以下、本発明の実施形態を説明する。
[概要]
まず概要を説明する。上述のように、本形態の「振動提示装置」は、振動を行う1個または複数個の「振動子」と、指の表面形状に倣う「窪み」である「第1ガイド」を持つ「第1把持部」と、「第1把持部」に取り付けられている「第2把持部」とを有する。ただし、「振動子」は「第1把持部」および「第2把持部」の少なくとも一方側に取り付けられており、「第2把持部」に対する「第1ガイド」の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方を調整可能である。これにより、「振動提示装置」を把持する使用者の手の形状や持ち方に応じ、「第2把持部」に対する「第1ガイド」の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方を調整できる。その結果、手の形状や持ち方の個人差にかかわらず、指の皮膚と「振動提示装置」との接触面積を大きくし、振動を効率的に皮膚に伝達できる。
「振動子」は、情報や感覚を知覚させるための振動を行うものであれば、どのようなものであってもよい。「振動子」の一例は、擬似的な力覚を知覚させるための周期的な「非対称運動」を行う装置である。周期的な「非対称運動」は、それに基づいて「第1把持部」および「第2把持部」を把持する使用者に擬似的な力覚を知覚させるような周期運動である。周期的な「非対称運動」は、「所定方向」の運動の時系列波形と当該「所定方向」と反対方向の運動の時系列波形とが非対称な周期運動である。「非対称運動」は並進方向に擬似的な力覚を提示するための周期的な並進運動であってもよいし、回転方向に擬似的な力覚を提示するための周期的な回転運動であってもよい。好ましくは、「非対称運動」に基づいて「第1把持部」および「第2把持部」が皮膚に与える力の「波形パターン」が、「第1の時間区間」では、向きが所定方向であって絶対値が「第1の閾値」以上である力を表し、「第1の時間区間」と異なる「第2の時間区間」では、向きが当該「所定方向」の反対方向であって絶対値が「第1の閾値」よりも小さな「第2の閾値」以内である力を表し、「第1の時間区間」が「第2の時間区間」よりも短くなるような「非対称運動」であることが望ましい。言い換えると、当該「波形パターン」が矩形パターンまたは矩形パターンに近似するパターンとなるような「非対称運動」であることが望ましい。これにより、より明確に擬似的な力覚を提示できるからである。周期的な「非対称運動」の例は非対称振動である。「非対称振動」は、「第1把持部」および「第2把持部」から皮膚に与えた力によって擬似的な力覚を知覚させるための振動であり、「所定方向」の振動の時系列波形と当該「所定方向」と反対方向の振動の時系列波形とが非対称な振動を意味する。「振動子」は、例えば、「支持部」と、当該「支持部」に支持された状態で「非対称振動」を行う「運動部材」とを有する装置である。「非対称振動」は、例えば、「運動部材」の「所定方向」の「物理量」の時系列波形と当該「運動部材」の当該「所定方向」と反対方向の「物理量」の時系列波形とが非対称となるような「運動部材」の振動である。「物理量」の例は、「運動部材」を支持する「支持部」に与えられる力、当該「支持部」の加速度、速度、もしくは位置、「運動部材」が「支持部」に与える力、「運動部材」の加速度、速度、もしくは位置、「運動部材」から皮膚に与えられる力、または「運動部材」の加速度、速度、もしくは位置などである。周期的な「非対称運動」や「非対称振動」の一例は、特許文献1や非特許文献1や参考文献1(特許第4551448号公報)などに開示されている。「振動子」の例は、並進振動を行うリニアアクチュエータ、偏心回転を行う偏心ロータなどである。
指の表面形状に倣う「窪み」は、指の表面形状に沿った形状の「窪み」と言い換えることもできる。指の表面形状に倣う「窪み」の例は、動物(例えば、ヒト)の指の腹の表面形状に倣う窪み(凹み)であり、「窪み」は、例えば、指の腹の表面形状に適合(フィット)する形状を持つ。「窪み」の形状は異方性を持つ。例えば、「第1把持部」に対して指が所定の方向に延びるように当該指の腹を「第1ガイド」に配置した場合には、この指の腹は「第1ガイド」にフィットするが、これと異なる向きに当該指の腹を「窪み」に配置した場合にはこの指の腹は「第1ガイド」にフィットしない場合がある。例えば、「第1ガイド」は「第1把持部」に対して所定の方向に延びる溝状の窪みであり、内壁面が略曲面とされている。「第1ガイド」の内壁面にさらに複数の小さな突起や窪みや凹凸などが設けられていてもよい。「第1把持部」だけではなく、「第2把持部」にも、指の表面形状に倣う「窪み」である「第2ガイド」が設けられてもよい。この場合、「第2ガイド」に対する「第1ガイド」の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方が調整可能とされる。「第2ガイド」も異方性を持つ。例えば、「第2把持部」に対して指が所定の方向に延びるように当該指の腹を「第2ガイド」に配置した場合には、この指の腹は当該「第2ガイド」にフィットするが、これと異なる向きに当該指の腹を当該「第2ガイド」に配置した場合にはこの指の腹は当該「第2ガイド」にフィットしない場合がある。例えば、「第2ガイド」は「第2把持部」に対して所定の方向に延びる溝状の窪みであり、内壁面が略曲面とされている。「第2ガイド」の内壁面にさらに複数の小さな突起や窪みや凹凸などが設けられていてもよい。「第2ガイド」は、「第1ガイド」と同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。
「第2把持部」に対する「第1ガイド」の相対的な向きとは、「第2把持部」を基準とした座標系(「第2把持部」に固定された座標系)での「第1ガイド」の向きを表す。「第2把持部」に対する「第1ガイド」の相対的な位置とは、「第2把持部」を基準とした座標系での「第1ガイド」の位置(座標)を表す。「第1把持部」および「第2把持部」は、例えば、「振動子」の外部を覆う部材(例えばケース)であってもよいし、「第2把持部」が「振動子」の外部を覆う部材であって、「第1把持部」が「第2把持部」の外部に取り付けられた部材であってもよいし、「第1把持部」が「振動子」の外部を覆う部材であって、「第2把持部」が「第1把持部」の外部に取り付けられた部材であってもよい。
好ましくは、「第2把持部」と「振動子」との間の相対的な位置関係を変化させることなく、「第2把持部」に対する「第1ガイド」の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方を調整可能である。「第2把持部」を基準とした「振動子」による振動方向を変化させない構成としては、「第2把持部」に対する「振動子」の相対的な位置関係が固定された構成を例示できる。例えば「第2把持部」に「振動子」が固定されていてもよい。「振動提示装置」が複数個の「振動子」を有する場合、「第2把持部」に対する全ての「振動子」の相対的な位置関係が固定されていてもよい(すなわち、全ての「振動子」の間の位置関係も固定されている)。「第2把持部」と「振動子」との間の相対的な位置関係を変化させないことにより、「第2把持部」を基準とした「振動子」による振動方向を変化させることなく、「第2把持部」に対する「第1ガイド」の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方を調整できる。すなわち、「第2把持部」と「振動子の振動方向」との間の相対的な位置関係を変化させることなく、「第2把持部」に対する「第1ガイド」の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方を調整できる。その結果、「第2把持部」を基準とした座標系での振動方向を変化させることなく、指の皮膚と「振動提示装置」との接触面積を大きくでき、振動を効率的に伝達できる。この場合、使用者が「第2把持部」を基準とした座標系での振動と、それによって提示しようとする情報や感覚と、の対応をとれるのであれば、「第2把持部」に対する「第1把持部」の方向や位置が変更されたとしても、当該使用者に情報や感覚を適切に提示できる。
この対応を目視に基づいて行うことができるように、「第2把持部」が「振動子」の振動方向に基づいて定められた「向きまたは位置」を表していてもよい。例えば、「第2把持部」が有する「第2ガイド」の形状によって当該「向きまたは位置」を表していてもよい。例えば、何れかの「振動子」の振動方向の軸(振動軸)に沿って「第2ガイド」の長手方向が配置されていてもよいし、「第2ガイド」がこの振動軸の向きを表す形状とされていてもよいし、複数の「振動子」の振動による力の合力が向かう方向に沿って「第2ガイド」の長手方向が配置されていてもよいし、「第2ガイド」がこの合力が向かう方向を表す形状とされていてもよい。例えば、「振動子」が擬似的な力覚を提示するための周期的な非対称振動を行うのであれば、いずれかの擬似的な力覚の提示方向に沿って「第2ガイド」の長手方向が配置されていてもよいし、「第2ガイド」がこの方向を表す形状とされていてもよい。「第2把持部」に「振動子」の振動方向に基づいて定められた「向きまたは位置」を表す「印」が設けられていてもよい。例えば、何れかの「振動子」の振動方向の軸に沿った位置に「印」が設けられていてもよいし、この振動軸の向きを表す「印」が設けられていてもよいし、複数の「振動子」の振動による力の合力が向かう方向を表す「印」が設けられていてもよい。例えば、「振動子」が擬似的な力覚を提示するための周期的な非対称振動を行うのであれば、擬似的な力覚の提示方向の何れかを表す「印」が「第2把持部」に設けられていてもよい。「印」は「第2把持部」の表面の凹凸形状であってもよいし、「第2把持部」の表面に印刷されたマークであってもよいし、「第2把持部」の表面に固定されたもの(例えば、ラベルやネジ止めされた部材)であってもよい。
「第2把持部」に対する「振動子」の相対的な位置関係が固定されており、「第2把持部」を基準とした座標系での「振動子」の振動方向に、「第2把持部」に対する「第1ガイド」の相対的な向きの回転(自由回転)または位置の移動(自由移動)が可能な場合、「振動子」の振動に基づく力が逃げてしまい、「第1把持部」に効率よく伝わらない。そのため、「第2把持部」を基準とした座標系での「振動子」の振動方向と異なる方向成分を持つ向きに、「第2把持部」に対する「第1ガイド」の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方が調整可能であることが望ましい。より好ましくは、「第2把持部」を基準とした座標系での「振動子」の振動方向に、「第2把持部」に対する「第1ガイド」の相対的な向きの回転または位置の移動ができないことが望ましい。例えば、「第2把持部」を基準とした座標系における「振動子」の振動方向と略直交する向きに(例えば、略直交する向きのみに)、「第2把持部」に対する「第1ガイド」の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方を調整可能であることが望ましい。「略直交」の例は「直交」である。これにより、「振動子」の振動に基づく力を効率的に指に伝達できる。
[第1実施形態]
次に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
<構成>
図1〜図4に例示するように、本形態の振動提示装置1は、振動子13−1,13−2および把持部11,12を有する。本形態では、把持部11が「第2把持部」に相当し、把持部12が「第1把持部」に相当する。
把持部11,12は、略円筒形状の一方の開口端が閉じられた形状(シャーレ状)の中空のケース部材である。把持部11,12の開口端側の辺縁部114,124はそれぞれ環状に形成されており、これらは互いにR1方向に回転可能に取り付けられている。図4Bに例示するように、例えば、把持部11の辺縁部114の内側の壁面側(内壁面側)には、辺縁部114の先端部114cに沿った環状の凸部114aおよび凹部114bが設けられている。凸部114aは内壁面方向に凸となっており、凹部114bは内壁面方向に凹となっている。凸部114aおよび凹部114bは一周りずつ設けられており、凸部114aは凹部114bよりも先端部114cに近い側に配置されている。また、把持部12の辺縁部124の外側の壁面側(外壁面側)には、辺縁部124の先端部124cに沿った環状の凸部124aおよび凹部124bが設けられている。凸部124aは外壁面方向に凸となっており、凹部124bは外壁面方向に凹となっている。凸部124aおよび凹部124bも一周りずつ設けられており、凸部124aは凹部124bよりも先端部124cに近い側に配置されている。凹部124bの底面は凹部114bの底面よりも内側(把持部11,12の中央側)に配置されており、凸部124aの先端面は凸部114aの先端面よりも外側(把持部11,12の外方側)に配置されている。凸部114aが凹部124b内に配置され、凸部124aが凹部114b内に配置されることで、把持部12が把持部11にR1方向に回転可能に嵌合している。このR1方向は辺縁部114,124に沿った回転方向である。すなわち、把持部12の環状の辺縁部124の外壁側が、把持部11の環状の辺縁部114の内壁側に、辺縁部114,124に沿って回転可能なように、嵌め込まれている。この回転により、把持部11に対する把持部12のガイド122の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方を調整可能である。
把持部11の閉口端側の面である上面111には、指の表面形状に倣う窪みであるガイド112(第2ガイド)が設けられている。ガイド112は上面111に沿ったD1方向に伸びた凹部である。言い換えると、ガイド112の長手方向がD1方向に沿って配置されている。すなわち、ガイド112の形状は方向性を持つ。ガイド112の内壁面は略曲面とされている。ガイド112は一般的な指の形状に沿ったへこみであるが、汎用性を高めるために一般的な指よりも若干大きい指にフィットする形状とされてもよい。ガイド112が倣う指の形状の例は、親指または人差し指である。また、ガイド112には複数の小さな凸部112aが設けられている。本形態では、複数の凸部112aからなる複数の列がD1方向に沿って配置されている。すなわち、凸部112aの配列にも方向性がある。
把持部12の閉口端側の面である下面121には、指の表面形状に倣う窪みであるガイド122(第1ガイド)が設けられている。ガイド122は下面121に沿ったD2方向に伸びた凹部である。言い換えると、ガイド122の長手方向がD2方向に沿って配置されている。すなわち、ガイド122の形状も方向性を持つ。ガイド122の内壁面も略曲面とされている。ガイド122は一般的な指の形状に沿ったへこみであるが、汎用性を高めるために一般的な指よりも若干大きい指にフィットする形状とされてもよい。ガイド122が倣う指の形状は、ガイド112が倣う指の形状と同一であってもよいし、異なっていてもよい。後者の場合、例えば、(1)ガイド112を親指の形状に倣う形状とし、かつ、ガイド122を人差し指の形状に倣う形状としてもよいし、(2)ガイド112を人差し指の形状に倣う形状とし、かつ、ガイド122を親指の形状に倣う形状としてもよい。また、ガイド122にも複数の小さな凸部122aが設けられている。本形態では、複数の凸部122aからなる複数の列がD2方向に沿って配置されている。すなわち、凸部122aの配列にも方向性がある。
把持部11,12は、振動を伝達でき、かつ把持部11,12としての強度を持つものであれば、ABS樹脂等の合成樹脂等どのような材質によって構成されていてもよい(以下の各実施形態およびその変形例の把持部の材質も同様である)。把持部11,12は、射出成形法などの周知の方法で一体成形されてもよいし、3Dプリンタによって製造されてもよい。
把持部11,12の内部には振動子13−1,13−2が配置されている。本形態の振動子13−i(ただし、i=1,2)は、D3−i方向に沿って周期的な非対称運動を行う装置(例えば、リニアアクチュエータ)である(具体例は後述する)。D3−1方向とD3−2方向とは互いに相違しており、例えば、互いに略直交する。本形態の振動子13−1,13−2は、把持部11側に固定されている。すなわち、把持部11に対する振動子13−1,13−2の相対的な位置関係が固定されている。例えば、把持部11の内壁面に振動子13−1のケースが固定され、振動子13−1のケースに振動子13−2のケースが固定されている。本形態では、振動子13−1がD1方向に沿って配置されており、ガイド112の長手方向が振動子13−1の振動方向に沿って配置されている。このガイド112の配置により、振動子13−1の振動方向に基づいて定められた向きまたは位置を認識できる。
以上の構成により、把持部11と振動子13−1,13−2との間の相対的な位置関係を変化させることなく、把持部11に対して把持部12をR1方向に回転させ、把持部11に対するガイド122の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方を調整できる。言い換えると、把持部11と振動子13−1,13−2の振動方向との間の相対的な位置関係を変化させることなく、把持部11に対するガイド122の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方を調整できる。さらに、本形態では把持部11にもガイド112が設けられており、ガイド112に対するガイド122の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方を調整可能である。また、振動子13−iの振動方向であるD3−i方向は回転方向であるR1方向と略直交する。すなわち、振動子13−iの振動方向であるD3−i方向と略直交する向きに(振動子13−iの振動方向であるD3−i方向と異なる方向成分を持つ向きに)、把持部11に対する把持部12のガイド122の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方を調整可能である。この構成では、振動子13−iの振動方向の力が、把持部12の把持部11に対する回転によって逃げてしまうことはない。すなわち、把持部11の凸部114aが把持部12の凹部124b内に配置され、把持部12の凸部124aが把持部11の凹部114b内に配置されることで、把持部12が把持部11にR1方向に回転可能に嵌合しているため、把持部12は把持部11に対して動径方向に動かず、振動子13−iの振動方向の力は把持部12に効率よく伝わる。これにより、ガイド112に対するガイド122の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方が調整可能でありながらも、振動子13−iの振動に基づく力を把持部12に効率的に伝達できる。
<振動子13−iの例示>
図5Aおよび図5Bに例示するように、振動子13−iは、例えば、支持部131−i、ばね132−i,133−i(弾性体)、コイル134−i、永久磁石である運動部材135−i、およびケース136−iを有する。本形態のケース136−iおよび支持部131−iは、ともに筒(例えば、円筒や多角筒)の両方の開放端を閉じた形状からなる中空の部材である。ただし、支持部131−iは、ケース136−iよりも小さく、ケース136−iの内部に収容可能な大きさである。ケース136−iおよび支持部131−iは、例えば、ABS樹脂等の合成樹脂から構成される。ばね132−i,133−iは、例えば、金属等から構成されるつるまきばねや板ばね等である。ばね132−i,133−iの弾性係数(ばね定数)は同一であることが望ましいが、互いに相違していてもよい。運動部材135−iは、例えば、円柱形状の永久磁石であり、長手方向の一方の端部135a−i側がN極であり、他方の端部135b−i側がS極である。コイル134−iは、例えば、一つながりのエナメル線であり、第1巻き部134a−iと第2巻き部134b−iとを有する。
運動部材135−iは支持部131−iの内部に収容され、そこで長手方向にスライド可能に支持されている。このような支持機構の詳細は図示しないが、例えば、支持部131−iの内壁面に長手方向に沿ったまっすぐなレールが設けられ、運動部材135−iの側面にこのレールをスライド可能に支持するレール支持部が設けられている。支持部131−iの長手方向の一端側の内壁面131a−iには、ばね132−iの一端が固定され(すなわち、支持部131−iにばね132−iの一端が支持され)、ばね132−iの他端は運動部材135−iの端部135a−iに固定されている(すなわち、運動部材135−iの端部135a−iがばね132−iの他端に支持されている)。また、支持部131−iの長手方向の他端側の内壁面121bには、ばね133−iの一端が固定され(すなわち、支持部131−iにばね133−iの一端が支持され)、ばね133−iの他端は運動部材135−iの端部135b−iに固定されている(すなわち、運動部材135−iの端部135b−iがばね133−iの他端に支持されている)。
支持部131−iの外周側にはコイル134−iが巻きつけられている。ただし、運動部材135−iの端部135a−i側(N極側)では、第1巻き部134a−iがA1方向(奥から手前に向けた方向)に巻きつけられており、端部135b−i側(S極側)では、第2巻き部134b−iがA1方向と反対向きのB1方向(手前から奥に向けた方向)に巻き付けられている。すなわち、運動部材135−iの端部135a−i側(N極側)からみた場合、第1巻き部134a−iは時計回りに巻き付けられており、第2巻き部134b−iは反時計回りに巻き付けられている。また、運動部材135−iが停止し、ばね132−i,133−iからの弾性力が釣り合った状態において、運動部材135−iの端部135a−i側(N極側)が第1巻き部134a−iの領域に配置され、端部135b−i側(S極側)が第2巻き部134b−iの領域に配置されることが望ましい。
以上のように配置構成された支持部131−i、ばね132−i,133−i、コイル134−i、および運動部材135−iが、ケース136−i内に収容され、支持部131−iがケース136−iの内部に固定されている。すなわち、ケース136−iの支持部131−iに対する相対位置が固定されている。ただし、ケース136−iの長手方向は、支持部131−iの長手方向および運動部材135−iの長手方向と一致する。
コイル134−iは、流された電流に応じた力を運動部材135−iに与え、これにより、運動部材135−iは、支持部131−iに対して周期的な非対称運動(非対称振動:支持部131−iを基準とした軸方向に非対称性をもった周期的な並進往復運動)を行う。すなわち、コイル134−iにA1方向(B1方向)に電流を流すと、フレミングの左手の法則で説明されるローレンツ力の反作用により、運動部材135−iにC1方向(運動部材135−iのN極からS極に向かう方向:右方向)の力が加えられる(図5A)。逆に、コイル134−iにA2方向(B2方向)に電流を流すと、運動部材135−iにC2方向(運動部材135−iのS極からN極に向かう方向:左方向)の力が加えられる(図5B)。ただし、A2方向はA1方向の反対方向である。これらの動作により、運動部材135−iおよびばね132−i,133−iからなる系に運動エネルギーが与えられる。それにより、ケース136−iを基準とする運動部材135−iの位置および加速度(支持部131−iを基準とした軸方向の位置および加速度)を変化させることができる。
なお、振動子13−iの構成は図5Aおよび図5Bのものに限定されない。例えば、運動部材135−iの端部135a−i側にコイル134−iの第1巻き部134a−iがA1方向に巻きつけられおり、端部135b−i側にコイル134−iが巻き付けられていない構成であってもよい。逆に、端部135b−i側にコイル134−iの第2巻き部134b−iがB1方向に巻き付けられており、運動部材135−iの端部135a−i側にコイル134−iが巻き付けられていない構成であってもよい。あるいは、第1巻き部134a−iと第2巻き部134b−iとが互いに別のコイルであってもよい。すなわち、第1巻き部134a−iと第2巻き部134b−iとが電気的に接続されておらず、互いに異なる電気信号が与えられる構成であってもよい。
<動作>
図6Aに例示するように、振動提示装置1の使用時には、使用者は2つの指101,102(例えば、親指と人差し指)で把持部11,12を把持する。一方の指101(例えば、親指)は把持部11のガイド112に配置され、他方の指102(例えば、人差し指)は把持部12のガイド122に配置される。2つの指101,102のいずれかがガイド112,122にフィットしない場合、それらがフィットするように、把持部11に対して把持部12をR1方向に回転させる。このような回転が行われても、ガイド112と振動子13−1,13−2との間の位置関係は変化しない。
この状態で、振動子13−i(ただし、i=1,2)を駆動するための駆動制御信号を振動子13−iに供給する。駆動制御信号は電圧制御された信号であってもよいし、電流制御された信号であってもよい。この駆動制御信号により、運動部材135−iに所望の方向(図5Aおよび図5B:C1方向またはC2方向)の加速度を与える向きの電流をコイル134−iに流す期間T1と、それ以外の期間T2と、を周期的に繰り返す。その際、所定の方向に電流を流す期間(時間)とそれ以外の期間(時間)との比(反転比)を何れか一方の期間に偏らせる。言い換えると、1つの周期に占める期間T1の割合が当該周期に占める期間T2の割合と異なる周期的な電流をコイル134−iに流す。これにより、少なくとも何れかの運動部材135−iがケース136−iに対してD3−i方向に沿って周期的な非対称振運動を行う。この非対称運動に基づく振動は把持部11,12に伝わり、ガイド112,122を把持する指に当該非対称運動に基づく力を与える。例えば、いずれか一つの振動子13−iのみを駆動させた場合には、D3−i方向のいずれかの向きに擬似的な並進力覚を提示できる。両方の振動子13−1,13−2を駆動させた場合には、D3−1方向とD3−2方向との間の方向に擬似的な並進力覚を提示できる。この際、振動子13−1,13−2のそれぞれから提示する力覚の強さを調整することで、擬似的な並進力覚を提示する向きも調整できる。なお、望ましくは、振動子13−iが皮膚に与える力の波形パターン(時系列波形パターン)は、時間区間τ1(第1の時間区間)では、向きが所定方向DIR1であって絶対値が閾値TH1(第1の閾値)以上である力を表し、時間区間τ2(第1の時間区間と異なる第2の時間区間)では、向きが所定方向の反対方向DIR2であって絶対値が閾値TH2(TH2<TH1)以内である力を表すことが好ましい。ただし、τ1<τ2であり、時間区間τ1と時間区間τ2とは周期的に繰り返される。これによって、より明確に擬似的な力覚を知覚させることができる。より望ましくは、当該力の波形パターンが矩形パターンまたは矩形パターンに近似するパターンであることが望ましい。
このように、振動提示装置1から提示される擬似的な力覚の向きは、振動子13−1,13−2の位置とそれらの駆動パターンとに基づく。前述のように把持部11に対して把持部12をR1方向に回転させても、ガイド112と振動子13−1,13−2との間の位置関係は変化しない。そのため、使用者がガイド112の長手方向に沿ったD1方向を基準にしていれば、この回転に応じて振動子13−1,13−2の駆動パターンをキャリブレーションする必要はない。
[第1実施形態の変形例1]
ガイド112と振動子13−1,13−2との間の位置関係は変化しないため、使用者が振動子13−1,13−2の振動方向に基づく基準方向を認識できれば、振動子13−1,13−2の駆動パターンをキャリブレーションする必要はない。第1実施形態では、使用者がガイド112を基準に振動子13−1,13−2の位置関係を把握した。しかし、振動子13−1,13−2の振動方向に基づいて定められた向きまたは位置を表す「印」を把持部11に設けておいてもよい。この場合、使用者はこの「印」を基準に基準方向を認識できる。例えば、図6Bに例示するように、振動子13−1の振動軸L1−1と把持部11の側面113との交点付近に印113aを設けておいてもよい。或いは、図6Cに例示するような側面113上のその他の位置(例えば、振動子13−1,13−2を同位相で駆動させた場合に力覚が提示される側の側面113上の位置)に印113aを設けておいてもよい。その他、ガイド112に設けられた複数の凸部112aの配置によって、振動子13−1,13−2の振動方向に基づいて定められた向きまたは位置を表してもよい。例えば、ガイド112に設けられた複数の凸部112aの配置(例えば、凸部112aの集合によって矢印を表す配置)によって、振動子13−1による力覚の提示方向を表してもよいし、振動子13−1,13−2を同位相で駆動させた場合に力覚が提示される方向を表してもよい。
[第1実施形態の変形例2]
第1実施形態およびその変形例1では、振動子13−1,13−2を把持部11に固定した。しかしながら、振動子13−1,13−2が把持部11に固定されずに、把持部12の内壁面に固定されていてもよい。この構成の場合には、把持部11が「第1把持部」に相対し、把持部12が「第2把持部」に相対し、ガイド112が「第1ガイド」に相当し、ガイド122が「第2ガイド」に相当することになる。
[第2実施形態]
本形態は第1実施形態の変形例である。図7および図8に例示するように、本形態の振動提示装置2は、振動子13−1,13−2、回転機構20、および把持部22を有する。回転機構20は、把持部21、本体23、およびピン24を含む。本形態では、把持部21が「第1把持部」に相当し、把持部22が「第2把持部」に相当する。
図7Aおよび図7Bに例示するように、把持部21は略円盤状の部材であり、その一方の面である上面211側には、指の表面形状に倣う窪みであるガイド212(第1ガイド)が設けられている。ガイド212の形状は第1実施形態のガイド112と同じであり、ガイド212には複数の小さな凸部212aが設けられている。前述のように、ガイド212の形状および凸部212aの配列には方向性がある。把持部21の他の面である下面214側の中央(中心)付近には、下面214に対して略直交する略円筒状の軸部213が突設されている。軸部213は中空であり、その先端側が開放されていることでピン24の挿入孔213a(凹部)が設けられている。本体23は、略円筒形状の一端を開口端233とし、他端に位置する上面231の大部分が閉じられたシャーレ状の中空のケース部材である。上面231の中央付近には、軸部213を挿入可能な大きさの貫通孔232が設けられている。ピン24は、略円柱の軸241と軸241よりも径の大きな止め部242を有する。把持部21の軸部213は、本体23の上面231側から貫通孔232に回転可能に挿入されており、ピン24の軸241が本体23の開口端233側から軸部213の挿入孔213aに挿入されている。これにより、把持部21は本体23に対してR2方向に回転可能に支持されている。すなわち、ガイド212の位置および向きの少なくとも一方が本体23に対して回転可能である。本体23の内壁面には振動子13−1,13−2が取り付けられている。つまり、振動子13−1,13−2の本体23に対する相対位置が固定されている。第1実施形態と同じく、振動子13−1と振動子13−2との間の相対的な位置関係は固定されている。
把持部22は、略円筒形状の一方の開口端が閉じられたシャーレ状の中空のケース部材である。把持部22の閉口端側の面である下面221には、指の表面形状に倣う窪みであるガイド222(第2ガイド)が設けられている。ガイド222の形状は第1実施形態のガイド122と同じであり、ガイド222には複数の小さな凸部が設けられている。前述のように、ガイド222の形状および凸部の配列には方向性がある。把持部22の閉口端側の辺縁部224は本体23の開口端233側に固定されている。
以上の構成により、把持部22に対して把持部21をR2方向に回転させ、把持部22に対するガイド212の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方を調整できる。本形態では把持部22にもガイド222が設けられており、ガイド222に対するガイド212の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方を調整可能である。また、振動子13−iの振動方向D3−iは回転方向であるR2方向と略直交する。すなわち、振動子13−iの振動方向D3−iと略直交する向きに、把持部22に対する把持部21のガイド212の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方を調整可能である。第1実施形態と同様、振動子13−iの振動方向の力が、把持部21の把持部22に対する回転によって逃げてしまうことはない。そのため、ガイド222に対するガイド212の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方が調整可能でありながらも、振動子13−iの振動に基づく力を把持部21に効率的に伝達できる。
本形態ではガイド222と振動子13−1,13−2との間の位置関係は変化しないため、使用者が振動子13−1,13−2の振動方向に基づく基準方向を認識できれば、振動子13−1,13−2の駆動パターンをキャリブレーションする必要はない。そのため、使用者が振動子13−1,13−2の振動方向に基づく基準方向を認識できるように、振動子13−1,13−2の振動方向に基づいて定められた向きまたは位置を表す「印」を本体23または把持部22に設けておいてもよい。この場合、使用者はこの「印」を基準に基準方向を認識できる。
使用者が振動子13−1,13−2の振動方向に基づく基準方向を認識できないのであれば、把持部22に対するガイド212の位置および向きの少なくとも一方を調整した後に振動子13−1,13−2の駆動パターンをキャリブレーションしてもよい。以下に、このキャリブレーション方法を例示する。
<キャリブレーション方法の例>
調整前の本体23が所定の方向θに擬似的な力覚(牽引力)を提示するために振動子13−1,13−2に与える駆動制御信号を[u1,u2]=F(θ)と表現する。ただし、u1,u2はそれぞれ振動子13−1,13−2に与える駆動制御信号であり、θは擬似的な力覚を提示しようとする方向を表す角度である。例えばθは、使用者の正面を基準にとり、時計回りを正として方向を表した角度とする。また、Fは装置の構成に応じて設定される関数である。例えば、図9Aおよび図9Bに例示するように、直交する2つの振動子13−1,13−2を持つ本体23と方向θを定義する場合、[u1,u2]=[f(t,k*cos(θ)),f(t,k*sin(θ))]=F(θ)となる関数Fを用いてもよい。ただし、f(t,p)は、単独の振動子が感覚量pなる強さの擬似的な力覚を知覚させるための駆動制御信号の時系列波形パターンを表す。ただし、tは時間を表す。具体的なfについては特許文献1などに基づき定めればよい。また、kは各方向に向かって知覚される擬似的な力覚の強さを表す。
把持部22に対するガイド212の位置および向きの少なくとも一方を調整した後、キャリブレーションシグナルとして、[u1,u2]=[u1_0,u2_0]=F(0)なる駆動制御信号を振動子13−1,13−2に与え、使用者に擬似的な力覚を感じる方向を回答させる。回答の方法として、例えば擬似的な力覚を感じる方向に使用者が手を動かし、その手の動きを使用者の腕に装着した加速度センサによって計測する。あるいは、加速度センサの情報を時間積分して速度や位置の情報にしてから回答方向を求めてもよい。また、加速度センサの代わりに、磁気による位置センサや外部に備え付けたカメラなど、その他の計測手段を用いてもよい。このとき、計測は1回でもよいし,精度を高めるために複数回回答させて平均値を計算してもよい。あるいはθ=0だけでなく、例えばθ=±π[rad](π≠0)で表されるその他の方向にも擬似的な力覚を知覚させ、それぞれ測定した情報を平均して回答方向を推定してもよい。
回答として得られた方向がφであるとする(図9B)。ただしφは、θと同様に定義された、方向を表す角度とする。ここで、回転方向θに擬似的な力覚を提示したいのであれば、補正後の駆動制御信号として[u1’,u2’]=F(θ−φ)を振動子13−1,13−2に入力すればよい。
[第2実施形態の変形例1]
第2実施形態では、振動子13−1,13−2を本体23(把持部22側)に固定した。しかしながら、振動子13−1,13−2が把持部22の内壁面に固定されていてもよい。また、ピン24を用いるのではなく、把持部21の下面214に設けられた環状のレールと、本体23の上面231に設けられた環状のレールとが、R2方向に回転可能に嵌合していてもよい。
[第3実施形態]
本形態も第1実施形態の変形例である。図10および図11に例示するように、本形態の振動提示装置3は、振動子13−1、把持部31−1,31−2、および把持部32を有する。本形態では、把持部31−1,31−2が「第1把持部」に相当し、把持部32が「第2把持部」に相当する。
本形態の把持部32は板状部材である。把持部32の内部には把持部32の短手方向であるD3−1方向に振動する振動子13−1が固定されている。把持部32の一方の板面である上面321側には、把持部32の長手方向であるD4方向に沿ったまっすぐな溝321aが設けられている。D4方向はD3−1方向と略直交する。溝321aの2つの内側壁面(溝321aの内側の互いに対向する長手方向の2つの側面)の開口部側には、D4方向に沿った2本のレール状凸部321aa、321abが設けられている(図11B)。これにより、溝321aの開口部の幅(D4方向と略直交する方向の幅)は溝321aの内部底面の幅よりも狭くなっている。
把持部31−i(ただし、i=1,2)は、接触部材312−i、スライド部材314−i、およびピン313−iを有する。接触部材312−iは平面形状が略楕円形状の船型の部材である。接触部材312−iの一方の面には指の表面形状に倣う窪みであるガイド312a−i(第1ガイド)が設けられている。ガイド312a−iは、接触部材312−iの長手方向であるD5−i方向に伸びた凹部である。言い換えると、ガイド312a−iの長手方向がD5−i方向に沿って配置されている。すなわち、ガイド312a−iの形状は方向性を持つ。第1実施形態と同様、ガイド312a−iは一般的な指の形状に沿ったへこみであるが、汎用性を高めるために一般的な指よりも若干大きい指にフィットする形状とされてもよい。ガイド312a−1が倣う指の形状の例は一方の手(例えば、左手)の親指であり、ガイド312a−2が倣う指の形状の例は他方の手(例えば、右手)の親指である。
図11Bに例示するように、スライド部材314−iの一端側の両側面には、互いに反対方向に突起する凸部314a−i,314b−iが設けられている。スライド部材314−iの凸部314a−i,314b−iは溝321aの内部に配置されている。把持部31−iは、そのガイド312a−iを外方(上方)に向けた状態で把持部32の上面321側に配置されている。スライド部材314−iおよび把持部31−iは、ガイド312a−iから挿入されたピン313−iによって連結されている。これにより、把持部31−1,31−2は把持部32に対してD4方向にスライド可能であり、把持部32に対するガイド312a−1,312a−2の相対的な位置を調整可能である。さらに、把持部31−iが、ピン313−iを中心として、スライド部材314−iに対してR3−i方向に回転可能であってもよい。この場合、D4方向に対するD5−i方向を変更でき、把持部32に対するガイド312a−1,312a−2の相対的な向きを調整できる。
振動子13−1の振動方向D3−1は、把持部31−1,31−2のスライド方向であるD4方向と略直交し、把持部31−1,31−2の回転方向であるR3−i方向とも略直交する。すなわち、振動子13−1の振動方向であるD3−1方向と略直交する向きに(振動子13−iの振動方向であるD3−i方向と異なる方向成分を持つ向きに)、把持部32に対する把持部31−1,31−2のガイド312a−1,312a−2の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方を調整可能である。この構成では、振動子13−1の振動方向の力が、把持部31−1,31−2のスライドや回転によって逃げてしまうことはない。これにより、把持部32に対するガイド312a−1,312a−2の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方が調整可能でありながらも、振動子13−1の振動に基づく力を把持部31−1,31−2に効率的に伝達できる。なお、ピン313−iによる留め度合い強くするなどして、向きおよび位置の少なくとも一方が調整された把持部31−1,31−2を把持部32に固定できてもよい。
[第4実施形態]
本形態は第3実施形態の変形例である。図12および図13に例示するように、本形態の振動提示装置4は、振動子13−1,13−2、把持部41−1,41−2、および把持部42を有する。本形態では、把持部41−1,41−2が「第1把持部」に相当し、把持部42が「第2把持部」に相当する。
本形態の把持部42は板状部材である。把持部42の内部には、把持部42の短手方向であるD6−1方向に振動する振動子13−1、および把持部42の長手方向であるD6−2方向に振動する振動子13−2が固定されている。把持部42の一方の板面である上面421側には、複数個の孔421a(凹部)が設けられている。孔421aの中心軸は上面421と略直交し、孔421aの開口部と平行な断面形状は略円形または多角形である。
図13Aおよび図13Bに例示するように、把持部41−i(ただし、i=1,2)は平面形状が略楕円形状の船形の部材である。把持部41−iの一方の面には指の表面形状に倣う窪みであるガイド412a−i(第1ガイド)が設けられている。ガイド412a−iは、把持部41−iの長手方向に伸びた凹部である。言い換えると、把持部41−iの長手方向に沿ってガイド412a−iの長手方向が配置されている。すなわち、ガイド412a−iの形状は方向性を持つ。第1実施形態と同様、ガイド412a−iは一般的な指の形状に沿ったへこみであるが、汎用性を高めるために一般的な指よりも若干大きい指にフィットする形状とされてもよい。ガイド412a−1が倣う指の形状の例は一方の手(例えば、左手)の親指であり、ガイド412a−2が倣う指の形状の例は他方の手(例えば、右手)の親指である。把持部41−iの他方の面には、上述の把持部42の孔421aに挿入可能な形状の凸部412b−iが設けられている。例えば、孔421aの開口部と平行な断面形状が略円形であれば凸部412b−iは略円柱であり、孔421aの開口部と平行な断面形状が多角形であれば凸部412b−iの断面形状も同じ多角形である。
使用者は自らの手にフィットする位置に把持部41−1,41−2が配置されるように、これらの凸部412b−1,412b−2を何れかの孔421aに挿入する。また、孔421aに凸部412b−iが挿入された把持部41−iは、R3−i方向に回転可能である。これにより、把持部41−1,41−2は把持部42に対して任意の位置に調整可能であり、さらにR3−i方向の任意の向きにも調整可能である。これにより、把持部42に対するガイド412a−1,412a−2の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方を調整できる。
振動子13−1の振動方向D6−1は把持部42の短手方向であり、振動子13−2の振動方向D6−2は把持部42の長手方向であり、これらは互いに略直交する。そのため、把持部41−1,41−2の回転方向R3−1,R3−2は、振動子13−1の振動方向D6−1、振動子13−2の振動方向D6−2、およびこれらの振動に基づく合力の向きのいずれとも略直交する。この構成では、振動子13−iの振動方向の力が、把持部41−1,41−2の回転によって逃げてしまうことはない。これにより、把持部42に対するガイド412a−1,412a−2の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方が調整可能でありながらも、振動子13−iの振動に基づく力を把持部41−1,41−2に効率的に伝達できる。
[第5実施形態]
本形態は第4実施形態の変形例である。図14に例示するように、本形態の振動提示装置5は、振動子13−1,13−2、把持部41−1,41−2、および把持部52を有する。本形態では、把持部41−1,41−2が「第1把持部」に相当し、把持部52が「第2把持部」に相当する。第4実施形態との相違点は把持部52のみである。本形態の把持部52は板状部材であり、把持部52の内部には、把持部52の短手方向であるD7−1,D7−2方向に振動する振動子13−1、13−2が固定されている。把持部52の一方の板面である上面521側にも、第4実施形態の孔421aと同じ形状の複数個の孔521a(凹部)が設けられている。ただし、振動子13−1,13−2を互いに逆位相で駆動させると把持部52は微小かつ周期的な回転運動をするが、その回転中心521cと上面521との交点付近521dには孔521aが設けられていない。
第4実施形態と同様、使用者は自らの手にフィットする位置に把持部41−1,41−2が配置されるように、凸部412b−1,412b−2を何れかの孔521aに挿入する。また、孔421aに凸部412b−iが挿入された把持部41−iは、R3−i方向に回転可能である。すなわち、把持部41−1,41−2は、把持部52に対して任意の位置に調整可能であり、さらにR3−i方向の任意の向きにも調整可能である。これにより、把持部52に対するガイド412a−1,412a−2の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方を調整できる。
振動子13−1,13−2の制御により、把持部52は、D7−1,D7−2方向に沿った向きに振動したり、回転中心521cを中心とした周期的な回転(回動)運動をしたりする。前者の振動方向D7−1,D7−2は、把持部41−1,41−2の回転方向R3−1,R3−2と略直交する。そのため、第4実施形態と同様、前者の振動に基づく力が把持部41−1,41−2の回転によって逃げてしまうことはない。さらに、振動子13−1,13−2を互いに逆位相で駆動させた際に生じる把持部52の回転中心521cと上面521との交点付近521dには孔521aが設けられていない。そのため、後者の周期的な回転運動に基づく力が把持部41−1,41−2の回転によって逃げてしまうことも抑制できる。これにより、把持部52に対するガイド412a−1,412a−2の相対的な向きおよび位置の少なくとも一方が調整可能でありながらも、振動子13−iの振動に基づく力を把持部41−1,41−2に効率的に伝達できる。
[第6実施形態]
本形態は第1〜5実施形態の変形例である。図15および図16に例示するように、本形態の振動提示装置6は、振動子13−1、および把持部61,62を有する。本形態では、把持部61が「第1把持部」に相当し、把持部62が「第2把持部」に相当する。
把持部62は、略直方体の中空のケース621、ケース621の一つの面である上面621aにそれぞれの一端が固定されたバネ622,623を有する。把持部62の内部には把持部62の長手方向であるD8方向に振動する振動子13−1が固定されている。把持部61は、ケース621を収納可能な大きさに形成された中空のケースである。把持部61の一面は開放面613とされている。把持部61の内部には把持部62の上面621a側の領域が収納されており、バネ622,623のそれぞれの他端が把持部61の内部に固定されている。把持部62の下面621b側(上面621a側の反対側)の領域は、把持部61の開放面613の外方に配置されている。把持部61は、一端が把持部62に保持されたバネ622,623の弾性力によって支えられている。これにより、把持部61の把持部62に対する相対的な位置をD9方向に移動させることができる。
把持部61の上面611側(開放面613の反対側)には、指の表面形状に倣う窪みであるガイド612(第1ガイド)が設けられている。ガイド612は上面611に沿ったD8方向に伸びた凹部である。言い換えると、ガイド612の長手方向がD8方向に沿って配置されている。ガイド612に複数の小さな凸部が設けられていてもよい。
以上の構成により、把持部62と振動子13−1との間の相対的な位置関係を変化させることなく、把持部62に対して把持部61をD9方向に移動させ、把持部62に対するガイド612の相対的な位置を調整できる。また、振動子13−1の振動方向であるD8方向は、把持部62に対する把持部61の移動方向であるD9方向と略直交する。この構成では、振動子13−1の振動方向の力が、把持部62に対する把持部61の移動によって逃げてしまうことはない。これにより、把持部62に対するガイド612の相対的な位置が調整可能でありながらも、振動子13−1の振動に基づく力を把持部61に効率的に伝達できる。
[その他の変形例等]
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、振動子13−iの個数は上述の実施形態で例示したものには限定されず、3個以上の振動子13−iが設けられていてもよい。また、把持部の個数やガイドの形状も上述したものに限定されない。
上述の振動子の制御を行う制御装置をコンピュータによって実現する場合、当該制御装置が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体の例は、非一時的な(non-transitory)記録媒体である。このような記録媒体の例は、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等である。
このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。処理の実行時、このコンピュータは、自己の記憶装置に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。
また、当該制御装置の処理機能の少なくとも一部がハードウェアで実現されてもよい。