以下、本発明の実施形態について、図面に基づき詳細に説明される。なお、各図面は、発明の内容の理解を高めるためのものであり、誇張された表示が含まれる他、各図面間において、縮尺等は厳密に一致していない点が予め指摘される。
図1は、本実施形態に係る調湿システム1を利用した建物(住宅)2の一例を概念的に示す側面図である。調湿システム1は、除湿された空気を建物2の居室3に供給するためのものである。本実施形態では、夏季において、居室3を換気しながら、空調(冷房)及び除湿する調湿システムが例示される。
調湿システム1は、空気調和機4、チャンバー5、第1ダクト手段7及び第2ダクト手段8を含んで構成されている。さらに、本実施形態の調湿システム1は、第3ダクト手段9、第4ダクト手段10、切替具11及び制御装置12を含んでいる。
本実施形態の空気調和機4は、一般的な家庭用のセパレート型エアコンである。空気調和機4は、建物2の内部に設置された室内機4aと、建物2の外部に設置された室外機(図示省略)とをセットとして含んでいる。本実施形態の室内機4aは、熱源チャンバー16内に格納されている。空気調和機4は、室内機4aで熱交換された空気(即ち、空気を冷却して相対湿度が高まった冷却空気)Acを吹き出すことができる。
熱源チャンバー16は、内部に断熱された空間を区画するケーシングを具えている。熱源チャンバー16は、室内機4aの空気吸込口(図示省略)側に、基礎換気口17から床下空間18に導入された外気が取り込まれる第1入口16aと、居室3の換気出口3bから居室の空気(内気)を導入する第2入口16bとがそれぞれ設けられている。さらに、熱源チャンバー16には、室内機4aの空気吹出口(図示省略)側に、室内機4aで熱交換された空気が吹き出される出口16cが設けられている。
このような熱源チャンバー16内の室内機4aは、新鮮な外気と居室3の空気との混合気を冷却することができる。そして、熱源チャンバー16は、室内機4aが空気(本実施形態では、混合気)を冷却して相対湿度を高めた冷却空気Acを、換気及び空調用の空気として、出口16cから排出することができる。なお、本実施形態では、外気として、基礎換気口17から床下空間18に導入され、この床下空間18で、一旦、地熱と熱交換されたものが利用されているが、このような態様に限定されない。外気としては、例えば、ダクト等で直接導かれたものが利用されても良く、外気として種々のものが採用できる。
チャンバー5は、その内部に、調湿材を収容するためのものである。本実施形態のチャンバー5は、第1チャンバー5A及び第2チャンバー5Bを含んでいる。本実施形態の第1チャンバー5A及び第2チャンバー5Bは、居室3よりも上方(本実施形態では、屋根23と天井24との間に形成された小屋裏25)に配置されている。これにより、第1チャンバー5A及び第2チャンバー5Bが、居室3を専有するのを防ぐことができる。
第1チャンバー5A及び第2チャンバー5Bは、実質的に同一仕様を有している。本実施形態において、実質的に同一仕様とは、形状、容積及び調湿能力が同一であることを示している。第1チャンバー5A及び第2チャンバー5Bは、並列的に用いられている。以下、代表的に、第1チャンバー5Aの一例が説明されるが、第2チャンバー5Bも同様の構造を具えている点が指摘される。
図2は、第1チャンバー5Aの一例を示す斜視図である。図3は、第2チャンバー5Bの一例を示す斜視図である。図4は、図2の横断面図である。図2及び図3に示されるように、各チャンバー5A及び5Bは、内部に空間26を区画するケーシング27と、ケーシング27内の空間26に収容される調湿材21とを含んでいる。
本実施形態のケーシング27は、例えば、直方体状の空間26を区画している。本実施形態の空間26は、水平方向にのびており、側面視において横長矩形状に形成されている。ケーシング27の水平方向の一端側には、空気が供給される入口29が形成される。ケーシング27の水平方向の他端側には、空気が排出される出口30が形成されている。これにより、ケーシング27は、空間26の内部において、入口29から出口30に向かう空気流れを提供することができる。本実施形態において、ケーシング27の空間26には、入口29から出口30に向かう水平方向の空気流れが提供される。
図2及び図3に示されるように、本実施形態の入口29及び出口30は、それぞれ2つずつ設けられている。入口29は、一方の入口29aと、他方の入口29bとを含んでいる。出口30は、一方の出口30aと、他方の出口30bとを含んでいる。
ケーシング27の形状については、内部に空間26を区画しうるものであれば、任意の形状が採用され得る。好ましい態様では、ケーシング27は、空間26側の内層27aと、その外側の外層27bとを含む多層構造を具えている。内層27aは、例えば、断熱材料で構成される。これにより、ケーシング27の内部の空間26が外部と断熱され、外部環境による内部の空気の温度(ひいては、相対湿度(相対蒸気圧))の変動を最小限に抑えることができる。これは、調湿材21に安定した除湿機能又は放湿機能を発揮させるのに有効である。
調湿材21は、相対湿度の高い空気から水蒸気を吸着しうるとともに、相対湿度の低い空気に自らが吸着した水蒸気を放出しうる吸放湿性能を有するものである。図2及び図4に示されるように、本実施形態の調湿材21は、シート状に形成されており、第1吸着材31a及び第2吸着材31bを含んでいる。第1吸着材31aと、第2吸着材31bとは、水蒸気の吸着性能が異なっている。図5(a)は、第1吸着材31aの水蒸気の吸着量と相対蒸気圧との関係を示す平衡含水率曲線のグラフである。図5(b)は、第2吸着材31bの水蒸気の吸着量と相対蒸気圧との関係を示す平衡含水率曲線のグラフである。
図5(a)、(b)のグラフにおいて、水蒸気の吸着量は、25℃の環境下で測定されたものである。
図5(a)に示されるように、本実施形態の第1吸着材31aは、25℃の環境下で、相対蒸気圧0.40での吸着量と相対蒸気圧0.15での吸着量との差が0.10kg/kg以上に設定される。このような第1吸着材31aは、相対蒸気圧が0.15となる低湿度から相対蒸気圧が0.40となる中湿度にかけて、多くの水蒸気を吸着又は放出できる。即ち、第1吸着材31aは、相対蒸気圧が0.15よりも高くなると、多くの水蒸気を吸着できる。また、第1吸着材31aは、相対蒸気圧が0.40よりも低くなると、多くの水蒸気を放出することができる。第1吸着材31aの吸放湿量を効果的に高めるために、25℃の環境下で、相対蒸気圧0.40での吸着量と相対蒸気圧0.15での吸着量との差は、0.13kg/kg以上であるのが望ましい。
図2及び図4に示されるように、本実施形態の第1吸着材31aは、粉粒体状に構成されている。第1吸着材31aの粒径については、特に限定されるものではない。なお、粒径が大きくなると、強度及び加工性の悪化や、比表面積の減少による吸放湿スピードの低下を招くおそれがある。このような観点より、第1吸着材31aの粒径は、例えば、100μm以下、より好ましくは10μm以下である。
また、第1吸着材31aの細孔径についても、特に限定されない。なお、細孔径が大きいと、特定の低湿域での水蒸気の吸着量が低下するおそれがある。このような観点より、第1吸着材31aの細孔径は、2.4nm程度が望ましい。
第1吸着材31aとしては、上記性能を有するものであれば、適宜採用されうる。本実施形態の第1吸着材31aとしては、A形シリカゲルが用いられるのが望ましい。
図5(b)に示されるように、本実施形態の第2吸着材31bは、25℃の環境下で、相対蒸気圧0.95での吸着量と相対蒸気圧0.70での吸着量との差が0.080kg/kg以上に設定されている。このような第2吸着材31bは、相対蒸気圧が0.7〜0.95となる高湿度において、多くの水蒸気を吸着又は放出できる。即ち、第2吸着材31bは、高湿時において、相対蒸気圧が0.70よりも高くなれば、多くの水蒸気を吸着できる。また、第2吸着材31bは、相対蒸気圧が0.95よりも低くなると、多くの水蒸気が放出される。第2吸着材31bの吸放湿量を効果的に高めるために、25℃の環境下で、相対蒸気圧0.95での吸着量と相対蒸気圧0.70での吸着量との差が0.085kg/kg以上、さらに好ましくは、0.090kg/kg以上である。
第2吸着材31bとしては、上記性能を有するものであれば、適宜採用されうる。第2吸着材31bとしては、例えば、パルプ繊維又は珪藻土が用いられるのが望ましい。図2及び図4に示されるように、本実施形態の第2吸着材31bは、シート状に形成されたパルプ繊維として構成されている。本実施形態の第2吸着材31bは、正面視略矩形の形状を有しているが、このような態様に限定されない。
このように、本実施形態の第1吸着材31a及び第2吸着材31bは、それぞれ異なる相対蒸気圧において、より多くの水蒸気を吸着又は放出することができるように設定されている。このため、本実施形態の調湿材21は、低湿度から中湿度での調湿性能を、第1吸着材31aに主として発揮させうる。また、第1吸着材31aの調湿性能を十分に発揮できない高湿時においては、第2吸着材31bに調湿性能を主として発揮させうる。図6は、調湿材21の水蒸気の吸着量と相対蒸気圧との関係を示す平衡含水率曲線のグラフである。図6のグラフは、調湿材全重量(即ち、第1吸着材31aの重量及び第2吸着材31bの重量の総和)に対して、第1吸着材31a及び第2吸着材31bが50%ずつ含まれる調湿材21の平衡含水率曲線を示している。また、図6のグラフにおいて、水蒸気の吸着量は、25℃の環境下で測定されたものである。
図6に示されるように、第1吸着材31a及び第2吸着材31bを含む調湿材21は、広い範囲の相対蒸気圧において、調湿性能を発揮できる。しかも、調湿材21は、高湿時において調湿性能を発揮しうる第2吸着材31bを含んでいるため、冬季に比べて居室3の相対湿度が著しく高くなる夏季において、調湿性能を効果的に発揮しうる。
上記作用を効果的に発揮させるために、第1吸着材31aは、調湿材全重量(即ち、第1吸着材31aの重量及び第2吸着材31bの重量の総和)に対して20%〜80%含まれるのが望ましい。なお、第1吸着材31aが20%未満であると、調湿材21は、第1吸着材31aの含有量が小さくなり、低湿時及び中湿時において、調湿性能を十分に発揮できないおそれがある。逆に、第1吸着材31aが80%を超えると、調湿材21は、第2吸着材31bの割合が小さくなり、高湿時において、調湿性能を十分に発揮できないおそれがある。このような観点より、第1吸着材31aは、好ましくは、吸着材全重量に対して30%以上が望ましく、また、好ましくは70%以下である。
図4に示されるように、本実施形態の調湿材21において、第1吸着材31aは、第2吸着材31bに担持されるのが望ましい。これにより、調湿材21は、第1吸着材31a及び第2吸着材31bを一体として形成することができる。
また、第1吸着材31aは、第2吸着材31bの両方の表面のみならず、その内部にも多数配置され得る。本実施形態の第2吸着材31bは、第2吸着材31bの全域において、第1吸着材31aを満遍なく保持している。これにより、調湿材21は、第1吸着材31a及び第2吸着材31bに、調湿性能を効果的に発揮しうる。
図2、図3及び図4に示されるように、調湿材21は、その表面がケーシング27内の空気流れに沿うように、ケーシング27内に間隔をあけて複数配置されている。即ち、調湿材21(第2吸着材31b)の表面は、ケーシング27内の水平方向に沿って配置されており、かつ、調湿材21の平面と直角な方向に間隔をあけて複数配置されている。これにより、第1チャンバー5A及び第2チャンバー5Bは、ケーシング27内の空気との接触機会を高め、湿気交換面積を増大させ得る。従って、本実施形態の第1チャンバー5A及び第2チャンバー5Bは、第1吸着材31a及び第2吸着材31bの除湿機能及び放湿機能を最大限に高めることができる。本実施形態では、シート状に形成された調湿材21(第2吸着材31b)が複数配列されたが、このような態様に限定されない。例えば、ハニカム状又はオニ段状に加工された調湿材21(第2吸着材31b)が複数配列されてもよい。このような調湿材21(第2吸着材31b)は、湿気交換面積を増大させることができ、調湿性能を効果的に発揮しうる。
第1吸着材31aの吸放湿速度は、それを保持する担体(本実施形態では、第2吸着材31b)の熱容量の影響を受け、一般に、前記熱容量が小さいほど、吸放湿速度が向上することが判明している。その点に関し、本実施形態の第2吸着材31bは、その厚さT1(図4に示す)が小さいシート状に形成されているため、その熱容量を小さくすることができる。従って、本実施形態の第1チャンバー5A及び第2チャンバー5Bは、第1吸着材31aの吸放湿速度を高めることもできる。
このような作用を効果的に発揮させるために、第2吸着材31bの厚さT1については、0.5〜4.0mmが望ましい。なお、厚さT1が4.0mmを超えると、第1吸着材31aの吸放湿速度を十分に高くできないおそれがある。逆に、厚さT1が0.5mm未満であると、強度や耐久性が低下するおそれがある。
調湿材21の入口29側の端部21sは、入口29から空気流れに沿って距離L1を隔てた位置に設けられている。調湿材21の出口30側の端部21tは、出口30から空気流れに沿って距離L1を隔てた位置に設けられている。これにより、入口29から供給された空気は、各調湿材21の間の空隙に満遍なく供給され、かつ、出口30から取り出すことができるため、広い範囲で吸放湿を行うことができる。好ましい態様では、前記距離L1は、50〜200mm程度が好適である。
図1〜図3に示されるように、第1ダクト手段7は、例えば、筒状に形成されたダクトによって形成されている。第1ダクト手段7の一端側は、熱源チャンバー16に接続されている。第1ダクト手段7の途中には、切替具11(第1切替具11a)を介して分岐する第1分岐部33A及び第2分岐部33Bを含んでいる。第1分岐部33Aは、第1チャンバー5Aの一方の入口29a(図2に示す)に接続されている。第2分岐部33Bは、第2チャンバー5Bの一方の入口29a(図3に示す)に接続されている。
このような第1ダクト手段7は、空気調和機4から吹き出された相対湿度の高い冷却空気Acを、第1切替具11aを介して、第1チャンバー5A又は第2チャンバー5Bに供給することができる。これにより、冷却空気Acに含まれる水蒸気を、第1チャンバー5A又は第2チャンバー5Bに収容された調湿材21に、効率よく吸着させることができる。
また、本実施形態の第1ダクト手段7は、その一端側(熱源チャンバー16側)から他端側(チャンバー5側)にかけて、気密に保たれている。これにより、第1ダクト手段7は、他の空気と混合させることなく、冷却空気Acをチャンバー5に供給することができるため、冷却空気Acに含まれる水蒸気を、調湿材21に効果的に吸着することができる。冷却空気Acの相対湿度及び温度を維持するために、第1ダクト手段7には、断熱材(図示省略)で覆われるのが望ましい。
図1〜図3に示されるように、第2ダクト手段8は、例えば、筒状に形成されたダクトによって形成されている。本実施形態の第2ダクト手段8は、居室供給部34、第1分岐部35A及び第2分岐部35Bを含んでいる。
居室供給部34は、分岐チャンバー40を介して各居室3の入口3aに接続されている。この入口3aには、風量を調整可能なダンパー(図示省略)が設けられている。第1分岐部35A及び第2分岐部35Bは、分岐チャンバー40よりもチャンバー5側に設けられた切替具11(第2切替具11b)を介して分岐している。第1分岐部35Aは、第1チャンバー5Aの一方の出口30a(図2に示す)に接続されている。第2分岐部35Bは、第2チャンバー5Bの一方の出口30a(図3に示す)に接続されている。
このような第2ダクト手段8は、第1チャンバー5A内の空気又は第2チャンバー5B内の空気を、第2切替具11b及び分岐チャンバー40を介して、各居室3に供給することができる。
本実施形態の第2ダクト手段8は、その一端側(居室3側)から他端側(チャンバー5側)にかけて、気密に保たれているのが望ましい。これにより、第2ダクト手段8は、第1チャンバー5A又は第2チャンバー5B内の空気を、他の空気と混合させることなく、各居室3に供給することができる。また、第2ダクト手段8には、断熱材(図示省略)で覆われるのが望ましい。
図1〜図3に示されるように、第3ダクト手段9は、例えば、筒状に形成されたダクトによって形成されている。本実施形態の第3ダクト手段9の一端側は、小屋裏25に接続されている。第3ダクト手段9の途中には、切替具11(第3切替具11c)を介して分岐する第1分岐部36A及び第2分岐部36B含んでいる。第1分岐部36Aは、第1チャンバー5Aの他方の入口29b(図2に示す)に接続される。第2分岐部36Bは、第2チャンバー5Bの他方の入口29b(図3に示す)に接続されている。
このような第3ダクト手段9は、小屋裏の空気Aaを、第3切替具11cを介して、第1チャンバー5A又は第2チャンバー5Bに供給することができる。夏季において、小屋裏の空気Aaの温度は、居室3内の空気の温度や、建物外部の空気(以下、単に「外気」ということがある。)の温度に比べて高くなる。このような小屋裏の空気Aaは、居室3内の空気や外気に比べて相対湿度が低い。従って、第3ダクト手段9は、第1チャンバー5A又は第2チャンバー5Bに、相対湿度の低い空気を供給することができる。これにより、第1チャンバー5A又は第2チャンバー5Bの調湿材21は、吸着した水蒸気を放出することができる。
本実施形態の第3ダクト手段9は、その一端側(小屋裏25側)から他端側(チャンバー5側)にかけて、気密に保たれているのが望ましい。これにより、第3ダクト手段9は、相対湿度の低い空気(小屋裏の空気Aa)を、他の空気と混合させることなくチャンバー5に供給することができるため、調湿材21が吸着した水蒸気を、効果的に放出させることができる。小屋裏の空気Aaの相対湿度を維持するために、第3ダクト手段9には、断熱材(図示省略)で覆われるのが望ましい。
図1〜図3に示されるように、第4ダクト手段10は、例えば、筒状に形成されたダクトによって形成されている。本実施形態の第4ダクト手段10の一端側は、居室外28(本実施形態では、小屋裏25)に連通している。第4ダクト手段10の途中には、切替具11(第4切替具11d)を介して分岐する第1分岐部37A及び第2分岐部37Bを含んでいる。第1分岐部37Aは、第1チャンバー5Aの他方の出口30b(図2に示す)に接続されている。第2分岐部37Bは、第2チャンバー5Bの他方の出口30b(図3に示す)に接続されている。
このような第4ダクト手段10は、第1チャンバー5A又は第2チャンバー5B内の空気を、第4切替具11dを介して、居室外28に供給することができる。第4ダクト手段10には、第1分岐部37A及び第2分岐部37Bを負圧にするための排気用のファン41が設けられるのが望ましい。これにより、第1チャンバー5A又は第2チャンバー5B内の空気を、居室外28に効果的に供給することができる。
図1に示されるように、切替具11は、空気を切り替えて供給可能な切替弁として構成されている。切替具11は、第1切替具11a、第2切替具11b、第3切替具11c及び第4切替具11dを含んで構成されている。
第1切替具11aは、第1ダクト手段7の第1分岐部33A及び第2分岐部33Bを、択一的に切り替えるためのものである。第1切替具11aは、第1ダクト手段7の切り替えにより、空気調和機4から吹き出された(第1ダクト手段7からの)冷却空気Acを、第1チャンバー5A及び第2チャンバー5Bの一方を経由させて、第2ダクト手段8に供給することができる(除湿モード)。この除湿モードでは、冷却空気Acに含まれる水蒸気を、第1チャンバー5A又は第2チャンバー5Bに収容された調湿材21に効率よく吸着させることができる。
第2切替具11bは、第2ダクト手段8の第1分岐部35A及び第2分岐部35Bを、択一的に切り替えるためのものである。第2切替具11bは、第2ダクト手段8の第1分岐部35A及び第2分岐部35Bの一方に切り替えることにより、第1チャンバー5A及び第2チャンバー5Bの一方の空気を、居室3に供給することができる。本実施形態の第2切替具11bは、除湿された冷却空気Acが居室3に供給されるように、第2ダクト手段8の第1分岐部35A及び第2分岐部35Bの一方に切り替えられる。これにより、除湿された冷却空気Acを居室3に供給することができる。
第3切替具11cは、第3ダクト手段9の第1分岐部36A及び第2分岐部36Bを、択一的に切り替えるためのものである。第3切替具11cは、第3ダクト手段9の第1分岐部36A及び第2分岐部36Bの一方に切り替えることにより、小屋裏の空気(第3ダクト手段9からの空気)を、第1チャンバー5A又は第2チャンバー5Bの一方を経由させて、第4ダクト手段10に供給することができる(放湿モード)。この放湿モードでは、相対湿度の低い小屋裏の空気Aaが供給されることにより、第1チャンバー5A又は第2チャンバー5Bの調湿材21に吸着された水蒸気を放出させることができる。
第4切替具11dは、第4ダクト手段10の第1分岐部37A及び第2分岐部37Bを、択一的に切り替えるためのものである。第4切替具11dは、第4ダクト手段10の第1分岐部37A及び第2分岐部37Bの一方に切り替えることにより、第1チャンバー5A又は第2チャンバー5Bの一方の空気を、居室外28に供給することができる。本実施形態の第4切替具11dは、水蒸気が放出された相対湿度の高い空気(小屋裏の空気Aa)が居室外28に供給されるように、第4ダクト手段10の第1分岐部37A及び第2分岐部37Bの一方に切り替えられる。これにより、相対湿度が高い空気を、居室外28を介して、屋外に排出することができる。
このように、切替具11は、第1切替具11a、第2切替具11b、第3切替具11c及び第4切替具11dが適宜切り替えられることにより、第1チャンバー5A及び第2チャンバー5Bを、除湿モード又は放湿モードに切り替えて運転することができる。
制御装置12は、予め定められた処理手順に基づいて、空気調和機4、切替具11及びファン41を制御するためのものである。制御装置12は、CPU(中央演算装置)からなる演算部(図示省略)と、制御手順が予め記憶されている記憶部(図示省略)と、記憶部から制御手順を読み込む作業用メモリ(図示省略)とを含んで構成されている。
図7は、調湿システム1の処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理手順は、制御装置12(図1に示す)に記憶されている制御手順に基づいて実施される。
本実施形態の制御装置12は、計時を開始した後(ステップS1)、第1チャンバー5Aを除湿モードに切り替えるとともに(ステップS2)、第2チャンバー5Bを放湿モードに切り替える(ステップS3)。本実施形態のステップS2及びステップS3は、同時に実施されている。図8(a)は、除湿モードの第1チャンバー5A及び放湿モードの第2チャンバー5Bを示す図である。
ステップS2では、先ず、第1切替具11aの切り替えにより、第1チャンバー5Aと空気調和機4(図1に示す)とを、第1ダクト手段7の第1分岐部33Aを介して連通させる。また、ステップS2では、第2切替具11bの切り替えにより、第1チャンバー5Aと図1に示した分岐チャンバー40(居室3)とを、第2ダクト手段8の第1分岐部35Aを介して連通させている。これにより、ステップS2では、相対湿度が高い冷却空気Acを、第1チャンバー5Aに経由させて第2ダクト手段8に供給することができる(除湿モード)。
これにより、ステップS2では、冷却空気Acに含まれる水蒸気を、第1チャンバー5Aに収容された調湿材21に吸着させることができるため、冷却空気Acを除湿することができる。そして、ステップS2では、除湿された冷却空気Acが、第2ダクト手段8を介して、居室3(図1に示す)に供給される。これにより、本実施形態の調湿システム1は、冬季に比べて居室3の相対湿度が著しく高くなる夏季において、居室3を冷房しつつ効果的に除湿することができる。
ステップS3では、先ず、第3切替具11cの切り替えにより、第2チャンバー5Bと小屋裏25(図1に示す)とを、第3ダクト手段9の第2分岐部36Bを介して連通させる。また、ステップS3では、第4切替具11dの切り替えにより、第2チャンバー5Bと居室外28(図1に示す)とを、第4ダクト手段10の第2分岐部37Bを介して連通させる。これにより、ステップS3では、第3ダクト手段9からの空気(本実施形態では、小屋裏の空気)Aaを、第2チャンバー5Bを経由させて、第4ダクト手段10に供給することができる(放湿モード)。
これにより、ステップS3では、相対湿度の低い小屋裏の空気Aaが供給されることにより、調湿材21に吸着した水蒸気を放出させることができる。水蒸気が放出された空気(小屋裏の空気Aa)は、第4ダクト手段10を介して、居室外28(図1に示す)に供給される。そして、居室外28に供給された相対湿度の高い空気は、換気口(図示省略)等を介して、屋外に排出される。これにより、本実施形態の調湿システム1は、居室3の湿度や温度を高めることもない。
次に、本実施形態の調湿システム1は、制御装置12が、予め定められた時間が経過したか否かを判断し(ステップS4)、結果が否定的である場合(ステップS4で、「N」)、ステップS2及びS3をループする。従って、予め定められた時間が経過するまで、第1チャンバー5Aを除湿モードで運転される一方、第2チャンバー5Bを放湿モードで運転される。上記「時間」は、任意に設定しうるが、例えば、各チャンバー5A及び5Bに収容されている第1吸着材31a及び第2吸着材31b(図2に示す)の吸放湿性能等に基づいて、第1吸着材31a及び第2吸着材31bが、水蒸気を完全に放出するまでのぎりぎりの時間として設定することができる。
次に、ステップS4の結果が肯定的である場合(ステップS4で、「Y」)、制御装置12は、これまでの計時をリセットし(ステップS5)、新たな計時を開始する(ステップS6)。
次に、本実施形態の調湿システム1は、制御装置12が、第1チャンバー5Aを放湿モードに切り替えるとともに(ステップS7)、第2チャンバー5Bを除湿モードに切り替える(ステップS8)。本実施形態のステップS7及びステップS8は、同時に実施されている。図8(b)は、放湿モードの第1チャンバー5A及び除湿モードの第2チャンバー5Bを示す図である。
ステップS7では、先ず、第3切替具11cの切り替えにより、第1チャンバー5Aと小屋裏25(図1に示す)とを、第3ダクト手段9の第1分岐部36Aを介して連通させる。また、ステップS7では、第4切替具11dの切り替えにより、第1チャンバー5Aと居室外28(図1に示す)とを、第4ダクト手段10の第1分岐部37Aを介して連通させる。これにより、ステップS7では、第3ダクト手段9からの空気(本実施形態では、小屋裏の空気)Aaを、第1チャンバー5Aを経由させて、第4ダクト手段10に供給することができる(放湿モード)。
これにより、ステップS7では、ステップS2において水蒸気を吸着した調湿材21に、相対湿度の低い小屋裏の空気Aaが供給されるため、調湿材21に吸着した水蒸気を放出させることができる。そして、ステップS7では、水蒸気が放出された空気(小屋裏の空気Aa)が、第4ダクト手段10及び居室外28(図1に示す)を介して、屋外に排出される。
ステップS8では、先ず、第1切替具11aの切り替えにより、第2チャンバー5Bと空気調和機4(図1に示す)とを、第1ダクト手段7の第2分岐部33Bを介して連通させる。また、ステップS8では、第2切替具11bの切り替えにより、第2チャンバー5Bと図1に示した分岐チャンバー40(居室3)とを、第2ダクト手段8の第2分岐部35Bを介して連通させている。これにより、ステップS8では、相対湿度が高い冷却空気Acを、第2チャンバー5Bに経由させて第2ダクト手段8に供給することができる(除湿モード)。
これにより、ステップS8では、ステップS3において水蒸気が放出された調湿材21に、相対湿度の高い冷却空気Acが供給されるため、冷却空気Acに含まれる水蒸気を、調湿材21に効率よく吸着させることができる。そして、ステップS8では、除湿された冷却空気Acが、第2ダクト手段8を介して、居室3(図1に示す)に供給される。これにより、本実施形態の調湿システム1は、冬季に比べて居室3の相対湿度が著しく高くなる夏季において、居室3を冷房しつつ効果的に除湿することができる。
次に、本実施形態の調湿システム1は、制御装置12が、予め定められた前記時間が経過したか否かを判断し(ステップS9)、結果が否定的である場合(ステップS9で、「N」)、ステップS7及びS8をループする。従って、予め定められた時間が経過するまで、第1チャンバー5Aを放湿モードで運転される一方、第2チャンバー5Bを除湿モードで運転される。次に、ステップS9の結果が肯定的である場合(ステップS9で、「Y」)、制御装置12は、これまでの計時をリセットし(ステップS10)、新たな計時を開始する(ステップS1)。以後、ステップS2以降が繰り返される。
以上述べたように、本実施形態の調湿システム1では、第1チャンバー5Aと第2チャンバー5Bとは、常に、異なる運転モードとされる。従って、第1チャンバー5Aが除湿モードで運転されている間、第2チャンバー5Bは放湿モードで運転される。他方、第1チャンバー5Aが放湿モードで運転されている間、第2チャンバー5Bは除湿モードで運転される。従って、本実施形態の調湿システム1は、第1チャンバー5A又は第2チャンバー5Bのそれぞれにおいて、除湿モードと放湿モードとが交互に切り替えられることで、除湿された冷却空気Acが実質的に連続して居室3に供給されうる。
本実施形態では、夏季において、空調(冷房)及び除湿する調湿システム1が例示されたが、このような態様に限定されない。調湿システム1は、冬季において、空調(暖房)及び加湿してもよい。この場合、調湿システム1は、空気調和機4から吹き出された暖房された空気(以下、単に「暖房空気」ということがある。)をチャンバー5に供給し、チャンバー5内の調湿材21で水蒸気が放出された暖房空気を、居室3に供給されるのが望ましい。これにより、調湿システム1は、居室3を換気しながら、空調及び加湿することができる。
なお、この実施形態において、切替具11は、第1ダクト手段7からの暖房空気を、第1チャンバー5A及び第2チャンバー5Bの一方を経由させて第2ダクト手段8に供給する放湿モードと、第3ダクト手段9からの相対湿度が高い空気(外気等)を、第1チャンバー5A及び第2チャンバー5Bの他方を経由させて、第4ダクト手段10に供給する除湿モードとを切り替えるのが望ましい。
これまでの実施形態の第3ダクト手段9は、小屋裏の空気Aaをチャンバー5に供給するように構成される態様が例示されたが、このような態様に限定されない。夏季の夜間において、小屋裏の空気Aaの温度は、外気の温度に比べて低くなる。このため、小屋裏の空気Aaは、外気に比べて相対湿度が高くなる。このような場合、第1チャンバー5A又は第2チャンバー5Bには、相対湿度の低い外気を供給して、調湿材21に吸着された水蒸気を放出させるのが望ましい。図9は、本発明の他の実施形態の調湿システム1を示す部分拡大図である。この実施形態において、前実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態の第3ダクト手段9は、第1分岐部36A及び第2分岐部36Bに加えて、第3分岐部36C及び第4分岐部36Dをさらに含んでいる。第3分岐部36C及び第4分岐部36Dは、切替具11(第5切替具11e)によって、いずれかに択一的に切り替えられる。第3分岐部36Cは、小屋裏25に接続されている。第4分岐部36Dは、建物2の軒天井42を通して、建物外部の空気に連通している。
このような第3ダクト手段9は、第5切替具11eの切り替えにより、小屋裏の空気又は外気のいずれかを選択的に、チャンバー5に供給することができる。これにより、調湿システム1は、小屋裏の空気又は外気のうち、相対湿度が低い空気を、チャンバー5に供給することができるため、調湿材21に吸着された水蒸気を効果的に放出させることができる。なお、第5切替具11eの切り替えは、図1に示した制御装置12が、小屋裏25の温度及び外気の温度等を比較して実施されるのが望ましい。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
図1に示した調湿システムを有する建物を想定し、下記の仕様及び条件に基づいて、居室での温度及び相対蒸気圧(相対湿度)が、コンピュータを用いて計算された(実施例)。また、比較のために、上記特許文献1に基づいて、調湿材を収容したチャンバーを有さない建物を想定し、居室での温度及び相対蒸気圧(相対湿度)が、コンピュータを用いて計算された(比較例)。そして、実施例の居室の湿度と、比較例の居室の湿度とが比較された。仕様や条件は、次のとおりである。
外気(小屋裏の空気):
温度:35℃、相対蒸気圧:0.40
空気調和機の冷却空気:
温度:20℃、相対蒸気圧0.95、絶対湿度:13.95g/kg’
室内発湿量(2名想定):60g/h
調湿材:
寸法:0.25m×1.0m
第1吸着材:シリカゲル(JIS Z0701に規定のA形シリカゲル)
:500g/m2
第2吸着材:パルプ繊維:500g/m2
チャンバー:
寸法:0.25m×0.25m×1.4m
調湿材の配置枚数:26枚
内部の初期条件:
温度:27℃、相対蒸気圧:0.60
チャンバーの断熱材:
熱伝導率λ:0.028、厚さ:30mm
チャンバーへの冷却空気の風量(除湿モード):290m3/h
チャンバーへの外気の風量(放湿モード):100m3/h
第1チャンバー及び第2チャンバーの切替間隔(除湿モードと放湿モードとの切替間隔):60分
テスト結果を表1に示す
テストの結果、実施例での居室の相対蒸気圧は、比較例での居室の相対蒸気圧に比べて、0.11低くすることができた。しかも、実施例では、除湿モードと放湿モードとが交互に切り替えられたため、除湿された冷却空気が実質的に連続して居室に供給することができた。従って、実施例の調湿システムは、冷却空気を効果的に除湿し、居室に供給することができた。