JP2017203014A - アスパラギン酸残基を含むペプチドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、アスパラギン酸残基を含むペプチドを製造するための方法であって、アスパルチミドやアスパルチミド類縁体の生成を顕著に低減することが可能であり、高純度の目的ペプチドを簡便に製造できる方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明に係るアスパラギン酸残基を含むペプチドの製造方法は、中間体ペプチドのN末端または担体のアミノ基と、特定のアスパラギン酸誘導体とを反応させることにより、アスパラギン酸残基を導入する工程、および、導入された上記アスパラギン酸残基の9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基保護アミノ基を、特定の添加剤と塩基とを含む塩基性条件により脱保護してアミノ基へと変換する工程を含むことを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、アスパラギン酸残基を含むペプチドを製造するための方法であって、アスパラギン酸残基に由来する特有の副生物の生成を抑制することにより、高純度の目的ペプチドを簡便に製造できる方法に関するものである。
ペプチド合成法は固相法と液相法に大別される。固相法では、担体などにアミノ酸またはペプチドを固定化し、ペプチド鎖を一つずつ伸張していくのが一般的である。液相法では、2以上のアミノ酸残基からなるペプチドフラグメントを結合させることもあるが、特にペプチドフラグメントを調製する際には、やはりペプチド鎖を一つずつ伸張することが行われる。
ペプチド合成では、ペプチド鎖を伸張していくに当たり多岐にわたる副反応の存在が知られており、かかる副反応はいずれの方法でも大きな問題になり得る。例えば、副反応により生じる副生成物の物理的性質が目的ペプチドと似ていることにより、最終的に目的ペプチドから分離することができず、目的ペプチドの純度を貶めることがある。
そのような副反応としては、アスパラギン酸の側鎖カルボキシ基が、ペプチド結合を形成する隣接アミノ酸残基のα−アミノ基と反応して環構造を形成するアスパルチミド化が挙げられる(非特許文献1)。
Figure 2017203014
非特許文献1によれば、アスパルチミド化により生じるアスパルチミドは、さらに求核性化合物の攻撃を受けて開環し、アスパルチミド類縁体という新たな副生物が生成する。求核性化合物としては、溶媒に含まれる水や、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(以下、「Fmoc基」と略記する場合がある)により保護されたα−アミノ基の脱保護に用いられるピペリジンなどが挙げられる。また、アスパルチミド環において、アスパラギン酸のα−カルボキシ基と隣接アミノ酸残基のα−アミノ基との間のペプチド結合が加水分解されれば、ペプチド結合がβ−異性化することになる(特許文献1)。その結果、アスパラギン酸残基を含むペプチドには、合成ペプチドに含まれる不純物として一般的なアミノ酸欠損体だけでなく、アスパルチミドやアスパルチミド類縁体も混入することになる。
ペプチド合成では、目的ペプチドは最終的にHPLCにより精製されることが一般的である。しかしながら、アスパルチミドやアスパルチミド類縁体の中には、目的ペプチドに類似した構造や性質を有するために目的ペプチドからの分離が極めて難しいものがある。
また、ペプチド構造以外の構造を有するペプチドの製造においても同様に、アスパルチミド化の抑制が必要である。例えばリポペプチドの製造では、目的化合物であるリポペプチドだけでなく、アスパルチミド類縁体やその他の副生物も、脂質部位の影響を受けて高い疎水性を示す。これらは一般的な逆相HPLCではシャープなピークを示さず、且つ低極性領域の類似した保持時間に溶出するため、通常のペプチドに比べてHPLC精製による高純度化が難しい。
そこで、精製以前に、反応条件を工夫することによりペプチド合成においてアスパルチミドやアスパルチミド類縁体の形成を抑制するための技術が開発されている。
例えば特許文献1には、アスパラギン酸残基を含むペプチドであるテヅグルチドを合成するにあたり、アミノ酸残基を1つずつ付加していくのではなく2つのペプチドフラグメントを結合することにより、アスパルチミドの形成を抑制する方法が開示されている。しかし、特許文献1の実施例によれば、各フラグメントとも数十%ものアスパルチミド類縁体を含んでおり、目的ペプチドであるテヅグルチドにも17%ものアスパルチミド類縁体が含まれている。特許文献1では当該方法により「β−Asp類似体のレベルが顕著に低下した」とされているが、この程度の効果はまったく十分ではない。
アスパルチミドやアスパルチミド類縁体の生成を抑制するためのその他の技術として、非特許文献2には、アスパラギン酸残基のC側のペプチド結合に含まれるα−アミノ基を、N−(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンジル)基(Hmb基)で保護する方法が記載されている。また、特許文献2には、ペプチド合成におけるアスパラギン酸残基の側鎖カルボキシ基の保護基は一般的にはt−ブチル基(OBut基)であるのに対して、4−(n−プロピル)ヘプタ−4−イル基(OPhp基)や3−エチルペンタ−3−イル基(Epe基)など嵩高い保護基で保護する方法が開示されている。さらに非特許文献3には、Fmoc基の除去を塩基と有機酸の存在下で行う方法が記載されている。
国際公開第2012/028602号パンフレット 欧州特許出願公開第2886531号明細書
Ramon Subiros−Funosasら,Tetrahedron,67(2011),8595−8606 Martin Quibellら,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1994,2343−2344 Tillmann Michelsら,Org.Lett.,Vol.14,No.20,2012,5218−5221
上述したように、アスパラギン酸残基を含むペプチドの製造においてアスパルチミドやアスパルチミド類縁体の形成の抑制を目的とした技術は開発されているが、その効果は十分なものではなかった。例えば、特許文献1に記載の実施例では目的化合物に17%ものアスパルチミドが混入していることが示されているし、特許文献2に記載の実施例では、いずれも数%のアスパルチミドが目的ペプチドに混入している。また、非特許文献3に記載の実験データでも約10%以上のアスパルチミドが生成物に混入している。
アスパルチミドやアスパルチミド類縁体の中には、目的ペプチドに類似した構造や性質を有し、少しでも生成すると目的ペプチドから分離することが難しいものがあり、この傾向は疎水性が比較的高いリポペプチドで一層顕著である。よって、これら副生物の生成はさらに抑制する必要がある。
なお、非特許文献2に記載の方法は、アミノ酸のα−アミノ基を嵩高い保護基で保護しなければならず、かかるアミノ酸のカップリング反応の収率は低いため、実際のペプチド合成、特に工業的なペプチド合成には適用し難い。
そこで本発明は、アスパラギン酸残基を含むペプチドを製造するための方法であって、アスパルチミドやアスパルチミド類縁体の生成を顕著に低減することが可能であり、高純度の目的ペプチドを簡便に製造できる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アスパラギン酸残基を含むペプチドを製造するに当たってアスパルチミドおよびアスパルチミド類縁体の生成を顕著に抑制できる条件を見出して、本発明を完成した。
以下、本発明を示す。
[1] アスパラギン酸残基を含むペプチドを製造するための方法であって、
中間体ペプチドのN末端または担体のアミノ基と、下記式(I)で表されるアスパラギン酸誘導体とを反応させることにより、アスパラギン酸残基を導入する工程、
Figure 2017203014
[式中、R1はメチル基を示し、R2およびR3は、独立して、C2-6アルキル基またはC6-10アリール−C1-6アルキル基を示し、R2およびR3がC2-6アルキル基を示す場合、互いに結合して環状アルキル基を形成していてもよく、Fmocは9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基を示す]
および、
導入された上記アスパラギン酸残基の9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基保護アミノ基を、カルボン酸、スルホン酸、フェノール類および酸性アルコール類からなる群より選択される1以上の添加剤と、塩基とを含む塩基性条件により脱保護してアミノ基へと変換する工程を含むことを特徴とする方法。
[2] 最初のアスパラギン酸残基の導入以降、アミノ酸を導入するための試薬としてそのα−アミノ基が9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基で保護されたアミノ酸導入試薬を用い、且つ、導入された当該アミノ酸残基のα−アミノ基を、カルボン酸、スルホン酸、フェノール類および酸性アルコール類からなる群より選択される1以上の添加剤と、塩基とを含む塩基性条件により脱保護する上記[1]に記載の方法。
[3] 上記添加剤がカルボン酸および/または酸性アルコールである上記[1]または[2]に記載の方法。
[4] 上記添加剤がカルボン酸である上記[3]に記載の方法。
[5] 上記添加剤が蟻酸である上記[4]に記載の方法。
[6] 上記ペプチドの配列中に、Asp−Gly、Asp−Asp、Asp−Asn、Asp−ArgおよびAsp−Cysからなる群から選択される1以上の配列が含まれる上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7] 上記ペプチドの配列中に、Ala−Thr−Pro−Glu−Asp−Asn−Gly−Arg−Ser−Phe−Serの配列が含まれる上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の方法。
[8] 上記ペプチドがリポペプチドまたはグリコペプチドである上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9] 上記ペプチドが、Cys−Ala−Thr−Pro−Glu−Asp−Asn−Gly−Arg−Ser−Phe−Serの配列を有し、且つ、Cysの側鎖チオール基に(2R)−2,3−ビス(パルミトイルオキシ)プロピル基が置換しているリポペプチドである上記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の方法。
本発明において「C1-6アルキル基」は、炭素数1以上、6以下の直鎖状または分枝鎖状の一価飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等である。好ましくはC1-4アルキル基であり、より好ましくはC1-2アルキル基であり、最も好ましくはメチルである。
また、「C2-6アルキル基」とは、上記C1-6アルキル基の中で炭素数が2以上、6以下のものをいい、好ましくはC2-5アルキル基であり、より好ましくはC2-4アルキル基である。
2およびR3がC2-6アルキル基を示し、且つ互いに結合して環状アルキル基を形成する場合、かかる環状アルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチル等を挙げることができる。
「C6-10アリール基」とは、炭素数が6以上、10以下の一価芳香族炭化水素基をいう。例えば、フェニル、インデニル、ナフチル等であり、好ましくはフェニルまたはナフチルであり、より好ましくはフェニルである。
本発明方法によれば、アスパラギン酸残基に由来する副生物であり、目的ペプチドと構造や性質が近く目的ペプチドから分離し難いアスパルチミドおよびアスパルチミド類縁体の生成を顕著に抑制することができる。その結果、精製における負荷が低減され、純度の高い目的ペプチドを製造することが可能になる。また、本発明方法は、アスパラギン酸残基を導入するためのアスパラギン酸導入試薬として、その側鎖カルボキシ基を特定の基で保護されたものを用い、且つ、α−アミノ基の保護基であるFmoc基の開裂除去のために特定の試薬を作用させる以外、従来のペプチド合成法をそのまま適用できるため、非常に簡便である。よって本発明は、高純度のペプチドを簡便に製造できる技術として産業上極めて有用である。
図1は、従来方法で製造された粗ペプチドのマススペクトルチャートである。 図2は、従来方法で製造された粗リポペプチドのマススペクトルチャートである。 図3は、従来方法で製造された粗リポペプチドからHPLCにより精製されたリポペプチドのHPLCチャートである。 図4は、従来方法で製造された粗リポペプチドからHPLCにより精製されたリポペプチドのマススペクトルチャートである。 図5は、本発明方法で製造された粗ペプチドのマススペクトルチャートである。 図6は、本発明方法で製造された粗リポペプチドのマススペクトルチャートである。 図7は、本発明方法で製造された粗リポペプチドからHPLCにより精製されたリポペプチドのマススペクトルチャートである。 図8は、本発明方法で製造された粗リポペプチドからHPLCにより精製されたリポペプチドのマススペクトルチャートである。
本発明方法では、アスパラギン酸残基を導入するまでは、通常のペプチド合成法を適用することができる。以下、先ず、一般的なペプチド合成法をカップリング反応と末端α−アミノ基の脱保護反応とに分けて説明する。
1.一般的なカップリング反応工程
本工程では、アスパラギン酸残基を導入するまで、中間体ペプチドのN末端または担体と、アスパラギン酸以外のアミノ酸の誘導体とを反応させることにより、アスパラギン酸以外のアミノ酸残基を導入する。中間体ペプチドとしては、そのC末端が担体に固定化された固相合成用中間体ペプチドと、そのC末端が保護された液相合成用中間体ペプチドを挙げることができる。但し、製造目的ペプチドのC末端残基がアスパラギン酸残である場合には、本工程1と次工程2は実施せず、後記の工程3から実施することが好ましい。
固相合成用中間体ペプチドの担体は、一般的なペプチド合成で用いられる担体であればよい。本発明で用い得る固相合成用担体としては、例えば、Rink amide resin、Rink Amide AM resin、Rink amide PEGA resin、Rink amide MBHA resin、Rink amide AM resin、Rink Amide NovaGel、NovaSyn TGR resin、NovaSyn TGA resin、TentaGel resin、Wang resin、HMPA−PEGA resin、HMP−NovaGel、HMPA−NovaGel、2−Chlorotrityl resin、NovaSyn TGT alcohol resin、HMPB−AM、Sieber Amide resin、NovaSyn TG Sieber resin、4−{4−Formyl−3−methoxyphenoxy}butyryl AM resin、4−Sulfamylbutyryl AM resin、4−Sulfamylbutyryl AM PEGA、4−Fmoc−hydrozinobenzoyl AM resin、HMBA−AM resin、HMBA−NovaGel、DHPなどを挙げることができる。
固相合成用担体は、一般的に、アミノ基やヒドロキシ基など、固相合成の起点となる反応性官能基を表面に有している。C末端アミノ酸と担体とを結合させる場合には、C末端アミノ酸のカルボキシ基または担体表面官能基を活性化したり、カップリング試薬を用いるなど、常法を適用すればよい。また、担体表面の官能基に、C末端アミノ酸を結合させるためのリンカー基を結合させてもよい。さらに、担体としては、目的ペプチドのC末端アミノ酸やC末端側ペプチドがもともと結合しているものを用いてもよい。
本発明で用い得る液相合成用中間体ペプチドのC末端保護基は、一般的な液相合成で用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、C1-6アルキルエステル基、C3-10シクロアルキルエステル基、C6-13アリール−C1-6アルキルエステル基、アミド基、ヒドラジド基を挙げることができる。各基は、置換基を有していてもよい。C1-6アルキルエステル基やC3-10シクロアルキルエステル基の置換基としては、ハロゲノ基、ベンゾイル基、ピリジニル基などのヘテロアリール基を挙げることができる。C6-13アリール基の置換基としては、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲノ基、ニトロ基からなる群より選択される1以上の置換基を挙げることができる。アミド基やヒドラジド基の置換基としては、C1-6アルキル基、C6-13アリール基、C6-13アリール−C1-6アルキル基などを挙げることができる。アミド基とヒドラジド基が2つのC1-6アルキル基で置換されている場合、それらが互いに結合し、置換されている窒素原子と共にピロリジニル基やピペリジニル基などの含窒素ヘテロシクリル基が形成されていてもよい。
具体的には、C1-6アルキルエステル基としては、メチルエステル、エチルエステル、t−ブチルエステル、トリクロロエチルエステル、フェナシルエステル、4−ピコリルエステルなどを挙げることができる。C3-10シクロアルキルエステル基としては、シクロヘキシルエステルやアダマンチルエステルなどを挙げることができる。C6-13アリール−C1-6アルキルエステル基としては、ベンジルエステル、p−ニトロベンジルエステル、p−メトキシベンチジエステル、ジフェニルメチルエステル、9−フルオレニルメチルエステルなどを挙げることができる。アミド基としては、無置換アミド(−(C=O)−NH2);N−メチルアミド、N−エチルアミド、N−ベンジルアミドなどの1級アミド基;N,N−ジメチルアミド、ピロリジニルアミドおよびピペリジニルアミドなどの2級アミド基を挙げることができる。ヒドラジド基としては、無置換ヒドラジド(−(C=O)−NHNH2);N−フェニルヒドラジド、N,N’−ジイソプロピルヒドラジドなどの置換ヒドラジドを挙げることができる。
本発明方法で製造される目的ペプチドを構成するアミノ酸は、アスパラギン酸の他、アミノ基(−NH2)とカルボキシ基(−COOH)をそれぞれ1個以上有する化合物であるアミノ酸であれば、天然型および非天然型のいずれでもよい。本発明において前記アミノ酸は特に限定されるものではないが、好ましくは、例えば、グリシン、アラニン、3,3,3−トリフルオロアラニン、2−アミノブタン酸、2−アミノ−2−メチルブタン酸、ノルバリン、5,5,5−トリフルオロノルバリン、バリン、2−アミノ−4−ペンテン酸、2−アミノ−2−メチルペンテン酸、プロパルギルグリシン、2−アミノ−シクロペンタンカルボン酸、ノルロイシン、ロイシン、イソロイシン、tert−ロイシン、2−アミノ−4−フルオロ−4−メチルペンタン酸、4−アミノシクロヘキサンカルボン酸、セリン、O−メチルセリン、O−アリルセリン、トレオニン、ホモセリン、システイン、2−メチルシステイン、メチオニン、ペニシラミン、アスパラギン酸、アスパラギン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン酸、グルタミン、2−アミノアジピン酸、オルニチン、チロシン、トリプトファン、リジン、(1R,2S)−1−アミノ−2−ビニル−シクロプロパン酸、(1R,2S)−1−アミノ−2−エチル−シクロプロパン酸、サルコシン、フェニルアラニン、N−メチルアラニン、N,N−ジメチルアラニンなどのα−アミノ酸;アジリジンカルボン酸、アゼチジンカルボン酸、プロリン、1−メチルプロリン、2−メチルプロリン、2−エチルプロリン、3−メチルプロリン、4−メチルプロリン、5−メチルプロリン、4−メチレンプロリン、4−ヒドロキシプロリン、4−フルオロプロリン、ピペコリン酸、ニペコチン酸、イソニペコチン酸などの環状アミノ酸;β−アラニン、イソセリン、3−アミノブタン酸、3−アミノペンタン酸、β−ロイシンなどのβ−アミノ酸;4−アミノブタン酸、4−アミノ−3−メチルプロピオン酸、4−アミノ−3−プロピルブタン酸、4−アミノ−3−イソプロピルブタン酸、4−アミノ−2−ヒドロキシブタン酸などのγ−アミノ酸が挙げられる。好ましいアミノ酸は、天然アミノ酸およびα−アミノ酸であり、より好ましくは天然α−アミノ酸である、本発明において、アミノ酸1分子におけるアミノ基およびカルボキシル基の数は特に限定されるものではなく、例えば、1つでもよく、複数でもよい。またアミノ酸1分子あたりのアミノ基とカルボキシル基の数は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
担体にC末端アミノ酸を導入するためや、中間体ペプチド鎖の伸張のために用いられるアミノ酸導入試薬のα−アミノ基と側鎖反応性官能基は保護しておくことが好ましい。
アミノ酸導入試薬において、カップリング反応に必要なアミノ基およびカルボキシ基以外の側鎖反応性官能基としては、アミノ基、カルボキシ基、水酸基、グアニジノ基およびメルカプト基を挙げることができる。これら側鎖反応性官能基は、公知の保護基で保護することができる。保護基は保護すべき側鎖反応性官能基に応じて適宜選択することができ、特に限定されるものではないが、例えば、アミノ基の保護基としてトルエンスルホニル基(Ts基)、tert−ブトキシカルボニル基(Boc基)、N−(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンジル)基(Hmb基)、ビス(4−メトキシフェニル)メチル基(Dmb基)、ベンジロキシカルボニル基、ベンジルオキシメチル基(Bom基)、4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデンエイル基(Dde基)、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシ−1−イリデン)−3−メチルブチル基(ivDde基)を;カルボキシ基の保護基としてtert−ブチル基(But基)、O−3−メチル−ペント−3−イル基(Mpe基)を;水酸基の保護基としてtert−ブチル基(But基)を;グアニジノ基の保護基として2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル基(Pmc基)、2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル基(Pbf基)を;メルカプト基の保護基としてトリチル基(Trt基)、tert−ブチル基(But基)、N−(アセチル)アミノメチル基(Acm基)、トリメチルアセトアミドメチル基(Tacm基)、モノメトキシトリチル基(Mmt基)、4−メチルトリチル基(Mtt基)を挙げることができる。
アミノ酸導入試薬のα−アミノ基も、保護しておくことが好ましい。α−アミノ基用の保護基としては、ラセミ化抑制の観点から、Boc基やFmoc基など、ウレタン型の保護基が好ましい。
カップリング反応は溶媒中で行うことが好ましい。反応溶媒としては、反応に悪影響を与えない限り特に制限は無く、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒;塩化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素系溶媒;メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド;水などを用いることができる。反応溶媒は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。2種類以上の溶媒を用いる場合の混合する割合については、特に制限は無い。反応溶媒としては、反応収率の点から、好ましくはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよび/またはジメチルスルホキシドを用いる。
溶媒の使用量は適宜調整すればよいが、例えば、カップリング反応に付す担体や中間ペプチドに対して0.1質量倍以上、50質量倍以下とすることができる。
担体または中間体ペプチドとカップリング反応させるアミノ酸導入試薬の使用量は、適宜調整すればよいが、例えば、担体上の反応性官能基または中間体ペプチド1モルに対して1倍モル量以上、50倍モル量以下とすることができ、好ましくは1倍モル量以上、10倍モル量以下とする。
担体または中間体ペプチドとアミノ酸導入試薬をカップリング反応させるに当たっては、アミノ酸導入試薬のカルボキシ基を活性エステル化したり、カップリング試薬を用いることが好ましい。カップリング試薬としては、例えば、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)などのトリアゾール類;O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HBTU)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HCTU)、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムヘキサフルオロボラート(TSTU)、(1−シアノ−2−エトキシ−2−オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU)、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(PyBOP)などのフルオロリン酸塩類;1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などのカルボジイミド類;プロパンホスホン酸無水物(T3P)などを挙げることができる。
また、反応収率の向上を目的として、塩基を加えてもよい。塩基としては、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリンなどを用いることができる。
反応条件も適宜調整すればよい、例えば、反応温度は、使用する溶媒の凝固点と沸点の間であればよいが、好ましくは−20℃以上、120℃以下であり、さらに好ましくは0℃以上、30℃以下である。反応時間としては、例えば、好ましくは5秒以上、3時間以下とすることができ、30秒以上、1時間以下が好ましい。
カップリング反応は、導入すべきアミノ酸が担体または中間体ペプチドに十分に導入されるまで2回以上繰り返すことが好ましい。例えば、2回以上、10回以下、好ましくは5回以下、繰り返すことができる。
反応終了後は、通常の後処理を行うことが好ましい。例えば、固相法を用いる場合には、担体を濾別可能な孔径を有するフィルターを用いて反応液を濾過し、濾別された担体を溶媒により十分に洗浄することにより、過剰に用いたアミノ酸導入試薬やカップリング試薬などを除去することができる。
洗浄に用いる溶媒は、カップリング反応に用いた溶媒と同一であっても異なっていてもよい。また、洗浄に用いる溶媒の用量や洗浄回数は、アミノ酸導入試薬などを十分に除去可能なように適宜調整すればよいが、例えば、カップリング反応に用いた溶媒と同程度の量の溶媒を用いることができ、また、洗浄回数としては2回以上、10回以下程度とすることができる。洗浄を2回以上繰り返す場合、使用する溶媒は同一のものとしてもよいし、異なったものとしてもよい。
洗浄後は、担体を乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、加熱乾燥や減圧乾燥、およびこれらの組み合わせとすることができる。
液相法を用いる場合には、反応終了後の反応液に水、酸性水溶液または塩基性水溶液を加えて反応を停止させた後に抽出操作を行うことが好ましい。
反応停止のために用いる酸性水溶液としては、一般的な酸性の化合物を含有する水溶液であれば特に制限されることなく用いることができる。酸性の化合物としては特に限定されず、アルカリ金属の硫酸水素塩、リン酸二水素塩等の無機酸性塩、塩酸や硫酸等の鉱酸類、クエン酸などの有機酸類を用いることができる。なかでも、硫酸水素カリウムやリン酸二水素カリウムなどの酸性塩が好ましい。
反応停止のために用いる塩基性水溶液としては、一般的な塩基性の化合物を含有する水溶液であれば特に制限されることなく用いることができる。塩基性の化合物としては特に限定されず、例えば、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液などの塩基性水溶液などを挙げることができる。
抽出に使用する溶媒は特に制限されず、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の脂肪酸エステル系溶媒;N,N−ジ−n−プロピルホルムアミド、N,N−ジブチルホルムアミド(DBF)等の水と混和しない非プロトン性極性溶媒等を挙げることができる。これらの溶媒は、単一で使用してもよく、または2種以上を混合して使用してもよい。2種以上を混合して用いる場合、混合比に特に制限はない。
取得した抽出液は水、酸性水溶液または塩基性水溶液を用いて洗浄してもよい。酸性水溶液や塩基性水溶液は、上記で挙げたものを用いることができる。なお、抽出液を洗浄にあたっては、有機層と水層の2層に分離しやすくするために、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム等の無機塩を添加するなど、一般的な抽出操作で行われる処理を施してもよい。
洗浄後の抽出液は、必要に応じて中和してもよいし、さらに飽和食塩水で洗浄してもよい。また、抽出液は無水硫酸マグネシウムや無水酸ナトリウムで乾燥してもよい。
このようにして得られた抽出液から、減圧加熱などの操作により反応溶媒および抽出溶媒を留去して取得できる残渣はそのまま次工程に用いてもよく、或いは、造塩晶析やカラムクロマトグラフィー等の一般的な精製手法により、さらに純度を高めてもよい。
次に、一般的なペプチド合成における末端α−アミノ基の脱保護反応を説明する。
2.末端α−アミノ基の一般的脱保護反応工程
担体または中間体ペプチドにカップリングさせたアミノ酸のN末端アミノ酸のα−アミノ基は、一般的には保護基で保護されている。当該α−アミノ酸を脱保護することにより、さらにアミノ酸残基のカップリングが可能になる。本工程では、当該α−アミノ基を脱保護する。
末端α−アミノ基の脱保護は、当業者であれば保護基の種類に応じ公知方法により実施することが可能である。例えばFmoc基の場合、溶媒中、中間体ペプチドに塩基を作用させればよい。
本工程で用いる溶媒は、脱保護反応に悪影響を与えない限り特に制限は無く、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒;塩化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素系溶媒;メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド;水を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。2種類以上の溶媒を用いる場合の混合する割合については、特に限定は無い。反応収率の点から、好ましくはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよび/またはジメチルスルホキシドである。溶媒の使用量としては、例えば、中間体ペプチド1質量倍に対して0.1質量倍以上、50質量倍以下用いてもよい。
例えばFmoc基を開裂除去するための塩基としては、ピペリジン、ピペラジン、フッ化テトラブチルアンモニウム、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モルホリン、トリス(2−アミノエチル)アミン、p−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピル1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、フッ化カリウム、塩化アルミニウムなどを挙げることができる。塩基の使用量としては、例えば、中間体ペプチド1倍モルに対して、1倍モル以上、1000倍モル以下、好ましくは1倍モル以上、100倍モル以下とすることができる。
例えばFmoc基の開裂除去のための反応条件は適宜調整すればよい。例えば、反応温度は、用いる溶媒の凝固点と沸点の間であればよく、好ましくは−20℃以上、120℃以下であり、さらに好ましくは20℃以上、100℃以下である。反応時間は、好ましくは5秒以上、3時間以下であり、さらに好ましくは10秒以上、1時間以下である。
Fmoc基を開裂除去するために添加剤を用いてもよい。添加剤としては、例えば、1−オクタンチオールが挙げられる。
脱保護反応後は、上記カップリング反応後の処理と同様に、中間体ペプチドの濾別と洗浄により脱保護試薬などを除去して中間体ペプチドを精製することが好ましい。
上記の脱保護反応と後処理は、N末端側α−アミノ基を完全に脱保護できるまで2回以上繰り返すことが好ましい。例えば、2回以上、10回以下、好ましくは5回以下、繰り返すことができる。
本発明方法では、担体または中間体ペプチドへ最初にアスパラギン酸残基を導入するまでは、必要に応じて上記カップリング反応工程1と末端α−アミノ基の脱保護反応工程2を繰り返すことによりペプチド鎖を伸張し、中間体ペプチドを合成する。
3.担体または中間体ペプチドとアスパラギン酸導入試薬とのカップリング反応工程
本発明では、上記で製造される中間体ペプチドのN末端アミノ基、または担体のアミノ基と、アスパラギン酸誘導体(I)のα−カルボキシ基とを反応させることにより、アスパラギン酸残基を導入する。
従来のペプチド合成法では、アスパラギン酸を導入する際、その側鎖カルボキシ基と、アスパラギン酸のα−カルボキシ基と隣接するアミノ酸または担体との間で形成されるペプチド結合中の窒素原子上の孤立電子対が反応し、アスパルチミドが副生する傾向がある。本発明では、後記の特徴的な脱保護反応と共に、アスパラギン酸を導入するための試薬としてα−アミノ酸保護基がFmoc基で保護されており且つ側鎖カルボキシ基が特定の保護基で保護されているアスパラギン酸誘導体(I)を用いることにより、アスパルチミドおよびその類縁体の副生を顕著に抑制している。
但し、本発明においては、アスパルチミドやアスパルチミド類縁体の生成を顕著に抑制可能である限り、アスパラギン酸残基の導入ごとにアスパラギン酸誘導体(I)を用いる必要は必ずしもない。例えば、アスパルチミドまたはアスパルチミド類縁体が生成し易い位置でのみアスパラギン酸誘導体(I)を用い、他の位置では、上記工程1に従って、アスパラギン酸誘導体(I)以外のアスパラギン酸導入試薬を用いてもよい。
本工程は、アミノ酸導入試薬としてアスパラギン酸誘導体(I)を用いること以外、上記カップリング工程1と同様に実施することができる。
4.導入アスパラギン酸残基のα−アミノ基の脱保護反応工程
本工程では、上記の担体または中間体ペプチドとアスパラギン酸誘導体(I)とのカップリング反応工程3で導入したアスパラギン酸残基のα−アミノ基を脱保護する。但し、かかる脱保護に際しては、通常のFmoc基開裂反応条件である塩基を含む塩基性条件に加え、カルボン酸、スルホン酸、フェノール類および酸性アルコール類からなる群より選択される1以上の添加剤を併用することが好ましい。本発明方法では、アスパラギン酸導入試薬としてアスパラギン酸誘導体(I)を用いることに加え、そのFmoc基を特別な条件で開裂除去することにより、目的ペプチドへのアスパルチミドおよびその類縁体の混入を顕著に抑制することが可能になる。
上記カルボン酸は特に限定されるものではないが、好ましくは、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、フルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、クロロ酢酸などを挙げることができ、蟻酸が好ましい。
上記スルホン酸は特に限定されるものではないが、好ましくは、例えば、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、タウリンなどが挙げられる。
上記フェノール類は特に限定されるものではないが、好ましくは、例えば、フェノール、4−ニトロフェノール、3−ニトロフェノール、2−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノールなどが挙げられる。
上記酸性アルコール類は特に限定されるものではないが、好ましくは、例えば、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(HFIP)、2,2,2−トリフルオロエタノール、アスコルビン酸などが挙げられる。
上記添加剤の使用量は、アスパルチミドおよびその類縁体の生成が抑制される範囲で適宜調整すればよく、特に制限されないが、例えば、脱保護反応に使用される反応液1質量倍に対して、0.001質量倍以上、0.5質量倍以下とすることができ、好ましくは0.01質量倍以上、0.1質量倍以下である。
その他の脱保護反応条件や後処理条件は、上記の末端α−アミノ基の脱保護反応工程2と同様のものとすればよい。
5.ペプチド鎖の伸張工程
担体または中間体ペプチドへのアスパラギン酸残基の最初の導入以降は、アスパラギン酸のみならずそれ以外のアミノ酸残基を導入する際においても、アミノ酸導入試薬としてそのα−アミノ基がFmoc基により保護されたものを用い、且つ、当該α−アミノ基を上記脱保護反応工程4の条件、即ち、1以上の添加剤と、塩基を含む塩基性条件により脱保護することが好ましい。それにより、アスパルチミドおよびその類縁体の生成をより一層顕著に抑制することが可能になる。
6.その他の反応工程
本発明において「ペプチド」とは、2以上のアミノ酸がペプチド結合により結合した構造を有するものであり、当該ペプチド構造を有するものである限り、その他の構造を有するものも含まれる。ペプチド構造以外の構造を有するペプチドとしては、特に制限されないが、例えば、長鎖ヒドロカルビル基などの脂質部分を有するリポペプチドや、糖が結合したグリコペプチドを挙げることができる。
リポペプチドに含まれる脂質としては、例えば、1個以上の長鎖ヒドロカルビルを挙げることができる。長鎖ヒドロカルビル基とは、炭素原子が少なくとも5個の直鎖アルキル基またはアルケニル基をいい、例えば、C8-50アルキル基またはC8-50アルケニル基を挙げることができ、好ましくはC8-25アルキル基またはC8-25アルケニル基である。アルケニル基は、天然の脂肪酸および脂肪族アルコールにおいて通常見られるように、炭化水素鎖の中に各々がEまたはZの幾何学的配置を有する好ましくは1,2または3個の二重結合を有する。長鎖ヒドロカルビルの定義にはさらに、分岐鎖アルキル基またはアルケニル基、例えば、2−エチルヘキシルの場合のように鎖の端から数えて2番目または3番目の炭素原子にメチル基またはエチル基を有しているアルキル基やアルケニル基も含まれる。
リポペプチドに含まれる長鎖ヒドロカルビル基の数は、1個であっても2個以上であってもよい。当該数としては、1個以上、5個以下が好ましい。
リポペプチドの脂質部分としては、例えば、2個または3個のヒドロカルビル基を含むS−グリセリルシステインや、2個または3個のヒドロカルビル基を含むリン脂質を挙げることができる。
グリコペプチドに含まれる糖は特に制限されず、単糖や、2個以上の糖がグリコシド結合した多糖であってもよい。例えば、ペントース、デオキシペントース、ヘキソース、デオキシヘキトースなどの糖のクラス;グルコース、アラビノース、キシロース、リキソースなどの特定的な糖;シクロペンチル基などの糖類似体;およびこれらが2個以上重合したものを挙げることができる。糖はピラノシル形態またはフラノシル形態でありうる。
ペプチドがペプチド構造以外の構造を有する場合、当該構造はペプチド構造に直接結合していてもよいし、リンカー基を介して結合していてもよい。当該リンカー基としては、特に制限されるものではないが、例えば、C1-6アルキレン基、アミノ基(−NH−)、イミノ基(>C=N−または−N=C<)、エーテル基(−O−)、チオエーテル基(−S−)、カルボニル基(−C(=O)−)、チオニル基(−C(=S)−)、エステル基(−C(=O)−O−または−O−C(=O)−)、アミド基(−C(=O)−NH−または−NH−C(=O)−)、スルホキシド基(−S(=O)−)、スルホニル基(−S(=O)2−)、スルホニルアミド基(−NH−S(=O)2−および−S(=O)2−NH−)、並びにこれら2以上が結合した基を挙げることができる。2以上のこれら基が結合して上記リンカー基が構成されている場合、当該結合数としては、10以下または5以下が好ましく、3以下がより好ましい。
本工程においては、必要に応じて、中間体ペプチドにペプチド以外の構造を結合させる。当業者にとり、ペプチド構造以外の構造をペプチド構造に直接結合させることも、リンカー基を介して結合させることも容易である。
ペプチド構造以外の構造を結合させた中間体ペプチドは、担体に結合しているため、上記カップリング反応工程1と同様に洗浄により精製することができる。
7.側鎖の脱保護と担体からの切り出し
以上で合成した中間体ペプチドは、公知の方法により側鎖の反応性官能基を脱保護し、担体から切断した上で洗浄により精製することで、目的のペプチドとすることができる。なお、アスパラギン酸残基の導入に伴う副生物であるアスパルチミドおよびその類縁体は、一般的に目的ペプチドと構造や性質が似ているために目的ペプチドからの分離が非常に難しいが、本発明ではアスパルチミドおよびその類縁体の生成自体が顕著に抑制されているため、本発明方法で製造される目的ペプチドの純度は極めて高いといえる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
比較例1:一般的な固相ペプチド合成によるリポペプチドの合成
(1)担体付きATPEDNGRSFSの合成
Figure 2017203014
(1−1)担体とFmocPhe−OHとのカップリング反応
FmocPhe−OH(397mg,1.03mmol)、O−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェイト(389mg,1.03mmol,以下、「HBTU」と略記する)、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(139mg,1.03mmol,以下、「HOBT」と略記する)およびジメチルホルムアミド(3mL,以下、「DMF」と略記する)からなる懸濁液に、エチルジイソプロピルアミン(0.196mL,2.05mmol)を加えて1分間超音波処理し、溶液とした。この溶液をH−Ser(tBu)−2−クロロトリチル樹脂(1.14mmol/g,300mg,0.34mmol)に加えてボルテックスミキサーを用い25℃で20分間撹拌した。反応液を濾過し、濾別された樹脂担体をDMF(3mL)で3回、ジクロロメタン(3mL)で1回洗浄した。以上のカップリング反応を合計3回実施後、Kaiser試験により反応の完結を確認した。
(1−2)アミノ基の脱保護反応
上記樹脂担体に20%ピペリジン/DMF溶液(3mL)を加え、ボルテックスミキサーを用い25℃で20分間撹拌した。反応液を濾過し、濾別された樹脂をDMF(3mL)で3回、ジクロロメタン(3mL)で1回洗浄した。以上の脱保護反応を合計4回実施することにより、Fmoc基を除去してアミノ基を脱保護した。
(1−3)ペプチド鎖の伸張
上記(1−1)のカップリング反応と上記(1−2)の脱保護反応を繰り返し、上記のとおり側鎖官能基が保護された1.0698gの担体付きATPEDNGRSFSを取得した。得られた生成物の純度を100%と仮定すると、収率はほぼ100%であった。
(1−4)粗ATPEDNGRSFSの取得
上記担体付き側鎖保護ATPEDNGRSFS(0.320mmol/mg,30mg,0.00953mmol)に、トリフルオロ酢酸/水/トリイソプロピルシラン=95/2.5/2.5(vol/vol/vol)の混合物(1mL)を加え、ボルテックスミキサーを用い25℃で2時間撹拌した。反応液を濾過し、濾別した樹脂担体をトリフルオロ酢酸(1mL,以下、「TFA」と略記する)で洗浄した。得られた濾液と洗浄液をヘキサン(5mL)で洗浄した後、TFAを減圧留去した。ここにジエチルエーテル(5mL)を加えると、白色の懸濁液となった。遠心分離後上清を除去し、沈殿をジエチルエーテル(5mL)で3回洗浄した。沈殿を減圧乾燥し、9.3mgの白色粉末として粗ATPEDNGRSFSを取得した(純度100%と仮定すると0.00788mmol,収率83%)。
(1−5)粗ATPEDNGRSFSの分析
上記(1−4)で得られた粉末をMALDI−TOF MSで分析すると、目的化合物であるATPEDNGRSFSの他に複数の副生物が検出された。副生物には、分子量から、アスパルチミドとアスパルチミド類縁体が含まれると判断された。検出されたシグナルの強度の和を100とし、各化合物の強度が占める割合を含有率(純度)として算出した。マススペクトルチャートを図1に、分析結果を表1に示す。
Figure 2017203014
上記結果のとおり、ATPEDNGRSFSの純度は62%に過ぎず、アスパルチミド(11%)とアスパルチミド類縁体(27%)が合計38%も含まれており、目的化合物と化学構造の近い不純物が多く生成してしまっていることが分かった。
(2)担体付きリポペプチドの合成
Figure 2017203014
(2−1)(R)−Pam2Cys導入反応
上記で得られた担体付き側鎖保護ATPEDNGRSFS(0.32mmol/g,200mg,0.064mmol)に、ジクロロメタン/N−メチルピロリドン=1/1(vol/vol)の混合溶媒(1.0mL)、Fmocで保護されたS−[(2R)−2,3−ビス(パルミトイルオキシ)プロピル]システイン(114mg,0.128mmol,以下、「(R)−Pam2Cys」と略記する),ヘキサフルオロリン酸 (ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(66.6mg,0.128mmol,以下、「PyBOP」と略記する)およびエチルジイソプロピルアミン(12.3μL,0.0704mmol)を順に加え、ボルテックスミキサーを用い25℃で30分間撹拌した。エチルジイソプロピルアミン(10.1μL,0.0576mmol)を加えさらに2時間撹拌した。反応液を濾過し、濾別した樹脂担体をDMF(3mL)で3回、ジクロロメタン(3mL)で1回洗浄した。Kaiser試験により、反応が完結していることを確認した。
(2−2)アミノ基の脱保護反応
上記樹脂担体に20%ピペリジン/DMF溶液(2mL)を加え、ボルテックスミキサーを用い25℃で20分間撹拌した。反応液を濾過し、濾別された樹脂担体をDMF(3mL)で3回、ジクロロメタン(3mL)で1回洗浄した。以上の脱保護反応を合計4回実施することにより、Fmoc基を除去してアミノ基を脱保護した。
(2−3)側鎖官能基の脱保護と担体の切断
上記(2−2)で得られた担体付き側鎖保護ペプチド(純度100%と仮定して0.064mmol)に、トリフルオロ酢酸/フェノール/水/メチルチオベンゼン/3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール=79/8/5/5/3(vol/vol)の混合物(4mL)を加え、ボルテックスミキサーを用い25℃で2時間撹拌した。反応液を濾過し、濾別した樹脂担体をTFA(1mL)で洗浄した。得られた濾液と洗浄液をヘキサン(10mL)で洗浄した後、TFAを減圧留去した。ここにジエチルエーテル(10mL)を加えると、白色の懸濁液となった。遠心分離後上清を除去し、沈殿をジエチルエーテル(10mL)で3回洗浄した。沈殿を減圧乾燥し、79mgの白色粉末を取得した(純度100%と仮定すると0.0431mmol,収率67%)。
(2−4)粗リポペプチドの分析
上記(2−3)で得られた粉末をMALDI−TOF MSで分析すると、目的化合物であるリポペプチドの他に複数の副生物が検出された。副生物には、分子量から、アスパルチミドとアスパルチミド類縁体が含まれると判断された。検出されたシグナルの強度の和を100とし、各化合物の強度が占める割合を含有率(純度)として算出した。マスチャートを図2に、分析結果を表2に示す。
Figure 2017203014
上記結果のとおり、目的化合物であるリポペプチドの純度は51%に過ぎず、アスパルチミド(22%)とアスパルチミド類縁体(27%)が合計49%も含まれており、目的化合物と化学構造の近い不純物が多く生成してしまっていることが分かった。
(2−5)リポペプチドの精製
上記(2−3)で得られた粗リポペプチドから、以下の条件の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により目的化合物であるリポペプチドを精製し、精製されたリポペプチドをHPLCで分析した。各HPLCの実施条件を以下に示す。
[HPLC精製条件]
カラム: YMC C4column (250×20mm)
溶離液: 0.1%TFA水溶液/0.1%アセトニトリル溶液=100/0→0/100(0〜20min)および0/100(20〜40min)
流速: 20mL/min
検出波長: 220nm
溶出時間: 26min
[精製結果の分析のためのHPLC条件]
HPLCカラム: YMC C4column (250×4.7mm)
流速: 1.0mL/min
カラム温度: 40℃
検出波長: 220nm
溶離液: 0.1%TFA水溶液/0.1%アセトニトリル溶液=100/0→0/100(0〜20min)
保持時間: 17.0min
面積比率: 100%
精製リポペプチドのHPLCチャートを図3に示す。図3のとおり、得られたピークは1つのみ(面積比率100%)であった。
(2−6)精製リポペプチドの分析
上記(2−5)で得られた精製リポペプチドをMALDI−TOF MSで分析し、上記(2−4)と同様に各化合物の含有率を算出した。マスチャートを図4に、分析結果を表3に示す。
Figure 2017203014
上記結果のとおり、アスパルチミド類縁体などの不純物はHPLCにより除去できたが、アスパルチミドは除去できず(38%)、HPLCによる精製にかかわらずリポペプチドの純度は62%までしか向上しなかった。
実施例1:本発明方法によるリポペプチドの合成
(1)担体付き側鎖官能基保護NGRSFSの合成
Figure 2017203014
(1−1)担体とFmocPhe−OHとのカップリング反応
上記比較例1と同様に、一般的な条件で担体とFmocPhe−OHとをカップリングさせた。具体的には、FmocPhe−OH(1.19g,3.08mmol)、HBTU(1.17g,3.08mmol)、HOBT(416mg,3.08mmol)およびDMF(9mL)からなる懸濁液に、エチルジイソプロピルアミン(0.589mL,6.16mmol)を加えて1分間超音波処理し、溶液とした。この溶液をH−Ser(tBu)−2−クロロトリチル樹脂(1.14mmol/g,900mg,1.03mmol)に加えてボルテックスミキサーを用い25℃で20分間撹拌した。反応液を濾過し、濾別された樹脂担体をDMF(9mL)で3回、ジクロロメタン(9mL)で1回洗浄した。以上のカップリング反応を合計3回実施後、Kaiser試験により反応の完結を確認した。
(1−2)アミノ基の脱保護反応
上記樹脂担体に20%ピペリジン/DMF溶液(9mL)を加え、ボルテックスミキサーを用い25℃で20分間撹拌した。反応液を濾過し、濾別された樹脂担体をDMF(9mL)で3回、ジクロロメタン(9mL)で1回洗浄した。以上の脱保護反応を合計4回実施することにより、Fmoc基を除去してアミノ基を脱保護した。
(1−3)ペプチド鎖の伸張
上記(1−1)のカップリング反応と上記(1−2)の脱保護反応を繰り返し、上記のとおり側鎖官能基が保護された2.25gの担体付き側鎖官能基保護NGRSFSを取得した。得られた生成物の純度を100%と仮定すると、収率はほぼ100%であった。
(2)担体付き側鎖官能基保護DNGRSFSの合成
Figure 2017203014
(2−1)側鎖カルボキシ基がMPeで保護されたDと担体付き側鎖官能基保護NGRSFSとのカップリング
Fmoc−Asp(OMpe)−OH(395.6mg,0.9mmol)とHBTU(341.4mg,0.9mmol)、HOBT(121.6mg,0.9mmol)、DMF(3mL)からなる混合物に、エチルジイソプロピルアミン(0.314mL,1.8mmol)を加えて1分間超音波処理を施し、溶液とした。これを担体付き側鎖官能基保護NGRSPS(0.459mmol/g;654mg,0.3mmol)に加え、ボルテックスミキサーを用いて25℃で30分間撹拌した。反応液を濾過し、樹脂担体をDMF(3mL)で3回、ジクロロメタン(3mL)で1回洗浄した後、減圧乾燥した。以上のカップリング操作を実施後、Kaiser試験により反応完結を確認した。
(2−2)アミノ基の脱保護反応
上記樹脂担体に1%蟻酸/19%ピペリジン/80%DMFの混合溶液(3mL)を加え、ボルテックスミキサーを用い25℃で20分間撹拌した。反応液を濾過し、濾別された樹脂担体をDMF(3mL)で3回、ジクロロメタン(3mL)で1回洗浄した。以上の脱保護反応を合計4回実施することによりFmoc基を除去して、担体付き側鎖官能基保護DNGRSFSを取得した。
(3)担体付き側鎖官能基保護ATPEDNGRSFSの合成
Figure 2017203014
(3−1)Fmoc保護アミノ酸と中間体ペプチドとのカップリング
代表例として担体付き側鎖官能基保護DNGRSFSとFmocGlu(tBu)−OHとの反応を記す。FmocGlu(tBu)−OH(383mg,0.9mmol)、HBTU(341mg,0.9mmol)、HOBT(122mg,0.9mmol)およびDMF(3mL)からなる懸濁液に、エチルジイソプロピルアミン(0.172mL,1.8mmol)を加えて1分間超音波処理し、溶液とした。この溶液を、上記(2)で得た担体付き側鎖官能基保護DNGRSFS(0.3mmol)に加え、ボルテックスミキサーを用い25℃で20分間撹拌した。反応液を濾過し、濾別された樹脂担体をDMF(3mL)で3回、ジクロロメタン(3mL)で1回洗浄した。以上のカップリング操作を合計3回実施後、Kaiser試験により反応完結を確認した。
(3−2)アミノ基の脱保護反応
上記樹脂担体に1%蟻酸/19%ピペリジン/80%DMFの混合溶液(3mL)を加え、ボルテックスミキサーを用い25℃で20分間撹拌した。反応液を濾過し、濾別された樹脂担体をDMF(3mL)で3回、ジクロロメタン(3mL)で1回洗浄した。以上の脱保護反応を合計4回実施することによりFmoc基を除去した。
(3−3)ペプチド鎖の伸張
上記(3−1)のカップリング反応と上記(3−2)の脱保護反応を繰り返し、上記のとおり側鎖官能基が保護された0.896gの担体付きATPEDNGRSFSを取得した。得られた生成物の純度を100%と仮定すると、収率はほぼ100%であり、1g当たりのモル数は0.335mmol/gであった。
(3−4)粗ATPEDNGRSFSの取得
上記(3−3)で得られた担体付き側鎖保護ATPEDNGRSFS(0.335mmol/mg,20mg,0.00670mmol)に、TFA/水/トリイソプロピルシラン=95/2.5/2.5(vol/vol/vol)の混合物(1mL)を加え、ボルテックスミキサーを用い25℃で2時間撹拌した。反応液を濾過し、濾別した樹脂担体をTFA(1mL)で洗浄した。得られた濾液と洗浄液をヘキサン(5mL)で洗浄した後、TFAを減圧留去した。ここにジエチルエーテル(5mL)を加えると、白色の懸濁液となった。遠心分離後上清を除去し、沈殿をジエチルエーテル(5mL)で3回洗浄した。沈殿を減圧乾燥し、7.0mgの白色粉末である粗ATPEDNGRSFSを取得した(純度100%と仮定すると0.00593mmol,収率88%)。
(3−5)粗ATPEDNGRSFSの分析
上記(3−4)で得られた粉末をMALDI−TOF MSで分析すると、目的化合物であるATPEDNGRSFSの他に複数の副生物が検出された。副生物には、分子量から、アスパルチミドとアスパルチミド類縁体が含まれると判断された。検出されたシグナルの強度の和を100とし、各化合物の強度が占める割合を含有率(純度)として算出した。マススペクトルチャートを図5に、分析結果を表4に示す。
Figure 2017203014
上記結果のとおり、アスパラギン酸の側鎖カルボキシ基をMPeで保護することによってアスパルチミドとアスパルチミド類縁体の生成が抑制されていることが分かった。
(4)担体付きリポペプチドの合成
Figure 2017203014
(4−1)(R)−Pam2Cys導入反応
上記で得られた担体付き側鎖保護ATPEDNGRSFS(0.335mmol/g,200mg,0.067mmol)に、ジクロロメタン/N−メチルピロリドン=1/1(vol/vol)の混合溶媒(1.0mL)、Fmocで保護された(R)−Pam2Cys(120mg,0.134mmol),PyBOP(69.7mg,0.134mmol)およびエチルジイソプロピルアミン(12.9μL,0.0737mmol)を順に加え、ボルテックスミキサーを用い25℃で30分間撹拌した。エチルジイソプロピルアミン(10.5μL,0.0603mmol)を加えさらに2時間撹拌した。反応液を濾過し、濾別した樹脂担体をDMF(3mL)で3回、ジクロロメタン(3mL)で1回洗浄した。Kaiser試験により、反応が完結していることを確認した。
(4−2)(R)−Pam2Cys中のアミノ基の脱保護反応
上記樹脂担体に1%蟻酸/19%ピペリジン/80%DMFの混合溶液(2mL)を加え、ボルテックスミキサーを用い25℃で20分間撹拌した。反応液を濾過し、濾別された樹脂をDMF(3mL)で3回、ジクロロメタン(3mL)で1回洗浄した。以上の脱保護反応を合計4回実施することにより、Fmoc基を除去してアミノ基を脱保護した。
(4−3)側鎖官能基の脱保護と担体の切断
上記(4−2)で得られた担体付き側鎖保護リポペプチド(純度100%と仮定して0.067mmol)に、トリフルオロ酢酸/フェノール/水/メチルチオベンゼン/3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール=79/8/5/5/3(vol/vol)の混合物(2mL)を加え、ボルテックスミキサーを用い25℃で4時間撹拌した。反応液を濾過し、濾別した樹脂担体をTFA(1mL)で洗浄した。得られた濾液と洗浄液をヘキサン(10mL)で洗浄した後、TFAを減圧留去した。ここにジエチルエーテル(10mL)を加えると、白色の懸濁液となった。遠心分離後上清を除去し、沈殿をジエチルエーテル(10mL)で3回洗浄した。沈殿を減圧乾燥し、79mgの白色粉末である粗リポペプチドを取得した(純度100%と仮定すると収率64%)。
(4−4)粗リポペプチドの分析
上記(4−3)で得られた粉末をMALDI−TOF MS分析すると、目的化合物であるリポペプチドの他に、システイン欠損体とパルミトイル基欠損体が確認された一方で、アスパルチミドとアスパルチミド類縁体は検出されなかった。検出されたシグナルの強度の和を100とし、各化合物の強度が占める割合を含有率(純度)として算出した。マスチャートを図6に、分析結果を表5に示す。
Figure 2017203014
上記結果のとおり、アスパラギン酸の側鎖カルボキシ基をMPeで保護することによってアスパルチミドとアスパルチミド類縁体の生成が抑制されていることが分かった。
(4−5)リポペプチドの精製
上記(4−3)で得られた粗リポペプチドから、以下の条件の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により目的化合物であるリポペプチドを精製し、精製されたリポペプチドをHPLCで分析した。各HPLCの実施条件を以下に示す。
[HPLC精製条件]
カラム: YMC C4column (250×20mm)
溶離液: 0.1%TFA水溶液/0.1%アセトニトリル溶液=100/0→70/30(0〜5min)および70/30→40/60(5〜40min)
流速: 20mL/min
検出波長: 220nm
溶出時間: 38min
[精製結果の分析のためのHPLC条件]
HPLCカラム: YMC C4column (250×4.7mm)
流速: 1.0mL/min
カラム温度: 40℃
検出波長: 220nm
溶離液: 0.1%TFA水溶液/0.1%アセトニトリル溶液=100/0→70/30(0〜5min)および70/30→40/60(5〜40min)
保持時間: 25.8min
面積比率: 100%
精製されたリポペプチドのHPLCチャートを図7に示す。図7のとおり、得られたピークは1つのみ(面積比率100%)であった。
(4−6)精製リポペプチドの分析
上記(4−5)で得られた精製リポペプチドをMALDI−TOF MSで分析し、上記(4−4)と同様に各化合物の含有率を算出した。マスチャートを図8に、分析結果を表6に示す。
Figure 2017203014
上記結果のとおり、構造の近い副生物は生成しておらず、目的化合物であるリポペプチドはHPLCによりその他の副生物から分離することが可能であり、その純度は100%と非常に高いものであった。
以上の結果のとおり、ペプチドの固相合成において、アスパラギン酸残基の導入のためのアミノ酸導入試薬として側鎖カルボキシ基がO−3−メチル−ペント−3−イル(Mpe)により保護されており且つアミノ基がFmocにより保護されたアスパラギン酸を用い、アスパラギン酸残基の導入以降、アミノ酸残基を導入するためのアミノ酸導入試薬としてはアミノ基がFmocにより保護されたものを用い、且つ当該Fmoc基を二級アミンおよび特定の添加剤を含む塩基性条件で除去することにより、アスパラギン酸残基を含むペプチドに特有な不純物であるアスパルチミドおよびその類縁体の生成を顕著に抑制できることが明らかとなった。

Claims (9)

  1. アスパラギン酸残基を含むペプチドを製造するための方法であって、
    中間体ペプチドのN末端または担体のアミノ基と、下記式(I)で表されるアスパラギン酸誘導体とを反応させることにより、アスパラギン酸残基を導入する工程、
    Figure 2017203014

    [式中、R1はメチル基を示し、R2およびR3は、独立して、C2-6アルキル基またはC6-10アリール−C1-6アルキル基を示し、R2およびR3がC2-6アルキル基を示す場合、互いに結合して環状アルキル基を形成していてもよく、Fmocは9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基を示す]
    および、
    導入された上記アスパラギン酸残基の9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基保護アミノ基を、カルボン酸、スルホン酸、フェノール類および酸性アルコール類からなる群より選択される1以上の添加剤と、塩基とを含む塩基性条件により脱保護してアミノ基へと変換する工程を含むことを特徴とする方法。
  2. 最初のアスパラギン酸残基の導入以降、アミノ酸を導入するための試薬としてそのα−アミノ基が9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基で保護されたアミノ酸導入試薬を用い、且つ、導入された当該アミノ酸残基のα−アミノ基を、カルボン酸、スルホン酸、フェノール類および酸性アルコール類からなる群より選択される1以上の添加剤と、塩基とを含む塩基性条件により脱保護する請求項1に記載の方法。
  3. 上記添加剤がカルボン酸および/または酸性アルコールである請求項1または2に記載の方法。
  4. 上記添加剤がカルボン酸である請求項3に記載の方法。
  5. 上記添加剤が蟻酸である請求項4に記載の方法。
  6. 上記ペプチドの配列中に、Asp−Gly、Asp−Asp、Asp−Asn、Asp−ArgおよびAsp−Cysからなる群から選択される1以上の配列が含まれる請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 上記ペプチドの配列中に、Ala−Thr−Pro−Glu−Asp−Asn−Gly−Arg−Ser−Phe−Serの配列が含まれる請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  8. 上記ペプチドがリポペプチドまたはグリコペプチドである請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 上記ペプチドが、Cys−Ala−Thr−Pro−Glu−Asp−Asn−Gly−Arg−Ser−Phe−Serの配列を有し、且つ、Cysの側鎖チオール基に(2R)−2,3−ビス(パルミトイルオキシ)プロピル基が置換しているリポペプチドである請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
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