本発明者らは、新たな自己抗原、トロンボスポンジンI型ドメイン含有7A(THSD7A)タンパク質に対して反応性の、特発性膜性腎症に罹患している患者における自己抗体の存在を強調した。
これらの自己抗体は、抗PLA2R1自己抗体を提示しない特発性膜性腎症に罹患している患者の約15%の血清中に存在する。これは、膜性腎症に罹患している患者の総集団の約5〜10%を示す。
本発明者らは、患者において見出される抗THSD7A自己抗体の大部分が、IgG4サブクラスのものであることを示した;サブクラスIgG3、IgG2およびIgG1もまた見出される。
定義
用語「膜性腎症」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、成人ネフローゼ症候群のよくある原因である腎疾患を指す。これは、全身性エリテマトーデス、B型肝炎または梅毒(...)などの二次的要因によって引き起こされる二次性膜性腎症、および「特発性膜性腎症」とも呼ばれる原発性自己免疫性膜性腎症を包含する。「特発性膜性腎症」は、糸球体を標的化する自己免疫疾患であるとみなされ、主要な公知の標的抗原は自己抗原PLA2R1である。
本明細書に開示される全ての疾患、障害および症状は、本願の出願時における教科書によって証明されるような、当技術分野で受容された一般的意味を有する。
本明細書で使用する場合、用語「膜性腎症を示す」とは、プロセスまたは事象に適用される場合、そのプロセスまたは事象が、健康な被験体および/または膜性腎症以外の疾患に罹患している患者においてよりも、膜性腎症に罹った患者において有意により頻繁に見出されるような、膜性腎症の診断であるプロセスまたは事象を指す。
用語「バイオマーカー」および「マーカー」は、本明細書で相互交換可能に使用される。これらは、生物学的プロセス、生物学的事象および/または病的状態の特徴的指標である物質を指す。本発明によれば、THSD7Aタンパク質(またはTHSD7Aポリペプチド)およびその任意の抗体結合性断片ならびに抗THSD7A自己抗体は、膜性腎症、特に特発性膜性腎症のバイオマーカーである。
用語「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」は、本明細書で相互交換可能に使用され、それらの中性(非荷電)形態でのまたは塩として、および、未改変の、またはグリコシル化、側鎖酸化、リン酸化、シトルリン化もしくはトランスグルタミネーション(transglutamination)によって改変された、種々の長さのアミノ酸配列を指す。ある特定の実施形態では、このアミノ酸配列は、全長ネイティブタンパク質である。他の実施形態では、このアミノ酸配列は、全長タンパク質のより小さい断片である。なお他の実施形態では、このアミノ酸配列は、アミノ酸側鎖に結合されたさらなる置換基、例えば、N末端もしくはC末端に付加されたタンパク質タグ、グルコシル単位、脂質、またはホスフェートなどの無機イオン、ならびにスルフヒドリル基の酸化などの鎖の化学的変換に関連する改変によって、改変される。したがって、用語「タンパク質」(またはその等価な用語)は、その特定の特性を有意には変化させない改変にさらされる、全長ネイティブタンパク質またはその断片のアミノ酸配列を含むことを意図する。特に、用語「タンパク質」は、タンパク質アイソフォーム、即ち、同じ遺伝子によってコードされるが、そのpIもしくはMWまたは両方が異なるバリアントを包含する。かかるアイソフォームは、そのアミノ酸配列が(例えば、選択的スプライシングまたは限定的なタンパク質分解の結果として)異なり得、または代替法では、差次的翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、アシル化、リン酸化)から生じ得る。
用語THSD7A(トロンボスポンジンI型ドメイン含有7A)は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、有足細胞上で高度に発現され、FAK依存的機構を介した血管新生の間の内皮細胞遊走および糸状仮足形成に関与する、1657アミノ酸のタンパク質を指す。この用語は、天然に存在するTHSD7Aならびにそのバリアントおよび改変形態を含み得る。THSD7Aは、任意の供給源由来であり得るが、典型的には、哺乳動物(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類または他の哺乳動物種)THSD7A、特にヒトTHSD7Aである。例示的なヒトネイティブTHSD7Aアミノ酸配列は、Q9UPZ6(UniProtデータベース)およびNP_056019(GenPeptデータベース、前駆体配列)に提供され、例示的なヒトネイティブTHSD7A mRNA配列は、NM_015204(GenBankデータベース、前駆体配列)に提供される。THSD7Aタンパク質の構造は、図4に示される。
本明細書で使用する場合、表現「THSD7Aの断片」とは、THSD7Aの連続的エレメントを指す。典型的には、この断片は、生物学的に活性な断片である、即ち、THSD7Aの1または複数の機能的特性を含む。
本発明の文脈では、THSD7Aの「断片」は、THSD7Aのアミノ酸配列全体の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%を含む、好ましくは、THSD7Aのアミノ酸配列全体の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%からなる。
好ましくは、この断片は、THSD7Aのアミノ酸配列全体の少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、少なくとも1100、少なくとも1120、少なくとも1250、少なくとも1300、少なくとも1400、少なくとも1500、少なくとも1600、少なくとも1620、少なくとも1640アミノ酸を含む。
好ましくは、この断片は、THSD7Aに対する自己抗体によって認識される。これらの自己抗体と相互作用する断片の能力を決定することは、上記方法または直接的結合を決定するための当技術分野で公知の方法のうちの1つによって、達成され得る。
用語PLA2R1(分泌型ホスホリパーゼA2受容体、PLA2R1としても公知)は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、本明細書で、特に特発性膜性腎症における主要抗原として公知の、PLA2R1遺伝子によってヒトにおいてコードされる受容体、M型ホスホリパーゼA2受容体を指す。例示的なヒトネイティブPLA2R1アミノ酸配列は、NP_001007268(GenPeptデータベース)に提供され、例示的なヒトネイティブTHSD7A mRNA配列は、NM_001007267(GenBankデータベース)に提供される。データベースに対する全ての言及、例えば、本明細書に開示されるコードまたはアクセッション番号は、2014年7月24日にオンラインで入手可能なバージョンを指すことに留意すべきである。
用語「PLA2R1陰性患者」または「THSD7A陰性患者」とは、その血清が、それぞれPLA2R1またはTHSD7Aに対する自己抗体を含まない(または検出可能な自己抗体を少なくとも含まない)、患者を指す。逆に、「PLA2R1陽性患者」または「THSD7A陽性患者」とは、その血清が、それぞれPLA2R1またはTHSD7Aに対する自己抗体を含む、患者を指す。
用語「自己抗体」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、被験体(または患者)の免疫系によって産生される、被験体(または患者)自身のタンパク質(例えば、THSD7A)に対する抗体を指す。自己抗体は、身体の自身の細胞、組織および/または臓器を攻撃して、炎症および細胞傷害を引き起こし得る。用語「THSD7Aを認識する自己抗体」は、「抗THSD7A自己抗体」と相互交換可能に使用され得る。
用語「抗体結合性断片」とは、抗原(例えば、THSD7A)に関して本明細書で使用する場合、抗原が抗体に結合して抗体−抗原複合体を形成する能力を保持する、抗原の断片を指す。特に、本発明の抗原の抗体結合性断片は、膜性腎症に特異的な自己抗体を結合する能力を保持する。抗原の適切な抗体結合性断片は、膜性腎症の特異的自己抗体を結合するそれらの能力を確認するための単純な試験によって、当業者によって同定され得る。
本明細書で使用する場合、用語「患者」とは、膜性腎症、特に特発性膜性腎症に罹り得る、ヒト被験体または別の哺乳動物被験体(例えば、霊長類、イヌ、ネコ、ヤギ、ウマ、ブタ、マウス、ラット、ウサギなど)を指す。好ましくは、この患者はヒト患者である。より好ましくは、この患者は、膜性腎症、特に特発性膜性腎症に罹る疑いがある。
用語「生物学的試料」は、その最も広い意味において本明細書で使用される。生物学的試料は、一般に、被験体について取得される。この被験体は、哺乳動物、好ましくはヒトである。典型的には、生物学的試料は、一般に、患者から取得される。典型的には、この試料は、自己抗体の代表的セットを含む。
試料は、本発明のバイオマーカー(複数可)がアッセイされ得る、任意の生物学的組織または流体のものであり得る。かかる試料には、細胞を含んでいてもいなくてもよい体液、例えば、血液(例えば、全血、血清または血漿)が含まれるがこれらに限定されない。かかる試料には、生検(例えば、腎臓生検)もまた含まれる。用語生物学的試料は、生物学的試料を処理することによって誘導される任意の材料もまた包含する。誘導された材料には、試料から単離された細胞(またはそれらの子孫)または試料から抽出されたタンパク質が含まれるがこれらに限定されない。生物学的試料の処理は、以下のうち1または複数を含み得る:濾過、蒸留、抽出、濃縮、妨害性構成成分の不活性化、試薬の添加など。
本発明の文脈では、用語「対照」とは、被験体を特徴付けるために使用する場合、健康な被験体、または腎疾患以外の特定の疾患を有すると診断された患者を指す。用語「対照試料」とは、健康な被験体から、または腎障害以外の疾患を有すると診断された患者から取得された1つの試料、または1よりも多い試料を指す。
用語「正常な」および「健康な」は、本明細書で相互交換可能に使用される。これらは、腎障害と関連する任意の症状を示しておらず、膜性腎症または他の腎症を有すると診断されていない、被験体を指す。好ましくは、正常な被験体は、腎系に影響を与える薬物療法を受けているわけではなく、任意の他の疾患を有すると診断されていない。ある特定の実施形態では、正常な被験体は、試験すべき生物学的試料が取得された被験体と比較して、類似の性別、年齢および/または肥満度指数を有する。用語「正常な」はまた、健康な被験体から取得された試料を適格とするために、本明細書で使用される。
本明細書で使用する場合、用語「参照レベル」とは、対照から取得された生物学的試料において測定されたレベル、または好ましくは、いくつかの対照から取得された生物学的試料において測定された、いくつかのレベルの平均を指す。
本明細書で使用する場合、用語「診断」、「診断する」または「診断的」は、その最も広い意味で使用され、膜性腎症における診断、予後判定、セラグノシスおよびモニタリングを包含する。
本明細書で使用する場合、用語「処置する」または「処置」とは、膜性腎症、特に特発性膜性腎症と関連する医学的状態と関連する少なくとも1つの有害作用または症状を低減または軽減させることを指す。これらには、抗THSD7A自己抗体の量を低減させること、抗THSD7A自己抗体の産生を低減、阻害もしくは停止させること、免疫系の抑制、ならびにそれらが腎臓糸球体と結合した場合の自己抗体の活性と関連する炎症および分解/損傷を低減させること、が含まれる。
本明細書で使用する場合、用語「セラグノシス」とは、特定の治療から利益を得うる患者の、例えば診断方法による同定を指す。
本明細書で使用する場合、用語「治療有効量」とは、可溶性抗THSD7A自己抗体の量を低減させることができる、活性作用物質(active agent)の量を指す。量の低減は、処置の開始前に血清中に存在する自己抗体の量と比較して、少なくとも10%、特に少なくとも20%、より特には少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも95%の、自己抗体における低減である。
本明細書で使用する場合、用語「医薬組成物」とは、医薬品産業において一般に使用される化学物質および化合物の薬学的に許容されるキャリアと組み合わせた、本発明の活性作用物質(例えば、以下に記載するような、THSD7Aポリペプチドもしくはその断片、このTHSD7Aポリペプチドもしくはその断片を発現するベクター、またはこのTHSD7Aポリペプチドもしくはその断片を発現する宿主細胞)を指す。
抗THSD7A自己抗体の検出に基づく、診断および予後判定方法ならびにキット
診断方法
したがって、本発明の第1の目的は、患者における膜性腎症、より特には特発性膜性腎症を診断および/または予後判定するためのin vitro方法に関し、この方法は、患者から取得された生物学的試料中の、THSD7Aタンパク質を認識する1または複数の自己抗体を検出するステップを含む。
好ましい一実施形態では、この生物学的試料は、血液試料(全血、血清または血漿を含む)である。好ましくは、この生物学的試料は、血清または血漿である。
一実施形態では、患者における膜性腎症、特に特発性膜性腎症を診断および/または予後判定するためのin vitro方法は、
(i)患者から取得された生物学的試料を、THSD7Aポリペプチドまたはその抗体結合性断片と接触させるステップ、および
(ii)形成された任意の抗原−抗体複合体を検出するステップ
を含み、抗原−抗体複合体の存在は膜性腎症を示す。
本発明の一実施形態では、このTHSD7Aポリペプチドまたはその抗体結合性断片は、異なる哺乳動物種、特に、ヒト、非ヒト霊長類、ブタ、ウサギまたはマウス由来であり得る。
一実施形態では、このTHSD7Aポリペプチドは、完全THSD7Aタンパク質であり得る。
本発明の一実施形態では、抗体結合性断片は、THSD7Aのその別個のトロンボスポンジンI型ドメインのうちの1つもしくはいくつかおよび/またはリンカーストーク(linker stalk)によって構成された、THSD7Aの完全細胞外ドメインまたはその断片を含み得る、またはそれからなり得る。
本発明のTHSD7Aポリペプチドおよびより一般には全てのバイオマーカーは、組換え方法を含む任意の適切な方法によって調製され得る。例えば「The Proteins」(第II巻、第3版、H. Neurathら(編)、1976年、Academic Press: New York、NY、105〜237頁)に記載されるようなかかる方法もまた、本発明のバイオマーカーを合成するために使用され得る。
ある特定の実施形態では、本発明のポリペプチド/タンパク質バイオマーカー(例えば、THSD7Aポリペプチド)は、固体キャリアまたは支持体(例えば、ビーズまたはアレイ)上に固定される。したがって、この実施形態では、本発明の方法は、THSD7Aポリペプチドまたはその断片でコーティングされたデバイスの使用を含む。典型的には、このデバイスは、医学的デバイスまたは診断的デバイス、好ましくは診断的デバイスである。
典型的には、本発明の文脈では、このTHSD7Aポリペプチドまたはその断片は、このデバイス上に固定される。
本発明の診断方法は、本発明のバイオマーカー(例えば、THSD7Aポリペプチド)と試験した生物学的試料中に存在する自己抗体との間で形成された抗原−抗体複合体の検出を含む。この検出は、この試料中の自己抗体(即ち、抗THSD7A自己抗体)の存在を示す。
本発明の実施では、かかる複合体の検出は、任意の適切な方法によって実施され得る(例えば、E. HarlowおよびA. Lane、「Antibodies: A Laboratories Manual」、1988年、Cold Spring Harbor Laboratory: Cold Spring Harbor、NYを参照のこと)。
例えば、抗原−抗体複合体の検出は、イムノアッセイを使用して実施され得る。ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(EIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光 免疫沈降およびラインブロットを含む広範なイムノアッセイ技術が、利用可能である。イムノアッセイは、当技術分野で周知であり、当業者の一般的知識の範囲内である。かかるアッセイを実施するための方法ならびに実務上の適用および手順は、教科書中にまとめられている。かかる教科書の例には、P. Tijssen、Practice and theory of enzyme immunoassays、R.H. Burdonおよびv. P.H. Knippenberg編、Elsevier、Amsterdam(1990年)、221〜278頁、ならびに免疫学的検出方法を扱う、Methods in Enzymology、S.P. Colowickら編、Academic Pressの種々の巻、特に70、73、74、84、92および121巻が含まれる。イムノアッセイは、競合的または非競合的であり得る。例えば、サンドイッチアッセイ技術のいくつかのバリエーションのいずれかが、イムノアッセイを実施するために使用され得る。簡潔に述べると、本発明に従う抗THSD7A自己抗体の検出に適用される典型的なサンドイッチアッセイでは、未標識のTHSD7Aポリペプチド(バイオマーカー)が、(上記のように)固体表面上に固定され、試験される生物学的試料は、抗原−抗体複合体の形成を可能にする時間にわたって、かつそのような条件下で、結合したバイオマーカーと接触させられる。好ましくは、抗原−抗体複合体の形成は、非還元条件下で実施される。
インキュベーション後、検出可能な部分で標識された、試験される種由来の抗体を特異的に認識する抗体(例えば、ヒト被験体については抗ヒトIgG)が添加され、任意のバイオマーカー結合した自己抗体と標識された抗体との間での三元複合体の形成を可能にする条件下でインキュベートされる。任意の未結合の材料は洗浄して除かれ、試料中の任意の抗THSD7A自己抗体の存在は、検出可能な部分によって直接的または間接的に生成されるシグナルの観察/検出によって決定される。このアッセイに対するバリエーションには、生物学的試料および標識された抗体の両方が、固定されたTHSD7A−タンパク質/ポリペプチドバイオマーカーに同時に添加される、アッセイが含まれる。
第2の抗体(即ち、上記サンドイッチアッセイにおいて添加される抗体)は、任意の検出可能な部分、即ち、その化学的性質によって、三元複合体の検出、および結果として、バイオマーカー−抗体複合体の検出を可能にする、分析的に同定可能なシグナルを提供する任意の実体で、標識され得る。
検出は、定性的または定量的のいずれかであり得る。抗体などの生物学的分子を標識するための方法は、当技術分野で周知である(例えば、「Affinity Techniques. Enzyme Purification: Part B」、Methods in Enzymol、1974年、第34巻、W.B. JakobyおよびM. Wilneck(編)、Academic Press: New York、NY;ならびにM. WilchekおよびE.A. Bayer、Anal. Biochem.、1988年、171巻:1〜32頁を参照のこと)。イムノアッセイにおいて最も一般的に使用される検出可能な部分は、酵素およびフルオロフォアである。酵素イムノアッセイ(EIAまたはELISA)の場合、酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(perodixase)、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなどは、一般にはグルタルアルデヒドまたはペリオデート(periodate)によって、第2の抗体にコンジュゲートされる。特定の酵素と共に使用される基質は、対応する酵素の加水分解の際の検出可能な色変化の生成のために、一般に選択される。免疫蛍光の場合、この第2の抗体は、その結合能の変更なしに蛍光部分に化学的にカップリングされる。バイオマーカー−抗体複合体への蛍光標識された抗体の結合、および任意の未結合の材料の除去後に、蛍光部分によって生成された蛍光シグナルが検出され、任意選択で定量される。あるいは、この第2の抗体は、放射性同位体、化学発光部分または生物発光部分で標識され得る。
典型的には、本発明の文脈では、このTHSD7Aポリペプチドは、単離されたポリペプチドまたは組換えポリペプチドである。
上述のように、本発明のバイオマーカーは、膜性腎症、より具体的には特発性膜性腎症に罹った患者の集団の血清によって、特に、抗PLA2R1自己抗体を有さない、膜性腎症に罹った患者の血清によって、特異的に認識される。
したがって、本発明の特定の一実施形態では、この患者はPLA2R陰性患者である。
この患者はまた、膜性腎症の全ての通常の原因、例えば、全身性エリテマトーデス、B型肝炎および梅毒について、陰性と試験されている。
現在、PLA2R1陰性患者について、膜性腎症、特に特発性膜性腎症の診断のために利用可能な非侵襲性の方法は存在しない。したがって、これらの患者は、腎臓生検を受ける必要がある。
逆に、本発明の方法は、THSD7A陰性患者において、ならびにTHSD7A陽性患者において、侵襲性の技術を実施する必要性から免れさせることができるので、高度に有望である。
特定の一実施形態では、この患者は、腎臓生検を受けなかった、および/または腎臓生検を受けないことになる。
この方法はまた、抗PLA2R1自己抗体(特許出願WO2010/009457に記載されている)の検出に基づく膜性腎症の診断方法と並行して適用され得、膜性腎症のさらなるバイオマーカー、例えば、二次性膜性腎症のバイオマーカーが評価され得る。かかるバイオマーカーの例には、抗核抗体(ANA)、抗B型肝炎抗原および迅速血漿レアギン(rapid plasma reagin)(RPR)が含まれるがこれらに限定されない。
この診断方法を使用して得られた結果は、臨床データ、膜性腎症の診断のために実施された他の試験、アッセイまたは手順からの結果と比較され得、および/またはそれらと組み合わされ得る。かかる比較および/または組合せは、より洗練された診断を提供することを助け得る。
膜性腎症の予後判定方法およびその処置のモニタリング
本発明者らは、抗THS7A自己抗体の存在およびレベルと、膜性腎症、より具体的には特発性膜性腎症を有する患者の処置の有効性、寛解または再燃との間の相関もまた示した。
膜性腎症、特に特発性膜性腎症に対して使用されている現在の処置は、免疫抑制治療、例えば、シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリン、インフリキシマブ、オマリズマブ、ダクリズマブ、アダリムマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、ナタリズマブ、オマリズマブおよびラパマイシンである。これには、シクロホスファミド、クロラムブシルおよびリツキシマブもまた含まれる。
したがって、本発明のさらなる目的は、患者における膜性腎症、特に特発性膜性腎症に対する処置の有効性を評価するためのin vitro方法に関し、この方法は、
(i)第1の時点において、この第1の時点において患者から取得された試料中の抗THSD7A自己抗体のレベルを決定するステップ、
(ii)第2の時点において、この第2の時点において患者から取得された試料中の抗THSD7A自己抗体のレベルを決定するステップ、および
(iii)これら2つの時点の自己抗体のレベルを比較するステップ
を含み、
・第1の時点と比較した第2の時点における抗THSD7A自己抗体のレベルにおける減少は、その処置が有効であることを示し、および/または
・第1の時点と比較した第2の時点における抗THSD7A自己抗体のレベルにおける増加は、その処置が有効でないことを示す。
本発明の方法は、好ましくは、膜性腎症、特に特発性膜性腎症と診断された、THSD7A陽性患者である患者に対して、実施される。
本発明の実施では、抗THSD7A自己抗体のレベルの決定は、例えば、上記のような、任意の適切な定量方法によって実施され得る(例えば、E. HarlowおよびA. Lane、「Antibodies: A Laboratories Manual」、1988年、Cold Spring Harbor Laboratory: Cold Spring Harbor、NYを参照のこと)。特に、抗THSD7A自己抗体のレベルは、抗原−抗体複合体が形成されるイムノアッセイによって検出され得る。
上で説明したように、この患者は、典型的には、膜性腎症を有すると最初に診断されており、検出可能な量の抗THSD7A自己抗体を有する。例えば免疫抑制治療による処置の際に、経時的に、検出可能な抗THSD7A自己抗体の量における減少が、有効な処置の場合に観察される。
抗THSD7A自己抗体のレベルの、少なくとも10%、特に少なくとも20%、より特には少なくとも30%、なおより特には少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、なおさらにより好ましくは少なくとも80%の減少が観察される場合、この処置は、有効であるとみなされる。これは一般に、予後良好を示す。
理想的な場合には、自己抗体の量は、本明細書に記載される検出方法の検出可能なレベルを下回るはずであり、患者は、この障害について寛解期にあるとみなされる。
逆に、第1の時点と第2の時点との間のレベルが、安定している、または抗THSD7A自己抗体の初期レベルの少なくとも5%、特に少なくとも10%、より特には少なくとも20%、なおより特には少なくとも30%、さらになおより特には少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、なおさらにより好ましくは少なくとも80%もしくはそれ超増加する場合、この処置は、無効であるとみなされる。
いくつかの状況が観察され得る。
一実施形態では、抗THSD7A自己抗体は、第2の時点においては検出されない。これは、この患者が寛解期にあるとみなされることを示す。
別の一実施形態では、安定なレベルの抗THSD7A自己抗体が観察される:第1の時点および第2の時点において取得されたレベルは、同等に類似しており、約1〜5%偏差の間、好ましくは1〜3%偏差の間の偏差で、統計分析分散内にある。これは、安定な疾患を示し、ここで、この処置は、不十分な持続時間のものであった(したがって、臨床的に必要な場合、これは継続されるべきである)または非有効である。
別の一実施形態では、第1の時点と比較して抗THSD7A自己抗体の増加したレベルが、第2の時点において観察され、第1の時点は、検出可能な抗THSD7A自己抗体を有した。これは、疾患の悪化および/または有効な処置の欠如を示す。少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも100%、さらにより好ましくは少なくとも200%の増加は、状況の悪化および予後不良を示すとみなされる。
別の一実施形態では、第1の時点と比較して抗THSD7A自己抗体の増加したレベルが、第2の時点において観察され、第1の時点は、検出可能な抗THSD7A自己抗体を有さなかった。これは、患者が再燃したこと、および膜性腎症が再発したことを示す。
本発明によれば、この第2の時点は、第1の時点よりも後になるように選択される。第1の時点および第2の時点は、例えば、治療戦略に関して、および膜性腎症、特に特発性膜性腎症を発症するリスクがある患者、または膜性腎症、特に特発性膜性腎症に既に罹患しており、再燃のリスクがある患者の追跡のために、戦略的に選択され得る。
例えば、この第1の時点は、患者に対する任意の処置の投与の前であり得、第2の時点は、処置が効果を示すはずの時点で、または処置の終了のときに置かれ得、アッセイは後に反復され得る。
したがって、このアッセイは、数回再現され得る;抗THSD7A自己抗体レベルは、2つよりも多い時点において評価され得る。ステップ(iii)の比較は、第1の時点で、または以前の時点で、行われる必要がある。患者の健康状態の改善および処置の有効性は、抗THSD7A自己抗体レベルの全体的な減少が時間中に観察される場合に示される。逆に、患者の健康状態の低下および処置の無効性は、抗THSD7A自己抗体レベルの減少が時間中に観察されない場合、特に、全体的な増加が観察される場合に、示される。検出不能な抗THSD7A自己抗体の期間の後の、検出可能な抗THSD7A自己抗体の再出現は、再燃を示す。
使用されるアッセイは、異なる時点において患者から収集した全ての試料について同一である。
無効な処置の場合、治療戦略を適応させる必要がある。
上記を考慮して、患者における膜性腎症、特に特発性膜性腎症に対する処置の有効性を評価するためのin vitro方法は、患者における膜性腎症、特に特発性膜性腎症を予後判定するための方法もまた構成する。
キット
別の一態様では、本発明は、本発明に従う方法を実施するために有用な材料を含むキットを提供する。本明細書で提供される診断手順は、診断検査室、実験研究室または従事者によって実施され得る。本発明は、これらの異なる設定において使用され得るキットを提供する。
本発明に従う、生物学的試料中のTHSD7A自己抗体を検出するためおよび/または患者における膜性腎症を診断するための材料および試薬が、キットにおいて一緒にアセンブルされ得る。本発明の各キットは、好ましくは生物学的試料中の自己抗体の検出に適切な量で、本発明の少なくとも1つのタンパク質/ポリペプチドバイオマーカーを含む。
したがって、本発明のさらなる目的は、患者から取得された生物学的試料中のTHSD7Aを認識する自己抗体を検出するためのキットに関し、このキットは、
・THSD7Aポリペプチドまたはその抗体結合性断片、および
・自己抗原、好ましくはTHSD7Aポリペプチドまたはその抗体結合性断片と、生物学的試料中に存在する自己抗体、好ましくはTHSD7Aに対する自己抗体との間で形成された抗原−抗体複合体の検出のための試薬
を含む。
本発明によれば、この試薬は、生物学的試料中に存在する自己抗体を検出することを可能にし、この自己抗体は、膜性腎症を示す抗THSD7A自己抗体である。
本発明の文脈では、このTHSD7Aポリペプチドは、特に、その別個のトロンボスポンジンI型ドメインのうちの1つもしくはいくつかおよび/またはリンカーストークによって構成された、THSD7Aの細胞外ドメインまたはその断片を含む、またはそれからなる、哺乳動物THSD7Aポリペプチド/タンパク質またはその抗体結合性断片、好ましくはヒトTHSD7Aポリペプチド/タンパク質またはその抗体結合性断片である。
本発明の一実施形態では、このTHSD7Aポリペプチドまたはその抗体結合性断片は、異なる哺乳動物種由来、特に、ヒト、非ヒト霊長類、ブタ、ウサギまたはマウス由来であり得る。
一実施形態では、本発明は、患者における膜性腎症を診断するための、上記本発明のキットに関する。
一実施形態では、このキットは、PLA2R1ポリペプチドまたはその抗体結合性断片をさらに含む。
本発明の文脈では、このPLA2R1ポリペプチドは、哺乳動物PLA2R1ポリペプチド/タンパク質およびその抗体結合性断片、好ましくはヒトPLA2R1ポリペプチド/タンパク質およびその抗体結合性断片である。
本発明の一実施形態では、このPLA2R1ポリペプチドまたはその抗体結合性断片は、異なる哺乳動物種由来、特に、ヒト、非ヒト霊長類、ブタ、ウサギまたはマウス由来であり得る。
自己抗原マーカーと生物学的試料中に存在する自己抗体との間で形成された抗原−抗体複合体の検出のための試薬は、(抗THSD7A自己抗体に加えて)膜性腎症を示す抗PLA2R1自己抗体を検出することもまた可能にする。
別の一実施形態では、このキットは、膜性腎症の少なくとも1つのさらなるバイオマーカー、例えば、二次性膜性腎症のバイオマーカー(例えば、ANA、抗B型肝炎抗原、迅速血漿レアギン...)をさらに含み得る。
本発明のキット中に含まれるポリペプチドバイオマーカー(複数可)は、基材表面(例えば、ビーズ、アレイなど)上に固定されていても固定されていなくてもよい。
したがって、一態様では、本発明は、THSD7Aポリペプチドまたはその断片でコーティングされたデバイスにさらに関する。典型的には、このデバイスは、医学的デバイスまたは診断的デバイス、好ましくは診断的デバイスである。
好ましくは、このデバイスは、膜性腎症、特に特発性膜性腎症を診断および/または予後判定するための方法において使用される。典型的には、本発明の文脈では、このTHSD7Aポリペプチドまたはその断片は、このデバイス上に固定される。
ポリペプチド分子を固体表面上に固定させるための方法は、当技術分野で公知である。ポリペプチド/タンパク質は、固体キャリアまたは支持体の表面に、共有結合的にまたは受動的に、のいずれかで結合されることによって、固定され得る。適切なキャリアまたは支持体材料の例には、アガロース、セルロース、ニトロセルロース、デキストラン、Sephadex、Sepharose、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、濾紙、マグネタイト、イオン交換樹脂、ガラス、ポリアミン−メチル−ビニル−エーテル−マレイン酸コポリマー、アミノ酸コポリマー、エチレン−マレイン酸コポリマー、ナイロン、絹などが含まれるがこれらに限定されない。固体キャリアまたは支持体の表面上でのポリペプチド/タンパク質バイオマーカーの固定は、当技術分野で周知の方法を使用した、架橋、共有結合的結合または物理的吸着を含み得る。この固体キャリアまたは支持体は、ビーズ、粒子、マイクロプレートウェル、アレイ、キュベット、チューブ、メンブレンの形態、または本発明に従う診断方法(例えば、イムノアッセイを使用する)を実施するのに適切な任意の他の形状であり得る。
したがって、好ましい実施形態では、本発明のキットは、本明細書で提供される、膜性腎症、特に特発性膜性腎症を診断するためのアレイを含む。あるいは、基材表面が、本発明のバイオマーカーの固定のために、本発明のキット中に含まれ得る。
本発明のキットは、キット中に含まれるペプチドバイオマーカー(例えば、THSD7Aおよび/またはPLA2R)と、生物学的試料中に存在する自己抗体との間で形成されたバイオマーカー−抗体複合体の検出のための少なくとも1つの試薬もまた含む。かかる試薬は、例えば、上記のような、試験される種由来の抗体を特異的に認識する標識された抗体(例えば、ヒト被験体について、抗ヒトIgG、特にIgG4、IgG3、IgG2およびIgG1、好ましくはIgG4)であり得る。
一実施形態では、この標識された抗体は、ヒトIgGの全ての形態を認識する。
別の一実施形態では、この標識された抗体は、特に、ヒトIgG4サブクラスを認識する。
手順に依存して、このキットは、以下のうちの1または複数をさらに含み得る:抽出緩衝液および/または試薬、ブロッキング緩衝液および/または試薬、免疫検出緩衝液および/または試薬、標識化緩衝液および/または試薬、ならびに検出手段。手順の異なるステップを実施するためのこれらの緩衝液および試薬を使用するためのプロトコールが、キット中に含まれ得る。本発明のキット中に含まれる異なる試薬は、固体(例えば、凍結乾燥された)形態または液体形態で供給され得る。本発明のキットは、各個々の緩衝液および/または試薬のための、異なる容器(例えば、バイアル、アンプル、試験管、フラスコまたは瓶)を任意選択で含み得る。各構成成分は、一般に、そのそれぞれの容器中にアリコート化されるとき、または濃縮形態で提供されるときに、適切である。開示された方法の特定のステップを実施するのに適切な他の容器もまた、提供され得る。キットの個々の容器は、好ましくは、商業的販売のために密閉して維持される。
ある特定の実施形態では、キットは、本発明の方法に従って、患者における膜性腎症、特に特発性膜性腎症の診断のためにその構成成分を使用するための指示を含む。本発明の方法に従ってキットを使用するための指示は、患者から取得された生物学的試料を処理するためおよび/もしくは試験を実施するための指示、ならびに/または結果を解釈するための指示を含み得る。キットは、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形態での通知もまた含み得る。
特定の一実施形態では、本発明は、その表面に固定された、本発明の少なくともTHSD7Aポリペプチドバイオマーカーを含む、膜性腎症、特に特発性膜性腎症の診断のためのアレイまたはタンパク質アレイを提供する。好ましくは、このアレイは、1よりも多い本発明のポリペプチド/タンパク質バイオマーカーを含み、したがって、PLA2R陽性患者の検出のために適切なPLA2R1ポリペプチドバイオマーカーもまた含む。このアレイは、膜性腎症の少なくとも1つのさらなるバイオマーカー、例えば、二次性膜性腎症のバイオマーカー(例えば、ANA、抗B型肝炎抗原、迅速血漿レアギン...)をさらに含み得る。
別の特定の一実施形態では、本発明は、膜性腎症、特に特発性膜性腎症の診断のための、タンパク質ビーズ懸濁物アレイ(protein bead suspension array)もまた提供する。このビーズ懸濁物アレイは、1または複数の同定可能な別個の粒子またはビーズの懸濁物を含み、ここで、各ビーズは、そのサイズ、色または蛍光シグネチャーに関するコード化特徴を含み、各ビーズは、本発明のポリペプチド/タンパク質バイオマーカーでコーティングされる。
本発明のなおさらなる目的は、患者における膜性腎症、特に特発性膜性腎症を診断するための、本発明のキット、アレイまたはビーズの使用に関する。
一実施形態では、本発明のキット、アレイまたはビーズは、
・THSD7Aポリペプチドまたはその抗体結合性断片、および
・自己抗原マーカーと、生物学的試料中に存在する自己抗体との間で形成された抗原−抗体複合体の検出のための試薬
を含み、本発明の方法に従って使用され得る。
本発明のキット、アレイまたはビーズは、患者における膜性腎症、特に特発性膜性腎症に対する処置の有効性を評価するため、および患者における膜性腎症、特に特発性膜性腎症を予後判定するためにも、使用され得る。
特定の一実施形態では、この患者は、PLA2R1を認識する自己抗体の存在について以前に評価されており、この自己抗体について陰性である。この患者はまた、膜性腎症の全ての通常の原因、例えば、全身性エリテマトーデス、B型肝炎および梅毒について、陰性と試験されている。
その場合、この患者における膜性腎症を診断するために使用される本発明のキットまたはアレイは、PLA2R1ポリペプチドまたはその抗体結合性断片も、膜性腎症の任意の他のバイオマーカーも含まない。
THSD7A自己抗原の検出に基づく診断方法およびキット
本発明者らは、自己抗原THSD7Aが、膜性腎症に罹った患者、特に、特発性膜性腎症に罹った患者の腎臓において(特に、THSD7A自己抗体を有する患者において)、過剰発現されることを示した。
したがって、本発明のさらなる目的は、膜性腎症、特に特発性膜性腎症のバイオマーカーとしての、THSD7Aの使用に関する。
したがって、本発明は、患者における膜性腎症、特に特発性膜性腎症を診断および/または予後判定するためのin vitro方法に関し、この方法は、患者から取得された生物学的試料中のTHSD7Aレベルを決定するステップを含む。
本発明によれば、患者における膜性腎症、特に特発性膜性腎症を診断および/または予後判定するためのこのin vitro方法は、患者における膜性腎症、特に特発性膜性腎症のモニタリングもまた包含する。
本発明によれば、このTHSD7Aレベルは、THSD7Aタンパク質レベルおよびmRNAタンパク質レベルを包含する。
特定の一実施形態では、この患者はPLA2R陰性患者である。
一実施形態では、この方法はまた、抗PLA2R1自己抗体および膜性腎症のさらなるバイオマーカーの検出に基づく膜性腎症の診断方法と並行して適用され得る。
別の一実施形態では、この生物学的試料は、好ましくは、血液試料または腎臓生検である。
THSD7Aタンパク質レベルの検出に基づく診断方法
一実施形態では、本発明は、患者における膜性腎症、特に特発性膜性腎症を診断および/または予後判定するためのin vitro方法に関し、この方法は、患者から取得された生物学的試料中のTHSD7Aタンパク質のレベルを決定するステップを含む。
特定の一実施形態では、この方法は、
(i)患者から取得された生物学的試料中のTHSD7Aタンパク質のレベルを測定するステップ、
(ii)このレベルを参照レベルと比較するステップ
を含み、参照レベルと比較したTHSD7Aタンパク質の増加したレベルは、膜性腎症、特に特発性膜性腎症を示す。
好ましくは、この生物学的試料は、血液試料または腎臓生検である。
典型的には、THSD7Aタンパク質の増加したレベルは、対照試料において測定されたタンパク質レベルの、少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%の増加に対応する。
THSD7Aレベルは、当技術分野で周知の異なる方法によって測定され得る。
特定の一実施形態では、本発明の方法は、この生物学的試料を、生物学的試料中に存在するバイオマーカー(例えば、THSD7A)と選択的に相互作用することが可能な結合パートナーと接触させるステップを含む。
この結合パートナーは、ポリクローナルまたはモノクローナル、好ましくはモノクローナルであり得る抗体であり得る。別の一実施形態では、この結合パートナーは、アプタマーであり得る。
本発明のポリクローナル抗体またはその断片は、適切な抗原またはエピトープを、例えば、とりわけ、ブタ、ウシ、ウマ、ウサギ、ヤギ、ヒツジおよびマウスから選択される宿主動物に投与することによる、公知の方法に従って惹起され得る。当技術分野で公知の種々のアジュバントが、抗体産生を増強するために使用され得る。本発明を実施する際に有用な抗体は、ポリクローナルであり得るが、モノクローナル抗体が好ましい。
本発明のモノクローナル抗体またはその断片は、培養物中の連続細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技術を使用することによって、調製および単離され得る。産生および単離のための技術には、KohlerおよびMilstein(1975年)によって元々記載されたハイブリドーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Coteら、1983年);およびEBV−ハイブリドーマ技術(Coleら 1985年)が含まれるがこれらに限定されない。
あるいは、単鎖抗体の産生について記載された技術(例えば、米国特許第4,946,778号を参照のこと)は、本発明のバイオマーカーに対する単鎖抗体を産生するために、適応され得る。本発明を実施する際に有用な抗体には、インタクトな抗体分子のペプシン消化によって生成され得るF(ab’)2断片、およびF(ab’)2断片のジスルフィドブリッジを還元することによって生成され得るFab断片が含まれるがこれらに限定されない、抗バイオマーカー断片もまた含まれる。あるいは、Fabおよび/またはscFv発現ライブラリーが、本発明のバイオマーカーに対する所望の特異性を有する断片の迅速な同定を可能にするように、構築され得る。例えば、抗体のファージディスプレイが使用され得る。かかる方法では、単鎖Fv(scFv)またはFab断片は、適切なバクテリオファージ、例えば、M13の表面上で発現される。簡潔に述べると、タンパク質で免疫された適切な宿主、例えばマウスの脾臓細胞が、取り出される。VL鎖およびVH鎖のコード領域が、そのタンパク質に対する所望の抗体を産生している細胞から取得される。次いで、これらのコード領域は、ファージ配列の末端に融合される。ファージが適切なキャリア、例えば細菌中に挿入されると、このファージは、抗体断片をディスプレイする。抗体のファージディスプレイは、当業者に公知のコンビナトリアル方法によっても提供され得る。次いで、ファージによってディスプレイされた抗体断片が、イムノアッセイの一部として使用され得る。VHHもまた使用され得る。
THSD7Aを認識する市販のモノクローナル抗体の例には、Abcam(ab121122)、Novus Biologicals(NBP1−93612)、Abnova Corporation(PAB20021)、Atlas Antibodies(HPA000923)およびSanta Cruz(sc−163453、sc−163455)から取得されるものが含まれる。
別の一実施形態では、結合パートナーは、アプタマーであり得る。アプタマーは、分子認識に関して抗体に対する代替法を提示する分子のクラスである。アプタマーは、高い親和性および特異性で事実上任意のクラスの標的分子を認識する能力を有するオリゴヌクレオチド配列またはオリゴペプチド配列である。かかるリガンドは、Tuerk C. 1997年に記載されるような、ランダム配列ライブラリーのSystematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment(SELEX)を介して単離され得る。このランダム配列ライブラリーは、DNAのコンビナトリアル化学合成によって取得可能である。このライブラリーでは、各メンバーは、独自の配列の、最終的に化学的に改変された線状オリゴマーである。このクラスの分子の可能な改変、使用および利点は、Jayasena S.D.、1999年に概説されている。ペプチドアプタマーは、ツーハイブリッド法によってコンビナトリアルライブラリーから選択されるプラットフォームタンパク質、例えば、E.coliチオレドキシンAによってディスプレイされた、コンフォメーション的に制限された抗体可変領域からなる(Colasら、1996年)。
本発明の結合パートナー、例えば、抗体またはアプタマーは、検出可能な分子または物質、例えば、蛍光分子、放射性分子または当技術分野で公知の任意の他の標識で、標識され得る。一般にシグナルを(直接的または間接的のいずれかで)提供する標識は、当技術分野で公知である。
本明細書で使用する場合、用語「標識された」は、抗体に関して、検出可能な物質、例えば、放射性作用物質またはフルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)またはフィコエリトリン(PE)またはインドシアニン(Cy5))を抗体またはアプタマーにカップリングさせる(即ち、物理的に連結する(slinking))ことによる、抗体またはアプタマーの直接的標識化、ならびに検出可能な物質との反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識化を包含する意図である。本発明の抗体またはアプタマーは、当技術分野で公知の任意の方法によって、放射性分子で標識され得る。例えば、放射性分子には、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えば、I123、I124、InI11、Re186、Re188が含まれるがこれらに限定されない。
上述のアッセイは、固体支持体への結合パートナー(即ち、抗体またはアプタマー)の結合を含み得る。本発明の実施において使用され得る固体支持体には、基材、例えば、ニトロセルロース(例えば、メンブレンまたはマイクロタイターウェル形態で);ポリ塩化ビニル(例えば、シートまたはマイクロタイターウェル);ポリスチレンラテックス(例えば、ビーズまたはマイクロタイタープレート);フッ化ポリビニリデン(polyvinylidine fluoride);ジアゾ化紙;ナイロンメンブレン;活性化されたビーズ、磁気的に応答性のビーズなどが含まれる。
本発明のバイオマーカーは、競合、直接的反応またはサンドイッチ型アッセイなどのイムノアッセイを含む、標準的な免疫診断的技術を使用することによって検出され得る。かかるアッセイには、凝集試験;酵素標識されたおよび酵素媒介性のイムノアッセイ、例えばELISA;ビオチン/アビジン型アッセイ;ラジオイムノアッセイ;免疫電気泳動;免疫沈降が含まれるがこれらに限定されない。
より特には、ELISA法が使用され得、このとき、マイクロタイタープレートのウェルは、本発明のバイオマーカーに対する抗体のセットでコーティングされる。次いで、このバイオマーカー(複数可)を含むまたは含むと疑われる生物学的試料が、コーティングされたウェルに添加される。抗体−抗原複合体の形成を可能にするのに十分なインキュベーションの期間の後、このプレート(複数可)は、未結合の部分を除去するために洗浄され得、検出可能に標識された二次結合分子が添加され得る。この二次結合分子は、任意の捕捉された試料マーカータンパク質と反応させられ、プレートが洗浄され、二次結合分子の存在が、当技術分野で周知の方法を使用して検出される。
あるいは、免疫組織化学検査(IHC)法が使用され得る。IHCは、具体的には、試料または組織標本中の標的をin situで検出する方法を提供する。試料の全体的な細胞の完全性は、IHCにおいて維持され、したがって、目的の標的の存在および位置の両方の検出を可能にする。典型的には、試料は、ホルマリンで固定され、パラフィン中に包埋され、染色、および光学顕微鏡法による引き続く検査のために、切片へとカットされる。IHCの現在の方法は、直接的標識化または二次抗体ベースのもしくはハプテンベースの標識化のいずれかを使用する。公知のIHCシステムの例には、例えば、EnVision(商標)(DakoCytomation)、Powervision(登録商標)(Immunovision、Springdale、AZ)、NBA(商標)キット(Zymed Laboratories Inc.、South San Francisco、CA)、HistoFine(登録商標)(Nichirei Corp、Tokyo、Japan)が含まれる。
特定の一実施形態では、組織切片(即ち、腎臓生検試料)は、本発明のバイオマーカーを認識する抗体(例えば、抗THSD7A抗体)とのインキュベーション後に、スライドまたは他の支持体上にマウントされ得る。次いで、適切な固体支持体上にマウントされた試料における顕微鏡検査が、実施され得る。顕微鏡写真の作成のために、試料を含む切片は、本発明のバイオマーカー(例えば、THSD7Aタンパク質)の存在を選択的染色によって強調するために、ガラススライドまたは他の平面支持体上にマウントされ得る。
したがって、IHC試料には、例えば以下が含まれ得る:(a)新鮮な組織またはこの組織から単離された細胞を含む調製物、(b)固定および包埋された組織または細胞試料、ならびに(c)組織または細胞試料中の本発明の検出バイオマーカー(例えば、THSD7Aタンパク質)。一部の実施形態では、IHC染色手順は、例えば以下のステップを含み得る:組織をカットおよびトリミングするステップ、固定、脱水、パラフィン浸透、薄い切片にカットするステップ、ガラススライド上にマウントするステップ、ベーキングするステップ、脱パラフィン処理、再水和、抗原回復、ブロッキングステップ、本発明のバイオマーカーを認識する一次抗体を適用するステップ、洗浄するステップ、二次抗体(任意選択で、適切な検出可能な標識にカップリングされている)を適用するステップ、洗浄するステップ、対比染色、および顕微鏡試験。
バイオマーカー(複数可)を(イムノアッセイベースの方法を用いてまたは用いずに)検出することには、化合物の分離:化合物の分子量に基づく遠心分離;質量および電荷に基づく電気泳動;疎水性に基づくHPLC;サイズに基づくサイズ排除クロマトグラフィー;および使用される特定の固相に対する化合物の親和性に基づく固相親和性もまた、含まれ得る。一旦分離されると、本発明のバイオマーカーは、既知の「分離プロファイル」、例えば、その化合物についての、標準的な技術を使用して測定される保持時間に基づいて、同定され得る。
あるいは、分離された化合物は、例えば、特に、バイオマーカー(複数可)の断片またはペプチドが測定される場合、質量分析計によって、検出および測定され得る。
別の一態様では、上記のように、本発明は、本発明に従う方法を実施するために有用な材料を含むキットを提供する。本明細書に提供される診断手順は、診断検査室、実験研究室または従事者によって実施され得る。本発明は、これらの異なる設定において使用され得るキットを提供する。
本発明に従う、生物学的試料中のTHSD7Aレベルを(mRNAまたはタンパク質レベルで)検出するためおよび/または患者における膜性腎症を診断するための材料および試薬が、キットにおいて一緒にアセンブルされ得る。
一実施形態では、本発明のキットは、少なくとも、THSD7Aを認識する抗体またはTHSD7Aの他の結合パートナーを含む。
特定の一実施形態では、このキットは、少なくとも、PLA2R1を認識する抗体またはPLA2R1の他の結合パートナーをさらに含み得る。
別の特定の一実施形態では、このキットは、膜性腎症の別のバイオマーカー、例えば、二次性膜性腎症のバイオマーカー(例えば、ANA、抗B型肝炎抗原、迅速血漿レアギン...)を認識する少なくとも1つの別の抗体(または別の結合パートナー)もまた含み得る。
この結合パートナーは、より容易な検出のためにタグ化され得る。これは、基材表面(例えば、ビーズ、アレイなど)上に固定されていても固定されていなくてもよい。例えば、本発明のキットは、本明細書で提供されるような、膜性腎症を診断するためのアレイを含み得る。あるいは、基材表面(例えば、メンブレン)が、結合パートナーの固定(例えば、電気泳動およびメンブレンへの移行を介した)のために、本発明のキット中に含まれ得る。
さらに、本発明のキットは、一般に、キット中に含まれる結合パートナーと、本発明のバイオマーカーとの間の複合体の検出のための、少なくとも1つの試薬もまた含む。
手順に依存して、このキットは、以下のうちの1または複数をさらに含み得る:抽出緩衝液および/または試薬、ウエスタンブロッティング緩衝液および/または試薬、ならびに検出手段。手順の異なるステップを実施するためのこれらの緩衝液および試薬を使用するためのプロトコールが、キット中に含まれ得る。
本発明のキット中に含まれる異なる試薬は、固体(例えば、凍結乾燥された)形態または液体形態で供給され得る。本発明のキットは、各個々の緩衝液および/または試薬のための、異なる容器(例えば、バイアル、アンプル、試験管、フラスコまたは瓶)を任意選択で含み得る。各構成成分は、一般に、そのそれぞれの容器中にアリコート化されるとき、または濃縮形態で提供されるときに、適切である。開示された方法の特定のステップを実施するのに適切な他の容器もまた、提供され得る。キットの個々の容器は、好ましくは、商業的販売のために密閉して維持される。ある特定の実施形態では、キットは、本発明の方法に従って、患者における膜性腎症の診断、予後判定またはモニタリングのためにその構成成分を使用するための指示を含む。本発明の方法に従ってキットを使用するための指示は、被験体から取得された生物学的試料を処理するためおよび/もしくは試験を実施するための指示、または結果を解釈するための指示を含み得る。キットは、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形態での通知もまた含み得る。
THSD7A mRNAレベルの検出に基づく診断方法
別の一実施形態では、本発明は、患者における膜性腎症、特に特発性膜性腎症を診断および/または予後判定するためのin vitro方法に関し、この方法は、患者から取得された生物学的試料中のTHSD7A発現のレベルを決定するステップを含む。
特定の一実施形態では、この方法は、
(i)患者から取得された生物学的試料中のTHSD7A mRNAのレベルを測定するステップ、
(ii)このレベルを参照レベルと比較するステップ
を含み、参照レベルと比較したTHSD7A mRNAの増加したレベルは、膜性腎症、特に特発性膜性腎症を示す。
好ましくは、この生物学的試料は、血液試料または腎臓生検である。
典型的には、THSD7A mRNAの増加したレベルは、対照試料において測定されたmRNAレベルの、少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%の増加に対応する。
mRNAの量を決定するための方法は、当技術分野で周知である。例えば、試料(例えば、患者から調製された細胞または組織)中に含まれる核酸は、最初に、標準的な方法に従って、例えば、溶解酵素もしくは化学的溶液を使用して抽出され、または製造業者の指示に従って核酸結合性樹脂によって抽出される。次いで、抽出されたmRNAは、ハイブリダイゼーション(例えば、ノーザンブロット分析)および/または増幅(例えば、RT−PCR)によって検出される。好ましい一実施形態では、THSD7AのmRNAレベルは、RT−PCR、好ましくは定量的または半定量的RT−PCR、さらにより好ましくはリアルタイム定量的または半定量的RT−PCRによって決定される。
増幅の他の方法には、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写媒介増幅(TMA)、鎖置換増幅(SDA)および核酸配列ベースの増幅(NASBA)が含まれる。
少なくとも10ヌクレオチドを有し、本明細書の目的のmRNAに対して配列相補性または相同性を示す核酸は、ハイブリダイゼーションプローブまたは増幅プライマーとしての用途を見出す。かかる核酸は、同一である必要はないが、典型的には、比較できるサイズの相同な領域に対して、少なくとも約80%同一、より好ましくは85%同一、さらにより好ましくは90〜95%同一であることが理解される。ある特定の実施形態では、ハイブリダイゼーションを検出するために、検出可能な標識などの適切な手段と組み合わせて核酸を使用することが、有利である。蛍光リガンド、放射性リガンド、酵素リガンドまたは他のリガンド(例えば、アビジン/ビオチン)を含む、広範な種々の適切な指標が、当技術分野で公知である。
プローブは、典型的には、10〜1000ヌクレオチド長の間、例えば、10と800との間、より好ましくは15と700との間、典型的には20と500との間の、一本鎖核酸を含む。プライマーは、典型的には、増幅される目的の核酸と完全にまたはほぼ完全に一致するように設計された、10〜25ヌクレオチド長の間の、より短い一本鎖核酸である。これらのプローブおよびプライマーは、それらがハイブリダイズする核酸に対して「特異的」である、即ち、これらは、好ましくは、高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件(最も高い融解温度Tm、例えば、50%ホルムアミド、5×または6×SCCに対応する。SCCは、0.15M NaCl、0.015M クエン酸Naである)下でハイブリダイズする。
上記増幅および検出方法において使用される核酸プライマーまたはプローブは、キットとしてアセンブルされ得る。かかるキットは、コンセンサスプライマーおよび分子プローブを含む。好ましいキットは、増幅が生じたかどうかを決定するために必要な構成成分もまた含む。このキットは、例えば、PCR緩衝液および酵素;陽性対照配列、反応対照プライマー;ならびに特異的配列を増幅および検出するための指示もまた含み得る。
本発明の治療方法
本発明者らは、有足細胞上で発現されるTHSD7Aタンパク質が、膜性腎症の特定の症例における自己抗原であることを強調し、このことが、この自己抗原を標的化することに基づく新規治療アプローチを想起することを可能にする。
実際、先行技術に記載されるように、特にPLA2R1について、有足細胞の足上の標的抗原への自己抗体結合から生じる免疫沈着物は、有足細胞傷害をもたらす補体系を活性化し得る。
したがって、本発明のさらなる目的は、患者における膜性腎症、特に特発性膜性腎症を処置するための方法に関し、この方法は、抗THSD7A自己抗体を患者における試料からex vivoで除去するステップを含む。
一実施形態では、この膜性腎症は特発性膜性腎症である。
別の一実施形態では、この患者はTHSD7A陽性患者である。
好ましくは、この患者はヒト患者である。
この抗体は、抗原としてTHSD7Aポリペプチドまたはその断片を用いた免疫吸収によって、血液から除去され得る。この試料は、抗体の除去後、患者に戻される。
THSD7Aに対する自己抗体の免疫吸収は、循環する自己抗体、特に循環するTHSD7A自己抗体の量を低減させることを助け、それによって、腎臓に対する潜在的損傷を低減させる。この処置は、抗THSD7A自己抗体の存在の免疫学的確認後および任意の免疫抑制治療の開始前に、最初に適用され得る。これは、免疫抑制治療が患者において免疫系および自己抗体の産生に対して効果を有することができるより前のこの早期の期間の間に、特に有用である。この処置は、この患者の処置の間およびこの患者が陽性−THSD7A患者と診断された後のいつでも、適用され得る。
一実施形態では、抗THSD7A自己抗体の免疫吸収は、固定されたTHSD7Aポリペプチド上に血液、血清または血漿を通過させることによって、生じ得る。組換えTHSD7A、好ましくは組換えヒトTHSD7A、または断片は、当技術分野で公知の不活性および無菌マトリックス、例えば、Sepharoseビーズ上に固定され得る。これらの抗THSD7A自己抗体は、固定されたTHSD7Aポリペプチドまたは断片に結合し、マトリックスに間接的に結合したままになる。次いで、血液、血清または血漿が収集される。この得られた血液、血清または血漿は、抗THSD7A自己抗体が低減されているはず、または検出可能な抗THSD7A自己抗体を有さないはずである。この免疫吸収手順は、無菌条件下で実施すべきである。次いで、抗THSD7A自己抗体が枯渇した収集された血液、血清または血漿は、患者中に輸注して戻され得る。
本発明の治療方法において使用する場合、THSD7Aポリペプチドの断片は、典型的には、抗体結合性断片である。
本発明の別のさらなる目的は、患者における膜性腎症、特に特発性膜性腎症を処置するための方法に関し、この方法は、治療有効量の、THSD7Aポリペプチドもしくはその断片、このTHSD7Aポリペプチドもしくはその断片を発現するベクター、またはこのTHSD7Aポリペプチドまたはその断片を発現する宿主細胞を投与するステップを含む。
一実施形態では、この膜性腎症は特発性膜性腎症である。
別の一実施形態では、この患者はTHSD7A陽性患者である。
好ましくは、この患者はヒト患者である。
本発明によれば、このTHSD7Aポリペプチドまたはその断片は、可溶性形態で投与される。
可溶性THSD7Aポリペプチドまたはその断片を提供することによって、この可溶性ポリペプチドは、デコイ抗原として機能し得、腎糸球体においてTHSD7Aから自己抗体を隔離し得、それによって、腎臓に対する潜在的損傷を低減することができる。このTHSD7Aポリペプチドは、好ましくは、ヒト起源のTHSD7Aポリペプチドである。
一実施形態では、血清からのTHSD7Aに対する自己抗体の処理または吸着に適切な断片は、その別個のトロンボスポンジンI型ドメインのうちの1つもしくはいくつかおよび/またはリンカーストークによって構成された、THSD7Aの細胞外ドメインまたはその断片を含む、またはそれからなる断片である。
上記のように、THSD7Aポリペプチドおよび断片は、例えば、細菌細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞または植物細胞における組換えタンパク質合成などの、当技術分野で周知の任意の方法によって合成され得る。
従来のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)クローニング技術は、PCRクローニングのための鋳型としてTHSD7AのmRNAを使用して、THSD7Aをコードする核酸をクローニングするために使用され得る。上記のように、例示的なヒトネイティブTHSD7A mRNA配列は、NM_015204(GeneBank)に提供される。
理想的には、制限酵素消化認識部位が、増幅された核酸の、クローニングベクターまたは他のベクター中へのライゲーションを促進するために、PCRプライマーのセンス鎖およびアンチセンス鎖の末端にデザインされるべきである。あるいは、3’−Aオーバーハングが、当技術分野で周知のTA−クローニングの目的のために含まれ得る。3’Aオーバーハングを有するかかるコード核酸は、Invitrogenトポイソメラーゼ補助TAベクター(topoisomerase-assisted TA vector)、例えば、pCR(登録商標)−TOPO、pCR(登録商標)−Blunt II−TOPO、pENTR/D−TOPO(登録商標)およびpENTR/SD/D−TOPO(登録商標)中に容易にライゲーションされ得る。このコード核酸は、一般的目的のクローニングベクター、例えば、pUC19、pBR322、pBLUESCRIPTベクター(STRATAGENE Inc.)またはINVITROGEN INC.のpCR TOPO(登録商標)中にクローニングされ得る。次いで、THSD7Aをコードする核酸を保有する、得られた組換えベクターは、哺乳動物細胞株、昆虫細胞株、酵母細胞、細菌細胞および植物細胞からなる群から選択される宿主細胞を使用する種々のタンパク質発現系におけるTHSD7A融合タンパク質の合成のために、タンパク質発現ベクターまたはウイルスベクター中にサブクローニングされ得る。プロテアーゼ切断部位もまたデザインされ得、より大きい融合タンパク質、例えば、His−THSD7Aまたはチオレドキシン−THSD7AからのTHSD7Aの遊離を促進するために、核酸内に含まれ得る。プロテアーゼ切断部位の例には、エンテロキナーゼ、キモトリプシンおよびトロンビンの切断部位が含まれるがこれらに限定されない。
PCR増幅されたコード核酸は、INVITROGENトポイソメラーゼ補助TAベクター、例えば、pCR(登録商標)−TOPO、pCR(登録商標)−Blunt II−TOPO、pENTR/D−TOPO(登録商標)およびpENTR/SD/D−TOPO(登録商標)において、TOPO(登録商標)クローニング方法を使用してベクター中にクローニングされ得る。pENTR/D−TOPO(登録商標)およびpENTR/SD/D−TOPO(登録商標)は共に、5’→3’配向でのGATEWAY(登録商標)発現ベクター中へのDNA配列のクローニングを可能にする定方向TOPOエントリーベクターである。5’→3’配向での定方向クローニングは、プロモーターが、核酸の5’ATG開始コドンの上流にあり、したがって、プロモーター駆動性のタンパク質発現を可能にするような、タンパク質発現ベクター中へのDNA配列の一方向挿入を促進する。THSD7Aコード核酸を保有する組換えベクターは、一般的なクローニングE.coli細胞、例えば、XLIBlue細胞、SURE細胞(STRATAGENE)およびTOP−10細胞(INVITROGEN)中にトランスフェクトされ得、その中で増殖され得る。
異なる発現ベクターが発現のために利用可能であり、異種タンパク質発現系から産生された組換えタンパク質の精製が行われ得る。例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、細菌細胞または植物細胞から選択される宿主細胞を使用する異種タンパク質発現系は、当業者に周知である。この発現ベクターは、そのそれぞれの宿主細胞における効率的な遺伝子転写および翻訳のために、必要な5’上流および3’下流の調節エレメント、例えば、プロモーター配列、リボソーム認識および結合TATAボックス、ならびに3’UTR AAUAAA転写終結配列を有するべきである。この発現ベクターは、発現された組換えタンパク質中に取り込まれるさらなる配列、例えば、6X−ヒスチジン、V5、チオレドキシン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、c−Myc、VSV−G、HSV、FLAG、マルトース結合性ペプチド、金属結合性ペプチド、HAおよび「分泌」シグナル(ミツバチメリチン、[アルファ]−因子、PHO、Bip)を有し得る。さらに、それらが必要なくなった後のさらなる配列の酵素的除去を促進するために、これらの配列の後ろに取り込まれた酵素消化部位が存在し得る。これらのさらなる配列は、組換えタンパク質発現の検出のため、親和性クロマトグラフィーによるタンパク質精製のため、宿主原形質における組換えタンパク質の増強された溶解度のため、特に小さいタンパク質断片について、より良いタンパク質発現のため、および/または培養培地中へと、原核生物細菌のペリプラズム中へと、もしくは酵母細胞のスフェロプラストへと、発現された組換えタンパク質を分泌するために、有用である。組換えタンパク質の発現は、宿主細胞において構成的であり得るか、または例えば、硫酸銅、ガラクトースなどの糖、メタノール、メチルアミン、チアミン、テトラサイクリン、バキュロウイルスによる感染、およびラクトースの安定な合成アナログ、(イソプロピル−ベータ−D−チオガラクトピラノシド)IPTGで、誘導され得る。
一部の実施形態では、組換えTHSD7Aは、種々の発現宿主細胞、例えば、E.coliなどの細菌の細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞および植物細胞、例えばChlamydomonasにおいて、またはさらには無細胞発現系から、発現され得る。クローニングベクターから、核酸は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、細菌細胞もしくは植物細胞、またはウサギ網状赤血球発現系などの無細胞発現系におけるタンパク質の発現に適切な組換え発現ベクター中にサブクローニングされ得る。サブクローニングは、PCRクローニング、制限消化とその後のライゲーション、または組換え反応、例えば、Gateway(登録商標)LRおよびBP CLONASE(商標)酵素混合物を使用したラムダファージベースの部位特異的組換えの反応によって、達成され得る。サブクローニングは、核酸の5’ATG開始コドンが発現ベクター中のプロモーターの下流になるように、一方向性であるべきである。あるいは、コード核酸が、pENTR/D−TOPO(登録商標)、pENTR/SD/D−TOPO(登録商標)(定方向エントリーベクター)、またはInvitrogenのGATEWAY(登録商標)Technology pENTR(エントリー)ベクターのいずれか中にクローニングされる場合、コード核酸は、1回の単一の組換え反応で、それぞれ、哺乳動物細胞、E.coli、昆虫および酵母におけるタンパク質発現のために、種々のGATEWAY(登録商標)発現ベクター(デスティネーション)中に移入され得る。一部のGATEWAY(登録商標)デスティネーションベクターは、そのそれぞれの宿主細胞に感染するとその宿主細胞における組換えタンパク質の異種発現を可能にする、バキュロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルスおよびレンチウイルスの構築のためにデザインされている。デスティネーションベクター中に遺伝子を移入させることは、製造業者の指示に従って、たった2つのステップで達成される。E.coli、昆虫細胞、哺乳動物細胞および酵母におけるタンパク質発現のためのGATEWAY(登録商標)発現ベクターが存在する。E.coliにおける形質転換および選択の後に、発現ベクターは、適切な宿主における発現のために即座に使用される。
他の発現ベクターおよび宿主細胞の例は、E.coli宿主細胞、例えば、BL21、BL21(DE3)およびAD494(DE3)pLysS、Rosetta(DE3)ならびにOrigami(DE3)(NOVAGEN)におけるタンパク質発現のためのpETベクター(NOVAGEN)、pGEXベクター(Amersham Pharmacia)およびpMALベクター(New England labs.Inc.);哺乳動物細胞株、例えば、CHO、COS、HEK−293、JurkatおよびMCF−7における発現のための強力なCMVプロモーターベースのpcDNA3.1(INVITROGEN)およびpCIneoベクター(Promega);哺乳動物細胞におけるアデノウイルス媒介性の遺伝子移入および発現のための複製不全(replication incompetent)アデノウイルスベクター、ベクターのpADENO X、pAd5F35、pLP−ADENO−X−CMV(CLONTECH)、pAd/CMV/V5−DEST、pAd−DESTベクター(INVITROGEN);哺乳動物細胞におけるレトロウイルス媒介性の遺伝子移入および発現のための、ClontechのRETRO−X(商標)系との使用のための、pLNCX2、pLXSNおよびpLAPSNレトロウイルスベクター;哺乳動物細胞におけるレンチウイルス媒介性の遺伝子移入および発現のためのpLenti4/V5−DEST(商標)、pLenti6/V5−DEST(商標)およびpLenti6.2/V5−GW/lacZ(INVITROGEN);哺乳動物細胞におけるアデノ随伴ウイルス媒介性の遺伝子移入および発現のためのアデノウイルス随伴ウイルス発現ベクター、例えば、pAAV−MCS、pAAV−IRES−hrGFPおよびpAAV−RCベクター(STRATAGENE);Spodopera frugiperda 9(Sf9)およびSf1l昆虫細胞株における発現のためのBACpak6バキュロウイルス(CLONTECH)およびpFASTBAC(商標)HT(INVITROGEN);Drosophila Schneider S2細胞における発現のためのpMT/BiP/V5−His(INVITROGEN);Pichia pastorisにおける発現のためのPichia発現ベクターpPICZα、pPICZ、pFLDαおよびpFLD(INVITROGEN)ならびにP.methanolicaにおける発現のためのベクターpMETαおよびpMET;酵母Saccharomyces cerevisiaeにおける発現のためのpYES2/GSおよびpYDl(INVITROGEN)ベクターである。Chlamydomonas reinhardtiiにおける異種タンパク質の大規模発現における最近の進歩は、Griesbeck C.ら 2006年 MoI. Biotechnol. 34巻:213〜33頁およびFuhrmann M. 2004年、Methods MoI Med. 94巻:191〜5頁によって記載されている。外来異種コード配列は、相同組換えによって、核、葉緑体およびミトコンドリアのゲノム中に挿入される。スペクチノマイシンまたはストレプトマイシンに対する抵抗性を付与する多用途葉緑体選択可能マーカー、アミノグリコシドアデニルトランスフェラーゼ(aadA)を保有する葉緑体発現ベクターp64は、葉緑体において外来タンパク質を発現させるために使用され得る。微粒子遺伝子銃(biolistic gene gun)法は、藻類においてベクターを導入するために使用され得る。葉緑体中へのそのエントリーの際に、外来DNAは、遺伝子銃粒子から放出され、相同組換えを介して葉緑体ゲノム中に組み込まれる。
異なる宿主細胞における組換えタンパク質発現は、構成的であり得る、または硫酸銅、ガラクトースなどの糖、メタノール、メチルアミン、チアミン、テトラサイクリンもしくはIPTGなどの誘導因子によって誘導可能であり得る。タンパク質を宿主細胞において発現させた後、宿主細胞を溶解して、発現したタンパク質を精製のために遊離させる。種々の宿主細胞を溶解させる方法は、「Sample Preparation-Tools for Protein Research」EMD BioscienceおよびCurrent Protocols in Protein Sciences(CPPS)中で特集されている。好ましい精製方法は、親和性クロマトグラフィー、例えば、ヒスチジンタグ化組換えタンパク質に対するニッケル、コバルトまたは亜鉛親和性樹脂を使用する、イオン−金属親和性クロマトグラフである。ヒスチジンタグ化組換えタンパク質を精製する方法は、彼らのTALON(登録商標)コバルト樹脂を使用してCLONTECHによって、彼らのpET系マニュアル、第10版においてNOVAGENによって、記載されている。別の好ましい精製戦略は、免疫親和性クロマトグラフィーによるものであり、例えば、抗myc抗体をコンジュゲートした樹脂が、mycタグ化組換えペプチドを親和性精製するために使用され得る。セリンプロテアーゼ、例えば、トロンビンおよびエンテロキナーゼによる酵素消化は、ヒスチジンまたはmycタグから組換えタンパク質を切断して放出させ、ヒスチジンタグおよびmycタグを親和性樹脂に結合させたままにしつつ、組換えタンパク質を親和性樹脂から放出させる。
無細胞発現系もまた企図される。無細胞発現系は、タンパク質折り畳みに好都合な反応条件の容易な改変、生成物毒性に対する感受性の減少、ならびに反応体積およびプロセス時間の低減に起因した迅速な発現スクリーニングまたは大量タンパク質産生などのハイスループット戦略に対する適性を含む、伝統的な細胞ベースの発現方法を超えるいくつかの利点を提供する。この無細胞発現系は、プラスミドまたは線状DNAを使用し得る。さらに、翻訳効率における改善が、反応ミックス1ミリリットル当たり1ミリグラムのタンパク質を上回る収量を生じている。高収量でタンパク質を産生することが可能な無細胞翻訳系の一例は、Spirin AS.ら、Science 242巻:1162頁(1988年)によって記載されている。この方法は、反応混合物全体にわたる、アミノ酸、アデノシン三リン酸(ATP)およびグアノシン三リン酸(GTP)を含む栄養補給緩衝液(feeding buffer)の連続的フローデザイン、ならびに翻訳されたポリペプチド生成物の連続的除去を使用する。この系は、無細胞の連続的栄養補給緩衝液を提供するために、E.coli溶解物を使用する。この連続的フロー系は、原核生物および真核生物の両方の発現ベクターと適合性である。一例として、内在性膜タンパク質EmrE多剤トランスポーターの大規模無細胞産生は、Chang G.ら、Science 310巻:1950〜3頁(2005年)によって記載されている。
他の市販の無細胞発現系には、チューブ反応形式で最大でミリグラム量の活性な組換えタンパク質を産生するための効率的な、共役した転写および翻訳反応のためにE.coliベースのin−vitro系を利用するEXPRESSWAY(商標)Cell−Free Expression Systems(Invitrogen);これもまたE.coliベースのin−vitro系を使用するRapid Translation System(RTS)(Roche Applied Science);およびウサギ網状赤血球ベースのin−vitro系を使用するTNT Coupled Reticulocyte Lysate Systems(Promega)が含まれる。
一実施形態では、いくつかのTHSD7Aポリペプチドのカクテルが、処置のために使用される。想定されるペプチドは、より長い血清半減期のための他のタンパク質、タンデムに連結されたペプチドまたは環状ペプチドと融合され得る。
本明細書に記載される方法には、哺乳動物、例えば、ブタまたはウサギから精製される哺乳動物THSD7Aが包含される。一実施形態では、ネイティブ(非組換え)哺乳動物THSD7Aが、腎臓からex vivoで精製される。ネイティブタンパク質の精製の方法は、当業者に周知である。
本発明のなおさらなる目的は、膜性腎症、特に特発性膜性腎症の処置における使用のための、THSD7Aポリペプチドまたはその断片に関する。
一実施形態では、この膜性腎症は特発性膜性腎症である。
別の一実施形態では、この患者はTHSD7A陽性患者である。
好ましくは、この患者はヒト患者である。
好ましい一実施形態では、THSD7Aポリペプチドの断片は、抗体結合性断片である(これは、本発明によれば、特発性膜性腎症に罹った患者の自己抗体が、この断片を認識することを意味する)。
好ましくは、THSD7Aの断片は、その別個のトロンボスポンジンI型ドメインのうちの1つもしくはいくつかおよび/またはリンカーストークによって構成された、THSD7Aの細胞外ドメインまたはその断片を含む、またはそれからなる。
本発明によれば、このTHSD7Aポリペプチドまたはその断片は、治療有効量で使用される。
特定の一実施形態では、本発明は、このTHSD7Aポリペプチドもしくはその断片を発現するベクター、またはこのTHSD7Aポリペプチドもしくはその断片を発現する宿主細胞もまた提供する。
本発明のさらなる目的は、THSD7Aポリペプチドまたはその断片および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物に関する。さらなる一態様では、本発明は、膜性腎症を処置するための使用のための、この医薬組成物に関する。
一実施形態では、この膜性腎症は特発性膜性腎症である。
別の一実施形態では、この患者はTHSD7A陽性患者である。
好ましくは、この患者はヒト患者である。
特定の一実施形態では、この医薬組成物は、このTHSD7Aポリペプチドもしくはその断片を発現するベクター、またはこのTHSD7Aポリペプチドもしくはその断片を発現する宿主細胞を含み得る。
この医薬組成物は、全長THSD7Aおよび種々のサイズの断片、特に抗体結合性断片と、薬学的に許容されるビヒクルとの組合せであり得る。かかる断片の例には、その別個のトロンボスポンジンI型ドメインのうちの1つもしくはいくつかおよび/またはリンカーストークによって構成された、THSD7Aの細胞外ドメインまたはその断片を含む、またはそれからなる断片が包含されるがこれらに限定されない。
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、いくつかのTHSD7Aポリペプチドまたはその断片のカクテルを含み得る。想定されるペプチドは、より長い血清半減期のための他のタンパク質、タンデムに連結されたペプチドまたは環状ペプチドと融合され得る。
一実施形態では、用語「薬学的に許容される」とは、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されたこと、または米国薬局方、もしくは動物、より特にはヒトにおける使用のための一般に認識された他の薬局方に列挙されたことを意味している。用語「キャリア」とは、治療剤と一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを指す。かかる薬学的キャリアは、無菌液体、例えば、水、および石油からのもの、動物、植物または合成起源のものを含む油、例えば、ラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などであり得る。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合に好ましいキャリアである。生理食塩水溶液ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶液もまた、液体キャリアとして、特に注射可能な溶液のために、使用され得る。適切な薬学的賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。この組成物は、所望に応じて、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤もまた含み得る。これらの組成物は、溶液、懸濁物、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、徐放性製剤などの形態を取り得る。この組成物は、伝統的なバインダーおよびキャリア、例えば、トリグリセリドを用いて、坐剤として製剤化され得る。経口製剤は、標準的なキャリア、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含み得る。適切な薬学的キャリアの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Gennaro編(Mack Publishing Co.、1990年)に記載されている。一実施形態では、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはアルギニン;セルロースもしくはその誘導体、グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む、単糖、二糖および他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;ならびに糖アルコール、例えば、マンニトールまたはソルビトールを含む他の成分が、医薬製剤に添加され得る。
一実施形態では、この組成物は、ヒトへの静脈内投与のために適応された医薬組成物として、慣用的手段に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与のための組成物は、無菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、この組成物は、可溶化剤および注射の部位における疼痛を緩和するための局所麻酔薬、例えばリグノカイン(lignocamne)もまた含み得る。一般に、これらの成分は、別々に、または単位剤形中に一緒に混合されてのいずれかで、例えば、活性作用物質の量を示す密封容器、例えば、アンプルまたはサシェ中の、乾燥した凍結乾燥粉末または水なし濃縮物として、供給される。組成物が注入によって投与される場合、これは、無菌医薬品グレードの水または食塩水を含む注入瓶で分配され得る。組成物が注射によって投与される場合、これらの成分が投与前に混合され得るように、無菌の注射用水、または食塩水のアンプルが提供され得る。
本発明の組成物は、中性または塩形態として製剤化され得る。
薬学的に許容される塩には、いくつか挙げると、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されるものなどのアニオンと形成される塩、および水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導されるものなどのカチオンと形成される塩が含まれる。
種々の送達系、例えば、リポソーム、微粒子およびマイクロカプセルにおけるカプセル封入が、当技術分野で公知であり、THSD7Aポリペプチドまたはその断片を投与するために使用され得る(例えば、WuおよびWu、J. Biol. Chem.、262巻:4429〜4432頁(1987年)を参照のこと)。この組成物は、小胞、特にリポソーム中で送達され得る(Langer、Science、249巻:1527〜1533頁(1990年);Treatら、Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer、Lopez-BeresteinおよびFidler編(Liss、New York 1989年)、353〜365頁;Lopez-Berestein、同書、317〜327頁を参照のこと;一般に同書を参照のこと)。導入の方法には、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外および経口経路が含まれるがこれらに限定されない。これらの組成物は、任意の簡便な経路によって、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または皮膚粘膜裏打ち層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を介した吸収によって投与され得、他の生物学的に活性な作用物質と一緒に投与され得る。投与は、全身または局所であり得る。さらに、本発明の医薬組成物を、脳室内および髄腔内注射を含む任意の適切な経路によって中枢神経系中に導入することが望まれ得る;脳室内注射は、例えば、Omcanaレザバなどのレザバに取り付けられた脳室内カテーテルによって促進され得る。例えば、吸入器またはネブライザーの使用、およびエアロゾル化剤を用いた製剤による肺投与も、使用され得る。
一実施形態では、治療的投与に使用される医薬製剤は、無菌でなければならない。無菌性は、無菌濾過メンブレン(例えば、0.2ミクロンメンブレン)を介した濾過によって容易に達成される。医薬製剤のpHは、典型的には、約6〜8であるべきである。
一実施形態では、この組成物は、制御放出系で送達され得る。一実施形態では、ポンプが使用され得る(Langer、上記;Sefton、CRC Crit. Ref. Biomed. Eng.、14巻:201頁(1987年);Buchwaldら、Surgery、88巻:507頁(1980年);Saudekら、N. Engl. J. Med.、321巻:574頁(1989年)を参照のこと)。別の一実施形態では、ポリマー性材料が使用され得る(Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise編(CRC Press、Boca Raton、FIa. 1974年);Controlled Drug Bioavailability、Drug Product Design and Performance、SmolenおよびBall編(Wiley、New York 1984年);RangerおよびPeppas、Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem.、23巻:61頁(1983年)を参照のこと;Levyら、Science、228巻:190頁(1985年);Duringら、Ann. Neurol.、25巻:351頁(1989年);Howardら、J. Neurosurg.、71巻:105頁(1989年)もまた参照のこと)。他の制御放出系は、Langerによる総説(Science、249巻:1527〜1533頁(1990年))において議論されている。徐放性組成物の例については、米国特許第3,773,919号、EP58,481A、米国特許第3,887,699号、EP158,277A、カナダ特許第1176565号、U. Sidmanら、Biopolymers 22巻:547頁(1983年)およびR. Langerら、Chem. Tech. 12巻:98頁(1982年)を参照のこと。
製剤において使用される正確な用量は、投与の経路、ならびに膜性腎症の重症度および血清中の抗THSD7A自己抗体の力価にも依存し、従事者の判断および各患者の情況に従って決定すべきである。有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験系から得られた用量反応曲線から外挿され得る。
患者に投与される投薬量は、典型的には、患者の体重1kg当たり0.1mg〜100mgである。好ましくは、患者に投与される投薬量は、患者の体重1kg当たり0.1mgと20mgとの間、より好ましくは、患者の体重1kg当たり1mg〜10mgである。遺伝子治療のために、ウイルスベクターは、1適用につき患者1人当たり1×106〜1014のウイルスベクター粒子の範囲であるべきである。
さらに、in vitroまたはin vivoアッセイが、最適な投薬量範囲を同定することを助けるために、任意選択で使用され得る。使用される正確な用量は、投与の経路、および処置されている状態の重篤度にも依存し、例えば、公開された臨床研究を考慮して、従事者の判断および各被験体の情況に従って決定すべきである。しかし、適切な有効投薬量の量は、約4時間毎に約10マイクログラムから約5グラムの範囲であるが、これらは、典型的には、4時間毎に約500mgまたはそれ未満である。一実施形態では、この有効投薬量は、4時間毎に、約10μg、約20μg、約50μg、約100μg、約200μg、約300μg、約400μg、約500μg、約600μg、約700μg、約800μg、約900μg、約1mg、約1.2mg、約1.4mg、約1.6mg、約1.8mg、約2.0mg、約2.2mg、約2.4mg、約2.6mg、約2.8mg、約3.0mg、約3.2mg、約3.4mg、約3.6mg、約3.8mg、約4.0mg、約4.2mg、約4.4mg、約4.6mg、約4.8mg、または約5.0mg、10.0mg、15.0mg、20.0mg、25.0mg、50.0mgである。等価な投薬量が、約2時間毎、約6時間毎、約8時間毎、約12時間毎、約24時間毎、約36時間毎、約48時間毎、約72時間毎、約1週間毎、約2週間毎、約3週間毎、約1ヶ月毎および約2ヶ月毎が含まれるがこれらに限定されない種々の期間にわたって、投与され得る。本明細書に記載される有効投薬量の量とは、投与される総量を指す。THSD7Aポリペプチド、その断片、またはそれを含む発現ベクターおよび/もしくは宿主細胞を含む組成物は、一度に、または一連の処置にわたって、患者に適切に投与される。
一実施形態では、THSD7Aポリペプチドまたはその断片を含む組成物は、アザチオプリン、インフリキシマブ、オマリズマブ、ダクリズマブ、アダリムマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、ナタリズマブ オマリズマブ、シクロホスファミド、クロラムブシルおよび/またはリツキシマブが含まれるがこれらに限定されない免疫抑制治療と組み合わせて投与される。
特に、THSD7Aポリペプチドまたはその断片を含む組成物は、膜性腎症、特に特発性膜性腎症を処置するために有用な、患者にとって有効であり得る任意の処置と組み合わせて投与される。
本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。しかし、これらの実施例は、本発明の範囲を限定すると決して解釈すべきではない。
材料および方法
患者。膜性腎症(MN)の診断を、腎生検によって行った。血清を、膜性腎症を有する患者、他の腎臓疾患を有する患者および健康な対照から採取した。全ての患者は、最初の血清を採取した時点では、先行する免疫抑制治療を有さなかった。血清を、ELISAによって、抗PLA2R1抗体について調査した。
ヒト腎組織。腎摘除術を受けた患者由来の腎臓の健康な部分を、ヒト糸球体の抽出物の調製のために使用した。糸球体を、段階篩別(graded sieving)によって獲得し、ダウンスホモジナイズした。可溶性画分および膜画分を、超遠心分離および可溶化によって分離した。存在する免疫グロブリンGを除去するために、試料を、プロテインGマイクロビーズ(Miltenyi Biotech、Bergisch Gladbach、Germany)と共にインキュベートし、結合した免疫グロブリンを、磁性分離カラムによって抽出した(同上)。酵素的脱グリコシル化のために、本発明者らは、製造業者の指示(共にRoche Diagnostics、Mannheim、Germany)に従って、N−グリコペプチダーゼFおよびノイラミニダーゼを使用した。
ウエスタンブロット分析。タンパク質試料を、非還元条件もしくは還元条件下で、ポリアクリルアミドゲル中で電気泳動し、半乾燥条件下でPVDFメンブレンに移した(BioRad、Hercules、USA)。メンブレン(Millipore、Billerica、USA)を、PBS−Tween 0.05%中5%の粉乳で一晩ブロッキングし、引き続いて、一次抗体および二次抗体と共に室温で2時間インキュベートした。一次抗体としての使用のために、血清を、0.5%粉乳中1:100作業希釈に希釈した。THSD7A(トロンボスポンジン1型ドメイン含有7A)の特異的検出のために、本発明者らは、1:1,000の作業希釈での市販のウサギポリクローナル抗体(Sigma、St.Louis、USA)を使用した。二次抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼをコンジュゲートしたマウス抗ヒトまたはヤギ抗ウサギIgG(全てSouthernBiotech、Birmingham、USA)であった。IgGサブクラス検出が望まれる場合には、マウス抗ヒトIgG1〜IgG4を適用した(同上)。
免疫沈降。ヒト糸球体溶解物を、膜性腎症または他の糸球体疾患を有する患者および健康な対照由来の血清と共にインキュベートした。IgG4親和性マトリックス(Life Technologies、Leiden、Netherlands)を添加し、試料を4℃で一晩インキュベートした。免疫沈降物を、上記のように、低速遠心分離によって収集し、試料を電気泳動し、ブロットし、抗THSD7A抗体を用いて検出した。
質量分析。ウエスタンブロット分析における目に見えるバンドに対応するゲル領域を切り出し、トリプシンゲル内消化に供した。消化したペプチドを、ギ酸およびアセトニトリルを使用して単離し、ナノ高速液体クロマトグラフィー(nanoHPLC)によって分離し、ABI 4700質量分析計(AB Sciex、Framingham、USA)を使用するマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI−TOF)タンデム質量分析によって同定した。生データを、ProteinPilotソフトウェア(AB Sciex、Framingham、USA)によって分析し、Paragon Algorithmを使用してさらに処理した。
候補タンパク質の組換え発現。THSD7A、ならびにPLA2R1の3つのパラログ、即ち、マクロファージマンノース受容体(MRC1)、エンドサイトーシス受容体180(MRC2)および樹状細胞受容体205(LY75)をコードするヒトcDNAを、標準的な方法を使用してPCRによってクローニングしたか、または会社(Gene CoppoeiaおよびOriGene)から購入した。全てのcDNA配列を、哺乳動物発現ベクター中へのサブクローニングおよび特異的HAまたはDDKタグ(pLPCXまたはpCMV6エントリー)の付加後に、配列決定によって確認した。プラスミドを、リン酸カルシウムトランスフェクションによってHEK293細胞中に一過的にトランスフェクトした。72時間後に、培地を収集し、細胞を掻き取り、溶解させた。目的の発現されたタンパク質の可溶性画分を、超遠心分離によって取得した。この膜画分を、溶解緩衝液中に再懸濁し、激しい手動ダウンシング(douncing)によってホモジナイズし、可溶化された画分を、高速遠心分離後に取得した。候補タンパク質の発現を、特異的抗体を使用するウエスタンブロット分析によって確認し、モックトランスフェクションと比較した。
組織学的分析。免疫蛍光分析のために、ヒト腫瘍腎摘除術標本の健康な極の2μMパラフィン切片を、脱パラフィン処理し、水中で再水和した。抗原回復を、クエン酸塩緩衝液pH6.1中で煮沸(一定の98℃で30分間)することによって得た。非特異的結合を、PBS中0.05%のTriton X−100(SIGMA、St.Louis、USA)を有する5%ウマ血清(Vector、Burlingame、USA)で室温30分間ブロッキングし、その後、ブロッキング緩衝液中の一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。染色を、蛍光色素をコンジュゲートした二次抗体(Jackson Immunoresearch、Dianova、Hamburg、Germany;1:400、5%ウマ血清中で室温30分間)で視覚化した。核を、DRAQ5(Molecular Probes、LIFE TECHNOLOGIES、Grand Island、USA)を使用して視覚化した。陰性対照を、一次抗体を省いて実施した。染色した切片を、Laser Scanning Microscope 510および適切なソフトウェアを使用する共焦点顕微鏡法によって評価した(全てZEISS、OBERKOCHEN、Germany)。
免疫組織化学検査のために、MNを有する患者由来の腎生検の1μMパラフィン切片を、脱パラフィン処理し、再水和した。抗原回復を、DAKO抗原回復緩衝液、pH9中で煮沸(98℃で15分間)し、引き続いて室温で15分間冷却することによって得た。非特異的結合を、PBS中0.05%のTriton X−100(SIGMA)を有する5%ウマ血清(Vector)を用い室温で30分間ブロッキングし、その後、ブロッキング緩衝液中のウサギ抗THSD7A(1:400、Atlas)と共に4℃で一晩インキュベートした。染色を、製造業者の指示に従って、ZytochemPlus AP Polymerキット(ZYTOMED SYSTEMS)を用いて視覚化した。核を、ヘマラウン(hemalaun)で対比染色し、切片を、アラビアゴム(SIGMA)を用いてマウントした。陰性対照を、一次抗体を省いて実施した。染色を、Axiovisionソフトウェアを使用してAxioskopを用いて評価した(全てZEISS)。
組織学的分析に使用した一次抗体は、以下であった:ウサギ抗THSD7Aおよび抗PLA2R1(ATLAS、1:200)、モルモット抗ネフリン(ACRIS、1:100)、ヤギ抗コラーゲンIV型(SOUTHERNBIOTECH、1:400)およびヒツジ抗フィブロネクチン(DAKO、1:500)。全ての二次抗体は、蛍光色素をコンジュゲートした、親和性精製したロバ抗体(JACKSON IMMUNORESEARCH、Dianova、Hamburg、Germany、1:400)であった。
結果
PLA2R1のパラログおよびヒト糸球体由来のタンパク質溶解物による特発性膜性腎症血清のスクリーニング。本発明者らは、2つの並行するアプローチによって、特発性膜性腎症(iMN)血清および適切な対照血清をスクリーニングした。第1のアプローチは、候補抗原として、PLA2R1のパラログに焦点を当てた。第2のアプローチは、ヒト糸球体抽出物(HGE)由来の総タンパク質に対する、より一般的な血清のスクリーニングであった。
PLA2R1の3つのパラログタンパク質、即ち、マクロファージマンノース受容体(MRC1)、エンドサイトーシス受容体180(MRC2)および樹状細胞受容体205(LY75)を、組換えタンパク質としてHEK293細胞において一過的に発現させた。これらのパラログならびにHGEに対する血清反応性を、膜性腎症を有する65人の患者(そのうち30人は、抗PLA2R1抗体について陰性であった)、他のタンパク尿腎臓疾患を有する57人の患者および44人の健康な対照由来の血清を用いて、非還元条件下でのウエスタンブロット分析によって調査した。ELISAによって以前に試験した、抗PLA2R1抗体について陽性であることが既知の全ての血清は、ウエスタンブロット分析で組換えPLA2R1と反応したが、これらの血清も他のカテゴリー由来の血清も、PLA2R1のパラログタンパク質とは反応しなかった。抗PLA2R1抗体について全て陰性であった、iMNを有する4人の患者由来の血清は、サイズが約250kDaの同じ糸球体タンパク質を認識した(図1A)。他の腎臓疾患を有する患者または健康な対照由来の血清は、このエリアではいずれの反応性も示さなかった。次いで、このスクリーニングを、膜性腎症を有する129人の患者(iMNを有する95人および二次性MNを有する34人)に拡張させた。ELISAおよびウエスタンブロット分析において抗PLA2R1抗体について全て陰性の合計6つの血清が、250kDaの同じタンパク質と反応することが見出された(図1B)。これらの患者のうち、5人はiMNを有し、1人は、この患者を二次性MNの症例として分類する、抗核抗体(ANA)についての陽性力価を伴うMNを有した(図1B)。
こうして、上記スクリーニングは、同じHGE調製物中の約180kDaのサイズを有するPLA2R1とはおそらく別個の、HGE中に存在する250kDaの新規自己抗原を同定した。2つの抗原間をよりよく識別するために、本発明者らは、低アクリルアミド百分率を有するSDS−PAGEゲルでHGEタンパク質を泳動して、目的の2つのタンパク質を分離し、次いで、ウエスタンブロットを作製し、続いて、PLA2R1または新たな抗原に対して反応性の血清と共に、メンブレンをインキュベートした。予測通り、約60kDaのサイズ差を有する2つの別個のバンドが明らかになり、これは、2つの異なる抗原の存在を示している。PLA2R1と比較して新規抗原をさらに特徴付けるために、本発明者らは、2つの抗原を含むHGEを酵素的に脱グリコシル化した。N−グリコペプチダーゼFは、新規抗原のサイズをおよそ225kDaまで減少させ、シアル酸を除去する酵素であるノイラミニダーゼの添加は、200kDaへのさらなるシフトを引き起こした。他方、PLA2R1は、以前に記載されたように、N−グリコペプチダーゼFの添加後におよそ145kDaへと移動したが、ノイラミニダーゼの添加後にはシフトはもはや見られなかった。完全にグリコシル化された250kDaタンパク質と反応する全ての血清は、同じ分子質量の脱グリコシル化形態もまた認識し、これは、全ての血清が同じタンパク質を認識することを示唆している。さらに、新規抗原およびPLA2R1の両方が、HGEの膜画分中に存在したが、可溶性画分中にはPLA2R1だけが存在する。
THSD7Aとしての新規HGE抗原の同定。本発明者らは、ネイティブ糸球体タンパク質、ならびにN−グリコペプチダーゼFならびにN−グリコペプチダーゼFおよびノイラミニダーゼで処理した糸球体タンパク質のゲル電気泳動を実施した。各処理由来のタンパク質の大部分を、クマシーブルー色素で染色し、他の部分を、PVDFに移し、新規抗原に対する抗体について陽性の患者の血清でプローブした。次いで、本発明者らは、標的タンパク質が3つ全ての条件において特異的に存在すると仮定して、上記のように、250kDa、225kDaおよび200kDaのウエスタンブロットシグナルに対応するクマシー染色されたゲルエリアを切り出した。質量分析による分析を、全てのゲルスライスにおいて実施し、一次候補リストを得た。候補タンパク質を、新たな抗原の予測された生化学的特徴に従って、即ち、それらの分子質量、N−グリコシル化、膜性局在、およびヒト腎臓または糸球体における発現を参照して、ランク付けした。興味深いことに、PLA2R1の全ての以前に試験したパラログが、質量分析による分析において顕著な位置に現れ、これは、初期のアプローチを遡及的に正当化する。本発明者らは、市販の抗体および一過的にトランスフェクトしたHEK293細胞を使用して、候補抗原について特異的に試験し、トロンボスポンジン1型ドメイン含有7A(THSD7A)を目的のタンパク質として最終的に同定した。
実際、HGE中の250kDaタンパク質と以前に反応した6つ全ての血清は、HEK293細胞において発現された組換えTHSD7Aもまた認識したが、抗PLA2R1陽性血清または対照のどれも、それを認識しなかった(図2A)。注目すべきことに、HGE中に存在するネイティブTHSD7Aタンパク質およびHEK293細胞において発現された組換えタンパク質は、同じパターンのグリコシル化を示したが、組換えタンパク質はわずかにより低い位置に移動し、これは、翻訳後修飾における軽微な差異を示唆している(図2A)。反応性血清によって認識された糸球体自己抗原が実際にTHSD7Aであることの最終的な証拠として、本発明者らは、免疫沈降実験を実施した。全ての反応性血清は、沈降物の、THSD7Aに対する特異的ポリクローナル抗体との反応性によって実証されるように、HGEからTHSD7Aを免疫沈降させたが、対照は免疫沈降させなかった(図2B)。
抗THSD7A自己抗体の特徴付け。抗THSD7A自己抗体のIgGサブタイプ(複数可)を決定するために、本発明者らは、異なるIgG(1〜4)に対する二次抗体を使用した。抗THSD7A IgG4は、6つ全ての反応性血清について優勢な抗体であることが見出された。しかし、他のIgGサブタイプもまた、ほとんどの血清中に存在した。この知見は、全ての利用可能な生検における、IgG4についての増強された染色に一致した。さらに、全ての陽性血清が、ゲルを還元条件下で泳動した場合、HGE中の250kDaタンパク質および組換えTHSD7Aの両方に対するそれらの反応性を喪失した。したがって、抗PLA2R1自己抗体と同様、抗THSD7A自己抗体は、ほとんどIgG4であり、ネイティブおよび組換えの両方のTHSD7Aタンパク質中に存在するTHSD7A中の1または複数のコンフォメーション依存的エピトープ(複数可)を認識する。
抗THSD7A自己抗体および疾患活性。iMNを有し、抗THSD7A抗体について陽性の2人の患者由来の連続血清試料が、半定量的ウエスタンブロット分析による抗THSD7A抗体レベルの分析のために利用可能であった。1人の患者では、免疫抑制治療は、抗THSD7A抗体レベルの実質的な減少を誘導し、タンパク尿における低減がそれに続いた(図3)。他方、軽微な臨床的愁訴に起因して免疫抑制治療を受けなかった1人の患者では、抗体レベルは、持続性のネフローゼ範囲のタンパク尿を伴って、着実に高いままであった。合わせると、これらの結果は、抗体レベルと臨床的疾患活性(clinical disease activity)との間の関連を示唆している。
健康な対照およびMN患者におけるTHSD7Aの糸球体発現。THSD7Aの糸球体発現を調査するために、本発明者らは、健康な被験体およびiMNを有する患者由来の生検試料において、免疫蛍光および免疫組織化学的分析を実施した。本発明者らは、2つの異なる抗THSD7A特異的抗体でプローブした場合、健康な腎臓由来の生検標本においてTHSD7Aの顕著な線状の糸球体発現を見出した。一次抗体を省いた陰性対照は、染色を全く示さなかった。有足細胞の足突起の細胞間スリットダイアフラグム(slit-diaphragm)の領域において発現される膜貫通タンパク質、ネフリンについて染色した場合、THSD7Aについてと非常に類似した染色パターンが見られた。さらに、両方の分子は強い共局在を示し、これは、THSD7Aが、有足細胞の足突起中にまたはそれにごく近接して位置することを示唆している。他方、THSD7Aは、糸球体基底膜のマーカー、例えば、コラーゲンIV型およびフィブロネクチンとは共局在しなかった。正確には、THSD7Aは、コラーゲンIV型およびフィブロネクチンと比較して上皮下に位置し、これは、THSD7Aが、糸球体基底膜ではなく有足細胞の足突起上で発現されることを示唆している。
以前の研究から、PLA2R1が、MNおよびPLA2R1に対する検出可能な抗体を有する患者由来の生検の上皮下(subepthelial)沈着物においてIgG4と共局在することが公知である。抗THSD7A陽性MN患者におけるこの現象を調査するために、本発明者らは、特異的抗THSD7Aならびに抗IgG4抗体を用いた免疫蛍光顕微鏡法を実施した。本発明者らは、抗THSD7A陽性MNを有する患者(n=5)由来の全ての利用可能な生検において、IgG4およびTHSD7Aについての強い染色を見出した。それによって、THSD7Aは、MNについて典型的である顆粒状パターンでIgG4と共局在した。
THSD7Aの免疫組織化学的染色は、健康な対照由来の生検試料において、有足細胞形質膜に沿った線状の陽性を明らかにした。対照的に、PLA2R1は、わずかに少なく発現される。抗THSD7A陽性MNを有する患者由来の5つ全ての利用可能な生検において、免疫組織化学検査は、正常対照と比較した場合に、THSD7Aについての顕著に増強された染色を明らかにした。他方、PLA2R1染色は、これらの患者において正常であった。対照的に、抗PLA2R1抗体を有する全ての調査した患者は、THSD7Aについては正常染色を有したが、以前に記載されたように、PLA2R1の増強された顆粒状染色を有した。二次性MNを有する患者由来の全ての調査した生検は、THSD7AおよびPLA2R1の両方について正常染色を有した。
生検組織からの抗THSD7A IgGの溶出。IgGを、その血清がTHSD7Aと反応性であった1人の患者、PLA2R1関連iMNの2人の症例、およびクラスVループス腎炎の1人の症例由来の凍結残存生検コア(frozen remnant biopsy core)から、酸溶出させた。抗THSD7A血清陽性症例由来のIgGは、ウエスタンブロットで組換えTHSD7Aを特異的に認識したが、PLA2R1関連MN症例から溶出されたIgGは、THSD7Aを認識せず、PLA2R1を特異的に認識した。クラスVループス腎炎生検から溶出されたIgGは、いずれの抗原も認識しなかった。