以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺等は必ずしも一致しない。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
(実施の形態1)
図1〜図3を用いて、実施の形態1に係る発光モジュール1の構成について説明する。図1は、実施の形態1に係る発光モジュール1の平面図である。図2は、同発光モジュール1の内部構造を示す平面図であり、図1においてダム部材及び封止部材を省略した図を示している。図3は、図1及び図2のIII−III線における同発光モジュール1の断面図である。
図1〜図3に示されるように、発光モジュール1は、基板10と、複数の発光素子20と、一対の端子30と、配線40と、封止部材50と、ダム部材60とを備える。複数の発光素子20、一対の端子30、配線40、封止部材50及びダム部材60は、基板10に設けられている。
本実施の形態における発光モジュール1は、LEDチップである発光素子20が基板10に直接実装されたCOBタイプのLEDモジュールであり、例えば白色光を出射する。以下、発光モジュール1の各構成部材について詳細に説明する。
[基板]
基板10は、発光素子20を実装するための実装基板である。基板10としては、セラミックからなるセラミック基板、樹脂をベースとする樹脂基板、金属をベースとするメタルベース基板、又は、ガラスからなるガラス基板等を用いることができる。
セラミック基板としては、アルミナからなるアルミナ基板又は窒化アルミニウムからなる窒化アルミニウム基板等を用いることができる。樹脂基板としては、例えば、ガラス繊維とエポキシ樹脂とからなるガラスエポキシ基板(CEM−3、FR−4等)、紙フェノールや紙エポキシからなる基板(FR−1等)、又は、ポリイミド等からなる可撓性を有するフレキシブル基板等を用いることができる。メタルベース基板としては、例えば、表面に絶縁膜が形成された、アルミニウム合金基板、鉄合金基板又は銅合金基板等を用いることができる。
また、基板10としては、光反射率が高い(例えば光反射率が90%以上)白色基板を用いるとよい。白色基板を用いることにより、発光素子20から出射する光を基板10の表面で反射させることができるので、発光モジュール1の光取り出し効率を向上させることができる。本実施の形態では、白色の多結晶セラミック基板を用いている。
また、基板10は、例えば、平面視形状が矩形状の矩形基板である。この場合、基板10の一辺の長さは、例えば10mm〜100mmであり、基板10の厚みは、例えば1mm程度である。なお、基板10の形状は、矩形状に限るものではなく、円形、楕円形、三角形や五角形以上の多角形等であってもよい。
[発光素子]
図2に示すように、複数の発光素子20は、互いに並列接続された第1発光素子21及び第2発光素子22を含む。本実施の形態において、複数の発光素子20は、第1発光素子21及び第2発光素子22に加えて、第3発光素子23、第4発光素子24及び第5発光素子25をさらに含んでいる。第3発光素子23、第4発光素子24及び第5発光素子25は、互いに並列接続されており、また、第1発光素子21及び第2発光素子22に対しても並列接続の関係にある。
また、第1発光素子21、第2発光素子22、第3発光素子23、第4発光素子24及び第5発光素子25の各々は、複数である。複数の第1発光素子21同士は直列接続されている。同様に、複数の第2発光素子22同士、複数の第3発光素子23同士、複数の第4発光素子24同士、及び、複数の第5発光素子25同士は、それぞれ直列接続されている。
つまり、本実施の形態において、複数の発光素子20は、直列接続された複数の第1発光素子21からなる第1直列接続体21Sと、直列接続された複数の第2発光素子22からなる第2直列接続体22Sと、直列接続された複数の第3発光素子23からなる第3直列接続体23Sと、直列接続された複数の第4発光素子24からなる第4直列接続体24Sと、直列接続された複数の第5発光素子25からなる第5直列接続体25Sとによって構成されており、第1直列接続体21S、第2直列接続体22S、第3直列接続体23S、第4直列接続体24S及び第5直列接続体25Sは、並列接続されている。
一例として、第1発光素子21、第2発光素子22、第3発光素子23、第4発光素子24及び第5発光素子25は、それぞれ12個であり、全部で60個の発光素子20が基板10に実装されている。つまり、基板10上に実装された60個の発光素子20は、12直5並で接続されている。
また、図2及び図3に示すように、複数の発光素子20の各々には、素子ワイヤ71(第1ワイヤ)が接続されている。つまり、第1発光素子21、第2発光素子22、第3発光素子23、第4発光素子24及び第5発光素子25の各々には、素子ワイヤ71が接続されている。
本実施の形態において、複数の発光素子20は、素子ワイヤ71によって直接接続されている。すなわち、隣り合う発光素子20は、Chip−to−Chipによってワイヤボンディングされている。具体的には、複数の第1発光素子21同士、複数の第2発光素子22同士、複数の第3発光素子23同士、複数の第4発光素子23同士(一部を除く)及び複数の第5発光素子24同士(一部を除く)は、素子ワイヤ71によって直接接続されている。
なお、複数の発光素子20の接続方法は、Chip−to−Chipに限らない。例えば、隣り合う発光素子20の間ごとに導電性のランド(配線)を設けて、当該ランドと発光素子20とをワイヤボンディングしてもよい。但し、Chip−to−Chipによって接続した方が、発光素子20を容易に高集積化することができるので、小型の発光装置を容易に実現できる。
各発光素子20は、ダイアタッチ剤等によって基板10にダイボンド実装されている。本実施の形態において、発光素子20は、基板10に直接実装されている。
複数の発光素子20の各々(第1発光素子21、第2発光素子22、第3発光素子23、第4発光素子24、第5発光素子25)は、半導体発光素子の一例であって、所定の電力により発光する。本実施の形態において、第1発光素子21、第2発光素子22、第3発光素子23、第4発光素子24及び第5発光素子25の各々は、いずれも単色の可視光を発するベアチップ(LEDチップ)であり、例えば、通電されれば青色光を発する青色LEDチップである。青色LEDチップとしては、サファイア基板に形成された窒化物半導体層の上面にp側電極及びn側電極の両電極が形成された片面電極構造を有する、例えば中心波長が440nm〜470nmの窒化ガリウム系の半導体発光素子を用いることができる。
なお、基板10上の複数の発光素子20は、順方向電圧特性(Vf特性)が同じである。ただし、個々の発光素子20のVf特性は多少ばらついていてもよく、直列接続された発光素子20の各直列接続体全体におけるVf合計(トータルVf)が所定のばらつき内に収まっていればよい。具体的には、第1直列接続体21S、第2直列接続体22S、第3直列接続体23S、第4直列接続体24S及び第5直列接続体25Sの各トータルVfが、所定のばらつき内に抑えられた略同一の値になっていればよい。
[端子]
図1及び図2に示すように、一対の端子30は、発光素子20(第1発光素子21、第2発光素子22、第3発光素子23、第4発光素子24、第5発光素子)を発光させるための電力を、発光モジュール1の外部電源等から受電する電極端子(外部接続端子)である。例えば、一対の端子30は、発光素子20を発光させるための直流電力を受電して、受電した直流電力を発光素子20に供給する。つまり、一対の端子30は、給電端子として機能する。
本実施の形態における発光モジュール1は、例えば、1つの電源(電源回路)に接続される。つまり、第1直列接続体21S(第1発光素子21)、第2直列接続体22S(第2発光素子22)、第3直列接続体23S(第3発光素子23)、第4直列接続体24S(第4発光素子24)、及び、第5直列接続体25S(第5発光素子25)には、一対の端子30を介して同一の電源から電力が供給される。電源は、発光モジュール1に一定の電流が供給されるように制御されている。
また、本実施の形態において、一対の端子30の一方は、例えば高圧側(プラス側)の第1端子31であり、一対の端子30の他方は、例えば低圧側(マイナス側)の第2端子32である。
第1端子31及び第2端子32は、例えば、矩形状にパターン形成された金(Au)等の金属からなる金属電極である。なお、第1端子31及び第2端子32は、金属電極に限るものではなく、ソケット型に構成されていてもよい。この場合、第1端子31及び第2端子32は、樹脂製のソケットと電力を受電するための導電ピンとによって構成される。
[配線]
図2に示すように、配線40は、発光素子20を発光させるための電力を発光素子20に供給するための給電配線である。
第1発光素子21(第1直列接続体21S)及び第2発光素子22(第2直列接続体22S)は並列接続となっているので、端子30から第1発光素子21及び第2発光素子22に供給される電流は並列接続の分岐点で分流される。したがって、配線40は、端子30から第1発光素子21(第1直列接続体21S)の第1電流経路及び第2発光素子22(第2直列接続体22S)の第2電流経路の分岐点までを接続する主配線41と、分岐点から分岐された分岐配線42とを有する。
本実施の形態では、第1発光素子21(第1直列接続体21S)、第2発光素子22(第2直列接続体22S)、第3発光素子23(第3直列接続体23S)、第4発光素子24(第4直列接続体24S)及び第5発光素子253(第5直列接続体25S)の5つが並列接続されている。したがって、主配線41と分岐配線42との分岐点は、端子30から、第1発光素子21(第1直列接続体21S)の第1電流経路、第2発光素子22(第2直列接続体22S)の第2電流経路、第3発光素子23(第3直列接続体23S)の第3電流経路、第4発光素子24(第4直列接続体24S)及び第5発光素子25(第5直列接続体25S)の第5電流経路の5つの分岐点(合流点)となっており、主配線41は5つの分岐配線42に接続されている。
主配線41としては、一対の端子30の一方(第1端子31)から一方の分岐点までを接続する第1配線と、一対の端子30の他方(第2端子32)から他方の分岐点までを接続する第2配線との2つが形成されている。
各主配線41は、配線パターンとしては、一部に不連続箇所を有している。具体的には、各主配線41は、分離形成された第1主配線部41aと第2主配線部41bとを有する。そして、分離形成された第1主配線部41aと第2主配線部41bとは、図2及び図4に示すように、配線ワイヤ72を介して電気的に接続されている。これにより、第1主配線部41aと第2主配線部41bとは、配線ワイヤ72を介して電気的に接続されている。なお、図4は、図1及び図2のIV−IV線における発光モジュール1の拡大断面図である。
なお、各直列接続体において、分岐配線42は、分岐点DPから各直列接続体の先頭又は最後尾の発光素子20とを接続するために形成されているが、分岐配線42は、各直列接続体における隣り合う発光素子20同士を接続するために形成されていてもよい。
配線40(主配線41、分岐配線42)は、例えば、Ag(銀)、Cu(銅)又は金(Au)等の金属材料からなる金属配線であり、基板10に所定形状で形成されている。なお、配線40としては、銀を母材金属として金メッキ処理が施された金属配線を用いることもできる。
また、配線40は、ガラス膜又は白レジスト等の絶縁膜で被覆されていてもよい。本実施の形態では、基板10として白色基板を用いているので、配線40を覆うように基板10はガラス膜で被覆されている。このように、絶縁膜で被覆することで、基板10の絶縁耐圧を向上させることができるとともに、配線40の金属酸化等を抑制することができる。
なお、配線40のうち素子ワイヤ71及び配線ワイヤ72が接続される部分には絶縁膜が形成されておらず、配線40が露出している。具体的には、図2に示されるハッチング部分が配線40の露出部分であり、絶縁膜は、配線40の素子ワイヤ71及び配線ワイヤ72が接続される箇所及び端子30が形成された箇所(図1のハッチング部分)を除いて、基板10の全体を被覆している。
[封止部材]
図1〜図3に示すように、封止部材50は、発光素子20を封止する。封止部材50は、複数の発光素子20を覆うように基板10上に形成される。発光素子20を封止部材50によって封止することで、発光素子20を保護することができる。
本実施の形態において、封止部材50は、基板10上の全ての発光素子20を一括封止しており、平面視形状が略円形である。なお、封止部材50は、発光素子20の各直列接続体ごとに発光素子20の配列に沿ってライン状に形成されていてもよいし、複数の発光素子20ごとに個別に封止するように形成されていてもよい。
封止部材50は、主として透光性材料からなるが、発光素子20が発する光の波長を所定の波長に変換する必要がある場合、封止部材50には波長変換材が含まれる。この場合、封止部材50は、波長変換材として蛍光体を含み、発光素子20が発する光の波長(色)を変換する波長変換部材として機能する。蛍光体は、発光素子20が発する光によって励起されて所望の色(波長)の光を放出する。
封止部材50を構成する透光性材料としては、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂又はフッソ系樹脂等の透光性の絶縁樹脂材料を用いることができる。透光性材料としては、必ずしも樹脂材料等の有機材に限るものではなく、低融点ガラスやゾルゲルガラス等の無機材を用いてもよい。
本実施の形態では、発光素子20が青色LEDチップであるので、白色光を得るために、蛍光体としては、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系の黄色蛍光体を用いることができる。これにより、青色LEDチップが発した青色光の一部は、黄色蛍光体に吸収されて黄色光に波長変換される。つまり、黄色蛍光体は、青色LEDチップの青色光によって励起されて黄色光を放出する。この黄色蛍光体による黄色光と黄色蛍光体に吸収されなかった青色光とが混ざった合成光として白色光が生成され、封止部材50からはこの白色光が出射する。
なお、演色性を高めるために、封止部材50には、さらに赤色蛍光体が含まれていてもよい。また、封止部材50には、光拡散性を高めるためにシリカ等の光拡散材、又は、蛍光体の沈降を抑制するためにフィラー等が分散されていてもよい。
本実施の形態における封止部材50は、透光性材料としてシリコーン樹脂を用いて、このシリコーン樹脂に黄色蛍光体を分散させた蛍光体含有樹脂である。封止部材50は、発光素子20を覆うようにダム部材60の内側に封止部材材料を充填するように塗布して硬化することで形成することができる。
[ダム部材]
図1及び図3に示すように、ダム部材60は、複数の発光素子20(第1発光素子21、第2発光素子22、第3発光素子23、第4発光素子24、第5発光素子25)を囲むように環状に形成されている。本実施の形態において、ダム部材60は、上面視において、基板10上の全ての発光素子20を囲むよう円環状に形成されている。なお、ダム部材60は、矩形環状に形成されていてもよい。
ダム部材60は、封止部材50の材料(封止部材材料)を塗布する際に封止部材材料をせき止めるための隔壁である。ダム部材60には、封止部材50が充填されている。
ダム部材60は、例えば、絶縁性を有する熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂等によって構成されている。ダム部材60の材料としては、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリフタルアミド(PPA)樹脂又はBTレジン等の樹脂材料が用いられる。
また、ダム部材60は、発光モジュール1の光取り出し効率を高めるために、光反射性を有することが望ましい。そこで、ダム部材60としては、白色の樹脂(いわゆる白樹脂)を用いるとよい。この場合、ダム部材60を構成する樹脂材料に、TiO2、Al2O3、ZrO2又はMgO等の光反射性粒子を分散させることで、白樹脂からなるダム部材60を形成することができる。
[ワイヤ]
素子ワイヤ71は、各発光素子20(第1発光素子21、第2発光素子22、第3発光素子23、第4発光素子24、第5発光素子25)に接続されるワイヤである。素子ワイヤ71は、各直列接続体において、発光素子20の配列方向に沿って架張されている。
配線ワイヤ72は、主配線41に接続されるワイヤである。具体的には、配線ワイヤ72は、主配線41を構成する第1主配線部41aと第2主配線部41bとを接続するためのワイヤである。図3に示すように、配線ワイヤ72は、ダム部材60の内側、かつ、ダム部材60の近傍に設けられている。
素子ワイヤ71及び配線ワイヤ72は、複数の屈曲部を有する。具体的には、素子ワイヤ71及び配線ワイヤ72の各々は、底辺のない略台形状に形成されており、2つの屈曲部を有する。素子ワイヤ71及び配線ワイヤ72は、例えば金ワイヤ等の金属ワイヤである。
このように構成される素子ワイヤ71及び配線ワイヤ72は、例えばキャピラリを用いて発光素子20及び配線40にワイヤボンディングすることができる。具体的には、素子ワイヤ71又は配線ワイヤ72をワイヤボンディングする際、まず、金ワイヤを発光素子20又は配線40に押し付け(1stボンド)、続いて、キャピラリを発光素子20又は配線40から上方に移動させながらキャピラリから金ワイヤを引き出し、続いて、キャピラリを水平及び斜め下方に移動させながらキャピラリからで金ワイヤを引き出し、その後、金ワイヤの他端を発光素子20又は配線40に接合する(2ndボンド)。
また、素子ワイヤ71及び配線ワイヤ72の各々は、少なくとも一部が封止部材50に埋まっている。本実施の形態では、図3に示すように、素子ワイヤ71の全体が封止部材50に埋まっている。また、図4に示すように、配線ワイヤ72の全体が封止部材50に埋まっている。つまり、封止部材50の材料をダム部材60内に充填する際、素子ワイヤ71及び配線ワイヤ72の全体が封止部材50に埋め込まれるように、封止部材50の材料をダム部材60に流し込む。
配線ワイヤ72は、素子ワイヤ71よりも先に断線するように、素子ワイヤ71よりも機械的強度が弱い脆弱構造を有する。本実施の形態では、図4に示すように、配線ワイヤ72は、脆弱構造として、1stボンド部72aの立ち上がり部分が基板10の主面(配線40の表面)の法線に対して傾斜している傾斜部を有する。つまり、1stボンド部72aの立ち上がり部分を傾斜させることで、配線ワイヤ72に脆弱構造を持たせている。
配線ワイヤ72の1stボンド部72aの立ち上がり部分の基板10の主面の法線に対する傾斜角θは、素子ワイヤ71の1stボンド部の立ち上がり部分の基板10の主面の法線に対する傾斜角よりも大きくなっている。傾斜角θは、配線ワイヤ72(素子ワイヤ71)の1stボンド部72aの立ち上がり部分と基板10の主面の法線とのなす角のことである。
配線ワイヤ72の1stボンド部72aの立ち上がり部分の基板10の主面の法線に対する傾斜角θは、5度以上であるとよい。また、配線ワイヤ72の1stボンド部72aの立ち上がり部分は、配線ワイヤ72の2ndボンド部72bとは反対側の方向に倒れるように傾斜している。なお、本実施の形態において、素子ワイヤ71の1stボンド部の立ち上がり部分の傾斜角は、0°としている。
また、配線ワイヤ72の1stボンド部72aの立ち上がり部分は、素子ワイヤ71の1stボンド部の立ち上がり部分よりも長くなっている。
[作用効果]
次に、図5及び図6を用いて、実施の形態1に係る発光モジュール1の作用効果について、本発明に至った経緯も含めて説明する。図5は、従来の発光モジュール1Xにおける発光素子20の接続関係を示す回路図である。図6は、実施の形態1に係る発光モジュール1における発光素子20の接続関係を示す回路図である。なお、発光モジュール1X、1は、例えば、1つの電源2(電源回路)に接続されている。
発光モジュールの寿命末期の一つの原因として、発光素子に接続された素子ワイヤの断線が考えられる。具体的には、発光素子に接続された素子ワイヤは、発光素子とともに樹脂材料からなる封止部材に埋め込まれているため、発光素子の点消灯に伴う封止部材(樹脂材料)の熱膨張と熱収縮との繰り返しによって素子ワイヤに応力が付与される。この結果、素子ワイヤが金属疲労して断線することがある。
素子ワイヤが断線すると、並列接続された複数の発光素子を有する発光モジュールでは、複数の発光素子が部分的に不点灯になってしまう。例えば、図5の(a)に示すように、60個の発光素子20(LEDチップ)が12直5並で接続された発光モジュール1Xにおいて、図5の(b)に示されるように、一部の素子ワイヤ71が断線すると、断線した素子ワイヤ71が接続されていた発光素子20を含む直列接続体の全ての発光素子20(12個のLEDチップ)が不点灯状態になる。この場合、発光モジュール1Xの配光特性が大きく変化してしまい、所期の配光特性が得られなくなる。
また、素子ワイヤの断線によって並列接続された複数の発光素子の一部が不点灯になると、発光モジュールに一定の電流が供給されるように制御されている場合には、断線した素子ワイヤが接続されていた発光素子を含む直列接続体以外の残りの直列接続体に電流が過剰に投入されることになり、発光素子が異常発熱する。例えば、図5の(a)及び(b)に示すように、60個の発光素子20が12直5並で接続された発光モジュール1Xにおいて一部の素子ワイヤ71が断線すると、断線した素子ワイヤ71が接続されていた発光素子を含む直列接続体以外の3つの直列接続体の発光素子20(12個×4のLEDチップ)に過剰に電流が投入されることになる。この結果、発光モジュール1Xの一部に熱が集中して発生することになる。この場合、発光モジュール1Xを照明装置等に組み込んだ場合に、発光モジュール1Xの周辺に配置されたレンズ等の光学部材や筐体等の樹脂部品が変形する等の不具合の発生が懸念される。
これに対して、本実施の形態における発光モジュール1では、図6の(a)に示すように、端子30から並列接続された発光素子20の直列接続体の分岐点DPまでを接続する主配線41を、第1主配線部41aと第2主配線部41bとに分離した上で、配線ワイヤ72によって第1主配線部41aと第2主配線部41bとを電気的に接続している。また、配線ワイヤ72は、発光素子20に接続された素子ワイヤ71と同様に、少なくとも一部が封止部材50に埋まっている。
これにより、発光素子20の点消灯に伴う封止部材50の熱膨張と熱収縮との繰り返しによって封止部材50が劣化した場合に、配線ワイヤ72が封止部材50内に位置させることで、封止部材50の劣化による応力上昇の影響を確実に捉えることができる。このため、封止部材50の熱膨張と熱収縮との繰り返しによって素子ワイヤ71及び配線ワイヤ72に応力が付与されたとしても、図6の(b)に示すように、配線ワイヤ72が素子ワイヤ71よりも先に断線することによって、配線ワイヤ72が接続された主配線41を電気的に断線させることができる。この結果、端子30から発光素子20への給電を全停止させることができるので、並列接続された発光素子20の全てを同時に消灯させることができる。したがって、並列接続された複数の発光素子20の一部が不点灯になることを抑制することができる。つまり、配線ワイヤ72は、自ら断線することで発光モジュール1が中途半端な状態で点灯することを回避して発光モジュール1の寿命末期を決定付ける寿命ワイヤとして機能する。
特に、本実施の形態において、配線ワイヤ72は、素子ワイヤ71よりも機械的強度が弱い脆弱構造を有している。
これにより、封止部材50の熱膨張と熱収縮との繰り返しによって素子ワイヤ71及び配線ワイヤ72に応力が付与された場合に、より確実に配線ワイヤ72を素子ワイヤ71よりも先に断線させることができる。したがって、並列接続された複数の発光素子20の一部が不点灯になることを一層抑制できる。
また、本実施の形態において、配線ワイヤ72は、脆弱構造として、1stボンド部72aの立ち上がり部分が基板10の主面の法線に対して傾斜している傾斜部を有する。
これにより、配線ワイヤ72に脆弱構造を容易に設けることができる。したがって、簡易な構成で、並列接続された複数の発光素子20の一部が不点灯になることを容易に抑制できる。
この場合、配線ワイヤ72の1stボンド部72aの立ち上がり部分の基板10の主面の法線に対する傾斜角θは、5度以上であるとよい。
これにより、さらに確実に配線ワイヤ72を素子ワイヤ71よりも先に断線させることができる。したがって、並列接続された複数の発光素子20の一部が不点灯になることをさらに抑制できる。なお、配線ワイヤ72の1stボンド部の立ち上がり部分の傾斜角θを大きくしすぎると、発光モジュール1の寿命が目的とする期間よりも短くなってしまうこともあるので、傾斜角θはあまり大きくしすぎない方がよい。
また、図4に示すように、本実施の形態において、配線ワイヤ72の1stボンド部72aの立ち上がり部分は、配線ワイヤ72の2ndボンド部72bとは反対側の方向に倒れるように傾斜している。
これにより、配線ワイヤ72の1stボンド部72aの立ち上がり部分を配線ワイヤ72の2ndボンド部72b側の方向に同じ角度で倒れるように傾斜させる場合に比べて、配線ワイヤ72の1stボンド部72aの立ち上がり部分の機械的強度を弱くすることができる。したがって、配線ワイヤ72に脆弱構造を容易に設けることができる。
また、本実施の形態において、配線ワイヤ72は、複数の屈曲部を有する。
これにより、簡単な形状で、配線ワイヤ72に脆弱構造を容易に設けることができる。
また、本実施の形態において、配線ワイヤ72の1stボンド部72aの立ち上がり部分は、素子ワイヤ71の1stボンド部の立ち上がり部分よりも長い。
これにより、配線ワイヤ72の機械的強度を、素子ワイヤ71の機械的強度よりも容易に脆弱にすることができる。したがって、容易に配線ワイヤ72を素子ワイヤ71よりも先に断線させることができる。
また、本実施の形態において、素子ワイヤ71及び配線ワイヤ72の各々の全体が封止部材50に埋まっている。
これにより、封止部材50の熱膨張と熱収縮との繰り返しによる素子ワイヤ71及び配線ワイヤ72への応力負荷をより均一にできるので、配線ワイヤ72を素子ワイヤ71よりもより断線しやすくできる。
また、本実施の形態において、複数の発光素子20(第1発光素子21、第2発光素子22、第3発光素子23、第4発光素子24、第5発光素子25)を囲む環状のダム部材60を備えている。また、ダム部材60には、封止部材50が充填されており、配線ワイヤ72は、ダム部材60の内側、かつ、ダム部材60の近傍に設けられている。
これにより、配線ワイヤ72を設けたとしても、複数の発光素子20から発する光が配線ワイヤ72によって遮光されたり吸収されたりすることを抑制することができる。
以上、本実施の形態における発光モジュール1によれば、並列接続された複数の発光素子20の一部が不点灯になることを抑制することができる。
したがって、配光特性が大きく変化した状態で発光モジュール1が発光することを抑制することができる。
また、発光モジュール1に一定の電流が供給されるように制御されているような場合でも、並列接続された複数の発光素子20の全部が消灯するので、一部の発光素子20に電流が過剰に投入されて発光素子20が異常発熱することも抑制できる。したがって、発光モジュール1の一部に熱が集中して発生することを抑制できるので、発光モジュール1を照明装置等に組み込んだ場合でも、発光モジュール1の周辺に配置されたレンズ等の光学部材や筐体等の樹脂部品が変形する等の不具合が発生することを抑制できる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る照明装置100の構成について、図7及び図8を用いて説明する。図7は、実施の形態2に係る照明装置100の断面図である。図8は、実施の形態2に係る照明装置100の外観斜視図である。
図7及び図8に示すように、本実施の形態に係る照明装置100は、例えば住宅等の天井に埋込配設されることにより下方(廊下や壁等)に光を照明するダウンライト等の埋込型照明装置である。照明装置100は、上記実施の形態1に係る発光モジュール1と、基部110及び枠体部120を結合してなる略有底筒状の器具本体と、当該器具本体に配置された、反射板130及び透光パネル140とを備える。
基部110は、発光モジュール1が取り付けられる取付台であるとともに、発光モジュール1で発生する熱を放熱するヒートシンクである。基部110は、金属材料を用いて略円柱状に形成されており、本実施の形態ではアルミダイカスト製である。
基部110の上部(天井側部分)には、上方に向かって突出する複数の放熱フィン111が一方向に沿って互いに一定の間隔をあけて設けられている。これにより、発光モジュール1で発生する熱を効率よく放熱させることができる。
枠体部120は、内面に反射面を有する略円筒状のコーン部121と、コーン部121が取り付けられる枠体本体部122とを有する。コーン部121は、金属材料を用いて成形されており、例えば、アルミニウム合金等を絞り加工またはプレス成形することによって作製することができる。枠体本体部122は、硬質の樹脂材料又は金属材料によって成形されている。枠体部120は、枠体本体部122が基部110に取り付けられることによって固定されている。
反射板130は、内面反射機能を有する円環枠状(漏斗状の)反射部材である。反射板130は、例えばアルミニウム等の金属材料を用いて形成することができる。なお、反射板130は、金属材料ではなく、硬質の白色樹脂材料によって形成してもよい。
透光パネル140は、光拡散性及び透光性を有する透光部材である。透光パネル140は、反射板130と枠体部120との間に配置された平板プレートであり、反射板130に取り付けられている。透光パネル140は、例えばアクリルやポリカーボネート等の透明樹脂材料によって円盤状に形成される。
なお、透光パネル140は設けなくても構わない。透光パネル140を設けない構成とすることにより、照明装置としての光束を向上させることができる。
また、図8に示すように、照明装置100には、発光モジュール1を発光させるための電力を生成して供給する点灯装置150と、商用電源からの交流電力を点灯装置150に中継する端子台160とが接続される。点灯装置150は、発光モジュール1を発光させるための電力を生成する電源回路を有する。
点灯装置150及び端子台160は、器具本体とは別体に設けられた取付板170に取付固定される。取付板170は、金属材料からなる矩形板状の部材を折り曲げて形成されており、その長手方向の一端部の下面に点灯装置150が取付固定されるとともに、他端部の下面に端子台160が取付固定される。取付板170は、器具本体の基部110の上部に取付固定された天板180と互いに連結される。
(変形例)
以上、本発明に係る発光モジュール及び照明装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施の形態において、配線ワイヤ72の脆弱構造は、1stボンド部72aの立ち上がり部を傾斜させる傾斜部としたが、これに限るものではない。その他の脆弱構造としては、配線ワイヤ72を素子ワイヤ71よりも細くした構造、又は、配線ワイヤ72の一部を細くした構造等が考えられる。
また、上記実施の形態において、配線ワイヤ72は、第1端子31に接続された主配線41及び第2端子32に接続された主配線41の両方に設けたが、これに限るものではなく、配線ワイヤ72は、第1端子31に接続された主配線41及び第2端子32に接続された主配線41のいずれか一方に設けてもよい。
また、上記実施の形態において、発光モジュール1は、青色LEDチップと黄色蛍光体とによって白色光を放出するように構成したが、これに限らない。例えば、赤色蛍光体及び緑色蛍光体を含有する蛍光体含有樹脂を用いて、これと青色LEDチップとを組み合わせることによりに白色光を放出するように構成しても構わない。
また、上記実施の形態において、LEDチップは、青色以外の色を発光するLEDチップを用いても構わない。例えば、青色LEDチップよりも短波長である紫外光を放出する紫外LEDチップを用いる場合、主に紫外光により励起されて三原色(赤色、緑色、青色)に発光する各色蛍光体を組み合わせたものを用いることができる。
また、上記実施の形態において、波長変換材として蛍光体を用いたが、これに限らない。例えば、波長変換材として、半導体、金属錯体、有機染料、顔料など、ある波長の光を吸収し、吸収した光とは異なる波長の光を発する物質を含んでいる材料を用いることができる。
また、上記実施の形態において、発光モジュール1は、調色可能な構成であってもよい。この場合、例えば、封止部材50を4つの直列接続体ごとにライン状に4本形成し、4本の封止部材50を低色温度の白色光と高色温度の白色光との色温度が異なる2色の光を発するものに分けて形成すればよい。
また、上記実施の形態において、並列接続された4つの直列接続体は、同一の電源によって連動して駆動するように構成されていたが、これに限るものではない。例えば、並列接続された4つの直列接続体の一部又は全部を独立して駆動できるように構成されていてもよい。
また、上記実施の形態2では、発光モジュール1をダウンライトに適用する例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、発光モジュール1は、ベースライト、スポットライト、電球形ランプ、又は、直管形ランプ等、その他の照明装置やランプにも適用することができる。さらに、発光モジュール1を照明用途以外の機器に用いることも可能である。
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。