JP2017202604A - 強化繊維構造物及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】芯部材と強化繊維が一体的に融合して所定にした強化繊維構造物が効率的に製造でき、曲げ加工すれば曲げ強度にも強い強化繊維構造物及びその製造方法を提供する。【解決手段】 強化繊維3の芯糸に熱融着糸がカバーリングされた強化繊維3により芯部材2が圧着、溶着又は焼成により被覆されてなる。前記強化繊維3に袋織り・袋編みで形成された袋状部分3aが設けられ、芯部材2入れられて圧着、溶着又は焼成により被覆されてなるので、熱圧着等により熱融着糸が溶融して芯部材に融合接着する。【選択図】 図1

Description

本発明は、強化繊維に金属製部材、繊維強化プラスチック部材、繊維強化セラミックス部材、又は、繊維強化ガラス部材等を圧着、溶着又は焼成して所定の厚みや所定形状に加工した強化繊維構造物及びその製造方法に関する。
カーボン繊維(炭素繊維)は軽量で、高強度で、高い弾性率を有しており、航空機構造部材、自動車用部品、スポーツ・レジャー用品のプリプレグや積層材の基材として使用されている。強化繊維(Carbon fiber)は、アクリル繊維またはピッチ(石油、石炭、コールタールなどの副生成物)を原料に高温で炭化して作った繊維である。アクリル繊維を使った強化繊維はPAN系(Polyacrylonitrile)、ピッチを使った強化繊維はピッチ系(PITCH)と区分される。強化繊維を単独の材料として利用することは少なく、合成樹脂などの母材と組み合わせた複合材料として用いることが主である。強化繊維を用いた複合材料としては強化(繊維)プラスチック、強化繊維強化炭素複合材料などがある。強化(繊維)プラスチックは、ガラス繊維やナイロン・ビニロンなどを補強材として加えて成形したプラスチック製品であり、衝撃に強く、自動車車体・ボートや飛行機の船体や建材・ヘルメット・釣具などに広く使用されている。
強化繊維の複合材料としては、例えば、特許文献1〜4等が既に開示されている。
特許文献1は、樹脂製の不燃性ないしは難燃性のハニカム芯の両面に炭素繊維強化複合材料を有するサンドイッチ板で構成された航空機座席用背もたれが開示されている。
特許文献2は、「(請求項1)鋳込み前に金型内に配置し、マトリックス金属とともに鋳造して繊維強化金属複合材料を構成する棒状または筒状のプリフォーム材であって、プリフォーム材の軸方向と一致する方向に繊維軸を引揃えた補強繊維からなる内層と、内層を被覆する補強繊維の筒状編組体または筒状製織体(以下、両者をまとめて筒状織・編物という)からなる被覆層とを、交互に複数層を重ねてなることを特徴とするプリフォーム材。」と、(請求項2)最外層が被覆層であることを特徴とする請求項1記載のプリフォーム材。」と、(請求項3)内層を構成する補強繊維は強化繊維であり、被覆層を構成する筒状織・編物は繊維の交差角が10〜45度で編成された袋編物または製織された筒状織物であることを特徴とする請求項1または2記載のプリフォーム。」が開示されている。
特許文献3は、管状金属合金とFRPプリプレグを相互に接着させ、引っ張り応力、及び、圧縮応力に対応した軽量で強固な構造体を構成するものであり(課題)、その要約書には「管状金属部品60の外周面に化学エッチングによるミクロンオーダーの粗度があり、且つその表面は電子顕微鏡観察で、高さ又は深さ及び幅が10〜500nmで長さが10nm以上の仕切り状凸部、又は溝状凹部が10〜数百nm周期で全面に存在する超微細凹凸形状を形成し、その表面が金属酸化物又は金属リン酸化物の薄層21とする。これに管状の繊維強化プラスチック材61をエポキシ系樹脂剤62により接着させ、管状複合体を形成する。」内容が記載されている。
特許文献4は、非常に大きなFRP製品に使用される長尺の斜向糸繊維織物を簡単に得ることができる実用性,生産性に秀れた技術を提供するものであり(課題)、「FRP用の繊維織物の製造方法であって、斜向糸供給部3を有するブレーダー2に軸芯方向に移動可能なマンドレル1を挿入し、この斜向糸供給部3は、マンドレル1の外周面上に該マンドレル1の軸芯に対して所定角度±θで斜向糸Sを供給するように構成され、この斜向糸供給部3から複数本の斜向糸Sを供給してマンドレル1の外周面上に筒状織物4を織成し、続いて、該筒状織物4をマンドレル1の軸芯方向に切り開いて前記複数の斜向糸Sが配設された長尺の斜向糸繊維織物5を製造する」内容が記載されている。
実公平2−12912号公報 特開平9−53132号公報 特開2008−307842号公報 特開2001−310393号公報
ところで、カーボン繊維(炭素繊維)は、その比重が1.8前後であり、鉄の7.8に比べて約1/4と非常に軽量であり、アルミニウムの2.7に比べても軽量である。またカーボン繊維の比強度(引張強度を比重で割った値)は鉄の10倍、比弾性(引張弾性率を比重で割った値)は、鉄の7倍と高強度である。そのため航空機構造部材や自動車用部品のプリプレグや積層材の基材として使用されているが、反面、曲げ強度には弱いとされ、曲げ加工も容易ではないとされている。なお、炭素繊維を建築構造物や自動車や船舶・飛行機などの構造物などに使用するに際して、複数枚の炭素繊維を重ね合わせて圧着する製造方法がある。また、炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させた半硬化状態のシート状成形用中間材料(プリプレグ)を積層させる技術が提案されている。
しかしながら、複数枚の炭素繊維を重ね合わせて圧着する方法では、硬度の点で十分ではなく、また、何枚も重ねるには製造にも時間がかかるばかりか、炭素繊維と炭素繊維の間に空気が入り込むなどの問題を生じる(特許文献1ではこの課題を有する)。
特許文献2ないし4は、所定形状に成型して主に更なる強度の強い強化繊維の複合材料であり(曲げ強度に強い部材ではあるが)、その製造方法は、マトリックス金属とともに鋳造して繊維強化金属複合材料を構成するものや(特許文献2)、管状の繊維強化プラスチック材61をエポキシ系樹脂剤62により接着させるものや(特許文献3)、斜向糸供給部3を有するブレーダー2に軸芯方向に移動可能なマンドレル1を挿入する等するものであり(特許文献4)、その製造方法が難しい面を有する。
なお、特許文献1〜4のような繊維強化複合材料を廃棄処分するとき、これを焼却等しても、分解して処理するようなことは無理で、無機材料や有機材料が混合した状態で残る問題を有する。
そこで本発明の目的は、芯部材と強化繊維が一体的に融合して所定にした強化繊維構造物が効率的に製造でき、曲げ加工すれば曲げ強度にも強くなり、しかも分解処理も容易な強化繊維構造物及びその製造方法を提供することにある。
本発明は、強化繊維の芯糸に熱融着糸がカバーリングされた強化繊維により芯部材が圧着、溶着又は焼成により被覆されてなることを特徴とする。
本発明によれば、圧着、溶着又は焼成の際に熱融着糸が溶融して芯部材に付着するために、芯部材と強化繊維が一体的(強化繊維の熱融着糸が溶けて芯部材と融合する状態)な所定の大きさや厚みの強化繊維構造物が容易に製造できる。すなわち、熱圧着等により熱融着糸が溶融して芯部材に融合接着するので、芯部材と強化繊維が一体的な強化繊維構造物が効率的に製造できる。
従来の強化繊維では何枚も重ね合わせなければ所定の厚さと硬度を得られなかった。また、従来の強化繊維は曲げ強度が弱いとされていた。しかし、本発明によれば、前記強化繊維よりも厚さが厚いものを使用することで、所定厚さの曲げ強度の強い強化繊維構造物が容易に製造できる。
本発明としては、前記強化繊維に袋織り・袋編みで形成された複数の袋状部分が設けられ、前記芯部材が入れられて圧着、溶着又は焼成により被覆されてなることを特徴とする。
本発明によれば、前記強化繊維に袋織り・袋編みで形成された複数の袋状部分が前記芯部材の大きさに対応して設けられているので、圧着、溶着又は焼成の際に前記芯部材の移動が防止されるとともに、芯部材の外周に密着した強化繊維が容易に製造できる。
本発明としては、前記芯部材が金属製部材、繊維強化プラスチック部材、繊維強化セラミックス部材、又は、繊維強化ガラス部材であり、これらの板状部材の硬度が前記強化繊維の硬度よりも低いことを特徴とする。
本発明によれば、前記芯部材の硬度が低くても、前記強化繊維の硬度がより強いので、前記芯部材の強度が低い点を補うことができる。これにより、建築用の強化構造物等への使用が可能になる。芯部材として金属製部材を使用すると、導電性の構造(回路基板等)にも使用できる。
本発明としては、前記強化繊維を袋織り・袋編みで袋状部分を形成して、この袋状部分に芯部材である金属製部材、繊維強化プラスチック部材、繊維強化セラミックス部材、又は、繊維強化ガラス部材を配置して、所定形状に曲げ加工して、圧着、溶着又は焼成して被覆してなることを特徴とする。
本発明によれば、圧着、溶着又は焼成の際に前記芯部材の移動が防止されるとともに、芯部材の外周に密着した強化繊維が効率的に製造できる。すなわち、袋状部分に板状の芯部材を入れた状態のまま焼成等を行なうと工程の削減が図られるとともに、芯部材に沿って袋状部分が芯部材を被覆する状態になり、被覆の精度向上が図られる。
本発明としては、前記強化繊維の芯糸がアクリル繊維を使用したPAN系またはピッチ系の炭素繊維であり、熱融着糸がカバーリングされた繊維であり、前記芯部材が金属製部材、繊維強化プラスチック部材、繊維強化セラミックス部材、又は、繊維強化ガラス部材であり、これらの表面を凹凸や波型にして前記強化繊維による圧着、溶着又は焼成により被覆の強度が高められることを特徴とする。
本発明によれば、これらの表面を凹凸や波型にして前記強化繊維による圧着、溶着又は焼成により被覆の強度が高められる。前記強化繊維に袋織り・袋編みで形成された複数の袋状部分が設けられることで、互いの凹凸表面の融合状態がより強固になる。
ここで、本発明としては、前記強化繊維の芯糸がアクリル繊維を使用したPAN系またはピッチ系の炭素繊維であり、熱融着糸がカバーリングされた繊維であり、前記芯部材が金属製部材、繊維強化プラスチック部材、繊維強化セラミックス部材、又は、繊維強化ガラス部材であり、前記強化繊維よりも硬度が低くしても良い。
本発明によれば、前記芯部材の硬度が低くても、前記強化繊維の硬度がより強いので、前記芯部材の強度が低い点を補うことができる。これにより、建築用の強化構造物等への使用が可能になる。
なお、前記芯部材である金属製部材や強化プラスチック部材等が前記強化繊維よりも融点が高くすることで、強化繊維のみを圧着、溶着又は焼成して、金属製部材や強化プラスチック部材等の形状を変化させずにその硬度と厚さを維持して所定の大きさと厚みの構造物(均一な素材の構造物)を製造できる。また、芯部材が強化繊維を含ませた繊維強化プラスチック部材、繊維強化セラミックス部材、強化ガラスに、前記被覆される強化繊維や袋織り・袋編される強化繊維と同じ強化繊維を使用することで、より一層一体的な融合状態に加工することが可能である。また、使用後に廃棄処理するときは、金属製部材や繊維強化プラスチック部材を分離処理することも容易である。
本発明によれば、圧着、溶着又は焼成の際に熱融着糸が溶融して芯部材に付着・融合するために、芯部材と強化繊維が一体的な所定の大きさや厚みの強化繊維構造物が効率的に製造でき、曲げ強度に強く、耐久性能の高い強化繊維構造物になる。例えば芯部材としてアルミニウムを使用してその周囲にカーボン繊維を圧着させた場合、アルミニウムは展延性に富み、比較的強度が低いが、周囲に圧着されたカーボン繊維が比強度、比弾性ともに優れた高強度素材のためアルミニウムの強度を補う強化繊維構造物となる。このため、建築構造物として使用されるL型鋼、H型鋼またはコの字型鋼として好適なものとなり、また、自動車の車体や船舶や飛行機などの船体の構造物(外壁や内壁)等として適用可能である。また、芯部材に金属製部材を選択した場合には、電気伝導する構造物としても適用可能である。また、使用後に廃棄処理するときは、金属製部材や繊維強化プラスチック部材を分離処理して、これらを再利用することも容易に可能である。
また、本発明によれば、前記強化繊維に袋織り・袋編みで形成された複数の袋状部分が設けられているので、圧着、溶着又は焼成の際に前記芯部材の移動が防止されて、芯部材の外周に密着・融合した強化繊維が容易に製造できる。従来の複数枚の炭素繊維を重ね合わせて圧着する方法で生じていた、炭素繊維と炭素繊維の間に空気が入り込むなどの問題が生じ難く、製造工程も単純化され時間の短縮が図られる。
また、本発明は、前記強化繊維は綾織又は朱子織の織物組織がさらに袋織りされている。そのため平織であれば経糸と緯糸は一本ずつ組織されるため経糸の本数は緯糸と同数となるが、綾織や朱子織では平織よりも密度を高めることができる。例えば朱子織であれば、経糸の本数はよこ糸の本数よりも約2.5倍は多くすることができ、綾織組織よりもさらに経糸密度を高めることができる。
本発明を適用した第1の実施形態の強化繊維と袋状部分に金属製板を収納した状態を示す斜視図である。 上記実施形態の強化繊維構造物と袋状部分を有する強化繊維を示す側面図である。 上記実施形態の強化繊維構造物と袋状部分を有する強化繊維示す斜視図である。 上記実施形態の他の例の強化繊維構造物を示す図であり、(a)は袋状部分に金属製板を収納した状態を断面図であり、(b)は圧着した状態を示す断面図である。 本発明の第2の実施形態の強化繊維構造物を示す図である。 上記実施形態の他の例の強化繊維構造物を示す図であり、(a)は袋状部分に金属製板を収納した状態を断面図であり、(b)は圧着した状態を示す断面図である。 上記実施形態の他の例の強化繊維構造物を示す図であり、(a)は袋状部分に金属製板を収納した状態を断面図であり、(b)は圧着した状態を示す断面図である。 上記第1の実施例の他の例の実施形態の強化繊維構造物を示す図であり、(a)は袋状部分に金属製板を収納した状態を断面図であり、(b)は圧着した状態を示す断面図である。 本発明の第3の実施形態の強化繊維構造物を示す図であり、(a)は袋状部分に金属製板を収納した状態を断面図であり、(b)は圧着した状態を示す断面図である。 本発明の第3の実施形態の強化繊維構造物を示す図であり、(a)は袋状部分に金属製板を収納した状態を断面図であり、(b)は圧着した状態を示す断面図である。 上記第3の実施形態の応用例を示す図である。 上記第3の実施形態の応用例を示す図である。 上記第2の実施形態の応用例を示す図である。 上記第2の実施形態の応用例を示す図である。
本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1(a)(b)は、強化繊維を芯糸にして熱融着糸がカバーリングされた熱融着糸を織り込んだ袋状部分3aを有する強化繊維の斜視図である。
第1の実施の形態では、強化繊維の芯糸(カーボン繊維)に熱融着糸(ナイロン)がカバーリングされた強化繊維3が使用され、この強化繊維3で袋状部分3aが袋織りにより形成されている。袋状部分3aの大きさは、芯部材2である金属製部材(アルミニウム、或いはアルミニウム合金)が入る程度の大きさになっている。アルミニウム板等の金属製部材3を二枚使用してL字に折り曲げられた芯部材2が袋状部分3aに入れられている(図2(a)(b))。芯部材2の厚さY2は、強化繊維(炭素繊維)2の厚さY1よりも厚く、強化繊維部材である(図3(a)(b))。なお、後述するように、二枚の芯部材を袋状部材3a,3aに入れてから焼成等を行ない、そのほぼ中央3bからL字状に折り曲げ加工しても良い(図4(a)(b))。そして、中央連結部3bは焼成して、その他は溶着をしても良い。
本実施の形態袋状部分3aは、その左右の端部3cは開口しているが、片側のみ開口させて、その開口3cから芯部材2を差し込んでも良い。なお、本発明は、前記強化繊維3が表裏の間に芯部材2が介材して接合されたものでも良く、つまり被覆される状態であれば良い。本実施の形態では、金属製板3の長さが袋状部分2よりも長いが、金属製部材3の長さが袋状部分3aよりも短かければ、金属製部材全体が入る状態になる。袋状部分3aは複数設けられているが、一つでも良く、ここに複数枚の金属製部材3が配置されて良い。また、厚さ方向に複数の袋状部分3aを形成して、各袋状部分3aに芯部材2を入れて積層状態にしても良い(図7(b))。
ここで、袋織りは、二重織りの一つであり、布の両端が表裏接合され、筒状(パイプ状)になる織り方であり、裁断してみると袋状に織られる。袋状にすることにより、厚みと弾力がでる。袋織りとはその織物がチューブ(円環或いは筒)状に織りあがる。上下に2枚つなぎ合わせたような織りあがりになり、円環の周方向に耐張力の高い、継ぎ目のない織物が得られる。袋編みは、両面(表裏)を袋状に編む方法であり、厚みと弾力がでるとともに、ソフト感がでる。袋織りでも袋編みでも良いが、編み目が細かくなることや、袋状部分3aに空気が入り込み難くできることや、伸縮力が低い袋織りの方が熱圧着性に優れ、金属製板(アルミニウム、或いはアルミニウム合金)2の移動が防止される。ニットには、大きく分けて緯編みと経編みがあり、緯編みは編目が横方向に連続して出来た編地であり、経編みは縦方向に連続した編目を作り出す編み方で、織物にも近いハリ・コシがあり、安定した編み地を作ることができる。袋編みは伸縮性に優れるので、図7(a)に示すように、芯部材2の形状が複雑な形状でも、一つの強化繊維による袋状部材3aに金属製部材(芯部材)2を収納することができ、その形状の金属製部材(芯部材)2に沿って被覆することができる。なお、袋織りのカバーとして袋編みの二重構造として、伸縮性の調整をすることも可能である。
前記強化繊維3として、炭素繊維、炭化繊維、ポリアミド繊維およびガラス繊維の種類からなる。炭素繊維は、PAN系またはピッチ系の強化繊維やガラス繊維を用いることができる。繊維強化プラスチックとは、連続又は不連続強化繊維で強化された熱可塑性樹脂または熱硬化性プラスチック複合材である。本明細書中では、所定形状に加工したものを(曲げ加工を含む)、繊維強化プラスチック部材、繊維強化セラミックス部材、又は、繊維強化ガラス部材と表記する。
強化プラスチック部材に使用されるプラスチックとしては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、繊維強化プラスチックとしては、チタンを含む金属と組み合わせても良い。
繊維強化セラミックス(fiber-reinforced ceramics; FRC)とは、セラミックスのもろいという性質をセラミック繊維を配合することにより靭性化させた強化セラミックスである。マトリックスには高温高強度のセラミックス(アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭素など)が用いられ、強化材としての繊維には炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維などが用いられる。また、セラミックウィスカ等で強化された繊維プリフォームにおける繊維表面に、各種特性向上を目的とした表面処理を実施して表面処理層して形成させるものもある。繊維強化セラミック複合材料の場合、セラミックポリマーの含浸・焼成、CVD法等によりセラミック材を織物内部等に形成させるものでも良い。また、繊維強化プラスチック複合材の場合、熱硬化性樹脂を流し込んで加熱し固める。繊維強化ガラス系複合材の場合は、ガラス材料を加熱して溶かし、加圧することによりガラス材料を織物内部にしみ込ませるものでも良い。芯部材2が金属製部材では、板状のアルミニウム、アルミニウム合金を使用したが、アルミニウム等の金属材料と前記セラミック繊維や前記炭素繊維・炭化繊維を混練して反応しないように層を形成させる処理で作成することもできる。
第1の実施の形態を建築構造物に使用されるL字型形鋼やH型形鋼として使用するときは、アルミニウム板等の金属製部材2を二枚使用してL字やH形状に配置してから圧着、溶着(或いは焼成)する(図6(a)(b))。芯部材2は、強化繊維(単青繊維)2よりも厚さが厚く高い硬度の強化繊維を用いることで、L型鋼、H型鋼やアンカーなどの建築構造物を容易に製造できる。芯部材としてアルミニウムを使用することや、或いは、芯部材を薄くすると、軽量化が図られるが、表面は炭素繊維3で被覆されるために、曲げ強度にも強い。H型に成型するときは、コ字形状を組み合わせて、一つの袋状部分3aに収納して成型することができる(図8(a)(b))。
また、図7(a)に示すように、凹凸の複雑な形状でも、内部空間部7を形成することで、一つの強化繊維による袋状部材3aに金属製部材(芯部材)2を収納することができ、芯部材2の形状を変えても、その形状の金属製部材(芯部材)2に沿って被覆することができる。被覆後は、その状態で圧着、溶着又は焼成すると、強化繊維3の熱融着糸が溶融して芯部材2の表面に融合付着して、表面は硬度が高くなる。ここで、圧着、溶着又は焼成しても、製造した製品に袋状部分3aが確認できた。本実施の形態では、左右の端部を揃えない状態(房)3cとしており、これにより端部(開口部分)3cの位置が確認し易くしている。
図7(b)は、芯部材2Dが袋状部材3(3a)で被覆されて積層状態になっており、その表裏に一般の炭素繊維6を熱圧着させた例である。片面や表裏に一般の炭素繊維(強化樹脂板)6を熱圧着させて、内装用の壁材や床材としての応用が可能である。これらの熱圧着に際しては、プレス機により圧着するほか、型を使用して、圧着する方法で行う。
(第2の実施の形態)
図5(b)(c)は、前記強化繊維は綾織又は朱子織の織物組織を袋織りした袋状部の断面図である。図5(a)は、平織りと綾織りと、朱子織りを説明する図である。
第2の実施の形態では、前記強化繊維3は綾織又は朱子織の織物組織を袋織りしたものである。平織りでは、経糸と緯糸は一本ずつ組織されるため経糸の本数は緯糸と同数となるが、綾織や朱子織は平織よりも繊維密度を高めることができる(地合が密で厚く,地質は柔らかく,皺(しわ)がよりにくい。)。例えば朱子織であれば経糸の本数はよこ糸3dの本数よりも約2.5倍は多くすることができる。そこで、袋織りされた袋状部分3aの外側の繊維密度が、袋状部分3aの内側部(芯部材2の圧着面)の繊維密度よりも大きくされているため、強化繊維は外からの物理的外力・損傷に強く耐久性のある構造であり、芯部材2の移動を防止できるとともに、袋状部分3aの内側部(芯部材の圧着面)に空気が入り込むなどの問題が生じ難くなる。なお、圧着強度を高めるために、芯部材2の表裏面に凹凸や波形を施したり、芯部材2に貫通孔を形成して、貫通孔を介して表裏の強化繊維を連結させても良い。芯部材2の表裏面に凹凸や波形2zを施し、袋状部分3aを綾織や朱子織りとすることで、圧着や焼成等の相乗効果により(互いの凹凸2zと凹凸2zの重合状態が得られることで)、より硬度の向上が図られる。
ここで、平織り(plain weave)は、経糸とよこ糸が1本ごとに交互に浮き沈みして交錯する組織である(図5(a))。
綾織り(twill weave:斜文織)は、平織りのように交互に浮き沈みせず、組織点が斜めに連続して、綾線を表示させる。通常は右上がりを表とする場合が多い。糸3dの太さと密度が同じ場合、綾線は45°になることが多い(図示右下から左上の方向の斜線となって織物表面に現れる)。朱子織り(satin weave:繻子織り)は、経糸とよこ糸5本以上で、交錯点は一定の間隔で隣り合わないようになり、経糸とよこ糸の数は同じで、最小の組織で一度だけ交錯する。5枚朱子(5 harness satin)は、朱子織りの中で最も簡単な組織で、表裏関係を除けば、交錯点が三飛びのものと二飛びの二種類がある。交錯点の配置がよく、朱子線が目立たないため、綺麗な織物ができる(図5(a))。朱子織としては五枚朱子の他、八枚朱子、十枚朱子、十二枚朱子、十六枚朱子、二十四枚朱子などが考えられるがこれらに限定されない。たとえば経五枚朱子であれば、経糸は緯糸と1回だけ交わり、4本の緯糸の上に、経糸が浮いた織物となる。経八枚朱子であれば、経糸は緯糸の7本の上に浮いた織物となる。糸が長く浮くことにより、糸を密に並べることが可能となり、糸間の隙間がなくなる。このことにより地が厚く、柔らかで皺がよりにくく、平らで滑らかとなり光沢が生まれる。
上記綾織と朱子織を使用することで、強化繊維3の表裏で繊維密度を変更したり、袋状部分3aの外側の繊維密度と袋状部分の内側で繊維密度を変更したりすることが出来る。図5(b)に示すように、袋状部分3aの外側の繊維密度を袋状部分3aの内側(芯部材の圧着面側)の繊維密度よりも大きくすると(Z1<Z2)、強化繊維は外からの物理的外力・損傷に強く耐久性のある構造となる。一方、図5(c)に示すように、袋状部分3aの外側の繊維密度を袋状部分の内側の繊維密度よりも小さくするため(Z1<Z2)、芯部材2の移動を防止する効果が高くなる。強化繊維の表裏で繊維密度を変更することでも、これらと同じ作用効果を生じさせることが出来る。
(第3の実施の形態)
図9(a)(b)と、図10(a)〜(d)は、強化繊維を芯糸にして熱融着糸がカバーリングされた熱融着糸3aを織り込んだ袋状部分3aを有する強化繊維の斜視図である。
第3の実施の形態は、強化繊維3が所定間隔で袋状部分3aが形成されており、袋状部分3a以外の箇所(連結部)3bで折り曲げ加工する。本実施の形態では、2枚の金属製板2を使用して、各々袋状部分3aに入れられるが、これら袋状部分3aと袋状部分3aとの間の部分3bを利用して折り曲げ加工する。2枚以上でも良く、図12(a)(b)に示すように、5枚の芯部材2を各々袋状部分3aに収納して所定角度で折り曲げることができる。第1の実施の形態の場合と異なり、上記中間部3bには金属製部材2が配置されていないために曲げ加工が容易である(図10(b))。上記中間部3bには金属製部材2が配置されていないが、袋織りや袋編みにて表裏が接合されていると、これらの表裏が熱圧着や焼成により溶着する。なお、上記中間部3bには、更に強化繊維を重ね合わせたり、薄い金属製部材2を配置したりしても良い(図10(d))。また、補強用の強化繊維を介在させたり、バインダーをこの中間部分3bにのみ使用して補強したり、又、この中間部分は焼成加工により曲げ加工して、その後は熱圧着加工を施すなどの加工をしても良い。
ここで、所定角度に曲げるときは、図13(a)(b)に示すように、芯部材2の先端に回転機構(軸2j)配置したり、図14(a)(b)に示すように、回転機構(軸2jと軸受け2i)で所定角度に回転可能にすることができる。
次に、例えば自動車の外壁として使用する場合の曲げ加工する場合(湾曲・屈曲フレームを製造する場合等)は、芯部材2Fに厚さの薄い部分2Faを設けて、この厚さの薄い部分2Faを利用して焼成するなどして湾曲させることができる(図11(b))。袋状部分3aに板状の芯部材2を入れた状態でL字状に曲げてから折り曲げても良いが(図11(a))、袋状部分3aに板状の芯部材2を入れた状態のまま焼成等を行なうと工程の削減が図られるとともに、芯部材2に沿って袋状部分3aが芯部材2を被覆することとなる。なお、先に加熱プレス機など所定厚みに形成しておき、前記湾曲部分2Faのみを焼成して所定の湾曲・屈曲のカーブ状態に加工しても良い。いずれの場合も、袋状部分3aはこれらの曲げ加工に追従して変化するために、その曲げ加工状態に沿っての良好な被覆状態が得られる。
溶着方法としては、加熱手段を備えた加圧成形装置、圧縮成形装置、真空圧着成形装置等を用いることができる。圧着は、熱溶着、熱プレスや加熱ロールプレス等のプレス機を用いることができる。加熱条件は、金属製部材の融点よりも低い温度が好ましい。また、比較的低い温度で熱圧着した後に、部分的に(例えば曲げ加工する箇所に)焼成して曲げても良い。上記加熱プレス成形の前に、バインダー成分が溶融する温度にて予備加熱してから、本加熱したり、上記部分的な焼成(折り曲げ箇所や調整のための曲げ加工)を行なってもよい。
プレス等による溶着に際しては、バインダー(結合剤)を使用する。バインダーとしては、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリアセテート、エチレンビニルアセテート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができる。これらのバインダーを塗布して加熱溶着することで、前記芯部材2の硬度よりも前記強化繊維3の硬度を高くしても良い。
ここで、芯部材2が強化繊維を含ませた繊維強化プラスチック部材等であるとき、前記被覆される強化繊維3と同じ強化繊維を使用することが好ましい。すなわち、芯部材2である繊維強化プラスチック部材に含ませる強化繊維が炭素繊維である場合、前記被覆される強化繊維3を同じ強化繊維である炭素繊維を使用することが好ましい。袋織り・袋編される袋状部分3aのみだけでも同じ強化繊維3aとしても良い。具体的な実施例としては、前記強化繊維の芯糸がアクリル繊維を使用したPAN系またはピッチ系の炭素繊維であり、強化繊維を含ませた繊維強化プラスチック部材等とする。これにより熱融着糸3aが芯部材2の表面により一層溶融し易くなり、付着力(融合状態)が良好になる。繊維強化セラミックス部材、又は、繊維強化ガラス部材についても同様である。
以上、本実施形態では、建築構造物に使用されるL字型形鋼やH型形鋼として使用する例を主に説明したが、本発明は自動車や車両の構造部材(胴体や内壁)、飛行機・飛行船の構造部材(胴体や内壁)や、これらの外壁のみならず内壁や床材等、自動車や車両の部品(座席フレーム等)、飛行機・飛行船の部品(座席フレーム等)や、建材、外壁材等に広く適用可能である。また、芯部材2として金属製部材を使用すると、導電性の構造(回路基板等)にも使用できる。
1 強化繊維構造物、
2,2A,2B,2C,2D,2E,2F 芯部材(金属製部材等)、
2z 芯部材の表裏面の凹凸(波形)、
3 強化繊維(袋状部分)、
3a 袋状部分、 3c 房(袋状部材の開口部)、3b 中央(折り曲げ部)、
3d 強化繊維の糸、
5 強化繊維構造物(焼成後、圧着後)、
本発明は、強化繊維に金属製部材、繊維強化プラスチック部材、繊維強化セラミックス部材、又は、繊維強化ガラス部材等を圧着、溶着又は焼成して所定の厚みや所定形状に加工した強化繊維構造物及びその製造方法に関する。
カーボン繊維(炭素繊維)は軽量で、高強度で、高い弾性率を有しており、航空機構造部材、自動車用部品、スポーツ・レジャー用品のプリプレグや積層材の基材として使用されている。強化繊維(Carbon fiber)は、アクリル繊維またはピッチ(石油、石炭、コールタールなどの副生成物)を原料に高温で炭化して作った繊維である。アクリル繊維を使った強化繊維はPAN系(Polyacrylonitrile)、ピッチを使った強化繊維はピッチ系(PITCH)と区分される。強化繊維を単独の材料として利用することは少なく、合成樹脂などの母材と組み合わせた複合材料として用いることが主である。強化繊維を用いた複合材料としては強化(繊維)プラスチック、強化繊維強化炭素複合材料などがある。強化(繊維)プラスチックは、ガラス繊維やナイロン・ビニロンなどを補強材として加えて成形したプラスチック製品であり、衝撃に強く、自動車車体・ボートや飛行機の船体や建材・ヘルメット・釣具などに広く使用されている。
強化繊維の複合材料としては、例えば、特許文献1〜4等が既に開示されている。
特許文献1は、樹脂製の不燃性ないしは難燃性のハニカム芯の両面に炭素繊維強化複合材料を有するサンドイッチ板で構成された航空機座席用背もたれが開示されている。
特許文献2は、「(請求項1)鋳込み前に金型内に配置し、マトリックス金属とともに鋳造して繊維強化金属複合材料を構成する棒状または筒状のプリフォーム材であって、プリフォーム材の軸方向と一致する方向に繊維軸を引揃えた補強繊維からなる内層と、内層を被覆する補強繊維の筒状編組体または筒状製織体(以下、両者をまとめて筒状織・編物という)からなる被覆層とを、交互に複数層を重ねてなることを特徴とするプリフォーム材。」と、(請求項2)最外層が被覆層であることを特徴とする請求項1記載のプリフォーム材。」と、(請求項3)内層を構成する補強繊維は強化繊維であり、被覆層を構成する筒状織・編物は繊維の交差角が10〜45度で編成された袋編物または製織された筒状織物であることを特徴とする請求項1または2記載のプリフォーム。」が開示されている。
特許文献3は、管状金属合金とFRPプリプレグを相互に接着させ、引っ張り応力、及び、圧縮応力に対応した軽量で強固な構造体を構成するものであり(課題)、その要約書には「管状金属部品60の外周面に化学エッチングによるミクロンオーダーの粗度があり、且つその表面は電子顕微鏡観察で、高さ又は深さ及び幅が10〜500nmで長さが10nm以上の仕切り状凸部、又は溝状凹部が10〜数百nm周期で全面に存在する超微細凹凸形状を形成し、その表面が金属酸化物又は金属リン酸化物の薄層21とする。これに管状の繊維強化プラスチック材61をエポキシ系樹脂剤62により接着させ、管状複合体を形成する。」内容が記載されている。
特許文献4は、非常に大きなFRP製品に使用される長尺の斜向糸繊維織物を簡単に得ることができる実用性,生産性に秀れた技術を提供するものであり(課題)、「FRP用の繊維織物の製造方法であって、斜向糸供給部3を有するブレーダー2に軸芯方向に移動可能なマンドレル1を挿入し、この斜向糸供給部3は、マンドレル1の外周面上に該マンドレル1の軸芯に対して所定角度±θで斜向糸Sを供給するように構成され、この斜向糸供給部3から複数本の斜向糸Sを供給してマンドレル1の外周面上に筒状織物4を織成し、続いて、該筒状織物4をマンドレル1の軸芯方向に切り開いて前記複数の斜向糸Sが配設された長尺の斜向糸繊維織物5を製造する」内容が記載されている。
実公平2−12912号公報 特開平9−53132号公報 特開2008−307842号公報 特開2001−310393号公報
ところで、カーボン繊維(炭素繊維)は、その比重が1.8前後であり、鉄の7.8に比べて約1/4と非常に軽量であり、アルミニウムの2.7に比べても軽量である。またカーボン繊維の比強度(引張強度を比重で割った値)は鉄の10倍、比弾性(引張弾性率を比重で割った値)は、鉄の7倍と高強度である。そのため航空機構造部材や自動車用部品のプリプレグや積層材の基材として使用されているが、反面、曲げ強度には弱いとされ、曲げ加工も容易ではないとされている。なお、炭素繊維を建築構造物や自動車や船舶・飛行機などの構造物などに使用するに際して、複数枚の炭素繊維を重ね合わせて圧着する製造方法がある。また、炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させた半硬化状態のシート状成形用中間材料(プリプレグ)を積層させる技術が提案されている。
しかしながら、複数枚の炭素繊維を重ね合わせて圧着する方法では、硬度の点で十分ではなく、また、何枚も重ねるには製造にも時間がかかるばかりか、炭素繊維と炭素繊維の間に空気が入り込むなどの問題を生じる(特許文献1ではこの課題を有する)。
特許文献2ないし4は、所定形状に成型して主に更なる強度の強い強化繊維の複合材料であり(曲げ強度に強い部材ではあるが)、その製造方法は、マトリックス金属とともに鋳造して繊維強化金属複合材料を構成するものや(特許文献2)、管状の繊維強化プラスチック材61をエポキシ系樹脂剤62により接着させるものや(特許文献3)、斜向糸供給部3を有するブレーダー2に軸芯方向に移動可能なマンドレル1を挿入する等するものであり(特許文献4)、その製造方法が難しい面を有する。
なお、特許文献1〜4のような繊維強化複合材料を廃棄処分するとき、これを焼却等しても、分解して処理するようなことは無理で、無機材料や有機材料が混合した状態で残る問題を有する。
そこで本発明の目的は、芯部材と強化繊維が一体的に融合して所定にした強化繊維構造物が効率的に製造でき、曲げ加工すれば曲げ強度にも強くなり、しかも分解処理も容易な強化繊維構造物及びその製造方法を提供することにある。
本発明は、強化繊維の芯糸に熱融着糸がカバーリングされた強化繊維により芯部材が圧着、溶着又は焼成により被覆されてなることを特徴とする。
本発明によれば、圧着、溶着又は焼成の際に熱融着糸が溶融して芯部材に付着するために、芯部材と強化繊維が一体的(強化繊維の熱融着糸が溶けて芯部材と融合する状態)な所定の大きさや厚みの強化繊維構造物が容易に製造できる。すなわち、熱圧着等により熱融着糸が溶融して芯部材に融合接着するので、芯部材と強化繊維が一体的な強化繊維構造物が効率的に製造できる。
従来の強化繊維では何枚も重ね合わせなければ所定の厚さと硬度を得られなかった。また、従来の強化繊維は曲げ強度が弱いとされていた。しかし、本発明によれば、前記強化繊維よりも厚さが厚いものを使用することで、所定厚さの曲げ強度の強い強化繊維構造物が容易に製造できる。
本発明としては、前記強化繊維に袋織り・袋編みで形成された複数の袋状部分が設けられ、前記芯部材が入れられて圧着、溶着又は焼成により被覆されてなることを特徴とする。
本発明によれば、前記強化繊維に袋織り・袋編みで形成された複数の袋状部分が前記芯部材の大きさに対応して設けられているので、圧着、溶着又は焼成の際に前記芯部材の移動が防止されるとともに、芯部材の外周に密着した強化繊維が容易に製造できる。
本発明としては、前記芯部材が金属製部材、繊維強化プラスチック部材、繊維強化セラミックス部材、又は、繊維強化ガラス部材であり、これらの板状部材の硬度が前記強化繊維の硬度よりも低いことを特徴とする。
本発明によれば、前記芯部材の硬度が低くても、前記強化繊維の硬度がより強いので、前記芯部材の強度が低い点を補うことができる。これにより、建築用の強化構造物等への使用が可能になる。芯部材として金属製部材を使用すると、導電性の構造(回路基板等)にも使用できる。
本発明としては、前記強化繊維を袋織り・袋編みで袋状部分を形成して、この袋状部分に芯部材である金属製部材、繊維強化プラスチック部材、繊維強化セラミックス部材、又は、繊維強化ガラス部材を配置して、所定形状に曲げ加工して、圧着、溶着又は焼成して被覆してなることを特徴とする。
本発明によれば、圧着、溶着又は焼成の際に前記芯部材の移動が防止されるとともに、芯部材の外周に密着した強化繊維が効率的に製造できる。すなわち、袋状部分に板状の芯部材を入れた状態のまま焼成等を行なうと工程の削減が図られるとともに、芯部材に沿って袋状部分が芯部材を被覆する状態になり、被覆の精度向上が図られる。
本発明としては、前記強化繊維の芯糸がアクリル繊維を使用したPAN系またはピッチ系の炭素繊維であり、熱融着糸がカバーリングされた繊維であり、前記芯部材が金属製部材、繊維強化プラスチック部材、繊維強化セラミックス部材、又は、繊維強化ガラス部材であり、これらの表面を凹凸や波型にして前記強化繊維による圧着、溶着又は焼成により被覆の強度が高められることを特徴とする。
本発明によれば、これらの表面を凹凸や波型にして前記強化繊維による圧着、溶着又は焼成により被覆の強度が高められる。前記強化繊維に袋織り・袋編みで形成された複数の袋状部分が設けられることで、互いの凹凸表面の融合状態がより強固になる。
ここで、本発明としては、前記強化繊維の芯糸がアクリル繊維を使用したPAN系またはピッチ系の炭素繊維であり、熱融着糸がカバーリングされた繊維であり、前記芯部材が金属製部材、繊維強化プラスチック部材、繊維強化セラミックス部材、又は、繊維強化ガラス部材であり、前記強化繊維よりも硬度が低くしても良い。
本発明によれば、前記芯部材の硬度が低くても、前記強化繊維の硬度がより強いので、前記芯部材の強度が低い点を補うことができる。これにより、建築用の強化構造物等への使用が可能になる。
なお、前記芯部材である金属製部材や強化プラスチック部材等が前記強化繊維よりも融点が高くすることで、強化繊維のみを圧着、溶着又は焼成して、金属製部材や強化プラスチック部材等の形状を変化させずにその硬度と厚さを維持して所定の大きさと厚みの構造物(均一な素材の構造物)を製造できる。また、芯部材が強化繊維を含ませた繊維強化プラスチック部材、繊維強化セラミックス部材、強化ガラスに、前記被覆される強化繊維や袋織り・袋編される強化繊維と同じ強化繊維を使用することで、より一層一体的な融合状態に加工することが可能である。また、使用後に廃棄処理するときは、金属製部材や繊維強化プラスチック部材を分離処理することも容易である。
本発明によれば、圧着、溶着又は焼成の際に熱融着糸が溶融して芯部材に付着・融合するために、芯部材と強化繊維が一体的な所定の大きさや厚みの強化繊維構造物が効率的に製造でき、曲げ強度に強く、耐久性能の高い強化繊維構造物になる。例えば芯部材としてアルミニウムを使用してその周囲にカーボン繊維を圧着させた場合、アルミニウムは展延性に富み、比較的強度が低いが、周囲に圧着されたカーボン繊維が比強度、比弾性ともに優れた高強度素材のためアルミニウムの強度を補う強化繊維構造物となる。このため、建築構造物として使用されるL型鋼、H型鋼またはコの字型鋼として好適なものとなり、また、自動車の車体や船舶や飛行機などの船体の構造物(外壁や内壁)等として適用可能である。また、芯部材に金属製部材を選択した場合には、電気伝導する構造物としても適用可能である。また、使用後に廃棄処理するときは、金属製部材や繊維強化プラスチック部材を分離処理して、これらを再利用することも容易に可能である。
また、本発明によれば、前記強化繊維に袋織り・袋編みで形成された複数の袋状部分が設けられているので、圧着、溶着又は焼成の際に前記芯部材の移動が防止されて、芯部材の外周に密着・融合した強化繊維が容易に製造できる。従来の複数枚の炭素繊維を重ね合わせて圧着する方法で生じていた、炭素繊維と炭素繊維の間に空気が入り込むなどの問題が生じ難く、製造工程も単純化され時間の短縮が図られる。
また、本発明は、前記強化繊維は綾織又は朱子織の織物組織がさらに袋織りされている。そのため平織であれば経糸と緯糸は一本ずつ組織されるため経糸の本数は緯糸と同数となるが、綾織や朱子織では平織よりも密度を高めることができる。例えば朱子織であれば、経糸の本数はよこ糸の本数よりも約2.5倍は多くすることができ、綾織組織よりもさらに経糸密度を高めることができる。
本発明を適用した第1の実施形態の強化繊維と袋状部分に金属製板を収納した状態を示す斜視図である。 上記実施形態の強化繊維構造物と袋状部分を有する強化繊維を示す側面図である。 上記実施形態の強化繊維構造物と袋状部分を有する強化繊維示す斜視図である。 上記実施形態の他の例の強化繊維構造物を示す図であり、(a)は袋状部分に金属製板を収納した状態を断面図であり、(b)は圧着した状態を示す断面図である。 本発明の第2の実施形態の強化繊維構造物を示す図である。 上記実施形態の他の例の強化繊維構造物を示す図であり、(a)は袋状部分に金属製板を収納した状態を断面図であり、(b)は圧着した状態を示す断面図である。 上記実施形態の他の例の強化繊維構造物を示す図であり、(a)は袋状部分に金属製板を収納した状態を断面図であり、(b)は圧着した状態を示す断面図である。 上記第1の実施例の他の例の実施形態の強化繊維構造物を示す図であり、(a)は袋状部分に金属製板を収納した状態を断面図であり、(b)は圧着した状態を示す断面図である。 本発明の第3の実施形態の強化繊維構造物を示す図であり、(a)は袋状部分に金属製板を収納した状態を断面図であり、(b)は圧着した状態を示す断面図である。 本発明の第3の実施形態の強化繊維構造物を示す図であり、(a)は袋状部分に金属製板を収納した状態を断面図であり、(b)は圧着した状態を示す断面図である。 上記第3の実施形態の応用例を示す図である。 上記第3の実施形態の応用例を示す図である。 上記第2の実施形態の応用例を示す図である。 上記第2の実施形態の応用例を示す図である。
本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1(a)(b)は、強化繊維を芯糸にして熱融着糸がカバーリングされた熱融着糸を織り込んだ袋状部分3aを有する強化繊維の斜視図である。
第1の実施の形態では、強化繊維の芯糸(カーボン繊維)に熱融着糸(ナイロン)がカバーリングされた強化繊維3が使用され、この強化繊維3で袋状部分3aが袋織りにより形成されている。袋状部分3aの大きさは、芯部材2である金属製部材(アルミニウム、或いはアルミニウム合金)が入る程度の大きさになっている。アルミニウム板等の金属製部材3を二枚使用してL字に折り曲げられた芯部材2が袋状部分3aに入れられている(図2(a)(b))。芯部材2の厚さY2は、強化繊維(炭素繊維)2の厚さY1よりも厚く、強化繊維部材である(図3(a)(b))。なお、後述するように、二枚の芯部材を袋状部材3a,3aに入れてから焼成等を行ない、そのほぼ中央3bからL字状に折り曲げ加工しても良い(図4(a)(b))。そして、中央連結部3bは焼成して、その他は溶着をしても良い。
本実施の形態袋状部分3aは、その左右の端部3cは開口しているが、片側のみ開口させて、その開口3cから芯部材2を差し込んでも良い。なお、本発明は、前記強化繊維3が表裏の間に芯部材2が介材して接合されたものでも良く、つまり被覆される状態であれば良い。本実施の形態では、金属製板3の長さが袋状部分2よりも長いが、金属製部材3の長さが袋状部分3aよりも短かければ、金属製部材全体が入る状態になる。袋状部分3aは複数設けられているが、一つでも良く、ここに複数枚の金属製部材3が配置されて良い。また、厚さ方向に複数の袋状部分3aを形成して、各袋状部分3aに芯部材2を入れて積層状態にしても良い(図7(b))。
ここで、袋織りは、二重織りの一つであり、布の両端が表裏接合され、筒状(パイプ状)になる織り方であり、裁断してみると袋状に織られる。袋状にすることにより、厚みと弾力がでる。袋織りとはその織物がチューブ(円環或いは筒)状に織りあがる。上下に2枚つなぎ合わせたような織りあがりになり、円環の周方向に耐張力の高い、継ぎ目のない織物が得られる。袋編みは、両面(表裏)を袋状に編む方法であり、厚みと弾力がでるとともに、ソフト感がでる。袋織りでも袋編みでも良いが、編み目が細かくなることや、袋状部分3aに空気が入り込み難くできることや、伸縮力が低い袋織りの方が熱圧着性に優れ、金属製板(アルミニウム、或いはアルミニウム合金)2の移動が防止される。ニットには、大きく分けて緯編みと経編みがあり、緯編みは編目が横方向に連続して出来た編地であり、経編みは縦方向に連続した編目を作り出す編み方で、織物にも近いハリ・コシがあり、安定した編み地を作ることができる。袋編みは伸縮性に優れるので、図7(a)に示すように、芯部材2の形状が複雑な形状でも、一つの強化繊維による袋状部材3aに金属製部材(芯部材)2を収納することができ、その形状の金属製部材(芯部材)2に沿って被覆することができる。なお、袋織りのカバー袋編みの二重構造として、伸縮性の調整をすることも可能である。
前記強化繊維3として、炭素繊維、炭化繊維、ポリアミド繊維およびガラス繊維の種類からなる。炭素繊維は、PAN系またはピッチ系の強化繊維やガラス繊維を用いることができる。繊維強化プラスチックとは、連続又は不連続強化繊維で強化された熱可塑性樹脂または熱硬化性プラスチック複合材である。本明細書中では、所定形状に加工したものを(曲げ加工を含む)、繊維強化プラスチック部材、繊維強化セラミックス部材、又は、繊維強化ガラス部材と表記する。
強化プラスチック部材に使用されるプラスチックとしては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、繊維強化プラスチックとしては、チタンを含む金属と組み合わせても良い。
繊維強化セラミックス(fiber-reinforced ceramics; FRC)とは、セラミックスのもろいという性質をセラミック繊維を配合することにより靭性化させた強化セラミックスである。マトリックスには高温高強度のセラミックス(アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭素など)が用いられ、強化材としての繊維には炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維などが用いられる。また、セラミックウィスカ等で強化された繊維プリフォームにおける繊維表面に、各種特性向上を目的とした表面処理を実施して表面処理層して形成させるものもある。繊維強化セラミック複合材料の場合、セラミックポリマーの含浸・焼成、CVD法等によりセラミック材を織物内部等に形成させるものでも良い。また、繊維強化プラスチック複合材の場合、熱硬化性樹脂を流し込んで加熱し固める。繊維強化ガラス系複合材の場合は、ガラス材料を加熱して溶かし、加圧することによりガラス材料を織物内部にしみ込ませるものでも良い。芯部材2が金属製部材では、板状のアルミニウム、アルミニウム合金を使用したが、アルミニウム等の金属材料と前記セラミック繊維や前記炭素繊維・炭化繊維を混練して反応しないように層を形成させる処理で作成することもできる。
第1の実施の形態を建築構造物に使用されるL字型形鋼やH型形鋼として使用するときは、アルミニウム板等の金属製部材2を二枚使用してL字やH形状に配置してから圧着、溶着(或いは焼成)する(図6(a)(b))。芯部材2は、強化繊維(炭素繊維)2よりも厚さが厚く高い硬度の強化繊維を用いることで、L型鋼、H型鋼やアンカーなどの建築構造物を容易に製造できる。芯部材としてアルミニウムを使用することや、或いは、芯部材を薄くすると、軽量化が図られるが、表面は炭素繊維3で被覆されるために、曲げ強度にも強い。H型に成型するときは、コ字形状を組み合わせて、一つの袋状部分3aに収納して成型することができる(図8(a)(b))。
また、図7(a)に示すように、凹凸の複雑な形状でも、内部空間部7を形成することで、一つの強化繊維による袋状部材3aに金属製部材(芯部材)2を収納することができ、芯部材2の形状を変えても、その形状の金属製部材(芯部材)2に沿って被覆することができる。被覆後は、その状態で圧着、溶着又は焼成すると、強化繊維3の熱融着糸が溶融して芯部材2の表面に融合付着して、表面は硬度が高くなる。ここで、圧着、溶着又は焼成しても、製造した製品に袋状部分3aが確認できた。本実施の形態では、左右の端部を揃えない状態(房)3cとしており、これにより端部(開口部分)3cの位置が確認し易くしている。
図7(b)は、芯部材2Dが袋状部材3(3a)で被覆されて積層状態になっており、その表裏に一般の炭素繊維6を熱圧着させた例である。片面や表裏に一般の炭素繊維(強化樹脂板)6を熱圧着させて、内装用の壁材や床材としての応用が可能である。これらの熱圧着に際しては、プレス機により圧着するほか、型を使用して、圧着する方法で行う。
(第2の実施の形態)
図5(b)(c)は、前記強化繊維は綾織又は朱子織の織物組織を袋織りした袋状部の断面図である。図5(a)は、平織りと綾織りと、朱子織りを説明する図である。
第2の実施の形態では、前記強化繊維3は綾織又は朱子織の織物組織を袋織りしたものである。平織りでは、経糸と緯糸は一本ずつ組織されるため経糸の本数は緯糸と同数となるが、綾織や朱子織は平織よりも繊維密度を高めることができる(地合が密で厚く,地質は柔らかく,皺(しわ)がよりにくい。)。例えば朱子織であれば経糸の本数はよこ糸3dの本数よりも約2.5倍は多くすることができる。そこで、袋織りされた袋状部分3aの外側の繊維密度が、袋状部分3aの内側部(芯部材2の圧着面)の繊維密度よりも大きくされているため、強化繊維は外からの物理的外力・損傷に強く耐久性のある構造であり、芯部材2の移動を防止できるとともに、袋状部分3aの内側部(芯部材の圧着面)に空気が入り込むなどの問題が生じ難くなる。なお、圧着強度を高めるために、芯部材2の表裏面に凹凸や波形を施したり、芯部材2に貫通孔を形成して、貫通孔を介して表裏の強化繊維を連結させても良い。芯部材2の表裏面に凹凸や波形2zを施し、袋状部分3aを綾織や朱子織りとすることで、圧着や焼成等の相乗効果により(互いの凹凸2zと凹凸2zの重合状態が得られることで)、より硬度の向上が図られる。
ここで、平織り(plain weave)は、経糸とよこ糸が1本ごとに交互に浮き沈みして交錯する組織である(図5(a))。
綾織り(twill weave:斜文織)は、平織りのように交互に浮き沈みせず、組織点が斜めに連続して、綾線を表示させる。通常は右上がりを表とする場合が多い。糸3dの太さと密度が同じ場合、綾線は45°になることが多い(図示右下から左上の方向の斜線となって織物表面に現れる)。朱子織り(satin weave:繻子織り)は、経糸とよこ糸5本以上で、交錯点は一定の間隔で隣り合わないようになり、経糸とよこ糸の数は同じで、最小の組織で一度だけ交錯する。5枚朱子(5 harness satin)は、朱子織りの中で最も簡単な組織で、表裏関係を除けば、交錯点が三飛びのものと二飛びの二種類がある。交錯点の配置がよく、朱子線が目立たないため、綺麗な織物ができる(図5(a))。朱子織としては五枚朱子の他、八枚朱子、十枚朱子、十二枚朱子、十六枚朱子、二十四枚朱子などが考えられるがこれらに限定されない。たとえば経五枚朱子であれば、経糸は緯糸と1回だけ交わり、4本の緯糸の上に、経糸が浮いた織物となる。経八枚朱子であれば、経糸は緯糸の7本の上に浮いた織物となる。糸が長く浮くことにより、糸を密に並べることが可能となり、糸間の隙間がなくなる。このことにより地が厚く、柔らかで皺がよりにくく、平らで滑らかとなり光沢が生まれる。
上記綾織と朱子織を使用することで、強化繊維3の表裏で繊維密度を変更したり、袋状部分3aの外側の繊維密度と袋状部分の内側で繊維密度を変更したりすることが出来る。図5(b)に示すように、袋状部分3aの外側の繊維密度を袋状部分3aの内側(芯部材の圧着面側)の繊維密度よりも大きくすると(Z1<Z2)、強化繊維は外からの物理的外力・損傷に強く耐久性のある構造となる。一方、図5(c)に示すように、袋状部分3aの外側の繊維密度を袋状部分の内側の繊維密度よりも小さくするため(Z1<Z2)、芯部材2の移動を防止する効果が高くなる。強化繊維の表裏で繊維密度を変更することでも、これらと同じ作用効果を生じさせることが出来る。
(第3の実施の形態)
図9(a)(b)と、図10(a)〜(d)は、強化繊維を芯糸にして熱融着糸がカバーリングされた熱融着糸3aを織り込んだ袋状部分3aを有する強化繊維の斜視図である。
第3の実施の形態は、強化繊維3が所定間隔で袋状部分3aが形成されており、袋状部分3a以外の箇所(連結部)3bで折り曲げ加工する。本実施の形態では、2枚の金属製板2を使用して、各々袋状部分3aに入れられるが、これら袋状部分3aと袋状部分3aとの間の部分3bを利用して折り曲げ加工する。2枚以上でも良く、図12(a)(b)に示すように、5枚の芯部材2を各々袋状部分3aに収納して所定角度で折り曲げることができる。第1の実施の形態の場合と異なり、上記中間部3bには金属製部材2が配置されていないために曲げ加工が容易である(図10(b))。上記中間部3bには金属製部材2が配置されていないが、袋織りや袋編みにて表裏が接合されていると、これらの表裏が熱圧着や焼成により溶着する。なお、上記中間部3bには、更に強化繊維を重ね合わせたり、薄い金属製部材2を配置したりしても良い(図10(d))。また、補強用の強化繊維を介在させたり、バインダーをこの中間部分3bにのみ使用して補強したり、又、この中間部分は焼成加工により曲げ加工して、その後は熱圧着加工を施すなどの加工をしても良い。
ここで、所定角度に曲げるときは、図13(a)(b)に示すように、芯部材2の先端に回転機構(軸2j)配置したり、図14(a)(b)に示すように、回転機構(軸2jと軸受け2i)で所定角度に回転可能にすることができる。
次に、例えば自動車の外壁として使用する場合の曲げ加工する場合(湾曲・屈曲フレームを製造する場合等)は、芯部材2Fに厚さの薄い部分2Faを設けて、この厚さの薄い部分2Faを利用して焼成するなどして湾曲させることができる(図11(b))。袋状部分3aに板状の芯部材2を入れた状態でL字状に曲げてから折り曲げても良いが(図11(a))、袋状部分3aに板状の芯部材2を入れた状態のまま焼成等を行なうと工程の削減が図られるとともに、芯部材2に沿って袋状部分3aが芯部材2を被覆することとなる。なお、先に加熱プレス機など所定厚みに形成しておき、前記湾曲部分2Faのみを焼成して所定の湾曲・屈曲のカーブ状態に加工しても良い。いずれの場合も、袋状部分3aはこれらの曲げ加工に追従して変化するために、その曲げ加工状態に沿っての良好な被覆状態が得られる。
溶着方法としては、加熱手段を備えた加圧成形装置、圧縮成形装置、真空圧着成形装置等を用いることができる。圧着は、熱溶着、熱プレスや加熱ロールプレス等のプレス機を用いることができる。加熱条件は、金属製部材の融点よりも低い温度が好ましい。また、比較的低い温度で熱圧着した後に、部分的に(例えば曲げ加工する箇所に)焼成して曲げても良い。上記加熱プレス成形の前に、バインダー成分が溶融する温度にて予備加熱してから、本加熱したり、上記部分的な焼成(折り曲げ箇所や調整のための曲げ加工)を行なってもよい。
プレス等による溶着に際しては、バインダー(結合剤)を使用する。バインダーとしては、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリアセテート、エチレンビニルアセテート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができる。これらのバインダーを塗布して加熱溶着することで、前記芯部材2の硬度よりも前記強化繊維3の硬度を高くしても良い。
ここで、芯部材2が強化繊維を含ませた繊維強化プラスチック部材等であるとき、前記被覆される強化繊維3と同じ強化繊維を使用することが好ましい。すなわち、芯部材2である繊維強化プラスチック部材に含ませる強化繊維が炭素繊維である場合、前記被覆される強化繊維3を同じ強化繊維である炭素繊維を使用することが好ましい。袋織り・袋編される袋状部分3aのみだけでも同じ強化繊維3aとしても良い。具体的な実施例としては、前記強化繊維の芯糸がアクリル繊維を使用したPAN系またはピッチ系の炭素繊維であり、強化繊維を含ませた繊維強化プラスチック部材等とする。これにより熱融着糸3aが芯部材2の表面により一層溶融し易くなり、付着力(融合状態)が良好になる。繊維強化セラミックス部材、又は、繊維強化ガラス部材についても同様である。
以上、本実施形態では、建築構造物に使用されるL字型形鋼やH型形鋼として使用する例を主に説明したが、本発明は自動車や車両の構造部材(胴体や内壁)、飛行機・飛行船の構造部材(胴体や内壁)や、これらの外壁のみならず内壁や床材等、自動車や車両の部品(座席フレーム等)、飛行機・飛行船の部品(座席フレーム等)や、建材、外壁材等に広く適用可能である。また、芯部材2として金属製部材を使用すると、導電性の構造(回路基板等)にも使用できる。
1 強化繊維構造物、
2,2A,2B,2C,2D,2E,2F 芯部材(金属製部材等)、
2z 芯部材の表裏面の凹凸(波形)、
3 強化繊維(袋状部分)、
3a 袋状部分、 3c 房(袋状部材の開口部)、3b 中央(折り曲げ部)、
3d 強化繊維の糸、
5 強化繊維構造物(焼成後、圧着後)

Claims (9)

  1. 芯糸に熱融着糸がカバーリングされた強化繊維を使用して、芯部材が圧着、溶着又は焼成により被覆されてなることを特徴とする強化繊維構造物。
  2. 前記強化繊維に袋織り・袋編みで形成された袋状部分が設けられ、前記芯部材が入れられて圧着、溶着又は焼成により被覆されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の強化繊維構造物。
  3. 前記袋状部分は綾織又は朱子織りであることを特徴とする請求項1又は2記載の強化繊維構造物。
  4. 前記強化繊維の芯糸がアクリル繊維を使用したPAN系またはピッチ系の炭素繊維であり、前記芯部材が金属製部材、繊維強化プラスチック部材、繊維強化セラミックス部材、或いは、繊維強化ガラス部材であり、これらの板状部材よりも前記強化繊維の硬度が高いことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の強化繊維構造物。
  5. 強化繊維に袋織り・袋編みで袋状部分を形成して、この袋状部分に芯部材が入れられて圧着、溶着又は焼成により被覆することを特徴とする強化繊維構造物の製造方法。
  6. 前記強化繊維を袋織り・袋編みで袋状部分を形成して、この袋状部分に芯部材である金属製部材、繊維強化プラスチック部材、繊維強化セラミックス部材、又は、繊維強化ガラス部材を配置して、所定形状に曲げ加工して、圧着、溶着又は焼成して被覆してなることを特徴とする強化繊維構造物の製造方法。
  7. 前記袋状部分を綾織又は朱子織りにし、前記芯部材の圧着面側と袋状部分の外側とで前記綾織又は朱子織りによる繊維密度を変更することを特徴とすることを特徴とする請求項5又は6記載の強化繊維構造物の製造方法。
  8. 前記強化繊維の芯糸がアクリル繊維を使用したPAN系またはピッチ系の炭素繊維であり、熱融着糸がカバーリングされた繊維であり、前記芯部材が金属製部材、繊維強化プラスチック部材、繊維強化セラミックス部材、又は、繊維強化ガラス部材であり、これらの表面を凹凸や波型にして前記強化繊維による圧着、溶着又は焼成により被覆の強度が高められることを特徴とする請求項5又は6記載の強化繊維構造物の製造方法。
  9. 前記芯部材が板状の部材であり、プレス機によりプレスする際に、前記強化繊維にバインダーを塗布して加熱溶着することにより、前記芯部材の硬度よりも前記強化繊維の硬度を高くすることを特徴とする請求項5ないし8のいずれか1項記載の強化繊維構造物の製造方法。
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