JP2017536238A - 冷却チャンネルピストンの製造方法とその方法により製造された冷却チャンネルピストン - Google Patents

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Abstract

本発明は、冷却チャンネルピストン(10)の製造方法であって、純粋な塩材料を加圧焼結することにより高々60μmの表面粗さRzを有する塩中子材(31)を製造するステップa)と、塩材料の飽和溶液中に塩中子材(31)を浸漬し又は塩材料の飽和溶液を塩中子材(31)に噴射するステップb)と、少なくとも200μmの表面粗さRzを有する塩中子(30)を形成するように塩中子材(31)を乾燥させるステップc)と、鋳型の中に塩中子(30)を配置して鋳造用金属材料から冷却チャンネルピストン(10)を鋳造するステップd)とを備えたことを特徴とする第1の方法に関する。本発明はまた、冷却チャンネルピストン(10)の製造方法であって、純粋な塩材料を加圧焼結することにより高々60μmの表面粗さRzを有する塩中子材(31)を製造するステップe)と、溶媒若しくは塩材料の溶液中に塩中子材(31)を浸漬し又は溶媒若しくは塩材料の溶液を塩中子材(31)に噴射するステップf)と、所定の粒子サイズ分布及び/又は所定の粒径分布を有する塩材料を塩中子材に振りかけるステップg)と、少なくとも200μmの表面粗さRzを有する塩中子(30)を形成するように塩中子材(31)を乾燥させるステップh)と、鋳型の中に塩中子(30)を配置して鋳造用金属材料から冷却チャンネルピストン(10)を鋳造するステップi)とを備えたことを特徴とする第2の方法に関する。

Description

本発明は、冷却チャンネルピストンの製造方法と、その方法により製造された冷却チャンネルピストンとに関する。
塩中子は、特に閉じた冷却チャンネルを有するピストンを鋳造するために用いられる。ピストンが鋳造された後、水で溶かすという従来の方法で塩中子がピストンから取り除かれる。この種の塩中子は、一般に塩化ナトリウムを基本として製造される。この目的のため、作るべき冷却チャンネルの形状と同じ形状を持つ未加工の成形体を作るように、材料の冷間圧縮が採用される。そして、この成形体は、当該材料の融点を少し下回る約800℃で焼結される。その結果得られる焼結品は、適切な場合には機械仕上げにかけられて、作るべき冷却チャンネルに対応した最終形態となり得る。
一般に、その結果得られる塩中子は、30μm〜60μmの表面粗さRzを有する。最近の冷却チャンネルピストンでは、エンジン動作中の高い熱負荷のゆえに、ピストンクラウンと、冷却チャンネル中を循環する冷却オイルとの間の効率の良い熱伝達が必須となっている。
国際公開第2010/133596号は、特に平滑な表面を有する塩中子の製造方法を開示している。その意図は、鋳造中に鋳造用材料が塩中子の表面に浸透したり、鋳造用材料が塩中子と化学反応したりすることを防止することにある。
本発明の目的は、ピストン材料と冷却チャンネル中を循環する冷却オイルとの間の特に効率の良い熱伝達を保証するピストンの製造方法と、そのようなピストンとを提供することにある。
第1の解決策は、純粋な塩材料を加圧焼結することにより高々60μmの表面粗さRzを有する塩中子材を製造するステップa)と、塩材料の飽和溶液に塩中子材を浸漬し又は塩材料の飽和溶液を塩中子材に噴射するステップb)と、少なくとも200μmの表面粗さRzを有する塩中子を形成するように塩中子材を乾燥させるステップc)と、鋳型の中に塩中子を配置して鋳造用金属材料から冷却チャンネルピストンを鋳造するステップd)とを備えたことを特徴とする方法にある。
第2の解決策は、純粋な塩材料を加圧焼結することにより高々60μmの表面粗さRzを有する塩中子材を製造するステップe)と、溶媒若しくは塩材料の溶液中に塩中子材を浸漬し又は溶媒若しくは塩材料の溶液を塩中子材に噴射するステップf)と、所定の粒子サイズ分布及び/又は所定の粒径分布を有する塩材料を塩中子材に振りかけるステップg)と、少なくとも200μmの表面粗さRzを有する塩中子を形成するように塩中子材を乾燥させるステップh)と、鋳型の中に塩中子を配置して鋳造用金属材料から冷却チャンネルピストンを鋳造するステップi)とを備えたことを特徴とする方法にある。
本発明の他の主題は、この種の方法により製造できるピストンである。
本発明の方法の特徴は、通例の焼結プロセスで製造される塩中子と比べて大きい、塩中子の所定の表面粗さを達成できることにある。
請求項1の方法によれば、本発明の目的は、ステップc)にて飽和した塩材料溶液から塩材料を結晶化させることにより達成される。その際、結晶は塩中子材の焼結面の上に定着し、かつ塩中子材の部分的に溶解した表面に固着する。更に、請求項1の方法により塩中子材の表面に付けられた塩結晶は、引き続く塩中子材の乾燥中に結晶化の核として作用するので、飽和した適切な溶液から析出する塩結晶は、塩粒子上に特に効率良く結晶化する。その結果、特に大きい表面粗さが得られる。
請求項2の方法によれば、本発明の目的は、適切な溶媒及び/又は塩材料の溶液により塩中子材の表面を部分的に溶解させ、引き続きその表面が乾かないうちに、所定の粒子サイズ分布及び/又は粒径分布を有する塩材料の結晶を追加的にその表面に振りかけることにより達成される。振りかけられた結晶は、塩中子材の部分的に溶解した表面に留まって、そこに固着する。
その結果として得られる冷却チャンネル表面の所定の表面粗さは、従来技術で得られるものよりも大きくなる。したがって、冷却チャンネルの表面積自体が拡大される結果、ピストン材料とエンジン動作中に冷却チャンネルを循環するオイルとの間の熱伝達が大いに改善される。
本発明の方法は、技術的に実施が容易であり、かつ現製造ラインとの統合も容易である。更に、本発明の方法は、他の材料や添加剤を要しないという利点を有する。そのような他の材料や添加剤は、ピストンの鋳造が完了した後の塩中子の溶解を大幅に妨げ得るほか、ピストンの鋳造中のガス放出にも結び付き得る。他の材料や添加剤を避けることにより、冷却チャンネル表面への(例えば、水素ガスによる多孔化の結果としての)損傷が防止される。特に、ガス放出や、それに伴う鋳造部品中の膨れを引き起こし得る接着剤を用いる必要がない。
有利な発展形は、従属請求項に基づくものである。
実用的には、ステップa)にて及び/又はステップe)にて、塩化ナトリウムの形態の確立した塩材料が用いられる。
ステップa)にて及び/又はステップe)にて、作るべき冷却チャンネルの非常に正確な外形を生み出すために、塩中子材は機械仕上げにかけられ得る。
塩材料に適した全ての溶媒、特に水及び極性有機溶媒が使用可能である。ただし、水の方が好ましい。メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル及びアセトンもまた、特に適している。極性有機溶媒を用いる場合には、塩材料の溶解性を改善するために、少なくとも1つのクラウンエーテルを添加するのがよい。ナトリウムイオンの錯形成に特に適しているのは、[15]−クラウン−5の環状開口である。カリウムイオンは、好ましくは、例えば[18]−クラウン−6により錯形成される。
好ましくは、ステップc)にて及び/又はステップh)にて、塩中子材は、撹拌された空気中で、かつ高々200℃の温度で、水分の放出がなくなるまで乾燥させられるべきである。好ましくは、塩中子材は、高々100℃の温度で特にゆっくりと乾燥させられる。更に好ましくは、室温にて乾燥が実行される。
ステップc)にて及び/又はステップh)にて、請求項1の方法により結晶化した塩結晶の偶発的なサイズに応じて、又は、ステップg)に従って塩中子材に追加で振りかけるのに用いられた塩結晶の各々のサイズに応じて、最大で1mmの表面粗さを有する塩中子が得られる。
実用上、請求項1の方法に従って、塩材料の飽和水溶液による特に効率の良い濡れが得られるように、ステップa)の後にかつステップb)の前に、塩中子材は80℃〜100℃の温度まで加熱される。
更に、本発明に従って得られた塩中子は、使用される鋳造用材料との温度差があまり大きくならないように、ステップd)及び/又はステップi)に従って鋳型の中に配置される前に、300℃〜500℃の温度まで加熱され得る。
本発明の方法は、アルミニウム系の材料、特にアルミニウム−シリコン鋳造合金からなる冷却チャンネルピストンの製造に、特に適している。
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の例示的な実施形態を詳細に説明する。ただし、例示的な図面における縮尺は、実際のものと異なる。
本発明の冷却チャンネルピストンの例示的な実施形態の断面図である。 図1の冷却チャンネルピストンの製造に用いられる塩中子の例示的な実施形態の断面図である。
本発明の方法は、任意の所望のタイプ及びデザインの冷却チャンネルピストンに適したものである。図1は、例えばワンピースキャスト法による冷却チャンネルピストン10を示している。冷却チャンネルピストン10は、燃焼室凹部13が作られたピストンクラウン12を有するピストン頭頂部11を備えている。ピストン頭頂部11はまた、トップランド14と、ピストンリング(不図示)を収容するリング溝を持つリング部15とを有する。リング部15の高さにて、冷却チャンネル16が一周するようにピストンに設けられている。更に、ピストンは、ピストンピン(不図示)を収容するボス孔19が設けられたピストンボス18を有するピストンスカート17を、従来の態様で備えている。ピストンボス18は、摺動面21を介して従来の態様で互いに結合される。
図1に概略が示されているように、一周する冷却チャンネル16は、少なくとも200μm、好ましくは最大で400μm、より好ましくは最大で1mmの表面粗さRzを有する表面を持つ。
図2は、図1による本発明の冷却チャンネルピストン10の製造に用いられる、塩化ナトリウムで作られた塩中子30を示している。塩中子30は、表面32が塩化ナトリウムからなる塩結晶33で覆われた塩中子材31を有する。
第1の例示的な実施形態によれば、塩中子30は次のようにして製造され得る。
最初に、従来の方法で、塩化ナトリウムのような塩材料の冷間加圧焼結により塩中子材31が製造される。この際、純粋な塩材料、すなわち他の材料や添加剤を含まない塩材料が用いられることを保証するように、注意を払うべきである。焼結の後、公知の方法で、作るべき冷却チャンネルの断面形状と非常に正確に一致した断面形状が得られるように、塩中子材31は、その表面32が機械仕上げにかけられ得る。
完成した塩中子材31は、例示的な実施形態では塩化ナトリウムである塩材料の飽和水溶液中に浸漬され、又は当該飽和水溶液の噴射を受ける。その結果、その表面32が溶液で濡れる。次に、塩中子材31は、乾燥炉にて、例えば100℃より少し低い温度、例えば95℃〜98℃にて、塩中子材から水蒸気が放出されなくなるまで乾燥させられる。乾燥プロセスの間、塩結晶33が飽和溶液から結晶化して、塩中子材31の表面32に付着する。
乾燥プロセスが終了すると、その結果完成した塩中子30は、少なくとも200μmの表面粗さRzによって区別される。
冷却チャンネルピストン10を製造するため、従来の方法で、塩中子30が対応する鋳型の中に配置され、例えばアルミニウム系の金属材料による鋳造が行われる。鋳造プロセスが完結すると、その結果得られるピストン材は、鋳込まれた塩中子30を有する。このピストン材は、公知の方法で仕上げ加工が施され、かつ塩中子30が水により洗い取られる。その結果、図1のような冷却チャンネルピストン10が得られる。
この方法の変形例によれば、飽和溶液による塩中子材31の表面32の特に効率の良い濡れが得られるように、塩中子材31は、飽和溶液中に浸漬される前に80℃〜100℃の温度まで加熱される。
第2の例示的な実施形態によれば、塩中子30は次のようにして製造され得る。
最初に、上述のようにして、塩中子材31が製造される。この塩中子材は、適切な溶媒、好ましくは水による噴射、若しくは塩材料、好ましくは塩化ナトリウムの溶液による噴射を受け、又は当該液体中に浸漬される。次に、塩中子材31の表面に、それがまだ濡れているうちに、塩材料、例示的な実施形態では塩化ナトリウムの結晶が振りかけられたうえ、乾燥の後、更に上述のようにして使用される。用いられる塩粒子は、所定の粒子サイズ分布及び/又は所定の粒径分布を有する。
この手段によれば、塩中子30の表面粗さRzを特に正確に設定することができる。例えば、500μmの平均粒子サイズを有する塩結晶を使用すれば、完成した冷却チャンネルピストン10の冷却チャンネル16の表面にて、200μm〜400μmの表面粗さRzを測定することが可能であった。1mmの平均粒径を有する塩結晶は、完成した冷却チャンネルピストン10の冷却チャンネル16の表面にて、700μm〜900μmの表面粗さRzをもたらした。

Claims (16)

  1. 冷却チャンネルピストン(10)の製造方法であって、
    純粋な塩材料を加圧焼結することにより、高々60μmの表面粗さRzを有する塩中子材(31)を製造するステップa)と、
    前記塩材料の飽和溶液中に前記塩中子材(31)を浸漬し、又は前記塩材料の飽和溶液を前記塩中子材(31)に噴射するステップb)と、
    少なくとも200μmの表面粗さRzを有する塩中子(30)を形成するように前記塩中子材(31)を乾燥させるステップc)と、
    鋳型の中に前記塩中子(30)を配置して、鋳造用金属材料から冷却チャンネルピストン(10)を鋳造するステップd)とを備えたことを特徴とする方法。
  2. 冷却チャンネルピストン(10)の製造方法であって、
    純粋な塩材料を加圧焼結することにより、高々60μmの表面粗さRzを有する塩中子材(31)を製造するステップe)と、
    溶媒若しくは前記塩材料の溶液中に前記塩中子材(31)を浸漬し、又は溶媒若しくは前記塩材料の溶液を前記塩中子材(31)に噴射するステップf)と、
    所定の粒子サイズ分布及び/又は所定の粒径分布を有する塩材料を前記塩中子材に振りかけるステップg)と、
    少なくとも200μmの表面粗さRzを有する塩中子(30)を形成するように前記塩中子材(31)を乾燥させるステップh)と、
    鋳型の中に前記塩中子(30)を配置して、鋳造用金属材料から冷却チャンネルピストン(10)を鋳造するステップi)とを備えたことを特徴とする方法。
  3. 請求項1又は2に記載の方法において、
    ステップa)にて及び/又はステップe)にて、塩化ナトリウムの形態の塩材料を用いることを特徴とする方法。
  4. 請求項1又は2に記載の方法において、
    ステップa)にて及び/又はステップe)にて、前記塩中子材(31)を機械仕上げにかけることを特徴とする方法。
  5. 請求項1又は2に記載の方法において、
    ステップb)にて及び/又はステップf)にて、溶媒としての水、並びに/又は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル及びアセトンを含む群から選択された少なくとも1つの極性有機溶媒を用いることを特徴とする方法。
  6. 請求項5記載の方法において、
    前記少なくとも1つの極性有機溶媒は、少なくとも1つのクラウンエーテルの形態の添加剤を含むことを特徴とする方法。
  7. 請求項1又は2に記載の方法において、
    ステップc)にて及び/又はステップh)にて、撹拌された空気中で前記塩中子材(31)を乾燥させることを特徴とする方法。
  8. 請求項1又は2に記載の方法において、
    ステップc)にて及び/又はステップh)にて、高々200℃の温度で前記塩中子材(31)を乾燥させることを特徴とする方法。
  9. 請求項7記載の方法において、
    室温にて前記塩中子材(31)を乾燥させることを特徴とする方法。
  10. 請求項1又は2に記載の方法において、
    ステップc)にて及び/又はステップh)にて、最大で1mmの表面粗さRzを有する塩中子(30)を得ることを特徴とする方法。
  11. 請求項1記載の方法において、
    ステップa)の後にかつステップb)の前に、80℃〜100℃の温度まで前記塩中子材(31)を加熱することを特徴とする方法。
  12. 請求項1又は2に記載の方法において、
    ステップd)の前に及び/又はステップi)の前に、300℃〜500℃の温度まで前記塩中子(30)を加熱することを特徴とする方法。
  13. 請求項1又は2に記載の方法において、
    ステップd)にて及び/又はステップi)にて、鋳造用材料としてアルミニウム系の材料を用いることを特徴とする方法。
  14. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法により製造できる冷却チャンネルピストン(10)。
  15. ピストン頭頂部(11)に循環式の冷却チャンネル(16)を備えた冷却チャンネルピストン(10)であって、
    前記冷却チャンネル(16)の表面は、少なくとも200μmの表面粗さRzを有することを特徴とする冷却チャンネルピストン。
  16. 請求項12記載の冷却チャンネルピストンにおいて、
    前記冷却チャンネル(16)の表面は、最大で1mmの表面粗さRzを有することを特徴とする冷却チャンネルピストン。
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