JP2017221136A - 緑化用マットの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コケ植物の脱落を防止することができる、コケ植物と人工芝とを混合した緑化用マットの製造方法を提供する。【解決手段】本発明の第1観点に係る緑化用マットは、以下の(1)〜(3)のステップを含む。(1)コケ植物を含まない基材と、前記基材の表面上に起立する芝葉を模した多数のパイルとを備える人工芝を用意するステップ。(2)前記基材の表面上において前記多数のパイル間に形成される養生空間に、コケ植物を配置するステップ。(3)前記養生空間内で、前記コケ植物を養生するステップ。【選択図】図2

Description

本発明は、緑化用マットの製造方法に関し、特に、コケ植物と人工芝とのハイブリッドタイプの緑化用マットの製造方法に関する。
昨今、ヒートアイランド対策や地球温暖化対策として、しばしば、敷地や建造物に一定以上の緑化面積を確保することが求められる。このとき、多くの場合、土地が限られることもあり、建造物の屋根や壁面等に植物が配置される。具体的には、壁面にヘチマやフウセンカズラ等の蔦植物をスノコ状に這わせたり、壁面にセダムや観葉植物を植え付けたり、屋根に芝やセダム、観葉植物、多肉植物、樹木等を配置したりすることが行われている。
しかしながら、上記に例示したような多くの植物は、維持管理に手間がかかる。例えば、一年草であれば、シーズンごとに植え込み、生育及び撤去を行わなければならない。多年草や常緑種でも、枯れた部分の植え替えが必要であり、多くの場合、頻繁に水やりや肥料やり、刈取りを行わなければならない。また、種子植物の場合には、風によって種子が飛散して周辺に自生することもあり、周辺の生態系を崩す可能性もある。さらに、根を這わせるために一定以上の深さの土壌が必要な植物では、建造物の耐荷重を考慮しなければならなくなる。
以上の問題を克服する植物として、近年、コケ植物が注目されている。コケ植物は乾燥しても仮死状態になるだけで枯れることがなく、水を与えれば再生するため、雨水だけでも維持することができる。また、コケ植物は、胞子で増殖し、空気中から水分を摂取するのみで細胞を維持するため、肥料も不要である。さらに、どこにでも生えている植物であるため、周辺の生態系への影響が少ない。その上、コケ植物は、土壌なしでも生育し、コンクリート等の無機質上でも腐食化のスピードが遅く、炭素固定化能力も高く、温室効果ガス削減にも非常に有用である。特許文献1,2には、コケ植物を用いた緑化用マットないしパネルが開示されている。
しかしながら、コケ植物は仮死状態に入ると、細胞内の葉緑体が見えにくくなり、黄味や茶色味を帯びた色に変色し、色味が落ちてしまう。この点、特許文献2では、コケ植物を担持したシートに人工芝の芝葉を植設することにより、人工芝で色味をカバーすることが開示されている。
特開2005−168370号公報 特開2003−250335号公報
しかしながら、コケ植物を担持したシートを用意した後、これに人工芝の芝葉を植設する方法では、芝葉の植設時にコケ植物がシートから脱落する虞がある。コケ植物は、不織布等の担持体に仮根を絡ませることにより固定されるが、特に仮根が十分に育つ前であれば、脱落の程度は大きい。なお、特許文献2では、コケ植物の脱落を防ぐために、コケ植物の表面に水溶性シートを接着する等した上で人工芝の芝葉を植設することが開示されている。しかしながら、これでは、水溶性シートをコケ植物の表面に取り付けるという煩雑で余分な手間が必要となる。
本発明は、コケ植物の脱落を防止することができる、コケ植物と人工芝とを混合した緑化用マットの製造方法を提供することにある。
本発明の第1観点に係る緑化用マットは、以下の(1)〜(3)のステップを含む。
(1)コケ植物を含まない基材と、前記基材の表面上に起立する芝葉を模した多数のパイルとを備える人工芝を用意するステップ。
(2)前記基材の表面上において前記多数のパイル間に形成される養生空間に、コケ植物を配置するステップ。
(3)前記養生空間内で、前記コケ植物を養生するステップ。
本発明の第2観点に係る緑化用マットは、第1観点に係る緑化用マットであって、上記(1)の前記人工芝を用意するステップは、以下の(1−1)及び(1−2)のステップを含む。
(1−1)前記基材を用意するステップ。
(1−2)前記基材を貫通するようにヤーンを前記基材にタフティングすることにより、前記パイルを形成するステップ。
本発明の第3観点に係る緑化用マットは、第1観点又は第2観点に係る緑化用マットであって、前記基材の表面における単位面積(1cm2)当たりの前記ヤーンの植設点の個数は、0.5個以上、2個以下である。
本発明の第4観点に係る緑化用マットは、第1観点から第3観点のいずれかに係る緑化用マットであって、前記ヤーンの植設点1つ当たりの前記パイルの繊度は、8000dtex以上、15000dtex以下である。
本発明の第5観点に係る緑化用マットは、第1観点から第4観点のいずれかに係る緑化用マットであって、前記基材の表面からの前記パイルの長さは、15mm以上、60mm以下である。
本発明の第6観点に係る緑化用マットは、第1観点から第5観点のいずれかに係る緑化用マットであって、以下の(4)のステップをさらに含む。
(4)前記養生空間に前記コケ植物を配置する前に、前記基材の裏面側に不織布シートを配置し、前記基材と前記不織布シートとを固定するステップ。
本発明の第7観点に係る緑化用マットは、第6観点に係る緑化用マットであって、上記(4)の前記基材と前記不織布シートとを固定するステップでは、前記基材の裏面に前記不織布シートの上面が直接接触するように、前記基材と前記不織布シートとが固定される。
本発明の第8観点に係る緑化用マットは、第1観点から第7観点のいずれかに係る緑化用マットであって、前記パイルは、ストレートパイルを含む。
本発明の第9観点に係る緑化用マットは、第1観点から第8観点のいずれかに係る緑化用マットであって、前記パイルは、捲縮パイルを含む。
本発明の第10観点に係る緑化用マットは、第1観点から第9観点のいずれかに係る緑化用マットであって、上記(2)の前記養生空間に前記コケ植物を配置するステップでは、繊維状物質と前記コケ植物とを混合したコケ植物混合体が配置される。
本発明の第1観点によれば、コケ植物と人工芝とのハイブリッドタイプの緑化用マットが提供される。ここでの緑化用マットは、以下の方法で製造される。すなわち、基材から起立する芝葉を模した多数のパイルを有する人工芝が用意される。ここでいう基材には、コケ植物は含まれない。その後、人工芝の基材上においてパイル間に形成される養生空間にコケ植物が投入され、育成される。すなわち、コケ植物を担持した担持体に後付けでパイルが植設される従来の方法(特許文献2)と異なり、パイルの取り付け工程でコケ植物が脱落することがない。また、コケ植物が人工芝のパイル間で育成されるため、コケ植物の仮根が人工芝に絡みつくように成長し、その結果、コケ植物が固定される。以上より、コケ植物の脱落が防止される。
第1実施形態に係る緑化用マットの斜視図。 第1実施形態に係る緑化用マットの側方断面図。 緑化用マットの製造工程を説明する図。 緑化用マットの製造工程を説明する別の図。 緑化用マットの製造工程を説明するさらに別の図。 第2実施形態に係る緑化用マットの側方断面図。
以下、図面を参照しつつ、本発明の幾つかの実施形態に係る緑化用マット及びその製造方法について説明する。
<1.第1実施形態>
<1−1.緑化用マットの構成>
本実施形態に係る緑化用マット1は、コケ植物と人工芝とのハイブリッドタイプの緑化用マットである。緑化用マット1は、ヒートアイランド対策や地球温暖化対策用の資材であり、典型的には、建造物の屋根や壁面等に設置される。しかしながら、その用途は限定されず、例えば、ガーデニングに用いることもできるし、道路の中央分離帯や道路脇等に設置することもできる。
図1に、緑化用マット1の斜視図を示し、図2に、緑化用マット1の側方断面図を示す。同図に示されるとおり、緑化用マット1は、コケ植物を含むコケ植物層52を備え、コケ植物を定着させる担持体として人工芝10のマットが使用されている。これにより、コケ植物により緑化を推進するとともに、コケ植物が仮死状態にある場合でも、コケ植物の色味を人工芝の色味でカバーすることができる。図3A〜図3Cは、緑化用マット1の製造及び育成工程を順に示す図である。図1及び図2は、コケ植物が十分に育成された後の緑化用マット1を示している。
人工芝10は、基材2と、基材2の表面2a上に起立する芝葉を模した多数のパイル3とを有する。基材2は、シート状に形成されており、パイル3は、基材2上に所定の間隔をあけて植設されている。本実施形態に係る基材2は、多層構造であり、より具体的には、硬質層21上に不織布シート層22を重ねた二層構造である。従って、不織布シート層22の上面が、基材2の表面2aを形成しており、硬質層21の下面が、基材2の裏面2bを形成している。硬質層21及び不織布シート層22の、これらの層21,22の重なり方向から見たサイズは、概ね一致する。なお、基材2には、コケ植物は含まれない。
硬質層21は、不織布シート層22に比べて硬質であり、薄いシート状であるものの、植設されるパイル3を支持できる程度の強度及び形態安定性を有する。また、硬質層21は、耐候性を備える材料から構成されることが好ましい。以上の観点から、硬質層21は、典型的には、ポリプロピレンやポリエチレン等の熱可塑性樹脂から構成され、本実施形態では、ポリプロピレン製の平織布として構成される。しかしながら、勿論、硬質層21は、綾織布として形成することもできるし、織物ではなく、編み地とすることもできるし、フィルム状の層とすることもできる。
一方、不織布シート層22は、薄いシート状であり、本実施形態では、PET(ポリエチレンテレフタレート)製であり、綿状に構成されている。不織布シート層22は、多孔質構造を有し、吸水性を有する。硬質層21と不織布シート層22とは、上下に重ねられ、互いに固定されている。本実施形態では、これらの層21,22には、これらの層21,22の重なり方向に針を突く加工(パンチング加工)が所定の間隔で施されている。その結果、不織布シート層22の繊維が硬質層21の織り目に絡まり、両層21,22が互いに接着されている。なお、基材2は、単層構造とすることができ、この場合、例えば、基材2から硬質層21を省略することもできるし、不織布シート層22を省略することもできる。なお、基材2が多層構造であったとしても、基材2から硬質層21を省略することもできるし、不織布シート層22を省略することもできる。この場合、基材2に適宜別の層を追加すればよい。
パイル3は、芝葉の外観を実現することができる限り、その形態及び材質は特に限定されず、典型的には樹脂製であり、本実施形態では、ポリエチレン製である。しかしながら、別の好ましい例としては、パイル3は、ポリプロピレン等の他の熱可塑性樹脂から形成することもできる。本実施形態に係るパイル3は、全てストレートヤーンから構成されるストレートパイルである。なお、パイル3は、モノフィラーから構成することもできるし、スプリットヤーンから構成することもできる。パイル3の色味は、芝葉の色、典型的には緑色である。
本実施形態では、パイル3は、タフティングマシンを用いてパイル3となるヤーンを基材2に縫い込むことにより形成され、基材2に対して固定されている。ヤーンは、基材2を上下方向に貫通しており、基材2の表面2aから突出しているとともに、基材2の裏面2bから露出している。なお、パイル3は、図1に示すとおり、基材2の表面2a上において、互いに平行な複数の列に沿ってタフティングされている。基材2上には、パイル3を構成するヤーンの植設点P1が格子の交点に対応する位置に並ぶように配列されている。各植設点P1からは、多数本のパイル3が起立している。
また、本実施形態では、基材2の裏面2b側、すなわち、硬質層21の下面側には、不織布シート層4が配置されている。不織布シート層4及び基材2の、これらの部位2,4の重なり方向から見たサイズは、概ね一致している。不織布シート層4は、本実施形態では、PET(ポリエチレンテレフタレート)製であり、綿状に構成されている。不織布シート層4も、不織布シート層22と同じく多孔質構造を有し、吸水性を有する。また、不織布シート層4も、薄いシート状であるが、不織布シート層22よりも厚みが大きい。
不織布シート層4と基材2とは、上下に重ねられ、互いに固定されている。本実施形態では、不織布シート層4と基材2とは、糸40により縫製されている。この糸40による縫製は、パイル3と干渉することがない位置に施されることが好ましい。本実施形態では、糸40の縫い目は、図1に示すように、パイル3がタフティングされる列と列との間において、これらの列に平行となるように形成されている。従って、これらの列に平行な側方断面図においては、本来であれば、パイル3と糸40とが同時に現れることはない。しかしながら、図2では、説明の便宜上、パイル3及び糸40の両方が示されており、糸40の位置が破線で示されている(図3B、図3C及び図4においても、同様である)。糸40は、図2に示すように、不織布シート層4の下面に沿って所定の長さだけ延び、その後、不織布シート層4及び基材2を貫通するように上方に向かい、基材2の表面2aに沿って所定の長さだけ延び、不織布シート層4及び基材2を貫通するように下方に向かう。そして、このような縫製のパターンが繰り返されることにより、不織布シート層4と基材2とが固定される。また、この縫製により、不織布シート層4が基材2の裏面2bに押し付けられるため、裏面2b上に露出しているパイル3を形成するヤーンが不織布シート層4と基材2との間にしっかりと挟み込まれる。その結果、パイル3の脱落が防止される。なお、不織布シート層4と基材2とを固定する方法は、縫製に限らず、例えば、適宜ピン止めを行ってもよいし、接着剤により接着してもよいし、パンチング加工により接着してもよい。ただし、不織布シート層4は、省略することもできる。
基材2の表面2a上において多数のパイル3間の空間は、コケ植物を養生するための養生空間S1となる。具体的には、本実施形態では、養生空間S1には、基盤層51と、基盤層51上に配置されるコケ植物層52とが形成されている。
基盤層51は、不織布シート層22上に配置され、バネ53と、バネ53を埋めるような態様で配置されるコケ養生材料54とにより構成される。コケ養生材料54は、バネ53内の空間にも入り込んでいる。バネ53は、細長い樹脂材料が三次元的にランダムに何度も折り曲げられた部材である。バネ53は、主としてコケ養生材料54からなる基盤層51の形状を維持する役割、すなわち、基盤層51の強度を保つ役割を果たす。なお、少なくともコケ植物が十分に成長した図1の状態においては、コケ養生材料54の中では全体的に、コケ植物の仮根がネットワークを形成しておいる。この意味で、基盤層51には、コケ養生材料54及びバネ53に絡みついたコケ植物の仮根も含まれる。また、本実施形態では、コケ養生材料54は、紙やおがくずのような吸水性のある繊維状の材料から構成され、これらの繊維状の材料には、糊も混ぜられている。従って、コケ養生材料54の層は、少なくとも図1の状態においては、概ね一体的にまとまった集合体を構成している。基盤層51は、一定の間隔を空けて配列されているパイル3に絡みつくように配置されるため、人工芝10に対して固定されている。また、コケ養生材料54には、コケの養生環境を整えるべく、繊維状の材料の他、珪藻土、ゼオライト粉末等の鉱物(コケ植物との相性の良いものが好ましい)、保水性ポリマー、粒状綿等の保水剤等を、適宜組み合わせて混合することができる。
コケ養生材料54を構成する材料は、上述した例に限られないが、水分を保持する能力があり、表面にコケ植物を定着させる能力があることが好ましい。また、コケ養生材料54を殆ど土壌とすることもできるが、主な材料としては、上記したような紙やおがくずのように、軽量の材料が選択されることが好ましい。また、バネ53の材料も、上述した基盤層51の強度を保つ役割を果たすことができる限り特に限定されず、好ましい例としては、ポリエチレン等の樹脂材料を挙げることができるが、その他、例えば、金属材料とすることもできる。
コケ植物層52は、コケ植物から構成され、コケ植物は、上述したとおり、基盤層51に仮根を張ることで基盤層51の上面に固定される。また、コケ植物は、仮根をパイル3に絡みつかせることでも、人工芝10のマットに対して固定される。また、パイル3は、コケ植物層52を保護する雨風除けとしても機能する。従って、コケ植物層52は、コケ植物が一定以上育成された後においては、基盤層51から剥がれて飛散し難く、緑化用マット1からの脱落が防止される。
なお、コケ植物層52が基盤層51から剥がれて飛散するのをさらに抑制すべく、コケ植物層52の上方から図示されないメッシュ状の薄板(以下、ネット部材)でコケ植物層52を覆ってもよい。このとき、パイル3は、ネット部材の開口から突出させるようにする。このネット部材は、例えば、ポリエチレン等の樹脂製とすることもできるし、金属製とすることもできる。ネット部材を使用する場合には、例えば、糸による縫製やピン止めの態様で、ネット部材を緑化用マット1のその他の部位に固定することが好ましい。
コケ植物層52を人工芝10のマットにしっかりと担持させる観点からは、基材2の表面2aからパイル3の先端までのパイル3の長さW1は、15mm≦W1≦60mmであることが好ましく、22mm≦W1≦55mmであることがより好ましい。また、かかる数値範囲が満たされる場合には、緑化用マット1の美観も向上する。なお、パイル3は、自重等により多少湾曲して傾斜するが、W1は、パイル3を直線状に起立させたときの基材2の表面2aからの長さである。
また、コケ植物層52をしっかりと担持し、緑化用マット1の美観を向上させる観点からは、基材2の表面2aにおける単位面積(1cm2)当たりの植設点P1の個数N1は、0.5個/cm2≦N1≦2個/cm2であることが好ましい。また、1つの植設点P1当たりのパイル3の繊度D1は、8000dtex≦D1であることが好ましく、10000dtex≦D1であることがさらに好ましい。また、D1≦15000dtexであることが好ましく、D1≦12000dtexであることがさらに好ましい。特に、8000dtex≦D1≦15000dtexであることが好ましく、10000dtex≦D1≦12000dtexであることがさらに好ましい。
コケ植物の種類は、特に限定されない。好ましい例としては、スナゴケ、ハイゴケ、ミズゴケ等が挙げられるが、これらの中では、特にスナゴケが好ましい。
不織布シート層4,22及びコケ養生材料54は、吸水性に富むため、コケ植物層52に安定的に水を供給し、コケ植物を育成するのに役立つ。これにより、水やりの回数を低減することができ、また、雨水だけでもコケ植物を育成することも可能となる。
<1−2.製造方法>
次に、上述した緑化用マット1の製造方法の一例について説明する。まず、人工芝10を製造する。具体的には、硬質層21となるポリプロピレン製の平織布を用意するとともに、不織布シート層22となる不織布シートを用意する。そして、これらの2枚のシートを重ね合わせた後、所定の間隔でパンチング加工を施し、両者を固定する。これにより、基材2が製造される。
また、パイル3を形成するためのヤーンを製造する。具体的には、パイル3を構成するための材料(以下、パイル材料という)、典型的には、緑色の着色剤が混合された樹脂材料を用意する。次に、パイル材料を押出機に投入し、所定の温度条件下で溶融押出し成形を行う。これにより、押出機の開口から、糸状のパイル材料が押し出される。このときの温度条件は、パイル材料の融点よりも高い温度、例えば、240℃とすることができる。続いて、押出機から押し出された糸状のパイル材料を水槽内で冷却固化し、この糸を一軸延伸加工する。一軸延伸加工の方法としては、ロール延伸法を用いることができる。さらにその後、熱水槽内で弛緩熱処理を行うことで、パイル材料からなるヤーンが製造される。弛緩熱処理後、ヤーンはボビンに巻き取られる。
ヤーンの製造後、ヤーンが巻き取られたボビンから繰出されるヤーンを、タフティングマシンを用いて基材2上に植設する。本実施形態では、基材2の不織布シート層22上にバネ53を敷き並べた後、バネ53と不織布シート層22とを熱溶着する。そして、ボビンを複数個用意し、各々から繰出される複数本のヤーンを一束に撚り合わせた後、この撚り合わされたヤーンをタフティングマシンにより、バネ53の載置された基材2に縫い付ける。このとき、ヤーンは基材2を上下方向に貫通し、基材2の表面2aから突出するヤーンのループが中央でカットされる。その結果、基材2上の1つの植設点P1からは、撚り合わされたヤーンの本数の2倍の本数のパイル3が起立することになる。このときの様子が、図3Aに示されている。
続いて、不織布シート層4となる不織布シートを用意し、図3Bに示すように、不織布シート層4と、パイル3の植設された基材2とを重ね合わせる。このとき、基材2の裏面2bと不織布シート層4とを対面させるようにする。そして、不織布シート層4の上面と基材2の裏面2bとがしっかりと直接接触するように、基材2と不織布シート層4とを糸40を縫い付けて固定する。このとき、糸40とパイル3とが干渉しないよう、パイル3の縫い目を避けるようにして縫製を行うことが好ましい。
次に、以上のようにして作成された人工芝10を、例えば、屋外の地面の上に敷く。このとき、パイル3が上を向くように配置する。
以上の状態で、コケ養生材料54とコケ植物の種苗とを混合したコケ植物混合体を用意する。この段階でのコケ植物混合体は、粉末状であり、コケ養生材料54とコケ植物とが均等に混合されている。そして、このコケ植物混合体を、図3Cに示すように、不織布シート層22上に形成される養生空間S1に散布する。このとき、水ポンプ及びエアーポンプを用いて、コケ植物混合体に水分を含ませながら、コケ植物混合体を基材2の表面2aに対し吹き付けるようにして撒くことが好ましい。こうして、養生空間S1内において、コケ植物混合体がバネ53及びパイル3間を埋めるような態様で充填される。
この後、水撒き、或いは雨水により定期的に水分を与えながら、コケ植物を養生空間S1内で養生すると、図1及び図2に示すようなコケ植物層52が形成される。コケ植物の育成期間は、育成環境にもよるが、1年以上育成することが好ましく、また、1年半程度育成することがより好ましい。この場合、10mm程度のコケ植物からなるコケ植物層52を形成することができる。コケ植物は、この育成期間に仮根をコケ養生材料54の中でネットワーク状に成長させ、コケ養生材料54に絡みつき、コケ養生材料54により形成された基盤層51の表面に定着する。また、仮根はパイル3にも絡まり、これによってもコケ植物が養生空間S1に定着する。
<2.第2実施形態>
次に、図4を参照しつつ、第2実施形態に係る緑化用マット101について説明する。第2実施形態に係る緑化用マット101は、第1実施形態に係る緑化用マット1と比べて、バネ53が省略されており、代わりに人工芝10が捲縮パイル3bを含む点において相違する。以下では、簡単のため、主として第1実施形態との差異について説明し、第1実施形態と共通の構成要素ついては、同様の符号を付して説明を省略する。
緑化用マット101では、各植設点P1から、ストレートパイル3aに加え、捲縮パイル3bが延びている。緑化用マット1の美観を向上させる観点からは、1つの植設点P1当たりのストレートパイル3aのみの繊度D2は、8000dtex≦D2であることが好ましく、10000dtex≦D2であることがさらに好ましい。また、D2≦15000dtexであることが好ましく、D2≦12000dtexであることがさらに好ましい。特に、8000dtex≦D2≦15000dtexであることが好ましく、10000dtex≦D2≦12000dtexであることがさらに好ましい。また、ストレートパイル3aと捲縮パイル3bとの混合比率は、適宜設定することができる。混合比率の好ましい例としては、捲縮パイルの重量/ストレートパイルの重量を、0.24以上、0.50以下とすることができる。従って、コケ植物層52をしっかりと担持し、また、緑化用マット1の美観を向上させる観点からは、1つの植設点P1当たりのパイル3a,3bの合計の繊度D3が、9920dtex≦D3であることが好ましく、12400dtex≦D3であることがさらに好ましい。また、D3≦22500dtexであることが好ましく、D3≦18000dtexであることがさらに好ましい。特に、9920dtex≦D3≦18000dtexであることが好ましく、12400dtex≦D3≦22500dtexであることがさらに好ましい。ストレートパイル3aは、モノフィラーから構成することもできるし、スプリットヤーンから構成することもできる。
ストレートパイル3aと同じく、捲縮パイル3bの材料は、芝葉の外観を実現することができる限り特に限定されない。ただし、捲縮パイル3bは、典型的には樹脂製であり、本実施形態では、ポリエチレン製である。また、別の好ましい例としては、ポリプロピレン等の他の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
捲縮パイル3bは、その名の通り、パイル3bの延びる方向に張力が加えられていない状態において縮れた形状を有する。基材2の表面2aから捲縮パイル3bの先端までの長さW1も、15mm≦W1≦60mmであることが好ましく、22mm≦W1≦55mmであることがより好ましい。なお、ここでいう捲縮パイル3bの長さW1は、捲縮パイル3bの先端を引っ張り、縮れを直線状に伸ばしたときの長さである。
本実施形態に係る緑化用マット101も、第1実施形態と概ね同様に製造することができる。第1実施形態及び第2実施形態に係る製造方法の主な相違点は、第2実施形態においては基材2にストレートヤーンに加え、捲縮ヤーンがタフティングされる点にある。捲縮ヤーンは、例えば、上述のヤーンの弛緩熱処理後、ボビンに巻き取られる前のストレートヤーンに対し、捲縮加工を施すことにより製造される。捲縮加工の方法としては、熱処理を行うもの等、様々なものが公知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。そして、ストレートヤーン及び捲縮ヤーンの製造後、これらが巻き取られたボビンから繰出されるヤーンを一束に撚り合わせた後、この撚り合わされたヤーンをタフティングマシンにより基材2に縫い付ける。このとき、基材2の上にバネ53を配置する工程は省略される。以後は、第1実施形態と同様の工程を経ることで、緑化用マット101が製造される。
捲縮パイル3bは、その縮れている性質により、コケ植物が仮根を絡ませ易く、コケ植物層52を担持する能力に優れる。また、同様に、コケ養生材料54から構成される基盤層51を基材2の表面2a上に固定するのにも優れる。
<3.変形例>
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
<3−1>
運動競技施設等に施工されるタイプの人工芝の多くも、基材にヤーンをタフティングすることにより形成される。このタイプの人工芝では、多くの場合、パイル上で激しいプレーが行われることが想定されるため、基材からパイルが抜け落ちるのを防止すべく、基材の裏面上にバッキング層が形成される。このようなバッキング層は、典型的には、基材の裏面全体において、SBRラテックス等のゴムから構成される透水性の低い接着材料が塗布され、固化させられることで形成される。
ところで、緑化用マット1,101においても、パイルが抜け落ちるのを防止すべく、同様のバッキング層を形成してもよい。ただし、緑化用マット1,101にバッキング層を形成する場合には、基材2の裏面2b上において、パイル3の縫い目が存在する部分のみにバッキング層を形成することが好ましい。不織布シート層4に保持されている水分をコケ植物に供給できるようにするためである。或いは、同様の目的から、基材2の裏面2b全体にバッキング層を形成した後、所定の間隔でバッキング層(及び基材)に対して穴あけ加工を施し、透水性を確保することが好ましい。
<3−2>
第2実施形態では、各植設点P1において、ストレートパイル3a及び捲縮パイル3bの両方が植設されていた。しかしながら、ストレートパイル3aのみの植設点P1と、捲縮パイル3bのみの植設点P1とが存在するように構成することもできる。或いは、ストレートパイル3aのみの植設点P1と、ストレートパイル3a及び捲縮パイル3bの両方が植設された植設点P1とが存在するように構成することもできる。或いは、捲縮パイル3bのみの植設点P1と、ストレートパイル3a及び捲縮パイル3bの両方が植設された植設点P1とが存在するように構成することもできる。そして、このような場合には、異なる種類の植設点P1を交互に配列することができる。また、緑化用マットにおいて、ストレートパイル3aを完全に省略して、捲縮パイル3bのみを使用することができる。
<3−3>
第1実施形態において、バネ53を省略してもよい。ただし、バネ53を省略する場合には、緑化用マット1の強度を保つべく、基材2の硬質層21は省略しないことが好ましい。また、第2実施形態において、捲縮パイル3bに加え、バネ53を含むように構成することもできる。
1 緑化用マット
10 人工芝
2 基材
2a 表面
2b 裏面
21 硬質層
22 不織布シート層
3 パイル
3a ストレートパイル
3b 捲縮パイル
4 不織布シート層
51 基盤層51
52 コケ植物層
53 バネ
54 コケ養生材料
S1 養生空間

Claims (10)

  1. 緑化用マットの製造方法であって、
    コケ植物を含まない基材と、前記基材の表面上に起立する芝葉を模した多数のパイルとを備える人工芝を用意するステップと、
    前記基材の表面上において前記多数のパイル間に形成される養生空間に、コケ植物を配置するステップと、
    前記養生空間内で、前記コケ植物を養生するステップと、
    を含む、
    緑化用マットの製造方法。
  2. 前記人工芝を用意するステップは、
    前記基材を用意するステップと、
    前記基材を貫通するようにヤーンを前記基材にタフティングすることにより、前記パイルを形成するステップと
    を含む、
    請求項1に記載の緑化用マットの製造方法。
  3. 前記基材の表面における単位面積(1cm2)当たりの前記ヤーンの植設点の個数は、0.5個以上、2個以下である、
    請求項1又は2に記載の緑化用マットの製造方法。
  4. 前記ヤーンの植設点1つ当たりの前記パイルの繊度は、8000dtex以上、15000dtex以下である、
    請求項1〜3のいずれかに記載の緑化用マットの製造方法。
  5. 前記基材の表面からの前記パイルの長さは、15mm以上、60mm以下である、
    請求項1〜4のいずれかに記載の緑化用マットの製造方法。
  6. 前記養生空間に前記コケ植物を配置する前に、前記基材の裏面側に不織布シートを配置し、前記基材と前記不織布シートとを固定するステップ
    をさらに含む、
    請求項1〜5のいずれかに記載の緑化用マットの製造方法。
  7. 前記基材と前記不織布シートとを固定するステップでは、前記基材の裏面に前記不織布シートの上面が直接接触するように、前記基材と前記不織布シートとが固定される、
    請求項6に記載の緑化用マットの製造方法。
  8. 前記パイルは、ストレートパイルを含む、
    請求項1〜7のいずれかに記載の緑化用マットの製造方法。
  9. 前記パイルは、捲縮パイルを含む、
    請求項1〜8のいずれかに記載の緑化用マットの製造方法。
  10. 前記養生空間に前記コケ植物を配置するステップでは、繊維状物質と前記コケ植物とを混合したコケ植物混合体が配置される、
    請求項1〜9のいずれかに記載の緑化用マットの製造方法。
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