<第1実施形態>
一例として、本実施形態の方法における標的生体分子は、所望の標的核酸配列を有する核酸である。また、標的生体分子と結合し得るリガンドは、当該標的核酸配列にアニーリングし得るプライマー(以下「標的核酸用プライマー」という)である。本実施形態においては、標的生体分子が核酸である場合について説明する。
本実施形態の標的核酸配列の特定方法は、(a1)核酸を含む試料を、複数の標的核酸配列の1つとアニーリングし得る標的核酸用プライマーと、光分解性保護基を有し、かつ光分解性保護基の脱保護によりプロトンの発生又は取り込みを生じ得る化合物とが固定化された、複数のビーズと接触させる工程と、(b1)前記試料と接触させたビーズを、ビーズ毎に、個別の反応槽に配置する工程と、(c1)前記ビーズが配置された前記反応槽に、核酸伸長反応に必要な試薬を添加する工程と、(d1)前記ビーズが配置された反応槽内で核酸伸長反応を行う工程と、(e1)前記核酸伸長反応中の各反応槽におけるプロトン発生量を測定する工程と、(f1)前記プロトン発生量に基づいて、各反応槽内における核酸伸長の有無を判定する工程と、(g1)前記反応槽に配置された前記ビーズに光を照射し、前記光照射の前後における各反応槽内のプロトン濃度の変化量に基づいて、前記ビーズに固定化された前記リガンドの種類を反応槽毎に特定する工程と、の各工程を有する。以下、各工程について説明する。
[標的核酸用プライマーとのアニーリング]
工程(a1)は、核酸を含む試料を、前記複数の標的核酸配列の1つとアニーリングし得る標的核酸用プライマーと、光分解性保護基を有し、かつ脱保護によりプロトン濃度の変化を生じ得る化合物とが固定化された、複数のビーズと接触させる工程である。
まず、本実施形態で用いるビーズについて、図1を参照して説明する。図1中、1はビーズ、2は標的核酸用プライマー、10は光分解性保護基を有し、かつ脱保護によりプロトン濃度の変化を生じ得る化合物、100はビーズ1に標的核酸用プライマー2と化合物10が固定化されたビーズ体を示す。
本実施形態において、ビーズ1は、標的核酸用プライマー2が固定化するための担体として用いられる。一例として、ビーズ1の形状は、球状又はそれに近い形状である。ビーズ1の形状は、これに限るものではない。一例として、ビーズ1の大きさは、平均直径1μmから250μmである。一例として、ビーズ1の大きさは、平均直径30μmから80μmである。ビーズ1の大きさは、これらに限るものではない。
ビーズ1の材質は、特に限定されないが、例えば、ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、ガラス、ポリスチレン、セルロース、ポリアミド等を挙げることができる。また、反応槽への配置の観点から、磁性ビーズを用いてもよい。ビーズ1は、1種類の物質のみならず、2種類以上の物質からなるものであってもよい。また、ビーズ1は、表面コーティングされたものであってもよい。
図1に示すように、ビーズ1には、標的核酸用プライマー2が固定化されている。これらの核酸のビーズ1への固定化は、公知の方法を用いて行うことができる。例えば、標的核酸用プライマー2をビオチン修飾し、ビーズ1の表面をアビジンでコーティングすることにより、アビジン−ビオチン結合を利用して、ビーズ1への両核酸の固定化を行うことができる。また、標的核酸用プライマー2をアミノ基、ホルミル基、SH基などの官能基で修飾し、ビーズ1をアミノ基、ホルミル基、エポキシ基などを有するシランカップリング剤で表面処理することにより、固定化を行ってもよい。
標的核酸用プライマー2は、目的とする標的核酸配列にアニーリングし得る配列を有する。一例として、標的核酸用プライマー2は、標的核酸配列の一部に相補的な配列を有する核酸である。標的核酸用プライマー2は、標的核酸配列にアニーリングし、標的核酸配列を鋳型とした核酸伸長反応を誘導する。一例として、標的核酸用プライマー2は、DNAである。標的核酸用プライマー2の配列は、目的とする標的核酸配列に応じて、適宜選択することができる。本実施形態においては、個々のビーズ1には、それぞれ異なる配列を有する標的核酸用プライマー2が固定化されている。
なお、図1では、ビーズ1に対して、標的核酸用プライマー2が1分子ずつしか固定化されていないが、ビーズ1に対して固定化されるこれらの核酸の数は1分子に限定されず、2分子以上を固定化することができる。一例として、標的核酸用プライマー2は、2以分子以上固定化される。ビーズ1に対して固定化される標的核酸用プライマー2の分子数は、特に限定されず、ビーズ1の表面積に応じて、標的核酸のアニーリング及び伸長反応を妨げない程度の密度の分子数とすることができる。なお、1つのビーズ1に対して固定化される標的核酸用プライマー2は、全て同一の標的核酸配列を標的とする。
また、ビーズ1に対して、同一の標的核酸配列を標的とするフォワードプライマーとリバースライマーの2種類の標的核酸用プライマー2を固定化してもよい。一例として、ビーズ1に対して、同じ分子数のフォワードプライマーとリバースプライマーとが固定化される。
ビーズ1には、標的核酸用プライマー2に加えて、光分解性保護基を有し、かつ光分解性保護基の脱保護によりプロトンの発生又は取り込みを生じ得る化合物10が固定化されている。一例として、化合物10は、図1に示されるような構造を有する。図1の化合物10において、Rは置換基を有してもよい炭化水素基、Aは官能基、Yは光分解性保護基を示す。
化合物10は、紫外線等の光を照射すると、光分解性保護基Yが脱保護される。この際、官能基Aの種類に応じて、プロトンの発生又は取り込みが生じる。例えば、官能基Aが、−CO−O−又は−O−CO−である場合、光分解性保護基Yの脱保護により、カルボン酸とアルコールが生じる。また、官能基Aが、−CO−NH−又は−NH−CO−である場合、光分解性保護基Yの脱保護により、アミンとカルボン酸が生じる。また、官能基Aが、−SO2−O−又は−O−SO2−である場合、光分解性保護基Yの脱保護により、スルホン酸とアルコールが生じる。これらの例では、これらの物質の生成により、プロトン発生が生じ、プロトン濃度が増大すると考えられる。なお、官能基Aの種類は、これらに限定されない。
化合物10の例としては、アミノ基、カルボニル基、スルホ基等が、光分解性保護基Yで保護された化合物を挙げることができる。そのような化合物の例としては、アミノ基、カルボニル基、スルホ基等を有する光分解性カップリング剤等を挙げることができる。また、光分解性カップリング剤の例としては、アミノ基、カルボニル基、スルホ基等を有する光分解性シランカップリング剤等を挙げることができる。光分解性シランカップリング剤の例としては、特開2003−321479号、特開2008−50321号、特開2015−214531号等に記載のもの等を挙げることができる。なお、光分解性保護基Yは、光の照射によって脱保護される保護基であり、前記公報に記載されるものに限らず、公知のものを使用することができる。
一例として、化合物10が光分解性シランカップリング剤である場合、ビーズ1の表面を水酸基で修飾し、化合物10を反応させることにより、ビーズ1に対する化合物10の固定化を行うことができる。
図2の例に示すように、ビーズ1に固定化される化合物10の数は、ビーズ1に固定化される標的核酸用プライマー2の種類毎に異なっている。一例として、標的核酸用プライマー2−1が固定化されたビーズ体100−1には、全ビーズ体中、1番目に少ない数の化合物10が固定化されている。また、標的核酸用プライマー2−2が固定化されたビーズ体100−2には、全ビーズ体中、2番目に少ない数の化合物10が固定化されている。また、標的核酸用プライマー2−mが固定化されたビーズ体100−mには、全ビーズ体中、m番目に少ない数の化合物10が固定化されている。このように、全ビーズ体中における固定化された化合物10の数の順位と、標的核酸用プライマー2の種類とは、1対1の対応関係を有している。
本工程では、ビーズ1に標的核酸用プライマー2と化合物10とが固定化されたビーズ体100を、核酸を含む試料と接触させる。本実施形態において、核酸を含む試料は、特に限定されず、例えば、生体サンプルや環境サンプルからの核酸抽出物等を含む試料等を使用することができる。一例として、試料に含まれる核酸は、DNAである。DNAの例としては、cDNAやゲノムDNAを挙げることができる。試料に含まれる核酸は、DNAに限定されず、RNAや修飾核酸であってもよい。
ビーズ体100と核酸を含む試料との接触は、例えば、ビーズ体100と核酸を含む試料とを混合することにより行うことができる。一例として、ビーズ体100と核酸を含む試料との混合物は、標的核酸用プライマー2が標的核酸とアニーリングし得る条件に置かれる。アニーリング条件は、標的核酸用プライマー2の長さ等に応じて、適宜設定することができる。試料中に標的核酸用プライマー2の標的核酸が含まれている場合には、図3に示すように、標的核酸用プライマー2が標的核酸3にアニーリングし、ビーズ体100に標的核酸3が捕捉される。一方、試料中に標的核酸用プライマー2の標的核酸が含まれていない場合には、標的核酸用プライマー2は試料中の核酸とはアニーリングしない。したがって、複数のビーズ体を試料と接触させた場合、標的核酸用プライマー2が標的核酸にアニーリングしているビーズ体100と、標的核酸用プライマー2に標的核酸がアニーリングしていないビーズ体100との混合物が形成される。なお、試料と接触させるビーズ体100の数は、検出したい標的核酸の数に応じて、適宜選択することができる。
[反応槽へのビーズの配置]
工程(b1)は、核酸を含む試料と接触させたビーズ体100を、ビーズ毎に、個別の反応槽に配置する工程である。本実施形態の工程(b)を、図4を参照して、説明する。図4中、20はビーズ配置用基板であり、21は反応槽である。この一例においては、ビーズ配置用基板20は、m×n個(m、nはいずれも自然数。)の反応槽21を備える。この反応槽21をウエルWともいう。
また、反応槽21は、プロトン濃度を検知するためのセンサ30を備えている。反応槽21のうち、例えば、ウエルW11は、センサ30−11を備える。ウエルWmnは、センサ30−mnを備える。一例として、センサ30は、反応槽21の底面に配設される。センサ30の配設位置は、これに限るものではない。また、一例として、センサ30は、イオン感応性電界効果トランジスタ(Ion Sensitive Field Effect Transistor;ISFET)である。
本実施形態において、ビーズ配置用基板20の材質は、特に限定されないが、ガラス、シリコン、ポリマー等とすることができる。なお、ビーズ配置用基板20にエラストラマー材料を用いる場合、微小なゴミなどの粒子が反応槽21とビーズ配置用基板20との間に挟まれたときに生じる反応槽21全体のビーズ配置用基板20との密着性に及ぼす悪影響がエラストラマーの局所的な変形により回避される利点がある。
ビーズ配置用基板20には、複数の反応槽21が配設されている。配設される反応槽21の数は、標的核酸用プライマーとのアニーリング工程で使用したビーズ体100の数以上である必要がある。一例として、反応槽21のサイズは、ビーズ1よりも若干大きいサイズである。一例として、ビーズ1のサイズの1〜2倍程度であり、1個のビーズ1を収納可能な程度の大きさとなっている。なお、ビーズ配置用基板20の表面や反応槽21の内壁は、核酸等の非特異的吸着を防止するブロッキング剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)や2−メテクリオイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)等でコーティングされていてもよい。このようなコーティングが施してあることで、ビーズ配置用基板20の表面や反応槽21の内壁への核酸の非特異的吸着を抑制することができる。また、一例として絵、反応槽21の内壁は、親水化されている。内壁が親水化されていることにより、ビーズ体100の分散液をビーズ配置用基板20上に滴下した際、反応槽21内部へのビーズ体100の充填効率が向上する。
本実施形態の工程(b1)では、図4に示すように、核酸を含む試料と接触させた複数のビーズ体100を、反応槽21に、1個ずつ配置する。反応槽21に、ビーズ体100を配置する方法は、特に限定されず、例えば、ビーズ体100を分散させた液体を、ビーズ配置用基板20上に滴下し、撹拌、振盪、遠心分離等の手段により、ビーズ体100を反応槽21に誘導してもよい。あるいは、ビーズ体100の分散液にビーズ配置用基板20を浸漬し、撹拌、振盪、遠心分離等の手段を用いてもよい。
反応槽21のうち、例えば、ウエルW11には、ビーズ体100−11が配置される。ウエルWmnには、ビーズ体100−mnが配置される。
また、ビーズ1に磁気ビーズを用いた場合には、ビーズ配置用基板20の基板材料下に磁性体板と磁石を配置し、該磁石による磁力によりビーズ体100を反応槽に誘導することもできる。この場合、基板材料下の磁石をビーズ配置用基板20に対して平行方向に動かすことで、ビーズ体が分散し、反応槽21へのビーズ体の充填効率が向上する。磁石によりビーズ配置用基板20に印加する磁場の強さは、特に限定されないが、一例として、100〜10000ガウスとすることができる。また、磁石を取り除いた後も磁性体板の磁化は残るため、ビーズ体100は安定した配置を保持し続けることが可能となる。かかる磁性体の材料としては、ニッケル、ニッケル合金、鉄および鉄合金などの金属を挙げることができる。
[核酸伸長反応に必要な試薬の添加]
工程(c1)は、ビーズが配置された反応槽に、核酸伸長反応に必要な試薬を添加する工程である。
本実施形態においては、核酸伸長反応に必要な試薬として、DNAポリメラーゼ、デオキシヌクレオシド三リン酸、適切なバッファ等を挙げることができる。一例として、DNAポリメラーゼは、Taqポリメラーゼ等の耐熱性DNAポリメラーゼ、鎖置換型DNAポリメラーゼである。核酸伸長反応に必要な試薬は、後述の工程(d1)で行う核酸伸長反応の方法に応じて、適宜選択することができる。なお、一例として、DNAポリメラーゼなどの一部の試薬は、本工程で添加せず、あらかじめ反応槽21の内壁に結合させておいてもよい。
一例として、核酸伸長反応としてPCR法や等温増幅法等の核酸増幅反応を行う場合は、本工程において、リバースプライマーを添加するもできる。リバースプライマーは、全ての標的核酸配列に共通なユニバーサルプライマーとしてもよく、各標的核酸配列に特異的なプライマーとしてもよい。
リバースプライマーは、一例として、ビーズ1に固定化しておくこともできる。また、リバースプライマーが、全ての標的核酸配列に共通なユニバーサルプライマーである場合には、一例として、当該ユニバーサルリバースプライマーは、反応槽21の内壁に固定化しておくこともできる。リバースプライマーをビーズ1又は反応槽21の内壁に固定化する場合、リバースプライマーは、一例として、ビーズ1側又は反応槽21の内壁側に光切断部位を有する。光切断部位とは、紫外線などの光を照射すると切断される性質を有する基をいい、かかる基を用いたものとしては、例えば、PC Linker Phosphoramidite(Glen research社)、フラーレンを含有してなる核酸の光切断用組成物(核酸の光切断用組成物:特開2005−245223)、特許文献1に記載のものなどを挙げることができる。あるいは、リバースプライマーは、1本鎖核酸切断酵素切断部位を有していてもよい。1本鎖核酸切断酵素切断部位とは、デオキシリボヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼなどの1本鎖核酸切断酵素により切断されることができる核酸基をいい、ヌクレオチドおよびその誘導体が含まれる。そのような核酸基としては、例えば、エンドヌクレアーゼVに認識されるデオキシイオシンなどを挙げることができる。核酸増幅反応開始前に、光照射又は1本鎖核酸切断酵素処理を行って、リバースプライマーをビーズ1から切り離すことにより、核酸増幅反応を効率よく行うことが可能になる。
[核酸伸長反応]
工程(d1)は、ビーズが配置された反応槽内で核酸伸長反応を行う工程である。
核酸伸長反応は、DNAポリメラーゼ等を用いた公知の方法により行うことができる。核酸伸長反応の条件は、用いる方法に応じて、適宜設定することができる。例えば、反応槽21内の温度を55〜70℃程度に維持して、核酸伸長反応を行ってもよい。
反応槽21には、ビーズ体100が1個ずつ配置されている。標的核酸用プライマー2が標的核酸3にアニーリングしているビーズ体100では、標的核酸3を鋳型として、核酸伸長反応が起こる。一方、標的核酸用プライマー2が標的核酸3にアニーリングしていないビーズ体100では、核酸伸長反応は起こらない。
本実施形態において、核酸伸長反応は、必ずしも核酸増幅反応である必要はない。ビーズ1に固定化された標的核酸用プライマー2の密度が高い場合には、1度の伸長反応で検出に十分なプロトンが発生する。核酸伸長反応を1回しか行わない場合には、反応槽21にリバースプライマーを添加する必要はない。
一方、本実施形態では、核酸増幅反応を行うこともできる。核酸増幅反応の方法には、公知の方法を用いることができる。一例として、核酸増幅反応には、PCR法を用いる。また他の例として、LAMP法などの等温増幅法を用いる。なお、核酸増幅反応を行う場合には、上記のとおり、反応槽21内にリバースプライマーが存在させておく必要がある。
[核酸伸長反応中のプロトン濃度の測定]
工程(e1)は、核酸伸長反応中の各反応槽におけるプロトン濃度を測定する工程である。
まず、図5を参照して、核酸伸長反応におけるプロトンの発生について説明する。図5中、B1〜B4は、塩基を示す。図5は、B1−B2−B3の塩基配列を有する核酸に、塩基B4を有するデオキシヌクレオシド三リン酸が結合して、B1−B2−B3―B4の塩基配列を有する核酸が生成する例である。図5に示すように、B1−B2−B3の塩基配列を有する核酸から、1塩基伸長して、B1−B2−B3―B4の塩基配列を有する核酸が生成する際には、1分子のプロトンとピロリン酸が放出される。すなわち、核酸伸長反応によって核酸が1塩基伸長すると、1分子のプロトンが発生する。したがって、核酸伸長反応中、各反応槽21中のプロトン濃度を測定することにより、核酸伸長が生じたか否か反応槽21毎に判定することができる。本工程において測定されたプロトン濃度は、後述の工程(e)における核酸伸長の有無の判定に供される。
反応槽21内のプロトン濃度は、センサ30によって検出される。センサ30は、一例として、ISFETである。本実施形態に使用可能なISFETとしては、例えば、国際公開公報WO2008/107014号に記載のもの等を挙げることができる。
センサ30がISFETである場合の、プロトン発生量の測定例について説明する。図5に、各反応槽21に備えられるセンサ30の構成を示す。センサ30は、ゲート絶縁膜GIFと、N型半導体SN(ソースsrc)と、ソース端子TSと、N型半導体SN(ドレインdrn)と、ドレイン端子TDと、P型半導体SPと、参照電極ERと、ゲート電源VGと、バイアス電源VBと、電流検出器CDとを備える。これら各部の構成については、既知のISFETと同様であるため、説明を省略する。センサ30は、溶液とゲート絶縁膜GIFとの間に発生する界面電位に応じた電流値のドレイン電流を電流検出器CDによって検出することにより、プロトン濃度を測定する。
[核酸伸長の有無の判定]
工程(f1)は、測定された前記プロトン濃度に基づいて、各反応槽毎に核酸伸長の有無を判定する工程である。
センサ30による反応槽21内のプロトン濃度の測定値が上昇したか否かに基づいて、反応槽21内での核酸伸長の有無を判定する。反応槽21内のプロトン濃度が上昇した場合には、核酸伸長が生じたと判定され、反応槽21内のプロトン濃度の上昇が検出されない場合には、核酸伸長が生じていないと判定される。
本実施形態においては、反応槽21毎に配置されたセンサ30によって、個々の反応槽21内のプロトン濃度を検出し、反応槽21毎に、核酸伸長の有無を判定する。
なお、センサ30は、電流検出器CDによって検出されるドレイン電流の大きさに応じて、反応槽21内に存在する核酸伸長が生じたビーズ体100の数を検出する構成であってもよい。
[化合物10の分子数順位の特定]
工程(g1)は、各反応槽に配置されたビーズに光を照射し、前記光照射の前後における各反応槽内のプロトン濃度の変化量に基づいて、前記ビーズに固定化された標的核酸用プライマーの配列を反応槽毎に特定する工程である。
図2に例示するように、ビーズ1には、標的核酸用プライマー2の種類毎に、異なる分子数の化合物10が固定化されている。紫外線等の光照射によって化合物10の光分解性保護基Yが脱保護されると、ビーズ1に固定化された化合物10の分子数に応じて、反応槽21内のプロトン濃度の変化量が変化する。すなわち、ビーズ1に固定化された化合物の分子数が多くなるほど、光分解性保護基Yが脱保護されたときに生じるプロトン濃度の変化量は大きくなる。したがって、ビーズ1に対する光照射後のプロトン濃度の変化量を、各反応槽21毎に順位付けすることにより、ビーズ1に固定化された標的核酸用プライマー2の配列を特定することができる。
本工程においては、各反応槽21に配置されたビーズ体100に対して、紫外線等の光照射を行う。照射する光は、化合物10に含まれる光分解性保護基Yの種類に応じて適宜選択すればよい。一例として、光分解性シランカップリング剤等では、紫外線の照射が挙げられる。
ビーズ体100に対する光照射の前後において、各反応槽21毎に、プロトン濃度が測定される。各反応槽21毎のプロトン濃度は、センサ30によって測定される。測定された光照射の前後におけるプロトン濃度に基づいて、各反応槽21毎に、光照射の前後におけるプロトン濃度の変化量を算出することができる。このプロトン濃度の変化量は、ビーズ体100に固定化される化合物10の分子数が多いほど、大きくなる。
本実施形態では、一例として、上記算出されたプロトン濃度の変化量に基づいて、各反応槽毎に配置されたビーズ体100を順位付けする。すなわち、プロトン濃度の変化量が大きい順又は小さい順に、各ビーズ体100に順位を付ける。この順位は、各ビーズ体100に固定化される化合物10の分子数の順位と対応している。したがって、各反応槽21に配置されたビーズ体100について、固定化される化合物10の分子数の順位を特定することができる。
本工程における各反応槽への光照射は、一例として、工程(b1)で各ビーズ体100を反応槽21に配置した後、工程(c1)で各反応槽に核酸伸長反応に必要な試薬を添加する前に、行ってもよい。この場合、本工程の後、反応槽21内を適切な緩衝液で洗浄し、反応槽21内の反応液を入れ替えてもよい。一例として、ビーズ1が磁気ビーズであれば、ビーズ1を反応槽21に固定して、反応槽21を洗浄することにより反応槽21内の反応液を入れ替えることができる。反応槽21内の反応液を入れ替えて、本工程で変動したプロトン濃度を初期化することにより、工程(d1)の核酸伸長反応で発生するプロトンの検出を精度よく行うことができる。ただし、本工程の後の反応槽21の洗浄は必須ではない。
また、一例として、本工程における各反応槽への光照射は、工程(d1)の核酸伸長反応を行い、工程(e1)で核酸伸長反応中のプロトン濃度を測定した後に、行ってもよい。この場合、核酸伸長反応後に、反応槽21内を適切な緩衝液で洗浄し、反応槽21内の反応液を入れ替えてもよい。一例として、ビーズ1が磁気ビーズであれば、上記と同様に、ビーズ1を反応槽21に固定して、反応槽21を洗浄することにより反応槽21内の反応液を入れ替えることができる。反応槽21内の反応液を入れ替えて、核酸伸長反応によって生じたプロトンを除去することにより、本工程で生じるプロトン濃度の変化を精度よく検出することができる。ただし、工程(d1)及び工程(e1)の後の反応槽21の洗浄は必須ではない。
なお、工程(f1)の核酸伸長の有無の判定は、工程(e1)の後であれば、本工程における光照射の前に行ってもよく、本工程における光照射の後に行ってもよい。
[標的核酸用プライマーの特定]
各ビーズ体100に固定化された標的核酸用プライマー2の種類は、ビーズ体100に固定化された化合物10の分子数と対応付けられている。したがって、上記で特定された各反応槽のビーズ体100の順位に基づいて、ビーズ体100に固定化された標的核酸用プライマー2の種類を反応槽21毎に特定することができる。
そして、工程(e)により判定された各反応槽21における核酸伸長の有無と、本工程により特定された各反応槽21内の標的核酸用プライマー2の種類との照合により、核酸伸長有と判定された反応槽21内の標的核酸用プライマー2の種類が特定される。すなわち、核酸を含む試料中に含まれる標的核酸配列を特定することができる。
本実施形態の方法によれば、いずれの種類のビーズ1が、いずれの反応槽21に配置されるのかが特定されていなくても、核酸伸長反応が生じた標的核酸用プライマー2を特定することができる。つまり本実施形態の方法によれば、ビーズ1の種類と反応槽21の番号との対応関係が特定されていなくても、試料中に含まれていた標的核酸配列を特定することができる。
本実施形態の方法によれば、核酸を含む試料において、複数の標的核酸配列の有無を、簡便に判定することができる。また、本実施形態の方法によれば、ビーズ1を反応槽21に配置する前に、試料と標的核酸用プライマー2が固定化されたビーズ1とを接触させることができるため、標的核酸に対する標的核酸用プライマー2のアニーリングを効率よく行うことができる。
本実施形態の方法は、感染症の原因となる病原体遺伝子の検出・同定や癌などの疾患関連遺伝子の検出・同定、疾患関連遺伝子の発現解析等に利用することができ、感染症や癌などの疾患の診断や治療効果のモニタリング等に有用である。
<第2実施形態>
一例として、本実施形態の方法における標的生体分子は、所望のタンパク質である。また、標的生体分子と結合し得るリガンドは、当該タンパク質に結合し得る抗体(以下「標的抗原検出用抗体」という)である。本実施形態においては、標的生体分子がタンパク質である場合について説明する。
本実施形態の方法は、(a2)タンパク質を含む試料を、複数の標的タンパク質の1つと結合し得る標的抗原検出用抗体と、光分解性保護基を有し、かつ光分解性保護基の脱保護によりプロトンの発生又は取り込みを生じ得る化合物とが固定化された、複数のビーズと接触させる工程と、(b2)前記タンパク質を含む試料と接触させた前記ビーズを、ビーズ毎に、個別の反応槽に配置する工程と、(c2)前記ビーズが配置された前記反応槽に、核酸伸長反応に必要な試薬を添加する工程と、(d2)前記ビーズが配置された反応槽内で、核酸伸長反応を行う工程と、(e2)前記核酸伸長反応中の各反応槽におけるプロトン濃度を測定する工程と、(f2)測定された前記プロトン濃度の上昇に基づいて、各反応槽毎に核酸伸長の有無を判定する工程と、(g2)前記反応槽に配置された前記ビーズに光を照射し、前記光照射の前後における各反応槽内のプロトン濃度の変化量に基づいて、前記ビーズに固定化された前記標的抗原検出用抗体の種類を反応槽毎に特定する工程と、の各工程を含む。以下、各工程について説明する。
[標的タンパク質との抗原抗体反応]
工程(a2)は、タンパク質を含む試料を、複数の標的タンパク質の1つと結合し得る標的抗原検出用抗体と、光分解性保護基を有し、かつ光分解性保護基の脱保護によりプロトンの発生又は取り込みを生じ得る化合物とが固定化された、複数のビーズと接触させる工程である。
まず、本実施形態で用いるビーズについて、図9を参照して説明する。図9中、1はビーズ、5は標的抗原検出用抗体、10は光分解性保護基を有し、かつ光分解性保護基の脱保護によりプロトンの発生又は取り込みを生じ得る化合物、100−2はビーズ1に標的抗原検出用抗体5及び化合物10が固定化されたビーズ体、400は標的タンパク質を示す。
本実施形態においては、第1実施形態の標的核酸用プライマー2に替り、標的抗原検出用抗体5がビーズ1に固定化されている。標的抗原検出用抗体5は、目的とする標的タンパク質に特異的に結合し得る抗体である。標的抗原検出用抗体5は、公知の抗体取得方法により、得ることができる。また、標的抗原検出用抗体5は、どのような動物由来のものであってもよい。マウス抗体、ニワトリ抗体、ウサギ抗体等、当技術分野で一般的に用いられる抗体を使用することができる。また、標的抗原検出用抗体5は、キメラ抗体、ヒト化抗体等の組み換え抗体であってもよい。また、標的抗原検出用抗体5は、Fab断片、F(ab’)2断片、Fv断片、一本鎖抗体等の抗体断片であってもよい。本明細書において、「抗体」という用語は、抗原に対する特異性及び結合性が維持されるこれらの抗体断片を包含する。
標的抗原検出用抗体5のビーズ1への固定化は、公知の方法を用いて行うことができる。例えば、第1実施形態の標的核酸用プライマー2同様に、アビジン-ビオチン結合を利用した固定化することができる。また、標的抗原検出用抗体5をアミノ基、ホルミル基、SH基などの官能基で修飾し、ビーズ1をアミノ基、ホルミル基、エポキシ基などを有するシランカップリング剤で表面処理することにより、固定化を行ってもよい。
標的抗原検出用抗体5は、ビーズ1に対して、複数分子を固定化することができる。一例として、標的抗原検出用抗体5は、2分子以上がビーズ1に固定化される。標的抗原検出用抗体5は、ビーズ1の表面積に応じて、アニーリング及び伸長反応を妨げない程度の密度で、固定化されていればよい。なお、ビーズ1に対して、2分子以上の標的抗原検出用抗体5を固定化する場合、1つのビーズ1に固定化される標的抗原検出用抗体5は、全て同一のタンパク質を標的とする。
ビーズ1には、標的抗原検出用抗体5が標的とするタンパク質の種類毎に、異なる分子数の化合物10が固定化されている。化合物10は、標的核酸用プライマー2の種類に替り標的抗原検出用抗体5の種類に対応させている他は、第1実施形態と同様である。また、ビーズ1についても、第1実施形態と同様である。
本実施形態の工程(a2)では、ビーズ1に標的抗原検出用抗体5及び化合物10が固定化されたビーズ体100−2を、タンパク質を含む試料と接触させる。本実施形態において、タンパク質を含む試料は、特に限定されず、例えば、生体サンプルや環境サンプルからのタンパク質抽出物等を含む試料等を使用することができる。試料に含まれるタンパク質は、天然タンパク質に限定されず、修飾タンパク質や組み換えタンパク質等であってもよい。
ビーズ体100−2とタンパク質を含む試料との接触は、例えば、ビーズ体100−2とタンパク質を含む試料とを混合することにより行うことができる。一例として、ビーズ体100とタンパク質を含む試料との混合物は、標的抗原検出用抗体5が標的タンパク質に結合し得る条件に置かれる。結合条件は、標的抗原検出用抗体5の種類等に応じて、適宜設定することができる。
図9において、ビーズ体100−2をタンパク質を含む試料と接触させると、該試料に標的タンパク質400が含まれている場合、標的抗原検出用抗体5は、標的タンパク質400に結合する。すなわち、標的タンパク質400は、標的抗原検出用抗体5に結合し、ビーズ体100−2に捕捉される。一方、試料中に標的タンパク質400が含まれていない場合には、標的抗原検出用抗体5には何も結合しない。したがって、複数のビーズ体100−2を試料と接触させた場合、標的抗原検出用抗体5が標的タンパク質400に結合しているビーズ体100−2と、標的抗原検出用抗体5が標的タンパク質400に結合していないビーズ体100−2との混合物が形成される。なお、試料と接触させるビーズ体100−2の数は、検出したい標的タンパク質の数に応じて、適宜選択することができる。
[反応槽へのビーズの配置]
本実施形態の工程(b2)は、第1実施形態の工程(b1)と同様に行うことができる。
[核酸伸長反応に必要な試薬の添加]
工程(c2)は、ビーズが配置された反応槽に、核酸伸長反応に必要な試薬を添加する工程である。
本実施形態の工程(c2)では、第1実施形態の工程(c1)で添加する試薬に加えて、シグナル生成用核酸310を結合させた2次抗体301を添加する。2次抗体301は、標的タンパク質400に特異的に結合し得る抗体である。2次抗体301は、標的抗原検出用抗体5と同じ抗体であってもよく、違う抗体であってもよい。一例として、2次抗体301は、標的抗原検出用抗体5と同一のタンパク質に結合し、異なるエピトープを有する抗体である。
2次抗体301には、一例として、図9に示すように、シグナル生成用核酸310が結合されている。2次抗体301とシグナル生成用核酸310との結合は、一例として、アビジン-ビオチン結合を利用して行うことができる。
シグナル生成用核酸310は、一例として、図9に示すように、プライマーアニーリング領域311とシグナル生成用配列312とを含む。プライマーアニーリング領域311は、シグナル生成用核酸310の3’側に位置している。シグナル生成用核酸310は、一例として、全ての種類の2次抗体に対して、同じ配列であることができる。また、シグナル生成用核酸310は、一例として、プライマーアニーリング領域311が、全ての種類の2次抗体に対して、同じ配列である。シグナル生成用核酸310の配列は、特に限定されず、適宜選択することができる。なお、図9において、300は、2次抗体301にシグナル生成用核酸310を結合させた複合体プローブを示す。
本工程では、一例として、複合体プローブ300は、核酸伸長反応に必要な他の試薬を添加する前に、反応槽21に添加される。この場合、一例として、ビーズ1が磁気ビーズであれば、ビーズ1を反応槽21に固定して、反応槽21を洗浄することにより、標的タンパク質400に結合していない複合体プローブ300を反応槽21から除去することができる。なお、複合体プローブ300は、後述する工程(d2)の核酸伸長反応の前であれば、どのようなタイミングで、試料又は反応槽21に添加してもよい。
本工程においては、複合体プローブ300に加えて、さらに、シグナル生成用プライマー320を添加する。シグナル生成用プライマー320は、複合体プローブ300の添加後に反応槽21に添加される。一例として、シグナル生成用プライマー320の添加前に、標的タンパク質400に結合していない複合体プローブ300は、洗浄により反応槽21から除去される。シグナル生成用プライマー320の反応槽21への添加は、一例として、他の核酸伸長に必要な試薬と共に行うことができる。
上記以外の核酸伸長反応に必要な試薬については、第1実施形態の工程(c1)と同じである。
[核酸伸長反応]
工程(d2)は、ビーズが配置された反応槽内で核酸伸長反応を行う工程である。本工程は、第1実施形態の工程(d1)と同様に行うことができる。なお、本工程では、図9に示すように、シグナル生成用配列312を鋳型とする核酸伸長反応が起こる。第1実施形態と同様に、標的抗原検出用抗体5に標的タンパク質400が結合していない場合には、核酸伸長反応は起こらない。
[プロトン濃度の検出]
工程(e2)は、核酸伸長反応の各反応槽におけるプロトン発生量の測定をする工程である。本工程は、第1実施形態の工程(e1)と同様に行うことができる。
[核酸増幅の有無の判定]
工程(f2)は、工程(e2)で測定されたプロトン発生量に基づいて、各反応槽内における核酸伸長の有無を判定する工程である。本工程は、第1実施形態の工程(f1)と同様に行うことができる。
[化合物10の分子数順位の特定]
工程(g2)は、反応槽に配置されたビーズに光を照射し、前記光照射の前後における各反応槽内のプロトン濃度の変化量に基づいて、前記ビーズに固定化された前記リガンドの種類を反応槽毎に特定する工程である。
本工程も、第1実施形態における標的核酸用プライマー2に替えて、標的抗原検出用抗体5を用いている以外は、第1実施形態と同様に行うことができる。すなわち、第1実施形態と同様に、各反応槽におけるビーズ1に固定化された化合物10の分子数の順位を特定し、該化合物10の分子数の順位に基づいて、各反応槽における標的抗原検出用抗体5の種類を特定することができる。
各反応槽21における化合物10の分子数の順位の特定は、第1実施形態と同様に、行うことができる。例えば、各反応槽21に配置されたビーズ体100に対して、紫外線等の光照射を行い、当該光照射の前後におけるプロトン濃度の変化量を各反応槽21毎に算出する。そして、前記各反応槽21毎に算出されたプロトン濃度の変化量に基づいて、各反応槽21における化合物10の分子数の順位付けを行うことができる。
本実施形態における各反応槽への光照射も、第1実施例と同様に、一例として、工程(b2)で各ビーズ体100を反応槽21に配置した後、工程(c2)で各反応槽に核酸伸長反応に必要な試薬を添加する前に、行ってもよい。第1実施形態と同様に、本工程の後、反応槽21内を適切な緩衝液で洗浄し、反応槽21内の反応液を入れ替えてもよい。一例として、ビーズ1が磁気ビーズであれば、ビーズ1を反応槽21に固定して、反応槽21を洗浄することにより反応槽21内の反応液を入れ替えることができる。反応槽21内の反応液を入れ替えて、本工程で変動したプロトン濃度を初期化することにより、工程(d2)の核酸伸長反応で発生するプロトンの検出を精度よく行うことができる。ただし、本工程の後の反応槽21の洗浄は必須ではない。
また、第1実施形態と同様に、一例として、本工程における各反応槽への光照射は、工程(d2)の核酸伸長反応を行い、工程(e2)で核酸伸長反応中のプロトン濃度を測定した後に、行ってもよい。第1実施形態と同様に、核酸伸長反応後に、反応槽21内を適切な緩衝液で洗浄し、反応槽21内の反応液を入れ替えてもよい。一例として、ビーズ1が磁気ビーズであれば、上記と同様に、ビーズ1を反応槽21に固定して、反応槽21を洗浄することにより反応槽21内の反応液を入れ替えることができる。反応槽21内の反応液を入れ替えて、核酸伸長反応によって生じたプロトンを除去することにより、本工程で生じるプロトン濃度の変化を精度よく検出することができる。ただし、工程(d2)及び工程(e2)の後の反応槽21の洗浄は必須ではない。
なお、第1実施形態と同様に、工程(f2)の核酸伸長の有無の判定は、工程(e2)の後であれば、本工程における光照射の前に行ってもよく、本工程における光照射の後に行ってもよい。
[標的抗原検出用抗体の特定]
第1実施形態と同様に、各ビーズ体100に固定化された標的抗原検出用抗体5の種類は、ビーズ体100に固定化された化合物10の分子数と対応付けられている。したがって、上記で特定された各反応槽のビーズ体100の順位に基づいて、ビーズ体100に固定化された標的抗原検出用抗体5の種類を反応槽21毎に特定することができる。
そして、工程(f2)により判定された各反応槽21における核酸伸長の有無と、本工程により特定された各反応槽21内の標的抗原検出用抗体5の種類との照合により、核酸伸長有と判定された反応槽21内の標的抗原検出用抗体5の種類が特定される。すなわち、タンパク質を含む試料中に含まれる標的タンパク質を特定することができる。
本実施形態の方法によれば、いずれの種類のビーズ1が、いずれの反応槽21に配置されるのかが特定されていなくても、標的タンパク質400が結合した標的抗原検出用抗体5を特定することができる。つまり本実施形態の方法によれば、ビーズ1の種類と反応槽21の番号との対応関係が特定されていなくても、試料中に含まれていた標的タンパク質を特定することができる。
本実施形態の方法によれば、ビーズ1を反応槽21に配置する前に、試料と標的抗原検出用抗体5が固定化されたビーズ1とを接触させることができるため、標的タンパク質に対する標的抗原検出用抗体5の結合を効率よく行うことができる。
本実施形態の方法によれば、タンパク質を含む試料において、複数の標的タンパク質を効率よく検出することができる。
本実施形態の方法は、感染症の原因となる病原体抗原の検出・同定や癌などの疾患関連遺伝子の検出・同定、疾患関連遺伝子の発現解析等に利用することができ、感染症や癌などの疾患の診断や治療効果のモニタリング等に有用である。
<標的生体分子特定装置>
[標的核酸配列特定装置の構成例]
上述した第1実施形態の方法を実現する標的核酸配列特定装置200の構成の一例について、図7及び図8を参照して説明する。
図7は、本実施形態における標的核酸配列特定装置200の構成の一例を示す図である。標的核酸配列特定装置200は、ビーズ配置用基板20と、演算装置210とを備える。
ビーズ配置用基板20は、反応槽21と、センサ30とをそれぞれ複数備える。1つの反応槽21には、1つのビーズ1が配置される。このビーズ1には、上述した標的核酸用プライマー2と、化合物10とが固定化されている。この化合物10は、ビーズ1に固定化されている標的核酸用プライマー2の核酸の配列に応じた分子数がビーズ1に固定化されている。つまり、反応槽21には、標的核酸用プライマー2と、当該標的核酸用プライマー2の核酸の配列に応じた分子数の化合物10とが固定化されたビーズ1が配置される。標的核酸用プライマー2の核酸の配列と、化合物10の分子数との対応関係は、演算装置210が備える核酸配列記憶部214に記憶されている。この核酸配列記憶部214の構成の具体例について、図8を参照して説明する。
図8は、本実施形態における核酸配列記憶部214の構成の一例を示す図である。核酸配列記憶部214には、ビーズIDと、ビーズ1に固定化された化合物10の分子数の順位を示す情報と、標的核酸用プライマー2の配列を示す情報とが、互いに対応付けられて記憶されている。ここで、ビーズIDとは、ビーズ1の種類、すなわち、ビーズ1に固定化されている標的核酸用プライマー2の配列の種類を識別する情報である。より具体的には、ビーズID−100Aには、分子数順位Aと、標的核酸用プライマー配列Aとが対応付けられている。つまり、核酸配列記憶部214に記憶されている情報によれば、ビーズ1に固定化される化合物10の分子数順位を特定すれば、この分子数順位に対応する標的核酸用プライマー2の配列を特定することができる。
図7に戻り、演算装置210は、例えばCPU(Central Processing Unit)を備えており、その機能部としての核酸伸長判定部211と、ビーズ特定部212と、標的核酸配列特定部213とを備えている。
核酸伸長判定部211は、核酸伸長反応中に、センサ30が検出する反応槽21毎のプロトンの発生量に基づいて、反応槽21内における核酸伸長の有無を反応槽21毎に判定する。具体的には、核酸伸長判定部211は、センサ30の出力電流値と、プロトンの発生量との対応を示す情報を予め有している。核酸伸長判定部211は、センサ30の出力電流値を取得し、取得した出力電流値に基づいて、プロトンの発生量を推定する。核酸伸長判定部211は、推定したプロトンの発生量に基づいて、核酸伸長の有無を判定する。ここで、センサ30は反応槽21毎に備えられている。核酸伸長判定部211は、反応槽21毎にセンサ30の出力電流値を取得することにより、核酸伸長の有無を反応槽21毎に判定する。
ビーズ特定部212は、光照射の前後でセンサ30が検出する反応槽21毎のプロトン濃度に基づいて、光照射前後におけるプロトン濃度の変化量を算出する。ビーズ特定部212は、算出されたプロトン濃度の変化量に基づいて、化合物10の分子数順位を反応槽21毎に特定する。化合物10の分子数順位の特定の具体的な手順については、上述の[化合物10の分子数順位の特定]において詳細に説明したため、ここでの説明を省略する。
標的核酸配列特定部213は、ビーズ特定部212が特定する化合物10の分子数順位に基づいて、標的核酸用プライマー2の配列を反応槽21毎に特定する。具体的には、標的核酸配列特定部213は、ビーズ特定部212が特定した化合物10の分子数順位を示す情報を取得する。標的核酸配列特定部213は、取得した化合物10の分子数順位を示す情報を検索キーにして核酸配列記憶部214を検索する。上述したように、核酸配列記憶部214には、化合物10の分子数順位を示す情報と、標的核酸用プライマー2の配列を示す情報とが、互いに対応付けられて記憶されている。したがって、標的核酸配列特定部213は、化合物10の分子数順位を示す情報を検索キーにした核酸配列記憶部214の検索の結果、化合物10の分子数順位を示す情報に対応する標的核酸用プライマー2の配列を示す情報を得る。つまり、標的核酸配列特定部213は、化合物10の分子数順位に対応する標的核酸用プライマー2の配列を特定する。標的核酸配列特定部213は、反応槽21毎に上述の手順を繰り返すことにより、反応槽21毎に化合物10の分子数順位に対応する標的核酸用プライマー2の配列を特定する。
本実施形態の標的核酸配列特定装置200によれば、いずれの種類のビーズ1が、いずれの反応槽21に配置されるのかが特定されていない場合に、反応槽21の番号と、当該反応槽21に配置されたビーズ1の種類との対応関係を特定することができる。
なお、演算装置210は、その機能部としての伸長核酸種類特定部215を更に備えていてもよい。伸長核酸種類特定部215は、核酸伸長判定部211の判定結果と、標的核酸配列特定部213が特定した標的核酸用プライマー2の配列とに基づいて、核酸伸長有又は核酸伸長無と判定されたビーズ1の標的核酸用プライマー2の配列を特定する。この伸長核酸種類特定部215を備えることにより、複数の種類の標的核酸用プライマー2のうち、いずれの標的核酸用プライマー2によって核酸伸長が生じたのか(又は、生じなかったのか)を判定することができる。つまり本実施形態の標的核酸配列特定装置200によれば、ビーズ1の種類と反応槽21の番号との対応関係が特定されていなくても、試料中に含まれていた標的核酸配列を特定することができる。
本実施形態の標的核酸配列特定装置200によれば、いずれの種類のビーズ1が、いずれの反応槽21に配置されるのかが特定されていなくても、核酸伸長反応が生じた標的核酸用プライマー2を特定することができる。つまり本実施形態の方法によれば、ビーズ1の種類と反応槽21の番号との対応関係が特定されていなくても、試料中に含まれていた標的核酸配列を特定することができる。
本実施形態の標的核酸配列特定装置200は、感染症の原因となる病原体遺伝子の検出・同定や癌などの疾患関連遺伝子の検出・同定、疾患関連遺伝子の発現解析等に利用することができ、感染症や癌などの疾患の診断、治療効果のモニタリング等に有用である。
なお、本実施形態における標的核酸配列特定装置200の各処理を実行するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、当該記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、上述した種々の処理を行ってもよい。
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
[標的タンパク質特定装置の構成例]
上述した第2実施形態の方法を実現する標的タンパク質特定装置200−2の構成は、上述の標的核酸配列特定装置200において、標的核酸配列特定部213に替えて標的タンパク質特定部213−2、核酸配列記憶部214に替えて抗原記憶部214−2、伸長核酸種類特定部215に替えて結合タンパク質種類特定部215−2を備えたものとすることができる。図10は、本実施形態における標的タンパク質特定装置200−2の構成の一例を示す図である。また、図11は、抗原記憶部214−2の構成の一例を示す図である。抗原記憶部214−2には、ビーズIDと、ビーズ1に固定化されたかごうぶつ10の分子数の順位を示す情報と、標的抗原検出用抗体5の抗原を示す情報とが、互いに対応付けられて記憶されている。
本実施形態の標的タンパク質特定装置200−2によれば、いずれの種類のビーズ1が、いずれの反応槽21に配置されるのかが特定されていなくても、核酸伸長反応が生じた反応槽21に配置された標的抗原検出用抗体5を特定することができる。つまり本実施形態の方法によれば、ビーズ1の種類と反応槽21の番号との対応関係が特定されていなくても、試料中に含まれていた標的タンパク質を特定することができる。
本実施形態の標的タンパク質特定装置200−2は、感染症の原因となる病原体抗原の検出・同定や癌などの疾患関連遺伝子の検出・同定、疾患関連遺伝子の発現解析等に利用することができ、感染症や癌などの疾患の診断、治療効果のモニタリング等に有用である。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。