JP2017519330A - 二次電池用のバナジウム酸硫化物系カソード材料 - Google Patents

二次電池用のバナジウム酸硫化物系カソード材料 Download PDF

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Abstract

バナジウム酸化物および無機硫化物からなる非結晶複合物を含むカソード活性複合物が提供される。一実施形態において、複合物は、五酸化バナジウムおよび五硫化リンを含む。さらなる特定の実施形態において、バナジウム、酸素および硫黄を含む非結晶母材と、母材中に埋め込まれたバナジウムおよび酸素の結晶領域とのナノ粒子複合物を含むカソード活性材料が提供される。また、カソード活性複合物のうち1つを含むカソードを備える電気化学セルおよび可逆電池も提供される。特定の実施形態において、電池は、マグネシウム電池である。

Description

関連出願の相互参照
本願は、2015年4月22日に提出された米国特許出願第14/693235号および2014年4月24日に提出された米国特許出願第14/260544号に基づく優先権の利益を主張し、その開示の全体が引用により本明細書中に援用される。
発明の背景
本発明は、マグネシウム二次電池用の正極活性材料および当該活性材料に基づくカソードを備えるマグネシウム電池に関する。
リチウムイオン電池(LIB)は、1991年から商用に使用され、一般的に携帯型電子機器の電源として使用されてきた。リチウムイオン電池の作製および組成に関連する技術は、研究および改善されてきたため、現行のLIB電池は、最大700Wh/Lのエネルギー密度を有すると報告される程度に成熟している。しかしながら、最先端のLIBであっても、将来の商用電気自動車(EV)の要求を満たすことができる動力源として使用できるとは考えられない。たとえば、現行の伝統的な内燃機関車に相当する伝動機構を有するEVは、300マイル距離を続行する場合、約2000Wh/Lのエネルギー密度を有するEV電池パックが必要である。このエネルギー密度がリチウムイオン活性材料の理論限界に近いため、より高いエネルギー密度の電池システムを提供することのできる技術が検討されている。
多価イオンとしてのマグネシウムは、潜在的に非常に高い体積エネルギ密度を提供することができるため、リチウムの代替的な電極材料として魅力的である。マグネシウムは、RHEに対して−2.375Vという高い標準電位、12.15g/当量という低い当量重量、および649℃という高い融点を有する。リチウムに比べて、マグネシウムの取扱い、加工および配置は、容易である。マグネシウムは、比較的豊富であるため、原料としてリチウムよりもコストが低い。また、マグネシウム化合物は、一般的にリチウム化合物よりも毒性が低い。さらに、マグネシウムは、リチウムに比べて、空気および湿気に対する感受性が低い。これらのすべての性質によって、マグネシウムは、リチウムの代替的なアノード材料として魅力的である。
マグネシウムに基づくアノードを有する電池の製造には、マグネシウムイオンを可逆的に吸着および脱着することができるカソード、およびマグネシウムイオンを効率的に輸送する電解質システムが必要である。世界中の多くの研究機関は、これらの領域で多大な努力を払っており、研究されている活性材料は、元素としての硫黄を含むさまざまな硫黄化合物、分子式MgMo(式中、xは、0〜4の数字であり、Tは、S、SeまたはTeであり、nは、8である)を有するシェブレル化合物として知られている材料、および種々の金属酸化物、たとえば、MnO(カリウムによって安定化したα−MnO)、Vおよびイオンによって安定化したMg、TiまたはVの酸化物またはホランダイトなどを含む。
バナジウムがV5+/V4+/V3+とバナジウム金属との間に多重酸化還元反応を行うことができるため、例えばVなどのバナジウム系カソード活性材料は、マグネシウム電池用カソードの非常に有望な候補である。また、V5+は、高原子価状態でも非常に安定であるため、動作電圧を容易に増加することができる。さまざまな研究グループは、正極活性材料としてVの有用性に取り組む努力を報告している。
しかしながら、Vの酸素がMg2+イオンを強く吸着するため、バナジウム酸化物は、活性材料として、マグネシウムイオンの挿入および脱離という課題に直面している。この吸着は、不活発なマグネシウムイオンの拡散をもたらし、さらなるマグネシウム化を妨げる。したがって、Vを修飾しない場合、低容量および低比率しか得られない。
ナノ結晶のVは、性能を改善することができる。しかしながら、従来知られているように、ナノ結晶材料は、低い充填密度を有するため、所望の高容量を有するカソードを作製することが困難であるが、寸法を十分小さくすることができるため、小規模の家電設備には有用である。したがって、ナノ結晶のVを使用する電池の体積エネルギー密度は、商業用途に満足できない。また、ナノ結晶材料は、非常に大きなナノ粒子表面積を有するため、電解質の分解を促進する。
本発明の発明者らは、マグネシウム電池に使用される高エネルギー密度カソード活性材料の継続研究において、マグネシウムイオンに対するVの強い吸着力を軽減する方法を検討してきた。硫黄を用いて、活性材料中の酸素を酸硫化物の形で置換することを検討した。
Chenら(US2013/0171502)は、ハイブリッド電極組立体を記載している。記載されたハイブリッド電極組立体は、中央の集電体と、集電体の一面に設けられたリチウムイオン層間浸入(intercalation)材料層と、集電体の他面に設けられたグラフェンなどの層間浸入材料を含まない層とを含む。従来のLi層間浸入材料は、段落[0072]、[0104]および請求項12に列挙されている。列挙された材料は、V、V、硫黄化合物およびそれらの任意の混合物を含む。
Bedjaouiら(US2012/0070588)は、リチウムマイクロ電池をパッケージ化する方法を記載している。マイクロ電池の一般的な説明において、チタン酸硫化物は、カソード活性材料として記載される。
Zhamuら(US2012/0064409)は、ナノグラフェンにより強化された粒子状物質を含む電極を備えるリチウムイオン電池を記載している。記載された通常のカソード活性材料は、リチウムバナジウム酸化物、ドープされたリチウムバナジウム酸化物、金属硫化物およびこれらの組み合わせを含む。五酸化バナジウムと硫化物ガラス形成剤との混合物は、明確に開示されておらず、示唆されていない。
Gaillardら(US7695531)は、リチウムマイクロ電池用の電解質薄膜を製造するためのフォトリソグラフィ法を記載している。リチウムマイクロ電池部品の一般的な説明において、二硫化チタン、チタン酸硫化物およびバナジウム酸化物は、適切なカソード材料として列挙されている。
Gorchkovら(US6916579)は、結晶性バナジウム酸化物と、硫黄、セレンまたはテルルのカルコゲナイドとを含有するリチウムイオン電池またはリチウム金属電池用のカソード材料を記載している。五酸化バナジウムと硫化物ガラス形成剤との混合物は、示唆されていない。
Mukherjeeら(US5919587)は、電気活性の硫黄ポリマ材料および遷移金属カルコゲナイドから形成された電気化学セル用の複合カソードを記載している。他の成分、例えば、シリカ、アルミナおよびケイ酸塩が存在してもよい。第I族および第II族の金属に基づくセルが概略に記載されているが、マグネシウム電気化学セルが明示的に開示されていない。五酸化バナジウムは、遷移金属カルコゲナイドの例として開示されているが、五酸化バナジウムと硫化物ガラス形成剤との混合物は、開示または示唆されていない。五硫化リンは、カソード活性材料の成分として開示されていない。
Abrahamら(US4934922)は、遷移金属の酸硫化物、好ましくはモリブデンの酸硫化物であるカソード活性材料を記載している。第I族および第II族の金属に基づくセルが概略に記載されているが、記載されたセルは、主にリチウムセルであり、マグネシウム電気化学セルは、明示的に開示されていない。
Ouvrardら(Journal of Power Sources, 54(1995), 246-249)は、リチウムイオンの層間浸入材料として、分子式VS・3HOを有するバナジウム酸硫化物を記載している。バナジウム酸硫化物を含有する正極を備えるリチウム電気化学セルも記載されている。
Aoyagiら(US2012/0164537)は、マグネシウム電池用の正極材料を記載している。このカソード材料は、バナジウム酸化物と、リン酸化物と、遷移金属酸化物と、アルカリ金属、硫黄およびハロゲンのような他の元素との複合物である。この複合物は、非結晶リン酸化物相においてバナジウム酸化物の微結晶を含有する混合相を成長させるように、特定の温度および時間で溶融される。実施例I−28には、V、P、FeおよびLiSに基づく組成物が記載されている。五酸化バナジウムと五硫化リンまたは任意の硫化物ガラス形成剤との混合物は、カソード活性材料の組成物として開示されていない。
Leviら(Chem. Mater., 2010, 22, 860-868)は、これまでに正極組成物として使用されてきた材料および各々の材料に関連する問題をレビューした。Vエアロゲルは、議論されたが、五酸化バナジウムと硫化物ガラス形成剤との混合物は、開示または示唆されていない。
Doeら(US2012/0219856)は、正極用のマグネシウムイオンを挿入および脱離するためのカルコゲナイドとして機能する一連のスピネル構造複合物を記載している。特に、バナジルリン酸塩は、記載されている。しかしながら、この文献は、五酸化バナジウムと硫化物ガラス形成剤との混合物を開示または示唆していない。
Amatucciら(Journal of the Electrochemical Society, 148(8), A940-A950 (2001))(発明の開示に列挙されている)は、さまざまな陽イオン用の層間浸入材料としてのナノ結晶Vに関する研究を記載している。この文献は、性能を改善する必要性を示しているが、五酸化バナジウムと硫化物ガラス形成剤との混合物を開示または示唆していない。
Imamuraら(Journal of the Electrochemical Society, 150(6) A753-A758 (2003))は、マグネシウム電池の正極材料としてのV炭素複合物の合成および特徴付けを報告したが、カソード活性材料として五酸化バナジウムと硫化物ガラス形成剤との混合物を開示または示唆していない。
Imamuraら(Solid State Ionics, 161 (2003) 173-180)は、マグネシウムイオンを挿入および脱離するための正極材料としてのV炭素複合材料の性能を記載している。しかしながら、この文献は、五酸化バナジウムと硫化物ガラス形成剤との混合物を開示または示唆していない。
すべての参考文献はいずれも、マグネシウム電池のカソード活性材料として、五酸化バナジウムと硫化物ガラス形成剤との混合物を開示または示唆していない。
したがって、本発明の目的は、高エネルギーマグネシウム電池の需要を満たし、従来公知のVの欠点を克服するV系カソード活性材料を提供することである。
本発明の別の目的は、修飾されたV系材料に基づく正極、およびこの正極を備え、既知のマグネシウム電気化学電池に比べて、大幅に改善されたエネルギー密度および性能を有するマグネシウム電池を提供することである。
発明の概要
これらの目的および他の目的は、本発明によって実現される。本発明の第1実施形態は、カソード活性材料を含む。このカソード活性材料は、バナジウム酸化物および無機硫化物からなる複合物を含み、前述の複合物は、実質的に非結晶構造を有し、XRD分析で結晶ピークを示さない。
さらなる実施形態において、本発明は、カソード活性材料を含む。このカソード活性材料は、バナジウム酸化物源および無機硫化物源からなる機械的に粉砕された複合物であるナノ粒子を含み、前述の複合物は、非結晶母材に埋め込まれた結晶領域を含む。
本発明の実施形態において、バナジウム酸化物またはバナジウム酸化物源は、五酸化バナジウム(V)を含むまたはVからなる。
他の実施形態において、無機硫化物または無機硫化物源は、P、B、SiS、GeS、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種である。
本発明に係る活性材料を含むカソードは、リチウムイオン、ナトリウムイオンまたはマグネシウムイオンを挿入および放出することができる。
他の態様において、本発明は、本発明の実施形態に係るカソード活性材料を備える電気化学セルを含む。
別の実施形態において、本発明は、可逆マグネシウム電池を含む。この可逆マグネシウム電池は、アノードと、カソードと、電解質とを含む。カソードは、集電体と、活性材料とを含む。前述の活性材料は、バナジウム酸化物および無機硫化物からなる複合物を含む。前述の複合物は、実質的に非結晶構造を有し、XRD分析で結晶ピークを示さない。
さらに別の実施形態において、本発明は、可逆マグネシウム電池含む。この可逆マグネシウム電池は、アノードと、カソードと、電解質とを含む。カソードは、集電体と、カソード活性材料とを含む。前述のカソード活性材料は、バナジウム酸化物源および無機硫化物源からなる機械的に粉砕された複合物であるナノ粒子を含む。前述の複合物は、非結晶母材に埋め込まれた結晶領域を含む。
上記は、一般的な説明として提供されており、以下の特許請求の範囲を限定する意図をしていない。現在好ましい実施形態およびさらなる利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによってより理解されるであろう。
本発明の一実施形態に係るマグネシウム電池を示す概略図である。 本発明の一実施形態に係る電気化学試験セルを概略的に示す図である。 本発明の一実施形態に係るV−P複合物のXRDパターンを示す図である。 およびPと比較して、本発明の一実施形態に係るV−P複合物のラマンスペクトルを示す図である。 本発明の一実施形態に係るナノ複合物の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す図である。 図5に示されたナノ粒子の選択区域1、2および3のエネルギー分散型X線分光(EDX)プロファイルを示す図である。 従来のMoと比較して、実施例1に作製されたV−P複合物の初期線形掃引ボルタモグラムを示す図である。 ボールミルにより粉砕されたVを含む活性材料と比較して、本発明に係る活性複合ナノ粒子材料を活性材料として用いて作製された動作電極の最初の3つのサイクルを示す図である。
本発明の好ましい実施形態の説明
本発明の発明者らは、マグネシウム二次電池用のカソード活性材料として機能することができる材料について、幅広い研究および評価を行っている。研究の目的は、容易に入手することができ、生産環境において安全かつ比較的容易に扱うことができ、且つ、高容量および高動作電位を有するマグネシウム電池を提供するカソード活性材料を発見することである。
特に明記しない限り、本明細書の全体において、記載された全ての範囲は、その範囲内の全ての値およびその部分範囲を含む。さらに、特に明記しない限り、本明細書の全体において、不定冠詞「a」または「an」は、「1つ以上」を意味する。
本発明の発明者らは、バナジウム酸化物と無機硫化物との非結晶組成物は、リチウムイオン、ナトリウムイオンおよびマグネシウムイオン、好ましくはマグネシウムイオンなどの金属イオンを挿入および放出することができることを発見した。本発明のいずれか1つの実施形態に記載の非結晶複合物をカソードに配合すると、高容量および高動作電位のマグネシウム電池を得ることができる。当該研究の最初の部分は、2014年4月24日に出願した米国特許出願第14/260544号に開示されている。その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
第1実施形態において、本発明は、カソード活性材料を提供する。このカソード活性材料は、バナジウム酸化物源および無機硫化物源からなる機械的に粉砕されれた複合物であるナノ粒子を含み、前述の複合物は、非結晶母材に埋め込まれた結晶領域を含む。
本発明の発明者らは、機械粉砕法によって得られた非結晶材料の継続研究において、機械粉砕処理条件の下で、結晶材料領域および非結晶材料領域を有する複合ナノ粒子を含む微粉砕材料を得ることができることを発見した。
さらなる実施形態において、本発明は、カソード活性材料を含む。このカソード活性材料は、バナジウム酸化物源および無機硫化物源からなる複合物を機械的に粉砕することにより得られたナノ粒子を含み、前述の複合物は、非結晶母材に埋め込まれた結晶領域を含む。
このようなナノ粒子の構造は、図5に示されている。複合ナノ粒子の体積の大部分は、円形区域1で示された非結晶領域であるが、ナノ粒子の内部には、円形区域2および3で示された小さな結晶領域が存在している。
驚くべきことに、結晶領域のEDXプロファイルは、実質的にバナジウムおよび酸素の存在を示している。これらの結晶領域を含む母材としての主な非結晶領域は、バナジウム、酸素およびガラス形成無機硫化物の元素を含む。したがって、図6において、機械的に粉砕された複合物V/Pの非結晶領域(図5の区域1)のEDXプロファイルは、バナジウムおよび酸素に加えて、リンおよび硫黄の存在を示している。
驚くべきことに、本発明の発明者らは、本明細書に記載された本発明のさまざまな実施形態に係る非結晶バナジウム酸化物材料が、3V級の酸化還元反応を行うことができるカソード活性材料を形成することができることを発見した。好ましい実施形態において、バナジウム酸化物またはバナジウム酸化物源は、五酸化バナジウム(V)である。特に明記しない限り、本発明の説明において、バナジウム酸化物および五酸化バナジウムという用語は、交換可能に使用されてもよい。いかなる特定の理論に拘束されることなく、各実施形態に含まれる複合母材の非結晶構造は、上記の金属イオン、特にMgイオンを受け入れるための多くの欠陥および歪曲空間を提供すると考えられる。また、母材中にS原子の存在は、MgイオンをO原子の強い吸着から「遮蔽」することによって、Mgイオンの母材内部への拡散および母材からの外部への拡散を増強することができる。さらに、各々の活性材料は、上述した多重酸化還元反応の酸化還元要素として機能するバナジウムの能力から恩恵を受けている。いかなる理論に限定されないが、本発明の発明者らは、バナジウム酸硫化物の非結晶領域が、本発明の活性材料の電気化学活性に寄与すると考えている。
さまざまな実施形態に係るVの無定形化は、従来に既知の急冷法および機械粉砕法を採用して行ってもよい。本発明の出願人は、作製時、P、B、SiS、GeS、AlおよびGaの少なくとも1つを含むガラス形成剤などの無機硫化物化合物をVに添加し、形成条件を慎重に監視することによって、非結晶母材に埋め込まれた小さな結晶領域を有する複合ナノ粒子を含有する実質的に非結晶材料または非結晶材料を得ることができる。結晶化度は、時間、温度、組成物の含量、急冷法および/または非結晶化方法に使用された機械粉砕媒体の実際の制御によって決定されてもよい。
また、複合材料中のVの相対含有量のモル%は、カソード活性成分としてこの複合材料を含有するマグネシウムセルの性能に影響を与える。含有量モル%が約35%〜約95%である場合、より高い可逆酸化還元活性を得ることができる。Vの含有量は、好ましくは60〜90モル%であってもよく、最も好ましくは67〜90モル%であってよい。しかしながら、本発明の発明者らは、最も好ましい含有量が、複合材料の実際の成分および複合材料を得るために使用された方法に応じて変化することを判明した。好ましい実施形態は、当業者に公知の実験方法によって決定されることができる。
無機硫化物または無機化合物の供給源は、好ましくは、P、B、SiS、GeS、AlおよびGaからなる群から選択されてもよい。非常に好ましい実施形態において、Pは、無機硫化物として使用される。これらの化合物の混合物を使用することもできる。理論的には、Vとガラス質複合物を形成する任意の無機硫化物を採用してもよい。
本発明に従って、「実質的に非結晶」という記載は、XRDにより分析される場合、材料がいずれかの結晶ピークを示さないことを意味する。
一実施形態において、市販の最低純度98%、好ましくは最低純度99%、最も好ましくは最低純度99.5%を有するVは、所定のモル%で、無機硫化物と物理的に混合することができる。その後、ボールミルなどの従来の粉砕装置で、この物理混合物を共粉砕することができる。混合物の共粉砕は、粉砕された複合混合物のXRDスペクトルが結晶材料に関連するピークがなくなるまでまたは図5に示された複合ナノ粒子が得られるまで、行われる。バナジウム酸化物−無機硫化物の非結晶複合物という用語を用いて、本発明に係るさまざまな実施形態に記載の活性材料を表すことができる。
別の実施形態において、適切な加熱炉またはオーブンにおいて、Vと無機硫化物との物理混合物を加熱し、水中に入れることによってまたは2つのプレートまたはローラ間に押圧することによって、急冷させることができる。次に、得られた非結晶固溶体を粉砕してもよい。粉砕物の粒径は、特に限定されないが、好ましい実施形態において、10μm以下、より好ましくは5μm以下、最も好ましくは1μm以下である。
カソードを作製するために、本発明のいずれかの実施形態に記載のV−無機硫化物非結晶複合物をバインダと混合することができる。バインダ材料は、特に限定されず、当業者によって認識される任意の適切なバインダを使用することができる。適切なバインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、およびポリイミドを含むことができる。好ましい一実施形態において、ポリテトラフルオロエチレンを使用することができる。
本発明の一実施形態において、V−無機硫化物の非結晶複合物を、グラファイト、カーボンナノチューブまたはカーボンブラックなどの炭素系材料と混合することができる。
カソード組成物中のバインダおよび炭素質材料の量は、50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、好ましくは10重量%以下にすることができる。
本発明に係るカソードは、リチウム電池、ナトリウム電池またはマグネシウム電池のいずれかに使用されてもよい。好ましい実施形態において、バナジウム酸化物および無機硫化物の非結晶複合物を含むカソードを備える可逆マグネシウム電池が提供される。
マグネシウム電池のアノードは、マグネシウム電池に適する任意のアノード、例えば、金属マグネシウムからなるアノードまたはマグネシウム金属を含有する組成物、例えばMgBiからなるアノードであってもよい。アノード活性材料は、導電性材料およびバインダをさらに含むことができる。導電性材料の例として、カーボンブラックなどのカーボン粒子が挙げられる。バインダの例として、PVDF、PTFE、SBRおよびポリイミドなどの種々のポリマが挙げられる。
電解質層は、アノードとカソードとの間に配置されてもよい。正極と負極との間の電気絶縁を維持するために、セパレータを設けてもよい。セパレータは、電極間の物理接触および/または短絡の危険性を低減するように構成された繊維、粒子、ウェブ、多孔質シート、または他の形態の材料を含むことができる。セパレータは、一体の要素であってもよく、粒子または繊維のような複数の個別スペーサ要素を含んでもよい。電解質層は、電解液に浸漬されたセパレータを含むことができる。いくつかの例では、たとえば、高分子電解質を使用する場合、セパレータを設けなくてもよい。
電解質層は、有機溶媒などの非水性溶媒、およびマグネシウム塩などの活性イオンの塩を含むことができる。マグネシウム塩によって提供されたマグネシウムイオンは、活性材料と電解的に相互作用する。電解質は、マグネシウムイオンを含む電解質であってもよく、またはそうでない場合、マグネシウムイオンを提供することができる電解質、たとえばマグネシウム塩を含む非水性電解質または非プロトン性電解質であってもよい。電解液は、有機溶剤を含むことができる。マグネシウムイオンは、マグネシウムの塩または錯体、または任意の適切な形態として存在してもよい。
電解質は、他の化合物、たとえばイオン伝導性を高める添加剤を含むことができる。いくつかの例において、電解質は、酸性または塩基性化合物を添加剤として含むことができる。電解質は、液体、ゲルまたは固体であってもよい。電解質は、たとえば可塑化ポリマを含むポリマ電解質であってもよく、マグネシウムイオンを注入したポリマ、またはそうでない場合、マグネシウムイオンを含むポリマを有してもよい。いくつかの例において、電解質は、溶融塩を含むことができる。一態様において、電解質は、フェニルマグネシウムクロライド(PhMgCl)および三塩化アルミニウム(AlCl3−)のテトラヒドロフラン(THF)溶液、マグネシウム単炭化物[Mg(CB1112]のテトラグライム(TEGDME)溶液、または過塩素酸マグネシウム[Mg(ClO]のアセトニトリル(ACN)溶液を含むことができる。好ましい実施形態において、電解質は、[Mg(ClO]のACN溶液であってもよい。
カソード活性材料は、シート状、リボン状、粒子状、または他の物理形状で存在してもよい。カソード活性材料を含む電極は、集電体によって支持されてもよい。
集電体は、電極を支持する金属シートまたは他の導電性シートを含んでもよい。集電体は、カーボン、カーボン紙、カーボン布、金属または貴金属メッシュ、もしくは金属または貴金属箔から形成されてもよい。
図1は、マグネシウム二次セル5の一構成例を示す図である。セル5は、本発明のV−無機硫化物非結晶複合物をカソード活性材料として含む正極10と、電解質層12と、負極14と、カソード集電体16と、負極ハウジング18と、不活性層21を含む正極ハウジング20と、密封ガスケット22とを含む。電解質層12は、電解液に浸漬されたセパレータを含むことができる。正極10は、カソード集電体16によって支持されてもよい。この例において、負極14は、金属マグネシウムからなる活性材料を含む。
図2は、本発明のカソード活性材料の評価および特徴付けに有用であり得る三極セルを示す概略図である。図2において、セルは、シリコーン蓋を有するガラス瓶を備えるように構成される。参照電極(R.E.)は、アセトニトリル(ACN)に溶解された0.01MのAgNOおよび0.1Mの過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)からなる参照溶液にAg線を挿入することにより得られたAg/Ag電極である。動作電極(W.E.)は、80目のステンレス鋼網から形成される。試験される活性材料層が、ステンレス鋼網の上面に形成される。アノード(C.E.)は、マグネシウム箔から形成される。電解質は、1MのMg(ClOのACN溶液である。図2に概略的に示された試験セルは、サイクリックボルタンメトリー、インピーダンスおよび充電/放電試験の実施に有用であり得る。このような試験は、試験セルをグローブボックス内に配置することによって、アルゴン雰囲気下で行われてもよい。
本発明を一般に説明したが、例示のみの目的のために本明細書に提供され、特に明記しない限り限定することを意図していない特定の具体的な実施例を参照することによって、本発明の更なる理解を得ることができる。
実施例
Ar雰囲気下で、出発原料(VおよびP)を370rpmの回転速度で、20時間ボールミリングすることによって、本発明の材料を作製した。ボールミリングには、ZrO製ボールおよびポットを使用した。ボールミリングした後、Ar雰囲気下で試料を収集した。N−メチルピロリドン(NMP)溶液において、本発明の試料をアセチレンブラック(HS−100、電気化学工業)およびPVDF(KF9305、Kureha社)と混合することによって、均一なカソードインクを作製した。得られたインクを80目のステンレススチール上に流延した後、真空下120℃で乾燥した。
図3は、ボールミリング粉砕工程に作成されたV−P材料のXRDパターンを示している。XRDによって結晶ピークが観察されなかったため、得られた材料は、非結晶であった。
図4は、VおよびPと比較して、V−P材料のラマンスペクトルを示している。Pの添加は、VおよびPと異なる化学環境を提供する。また、約400〜500cm−1で、硫黄の特徴ピークが観察された。
図5は、ボールミリングされたV−P試料のTEM像を示している。非結晶母体の複合物として示されたナノ粒子は、埋め込まれた結晶領域を有する。区域1は、観察された典型的な非結晶構造を表し、この非結晶構造は、試料中のナノ粒子体積の大部分を占めている。区域2および3は、非結晶母材中に埋め込まれたVの結晶領域を表す。図5中のV−P試料の選択区域のEDXプロファイルは、図6に示されている。非結晶領域からは、元素V、O、PおよびSが明確に検出され、結晶領域からは、元素VおよびOのみが検出された。
図7は、従来の電解質(ACNに溶解された1MのMg(ClO)において、従来のシェブレルMo材料と比較して、V−P材料の初期線形掃引ボルタモグラムを示している。走査速度は、0.1mV/秒であり、動作温度は、25℃であった。電流は、陰極で掃引され、各クリックボルタモグラムにおいて観察された最大電流で正規化された。電位は、Ag参照電極により正規化された。V−無機硫化物の複合物から観察された動作電位は、シェブレル相(比較例1)の電位よりも高かった。また、我々の実験によれば、異なるマグネシウム電池の電解質から、同程度の放電容量を得た。また、留意すべきことは、Ag/Agに対する0Vの電位が、Mg/Mg2+に対する約2.5Vの電位に対応することである。
図8は、図2に示された三極セル構造において動作電極として使用された試料V−Pナノ粒子複合物の最初の3つのサイクルを示している。ボールミリングされたV試料(比較例2)の初期サイクルは、比較のために示されている。電流密度は、0.1mA/cmであり、動作温度は、25℃であった。電位は、Ag参照電極により正規化された。明らかに、V−P試料から観察された容量は、V試料の容量よりも高かった。セルを繰り返して循環させる際に、主にアノード側から副反応によって、容量の漸減が観察された。
結論として、本発明の実施形態に従って合成されたバナジウム酸化物−無機硫化物の非結晶化合物は、ベンチマークとしてのシェブレルMo材料および参照されるV材料よりも大幅に改善された電気化学的性質を示し、本発明の実施形態に従って、従来の既知カソード材料よりも高いエネルギー密度を得ることができることを示唆している。
上記の説明および実施例に照らして、本発明に対して多くの修正および変形を行うことが可能である。したがって、特許請求の範囲内で、本明細書に具体的に記載された方法と異なる方法で本発明を実施することができることを理解すべきである。これらの実施形態は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。

Claims (32)

  1. カソード活性材料であって、
    バナジウム酸化物および無機硫化物からなる複合物を含み、
    前記複合物は、実質的に非結晶構造を有し、XRD分析で結晶ピークを示さない、カソード活性材料。
  2. 前記無機硫化物は、P、B、SiS、GeS、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のカソード活性材料。
  3. 集電体と、
    請求項1に記載の活性材料とを含む、カソード。
  4. 電気化学セルであって、
    アノードと、
    請求項3に記載のカソードと、
    電解質とを含み、
    前記アノードおよび前記カソードは、リチウムイオン、ナトリウムイオンおよびマグネシウムイオンからなる群から選択される金属イオンを吸着および放出することができる、電気化学セル。
  5. 請求項4の電気化学セルを含むマグネシウム電池。
  6. カソード活性材料であって、
    バナジウム酸化物源および無機硫化物源からなる機械的に粉砕された複合物であるナノ粒子を含み、
    前記複合物は、非結晶母材に埋め込まれた結晶領域を含む、カソード活性材料。
  7. 前記非結晶母材は、少なくともバナジウム、酸素および硫黄を含む、請求項6に記載のカソード活性材料。
  8. 前記結晶領域は、実質的に、EDX分析によって実質的にバナジウムおよび酸素のみを含むと決定される、請求項6に記載のカソード活性材料。
  9. 前記バナジウム酸化物源は、五酸化バナジウムからなる、請求項6に記載のカソード活性材料。
  10. 前記無機硫化物源は、P、B、SiS、GeS、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載のカソード活性材料。
  11. 前記無機硫化物源は、Pである、請求項10に記載のカソード活性材料。
  12. 前記非結晶母材は、バナジウム、酸素、リンおよび硫黄から成る、請求項11に記載のカソード活性材料。
  13. 前記機械的に粉砕された複合物は、ボールミルにより粉砕される、請求項6に記載のカソード活性材料。
  14. 集電体と、
    請求項6に記載の活性材料とを含む、カソード。
  15. 前記ナノ粒子の非結晶母材は、少なくともバナジウム、酸素および硫黄を含む、請求項14に記載のカソード。
  16. 前記ナノ粒子のバナジウム酸化物源は、五酸化バナジウム(V)を含む、請求項14に記載のカソード。
  17. 前記ナノ粒子のバナジウム酸化物源は、五酸化バナジウム(V)からなる、請求項14に記載のカソード。
  18. 前記ナノ粒子の無機硫化物源は、P、B、SiS、GeS、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項14に記載のカソード。
  19. 前記無機硫化物源は、Pである、請求項18に記載のカソード。
  20. 前記非結晶母材は、バナジウム、酸素、リンおよび硫黄から成る、請求項19に記載のカソード。
  21. 前記バナジウム酸化物源は、五酸化バナジウム(V)であり、
    前記無機硫化物源は、Pである、請求項14に記載のカソード。
  22. 前記Vの含有量は、前記Vおよび前記無機硫化物の合計モル%の67〜90モル%である、請求項16に記載のカソード。
  23. 前記Vの含有量は、前記Vおよび前記Pの合計モル%の67〜90モル%である、請求項21に記載のカソード。
  24. 電気化学セルであって、
    アノードと、
    請求項14に記載のカソードと、
    電解質とを含み、
    前記アノードおよび前記カソードは、リチウムイオン、ナトリウムイオンおよびマグネシウムイオンからなる群から選択される金属イオンを吸着および放出することができる、電気化学セル。
  25. 請求項24の電気化学セルを含むマグネシウム電池。
  26. 前記ナノ粒子のバナジウム酸化物源は、五酸化バナジウム(V)を含む、請求項25に記載のマグネシウム電池。
  27. 前記ナノ粒子のバナジウム酸化物源は、五酸化バナジウム(V)からなる、請求項25に記載のマグネシウム電池。
  28. 前記ナノ粒子の無機硫化物源は、P、B、SiS、GeS、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項25に記載のマグネシウム電池。
  29. 前記無機硫化物源は、Pである、請求項28に記載のマグネシウム電池。
  30. 前記Vの含有量は、前記Vおよび前記Pの合計モル%の67〜90モル%である、請求項25に記載のマグネシウム電池。
  31. 前記バナジウム酸化物源は、五酸化バナジウム(V)であり、
    前記無機硫化物源は、Pである、請求項25に記載のマグネシウム電池。
  32. 前記Vの含有量は、前記Vおよび前記Pの合計モル%の67〜90モル%である、請求項31に記載のマグネシウム電池。
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