このため、第1の態様では本発明は、欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は下層上皮に付着した異常粘液に起因又は関連するヒト患者における病態を治療する方法であって、モノマー残基の少なくとも30%がG残基であるアルギネートオリゴマーを、患者において欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は上記異常粘液を有する粘膜表面の少なくとも一部で1%〜6%(w/v)のアルギネートオリゴマーの局所濃度を達成するのに十分な量で患者に投与し、それにより上記粘膜表面からの粘液の少なくとも部分的な脱離をもたらすことを含む、方法を提供する。
本発明は、欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は下層上皮に付着した異常粘液に起因又は関連するヒト患者における病態の治療への使用のためのアルギネートオリゴマーであって、アルギネートオリゴマーのモノマー残基の少なくとも30%がG残基であり、上記アルギネートオリゴマーが患者において欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は上記異常粘液を有する粘膜表面の少なくとも一部で1%〜6%(w/v)のアルギネートオリゴマーの局所濃度を達成するのに十分な量で患者に投与され、それにより上記粘膜表面からの粘液の少なくとも部分的な脱離がもたらされる、アルギネートオリゴマーを更に提供する。
代替的に述べると、本発明は、欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は下層上皮に付着した異常粘液に起因又は関連するヒト患者における病態の治療に使用される薬剤の製造におけるアルギネートオリゴマーの使用であって、アルギネートオリゴマーのモノマー残基の少なくとも30%がG残基であり、上記薬剤が患者において欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は上記異常粘液を有する粘膜表面の少なくとも一部で1%〜6%(w/v)のアルギネートオリゴマーの局所濃度を達成するのに十分な量で患者に投与され、それにより上記粘膜表面からの粘液の少なくとも部分的な脱離がもたらされる、使用を更に提供する。
代替的に述べると、これらの本発明の様々な態様において、アルギネートオリゴマーは欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は下層上皮に付着した異常粘液に起因又は関連する病態を有するヒト患者の治療に使用することができる。この点において、かかる異常粘液はCFに特徴的な粘液(粘膜表面から脱離していない粘液)であるが、一般的な根本欠陥(CFTR機能の喪失又は欠損)を考えると、上記で論考されるような他の病態にも見られ得ることを理解されたい。特に、下記でより詳細に説明されるように、本発明はかかる病態の任意の合併症の治療を含む。したがって、本明細書における上記病態の治療への言及は、1つ又は複数の合併症又は病態に関連する臨床症状の治療を含む。
本明細書で使用される場合、「病態」という用語は、遺伝的欠陥若しくは突然変異により生じたものか、又は例えば上記で論考されるような、例えば環境的及び/又は臨床的曝露による後天性の病態を含む任意の他の形で生じたものかにかかわらず任意の疾患、障害又は病態を含む。
「欠陥CFTRイオンチャネル」は、CFTR機能における任意の欠陥又は欠損、すなわちCFTR機能不全を含むことが上記から理解される。このため、「欠陥CFTRイオンチャネル」は事実上、「欠陥CFTRイオンチャネル機能」を意味し、代替的にそのように表される場合がある。この病態はしたがって、CFTR機能不全を特徴とする病態とみなすことができる。下記でより詳細に論考されるように、これは非機能的であるか、又は機能の低減を有する、すなわち部分的又は完全にCFTRイオンチャネル活性を欠いている(言い換えると、CFTRイオンチャネル活性が低減した又は抑止された)という意味で欠陥のあるCFTRイオンチャネルを含み得る。このため、機能的CFTRイオンチャネルの欠如(病態の根底にある可能性がある)は、完全に機能的な(すなわち、完全又は正常なCFTR活性を示す)CFTRチャネルの欠如を含み得る。例えばチャネルの発現若しくは細胞表面への輸送の低減若しくは非存在の結果として、又は内在化若しくは代謝回転、若しくは細胞表面からのCFTRイオンチャネルの喪失/枯渇をもたらす他のプロセシングの増大による、機能的CFTRイオンチャネルの喪失又は枯渇も含まれる。本質的に、欠陥CFTRイオンチャネルに関連又は起因する病態は、CFTRイオンチャネル数の低減若しくは存在するCFTRイオンチャネル活性の低減、又はその両方によるものかにかかわらず、CFTRの機能又は活性が低減する任意の病態を含む。特に、欠陥CFTRイオンチャネルは異常粘液、より具体的には粘膜表面から脱離していない粘液をもたらす。
或る特定の実施の形態では、病態はCF、非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性、気道における異常粘液クリアランス及び/又は慢性微粒子吸入によって生じる呼吸困難、及び/又は慢性炎症性呼吸器障害、例えばCOPD(並びにその亜型である慢性気管支炎及び肺気腫)、気管支拡張症、喘息及び/又は慢性副鼻腔炎であり得る。より一般には、病態は呼吸器障害、例えば閉塞性呼吸器障害であり得る。より特には、より具体的な実施の形態では、病態は慢性炎症状態、気道リモデリング及び気道感染による増悪を特徴とし得る。
他の実施の形態では、病態は上記に挙げた病態の粘液関連合併症であり得る。更なる具体的な実施の形態では、本発明はタバコ喫煙者、並びに微粒子刺激物、例えば煙粒子(タバコ、木材等)、汚染物質、粉塵(アスベスト、綿、炭、石、動物の糞等)及び胞子の慢性吸入に曝露された他の対象における粘液鬱滞及び呼吸困難の治療を提供する。
このため、第1の態様の具体的な一実施の形態では、本発明はヒト患者における嚢胞性線維症を治療する方法であって、モノマー残基の少なくとも30%がG残基であるアルギネートオリゴマーを、患者における粘膜表面の少なくとも一部で1%〜6%(w/v)のアルギネートオリゴマーの局所濃度を達成するのに十分な量で患者に投与し、それにより上記粘膜表面からの粘液の少なくとも部分的な脱離をもたらすことを含む、方法を提供する。
本発明は、ヒト患者における嚢胞性線維症の治療への使用のためのアルギネートオリゴマーであって、アルギネートオリゴマーのモノマー残基の少なくとも30%がG残基であり、該アルギネートオリゴマーが患者における粘膜表面の少なくとも一部で1%〜6%(w/v)のアルギネートオリゴマーの局所濃度を達成するのに十分な量で患者に投与され、それにより上記粘膜表面からの粘液の少なくとも部分的な脱離がもたらされる、アルギネートオリゴマーを更に提供する。
代替的に述べると、本発明は、ヒト患者における嚢胞性線維症の治療に使用される薬剤の製造におけるアルギネートオリゴマーの使用であって、アルギネートオリゴマーのモノマー残基の少なくとも30%がG残基であり、上記薬剤が患者における粘膜表面の少なくとも一部で1%〜6%(w/v)のアルギネートオリゴマーの局所濃度を達成するのに十分な量で患者に投与され、それにより上記粘膜表面からの粘液の少なくとも部分的な脱離がもたらされる、使用を更に提供する。
代替的に述べると、これらの本発明の様々な態様において、アルギネートオリゴマーはCFの患者の治療に使用することができる。特に、下記でより詳細に説明されるように、本発明はCFに見られ、CFを特徴付け、及び/又は欠陥CFTRイオンチャネル(特に異常粘液、より具体的には粘膜表面から脱離していない粘液をもたらす欠陥CFTRイオンチャネル)を有する異常粘液に関連又は起因する任意の病態又は障害と本明細書で規定されるCFの任意の合併症の治療を含む。したがって、本明細書におけるCFの治療への言及は、1つ又は複数のCFの合併症の治療を含む。
他の態様では、本発明は、ヒト患者においてCFTR機能不全及び/又は下層上皮に付着した異常粘液、及び/又はその合併症の治療について上記したものの特徴を有する方法及び医学的使用を提供するとみなすことができる。
粘膜表面は粘液を分泌する、有する、保有する又は粘液で任意の程度までコーティングされる人体の内部又は外部の両方の任意の表面と本明細書で規定される。より具体的には、粘膜表面は粘液を分泌する、有する、保有する又は粘液で任意の程度までコーティングされる、典型的には上皮細胞層(上皮)として配置される上皮細胞を含む組織内層である。「粘膜("mucous membrane" and "mucosa")」という用語が粘膜表面に言及するために代替的に用いられ得ることが認められている。本発明によると、本発明の治療の標的とされる粘膜表面は機能的CFTRの欠如の影響を受けるため(すなわち欠陥CFTRイオンチャネルを有する、又は言い換えるとCFTR機能不全を示す粘膜表面)、CFに特徴的な異常粘液(下層上皮に付着した粘液)を分泌する、有する、保有する又は異常粘液で任意の程度までコーティングされる。
粘膜表面での欠陥CFTRイオンチャネル機能(CFTR機能不全)は、正常又は健常粘膜表面と比較したCFTRイオンチャネル能力、より具体的にはCFTR媒介イオン輸送の低減、特に任意のかかる輸送を正常又は健常粘液、特に非付着粘液を維持するのに不十分なものとする低減の観点から表すことができる。「CFTR媒介イオン輸送」という用語には、CFTR自体を介したイオンの輸送、更には二次機構、例えばCFTRを介して輸送されるイオンにより維持されるイオン濃度勾配によって推進される粘膜表面の他のイオンチャネルタンパク質を介したイオンの輸送が含まれる。かかるイオンとしては、塩化物イオン、ナトリウムイオン及び重炭酸イオンが挙げられる。
粘膜表面での欠陥CFTRイオンチャネル機能(CFTR機能不全)は、この場合細胞表面でのCFTRの集団のイオンを輸送する能力を減少させる任意の機構又は機構の組合せによって引き起こされ得る。これには、例えばタンパク質自体の欠陥による、タンパク質において一時的又は永続的な構造変化をもたらす作用物質及び/又はイオン輸送ポア/チャネルを遮断する作用物質による細胞表面でのCFTRのイオン輸送活性の阻害が含まれ得る。機構的には、阻害効果はポア/チャネルが或る程度まで遮断される(コンダクタンスが減少する)場合及び/又はゲーティング期間若しくは確率が減少する場合に見ることができる。イオンを輸送する細胞表面でのCFTRの集団の能力は、細胞表面でのCFTRが過度に少ない場合にも減少し得る。これはCFTR遺伝子からの発現が不十分な場合に起こる可能性がある。これは、その集団の一部のCFTRが正確に細胞表面に到達又は挿入されるのを防ぐ欠陥がCFTR遺伝子、転写産物又は翻訳産物に存在する場合にも起こる可能性がある。これは、CFTR代謝回転に関与する機構が補充ではなく除去(内在化)を支持して平衡を欠く場合にも起こる可能性がある。この後者の機構はCFTRタンパク質における欠陥の結果であるか、又は環境要因に起因し得る。粘膜表面での欠陥CFTRイオンチャネル機能を有する対象が正常よりも少ない数の粘膜表面のCFTRを有し、CFTRの集団内のCFTRが正常よりも低いイオン輸送活性を有する場合もあり得る。
このため本発明によって、粘膜表面での機能的CFTR(例えば完全に機能的なCFTR)の欠如が何らかの手段により、粘膜表面での欠陥CFTRイオンチャネル機能(CFTR機能不全)、ひいては正常又は健常粘液、特に非付着粘液を維持するのに不十分なCFTRイオンチャネルの能力をもたらし得ることが認められる。その結果として、機能的CFTRの欠如の影響を受ける粘膜表面(すなわち、CFTR機能不全を示す粘膜表面)を有する患者は、欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は下層上皮に付着した異常粘液(すなわち、CFに特徴的な粘液)に起因又は関連する病態を患う可能性がある。
特に、機能的CFTRの欠如の影響を受ける粘膜表面(すなわち、CFTR機能不全を示す粘膜表面)の上皮細胞からの粘液の脱離を達成するために、或る特定の局所濃度の或る特定のアルギネートオリゴマー、すなわち少なくとも30%のモノマー残基がG残基である1%〜6%(w/v)のアルギネートオリゴマーが粘膜表面で必要とされると判断した。このことはアルギネートオリゴマーが、粘膜表面での又は粘膜表面に到達するオリゴマーがこの濃度となる、より具体的には粘液層又は粘液コーティングでの濃度がこの範囲となるように投与又は送達されることを意味する。このため例えば、粘膜表面の少なくとも一部のルーメン又は粘膜表面の少なくとも一部の粘液界面での局所濃度がこのレベルとなる。特に、この濃度は上皮の頂端側又は粘膜表面で達成される。
嚢胞性線維症は異常な物理的特性、典型的には粘度の増大、及び粘液の場合には粘膜表面の上皮への付着を有する肺、膵臓及び肝臓からの粘液及び/又は外分泌液を特徴とするヒト疾患である。これらの根本要因は数ある病態の中でも、呼吸困難、気道感染(慢性及び急性;例えば気管支又は肺の)、気道炎症(例えば気管支炎症(感染による場合に気管支炎と称される)又は肺炎症/肺臓炎(感染による場合に肺炎と称される))、肺高血圧、心不全、呼吸不全、肺リモデリング、副鼻腔感染、副鼻腔炎(急性、亜急性及び慢性)、顔面痛、頭痛、異常鼻漏、粘稠便、便秘、腸閉塞、栄養吸収不良、膵炎症、膵炎、糖尿病、胆石、肝硬変及び不妊に現れる。特に肺における抗生物質に対する応答の減少も見られる。異常粘液及び外分泌液は、上皮膜を介して塩化物イオン及び重炭酸イオンを輸送し、それによりナトリウム等の他のイオンの平衡を調節するこのタンパク質の能力に影響を及ぼす嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)における突然変異に起因する。CFTRの多くのかかる突然変異が同定されており、一部は他よりも顕著なCF表現型を生じる。したがって、患者が上述の病態、異常粘液(例えば、少なくとも1つの粘膜表面での上皮に付着した粘液)、超高粘度の痰又は他の分泌液及び/又は外分泌液、及びそのCFTR遺伝子の各々における突然変異の1つ又は複数、好ましくは2つ、3つ、4つ、5つ、6つ若しくはそれ以上、又は全てを有する場合に患者はCFを患うとみなされる。
CFは「汗試験」によって好都合に診断することができる。これは当業者によく知られた日常試験である。簡潔に述べると、ピロカルピンを皮膚上に置き、取込みを電流により誘導する。治療部位でピロカルピンに応答して放出される汗を採取した後(例えば濾紙片に吸収させる)、その塩含量を分析する。CFの個体は正常よりも1.5倍〜2倍高い塩濃度を有する。より具体的には、生後6ヶ月を含むそれ以下の乳児については、29mmol/L以下の塩化物レベルはCFの可能性が極めて低いことを意味し、30mmol/L〜59mmol/LのレベルはCFの可能性があることを意味し、60mmol/L以上のレベルはCFの可能性が高いことを意味する。生後6ヶ月よりも高年齢の人々については、39mmol/L以下の塩化物レベルはCFの可能性が極めて低いことを意味し、40mmol/L〜59mmol/LのレベルはCFの可能性があることを意味し、60mmol/L以上のレベルはCFの可能性が高いことを意味する。
本発明によると、本発明の治療が適用される乳児患者(生後6ヶ月以下)は25mmol/L超、好ましくは29mmol/L、35mmol/L、40mmol/L、45mmol/L、50mmol/L、55mmol/L又は60mmol/L超の汗中塩化物レベルを有し、他の全ての患者は35mmol/L超、好ましくは39mmol/L、45mmol/L、50mmol/L、55mmol/L又は60mmol/L超の汗中塩化物レベルを有する。
上記で論考されるように、CFTR機能不全はCF以外の病態における根本要因として認められている。かかる機能不全は1つの突然変異CFTR対立遺伝子の遺伝による遺伝性であるか、又は例えば微粒子(特にタバコ及び木材の煙)の慢性吸入及び(例えばCOPD、及びその亜型であるCB及び肺気腫、気管支拡張症、並びに慢性副鼻腔炎における)気道の慢性炎症による後天性であり得る。
非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性は、対象が細胞内プロセシング及び/又はそれにより発現されるタンパク質の細胞表面イオンチャネル活性をもたらす突然変異を保有しない1つのCFTR対立遺伝子、並びに細胞内プロセシング及び/又はそれにより発現されるタンパク質の細胞表面イオンチャネル活性にとって有害な突然変異を有する1つの対立遺伝子を有する臨床病態である。かかる対象は、様々なCFの合併症の幾つかが常に明らかに見られる限りにおいて上記に規定される顕性CFを呈しないが、ヘテロ接合性対象は少なくとも時折CFを特徴付ける軽微な形態の異常粘液を有し、CFの明確な診断を促すほど十分に重症ではないが軽微な形態のCFの合併症の1つ又は複数を示し得る。具体的には、CFTRヘテロ接合性の対象は再発性の「特発性」膵炎、先天性両側輸精管欠損、慢性副鼻腔炎及び特発性気管支拡張症を有することが観察されるが、かかる患者は本明細書に記載のCF合併症のいずれかを示し得る。
非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性の疑いのある患者は汗中塩化物レベルが「可能性が極めて低い」及び「可能性が高い」範囲の間に位置するため、CF汗試験を用いてかかる患者を同定することができる。乳児患者(生後6ヶ月以下)については、これは25mmol/L超、好ましくは29mmol/L、35mmol/L、40mmol/L、45mmol/L、50mmol/L、55mmol/L超であるが、60mmol/L未満の汗中塩化物レベルとすることができ、他の全ての患者は35mmol/L超、好ましくは39mmol/L、45mmol/L、50mmol/L、55mmol/L超であるが、60mmol/L未満の汗中塩化物レベルを有する。その後、疑いのある患者の遺伝子検査により診断を確認することができる。
慢性閉塞性肺疾患(COLD)及び慢性閉塞性気道疾患(COAD)とも称されるCOPDは拡張、慢性的に不良な気流及び痰生成の増加のない気道の慢性炎症を特徴とする慢性閉塞性肺疾患の総称である。慢性気管支炎(気管支の粘膜の炎症)及び肺気腫(肺組織、具体的には肺胞の崩壊)の病態がCOPDの亜型であることが一般に認められている。COPDは通常、気管支拡張剤の投与によって改善されない慢性的に低い肺機能及び慢性湿咳として診断される。例えばMRI及び高分解能コンピュータ断層撮影(HRCT)を用いた胸部イメージングによってもCOPDに特徴的な生理学を明らかにし、他の呼吸器病態を除外することができる。
現在、COPDは可逆的ではなく、患者は時間とともに悪化し、最終的に呼吸不全で死亡する。COPDにおいて観察される痰生成の増加及びCF粘液と同様のその特徴は、上記で論考されるようなCFにおいて観察される呼吸器合併症、特に気道の感染に関連する合併症がCOPD患者によく見られることを意味する。
気管支拡張症は、炎症性応答の結果としての慢性拡張及び後続の気管支の崩壊、気管支拡張剤の投与によって改善され得る慢性的に低い肺機能、並びに慢性湿咳を特徴とする疾患である。診断は通常、肺機能試験、並びに例えば疾患に特徴的な拡張した気管支を明らかにするMRI及び高分解能コンピュータ断層撮影(HRCT)を用いた胸部イメージングに基づく。
現在、気管支拡張症は可逆的ではなく、患者は時間とともに悪化し、最終的に呼吸不全で死亡する。気管支拡張症において観察される痰生成の増加及びCF粘液と同様のその特徴は、上記で論考されるようなCFにおいて観察される呼吸器合併症、特に気道の感染に関連する合併症が気管支拡張症患者によく見られることを意味する。
慢性副鼻腔炎は3ヶ月を超える長期の副鼻腔の炎症である。この炎症の原因は感染、アレルギー(通常は粉塵、汚染物質、花粉、胞子及び微生物を含む微粒子に対する)又は自己免疫応答であり得る。炎症は粘液生成の増大及び副鼻腔排液の障害及び二次細菌感染につながり、これが炎症性応答に更に寄与する。慢性副鼻腔炎の患者の副鼻腔粘液がCF粘液と同様の特徴を有することは、上記で論考されるようなCFにおいて観察される呼吸器、特に副鼻腔の合併症が慢性副鼻腔炎の患者によく見られることを意味する。慢性副鼻腔炎の診断は通常、鼻内視鏡検査によって確認される。
喘息は気道、主に細気管支の周囲の平滑筋の拘縮によって生じる一過性の気管支収縮のために気流閉塞の急性エピソードとして現れる慢性気道疾患である。かかる増悪は外部刺激への曝露によって誘発されることが多い。気管支炎症はまた、組織腫脹及び浮腫につながることで更なる閉塞を引き起こす。瘢痕及び炎症並びに発達過剰の粘液腺による気道の増粘及びリモデリングの慢性症状が、気管支収縮及び気道閉塞の顕性エピソードの根底にある。
現在、喘息の治癒は存在せず、治療は急性症状の制御に限られている。痰生成の増加を含む長期喘息に関連する気道の慢性炎症性プロセス及び組織リモデリングは、上記で論考されるようなCFにおいて観察される呼吸器合併症、特に気道の感染に関連する合併症が喘息患者に見られることを意味する。
微粒子刺激物、例えば煙粒子(タバコ、木材等)、汚染物質、粉塵(アスベスト、綿、炭、石、動物の糞等)及び胞子の吸入が、CFTRイオン輸送活性の阻害及び/又は上皮細胞表面からのCFTRの内在化の促進により欠陥CFTRイオンチャネル機能(CFTR機能不全)をもたらし得ることも認識されている。この長期にわたる曝露は、慢性炎症性呼吸器障害の顕性症状を示さない対象においてCFに特徴的な粘液の形成、ひいては異常粘液クリアランス及び/又は呼吸困難につながる可能性がある。かかる対象に見られる異常粘液クリアランス(又は粘液鬱滞)は、上記で論考されるようなCFにおいて観察される呼吸器合併症、特に気道の感染及び炎症に関連する合併症がかかる対象、例えば喫煙者によく見られることを意味する。
したがって或る特定の実施の形態では、本発明の方法は患者が患者の1つ又は複数の粘膜表面に欠陥CFTRイオンチャネルを有することを判断する、及び/又は患者に由来する粘液サンプルを粘度の上昇について評価する、及び/又は1つ又は複数の粘膜表面の上皮への粘液の付着を評価する先行工程を更に含む。他の実施の形態では、本発明の方法は、患者が欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は下層上皮に付着した異常粘液に起因又は関連する病態を有することを判断する先行工程を更に含む。より具体的な実施の形態では、本発明の方法は、患者が嚢胞性線維症、非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性、COPD、CB、肺気腫、気管支拡張症、喘息及び/又は慢性副鼻腔炎を有することを判断する先行工程を更に含む。
CF及び非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性の場合、先行工程は例えばCFの臨床指標(特に粘液の粘度及び/又は粘膜表面の上皮への粘液の付着)の観察及び評価、並びに病歴の蓄積と組み合わせた汗試験の実施、及び/又は遺伝子検査(すなわち、突然変異体CFTR遺伝子の存在の検査、例えば患者のCFTR対立遺伝子のヌクレオチド配列のスクリーニング)によるものであり得る。COPD、CB、肺気腫、喘息及び気管支拡張症の場合、これは例えば、気管支拡張剤の有無による肺機能の測定、胸部イメージング及び病歴の蓄積によるものであり得る。慢性副鼻腔炎の場合、先行工程は鼻内視鏡検査及び病歴の蓄積によるものであり得る。
これらの上述の工程の一部を行うことで診断を除外することが可能である。例えば、本発明の方法はCOPDを治療する方法であり得るが、これは必ずしも患者をCF又はCFTR突然変異の指標について評価する工程を除外するものではない。このため本発明の方法は、患者が嚢胞性線維症、非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性、COPD、CB、肺気腫、気管支拡張症、喘息及び/又は慢性副鼻腔炎を有しないことを判断する先行工程を更に含み得る。
他の実施の形態では、本発明の方法は、欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は粘液の異常付着に起因又は関連する患者の病態の臨床指標を評価し、好ましくはその任意の変化を決定するために上記治療の前に又はその初期に行われた対応する評価と比較する後続工程を更に含む。より具体的な実施の形態では、本発明の方法はCF、非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性、COPD、CB、肺気腫、気管支拡張症、喘息及び/又は慢性副鼻腔炎の患者の臨床指標(上記のCF、非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性、COPD、CB、肺気腫、気管支拡張症、喘息及び/又は慢性副鼻腔炎に関連する様々な病態又は合併症に関するものを含む)を必要に応じて評価し、好ましくはその任意の変化を決定するために上記治療の前に又はその初期に行われた対応する評価と比較する後続工程を更に含む。欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は粘液の異常付着に起因又は関連する病態を有する患者、例えばCF患者、及び非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性、COPD、CB、肺気腫、気管支拡張症、喘息及び/又は慢性副鼻腔炎の患者の臨床状態に関するパラメーターは当該技術分野で既知であり、例えば肺パフォーマンス、肺生理学及び測定可能な炎症の前兆との関連で既知の手順に従ってモニタリングすることができる。しかしながら、患者における又は患者の粘液及び/又は分泌に対する本発明に使用されるアルギネートオリゴマーの効果に関するパラメーター、例えば粘膜表面の上皮への粘液の付着及び/又は粘液特性(例えば粘度、特に痰粘度)の変化も評価することができる。
粘膜表面の上皮への粘液の付着に対する必須の局所濃度で使用される場合の少なくとも30%のモノマー残基がG残基であるアルギネートオリゴマーの効果を考えると、本発明の方法及び医学的使用は、CF患者におけるCFに関連する更なる病態の発現若しくは発症を予防する、低減する若しくは遅延させること、又はCF患者がCFに関連する更なる病態を発現若しくは罹患するリスクを低減することを含む、CF患者におけるCFに関連する病態、すなわちその合併症を治療するための方法又は医学的使用とみなすこともできる。これは上記で言及又は論考される病態のいずれにも適用され、したがって上記のCF状況に類似し、本発明は更なる病態の発現若しくは発症、又はリスクを予防する、低減する又は遅延させることを含む、非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性、気道における異常粘液クリアランス及び/又は慢性微粒子吸入によって生じる呼吸困難、及び/又は慢性炎症性呼吸器障害、例えばCOPD、CB、肺気腫、気管支拡張症、喘息及び/又は慢性副鼻腔炎に関連する任意の病態又は合併症の治療にまで及ぶ。特に、上記で説明されるように、CF又は上述の他の病態のいずれかに関連する病態は、かかる患者におけるCFに特徴的な異常粘液及び/又は欠陥CFTRイオンチャネルの機能障害(すなわちCFTR機能不全)の結果として又は起因して生じる病態である。
かかる病態(合併症)は上記のもの又は以下の節で列挙されるもののいずれかであり得る。便宜上、以下でかかる病態はCFTR機能不全に関連する病態への言及によって表現されるが、かかる用語は文脈上許容される場合に、上記に挙げた病態、例えば上記に挙げたCF、非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性等のいずれかに関連する病態(又は合併症)として解釈することができる。このため、かかる病態(合併症)はCFTR機能不全に関連する気道病態(例えば気道感染、気道炎症、呼吸困難、呼吸不全及び肺リモデリング)、CFTR機能不全に関連する心血管病態(例えば肺高血圧及び心不全)、CFTR機能不全に関連する副鼻腔病態(例えば副鼻腔感染、副鼻腔炎、顔面痛、頭痛、異常鼻漏、鼻ポリープ)、CFTR機能不全に関連するGI病態(例えば便秘、腸閉塞(例えば新生児対象における胎便性イレウス、並びにより高年齢の患者における腸重積症及びDIOS)、栄養吸収不良)、CFTR機能不全に関連する膵臓病態(例えば膵管閉塞、栄養吸収不良、膵炎症、膵炎(急性及び慢性)、糖尿病)、CFTR機能不全に関連する肝臓病態(例えば胆管閉塞、胆石、肝硬変)、及びCFTR機能不全に関連する不妊であり得る。CFTR機能不全に関連する肺、GI、膵臓及び肝臓の病態(例えば上記で特定したもの)の治療が好ましい。したがって、本発明はアルギネートオリゴマーにより患者におけるCFTR機能不全を治療し、より正常な粘液表現型の回復を助長することで、(最も注目すべきは気道、GI管、膵臓及び/又は肝臓における)CFTR機能不全に関連する感染及び/又は炎症の発現を回避する(すなわち低減又は予防する)ことができるため予防的に有用である。CFTR機能不全に関連するGI、膵臓及び肝臓の病態の治療との関連で、本治療は特に長期にわたる切実な要求を満たすものであることに留意されたい。
好ましい実施の形態では、本発明のアルギネートオリゴマーは、その気道の粘膜表面が機能的CFTRイオンチャネルの欠如の影響を受ける患者(例えばCF、又は上記に挙げた病態のいずれかの患者)の下気道、例えば気管支又は肺における慢性及び急性感染及び/又は炎症、特に慢性感染及び/又は炎症の治療に使用される。代替的に述べると、本発明のアルギネートオリゴマーはかかるCF又は他の患者における気管支炎又は肺炎の治療に使用される。かかる感染/炎症(例えば気管支炎又は肺炎)は一般に黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、緑膿菌、マイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(肺結核の原因物質)及びアスペルギルス・フミガーツスによって引き起こされ得るが、感染/炎症は任意の感染因子、例えば細菌、真菌、ウイルス及び寄生生物によって引き起こされる場合もある。既に述べたものに加えて、気道に見られる一般的な感染因子としては、肺炎クラミジア(Chlamydophila pneumonia)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、マイコプラズマ・ニューモニア(Mycoplasma pneumonia)、カタラリス菌(Moraxella catarrhalis)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)、コクシエラ菌(Coxiella burnetti)、ライノウイルス、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、アデノウイルス、メタ肺炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ニューモシスチス・ジロヴェチ(Pneumocystis jiroveci)、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)、糞線虫(Strongyloides stercoralis)、回虫(Ascaris lumbricoides)及び四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)が挙げられるが、これらに限定されない。
更なる好ましい実施の形態では、本発明のアルギネートオリゴマーは、その気道の粘膜表面が機能的CFTRイオンチャネルの欠如の影響を受ける患者(例えばCF、又は上記に挙げた他の病態のいずれかの患者)の上気道、例えば鼻、鼻道、咽頭、喉頭及び気管における慢性及び急性感染及び/又は炎症の治療に使用することができる。かかる患者の気管における感染及び/又は炎症の治療が特に好ましい。代替的に述べると、本発明のアルギネートオリゴマーは、かかる患者(例えばCF、COPD又は上記で挙げた他の病態のいずれかの患者)における鼻炎(鼻粘膜の炎症)、鼻咽頭炎(又は鼻咽炎;鼻粘膜、咽頭、下咽頭、口蓋垂及び扁桃の炎症)、咽頭炎(咽頭、下咽頭、口蓋垂及び扁桃の炎症)、喉頭蓋炎(又は声門上炎;喉頭の上部及び声門上域の炎症)、喉頭炎(喉頭の炎症)、喉頭気管炎(喉頭、気管及び声門下域の炎症)、気管炎(気管及び声門下域の炎症)及び扁桃炎(扁桃の炎症)の治療に使用することができる。これらの病態は上気道感染と総称される場合もあり、上述の感染因子のいずれかによって引き起こされ得る。
本発明の方法及び医学的使用は、欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は下層上皮に付着した異常粘液に起因又は関連する病態を有する患者、例えばCF患者、並びに非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性、気道における異常粘液クリアランス及び/又は慢性微粒子吸入によって生じる呼吸困難、及び/又は慢性炎症性呼吸器障害、例えばCOPD、CB、肺気腫、気管支拡張症、喘息及び/又は慢性副鼻腔炎の患者、特に肺感染を有するかかる患者の下記に列挙した抗菌剤、例えば抗生物質、抗真菌剤及び抗ウイルス剤に対する反応性を増大する方法又は医学的使用と更にみなすことができる。抗菌剤に対する反応性は、特定の方法で投与される特定の用量の抗菌剤について患者レベルで観察される感染に対する効果と言及される。これには、患者レベルで観察される感染の任意の前兆又は症状、例えば(全体的な又は特定の位置での)微生物負荷、炎症、熱、微生物毒素レベル及び全身健康状態が含まれる。
上述したように、アルギネートは通例、平均分子質量が少なくとも35000ダルトン、すなわちモノマー残基数が約175〜約190(ただし通例もっと高い)のポリマーとして生じ、本発明によるアルギネートオリゴマーは、アルギネートポリマー(通常は天然のアルギネート)の分画(すなわちサイズの低減)により得られる物質と規定することができる。アルギネートオリゴマーは、平均分子量が35000ダルトン未満(すなわちモノマー残基数が約190未満又は約175未満)のアルギネート、特に平均分子量が30000ダルトン未満(すなわちモノマー残基数が約175未満又は約150未満)、より具体的には平均分子量が25000ダルトン未満又は20000ダルトン未満(すなわちモノマー残基数が約135未満若しくは125未満、又はモノマー残基数が約110未満若しくは100未満)のアルギネートであると考えることができる。
代替的な観点から見ると、オリゴマーは概して2個以上の単位又は残基を含み、本発明による使用のためのアルギネートオリゴマーは典型的には2個〜100個、より典型的には3個、4個、5個又は6個〜100個のモノマー残基を含有し、2個、3個、4個、5個若しくは6個〜75個、2個、3個、4個、5個若しくは6個〜50個、2個、3個、4個、5個若しくは6個〜40個、2個、3個、4個、5個若しくは6個〜35個、又は2個、3個、4個、5個若しくは6個〜30個の残基を含有し得る。このため、本発明による使用のためのアルギネートオリゴマーは典型的には平均分子量が350ダルトン、550ダルトン、700ダルトン、900ダルトン若しくは1000ダルトン〜20000ダルトン、350ダルトン、550ダルトン、700ダルトン、900ダルトン若しくは1000ダルトン〜15000ダルトン、350ダルトン、550ダルトン、700ダルトン、900ダルトン若しくは1000ダルトン〜10000ダルトン、350ダルトン、550ダルトン、700ダルトン、900ダルトン若しくは1000ダルトン〜8000ダルトン、350ダルトン、550ダルトン、700ダルトン、900ダルトン若しくは1000ダルトン〜7000ダルトン、又は350ダルトン、550ダルトン、700ダルトン、900ダルトン若しくは1000ダルトン〜6000ダルトンである。
別の観点からは、アルギネートオリゴマーは、2〜100、好ましくは2〜75、好ましくは2〜50、より好ましくは2〜40、2〜35、2〜30、2〜28、2〜25、2〜22、2〜20、2〜18、2〜17、2〜15、又は2〜12の重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)を有し得る。
他の代表的な範囲(残基の数、DP又はDPnを問わない)は3、4、5、6、7、8、9、10又は11のいずれか1つ〜50、45、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13又は12のいずれか1つを含む。
他の代表的な範囲(残基の数、DP又はDPnを問わない)は8、9、10、11、12、13、14又は15のいずれか1つ〜50、45、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17又は16のいずれか1つを含む。
他の代表的な範囲(残基の数、DP又はDPnを問わない)は11、12、13、14、15、16、17又は18のいずれか1つ〜50、45、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20又は19のいずれか1つを含む。
上述したように、アルギネートオリゴマーは、一般用語において、グルロネート若しくはグルロン酸(G)及び/又はマンヌロネート若しくはマンヌロン酸(M)の残基又は単位を含有する(又は含む)。本発明によるアルギネートオリゴマーは、好ましくはウロネート残基/ウロン酸残基のみ、又は実質的にそれらのみから構成され(すなわちそれらから本質的になり)、より具体的にはG残基及びM残基又はモノマー残基の少なくとも30%がG残基である限りG残基のみ、又は実質的にそれらのみから構成される。別の表現をすると、本発明における使用におけるアルギネートオリゴマーでは、モノマー残基の少なくとも80%、より具体的には少なくとも85%、90%、95%又は99%が、ウロネート残基/ウロン酸残基、又はより具体的にはG残基及びM残基又はモノマー残基の少なくとも30%がG残基である限りG残基であり得る。換言すれば好ましくは、アルギネートオリゴマーは、他の残基又は単位(例えば、他の糖残基、又はより具体的には他のウロン酸残基/ウロネート残基)を含まない。
アルギネートオリゴマーは、好ましくは直鎖オリゴマーである。
既に述べたように、アルギネートオリゴマーのモノマー残基の少なくとも30%が、G残基(すなわちグルロネート又はグルロン酸)である。換言すれば、アルギネートオリゴマーは、少なくとも30%のグルロネート(又はグルロン酸)残基を含有する。したがって具体的な実施の形態は、30%〜70%のG(グルロネート)残基、又は70%〜100%のG(グルロネート)残基を有する(例えば、含有する)アルギネートオリゴマーを含む。したがって、本発明による使用のための代表的なアルギネートオリゴマーは、少なくとも70%のG残基を含有し得る(すなわち、アルギネートオリゴマーのモノマー残基の少なくとも70%がG残基である)。
好ましくはモノマー残基の少なくとも40%、45%、50%、55%又は60%、より具体的には少なくとも70%又は75%、更により具体的には少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%が、グルロネートである。1つの実施の形態では、アルギネートオリゴマーは、オリゴグルロネート(すなわちGのホモオリゴマー、又は100%のG)であり得る。
更に1つの好ましい実施の形態では、上述の本発明のアルギネートは、G残基の大部分がいわゆるGブロック中に存在する一次構造を有する。好ましくはG残基の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%又は75%、最も好ましくは少なくとも80%、85%、90%、92%又は95%が、Gブロック中に存在する。Gブロックは、少なくとも2個のG残基、好ましくは少なくとも3個の連続したG残基、より好ましくは少なくとも4個又は5個の連続したG残基、最も好ましくは少なくとも7個の連続したG残基の連続した配列である。
特に、G残基の少なくとも90%は、別のG残基と(1−4)結合している。より具体的にはアルギネートのG残基の少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%が、別のG残基と(1−4)結合している。
本発明における使用のためのアルギネートオリゴマーは、好ましくは3−mer〜35−mer、より好ましくは3−mer〜28−mer、特に4−mer〜25−mer、例えば5−mer〜20−mer、特に6−mer〜22−mer、特に8−mer〜20−mer、特に10−mer〜15−merであり、例えば、350ダルトン〜6400ダルトン、又は350ダルトン〜6000ダルトン、好ましくは550ダルトン〜5500ダルトン、好ましくは750ダルトン〜5000ダルトン、特に750ダルトン〜4500ダルトン又は2000ダルトン〜3000ダルトン、又は900ダルトン〜3500ダルトンの範囲の分子量を有する。他の代表的なアルギネートオリゴマーとしては、上述したように5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個又は13個〜50個、45個、40個、35個、28個、25個、22個又は20個の残基を有するオリゴマーが挙げられる。
アルギネートオリゴマーは単一の化合物であり得る、又は例えば或る範囲の重合度を有する化合物の混合物であり得る。上述したように、アルギネートオリゴマーにおけるモノマー残基は、同じであっても、又は異なっていてもよく、その全てが荷電基を保有する必要はないが、その大部分(例えば少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%)が荷電基を保有することが好ましい。荷電基の実質的な大部分、例えば少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%が同じ極性を有することが好ましい。アルギネートオリゴマーでは、ヒドロキシル基対荷電基の比は、好ましくは少なくとも2:1、より具体的には少なくとも3:1である。
本発明のアルギネートオリゴマーは、3〜28、4〜25、6〜22、8〜20、又は10〜15、又は5〜18、又は7〜15、又は8〜12、特には10の重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)を有し得る。
本発明のアルギネートオリゴマーは、3〜24、4〜23、5〜22、6〜21、7〜20、8〜19、9〜18、10〜17、11〜16、12〜15、又は13〜14(例えば13又は14)の重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)を有し得る。
本発明のアルギネートオリゴマーは、4〜25、5〜24、6〜23、7〜22、8〜21、9〜20、10〜19、11〜18、12〜17、13〜16、又は14〜15(例えば14又は15)の重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)を有し得る。
本発明のアルギネートオリゴマーは、5〜26、6〜25、7〜24、8〜23、9〜22、10〜21、11〜20、12〜19、13〜18、14〜17、又は15〜16(例えば15又は16)の重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)を有し得る。
本発明のアルギネートオリゴマーは、4〜50、4〜40、4〜35、4〜30、4〜28、4〜26、4〜22、4〜20、4〜18、4〜16、又は4〜14の重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)を有し得る。
本発明のアルギネートオリゴマーは、5〜50、5〜40、5〜25、5〜22、5〜20、5〜18、5〜23、5〜20、5〜18、5〜16、又は5〜14の重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)を有し得る。
本発明のアルギネートオリゴマーは、6〜50、6〜40、6〜35、6〜30、6〜28、6〜26、6〜24、6〜20、6〜19、6〜18、6〜16、又は6〜14の重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)を有し得る。
本発明のアルギネートオリゴマーは、8〜50、8〜40、8〜35、8〜30、8〜28、8〜25、8〜22、8〜20、8〜18、8〜16、又は8〜14の重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)を有し得る。
本発明のアルギネートオリゴマーは、9〜50、9〜40、9〜35、9〜30、9〜28、9〜25、9〜22、9〜20、9〜18、9〜16、又は9〜14の重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)を有し得る。
本発明のアルギネートオリゴマーは、10〜50、10〜40、10〜35、10〜30、10〜28、10〜25、10〜22、10〜20、10〜18、10〜16、又は10〜14の重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)を有し得る。
本発明のアルギネートオリゴマーは、11〜50、11〜40、11〜35、11〜30、11〜28、11〜25、11〜22、11〜20、11〜18、11〜16、又は11〜14の重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)を有し得る。
本発明のアルギネートオリゴマーは、12〜50、12〜40、12〜35、12〜30、12〜28、12〜25、12〜22、12〜20、12〜18、12〜16、又は12〜14の重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)を有し得る。
本発明のアルギネートオリゴマーは、13〜50、13〜40、13〜35、13〜30、13〜28、13〜25、13〜22、13〜20、13〜18、13〜16、又は13〜14の重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)を有し得る。
本発明のアルギネートオリゴマーは、14〜50、14〜40、14〜35、14〜30、14〜28、14〜25、14〜22、14〜20、14〜18、14〜16、又は14〜15の重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)を有し得る。
本発明のアルギネートオリゴマーは、15〜50、15〜40、15〜35、15〜30、15〜28、15〜25、15〜22、15〜20、15〜18又は15〜16の重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)を有し得る。
本発明のアルギネートオリゴマーは、18〜50、18〜40、18〜35、18〜30、18〜28、18〜25、18〜22、又は18〜20の重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)を有し得る。
好ましくは、本発明のアルギネートオリゴマーは、本明細書で開示される範囲外の重合度を有するアルギネートオリゴマーを実質的に含まない、好ましくは本質的に含まない。このことは、本発明のアルギネートオリゴマーの分子量分布、例えば関連範囲外のDPを有する、本発明により使用されるアルギネートオリゴマーの各々のモル%を単位として表すことができる。分子量分布は、好ましくは、DPnに関する適切な上限(relevant upper limit)より3、2又は1高いDPを有するものが10モル%以下、好ましくは9モル%、8モル%、7モル%、6モル%、5モル%、4モル%、3モル%、2モル%又は1モル%以下である。同様に、DPnに関する適切な下限よりも3、2又は1小さい数未満のDPを有するものが10モル%以下、好ましくは9モル%、8モル%、7モル%、6モル%、5モル%、4モル%、3モル%、2モル%又は1モル%以下であるのが好ましい。
好適なアルギネートオリゴマーは、特許文献1、特許文献2、特許文献3、及び特許文献6に記載されている(それらの開示の全体が明示的に引用することにより本明細書の一部をなす)。
代表的な好適なアルギネートオリゴマーは、5〜30の範囲のDPnと、少なくとも0.80のグルロネート率(FG)と、0.20以下のマンヌロネート率(FM)とを有し、少なくとも95モル%のDPが25以下である。
更に好適なアルギネートオリゴマーは、7〜15(好ましくは8〜12)の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.85(好ましくは少なくとも0.90)のグルロネート率(FG)と、0.15以下(好ましくは0.10以下)のマンヌロネート率(FM)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が17未満(好ましくは14未満)である。
更に好適なアルギネートオリゴマーは、5〜18(特に7〜15)の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.80(好ましくは少なくとも0.85、特に少なくとも0.92)のグルロネート率(FG)と、0.20以下(好ましくは0.15以下、特には0.08以下)のマンヌロネート率(FM)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が20未満(好ましくは17未満)である。
更に好適なアルギネートオリゴマーは、5〜18の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.92のグルロネート率(FG)と、0.08以下のマンヌロネート率(FM)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が20未満である。
更に好適なアルギネートオリゴマーは、5〜18(好ましくは7〜15、より好ましくは8〜12、特に約10)の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.80(好ましくは少なくとも0.85、より好ましくは少なくとも0.90、特に少なくとも0.92、最も具体的には少なくとも0.95)のグルロネート率(FG)と、0.20以下(好ましくは0.15以下、より好ましくは0.10以下、特には0.08以下、最も具体的には0.05以下)のマンヌロネート率(FM)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が20未満(好ましくは17未満、より好ましくは14未満)である。
更に好適なアルギネートオリゴマーは、7〜15(好ましくは8〜12)の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.92(好ましくは少なくとも0.95)のグルロネート率(FG)と、0.08以下(好ましくは0.05以下)のマンヌロネート率(FM)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が17未満(好ましくは14未満)である。
更に好適なアルギネートオリゴマーは、5〜18の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.80のグルロネート率(FG)と、0.20以下のマンヌロネート率(FM)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が20未満である。
更に好適なアルギネートオリゴマーは、7〜15の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.85のグルロネート率(FG)と、0.15以下のマンヌロネート率(FM)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が17未満である。
更に好適なアルギネートオリゴマーは、7〜15の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.92のグルロネート率(FG)と、0.08以下のマンヌロネート率(FM)とを有し、少なくとも95モル%の重合度が17未満である。
更に好適なアルギネートオリゴマーは、5〜20の範囲の数平均重合度と、少なくとも0.85のグルロネート率(FG)と、0.15以下のマンヌロネート率(FM)とを有する。
更なる好適なアルギネートオリゴマーは数平均重合度が約13(例えば12、13又は14)、グルロネート率(FG)が少なくとも約0.80、0.85、0.87、0.88、0.90又は0.93(例えば0.92、0.93又は0.94)、対応するマンヌロネート率(FM)が約0.20、0.15、0.13、0.12、0.10又は0.07(例えば0.08、0.07又は0.06)以下である。
更なる好適なアルギネートオリゴマーは数平均重合度が約21(例えば20、21又は22)、グルロネート率(FG)が少なくとも約0.80(例えば0.85、0.87、0.88、0.90、0.92、0.94、又は0.95)、対応するマンヌロネート率(FM)が約0.20(例えば0.15、0.13、0.12、0.10、0.08、0.06、0.05)以下である。
更なる好適なアルギネートオリゴマーは数平均重合度が約6(例えば5、6又は7)、グルロネート率(FG)が少なくとも約0.80(例えば0.85、0.87、0.88、0.90、0.92、0.94、又は0.95)、対応するマンヌロネート率(FM)が約0.20(例えば0.15、0.13、0.12、0.10、0.08、0.06、0.05)以下である。
このため、本発明により望ましい特定の群のアルギネートオリゴマーが、いわゆる「高G」又は「Gブロック」オリゴマーとして規定される、すなわちG残基又はGブロックの含量が高い(例えばモノマー残基の少なくとも70%がGであり、好ましくはGブロック中に配置される)アルギネートオリゴマーであることが認められる。しかしながら、オリゴマーが単独で配置されるか及び/又はGブロック中に配置されるかにかかわらず少なくとも30%のG残基を含む限りにおいて、特にMブロック中に配置されるM残基を含むM残基の含量がより高いオリゴマーを含む他のタイプのアルギネートオリゴマーを使用してもよい。特に下記で更に説明される交互のM/G残基構造を有する、いわゆるMGブロックオリゴマーも含まれる。
オリゴマー中のモノマー残基の少なくとも70%が別のG残基に(1−4)結合したG残基であるか、又はより好ましくはオリゴマーのモノマー残基の少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%が別のG残基に(1−4)結合したG残基であるオリゴマーが特に好ましい。この2つのG残基の(1−4)結合は代替的に、隣接するグルロン単位と結合したグルロン単位として表すこともできる。
上述のように、或る特定の実施の形態では、本発明による使用のためのオリゴマー中に存在する任意のM残基はMブロック中に配置され得る。例えば、かかる実施の形態では、M残基の少なくとも50%、又はより具体的には少なくとも70%若しくは75%、例えば少なくとも80%、85%、90%若しくは95%がMブロック中にあってもよい。Mブロックは少なくとも2つのM残基の連続した配列、好ましくは少なくとも3つの連続したM残基、より好ましくは少なくとも4つ又は5つの連続したM残基、最も好ましくは少なくとも7つの連続したM残基である。
特に、M残基の少なくとも90%が別のM残基と(1−4)結合していてもよい。より具体的には、アルギネートのM残基の少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%が別のM残基と(1−4)結合していてもよい。
また更なる実施の形態では、本発明のアルギネートオリゴマーは、交互のM残基及びG残基の配列を含む。少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つの交互のM残基及びG残基の配列はMGブロックを表す。好ましくは、本発明のアルギネートオリゴマーはMGブロックを含む。より具体的に表すと、MGブロックはG残基及びM残基からなる少なくとも3つの連続した残基の配列であり、連続した配列中の各々の非末端(内部)G残基はM残基と(1−4)及び(4−1)結合し、連続した配列中の各々の非末端(内部)M残基はG残基と(1−4)及び(4−1)結合する。好ましくは、MGブロックは少なくとも5つ又は6つの連続した残基、より好ましくは少なくとも7つ又は8つの連続した残基である。
更なる実施の形態では、アルギネートオリゴマー中の少数ウロネート(すなわちマンヌロネート又はグルロネート)が主にMGブロック中に見られる。この実施の形態では、MGブロックアルギネートオリゴマー中の少数ウロネートモノマーの好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%又は75%、最も好ましくは少なくとも80%、85%、90%又は95%がMGブロック中に存在する。別の実施の形態では、オリゴマー中のG残基及びM残基の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、例えば100%がMGブロック中に配置されるように、アルギネートオリゴマーが配置される。
上記に従って、MGブロック含有アルギネートオリゴマーは、少なくとも30%(又は少なくとも35%、40%又は45%又は50%のG)(ただし100%未満)のGを含有する。したがって、具体的な実施の形態は、30%〜70%のG(グルロネート)残基、又は70%〜99%のG(グルロネート)残基を有する(例えば含有する)MGブロック含有アルギネートオリゴマーを含む。したがって、本発明による使用のための代表的なMGブロック含有アルギネートオリゴマーは、30%超(ただし70%未満)のG残基を含有し得る(すなわち、MGブロックアルギネートオリゴマーのモノマー残基の30%超(ただし70%未満)がG残基である)。
好ましくは、MGブロック含有アルギネートオリゴマーのモノマー残基の30%超、より具体的には35%又は40%超、更により具体的には45%、50%、55%、60%又は65%超(ただし、いずれの場合も70%未満)がグルロネートである。代替的には、MGブロック含有アルギネートオリゴマーのモノマー残基の70%未満、より好ましくは65%又は60%未満、更により好ましくは55%、50%、45%、40%又は35%未満(ただし、いずれの場合も30%超)がグルロネートである。これらの値の任意の組合せによって形成される任意の範囲を選択することができる。したがって、例えばMGブロック含有アルギネートオリゴマーは、例えば35%〜65%、40%〜60%又は45%〜55%のG残基を有し得る。
別の実施の形態では、MGブロック含有アルギネートオリゴマーは、ほぼ等量のG残基及びM残基(例えば、65%のG/35%のM〜35%のG/65%のM、例えば60%のG/40%のM〜40%のG/60%のM;55%のG/45%のM〜45%のG/55%のM;53%のG/47%のM〜47%のG/53%のM;51%のG/49%のM〜49%のG/51%のM;例えば、約50%のG及び約50%のMという比率)を有し得るが、これらの残基は主に、好ましくは全体的に又は可能な限り完全に交互のMGパターンで配置されている(例えば、M残基及びG残基の少なくとも50%又は少なくとも60%、70%、80%、85%、90%又は95%又は100%が交互のMG配列中にある)。
或る特定の実施の形態では、本発明のオリゴマーの末端ウロン酸残基は二重結合、特にC4原子とC5原子との間に位置する二重結合を有しない。かかるオリゴマーは飽和末端ウロン酸残基を有するものとして記載され得る。当業者は、過度の負担なしに飽和末端ウロン酸残基を有するオリゴマーを調製することができるだろう。これは、かかるオリゴマーを生じる製造技法を用いること、又は不飽和末端ウロン酸残基を有するオリゴマーを生じるプロセスによって製造されたオリゴマーを変換する(飽和させる)ことによって行うことができる。
アルギネートオリゴマーは通常、電荷を保有するので、アルギネートオリゴマーに対する対イオンは、任意の生理学的に耐容性を有するイオン、特に荷電薬剤物質に一般的に使用されるイオン(例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、塩化物イオン、メシレートイオン、メグルミンイオン等)であり得る。アルギネートのゲル化を促進するイオン(例えば2族の金属イオン)も、使用することができる。
アルギネートオリゴマーは、適切な数のグルロネート残基及びマンヌロネート残基の重合から生成される合成物質であってもよいが、本発明における使用のためのアルギネートオリゴマーは、上述したような天然の供給源、すなわち天然アルギネート原料から、好都合に入手、製造又は誘導することができる。
本発明により使用可能なアルギネートオリゴマーを製造するための多糖からオリゴ糖への切断は、酵素消化及び酸加水分解等の従来の多糖溶解技法を使用して、実施することができる。望ましい1つの実施の形態では、酸加水分解を使用して本発明のアルギネートオリゴマーを調製する。他の実施の形態では、酵素消化を更なる加工処理工程(複数の場合もある)と共に使用して、オリゴマー中の末端ウロン酸を飽和させる。
オリゴマーはその後、イオン交換樹脂を使用してクロマトグラフィにより、又は分画沈降(fractionated precipitation)若しくは可溶化若しくは濾過により、多糖分解生成物から分離することができる。米国特許第6,121,441号及び特許文献3(その全体が明示的に引用することにより本明細書の一部をなす)は、本発明における使用のためのアルギネートオリゴマーを調製するのに好適なプロセスを説明している。更なる情報及び考察は、例えば「Handbooks of Hydrocolloids」Ed. Phillips and Williams, CRC, Boca Raton, Florida, USA, 2000に見ることができる(この内容は、その全体が明示的に引用することにより本明細書の一部をなす)。
アルギネートオリゴマーはまた化学的に修飾することができ、これには荷電基を付加する修飾(カルボキシル化又はカルボキシメチル化グリカン等)が含まれるが、これに限定されず、アルギネートオリゴマーは、柔軟性を変化させるために(例えば、過ヨウ素酸塩による酸化により)修飾される。
本発明による使用に好適なアルギネートオリゴマー(例えば、オリゴグルロン酸)は、ラミナリア・ヒポルボラ(Laminaria hyperbora)及びレソニア・ニグレセンス(Lessonia nigrescens)(ただしこれらに限定されない)由来のアルギン酸の酸加水分解、中性pHでの溶解、pHを3.4に低下させてアルギネートオリゴマー(オリゴグルロン酸)を析出させる鉱酸の添加、弱酸での洗浄、中性pHでの再懸濁、並びに凍結乾燥により、好都合に製造することができる。
本発明のアルギネートオリゴマーの製造のためのアルギネートは、好適な細菌性供給源(例えばシュードモナス・エルギノーサ又はアゾトバクター・ビネランジー)から直接得ることもできる。
G残基の大部分が単一残基としてではなくGブロック中に配置される一次構造を有するアルギネートオリゴマーが必要とされる実施の形態では、藻類の供給源が、これらの生物において産生されるアルギネートがこれらの構造を有する傾向があることから、最も好適であることが期待される。細菌性供給源は、異なる構造のアルギネートオリゴマーを得るのにより好適であり得る。
シュードモナス・フルオレセンス及びアゾトバクター・ビネランジーにおけるアルギネート生合成に関与する分子装置が、クローニングされると共に、特徴づけられており(特許文献4;Ertesvag, H., et al, Metabolic Engineering, 1999, Vol 1, 262-269;特許文献5;非特許文献1(上掲);Remminghorst and Rehm, Biotechnology Letters, 2006, Vol 28, 1701-1712;Gimmestad, M. et al, Journal of Bacteriology, 2006, Vol 188(15), 5551-5560)、調整した(tailored)一次構造を有するアルギネートを、これらの系を操作することにより容易に得ることができる。
アルギネート(例えば藻類原料)のG含量は、例えばA.ビネランジー由来のマンヌロナンC−5エピメラーゼ、又は他のエピメラーゼ酵素を用いて、エピマー化により増大させることができる。したがって、例えば、in vitroでのエピマー化を、シュードモナス又はアゾトバクター由来の単離エピメラーゼ、例えばシュードモナス・フルオレセンス若しくはアゾトバクター・ビネランジー由来のAlgG、又はアゾトバクター・ビネランジー由来のAlgE酵素(AlgE1〜AlgE7)を用いて、実施することができる。アルギネートを産生する能力を有する他の生物(特に藻類)由来のエピメラーゼの使用も、具体的に意図される。アゾトバクター・ビネランジーAlgEエピメラーゼを用いる低Gアルギネートのin vitroでのエピマー化は、Ertesvag et al(上掲)及びStrugala et al(Gums and Stabilisers for the Food Industry, 2004, 12, The Royal Society of Chemistry, 84 - 94)に詳細に説明されている。
アルギネート又はアルギネートオリゴマーを含有するGブロックを得るには、AlgE4以外の1つ又は複数のアゾトバクター・ビネランジーAlgEエピメラーゼを用いるエピマー化が、これらの酵素がGブロック構造を産生する能力を有するため、好ましい。一方で、AlgE4エピメラーゼは選択的に個々のM残基をエピマー化して、Gブロックを産生するのではなく、M残基と結合した単一のG残基を産生するようであることが見出されているため、この酵素を使用して、M/G配列の交互のストレッチ又は単一のG残基を含有する一次構造を有するアルギネート又はアルギネートオリゴマーを作り出すことができる。特定の一次構造を、これらの酵素の種々の組合せを使用して得ることができる。
これらの酵素の突然変異型又は他の生物由来の相同体も、有用であるとして具体的に意図される。特許文献4は、例えば、エピメラーゼ配列によりコードされる組換え又は修飾マンヌロナンC−5エピメラーゼ酵素(AlgE酵素)を説明しており、ここではエピメラーゼの異なるドメイン又はモジュールをコードするDNA配列が、シャッフルされ(shuffled)、又は欠失すると共に、組み換えられている。代替的には、例えばAlgG遺伝子又はAlgE遺伝子の部位特異的突然変異誘発又はランダム突然変異誘発により得られる、天然のエピメラーゼ酵素(AlgG又はAlgE)の突然変異体を使用することができる。
異なるアプローチは、その突然変異体が続くアルギネートオリゴマー産生に要求される構造のアルギネート、又は更には要求される構造及びサイズ(又は分子量)のアルギネートオリゴマーを産生するように、そのエピメラーゼ遺伝子の幾つか又は全てで突然変異したシュードモナス属及びアゾトバクター属の生物を作り出すことである。AlgG遺伝子が突然変異した多数のシュードモナス・フルオレセンス生物の作製は、特許文献5及び非特許文献1(上掲)に詳細に説明されている。AlgE遺伝子が突然変異した多数のアゾトバクター・ビネランジー生物の作製は、Gimmestad, M., et al, 2006(上掲)に開示されている。
更なるアプローチは、アゾトバクター属又はシュードモナス属の生物由来の内在性エピメラーゼ遺伝子を欠失又は不活性化させること、及びその後、1つ又は複数の外来性エピメラーゼ遺伝子(突然変異していても又は突然変異していなくともよく(すなわち野生型であっても又は修飾されていてもよい))を導入することであり、その発現は、例えば誘導性の又は他の「制御可能なプロモータ」の使用により制御されていてもよい。遺伝子の適切な組合せを選択することにより、所定の一次構造を有するアルギネートを生成することができる。
また更なるアプローチは、シュードモナス属及び/又はアゾトバクター属のアルギネート生合成機構の幾つか又は全てを、非アルギネート産生生物(例えば大腸菌)中に導入すること、並びにこれらの遺伝子操作生物からのアルギネートの産生を誘導することであろう。
これらの培養基準のシステムを使用する場合、アルギネート又はアルギネートオリゴマー生成物の一次構造は、培養条件により影響され得る。特定の生物により産生されるアルギネートの一次構造を操作するために、温度、浸透圧(osmolarity)、栄養レベル/栄養源及び大気パラメーター等の培養パラメーターを調整することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
「G残基/G」及び「M残基/M」への言及、又はグルロン酸若しくはマンヌロン酸、又はグルロネート若しくはマンヌロネートへの言及は、グルロン酸/グルロネート及びマンヌロン酸/マンヌロネート(具体的にはα−L−グルロン酸/グルロネート及びβ−D−マンヌロン酸/マンヌロネート)への言及と区別がなく解釈されるものとし、これには非修飾オリゴマーよりも実質的に低いCF、若しくはCF関連障害若しくは病態を治療する能力、又は粘膜表面の上皮からの粘液の脱離を促進する能力をもたらすことなく、1つ又は複数の利用可能な側鎖又は基が修飾されているそれらの誘導体が更に含まれる。一般的な糖修飾基は、アセチル基、硫酸基、アミノ基、デオキシ基、アルコール基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基及びアンヒドロ基を含む。アルギネートオリゴマーはまた、荷電基を付加するように(例えばカルボキシル化又はカルボキシメチル化グリカン)、及び柔軟性を変化させるように(例えば過ヨウ素酸塩による酸化により)化学修飾することができる。当業者は、オリゴ糖の単糖サブユニットに対して行うことができるまた更なる化学修飾を認識し、これらを本発明のアルギネートオリゴマーに適用することができる。
本発明は、単一のアルギネートオリゴマー又は様々なアルギネートオリゴマーの混合物(多数/複数)の使用を包含する。したがって、例えば様々なアルギネートオリゴマー(例えば2つ以上)の組合せを使用することができる。
或る特定の実施の形態では、アルギネートオリゴマーの局所濃度は1%〜5.5%(w/v)、1%〜5%(w/v)、1%〜4.5%(w/v)、1%〜4%(w/v)、1%〜3.5%(w/v)、1%〜3%(w/v)、1%〜2.5%(w/v)、1%〜2%(w/v)又は1%〜1.5%(w/v)である。
或る特定の実施の形態では、アルギネートオリゴマーの局所濃度は1%(w/v)超かつ6%(w/v)以下、例えば1.1%〜6%(w/v)、1.1%〜5.5%(w/v)、1.1%〜5%(w/v)、1.1%〜4.5%(w/v)、1.1%〜4%(w/v)、1.1%〜3.5%(w/v)、1.1%〜3%(w/v)、1.1%〜2.5%(w/v)、1.1%〜2%(w/v)又は1.1%〜1.5%(w/v)である。
或る特定の実施の形態では、アルギネートオリゴマーの局所濃度は1.2%〜6%(w/v)、1.2%〜5.5%(w/v)、1.2%〜5%(w/v)、1.2%〜4.5%(w/v)、1.2%〜4%(w/v)、1.2%〜3.5%(w/v)、1.2%〜3%(w/v)、1.2%〜2.5%(w/v)、又は1.2%〜2%(w/v)又は1.2%〜1.5%(w/v)である。
或る特定の実施の形態では、アルギネートオリゴマーの局所濃度は1.5%〜6%(w/v)、1.5%〜5.5%(w/v)、1.5%〜5%(w/v)、1.5%〜4.5%(w/v)、1.5%〜4%(w/v)、1.5%〜3.5%(w/v)、1.5%〜3%(w/v)、1.5%〜2.5%(w/v)、又は1.5%〜2%(w/v)である。
或る特定の実施の形態では、アルギネートオリゴマーの局所濃度は2%〜6%(w/v)、2%〜5.5%(w/v)、2%〜5%(w/v)、2%〜4.5%(w/v)、2%〜4%(w/v)、2%〜3.5%(w/v)、2%〜3%(w/v)、又は2%〜2.5%(w/v)である。
或る特定の実施の形態では、アルギネートオリゴマーの局所濃度は2%(w/v)超かつ6%(w/v)以下、例えば2.1%〜6%(w/v)、2.1%〜5.5%(w/v)、2.1%〜5%(w/v)、2.1%〜4.5%(w/v)、2.1%〜4%(w/v)、2.1%〜3.5%(w/v)、2.1%〜3%(w/v)、又は2.1%〜2.5%(w/v)である。
或る特定の実施の形態では、アルギネートオリゴマーの局所濃度は2.5%〜6%(w/v)、2.5%〜5.5%(w/v)、2.5%〜5%(w/v)、2.5%〜4.5%(w/v)、2.5%〜4%(w/v)、2.5%〜3.5%(w/v)、又は2.5%〜3%(w/v)である。
或る特定の実施の形態では、アルギネートオリゴマーの局所濃度は3%〜6%(w/v)、3%〜5.5%(w/v)、3%〜5%(w/v)、3%〜4.5%(w/v)、3%〜4%(w/v)、又は3%〜3.5%(w/v)である。
或る特定の実施の形態では、アルギネートオリゴマーの局所濃度は3.5%〜6%(w/v)、3.5%〜5.5%(w/v)、3.5%〜5%(w/v)、3.5%〜4.5%(w/v)、又は3.5%〜4%(w/v)である。
或る特定の実施の形態では、アルギネートオリゴマーの局所濃度は4%〜6%(w/v)、4%〜5.5%(w/v)、4%〜5%(w/v)、又は4%〜4.5%(w/v)である。
或る特定の実施の形態では、アルギネートオリゴマーの局所濃度は4.5%〜6%(w/v)、4.5%〜5.5%(w/v)、又は4.5%〜5%(w/v)である。
或る特定の実施の形態では、アルギネートオリゴマーの局所濃度は5.0%〜6%(w/v)又は5.0%〜5.5%(w/v)である。
或る特定の実施の形態では、アルギネートオリゴマーの局所濃度は5.5%〜6%(w/v)である。
或る特定の実施の形態では、アルギネートオリゴマーの局所濃度は1%(w/v)以上かつ2%(w/v)未満、例えば1%〜1.9%(w/v)、1%〜1.8%(w/v)、1%〜1.7%(w/v)、1%〜1.6%(w/v)、1%〜1.5%(w/v)、1%〜1.4%(w/v)、1%〜1.3%(w/v)、1%〜1.2%(w/v)又は1%〜1.1%(w/v)である。
或る特定の実施の形態では、アルギネートオリゴマーの局所濃度は1.1%(w/v)以上かつ2%(w/v)未満、例えば1.1%〜1.9%(w/v)、1.1%〜1.8%(w/v)、1.1%〜1.7%(w/v)、1.1%〜1.6%(w/v)、1.1%〜1.5%(w/v)、1.1%〜1.4%(w/v)、1.1%〜1.3%(w/v)、又は1.1%〜1.2%(w/v)である。
或る特定の実施の形態では、アルギネートオリゴマーの局所濃度は1.2%(w/v)以上かつ2%(w/v)未満、例えば1.2%〜1.9%(w/v)、1.2%〜1.8%(w/v)、1.2%〜1.7%(w/v)、1.2%〜1.6%(w/v)、1.2%〜1.5%(w/v)、1.2%〜1.4%(w/v)、又は1.2%〜1.3%(w/v)である。
「局所濃度」は粘膜表面、又はより具体的には標的治療部位(すなわち、標的粘膜表面の少なくとも一部)の粘液層又はコーティング、例えばルーメン/粘液界面に存在する投与されたアルギネートオリゴマーの濃度を意味する。したがって、「粘膜表面での」、「粘膜表面の粘液層又はコーティングでの」又は「粘膜表面のルーメン/粘液界面での」(これらの用語は区別なく使用される)は、粘液層の頂端表面の「ごく近傍」又は粘液層の頂端表面と「本質的に直接接触する」と表すことができる。数値的に表現すると、粘液層の頂端表面から1mm未満、例えば粘液層の頂端表面から0.5mm、0.25mm、0.1mm、0.05mm、0.01mm、0.005mm、0.001mm未満の空間点がルーメン/粘液界面である。他の実施の形態では、「局所濃度」という用語は、標的治療部位での粘膜表面の粘液層内に存在するものを含む。理論に束縛されることを望むものではないが、標的粘液層は本質的に下層上皮に完全に付着するか、又は部分的に付着している。考慮される体積は最終的に標的部位での粘液の厚さによって限定され、これは治療部位の位置、患者及びその臨床病態、例えばそのCFの重症度に応じて変動し得る。或る特定の実施の形態では、局所濃度はルーメン/粘液界面での粘液におけるその濃度である。数値的に表現すると、粘液層の頂端表面下1mm未満、例えば粘液層の頂端表面下0.5mm、0.25mm、0.1mm、0.05mm、0.01mm、0.005mm、0.001mm未満の深さの空間点がルーメン/粘液界面である。更なる実施の形態では、局所濃度は標的治療部位の粘液層の全深さにわたって存在する濃度(又は平均(mean average)濃度)として判断される。
「%(w/v)」(又は「重量体積パーセント」)は液体又は半固体溶媒中の固体溶質の濃度の一般に使用される表現である。例えば、1%(w/v)は100mlの溶媒当たり1グラムの固体に相当し、2%(w/v)は100mlの溶媒当たり2gの固体に相当する。したがって、局所濃度はg/100ml、100ミリリットル当たりのグラム数、g100ml−1と表すことができる。1%(w/v)は溶媒1リットル当たり10グラムの固体にも相当するため、本発明の局所濃度範囲は10g/l〜60g/lと表現することができる。当業者は適切な尺度計算により、本範囲の局所濃度範囲を質量及び体積の任意のSI単位の観点から表現することができることを理解する。濃度の非標準尺度への変換も可能であり、当業者にとって日常的である。
本発明において「局所濃度」は通例、標的粘膜表面のルーメン/粘液界面に存在する体液、粘液の水性外層(例えば気道、副鼻腔及び空気で満たされたルーメンが存在する生殖器系の一部の場合)、又は使用される場合、局所送達ビヒクル中の本発明のアルギネートオリゴマーの濃度の量である。上述のように、他の実施の形態では、「局所濃度」という用語は標的治療部位での粘膜表面の粘液層内に存在するものも含む。
溶媒/粘液の関連体積は、考慮される標的治療部位のサイズによって部分的に決定される。これは気道、GI管、膵管、胆管、副鼻腔の全て又は一部、例えば下記に列挙したこれらの一部又はその小区分であり得る。上述のように、標的治療部位の粘膜表面の「ルーメン/粘液界面での」とは、粘液層の頂端表面から1mm未満の空間点を意味する。この体積内に本発明の効果的な濃度範囲を達成するために十分な質量のアルギネートが存在する必要がある。
当業者は、標的治療部位での粘膜表面のルーメン/粘液界面におけるその必要濃度を達成するために投与する必要があるアルギネートオリゴマーの量を日常的に決定することが可能である。この量は標的治療部位の位置、投与経路及び使用される投薬形態、並びに関連する特定の薬物動態学的要因に応じて変動し得るが、当業者は全ての要因を考慮し、好適な投与計画に到達することが可能である。局所組成物の場合、組成物はアルギネートオリゴマーを必須の局所濃度で含有するように単純に配合することができる。患者における本発明によって治療される病態(例えば、CF又は上述の他の病態のいずれか)の症状若しくは指標のいずれか、若しくは例えばCFの様々なCFTR機能不全関連(例えばCF関連)障害若しくは病態(合併症)、若しくは患者が呈する任意の他の病態における任意の改善、又はかかる患者における任意の予防的(prophylactic or preventative)効果は、適切な局所濃度が達成されたことの指標とみなすことができる。
局所濃度は適切な投薬を確実にするために直接測定することができる。これはサンプルの抽出及び分析、又は標識型のアルギネートオリゴマーのイメージングによって達成され得る。好適なサンプル採取法は標的治療部位に応じて異なるが、概して痰採取(気道)、スワビング(例えば鼻、口及び喉、下部GI管、並びに下部女性生殖管)、例えば内視鏡手術による粘液生検及び組織生検を挙げることができる。かかる手順としては、食道胃十二指腸鏡検査(食道、胃及び十二指腸)、小腸鏡検査(小腸)、結腸鏡検査(結腸)、S字結腸鏡検査(大腸)、胆道鏡検査(胆管及び膵管)、直腸鏡検査(rectoscopy)(直腸)、肛門鏡検査(肛門)、直腸鏡検査(proctoscopy)(肛門及び直腸)、鼻鏡検査(鼻/副鼻腔)、気管支鏡検査(下気道)、耳鏡検査(耳)、膀胱鏡検査(尿路)、婦人科検査(gynoscopy)(女性生殖器系)、膣鏡検査(子宮頸部)、子宮鏡検査(子宮)、卵管鏡検査(ファローピウス管)、腹腔鏡検査(腹腔又は骨盤腔)が挙げられる。標識アルギネートオリゴマーは放射性又は発光(例えば蛍光)であり得る。これらの標識アルギネートオリゴマーから生じるシグナルは適切な手段によって検出し、定量化した後、局所濃度の算出に用いることができる。
粘膜表面は呼吸器系、例えば上気道(鼻、鼻道、咽頭、喉頭及び気管)、副鼻腔及び気管支(一次、二次及び三次)並びに下気道の細気管支内であってもよい。粘膜表面は気道、好ましくは気管、気管支及び細気管支内であるのが好ましい。
機能的CFTRイオンチャネルの欠如の影響を受ける呼吸器系の粘膜表面の上皮細胞からの粘液脱離の誘導は、粘膜毛様体クリアランスの改善及び治療対象の病態(特にCF若しくは他の病態/CFの気道合併症のいずれかに関連する気道病態、又は他の病態のいずれか(例えば気道感染、気道炎症(肺炎及び気管支炎)、呼吸困難、呼吸不全及び肺リモデリング))の改善をもたらすことが提示される。気道における細菌及び粘液蓄積の低減は、心血管病態/CFの心血管合併症又は他の病態(例えば肺高血圧及び心不全)の発現を低減又は予防することが提示される。
本発明の治療は、CF又は他の病態のいずれかであるか又はそれらに関連する副鼻腔病態/副鼻腔合併症(例えば副鼻腔感染、副鼻腔炎、顔面痛、頭痛、異常鼻漏、鼻ポリープ)を改善することも提示される。
粘膜表面は胃腸管、例えば口、咽頭、食道、十二指腸及び小腸(空腸及び回腸)内であり得る。上部GI管は口、咽頭、食道、胃及び十二指腸からなり、下部GI管は小腸、大腸(盲腸、結腸及び直腸)及び肛門からなる。機能的CFTRイオンチャネルの欠如の影響を受けるGI管の粘膜表面、特に口、咽頭、食道、十二指腸及び小腸(空腸及び回腸)における粘膜表面の上皮細胞からの粘液脱離の誘導は、CF又は非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性に関連するGI病態/CFのGI合併症、又は非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性(例えば便秘、腸閉塞(例えば新生児対象における胎便性イレウス、並びにより高年齢の患者における腸重積症及びDIOS)、栄養吸収不良)における改善をもたらすことが提示される。
粘膜表面は膵臓及び/又は胆管内であってもよい。機能的CFTRイオンチャネルの欠如の影響を受ける膵臓及び/又は胆管の粘膜表面の上皮細胞からの粘液脱離の誘導は、CF若しくは非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性に関連する膵臓病態/CFの膵臓合併症、又は非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性(例えば膵管閉塞、栄養吸収不良、膵炎症、膵炎(急性及び慢性)及び糖尿病)及び/又はCF若しくは非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性に関連する肝臓病態/CFの肝臓合併症(例えば胆管閉塞、胆石及び肝硬変)の改善をもたらすことが提示される。
粘膜表面は女性生殖器系、例えば膣、子宮頸部、子宮、ファローピウス管及び卵巣、好ましくは子宮頸部、子宮及びファローピウス管内であってもよい。子宮頸部が特に注目される。機能的CFTRイオンチャネルの欠如の影響を受ける女性生殖器系の粘膜表面の上皮細胞からの粘液脱離の誘導は、CF若しくは非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性に関連する女性不妊/CFの女性生殖能合併症、又は非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性の改善をもたらすことが提示される。
粘膜表面は男性生殖器系、例えば睾丸、精巣上体、輸精管、付属腺、精嚢、前立腺及び球尿道腺内であってもよい。精巣上体及び輸精管が特に注目される。機能的CFTRイオンチャネルの欠如の影響を受ける男性生殖器系の粘膜表面の上皮細胞からの粘液脱離の誘導は、CF若しくは非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性に関連する男性不妊/CFの男性生殖能合併症、又は非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性の改善をもたらすことが提示されている。
実施例に記載の実験作業から、少なくとも30%のモノマー残基がG残基である或る特定の局所濃度のアルギネートオリゴマーは機能的CFTRイオンチャネルの欠如の影響を受ける粘膜表面、より具体的にはCF患者の粘膜表面の異常表現型を健常粘膜表面、すなわち機能的CFTRイオンチャネルの欠如の影響を受けない対象(例えば非CF対象)の粘膜表面によりよく似た表現型へと変換するよう促進することが可能であることが示された。これは一部、粘膜表面を或る特定の局所濃度のアルギネートオリゴマーに曝露した際に観察された、機能的CFTRイオンチャネルの欠如の影響を受ける粘膜表面(例えばCF粘膜表面)からの粘液層の脱離によるものと考えられる。本発明の治療に従って脱離した、機能的CFTRイオンチャネルの欠如の影響を受ける粘膜表面の粘液層は、機能的CFTRイオンチャネルの欠如の影響を受けない正常健常粘液層と実質的に類似して挙動し、したがって健常対象(例えば非CF対象)の粘液とほぼ同じ形で身体の粘液クリアランス/取扱い系に対して応答することが提示される。
これにより、例えば上記で論考されるような治療中の患者が患う病態、及び/又は病態に関連する任意の合併症又は障害等の軽減、及び/又は任意の更なる病態又は病態に関連する障害若しくは合併症の発症の予防がもたらされることが期待される。
CFの特定の場合では、これにより例えば上記で論考されるような治療中のCF患者が患うCFに関連する障害若しくは病態(CFの合併症)の軽減、及び/又はCFに関連する更なる障害若しくは病態(CFの合併症)の発症の予防がもたらされることが期待される。
この点から、治療部位内の全体的な(又は完全な)脱離は、患者の(例えばCF患者の)病態又は障害の顕著な改善をもたらすために必要でない可能性もある。このように、或る特定の実施の形態では、脱離は部分的なものであってもよい。本発明による部分的な脱離は、治療上効果的な脱離の程度とみなすことができる。病態(例えばCF)、例えばCF患者が呈する様々なCFに関連する障害若しくは病態(CFの合併症)、若しくは治療中の患者における任意の他のCFTR機能不全関連病態に関連する任意の合併症若しくは症状若しくは病態の症状若しくは指標のいずれかの任意の改善、又は患者における任意の予防的効果は、治療上効果的な脱離が達成されたことの指標とみなすことができる。
数値的に表現すると、標的治療部位での粘液層はその部位の少なくとも40%、例えばその部位の少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%にわたって脱離する。標的治療部位での粘液層はその部位の約100%にわたって脱離するのが好ましい。
脱離は、粘液付着性の低減又は粘液層と下層上皮細胞との間の相互作用の緩和とみなすことができる。これらの特性は、粘液成分(例えばムチン)と上皮細胞との間に生じる様々な化学結合、例えば分子内結合及び分子間結合によってもたらされると考えられる。したがって、部分的な脱離は少なくとも40%、例えば少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は約100%の粘液付着性の低減/粘液−上皮相互作用の緩和とみなすことができる。
脱離の程度は任意の好都合な手段、例えば顕微鏡により測定することができる。非特許文献2(上掲)(その全体が明示的に引用することにより本明細書の一部をなす)は、粘液層の厚さ及び下層上皮からの付着/脱離を評価するための共焦点、透過型電子及び光学的(明視野)顕微鏡検査法に関する更なる詳細を提示している。好適な較正により、脱離の程度を粘液付着性の低減/粘液−上皮相互作用の緩和に対して更に関連付けることができる。
実施例に示されるように、治療部位の粘膜表面の一部を例えば内視鏡検査時の生検によって抽出することができ、粘液層の脱離の程度を標準化吸引手順の前後の粘液厚さの測定によって測定することができる。この手順を複数の異なる位置で繰り返すことで、或る特定の部位にわたる脱離度の評価が可能となる。これら及び同等の実施の形態では、粘液脱離は吸引後の治療部位にわたる平均(average (e.g. mean))粘液厚さの観点から表すこともできる。部分的な脱離は、吸引後の治療部位にわたる少なくとも40%、例えば少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は約100%の平均粘液厚さの低減をもたらすことが好ましい。粘液層を吸引するために用いる技法に応じて、(例えば健常対象のサンプル、又はより具体的には機能的CFTRの欠如の影響を受けない粘膜表面、例えば非CFサンプルの場合と同様に)脱離が全体的なものであっても、粘液層を完全に除去することが可能でない場合もある。かかる例では、100%が実験状況下で観察される最大の厚さの低減と解釈されるものとする。最大の厚さの低減は好適な内部実験対照によって決定することができる。
粘液の付着はビデオ顕微鏡法によっても記録及び観察することができ、この場合粘液は通常、繊毛又は制御された吸引によって移動するものとする。粘液は炭及び染料を含む種々の染色によって可視化することができる。
実施例の実験作業から、本発明の治療が実質的に治療部位での粘液層の厚さを変化させないことが更に明らかである。かかる特徴は提案される治療の付加的な利点として提示される。上記で論考されるように、欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は粘液の異常付着に起因又は関連する病態、例えばCFに関連する障害又は病態(CFの合併症)の多くは、粘液又は増粘した外分泌液によるルーメンの完全又は部分的な閉塞を特徴とする(例えば肺、GI、肝臓及び膵臓の病態)。したがって、粘液厚さを増大しない治療は、既に狭窄したルーメンの更なる狭窄/閉塞を引き起こすことによってこれらの病態を悪化させないことが期待される。
したがって、本発明の方法及び医学的使用は、アルギネートオリゴマーを投与した粘膜表面(治療部位)の粘液コーティングを実質的に増粘することなく達成され得る方法及び医学的使用とみなすことができる。「実質的に増粘することなく」とは、治療部位へアルギネートオリゴマーを投与した際の40%未満の厚さの増大、例えば30%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%未満の厚さの増大として数値的に表現することができる。治療部位での粘液層の厚さに実質的に変化がないのが好ましい。粘液厚さは上記のようなアルギネートオリゴマーによる治療前、治療後及び治療中に測定することができる。
本発明による欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は粘液の異常付着に起因又は関連する病態の治療との関連で使用される場合の「治療」は任意の治療効果、すなわち上記病態又はその症状若しくは指標に対する任意の有益な効果を含むように本明細書で広範に使用される。かかる病態にはCF、非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性、気道における異常粘液クリアランス及び/又は慢性微粒子吸入によって生じる呼吸困難、及び/又は慢性炎症性呼吸器障害、例えばCOPD、CB、肺気腫、気管支拡張症、喘息及び/又は慢性副鼻腔炎だけでなく、これらの病態のいずれかに関連する病態又は障害も含まれる。本節では、CF、非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性、気道における異常粘液クリアランス及び/又は慢性微粒子吸入によって生じる呼吸困難、及び/又は慢性炎症性呼吸器障害、例えばCOPD、CB、肺気腫、気管支拡張症、喘息及び/又は慢性副鼻腔炎に関連する病態又は障害への言及は、CFの合併症、非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性、気道における異常粘液クリアランス及び/又は慢性微粒子吸入によって生じる呼吸困難、及び/又は慢性炎症性呼吸器障害、例えばCOPD、CB、肺気腫、気管支拡張症、喘息及び/又は慢性副鼻腔炎への言及と代替可能である。
具体的には、CF及び非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性との関連で、これらの疾患は、各々の患者において本発明の治療を受けている時点で患者が呈するCF及び非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性に関連する障害及び病態の独自の群を特徴とする遺伝的疾患であるため、「CFの治療」及び「非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性の治療」という用語は、患者の障害及び病態のいずれか若しくは全ての治療又はそれらの一部の治療とみなすことができる。
このため、本発明はCF又は非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性の根底にある遺伝的欠陥の補正に対処するものではないが、欠陥に起因する体内の影響の治療、例えばその影響、例えば異常粘液に起因する影響の軽減に関し、関連する障害又は病態の治療、更には障害若しくは病態の臨床的影響又は対象の全身健康状態の改善を含む。これに関連して、CF又は非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性の「治癒」は、本発明の治療を受けている時点での患者が呈する様々なCF又は非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性に関連する障害及び病態の完全な軽減に相当するが、疾患の遺伝的基盤(CFTR突然変異)が依然として残る。それにもかかわらず、本発明はかかる「治癒」を必要とせず、上記で述べたように、CF又は非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性が身体に対して有する任意の影響の改善を含む。このため例えば、患者におけるCF若しくは非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性に関連する障害若しくは病態の任意の症状若しくは前兆、又はCF若しくは非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性に関連する障害若しくは病態の任意の臨床的に認められた指標の改善(例えば肺における粘膜毛様体クリアランスの増大、抗生物質に対する肺感染の反応性の増大、便秘の発生率の低減又は栄養吸収の改善)が含まれる。今回特許請求される治療では、既存のCF若しくは非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性に関連する障害若しくは病態が完全には根絶せず、又は新たなCF若しくは非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性に関連する障害若しくは病態の発症が完全には停止しない可能性があるが、治療はこれらのプロセスを標的CF若しくは非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性に関連する障害しくは病態が完全に解消されるか、又は少なくとも或る程度まで、好ましくは対象に許容可能な程度まで解消されるような程度まで阻害するのに十分である。このため、治療は例えば既存の又は診断されたCF又は非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性に関連する障害又は病態の治癒的及び姑息的療法(palliative therapy)の両方、すなわち保守的治療(reactionary treatment)を含む。
本発明による欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は粘液の異常付着に起因又は関連する病態の治療との関連で使用される場合の「予防」は、上記病態に対する患者における任意の予防的効果を含むように本明細書で広範に使用される。かかる病態にはCF、非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性、気道における異常粘液クリアランス及び/又は慢性微粒子吸入によって生じる呼吸困難、及び/又は慢性炎症性呼吸器障害、例えばCOPD、CB、肺気腫、気管支拡張症、喘息及び/又は慢性副鼻腔炎だけでなく、それに関連する病態又は障害も含まれる。本節ではCF、非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性、気道における異常粘液クリアランス及び/又は慢性微粒子吸入によって生じる呼吸困難及び/又は慢性炎症性呼吸器障害、例えばCOPD、CB、肺気腫、気管支拡張症、喘息及び/又は慢性副鼻腔炎に関連する病態又は障害への言及は、CFの合併症又は任意の上記病態への言及と代替可能である。このため、一般用語における「予防」は、例えば予防的治療前の病態、合併症、その症状又は兆候に対して患者における上記病態若しくは合併症、若しくは1つ若しくは複数のその症状若しくは兆候の影響、又は上記病態若しくは合併症、若しくは1つ若しくは複数のその症状若しくは兆候の発症を遅延させる、制限する、低減する又は予防することを含む。
当然ながら、根底にある遺伝的欠陥という意味でのCF及び非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性は本発明によって予防することができず、これは含まれないことを理解されたい。このため、これらの状況における「予防」は根底にある遺伝的欠陥の結果として又は異常粘液の結果として生じる体内の影響を予防することに関する。
具体的には、CF及び非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性との関連で、これらの疾患は、各々の患者において本発明の治療を受けている時点で患者が呈するCF及び非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性に関連する障害及び病態の独自の群を特徴とする遺伝的疾患であるため、「CF若しくは非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性、又はCF若しくは非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性に関連する障害若しくは病態の予防」という用語は、患者が未だ罹患していないか又は患者が以前に罹患していたが、特許請求される治療を受ける前に克服した、任意のCF又は非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性に関連する障害又は病態の予防とみなすことができる。
予防法は、上記に規定される欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は粘液の異常付着に起因又は関連する病態、若しくはその症状若しくは兆候の発生若しくはその影響の発現の絶対的な予防、及び上記に規定される欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は粘液の異常付着に起因若しくは関連する病態、若しくはその症状若しくは兆候の発生若しくはその影響の発現の任意の遅延、又は上記に規定される欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は粘液の異常付着に起因若しくは関連する病態、若しくはその症状若しくは兆候の発現若しくは進行の低減若しくは制限の両方を明示的に含む。予防的治療は、上記に規定される欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は粘液の異常付着に起因若しくは関連する病態、又はその症状若しくは兆候を罹患又は発現する患者のリスクを低減する治療とみなすこともできる。
「CFの患者」、「CFを患う患者」、「CFを有する患者」及び「CF患者」という用語は同等であるとみなされ、本明細書で区別なく使用される。本明細書で言及される欠陥CFTRイオンチャネル及び/又は下層上皮に付着した異常粘液に起因又は関連する他の病態のいずれかを対象にした対応する用語も同様に使用される。
本発明の一実施の形態では、本明細書で規定されるアルギネートオリゴマーは、CF又はCF関連障害若しくは病態/CFの合併症の治療のための更なる医薬品(以下、「更なるCF医薬品」)と併せて又は組み合わせて本発明の方法又は使用に使用することができる。かかる医薬品は、特に非複合CFTR遺伝子突然変異ヘテロ接合性、気道における異常粘液クリアランス及び/又は慢性微粒子吸入によって生じる呼吸困難、及び/又は慢性炎症性呼吸器障害、例えばCOPD、CB、肺気腫、気管支拡張症、喘息及び/又は慢性副鼻腔炎、それに関連する病態又はその合併症の治療において使用されるとみなすこともできる。
更なるCF又は他の医薬品(すなわち更なる治療的活性剤)は抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、免疫刺激薬、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、気管支拡張剤、消化酵素サプリメント、経口抗糖尿病薬、注射用抗糖尿病薬又は粘液粘度低減剤(すなわち、粘液の粘度を低減する薬剤;この用語は「粘液溶解薬」という用語と区別なく使用される)であり得る。
抗生物質は、アミノグリコシド系抗生物質(例えばアミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン);β−ラクタム(例えばカルバセフェム系抗生物質(例えばロラカルベフ));第一世代セファロスポリン系抗生物質(例えばセファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン);第二世代セファロスポリン系抗生物質(例えばセファクロル、セファマンドール、セファレキシン、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム);第三世代セファロスポリン系抗生物質(例えばセフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン);第四世代セファロスポリン系抗生物質(例えばセフェピム);モノバクタム系抗生物質(例えばアズトレオナム);マクロライド系抗生物質(例えばアジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、トロレアンドマイシン);モノバクタム系抗生物質(例えばアズトレオナム);ペニシリン系抗生物質(例えばアモキシシリン、アンピシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ペニシリンV、ピペラシリン、チカルシリン);ポリペプチド系抗生物質(例えばバシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB);キノロン系抗生物質(例えばシプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン);スルホンアミド系抗生物質(例えばマフェニド、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム−スルファメトキサゾール合剤);テトラサイクリン系抗生物質(例えばデメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン);グリシルサイクリン系抗生物質(例えばチゲサイクリン);カルバペネム系抗生物質(例えばイミペネム、メロペネム、エルタペネム、ドリペネム、パニペネム/ベタミプロン合剤、ビアペネム、PZ−601)から選択することができ、他の抗生物質はクロラムフェニコール;クリンダマイシン、エタンブトール;ホスホマイシン;イソニアジド;リネゾリド;メトロニダゾール;ニトロフラントイン;ピラジナミド;キヌプリスチン/ダルホプリスチン合剤;リファンピン;スペクチノマイシン;及びバンコマイシンを含む。
抗生物質は、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、アズトレオナム、アモキシシリン、アンピシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ペニシリンV、ピペラシリン、チカルシリン、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テリスロマイシン、カルボマイシンA、ジョサマイシン、キタサマイシン、ミデカマイシン、オレアンドマイシン、スピラマイシン、トロレアンドロマイシン、タイロシン、イミペネム、メロペネム、エルタペネム、ドリペネム、パニペネム/ベタミプロン、ビアペネム、PZ−601、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン及びテトラサイクリンから選択されることがより好ましい。
抗生物質は、アズトレオナム、シプロフロキサシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アモキシシリン、コリスチン、セフタジジム、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、オキシテトラサイクリン、及びイミペネムから選択されることがより好ましい。
特に好ましい実施の形態では、抗生物質は、アズトレオナム、シプロフロキサシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アモキシシリン、コリスチン及びセフタジジムから選択される。
代表的な抗真菌剤としては、ポリエン類(例えばナタマイシン、リモシジン、フィリピン、ナイスタチン、アンホテリシンB、カンジシン(candicin));イミダゾール類(例えばミコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ビホナゾール、ブトコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール);トリアゾール類(例えばフルコナゾール、イトラコナゾール、イサブコナゾール、ラブコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、テルコナゾール);アリルアミン類(例えばテルビナフィン、アモロルフィン、ナフチフィン、ブテナフィン);及びエキノカンジン類(例えばアニデュラファンギン、カスポファンギン、ミカファンギン)が挙げられるが、これらに限定されない。
代表的な抗ウイルス剤は、アバカビル、アシクロビル、アデフォビル、アマンタジン、アンプレナビル、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、ボセプレビル、シドフォビル、コンビビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフュービルタイド、エンテカビル、ファムシクロビル、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、フォスカーネット、ホスホネット、ガンシクロビル、イバシタビン、イムノビル(imunovir)、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、III型インターフェロン、II型インターフェロン、I型インターフェロン、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド、マラビロク、モロキシジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネキサビル(nexavir)、オセルタミビル、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、ラルテグラビル、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、スタブジン、テノホビル、テノホビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル及びジドブジンを含むが、これらに限定されない。
代表的な免疫刺激薬としては、サイトカイン、例えばTNF、IL−1、IL−6、IL−8、及び例えば米国特許第5,169,840号、国際公開第91/11205号及び国際公開第03/045402号(その全体が明示的に引用することにより本明細書の一部をなす)に記載されるような高M含量アルギネート等の免疫刺激アルギネート(免疫刺激特性を有する任意のアルギネートを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
代表的なNSAIDとしては、サリチル酸塩(例えばアスピリン(アセチルサリチル酸)、コリンマグネシウムトリサリチル酸、ジフルニサル、サルサレート)、プロピオン酸誘導体(例えばイブプロフェン、デクスイブプロフェン、デクスケトプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン)、酢酸誘導体(例えばアセクロフェナク、ジクロフェナク、エトドラク、インドメタシン、ケトロラク、ナブメトン、トルメチン、スリンダク)、エノール酸誘導体(例えばドロキシカム、イソキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム)、アントラニル酸誘導体(例えばフルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、トルフェナム酸)、及び選択的COX−2阻害剤(コキシブ;例えばセレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブ、ロフェコシキブ、バルデコキシブ)が挙げられるが、これらに限定されない。プロピオン酸誘導体(例えばイブプロフェン、デクスイブプロフェン、デクスケトプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン)が好ましく、イブプロフェンが最も好ましい。
本明細書で使用される場合、「粘液溶解薬」及び「粘液粘度低減剤」という用語は、粘液の固有粘度を低減する薬剤及び下層上皮への粘液の付着を低減する薬剤、特に粘液の成分内又は成分間の分子間相互作用を直接的又は間接的に破壊する薬剤、粘液の水和に影響を及ぼす薬剤及び粘膜上皮のイオン微小環境(特に二価カチオン、例えばカルシウムのレベル)を調整する薬剤を包含することを意図したものである。好適な粘液粘度低減剤の代表例としては、核酸切断酵素(例えばDNアーゼI等のDNアーゼ、又はドルナーゼアルファ)、高張食塩水、ゲルソリン、チオール還元剤、アセチルシステイン、非荷電低分子多糖(例えばデキストラン、マンニトール)、アルギニン(又は他の酸化窒素前駆体若しくは合成刺激物質)、プリン受容体のP2Y2亜型の作動薬(例えばデヌホソル)又はアニオン性ポリアミノ酸(例えばポリASP又はポリGLU)が挙げられるが、これらに限定されない。アンブロキソール、ブロムヘキシン、カルボシステイン、ドミオドール、エプラジノン、エルドステイン、レトステイン、メスナ、ネルテネキシン、ソブレロール、ステプロニン、チオプロニンが注目すべき具体的な粘液溶解薬(mucolytics)である。DNアーゼI及び高張食塩水が好ましい。
好適な気管支拡張剤の代表例としては、β2作動薬(例えば短時間作用β2作動薬(例えばピルブテロール、エピネフリン、サルブタモール、レボサルブタモール、クレンブテロール、テルブタリン、プロカテロール、メタプロテレノール、フェノテロール、ビトルテロールメシレート、リトドリン、イソプレナリン)、長時間作用β2作動薬(例えばサルメテロール、ホルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール)、及び超長時間作用β2作動薬(例えばインダカテロール))、抗コリン作用薬(例えばイプラトロピウム、オキシトロピウム、チオトロピウム)及びテオフィリンが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なコルチコステロイドの代表例としては、プレドニゾン、フルニソリド、トリアムシノロン、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、チキソコルトール、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、アルクロメタゾン、プレドニカルベート、クロベタゾン、クロベタゾール、及びフルプレドニデンが挙げられるが、これらに限定されない。
好適な消化酵素サプリメントの代表例としては、パンクレリパーゼ(膵リパーゼ、アミラーゼ及びキモトリプシンの混合物)、パンクレアチン(膵リパーゼ、アミラーゼ及びトリプシンの混合物)、又は1つ若しくは複数のリパーゼ(例えば胆汁塩依存性リパーゼ、膵リパーゼ、胃リパーゼ、膵リパーゼ関連タンパク質1、膵リパーゼ関連タンパク質2、舌リパーゼ)、プロテアーゼ(例えばペプシン、トリプシン及びキモトリプシン)及びアミラーゼ(例えばα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、γ−アミラーゼ)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの酵素は植物酵素又はヒトを含む動物の酵素であり得る。これらの酵素は天然の供給源から得るか、又は分子生物学的技法によって調製することができる。
好適な経口抗糖尿病薬の代表例としては、スルホニル尿素類(例えばカルブタミド、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、トルブタミド、グリピジド、グリクラジド、グリベンクラミド、グリボルヌリド、グリキドン、グリソキセピド、グリクロピラミド、グリメピリド)、ビグアニド類(例えばメトホルミン、フェノホルミン、ブホルミン、プログアニル)、チアゾリジンジオン類(例えばロシグリタゾン、ピオグリタゾン、トログリタゾン)、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤(例えばアカルボース、ミグリトール、ボグリボース)、メグリチニド類(例えばナテグリニド、レパグリニド、ミチグリニド)、及びグリコ尿酸類(glycosurics)(例えばダパグリフロジン、ガナグリフロジン(ganagliflozin)、イパラグリフロジン、トホグリフロジン、エンパグリフロジン、エタボン酸セルグリフロジン、エタボン酸レモグリフロジン)が挙げられるが、これらに限定されない。
好適な注射用抗糖尿病薬の代表例としては、インスリン及びその類縁体(例えばインスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングルリジン、インスリン亜鉛、イソフェンインスリン、インスリングラルギン、インスリンデテミル)、並びにインクレチン模倣物(例えばグルカゴン様ペプチド(GLP)作動薬、例えばエキセナチド、リラグルチド、及びタスポグルチド;並びにジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP−4)阻害剤、例えばビルダグリプチン、シタグリプチン、サクサグリプチン、リナグリプチン、アログリプチン及びセプタグリプチン)が挙げられるが、これらに限定されない。
更なるCF医薬品はアルギネートオリゴマーの前に、アルギネートオリゴマーと同時に又はアルギネートオリゴマーの後に好都合に適用することができる。更なるCF医薬品をアルギネートオリゴマーと実質的に同時に又はその後に適用することが好都合である。他の実施の形態では、更なるCF医薬品をアルギネートオリゴマーの前に好都合に適用又は投与することができる。更なるCF医薬品は、使用される薬剤に適切な時点で繰り返し与える(例えば投与又は送達する)ことができる。当業者は好適な投薬計画を考案することが可能である。長期治療では、アルギネートオリゴマーを繰り返し使用してもよい。アルギネートオリゴマーは更なるCF医薬品と同じ頻度で、又はより高い若しくは低い頻度で適用することができる。必要とされる頻度は、アルギネートオリゴマーが投与される粘膜表面の位置、更には治療中の特定の患者が呈する臨床病態(例えばCF)の全体的性質に応じて異なり得る。
本発明による使用に提案されたアルギネートオリゴマー及び更なるCF医薬品(又は更なる治療的活性剤)は、例えば単一の医薬配合物若しくは組成物に合わせて又は個別に投与することができる(すなわち、個別の、連続の、又は同時の投与)。したがって、本発明のアルギネートオリゴマー及び更なるCF医薬品を、例えば医薬キットに又は組み合わせた(「組合せ」)生成物として組み合わせることができる。
それゆえ、本発明はまた、生成物(例えば、医薬品キット又は組み合わせた(「組合せ」生成物)又は組成物(例えば、医薬組成物)を提供し、この場合生成物又は組成物は本明細書で規定されるアルギネートオリゴマー及び例えば上記のような更なるCF医薬品(又は更なる治療的活性剤)を含む。本明細書で規定されるアルギネートオリゴマー及び抗生物質、抗真菌剤、NSAID、気管支拡張剤、コルチコステロイド及び/又は粘液粘度低減剤を含む組合せが好ましい。本明細書で規定されるアルギネートオリゴマー及び抗生物質、抗真菌剤及び/又は粘液粘度低減剤を含む組合せが特に好ましい。かかる医薬生成物及び医薬組成物を本発明の医学的方法への使用に適合させることが好ましい。
本発明の医学的方法に使用されるこのような医薬生成物及び医薬組成物を製造するために本明細書において定義されたアルギネートオリゴマーの使用も検討される。
本発明のアルギネートオリゴマーを、標的治療部位の粘膜表面で必須の局所濃度を達成するために任意の好都合な形態において、又は任意の好都合な手段により、例えば局所、経腸(例えば経口、口腔、舌下、直腸)、非経口(例えば肝臓内、膵臓内)により、又は吸入(鼻孔吸入を含む)により対象に投与することができる。アルギネートを経腸経路により又は吸入により投与するのが好ましい。女性生殖器系の一部(例えば膣及び子宮頸部)への局所投与も好都合であり得る。アルギネートオリゴマーを多くの異なる経路を介して投与することができることは、肝臓及び膵臓合併症の比較的直接的な治療が可能となるため、現在市販されているCF医薬品に対して有利な点となる。
当業者であれば、本発明のアルギネートオリゴマーを、当該技術分野において既知であり、文献に広く記載されている従来の方法のいずれかに従って、これらの投与経路に適用する医薬組成物に配合することができるだろう。
したがって本発明は、本明細書で規定されるアルギネートオリゴマーを、好ましくは標的治療部位の粘膜表面の必須の局所濃度を達成するのに十分な量で少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤と共に含む、上述の方法又は使用のいずれかに使用される医薬組成物も提供する。この組成物は上記のような他の治療剤も含み得る。
より具体的には、本発明のアルギネートオリゴマーは、任意に他の活性剤、1つ又は複数の従来の担体、希釈剤及び/又は賦形剤と共に組み込み、従来のガレヌス調製物、例えば錠剤、ピル、粉末(例えば、吸入用乾燥粉末を含む吸入用粉末)、ロゼンジ、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル、懸濁液、乳化液、溶液、シロップ、エアロゾル(固体として、又は液体媒体中で)、スプレー(例えば鼻腔用スプレー)、ネブライザにおける使用のための組成物、外用薬、クリーム、軟膏、軟ゼラチンカプセル及び硬ゼラチンカプセル、坐剤、ペッサリー、無菌注射溶液、無菌包装粉末等を製造することができる。腸溶性固体又は液体組成物、無菌吸入用組成物及び無菌注射用組成物は、特に注目すべきである。
好適な担体、賦形剤及び希釈剤の例は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、不活性アルギネートポリマー、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水シロップ、水、水/エタノール、水/グリコール、水/ポリエチレン、高張食塩水、グリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、若しくは脂肪物質(ハードファット等)、又はそれらの好適な混合物である。注目すべき賦形剤及び希釈剤は、マンニトール及び高張食塩水(生理食塩水)である。
組成物は、滑剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、保存料、甘味料、香料等を更に含んでいてもよい。上記の組合せ療法に関して上で論じたように、更なる治療的活性剤が医薬品組成物中に含まれ得る。
非経口で投与可能な形態、例えば上述の肝臓内又は膵臓内経路による送達に好適な溶液は、無菌であり、かつ生理学的に許容不可能な薬剤を含まぬべきであり、投与による刺激又は他の悪影響を最小化するために低浸透圧であるべきであり、したがって該溶液は好ましくは、等張、又はわずかに高張の溶液、例えば高張食塩水(生理食塩水)であるべきである。好適なビヒクルは、非経口溶液、例えば無菌注射用水、塩化ナトリウム注射液、リンガー液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、乳酸加リンガー液、並びにRemington's Pharmaceutical Sciences, 15th ed., Easton: Mack Publishing Co., pp. 1405-1412 and 1461-1487 (1975)及びThe National Formulary XIV, 14th ed. Washington: American Pharmaceutical Association (1975)(その全体が明示的に引用することにより本明細書の一部をなす)に記載されるような他の溶液を投与するために習慣的に使用されている水性ビヒクルを含む。溶液は、バイオポリマーに適合性を有し、かつ製品の製造、貯蔵又は使用を妨げない非経口溶液、賦形剤及び他の添加物のために従来から使用されている保存料、抗菌剤、緩衝液及び抗酸化剤を含有することができる。
アルギネートオリゴマーの単純な無菌溶液又はアルギネートオリゴマーを含む単純な無菌液状組成物は外科手術時の使用、及び例えばネブライザによる肺への送達又は例えば鼻内噴霧デバイスによる副鼻腔への送達に特に好都合であり得る。
アルギネートオリゴマーの固体又は液体配合物に胃及び/又は上部GI管の他の部分における分解を予防するが、下部GI管、例えば小腸における分解を可能とする腸溶コーティングを設けてもよい。かかるコーティングは脂肪酸、ろう、セラック、プラスチック及び植物繊維を含むポリマーから日常的に調製される。その具体例としては、アクリル酸メチル−メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸メチル−メタクリル酸コポリマー、酢酸コハク酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル酢酸コハク酸セルロース(酢酸コハク酸ヒプロメロース)、ポリ酢酸ビニルフタレート(PVAP)、トリメリト酸酢酸セルロース及びアルギン酸ナトリウムポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
局所投与のために、アルギネートオリゴマーを、クリーム、外用薬、ゲル、軟膏、経皮パッチ等の中に組み込むことができる。好適であると考えられる更なる局所システムは、例えば、固体、半固体、非晶質、又は液体結晶ゲルマトリクスがin situで形成され、かつアルギネートオリゴマー(本明細書に規定の任意のアルギネートオリゴマーとすることができる)を含み得るゲルのような、in situ薬剤送達システムである。かかるマトリクスは、マトリクスからのアルギネートオリゴマーの放出を制御するように好都合に設計することができ、例えば放出を、選択した一定期間にわたり遅延化及び/又は持続させることができる。かかるシステムは、生物学的な組織又は流体、例えば粘膜表面と接触しただけで、ゲルを形成し得る。通例ゲルは、生体接着性及び/又は粘膜接着性を有する。プレゲル組成物を保持する、又は該組成物を保持するように適合させることができる任意の身体の部位への送達は、かかる送達技法により標的とすることができる。かかるシステムは、国際公開第2005/023176号(その全体が明示的に引用することにより本明細書の一部をなす)で説明されている。
本発明の組成物中のアルギネートオリゴマーの相対含量は、必要とされる投薬量及び従うべき投薬計画に応じて変化し得るが、治療する対象の体格、対象の特定の病気の性質、並びに標的治療部位の位置及び同一性等の可変要素を考慮して、標的治療部位の粘膜表面での必須の局所濃度を達成するのに十分である。当業者であれば、複数回投与計画が続く場合アルギネート量を減少させることができ、又は投与若しくは適用の回数を最小限にするようアルギネート量を増大させることができることがわかるだろう。
子宮頸部又は下部女性生殖器系の他の部分への本発明のアルギネートオリゴマーの投与に使用することができる代表的な局所配合物、例えばクリーム、外用薬又は軟膏は1%〜25%、1%〜20%、1%〜15%、1%〜10%、1%〜9%、1%〜8%、1%〜7%、1%〜6%、5%〜25%、5%〜20%、5%〜15%、5%〜10%、5%〜9%、5%〜8%、5%〜7%、5%〜6%、8%〜25%、8%〜20%、8%〜15%、8%〜10%、9%〜25%、9%〜20%又は9%〜15%(w/v)のオリゴマーを含有し、残りの部分は薬学的に許容可能な賦形剤、及び/又は使用される場合に他の活性剤から構成され得る。女性生殖器系への局所配合物の適用のために設計される送達デバイスは既知であり、好都合な場合に上述の配合物を送達するために用いることができる。
鼻又は副鼻腔への投与については、無菌水性及び/又は油性液体配合物(例えばエマルション)を使用し、例えば鼻内噴霧デバイス(例えば噴射剤を用いない又は噴射剤を用いる)によって投与することができる。代表的な配合物は1%〜25%、1%〜20%、例えば1%〜15%、1%〜10%、1%〜9%、1%〜8%、1%〜7%又は1%〜6%、5%〜25%、5%〜20%、5%〜15%、5%〜10%、5%〜9%、5%〜8%、5%〜7%、5%〜6%、8%〜25%、8%〜20%、8%〜15%、8%〜10%、9%〜25%、9%〜20%又は9%〜15%(w/v又はw/w)のオリゴマーを含有し、残りの部分は薬学的に許容可能な賦形剤、例えば水、及び/又は使用される場合に他の活性剤から構成され得る。
他の実施の形態では、徐放性、遅延放出性又は持続放出性配合物を例えば鼻又は副鼻腔への送達に使用することができる。代表的な配合物はアルギネートオリゴマーを含有する粉末又は該粉末の懸濁液であり、該粉末は最大90%、例えば最大85%、80%、75%又は70%、例えば50%〜90%、55%〜90%、60%〜90%、65%〜90%、70%〜90%、75%〜90%、80%〜90%、85%〜90%、50%〜85%、55%〜85%、60%〜85%、65%〜85%、70%〜85%、75%〜85%、80%〜85%、50%〜80%、55%〜80%、60%〜80%、65%〜80%、70%〜80%、75%〜80%、50%〜70%、55%〜70%、60%〜70%又は65%〜70%(w/v又はw/w)のオリゴマーを含有し、残りの部分は薬学的に許容可能な賦形剤及び/又は使用される場合に他の活性剤から構成され得る。粉末はアルギネートオリゴマーの放出を制御するコーティングを含み得る。
上気道への本発明のアルギネートオリゴマーの投与に使用される代表的な吸入用溶液は通例無菌であり、6%〜25%、例えば6%〜20%、6%〜15%、6%〜10%、8%〜25%、8%〜20%、8%〜15%、9%〜25%、9%〜20%、9%〜15%、10%〜15%、10%〜20%、10%〜25%、15%〜20%又は15%〜25%(w/v)のオリゴマーを含有し、残りの部分は薬学的に許容可能な賦形剤、例えば水、及び/又は使用される場合に他の活性剤から構成され得る。
下気道への本発明のアルギネートオリゴマーの投与に使用される代表的な吸入用粉末は最大90%、例えば最大85%、80%、75%又は70%、例えば50%〜90%、55%〜90%、60%〜90%、65%〜90%、70%〜90%、75%〜90%、80%〜90%、85%〜90%、50%〜85%、55%〜85%、60%〜85%、65%〜85%、70%〜85%、75%〜85%、80%〜85%、50%〜80%、55%〜80%、60%〜80%、65%〜80%、70%〜80%、75%〜80%、50%〜70%、55%〜70%、60%〜70%又は65%〜70%(w/v又はw/w)のオリゴマーを含有し、残りの部分は薬学的に許容可能な賦形剤及び/又は使用される場合に他の活性剤から構成され得る。
下部GI管への本発明のアルギネートオリゴマーの投与に使用される代表的な錠剤は最大99%、最大95%、90%、85%又は80%、例えば50%〜95%、55%〜95%、60%〜95%、65%〜95%、70%〜95%、75%〜95%、80%〜95%、85%〜95%、90%〜95%、50%〜90%、50%〜90%、55%〜90%、60%〜90%、65%〜90%、70%〜90%、75%〜90%、80%〜90%、85%〜90%、50%〜90%、55%〜85%、60%〜80%又は65%〜75%(w/v又はw/w)のオリゴマーを含有し、残りの部分は薬学的に許容可能な賦形剤及び/又は使用される場合に他の活性剤から構成され得る。
腸溶性錠剤も下部GI管への本発明のアルギネートオリゴマーの投与に効果的であり得る。代表的な腸溶性錠剤は最大95%、例えば最大90%、85%又は80%、例えば55%〜90%、60%〜90%、65%〜90%、70%〜90%、75%〜90%、80%〜90%、85%〜90%、55%〜85%、60%〜85%、65%〜85%、70%〜85%、75%〜85%、80%〜85%、50%〜80%、55%〜80%、60%〜80%、65%〜80%、70%〜80%又は75%〜80%(w/v又はw/w)のオリゴマーを含有し、残りの部分は腸溶コーティング(例えば脂肪酸、ろう、セラック、プラスチック及び植物繊維を含むポリマー)を含む薬学的に許容可能な賦形剤、及び/又は使用される場合に他の活性剤から構成され得る。
ペッサリーを女性生殖管の下部への本発明のアルギネートオリゴマーの投与に使用することができる。代表的な配合物は1%〜25%、1%〜20%、例えば1%〜15%、1%〜10%、1%〜9%、1%〜8%、1%〜7%、1%〜6%、5%〜25%、5%〜20%、5%〜15%、5%〜10%、5%〜9%、5%〜8%、5%〜7%、5%〜6%、8%〜25%、8%〜20%、8%〜15%、8%〜10%、9%〜25%、9%〜20%又は9%〜15%(w/v又はw/w)のオリゴマーを含有し、残りの部分は固体賦形剤(例えばパラフィン等)を含む薬学的に許容可能な賦形剤、及び/又は使用される場合に他の活性剤から構成され得る。
肝臓、膵臓又は生殖器系の粘膜表面への直接送達のための代表的な水溶液は無菌であり、6%〜25%、例えば6%〜20%、6%〜15%、6%〜10%、8%〜25%、8%〜20%、8%〜15%、9%〜25%、9%〜20%、9%〜15%、10%〜15%、10%〜20%、10%〜25%、15%〜20%又は15%〜25%(w/v)のオリゴマーを含有し、残りの部分は水及び薬学的に許容可能な賦形剤、及び/又は使用される場合に他の活性剤から構成され得る。
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照して更に説明される。