JP2017222910A - 二方向性電磁鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】{100}<001>(±30°)の結晶方位の結晶粒の占める面積比率が50%以上であり、{110}<110>(±30°)結晶方位の結晶粒の占める面積比率が20%以上である二方向性電磁鋼板。
【選択図】図3
Description
このような磁気特性を実現するためには、鉄の磁化容易軸である<001>軸を使用磁界方向に集積させることが有効とされている。
これにより、一方向性電磁鋼板は、圧延方向に対して極めて高い磁気特性を示すことができる。このため、一方向性電磁鋼板は、巻き鉄心のような圧延方向にのみ磁束が流れる用途に適しており、有用な磁性材料として使用されている。
例えば、二方向性電磁鋼板は、クロス圧延による方法によって得られることが知られている(特許文献1)。この方法は、珪素鋼素材を一方向に冷間圧延した後、さらに、この冷間圧延方向と交差方向に冷間圧延を加え、その後、仕上げ焼鈍として、短時間焼鈍と900℃〜1300℃程度の高温焼鈍とを行う方法である。
しかし、仕上げ焼鈍前に交差圧延を行うことは、商業生産上、コイルの状態で幅方向に圧延しなければならず、特殊な装置が必要となる。
しかし、この手法では真空中で焼鈍しなければならず、やはり、特殊な装置が必要となる。
しかし、この手法では、浸炭によりセメンタイトが析出し、鉄損が劣位である。
なお、以下の説明において、打ち抜き加工時の寸法精度を「打ち抜き精度」と称する。また、曲げ加工時に占積率が低下しにくいことを、「曲げ加工性が良い」又は「曲げ加工性に優れる」と称する。
その結果、本発明者らは、主方位となる{100}<001>から±30度以内の結晶方位の結晶粒の占める面積比率が50%以上であり、副方位となる結晶の滑り面が板厚と平行な{110}<110>から±30度以内の結晶方位の結晶粒の面積比率が20%以上である集合組織を有する二方向性電磁鋼板とすることで、磁気特性に優れ、打ち抜き精度と曲げ加工性が飛躍的に向上することを知見した。
<2> 平均結晶粒径が150μm以下である<1>に記載の二方向性電磁鋼板。
<3> 質量%で、
C:0.0100%以下、
Si:2.00%以上4.00%以下、
Mn:0.5%以下、
Sb:0.2%以下、
Sn:0.2%以下、
Ni:0.5%以下、
Cu:0.5%以下、
Cr:0.5%以下、
P:0.3%以下、
及びAl:0.5%以下を含有し、並びに、残部としてFeおよび不純物元素を含有する<1>又は<2>に記載の二方向性電磁鋼板。
<4> {110}<001>方位に集積した結晶粒を有する一方向性電磁鋼板の圧延方向に対して直交する方向に、圧下率が20%〜50%となるように冷間圧延する冷間圧延工程と、
前記冷間圧延工程の後、700℃以上の温度域で焼鈍する焼鈍工程と、
を有する<1>〜<3>のいずれか1項に記載の二方向性電磁鋼板の製造方法。
<5> 前記焼鈍の温度域が、700℃〜1000℃である<4>に記載の二方向性電磁鋼板の製造方法。
なお、本明細書中において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
なお、{100}<001>(±30°)は、{100}<001>から±30度以内を表し、{110}<110>(±30°)は、{110}<110>から±30度以内を表す。
まず、本発明の二方向性電磁鋼板の有する{100}<001>から±30度以内の結晶方位の結晶粒、及び{110}<110>から±30度以内の結晶方位の結晶粒について、図面を用いて説明する。
このように、本発明の二方向性電磁鋼板は、主方位である{100}<001>近傍方位1と、副方位である{110}<110>近傍方位2との両者に結晶方位を有している点で、従来の二方向性電磁鋼板とは、異なるものである。
なお、以下の説明において、{100}<001>(±30°)の結晶方位の結晶粒の占める面積比率、及び{110}<110>(±30°)の結晶方位の結晶粒の占める面積比率は、それぞれ、「{100}<001>(±30°)の結晶粒の面積比率」、及び「{110}<110>(±30°)の結晶粒の面積比率」と称する場合がある。
本発明の二方向性電磁鋼板の結晶方位は、電子線後方散乱回折法(EBSD)を用いて観察する。結晶方位の{}内は圧延面の法線方向のミラー指数を示し、<>内は2次再結晶前の冷延における圧延方向と平行な方向をミラー指数で示している。
・測定装置:電子線後方散乱回折装置付き走査型電子顕微鏡(SEM−EBSD)
(SEMの型番「JSM−6400」(JEOL社製))
・ステップ間隔:10μm
・倍率:100倍
・測定対象:鋼板の圧延面の中心層
・測定領域:7500μm×7500μm
・測定結晶粒数:1000個
また、磁気特性及び打ち抜き精度と曲げ加工性の点で、{110}<110>(±30°)の結晶粒の面積比率は、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。上限は磁気特性の点で、49%以下であることがよい。
また、本発明の二方向性電磁鋼板が、螺旋巻き鉄心に適用された場合に、曲げ加工時の板厚減少が発生しにくいのは、r値(引張加工時における(幅減少量)/(板厚減少量))が高いことに起因していると本発明者らは考えている。{100}<001>のr値は{110}<110>のr値よりも低いことが知られている。本発明の二方向性電磁鋼板は、{100}<001>の他に{110}<110>も含まれていることから、従来の二方向性電磁鋼板よりもr値が高い、つまり板厚が減少しにくくなっていると考えられる。なお、{110}<110>方位粒が、例えば、螺旋巻き鉄心のような螺旋状等の曲げ加工に適していることは、特許3631523号公報で述べられている。
一方、平均結晶粒径の下限は特に限定されないが、平均結晶粒径が小さすぎると磁気特性が低くなるため、20μm以上にすることがよい。
試験片を板厚断面が観察できるように切断し、ナイタールエッチングにより粒界を腐食させて発現させる。その後、100個以上の結晶粒の結晶粒径を線分法により測定し、平均結晶粒径を求める。
一方、Siは、含有量が増え過ぎると、磁束密度が低下し、かつ、硬度の上昇を招いて、打ち抜き精度が低下しやすくなる。また、二方向性電磁鋼板の製造工程において、冷延等の作業性の低下、コスト高ともなり得るので、4.00%以下とすることがよい。
このような一方向性電磁鋼板としては、質量比で、C:0.0000%〜0.0030%、Si:2.00%〜4.00%、Mn:0.0%〜0.5%、Sb:0.0%〜0.2%、Sn:0.0%〜0.2%、Ni:0.0%〜0.5%、Cu:0.0%〜0.5%、Cr:0.0%〜0.5%、P:0.0%〜0.3%、及びAl:0.0%〜0.5%を含有する。そして、残部は、Feおよび不純物元素からなる鋼板である。
ここで、{110}<001>方位に集積した結晶粒を有する一方向性電磁鋼板を板厚方向に90度回転させると{110}<110>方位となる。この{110}<110>方位を冷間圧延(以下、「冷延」と称する場合がある)すると、剪断変形により{110}<110>が一部{100}<001>に方位変化する。
このとき、圧下率が20%未満の時は{100}<001>方位の発生量が少なく、二方向性電磁鋼板とならない。一方、圧下率が50%超のときは{110}<110>方位粒が磁気特性の低い{111}<110>に変化するため、磁気特性、打ち抜き精度が低下する。そのため、圧下率が20%〜50%となるように冷延することで、磁気特性、打ち抜き精度、及び曲げ加工性に優れた二方向性電磁鋼板が得られる。
このように、本発明の二方向性電磁鋼板の製造方法は、二次再結晶した一方向性電磁鋼板の幅方向に対する冷延が最大の特徴である。
なお、本発明の二方向性電磁鋼板を得る方法として、上記の製造方法を例に挙げて説明したが、この製造方法に限定されるものではない。{100}<001>(±30°)の結晶粒を50%以上有し、{110}<110>(±30°)の結晶粒を20%以上有する二方向性電磁鋼板が得られるのであれば、製造方法は特に限定されるものではない。
本発明の二方向性電磁鋼板は、鋼板面内に直交する二方向で優れた磁気特性を有し、優れた打ち抜き精度を有するため、例えば、ティース部とヨーク部とで磁束が流れる方向が直交している、モータの分割鉄心の材料として有用である。
まず、本発明の二方向性電磁鋼板を使用して、ティース部とヨーク部とを有する所定形状に打ち抜き、所定の枚数の打ち抜き部材(打ち抜き板)を作製する。打ち抜き部材は、ティース部とヨーク部とを有する所定の形状に打ち抜かれるときに、積層して一体化するための凹凸部が形成される。
次に、得られた打ち抜き部材の所定の枚数を組み合わせて積層され、かしめ加工される。かしめ加工により、各々の打ち抜き板に形成された凹凸部が機械的に相互に嵌め合わされて固定され、打ち抜き部材が一体化され、モータ鉄心が得られる。
まず、本発明の二方向性電磁鋼板を使用して、ティース部とヨーク部とを有する所定形状に打ち抜き、打ち抜き部材を作製する。打ち抜き部材は、ティース部を内側、ヨーク部を外側にして、螺旋状に曲げ加工を行い、積層される。
次に、螺旋状に積層された鉄心をかしめ加工する。かしめ加工により、各々の螺旋状に積層された鉄心が機械的に相互に嵌め合わされて固定され、一体化されたモータ鉄心が得られる。このようにして得られたモータ鉄心は、加工歪みを除くために焼鈍を行っても良い。
−主方位および副方位の確認−
本発明の二方向性電磁鋼板が、主方位および副方位を有することについて確認試験を行う。
まず、質量%で、C:0.0030%、Si:3.10%、Mn:0.1%、を含有する厚さ0.30mmの一方向性電磁鋼板の切板を準備する。次に、絶縁コーティングを水酸化ナトリウム水溶液で、フォルステライト皮膜を硫酸で除去する。しかる後に、絶縁コーティング、及びフォルステライト皮膜を除去した切板の幅方向に対して40%の圧下率で冷延を行う。その後、冷延板を窒素雰囲気中にて850℃で1秒焼鈍する。焼鈍終了後、鋼板を空冷する。
上記方法で得られる二方向性電磁鋼板の中心層を既述の測定条件により、EBSDにより観察を行う。
−圧下率および焼鈍条件の影響−
まず、質量%で、C:0.0002%、Si:3.09%を含有する0.30mmの一方向性電磁鋼板の切板を準備する。次に、水酸化ナトリウム水溶液で絶縁コーティングを除去し、硫酸でフォルステライト皮膜を除去する。その後に、絶縁コーティング、及びフォルステライト皮膜を除去した切板の幅方向に対して圧下率10%〜60%で冷延を行う。その後、窒素雰囲気中にて、冷延板を600℃〜1100℃の各温度条件で1秒間焼鈍する。焼鈍終了後、鋼板を空冷する。
上記方法で得られる二方向性電磁鋼板について、表1に示す中心層のEBSD観察、磁気特性、打ち抜き精度及び曲げ加工性の各評価を行う。
なお、EBSD観察は既述の方法により測定を行う。磁気特性はB50(T)(磁化力5000A/mにおける磁束密度)の測定を行う。
B50(T)は、二方向性電磁鋼板における長手方向(一方向性電磁鋼板における圧延方向)と幅方向(一方向性電磁鋼板における圧延方向に直交する方向に圧延した方向)との平均値である。
打ち抜き精度と曲げ加工性は下記操作方法により評価を行う。
内径100mm、外径120mmのリング状試料を打ち抜き、真円からの平均差(真円からのズレ)を求める。平均差が2μm以下であれば打ち抜き精度は良いと考える。
20mm幅×800mm長さの鋼板を作製し、内径200mm、外径240mmの曲げ加工を行う。その際の板厚変化量(%)を測定する。板厚変化量が6%以下であれば曲げ加工性は良いと考える。
また、表1に示すように、圧下率が低すぎると{100}<001>(±30°)の結晶粒の面積比率が少ない。圧下率が高すぎる、又は焼鈍温度が低すぎると、{100}<001>(±30°)の結晶粒の面積比率、及び{110}<110>(±30°)の結晶粒の面積比率が少ない。さらに、同じ圧下率であって、焼鈍温度が高い場合は、平均結晶粒径が大きくなる傾向がある。
−化学組成による影響−
まず、質量%で、表2に示す化学組成を有し、厚さ0.30mmの一方向性電磁鋼板(鋼板と表記)の切板を準備する。次に、水酸化ナトリウム水溶液で絶縁コーティングを除去し、硫酸でフォルステライト皮膜を除去する。その後に、絶縁コーティング、及びフォルステライト皮膜を除去した切板の幅方向に圧下率40%で冷延を行う。冷延板を850℃の各温度条件で1秒間焼鈍をし、空冷する。
上記方法で得られる二方向性電磁鋼板について、実施例2と同様の評価方法により、表3に示す中心層のEBSD観察、磁気特性、及び打ち抜き精度と曲げ加工性の各評価を行う。
しかし、成分の推奨範囲を外れると別の課題が発生する。鋼板No.3−9はCが多く、磁気時効を起こすためモータ鉄心への適用は不向きである。また、鋼板No.3−10はSiが多く、冷延時の作業性が低下するため、商業生産には向いていない。鋼板No.3−11はSi量が少なく、相変態をするため、一方向性電磁鋼板を商業的に生産するには不向きである。
Claims (5)
- {100}<001>(±30°)の結晶方位の結晶粒の占める面積比率が50%以上であり、{110}<110>(±30°)結晶方位の結晶粒の占める面積比率が20%以上である二方向性電磁鋼板。
- 平均結晶粒径が150μm以下である請求項1に記載の二方向性電磁鋼板。
- 質量%で、
C:0.0100%以下、
Si:2.00%以上4.00%以下、
Mn:0.5%以下、
Sb:0.2%以下、
Sn:0.2%以下、
Ni:0.5%以下、
Cu:0.5%以下、
Cr:0.5%以下、
P:0.3%以下、
及びAl:0.5%以下を含有し、並びに、残部としてFeおよび不純物元素を含有する請求項1又は2に記載の二方向性電磁鋼板。 - {110}<001>方位に集積した結晶粒を有する一方向性電磁鋼板の圧延方向に対して直交する方向に、圧下率が20%〜50%となるように冷間圧延する冷間圧延工程と、
前記冷間圧延工程の後、700℃以上の温度域で焼鈍する焼鈍工程と、
を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の二方向性電磁鋼板の製造方法。 - 前記焼鈍の温度域が、700℃〜1000℃である請求項4に記載の二方向性電磁鋼板の製造方法。
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