本実施形態を以下に図面を参照して説明する。図面において、同一部分には同一の参照符号を付す。また、重複した説明は、必要に応じて行う。
1.第1の実施形態
以下に図1乃至図8を用いて、第1の実施形態に係る化学反応装置について説明する。
第1の実施形態に係る化学反応装置では、第1電極16、光起電力層15、および第2電極11を含む積層体10と、積層体10を収容する電解槽21と、積層体10に電気的に接続または遮断可能な外部電源32および電力需要部34と、で構成される。これにより、化学反応装置は、積層体10と外部電源32とを電気的に接続することで電解システムとして機能し、積層体10と電力需要部34とを電気的に接続することで太陽電池として機能し、積層体10と外部電源32および電力需要部34とを電気的に遮断することで人工光合成システムとして機能することができる。したがって、諸条件に応じて適宜動作する一体型の化学反応装置を提供することができる。以下に、第1の実施形態について詳説する。
1−1.第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態に係る化学反応装置の構成例を示す概略構成図である。なお、図1において、積層体10および電解槽21は、その断面構成を示している。
図1に示すように、第1の実施形態に係る化学反応装置は、積層体10、電解槽21、外部電源32、電力需要部34、スイッチング素子制御部41、および電解液制御部61を備える。
電解槽21は、その内部に積層体10を収容する。また、電解槽21は、積層体10を浸漬するように、その内部に電解液23を収容する。電解液23は、例えばH2Oを含む溶液である。このような溶液としては、任意の電解質を含むものが挙げられるが、H2Oの酸化反応を促進するものであることが望ましい。また、電解液23は、例えばCO2を含む溶液である。電解槽21の上面は、光透過率の高い例えばガラスまたはアクリルからなる窓部が設けられる。照射光は、電解槽21の上方から照射される。この照射光によって、積層体10は、酸化還元反応を行う。
また、電解槽21には、配管22が接続される。配管22は、電解槽21内に電解液23を注入する、または、電解槽21内から電解液23を排出する。
電解液制御部61は、電解槽21内の電解液23を制御する。より具体的には、電解液制御部61は、電解槽21内の電解液23の量を測定し、配管22による電解液23の注入および排出を制御する。これにより、電解液制御部61は、人工光合成システムおよび電解システムとして用いる場合に、十分な電解反応が起こるように電解槽21内を電解液23で充填させる。また、電解液制御部61は、太陽電池として用いる場合に、電解液23中に電気が流れないように電解槽21内から電解液23を排出して電解槽21内を空気で充填させる。
積層体10は、第1電極16、光起電力層15、第2電極11、第1触媒17、および第2触媒18を有する。積層体10は、平面に拡がる平板状であり、第2電極11を基材(基板)として順次形成される。なお、ここでは、光照射側を表面(上面)とし、光照射側の反対側を裏面(下面)として説明する。
第2電極11は、導電性を有する。また、第2電極11は、積層体41を支持し、その機械的強度を増すために設けられる。第2電極11は、例えばCu、Al、Ti、Ni、Fe、またはAg等の金属板、もしくはそれらを少なくとも1つ含む例えばSUSのような合金板で構成される。また、第2電極11は、導電性の樹脂等で構成されてもよい。また、第2電極11は、SiまたはGe等の半導体基板、イオン交換膜で構成されてもよい。
光起電力層15は、第2電極11上(表面上(上面上))に形成される。光起電力層15は、第1光起電力層12、第2光起電力層13、および第3光起電力層14で構成される。
第1光起電力層12、第2光起電力層13、および第3光起電力層14はそれぞれ、pin接合半導体を使用した太陽電池であり、光の吸収波長が異なる。これらを平面状に積層することで、光起電力層15は、太陽光の幅広い波長の光を吸収することができ、太陽光エネルギーをより効率良く利用することが可能となる。また、各光起電力層は、直列に接続されているため、高い開放電圧を得ることができる。
より具体的には、第1光起電力層12は、第2電極11上に形成され、例えば下部側から順に形成されたn型のアモルファスシリコン(a−Si)層、真性(intrinsic)のアモルファスシリコンゲルマニウム(a−SiGe)層、およびp型の微結晶シリコン(μc−Si)層で構成される。ここで、a−SiGe層は、700nm程度の長波長領域の光を吸収する層である。すなわち、第1光起電力層12は、長波長領域の光エネルギーによって、電荷分離が生じる。
また、第2光起電力層13は、第1光起電力層12上に形成され、例えば下部側から順に形成されたn型のa−Si層、真性(intrinsic)のa−SiGe層、およびp型のμc−Si層で構成される。ここで、a−SiGe層は、600nm程度の中間波長領域の光を吸収する層である。すなわち、第2光起電力層13は、中間波長領域の光エネルギーによって、電荷分離が生じる。
また、第3光起電力層14は、第2光起電力層13上に形成され、例えば下部側から順に形成されたn型のa−Si層、真性(intrinsic)のa−Si層、およびp型のμc−Si層で構成される。ここで、a−Si層は、400nm程度の短波長領域の光を吸収する層である。すなわち、第3光起電力層14は、短波長領域の光エネルギーによって、電荷分離が生じる。
このように、光起電力層15は、各波長領域の光によって電荷分離が生じる。すなわち、正孔が陽極側(表面側)に、電子が陰極側(裏面側)に分離する。これにより、光起電力層15は、起電力を発生させる。
第1電極16は、光起電力層15のp型半導体層(p型のμc−Si層)上に形成される。このため、第1電極16は、p型半導体層とオーミック接触が可能な材料で構成されることが望ましい。第1電極は、例えば、Ag、Au、Al、またはCu等の金属、もしくはそれらを少なくとも1つ含む合金で構成される。また、第1電極16は、ITO、ZnO、FTO、AZO、またはATO等の透明導電性酸化物で構成されてもよい。また、第1電極16は、例えば金属と透明導電性酸化物とが積層された構造、金属とその他導電性材料とが複合された構造、または透明導電性酸化物とその他導電性材料とが複合された構造で構成されてもよい。
また、本例において、照射光は、第1電極16を通過して光起電力層15に到達する。このため、光照射側(図面において上部側)に配置される第1電極16は、照射光に対して光透過性を有する。より具体的には、光照射側の第1電極16の光透過性は、照射光の照射量の少なくとも10%以上、より好ましくは30%以上であることが好ましい。または、第1電極16は、光を透過することができる開口部分を有する。すなわち、第1電極16の形状は、薄膜状に限らず、格子状、粒子状、またはワイヤー状であってもよい。開口率は、少なくとも10%以上、より好ましくは30%以上である。
なお、上記において、3つの光起電力層(第1光起電力層12、第2光起電力層13、および第3光起電力層14)の積層構造で構成される光起電力層15を例に説明したが、これに限らない。光起電力層15は、2つまたは4つ以上の光起電力層の積層構造から構成されてもよい。または、光起電力層の積層構造の代わりに、1つの光起電力層を用いてもよい。また、前述ではpin接合半導体を使用した太陽電池について説明したが、pn接合型半導体を使用した太陽電池であってもよい。また、半導体層として、SiおよびGeで構成される例を示したが、これに限らず、化合物半導体系、例えばGaAs、GaInP、AlGaInP、CdTe、CuInGaSeで構成されてもよい。さらに、単結晶、多結晶、アモルファス状の種々の形態を適用することができる。また、第1電極16および第2電極11は、光起電力層15の全面に設けられてもよいし、部分的に設けられてもよい。
第1触媒17は、第1電極16の上面上に形成される。第1触媒17は、第1電極16の表面付近における化学反応性(酸化反応性)を高めるために設けられる。電解液23として水溶液、すなわち、H2Oを含む溶液を用いた場合、第1電極16はH2Oを酸化してO2とH+を生成する。このため、第1触媒17は、H2Oを酸化するための活性化エネルギーを減少させる材料で構成される。言い換えると、H2Oを酸化してO2とH+を生成する際の過電圧を低下させる材料で構成される。このような材料として、酸化マンガン(Mn−O)、酸化イリジウム(Ir−O)、酸化ニッケル(Ni−O)、酸化コバルト(Co−O)、酸化鉄(Fe−O)、酸化スズ(Sn−O)、酸化インジウム(In−O)、または酸化ルテニウム(Ru−O)等の二元系金属酸化物、Ni−Co−O、Ni−Fe−O、La−Co−O、Ni−La−O、Sr−Fe−O等の三元系金属酸化物、Pb−Ru−Ir−O、La−Sr−Co−O等の四元系金属酸化物、もしくは、Ru錯体またはFe錯体等の金属錯体が挙げられる。また、第1触媒17の形状としては、薄膜状に限らず、格子状、粒子状、またはワイヤー状であってもよい。また、第1電極16にある金属と透明導電性酸化物とが積層された構造における金属部、または金属とその他導電性材料とが複合された構造における金属部に触媒性能を設けてもよい。また、電極金属自体が触媒性能を有してもよい。これにより、構造を簡略化することができる。
第2触媒18は、第2電極11の下面上に形成される。第2触媒18は、第2電極11の裏面付近における化学反応性(還元反応性)を高めるために設けられる。電解液23としてCO2を含む溶液を用いた場合、CO2を還元して炭素化合物(例えば、CO、HCOOH、CH4、CH3OH、C2H5OH、C2H4)等を生成する。このため、第2触媒18は、CO2を還元するための活性化エネルギーを減少させる材料で構成される。言い換えると、CO2を還元して炭素化合物を生成する際の過電圧を低下させる材料で構成される。このような材料として、Au、Ag、Cu、Pt、C、Ni、Zn、C、グラフェン、CNT(carbon nanotube)、フラーレン、ケッチェンブラック、またはPd等の金属、もしくは、それらを少なくとも1つ含む合金、あるいは、Ru錯体またはRe錯体等の金属錯体が挙げられる。また、電解液23としてCO2を含まない水溶液、すなわち、CO2を含まないH2Oを用いた場合、H2Oを還元してH2を生成する。このため、第2触媒18は、H2Oを還元するための活性化エネルギーを減少させる材料で構成される。言い換えると、H2Oを還元してH2を生成する際の過電圧を低下させる材料で構成される。このような材料として、Ni、Fe、Pt、Ti、Au、Ag、Zn、Pd、Ga、Mn、Cd、C、グラフェンといった金属もしくはそれらを少なくとも一つ含む合金が挙げられる。また、第2触媒18の形状としては、薄膜状に限らず、格子状、粒子状、ワイヤー状であってもよい。
なお、光起電力層15の積層構造を反対にし、第1触媒17および第2触媒18による第1電極16および第2電極11の過電圧の低下作用を逆転させてもよい。
外部電源32は、第1電極16と第2電極11との間に、第1スイッチング素子31を介して電気的に接続される。言い換えると、外部電源32と第1電極16または第2電極11との間に、第1スイッチング素子31が形成される。そして、第1スイッチング素子31をオンにすることで、第1電極16と第2電極11とは外部電源32を介して電気的に接続される。一方、第1スイッチング素子31をオフにすることで、第1電極16と第2電極11とは外部電源32を介して電気的に遮断される。また、外部電源32の陽極側に第1電極16が接続され、陰極側に第2電極11が接続される。詳細は後述するが、余剰電力がある場合において、外部電源32は、第1電極16および第2電極11に電力を供給する。
電力需要部34は、第1電極16と第2電極11との間に、第2スイッチング素子33を介して電気的に接続される。また、電力需要部34は、外部電源32とは並列に接続される。言い換えると、電力需要部34と第1電極16または第2電極11との間に、第2スイッチング素子33が形成される。そして、第2スイッチング素子33をオンにすることで、第1電極16と第2電極11とは電力需要部34を介して電気的に接続される。一方、第1スイッチング素子31をオフにすることで、第1電極16と第2電極11とは電力需要部34を介して電気的に遮断される。詳細は後述するが、余剰電力がない場合において、電力需要部34に光起電力層15から電力が供給される。電力需要部34は、例えば電力を溜める蓄電池、または電力を消費する領域である。
スイッチング素子制御部41は、電力需要部34の需要を越える余剰電力の有無および太陽光エネルギーの有無等の条件に応じて、第1スイッチング素子31および第2スイッチング素子33のオン/オフを制御する。
より具体的には、スイッチング素子制御部41は、余剰電力がある場合であって、太陽光エネルギーがある場合、第1スイッチング素子31および第2スイッチング素子33をオフにする。これにより、第1電極16と第2電極11とが光起電力層15のみを介して電気的に接続される。その結果、光起電力層15による起電力によって第1電極16および第2電極11において電解が行われて化学エネルギーが生成される。すなわち、化学反応装置は、人工光合成システムとして機能する。
一方、スイッチング素子制御部41は、余剰電力がある場合であって、太陽光エネルギーがない場合、第2スイッチング素子33をオフにし、第1スイッチング素子31をオンにする。これにより、第1電極16と第2電極11とが外部電源32を介して電気的に接続される。その結果、外部電源32による起電力によって第1電極16および第2電極11において電解が行われて化学エネルギーが生成される。すなわち、化学反応装置は、電解システムとして機能する。
また、スイッチング素子制御部41は、余剰電力がない場合、第1スイッチング素子31をオフにし、第2スイッチング素子32をオンにする。これにより、光起電力層15と電力需要部34とが電気的に接続される。その結果、光起電力層15による起電力によって電力需要部34に電力が供給される。すなわち、化学反応装置は、太陽電池として機能する。
1−2.第1の実施形態の動作
図2は、第1の実施形態に係る化学反応装置の人工光合成システム動作を示す図である。人工光合成システムは、主に余剰電力がある場合であって、太陽光エネルギーがある場合に用いられる。
図2に示すように、人工光合成システムとして用いる場合、スイッチング素子制御部41は、第1スイッチング素子31および第2スイッチング素子33をオフにする。これにより、第1電極16と第2電極11とが外部電源32を介して電気的に遮断される。また、第1電極16と第2電極11とが電力需要部34を介して電気的に遮断される。
また、電解液制御部61は、第1電極16および第2電極11が電解液23に浸漬されるように、電解槽21内の電解液23の量を制御する。これにより、電解槽21内に配管22を介して電解液23が注入され、電解槽21内は電解液23で充填される。なお、電解槽21内が電解液23で充填されなくてもよく、少なくとも第1電極16および第2電極11の一部が電解液23に浸漬されていればよい。
この状態で上方から光が照射されると、照射光は第1電極16を通過し、光起電力層15に到達する。光起電力層15は、光を吸収すると、電子およびそれと対になる正孔を生成し、それらを分離する。すなわち、各光起電力層(第1光起電力層12、第2光起電力層13、および第3光起電力層14)において、n型の半導体層側(第2電極11側)に電子が移動し、p型の半導体層側(第1電極16側)に電子の対として発生した正孔が移動し、電荷分離が生じる。これにより、光起電力層15に起電力が発生する。
光起電力層15内で発生し、陰極側の電極である第2電極11に移動した電子は、第2電極11の裏面付近(第2触媒18付近)における還元反応に使用される。一方、光起電力層15内で発生し、陽極側の電極である第1電極16に移動した正孔は、第1電極16の表面付近(第1触媒17付近)における酸化反応に使用される。より具体的には、電解液23に接する第1電極16の表面付近では(1)式、第2電極11の裏面付近では(2)式の反応が生じる。
2H2O → 4H++O2+4e− ・・・(1)
2CO2+4H++4e− → 2CO+2H2O ・・・(2)
(1)式に示すように、第1電極16の表面付近において、H2Oが酸化されて(電子を失い)酸素(O2)と水素イオン(H+)が生成される。そして、第1電極16側で生成されたH+は、第2電極11側に移動する。
(2)式に示すように、第2電極11の裏面付近において、CO2と移動したH+とが反応し、一酸化炭素(CO)とH2Oが生成される。すなわち、CO2が還元される(電子を得る)。
このとき、光起電力層15は、第1電極16で生じる酸化反応の標準酸化還元電位と第2電極11で生じる還元反応の標準酸化還元電位との電位差以上の開放電圧を有する必要がある。例えば、(1)式における酸化反応の標準酸化還元電位は1.23[V]であり、(2)式における還元反応の標準酸化還元電位は−0.1[V]である。このため、光起電力層15の開放電圧は、1.33[V]以上の必要がある。なお、より好ましくは、開放電圧は過電圧を含めた電位差以上の必要がある。より具体的には、例えば(1)式における酸化反応および(2)式における還元反応の過電圧がそれぞれ0.2[V]である場合、開放電圧は1.73[V]以上であることが望ましい。
なお、(2)式に示すCO2からCOへの還元反応だけでなく、CO2からHCOOH、CH4、C2H4、CH3OH、C2H5OH等への還元反応も生じさせることが可能である。また、第2溶液82に用いたH2Oの還元反応も生じさせることが可能であり、H2の発生も可能である。また、溶液中の水分(H2O)量を変えることによって、生成されるCO2の還元物質を変えることができる。例えば、HCOOH、CH4、CH3OH、C2H5OH、またはH2等の生成割合を変えることができる。
このように、人工光合成システムでは、太陽光エネルギーによって光起電力層15に起電力が生じ、この起電力によって酸化還元反応(電解反応)が起こり、化学エネルギーが生成される。すなわち、太陽光エネルギーを化学エネルギーに変換することができる。
図3は、第1の実施形態に係る化学反応装置の電解システム動作を示す図である。電解システムは、主に余剰電力がある場合であって、太陽光エネルギーがない場合に用いられる。例えば、電解システムは、夜間に用いられ得る。
図3に示すように、電解システムとして用いる場合、スイッチング素子制御部41は、第1スイッチング素子31をオンにする。これにより、第1電極16と第2電極11とが外部電源32を介して電気的に接続される。一方、スイッチング素子制御部41は、第2スイッチング素子33をオフにする。これにより、第1電極16と第2電極11とが電力需要部34を介して電気的に遮断される。
また、電解液制御部61は、第1電極16および第2電極11が電解液23に浸漬されるように、電解槽21内の電解液23の量を制御する。これにより、電解槽21内に配管22を介して電解液23が注入され、電解槽21内は電解液23で充填される。なお、電解槽21内が電解液23で充填されなくてもよく、少なくとも第1電極16および第2電極11の一部が電解液23に浸漬されていればよい。
この状態で外部電源32に起電力が発生すると、外部電源32の陽極側に接続された第1電極16側に正孔が移動する。一方、外部電極32の陰極側に接続された第2電極11側に電子が移動する。陰極側の電極である第2電極11に移動した電子は、第2電極11の裏面付近における還元反応に使用される。一方、光起電力層15内で発生し、陽極側の電極である第1電極16に移動した正孔は、第1電極16の表面付近における酸化反応に使用される。より具体的には、電解液23に接する第1電極16の表面付近では(1)式、第2電極11の裏面付近では(2)式の反応が生じる。
(1)式に示すように、第1電極16の表面付近において、H2Oが酸化されて(電子を失い)O2と水素イオン(H+)が生成される。そして、第1電極16側で生成されたH+は、第2電極11側に移動する。
(2)式に示すように、第2電極11の裏面付近において、CO2と移動したH+とが反応し、COとH2Oが生成される。すなわち、CO2が還元される(電子を得る)。
このとき、光起電力層15は、第1電極16で生じる酸化反応の標準酸化還元電位と第2電極11で生じる還元反応の標準酸化還元電位との電位差以上の開放電圧を有する必要がある。例えば、(1)式における酸化反応の標準酸化還元電位は1.23[V]であり、(2)式における還元反応の標準酸化還元電位は−0.1[V]である。このため、光起電力層15の開放電圧は、1.33[V]以上の必要がある。なお、より好ましくは、開放電圧は過電圧を含めた電位差以上の必要がある。より具体的には、例えば(1)式における酸化反応および(2)式における還元反応の過電圧がそれぞれ0.2[V]である場合、開放電圧は1.73[V]以上であることが望ましい。
なお、(2)式に示すCO2からCOへの還元反応だけでなく、CO2からHCOOH、CH4、C2H4、CH3OH、C2H5OH等への還元反応も生じさせることが可能である。また、電解液23に用いたH2Oの還元反応も生じさせることが可能であり、H2の発生も可能である。また、溶液中の水分(H2O)量を変えることによって、生成されるCO2の還元物質を変えることができる。例えば、HCOOH、CH4、CH3OH、C2H5OH、またはH2等の生成割合を変えることができる。
また、光起電力層15を構成する半導体層が有するダイオード特性により、半導体層の構成の向きに応じて流れる電流が少なくてもよい。
このように、電解システムでは、余剰電力の電気エネルギーによって外部電源32に起電力が生じ、この起電力によって酸化還元反応(電解反応)が起こり、化学エネルギーが生成される。すなわち、電気エネルギーを化学エネルギーに変換することができる。
図4は、第1の実施形態に係る化学反応装置の太陽電池動作を示す図である。図5は、第1の実施形態に係る化学反応装置の太陽電池動作の変形例を示す図である。太陽電池は、主に余剰電力がない場合に用いられる。
図4に示すように、太陽電池として用いる場合、スイッチング素子制御部41は、第1スイッチング素子31をオフにする。これにより、第1電極16と第2電極11とが外部電源32を介して電気的に遮断される。一方、スイッチング素子制御部41は、第2スイッチング素子33をオンにする。これにより、第1電極16と第2電極11とが電力需要部34を介して電気的に接続される。
このとき、第1電極16と第2電極11との間において、電解液23を介してイオンの移動は起こらないほうがよい。すなわち、電解液23を介して電流が流れないほうがよい。これは、光起電力層15による発電と同時に電力需要部34に放電するためである。このため、電解液制御部61は、第1電極16および第2電極11が電解液23に浸漬されないように、電解槽21内の電解液23の量を制御する。これにより、電解槽21内から配管22を介して電解液23が排出され、電解槽21内は空気で充填される。
なお、電解槽21内が空気で充填されなくてもよく、少なくとも第1電極16および第2電極11の一部が電解液23に浸漬されていなければよい。このとき、図5に示すように、上述した人工光合成システムまたは電解システムによって生成された気体(例えばO2等)で電解槽21内の一部を充填させてもよい。この場合、配管22を介して、電解槽21内から電解液23を排出する必要はない。すなわち、配管22に備えられるポンプ等を用いる必要がなく、エネルギーロスを少なくすることができる。また、この場合、第1電極16を重力とは反対側に配置することが必要である。
また、配管22を介して、配管22に接続される電解液貯蓄タンクに排出された電解液23を貯蓄してもよい。また、電解槽21内は空気でなく、非導電性の液体で充填されてもよい。
この状態で上方から光が照射されると、照射光は第1電極16を通過し、光起電力層15に到達する。光起電力層15は、光を吸収すると、電子およびそれと対になる正孔を生成し、それらを分離する。すなわち、各光起電力層(第1光起電力層12、第2光起電力層13、および第3光起電力層14)において、n型の半導体層側(第2電極11側)に電子が移動し、p型の半導体層側(第1電極16側)に電子の対として発生した正孔が移動し、電荷分離が生じる。これにより、光起電力層15に起電力が発生する。この光起電力層15によって発生した起電力によって、電力需要部34に電力を供給することができる。
このように、太陽電池では、太陽光エネルギーによって光起電力層15に起電力が生じ、この起電力によって電気エネルギーが生成される。すなわち、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
図6は、第1の実施形態に係る化学反応装置における動作を示すフローチャートである。
図6に示すように、まず、ステップS1において、化学反応装置は、電力需要部34の需要を越える余剰電力があるか否かを確認する。
ステップS1において余剰電力がない場合、ステップS2において化学反応装置は太陽電池として機能する。より具体的には、余剰電力がない場合、スイッチング素子制御部41は、第1スイッチング素子31をオフにし、第2スイッチング素子32をオンにする。これにより、光起電力層15と電力需要部34とが電気的に接続され、光起電力層15による起電力によって電力需要部34に電力が供給される。
ステップS1において余剰電力がある場合、ステップS3において化学反応装置は太陽光エネルギーがあるか否かを確認する。
ステップS3において太陽光エネルギーがない場合、ステップS4において化学反応装置は電解システムとして機能する。より具体的には、太陽光エネルギーがない場合、スイッチング素子制御部41は、第2スイッチング素子33をオフにし、第1スイッチング素子31をオンにする。これにより、第1電極16と第2電極11とが外部電源32を介して電気的に接続され、外部電源32による起電力によって第1電極16および第2電極11において電解が行われて化学エネルギーが生成される。
ステップS3において太陽光エネルギーがある場合、ステップS5において化学反応装置は人工光合成システムとして機能する。より具体的には、太陽光エネルギーがある場合、スイッチング素子制御部41は、第1スイッチング素子31および第2スイッチング素子33をオフにする。これにより、第1電極16と第2電極11とが光起電力層15のみを介して電気的に接続され、光起電力層15による起電力によって第1電極16および第2電極11において電解が行われて化学エネルギーが生成される。
このように、化学反応装置は、諸条件に応じて人口光合成システム、太陽電池、および電解システムとして適宜動作する。
1−3.第1の実施形態の効果
上記第1の実施形態によれば、化学反応装置は、第1電極16、光起電力層15、および第2電極11を含む積層体10と、積層体10を収容する電解槽21と、積層体10に電気的に接続または遮断可能な外部電源32および電力需要部34と、で構成される。すなわち、積層体10と外部電源32との接続、および積層体10と電力需要部34との接続は切り替え可能である。また、外部電源32および電力需要部34のいずれにも積層体10を電気的に接続しない(遮断する)ことも可能である。
これにより、積層体10と外部電源32とを電気的に接続することで、化学反応装置を電解システムとして機能させることができる。また、積層体10と電力需要部34とを電気的に接続することで、化学反応装置を太陽電池として機能させることができる。さらに、積層体10と、外部電源32および電力需要部34と、を電気的に遮断することで、化学反応装置を人工光合成システムとして機能させることができる。これらの接続は、余剰電力の有無および太陽光エネルギーの有無によって決定される。
すなわち、第1の実施形態によれば、余剰電力の有無および太陽光エネルギーの有無等の諸条件に応じて、エネルギー変換効率が高くなるように、人工光合成システム、太陽電池、または電解システムとして適宜動作する一体型の化学反応装置を提供することができる。
1−4.第1の実施形態の変形例
図7は、第1の実施形態に係る化学反応装置の第1の変形例の構成を示す概略構成図である。
図7に示すように、第1の実施形態に係る化学反応装置の第1の変形例では、第2電極11が電解槽21を第1電解槽25と第2電解槽26とに物理的に分離する。
第1電解槽25は、第1電極16の表面(第1触媒17)を浸漬するように、その内部に第1電解液23aを収容する。第1電解液23aは、例えばH2Oを含む溶液である。このような溶液としては、任意の電解質を含むものが挙げられるが、H2Oの酸化反応を促進するものであることが望ましい。第1電解槽25の上面は、光透過率の高い例えばガラスまたはアクリルからなる窓部が設けられる。照射光は、第1電解槽25の上方から照射される。
また、第1電解槽25には、配管22aが接続される。配管22aは、第1電解槽25内に第1電解液23aを注入する、または、第1電解槽25内から第1電解液23aを排出する。
第2電解槽26は、第2電極11の裏面(第2触媒18)を浸漬するように、その内部に第2電解液23bを収容する。第2電解液23bは、例えばCO2を含む溶液である。第2電解液23bは、CO2の吸収率が高いことが望ましく、H2Oを含む溶液として、NaHCO3、KHCO3の水溶液が挙げられる。また、第1電解液23aと第2電解液23bとは同じ溶液でもよいが、第2電解液23bはCO2の吸収量が高いほうが好ましいため、第1電解液23aと第2電解液23bとは別の溶液を用いてもよい。また、第2電解液23bは、CO2の還元電位を低下させ、イオン伝導性が高く、CO2を吸収するCO2吸収剤を有することが望ましい。このような電解液として、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオン等の陽イオンと、BF4−またはPF6−等の陰イオンとの塩からなり、幅広い温度範囲で液体状態であるイオン液体もしくはその水溶液が挙げられる。または、電解液として、エタノールアミン、イミダゾール、またはピリジン等のアミン溶液もしくはその水溶液が挙げられる。アミンは、一級アミン、二級アミン、または三級アミンのいずれでもかまわない。一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、またはヘキシルアミン等が挙げられる。アミンの炭化水素は、アルコールやハロゲン等が置換していてもかまわない。アミンの炭化水素が置換されたものとしては、例えば、メタノールアミン、エタノールアミン、またはクロロメチルアミン等が挙げられる。また、不飽和結合が存在していてもかまわない。これら炭化水素は、二級アミン、三級アミンも同様である。二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、またはジプロパノールアミン等が挙げられる。置換した炭化水素は、異なってもかまわない。これは、三級アミンでも同様である。例えば、炭化水素が異なるものとしては、メチルエチルアミン、またはメチルプロピルアミン等が挙げられる。三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリエキサノールアミン、メチルジエチルアミン、またはメチルジプロピルアミン等が挙げられる。イオン液体の陽イオンとしては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾールイオン、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムイオン、または1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムイオン等が挙げられる。また、イミダゾリウムイオンの2位が置換されていてもよい。イミダゾリウムイオンの2位が置換されたものとしては、例えば、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−ペンチルイミダゾリウムイオン、または1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン等が挙げられる。ピリジニウムイオンとしては、メチルピリジニウム、エチルピリジニウム、プロピルピリジニウム、ブチルピリジニウム、ペンチルピリジニウム、またはヘキシルピリジニウム等が挙げられる。イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオンはともに、アルキル基が置換されてもよく、不飽和結合が存在してもよい。アニオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、BF4−、PF6−、CF3COO−、CF3SO3−、NO3−、SCN−、(CF3SO2)3C−、ビス(トリフルオロメトキシスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメトキシスルホニル)イミド、またはビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド等が挙げられる。また、イオン液体のカチオンとアニオンとを炭化水素で連結した双生イオンでもよい。
また、第2電解槽26には、配管22bが接続される。配管22bは、第2電解槽26内に第2電解液23bを注入する、または、第2電解槽26内から第2電解液23bを排出する。
電解液制御部61は、第1電解槽25内の第1電解液23aおよび第2電解槽26内の第2電解液23bを制御する。より具体的には、電解液制御部61は、第1電解槽25内の第1電解液23aおよび第2電解槽26内の第2電解液23bの量を測定し、配管22aによる第1電解液23aおよび配管22bによる第2電解液23bの注入および排出を制御する。これにより、電解液制御部61は、人工光合成システムおよび電解システムとして用いる場合に、十分な電解反応が起こるように第1電解槽25内を第1電解液23aで充填させ、第2電解槽26内を第2電解液23bで充填させる。また、電解液制御部61は、太陽電池として用いる場合に、第1電解液23aまたは第2電解液23b中に電気が流れないように、第1電解槽25内から第1電解液23aまたは第2電解槽26内から第2電解液23bを排出して第1電解槽25内または第2電解槽26内を空気で充填させる。
第2電極11は、電解槽21を第1電解槽25と第2電解槽26とに物理的に分離する。第2電極11の裏面は、第2電解槽26側に配置され、第2電解槽26に収容される。このとき、第2電極11の表面は第1電解槽25側に配置されるが、第2電極11の表面に図示せぬ絶縁層を形成することで第2電極11と第1電解液22aとを電気的に絶縁させてこれらの反応を抑制することができる。また、第1電解液22aを非導電性の液体または気体に置き換えることで反応を抑制させてもよい。
また、第2電極11は、その露出部分にイオン移動経路を有する。イオン移動経路は、例えばその表面から裏面まで貫通する複数の細孔である。細孔は、第1電解槽25における第1電極16の酸化反応により生成されたイオン(例えばHイオン(H+))のみを選択的に第2電解槽26に通過させる。細孔を通過したイオンは、第2電解槽26の第2電極11で還元反応によりO2、H2、または有機化合物等に変換される。
また、細孔は、イオンが通過する大きさであればよい。例えば、細孔の直径(円相当径)の下限は、0.3nm以上であることが好ましい。また、複数の細孔の総面積S1とイオン透過部材21aの面積S2との面積比S1/S2は、機械強度を損なわないように、0.9以下、好ましくは0.6以下である。また、細孔の形状は円形状に限らず、楕円形状、三角形状、または四角形状であってもよい。細孔の配置構成は四角格子状に限らず、三角格子状、ランダムであってもよい。また、細孔にイオン交換膜19を充填してもよい。イオン交換膜としては、例えばナフィオンまたはフレミオンのようなカチオン交換膜、ネオセプタまたはセレミオンのようなアニオン交換膜が挙げられる。また、細孔にガラスフィルタや寒天を充填してもよい。
なお、第2電極11は、細孔の代わりに、その表面から裏面まで貫通し、かつイオン交換膜19が充填された複数のスリットを有してもよい。スリットは、第1電解槽25における第1電極16の酸化反応により生成されたイオン(例えばHイオン(H+))のみを選択的に第2電解槽26に通過させる。
また、イオン移動経路にポンプを設けることで、イオンの移動を促進させてもよい。
また、イオン移動流路に弁を設けることで、電解槽(第1電解槽25および第2電解槽26)毎に電解液が充填される状態と、電解液で充填されない(空気で充填される)状態とを構成することができる。
第1の変形例では、電解槽21を第1電解槽25と第2電解槽26とに分離することにより、各電解槽において反応しやすい異なる電解液(第1電解液23aおよび第2電解液23b)を充填することができる。また、電解槽21を第1電解槽25と第2電解槽26とに分離することにより、第1電解槽25側で酸化反応が行われ、第2電解槽26側で還元反応が行われる。その結果、酸化反応による生成物(例えばO2)を第1電解槽25で回収し、還元反応による生成物(例えばCO)を第2電解槽26で回収することができる。すなわち、酸化反応よる生成物と還元反応による生成物を分離して回収することができる。
さらに、電解システムとして使用する際と人工光合成システムとして使用する際とで、第1電解槽25および第2電解槽26内の電解液を変えて異なる反応を起こすことができる。これにより、光強度や余剰電力量などによって異なる反応電流密度に対して、最適な反応を起こすことができる。
図8は、第1の実施形態に係る化学反応装置の第2の変形例の構成を示す概略構成図である。
図8に示すように、第1の実施形態に係る化学反応装置の第2の変形例では、第1電極16と第2電極11との間に、センサ部42,43が電気的に接続される。
センサ部42は、第1電極16と第2電極11との間に、スイッチング素子31および外部電源32を介して電気的に接続される。言い換えると、センサ部42と第1電極16または第2電極11との間に、第1スイッチング素子31が形成される。そして、第1スイッチング素子31をオンにすることで、第1電極16と第2電極11とは外部電源32およびセンサ部42を介して電気的に接続される。一方、第1スイッチング素子31をオフにすることで、第1電極16と第2電極11とは外部電源32およびセンサ部42を介して電気的に遮断される。すなわち、化学反応装置が主に電解システムとして用いられる場合に、センサ部42が機能する。
センサ部43は、第1電極16と第2電極11との間に、第3スイッチング素子35を介して電気的に接続される。言い換えると、センサ部43と第1電極16または第2電極11との間に、第3スイッチング素子35が形成される。そして、第3スイッチング素子35をオンにすることで、第1電極16と第2電極11とはセンサ部43を介して電気的に接続される。一方、第3スイッチング素子35をオフにすることで、第1電極16と第2電極11とはセンサ部43を介して電気的に遮断される。すなわち、化学反応装置が主に人工光合成システムとして用いられる場合に、センサ部43が機能する。
センサ部42は、例えば電解システムの場合に外部電源32の起電力を利用し、電解液23と第1電極16および第2電極11との反応によって得られる電気信号を捉える。これにより、センサ部42は、電解システムの場合において、電解液23のpH、電解液23の濃度、電解液23の組成、電解槽21内の圧力、電解槽21内の温度、および光の強度等を測定する。
センサ部43は、例えば人工光合成システムの場合に光起電力層15の起電力を利用し、電解液23と第1電極16および第2電極11との反応によって得られる電気信号を捉える。これにより、センサ部43は、人工光合成システムの場合において、電解液23のpH、電解液23の濃度、電解液23の組成、電解槽21内の圧力、電解槽21内の温度、および光の強度等を測定する。センサ部43は、光起電力層15の起電力を利用するものであるため、電源レスで動作することができる。
なお、人工光合成システムとして用いる場合に、光強度が弱くて光起電力層15の起電力によってセンサ43が機能しないことが考えらえる。この場合、一時的に外部電源32によってセンサ部42を機能させて、種々の要件を測定してもよい。一方、電解システムとして用いる場合も同様である。すなわち、電解システムとして用いる場合に、一時的に光起電力層15の起電力によってセンサ部43を機能させて、種々の要件を測定してもよい。
特に、センサ部42,43は、反応によって光を発生するもの、光によって反応が起こるもの、および光によって反応が変化するようなものに適している。なお、光は可視光に限らず、光起電力層15に作用する電磁波、または放射線であってもよい。センサ部42,43は、電気信号を捉えることにより、反応による光の吸収の変化または反応により発生する光および放射線等に応じた電解液23の状況(pH、濃度、および組成)および反応の進行具合を検知することも可能である。
第2の変形例では、センサ部42,43により、電解液23のpH、電解液23の濃度、電解液23の組成、電解槽21内の圧力、電解槽21内の温度、および光の強度等を測定する。これにより、電解反応を促進させるための電解液23および電解槽21の状況を適宜調整することができる。
なお、その他の変形例として、以下の構成を適用してもよい。
人工光合成システムにおける光起電力層15による起電力によって、光エネルギーを物質の還元体として蓄えてもよい。言い換えると、光エネルギーによって、物質を還元し、その還元された物質を還元エネルギーとして蓄えてもよい。ここで、還元体とは、還元力を有するものを示す。言い換えると、還元体とは、自身が酸化されて電子を失い、その電子を他の物質に与えて他の物質を還元するものを示す。光エネルギーを還元エネルギーに変換する例としては、光エネルギーによる鉄の3価イオン(Fe3+)から2価イオン(Fe2+)への変換、光エネルギーによるヨウ素の1価イオン(I−)から3価イオン(I3−)への変換等が挙げられる。また、還元体としてH+を蓄えてもよい。
このように、人工光合成システムで得られた還元体を電解システムにおける外部電源32による起電力によって、さらに還元してもよい。これにより、よりエネルギー密度の高い還元体に変換させることができる。
また、人工光合成システムで得られた還元体を酸化させて元に戻す反応を行うことによって、還元エネルギーから電気エネルギーを得てもよい。すなわち、蓄電機能を有する人工光合成システムとなる。また、通常の電池のように、電解質にリチウムのような化合物を用いて、電極間との相互作用によって蓄電機能を備えることもできる。
また、燃料電池として用いることも可能である。より具体的には、光エネルギーによって、水を分解して水素と酸素を生成する。この得られた酸素と水素によって少なくとも1つの電極を共有することで、水素と酸素とで水を生成する。これにより、電力を得ることができる。すなわち、人工光合成システムに燃料電池を一体化させることができる。なお、通常の燃料電池のように電解槽21内に流路を設けることで、反応の効率を向上させることができる。また、固体高分子形燃料電池に用いられる固体高分子膜が、第1電極16と第2電極11の間に形成されてもよい。さらに、このときの発電に伴う熱、または太陽光によって暖められた電解質の熱を利用媒体としてもよい。熱の利用媒体としては、電解質に限らず、他の熱媒体を第2電極11上または電解液23中の図示せぬ銅配管上に設けることで用いてもよい。
2.第2の実施形態
以下に図9乃至図15を用いて、第2の実施形態に係る化学反応装置について説明する。
第2の実施形態に係る化学反応装置では、電解槽21内に、第1電極16、光起電力層15、および第2電極11を含む積層体10だけでなく、第2電極11に離間して対向する第3電極51が配置される。そして、第2電極11と第3電極51との間に外部電源32を電気的に接続し、第2電極11、第3電極51、および外部電源32によって電解システムとして機能することができる。以下に、第2の実施形態について詳説する。
なお、第2の実施形態において、上記第1の実施形態と同様の点については適宜説明を省略し、主に異なる点について説明する。
2−1.第2の実施形態の構成
図9は、第2の実施形態に係る化学反応装置の構成例を示す概略構成図である。なお、図9において、積層体10、第3電極51、および電解槽21は、その断面構成を示している。
図9に示すように、第2の実施形態に係る化学反応装置において、第1の実施形態と異なる点は、第1電極16および第2電極11だけではなく、第3電極51が設けられる点である。
第3電極51は、電解槽21内に収容され、第2電極11に対して光照射側とは反対側に離間し、かつ対向して配置される。第3電極51は、例えばCu、Al、Ti、Ni、Fe、またはAg等の金属板、もしくはそれらを少なくとも1つ含む例えばSUSのような合金板で構成される。また、第3電極51は、導電性の樹脂等で構成されてもよい。また、第3電極51は、SiまたはGe等の半導体基板で構成されてもよい。
第3電極51は、光照射側とは反対側に配置されるため、光透過性および形状等において特に制限はない。
また、第3電極51の表面上に、図示せぬ第3触媒が形成されてもよい。第3触媒は、第3電極51の表面付近における化学反応性(酸化反応性)を高めるために設けられる。電解液23として水溶液、すなわち、H2Oを含む溶液を用いた場合、第3電極51はH2Oを酸化してO2とH+を生成する。このため、第3触媒は、H2Oを酸化するための活性化エネルギーを減少させる材料で構成される。言い換えると、H2Oを酸化してO2とH+を生成する際の過電圧を低下させる材料で構成される。このような材料として、Mn−O、Ir−O、Ni−O、Co−O、Fe−O、Sn−O、In−O、またはRu−O等の二元系金属酸化物、Ni−Co−O、Ni−Fe−O、La−Co−O、Ni−La−O、Sr−Fe−O等の三元系金属酸化物、Pb−Ru−Ir−O、La−Sr−Co−O等の四元系金属酸化物、もしくは、Ru錯体またはFe錯体等の金属錯体が挙げられる。また、第3触媒の形状としては、薄膜状に限らず、格子状、粒子状、またはワイヤー状であってもよい。
外部電源32は、第2電極11と第3電極51との間に、第1スイッチング素子31を介して電気的に接続される。言い換えると、外部電源32と第2電極11または第3電極51との間に、第1スイッチング素子31が形成される。そして、第1スイッチング素子31をオンにすることで、第2電極11と第3電極51とは外部電源32を介して電気的に接続される。一方、第1スイッチング素子31をオフにすることで、第2電極11と第3電極51とは外部電源32を介して電気的に遮断される。また、外部電源32の陽極側に第3電極51が接続され、陰極側に第2電極11が接続される。詳細は後述するが、余剰電力がある場合において、外部電源32は、第2電極11および第3電極51に電力を供給する。
スイッチング素子制御部41は、電力需要部34の需要を越える余剰電力の有無および太陽光エネルギーの有無等の条件に応じて、第1スイッチング素子31および第2スイッチング素子33のオン/オフを制御する。
より具体的には、スイッチング素子制御部41は、余剰電力がある場合であって、太陽光エネルギーがある場合、第1スイッチング素子31および第2スイッチング素子33をオフにする。これにより、第1電極16と第2電極11とが光起電力層15のみを介して電気的に接続される。その結果、光起電力層15による起電力によって第1電極16および第2電極11において電解が行われて化学エネルギーが生成される。すなわち、化学反応装置は、人工光合成システムとして機能する。
一方、スイッチング素子制御部41は、余剰電力がある場合であって、太陽光エネルギーがない場合、第2スイッチング素子33をオフにし、第1スイッチング素子31をオンにする。これにより、第2電極11と第3電極51とが外部電源32を介して電気的に接続される。その結果、外部電源32による起電力によって第2電極11および第3電極51において電解が行われて化学エネルギーが生成される。すなわち、化学反応装置は、電解システムとして機能する。
また、スイッチング素子制御部41は、余剰電力がない場合、第1スイッチング素子31をオフにし、第2スイッチング素子32をオンにする。これにより、光起電力層15と電力需要部34とが電気的に接続される。その結果、光起電力層15による起電力によって電力需要部34に電力が供給される。すなわち、化学反応装置は、太陽電池として機能する。
2−2.第2の実施形態の動作
図10は、第2の実施形態に係る化学反応装置の人工光合成システム動作を示す図である。人工光合成システムは、主に余剰電力がある場合であって、太陽光エネルギーがある場合に用いられる。
図10に示すように、人工光合成システムとして用いる場合、スイッチング素子制御部41は、第1スイッチング素子31および第2スイッチング素子33をオフにする。これにより、第2電極11と第3電極51とが外部電源32を介して電気的に遮断される。また、第1電極16と第2電極11とが電力需要部34を介して電気的に遮断される。
また、電解液制御部61は、第1電極16および第2電極11が電解液23に浸漬されるように、電解槽21内の電解液23の量を制御する。これにより、電解槽21内に配管22を介して電解液23が注入され、電解槽21内は電解液23で充填される。なお、電解槽21内が電解液23で充填されなくてもよく、少なくとも第1電極16および第2電極11の一部が電解液23に浸漬されていればよい。
この状態で上方から光が照射されると、上記第1の実施形態と同様の反応が生じる。すなわち、電解液23に接する第1電極16の表面付近では(1)式、第2電極11の裏面付近では(2)式の反応が生じる。
(1)式に示すように、第1電極16の表面付近において、H2Oが酸化されて(電子を失い)O2とH+が生成される。そして、第1電極16側で生成されたH+は、第2電極11側に移動する。
(2)式に示すように、第2電極11の裏面付近において、CO2と移動したH+とが反応し、COとH2Oが生成される。すなわち、CO2が還元される(電子を得る)。
このように、人工光合成システムでは、太陽光エネルギーによって光起電力層15に起電力が生じ、この起電力によって第1電極16の表面および第2電極11の裏面において酸化還元反応(電解反応)が起こり、化学エネルギーが生成される。すなわち、太陽光エネルギーを化学エネルギーに変換することができる。
図11は、第2の実施形態に係る化学反応装置の電解システム動作を示す図である。電解システムは、主に余剰電力がある場合であって、太陽光エネルギーがない場合に用いられる。例えば、電解システムは、夜間に用いられ得る。
図11に示すように、電解システムとして用いる場合、スイッチング素子制御部41は、第1スイッチング素子31をオンにする。これにより、第2電極11と第3電極51とが外部電源32を介して電気的に接続される。一方、スイッチング素子制御部41は、第2スイッチング素子33をオフにする。これにより、第1電極16と第2電極11とが電力需要部34を介して電気的に遮断される。
また、電解液制御部61は、第2電極11および第3電極51が電解液23に浸漬されるように、電解槽21内の電解液23の量を制御する。これにより、電解槽21内に配管22を介して電解液23が注入され、電解槽21内は電解液23で充填される。なお、電解槽21内が電解液23で充填されなくてもよく、少なくとも第2電極11および第3電極51の一部が電解液23に浸漬されていればよい。
この状態で外部電源32に起電力が発生すると、外部電源32の陽極側に接続された第3電極51側に正孔が移動する。一方、外部電極32の陰極側に接続された第2電極11側に電子が移動する。陰極側の電極である第2電極11に移動した電子は、第2電極11の裏面付近における還元反応に使用される。一方、光起電力層15内で発生し、陽極側の電極である第3電極51に移動した正孔は、第3電極51の表面付近における酸化反応に使用される。より具体的には、電解液23に接する第3電極51の表面付近では(1)式、第2電極11の裏面付近では(2)式の反応が生じる。
(1)式に示すように、第3電極51の表面付近において、H2Oが酸化されて(電子を失い)O2)とH+が生成される。そして、第3電極51側で生成されたH+は、第2電極11側に移動する。
このとき、第3電極51と第2電極11とは、互いに対向して形成されるため、その距離は比較的小さい。このため、第3電極51から第2電極11へとH+が移動する距離は小さい。したがって、効率的にH+を第3電極51から第2電極11へと拡散させることができる。
(2)式に示すように、第2電極11の裏面付近において、CO2と移動したH+とが反応し、COとH2Oが生成される。すなわち、CO2が還元される(電子を得る)。
このとき、光起電力層15は、第3電極51で生じる酸化反応の標準酸化還元電位と第2電極11で生じる還元反応の標準酸化還元電位との電位差以上の開放電圧を有する必要がある。例えば、(1)式における酸化反応の標準酸化還元電位は1.23[V]であり、(2)式における還元反応の標準酸化還元電位は−0.1[V]である。このため、光起電力層15の開放電圧は、1.33[V]以上の必要がある。なお、より好ましくは、開放電圧は過電圧を含めた電位差以上の必要がある。より具体的には、例えば(1)式における酸化反応および(2)式における還元反応の過電圧がそれぞれ0.2[V]である場合、開放電圧は1.73[V]以上であることが望ましい。
このように、電解システムでは、余剰電力の電気エネルギーによって外部電源32に起電力が生じ、この起電力によって酸化還元反応(電解反応)が起こり、化学エネルギーが生成される。すなわち、電気エネルギーを化学エネルギーに変換することができる。
図12は、第2の実施形態に係る化学反応装置の太陽電池動作を示す図である。図13は、第2の実施形態に係る化学反応装置の太陽電池動作の変形例を示す図である。太陽電池は、主に余剰電力がない場合に用いられる。
図12に示すように、太陽電池として用いる場合、スイッチング素子制御部41は、第1スイッチング素子31をオフにする。これにより、第2電極11と第3電極51とが外部電源32を介して電気的に遮断される。一方、スイッチング素子制御部41は、第2スイッチング素子33をオンにする。これにより、第1電極16と第2電極11とが電力需要部34を介して電気的に接続される。
このとき、第1電極16と第2電極11との間において、電解液23を介してイオンの移動は起こらないほうがよい。すなわち、電解液23を介して電流が流れないほうがよい。これは、光起電力層15による発電と同時に電力需要部34に放電するためである。このため、電解液制御部61は、第1電極16および第2電極11が電解液23に浸漬されないように、電解槽21内の電解液23の量を制御する。これにより、電解槽21内から配管22を介して電解液23が排出され、電解槽21内は空気で充填される。
なお、電解槽21内が空気で充填されなくてもよく、少なくとも第1電極16および第2電極11の一部が電解液23に浸漬されていなければよい。このとき、図13に示すように、上述した人工光合成システムまたは電解システムによって生成された気体(例えばO2等)で電解槽21内の一部を充填させてもよい。この場合、配管22を介して、電解槽21内から電解液23を排出する必要はない。すなわち、配管22に備えられるポンプ等を用いる必要がなく、エネルギーロスを少なくすることができる。また、この場合、第1電極16を重力とは反対側に配置することが必要である。
この状態で上方から光が照射されると、照射光は第1電極16を通過し、光起電力層15に到達する。光起電力層15は、光を吸収すると、電子およびそれと対になる正孔を生成し、それらを分離する。すなわち、各光起電力層(第1光起電力層12、第2光起電力層13、および第3光起電力層14)において、n型の半導体層側(第2電極11側)に電子が移動し、p型の半導体層側(第1電極16側)に電子の対として発生した正孔が移動し、電荷分離が生じる。これにより、光起電力層15に起電力が発生する。この光起電力層15によって発生した起電力によって、電力需要部34に電力を供給することができる。
このように、太陽電池では、太陽光エネルギーによって光起電力層15に起電力が生じ、この起電力によって電気エネルギーが生成される。すなわち、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
2−3.第2の実施形態の効果
上記第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、第2の実施形態によれば、電解槽21内に、第1電極16、光起電力層15、および第2電極11を含む積層体10だけでなく、第2電極11に離間して対向する第3電極51が収容される。そして、第2電極11と第3電極51との間に外部電源32を電気的に接続することで、電解システムとして機能することができる。
このとき、第3電極51と第2電極11とは、互いに対向して形成されるため、その距離は比較的小さい。このため、第3電極51で生成されたH+が第2電極11へと移動する距離は小さい。したがって、第2電極11の反応に用いられるH+を効率的に第3電極51から第2電極11へと拡散させることができる。
また、第3電極51は、光起電力層15に対して光照射側とは反対側に配置される。このため、第3電極51の材料として透過性を考慮する必要はなく、また、その形状も特に限定されない。すなわち、第3電極51の材料および形状は、反応効率のみを考慮して設定することができる。
また、人工光合成システムとして機能する場合と電解システムとして機能する場合とで異なる反応電流密度などに応じて、第2触媒18および第1触媒17とは異なる第3電極51表面の図示せぬ第3触媒を用いることができる。
なお、第3電極51は、第2電極11に離間して対向することに限らない。第3電極51は、構造上の問題などに応じて、第2電極11に対して垂直に配置されてもよい。
また、外部電源32の余剰電力に応じて、外部電源32を第2電極11と第3電極51との間に接続するだけではなく、第2電極11と第1電極16との間にも接続してもよい。すなわち、外部電源32と種々のスイッチング素子との接続の組み合わせは本例に限らない。
2−4.第2の実施形態の変形例
図14は、第2の実施形態に係る化学反応装置の第1の変形例の構成を示す概略構成図である。
図14に示すように、第2の実施形態に係る化学反応装置の第1の変形例では、電解槽21は、第2電極11によって第1電解槽25と第2電解槽26とに物理的に分離され、イオン交換膜19aによって第2電解槽26と第3電解槽27とに物理的に分離される。
第1電解槽25は、第1電極16の表面(第1触媒17)を浸漬するように、その内部に第1電解液23aを収容する。第1電解液23aは、例えばH2Oを含む溶液である。このような溶液としては、任意の電解質を含むものが挙げられるが、H2Oの酸化反応を促進するものであることが望ましい。第1電解槽25の上面は、光透過率の高い例えばガラスまたはアクリルからなる窓部が設けられる。照射光は、第1電解槽25の上方から照射される。
また、第1電解槽25には、配管22aが接続される。配管22aは、第1電解槽25内に第1電解液23aを注入する、または、第1電解槽25内から第1電解液23aを排出する。
第2電解槽26は、第2電極11の裏面(第2触媒18)を浸漬するように、その内部に第2電解液23bを収容する。第2電解液23bは、例えばCO2を含む溶液である。第2電解液23bは、CO2の吸収率が高いことが望ましく、H2Oを含む溶液として、NaHCO3、KHCO3の水溶液が挙げられる。また、第1電解液23aと第2電解液23bとは同じ溶液でもよいが、第2電解液23bはCO2の吸収量が高いほうが好ましいため、第1電解液23aと第2電解液23bとは別の溶液を用いてもよい。また、第2電解液23bは、CO2の還元電位を低下させ、イオン伝導性が高く、CO2を吸収するCO2吸収剤を有することが望ましい。このような電解液として、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオン等の陽イオンと、BF4−またはPF6−等の陰イオンとの塩からなり、幅広い温度範囲で液体状態であるイオン液体もしくはその水溶液が挙げられる。または、電解液として、エタノールアミン、イミダゾール、またはピリジン等のアミン溶液もしくはその水溶液が挙げられる。アミンは、一級アミン、二級アミン、または三級アミンのいずれでもかまわない。一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、またはヘキシルアミン等が挙げられる。アミンの炭化水素は、アルコールやハロゲン等が置換していてもかまわない。アミンの炭化水素が置換されたものとしては、例えば、メタノールアミン、エタノールアミン、またはクロロメチルアミン等が挙げられる。また、不飽和結合が存在していてもかまわない。これら炭化水素は、二級アミン、三級アミンも同様である。二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、またはジプロパノールアミン等が挙げられる。置換した炭化水素は、異なってもかまわない。これは、三級アミンでも同様である。例えば、炭化水素が異なるものとしては、メチルエチルアミン、またはメチルプロピルアミン等が挙げられる。三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリエキサノールアミン、メチルジエチルアミン、またはメチルジプロピルアミン等が挙げられる。イオン液体の陽イオンとしては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾールイオン、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムイオン、または1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムイオン等が挙げられる。また、イミダゾリウムイオンの2位が置換されていてもよい。イミダゾリウムイオンの2位が置換されたものとしては、例えば、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−ペンチルイミダゾリウムイオン、または1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン等が挙げられる。ピリジニウムイオンとしては、メチルピリジニウム、エチルピリジニウム、プロピルピリジニウム、ブチルピリジニウム、ペンチルピリジニウム、またはヘキシルピリジニウム等が挙げられる。イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオンはともに、アルキル基が置換されてもよく、不飽和結合が存在してもよい。アニオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、BF4−、PF6−、CF3COO−、CF3SO3−、NO3−、SCN−、(CF3SO2)3C−、ビス(トリフルオロメトキシスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメトキシスルホニル)イミド、またはビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド等が挙げられる。また、イオン液体のカチオンとアニオンとを炭化水素で連結した双生イオンでもよい。
また、第2電解槽26には、配管22bが接続される。配管22bは、第2電解槽26内に第2電解液23bを注入する、または、第2電解槽26内から第2電解液23bを排出する。
第3電解槽27は、第3電極51を浸漬するように、その内部に第3電解液23cを収容する。第3電解液23cは、第1電解液23aと同じ液体であり、例えばH2Oを含む溶液である。このような溶液としては、任意の電解質を含むものが挙げられるが、H2Oの酸化反応を促進するものであることが望ましい。
また、第3電解槽27には、配管22cが接続される。配管22cは、第3電解槽27内に第3電解液23cを注入する、または、第3電解槽27内から第3電解液23cを排出する。
電解液制御部61は、第1電解槽25内の第1電解液23a、第2電解槽26内の第2電解液23b、および第3電解槽27内の第3電解液23cを制御する。より具体的には、電解液制御部61は、第1電解槽25内の第1電解液23a、第2電解槽26内の第2電解液23b、および第3電解槽27内の第3電解液23cの量を測定し、配管22aによる第1電解液23a、配管22bによる第2電解液23b、および配管22cによる第3電解液23cの注入および排出を制御する。
これにより、電解液制御部61は、人工光合成システムとして用いる場合に、十分な電解反応が起こるように第1電解槽25内を第1電解液23aで充填させ、第2電解槽26内を第2電解液23bで充填させる。また、電解液制御部61は、電解システムとして用いる場合に、十分な電解反応が起こるように第2電解槽26内を第2電解液23bで充填させ、第3電解槽27内を第3電解液23cで充填させる。また、電解液制御部61は、太陽電池として用いる場合に、第1電解液23aまたは第2電解液23b中に電気が流れないように、第1電解槽25内または第2電解槽26内から第1電解液23aまたは第2電解液23bを排出して第1電解槽25内または第2電解槽26内を空気で充填させる。
第2電極11は、電解槽21を第1電解槽25と第2電解槽26とに物理的に分離する。第2電極11の裏面は、第2電解槽26側に配置され、第2電解槽26に収容される。このとき、第2電極11の表面は第1電解槽25側に配置されるが、第2電極11の表面に図示せぬ絶縁層を形成することで第2電極11と第1電解液22aとを電気的に絶縁させてこれらの反応を抑制することができる。また、第1電解液22aを非導電性の液体または気体に置き換えることで反応を抑制させてもよい。
また、第2電極11は、その露出部分にイオン移動経路を有する。イオン移動経路は、例えばその表面から裏面まで貫通する複数の細孔である。細孔は、第1電解槽25における第1電極16の酸化反応により生成されたイオン(例えばHイオン(H+))のみを選択的に第2電解槽26に通過させる。細孔を通過したイオンは、第2電解槽26の第2電極11で還元反応によりO2、H2、または有機化合物等に変換される。
また、細孔は、イオンが通過する大きさであればよい。例えば、細孔の直径(円相当径)の下限は、0.3nm以上であることが好ましい。また、複数の細孔の総面積S1とイオン透過部材21aの面積S2との面積比S1/S2は、機械強度を損なわないように、0.9以下、好ましくは0.6以下である。また、細孔の形状は円形状に限らず、楕円形状、三角形状、または四角形状であってもよい。細孔の配置構成は四角格子状に限らず、三角格子状、ランダムであってもよい。また、細孔にイオン交換膜19を充填してもよい。イオン交換膜としては、例えばナフィオンまたはフレミオンのようなカチオン交換膜、ネオセプタまたはセレミオンのようなアニオン交換膜が挙げられる。また、細孔にガラスフィルタや寒天を充填してもよい。
なお、第2電極11は、細孔の代わりに、その表面から裏面まで貫通し、かつイオン交換膜19が充填された複数のスリットを有してもよい。スリットは、第1電解槽25における第1電極16の酸化反応により生成されたイオン(例えばHイオン(H+))のみを選択的に第2電解槽26に通過させる。
また、イオン移動経路にポンプを設けることで、イオンの移動を促進させてもよい。
イオン交換膜19aは、電解槽21を第2電解槽26と第3電解槽27とに物理的に分離する。イオン交換膜19aの表面は第2電解槽26側に配置され、イオン交換膜19aの裏面は第3電解槽27側に配置される。イオン交換膜19aは、第3電解槽27における第3電極51の酸化反応により生成されたイオン(例えばHイオン(H+))のみを選択的に第2電解槽26に通過させる。イオン交換膜19aを通過したイオンは、第2電解槽26の第2電極11で還元反応によりO2、H2、または有機化合物等に変換される。イオン交換膜19aとしては、例えばナフィオンまたはフレミオンのようなカチオン交換膜、ネオセプタまたはセレミオンのようなアニオン交換膜が挙げられる。
第1の変形例では、電解槽21を第1電解槽25と第2電解槽26と第3電解槽27に分離することにより、各電解槽において反応しやすい異なる電解液(第1電解液23a、第2電解液23b、および第3電解槽23c)を充填することができる。また、電解槽21を第1電解槽25と第2電解槽26と第3電解槽27とに分離することにより、第1電解槽25および第3電解槽27で酸化反応が行われ、第2電解槽26で還元反応が行われる。その結果、酸化反応による生成物(例えばO2)を第1電解槽25および第3電解槽27で回収し、還元反応による生成物(例えばCO)を第2電解槽26で回収することができる。すなわち、酸化反応よる生成物と還元反応による生成物を分離して回収することができる。
また、例えば反応電流密度、電極、または反応によって電解液を変化させてもよい。例えば、第1電解液23aおよび第3電解液23cはH2Oの酸化反応を行うが、第3電解液23cは外部電源32による反応である。このため、第3電解液23cにおける反応電流密度は、任意に変化させることができる。したがって、その反応電流密度に応じて、最適な電解液を選択することが可能である。例えば、第1電解液23aは半導体層(光起電力層15)を浸漬するため、半導体層を侵食しないものがよい。一方、第3電解液23cではその制限はないため、第3電解液23cとして異なる電解液を用いてもよい。
図15は、第2の実施形態に係る化学反応装置の第2の変形例の構成を示す概略構成図である。
図15に示すように、第2の実施形態に係る化学反応装置の第2の変形例では、第1電極16と第2電極11との間にセンサ部42が電気的に接続され、第2電極11と第3電極51との間にセンサ部43が電気的に接続される。
センサ部42は、第2電極11と第3電極51との間に、スイッチング素子31および外部電源32を介して電気的に接続される。言い換えると、センサ部42と第2電極11または第3電極51との間に、第1スイッチング素子31が形成される。そして、第1スイッチング素子31をオンにすることで、第2電極11と第3電極51とは外部電源32およびセンサ部42を介して電気的に接続される。一方、第1スイッチング素子31をオフにすることで、第2電極11と第3電極51とは外部電源32およびセンサ部42を介して電気的に遮断される。すなわち、化学反応装置が主に電解システムとして用いられる場合に、センサ部42が機能する。
センサ部43は、第1電極16と第2電極11との間に、第3スイッチング素子35を介して電気的に接続される。言い換えると、センサ部43と第1電極16または第2電極11との間に、第3スイッチング素子35が形成される。そして、第3スイッチング素子35をオンにすることで、第1電極16と第2電極11とはセンサ部43を介して電気的に接続される。一方、第3スイッチング素子35をオフにすることで、第1電極16と第2電極11とはセンサ部43を介して電気的に遮断される。すなわち、化学反応装置が主に人工光合成システムとして用いられる場合に、センサ部43が機能する。
センサ部42は、例えば電解システムの場合に外部電源32の起電力を利用し、電解液23と第2電極11および第3電極51との反応によって得られる電気信号を捕らえる。これにより、センサ部42は、電解システムの場合において、電解液23のpH、電解液23の濃度、電解液23の組成、電解槽21内の圧力、電解槽21内の温度、および光の強度等を測定する。
センサ部43は、例えば人工光合成システムの場合に光起電力層15の起電力を利用し、電解液23と第1電極16および第2電極11との反応によって得られる電気信号を捕らえる。これにより、センサ部43は、人工光合成システムの場合において、電解液23のpH、電解液23の濃度、電解液23の組成、電解槽21内の圧力、電解槽21内の温度、および光の強度等を測定する。センサ部43は、光起電力層15の起電力を利用するものであるため、電源レスで動作することができる。
なお、人工光合成システムとして用いる場合に、光強度が弱くて光起電力層15の起電力によってセンサ43が機能しないことが考えらえる。この場合、一時的に外部電源32によってセンサ部42を機能させて、種々の要件を測定してもよい。一方、電解システムとして用いる場合も同様である。すなわち、電解システムとして用いる場合に、一時的に光起電力層15の起電力によってセンサ部43を機能させて、種々の要件を測定してもよい。
第2の変形例では、センサ部42,43により、電解液23のpH、電解液23の濃度、電解液23の組成、電解槽21内の圧力、電解槽21内の温度、および光の強度等を測定する。これにより、電解反応を促進させるための電解液23および電解槽21の状況を適宜調整することができる。
3.第3の実施形態
以下に図16乃至図21を用いて、第3の実施形態に係る化学反応装置について説明する。
第3の実施形態は、上記第2の実施形態の変形例である。第3の実施形態に係る化学反応装置では、積層体10(第2触媒18)の裏面上に、イオン交換膜19bを介して第3触媒52および第3電極51が形成される。そして、第2電極11の内部に第2電解槽流路26aが形成され、第3電極51の内部に第3電解槽流路27aが形成される。これにより、第2電解槽流路26aにおいて還元反応を行い、第3電解槽流路27aにおいて酸化反応を行うことができる。以下に、第3の実施形態について詳説する。
なお、第3の実施形態において、上記各実施形態と同様の点については適宜説明を省略し、主に異なる点について説明する。
3−1.第3の実施形態の構成
図16は、第3の実施形態に係る化学反応装置の構成例を示す概略構成図である。なお、図16において、積層体10、第3電極51、第3触媒52、イオン交換膜19b、および容器90は、その断面構成を示している。
図16に示すように、第3の実施形態に係る化学反応装置において、第1の実施形態と異なる点は、積層体10の裏面上(第2触媒18の裏面上)に、イオン交換膜19b、第3触媒52、および第3電極51が形成され、第2電極11内に第2電解槽流路26aが形成され、第3電極51内に第3電解槽流路27aが形成される点である。
第2電極11は、容器90を第1電解槽25と槽28とに物理的に分離する。
第1電解槽25は、容器90の第2電極11の表面側であり、第1電極16の表面(第1触媒17)を浸漬するように、その内部に第1電解液23aを収容する。第1電解液23aは、例えばH2Oを含む溶液である。このような溶液としては、任意の電解質を含むものが挙げられるが、H2Oの酸化反応を促進するものであることが望ましい。第1電解槽25の上面は、光透過率の高い例えばガラスまたはアクリルからなる窓部が設けられる。照射光は、第1電解槽25の上方から照射される。
また、第1電解槽25には、配管22aが接続される。配管22aは、第1電解槽25内に第1電解液23aを注入する、または、第1電解槽25内から第1電解液23aを排出する。
槽28は、第2電極11の裏面側であり、第2触媒18、イオン交換膜19b、第3触媒52、および第3電極51を収容する。槽28は、その内部に電解液を収容せず、例えば空気で充填される。
第2電極11は、容器90を第1電解槽25と槽28とに物理的に分離する。第2電極11の裏面は、槽28側に配置され、槽28に収容される。このとき、第2電極11の表面は第1電解槽25側に配置されるが、第2電極11の表面に図示せぬ絶縁層を形成することで第2電極11と第1電解液22aとを電気的に絶縁させてこれらの反応を抑制することができる。
また、第2電極11は、その露出部分にイオン移動経路を有する。イオン移動経路は、例えばその表面から裏面まで貫通する複数の細孔である。細孔は、第1電解槽25における第1電極16の酸化反応により生成されたイオン(例えばH+)のみを選択的に第2電解槽流路26aに通過させる。細孔を通過したイオンは、第2電解槽流路26aの第2電極11で還元反応によりO2、H2、または有機化合物等に変換される。
また、細孔は、イオンが通過する大きさであればよい。例えば、細孔の直径(円相当径)の下限は、0.3nm以上であることが好ましい。また、複数の細孔の総面積S1とイオン透過部材21aの面積S2との面積比S1/S2は、機械強度を損なわないように、0.9以下、好ましくは0.6以下である。また、細孔の形状は円形状に限らず、楕円形状、三角形状、または四角形状であってもよい。細孔の配置構成は四角格子状に限らず、三角格子状、ランダムであってもよい。また、細孔にイオン交換膜19を充填してもよい。イオン交換膜としては、例えばナフィオンまたはフレミオンのようなカチオン交換膜、ネオセプタまたはセレミオンのようなアニオン交換膜が挙げられる。また、細孔にガラスフィルタや寒天を充填してもよい。
なお、第2電極11は、細孔の代わりに、その表面から裏面まで貫通し、かつイオン交換膜19が充填された複数のスリットを有してもよい。スリットは、第1電解槽25における第1電極16の酸化反応により生成されたイオン(例えばH+)のみを選択的に第2電解槽流路26aに通過させる。
第2電極11の裏面上に、第2触媒18が形成される。第2触媒18は、イオン移動経路に接するように形成される。第2触媒18は、多孔質であり、電解液の原料、水(H2O)、CO2、およびイオン(例えばH+)を通過させる。また、第2電極11と第2電解槽流路26aとの間に図示せぬガス拡散層が形成されてもよい。ガス拡散層は、多孔質であり、撥水性を有する。これにより、物質拡散速度を高めることができ、水(H2O)およびCO2を蒸気(気体)として第2触媒18に供給することができる。これにより、第2触媒18における反応効率を上昇させることができる。
イオン交換膜19bは、第2触媒18の裏面上に形成される。イオン交換膜19bは、第3電解槽流路27aにおける第3電極51の酸化反応により生成されたイオン(例えばH+)のみを選択的に第2触媒18を介して第2電解槽流路26aに通過させる。イオン交換膜19aを通過したイオンは、第2電解槽26の第2電極11で還元反応によりO2、H2、または有機化合物等に変換される。イオン交換膜19bとしては、例えばナフィオンまたはフレミオンのようなカチオン交換膜、ネオセプタまたはセレミオンのようなアニオン交換膜が挙げられる。
第3触媒52は、イオン交換膜19bの裏面上に形成される。第3触媒52は、多孔質であり、電解液の原料、水(H2O)、CO2、およびイオン(例えばH+)を通過させる。また、第3電極51と第3電解槽流路27aとの間に図示せぬガス拡散層が形成されてもよい。ガス拡散層は、多孔質であり、撥水性を有する。これにより、物質拡散速度を高めることができ、水(H2O)およびCO2を蒸気(気体)として第3触媒52に供給することができる。これにより、第3触媒52における反応効率を上昇させることができる。
第3触媒52は、第3電極51の表面付近における化学反応性(酸化反応性)を高めるために設けられる。第3電解液23cとして水溶液、すなわち、H2Oを含む溶液を用いた場合、第3電極51はH2Oを酸化してO2とH+を生成する。このため、第3触媒52は、H2Oを酸化するための活性化エネルギーを減少させる材料で構成される。言い換えると、H2Oを酸化してO2とH+を生成する際の過電圧を低下させる材料で構成される。このような材料として、Mn−O、Ir−O、Ni−O、Co−O、Fe−O、Sn−O、In−O、またはRu−O等の二元系金属酸化物、Ni−Co−O、Ni−Fe−O、La−Co−O、Ni−La−O、Sr−Fe−O等の三元系金属酸化物、Pb−Ru−Ir−O、La−Sr−Co−O等の四元系金属酸化物、もしくは、Ru錯体またはFe錯体等の金属錯体が挙げられる。また、第3触媒の形状としては、薄膜状に限らず、格子状、粒子状、またはワイヤー状であってもよい。
第3電極51は、第3触媒52の裏面上に形成される。第3電極51は、例えばCu、Al、Ti、Ni、Fe、またはAg等の金属板、もしくはそれらを少なくとも1つ含む例えばSUSのような合金板で構成される。また、第3電極51は、導電性の樹脂等で構成されてもよい。また、第3電極51は、SiまたはGe等の半導体基板で構成されてもよい。また、第3電極51は、カーボンまたは多孔体カーボンで構成されてもよい。
第2電解槽流路26aは、第2電極11内に形成される。より具体的には、第2電解槽流路26aは、第2電極11の裏面に形成された溝部として形成される。言い換えると、第2電解槽流路26aは、第2電極11と第2触媒18との界面における空洞部分に形成される。このため、第2電解槽流路26aは、第2電極11および第2触媒18に接して形成される。すなわち、第2電解槽流路26a内に第2電解液23bが充填されることで、第2電解液23bは第2電極11および第2触媒18に接する。
第3電解槽流路27aは、第3電極51内に形成される。より具体的には、第3電解槽流路27aは、第3電極51の表面に形成された溝部として形成される。言い換えると、第3電解槽流路27aは、第3電極51と第3触媒52との界面における空洞部分に形成される。このため、第3電解槽流路27aは、第3電極51および第3触媒52に接して形成される。すなわち、第3電解槽流路27a内に第3電解液23cが充填されることで、第3電解液23cは第3電極51および第3触媒52に接する。
電解液制御部61は、第1電解槽25内の第1電解液23a、第2電解槽流路26a内の第2電解液23b、および第3電解槽流路27a内の第3電解液23cを制御する。より具体的には、電解液制御部61は、第1電解槽25内の第1電解液23a、第2電解槽流路26a内の第2電解液23b、および第3電解槽流路27a内の第3電解液23cの量を測定し、配管22aによる第1電解液23a、第2電解槽流路26aに接続される図示せぬ配管による第2電解液23b、および第3電解槽流路27aに接続される図示せぬ配管による第3電解液23cの注入および排出を制御する。
3−2.第3の実施形態の動作
図17は、第3の実施形態に係る化学反応装置の人工光合成システム動作を示す図である。人工光合成システムは、主に余剰電力がある場合であって、太陽光エネルギーがある場合に用いられる。
図17に示すように、人工光合成システムとして用いる場合、スイッチング素子制御部41は、第1スイッチング素子31および第2スイッチング素子33をオフにする。これにより、第2電極11と第3電極51とが外部電源32を介して電気的に遮断される。また、第1電極16と第2電極11とが電力需要部34を介して電気的に遮断される。
また、電解液制御部61は、第1電極16が第1電解液23aに浸漬されるように、第1電解槽25内の第1電解液23aの量を制御する。これにより、第1電解槽25内に配管22aを介して第1電解液23aが注入され、第1電解槽25内は第1電解液23aで充填される。なお、第1電解槽25内が第1電解液23aで充填されなくてもよく、少なくとも第1電極16の一部が第1電解液23aに浸漬されていればよい。
一方、電解液制御部61は、第2電極11が第2電解液23bに浸漬されるように、第2電解槽流路26a内の第2電解液23bの量を制御する。これにより、第2電解槽流路26a内に図示せぬ配管を介して第2電解液23bが注入され、第2電解槽流路26a内は第2電解液23bで充填される。なお、第2電解槽流路26a内が第2電解液23bで充填されなくてもよく、少なくとも第2電極11の一部が第2電解液23bに浸漬されていればよい。
なお、第3電解槽流路27a内には、第3電解液23cが充填されていても、充填されていなくてもよい。
この状態で上方から光が照射されると、第1電解液23aに接する第1電極16の表面付近では(1)式、第2電解液23bに接する第2電極11の裏面付近では(2)式の反応が生じる。
(1)式に示すように、第1電極16の表面付近において、H2Oが酸化されて(電子を失い)O2とH+が生成される。そして、第1電極16側で生成されたH+は、第2電極11側に移動する。より具体的には、第1電極16側で生成されたH+は、イオン交換膜19および多孔質の第2触媒18を通過して、第2電解槽流路26a内に移動する。
(2)式に示すように、第2電極11の裏面付近(第2電解槽流路26a)において、CO2と移動したH+とが反応し、COとH2Oが生成される。すなわち、CO2が還元される(電子を得る)。
このように、人工光合成システムでは、太陽光エネルギーによって光起電力層15に起電力が生じ、この起電力によって第1電極16の表面および第2電極11の裏面において酸化還元反応(電解反応)が起こり、化学エネルギーが生成される。すなわち、太陽光エネルギーを化学エネルギーに変換することができる。
図18は、第3の実施形態に係る化学反応装置の電解システム動作を示す図である。電解システムは、主に余剰電力がある場合であって、太陽光エネルギーがない場合に用いられる。例えば、電解システムは、夜間に用いられ得る。
図18に示すように、電解システムとして用いる場合、スイッチング素子制御部41は、第1スイッチング素子31をオンにする。これにより、第2電極11と第3電極51とが外部電源32を介して電気的に接続される。一方、スイッチング素子制御部41は、第2スイッチング素子33をオフにする。これにより、第1電極16と第2電極11とが電力需要部34を介して電気的に遮断される。
また、電解液制御部61は、第2電極11が第2電解液23bに浸漬されるように、第2電解槽流路26a内の第2電解液23bの量を制御する。これにより、第2電解槽流路26a内に図示せぬ配管を介して第2電解液23bが注入され、第2電解槽流路26a内は第2電解液23bで充填される。なお、第2電解槽流路26a内が第2電解液23bで充填されなくてもよく、少なくとも第2電極11の一部が第2電解液23bに浸漬されていればよい。
一方、電解液制御部61は、第3電極51が第3電解液23cに浸漬されるように、第3電解槽流路27a内の第3電解液23cの量を制御する。これにより、第3電解槽流路27a内に図示せぬ配管を介して第3電解液23cが注入され、第3電解槽流路27a内は第3電解液23cで充填される。なお、第3電解槽流路27a内が第3電解液23cで充填されなくてもよく、少なくとも第2電極11の一部が第2電解液23bに浸漬されていればよい。
なお、第1電解槽25内には、第1電解液23aが充填されていても、充填されていなくてもよい。
この状態で外部電源32に起電力が発生すると、第3電解液23cに接する第3電極51の表面付近では(1)式、第2電解液23bに接する第2電極11の裏面付近では(2)式の反応が生じる。
(1)式に示すように、第3電極51の表面付近(第3電解槽流路27a)において、H2Oが酸化されて(電子を失い)O2とH+が生成される。そして、第3電極51側で生成されたH+は、第2電極11側に移動する。より具体的には、第3電極51側で生成されたH+は、多孔質の第3触媒52、イオン交換膜19、および多孔質の第2触媒18を通過して、第2電解槽流路26a内に移動する。
このとき、第3電極51と第2電極11とは、互いに対向して形成されるため、その距離は比較的小さい。このため、第3電極51から第2電極11へとH+が移動する距離は小さい。したがって、効率的にH+を第3電極51から第2電極11へと拡散させることができる。
(2)式に示すように、第2電極11の裏面付近(第2電解槽流路26a)において、CO2と移動したH+とが反応し、COとH2Oが生成される。すなわち、CO2が還元される(電子を得る)。
このように、電解システムでは、余剰電力の電気エネルギーによって外部電源32に起電力が生じ、この起電力によって酸化還元反応(電解反応)が起こり、化学エネルギーが生成される。すなわち、電気エネルギーを化学エネルギーに変換することができる。
なお、人工光合成システムと電解システムとを同時に反応させてもよい。すなわち、第1電解槽25内に第1電解液23a、第2電解槽流路26a内に第2電解液23b、第3電解槽流路27a内に第3電解液23cを充填させる。そして、光を照射させるとともに、スイッチング素子31をオンにする。これにより、第1電極16と第3電極51とを第2電極11に対して並列に接続させた状態で、第1電解槽25、第2電解槽流路26a、および第3電解槽流路27aのそれぞれで各反応を生じさせることができる。
図19は、第3の実施形態に係る化学反応装置の太陽電池動作を示す図である。図20は、第2の実施形態に係る化学反応装置の太陽電池動作の変形例を示す図である。太陽電池は、主に余剰電力がない場合に用いられる。
図19に示すように、太陽電池として用いる場合、スイッチング素子制御部41は、第1スイッチング素子31をオフにする。これにより、第2電極11と第3電極51とが外部電源32を介して電気的に遮断される。一方、スイッチング素子制御部41は、第2スイッチング素子33をオンにする。これにより、第1電極16と第2電極11とが電力需要部34を介して電気的に接続される。
このとき、第1電極16と第2電極11との間において、第1電解液23aまたは第2電解液23bを介してイオンの移動は起こらないほうがよい。すなわち、第1電解液23aまたは第2電解液23bを介して電流が流れないほうがよい。これは、光起電力層15による発電と同時に電力需要部34に放電するためである。このため、電解液制御部61は、第1電極16が第1電解液23aに浸漬されないように、第1電解槽25内の第1電解液23aの量を制御する。または、第2電極11が第2電解液23bに浸漬されないように、第2電解槽26a内の第2電解液23bの量を制御する。これにより、第1電解槽25内から配管22aを介して第1電解液23aが排出され、第1電解槽25内は空気で充填される、または、第2電解槽26a内から図示せぬ配管を介して第2電解液23bが排出され、第2電解槽26a内は空気で充填される。
なお、第1電解槽25内が空気で充填されなくてもよく、少なくとも第1電極16が第1電解液23aに浸漬されていなければよい。このとき、図20に示すように、上述した人工光合成システムまたは電解システムによって生成された気体(例えばO2等)で第1電解槽25内の一部を充填させてもよい。この場合、配管22aを介して、第1電解槽25内から第1電解液23aを排出する必要はない。すなわち、配管22aに備えられるポンプ等を用いる必要がなく、エネルギーロスを少なくすることができる。また、この場合、第1電極16を重力とは反対側に配置することが必要である。
また、第2電極11が導電性材料で構成される場合、第2電極11と第2触媒18との間(接触点)に図示せぬ絶縁層を設けてもよい。そして、第2電解槽流路26a内の第2電解液23bを排出して、第2電解槽流路26a内を絶縁性の液体または気体で満たす。これにより、第1電解槽25内の第1電解液23aを排出する必要がなくなる。したがって、第1電解液23aの出し入れに伴う煩雑さがなく、エネルギー効率を向上させることができる。
この状態で上方から光が照射されると、照射光は第1電極16を通過し、光起電力層15に到達する。光起電力層15は、光を吸収すると、電子およびそれと対になる正孔を生成し、それらを分離する。すなわち、各光起電力層(第1光起電力層12、第2光起電力層13、および第3光起電力層14)において、n型の半導体層側(第2電極11側)に電子が移動し、p型の半導体層側(第1電極16側)に電子の対として発生した正孔が移動し、電荷分離が生じる。これにより、光起電力層15に起電力が発生する。この光起電力層15によって発生した起電力によって、電力需要部34に電力を供給することができる。
このように、太陽電池では、太陽光エネルギーによって光起電力層15に起電力が生じ、この起電力によって電気エネルギーが生成される。すなわち、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
3−3.第3の実施形態の効果
上記第3の実施形態によれば、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、第3の実施形態によれば、積層体10(第2触媒18)の裏面上に、イオン交換膜19bを介して第3触媒53および第3電極51が形成される。そして、第2電極11の内部に第2電解槽流路26aが形成され、第3電極51の内部に第3電解槽流路27aが形成される。第3の実施形態における第2電解槽流路26aおよび第3電解槽流路27aは、第2の実施形態における第2電解槽26および第3電解槽27よりも容量が小さく形成される。これにより、第2電解槽流路26a内および第3電解槽流路27a内で生成された生成物を、第2の実施形態よりも容易に回収することができる。
3−4.第3の実施形態の変形例
図21は、第3の実施形態に係る化学反応装置の第1の変形例の構成を示す概略構成図である。
図21に示すように、第3の実施形態に係る化学反応装置の第1の変形例では、第1電極16と第2電極11との間にセンサ部42が電気的に接続され、第2電極11と第3電極51との間にセンサ部43が電気的に接続される。
センサ部42は、第2電極11と第3電極51との間に、スイッチング素子31および外部電源32を介して電気的に接続される。言い換えると、センサ部42と第2電極11または第3電極51との間に、第1スイッチング素子31が形成される。そして、第1スイッチング素子31をオンにすることで、第2電極11と第3電極51とは外部電源32およびセンサ部42を介して電気的に接続される。一方、第1スイッチング素子31をオフにすることで、第2電極11と第3電極51とは外部電源32およびセンサ部42を介して電気的に遮断される。すなわち、化学反応装置が主に電解システムとして用いられる場合に、センサ部42が機能する。
センサ部43は、第1電極16と第2電極11との間に、第3スイッチング素子35を介して電気的に接続される。言い換えると、センサ部43と第1電極16または第2電極11との間に、第3スイッチング素子35が形成される。そして、第3スイッチング素子35をオンにすることで、第1電極16と第2電極11とはセンサ部43を介して電気的に接続される。一方、第3スイッチング素子35をオフにすることで、第1電極16と第2電極11とはセンサ部43を介して電気的に遮断される。すなわち、化学反応装置が主に人工光合成システムとして用いられる場合に、センサ部43が機能する。
センサ部42は、例えば電解システムの場合に外部電源32の起電力を利用し、第2電解液23bと第2電極11との反応、および第3電解液23cと第3電極51との反応によって得られる電気信号を捕らえる。これにより、センサ部42は、電解システムの場合において、第2電解液23bおよび第3電解液23cのpH、第2電解液23bおよび第3電解液23cの濃度、第2電解液23bおよび第3電解液23cの組成、第2電解槽流路26a内および第3電解槽流路27a内の圧力、第2電解槽流路26a内および第3電解槽流路27a内の温度、および光の強度等を測定する。
センサ部43は、例えば人工光合成システムの場合に光起電力層15の起電力を利用し、第1電解液23aと第1電極16との反応および第2電解液23bと第2電極11との反応によって得られる電気信号を捕らえる。これにより、センサ部43は、人工光合成システムの場合において、第1電解液23aおよび第2電解液23bのpH、第1電解液23aおよび第2電解液23bの濃度、第1電解液23aおよび第2電解液23bの組成、第1電解槽25内および第2電解槽流路26a内の圧力、第1電解槽25内および第2電解槽流路26a内の温度、および光の強度等を測定する。センサ部43は、光起電力層15の起電力を利用するものであるため、電源レスで動作することができる。
なお、人工光合成システムとして用いる場合に、光強度が弱くて光起電力層15の起電力によってセンサ43が機能しないことが考えらえる。この場合、一時的に外部電源32によってセンサ部42を機能させて、種々の要件を測定してもよい。一方、電解システムとして用いる場合も同様である。すなわち、電解システムとして用いる場合に、一時的に光起電力層15の起電力によってセンサ部43を機能させて、種々の要件を測定してもよい。
第1の変形例では、センサ部42,43により、第1電解液23a、第2電解液23b、および第3電解液23cのpH、第1電解液23a、第2電解液23b、および第3電解液23cの濃度、第1電解液23a、第2電解液23b、および第3電解液23cの組成、第1電解槽25内、第2電解槽流路26a内、および第3電解槽流路27a内の圧力、第1電解槽25内、第2電解槽流路26a内、および第3電解槽流路27a内の温度、および光の強度等を測定する。これにより、電解反応を促進させるための電解液および電解槽の状況を適宜調整することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。