JP2017214315A - ジフェニルピラゾール誘導体及びその医薬用途 - Google Patents

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和之 徳丸
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Abstract

【課題】MALT1のプロテアーゼ活性を阻害する作用を有し、多発性硬化症や乾癬等の自己免疫疾患の治療薬又は予防薬として有用な化合物を提供すること。
【解決手段】本発明は、下式に代表されるジフェニルピラゾール誘導体又はその薬理学的に許容される塩を提供する。
Figure 2017214315

【選択図】なし

Description

本発明は、ジフェニルピラゾール誘導体及びその医薬用途に関する。
Mucosa−associated lymphoid tissue lymphoma translocation protein 1(以下、MALT1)は、Mucosa−associated lymphoid tissue lymphoma translocation gene 1(以下、MALT1遺伝子)によってコードされるタンパク質である。
MALT1は、システインプロテアーゼであり、NF−κBの転写活性のネガティブフィードバック機構を司るA20やCYLD等のタンパク質を分解することにより、NF−κBのシグナル伝達を活性化することが報告されている(非特許文献1、2)。
NF−κBシグナルは、B細胞及びT細胞の生存、分化、活性化等の免疫応答を制御するが、MALT1のプロテアーゼ活性の亢進によってNF−κBシグナルが過剰に活性化すると、様々な自己免疫疾患を発症し得ることが明らかとなってきた。
例えば、MALTリンパ腫や活性化B細胞様びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(ABC−DLBCL)では、MALT1のプロテアーゼ活性が亢進していることが報告されている(非特許文献3)。
また、多発性硬化症の代表的な動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎モデルにおいてMALT1遺伝子を欠損させると、その病態が完全に抑制されることから、MALT1のプロテアーゼ活性を阻害することで多発性硬化症の予防及び治療効果が期待できることが報告されている(非特許文献4)。
さらに、MALT1が分解して不活化するA20やCYLD等のタンパク質と自己免疫疾患との関連性も示されており、例えば、A20をコードする遺伝子を欠損したマウスでは、リウマチや乾癬、大腸炎といった自己免疫疾患様病態が自然発症することが報告されている(非特許文献5)。
したがって、MALT1のプロテアーゼ活性を阻害する化合物は、多発性硬化症、乾癬及びリウマチ等の自己免疫疾患又はリンパ腫に対して予防及び治療効果を示すことが期待されている。
MALT1のプロテアーゼ活性を阻害する化合物として、例えば、オリゴペプチド化合物であるZ−VRPR−fmk(非特許文献6)、フェニルフラン誘導体(特許文献1)、フェノチアジン誘導体(特許文献2)及びトリアゾール誘導体(非特許文献7)が報告されている。
一方、ジフェニルピラゾール骨格を有する化合物としては、例えば、カンナビノイド1受容体拮抗作用を有する化合物として、リモナバン(5−(4−クロロフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−メチル−N−(ピペリジン−1−イル)−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド)(特許文献3)が、シクロオキシゲナーゼ阻害作用を有する化合物として、セレコキシブ(4−(1−(p−トリル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−5−イル)ベンゼンスルホンアミド)(非特許文献8)が、ナトリウムイオン/プロトン交換輸送体1阻害作用を有する化合物として、ジフェニルピラゾール−3−イルカルボニルグアニジン誘導体(特許文献4)が報告されている。
国際公開第2009/065897号 国際公開第2013/017637号 米国特許第5624941号 国際公開第1999/043663号
Beyaertら、Nature Immunology、2008年、第9巻、p.263―271 Beyaertら、The EMBO Journal、2011年、第30巻、p.1742―1752 Staudtら、Nature、2006年、第441巻、p.106−110 Makら、The Journal of Clinical Investigation、2012年、第122巻、p.4698−4709 Maら、Science、2000年、第289巻、p.2350−2354 Thomeら、Nature Immunology、2008年、第9巻、p.272―281 Melnickら、Cancer Cell、2012年、第22巻、p.812―824 木本愛之ら、日本薬理学雑誌、2008年、第131巻、p.127−136
しかしながら、特許文献1〜4及び非特許文献1〜8には、MALT1のプロテアーゼ活性を阻害する作用を有したジフェニルピラゾール骨格を有する化合物については開示も示唆もされていない。
そこで本発明は、MALT1のプロテアーゼ活性を阻害する作用を有し、多発性硬化症や乾癬等の自己免疫疾患の治療薬又は予防薬として有用な化合物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、新規なジフェニルピラゾール誘導体又はその薬理学的に許容される塩が、MALT1のプロテアーゼ活性を阻害する作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の一般式(I)で示されるジフェニルピラゾール誘導体(以下、ジフェニルピラゾール誘導体(I))又はその薬理学的に許容される塩を提供する。
Figure 2017214315
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表し、Rは、水素原子、シアノ基、カルバモイル基、炭素数1〜3のアルキルスルホニル基又は炭素数1〜3のアシル基を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。]
上記のジフェニルピラゾール誘導体(I)は、R及びRが、塩素原子であることが好ましい。この場合、高いMALT1阻害活性が期待できる。
また、上記のジフェニルピラゾール誘導体(I)は、Rが、水素原子、シアノ基、カルバモイル基、アセチル基又はメタンスルホニル基であり、Rが、水素原子又はエチル基であることが好ましい。この場合、より高いMALT1阻害活性が期待できる。
さらには、上記のジフェニルピラゾール誘導体(I)は、R及びRが、塩素原子であり、Rが、水素原子、シアノ基、カルバモイル基、アセチル基又はメタンスルホニル基であり、Rが、水素原子又はエチル基であることがより好ましい。この場合、さらに高いMALT1阻害活性が期待でき、さらに自己免疫疾患における優れた治療効果又は予防効果が期待できる。
また、本発明は、上記のジフェニルピラゾール誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、医薬及びMALT1阻害剤を提供する。
上記の医薬は、自己免疫疾患の治療剤又は予防剤であることが好ましく、上記の自己免疫疾患の治療剤又は予防剤としては、多発性硬化症若しくは乾癬の治療剤又は予防剤であることがより好ましい。
本発明のジフェニルピラゾール誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩は、MALT1のプロテアーゼ活性を強力に阻害する作用を有し、多発性硬化症、乾癬等の自己免疫疾患に対して予防効果及び治療効果を示す医薬として用いることができる。
イミキモド誘発乾癬モデルマウスにおける皮膚の肥厚に対する実施例2の化合物の作用を示す図である。
本発明のジフェニルピラゾール誘導体は、以下の一般式(I)で示されることを特徴としている。
Figure 2017214315
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表し、Rは、水素原子、シアノ基、カルバモイル基、炭素数1〜3のアルキルスルホニル基又は炭素数1〜3のアシル基を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。]
本明細書で使用する次の用語は、特に断りがない限り、下記の定義のとおりである。
「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
上記のジフェニルピラゾール誘導体(I)は、光学異性体やジアステレオマーが存在する場合があるが、単一異性体のみならず、ラセミ体及びジアステレオマー混合物も包含する。
また、ジフェニルピラゾール誘導体(I)は、互変異性体が存在する場合があるが、一般式(I)で示される極限構造の異性体のみならず、他の互変異性体及び2種類以上の互変異性体の混合物も包含する。
ジフェニルピラゾール誘導体(I)の「薬理学的に許容される塩」としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩若しくはリン酸塩等の無機酸塩又はシュウ酸塩、マロン酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、グルコン酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、グルタル酸塩、マンデル酸塩、フタル酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩若しくはケイ皮酸塩等の有機酸塩が挙げられるが、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩又はメタンスルホン酸塩が好ましい。
ジフェニルピラゾール誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩は、無水物であってもよいし、水和物等の溶媒和物を形成していても構わない。ここで溶媒和物としては、薬理学的に許容される溶媒和物が好ましい。薬理学的に許容される溶媒和物は、水和物又は非水和物のいずれであっても構わないが、水和物が好ましい。溶媒和物を構成する溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール若しくはn−プロパノール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドが挙げられる。
ジフェニルピラゾール誘導体(I)は、その基本骨格や置換基の種類に由来する特徴に基づいた適切な方法で製造することができる。なお、これらの化合物の製造に使用する出発物質と試薬は一般に購入することができるか又は公知の方法若しくはそれらに準じた方法で製造することができる。
ジフェニルピラゾール誘導体(I)並びにその製造に使用する中間体及び出発物質は、公知の手段によって単離精製することができる。単離精製のための公知の手段としては、例えば、溶媒抽出、再結晶又はクロマトグラフィーが挙げられる。
ジフェニルピラゾール誘導体(I)が、光学異性体又は立体異性体を含有する場合には、公知の方法により、それぞれの異性体を単一化合物として得ることができる。公知の方法としては、例えば、結晶化、酵素分割又はキラルクロマトグラフィーが挙げられる。
ジフェニルピラゾール誘導体(I)は、例えば、スキーム1に記載の方法により得ることができる。
Figure 2017214315
スキーム1
[式中、R〜Rは、上記定義に同じであり、Xは、それぞれ独立して、脱離基を表す。]
Xで表される脱離基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子若しくはヨウ素原子等のハロゲン原子、メチルチオ基、エチルチオ基若しくはドデシルチオ基等の炭素数1〜12のアルキルチオ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基若しくはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基等の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルアミノ基等のアルキルスルホニルアミノ基又はイミダゾール−1−イル基若しくはピラゾール−1−イル基等のアゾリル基が挙げられる。
(第1工程)
ジフェニルピラゾール誘導体(I)は、ジフェニルピラゾール−3−イルメチルアミン誘導体(II)とグアニジノ化剤(III)とのグアニジノ化反応により得られる。
グアニジノ化反応に用いるグアニジノ化剤(III)の量は、ジフェニルピラゾール−3−イルメチルアミン誘導体(II)に対して0.5〜10当量が好ましく、1〜3当量がより好ましい。
グアニジノ化反応は、所望により塩基を用いてもよい。用いる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン若しくはピリジン等の有機塩基、炭酸水素ナトリウム若しくは炭酸カリウム等の無機塩基又はそれらの混合物が挙げられるが、トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン又はピリジン等の有機塩基が好ましい。
グアニジノ化反応に用いる反応溶媒としては、用いる試薬の種類に応じて適宜選択されるが、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、アセトニトリル若しくはプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド若しくはジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン若しくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル若しくは酢酸プロピル等のエステル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム若しくは1,2−ジクロロエタン等の塩素系溶媒又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、アセトニトリル又はプロピオニトリル等のニトリル系溶媒が好ましい。
グアニジノ化反応の反応温度は、0〜300℃が好ましく、30〜200℃がより好ましい。
グアニジノ化反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、1〜30時間が好ましい。
グアニジノ化反応に用いるフェニルピラゾール−3−イルメチルアミン誘導体(II)の反応開始時の濃度は、1mmol/L〜1mol/Lが好ましい。
グアニジノ化反応に用いるグアニジノ化剤(III)は、購入することができるか又は公知の方法若しくはそれらに準じた方法で製造することができる。
(第2工程)
カルバムイミド酸誘導体(V)は、ジフェニルピラゾール−3−イルメチルアミン誘導体(II)とカルボンイミド酸誘導体(IV)とのカルバムイミド化反応により得られる。
カルバムイミド化反応に用いるカルボンイミド酸誘導体(IV)の量は、ジフェニルピラゾール−3−イルメチルアミン誘導体(II)に対して0.5〜10当量が好ましく、1〜3当量がより好ましい。
カルバムイミド化反応は、所望により塩基を用いてもよい。用いる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン若しくはピリジン等の有機塩基、炭酸水素ナトリウム若しくは炭酸カリウム等の無機塩基又はそれらの混合物が挙げられるが、トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン又はピリジン等の有機塩基が好ましい。
カルバムイミド化反応に用いる反応溶媒としては、用いる試薬の種類に応じて適宜選択されるが、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、アセトニトリル若しくはプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド若しくはジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン若しくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル若しくは酢酸プロピル等のエステル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム若しくは1,2−ジクロロエタン等の塩素系溶媒又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、アセトニトリル又はプロピオニトリル等のニトリル系溶媒が好ましい。
カルバムイミド化反応の反応温度は、−78℃〜200℃が好ましく、−20℃〜200℃がより好ましい。
カルバムイミド化反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、1〜30時間が好ましい。
カルバムイミド化反応に用いるフェニルピラゾール−3−イルメチルアミン誘導体(II)の反応開始時の濃度は、1mmol/L〜1mol/Lが好ましい。
カルバムイミド化反応に用いるカルボンイミド酸誘導体(IV)は、購入することができるか又は公知の方法若しくはそれらに準じた方法で製造することができる。
(第3工程)
ジフェニルピラゾール誘導体(I)は、カルバムイミド酸誘導体(V)とアミン誘導体(VI)とのグアニジノ化反応により得られる。
グアニジノ化反応は、第1工程のグアニジノ化反応と同様にして行うことができる。
グアニジノ化反応に用いるアミン誘導体(VI)は、購入することができるか又は公知の方法若しくはそれらに準じた方法で製造することができる。
上記の一般式(I)においてRがカルバモイル基であるジフェニルピラゾール誘導体(Ib)は、例えば、スキーム2に示すように、酸存在下、上記の一般式(I)のRがシアノ基であるジフェニルピラゾール誘導体(Ia)の加水分解反応により得ることができる。
Figure 2017214315
スキーム2

[式中、R、R及びRは、上記定義に同じである。]
加水分解反応に用いる酸としては、例えば、塩酸若しくは硫酸等の無機酸類、酢酸若しくはトリフルオロ酢酸等のカルボン酸類又はメタンスルホン酸若しくはトリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸類が挙げられるが、塩酸若しくは硫酸等の無機酸類が好ましい。
加水分解反応に用いる酸の量は、ジフェニルピラゾール誘導体(Ia)に対して0.5〜1000当量が好ましく、1〜200当量がより好ましい。
加水分解反応に用いる反応溶媒としては、用いる酸の種類に応じて適宜選択されるが、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール若しくはtert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド若しくはジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン若しくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル若しくはプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、水又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、水が好ましい。
加水分解反応の反応温度は、−30℃〜300℃が好ましく、0℃〜200℃がより好ましい。
加水分解反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、1〜30時間が好ましい。
加水分解反応に用いるジフェニルピラゾール誘導体(Ia)の反応開始時の濃度は、1mmol/L〜1mol/Lが好ましい。
ジフェニルピラゾール−3−イルメチルアミン誘導体(II)は、例えば、スキーム3に記載の方法により得ることができる。
Figure 2017214315
スキーム3

[式中、R及びRは、上記定義に同じであり、Rは、カルボキシル基の保護基を表し、Rは、メチル基、トリフルオロメチル基又はp−トリル基等の基を表す。]
で表されるカルボキシル基の保護基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基又はベンジル基が挙げられる。
(第1工程)
ジフェニルピラゾール−3−カルボン酸エステル誘導体(IX)は、ジケトン誘導体(VII)とヒドラジン誘導体(VIII)との脱水縮合反応により得られる。
脱水縮合反応に用いるヒドラジン誘導体(VIII)の量は、ジケトン誘導体(VII)に対して0.5〜10当量が好ましく、1〜3当量がより好ましい。
脱水縮合反応に用いる反応溶媒としては、用いる試薬の種類に応じて適宜選択されるが、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール若しくはtert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド若しくはジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン若しくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール又はtert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒が好ましい。
脱水縮合反応の反応温度は、−30℃〜300℃が好ましく、0〜150℃がより好ましい。
脱水縮合反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、1〜30時間が好ましい。
脱水縮合反応に用いるジケトン誘導体(VII)の反応開始時の濃度は、1mmol/L〜1mol/Lが好ましい。
脱水縮合反応に用いるヒドラジン誘導体(VIII)は、購入することができるか又は公知の方法若しくはそれらに準じた方法で製造することができる。
(第2工程)
ジフェニルピラゾール−3−イルメタノール誘導体(X)は、ジフェニルピラゾール−3−カルボン酸エステル誘導体(IX)の還元反応により得られる。
還元反応に用いる還元剤としては、例えば、水素化リチウムアルミニウム若しくは水素化ジイソブチルアルミニウム等のアルミニウム系還元剤、水素化ホウ素ナトリウム若しくは水素化ホウ素リチウム等のホウ素系還元剤が挙げられるが、水素化リチウムアルミニウム又は水素化ジイソブチルアルミニウム等のアルミニウム系還元剤が好ましい。
還元反応に用いる還元剤の量は、ジフェニルピラゾール−3−カルボン酸エステル誘導体(IX)に対して0.3〜100当量が好ましく、0.5〜20当量がより好ましい。
還元反応に用いる反応溶媒としては、用いる試薬の種類に応じて適宜選択されるが、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール若しくはtert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド若しくはジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン若しくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、トルエン若しくはキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン又は1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒が好ましい。
還元反応の反応温度は、−100℃〜200℃が好ましく、−50℃〜50℃がより好ましい。
還元反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、1〜30時間が好ましい。
還元反応に用いるジフェニルピラゾール−3−カルボン酸エステル誘導体(IX)の反応開始時の濃度は、1mmol/L〜1mol/Lが好ましい。
(第3工程)
スルホン酸ジフェニルピラゾール−3−イルメチルエステル誘導体(XI)は、ジフェニルピラゾール−3−イルメタノール誘導体(X)のスルホニル化反応により得られる。
スルホニル化反応に用いるスルホニル化剤としては、例えば、塩化メタンスルホニル、塩化トルエンスルホニル又はトリフルオロメタンスルホン酸無水物が挙げられるが、塩化メタンスルホニルが好ましい。
スルホニル化反応に用いるスルホニル化剤の量は、ジフェニルピラゾール−3−イルメタノール誘導体(X)に対して0.5〜100当量が好ましく、0.8〜10当量がより好ましい。
スルホニル化反応は、所望により塩基を用いてもよい。用いる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン若しくはピリジン等の有機塩基、炭酸水素ナトリウム若しくは炭酸カリウム等の無機塩基又はそれらの混合物が挙げられるが、トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン若しくはピリジン等の有機塩基が好ましい。
スルホニル化反応に用いる反応溶媒としては、用いる試薬の種類に応じて適宜選択されるが、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール若しくはtert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド若しくはジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン若しくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、トルエン若しくはキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン若しくは2,6−ルチジン等の塩基性溶媒又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、ピリジン又は2,6−ルチジン等の塩基性溶媒が好ましい。
スルホニル化反応の反応温度は、−100℃〜200℃が好ましく、−50℃〜50℃がより好ましい。
スルホニル化反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、1〜30時間が好ましい。
スルホニル化反応に用いるジフェニルピラゾール−3−イルメタノール誘導体(X)の反応開始時の濃度は、1mmol/L〜1mol/Lが好ましい。
(第4工程)
N−(ジフェニルピラゾール−3−イルメチル)フタルイミド誘導体(XIII)は、スルホン酸ジフェニルピラゾール−3−イルメチルエステル誘導体(XI)とフタルイミドカリウム(XII)との置換反応により得られる。
置換反応に用いるフタルイミドカリウム(XII)の量は、スルホン酸ジフェニルピラゾール−3−イルメチルエステル誘導体(XI)に対して0.5〜100当量が好ましく、0.8〜10当量がより好ましい。
置換反応に用いる反応溶媒としては、用いる試薬の種類に応じて適宜選択されるが、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール若しくはtert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド若しくはジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン若しくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、トルエン若しくはキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド又はジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が好ましい。
置換反応の反応温度は、−30℃〜300℃が好ましく、0〜150℃がより好ましい。
置換反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、1〜30時間が好ましい。
置換反応に用いるスルホン酸ジフェニルピラゾール−3−イルメチルエステル誘導体(XI)の反応開始時の濃度は、1mmol/L〜1mol/Lが好ましい。
(第5工程)
ジフェニルピラゾール−3−イルメチルアミン誘導体(II)は、ヒドラジン存在下、N−(ジフェニルピラゾール−3−イルメチル)フタルイミド誘導体(XIII)の脱保護反応により得られる。
脱保護反応に用いるヒドラジンの量は、N−(ジフェニルピラゾール−3−イルメチル)フタルイミド誘導体(XIII)に対して0.5〜100当量が好ましく、0.8〜10当量がより好ましい。
脱保護反応に用いる反応溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール若しくはtert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド若しくはジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン若しくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、トルエン若しくはキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール又はtert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒が好ましい。
脱保護反応の反応温度は、−30℃〜300℃が好ましく、0〜150℃がより好ましい。
脱保護反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、1〜30時間が好ましい。
脱保護反応に用いるN−(ジフェニルピラゾール−3−イルメチル)フタルイミド誘導体(XIII)の反応開始時の濃度は、1mmol/L〜1mol/Lが好ましい。
ジケトン誘導体(VII)は、例えば、スキーム4に示すように、塩基の存在下、アセトフェノン誘導体(XIV)とシュウ酸エステル誘導体(XV)とのクライゼン縮合により得ることができる。
Figure 2017214315
スキーム4

[式中、R及びRは、上記定義に同じである。]
クライゼン縮合に用いるシュウ酸エステル誘導体(XV)の量は、アセトフェノン誘導体(XIV)に対して0.5〜10当量が好ましく、1〜3当量がより好ましい。
クライゼン縮合に用いる塩基としては、例えば、トリエチルアミン若しくはN−エチルジイソプロピルアミン等のアミン類、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド若しくはカリウムtert−ブトキシド等の金属アルコキシド類、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム等の無機塩基、水素化ナトリウム、水素化カリウム若しくは水素化カルシウム等の水素化金属化合物、メチルリチウム若しくはブチルリチウム等のアルキルリチウム、リチウムヘキサメチルジシラジド若しくはリチウムジイソプロピルアミド等のリチウムアミド又はそれらの混合物が挙げられるが、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド又はカリウムtert−ブトキシド等の金属アルコキシド類が好ましい。
クライゼン縮合に用いる塩基の量は、アセトフェノン誘導体(XIV)に対して0.5〜100当量が好ましく、1〜20当量がより好ましい。
クライゼン縮合に用いる反応溶媒としては、用いる試薬の種類に応じて適宜選択されるが、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール若しくはtert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド若しくはジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン若しくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール又はtert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒が好ましい。
クライゼン縮合の反応温度は、−78℃〜200℃が好ましく、0℃〜100℃がより好ましい。
クライゼン縮合の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、1〜30時間が好ましい。
クライゼン縮合に用いるアセトフェノン誘導体(XIV)の反応開始時の濃度は、1mmol/L〜1mol/Lが好ましい。
クライゼン縮合に用いるアセトフェノン誘導体(XIV)は、購入することができるか又は公知の方法若しくはそれらに準じた方法で製造することができる。
クライゼン縮合に用いるシュウ酸エステル誘導体(XV)は、購入することができる、又は公知の方法若しくはそれらに準じた方法で製造することができる。
本発明の医薬及びMALT1阻害剤は、ジフェニルピラゾール誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴としている。上記の医薬は、自己免疫疾患の治療剤又は予防剤であることが好ましく、多発性硬化症若しくは乾癬の治療剤又は予防剤であることがより好ましい。
「MALT1阻害」とは、MALT1のプロテアーゼ活性を阻害することを意味する。
「MALT1阻害剤」とは、MALT1のプロテアーゼ活性を阻害して、その活性を消失又は減弱する作用を有する化合物を意味する。
「自己免疫疾患」とは、免疫系が自身の正常な細胞や組織に対してまで過剰に反応し攻撃を加えてしまうことで症状を来す疾患の総称であり、具体的には、例えば、多発性硬化症、乾癬、リウマチ、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、ぶどう膜炎又はリウマチ性多発性筋痛症が挙げられる。
ジフェニルピラゾール誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩は、MALT1のプロテアーゼ活性、すなわち、基質切断活性を阻害することにより、MALT1の機能を抑制することを特徴としている。したがって、ジフェニルピラゾール誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩は、MALT1のプロテアーゼ活性を阻害することによって病態の改善又は症状の寛解が期待できる疾患に対する医薬、特に、自己免疫疾患の治療剤又は予防剤として用いることができる。
ジフェニルピラゾール誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩が、MALT1のプロテアーゼ活性を阻害する作用を有することは、in vitro試験を用いて評価できる。in vitro試験としては、例えば、MALT1による基質(例えば、BCL10タンパク質)の切断を評価する方法(Cancer Cell、2012年、第22巻、p.825−837)が挙げられる。また、MALT1のプロテアーゼ活性を阻害することによって引き起こされるNF−κB転写活性阻害作用は、レポータージーンアッセイを用いて評価することができる(国際公開第2009/065897号)。
ジフェニルピラゾール誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩が、MALT1の機能を抑制することは、リンパ球細胞株(例えば、Jurkat T cell)を用いて、IL−2(インターロイキン−2)の産生量を指標に評価することができる。IL−2産生を指標にした方法としては、例えば、Jurkat T cellを、Phorbol 12−myristate 13−acetateとIonomycinとで共刺激すること、又は、CD3とCD28とで共刺激することによって、MALT1依存的に誘発されるIL−2産生を測定する方法が挙げられる(Cancer Cell、2012年、第22巻、p.825−837)。
ジフェニルピラゾール誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩が、自己免疫疾患の治療又は予防に有効であることは、病態モデルを用いて評価できる。病態モデルとしては、例えば、実験的自己免疫性脳脊髄炎モデル(Journal of Neuroscience Research、2006年、第84巻、p.1225−1234)、コラーゲン関節炎モデル(Annual Review of Immunology、1984年、第2巻、p.199−218)、デキストラン硫酸ナトリウム誘発大腸炎モデル(Laboratory Investigation、1993年、第69巻、p.238−249)、全身性エリテマトーデスの自然発症モデル(Nature、2000年、第404巻、p.995−999)、強直性脊椎炎モデル(Arthritis Research & Therapy、2012年、第14巻、p.253−265)、実験的自己免疫性ぶどう膜炎モデル(Journal of Immunology、2006年、第36巻、p.3071−3081)又はイミキモド誘発乾癬モデル(The Journal of Dermatological Science、2013年、第71巻、第1号、p.29−36)が挙げられる。
ジフェニルピラゾール誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩の、自己免疫疾患の治療又は予防に対する有効性は、上記のin vitro試験を用いて、例えば、MALT1のプロテアーゼ活性の低下、又は、MALT1のプロテアーゼ活性を阻害することによって引き起こされるNF−κB転写活性の低下若しくはMALT1の機能の指標であるIL−2産生量の低下を指標に評価することができる。また、自己免疫疾患の一つである、乾癬の治療又は予防に対する有効性は、上記のイミキモド誘発乾癬モデルを用いて、例えば、乾癬モデルの症状進行に伴って増加する皮膚の厚みの低下を指標に評価することができる。
ジフェニルピラゾール誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩は、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、サル、ウシ、ヒツジ又はヒト)、特にヒトに対して投与した場合に、有用な医薬(特に、自己免疫疾患の治療剤又は予防剤)として用いることができる。ジフェニルピラゾール誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を医薬として臨床で使用する際には、ジフェニルピラゾール誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩をそのまま用いてもよいし、賦形剤、安定化剤、保存剤、緩衝剤、溶解補助剤、乳化剤、希釈剤又は等張化剤等の添加剤が適宜混合されていてもよい。また、上記の医薬は、これらの薬剤用担体を適宜用いて、通常の方法によって製造することができる。上記の医薬の投与形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤若しくはシロップ剤等による経口剤、吸入剤、注射剤、座剤若しくは液剤等による非経口剤又は局所投与をするための軟膏剤、クリーム剤若しくは貼付剤等が挙げられる。また、公知の持続型製剤としても構わない。
上記の医薬は、ジフェニルピラゾール誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩を、0.00001〜90重量%含有することが好ましく、0.01〜70重量%含有することがより好ましい。用量は、患者の症状、年齢及び体重、並びに投与方法に応じて適宜選択されるが、成人に対する有効成分量として、注射剤の場合1日0.1μg〜1g、経口剤の場合1μg〜10g、貼付剤の場合1μg〜10gが好ましく、それぞれ1回又は数回に分けて投与することができる。
上記の医薬の薬理学的に許容される担体又は希釈剤としては、例えば、結合剤(シロップ、ゼラチン、アラビアゴム、ソルビトール、ポリビニルクロリド又はトラガント等)、賦形剤(砂糖、乳糖、コーンスターチ、リン酸カルシウム、ソルビトール又はグリシン等)又は滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、タルク又はシリカ等)を挙げることができる。
上記の医薬は、その治療若しくは予防効果の補完又は増強あるいは投与量の低減のために、他の薬剤と適量配合又は併用して使用しても構わない。
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。
なお、実施例化合物の合成に使用される化合物で合成法の記載のないものについては、市販の化合物を使用した。NMRデータ中に示される溶媒名は、測定に使用した溶媒を示している。また、400 MHz NMRスペクトルは、JNM−AL400型核磁気共鳴装置(日本電子社)を用いて測定した。ケミカルシフトは、テトラメチルシランを基準として、δ(単位:ppm)で表し、シグナルはそれぞれs(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、quint(五重線)、sept(七重線)、m(多重線)、br(幅広)、dd(二重二重線)、dt(二重三重線)、ddd(二重二重二重線)、dq(二重四重線)、td(三重二重線)、tt(三重三重線)で表した。ESI−MSスペクトルは、Agilent Technologies 1200 Series、G6130A(Agilent Technologies社)を用いて測定した。アミンシリカゲルは富士シリシア化学製アミンシリカゲルDM1020を用い、クロマトグラフィーはYFLC W−prep2XY(山善社)を用いた。マイクロウェーブ照射反応装置はmonowave300(Anton Paar社)を用いた。
(実施例1)1−((1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メチル)−2−シアノ−3−エチルグアニジンの合成:
Figure 2017214315
1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸エチルの合成:
Figure 2017214315
4−(4−クロロフェニル)−2,4−ジオキソブタン酸エチル(5.0g)及び(4−クロロフェニル)ヒドラジン 塩酸塩(3.5g)をエタノール(50mL)に溶解させ、一晩加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却した後、減圧濃縮した。残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製した後、得られた固体をヘキサンで洗浄することにより表題化合物(4.2g)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.42(3H,t,J=7.1Hz),4.46(2H,q,J=7.1Hz),7.03(1H,s),7.13-7.16(2H,m),7.25-7.36(6H,m).
MS(ESI):361.0(M+H).
(1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メタノールの合成:
Figure 2017214315
水素化リチウムアルミニウム(2.5g)をテトラヒドロフラン(50mL)中に懸濁させ、4℃に冷却した後、1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−カルボン酸エチル(10.0g)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液をゆっくり滴下した。反応混合物を4時間攪拌した後、硫酸ナトリウム十水和物を加え、さらに1時間攪拌した。不溶物をろ過して除去し、ろ液を減圧濃縮することにより表題化合物(8.8g)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:2.11(1H,t,J=5.9Hz),4.78(2H,d,J=5.9Hz),6.52(1H,s),7.13-7.23(4H,m),7.29-7.34(4H,m).
MS(ESI):319.0(M+H).
2−((1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メチル)イソインドリン−1,3−ジオンの合成:
Figure 2017214315
(1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メタノール(6.0g)をピリジン(30mL)に溶解させ、4℃に冷却した後、塩化メタンスルホニル(2.9mL)をゆっくり滴下した。反応混合物を室温まで昇温させた後、3時間攪拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を1mol/L塩酸及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物(3.0g)及びフタルイミドカリウム(1.7g)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(15mL)に溶解させ、80℃で6時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、水を加えて酢酸エチルで抽出した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製した後、得られた固体を再結晶(ヘキサン−酢酸エチル)することにより表題化合物(2.6g)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:4.99(2H,s),6.47(1H,s),7.08-7.11(2H,m),7.17-7.20(2H,m),7.25-7.30(4H,m),7.72-7.74(2H,m),7.88-7.90(2H,m).
MS(ESI):448.1(M+H).
(1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メタンアミンの合成:
Figure 2017214315
2−((1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メチル)イソインドリン−1,3−ジオン(2.5g)及びヒドラジン一水和物(0.81mL)をメタノール(15mL)に溶解させ、50℃で5時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、不溶物をろ過して除去した。ろ液を減圧下濃縮した。残渣に酢酸エチル(30mL)を加え、生じた固体をろ過して除去した。ろ液を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮することにより表題化合物(1.7g)を得た。
1H-NMR(DMSO-D6)δ:1.80(2H,brs),3.74(2H,s),6.65(1H,s),7.23-7.27(4H,m),7.44-7.49(4H,m).
MS(ESI):318.0(M+H).
N−((1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メチル)−N’−シアノカルバムイミド酸フェニルの合成:
Figure 2017214315
(1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メタンアミン(1.5g)をジクロロメタン(15mL)に溶解させた後、室温下N−シアノカルボンイミド酸ジフェニル(1.2g)を加え、2時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮し、残渣をヘキサン−酢酸エチル(3:1、32mL)中に懸濁させ、生じた固体をろ取することにより表題化合物(2.1g)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:4.58-4.76(2H,m),6.50(1H,s),7.11-7.45(13H,m).
MS(ESI):462.1(M+H).
1−((1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メチル)−2−シアノ−3−エチルグアニジンの合成:
Figure 2017214315
N−((1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メチル)−N’−シアノカルバムイミド酸フェニル(0.073g)及びエチルアミン(2.0mol/L THF溶液、0.24mL)をアセトニトリル(2mL)に溶解させ、マイクロウェーブ照射下120℃で15分間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより表題化合物(以下、実施例1の化合物)(0.042g)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.18(3H,t,J=7.2Hz),3.22-3.29(2H,m),4.43(2H,d,J=5.4Hz),5.91(2H,brs),6.47(1H,s),7.12-7.20(4H,m),7.30-7.36(4H,m).
MS(ESI):413.1(M+H).
(実施例2)1−((((1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メチル)アミノ)(エチルアミノ)メチレン)尿素の合成:
Figure 2017214315
実施例1の化合物(0.40g)及び濃塩酸(5mL)の混合物を50℃で4時間攪拌した。反応混合物にエタノールを加え、減圧濃縮した。残渣をヘキサン−酢酸エチル中に懸濁させ、生じた固体をろ取することにより表題化合物(以下、実施例2の化合物)(0.41g)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.10-1.27(3H,m),3.18-3.32(2H,m),4.37-4.73(4H,m),6.47(1H,s),7.12-7.20(4H,m),7.29-7.35(4H,m).
MS(ESI):431.1(M+H).
(実施例3)N−(アミノ(((1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メチル)アミノ)メチレン)アセトアミド 塩酸塩の合成:
Figure 2017214315
S−メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素酸塩の合成:
Figure 2017214315
チオアミド(10g)をメタノール(100mL)に溶解させた後、ヨウ化メチル(19g)を加えた。反応混合物を1時間加熱還流した後、減圧濃縮することにより表題化合物(27.6g)を得た。
1H-NMR(DMSO-D6)δ:2.57(3H,s),8.89(4H,s).
N−(tert−ブトキシカルボニル)−S−メチルイソチオ尿素の合成:
Figure 2017214315
S−メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素酸塩(28g)及びトリエチルアミン(18mL)をジクロロメタン(250mL)に溶解させた後、二炭酸ジ−tert−ブチル(28mL)を加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌した後、水を加えクロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた固体を酢酸エチルで洗浄することにより表題化合物(24g)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.51(9H,s),2.46(3H,s).
N−アセチル−N’−(tert−ブトキシカルボニル)−S−メチルイソチオ尿素の合成:
Figure 2017214315
N−(tert−ブトキシカルボニル)−S−メチルイソチオ尿素(1.0g)及びN−エチルジイソプロピルアミン(DIPEA)(0.92mL)をジクロロメタン(3mL)に溶解させた後、無水酢酸(0.50mL)を加えた。反応混合物を室温で3時間攪拌した後、水を加えクロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた固体を再結晶(酢酸エチル)することにより表題化合物(0.61g)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.53(9H,s),2.21(3H,s),2.39(3H,s).
1−(tert−ブトキシカルボニル)−3−((1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メチル)−2−アセチルグアニジンの合成:
Figure 2017214315
(1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メタンアミン(0.60g)をジクロロメタン(1mL)に溶解させた後、N−アセチル−N’−(tert−ブトキシカルボニル)−S−メチルイソチオ尿素(0.44g)を加えた。反応混合物を一晩加熱還流させた後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより表題化合物(0.81g)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.54(9H,s),2.23(3H,s),4.72-4.74(2H,m),6.46(1H,s),7.14-7.34(8H,m),9.45(1H,brs),12.44(1H,brs).
MS(ESI):502.1(M+H).
N−(アミノ(((1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メチル)アミノ)メチレン)アセトアミド 塩酸塩の合成:
Figure 2017214315
1−(tert−ブトキシカルボニル)−3−((1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メチル)−2−アセチルグアニジン(1.0g)及び4mol/L塩化水素−酢酸エチル溶液(5mL)を酢酸エチル(5mL)に溶解させ、反応混合物を室温で一晩攪拌した後、減圧濃縮した。得られた固体を酢酸エチルで洗浄することにより表題化合物(以下、実施例3の化合物)(0.76g)を得た。
1H-NMR(CD3OD)δ:2.22(3H,s),4.65(2H,s),6.66(1H,s),7.23-7.29(4H,m),7.37-7.44(4H,m).
MS(ESI):402.1(M+H).
(実施例4)N−(アミノ(((1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メチル)アミノ)メチレン)メタンスルホンアミド 塩酸塩の合成:
Figure 2017214315
N−(tert−ブトキシカルボニル)−N’−メタンスルホニル−S−メチルイソチオ尿素の合成:
Figure 2017214315
N−(tert−ブトキシカルボニル)−S−メチルイソチオ尿素(1.0g)及びN−エチルジイソプロピルアミン(DIPEA)(0.92mL)をジクロロメタン(3mL)に溶解させた後、0℃まで冷却し、塩化メタンスルホニル(0.41mL)を加えた。反応混合物を室温まで昇温し、1時間攪拌した後、水を加えクロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより表題化合物(1.1g)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.50(9H,s),2.34(3H,s),3.09(3H,s).
1−(tert−ブトキシカルボニル)−3−((1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メチル)−2−メタンスルホニルグアニジンの合成:
Figure 2017214315
(1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メタンアミン(1.0g)をジクロロメタン(5mL)に溶解させた後、N−(tert−ブトキシカルボニル)−N’−メタンスルホニル−S−メチルイソチオ尿素(0.86g)を加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌した後、減圧濃縮した。得られた固体を再結晶(酢酸エチル)することにより表題化合物(1.4g)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.49(9H,s),3.04(3H,s),4.60-4.61(2H,m),6.49(1H,s),7.13-7.15(2H,m),7.20-7.22(2H,m),7.30-7.34(4H,m),8.91(1H,brs),9.79(1H,brs).
MS(ESI):538.1(M+H).
N−(アミノ(((1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メチル)アミノ)メチレン)メタンスルホンアミド 塩酸塩の合成:
Figure 2017214315
1−(tert−ブトキシカルボニル)−3−((1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メチル)−2−メタンスルホニルグアニジン(1.0g)を酢酸エチル(5mL)に溶解させ、4mol/L塩化水素−酢酸エチル溶液(5mL)を加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌した後、減圧濃縮し、残渣を酢酸エチルで洗浄することにより表題化合物(以下、実施例4の化合物)(1.3g)を得た。
1H-NMR(CD3OD)δ:3.31(3H,s),4.60-4.64(2H,m),6.64(1H,s),7.22-7.28(4H,m),7.36-7.44(4H,m).
MS(ESI):438.0(M+H).
(実施例5)1−((1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メチル)グアニジンの合成:
Figure 2017214315
(1,5−ビス(4−クロロフェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)メタンアミン(0.10g)及びトリエチルアミン(0.11mL)をテトラヒドロフラン(1mL)に溶解させた後、1−アミジノピラゾール 塩酸塩(51mg)を加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌した後、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(0.35mL)及び水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた固体を再結晶(ヘキサン−酢酸エチル)することにより表題化合物(以下、実施例5の化合物)(0.030g)を得た。
1H-NMR(CD3OD)δ:4.48(2H,s),6.62(1H,s),7.22-7.28(4H,m),7.37-7.44(4H,m).
MS(ESI):360.1(M+H).
(実施例6)MALT1のプロテアーゼ活性阻害評価:
ジフェニルピラゾール誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩が、MALT1のプロテアーゼ活性を阻害することは、文献(Cancer Cell、2012年、第22巻、p.825−837)記載の方法に準じ、in vitroの実験系で評価した。すなわち、リコンビナントMALT1が蛍光標識した人工ペプチド基質を切断することで生じる蛍光値の上昇に対する、化合物による蛍光値の低下の度合いを測定することで評価した。
リコンビナントGST融合MALT1の作製
PCRにて増幅したヒトMALT1遺伝子(GenBankアクセッション番号:AB026118.1)の全長cDNAを、pGEX6P3ベクター(GE Healthcare)のGST遺伝子の下流に存在するSalIサイトにインフレームとなるよう組み込んだベクター(以下、pGEX6P3―MALT1ベクター)を作製した。次いで、pGEX6P3―MALT1ベクターをタンパク質発現用大腸菌(BL21−RIL−codon plus−DE3、Agilent)にトランスフォームした後、アンピシリン耐性スクリーニング及びコロニーPCRによる解析を行って、リコンビナントGST融合MALT1を発現する大腸菌株を得た。タンパク質の発現誘導はイソプロピル−β−チオガラクトピラノシドで行った。発現誘導後、大腸菌の培養液から遠心により大腸菌沈殿物を回収し、大腸菌沈殿物を破砕後、遠心して上清を得た。上清を、GSTrap FFカラム(GE Health Care)を用いて精製し、リコンビナントGST融合MALT1を得た。
MALT1のプロテアーゼ活性阻害評価
1検体当たり、89μLの酵素溶液(4.8μg/mL GST融合MALT1、50mmol/L MES、150mmol/L NaCl、10% sucrose、0.1% CHAPS、10mmol/L ジチオトレイトール、1mol/L tri−ammonium citrate)に、各濃度の被験化合物(DMSO希釈溶液)を1μLずつ添加し、混合液とした。混合液を、室温で30分間インキュベートした後、混合液の蛍光値を測定した(1回目測定の蛍光値)(Ex:380nm、Em:460nm;Envision(Perkin Elmer))。次に、混合液に200μmol/Lの基質(Ac−LRSR−AMC、SM Biochemicals)を10μL添加し(最終濃度:20μmol/L)、30℃で80分間インキュベートして反応させた後、その反応液の蛍光値を測定した(2回目測定の蛍光値)(Ex:380nm、Em:460nm;Envision(Perkin Elmer))。なお、被験化合物非添加(DMSOのみ添加)、酵素非添加かつ基質添加のウェル、及び、被験化合物非添加(DMSOのみ添加)、酵素添加かつ基質添加のウェルを設けた。
1回目測定の蛍光値を「F1」、2回目測定の蛍光値を「F2」とした。被験化合物非添加(DMSOのみ添加)、酵素非添加かつ基質添加のウェルのF2―F1を「Fback」とし、被験化合物非添加(DMSOのみ添加)、酵素添加かつ基質添加のウェルのF2―F1を「Fpositive」、被験化合物添加、酵素添加かつ基質添加のウェルのF2―F1を「Fsample」として、被験化合物によるMALT1のプロテアーゼ活性阻害率(%)を次の式で算出した。
阻害率(%)=100×(1―(Fsample―Fback)/(Fpositive―Fback))
各被験化合物のIC50値を表1に示す。表1の結果から明らかな通り、本発明のジフェニルピラゾール誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩が、MALT1のプロテアーゼ活性を阻害する作用を有することが示された。
Figure 2017214315
(実施例7)イミキモド誘発乾癬モデルマウスにおける皮膚の肥厚の抑制効果:
ジフェニルピラゾール誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩が、自己免疫疾患の一つである乾癬に対して治療効果を発揮することは、文献(The Journal of Dermatological Science、2013年、第71巻、第1号、p.29−36)に準じた方法により、イミキモド誘発乾癬モデルマウスを用いたin vivoの実験系で評価した。すなわち、イミキモド誘発乾癬モデルの症状進行に伴って増加する皮膚の厚みを指標として、皮膚の厚みに対する化合物による抑制効果を検証することで評価した。
7週齢のBALB/c系雄性マウス(日本チャールス・リバー)を、予備飼育の後、8週齢で使用した。イミキモド初回投与日(以下、誘発日)の3日前に、イソフルラン麻酔下でマウスの背部を電気バリカンで毛刈りをした後、除毛剤(エピラット、カネボウ)を用いて除毛した。乾癬モデル誘発の為、70mgのベセルナクリーム5%(イミキモド投与量3.5mg/body/day)を、誘発日から誘発後2日目までの3日間、1日1回、除毛したマウス背部に塗布した。被験化合物は、0.5%メチルセルロース溶液に懸濁して投与薬液とした。投与薬液を、誘発日から誘発後2日目までの3日間、午前及び午後の1日2回、経口投与した(投与容量は10mL/kg)。なお、0.5%メチルセルロース溶液を同様に投与した群を溶媒投与群として設けた。
誘発日のイミキモド投与前(誘発前)の背部皮膚の厚みと、誘発後3日目の背部皮膚の厚みを、デジタルマイクロメーター(ミツトヨ)を用いて測定し、その変化(誘発後3日目の背部皮膚の厚み−誘発前の背部皮膚の厚み)を薬効評価の指標とした。統計解析は、統計解析ソフトEXSAS(ver.7.6)を用い、ノンパラメトリックWilliams検定を実施した。
実施例2の化合物の評価結果を図1に示す。図の縦軸は、背部皮膚の厚みの変化(mm)を示し、横軸は各投与群を示す。図中の「***」は、溶媒投与群と比較して統計学的に有意(P<0.0005)であることを示す。
実施例2の化合物は、乾癬モデルの症状進行に伴う背部皮膚の厚みの増加を用量依存的に抑制し、特に、100mg/kg/dayを投与した群では、溶媒投与群と比較して統計学的に有意であった。
また、溶媒投与群の背部皮膚の厚みの変化を100%とした時、実施例3又は4の化合物を100mg/kg/day投与した群は、背部皮膚の厚みの変化が、それぞれ、59%、70%に抑制された。
これにより、本発明のジフェニルピラゾール誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩が、乾癬に対する強力な治療効果を発揮することが示された。
本発明のジフェニルピラゾール誘導体(I)又はその薬理学的に許容される塩は、MALT1のプロテアーゼ活性を強力に阻害する作用を有するため、多発性硬化症及び乾癬等の自己免疫疾患の予防用、治療用の医薬として利用できる。

Claims (6)

  1. 以下の一般式(I)で示されるジフェニルピラゾール誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
    Figure 2017214315
    [式中、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表し、Rは、水素原子、シアノ基、カルバモイル基、炭素数1〜3のアルキルスルホニル基又は炭素数1〜3のアシル基を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。]
  2. 及びRは、塩素原子である、請求項1記載のジフェニルピラゾール誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  3. は、水素原子、シアノ基、カルバモイル基、メタンスルホニル基又はアセチル基であり、Rは、水素原子又はエチル基である、請求項1又は2記載のジフェニルピラゾール誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項記載のジフェニルピラゾール誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、医薬。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項記載のジフェニルピラゾール誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、Mucosa−associated lymphoid tissue lymphoma translocation protein 1阻害剤。
  6. 請求項1〜3のいずれか一項記載のジフェニルピラゾール誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、自己免疫疾患の治療剤又は予防剤。
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