JP2017227913A - 塵埃除去装置および撮像装置 - Google Patents

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伊福 俊博
Toshihiro Ifuku
俊博 伊福
康志 清水
Koji Shimizu
康志 清水
達雄 古田
Tatsuo Furuta
達雄 古田
松田 堅義
Katayoshi Matsuda
堅義 松田
久保田 純
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純 久保田
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Junpei Hayashi
潤平 林
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Abstract

【課題】適切に設計・制御可能であり、かつ、低温においても高い塵埃除去性能を有する塵埃除去装置およびそれを用いた撮像装置を提供する。
【解決手段】本発明の塵埃除去装置は、振動部材と、圧電材料と一対の対向する電極を有する圧電素子と、高分子化合物成分を有する固定部材を備えた塵埃除去装置であって、前記振動部材に、前記圧電素子及び前記固定部材が設けられており、圧電材料の第一の強誘電結晶相から第二の強誘電結晶相への相転移温度Tが−60℃≦T≦−5℃であり、前記固定部材の25℃における弾性率が−5℃における弾性率より小さいことを特徴とする。
【選択図】図4

Description

本発明は、デジタルカメラやビデオカメラなどの撮像装置及び撮像装置に組み込まれる光学部品の表面に付着する塵埃の除去に関するもので、とくに、塵埃を振動により除去する塵埃除去装置に関するものである。
画像信号を電気信号に変換して撮像するデジタルカメラ等の撮像装置では、撮影光束をCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子で受光する。そして、撮像素子から出力される光電変換信号を画像データに変換して、メモリカード等の記録媒体に記録する。このような撮像装置では、撮像素子の前方(被写体側)に、光学ローパスフィルタや赤外線カットフィルタが配置される。
この種の撮像装置において、撮像素子のカバーガラスやこれらのフィルタの表面に塵埃が付着すると、その塵埃が黒い点となって撮影画像に写り込むことがある。とくに、レンズ交換可能なデジタル一眼レフデジタルカメラでは、レンズ交換時に塵埃がレンズマウントの開口からデジタルカメラ本体内に入り込み撮像素子のカバーガラスやフィルタの表面に付着することがある。
そこで、圧電素子の振動を利用して、表面に付着した塵埃を除去する塵埃除去装置を備えたデジタルカメラ(例えば、特許文献1)が提案されている。
特許文献1のデジタルカメラに備えられた塵埃除去装置は、振動部材(特許文献1の防塵フィルタ)に固着した圧電素子に所定周波数の交番電圧を印加し、この圧電素子の駆動により振動部材を光軸方向つまり振動部材の厚さ方向に変位させる弾性振動(以下 面外振動:Flexural Vibrationと定義する)を発生させる。特許文献1の塵埃除去装置は、この面外振動により振動部材の表面に付着した塵埃を除去するものである。
かかる構成において、特許文献1のデジタルカメラでは、振動部材は、振動部材の前面側を一端部がねじでカメラ本体(撮像装置)に固定された押圧部材と、振動部材の背面側をカメラ本体(撮像装置)に備え付けられたシール、とによって保持されている。振動部材の背面側は振動部材とシールとカメラ本体によって機密状態が確保されている(塵埃等の異物の侵入を防ぐ密閉空間が形成されている)ため、振動部材の前面側の塵埃さえ除去できれば、撮像画像に塵埃が写りこむことはない。
ここで、振動部材は押圧部材からの押圧力でシールに向かって押圧されるが、バネ用りん青銅やバネ用ステンレスの板材で形成されている押圧部材は曲げの剛性が高く、ゴム材で形成されているシールは曲げの剛性が低いので、押圧や外力(慣性力等)によってはシールが変形することになる。
また、押圧部材と振動部材の間には押圧部材に接着された受け部材が介在し、光軸と垂直な面内における振動部材の位置決めは位置決め部材を介して受けることによって行う。この受け部材および位置決め部材はゴムや樹脂等の振動減衰性のある材料で形成されている。
さらに、振動部材の背面側には受け部が設置されているが、ゴムあるいは軟質の樹脂等の振動減衰性のある受け部の剛性はシールの剛性に比べ高いので、ある一定以上の振動部材の押し込みに対してシールの変形は抑えられる。
ところで、この受け部は振動部材の面外振動がほとんど発生しない節の部分を支持するように配置されており、振動部材の振動をあまり阻害しないような構成となっている。
なお、振動部材に固着された圧電素子には、圧電素子に所定周波数の交番電圧を印加するためのフレキシブルプリント基板が電気的に接続されているが、この接続は一般にACF(異方性導電膜)や樹脂による接着によって行われている。
このように、塵埃除去装置には撮像装置もしくはカメラ本体等の基体に設置するために固定部材が必要である。固定部材は基体に過剰な振動を伝達しないように制振性能がその機能として必要である。一方で、特許文献1におけるこのような一連の構成に示される通り、固定部材は振動部材の振動を著しく阻害し、塵埃の除去効果を低下させてしまうという側面を持つ。このため、固定部材にはゴムや樹脂等の柔らかい高分子化合物材料が用いられている。
また、塵埃除去装置では、圧電素子と振動部材の固着や圧電素子とフレキシブルプリント基板との接着等にも樹脂等の柔らかい材料が用いられている。
特許文献1の圧電素子は、圧電材料と、圧電材料の板面に配置された下電極とも呼ばれる第1の電極と、上電極とも呼ばれる第2の電極とで一対をなした対向する電極、とにより構成されているリング状ないし矩形状の板状圧電素子である。ここで、特許文献1の圧電素子には、電極間に印加する電界により生じる圧電材料の伸縮歪みにより、振動部材の光軸と垂直方向、つまり圧電素子の厚さ方向と垂直方向(以下 長さ方向:Lengthdirectionと定義する)に変位する弾性振動(以下 長さ方向の伸縮振動:Length vibrationと定義する)が発生する。この圧電素子の長さ方向の伸縮振動により、圧電素子と圧電素子に固着された振動部材との間に応力が発生し、振動部材に面外振動を発生させることができる。
振動部材は圧電素子へ印加する電圧の周波数や位相を制御することにより、振動モードと呼ばれる複数の節部や腹部をもつ複次の定在波や、節部や腹部がある時間に対し振動部材の長さ方向に移動する進行波を振動部材の面外振動により作り出すことができる。例えば特許文献1のデジタルカメラに備えられた塵埃除去装置では、一対の圧電素子に印加する電圧の位相を制御することにより複数の振動モードを発生させ、複数の振動モードを効果的に使い分けることで振動部材の表面に付着した塵埃を効果的に除去できる。
ここで、特許文献1の塵埃除去装置の駆動周波数は振動部材の共振周波数近傍とすることで、圧電素子により小さな電圧を印加しても振動部材により大きな面外振動を発生させることができる。
また、特許文献1の塵埃除去装置は共振周波数近傍の周波数帯を掃引することにより、塵埃除去装置の個体ばらつきや温度に対する周波数の変動に対しても問題なく塵埃を除去できる構成となっている。特許文献1によれば、圧電素子を振動させる周波数は圧電素子と振動部材で構成された振動子の形状、寸法、材質や支持の状態によって決まり、通常、温度は振動子の弾性率に影響し、その共振周波数を変化させる要因の1つとなっている。このように、温度は振動子や塵埃除去装置の共振周波数を変動させる要因の1つである。
ところで、圧電素子の長さ方向の伸縮振動の大きさは、圧電セラミックスの圧電横効果に起因した圧電変位の大きさと密接に関係していため、圧電特性の優れた圧電素子が採用されている。
現在各種デバイスに用いられている圧電素子には鉛を含有するジルコン酸チタン酸鉛(PZT:PbZr1−xTi)他、鉛を多量に含有する圧電材料が多く用いられている。例えば特許文献1の圧電素子はジルコン酸チタン酸鉛である。しかしながら、ジルコン酸チタン酸鉛のような鉛を多量に含有する圧電素子は一旦廃却され酸性雨を浴びたりする場合、圧電材料中の鉛成分が土壌に溶け出し生態系に害を成す可能性が指摘されている。そこで近年、環境に配慮する為、また、各種製品への鉛の使用を規制する法令に対応する為、鉛を使用しないもしくは鉛の使用を極力抑えた圧電材料(非鉛圧電材料)の研究や製品開発の検討が行われている。しかしながら、各種諸特性がジルコン酸チタン酸鉛に匹敵するような優れた非鉛圧電材料の実現には未だ至っておらず、ジルコン酸チタン酸鉛と同等の性能を有する非鉛圧電材料を用いたデバイスが製品化されている例はまだ少ない。
特許第04790056号公報
岩波理化学辞典 第5版(岩波書店 1998年2月20日発行)
上述のように、特許文献1のデジタルカメラに備えられた塵埃除去装置は圧電素子に長さ方向の伸縮振動を発生させることで振動部材に面外振動を発生させることができ、その面外振動により振動部材の表面に付着した塵埃を除去するものである。
しかしながら、圧電素子に発生させる振動が長さ方向の伸縮振動であるため、振動部材や圧電素子全体がある振動モードで面外振動する。このため、塵埃除去装置を撮像装置もしくはカメラ本体等の基体に設置するために固定部材が必要である。固定部材は基体に過剰な振動を伝達しないように制振性能がその機能として必要である。一方で、固定部材は振動部材の振動を著しく阻害し、塵埃の除去効果を低下させてしまうという側面を持つ。このため、固定部材には振動部材の振動を著しく阻害しないようにゴムや樹脂等の高分子化合物材料が用いられている。
また、塵埃除去装置では、圧電素子と振動部材の固着や圧電素子とフレキシブルプリント基板との接着等にも樹脂等の柔らかい高分子化合物材料が用いられている。
一般に、振動部材の振動を妨げることなく、かつ、撮像装置もしくはカメラ本体等の基体に過剰な振動を伝達しないような部材、つまり制振性能が最も優れる部材は低温域にガラス転移温度をもつゴム状樹脂である。しかし、このような材料は一般に室温付近にガラス転移温度をもつため、低温になるにつれ材料が顕著に硬化し、材料の弾性率が増大する。このため、特許文献1に開示されているような従来の塵埃除去装置では、低温になるに伴い塵埃除去装置の駆動周波数が高くなってしまい、使用想定温度で問題なく塵埃除去できるように、塵埃除去装置の掃引周波数帯をあらかじめ広げておく必要が生じる。また、このように掃引周波数帯をあらかじめ広げておかなければならない問題を回避するため、低温域では別の弾性振動を用いて塵埃を除去しなければならない、等、塵埃除去装置を適切に設計したり制御することが困難であった。
さらに、特許文献1に開示されているような従来の塵埃除去装置では、低温になるにつれ材料が顕著に硬化し、振動部材の振動を妨げるようになるため、低温になるに伴い振動部材の振幅が小さくなり、塵埃除去性能が低下してしまう課題があった。
特に、矩形形状の塵埃除去装置では、たとえ一つの振動モードで塵埃を除去するにしても、固定部材は必ず振動部材の節以外の部位に接することは避けられない。このため、塵埃除去装置を適切に設計したり制御することも、低温で高い塵埃除去性能を維持することも、円形形状の塵埃除去装置に比べさらに困難であった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、塵埃除去装置を適切に設計したり制御することが可能で、低温においても高い塵埃除去性能を有する塵埃除去装置およびそれを用いた撮像装置を提供することを目的とする。
本発明の塵埃除去装置は、振動部材と、圧電材料と一対の対向する電極を有する圧電素子と、高分子化合物成分を有する固定部材を備えた塵埃除去装置であって、前記振動部材に前記圧電素子及び前記固定部材が設けられており、前記圧電材料の第一の強誘電結晶相から第二の強誘電結晶相への相転移温度Tが−60℃≦T≦−5℃であり、前記固定部材の25℃における弾性率が−5℃における弾性率より小さいことを特徴とする。
本発明の撮像装置は、前記塵埃除去装置と撮像素子ユニットとを少なくとも有する撮像装置であって、前記塵埃除去装置の振動部材と前記撮像素子ユニットの受光面を同一軸上に順に設けたことを特徴とする。
本発明によれば、塵埃除去装置を適切に設計したり制御することが可能な塵埃除去装置およびそれを用いた撮像装置を提供することができる。さらに、低温においても高い塵埃除去性能を有する塵埃除去装置およびそれを用いた撮像装置を提供することができる。
本発明の圧電素子の一例を示す図である。 本発明の圧電素子の振動原理の一例を示す図である。 本発明の塵埃除去装置の一例を示す図である。 本発明の塵埃除去装置の一例を示す図である。 本発明の塵埃除去装置の振動原理を示す模式図である。 従来の圧電材料の比誘電率と、共振周波数の一例を示す図である。 本発明の圧電材料の比誘電率と、共振周波数の一例を示す図である。 本発明の撮像装置の一例を示す図である。 本発明の撮像装置の一例を示す図である。 本発明の撮像装置の撮像ユニットの構成の一例を示す分解斜視図である。 図9のA−A線に沿う断面図である。 本発明の塵埃除去装置の電気的構成の一例を示すブロック図である 本発明の撮像装置の塵埃除去装置の構成の一例を示す分解斜視図である。 本発明の撮像装置の塵埃除去装置の一例を示す図である。 実施例1、比較例1、比較例2の圧電素子の圧電定数d31の温度依存性を示す図である。 実施例1、比較例1、比較例2の圧電素子の弾性定数Y11の温度依存性を示す図である。 実施例1、比較例1、比較例2の圧電素子の共振周波数の温度依存性を示す図である。 実施例31、比較例3、比較例4の塵埃除去装置を備える撮像ユニットの共振周波数の温度依存性を示す図である。 実施例31、比較例3、比較例4の塵埃除去装置を備える撮像ユニットの機械アドミタンスの温度依存性を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明に係る塵埃除去装置は、圧電材料と一対の対向する電極により構成される圧電素子と、振動部材と、高分子化合物成分を少なくとも有する固定部材とからなる、基体に設置する塵埃除去装置であって、前記圧電材料の第一の強誘電結晶相から第二の強誘電結晶相への相転移温度Tが−60℃≦T≦−5℃であることを特徴とする。
本発明に係る撮像装置は、圧電材料と一対の対向する電極により構成される圧電素子と、振動部材と、高分子化合物成分を少なくとも有する固定部材とからなる、基体に設置する塵埃除去装置と撮像素子ユニットとを少なくとも有する撮像装置であって、前記圧電材料の第一の強誘電結晶相から第二の強誘電結晶相への相転移温度Tが−60℃≦T≦−5℃であり、前記塵埃除去装置の振動部材と前記撮像ユニットの受光面を同一軸上に順に設けた事を特徴とする。
まず、本発明の塵埃除去装置の好適な実施形態の一例について説明する。
図1は本発明の塵埃除去装置が備える圧電素子430の一例を示す図である。圧電素子430は圧電材料431と第1の電極432と第2の電極433より構成され、第1の電極432と第2の電極433は圧電材料431の板面に対向して配置されている。図中右側(c)の圧電素子430の手前に出ている第1の電極432が設置された面を第1の電極面436、図中左側(a)の圧電素子430の手前に出ている第2の電極432が設置された面が第2の電極面437である。ここで、本発明における電極面とは電極が設置されている圧電素子の面を指しており、例えば図1に示すように第1の電極432が第2の電極面437に回りこんでいても良い。さらに第2の電極面にセンシング用等に利用される第3の電極等があっても良い。なお、以降の図面において、図中の符号と同じ符号は同じ構成要素を表す。
図2は本発明の塵埃除去装置が備える圧電素子430の動作原理の一例を示す図である。圧電素子430は圧電材料431があらかじめ第1の電極面436の垂直方向に分極されており、電源から第1の電極432と第2の電極433とに高周波数の電圧が印加できるようになっている。圧電素子430は、電界方向435の矢印が示す方向に発生する交番電界により生じる圧電材料431の伸縮歪みにより、圧電素子430の長さ方向に伸縮振動が発生する。圧電素子の長さ方向の伸縮振動の大きさは、圧電セラミックスの圧電横効果に起因した圧電変位の大きさと密接に関係している。なお、符号434は分極方向を表す。
第1の電極432と第2の電極433は、厚み5nmから5000nm程度の導電層よりなる。その材料は特に限定されず、圧電素子に通常用いられているものであればよい。例えば、Ti、Pt、Ta、Ir、Sr、In、Sn、Au、Al、Fe、Cr、Ni、Pd、Ag、Cuなどの金属およびこれらの化合物を挙げることができる。
第1の電極432と第2の電極433は、これらのうちの1種からなるものであっても、あるいはこれらの2種以上を積層してなるものであってもよい。また、第1の電極432と第2の電極433は、それぞれ異なる材料であっても良い。
図3および図4(a)、(b)は本発明の塵埃除去装置470の一例を示す概略図である。
塵埃除去装置470は、振動部材410、圧電素子に接続されるフレキシブルプリント基板420、圧電素子430、密閉部材450と呼ばれる固定部材とにより構成されていて、基体501に設置される。
圧電素子430と振動部材410は、図3に示すように圧電素子430の第1の電極面436で振動部材410の板面に固着される。また、圧電素子430の第2の電極面437の一部にはフレキシブルプリント基板420が電気的に接続され、圧電素子430に電源から交番電圧を印加できるようになっている。
図5は本発明の塵埃除去装置470の振動原理の一例を示す模式図である。便宜上、図には圧電素子430と振動部材410のみ図示している。上図(a)は左右一対の圧電素子430に同位相の交番電圧を印加して、振動部材410に定在波の面外振動を発生させた状態を表している。左右一対の圧電素子430は圧電材料431の分極が圧電素子430の厚さ方向に向きを同じくしており、塵埃除去装置470は7次の振動モードで駆動している。ここで、本発明の振動モードとは、振動部材の面外振動により作り出すことができる複数の節部や腹部をもつ複次の定在波や、節部や腹部がある時間に対し振動部材410の長さ方向に移動する進行波を指す。
下図(b)は左右一対の圧電素子430に位相が180°反対である逆位相の交番電圧をフレキシブルプリント基板420を介して印加して、振動部材410に定在波の面外振動を発生させた状態を表している。左右一対の圧電素子430は圧電材料431の分極が圧電素子430の厚さ方向に向きを同じくしており、塵埃除去装置470は6次の振動モードで駆動している。このように、本実施形態の塵埃除去装置470は、少なくとも2つの振動モードを効果的に使い分けることで振動部材410の表面に付着した塵埃をより効率的に除去できる。
しかし、本発明の塵埃除去装置は必ずしもこのような振動モードのみで駆動するものではない。本発明の塵埃除去装置は、圧電材料と一対の対向する電極により構成される圧電素子と、振動部材と高分子化合物成分を少なくとも有する固定部材とを備えていればよい。例えば、一個の圧電素子430が振動部材410に備えられていればよく、また、左右一対の圧電素子430は圧電材料431の分極が圧電素子430の厚さ方向に向きを同じくしている必要はない。さらに、前述した6次や7次の振動モードではなく、例えば18次や19次の振動モード等別の振動モードを利用してもよいし、3種類以上の振動モードを利用してもよい。なお、図5では、定在波の振動モードを用いて振動原理を示したが、任意の周波数と任意の位相を制御し、定在波ではなく進行波を用いた振動モードを用いてもよい。ただし、塵埃除去装置470が不快な音を発生しないように、振動部材410に発生させる面外振動の共振周波数は可聴域外となるような固有モードを選ぶことが好ましい。
また、本発明の圧電素子430や振動部材410は塵埃除去装置470の機械的品質係数Qmを損なわないものを選択することが好ましい。ここで、機械的品質係数Qmとは、圧電素子や塵埃除去装置を振動子として評価した際に振動による弾性損失を表す係数であり、機械的品質係数の大きさは、インピーダンス測定における共振曲線の鋭さとして観察される。つまり圧電素子の共振の鋭さを表す定数である。機械的品質係数Qmが大きいと、共振周波数付近で振動部材410の面外振動がより大きくなり、効果的に塵埃を除去することができる塵埃除去装置470が得られる。
よって、本発明の振動部材410は表面に付着した塵埃をできる機能を有する限りにおいて、どのようなものでも構わないが、可能な限り機械品質係数が高い部材を選択することが好ましい。同様に、本発明の圧電素子430も、可能な限り機械品質係数が高い部材を選択することが好ましい。また、難塵埃付着性物質が表面にコーティングされていてもよいし、表面を導電性に処理し、静電気が原因で塵埃が付着することを防止してもよい。ただし、そのような処理を施していなくても構わない。
本発明の塵埃除去装置は、圧電素子430に発生させる振動が長さ方向の伸縮振動であるため、図5に示すように振動部材410や圧電素子430全体が、ある振動モードで面外振動する。このため、撮像装置もしくはカメラ本体等の基体501に設置するために固定部材が必要である。固定部材は基体501に過剰な振動を伝達しないように、制振性能がその機能として必要である。一方で、固定部材は振動部材410の振動を阻害し、塵埃の除去効果を低下させてしまうという側面を持つ。このため、固定部材には振動部材410の振動を阻害しないように高分子化合物成分を少なくとも有する材料を用いる。
ここで、本発明の高分子化合物は、分子量が1万程度以上の単量体の繰り返し構造をもつ固形の重合体であり、例えば、天然ゴム、合成ゴム、合成樹脂、合成繊維などを指す。これらの材料は金属やセラミックスに比べ弾性率が小さいため制振性能に優れ、振動部材410の振動を著しく阻害することはない。
固定部材は密閉部材450のみである必要はないが、本発明の塵埃除去装置は、振動部材410と基体501との間に塵埃等の異物の侵入を防ぐ密閉空間を形成していることが好ましい。これは、振動部材410が例えば透明な光学材料であった場合、本発明の塵埃除去装置470の振動部材410の前面側の塵埃を除去すれば、振動部材410には塵埃が付着しない為である。よって、密閉部材450のような密閉空間が形成できる部材を備えていることが好ましが、密閉部材450はかならずしも1個の部材のみで形成される必要はない。
圧電素子430と振動部材410は、樹脂による接着、例えばエポキシ樹脂系接着剤などの高分子化合物成分を少なくとも有する材料によって固着することができる。接着剤は塵埃除去装置470の使用温度域での接着性を損なわないものを選択することが好ましい。また、振動部材410に発生する面外振動を損なわないものを選択することが好ましい。よって、塵埃除去装置470の機械的品質係数Qmを損なわないものを選択することが好ましい。さらに、圧電素子430は既に分極処理がなされた後であるため、接着温度は圧電材料431のキュリー温度もしくは脱分極温度未満であることが好ましい。
圧電素子430とフレキシブルプリント基板420は、ACF(異方性導電膜)や樹脂による接着、例えば導電性接着剤などの高分子化合物成分を少なくとも有する材料によって固着することができる。接着剤は塵埃除去装置470の使用温度域での接着性を損なわないものを選択することが好ましい。また、振動部材410に発生する面外振動を損なわないものを選択することが好ましい。よって、塵埃除去装置470の機械的品質係数Qmを損なわないものを選択することが好ましい。さらに、圧電素子30は既に分極処理がなされた後であるため、接着温度は圧電材料431のキュリー温度もしくは脱分極温度未満であることが好ましい。
本発明の塵埃除去装置は、圧電材料431と一対の対向する電極により構成される圧電素子と、振動部材と、高分子化合物成分を少なくとも有する固定部材とからなる。よって、圧電素子430は、必ずしもフレキシブルプリント基板420で電気的に接続される必要はなく、例えば、リード線の銀ペースト接続等の他の方法で電気的に接続されてもよい。
本発明の圧電材料431は強誘電体であり、第一の強誘電結晶相から第二の強誘電結晶相への相転移温度Tが−60℃≦T≦−5℃であることを特徴とする。強誘電体とは外部に電場がなくても電気双極子が自発的に整列しており、かつ、双極子の方向が電場によって変化できる誘電体物質を指す。また、強誘電体は電界を印加すると自体が変形する逆圧電効果も示す。
代表的な強誘電体としては、水晶(SiO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNaNbO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)、ジルコン酸チタン酸鉛(PbZrTiO)、メタニオブ酸鉛(PbNb2O)、酸化亜鉛(ZnO)等を主成分とする物質が代表的である。例えば(LaPbZrTiO)、(LiKNaNbO)、(BaCaTiZrO)なども代表的である。
本発明の強誘電体はこれらの物質に特定されるわけではなく、外部に電場がなくても電気双極子が自発的に整列しており、かつ双極子の方向が電場によって変化できる誘電体物質であればよい。このような材料は、ソーヤー・タワー回路による自発分極と抗電界のP−Eヒステリシス評価により簡単に評価することができる。
本発明の強誘電結晶相とは、強誘電材料で、かつ、結晶格子と呼ばれる7種類の晶系のうち、三斜晶(triclinic)、単斜晶(monoclinic)、斜方晶(orthorhombic)、六方晶(hexagonal)、三方晶(trigonal)もしくは菱面体晶(rhombohedral)、正方晶(tetragonal)の6つの晶系のいずれかに属する材料のことを指す。
本発明の圧電材料431は、第一の強誘電結晶相から第二の強誘電結晶相への相転移温度Tが−60℃≦T≦−5℃であることを特徴とする。つまり、強誘電―強誘電相転移への相転移温度Tが、少なくとも−60℃≦T≦−5℃の範囲に存在する材料である。ここで、第一の強誘電結晶相と第二の強誘電結晶相は7種類の晶系のうち、それぞれ異なる2つの晶系を指し、第一の強誘電結晶相と第二の強誘電結晶相は、第一の強誘電結晶相が第二の強誘電結晶相に比してより高い温度で出現する結晶相と定義する。
相転移温度Tは、例えば微小交流電界を用いて測定温度を変えながら圧電素子430の誘電率を測定し、誘電率が極大を示す温度から求めることができる。また、X線回折やラマン分光を用いて測定温度を変えながら、圧電素子430もしくは圧電材料431の結晶相が変化する温度から求めることもできる。前記いずれの方法を用いても、圧電素子430もしくは圧電材料431の温度が測定環境温度と同等になる充分な時間の間、保持されていれば、観測される相転移温度Tは同等となる。ただし、測定の簡便さと再現性の観点において、微小交流電界を用いて測定温度を変えながら圧電素子430の誘電率を測定する手法が好ましい。一般に、強誘電体は、第一の強誘電結晶相から第二の強誘電結晶相への相転移温度(降温時の相転移温度)と第二の強誘電結晶相から第一の強誘電結晶相への相転移温度(昇温時の相転移温度)に若干の温度差が生じるが、本発明の相転移温度Tは第一の強誘電結晶相から第二の強誘電結晶相への相転移温度、つまり降温時の相転移温度である。
相転移温度Tは、圧電素子430の分極前後どちらで評価しても構わないが、本発明の塵埃除去装置470は分極した圧電素子430を備えた装置であるため、圧電素子430を分極した後に評価することが好ましい。圧電素子430の分極は、例えば後述する共振−反共振法により、圧電素子430の長さ方向の伸縮振動が発生するか否かを評価することにより、分極の有無を確認することができる。
図6は従来の圧電材料の一例として、代表的な強誘電体であるチタン酸バリウム圧電素子の1kHzにおける比誘電率(a)と、長さ方向に伸縮振動が発生する共振周波数(b)を示す。同様に、図7は本発明の圧電材料431の1kHzにおける比誘電率(a)と、長さ方向に伸縮振動が発生する共振周波数(b)を示す。圧電素子の寸法は10×2.5×0.5mmである。図6、図7の(a)、(b)とも、測定は30℃をスタートとし、昇温、降温、30℃まで昇温、という順序で温度を変化させながら測定した結果である。測定は恒温槽内で行い、それぞれの温度で一定時間保持し、温度が安定した後に各温度での誘電率、共振周波数を評価している。図6および図7の(a)、(b)では、温度に対する誘電率、共振周波数の変化が昇温時と降温時で異なっている。この原因は強誘電体が、第一の強誘電結晶相から第二の強誘電結晶相への相転移温度(降温時の相転移温度)と第二の強誘電結晶相から第一の強誘電結晶相への相転移温度(昇温時の相転移温度)とで若干の温度差が生じるためである。ここで、第一の強誘電結晶相から第二の強誘電結晶相への相転移温度(降温時の相転移温度)と第二の強誘電結晶相から第一の強誘電結晶相への相転移温度(昇温時の相転移温度)とでは、第一の強誘電結晶相から第二の強誘電結晶相への相転移温度(降温時の相転移温度)の方が低い。
図6、図7より、チタン酸バリウムは5℃付近に相転移温度Tを持ち、本発明の圧電材料431は−25℃付近に相転移温度Tをもつことがわかる。また、圧電素子の共振周波数はそれぞれ相転移温度T付近で極小となっていることが分かる。同様に、従来の圧電素子の一例として、ジルコン酸チタン酸鉛を評価したが、少なくとも−60℃から50℃の範囲には相転移温度Tはなく、同様に共振周波数が極小になる温度は存在しなかった。
鋭意検討の結果、これら従来の圧電材料を備えた塵埃除去装置では、低温になるに伴い、後述するように塵埃除去装置の駆動周波数が高くなってしまい、特に、−5℃から−30℃の温度では特に顕著であることがわかった。一般に塵埃除去装置は、共振周波数近傍の周波数帯を掃引することにより、塵埃除去装置の個体ばらつきや温度に対する周波数の変動に対しても問題なく塵埃を除去できる構成となっている。しかし、従来の塵埃除去装置では、低温になるに伴い塵埃除去装置の駆動周波数が高くなってしまうため、塵埃除去装置の掃引周波数帯をあらかじめ広げておく必要が生じる。また、このような掃引周波数帯をあらかじめ広げておかなければならない問題を回避するため、低温域では別の弾性振動を用いて塵埃を除去しなければならなかった。
一方、本発明の塵埃除去装置470は、図7に示すような圧電材料431を備えるため、低温で塵埃除去装置470の駆動周波数が高くなることはない。このため、塵埃除去装置470の掃引周波数帯を従来の塵埃除去装置より狭くできる。本発明の圧電材料431が図7に示すような長さ方向の伸縮振動の共振周波数を示すのは、本発明の圧電材料431の相転移温度Tが−60℃≦T≦−5℃となり、相転移温度T近傍で材料の弾性率が小さくなることに起因していると考えられる。
圧電材料の、第一の強誘電結晶相から第二の強誘電結晶相への相転移温度TがT>−5℃であると、−5℃より低温側で弾性率が顕著に大きくなっていく。よって、−5℃より低温側で、低温になるに伴い塵埃除去装置の駆動周波数が高くなってしまうため、結果的に塵埃除去装置の掃引周波数帯をあらかじめ広げておく必要が生じる。
圧電材料の、第一の強誘電結晶相から第二の強誘電結晶相への相転移温度TがT<−60℃であると、一般に圧電材料と一対の対向する電極により構成される圧電素子と、振動部材と、高分子化合物成分を少なくとも有する固定部材とからなる塵埃除去装置においては、低温になるに伴い塵埃除去装置の駆動周波数が高くなってしまう課題を大きくは改善できず、塵埃除去装置の掃引周波数帯をあらかじめ広げておく必要が生じる。
さらに、鋭意検討の結果、圧電材料の、第一の強誘電結晶相から第二の強誘電結晶相への相転移温度TがT<−60℃であるような圧電素子は、圧電定数等の圧電諸特性がジルコン酸チタン酸鉛のような、少なくとも−60℃から−5℃の範囲には相転移温度Tがないが、圧電定数等の圧電諸特性が大きい圧電材料からなる圧電素子と比較して、振動部材410に従来と同等の面外振動を発生させることができないことがわかった。
ところで、従来の圧電材料を備えた塵埃除去装置では、低温になるに伴い塵埃除去装置の駆動周波数が高くなってしまう理由は必ずしも明確ではないが、振動部材、圧電素子と振動部材の接着、圧電素子とフレキシブルプリント基板の接着、固定部材などが影響していると考えられる。
本発明の固定部材は、25℃における弾性率が−5℃における弾性率より小さいことが好ましい。一般に、振動部材410に付着した塵埃は高湿度の環境下では除去しにくい傾向がある。これは、水分を含んだ塵埃の方が、乾燥した塵埃より除去しにくいことに起因するが、高湿度の環境は低温時より高温時に起こりやすい。
固定部材の弾性率は塵埃除去装置の振動性能に影響し、弾性率が大きいほど塵埃除去装置の振動性能を阻害する。本発明の固定部材は、25℃における弾性率が−5℃における弾性率より小さいので、より高湿度の環境が起こりやすい高温度で塵埃除去装置の振動性能が優れるという特徴をもつ。よって、高温度で圧電素子430に印加する電圧を従来の塵埃除去装置より低くできる。
一方、25℃における弾性率が−5℃における弾性率より大きくなる固定部材の一例として、カーボンナノチューブを高分子化合物中に分散させて成形した樹脂が挙げられる。この場合であっても、低温度と高温度で塵埃除去装置の振動性能に大きな差は無いが、高温度での塵埃除去性能が低下してしまうので、圧電素子430に印加する電圧を高くする必要がある。
なお、本発明の固定部材の25℃における弾性率と−5℃における弾性率の差は0.1MPa以上または10倍以上あることが好ましい。0.1MPa以上または10倍以上の差があれば、より高湿度の環境が起こりやすい高温度で塵埃除去装置の振動性能が優れるという効果が大きくなる。
なお、固定部材の温度における弾性率の違いは、例えば動的粘弾性分析(DMA)等によって貯蔵弾性率G’を比較することにより評価することができる。
本発明の固定部材はエラストマーであることが好ましい。本発明のエラストマーとはゴム状の弾性体であり、1から10MPaと低い弾性率を示す。一般に、エラストマーとは分子構造的には分子内に架橋点を持ち、3次元の網目構造になっているゴム、分子内に架橋(結合している部分)はなく分子内の硬質層の分子グループにより分子を拘束状態にして流動することを防止している熱可塑性エラストマーのことを指す。固定部材にエラストマーを用いると、塵埃除去装置の振動性能が全体として更に優れるという特徴をもつ。代表的なエラストマーとしては、アクリルゴム、ニトリルゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム等が挙げられる。
本発明の固定部材は発泡樹脂であることが好ましい。本発明の発泡樹脂とは
発泡状または多孔質形状の高分子化合物である。固定部材に発泡樹脂を用いると、塵埃除去装置としての制振性能が更に優れるという特徴を持つ。代表的な発泡樹脂としてはスポンジ、フォームと呼ばれるもので、合成樹脂や合成ゴムから作られ、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリオレフィン(主にポリエチレンやポリプロピレン)、シリコン、ポリイミドなどが使用される。
本発明の固定部材は、上記高分子化合物成分のうち熱可塑性を有する高分子であることが好ましい。本発明の熱可塑性樹脂とは加熱すると柔らかくなり、冷却すれば硬くなる性質を持った樹脂のことであり、高温になるにつれ弾性率は小さくなる。一般に熱可塑性樹脂は分子内に架橋(結合している部分)はなく分子内の硬質層の分子グループにより分子を拘束状態にして流動することを防止している樹脂である。前述のように固定部材の弾性率は塵埃除去装置の振動性能に影響し、弾性率が大きいほど塵埃除去装置の振動性能を阻害する。しかし、固定部材の分子化合物成分が熱可塑性であると、高温になるにつれ、弾性率は小さくなるため、より高湿度の環境が起こりやすい高温度で塵埃除去装置の振動性能がさらに優れるという特徴をもつ。
以上の理由から、本発明の最も好ましい固定部材とは熱可塑性の発泡性エラストマーであり、例えばゴム弾性を有するポリウレタンフォームなどが最も好ましい固定部材の一つである。このような高分子化合物成分は一般に室温から室温温度以下の温度域にガラス転移温度(Tg)を有する物が多い。ガラス転移温度付近では塵埃除去装置の振動性能のみならず、制振性能も最も優れるため、好ましくは室温温度以下程度の温度にガラス転移温度を持つ熱可塑性の発泡性エラストマーを固定部材として選択できれば、最も塵埃除去性能が優れることが好ましい室温域から、より高湿度の環境が起こりやすい高温度域にかけて、特に優れた塵埃除去性能を有する塵埃除去装置が実現できる。
一方、このような高分子化合物成分を固定部材として備えた塵埃除去装置では、低温になるに伴い塵埃除去装置の駆動周波数がより顕著に高くなってしまうという特徴を有する。しかし、本発明の塵埃除去装置470は、図7に示すような圧電材料431を備えるため、低温で塵埃除去装置470の駆動周波数が高くなることはない。このため、塵埃除去装置470の掃引周波数帯を従来の塵埃除去装置より狭くできる。
ここで、本発明のガラス転移温度とは、非晶質固体材料にガラス転移が起きる温度であり、通常Tgと記される。ガラス転移温度より低温の非晶質状態ではガラス状態となり、ガラス転移温度より高温では物質はゴム状態となる。ガラス転移温度は示差走査熱量分析(DSC)、示差熱分析(DTA)、機械的熱分析(TMA)、動的粘弾性分析(DMA)等によって評価することができる。
本発明の圧電材料431は第一の強誘電結晶相が正方晶相であることが好ましい。本発明の強誘電結晶相は、三斜晶、単斜晶、斜方晶、六方晶、三方晶もしくは菱面体晶、正方晶の6つの晶系のいずれかに属するが、この中で対称性の最も高い晶系は正方晶である。強誘電体とは外部に電場がなくても電気双極子が自発的に整列しており、かつ、双極子の方向が電場によって変化できる誘電体物質を指すが、実際の結晶では双極子の方向が異なる複数の領域が存在している。このような領域のことを強誘電分域(ferroelectric domain)と呼ぶが、この分域は前述の対称性が低い物質ほど複雑である。
ところで、本発明の圧電素子430は機械的品質係数Qmが大きいことが好ましいが、分域が複雑であるほど機械的品質係数は低下する。これは分域と分域の境界部において、より機械的変位で得られるエネルギーを熱的に消費してしまうためである。このため、第一の強誘電結晶相が正方晶相であると、相転移温度T以上において、より塵埃除去性能に優れる塵埃除去装置が実現することが容易となる。
また、他の態様として、本発明の圧電材料431は第二の強誘電結晶相が斜方晶相であることが好ましい。斜方晶は、三方晶もしくは菱面体晶、六方晶と比較して、対称性が低いものの正方晶からの小さな結晶格子の変化で相変態することができる。よって、相転移温度Tをまたいだ際に、より小さな応力で結晶相が変態できる。このため、電極の剥がれの発生する恐れが少なくなり、相転移温度Tを繰り返しまたぐ温度信頼性評価の際に、材料特性の劣化が少ない圧電体素子430が実現できる。
なお、本発明の第一の強誘電結晶相や第二の強誘電結晶相は、例えば、X線回折や電子線回折による構造解析から判断することができる。
本発明の圧電材料431は鉛の含有量が1000ppm未満であることが好ましい。従来の塵埃除去装置において、圧電材料はそのほとんどがジルコン酸チタン酸鉛を主成分とする圧電セラミックスである。このため、例えば塵埃除去装置が廃却され酸性雨を浴びたり、過酷な環境に放置されたりした際、圧電材料中の鉛成分が土壌に溶け出し生態系に害を成す可能性が指摘されている。しかし、鉛の含有量が1000ppm未満であれば、例えば塵埃除去装置470が廃却され酸性雨を浴びたり、過酷な環境に放置されたりしても、圧電材料431中の鉛成分が環境に悪影響を及ぼす可能性は低い。
圧電材料431の鉛の含有量は、例えば蛍光X線分析(XRF)、ICP発光分光分析により定量された圧電材料431の総重量に対する鉛の含有量によって評価することができる。
本発明の圧電材料431はチタン酸バリウムを主成分とする圧電セラミックスであることが好ましい。このような非鉛圧電セラミックスでは、現状、各種諸特性がジルコン酸チタン酸鉛を主成分とする圧電セラミックスに匹敵するような優れた材料の実現には未だ至っていない。しかし、例えば圧電材料431がチタン酸バリウムを主成分とする圧電セラミックスである場合は、弾性率がジルコン酸チタン酸鉛より大きくなる。本発明の塵埃除去装置470は、圧電素子430の長さ方向に伸縮振動により、振動部材410に面外振動を発生させるが、圧電素子430の弾性率が大きければ、圧電定数等の圧電諸特性がジルコン酸チタン酸鉛に多少及ばなくても、振動部材410に従来と同等の面外振動を発生させることができることがわかった。このため、本発明の圧電材料431は、環境面も考慮し、チタン酸バリウムを主成分とする圧電セラミックスであることが好ましい。
なお、本明細書中においてセラミックスとは、基本成分が金属酸化物であり、熱処理によって焼き固められた結晶粒子の凝集体(バルク体とも言う)、いわゆる多結晶を表す。焼結後に加工されたものも含まれる。
本発明の圧電材料431は下記一般式(1)
一般式(1) (Ba1−xCa)(Ti1−yZr)O(0.02≦x≦0.30、0.020≦y≦0.095であり、かつy≦x)
で表わされるペロブスカイト型金属酸化物を主成分とすることが好ましい。
鋭意検討の結果、例えばジルコン酸チタン酸鉛のような圧電特性が温度に対して変化の小さい従来の圧電材料を備えた塵埃除去装置では、低温になるに伴い振動部材の振幅が小さくなり、塵埃除去性能が低下してしまうことがわかった。一方、このような圧電材料431を本発明の塵埃除去装置470として用いると、材料設計の点で相転移温度Tを−60℃≦T≦−5℃とすることが非常に容易となると共に、相転移温度Tを極大に圧電特性が非常に大きくなるという特徴を合わせ持つ。よって、低温においても高い塵埃除去性能を有する塵埃除去装置およびそれを用いた撮像装置を提供することができる。
本発明において、ペロブスカイト型金属酸化物とは、非特許文献1に記載されているような、理想的には立方晶構造であるペロブスカイト構造(ペロブスカイト構造とも言う)を持つ金属酸化物を指す。ペロブスカイト構造を持つ金属酸化物は一般にABOの化学式で表現される。ペロブスカイト型金属酸化物において、元素A、Bは各々イオンの形でAサイト、Bサイトと呼ばれる単位格子の特定の位置を占める。例えば、立方晶系の単位格子であれば、A元素は立方体の頂点、B元素は体心に位置する。O元素は酸素の陰イオンとして立方体の面心位置を占める。
前記一般式(1)で表わされる金属酸化物は、Aサイトに位置する金属元素がBaとCa、Bサイトに位置する金属元素がTiとZrであることを意味する。ただし、一部のBaとCaがBサイトに位置してもよい。同様に、一部のTiとZrがAサイトに位置してもよい。
一般式(1)における、Bサイトの元素とO元素のモル比は1対3であるが、モル比が若干ずれた場合(例えば、1.00対2.94〜1.00対3.06)でも、金属酸化物がペロブスカイト構造を主相としていれば、本発明の範囲に含まれる。
金属酸化物がペロブスカイト構造であることは、例えば、X線回折や電子線回折による構造解析から判断することができる。
一般式(1)において、AサイトにおけるCaのモル比を示すxは、0.02≦x≦0.30の範囲である。xが0.02より小さいと誘電損失(tanδ)が増加する。誘電損失が増えると、圧電素子430に電圧を印加して駆動させた際に発生する発熱が増え、駆動効率が低下する恐れがある。一方で、xが0.30より大きいと圧電特性が充分でなくなる恐れがある。
一般式(1)において、BサイトにおけるZrのモル比を示すyは、0.020≦y≦0.095の範囲である。yが0.020より小さいと、圧電特性が充分でなくなる。一方で、yが0.095より大きいとキュリー温度(Tc)が85℃未満と低くなり、高温において圧電特性が消失する恐れがある。
本明細書において、キュリー温度とは、強誘電性が消失する温度をいう。その特定方法は、測定温度を変えながら強誘電性が消失する温度を直接測定する方法に加えて、微小交流電界を用いて測定温度を変えながら誘電率を測定し誘電率が極大を示す温度から求める方法がある。
一般式(1)において、Caのモル比xとZrのモル比yはy≦xの範囲である。y>xであると、誘電損失が増加したり、絶縁性が充分でなくなったりする。また、これまで示したxとyの範囲を同時に満たすと、相転移温度Tを室温付近から実用温度以下に移動させることが可能となり、広い温度領域において安定に圧電素子430を駆動させることが可能となる。
また、一般式(1)において、AサイトにおけるBaとCaのモル量とBサイトにおけるTiとZrのモル量との比を示すA/Bは、1.00≦A/B≦1.01の範囲でることが好ましい。A/Bが1.00より小さいと異常粒成長が生じ易くなり、圧電材料431の機械的強度が低下してしまう。一方で、A/Bが1.01より大きくなると粒成長に必要な温度が高くなり過ぎ、一般的な焼成炉では密度が充分に大きくならなかったり、圧電材料431内にポアや欠陥が多数存在してしまったりする。
本発明の圧電材料431の組成を測定する手段は特に限定されない。手段としては、X線蛍光分析、ICP発光分光分析、原子吸光分析などが挙げられる。
いずれの手段においても、圧電材料431に含まれる各元素の重量比および組成比を算出できる。
本発明の圧電材料431は、前記一般式(1)で表わされるペロブスカイト型金属酸化物を主成分とし、前記金属酸化物にMnが含有されており、前記Mnの含有量が前記金属酸化物100重量部に対して金属換算で0.02重量部以上0.40重量部以下であることが好ましい。
前記範囲のMnを含有すると、絶縁性や機械的品質係数Qmが向上する。絶縁性と機械的品質係数の向上は、TiやZrと価数が異なるMnによって欠陥双極子が導入されて内部電界が発生することに由来すると考えられる。内部電界が存在すると、圧電素子430に電圧を印加し駆動させた際に、圧電素子430の信頼性が確保できる。
ここで、Mnの含有量を示す金属換算とは、圧電材料431から蛍光X線分析(XRF)、ICP発光分光分析、原子吸光分析などにより測定されたBa、Ca、Ti、ZrおよびMnの各金属の含有量から、一般式(1)で表わされる金属酸化物を構成する元素を酸化物換算し、その総重量を100としたときに対するMn重量との比によって求められた値を表す。
Mnの含有量が0.02重量部未満であると、圧電素子430の駆動に必要な分極処理の効果が充分でなくなる。一方、Mnの含有量が0.40重量部より大きくなると、圧電特性が充分でなくなることや、圧電特性に寄与しない六方晶構造の結晶が発現するので好ましくない。
Mnは金属Mnに限らず、Mn成分として圧電材料に含まれていれば良く、その含有の形態は問わない。例えば、Bサイトに固溶していても良いし、粒界に含まれていてもかまわない。または、金属、イオン、酸化物、金属塩、錯体などの形態でMn成分が圧電材料431に含まれていても良い。より好ましい含有の形態は、絶縁性や焼結容易性という観点からBサイトに固溶することである。Bサイトに固溶された場合、AサイトにおけるBaとCaのモル量とBサイトにおけるTi、ZrおよびMnのモル量の比をA/Bとすると、好ましいA/Bの範囲は0.993≦A/B≦0.998である。A/Bがこれらの範囲にある圧電素子430は、圧電素子430の長さ方向に伸縮振動が大きく、また、機械的品質係数が高いため、塵埃除去性能に優れ、かつ、耐久性に優れた塵埃除去装置470を得ることができる。
本発明の圧電材料431は、前記一般式(1)およびMn以外の成分(以下、副成分)を特性が変動しない範囲で含んでいてもよい。副成分は、一般式(1)で表現される金属酸化物100重量部に対してその合計が1.2重量部より少ないことが好ましい。副成分が1.2重量部を超えると、圧電材料431の圧電特性や絶縁特性が低下する恐れがある。また、副成分のうち前記Ba、Ca、Ti、Zr、Mn以外の金属元素の含有量は、圧電材料431に対して酸化物換算で1.0重量部以下、または金属換算で0.9重量部以下であることが好ましい。本発明の金属元素とはSi、Ge、Sbのような半金属元素も含む。副成分のうち前記Ba、Ca、Ti、Zr、Mn以外の金属元素の含有量が、圧電材料431に対して酸化物換算で1.0重量部、または金属換算で0.9重量部を超えると、圧電材料431の圧電特性や絶縁特性が著しく低下する恐れがある。副成分のうち、Li、Na、Mg、Al元素の合計は、圧電材料431に対して金属換算で0.5重量部以下であることが好ましい。副成分のうち、Li、Na、Mg、Al元素の合計が、圧電材料431に対して金属換算で0.5重量部を超えると、焼結が不十分となる恐れがある。副成分のうち、Y、V元素の合計は、圧電材料431に対して金属換算で0.2重量部以下であることが好ましい。副成分のうち、Y、V元素の合計が圧電材料431に対して金属換算で0.2重量部を超えると、分極処理が困難になる恐れがある。
副成分の例として、SiやCuといった焼結助剤が挙げられる。また、BaおよびCaの市販原料に不可避成分として含まれる程度のSrやMgは、本発明の圧電材料に含んでいてもよい。同じく、Tiの市販原料に不可避成分として含まれる程度のNbと、Zrの市販原料に不可避成分として含まれる程度のHfは、本発明の圧電材料431に含んでいてもよい。
副成分の重量部を測定する手段は特に限定されない。手段としては、蛍光X線分析(XRF)、ICP発光分光分析、原子吸光分析などが挙げられる。
本発明の圧電素子430及び振動部材410は板状であり、圧電素子430の一方の電極面が振動部材410の板面に固着され、振動部材410が固定部材を介して基体に固定されていることが好ましい。さらに、本発明の圧電素子430を複数有することが好ましい。
本発明の圧電素子430の厚さは、通常、0.1mmから10mmである。圧電素子430は、圧電材料431があらかじめ第1の電極面436と垂直な方向434に分極されており、電源から第1の電極432と第2の電極433とに高周波数の電圧が印加できるようになっている。そして、圧電素子430は、電界方向435の矢印が示す方向に発生する交番電界により生じる圧電材料431の伸縮歪みにより、圧電素子430の長さ方向に伸縮振動が発生する。このため、圧電素子が板状であれば、より低い電圧でより高い電界を圧電素子430に印加することができる。
また、圧電素子430の長さ方向に伸縮振動により、振動部材410に面外振動を発生させるが、振動部材410が板状であれば、振動部材410により大きな面外振動を発生させることができる。さらに、圧電素子430の一方の電極面が振動部材410の板面に固着されていれば、圧電素子430の長さ方向の伸縮振動から、より効率よく振動部材410に面外振動を引き出すことができる。
さらに、振動部材410が固定部材を介して基体に固定されていれば、圧電素子430が固定部材を介して基体に固定されている場合よりも、塵埃除去装置470の振動性能を阻害することはない。特に、矩形形状の塵埃除去装置では、たとえ一つの振動モードで塵埃を除去するにしても、固定部材は必ず振動部材の節以外の部位に接することは避けられない。このため、本発明の塵埃除去装置470は矩形形状の塵埃除去装置として特に好ましい。
本発明の振動部材410は光学材料であることが好ましい。本発明の光学材料とは、入射光に対し光学的な機能を有する材料である。光学的な機能の例としては、透過、屈折、干渉、反射、散乱などが挙げられる。振動部材410は、振動部材としての機能のみでなく、例えば赤外線カットフィルタ、紫外線カットフィルタ、光学ローパスフィルタなどの光学的な機能を有していてもよい。ここで、赤外線カットフィルタとは可視光を透過して近赤外光(IR)をカットするための光学部材であり、例えばガラスからなる。紫外線カットフィルタは同様に紫外光(UV)をカットするための光学部材である。また、光学ローパスフィルタとは透過光の高い空間周波数成分を取り除く為に、光を常光線と異常光線に分離する、ための光学部材であり、例えば水晶からなる複屈折板および位相板が複数枚積層されたものである。ただし、光学的な特別の機能が備わっていないガラス等の部材であっても構わない。
さらに、振動部材410に電気的に塵埃が付着するのを防止する為に、導電性物質等で表面がコーティングされていても良い。また、振動部材410はそれぞれ上述のような別の機能を有する複数の部材で形成されていても良い。この際、振動部材410は必要な機能を有する限りにおいて、可能な限り機械的品質係数が高い部材を選択することが好ましい。
本発明の撮像装置は、塵埃除去装置と撮像素子ユニットとを少なくとも有する撮像装置であって、塵埃除去装置の振動部材410と撮像ユニットの受光面を同一軸上に順に設けた事を特徴とする。このような、本発明の撮像装置の好適な実施形態の一例について以下に説明する。
図8および図9は本発明の撮像装置の好適な実施形態の一例であるデジタル一眼レフカメラを示す図である。
図8は、カメラ本体1を被写体側より見た正面側斜視図であって、撮影レンズユニットを外した状態を示す。図9は、本発明の塵埃除去装置と撮像ユニット400の周辺構造について説明するためのカメラ内部の概略構成を示す分解斜視図である。
カメラ本体1内には、撮影レンズを通過した撮影光束が導かれるミラーボックス5が設けられており、ミラーボックス5内にメインミラー(クイックリターンミラー)6が配設されている。メインミラー6は、撮影光束をペンタダハミラー22(不図示)の方向へ導くために撮影光軸に対して45°の角度に保持される状態と、撮像素子570(図10を参照)の方向へ導くために撮影光束から退避した位置に保持される状態とを取り得る。
カメラ本体の骨格となる本体シャーシ300の被写体側には、被写体側から順にミラーボックス5、シャッタユニット200が配設される。また、本体シャーシ300の撮影者側には、撮像ユニット400が配設される。撮像ユニット400は、撮影レンズユニットが取り付けられる基準となるマウント部2の取付面に撮像素子570の撮像面が所定の距離を空けて、且つ平行になるように調整されて設置される。
ここで、本発明の撮像装置として、デジタル一眼レフカメラについて説明したが、例えばミラーボックス5を備えていないミラーレス型のデジタル一眼カメラのような撮影レンズユニット交換式カメラであってもよい。また、撮影レンズユニット交換式のビデオカメラや、複写機、ファクシミリ、スキャナ等の各種の撮像装置もしくは撮像装置を備える電子電気機器のうち、特に光学部品の表面に付着する塵埃の除去が必要な機器にも適用することができる。
図10は、本発明の撮像装置の好適な実施形態の一例であるデジタル一眼レフカメラの撮像ユニット400の構成を示す分解斜視図である。図11は、図9のA−A線に沿う断面図である(ただし、回路基板520とシールドケース530は不図示)。
撮像ユニット400は、大きく分けて、塵埃除去装置470と、撮像素子570を含む撮像素子ユニット500とを備える。撮像素子ユニット500は、撮像素子570、撮像素子570を保持する撮像素子保持部材510、回路基板520、シールドケース530、遮光部材540、光学ローパスフィルタ560、光学ローパスフィルタ保持部材550により構成される。
撮像素子保持部材510は、金属等によって形成され、塵埃除去装置470の押圧部材460と位置決めするための左右の位置決めピン510aと、回路基板520及びシールドケース530をビスで固定するためのビス穴510bと、塵埃除去装置470の押圧部材460をビスで固定するための左右のビス穴510cとが設けられる。
回路基板520には撮像系の電気回路が実装され、ビス用の逃げ穴520aが設けられる。シールドケース530は、金属等によって形成され、ビス穴530aが設けられる。回路基板520とシールドケース530は、ビス用の逃げ穴520aとビス穴530a、ビス穴510bを用いて、撮像素子保持部材510にビスで係止される。シールドケース530は電気回路を静電気等から保護するため回路上の接地電位に接続される。
遮光部材540は、撮像素子570の光電変換面の有効領域に対応した開口を有し、被写体側及び撮影者側に両面テープが備えられている。光学ローパスフィルタ保持部材550は、遮光部材540の被写体側の両面テープにより撮像素子570のカバーガラス570aに固定、保持される。光学ローパスフィルタ560は、光学ローパスフィルタ保持部材550の開口箇所にて位置決めされ、遮光部材540の被写体側の両面テープにより固定、保持される。
一方、遮光部材540の撮影者側の面は、遮光部材540の撮影者側の両面テープにより撮像素子570のカバーガラス570aに固定、保持される。これにより、光学ローパスフィルタ560と撮像素子570のカバーガラス570aとの間は遮光部材540によって封止され、塵埃等の異物の侵入を防ぐ密閉空間が形成される。
本実施形態においては、光学ローパスフィルタ560と撮像素子570のカバーガラス570aとの間は遮光部材540によって封止され、塵埃等の異物の侵入を防ぐ密閉空間が形成される。しかし、本発明においては光学ローパスフィルタ560や遮光部材540は必ずしも必要なく、塵埃除去装置470が、撮像素子570のカバーガラス570aを介して後述する振動板410および密閉部材450を挟み込むかたちで撮像素子ユニット500に設置される構成であっても構わない。この場合、カバーガラス570aと塵埃除去装置470の間は密閉部材450によって封止され、塵埃等の異物の侵入を防ぐ密閉空間が形成される。
図12は本発明の撮像装置の好適な実施形態の一例であるデジタル一眼レフカメラの塵埃除去装置470の電気的構成を示すブロック図であり、点線で囲まれた制御回路と電源と駆動する圧電素子とで、本発明の塵埃除去装置を構成している。制御回路は、圧電効果によって圧電素子430のセンシング用電極に発生する電圧を読み取り、振動の振幅および位相を検知し、電源が発生する交番電圧の振幅、周波数および時間的位相を制御する。本実施形態において、振動装置の制御回路には、姿勢センサと、後述する撮像素子ユニット500に接続された画像処理部とが接続されている。姿勢センサは、塵埃除去装置470の姿勢を検知する。画像処理部は、振動部材410のどの位置に塵埃が付着しているかを、撮像素子ユニット500によって撮像された画像を用いて演算する。なお、電源は圧電素子430に所定の周波数範囲の交番電圧を印加する。
圧電素子430は、図12に示すように制御回路の指示を受けた電源からの電力供給によって駆動する。そして圧電素子430の駆動により圧電素子430と振動部材410との間に応力が発生し、振動部材に面外振動を発生させる。本実施形態の塵埃除去装置470は、この振動部材410の面外振動により振動部材410の表面に付着した塵埃を除去する装置である。面外振動とは、振動部材を光軸方向つまり振動部材の厚さ方向に変位させる弾性振動を意味する。
図13は本発明の撮像装置の好適な実施形態の一例であるデジタル一眼レフカメラの塵埃除去装置470の構成を示す分解斜視図である(ただし、圧電素子に接続されるフレキシブルプリント基板420、圧電素子430と固定部材は不図示)。図14は図13の塵埃除去装置470を図5とは反対の視野から見た図である(ただし、圧電素子に接続されるフレキシブルプリント基板420、接着部材440と固定部材は不図示)。
塵埃除去装置470は、振動部材410、圧電素子に接続されるフレキシブルプリント基板420、圧電素子430、それぞれ接着部材440、密閉部材450、押圧部材460と呼ばれる複数の固定部材とにより構成されている。
振動部材410は、赤外線カットフィルタと呼ばれる高い空間周波数を取り除く光学部材であり、かつ、圧電素子430の駆動により振動部材410に面外振動を発生させることのできる振動部材である。振動部材410の表面は、異物の付着を防止する目的で導電性物質でコーティングされている。本実施形態では、この振動部材410と、撮像素子ユニット500の撮像素子570の受光面が同一軸上に順に配置されている。
しかし、本発明の撮像装置に備えられる塵埃除去装置の振動部材410は必ずしもこのような部材に限定されるものではない。本発明の振動部材は、振動部材に発生する面外振動により表面に付着した塵埃を除去できるものであればよく、例えば、紫外線カットフィルタ、赤外線/紫外線カットフィルタ、本実施形態の光学ローパスフィルタ560(水晶やニオブ酸リチウム単結晶等の複屈折板及び位相板を複数枚貼り合わせて積層されている部材)であってもよいし、光学的な別の機能が備わっていないガラス等の部材であってもよい。また、振動部材410には導電性物質以外に難塵埃付着性物質が表面にコーティングされていてもよいし、そのような処理を施していなくても構わない。
図14に示すように、圧電素子430は矩形の振動部材410の端部に固着される。本実施形態においては、振動部材410の両端に合計2枚の板状の圧電素子430を固着している。しかし、必ずしもこのような構成である必要はなく、例えば、一個の圧電素子430が振動部材410に備えられていればよい。
押圧部材460は、振動部材410を固定、保持して付勢力を与える機能を有する枠状の固定部材である。塵埃除去装置470は押圧部材460の位置決め穴460aと撮像素子保持部材510の位置決めピン510aとを用いて、撮像素子ユニット500に対して位置決めされる。その状態で、塵埃除去装置470は、押圧部材460のビス穴460bとビス穴510cとを用いて、振動部材410および密閉部材450を挟み込むかたちで撮像素子ユニット500にビスで係止される。
図13に示すように、本実施形態においては、振動部材410は、振動部材410の四隅付近で接着部材440を介して押圧部材460と固定・保持される。振動部材410のうち塵埃を除去できる範囲は、撮像素子570の光学有効範囲内に入射される光束が通過する範囲であればよい。よって、振動部材410の四隅付近で押圧部材460と固定・保持することで、デジタルカメラの光学有効範囲内の振動を阻害することなく、効率的に塵埃を除去することができる。また、押圧部材460は、振動時に押圧部材460と振動部材410が直接振れて音を発生させないように、接着部材440以外とは接することがないように加工が施されている。
接着部材440は導電性の接着剤を用いることが好ましい。これにより、導電性物質でコーティングされた振動部材410の表面に帯電した電気を、押圧部材410から撮像素子保持部材510、シールドケース530を介して回路基板520へ逃がすことができ、振動部材410への塵埃の付着を効果的に予防することができる。さらに、接着部材440は導電性両面テープを用いることが好ましい。導電性両面テープは振動吸収としての機能を有し、押圧部材460に振動を伝達しない効果がある。すなわち、振動部材410の面外振動をより効率的に発生することができる。
本実施形態においては、振動部材410は、振動部材410の四隅付近で接着部材440を介して押圧部材460と固定・保持される。しかし、接着部材440は必ずしも四隅付近である必要はなく、光学有効範囲内の振動を阻害することなく、効果的に塵埃を除去することができれば、どの位置に備えられても、いくつ備えられても構わない。好ましくは、振動部材410の面外振動の節部に接着部材440のより多くの部分が当接することが望ましい。また、本実施形態においては、振動部材410は、4つの接着部材440を介して押圧部材460と固定・保持されるが、接着部材440が4つとも導電性物質である必要はなく、すべてが非導電性物質であっても構わない。好ましくは、少なくとも1つが導電性物質であれば、前述の理由で、振動部材410への塵埃の付着を効果的に予防することができる。
本実施形態においては、押圧部材460は金属等のバネ性(弾性)を有する材料(導電性部材)によって単一部品として形成されている。しかし、必ずしもこのような構成である必要はなく、例えば、複数の部材によって形成されていてもよい。また、金属等ではなく、有機高分子化合物成分を少なくとも有する部材によって付勢力を与えてもよい。この場合、接着部材440を備えない塵埃除去装置470の構成であっても構わない。
密閉部材450は、樹脂やエラストマーで形成され、振動部材410の振動吸収材としての役割を有するとともに、振動部材410と光学ローパスフィルタ560との間に塵埃等の異物の侵入を防ぐ密閉空間を形成する。なお、密閉部材450は、振動部材410の振動吸収性を高めるために、厚い部材もしくは弾性率が小さい部材で構成すること、及び振動部材410の面外振動の節部に密閉部材450のより多くの部分が当接することが好ましい。
密閉部材450の被写体側の面は振動部材410と当接し、撮影者側の面は光学ローパスフィルタ560と当接する。振動部材410は、押圧部材460のバネ性によって撮像素子ユニット500側へと付勢されるので、密閉部材450と隙間無く密着し、また、密閉部材450と光学ローパスフィルタ560も同様に隙間無く密着する。これにより、振動部材410と光学ローパスフィルタ560との間は密閉部材450によって封止され、塵埃等の異物の侵入を防ぐ密閉空間が形成される。
密閉部材450は、押圧部材460のバネ性によって撮像素子ユニット500側へと付勢されるので、密閉部材450を接着剤や両面テープ等を用いて、振動部材410や光学ローパスフィルタ560と固定・保持する必要はない。しかし、実際に組み立てを行う際に、簡易的に固定・保持することが好ましければ、接着剤や両面テープ等を用いて、振動部材410や光学ローパスフィルタ560と固定・保持しても構わない。逆に、本発明の塵埃除去装置は、押圧部材460を備えず、密閉部材450を接着剤や両面テープ等を用いて、振動部材410や光学ローパスフィルタ560と固定・保持する構成であっても構わない。
本発明の塵埃除去装置は基体に設置するが、本実施形態における基体とは撮像素子ユニット500である。塵埃除去装置470は、押圧部材460のビス穴460bとビス穴510cとを用いて、振動部材410および密閉部材450を挟み込むかたちで基体である撮像素子ユニット500にビスで係止されている。
このように本実施形態の撮像装置は、塵埃除去装置と撮像素子ユニットとを少なくとも有する撮像装置であって、塵埃除去装置の振動部材410と撮像ユニットの受光面を同一軸上に順に設けている。この結果、塵埃除去装置の片側面のゴミさえ除去できれば撮像素子に塵埃が写りこむことが無い。また、一般にカメラの撮影時は塵埃除去装置が重力と並行に備えられているため、一度除去した塵埃が塵埃除去装置に再付着する頻度は非常に少ないものとなる。
しかし、本発明の基体は必ずしも撮像素子ユニット500である必要はなく、他の部材や部品であっても構わない。例えば、デジタルカメラ本体、デジタルビデオカメラ、複写機、ファクシミリ、スキャナの各種の撮像装置や画像読取装置、およびその内部の部材や部品であればよい。
また、本実施形態における高分子化合物成分を少なくとも有する固定部材とは、接着部材440であり、密閉部材450である。しかし、本発明の固定部材は必ずしも接着部材440や、密閉部材450である必要はなく、他の部材であっても構わない。例えば、高分子化合物成分を少なくとも有するのであれば、押圧部材460であってもよいし、特許文献1にあるようなシールと呼ばれる部材であってもよい。また、例えば、圧電素子430の弾性振動や振動部材410の面外振動を妨げないスポンジ状の部材を介して、圧電素子430と基体とを直接固定・保持し、塵埃除去装置470を設置している場合、その部材や圧電素子430と振動部材410を固着している接着剤等が固定部材である。さらに、例えばフレキシブルプリント基板420を用いて基体側へと付勢されている場合には、フレキシブルプリント基板420や、圧電素子430とフレキシブルプリント基板420とを接着する部材が固定部材である。
次に、本発明の塵埃除去装置470のうち、特に圧電素子430の作製方法を中心に、図1で示されるような直方体の板状圧電素子を用いて詳細に説明する。
本発明の圧電素子430における圧電材料431の製造方法は特に限定されないが、構成元素を含んだ酸化物、炭酸塩、硝酸塩、蓚酸塩などの固体粉末を常圧化で焼結する圧電セラミックスの一般的な手法を採用することができる。
また、例えば本発明の圧電材料431として、下記一般式(1)
一般式(1) (Ba1−xCa)(Ti1−yZr)O(0.02≦x≦0.30、0.020≦y≦0.095であり、かつ、y≦x)
で表わされるペロブスカイト型金属酸化物を主成分とし、前記金属酸化物にMnが含有されており、前記Mnの含有量が前記金属酸化物100重量部に対して金属換算で0.02重量部以上0.40重量部以下である場合、原料としては、Ba化合物、Ca化合物、Ti化合物、Zr化合物およびMn化合物といった金属化合物から構成される。
使用可能なBa化合物としては、酸化バリウム、炭酸バリウム、蓚酸バリウム、酢酸バリウム、硝酸バリウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウムなどが挙げられる。
使用可能なCa化合物としては、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、蓚酸カルシウム、酢酸カルシウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。
使用可能なTi化合物としては、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸カルシウムなどが挙げられる。
使用可能なZr化合物としては、酸化ジルコニウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。
使用可能なMn化合物としては、炭酸マンガン、酸化マンガン、二酸化マンガン、酢酸マンガンなどが挙げられる。
また、本発明の圧電材料431のAサイトにおけるBaとCaのモル量とBサイトにおけるTiとZrのモル量との比を示すaを調整するための原料は特に限定されない。Ba化合物、Ca化合物、Ti化合物、Zr化合物のいずれでも効果は同じである。
なお、本発明の圧電材料431は必ずしもチタン酸バリウムを主成分とする圧電セラミックスである必要はない。よって、構成元素に合わせて最も好ましい原料や作製方法を選択すればよい。
本発明の圧電材料431の原料粉を造粒する方法は特に限定されない。Ba化合物、Ca化合物、Ti化合物、Zr化合物およびMn化合物を機械的に混合した混合粉を造粒してもよいし、これらの化合物を800〜1300℃程度で仮焼した後に造粒してもよいし、Ba化合物、Ca化合物、Ti化合物およびZr化合物を仮焼したのちにマンガン化合物をバインダーと同時に添加させてもよい。造粒粉の粒径をより均一にできるという観点において、最も好ましい造粒方法はスプレードライ法である。
造粒する際に使用可能なバインダーの例としては、PVA(ポリビニルアルコール)、PVB(ポリビニルブチラール)、アクリル系樹脂が挙げられる。添加するバインダーの量は1質量%から10質量%が好ましく、成形体の密度が上がるという観点において2質量%から5質量%がより好ましい。
本発明の圧電材料431の焼結方法は特に限定されない。焼結方法の例としては、電気炉による焼結、ガス炉による焼結、通電加熱法、マイクロ波焼結法、ミリ波焼結法、HIP(熱間等方圧プレス)などが挙げられる。電気炉およびガスによる焼結は、連続炉であってもバッチ炉であっても構わない。
圧電材料431の焼結温度は特に限定されないが、各化合物が反応し、充分に結晶成長する温度であることが好ましい。好ましい焼結温度としては、セラミックスの粒径を1μmから10μmの範囲にするという観点で、1200℃以上1550℃以下であり、より好ましくは1300℃以上1480℃以下である。上記温度範囲において焼結した圧電材料431は良好な圧電性能を示す。
焼結処理により得られる圧電材料431の特性を再現よく安定させるためには、焼結温度を上記範囲内で一定にして2時間以上24時間以下の焼結処理を行うとよい。また、二段階焼結法などの焼結方法を用いてもよいが、生産性を考慮すると急激な温度変化はない方法が好ましい。
圧電材料431は研磨加工した後に、1000℃以上の温度で熱処理することが好ましい。機械的に研磨加工されると、圧電材料431の内部には残留応力が発生するが、1000℃以上で熱処理することにより、残留応力が緩和し、圧電材料431の圧電特性がさらに良好になる。また、粒界部分に析出した炭酸バリウムなどの原料粉を排除する効果もある。熱処理の時間は特に限定されないが、1時間以上が好ましい。
本発明の圧電素子430の分極方法は特に限定されない。分極処理は大気中で行ってもよいし、シリコンオイル中で行ってもよい。分極をする際の温度は60℃から100℃の温度が好ましいが、圧電素子430を構成する圧電材料431の組成によって最適な条件は多少異なる。分極処理をするために印加する電界は800V/mmから2.0kV/mmが好ましい。
圧電素子430の圧電定数、機械的品質係数Qm、弾性率は、市販のインピーダンスアナライザーを用いて得られる共振周波数及び反共振周波数の測定結果から、日本電子材料工業会標準規格(EMAS−6100)に基づいて、計算により求めることができる。なお、この方法は一般に共振−反共振法と呼ばれている。
以下に実施例を挙げて本発明の塵埃除去装置を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
本発明の圧電素子に用いる圧電材料を作製した。
(製造例1)
平均粒径100nmのチタン酸バリウム(堺化学工業製:BT−01)、平均粒径300nmのチタン酸カルシウム(堺化学工業製:CT−03)、平均粒径300nmのジルコン酸カルシウム(堺化学工業製:CZ−03)をモル比で83.0対10.5対6.5になるように秤量した。
次に、これらの秤量粉を、ボールミルを用いて24時間の乾式混合によって混合した。得られた混合粉を造粒するために、混合粉に対してMn重量が金属換算で0.18重量部となる酢酸マンガン(II)と混合粉に対して3重量部となるPVAバインダーを、それぞれスプレードライヤー装置を用いて、混合粉表面に付着させた。
次に、得られた造粒粉を金型に充填し、プレス成型機を用いて200MPaの成形圧をかけて円盤状の成形体を作製した。この成形体は冷間等方加圧成型機を用いて、更に加圧しても構わない。
得られた成形体を電気炉に入れ、1340℃の最高温度で5時間保持し、合計24時間かけて大気雰囲気で焼結した。
次に、蛍光X線分析により組成を評価した。その結果、(Ba0.830Ca0.170)(Ti0.935Zr0.065)Oの化学式で表わすことができる組成にMnが0.18重量部含有されていることが分かった。これは秤量した組成と焼結後の組成が一致していることを意味する。また、Ba、Ca、Ti、ZrおよびMn以外の元素は検出限界以下の量であり、1重量部以下であった。
さらに、25℃および、−70℃でX線回折により、結晶構造を解析した。その結果、ペロブスカイト構造に相当するピークのみが観察された。またX線回折の結果をリートベルト解析した結果、25℃においては正方晶、−70℃においては斜方晶の結晶相であることがわかった。
(比較用の製造例1)
平均粒径100nmのチタン酸バリウム(堺化学工業製:BT−01)を造粒するために、混合粉に対してMn重量が金属換算で0.12重量部となる酢酸マンガン(II)と混合粉に対して3重量部となるPVAバインダーを、それぞれスプレードライヤー装置を用いて、混合粉表面に付着させた。
次に、得られた造粒粉を金型に充填し、プレス成型機を用いて200MPaの成形圧をかけて円盤状の成形体を作製した。得られた成形体を電気炉に入れ、1380℃の最高温度で5時間保持し、合計24時間かけて大気雰囲気で焼結した。
次に、蛍光X線分析により組成を評価した。その結果、BaTiOの化学式で表わすことができる組成にMnが0.12重量部含有されていることが分かった。また、Ba、Ca、Ti、ZrおよびMn以外の元素は検出限界以下の量であり、1重量部以下であった。
さらに、25℃および、−70℃でX線回折により、結晶構造を解析した。その結果、ペロブスカイト構造に相当するピークのみが観察された。またX線回折の結果をリートベルト解析した結果、25℃においては正方晶、−70℃においては斜方晶の結晶相であることがわかった。
(比較用の製造例2)
ジルコン酸チタン酸鉛の焼結体を用意した。さらに、25℃および、−70℃でX線回折により、結晶構造を解析した。その結果、ペロブスカイト構造に相当するピークのみが観察された。またX線回折の結果をリートベルト解析した結果、25℃においては正方晶、−70℃においても正方晶の結晶相であることがわかった。
(実施例1および比較例1)
製造例1および比較用の製造例1の圧電材料を用いて実施例1および比較例1の圧電素子を作製した。
圧電材料を厚さ0.5mmに研磨加工し、2つの面にDCマグネトロンスパッタリングでTi⇒Auの順でそれぞれ30nm、380nm厚さで形成し、第1の電極および第2の電極を備えた圧電素子とした。
次に、これらの圧電素子を10.0mm×2.5mm×0.5mmに切断加工した後、これらの圧電素子に直流電源を用いて圧電素子に分極処理を行った。温度は100℃、印加電界は1kV/mm、電圧印加時間は30分とした。ここで、これらの圧電素子の分極軸方向は膜厚方向と平行である。
さらに、実施例1、比較例1の圧電素子に測定温度を変えながら微小交流電界印加して誘電率を測定し、相転移温度Tを評価した。その結果、相転移温度Tは実施例1、比較例1でそれぞれ−32℃、6℃であった。
(比較例2)
比較用の製造例2の圧電材料を用いて比較例2の圧電素子を作製した。
圧電材料を厚さ0.25mmに研磨加工し、2つの面にDCマグネトロンスパッタリングでTi⇒Auの順でそれぞれ30nm、380nm厚さで形成し、第1の電極および第2の電極を備えた圧電素子とした。
次に、この圧電素子を10.0mm×2.5mm×0.5mmに切断加工した後、直流電源を用いて圧電素子に分極処理を行った。温度は200℃、印加電界は1.7kV/mm、電圧印加時間は30分とした。ここで、圧電素子の分極軸方向は膜厚方向と平行である。
さらに、比較例2の圧電素子に測定温度を変えながら微小交流電界印加して誘電率を測定し、相転移温度Tを評価した。その結果、少なくとも−60℃から50℃の範囲には相転移温度Tは存在しなかった。
(実施例1および比較例1および比較例2の圧電素子の評価)
次に、共振−反共振法により、実施例1、比較例1、比較例2の圧電素子の圧電定数d31、弾性定数Y11、共振周波数を求めた。結果をそれぞれ図15、図16、図17に示す。ここで、実線は実施例1の圧電素子、点線は比較例1の圧電素子、1点鎖線は比較例2の圧電素子の結果である。図15、図16、図17とも、測定は30℃をスタートとし、昇温、降温、30℃まで昇温、という順序で温度を変化させながら測定した結果である。測定は恒温槽内で行い、それぞれの温度で一定時間保持し、温度が安定した後に各温度での圧電定数d31、弾性定数Y11、共振周波数を評価している。図15、図16、図17では、実施例1、比較例1の圧電素子で、温度に対する圧電定数d31、弾性定数Y11、共振周波数の変化が昇温時と降温時で異なっている。この原因は強誘電体が、第一の強誘電結晶相から第二の強誘電結晶相への相転移温度(降温時の相転移温度)と第二の強誘電結晶相から第一の強誘電結晶相への相転移温度(昇温時の相転移温度)とで若干の温度差が生じためである。ここで、第一の強誘電結晶相から第二の強誘電結晶相への相転移温度(降温時の相転移温度)と第二の強誘電結晶相から第一の強誘電結晶相への相転移温度(昇温時の相転移温度)とでは、第一の強誘電結晶相から第二の強誘電結晶相への相転移温度(降温時の相転移温度)の方が低い。一方、比較例2の圧電素子は、少なくとも−60℃から50℃の範囲には相転移温度Tは存在しないため、温度に対する圧電定数d31、弾性定数Y11、共振周波数の変化が昇温時と降温時で極端にことなることはなく、ほとんどの温度で昇温時と降温時の圧電定数d31、弾性定数Y11、共振周波数はほぼ同じ値を示す。
ここで、実施例1の圧電素子は低温になるにつれ、圧電定数が大きくなり、弾性定数が小さくなり、共振周波数が低くなった。一方、比較例1の圧電素子は、5℃近辺に特性の変極点が存在し、5℃近辺で圧電定数は最も大きくなり、弾性定数は最も小さくなり、共振周波数は最も低くなった。また、比較例2の圧電素子は、各物性とも温度に依存せずほぼ一定となった。
(製造例2から27)
平均粒径100nmのチタン酸バリウム(堺化学工業製:BT−01)、平均粒径300nmのチタン酸カルシウム(堺化学工業製:CT−03)、平均粒径300nmのジルコン酸カルシウム(堺化学工業製:CZ−03)を表1に示すモル比になるように秤量した。
次に、これらの秤量粉を、ボールミルを用いて24時間の乾式混合によって混合した。得られた混合粉を造粒するために、混合粉に対してMn重量が金属換算で表1の重量部となる酢酸マンガン(II)と混合粉に対して3重量部となるPVAバインダーを、それぞれスプレードライヤー装置を用いて、混合粉表面に付着させた。
次に、得られた造粒粉を金型に充填し、プレス成型機を用いて200MPaの成形圧をかけて円盤状の成形体を作製した。この成形体は冷間等方加圧成型機を用いて、更に加圧しても構わない。
得られた成形体を電気炉に入れ、1330℃から1480℃の最高温度で5時間保持し、合計24時間かけて大気雰囲気で焼結した。尚、製造例10の最高温度は1330℃、製造例11の最高温度は1440℃、製造例12の最高温度は1400℃とした。
次に、蛍光X線分析により組成を評価した。その結果、(Ba1−xCa)(Ti1−yZr)Oの化学式で表わすことができる組成(x,yは表2に記載)にMnが表1の重量部含有されていることが分かった。また、Ba、Ca、Ti、ZrおよびMn以外の元素は検出限界以下の量であり、1重量部以下であった。
さらに、25℃および、−70℃でX線回折により、結晶構造を解析した。その結果、すべての実施例においてペロブスカイト構造に相当するピークのみが観察された。またX線回折の結果をリートベルト解析した結果、すべての実施例において25℃においては正方晶、−70℃においては斜方晶の結晶相であることがわかった。
(実施例2から27)
製造例2から27の圧電材料を用いて実施例2から27の圧電素子を作製した。
圧電材料を厚さ0.5mmに研磨加工し、2つの面にDCマグネトロンスパッタリングでTi⇒Auの順でそれぞれ30nm、380nm厚さで形成し、第1の電極および第2の電極を備えた圧電素子とした。
次に、これらの圧電素子を10.0mm×2.5mm×0.5mmに切断加工した後、これらの圧電素子に直流電源を用いて圧電素子に分極処理を行った。温度は100℃、印加電界は1kV/mm、電圧印加時間は30分とした。ここで、これらの圧電素子の分極軸方向は膜厚方向と平行である。
さらに、実施例2から27の圧電素子に測定温度を変えながら微小交流電界印加して誘電率を測定し、相転移温度Tを評価した。その結果、相転移温度Tは表2で示される温度であった。表2には実施例1および比較例1の圧電素子の相転移温度Tの結果も記載しているが、相転移温度Tの評価は実施例2から27と同様に、圧電素子に測定温度を変えながら微小交流電界印加して誘電率を測定し、相転移温度Tを評価したものである。
Figure 2017227913
Figure 2017227913
(製造例28)
純度99.9%の炭酸カリウム(キシダ化学社製)、炭酸ナトリウム(キシダ化学社製)、炭酸リチウム(キシダ化学社製)および酸化ニオブ(高純度化学社製)を化学式(K0.46Na0.46Li0.08)NbOで表わされる組成となるように秤量した。
次に、これらの秤量粉を、ボールミルを用いて24時間アルコール中で湿式混合によって混合した。得られた混合粉を乾燥した後、800℃で4時間仮焼した。得られた仮焼粉は、瑪瑙乳鉢を用いて粉砕した後、3重量部となるPVBバインダーを混合し、24時間ボールミルを用いて湿式粉砕を行った。得られた粉砕粉を80℃で12時間乾燥させたのちに、40メッシュの篩を通し、造粒粉を得た。
次に、得られた造粒粉を金型に充填し、プレス成型機を用いて200MPaの成形圧をかけて円盤状の成形体を作製した。
得られた成形体を電気炉に入れ、1120℃の最高温度で5時間保持し、合計24時間かけて大気雰囲気で焼結した。
次に、ICP発光分光分析により組成を評価した。組成の評価は組成評価用の焼結体を用いて行った。その結果、(K0.46Na0.46Li0.08)NbOで表わされる組成であることが分かった。これは秤量した組成と焼結後の組成が一致していることを意味する。
さらに、焼結体を25℃および、−70℃でX線回折により、結晶構造を解析した。その結果、ペロブスカイト構造に相当するピークのみが観察された。またX線回折の結果をリートベルト解析した結果、25℃においては斜方晶、−70℃においては菱面体晶の結晶相であることがわかった。
(実施例28)
製造例28の圧電材料を用いて実施例28の圧電素子を作製した。
実施例1と同じ手順で10.0mm×2.5mm×0.5mmの切断加工まで行い、実施例28の圧電素子とした。
次に、この圧電素子に直流電源を用いて圧電素子に分極処理を行った。圧電素子はシリコンオイル中に設置し、温度は120℃、印加電界は4kV/mm、電圧印加時間は30分とした。ここで、これらの圧電素子の分極軸方向は膜厚方向と平行である。
さらに、実施例28の圧電素子に測定温度を変えながら微小交流電界印加して誘電率を測定し、相転移温度Tを評価した。その結果、相転移温度Tは実施例−35℃であった。
(製造例29)
純度99.9%の炭酸カリウム(キシダ化学社製)、炭酸ナトリウム(キシダ化学社製)、炭酸リチウム(キシダ化学社製)および酸化ニオブ(高純度化学社製)を化学式(K0.455Na0.455Li0.09)NbOで表わされる組成となるように秤量した。
以下、製造例28と同様の手順で焼結までおこない、焼結体を得た。
次に、ICP発光分光分析により組成を評価した。組成の評価は組成評価用の焼結体を用いて行った。その結果、(K0.455Na0.455Li0.09)NbOで表わされる組成であることが分かった。これは秤量した組成と焼結後の組成が一致していることを意味する。
さらに、焼結体を25℃および、−70℃でX線回折により、結晶構造を解析した。その結果、ペロブスカイト構造に相当するピークのみが観察された。またX線回折の結果をリートベルト解析した結果、25℃においては斜方晶、−70℃においては菱面体晶の結晶相であることがわかった。
(実施例29)
製造例29の圧電材料を用いて実施例29の圧電素子を作製した。
実施例1と同じ手順で10.0mm×2.5mm×0.5mmの切断加工まで行い、実施例29の圧電素子とした。
次に、この圧電素子に実施例28と同じ手順で分極処理を行った。
さらに、実施例29の圧電素子に測定温度を変えながら微小交流電界印加して誘電率を測定し、相転移温度Tを評価した。その結果、相転移温度Tは実施例−65℃であった。
(製造例30)
平均粒径100nmのチタン酸バリウム(堺化学工業製:BT−01)、平均粒径300nmのジルコン酸バリウム(日本化学工業製)をモル比で97.0対3.0対になるように秤量した。
次に、これらの秤量粉を、ボールミルを用いて24時間の乾式混合によって混合した。得られた混合粉を造粒するために、混合粉に対してMn重量が金属換算で0.12重量部となる酢酸マンガン(II)と混合粉に対して3重量部となるPVAバインダーを、それぞれスプレードライヤー装置を用いて、混合粉表面に付着させた。
次に、実施例1と同様の手順で成形体を作製したのちに、大気雰囲気で焼結した。
次に、蛍光X線分析により組成を評価した。その結果、Ba(Ti0.970Zr0.030)Oの化学式で表わすことができる組成にMnが0.12重量部含有されていることが分かった。これは秤量した組成と焼結後の組成が一致していることを意味する。また、Ba、Ti、ZrおよびMn以外の元素は検出限界以下の量であり、1重量部以下であった。
さらに、25℃および、−70℃でX線回折により、結晶構造を解析した。その結果、ペロブスカイト構造に相当するピークのみが観察された。またX線回折の結果をリートベルト解析した結果、25℃においては斜方晶、−70℃においては菱面体晶の結晶相であることがわかった。
(実施例30)
製造例30の圧電材料を用いて実施例30の圧電素子を作製した。
実施例1と同じ手順で10.0mm×2.5mm×0.5mmの切断加工まで行い、実施例30の圧電素子とした。
次に、この圧電素子に直流電源を用いて圧電素子に分極処理を行った。温度は100℃、印加電界は1kV/mm、電圧印加時間は30分とした。ここで、これらの圧電素子の分極軸方向は膜厚方向と平行である。
さらに、実施例30の圧電素子に測定温度を変えながら微小交流電界印加して誘電率を測定し、相転移温度Tを評価した。その結果、相転移温度Tは−55℃であった。
(実施例31および比較例3)
製造例1および比較用の製造例1の圧電材料を用いて図10に示すような実施例31および比較例3の塵埃除去装置を備える撮像ユニットを作製した。
圧電材料を厚さ0.25mmに研磨加工し、2つの面にDCマグネトロンスパッタリングでTi⇒Auの順でそれぞれ30nm、380nm厚さでパターン形成し、第1の電極および第2の電極を備えた圧電素子とした。さらに、この圧電素子を33.3×4.0×0.25mmに切断加工した後、前述のDCマグネトロンスパッタリングでTi⇒Auの順で回り込み電極をパターン形成することで、第1の電極面の第1の電極と第2の電極面の第1の電極とを圧電材料の4.0×0.25mmの片方の面を介して短絡させた。このとき第1の電極と第2の電極は短絡していないことを確認することで、図1に示すような圧電素子を作製した。
次に、これらの圧電素子に直流電源を用いて圧電素子に分極処理を行った。温度は100℃、印加電界は1kV/mm、電圧印加時間は30分とした。
次に、製造例1および比較用の製造例1から作製したこれらの圧電素子それぞれ2個を、赤外線カットフィルタとしての機能を有する50.8×33.7×0.3mmのガラス板の33.7mmの辺に沿ってエポキシ樹脂系接着剤を用いて接着した。圧電素子の接着面は第1の電極面である。
次に、フレキシブルプリント基板をそれぞれの圧電素子の第2の電極面の第1の電極と第2の電極がある部分に導電性接着剤を用いて接着した。それぞれの圧電素子の第1の電極および第2の電極は、フレキシブルプリント基板を介してカメラ本体と電気的に接続され、圧電素子に電源から交番電圧を印加できるようになっている
次にCMOSセンサを備え、被写体側の前面が光学ローパスフィルタである図10に示す撮像素子ユニットに、前期圧電素子を備えた赤外線カットフィルタを、ポリウレタンフォームからなる密閉部材、ステンレスからなる押圧部材、1つが導電性両面テープ、3つが両面テープである接着部材を用いて、図10に示すようにねじ止めし、実施例31および比較例3の塵埃除去装置を備える撮像ユニットを作製した。
ここで、動的粘弾性分析(DMA)によって評価したポリウレタンフォームの貯蔵弾性率G’は、−5℃において10MPa、25℃において0.1MPaであった。
(比較例4)
比較用の製造例1の圧電材料を用いて図10に示すような比較例4の塵埃除去装置を備える撮像ユニットを作製した。
圧電材料を厚さ0.25mmに研磨加工し、2つの面にDCマグネトロンスパッタリングでTi⇒Auの順でそれぞれ30nm、380nm厚さでパターン形成し、第1の電極および第2の電極を備えた圧電素子とした。さらに、この圧電素子を33.3×4.0×0.25mmに切断加工した後、前述のDCマグネトロンスパッタリングでTi⇒Auの順で回り込み電極をパターン形成することで、第1の電極面の第1の電極と第2の電極面の第1の電極とを圧電材料の4.0×0.25mmの片方の面を介して短絡させた。このとき第1の電極と第2の電極は短絡していないことを確認することで、図1に示すような圧電素子を作製した。
次に、圧電素子に直流電源を用いて圧電素子に分極処理を行った。温度は200℃、印加電界は1.7kV/mm、電圧印加時間は30分とした。
次に、圧電素子2個を、赤外線カットフィルタとしての機能を有する50.8×33.7×0.3mmのガラス板の33.7mmの辺に沿ってエポキシ樹脂系接着剤を用いて接着した。圧電素子の接着面は第1の電極面である。
次に、フレキシブルプリント基板をそれぞれの圧電素子の第2の電極面の第1の電極と第2の電極がある部分に導電性接着剤を用いて接着した。それぞれの圧電素子の第1の電極および第2の電極は、フレキシブルプリント基板を介してカメラ本体と電気的に接続され、圧電素子に電源から交番電圧を印加できるようになっている。
次にCMOSセンサを備え、被写体側の前面が光学ローパスフィルタである図10に示す撮像素子ユニットに、前期圧電素子を備えた赤外線カットフィルタを、ポリウレタンフォームからなる密閉部材、ステンレスからなる押圧部材、1つが導電性両面テープ、3つが両面テープである接着部材を用いて、図10に示すようにねじ止めし、比較例4の塵埃除去装置を備える撮像ユニットを作製した。
(実施例31および比較例3および4の塵埃除去装置を備える撮像ユニットの塵埃除去性能の評価)
次に実施例31、比較例3、比較例4の塵埃除去装置を備える撮像ユニットの機械アドミタンスと共振周波数を測定した。測定は温度を任意で可変できる環境箱中に塵埃除去装置を備える撮像ユニットを置き、アジレントテクノロジーズ社製のプレシジョン・インピーダンス・アナライザ4294Aを用いて評価した。測定周波数は105から120kHZの範囲とし、測定は−30℃〜50℃の範囲で25℃→50℃→−30℃→25℃の順に5℃刻みで行った。なお、実施例31、比較例3、比較例4の塵埃除去装置を備える撮像ユニットと共に、左右の圧電素子には同位相の交番電界を印加し、前記周波数範囲においては19次の定在波振動モードを振動板上に形成している状態である。
機械アドミタンスとは日本電子材料工業会標準規格(EMAS−6100)に記載されている圧電振動子の等価回路から、等価回路の並列容量成分(電気的容量成分)を除去して得られるアドミタンスの絶対値である。機械システムの動力学特性を機械回路に置き換えて電気的に解析することが一般的であることからもわかるように、機械アドミタンスの大きさは塵埃除去装置の振動モードの振幅の大きさに比例する。つまり、例えば、塵埃除去装置の振動板の表面をレーザードップラ振動計にて測定した結果と比例する値である。
機械アドミタンスは、具体的には、測定で得られた各周波数におけるアドミタンスを、各周波数における位相を用いて実数部と虚数部に分解し、1kHzにおける圧電素子の比誘電率より算出した圧電素子の電気容量と各周波数での角速度とを乗じた値を前記虚数部から減じたものの2乗と、前期実数部の2乗との和の平方根として得られる値である。
また、共振周波数は、105から120kHZの範囲において機械アドミタンスがその最大の値を示す周波数数とした。
図18と図19はそれぞれ、実施例31、比較例3、比較例4の塵埃除去装置を備える撮像ユニットの共振周波数および機械アドミタンスの温度に対する変動を示す図である。実線で結ばれた丸印は実施例31の塵埃除去装置を備える撮像ユニット、点線で結ばれた菱形印は比較例3の塵埃除去装置を備える撮像ユニット、1点鎖線で結ばれた三角印は比較例4の塵埃除去装置を備える撮像ユニットの結果である。図18、図19、とも、測定は30℃をスタートとし、昇温、降温、30℃まで昇温、という順序で温度を変化させながら測定した結果である。測定は恒温槽内で行い、それぞれの温度で一定時間保持し、温度が安定した後に各温度での共振周波数および機械アドミタンスを評価している。
図18より、実際に撮像ユニットに備えられた塵埃除去装置が高い塵埃除去性能を少なくとも有する必要がある−30℃〜50℃の温度範囲において、比較例3の塵埃除去装置では6.5kHz、比較例4の塵埃除去装置では少なくとも10.5kHz以上の共振周波数の変動があるのに対し、本発明の実施例31の塵埃除去装置では1.5kHzの周波数変動内で塵埃除去装置が共振できた。なお、1点鎖線で結ばれた三角印で示された比較例4の塵埃除去装置を備える撮像ユニットにおいては、0℃以下では0℃以上とは別の振動モードを用いて塵埃除去することで、実際には7.5kHzの周波数変動内で塵埃除去装置を共振させ、塵埃を除去することができる。
また、図19より、実際に撮像ユニットに備えられた塵埃除去装置が高い塵埃除去性能を少なくとも有する必要がある−30℃〜50℃の温度範囲において、比較例3および比較例4の塵埃除去装置では、およそ1.0mSが、前記温度範囲における最も小さい機械アドミタンスだったのに対し、本発明の実施例31の塵埃除去装置では、およそ3.0mSが、前記温度範囲における最も小さい機械アドミタンスだった。
また、比較例の塵埃除去装置を備える撮像ユニットにおいては、0℃以下で機械アドミタンスが最も小さくなっているが、本発明の実施例31の塵埃除去装置を備える撮像ユニットにおいては0℃以下で機械アドミタンスが最も小さくはならなかった。
(実施例32から57)
実施例31と同様の方法で、製造例2から27の圧電材料を用いて図10に示すような実施例32から57の塵埃除去装置を備える撮像ユニットを作製した。
(実施例58および59)
圧電素子をシリコンオイル中に設置し、温度が120℃、印加電界が4kV/mm、電圧印加時間が30分で分極処理をしたこと以外は実施例31と同様の方法で、製造例28および29の圧電材料を用いて図10に示すような実施例58から59の塵埃除去装置を備える撮像ユニットを作製した。
(実施例60)
温度が100℃、印加電界が1kV/mm、電圧印加時間が30分で分極処理をしたこと以外は実施例31と同様の方法で、製造例30の圧電材料を用いて図10に示すような実施例60の塵埃除去装置を備える撮像ユニットを作製した。
(実施例32から60の塵埃除去装置を備える撮像ユニットの塵埃除去性能の評価)
次に実施例32から60の塵埃除去装置を備える撮像ユニットの機械アドミタンスと共振周波数を測定した。その結果、機械アドミタンスと共振周波数は表3で示される値であった。実施例58から60の塵埃除去装置を備える撮像ユニットでは、比較例と比べ共振周波数の変動が小さくて良好な特性を有した。
Figure 2017227913
(実施例61および62)
密閉部材の材質が異なること以外は実施例31と同様の方法で、製造例1の圧電材料を用いて図10に示すような実施例61および実施襟62の塵埃除去装置を備える撮像ユニットを作製した。実施例61の密閉部材はシリコンゴムシート、実施例62の密閉部材はスチレン・ブタジエンゴムシートとした。ここで、動的粘弾性分析(DMA)によって評価したシリコンゴムシートの貯蔵弾性率G’は、−5℃において4MPa、25℃において3MPaであった。また、スチレン・ブタジエンゴムシートの貯蔵弾性率G’は、−5℃において6MPa、25℃において4MPaであった。
(実施例61および62の塵埃除去装置を備える撮像ユニットの塵埃除去性能の評価)
次に実施例61および62の塵埃除去装置を備える撮像ユニットの機械アドミタンスと共振周波数を測定した。測定周波数は105から120kHZの範囲とし、測定は−30℃〜50℃の範囲で25℃→50℃→−30℃→25℃の順に5℃刻みで行った。なお、実施例61および62の塵埃除去装置を備える撮像ユニット共に、左右の圧電素子には同位相の交番電界を印加し、前記周波数範囲においては19次の定在波振動モードを振動板上に形成している状態である。
実施例61および62の塵埃除去装置を備える撮像ユニットの共振周波数の変動幅は、どちらも4kHz未満であった。また、どちらも機械アドミタンスは低温になるほど大きくなる傾向を示し、最も小さい機械アドミタンスの値は2mS以上となった。
(塵埃除去性能の評価)
実施例31および比較例4の塵埃除去装置を備える撮像ユニットの塵埃除去性能を評価した。塵埃除去装置を備える撮像ユニットの振動板表面に塵埃除去率評価用の各種プラスチック製ビーズを散布し、一定時間経過後の振動板上の塵埃除去率を評価した。左右の圧電素子に同位相、30Vp−pの交番電界を印加しながら105から120kHZの周波数範囲を0.5秒間掃引し、次に逆位相、30Vp−pの交番電界を印加しながら100から115kHZの周波数範囲を0.5秒間掃引した。前記周波数範囲においては19次および18次の定在波振動モードを振動板上に順に形成している状態である。評価は振動板表面の温度をそれぞれー30℃、−5℃、25℃、50℃として行った。
実施例31の塵埃除去性能評価結果を表4に、比較例4の塵埃除去性能評価結果を表5に、示す。本発明の塵埃除去装置は、例えばデジタルカメラ本体の電源から電圧を印加しても充分に高い塵埃除去率を示すことが分かった。
Figure 2017227913
Figure 2017227913
(注)
ビーズ1:ポリスチレン 粒径10〜100μm
ビーズ2:ポリメタクリル酸メチル 粒径10〜100μm
ビーズ3:シリカ 粒径10〜100μm
ビーズ4:ビーズ1、ビーズ2、ビーズ3混合物
本発明の塵埃除去装置は、表面に付着した塵埃を良好に除去することができるので、撮像素子、デジタルカメラ本体、デジタルビデオカメラ、複写機、ファクシミリ、スキャナの各種の撮像装置もしくは撮像装置を備える電子電気機器のうち、特に光学部品の表面に付着する塵埃の除去が必要な機器にも適用することができる。
1 カメラ本体
2 マウント部
5 ミラーボックス
6 メインミラー
200 シャッタユニット
300 本体シャーシ
400 撮像ユニット
410 振動板
420 フレキシブルプリント基板
430 圧電素子
431 圧電材料
432 第1の電極
433 第2の電極
434 分極方向
435 電界方向
436 第1の電極面
437 第2の電極面
440 接着部材
450 密閉部材
460 押圧部材
470 塵埃除去装置
500 撮像素子ユニット
501 基体
510 撮像素子保持部材
520 回路基板
530 シールドケース
540 遮光部材
550 光学ローパスフィルタ保持部材
560 光学ローパスフィルタ
570 撮像素子

Claims (15)

  1. 振動部材と、圧電材料と一対の対向する電極を有する圧電素子と、高分子化合物成分を有する固定部材を備えた塵埃除去装置であって、
    前記振動部材に前記圧電素子及び前記固定部材が設けられており、
    前記圧電材料の第一の強誘電結晶相から第二の強誘電結晶相への相転移温度Tが−60℃≦T≦−5℃であり、
    前記固定部材の25℃における弾性率が−5℃における弾性率より小さい、
    ことを特徴とする塵埃除去装置。
  2. 前記固定部材がエラストマーであることを特徴とする請求項1に記載の塵埃除去装置。
  3. 前記固定部材が発泡樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の塵埃除去装置。
  4. 前記固定部材が熱可塑性であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塵埃除去装置。
  5. 前記圧電材料の第一の強誘電結晶相が正方晶相であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の塵埃除去装置。
  6. 前記圧電材料の第二の強誘電結晶相が斜方晶相であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の塵埃除去装置。
  7. 前記圧電材料の鉛の含有量が1000ppm未満であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の塵埃除去装置。
  8. 前記圧電材料がチタン酸バリウムを主成分とする圧電セラミックスであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の塵埃除去装置。
  9. 前記圧電材料が、下記一般式(1)
    一般式(1) (Ba1−xCa)(Ti1−yZr)O(0.02≦x≦0.30、0.020≦y≦0.095であり、かつy≦x)
    で表わされるペロブスカイト型金属酸化物を主成分とすることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の塵埃除去装置。
  10. 前記圧電材料が、前記一般式(1)で表わされるペロブスカイト型金属酸化物を主成分とし、前記ペロブスカイト型金属酸化物にMnが含有されており、前記Mnの含有量が前記ペロブスカイト型金属酸化物100重量部に対して金属換算で0.02重量部以上0.40重量部以下であることを特徴とする請求項9に記載の塵埃除去装置。
  11. 前記圧電素子及び前記振動部材が板状であり、前記圧電素子の一方の電極面が前記振動部材の板面に固着され、前記振動部材が前記固定部材を介して基体に固定されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の塵埃除去装置。
  12. 前記圧電素子を複数有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の塵埃除去装置。
  13. 前記振動部材が光学材料であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の塵埃除去装置。
  14. 請求項1乃至13のいずれか1項に記載の塵埃除去装置と撮像素子ユニットとを少なくとも有する撮像装置であって、前記塵埃除去装置の振動部材と前記撮像素子ユニットの受光面を同一軸上に順に設けたことを特徴とする撮像装置。
  15. 請求項14に記載の撮像装置を備えた電気機器。
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