照は、一次抗体の代わりに抗体希釈剤のみを使用した。
組織学的定量化:
スライドをAperio CS2スキャナー(Leica)を使用してスキャンして、総占有ピクセル面積をImagescope(Leica)で算出した。H&E染色したスライド上の影響を受けた膵炎領域に手動で注釈を付し、影響を受けていない領域及び影響を受けた領域を測定した。膵炎領域を、浸潤リンパ球の存在、腺房小葉内の腫脹、腺房から導管への化生、線維化及び脂肪細胞の置換によって定義した。Ki67陽性核の数を、1群あたり少なくとも4匹の動物からの5つの代表的な高倍率視野において手動で計数した。
血清学的測定:
血漿中のアミラーゼ及びリパーゼレベル(リチウムヘパリン、BD biosciences)を、IDEXXの病理学サービスによって測定した。CA19−9レベルを、MagPIXマルチプレックスELISAプラットフォーム(Luminex)でヒトがんバイオマーカーアッセイ(EMD Millipore)を使用して測定した。血糖値を、外側伏在静脈でAccu−Chek Nanoモニター(Roche)を使用して測定した。CA19−9を対象とする抗体のレベルを、高結合性ポリスチレン平底プレートを275ユニットのCA19−9(MyBioSource、MBS318287)で室温で一晩コーティングすることによって測定した。CA19−9でコーティングしたプレートを、PBS中の0.05%Tween(登録商標)20で洗浄し、洗浄緩衝液中の1%BSAでブロッキングしてから、最終容量100μlのブロッキング緩衝液で10μlのマウス血漿をインキュベートした。
糞便測定:
新鮮な糞便試料を採取し、各アッセイ緩衝液のそれぞれにおいて手動による破壊(Biomasher II)を使用して処理した。キモトリプシン(BioVision)及びエラスターゼ(EnzChek,ThermoFisher)の測定を、製造業者の指示に従って実施した。
オルガノイド、腺房外植片、単層細胞株及び培養条件:
膵管オルガノイド培養物の単離及び増殖のための詳細な手順は、以前に説明されている(Boj Sylvia F,et al.,Cell.2015;160(1−2):324−38)。簡潔に述べると、膵臓の導管を、1%FBS(GIBCO)含有DMEM中の0.012%コラゲナーゼXI(Sigma)及び0.12%ディスパーゼ(GIBCO)による酵素消化後に回収し、100%成長因子低減(GFR)マトリゲル(BD)に包埋した。オルガノイドを、最終濃度100ng〜1μg/mlのドキシサイクリンで処置した。必要な場合(例えば、増殖曲線)、オルガノイドを、2mg/mlのディスパーゼを使用して単一細胞懸濁液に解離させ、続いて37℃で10分間、TrypLEでインキュベーションした。細胞を40μmのセルストレーナーで濾過した。細胞濃度を、Nexcelom Cellometerでアクリジンオレンジ及びヨウ化プロピジウムを使用して判定した。CellTiter−Gloを使用した増殖曲線分析のために、オルガノイド単一細胞を、384ウェルプレートにウェルあたり500細胞で10%マトリゲル中に播種した。抗体ブロッキング実験を、2〜4μgの抗体を使用して実施した。
腺房の外植を、5mg/mlコラゲナーゼII(GIBCO)、1mg/mlディスパーゼ(GIBCO)、2.50%FBS(GIBCO)及び1mg/ml大豆トリプシン阻害剤(GIBCO)を含有するAdvanced DMEM/F12(GIBCO)中で5〜10分間短時間で消化した後、細かく刻んだ膵組織で実施した。腺房クラスターを、腺房凝集塊がおよそ20〜200細胞のクラスターサイズに達するまで、37℃で消化しながら3〜5分ごとにモニタリングした。腺房クラスターを1回洗浄し、次に、1×Glutamax(GIBCO)、1×ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S、GIBCO)、1×HEPES(GIBCO)、3×NEAA(GIBCO)及び0.1%BSA(Sigma−Aldrich)を含有するAdvanced DMEM/F12(GIBCO)に播種した。
マウス膵腫瘍からの単層細胞株を、隣接する正常膵臓から原発腫瘍を切開し、手動で約1mm断片に細かく刻むことにより作製した。細かく刻んだ組織を、100mg/mlのコラゲナーゼV中で37℃で45分間、回転させながら酵素的に消化した。消化をDMEM中の10%FBS、P/Sでクエンチし、消化した物質を300RCFで5分間遠心分離した。上清を廃棄し、消化した物質を10%FBS、P/S、DMEMに再懸濁させ、凍結保存及び増殖のために10cm組織培養プレートに播種した。ヒト膵癌細胞株であるCapan2、Suit2、Miapaca2(ATCC)及びhM1−2Dを、RPMI中の10%FBS、P/S(GIBCO)中で増殖させた。
フローサイトメトリー用のマウス一次組織の単一細胞懸濁:
脾臓及びリンパ節を、FACS緩衝液(eBioscience)中で機械的に解離させ、ホモジナイズして、ナイロンセルストレーナー(BD Falcon)に通した。膵臓を機械的に解離させ、10%FCSを補充したDMEM(Gibco)中の0.4mg/mLリベラーゼ、0.05mg/mLコラゲナーゼD及び0.1mg/mL DNase I(Roche)で、37℃で30分間消化して、懸濁液をナイロンセルストレーナーに通した。
フローサイトメトリー分析:
染色を、プレートシェーカー上で細胞を4℃で15分間、FACS緩衝液(eBioscience)中の抗体とともにインキュベートすることにより実施した。マルチカラーフローサイトメトリー分析を、LSR Fortessaサイトメーター(BD Biosciences)を使用して実施した。すべてのフローサイトメトリー実験のゲーティング戦略を、以下にさらに記載する。
ウエスタンブロッティング:
免疫ブロッティングには標準的な手法を用いた。簡潔に述べると、タンパク質溶解物を4〜12%のBis−Tris NuPAGEゲル(Life Technologies)上で分離し、PVDF膜(Millipore)に転写し、TBS中の0.1%Tween(登録商標)20中の3%BSA(Sigma)で1時間ブロッキングした。次に、膜を一次抗体で4℃で振盪しながら一晩インキュベートした後、西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートした適切な二次抗体で1時間インキュベートし、ECL(GE Healthcare)により検出した。指定のタンパク質標的に対して正規化した変化を、ローディング対照であるコフィリン及び未処置の時点と比較して定量化した。
細胞株からのタンパク質の単離:
組織培養プレートを氷冷PBSで3回洗浄し、氷上で30分間、1×プロテアーゼ・ホスファターゼ阻害剤カクテルを含む、1%Triton(登録商標) X−100、50mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、5mM EDTA入りのプレート上で溶解させた。溶解物をマイクロ遠心チューブに移し、16100RCFで4°Cで10分間清澄化して、−20°Cで保存するために新しいチューブに分取した。
オルガノイドからのタンパク質の単離:
液体オーバーレイ培地を、0.5×完全ミニプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche、EDTA不含)と0.5×PhosSTOP(Roche)とを含有するオルガノイド及び氷冷Cell Recovery Solution(Corning)から吸引した。オルガノイドをCRS中で0.5×プロテアーゼ・ホスファターゼ阻害剤とともに氷上で10分間インキュベートし、続いて、4℃で5分間、1500RCFで遠心分離した。上清を廃棄し、オルガノイドを0.5×プロテアーゼ・ホスファターゼ阻害剤を含むCRSで1回洗浄した。オルガノイドペレットを液体窒素中で急速冷凍し、−80℃で保存した。オルガノイドを、氷上で30分間、1×プロテアーゼ・ホスファターゼ阻害剤カクテルを含む、1%Triton(登録商標) X−100、50mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、5mM EDTA中で溶解させ、16100RCFで4°Cで10分間清澄化して、−20°Cで保存するために新しいチューブに分取した。
免疫沈降:
CA19−9の免疫沈降を、20mM HEPES、150mM NaClを含有するIP緩衝液中で、0.5×完全ミニプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche、EDTA不含)の存在下で実施した。モノクローナル抗体を、製造業者の指示に従ってM−270 Epoxy Dynabeads(Thermo Fisher)にコンジュゲートさせた。100μlのmAbコンジュゲートDynabeadsをIP緩衝液で3回洗浄し、1.5mlのLoBindマイクロ遠心チューブ(Eppendorf)内の1mlのIP緩衝液中の単層細胞株からの500μgの全細胞溶解物、または5mlのLoBindチューブ(Eppendorf)内の4mlのオルガノイド条件培地とともに、4℃で1時間回転させながらインキュベートした。試料を磁石に1分間結合させた後、上清を除去し、ビーズをIP緩衝液で3回洗浄した。
Flag免疫沈降を、5mlの条件培地、10μgのウサギ抗Flag抗体(Sigma)及びプロテインGコンジュゲートDynabeads(ThermoFisher)を製造業者の指示に従って使用して、TBS(50mM Tris(pH7.6)、150mM NaCl)中で実施した。免疫沈降させたタンパク質を、DYKペプチド(100μg/ml)を使用して1時間穏やかに振盪するか、または氷冷のアミンベースの低pH IgG溶出緩衝液(ThermoFisher)を使用して氷上で溶出させ、10×TBSでクエンチした。
EGFRの免疫沈降を、1% Triton(登録商標) X−100、150mM NaCl及び50mM Tris(pH7.5)中で実施した。
オルガノイドからのRNAの単離、cDNAの合成及び定量RT−PCR:
Trizol及びPureLink RNA単離キットを製造業者(Thermo Fisher)の指示に従って使用して、RNAを細胞及びオルガノイド培養物から抽出した。1μgの全RNA及びTaqMan Reverse Transcription Reagent(Applied Biosystems)を使用して、cDNAを合成した。QuantStudio 6−フレックスリアルタイムPCR装置(Applied Biosystems)で、遺伝子特異的Taqmanプライマー及びプローブセット(Applied Biosystems)を使用して、すべての標的を増幅した(40サイクル)。相対的な遺伝子発現の定量化を、QuantStudioリアルタイムPCRソフトウェアv1.1 (Applied Biosystems)を使用したDDCt法を使用して実施した。発現レベルをHprtに対して正規化した。解析した例示的な遺伝子には、Mm01187858_ml(EGFR)、Mm0065854l_ml(Her2)、Mm01159999_ml(Erbb3)、Mm01256793_ml(Erbb4)、Mm00438696_ml(EGF)、Mm00446232_ml(TGFa)、Mm01354339_ml(Areg)、Mm00514794_ml(Ereg)、Mm00446968_ml(Hprt)が含まれた。
RNAシーケンシング及び解析
RNAシーケンシングを、Judith Sulzberger Columbia Genome Centerにて、Illumina HiSeq2500装置で60倍のカバレッジ及び100bpのペアエンドリードを使用して実施した。Kallisto 0.44(Bray,N.L.,et al.,Nat Biotechnol 34,525−527(2016)。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で、Ensembl GRCh38マウストランスクリプトームを、β3GALT5(ENST00000380620.8、ENST00000475838.1、ENST00000380618.5、ENST00000398714.3、ENST00000615480.4、ENST00000615480.4)、FUT3(ENST00000458379.6、ENST00000458379.6、ENST00000303225.10、ENST00000589620.5、ENST00000589620.5、ENST00000587048.1、ENST00000587048.1、ENST00000585715.1、ENST00000587183.1、ENST00000588539.1)、eGFP(pBS31’−RBGpA\TRE)、rtTA3(pRosa−pA−CAGGs−L)及びmKate2(Akama−Garren,E.H.et al.Sci Rep 6,16836,(2016)。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)のcDNAと組み合わせて使用して、転写物の存在量を定量化した。
転写物レベルの存在量を、tximport 1.8(R/Bioconductor(Soneson,C.,et al.,F1000Research 4,1036(2015)。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる))を使用して遺伝子レベルで集計した。DESeq2 1.2(R/Bioconductor(Love,M.I.,et al.,Genome Biol 15,550,(2014))。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で、以下の時点及び条件の対比:4時間の遺伝的陰性のオルガノイド対0時間の遺伝的陰性のオルガノイド、24時間の遺伝的陰性のオルガノイド対0時間の遺伝的陰性のオルガノイド、24時間の遺伝的陰性のオルガノイド対4時間の遺伝的陰性のオルガノイド、4時間のCPDX;RLSL;Fオルガノイド対0時間のCPDX;RLSL;Fオルガノイド、24時間のCPDX;RLSL;Fオルガノイド対0時間のCPDX;RLSL;Fオルガノイド、及び24時間のCPDX;RLSL;Fオルガノイド対4時間のCPDX;RLSL;Fオルガノイド、を用いて遺伝子レベルカウントの差次的発現を実施した。レポーター遺伝子eGFPならびにヒト導入遺伝子β3GALT5及びFUT3を、差次的発現解析(遺伝子全体にわたり情報をプールする)の偏りを避けるために除外した。遺伝子Oprd1及びGstm5を、それらの極度の差次的発現を理由として異常値として特定し、同様に除外した。
遺伝子を−log10(q値)*符号(log2倍率変化)を使用してランク付けし、ここで、q値は、多重検定用に補正したp値である(Benjamini & Hochberg法)。遺伝子セットのエンリッチメントを、24時間処置対0時間処置のランク付けした遺伝子リスト上で、GSEA 3.0(Subramanian,A et al.Proc Natl Acad Sci U S A 102,15545−15550,(2005)。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を、以下のMSigDB 6.1データベース:C2 KEGG、C5、C6及びHを使用して実施した。GSEAは、以下の非デフォルトパラメータ:−nperm 2000、−set_min 10、−set_max 1000を使用した。GSEAを実行する前に、24時間の遺伝的陰性オルガノイド対0時間の遺伝的陰性オルガノイドの対比において差次的に発現した遺伝子を、ランク付けした遺伝子リストから除外した。
可視化のために、ライブラリーサイズ及び分散−平均関係について、DESeq2の分散安定化変換関数を使用して未加工の数値を対照に対して正規化した。
トリプシン消化及びiTRAQ標識:
ビーズを、20μLの50mM炭酸水素トリエチルアンモニウム緩衝液(TEAB)で再構成した。RapiGestを最終濃度が0.1%になるように添加し、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を最終濃度が5mMになるように添加した。次に、試料を20分間55°Cまで加熱し、室温まで冷却して、メチルメタンチオスルホン酸(MMTS)を最終濃度が10mMになるように添加した。試料を室温で20分間インキュベートして、遊離スルフヒドリル基のブロッキングを完了した。次に、2μgのシーケンスグレードのトリプシン(Promega)を試料に添加し、試料を37℃で一晩消化させた。消化後、上清をビーズから除去し真空中で乾燥させた。ペプチドを50μLの0.5M TEAB/70%エタノールで再構成し、室温で1時間、8プレックスiTRAQ試薬で標識した(Ross PL,et al.,Mol Cell Proteomics.2004;3(12):1154−69)。次に、標識した試料をギ酸を使用してpH4に酸性化して合わせて、約10μLが残存するまで真空中で濃縮した。
スピンカラムを使用した二次元分画:
Pierce High pH Reversed−Phase Peptide Fractionation Kit(Thermo Scientific)を製造業者の指示に従いそこにわずかな変更を加えて使用して、ペプチドを分画した。簡潔に述べると、ペプチドを150μLの0.1%TFAで再構成し、スピンカラムにロードし、3000gで2分間遠心分離した。カラムを水で洗浄後、0.1%トリエチルアミン(TEA)中の次のパーセンテージ:5%、7.5%、10%、12.5%、15%、20%、30%及び50%のアセトニトリル(ACN)でペプチドを溶出させた。次に、8つの分画のそれぞれを、低pHでキャピラリー逆相LCを使用して質量分析計に個々に注入した。
LCによる二次元分画:
ペプチドを、高−低pH逆相分離戦略(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Gilar,M.,et al.,Journal of separation science 28,1694−1703(2005)より適用)を使用して分画した。最初の(高pH)次元では、Gemini 3u C18樹脂(Phenomenex,Ventura,CA)を充填した10cm×1.0mmカラムで、流速100μl/分でペプチドを分画した。移動相Aを20mMギ酸アンモニウム(pH10)で構成し、移動相Bを90%アセトニトリル/20mMギ酸アンモニウム(pH10)で構成した。試料を50μLの移動相Aで再構成し、試料全体をカラムに注入した。Bを5%からBを70%の線形勾配を35分間使用してペプチドを分離し、次いで移動相を10分間、Bを95%まで増加させた。画分を40分間にわたり毎分採取し、次に、Wang,Y.et al.Proteomics 11,2019−2026(2011)(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)により記載されたコンカテネーション(concatenation)戦略を使用して8つの画分に合わせた。次に、8つの分画のそれぞれを、低pHでキャピラリー逆相LCを使用して質量分析計に個々に注入した。
質量分析法(Velos):
ナノイオンスプレー源を備えたOrbitrap Velos Pro質量分析計(Thermo Scientific)を、EASY−nLCシステム(Thermo Scientific)に連結した。ナノフローLCシステムは、3cmのAqua 5μm C18材料(Phenomenex)を含有する内径180μmの溶融シリカキャピラリートラップカラム、及びAqua 3μm C18材料(Phenomenex)を15cmまで充填した8μmエミッター(New Objective,Woburn,MA)を備えたセルフパックPicoFrit(商標)100μm分析カラムで構成されていた。移動相Aを2%アセトニトリル、0.1%ギ酸で構成し、移動相Bを90%アセトニトリル、0.1%ギ酸で構成した。移動相Aに溶解させた3μLの各試料を、オートサンプラーを介してトラップカラムに注入した。次に、以下の線形勾配段階:Bが5%で1分間、70分間でBを5%からBを35%に、15分間でBを35%からBを75%に、Bを75%で8分間維持し、1分間でBを75%からBを8%に、最後の5分間はBを8%で維持、を400nL/分の流量で使用してペプチドを分離した。
溶出したペプチドを、末端の2.3kVスプレー電圧及び275°Cのキャピラリー温度を適用して、Orbitrap Velos Pro質量分析計に直接エレクトロスプレーした。各フルスキャン質量スペクトル(Res=60,000;380〜1700m/z)に、上位12種の質量のMS/MSスペクトルが続いた。高エネルギー衝突解離(HCD)を、断片化のための正規化衝突エネルギーを35に設定し、単離幅を1.2に設定し、活性化時間を0.1で使用した。排除リストサイズ500、リピートカウント1及び排除質量幅10ppmとともに、動的排除のために70秒の持続時間を設定した。電荷状態が+2以上の場合はモノアイソトピックプリカーサー選択を使用し、すべてのデータをプロファイルモードで取得した。
質量分析法(Fusion):
ナノイオンスプレー源を備えたOrbitrap Fusion Lumos質量分析計(Thermo Scientific)を、EASY−nLC1200システム(Thermo Scientific)に連結した。LCシステムは、ReproSil−Pur C18−AQ 1.9uM材料(Dr.Maish GmbH)を25cmまで充填した8μmエミッター(New Objective,Woburn,MA)を備えたセルフパックPicoFrit(商標)75μm分析カラムで構成されていた。移動相Aを2%アセトニトリル、0.1%ギ酸で構成し、移動相Bを90%アセトニトリル、0.1%ギ酸で構成した。次に、以下の段階:200nL/分の流量で、1分間でBを2%からBを6%、84分間でBを6%からBを30%に、9分間でBを30%からBを60%に、1分間でBを60%からBを90%に、Bを90%で5分間維持し、1分間でBを90%からBを50%にして、次にBを50%で9分間維持する際に流量を500nL/分に増加、を使用してペプチドを分離した。
溶出したペプチドを、末端の2.3kVのスプレー電圧及び300°Cのキャピラリー温度を適用して、Fusion Lumos質量分析計に直接エレクトロスプレーした。フルスキャン質量スペクトル(Res=60,000;400〜1600m/z)に、選択のための「トップスピード(Top Speed)」法を使用したMS/MSが続いた。高エネルギー衝突解離(HCD)を、断片化のための正規化衝突エネルギーを35に設定し、単離幅を1.2に設定し、排除質量幅10ppmとともに動的排除のために10秒の持続時間を設定して使用した。電荷状態が+2以上の場合はモノアイソトピックプリカーサー選択を使用し、すべてのデータをプロファイルモードで取得した。
データベース検索:
ピークリスト(.MGF)ファイルを、Mascot Distiller 2.6(Matrix Science)によって作成した。タンパク質の同定及び定量化を、UniProtマウスまたはヒト参照プロテオーム(それぞれ60,725配列及び93,799配列)に対して検索する、Mascot2.6(Perkins,D.N.et al.,Electrophoresis 20,3551−3567(1999)。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を使用して実施した。システインのメチルチオール化ならびにN末端及びリシンのiTRAQ修飾を固定の修飾として設定し、メチオニン酸化及び脱アミド化(NQ)を可変として設定した。トリプシンを切断酵素として使用し、1回の切断ミスを許容した。質量許容差を、インタクトなペプチドの質量については30ppm、断片イオンについては0.3Daに設定した。同じUniprotヒトまたはマウスデータベースのランダム化バージョンを使用して、最終1%または5%のFDRを得るように検索結果を再スコア化した。タンパク質レベルのiTRAQ比を、期待値が<1%または5%FDRであるペプチドのみを使用して強度加重として算出した。これらはタンパク質IP実験であったため、全体的な比率の正規化は適用されなかった。次に、タンパク質エンリッチメントを、1.8の値をエンリッチメントのカットオフとして使用して(2>SD)、真の試料のタンパク質比を対応する対照試料の比で割ることにより算出した。
CA19−9の発現は膵炎患者で上昇している:
膵炎は、死亡または著しい病的状態、全身性炎症反応及び多臓器不全症候群を伴う慢性状態を招くおそれがある重篤かつ一般的な病状である。膵炎はまた、膵癌を発症するリスクの16.5倍の上昇と関連しており(Lowenfels,A.B.et al.N Engl J Med 328,1433−1437(1993)。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、膵炎の病因及び処置に関するさらなる研究が必要であることが明確に示されている。一部の膵炎患者(10〜30%)の血清では、CA19−9の上昇を含むグリコシル化の変化が認められているが、疾患の進行におけるこのグリカンエピトープに帰する役割は存在しない(Haglund,C.et al.,Br J Cancer 53,189−195(1986)、Makovitzky,J.Virchows Archiv.B, Cell pathology including molecular pathology 51,535−544(1986)。これらは両方とも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。我々は、膵炎の切除標本の組織マイクロアレイ(TMA)を評価し、90%を超える患者において、CA19−9は、主に導管に発現しているが腺房上皮細胞には発現していないことを見出し(図1A、図1B)、これは、この疾患におけるその突出した存在を実証している。CA19−9は、1型前駆体鎖への様々な糖部分の段階的付加により生成され、最終的にフコースのN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)へのα1,4結合が生じ(図1C)、CA19−9は分泌タンパク質及び細胞表面タンパク質に多価的に付加することができる。マウスにおけるCA19−9の機能的重要性の評価は、げっ歯類の偽遺伝子であるFut3をマウスが欠如していることにより妨げられてきた(Xia,B.et al.,Anal Biochem 387,162−170(2009)、Narimatsu,H.in Handbook of Glycosyltransferases and Related Genes(eds Naoyuki Taniguchi et al.)218−225(Springer Japan,2002)。これらは両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。Fut3は、α1,4結合を介してフコース部分を付加する能力を有する唯一のフコシルトランスフェラーゼである。我々は、I型鎖前駆体の産生に必要なFUT3及びβ3GALT5(Ishijima,N.et al.J Biol Chem 286,25256−25264(2011)。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の両方の発現が、マウス膵管腺癌(PDAC)細胞の培養物におけるCA19−9(シアリルルイス、sLe)の産生に必要であることを見出した(図1C〜1E)。FUT3及びβ3GALT5の両方の発現は、ヒトがん細胞株(Colo205)で観察されたものと同等レベルでのCA19−9の細胞表面発現をもたらした(図1E)。操作したマウスPDAC細胞中でCA19−9エピトープが適切な方法で発現したことを確認するために、それらをヒトPDAC細胞株と比較したところ、培養物中で予想された膜局在化も示すことが判明した(図1F)。さらに、CA19−9にコンジュゲートしたタンパク質は、同所移植後にin vivoで分泌され、これは、ヒトPDAC細胞株移植レシピエントに匹敵するレベルでのCA19−9の産生を実証している(図1G)。
CA19−9がげっ歯類発現系におけるタンパク質に擬似的に付加されているかどうかを判定するために、操作したマウスPDAC細胞株に存在するCA19−9修飾タンパク質を、ヒトPDAC細胞に存在する内因性CA19−9修飾タンパク質と比較した。CA19−9タンパク質キャリアを免疫沈降(IP)させ、CA19−9発現細胞(FB)の空ベクター形質導入対照(Neo)との質量分析(MS)比較により同定した(図2A)。CA19−9陽性細胞と陰性細胞間のタンパク質の相対的存在量の差異を、相対的及び絶対的定量化のための等圧タグ(iTRAQ)(Ross,P.L.et al.Mol Cell Proteomics 3,1154−1169(2004)。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を使用して判定した。文献(Koprowski,H.et al.Somatic Cell Genet 5,957−971(1979)、Sawada,R.et al.Clin Cancer Res 17,1024−1032(2011)。これらは両方とも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)における使用に基づいて、2つのCA19−9抗体クローン(5B1、NS19−9)を選択した。CA19−9タンパク質キャリアを、いずれかのCA19−9抗体を使用して、陰性試料と比較してCA19−9陽性において少なくとも1.5倍上方制御されるものと定義した。これらの分析により、Muc1、Lgals3bp、CD44及びMuc5acを含むFBマウス細胞における既知のCA19−9タンパク質キャリアを同定した(Sperandio,M.et al.,Immunological reviews 230,97−113(2009)、Yue,T.et al.PLoS One 6,e29180(2011)、Yue,T.et al.Proteomics 11,3665−3674(2011)、Hirao,Y.et al.,Journal of Molecular Biomarkers & Diagnosis 03,(2012)。これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。ヒトPDAC細胞株であるMiaPaCa−2はCA19−9陰性であり、CA19−9陽性細胞株であるCapan2、Suit2及びhM1−2D中のヒトCA19−9コアタンパク質を同定するための対照として使用される(図2B)。マウス及びヒトCA19−9タンパク質キャリアを比較したところ、3つのヒトPDAC細胞株のうちの3つで同定されたCA19−9修飾タンパク質の平均72.3%(95%CI 60.3〜84.3%)が、3つのマウスFB PDAC細胞株でも見出されたことが判明し、これは、マウス細胞中のFUT3及びβ3GALT5の発現が、ヒトCA19−9のキャリアプロファイルを概ね再現していることを示している(図2C)。3つのモデルマウス膵管腺癌(PDAC)細胞中のシアリルルイスキャリアである合計4260個の非重複タンパク質、3つのモデルマウスPDAC細胞中のシアリルルイスキャリアである合計1521個の共通タンパク質、3つのモデルヒトPDAC細胞中のシアリルルイスキャリアである合計3017個の非重複タンパク質、及び3つのモデルヒトPDAC細胞中のシアリルルイスキャリアである合計926個の共通タンパク質を同定した。
CA19−9の発現は膵炎を引き起こす:
我々は、LoxP隣接STOPカセット(LSL)及びテトラサイクリン応答性プロモーターエレメント(TRE)によって調節される誘導性及び条件付きプロモーターを介してFUT3、β3GALT5及びeGFPを多遺伝子的に発現するマウス胚性幹(mES)細胞を作製した(図3A〜3D)(Beard,C.et al.,Genesis 44,23−28(2006)。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。CA19−9の全身(R;F)発現、膵臓全体(CPDX;RLSL;F)発現または膵臓限局性(CPDXもしくはp48;RLSL;FLSL)発現のいずれかを保有するいくつかのタイプのマウスモデルを作製した。すべてのCA19−9マウスモデルにおいて、膵臓以外の組織は、Dox処置の時間経過後、遺伝的に陰性の同腹仔対照と比較して正常な組織構造を示した(図4〜24)。意外にも、すべてのモデルが膵炎の生理学的、組織学的及び血清学的徴候(腺房萎縮、免疫細胞浸潤、コラーゲン沈着、リパーゼ及びアミラーゼの上昇)を選択的に示したが、他方、Dox処置した遺伝的陰性の対照または未処置マウスでは膵炎は観察されなかった(図25A〜25C、図26〜27、図28A〜28C)。
Dox投与後のeGFP及びCA19−9の発現は、各CA19−9マウスモデルの予想された組織における発現を示した(図25A、図29A〜29B、図30A〜30B、図31〜47)。R;F及びCPDX;RLSL;Fモデルでは、eGFPの発現は、免疫組織化学(IHC)により、膵管及び腺房細胞の大部分で検出され、膵島中でモザイク状に検出されたが、膵間質または内皮区画では全く検出されなかった(図29A、図30A〜30B、図31)。eGFPもまた、R;Fマウスの他のすべての器官において、Dox依存的に検出された(図32〜33)。対照的に、CPDXまたはp48;RLSL;FLSLモデルは、腺房区画で散発的にeGFP陽性を示し、導管区画では稀に陽性を示し、膵島、間質または内皮膵臓区画では全く陽性を示さなかった(図29A)。予想通り、PDXプロモーターによって駆動される組換えもまた、十二指腸及び胆嚢におけるDox依存性のモザイクのeGFP発現をもたらしたが、他方、p48−CRE媒介性の組換えは、膵臓以外の器官におけるeGFP発現をもたらさなかった(図34〜39)。R;F及びC;RLSL;Fモデルでは、CA19−9は主に膵臓の小葉内及び介在導管細胞及び膵島細胞で検出され、稀に陽性の腺房細胞が検出された(図25A、図29B)。PDX1駆動CREまたはp48駆動CREのいずれかを使用するC;RLSL;FLSLモデルの腺房区画で、CA19−9は主に検出され、導管細胞では稀に検出され、PDX−Cre駆動モデルに限り散発的な膵島の陽性を伴った(図29B)。R;Fマウスでは、CA19−9はDox処置後に検査したすべての組織で検出された(図40〜43)。CA19−9の発現は、PDX1−CRE駆動モデルでは膵臓、十二指腸及び胆嚢に限定されていたが、p48−CRE駆動マウスでは膵臓以外でのCA19−9の発現は観察されなかった(図44〜47)。R;F膵臓の詳細な免疫蛍光評価により、CA19−9、eGFP及び導管マーカーであるCK19の共発現が明らかとなった。興味深いことに、腺房細胞は多くの場合eGFPも発現していたが、それらはCA19−9陰性のままであった。さらに、膵島は多くの場合、eGFP及びCA19−9に対して二重陽性であったが、一部のeGFP陰性の膵島細胞もまた、CA19−9陽性であった。CA19−9の発現は、eGFP陰性の血管系及び間質細胞においても検出された。さらなる免疫蛍光分析により、eGFP陰性、ポドプラニン陽性細胞(線維芽細胞)がCA19−9陽性及び陰性状態の両方で存在することが示された。これらのデータは、分泌されたCA19−9のeGFP陰性の血管系及び間質への蓄積を示している(図29B、図30A〜30B及び図31)。
R;Fマウスは、CA19−9の発現後に浸透性が非常に高い膵炎、体重減少及び膵萎縮を示し、場合によっては、20%を超える体重の減少、及びそれに続く安楽死に至った(図48A〜48B)。R;Fマウスは、識別可能なCA19−9を対象とした抗体応答を生成せず(図49A)、すべての膵臓以外の組織は組織学的に健常と思われたことから(図4〜6)、観察された膵炎は自己免疫介在性ではないことが示されている。代わりに、Dox投与後のR;Fの体重減少は、このモデルがCre媒介性の組換えに依存していないことを考慮すると、膵炎の高浸透率に起因する可能性がある。実際、膵外分泌機能不全は慢性膵炎の場合に観察されることが多く、患者の重度の体重減少を伴う(Struyvenberg MR et al.,BMC Med.;15(1):29−,(Feb 10,2017))。R;Fモデルで観察された顕著な程度の膵萎縮(図48B)及び消化酵素の不十分な産生(図49B)は、これらのマウスが膵外分泌機能不全に罹患していることを示唆している。また、CA19−9を発現する無作為給餌状態のR;F及びCPDX;RLSL;Fマウスが、溶媒処置及び未処置の対応するマウスと比較して正常な血糖値を示したことから(図49C)、体重減少が血糖調節の喪失に起因する可能性は低い。
PDX;RLSL;FマウスのDox処置もまた、体重または膵臓重量の減少を伴わずに、浸透性が非常に高い膵炎ならびにアミラーゼ及びリパーゼレベルの上昇を示した(図25A〜25C及び図48A〜48B)。CPDXまたはp48;RLSL;FLSLマウスのDox処置は、体重または膵臓重量の減少を伴わずに、遺伝的対照及び未処置対照と比較して、より小さな膵炎病巣ならびにアミラーゼ及びリパーゼレベルの上昇を示した(図26〜27、図28A〜28C及び図48A〜48B)。すべてのモデルは、4週間のDox処置後にアミラーゼ及びリパーゼレベルの正常化を示したが、慢性膵炎の組織学的徴候を示した(図25A〜25C、図26〜27及び図28A〜28C)。Dox処置後に、R;F及びC;RLSL;Fマウスの血漿中ではCA19−9レベルの上昇が検出可能であったが、CPDX;RLSL;FLSLモデルでは検出不可であった(図49D及び図50A)。さらなる試験では、膵機能不全及び体重減少を伴わず、適正な膵臓局在性及びCA19−9の分泌を伴って膵炎の表現型の高い浸透率を生じたCPDX;RLSL;Fマウスに焦点を合わせた。
急性膵炎のセルレインモデルと比較した、CPDX;RLSL;Fマウスの脾臓、リンパ節及び膵臓に存在する免疫細胞型をフローサイトメトリーによって特性決定したところ、膵炎の誘発後、脾臓またはリンパ節の免疫細胞型の表現に変化を与えずに、両方のモデルの膵臓において炎症性単球及びマクロファージが流入していることが明らかとなった(図50B及び図51A)。いずれのモデルも、検査時点(1〜3日間)でT細胞またはB細胞の動員を示さなかった(図51B)。
実施例3
実施例2に記載の方法及びアッセイは、ここで、本実施例に組み込まれる。
CA19−9の発現は、導管の増殖及びシグナル伝達の変化を引き起こす:
遺伝的マウスモデルにおけるCA19−9の発現は、in vivoのKi67免疫組織化学(IHC)及びEduの取り込みにより評価されるように、特に、導管細胞及び免疫細胞中で膵臓増殖の増加をもたらした(図52A及び図53A〜53B)。酵素放出の刺激にもかかわらず、腺房外植片培養物におけるAtf4及びBipのDox依存性誘導の証拠はなく、タンパク質毒性ストレスが、観察された膵炎において役割を果たすという可能性が減少した(図52B〜52C)。
CA19−9発現に直接応答して発生するシグナル伝達経路の変化を精査するために、我々は、膵管オルガノイドをCPDX;RLSL;Fマウスから単離した(Boj,Sylvia F.et al.Cell 160,324−338(2015)。これは、その全体が参照により組み込まれる)。CA19−9の発現誘導後のCPDX;RLSL;FオルガノイドのRNA−seq解析により、導入遺伝子発現の予想された変化が明らかとなり(図54A〜54F)、ヒト導管オルガノイドで内因的に観察される範囲内のレベルでのマウス導管オルガノイドにおけるFUT3及びβ3GALT5の発現が可能となった(図54D)(Tiriac,H.et al.Cancer Discov,doi:10.1158/2159−8290.CD−18−0349[印刷前の電子出版](2018)。これは、その全体が参照により組み込まれる)。遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)により、CA19−9発現後の未フォールディングタンパク質応答の遺伝子セットの減少及びケモカインに関連する経路のエンリッチメント、及びTGFベータシグナル伝達が明らかとなった(図55A〜図55C及び図56A〜56B)。我々はさらに、CA19−9発現後のErbb及びPI3K及びAktのシグナル伝達のエンリッチメントを調査した(図55A〜55C及び図56A〜56B)。CPDX;RLSL;FオルガノイドにおけるDox誘導性のCA19−9の発現は、総EGFRレベルを低下させながらEGFRリン酸化を選択的かつ顕著に上昇させ、これは、この経路を介したより大きな流動を示している(図57A)。ホスホ−EGFRの増加には、ホスホ−Akt及びホスホ−Erk1/2のレベルの増加が伴った(図57A)。総S6またはホスホ−S6、Her2及びp65への一貫した変化は観察されなかった(図57B)。これらの結果は、培養物の培地にマウスEgfが含まれていることとは無関係であった(図57C)。さらに、ホスホ−EGFRは、Dox処置後のC;RLSL;Fマウスの膵管にin vivoで存在していた(図57D)。CA19−9の発現は、DoxによるCA19−9発現の誘導後のC;RLSL;F、R;FまたはC;RLSL;FLSLオルガノイドの増殖を変化させず、加えて、CA19−9の構成的発現を伴うマウス正常膵管オルガノイドにおいても変化させなかったことから(図58A〜58D)、in vivoでの導管増殖の増加にさらなる外因性の合図が必要であることが示唆される。
EGFRのグリコシル化状態が、EGFRの標的キナーゼ阻害剤を活性化する能力及びそれに応答する能力に影響を与える場合があることが報告されているが(Liu,Y.C.et al.Proc Natl Acad Sci U S A 108,11332−11337(2011)、Matsumoto,K.et al.Cancer science 99,1611−1617(2008)。これらは両方とも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、我々は、EGFRのCA19−9修飾を見出さなかった(図59A)。同様に、CA19−9の発現はまた、CPDX;RLSL;Fオルガノイドに対し、ERBBキナーゼ阻害剤であるエルロチニブ及びネラチニブのEC50または増殖阻害表現型に影響を及ぼさなかった(図59B〜59C)。他方、CA19−9へのモノクローナル抗体の付加は、DoxによりCA19−9を発現するように誘導した正常オルガノイドにおいて、EGFRのリン酸化を遮断するのに十分であった(図60)。
実施例4
実施例2及び3に記載の方法及びアッセイは、ここで、本実施例に組み込まれる。
CA19−9誘発性の膵炎は可逆的であり、CA19−9特異的抗体で処置することができる:
我々は、遺伝的マウスモデルにおいて、CA19−9媒介性膵炎が、3日間のDoxパルス及び4日間の回復期間後に完全に可逆的であることをさらに見出した(図61A〜61B)。これらのデータは、CA19−9の標的化が、膵炎エピソードの重症度及び再発の軽減のために治療的に有用である可能性があることを示唆している。重要なことは、CA19−9を対象とする抗体はまた、急性膵炎(24時間の2g/L Dox、NS19−9クローン)及び重度の急性膵炎(7日間の0.5g/L Dox、5B1クローン)の場合に、膵炎の組織学的及び血清学的徴候も改善し、かつin vivoのEGFRの過剰活性化を低減させ、これが、疾患の病因におけるグリカン及びそれが付着しているコアポリペプチドの役割を示唆していることである(図62A〜62D、図63A〜63C及び図64A〜64C)。しかしながら、逆説的ではあるが、EGFR阻害剤であるエルロチニブは、膵炎誘発の24時間前のエルロチニブによる処置が20%を超える重度の体重減少を生じさせ、試験完了前に人道的エンドポイントに至ったことから、抗CA19−9療法を代替することはできなかった。膵萎縮は剖検時に明らかであり、腺房区画の空胞化は組織学的検査によって明らかであった(図65A〜65B)。これらの影響は、正常マウス(C57Bl/6J)におけるエルロチニブに関連する毒性とは無関係であった(図65C〜65D)。これらのデータは、EGFRの活性化が、CA19−9による炎症性カスケードの誘発後に腺房区画に対する保護機序として機能することを示唆している。
EGFRのCA19−9依存性の活性化が可溶性リガンドに起因するかどうかを明確にするために、CA19−9陽性オルガノイドからの条件培地を評価したところ、この培地が対照マウスの導管オルガノイドにおいてEGFRリン酸化を刺激することが判明した(図66A)。この活性はEGFR−Fc(EGFRトラップ)の付加により減弱し、これは、1つ以上のEGFRリガンドの存在をさらに裏付ける(図66B)。これらの結果がCA19−9修飾され分泌されたEGFRリガンドの存在を示唆したため、例示的なCA19−9修飾タンパク質をIP/MSによって同定した(以下の表3及び表4)
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
Figure 2022500382
グリコシル化の不均衡は、ヒトの疾患において一般的に説明されているが、疾患の媒介におけるグリカン変化の生物学的役割はほとんど調査されていない。CA19−9の上昇は膵炎と相関しているが、これまで、疾患の病因に直接寄与するとは考えられていなかった。マウスの膵炎を誘発し永続させるCA19−9発現の能力は、このグリカンエピトープ及びその下流のエフェクター経路が、膵炎の消失及び膵腫瘍形成の予防のための新しい処置戦略を示す可能性があることを示唆する。現在、膵炎患者に対する処置選択肢は、病的状態及び膵癌のリスクにもかかわらず、依然として限られている。本明細書で提供される抗CA19−9抗体(Sawada,R.et al.Clin Cancer Res 17,1024−1032(2011)。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、膵炎患者の処置のためのCA19−9標的療法の臨床現場への迅速な変換を促進することができる。

Claims (64)

  1. 膵炎の予防、処置、改善または管理を必要とする対象において前記膵炎を予防、処置、改善または管理するための方法であって、
    シアリルルイスに結合する治療有効量の抗体またはその機能的断片(抗sLe)を前記対象に投与することを含む、前記方法。
  2. 膵炎の予防、処置、改善または管理を必要とする対象において前記膵炎を予防、処置、改善または管理するための方法であって、
    (1)シアリルルイスに結合する抗体またはその機能的断片(抗sLe)を第1の用量で前記対象に投与すること、
    (2)前記対象の膵炎の重症度を判定すること、及び
    (3)前記抗sLeの投与前の前記対象の前記膵炎の重症度と比較して前記対象の前記膵炎の重症度が低減する場合に、抗sLeに結合する前記抗体もしくはその機能的断片の第2の用量を前記第1の用量と同じかもしくはそれよりもより少量で投与すること、または前記対象の前記膵炎の重症度が低減しない場合に、前記抗sLeの第2の用量を前記第1の用量よりもより多量で投与すること
    を含む、前記方法。
  3. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、可変重鎖(VH)ドメインを含み、
    前記VHドメインが、配列番号2の残基20〜142、配列番号6の残基20〜142、配列番号10の残基20〜142及び配列番号14の残基20〜145からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
  4. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、可変軽鎖(VL)ドメインを含み、
    前記VLドメインが、配列番号4の残基20〜130、配列番号8の残基20〜129、配列番号12の残基20〜130及び配列番号16の残基23〜130からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、可変重鎖(VH)ドメイン及び可変軽鎖(VL)ドメインを含み、
    前記VHドメイン及び前記VLドメインがそれぞれ、
    配列番号2の残基20〜142及び配列番号4の残基20〜130、
    配列番号6の残基20〜142及び配列番号8の残基20〜129、
    配列番号10の残基20〜142及び配列番号12の残基20〜130、ならびに
    配列番号14の残基20〜145及び配列番号16の残基23〜130
    からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、
    American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体のKabat付番に従う3つの重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を有する、3つのCDRを含む重鎖可変領域、及び
    ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体のKabat付番に従う3つの軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を有する、3つのCDRを含む軽鎖可変領域
    を含む、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、
    American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び
    ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域
    を含む、請求項1〜2、及び6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、
    ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の重鎖のアミノ酸配列からなる重鎖、及び
    ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の軽鎖のアミノ酸配列からなる軽鎖
    を含む、請求項1〜2及び6〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記抗sLe抗体の機能的断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、scFV、ダイアボディ、トリアボディ、ミニボディ及び単一ドメイン抗体(sdAB)からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、ダイアボディである、請求項9に記載の方法。
  11. 前記ダイアボディが、配列番号18または配列番号20のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の方法。
  12. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、モノクローナル抗体である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、IgGまたはIgMアイソタイプである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記IgG抗体が、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブクラスである、請求項13に記載の方法。
  15. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物として製剤化される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 前記抗体またはその機能的断片が、非経口的投与経路により投与される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 前記非経口的投与が、皮下注射、筋肉内注射及び静脈内注射からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
  18. 前記抗体またはその機能的断片が、約0.1mg/kg/用量〜約10mg/kg/用量の用量範囲で投与される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 前記抗体またはその機能的断片が、毎週、隔週、毎月、または隔月投与される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 前記抗体またはその機能的断片が、約1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間または6ヶ月間投与される、請求項19に記載の方法。
  21. 膵炎の予防、処置、改善または管理を必要とする対象において膵炎を予防、処置、改善または管理するための方法であって、CA19−9に結合する治療有効量の治療剤を前記対象に投与することを含む、前記方法。
  22. 膵炎の予防、処置、改善または管理を必要とする対象において膵炎を予防、処置、改善または管理するための方法であって、
    (1)CA19−9に結合する治療剤を第1の用量で前記対象に投与すること、
    (2)前記対象の膵炎の重症度を判定すること、及び
    (3)前記薬剤の投与前の前記対象の前記膵炎の重症度と比較して前記対象の前記膵炎の重症度が低減する場合に、前記治療剤の第2の用量を前記第1の用量と同じかもしくはそれよりもより少量で投与すること、または前記対象の前記膵炎の重症度が低減しない場合に、前記治療剤の第2の用量を前記第1の用量よりもより多量で投与することを含む、前記方法。
  23. 前記治療剤が、シアリルルイスに結合する抗体またはその機能的断片(抗sLe)である、請求項21〜22のいずれか1項に記載の方法。
  24. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、マウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体または完全ヒトモノクローナル抗体である、請求項23に記載の方法。
  25. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、可変重鎖(VH)ドメインを含み、
    前記VHドメインが、配列番号2の残基20〜142、配列番号6の残基20〜142、配列番号10の残基20〜142及び配列番号14の残基20〜145からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項23〜24のいずれか1項に記載の方法。
  26. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、可変軽鎖(VL)ドメインを含み、
    前記VLドメインが、配列番号4の残基20〜130、配列番号8の残基20〜129、配列番号12の残基20〜130及び配列番号16の残基23〜130からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項23〜24のいずれか1項に記載の方法。
  27. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、可変重鎖(VH)ドメイン及び可変軽鎖(VL)ドメインを含み、
    前記VHドメイン及び前記VLドメインがそれぞれ、
    配列番号2の残基20〜142及び配列番号4の残基20〜130、
    配列番号6の残基20〜142及び配列番号8の残基20〜129、
    配列番号10の残基20〜142及び配列番号12の残基20〜130、ならびに
    配列番号14の残基20〜145及び配列番号16の残基23〜130
    からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項23〜24のいずれか1項に記載の方法。
  28. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、
    American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体のKabat付番に従う3つの重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を有する、3つのCDRを含む重鎖可変領域、及び
    ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体のKabat付番に従う3つの軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を有する、3つのCDRを含む軽鎖可変領域
    を含む、請求項23〜24のいずれか1項に記載の方法。
  29. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、
    American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び
    ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域
    を含む、請求項23〜24、及び28のいずれか1項に記載の方法。
  30. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、
    ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の重鎖のアミノ酸配列からなる重鎖、及び
    ATCCアクセッション番号HB−8059の下で寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体の軽鎖のアミノ酸配列からなる軽鎖
    を含む、請求項23〜24及び28〜29のいずれか1項に記載の方法。
  31. 前記抗sLe抗体の機能的断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、scFV、ダイアボディ、トリアボディ、ミニボディ及び単一ドメイン抗体(sdAB)からなる群から選択される、請求項23〜30のいずれか1項に記載の方法。
  32. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、ダイアボディである、請求項31に記載の方法。
  33. 前記ダイアボディが、配列番号18または配列番号20のアミノ酸配列を含む、請求項32に記載の方法。
  34. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、モノクローナル抗体である、請求項23〜33のいずれか1項に記載の方法。
  35. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、IgGまたはIgMアイソタイプである、請求項23〜34のいずれか1項に記載の方法。
  36. 前記IgG抗体が、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブクラスである、請求項35に記載の方法。
  37. 前記抗sLe抗体またはその機能的断片が、薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物として製剤化される、請求項23〜36のいずれか1項に記載の方法。
  38. 前記抗体またはその機能的断片が、非経口的投与経路により投与される、請求項23〜37のいずれか1項に記載の方法。
  39. 前記非経口的投与が、皮下注射、筋肉内注射及び静脈内注射からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
  40. 前記抗体またはその機能的断片が、約0.1mg/kg/用量〜約10mg/kg/用量の用量範囲で投与される、請求項23〜39のいずれか1項に記載の方法。
  41. 前記抗体またはその機能的断片が、毎週、隔週、毎月、または隔月投与される、請求項23〜40のいずれか1項に記載の方法。
  42. 前記抗体またはその機能的断片が、約1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間または6ヶ月間投与される、請求項41に記載の方法。
  43. 前記治療剤が、ペプチドまたはペプチド模倣分子である、請求項21〜22に記載の方法。
  44. 前記ペプチドまたは前記ペプチド模倣分子が、シアリルルイスに特異的に結合する特性を有する、請求項43に記載の方法。
  45. 前記膵炎が、1つ以上のマーカーによって特徴付けられる、請求項1〜44のいずれか1項に記載の方法。
  46. 前記膵炎の重症度が、1つ以上のマーカーにより判定される、請求項2〜20、22〜45のいずれか1項に記載の方法。
  47. 前記対象が、膵炎の1つ以上のマーカーのレベルが上昇している、請求項1〜46のいずれか1項に記載の方法。
  48. 前記治療剤の前記投与することが、前記対象における膵炎の1つ以上のマーカーのレベルを低減させる、請求項1〜47のいずれか1項に記載の方法。
  49. 前記1つ以上のマーカーが、生理学的マーカー、組織学的マーカー、血清学的マーカー及びシグナル伝達マーカーからなる群から選択される、請求項45〜48のいずれか1項に記載の方法。
  50. 前記組織学的マーカーが、免疫細胞浸潤、コラーゲン沈着、線維性組織、脂肪壊死、間質浮腫、腺房及び血管の破壊、間質出血、導管拡張、腺房細胞の均質化、ならびにCA19−9の発現レベルからなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
  51. 前記1つ以上のマーカーが、CA19−9の発現レベルを含む、請求項45〜50のいずれか1項に記載の方法。
  52. 前記1つ以上のマーカーが、免疫組織化学によって判定される、請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法。
  53. 前記血清学的マーカーが、血清リパーゼレベル、血清アミラーゼレベル及び血清C反応性タンパク質レベルからなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
  54. 前記血清リパーゼレベルが、200U/Lを超える、請求項53に記載の方法。
  55. 前記血清アミラーゼレベルが、200U/Lを超える、請求項53に記載の方法。
  56. 前記血清アミラーゼレベルが、対照対象の正常血清アミラーゼレベルの上限を3倍上回る、請求項53に記載の方法。
  57. 前記血清リパーゼレベルが、対照対象の正常血清リパーゼレベルの上限を3倍上回る、請求項53に記載の方法。
  58. 前記生理学的マーカーが、体重減少、食物の吸収不良、膵萎縮、膵腫大、膵炎症及び胆汁逆流からなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
  59. 膵臓のsLeが上昇している対象において膵炎を予防、処置、改善または管理するための方法であって、sLeに特異的に結合する治療有効量の治療剤を前記対象に投与することを含む、前記方法。
  60. 前記膵炎が、慢性膵炎及び急性膵炎からなる群から選択される膵炎である、請求項1〜59のいずれか1項に記載の方法。
  61. 前記慢性膵炎が、軽度の慢性膵炎、中等度の慢性膵炎及び重度の慢性膵炎からなる群から選択される、請求項60に記載の方法。
  62. 前記急性膵炎が、軽度の急性膵炎、中等度の急性膵炎及び重度の急性膵炎からなる群から選択される、請求項60に記載の方法。
  63. 前記対象が哺乳動物である、請求項1〜62のいずれか1項に記載の方法。
  64. 前記哺乳動物がヒトである、請求項63に記載の方法。

JP2021513309A 2018-09-10 2019-09-09 膵炎を処置するための方法 Pending JP2022500382A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US201862729354P 2018-09-10 2018-09-10
US62/729,354 2018-09-10
PCT/US2019/050262 WO2020055768A1 (en) 2018-09-10 2019-09-09 Methods for treating pancreatitis

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2022500382A true JP2022500382A (ja) 2022-01-04
JPWO2020055768A5 JPWO2020055768A5 (ja) 2022-09-20

Family

ID=69776851

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021513309A Pending JP2022500382A (ja) 2018-09-10 2019-09-09 膵炎を処置するための方法

Country Status (13)

Country Link
US (1) US20220049011A1 (ja)
EP (1) EP3849605A4 (ja)
JP (1) JP2022500382A (ja)
KR (1) KR20210073515A (ja)
CN (1) CN113056286A (ja)
AU (1) AU2019337564A1 (ja)
BR (1) BR112021004444A2 (ja)
CA (1) CA3112382A1 (ja)
CL (2) CL2021000585A1 (ja)
IL (1) IL281343A (ja)
MX (1) MX2021002761A (ja)
SG (1) SG11202102416SA (ja)
WO (1) WO2020055768A1 (ja)

Family Cites Families (20)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4018653A (en) 1971-10-29 1977-04-19 U.S. Packaging Corporation Instrument for the detection of Neisseria gonorrhoeae without culture
US4016043A (en) 1975-09-04 1977-04-05 Akzona Incorporated Enzymatic immunological method for the determination of antigens and antibodies
US4471057A (en) * 1981-06-30 1984-09-11 The Wistar Institute Detection of colorectal carcinoma
US4424279A (en) 1982-08-12 1984-01-03 Quidel Rapid plunger immunoassay method and apparatus
US5051448A (en) 1984-07-24 1991-09-24 The Mclean Hospital Corporation GABA esters and GABA analog esters
US4704355A (en) 1985-03-27 1987-11-03 New Horizons Diagnostics Corporation Assay utilizing ATP encapsulated within liposome particles
JPS63159763A (ja) * 1986-12-24 1988-07-02 Fujirebio Inc 逆受身凝集反応試薬
WO1991004014A1 (en) 1989-09-21 1991-04-04 Synergen, Inc. Method for transporting compositions across the blood brain barrier
US5192746A (en) 1990-07-09 1993-03-09 Tanabe Seiyaku Co., Ltd. Cyclic cell adhesion modulation compounds
US5559103A (en) 1993-07-21 1996-09-24 Cytel Corporation Bivalent sialyl X saccharides
US5576423A (en) 1994-12-02 1996-11-19 Schering Corporation Antibodies to the slam protein expressed on activated T cells
JP5274253B2 (ja) 2005-08-05 2013-08-28 アライム ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド 組織保護ペプチド及びその使用
FI20070853A0 (fi) * 2007-11-09 2007-11-09 Glykos Finland Oy Glykaania sitovat monoklonaaliset vasta-aineet
KR20180041269A (ko) 2008-01-22 2018-04-23 아라임 파마슈티칼즈, 인크. 조직 손상 관련 질환 및 장애를 예방 및 치료하기 위한 조직 보호 펩티드 및 펩티드 유사체
CN102137681B (zh) * 2008-08-08 2014-12-03 埃姆诺医药有限公司 抗胰腺癌抗体
MX2016000448A (es) 2013-07-17 2016-05-12 Araim Pharmaceuticals Inc Péptidos y análogos peptídicos protectores de tejido para prevenir y tratar enfermedades y trastornos asociados con daño del tejido.
AU2014332442B2 (en) * 2013-08-26 2019-12-19 Biontech Research And Development, Inc. Nucleic acids encoding human antibodies to Sialyl-Lewis
EP3738981A1 (en) 2014-01-24 2020-11-18 NGM Biopharmaceuticals, Inc. Antibodies binding beta klotho domain 2 and methods of use thereof
WO2017019957A2 (en) 2015-07-29 2017-02-02 Ngm Biopharmaceuticals, Inc. Binding proteins and methods of use thereof
WO2017189959A1 (en) * 2016-04-29 2017-11-02 Voyager Therapeutics, Inc. Compositions for the treatment of disease

Also Published As

Publication number Publication date
SG11202102416SA (en) 2021-04-29
BR112021004444A2 (pt) 2021-06-01
EP3849605A4 (en) 2022-06-15
EP3849605A1 (en) 2021-07-21
KR20210073515A (ko) 2021-06-18
CL2021000585A1 (es) 2021-08-13
CA3112382A1 (en) 2020-03-19
WO2020055768A1 (en) 2020-03-19
US20220049011A1 (en) 2022-02-17
CL2022000091A1 (es) 2022-11-18
CN113056286A (zh) 2021-06-29
MX2021002761A (es) 2021-05-31
AU2019337564A1 (en) 2021-05-06
IL281343A (en) 2021-04-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US9316654B2 (en) TAZ/WWTR1 for diagnosis and treatment of cancer
Chen et al. β‐catenin‐controlled tubular cell‐derived exosomes play a key role in fibroblast activation via the OPN‐CD44 axis
Choi et al. YAP/TAZ direct commitment and maturation of lymph node fibroblastic reticular cells
US20230212276A1 (en) Monoclonal antibody and antigens for diagnosing and treating lung disease and injury
JP2011523551A (ja) 血管形成の調節の新規ターゲット
JP2013520958A (ja) 上皮間葉転換のバイオマーカーとしてaxlを使用する方法
JP5756014B2 (ja) がんの診断および治療のためのvhz
US20220125876A1 (en) A method of immune modulation by modulating abcf1
US20200024333A1 (en) Endotrophin neutralization and use thereof
US9790503B2 (en) VHZ for diagnosis and treatment of cancer
JP2017526916A (ja) 癌の診断
Chen et al. Germinal Center Kinase–like Kinase Overexpression in T Cells as a Novel Biomarker in Rheumatoid Arthritis
JP2019528437A (ja) 腫瘍関連マクロファージをターゲティングすることによるガン疾患の処置方法
WO2005027727A2 (en) Use of pin1 inhibitors for treatment of cancer
JP2021531007A (ja) Vistaに対する受容体
Allard et al. Adenosine A2A receptor is a tumor suppressor of NASH-associated hepatocellular carcinoma
Lin et al. Expression of human carcinoembryonic antigen‐related cell adhesion molecule 6 and alveolar progenitor cells in normal and injured lungs of transgenic mice
JP2022500382A (ja) 膵炎を処置するための方法
US20220370463A1 (en) Stabilized c-fms intracellular fragments (ficd) promote osteoclast differentiation and arthritic bone erosion
US11442065B2 (en) Marker for gastrointestinal tumors
Zhao et al. Neutrophils-derived Spink7 as one safeguard against experimental murine colitis
US10722523B2 (en) Chemoimmunotherapy for epithelial cancer
JP2014532408A (ja) USP2aペプチドおよび抗体
WO2007037538A1 (ja) Spo11遺伝子の治療的又は診断的用途
An et al. LSR targets YAP to modulate intestinal Paneth cell differentiation

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220909

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220909

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230814

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20231109

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20240112

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20240214