JP2017529364A - 線維症を治療するための組成物及び方法 - Google Patents

線維症を治療するための組成物及び方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、必要とする対象において、線維症及び/またはがんを治療するための方法を提供する。方法は、線維症及び/またはがんを治療するために、IL−4/IL−13受容体機能の阻害物質を含む組成物を提供する段階と、対象に有効量の組成物を投与する段階とを含む。

Description

政府の権利
本発明は、米国国立衛生研究所助成金番号CA163200及びAA11999に基づく助成を受け、政府の支援によりなされたものである。政府は、本発明に対し、一定の権利を有する。
発明の分野
必要とする対象において、線維症、膵炎及び/または膵臓がんを治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその予防を促進するための組成物及び方法が本明細書にて提供される。組成物は、IL−4/IL−13受容体機能の阻害物質を含む。
背景
本明細書にて引用される全ての公開物は、それぞれの個々の公開物または特許出願が参考として本明細書に援用されることが具体的かつ個別に示された場合と同様に、その全体を参考として本明細書に援用する。以下の説明には、本発明を理解する際に有用となり得る情報が含まれる。本明細書に記載される情報のいずれかが先行技術であること、もしくはここに特許請求する発明に関連していること、または具体的もしくは暗示的に参照されるあらゆる公開物が先行技術であることを自認するものではない。
慢性膵炎(CP)は、進行性であり、かつ不可逆的であると考えられる膵臓への損傷によって特徴付けられ、内分泌及び外分泌機能不全の最終結果を伴う。CPの組織学的特徴には、慢性炎症、線維症、腺房細胞萎縮ならびに屈曲した及び/または閉塞した管が挙げられる。CPの管理は難しく、合併症の管理に焦点が当てられ、特別な支持療法があるにもかかわらず、ほとんどの患者で症状が残る。現時点では、進行を制限するか、またはこの症候群を逆転させる効果的な方法はない。再発性APまたは膵臓の傷害は、壊死性炎症につながり、膵線維化の発症(壊死−線維化の概念)に関連付けられる。最近のインビトロ及びインビボ研究により、細胞外基質タンパク質の合成及び分解を制御することによる、活性化した膵星細胞(PSC)のCP関連線維形成での中心的役割が明らかになった。PSCは、膵炎に関連する毒性因子(例えば、エタノール)などの多くの要因、ならびに/または損傷した腺房細胞から放出されるサイトカイン及び/もしくは膵臓に浸潤する白血球(マクロファージ及び好中球など)によって活性化される。
マクロファージは、自然免疫細胞であり、Siamon Gordonのスキームに基づいて、2つの主な種類の範囲:(1)インターフェロンガンマ(IFNγ)及び/またはリポ多糖体によって誘導され、活性酸素及び窒素種の産生を特徴とし、宿主防御及び抗腫瘍免疫に重要な役割を果たすと考えられる、古典的活性化マクロファージ(M1)と;(2)IL−4/IL−13への曝露による、スカベンジャー受容体CD206の細胞表面発現を特徴とする、選択的活性化マクロファージ(AAM、M2)とに簡潔に分けられる。AAMは、炎症の鎮静にて主要な役割を果たし、創傷治癒、線維化及び腫瘍形成を促進する。近年の研究では、線維症の主要な制御因子として、マクロファージの機能が強調された。別個のマクロファージ集団が線維化の開始期、維持期及び消失期に対して重要な働きをもたらす。マクロファージは、PSCに近い量でヒト膵線維症において観察されており、また、その存在がCPのラットモデルで観察されていることから、十分定義されていないが、CPでのその潜在的役割が示唆されている。このように、活性化した星細胞とマクロファージとの間のクロストークがCP時の線維化プロセスを誘発し、維持するというメカニズム(複数可)はわかっていない。線維化プロセスに関与する免疫応答を詳細に描写することは、疾患の病因に関する我々の理解を改善し、疾患の治療及び/または逆転のいずれかを行うことができる新規治療法の開発を可能にするであろう。本発明者らの研究は、CPにおけるマクロファージの特徴及び機能を調査し、特定するものである。
本明細書にて、本発明者らは、CPへの進行がマクロファージの選択的活性化に関連することを明らかにし、インビボ及びインビトロの動物研究ならびにエクスビボヒト初代細胞を用いて、マクロファージとPSCとの間のクロストークにおけるIL−4/IL−13経路の重要な役割を示す。とりわけ、ペプチド拮抗物質を用いてIL−4/IL−13を遮断することで、確立した実験的CPにおける治療効果、及びヒトサンプルを使用した概念実証を得たエクスビボでの治療効果を明らかにする。これらの研究は、現在、有効な治療薬が存在せず、また進行性かつ不可逆性と思われる疾患に潜在的な利益を提供すると考えられる。
IL−4/IL−13受容体の阻害物質と、薬学的に許容される担体/賦形剤とを含む医薬組成物が本明細書にて提供される。種々の実施形態において、阻害物質は、本明細書に記載されるCSRM53567(配列番号1に記載)ペプチド、CSRM535671(配列番号2に記載)ペプチド、CSRM535672(配列番号3に記載)ペプチドもしくはこれらの組み合わせを含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。
いくつかの実施形態において、ペプチドは、1つ以上の非天然ペプチド結合もしくはアミノ酸を用いて、あるいは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)などの官能基をペプチドに連結させることによって、貯蔵寿命及び/またはバイオアベイラビリティを拡大するように修飾することができる。
組成物は、薬学的に許容される担体などの担体を更に含み得る。
必要とする対象において、疾患状態を治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその予防を促進するための方法が本明細書にて提供される。方法は、IL−4/IL−13受容体の阻害物質を含む組成物を提供する段階と、疾患状態を治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその予防を促進するために、有効量の組成物を対象に投与する段階とを含む。例示的な実施形態において、疾患状態は、線維症及び/またはがんである。いくつかの実施形態において、IL−4/IL−13受容体の阻害物質は、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672及び/もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上である。一実施形態において、対象は、ヒトである。
必要とする対象において、線維症を治療し、阻害し、その重症度を低減させるか、またはその予防を促進するための方法もまた本明細書にて提供される。方法は、IL−4/IL−13受容体の阻害物質を含む組成物を提供する段階と、線維症を治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその予防を促進するために、有効量の組成物を対象に投与する段階とを含む。線維症を治療し、阻害し、その重症度を低減させるか、またはその予防を促進するための方法は、器官特異性線維症に対する既存の治療法を指示する段階及び/または施す段階を更に含み得る。いくつかの実施形態において、IL−4/IL−13受容体の阻害物質は、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672及び/もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上である。一実施形態において、対象は、ヒトである。一実施形態において、線維症は、膵線維症である。別の実施形態において、線維症は、肺線維症である。
必要とする対象において、がんを治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその転移を防ぐための方法が本明細書にて更に提供される。方法は、IL−4/IL−13受容体の阻害物質を含む組成物を提供する段階と、がんを治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその転移を防ぐために、有効量の組成物を対象に投与する段階とを含む。がんを治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその転移を防ぐための方法は、特定のがん種に対する既存の治療法を指示する段階及び/または施す段階を更に含み得る。いくつかの実施形態において、IL−4/IL−13受容体の阻害物質は、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672及び/もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上である。一実施形態において、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態において、がんは、膵臓がんである。いくつかの実施形態において、がんは、肺がんである。
必要とする対象において、膵炎を治療し、阻害し、その重症度を低減させるか、またはその予防を促進するための方法もまた本明細書にて提供される。方法は、IL−4/IL−13受容体の阻害物質を含む組成物を提供する段階と、対象の膵炎を治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその予防を促進するために、有効量の組成物を対象に投与する段階とを含む。膵炎を治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその予防を促進するための方法は、膵炎に対する既存の治療法を指示する段階及び/または施す段階を更に含み得る。いくつかの実施形態において、IL−4/IL−13受容体の阻害物質は、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672及び/もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上である。一実施形態において、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態において、がんは、膵臓がんである。
IL−4/IL−13受容体シグナル伝達に関係する疾患状態を治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその予防を促進するための方法が本明細書にて更に提供される。方法は、IL−4/IL−13受容体の阻害物質を含む組成物を提供する段階と、IL−4/IL−13受容体シグナル伝達に関係する疾患状態を治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその予防を促進するために、有効量の組成物を対象に投与する段階とを含む。例示的な実施形態において、疾患状態には、慢性膵炎、慢性炎症、線維症、がんまたはこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、IL−4/IL−13受容体の阻害物質は、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672及び/もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上である。一実施形態において、対象は、ヒトである。
IL−4/IL−13受容体機能を阻害することによって治療可能な疾患状態を治療し、阻害し、その重症度を低減させるか、またはその予防を促進するための方法もまた本明細書にて提供される。方法は、IL−4/IL−13受容体の阻害物質を含む組成物を提供する段階と、IL−4/IL−13受容体機能を阻害する段階によって治療可能な疾患状態を治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその予防を促進するために、有効量の組成物を対象に投与する段階とを含む。例示的な実施形態において、疾患状態には、慢性膵炎、慢性炎症、線維症、がんまたはこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、IL−4/IL−13受容体の阻害物質は、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672及び/もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上である。一実施形態において、対象は、ヒトである。
例示的な実施形態を参照図に示す。本明細書にて開示される実施形態及び図は、限定的なものではなく、例示的なものとみなされることが意図される。
図1A〜図1Cは、本発明の種々の実施形態に従って、CSRM53567が慢性膵炎マウスモデルのマクロファージ及び線維症を低減させることを示す。図1Aは、治療方針を示し、図1Bは、FACSによって測定したCSRM53567のマクロファージに対する効果を示す。図1Cは、慢性膵炎を介した線維症による膵臓萎縮を防ぐ、CSRM53567の効果を示す。 図2は、本発明の種々の実施形態に従って、マウス及びヒトCPにおいて、マクロファージが増加することを示す。図2Aは、Luminex分析により定量化した、対照(Con)及びCPマウス由来の膵臓溶解物におけるサイトカイン及びケモカイン発現のヒートマップを示す。 図2Bは、アミラーゼ(腺房細胞)、α−SMA及びGFAP(PSC)、F4/80(マクロファージ)及び4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で染色した、対照マウス及びCPマウスに由来する膵臓の代表的な免疫蛍光法画像を示す。スケールバー50μm。 図2Cは、アミラーゼ、α−SMA、CD68(マクロファージ)及びDAPIで染色した、一対の正常組織及びCP組織のヒト膵臓の代表的な免疫蛍光法画像を示す。スケールバー50μm。 図2Dでは、対照マウス及びCPマウスから膵臓の白血球を単離し、フローサイトメトリーを使用して、マクロファージ数、BrdU取り込み、Ki−67発現を分析した(1群あたりn≧3)。 図2Eでは、CCR2WTCD45.1CD45.2 C57BL/6マウスを致死量照射し、CCR2WTCD45.1及びCCR2KOCD45.2マウス由来のBM細胞の1:1混合物で8週間かけて再構築した。記載のとおりに、セルレインをマウスに注入してCPを誘導し、膵臓の白血球を単離後、フローサイトメトリーを使用してマクロファージを分析した(前もってCD45.2でゲーティングせずに、CD11bF4/80でゲーティングした)。マクロファージの割合ならびにCCR2WTCD45.1(黒線)対CCR2KOCD45.2(灰色線)に由来するBrdU取り込み及びCCR2発現を示す、代表的なフローサイトメトリーのプロット及び棒グラフを示す。各群n=3、平均値±s.e.m.、nsは有意性なし(対応のない両側のスチューデントのt検定)。 図3は、本発明の種々の実施形態に従って、マウス及びヒトCPにおいて、選択的活性化マクロファージが優位であることを示す。図3Aでは、対照マウス及びCPマウスから膵臓の白血球を単離し、SSC−AlowCD11b単球/マクロファージでソートした(各群について5匹のマウスをプールした)。選択的活性化及び古典的活性化マクロファージのマーカーについて、定量的PCRを用いて評価した。遺伝子の発現量は、対照マウスでの相対発現量に対して正規化した。 図3Bでは、指定マウスの膵臓マクロファージにおける選択的活性化マーカー(CD206、IL−10及びIL−4Rα)及び古典的活性化マーカー(MHCII及びTNFα)の発現について、フローサイトメトリーを用いて測定した。MFI(平均蛍光強度);データは平均値±s.e.m.(対応のない両側のスチューデントのt検定)で示す。 図3Cは、マクロファージF4/80(マウス)またはCD68(ヒト)、CD206(M2マーカー)及びDAPI(核)で共染色した、マウス及びヒトCP組織の代表的な免疫蛍光法画像を示す。 図3Dは、F4/80またはCD68、TNFα(M1マーカー)及びDAPIで共染色した、マウス及びヒトCP組織の代表的な免疫蛍光法画像を示す。スケールバー50μm。 図4は、本発明の種々の実施形態に従って、マウス及びヒト膵星細胞が選択的マクロファージの分極化を促進することを示す。図4Aでは、CPマウスから分離した初代PSCの培養上清を回収し、Luminex分析により定量した。サイトカインデータをヒートマップで表す。 図4Bは、PSCの存在下または非存在下にて2日間共培養したBMDM中のマクロファージ活性化関連遺伝子の分析を示す。棒グラフは、BMDM遺伝子発現量を、PSCの存在とPSCの非存在(BMDM単独)とを比較して表している。 図4Cでは、BMDMをPSC馴化培地(PSC_CM)または対照培地(Con)とともに24時間培養し、CD206、IL−10、IL−4Rα、MHCII及びTNFαの発現をフローサイトメトリーの使用により測定した。 図4Dでは、WTまたはIL−4Rα−/−マウスに由来するBMDMをPSC_CMまたはIL−4/IL−13(選択的マクロファージ分極化の陽性対照)とともに24時間培養し、フローサイトメトリーを使用して、CD206の発現を調べた。 図4Eでは、マウスPSCをTGFβ(5ng ml−1)、PDGFβ(10ng ml−1)または対照とともに6時間培養し、qPCRを使用して、指定の遺伝子発現量を測定した。代表的な棒グラフは、対照処置群に対するmRNA相対発現量を示す。 図4Fには、PDAC片(番号2、4、6)、PDAC患者の正常辺縁(番号3及び5)及び正常な膵臓(番号1;膵臓の部分的切除を要した非膵臓腫瘍の患者)に由来する初代PSCの培養上清を回収し、Luminex分析により定量したものを示す。データをサイトカインのヒートマップ発現として示す。 図4Gでは、単球由来ヒトマクロファージをヒトPSC(hPSC_CM)の馴化培地に24時間曝露させた。CD206及びTNFαの発現について、フローサイトメトリーを使用して調べた。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。データは平均値±s.e.m.で示した(対応のない両側のスチューデントのt検定)。 図5は、本発明の種々の実施形態に従って、全てまたは骨髄特異性IL−4Rα欠損は、CPを防ぐことを示す。WT、IL−4/IL−13−/−、IL−4Rα−/−及びLysMcreIL−4Rαflox/floxマウスをセルレイン誘導CPに供した。図5Aには、膵臓の相対重量(膵臓の重量/体重)を示す。遺伝子型ごとn=6〜7、平均値±s.e.m.、***P<0.001、nsは有意性なし、P<0.05を有意とみなした(一元配置分散分析(ANOVA)、テューキー事後検定)。 図5Bには、異なる遺伝子型のマウスに由来する膵臓の組織学的特徴を、H&E及びトリクローム染色を使用して示す。スケールバー200μm。 図5Cは、指定マウスの膵臓中の線維症関連遺伝子αSMA(α−SMA)及びCol1α1(コラーゲン1A1)の定量的RT−PCR分析を示す。平均値±s.e.m.、P<0.05、**P<0.01、nsは有意性なし(一元配置ANOVA、テューキー事後検定)。 図5Dは、指定マウスの膵臓中の線維症関連遺伝子αSMA(α−SMA)及びCol1α1(コラーゲン1A1)の定量的RT−PCR分析を示す。平均値±s.e.m.、P<0.05、**P<0.01、nsは有意性なし(一元配置ANOVA、テューキー事後検定)。 図5Eは、各遺伝子型のマウスに由来する膵臓の代表的な免疫蛍光法画像(α−SMA、コラーゲン1A1及びDAPIで共染色)を示す。 図5Fは、異なる遺伝子型のマウスに由来する膵臓マクロファージ(CD11bF4/80)のCD206発現(MFI)のフローサイトメトリー分析を示す。平均値±s.e.m.、P<0.05、**P<0.01、nsは有意性なし(一元配置ANOVA、テューキー事後検定)。 図6は、本発明の種々の実施形態に従って、IL−4/IL−13阻害ペプチドが、確立されたCPを改善することを示す。CP誘導開始から2週間後に、IL−4/IL−13阻害ペプチド(マウス1匹あたりIL4/13BPをi.p.で50μg、週5日)をマウスに投与し、前述のとおり、セルレイン注入から4週後にマウスを屠殺した。図6Aは、Con及びIL4/13BP処置マウスの膵臓の相対重量を示す。各群n=8〜9、平均値±s.e.m.(対応のない両側のスチューデントのt検定)。 図6Bは、膵臓の代表的なH&E及びトリクローム染色を示す。スケールバー200μm。 図6Cは、指定マウスに由来する膵臓の代表的な免疫蛍光法画像(α−SMA、コラーゲン1A1及びDAPIで共染色)を示す。スケールバー:50μm。 図6Dは、指定マウスの膵臓中のα−SMA及びCol1α1(コラーゲン1A1)の遺伝子発現量のRT−PCR分析を示す。平均値±s.e.m.(対応のない両側のスチューデントのt検定)。 図6Eは、指定マウスの膵臓中のα−SMA及びCol1α1(コラーゲン1A1)の遺伝子発現量のRT−PCR分析を示す。平均値±s.e.m.(対応のない両側のスチューデントのt検定)。 図6Fは、指定マウスから単離した膵臓マクロファージ(CD11bF4/80)によるCD206発現(MFI)のフローサイトメトリー分析を示す。平均値±s.e.m.(対応のない両側のスチューデントのt検定)。 図6Gでは、上述のヒトマクロファージを、対照培地(Con)、hPSCs(hPSC_CM)の馴化培地または1μM IL4/13BPで前処理したhPSC_CM(hPSC_CM+BP)とともに24時間培養した。フローサイトメトリーを使用して、CD206の発現(CD206マクロファージのパーセンテージ)を分析した。 本発明の種々の実施形態に従って、慢性膵炎におけるマクロファージと膵星細胞(PSC)の相互作用の概略図を示す。
発明の詳細な説明
本明細書中に引用される全て参考文献は、完全に記載されているかのように、その全体が参考として援用される。別途の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。Allen et al.,Remington:The Science and Practice of Pharmacy 22nd ed.,Pharmaceutical Press(September 15,2012)、Hornyak et al.,Introduction to Nanoscience and Nanotechnology,CRC Press(2008)、Singleton and Sainsbury,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 3rd ed.,revised ed.,J.Wiley&Sons(New York,NY 2006)、Smith,March’s Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure 7th ed.,J.Wiley&Sons(New York,NY 2013)、Singleton,Dictionary of DNA and Genome Technology 3rd ed.,Wiley−Blackwell(November 28,2012)、及びGreen and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(Cold Spring Harbor,NY 2012)は、本出願に使用される多数の用語に関する一般的な指針を当業者に提供する。抗体の作製方法に関する参考文献については、Greenfield,Antibodies A Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Press(Cold Spring Harbor NY,2013)、Kohler and Milstein,Derivation of specific antibody−producing tissue culture and tumor lines by cell fusion,Eur.J.Immunol.1976 Jul,6(7):511−9、Queen and Selick,Humanized immunoglobulins(米国特許第5,585,089号、1996年12月)、及びRiechmann et al.,Reshaping human antibodies for therapy,Nature 1988 Mar 24,332(6162):323−7を参照されたい。
小児科学に関する参考文献については、Schwartz et al.,The 5−Minute Pediatric Consult 4th ed.,Lippincott Williams&Wilkins,(June 16,2005)、Robertson et al.,The Harriet Lane Handbook:A Manual for Pediatric House Officers 17th ed.,Mosby(June 24,2005)、及びHay et al.,Current Diagnosis and Treatment in Pediatrics(Current Pediatrics Diagnosis&Treatment)18th ed.,McGraw−Hill Medical(September 25,2006)を参照されたい。
当業者であれば、本発明の実施に使用することができる、本明細書に記載のものに類似するか、または等価である数多くの方法及び材料を認識するであろう。実際、本発明は、記載の方法及び材料に限定されるものでは一切ない。本発明上、次の用語は以下の定義とする。
本明細書で使用するとき、「含む(comprising)」または「含む(comprise)」という用語は、実施形態に有用である、組成物、方法及びその対応する構成要素(複数可)に関して使用されるものであり、有用であるか否かにかかわらず明記されていない要素の包含を制限するものではない。当業者であれば、通常、本明細書で使用される用語は、「非限定的な」用語であることが概ね意図されることを理解するであろう(例えば、「含む(including)」という用語は「〜を含むがこれらに限定されない」と解釈され、「有する(having)」という用語は「〜を少なくとも有する」と解釈され、「含む(include)」と言う用語は「〜を含むがこれらに限定されない」などと解釈されるものとする)。
特に記載のない限り、本出願の特定の実施形態を記載する文脈において(特に請求項との関連において)使用される「一つの(a)」及び「一つの(an)」及び「その(the)」という用語ならびに類似の指示は、単数と複数の両方を包含するものと解釈することができる。本明細書における値の範囲の記述は、その範囲内に該当する個々の各値を個別に指定するための簡便な方法として使用することを単に意図するものである。本明細書中に別途指定のない限り、個々の各値は、それが本明細書にて個別に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書中に別途指定のない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書中のある特定の実施形態に関して記載されるあらゆる全ての例または例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、本出願をより良く説明することのみを意図するものであり、別途特許請求される本出願の範囲に限定を課すものではない。「例えば(e.g.)」という略語は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、非限定的な例を示すために本明細書において使用される。したがって、「e.g.」という略語は、「例えば(for example)」という用語と同義である。本明細書中のいかなる文言も、特許請求されていない任意の要素が本出願の実施に不可欠であることを示すものと解釈されるべきではない。
「有益な結果」には、疾患状態の重症度を軽減または緩和すること、疾患状態の悪化を防ぐこと、疾患状態を治癒すること、疾患状態の発症を防ぐこと、疾患状態を発症する機会を減らすこと、及び患者の寿命または平均余命を延ばすことを挙げることができるが、これらに決して限定されるものではない。有益なまたは所望の臨床結果には、1つ以上の症状(複数可)の緩和、障害の程度の低減、がん進行状態の安定化(すなわち、悪化していない)、転移または浸潤の遅延または鈍化、及びがん関連症状の改善または一時的緩和が挙げられるが、これらに限定されない。治療には、その治療を受けない対象と比較した、対象の死亡率の低下または寿命の増加も含まれる。
本明細書で使用するとき、「投与すること」という用語は、所望の部位に作用物質を少なくとも部分的に局在化させる方法または経路により、本明細書に開示される作用物質を対象に投ずることを指す。
本明細書で使用する「がん」または「腫瘍」は、身体の器官及び系の正常な機能を妨げる、細胞の無秩序な成長を指す。がんまたは腫瘍を有する対象は、客観的に測定可能ながん細胞が対象の体内に存在する対象である。良性及び悪性がん、ならびに休眠腫瘍または微小転移もこの定義に含まれる。元の位置から移転し、生命維持に不可欠な器官に播種するがんは、最終的に、冒された器官の機能低下により、対象の死を招く可能性がある。本明細書で使用するとき、「癌腫」という用語は、上皮細胞から生じるがんを指す。本明細書で使用するとき、「浸潤性」という用語は、周囲組織に侵入し、それを破壊する能力を指す。黒色腫は、浸潤性の皮膚腫瘍である。がんの例には、B細胞リンパ腫(ホジキンリンパ腫及び/または非ホジキンリンパ腫)、脳腫瘍、乳がん、大腸がん、肺がん、肝細胞がん、胃がん、膵臓がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、尿路がん、甲状腺がん、腎臓がん、癌腫、黒色腫、頭頸部がん、脳がん及び前立腺がん(限定するものではないが、アンドロゲン依存性前立腺がん及びアンドロゲン非依存性前立腺がんを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用する「有効量」という用語は、疾患または障害の少なくとも1つ以上の症状を軽減させる、1つ以上の本明細書に開示されるペプチドまたはその変異体、バリアント、類似体もしくは誘導体を含む医薬組成物の量を指し、所望の効果をもたらすのに十分な薬理学的組成物の量に関する。本明細書で使用する「治療上有効な量」という用語は、任意の医学的処置に適用可能な妥当な利益/リスク比で、障害を治療するのに十分な組成物の量を意味する。
症状の治療上または予防上の有意な減少は、ある測定パラメーターについて、対照または非治療対象または当該ペプチドを投与する前の対象の状態と比較して、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約125%、少なくとも約150%またはそれを超える。測定されるまたは測定可能であるパラメーターには、臨床的に検出可能な疾患マーカー、例えば生物学的マーカーレベルの上昇または低下、ならびに線維症及び/もしくは炎症の症状またはマーカーの臨床的に許容されるスケールに関するパラメーターが含まれる。しかしながら、本明細書に開示される組成物及び製剤の一日の総用量は、堅実な医学的判断の範囲内で主治医により決定されることは理解されるであろう。必要とされる正確な量は、治療すべき疾患の種類、対象の性別、年齢及び体重などの因子に応じて変わるであろう。
本明細書で使用するとき、「対象」は、ヒトまたは動物を意味する。通常、動物は、霊長類、齧歯類、飼育動物または狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類には、チンパンジー、カニクイザル、クモザル及びマカク、例えば、アカゲザルが挙げられる。齧歯類には、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ及びハムスターが挙げられる。飼育動物及び狩猟動物には、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ科の種、例えば、飼いネコ、及びイヌ科の種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミが挙げられる。「患者」、「個体」及び「対象」という用語は、本明細書において区別なく用いられる。一実施形態において、対象は、哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマまたはウシであり得るが、これらの例に限定されない。更に、本明細書に記載の方法は、飼育動物及び/またはペットを治療するために使用することができる。この用語は、特定の年齢または性別を表すものではない。したがって、成体及び新生対象ならびに胎児が、男女関係なく、この用語の範囲内に含まれることが意図される。
本明細書で使用するとき、「治療する」、「治療」、「治療すること」または「改善」という用語は、その目的が、疾患または障害に関連する状態を逆転し、緩和し、改善し、阻害し、鈍化させるか、またはその進行もしくは重症度を留めることである、治療的処置を指す。「治療すること」という用語は、線維症、自己免疫疾患、慢性感染症またはがんなどの状態、疾患または障害の少なくとも1つの有害反応または症状を低減させるか、または緩和することを含む。治療は、1つ以上の症状または臨床マーカーが低減した場合、一般に「有効」である。あるいは、治療は、疾患の進行が減速するか、または停止した場合、「有効」である。すなわち、「治療」は、症状またはマーカーの改善だけでなく、治療の非存在下で予想される症状の進行または悪化を少なくとも遅らせることの中止も含まれる。有益なまたは所望の臨床結果には、検出が可能か不可能かにかかわらず、1つ以上の症状(複数可)の緩和、疾患程度の低減、疾患状態の安定化(すなわち、悪化していない)、疾患進行の遅延または鈍化、疾患状態の改善または一時的緩和、及び寛解(部分的であれ完全であれ)が挙げられるが、これらに限定されない。疾患の「治療」という用語には、疾患の症状または副作用の軽減をもたらすことも含まれる(緩和処置を含む)。
本明細書で使用する「治療薬」は、例えば、疾患を治療し、阻害し、予防し、その作用を軽減させ、その重症度を低減させ、その発症の可能性を低減させ、その進行を遅らせ、及び/または治癒するために使用される作用物質を指す。治療薬が標的にする疾患には、線維症、慢性膵炎、がんならびに/またはIL−4/IL−13受容体を介した機能及び/もしくはシグナル伝達に関連する任意の疾患状態が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用する「ペプチド模倣物」は、タンパク質機能を模倣するように設計された小さなタンパク質様鎖である。これらは、既存のペプチドの改変であってもよいし、既知のペプチドを模倣するように新しく設計されてもよい。これらは、例えば、ペプトイドならびに/またはβ−ペプチド及び/もしくはD−ペプチドであってよい。
「組み換えウイルス」とは、遺伝子的に(例えば、粒子への異種核酸構築物の付加または挿入により)改変されたウイルスを指す。
「遺伝子」または「コード配列」または特定のタンパク質もしくはペプチドを「コードする」配列は、適切な制御配列の制御下に置かれたとき、インビトロまたはインビボで、(DNAの場合)転写され、(mRNAの場合)ポリペプチドに翻訳される、核酸分子である。遺伝子の境界は、5’(すなわち、アミノ)末端の開始コドン及び3’(すなわち、カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定される。遺伝子には、原核生物または真核生物のmRNA由来のcDNA、原核生物または真核生物のDNA由来のゲノムDNA配列、及び更に合成DNA配列を挙げることができるが、これらに限定されない。転写終結配列は、通常、遺伝子配列の3’側に置かれる。
「制御エレメント」という用語は、プロモーター領域、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流制御ドメイン、複製起点、配列内リボソーム進入部位(「IRES」)、エンハンサーなどを総称的に指し、レシピエント細胞におけるコード配列の複製、転写及び翻訳を総合的に提供する。これらの制御エレメントは、選択したコード配列が適切な宿主細胞において複製され、転写され、翻訳され得る限り、その全てが常に存在する必要はない。
「プロモーター領域」という用語は、その通常の意味で、DNA制御配列を含むヌクレオチド領域を指すために本明細書にて使用され、この制御配列は、RNAポリメラーゼの結合及び下流(3’方向)のコード配列の転写開始を可能にする遺伝子に由来する。
「機能的に連結された」とは、そのように記載された要素がその通常の機能を果たすように構成された、エレメントの配置を指す。したがって、コード配列に機能的に連結された制御エレメントは、コード配列の発現をもたらすことができる。制御エレメントは、その発現を導くように機能する限り、コード配列と連続する必要はない。したがって、例えば、翻訳されないが転写される介在配列がプロモーター配列とコード配列との間に存在し得、それでもなお、このプロモーター配列は、コード配列に「機能的に連結された」とみなすことができる。
「遺伝子導入」または「遺伝子送達」とは、宿主細胞中に外来DNAを確実に挿入するための方法またはシステムを指す。このような方法により、導入された未統合DNAの一過性発現、導入されたレプリコン(例えば、エピソーム)の染色体外複製及び発現、または導入された遺伝子物質の宿主細胞のゲノムDNA中への組み込みをもたらすことができる。遺伝子導入は、後天性及び遺伝性疾患の治療のための特別なアプローチを提供する。哺乳動物細胞への遺伝子導入については、多数の系が開発されている。例えば、米国特許第5,399,346号を参照されたい。遺伝子導入に関してよく知られているビヒクルの例には、アデノウイルス及び組み換えアデノウイルス(RAd)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)ならびにレンチウイルス(LV)が挙げられる。
本明細書で使用する「遺伝子改変された細胞」、「遺伝子操作された細胞」または「改変された細胞」とは、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらのバリアント、誘導体、薬学的同等物、ペプチド模倣物もしくは類似体のうちのいずれか1つ以上の配列を有するポリヌクレオチドを発現する細胞を指す。
本明細書で使用する「ネイキッドDNA」は、発現に適した配向で好適な発現ベクター内にてクローン化された、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672もしくはこれらの組み合わせ、またはそのバリアント、誘導体、薬学的同等物、ペプチド模倣物もしくは類似体のうちのいずれか1つ以上の配列を有するポリペプチドをコードするDNAを指す。使用することができるウイルスベクターには、SINレンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、泡沫状ウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ハイブリッドベクター及び/またはプラスミドトランスポゾン(例えば、スリーピングビューティートランスポゾン系)もしくはインテグラーゼによるベクター系が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の代替的実施形態に関連して使用することができる他のベクターについては、当業者に明らかである。
本明細書で使用する「ポリヌクレオチド」には、DNA、RNA、cDNA(相補DNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、rRNA(リボゾームRNA)、shRNA(小ヘアピンRNA)、snRNA(核内低分子RNA)、snoRNA(核小体低分子RNA)、miRNA(マイクロRNA)、ゲノムDNA、合成DNA、合成RNA及び/またはtRNAが挙げられるが、これらに限定されない。
「トランスフェクション」という用語は、細胞による外来DNAの取り込みを指すために本明細書において使用される。細胞は、外因性DNAが細胞膜内に導入されたとき、「トランスフェクト」されている。多数のトランスフェクション技術が当該技術分野において一般に知られている。例えば、Graham et al.Virology,52:456(1973)、Sambrook et al.Molecular Cloning,a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New York(1989)、Davis et al.,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier(1986)、及びChu et al.Gene 13:197(1981)を参照されたい。このような技術を使用して、1つ以上の外因性DNA部分、例えばプラスミドベクター及び他の核酸分子を好適な宿主細胞に導入することができる。この用語は、遺伝子物質の安定的及び一過性の両方の取り込みを指す。
本明細書で使用する「ベクター」、「クローニングベクター」及び「発現ベクター」とは、宿主を形質転換し、導入された配列の発現(例えば、転写及び翻訳)を促進するようにポリヌクレオチド配列(例えば、外来遺伝子)を宿主細胞中に導入することができる、ビヒクルを指す。ベクターには、プラスミド、ファージ、ウイルスなどが挙げられる。
現在、IL−4/IL−13の両サイトカイン経路を標的にする小分子薬は存在しない。線維症及び/またはがん、例えば、膵炎及び膵臓がんを有する対象の線維症の予防及び/または治療のためのIL4/IL−13受容体阻害物質(例えば、小分子阻害物質CSRM53567、CSRM535671及びCSRM535672)が本明細書にて提供される。
阻害物質
IL−4/IL−13受容体機能を標的にする阻害物質及び許容される担体/賦形剤を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる医薬組成物が本明細書にて提供される。種々の実施形態において、阻害物質は、小分子、ペプチド、タンパク質、アプタマー、抗体もしくはその断片、核酸分子、IL−4及びIL−4/IL−13受容体に特異的な結合部位を含む二重特異性ポリペプチド、IL−13及びIL−4/IL−13受容体に特異的な結合部位を含む二重特異性ポリペプチドまたはこれらの組み合わせのうちのいずれか1つ以上である。
いくつかの実施形態において、阻害物質には、抗体(「抗体」は、エピトープもしくは抗原結合ペプチド、パラトープ、機能的CDRなどの抗体の抗原結合部分;組み換え抗体;キメラ抗体;トリボディ;ミディボディ;またはそれらの抗原結合誘導体、類似体、バリアント、一部もしくは断片を含む)、タンパク質結合物質、小分子、組み換えタンパク質、ペプチド、アプタマー、アビマー及びこれらのタンパク質結合誘導体、一部または断片が挙げられるが、これらに限定されない。
IL−4/IL−13受容体機能を標的にする阻害物質及び許容される担体/賦形剤を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる医薬組成物もまた本明細書にて提供される。種々の実施形態において、阻害物質は、本明細書に記載のCSRM53567ペプチド、CSRM535671ペプチド、CSRM535672ペプチドもしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物及び/もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上である。本発明の全ての実施形態のある特定の態様では、ペプチドは、融合タンパク質を更に含む。具体的には、融合タンパク質は、エピトープタグ及び半減期延長物質またはこれらの組み合わせから選択することができる。ある特定の実施形態において、1つ以上のペプチドは、IL−4/IL−13受容体機能の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%阻害をもたらす。治療的に投与される場合、ペプチド組成物は、典型的に、薬学的に許容される溶液または担体を更に含む。いくつかの態様において、ポリペプチドまたはタンパク質(例えば、CSRM53567ペプチド、CSRM535671ペプチド、CSRM535672ペプチドまたはこれらの組み合わせ)は、非天然アミノ酸を含む「修飾ポリペプチド」である。いくつかの態様において、ポリペプチドは、天然及び非天然アミノ酸の組み合わせを含み、いくつかの実施形態において、ペプチドは、非天然アミノ酸のみを含む。
一実施形態において、阻害物質は、アミノ酸配列TYR−CYS−ASP−ASP−PHE−VAL−GLY−SER−PHE−ASP−CYS−TYR(配列番号1)またはその類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物を含むか、これらからなるか、あるいはこれらから本質的になるCSRM53567である。
別の実施形態において、阻害物質は、アミノ酸配列TYR−CYS−ASP−ASP−PHE−VAL−GLY−SER−PHE−ASP−CYS−TYR−ASP(配列番号2)またはその類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物を含むか、これらからなるか、あるいはこれらから本質的になるCSRM535671である。
更なる実施形態において、阻害物質は、アミノ酸配列TYR−CYS−ASP−ASP−PHE−VAL−GLY−SER−PHE−ASP−CYS−TYR−GLU(配列番号3)またはその類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物を含むか、これらからなるか、あるいはこれらから本質的になるCSRM535672である。
いくつかの実施形態において、阻害物質のCSRM53567ペプチド、CSRM535671ペプチド、CSRM535672ペプチドもしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物及び/もしくはペプチド模倣物は、修飾されたペプチドである。「修飾されたペプチド」は、本発明のペプチドへのラクタム架橋、頭−尾結合環化、非天然アミノ酸の組み込み、例えば、ペプチド(またはプロテアーゼ認識配列を除く、組成物の他の構成要素)への非天然合成アミノ酸、置換アミノ酸または1つもしくは複数のD−アミノ酸の組み込みを含み得、ある特定の状況では望ましい。D−アミノ酸含有ペプチドは、L−アミノ酸含有型と比較して、インビトロまたはインビボでより大きな安定性を示す。したがって、より大きなインビボまたは細胞内での安定性が望ましいか、または必要とされる場合、D−アミノ酸を含むペプチドの構築物が特に有用であり得る。より具体的には、D−ペプチドは、内因性ペプチダーゼ及びプロテアーゼに対する抵抗性があり、これにより、そのような特性が望ましい場合には、連結された薬物及び複合体のより良好な経口経上皮的及び経皮的送達、膜透過性複合体(更なる考察については以下参照)のバイオアベイラビリティの改善、ならびに血管内及び間質における寿命の延長をもたらす。D−異性体ペプチドを使用すると、連結された薬物及び他のカーゴ分子の経皮的及び経口経上皮的送達が向上し得る。更に、D−ペプチドは、ヘルパーT細胞への主要組織適合遺伝子複合体クラスII拘束性提示に関して、有効的にプロセシングされないため、生物全体において、体液性免疫反応を誘発する可能性が低い。したがって、ペプチド複合体は、例えば、D−異性体型の細胞膜透過性ペプチド配列、L−異性体型の開裂部位及びD−異性体型の治療用ペプチドを用いて、構築することができる。したがって、いくつかの実施形態において、開示されるペプチドは、L及びDアミノ酸を含み、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個以下のD−アミノ酸が含まれる。ある特定の態様では、ペプチドは10個を超えるD−アミノ酸を含み、ある特定の態様では、ペプチドの全てのアミノ酸がD−アミノ酸である。
いくつかの実施形態において、阻害物質は、CSRM53567ペプチド、CSRM535671ペプチド、CSRM535672ペプチドもしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物及び/もしくはペプチド模倣物のレトロインベルソペプチドである。「レトロインベルソペプチド」という用語は、少なくとも1つの位置においてペプチド結合の方向が逆転していること、すなわち、アミノ酸の側鎖に関してアミノ末端とカルボキシ末端とが逆転しているペプチドを指す。したがって、レトロインベルソ類似体は、逆転した末端及び逆転したペプチド結合方向を有し、かつ本来のペプチド配列中の側鎖のトポロジーをほぼ維持している。レトロインベルソペプチドは、L−アミノ酸もしくはD−アミノ酸またはL−アミノ酸とD−アミノ酸との組み合わせを含むことができ、最大でアミノ酸の全てがD−異性体である。部分レトロインベルソペプチド類似体は、配列の一部のみが逆転しており、かつ鏡像異性アミノ酸残基で置換されているポリペプチドである。このような類似体のレトロインベルソ部分は、逆転したアミノ末端及びカルボキシル末端を有するので、レトロインベルソ部分の側面に位置するアミノ酸残基は、側鎖の類似体であるα-置換されたジェミナルのジアミノメタン及びマロン酸にそれぞれ置き換えられる。細胞膜透過性ペプチドのレトロインベルソ型は、天然型と同等の効率で膜を移行するように働くことがわかっている。レトロインベルソペプチド類似体の合成については、Bonelli,F.et al.,Int J Pept Protein Res.24(6):553−6(1984)、Verdini,A and Viscomi,G.C,J.Chem.Soc.Perkin Trans.1:697−701(1985)、及び米国特許第6,261,569号に記載されており、これらの全体を参考として本明細書に援用する。部分レトロインベルソペプチド類似体の固相合成法は記載されており(EP97994−B)、この全体も同様に参考として本明細書に援用する。
本明細書に記載のペプチド(例えば、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672)の他のバリアントは、保存的に置換された配列を含み得る。これは、元のペプチドの1つ以上のアミノ酸残基が異なる残基によって置き換えられており、かつ保存的に置換されたペプチドは所望の生物活性、すなわち、元のペプチドの能力と本質的に等価であるIL−4/IL−13受容体を阻害する能力を保持していることを意味する。保存的置換の例には、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672の二次及び/もしくは三次構造を変更しないアミノ酸の置換、全体的もしくは局所的な疎水性特徴を変更しない置換、全体的もしくは局所的な電荷を変更しない置換、同等の大きさの側鎖の残基による置換、または類似の反応性基を含む側鎖による置換が挙げられる。
他の例は、種間で親配列に進化的に保存されていないアミノ酸の置換を含む。有利には、いくつかの実施形態において、これらの保存されたアミノ酸及び構造は、保存的に置換された配列を生成するとき、変更されない。
所与のアミノ酸は、例えば、脂肪族残基を別の脂肪族残基で置換すること(Ile、Val、LeuまたはAlaの互いの置換)または極性残基を別の極性残基で置換すること(LysとArg、GluとAspまたはGlnとAsnの間での置換)など、類似の生理化学的性質を有する残基によって置換することができる。他のこのような保存的置換、例えば、類似の疎水性特徴を有する領域全体の置換または類似の体積の側鎖を有する残基の置換もよく知られている。保存的アミノ酸置換を含む単離されたペプチドは、本明細書で別途記載されるアッセイによって決定される所望の活性、例えば、IL−4/IL−13受容体機能の阻害が保持されていることを確認するために、本明細書に記載のアッセイのうちのいずれか1つにて試験を行うことができる。
アミノ酸は、その側鎖の特性の類似性に従ってグループ化することができる(A.L.Lehninger,in Biochemistry,second ed.,pp.73−75,Worth Publishers,New York(1975)):(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M);(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q);(3)酸性:Asp(D)、Glu(E);(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)。あるいは、天然残基は、共通する側鎖特性:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Trp;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、Ala、Tyr、His、Pro、Gly;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖配向性に影響する残基:Gly、Pro;(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe、Pro、Hisまたはヒドロキシプロリンに基づいて各グループに分けられる。非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスに交換することによってなされる。
本明細書に記載のバリアントにおける使用に対して特に好ましい保存的置換は、次のとおりである。AlaをGlyもしくはSerへ、ArgをLysへ、AsnをGlnもしくはHisへ、AspをGluもしくはAsnへ、CysをSerへ、GlnをAsnへ、GluをAspへ、GlyをAlaもしくはProへ、HisをAsnもしくはGlnへ、IleをLeuもしくはValへ、LeuをIleもしくはValへ、LysをArg、GlnもしくはGluへ、MetをLeu、TyrもしくはIleへ、PheをMet、LeuもしくはTyrへ、SerをThrへ、ThrをSerへ、TrpをTyrもしくはPheへ、TyrをPheもしくはTrpへ、及び/またはPheをVal、Tyr、IleもしくはLeuへの置換。一般に、保存的置換は、類似の物理化学的性質を持つ残基での残基変換を包含する(すなわち、疎水性残基の別の疎水性アミノ酸での置換)。
本明細書に記載の単離ペプチドの適切な立体構造の維持に関与しない任意のシステイン残基もまた、通常はセリンで置換することができ、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を防ぐことができる。逆に、システイン結合(複数可)を本明細書に記載の単離ペプチドに付加して、その安定性を改善するか、または多量体化を容易にすることができる。
本明細書で使用するとき、「機能性断片」は、少なくとも5つのアミノ酸を含み、本明細書に記載のアッセイによりIL−4/IL−13受容体機能を阻害することができる、ペプチドの断片またはセグメントである。機能性断片は、IL−4/IL−13受容体機能を阻害する機能を保持する限り、本明細書にて開示される、配列の保存的置換を含み得る。これは、ペプチドの親の(例えば、元の)形態の阻害の少なくとも50%の阻害を検出することにより試験することができる。
安定性、バイオアベイラビリティ及び/またはペプチドの細胞への送達を向上させるために、ペプチドを修飾することができる。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の単離ペプチドは、少なくとも1つのペプチド結合置換を含み得る。1つのペプチド結合以上のペプチド結合、例えば、2つの結合、3つの結合、4つの結合、5つの結合もしくは6つ以上の結合、または全てのペプチド結合を置換することができる。本明細書に記載の単離ペプチドは、1種類のペプチド結合置換以上の種類のペプチド結合置換、例えば、2種類、3種類、4種類、5種類以上の種類のペプチド結合置換を含み得る。ペプチド結合置換の非限定的な例には、尿素、チオ尿素、カルバメート、スルホニル尿素、トリフルオロエチルアミン、オルト−(アミノアルキル)−フェニル酢酸、パラ−(アミノアルキル)−フェニル酢酸、メタ−(アミノアルキル)−フェニル酢酸、チオアミド、テトラゾール、ボロン酸エステル、オレフィン基及びこれらの誘導体が挙げられる。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の単離ペプチドは、生体によって産生されるポリペプチド及び/またはタンパク質において一般的に認められる天然アミノ酸、例えば、Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)、Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)、Asp(D)、Glu(E)、Lys(K)、Arg(R)及びHis(H)を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の単離ペプチドは、代替的なアミノ酸を含み得る。代替的なアミノ酸の非限定的な例としては、D−アミノ酸;β−アミノ酸;ホモシステイン、ホスホセリン、ホスホトレオニン、ホスホチロシン、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸;馬尿酸、オクタヒドロインドール−2−カルボン酸、スタチン、1,2,3,4,−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、ペニシラミン(3−メルカプト−D−バリン)、オルニチン、シトルリン(citruline)、α−メチル−アラニン、パラ−ベンゾイルフェニルアラニン、パラ−アミノフェニルアラニン、p−フルオロフェニルアラニン、フェニルグリシン、プロパルギルグリシン、サルコシン及びtert−ブチルグリシン)、ジアミノ酪酸、7−ヒドロキシ−テトラヒドロイソキノリンカルボン酸、ナフチルアラニン、ビフェニルアラニン、シクロヘキシルアラニン、アミノ−イソ酪酸、ノルバリン、ノルロイシン、tert−ロイシン、テトラヒドロイソキノリンカルボン酸、ピペコリン酸、フェニルグリシン、ホモフェニルアラニン、シクロヘキシルグリシン、デヒドロロイシン、2,2−ジエチルグリシン、1−アミノ−1−シクロペンタンカルボン酸、1−アミノ−1−シクロヘキサンカルボン酸、アミノ−安息香酸、アミノ−ナフトエ酸、γ−アミノ酪酸、ジフルオロフェニルアラニン、ニペコチン酸、α−アミノ酪酸、チエニル−アラニン、t−ブチルグリシン、トリフルオロバリン;ヘキサフルオロロイシン;フッ素化類似体;アジド修飾アミノ酸;アルキン修飾アミノ酸;シアノ修飾アミノ酸;ならびにこれらの誘導体が挙げられる。
いくつかの実施形態において、単離されたペプチドは、例えば、ペプチドを構成するアミノ酸のうちの1つ以上に、ある部分を付加することにより、修飾することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の単離ペプチドは、1つ以上の部分分子、例えば、1ペプチドあたり1つ以上の部分分子、1ペプチドあたり2つ以上の部分分子、1ペプチドあたり5つ以上の部分分子、1ペプチドあたり10つ以上の部分分子、または1ペプチドあたりそれより多くの部分分子を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の単離ペプチドは、1種類以上の修飾及び/または部分、例えば、1種類の修飾、2種類の修飾、3種類の修飾またはそれ以上の修飾を含み得る。修飾及び/または部分の非限定的な例には、PEG化、グリコシル化、HES化、ELP化、脂質化、アセチル化、アミド化、エンドキャップ修飾、シアノ基、リン酸化及び環化が挙げられる。いくつかの実施形態において、エンドキャップ修飾は、N末端でのアセチル化、N末端アシル化及びN末端ホルミル化を含み得る。いくつかの実施形態において、エンドキャップ修飾は、C末端でのアミド化、C末端のアルコール、アルデヒド、エステル及びチオエステル部分の導入を含み得る。
本明細書に記載の単離ペプチドは、第2の機能性分子、ペプチド及び/またはポリペプチドに連結及び/または接続することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の単離ペプチドは、標的化分子に連結される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の単離ペプチドは、ペプチドと標的化分子とを、所望により、この間に挿入されたペプチドリンカー配列とともに、融合ペプチドとして発現させることによって、標的化分子に連結される。本明細書で使用するとき、「標的化分子」は、特定の細胞または組織型に結合することができるか、または結合され得る任意の分子、例えば、ペプチド、抗体もしくはその断片、抗原、標的化リポソームまたは小分子であってよい。非限定的な例として、本明細書に記載の単離ペプチドを肺に対して標的化するのが望ましい場合(例えば、炎症、肺線維症または肺がんを治療するため)、配列番号1、配列番号2または配列番号3のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む単離ペプチドを、肺細胞または肺組織に特異的である抗体またはその断片、例えば、米国特許公開第2005/0287066号に記載されている抗体または抗体断片に連結することが可能である。非限定的な例として、本明細書に記載の単離ペプチドを膵臓に対して標的化するのが望ましい場合(例えば、炎症、膵線維症、膵臓がんを治療するため)、配列番号1、配列番号2または配列番号3のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む単離ペプチドを、肺細胞または肺組織に特異的である抗体またはその断片、例えば、ErbB受容体または及び/またはがん胎児性抗原(CEA)及び/またはがん抗原19−9(CA19−9)を標的にする抗体または抗体断片に連結することが可能である。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の単離ペプチドは、融合ペプチドまたはポリペプチドであってよい。融合ポリペプチドは、本明細書にて記載される配列番号1〜3またはこれらの誘導体、バリアント、機能性断片、プロドラッグもしくは類似体のアミノ酸配列を含むペプチドの第1のドメインと、融合ペプチドの少なくとも第2のドメインとの間に挿入されたペプチドリンカードメインを含み得る。第1のペプチドドメインは、N末端ドメインもしくはC末端ドメインまたはパートナードメインが構成要素の断片相互作用後に形成される場合には内部配列であってよい。融合タンパク質を合成または作製する方法は当業者によく知られている。本明細書で使用する「融合タンパク質」という用語は、2つまたはそれ以上のタンパク質の組み換えタンパク質を指す。融合タンパク質は、例えば、細胞中で全ての目的タンパク質を有する1つのポリペプチドに翻訳され得る単一のオープンリーディングフレームを構成するように、1つのタンパク質をコードする核酸配列を、別のタンパク質をコードする核酸に結合することによって作製することができる。タンパク質の配置の順序は、変えてもよい。融合タンパク質は、エピトープタグまたは半減期延長物質を含み得る。エピトープタグには、ビオチン、FLAGtag、c−myc、ヘマグルチニン、His6、ジゴキシゲニン、FITC、Cy3、Cy5、緑色蛍光タンパク質、V5エピトープタグ、GST、β−ガラクトシダーゼ、AU1、AU5及びアビジンが挙げられる。半減期延長物質には、Fcドメイン及び血清アルブミンが挙げられる。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の単離ペプチドは、薬学的に許容されるプロドラッグであってよい。本明細書で使用するとき、「プロドラッグ」は、何らかの化学的または生理学的プロセス(例えば、酵素的プロセス及び代謝的加水分解)を介して治療薬へと変換され得る化合物を指す。したがって、「プロドラッグ」という用語はまた、薬学的に許容される生物学的活性化合物の前駆体も指す。プロドラッグは、対象に投与されるときは不活性、すなわちエステルであり得るが、インビボで、例えば、遊離カルボン酸または遊離ヒドロキシルへの加水分解によって、活性化合物に変換される。プロドラッグ化合物は、多くの場合、生体における溶解度、組織適合性または遅延放出に関する利点を提供する。「プロドラッグ」という用語はまた、このようなプロドラッグが対象に投与されたときに、インビボで活性化合物を放出する任意の共有結合された担体を含むことも意味する。活性化合物のプロドラッグは、通常の操作またはインビボのいずれかで修飾が切断されて親活性化合物になるように、活性化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製することができる。プロドラッグは、ヒドロキシ基、アミノ基またはメルカプト基が、活性化合物のプロドラッグが対象に投与されたときに切断されて、それぞれ遊離ヒドロキシ基、遊離アミノ基または遊離メルカプト基を形成する任意の基に結合されている化合物を包含する。プロドラッグの例には、アルコールの酢酸、ギ酸及び安息香酸誘導体及び活性化合物中のアミン官能基のアセトアミド、ホルムアミド及びベンズアミド誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。Harper,“Drug Latentiation” in Jucker,ed.Progress in Drug Research 4:221−294(1962)、Morozowich et al,“Application of Physical Organic Principles to Prodrug Design” in E.B.Roche ed.Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs,APHA Acad.Pharm.Sci.40(1977)、Bioreversible Carriers in Drug in Drug Design,Theory and Application,E.B.Roche,ed.,APHA Acad.Pharm.Sci.(1987)、Design of Prodrugs,H.Bundgaard,Elsevier(1985)、Wang et al.“Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drug” in Curr.Pharm.Design.5(4):265−287(1999)、Pauletti et al.(1997)Improvement in peptide bioavailability:Peptidomimetics and Prodrug Strategies,Adv.Drug.Delivery Rev.27:235−256、Mizen et al.(1998)“The Use of Esters as Prodrugs for Oral Delivery of(3−Lactam antibiotics” Pharm.Biotech.ll,:345−365、Gaignault et al.(1996)“Designing Prodrugs and Bioprecursors I.Carrier Prodrugs” Pract.Med.Chem.671−696、Asgharnejad,“Improving Oral Drug Transport”,in Transport Processes in Pharmaceutical Systems,G.L.Amidon,P.I.Lee and E.M.Topp,Eds.,Marcell Dekker,p.185−218(2000)、Balant et al.,“Prodrugs for the improvement of drug absorption via different routes of administration”,Eur.J.Drug Metab.Pharmacokinet.,15(2):143−53(1990)、Balimane and Sinko,“Involvement of multiple transporters in the oral absorption of nucleoside analogues”,Adv.Drug Delivery Rev.,39(1−3):183−209(1999)、Browne,“Fosphenytoin(Cerebyx)”,Clin.Neuropharmacol.20(1):1−12(1997)、Bundgaard,“Bioreversible derivatization of drugs− principle and applicability to improve the therapeutic effects of drugs”,Arch.Pharm.Chemi 86(1):1−39(1979)、Bundgaard H.“Improved drug delivery by the prodrug approach”,Controlled Drug Delivery 17:179−96(1987)、Bundgaard H.“Prodrugs as a means to improve the delivery of peptide drugs”,Arfv.Drug Delivery Rev.8(1):1−38(1992)、Fleisher et al.“Improved oral drug delivery:solubility limitations overcome by the use of prodrugs”,Arfv.Drug Delivery Rev.19(2):115−130(1996)、Fleisher et al.“Design of prodrugs for improved gastrointestinal absorption by intestinal enzyme targeting”,Methods Enzymol.112(Drug Enzyme Targeting,Pt.A):360−81,(1985)、Farquhar D,et al.,“Biologically Reversible Phosphate−Protective Groups”,Pharm.Sci.,72(3):324−325(1983)、Freeman S,et al.,“Bioreversible Protection for the Phospho Group:Chemical Stability and Bioactivation of Di(4−acetoxy−benzyl)Methylphosphonate with Carboxyesterase,” Chem.Soc.,Chem.Commun.,875−877(1991)、Friis and Bundgaard,“Prodrugs of phosphates and phosphonates:Novel lipophilic alphaacyloxyalkyl ester derivatives of phosphate− or phosphonate containing drugs masking the negative charges of these groups”,Eur.J.Pharm.Sci.4:49−59(1996)、Gangwar et al.,“Pro−drug,molecular structure and percutaneous delivery”,Des.Biopharm.Prop.Prodrugs Analogs,[Symp.] Meeting Date 1976,409−21.(1977)、Nathwani and Wood,“Penicillins:a current review of their clinical pharmacology and therapeutic use”,Drugs 45(6):866−94(1993)、Sinhababu and Thakker,“Prodrugs of anticancer agents”,Adv.Drug Delivery Rev.19(2):241−273(1996)、Stella et al.,“Prodrugs.Do they have advantages in clinical practice?”,Drugs 29(5):455−73(1985)、Tan et al.“Development and optimization of anti−HIV nucleoside analogs and prodrugs:A review of their cellular pharmacology,structure−activity relationships and pharmacokinetics”,Adv.Drug Delivery Rev.39(1−3):117−151(1999)、Taylor,“Improved passive oral drug delivery via prodrugs”,Adv.Drug Delivery Rev.,19(2):131−148(1996)、Valentino and Borchardt,“Prodrug strategies to enhance the intestinal absorption of peptides”,Drug Discovery Today 2(4):148−155(1997)、Wiebe and Knaus,“Concepts for the design of anti−HIV nucleoside prodrugs for treating cephalic HIV infection”,Adv.Drug Delivery Rev.:39(l−3):63−80(1999)、Waller et al.,“Prodrugs”,Br.J.Clin.Pharmac.28:497−507(1989)を参照されたい。これらの文献は、その全体を参考として本明細書に援用する。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の単離ペプチドは、薬学的に許容される溶媒和物であってよい。「溶媒和物」という用語は、好適な溶媒の分子がその結晶格子中に取り込まれている、固体状態の本明細書に記載の単離ペプチドを指す。治療的投与に適した溶媒は、投与量で生理学的に耐容性である。治療的投与に適した溶媒の例は、エタノール及び水である。水が溶媒である場合、溶媒和物は、水和物と呼ばれる。一般に、溶媒和物は、化合物を適切な溶媒中に溶解し、冷却するか、または逆溶媒を用いて、溶媒和物を単離することによって形成される。溶媒和物は、典型的には、周囲条件下にて、乾燥または共沸される。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の単離ペプチドは、非結晶性、すなわち、非晶質固体であってよい。
一態様において、本明細書に記載されるペプチドをコードする核酸を含むベクターが本明細書にて記載される。「ベクター」という用語は、本明細書で使用するとき、宿主細胞への送達または異なる宿主細胞間での移行のために設計された核酸構築物を指す。本明細書で使用するとき、ベクターは、ウイルス性であっても、非ウイルス性であってもよい。「ベクター」という用語は、適切な制御エレメントと連結されたときに複製が可能となり、かつ遺伝子配列を細胞に導入することができる、任意の遺伝子エレメントを包含する。ベクターには、クローニングベクター、発現ベクター、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。標的哺乳動物細胞中に外因性遺伝子を導入するのに有用なベクターは、多数入手可能である。ベクターは、エピソーム性、例えば、プラスミド、サイトメガロウイルス、アデノウイルスなどのウイルス由来ベクターであってもよいし、あるいは相同組み換えまたはランダム組み込みによって、例えば、MMLV、HIV−1、ALVなどのレトロウイルス由来ベクターによって標的細胞ゲノムに組み込んでもよい。多数のウイルスベクターが当該技術分野において知られており、核酸制御化合物の細胞内への担体として使用することができる。例えば、ポリペプチドをコードする核酸を含有する構築物は、細胞への感染または形質導入のために、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)もしくは単純ヘルペスウイルス(HSV)またはレトロウイルス及びレンチウイルスベクターを含む他のウイルスなどの複製しない欠損ウイルスゲノムに組み込み、パッケージすることができる。あるいは、構築物は、エピソーム複製が可能なベクター、例えば、EPV及びEBVベクターに組み込むことができる。ベクターに組み込まれた核酸は、発現制御配列に機能的に連結され得、これにより、発現制御配列が当該ポリヌクレオチド配列の転写及び翻訳の調節及び制御を行う。
本明細書で使用するとき、「発現ベクター」という用語は、ベクター上の転写制御配列に連結された配列からRNAまたはポリペプチドの発現を誘導するベクターを指す。発現される配列は、その細胞とは異種であることが多いが、必ずしもその必要はない。発現ベクターは、追加のエレメントを含んでもよい。例えば、発現ベクターは2つの複製系を有することができ、これにより、2つの生体、例えば、発現のためのヒト細胞、ならびにクローニング及び増幅のための原核生物宿主中での維持が可能となる。
本明細書で使用する「トランスフェクション」という用語は、本明細書に記載のペプチドをコードする核酸配列などの外因性核酸を細胞に導入するための化学的方法などの方法を指す。本明細書で使用するとき、トランスフェクションという用語は、外因性核酸を細胞に導入するウイルスに基づく方法を包含しない。トランスフェクションの方法には、物理的処理(エレクトロポレーション、ナノ粒子、マグネトフェクション)及び化学的トランスフェクション法が挙げられる。化学的トランスフェクション方法には、シクロデキストリン、ポリマー、リポソーム、ナノ粒子、カチオン性脂質またはその組み合わせ(例えば、DOPA、リポフェクタミン及びUptiFectin)及びDEAE−デキストランまたはポリエチレンイミンなどのカチオン性ポリマーを使用するものが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用するとき、「ウイルスベクター」という用語は、少なくとも1つのウイルス由来要素を含み、パッケージされてウイルスベクター粒子になる能力を有する核酸ベクター構築物を指す。ウイルスベクターは、非必須ウイルス遺伝子の代わりに、本明細書に記載のペプチドをコードする核酸を含有することができる。ベクター及び/または粒子は、インビトロまたはインビボのいずれかで、任意の核酸を細胞に移入するために用いることができる。多数の種類のウイルスベクターが当該技術分野において知られている。「複製不能」という用語は、ウイルスベクターに関して使用される場合、ウイルスベクターがそのゲノムを更に複製し、パッケージすることができないことを意味する。例えば、対象の細胞が複製不能組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンに感染した場合、患者の細胞で異種遺伝子(導入遺伝子としても知られる)が発現されが、rAAVは複製欠損性である(例えば、ウイルスをパッケージするのに必要なタンパク質をコードするアクセサリー遺伝子を欠く)ので、ウイルス粒子は患者の細胞内で形成され得ない。本明細書で使用する「形質導入」という用語は、外因性核酸を細胞内に導入するためのウイルス粒子またはウイルスの使用を指す。
レンチウイルスなどのレトロウイルスは、目的の作用物質をコードする核酸配列を送達するのに便利なプラットフォームを提供する。当該技術分野において知られている技術を使用して、選択した核酸配列をベクターに挿入し、レトロウイルス粒子内にパッケージすることができる。次いで、組み換えウイルスを単離し、例えば、インビトロまたはエクスビボで細胞に送達することができる。レトロウイルス系については、当該技術分野において知られており、例えば、米国特許第5,219,740号、Kurth and Bannert(2010)“Retroviruses:Molecular Biology,Genomics and Pathogenesis” Calster Academic Press(ISBN:978−1−90455−55−4)、及びHu and Pathak Pharmacological Reviews 2000 52:493−512に記載されており、これらの全体を参考として本明細書に援用する。
いくつかの実施形態において、目的のヌクレオチド配列は、アデノウイルス系発現ベクターに挿入される。宿主ゲノムに組み込まれるレトロウイルスとは異なり、アデノウイルスは、染色体外に残存するため、挿入変異に伴うリスクが最小限である(Haj−Ahmad and Graham(1986)J.Virol.57:267−74、Bett et al.(1993)J.Virol.67:5911−21、Mittereder et al.(1994)Human Gene Therapy 5:717−29、Seth et al.(1994)J.Virol.68:933−40;Barr et al.(1994)Gene Therapy 1:51−58、Berkner,K.L.(1988)BioTechniques 6:616−29、及びRich et al.(1993)Human Gene Therapy 4:461−76)。アデノウイルスベクターは、遺伝子治療において、いくつかの利点を有しており、多種多様の細胞に感染し、宿主範囲が広く、感染効率が高く、異種配列の発現を高レベルで誘導し、これらの配列のインビボでの長期発現を達成する。このウイルスは、無細胞ビリオンで完全に感染性であるため、プロデューサー細胞株の導入は必要ない。安全性に関して、アデノウイルスは、重いヒト病理を伴うことがなく、このウイルス由来組み換えベクターは、ウイルスゲノムの初期領域1(「E1」)の欠失により、複製欠損性にすることができる。アデノウイルスはまた、比較的容易に、大量に作製することができる。これらの全ての理由から、少なくともE1領域を欠失させ、目的の遺伝子に置き換えたヒトアデノウイルスに由来するベクターが、前臨床段階及び臨床段階の遺伝子治療実験に広く使用されている。本明細書にて記載される組成物及び方法で使用するためのアデノウイルスベクターは、種々のアデノウイルス血清型のうちのいずれか、例えば、限定するものではないが、血清型2、5、12、40及び41などの40を超えるアデノウイルスの血清型株のうちのいずれかに由来し得る。本明細書に記載される方法において使用されるアデノウイルスベクターは、通常、複製欠損性であり、好適なプロモーターの制御下にある目的の配列を含む。例えば、米国特許第6,048,551号(その全体を参考として本明細書に援用する)は、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターの制御下にあるヒト遺伝子を含む複製欠損アデノウイルスベクターについて記載している。異なるプロモーター系を含む、他の各種血清型の組み換えアデノウイルスは、当業者であれば作製することができる。例えば、その全体を参考として本明細書に援用する、米国特許第6,306,652号を参照されたい。核酸配列の送達に有用な他のアデノウイルス系ベクターには、キャプシド形成に必要なウイルスゲノム(キャプシド形成シグナル)の少なくとも一部と、ITRの少なくとも機能性部分または誘導体の少なくとも1つのコピーとを保持する、米国特許第6,306,652号に記載の「最小」アデノウイルスベクター、及びウイルスゲノムの大部分が除去され、本質的に全くウイルスタンパク質を産生せず、単回投与後1年にわたってかかるベクターの遺伝子発現が可能となる、「ガットレス」(ヘルパー依存性)アデノウイルス(Wu et al.(2001)Anesthes.94:1119−32;Parks(2000)Clin.Genet.58:1−11;Tsai et al.(2000)Curr.Opin.Mol.Ther.2:515−23)が挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のペプチドをコードするヌクレオチド配列は、アデノ随伴ウイルス系発現ベクターに挿入される。AAVは、ディペンドウイルス属に属するパルボウイルスであり、他のウイルスにはみられない、いくつかの特徴を有している。AAVは、非分裂細胞を含む、広範囲の宿主細胞に感染することができる。AAVは、異なる種に由来する細胞を感染させられる。AAVは、いかなるヒトまたは動物疾患とも関係せず、取り込み時に宿主細胞の生物学的特性を変えないと思われる。実際、ヒト集団の80〜85%がこのウイルスに曝露されていると推定される。最後に、AAVは、幅広い物理的及び化学的状態で安定であり、作製、貯蔵及び輸送が容易である。AAVは、ヘルパー依存性ウイルスであり、すなわち、野生でAAVビリオンを形成するには、ヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルスまたはワクシニア)との重感染が必要である。ヘルパーウイルスとの重感染がない場合、AAVは、ウイルスゲノムが宿主細胞染色体に挿入されるが、感染性ビリオンは産生されない、潜伏状態を確立する。その後、ヘルパーウイルスに感染して、組み込まれたゲノムを救済することにより、そのゲノムを複製し、パッケージして、感染性AAVビリオンになることが可能となる。AAVは、異なる種に由来する細胞を感染させられるが、ヘルパーウイルスは、宿主細胞と同じ種のものでなければならない。したがって、例えば、ヒトAAVは、イヌアデノウイルスに重感染したイヌ細胞において複製する。アデノ随伴ウイルス(AAV)は、成功をもって遺伝子治療に使用されている。AAVは、AAVゲノムの内部非反復部分(すなわち、rep及びcap遺伝子)を欠失させ、ITRの間に異種配列(この場合、作用物質をコードする配列)を挿入することによって、目的の遺伝子を送達するように操作されている。異種配列は、典型的に、適切な条件下で、患者の標的細胞にて発現を駆動することができる異種プロモーター(構造性、細胞特異的または誘導性プロモーター)に機能的に連結される。目的の作用物質をコードする核酸配列を含む組み換えAAVビリオンは、当該技術分野にて認識されている種々の技術を用いて作製することができ、米国特許第5,139,941号、同第5,622,856号、同第5,139,941号、同第6,001,650号及び同第6,004,797号に記載されている。これらの特許のそれぞれの内容は、その全体を参考として本明細書に援用する。ヘルパーウイルスフリーrAAVストックを作製するために必要なベクター及び細胞株は、AAVヘルパーフリーシステム(カタログ番号240071)(Agilent Technologies,Santa Clara,Calif.)として市販されている。
本明細書に記載のペプチドをコードする核酸分子を送達するのに有用な更なるウイルスベクターには、ワクシニアウイルス及び鳥ポックスウイルスを含む、ポックスウイルス群から誘導されるものが挙げられる。あるいは、鶏痘及びカナリア痘ウイルスなどの鳥ポックスウイルスを使用して遺伝子を送達することができる。鳥ポックス属の構成種は、感受性の鳥類種においてのみ多量に複製可能であるので、ヒト及び他の哺乳動物種の細胞にて鳥ポックスベクターを使用することは、安全性の点から有利である。組み換え鳥ポックスウイルスを作製する方法は、当該技術分野において知られており、遺伝子組み換えを用いる。例えば、WO91/12882、WO89/03429、及びWO92/03545を参照されたい。
本明細書に記載のペプチドをコードする配列を送達するために、アデノウイルスキメラベクターなどの分子結合ベクターを使用することができる(Michael et al.(1993)J.Biol.Chem.268:6866−69 and Wagner et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6099−6103)。アルファウイルス属の構成種、例えば、シンドビス及びセムリキ森林ウイルスも同様に、核酸配列を送達するためのウイルスベクターとして使用することができる(例えば、Dubensky et al.(1996)J.Virol.70:508−19、WO95/07995、WO96/17072を参照されたい)。
いくつかの実施形態において、ベクターは、ペプチドに機能的に連結されたシグナルペプチドを更に含む。シグナルペプチドは、末端(通常はN末端)に位置するペプチド配列であり、タンパク質の膜内への輸送または膜を通過させる輸送を提供する。異なる用途では、異なるシグナルペプチドを使用することができる。例えば、本明細書に記載の単離ペプチドを産生するための細胞系に関して、分泌シグナルペプチドは、収率を上げ、精製を容易にすることが可能である。更なる例としては、本明細書に記載のペプチドを産生し、かつ治療目的で対象に投与される細胞に関して、複数のシグナルペプチド、例えば、第1の細胞からの分泌のためのペプチドシグナル伝達、第2の細胞による内在化のためのペプチドシグナル伝達、及び核局在化のための最終ペプチドシグナル伝達は、標的環境に達するペプチドの量を増加させることができる。更なる例としては、例えば、遺伝子治療用途に関して、核局在化のためのペプチドシグナル伝達は、標的環境に達するペプチドの量を増加させることができる。シグナルペプチドは、当該技術分野において知られている。哺乳動物細胞にて使用するための核局在化シグナル(NLS)ペプチドの非限定的な例には、SV40ラージT−抗原
Figure 2017529364
ヌクレオプラスミン
Figure 2017529364
K−K/R−X−K/R(配列番号6)コンセンサス
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及びPY−NLSが挙げられる(例えば、Dingwall et al.J Cell Biol 188 107:841−9及びMakkerh et al.Curr Biol.1996 6:1025−7を参照されたい。両文献は、更なる考察のために、その全体を参考として本明細書に援用する)。哺乳動物細胞にて使用するための分泌シグナルペプチドの非限定的な例には、ヒトアルブミンシグナルペプチド
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ヒトキモトリプシンシグナルペプチド
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ヒトインターロイキン−2シグナルペプチド
Figure 2017529364
ヒトトリプシノゲン−2シグナルペプチド
Figure 2017529364
及びシグナルペプチダーゼ、フーリンまたは他のプロホルモン転換酵素による前駆体切断のためのシグナルに関するコード領域を含む配列(例えば、PC3)が挙げられる。例えば、フーリンによって切断されるシグナル(ペプチド)配列(PACEとしても知られる、米国特許第5,460,950号参照)、他のサブチリシン(PC2、PC1/PC3、PACE4、PC4、PC5/PC6、LPC/PC7IPC8/SPC7及びSKI−Iを含む;Nakayama,Biochem.J.,327:625−635(1997));エンテロキナーゼ(米国特許第5,270,181号参照)またはキモトリプシンを、本明細書にて定義されるシグナル(ペプチド)配列に導入することができる。更なるシグナルペプチドは、当該技術分野において知られており、シグナルペプチドの選択は、細胞種、成長条件及びペプチドの所望の行き先による影響を受け得る。
一態様において、本明細書に記載されるペプチドをコードする核酸を含むベクターを発現する細胞が本明細書に記載される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のベクターを発現する細胞は、ポリペプチドの産生に適した細胞である。ポリペプチドの産生に適した細胞は、原核生物または真核細胞、例えば、細菌、ウイルス、酵母菌、真菌、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞などであってよい。非限定的な例として、タンパク質を産生するための細胞は、例えば、細菌細胞(BL21由来細胞−カタログ番号60401−1、Lucigen;Middleton,WI及び哺乳動物細胞(293F細胞−カタログ番号11625−019、Invitrogen;Grand Island,NY)が市販されている。
組み換え分子、例えば、本明細書に記載のベクターは、形質転換、特に、形質導入、接合、リポフェクション、原形質融合、可動化、微粒子銃法、エレクトロポレーション(Neumann et al.,“Gene Transfer into Mouse Lyoma Cells by Electroporation in High Electric Fields,” EMBO J.1(7):841−845(1982)、Wong et al.,“Electric Field Mediated Gene Transfer,” Biochem Biophys Res Commun 107(2):584−587(1982)、Potter et al.,“Enhancer−dependent Expression of Human Kappa Immunoglobulin Genes Introduced into Mouse pre−B Lymphocytes by Electroporation,” Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81(22):7161−7165(1984)、これらの文献は、その全体を参考として本明細書に援用する)、ポリエチレングリコールを介したDNA取り込み(Joseph Sambrook&David W.Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual cp.16(2d ed.1989)、全体を参考として本明細書に援用する)、またはプロトプラストと他の実体(例えば、ミニ細胞、細胞、リソソームまたはキメラ遺伝子を含有する他の溶解性脂質被覆体)との融合(Fraley et al.,“Liposome−mediated Delivery of Tobacco Mosaic Virus RNA into Tobacco Protoplasts:A Sensitive Assay for Monitoring Liposome−protoplast Interactions,” Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79(6):1859−1863(1982)、全体を参考として本明細書に援用する)により細胞に導入することができる。次いで、宿主細胞を、好適な培地中で、目的のタンパク質またはポリペプチドの発現に適した条件下にて培養する。培養後、細胞を物理的または化学的手段により破壊し、得られた粗製抽出物からタンパク質またはポリペプチドを精製する。あるいは、培養は、タンパク質またはポリペプチドが組み換え宿主細胞の成長培地中に分泌され、そのタンパク質またはポリペプチドを成長培地から単離するという条件を含み得る。適切であれば、別の方法を使用してもよい。
ペプチドはまた、アジュバントに結合させてもよい。「アジュバント」という用語は、免疫応答を高め、及び/または接種後の適切な吸収速度を促進する化合物または混合物を指し、本明細書で使用するとき、あらゆる取り込み促進物質を包含する。アジュバントの非限定的な例としては、ケモカイン(例えば、デフェンシン、HCC−1、HCC4、MCP−1、MCP−3、MCP4、MIP−1α、MIP−1β、MIP−1δ、MIP−3α、MIP−2、RANTES);ケモカイン受容体の他のリガンド(例えば、CCR1、CCR−2、CCR−5、CCR6、CXCR−1);サイトカイン(例えば、IL−1β、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−10、IL−12、IL−13、IL−15、IL−17(A−F)、IL−18;IFNα、IFN−γ;TNF−α;GM−CSF);TGF)−β;FLT−3リガンド;CD40リガンド;これらのサイトカインに対する他の受容体リガンド;限定するものではないが、IFN−γ、IL−2、IL−12、IL−18及びTNFを含む、Th1サイトカイン;限定するものではないが、IL−4、IL−5、IL−10及びIL−13を含む、Th2サイトカイン;ならびに限定するものではないが、IL−17(A〜F)、IL−23、TGF−β及びIL−6を含む、Th17サイトカイン;細菌DNAもしくはオリゴヌクレオチド中の免疫活性化CpGモチーフ;モノホスホリルリピドA(MPL)などのリポ多糖体の誘導体;ムラミルジペプチド(MDP)及びその誘導体(例えば、ムラブチド、スレオニル−MDP、ムラミルトリペプチド、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP);N−アセチル−nor−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP11637、nor−MDPとも呼ばれる);N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP19835A、MTP−PEとも呼ばれる));MF59(国際公開WO90/14837参照);ポリ[ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン](PCPPポリマー;Virus Research Institute,USA);2%スクアレン/Tween80エマルション中に、細菌から抽出した3つの成分、モノホスホリルリピドA、トレハロースジミコール酸及び細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を含むRIBI(GSK);OM−174(リピドAに関する二糖グルコサミン;OM Pharma SA,Meyrin,Switzerland);熱ショックタンパク質及びその誘導体;elF4aのリーシュマニアホモログ及びその誘導体;細菌ADPリボシル化外毒素及びその誘導体(例えば、遺伝子変異体、A及び/またはBサブユニット含有断片、化学的にトキソイド化した型);細菌ADPリボシル化外毒素またはその誘導体を含有する化学的複合体または遺伝子組み換え体;C3dタンデムアレイ;リピドA及びその誘導体(例えば、モノホスホリルまたはジホスホリルリピドA、リピドA類似体、AGP、AS02、AS04、DC−Chol、Detox、OM−174);ISCOMS及びサポニン(例えば、QuilA、QS−21、Stimulon(登録商標)(Cambridge Bioscience,Worcester,MA));スクアレン;スーパー抗原;または塩(例えば、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム、リン酸カルシウム)が挙げられる。他の有用なアジュバントについては、Nohria et al.Biotherapy,7:261−269,1994、Richards et al.,in Vaccine Design,Eds.Powell et al.,Plenum Press,1995、及びPashine et al.,Nature Medicine,11:S63−S68,4/2005)も参照されたい。アジュバントの更なる例には、RIBIアジュバント系(Ribi Inc.,Hamilton,MT.)、ミョウバン、水酸化アルミニウムゲルなどの無機物ゲル、水中油型エマルション、例えば、フロイント完全及び不完全アジュバントなどの油中水型エマルション、ブロックコポリマー(CytRx,Atlanta GA)、QS−21(Cambridge Biotech Inc.,Cambridge MA)ならびにSAF−M(Chiron,Emeryville CA)、AMPHIGEN(登録商標)アジュバント、サポニン、Quil Aまたは他のサポニンフラクション、モノホスホリルリピドAならびにアブリジンリピド−アミンアジュバントならびにMETASTIM(登録商標)を挙げることができる。他の好適なアジュバントには、例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油型または炭化水素エマルション、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールなどの表面活性物質を挙げることができる。
いくつかの実施形態において、細胞は、本明細書に記載のペプチドを発現するように遺伝子操作され得、この遺伝子操作された細胞を細胞療法に使用することができる。使用され得る細胞の例には、治療上関連する子孫をもたらすことができる、樹状細胞、Tリンパ球(T細胞)、ナイーブT細胞(T)、メモリーT細胞(例えば、セントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリー細胞(TEM))、ナチュラルキラー細胞、造血幹細胞及び/または多能性胚性/誘導性幹細胞が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、遺伝子操作された細胞は、自己由来細胞である。例として、本発明の個々のT細胞は、CD4+/CD8−、CD4−/CD8+、CD4−/CD8−またはCD4+/CD8+であってよい。T細胞は、CD4+/CD8−とCD4−/CD8+細胞の混合集団または単一クローンの集団であってよい。CD4+T細胞は、ペプチドを発現する細胞(例えば、CD20+及び/またはCD19+腫瘍細胞)とともにインビトロ共培養した場合、IL−2、IFNγ、TNFα及び他のT細胞エフェクターサイトカインを産生し得る。CD8T細胞は、標的細胞とインビトロ共培養した場合、抗原特異的標的細胞を溶解し得る。いくつかの実施形態において、T細胞は、CD45RA CD62Lナイーブ細胞、CD45RO CD62Lセントラルメモリー細胞、CD62Lエフェクターメモリー細胞またはこれらの組み合わせのうちのいずれか1つ以上であってよい(Berger et al.,Adoptive transfer of virus−specific and tumor−specific T cell immunity.Curr Opin Immunol 2009 21(2)224−232)。
いくつかの実施形態において、寛容化した抗原提示細胞を細胞療法に使用することができる。例としては、B細胞、樹状細胞、マクロファージなどが挙げられる。細胞は、ヒトを含む任意の起源の細胞であってよい。本明細書に記載のペプチドを用いて細胞を寛容化することができる。いくつかの実施形態において、細胞は、サイトカインの存在下で寛容化される。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のペプチドを産生する細胞は、例えば、膵線維症、膵炎、膵臓がん、肺線維症または肺がんの治療のために、対象に投与することができる。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のペプチドを含有するナノ粒子を対象に投与することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のペプチドとともに使用するためのナノ粒子は、Levine et al.,Polymersomes:A new multi−functional tool for cancer diagnosis and therapy.Methods 2008 Vol 46 pg 25−32に記載のもの、またはS Jain,et al.,Gold nanoparticles as novel agents for cancer therapy.Br J Radiol.2012 Feb;85(1010):101−113に記載のものであってよい。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のペプチドをコードするベクターを発現する細胞は、対象、例えば、がん治療のために遺伝子治療が行われる対象の細胞であり得る。遺伝子治療のためのベクターは、本明細書に別途記載するとおり、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターを含むことができる。
使用方法
必要とする対象において、疾患状態を治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその予防を促進するための方法が本明細書にて提供される。方法は、IL−4/IL−13受容体の阻害物質を含む組成物を提供することと、疾患状態を治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその予防を促進するために、有効量の組成物を対象に投与することとを含む。種々の実施形態において、疾患状態は、線維症及び/またはがんである。いくつかの実施形態において、IL−4/IL−13受容体の阻害物質は、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672及び/もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上である。一実施形態において、対象は、ヒトである。種々の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、対象が疾患状態を発症する前、その間、またはその後に、対象に投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、1日あたり1〜3回または1週あたり1〜7回、対象に投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、1〜5日間、1〜5週間、1〜5ヶ月間または1〜5年間、対象に投与される。
必要とする対象において、線維症(慢性線維症を含む)を治療し、阻害し、その重症度を低減させるか、またはその予防を促進するための方法が本明細書にて提供される。方法は、IL−4/IL−13受容体の阻害物質を含む組成物を提供することと、線維症を治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその予防を促進するために、有効量の組成物を対象に投与することとを含む。線維症を治療し、阻害し、その重症度を低減させるか、またはその予防を促進するための方法は、器官特異性線維症に対する既存の治療法を施すことを更に含み得る。
例示的な実施形態において、本明細書に記載の線維症を治療し、阻害し、その重症度を低減させるか、またはその予防を促進するための方法は、膵臓の線維症に対する腹痛の薬理学的緩和、消化及び吸収の薬理学的回復、内視鏡処置、外科的療法、食事療法またはこれらの組み合わせを更に含み得る。
別の例示的な実施形態において、本明細書に記載の線維症を治療し、阻害し、その重症度を低減させるか、またはその予防を促進するための方法は、肺線維症に対する酸素療法、プレドニゾン、アザチオプリン及び/またはN−アセチルシステインを更に含み得る。
更なる例示的な実施形態において、線維症を治療し、阻害し、その重症度を低減させるか、またはその予防を促進するための方法は、心筋線維症に対するアンギオテンシン変換酵素阻害物質またはリシノプリルを投与することを更に含み得る。
本明細書に記載の組成物(例えば、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672及び/もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物を含む組成物)及び既存の治療法は、逐次的または同時に投与することができる。本明細書にて記載される方法の種々の実施形態において、線維症は、膵線維症、嚢胞性線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症、腎性全身性線維症、クローン病、ケロイド、強皮症/全身性硬化症、関節線維症、ペロニー病、デュピュイトラン拘縮、癒着性関節包炎、肝線維症、肺線維症、腸線維症、心臓線維症またはこれらの組み合わせのうちのいずれか1つ以上である。
必要とする対象において、膵炎(慢性膵炎など)を治療し、阻害し、その重症度を低減させるか、またはその予防を促進するための方法もまた本明細書にて提供される。方法は、IL−4/IL−13受容体の阻害物質を含む組成物を提供することと、対象の膵炎を治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその予防を促進するために、有効量の組成物を対象に投与することとを含む。膵炎を治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその予防を促進するための方法は、膵炎に対する既存の治療法を指示する段階及び/または施す段階を更に含み得る。いくつかの実施形態において、IL−4/IL−13受容体の阻害物質は、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672及び/もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上である。一実施形態において、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態において、がんは、膵臓がんである。既存の治療法の例には、腹痛の薬理学的緩和、消化及び吸収の薬理学的回復、内視鏡処置、外科的療法、食事療法またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の組成物(例えば、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672及び/もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物を含む組成物)及び既存の治療法は、逐次的または同時に投与することができる。
必要とする対象において、がんを治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその転移を防ぐための方法が本明細書にて更に提供される。方法は、IL−4/IL−13受容体の阻害物質を含む組成物を提供することと、がんを治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその転移を防ぐために、有効量の組成物を対象に投与することとを含む。がんを治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその転移を防ぐための方法は、特定のがん種に対する既存の治療法、例えば、外科手術、放射線療法もしくは化学療法またはこれらの組み合わせを指示する段階及び/または施す段階を更に含み得る。いくつかの実施形態において、IL−4/IL−13受容体の阻害物質は、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672及び/もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上である。一実施形態において、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態において、がんは、膵臓がんである。外科手術、放射線療法もしくは化学療法またはこれらの組み合わせは、治療上有効な量の本明細書に記載の組成物を対象に投与する前、その間またはその後に実施され得る。本明細書にて記載される方法の種々の実施形態において、がんは、リンパ腫、肉腫、脳がん、乳がん、大腸がん、肺がん、肝細胞がん、胃がん、膵臓がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、尿路がん、甲状腺がん、腎臓がん、癌腫、黒色腫、頭頸部がん、脳がん及び前立腺がんのうちのいずれか1つ以上である。
IL−4/IL−13受容体シグナル伝達に関係する疾患状態を治療し、阻害し、その重症度を低減させるか、またはその予防を促進するための方法が本明細書にて提供される。方法は、IL−4/IL−13受容体の阻害物質を含む組成物を提供することと、IL−4/IL−13受容体シグナル伝達に関係する疾患状態を治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその予防を促進するために、有効量の組成物を対象に投与することとを含む。例示的な実施形態において、疾患状態には、慢性膵炎、慢性炎症、線維症、がんまたはこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、IL−4/IL−13受容体の阻害物質は、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672及び/もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上である。一実施形態において、対象は、ヒトである。
IL−4/IL−13受容体機能を阻害することによって治療可能な疾患状態を治療し、阻害し、その重症度を低減させるか、またはその予防を促進するための方法が本明細書にて提供される。方法は、IL−4/IL−13受容体の阻害物質を含む組成物を提供することと、IL−4/IL−13受容体機能を阻害することによって治療可能な疾患状態を治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその予防を促進するために、有効量の組成物を対象に投与することとを含む。例示的な実施形態において、疾患状態には、慢性膵炎、慢性炎症、線維症、がんまたはこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、IL−4/IL−13受容体の阻害物質は、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672及び/もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上である。一実施形態において、対象は、ヒトである。
本明細書に記載の医薬組成物及び方法の種々の実施形態において、組成物(例えば、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672及び/もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上を含む組成物)は、他の治療薬、例えば、限定するものではないが、化学療法剤及び/または放射線療法と同時または逐次的に投与することができる。
いくつかの実施形態において、化学療法剤は、細胞傷害性抗生物質、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害薬、アルキル化剤、ヒ素化合物、DNAトポイソメラーゼ阻害薬、タキサン、ヌクレオシド類似体、植物アルカロイド及び毒素ならびにこれらの合成誘導体のうちのいずれか1つ以上から選択することができる。例示的な化合物には、アルキル化剤:トレオスルファン及びトロホスファミド;植物アルカロイド:ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキソル;DNAトポイソメラーゼ阻害物質:ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン、テニポシド、クリスナトール及びマイトマイシン;抗葉酸剤:メトトレキサート、ミコフェノール酸及びヒドロキシウレア;ピリミジン類似体:5−フルオロウラシル、ドキシフルリジン及びシトシンアラビノシド;プリン類似体:メルカプトプリン及びチオグアニン;DNA代謝拮抗物質:2’−デオキシ−5−フルオロウリジン、グリシン酸アフィジコリン及びピラゾロイミダゾール;ならびに有糸分裂阻害薬:ハリコンドリン、コルヒチン及びリゾキシンが挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の化学療法剤(例えば、FLAG、CHOP)を含む組成物を使用してもよい。FLAGは、フルダラビン、シトシンアラビノシド(Ara−C)及びG−CSFを含む。CHOPは、シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン及びプレドニゾンを含む。別の実施形態において、PARP(例えば、PARP−1及び/またはPARP−2)阻害薬が使用される。このような阻害薬は、当該技術分野においてよく知られている(例えば、オラパリブ、ABT−888、BSI−201、BGP−15(N−Gene Research Laboratories,Inc.);INO−1001(Inotek Pharmaceuticals Inc.);PJ34(Soriano et al.,2001;Pacher et al.,2002b);3−アミノベンズアミド(Trevigen);4−アミノ−1,8−ナフタルイミド;(Trevigen);6(5H)−フェナントリジノン(Trevigen);ベンズアミド(米国特許第36,397号);及びNU1025(Bowman et al.)。
種々の実施形態において、治療法には、例えば、放射線療法が挙げられる。放射線療法で使用される放射線は、電離放射線であってよい。放射線療法はまた、ガンマ線、X線または陽子線であってもよい。放射線療法の例には、外照射治療、放射性同位体(I−125、パラジウム、イリジウム)組織内刺入、ストロンチウム−89などの放射性同位体、胸部放射線療法、腹腔内P−32放射線療法ならびに/または全腹部及び骨盤放射線療法が挙げられるが、これらに限定されない。放射線療法の全般的概略については、Hellman,Chapter 16:Principles of Cancer Management:Radiation Therapy,6th edition,2001,DeVita et al.,eds.,J.B.Lippencott Company,Philadelphiaを参照されたい。放射線療法は、照射を遠隔源から行う、外照射または遠隔照射療法として実施することができる。放射線治療はまた、がん細胞または腫瘤近くの体内に放射線源を配置する、内部療法または小線源療法として実施することもできる。また、ヘマトポルフィリン及びその誘導体、ベルトポルフィン(BPD−MA)、フタロシアニン、光感受性物質Pc4、デメトキシ−ヒポクレリンAならびに2BA−2−DMHAなどの光感受性物質の投与を含む、光線力学的療法の使用も包含される。
種々の実施形態において、治療法には、例えば、免疫療法が挙げられる。免疫療法は、例えば、がんワクチン及び/または感作した抗原提示細胞の使用を含み得る。いくつかの実施形態において、治療法は、腫瘍微小環境内の細胞を標的にすること、または免疫細胞を標的にすることを含む。免疫療法は、がん抗原または疾患抗原を標的にする既存の抗体の投与(例えば、化学療法剤または毒素を任意に連結させた、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体の投与)によって達成される、宿主の短期保護のための受動免疫を伴い得る。免疫療法はまた、がん細胞株の細胞傷害性リンパ球認識エピトープを使用することを中心にしてもよい。
種々の実施形態において、治療法は、例えば、ホルモン療法を含む。ホルモン療法の治療は、例えば、ホルモン作動薬、ホルモン拮抗薬(例えば、フルタミド、ビカルタミド、タモキシフェン、ラロキシフェン、リュープロレリン酢酸塩(LUPRON)、LH−RH拮抗薬)、ホルモン生合成及びプロセシングの阻害物質ならびにステロイド(例えば、デキサメタゾン、レチノイド、デルトイド(deltoids)、ベタメタゾン、コルチゾール、コルチゾン、プレドニゾン、デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、ミネラルコルチコイド、エストロゲン、テストステロン、プロゲスチン)、ビタミンA誘導体(例えば、オールトランス型レチノイン酸(ATRA))、ビタミンD3類似体、抗黄体ホルモン薬(例えば、ミフェプリストン、オナプリストン)または抗アンドロゲン薬(例えば、酢酸シプロテロン)を含み得る。
種々の実施形態において、IL−4/IL−13受容体の阻害物質(例えば、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672及び/もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちの1つ以上)の有効量は、約0.01〜0.05μg/kg/日、0.05−0.1μg/kg/日、0.1〜0.5μg/kg/日、0.5〜5μg/kg/日、5〜10μg/kg/日、10〜20μg/kg/日、20〜50μg/kg/日、50〜100μg/kg/日、100〜150μg/kg/日、150〜200μg/kg/日、200〜250μg/kg/日、250〜300μg/kg/日、300〜350μg/kg/日、350〜400μg/kg/日、400〜500μg/kg/日、500〜600μg/kg/日、600〜700μg/kg/日、700〜800μg/kg/日、800〜900μg/kg/日、900〜1000μg/kg/日、0.01〜0.05mg/kg/日、0.05−0.1mg/kg/日、0.1〜0.5mg/kg/日、0.5〜1mg/kg/日、1〜5mg/kg/日、5〜10mg/kg/日、10〜15mg/kg/日、15〜20mg/kg/日、20〜50mg/kg/日、50〜100mg/kg/日、100〜200mg/kg/日、200〜300mg/kg/日、300〜400mg/kg/日、400〜500mg/kg/日、500〜600mg/kg/日、600〜700mg/kg/日、700〜800mg/kg/日、800〜900mg/kg/日、900〜1000mg/kg/日またはこれらの組み合わせのうちのいずれか1つ以上である。IL−4/IL−13受容体阻害物質の有効量の典型的な用量は、既知の治療用化合物が使用される場合には、その製造業者により推奨され、またインビトロ応答または動物モデルにおける応答から当業者に示される範囲内であり得る。かかる用量は、典型的に、関連する生物活性が失活しない濃度または量で、約10分の1まで減らすことができる。実際の用量は、医師の判断、患者の状態及び治療法の有効性、例えば、関連する培養細胞もしくは組織培養した組織サンプル(生検で得た悪性腫瘍など)のインビトロ応答性または適切な動物モデルにて観察された応答に基づく有効性に応じて決定され得る。種々の実施形態において、IL−4/IL−13受容体阻害物質を含む本発明の組成物は、有効量のIL−4/IL−13受容体阻害物質を対象に投与するために、1日1回(SID/QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)、1日4回(QID)またはそれ以上投与することができ、ここで、有効量は、本明細書に記載される用量のうちのいずれか1つ以上である。
種々の実施形態において、対象は、ヒト、非ヒト霊長類、サル、類人猿、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、マウス及びラットからなる群から選択される。
IL−4/IL−13阻害物質の作製方法
CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらのバリアント、誘導体、薬学的同等物、ペプチド模倣物もしくは類似体のうちのいずれか1つ以上を作製するための方法が本明細書にて提供される。CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらのバリアント、誘導体、薬学的同等物、ペプチド模倣物もしくは類似体は、組み換えであってもよいし、化学的に合成してもよい(Murali,R.and Green,M.Pharmaceuticals 2012 Vol 5 209−235)。これらは、限定するものではないが、His6、エピトープ(例えば、myc、V5、FLAGまたはソフトエピトープ)、ストレプトアビジン、ビオチン、アビジン、テトラシステイン、カルモジュリン結合タンパク質、エラスチン様ペプチド、融合タンパク質(例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質、セルロース結合ドメイン、チオレドキシン、NusAまたはミスチン)、キチン結合ドメイン、GFP、アルカリホスファターゼ、クチナーゼ、O−アルキルグアニンアルキルトランスフェラーゼ(AGT)またはハロタグを含む、1つ以上の精製タグにより修飾され得る。一実施形態において、CSRM53567は、アミノ酸配列TYR−CYS−ASP−ASP−PHE−VAL−GLY−SER−PHE−ASP−CYS−TYR(配列番号1)またはその類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物を含むか、これらからなるか、あるいはこれらから本質的になる。別の実施形態において、CSRM535671は、アミノ酸配列TYR−CYS−ASP−ASP−PHE−VAL−GLY−SER−PHE−ASP−CYS−TYR−ASP(配列番号2)またはその類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物を含むか、これらからなるか、あるいはこれらから本質的になる。更なる実施形態において、阻害物質CSRM535672は、アミノ酸配列TYR−CYS−ASP−ASP−PHE−VAL−GLY−SER−PHE−ASP CYS−TYR−GLU(配列番号3)またはその類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物を含むか、これらからなるか、あるいはこれらから本質的になる。
いくつかの実施形態において、方法は、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらのバリアント、誘導体、薬学的同等物、ペプチド模倣物もしくは類似体のうちのいずれか1つ以上を宿主細胞内で産生するように、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらのバリアント、誘導体、薬学的同等物、ペプチド模倣物もしくは類似体のうちのいずれか1つ以上をコードするベクターをトランスフェクトされた宿主ベクター系を成長させることと、次いで、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらのバリアント、誘導体、薬学的同等物、ペプチド模倣物もしくは類似体のうちのいずれか1つ以上を回収することとを伴う。CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらのバリアント、誘導体、薬学的同等物、ペプチド模倣物もしくは類似体のうちのいずれか1つ以上に対応するアミノ酸配列をコードするDNAを組み立て、発現させるための技術、例えば、オリゴヌクレオチドの合成、PCR、細胞形質転換、ベクター構築、発現系などは、当該技術分野において十分確立されており、大部分の実施者は、特定の条件及び手順のための標準的な参照資料を熟知している。CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらのバリアント、誘導体、薬学的同等物、ペプチド模倣物もしくは類似体のうちのいずれかの1つ以上に対応するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、当該技術分野において知られている種々の系にて発現させることが可能である。cDNAは、好適な制限酵素によって切断し、かかる発現に適した原核生物または真核生物発現ベクターにライゲートすることができる。
具体的には、所望の遺伝子コード及び制御配列を含有する好適なベクターの構築は、標準的なライゲーション及び制限技術を使用するものであり、これらは、当該技術分野においてよく理解されている(Maniatis et al.,in Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1982)を参照。単離されたプラスミド、DNA配列または合成オリゴヌクレオチドは、切断され、必要に応じて調整され、所望の形態に再びライゲートされる(Methods in Enzymology65:499−560(1980);D.Goeddel(ed.)Gene Expression Technology:Methods in Enzymology(1991)。
組み換えタンパク質は、原核生物、酵母菌、昆虫、植物または哺乳動物系にて発現させることが可能である。よく知られている原核生物(細菌)発現系の例は、大腸菌(E.coli)(例えば、BL21、BL21(DE3)、XL1、XL1 Blue、DH5αまたはDH10B細胞株)及びB.subtilisである。酵母菌には、P.パストリス(P.pastoris)、K.ラクティス(K.lactis)、S.セレビシエ(S.cerevisiae)、S.ポンベ(S.pombe)、Y.リポリト(Y.lipolyt)及びK.マルキシアヌス(K.marxianus)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な哺乳動物細胞株は、とりわけ、CHO、HEK293BHK、NS0、NS1、SP2/0であり得る。昆虫細胞株には、例えば、ショウジョウバエ(Drosophila)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)mosquitoe、Sf21、Sf9及びT.ni細胞株を挙げることができる。単離されたタンパク質は、発現系に応じて、アミノ酸の種々の翻訳後修飾、例えば、酢酸基、リン酸基、種々の脂質及び炭水化物、アミノ酸の化学的性質の変化(例えば、シトルリン化)またはジスルフィド架橋などの構造変化を含む場合がある。
好適なベクターには、ウイルスベクター系、例えば、自己不活性化(SIN)レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、泡沫状ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、HSV−1アンプリコン、複製可能ベクター(例えば、ONYX−015)及び/またはプラスミドトランスポゾン(例えば、スリーピングビューティートランスポゾンベクター)、ADV、RV(R.J.Kaufman “Vectors used for expression in mammalian cells” in Gene Expression Technology,edited by D.V.Goeddel(1991)が挙げられるが、これらに限定されない。
機能的DNA導入遺伝子を細胞に挿入するための方法は、当該技術分野において多数知られている。例えば、非ベクター方法には、DNAの細胞への非ウイルス性物理的トランスフェクション、例えば、マイクロインジェクション(DePamphilis et al.,BioTechnique 6:662−680(1988))、liposomal mediated transfection(Felgner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:7413−7417(1987)、Felgner and Holm,Focus 11:21−25(1989)及びFelgner et al.,Proc.West.Pharmacol.Soc.32:115−121(1989))及び当該技術分野において知られている他の方法が挙げられる。
医薬組成物
IL−4/IL−13受容体機能を標的にする阻害物質及び許容される担体/賦形剤を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる医薬組成物が本明細書にて提供される。種々の実施形態において、阻害物質は、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上である。一実施形態において、阻害物質は、アミノ酸配列TYR−CYS−ASP−ASP−PHE−VAL−GLY−SER−PHE−ASP−CYS−TYR(配列番号1)またはその類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物を含むか、これらからなるか、あるいはこれらから本質的になるCSRM53567である。別の実施形態において、阻害物質は、配列TYR−CYS−ASP−ASP−PHE−VAL−GLY−SER−PHE−ASP−CYS−TYR−ASP(配列番号2)またはその類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物を含むか、これらからなるか、あるいはこれらから本質的になるCSRM535671である。別の実施形態において、阻害物質は、配列TYR−CYS−ASP−ASP−PHE−VAL−GLY−SER−PHE−ASP−CYS−TYR−GLU(配列番号3)またはその類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物を含むか、これらからなるか、あるいはこれらから本質的になるCSRM535672である。
種々の実施形態において、本発明に係る医薬組成物は、任意の投与経路を介して送達するために製剤化され得る。「投与経路」は、当該技術分野において知られている任意の投与経路を指し得、エアゾール、経鼻、経口、経粘膜、経皮、非経口または経腸が挙げられるがこれらに限定されない。「非経口」とは、眼窩内、注入、動脈内、嚢内、心臓内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、髄腔内、子宮内、静脈内、くも膜下、被膜下、皮下、経粘膜または経気管を含む、一般に注射に関係する投与経路を指す。非経口経路を介する場合、組成物は、注入または注射のための液剤または懸濁剤の形態であってもよいし、凍結乾燥粉末であってもよい。非経口経路を介する場合、組成物は、注入または注射のための液剤または懸濁剤の形態であってもよい。経腸経路を介する場合、医薬組成物は、錠剤、ゲルカプセル剤、糖衣錠剤、シロップ剤、懸濁剤、液剤、散剤、顆粒剤、乳剤、制御放出を可能にするマイクロスフェアもしくはナノスフェアまたは脂質ベシクルもしくはポリマーベシクルの形態であってよい。
本明細書で使用する「非経口的投与」及び「非経口的に投与される」という文言は、経腸及び局所投与以外の投与モデル、通常は注射によるものを指す。本明細書で使用する「全身投与」、「全身投与される」、「末梢投与」及び「末梢投与される」という文言は、対象の循環系に入ることにより、代謝及び他の同様のプロセスを受けるような、標的部位、組織または器官への直接投与以外のIL−4/IL−13受容体阻害物質の投与を指す。
「薬学的に許容される賦形剤」とは、一般に、安全で、非毒性であり、望ましい医薬組成物を調製するのに有用である賦形剤を意味し、獣医学的使用及びヒトの薬学的使用に許容される賦形剤を含む。このような賦形剤は、固体、液体、半固体であってよく、エアゾール組成物の場合はガス状であってもよい。
本発明に係る医薬組成物はまた、任意の薬学的に許容される担体を含み得る。本明細書で使用する「薬学的に許容される担体」とは、身体のある組織、器官または部分から身体の別の組織、器官または部分に目的の化合物を運搬または輸送することを担う、薬学的に許容される物質、組成物またはビヒクルを指す。例えば、担体は、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒もしくは封入材料またはこれらの組み合わせであってよい。担体の各構成成分は、製剤の他の成分と適合しなければならないという点で、「薬学的に許容される」ことを要する。担体はまた、接触する可能性のある任意の組織または器官と接触して使用するのに適していなければならず、これは、その治療上の利益を過度に上回る、毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性またはあらゆる他の合併症のリスクがあってはならないことを意味する。
本発明に係る医薬組成物はまた、経口投与のために、カプセル化され、錠剤化され、乳剤またはシロップ剤に調製されてもよい。組成物を強化もしくは安定化するために、または組成物の調製を容易にするために、薬学的に許容される固体または液体担体が添加され得る。液体担体には、シロップ剤、ピーナッツ油、オリーブ油、グリセリン、生理食塩水、アルコール及び水が挙げられる。固体担体には、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム、二水和物,白陶土、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸、タルク、ペクチン、アラビアゴム、寒天またはゼラチンが挙げられる。担体はまた、単独で、またはワックスとともに、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの持続放出材料を含み得る。
医薬品は、錠剤の形態の場合、粉砕、混合、造粒及び必要に応じて圧縮、または硬ゼラチンカプセル剤の形態の場合、粉砕、混合及び充填を伴う、調剤の従来技術に従って作製される。液体担体が使用される場合、製剤は、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤または水性もしくは非水性懸濁剤の形態である。このような液体製剤は、直接p.o.投与してもよいし、軟ゼラチンカプセル剤中に充填してもよい。
本発明に係る医薬組成物は、治療上有効な量で送達され得る。正確な治療上有効な量は、所与の対象における治療の有効性の観点から最も効果的な結果を生じる組成物の量である。この量は、限定するものではないが、治療用化合物の特徴(活性、薬物動態、薬力学及びバイオアベイラビリティを含む)、対象の生理学的状態(年齢、性別、疾患の種類及び病期、全般的な健康状態、所与の用量に対する応答性ならびに薬物の種類を含む)、製剤中の薬学的に許容される担体(複数可)の性質及び投与経路を含む、種々の要因に応じて変化する。臨床及び薬理学分野の当業者であれば、慣用的実験を介して、例えば、化合物の投与に対する対象の応答をモニターし、用量を適宜調節することにより、治療上有効な量を決定することができる。更なる指針については、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro ed.20th edition,Williams&Wilkins PA,USA)(2000)を参照されたい。
治療薬は、単回投与以上回投与で、患者に投与することができる。複数回投与が行われる場合、投与は、互いに、例えば、1時間、3時間、6時間、8時間または1日、2日、1週間、2週間または1ヶ月の間隔があってよい。例えば、治療薬は、例えば、2、3、4、5、6、7、8、10、15、20週間またはそれ以上の間、投与され得る。種々の実施形態において、組成物は、1日あたり1〜3回または1週あたり1〜7回、対象に投与される。種々の実施形態において、組成物は、1〜5日間、1〜5週間、1〜5ヶ月間または1〜5年間、対象に投与される。具体的な投薬レジメンは、いかなる特定の対象に関しても、個々の必要性及び組成物の投与を実施または管理する者の専門的判断に従って、経時的に調整されるべきであることを理解されたい。例えば、低用量で十分な治療活性が生じない場合には、治療薬の用量を増やすことができる。主治医が適切な量及び投薬レジメンを最終的に決定するであろうが、治療上有効な量の本明細書に開示される1つ以上のペプチドまたはその変異体、バリアント、類似体もしくは誘導体は、0.0001、0.01、0.010.1、1、5、10、25、50、100、500または1,000mg/kgまたはμg/kgの用量で提供され得る。有効用量は、インビトロまたは動物モデルにおける試験バイオアッセイまたは系から導出される用量反応曲線から外挿することができる。
本明細書にて使用される有効量は、疾患の症状の発症を遅らせ、疾患の症状の経過を変える(例えば、限定するものではないが、疾患の症状の進行を遅らせる)か、または疾患の症状を逆転するのに十分な量も含み得る。したがって、正確な「有効量」を明記することはできない。しかしながら、任意の所与の症例に関して、適切な「有効量」は、慣用的実験のみを用いて、当業者によって決定され得る。
有効量、毒性及び治療有効性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手法によって、例えば、LD50(集団の50%にとって致死的である用量)及びED50(集団の50%で治療上有効である用量)を測定する手法によって、決定することができる。用量は、採用される剤形及び使用される投与経路に応じて、変動し得る。毒性と治療効果との用量比は、治療指数であり、LD50/ED50の比で表すことができる。大きい治療指数を示す組成物及び方法が好ましい。治療上有効な量は、まず、細胞培養アッセイから推定することができる。また、用量は、細胞培養または適切な動物モデルにて測定されたIC50(すなわち、症状の最大半数の阻害を達成する、Il−4/IL−13受容体機能を阻害する作用物質の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲を達成するように、動物モデルで定式化することができる。血漿中濃度は、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。任意の特定の用量の効果は、好適なバイオアッセイによってモニターすることができる。用量は、医師によって決定され、観察される治療効果に合わせて必要に応じて調整され得る。
「薬学的に許容される」という文言は、堅実な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、妥当な利益/リスク比に見合った、ヒト及び動物の組織との接触に使用するのに適した化合物、物質、組成物及び/または剤形を指す。本明細書で使用する「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される賦形剤」という文言は、IL−4/IL−13受容体阻害物質の安定性、溶解度または活性を維持するのに関係する、薬学的に許容される物質、組成物またはビヒクル、例えば、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、媒体、封入材料、製造助剤(例えば、滑沢剤、タルクステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸亜鉛またはステアリン酸)または溶媒封入材料を意味する。それぞれの担体は、製剤の他の成分と適合性があり、患者にとって有害でないという意味で、「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として機能し得る物質のいくつかの例には、(1)ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖、(2)トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン、(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体、(4)トラガカント粉末、(5)モルト、(6)ゼラチン、(7)カカオバター及び坐薬用ワックスなどの賦形剤、(8)ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油などの油、(9)プロピレングリコールなどのグリコール、(10)グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール(PEG)などのポリオール、(11)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル、(12)寒天、(13)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(14)アルギン酸、(15)パイロジェンフリー水、(16)等張生理食塩水、(17)リンゲル溶液、(18)pH緩衝溶液、(19)ポリエステル、ポリカーボネート及び/またはポリ無水物、(20)ポリペプチド及びアミノ酸などの増量剤、(21)血清アルブミン、HDL及びLDLなどの血清構成成分、(22)エタノールなどのC2〜C12アルコール、ならびに(23)医薬製剤に採用される他の非毒性適合物質が挙げられる。離型剤、コーティング剤、保存剤及び抗酸化剤も製剤中に存在し得る。「賦形剤」、「担体」、「薬学的に許容される担体」などの用語は、本明細書において区別なく用いられる。
本明細書に記載されるIL−4/IL−13受容体の阻害物質は、固体、液体またはゲル状で化合物を対象に投与するために特別に製剤化され得、これらには、(1)非経口的投与、例えば、無菌の液剤もしくは懸濁剤もしくは徐放性製剤として、例えば、皮下、筋肉内、静脈内もしくは硬膜外注入による投与、(2)局所適用、例えば、クリーム剤、軟膏もしくは放出制御パッチもしくは皮膚に塗布するスプレーとしての適用、(3)膣内もしくは直腸内、例えば、膣坐薬、クリーム剤もしくは泡剤としての投与、(4)眼内、(5)経皮、(6)経粘膜、または(7)経鼻に適合させたものが挙げられる。更に、本明細書に記載されるIL−4/IL−13受容体の阻害物質は、患者に埋め込むか、または薬物送達システムを使用して注入することができる。例えば、Urquhart,et al.,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.24:199−236(1984)、Lewis,ed.“Controlled Release of Pesticides and Pharmaceuticals”(Plenum Press,New York,1981)、米国特許第3,773,919号、及び米国特許第3,270,960号を参照されたい。
本明細書に記載の方法にて使用することができる、IL−4/IL−13受容体阻害物質の製剤及び投与方法の更なる実施形態について、以下に示す。
非経口剤形。IL−4/IL−13受容体阻害物質の非経口剤形は、種々の経路、例えば、限定するものではないが、皮下、静脈内(ボーラス注入を含む)、筋肉内及び動脈内により、対象に投与することができる。典型的に、非経口剤形の投与が汚染物質に対する患者の自然防御能を回避するために、非経口剤形は、好ましくは、無菌であるか、または患者への投与前に滅菌することができる。非経口剤形の例には、すぐに注射可能な液剤、薬学的に許容される注射用ビヒクル中にすぐに溶解または懸濁可能な乾燥製品、すぐに注射可能な懸濁剤、制御放出性非経口剤形及び乳剤が挙げられるが、これらに限定されない。
本開示の非経口剤形を提供するために使用することができる好適なビヒクルは、当業者によく知られている。例としては、限定するものではないが、滅菌水;USP注射用水;食塩水溶液;グルコース溶液;水性ビヒクル、例えば、限定するものではないが、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、ブドウ糖注射液、ブドウ糖塩化ナトリウム注射液及び加乳酸リンゲル注射液;水混和性ビヒクル、例えば、限定するものではないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコール;ならびに非水性ビヒクル、例えば、限定するものではないが、コーン油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル及び安息香酸ベンジルが挙げられる。
エアゾール製剤。IL−4/IL−13受容体の阻害物質は、加圧エアゾール容器中に、好適な噴射剤、例えば、プロパン、ブタンまたはイソブタンなどの炭化水素噴射剤と、従来のアジュバントとともに収容することができる。IL−4/IL−13受容体の阻害物質は、ネブライザまたはアトマイザなどの非加圧形態で投与することもできる。IL−4/IL−13受容体の阻害物質は、乾燥粉末の形態で、例えば、吸入器の使用により、気道に直接投与してもよい。
好適な粉末組成物には、例示として、ラクトースまたは気管支内投与に許容される他の不活性粉末と十分に混合した、IL−4/IL−13受容体阻害物質の粉末製剤が挙げられる。粉末組成物は、エアゾールディスペンサーにより投与することができ、またはカプセルに穴をあけ、吸入に適した一定の流れで粉末を吹き出す装置に、対象が挿入し得る、破砕可能なカプセル中に入れることができる。組成物は、噴射剤、界面活性剤及び共溶媒を含み得、好適な定量バルブによって密閉される従来のエアゾール容器に充填することができる。
気道への送達のためのエアゾール剤は、当該技術分野において知られている。例えば、Adjei,A.and Garren,J.Pharm.Res.,1:565−569(1990)、Zanen,P.and Lamm,J.−W.J.Int.J.Pharm.,114:111−115(1995)、Gonda,I.”Aerosols for delivery of therapeutic an diagnostic agents to the respiratory tract,” in Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,6:273−313(1990)、Anderson et al.,Am.Rev.Respir.Dis.,140:1317−1324(1989))ならびにペプチド及びタンパク質の全身送達の可能性(Patton and Platz,Advanced Drug Delivery Reviews,8:179−196(1992))、Timsina et.al.,Int.J.Pharm.,101:1−13(1995)、ならびにTansey,I.P.,Spray Technol.Market,4:26−29(1994)、French,D.L.,Edwards,D.A.and Niven,R.W.,Aerosol Sci.,27:769−783(1996)、Visser,J.,Powder Technology 58:1−10(1989))、Rudt,S.and R.H.Muller,J.Controlled Release,22:263−272(1992)、Tabata,Y,and Y.Ikada,Biomed.Mater.Res.,22:837−858(1988)、Wall,D.A.,Drug Delivery,2:10 1−20 1995)、Patton,J.and Platz,R.,Adv.Drug Del.Rev.,8:179−196(1992)、Bryon,P.,Adv.Drug.Del.Rev.,5:107−132(1990)、Patton,J.S.,et al.,Controlled Release,28:15 79−85(1994)、Damms,B.and Bains,W.,Nature Biotechnology(1996)、Niven,R.W.,et al.,Pharm.Res.,12(9);1343−1349(1995)、ならびにKobayashi,S.,et al.,Pharm.Res.,13(1):80−83(1996)を参照されたい。これら全ての内容は、その全体を参考として本明細書に援用する。
水がいくつかの化合物の分解を促進し得るので、本明細書に記載されるIL−4/IL−13受容体阻害物質の製剤は、本開示の化合物を活性成分として含む、無水の医薬組成物及び剤形を更に包含する。例えば、水の添加(例えば、5%)は、長期保存をシミレーションする手段として、製剤の貯蔵期間または経時安定性などの特徴を決定するために、薬学分野にて広く受け入れられている。例えば、Jens T.Carstensen,Drug Stability:Principles&Practice,379−80(2nd ed.,Marcel Dekker,NY,N.Y.:1995)を参照されたい。本開示の無水の医薬組成物及び剤形は、無水または低水分含有成分及び低水分または低湿度条件を用いて調製することができる。ラクトースと、一級または二級アミンを含む少なくとも1つの活性成分とを含む、医薬組成物及び剤形は、好ましくは、製造、包装及び/または貯蔵の間に水分及び/または湿気との実質的な接触が予想される場合、無水とする。無水組成物は、好ましくは、水への曝露を防ぐことが知られている材料を使用して包装され、これを好適な処方キット中に含めることができる。好適な包装の例には、密封されたホイル、プラスチック、乾燥剤入りまたは乾燥剤なしの単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスターパック及びストリップパックが挙げられるが、これらに限定されない。
制御放出及び遅延放出剤形。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、IL−4/IL−13受容体の阻害物質は、制御放出または遅延放出の手段により対象に投与することができる。理想的には、医療処置において最適に設計された制御放出製剤の使用は、最少量の薬剤物質を使用して最小限の時間で病態を治療または制御することを特徴とする。制御放出製剤の利点には、1)薬物の活性持続、2)投与頻度の減少、3)患者のコンプライアンスの向上、4)使用する全薬物量の減少、5)局所または全身の副作用の低減、6)薬物蓄積の最小化、7)血中レベル変動の低減、8)治療有効性の改善、9)薬物活性の増強または消失の低減、及び10)疾患または状態の制御速度の改善(Kim,Cherng−ju,Controlled Release Dosage Form Design,2(Technomic Publishing,Lancaster,Pa.:2000))が挙げられる。制御放出製剤を使用することで、化合物の作用開始、作用の継続期間、治療濃度域内の血漿レベル、及びピーク血中濃度を制御することができる。特に、制御放出または持続放出性の剤形または製剤の使用は、薬物の過少投与(すなわち、最小治療レベルを下回る投与)と、薬物の毒性レベルの超過の両方から生じ得る、潜在的な有害作用及び安全性の問題を最小限にしつつ、式(I)の化合物の最大有効性が達成されることを確実にする。
既知である種々の制御放出または持続放出性の剤形、製剤及びデバイスを、本明細書に記載されるIL−4/IL−13受容体の阻害物質との使用に適するようにすることができる。例としては、米国特許第3,845,770号、同第3,916,899号、同第3,536,809号、同第3,598,123号、同第4,008,719号、同第5674,533号、同第5,059,595号、同第5,591,767号、同第5,120,548号、同第5,073,543号、同第5,639,476号、同第5,354,556号、同第5,733,566号及び同第6,365,185B1号に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。これらの各特許は、その全体を参考として本明細書に援用する。これらの剤形は、所望の放出プロファイルをもたらすために、様々な比率で、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過性膜、浸透圧系(OROS(登録商標)(Alza Corporation,Mountain View,Calif.USA)など)、多層コーティング、微小粒子、リポソームもしくはミクロスフェアまたはこれらの組み合わせを用いて、1つ以上の活性成分の徐放または制御放出を提供するために使用することができる。更に、イオン交換材料を使用して、本開示の化合物の固定吸着された塩形態を調製することにより、薬物の制御送達をもたらすことができる。具体的なアニオン交換体の例には、Duolite(登録商標)A568及びDuolite(登録商標)AP143(Rohm&Haas,Spring House,Pa.USA)が挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法にて使用するためのIL−4/IL−13受容体阻害物質は、持続放出により、またはパルスで対象に投与される。パルス療法は、経時的に同じ量の組成物を断続的に投与する形態ではなく、同じ量の組成物を低頻度で投与すること、または低用量の投与を含むものである。持続放出またはパルス投与は、障害が対象にて連続的に生じる場合、例えば、対象がウイルス感染症の連続性または慢性症状を有する場合、特に好ましい。それぞれのパルス用量を減らすことができるので、治療過程にわたって患者に投与されるIL−4/IL−13受容体阻害物質の合計量が最小限になる。
各パルスの間隔は、必要に応じて、当業者が決定できる。多くの場合、各パルスの間隔は、次のパルスの送達前に、組成物または組成物の活性成分が対象において検出されなくなった時点で、別の用量の組成物を投与することによって計算することができる。また、組成物のインビボ半減期から間隔を計算することができる。間隔は、インビボ半減期よりも長いか、または組成物半減期の2、3、4、5及び10倍以上長いものとして、計算可能である。患者への注入または他の送達形態により組成物をパルス投与するための様々な方法及び装置は、米国特許第4,747,825号、同第4,723,958号、同第4,948,592号、同第4,965,251号及び同第5,403,590号に開示されている。
本発明のキット
本発明はまた、必要とする対象における、がん及び/もしくは線維化疾患の治療、がん及び/もしくは線維化疾患の阻害、がん及び/もしくは線維化疾患の低減またはがん及び/もしくは線維化疾患予防の促進ためのキットを提供する。キットは、必要とする対象において、がん及び/または線維化疾患を治療し、阻害し、及び/またはその重症度を低減させるためのIL−4/IL−13受容体阻害物質を含む組成物と、組成物の使用説明書とを含む。いくつかの実施形態において、IL−4/IL−13受容体阻害物質は、小分子、ペプチド、タンパク質、アプタマー、抗体もしくはその断片、核酸分子またはIL−4もしくはIL−13及びIL−4/IL−13受容体に特異的な結合部位を含む二重特異性ポリペプチド剤である。種々の実施形態において、阻害物質は、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上である。
キットは、材料または構成要素の集合体であり、本明細書に記載の組成物のうちの少なくとも1つを含む。したがって、いくつかの実施形態において、キットは、IL−4/IL−13受容体阻害物質を含む組成物を含み、ここで、IL−4/IL−13受容体阻害物質は、本明細書にて記載される、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上である。
本発明のキット中に構成される要素の正確な性質は、その使用目的に依存する。一実施形態において、キットは、特にヒト対象のために構成される。更なる実施形態において、キットは、限定するものではないが、家畜、飼育動物及び実験動物などの対象を治療する獣医学的用途のために構成される。
使用説明書をキットに含めてもよい。「使用説明書」は、典型的に、所望の転帰を達成するために、例えば、対象のがん及び/または線維化疾患を治療し、その重症度を低減させ、阻害するか、または予防するために、キットの構成要素を使用する際に必要とされる方法を記載する具体的な表現を含む。必要に応じて、キットはまた、他の有用な構成要素、例えば、測定器具、希釈剤、緩衝剤、薬学的に許容される担体、シリンジまたは当業者によって容易に認識される他の有用な器具を含む。
キットに組み込まれる物質または構成要素は、操作性及び実用性を維持する任意の簡便かつ好適な方法で保存され、実施者に提供することができる。例えば、構成要素は、溶解、脱水または凍結乾燥した形態であり得、室温、冷蔵温度または凍結温度で提供することができる。構成要素は、通常、好適なパッケージ材料(複数可)に収容される。本明細書にて使用するとき、「パッケージ材料」という文言は、キットの内容物、例えば、本発明の組成物などを収容するために用いる、1つ以上の物理的構造体を指す。パッケージ材料は、周知の方法によって組み立てられ、好ましくは、汚染物質を含まない無菌環境をもたらす。本明細書で使用するとき、「パッケージ」という用語は、個々のキット構成要素を保持することができる、ガラス、プラスチック、紙、箔などの好適な固体のマトリックスまたは材料を指す。したがって、例えば、パッケージは、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上である阻害物質を含有する本発明の組成物の好適な量を収容するために使用される瓶であり得る。パッケージ材料は、一般に、キット及び/またはその構成要素の内容物及び/または用途を示す、外部ラベルを有する。
以下の実施例は、特許請求される発明をより良く説明するために提供するものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。特定の材料が言及される場合においては、それは、単なる例示を目的とし、本発明を限定する意図はない。当業者であれば、独創的な能力を発揮することなく、かつ本発明の範囲を逸脱することなく、同等の手段または反応物質を開発できるであろう。
実施例1
IL−4/IL−13受容体機能を阻害するように設計された阻害物質CSRM53567が本明細書にて提供される。慢性炎症及び組織線維症を特徴とする慢性膵炎モデルにおける、CSRM53567の利益の証拠を提供する。慢性炎症及び線維症の機序におけるIL−4/IL−13受容体の役割、ならびにがんにおけるそれらのプロセスの役割に関する現時点での知見では、IL−4/IL−13受容体を阻害する作用物質が幅広い慢性炎症/線維化疾患及びがんに有益であることが示唆されている。
例として、慢性膵炎及び膵臓がんは、線維症を伴う持続性の膵臓炎症によって引き起こされる組織線維症を特徴とする。骨髄細胞、膵星細胞(PSC)ならびに星細胞及び骨髄細胞からの炎症誘発性サイトカインが疾患の病因において中心的役割を持つことが複数の証拠から示唆されている。慢性膵炎及び膵臓がんにおいて活性化された場合、膵臓の星細胞は、他の組織病態における線維芽細胞と類似の特徴及び機能を有する。
現在、IL−4/IL−13の両サイトカイン経路を標的にする小分子薬は存在しない。膵炎における線維症及び膵臓がんの予防及び/または治療のためのIL−4/IL−13受容体阻害物質、例えば、小分子阻害物質CSRM53567、CSRM535671及びCSRM535672が本明細書にて提供される。
IL−4/IL−13受容体の例示的な阻害物質:
CSRM53567: TYR−CYS−ASP−ASP−PHE−VAL−GLY−SER−PHE−ASP−CYS−TYR(配列番号1)(CYS2−CYS11ジスルフィド)
CSRM535671: TYR−CYS−ASP−ASP−PHE−VAL−GLY−SER−PHE−ASP−CYS−TYR−ASP(配列番号2)(CYS2−CYS11ジスルフィド)
CSRM535672: TYR−CYS−ASP−ASP−PHE−VAL−GLY−SER−PHE−ASP−CYS−TYR−GLU(配列番号3)(CYS2−CYS11ジスルフィド)
暫定的結果を図1に示す。本明細書にて示すように、CRSM53567などのIL−4/IL−13受容体機能を阻害する作用物質は、複数の線維症及びがん疾患に利益があるであろう。図1は、実験デザインを示す(図1A)。本デザインにおいて、齧歯類に慢性膵炎を生じさせるのに一般的に用いられるモデルを作製した。このモデルでは、コレシストキニン類似体のセルレインを、腹腔内注射にて1日6回1セット、週3回の繰り返しで、4週間動物に投与する。図1Bは、CSRM53567が組織中のマクロファージを減少させることを示している。CD206は、II型マクロファージのマーカーであり、一方のMHCIIは、I型マクロファージで高度に発現される。CSRM53567処置群における組織体積の増加は、線維症の減少を反映するものである(図1B)。
実施例2
実験方法
マウス:BALB/c、C57BL/6、SJL、B6.SJL、IL−4Rα−/−、CCR2KOマウス系統をJackson Laboratoryから購入し、所内で飼育した。BALB/cバックグラウンドのLysMcreIL−4Rαflox/flox(参考文献24)及びIL−4/IL−13−/−マウスを記載のとおりに作製した(McKenzie,G.J.,et al. Simultaneous disruption of interleukin(IL)−4 and IL−13 defines individual roles in T helper cell type 2−mediated responses.J.Exp.Med.189,1565−1572(1999))。実験マウスは全て年齢(6〜8週齢)と性別を一致させ、動物実験についてはスタンフォード大学動物実験委員会の承認を受けた。
混合骨髄キメラ:CCR2WT CD45.1 CD45.2 C57BL/6マウスに9.5Gyのガンマ線照射を約3時間離して2回致死量照射し、続いて、CCR2WTCD45.1及びCCR2KOCD45.2マウス由来の1:1混合細胞を含む5×10個のBM細胞をi.v.注入することによって、競合型混合BMキメラマウスを作製した。キメラマウスは、少なくとも8週間、移植状態のままにし、その後、更なる実験操作を行った。
膵炎モデル及び処置:先の記載のとおりに、セルレインをマウスに注入してAPを誘導した(Xue,J.,et al.Aryl hydrocarbon receptor regulates pancreatic IL−22 production and protects mice from acute pancreatitis.Gastroenterology 143,1670−1680(2012);Xue,J.&Habtezion,A.Carbon monoxide−based therapy ameliorates acute pancreatitis via TLR4 inhibition.J.Clin.Invest.124,437−447(2014))。セルレインの反復注入によりCPを誘導した(Lerch,M.M.&Gorelick,F.S.Models of acute and chronic pancreatitis.Gastroenterology 144,1180−1193(2013)、Treiber,M.et al.Myeloid,but not pancreatic,RelA/p65 is required for fibrosis in a mouse model of chronic pancreatitis.Gastroenterology 141,e1471−e1477(2011))。簡潔に述べれば、50μg/kg体重のセルレイン(Sigma−Aldrich)を、6回の1時間ごとの腹腔内(i.p.)注入で、週3日、合計4週間、マウスに投与した。その後、セルレインの最終注入から3日後にマウスを屠殺し、分析した。阻害ペプチド試験に関しては、上記のとおり、全てのマウスに週3日、合計4週間、セルレイン注入を行い、セルレイン注入開始から2週間後に、ビヒクル対照(PBS)またはIL−4/IL−13阻害ペプチド(マウス1匹あたり50μg、1日100μlを週5日×2週間)のいずれかをマウスに投与し、上記のとおり、4週間と3日後に屠殺した。
ヒトサンプル:CP患者、膵管腺癌(PDAC)患者に由来するヒト膵臓組織及びPDAC患者に由来する正常膵辺縁、ならびに正常な膵臓を持つ患者に由来する膵臓組織(患者は近傍に非膵臓腫瘍を有していたため、膵臓の部分的切除を要した)を所属倫理委員会の承認及び患者の同意を得た上で、スタンフォード組織バンクから取得した。
組織学及び免疫蛍光法:マウスをCO吸入により屠殺し、次いで、その膵臓を素早く摘出した。膵臓片を直ちに10%ホルマリンに固定するか、またはTissue−Tek OCTコンパウンドで凍結した。固定した組織を切片にし、ヘマトキシリン及びエオシンならびにトリクローム染色に使用した(Histo−Tec Laboratoryで実施)。同様に、指定抗体での免疫蛍光染色のために凍結組織を切片にし、共焦点顕微鏡で分析した。
Luminexアッセイ:スタンフォード大学のHuman Immune Monitoring Centerにてアッセイを実施した(Xue,J.&Habtezion,A.Carbon monoxide−based therapy ameliorates acute pancreatitis via TLR4 inhibition.J.Clin.Invest.124,437−447(2014))。ヒト63プレックスまたはマウス26プレックスキットをAffymetrixから購入し、製造業者の推奨に従って、以下に記載の修正を加えて使用した。簡潔に述べれば、底面フィルター付96ウェルプレート上の抗体結合ポリスチレンビーズとサンプルを混合し、室温で2時間インキュベートし、続いて4℃で終夜インキュベートした。室温のインキュベーション工程は、オービタルシェーカー上で、500〜600r.p.m.にて実施した。プレートを真空濾過し、2回洗浄し、次いで、ビオチン化検出抗体とともに、室温で2時間インキュベートした。次いで、上述のとおりサンプルを濾過し、2回洗浄し、ストレプトアビジン−フィコエリトリン(PE)中に再懸濁させた。室温で40分間インキュベーションした後、真空洗浄を更に2回実施し、サンプルを読み取り用緩衝液中に再懸濁させた。各サンプルをデュプリケートで測定した。Luminex200機器を用いて、プレートを読み取った。
抗体及びフローサイトメトリー:別途記載のない限り、フローサイトメトリーに使用した抗体は全てBiolegendから購入した。表面染色の場合、マウス細胞は、次の抗体で染色した。APC−CD45.2(109814、1:200)、PE/Cy7−CD4(100528、1:300)、Percp/Cy5.5−CD1lb(101228、1:200)、BV421−F4/80(123137、1:200)、APC/Cy7−CD11C(117324、1:200)、PE−IL−411.a(1448031:100)、AF488−CD206(141710、1:100)、AF700−MHCII(107622、1:300)、PB−Ly6C(128014、1:200)、PE/Cy7−Ly−6G(127617、1:300)、PE−FcεRIα(134307、1:200)、AF488−ckit(105815、1:200)、APC−eFluor780−CD45.1(47−0453−82、eBioscience、1:200)及びPE−Siglec−F(562068、BDBiosciences、1:200)。ヒト細胞は、PE/Cy7−CD14(301814、1:100)、AF488−CD206(321114、1:50)及びAPC−CD68(333810、1:100)で染色した。細胞内サイトカイン染色の場合、染色の前に、細胞を、ホルボールミリスタートアセタート(50ng ml−1)及びイオノマイシン(1μg ml−1)で、ブレフェルジンA(10μg ml−1、eBioscience)の存在下、37℃にて4時間活性化させた。次いで、eBioscienceキットを製造業者のガイドラインに従って使用して、細胞を固定し、透過処理した。細胞内染色には、BD BiosciencesのAPC−IL10(554468、1:100)及びアイソタイプコントロール(556924、1:100)を使用した。細胞内TNFα染色の場合、表面染色の前に、細胞を、リポ多糖体(100ng ml−1、InvivoGen)とともに、またはなしで、ブレフェルジンAの存在下で、インキュベートした。BD BiosciencesのPE−TNFα(554419、1:200)及びアイソタイプコントロール(554685、1:200)を使用した。
細胞内Ki−67及びBrdUの検出には、Foxp3染色緩衝液セット(eBioscience)を使用して、細胞の表面マーカーを染色し、次いで、固定し、透過処理した。BrdU染色の場合、最初に、細胞をDNaseとともに37℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞をPE−BrdU(339812、1:100)またはAF488−Ki67(558616、BD Biosciences、1:50)で染色した。死細胞はバイオレット生存率染色(Invitrogen)を使用して分析から除外した。フローサイトメトリーのデータ収集をFortessa LSRII(BD Biosciences)で行い、FlowJoソフトウェア(Tree Star Inc.)を使用して解析した。
細胞調製及びインビトロ培養:膵臓の白血球は、フローサイトメトリー分析に関して先に記載されたコラゲナーゼ消化法を使用して単離した(Xue,J.,et al.Aryl hydrocarbon receptor regulates pancreatic IL−22 production and protects mice from acute pancreatitis.Gastroenterology 143,1670−1680(2012))。CPマウス由来のPSCは、記載されている生成方法により単離した(Bachem,M.G.et al.Identification,culture,and characterization of pancreatic stellate cells in rats and humans.Gastroenterology 115,421−432(1998))。正常辺縁及びPDACに由来する初代ヒトPSCは、それぞれ、勾配遠心分離法及び生成方法を使用して単離した(Bachem,M.G.et al.Identification,culture,and characterization of pancreatic stellate cells in rats and humans.Gastroenterology 115,421−432(1998)、Apte,M.V.et al.Periacinar stellate shaped cells in rat pancreas:identification,isolation,and culture.Gut 43,128−133(1998))。マウスPSCは、10%FBS含有DMEM/F12(1:1)培地で培養した。指定のある場合、マウスPSCは、TGFβ(5ng ml−1)、PDGFβ(10ng ml−1)または対照培地で6時間培養し、その後、mRNA分析及びqPCR分析のために回収した。ヒトPSCは、20%FBS含有IMDM培地で培養した。単離したPSCは、第二継代後に使用できる状態であった。培養2日後に、細胞が70〜80%コンフルエントに達したら、PSCの馴化培地(CM)を回収した。使用前に、CMを遠心分離にかけて、細胞デブリを除去した。BMDMは、先に記載のとおりに調製した(Xue,J.&Habtezion,A.Carbon monoxide−based therapy ameliorates acute pancreatitis via TLR4 inhibition.J.Clin.Invest.124,437−447(2014))。ヒト単球由来マクロファージの調製については、Ficoll−Hypaqueの密度勾配遠心分離を使用して軟膜からヒト末梢血単核細胞を単離し、次いで、CD14磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)により更に単球を濃縮した。濃縮した単球を、ヒトマクロファージCSF 50ng ml−1を含む完全RPMI培地で培養した。6日目に、ヒトマクロファージは使用できる状態となる(Vijayan,D.Isolation and differentiation of monocytes−macrophages from human blood.Methods Mol.Biol.844,183−187(2012))。PSC及びBMDM共培養実験は、Transwellシステム(Corning)を使用して、10%FBS含有DMEM/F12培地で実施した。下のウェルに5×10個のPSCを播種した後、上のメッシュ(孔径:0.4μm)上に5×10個のBMDMを播種した。共培養の48時間後に、マクロファージを分析のために回収した。
定量的RT−PCR:トータルRNA調製用Trizol試薬(Invitrogen)を製造業者の説明書に従って使用して、膵臓または細胞を溶解した。簡潔に述べれば、GoScript逆転写システム(Promega)を使用して、cDNAを生成した。ABI−7900配列検出システム(Applied Biosystems)により、特別設計した以下のTaqManプローブ及びプライマーを使用して、定量的PCRを実施した。
Figure 2017529364
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。サンプルは、GAPDHに対して正規化し、別途の記載がない限り、未処置対照群に対する誘導倍率で示した。
統計分析:特に指定のない限り、対応のないスチューデントのt検定を使用して、統計的有意性を求めた。0.05未満のP値を有意とみなした。指定のある場合、図の説明に記載のとおり、一元配置分散分析及びテューキー事後検定を使用した。値は、平均値±s.e.m.で表す(Prism5;GraphPad Software)。別途記載のない限り、結果は、少なくとも3回の独立した実験に基づく。
実施例3
マクロファージは、マウスCP及びヒトCPで増加する。
ヒトCPにおける線維症の発病機序に関する研究は、外科手術から得られる組織の入手可能性に制限があることから、限定されている。したがって、CPの発生及び進行を調べるには、ヒト疾患の全ての側面を再現するには限界があるものの、動物モデルが有用である(Saluja,A.K.&Dudeja,V.Gastroenterology 144,1194−1198(2013);Lerch,M.M.&Gorelick,F.S.Gastroenterology 144,1180−1193(2013))。マウスでは、コレシストキニン類似体のセルレインで膵臓を過剰刺激すると、APに至り、膵臓に対する連続的な急性損傷により膵臓の慢性炎症が生じる(Witt,H.,et al. Gastroenterology 132,1557−1573(2007);Lerch,M.et al.Gastroenterology 144,1180−1193(2013))。実験的CPを引き起こすために、4週間(週3回)にわたり、反復的にAPを誘導した。セルレインによる反復処置を受けたマウスは、白血球浸潤、膵線維症及び体重と比較して膵臓の大きさが小さいことと一致する腺房細胞の減少を伴う、CPの形態学的徴候を見せた。
次に、実験的CPにおける免疫応答の調査を試みた。Luminexアッセイを使用して、対照マウス及びCPマウスに由来する膵臓中の複数のサイトカイン及びケモカインの発現プロファイルを比較した。予想されたとおり、線維化誘導サイトカインであるトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)がCPマウスの膵臓中で増加した。一方、急性炎症中に増加することが知られている、炎症誘発性サイトカイン(IL−1β及びIL−6)は、CPにおいて下方制御された。長期のセルレイン反復投与及び最終注入から3日後の膵臓採取は、APではなく、慢性膵炎の発症と一致する。更に、マクロファージに関連するサイトカイン及びケモカイン(顆粒球−マクロファージCSF、顆粒球CSF、ケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド(CCL)2/単球特異的ケモカイン(MCP)−1、CCL7/MCP−3及びCCL3/マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)1A)は上方制御されており、これは、単球/マクロファージがCP時に重要な役割を担うことを示唆している。対照的に、APに関与する好中球走化性因子CXCL1の有意な増加(Zhang,H.et al.J.Clin.Invest.123,1019−1031(2013))は認められなかった(図2a)。
これらの観察結果のヒトCPとの関連性を理解するために、これらを正常な膵臓組織切片と比較した。免疫蛍光分析は、ヒトCPでCD68マクロファージが多いことを示した(図2c)。同様の傾向がマウスでも認められ、マクロファージマーカーF4/80分析では、マウスの正常膵臓と比較して、CPではマクロファージが多量であることが明らかになった(図2b)。更に、フローサイトメトリーを使用して分析した膵臓マクロファージ(CD11bF4/80)の数は、CPマウスで著しく大きかった(図2d)。マクロファージの組織浸潤は、単球前駆体の動員と在住細胞の増殖との2つの異なる方法で生じる(Jenkins,S.J.et al.J.Exp.Med.210,2477−2491(2013))。増殖マクロファージの割合を求めるために、Ki−67発現及び5−ブロモデオキシウリジン(BrdU)取り込みを使用した。BrdU及びKi−67マクロファージの両方がCPマウスで増加し、膵臓マクロファージの約12〜25%を占めることがわかった(図2d)。これは、在住マクロファージまたはマクロファージに分化した動員単球のいずれかの増殖が、CPにおけるマクロファージ蓄積の一因であることを示している。
AP時には、単球は、CCR2依存的に、マクロファージへと分化する前に、損傷した膵臓に引き寄せられる(Saeki,K.et al.Gastroenterology 142,1010−1020 e1019(2012)、Serbina,N.V.&Pamer,E.G.Nat.Immunol.7,311−317(2006))。CCL2(MCP−1)及びCCL7(MCP−3)などのCCR2リガンドもまた、CPで上昇する(図2a)。CPモデルが反復的な急性損傷に基づくことを考慮し、本発明者らは、増殖に加えて、CPにおけるマクロファージのかなりの部分が単球動員から生じると仮定した。レシピエントのCCR2WTCD45.1 CD45.2 C57BL/6マウスに致死量照射し、CCR2野生型(WT;CCR2WT CD45.1)及びCCR2ノックアウト(CCR2KO CD45.2)マウスに由来するBMの1:1混合物でマウスを再構築することによって、競合型骨髄(BM)キメラを樹立した。これにより、CCR2KO及びCCR2WTマウスに由来するマクロファージは、互いに区別できるだけでなく、CD45アロタイプマーカーに基づいてレシピエントマウスのマクロファージと区別できるようになった。移植及びCP誘導の8週間後、CCR2WTマクロファージの数がCCR2KOマクロファージの数を大幅に上回ったことがわかった。一方、観察された増殖(BrdU取り込み)は、CCR2WT細胞とCCR2KO細胞との間で差異はなかった。これは、CPでのマクロファージ蓄積の重要な一因である、単球動員におけるCCR2の役割を裏付けている(図2e)。
非照射野生型(CCR2WT)及びCCR2ノックアウト(CCR2KOマウス)にてCPを誘導した。CCR2欠損は、CPにおける膵臓マクロファージ蓄積を制限し、CCR2の存在と非存在との間で、増殖の差異は観察されない。これはBMキメラでの上記所見と一致する。しかしながら、CCR2の不在下において、CP時における膵臓への単球/マクロファージ動員が依然としてあることから、CCR2に依存しない機序(複数可)も存在することが示唆される。したがって、単球動員(CCR2依存性及び非依存性機序による)とマクロファージ増殖の両方が、CP進行中におけるマクロファージ蓄積の説明となる。
実施例4
AAMは、マウスCP及びヒトCPで優位である。
CPにおけるマクロファージの分極状態を決定するために、対照マウス及びCPマウスの両方から遺伝子発現分析のためにSSC−AlowCD1lb単球/マクロファージを選別した。遺伝子発現プロファイルにより、CPの膵臓単球/マクロファージにおいて、YM1、CD206、CD301、IL−10、TGFβ及びPDGFβなどのM2関連遺伝子が、対照と比較して増加していることが明らかになった(図3a)。更に、CPにおけるAAMの存在は、フローサイトメトリーを使用することで、M2関連マーカー(CD206、IL−10及びIL−4Rα)の増加及びM1関連マーカー(主要組織適合遺伝子複合体クラスII(MHCII))及び腫瘍−壊死因子アルファ(TNFα)発現の減少または不変が示されたとおり、更に確認された(図3b)。対照的に、AP誘導時における膵臓マクロファージの動的遺伝子発現を評価すると、TNFαの増加及びCD206、CD301の減少という古典的活性化プロファイルがAPマウスで認められた。TNFαとは異なり、IL−10の発現は、M1の後期反応と考えることができる(Murray,P.J.&Wynn,T.A.J.Leukoc.Biol 89,557−563(2011))。しかし、膵臓マクロファージでは、APにおけるIL−10は、CP(図3)と比較して極めて低い発現であり、同じ程度ではないが、CPでは、APと比較して、わずかに高いYM1発現量が認められる。Arg1は、古典的とAAMの両方で発現されることが最近示された(Murray,P.J.et al.Immunity 41,14−20(2014))。フローサイトメトリーのデータは、F4/80マクロファージの大部分でCD206は陽性であるが、TNFαは陽性でないという免疫蛍光染色に基づき、CPマウス由来の膵臓の組織学的分析と一致した。類似の所見がヒトCP組織でも観察され、CD68細胞は、CD206を発現したが、TNFαを発現しなかった(図3c、d)。
実施例5
PSCはマクロファージの選択的活性化を促進する。
マクロファージは、局所微小環境シグナルに応じて、その活性化状態及び機能を迅速に変えることができる、極めて不均質な細胞である(Sica,A.&Mantovani,A.J.Clin.Invest.122,787−795(2012);Murray,P.J.&Wynn,T.A.Nat.Rev.Immunol.11,723−737(2011))。PSCがCPにおいて果たす重要な役割を考慮して、本発明者らは、PSCがマクロファージの分極化及び機能に関与するのかどうか問うた。CPマウスからPSCを単離し、そのサイトカイン産生をLuminexアッセイで評価した。全体的に、IFNγ、TNFα及びIL−1βなどの複数の炎症誘発性サイトカインの発現が非常に低かった。対照的に、PSCは、IL−4、IL−5、IL−13、IL−10及びTGFβを多く分泌した。これは、Th2と線維形成促進性サイトカインのバイアスを示している(図4a)。
PSCにより放出される因子が膵臓マクロファージの活性化及び分極化の状態を変える能力を有するかどうか調査するために、BM由来マクロファージ(BMDM)をPSCとともにインビトロで共培養した。活性化PSCと共培養した後のBMDMは、CD206、CD301、IL−10、TGFβ及びPDGFβ mRNA発現の増加を伴う選択的活性化(M2)プロファイルを示した一方、誘導型一酸化窒素合成酵素(M1マーカー)の発現は減少した(図4b)。更に、PSCの馴化培地は、CD206、IL−10及びIL−4Rαの上方制御と、MHCII及びTNFα発現の下方制御をもたらしたことから(図4c)、PSCにより放出される因子はマクロファージ分極化をM2へと促進させることが示唆される。
IL−4/IL−13などのTh2サイトカインは、IL−4受容体を介して、マクロファージの選択的活性化を媒介する。したがって、PSC上清がIL−4Rαを介してM2分極化を媒介するかどうかについて、WT及びIL−4Rα−/−マウス由来のBMDMを使用して試験した。WT BMDMと比較して、IL−4Rα−/−のBMDMは、PSCの馴化培地により、選択的活性化できなかった(図4d)。更に、PSC馴化培地は、標準的なM2分極化条件である、外因的に添加されたIL−4/IL−13と同程度に良好であった。マクロファージ産生TGFβ及びPDGFβ(図4b)は、PSCの強力な活性化因子であることが先に示されている(Omary,M.B.,et al.J.Clin.Invest.117,50−59(2007))。PSC媒介性マクロファージ分極化に対するこれらの因子の作用を調査するために、PSCをTGFβ及びPDGFβで処置し、IL−4/IL−13の発現を調べた。本発明者らの研究では、PDGFβ及び特にTGFβが、PSCにおいて、アルファ平滑筋アクチン(α−SMA)だけでなく、IL−4及びIL−13遺伝子も誘導できたことを示している(図4e)。まとめると、これらの結果により、PSCは、IL−4Rαシグナル伝達依存的にマクロファージの選択的活性化を促進し、マクロファージは、PSC活性化を誘導し、かつIL−4Rリガンドを産生する能力を有することが示唆される。
ヒトにおける本所見を更に確認するために、膵臓の外科的切除を受けた6名の患者(hPSC)からPSC(正常な膵臓から3つ、膵臓がんから3つ)を単離した。培養した細胞がPSC表現型を有することは、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)及びα−SMAの免疫蛍光染色を使用して確認した。マウスPSCと一致して、hPSCは、Th1サイトカインと比較して、Th2を比較的高レベルで分泌した(図4f)。マウス試験を解釈するために、健康な血液ドナーの循環単球に由来するマクロファージをhPSC上清と共培養した。6つ全てのhPSCの馴化培地が、ヒトマクロファージのCD206を増加させ、TNFα発現を減少させた。これは、hPSCから放出される因子もマクロファージ分極化をM2へと促進させることを示している(図4g)。
実施例6
IL−4Rαシグナル欠損は、AAMを制限し、CPを防ぐ。
CPにおけるマクロファージの選択的活性化の重要性を調査するために、IL−4及びIL−13を欠くマウスでCPを誘導した。IL−4/IL−13−/−マウスは、他の疾患モデルにおいて、AAMを欠くことがわかっている(Nguyen,K.D.et al.Nature 480,104−108(2011))。WT同等マウスとは異なり、IL−4/IL−13−/−マウスは、膵臓相対サイズがより大きく(WT:5.95±0.11〜1.71±0.05、IL−4/IL−13−/−:5.98±0.20〜2.89±0.07;図5a)、リアルタイムPCR及び免疫蛍光分析を使用して、αSMA(α−SMA)及びCol1α1(コラーゲン1A1)などの膵臓における線維症に関連する遺伝子発現がより低い(図5b、c)ことから示されるように、CPにかかりにくかった。更に、WTマウスと比較して、IL−4/IL−13−/−マウス膵臓から単離したマクロファージは、CD206の発現がより低いことから、膵臓マクロファージの選択的活性化の低減が示唆される(図5d)。
観察された膵線維症の減少がIL−4Rαシグナル伝達の直接的影響であるかどうかを特定するために、IL−4Rαを完全に欠くマウスと、IL−4Rαが骨髄細胞(すなわち、マクロファージ及び好中球)にて特に欠損される、LysMcreIL−4Rαflox/floxマウスとを使用して、CPを誘導した(Nguyen,K.D.et al.Nature 480,104−108(2011);Herbert,D.R.et al.Immunity 20,623−635(2004))。予想されたとおり、IL−4Rα−/−及びLysMcreIL−4Rαflox/floxマウス由来の膵臓マクロファージは、慢性炎症下で選択的活性化の減少を示した(図5f)。IL−4Rα−/−及びLysMcreIL−4Rαflox/floxマウスの膵臓は、WT同等マウスと比較して、線維化が少なく、線維症関連マーカー(α−SMA及びコラーゲン1A1)の発現が低かった(図5a〜e)。とりわけ、IL−4Rα−/−及びLysMcreIL−4Rαflox/floxマウスは、膵線維症及びマクロファージの選択的活性化に関して明確な差異を示さなかったことから、IL−4Rα阻害の防御効果は、骨髄細胞またはマクロファージにおけるこの受容体またはシグナル伝達の非存在を介して媒介されることが示唆される。したがって、このCPモデルにおいて、AAMは、疾患の病因の重要な一因である。
CPにおけるマクロファージ選択的活性化に対するIL−4Rα要件を更に確認するために、同じCP環境でIL−4Rα正常及び欠損マクロファージを比較することを目的に、IL−4RαWT CD45.1とIL−4Rα−/− CD45.2マウスから1:1のBM再構築物を有する混合BMキメラを確立した。このような競合的環境において、IL−4RαWTマクロファージ(CD11b F4/80)のCD206発現は、CP誘導後、上方制御されたが、IL−4Rα−/−マクロファージでは、CD206発現に有意な差異は認められなかった。IL−4RαWTとIL−4Rα−/−の膵臓マクロファージ間で、増殖に差異は認められなかった。要するに、これらの所見は、マクロファージにおけるIL−4Rαシグナル伝達が、CP進展中の膵臓マクロファージの選択的活性化及び線維症にある程度必要であることを示している。
実施例7
IL−4/IL−13遮断は、確立されたCPを改善する。
実験的CP関連線維形成におけるIL−4Rαシグナル伝達の上記所見及び重要性を鑑みて、本発明者らは、確立された疾患の治療法として、IL−4Rαシグナル伝達遮断を使用できるかどうか試験しようとした。IL−4/IL−13阻害ペプチド(CSRM53567)を使用した。まず、阻害物質をインビトロタイトレーションアッセイにて試験すると、阻害物質は、1μMで、マウスIL−4/IL−13誘導性M2分極化及びCD206発現を有意に減少させた。次いで、セルレイン反復注入を2週間受け、膵臓サイズが有意に減少し、α−SMA発現が存在したマウスにおいて、阻害物質の効果を試験した。対照処置群と比較して、阻害物質での処置により、膵臓線維症が抑えられた(図6a〜e)。更に、阻害物質による膵臓マクロファージの選択的活性化の阻害がフローサイトメトリーの使用により確認された(図6f)。これらの観察結果は、概念実証として、CPの治療可能性を実証するものである。次いで、hPSCによるヒトマクロファージのM2分極化を阻害することについて、阻害物質の能力を試験した。このペプチドは、実際に、ヒトマクロファージのhPSC媒介性M2分極化を阻害することができた(図6g)。
実施例8
一般に、CPは、不可逆的な線維化疾患として認められており、現在の治療技術は、良くても支持的なものであり、痛みならびに外分泌及び内分泌の機能不全に関連する合併症を制御することに焦点が置かれている(Witt,H.,et al.Gastroenterology 132,1557−1573(2007))。膵線維症におけるPSCについての発見及び中心的役割に従って、CPの潜在的治療法については、PSCの阻害または非活性化が提案されている(Talukdar,R.&Tandon,R.K.J.Gastroenterol.Hepatol.23,34−41(2008))。しかしながら、CP進行中の免疫応答及び免疫細胞のPSC活性化に対する関与は、まだ十分理解されていない。本研究では、マクロファージの特徴及び役割を探るとともに、CPにおけるマクロファージとPSCとの相互作用の機序を特定することを目指している。本発明者らの結果は、AAMがCP線維形成において重要な役割を果たし、標的にすることが可能であり得る重要な経路を定めていることを示している。
マクロファージは、肝線維症及び全身性硬化症などの疾患における炎症及び線維症の主要な制御因子であることが提案されている(Wynn,T.A.&Barron,L.Semin.Liver Dis.30,245−257(2010))。本発明者らの研究は、マウスCPとヒトCPの両方でマクロファージが増加することを明らかにしている。CPはまた、マクロファージに関係するサイトカイン及びケモカインの増加とも関連しており、これは、疾患進行におけるマクロファージの重要な役割を裏付けている。マクロファージは、組織中で分化だけでなく分極もし、かつ循環しないため、競合型BMキメラ及び増殖試験を使用した本データは、局所(in situ)マクロファージ増殖及び単球動員の両方がCPでのマクロファージ蓄積の一因であることを示唆している。
M1が優位であるAPとは極めて対照的に、CPは、マクロファージの選択的活性化に有利に働く。マクロファージは、別個の安定した亜集団ではなく、ある範囲の活性化表現型を呈し(Mosser,D.,M.&Edwards,J.P.Nat.Rev.Immunol.8,958−969(2008))、異なる生理学的及び病理学的条件下でみられるように、異なる活性化状態または混合表現型のマクロファージが共存する可能性がある(Kawanishi,N.,et al.Exerc.Immunol.Rev.16,105−118(2010))。実際、これらの現象は、一部のM2マーカー(例えば、YM1)の様々な発現量により説明され得る。本CPモデルのマクロファージ及びPSC共培養由来のマクロファージは、TGFβ及びPDGFβのmRNA発現が多く、これは、増殖及び活性化を直接促進する、PSCの潜在的役割を示唆している(Omary,M.B.,et al.J.Clin.Invest.117,50−59(2007)、Apte,M.V.et al.Gut 44,534−541(1999)、Shek,F.W.et al.Am.J.Pathol.160,1787−1798(2002))。これらのマクロファージは、組織阻害物質メタロプロテイナーゼ2(TIMP2)及びマトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)を高レベルで発現していることから、細胞外基質の代謝回転も調節し得る(図3a)。更に、IL−10のこれらの発現及びMHCIIの下方制御は、免疫抑制特性を示唆している。
いくつかの研究では、マクロファージの可塑性が実証されており、これらの細胞は、様々な局所微小環境シグナルに応答して、1つの機能表現型から別の機能表現型へ切り替わる(Kawanishi,N.,et al.Exerc.Immunol.Rev.16,105−118(2010)、Stout,R.D.et al.J.Immunol.175,342−349(2005)、Stout,R.D.&Suttles,J.J.Leukoc.Biol.76,509−513(2004)、Porcheray,F.et al.Clin.Exp.Immunol.142,481−489(2005))。CP進行におけるPSCの中心的役割を鑑みて、本発明者らは、PSCが、CPにて観察された選択的活性化を維持し、その増加を促進するシグナルを発している可能性を検討した。実際、PSC(マウスとヒト膵臓由来の両方)は、炎症誘発性サイトカインと比較して、マクロファージの選択的活性化に必要とされる、Th2サイトカインIL−4及びIL−13を高レベルで発現した(Gordon,S.Nat.Rev.Immunol.3,23−35(2003)、Van Dyken,S.J.&Locksley,R.M.Annu.Rev.Immunol.31,317−343(2013))。更に、本発明者らは、IL−4Rα正常及び欠損混合BMキメラを使用して、IL−4Rαシグナル伝達がCPにおけるマクロファージの選択的活性化に必要であることを確認した。
IL−4Rα−/−及びLysMcreIL−4Rαflox/floxの両マウスは、膵線維症及びPSC活性化(α−SMA)に関して類似の減少を示した。これは、CP時の線維症におけるIL−4Rαシグナル伝達の関与が骨髄またはマクロファージ依存的であることを示唆している。IL−4/IL−13−/−マウスは、セルレイン誘導CPにかかりにくかった。IL−4と同様に、IL−13は、IL−4受容体(IL−4Rα及びIL−13Rα1からなるヘテロ二量体受容体)を介してシグナル伝達されるが、IL−13は、IL−13Rα2(IL−4とは結合しない)にも結合して下流シグナルを誘発することができる。IL−13は、部分的にはIL−13Rα2を介し、多くの慢性感染症及び自己免疫疾患における線維症の主な誘導因子であることがわかっている(参考文献34)。ダブルノックアウトマウス(IL−4/IL−13−/−)におけるIL−4受容体及びIL−13Rα2の両シグナル伝達の阻害は、IL−4Rα−/−及びLysMcreIL−4Rαflox/floxマウスにおけるIL−4受容体のみの阻害と比較した場合、IL−4/IL−13−/−マウスで観察されたCP進展に対する防御の増加を説明することができる。
機能的マクロファージ分極化は、生理学的及び病理学的条件下でインビボで観察される(Sica,A.&Mantovani,A.J.Clin.Invest.122,787−795(2012))。分極したM1またはM2マクロファージの表現型は、インビトロ及びインビボで、ある程度、逆転し得る(Saccani,A.et al.Cancer Res.66,11432−11440(2006)、Guiducci,C.,et al.Cancer Res.65,3437−3446(2005))。したがって、マクロファージの分極化を再配向し、再構築することは、いくつかの疾患の治療戦略として検討されている。本研究において、本発明者らは、遺伝子欠損マウスにより、または薬理学的手段でIL−4/IL−13を遮断することにより、マクロファージの分極化を再構築することを試みた。IL−4/IL−13欠損マウスの結果と一致して、CP誘導後にIL−4/13阻害ペプチドで処置すると、マクロファージの選択的活性化が減少し、膵線維症が改善した。実験的CPにおけるこの免疫療法は、CPは積極的に治療し、逆転させ、または進行を止めることができないという考えに異議を唱えるものである。IL−4対IL−13の関与を特定する更なる研究は、具体的な標的(複数可)を更に特定し、設計する上で興味深いものであろう。
本発明者らのインビトロでのヒトPSCとマクロファージの共培養実験は、マウス試験にて得られた結果と一致している。活性化されたマウス及びヒトPSCがTh2サイトカインを分泌し、M2分極化を促進することにより、絶えず継続する可能性のあるフィードフォワードプロセスに至ることを示す(図7)。これらの所見は、マウス及びヒト実験系でIL−4Rα欠損マクロファージ及びIL−4/IL−13阻害ペプチドを使用して確かめられる。IL−4Rαシグナル伝達及び/またはPSC活性化を阻害すれば、CPにおけるこのフィードフォワードプロセスをオフにできると考えられる。本発明者らのインビトロでのヒト試験は、マウス試験から得られた結果とともに、標的にすることが可能な経路対する概念実証及びベンチ台から臨床段階への移行の第一歩を提供するものである。
上に記載した種々の方法及び技術は、本出願を実施するための多数の方法を提供する。当然のことながら、記載された全ての目的または利点が、本明細書に記載の任意の特定の実施形態に従って達成されるとは限らないことを理解されるべきである。したがって、例えば、当業者は、本明細書にて教示または示唆される他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本明細書にて教示される1つの利点または利点群を達成または最適化する仕方で、方法を実施することができることを認識するであろう。種々の代替物が本明細書にて言及される。いくつかの好ましい実施形態は、1つの、別の、またはいくつかの特徴を特に含み、一方、他の実施形態は、1つの、別の、またはいくつかの特徴を特に含まず、一方、更に他の実施形態は、1つの、別の、またはいくつかの有利な特徴を含めることによって、特定の特徴を減じることを理解されたい。
更に、当業者であれば、種々の実施形態から様々な特徴の利用可能性を認識するであろう。同様に、上述した様々な要素、特徴及び工程、ならびにこのような要素、特徴または工程のそれぞれの他の既知の等価物は、本明細書に記載の原理に従って方法を実施するために、当業者によって、様々な組み合わせで採用され得る。種々の要素、特徴及び工程のうち、異なる実施形態において、いくつかは特に包含され、他は特に除外される。
本出願は、ある特定の実施形態及び実施例との関係において開示されているが、当業者であれば、本出願の実施形態が、具体的に開示される実施形態を超えて、他の代替的実施形態及び/または使用ならびにそれらの改変及び等価物まで及ぶことを理解するであろう。
本発明者らが認識している、本出願を実施するための最良の形態を含め、本出願の好ましい実施形態が本明細書において記載されている。これらの好ましい実施形態に対する変更は、前述の説明を読めば、当業者には明らかとなろう。当業者は、こうした変更を必要に応じて採用することができ、本明細書に具体的に記載されるものとは別の方法で本出願を実施することができることが企図される。したがって、本出願の多数の実施形態は、適用される法律で許される場合、本明細書に添付される特許請求の範囲において列挙される主題の変更及び等価物を全て包含する。更に、その可能な限りの全ての変更における上述の要素のあらゆる組み合わせは、本明細書中に別途指定のない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、本出願に包含される。
本明細書中で言及される全ての特許、特許出願、特許出願公開及びその他の資料、例えば、論文、書籍、仕様書、出版物、文書、事物及び/または同様物は、本出願において、これらの全体を参考として本明細書に援用するが、これらに関連する何らかの出願経過履歴、本文書と一致しないか、もしくは矛盾するこれらのいずれか、または本文書に現在または以降に関連する特許請求の最も広範な範囲に対して限定的影響を与え得るこれらのいずれかは除外される。例として、援用された資料のいずれかと関係する記述、定義及び/または用語の使用と、本文書と関係するものとの間に何らかの不一致または矛盾がある場合には、本文書中の記述、定義及び/または用語の使用が優先される。
最後に、本明細書に開示される本出願の実施形態は、本出願の実施形態の原理の例示であることを理解されたい。採用することができる他の変更は、本出願の範囲内に含まれ得る。そのため、例として、限定するものではないが、本明細書中の教示に従って、本出願の実施形態の代替構成を利用することができる。したがって、本出願の実施形態は、例示され、記載されたものに、厳密に限定されるものではない。

Claims (36)

  1. 必要とする対象において、疾患状態を治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその予防を促進するための方法であって、
    (i)IL−4/IL−13受容体の阻害物質を含む組成物を提供する段階と、
    (ii)前記対象の前記疾患状態を治療するために、治療上有効な量の前記組成物を前記対象に投与する段階と
    を含む、前記方法。
  2. 前記疾患状態が線維症及び/またはがんである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記疾患状態が膵線維症、膵炎及び/または膵臓がんである、請求項1に記載の方法。
  4. 前記疾患状態が肺線維症または肺がんである、請求項1に記載の方法。
  5. 前記がんが慢性膵炎と関係する、請求項2に記載の方法。
  6. 前記がんが器官の線維化と関係する、請求項2に記載の方法。
  7. 線維症が、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症、腎性全身性線維症、クローン病、ケロイド、強皮症/全身性硬化症、関節線維症、ペロニー病、デュピュイトラン拘縮、癒着性関節包炎、肝臓線維症、肺線維症、膵線維症、腸線維症、心臓線維症またはこれらの組み合わせのうちのいずれか1つ以上である、請求項2に記載の方法。
  8. 前記がんが、リンパ腫、肉腫、脳がん、乳がん、大腸がん、肺がん、肝細胞がん、胃がん、膵臓がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、尿路がん、甲状腺がん、腎臓がん、癌腫、黒色腫、頭頸部がん、脳がん及び前立腺がんのうちのいずれか1つ以上である、請求項2に記載の方法。
  9. 請求項1に記載の方法によって、がん転移を低減または阻害するための方法。
  10. 前記IL−4/IL−13受容体の阻害物質が、小分子、ペプチド、タンパク質、アプタマー、抗体またはその断片、核酸分子、IL−4及びIL−4/IL−13受容体に特異的な結合部位を含む二重特異性ポリペプチド剤、ならびにIL−13及びIL−4/IL−13受容体に対する結合部位を含む二重特異性ポリペプチド剤からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  11. 前記二重特異性ポリペプチドが、IL−4に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分と、IL−4/IL−13受容体に結合する抗体またはその抗原結合部分とを含む、請求項10に記載の方法。
  12. 前記二重特異性ポリペプチドが、IL−13に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分と、IL−4/IL−13受容体に結合する抗体またはその抗原結合部分とを含む、請求項10に記載の方法。
  13. 前記核酸分子がIL−4/IL−13受容体のsiRNA分子である、請求項10に記載の方法。
  14. 前記抗体が、モノクローナル抗体またはその断片、ポリクローナル抗体またはその断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、アンタゴニスト抗体、二重特異性抗体及び一本鎖抗体からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
  15. 前記IL−4/IL−13受容体阻害物質が、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672及び/もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上である、請求項10に記載の方法。
  16. 前記阻害物質が、配列TYR−CYS−ASP−ASP−PHE−VAL−GLY−SER−PHE−ASP−CYS−TYRまたはその類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物を含むか、これらからなるか、あるいはこれらから本質的になるCSRM53567である、請求項15に記載の方法。
  17. 前記阻害物質が、配列TYR−CYS−ASP−ASP−PHE−VAL−GLY−SER−PHE−ASP−CYS−TYR−ASPまたはその類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物を含むか、これらからなるか、あるいはこれらから本質的になるCSRM535671である、請求項15に記載の方法。
  18. 前記阻害物質が、配列TYR−CYS−ASP−ASP−PHE−VAL−GLY−SER−PHE−ASP CYS−TYR−GLUまたはその類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物を含むか、これらからなるか、あるいはこれらから本質的になるCSRM535672である、請求項15に記載の方法。
  19. 前記組成物が、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口または吸入により投与される、請求項1のいずれか一項に記載の方法。
  20. 前記IL−4/IL−13受容体阻害物質の前記有効な量が、約0.1〜0.5mg/kg/日、0.5〜5mg/kg/日、5〜10mg/kg/日、10〜20mg/kg/日、20〜50mg/kg/日、50〜100mg/kg/日、100〜200mg/kg/日、200〜300mg/kg/日、300〜400mg/kg/日、400〜500mg/kg/日、500〜600mg/kg/日、600〜700mg/kg/日、700〜800mg/kg/日、800〜900mg/kg/日または900〜1000mg/kg/日である、請求項1に記載の方法。
  21. 前記対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
  22. 前記対象が前記疾患状態を発症する前、その間、またはその後に、前記組成物が前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
  23. 前記組成物が、1日あたり1〜3回または1週あたり1〜7回、前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
  24. 前記組成物が、1〜5日間、1〜5週間、1〜5ヶ月間または1〜5年間、前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
  25. 前記対象を外科手術、放射線療法、化学療法またはこれらの組み合わせで治療する段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
  26. 前記組成物が化学療法剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
  27. (i)IL−4/IL−13受容体阻害物質と、
    (ii)薬学的に許容される担体と
    を含む、医薬組成物。
  28. 前記IL−4/IL−13受容体阻害物質が、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672及び/もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上である、請求項27に記載の医薬組成物。
  29. (i)ある量の、IL−4/IL−13受容体阻害物質を含む組成物と、
    (ii)線維症及び/またはがんを治療し、阻害し、その重症度を低減させ、及び/またはその予防を促進することを必要とする哺乳動物対象に、前記組成物の治療上有効な量を投与するための説明書と
    を含む、キット。
  30. 前記IL−4/IL−13受容体阻害物質が、CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672及び/もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上である、請求項29に記載のキット。
  31. CSRM53567、CSRM535671、CSRM535672及び/もしくはこれらの組み合わせ、またはこれらの類似体、薬学的同等物もしくはペプチド模倣物のうちのいずれか1つ以上の配列を有する、単離された及び精製されたIL−4/IL−13受容体阻害物質。
  32. 請求項31に記載のIL−4/IL−13受容体阻害物質をコードするポリヌクレオチド。
  33. 請求項32に記載のcDNA分子。
  34. 請求項33に記載のcDNA分子を含むベクター。
  35. 適合性のある宿主細胞にトランスフェクトされた請求項34に記載のベクターを含む、宿主ベクター系。
  36. 前記適合性のある宿主細胞が、原核細胞または真核細胞である、請求項35に記載の宿主ベクター系。
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