JP2017206687A - 水素化重合体の製造方法 - Google Patents

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隆直 松本
遠藤 浩悦
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高柳 健二郎
Kenjiro Takayanagi
健二郎 高柳
川上 公徳
Kimitoku Kawakami
公徳 川上
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Abstract

【課題】ビニル芳香族重合体成分を含む重合体を核水素化して水素化重合体を製造する際の水素化速度の低下を抑制し、その後の触媒分離における濾過工程においても、その速度の低下を抑制することができ、さらに、一度使用した触媒を再使用する際にも、核水素化速度及び触媒の濾過性の低下を抑制することができる水素化重合体の製造方法を提供する。【解決手段】下記工程(1)及び(2)を有するものである、水素化重合体の製造方法。(1)ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液から塩基性物質を除去する工程。(2)工程(1)後、該ビニル芳香族重合体成分を含む重合体を核水素化する工程。【選択図】なし

Description

本発明は、水素化重合体を製造する方法に関する。
ポリスチレンなどのビニル芳香族系化合物の重合体の芳香環を水素化して得られるビニル芳香族系重合体水素化物は、低複屈折性に優れていることなどから、光学レンズや光ディスクの成形材料に使用されている。ビニル芳香族系化合物と共役ジエン化合物との共重合体についても、共重合体中の芳香環を水素化することでガスバリア性や他のポリマーとの相溶性が改善されるなど、水素化による物性面でのメリットが大きい(特許文献1)。
芳香族系重合体の水素化物を合成する方法としては、担持金属触媒を用いて水素化を行う方法が知られている(特許文献1)。ビニル芳香族系化合物と共役ジエン化合物との共重合体についても同様に、担持金属触媒の存在下に水素化を行うことで製造される(特許文献2)。
特開平3−76706号公報 特表2013−216902号公報
ビニル芳香族系化合物と共役ジエン化合物の共重合体は、反応器の腐食等を抑制するために、通常、ハイドロタルサイト等の塩基性物質が添加されている。
本発明者らの詳細な検討によれば、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体、特に、ビニル芳香族系化合物と共役ジエン化合物との共重合体を担持金属触媒の存在下に核水素化して水素化物を得る際に、原料となる重合体にハイドロタルサイトのような塩基性物質が含有されていると、水素化速度が低下し、その後の触媒分離における濾過工程においても、その速度が低下することがわかった。また、一度使用した触媒を再使用する際に、さらに核水素化速度が低下し、触媒の濾過性も悪化することが明らかになった。
また、この問題を解決するために重合体から塩基性物質を除去する処理を行うと、重合体に含まれるハロゲン成分が核水素化工程で水素化分解されることで発生した酸により、反応器によっては、腐食が発生するという新たな問題が生じることが明らかとなった。
本発明は、上記課題を解決する水素化重合体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体を核水素化する工程の前に、該ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液から塩基性物質を除去する工程を行うこと、更には、核水素化する工程の前にビニル芳香族重合体成分を含む重合体のハロゲン含有量を所定範囲に調整する工程を行うことで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 下記工程(1)及び(2)を有するものである、水素化重合体の製造方法。
(1)ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液から塩基性物質を除去する工程。
(2)工程(1)後、該ビニル芳香族重合体成分を含む重合体を核水素化する工程。
[2] 更に、上記工程(2)の前に、下記工程(a)を有するものである、[1]に記載の水素化重合体の製造方法。
(a)ビニル芳香族重合体成分を含む重合体のハロゲン含有量を、1質量ppm以上、350質量ppm以下に調整する工程。
[3] 前記工程(a)を触媒共存下で行うものである、[2]に記載の水素化重合体の製造方法。
[4] 前記工程(a)を塩基性物質共存下で行うものである、[2]又は[3]に記載の水素化重合体の製造方法。
[5] 前記ビニル芳香族重合体成分を含む重合体が、共重合体である、[1]〜[4]の何れか一つに記載の水素化重合体の製造方法。
[6] 前記共重合体が、スチレン−イソブチレン系共重合体である、[5]に記載の水素化重合体の製造方法。
[7] 前記ハロゲンが、塩素である、[2]〜[6]の何れか一つに記載の水素化重合体の製造方法。
本発明によれば、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体を核水素化する工程の前に、該ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液から塩基性物質を除去する工程を行うことで、核水素化する工程での水素化速度の低下を抑制し、その後の触媒分離における濾過工程においても、濾過速度の低下を抑制することができる。さらに、一度使用した触媒を再使用する際にも、核水素化速度及び触媒の濾過性の低下を抑制することができる。
また、このように塩基性物質を除去した後核水素化する場合において、核水素化する工程の前にビニル芳香族重合体成分を含む重合体のハロゲン含有量を所定範囲に調整する工程を行うことにより、反応器の腐食を抑制することができる。
以下、本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
〔水素化重合体の製造方法〕
本発明の水素化重合体の製造方法は、下記工程(1)及び(2)を有するものである。
(1)ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液から塩基性物質を除去する工程。
(2)工程(1)後、該ビニル芳香族重合体成分を含む重合体を核水素化する工程。
本発明の水素化重合体を得る製造方法は、工程(1)及び(2)を有するものであれば特に限定されない。また、工程(1)の後に工程(2)を行えばよく、工程(1)と工程(2)の間に他の工程が含まれていてもよく、これらの工程の前後にその他の工程を有するものであってもよい。
工程(1)及び(2)を有する本発明の水素化重合体の製造方法により、本発明の効果が得られる理由は定かではないが、以下の通り推測される。
ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液に塩基性物質が過剰に含まれると、工程(2)の核水素化に用いられる触媒金属等に作用し、ルイス酸性が低下する。そのため、前記触媒金属等の活性が低下してしまう。さらに、前記触媒金属等の分離を行う場合において、塩基性物質がフィルターの目詰まりを起こす等により、濾過性を低下させる傾向にある。工程(1)によりビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液から、塩基性物質を除去することで、核水素化する工程での水素化速度の低下を抑制し、その後の触媒分離における濾過工程においても、濾過速度の低下を抑制することができる。さらに、一度使用した触媒を再使用する際にも、核水素化速度及び触媒の濾過性の低下を抑制することができる。
本発明において、水素化重合体とは、このようなビニル芳香族重合体成分を含む重合体に含有される芳香環部分、或いは芳香環部分とオレフィン部分が水素化され、飽和炭化水素部分に変換されたものを表す。
ビニル芳香族重合体成分を含む重合体、水素化重合体は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。共重合体の配列も特に限定されず、ランダム、ブロック等が挙げられる。これらの中でも、水素化重合体の物性の調整が容易であることから、ブロック共重合体が好ましい。
[ビニル芳香族重合体成分を含む重合体]
本発明に係るビニル芳香族重合体成分を含む重合体は、ビニル芳香族重合体成分を含んでいればよく特に限定されない。
(ビニル芳香族重合体成分)
ビニル芳香族重合体成分とはビニル芳香族重合体を構成する成分であり、後述のビニル芳香族重合体を構成する単量体(以下「ビニル芳香族単量体」と称す場合がある。)を重合したものである。
ビニル芳香族単量体としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、フェナントレン環等の芳香環に、ビニル基が結合されたものが挙げられる。芳香環に結合されるビニル基は一つでも複数でもよい。また、この芳香環にはビニル基以外の置換基が結合していてもよい。ビニル芳香族単量体としては、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、4−モノクロロスチレン、4−クロロメチルスチレン、4−ヒドロキシメチルスチレン、4−t−ブトキシスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ジビニルベンゼン等が挙げられ、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレンが好ましく用いられ、さらにスチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレンが好ましく用いられ、最も好ましくはスチレンが用いられる。これらのビニル芳香族単量体を用いることで得られる重合体の成形性や、耐衝撃性が向上する傾向にある。これらのビニル芳香族単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(ビニル芳香族重合体以外の成分)
ビニル芳香族重合体成分を含む重合体は、上記ビニル芳香族単量体に由来する単位等のビニル芳香族重合体成分以外の成分(以下「ビニル芳香族重合体以外の成分」と称す場合がある。)を含んでいてもよい。ビニル芳香族重合体成分を含む重合体が含んでいてもよい、ビニル芳香族重合体以外の成分としては、例えば、以下に示す単量体(以下「他の単量体」と称す場合がある。)に由来する単位及び該単量体から構成される重合体が挙げられる。他の単量体としては、具体的には、脂肪族オレフィン類、共役ジエン類、ビニルエーテル類、β−ピネン類等が挙げられ、具体的にはエチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン等が挙げられる。他の単量体は好ましくはブタジエン又はイソブチレンであり、最も好ましくはイソブチレンである。これらのビニル芳香族重合体以外の成分は、1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。ビニル芳香族重合体成分を含む重合体がビニル芳香族重合体以外の成分を含むことで、透明性、光学特性、柔軟性、機械物性、ガスバリア性、低吸湿性及び薬液非吸着性にバランスよく優れた水素化重合体が得られる傾向にある。
(ブロック共重合体)
ビニル芳香族重合体成分を含む重合体がビニル芳香族重合体以外の成分を含む場合、ビニル芳香族重合体成分とビニル芳香族重合体以外の成分とは共重合体を形成していてもよい。この場合、共重合体はブロック共重合体であってもよい。
ブロック共重合体は、1以上のセグメントA(ビニル芳香族重合体成分)と1以上のセグメントB(ビニル芳香族重合体以外の成分)を有し、その組み合わせは、本発明の効果を得られる範囲であれば特に限定されず、具体的にはA−B、A−(B−A)、(A−B)、B−A−(B−A)−B(ただし、nは1以上の整数、mは2以上の整数を表す)等の構造が挙げられる。
本発明の効果が得られる範囲であれば、ビニル芳香族重合体成分及びビニル芳香族重合体以外の成分の組み合わせは特に限定されない。好ましくは、スチレンとイソブチレンの組合せ、スチレンとエチレンの組合せ、スチレンとブタジエンの組合せ、スチレンと2−ブテンの組合せ等が、得られる水素化重合体の耐候性、耐熱性、柔軟性及び強度が良好となる傾向にあるため好ましい。
本発明に係るビニル芳香族重合体成分を含む重合体は、特にスチレン−イソブチレン系共重合体であることが好ましい。
また、上記組合せの割合も特に限定されないが、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体において、ビニル芳香族重合体成分の割合は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。ビニル芳香族重合体成分の割合が上記上限値以下であることにより、得られる水素化重合体は柔軟性や弾力性が良好で、耐衝撃性に優れる傾向にあり、上記下限値以上であることにより、得られる水素化重合体は耐熱性が良好なものとなる傾向にある。
(分子構造)
ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状又はこれらの任意の組み合わせのいずれであってもよい。
(重量平均分子量)
ビニル芳香族重合体成分を含む重合体は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは10000以上、より好ましくは30000以上、更に好ましくは50000以上で、好ましくは200000以下、より好ましくは150000以下、更に好ましくは130000以下である。ビニル芳香族重合体成分を含む重合体のMwが上記下限値以上であることにより、得られる水素化重合体の耐熱性、成形性、水素化重合体を成形してなる成形体の機械強度が良好なものとなり、上記上限値以下であることにより、加工時の溶融粘度が下がり、成形性が良好なものとなる傾向にある。
[ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液]
本発明に係るビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液とは、上記のビニル芳香族重合体成分を含む重合体が溶媒に完全に溶解ないし分散している状態、一部溶解ないし分散している状態、或いはビニル芳香族重合体成分を含む重合体が融点を超えて溶融している状態のものを示す。
ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液が、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体を溶媒に溶解ないし分散させたものである場合、該溶媒としては、後述の工程(1)で用いられる溶媒が挙げられる。
[工程(1)]
工程(1)は、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液から塩基性物質を除去する工程である。
本発明における塩基性物質とは、酸を中和する性質を持つものである。塩基性物質としては特に限定されないが、例えば、アルカリ金属の炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物等のアルカリ金属化合物;アルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物等のアルカリ土類金属化合物;ハイドロタルサイト類、酸化マグネシウムなどの金属酸化物;アンモニア;等の無機塩基性物質や、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、n−トリオクチルアミンなどの3級アミン;ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン等の2級アミン;エチレンジアミン等の1級アミン;等の有機塩基性物質が挙げられる。工程(1)で除去する塩基性物質は、これらの2種類以上であってもよい。
前述の通り、これらの塩基性物質は、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の製造工程に由来して核水素化原料であるビニル芳香族重合体成分を含む重合体に反応器などの腐食防止のために、通常0.01〜5質量%程度含有される。
本発明における塩基性物質としては、これらの中でも、アルカリ金属の炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物等のアルカリ金属化合物;アルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物等のアルカリ土類金属化合物;ハイドロタルサイト類、酸化マグネシウムなどの金属酸化物等の固体無機塩基性物質が好ましく、金属塩(アルカリ金属の炭酸塩、重炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩)、金属酸化物及びハイドロタルサイト類からなる群から選ばれる少なくとも一つであることがより好ましい。中でも、工程(2)に用いる触媒活性の向上及び触媒分離濾過性の改善の効果が良好に得られる傾向にあるため、塩基性物質としてハイドロタルサイト類を除去することが特に好ましい。
ハイドロタルサイト類は、マグネシウムおよびアルミニウムを含む固体塩基で、天然鉱物のハイドロタルサイトと人工的に製造されたハイドロタルサイトを含むハイドロタルサイト類が挙げられる。また、有機化合物等で表面修飾を施したもの等もある。具体的にはDHT−4A、DHT−4C、DHT−6(以上協和化学工業株式会社製)が挙げられる。
ハイドロタルサイト類は、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体に、Mg含有量として25質量ppm〜1.2質量%程度含有されている場合がある。
ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の塩基性物質の含有形態としては、特に限定されないが、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体に添加されている形態が挙げられる。例えば、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体を溶媒に溶解させた場合、その塩基性物質が溶媒に不溶性のものであれば、溶媒中に分散した状態となる。この場合、工程(1)を行わなければ、工程(2)へ塩基性物質が持ち込まれることになる。
ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液から塩基性物質を除去する方法は特に限定されない。例えば、重合体を溶媒に溶解させ不溶分となる塩基性物質をフィルター等で濾過により除く方法、デカンテーションにより沈降した塩基性物質を除く方法、遠心分離により塩基性物質を除く方法、活性炭などに吸着させた後に濾過等で除く方法、蒸留により除く方法などが挙げられる。溶媒に溶解する塩基性物質の場合、酸により塩として沈殿させ除去する方法、溶媒抽出で除く方法などが挙げられる。効率の観点から、不溶性の塩基性物質は濾過による除去が好ましい。
本発明における工程(1)後のビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液中の塩基性物質の含有量は、工程(2)に影響がない範囲であれば特に限定されない。この塩基性物質の含有量は、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の質量に対して、通常0.05質量%以下であり、好ましくは0.005質量%以下、さらに好ましくは0.0005質量%以下である。塩基性物質含有量の下限は特に限定されないが、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の質量に対して例えば0.0001質量%以上である。
なお、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体中の塩基性物質の含有量は、一般的には酸による中和滴定により求めることができる。ただし、あらかじめ含有されている塩基性物質が特定されている場合は、その塩基性物質に由来する元素量を分析し、この結果から換算して求めることができる。例えば、ハイドロタルサイトであってその組成が分かっている場合、Mg量を測定することで、含有量を求めることができる。
工程(1)において塩基性物質を除去する際に、助剤を用いてもよい。助剤は塩基性物質の除去に悪影響のないものであれば特に限定されないが、直接塩基性物質を吸着するもの、塩基性物質を濾過する際に濾過速度を向上させるもの等が挙げられる。具体的には活性炭、シリカ、アルミナ、活性白土、珪藻土等である。これらのうち、重合体の色相に影響を及ぼす有機低分子物等も除去できる点から、活性炭が好ましい。
助剤の使用量は特に限定されないが、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の質量に対して好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。助剤の使用量が上記範囲であることで、助剤の効果が十分に得られ、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液のハンドリングの悪化を抑制し、助剤への塩基性物質の吸着、濾過速度の向上が十分行われる傾向にある。
工程(1)の処理温度は特に限定されないが、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上である。また、好ましくは270℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。処理温度が前記下限値以上であることで、溶液の粘度の上昇を抑制し、溶液のハンドリング性が維持される、また、前記上限値以下であることで、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の分解や、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体からのハロゲンの放出(ビニル芳香族重合体成分を含む重合体がハロゲンを含むことについては後述の通りである。)による反応器腐食を抑制できる傾向にある。
工程(1)において溶媒を用いてもよい。溶媒は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブテンジオールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンやジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;ヘキサン、シクロヘキサン、デカリンなどの炭化水素;等が挙げられる。これらの溶媒は、単独でも2種類以上の混合溶媒としても用いることができる。ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の溶解性の点から、テトラヒドロフラン(THF)又はシクロヘキサンを用いることが好ましい。
工程(1)において溶媒を用いる際、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液中のビニル芳香族重合体成分を含む重合体の濃度としては、特に限定されないが、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。また、好ましくは70質量%以下、より好ましく50質量%以下である。ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の濃度が前記範囲であることで、生産性を維持しながら、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液の粘度の上昇を抑制でき、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液のハンドリング性を維持できる傾向にある。
[工程(2)]
工程(2)は、工程(1)の後、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体を核水素化する工程である。
核水素化とは、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体に含まれる芳香環を飽和炭化水素骨格に変換することを指す。重合体に含まれる芳香環は、通常ベンゼン、ナフタレン、アントラセンなどの炭素骨格のみで形成されるものなどを含む。これらの芳香環は重合体に一種類でもよく、2種類以上を任意の割合で含んでいてもよい。
例えばポリスチレンであれば、核水素化によってベンゼン環部分がシクロヘキサン環部分に変換される。
重合体骨格中の任意の部位に脂肪族不飽和炭化水素(オレフィン)部分が含まれている場合、核水素化を行った際に同時にこの部分が飽和炭化水素部分となってもよい。
工程(2)における核水素化の進行率は特に限定されないが、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体に含まれる芳香環のうち、通常5モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、特に好ましくは99モル%以上であり、上限は特に限定されない。核水素化進行率が上記範囲であることで、水素化重合体に所望の物性を得られる傾向にある。核水素化進行率は、例えば、H−NMRにより、0.5〜2.5ppm付近の脂肪族由来ピークと6.0〜8.0ppm付近の芳香族由来のピークの積分値から算出することができる。
核水素化の方法は特に限定されないが、例えば、触媒、水素等の存在下で芳香環を水素化する方法がある。必要に応じて加圧や加熱を行ってもよい。核水素化の具体的方法について、以下に説明する。
(触媒)
工程(2)では、触媒を使用してもよく、触媒としては金属触媒が使用できる。金属触媒としては、合金触媒、担体に活性金属種を担持させた担持金属触媒等が挙げられる。
金属触媒の金属成分は、重合体中の芳香環を水素化できるものであれば特に限定されないが、通常、ルテニウム、ニッケル、銅、パラジウム、金、白金、鉄、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム等の金属を用いることができる。なかでも、水素化能力を発揮するものとして、周期表第8族、第9族、第10族及び第11族からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含むことが好ましい。特に水素化能力が高いことから、周期表第8族、第9族及び第10族からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含むことが好ましく、特に選択性が高いことから、ルテニウム、ロジウム、ニッケル、パラジウム又は白金が好ましく、特に核水素化に対する能力の高さからルテニウム、ニッケル又はパラジウムが好ましい。
工程(2)で用いる金属触媒は、金属を1種類用いても、2種類以上用いてもよい。金属を2種類以上用いるときは、その組み合わせは特に限定されず、それぞれの金属が触媒活性を有するもの(共触媒)でも、1種類以上の金属の触媒活性を向上させるもの(助触媒)であってもよいが、これらのうち助触媒が好ましい。
前記合金触媒は、特に限定はされないが、ルテニウム、ニッケル、銅、パラジウム、金、白金等の金属の合金が用いられる。具体的には一般的に知られているラネー触媒、銅クロム触媒などが挙げられる。
金属触媒は、活性金属種を後述する各種の担体に担持させた担持金属触媒であってもよく、均一系の錯体触媒であってもよい。反応液からの分離を容易に行えること、触媒の再使用が容易であるという点から、担持金属触媒を用いることが好ましい。
前記担体としては特に限定はされないが、例えば活性炭、カーボンブラック、シリコンカーバイド等の炭素系担体;アルミナ、シリカ、ジルコニア、ニオビア、チタニア、セリア、珪藻土、ゼオライト等の金属酸化物担体等が挙げられる。中でも活性炭、シリカ及びアルミナからなる群より選ばれる少なくとも1種を担体として用いるのが、反応活性発現と触媒の活性安定化の面で好ましい。
担持金属触媒における金属の含有量は特に限定されないが、金属に換算した質量百分率で、通常、担体と金属の合計質量に対して0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上である。また、通常50質量%以下であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。金属含有量を前記範囲内とすることにより、十分な触媒活性を得ることができる。なお、以下の触媒の記載において、質量%と記載されている値は、その触媒の担体と金属の合計質量に対する金属含有量を示す。
金属触媒に用いられる担体の表面積は特に限定されないが、通常1m/g以上であり、好ましくは10m/g以上、より好ましくは50m/g以上である。また、好ましくは2000m/g以下であり、より好ましくは1500m/g以下、更に好ましくは1000m/g以下である。表面積が前記下限値以上のものを用いることで、金属を担体に高い分散度で担持することを可能とし、十分な触媒活性を得る上で好ましい。また前記上限値以下のものを用いることは、通常担体が有する細孔を有効に利用できる点で好ましい。
担持金属触媒に用いられる担体の平均細孔径は特に限定されないが、通常200Å以上であり、好ましくは250Å以上である。また、好ましくは500Å以下であり、より好ましくは400Å以下である。平均細孔径が上記下限以上であることで、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の取り込みが十分行われ、処理効率を維持できる傾向にある。上記範囲より平均細孔径が大きい担体も使用できるが、担体表面を有効に利用する点から上記上限以下が好ましい。
工程(2)で用いる金属触媒の製造方法は、活性成分が金属状態で触媒として機能していればよく、特に限定されない。例えば、金属、金属化合物等を、還元処理することで得ることができる。
担持金属触媒を用いる場合、その製造方法は特に限定されず、一般的な方法を適宜組み合わせて製造することができる。通常、金属源となる金属化合物を担体に担持させ、乾燥、洗浄、焼成等の処理を行なった後、還元処理によって、金属状態に変換して用いる。
金属化合物の担体への担持方法は、特に限定されないが、例えば含浸法、イオン交換法、スプレー法、共沈法等の担持金属触媒の調製に常用されている既知の方法を用いることができる。前記金属化合物が担持された担体を還元処理することにより、担体に担持された金属化合物が金属に変換されることで、目的とする触媒が得られる。
前記還元処理は、液相又は気相のいずれでも行うことができるが、水素などの還元性ガスを用いて還元する気相還元や、アルコール、ギ酸、ギ酸ナトリウムなどを用いて還元する液相還元が好ましい。
前記還元処理における還元温度は特に限定はされないが、通常20℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは250℃以上であり、通常600℃以下、好ましくは500℃以下である。
工程(2)で用いられる金属触媒の形状は、特に限定はされず、該金属触媒を用いて行う反応の形式に応じて、適宜選択して用いることができる。該金属触媒の具体的な形状としては、例えば粉末状、粒子状、ペレット状等の形状が挙げられるが、中でも細孔内拡散の影響が少ない粉末状が好ましい。
また工程(2)で用いられる金属触媒の粒子径等も特に限定はされない。該金属触媒を用いる反応の形式に応じて、適宜選択して用いることができるが、通常、平均粒径30μm以上、20mm以下の触媒が使用される。
工程(2)で用いられる金属触媒の使用量は、芳香環を適切な時間内に水素化できる程であればよく、特に限定されないが、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の重量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。また、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
(水素化反応条件)
工程(2)は、水素雰囲気下で行ってもよい。水素源としては特に限定はされないが、反応終了後に分離精製の必要がない気体の水素を用いることが望ましい。
水素ガス圧は、特に限定はされないが、通常、水素ガスによる加圧条件下で行われる。水素化反応の圧力は特に限定されないが、通常1MPa以上、好ましくは3MPa以上、より好ましくは5MPa以上である。また、好ましくは30MPa以下、より好ましくは20MPa以下、さらに好ましくは15MPa以下である。
一般的には、反応圧力を上昇させると金属触媒への水素供給が促進され、核水素化の反応速度が向上する。一方で、高い反応圧力で実施するには特別に耐圧性を高めた反応器等の設備が必要となるほか、高い反応圧力の条件によって重合体の分解反応が生じる可能性がある。
水素雰囲気下における水素ガスの水素濃度は、特に限定はされないが、通常70体積%以上、好ましくは80体積%以上、より好ましくは90体積%以上であり、上限は通常100体積%であり、好ましくは95体積%以下である。
工程(2)における、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体を核水素化する温度は、特に限定されないが、通常20℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。また、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは220℃以下である。反応温度が前記範囲であることで、重合体の分解反応を抑制しながら、効率的な核水素化が達成できる傾向にある。
ビニル芳香族重合体成分を含む重合体を核水素化する反応時間については、重合体の核水素化が達成されれば特に限定されない。反応時間は好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上であり、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。
工程(2)において行われる核水素化反応で溶媒を用いる際、溶媒としては特に限定されない。具体的には工程(1)で挙げた溶媒を用いることができる。また、工程(2)において、新たに溶媒を添加してもよく、新たに溶媒を添加せず、工程(1)の溶液状態のままで行うこともできる。
工程(2)において溶媒を用いる際、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の濃度としては、特に限定されないが、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。また、好ましくは70質量%以下であり、より好ましく50質量%以下である。ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の濃度が前記範囲であることで、生産性を維持しながら、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液の粘度の上昇を抑制し、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液のハンドリング性を維持することができる傾向にある。
(反応装置)
工程(2)で用いられる反応装置については、特に限定されないが、通常は高圧反応が可能なオートクレーブが使用される。ループリアクターを使用してもよい。連続反応器の使用も可能であり、触媒を反応器に充填し、原料液と水素を流通させ、反応を行うことも選択できる。連続反応器の場合は、触媒の分離工程が不要であるので、大量生産を行う場合は連続反応器の方が望ましい。反応装置の材質については通常SUSが用いられるが、ハステロイなどの耐酸性のSUSを用いてもよい。発生する酸に対する対応として、グラスライニングの容器やテフロンコーティングの容器なども使用できる。
(触媒の分離)
工程(2)の後に、得られた水素化重合体から触媒を分離してもよい。具体的な触媒の分離方法は特に限定されないが、フィルターなどによる濾過、デカンテーション、遠心分離等が挙げられる。
(塩基性物質含有量)
本発明における工程(2)を行う際のビニル芳香族重合体成分を含む重合体中の塩基性物質含有量は、続く工程(2)に影響がない範囲であれば特に限定されない。
塩基性物質の含有量は、前述の工程(1)後のビニル芳香族重合体成分を含む重合体の塩基性物質含量と同様に、用いるビニル芳香族重合体成分を含む重合体の質量に対して、通常0.05質量%以下であり、好ましくは0.005質量%以下、さらに好ましくは0.0005質量%以下である。下限は特に限定されないが、例えば、0.0001質量%以上である。上記範囲であることで、前述の通り、工程(2)の核水素化時の触媒の活性低下及び触媒の濾過速度の低下を抑制できる傾向にある。
[その他の工程]
本発明の水素化重合体の製造方法は、前述の工程(1)及び(2)を有するものであれば特に限定されない。例えば、反応装置の材質が耐酸性のSUS等でない場合は、工程(2)の前に、後述の工程(a)を有することが好ましい。工程(2)の前に工程(1)により塩基性物質を除去すると、水素化速度、触媒の濾過分離性は前記の通り劇的に向上する。一方、核水素化時に、原料となるビニル芳香族重合体成分を含む重合体に含まれているハロゲン成分が水素化分解され、発生した酸により耐酸性のSUS等でない場合は反応器の腐食の問題を新たに引き起こす場合がある。この原料中のハロゲンは、ビニル芳香族系重合体成分と共役ジエン類との共重合体の製造時の重合開始剤や重合触媒に由来し、含有が避けられないものであり(例えば、特開2006−131774号公報)、特に重合開始剤由来のハロゲンについては洗浄や濾過などの単純な処理では除去することが難しいものである。工程(a)では、このような単純な処理では除去することが難しいハロゲンを、後述する方法で、所定の含有量となるよう、調整を行なう。
工程(a)を行う場合、工程(a)と工程(1)の順番は特に限定されず、工程(a)と工程(1)の間に他の工程を有していてもよく、工程(a)と工程(1)を交互に繰り返して行ってもよい。また、工程(a)は、工程(1)と同時に行ってもよい。反応容器の腐食抑制の観点から、好ましくは工程(1)の前に、工程(a)を有することが好ましい。
[工程(a)]
工程(a)は、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体のハロゲン含有量を、1質量ppm以上、350質量ppm以下に調整する工程である(ここで、ハロゲン含有量とは、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の全ハロゲン含有量をさし、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体が複数のハロゲンを含む場合はその合計をさす。)。
ここでいうハロゲンとはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素のことをさす。ビニル芳香族重合体成分を含む重合体は、上記ハロゲンを単独で含む場合もあり、複数のハロゲンを含む場合もある。
これらのハロゲンはビニル芳香族重合体成分を含む重合体合成時の重合開始剤や触媒に由来して含有される場合が多く、その場合はビニル芳香族重合体成分を含む重合体に含有されているハロゲンをもとに、所定のハロゲン含有量に調整することが望ましい。例えば、カチオン重合では、重合開始剤としては1,4−ビス(α−クロル−イソプロピル)ベンゼンなどが用いられるが、製造されたポリマー骨格にそのまま塩素が組み込まれる場合がある。この場合は、特に塩素がビニル芳香族重合体成分を含む重合体に含まれている可能性が高いので、塩素の量を本発明の範囲内の量に調整することが望ましい。
本発明における工程(a)後のビニル芳香族重合体成分を含む重合体中の全ハロゲン含有量は好ましくは350質量ppm以下であり、より好ましくは300質量ppm以下、さらに好ましくは200質量ppm以下、特に好ましくは100質量ppm以下、最も好ましくは50質量ppm以下である。また、下限は特に限定されず、例えば、1質量ppm以上である。
また、本発明における工程(a)後のビニル芳香族重合体成分を含む重合体中の各ハロゲン含有量は特に限定されないが、特に塩素、フッ素、臭素及びヨウ素の含有量を特定の範囲にすることが、反応器の腐食リスクを低減させる傾向にあるため好ましい。
工程(a)後のビニル芳香族重合体成分を含む重合体中の塩素、フッ素、臭素及びヨウ素の各含有量は、全ハロゲン含有量が上記の範囲であれば、各々の含有量は特に限定されない。例えば、それぞれ、350質量ppm以下が好ましく、より好ましくは200質量ppm以下、さらに好ましくは100質量ppm以下、最も好ましくは50質量ppm以下である。下限は特に限定されず、例えば0.1質量ppm以上である。
ビニル芳香族重合体成分を含む重合体中の全ハロゲン含有量及び各ハロゲン含有量を上記範囲にすることで、工程(2)の核水素化の工程において反応器等の腐食を抑制することができる傾向にある。また、系内の酸性度が下がり過ぎないことで、水素化の反応速度の低下を抑制することができる傾向にある。
工程(a)でハロゲン含有量を調整する前のビニル芳香族重合体成分を含む重合体に含まれるハロゲン含有量については特に制約はないが、前述のように重合体を製造する段階でハロゲンが含有される場合は、そのハロゲン含有量を基準に調整すればよい。工程(a)前のビニル芳香族重合体成分を含む重合体中のハロゲン含有量は特に限定されないが、好ましくは5000質量ppm以下、より好ましくは1000質量ppm以下である。下限は特に限定されないが、例えば原料由来で含まれる量としては400質量ppm以上である。
ビニル芳香族重合体成分を含む重合体に含まれるハロゲン含有量の測定方法は特に限定されないが、例えば、湿式分解後のイオンクロマトグラフ測定、XRF測定等が挙げられる。
工程(a)の具体的な方法は限定されないが、例えば、ハロゲンの水素化分解を行う方法、重合体の加熱によりハロゲン含有量を調整する方法、塩基を添加してハロゲン含有量を調整する方法などがある。ハロゲン含有量を調整する効率の点からは、ハロゲンの水素化分解を行う方法が最も好ましい。
以下、工程(a)の具体的な方法について説明する。
(溶媒)
ビニル芳香族重合体成分を含む重合体を加熱してハロゲン含有量を調整する場合は、溶媒を使用してもよいし、そのまま溶融させて行ってもよい。また、ハロゲンの水素化分解を行う場合にも溶媒を使用してもよい。
溶媒を用いる場合、該溶媒としては、特に限定されない。具体的には工程(1)の説明で挙げた溶媒を用いることができ、その場合のビニル芳香族重合体成分を含む重合体の濃度についても、工程(1)におけると同様の理由で工程(1)における好適濃度とすることが好ましい。
(温度・時間)
工程(a)の温度は、特に限定されないが、好ましくは120℃以上、より好ましくは190℃以上、さらに好ましくは210℃以上である。また、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは280℃以下である。反応温度が前記範囲であることで、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の分解反応を抑制しながら、効率的にハロゲン含有量を調整することができる傾向にある。
工程(a)の時間は、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体のハロゲン含有量が所望のハロゲン含有量となる時間であればよく、特に限定されない。好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上であり、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。
(金属触媒)
工程(a)は、金属触媒を共存させて行ってもよい。金属触媒の金属成分は、ハロゲン含有量を調整できるものであれば特に限定されない。金属触媒としては、例えば、合金触媒、担体に触媒活性金属を担持させた担持金属触媒等が挙げられる。
具体的には、工程(2)の説明で挙げた触媒を用いることができる。これらの中でも、パラジウム又は白金が、ハロゲンに対する高い水素化分解能を有する傾向にあるため好ましい。
工程(a)で金属触媒を用いる場合は、金属を1種類用いても、2種類以上用いてもよい。金属を2種類以上用いるときは、その組み合わせは特に限定されず、それぞれの金属が触媒活性を有するもの(共触媒)でも、1種類以上の金属の触媒活性を向上させるもの(助触媒)であってもよいが、これらのうち助触媒が好ましい。
工程(a)で金属触媒を用いる場合、その使用量は、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体中のハロゲンを適切な時間内に水素化分解できる程度であればよく、特に限定されないが、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体の重量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上である。また、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
(塩基性物質)
工程(a)で水素化分解を行うと、反応器の腐食に影響するハロゲン化水素が発生する場合がある。この場合、工程(a)に先立ち工程(1)を行う場合には、工程(1)で除去する塩基性物質の量を調整して若干量の塩基性物質を残留させたり、工程(1)で塩基性物質を除去した後、別途工程(a)で塩基性物質を添加したりすることで、脱離したハロゲンを塩基性物質によりトラップし、反応器の腐食を抑制できる傾向にある。
塩基性物質は反応器の腐食を抑制できるものであれば特に限定されないが、具体的には、工程(1)の説明で示したものが挙げられ、好ましい態様も同じである。
塩基性物質を工程(a)で添加する或いは残留させる場合の添加量又は残留量は、工程(a)でハロゲン含有量を調整するにあたり、脱離したハロゲンに由来する酸を中和できる量であれば特に限定されないが、用いるビニル芳香族重合体成分を含む重合体の質量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、通常10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。また、用いるビニル芳香族重合体成分を含む重合体中のハロゲン含有モル量に対して、好ましくは0.8当量以上、より好ましくは1当量以上、さらに好ましくは1.1当量以上であり、好ましくは3当量以下、より好ましくは2.5当量以下、さらに好ましくは2当量以下である。
また、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体にはあらかじめ上記の範囲内で塩基性物質が添加されている場合がある。従って、工程(1)に先立ち、工程(a)を行う場合、塩基性物質が上記範囲で添加されていることで、水素化分解により発生するハロゲン化水素をトラップしながら、ハロゲンの水素化分解反応を行うことができる傾向にある。
(水素ガス圧)
工程(a)は、水素雰囲気下で行ってもよい。水素雰囲気下で行う具体的方法は、前記工程(1)におけると同様である。
工程(a)における水素ガス圧は、特に限定はされないが通常、水素ガス存在下の加圧条件下で行われる。水素化反応の圧力は特に限定されないが、通常0.1MPa以上、好ましくは0.3MPa以上、より好ましくは0.4MPa以上である。また、通常5MPa以下、好ましくは3MPa以下であり、より好ましくは2MPa以下である。一般的には、反応圧力を上昇させると金属触媒への水素供給が促進され、水素化分解の反応速度が向上する。一方で、高い反応圧力で実施するには特別に耐圧性を高めた反応器等の設備が必要となるほか、核水素化が進行し、芳香環部分を保てない可能性がある。
(窒素ガス圧)
工程(a)は、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、この場合においては、ハロゲン基を熱分解させることにより重合体から脱離させてハロゲンを除去することができる。窒素等の不活性ガス雰囲気下で行う具体的方法は、前記工程(1)におけると同様である。不活性ガス下で工程(a)を実施することにより、酸素等による重合体の分解を抑制することができる。
工程(a)を窒素ガス雰囲気下で行う場合、窒素ガス圧は、特に限定はされないが通常、窒素ガス存在下の常圧から加圧条件下で行われる。窒素ガス圧は特に限定されないが、加圧条件の場合、通常0.1MPa以上、好ましくは0.3MPa以上、より好ましくは0.4MPa以上である。また、通常5MPa以下、好ましくは3MPa以下である。一般的には、窒素ガス圧を上昇させると処理雰囲気中の酸素濃度を低下させることができ、重合体の分解を抑制できる。一方で、高い反応圧力で実施するには特別に耐圧性を高めた反応器等の設備が必要となるほか、重合体溶液中の溶存窒素量が増え、工程後の溶液ハンドリングに支障をきたす場合がある。
(溶媒の分離)
工程(a)で溶媒を使用した場合、工程(a)の後にビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液を、そのまま工程(1)の塩基性物質除去または(2)の核水素化に供してもよく、溶媒を分離して固体として取り出してもよい。固体として取り出す方法は特に限定されないが、スチームストリッピングにより溶媒を除去するスチーム凝固法、減圧加熱下で溶媒を除去する直接脱溶媒法、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、水、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の、ビニル重合体成分を含む重合体の貧溶媒中に溶液を注いでビニル重合体成分を含む重合体を析出、凝固させる凝固法などの公知の方法を採用することができる。
(重合体末端)
本発明における工程(a)後のビニル芳香族重合体成分を含む重合体の構造は、特に限定されないが、重合体の安定性の面から重合体末端が飽和炭化水素になっていることが望ましい。一般的に、重合体末端は重合体合成時の重合開始剤に由来する構造となっており、重合開始剤によってはハロゲン化炭化水素構造となっていることがある。該ハロゲン化炭化水素構造は、工程(a)で水素化によるハロゲン含有量の調整を行うことで、重合体末端を飽和炭化水素とすることができる。具体的には、1,4−ビス(α−クロル−イソプロピル)ベンゼンなどが重合開始剤に使用された重合体の場合、末端をイソプロピル基とすることができる。末端構造のうちのイソプロピル基の割合は特に限定されないが、末端構造のうち通常40%以上であり、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。この割合の上限には特に制限はないが99.9%以下である。
[触媒]
(触媒の繰り返し使用)
工程(2)及び(a)で用いた金属触媒は反応溶液から分離した後、工程(2)及び(a)で繰り返し使用することができる。金属触媒の分離方法は前述の工程(2)の説明において記載した通りである。
不溶性の塩基性物質がビニル芳香族重合体成分を含む重合体等の溶液中に多く含まれていると、濾過等の固液分離時に塩基性物質と金属触媒が同伴した状態で分離されることになる。本発明では工程(1)において、ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液から塩基性物質を除去するにより、触媒と同伴する塩基性物質量を低減することができ、繰り返し触媒を使用することが可能となる。
(触媒の再生処理)
工程(2)及び(a)で用いた金属触媒は、再生処理を行い、工程(2)及び(a)で再使用してもよい。再生処理としては水、有機溶媒による洗浄処理;硫酸、硝酸などによる酸処理;ギ酸、アルコールによる還元処理;窒素、酸素、水素ガス、スチーム存在下での加熱処理などが用いられる。特に、炭素系多孔質材料を担体として含む金属触媒に対して加熱処理を行う場合は、炭素質が焼失せず、かつ付着有機物が除去される温度範囲が望ましい。具体的には100℃以上、600℃以下であり、より好ましくは200℃以上、500℃以下である。
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
<濾過速度の測定方法>
孔径0.2μmのメンブレンフィルター(親水性)を装着した加圧濾過器に重合体溶液を入れ、0.2MPaのアルゴンガスを導入し、メンブレンフィルターを通過した重合体溶液の重量(g)と通過に要した時間(h)から濾過速度(g/h)を算出した。検討した範囲でフィルターの種類、大きさなどは同一のものを使用した。
<ビニル芳香族重合体成分を含む重合体中のCl量、F量、Br量、およびI量の分析方法>
ビニル芳香族重合体成分を含む重合体中のCl量、F量、Br量、およびI量は以下の方法で測定した。
(Cl量、F量)
方法:燃焼吸収イオンクロマト測定
燃焼装置:株式会社三菱ケミカルアナリテック製 AQF−2100M
イオンクロマト:サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製 DX500
(Br量、I量)
方法:燃焼吸収誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)
燃焼装置:株式会社三菱ケミカルアナリテック製 AQF−2100M
ICP−MS:AgilentTechnologies社製 7500CE
<ビニル芳香族重合体成分を含む重合体中のMg量分析方法>
ビニル芳香族重合体成分を含む重合体中のMg量は以下の方法で測定した。
重合体に硝酸を添加して乾式灰化後、アルカリ溶融を行った。その後酸を添加して溶解し定容した。この溶液を誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)にて測定を行った。
装置:ICP−AES サーモフィッシャーサイエンティフィック社製iCAP7600 Duo
<水素化進行率測定(NMR)方法>
核水素化の進行率は、H−NMRにより、0.5〜2.5ppm付近の脂肪族由来のピークと6.0〜8.0ppm付近の芳香族由来のピークの積分値から算出した。NMRスペクトルの測定条件は以下の通りである。
(NMRスペクトル測定条件)
装置:BRUKER Ultra Shield
周波数:400MHz
溶媒:CDCl
<水素化速度の測定方法>
反応開始から反応終了までの水素消費量をモニタリングした結果と反応終了後の水素化進行率の測定結果から、水素化進行率が20%と50%に到達する時間を算出した。水素化進行率が20%から50%までの水素化進行率30%に相当する反応量を、その期間反応に費やした時間で割った値を反応速度とした。
<SUS316テストピースの表面観察>
オートクレーブの内部、気相部分にSUS316製のテストピース(1cm×2cm×1mm:電解研磨処理品)を装着した。工程(2)の水素化の反応終了後、このテストピースを回収し、表面をアセトンで洗浄し、乾燥を行った。その後、以下の分析条件で、テストピースの表面をSEMで観察し、腐食に起因するピットが存在するかどうかを調べた。
(分析条件)
前処理: 試料は、試料台に導電テープで固定した(蒸着処理なし)。
分析装置: Carl Zeiss社製 Ultra55
分析条件: 加速電圧3kV
観察方法: 1000〜5000倍の倍率で観察を行い、腐食に起因すると思われる
1μm以上のピットの有無を調べた。
<触媒調製方法>
(含浸工程)
シリカ(富士シリシア化学キャリアクトQ30)担体2.85gと、パラジウム原料として塩化パラジウム(日本エンゲルハルド株式会社)0.25gを、100mlナスフラスコに秤量し、濃塩酸0.9g、水6.6mlを加えて攪拌した(水の添加量はシリカ担体の吸水量の130質量%に相当)。攪拌溶液全体がなじんだ後、ナスフラスコ内を減圧しながら湯浴(80℃)で加熱し、パラジウム原料溶液を前記シリカ担体に含浸させると共に、余分な水分を除去した。シリカ担体に担持するパラジウム量は、金属パラジウムとして質量百分率で、5質量%となるように仕込んだ。
パラジウム原料溶液を含浸させた前記シリカ担体を、ガラス管(パイレックス社製)につめ、アルゴンガス流通下で乾燥し、室温まで冷却した後、取り出した。以下、これを触媒前躯体という。乾燥条件の詳細は以下の通りである。
ガス流通量:アルゴンガス 83ml/分
乾燥温度:室温から150℃まで15分間かけて昇温し、150℃にて1時間保持の後、50℃まで放冷した。
(還元工程及び安定化工程)
上記乾燥工程を経た触媒前躯体に対して、還元処理を行った。還元処理は、再度触媒前駆体を、ガラス管(パイレックス社製)につめ、Hガスを83ml/分で流通させながら、還元温度50℃から300℃まで30分間かけて昇温の後、300℃にて2時間保持して行った。その後、流通ガスをアルゴンに切り替え、流量83ml/分流通下、室温まで放冷した。
引き続き同じガラス管(パイレックス社製)に5体積%O含有窒素ガスを30分間流通し、安定化処理を行ない、5質量%Pd/SiO触媒(以下、「新品5質量%Pd/SiO触媒」と称す場合がある。)を得た。
[実施例1]
(工程(1))
シクロヘキサンを入れた200ml三角フラスコに、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(スチレン含量30質量%、重量平均分子量110,000。ハイドロタルサイト由来のMgを820質量ppm含有。以下「A−1」と表すことがある。)が18質量%となるように溶解させ、重合体溶液を得た。この重合体溶液に含まれるA−1に対して4質量%となる量の活性炭(日本エンバイロケミカルズ白鷺A)を加えて、室温(20℃)で2時間混合した。
この処理後は、孔径0.2μmのメンブレンフィルター(親水性)を装着したアルゴン加圧濾過器によって活性炭を濾別し、A−1処理液1を得た。
A−1処理液1を3g、THF3gを混合した溶液を作成し、メタノール30gの中に入れ、重合体を析出させた。得られた重合体の減圧乾燥を行い、固体中の溶媒を除去した。この固体重合体中のCl含有量を測定したところ400質量ppmであった。なお、処理前のA−1について、上記と同様にCl含有量を測定したところ550質量ppmであった。また、この重合体中のMg含量は0.6質量ppm(ハイドロタルサイト含有量として2.5質量ppm)であり、ハイドロタルサイトが除去されたと推測される。
(工程(2))
上記A−1処理液1に、含有するA−1に対して4質量%の量となる新品5質量%Pd/SiO触媒を加え、攪拌装置を備えたハステロイ製オートクレーブ中で混合して原料混合物1とした。また、このオートクレーブの内部、気相部分にはSUS316製のリングを設置した。
原料混合物1を含むオートクレーブを密閉後、H圧力1MPaとなるようにHを仕込んだ。このオートクレーブを反応温度である210℃まで昇温し、その時点から全圧が10.2MPaとなるようにHを導入した。反応中はオートプレッシャーコントローラーにより反応容器内の圧力が10.2MPaで一定となるようHを導入して制御した。反応での水素消費量は、オートプレッシャーコントローラーの一次側に設置した蓄圧器の圧力変化で常時監視し、反応は水素の消費が見られなくなるまで行った。
反応後は、孔径0.2μmのメンブレンフィルター(親水性)を装着したAr加圧濾過器によって触媒を濾別し、A−1水素化反応液1を得た。
このときの濾過速度は25.8g/hであった。また、工程(2)での水素化速度は139%/hで、工程(2)後の水素化進行率は99.9%であった。しかしながら、オートクレーブ内部に設置したSUS316リングの減肉が若干観測され、表面の変色も若干見受けられた。非常に高い反応性と濾過性を示したが、反応器の材質にもよるものの、SUS316では反応器腐食の懸念が若干見られた。
[実施例2]
新品5質量%Pd/SiO触媒の代りに、実施例1で回収した触媒を使用したこと以外は実施例1と同様の方法でA−1の水素化を行った。このときの濾過速度は25.1g/hであった。また、工程(2)での水素化速度は120%/hで、工程(2)後の水素化進行率は99.8%であった。触媒を再利用した場合であっても、このように高い反応速度を維持しつつ、濾過速度も速い状態を維持した。
[実施例3]
(工程(a)及び工程(1))
シクロヘキサンを入れた200ml三角フラスコにスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(実施例1で用いたA−1)が18質量%となるように溶解させ、重合体溶液を得た。この重合体溶液に含まれるA−1に対して0.4質量%となる量の新品5質量%Pd/SiO触媒と、重合体溶液を、攪拌装置を備えたハステロイ製オートクレーブに入れて混合して原料混合物2aとした。
原料混合物2aを含むオートクレーブを密閉後、H圧力1MPaとなるようにHを仕込んだ。前記オートクレーブを処理温度である210℃まで昇温し、210℃で8時間攪拌し、処理を行った。処理中のオートクレーブ内全圧は2MPaであった。
この処理後は、孔径0.2μmのメンブレンフィルター(親水性)を装着したAr加圧濾過器によって触媒を濾別し、A−1処理液2を得た。フィルター上に白色物が残り、塩基性物質であるハイドロタルサイトが除去されていた。
A−1処理液2を3g、THF3gを混合した溶液を作成し、メタノール30gの中に入れ、重合体を析出させた。得られた重合体の減圧乾燥を行い、固体中の溶媒を除去した。この固体重合体中のCl含有量を測定したところ14質量ppmであった。
(工程(2))
上記A−1処理液2に、含有するA−1に対して4質量%の量となる新品5質量%Pd/SiO触媒を加え、攪拌装置を備えたハステロイ製オートクレーブ中で混合して原料混合物2bとした。また、このオートクレーブの内部、気相部分にはSUS316製のリングと、SUS316製のテストピースを設置した。
原料混合物2bを含むオートクレーブを密閉後、H圧力1MPaとなるようにHを仕込んだ。前記オートクレーブを反応温度である210℃まで昇温し、その時点から全圧が10.2MPaとなるようにHを導入した。反応中はオートプレッシャーコントローラーにより反応容器内の圧力が10.2MPaで一定となるようHを導入して制御した。反応での水素消費量は、オートプレッシャーコントローラーの一次側に設置した蓄圧器の圧力変化で常時監視し、反応は水素の消費が見られなくなるまで行った。
反応後は、孔径0.2μmのメンブレンフィルター(親水性)を装着したAr加圧濾過器によって触媒を濾別し、A−1水素化反応液2を得た。
このときの濾過速度は24.2g/hであった。また、オートクレーブ内部に設置したSUS316リングの減肉は確認されず、表面の変色も確認されなかった。また、SUS316製テストピースのSEMによる表面観察を行ったところ、腐食に起因するようなピット状のものは観測されなかった。よって、腐食によるリスクは非常に少ないものと判断した。
A−1水素化反応液2を3g、THF3gを混合した溶液を作成し、メタノール30gの中に入れ、重合体を析出させた。得られた重合体の減圧乾燥を行い、固体中の溶媒を除去した。工程(2)後の水素化進行率は99.4%で、工程(2)での水素化速度は122%/hと算出された。
[実施例4]
実施例3において、原料混合物2aを含むオートクレーブを210℃で8時間処理する代りに、210℃で2時間攪拌し、処理を行ったこと以外は実施例3と同様に工程(a)、工程(1)及び工程(2)を行った。
工程(a)及び工程(1)後の重合体中Cl含有量は44質量ppmで、F含有量、Br含有量、I含有量はいずれも1質量ppm未満であった。また、工程(2)での濾過速度は23.7g/hであった。工程(2)後の重合体の水素化進行率は99.6%で、工程(2)での水素化速度は117%/hであった。また、オートクレーブ内部に設置したSUS316リングの減肉は確認されず、表面の変色も確認されなかった。また、SUS316製テストピースのSEMによる表面観察を行ったところ、腐食に起因するようなピット状のものは観測されなかった。よって、腐食によるリスクは非常に少ないものと判断した。
[実施例5]
実施例3において、原料混合物2aを含むオートクレーブを210℃で8時間処理する代りに、150℃で2時間攪拌し、処理を行ったこと以外は、実施例3と同様に工程(a)、工程(1)及び工程(2)を行った。
工程(a)及び工程(1)後の重合体中Cl含有量は91質量ppmであった。また、工程(2)での濾過速度は19.3g/hであった。工程(2)後の重合体の水素化進行率は99.6%で、工程(2)での水素化速度は72%/hであった。また、オートクレーブ内部に設置したSUS316リングの減肉は確認されず、表面の変色も確認されなかった。また、SUS316製テストピースのSEMによる表面観察を行ったところ、ピット状のものが非常に少ない割合で観測された。このピット状のものが腐食に起因するものか否かは不明であるが、腐食によるリスクは少ないものと判断した。
[実施例6]
(工程(a)及び工程(1))
シクロヘキサンを入れた200ml三角フラスコにスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(実施例1で用いたA−1)が18質量%となるように溶解させ、重合体溶液を得た。この重合体溶液を、攪拌装置を備えたハステロイ製オートクレーブに入れた。
重合体溶液を含むオートクレーブを密閉後、N圧力1MPaとなるようにNを仕込んだ。前記オートクレーブを処理温度である260℃まで昇温し、260℃で2時間攪拌し、処理を行った。処理中のオートクレーブ内全圧は3MPaであった。
この処理後は、孔径0.2μmのメンブレンフィルター(親水性)を装着したAr加圧濾過器によって濾過し、濾液の重合体処理液を得た。フィルター上に白色物が残り、塩基性物質であるハイドロタルサイトが除去されていた。
重合体処理液を3g、THF3gを混合した溶液を作成し、メタノール30gの中に入れ、重合体を析出させた。得られた重合体の減圧乾燥を行い、固体中の溶媒を除去した。この固体重合体中のCl含有量を測定したところ100質量ppmであった。
[比較例1]
工程(1)を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に工程(2)の反応を行った。工程(2)での濾過速度は9.3g/hであり、濾過速度が遅いことがわかった。工程(2)後の重合体の水素化進行率は98.8%であった。また工程(2)での水素化速度は67%/hであった。また、オートクレーブ内部に設置したSUS316リングの減肉は確認されず、表面の変色も確認されなかった。
[比較例2]
工程(1)の処理を行わなかったこと、及び工程(2)におけるオートクレーブの反応温度を210℃から200℃としたこと以外は、実施例1と同様に工程(2)の反応を行った。工程(2)での濾過速度は10.7g/hであり、濾過速度が遅いことがわかった。工程(2)後の重合体の水素化進行率は98.1%であった。また工程(2)での水素化速度は38%/hであった。
[比較例3]
工程(1)の処理を行わなかったこと、工程(2)におけるオートクレーブの反応温度を210℃から200℃としたこと、触媒として比較例2で使用した触媒を回収して再使用したこと以外は、実施例1と同様に工程(2)の反応を行った。工程(2)での濾過速度は3.6g/hであり、触媒の繰り返し使用により濾過速度が大幅に低下した。工程(2)後の重合体の水素化進行率は91.2%であり、反応の押し切り性も低下した。また工程(2)での水素化速度は34%/hであり、反応速度は遅かった。
以上の結果を表1(表1A,1B)にまとめて示す。
表1に示すように、実施例4の工程(1)後の重合体に含まれるF量、Br量、I量を測定した結果は、いずれも1質量ppm未満であった。スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体A−1に含まれるF量、Br量、I量を測定したところ、いずれも1質量ppm未満であったことから、実施例1〜3、5、および6の工程(1)後の重合体に含まれるF量、Br量、I量は、いずれも1質量ppm未満であると推測される。
Figure 2017206687
上記の実施例1,2と比較例1〜3との対比より、工程(1)で塩基性物質を除去することにより、工程(2)の核水素化する工程での水素化速度の低下を抑制し、その後の触媒分離における濾過工程においても、濾過速度の低下を抑制することができ、さらに、一度使用した触媒を再使用する際にも、核水素化速度及び触媒の濾過性の低下を抑制することができることが分かる。
また、実施例1のように、工程(1)で塩基性物質を除去してもハロゲン含有量の調整を行わないと反応器の腐食、劣化の問題があるが、実施例3〜5のように、工程(a)でハロゲンを除去してその含有量を調整することにより、反応器の腐食、劣化を抑制できる。
実施例6は触媒や助剤を用いずに窒素ガス雰囲気で工程(a)を行ったものであり、実施例1〜5のようにハロゲン含有量の調整において触媒や助剤を用いる方法よりも廃棄物量を低減することができる。

Claims (7)

  1. 下記工程(1)及び(2)を有するものである、水素化重合体の製造方法。
    (1)ビニル芳香族重合体成分を含む重合体溶液から塩基性物質を除去する工程。
    (2)工程(1)後、該ビニル芳香族重合体成分を含む重合体を核水素化する工程。
  2. 更に、上記工程(2)の前に、下記工程(a)を有するものである、請求項1に記載の水素化重合体の製造方法。
    (a)ビニル芳香族重合体成分を含む重合体のハロゲン含有量を、1質量ppm以上、350質量ppm以下に調整する工程。
  3. 前記工程(a)を触媒共存下で行うものである、請求項2に記載の水素化重合体の製造方法。
  4. 前記工程(a)を塩基性物質共存下で行うものである、請求項2又は3に記載の水素化重合体の製造方法。
  5. 前記ビニル芳香族重合体成分を含む重合体が、共重合体である、請求項1〜4の何れか1項に記載の水素化重合体の製造方法。
  6. 前記共重合体が、スチレン−イソブチレン系共重合体である、請求項5に記載の水素化重合体の製造方法。
  7. 前記ハロゲンが、塩素である、請求項2〜6の何れか一項に記載の水素化重合体の製造方法。
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