図1〜図3は、本発明の第1の実施形態によるボーラス注射デバイスであり得る薬剤送達デバイス10(以下、単に「デバイス10」と呼ぶ)を示し、このデバイスは、患者がデバイス10を使用して薬剤投与プロセスを開始する前に意図した注射部位を消毒するための殺菌スワブまたはパッドを含む。デバイス10は、薬剤送達機構12を含むハウジング11を含む。明確かつ簡潔にするために、薬剤送達機構12のいくつかの機能部材が省略されているが、薬剤送達機構12は液体薬剤を患者の身体に注射するための針13を含む。液体薬剤は、薬剤送達機構12内でリザーバ(図示せず)内に設けられても、デバイス10の外側に設けられてもよい。
図示しないが、デバイスの薬剤送達機構は、以下の部材の1つまたはそれ以上を含んでよい。デバイス10の動作を制御するように構成されたコントローラ。針13を患者に後退位置から係合位置へ挿入するための針挿入機構。針挿入機構を駆動するための針駆動装置、例えば電気モータまたはばね機構。針駆動装置に電力を供給するためのエネルギー源。患者に投与予定の薬剤の供給量を含む薬剤リザーバ。この薬剤リザーバとしては、例えば、ガラスで形成されたカートリッジまたはバイアルが挙げられる。おそらくはカートリッジ内に設けられたプランジャおよびプランジャに機械的に連結されたプランジャ駆動装置。このプランジャ駆動装置は、プランジャを薬剤カートリッジに沿って動かすように制御可能であり得る。プランジャによって与えられる力により、薬剤が薬剤カートリッジの薬剤送達アパーチャを通り、薬剤送達チューブに沿って針13へ排出され、針13の孔を通して排出される。コントローラに電力を供給するためのバッテリの形の電源。このバッテリも、プランジャ駆動装置が電気駆動デバイスであれば、これに電力を供給することができる。バッテリは、針駆動装置のエネルギー源を構成してもよい。
デバイス10は、一般に、ハウジングの上側11aおよび下側11bを含み、使用時には、ハウジング11の下側11bが、薬剤投与プロセス中に患者の皮膚に当てられる接触面となる。ハウジング11の接触面または下側11bはアパーチャ14を含み、これを通して針13が使用時に突出することができる。薬剤送達機構12の針13は、後退位置と係合位置との間で可動である。後退位置で、針13はデバイス10のハウジング11内に配設され、係合位置で、針13はハウジング11の下側11bからアパーチャ14を通って突出して、デバイス10が患者に貼り付けられたときに患者の皮膚を穿孔し注射するようになっている。
ハウジング11の下側11bは、使用中にハウジング11を患者の皮膚に粘着するための第1の粘着層15を含む。第1の粘着層15上には基材16があり、殺菌スワブパッド17が、基材16の、ハウジング11から離れた側に接着される(bond)。殺菌パッド17は、アルコールを含み得る殺菌剤が含浸された吸収材料を含む。殺菌パッド17は、基材16の縁部まで延びておらず、第2の粘着層18が、殺菌パッド17を囲む基材16の縁部周りに設けられる。着脱可能なカバーシート19が基材16および殺菌パッド17上に配設され、第2の粘着層18により定位置に保持される。
第1の粘着層15の接着剤(glue)および基材16の隣接面の材料は、基材16がハウジング11の下側11bに恒久的に粘着されずハウジング11の下側11bから着脱可能であるように構成される。同様に、第2の粘着層18の接着剤およびカバーシート19の隣接面の材料は、カバーシート19が基材16に恒久的に粘着されず基材16から着脱可能であるように構成される。
図7のフローチャートを参照しながら、デバイス10の使用について説明する。工程S1で、患者はカバーシート19を基材16から剥がして殺菌パッド17を露出させる。工程S2で、患者はその後、薬剤投与プロセスの開始前に、殺菌パッド17を使用して注射部位となる予定の皮膚の領域を拭い、その領域を消毒する。患者が注射部位を十分に殺菌すると、工程S3で、患者は基材16(およびそれと共に、貼り付けられた殺菌パッド17)をハウジング11の下側11bから取り外して、第1の粘着層15およびアパーチャ14を露出させる。その後、患者は、アパーチャ14を殺菌された注射部位上に配置した状態で、ハウジング11を身体の適切な部分に粘着し、その後の薬剤投与プロセス中に第1の粘着層15がハウジング11を患者に固定する。
ハウジング11が患者の身体に粘着されると、工程S5で、薬剤投与プロセスを開始することができ、このプロセスでは、薬剤送達機構12を作動させ、針13を係合位置へ動かして患者の皮膚を穿孔し、その後、針13を介して薬剤を患者に投与する。薬剤送達機構12の作動を、例えばハウジング11の上側11aのボタン20を押すことにより、ユーザが手動で始めてもよい。
殺菌パッド17を組み込んだ本発明のデバイス10によって、ユーザが、薬剤投与プロセスを行うために、デバイス10に加えて別個の材料および機器を組み立てる必要がなくなることにより、手順がより簡単で迅速になり、患者の手間が少なくなることが理解されよう。
患者によるデバイス10の使用をできるだけ簡単かつ使い勝手の良いものにするために、カバーシート19および/または基材16が、それぞれの突出するプルタブ19a、16aを含んで、ユーザがカバーシート19を基材16から剥がしやすくし、基材16をハウジング11の下側11bから剥がしやすくしてもよい。患者による識別を容易にするために、プルタブ19a、16aに番号を付けても、他の方法で印付けてもよい。例えば、カバーシートのプルタブ19aに「1」と印付け、基材のプルタブ16aに「2」と印付けてもよい。あるいは、プルタブ19a、16aを文字、記号、または異なる色で印付けてもよい。さらに、使いやすさを助長するために、プルタブ19a、16aは、デバイス10の周囲に沿って離間していることが好ましい。
患者がカバーシート19を引いて除去するときに、基材16上の第2の粘着層18から取り外すことにより、カバーシート19のみがハウジング11から離れ、基材16がカバーシート19に貼り付けられたままにならず、カバーシート19に貼り付けられたハウジング11の下側11bから離れることが、デバイス10の正しい使用のために重要であることが理解されよう。デバイス10の正しい動作を確実にするために、第2の粘着層18は、第1の粘着層15が基材16をハウジング11の下側11bに固定する力よりも弱い力で、カバーシート19を基材16に固定しなければならない。これをいくつかの方法で達成することができる。本発明の第1の配置において、第1の粘着剤15の全表面積は、第2の粘着剤18の全表面積より大きくてよい。例えば、ハウジング11の下側11bの周囲に沿った第1の粘着層15のストリップの幅d15は、基材16の周囲に沿った第2の粘着層18のストリップの幅d18より大きくてよい。この配置は図2に示され、このことが第1および第2の粘着剤15、18のそれぞれの陰影領域からわかる。また、ハウジング11の下側11bは、アパーチャ14により占められた領域を除く表面全体にわたって、第1の粘着層15の大きい領域を含む。代わりに、または加えて、第1の粘着剤15が第2の粘着剤18とは異なっていて、第1の粘着剤15が第2の粘着剤18より強力であるようにしてもよい。
殺菌パッド17は圧縮性材料から作られることが好ましく、殺菌パッド17を最初に圧縮状態で基材16上に設けることができ、基材16に粘着されたカバーシート19により圧縮状態に保持することができる。そのような実施形態において、カバーシート19を取り外したとき、殺菌パッド17が膨張して基材16の表面から外方へ突出する。これにより、使用時に殺菌パッド17が確実に患者の皮膚に十分接触し、患者が第2の粘着層18を皮膚に擦り付けることを避ける。
殺菌パッド17に含浸される殺菌剤は、本発明の範囲内の液体またはゲルであってよい。ゲルを含む殺菌剤の利点は、デバイス10の収納中に殺菌剤が基材16とカバーシート19との間の殺菌パッド17から漏れにくいため、デバイス10の保存または収納寿命が長くなり得ることである。
本発明の第2の実施形態の薬剤送達デバイス30が図4〜図6に示され、これは第1の実施形態の薬剤送達デバイスと同様である。したがって、同じ機能は同じ参照符号を保持して、その詳細な説明を繰り返さない。
第2の実施形態のデバイス30と第1の実施形態のデバイスとの違いは、第2の実施形態のデバイス30が、殺菌パッド17とデバイス30のハウジング11の下側11bとの間に置かれた追加の乾燥層を含むことである。
殺菌パッド17が接着される基材16は第1の基材を含み、デバイス30は第2の基材36をさらに含む。第2の基材36は、ハウジング11の下側11bの第1の粘着層15上に設けられる。乾燥パッド37が、第2の基材36の、デバイス30から離れた側に接着される。乾燥パッド37は、脱脂綿またはガーゼを含み得る乾燥吸収材料を含む。乾燥パッド37は第2の基材36の縁部まで延びておらず、第3の粘着層38が、乾燥パッド37を囲む第2の基材36の縁部周りに設けられる。
第1の基材16は、第2の基材36上に設けられ、第3の粘着層38により第2の基材36上で定位置に保持されることによって、第2の基材36を介してハウジング11に粘着される。本発明の第1の実施形態と同様に、着脱可能なカバーシート19が第1の基材16および殺菌パッド17上に配設され、第2の粘着層18により定位置に保持される。
第1の粘着層15の接着剤および第2の基材36の隣接面の材料は、第2の基材36がハウジング11の下側11bに恒久的に粘着されずハウジング11の下側11bから着脱可能であるように構成される。同様に、第3の粘着層38の接着剤および第1の基材16の隣接面の材料は、第1の基材16が第2の基材36に恒久的に粘着されず第2の基材36から着脱可能であるように構成される。また、第2の粘着層18の接着剤およびカバーシート19の隣接面の材料は、カバーシート19が第1の基材16に恒久的に粘着されず第1の基材16から着脱可能であるように構成される。
デバイス30の使用時に、患者はカバーシート19を第1の基材16から剥がして殺菌パッド17を露出させる。患者はその後、薬剤投与プロセスの開始前に、殺菌パッド17を使用して注射部位となる予定の皮膚の領域を拭い、その領域を消毒する。次に、患者は第1の基材16(およびそれと共に、貼り付けられた殺菌パッド17)を第2の基材36から剥がして第1の基材16を廃棄する。これにより乾燥パッド37を露出させた後、患者は乾燥パッド37を用いて先に消毒した皮膚の領域を拭い、皮膚に残っている可能性のある余分な殺菌パッド17からの殺菌剤を吸収する。その後、患者は第2の基材36(およびそれと共に、貼り付けられた乾燥パッド37)をハウジング11の下側11bから剥がして第2の基材36を廃棄する。これにより、第1の粘着層15およびアパーチャ14を露出させる。その後、患者は、アパーチャ14を殺菌および乾燥された注射部位上に配置した状態で、ハウジング11を身体の適切な部分に粘着し、本発明の第1の実施形態に関して前述したように開始されるその後の薬剤投与プロセス中に第1の粘着層15がハウジング11を患者に固定する。
組み込まれた殺菌パッド17の上記の利点だけでなく、組み込まれた乾燥パッド37をさらに設ける本発明の第2の実施形態のデバイス30によって、患者は、薬剤投与プロセスを行うために、デバイス30に加えて別個の乾燥材料を集める必要なく追加の準備工程を実行できるようになり、したがって、手順がさらに簡単で迅速になり、患者の手間が少なくなる。また、患者が注射部位から余分な殺菌剤(sterilization agent)を乾燥させることができると、ユーザの皮膚と第1の粘着層15とのしっかりとした接着の確保を助けることができるため有利である。
カバーシート19および第1の基材16上の前述した突出するプルタブ19a、16aだけでなく、第2の基材36は、ユーザが第2の基材36をハウジング11の下側11bから剥がしやすくするためのプルタブ36aを含んでもよい。前述したように、患者による識別を容易にするために、すべてのプルタブ19a、16a、36aに番号を付けても、他の方法で、例えば、数字、文字、記号、または異なる色で印付けてもよい。すべてのプルタブ19a、16a、36aが、デバイス30の周囲に沿って離間していることが好ましい。
本発明の第1の実施形態と同様に、デバイス30の正しい使用を確実にするために、第2の粘着層18は、第3の粘着層38が第1の基材16を第2の基材36に固定する力よりも弱い力で、カバーシート19を第1の基材16に固定しなければならない。同様に、第3の粘着層38は、第1の粘着層15が第2の基材36をハウジング11の下側11bに固定する力よりも弱い力で、第1の基材16を第2の基材36に固定しなければならない。これをいくつかの方法で達成することができる。本発明の第1の配置において、第1の粘着層15の全表面積は、第3の粘着層38の全表面積より大きくてよく、この第3の粘着層38の全表面積はそれ自体第2の粘着層18の全表面積より大きい。例えば、ハウジング11の下側11bの周囲に沿った第1の粘着層15のストリップの幅d15は、第2の基材3の周囲に沿った第3の粘着層38のストリップの幅d38より大きくてよく、この幅d38は、第1の基材16の周囲に沿った第2の粘着層18のストリップの幅d18より大きい。この配置が図5に示され、このことが第1、第3、および第2の粘着層15、38、18のそれぞれの陰影領域からわかる。また、ハウジング11の下側11bは、アパーチャ14により占められた領域を除く表面全体にわたって、第1の粘着層15の大きい領域を含む。代わりに、または加えて、第1、第3、および第2の粘着層15、38、18が異なる粘着剤であって、第1の粘着剤15が第3の粘着剤38より強力であり、第3の粘着剤38が第2の粘着剤18より強力であるようにしてもよい。
乾燥パッド37は圧縮性材料から作られることが好ましく、乾燥パッド37を最初に圧縮状態で第2の基材36上に設けることができ、粘着された第1の基材16により圧縮状態に保持することができる。そのような実施形態において、第1の基材16を取り外したとき、乾燥パッド37が膨張して第2の基材36の表面から外方へ突出する。これにより、使用時に乾燥パッド37が確実に患者の皮膚に十分接触し、患者が第3の粘着層38を皮膚に擦り付けることを避ける。
乾燥パッド37が作られる材料は、殺菌パッド17を使用して先に殺菌された注射部位を汚染しないように殺菌されている。デバイス30の製造中、乾燥パッドを殺菌し、第3の粘着層により第1および第2の基材16、36間に封止して、その後のデバイス30の製造、組立て、輸送、および収納中の乾燥パッド37の汚染を防止する。あるいはまたは加えて、乾燥パッド37に乾燥殺菌剤を含浸させて、乾燥パッド37の無菌状態を維持し、使用時の注射部位の汚染を避けてもよい。これにより、ユーザが十分に清潔でなく殺菌されていない可能性のあるペーパータオル、布、または他の材料を用いて注射部位を乾燥させようとした場合に普通なら生じるはずの、患者による注射部位の汚染を避けるというさらなる利点をもたらすことができる。
第1および第2の実施形態の殺菌パッド17は、殺菌剤を含浸させた吸収材料を含む。しかしながら、本発明は、そのような殺菌パッドの構成に限定されるものではなく、あるいは基材上に形成された固体殺菌材料の層を含んで、パッド全体が殺菌材料を含むようにしてもよい。そのような実施形態は、吸収キャリア材料に所望の殺菌剤を含浸させる別個の工程を必要とすることなく、殺菌材料の層を基材上に形成、例えば印刷することができるため、簡単であり、したがって費用効果の高い製造という利点をもたらすことができる。そのような実施形態は、長期間安定したままであるため保存または収納寿命が長くなるという利点をもたらすこともできる。
本発明の実施形態において、殺菌パッド17および/または殺菌剤は、殺菌された領域を視覚的に識別するように、患者の皮膚に着色するための色素を含んでもよい。これにより、患者が殺菌された皮膚の領域を容易に識別することができるという利点をもたらし、確実にデバイスを薬剤投与プロセスのために正確に位置させることができる。加えて、患者の皮膚上のどの領域が注射部位として最後に使用されたかを示すインジケータとして色素を使用してもよく、色素は、一部の薬剤については勧められない連続した薬剤投与プロセスで患者が同じ部位を使用することを避ける助けとなり得る。使用される色素を、所定期間または所定の皮膚洗浄の回数について、患者の皮膚上で見え続けるように構成して、薬剤投与の特定の頻度に対応させてもよい。例えば、当該薬剤が週1回投与するものである場合、7日または8日間、患者の皮膚を着色するように色素を設計してもよい。このように、最も直近の注射部位のみが患者に見え、どの注射部位が最後に使用されたかに関する混乱を避ける。
殺菌パッド17に含浸させる殺菌剤は、場合により、殺菌される皮膚の領域に局所的に麻酔をかけるための局所麻酔薬を含んでもよい。これにより、普通なら針を患者の皮膚に注射することによって生じるはずの痛みまたは不快感を減らすことができ有利である。
本発明の第2の実施形態において、殺菌パッド17を乾燥パッド37上に設けて、乾燥パッド37が殺菌パッド17とハウジング11との間に置かれるようにする。しかしながら、乾燥パッドを殺菌パッドとは別に設けてもよいことが本発明の範囲内に含まれる。例えば、本発明のそのような代替の第3の実施形態50が図8に示され、これは、本発明の第1の実施形態と同様である。しかしながら、第3の実施形態のデバイス50は、ハウジングの別の面、例えば図示したように端面に設けられた追加の乾燥パッド57を含むが、これをハウジングの任意の他の面に設けてもよい。そのような実施形態において、乾燥パッド57を基材(図示せず)に設けても、図8に示すようにハウジングに直接設けてもよい。基材に設ける場合、乾燥パッド57はハウジングから取り外し可能であってよい。さらに、乾燥パッドは、使用前に乾燥パッドを覆うためのそれ自体のカバーシート59を含んでもよく、これにより、乾燥パッド57の無菌状態を維持することができ有利である。カバーシート59は、カバーシート59の除去を容易にするためのタブ59aを含んでよい。
本発明のさらなる代替の第4の実施形態のデバイス70は、第1の実施形態のデバイス10と同様であり得るが、殺菌パッド71および乾燥パッド72をハウジングの下側11bに並べてそれぞれの基材73、74に設けることができる。各基材73、74は、ハウジング11の下側11bからの基材73、74の取り外しを容易にするためのタブ73a、74aを含んでよい。各基材73、74は、それ自体のカバーシート75、76を含んでよい。各カバーシート75、76は、基材73、74からのカバーシート75、76の取り外しを容易にするためのタブ75a、76aを含んでよい。両基材は、殺菌/乾燥パッド71、72の周りに粘着層18を含んで、使用前にカバーシート75、76を定位置に保持することができる。患者は最初に殺菌パッド71のカバーシート75を除去し、殺菌パッド71を使用して注射部位を殺菌した後、殺菌パッド基材73をハウジング11から除去することができる。その後、患者は乾燥パッド72のカバーシート76を除去して殺菌された注射部位を乾燥させた後、乾燥パッド72をハウジング11から除去し、ハウジング11を、露出された粘着層が下側11bにある状態にして、患者の皮膚に貼り付け、薬剤投与プロセスを開始する。
第1および第2の実施形態において、第1の粘着層15を設けて、第1または第2の基材16、36をハウジング11に固定するだけでなく、その後、デバイス10、30の使用時にハウジング11を患者の皮膚に固定する。これを達成するために、第1の粘着剤は、第1または第2の基材16、36をハウジング11に保持するよりも、ハウジングを患者の皮膚にしっかりと貼り付けることができる。これは、第1または第2の基材16、36を第1の粘着層に取り外し可能に接着する材料、例えばパラフィン紙またはプラスチック材料から作ることにより達成することができる。あるいは、殺菌パッド17または乾燥パッド37から離れた側である第1または第2の基材16、36の裏当てを、第1の粘着層に取り外し可能に接着する材料、例えばパラフィン紙またはプラスチックコーティングで被覆してもよい。
上記にかかわらず、本発明は、使用時にハウジング11の接触面/下側11bの第1の粘着層15がハウジング11を患者の皮膚に固定し、かつ第1または第2の基材を16、36ハウジング11に取り外し可能に粘着する実施形態に限定されるものではない。本発明のさらに例示的な実施形態において、ハウジングの下側11bは、第1または第2の基材16、36をハウジング11に粘着するように機能し得る第1の粘着層を備えてもよく、薬剤投与プロセス中にハウジング11を専らまたは主に患者の皮膚に貼り付ける別個の皮膚粘着層をさらに含んでもよい。そのような例示的な実施形態において、第1の粘着層をハウジング11の下側11bの周囲に沿ったストリップに設けてもよく、皮膚粘着層を第1の粘着層の周囲内でハウジング11の下側11bにパッチとして設けてもよい。そのような例示的な実施形態において、第1または第2の基材16、36の裏当て面が、異なる材料の領域または異なる被覆を含んで、異なる強度で第1の粘着層および皮膚粘着層に粘着してもよい。あるいはまたは加えて、第1の粘着層および第2の粘着層の粘着剤が、異なる特性を有して異なっていてもよい。例えば、皮膚粘着層は、第1または第2の基材に接着する強度よりも強い強度で皮膚に接着してもよく、かつ/または第1の粘着層は、皮膚に接着するよりも強い強度で第1および第2の基材に接着してもよい。そのような実施形態において、カバーシートが第1の基材に粘着されるよりも強力に、第1の基材が、第1の粘着層により、または第1の粘着層および皮膚粘着層の両方によりハウジングに粘着されることが有利となり得る。同様に、乾燥パッド含む実施形態において、第1の基材が第2の基材に粘着されるよりも強力に、第2の基材が、第1の粘着層により、または第1の粘着層および皮膚粘着層の両方によりハウジングに粘着されること、ならびにカバーシートが第1の基材に粘着されるよりも強力に第1の基材が第2の基材に粘着されることが有利となり得る。
図1〜図6において、第1、第2、および第3の粘着層15、18、38、第1および第2の基材16、36、殺菌パッド17、乾燥パッド37、ならびにカバーシート19の厚さは原寸に比例して示されておらず、図示を明確にするために誇張されていることを理解されたい。
ハウジング11の下側11bは略平面の接触面として示されているが、本発明はそのような構成に限定されず、代替実施形態において、接触面は湾曲していても他の形の輪郭であってもよい。そのような実施形態は、デバイス10を固定することになっている患者の身体、例えば太腿または胴の輪郭にデバイス10をフィットさせることができるため有利となり得る。
第1および第2の基材16、36がハウジング11の下側11bの全表面積を覆うものとして図示され説明されているが、本発明はそのような構成に限定されるものではなく、あるいは第1および第2の基材16、36がハウジング11の下側11bを部分的にのみ覆ってもよい。
上記に加えて、本発明は、殺菌パッドおよび/または乾燥パッドがハウジング11の下側11b、または患者の皮膚に固定されることになっているデバイスの表面に設けられるデバイスに限定されない。デバイスは、本発明の範囲内のデバイスの任意の他の表面、例えば側面または上面に殺菌パッドおよび/または乾燥パッドを含んでもよい。
本発明のデバイス10、30、50、70は、使用前に殺菌パッド17、71および/または乾燥パッド57、72を覆うためのカバーシート19、59、75、76を有するものとして説明されている。しかしながら、本発明は、そのようなカバーシート19、59、75、76を含むデバイスに限定されず、他の構成のカバーを設けて、使用前に殺菌パッド17、71および/または乾燥パッド37、57、72を覆ってもよい。デバイスを包装(図示せず)内に設け、基材および/またはハウジング表面を包装の表面に固定することにより、殺菌パッド17、71および/または乾燥パッド37、57、72を覆ってもよい。これにより、包装の表面は、カバーシートの代わりにカバー層として機能し得る。その後、患者がデバイス10、30、50、70を包装から除去すると、殺菌パッド17、71および/または乾燥パッド37、57、72が露出されて患者が使用する準備が整う。これにより、別個のカバーシート除去工程が必要ないため、患者のプロセスの工程数を減らすことができ有利である。これは、患者にとって使いやすさという利点をもたらす。別個のカバーシート19、59、75、76を必要とすることなく、包装がカバーシートとしても機能するため、無駄を減らすことにもなる。
図示し説明した本発明のデバイス10、30、50、70において、殺菌パッド17、71は、殺菌剤が含浸されるものとして説明されている。しかしながら、本発明は、予め含浸された殺菌パッドを有するそのようなデバイスに限定されず、本発明の範囲内の代替実施形態において、殺菌パッドは吸収パッドを含んでもよく、使用前に患者がこの吸収パッドを、例えば殺菌剤に浸漬させる、または殺菌剤源に浸すもしくは押し当てることによって、吸収パッドに殺菌剤を含浸させることができる。そのような殺菌剤源は、殺菌材料の容器を含んでよく、殺菌材料は、パッドを殺菌材料に擦り付けることによって殺菌パッドに添加される(load)液体またはゲルまたは固体殺菌剤であってよい。そのような殺菌剤源は、例えばデバイスの包装内にデバイス10、30、50、70と共に提供されてもよい。あるいは、容器をデバイスのカバーシートに形成するか、またはカバーシートに接着してもよい。
本発明の薬剤送達デバイスの発明概念をLVDに適用してもよいことを理解されたい。しかしながら、本発明は、この特定のタイプの薬剤送達デバイスに限定されるものではなく、本発明は、例えば、パッチポンプおよび輸液ポンプなどの、患者の皮膚に接触して機能する代わりのタイプの薬剤送達デバイスを包含するものである。
本発明の薬剤送達デバイスは、患者の皮膚を通して身体に薬剤を注射するプロセスの一部として患者の皮膚を穿孔するための針を含む。そのようなデバイスは、例えば、薬剤が患者の組織に送達されるパッチポンプおよび輸液デバイスを含む。本発明の実施形態は、特にボーラス注射に適しているが、代わりに注射デバイスは基本的なタイプのものであってもよい。
本発明の範囲内に含まれるデバイスは、薬剤がそれを通して送達される中空針、またはトロカールデバイス内にあるような中実針を含んでよく、このトロカールデバイスでは、中実針または閉塞具が皮膚を穿孔し、続いて中空チューブまたはカニューレが穿孔された孔に挿入された後、それを通して薬剤が患者に送達される。トロカールデバイスでは、薬剤送達中に中実針または閉塞具が患者の皮膚内にとどまらない。
本発明の実施形態の薬剤送達機構は、任意の適切な形を取ることができる。薬剤送達機構は、例えば、針13をユーザに挿入する電気モータおよび歯車機構を含んでよい。あるいは、薬剤送達機構は機械ばねに基づく機構であってよい。この場合、針13を駆動するエネルギー源は予圧ばねであり、針挿入機構駆動装置はばね解放機構であってよく、このばね解放機構は、ばねからの力を針挿入機構に伝えることによって針13を患者に挿入する。
針を挿入するための挿入機構は、任意の適切な形を取ることができる。挿入機構は機械ばねに基づく機構であってよい。あるいは、挿入要素機構は、例えば、挿入要素をユーザに挿入する電気モータおよび歯車機構を含んでよい。本発明の代替実施形態において、針挿入機構駆動装置はガスまたは流体圧動作機構であってよく、この場合、針駆動エネルギー源は、加圧ガスのリザーバであるか、または2つ以上の化学物質を共に混合してガスまたは流体圧を生じさせる化学系である。
殺菌パッド17は、適切な殺菌剤が含浸された吸収パッドを含んでよい。例示的な殺菌剤としては、限定されないが、イソプロパノール、イソプロピルアルコール、溶解(dissolution)としてのイソプロピルアルコール、例えば70%溶解としてのイソプロピルアルコール、ヨードチンキ、過酸化水素、クロラミンT、アルコール(例えばエタノール、1−プロパノール)、フェノール、窒素化合物、クロルヘキシジン、および/または洗浄剤が挙げられる。
乾燥パッド37は、脱脂綿またはガーゼを含み得る乾燥吸収材料を含んでよい。しかしながら、乾燥パッド37は任意の適切な材料を含んでよく、限定されないが、ガーゼスポンジ、綿、セルロース、レーヨン、または他の多孔フィルタ材料を含んでよい。
デバイスは薬剤を皮下に送達するように構成されるが、代わりに、デバイスを、例えば極微針を使用する皮内注射または他の方法の注射用に構成してもよい。
ボーラス注射デバイスは、大量デバイス(LVD)として知られるタイプのものであってよい。LVD注射デバイスは、比較的大きい用量の薬剤、特に少なくとも1ml、一般的に最大2.5ml、場合によって最大10mlを投薬するように構成される。
ボーラス注射デバイスは、それぞれの薬剤のボーラスを送達して、ある量の薬剤を所定時間内に患者の身体に届けるように構成される。しかしながら、注射速度は重要でなくてよく、すなわち厳しい制御は必要でなくてよい。しかしながら、送達部位の周囲の組織への損傷を避けるために、送達速度に(生理学的)上限があってもよい。薬剤のボーラス用量を送達するためにかかる時間は、薬剤の分量(量)、薬剤の粘性、および注射デバイスを使用することになっている注射部位の性質を含むいくつかの要因に応じて数分から数時間であってよい。
ユーザまたは医療従事者の観点から、患者のライフスタイルおよびスケジュールに及ぼす影響が最小限になるように注射デバイスを構成して、注射と注射の合間には患者が自分の疾患についてほとんど思い出さないようにすることが望ましい。通常、療法のための治療スケジュールは断続的であり、すなわち、週に1回の注射、2週に1回の注射、または月に1回の注射である。したがって、通常、患者は自分の疾患を扱う日常的作業がないため、必要な注射を行う日常的作業/経験がわずかとなる。したがって、患者による操作を簡単にするための注射デバイスの構成が非常に望ましい。
注射デバイスの構成は、ボーラス動作のためのものであるため、基本的動作のために使用される注射デバイスと比較して非常に異なる。また、注射デバイスの使用も非常に異なる。例えば、基本的なタイプのインスリンポンプは、一般に、プログラム可能な送達速度プロファイル、ボーラス計算器などの多くの高度な糖尿病専用の機能を含むため、比較的高価である。さらに、輸液セットを介して身体に連結することにより、療法の進行中に患者が自分の視界内でポンプを取り扱い、操作することができる。さらに、糖尿病患者は、通常、輸液セットの設定、ポンプの連結および操作、ならびにシャワーを浴びるような状況のためにポンプを一時的に連結解除してポンプを水に晒さないようにする際に日常的作業を有する。これに対して、前述したボーラス注射デバイスは比較的簡単で安価なデバイスである。ボーラス注射デバイスを、薬剤を再充填できず、複雑さおよび費用をさらに低減させた単回使用デバイスとして提供してもよい。
本明細書で使用される「薬物」または「薬剤」という用語は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味する。一部の実施形態において、薬学的に活性な化合物は最大1500Daの分子量を有し得、またはペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA分子、RNA分子、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモン、もしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物を含み得る。様々なタイプまたはサブタイプの化合物も考えられる。例えば、RNAはRNAi、siRNA、またはmiRNAを含み得る。他の実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病もしくは糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈もしくは肺血栓塞栓症等の血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症、または関節リウマチの治療または予防に有用であり得る。一部の実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症の治療または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み得る。また、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)またはその類似体もしくは誘導体、エキセンジン−3もしくはエキセンジン−4、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含み得る。
インスリン類似体としては、例えば、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;ヒトインスリンであり、B28位のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValもしくはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられてもよいインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28〜B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンが挙げられる。
インスリン誘導体としては、例えば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンが挙げられる。
エキセンジン−4としては、例えばエキセンジン−4(1−39)が挙げられる。
ホルモンとしては、例えば、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモン、または調節活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、例えばゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンが挙げられる。
多糖類としては、例えば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはその誘導体、または上述の多糖類の硫酸化、例えばポリ硫酸化形態、および/またはその薬学的に許容される塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。
抗体としては、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られる略球状血漿タンパク質(約150kDa)が挙げられる。球状血漿タンパク質は、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するため、糖タンパク質と分類してもよい。各抗体の基本的な機能単位は、免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体は、IgAのような2つのIg単位を有する二量体、硬骨IgMなどの4つのIg単位を有する四量体、または哺乳類IgMなどの5つのIg単位を有する五量体である。
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖;システイン残基間のジスルフィド結合により結合された2本の重鎖および2本の軽鎖を含み得る「Y」字形分子である。各重鎖は、約440アミノ酸長であり;各軽鎖は、約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖は各々、これらのフォールディングを安定化する鎖間ジスルフィド結合を含み得る。各鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは、通常、約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に応じて異なるカテゴリー(例えば、可変またはV、および定常またはC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインとその他の電荷アミノ酸との相互作用により共に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリンフォールドを有する。
α、δ、ε、γおよびμで指定される5つのタイプの哺乳類Ig重鎖がある。存在する重鎖のタイプは、抗体のアイソタイプを規定し;これらの鎖は、それぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
異なる重鎖は、サイズおよび組成が異なり;αおよびγは約450個のアミノ酸を、δは約500個のアミノ酸を含み、一方、μおよびεは約550個のアミノ酸を含む。各重鎖は、2つの領域、定常領域(CH)および可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体においては本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体においては異なる。重鎖γ、αおよびδは、3つのタンデムIgドメインおよび追加の可撓性のためのヒンジ領域から構成された定常領域を有し;重鎖μおよびεは、4個の免疫グロブリンドメインから構成された定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞により産生された抗体において異なるが、単一のB細胞またはB細胞クローンにより産生されたすべての抗体については同一である。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
哺乳類では、λおよびκで指定される2つのタイプの免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続したドメイン:1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を含み;哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλのうちの1つのタイプのみ存在する。
抗体の全体構造は類似し得るが、所与の抗体の固有の特性は、詳細に前述したように、可変領域(V)により決定される。より具体的には、多くの場合、軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(VH)について3つの可変ループが、抗原との結合、すなわち、その抗原の特異性の原因となる。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHおよびVLドメインからのCDRが抗原結合部位に寄与するため、通常、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合わせであり、いずれか単独ではない。
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を呈する。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。各々が1つの完全なL鎖およびH鎖の約半分を含む2つの同一アミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同様であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両重鎖の半分のカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシンの消化は、Fab片およびH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントを生成する。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断され得る。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、単一鎖可変フラグメント(scFv)を形成するために共に縮合可能である。
薬学的に許容される塩は、例えば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、例えばHCl塩またはHBr塩である。塩基性塩は、例えばアルカリまたはアルカリ土類のイオン、例えばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+から選択されるカチオン、もしくはアンモニウムイオンを有する塩である。薬学的に許容される溶媒和物は、例えば水和物である。
一部の実施形態において、様々な粘性の薬剤を注射することができる。例えば、粘性は約3〜約50cPであってよい。他の実施形態において、粘性は約3cP未満または約50cP超であってもよい。注射は、薬剤を患者の体内の皮下、筋肉内、または経皮位置へ送達することをさらに含んでよい。薬剤は、液体、ゲル、スラリ、懸濁液、粒子、粉末、または他のタイプの形であってよい。
一般的な注射量は約1mL〜約10mLであり得る。注射速度は約0.5mL/分、約0.2mL/分、または約0.1mL/分であり得る。そのような注射プロファイルは、流量が概ね一定で、期間が概ね連続し、または概ね一定であり、かつ概ね連続し得る。これらの注射を投与の単回工程で行ってもよい。そのような注射プロファイルをボーラス注射と呼んでもよい。
そのような薬剤と共に機能する送達デバイスは、薬剤を患者に送達するように構成された針、カニューレ、または他の注射要素を使用することができる。そのような注射要素は、例えば、27G以下の外寸または外径を有する。さらに、注射要素、剛性であっても可撓性であってもよく、これをある範囲の1つまたはそれ以上の材料を使用して形成してもよい。一部の実施形態において、注射要素は2つ以上の部材を含んでもよい。例えば、剛性トロカールが可撓性カニューレと共に動作してもよい。最初に、トロカールとカニューレとが共に動いて皮膚を穿孔することができる。その後、カニューレが少なくとも部分的に標的組織内に残ったままトロカールが後退することができる。後で、カニューレが別個に送達デバイス内へ後退することができる。