本発明は、多くの様々な形態で具現化され得る。本明細書には、本発明の原理を例示する本発明の非限定的な説明的実施形態が開示されている。本明細書で使用されるいずれの項目の見出しも、組織化を目的とするだけのものであり、記載されている主題を限定するものと解釈されるべきでない。本開示の目的に関して、全ての特定されている配列受託番号は、別途記載がない限り、NCBI参照配列(RefSeq)データベースおよび/またはNCBI GenBank(登録商標)アーカイブ配列データベースで見出され得る。
MFI2発現は、驚くべきことに、いくつかの腫瘍型と相関することが見出され、決定因子として、このような腫瘍の処置に利用され得る。さらに、MFI2発現が腫瘍形成性細胞に関連し、したがってこのような細胞の阻害または除去に効果的に利用し得ることが予想外に見出された。腫瘍形成性細胞は、下記にさらに詳細に記載されるが、従来の多くの処置に耐性を示すことが知られている。先行技術の教唆とは対照的に、開示された化合物および方法は、この固有の耐性を有効に克服する。
本発明は、特定の作用機構または特異的に標的化された細胞もしくは分子成分にかかわらず、様々なMFI2関連がんの後診断、診断、診断治療、処置および/または予防のための抗MFI2抗体(抗体薬物コンジュゲートを含む)およびこの使用を提供する。
I. MFI2生理学
メラノトランスフェリン(MFI2;MTF1、CD228、MAP97およびメラノーマ関連抗原p97としても公知)は、細胞表面グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーで固定された糖タンパク質であり、非ヘム鉄結合タンパク質のトランスフェリンファミリーのメンバーと配列類似性を有する(Suryo Rahmantoら、2007;PMID:17452986)。代表的なMFI2タンパク質オルソログとしては、限定されないが、ヒト(NP_005920)、チンパンジー(XP_003310242)、アカゲザル(XP_001096034)、ラット(NP_001099342)およびマウス(NP_038928)が挙げられる。ヒトにおいて、MFI2遺伝子は、染色体3q28−q29にある約28kBpに及ぶ16個のエクソンからなる。ヒトMFI2遺伝子座の転写は、少なくとも2つの既知のRNA転写物、つまり738アミノ酸のプレタンパク質(NP_005920;図3AのhMFI2)をコードする長い方の3.96kBp転写物(NM_005929)および302アミノ酸のプレタンパク質(NM_201573;図3AのhΔMFI2)をコードすると考えられるオルターナティブスプライシングされた短い方の1.67kBp転写物(NM_033316)を生じる。いずれのタンパク質アイソフォームについても、プレタンパク質のプロセシングは、分泌シグナルペプチドを含む最初の19アミノ酸の除去を含むと予測される。長い方の738アミノ酸タンパク質アイソフォームの場合には、最後の29アミノ酸がプロセシングの一部で除去され、成熟タンパク質がGPIアンカーを介して細胞膜と連結される。短い方の302アミノ酸タンパク質アイソフォームは、作製されるかは明確でないが、分泌されると予測される。構造的に、長い方のアイソフォームは、タンデムトランスフェリン様ドメイン(図3Aにおいて、TFLD1およびTFLD2と標識)を含むと予測されるが、最初のドメインのみが鉄に結合することができる。3つのN−連結グリコシル化部位がマッピングされている−2つは第1のトランスフェリン様ドメインに対するものであり、1つは第2のトランスフェリン様ドメインに対するものである。メラノトランスフェリンの可溶性形態が、細胞培養上清および血清中で同定されているが、この形態の生物学的起源はまだ明らかになっていない。
メラノーマ関連抗原p97は、メラノーマに関して発見された最初の細胞表面マーカーの1つであり、トランスフェリンタンパク質との配列類似性に基づいて、メラノトランスフェリンと名付けられた。しかしながら、トランスフェリンファミリータンパク質の他のメンバーと共通の配列保存およびその明白な鉄結合能力にかかわらず、様々な細胞培養およびインビボ実験により、メラノトランスフェリンは、正常またはメラノーマ細胞における鉄輸送または代謝において必要不可欠な役割を果たしていないことが示されている(Suryo Rahmantoら、2012;PMID:21933697に総説)。このタンパク質は、輸送機能を媒介するためというよりは、むしろ構造的理由により鉄に結合している可能性がある。他のイオン、例えばZn(II)も、同様に、メラノトランスフェリンに結合することが示唆されている。メラノトランスフェリンに関して示唆されているさらなる機能には、血管新生の刺激、プラスミノーゲン活性化ならびに細胞増殖および遊走の刺激が含まれている。最近、メラノトランスフェリンは、脊椎動物でみられる上皮シートに形成されるタイトジャンクションに類似の、昆虫における上皮細胞間の拡散バリアをもたらす構造である、ショウジョウバエ属(Drosophila)における上皮隔膜ジャンクション(epithelial septal junction)の構築と関連づけられた。しかしながら、メラノトランスフェリンの正確な生物学的機能はまだ分かっていない。
II.がん幹細胞
現在のモデルによれば、腫瘍は、非腫瘍形成性細胞および腫瘍形成性細胞を含む。非腫瘍形成性細胞は、自己再生能力を有さず、免疫無防備状態マウスに過剰な細胞数で移植された場合でも腫瘍を再現的に形成することができない。腫瘍形成性細胞は、本明細書で「腫瘍開始細胞」(tumor initiating cell、TIC)とも称され、腫瘍の細胞集団の0.1〜40%(より典型的には0.1〜10%)を構成し、腫瘍を形成する能力を有する。腫瘍形成性細胞は、がん幹細胞(CSC)と交換可能に参照される腫瘍永続化細胞(tumor perpetuating cell、TPC)と、腫瘍始原細胞(tumor progenitor cell、TProg)との両方を包含している。
正常組織の細胞ヒエラルキーを支持する正常幹細胞と同様に、CSCは、多系列分化の能力を維持しながら、不確定に自己複製することができる。CSCは、腫瘍形成性後代と非腫瘍形成性後代の両方を生成することができ、連続的単離および少数の単離されたCSCの免疫無防備状態マウスへの移植によって実証されるように、親腫瘍の異種性細胞組成物を完全に再現することができる。
TProgは、CSCと同様に、一次移植片における腫瘍成長を促進する能力を有する。しかしながら、CSCと異なり、TProgは、親腫瘍の細胞異種性を再現することができず、後続の移植片において腫瘍形成性を再開するには効率性が低い。なぜなら、TProgは、少数の高精製TProgの免疫無防備状態マウスへの連続移植により実証されるように、一般に限定された数の細胞分裂しかできないからである。TProgはさらに、初期TProgと後期TProgとに分けることができ、これらは、表現型(例えば、細胞表面マーカー)および腫瘍細胞構造を再現する能力の差異によって区別され得る。いずれもCSCと同程度に腫瘍を再現することはできないが、初期TProgの方が、後期TProgよりも、親腫瘍の特徴を再現する能力が高い。前述の区別にかかわらず、一部のTProg集団は稀に、CSCに通常属する性質である自己再生能力を獲得し、それ自体がCSCになることができる。
CSCは、(i)TProg(初期および後期TProgの両方)ならびに(ii)非腫瘍形成性細胞、例えば、腫瘍−浸潤性細胞、例えば、CSCから誘導され、通常バルクの腫瘍を含む、線維芽細胞/間質、内皮および造血性細胞よりも高い腫瘍形成性を示し、比較的さらに静止している。従来の治療およびレジメンが、大部分は、腫瘍を減量させ、急速に増殖する細胞を攻撃するように設計されていることを考慮すると、CSCは、より急速に増殖するTProgおよび他のバルクな腫瘍細胞集団、例えば非腫瘍形成性細胞よりも、従来の治療およびレジメンに対して耐性が強い。CSCを従来の治療に対して相対的に化学療法耐性にし得る他の特徴は、多剤耐性トランスポーターの発現増加、DNA修復メカニズムおよび抗アポトーシス遺伝子発現の向上である。このようなCSCの特性は、進行した病期の新生物を有する患者に持続的な応答をもたらすための標準処置レジメンの失敗を示唆している。なぜなら、標準的化学療法では、継続的な腫瘍成長および再発を実際に促進しているCSCが、有効に標的とされていないためである。
驚くべきことに、MFI2発現が、様々な腫瘍形成性細胞小集団と関連していることが分かった。本発明は、特に腫瘍形成性細胞を標的化するために有用であり、腫瘍形成性細胞を鎮静する、敏感にする、中和する、出現頻度を減少させる、ブロックする、破棄する、干渉する、減少させる、妨害する、抑制する、制御する、枯渇させる、和らげる、介在する、縮小させる、再プログラムする、消去するまたは他の方法で阻害する(集約して、「阻害する」)ために使用することができ、したがって増殖性障害(例えば、がん)の処置、管理および/または予防を容易にする抗MFI2抗体を提供する。有利には、本発明の新規の抗MFI2抗体は、対象に投与した際に、MFI2の決定因子の型(例えば、表現型または遺伝子型)にかかわらず、腫瘍形成性細胞の出現頻度または腫瘍形成性を好ましくは減少させるように選択してもよい。腫瘍形成性細胞の出現頻度の減少は、(i)腫瘍形成性細胞の阻害もしくは根絶、(ii)腫瘍形成性細胞の成長、拡大もしくは再発の制御、(iii)腫瘍形成性細胞の開始、伝播、維持または増殖の中断または(iv)これら以外の腫瘍形成性細胞の生存、再生および/もしくは転移を妨げることの結果として生じ得る。いくつかの実施形態において、腫瘍形成性細胞の阻害は、1つ以上の生理学的経路の変化の結果として生じ得る。経路の変化は、腫瘍形成性細胞の阻害、腫瘍形成性細胞の能力の改変(例えば、分化もしくはニッチ破壊の誘導による)または腫瘍形成性細胞が腫瘍環境もしくは他の細胞に影響する能力の他の方法での干渉のいずれによるものであっても、腫瘍形成性、腫瘍の維持および/または転移ならびに再発の阻害により、より有効にMFI2関連障害を処置することを可能にする。開示された抗体の同じ特徴は、標準処置レジメンに耐性または不応性であることが立証された再発性腫瘍の処置で、抗体を特に有効にすることがさらに認識される。
腫瘍形成性細胞の出現頻度の減少を評価するために使用され得る方法としては、限定されないが、細胞数測定または免疫組織化学的分析、好ましくはインビトロまたはインビボ限界希釈分析(Dyllaら、2008、PMID:PMC2413402およびHoeyら、2009、PMID:19664991)が挙げられる。
インビトロ限界希釈分析は、断片化または非断片化腫瘍細胞(例えば、それぞれ処置または未処置細胞)を固体培地で培養してコロニーを形成させ、成長したコロニーを計数し、特徴付けることにより行ってもよい。または腫瘍細胞を、液体培地を含有するウェルを有するプレート上に段階希釈し、各ウェルを、接種後、好ましくは接種から10日より後の任意の時点において、コロニー形成について陽性であるか陰性であるかでスコア化してもよい。
インビボ限界希釈分析は、未処置対照または選択した治療剤に曝露した腫瘍のいずれかからの腫瘍細胞を、免疫無防備状態マウスに段階希釈で移植し、この後、各マウスの腫瘍形成について陽性であるか陰性であるかをスコア化することによって実施される。スコア化は、移植した腫瘍が検出可能となった後の任意の時点で行ってよいが、好ましくは移植から60日以上経過した後で行う。腫瘍形成性細胞の出現頻度を決定するための限界希釈実験の結果の解析は、好ましくは、ポアソン分布統計を使用してまたは腫瘍がインビボで生成されるか否かの能力のような予め定義された確定事象の出現頻度を評価することにより(Fazekasら、1982、PMID:7040548)、行われる。
フローサイトメトリおよび免疫組織化学も、腫瘍形成性細胞の出現頻度を決定するために使用され得る。両方の技術が、腫瘍形成性細胞を濃縮することが知られている、当該技術分野で認識されている細胞表面タンパク質またはマーカーに結合する1つ以上の抗体または試薬を利用する(WO2012/031280参照)。当該技術分野で公知であるように、フローサイトメトリ(例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS))は、腫瘍形成性細胞を含む様々な細胞集団を特徴付け、単離、精製、濃縮または分類するためにも使用され得る。フローサイトメトリは、細胞の混合集団が懸濁されている流体の流れを、秒あたり最大何千もの粒子の物理的および/または化学的特徴を測定できる電子的検出装置を通して通過させることによって、腫瘍形成性細胞のレベルを測定する。免疫組織化学は、腫瘍形成性細胞マーカーに結合する標識化抗体または試薬で組織試料を染色することにより、インサイチュ(例えば、組織切片内)で腫瘍形成性細胞の視覚化を可能にするという点で、さらなる情報を提供する。
したがって、本発明の抗体は、例えば、フローサイトメトリ、磁気活性化細胞選別(MACS)、レーザー媒介の薄片化またはFACSなどの方法による、腫瘍形成性細胞の同定、特徴付け、監視、単離、薄片化または集団もしくは小集団の富化に有用であり得る。FACSは、特異的な細胞表面マーカーに基づいて99.5%を超える純度で細胞小集団を単離するために使用される信頼性のある方法である。CSCを含む腫瘍形成性細胞の特徴付けおよび操作のための他の適合技術は、例えば、U.S.P.N.12/686,359、12/669,136および12/757,649において見ることができる。
下記に列挙するのは、CSC集団に関連し、CSCを単離または特徴付けるために使用されてきたマーカーである:ABCA1、ABCA3、ABCG2、ADAM9、ADCY9、ADORA2A、AFP、AXIN1、B7H3、BCL9、Bmi−1、BMP−4、C20orf52、C4.4A、カルボキシペプチダーゼM、CAV1、CAV2、CD105、CD133、CD14、CD16、CD166、CD16a、CD16b、CD2、CD20、CD24、CD29、CD3、CD31、CD324、CD325、CD34、CD38、CD44、CD45、CD46、CD49b、CD49f、CD56、CD64、CD74、CD9、CD90、CEACAM6、CELSR1、CPD、CRIM1、CX3CL1、CXCR4、DAF、デコリン、easyh1、easyh2、EDG3、eed、EGFR、ENPP1、EPCAM、EPHA1、EPHA2、FLJ10052、FLVCR、FZD1、FZD10、FZD2、FZD3、FZD4、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、GD2、GJA1、GLI1、GLI2、GPNMB、GPR54、GPRC5B、IL1R1、IL1RAP、JAM3、Lgr5、Lgr6、LRP3、LY6E、MCP、mf2、mllt3、MPZL1、MUC1、MUC16、MYC、N33、Nanog、NB84、ネスチン、NID2、NMA、NPC1、オンコスタチンM、OCT4、OPN3、PCDH7、PCDHA10、PCDHB2、PPAP2C、PTPN3、PTS、RARRES1、SEMA4B、SLC19A2、SLC1A1、SLC39A1、SLC4A11、SLC6A14、SLC7A8、smarcA3、smarcD3、smarcE1、smarcA5、Sox1、STAT3、STEAP、TCF4、TEM8、TGFBR3、TMEPAI、TMPRSS4、トランスフェリン受容体、TrkA、WNT10B、WNT16、WNT2、WNT2B、WNT3、WNT5A、YY1およびβ−カテニン。例えば、Schulenburgら、2010、PMID:20185329、U.S.P.N.7,632,678ならびにU.S.P.N.2007/0292414、2008/0175870、2010/0275280、2010/0162416および2011/0020221参照。
同様に、特定の腫瘍型のCSCに関連する細胞表面表現型の非限定的な例としては、CD44hiCD24low、ALDH+、CD133+、CD123+、CD34+CD38−、CD44+CD24−、CD46hiCD324+CD66c−、CD133+CD34+CD10−CD19−、CD138−CD34−CD19+、CD133+RC2+、CD44+α2β1 hiCD133+、CD44+CD24+ESA+、CD271+、ABCB5+ならびに当該技術分野で公知の他のCSC表面表現型が挙げられる。例えば、Schulenburgら、2010、前掲、Visvaderら、2008、PMID:18784658およびU.S.P.N.2008/0138313参照。本発明に関して特に関心がもたれるのは、CD46hiCD324+表現型を含むCSC調製物である。
「正」、「低」および「負」の発現レベルがマーカーまたはマーカー表現型に適用されるとき、以下のように定義される。負(つまり、「−」)の発現を有する細胞は、本明細書において、蛍光チャネル中のアイソタイプ対照抗体を、別の蛍光チャネルの目的の他のタンパク質を標識する完全抗体染色カクテルの存在下で観察した発現の95パーセンタイル以下で発現する細胞として定義される。当業者は、この負の事象を定義するための手法が、「1を引いた蛍光(fluorescence minus one)」または「FMO」染色として参照されることを認識する。上記で述べたFMO染色手法を用いてアイソタイプ対照抗体で観察された発現の95パーセンタイルを上回る発現を有する細胞は、「正」(つまり「+」)と定義される。本明細書で定義するとき、様々な細胞集団が広範に「正」と定義される。抗原の平均発現観測値が、上記のようにアイソタイプ対照抗体でFMO染色を用いて決定された95パーセンタイルを上回る場合、細胞は正として定義される。正の細胞は、平均発現観測値がFMO染色によって決定された95パーセンタイルを上回るが、95パーセンタイルの1標準偏差以内である場合、「低発現」(つまり、「lo」)の細胞と称され得る。代替的に、正の細胞は、平均発現観測値がFMO染色によって決定された95パーセンタイルを上回り、95パーセンタイルを上回る1標準偏差より大きい場合、「高発現」(つまり、「hi」)の細胞と称され得る。他の実施形態において、99パーセンタイルは、好ましくは、負と正のFMO染色の間の分界点として使用することができ、いくつかの実施形態において、パーセンタイルは99%より大きくなり得る。
CD46hiCD324+マーカー表現型およびすぐ上に例示された表現型は、標準的フローサイトメトリ解析ならびにさらなる解析のためにTICおよび/またはTPC細胞または細胞集団を、特徴付け、単離、精製または濃縮する細胞選別技術と組み合わせて使用され得る。
したがって、腫瘍形成性細胞の出現頻度を減少させる本発明の抗体の能力は、上記に記載の技術およびマーカーを使用して決定され得る。いくつかの場合には、抗MFI2抗体は、腫瘍形成性細胞の出現頻度を10%、15%、20%、25%、30%またはさらには35%減少させ得る。他の実施形態において、腫瘍形成性細胞の出現頻度の減少は、40%、45%、50%、55%、60%または65%程度であり得る。ある特定の実施形態において、開示された化合物は、腫瘍形成性細胞の出現頻度を70%、75%、80%、85%、90%またはさらには95%減少させ得る。腫瘍形成性細胞の出現頻度の何らかの減少は、腫瘍形成能、残留性、再発性および新生物の攻撃性の対応する減少をもたらし得ることが理解される。
III.抗体
A.抗体の構造
抗体ならびにそのバリアントおよび誘導体は、承認されている命名法および番号付けシステムを含め、例えば、Abbasら(2010)、Cellular and Molecular Immunology(第6版)、W.B.Saunders Company;またはMurpheyら(2011)、Janeway’s Immunobiology(第8版)、Garland Scienceに詳細に記載されている。
「抗体」または「無傷な抗体」は、通常、ジスルフィド共有結合および非共有結合性相互作用により一緒に保持された2つの重鎖(H)ポリペプチド鎖と2つの軽鎖(L)ポリペプチド鎖とを含むY字型4量体タンパク質を指す。各軽鎖は、1つの可変ドメイン(VL)と1つの定常ドメイン(CL)とで構成される。各重鎖は、1つの可変ドメイン(VH)と、IgG、IgAおよびIgD抗体の場合にCH1、CH2およびCH3と称される3つのドメインを含む(IgMおよびIgEは第4のドメインCH4を含む。)定常領域とを含む。IgG、IgAおよびIgDクラスにおいて、CH1およびCH2ドメインは、可変長のプロリンおよびシステインリッチセグメントであるフレキシブルなヒンジ領域(様々なIgGサブクラスにおいて約10から約60のアミノ酸)によって分離されている。軽鎖および重鎖の両方の可変ドメインは、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって定常ドメインに連結されており、重鎖は、約10の付加的アミノ酸の「D」領域も有する。抗体の各クラスは、対のシステイン残基によって形成される鎖間および鎖内のジスルフィド結合をさらに含む。
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、マルチクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化および霊長類化抗体、CDRグラフト化抗体、ヒト抗体、組換え産生抗体、細胞内抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、一価抗体、多価抗体、抗イディオタイプ抗体、合成抗体、例えば、これらのムテインおよびバリアント、免疫特異的抗体断片、例えば、Fd、Fab、F(ab’)2、F(ab’)断片、単鎖断片(例えば、ScFvおよびScFvFc)ならびにFc融合および他の修飾を含むそれらの誘導体、ならびに決定因子との優先的会合または結合を示す限り、あらゆる他の免疫反応分子を含む。さらに、文脈上の制約によって他に指示されない限り、用語はさらに全ての抗体のクラス(つまり、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM)ならびに全てのサブクラス(つまり、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)を含む。様々な抗体のクラスに対応する重鎖定常領域は、通常、対応するギリシャ語の小文字α、δ、ε、γおよびμでそれぞれ示される。いずれかの脊椎動物種からの抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に異なる種類の1つに割り当てることができる。
抗体の可変ドメインは、抗体毎にアミノ酸組成にかなりの違いを示し、主に抗原認識および結合の役割を担っている。各軽鎖/重鎖対の可変領域は抗体結合部位を形成しており、したがって無傷なIgG抗体は2つの結合部位を有する(すなわち、これは2価である。)。VHおよびVLドメインは、非常に可変性のある3つの領域を含み、これらの領域は超可変領域、またはより一般的には相補性決定領域(CDR)と称され、フレームワーク領域(FR)として知られる4つの可変性の少ない領域によって囲まれ分離されている。VHおよびVL領域間の非共有結合性の会合は、抗体の2つの抗原結合部位の1つを含有するFv断片(「可変部断片」を表す)を形成している。ScFv断片(一本鎖可変部断片の場合)は、遺伝子操作によって取得することができ、単一のポリペプチド鎖中でペプチドリンカーによって分離された抗体のVHおよびVL領域と会合している。
本明細書で使用される場合、アミノ酸の各ドメイン、フレームワーク領域およびCDRに対する割り付けは、他に記載がない限り、Kabatら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest(第5版)、米国保健福祉省、PHS、NIH、NIH公開番号91−3242;Chothiaら、1987、PMID:3681981;Chothiaら、1989、PMID:2687698;MacCallumら、1996、PMID:8876650;またはDubel編(2007)Handbook of Therapeutic Antibodies、第3版、Wily−VCH Verlag GmbH and CoまたはAbM (Oxford Molecular/MSI Pharmacopia)によって提供される番号付けスキームの1つに従い得る。Abysisウェブサイトデータベース(下記)から取得されるKabat、Chothia、MacCallum(Contactとしても知られる)およびAbMによって定義される、CDRを含むアミノ酸残基は、下記に示されている。
抗体配列における可変領域およびCDRは、当該技術分野で展開されている一般的法則に従って(上記に示したもの、例えば、Kabat番号付けシステム)または既知の可変領域のデータベースに対して配列を整列させることにより同定され得る。これらの領域を同定するための方法は、Kontermann and Dubel編、Antibody Engineering、Springer、New York、NY、2001およびDinarelloら、Current Protocols in Immunology、John Wiley and Sons Inc.、Hoboken、NJ、2000に記載されている。抗体配列の例示的なデータベースは、www.bioinf.org.uk/absの「Abysis」ウェブサイト(英国、ロンドン、ロンドン大学の生化学・分子生物学(Biochemistry&Molecular Biology)部門のA.C.Martinによって保持)およびwww.vbase2.orgのVBASE2ウェブサイト(Retterら、Nucl.Acids Res.、33(データベース号):D671−D674(2005)に記載されている)に記載されているまたはこれらを通じてアクセスされ得る。好ましくは、配列は、Kabat、IMGTおよびタンパク質データバンク(PDB)からの配列データを、PDBからの構造データと統合したAbysisデータベースを使用して解析される。Dr.Andrew C.R.Martin’s book chapter Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains.In:Antibody Engineering Lab Manual(編集:Duebel,S. and Kontermann,R.、Springer−Verlag、Heidelberg、ISBN−13:978−3540413547、ウェブサイトのbioinforg.uk/absでも利用可能)参照。Abysisデータベースウェブサイトは、本明細書の教示に従って使用され得る、CDRを同定するために展開された一般的な規則をさらに含む。本明細書に添付の図6E−6Gは、例示的な重鎖および軽鎖可変領域の注釈におけるこのような解析での結果を示す。他に示さない限り、本明細書に示す全てのCDRは、Kabatらに従ってAbysisデータベースウェブサイトにより導き出されたものである。
本発明で議論される重鎖定常領域アミノ酸位置について、番号付けは、Euインデックスに従う。このインデックスは、最初にEdelmanら、1969、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 63(1):78−85において記載された。この文献は骨髄腫タンパク質Euのアミノ酸配列を記載しており、この配列は最初に配列決定されたヒトIgG1と報告されている。EdelmanのEuインデックスは、Kabatら、1991(前掲)にも示されている。したがって、重鎖の文脈における用語「Kabatに記載のEuインデックス」または「KabatのEuインデックス」または「Euインデックス」または「Eu番号付け」は、Kabatら、1991(前掲)に示されたEdelmanらのヒトIgG1 Eu抗体に基づく残基番号付けシステムを指す。軽鎖定常領域アミノ酸配列で使用される番号付けシステムは、同様に、Kabatら(前掲)に示されている。本発明に適合する例示的なカッパ軽鎖定常領域アミノ酸配列を直下に示す:
同様に、本発明に適合する例示的なIgG1重鎖定常領域アミノ酸配列を直下に示す:
開示された定常領域配列またはそれらの変形もしくは誘導体は、開示された重鎖および軽鎖可変領域と、標準的な分子生物学的技術を使用して操作可能に会合されて、本発明の抗MFI2ADCでそのまま使用され得るまたは組み込まれ得る全長抗体を提供し得る。
本発明の抗体または免疫グロブリンは、任意の関連する決定因子を特異的に認識するまたはこれと会合する抗体から生成され得る。本明細書で使用される場合「決定因子」または「標的」は、特定の細胞、細胞集団または組織においてもしくはこれらの上で、同定可能的に会合する、または特異的に見出される任意の検出可能な形質、特性、マーカーまたは因子を意味する。決定因子または標的は、形態学的、機能的または生化学的性質であってもよく、好ましくは表現型である。いくつかの実施形態において、決定因子は、特定の細胞型またはある特定の条件下の細胞(例えば、細胞周期の特定の点におけるまたは特定の微小環境における細胞)によって異なって発現(過剰発現または過小発現)されるタンパク質である。本発明の目的のために、決定因子は、好ましくは、異常ながん細胞上で異なって発現され、MFI2タンパク質またはそのスプライスバリアント、アイソフォーム、ホモログもしくはファミリーメンバーまたはこれらの特異的ドメイン、領域もしくはエピトープのいずれかを含み得る。「抗原」、「免疫原性決定因子」、「抗原性決定因子」または「免疫原」は、免疫適格性の動物に導入されたときに免疫応答を刺激できるおよび免疫応答により生じる抗体によって認識される任意のタンパク質または任意の断片、領域もしくはドメインを意味する。本明細書で検討されるMFI2決定因子の存在または不在は、細胞、細胞小集団または組織(例えば、腫瘍、腫瘍形成性細胞またはCSC)を同定するために使用され得る。
免疫グロブリン分子内には、2種類のジスルフィド架橋または結合、つまり鎖間および鎖内ジスルフィド結合がある。当該分野で周知のように、鎖間ジスルフィド結合の位置および数は、免疫グロブリンのクラスおよび種類によって変化する。本発明は、抗体の任意のクラスまたは特定のサブクラスに限定されるものではないが、IgG1免疫グロブリンが、例示のために、本開示を通して使用される。野生型IgG1分子には、12の鎖内ジスルフィド結合(それぞれ重鎖に4つとそれぞれ軽鎖に2つ)と、4つの鎖間ジスルフィド結合がある。鎖内ジスルフィド結合は、一般にやや保護されており、鎖間結合よりも相対的に還元されにくい。逆に、鎖間ジスルフィド結合は、免疫グロブリンの表面に位置しており、溶媒に接触可能で、通常は比較的還元されやすい。2つの鎖間ジスルフィド結合は、重鎖間に存在し、さらにそれぞれの重鎖からそれぞれの軽鎖に存在するジスルフィド結合が存在する。鎖間ジスルフィド結合は、鎖の会合に必須ではないことが実証された。IgG1ヒンジ領域は、重鎖に鎖間ジスルフィド結合を形成するシステインを含有しており、これらのシステインが、構造的な支えとともにFabの動きを容易にする柔軟性をもたらす。重/重IgG1鎖間ジスルフィド結合は、残基C226およびC229(Euナンバリング)に位置し、一方でIgG1の軽鎖および重鎖間(重/軽)のIgG1鎖間ジスルフィド結合は、カッパまたはラムダ軽鎖のC214と、重鎖の上流ヒンジ領域のC220との間に形成される。
B.抗体生成および産生
本発明の抗体は、当該技術分野で公知の様々な方法を使用して産生され得る。
1.宿主動物におけるポリクローナル抗体の生成
様々な宿主動物におけるポリクローナル抗体の産生は、当該技術分野において周知である(例えば、Harlow and Lane(編集)(1988)Antibodies:A Laboratory Manual、CSH Press;およびHarlowら(1989)Antibodies、NY、Cold Spring Harbor Press参照)。ポリクローナル抗体を生成するために、免疫適格性の動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、非ヒト霊長類など)は抗原性タンパク質または抗原性タンパク質を含む細胞もしくは調製物で免疫化する。一定時間後に、ポリクローナル抗体含有血清が、動物を出血させ、または屠殺することにより取得される。血清は動物から取得した形態で使用されてもよく、または抗体を部分的もしくは完全に精製して免疫グロブリン分画もしくは単離された抗体調製物を得てもよい。
任意の形態の抗原または抗原を含有する細胞もしくは調製物を、決定因子に特異的な抗体を生成するために使用することができる。用語「抗原」は、広義で使用され、任意の免疫原性断片または選択された標的の決定因子、例えば、単一のエピトープ、複数のエピトープ、単一もしくは複数のドメインまたは全細胞外ドメイン(ECD)を含み得る。抗原は、単離された完全長タンパク質、細胞表面タンパク質(例えば、これらの表面上の抗原の少なくとも一部を発現している細胞で免疫化されている)または可溶性タンパク質(例えば、タンパク質のECD部分のみで免疫化されている)であってもよい。抗原は、遺伝的に修飾された細胞において産生されてもよい。前述の抗原のいずれかが単独で使用されてもよく、当該技術分野で公知の1つ以上の免疫原性増強アジュバントと組み合わせて使用されてもよい。抗原をコードしているDNAは、ゲノムであっても非ゲノム(例えば、cDNA)であってもよく、免疫原性応答を誘発するのに十分なECDの少なくとも一部をコードしていてもよい。任意のベクターを使用して、抗原が発現される細胞を形質転換してもよく、例えばベクターとして、これらに限定されないが、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、プラスミドおよびカチオン性脂質などの非ウイルス性ベクターが挙げられる。
2.モノクローナル抗体
選択された実施形態において、本発明では、モノクローナル抗体の使用を検討する。当該技術分野で公知であるように、用語「モノクローナル抗体」または「mAb」は、実質的に均一な抗体の集団、すなわち、微量に存在し得る可能性のある変異(例えば、天然に生じる変異)を除いて同一である集団を構成する個別の抗体から取得される抗体を指す。
モノクローナル抗体はハイブリドーマ技術、組換え技術、ファージディスプレイ技術、トランスジェニック動物(例えば、XenoMouse(登録商標))またはこれらの何らかの組合せを含む、当該技術分野で公知の様々な技術を使用して調製され得る。例えば、モノクローナル抗体は、例えば、An,Zhigiang(編集)Therapeutic Monoclonal Antibodies:From Bench to Clinic、John Wiley and Sons、第1版 2009;Shireら、(編集)Current Trends in Monoclonal Antibody Development and Manufacturing、Springer Science+Business Media LLC、第1版 2010;Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Pres、第2版 1988;Hammerlingら、in:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681(Elsevier、N.Y.、1981)により詳細に記載されているハイブリドーマおよび生化学的遺伝子操作技術を使用して産生され得る。決定因子に特異的に結合する複数のモノクローナル抗体の産生後、特に有効な抗体を、様々なスクリーニングプロセスを通じて、例えば、決定因子に対するそれらの親和性または内在化速度に基づいて、選択されてもよい。本明細書に記載されるように産生される抗体は「出所」抗体として使用することができ、さらに、例えば、標的への親和性を改善するため、細胞培養における産生性を向上させるため、インビボでの免疫原性を減少させるため、多重特異性構築物を生成するために修飾してもよい。モノクローナル抗体の産生およびスクリーニングのより詳細な説明は、下記および添付の実施例に示される。
3.ヒト抗体
別の実施形態において、抗体は、完全ヒト抗体を含み得る。語「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のアミノ配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体および/または下記に記載のヒト抗体を作製する技術のいずれかを使用して作製された抗体(好ましくはモノクローナル抗体)を指す。
ヒト抗体は、当該技術分野で既知の様々な技術を使用して産生され得る。一実施形態において、組換えヒト抗体は、ファージディスプレイを使用して調製された組換えコンビナトリアル抗体ライブラリをスクリーニングすることによって単離され得る。一実施形態において、ライブラリは、B細胞から単離されたmRNAから調製されたヒトVLおよびVH cDNAを使用して生成されたscFvファージまたは酵母ディスプレイライブラリである。
ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物、例えば、内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化され、ヒト免疫グロブリン遺伝子が導入されたマウスに導入することにより作製することもできる。チャレンジすると、ヒト抗体産生が観察され、この産生は、遺伝子再配列、アセンブリおよび完全ヒト抗体レパートリーを含む全ての点において、ヒトで見られるものと緊密に類似している。このアプローチは、例えば、U.S.P.N.5,545,807;5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;5,661,016ならびにXenoMouse(登録商標)技術に関するU.S.P.N.6,075,181および6,150,584;ならびにLonberg and Huszar、1995、PMID:7494109)に記載されている。代替的には、ヒト抗体は、標的抗原に対して向けられた抗体を産生するヒトBリンパ球の不死化を介して調製され得る(このようなBリンパ球は、新生物障害に罹患している個体から回収し得るまたはインビトロで免疫化され得る。)。例えば、Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、p.77(1985);Boernerら、1991、PMID:2051030;およびU.S.P.N.5,750,373を参照。他のモノクローナル抗体と同様に、このようなヒト抗体は、出所抗体として使用され得る。
4.誘導された抗体
出所抗体は、上記のように生成され、選択され、単離された後、改善された医薬的特徴を有する抗MFI2抗体となるようにさらに改変されてもよい。好ましくは、出所抗体は、所望の治療学的特性を有する誘導抗体をもたらすように既知の分子操作技術を使用して修飾または改変されてもよい。
4.1.キメラおよびヒト化抗体
本発明の選択された実施形態は、免疫特異的にMFI2に結合するマウスモノクローナル抗体を含み、この抗体は、「出所」抗体と考えることができる。選択された実施形態において、本発明の抗体は、このような「出所」抗体から、出所抗体の定常領域および/またはエピトープ結合アミノ酸配列の任意選択の修飾を通じて誘導され得る。ある特定の実施形態では、抗体は、出所抗体の選択されたアミノ酸が、欠失、変異、置換、統合または組合せを通じて変化する場合、出所抗体から「誘導される」。別の実施形態において、「誘導された」抗体は、出所抗体の断片(例えば、1つ以上のCDRまたは全重鎖および軽鎖可変領域)がアクセプター抗体配列と組み合わされるまたはアクセプター抗体配列に組み込まれて、誘導抗体(例えば、キメラまたはヒト化抗体)を提供する抗体である。これらの「誘導された」抗体は、標準的な分子生物学的技術を使用して、下記に記載されるように、例えば、決定因子に対する親和性を改善するために、抗体安定性を向上させるために、細胞培養における産生および収率を向上させるために、インビボにおける免疫原性を下げるために、毒性を下げるために、活性部分のコンジュゲーションを容易にするためにまたは多重特異的抗体を作製するために生成され得る。このような抗体は、出所抗体から、化学的手段または翻訳後修飾による成熟分子の修飾(例えば、グリコシル化パターンまたはペグ化)を通じて、誘導されてもよい。
一実施形態において、本発明の抗体は、少なくとも2つの異なる抗体の種またはクラス由来の共有結合的に連結されたタンパク質セグメントから誘導されたキメラ抗体を含み得る。用語「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であるが、鎖の残りは、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体ならびにこのような抗体の断片の対応する配列と同一または相同である構築物を指す(U.S.P.N.4,816,567;Morrisonら、1984、PMID:6436822)。いくつかの好ましい実施形態において、本発明のキメラ抗体は、ヒト軽鎖および重鎖定常領域に操作可能に連結されている選択されたマウス重鎖および軽鎖可変領域の全てまたはほとんどを含んでもよい。他の選択された実施形態において、抗MFI2抗体は、本明細書に開示のマウス抗体から「誘導された」ものであり得る。
他の実施形態において、本発明のキメラ抗体は、「CDRグラフト化」抗体であり、この場合に、CDR(Kabat、Chothia、McCallumなどを使用して定義される)は、特定の種から誘導されるまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属しており、抗体の残りは別の種から大きく誘導されるまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属している。ヒトで使用するために、1つ以上の選択されたげっ歯類CDR(例えば、マウスCDR)は、ヒトアクセプター抗体にグラフト化され、天然に存在するヒト抗体のCDRの1つ以上と置き換えられ得る。これらの構築物は、一般的に、対象による抗体に対する望ましくない免疫応答を低減しながら、十分な強度のヒト抗体機能、例えば、補体依存細胞傷害性(CDC)および抗体依存細胞媒介細胞傷害性(ADCC)をもたらすという利点を有する。一実施形態において、CDRグラフト化抗体は、ヒトフレームワーク配列に組み込まれたマウスから取得される1つ以上のCDRを含む。
CDRグラフト化抗体に類似しているのが「ヒト化」抗体である。本明細書で使用するとき、「ヒト化」抗体は、1つ以上の非ヒト抗体(ドナーまたは出所抗体)から誘導された1つ以上のアミノ酸配列(例えば、CDR配列)を含むヒト抗体(アクセプター抗体)である。ある特定の実施形態では、「逆変異」が、ヒト化抗体に導入されていてもよい。この逆変異では、レシピエントのヒト抗体の可変領域の1つ以上のFRが、非ヒト種ドナー抗体の対応する残基によって置換されている。このような逆変異は、グラフト化CDRの適切な三次元立体配置の維持を補助し、それにより親和性および抗体安定性を改善し得る。様々なドナー種由来の抗体を使用することができ、例えば、限定されないが、マウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類が挙げられる。さらに、ヒト化抗体は、例えば、抗体の性能をさらに洗練するために、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない新たな残基を含んでもよい。出所抗体由来のマウス成分およびアクセプター抗体由来のヒト成分を含む、本発明に適合するCDRグラフト化およびヒト化抗体は、下記実施例に示すように提示される。
当該技術分野で認識されている様々な技術を使用して、どのヒト配列をアクセプター抗体として使用するかを決定し、本発明に従ってヒト化構築物を提供することができる。適合するヒト生殖系列配列の編纂およびそれらのアクセプター配列としての適性を決定するための方法は、例えば、Dubel and Reichert(編)(2014)Handbook of Therapeutic Antibodies、第2版、Wiley−Blackwell GmbH;Tomlinson、I.A.ら(1992)J.Mol.Biol.227:776−798;Cook、G.P.ら(1995)Immunol.Today 16:237−242;Chothia、D.ら(1992)J.Mol.Biol.227:799−817;およびTomlinsonら(1995)EMBO J 14:4628−4638)に開示されている。ヒト免疫グロブリン可変領域配列の網羅的なディレクトリを提供している(Tomlinson,I.A.ら、MRC Centre for Protein Engineering、Cambridge、UKにより編集)V−BASEディレクトリ(VBASE2−Retterら、Nucleic Acid Res.33;671−674、2005)を使用して適合するアクセプター配列を同定してもよい。さらに、例えばU.S.P.N.6,300,064に記載されているコンセンサスヒトフレームワーク配列も適合するアクセプター配列であり得、本教示に従って使用し得る。一般に、ヒトフレームワークアクセプター配列は、マウス由来フレームワーク配列との相同性と、出所抗体およびアクセプター抗体のCDR古典的構造の解析とに基づいて選択される。次いで、誘導された抗体の重鎖および軽鎖可変領域の誘導された配列が、当該技術分野で認識されている技術を使用して合成され得る。
例として、CDRグラフト化およびヒト化抗体ならびに関連する方法は、U.S.P.N.6,180,370および5,693,762に記載されている。さらなる詳細は、例えば、Jonesら、1986、(PMID:3713831);ならびにU.S.P.N.6,982,321および7,087,409を参照。
CDRグラフト化またはヒト化抗体の可変領域のヒトアクセプター可変領域の配列同一性またはホモロジーは、本明細書で議論したように決定され、本明細書で議論したように測定されるとき、好ましくは少なくとも60%または65%の配列同一性、より好ましくは少なくとも70%、75%、80%、85%または90%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも93%、95%、98%または99%の配列同一性を共有する。好ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換により異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)の側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されている置換である。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変化させない。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、配列同一性パーセントまたは類似度を上方調節させて置換の保存的性質を正しくしてもよい。
添付の図6Aおよび6Bに示される注釈の付されたCDRおよびフレームワーク配列は、専売のAbysisデータベースを使用して、Kabatらに従って定義されていることが理解される。同様に、図6H〜6Jにおいて注釈の付された整列配列で示されるCDRも、Kabatらに従って定義されている。しかしながら、本明細書で説明され、図6E〜6Gで示されるように、当業者は、Chothiaら、ABMまたはMacCallumらによって提供される定義に従って、CDRを、Kabatらと同様に容易に同定し得る。このように、前述のシステムのいずれかに従って誘導された1つ以上のCDRを含む抗MFI2ヒト化抗体は、本発明の範囲内に明確に保持される。
4.2.部位特異的抗体
本発明の抗体は、細胞毒または他の抗がん剤へのコンジュゲーションを容易にするために(下記でより詳細に議論されるように)操作されてもよい。抗体薬物コンジュゲート(ADC)調製にとって、抗体上の細胞毒の位置および薬物抗体比(DAR)の観点から、均質なADC分子集団を含むことが有利である。本発明に基づいて、当業者は本明細書に記載されるような部位特異的操作構築物を容易に作製することができる。本明細書で使用するとき、「部位特異的抗体」または「部位特異的構築物」は、重鎖または軽鎖のいずれかの少なくとも1つのアミノ酸が、欠失、改変または(好ましくは別のアミノ酸で)置換されて少なくとも1つの遊離システインを与えている抗体またはその免疫反応性断片を意味する。同様に、「部位特異的コンジュゲート」は、部位特異的抗体と、不対または遊離システインにコンジュゲートした少なくとも1つの細胞毒または他の化合物とを含むADCを意味する。ある特定の実施形態において、不対システイン残基は、不対鎖内システイン残基を含む。他の実施形態において、遊離システイン残基は、不対鎖間システイン残基を含む。さらに他の実施形態において、遊離システインは、抗体のアミノ酸配列内(例えば、CH3ドメイン内)へと改変させてもよい。いずれにしても、部位特異的抗体は、様々なアイソタイプの抗体、例えば、IgG、IgE、IgAまたはIgDであることができ;これらのクラス内で、抗体は、様々なサブクラスの抗体、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4であることができる。IgG構築物に関して、抗体の軽鎖は、C214がそれぞれ組み込まれたカッパまたはラムダのいずれかのアイソタイプを含んでもよく、選択された実施形態において、C214は、IgG1重鎖のC220残基がないことにより、不対であってもよい。
したがって、本明細書で使用されるとき、用語「遊離システイン」または「不対システイン」は、他に文脈で指示されていない限り、相互に交換可能に使用することができ、天然に存在しているまたは分子操作技術を使用して選択された残基位置に特別に組み込まれたにかかわらず、抗体の任意のシステイン(またはチオール含有)成分を意味し得る。ある特定の選択された実施形態において、遊離システインは、天然の鎖内または鎖間ジスルフィド架橋パートナーが置換され、除去されまたは他の方法で変化することにより生理学的条件下で天然に存在しているジスルフィド架橋が破壊され、それによって部位特異的コンジュゲーションに適切な不対システインとなっている、天然のシステインを含み得る。他の好ましい実施形態において、遊離または不対システインは、抗体の重鎖または軽鎖アミノ酸配列内の所定の部位に選択的に配置されているシステイン残基を含む。コンジュゲーションの前に、遊離または不対システインが、チオール(還元されたシステイン)として、キャッピングされたシステイン(酸化されている)としてまたは系の酸化状態に依存した同じ抗体上の別の遊離システインとの非天然分子内ジスルフィド結合(酸化されている)として、存在してもよいことが認識される。下記でより詳細に説明するように、この抗体構築物の穏やかな還元は、部位特異的コンジュゲーションに利用可能なチオールを提供する。特に好ましい実施形態において、遊離または不対システインは(天然に存在するものかまたは組み込まれたものかにかかわらず)、選択的還元とこの後のコンジュゲーションを受けて、均一なDARの組成物を提供する。
開示された改変コンジュゲート調製物により示される好ましい特性は、コンジュゲーションの位置および組成物の絶対的DARの観点からコンジュゲーションを詳細に指定し、作製されたコンジュゲートを大きく限定する能力に基づき、少なくとも部分的に、予測されるものであることが理解される。従来の多くのADC調製物と異なり、本発明は、ランダムなコンジュゲーション部位および比較的制御されていないDAR種を生成する抗体の部分的または完全な還元に完全には依拠していない。むしろ、本発明は、標的化抗体を改変して天然に存在する(つまり「未処理の」)鎖内または鎖間ジスルフィド架橋の1つ以上を破壊することによりまたは任意の位置にシステイン残基を導入することにより、1つ以上の所定の不対(または遊離の)システイン部位を用意する。この目的のために、選択された実施形態において、システイン残基は、標準的分子操作技術を使用して、抗体(またはそれらの免疫反応性断片)の重鎖もしくは軽鎖のいずれの場所に組み込まれてもよくまたは付加されてもよいことが理解される。他の好ましい実施形態において、天然ジスルフィド結合の破壊は、後にコンジュゲーション部位として使用され得る非天然システインの導入(後に遊離システインを含む)との組み合わせで行われ得る。
一実施形態において、操作された抗体は、鎖内または鎖間システイン残基に少なくとも1つのアミノ酸欠失または置換を含む。本明細書で使用するとき、「鎖間システイン残基」は、抗体の軽鎖と重鎖の間または抗体の2つの重鎖間のいずれかの天然のジスルフィド結合に含まれるシステイン残基を意味し、一方で、「鎖内システイン残基」は、同じ重鎖または軽鎖内の別のシステインと天然に対をなしているシステイン残基である。一実施形態において、鎖間システイン残基の欠失または置換は、軽鎖と重鎖との間のジスルフィド結合の形成に関与している。別の実施形態において、システイン残基の置換または欠失は、2つの重鎖間のジスルフィド結合に関与している。典型的な実施形態において、軽鎖が重鎖のVHおよびCH1ドメインと対形成しており、1つの重鎖のCH2およびCH3ドメインが相補的重鎖のCH2およびCH3ドメインと対形成している抗体の相補的な構造により、いずれかの軽鎖または重鎖の単一のシステインの変異または欠失によって、操作された抗体における2つの不対システイン残基が生じる。
いくつかの実施形態において、鎖間システイン残基は欠失している。他の実施形態において、鎖間システインは、別のアミノ酸(例えば、天然アミノ酸)で置換されている。例えば、アミノ酸置換は、鎖間システインの、中性(例えば、セリン、スレオニンもしくはグリシン)または親水性(例えば、メチオニン、アラニン、バリン、ロイシンもしくはイソロイシン)残基での置き換えを生じ得る。一実施形態において、鎖間システインは、セリンと置き換えられている。
本発明で意図されるいくつかの実施形態において、欠失または置換システイン残基は、軽鎖(カッパまたはラムダのいずれか)上にあり、したがって重鎖上に遊離システインが残る。他の実施形態において、欠失または置換システイン残基は重鎖上にあり、軽鎖定常領域上に遊離のシステインを残す。アセンブリにおける無傷な抗体の軽鎖または重鎖のいずれかの単一システインの欠失または置換は、2つの不対システイン残基を有する部位特異的抗体をもたらすことが理解される。
一実施形態において、IgG軽鎖(カッパまたはラムダ)の214位のシステイン(C214)が欠失または置換されている。別の実施形態において、IgG重鎖の220位のシステイン(C220)が欠失または置換されている。さらなる実施形態において、重鎖の226位または229位のシステインが欠失または置換されている。一実施形態において、重鎖のC220がセリンに置換されて(C220S)、軽鎖に好ましい遊離システインをもたらす。別の実施形態において、軽鎖のC214がセリンに置換されて(C214S)、重鎖に好ましい遊離システインをもたらす。実施例15においてこのような部位特異的構築物を示す。これらの構築物の概要を直下の表2に示す。ここで、ナンバリングは一般的にKabatに示されるEUインデックスに従い、WTは、「野生型」または天然の改変のない定常領域配列を表し、デルタ(Δ)はアミノ酸残基の欠失を指す(例えば、C214Δは、214位のシステインが欠失していることを示す。)。
システイン残基または遊離システインを提供するための残基を(天然のジスルフィド結合の破壊とは対照的に)導入または付加することに関して、抗体または抗体断片上の適合する位置は、当業者によって容易に判別され得る。したがって、選択された実施形態において、システインは、所望のDAR、抗体構築物、選択されたペイロードおよび抗体標的に応じて、CH1ドメイン、CH2ドメインもしくはCH3ドメインまたはそれらの任意の組合せに導入され得る。他の好ましい実施形態において、システインは、カッパまたはラムダCLドメイン内に導入されてもよく、特に好ましい実施形態において、CLドメインのc末端領域に導入されてもよい。それぞれの場合において、システインの挿入部位に近位の他のアミノ酸残基を変更、除去または置換して、分子の安定性、コンジュゲーションの効率性を促進させてもよくまたは一度付加されたペイロードに保護的環境を与えてもよい。特定の実施形態において、置換される残基は、抗体の任意の接触可能部位にある。このような表面残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基は、抗体が容易に接触可能な部位に位置づけられ、本明細書でさらに記載されているように選択的に還元され得る。ある特定の実施形態において、置換される残基は、抗体の接触可能部位にある。これらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基は、抗体が接触可能な部位に位置づけられ、抗体と選択的にコンジュゲートするために使用され得る。ある特定の実施形態において、以下の残基の任意の1つ以上が、システインで置換され得る:軽鎖のV205(Kabat番号付け);重鎖のA118(Eu番号付け);および重鎖Fc領域のS400(Eu番号付け)。さらなる置換位置および適合する部位特異的抗体の作製方法は、その全体が本明細書に組み込まれるU.S.P.N.7,521,541に記載されている。
本明細書に記載されるような、定義された部位で抗体薬物コンジュゲートを生成するためのストラテジーと薬物負荷の化学量論は、抗体の保存された定常領域の操作に主に関わるので、全ての抗MFI2抗体に広く適用可能である。抗体の各クラスおよびサブクラスのアミノ酸配列および天然のジスルフィド結合は十分に文献に記載されているので、当業者は、様々な抗体の操作された構築物を、過度の実験を必要とせずに容易に作製することができ、したがってこのような構築物は、本発明の範囲内にあるとして明確に意図されている。
4.3.定常領域の修飾または改変された糖鎖結合
本発明の選択された実施形態は、定常領域(つまりFc領域)の置換または修飾、例えば、限定されないが、アミノ酸残基の置換、変異および/または修飾を含んでもよく、この置換または修飾により、化合物に特徴、例えば、限定されないが、薬物動態の変化、血清半減期の延長、結合親和性の増加、免疫原性の減少、生産増加、FcリガンドのFc受容体(FcR)への結合の変化、ADCCまたはCDCの増強または減少、糖鎖結合および/またはジスルフィド結合の変化ならびに結合特異性の変更がもたらされる。
改善されたFcエフェクター機能を有する化合物は、例えば、FcドメインとFc受容体との間の相互作用(例えば、FcγRI、FcγRIIAおよびB、FcγRIIIおよびFcRn)に関与するアミノ酸残基の変化を通じて生成することができ、これにより、血清半減期の延長のような細胞毒性の増加および/または薬物動態の変化が導かれ得る(例えば、Ravetch and Kinet、Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991);Capelら、Immunomethods 4:25−34(1994);およびde Haasら、J.Lab.Clin.Med.126:330−41(1995)を参照。
選択された実施形態において、インビボ半減期が延長された抗体は、FcドメインとFcRn受容体との間の相互作用に関与することが同定されたアミノ酸残基を修飾(例えば、置換、欠失または付加)することにより生成することができる(例えば、WO97/34631;WO04/029207;U.S.P.N.6,737,056およびU.S.P.N.2003/0190311を参照)。このような実施形態に関して、Fcバリアントは、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、5日より長い、10日より長い、15日より長い、好ましくは20日より長い、25日より長い、30日より長い、35日より長い、40日より長い、45日より長い、2カ月より長い、3カ月より長い、4カ月より長いまたは5カ月より長い、半減期を与え得る。延長された半減期により血清力価が高くなり、従って、抗体の投与頻度を減少させるおよび/または投与される抗体の濃度を減少させる。インビボにおけるヒトFcRnへの結合およびヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清半減期は、例えば、ヒトFcRnを発現しているトランスジェニックマウスもしくはトランスフェクトされたヒト細胞株またはバリアントFc領域を有するポリペプチドが投与された霊長類でアッセイし得る。WO2000/42072は、FcRnへの結合が向上したまたは減少した抗体バリアントを記載している。さらに、例えば、Shieldsら J.Biol.Chem.9(2):6591−6604(2001)を参照。
他の実施形態において、Fc改変により、ADCCまたはCDC活性の増強または低下が導かれ得る。当該分野で既知のように、CDCは、補体の存在下での標的細胞の溶解を指し、ADCCは、細胞毒性の1形態を指し、ある特定の細胞毒性細胞(例えば、ナチュラルキラー細胞、好中球およびマクロファージ)に存在するFcRへ分泌Igが結合すると、これらの細胞毒性エフェクター細胞が抗原保有標的細胞に特異的に結合可能となり、この後、細胞毒により標的細胞が殺傷される。本発明の文脈において、抗体バリアントは、「改変された」FcR結合親和性を有し、親もしくは非修飾抗体または天然のFcR配列を含む抗体と比較して、結合が増強または減少している。低下した結合を示すこのようなバリアントは、明らかな結合をほとんどまたは全く有さず、例えば、天然配列と比較してFcRに対する結合は、例えば当該技術分野で周知の技術で決定するとき、0〜20%であり得る。他の実施形態において、バリアントは、天然の免疫グロブリンFcドメインと比較して増強された結合を示す。これらの種類のFcバリアントは、開示された抗体の有効な抗新生物特性を増強するために有利に使用し得ることが理解される。さらに他の実施形態において、このような改変は、結合親和性の増加、免疫原性の減少、生産増加、糖鎖結合および/もしくはジスルフィド結合の変化(例えば、コンジュゲーション部位に対して)、結合特異性の変更、ファゴサイトーシスの増加および/または細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方制御などを導く。
さらに他の実施形態は、1つ以上の操作されたグリコフォーム、例えば、タンパク質(例えばFcドメイン中の)に共有結合されている改変された糖鎖結合パターンまたは改変された炭化水素組成を含む部位特異的抗体を含む。例えば、Shields、R.L.ら(2002)J.Biol.Chem.277:26733−26740を参照。操作されたグリコフォームは、様々な目的、例えば、これらに限定されないが、エフェクター機能の増強または減少、標的に対する抗体の親和性の増加または抗体の産生促進のために有用であり得る。ある特定の実施形態において、エフェクター機能の減少が所望される場合、分子を操作してアグリコシル化された形態を発現させ得る。1つ以上の可変領域フレームワーク糖鎖結合部位の消去に至り得る置換、したがってこの部位での糖鎖結合を消去し得る置換は、周知である(例えば、U.S.P.N.5,714,350および6,350,861参照)。逆に、増強されたエフェクター機能または改善された結合が、1つ以上のさらなる糖鎖結合部位の操作によって、Fc含有分子に付与されてもよい。
他の実施形態としては、改変された糖鎖組成を有するFcバリアント、例えば、フコシル残基の量が減少している低フコシル化抗体または二分化GlcNAc構造が増加している抗体が挙げられる。このような改変された糖鎖結合パターンは、抗体のADCC能力を向上させることが実証されている。操作されたグリコフォームは、当業者に公知の任意の方法により、例えば、操作されたまたはバリアント発現系統を使用することにより、1つ以上の酵素(例えば、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))の共発現により、様々な生物または様々な生物由来の細胞株にFc領域を含む分子を発現させることによりまたはFc領域を含む分子を発現させた後、炭水化物を修飾することにより(例えば、WO2012/117002参照)、生成され得る。
4.4.断片
本発明の実施のためにどの形態の抗体(例えば、キメラ、ヒト化など)を選択したかにかかわらず、免疫反応断片を、それ自体でまたは抗体薬物コンジュゲートの一部として、本明細書の教示に従って使用し得ることが理解される。「抗体断片」は、無傷な抗体の少なくとも1部を含む。本明細書で使用するとき、抗体分子の「断片」という用語は、抗体の抗原結合断片を含んでおり、用語「抗原結合断片」は、選択された抗原またはこの免疫原性断片に免疫特異的に結合または反応し、この断片が由来する無傷抗体と特異的な抗原結合について競合する免疫グロブリンまたは抗体のポリペプチド断片を指す。
例示的な部位特異的断片としては、可変軽鎖断片(VL)、可変重鎖断片(VH)、scFv、F(ab’)2断片、Fab断片、Fd断片、Fv断片、単一ドメイン抗体断片、ダイアボディ、線状抗体、一本鎖抗体分子および抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。さらに、活性部位特異的断片は、抗原/基質または受容体と相互作用する能力を維持し、無傷抗体と同様の様式でそれらを修飾する(ただしおそらくはやや効率が劣る)、抗体の部分を含む。このような抗体断片は、本明細書に記載されるような1つ以上の遊離システインを含むようにさらに操作されてもよい。
他の実施形態において、抗体断片は、Fc領域を含む断片であって、Fc領域が無傷抗体に存在しているときに通常伴われる少なくとも1つの生物学的機能、例えばFcRn結合、抗体半減期調節、ADCC機能および補体結合を維持している断片である。一実施形態において、抗体断片は、無傷抗体と実質的に同様のインビボ半減期を有する一価抗体である。例えば、このような抗体断片は、断片にインビボ安定性を付与することが可能な少なくとも1つの遊離システインを含むFc配列に連結された抗原結合アームを含んでもよい。
当業者であれば十分に認識されるように、断片は、分子操作技術によりまたは無傷のもしくは完全な抗体もしくは抗体鎖の化学的もしくは酵素的処置(例えばパパインもしくはペプシン)を介してまたは組み換え手段により、取得することができる。抗体断片のより詳細な説明は、例えばFundamental Immunology、W.E.Paul編、Raven Press、N.Y.(1999)を参照。
選択された実施形態において、本発明の抗体断片は、様々な立体配置で使用され得るScFv構築物を含む。このような抗MFI2 ScFv構築物は、例えば、腫瘍を処置するための養子免疫遺伝子療法で使用され得る。ある特定の実施形態において、本発明の抗体(例えば、ScFv断片)は、MFI2と免疫選択的に反応するキメラ抗原受容体(CAR)を生成するために使用され得る。本開示に従って、抗MFI2 CARは、本発明の抗MFI2抗体またはそれらの免疫反応性断片(例えば、ScFv断片)、膜貫通ドメインおよび少なくとも1つの細胞内ドメインを含む融合タンパク質である。ある特定の実施形態において、抗MFI2 CARを発現するように遺伝子的に改変されたT細胞、ナチュラルキラー細胞または樹状細胞は、MFI2を発現する腫瘍細胞を特異的に標的とするように対象の免疫系を刺激するために、がんに罹患している対象に導入されてもよい。いくつかの実施形態において、本発明のCARは、一次細胞質シグナル伝達配列、つまりT細胞受容体複合体を介して抗原依存性一次活性化を開始するための配列を開始させる細胞内ドメイン、例えば、CD3ζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79bおよびCD66d由来の細胞内ドメインを含む。他の実施形態において、本発明のCARは、二次または共刺激シグナルを開始させる細胞内ドメイン、例えば、CD2、CD4、CD5、CD8α、CD8β、CD28、CD134、CD137、ICOS、CD154、4−1BBおよびグルココルチコイド誘導腫瘍壊死因子受容体(U.S.P.N.US/2014/0242701を参照)から誘導される細胞内ドメインを含む。
4.5.多価構築物
他の実施形態において、本発明の抗体およびコンジュゲートは、一価または多価(例えば、二価、三価など)であり得る。本明細書で使用するとき、用語「価数」は、抗体に関連した可能な標的結合部位の数を指す。各標的結合部位は、標的分子上の1つの標的分子または特異的位置もしくは座位に特異的に結合する。抗体が一価であるとき、分子の各結合部位は、単一抗原位置またはエピトープで特異的に結合する。抗体が2つ以上の標的結合部位(多価)を含むとき、各標的結合部位は同じまたは異なる分子に特異的に結合してもよい(例えば、異なるリガンドもしくは異なる抗原または同じ抗原上の異なるエピトープもしくは位置に結合してもよい。)。例えば、U.S.P.N.2009/0130105を参照。
一実施形態において、抗体は、二重特異的抗体であり、2つの鎖が、Millsteinら、1983、Nature、305:537−539に記載されるように、異なる特異性を有している。他の実施形態には、さらなる特異性を有する抗体、例えば三重特異的抗体が含まれる。他のより精巧な適合する多重特異的構築物およびそれらの作製方法は、U.S.P.N.2009/0155255ならびにWO94/04690;Sureshら、1986、Methods in Enzymology、121:210およびWO96/27011に記載されている。
多価抗体は、所望の標的分子の異なるエピトープに免疫特異的に結合することができるまたは異種性ポリペプチドもしくは固形支持材料のような標的分子と異種性エピトープとの両方に免疫特異的に結合することができる。選択された実施形態は2つの抗原にのみ結合する(つまり、二重特異的抗体である)ことができるが、さらなる特異性を有する抗体、例えば三重特異的抗体も本発明に包含される。二重特異的抗体には、架橋または「ヘテロコンジュゲート」抗体も含まれる。例えば、ヘテロコンジュゲートの抗体の1つはアビジンに結合することができ、他方はビオチンに結合することができる。このような抗体は、例えば、不要な細胞に対して免疫系細胞を標的化させるために(U.S.P.N.4,676,980)およびHIV感染の処置のために(WO91/00360、WO92/200373およびEP03089)提唱されてきた。ヘテロコンジュゲート抗体は、いずれかの都合のよい架橋方法を使用して作製することができる。適切な架橋剤は当該技術分野で周知であり、いくつかの架橋技術と共にU.S.P.N.4,676,980に開示されている。
5.抗体の組換え産生
抗体およびそれらの断片は、抗体産生細胞および組換え技術から得られた遺伝子材料を使用して作製または修飾されてもよい(例えば、Dubel and Reichert(編)(2014)Handbook of Therapeutic Antibodies、第2版、Wiley−Blackwell GmbH;Sambrook and Russell(編)(2000)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版)、NY、Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubelら(2002)Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、John & Sons、Inc.およびU.S.P.N.7,709,611を参照)。
本発明の別の態様は、本発明の抗体をコードする核酸分子に関する。核酸は、全細胞、細胞溶解物または部分的に精製されたもしくは実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、他の細胞成分または他の混入物、例えば、他の細胞核酸もしくはタンパク質から、標準技術、例えば、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動および当該技術分野で周知の他のものを使用して分離されるとき、「単離される」または実質的に純粋にされる。本発明の核酸は、例えば、DNA(例えば、ゲノムDNA、cDNA)、RNAおよびこの人工バリアント(例えば、ペプチド核酸)であり得、一本鎖もしくは二本鎖またはRNA、RNAであってもよく、イントロンを含んでも含まなくてもよい。選択された実施形態において、核酸はcDNA分子である。
本発明の核酸は、標準的な分子生物学的技術を使用して取得され得る。ハイブリドーマ(例えば、下記実施例に記載された調製されるハイブリドーマ)により発現される抗体については、抗体の軽鎖および重鎖をコードしているcDNAは、標準的PCR増幅またはcDNAクローニング技術によって取得され得る。免疫グロブリン遺伝子ライブラリから(例えば、ファージディスプレイ技術を使用して)取得される抗体については、抗体をコードしている核酸が、ライブラリから収集され得る。
VHおよびVLセグメントをコードしているDNA断片は、標準的組換えDNA技術によりさらに操作され、例えば、可変領域遺伝子を、完全長抗体鎖遺伝子、Fab断片遺伝子またはscFv遺伝子に変換することができる。これらの操作において、VLまたはVHをコードしているDNA断片は、別のタンパク質、例えば、抗体定常領域またはフレキシブルリンカーをコードしている別のDNA断片に操作可能に連結される。用語「操作可能に連結される」は、この文脈で使用される場合、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように2つのDNA断片が連結されていることを意味する。
VH領域をコードしている単離されたDNAは、重鎖定常領域(IgG1の場合は、CH1、CH2およびCH3)をコードする別のDNA分子にVHコードDNAを操作可能に連結することによって、完全長重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技術分野で公知であり(例えば、Kabatら、(1991)(前掲))、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的PCR増幅により取得され得る。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であり得るが、最も好ましくはIgG1またはIgG4定常領域である。例示的IgG1定常領域は、配列番号2に示される。Fab断片重鎖遺伝子に関して、VHコードDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードしている別のDNA分子に操作可能に連結され得る。
VL領域をコードしている単離されたDNAは、軽鎖定常領域CLをコードしている別のDNA分子にVLコードDNAを操作可能に連結することによって、完全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当該技術分野で公知であり(例えば、Kabatら、(1991)(前掲))、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的PCR増幅によって取得され得る。軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダ定常領域であり得るが、最も好ましくはカッパ定常領域である。例示的な適合するカッパ軽鎖定常領域は、配列番号1に示されている。
本明細書において、本発明のポリペプチドに対する「配列同一性」、「配列類似性」または「配列相同性」を示すある特定のポリペプチド(例えば、抗原または抗体)が検討される。例えば、誘導されたヒト化抗体VHまたはVLドメインは、出所(例えば、マウス)またはアクセプター(例えば、ヒト)VHまたはVLドメインと配列類似性を示し得る。「相同」ポリペプチドは、65%、70%、75%、80%、85%または90%の配列同一性を示し得る。他の実施形態において、「相同」ポリペプチドは、93%、95%または98%の配列同一性を示し得る。他の実施形態において、「相同」ポリペプチドは、93%、95%または98%の配列同一性を示し得る。本明細書で使用するとき、2つのアミノ酸配列間の相同性パーセントは、2つの配列間の同一性パーセントと同等である。2つの配列間の同一性パーセントは、配列によって共有される同一の位置の数の関数であり(つまり、%相同性=同一位置の数/位置の合計数×100)、2つの配列の最適な整列のために導入することが必要なギャップの数と各ギャップの長さが考慮に入れられる。配列の比較および2つの配列間の同一性パーセントの決定は、下記の非限定的実施例に記載されるように、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。
2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.MeyersおよびW.Millerのアルゴリズム(Comput.Appl.Biosci.,4:11−17(1988))を使用し、PAM120ウェイト残基テーブル(weight residue table)、12のギャップ・レングス・ペナルティ、4のギャップペナルティを使用して決定され得る。さらに、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラム(www.gcg.comで利用可能)に組み込まれているNeedlemanおよびWunschのアルゴリズム(J.Mol.Biol.48:444−453(1970))を使用し、Blossum62マトリックスまたはPAM250マトリックスならびに16、14、12、10、8、6または4のギャップ・ウェイトおよび1、2、3、4、5または6のレングス・ウェイトを使用して決定され得る。
追加的にまたは代替的に、本発明のタンパク質配列は、公的データベースに対して検索を行い、例えば関連する配列を同定するために、「クエリー配列」として使用されてもよい。このような検索は、Altschulら、(1990)J.Mol.Biol.215:403−10のXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施され得る。BLASTタンパク質検索は、本発明の抗体分子に相同なアミノ酸配列を取得するために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワードレングス=3を用いて実施されてもよい。比較のためのギャップありアラインメントを取得するために、Gapped BLASTが、Altschulら、(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389−3402に記載されているように利用されてもよい。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを使用するときは、対応するプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータが使用されてもよい。
同一でない残基の位置は、保存的アミノ酸置換また非保存的アミノ酸置換によって異なり得る。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)の側鎖を有する別のアミノ酸残基によって置換されている置換である。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変化させない。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、置換の保存的性質を訂正するために、配列同一性パーセントまたは類似度を上昇するように調整してもよい。非保存的アミノ酸による置換が存在する場合、実施形態において、配列同一性を示すポリペプチドは、本発明のポリペプチド(例えば、抗体)の所望の機能または活性を保持する。
本発明の核酸に対して「配列同一性」、「配列類似性」または「配列相同性」を示す核酸も、本明細書で検討される。「相同配列」は、少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%または90%の配列同一性を示す核酸分子の配列を意味する。他の実施形態において、核酸の「相同配列」は、参照核酸に対して、93%、95%または98%の配列同一性を示し得る。
本発明は、プロモーターに操作可能に連結されていてもよい上記に記載されたこのような核酸(例えば、WO86/05807;WO89/01036;およびU.S.P.N.5,122,464参照)と、真核生物分泌経路の他の転写調節およびプロセシング制御エレメントとを含むベクターも提供する。本発明は、これらのベクターを包含する宿主細胞および宿主発現系も提供する。
本明細書で使用される場合、用語「宿主発現系」は、本発明の核酸、またはポリペプチドおよび抗体のいずれかを生成するように操作することができる任意の種類の細胞系を含む。このような宿主発現系としては、これらに限定されないが、組換えバクテリオファージDNAまたはプラスミドDNAで形質転換またはトランスフェクトされた微生物(例えば、E.コリ(E.coli)またはB.サブチリス(B.subtilis));組換え酵母発現ベクターでトランスフェクトされた酵母(例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces))または哺乳動物細胞もしくはウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモーター)のゲノムに由来するプロモーターを含有する組換え発現構築物を包含する哺乳動物細胞(例えば、COS、CHO−S、HEK−293T、3T3細胞)が挙げられる。宿主細胞は、2つの発現ベクター、例えば、重鎖由来ポリペプチドをコードしている第1のベクターおよび軽鎖由来ポリペプチドをコードしている第2のベクターでコトランスフェクトされていてもよい。
哺乳動物細胞を形質転換する方法は当該技術分野で周知である。例えば、U.S.P.N.4,399,216、4,912,040、4,740,461および4,959,455参照。宿主細胞は、様々な特徴を有する抗原結合分子の産生を可能にするように操作されていてもよい(例えば、修飾グリコフォームまたはGnTIII活性を有するタンパク質)。
組換えタンパク質の長期的な高収率生産のために、安定な発現が好ましい。したがって、選択された抗体を安定に発現する細胞株は、当該技術分野で認識されている標準技術を使用して操作されてもよく、本発明の一部を形成する。ウイルス複製起源を含有する発現ベクターを使用せずに、宿主細胞は、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーターまたはエンハンサー配列、転写ターミネータ、ポリアデニル化部位など)および選択可能マーカーにより制御されたDNAで形質転換されてもよい。当該技術分野で周知の選択系のいずれも使用することができ、例えば、選択された条件下で発現を増強する効率的なアプローチを提供するグルタミン合成酵素遺伝子発現系(GS系)を使用してもよい。GS系は、全体的または部分的に、EP0216846、EP0256055、EP0323997およびEP0338841ならびにU.S.P.N.5,591,639および5,879,936に関連して述べられている。安定な細胞株の開発のための別の適合する発現系は、Freedom(商標)CHO−Sキット(Life Technologies)である。
本発明の抗体が、組換え発現または任意の他の開示された技術で産生されたら、当該技術分野で公知の方法で精製または単離してもよく、これにより抗体は、同定され、それらの天然環境から分離および/もしくは回収され、抗体または関連ADCの診断的または治療的用途に干渉する混入物から分離される。単離された抗体には、組換え細胞内のインサイチュの抗体が含まれる。
これらの単離された調製物は、当該技術分野で認識されている様々な技術、例えば、イオン交換およびサイズ排除クロマトグラフィー、透析、ダイアフィルトレーションおよび親和性クロマトグラフィー、特にタンパク質Aまたはタンパク質G親和性クロマトグラフィーを使用して精製されてもよい。下記の実施例において、適合する方法をより詳細に説明する。
6.産生後選択
取得される方法にかかわらず、抗体産生細胞(例えば、ハイブリドーマ、酵母コロニーなど)は選択され、クローン化され、所望の特徴、例えば、堅固な成長、抗体高産生および目的の抗原に対する高い親和性などの望ましい抗体特徴のためにさらにスクリーニングされてもよい。ハイブリドーマは、細胞培養においてインビトロでまたは同系遺伝子免疫無防備状態動物においてインビボで拡大増殖させることができる。ハイブリドーマおよび/またはコロニーを選択、クローニングおよび拡大増殖する方法は、当業者に周知である。所望の抗体が同定されたら、当該技術分野で認識されている一般的な分子生物学および生化学的技術を使用して、関連する遺伝子材料を単離、操作および発現させてもよい。
ナイーブなライブラリ(天然または合成のいずれか)で産生された抗体は、中程度の親和性(約106から107M−1のKa)を有する抗体であり得る。親和性を増加させるために、親和性成熟が、抗体ライブラリの構築(例えば、エラープローンポリメラーゼを使用したインビトロでのランダム変異の導入による)および抗原に対して高親和性を有する抗体の第2ライブラリからの再選択(例えば、ファージまたは酵母ディスプレイの使用による)により、インビトロで模倣されてもよい。WO9607754は、軽鎖遺伝子のライブラリを作成するために、免疫グロブリン軽鎖のCDRに変異誘発を誘導する方法を記載している。
様々な技術が、抗体を選択するために使用され得、例えば、これらに限定されないが、ヒトコンビナトリアル抗体またはscFv断片のライブラリがファージまたは酵母で合成されるファージまたは酵母ディスプレイを使用でき、このライブラリを、目的の抗原またはその抗体結合部分でスクリーニングし、この抗原に結合するファージまたは酵母を単離して、これらから抗体または免疫反応性断片を取得し得る(Vaughanら、1996、PMID:9630891;Sheetsら、1998、PMID:9600934;Boderら、1997、PMID:9181578;Pepperら、2008、PMID:18336206)。ファージまたは酵母ディスプレイライブラリを生成するためのキットは市販されている。抗体ディスプレイライブラリの生成およびスクリーニングに使用され得る他の方法および試薬もある(U.S.P.N.5,223,409;WO92/18619、WO91/17271、WO92/20791、WO92/15679、WO93/01288、WO92/01047、WO92/09690;およびBarbasら、1991、PMID:1896445参照)。このような技術は、多数の候補抗体のスクリーニングを有利に可能にし、配列の比較的簡単な操作を提供する(例えば、組換えシャッフリングによる)。
IV.抗体の特徴
ある特定の実施形態において、抗体産生細胞(例えば、ハイブリドーマ、酵母コロニーなど)は、選択され、クローン化され、ならびに好ましい特性、例えば、堅固な成長、抗体高産生および下記に詳細に記載されるような望ましい部位特異的抗体特徴のためにさらにスクリーニングされてもよい。他の場合において、抗体の特徴は、動物の接種のために、特定の抗原(例えば、特異的MFI2アイソフォーム)または標的抗原の免疫応答性断片を選択することによって付与されてもよい。さらに他の実施形態において、選択された抗体は、上記のように操作されて、免疫化学的特徴、例えば親和性または薬物動態が増強または洗練されてもよい。
A.中和抗体
選択された実施形態において、本発明の抗体は、「アンタゴニスト」または「中和」抗体であり得、このことは、抗体が決定因子と会合して、前記決定因子の活性を、直接的にまたは決定因子と結合パートナー、例えば、リガンドまたは受容体との会合を予防することにより、阻止または阻害し得ることを意味し、それにより、そうしなければ分子の相互作用から生じるはずの生物学的応答を中断し得る。過剰な抗体が、決定因子に結合する結合パートナーの量を、例えば、標的分子活性またはインビトロ競合結合アッセイにより測定するとき、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、99%またはより多く減少させる場合、中和またはアンタゴニスト抗体は、決定因子がそのリガンドまたは基質に結合することを実質的に阻害する。修飾された活性は、当該技術分野で認識されている技術を使用して直接的に測定され得るまたは変化した活性が下流で有する影響(例えば、腫瘍形成または細胞生存)により測定され得ることが理解される。
B.内在化抗体
ある特定の実施形態において、抗体は、抗体が決定因子と結合し、腫瘍形成性細胞のような選択された標的細胞に内在化される(任意のコンジュゲートされた医薬活性成分を伴う)ような、内在化抗体を含み得る。内在化する抗体分子の数は、抗原発現細胞、特に、抗原発現腫瘍形成性細胞を殺傷するのに十分であり得る。抗体または一部の場合には抗体薬物コンジュゲートの効力に応じて、単一抗体分子の細胞への取込みが、抗体が結合する標的細胞を殺傷するために十分であり得る。本発明に関連して、発現されたMFI2タンパク質の実質的な部分が腫瘍形成性細胞表面に会合して残り、それにより開示された抗体またはADCの局在化および内在化を可能にしているという証拠がある。選択された実施形態において、このような抗体は、内在化に際して細胞を殺傷する1つ以上の薬物と会合されるまたはコンジュゲートされる。いくつかの実施形態において、本発明のADCは、内在化部位特異的ADCを含む。
本明細書で使用されるとき、「内在化する」抗体は、関連する決定因子に結合する際に、標的細胞によって(任意のコンジュゲートされた細胞毒と共に)取り込まれる抗体を指す。このような内在化するADCの数は、決定因子発現細胞、特に、決定因子発現がん幹細胞を殺傷するのに十分であることが好ましい。細胞毒またはADCの全体としての効力に応じて、一部の場合に、抗体の数分子の細胞内への取込みが、抗体が結合する標的細胞を殺傷するために十分である。例えば、PBDまたはカリチアマイシンのようなある特定の薬物は強力であるため、抗体にコンジュゲートされた毒素の数分子の内在化が、腫瘍細胞を殺傷するために十分である。抗体が哺乳動物細胞に結合して内在化するかどうかは、下記実施例に記載されているものを含め、当該技術分野で認識されている様々なアッセイにより決定され得る。抗体が細胞に内在化するかどうかを検出する方法は、U.S.P.N.7,619,068にも記載されている。
C.枯渇抗体
他の実施形態において、本発明の抗体は枯渇抗体である。用語「枯渇」抗体は、好ましくは細胞表面上または細胞表面近傍で抗原に結合し、(例えば、CDC、ADCCまたは細胞毒性剤の導入により)細胞の死を誘導する、促進するまたは生じさせる抗体を指す。実施形態において、選択された枯渇抗体は、細胞毒にコンジュゲートされている。
好ましくは、枯渇抗体は、定義された細胞集団におけるMFI2発現細胞の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%または99%を殺傷することができる。いくつかの実施形態において、細胞集団は、濃縮された、区分された、精製されたまたは単離された腫瘍形成性細胞、例えば、がん幹細胞を含み得る。他の実施形態において、細胞集団は、全腫瘍試料またはがん幹細胞を含む異種性腫瘍抽出物を含み得る。標準的な生化学的技術が使用され、腫瘍形成性細胞の枯渇が、本明細書に記載の技術に従って監視および定量されてもよい。
D.結合親和性
本明細書において、特定の決定因子、例えば、MFI2に対して高い結合親和性を有する抗体が開示される。用語「KD」は、特定の抗体−抗原相互作用の解離定数または見かけの親和性を指す。本発明の抗体は、解離定数KD(koff/kon)が≦10−7Mであるとき、その標的抗原に免疫特異的に結合することができる。抗体は、KDが≦5×10−9Mであるとき、高親和性で抗原に特異的に結合し、KDが≦5×10−10Mであるとき、非常に高い親和性で抗原に特異的に結合する。本発明の一実施形態において、抗体は、≦10−9MのKDと、約1×10−4/秒のオフ速度(off−rate)を有する。本発明の一実施形態において、オフ速度は、<1×10−5/秒である。本発明の他の実施形態において、抗体は、約10−7Mから10−10MのKDで決定因子に結合し、さらに別の実施形態において、KD≦2×10−10Mで決定因子に結合する。本発明のさらに他の選択された実施形態は、10−6M未満、5×10−6M未満、10−7M未満、5×10−7M未満、10−8M未満、5×10−8M未満、10−9M未満、5×10−9M未満、10−10M未満、5×10−10M未満、10−11M未満、5×10−11M未満、10−12M未満、5×10−12M未満、10−13M未満、5×10−13M未満、10−14M未満、5×10−14M未満、10−15M未満または5×10−15M未満のKD(koff/kon)を有する抗体を含む。
ある特定の実施形態において、決定因子、例えば、MFI2に免疫特異的に結合する本発明の抗体は、少なくとも105M−1s−1、少なくとも2×105M−1s−1、少なくとも5×105M−1s−1、少なくとも106M−1s−1、少なくとも5×106M−1s−1、少なくとも107M−1s−1、少なくとも5×107M−1s−1または少なくとも108M−1s−1の会合速度定数またはkon(またはka)速度(抗体+抗原(Ag)k on←抗体−Ag)を有し得る。
別の実施形態において、決定因子、例えば、MFI2に免疫特異的に結合する本発明の抗体は、10−1s−1未満、5×10−1s−1未満、10−2s−1未満、5×10−2s−1未満、10−3s−1未満、5×10−3s−1未満、10−4s−1未満、5×104s−1未満、10−5s−1未満、5×10−5s−1未満、10−6s−1未満、5×10−6s−1未満、10−7s−1未満、5×10−7s−1未満、10−8s−1未満、5×10−8s−1未満、10−9s−1未満、5×10−9s−1未満または10−10s−1未満の解離速度定数またはkoff(またはkd)速度(抗体+抗原(Ag)k off←抗体−Ag)を有し得る。
結合親和性は、当該技術分野で公知の様々な技術、例えば、表面プラズモン共鳴、バイオレイヤー干渉法、二面偏波式干渉法、静的光散乱法、動的光散乱法、等温滴定型カロリメトリー、ELISA、超遠心分析法およびフローサイトメトリを使用して決定され得る。
E.ビニング(Binning)およびエピトープマッピング
本明細書に開示された抗体は、それらが会合する個別のエピトープの観点で特徴付けることができる。「エピトープ」は、抗体または免疫反応性断片が特異的に結合する決定因子の部分である。免疫特異的結合は、上記の結合親和性に基づいてまたはタンパク質および/もしくは巨大分子の複雑な混合物における(例えば、競合アッセイにおける)その標的抗原の抗体による優先的な認識により、確認し、定義することができる。「線状エピトープ」は、抗体の免疫特異的結合を可能にする、抗原における連続的アミノ酸により形成される。線状エピトープに優先的に結合する能力は、一般に、抗原が変性されたときでも維持される。逆に、「立体エピトープ」は、通常、抗原のアミノ酸配列における非連続的アミノ酸であるが、抗原の二次的、三次的または四次的構造の概念において、単一の抗体に同時に結合されるために十分に近接している非連続的アミノ酸を含む。立体エピトープを有する抗原が変性されたとき、抗体は通常、もはや抗原を認識しない。エピトープ(連続的または非連続的)は、特有の空間的立体配置に、通常少なくとも3個、より一般的には少なくとも5個または8〜10個または12〜20個のアミノ酸を含む。
本発明の抗体は、それらが属する群または「ビン(bin)」の観点で特徴付けることもできる。「ビニング」は、免疫原性決定因子に同時に結合することができない抗体の対を同定し、それによって結合について「競合する」抗体を同定する、競合的抗体結合アッセイの使用を指す。抗体の競合は、試験される抗体または免疫学的に機能的な断片が、共通の抗原に対する参照抗体の特異的結合を予防または阻害するアッセイによって決定され得る。そのようなアッセイは典型的には、固体表面または細胞、非標識試験抗体および標識参照抗体に結合した精製抗原(例えば、MFI2またはこのドメインもしくは断片)の使用が含まれる。競合阻害は、試験抗体の存在下に固体表面または細胞に結合したラベルの量を決定することにより測定される。競合的結合を決定するための方法に関するさらなる詳細は、本明細書に記載の実施例で提供される。通常、競合抗体が過剰に存在するとき、競合抗体は、参照抗体の共通抗原に対する特異的な結合を、少なくとも30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%阻害する。いくつかの例において、結合は、少なくとも80%、85%、90%、95%または97%以上阻害される。逆に、参照抗体が結合しているとき、参照抗体は、後で添加する試験抗体(つまり、MFI2抗体)の結合を、好ましくは、少なくとも、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%阻害する。いくつかの例において、試験抗体の結合は、少なくとも80%、85%、90%、95%または97%以上阻害される。
一般に、ビニングまたは競合結合は、当該技術分野で認識されている様々な技術、例えば、イムノアッセイ、例えば、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射定量測定アッセイ、蛍光イムノアッセイおよびタンパク質Aイムノアッセイを使用して決定され得る。このようなイムノアッセイは慣例であり、当該技術分野で周知である(Ausubelら編(1994)Current Protocols in Molecular Biology、1巻、John Wiley&Son,Inc.、New York参照)。さらに、交差ブロックアッセイを使用することができる(例えば、WO2003/48731;およびHarlowら(1988)Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Ed Harlow and David Lane参照)。
競合的阻害(したがって「ビン」)を決定するために使用される他の技術としては、例えば、BIAcore(商標)2000システム(GE Healthcare)を使用した表面プラズモン共鳴;例えば、ForteBio(登録商標)Octet RED(ForteBio)を使用したバイオレイヤー干渉法;または、例えば、FACSCanto II(BD Biosciences)もしくはマルチプレックスLUMINEX(商標)検出アッセイ(Luminex)を使用したフローサイトメトリビーズアレイが挙げられる。
Luminexは、大規模マルチプレックス抗体対合を可能にするビーズベースのイムノアッセイプラットフォームである。アッセイは、抗体の対の標的抗原への同時結合パターンを比較する。抗体の対の1つ(捕捉mAb)がLuminexビーズに結合し、一方でそれぞれの捕捉mAbは異なる色のビーズに結合する。他の抗体(検出因子mAb)は、蛍光シグナル(例えば、フィコエリトリン(PE))に結合する。アッセイは、抗原に対する抗体の同時結合(対合)を解析し、同様の対合プロファイルを有する抗体とともに群分けする。検出因子mAbと捕捉mAbの同様のプロファイルは、2つの抗体が同じまたは密接に関連したエピトープに結合することを示す。一実施形態において、対合プロファイルは、Pearson相関係数を使用して決定され、試験される一連の抗体の任意の特定の抗体に最も密接に相関する抗体を同定することができる。実施形態において、抗体の対のPearson相関係数が少なくとも0.9である場合、試験/検出因子mAbは、参照/捕捉mAbと同じビンにあると決定される。他の実施形態において、Pearson相関係数は、少なくとも0.8、0.85、0.87または0.89である。さらなる実施形態において、Pearson相関係数は、少なくとも0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99または1である。Luminexアッセイから得られたデータを解析する他の方法は、U.S.P.N.8,568,992に記載されている。同時に100種類(またはそれ以上)の異なるビーズを解析するLuminexの能力により、ほぼ無制限の抗原および/または抗体表面が用意され、バイオセンサーアッセイ上の抗体エピトーププロファイリングにおいて改善された処理能力および解像度がもたらされる(Millerら、2011、PMID:21223970)。
同様に、表面プラズモン共鳴を含むビニング技術は、本発明に適合する。本明細書で使用されるとき、「表面プラズモン共鳴」は、バイオセンサーマトリクス内のタンパク質濃度の変化を検出することにより、特異的相互作用のリアルタイム解析を可能にする光学的現象を指す。BIAcore(商標)2000システムのような市販の機器を使用して、選択された抗体が、定義された抗原に対する結合に関して互いに競合するかを容易に決定することができる。
他の実施形態において、試験抗体が結合に関して参照抗体と「競合する」かを決定するために使用し得る技術は「バイオレイヤー干渉法」である。この干渉法は、2つの表面、つまりバイオセンサーチップ上に固定化されたタンパク質の層および内部参照層から反射される白色光の干渉パターンを解析する光学的解析技術である。バイオセンサーチップに結合した分子の数の任意の変化は、リアルタイムで測定され得る干渉パターンのシフトを引き起こす。このようなバイオレイヤー干渉法アッセイは、ForteBio(登録商標)Octet RED機器を使用して以下のように実施され得る。参照抗体(Ab1)を、抗マウス捕捉チップ上に捕捉させ、次いで、高濃度の非結合抗体を使用して、チップをブロックし、ベースラインを収集する。単量体の組換え標的タンパク質を、次いで特異的抗体(Ab1)に捕捉させ、チップを対照と同じ抗体(Ab1)を含むウェル中または異なる試験抗体(Ab2)を含むウェル中に浸漬させる。結合レベルを対照Ab1と比較して決定して、さらなる結合が生じない場合、Ab1およびAb2は「競合する」抗体と決定される。Ab2でさらなる結合が観察された場合、Ab1およびAb2は互いに競合しないと決定される。このプロセスは、固有のビンを示す96ウェルのプレート中の抗体の完全な列を使用して、固有の抗体の大きなライブラリをスクリーニングするために拡大され得る。実施形態において、参照抗体が共通の抗原に対する試験抗体の特異的結合を少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%阻害する場合、試験抗体は参照抗体と競合する。他の実施形態において、結合は、少なくとも80%、85%、90%、95%または97%以上阻害される。
競合抗体の群を包含するビンが定義されたら、この抗体の群が結合する抗原上の特異的ドメインまたはエピトープを決定するために、さらなる特徴付けを実施してもよい。ドメイン−レベルエピトープマッピングは、Cochranら、2004、PMID:15099763に記載されているプロトコールを改変して使用することにより実施され得る。ファインエピトープマッピングは、抗体が結合する決定因子のエピトープを含む抗原上の特異的アミノ酸を決定するプロセスである。
ある特定の実施形態において、ファインエピトープマッピングは、ファージまたは酵母ディスプレイを使用して実施することができる。他の適合エピトープマッピング技術としては、アラニンスキャニング変異体、ペプチドブロット(Reineke、2004、PMID:14970513)またはペプチド切断解析が挙げられる。さらに、エピトープ除去、エピトープ抽出および抗原の化学的修飾のような方法(Tomer、2000、PMID:10752610)も、タンパク分解酵素のような酵素(例えば、トリプシン、エンドプロテイナーゼGlu−C、エンドプロテイナーゼAsp−N、キモトリプシンなど);スクシンイミジルエステルおよびそれらの誘導体、一級アミン含有化合物、ヒドラジンおよびカルボヒドラジン、遊離アミノ酸のような化学物質を使用して利用することができる。別の実施形態において、抗原構造ベースの抗体プロファイリング(Antigen Structure−based Antibody Profiling、ASAP)としても公知の修飾補助プロファイリング(Modification Assisted Profiling)を使用して、化学的または酵素的に修飾された抗原表面に対する各抗体の結合プロファイルの類似性に従って、同じ抗原に向かう多数のモノクローナル抗体を分類することができる(U.S.P.N.2004/0101920)。
抗原上の所望のエピトープが決定されたら、このエピトープに対するさらなる抗体を、例えば、本明細書に記載の技術を使用して、選択されたエピトープを含むペプチドで免疫化することにより、生成することができる。
V.抗体コンジュゲート
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、医薬として活性なまたは診断的成分とコンジュゲートして、「抗体薬物コンジュゲート」(antibody drug conjugate、ADC)または「抗体コンジュゲート」を形成し得る。用語「コンジュゲート」は広義に使用され、会合の方法に関わらず、任意の医薬として活性なまたは診断的成分と本発明の抗体との共有結合的または非共有結合的会合を意味する。ある特定の実施形態において、この会合は、抗体のリシンまたはシステイン残基を通じて達成される。いくつかの実施形態において、医薬として活性なまたは診断的成分は、1つ以上の部位特異的な遊離システインを介して抗体にコンジュゲーションされ得る。開示されるADCは、治療および診断目的のために使用され得る。
本発明のADCを使用して、細胞毒または他のペイロードを、標的位置(例えば、腫瘍形成性細胞および/またはMFI2を発現している細胞)に送達し得る。本明細書で使用される場合、用語「薬物」または「弾頭(warhead)」は相互に交換可能に使用でき、生物学的に活性なまたは検出可能な分子もしくは薬物、例えば、下記に記載された抗がん剤を意味する。「ペイロード」は、任意選択のリンカー化合物と組み合わせた薬物または「弾頭」を含み得る。コンジュゲート上の「弾頭」は、ペプチド、タンパク質またはインビボで代謝されて活性薬剤となるプロドラッグ、ポリマー、核酸分子、小分子、結合剤、模倣剤、合成薬物、無機分子、有機分子および放射性同位体を含み得る。有利な実施形態において、開示されるADCは、結合したペイロードを、弾頭の放出および活性化の前に、比較的非反応性の非毒性の状態で標的部位に向かわせる。弾頭のこの標的化放出は、好ましくは、ペイロードの安定なコンジュゲーション(例えば、抗体上の1つ以上のシステインを介して)および過剰にコンジュゲートされた毒性種を最小にするADC調製物の比較的均質な組成物を通じて達成される。弾頭を大量に放出するように設計された薬物リンカーと結合されて腫瘍部位に送達されると、本発明のコンジュゲートは、望ましくない非特異的な毒性を実質的に低減し得る。これにより、腫瘍部位で比較的高レベルの活性な細胞毒が、非標的化細胞および組織への曝露を最小にしつつ有利に提供され、これにより増強した治療指数が提供される。
本発明のいくつかの実施形態は、治療成分(例えば、細胞毒)が組み込まれたペイロードを含むが、診断剤および生体適合性修飾剤が組み込まれた他のペイロードも、開示されるコンジュゲートにより、提供される標的化放出から利益を得る場合があることが理解される。したがって、例示的な治療的ペイロードに関する任意の開示は、文脈による他の指示がない限り、本明細書に述べられている診断剤または生体適合性修飾剤を含むペイロードにも適用可能である。選択されたペイロードは、共有結合的にまたは非共有結合的に抗体に連結することができ、少なくとも部分的にコンジュゲーションを達成するために使用される方法に依存して、様々な化学量論的モル比率を示し得る。本発明のコンジュゲートは一般的に、式:
Ab−[L−D]n
(式中、
a)Abは、抗MFI2抗体を含み、
b)Lは、任意選択のリンカーを含み、
c)Dは、薬物を含み、
d)nは、約1から約20の整数である。)
またはその医薬として許容される塩によって表され得る。
当業者は、前述の式によるコンジュゲートは、いくつかの異なるリンカーおよび薬物を使用して作製することができ、コンジュゲーション方法は、成分の選択により様々であることを理解する。このように、開示される抗体の反応性残基(例えば、システインまたはリシン)と会合する任意の薬物または薬物リンカー化合物は、本明細書における教示と適合する。同様に、選択される薬物の抗体に対するコンジュゲーション(部位特異的コンジュゲーションを含む)を可能にする任意の反応条件は、本発明の範囲内である。前記にかかわらず、本発明のいくつかの実施形態は、薬物または薬物リンカーの遊離システインとの、本明細書に記載の穏やかな還元剤と組み合わせた安定化剤を使用した選択的なコンジュゲーションを含む。このような反応条件は、非特異的コンジュゲーションおよび混入物がより少なく、対応して毒性が少ない、より均質な調製物を提供する傾向がある。
A. ペイロードおよび弾頭
1.治療剤
本発明の抗体は、治療成分または抗がん剤のような薬物である、医薬として活性な成分、例えば、これらに限定されないが、細胞毒性剤、細胞分裂停止剤、抗血管新生剤、減量剤、化学治療剤、放射性治療剤、標的化抗がん剤、生物学的応答修飾剤、がんワクチン、サイトカイン、ホルモン療法、抗転移剤および免疫療法剤と、コンジュゲート、連結、融合または他の方法で会合されてもよい。
例示的な抗がん剤(それらのホモログおよび誘導体を含む)としては、1−デヒドロテストステロン、アントラマイシン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、カリチアマイシン、コルヒチン、シクロホスファミド、サイトカラシンB、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ジヒドロキシアントラシン、ジオン、デュオカルマイシン、エメチン、エピルビシン、臭化エチジウム、エトポシド、グルココルチコイド、グラミシジンD、リドカイン、DM−1およびDM−4(免疫原)のようなマイタンシノイド、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、パクリタキセル、プロカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、テニポシド(tenoposide)、テトラカインならびに上記のいずれかの医薬として許容される塩もしくは溶媒和物、酸、もしくは誘導体が挙げられる。
さらなる適合細胞毒は、ドラスタチンおよびオーリスタチン類、例えば、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)およびモノメチルオーリスタチンF(MMAF)(Seattle Genetics)、アマニチン類、例えば、α−アマニチン、β−アマニチン、γ−アマニチンまたはε−アマニチン(Heidelberg Pharma)、DNA副溝結合剤、例えば、デュオカルマイシン誘導体(Syntarga)、アルキル化剤、例えば、修飾もしくは二量体ピロロベンゾジアゼピン類(PBD)、メクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCおよびシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン、スプライシング阻害剤、例えば、メアヤマイシン類似体または誘導体(例えば、U.S.P.N.7,825,267に示されるFR901464)、チューブ(tubular)結合剤、例えば、エポチロン類似体およびチューブリシン、パクリタキセルおよびDNA損傷剤、例えば、カリチアマイシンおよびエスペラミシン、抗代謝物質、例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビンおよび5−フルオロウラシル デカルバジン、抗有糸分裂剤、例えば、ビンブラスチンおよびビンクリスチンおよびアントラサイクリン類、例えば、ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシンならびに上記のいずれかの医薬として許容される塩または溶媒和物、酸または誘導体を含む。
一実施形態において、本発明の抗体は、細胞傷害性T細胞を動員し、腫瘍形成性細胞に標的化させるために、抗CD3結合分子と会合され得る(BiTE technology;例えば、Fuhrmannら、(2010)Annual Meeting of AACR要約番号5625を参照)。
さらなる実施形態において、本発明のADCは、適切なリンカーを使用してコンジュゲートされる治療用放射性同位体を含んでもよい。このような実施形態に適合し得る例示的な放射性同位体としては、これらに限定されないが、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、銅(62Cu、64Cu、67Cu)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(115In、113In、112In、111In)、ビスマス(212Bi、213Bi)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、117Sn、225Ac、76Brおよび211Atが挙げられる。他の放射性核種も診断剤および治療剤として利用可能であり、特にエネルギー範囲60から4,000keVのものを利用し得る。
ある特定のいくつかの実施形態において、本発明のADCは、PBDおよびその医薬として許容される塩または溶媒和物、酸または誘導体を、弾頭として含み得る。PBDは、DNAの副溝に共有結合することにより抗腫瘍活性を発揮し、核酸合成を阻害するアルキル化剤である。PBDは、強力な抗腫瘍特性を有する一方で、最小の骨髄抑制を示すことが示されてきた。本発明に適合するPBDは、いくつかの種類のリンカー(例えば、遊離のスルフヒドリルを有するマレイミド部分を含むペプチジルリンカー)を使用して抗体に連結されてもよく、ある特定の実施形態では二量体の形態である(すなわち、PBD二量体)。開示される抗体にコンジュゲートさせ得る適合PBD(および任意選択のリンカー)は、例えば、U.S.P.N.6,362,331、7,049,311、7,189,710、7,429,658、7,407,951、7,741,319、7,557,099、8,034,808、8,163,736、2011/0256157およびPCT出願WO2011/130613、WO2011/128650、WO2011/130616、WO2014/057073およびWO2014/057074に記載されている。以下に本発明に適合するPBD化合物の例を示す。
より詳細には、選択された実施形態において、本発明は、PBD部分の一方の位置に接続され、MFI2抗体にコンジュゲートされているリンカー(下記に記載)を含むPBD二量体を提供する。丹念に改変された構成を通じて、コンジュゲートは、好ましくはリンカーのいずれの部分も保持していない活性なPBD化合物の放出を可能にする。つまり、PBDペイロードの反応性に有害な影響を与える可能性のある切れ端またはリンカー残基は存在しない。したがって、選択されたMFI2コンジュゲートは、リンカーの切断に際し、以下の二量体PBD化合物を放出する:
前記二量体PBD弾頭のそれぞれが、好ましくは、標的細胞による内在化およびリンカーの破壊に際して放出されることが理解される。下記でさらに詳細に記載されているように、好ましいリンカーには、リンカーのいかなる部分も保持させずに活性なPBD弾頭の放出を可能にする自己崩壊部分を組み込んだ切断可能リンカーが含まれる。放出に際し、PBD弾頭は、標的細胞のDNAに結合および架橋する。このような結合は、標的がん細胞の分裂をそれらのDNAヘリックスを歪ませることなく明らかに阻止することから、一般的な突発的な薬物耐性現象を潜在的に防ぐ。
前述の作用剤に加えて、本発明の抗体は、生物学的応答修飾剤にコンジュゲートされてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、薬物部分は、所望の生物学的活性を有するポリペプチドであり得る。このようなタンパク質としては、例えば、毒素、例えば、アブリン、リシンA、オンコナーゼ(Onconase)(または別の細胞傷害性RNアーゼ)、シュードモナス菌体外毒素、コレラ毒素、ジフテリア毒素;アポトーシス剤、例えば、腫瘍壊死因子、例えば、TNFαまたはTNFβ、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、AIM I(WO97/33899)、AIM II(WO97/34911)、Fasリガンド(Takahashiら、1994、PMID:7826947)およびVEGI(WO99/23105)、血栓性物質(thrombotic agent)、抗血管新生剤、例えば、アンジオスタチンまたはエンドスタチン、リンホカイン、例えば、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−6(IL−6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)および顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または成長因子、例えば、成長ホルモン(GH)が挙げられ得る。
2.診断剤または検出剤
他の実施形態において、本発明の抗体またはその断片もしくは誘導体は、例えば、生物学的分子(例えば、ペプチドまたはヌクレオチド)、小分子、フルオロフォアまたは放射性同位体であり得る診断剤もしくは検出剤、マーカーまたはレポーターにコンジュゲートされる。標識化抗体は、過剰増殖障害の発生もしくは進行を監視するのに、または開示する抗体(すなわち診断治療薬)を含む特定の治療の有効性を決定するためのもしくは処置の今後の方針を決定するための臨床的試験手法の一部として有用であり得る。このようなマーカーまたはレポーターは、抗体分析(例えば、エピトープ結合または抗体ビニング)に使用するための選択された抗体を精製するために、腫瘍形成性細胞を分離もしくは単離するためにまたは前臨床的手法もしくは毒性研究においても、有用であり得る。
このような診断、解析および/または検出は、抗体を検出可能な物質、例えば、これらに限定されないが、様々な酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼ;補欠分子族、例えば、これらに限定されないがストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチン;蛍光材料、例えば、これらに限定されないが、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(isothiocynate)、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミン フルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリン;発光材料、例えば、これらに限定されないが、ルミノール;生物発光材料、例えば、これらに限定されないが、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリン;放射活性材料、例えば、これらに限定されないが、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(115In、113In、112In、111In)およびテクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Snおよび117Tin;様々なポジトロン放出トモグラフィを使用したポジトロン放出金属、非放射活性常磁性金属イオンおよび特定の放射性同位体に放射標識またはコンジュゲートした分子にカップリングすることによって行われ得る。このような実施形態において、適切な検出方法は、当該技術分野で周知であり、多数の市販供給源から容易に利用可能である。
他の実施形態において、抗体またはその断片は、マーカー配列または化合物、例えば、ペプチドまたはフルオロフォアに融合またはコンジュゲートされて、精製または診断または分析的手法、例えば、免疫組織化学、バイオレイヤー干渉法、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリ、競合的ELISA、FACなどを容易にすることができる。いくつかの実施形態において、マーカーは、ヒスチジンタグ、例えば、多くの市販品の中でもとりわけpQEベクター(Qiagen)によって提供されるヒスチジンタグを含む。精製のために有用な他のペプチドタグとしては、これらに限定されないが、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープに対応するヘマグルチニン「HA」タグ(Wilsonら、1984、Cell 37:767)および「フラッグ」タグ(U.S.P.N.4,703,004)が挙げられる。
3.生体適合性修飾因子
選択された実施形態において、本発明の抗体は、所望の通りに特徴を調整、変化、改善または緩和するために使用され得る生体適合性修飾因子とコンジュゲートしてもよい。例えば、インビボ半減期が増加した抗体または融合構築物は、比較的分子量の大きいポリマー分子、例えば、市販のポリエチレングリコール(PEG)または同様の生体適合性ポリマーを結合することによって生成されてもよい。当業者は、PEGが、多くの様々な分子量および分子構造で取得され得、これらを選択して抗体に特定の特性を付与することができる(例えば半減期を調節し得る)ことを理解する。PEGは、PEGの前記抗体もしくは抗体断片のNもしくはC末端へのコンジュゲーションを通じてまたはリシン残基上に存在するεアミノ基を介して、多機能リンカーありまたはなしで、抗体または抗体断片または誘導体に結合し得る。生物学的活性の損失を最小にする線状または分岐ポリマー誘導体が使用され得る。コンジュゲーションの度合いは、PEG分子の抗体分子への最適なコンジュゲーションを確実にするために、SDS−PAGEおよび質量分析により密接に監視され得る。未反応のPEGは、抗体−PEGコンジュゲートから、例えば、サイズ排除またはイオン交換クロマトグラフィーにより分離され得る。同様の方法において、開示される抗体は、抗体もしくは抗体断片をインビボでより安定にするためにまたはインビボでより長い半減期を有するためにアルブミンにコンジュゲートされ得る。この技術は、当該技術分野で周知である。例えば、WO93/15199、WO93/15200およびWO01/77137;およびEP0413,622を参照。他の生体適合性コンジュゲートは当業者にとって明らかであり、本明細書に記載の教示に従って容易に同定され得る。
B.リンカー化合物
多数のリンカー化合物が、関連する弾頭に本発明の抗体をコンジュゲートするために使用され得る。リンカーは、抗体上の反応性残基(好ましくはシステインまたはリシン)と選択された薬物化合物とを共有結合することが必要とされるにすぎない。したがって、選択された抗体残基と反応し、本発明の比較的安定なコンジュゲート(部位特異的またはそれ以外のコンジュゲート)を提供するために使用され得る任意のリンカーは、本明細書の教示に適合する。
適合リンカーは、求核性である還元されたシステインおよびリシンに有利に結合し得る。還元されたシステインおよびリシンに関与するコンジュゲーション反応としては、これらに限定されないが、チオール−マレイミド、チオールハロゲノ(アシルハライド)、チオール−エン、チオール−イン、チオール−ビニルスルホン、チオール−ビスルホン、チオール−チオスルホネート、チオール−ピリジルジスルフィドおよびチオールパラフルオロ反応が挙げられる。本明細書でさらに議論されるように、チオール−マレイミド生体コンジュゲーションは、この速い反応速度と穏やかなコンジュゲーション条件により、最も広く使用されているアプローチの1つである。このアプローチの1つの問題点は、レトロミカエル反応の可能性、および抗体から血漿中の他のタンパク質、例えば、ヒト血清アルブミンへの、マレイミド連結ペイロードの損失または移行である。しかしながら、いくつかの実施形態において、コンジュゲートを安定化し、この望ましくない移行を減少させるために、実施例18および19において本明細書で示される選択的還元および部位特異的抗体の使用が使用され得る。チオール−アシルハライド反応は、レトロミカエル反応が起こり得ない生体コンジュゲートを提供し、それゆえさらに安定である。しかしながら、チオール−ハライド反応は、一般にマレイミドに基づくコンジュゲーションと比較して反応速度が遅いことから効率的でなく、所望しない薬物抗体比をもたらす。チオール−ピリジルジスルフィド反応は、よく使用される別の生体コンジュゲーション経路である。ピリジルジスルフィドは、遊離チオールとの速い交換が進行し、それにより混成のジスルフィドおよびピリジン−2−チオンの放出がもたらされる。混成のジスルフィドは還元的な細胞環境で切断され、ペイロードが放出され得る。生体コンジュゲーションにおいてさらに注目を集める他のアプローチは、チオール−ビニルスルホンおよびチオールビスルホン反応であり、これらのそれぞれが本明細書の教示に適合し、明確に本発明の範囲内に含まれる。
いくつかの実施形態において適合リンカーは、細胞外環境においてADCに安定性を付与し、ADC分子の凝集を予防し、ADCの水性媒体および単量体状態における自由な可溶性を保持する。細胞への移動または送達の前に、ADCは、好ましくは安定であり、無傷のままであり、つまり、抗体は薬物部分に連結したままである。リンカーは、標的細胞外で安定であるが、細胞内でいくぶん効果的な速度で切断または分解されるように設計されている。したがって、効果的なリンカーは、:(i)抗体の特異的結合特性を維持し、(ii)コンジュゲートまたは薬物部分の細胞内送達を可能にし、(iii)コンジュゲートがその標的部位に送達または輸送されるまで、安定および無傷のままである、すなわち切断も分解もされない;および(iv)薬物部分の細胞傷害性、細胞殺傷効果または細胞分裂停止効果(いくつかの場合には任意のバイスタンダー効果を含む)を維持する。ADCの安定性は、標準的な解析技術、例えば、HPLC/UPLC、質量分析、HPLCならびに分離/解析技術LC/MSおよびLC/MS/MSによって測定され得る。前述のように、抗体および薬物部分の共有結合は、リンカーに、2つの反応性官能基、すなわち反応性という意味において2価を有することを要求する。2つ以上の機能的または生物学的に活性な部分を結合するために有用である2価のリンカー試薬、例えば、MMAEおよび抗体は公知であり、それらの結果として生じるコンジュゲートを得るための方法が記載されてきた。
本発明に適合するリンカーは、広義において、切断可能リンカーおよび非切断可能リンカーとして分類され得る。切断可能リンカーは、酸不安定性リンカー、プロテアーゼ切断可能リンカーおよびジスルフィドリンカーを含み得、標的細胞に内在化され、細胞内のエンドソーマル−リソソーマル経路において切断される。細胞毒の放出および活性化は、酸不安定性化学的連結、例えば、ヒドラゾンまたはオキシムの切断を容易にするエンドソーム/リソソーム酸性区画に依存する。リソソーマル−特異的なプロテアーゼ切断部位がリンカー内へと操作される場合、細胞毒がそれらの細胞内標的の近傍で放出される。代替的に、混合ジスルフィドを含有するリンカーは、細胞傷害性ペイロードが、血流中の酸素リッチ環境ではなく細胞の還元環境内で選択的に切断されるときに細胞内に放出されるアプローチを提供する。対照的に、アミド連結ポリエチレングリコールまたはアルキルスペーサーを含有する適合性非切断可能リンカーは、標的細胞内でADCがリソソーマル分解される間に毒性ペイロードを解放する。いくつかの観点で、リンカーの選択は、コンジュゲートで使用される特定の薬物、特定の指標および抗体標的に依存する。
したがって、本発明のある特定の実施形態は、細胞内環境(例えば、リソソームまたはエンドソームまたはカベオラ内)に存在する切断剤により切断可能であるリンカーを含む。リンカーは、例えば、細胞内ペプチダーゼまたはプロテアーゼ酵素、例えば、これらに限定されないが、リソソーマルまたはエンドソーマルプロテアーゼによって切断されるペプチジルリンカーであり得る。いくつかの実施形態において、ペプチジルリンカーは、少なくとも2アミノ酸長または少なくとも3アミノ酸長である。切断剤は、カテプシンBおよびDならびにプラスミンを含むことができ、これらのそれぞれは、ジペプチド薬物誘導体を加水分解して標的細胞内に活性な薬物を放出することが知られている。カテプシン−Bは、がん性組織で高発現することが見出されているので、チオール−依存性プロテアーゼカテプシン−Bによって切断可能な例示的なペプチジルリンカーは、Phe−Leuを含むペプチドである。このようなリンカーの他の例は、例えば、U.S.P.N.6,214,345に記載されている。特定の実施形態において、細胞内プロテアーゼにより切断可能なペプチジルリンカーは、Val−Citリンカー、Val−AlaリンカーまたはPhe−Lysリンカーである。治療剤の細胞内タンパク分解性放出を利用する1つの利点は、薬剤がコンジュゲートされると通常減弱化され、コンジュゲートの血清安定性が比較的高いことである。
他の実施形態において、切断可能なリンカーは、pH感受性である。通常、pH感受性リンカーは、酸性条件下で加水分解性である。例えば、リソソーム中で加水分解性である酸不安定性リンカー(例えば、ヒドラゾン、オキシム、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、cis−アコニットアミド、オルトエステル、アセタール、ケタールなど)を使用することができる(例えば、U.S.P.N.5,122,368;5,824,805;5,622,929を参照)。このようなリンカーは、中性pH条件、例えば、血液のpH条件下で比較的安定であるが、ほぼリソソームのpHであるpH5.5または5.0未満で不安定(例えば、切断可能)である。
さらに他の実施形態において、リンカーは、還元条件下で切断可能である(例えば、ジスルフィドリンカー)。様々なジスルフィドリンカーが当該技術分野で公知であり、例えば、SATA(N−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート)、SPDP(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)ブチレート)およびSMPT(N−スクシンイミジル−オキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジル−ジチオ)トルエン)を使用して形成可能なものが挙げられる。さらに他の特定の実施形態において、リンカーは、マロネートリンカー(Johnsonら、1995、Anticancer Res.15:1387−93)、マレイミドベンゾイルリンカー(Lauら、1995、Bioorg−Med−Chem.3(10):1299−1304)または3’−N−アミドアナログ(Lauら、1995、Bioorg−Med−Chem.3(10):1305−12)である。
いくつかの実施形態(U.S.P.N.2011/0256157に示される形態など)において、適合するペプチジルリンカーは、
(式中、アスタリスクは薬物への結合点を示し、CBA(cell binding agent、つまり細胞結合剤)は、抗MFI2抗体を含み、L
1は、リンカーおよび任意選択的に切断可能リンカーを含み、Aは、L
1を抗体上の反応性残基に連結する(任意選択的にスペーサーを含む)連結基であり、L
2は、共有結合であるまたは−OC(=O)−と一緒になって自己崩壊部分を形成する。)を含む。
L1およびL2の性質は、存在する場合、広く変動し得ることが理解される。これらの基は、これらの切断特徴に基づき選択され、コンジュゲートが送達される部位の条件によって指示され得る。酵素の作用により切断されるリンカーが好ましいが、pHの変化(例えば、酸もしくは塩基不安定性)、温度の変化または放射線照射(例えば、感光性)によって切断可能なリンカーも使用され得る。還元または酸化条件下で切断可能であるリンカーも本発明で使用され得る。
ある特定の実施形態において、L1は、アミノ酸の連続配列を含んでもよい。アミノ酸配列は酵素切断の標的基質となり得、それにより薬物を放出し得る。
一実施形態において、L1は、酵素の作用により切断可能である。一実施形態において、酵素は、エステラーゼまたはペプチダーゼである。
別の実施形態において、L1は、カテプシン不安定性リンカーである。
一実施形態において、L1は、ジペプチドを含む。ジペプチドは、−NH−X1−X2−CO−として表される場合があり、ここで−NH−および−CO−は、それぞれアミノ酸基X1およびX2のN末端およびC末端を表す。ジペプチドのアミノ酸は、天然アミノ酸の任意の組合せであり得る。リンカーがカテプシン不安定性リンカーである場合、ジペプチドは、カテプシン媒介切断の作用部位となり得る。
さらに、カルボキシルまたはアミノ側鎖官能基を有するアミノ酸基、例えば、それぞれGluおよびLysに対して、COおよびNHが、この側鎖官能基であり得る。
一実施形態において、ジペプチド、−NH−X1−X2−CO−における基−X1−X2−は、−Phe−Lys−、−Val−Ala−、−Val−Lys−、−Ala−Lys−、−Val−Cit−、−Phe−Cit−、−Leu−Cit−、−Ile−Cit−、−Phe−Arg−および−Trp−Cit−から選択され、ここでCitはシトルリンである。
好ましくは、ジペプチド、−NH−X1−X2−CO−における基−X1−X2−は、−Phe−Lys−、−Val−Ala−、−Val−Lys−、−Ala−Lys−および−Val−Cit−から選択される。
最も好ましくは、ジペプチド、−NH−X1−X2−CO−における基−X1−X2−は、−Phe−Lys−または−Val−Ala−またはVal−Citである。
一実施形態において、L2は存在し、−C(=O)O−と一緒になって自己崩壊性リンカーを形成する。
一実施形態において、L2は、酵素活性の基質であり、それにより弾頭の放出を可能にする。
一実施形態において、L1が酵素の作用により切断可能であり、L2が存在する場合、酵素は、L1とL2との間の結合を切断する。
L1およびL2は、存在する場合、−C(=O)NH−、−C(=O)O−、−NHC(=O)−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−NHC(=O)O−、−OC(=O)NH−および−NHC(=O)NH−から選択される結合によって連結されていてもよい。
L2に連結されているL1のアミノ基は、アミノ酸のN末端であり得、またはアミノ酸側鎖、例えば、リシンアミノ酸側鎖のアミノ基から誘導され得る。
L2に連結されているL1のカルボキシル基は、アミノ酸のC末端であり得、またはアミノ酸側鎖、例えば、グルタミン酸アミノ酸側鎖のカルボキシル基から誘導され得る。
L2に連結されているL1のヒドロキシル基は、アミノ酸側鎖、例えば、セリンアミノ酸側鎖のヒドロキシル基から誘導され得る。
用語「アミノ酸側鎖」は、(i)天然に存在するアミノ酸、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリン;(ii)マイナーなアミノ酸、例えば、オルニチンおよびシトルリン;(iii)非天然アミノ酸、ベータ−アミノ酸、合成類似体および天然に存在するアミノ酸の誘導体;ならびに(iv)全てのエナンチオマー、ジアステレオマー、異性体的に濃縮された形態、同位体で標識された形態(例えば、2H、3H、14C、15N)、保護された形態およびそれらのラセミ体混合物で見出されるそれらの基を含む。
一実施形態において、−C(=O)O−およびL2は一緒になって基:
(式中、アスタリスクは、薬物または細胞毒性剤の位置に対する結合点を示し、波線は、リンカーL
1への結合点を示し、Yは、−N(H)−、−O−、−C(=O)N(H)−または−C(=O)O−であり、nは0から3である。)を形成する。フェニレン環は、1、2または3つの置換基で置換されていてもよい。一実施形態において、フェニレン基は、ハロ、NO
2、アルキルまたはヒドロキシアルキルで置換されていてもよい。
一実施形態において、Yは、NHである。
一実施形態において、nは0または1である。好ましくは、nは0である。
YがNHであり、nが0である場合、自己崩壊性リンカーは、p−アミノベンジルカルボニルリンカー(PABC)と称され得る。
他の実施形態において、リンカーは、自己崩壊性リンカーおよびジペプチドを含み、一緒になって、基−NH−Val−Cit−CO−NH−PABC−を形成してもよい。他の選択された実施形態において、リンカーは、下記に示すNH−Val−Ala−CO−NH−PABC基を含んでもよい:
(式中、アスタリスクは、選択された細胞毒性部分に対する結合点を示し、波線は、抗体にコンジュゲートされ得るリンカーの残余部分(例えば、スペーサー−抗体結合セグメント)への結合点を示す。)。ジペプチドの酵素切断に際し、自己崩壊性リンカーは遠位部位が活性化されるとき、以下に示す流れに沿って進み、保護された化合物(つまり、細胞毒)の明確な放出を可能にする:
(式中、アスタリスクは、選択された細胞毒性部分への結合点を示し、L
・は、切断されるペプチジル単位を含むリンカーの残余部分の活性化形態である。)。弾頭の明確な放出は、所望の毒性活性の維持を確実にする。
一実施形態において、Aは、共有結合である。したがって、L1と抗体とは直接的に連結される。例えば、L1が、連続するアミノ酸配列を含む場合、配列のN末端は、抗体残基に直接連結し得る。
別の実施形態において、Aは、スペーサー基である。したがって、L1と抗体は、間接的に連結する。
ある特定の実施形態において、L1およびAは、−C(=O)NH−、−C(=O)O−、−NHC(=O)−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−NHC(=O)O−、−OC(=O)NH−および−NHC(=O)NH−から選択される結合によって連結され得る。
下記にさらに詳細に述べられるように、本発明の薬物リンカーは、好ましくは、システイン、例えば、遊離システイン上の反応性チオール求核基に連結する。この目的に関して、抗体のシステインは、様々な還元剤、例えば、DTTまたはTCEPまたは本明細書に記載の穏やかな還元剤での処置によってリンカー試薬とコンジュゲーションするために反応し得る。他の実施形態において、本発明の薬物リンカーは、好ましくはリシンに連結される。
好ましくは、リンカーは、抗体上の求核性官能基と反応する求電子性官能基を含む。抗体上の求核性基としては、これらに限定されないが:(i)N末端アミン基、(ii)側鎖アミン基、例えば、リシン、(iii)側鎖チオール基、例えば、システインおよび(iv)抗体がグリコシル化されている、糖のヒドロキシルまたはアミノ基が挙げられる。アミン、チオールおよびヒドロキシル基は、求核性であり、リンカー部分およびリンカー試薬上の求電子性基と反応して共有結合を形成することができる。リンカー試薬としては、(i)マレイミド基、(ii)活性化ジスルフィド、(iii)活性エステル、例えば、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)エステル、HOBt(N−ヒドロキシベンゾトリアゾール)エステル、ハロホルメートおよび酸ハロゲン化物;(iv)アルキルおよびベンジルハロゲン化物、例えば、ハロアセトアミド;および(v)アルデヒド、ケトン、およびカルボキシル基が挙げられる。
本発明と適合する例示的な官能基を、直下に示す:
いくつかの実施形態において、システイン(部位特異的抗体の遊離システインを含む)と薬物−リンカー部分との間の結合は、リンカーに存在しているチオール残基および末端マレイミド基を通じたものである。このような実施形態において、抗体と薬物−リンカーとの連結は、
(式中、アスタリスクは、薬物−リンカーの残余部分との結合点を示し、波線は、抗体の残余部分との結合点を示す。)であることができる。この実施形態において、S原子は、好ましくは、部位特異的遊離システインから誘導される。
他の適合リンカーに関して、結合部分は、抗体上の活性化残基と反応して所望のコンジュゲートを提供し得る末端ヨードアセトアミドを含んでもよい。いずれにしても、当業者は、開示された薬物−リンカー化合物のそれぞれと、適合する抗MFI2抗体(例えば、部位特異的抗体)とを、本開示に鑑みて、容易にコンジュゲートすることができる。
本開示によれば、本発明は、適合する抗体薬物コンジュゲートを作製する方法であって、抗MFI2抗体を下記からなる群から選択される薬物−リンカー化合物にコンジュゲートすることを含む方法を提供する:
本出願の目的に関し、DLは、「薬物−リンカー」の略称として使用され、上記に示す薬物リンカー1〜5(つまり、DL1、DL2、DL3、DL4およびDL5)を含む。
末端マレイミド部分(DL1〜DL4)またはヨードアセトアミド部分(DL5)が付されたリンカーは、当該分野で認識されている技術を使用して、選択されたMFI2抗体の遊離スルフヒドリルにコンジュゲートしてもよいことが理解される。前記化合物の合成経路は、参照により本明細書に組み込まれるWO2014/130879に示されており、このようなPBDをコンジュゲートする詳細な方法は、下記の実施例に示されている。
したがって、選択された態様において、本発明は、開示されたピロロベンゾジアゼピンにコンジュゲートされたMFI2抗体に関し、下記のADC1〜5で実質的に示されるMFI2免疫コンジュゲートを提供する。したがって、ある特定の態様において、本発明は、
(式中、Abは、抗MFI2抗体またはそれらの免疫反応性断片を含む。)からなる群から選択されるコンジュゲートを対象とする。
C.コンジュゲーション
いくつかの周知の様々な反応を使用して、薬物部分および/またはリンカーが選択された抗体に結合してもよいことが理解される。例えば、システインのスルフヒドリル基を活用する様々な反応が、所望の部分をコンジュゲートするために利用されてもよい。いくつかの実施形態は、下記に詳細に述べられた1つ以上の遊離システインを含む抗体のコンジュゲーションを含む。他の実施形態において、本発明のADCは、選択された抗体に存在するリシン残基の溶媒露出されたアミノ基への薬物のコンジュゲーションを通じて生成され得る。さらに他の実施形態は、N末端スレオニンおよびセリン残基の活性化を含み、この活性化が利用されて開示されたペイロードが抗体に連結され得る。選択されるコンジュゲーション方法は、好ましくは、抗体に結合する薬物の数を最適化し、比較的高い治療指数を得るために仕立てられる。
治療化合物をシステイン残基にコンジュゲートさせるための様々な方法は、当該技術分野において公知であり、当業者に明らかである。塩基性条件下で、システイン残基を脱プロトン化すると、マレイミドおよびヨードアセトアミドなどのソフトな求電子剤と反応し得るチオレート求核剤が生成される。一般にこのようなコンジュゲーションのための試薬は、システインチオールと直接反応してコンジュゲート化タンパク質を形成してもよくまたはリンカー−薬物と直接反応してリンカー−薬物中間体を形成してもよい。リンカーの場合、有機化学反応、条件および試薬を用いる複数の経路が当業者に公知であり、例えば、(1)本発明のタンパク質のシステイン基をリンカー試薬と反応させて、共有結合を介してタンパク質−リンカー中間体を形成し、次いで、活性化化合物と反応させる経路;および(2)化合物の求核性基をリンカー試薬と反応させて、共有結合を介した薬物−リンカー中間体を形成し、次いで本発明のタンパク質のシステイン基と反応させる経路がある。前述の記載から当業者に明らかなように、二官能性(または二価)リンカーが本発明において有用である。例えば、二官能性リンカーは、システイン残基と共有結合するためのチオール修飾基、および化合物と共有または非共有結合するための少なくとも1つの結合部分(例えば、第2チオール修飾部分)を含み得る。
コンジュゲーションの前に、抗体を、例えば、ジチオスレイトール(DTT)または(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を用いた処置により、リンカー試薬とのコンジュゲーションに対して反応性にしてもよい。他の実施形態において、抗体にさらなる求核性基を、リシンと試薬との反応により導入してもよく、試薬としては、これらに限定されないが、アミンをチオールに変換する2−イミノチオラン(Traut試薬)、SATA、SATPまたはSAT(PEG)4が挙げられる。
このようなコンジュゲーションに関して、システインチオールまたはリシンアミノ基は求核性であり、リンカー試薬または化合物−リンカー中間体または薬物、例えば、(i)活性エステル、例えば、NHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメートおよび酸ハロゲン化物;(ii)アルキルおよびベンジルハロゲン化物、例えば、ハロアセトアミド;(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシルおよびマレイミド基;ならびに(iv)ジスルフィド、例えば、ピリジルジスルフィド、の求電子性基と、スルフィド交換を介して反応して共有結合を形成することができる。化合物またはリンカー上の求核性基としては、これらに限定されないが、リンカー部分またはリンカー試薬の求電子性基と反応して共有結合を形成することができるアミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレートおよびアリールヒドラジド基が挙げられる。
コンジュゲーション試薬としては、マレイミド、ハロアセチル、ヨードアセトアミドスクシンイミジルエステル、イソチオシアネート、スルホニルクロリド、2,6−ジクロロトリアジニル、ペンタフルオロフェニルエステルおよびホスホラミダイトが挙げられるが、他の官能基も使用され得る。ある特定の実施形態において、方法は、例えば、マレイミド類、ヨードアセトアミド類またはハロアセチル/アルキルハライド、アジリジン、アクリロイル誘導体を使用して、システインのチオールと反応させて、化合物と反応するチオエーテルを製造することを含む。遊離チオールと活性化されたピリジルジスルフィドとのジスルフィド交換は、コンジュゲートの製造(例えば、5−チオ−2−ニトロ安息香酸(TNB)の使用)のためにも有用である。好ましくは、マレイミドが使用される。
上述のように、リシンは、本明細書に示されるコンジュゲーションを達成する反応性残基としても使用することができる。求核性リシン残基は、一般に、アミン反応性スクシンイミジルエステルを通して標的化される。最適な数の脱プロトン化リシン残基を得るために、水溶液のpHは、リシンアンモニウム基のpKaである約10.5より低くすべきであり、したがって、反応の典型的なpHは約8および9である。カップリング反応のための一般的試薬は、リシンアシル化機構を介して求核性リシンと反応するNHS−エステルである。同様の反応を行う他の適合試薬は、本明細書の教示と共に使用してADCを提供することもできるイソシアネートおよびイソチオシアネートを含む。リシンが活性化されたら、前述の連結基の多くが、弾頭を抗体に共有結合させるために使用され得る。
化合物をスレオニンまたはセリン残基(好ましくはN末端残基)にコンジュゲートさせるための方法も当該技術分野で公知である。例えば、カルボニル前駆体を、セリンまたはスレオニンの1,2−アミノアルコールから誘導し、過ヨウ素酸酸化により選択的におよび迅速にアルデヒド形態に変換させることができる方法が記載されている。アルデヒドを、本発明のタンパク質に結合する化合物におけるシステインの1,2−アミノチオールと反応させることにより、安定なチアゾリジン生成物が形成される。この方法は、N末端セリンまたはスレオニン残基でタンパク質を標識するために特に有用である。
いくつかの実施形態において、反応性チオール基が、選択された抗体(またはその断片)に、1、2、3、4またはより多くの遊離システイン残基を導入することにより(例えば、1つ以上の遊離非天然システインアミノ酸残基を含む抗体を調製することにより)、導入され得る。少なくとも部分的には、本明細書に示す改変された遊離システイン部位および/または新規コンジュゲーション手法が提供されるため、このような部位特異的抗体または改変抗体により、コンジュゲート調製物が、向上した安定性および実質的な均一性を示すことが可能になる。鎖内または鎖間抗体ジスルフィド結合のそれぞれを完全または部分的に還元してコンジュゲーション部位を提供する従来のコンジュゲーション方法(本発明に完全に適合する)と異なり、本発明はある特定の調製された遊離システイン部位の選択的還元およびそれに対する薬物リンカーの方向をさらに提供する。部位の改変および選択的還元により特異的に促進されたコンジュゲーションにより、所望の位置での部位特異的コンジュゲーションの割合が高くなる。重大なことに、これらのコンジュゲーション部位の一部、例えば、軽鎖定常領域の末端領域に存在するコンジュゲーション部位は、他の遊離システインと交差反応しやすいために、一般に有効にコンジュゲートすることが困難である。しかしながら、得られた遊離システインの分子的操作および選択的還元により、望ましくない高DAR混入物および非特異的毒性を大きく減少させる効率的なコンジュゲーション率が得られ得る。より一般的には、選択的還元を含む改変された構築物および開示された新規コンジュゲーション方法は、改善された薬物動態および/または薬力学ならびに潜在的な改善された治療指数を有するADC調製物を提供する。
ある特定の実施形態において、部位特異的構築物は、遊離システインを提示しており、還元されると、上記で開示するようなリンカー部分の求電子性基と反応して共有結合を形成することができる求核性チオール基を含む。上記のように、本発明の抗体は、還元可能な不対の鎖間もしくは鎖内システインまたは導入された非天然システイン、つまりこのような求核性基を提供するシステインを有してもよい。したがって、ある特定の実施形態において、還元された遊離システインの遊離スルフヒドリル基と、開示される薬物リンカーの末端マレイミドまたはハロアセトアミド基との反応により、所望のコンジュゲーションが提供される。このような場合に、抗体の遊離システインは、還元剤、例えば、ジチオスレイトール(DTT)または(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)での処置により、リンカー試薬とのコンジュゲーションに反応性にしてもよい。各遊離システインは、したがって論理的に、反応性チオール求核剤を提供する。このような試薬が適合する一方、部位位特異的抗体のコンジュゲーションは、一般的に当業者に公知の様々な反応、条件および試薬を使用して達成され得ることが理解される。
さらに、操作された抗体の遊離システインは、選択的に還元されて、部位特異的コンジュゲーションの向上および望ましくない潜在的な毒性混入物の減少をもたらし得ることが見出された。より詳細には、アルギニンなどの「安定化剤」は、タンパク質中の分子内または分子間相互作用を調節することが見出され、選択された還元剤(好ましくは比較的穏やか)と組み合わせて使用され、遊離システインを選択的に還元し、本明細書に示される部位特異的コンジュゲーションを容易にし得る。本明細書で使用される場合、用語「選択的還元」または「選択的に還元される」は、相互に交換可能に使用され得、改変抗体に存在する天然ジスルフィド結合を実質的に破壊することのない遊離システインの還元を意味する。選択された実施形態において、選択的還元は、特定の還元剤により影響を受け得る。他の実施形態において、改変構築物の選択的還元は、還元剤(穏やかな還元剤を含む)と組み合わせた安定化剤の使用を含む。用語「選択的コンジュゲーション」は、本明細書に記載の細胞毒で選択的に還元された操作された抗体のコンジュゲーションを意味することが理解される。この点に関して、選択された還元剤と組み合わせたこのような安定化剤の使用は、抗体重鎖および軽鎖のコンジュゲーションの程度ならびに調製物のDAR分布により決定される部位特異的コンジュゲーションの効率を顕著に改善し得る。適合する抗体構築物ならびに選択的コンジュゲーション技術および試薬は、WO2015/031698においてこのような方法論および構築物に関して詳細に開示されている。
特定の理論に制限されることは望まないが、このような安定化剤は、所望のコンジュゲーション部位で静電気的微小環境を調節および/または立体配座変化を調節するように作用し得、それにより比較的穏やかな還元剤(無傷の天然のジスルフィド結合を実質的に還元しない)に、所望の遊離システイン部位でのコンジュゲーションを促進させる。このような物質(例えば、ある特定のアミノ酸)は、塩橋を形成(水素結合および静電相互作用を介して)することが知られており、好ましい構造変化を生じさせ得るおよび/または好ましくないタンパク質−タンパク質相互作用を減少させる安定化効果を付与するようにタンパク質−タンパク質相互作用を調節し得る。さらに、このような物質は、還元後の望ましくない分子内(および分子間)システイン−システイン結合の形成を阻害するように作用し得、したがって、改変された部位特異的システインが(好ましくはリンカーを介して)薬物に結合する所望のコンジュゲーション反応が促進される。選択的還元条件は、無傷の天然のジスルフィド結合を顕著に還元しないので、後のコンジュゲーション反応は自然に、遊離システイン上の比較的反応性の少ないチオール(例えば、好ましくは抗体あたり2つの遊離チオール)に向かう。先に言及したように、このような技術は、本開示に従って作製されるコンジュゲート調製物における非特異的コンジュゲーションおよび対応する不純物のレベルを相当に減少させるために使用され得る。
選択された実施形態において、本発明に適合する安定化剤は、一般的に、塩基性pKaを有する少なくとも1つの成分を有する化合物を含む。ある特定の実施形態において、この成分は、一級アミンを含むが、他の実施形態において、アミン部分は、二級アミンを含む。さらに他の実施形態において、アミン部分は、三級アミンまたはグアニジニウム基を含む。他の選択された実施形態において、アミン部分は、アミノ酸を含み、他の適合する実施形態において、アミン部分は、アミノ酸側鎖を含む。さらに他の実施形態において、アミン部分は、タンパク質性アミノ酸を含む。さらに他の実施形態において、アミン部分は、非タンパク質性アミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、適合する安定化剤は、アルギニン、リシン、プロリンおよびシステインを含み得る。さらに適合安定化剤は、グアニジンおよび塩基性pKaを有する窒素含有複素環を含み得る。
ある特定の実施形態において、適合安定化剤は、約7.5より大きいpKaを有する少なくとも1つのアミン部分を有する化合物を含む。他の実施形態において、対象アミン部分は、約8.0より大きいpKaを有し、さらに他の実施形態において、アミン部分は、約8.5より大きいpKaを有し、さらに他の実施形態において、安定化剤は、約9.0より大きいpKaを有するアミン部分を含む。他の実施形態は、アミン部分が約9.5より大きいpKaを有する安定化剤を含み、一方で、ある特定の他の実施形態は、約10.0より大きいpKaを有する少なくとも1つのアミン部分を示す安定化剤を含む。さらに他の実施形態において、安定化剤は、約10.5より大きいpKaを有するアミン部分を有する化合物を含み、他の実施形態において、安定化剤は、約11.0より大きいpKaを有するアミン部分を有する化合物を含み、さらに他の実施形態において、安定化剤は、約11.5より大きいpKaを有するアミン部分を含む。さらに他の実施形態において、安定化剤は、約12.0より大きいpKaを有するアミン部分を有する化合物を含み、さらに他の実施形態において、安定化剤は、約12.5より大きいpKaを有するアミン部分を含む。当業者は、関連するpKaが、標準的技術を使用して容易に計算または決定され得、安定化剤としての選択された化合物の使用の適応性を決定するために使用され得ることを理解する。
開示される安定化剤は、ある特定の還元剤と組み合わされるときに、遊離の部位特異的システインに対するコンジュゲーションの標的化において特に有効であることが示される。本発明の目的に関して、適合する還元剤は、改変抗体の天然ジスルフィド結合を顕著に破壊することなく、コンジュゲーションについて部位特異的な還元された遊離のシステインを生じさせる、任意の化合物を含み得る。好ましくは、このような選択された安定化剤と還元剤との組合せによりもたらされる条件下において、活性化薬物リンカーは、所望の遊離の部位特異的システイン部位に結合するよう大きく制限されることになる。比較的低濃度で使用され、穏やかな条件を与える比較的穏やかな還元剤または還元剤が、特に好ましい。本明細書で使用される場合、用語「穏やかな還元剤」または「穏やかな還元条件」は、改変抗体に存在する天然ジスルフィド結合を実質的に破壊することなく、遊離システイン部位でチオールを提供する還元剤により(任意選択的に安定化剤の存在下で)もたらされる任意の物質または条件を意味することが支持される。つまり、穏やかな還元剤または条件(好ましくは安定化剤との組合せ)は、タンパク質の天然ジスルフィド結合を顕著に破壊することなく、遊離システインを効果的に還元する(チオールを提供する)ことができる。所望の還元条件は、選択的コンジュゲーションのための適切な環境を確立するいくつかのスルフヒドリル系化合物により提供され得る。実施形態において、穏やかな還元剤は、1つ以上の遊離チオールを有する化合物を含み得、いくつかの実施形態において、穏やかな還元剤は、単一の遊離チオールを有する化合物を含む。本発明の選択的還元技術に適合する還元剤の非限定的な例としては、グルタチオン、n−アセチルシステイン、システイン、2−アミノエタン−1−チオールおよび2−ヒドロキシエタン−1−チオールが挙げられる。
上記に示される選択的還元プロセスは、遊離のシステインに対する標的化コンジュゲーションで特に効果的であることが理解される。この点に関して、部位特異的抗体における、所望の標的部位に対するコンジュゲーションの程度(ここでは「コンジュゲーション効率」として定義する)は、当該技術分野で受け入れられている様々な技術により決定され得る。抗体に対する薬物の部位特異的コンジュゲーション効率は、全ての他のコンジュゲーション部位に対する標的コンジュゲーション部位(例えば、各軽鎖のc末端の遊離システイン)のコンジュゲーションのパーセンテージを評価することによって決定され得る。ある特定の実施形態において、本明細書における方法は、遊離システインを含む抗体に薬物を効率的にコンジュゲートすることを提供する。いくつかの実施形態において、コンジュゲーション効率は、全ての他のコンジュゲーション部位に対する標的コンジュゲーションのパーセンテージにより測定して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%またはそれ以上である。
コンジュゲーション可能な改変抗体は、抗体が産生または保存されるときに、阻止またはキャップされるスルフヒドリル基を含む遊離システイン残基を含有し得ることがさらに理解される。このようなキャップとしては、小分子、タンパク質、ペプチド、イオンおよびスルフヒドリル基と相互作用し、コンジュゲート形成を予防または阻害する他の物質が挙げられる。いくつかの場合において、コンジュゲートしていない改変抗体は、同じまたは異なる抗体上の他の遊離システインに結合する遊離システインを含んでもよい。本明細書で述べられているように、このような交差反応性は、作製手順の間に様々な混入物を導き得る。いくつかの実施形態において、改変抗体は、コンジュゲーション反応の前にキャップをはずすことを必要とし得る。特定の実施形態において、本明細書の抗体は、キャップされておらず、コンジュゲーション可能な遊離スルフヒドリル基を提示する。特定の実施形態において、本明細書の抗体は、天然に存在するジスルフィド結合を破壊せず、再配列もしない、無キャップ反応にかけられる。ほとんどの場合において、キャップ除去反応は通常の還元反応(還元または選択的還元)中に生じることが理解される。
D.DAR分布および精製
選択された実施形態において、本発明の部位特異的抗体を用いたコンジュゲーションは、狭いDAR分布を含む比較的均質なADC調製物を生成する能力を有利にもたらす。この点に関して、開示された構築物および/または選択的コンジュゲーションは、薬物と改変抗体との間の化学量論比の観点および毒素の位置に関して、試料内のADC種に均質性を提供する。上記で簡単に述べたように、用語「薬物対抗体比」または「DAR」は、抗体に対する薬物のモル比を指す。いくつかの実施形態において、コンジュゲート調製物は、そのDAR分布に関して実質的に均質であり得、このことは、ADC調製物内で、ローディングの部位(すなわち、遊離システイン上)に関しても均一である特定のDAR(例えば、2または4のDAR)を有する部位特異的ADCが主要な種であることを意味する。本発明のある特定の実施形態において、部位特異的抗体および/または選択的還元ならびにコンジュゲーションの使用を通じて所望の均質性を達成することができる。他の実施形態において、所望の均質性は、選択的還元と組み合わせた部位特異的構築物の使用を通じて達成し得る。さらに他の実施形態において、調製物は、分析的または分取クロマトグラフィー技術を使用してさらに精製され得る。これらの実施形態のそれぞれにおいて、ADC試料の均質性は、当該技術分野で公知の様々な技術、例えば、これらに限定されないが、質量分析、HPLC(例えば、サイズ排除HPLC、RP−HPLC、HIC−HPLCなど)またはキャピラリー電気泳動を使用して解析され得る。
ADC調製物の精製に関して、所望の純度を得るために、標準的医薬調製方法が使用され得ることが理解される。本明細書において述べられているように、液体クロマトグラフィー方法、例えば、逆相(RP)および疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)は、薬物負荷値により混合物中の化合物を分離することができる。一部の場合に、イオン交換(IEC)または混合モードクロマトグラフィー(MMC)を使用して、特異的薬物負荷を有する種を単離してもよい。
開示されたADCおよびその調製物は、抗体の構成および少なくとも部分的にコンジュゲーションを達成するために使用される方法に依存して、様々な化学量論モル比の薬物部分および抗体成分を含むことができる。ある特定の実施形態において、ADCあたりの薬物負荷は、1から20の弾頭を含み得る(すなわち、nは1〜20である。)。他の選択された実施形態は、1から15の弾頭の薬物負荷を有するADCを含む。さらに他の実施形態において、ADCは、1から12の弾頭、またはより好ましくは1から10の弾頭を含み得る。いくつかの実施形態において、ADCは、1から8の弾頭を含む。
理論的薬物負荷は比較的高くてもよいが、遊離システイン交差反応性および弾頭疎水性などの実際上の限定により、このようなDARを含む均質な調製物の生成は、凝集物および他の混入物により限定される傾向がある。つまり、高い薬物負荷、例えば、>6または8は、凝集、不溶性、毒性またはある特定の抗体薬物コンジュゲートの細胞透過性の消失を引き起こし得る。このような懸念の観点から、本発明により提供される実際の薬物負荷は、好ましくは、コンジュゲートあたり1から8個の薬物の範囲であり、すなわち各抗体に1、2、3、4、5、6、7または8個の薬物が共有結合している(例えば、IgG1の場合には、他の抗体が、ジスルフィド結合の数に応じて異なる負荷性を有し得る。)。好ましくは、本発明の組成物のDARは、およそ2、4または6であり、いくつかの実施形態において、DARはおよそ2である。
本発明により提供される比較的高いレベルの均質性にかかわらず、開示された組成物は、ある範囲の(IgG1の場合は1から8の範囲の)薬物化合物を有するコンジュゲートの混合物を実際に含む。このように、開示されるADC組成物は、コンジュゲートの混合物を含み、ここで構成要素の抗体のほとんどは、1つ以上の薬物部分に共有結合的に連結されており、(改変された構築物および選択的還元によりもたらされる相対的なコンジュゲート特異性にもかかわらず)、薬物部分は様々なチオール基により抗体に結合されていてもよい。つまり、以下の本発明のコンジュゲートADC組成物は、様々な濃度の異なる薬物負荷(例えば、IgG1抗体あたり1から8の薬物)を有するコンジュゲートの混合物を含む(遊離システインの交差反応性によって主に引き起こされるある特定の反応混入物を含む)。しかしながら選択的還元および作製後の精製を使用して、コンジュゲート組成物は、単一の主要な所望のADC種(例えば、2の薬物負荷を有する)を大量に含み、他のADC種(例えば、1、4、6などの薬物負荷を有する)は比較的低レベルとなる点に導かれ得る。平均DAR値は、組成物全体に対する薬物負荷(すなわち、全てのADC種をまとめたもの)の加重平均を表す。用いられる定量法の固有の不確定性と商業的状況において非優勢ADC種を完全に除去することの困難性とにより、許容可能なDAR値または特異度、平均値、範囲または分布として表されることが多い(すなわち、平均DARが2+/−0.5)。好ましくは、範囲内(すなわち、1.5から2.5)に測定された平均DARを含む組成物が、医薬的状況において使用される。
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、1、2、3、4、5、6、7または8でそれぞれ+/−0.5の平均DARを有する組成物を含む。他の実施形態において、本発明は、2、4、6または8+/−0.5の平均DARを含む。最終的に、選択された実施形態において、本発明は、2+/−0.5または4+/−0.5の平均DARを含む。この範囲または偏差は、いくつかの実施形態において、0.4未満であり得ることが理解される。したがって、他の実施形態において、組成物は、1、2、3、4、5、6、7もしくは8でそれぞれ+/−0.3の平均DAR、2、4、6もしくは8+/−0.3の平均DAR、さらにより好ましくは2もしくは4+/−0.3の平均DAR、またはさらには2+/−0.3の平均DARを含む。他の実施形態において、IgG1コンジュゲート組成物は、好ましくは、平均DARが1、2、3、4、5、6、7または8でそれぞれ+/−0.4で、非優勢ADC種が比較的低いレベル(すなわち、30%未満)である組成物を含む。他の実施形態において、ADC組成物は、2、4、6または8でそれぞれ+/−0.4の平均DARを含み、非優勢ADC種を比較的低レベル(<30%)で含む。いくつかの実施形態において、ADC組成物は、2+/−0.4の平均DARを含み、非優勢ADC種を比較的低いレベル(<30%)で含む。さらに他の実施形態において、優勢ADC種(例えば、DARが2またはDARが4)は、他のDAR種に対して測定するとき、65%超の濃度、70%超の濃度、75%超の濃度、80%超の濃度、85%超の濃度、90%超の濃度、93%超の濃度、95%超の濃度またはさらに97%超の濃度で存在する。
下記実施例に詳述されるように、コンジュゲーション反応由来のADCの調製物における抗体あたりの薬物の分布は、従来手段、例えば、UV−Vis分光光度法、逆相HPLC、HIC、質量分析、ELISAおよび電気泳動法により特徴付けられ得る。抗体あたりの薬物の観点でADCの定量的分布も決定され得る。ELISAにより、ADCの特定の調製物における抗体あたりの薬物の平均値が決定され得る。しかしながら、抗体あたりの薬物の分布の値は、抗体−抗原結合およびELISAの検出限界により識別可能でない。さらに、抗体−薬物コンジュゲートの検出のためのELISAアッセイは、薬物部分が抗体に結合する場所、例えば、重鎖もしくは軽鎖断片または特定のアミノ酸残基を判別しない。
VI.診断およびスクリーニング
A.診断
本発明は、増殖性障害を検出、診断または監視するためのインビトロおよびインビボの方法ならびに患者からの細胞をスクリーニングして、腫瘍形成性細胞を含む腫瘍細胞を同定するための方法を提供する。このような方法は、がんを有する個体を処置のために特定することまたはがんの進行を監視する方法であって、患者または患者から得られた試料を、MFI2を特異的に認識し、会合することができる検出剤(例えば、抗体または核酸プローブ)と、(インビボまたはインビトロのいずれかで)接触させることおよび試料における検出剤の存在もしくは不在または会合のレベルを検出することを含む、方法を含む。選択された実施形態において、検出剤は、本明細書に記載の検出可能な標識またはレポーター分子と会合した抗体を含む。さらに他の実施形態(例えば、インサイチュハイブリダイゼーションまたはISH)において、ゲノムMFI2決定因子と反応する核酸プローブは、増殖性障害の検出、診断または監視に使用される。
より一般的に、MFI2決定因子の存在および/またはレベルは、タンパク質または核酸解析のために当業者に利用可能ないくつかの任意の技術、例えば、直接的物理学的測定(例えば、質量分析)、結合アッセイ(例えば、イムノアッセイ、凝集アッセイおよびイムノクロマトグラフィーアッセイ)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR、RT−PCR;RT−qPCR)技術、分岐オリゴヌクレオチド技術、ノザンブロット技術、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション技術ならびにインサイチュハイブリダイゼーション技術を使用して測定されてもよい。方法には、化学反応、例えば、光学的吸光度の変化、蛍光の変化、化学発光もしくは電気化学発光の生成、反射率、屈折率もしくは光散乱の変化、検出可能標識の蓄積もしくは表面からの放出、酸化もしくは還元もしくは酸化還元種、電流もしくは電位、磁場の変化などから生じるシグナルの測定を含んでもよい。適切な検出技術は、光発光(例えば、蛍光、時間分解蛍光、エバネッセント波蛍光、アップコンバート性リン、多光子蛍光の測定を介して)、化学発光、電気化学発光、光散乱、光吸収、放射能、磁場、酵素活性(例えば、光吸収もしくは蛍光の変化を生じさせるまたは化学発光の放射を生じさせる酵素反応を通じた酵素活性の測定による)を介した標識の測定を通じて、標識された結合試薬の参加を測定することにより、結合事象を検出してもよい。代替的に、標識の使用を必要としない検出技術、例えば、質量(例えば、表面弾性波測定)、屈折率(例えば、表面プラズモン共鳴測定)または分析物の固有の発光の測定に基づく技術を使用してもよい。
いくつかの実施形態において、検出剤と試料中の特定の細胞または細胞成分との会合は、試料が腫瘍形成性細胞を含む可能性があることを示しており、したがって、がんを有する個体を本明細書に記載の抗体またはADCを用いて効果的に処置し得ることを示している。
ある特定の好ましい実施形態において、アッセイには、免疫組織化学(IHC)アッセイもしくはこの変形(例えば、蛍光、色素生産性、標準ABC、標準LSABなど)、免疫細胞化学もしくはこの変形(例えば、直接、間接、蛍光、色素生産性など)またはインサイチュハイブリダイゼーション(ISH)もしくはこの変形(例えば、色素生産性インサイチュハイブリダイゼーション(CISH)もしくは蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(DNA−FISHまたはRNA−FISH]))が含まれてもよい。
この点に関して、本発明のある特定の態様は、免疫組織化学(IHC)のための標識されたMFI2の使用を含む。より詳細には、MFI2 IHCは、様々な増殖性障害の診断を補助するためおよびMFI2抗体療法を含む処置に対する潜在的な応答を監視するための診断ツールとして使用され得る。本明細書で議論するようにおよび下記実施例において示されるように、適合する診断アッセイは、化学的に固定された(例えば、限定されないが、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド(gluteraldehyde)、四酸化オスミウム、重クロム酸カリウム、酢酸、アルコール、亜鉛塩、塩化第二水銀、四酸化クロムおよびピクリン酸)ならびに包埋された(例えば、限定されないが、グリコールメタクリレート、パラフィンおよび樹脂)または凍結を介して保存された組織に対して実施され得る。このようなアッセイは、処置の決定に対する道筋をたて、投与レジメンおよびタイミングを決定するために使用され得る。
他の特に適合する本発明の態様は、MFI2決定因子を検出または監視するためのインサイチュハイブリダイゼーションの使用を含む。インサイチュハイブリダイゼーション技術またはISHは、当業者にとって周知である。簡潔には、細胞を固定し、特定のヌクレオチド配列を含有する検出可能なプローブを固定した細胞に加える。細胞が相補的ヌクレオチド配列を含有する場合には、検出され得るプローブは、それらの配列にハイブリダイズする。本明細書に示す配列情報を使用して、遺伝子型MFI2決定因子を発現する細胞を特定するようにプローブを設計することができる。プローブは、好ましくは、そのような決定因子に対応するヌクレオチド配列にハイブリダイズする。ハイブリダイゼーション条件は、不完全な相補的ハイブリダイゼーションによるバックグラウンドシグナルを最小化するように常法により最適化することができるが、好ましくは、プローブは、選択されたMFI2決定因子に完全に相補的であることが好ましい。選択された実施形態において、プローブは、プローブに付された蛍光色素で標識されており、つまり標準的蛍光方法により容易に検出可能である。
インビボの診断治療または診断に適合するアッセイには、当業者に公知の磁気共鳴画像、コンピュータ断層撮影(例えば、CATスキャン)、陽電子放射断層撮影(例えば、PETスキャン)、X線撮影、超音波のような当該分野で認識されている画像化または監視技術を含めてもよい。
ある特定の実施形態において、本発明の抗体は、患者試料(例えば、血漿または血液)中の特定の決定因子(例えば、MFI2タンパク質)のレベルを検出および定量するために使用することができ、同様に、関連する決定因子が関与する増殖性障害を検出、診断または監視するために使用することができる。関連する実施形態において、本発明の抗体は、循環腫瘍細胞をインビボまたはインビトロのいずれかで検出、監視および/または定量するために使用され得る(WO2012/0128801)。さらに他の実施形態において、循環腫瘍細胞は、腫瘍形成性細胞を含み得る。
本発明のある特定の実施形態において、対象または対象由来の試料における腫瘍形成性細胞は、治療またはレジメンのベースラインが確立される前に、開示された抗体を使用して評価または特徴付けされ得る。他の例において、腫瘍形成性細胞は、処置された対象から誘導される試料から評価され得る。
別の実施形態において、本発明は、がんの進行および/または病因をインビボで分析する方法を提供する。別の実施形態において、がんの進行および/または病因のインビボでの解析は、腫瘍の進行の程度を決定することを含む。別の実施形態において、解析は、腫瘍の同定を含む。別の実施形態において、腫瘍の進行の解析が、原発性腫瘍に対して行われる。別の実施形態において、解析は、当業者にとって既知のように、がんの種類に応じて経時的に行われる。別の実施形態において、原発性腫瘍の転移性細胞に起因する二次性腫瘍の解析が、さらにインビボで行われる。別の実施形態において、二次性腫瘍の大きさと形状が解析される。いくつかの実施形態において、さらにエクスビボの解析が行われる。
別の実施形態において、本発明は、がんの進行および/または病因をインビボで解析する方法であって、細胞の転移を決定することまたは循環腫瘍細胞のレベルを検出することおよび定量することを含む方法を提供する。さらに別の実施形態において、細胞転移の解析は原発性腫瘍から不連続の部位において、細胞の進行性成長を測定することを含む。別の実施形態において、細胞転移の解析部位は、新生物の拡散経路を含む。いくつかの実施形態において、細胞は、血管、リンパ、体腔内またはそれらの組合せを通じて分散することができる。別の実施形態において、細胞転移解析は、細胞遊走、播種、血管外漏出、増殖またはそれらの組合せの結果として行われる。
ある特定の例において、対象または対象由来の試料における腫瘍形成性細胞は、治療の前にベースラインを確立するために、開示された抗体を使用して評価または特徴付けてもよい。他の例において、試料は、処置された対象から誘導される。いくつかの例において、試料は、対象が処置を開始または終了してから少なくとも約1、2、4、6、7、8、10、12、14、15、16、18、20、30、60、90日、6カ月、9カ月、12カ月または>12カ月後の対象から得られる。ある特定の実施例において、腫瘍形成性細胞は、一定数の投与の後(例えば、治療の2、5、10、20、30回以上の投与の後)に、評価または特徴付けされる。他の例において、腫瘍形成性細胞は、1回以上の治療を受けてから1週、2週、1カ月、2カ月、1年、2年、3年、4年以上後に、特徴付けまたは評価される。
B.スクリーニング
ある特定の実施形態において、本発明の抗体は、決定因子との相互作用により腫瘍細胞の機能または活性を変化させる化合物または作用因子(例えば、抗体またはADC)を同定するために、試料のスクリーニングに使用することができる。一実施形態において、腫瘍細胞は、抗体またはADCと接触され、この抗体またはADCは、ある特定の標的(例えばMFI2)を発現する細胞について腫瘍をスクリーニングするために使用され、このような細胞を例えば限定されないが診断目的などの目的のために同定すること、このような細胞を監視して処置の有効性を決定することまたはこのような標的発現細胞のための細胞集団を濃縮することができる。
さらに別の実施形態において、方法は、腫瘍細胞を試験薬剤または化合物に直接的または間接的に接触させることと、試験薬剤または化合物が、決定因子会合腫瘍細胞の活性または機能を調節するかどうか、例えば、細胞の形態または生存性の変化、マーカーの発現、分化または脱分化、細胞の呼吸作用、ミトコンドリア活性、膜完全性、成熟性、増殖性、生存性、アポトーシスまたは細胞死を調節するかどうかを決定することとを含む。直接的相互作用の一例は物理的相互作用であり、一方で、間接的相互作用としては、例えば、参照実体(例えば、細胞または細胞培養物)に順に作用する中間的分子に対する組成物の作用が挙げられる。
スクリーニング方法は、ハイスループットスクリーニングを含み、この方法は、例えば、培養皿、チューブ、フラスコ、ローラボトルまたはプレート上に、任意選択的に所定の位置において、配置されたまたは置かれた細胞のアレイ(例えば、マイクロアレイ)を含み得る。ハイスループットのロボットまたは手作業による方法は、化学的相互作用を調べ、短期間に多くの遺伝子の発現レベルを決定することができる。分子シグナルを利用する、例えば、フルオロフォアまたはマイクロアレイを介する技術(Mocellin and Rossi、2007、PMID:17265713)が開発され、さらに情報を非常に迅速に処理する解析(例えば、Pinhasovら、2004、PMID:15032660参照)が自動化されてきた。スクリーニングされ得るライブラリは、例えば、小分子ライブラリ、ファージディスプレイライブラリ、全ヒト抗体酵母ディスプレイライブラリ(Adimab)、siRNAライブラリおよびアデノウイルストランスフェクションベクターを含む。
VII.医薬調製物および治療的使用
A.製剤および投与経路
本発明の抗体またはADCは、当該技術分野で認識されている技術を使用して様々な方法で製剤化され得る。いくつかの実施形態において、本発明の治療組成物は、そのまままたは最小量の付加的成分と共に投与することができ、他方で任意選択的に適切な医薬として許容される担体を含有するように製剤化してもよい。本明細書で使用される場合、「医薬として許容される担体」は、当該技術分野で周知であり、医薬調製物で使用するために商業的供給源から入手可能である、賦形剤、ビヒクル、アジュバントおよび希釈剤を含む(例えば、Gennaro(2003)Remington:The Science and Practice of Pharmacy with Facts and Comparisons:Drugfacts Plu、第20版、Mack Publishing;Anselら(2004)Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版、Lippencott Williams and Wilkins;Kibbeら(2000)Handbook of Pharmaceutical Excipients、第3版、Pharmaceutical Pressを参照)。
適切な医薬として許容される担体は、比較的不活性である物質を含み、抗体の投与を容易にすることができるまたは活性化合を作用部位に送達するために医薬として最適化された調製物に処理することを補助し得る。
このような医薬として許容される担体は、製剤の形態、一貫性、粘度、pH、張度、安定性、浸透圧、薬物動態、タンパク質凝集または溶解度を変えることができる薬剤を含み、緩衝剤、湿潤剤、乳化剤、希釈剤、カプセル剤および皮膚浸透促進剤を含む。担体のある特定の非限定的例は、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、アルギニン、ショ糖、水、グリセロール、エタノール、ソルビトール、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびこれらの組合せを含む。全身投与のための抗体は、経腸的、非経口的または局所的投与のために製剤化され得る。実際、3種類の製剤全てが、活性成分の全身投与を達成するために同時に使用され得る。非経口的および経口的薬物送達のための賦形剤および製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2000)第20版、Mack Publishingに示されている。
経腸投与のために適切な製剤は、硬または軟ゼラチンカプセル剤、丸剤、錠剤、例えば、被覆錠剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップまたは吸入剤およびこれらの制御放出形態を含む。
非経口投与(例えば、注射による)に適切な製剤としては、活性成分が、溶解、懸濁化または他の方法で(例えば、リポソームまたは他の微小粒子系で)提供される水性または非水性、等張性、発熱物質不含、滅菌液(例えば、溶液、懸濁液)が挙げられる。このような液体は、他の医薬として許容される抗体、例えば、抗酸化剤、緩衝剤、保存剤、安定化剤、静菌剤、懸濁化剤、増粘剤および製剤を対象とするレシピエントの血液(または他の関連する体液)と等張にする溶質をさらに含んでもよい。賦形剤の例としては、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油などが挙げられる。 このような製剤に使用するための適切な等張の医薬として許容される担体の例は、塩化ナトリウム注射剤、リンゲル液または乳酸リンゲル注射剤を含む。
非経口投与(例えば、静脈内注射)に適合する製剤は、約10μg/mLから約100mg/mLの濃度のADCまたは抗体を含み得る。ある特定の選択された実施形態において、抗体またはADCの濃度は、20μg/mL、40μg/mL、60μg/mL、80μg/mL、100μg/mL、200μg/mL、300μg/mL、400μg/mL、500μg/mL、600μg/mL、700μg/mL、800μg/mL、900μg/mLまたは1mg/mLを含む。他の実施形態において、ADCの濃度は、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、8mg/mL、10mg/mL、12mg/mL、14mg/mL、16mg/mL、18mg/mL、20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mL、40mg/mL、45mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mLまたは100mg/mLを含む。
本発明の化合物および組成物は、インビボで、それを必要とする対象に、様々な経路、例えば、これらに限定されないが、経口、静脈内、動脈内、皮下、非経口的、鼻腔内、筋肉内、心臓内、脳室内、気管内、バッカル、直腸、腹腔内、皮内、局所、経皮およびくも膜下腔内またはそれ以外に移植もしくは吸入により投与され得る。本組成物は、固体、半固体、液体または気体形態の調製物に製剤化することができ、例えば、これらに限定されないが、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏、溶液、坐剤、浣腸剤、注射剤、吸入剤およびエアロゾルが挙げられる。適切な製剤および投与経路は、意図する適用および治療レジメンにより選択され得る。
B.投与量
特定の投与レジメン、すなわち、用量、タイミングおよび反復は、特定の個体ならびに実験的検討事項、例えば、薬物動態(例えば、半減期、クリアランス速度など)に依存する。投与の頻度の決定は、当業者、例えば、担当医により、状態および処置される状態の重症度、処置される対象の年齢および全体的健康状態などの検討事項に基づいて行われ得る。投与の頻度は、選択した組成物の効能および投与レジメンの評価に基づいて治療の過程を通じて調整され得る。このような評価は、特異的な疾患、障害または状態のマーカーに基づいて行われ得る。個体ががんを有する実施形態において、評価は、触診または視覚的観察を介した腫瘍サイズの直接的測定、X線または他の画像化技術による腫瘍サイズの間接的測定、直接的な腫瘍生検によって評価される改善および腫瘍試料の顕微鏡検査、間接的な腫瘍マーカー(例えば、前立腺がんに対するPSA)または本明細書に記載の方法により特定された抗原、増殖性または腫瘍形成性細胞の数の減少、このような新生細胞の減少の維持、新生細胞の増殖の減少または転移の発生の遅延の測定を含む。
本発明のMFI2抗体またはADCは、様々な範囲で投与され得る。これらの範囲としては、用量あたり約5μg/kg体重から約100mg/kg体重、用量あたり約50μg/kg体重から約5mg/kg体重、用量あたり約100μg/kg体重から約10mg/kg体重が挙げられる。他の範囲としては、用量あたり約100μg/kg体重から約20mg/kg体重および用量あたり約0.5mg/kg体重から約20mg/kg体重が挙げられる。特定の実施形態において、投与量は、少なくとも約100μg/kg体重、少なくとも約250μg/kg体重、少なくとも約750μg/kg体重、少なくとも約3mg/kg体重、少なくとも約5mg/kg体重、少なくとも約10mg/kg体重である。
選択された実施形態において、MFI2抗体またはADCは、用量あたりおよそ10、20、30、40、50、60、70、80、90または100μg/kg体重で(好ましくは静脈内に)投与される。他の実施形態は、用量あたり約200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900または2000μg/kg体重での抗体またはADCの投与を含む。他の実施形態において、開示されたコンジュゲートは、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、9または10mg/kgで投与される。さらに他の実施形態において、コンジュゲートは、用量あたり12、14、16、18または20mg/kg体重で投与され得る。さらに他の実施形態において、コンジュゲートは、用量あたり25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、90または100mg/kg体重で投与され得る。本明細書の教示を用い、当業者は、前臨床動物研究、臨床観察ならびに標準的な医学および生化学的技術および測定に基づいて、様々なMFI2抗体またはADCのための適切な投与量を容易に決定することができる。
他の投与レジメンは、U.S.P.N.7,744,877に開示されているような体表面積(BSA)計算に基づき、予測され得る。周知のように、BSAは、患者の身長および体重を使用して計算され、彼または彼女の身体の表面積によって表される対象の大きさの尺度を提供する。ある特定の実施形態において、コンジュゲートは、1mg/m2から800mg/m2、50mg/m2から500mg/m2の投与量および100mg/m2、150mg/m2、200mg/m2、250mg/m2、300mg/m2、350mg/m2、400mg/m2または450mg/m2の投与量で投与され得る。当該分野で認識されているまたは実験技術が適切な投与量を決定するために使用され得ることも理解される。
抗MFI2抗体またはADCは特別なスケジュールで投与されてもよい。一般に、MFI2コンジュゲートの有効量は、対象に1回以上投与される。より詳細には、ADCの有効量は、対象に、1カ月に1回、1カ月に2回以上または1カ月に1回未満投与される。ある特定の実施形態において、MFI2抗体またはADCの有効量は、複数回、例えば少なくとも1カ月、少なくとも6カ月、少なくとも1年、少なくとも2年または数年間投与され得る。さらに他の実施形態において、数日(2、3、4、5、6もしくは7日)、数週間(1、2、3、4、5、6、7もしくは8週間)または数カ月間(1、2、3、4、5、6、7もしくは8カ月間)またさらには1もしくは数年間が、開示された抗体またはADCの投与間に経過し得る。
いくつかの実施形態において、コンジュゲート抗体を含む処置の過程は、数週間または数カ月の期間にわたり、選択された薬物製品を複数回投与することを含む。より詳細には、本発明の抗体またはADCは、1日毎に1回、2日毎に1回、4日毎に1回、1週毎に1回、10日毎に1回、2週毎に1回、3週毎に1回、1カ月毎に1回、6週毎に1回、2カ月毎に1回、10週毎または3カ月毎に1回投与され得る。これに関して、患者の応答および診療に基づき、投与量を変化させてもよく、投与間隔を調整してもよいことが理解される。本発明には、不連続投与または数回の部分投与に分割された1日用量も包含される。本発明の組成物および抗がん剤は、交互に、隔日または隔週で投与されてもよくまたは一連の抗体処置を行って、この後に1つ以上の抗がん剤治療による処置を行ってもよい。いずれにしても、当業者であれば理解するように、化学療法剤の適切な用量は、一般に、化学療法剤が単独でまたは他の化学療法剤との併用で投与される臨床治療において既に採用されている用量程度である。
別の実施形態において、本発明のMFI2抗体またはADCは、疾患の初期症状後の腫瘍再発の確率を減少または無くすための維持療法に使用されてもよい。好ましくは、障害は、処置されたことがあり、最初の腫瘍塊は除去、減少または他の方法で緩和されており、患者は無症状であるまたは寛解状態にある。このような場合、標準的診断手法を使用して疾患の徴候がほとんどまたは全くない場合でも、対象は、医薬として有効な量の開示された抗体が1回以上投与されてもよい。
別の好ましい実施形態において、本発明の調節因子は、予防的にまたは減量手法後の腫瘍転移の可能性を予防または減少させるためのアジュバント療法として使用され得る。本開示で使用するとき、「減量手法」は、腫瘍または腫瘍増殖を減少または緩和させる任意の手法、技術または方法を意味する。例示的減量手法としては、限定されないが、外科手術、放射線処置(つまり、ビーム照射)、化学療法、免疫療法またはアブレーションが挙げられる。本開示に鑑みて当業者により容易に決定される適切な時間に、開示されたADCは、臨床的、診断的または診断治療的手法により示唆されるように腫瘍転移を減少させるために投与されてもよい。
本発明のさらに他の実施形態は、開示されたADCを、無症状であるががんを発症するリスクのある対象に投与することを含む。つまり、本発明のADCは、真に予防的な意味において使用することができ、検査もしくは試験を受けて1つ以上の認められた危険因子(例えば、ゲノム指標、家族歴、インビボまたはインビトロ試験結果など)を有するが新生物を発症していない患者に投与されてもよい。
投与量およびレジメンも、開示された組成物を個体に1回以上投与して実験的に決定され得る。例えば、個体に、本明細書に記載されるように製造された治療組成物を漸増する投与量で与えてもよい。選択された実施形態において、投与量は、実験的に決定されたまたは観察された副作用または毒性にそれぞれ基づいて、徐々に増加または減少または減弱化してもよい。選択された組成物の有効性を評価するために、特定の疾患、障害または状態のマーカーを前述のように伴ってもよい。がんに関して、これらには、触診または視覚的観察を介した腫瘍サイズの直接的測定、X線または他の画像化技術による腫瘍サイズの間接的測定、直接的な腫瘍生検によって評価される改善および腫瘍試料の顕微鏡検査;間接的な腫瘍マーカー(例えば、前立腺がんに対するPSA)または本明細書に記載の方法により特定された腫瘍形成性抗原、疼痛または麻痺の減少、会話、視力、呼吸もしくは他の腫瘍に関連する障害の改善、食欲の増加または容認された試験もしくは生存の延長によって測定される生活の質の向上の測定が挙げられる。当業者は、投与量が、個体、新生物状態の種類、新生物状態の病期、新生物状態の個体の他の位置への転移ならびに過去および現在に使用している処置に依存して変わることを認識する。
C.併用療法
併用療法は、がんの予防または処置およびがんの転移または再発の予防に有用であり得る。「併用療法」は、本明細書で使用するとき、少なくとも1つの抗MFI2抗体またはADCと少なくとも一つの治療成分(例えば、抗がん剤)との組合せ投与を意味し、ここで組合せは、好ましくは、がんの処置において、(i)抗MFI2抗体もしくはADCの単独使用、(ii)治療成分の単独使用または(iii)抗MFI2抗体もADCも含まない別の治療成分と組み合わせた治療成分の使用を上回る治療的相乗作用を有するまたは測定可能な治療効果を改善する。用語「治療的相乗作用」は、本明細書で使用される場合、抗MFI2抗体またはADCと1つ以上の治療成分との組合せの相加的効果よりも大きい治療効果を有する、抗MFI2抗体またはADCと1つ以上の治療成分との組合せを意味する。
開示された組合せの所望の転帰は、対照またはベースラインの測定に対する比較によって定量される。本明細書で使用される場合、相対的な用語、例えば、「改善する」、「増加する」または「減少させる」は、対照、例えば、本明細書に記載の処置の開始前の同じ個体の測定値または本明細書に記載の抗MFI2抗体もADCも不在であるが、標準治療処置などの他の治療成分の存在下における対照個体(もしくは複数の対照個体)の測定値に対する値を示す。代表的な対照個体は、処置されている個体と同じ形態のがんに罹患しており、処置されている個体とほぼ同じ年齢の個体である(処置される個体および対照個体の疾患の病期が同等であることを確実にするため)。
治療に応答した変化または改善は、一般に、統計学的に有意である。本明細書で使用される場合、用語「有意性」または「有意」は、2つ以上の実体間に非ランダムな関係がある確率についての統計学的解析に関する。関係が「有意」であるまたは「有意性」を有するかどうかを決定するために「p値」が計算され得る。ユーザー定義のカットオフ点を下回るp値は、有意とみなされる。0.1以下、0.05未満、0.01未満、0.005未満または0.001未満のp値は、有意とみなされ得る。
相乗的治療効果は、単一の治療成分もしくは抗MFI2抗体またはADCにより誘発される治療効果よりもまたは所与の組合せの抗MFI2抗体またはADCもしくは単一治療成分により誘発される治療効果の合計よりも少なくとも約2倍大きいまたは少なくとも約5倍大きいまたは少なくとも約10倍大きいまたは少なくとも約20倍大きいまたは少なくとも約50倍大きいまたは少なくとも約100倍大きい効果であり得る。また相乗的治療効果は、単一の治療成分もしくは抗MFI2抗体またはADCにより誘発される治療効果または所与の組合せの抗MFI2抗体またはADCもしくは単一治療成分により誘発される治療効果の合計と比較して、少なくとも10%または少なくとも20%または少なくとも30%または少なくとも40%または少なくとも50%または少なくとも60%または少なくとも70%または少なくとも80%または少なくとも90%または少なくとも100%以上の治療効果の増加として観察され得る。相乗的効果は、組合せで使用したときに、治療剤の投与量の減少を可能にする効果でもある。
併用療法の実施において、抗MFI2抗体またはADCおよび治療成分は、単一の組成物または同じもしくは異なる投与経路を使用する2つ以上の別個の組成物において、対象に同時に投与することができる。代替的に、抗MFI2抗体またはADCでの処置は、例えば、数分から数週間の間隔で、治療成分による処置に先行または追随してもよい。一実施形態において、治療成分と、抗体またはADCとの両方が互いに約5分から約2週間以内に投与される。さらに他の実施形態において、数日(2、3、4、5、6もしくは7)、数週間(1、2、3、4、5、6、7もしくは8)または数カ月間(1、2、3、4、5、6、7もしくは8)が、抗体と治療成分の投与の間に経過してもよい。
併用療法は、状態が処置されるまで、緩和されるまで、または治癒されるまで、様々なスケジュールで、例えば、1日に1回、2回もしくは3回、2日毎に1回、3日毎に1回、1週間毎に1回、2週間毎に1回、1カ月毎に1回、2カ月毎に1回、3カ月毎に1回、6カ月毎に1回、投与されてもよくまたは連続的に投与されてもよい。抗体および治療成分は、1日おきにもしくは1週間おきに投与されてもよく、または一連の抗MFI2抗体もしくはADC処置を行い、後にさらなる治療成分で1回以上処置してもよい。一実施形態において、抗MFI2抗体またはADCは1つ以上の治療成分と組み合わせて短期処置サイクルで投与される。他の実施形態において、組合せ処置は、長期処置サイクルで投与される。併用療法は、任意の経路を介して投与され得る。
選択された実施形態において、本発明の化合物および組成物は、PD−1阻害剤またはPDL−1阻害剤のようなチェックポイント阻害剤と組み合わせて使用されてもよい。PD−1は、そのリガンドPD−L1と共に、抗腫瘍Tリンパ球応答の負の制御因子である。一実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCと共に、抗PD−1抗体(例えば、ランブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ)および任意選択的に1つ以上の他の治療成分を含んでもよい。別の実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCと共に、抗PD−L1抗体(例えば、MPDL3280A、MEDI4736、MSB0010718C)および任意選択的に1つ以上の他の治療成分を含んでもよい。さらに別の実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCならびに抗PD−1および/または標的化BRAF併用療法(例えば、イピリムマブおよびベムラフェニブまたはダブラフェニブ)での処置後に進行が続く患者に投与される他の抗PD−1抗体(例えば、ペンブロリズマブ)を含んでもよい。
いくつかの実施形態において、抗MFI2抗体またはADCは、がんの様々な第一選択処置との組合せで使用されてもよい。一実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCならびにイホスファミド、マイトマイシン(mytomycin)C、ビンデシン、ビンブラスチン、エトポシド、イリノテカン(ironitecan)、ゲムシタビン、タキサン、ビノレルビン、メトトレキサートおよびペメトレキセドのような細胞毒性剤ならびに任意選択的に1つ以上の他の治療成分の使用を含む。
別の実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCおよび白金系薬剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)および任意選択的に1つ以上の他の治療成分(例えば、ビノレルビン;ゲムシタビン;例えばドセタキセルもしくはパクリタキセルのようなタキサン;イリノテカン(irinotican);またはペメトレキセド)の使用を含む。
一実施形態において、例えばBR−ERPR、BR−ERまたはBR−PRがんの処置において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCおよび「ホルモン療法」として記載されている1つ以上の他の治療成分の使用を含む。「ホルモン療法」は、本明細書で使用されるとき、例えば、タモキシフェン;性腺刺激ホルモンまたは黄体形成ホルモン放出ホルモン(luteinizing releasing hormone)(GnRHまたはLHRH);エベロリムスおよびエキセメスタン;トレミフェン;またはアロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタンまたはフルベストラント)を指す。
別の実施形態において、例えばBR−HER2の処置において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCおよびトラスツズマブまたはトラスツズマブエムタンシン(ado−trastuzumab emtansine)および任意選択的に1つ以上の他の治療成分(例えば、ペルツズマブおよび/またはドセタキセル)の使用を含む。
いくつかの実施形態において、例えば転移性乳がんの処置において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCならびにタキサン(例えば、ドセタキセルまたはパクリタキセル)ならびに任意選択的に1つ以上の他の治療成分、例えば、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンもしくはエピルビシン)および/またはエリブリンの使用を含む。
別の実施形態において、例えば転移性または再発性乳がんまたはBRCA−変異乳がんの処置において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCおよびメゲストロールおよび任意選択的にさらなる治療成分の使用を含む。
さらなる実施形態において、例えばBR−TNBCの処置において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCならびにポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤(例えば、BMN−673、オラパリブ、ルカパリブおよびベリパリブ)ならびに任意選択的にさらなる治療成分の使用を含む。
別の実施形態において、例えば乳がんの処置において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCならびにシクロホスファミドならびに任意選択的に1つ以上の他の治療成分(例えば、ドキソルビシン、タキサン、エピルビシン、5−FUおよび/またはメトトレキサート)の使用を含む。
別の実施形態において、EGFR陽性NSCLCの処置のための併用療法は、抗MFI2抗体またはADCならびにアファチニブならびに任意選択的に1つ以上の他の治療成分(例えば、エルロチニブおよび/またはベバシズマブ)の使用を含む。
別の実施形態において、EGFR陽性NSCLCの処置のための併用療法は、抗MFI2抗体またはADCおよびエルロチニブおよび任意選択的に1つ以上の他の治療成分(例えば、ベバシズマブ)の使用を含む。
別の実施形態において、ALK陽性NSCLCの処置のための併用療法は、抗MFI2抗体またはADCおよびセリチニブおよび任意選択的に1つ以上の他の治療成分の使用を含む。
別の実施形態において、ALK陽性NSCLCの処置のための併用療法は、抗MFI2抗体またはADCおよびクリゾチニブおよび任意選択的に1つ以上の他の治療成分の使用を含む。
別の実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCならびにベバシズマブならびに任意選択的に1つ以上の他の治療成分(例えば、ドセタキセルもしくはパクリタキセルのようなタキサン;および/または白金アナログ)の使用を含む。
別の実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCならびにベバシズマブならびに任意選択的に1つ以上の他の治療成分(例えば、ゲムシタビンおよび/または白金アナログ)の使用を含む。
一実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCならびに白金系薬剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)アナログならびに任意選択的に1つ以上の他の治療成分(例えば、ドセタキセルおよびパクリタキセルのようなタキサン)の使用を含む。
一実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCならびに白金系薬剤(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)アナログならびに任意選択的に1つ以上の他の治療成分(例えば、ドセタキセルおよびパクリタキセルのようなタキサンおよび/またはゲムシタビンおよび/またはドキソルビシンなど)の使用を含む。
特定の実施形態において、白金製剤耐性腫瘍の処置のための併用療法は、抗MFI2抗体またはADCならびにドキソルビシンおよび/またはエトポシドおよび/またはゲムシタビンおよび/またはビノレルビンおよび/またはイホスファミドおよび/またはロイコボリン変調(leucovorin−modulated)5−フルオロウラシル(fluoroucil)および/またはベバシズマブおよび/またはタモキシフェンならびに任意選択的に1つ以上の他の治療成分の使用を含む。
別の実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCおよびPARP阻害剤および任意選択的に1つ以上の他の治療成分の使用を含む。
別の実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCおよびベバシズマブおよび任意選択的にシクロホスファミドの使用を含む。
併用療法は、抗MFI2抗体またはADCおよび変異または異常発現した遺伝子またはタンパク質(例えば、BRAF V600E)を含む腫瘍(例えば、メラノーマ)に有効な化学療法成分を含んでもよい。
Tリンパ球(例えば、細胞毒性リンパ球(CTL))は、悪性腫瘍に対する宿主防御に重要な役割を果たす。CTLは、抗原提示細胞上の腫瘍関連抗原の提示によって活性化される。活性特異的免疫療法は、既知のがん関連抗原に由来するペプチドを患者にワクチン接種することによって、がんに対するTリンパ球応答を増強するために使用することができる方法である。一実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCならびにがん関連抗原(例えば、メラノサイト系譜特異的抗原チロシナーゼ、gp100、Melan−A/MART−1またはgp75)に対するワクチンを含んでもよい。他の実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCの投与と共に、自己CTLまたはナチュラルキラー細胞のインビトロ拡大増殖、活性化および養子性再導入を含んでもよい。CTL活性化は、抗原提示細胞による腫瘍抗原提示を増強する戦略によっても促進され得る。顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)は、樹状細胞の動員および樹状細胞交差プライミングの活性化を促進する。一実施形態において併用療法は、抗原提示細胞の単離、このような細胞の刺激性サイトカイン(例えば、GM−CSF)による活性化、腫瘍関連抗原を用いたプライミングならびにこの後の抗MFI2抗体またはADCおよび任意選択的に1つ以上の異なる治療成分の使用を組み合わせた患者への抗原提示細胞の養子性再導入を含んでもよい。
いくつかの実施形態において、抗MFI2抗体またはADCは、メラノーマの様々な第一選択処置との組合せで使用されてもよい。一実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCおよびダカルバジンおよび任意選択的に1つ以上の他の治療成分の使用を含む。さらなる実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCおよびテモゾロミドおよび任意選択的に1つ以上の他の治療成分の使用を含む。別の実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCおよび白金系治療成分(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)および任意選択的に1つ以上の他の治療成分の使用を含む。いくつかの実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCおよびビンカアルカロイド治療成分(例えば、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンクリスチンまたはビンデシン)および任意選択的に1つ以上の他の治療成分の使用を含む。一実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCおよびインターロイキン2および任意選択的に1つ以上の他の治療成分の使用を含む。別の実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCおよびインターフェロンαおよび任意選択的に1つ以上の他の治療成分の使用を含む。
他の実施形態において、抗MFI2抗体またはADCは、メラノーマのアジュバント処置および/または外科的手法(例えば、腫瘍切除)との組合せで使用されてもよい。一実施形態において、併用療法は、抗MFI2抗体またはADCおよびインターフェロンαおよび任意選択的に1つ以上の他の治療成分の使用を含む。
本発明は、抗MFI2抗体またはADCと放射線療法との組合せも提供する。用語「放射線療法」は、本明細書で使用される場合、腫瘍細胞内で局所的にDNA損傷を誘導する任意の機構、例えば、ガンマ線照射、X線、UV照射、マイクロ波、電子放出などを意味する。腫瘍細胞への放射性同位体の方向付けられた送達を使用する併用療法も検討され、本明細書に開示の抗MFI2抗体と組み合わせてまたは抗MFI2抗体のコンジュゲートとして使用され得る。典型的には、放射線療法は、約1から約2週間の期間にわたりパルスで投与される。任意選択的に、放射線療法は、単独用量としてまたは複数回の連続用量として投与されてもよい。
他の実施形態において、抗MFI2抗体またはADCは、下記の化学療法剤の1つ以上と組み合わせて使用され得る。
D.抗がん剤
用語「抗がん剤」または「化学療法剤」は、本明細書で使用される場合、「治療成分」の1つのサブセット、つまり、「医薬として活性な成分」として記載される薬剤のサブセットである。より詳細には、「抗がん剤」は、細胞増殖性障害、例えば、がんを処置するために使用することができる任意の薬剤を意味し、これらに限定されないが、細胞毒性剤、細胞分裂停止剤、抗血管新生剤、減量剤、化学療法剤、放射線療法および放射線治療剤、標的化抗がん剤、生物学的応答修飾剤、治療抗体、がんワクチン、サイトカイン、ホルモン療法、抗転移剤および免疫療法剤が挙げられる。上記で議論した選択された実施形態において、このような抗がん剤は、コンジュゲートを含むことができ、投与前に抗体と会合していてもよいことが理解される。ある特定の実施形態において、開示された抗がん剤は、抗体と連結されて、本明細書に開示のADCを提供する。
用語「細胞毒性剤」は、抗がん剤である場合もあり、細胞に毒性があり、細胞の機能を減少もしくは阻害するおよび/または細胞の破壊を引き起こす物質を意味する。典型的には、物質は、生存生物に由来する天然に存在する分子(または合成的に調製された天然産物)である。細胞毒性剤の例としては、これらに限定されないが、小分子毒素または酵素的に活性な細菌毒素(例えば、ジフテリア(Diptheria)毒素、シュードモナス菌体内毒素および菌体外毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンA)、菌類(例えば、αサルシン、レストリクトシン)、植物(例えば、アブリン、リシン、モデシン、ビスクミン、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、サポリン、ゲロニン、モモルジン(momoridin)、トリコサンチン、オオムギ毒素、アレウリテス・フォルジ(Aleurites fordii)タンパク質、ジランチン(dianthin)タンパク質、フィトラッカ・メリカナ(Phytolacca mericana)タンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP−S)、モモルディカ・カランティア(Momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サポナリア・オフィキナリス(saponaria officinalis)阻害剤、ミトゲリン(mitegellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、ネオマイシンおよびトリコテセン)または動物(例えば、細胞傷害性RNアーゼ、例えば、細胞外膵RNアーゼ;DNアーゼI、これらの断片および/またはバリアントを含む)が挙げられる。
抗がん剤としては、がん性細胞またはがん性になる可能性のある細胞もしくは腫瘍形成性後代(例えば、腫瘍形成性細胞)を生じる可能性のある細胞を、阻害または阻害するよう設計されている任意の化学薬剤が挙げられ得る。このような化学薬剤は、細胞成長または分裂に必要な細胞内処理に向かうことが多く、したがって一般的に急速に成長または分裂するがん性細胞に特に有効である。例えば、ビンクリスチンは、微小管を脱重合し、したがって細胞が有糸分裂に入るのを阻害する。このような薬剤は、例えばCHOP製剤など、組合せで投与されることが多く、最も有効であることが多い。繰り返すが、選択された実施形態において、このような抗がん剤は、開示された抗体とコンジュゲーションし、ADCを提供し得る。
本発明の抗体と組み合わせて(またはコンジュゲートして)使用し得る抗体の例は、限定されないが、アルキル化剤、アルキルスルホネート、アナストロゾール、アマニチン、アジリジン、エチレンイミンおよびメチルメラミン、アセトゲニン、カンプトテシン、BEZ−235、ボルテゾミブ、ブリオスタチン、カリスタチン(callystatin)、CC−1065、セリチニブ、クリゾチニブ、クリプトフィシン、ドラスタチン、デュオカルマイシン、エリュテロビン、エルロチニブ、パンクラチスタチン、サルコジクチイン、スポンジスタチン、ナイトロジェンマスタード、抗生物質、エンジイン ダイネマイシン、ビスホスホネート、エスペラミシン、色素タンパク質のエンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、アクチノマイシン(cactinomycin)、カンフォスファミド、カルビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、シクロホスファミド(cyclosphosphamide)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、トルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン,ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、エキセメスタン、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲフィチニブ、イダルビシン、ラパチニブ、レトロゾール、ロナファーニブ、マルセロマイシン、酢酸メゲストロール、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリゴマイシン(olivomycin)、パゾパニブ、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン、ラパマイン、ロドルビシン、ゾラフェニブ、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、クエン酸タモキシフェン、テモゾロミド、テパディナ(tepodina)、チピファルニブ、ツベルシジン、ウベニメクス、バンデタニブ、ボロゾール、XL−147、ジノスタチン、ゾルビシン;抗代謝物質、葉酸アナログ、プリンアナログ、アンドロゲン、抗副腎物質、フォリン酸(frolinic acid)のような葉酸補充薬、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン、ベストラブシル、ビサントレン、エダトレキサート、デフォファミン(defofamine)、デメコルチン、ジアジクオン、エフロルニチン(elfornithine)、酢酸エリプチニウム、エポチロン、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、レンチナン、ロニダミン(lonidainine)、マイタンシノイド、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモール(mopidanmol)、ニトラエリン(nitraerine)、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ロソキサントロン、ポドフィリン酸、2−エチルヒドラジド、プロカルバジン、多糖錯体、ラゾキサン;リゾキシン;SF−1126、シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”−トリクロロエチルアミン;トリコテシン類(T−2毒素、ベラキュリン(verracurin)A、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド;シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、クロラムブシル(chloranbucil);ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金アナログ、ビンブラスチン;白金;エトポシド;イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン、トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(difluorometlhylornithine);レチノイド;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン;オキサリプラチン;XL518、細胞増殖を減少させるPKC−α、Raf、H−Ras、EGFRおよびVEGF−A阻害ならびに上記のいずれかの医薬的に許容される塩または溶媒和物、酸もしくは誘導体を含む。腫瘍に対するホルモンの作用を調節するまたは阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、抗エストロゲン剤および選択的エストロゲン受容体抗体、副腎におけるエストロゲンの生成を調節する酵素であるアロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤ならびに抗アンドロゲン剤ならびにトロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、VEGF発現阻害剤およびHER2発現阻害剤などのリボザイム、ワクチン、PROLEUKIN(登録商標)rIL−2、LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤、ABARELIX(登録商標)rmRH、ビノレルビンおよびエスペラミシンならびに上記のうちのいずれかの医薬として許容される塩または溶媒和物、酸または誘導体なども本定義に含まれる。
抗がん剤は、商業的または臨床的に利用可能な化合物、例えば、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Sanofi−Aventis)、5−FU(フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、CAS番号51−21−8)、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標)、Lilly)、PD−0325901(CAS番号391210−10−9、Pfizer)、シスプラチン(cis−ジアミン、ジクロロ白金(II)、CAS番号15663−27−1)、カルボプラチン(CAS番号41575−94−4)、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、テモゾロミド(4−メチル−5−オキソ−2,3,4,6,8−ペンタアザビシクロ[4.3.0]ノナ−2,7,9−トリエン−9−カルボキサミド、CAS番号85622−93−1、TEMODAR(登録商標)、TEMODAL(登録商標)、Schering Plough)、タモキシフェン((Z)−2−[4−(1,2−ジフェニルブタ−1−エニル)フェノキシ]−N,N−ジメチルエタンアミン、NOLVADEX(登録商標)、ISTUBAL(登録商標)、VALODEX(登録商標))およびドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標))を含む。さらなる商業的または臨床的に利用可能な抗がん剤は、オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、Sanofi)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millennium Pharm.)、スーテント(SUNITINIB(登録商標)、SU11248、Pfizer)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、XL−518(Mek阻害剤、Exelixis、WO2007/044515)、ARRY−886(Mek阻害剤、AZD6244、Array BioPharma、Astra Zeneca)、SF−1126(PI3K阻害剤、Semafore Pharmaceuticals)、BEZ−235(PI3K阻害剤、Novartis)、XL−147(PI3K阻害剤、Exelixis)、PTK787/ZK 222584(Novartis)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、リューコボリン(フォリン酸)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファーニブ(SARASAR(商標)、SCH 66336、Schering Plough)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、BAY43−9006、Bayer Labs)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、イリノテカン(CAMPTOSAR(登録商標)、CPT−11、Pfizer)、ティピファニブ(ZARNESTRA(商標)、Johnson&Johnson)、ABRAXANE(商標)(Cremophor−free)、パクリタキセルのアルブミン改変ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners、Schaumberg、Il)、バンデタニブ(rINN、ZD6474、ZACTIMA(登録商標)、AstraZeneca)、クロラムブシル、AG1478、AG1571(SU 5271;Sugen)、テムシロリムス(TORISEL(登録商標)、Wyeth)、パゾパニブ(GlaxoSmithKline)、カンフォスファミド(TELCYTA(登録商標)、Telik)、チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標)、NEOSAR(登録商標))、ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標)、Roche)、タモキシフェン(例えば、NOLVADEX(登録商標)、クエン酸タモキシフェン、FARESTON(登録商標)(クエン酸トレミフェン(toremifine))、MEGASE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、AROMASIN(登録商標)(エキセメスタン;Pfizer)、フォルメスタン(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボロゾール)、FEMARA(登録商標)(レトロゾール;Novartis)およびARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾール;AstraZeneca)を含む。
用語「医薬として許容される塩」または「塩」は、分子または巨大分子の有機または無機塩を意味する。酸付加塩は、アミノ基と共に形成され得る。例示的な塩としては、これらに限定されないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(すなわち、1,1’メチレンビス−(2−ヒドロキシ3−ナフトエート))が挙げられる。医薬として許容される塩は、例えば、酢酸イオン、コハク酸イオンまたは他の対イオンなどの別の分子が包含されたものを含み得る。対イオンは、親化合物の電荷を安定化させる任意の有機または無機部分であり得る。さらに、医薬として許容される塩は、その構造内に2つ以上の荷電原子を有し得る。複数の荷電原子が医薬として許容される塩の一部である場合、この塩は複数の対イオンを有し得る。したがって、医薬として許容される塩は、1つ以上の荷電原子および/または1つ以上の対イオンを有し得る。
「医薬として許容される溶媒和物」または「溶媒和物」は、1つ以上の溶媒分子と分子または巨大分子との会合物を指す。医薬として許容される溶媒和物を形成する溶媒の例としては、これらに限定されないが、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸およびエタノールアミンが挙げられる。
他の実施形態において、本発明の抗体またはADCは、現在臨床試験にあるまたは市販のいくつかの抗体(または免疫療法剤)のいずれか1つと組み合わせて使用し得る。開示された抗体は、アバゴボマブ、アデカツムマブ、アフツズマブ、アレムツズマブ、アルツモマブ、アマツキシマブ、アナツモマブ、アルシツモマブ、アテゾリズマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ、カンツズマブ、カツマキソマブ、セツキシマブ、シタツズマブ、シクスツムマブ、クリバツズマブ、コナツムマブ、ダラツムマブ、ドロジツマブ、デュリゴツマブ、デュシギツマブ、デツモマブ、ダセツズマブ、ダロツズマブ、エクロメキシマブ、エロツズマブ、エンシツキシマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、ファルレツズマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フランボツマブ、フツキシマブ、ガニツマブ、ゲムツズマブ、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブ、イブリツモマブ、イゴボマブ、イムガツズマブ、インダツキシマブ、イノツズマブ、インテツムマブ、イピリムマブ、イラツムマブ、ラベツズマブ、ラムブロリズマブ、レクサツムマブ、リンツズマブ、ロルボツズマブ、ルカツムマブ、マパツムマブ、マツズマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モキセツモマブ、ナルナツマブ、ナプツモマブ、ネシツムマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブ(nofetumomabn)、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オラパリブ、オナルツズマブ、オポルツズマブ、オレゴボマブ、パニツムマブ、パーサツズマブ、パトリツマブ、ペンブロリズマブ、ペムツモマブ、パーツズマブ、ピジリズマブ、ピンツモマブ、プリツムマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラムシルマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、サツモマブ、セルメチニブ、シブロツズマブ、シルツキシマブ、シムツズマブ、ソリトマブ、タカツズマブ、タプリツモマブ、テナツモマブ、テプロツムマブ、チガツズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、ツコツズマブ、ウブリツキシマブ、ベルツズマブ、ボルセツズマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、CC49、3F8、MDX−1105およびMEDI4736ならびにこれらの組合せからなる群から選択される抗体と組み合わせて使用され得る。
他の実施形態は、がん治療のために承認された抗体、例えば、これらに限定されないが、リツキシマブ、ゲムツズマブ オゾガマイシン、アレムツズマブ、イブリツモマブ チウキセタン、トシツモマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ(patitumumab)、オファツムマブ、イピリムマブおよびブレンツキシマブベドチンの使用を含む。当業者は、本明細書の教示に適合するさらなる抗がん剤を容易に特定することができる。
E.放射線療法
本発明は、抗体またはADCと、放射線療法(つまり、腫瘍細胞内で局所的にDNA損傷を誘導する任意の機構、例えば、ガンマ線照射、X線、UV照射、マイクロ波、電子放出など)との組み合わせも提供する。腫瘍細胞への放射性同位体の方向付けられた送達を使用する併用療法も検討され、開示された抗体またはADCは、標的抗がん剤または他の標的化手段と結び付けて使用することができる。典型的には、放射線療法は、約1−約2週間の期間にわたりパルスで投与される。放射線療法は、頭頚部がんを有する対象に約6−7週間投与されてもよい。任意選択的に、放射線療法は、単回用量としてまたは複数回の連続用量として投与されてもよい。
VIII.適応症
本発明は、本発明の抗体およびADCの、様々な障害、例えば、新生物、炎症性、血管新生および免疫学的障害ならびに毒素によって引き起こされる障害の診断、診断治療、処置および/または予防のための使用を提供する。ある特定の実施形態において、処置される疾患は、固形腫瘍を含む新生物状態を含む。他の実施形態において、処置される疾患は、血液悪性疾患を含む。ある特定の実施形態において、本発明の抗体またはADCは、MFI2決定因子を発現する腫瘍または腫瘍形成性細胞を処置するために使用される。好ましくは、処置される「対象」または「患者」はヒトであるが、本明細書で使用するとき、それらの用語は、あらゆる哺乳動物種を含むものとして表される。
本発明に従った新生物状態の処置対象は、良性または悪性であり得、固形腫瘍および血液悪性疾患であり得、限定されないが、以下の群から選択され得る;副腎腫瘍、AIDS−関連がん、胞状軟部肉腫、星細胞系腫瘍、自律神経節腫瘍、膀胱がん(扁平上皮がんおよび移行上皮がん)、胞胚腔障害、骨がん(アダマンチノーマ、動脈瘤様骨のう腫(aneurismal bone cyst)、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄がん、転移性脳腫瘍、乳がん、頸動脈球腫瘍、子宮頚部がん、軟骨肉腫、脊索腫、嫌色素性腎細胞癌、腎明細胞癌、結腸がん、結腸直腸がん、深在性良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣腫、上皮障害、ユーイング腫瘍、骨外性粘液様軟骨肉腫、骨性線維形成不全症(fibrogenesis imperfecta ossium)、線維性骨異形成症、胆嚢および胆管がん、胃がん、胃腸、妊娠性絨毛性疾患、胚細胞腫瘍、腺障害、頭頚部がん、視床下部、腸がん、島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓がん(腎芽腫、乳頭状腎細胞がん)、白血病、脂肪腫/良性脂肪腫様腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪腫様腫瘍、肝臓がん(肝芽腫、肝細胞がん)、リンパ腫、肺がん(小細胞がん、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなど)、マクロファージ障害(macrophagal disorder)、髄芽腫、メラノーマ、髄膜腫、多発性内分泌腫瘍症、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽細胞腫、神経内分泌腫瘍、卵巣がん、膵臓がん、甲状腺乳頭がん、副甲状腺腫瘍、小児科がん、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体膿瘍腫瘍、前立腺がん、後ブドウ膜黒色腫、希少血液障害(rare hematologic disorder)、腎性転移性がん、ラブドイド腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚がん、軟組織肉腫、扁平上皮がん、胃がん、間質障害、滑膜肉腫、精巣がん、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺転移性がんおよび子宮がん(子宮頚部癌、子宮内膜癌および平滑筋腫)。
ある特定の実施形態において、本発明の化合物および組成物は、第一選択治療として使用され、がん性状態に関して以前に処置されたことがない対象に投与される。他の実施形態において、本発明の化合物および組成物は、以前に(本発明の抗体またはADCを用いてまたは他の抗がん剤を用いて)処置され、再燃した対象または以前の処置に対して不応性と判断された対象を処置するために使用される。選択された実施形態において、本発明の化合物および組成物は、再発性腫瘍を有する対象を処置するために使用され得る。
ある特定の選択された実施形態において、処置される増殖性障害は、固形腫瘍、例えば、限定されないが、副腎、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、胃、卵巣、子宮頸部、子宮、食道、結腸直腸、前立腺、膵臓、肺(小細胞および非小細胞の両方を含む)、甲状腺、癌腫、肉腫、神経膠芽腫および様々な頭頚部の腫瘍を含む。
他の選択された実施形態においておよび下記実施例に示されるように、開示された抗体薬物コンジュゲートは、乳がん、例えばトリプルネガティブ乳がんの処置に特に有効である。ある特定の実施形態において、乳がんは、BR−基底様、BR−HER2、BR−LumA、BR−LumBまたはBR−未確定腫瘍を含む。一実施形態において、乳がんに罹患している対象は、カペシタビン(例えば、Xeloda)、カルボプラチン(例えば、Paraplatin)、シスプラチン(例えば、Platinol)、シクロホスファミド(例えば、Neosar)、ドセタキセル(例えば、DocefrezまたはTaxotere)、ドキソルビシン(例えば、Adriamycin)、ペグ化リポソーマルドキソルビシン(例えば、Doxil)、エピルビシン(例えば、Ellence)、フルオロウラシル(例えば、5−FUまたはAdrucil)、ゲムシタビン(例えば、Gemzar)、メトトレキサート、パクリタキセル(例えば、Taxol)、タンパク結合パクリタキセル(例えば、Abraxane)、ビノレルビン(例えば、Navelbine)、エリブリン(例えば、Halaven)およびイクサベピロン(例えば、Ixempra)からなる群から選択される薬物を用いた処置に対して不応性、再発性または耐性である。他の実施形態において、対象は、カペシタビン(例えば、Xeloda)、カルボプラチン(例えば、Paraplatin)、シスプラチン(例えば、Platinol)、シクロホスファミド(例えば、Neosar)、ドセタキセル(例えば、DocefrezもしくはTaxotere)、ドキソルビシン(例えば、Adriamycin)、ペグ化リポソーマルドキソルビシン(例えば、Doxil)、エピルビシン(例えば、Ellence)、フルオロウラシル(例えば、5−FUもしくはAdrucil)、ゲムシタビン(例えば、Gemzar)、メトトレキサート、パクリタキセル(例えば、Taxol)、タンパク結合パクリタキセル(例えば、Abraxane)、ビノレルビン(例えば、Navelbine)、エリブリン(例えば、Halaven)およびイクサベピロン(例えば、Ixempra)からなる群から選択される1つ以上の薬物を用いた処置の後に生じた再発乳房腫瘍に罹患している。
さらに他の好ましい実施形態において、化合物または組成物は、メラノーマに罹患している対象に投与される。より一般的に、本明細書に開示された組成物および方法は、メラノーマを診断、監視、処置または予防するために使用され得る。用語「メラノーマ」は、本明細書で使用されるとき、全ての種類のメラノーマ、例えば、限定されないが、原発性メラノーマ、悪性メラノーマ、皮膚メラノーマ、真皮外メラノーマ、表在拡大型メラノーマ、ポリープ状メラノーマ、黒色癌、黒色上皮腫、黒色肉腫、上皮内メラノーマ(melanoma in situ)、結節型悪性メラノーマ、悪性黒子型メラノーマ、黒子型メラノーマ、黒子型悪性メラノーマ、粘膜部黒子型メラノーマ、粘膜部メラノーマ、末端黒子型メラノーマ、軟組織メラノーマ、眼内メラノーマ、浸潤性メラノーマ、家族性異型母斑メラノーマ(FAM−M)症候群、線維形成性悪性メラノーマまたはぶどう膜メラノーマを含む。
転移性メラノーマは、メラノサイト、メラノサイト性母斑または異形成母斑から派生する可能性があり、腫瘍進行の様々な段階(例えば、肥大成長段階または垂直成長段階)を通じて発展し得る。メラノーマは、染色体異常、変性成長および/または発達障害、分裂促進剤、紫外線照射、ウイルス感染、発癌物質、様々な遺伝子変異または遺伝子の異常発現によって生じる可能性がある。
他の実施形態において、開示された抗体およびADCは、肺がん、例えば、以下のサブタイプ:小細胞肺がんおよび非小細胞肺がん(例えば、扁平上皮非小細胞肺がんまたは扁平上皮小細胞肺がん)の処置に特に有効である。選択された実施形態において、抗体およびADCは、限定された病期の疾患または広範囲の病期の疾患を示す患者に投与され得る。他の実施形態において、開示されたコンジュゲート抗体は、不応性患者(つまり、初期治療の全工程中または直後に疾患を再発する患者)、感受性のある患者(つまり、再発が一次治療から2〜3カ月後より長い患者);または白金系薬剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン)および/もしくはタキサン(例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセルもしくはカバジタキセル)に耐性を示す患者に投与される。
血液悪性疾患に関して、本発明の化合物および方法は、様々な種類のB細胞性リンパ腫、例えば、低悪性度/NHL濾胞細胞リンパ腫(FCC)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞リンパ腫(DLCL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小非分割細胞NHL、巨大腫瘤病変NHL、ワルデンストレームマクログロブリン血症、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞リンパ腫(DLCL)、バーキットリンパ腫(BL)、AIDS関連リンパ腫、単球B細胞リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ節症(angioimmunoblastic lymphoadenopathy)、小リンパ球性、濾胞性、びまん性大細胞、びまん性小分割細胞型、大細胞免疫芽球性リンパ芽球腫、小非分割バーキットおよび非バーキット濾胞性優性大細胞;濾胞性優性小分割細胞;ならびに濾胞性混合小分割および大細胞リンパ腫を処置するために特に有効であり得ることがさらに認識される。Gaidonoら、「Lymphomas」、IN CANCER:PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY、第2巻:2131−2145(DeVitaら編、第5版、1997)を参照。これらのリンパ腫が分類体系の変更によってしばしば異なる名称を有し、異なる名称で分類されたリンパ腫を有する患者も本発明の組み合わされた治療レジメンによって利益を得る場合があることは、当業者にとって明らかである。
IX.製品
本発明は、1つ以上の容器を含む医薬パックまたはキットを含み、ここで、容器は、1用量以上の本発明の抗体またはADCを含み得る。ある特定の実施形態において、パックまたはキットは、単位用量を含み、単位用量とは、例えば、本発明の抗体またはADCを、1つ以上の添加剤および任意選択的に1つ以上の抗がん剤を伴ってまたは伴わずに含む組成物の所定の量を意味する。
本発明のキットは、一般的に、適切な容器内に、本発明の抗体またはADCの医薬として許容される製剤を含有し、任意選択的に、同じまたは異なる容器に1つ以上の抗がん剤を含む。キットは、診断または併用療法のいずれかのために、他の医薬として許容される製剤または装置を含んでもよい。診断装置または機器の例としては、細胞または増殖性障害に伴うマーカーの検出、監視、定量化またはプロファイルに使用し得るものを含む(このようなマーカーの全ての列挙について、上記参照)。いくつかの実施形態において、装置は、インビボまたはインビトロのいずれかで、循環する腫瘍細胞を検出、監視および/または定量化するために使用することができる(例えば、WO2012/0128801を参照)。さらに他の実施形態において、循環する腫瘍細胞は、腫瘍形成性細胞を含んでもよい。本発明で検討されるキットは、本発明の抗体またはADCを抗がん剤または診断剤と組み合わせるための適切な試薬を含んでもよい(例えば、U.S.P.N.7,422,739を参照)。
キットの成分が1つ以上の液体溶液で提供される場合、液体溶液は非水性であり得るが、水溶液が好ましく、滅菌水溶液も含まれる。キット内の製剤は、乾燥粉末として、または適切な液体の添加により再構成され得る凍結乾燥形態で提供されてもよい。再構成に使用される液体は、別個の容器に含有され得る。このような液体は、滅菌の医薬として許容されるバッファーまたは他の希釈剤、例えば、注射用滅菌水、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液またはデキストロース液を含み得る。キットが、本発明の抗体またはADCをさらなる治療薬または薬剤との組合せで含む場合、溶液はモル当量の組合せで、または一方の成分を他方より過剰にして予め混合されていてもよい。代替的に、本発明の抗体またはADCおよびいずれかの任意選択の抗がん剤または他の薬剤は、患者への投与前は別個の容器内で別個に維持されていてもよい。
キットは、1つまたは複数の容器、および封入される組成物が選択される疾患状態の診断または処置に使用されることを示す標識または添付文書を、容器内に、容器上にまたは容器に付随して含んでもよい。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどが含まれる。容器は、様々な材料、例えば、ガラスまたはプラスチックなどで形成することができる。容器は、滅菌アクセスポートを含んでもよく、例えば、容器は、皮下注射針で穴を開けることができるストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであってもよい。
いくつかの実施形態において、キットは、抗体およびいずれかの任意選択の成分を患者に投与するための手段、例えば、製剤を対象に注射もしくは導入するまたは身体の疾患領域に適用することができる、1つ以上の針またはシリンジ(充填済または空)、点眼器、ピペットまたは他の同様の装置を含んでもよい。本発明のキットは、典型的に、バイアルまたはそれと同様のもの、および市販のために厳重に密封された状態の他の要素、例えば、所望のバイアルおよび他の装置を配置および保持できる中空プラスチック容器を含有するための手段も含む。
X.その他
本明細書において別段に定義されない限り、本発明に関連して使用される科学的および技術的用語は、当業者に一般に理解される意味を有する。さらに、文脈によって別途要求されない限り、単数形は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。さらに、本明細書および添付の特許請求の範囲において提供される範囲は、両方の終点および終点の間の全ての点を含む。したがって、2.0から3.0の範囲は、2.0、3.0および2.0と3.0との間の全ての点を含む。
一般的に、本明細書に記載の細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学および化学に関する技術は、当該技術分野において周知であり、一般に使用されているものである。本明細書で使用される命名法は、このような技術に関連して、当該技術分野でも一般に使用されている。他に指示されていない限り、本発明の方法および技術は、一般的に、当該技術分野で周知のおよび本明細書を通じて引用されている様々な参照文献に記載された通常の方法に従って実施される。
XI.参照文献
本明細書で引用されている全ての特許、特許出願および出版物ならびに電子工学的に利用可能な資料(例えば、GenBankおよびRefSeqにおけるヌクレオチド配列提出物、ならびに例えば、SwissProt、PIR、PRF、PBDにおけるアミノ酸配列提出物ならびにGenBankおよびRefSeqにおける注釈の付されたコード領域からの翻訳物を含む)の完全な開示は、「参照により組み込む」という文言が特定の参照文献に関連して使用されているか否かに関わらず、参照により組み込む。前述の詳細な説明および以下の実施例は、理解を明確にするためにのみ提供される。それによって不必要に限定されないことが理解されるものとする。本発明は、示され、記載されている正確な詳細に限定されない。当業者にとって明らかな変形は、特許請求の範囲によって定義された本発明に含まれる。本明細書で使用されるあらゆる標題は組織化を目的とするものにすぎず、記載の主題を限定するものとして解釈されるべきでない。
XII.配列表の要約
本出願には、いくつかの核酸配列およびアミノ酸配を含む配列表を添付している。以下の表3は、含まれる配列の概要を提供する。
上記で全体的に説明した本発明は、以下の実施例を参照することにより、さらに容易に理解される。以下の実施例は、例証として提供され、本発明を限定することを意図していない。実施例は、以下の実験が、実施される全てまたは唯一の実験であると表すことを意図していない。別途指示しない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧または大気圧近傍である。
PDX腫瘍細胞のタイプは、特定の腫瘍細胞株を表す略称とそれに続く番号で示されている。試験した試料の継代数は、試料の命名に付属したp0〜p#で表され、ここでp0は患者腫瘍から直接取得された非継代の試料を示し、p#は試験前のマウスから腫瘍が継代された回数を示す。本明細書で使用される場合、腫瘍のタイプおよびサブタイプの略称が以下の通り表4に示される:
[実施例1]
全トランスクリプトーム配列決定を使用したMFI2発現の同定
がん患者に存在する固形腫瘍の細胞異質性を特徴付け、臨床的に関連する治療標的を同定するために、当該技術分野で認識されている技術を使用して、大規模なPDX腫瘍バンクを開発し、維持した。多数の個別の腫瘍細胞株を含むPDX腫瘍バンクは、様々な固形腫瘍悪性病変に罹患しているがん患者から初めに取得した腫瘍細胞の複数回継代により免疫無防備状態マウスで増殖させた。低継代PDX腫瘍は、天然環境にある腫瘍を表し、腫瘍の成長および現行治療に対する耐性を駆動させる根底のメカニズムに臨床的に関連する洞察を与える。
腫瘍細胞は、2つの種類の細胞小集団:非腫瘍形成性細胞(NTG)と腫瘍開始細胞(TIC)とに大きく分けることができる。TICは、免疫無防備状態マウスに移植されたとき、腫瘍を形成する能力を有する。がん幹細胞(CSC)は、多系列分化の能力を維持しながら、不確定に自己複製することができるTICの一区分である。NTGは、時にはインビボで増殖することができるが、移植されたとき、当初の腫瘍の異種性を再現する腫瘍を形成しない。
全トランスクリプトーム解析を実施するために、腫瘍バンクからのPDX腫瘍を、800〜2,000mm3に達した後でマウスから切除した。切除したPDX腫瘍を、当該技術分野で認識されている酵素消化技術(例えば、U.S.P.N.2007/0292414参照)を使用して、単一細胞懸濁液に解離した。解離されたバルク腫瘍細胞を、死細胞を検出するための4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)、マウス細胞を同定するための抗マウスCD45およびH−2Kd抗体ならびにヒト細胞を同定するための抗ヒトEPCAM抗体と共にインキュベートした。さらに腫瘍細胞を蛍光コンジュゲート抗ヒトCD46および/またはCD324抗体と共に、インキュベートして、CD46hiCD324+CSCまたはCD46lo/−CD324−NTG細胞を同定し、この後、FACSAria細胞ソーター(BD Biosciences)を使用して選別した(U.S.P.N.2013/0260385、2013/0061340および2013/0061342)参照。
細胞を、1%の2−メルカプトエタノールを補足したRLTプラスRNA溶解バッファー(Qiagen)中に溶解させ、溶解物を−80℃で凍結させてから、RNeasy単離キット(Qiagen)を使用するRNAの抽出のために、溶解物を解凍することによって、腫瘍細胞からRNAを抽出した。RNAを、Nanodrop分光光度計(Thermo Scientific)および/またはBioanalyzer2100(Agilent Technologies)を使用して定量した。正常組織RNAは、様々な供給元(Life Technology、Agilent、ScienCell、BioChainおよびClontech)から購入した。得られた全RNA調製物を、遺伝子配列決定および遺伝子発現解析により評価した。
高品質RNAの全トランスクリプトーム配列決定を、2つの異なるシステムを使用して実施した。ある特定のBRおよびSK PDX腫瘍試料を、Oligo Ligation/Detection(SOLiD)4.5またはSOLiD 5500xl次世代配列決定システム(Life Technologies)によるApplied Biosystems(ABI)配列決定を使用して解析した。LU PDX腫瘍試料は、Illumina HiSeq2000または2500次世代シーケンシングシステム(Illumina)を使用して解析した。
SOLiD全トランスクリプトーム解析を、選別されたBRまたはバルクSK腫瘍試料由来の1ngのRNAから生成したcDNAで、低インプット全RNAについて設計したABIからの改変全トランスクリプトームプロトコールまたはOvation RNA−Seq System V2(商標)(NuGEN Technologies)のいずれかを使用して実施した。得られたcDNAライブラリを断片化し、配列決定実施の間の異なる試料からの断片ライブラリのプールを可能にするためにバーコードアダプターを加えた。SOLiDプラットフォームにより生成したデータは、公開されたヒトゲノムのNCBIバージョンhg19.2を用いたRefSeqバージョン47により注釈の付された34,609遺伝子にマッピングされ、ほとんどの試料においてRNAレベルの検証可能な測定を提供した。SOLiDプラットフォームからの配列決定データは、遺伝子のエクソン領域にマッピングされた測量単位RPKM(100万あたりキロベースあたりのリード数)を使用した転写産物発現値として名目上表され、基本的な遺伝子発現解析を、RPKM_転写産物として正規化および計数することが可能になっている。MFI2 mRNA発現は、PDX株:BR31およびBR25において、BR CSCの方がNTG細胞および正常組織と比較して高かった。MFI2 mRNA発現は、PDX株:SK3およびSK13において、バルクSK PDXの方が、メラノサイトを含む正常組織と比較して高かった(図1A)。
Illumina全トランスクリプトーム解析は、実施例1で上述のように単離したNTGまたはCSC腫瘍小集団のいずれかから抽出した5ngの全RNAを使用して生成したcDNAを用いて実施した。ライブラリを、TruSeq RNA Sample Preparation Kit v2(Illumina)を使用して作製した。得られたcDNAライブラリを断片化し、バーコード付加した。Illuminaプラットフォームからの配列決定データは、遺伝子のエクソン領域にマッピングされた測量単位FPKM(100万あたりキロベースあたりの断片数)を使用した断片発現値として名目上表され、基本的な遺伝子発現解析を、FPKM_転写産物として正規化および計数することが可能になっている。CSC腫瘍細胞小集団におけるMFI2 mRNA発現は、両方の正常細胞における発現よりも高く、以下のLUおよびCR PDX腫瘍細胞株:LU120、LU128、LU152、LU244およびCR4におけるNTG細胞集団と比較して高かった(図1B)。
BR、SK、LUおよびCR PDX腫瘍で上昇したMFI2 mRNA発現が特定されることは、MFI2が、有望な診断および免疫療法標的としてさらに評価する価値があることを表していた。さらに、BR、CRおよびLU PDX腫瘍においてMFI2の発現はCSCの方がNTGと比較して増加しており、このことは、MFI2がこれらの種類の腫瘍における腫瘍形成性細胞の良好なマーカーであることを示している。
[実施例2]
qRT−PCRを使用した腫瘍におけるMFI2mRNAの発現
ヒトMFI2遺伝子は、16エクソン長の2377bpのアイソフォーム(Genbank受託番号NM_005929)およびより短い7エクソンの1651bpのアイソフォーム(Genbank受託番号NM_033316)の2つの転写物をコードする。短いおよび長いアイソフォームの最初の6つのエクソンは、同一である。しかしながら、短いアイソフォームの第7番目および最後のエクソンは、インフレーム末端シグナルを含み、短縮されたタンパク質を生じる。MFI2タンパク質(「hMFI2」)の長いアイソフォームは、GPI−膜固定された738アミノ酸のタンパク質である。短いアイソフォーム(「hΔMFI2」)は、予測された長さの302アミノ酸を有し、GPIアンカーモチーフを有さず、したがって分泌タンパク質と考えられる。図2Aは、hMFI2の模式図であり、両方のアイソフォームを示している。
本発明の抗MFI2抗体は、短いまたは長いアイソフォームに結合するかにかかわらず腫瘍の有効な処置または診断方法として使用することができるが、抗体の局在化を腫瘍位置に最適化し、抗体内在化を向上するために、膜固定された長いアイソフォームに結合することが、本発明の抗体にとって特に有利である。実施例1および2の結果を確認するために、ならびに様々なPDX腫瘍細胞株でどのhMFI2アイソフォームが発現されているかを決定するために。
腫瘍細胞におけるMFI2RNA発現を確認するために、qRT−PCRを、Fluidigm BioMark(商標)HDシステムを使用して、産業上の標準プロトコールに従って、様々なPDX細胞株に対して行った。実施例1に記載されているように、RNAを、バルクPDX腫瘍細胞または選別されたCSCおよびNTG小集団から抽出した。1ngのRNAを、高性能cDNAアーカイブキット(Life Technologies)を使用して、製造業者の指示書に従ってcDNAに変換した。cDNA材料は、MFI2の長いアイソフォームに特異的なTaqmanアッセイを使用して事前に増幅させた後、次のqRT−PCR実験に使用した。
正常組織(NormToxまたはNorm)における発現を、BR、CR、EM、LU、PAおよびSK PDX腫瘍細胞株における発現と比較した(図2B;各ドットは、各個体組織またはPDX細胞株の平均相対発現を表し、小さい水平線は幾何平均を表している。)。「NormTox」は、様々な以下の正常組織の試料を表す:副腎、動脈、結腸、後根神経節、食道、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、骨格筋、皮膚、線維芽細胞、ケラチノサイト、小腸、脾臓、胃、気管および静脈。「Norm」と称される別の組の正常組織は、ADC型薬物に関連して「NormTox」細胞と比較して毒性に対するリスクが低いと予測される、以下の正常組織の試料を表す:末梢血単核細胞および様々に選別された小集団(B細胞、単球、NK細胞、好中球、T細胞)、脳、乳房、メラノサイト、正常骨髄および様々に選別された小集団および精巣。図2Bは、平均のMFI2発現が、乳房(BR−基底様);結腸直腸、肺(LU−Ad、LU−LCCおよびLU−SCC);膵臓および皮膚(SK−MEL)腫瘍ならびにEM腫瘍の分画において、NormおよびNormTox組織と比較して高かったことを示している。このデータは、BR、LUおよびSK PDXにおけるMFI2の発現が正常組織と比較して上昇しているという先の知見を支持する。
MFI2発現は、上記実施例1で記載されたように、CSCおよびNTGに選別された様々なPDX腫瘍細胞株でも測定された。MFI2発現は、腫瘍サブタイプ:BR−基底様(BR22、BR31);BR−CLDN低(BR25);CR(CR4);LU−Ad(LU123);およびLU−SCC(LU116およびLU128)(図2C)において、CSCの方が、NTGと比較して高かった。前記LU PDX腫瘍株とは対照的に、LU206は、MFI2の発現が低かった(図2B)。この知見は、後にLU206のMFI2タンパク質発現のレベルを決定するときに確認された(以下の実施例16を参照)。
このような知見は、MFI2発現レベルと、BR、CRおよびLUを含む様々な腫瘍サブタイプとの間で観察された関連性をさらに支持する。
[実施例3]
マイクロアレイを使用した腫瘍におけるMFI2 mRNA発現の決定
GPI固定hMFI2全長アイソフォームについてマイクロアレイ実験を実施し、データを以下のように分析した。1〜2μgの全腫瘍の全RNAを、実質的に実施例1に記載されたように、BR、CR、LU、PAおよびSKのPDX細胞株から抽出した。試料を、ヒトゲノムにおける27,958遺伝子および7,419lncRNAに対して設計された50,599個の生物学的プローブを含むAgilent SurePrint GEヒト8×60v2マイクロアレイプラットフォームを使用して解析した。標準的産業手段を使用して、強度値を正規化し、変換し、各試料について遺伝子発現を定量した。各試料におけるMFI2発現の正規化強度を図3にプロットし、各腫瘍タイプに由来する幾何平均を水平棒で示す。
図3は、BR(BR−基底様、BR−CLDN低、BR−HER2、BR−NL)、CR、LU(LU−Ad、LU−SCC)、PAおよびSKにおけるMFI2の長いアイソフォームの発現を正常組織と比較して示している。前記腫瘍型においてMFI2発現の上昇が観察されることにより、実施例1および2の結果が確認される。さらに、LU206は、MFI2を発現しないことが示され、実施例16において記載したこの特定のPDX腫瘍株についてのフローサイトメトリの結果が確認された。特に3つ全てのプラットフォームで解析されたBR25、BR31およびCR4が、全トランスクリプトームRNA配列決定(実施例1)、qRT−PCR(実施例2)およびマイクロアレイ(実施例3)で測定したとき、長いアイソフォームのMFI2発現が上昇していることを示している。これらのデータは、MFI2の長いアイソフォームが、BR、CR、LU、PAおよびSKを含むいくつかの腫瘍サブタイプで発現しており、これらの適応症の抗体ベースの治療法の開発における良好な標的となり得ることを実証している。
[実施例4]
がんゲノムアトラスを使用した腫瘍におけるMFI2の発現
様々な腫瘍におけるhMFI2 mRNAの過剰発現を、がんゲノムアトラス(The Cancer Genome Atlas、TCGA)として知られる大規模な公的に利用可能な原発性腫瘍および正常試料のデータセットを使用して確認した。IlluminaHiSeq_RNASeqV2プラットフォームからのhMFI2発現データを、TCGAデータポータル(https://tcga−data.nci.nih.gov/tcga/tcgaDownload.jsp)からダウンロードし、解析して各遺伝子の個々のエクソンからのリードを集計し、マッピングされたリード100万あたりエクソンのキロベースあたりの単一値のリードを生成した(RPKM)。図4Aは、MFI2発現が、正常組織と比較して以下のPDX腫瘍株で上昇していることを示している:BD、BR(BR−TNBC);CR;RE−Ad、ES、GA、LU(LU−Ad、LU−SCC);OV;PA;およびSK。これらのデータは、MFI2 mRNAのレベル上昇が上述の腫瘍型で見出され得ることを確認するものであり、抗MFI2抗体およびADCがこれらの腫瘍に対する有用な治療法であり得ることを示している。
図4Bは、患者の生存データが利用可能であったLU−Ad TCGA腫瘍のサブセットについてのKaplan Meier生存曲線を示す。患者を、LU−Ad腫瘍におけるMFI2 mRNAの高発現、つまり閾値指標値を上回る発現またはMFI2 mRNAの低発現、つまり閾値指標値を下回る発現に基づいて階層化した。閾値指標値は、RPKM値の算術平均として計算され、算術平均は5.42と計算された。
プロットの下に示されている「リスクのある数(numbers at risk)」は、各患者が最初に診断された日(0日目)から1000日毎のデータセットで残っている生存患者の数を示す。2つの生存曲線は、Gehan−Breslow−Wilcoxon テストによるp=0.0004とLog−rank(Mantel−Cox)テスト(p=0.0002)により有意な差異がある。これらのデータは、MFI2の高発現を示すLU−Ad腫瘍を有する患者が、MFI2の低発現を示すLU−Ad腫瘍を有する患者と比較して、生存時間がはるかに短いことを示す。このことは、LU−Adを処置するための抗MFI2治療の有用性および処置決定をなし得る基礎の予後診断バイオマーカーとしてのMFI2発現の有用性を示唆する。
[実施例5]
組換えMFI2タンパク質のクローニングおよび発現ならびに細胞表面MFI2タンパク質を過剰発現している細胞株の操作
ヒトMFI2(hMFI2)
hMFI2タンパク質に関する本発明の全ての分子および細胞材料を生成するために、市販のヒトMFI2 cDNAクローンを、Thermo Scientific(IMAGEクローン100016036;受託番号BC152832)から購入し、このオープンリーディングフレームをBLAST解析により決定して、hMFI2、受託番号NP_005920についてのRefSeqと100%同一のタンパク質をコード化した。BC152832 cDNAクローンを、この後の全ての成熟hMFI2タンパク質またはこの断片を発現する構築物の操作に使用した。
hMFI2タンパク質に対する免疫反応性抗体を作製するために、hMFI2タンパク質の細胞外ドメイン(ECD)を、ヒスチジンタグまたはヒトIgG2 Fcタグのいずれかにインフレームで融合し、キメラ融合遺伝子を作製した。これは以下のように行った:hMFI2(残基G20〜C709)のECDをコードするDNA断片をBC152832 cDNAクローンからPCR増幅し、CMV駆動発現ベクターに、インフレームで、免疫グロブリンκ(IgK)シグナルペプチド配列の下流におよびヒスチジンタグまたはヒトIgG2 Fc cDNAのいずれかの上流に、標準的分子技術を使用してサブクローニングした。
CMV−駆動hMFI2発現ベクターは、HEK293Tおよび/またはCHO−S細胞において高レベルの一過性発現を可能にする。HEK293T細胞の懸濁または付着培養物または懸濁CHO−S細胞を、トランスフェクション試薬としてポリエチレンイミンポリマーを使用して、hMFI2K−ECD−HisまたはhMFI2 ECD−Fcタンパク質のいずれかをコードする発現構築物でトランスフェクトした。トランスフェクションから3−5日後に、hMFI2−ECD−HisまたはhMFI2−ECD−Fcタンパク質を、清澄化した細胞上清から、AKTAエクスプローラならびにNickel−EDTA(Qiagen)カラムまたはMabSelect SuRe(商標)タンパク質A(GE Healthcare Life Sciences)カラムのいずれかをそれぞれ使用して精製した。
ラットMFI2(rMFI2)
ヒスチジンタグまたはヒトIgG2 Fcタグのいずれかにインフレームで融合されたrMFI2のECDをコードする構築物を組み立てるために、NCBI受託番号NM_001105872に含有される配列を使用して、3つの重複する合成DNA断片(gBlocks、IDT)を設計し、CMV駆動発現ベクターに、インフレームで、IgKシグナルペプチド配列の下流におよびヒスチジンタグまたはヒトIgG2 Fc cDNAのいずれかの上流に、インビトロ組換え技術(In−Fusion、Clontech)を製造業者の指示に従って使用して、クローニングした。組換えタンパク質は、hMFI2タンパク質について上に記載したように製造した。
細胞株改変
hMFI2を過剰発現する改変細胞株を、レンチウイルスベクターを使用し、当該分野で認識されている技術を用いてHEK293T細胞株に形質導入して、構築した。初めに、標準的分子クローニング技術を使用して、IgKシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を導入し、次いでDDDKエピトープタグをコードするヌクレオチド配列をpCDH−EF1−MCS−T2A−GFP(System Biosciences)のマルチプルクローニング部位の上流に導入し、ベクターpCEMTを作製した。pCEMTにおけるT2A配列は、ペプチド結合縮合のリボソームスキッピングを促進し、2つの独立したタンパク質の発現、つまりT2Aペプチドの上流でコードされるDDDKタグ化細胞表面タンパク質の高レベル発現およびT2Aペプチドの下流でコードされるGFPマーカータンパク質の共発現を生じさせる。pCEMTを使用して、様々なMFI2ベクターを以下のように作製した:成熟hMFI2タンパク質(G20−L738残基)をコードするDNA断片を、鋳型としてBC152832cDNAクローンを使用してPCR増幅により生成し、得られたPCR産物を、pCEMTにおいて、インフレームで、IgKシグナルペプチド配列の下流−DDDKエピトープタグにサブクローニングした。これにより、pL120−hMFI2レンチウイルスベクターが得られた。このレンチウイルスベクターを使用して、hMFI2タンパク質を過剰発現する安定なHEK293T系細胞株を当業者に周知の標準的なレンチウイルス形質導入技術を用いて生成し、この後、MFI2陽性細胞選択および高発現HEK293Tサブクローン(例えば、GFPおよびFLAGエピトープに強く陽性を示す細胞)の蛍光活性化細胞選別(FACS)を行った。
[実施例6]
抗MFI2抗体の生成
抗MFI2マウス抗体を作製するために、1匹のBalb/cマウスに、10μgのhMFI2−Hisタンパク質を適切なアジュバントと共に接種した。初回の接種後、マウスに、10μgのhMFI2−Hisタンパク質を、適切なアジュバントと共に、1週間に2回、4週間にわたって接種し、最後の接種は、10μgのhMFI2−Hisタンパク質を適切なアジュバントと共に用いて行った。
マウスを屠殺し、流入リンパ節(膝窩、鼠径および内腸骨)を解離し、抗体産生細胞源として使用した。B細胞(430x106細胞)の単一細胞懸濁液を、非分泌P3x63Ag8.653骨髄腫細胞(ATCC番号CRL−1580)と、1:1の比率で、エレクトロセルフュージョンにより、BTX Hybrimmuneシステム(BTX Harvard Apparatus)モデルを使用して融合した。細胞を、アザセリン、15%の胎性クローンI血清、10%のBM 馴化培地、1mMの非必須アミノ酸、1mMのHEPE、100IUのペニシリン−ストレプトマイシンおよび50μMの2−メルカプトエタノールを補足したDMEM培地からなるハイブリドーマ選択培地に再懸濁し、フラスコあたり100mLの選択培地を含む4つのT225フラスコで培養した。フラスコを、5%CO2および95%空気を含有する加湿37℃インキュベータ内に6日間配置した。
融合の6日後、ハイブリドーマライブラリ細胞を、フラスコから回収し、液体窒素中で保存した。凍結バイアルをT75フラスコ中に解凍し、翌日、ハイブリドーマ細胞を、90μLの補足ハイブリドーマ選択培地(上記の通り)中のウェルあたり1個の細胞(FACSAria I細胞ソーターを使用)で、15Falcon 384ウェルのプレートに蒔いた。
ハイブリドーマを10日間培養し、以下の通りに実施したフローサイトメトリを使用して、hMFI2に特異的な抗体について上清をスクリーニングした。hMFI2が安定に形質導入されたウェルあたり1x105個のHEK293T細胞を、25μLのハイブリドーマ上清と共に30分間インキュベートした。細胞を、PBS/2% FCSで洗浄し、次いで試料あたり25μLの、PBS/2% FCSで1:300希釈したFc断片二次特異的、DyeLight649標識化ヤギ−抗マウスIgGと15分間インキュベートした。細胞をPBS/2%FCSで2回洗浄し、DAPIのPBS/2%FCS中で再懸濁し、アイソタイプ対照抗体で染色した細胞の蛍光を超える蛍光について、フローサイトメトリにより分析した。未使用のハイブリドーマライブラリ細胞の残りは、今後のライブラリ試験およびスクリーニングのために、液体窒素中で凍結した。
hMFI2−His免疫付与キャンペーンにより、hMFI2発現HEK293T細胞の表面に特異的に結合するマウス抗体が得られた。
[実施例7]
抗MFI2抗体の特徴
様々な方法を使用して、実施例6で生成した抗MFI2マウス抗体を、アイソタイプ、ラットMFI2との交差反応性、ラット、カニクイザルおよびヒトMFI2に対する親和性ならびにエピトープビニングの観点から特徴付けした。図5は、前記特徴をまとめた表であり、ここで「ND」は「未決定」を示す。
代表的な数の抗体のアイソタイプを、Milliplexマウス免疫グロブリン・アイソタイピング・キット(Millipore)を使用し、製造業者の指示に従って、決定した。特有のMFI2特異的抗体についての結果を図5に示す。
ラットMFI2に対する抗hMFI2マウス抗体の親和性は、以下のようにForteBio REDを用いて生成した動態曲線から定性的に決定した。8μg/mLの精製抗MFI2抗体を、抗マウスFc捕捉バイオセンサー上に、接触時間3分および振盪速度1000rpmで固定化した。捕捉された抗体のベースラインからの負荷は、0.3〜1単位で一定であった。抗体捕捉および50秒のベースライン後、バイオセンサーを300nMの精製されたhMFI2−HisまたはrMFI2−Hisタンパク質の溶液に浸し、1000rpmの振盪速度で、60秒の会合段階、続いて60秒の解離段階を行った。バイオセンサーは、各サイクル後に、10mMのグリシン、pH1.7に浸して再生した。データは、特異的な抗体応答から対照マウスIgG表面応答を差し引くことによって処理し、さらにデータを会合段階および解離段階に切り詰めた。会合および解離曲線を使用して、選択された抗体のhMFI2およびrMFI2に結合する能力を定性的に評価した。試験した抗体のうち、8つの抗体が、スクリーニングした他の抗体と比較して高い親和性でrMFI2−Hisと交差反応することが測定された(図5)。
選択されたマウスおよびヒト化抗hMFI2抗体の、ヒト、カニクイザルまたはラットMFI2タンパク質に対する親和性を、BIAcore2000機器(GE Healthcare)を使用して表面プラズモン共鳴により定量的に決定した。抗体捕捉キットを使用してCM5バイオセンサーチップ上にマウスまたはヒト化抗MFI2抗体を固定化した。各抗原の注入サイクルの前に、マウスまたはヒト化抗体を、濃度0.01〜1μg/mLで、接触時間1分および流速5μL/分で表面上に捕捉させた。捕捉抗体のベースラインからの負荷は、80〜120応答単位で一定であった。抗体捕捉および1分間のベースライン後、単量体hMFI2−His抗原、cMFI2−HisまたはrMFI2−His抗原を、様々な濃度で表面上に流動させ、1.5分の会合段階、次いで5分の解離段階を、流速10μL/分で実施した。データは、特異的な抗体表面応答から対照非結合抗体表面応答を差し引いて処理し、データを会合および解離段階へ切り詰めた。得られた応答曲線に1:1のLangmuir結合モデルを当てはめ、BiaEvaluationソフトウェア3.1(GE Healthcare)を使用して、見かけの親和性、konおよびkoff動態定数を生成した。選択された抗体は、hMFI2、cMFI2およびrMFI2に対してナノモル範囲の親和性を示した(図5)。
抗体を、マルチプレックス競合イムノアッセイ(Luminex)を使用してビンに群分けした。100μlの各特有の抗MFI2抗体(捕捉mAb)を、10μg/mLの濃度で、抗マウスカッパ抗体(Millerら、2011、PMID:21223970)にコンジュゲートした磁気ビーズ(Luminex)とともに1時間インキュベートした。捕捉mAb/コンジュゲート化ビーズ複合体を、PBSTAバッファー(0.05%Tween20を含むPBS中、1%BSA)で洗浄し、次いでプールした。残渣洗浄バッファーの除去後、ビーズを1時間、2g/mLのhMFI2−Hisタンパク質と共にインキュベートし、洗浄し、PBSTAに再懸濁した。プールされたビーズ混合物を96ウェルプレートに分配し、各ウェルに特有の抗MFI2抗体(検出因子mAb)を含有させ、撹拌しながら1時間インキュベートした。洗浄工程の後、PEにコンジュゲートされた抗マウスカッパ抗体(上記で使用したものと同じ)を5μg/mlの濃度でウェルに加え、1時間インキュベートした。ビーズを再度洗浄し、PBSTAに再懸濁した。平均蛍光強度(MFI)値を、Luminex MAGPIX装置で測定した。抗体対合は、抗体の対のPearson相関係数から計算した距離マトリックスの樹状図として視覚化した。ビニングは、樹状図および抗体の対のMFI値の解析に基づいて決定した。MFI2に対する結合親和性が低く、特定のビンに配置できなかった抗体は、ビンXとして示す。「ND」は、関連抗体に対するビニング実験が実施されなかったことを意味する。図5は、スクリーニングされた抗MFI2抗体が、hMFI2タンパク質に関して少なくとも5つの特有のビン(A〜E)にグループ分けできることを示す。
[実施例8]
抗MFI2抗体のトランスフェリンとの交差反応性
hMFI2は、トランスフェリン(Tf)ホモログであり、ヒトTfと37〜39%の相同性を有する。ヒトTfには2つの形態があり、鉄を含まないApo−Tfおよび鉄が結合しているHolo−Tfの2つの形態がある。本発明の抗体が、Apo−TfまたはHolo−Tfのいずれと交差反応するかを決定するために、ELISAアッセイを使用した。
プレートを、5μg/mLの精製hMFI2−His、Holo−Tf(RnDカタログ番号2914−HT)またはApo−Tf(RnDカタログ番号3188−AT)を含むPBSバッファーで被覆し、4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートを、PBST(PBS+0.05% Tween20)で洗浄し、3%BSAを含むPBSで1時間、37℃でブロッキングした。プレートを洗浄し、10μLの抗MFI2抗体を1.4g/mLで1時間、室温で添加した。ヤギ抗マウスIgG検出抗体を、MSD(登録商標)SULF0−TAG NHSエステルを製造業者のプロトコールに従って使用して、スルホタグ化した。MSD SULFO−TAG NHS−エステルは、弱塩基性条件下でタンパク質の一級アミン基に容易に結合して安定なアミド結合を形成するアミン反応性N−ヒドロキシスクシンイミドエステルである。プレートを洗浄し、10μL/ウェルの0.5μg/mLスルホタグ化ヤギ抗マウスIgGを室温で30分間添加した。プレートを洗浄し、MSD ReadバッファーTを界面活性剤と共に水中に1倍希釈し、35μLを各ウェルに加えた。プレートは、MSD Sector Imager2400を使用して読み取った。高シグナルは、結合を示す。試験した60のマウス抗MFI2抗体のうち、Apo−TfまたはHolo−Tfのいずれかと交差反応した抗体は無かった。これらの結果は、本発明の抗体が、血漿中の遊離トランスフェリンまたはTfを発現する正常細胞と交差反応しないことを示している。
[実施例9]
MFI2抗体の配列決定
生成した抗MFI2マウス抗体(実施例6)を下記のように配列決定した。全RNAを、選択されたハイブリドーマ細胞から、製造業者の指示に従ってRNeasy Miniprep Kit(Qiagen)を使用して、精製した。試料あたり、104から105個の間の細胞を使用した。単離したRNA試料は、使用するまで−80℃で保存した。
各ハイブリドーマのIg重鎖の可変領域を、完全マウスVHレパートリーを標的とするように設計した86のマウス特異的リーダー配列プライマーを含む2つの5’プライマーミックスと、全てのマウスIgアイソタイプに特異的な3’マウスCγプライマーとを組合せて使用して増幅させた。同様に、Vκマウスファミリーのそれぞれを増幅するように設計した64の5’Vκリーダー配列を含む2つのプライマーミックスを、マウスカッパ定常領域に特異的な単一リバースプライマーと組み合わせて使用し、カッパ軽鎖を増幅させ配列決定した。VHおよびVL転写産物は、100ngの全RNAから、Qiagen One工程RT−PCRキットを以下のように使用して増幅した。全部で4つのRT−PCR反応を、各ハイブリドーマについて実施し、2つはVκ軽鎖に対して、2つはVH重鎖に対して行った。PCR反応混合物は、1.5μLのRNA、0.4μLの100μMの重鎖またはカッパ軽鎖いずれかのプライマー(IDTによりカスタム合成)、5μLの5×RT−PCRバッファー、1μLのdNTP、ならびに逆転写酵素およびDNAポリメラーゼを含有する0.6μLの酵素ミックスを含んでいた。サーマルサイクラープログラムは、50℃で60分、95℃で15分、続いて35サイクル×(94.5℃で30秒、57℃で30秒、72℃で1分間)のRT工程であった。次いで、最終インキュベーションを72℃で10分間実施した。
抽出したPCR産物は、可変領域の増幅について上述したものと同じ特異的可変領域プライマーを使用して配列決定した。PCR産物を、PCR精製および配列決定サービスのために、外部の配列決定ベンダー(MCLAB)に送った。ヌクレオチド配列は、IMGT配列解析ツール(http://www.imgt.org/IMGTmedical/sequence_analysis.html)を使用して分析し、最も高い配列相同性を有する生殖系列V、DおよびJ遺伝子メンバーを同定した。誘導した配列は、専売抗体配列データベースを使用してVHおよびVL遺伝子をマウス生殖系列データベースにアラインメントすることにより、IgのV−およびJ−領域の既知の生殖系列DNA配列と比較した。
図6Aは、抗MFI2抗体由来の多数の新規マウス軽鎖可変領域および代表的なマウス抗MFI2抗体の可変軽鎖から誘導される例示的ヒト化軽鎖可変領域の連続するアミノ酸配列を示す。図6Bは同じ抗MFI2抗体由来の新規マウス重鎖可変領域およびヒト化軽鎖を提供する同じマウス抗体由来のヒト化重鎖可変領域の連続するアミノ酸配列を示す。マウス軽鎖および重鎖可変領域アミノ酸配列を、配列番号21〜91、奇数、に示し、一方で、ヒト化軽鎖および重鎖可変領域アミノ酸配列を、配列番号93〜107、奇数に示す。
図6Aおよび6Bは共にいくつかのマウス抗MFI2抗体の注釈の付いた配列を示し、それらは、配列番号21のVLおよび配列番号23のVHを有するSC57.1(SC57.2、57.23と同一配列);配列番号25のVLおよび配列番号27のVHを有するSC57.3(SC57.52、SC57.55と同一配列);配列番号29のVLおよび配列番号31のVHを有するSC57.4(SC57.16、SC57.18、SC57.25、SC57.28、SC57.37と同一配列);配列番号33のVLおよび配列番号35のVHを有するSC57.5;配列番号37のVLおよび配列番号39のVHを有するSC57.6(SC57.7、SC57.48と同一配列);配列番号41のVLおよび配列番号43のVHを有するSC57.8;配列番号45のVLおよび配列番号47のVHを有するSC57.9;配列番号49のVLおよび配列番号51のVHを有するSC57.10(SC57.29、SC57.30、SC57.32、SC57.35、SC57.38、SC57.40、SC57.45、SC57.47、SC57.51、SC57.54と同一配列);配列番号53のVLおよび配列番号55のVHを有するSC57.11(SC57.41、SC57.56と同一配列);配列番号57のVLおよび配列番号59のVHを有するSC57.12(SC57.46と同一配列);配列番号61のVLおよび配列番号63のVHを有するSC57.14;配列番号65のVLおよび配列番号67のVHを有するSC57.15;配列番号69のVLおよび配列番号71のVHを有するSC57.17;配列番号73のVLおよび配列番号75のVHを有するSC57.20;配列番号77のVLおよび配列番号79のVHを有するSC57.27;配列番号81のVLおよび配列番号83のVHを有するSC57.31(SC57.53、SC57.57と同一配列);配列番号85のVLおよび配列番号87のVHを有するSC57.43;ならびに配列番号89のVLおよび配列番号91のVHを有するSC57.60と称される抗体の注釈の付いた配列が提供される。さらに、図6Aおよび6Bにより、配列番号93のVLおよび配列番号95のVHを有するhSC57.5;配列番号93のVLおよび配列番号97のVHを有するhSC57.5v1(実施例13に記載);配列番号99のVLおよび配列番号101のVHを有するhSC57.32;配列番号99のVLおよび配列番号103のVHを有するhSC57.32v1(実施例13に記載)ならびに配列番号105のVLおよび配列番号107のVHを有するhSC57.43と称されるヒト化抗体の注釈の付いた配列が提供される。
アミノ酸配列に注釈を付けてフレームワーク領域(つまり、FR1〜FR4)を同定し、相補性決定領域(つまり、図6AのCDRL1〜CDRL3または図6BのCDRH1〜CDRH3)を、Kabatに従って定義する。可変領域配列を、Abysisデータベースの専売バージョンを使用して解析し、CDRおよびFRを指定した。CDRは、Kabatに従って定義されているが、当業者は、ChothiaまたはMcCallumに従ってまたは任意の他の容認された命名法に従って同様にCDRおよびFRが定義できることを理解する。図6Cは、図6Aおよび6Bに示すアミノ酸配列をコードする核酸配列(配列番号20〜106、偶数)を示す。図6Dは、例示的な全長抗体の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列(配列番号:108〜118)を提供する。図6E−6Gは、Kabat、Chothia、ABMおよびContactの方法により決定され、Kabatに従って番号付けされたSC57.5(図6E)、SC57.32(図6F)およびSC57.43(図6G)マウス抗体の軽鎖および重鎖可変領域のCDRを示す。同様に、図6H−6Jは、マウス出所抗体および誘導されたヒト化構築物(SC57.5−図6H、SC57.32−図6IおよびSC57.43−図6J)の重鎖および軽鎖可変領域についての整列されたアミノ酸配列を示しており、ここでKabatに従ったCDRは枠で囲んでいる。
図6Aおよび6Bで示されるように、それぞれの特定のマウス抗体についてのアミノ酸配列の重鎖および軽鎖可変領域の配列番号は一連の奇数である。したがって、モノクローナル抗MFI2抗体SC57.1は、軽鎖および重鎖可変領域についてそれぞれ配列番号21および23を含み;SC57.3は配列番号25および27を含み;SC57.4は配列番号29および31を含み、他も同様である。各マウス抗体アミノ酸配列についての対応する核酸配列は、図6Cに含まれており、対応するアミノ酸の配列番号の直前の配列番号を有する。したがって、例えば、SC57.1抗体のVLおよびVHの核酸配列の配列番号は、それぞれ配列番号20および22である。
[実施例10]
部位特異的抗体の生成
天然の軽鎖(LC)定常領域および重鎖(HC)定常領域を含む操作されたヒトIgG1/カッパ抗MFI2部位特異的抗体を構築した。この抗体において、LCのシステイン214(C214)と鎖間ジスルフィド結合を形成するHCの上方ヒンジ領域のシステイン220(C220)がセリンと置換されている(C220S)。構築されたとき、HCおよびLCは、治療剤とのコンジュゲーションに適切である2つの遊離システインを含む抗体を形成する。他に記載しない限り、定常領域残基の全ての番号付けは、Kabatらに示されるEU番号付けスキームに従っている。
改変抗体は、以下のように生成した。全長ヒト化抗MFI2抗体hSC57.5v1 HC(配列番号111)またはhSC57.32(配列番号113)をコードする発現ベクターを、PCR増幅および部位特異的変異誘発の鋳型として使用した。部位特異的変異誘発は、製造業者の指示書に従ってQuick−change(登録商標)システム(Agilent Technologies)を使用して実施した。
hSC57.5v1、hSC57.32またはhSC5757.43の変異C220S HCをコードするベクターを、CHO−S細胞中で、hSC57.5(配列番号108)のLCと同一であるhSC57.5v1またはhSC57.32(配列番号112)またはhSC57.43(配列番号116)の天然全長カッパLCと、それぞれ同時トランスフェクションし、哺乳類一過性発現システムを使用して発現させた。C220S変異体を含む改変された抗MFI2部位特異的抗体を、hSC57.5v1ss1およびhSC57.32ss1と名付けた。hSC57.5v1ss1(配列番号108および110)、hSC57.32ss1(配列番号112および114)ならびにhSC57.43ss1(配列番号116および118)部位特異的抗体の全長LCおよびHCのアミノ酸配列は、図6Dに示す。LCにおける反応システインは、HCの220位での天然または変異残基のように下線を付している。改変抗MFI2抗体を、SDS−PAGEにより特徴付け、正確な変異体が生成されていることを確認した。SDS−PAGEは、life technologiesからのプレキャスト10%Tris−Glycineミニゲル上で、還元剤、例えば、DTT(ジチオスレイトール)の存在および不在下で実施した。電気泳動後、ゲルをクーマシーコロイド溶液で染色した。還元条件下、遊離LCおよび遊離HCに対応する2つのバンドを観察した(データ示さず)。このパターンは、還元条件のIgG分子に典型的である。非還元条件下、バンドパターンは、HCとLCとの間のジスルフィド結合の不在を示す天然IgG分子とは異なる。HC−HCダイマーに対応する約98kDのバンドが観察された。さらに、遊離LCに対応するかすかなバンドと、LC−LCダイマーに対応する約48kDの顕著なバンドが観察された。若干量のLC−LC種の形成は、各LC上のC末端における遊離システインにより予測される。
[実施例11]
キメラおよびヒト化抗MFI2抗体の生成
キメラ抗MFI2抗体を、当該技術分野で認識されている技術を用いて以下のように生成した。全RNAを、実施例1に記載の方法を用いて抗MFI2抗体産生ハイブリドーマから抽出し、このRNAをPCR増幅した。マウス抗体のVHおよびVL鎖のV、DおよびJ遺伝子セグメントに関するデータは、本発明の抗MFI2抗体の核酸配列(図6C)から取得した。抗体のVHおよびVL鎖のフレームワーク配列に特異的なプライマーセットを、次の制限部位を使用して設計した:VH断片に対してAgeIおよびXhoIならびにVL断片に対してXmaIおよびDraIII。PCR産物を、Qiaquick PCR精製キット(Qiagen)で精製し、次いでVH断片に対して制限酵素AgeIおよびXhoIならびにVL断片に対してXmaIおよびDraIIIを用いて消化した。VHおよびVL消化PCR産物を精製し、IgHまたはIgκ発現ベクターにそれぞれ連結した。ライゲーション反応を、全体積10μLの200UのT4−DNAリガーゼ(New England Biolabs)、7.5μLの消化および精製した遺伝子特異的PCR産物ならびに25ngの直線化ベクターDNA中で実施した。形質転換受容性のあるE.コリDH10B細菌(Life Technologies)を、3μLのライゲーション産物を用いて42℃での熱ショックを介して形質転換し、濃度100μg/mLでアンピシリンプレート上に蒔いた。増幅ライゲーション産物の精製および消化後、VH断片を、HuIgG1(pEE6.4HuIgG1)を含むpEE6.4発現ベクター(Lonza)のAgeI−XhoI制限部位にクローニングし、VL断片を、ヒトカッパ軽鎖定常領域(pEE12.4Hu−Kappa)を含むpEE12.4発現ベクター(Lonza)のXmaI−DraIII制限部位にクローニングした。
キメラ抗体を、pEE6.4HuIgG1およびpEE12.4Hu−カッパ発現ベクターを用いてCHO−S細胞に同時トランスフェクションすることにより、発現させた。各2.5μgのpEE6.4HuIgG1およびpEE12.4Hu−カッパベクターDNAを、400μLのOpti−MEM中15μgのPEIトランスフェクション試薬に加えた。混合物を室温で10分間インキュベートし、細胞に加えた。上清を、トランスフェクションから3から6日後に採取した。組換えキメラ抗体を含有する培養上清を、800×gで10分間遠心分離することにより細胞デブリから清澄化し、4℃で保存した。組換えキメラ抗体を、タンパク質Aビーズを用いて精製した。
さらに、マウス抗MFI2抗体を、専売のコンピュータ支援CDRグラフト化方法(Abysis Database、UCL Business)と標準的な分子操作技術を使用して、以下のようにヒト化した。可変領域のヒトフレームワーク領域を、ヒト生殖系列抗体配列のフレームワーク配列およびCDR古典的構造と、関連マウス抗体のフレームワーク配列およびCDRとの間の最も高い相同性に基づき設計した。解析のために、アミノ酸のCDRドメインのそれぞれに対する帰属をKabatらの番号付けに従って行った。可変領域が選択されたら、それらを合成遺伝子セグメントから生成した(Integrated DNA Technologies)。ヒト化抗体をクローニングし、キメラ抗体について上述した分子的方法を使用して発現させた。
ヒト化抗体hSC57.5(配列番号93および95)、hSC57.32(配列番号99および101)、hSC57.43(配列番号105および107)のVLおよびVHアミノ酸配列を、対応するマウス抗体SC57.5(配列番号33および35)、SC57.32(配列番号49および51)ならびにSC57.43(配列番号85および87)のVLおよびVH配列から誘導した。下記表5および図6H〜6Jは、抗体の好ましい特性を維持するために、フレームワーク変化が比較的少ししか必要でなかったことを示す。
hSC57.5の変形を、VH CDRH2にG55A変異を導入することによって生成し、hSC57.5v1抗体(配列番号93および97)を作製した。hSC57.5v1のVLは、hSC57.5(配列番号93)のVLと同一であった。hSC57.5v1ss1は、hSC57.5v1と同一のVHおよびVLを有した。3つのフレームワーク変化をhSC57.32およびhSC57.32ss1抗体に導入し、このうち2つはVHにおけるM69FおよびT71Aであり、1つはVLにおけるF71Yであった。hSC57.32v1では、2つのフレームワーク変化を導入し、この1つはVHにおけるT71Aであり、1つはVLにおけるF71Yであった。一点変異S30Gを、hSC57.43およびhSC57.43ss1抗体のVHフレームワーク領域に導入した。
ヒト化抗体hSC57.5、hSC57.5v1、hSC57.5v1ss1、hSC57.32、hSC57.32v1、hSC57.32ss1、hSC57.43およびhSC57.43ss1の全長軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を、図6Dに示す。
[実施例12]
抗MFI2抗体のドメイン−レベルエピトープマッピング
開示された抗MFI2抗体が会合するエピトープを特徴づけるために、ドメイン−レベルエピトープマッピングを、Cochranら(2004、PMID:15099763)に記載されているプロトコールの改変である、酵母にディスプレイされたドメインを用いたFACSをベースとする方法を使用して実施した。
酵母ディスプレイプラスミド構築物を、アミノ酸20〜357を含むhMFI2Tf様ドメイン1(TLD1);およびアミノ酸366〜709を含むTf様ドメイン2(TLD2)の発現のために生成した。両方のドメインの番号付けには、hMFI2のリーダー配列であるアミノ酸1〜19を含めた。ドメイン情報について、一般的には、UniProtKB/Swiss−ProtデータベースエントリーP08582を参照。hMFI2のアイソフォームはTLD1およびTLD2の両方を含むが、hMFI2の短いアイソフォームはTLD1のみを含み、TLD2を含まない。したがって、TLD2に結合したそれらの抗体は、hMFI2のGPI固定された長いアイソフォームに対して特異的である。
酵母ディスプレイプラスミドを、酵母に形質転換し、次いで増殖させ、Cochranら(前掲)に記載された通りに誘導した。特定の構築物に対する結合を試験するために、所望の構築物を発現する200,000個の誘導された酵母細胞を、1mg/mLのBSAを含むPBS(PBSA)で2回洗浄した。酵母細胞を、50μLのPBSA中で、1μg/mLのニワトリ抗c−Myc(Life Technologies)抗体と共にインキュベートし、50ng/mLの抗MFI2抗体を氷上で90分間精製し、次いでPBSA中で2回洗浄した。次いで、細胞を、50μLのPBSA中でそれぞれ1μg/mLのAlexa488コンジュゲート抗ニワトリ抗体およびAlexa647コンジュゲートヤギ抗マウス抗体(両方ともLife Technologies)と共にインキュベートした。氷上で20分間インキュベートした後、細胞をPBSAで2回洗浄し、FACSCantoII(BD Biosciences)で解析した。図5は、試験した抗体の大半がTLD2に結合し、ほとんどの抗体がMFI2のGPI固定された長いアイソフォームに特異的であると示唆されることを示している。注意すべきことに、ビンEであった抗体(実施例8;図5参照)のみがTLD1に結合し、一方でビンA−Dであった抗体はTLD2に結合した。図5における「ND」は「未決定」を示し、実験が特定の抗体について実施されなかったことを意味する。
エピトープを立体配座(例えば、不連続)または線状で分類するために、hMFI2ドメインをディスプレイしている酵母を、80℃で30分間加熱処理して、次いで氷冷PBSA中で2回洗浄した。次いで、変性抗原をディスプレイしている酵母(変性酵母)を、上記と同じ染色プロトコールおよびフローサイトメトリ分析にかけた。変性および天然酵母の両方に結合する抗MFI2抗体を線状エピトープに結合するものとして分類し、一方で、天然酵母に結合するが変性酵母に結合しない抗MFI2抗体を立体配座特異的として分類した。試験した抗体の大半は、線状エピトープに結合したSC57.2、SC57.7、SC57.31、SC57.53およびSC57.57を除き、立体配座特異的であることが見出された。
[実施例13]
抗MFI2抗体のファインエピトープマッピング
ファインエピトープマッピングを、酵母ディスプレイ方法(Chaoら、Nat Protoc.1(2):755−768、2007)を使用して、選択された抗MFI2抗体にさらに実施した。簡潔に述べると、hMFI2 ECD変異体のライブラリを、ヌクレオチドアナログ8−オキソ−2’デオキシグアノシン−5’−トリホスフェートおよび2’−デオキシ−p−ヌクレオシド−5’トリホスフェート(両方ともTriLink Bio製)を使用して、クローンあたり1アミノ変異の標的変異誘発割合で、エラープローンPCRを用いて生成した。これらを酵母ディスプレイ形式に変換した。ドメインレベルのマッピングについて上記の技術を使用して、ライブラリを、c−Mycおよび抗MFI2抗体結合に対して50nMで染色した。FACS Aria(BD)を使用して、野生型hMFI2 ECDと比較して結合の喪失を示したクローンを再増殖させ、標的抗体に対する結合の喪失について別ラウンドのFACS選別にかけた。Zymoprep Yeast Plasmid Miniprepキット(Zymo Research)を使用して、個々のECDクローンを単離し、配列決定した。必要であれば、変異を、Quikchange部位特異的変異誘発キット(Agilent)を使用して単一変異ECDクローンに再編成した。
次に、個々の単一変異ECDクローンをスクリーニングし、結合の喪失がエピトープ中の変異によるものかまたはミスフォールディングを生じた変異によるものかを決定した。システイン、プロリンおよびストップコドンが関与する変異は、ミスフォールディング変異の可能性が高いために自動的に廃棄した。次いでECDクローンを、様々な非競合性の立体配座特異的抗体への結合についてスクリーニングした。非競合性の立体配座特異的抗体への結合が喪失したECDクローンは、ミスフォールディング変異を含むと結論され、一方で、野生型hMFI2 ECDと等価な結合を保持したECDクローンは、適切にフォールディングされていると結論された。後者のグループのECDクローン中の変異は、エピトープ中にあると結論された。
様々な抗体のマッピングの結果を下記表6に示す。この表では、特異的変異を、変異MFI2ホモログに結合する対象抗体の能力と共に示している。表7において、エピトープ構成要素と意味づけられる残基は、変異残基の前の#によって示している。
変異ホモログから誘導されるデータに基づいて、SC57.32,およびSC57.41について考えられるエピトープ構成要素を、直下の表7に示す。
[実施例14]
腫瘍におけるMFI2タンパク質発現
実施例1〜3に記載される様々な腫瘍と会合したMFI2 mRNA転写レベルの上昇を考慮して、MFI2タンパク質発現が、PDX腫瘍においても上昇しているかを調べる作業を行った。MFI2のタンパク質発現を検出および定量するために、電気化学発光MFI2サンドイッチELISAアッセイを、MSD Discovery Platform(Meso Scale Discovery)を使用して展開した。
PDX腫瘍をマウスから切り出し、ドライアイス/エタノールで急速凍結した。タンパク質抽出バッファー(Biochain Institute)を、解凍した腫瘍片に加え、腫瘍を、TissueLyserシステム(Qiagen)を使用して微粉砕した。溶解物を、遠心分離(20,000g、20分、4℃)により清澄化し、各溶解物中の全タンパク質濃度を、ビシンコニン酸を使用して定量化した。次いで、タンパク質溶解液を5mg/mLに正規化して、使用するまで−80℃で保存した。正常組織は市販品を購入した。
溶解試料からのMFI2タンパク質濃度を、実施例5に記載されたように作製した精製組換えMFI2−Hisタンパク質を使用して生成した標準タンパク質濃度曲線から値を内挿することによって、決定した。MFI2タンパク質標準曲線およびタンパク質定量アッセイを以下のように実施した:
MSD標準プレートを、一晩4℃で、15μLの、PBS中2μg/mLのSC57.2捕捉抗体で被覆した。プレートをPBST中で洗浄し、35μLのMSD3%ブロッカーA溶液中で1時間、振盪しながらブロッキングした。プレートをPBST中で再び洗浄した。MSD1%ブロッカーA含有10%タンパク質抽出バッファー中10μLの10倍希釈溶解物(または段階希釈組換えMFI2標準)をまたウェルに加え、振盪しながら2時間インキュベートした。プレートをPBSTで再び洗浄した。次いで、SC57.10検出抗体を、MSD(登録商標)SULF0−TAG NHSエステルを製造業者のプロトコールに従って使用して、スルホタグ化した。10μLのタグ化SC57.10抗体を、MSD1%ブロッカーA中0.5μg/mLで、洗浄したプレートに室温で振盪しながら1時間で加えた。プレートをPBST中で洗浄した。MSD ReadバッファーTを界面活性剤と共に水中に1倍希釈し、35μLを各ウェルに加えた。プレートをMSD Sector Imager 2400で、組み込まれたソフトウェア解析プログラムを使用して読み取り、標準曲線からの内挿を介してPDX試料におけるMFI2濃度を導き出した。次いで値を全タンパク質濃度で除算して、全溶解タンパク質のミリグラムあたりのMFI2のナノグラムを得た。得られた濃度を図7に示す。この図で各スポットは、単一PDX腫瘍株から誘導したMFI2タンパク質濃度を表す。各スポットは単一のPDX株から誘導しているが、ほとんどの場合、同じPDX株由来の複数の生物学的試料を試験し、値を平均してデータ点を得た。
図7は、MFI2タンパク質高発現を示したBD、BR(BR−基底様、BR−HER2、BR−LumA、BR−LumB、BR−未確定)、EM、CR、LU、GA、LIV、OV、PAおよびSK腫瘍試料の代表的試料を示す。各試料についてのMFI2タンパク質発現レベルは、ng/mg全タンパク質の単位で示し、各腫瘍型について誘導した中央値を水平棒で示している。試験した正常組織は、副腎、動脈、結腸、食道、胆嚢、心臓、腎臓、肝臓、肺、末梢および坐骨神経、膵臓、骨格筋、皮膚、小腸、脾臓、胃、気管、赤血球および白血球ならびに血小板、膀胱、脳、乳房、眼、リンパ節、卵巣、下垂体、前立腺および脊髄を含んでいた。検出可能なレベルのMFI2タンパク質は、脊髄、充填RBCおよび末梢血白血球においてのみ見られた。いくつかのBD、BR、CR、LU、PAおよびSK PDX腫瘍試料は、平均正常組織よりも有意に高かった。これらのデータは、上記で示したMFI2発現についてのmRNA転写データと組み合わさって、MFI2が、抗体に基づく治療介入のための魅力的な標的であるという説を強く補強する。
[実施例15]
免疫組織化学
免疫組織化学(IHC)を、PDX腫瘍および原発性ヒト腫瘍組織切片に実施し、腫瘍細胞におけるMFI2の発現および位置を評価した。
IHC適合抗MFI2抗体を同定するために、本発明の多数の抗MFI2抗体を使用して、IHCをHEK293T親細胞ペレットまたはMFI2発現HEK293T細胞ペレットに実施した。抗MFI2抗体SC57.5、SC57.11、SC57.30、SC57.32、SC5735、SC5736およびSC57.47は、試験した本発明の他の抗MFI2抗体よりも効果的にMFI2過剰発現HEK293T細胞ペレットを特異的に検出することができた(データ示さず)。これらの抗体がMFI2を特異的に検出する能力は、関連抗MFI2抗体を5×モル比の過剰のhMFI2−Hisタンパク質と混合し、次いでMFI2発現HEK293Tのホルマリン固定およびパラフィン包理(FFPE)切片と共にインキュベートする競合実験により確認した。陽性染色が存在しないことにより、hMFI2−Hisタンパク質が、MFI2過剰発現HEK293T細胞に対する抗MFI2抗体の結合に干渉していることが実証された(データ示さず)。
IHCは、下記に記載するように、当該技術分野の標準であるホルマリン固定およびパラフィン包埋(FFPE)組織に実施した。組織の平らな部分を切断し、顕微鏡スライドガラス上に載せた。キシレン脱パラフィン後、5μmの切片を、抗原回収溶液(Dako)を用いて99℃で20分間前処理し、75℃に冷却し、次いで、0.3%過酸化水素を含むPBS、次いでアビジン/ビオチンブロッキング溶液(Vector Laboratories)で処理した。この後、FFPEスライドを、3%BSAを含むPBSバッファー中10%ウマ血清でブロッキングし、3%BSA/PBS中で10μg/mlに希釈した本発明の一次抗MFI2抗体と共に室温で30分間インキュベートした。FFPEスライドを、3%BSA/PBS中で2.5μg/mlに希釈したビオチンコンジュゲート化ウマ抗マウス抗体(Vector Laboratories)と共に室温で30分間インキュベートした後、ストレプトアビジン−HRP(ABC Elite Kit;Vector Laboratories)中でインキュベートした。次いで、原発性ヒト腫瘍のFFPEスライドを、TSA増幅キット(TSA Amplification Kit;Perkin Elmer)の製造業者の指示書に従って、ビオチニルチラミド中、次いでストレプトアビジン−HRP中でインキュベートした。発色性検出は、3,3’−ジアミノベンジジン(Thermo Scientific)を用いて5分間、室温で展開させ、組織をMeyerヘマトキシリン(IHC World)で対比染色し、アルコールで洗浄し、キシレン中に浸漬した。PDX腫瘍は、TSA増幅を受けなかった。この後、切片を、明視野観察法により観察し、腫瘍上皮上のMF12膜発現をHスコアにより記した。Hスコアは、式:3×強く染色している核のパーセンテージ+2×中程度に染色している核パーセンテージ+弱く染色している核パーセンテージにより得られ、0から300の範囲となる。
図8Aは、様々なBR、LUおよびSK PDX株における膜性hMFI2タンパク質発現のIHCによるHスコア値を示している。図8Bは、IHCによるヒト原発性乳がん、肺がんおよびメラノーマ組織試料におけるMFI2発現を示す。MFI2は、IHCにより、トリプルネガティブ乳がん患者試料の50%、肺腺癌試料の61%、肺扁平上皮癌試料の85%、転移性メラノーマ患者試料の61%で発現することが示されている。
[実施例16]
フローサイトメトリを使用したHEK293T細胞および腫瘍のMFI2発現の検出
フローサイトメトリを使用して、本発明の抗MFI2抗体が、SK、BRおよびLU PDX腫瘍細胞株の表面のヒトMFI2タンパク質の存在を特異的に検出する能力を評価した。さらに、BRおよびLU CSCの表面のMFI2の発現も決定した。
PDX腫瘍を採取し、当該技術分野で認識されている酵素組織消化技術を使用して解離し、PDX腫瘍細胞の単一細胞懸濁液を取得した(例えば、U.S.P.N.2007/0292414参照)。PDX腫瘍単一細胞懸濁液を、死細胞を検出するための4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)、マウス細胞を同定するための抗マウスCD45およびH−2Kd抗体ならびにヒト癌腫細胞を同定するための抗ヒトEPCAM抗体と共にインキュベートした。得られた単一細胞懸濁液は、NTG細胞およびCSCの両方を含む腫瘍細胞のバルク試料を含んでいた。バルクLU PDX腫瘍細胞集団を、NTGおよびCSC小集団に分割するために、PDX腫瘍細胞を抗ヒトCD46および/またはCD324およびESA抗体とともにインキュベートした(U.S.P.N.2013/0260385、2013/0061340および2013/0061342を参照)。バルクまたは選別された腫瘍細胞を、hMFI2発現について、BD FACS CantoIIフローサイトメータを使用したフローサイトメトリにより、ヒトMFI2タンパク質の長いアイソフォームのトランスフェリン様ドメイン2(TFLD2)に結合する抗MFI2抗体であるSC57.43を用いて分析した。
図9Aは、SC57.43抗体が、選別されていないヒトSK生腫瘍細胞株(例えば、SK3、SK11、SK13、SK40、SK44、SK62、SK66、SK71)(黒線)のサブセットにおいて、hMFI2の表面発現を、IgGアイソタイプ対照抗体(灰色の塗りつぶし)と比較して高レベルで検出したことを示す。SK PDX細胞株のあるサブセットは変異BRAFタンパク質(V600E)を発現したが(例えば、SK3、SK11、SK13)、他は野生型BRAFを発現した(SK40、SK44、SK62、SK66、SK71)。これらの結果は、本発明の抗MFI2抗体が、メラノーマを診断および処置するために有用であり得ることならびに野生型または変異型BRAFのいずれかを発現するメラノーマを処置するためにも有用であり得ることを示す。
図9Bは、抗hMFI2抗体SC57.43が、バルクLUおよびBR PDX腫瘍細胞の表面のhMFI2発現を検出したことを示している。全ての試料において、抗MFI2抗体(黒線)は、IgGアイソタイプ対照抗体(灰色の塗りつぶし)と比較して、増加したMFI2発現を検出した。LU−Ad(LU58およびLU206)ならびにLU−SCC(LU85)について、黒実線は、バルクのヒト腫瘍細胞の抗MFI2抗体についての染色を示しており、hMFI2の発現がLU58およびLU85で検出されたが、LU206 PDX株では検出されなかったことを示している。PDX腫瘍試料LU123(LU−Ad)、LU120(LU−SCC)、BR31およびBR86(両方ともBR−基底様)は、IgGアイソタイプ対照抗体(灰色の塗りつぶし)と比較して、LUおよびBR PDX腫瘍細胞(点線)におけるCSC(黒実線)およびNTG小集団のhMFI2発現が増加していることを示した。このことは、MFI2が、いくつかのLU腫瘍サブタイプ(LU−AdおよびLU−SCC)、さらにBR腫瘍におけるCSCで発現されることを実証する。発現は、抗MFI2抗体を用いて染色した腫瘍細胞の表面で観測される幾何平均蛍光強度の、アイソタイプ対照抗体で染色した同じ腫瘍と比較した変化(ΔMFI)として定量することができる。解析した腫瘍細胞株のそれぞれについてΔMFIをまとめた表を、図9Aおよび9Bに挿入表として示す。このデータでは、乳がんPDX株BR31およびBR86およびメラノーマPDX株SK3およびSK40も、IHCおよびフローサイトメトリにより陽性染色を示しており、実施例15におけるIHCの結果が確認される。LU206は、フローサイトメトリによりhMFI2の発現を示さなかったが、このことは、実施例1、2および3で得られた低いRNA発現データに基づいて予測されたことであり、抗MFI2抗体結合の特異性をさらに実証する。まとめると、これらのデータは、GPI固定されたMFI2の長い形態が、SK、LUおよびBR PDX腫瘍細胞において発現されており、抗MFI2抗体薬物コンジュゲートを用いた標的療法の優れた候補となることを示唆している。
[実施例17]
抗MFI2抗体は、インビトロにおける細胞毒性剤の送達を容易にする
本発明の抗MFI2抗体が、細胞毒性剤の生腫瘍細胞への送達を媒介するために内在化できるかどうかを判断するために、選択された抗MFI2抗体およびサポリンに連結された二次抗マウス抗体FAB断片を用いて、インビトロ細胞殺傷アッセイを行った。サポリンは、リボソームを不活性化させ、それによりタンパク質合成を阻害し、細胞を死に至らせる植物毒素である。サポリンは、リボソームに接近する細胞内でのみ細胞毒性であり、独立して内在化することはできない。したがって、これらのアッセイにおけるサポリン媒介細胞内細胞毒性は、会合した抗MFI2マウス抗体が標的細胞に結合して内在化する際に、抗マウスFAB−サポリン構築物が内在化される能力を表すものである。
hMFI2を過剰発現しているHEK293T細胞の単一細胞懸濁液を、ウェルあたり500細胞で、BD Tissue Cultureプレート(BD Biosciences)に蒔いた。1日後、様々な濃度の精製抗MFI2抗体(マウスまたはヒト化抗体のいずれか)を、一定濃度の2nMの抗マウスIgG FAB−サポリン構築物(Advanced Targeting Systems)(マウス抗体の試験について)または2nMの抗ヒトIgG FAB−サポリンコンジュゲート(ヒト化抗体の試験について)とともに培地に加えた。96時間インキュベーションした後、CellTiter−Glo(登録商標)(Promega)を製造業者の指示書に従って使用して、生存細胞を数えた。二次FABサポリンコンジュゲートとのみインキュベートした細胞を含有する培養物を使用した未処理の発光カウント数を100%の参照値に設定し、他のカウント数は全てこの参照値に対するパーセンテージとして計算した。大きなサブセットの抗MFI2抗体−サポリンコンジュゲートは、100pMの濃度で、hMFI2過剰発現HEK293T細胞を様々な効力で有効に殺傷したが(図10A)、一方で、同じ濃度のマウスIgG1アイソタイプ対照抗体は有効に殺傷しなかった。
上記実験を、メラノーマPDX腫瘍細胞株(SK43)を使用して繰り返した。SK PDX腫瘍を、マウスから回収し、ビオチン化抗マウスCD45およびH−2Kd抗体およびストレプトアビジン被覆鉄ビーズを使用して、マウス細胞を磁気的に枯渇させた。次いで、腫瘍を、当該技術分野で認識されている酵素組織消化技術を使用して解離し、細胞の単一細胞懸濁液を取得した(例えば、U.S.P.N.2007/0292414参照)。細胞は、当該技術分野で既知のようにDMEM培地中ウェルあたり2,500個の細胞で蒔いた。250pMの精製抗MFI2抗体を、一定濃度の2nMの抗マウスIgG FAB−サポリン構築物とともに培養物に添加した。7日間のインキュベーション後、CellTiter−Glo(登録商標)を製造業者の指示書に従って使用して、生存細胞を数えた。二次FABサポリンコンジュゲートのみとインキュベートした細胞を含有する培養物を使用した未処理の発光カウント数を100%の参照値に設定し、他のカウント数は全てこの参照値に対するパーセンテージとして計算した。図10Bは、顕著な数の抗MFI2マウス抗体−サポリンコンジュゲートが、SK43 PDX腫瘍細胞を効果的に殺傷したことを示している。
最後に、抗MFI2ヒト化抗体(hSC57.32、hSC57.32v1およびhSC57.43)は、MFI2を過剰発現するHEK−293T細胞を有効に殺傷した。ヒト化抗体は、それらが誘導されたキメラ抗体(hSC57.32およびhSC57.43の場合)ならびにマウス抗体(hSC57.43の場合)に匹敵する効果を示した(図10C)。上記結果は、コンジュゲートされた細胞毒性ペイロードの内在化を媒介する抗MFI2抗体の能力を実証しており、抗MFI2抗体がADCに対する標的部分として治療有用性を有し得るという仮説を支持する。
ここで、(i)本発明の抗MFI2抗体が細胞への内在化および殺傷を媒介する能力と、(ii)このような抗MFI2抗体が結合するMFI2タンパク質のエピトープとの間に相関関係があるかを判断することが望まれた。このような情報により、特に効果的な抗体の設計および選択が可能になる。この目的のために、MFI2を過剰発現するHEK293T細胞を使用した上記のインビトロ細胞殺傷アッセイを完了させた後、使用した抗MFI2抗体に対する生細胞のパーセンテージをプロットした。抗体を、実施例7に記載のビニング実験により判断して、ビンにグループ分けした。ビンCおよびDにおける抗体は、内在化および細胞死の媒介において特に効果があり、一方でビンBの抗体は効果が低かった(図10D)。ビンAおよびEの抗体の大半が、内在化および殺傷を媒介することができたが、ビンCおよびDにおける抗体よりも程度が低かった。実施例7で記載したように、ビンA、B、CおよびDの全ての抗体は、トランスフェリン様ドメイン2(TFLD2)に結合したが、一方で、ビンEにおける抗体はTFLD1に結合した。これらの結果より、ビンCおよびDにおける抗体が結合するTFLD2ドメイン内の特定のエピトープは、例えばビンBにおける抗体が結合するTFLD2のエピトープAおよびBと比較して、抗体をより有効にすることが示される。このように、ビンCおよびDにおける抗体、例えばSC57.32ならびにこのような抗体と競合する任意の抗体は、細胞に内在化し、殺傷するその優れた能力によって、様々な腫瘍の処置に特に効果的であり得る抗MFI2抗体のサブセットを含んでいる。
[実施例18]
ピロロベンゾジアゼピン(PBD)への抗MFI2抗体のコンジュゲーション
7種のマウス抗MFI2抗体(SC57.4、SC57.5、SC57.9、SC57.32、SC57.41、SC57.43およびSC57.46)および2種のヒト化部位特異的抗MFI2抗体(hSC57.32ss1およびhSC57.43ss1)を、遊離スルフヒドリル基を有する末端マレイミド部分を介してピロロベンゾジアゼピン(PBD1)にコンジュゲートさせ、hSC57.32ss1PBD1およびhSC57.43ss1PBD1と称するADCを作製した。
マウス抗MF12抗体薬物コンジュゲート(ADC)を、以下のように調製した。抗MF12抗体のシステイン結合を、抗体1モルあたり所定のモル添加率のモル数のトリス(2−カルボキシエチル)−ホスフィン(TCEP)で90分間、室温で、5mMのEDTAを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で部分的に還元した。次いで、得られた部分的に還元された調製物を、室温で最低30分間、マレイミドリンカーを介してPBD1とコンジュゲートした(PBD1の構造は、本明細書中、上記で提供されている。)。次いで水中で調製した10mMの原液を使用して、リンカー薬物と比較して過剰のN−アセチルシステイン(NAC)を添加することにより、反応をクエンチした。最低20分間クエンチした後、0.5Mの酢酸を添加してpHを6.0に調整した。ADCの調製物を、30kDa膜を使用してダイアフィルトレーションによりダイアフィルトレーションバッファーにバッファー交換した。次いでダイアフィルトレーションした抗MFI2ADCを、ショ糖およびポリソルベート20を用いて製剤化し、目的の最終濃度にした。得られた抗MFI2ADCを、タンパク質濃度(UVで測定)、凝集(SEC)、逆相HPLC(RP−HPLC)による薬物抗体比(DAR)およびインビトロ細胞毒性について解析した。
部位特異的ヒト化抗MFI2ADCは、改変された部分還元プロセスを使用してコンジュゲートした。所望の生成物は、各LC定常領域上の不対システイン(C214)に最大限コンジュゲートし、2より大きい(DAR>2)薬物抗体比(DAR)を有するADCを最小化する一方で、DARが2(DAR=2)のADCを最大化する、ADCである。コンジュゲーションの特異性をさらに改善するために、安定化剤(例えば、L−アルギニン)および穏やかな還元剤(例えば、グルタチオン)を含むプロセスを使用して抗体を選択的に還元し、この後、リンカー−薬物を用いたコンジュゲーション、続いてダイアフィルトレーションおよび製剤化工程を行った。このプロセスを下記に説明する。
各抗体の調製物を、1MのL−アルギニン/5mMのEDTAを所定濃度の還元型グルタチオン(GSH)と共に含有するpH8.0の緩衝液中で最低2時間、室温で部分的に還元させた。次いで全ての調製物を、30kDaの膜(Millipore Amicon Ultra)を使用して、20mMのTris/3.2mMのEDTA、pH7.0バッファーへとバッファー交換し、還元バッファーを除去した。次いで、得られた部分還元調製物を、室温で最低30分間、マレイミドリンカーを介してPBD1とコンジュゲートした(PBD1の構造は、本明細書中、上記で提供されている。)。次いで水中で調製した10mMの原液を使用して、リンカー薬物と比較して過剰のNACを添加することにより、反応をクエンチした。最低20分間クエンチした後、0.5Mの酢酸を添加してpHを6.0に調整した。ADCの調製物を、30kDa膜を使用してダイアフィルトレーションによりダイアフィルトレーションバッファーにバッファー交換した。次いでダイアフィルトレーションした抗MFI2ADCを、ショ糖およびポリソルベート20を用いて製剤化し、目的の最終濃度にした。得られた抗MFI2ADCを、タンパク質濃度(UVで測定)、凝集(SEC)、逆相HPLC(RP−HPLC)による薬物抗体比(DAR)およびインビトロ細胞毒性について解析した。
[実施例19]
カリチアマイシンへの抗MFI2抗体のコンジュゲーション
抗MFI2抗体(hSC57.32ss1)を、遊離スルフヒドリル基を有する末端マレイミド部分を介して、カリチアマイシン(Cal)化合物にコンジュゲートさせ、hSC57.32ss1Calと称されるADCを作製した。
所望の生成物は、各LC定常領域上の不対システイン(C214)に最大限コンジュゲートし、2より大きい(DAR>2)薬物抗体比(DAR)を有するADCを最小化する一方で、DARが2(DAR=2)であるADCを最大化する、ADCである。
コンジュゲーションの特異性をさらに改善するために、安定化剤(例えば、L−アルギニン)および穏やかな還元剤(例えば、グルタチオン)を含むプロセスを用いて抗体を選択的に還元し、この後、リンカー−薬物を用いたコンジュゲーション、続いてダイアフィルトレーションおよび製剤化工程を行った。このプロセスを下記に説明する。
各抗体の調製物を、1MのL−アルギニン/5mMのEDTAを所定濃度の還元型グルタチオン(GSH)と共に含有するpH8.0の緩衝液中で最低2時間、室温で部分的に還元させた。次いで全ての調製物を、30kDaの膜(Millipore Amicon Ultra)を使用して、20mMのTris/3.2mMのEDTA、pH7.0バッファーにバッファー交換し、還元バッファーを除去した。次いで、得られた部分還元調製物を、マレイミドリンカーを介して、最低120分間、室温で、カリチアマイシンとコンジュゲートさせた。次いで水中で調製した10mMの原液を使用して、リンカー薬物と比較して過剰のNACを添加することにより、反応をクエンチした。最低20分間クエンチした後、0.5Mの酢酸を添加してpHを6.0に調整した。ADCの調製物を、30kDa膜を使用してダイアフィルトレーションによりダイアフィルトレーションバッファーにバッファー交換した。次いでダイアフィルトレーションした抗MFI2ADCを、ショ糖およびポリソルベート20を用いて製剤化し、目的の最終濃度にした。得られた抗MFI2ADCを、タンパク質濃度(UVで測定)、凝集(SEC)、逆相HPLC(RP−HPLC)による薬物抗体比(DAR)およびインビトロ細胞毒性について解析した。
[実施例20]
抗MFI2抗体薬物コンジュゲートは、インビトロにおける細胞毒性剤の送達を容易にする
本発明の抗MFI2ADCが、細胞毒性剤の生腫瘍細胞への送達を媒介するために内在化できるかどうかを判断するために、インビトロ細胞殺傷アッセイを、抗MFI2ADC、hSC57.32ss1PBD1およびhSC57.43ss1PBD1(上記実施例18で記載されたように製造)ならびにhSC57.32ss1Cal(上記実施例19で記載されたように製造)を使用して実施した。
hMFI2を過剰発現するHEK293T細胞、MFI2を内因的に発現するSK−MEL−28細胞または未処理HEK293T細胞の単一細胞懸濁液を、ウェルあたり500個の細胞でBD Tissue Cultureプレート(BD Biosciences)に蒔いた。PDX腫瘍由来のBR22およびSK19細胞の単一細胞懸濁液を、ウェルあたり2500個の細胞でPrimeriaプレートに蒔いた。1日後、様々な濃度の精製ADCまたはPBD1もしくはカリチアマイシンにコンジュゲートさせたヒトIgG1対照抗体を、培養物に加えた。細胞を、96時間またはPDX誘導腫瘍株の場合には7日間、インキュベートした。インキュベーション後、CellTiter−Glo(登録商標)(Promega)を製造業者の指示書に従って使用して、生存細胞を数えた。処置されていない細胞を含有する培養物を使用した未処理の発光カウント数を100%の参照値に設定し、他のカウント数は全てこの参照値に対するパーセンテージとして計算した。図11Aおよび11Bは、試験した全ての細胞が、抗MFI2ADCに対し、ヒトIgG1対照抗体と比較して非常に高い感受性があったことを示す。さらに、ADCは、MFI2を過剰発現するHEK293T細胞と比較して、MFI2を過剰発現しない未処理HEK293T細胞にほとんど効果を示さず、ADCのMFI2抗原に対する特異性が実証される(図11A)。図11Bは、様々な毒素(PBDおよびカリチアマイシン)を含む抗MFI2ADCが、BRおよびSK腫瘍を有効に殺傷する能力を示している。
上記結果は、MFI2を発現する細胞、例えばメラノーマおよび乳房腫瘍細胞への内在化および細胞毒性ペイロードの送達を特異的に媒介する抗MFI2ADCの能力を実証する。
[実施例21]
抗MFI2抗体薬物コンジュゲートはインビボで腫瘍成長を抑制する
上記実施例18で記載されたように生成された抗MFI2ADCを、免疫不全マウスにおいて、BR、LUおよびSK腫瘍成長を抑制する能力を実証するために試験した。
MFI2を発現するPDX腫瘍株(例えば、SK44、LU92、BR22およびBR86)ならびにより低いレベルでMFI2発現を示す腫瘍株(例えば、LU134)を、当該分野で認識されている技術を使用して、雌NOD/SCIDマウスの側腹部で皮下増殖させた。腫瘍体積およびマウスの重量は、1週間に1回または2回観測した。腫瘍体積が150〜250mm3に達したとき、マウスをランダムに複数の処置群に割り当てた。
BR腫瘍を有するマウスに対して行った試験では、マウスに、20mg/kgのドセタキセルまたはパクリタキセル(標準治療)の一用量、0.8mg/kg hSC57.32ss1PBD1もしくは抗ハプテン対照ヒトIgG1PBD1の一用量またはビヒクル対照の一用量のいずれかを腹腔内注射した(図12A)。メラノーマまたは肺腫瘍を有するマウスに対して行った試験では、マウスに、2mg/kg hSC57.43PBD1(図12Bで抗MFI2ADCとして示す)または抗ハプテン対照ヒトIgG1PBD1の一用量またはビヒクル対照の一用量のいずれかを腹腔内注射した(図12B)。
処置後、腫瘍体積およびマウス重量を、腫瘍が800mm3を超えるまでまたはマウスが病気になるまで監視した。抗MFI2ADCで処置されたマウスは、免疫不全の腫瘍担持NOD/SCIDマウスで通常見られるものを超えるような健康への有害な影響を何ら示さなかった。抗MFI2ADCの投与により、SK44、LU92、BR22およびBR86腫瘍において100日間を超えて続く顕著な腫瘍抑制がもたらされ、一方で、対照ADC IgG1PBD1(ならびにBR86、標準治療パクリタキセルおよびドセタキセル)の投与の場合には、腫瘍体積減少には至らなかった。逆に、抗MFI2ADCは、化学発光アッセイ(実施例14)およびフローサイトメトリ(実施例11)で測定されるMFI2の発現レベルが非常に低いLU134腫瘍において、腫瘍体積減少の効果をほとんど示さなかった。
抗MFI2ADCがMFI2発現腫瘍細胞を特異的に殺傷し、腫瘍成長をインビボで劇的に長期間抑制する能力は、がん、特に乳がんのTNBRサブタイプにおける治療的処置での抗MFI2ADCの使用をさらに確証する。さらに興味深いことに、図12Aにおいて2つの標準治療薬物で示されるように、BR86は薬物耐性腫瘍細胞株であり、したがってこの結果は、抗MFI2ADCが、薬物耐性腫瘍の腫瘍体積減少にも有効であることを示している。
[実施例22]
がん幹細胞集団における高密度のMFI2発現
腫瘍細胞は、2種類の細胞小集団、つまり非腫瘍形成性細胞(NTG)と腫瘍開始細胞または腫瘍形成性細胞とに大きく分けることができる。腫瘍形成性細胞は、免疫無防備状態マウスに移植したときに腫瘍を形成する能力を有するが、非腫瘍形成性細胞はこの能力を有しない。がん幹細胞(CSC)は、腫瘍形成性細胞の一区分であり、多系列分化の能力を維持しながら無限に自己複製することができる。
腫瘍におけるMFI2発現が、増強された腫瘍形成性と相関しているかを判断するために、以下の試験を行った。ヒトSK−MEL PDX腫瘍試料を、免疫無防備状態マウスで増殖させ、腫瘍が800〜2,000mm3に達した後で切除した。腫瘍を、当該技術分野で認識されている酵素消化技術(例えば、U.S.P.N.2007/0292414参照)を使用して、単一細胞懸濁液に解離した。ヒトSK−MEL PDX腫瘍細胞を、マウス抗CD45または抗H2kD抗体で染色し、ヒト腫瘍細胞とマウス細胞とを区別した。さらに腫瘍を、抗MFI2抗体(SC57.43)を用いて染色し、FACSAria(商標)フローサイトメータ(BD Biosciences)を使用して選別した。ヒトTNBR PDX腫瘍細胞を、MFI2(MFI2−hi)を発現する細胞集団およびアイソタイプ染色パラレル対照試料で定義されるMFI2を発現しない細胞集団(MFI2−neg)に分けた。5匹の雌NOD/SCID免疫無防備状態マウスに、50個のMFI2−hi SK−MEL腫瘍細胞を皮下注射し、5匹のマウスに、200個のMFI2−neg SK−MEL腫瘍細胞を注射した。腫瘍体積は、1週間に1回の基準で4カ月にわたり測定した。
図13は、MFI2−hi腫瘍細胞はインビボで腫瘍を機能的に再構成することができるが、一方でMFI2−neg腫瘍は再構成できないことを示す。したがって、MFI2を発現する腫瘍細胞は、MFI2を発現しない腫瘍細胞よりも腫瘍形成性が高い。このことから、MFI2タンパク質が、ヒト腫瘍内で腫瘍形成性小集団を機能的に定義することができることが示唆され、選択された抗MFI2ADCの使用により腫瘍細胞の腫瘍形成性小集団を標的化でき、顕著な腫瘍退縮および腫瘍再発の予防をもたらし得るという概念が支持される。
[実施例23]
抗MFI2抗体−薬物コンジュゲートによる腫瘍開始細胞の出現頻度の減少
実施例1、2および16で実証されるように、MFI2発現は腫瘍形成性細胞と関連している。したがって、薬物耐性であり、腫瘍再発および転移を亢進させることが既知のTICの出現頻度を、抗MFI2ADCを用いた処置が減少させることを実証するために、例えば、以下に要約して説明されるようなインビボ限界希釈アッセイ(LDA)を行う。
PDX腫瘍(例えば、乳房、肺またはメラノーマ)、免疫無防備状態マウスの皮下で成長させる。腫瘍体積が、平均して150mm3〜250mm3である場合、マウスを2つの群にランダムに分離する。一つの群には、薬物にコンジュゲートしたヒトIgG1を陰性対照として腹腔内注射し、他の群には、抗MFI2ADC(例えば、実施例18で調製したもの)を腹腔内注射する。投与から1週間後に、各群からの代表的マウスを安楽死させ、次いで腫瘍を採取し、単一細胞懸濁液に分散させる。次いで、各処置群の腫瘍細胞を回収し、プールし、実施例1で前述したように分解する。細胞を、FITC−コンジュゲート抗マウスH2Kdおよび抗マウスCD45抗体で標識してマウス細胞を検出し、EpCAMでヒト細胞を検出し、次いでDAPIで死細胞を検出する。次いで得られた懸濁液を、BD FACS Canto IIフローサイトメータを使用してFACSにより選別し、ヒト腫瘍生細胞を単離し、回収する。
マウスのいくつかのコホートに、抗MFI2ADCで処置した腫瘍由来の1250、375、115または35個の選別したヒト生細胞を移植する。陰性対照として、コホートあたり同じ数のマウスに、対照IgG1 ADCで処置した腫瘍由来の1000、300、100または30個の選別したヒト生細胞を移植する。レシピエントマウスの腫瘍は毎週測定し、腫瘍が1500mm3に達する前に個々のマウスを安楽死させる。レシピエントマウスは、陽性または陰性の腫瘍成長を有することでスコア化する。陽性の腫瘍成長は、100mm3を超える腫瘍の成長として定義される。ポアソン分布統計(L−Calcソフトウェア、Stemcell Technologies)を使用して、各集団におけるTICの出現頻度を計算する。