JP2017214791A - 建物施工法 - Google Patents

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【課題】下部に仮設柱を設置することなく跳出部を施工することができる建物施工法を提供する。【解決手段】建物14の下部跳出部32を支持する仮設の方杖34を設置した後、建物14の上部跳出部36を施工し、上部跳出部36又は下部跳出部32の方杖34の延出側の上部の柱38を切離することにより方杖34に作用している応力を解放し、柱38を接合した後、方杖34を撤去する。【選択図】図1

Description

本発明は、跳出部を備える建物の建物施工法に関する。
従来、例えば特許文献1に示すような上層階が跳出部とされた建物を施工する場合、仮設柱によって跳出部を支持しながら上層階を施工し、施工後に仮設柱を撤去する、いわゆるベント工法が用いられている。
特開2015−145580号公報
しかし、跳出部の下部に仮設柱を設置するスペースが無い場合には、ベント工法を用いることができなかった。
本発明は上記事実に鑑み、下部に仮設柱を設置することなく跳出部を施工することができる建物施工法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の建物施工法は、建物の下部跳出部を支持する仮設の斜材を設置した後、前記建物の上部跳出部を施工し、前記上部跳出部又は前記下部跳出部の前記斜材の延出側の上部の柱を切離することにより前記斜材に作用している応力を解放し、前記柱を接合した後、前記斜材を撤去する。
上記構成によれば、下部跳出部を支持する仮設の斜材を設置し、下部跳出部に作用する荷重を建物の本体部へ流すようにして上部跳出部を施工することで、跳出部の下方から跳出部を支持する仮設柱が不要となる。
また、上部跳出部の施工後に斜材の延出側の上部の柱を切離することで、斜材の残留応力や累積変形を解放することができる。このため、跳出部の施工後に斜材を容易に撤去することができるとともに、斜材を撤去した後に残留応力によって建物が変形することを抑制することができる。
請求項2に記載の建物施工法は、請求項1に記載の建物施工法であって、前記柱を切離した後、分離した前記柱同士を互いに引寄せ、その後、前記柱を接合する。
上記構成によれば、分離した柱同士を互いに引寄せることにより、柱の切離のみを行う構成と比較して、斜材の残留応力をより低減させることができる。
請求項3に記載の建物施工法は、請求項1又は2に記載の建物施工法であって、前記上部跳出部の一部の梁を、他の梁より剛性の大きい強化梁とする。
上記構成によれば、柱の切離時に、斜材の残留応力を強化梁へ流すことにより、斜材の残留応力を低減させることができる。
本発明によれば、下部に仮設柱を設置することなく跳出部を施工することができる建物施工法を提供することができる。
(A)〜(D)は本発明の実施形態の一例における建物施工法の手順を示す立面図である。 (A)〜(E)は本発明の実施形態の一例における柱の切離及び接合の手順を示す立面図である。
以下、本発明の実施形態に係る建物施工法の一例について、図1、図2に従って説明する。
図1(D)に示すように、本実施形態の建物14は、複数の階層(本実施形態では8階)からなる鉄骨ラーメン構造の本体部10と、本体部10の中層(本実施形態では3階部分)から跳出している跳出部12と、で構成されている。
本体部10における1階部分及び2階部分にあたる跳出部12の下部は、柱等が配置されておらず、解放空間16とされている。また、建物14の最上階には、トラス梁によってハットトラス18、20が構成されており、建物14の他の階層より剛性が大きくされている。
この建物14を施工する場合、まず、本体部10の1階部分から5階部分を構築し、図1(A)に示すように、本体部10の3階部分から跳出部12の3階部分の梁22を延出させる。そして、梁22の延出側の先端と本体部10の5階部分とを繋ぐ吊り材24を設置する。
その後、本体部10の5階部分から最上階までを構築するとともに、跳出部12の3階部分から5階部分の柱26、梁28、30、及び3階部分のスラブを施工して跳出部12の下部跳出部32を構築する。なお、柱26や梁22、28、30は鉄骨造とされている。
次に、跳出部12の5階部分の梁30の延出側の先端と本体部10の3階部分とを繋ぐ仮設の方杖34を設置し、吊り材24を撤去することで、下部跳出部32の荷重を吊り材24から方杖34へと受替える。
なお、方杖34は鉄骨造とされており、下部跳出部32の梁22、28、30に剛接合される。その後、図1(B)に示すように、跳出部12の5階部分から最上階までの柱38、梁40、及びハットトラス20を施工して跳出部12の上部跳出部36を構築する。
ここで、図2(A)に示すように、柱38は、互いに仮接合された鉄骨造の上柱42と下柱44とによって構成されている。具体的には、上柱42の外周面の下端部分及び下柱44の外周面の上端部分には、複数のエレクションピース48、50が設けられており、ボルト52によってエレクションピース48、50にプレート54の両端をそれぞれ固定することで、上柱42と下柱44とが仮接合された状態で保持されている。
なお、上柱42の下端面42Aと下柱44の上端面44Aとの間には、スペーサ46が挟持されている。また、上柱42と下柱44との仮接合箇所は、図1(B)における柱38の5階部分とされている。
跳出部12の上部跳出部36を構築した後、図1(C)及び図2(B)に示すように、エレクションピース48、50からプレート54を取外してスペーサ46を撤去することにより、上柱42と下柱44とを分離する。すなわち、柱38における方杖34の延出側の上部である5階部分を切離する。
なお、上柱42と下柱44とを分離することにより、上柱42及び下柱44に作用している応力が解放され、上柱42(上部跳出部36)が降下するとともに下柱44(下部跳出部32)が上昇する。
次に、図2(C)に示すように、エレクションピース48、50間にジャッキ56を設置し、ジャッキ56によって上柱42と下柱44とをさらに引寄せる。なお、本実施形態では、ジャッキ56としてセンターホール型の油圧ジャッキが用いられている。
そして、ジャッキ56により上柱42と下柱44とを引寄せた状態で、図2(D)に示すように、ボルト52によってエレクションピース48、50にプレート54の両端を再度固定する。
プレート54によって上柱42と下柱44とを固定した状態で、上柱42の下端面42Aと下柱44の上端面44Aとの間につなぎ材58を挟持させ、つなぎ材58を上柱42及び下柱44に溶接することにより、上柱42と下柱44とを本接合する。
次に、図2(E)に示すように、ジャッキ56を撤去し、上柱42及び下柱44からエレクションピース48、50を切除した後、図1(D)に示すように、方杖34を撤去する。その後、跳出部12のスラブや建物14の外装等を施工することで、建物14が完成する。
本実施形態によれば、跳出部12の下部跳出部32に仮設の方杖34を設置するため、方杖34によって下部跳出部32に作用する荷重を本体部10へ流しながら跳出部12の上部跳出部36を施工することができる。このため、跳出部12を施工する際に、跳出部12を支持する仮設柱等を下部に設ける必要がなく、解放空間16に仮設柱等を設置するスペースが無い場合であっても、跳出部12を施工することができる。
また、本実施形態によれば、跳出部12の構築後に上部跳出部36の柱38を切離している。このため、上柱42及び下柱44に作用している応力が解放されるとともに、方杖34に作用している応力が建物14の本体部10へと流れる。
ここで、建物14の最上階には剛性の大きいハットトラス18、20が形成されているため、残留応力をハットトラス18、20へと流すことで、方杖34の残留応力や累積変形を低減させることができる。このため、実際の建物14の跳出部12の応力状態を、設計時に想定した応力状態に近づけることができる。
なお、柱38を切離した状態では、方杖34に応力が残っている場合がある。しかし、本実施形態では、柱38を切離した後に上柱42と下柱44とを互いに引寄せてから接合するため、柱38の切離のみを行う構成と比較して、方杖34の残留応力や累積変形をより解放することができる。このため、跳出部12の施工後に方杖34を容易に撤去することができるとともに、方杖34を撤去した後に残留応力によって建物14が変形することを抑制することができる。
さらに、柱38の切離時の上柱42及び下柱44の鉛直変位量を測定することにより、建物14の施工途中で跳出部12の撓み量を確認することができる。このため、実際の撓み量を元にジャッキ56による上柱42と下柱44との引寄せ量を調整することにより、設計時に想定した応力状態に近づけることができる。
また、建物14の施工途中で柱38を切離して、跳出部12に作用する応力を解放するため、柱38を切離しない構成と比較して跳出部12の梁22、28、30、40のむくり量を小さく設定することができる。
以上、本発明について実施形態の一例を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能である。
例えば、上記実施形態では、柱38の切離後にジャッキ56によって上柱42と下柱44とを引寄せていたが、上柱42及び下柱44の鉛直変位量(跳出部12の撓み量)が想定範囲内である場合には、上柱42と下柱44とを引寄せることなく接合してもよい。
また、上記実施形態では、下部跳出部32内に仮設の方杖34を設置していた。しかし、方杖34によって下部跳出部32を支持することができればよく、例えば下部跳出部32の梁22の延出側の先端と本体部10の2階部分とを繋ぐように方杖34を設置してもよい。
また、上記実施形態では、引張力により下部跳出部32を支持する吊り材24(引張材)から圧縮力により下部跳出部32を支持する方杖34(圧縮材)へと下部跳出部32の荷重を受替えていた。しかし、方杖34を設置せずに吊り材24を仮設の斜材として用いてもよい。
さらに、吊り材24及び方杖34の両方を仮設の斜材として併用してもよく、また、仮設の斜材として吊り材24より頑強な別の吊り材を設置し、吊り材24から別の吊り材へと下部跳出部32の荷重を受替えてもよい。
また、上記実施形態では、上部跳出部36の最上階にトラス梁によるハットトラス20が形成されていたが、最上階に設けられている必要はなく、他の梁40より剛性の大きい梁とされていればトラス梁でなくてもよい。さらに、一部ではなく跳出部12全体の剛性を大きくしてもよい。
また、上記実施形態では、方杖34を撤去した後、跳出部12のスラブや建物14の外装等を施工していたが、施工のタイミングは上記実施形態には限られず、例えば柱38の切離前に跳出部12のスラブや建物14の外装等を施工してもよい。
また、上記実施形態では、エレクションピース48、50及びプレート54によって仮接合された上柱42と下柱44とで柱38が構成され、プレート54を取外すことで上柱42と下柱44とを分離していた。しかし、上柱42と下柱44とは、どのような方法で接合されていてもよく、また、分離されていない一本の柱38を切離することにより、上柱42と下柱44とに分離してもよい。
また、上記実施形態では、方杖34の真上にあたる柱38の5階部分を切離していたが、方杖34の上部であれば柱38のどの位置を切離してもよい。さらに、柱38等の建物14の骨組みは鉄骨造とされていたが、鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリート、コンクリート充填鋼管、プレキャストコンクリートで構成されていてもよい。
14 建物
18、20 ハットトラス(強化梁)
32 下部跳出部
34 方杖(斜材)
36 上部跳出部
38 柱

Claims (3)

  1. 建物の下部跳出部を支持する仮設の斜材を設置した後、前記建物の上部跳出部を施工し、
    前記上部跳出部又は前記下部跳出部の前記斜材の延出側の上部の柱を切離することにより前記斜材に作用している応力を解放し、
    前記柱を接合した後、前記斜材を撤去する、
    建物施工法。
  2. 前記柱を切離した後、分離した前記柱同士を互いに引寄せ、その後、前記柱を接合する、請求項1に記載の建物施工法。
  3. 前記上部跳出部の一部の梁を、他の梁より剛性の大きい強化梁とする、請求項1又は2に記載の建物施工法。
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