以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1−1.現金自動預払機及び紙幣入出金機の構成]
図1に外観を示すように、現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関等に設置され、使用者(すなわち金融機関等の顧客)との間で入金取引や出金取引等の現金に関する取引を行うようになっている。
筐体2は、その前側に顧客が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に顧客応対部3が設けられている。顧客応対部3は、カード入出口4、入出金口5、操作表示部6、テンキー7、及びレシート発行口8が設けられており、顧客との間で現金や通帳等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになっている。
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口4の筐体内側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。入出金口5は、筐体2を貫通した孔状に構成されており、顧客により入金する紙幣が投入されると共に、顧客へ出金する紙幣が排出される部分となっている。また入出金口5は、シャッタ5Aにより開放又は閉塞されるようになっている。
操作表示部6は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額等を入力するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルとなっている。テンキー7は、「0」〜「9」の数字等の入力を受け付ける物理キーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられる。レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。因みにレシート発行口8の奥側には、レシートに取引内容等を印字するレシート処理部(図示せず)が設けられている。
以下では、現金自動預払機1のうち顧客が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した顧客から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
筐体2内には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、媒体としての紙幣に関する種々の処理を行う紙幣入出金機10等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
紙幣入出金機10は、図2に模式的な側面図を示すように、紙幣制御部11、紙幣入出金部12、搬送部13、鑑別部14、紙幣を一時的に収納する一時保留部15、複数の紙幣収納庫16及びリジェクト庫17等が設けられている。
紙幣制御部11は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、全体を統括的に制御し、また紙幣の搬送先を決定する処理や各部の動作を制御する処理等、種々の処理を行う。
また紙幣制御部11は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。例えば紙幣制御部11は、取扱可能な紙幣の正常な画像データや金種ごとの各辺の長さ等を記憶している。
紙幣入出金部12は、紙幣入出金機10における前上部に位置しており、図3に斜視図を示すように、その内部に紙幣を収容するための収容空間12Aが形成されている。収容空間12Aは、上側が開放された直方体状に形成されている。この収容空間12Aには、長方形の紙葉状に形成された複数の紙幣が、それぞれの紙面をほぼ前後方向に向けると共に長辺を上下にそれぞれ位置させた姿勢で、互いの紙面を前後方向に重ねた状態で収容される。
この紙幣入出金部12は、収容空間12Aにおける左右方向(以下これを幅方向とも呼ぶ)の大きさが、左右それぞれに設けられたサイドガイド12Gにより規定されている。各サイドガイド12Gは、それぞれの取付位置を左右方向に変更することができる。このため紙幣入出金部12は、その製造時等に、設置される国や地域において取り扱われる紙幣のうち長辺の長さが最大となる紙幣に合わせて、各サイドガイド12Gの取付位置が適切に設定される。
また紙幣入出金部12(図2)は、収容空間12Aの上側に開閉可能なシャッタ12Bを配置しており、入出金口5(図1)のシャッタ5A及びこのシャッタ12Bを連動して開閉させることにより、収容空間12Aを外部と連通させ、又は該収容空間12Aを外部から遮蔽するようになっている。このため紙幣入出金部12は、シャッタ5Aと連動してシャッタ12Bを開放させた場合に、顧客に紙幣を収容空間12Aへ投入させること及び該顧客に該収容空間12Aから紙幣を取り出させること、すなわち該顧客との間で紙幣を授受することができる。
さらに紙幣入出金部12には、収容空間12Aの前下側に分離部12Cが設けられると共に、該収容空間12Aの後下側に放出部12Dが設けられている。分離部12Cは、収容空間12A内に収容されている紙幣を1枚ずつに分離し、下側に配置された搬送部13に引き渡す。放出部12Dは、後側に配置された搬送部13から受け取った紙幣を収容空間12A内へ放出することにより、該紙幣を該収容空間12A内に集積させて収容する。因みに紙幣入出金部12には、収容空間12A内における紙幣の有無や、該収容空間12A内に顧客の手が挿入されているか否か等を検出する種々のセンサが設けられている。このセンサは、得られた検知結果を紙幣制御部11へ供給するようになっている。
搬送部13(図2)は、紙幣を案内する搬送ガイドや多数の回転する搬送ローラ、或いは走行するベルト等が適宜配置されることにより、紙幣を搬送する搬送路W(図中に実線で示す)を形成している。また搬送部13は、複数の搬送路Wが接続された箇所に紙幣の進行方向を切り替える切替器が適宜設けられており、紙幣制御部11の制御に基づいて紙幣の搬送経路を切り替えるようになっている。
具体的に搬送部13は、各ローラを適宜回転させ、また各ベルトを適宜走行させ、さらに各切替器を適宜切り替えることにより、搬送路Wに沿って紙幣を各部へ搬送する。このとき搬送部13は、紙幣の長辺を進行方向の先端及び末端に位置させて、該長辺をほぼ左右方向(すなわち幅方向)に沿わせた姿勢で、該紙幣を短辺に沿った方向へ、すなわち幅方向と交差する方向へ進行させる。
鑑別部14は、搬送部13の搬送路Wと連続する鑑別搬送路14Wを内部に形成しており、この鑑別搬送路14Wに沿って、イメージセンサを含む複数種類のセンサが組み込まれている(詳しくは後述する)。この鑑別部14は、紙幣から各センサにより得られた信号や画像データ等を鑑別結果として紙幣制御部11へ供給する。これに応じて紙幣制御部11は、得られた鑑別結果を基に紙幣の金種、真偽、正損(損傷しているか否か)等を判別した上で、該紙幣の搬送先を決定し、さらに搬送部13の切替器を適宜切り替えさせる。
一時保留部15は、いわゆるテープエスクロ方式を採用しており、回転可能な円筒状のドラムやこのドラムの周側面に一端が固定された1本以上のテープ等を有している。この一時保留部15は、搬送部13から受け取った紙幣を収納する場合、ドラムを所定の巻付方向に回転させ、該紙幣をテープと共に該ドラムの周側面に巻き付けることにより当該紙幣を収納する。また一時保留部15は、収納している紙幣を繰り出す場合、ドラムを巻付方向と反対の巻戻方向に回転させ、周側面からテープを引き剥がすことにより、当該紙幣をドラムの周側面から引き剥がして繰り出し、搬送部13に引き渡す。
各紙幣収納庫16は、何れも同様に構成されており、内部に紙幣を集積して収納する収納空間を有すると共に、紙幣をこの収納空間内へ放出して集積し、又は集積された紙幣を1枚ずつに分離して繰り出す分離集積部を有している(詳しくは後述する)。この紙幣収納庫16は、鑑別部14及び紙幣制御部11により損傷の程度が小さく再利用が可能であると判断された紙幣が、その金種に応じて搬送部13により搬送されてくると、当該紙幣を内部に集積して収納する。また紙幣収納庫16は、紙幣制御部11から紙幣を繰り出す指示を受け付けると、集積している紙幣を1枚ずつに分離して繰り出し、搬送部13へ引き渡す。
リジェクト庫17は、紙幣収納庫16と一部類似した構成となっており、その内部に紙幣を収納するための収納空間を有している。このリジェクト庫17は、鑑別部14及び紙幣制御部11により損傷の程度が大きく再利用すべきで無いと判断された紙幣(いわゆるリジェクト紙幣)が搬送部13により搬送されてくると、当該紙幣を内部空間へ放出して収納する。
例えば、現金自動預払機1が顧客との間で入金取引を行う場合、紙幣入出金機10は、前段の処理として顧客から受け取った紙幣の計数等を行う入金計数処理を行い、後段の処理としてこの紙幣を金種等に応じて紙幣収納庫16等に収納させる入金収納処理を行うようになっている。
具体的に紙幣入出金機10の紙幣制御部11は、前段の入金計数処理において、まず主制御部9等と連携しながら、操作表示部6を介して所定の操作入力を受け付けた後、入出金口5(図1)のシャッタ5Aと共に紙幣入出金部12のシャッタ12Bを開放させ、顧客に紙幣を収容空間12A内へ投入させる。
続いて紙幣入出金部12は、入出金口5のシャッタ5A及びシャッタ12Bを閉塞してから、分離部12Cにより紙幣を1枚ずつに分離して下側の搬送部13へ引き渡す。搬送部13は、受け取った紙幣を後方へ搬送すると共に鑑別部14により鑑別させ、得られた鑑別結果を紙幣制御部11へ通知する。これに応じて紙幣制御部11は、各紙幣の搬送先を決定する。
このとき搬送部13は、鑑別部14において取扱可能であり正常と鑑別された紙幣(いわゆる正券)を一時保留部15へ搬送して収納させる。また搬送部13は、いわゆる損券や偽券のように、取引すべきでないと鑑別された紙幣(以下これを入金リジェクト紙幣と呼ぶ)を、紙幣入出金部12の放出部12Dへ搬送する。これに応じて紙幣入出金部12は、搬送されてきた紙幣を放出部12Dにより収容空間12A内へ放出して集積させる。
その後紙幣入出金部12は、入出金口5のシャッタ5Aと共にシャッタ12Bを開放することにより、顧客に紙幣を取り出させて確認させた後、必要に応じて紙幣を再度投入させる。ここで紙幣が再度投入された場合、紙幣入出金部12は、同様の処理を繰り返す。
その後紙幣制御部11は、操作表示部6(図1)を介して顧客により入金金額を確定する操作を受け付けると、前段の入金計数処理を終了すると共に、後段の入金収納処理を開始する。具体的に紙幣制御部11は、一時保留部15に収納している紙幣を順次繰り出し、搬送部13により搬送して鑑別部14によりそれぞれの金種及び損傷の程度等を鑑別させ、その鑑別結果を取得する。
続いて紙幣制御部11は、紙幣の損傷の程度が小さければ、これを再利用可能な紙幣とし、その金種に応じた紙幣収納庫16へ搬送して収納させる。また紙幣制御部11は、紙幣の損傷の程度が大きければ、これを再利用すべきでないリジェクト紙幣として、リジェクト庫17へ搬送して収納させる。
また、例えば現金自動預払機1が顧客との間で出金取引を行う場合、紙幣入出金機10の紙幣制御部11は、出金処理を行う。具体的に紙幣制御部11は、主制御部9等と連携しながら、操作表示部6(図1)等を介して出金額等の操作入力を受け付けた後、この出金額に応じた金種及び枚数の紙幣を紙幣収納庫16から順次繰り出させる。
続いて紙幣制御部11は、この紙幣を搬送部13により鑑別部14へ搬送して鑑別させた上で紙幣入出金部12の放出部12Dへ搬送する。これに応じて紙幣入出金部12は、搬送されてきた紙幣を放出部12Dにより収容空間12A内へ放出して集積させた後、入出金口5(図1)のシャッタ5Aと共にシャッタ12Bを開放して、紙幣を顧客に取り出させる。
このように紙幣入出金機10は、入金取引において紙幣入出金部12に投入された紙幣の左右方向(すなわち幅方向)に関する位置を殆ど変更すること無く、搬送部13により鑑別部14を通る搬送経路に沿って紙幣収納庫16へ搬送し、他の紙幣と共に集積した状態で収納させるようになっている。また紙幣入出金機10は、出金取引において、紙幣収納庫16に集積した状態で収納されている紙幣を1枚ずつに分離して繰り出し、出金するようになっている。
[1−2.紙幣収納庫の構成]
次に、紙幣収納庫16(図2)の構成について説明する。紙幣収納庫16は、図4(A)に模式的な側面図を示すと共に、そのA1−A2断面図を図4(B)に示すように、全体として直方体状に構成されており、左側、右側、上側、下側及び後側の各側面を形成する収納庫筐体20と、前側の側面である前扉21とにより構成されている。
前扉21は、収納庫筐体20に対し、図示しない蝶番により開閉可能に取り付けられている。また収納庫筐体20内における後寄りには、リバースガイド22が設けられている。リバースガイド22は、収納庫筐体20内の空間を前後に仕切っており、その前側に内部空間20Sを形成している。
内部空間20S内には、紙幣BLを上面に載置するステージ23が設けられている。ステージ23は、板面をほぼ水平に向けた板状に形成されており、図示しないステージ駆動部により駆動される。このステージ駆動部は、ステージ23を上下方向へ駆動させると共に、当該ステージ23を所望の高さ(上下方向の位置)において静止させる。また内部空間20Sの上端は、収納庫筐体20の上側板よりもやや下側に設けられた天板20Cにより規定されている。さらに紙幣収納庫16内には、ステージ23の高さや該ステージ23上に集積された紙幣の最上面の高さを検知するためのセンサが適宜設けられている。
内部空間20S内における左右それぞれの内側面近傍には、紙幣を案内するサイドガイド25がそれぞれ設けられている。サイドガイド25は、収納庫筐体20に対し、図示しない位置調整機構を介して取り付けられている。このためサイドガイド25は、この位置調整機構によってそれぞれ左右方向へ移動されることにより、それぞれの左右方向の位置を調整し、当該サイドガイド25同士の間隔が所望の長さに調整される。
このように内部空間20Sの内部には、ステージ23の上側に、天板20C、リバースガイド22、前扉21及び左右それぞれのサイドガイド25により規定される、当該内部空間20Sよりも一回り小さな直方体状の空間が形成される。この空間には、紙幣がステージ23上に順次集積されながら収納されていく。以下、この空間を収納空間20SCと呼ぶ。このため、収納空間20SCにおける左右方向(幅方向)の大きさは、各サイドガイド25の取付位置により規定されることになる。
収納空間20SCにおける前上方、すなわち前扉21の後面における上端近傍には、ビルストッパ26が設けられている。ビルストッパ26は、小さな直方体状に形成されており、前扉21の後面に対し、図示しない弾性体を介して取り付けられている。
内部空間20Sの後側における上寄りの部分には、分離放出部30が設けられている。分離放出部30は、紙幣を搬送する搬送ガイド31、フィードローラ32、テンションローラ33、舌片ローラ34及びピッカローラ35により構成されている。
搬送ガイド31は、後上側及び前下側の間で紙幣を案内して進行させる。フィードローラ32、テンションローラ33及びピッカローラ35は、何れも中心軸を左右方向に向けた円板状に構成されており、図示しない回転軸を中心に回転し得るようになっている。テンションローラ33は、フィードローラ32に向けて付勢されている。またフィードローラ32及びピッカローラ35は、周側面の一部に、紙幣との間に高い摩擦力を発生させる高摩擦部材が取り付けられている。因みに分離放出部30には、それぞれの回転軸に対し、左右方向に互いに離れた4箇所に、フィードローラ32、テンションローラ33及びピッカローラ35がそれぞれ配置されている。
舌片ローラ34は、テンションローラ33と共通の回転軸(図示せず)に取り付けられた中心部分と、この中心部分から外方へ向けて放射状に伸びた複数の舌片とにより構成されている。各舌片は、例えば樹脂材料によって構成されており、可撓性を有している。因みに分離放出部30には、テンションローラ33の回転軸に対し、該テンションローラ33同士の間に舌片ローラ34が適宜取り付けられている。
紙幣収納庫16は、紙幣を収納する場合、まずステージ23を適宜下降させることにより、該ステージ23上に集積された紙幣の最上面を天板20Cからある程度引き離した状態として、分離放出部30の前下方に十分な大きさの収納空間20SCを形成する。分離放出部30は、各ローラを適宜回転させた上で、搬送部13(図2)から受け取った紙幣を搬送ガイド31に沿って前下方へ案内し、フィードローラ32及びテンションローラ33に挟持させる。
フィードローラ32及びテンションローラ33は、それぞれの回転により紙幣を前方へ進行させ、収納空間20SC内へ放出する。放出された紙幣は、ビルストッパ26に当接して衝撃が吸収された上で、舌片ローラ34により下方へ叩き付けられると共に後方へ引き寄せられ、ステージ23の上又は該ステージ23上に既に集積されている紙幣の上に集積される。このとき紙幣は、搬送部13から紙幣収納庫16に引き渡された後、左右方向の位置を概ね維持したまま、ステージ23上に集積される。
また紙幣収納庫16は、紙幣を繰り出す場合、まずステージ23を上昇させることにより、ステージ23上に集積された紙幣の最上面をピッカローラ35の下端に当接させた状態とする。これと共に紙幣収納庫16は、分離放出部30のピッカローラ35及びフィードローラ32を収納時とは反対方向へ回転させると共にテンションローラ33を静止させる。
分離放出部30は、まずピッカローラ35により最上面及びその近傍の紙幣を後方へ送り出し、続いてフィードローラ32及びテンションローラ33により最上面の紙幣を他の紙幣から分離しながら後方へ送り出し、搬送ガイド31により後上方へ案内して、搬送部13に引き渡す。このとき分離放出部30は、高摩擦部材が周側面の一部にのみ設けられているため、紙幣同士の間隔を適宜空けながら、1枚ずつ繰り出すことができる。
このように紙幣収納庫16は、左右のサイドガイド25により左右方向(幅方向)の範囲が規定された収納空間20SC内に紙幣BLを集積して収納し、またこの収納空間20SCに集積された状態で収納されている紙幣を1枚ずつに分離して順次繰り出すようになっている。
[1−3.鑑別部の構成]
図5に斜視図を示すと共に図6に模式的な左側面図を示すように、鑑別部14は、鑑別部筐体40内に前後方向に沿って鑑別搬送路14Wを形成している。鑑別搬送路14Wの上下には、紙幣を案内する上搬送ガイド41A及び下搬送ガイド41Bがそれぞれ配置されている。上搬送ガイド41Aは、上下方向に薄い板状に構成されると共に、その下面が平坦に形成されている。また上搬送ガイド41Aには、複数の孔部が適宜形成されており、各孔部を介して後述するローラや各種センサの一部を鑑別搬送路14W内に露出させている。下搬送ガイド41Bは、上搬送ガイド41Aと概ね上下対称に構成されている。
鑑別部筐体40の内部には、前側から後側へ向けて、搬送ローラ対42、厚みセンサ部43、搬送ローラ対44、イメージセンサ部45、搬送ローラ対46、磁気センサ47部及び搬送ローラ対48が順次配置されている。
搬送ローラ対42は、鑑別搬送路14Wの上側に配置された駆動ローラ42Aと、該鑑別搬送路14Wの下側に配置された従動ローラ42Bとの組合せにより構成されている。駆動ローラ42Aは、中心軸を左右方向に沿わせた円板状に形成されており、図示しない駆動モータから駆動力が伝達されることにより回転する。従動ローラ42Bは、駆動ローラ42Aと同様に中心軸を左右方向に沿わせた円板状に形成されており、上方の駆動ローラ42Aに押し付けられると共に、自在に回転し得るようになっている。因みに鑑別部筐体40には、複数の搬送ローラ対42が、左右方向に離間した複数箇所にそれぞれ配置されている。
搬送ローラ対44、46及び48は、何れも搬送ローラ対42と同様に構成されている。このため鑑別部14は、搬送ローラ対42、44、46及び48により、紙幣を鑑別搬送路14Wに沿って、前方向又は後方向へ搬送することができる。
厚みセンサ部43は、上側に配置され上下方向に変位可能な変位ローラ部43Aと、その下側に配置されその位置を不変とする支持ローラ部43Bとにより構成されている。変位ローラ部43Aは、図示しないスプリングにより支持ローラ部43Bに押し付けられている。かかる構成により厚みセンサ部43は、鑑別搬送路14Wに沿って搬送される紙幣の厚さに応じて変位ローラ部43Aを上下方向に変位させ、このときの変位量を該紙幣の厚み量として検知し、得られた厚み量を鑑別結果の一部として紙幣制御部11(図2)へ送信する。
イメージセンサ部45は、上側に配置された上イメージセンサ45A及び下側に配置された下イメージセンサ45Bにより構成されている。上イメージセンサ45Aは、いわゆるラインセンサとなっており、撮像素子が左右方向に沿って線状に配置された構成となっている。この上イメージセンサ45Aは、鑑別搬送路14Wに沿って搬送される紙幣の上面を順次撮像して画像データを生成し、これを紙幣制御部11(図2)へ供給する。また下イメージセンサ45Bは、上イメージセンサ45Aと概ね上下対称に構成されており、鑑別搬送路14Wに沿って搬送される紙幣の下面を順次撮像して画像データを生成し、これを鑑別結果の一部として紙幣制御部11(図2)へ送信する。
磁気センサ部47は、上側に配置された磁気センサ47Aと、下側に配置された付勢ローラ47Bとにより構成されている。付勢ローラ47Bは、自在に回転し得るように構成されており、且つ上方向へ付勢されている。磁気センサ47Aは、その下面に磁気を検知する磁気ヘッドが取り付けられている。このため磁気センサ部47は、鑑別搬送路14Wに沿って搬送される紙幣から磁気を読み取って磁気検知信号を生成し、これを鑑別結果の一部として紙幣制御部11(図2)へ送信する。
これに応じて紙幣制御部11(図2)は、鑑別部14から得られる鑑別結果(すなわち厚み量、画像データ及び磁気検知信号)を基に、紙幣の搬送状態、真偽、金種及び正損等を判断し、該紙幣の搬送先を決定する。
[1−4.幅方向に関する紙幣の位置]
ところで紙幣入出金機10は、上述したように、複数の種類(すなわち金種)の紙幣を取り扱うようになっている。多くの場合、紙幣の大きさ(長辺及び短辺の長さ)は、金種ごとに異なっている。また紙幣入出金機10では、上述したように、紙幣の長辺を左右方向に沿わせ、その短辺に沿った方向を進行方向として、すなわち各長辺をそれぞれ先頭及び末尾として、該紙幣の搬送、収納及び繰出等を行うようになっている。
このため紙幣入出金機10では、図7(A)に示すように、取扱可能な紙幣BLのうち長辺の長さが最も大きい紙幣(以下これを最大長辺紙幣BLMAXと呼ぶ)における長辺の長さ(以下これを最大長辺長LMAXと呼ぶ)に合わせて、各部における左右方向(すなわち幅方向)の大きさが規定されている。
また説明の都合上、以下では、図7(B)に示すように、紙幣入出金機10において取扱可能な紙幣のうち長辺の長さが最も小さい紙幣を最小長辺紙幣BLMINと呼び、その長辺の長さを最小長辺長LMINと呼ぶ。これに加えて以下では、説明の都合上、幅方向の中央部分において、最小長辺長LMINよりも僅かに長く、且つ最大長辺長LMAXよりも十分に短い、中央部長さLCを規定する。さらに以下では、中央部長さLCの両端に相当する幅方向の位置をそれぞれ境界位置WEとも呼ぶ。すなわち中央部長さLC及び各境界位置WEは、最小長辺長LMINを基に定められる。
紙幣入出金機10では、図7(C)に模式的に示すように、紙幣入出金部12におけるサイドガイド12Gの取付位置が適切に調整されることにより、該サイドガイド12G同士の間隔であり、収容空間12Aにおける左右方向(すなわち幅方向)の長さであるガイド間隔LGが、最大長辺長LMAXよりも僅かに長くなっている。以下では、サイドガイド12Gの内側面に相当する幅方向の位置をガイド位置WGとも呼ぶ。また以下では、ガイド位置WGから境界位置WEまでの長さを外部長さLEと呼ぶ。
これと同様に紙幣入出金機10では、図7(F)に模式的に示すように、紙幣収納庫16におけるサイドガイド25の取付位置が適切に調整されることにより、該サイドガイド25同士の間隔が紙幣入出金部12と同等のガイド間隔LGに設定されている。換言すれば、サイドガイド25は、その内側面をガイド位置WGに合わせるように取り付けられている。
ところで図7(B)は、最小長辺紙幣BLMINにおける左右の中心が、収容空間12A等における左右方向の中心を表す搬送中心線WCと一致した状態、すなわち最小長辺紙幣BLMINが収容空間12A等における左右方向の中央に位置した状態を表している。
ここで図7(E)に示すように、長辺の長さが最小長辺紙幣BLMINと同程度であり、中央部長さLCよりも十分に短い短紙幣BLSが、収容空間12A等に対して左右方向(すなわち幅方向)に偏った位置にある場合を想定する。この短紙幣BLSは、左右方向に関する一方の端部が境界位置WEよりも外側に、すなわち外部長さLEに相当する部分に到達している。
このように長辺の長さが比較的短い短紙幣BLSが、収容空間12A等に対して左右方向に偏った位置にある場合、紙幣収納庫16では、この短紙幣BLSを収納すると、出金取引において出金する際に、正常に繰り出し得なくなる恐れがある。
例えば図8(A)及び(B)に示すように、紙幣収納庫16の収納空間20SC内において、収納時に短紙幣BLSが右側又は左側に偏った位置にある状態で、順次集積された場合を想定する。この紙幣収納庫16では、ステージ23上の左右方向に関するそれぞれの位置における紙幣の集積枚数に着目すると、中央付近が最も多く、左右の外方がこれよりも少なくなっている。このため紙幣収納庫16では、見かけ上、ステージ23上に集積された紙幣(短紙幣BLS)のうち左右の中央付近が上方へ突出するように盛り上がり、その周囲がこれよりも低くなっている。
このような紙幣収納庫16では、出金取引等において短紙幣BLSを繰り出す場合、ステージ23を上方へ持ち上げたとしても、左右方向の中央部分のみが天板20Cに到達するため、ピッカローラ35の下端に対し紙幣を十分に押し付けることができず、短紙幣BLSを後方へ正常に送り出し得ない恐れがある。またこの場合、2枚以上の短紙幣BLSを同時に後方へ送り出してしまい、1枚ずつに分離できない恐れもある。
また、図9(A)及び(B)に示すように、紙幣収納庫16の収納空間20SC内において、収納時に短紙幣BLSが左右方向のほぼ中央に整然と集積された上に、新たに集積された紙幣が右方向に偏っていたために右端近傍が最上面から垂れ下がっていた場合を想定する。この紙幣収納庫16では、出金取引等において短紙幣BLSを繰り出す場合、最上面の短紙幣BLSのうち垂れ下がっている部分が、収納空間20SCの後側面を形成するリバースガイド22に引っ掛かることになり、正常に後方へ送り出すことができない。
そこで紙幣入出金機10では、入金取引における前段の入金計数処理等において、長辺の長さが比較的短い短紙幣BLSが左右方向(すなわち幅方向)に偏っていた場合(以下このような紙幣を幅偏位紙幣又は幅偏位媒体と呼ぶ)、その偏りの解消を図るようになっている。
具体的に紙幣入出金機10では、図7(D)に示すように、鑑別部14の上イメージセンサ45Aにおいて、撮像領域SAのうち左右方向(すなわち幅方向)に関し、境界位置WEよりも内側の範囲、すなわち中央部長さLCの範囲を中央部領域SACとし、該境界位置WEよりも外側の範囲を外部領域SAEとしている。
そのうえで紙幣入出金機10は、紙幣入出金部12(図3)に投入された紙幣が短紙幣BLSであり、且つ左右方向の位置が偏っていると判断した場合、具体的には上イメージセンサ45Aから得られた画像データにおいて短紙幣BLSの一部が外部領域SAEに到達していた場合に、このような偏位の解消を図るための処理を行う。
[1−5.入金計数処理手順]
次に、紙幣入出金機10において入金取引の前段部分として行う入金計数処理の詳細な処理手順について説明する。
紙幣入出金機10の紙幣制御部11は、主制御部9(図1)から入金計数処理の開始指示を受け付けると、記憶部から入金計数処理プログラムを読み出して実行することにより、図10に示す入金計数処理手順RT1を開始してステップSP1へ移る。ステップSP1において紙幣制御部11は、主制御部9と連携することにより、入出金口5のシャッタ5A(図1)と共に紙幣入出金部12のシャッタ12Bを開放し、次のステップSP2へ移る。
ステップSP2において紙幣制御部11は、紙幣入出金部12に設けられたセンサから得られる検知結果を基に、収容空間12A内に紙幣が投入されたか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、紙幣制御部11はこのステップSP2を繰り返すことにより、収容空間12A内に紙幣が投入されるのを待ち受ける。一方、ステップSP2において肯定結果が得られると、紙幣制御部11は次のステップSP3へ移る。
ステップSP3において紙幣制御部11は、紙幣入出金部12に設けられたセンサから得られる検知結果を基に、収容空間12Aの直近に顧客の手があるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことはシャッタ12B等を閉塞した場合に顧客の手等を挟む恐れがあることを表している。このとき紙幣制御部11はこのステップSP3を繰り返すことにより、顧客の手が収容空間12Aの近傍から離れるのを待ち受ける。
一方、ステップSP3において否定結果が得られると、紙幣制御部11は次のステップSP4へ移る。ステップSP4において紙幣制御部11は、主制御部9と連携することにより、入出金口5のシャッタ5A(図1)と共に紙幣入出金部12のシャッタ12Bを閉塞し、次のステップSP5へ移る。
ステップSP5において紙幣制御部11は、紙幣入出金部12に設けられたセンサから得られる検知結果を基に、収容空間12A内に紙幣が1枚以上残っているか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことはこの残っている紙幣を1枚ずつに分離して繰り出す処理を継続する必要があることを表している。このとき紙幣制御部11は、次のステップSP6へ移る。
ステップSP6において紙幣制御部11は、紙幣入出金部12の分離部12C(図2)により収容空間12A内の紙幣を1枚分離して搬送部13に引き渡し、次のステップSP7へ移る。ステップSP7において紙幣制御部11は、搬送部13により紙幣(以下これを対象紙幣と呼ぶ)を搬送すると共に、鑑別部14により該対象紙幣を鑑別させて鑑別結果を取得し、次のステップSP8へ移る。
ステップSP8において紙幣制御部11は、鑑別部14から得られた鑑別結果を基に金種を判定することにより、対象紙幣が短紙幣BLSであるか否か、すなわち該対象紙幣の長辺が中央部長さLC(図7)よりも短いか否かを判定する。具体的に紙幣制御部11は、まず鑑別結果を基に金種を判定し、次に予め記憶している金種に応じた長辺の長さを読み出して、この長辺の長さを中央部長さLCと比較する。ここで肯定結果が得られると、紙幣制御部11は次のステップSP9へ移る。
ステップSP9において紙幣制御部11は、鑑別部14から得られた鑑別結果のうち上イメージセンサ45Aから得られた画像データを基に、紙幣の一部が境界位置WEよりも外側の外部領域SAE(図7)に到達しているか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは対象紙幣が右側又は左側に偏った幅偏位紙幣であるために、仮にそのまま紙幣収納庫16に収納した場合には以降の出金処理等において該幅偏位紙幣を正常に繰り出せない恐れがあることを表している(図8及び図9)。このとき紙幣制御部11は、次のステップSP10へ移る。
ステップSP10において紙幣制御部11は、搬送部13(図2)に設けられた切替器を適宜切り替えることにより、対象紙幣を紙幣入出金部12の後側へ搬送し、放出部12Dから収容空間12A内へ放出させ、次のステップSP11へ移る。
ステップSP11において紙幣制御部11は、主制御部9(図1)と連携することにより、操作表示部6に再投入画面を表示させる。この再投入画面には、例えば「紙幣を中央に揃えて投入し直して下さい」といったメッセージが表示されている。さらに紙幣制御部11は、再度ステップSP1へ戻ることにより、紙幣入出金部12のシャッタ12B等を開放させて顧客に紙幣を再投入させ、一連の処理を繰り返す。
一方、ステップSP8において否定結果が得られると、このことは対象紙幣の長辺が比較的長く、ガイド間隔LG(図7)との差分が比較的小さいために、左右方向への偏りがあったとしてもその度合が比較的小さく収まることを表している。この場合、紙幣収納庫16では、対象紙幣をそのまま収納することにより概ね正常に集積でき、以降の出金取引等においても正常に繰り出し得る可能性が高い。このため紙幣制御部11は、次のステップSP12へ移る。
また、ステップSP9において否定結果が得られると、このことは短紙幣BLS(図7)である対象紙幣が境界位置WEよりも内側にあり中央部領域SACの範囲内に収まっているため、紙幣収納庫16へ搬送して収納した場合に正常に集積でき、また以降の出金取引等において正常に繰り出し得ることを表している。このとき紙幣制御部11は、次のステップSP12へ移る。
ステップSP12において紙幣制御部11は、搬送部13の各切替器を適宜切り替えることにより、対象紙幣を一時保留部15へ搬送して収納させた後、再度ステップSP5へ移って一連の処理を繰り返す。
また、ステップSP5において否定結果が得られると、このことは収容空間12A内の紙幣を全て繰り出したことを表している。このとき紙幣制御部11は、次のステップSP13へ移り、入金計数処理手順RT1を終了する。
[1−6.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態による現金自動預払機1の紙幣入出金機10は、入金計数処理において、対象紙幣が短紙幣BLS(図7)であり、且つその一部が外部領域SAEに到達した幅偏位紙幣であった場合、該対象紙幣を紙幣入出金部12へ戻して顧客に再投入させる。
すなわち紙幣入出金機10は、短紙幣BLSが幅偏位紙幣であった場合、再投入画面に表示されるメッセージを見た顧客により、該短紙幣BLSが収容空間12Aから一度取り出され、幅方向の中央に合わせて再投入されることが期待できる。
このため紙幣入出金機10は、短紙幣BLSについて、幅方向のほぼ中央に位置する状態、具体的には左右の境界位置WEよりも内側にあり中央部領域SACの範囲内に収まった状態のもののみを紙幣収納庫16へ搬送することができ、収納空間20SC(図4)内における幅方向の中央部分に、整然と集積できる。
これにより紙幣入出金機10は、以降の出金取引等において、紙幣収納庫16から紙幣を正常に繰り出し得なくなる恐れ(図8及び図9)を排除でき、安定的に紙幣を繰り出すこと、すなわち出金取引等を正常に行うことができる。
これを他の観点から見れば、仮に紙幣入出金機10内に紙幣の左右方向(幅方向)に関する位置を機械的に修正するための幅偏位修正機構を設けた場合、幅偏位紙幣の幅方向に関する位置を左右の境界位置WE(図7)の内側に収めるよう、自動的に修正することが可能となる。しかしながらこの場合、幅偏位修正機構を追加するための製造コストが増加し、また機構の複雑化に伴う保守等の手間も増加し、さらには現金自動預払機1における可用性の低下に繋がる恐れも生じてしまう。
これに対し本実施の形態による紙幣入出金機10では、幅偏位紙幣を入金リジェクト紙幣と同様に紙幣入出金部12から顧客へ返却するため、該顧客の手を借りることにより、製造や保守等におけるコストの増加を招くことなく、短紙幣BLSの位置を概ね中央に合わせるよう修正することができる。
また一般に、現金自動預払機1における入金取引では、顧客により入金された紙幣の一部が入金リジェクト紙幣として返却されることが度々生じており、顧客が紙幣を再投入する操作に慣れている。このため現金自動預払機1では、顧客に比較的慣れた作業を行わせるだけで良く、不慣れな作業を強いることが無い。
また紙幣入出金機10では、鑑別部14の上イメージセンサ45Aから得られる画像データ等を基に、対象紙幣が短紙幣BLSであるか否か、及びその一部が外部領域SAEに到達しているか否かを判断することができるので、該鑑別部14に専用のイメージセンサや位置センサ等を追加する必要が無い。
ところで従来の紙幣入出金機では、入金計数処理において、顧客に投入された紙幣の金種、正損及び真偽等を鑑別する目的で、投入された紙幣を鑑別部において鑑別していた。また従来の紙幣入出金機では、顧客に投入された紙幣が入金リジェクト紙幣であった場合、これを鑑別部から紙幣入出金部へ搬送して顧客に返却していた。
このため本実施の形態による紙幣入出金機10では、従来の紙幣入出金機と比較して、新たな鑑別部を追加する必要が無く、また入金計数処理において対象紙幣を鑑別部へ搬送するための搬送経路を設ける必要や、対象紙幣が短紙幣BLSであり且つ幅偏位紙幣であった場合に紙幣入出金部12へ搬送するための搬送経路等を設ける必要も無い。
以上の構成によれば、第1の実施の形態による現金自動預払機1の紙幣入出金機10は、入金計数処理において、対象紙幣が短紙幣BLSであり、且つその一部が外部領域SAEに到達した幅偏位紙幣であった場合、該対象紙幣を紙幣入出金部12へ戻して顧客に再投入させるようにした。このため紙幣入出金機10は、短紙幣BLSを幅方向のほぼ中央に位置させた状態で紙幣収納庫16へ搬送し、整然と集積させることができる。これにより紙幣入出金機10は、以降の出金取引等において紙幣収納庫16から紙幣を正常に繰り出し得なくなる恐れを排除でき、安定的に紙幣を繰り出すことができる。
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による現金自動預払機101は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、紙幣入出金機10に代わる紙幣入出金機110を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
紙幣入出金機110は、第1の実施の形態による紙幣入出金機10と比較して、紙幣制御部11及び紙幣入出金部12に代わる紙幣制御部111及び紙幣入出金部112を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
紙幣制御部111は、第1の実施の形態による紙幣制御部11と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、全体を統括的に制御し、また紙幣の搬送先を決定する処理や各部の動作を制御する処理等、種々の処理を行う。また紙幣制御部111は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。この紙幣制御部111は、入金計数処理において、第1の実施の形態と一部異なる処理を行うようになっている(詳しくは後述する)。
紙幣入出金部112は、図3と対応する図11(A)に示すように、第1の実施の形態による紙幣入出金部12と比較して、収容空間12Aの前側及び後側に、位置案内ラベル112Lがそれぞれ貼り付けられている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
位置案内ラベル112Lは、図11(B)に平面図として示すように、例えば金属や樹脂等でなる板状部材として構成されており、左右方向(すなわち幅方向)に関してほぼ中央に貼り付けられており、顧客から容易に視認され得るようになっている。また位置案内ラベル112Lの両端近傍には、位置マークMが配置されている。この位置マークMは、幅方向に関して、境界位置WEに相当する位置、すなわち鑑別部14の上イメージセンサ45A(図7)における中央部領域SAC及び外部領域SAEの境界と対応する位置に設けられている。
このため位置案内ラベル112Lは、顧客に短紙幣BLSを幅方向の中央部分に合わせて投入させる場合に、位置マークMを位置合わせの目安として利用させることができる。因みに位置マークMは、位置案内ラベル112Lに対し、例えば赤色のような容易に視認し得る色の塗料が塗布されることにより、記されている。
また紙幣制御部111は、入金計数処理において、第1の実施の形態と同様に、入金計数処理手順RT1(図10)に従った処理を順次行う。ただし紙幣制御部111は、ステップSP11において、第1の実施の形態とは異なり、図12に示す再投入案内画面D2を操作表示部6(図1)に表示させるようになっている。
この再投入案内画面D2は、顧客の視点から見た紙幣入出金部112及びその周辺部分を画像として表しており、さらに人の手により紙幣の位置を位置案内ラベル112Lの位置マークMに合わせて収容空間12A内へ投入する様子を表している。
すなわち紙幣制御部111は、この再投入案内画面D2を操作表示部6に表示させることにより、位置案内ラベル112Lにおける2個の位置マークMの間に収めるように、紙幣を収容空間12A内へ再投入するよう、顧客に対し画像で説明することができる。
以上の構成において、第2の実施の形態による現金自動預払機101の紙幣入出金機110は、第1の実施の形態と同様、入金計数処理において、対象紙幣が短紙幣BLS(図7)であり、且つその一部が外部領域SAEに到達した幅偏位紙幣であった場合、該対象紙幣を紙幣入出金部112へ戻して顧客に再投入させる。
このとき紙幣入出金機110は、紙幣入出金部112に位置案内ラベル112L(図11)が貼り付けてあるため、短紙幣BLSの位置を2箇所の位置マークM同士の間に収めれば良いことを直感的に認識させることができる。さらに紙幣入出金機110は、操作表示部6に再投入案内画面D2(図12)を表示することにより、短紙幣BLSを2箇所の位置マークM同士の間に収めれば良いことを、画像により容易に理解させることができる。
このため紙幣入出金機110は、例えば様々な言語の顧客に利用されることが想定される場合であっても、各言語によるメッセージをそれぞれ表示すること無く、位置マークMが紙幣を投入する際に合わせるべき位置を示していることを、1種類の画像のみにより適切に認識させることができる。
その他の点においても、第2の実施の形態による紙幣入出金機110は、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第2の実施の形態による現金自動預払機101の紙幣入出金機110は、入金計数処理において、対象紙幣が短紙幣BLSであり、且つその一部が外部領域SAEに到達した幅偏位紙幣であった場合、該対象紙幣を紙幣入出金部112へ戻して顧客に再投入させるようにした。また紙幣入出金機110は、紙幣入出金部112に位置案内ラベル112Lを設けると共に、再投入案内画面D2を操作表示部6に表示させるようにした。このため紙幣入出金機110は、顧客に短紙幣BLSを位置マークM同士の間に位置されば良いことを容易に理解させた上で再投入させることができ、該短紙幣BLSを紙幣収納庫16において整然と集積できる。これにより紙幣入出金機110は、第1の実施の形態と同様、以降の出金取引等において紙幣収納庫16から紙幣を正常に繰り出し得なくなる恐れを排除でき、安定的に紙幣を繰り出すことができる。
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、鑑別部14において上イメージセンサ45Aから得られた画像データを基に、対象紙幣の一部が外部領域SAEに到達しているか否かを判定する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば下イメージセンサ45Bから得られた画像データを基に判定しても良く、或いは上イメージセンサ45Aから得られた画像データ及び下イメージセンサ45Bから得られた画像データを組み合わせて利用することにより判定しても良い。また、厚みセンサ部43や磁気センサ部47から得られる検知結果や、これらと画像データとの組合せ等を基に判定しても良い。さらには、専用の光学センサ等を設けることにより判定しても良い。要は、何らかのセンサにより得られた検知結果(鑑別結果)を基に、対象紙幣の一部が外部領域SAEに到達しているか否かを判定すれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
また上述した第1の実施の形態においては、鑑別部14において得られた鑑別結果を基に対象紙幣の金種を判別し、これに応じて予め記憶している金種ごとの幅方向の長さを読み出して中央部長さLCと比較することにより、対象紙幣が短紙幣BLSであるか否かを判定する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば上イメージセンサ45Aから得られた画像データにおいて対象紙幣が幅方向に占める範囲の長さを算出し、これを中央部長さLCと比較する等、他の種々の手法により、対象紙幣が短紙幣BLSであるか否かを判定しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、鑑別部14において得られた鑑別結果を紙幣制御部11へ供給することにより、該紙幣制御部11において紙幣の金種等を判別する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば鑑別部14内に金種等の判別処理を行う判別処理部を設け、この判別処理部において鑑別結果を基に金種等を判別し、得られた判別結果を紙幣制御部11へ供給しても良い。これにより、紙幣制御部11の処理負荷を軽減することができる。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、短紙幣BLSが幅偏位紙幣であり紙幣入出金部12から顧客に返却する際に、幅方向の位置を中央に合わせて紙幣を再投入すべきことを、文字列により顧客に説明する場合について述べた。また第2の実施の形態においては、これらを位置案内ラベル112L(図11)の設置及び再投入案内画面D2(図12)の表示により顧客に通知する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば音声や動画像、或いはこれらの組合せ等、種々の手法により顧客に通知しても良い。
さらに上述した第2の実施の形態においては、位置案内ラベル112L(図11)の左右両端近傍に、塗料の塗布等により位置マークMを常に視認し得る状態で表示する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば位置案内ラベル112Lにおける左右方向(幅方向)に異なる複数箇所に、互いに異なる色や形状でなる位置マークMを複数配置しておき、対象紙幣における長辺の長さに応じた位置マークMに合わせて紙幣を再投入する様子を表す再投入案内画面を表示しても良い。或いは、例えば位置案内ラベル112Lにおける左右方向(幅方向)に異なる複数箇所にLED(Light Emitting Diode)等の発光素子をそれぞれ組み込み、対象紙幣における長辺の長さに合わせた箇所の発光素子のみを発光させるようにしても良い。これらの場合、対象紙幣における長辺の長さに合わせて、その両端を合わせるべき位置を適切に示すことができる。
さらに上述した第1の実施の形態においては、現金自動預払機1において取扱可能な紙幣のうち長辺が最も短い紙幣の最小長辺長LMINを基に中央部長さLC及び各境界位置WEを定める場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば事前に定められた左右の外部長さLEをガイド間隔LGからそれぞれ差し引くことにより各境界位置WEを定める等、種々の値を基に中央部長さLC及び各境界位置WEを定めても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、媒体としての紙幣に関する取引を行う現金自動預払機1の紙幣入出金機10に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば種々の証券や金券、或いは商品券や入場券等、紙葉状でなり大きさが異なる複数種類の媒体を取り扱う種々の媒体処理装置に適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した実施の形態においては、入出部としての紙幣入出金部12と、収容空間としての収容空間12Aと、搬送部としての搬送部13と、鑑別部としての鑑別部14と、収納部としての紙幣収納庫16と、通知部としての操作表示部6と、制御部としての紙幣制御部11とによって媒体処理装置としての現金自動預払機1を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる入出部と、収容空間と、搬送部と、鑑別部と、収納部と、通知部と、制御部とによって媒体処理装置を構成しても良い。