JP2017212869A - 電力変換装置の制御方法及び電力変換装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電力変換装置のパルス幅変調において、三相変調から二相変調、そして過変調(1パルス駆動)まで、変調率に応じてシームレスに変調方式を切り替える。【解決手段】ゲート信号生成部に備えられた補正項加算部1において、多相の電圧指令値のの最大値max(V*)と最小値min(V*)を算出し、max(V*)+min(V*)にゲインg1を乗算した補正量α、1−max(V*)と−1−min(V*)のうち絶対値の値が小さい方にゲインg2を乗算した補正量β、多相の電圧指令値の相毎に1−V*U(V*vまたはV*w)、−1−V*U(V*vまたはV*w)のいずれかにゲインg3を乗算した補正量γを生成する。補正量αの絶対値と、補正量β+補正量γの絶対値のうち最も小さいものとの比較に応じて、補正量αまたは補正量β+補正量γを電圧指令値に加算し、補正された電圧指令値に基づいてPWM変調を行う。【選択図】図2
Description
本発明は、電力変換装置の制御方法に関する。特に、AC/DC変換装置またはDC/AC変換装置のパルス幅変調(PWM)制御に関する。
AC/DC変換またはDC/AC変換を行う電力変換器において、損失低減を行いつつ電圧精度を向上させるパルス幅変調(PWM)方式として、図7に示すような制御構成を有する電力変換装置がある(例えば、特許文献1)。
この方式は、変調率mによって定まる三相電圧指令値V* U、V* V、V* W、に基づいて二相変調方式の第1補正量α’を演算し、さらに三相変調方式も採用する第2補正量β’を演算して、三相電圧指令値V* U、V* V、V* W、に第2補正量β’を加算する方式である。さらに、この補正された三相電圧指令値に基づいてPWMを行い、電力変換装置内のスイッチングデバイスのオンオフを制御して、電力のAC/DC変換またはDC/ACの変換を行う。図8に、変調率mを0から1.15まで一定の傾きで増加させたときの各信号波形の一例のタイムチャートを示す。
この方式により、電力変換器(例えば、三相インバータ)における変調方式を三相変調方式から、一相のスイッチングを休止する二相変調方式に、変調率(変調度)mに応じて、自動的に変調方式を切り換えることができる。このように、特許文献1に記載の電力変換装置は、二相変調方式(2アーム変調方式)と三相変調方式(3アーム変調方式)とをシームレスに切り替えることができるため、発生する騒音の急変を抑制することができる。
しかしながら、特許文献1では、変調率が2/√3=1.154700538…(以下、1.15とする)よりも大きい過変調領域における変調方式まで考慮されていない。図8(d)に示すように、変調率m=1.15のときの補正後の電圧指令値V* U+β’は正弦波状となっている。しかし、変調率m>1.15では、原理上補正後の電圧指令値V* U+β’は、正弦波状とはならず、歪波形となる。これが原因で、変調率m>1.15の領域での電力変換装置の出力電圧の電圧精度が低下するおそれがある。
また、変調率m>1.15の領域での電圧精度を低下させない先行技術として、1パルス駆動方式がある(例えば、特許文献2)。特許文献2には、多パルスPWM方式から1パルス駆動方式に切り替えるインバータの技術が開示されている。しかし、特許文献2は、強制的に1パルス駆動に切り替える技術である。したがって、特許文献2には、特許文献1のようにシームレスな変調方式の切替えについては記載されていない。強制的に1パルス駆動方式に切り替えると、切替時に騒音が急変し耳障りとなるおそれがある。
上記事情に鑑み、本発明は、電力変換装置のパルス幅変調において、三相変調から二相変調、そして過変調(1パルス駆動)まで、変調率に応じてシームレスに変調方式を切り替える技術を提供することを目的としている。
上記目的を達成する本発明の電力変換装置の制御方法の一態様は、交流−直流変換または直流−交流変換を行う電力変換装置に備えられた半導体スイッチ素子に対して、電圧指令値をPWM変調するゲート信号生成部により得られたゲート信号を出力する電力変換装置の制御方法であって、ゲート信号生成部に備えられた補正項加算部において、多相の電圧指令値のうち最大となる電圧指令値と、多相の電圧指令値のうち最小となる電圧指令値を算出し、多相の電圧指令値のうち最大となる電圧指令値と最小となる電圧指令値を加算した信号に第1ゲインを乗算して第1補正量を生成し、三角波キャリアの最大値から前記最大となる電圧指令値を減算した値と、三角波キャリアの最小値から前記最小となる電圧指令値を減算した値と、のうち絶対値の値が小さい方に第2ゲインを乗算した第2補正量を生成し、多相の電圧指令値の相毎に、三角波キャリアの最大値と電圧指令値の差分と、三角波キャリアの最小値と電圧指令値との差分と、のうち、電圧指令値の極性が負のときには三角波キャリアの最大値と電圧指令値の差分に、電圧指令値の極性が正のときには三角波キャリアの最小値と電圧指令値の差分に第3ゲインを乗算した第3補正量を生成し、前記第1補正量の絶対値が、前記第2補正量と前記第3補正量とを加算した値の絶対値のうち最も小さいものよりも小さい場合、前記第1補正量を各相共通の電圧指令の補正量として選択し、前記第1補正量の絶対値が、前記第2補正量と前記第3補正量とを加算した値の絶対値のうち最も小さいものよりも大きい場合、前記第2補正量と相毎の前記第3補正量とを加算した値を相毎の電圧指令の補正量として選択し、前記ゲート信号生成部が、多相の電圧指令値に前記電圧指令の補正量が加算された補正電圧指令値に基づいてPWM変調を行うことを特徴としている。
また、上記目的を達成する本発明の電力変換装置の制御方法の他の態様は、上記電力変換装置の制御方法において、第1ゲインは、変調率が所定値m1までは0、m1以降は次第に増加し、1.15以降は比例ゲインKp+1となる特性であり、第2ゲインは、変調率が1.15までは1であり、変調率が1.15以降は0になるまで減少する特性であり、第3ゲインは、変調率が1.15までは0であり、変調率が1.15からは1になるまで増加する特性であることを特徴としている。
また、上記目的を達成する本発明の電力変換装置の制御方法の他の態様は、上記電力変換装置の制御方法において、前記補正項加算部に入力される電圧指令値と前記補正項加算部から出力される補正電圧指令値の差分に基づいて、前記補正項加算部における電圧指令値補正に起因する高調波成分の電流を推定し、電流指令値から前記高調波成分の電流を減算した指令値と前記電力変換装置の出力電流の検出値の差分に基づいて、前記電力変換装置の出力電流の検出値が電流指令値に追従するように制御するための電圧指令値を生成し、この電圧指令値を前記補正項加算部に入力することを特徴としている。
また、上記目的を達成する本発明の電力変換装置の一態様は、交流−直流変換または直流−交流変換を行う電力変換装置に備えられた半導体スイッチ素子と、前記半導体スイッチ素子に対して出力される、電圧指令値をPWM変調したゲート信号を生成するゲート信号生成部と、を有する電力変換装置であって、前記ゲート信号生成部には、補正項加算部が備えられ、前記補正項加算部は、多相の電圧指令値のうち最大となる電圧指令値と、多相の電圧指令値のうち最小となる電圧指令値を算出し、多相の電圧指令値のうち最大となる電圧指令値と最小となる電圧指令値を加算した信号に第1ゲインを乗算して第1補正量を生成し、三角波キャリアの最大値から前記最大となる電圧指令値を減算した値と、三角波キャリアの最小値から前記最小となる電圧指令値を減算した値と、のうち絶対値の値が小さい方に第2ゲインを乗算した第2補正量を生成し、多相の電圧指令値の相毎に、三角波キャリアの最大値と電圧指令値の差分と、三角波キャリアの最小値と電圧指令値との差分と、のうち、電圧指令値の極性が負のときには三角波キャリアの最大値と電圧指令値の差分に、電圧指令値の極性が正のときには三角波キャリアの最小値と電圧指令値の差分に第3ゲインを乗算した第3補正量を生成し、前記第1補正量の絶対値が、前記第2補正量と前記第3補正量とを加算した値の絶対値のうち最も小さいものよりも小さい場合、前記第1補正量を各相共通の電圧指令の補正量として選択し、前記第1補正量の絶対値が、前記第2補正量と前記第3補正量とを加算した値の絶対値のうち最も小さいものよりも大きい場合、前記第2補正量と相毎の前記第3補正量とを加算した値を相毎の電圧指令の補正量として選択し、前記ゲート信号生成部は、多相の電圧指令値に前記電圧指令の補正量が加算された補正電圧指令値に基づいてゲート信号を生成することを特徴としている。
また、上記目的を達成する本発明の電力変換装置の他の態様は、上記電力変換装置において、前記ゲート信号生成部は、ゲイン演算部を備え、前記ゲイン演算部は、変調率が所定値m1までは0、m1以降は次第に増加し、1.15以降は比例ゲインKp+1である特性の第1ゲイン、変調率が1.15までは1であり、変調率が1.15以降は0になるまで減少する第2ゲイン、変調率が1.15までは0であり、変調率が1.15からは1になるまで増加する特性である第3ゲインを演算することを特徴としている。
また、上記目的を達成する本発明の電力変換装置の他の態様は、上記電力変換装置において、前記電力変換装置の出力電流の検出値を電流指令値に追従するように制御する電流制御部と、前記補正項加算部に入力される電圧指令値と前記補正項加算部から出力される補正電圧指令値の差分に基づいて、前記補正項加算部における電圧指令値補正に起因する高調波成分の電流を推定する高調波電流推定部と、をさらに備え、前記電流制御部は、電流指令値から前記高調波成分の電流が減算された指令値と前記電力変換装置の出力電流の検出値の差分に基づいて、前記補正項加算部に入力される電圧指令値を生成し、前記補正項加算部は、当該電圧指令値に前記電圧指令の補正量が加算された補正電圧指令値を生成することを特徴としている。
以上の発明によれば、三相変調から二相変調、そして過変調(1パルス駆動)まで、変調率に応じてシームレスに変調方式を切り替えることができる。
本発明の実施形態に係る電力変換装置の制御方法及び電力変換装置について、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1に示すように、交流−直流変換または直流−交流変換を行う電力変換装置(例えば、三相インバータ等)に備えられた半導体スイッチ素子に対して、電圧指令値をPWM変調して得られるゲート信号を出力するゲート信号生成部には、三相の電圧指令値V* U、V* V、V* Wが入力される。そして、補正項加算部1において、図2に示すように、三相の電圧指令値V* U、V* V、V* Wに対して、電圧指令の補正量(VofsU、VofsV、VofsW)を加算することにより、補正電圧指令値V’* U、V’* V、V’* Wを生成し、それぞれ比較器2に出力する。比較器2では、補正電圧指令値V’* U、V’* V、V’* Wと三角波キャリアとの比較を行う。前記図1における比較器2以降のNOT回路3、デッドタイム発生回路4の動作については、周知技術であるため、詳細な説明は省略する。
図1に示すように、交流−直流変換または直流−交流変換を行う電力変換装置(例えば、三相インバータ等)に備えられた半導体スイッチ素子に対して、電圧指令値をPWM変調して得られるゲート信号を出力するゲート信号生成部には、三相の電圧指令値V* U、V* V、V* Wが入力される。そして、補正項加算部1において、図2に示すように、三相の電圧指令値V* U、V* V、V* Wに対して、電圧指令の補正量(VofsU、VofsV、VofsW)を加算することにより、補正電圧指令値V’* U、V’* V、V’* Wを生成し、それぞれ比較器2に出力する。比較器2では、補正電圧指令値V’* U、V’* V、V’* Wと三角波キャリアとの比較を行う。前記図1における比較器2以降のNOT回路3、デッドタイム発生回路4の動作については、周知技術であるため、詳細な説明は省略する。
次に、図2を基に補正項加算部1の内部における動作を説明する。なお、二相変調方式と三相変調方式の詳細は、特許文献1に記載されているので、詳細な説明は省略する。
まず、第1補正量(以後、補正量αと称する)の演算方法について説明する。
最大値演算器5Max(x,y,z)は、電圧指令値V* U、V* V、V* Wが入力され、三相の電圧指令値V* U、V* V、V* Wより、最も値の大きい電圧指令値を選択した最大値max(V*)を出力する。また、最小値演算器6Min(x,y,z)は、電圧指令値V* U、V* V、V* Wが入力され、三相の電圧指令値V* U、V* V、V* Wより、最も小さい電圧指令値を選択した最小値min(V*)を出力する。
最大値演算器5Max(x,y,z)から出力された最大値max(V*)と最小値演算器6Min(x,y,z)から出力された最小値min(V*)とが、加算器7により加算される。この加算されたmax(V*)+min(V*)信号は、乗算器8においてゲインg1が乗算され、α(α=g1(max(V*)+min(V*)))信号として出力される。このα信号は、三相共通の信号である。
次に、二相変調成分の電圧指令値を演算するための第2補正量(以後、補正量βと称する)の演算方法について説明する。図2のブロック図の点線で囲まれた部分がここの部分に相当する。なお、以下の説明において、変調率m=電圧指令値の振幅/搬送波の振幅であり、搬送波である三角波キャリアの最大値は1、最小値は−1である。
最大値演算器5Max(x,y,z)、最小値演算器6Min(x,y,z)から出力される最大値max(V*)、最小値min(V*)は、減算器9,10にもそれぞれ入力され、その減算器9,10において1−max(V*)と−1−min(V*)をそれぞれ演算し、その信号をスイッチ11に出力する。そして、スイッチ11は、比較器12から入力される信号s1=1の期間は、1−max(V*)を、s1=0の期間は、−1−min(V*)を出力する。つまり、比較器12では、a入力値<b入力値の場合に「1」、a入力値≧b入力値の場合に「0」を出力する。ここで、a入力値は減算器9の出力の絶対値、b入力値は減算器10の出力の絶対値である。スイッチ11は、この信号s1を受けて、「s1=1」の場合は上側にスイッチがONして、最大値演算器5Max(x,y,z)の出力と1p.u.の差分をスイッチ11から出力する。また、「s1=0」の場合は、下側にスイッチがONして、最小値演算器6Min(x,y,z)の出力と−1p.u.の差分をスイッチ11から出力する。このスイッチ11からの出力信号は、乗算器13においてゲインg2が乗算されβ信号として出力される。このように、二相変調成分の演算として、最大値演算器5Max(x,y,z)の出力と1p.u.の差分、及び最小値演算器6(x,y,z)の出力と−1p.u.の差分のうち、絶対値が小さい方を選択し、これにゲインg2を乗じた値が補正量βとして定められる。この補正量βは、三相共通の信号である。
さらに、第3補正量(以後、補正量γと称する)の演算方法について説明する。図2のブロック図の一点鎖線で囲まれた部分がここの部分に相当する。なお、補正量γは、前記α、βとは異なり三相各々について定められるが、代表して電圧指令値V* Uの場合について説明する。比較器15は、a入力値(電圧指令値V* U)と0を比較し、a入力値<0の場合に「1」、a入力値≧0の場合に「0」を出力する。スイッチ14は、スイッチ11と同様の動作をするので詳細な説明を省略する。
三相の電圧指令値V* Uは、減算器16,17にもそれぞれ入力され、その減算器16,17において1−V* U、−1−V* Uをそれぞれ演算し、その信号をスイッチ14に出力する。そして、スイッチ14は、比較器15から入力される信号s2=1の期間は1−V* Uを、s2=0の期間は、−1−V* Uを出力する。このスイッチ14からの出力信号は、乗算器18においてゲインg3が乗算されてγ信号として出力される。このように、三相の電圧指令値(V* U、V* V、V* W)の極性が負のときには、三相の電圧指令値(V* U、V* V、V* W)と1p.u.の差分を選択し、三相の電圧指令値(V* U、V* V、V* W)の極性が正のときには、三相の電圧指令値(V* U、V* V、V* W)と−1p.u.の差分を選択し、選択された値にゲインg3を乗じた値が補正量γとして定められる。
補正量βと補正量γは、加算器19に出力され、補正量βと補正量γを加算した値がスイッチ20に入力される。スイッチ20には、補正量αも入力されており、スイッチ20において、補正量βと補正量γを加算した三相各々の値の絶対値の最小値(三相成分の中の最小値)と、補正量αの絶対値とを比較し、補正量αの絶対値の方が小さい場合には、三相共通の補正量αを三相各々の信号として選択する。補正量αの絶対値の方が大きい場合には、三相共通の補正量βと相毎の補正量γを加算した三相各々の信号として選択する。最後に、スイッチ20から出力される三相各々の信号を電圧指令の補正量VofsU、VofsV、VofsWとして、三相の電圧指令値V* U、V* V、V* Wにそれぞれ加算し、補正電圧指令値V’* U、V’* V、V’* Wを算出する。
なお、図2の最小値演算器21は、補正量βとU相の補正量γとの和の絶対値、補正量βとV相の補正量γの和の絶対値、補正量βとW相の補正量γとの和の絶対値、より最も小さい値を出力する。つまり、比較器22では、a入力値(|x|)とb入力値(Min(x,y,z))を比較し、a入力値<b入力値の場合に「1」、a入力値≧b入力値の場合に「0」を出力する。スイッチ20はスイッチ11と同様の動作をするので説明を省略する。
補正電圧指令値V’* U、V’* V、V’* Wは、ゲインg1〜g3により変調率m1(予め定められた所定の値)までは三相変調(正弦波PWM)、変調率m1から1.15までは二相変調が混合され、変調率1.15以上から1パルス駆動へシームレスに変調方式を切り換えるために電圧指令値を操作された補正電圧指令値である。図3にゲインg1〜g3の生成方法を示す。リミッタL1〜L4は、0を下限値とし、1を上限値とする。リミッタL5は、0を下限値とし、Kp+1を上限値とする。
第1ゲインg1は、変調率が所定値m1までは0、m1以降は次第に増加し、1.15以降は比例ゲインKp+1となる特性であり、第2ゲインg2は、変調率が1.15までは1であり、変調率が1.15以降は0になるまで減少する特性であり、第3ゲインg3は、変調率が1.15までは0であり、変調率が1.15からは1になるまで増加する特性である。
図3のKpは、比例ゲインで1よりも非常に大きい値(例えば、100)を設定する。これにより、図3での加算器23の出力は、変調率m≦1.15の範囲では1となり、変調率m>1.15の場合では1以上の非常に大きな値となる。
図3のKpは、比例ゲインで1よりも非常に大きい値(例えば、100)を設定する。これにより、図3での加算器23の出力は、変調率m≦1.15の範囲では1となり、変調率m>1.15の場合では1以上の非常に大きな値となる。
さらに、Kpが非常に大きい値であることにより、変調率m>1.15の場合では、g1の値が乗算される三相変調の電圧オフセットαは大きい値となるため、この絶対値も大きくなり、図2のスイッチ20においてVofsには選択されない。したがって、補正量βと補正量γの和(二相変調/1パルス駆動)がVofsに選択される。このようにして、変調率m>1.15では三相/二相変調から二相変調/1パルス駆動に切り替えることができる。
図4に変調率mを0から一定の傾きで1.5まで増加させたときの電圧指令値V* U、補正電圧指令値V’* U、電圧指令の補正量VofsUを示す。m1=0.25としている。
変調率mが0.25(m1)以下のときは、VofsU=0である。mが0.25(m1)以上になると、補正量αが選択されるため、特許文献1と同様に、V’* Uの正弦波の頂点付近の振幅が凸型となる。
変調率mが0.5以上になると、V’* Uの正弦波の頂点付近が飽和し始める。これは、頂点付近では補正量βが選択されて二相変調となっていることを示す。二相変調と三相変調が混合される。つまり、図4のタイムチャートの時間t1以降(変調率mが0.75程度)波形に示すように、三相変調と二相変調との割合が変化する領域が現れる。これは、図8のタイムチャート(すなわち、従来技術に係る電力変換装置の信号波形のタイムチャート)の時間t1’以降の波形と同様である。
変調率mが1.15以上になると、過変調領域となり、補正量γが選択され、1パルス変調と二相変調が混合される。つまり、図4のタイムチャートにおける時間t2以降(変調率mが1.2程度)では、二相変調と1パルス変調との割合が変化する領域が現れる。
このように、変調率mに応じて、三相変調、二相変調、1パルス変調へ混合する期間を設けながら自動的に変調方式を切り替えることができる。
以上のような、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置及び電力変換装置の制御方法によれば、低い変調率のときに三相変調、変調率1.15までは二相変調と三相変調が混在し、変調率が1.15より大きくなると、二相変調と1パルス駆動が混合した補正電圧指令値を生成できる。
また、変調率に応じて変調方式を自動的にシームレスに切り替えることができ、広い変調率にわたって電圧誤差の低減ができる。そして、シームレスな切替を行うため、切替時の騒音の急変を低減でき、耳障りでなくなる。
さらに、スイッチング損失が低い二相変調と、1パルス駆動方式を適用しているため、電力変換器の効率を高めることができる。また、極座標変換を行わないため、制御演算器の負荷を低減できる。
[第2実施形態]
図2に示した補正項加算部1を備える電力変換装置において、二相変調/1パルス駆動、または1パルス駆動の電圧指令値補正を行うと、補正後の電圧指令値には高調波成分の電圧が含まれる(図4のV’*u信号波形を参照)。この成分により、インバータの出力電流がひずむので、電流制御マイナーループを含む制御系においては、電圧指令値補正に起因する高調波成分電流を抑制するためにフィードバック制御が機能してしまう。このため、基本波成分の変調率に応じて電圧指令値を飽和させているにもかかわらず、電圧飽和を緩和する、電圧飽和を助長する、などの不要な動作が生じて、電圧の制御が不安定となるおそれがある。
図2に示した補正項加算部1を備える電力変換装置において、二相変調/1パルス駆動、または1パルス駆動の電圧指令値補正を行うと、補正後の電圧指令値には高調波成分の電圧が含まれる(図4のV’*u信号波形を参照)。この成分により、インバータの出力電流がひずむので、電流制御マイナーループを含む制御系においては、電圧指令値補正に起因する高調波成分電流を抑制するためにフィードバック制御が機能してしまう。このため、基本波成分の変調率に応じて電圧指令値を飽和させているにもかかわらず、電圧飽和を緩和する、電圧飽和を助長する、などの不要な動作が生じて、電圧の制御が不安定となるおそれがある。
そこで、電流制御マイナーループが含まれる制御系において、第1実施形態に係る電力変換装置の技術を用いる場合に、二相変調/1パルス駆動、または1パルス駆動の電圧指令値補正に起因する高調波成分の電流を推定して予め電流指令値から減算することで、高調波成分の電流を制御しないようにして、電圧指令値の電圧飽和を有効利用する。
図5に、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置24の制御ブロック図を示す。
三相インバータ25の入力側には、直流電源VDCが接続され、三相インバータ25の出力側には、出力インダクタL1、ACフィルタコンデンサC1、交流電源側インダクタL2からなるフィルタ回路を介して三相交流電源26が接続されている。なお、三相交流電源26の代わりにモータなどの三相負荷を接続する構成でも可能である。
三相インバータ25に備えられる各スイッチングデバイス(半導体スイッチ素子)に対してゲート信号(Gate signals)を出力するパルス幅変調部27には、第1実施形態で説明した補正項加算部1(図2の制御ブロックに相当)から出力される補正電圧指令値が入力される。第1実施形態と同様に、補正項加算部1は、三相の電圧指令値V* U、V* V、V* Wに対して、電圧指令の補正量(VofsU、VofsV、VofsW)を加算することにより、補正電圧指令値V’* U、V’* V、V’* Wを生成し、この補正電圧指令値V’* U、V’* V、V’* Wがパルス幅変調部27に出力される。すなわち、第2実施形態に係る電力変換装置24において、補正項加算部1とパルス幅変調部27が第1実施形態に係る電力変換装置のゲート信号生成部に相当する。
また、補正項加算部1に入力される電圧指令値V* U、V* V、V* W(以後、電圧指令値vref1とする)と補正項加算部1から出力される補正電圧指令値V’* U、V’* V、V’* W(以後、電圧指令値vref2とする)は、高調波電流推定部28にも入力される。
高調波電流推定部28は、出力インダクタL1のインダクタンス値とハイパスフィルタ機能を利用し、電圧指令値vref1と電圧指令値vref2の差分に基づいた高調波成分の電流を推定する。高調波電流推定部28は、式(1)に基づいて、電圧指令値vref1と電圧指令値vref2の差分から高調波成分の推定電流G(s)vdiffを演算し、推定電流G(s)vdiffを減算器29に出力する。式(1)において、L1は出力インダクタL1のインダクタンス値、sは微分演算子、T1はハイパスフィルタの時定数である。ハイパスフィルタは、DC成分の除去を目的としている。
図6に、電圧指令値vref1と電圧指令値vref2、及び電圧指令値の差分vdiff、推定電流G(s)vdiffの関係を示す。電圧指令値vref2が1パルス駆動時の波形である。電圧指令値vref1と電圧指令値vref2の差分vdiffに対して、式(1)を演算した結果が推定電流G(s)vdiffである。
減算器29は、電流指令値irefと推定電流G(s)vdiffの差分を演算し、その差分(以後、電流指令値iref_err1とする)を減算器30に出力する。減算器30は、電流指令値iref_err1とインバータ出力電流検出値idetの差分(以後、電流指令値iref_err2とする)を演算し、その差分を電流制御部31(ACR)に出力する。
電流制御部31は、インバータ出力電流検出値idetを電流指令値irefに追従するように制御するために、例えば、比例積分(PI)制御などによって、電流指令値iref_err2に基づいて、三相の電圧指令値vref1を生成する。この電圧指令値vref1は、補正項加算部1に入力される。
補正項加算部1では、第1実施形態で詳述した電圧指令値補正が行われ、電圧指令値vref2が生成される。パルス幅変調部27は、電圧指令値vref2に、キャリア信号carrierとの比較に基づくパルス幅変調(PWM)を施して、三相インバータ25内の各スイッチングデバイスのゲート信号を出力する。
以上のような、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置24によれば、電圧指令値補正に起因する高調波成分の電流G(s)vdiffを推定して、予め電流指令値irefから減算することで、電圧指令補正に起因する高調波成分の電流を制御しないようにする。これにより、電流マイナーループを含んだ制御系において、二相/1パルス駆動、1パルス駆動を用いた場合に、電圧指令値補正に起因する高調波成分の電流が、電圧を飽和させているにもかかわらず、電圧飽和を緩和する、電圧飽和を助長する、などの不要な動作を生じさせる問題が改善される。その結果、電圧指令値の二相/1パルス駆動、1パルス駆動時でも、安定した電圧の制御が行われるようになり、電圧の精度も向上する。
1…補正項加算部
24…電力変換装置
25…三相インバータ
26…三相交流電源
27…パルス幅変調部
28…高調波電流推定部
29、30…減算器
31…電流制御部(ACR)
V* U、V* V、V* W…電圧指令値
VofsU、VofsV、VofsW…電圧指令値の補正量
Gu、Gv、Gw、Gx、Gy、Gz…ゲート信号
α、β、γ…第1補正量〜第3補正量
g1、g2、g3…第1ゲイン〜第3ゲイン
max(V*)…電圧指令値の最大値
min(V*)…電圧指令値の最小値
vref1、vref2…電圧指令値
G(s)vdiff…推定電流
24…電力変換装置
25…三相インバータ
26…三相交流電源
27…パルス幅変調部
28…高調波電流推定部
29、30…減算器
31…電流制御部(ACR)
V* U、V* V、V* W…電圧指令値
VofsU、VofsV、VofsW…電圧指令値の補正量
Gu、Gv、Gw、Gx、Gy、Gz…ゲート信号
α、β、γ…第1補正量〜第3補正量
g1、g2、g3…第1ゲイン〜第3ゲイン
max(V*)…電圧指令値の最大値
min(V*)…電圧指令値の最小値
vref1、vref2…電圧指令値
G(s)vdiff…推定電流
Claims (6)
- 交流−直流変換または直流−交流変換を行う電力変換装置に備えられた半導体スイッチ素子に対して、電圧指令値をPWM変調するゲート信号生成部により得られたゲート信号を出力する電力変換装置の制御方法であって、
ゲート信号生成部に備えられた補正項加算部において、
多相の電圧指令値のうち最大となる電圧指令値と、多相の電圧指令値のうち最小となる電圧指令値を算出し、
多相の電圧指令値のうち最大となる電圧指令値と最小となる電圧指令値を加算した信号に第1ゲインを乗算して第1補正量を生成し、
三角波キャリアの最大値から前記最大となる電圧指令値を減算した値と、三角波キャリアの最小値から前記最小となる電圧指令値を減算した値と、のうち絶対値の値が小さい方に第2ゲインを乗算した第2補正量を生成し、
多相の電圧指令値の相毎に、三角波キャリアの最大値と電圧指令値の差分と、三角波キャリアの最小値と電圧指令値との差分と、のうち、電圧指令値の極性が負のときには三角波キャリアの最大値と電圧指令値の差分に、電圧指令値の極性が正のときには三角波キャリアの最小値と電圧指令値の差分に第3ゲインを乗算した第3補正量を生成し、
前記第1補正量の絶対値が、前記第2補正量と前記第3補正量とを加算した値の絶対値のうち最も小さいものよりも小さい場合、前記第1補正量を各相共通の電圧指令の補正量として選択し、
前記第1補正量の絶対値が、前記第2補正量と前記第3補正量とを加算した値の絶対値のうち最も小さいものよりも大きい場合、前記第2補正量と相毎の前記第3補正量とを加算した値を相毎の電圧指令の補正量として選択し、
前記ゲート信号生成部が、多相の電圧指令値に前記電圧指令の補正量が加算された補正電圧指令値に基づいてPWM変調を行う
ことを特徴とする電力変換装置の制御方法。 - 第1ゲインは、変調率が所定値m1までは0、m1以降は次第に増加し、1.15以降は比例ゲインKp+1となる特性であり、
第2ゲインは、変調率が1.15までは1であり、変調率が1.15以降は0になるまで減少する特性であり、
第3ゲインは、変調率が1.15までは0であり、変調率が1.15からは1になるまで増加する特性である
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置の制御方法。 - 前記補正項加算部に入力される電圧指令値と前記補正項加算部から出力される補正電圧指令値の差分に基づいて、前記補正項加算部における電圧指令値補正に起因する高調波成分の電流を推定し、
電流指令値から前記高調波成分の電流を減算した指令値と前記電力変換装置の出力電流の検出値の差分に基づいて、前記電力変換装置の出力電流の検出値が電流指令値に追従するように制御するための電圧指令値を生成し、
この電圧指令値を前記補正項加算部に入力する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置の制御方法。 - 交流−直流変換または直流−交流変換を行う電力変換装置に備えられた半導体スイッチ素子と、
前記半導体スイッチ素子に対して出力される、電圧指令値をPWM変調したゲート信号を生成するゲート信号生成部と、を有する電力変換装置であって、
前記ゲート信号生成部には、補正項加算部が備えられ、
前記補正項加算部は、
多相の電圧指令値のうち最大となる電圧指令値と、多相の電圧指令値のうち最小となる電圧指令値を算出し、
多相の電圧指令値のうち最大となる電圧指令値と最小となる電圧指令値を加算した信号に第1ゲインを乗算して第1補正量を生成し、
三角波キャリアの最大値から前記最大となる電圧指令値を減算した値と、三角波キャリアの最小値から前記最小となる電圧指令値を減算した値と、のうち絶対値の値が小さい方に第2ゲインを乗算した第2補正量を生成し、
多相の電圧指令値の相毎に、三角波キャリアの最大値と電圧指令値の差分と、三角波キャリアの最小値と電圧指令値との差分と、のうち、電圧指令値の極性が負のときには三角波キャリアの最大値と電圧指令値の差分に、電圧指令値の極性が正のときには三角波キャリアの最小値と電圧指令値の差分に第3ゲインを乗算した第3補正量を生成し、
前記第1補正量の絶対値が、前記第2補正量と前記第3補正量とを加算した値の絶対値のうち最も小さいものよりも小さい場合、前記第1補正量を各相共通の電圧指令の補正量として選択し、
前記第1補正量の絶対値が、前記第2補正量と前記第3補正量とを加算した値の絶対値のうち最も小さいものよりも大きい場合、前記第2補正量と相毎の前記第3補正量とを加算した値を相毎の電圧指令の補正量として選択し、
前記ゲート信号生成部は、多相の電圧指令値に前記電圧指令の補正量が加算された補正電圧指令値に基づいてゲート信号を生成する
ことを特徴とする電力変換装置。 - 前記ゲート信号生成部は、ゲイン演算部を備え、
前記ゲイン演算部は、変調率が所定値m1までは0、m1以降は次第に増加し、1.15以降は比例ゲインKp+1である特性の第1ゲイン、
変調率が1.15までは1であり、変調率が1.15以降は0になるまで減少する特性である第2ゲイン、
変調率が1.15までは0であり、変調率が1.15からは1になるまで増加する特性である第3ゲインを演算する
ことを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。 - 前記電力変換装置の出力電流の検出値を電流指令値に追従するように制御する電流制御部と、
前記補正項加算部に入力される電圧指令値と前記補正項加算部から出力される補正電圧指令値の差分に基づいて、前記補正項加算部における電圧指令値補正に起因する高調波成分の電流を推定する高調波電流推定部と、をさらに備え、
前記電流制御部は、電流指令値から前記高調波成分の電流が減算された指令値と前記電力変換装置の出力電流の検出値の差分に基づいて、前記補正項加算部に入力される電圧指令値を生成し、
前記補正項加算部は、当該電圧指令値に前記電圧指令の補正量が加算された補正電圧指令値を生成する
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の電力変換装置。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2016100962 | 2016-05-20 | ||
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ID=60476903
Family Applications (1)
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JP2017027431A Pending JP2017212869A (ja) | 2016-05-20 | 2017-02-17 | 電力変換装置の制御方法及び電力変換装置 |
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JP (1) | JP2017212869A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP7202244B2 (ja) | 2019-04-03 | 2023-01-11 | オリエンタルモーター株式会社 | 電力変換装置 |
-
2017
- 2017-02-17 JP JP2017027431A patent/JP2017212869A/ja active Pending
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JP7202244B2 (ja) | 2019-04-03 | 2023-01-11 | オリエンタルモーター株式会社 | 電力変換装置 |
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