JP2017212959A - 組換え水素酸化細菌を用いたタンパク質発現方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本来微生物発現系では不溶性・不活性型でしか発現しないタンパク質を菌体内および/または培地中に直接、可溶性かつ活性型で発現させる方法を提供すること。【解決の手段】 目的タンパク質遺伝子および輸送タンパク質遺伝子を水素酸化細菌に導入して得られる水素酸化細菌、および前記水素酸化細菌を培養し前記目的タンパク質遺伝子および前記輸送タンパク質遺伝子とを共発現させることで、本来微生物では不溶性・不活性型でしか発現できないタンパク質を菌体内および/または培地中に可溶性かつ活性型で発現させる方法により、前記課題を解決する。【選択図】 図1

Description

本発明は、本来微生物では不溶性・不活性型としてしか発現できないような目的タンパク質の発現において、目的タンパク質遺伝子および輸送タンパク質遺伝子を導入することで前記タンパク質を直接可溶性かつ活性型で菌体内および/または培養液中に発現可能な水素酸化細菌、およびそれを用いた前記タンパク質の発現方法に関する。
TGF−βは多様な機能を持つ増殖因子であり、TGF−βスーパーファミリーと呼ばれる構造が類似した一群の増殖因子の一つである(非特許文献1)。これらの増殖因子は細胞の増殖、分化、細胞外マトリクスの形成などに関与する。TGF−βにはTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3等と呼ばれる複数の類縁体が知られている。これらのアミノ酸配列のホモロジーは65%以上であり、in vitro試験では類似した生理活性を示すことが報告されている(非特許文献2)。一方で、造血幹細胞への阻害、内皮細胞の増殖、脊椎動物胚における中胚葉の形成などに対する効果には相違があることが知られており(非特許文献1)、生体内ではそれぞれ別の役割をもっているものと考えられている。
TGF−βはいずれもアミノ酸残基数390〜412の2本ポリペプチド鎖よりなる前駆体として生合成され、限定的タンパク質分解を受けてC末端側のアミノ酸残基数112のポリペプチド2本よりなる成熟体となる(特許文献1)。前駆体のN末端付近にはシグナルペプチドを有しており、生合成の際の細胞外への分泌に関与する。続くプロ領域は分子種毎に長さが異なっており、タンパク質のフォールディングや2量体の形成、因子の活性調整に関与する。プロ領域には細胞結合アミノ酸配列モチーフであるRGD配列が存在し、またC末端側には限定的タンパク質分解のサイトとなる共通アミノ酸配列モチーフRXXRが存在する。成熟体は7つのシステイン残基を有し、そのうち6つがポリペプチド内でのSS結合を形成し、残りの1つはポリペプチド間でのSS結合を形成して2量体の安定化に関与する。(非特許文献3)。上記の構造はTGF−βスーパーファミリーに属するタンパク質全てに共通した構造である。
TGF−βは細胞や組織のタイプ、他の増殖因子の有無に依存して、細胞の有糸分裂や増殖・成長を促進・阻害し、脂質生成、筋発生、軟骨形成、骨形成、免疫細胞機能の調節、走化性の刺激、分化の誘導や阻害の活性を示す。また、炎症の発生後に顆粒組織の形成に関与し、フィブロネクチンやコラーゲン、各種プロテアーゼインヒビター等の細胞外マトリクス遺伝子の発現を促進するなどの多様な生理活性を示す(特許文献1)。そのためTGF−βは医薬品や再生医療における細胞調製用試薬として注目されており、安価に提供するための大腸菌による製造法の検討が多数行われている(特許文献1、非特許文献1、非特許文献4)。しかしこれらの方法ではいずれの場合も成熟体領域は菌体内に不溶性かつ不活性型のインクルージョンボディとして生成するのみであり、可溶性かつ活性型のTGF−βを得るためにはリフォールディング操作が必要であった。TGF−βのリフォールディング操作は、時間が掛かる、回収率が低い、リフォールディング効率が悪く不完全であるといった問題点があり、菌体を培養するだけで直接可溶性かつ活性型のTGF−βが得られるような菌体内での可溶性での発現方法、より望ましくは培地中への分泌発現方法が求められていた。
インクルージョンボディになりやすいタンパク質の発現において、大腸菌以外に有効と考えられる宿主のひとつとしては、水素酸化細菌Ralstonia eutrophaが知られている。Ralstonia eutrophaは従属栄養条件下の高密度培養ではPHBを含む菌体収量が281g/Lにまで達することが確認されており(非特許文献5)、古くから化成品などの発現における微生物宿主として注目されてきた。また、Ralstonia eutrophaは、このPHBの発現・分解サイクルを繰り返すことで高密度培養時でも有機酸を蓄積することなく大腸菌以上に高密度培養が可能であり、こうした代謝系の特徴から菌体内の酸化還元バランスが活性型タンパク質の製造においても有望であると考えられてきた。実際、大腸菌発現ではインクルージョンボディになり易く、高密度培養による大量調製が難しいタンパク質のひとつである有機リン分解酵素を、Ralstonia eutrophaを宿主とし、無機塩とグルコースのみの原料から大量発現した例が報告されている(非特許文献6)。
さらに、Ralstonia eutrophaはゲノム中の膜タンパク質・分泌タンパク質の種類・数が大腸菌よりも豊富であることから、タンパク質の培地中への分泌発現においても有効な宿主であると考えられている。分泌発現は細胞内発現に比べ、目的タンパク質の検出・精製が容易であり、細胞由来成分であるエンドトキシンの汚染がないため目的タンパク質の純度が高いことが知られている。また、細胞内タンパク質分解酵素による分解、非特異的ジスルフィド結合の形成、封入体の形成を防ぐことが出来るためタンパク質自体の活性が高いというメリットがある。Ralstonia eutrophaを宿主とし、タンパク質の培地中への分泌発現を行った事例としては、Ralstonia eutrophaのゲノムより目的タンパク質の分泌発現に有効な輸送タンパク質遺伝子をスクリーニングし、Fc結合性タンパク質遺伝子と共発現することで、ヒトFc受容体等のFc結合性タンパク質を培養液中に分泌発現した例が知られている(特許文献2,3)。
特許第4354980号 特開2015−171340 特願2015−066420
Hanら、1997年、Prot.Express.Purif.11,169−178 Graycarら、1989年、Mol.Endo.3,1977−1986 Bottnerら、2000年、J.Nerrochem.75,2227−2239 Huangら、2009年、Biotechon.Prog.25,1387−1395 Ryuら、1997年、Biotechnol.Bioeng. 55,28−32 Sriram Srinivasanら、2002年、Appl.Environ. Microbiol. 68,5925−32
水素酸化細菌Ralstonia eutrophaに代表されるRalstonia属の細菌はもともと温泉や土壌など様々な環境に生息している微生物であり、独立栄養条件で増殖できるなど、その環境適応性から物質の取り込みに関わる機能が発達していることが示唆されてきた。実際、芳香族化合物の取り込みや分解を行うRalstonia eutropha JMP134、重金属アンチポーターによる重金属排出能を持つRalstonia metallidurans CH34、多数の細胞外毒素を放出する機構を持つRalstonia solanacearum、細胞外PHBデポリメラーゼを持つRalstonia pickettiiなどの様々な種が存在し、細胞膜上の物質輸送に関するタンパク質が多様性に富んでいることが明らかとなっている。また、ゲノム情報解析の結果では、ゲノム中のタンパク質遺伝子のうち12%が物質の輸送に関わるものであり、大腸菌の9%と比べ多く、Ralstonia eutropha属の細菌における膜輸送タンパク質の多様性を裏付ける結果となっている。
このように大腸菌など既存の組換え微生物よりも膜輸送タンパク質が豊富であることから、膜輸送タンパク質をキャリアとして利用し、目的タンパク質の分泌発現を行う為の宿主として、Ralstonia属の水素酸化細菌は有望であると考えられる。これまで、Ralstonia属の水素酸化細菌のゲノムからスクリーニングされた、目的タンパク質の分泌発現に有効な輸送タンパク質遺伝子としては、Ralstonia eutropha H16株由来のH16_A2820遺伝子やH16_A0983遺伝子、H16_B0271のN末端領域遺伝子が挙げられる。これらの輸送タンパク質遺伝子を目的タンパク質の細胞外への発現に利用した事例としては、これら輸送タンパク質遺伝子とヒトFc受容体等のFc結合性タンパク質遺伝子の融合遺伝子を水素酸化細菌へと導入し共発現することで、Fc結合性タンパク質を培養液中に分泌発現した例が報告されている。しかしながら、Fc結合性タンパク質は元々大腸菌発現系においても可溶性発現が可能なタンパク質であり、精製工程の手間やコストといった問題を除けば、菌体ペレットからのタンパク質抽出、および精製工程を経ることで、Fc結合性を維持した活性体を得ることは既存の発現系でも比較的容易であった。
一方、TGF−βスーパーファミリーと呼ばれる構造が類似した一群の増殖因子の一つであるTGF−β3は、動物細胞を用いた発現が殆どであったが、近年再生医療技術などの発展に伴い、安価な微生物発現系での大量発現が望まれていた。これまでに報告されている大腸菌による発現系ではTGF−β3は不溶性かつ不活性型(または活性が著しく低い)のインクルージョンボディとしてのみ発現が確認されており、活性体を得るためには、菌体からのインクルージョンボディ調製、リフォールディング、精製操作が必要であった。このうち特にリフォールディング操作については、時間が掛かる、回収率が低い、リフォールディング効率が悪く不完全であるといった問題があり、これらの煩雑な工程を経た最終的な可溶性・活性型タンパク質の収量は極めて低いものであった。然るにこれまでの所、微生物発現系による、TGF−β3の可溶性かつ活性型での菌体内または培地中への直接発現例は全く報告されておらず、TGF−β3の市場価格高騰の原因にもなっていた。
そこで本発明の目的は、微生物宿主で菌体内に可溶性発現、もしくは培地中に直接分泌発現が困難であるような目的タンパク質遺伝子の発現において、前記目的タンパク質を可溶性かつ活性型で菌体外または菌体内に発現可能な水素酸化細菌、および前記水素酸化細菌を用いた可溶性かつ活性型目的タンパク質の発現方法を提供することにある。本発明では水素細菌ゲノムより選抜された目的タンパク質の分泌発現に有効な輸送タンパク質遺伝子と、目的タンパク質遺伝子とを水素細菌を宿主として共発現することで、インクルージョンボディ調製およびリフォールディング操作が不要な、可溶性かつ活性型の目的タンパク質の直接発現が可能となる。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、目的タンパク質遺伝子を導入した水素酸化細菌において、Ralstonia eutropha H16株由来のH16_A2820遺伝子またはH16_B0271N末端領域遺伝子を輸送タンパク質遺伝子として導入し、前記水素酸化細菌を宿主とし、前記目的タンパク質遺伝子と前記輸送タンパク質遺伝子とを共発現させることで、TGF−β3のように不溶性かつ不活性型としてしか微生物発現が確認されていないようなタンパク質であっても、可溶性かつ活性型タンパク質として菌体内および/または培地中へ直接発現することができ、リフォールディング操作が不要な可溶性・活性型タンパク質発現方法を構築できることを見出した。
すなわち本発明は以下の態様を包含する。
[1]目的タンパク質遺伝子および輸送タンパク質遺伝子をコードするポリヌクレオチドを導入した水素酸化細菌であって、前記タンパク質が可溶性かつ活性型で発現することを特徴とする水素酸化細菌を用いたタンパク質発現方法。
[2]前記輸送タンパク質が、配列番号11または19に記載の配列からなるポリペプチドであることを特徴とする[1]に記載の水素酸化細菌を用いたタンパク質発現方法。
[3]前記輸送タンパク質遺伝子が配列番号10または18に記載の配列からなるポリヌクレオチドである、[1]に記載の水素酸化細菌を用いたタンパク質発現方法。
[4]前記目的タンパク質がTGF−β3である、[1]から[3]のいずれかに記載の水素酸化細菌を用いたタンパク質発現方法。
[5]目的タンパク質がTGF−βスーパーファミリーに属するタンパク質である、[1]から[3]のいずれかに記載の水素酸化細菌を用いたタンパク質発現方法。
[6]前記水素酸化細菌がRalstonia属細菌である、[1]から「5]のいずれかに記載の水素酸化細菌を用いたタンパク質発現方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、宿主として用いる水素酸化細菌は特に限定はないものの、独立栄養条件下で増殖でき、かつ物質の取り込みに関わる機能が発達しているRalstonia属細菌が好ましく、その中でもRalstonia eutrophaは多様な環境適応性を持ち、かつ物質輸送に関わるタンパク質の機能や数が豊富である点で、特に好ましい水素酸化細菌といえる。
本発明は、水素酸化細菌を宿主として目的タンパク質を発現させる際に、目的タンパク質遺伝子に加えて輸送タンパク質遺伝子も水素酸化細菌に導入することを特徴としている。輸送タンパク質は、水素酸化細菌が有する分泌性タンパク質または膜タンパク質の中から、目的タンパク質との共発現により当該目的タンパク質を培養液中に放出する機能を持つタンパク質を適宜選択すればよいが、親水性の高いタンパク質や分子量40kDa以下のタンパク質を選択すると好ましい。なお輸送タンパク質の全長が40kDa以上の場合は、親水性の高い領域のみを利用し40kDa以下の輸送タンパク質として発現させればよい。
輸送タンパク質の一例としては、Ralstonia eutropha H16株 染色体1由来のH16_A2820遺伝子、染色体1由来のH16_A0983遺伝子のN末端領域、染色体2由来のH16_B0271のN末端領域があげられる。
水素酸化細菌に導入する輸送タンパク質遺伝子は、前記輸送タンパク質のcDNA等からPCR法などのDNA増幅法を用いて調製後適当な方法で連結して得てもよいし、前記輸送タンパク質のアミノ酸配列からヌクレオチド配列に変換後人工的に合成して得てもよい。アミノ酸配列からヌクレオチド配列に変換する際は、形質転換させる宿主におけるコドンの使用頻度を考慮して変換するのが好ましい。コドンの使用頻度の解析は公的データベース(例えば、かずさDNA研究所のホームページにあるCodon Usage Databaseなど)を利用することによっても可能である。輸送タンパク質遺伝子の一例としては、配列番号11に記載のアミノ酸配列からなる輸送タンパク質(H16_A2820)をコードするポリヌクレオチドである配列番号10に記載の配列からなるポリヌクレオチド、配列番号19に記載のアミノ酸配列からなる輸送タンパク質(H16_B0271のN末端側領域)をコードするポリヌクレオチドである配列番号18に記載の配列からなるポリヌクレオチドがあげられる。
本発明において目的タンパク質遺伝子および輸送タンパク質遺伝子を導入する際、ペリプラズム中または外膜中に存在する宿主由来のプロテアーゼにより自動的に切断される適当な切断リンカーを介して連結し、目的タンパク質と輸送タンパク質との融合タンパク質として共発現させると好ましい。このようにすることで、発現した目的タンパク質と輸送タンパク質の融合タンパク質がペリプラズムに輸送された後プロテアーゼにより切断されることで、他の特別な処理を行なうことなく自動的に培養液中に分泌されるからである。
ここで用いる切断リンカーは、宿主由来のプロテアーゼで切断されるものであれば特に限定はなく、例えば大腸菌のpelBやPaucimonas lemoigneiの細胞外PHB分解酵素のシグナル配列であるprePhaZ1が例示できる。また本発明において目的タンパク質遺伝子および輸送タンパク質遺伝子を導入する際、(目的タンパク質遺伝子−(好ましくは切断リンカー)−輸送タンパク質遺伝子)の融合タンパク遺伝子の上流にファジンプロモーターを導入するとさらに好ましい。ファジンプロモーターはPHB(ポリヒドロキシ酪酸)顆粒の表面を覆うタンパク質であるファジン発現のプロモーターであり、Ralstonia eutrophaの中で強力なプロモーターとして知られている。またファジンプロモーターは、培養液中の窒素源やリン源の枯渇により活性化するため、大腸菌発現系などで用いられるIPTG(イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド)などの高価な誘導剤の添加なしにタンパク質の高発現が可能となる。
本発明の水素酸化細菌を作製する際、目的タンパク質遺伝子および輸送タンパク質遺伝子の水素酸化細菌への導入方法としては、主に広域宿主ベクターを用いた発現方法と自殺ベクターを用いたゲノム組換え法がある。水素酸化細菌としてRalstonia eutrophaを用いた場合、広域宿主ベクターとしてはpBBR1MCS2、pKT230、pBHR1が、自殺ベクターとしてはpJQ200mp18、pNHG1、pLO1が、それぞれ例示できる。なお広域宿主ベクターと自殺ベクターを併用して遺伝子導入を行なってもよい。
本発明の水素酸化細菌を用いて可溶性かつ活性型で発現可能な目的タンパク質に特に限定はなく、一例として、インシュリン、インターフェロン、インターロイキン、抗体、エリスロポエチン、成長ホルモンなどのヒト由来タンパク質、およびそれらの受容体タンパク質があげられる。なお本発明の水素酸化細菌を用いて可溶性かつ活性型で発現させる目的タンパク質は、完全体であってもよいし、目的タンパク質の機能に重要な部分のみから構成されるポリペプチドであってもよいし、さらに目的タンパク質を構成するアミノ酸の一つ以上が欠失および/または挿入および/または置換されていてもよい。以降、本発明の水素酸化細菌を用いて可溶性かつ活性型で発現可能な目的タンパク質のうち、TGF−βスーパーファミリーのタンパク質であるスーパーファミリーのタンパク質であるTGF−β3について詳細に説明する。
TGFβはいずれもアミノ酸残基数390〜412の2本ポリペプチド鎖よりなる前駆体として生合成され、限定的タンパク質分解を受けてC末端側のアミノ酸残基数112のポリペプチド2本よりなる成熟体となる(特許文献1)。前駆体のN末端付近にはシグナルペプチドを有しており、生合成の際の細胞外への分泌に関与する。続くプロ領域は分子種毎に長さが異なっており、タンパク質のフォールディングや2量体の形成、因子の活性調整に関与する。プロ領域には細胞結合アミノ酸配列モチーフであるRGD配列が存在し、またC末端側には限定的タンパク質分解のサイトとなる共通アミノ酸配列モチーフRXXRが存在する。成熟体は7つのシステイン残基を有し、そのうち6つがポリペプチド内でのSS結合を形成し、残りの1つはポリペプチド間でのSS結合を形成して2量体の安定化に関与する。(非特許文献3)。上記の構造はTGFβスーパーファミリーに属するタンパク質全てに共通した構造である。
TGF−β3は生体内で通常は、プロ領域と成熟体領域間のペプチド結合切断されているものの、両者が非共有結合的に結合したラテント複合体(Latent Complex)として存在する。この複合体はN末端付近のシステイン残基で別のタンパク質であるラテントTGF結合タンパク(Latent TGF Binding Protein、LTBP)のシステイン残基にSS結合で結合し、これを介して細胞外マトリクス内に局在する。このラテント複合体のRGDモチーフに、細胞が表層のインテグリンを介して結合すると、ラテント複合体に力学的な刺激が加えられて変形し、成熟体が複合体から遊離して活性発現することが知られている。
本明細書においてTGF−β3タンパク質は、ヒトTGF−β3の成熟領域(具体的には天然型ヒトTGF−β3の場合、配列番号13に記載のアミノ酸配列のうち16番目のグルタミンから292番目のヒスチジンまでの領域)を構成するタンパク質のことをいう。ただし必ずしも活性発現に必要なこの最小限の領域のみだけでなくともよく、前述のプロ領域におけるタンパク質分解のサイトとなる共通アミノ酸配列モチーフRXXRやRGD配列を含んでいても良く、細胞増殖・分化効果などの報告されているTGF−β3の機能を発揮するものであれば特に限定されない。
本発明は、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明の水素酸化細菌を宿主としたタンパク質発現方法は、目的タンパク質遺伝子および輸送効率に優れた輸送タンパク質遺伝子であるH16_A2820またはH16_B0271N末端領域遺伝子を導入し、前記目的タンパク質と前記輸送タンパク質とを共発現させることで、これまで困難であった、微生物発現では不溶化・不活性化し易いような目的タンパク質の、菌体内または培地中への可溶性・活性型での直接発現を可能とする。
(2)本発明の水素酸化細菌を宿主としたタンパク質発現方法は、従来のタンパク質発現方法よりもタンパク質製造のコストを抑えることができる。TGF−β3のようにこれまで不溶性・不活性型としてしか微生物発現が確認されていないような種類のタンパク質の発現については、インクルージョンボディ調製やリフォールディングといった煩雑で時間の掛かる工程を経て可溶性・活性型タンパク質の回収を行う必要があり、精製プロセスを含めたコストの増大、タンパク質回収率の低下の要因となっていた。一方本発明では、目的タンパク質遺伝子および輸送効率に優れた輸送タンパク質遺伝子であるH16_A2820またはH16_B0271N末端領域遺伝子を導入し、前記目的タンパク質と前記輸送タンパク質とを共発現させることで、目的タンパク質の菌体内または培地中への直接の可溶性・活性型での発現が可能となり、インクルージョンボディ調製やリフォールディングといった手間を省き、菌体からのタンパク質抽出・精製のみまたは培地中からのタンパク質精製のみで、可溶性・活性型での目的タンパク質の回収が可能となる。
タンパク質の分泌に有効な輸送タンパク質遺伝子とTGF−β3成熟領域遺伝子の融合タンパク質遺伝子を導入した水素酸化細菌による、試験管培養におけるTGF−β3の発現性を評価・比較した結果を示す図である。黒はTGF−β3の培養液中への発現量、白は菌体タンパク質抽出物中への発現量である。
以下、タンパク質としてTGF−β3を、水素酸化細菌としてRalstonia属の菌を、それぞれ用いたときの実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更が可能であることはいうまでもない。
実施例1
(a)タグ配列とコドン最適化TGF−β3遺伝子の融合遺伝子のpTrcベクターへのクローニング
培養基材への固定化用のタグであるシステインタグまたはシスタグ、および発現タンパク質精製用タグであるヒスタグ、およびTGF−β3成熟領域をコードする遺伝子を連結した融合タンパク遺伝子のpTrcベクターへのクローニングを行った。
(a−1)シグマジェノシス2本鎖DNA合成サービスにより、システインタグとヒスタグ配列を含む配列番号1の2本鎖DNA,およびシスチンタグとヒスタグ配列を含む配列番号2の2本鎖DNAを合成した。配列番号1と配列番号2の塩基番号7―12は制限酵素NcoI切断配列、塩基番号15―20は制限酵素ClaI切断配列、塩基番号21―44はそれぞれシステインタグ(配列番号1)またはシスチンタグ(配列番号2)をコードする配列、塩基番号45―50は制限酵素SpeI切断配列、塩基番号51―68はヒスチジンタグをコードする配列、塩基番号69―74は制限酵素NheI切断配列、塩基番号109―114は制限酵素HindIII切断配列である。
(a−2)タカラバイオ社人工遺伝子合成サービスにて配列番号3に示す塩基配列をT−Vector pMD19 (Simple) に導入したものを作製した。塩基配列3はヒト型TGF−β3遺伝子のシグナル配列、プロ領域、成熟領域のタンパク質(アミノ酸配列を配列番号4に示す。)をコードする遺伝子を水素細菌Ralstonia eutropha H16にコドン最適化した配列(配列番号5)の、4番目から6番目、601番目から603番目、964番目から966番目の塩基配列をTCGからAGCに、804番目の塩基をGからCに変更した配列を含むものである。
(a−3)配列番号1と2の2本鎖DNA、および配列番号6に示すpTrcベクター由来のプラスミド(配列番号6中塩基番号266−331は改変型PelBシグナルをコードする塩基配列、塩基番号332−1183は改変型Fc結合タンパク質をコードする塩基配列)をそれぞれNcoI、HindIIIで消化し、アガロース電気泳動により、それぞれ約0.1kbp、約0.1kbp、約4.2kbpのDNA産物をゲル抽出キットにより精製した。
(a−4)配列番号1の2本鎖DNAのNcoI、HindIII消化断片、および配列番号2の2本鎖DNAのNcoI、HindIII消化断片をそれぞれ、配列番号6に示すプラスミドDNAのNcoI、HindIII消化断片と16℃でライゲーション反応(Ligation High、東洋紡社製)を行ない、得られたプラスミドで大腸菌JM109株(タカラバイオ社製)を形質転換した。
(a−5)形質転換後の溶液を、アンピシリン100μg/mLを含むLB平板培養液(バクトトリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム10g/L、バクトアガロース15g/L)に撒き、形質転換体コロニーを得た。
(a−6)複数のコロニーを培養してプラスミド抽出を行ない、様々な制限酵素による切断パターンを確認し、配列番号1中のシステインタグ配列とヒスタグ配列が挿入されたプラスミドであるpTrc−tag1、および配列番号2中のシスチンタグ配列とヒスタグ配列が挿入されたプラスミドであるpTrc−tag2のプラスミドを選定した。pTrc−tag1、pTrc−tag2はそれぞれ、配列番号6に示すプラスミドのNcoI、HindIIIサイト間(塩基配列中の配列番号336−1181)が配列番号1の塩基配列中の配列番号13−108、配列番号2の塩基配列中の配列番号13−108で置換されたものである。
(a−7)配列番号3に示す塩基配列をT−Vector pMD19 (Simple)へと導入したプラスミドを鋳型とし、PCR反応によりTGF−遺伝子の成熟領域アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド領域含むDNA領域を増幅した。DNAポリメラーゼはKOD FX neo(東洋紡績社製)を用い、プライマーは配列番号7(5’末端側より1番目から6番目までの配列はNheIサイトの配列)に示すフォワードプライマーと配列番号8(5’末端側より1番目から6番目までの配列はNheIサイトの配列)に示すフォワードプライマー、配列番号9(5’末端側より1番目から6番目までの配列はHindIIIサイトの配列、7番目から12番目までの配列はEcoRIサイトの配列)に示すリバースプライマーを用い、温度条件は94℃で2分、その後(98℃で10秒−63℃で30秒−68℃で1分)のサイクルを40回、最後に68℃で7分で増幅反応を行った。このようにして、配列番号7と配列番号9に示すプライマーの組み合わせ、および配列番号8と配列番号9に示すプライマーの組み合わせで増幅したPCR産物であるTGF−1、TGF−2をそれぞれ得た。TGF−1、TGF−2はそれぞれ、配列番号3中の配列番号761−1270、配列番号868−1270を含む増幅産物である。
(a−8)得られたPCR増幅産物TGF−1、TGF−2をアガロースゲル電気泳動に供し、ゲル抽出キット(キアゲン社製)を用いてゲルから抽出することでそれぞれ約0.5kbp、約0.4kbpのポリヌクレオチド断片を精製した。
(a−9)精製したポリヌクレオチド断片をリン酸化後、Mighty Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用いてpUC118のHincIIサイトにライゲーションした。大腸菌(Escherichia coli)JM109株(タカラバイオ社製)を形質転換した。形質転換操作後の溶液を、100μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天培地(10g/L バクトトリプトン(ベクトンディッキンソン社製)、5g/L 酵母エキス、10g/L 塩化ナトリウム、15g/L バクトアガロース(ベクトンディッキンソン社製))に塗布し、形質転換体コロニーを得た。
(a−10)複数のコロニーを培養してプラスミド抽出を行ない、様々な制限酵素による切断パターンを確認し、プラスミドpUC118−TGF−1、pUC118−TGF−2を得た。pUC118−TGF−1、pUC118−TGF−2はそれぞれPCR増幅産物TGF−1、TGF−2がpUC118のHincIIサイトに挿入されたプラスミドである。
(a−11)pTrc−tag1、pTrc−tag2、pUC118−TGF−1、pUC118−TGF−2をそれぞれNheI、HindIIIで消化し、アガロース電気泳動により、それぞれ約4.3kbp、約4.3kbp、約0.5kbp、約0.4kbpのDNA産物をゲル抽出キットにより精製した。
(a−12)pTrc−tag1のNheI、HindIII消化物とpUC118−TGF−1のNheI、HindIII消化物、pTrc−tag1のNheI、HindIII消化物とpUC118−TGF−2のNheI、HindIII消化物、pTrc−tag2のNheI、HindIII消化物とpUC118−TGF−1のNheI、HindIII消化物、pTrc−tag2のNheI、HindIII消化物とpUC118−TGF−2のNheI、HindIII消化物をそれぞれの組み合わせで16℃でライゲーション反応(Ligation High、東洋紡社製)を行い、大腸菌(Escherichia coli)JM109株(タカラバイオ社製)を形質転換した。形質転換操作後の溶液を、100μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天培地(10g/L バクトトリプトン(ベクトンディッキンソン社製)、5g/L 酵母エキス、10g/L 塩化ナトリウム、15g/L バクトアガロース(ベクトンディッキンソン社製))に塗布し、形質転換体コロニーを得た。
(a−13)複数のコロニーを培養してプラスミド抽出を行ない、様々な制限酵素による切断パターンを確認し、プラスミドpTrc−tag1−TGF1、pTrc−tag1−TGF2、pTrc−tag2−TGF1、pTrc−tag2−TGF2を得た。pTrc−tag1−TGF1はpTrc−tag1プラスミドのNheI、HindIIIサイト間が配列番号3中の配列番号761−1270で置換されたもの、pTrc−tag1−TGF2はpTrc−tag1プラスミドのNheI、HindIIIサイト間が配列番号3の配列番号868−1270で置換されたもの、pTrc−tag2−TGF1はpTrc−tag2プラスミドのNheI、HindIIIサイト間が配列番号3中の配列番号761−1270で置換されたもの、pTrc−tag2−TGF2はpTrc−tag2プラスミドのNheI、HindIIIサイト間が配列番号3の塩基配列中の配列番号868−1270で置換されたものである。このようにしてシステインタグまたはシスタグをコードする遺伝子とヒスチジンタグをコードする遺伝子、およびTGF−β3成熟領域を含むタンパク質領域をコードする遺伝子が連結された融合遺伝子を挿入したpTrcベクターを得た。
(b)ファジンプロモーター遺伝子、および(輸送タンパク質遺伝子−切断リンカー遺伝子−TGF−β3成熟領域遺伝子)の融合遺伝子、ターミネーター遺伝子を導入した水素細菌発現用広域宿主ベクターの作製。
特許文献2に記載の、Fc結合性タンパク質分泌発現用ベクターにおけるFc結合性タンパク質をコードする遺伝子を、(a)で作製したタグ配列とTGF−β3成熟領域遺伝子の融合タンパクをコードする遺伝子で置換することで、TGF−β3分泌ベクターを作製した。
(b−1)Fc結合性タンパク質分泌発現用ベクターであるA2820−FcR−pBBR1MCS2、A0983N−FcR−pBBR1MCS2、B0271N−FcR−pBBR1MCS2をそれぞれClaI、EcoRIで消化し、アガロース電気泳動により、それぞれ約6.1kbp、約6.4kbp、約6.3kbpのDNA産物をゲル抽出キットにより精製した。
下記(b−1−1)から(b−1−3)にそれぞれのプラスミドの詳細な説明を示す。
(b−1−1)A2820−FcR−pBBR1MCS2
A2820−FcR−pBBR1MCS2の塩基配列を配列番号10に示す。塩基番号1829−1834は制限酵素ApaI切断配列、塩基番号1835−2272はファジンプロモーター遺伝子配列、塩基番号2273−2278は制限酵素HindIII切断配列、塩基番号2279−2602は輸送タンパク質遺伝子(遺伝子配列を配列番号11、アミノ酸配列を配列番号12に示す。)、塩基番号2603−2608は制限酵素SpeI切断配列、塩基番号2609−2716は切断リンカー遺伝子(遺伝子配列を配列番号13、アミノ酸配列を配列番号14に示す。)、塩基番号2717−2722は制限酵素ClaI切断配列、塩基番号2723−3559はFcR結合性タンパク質遺伝子(遺伝子配列を配列番号15、アミノ酸配列を配列番号16に示す。)、塩基番号3560−3565は制限酵素EcoRI切断配列、塩基番号3566−3676はターミネーター遺伝子、塩基番号3677−3682は制限酵素XbaI切断配列である。
(b−1−2)
A0983N−FcR−pBBR1MCS2の塩基配列を配列番号17に示す。塩基番号1829−1834は制限酵素ApaI切断配列、塩基番号1835−2272はファジンプロモーター遺伝子配列、塩基番号2273−2278は制限酵素HindIII切断配列、塩基番号2279−2887は輸送タンパク質遺伝子(遺伝子配列を配列番号18、アミノ酸配列を配列番号19に示す。)、塩基番号2888−2893は制限酵素SpeI切断配列、塩基番号2894−3001は切断リンカー遺伝子(遺伝子配列を配列番号13、アミノ酸配列を配列番号14に示す。)、塩基番号3002−3007は制限酵素ClaI切断配列、塩基番号3008−3844はFcR結合性タンパク質遺伝子(遺伝子配列を配列番号15、アミノ酸配列を配列番号16に示す。)、塩基番号3845−3850は制限酵素EcoRI切断配列、塩基番号3851−3961はターミネーター遺伝子、塩基番号3962−3967は制限酵素XbaI切断配列である。
(b−1−3)
B0271N−FcR−pBBR1MCS2の塩基配列を配列番号20に示す。塩基番号1829−1834は制限酵素ApaI切断配列、塩基番号1835−2272はファジンプロモーター遺伝子配列、塩基番号2273−2278は制限酵素HindIII切断配列、塩基番号2279−2791は輸送タンパク質遺伝子(遺伝子配列を配列番号21、アミノ酸配列を配列番号22に示す。)、塩基番号2792−2997は制限酵素SpeI切断配列、塩基番号2798−2905は切断リンカー遺伝子(遺伝子配列を配列番号13、アミノ酸配列を配列番号14に示す。)、塩基番号2906−2911は制限酵素ClaI切断配列、塩基番号2912−3748はFcR結合性タンパク質遺伝子(遺伝子配列を配列番号15、アミノ酸配列を配列番号16に示す。)、塩基番号3749−3754は制限酵素EcoRI切断配列、塩基番号3755−3865はターミネーター遺伝子、塩基番号3866−3871は制限酵素XbaI切断配列である。
(b−2)(a−13)で得られたプラスミドである、pTrc−tag1−TGF1、pTrc−tag1−TGF2、pTrc−tag2−TGF1、pTrc−tag2−TGF2をそれぞれClaI、EcoRIで消化し、アガロース電気泳動により、それぞれ約0.6bp、約0.5kbp、約0.6kbp、約0.5kbpのDNA産物をゲル抽出キットにより精製した。
(b−3)(b−1)で得られたA2820−FcR/pBBR1MCS2のClaI、EcoRI消化物をそれぞれ、(b−2)で得られたpTrc−tag1−TGF1、pTrc−tag1−TGF2、pTrc−tag2−TGF1、pTrc−tag2−TGF2のClaI、EcoRI消化物と16℃でライゲーション反応(Ligation High、東洋紡社製)を行い、大腸菌(Escherichia coli)JM109株(タカラバイオ社製)を形質転換した。形質転換操作後の溶液を、30μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地(10g/L バクトトリプトン(ベクトンディッキンソン社製)、5g/L 酵母エキス、10g/L 塩化ナトリウム、15g/L バクトアガロース(ベクトンディッキンソン社製))に塗布し、形質転換体コロニーを得た。
(b−4)複数のコロニーを培養してプラスミド抽出を行ない、様々な制限酵素による切断パターンを確認し、プラスミドA2820−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2、A2820−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2、A2820−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2、A2820−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2を得た。
A2820−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2はA2820−FcR‐pBBR1MCS2プラスミドのClaI、EcoRIサイト間がpTrc−tag1−TGF1のプラスミドのClaI、EcoRIの制限酵素消化断片配列で置換されたもの、 A2820−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2はA2820−FcR‐pBBR1MCS2プラスミドのClaI、EcoRIサイト間がpTrc−tag1−TGF2のプラスミドのClaI、EcoRIの制限酵素消化断片配列で置換されたもの、A2820−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2はA2820−FcR‐pBBR1MCS2プラスミドのClaI、EcoRIサイト間がpTrc−tag2−TGF1のプラスミドのClaI、EcoRIの制限酵素消化断片配列で置換されたもの、 A2820−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2はA2820−FcR‐pBBR1MCS2プラスミドのClaI、EcoRIサイト間がpTrc−tag2−TGF2のプラスミドのClaI、EcoRIの制限酵素消化断片配列で置換されたものである。
(b−5)(b−1)で得られたA0983N−FcR/pBBR1MCS2のClaI、EcoRI消化物をそれぞれ、(b−2)で得られたpTrc−tag1−TGF1、pTrc−tag1−TGF2、pTrc−tag2−TGF1、pTrc−tag2−TGF2のClaI、EcoRI消化物と16℃でライゲーション反応(Ligation High、東洋紡社製)を行い、大腸菌(Escherichia coli)JM109株(タカラバイオ社製)を形質転換した。形質転換操作後の溶液を、30μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地(10g/L バクトトリプトン(ベクトンディッキンソン社製)、5g/L 酵母エキス、10g/L 塩化ナトリウム、15g/L バクトアガロース(ベクトンディッキンソン社製))に塗布し、形質転換体コロニーを得た。
(b−6)複数のコロニーを培養してプラスミド抽出を行ない、様々な制限酵素による切断パターンを確認し、プラスミドA0983N−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2、A0983N−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2、A0983N−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2、A0983N−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2を得た。
A0983N−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2はA0983N−FcR‐pBBR1MCS2プラスミドのClaI、EcoRIサイト間がpTrc−tag1−TGF1のプラスミドのClaI、EcoRIの制限酵素消化断片配列で置換されたもの、 A0983N−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2はA0983N−FcR‐pBBR1MCS2プラスミドのClaI、EcoRIサイト間がpTrc−tag1−TGF2のプラスミドのClaI、EcoRIの制限酵素消化断片配列で置換されたもの、A0983N−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2はA0983N−FcR‐pBBR1MCS2プラスミドのClaI、EcoRIサイト間がpTrc−tag2−TGF1のプラスミドのClaI、EcoRIの制限酵素消化断片配列で置換されたもの、 A0983N−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2はA0983N−FcR‐pBBR1MCS2プラスミドのClaI、EcoRIサイト間がpTrc−tag2−TGF2のプラスミドのClaI、EcoRIの制限酵素消化断片配列で置換されたものである。
(b−7)(b−1)で得られたB0271N−FcR/pBBR1MCS2のClaI、EcoRI消化物をそれぞれ、(b−2)で得られたpTrc−tag1−TGF1、pTrc−tag1−TGF2、pTrc−tag2−TGF1、pTrc−tag2−TGF2のClaI、EcoRI消化物と16℃でライゲーション反応(Ligation High、東洋紡社製)を行い、大腸菌(Escherichia coli)JM109株(タカラバイオ社製)を形質転換した。形質転換操作後の溶液を、30μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地(10g/L バクトトリプトン(ベクトンディッキンソン社製)、5g/L 酵母エキス、10g/L 塩化ナトリウム、15g/L バクトアガロース(ベクトンディッキンソン社製))に塗布し、形質転換体コロニーを得た。
(b−8)複数のコロニーを培養してプラスミド抽出を行ない、様々な制限酵素による切断パターンを確認し、プラスミドB0271N−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2、B0271N−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2、B0271N−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2、B0271N−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2を得た。
B0271N−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2はB0271N−FcR‐pBBR1MCS2プラスミドのClaI、EcoRIサイト間がpTrc−tag1−TGF1のプラスミドのClaI、EcoRIの制限酵素消化断片配列で置換されたもの、 B0271N−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2はB0271N−FcR‐pBBR1MCS2プラスミドのClaI、EcoRIサイト間がpTrc−tag1−TGF2のプラスミドのClaI、EcoRIの制限酵素消化断片配列で置換されたもの、B0271N−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2はB0271N−FcR‐pBBR1MCS2プラスミドのClaI、EcoRIサイト間がpTrc−tag2−TGF1のプラスミドのClaI、EcoRIの制限酵素消化断片配列で置換されたもの、 B0271N−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2はB0271N−FcR‐pBBR1MCS2プラスミドのClaI、EcoRIサイト間がpTrc−tag2−TGF2のプラスミドのClaI、EcoRIの制限酵素消化断片配列で置換されたものである。
実施例2 Ralstonia eutropha形質転換体の作製
以下の方法により、実施例1(b−4)で作製したA2820−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2、A2820−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2、A2820−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2、A2820−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2、実施例1(b−6)で作製したA0983N−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2、A0983N−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2、A0983N−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2、A0983N−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2、実施例1(b−8)で作製したB0271N−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2、B0271N−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2、B0271N−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2、B0271N−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2、およびネガティブコントロールとして、市販のpBBR1MCS2プラスミドで、それぞれRalstonia eutropha H16株とPHB_4株を形質転換した。
(2−1)プラスミドA2820−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2、A2820−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2、A2820−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2、A0983N−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2、A0983N−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2、A0983N−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2、A0983N−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2、B0271N−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2、B0271N−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2、B0271N−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2、B0271N−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2、pBBR1MCS2で、接合性大腸菌S17−1を形質転換した。
(2−2)形質転換後の溶液を、カナマイシン30μg/mLを含むLB平板培養液に撒き、大腸菌S17−1株形質転換株を得た。
(2−3)それぞれの大腸菌S17−1株形質転換体を、カナマイシン50μg/mLを含むLB(バクトトリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム10g/L)培養液中、30℃で一晩培養を行なった。
(2−4)市販のRalstonia eutropha H16株(ATCC 17699)またはalstonia eutropha PHB_4株(DSM 541)をそれぞれ抗生物質を含まないLB(バクトトリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム10g/L)培養液中、30℃で一晩培養を行なった。
(2−5)(3)で得た大腸菌培養物1mlと(4)で得たRalstonia eutropha培養物1mlとをそれぞれの組み合わせで混合し、15000rpmで5分間遠心した。上澄み液を廃棄し、混合菌体ペレットを100μlのNutrient broth培地(Difco製、Nutrient Broth8g/L)に懸濁し、Nutrient brothプレート(Nutrient Broth8g/L、バクトアガロース15g/L)に撒き30℃で一晩培養した。また、コントロールとして、各大腸菌S17−1株の形質転換体、Ralstonia eutropha H16株またはRalstonia eutropha PHB_4株について、それぞれ2mlの菌体を遠心して得られる菌体ペレットを、100μlのNutrient broth培地(Difco製、Nutrient Broth8g/L)に懸濁し、Nutrient brothプレート(Nutrient Broth8g/L、バクトアガロース15g/L)に撒き30℃で一晩培養した。
(2−6)プレート表面の菌体を5mlのNutrient Broth培養液に懸濁させ、Nutrient Broth培養液で1/1000に希釈した後、カナマイシン600μg/mLを含むNutrient brothプレートに100μl塗布し、30℃で2日から3日培養した。コントロールである、各大腸菌S17−1株の形質転換体、Ralstonia eutropha H16株またはRalstonia eutropha PHB_4株のみを培養したプレートからはコロニーは0から数個しか出現しなかった。一方、大腸菌S17−1株の形質転換体とRalstonia eutropha H16株またはRalstonia eutropha PHB_4の混合菌体を塗布したプレートからは、それぞれ数十〜数百個のコロニーが得られた。
(2‐7)得られた接合菌体の各クローンを培養してプラスミド抽出を行ない、様々な制限酵素による切断パターンの分析により、目的のプラスミドが伝達されたことを確認した。
以上の方法で、A2820−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2、A2820−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2、A2820−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2、A2820−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2、pBBR1MCS2をそれぞれRalstonia eutropha H16株に接合伝達した株であるA2820−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2/H16株、A2820−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2/H16株、A2820−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2/H16株、A2820−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2/H16株、pBBR1MCS2/H16株、および、A2820−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2、A2820−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2、A2820−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2、A2820−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2、pBBR1MCS2をそれぞれRalstonia eutropha PHB_4株に接合伝達した株であるA2820−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2/PHB_4株、A2820−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2/PHB_4株、A2820−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2/PHB_4株、A2820−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2/PHB_4株、pBBR1MCS2/PHB_4株、およびA0983N−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2、A0983N−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2、A0983N−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2、A0983N−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2、pBBR1MCS2をそれぞれRalstonia eutropha H16株に接合伝達した株であるA0983N−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2/H16株、A0983N−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2/H16株、A0983N−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2/H16株、A0983N−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2/H16株、pBBR1MCS2/H16株、および、A0983N−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2、A0983N−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2、A0983N−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2、A0983N−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2、pBBR1MCS2をそれぞれRalstonia eutropha PHB_4株に接合伝達した株であるA0983N−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2/PHB_4株、A0983N−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2/PHB_4株、A0983N−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2/PHB_4株、A0983N−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2/PHB_4株、pBBR1MCS2/PHB_4株、およびB0271N−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2、B0271N−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2、B0271N−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2、B0271N−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2、pBBR1MCS2をそれぞれRalstonia eutropha H16株に接合伝達した株であるB0271N−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2/H16株、B0271N−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2/H16株、B0271N−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2/H16株、B0271N−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2/H16株、pBBR1MCS2/H16株、および、B0271N−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2、B0271N−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2、B0271N−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2、B0271N−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2、pBBR1MCS2をそれぞれRalstonia eutropha PHB_4株に接合伝達した株であるB0271N−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2/PHB_4株、B0271N−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2/PHB_4株、B0271N−tag2−TGF1‐pBBR1MCS2/PHB_4株、B0271N−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2/PHB_4株、pBBR1MCS2/PHB_4株を得た。
実施例3 試験管培養におけるTGF−β3の発現量評価
実施例(2‐7)に記載した水素細菌形質転換株を培養し、菌体のタンパク質抽出物及び培養上清中に発現したTGF−β3を下記の方法によりELISA法にて定量した。
(3−1)実施例2で作製した水素細菌形質転換株のうち、A0983N−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2/PHB_4株、A2820−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2/H16株、A2820−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2/H16株、B0271N−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2/H16株、B0271N−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2/H16株、pBBR1MCS2/H16株、pBBR1MCS2/PHB_4株を、それぞれカナマイシン300μg/mLを含む3mlの2×YT(バクトトリプトン16g/L、酵母エキス10g/L、塩化ナトリウム5g/L)培養液を用いて試験管で前培養した(30℃、180rpm、一晩)。
(3−2)(1)の前培養液をそれぞれカナマイシン300μg/mLを含む試験管2本の3mlの2×YTへ150μL植菌し、30℃、180rpmで6時間培養を行なった。その後、グルコン酸ナトリウムを終濃度4%(w/v)となるように添加し、20℃、180rpmで16時間培養を行なった。
(3−3)菌体を1mLずつマイクロチューブに採取し、15000rpmで10分間遠心分離することで培養上清と菌体ペレットを分離し、培養上清を別のマイクロチューブに保存した。上清を除いた菌体ペレットは、タンパク抽出試薬1mL(リゾチーム0.2mg/mL、エチレンジアミン四酢酸2mM、フッ化フェニルメチルスルホニル2mM、Benzonase 125U/mLを含むBugBuster(Novagen社製)タンパク質抽出試薬)を加えることで菌体内のタンパク質を抽出した。菌体タンパク質抽出液は15000rpmで10分間遠心分離することで抽出残渣を沈降させ、タンパク質抽出物の可溶性画分である上澄み液を別のマイクロチューブに保存した。
(3−4)保存した培養上清とタンパク質抽出物中のTGF−β3発現量をTGF−β3, Human, DuoSet Kit(R&Dシステム社製)によるELISA法で測定した。測定方法はキット添付の標準プロトコルに従い、以下の方法で行った。
(3−4−1)96穴のELISAプレート(Nunc社製)にTGF捕捉抗体として2.0 g/mL のmouse anti−human TGF−β3(TBS緩衝液:150mM NaClを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5))による希釈物)を各ウェルに100μLずつ添加し、室温で18時間静置することにより固定した。
(3−4−2)0.2%(w/v)Tween 20を含むTBS緩衝液でプレートを洗浄後、1%BSAを含むTBS緩衝液を300μLずつ添加し、室温で1時間以上静置することでブロッキング操作を施した。
(3−4−3)0.2%(w/v)Tween 20を含むTBS緩衝液でプレートを洗浄後、培養上清または菌体抽出物の原液を各ウェルに100μL添加し、固定化したmouse anti−human TGF−3と室温で2時間反応させた。また同様に、キットに添付のTGF−β3標準資料の希釈系列(1%BSAを含むTBS緩衝液による希釈物)についても、各ウェルに100μLを添加し、固定化したmouse anti−human TGF−3と室温で2時間反応させた。
(3−4−4)反応終了後、0.2%(w/v)Tween 20を含むTBS緩衝液でプレートを洗浄し、1次抗体として100 ng/mL のbiotinylated goat anti−human TGF−3(1%BSAを含むTBS緩衝液による希釈物)を各ウェルに100μL添加して室温で2時間反応させた。
(3−4−5)反応終了後、0.2%(w/v)Tween 20を含むTBS緩衝液でプレートを洗浄し、2次抗体としてstreptavidin conjugated to horseradish−peroxidase(1%BSAを含むTBS緩衝液による希釈物)を各ウェルに100μL添加して室温で20分間反応させた。
(3−4−6)反応終了後、0.2%(w/v)Tween 20を含むTBS緩衝液でプレートを洗浄し、TMB Peroxidase Substrate(KPL社製)を各ウェルに100μLずつ添加し室温で30分間発色反応させた。
(3−4−7)発色後、1Mリン酸水溶液を各ウェルに100μL添加して反応を停止させ、450nmの吸光度を測定した。
(3−5)
TGF−β3標準資料の希釈系列をアプライしたウェルの450nmの吸光度より検量線を作製し、上清と菌体タンパク抽出物をアプライしたウェルの450nmの吸光度より各サンプル中のTGF−β3濃度を算出した。
結果を図1に示す。ネガティブコントロール(TGF−β3成熟領域遺伝子を導入しない株)である、pBBR1MCS2/H16株およびpBBR1MCS2/PHB_4株は上清と菌体タンパク抽出物のいずれにもTGF−β3を発現しなかった。また、TGF−β3成熟領域遺伝子および輸送タンパク質遺伝子を水素酸化細菌に導入した菌株の内、A0983N−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2/PHB_4株、A2820−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2/H16株、B0271N−tag1−TGF2‐pBBR1MCS2/H16株は培養上清とタンパク質抽出物中のTGF−β3発現量が合計で0.02μg/L以下であった。一方、A2820−tag1−TGF1‐pBBR1MCS2/H16株、B0271N−tag2−TGF2‐pBBR1MCS2/H16株は培養上清とタンパク質抽出物中両者にそれぞれ0.1μg/Lの良好な発現を示した。
このことから、高性能な輸送タンパク質遺伝子であるH16_A2820遺伝子またはH16_B0271N末端領域遺伝子をTGF−β3遺伝子と共に水素酸化細菌に導入し両者を共発現することで、本来微生物発現系では不溶性・不活性型でしか発現しないTGF−β3を、タンパク質を菌体内および/または培地中に直接、可溶性かつ活性型で発現可能であることがわかる。

Claims (6)

  1. 目的タンパク質遺伝子および輸送タンパク質遺伝子をコードするポリヌクレオチドを導入した水素酸化細菌であって、前記タンパク質が可溶性かつ活性型で発現することを特徴とする水素酸化細菌を用いたタンパク質発現方法。
  2. 前記輸送タンパク質が、配列番号11または19に記載の配列からなるポリペプチドであることを特徴とする請求項1に記載の水素酸化細菌を用いたタンパク質発現方法。
  3. 前記輸送タンパク質遺伝子が配列番号10または18に記載の配列からなるポリヌクレオチドである、請求項1に記載の水素酸化細菌を用いたタンパク質発現方法。
  4. 前記目的タンパク質がTGF−β3である、請求項1から3のいずれかに記載の水素酸化細菌を用いたタンパク質発現方法。
  5. 目的タンパク質がTGF−βスーパーファミリーに属するタンパク質である、請求項1から3のいずれかに記載の水素酸化細菌を用いたタンパク質発現方法。
  6. 前記水素酸化細菌がRalstonia属細菌である、請求項1から5のいずれかに記載の水素酸化細菌を用いたタンパク質発現方法。
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