JP2017197683A - エマルジョン燃料、その製造方法およびその製造装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】界面活性剤を用いることなく燃料油をエマルジョン化して、油水分離を引き起こすことなく安定した乳化状態を維持でき、燃費効率を向上できるエマルジョン燃料、その製造方法およびその製造装置を提供する。
【解決手段】燃料油と、添加剤と、水とを含む油中水滴型のエマルジョン燃料であって、添加剤は石炭油を含み、温度50℃において石炭油よりも低い動粘度を有する、エマルジョン燃料である。
【選択図】なし

Description

本発明は、エマルジョン燃料、その製造方法およびその製造装置に関する。
ディーゼルエンジンやボイラ等では、軽油、灯油、重油等の燃料油が用いられている。これらの燃料油に水を添加し乳化して得られるエマルジョン燃料は、燃料の使用量を低減でき、燃焼したときに生じる汚染物質(NO、SO、CO、粒子状物質(PM))の発生の抑制といった環境にも配慮した燃料として知られている。
エマルジョン燃料は、一般に燃料油と水とを混合したものであり、混合状態は、水の中に燃料油が存在するO/W型(水中油滴型)、燃料油の中に水が存在するW/O型(油中水滴型)に分けられる。O/W型のエマルジョン燃料は燃料油が水に包まれた状態であり、燃焼装置における配管の腐食や燃料ポンプの損傷などを生じさせる原因となるため、W/O型のエマルジョン燃料油を用いることが優位となっている。
W/O型のエマルジョン燃料は油水分離が生じやすいため、特に軽油、灯油、重油等のエマルジョン燃料では、燃料油と水とを均一に乳化し安定な乳化状態を維持するための乳化剤として界面活性剤を用いることが多い。しかしながら、界面活性剤は一般に高価であるため、界面活性剤の使用はエマルジョン燃料のコストアップを招く。
そこで、軽油、灯油、A重油、ガソリン等の燃料油にC重油を添加することにより、界面活性剤を使用しないまたは低減してコストを低減したエマルジョン燃料が知られている(たとえば、特許文献1〜2等)。
特開昭51−119003号公報 特開2011−148866号公報
本発明は、界面活性剤を添加しなくても、または添加量を低減しても、安定した乳化状態を維持でき、優れた燃費効率を有する新規なエマルジョン燃料、その製造方法およびその製造装置を提供することを目的とする。
本発明は、以下に示すエマルジョン燃料、その製造方法およびその製造装置を提供する。
〔1〕 燃料油と、添加剤と、水とを含む油中水滴型のエマルジョン燃料であって、
前記添加剤は、石炭油を含み、
前記燃料油は、温度50℃において前記石炭油よりも低い動粘度を有する、エマルジョン燃料。
〔2〕 前記石炭油は、前記石炭油と前記燃料油との総重量に対して0.5重量%以上10重量%以下である、〔1〕に記載のエマルジョン燃料。
〔3〕 前記水は、粒子径が100nm以上1000nm以下の粒子である、〔1〕または〔2〕に記載のエマルジョン燃料。
〔4〕 前記水は、前記エマルジョン燃料の総重量に対して5重量%以上50重量%以下である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のエマルジョン燃料。
〔5〕 前記石炭油は、クレオソート油、コールタール、無水タールよりなる群より選択される少なくとも1種である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のエマルジョン燃料。
〔6〕 前記燃料油は、灯油、軽油、A重油、ガソリン、バイオ燃料、再生油よりなる群より選択される少なくとも1種である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のエマルジョン燃料。
〔7〕 〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のエマルジョン燃料の製造方法であって、
前記燃料油と、前記添加剤と、前記水とを混合する混合工程を有する、エマルジョン燃料の製造方法。
〔8〕 〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のエマルジョン燃料の製造装置であって、
前記燃料油と、前記添加剤と、前記水とを混合する混合タンクを有する、エマルジョン燃料の製造装置。
本発明によれば、乳化状態の安定性に優れ、燃費効率を向上できるエマルジョン燃料、その製造方法およびその製造装置を提供することができる。
本発明の実施形態に係るエマルジョン燃料の製造装置の概念図である。 本発明の実施形態に係るエマルジョン燃料の製造装置の制御機構を示すブロック図である。 実施例における燃焼試験の結果を示す図である。 参考例における燃焼試験の結果を示す図である。
〔エマルジョン燃料〕
以下に、本発明のエマルジョン燃料の具体例を以下に説明する。
本発明のエマルジョン燃料は、石炭油を含む添加剤と前記石炭油よりも低い粘度を有する燃料油と水とを含むW/O型のエマルジョン燃料である。
(添加剤)
添加剤は、エマルジョン燃料油の乳化状態を安定化するものであって、石炭油を必須成分として含有するものであり、石炭油のほかに界面活性剤やC重油などを含んでいてもよい。添加剤の含有率は、エマルジョン燃料油の乳化状態を安定できる範囲であれば特に限定されないが、エマルジョン燃料油の総重量に対して0.5重量%以上10重量%以下であることが好ましく、1重量%以上5重量%以下であることがより好ましい。
石炭油とは、石炭を乾留して得られる副生成物や、この副生成物を蒸留して得られる物質をいう。石炭油としては、クレオソート油、コールタール、無水タール油よりなる群より選択される少なくとも1種を挙げることができ、このうちクレオソート油(JAO,JBO(JFEケミカル(株)))、無水タール油を用いることが好ましい。クレオソート油や無水タール油は、製品毎の品質のばらつきが小さく性状が安定しているため、エマルジョン燃料の乳化状態を良好なものとすることができる。
石炭油の含有率は、石炭油と燃料油との総重量に対して0.5重量%以上であり、2重量%以上であることが好ましい。石炭油の含有率が0.5重量%未満であると、エマルジョン燃料の乳化状態を安定化しにくくなる。石炭油の含有率の上限値は特に限定されないが、石炭油と燃料油との総重量に対して10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましい。石炭油の含有率が上記の範囲内であれば、界面活性剤を添加することなくエマルジョン燃料の乳化状態を安定化することができる。
石炭油は粘度が高く、添加量が少量であれば常温で取扱うことも可能であるが、石炭油の含有率が10重量%を超えると加熱して取扱う必要が生じ、エマルジョン燃料の生成工程が複雑になる。そのため、石炭油の添加量は、エマルジョン燃料の乳化状態を安定に維持できる範囲で可能な限り少量であることが望ましい。また、石炭油の添加量を少量とすることで、石炭油に含まれる窒素分や硫黄分の添加量も抑制されるため、エマルジョン燃料を燃焼したときに生じる汚染物質の排出量を抑制することができる。
(燃料油)
燃料油は、常温常圧で液体である石油、植物油、アルコールなどを用いることができる。燃料油は、温度50℃において前記石炭油よりも低い動粘度を有する燃料油であれば特に限定されない。石炭油は温度50℃における動粘度が30〜100mm/s(cSt)であるので、燃料油の温度50℃における動粘度が、石炭油の上記動粘度よりも低いものであればよいが、燃料油の温度50℃における動粘度が30mm/s以下であることが好ましく、0.7〜20mm/sであることが好ましい。燃料油の温度50℃における動粘度が小さくなりすぎると水との粘度差が小さいため、エマルジョン燃料を得にくくなる傾向がある。また、燃料油は水と混合したときに粘度が上昇することから、エマルジョン燃料油の温度50℃における動粘度が30mm/sを超えるとエマルジョン燃料を常温で使用しにくくなる傾向があるため、エマルジョン燃料油としたときに上記動粘度が30mm/s以下となる燃料油を選択することが望ましい。なお、上記動粘度は、JIS K 2283:2000で測定した値とする。
燃料油は、具体的には灯油、軽油、A重油、ガソリン、バイオ燃料、再生油(廃油)よりなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。灯油、軽油、A重油、ガソリン、バイオ燃料、再生油(廃油)は、水と混合した際の乳化状態の安定性が悪く油水分離が生じやすい。本発明では、石炭油を用いることにより安定したエマルジョン化が可能となる。したがって、エマルジョン化のために界面活性剤を使用しない、または低減することが可能になる。
(水)
水は、水道水、蒸留水、精製水、イオン交換水、アルカリ水、酸性水、純粋、超純水、廃水、ウルトラファインバブル水等を用いることができる。
水の含有率は、エマルジョン燃料の総重量に対して5重量%以上とすることが好ましく、10重量%以上とすることがより好ましく、15重量%以上とすることがさらに好ましい。水の含有率が5重量%未満であると、エマルジョン燃料を用いたときの燃費や燃料コストの向上が大きくは期待できない。また、水の含有率を15重量%以上とすることにより、エマルジョン燃料の燃焼時に生じる汚染物質であるNOの量を、燃料油単体の燃焼時に生じるNOの量と同程度とすることができる。
一方、エマルジョン燃料に含まれる水の量が多いほど燃料コストが下がるため、水の含有率は大きい方が好ましい。本発明のエマルジョン燃料では、水の含有率は、エマルジョン燃料の総重量に対して50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましく、30重量%以下であることがさらに好ましい。水の含有率が50重量%を超えると、エマルジョン燃料の安定性が低下する傾向がある。
本発明のエマルジョン燃料に含まれる水の粒子径は、燃費効率を向上する観点から、小さいことが好ましく、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。一方、エマルジョン燃料の燃焼時に生じる汚染物質を低減する観点からは、水の粒子径は、100nm以上であることが好ましく、300nm以上であることがより好ましい。なお、上記水の粒子径は、後述の実施例で測定した方法で測定した値とする。
水の粒子径は、燃料油、添加剤および水を混合するときの混合時間、混合圧力、撹拌速度を調整することで制御することができる。
(その他の成分)
本発明のエマルジョン燃料は、燃料油、添加剤、水以外のその他の成分として、酸化防止剤、粘度調整剤、防錆剤、分散剤、消泡剤、香料、着色剤、潤滑剤などを含んでいてもよい。エマルジョン燃料に含まれるその他の成分の含有率は、本発明のエマルジョン燃料の安定した乳化状態を維持できる範囲であれば特に限定されないが、エマルジョン燃料の総重量に対して20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
〔エマルジョン燃料の用途〕
本発明のエマルジョン燃料は、製造装置内にある混合タンクに燃料油、石炭油、水が供給され、これらが混合タンク内で混合されて生成され、ボイラ、ディーゼルエンジン、燃焼炉、乾燥炉などの燃焼装置に供給されて使用される。
〔エマルジョン燃料の製造装置〕
以下に、エマルジョン燃料の製造装置の具体例を示す。図1は、本発明の実施形態に係るエマルジョン燃料の製造装置の概念図である。図2は、本発明の実施形態に係るエマルジョン燃料の製造装置の制御機構を示すブロック図である。
具体的には、製造装置Aは、図1に示すように、水を供給する水タンクT1、石炭油を供給する石炭油タンクT2、燃料油を供給する燃料タンクT3、燃料油、石炭油、水が供給されて混合される混合タンクT4を備えている。
上記水タンクT1と上記混合タンクT4との間には、水タンクT1側から順に水流量計R1、水投入電磁弁V1、水流量調整弁V2が直列的に配設されている。上記石炭油タンクT2と上記混合タンクT4との間には、石炭油タンクT2側から順に石炭油ポンプP1、石炭油流量計R2、石炭油投入電磁弁V3が直列的に配設されている。上記燃料油タンクT3と上記混合タンクT4との間には、燃料油タンクT3側から順に燃料油流量計R3、燃料油投入電磁弁V4が直列的に配設されている。
上記混合タンクT4には混合タンク撹拌モータM4に取り付けた撹拌装置が設けられ、混合タンクT4で燃料油、石炭油、水が混合されてエマルジョン燃料が生成される。混合タンクT4には、循環経路Jが接続されており、循環経路Jには、混合タンクT4の排出口側から順に循環方向に、循環ポンプP2、ミキサMx、循環電磁弁V5が直列的に設けられている。
上記循環経路Jの出口には、移送電磁弁V6を介して貯蔵タンクT5が接続され、貯蔵タンクT5の出口には、貯蔵タンクT5の出口側から順に吐出ポンプP3、吐出電磁弁V7が配設されている。上記貯蔵タンクT5には貯蔵タンク撹拌モータM5に取り付けた撹拌装置が設けられている。
上記製造装置Aには、図2に示すようなコントローラCが設けられており、コントローラCには、コンピュータ等の操作部Op、上記した各流量計R1〜R3、石炭タンクT2に設けられた石炭タンク油量計L2、混合タンクT4に設けられた混合タンク油量計L4、貯蔵タンクT5に設けられた貯蔵タンク油量計L5からの出力情報が入力される。そして、コントローラCは、これらの出力情報に基づいて制御情報を生成し、上記した各電磁弁V1〜V7、各ポンプP1〜P3、ミキサMx、各モータM4〜M5に制御情報を出力する。
上記製造装置Aでは、操作部Opを操作して燃料油、石炭油、水を所望の混合重量割合に設定することで、燃料油量、石炭油量、水量がそれぞれ算出され、それに適用した開口量で上記電磁弁V1,V3,V4の開口量が決定される。上記電磁弁V1,V3,V4が開口されると、燃料油タンクT3から燃料油が混合タンクT4に供給され、その流量は燃料油流量計R3により検出される。石炭油は、石炭油ポンプP1により石炭油タンクT2から混合タンクT4に供給され、その流量は石炭油流量計R2により検出される。水は、水流量調整弁V2で流量を調整しながら混合タンクT4に供給され、その流量は水流量計R1で検出される。
混合タンクT4には、まず燃料油および石炭油が供給され、混合タンクT4内でスターラー等の撹拌装置で撹拌を開始すると同時にゆっくりと水が供給される。これにより、混合タンクT4内で燃料油、石炭油、水が上記撹拌装置で撹拌されてエマルジョン燃料となる。このエマルジョン燃料は、循環ポンプP2により混合タンクT4に接続された循環経路Jに導入される。エマルジョン燃料は、循環電磁弁V5が開口した状態の循環経路Jを2〜5回循環することにより、加圧溶解式混合器、旋回式混合器、せん断式混合器等のミキサMxで混合・撹拌されて、分散媒である水の粒子径の微細化を図った後、移送電磁弁V6が開口されて貯蔵タンクT5に供給される。貯蔵タンクT5内のエマルジョン燃料は、吐出電磁弁V7が開口されて吐出ポンプP3によりボイラの燃焼室に供給される。
上記のように、本発明のエマルジョン燃料油は、混合タンクT4に、まず燃料油と石炭油とを供給した後、水を供給してこれらを混合・撹拌することによって簡単に生成することができる。
なお、石炭油以外の添加油を用いる場合は、予め石炭油と混合しておいてもよく、石炭油とは別のタンクから、混合タンクT4に燃料油、石炭油とともに供給して混合するようにしてもよい。その他の成分についても、専用のタンクから混合タンクT4に適宜のタイミングで供給すればよい。
<実施例1:油水分離テスト>
図1に示す製造装置Aを用い、燃料油としてローサルファA重油(LSA)(クリーンA重油、昭和シェル石油(株)製)と石炭油としてクレオソート油(JBO、JFEケミカル(株)製)とを表1に示す割合で混合タンクT4に供給し、撹拌速度1000rpm、循環経路Jを圧力1.0MPaで循環するように撹拌を開始すると同時に、水道水を表1に示す割合となるまでゆっくりと供給し、温度20℃、撹拌速度1000rpm、撹拌時間10分として、循環経路Jを2回循環混合させた(試料1−1〜試料1−4)。図1に示す混合タンクT4での撹拌は、撹拌装置としてラモンドスターラーRS100A((株)ナノクス製)を用い、ミキサMxとしてラモンドナノミキサRNM030A−S((株)ナノクス製)を使用した。LSAおよびクレオソート油の物性は表2に示すとおりである。
得られたエマルジョン燃料を200mLのメスシリンダーに150mL投入し、24時間静置した後、油水分離の有無を目視で確認する油水分離テストを行った。結果を表1に示す。評価結果は以下のとおりである。
A:24時間静置後も油水分離は生じなかった。
B:12時間以上24時間未満の間に油水分離が生じた。
C:6時間以上12時間未満の間に油水分離が生じた。
D:6時間未満に油水分離が生じた。
<参考例1:油水分離テスト>
LSA、C重油(LPC28、昭和シェル石油(株)製)、水30重量%を用い、表1に示す割合で混合・撹拌した以外は、実施例1と同様の方法でエマルジョンを得、油水分離テストを行った(試料2−1〜2−4)。なお、LSA、水については、上記実施例1で使用したものと同じものを用いた。結果を表1に示し、C重油の物性を表2に示す。
<油水分離テストの結果の考察>
実施例1の結果から、クレオソート油を2重量%以上添加すれば油水分離を防止でき、安定な乳化状態のエマルジョン燃料が得られることがわかった。一方、参考例1の結果から、C重油は5重量%以上用いなければ油水分離を防止できないことがわかった。以上より、クレオソート油を用いることにより、C重油を用いた場合よりも少ない添加量で、油水分離を防止しエマルジョン燃料の乳化状態を安定化できることがわかる。
Figure 2017197683
Figure 2017197683
<実施例2:燃焼試験>
LSAとクレオソート油との総重量に対してLSA98重量%、クレオソート油2重量%の混合比とし(実施例1の試料1−3のLSAとクレオソート油との混合比に相当)、エマルジョン燃料100重量%に対する水の混合率を5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%に変化させた以外は、実施例1と同様の方法でエマルジョン燃料を得た。なお、LSA、クレオソート油、水については、上記実施例1で使用したものと同じものを用いた。
次いで、図1に示す製造装置Aで生成された上記エマルジョン燃料を、バーナ(GNP−10、加藤鉄工所製)を用いて噴射圧力1.0MPaで噴射して、簡易燃焼炉(炉サイズ:内径600mm、幅1500mm)内で燃焼させる燃焼試験を行った。排ガス分析器(Testo350S、テストー製)を用いて、簡易燃焼炉から排出される排ガスの排気煙道から、排ガス分析器のプローブで排ガス0.6L/minを採取し、排ガス内のNO、NO、SO、CO、COの量を測定した。結果を図3に示す。図3には、比較のために、LSAのみを用いた場合およびLSA98重量%、クレオソート油2重量%を混合した混合油を用いた場合について、上記と同様の方法で燃焼試験を行い、排ガスを分析した結果も示している。
<参考例2:燃焼試験>
LSAとC重油との総重量に対してLSA95重量%、C重油5重量%の混合比とし(参考例1の試料2−3のLSAとC重油との混合比に相当)、エマルジョン燃料100重量%に対する水の混合率を5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%に変化させた以外は、実施例1と同様の方法でエマルジョン燃料を得た。なお、LSA、C重油、水については、上記参考例1で使用したものと同じものを用いた。
次いで、上記実施例2と同様の方法で燃焼試験を行った。結果を図4に示す。図4には、比較のために、LSAのみを用いた場合およびLSA95重量%、C重油5重量%を混合した混合油を用いた場合についても上記と同様の方法で燃焼試験を行い、排ガスを分析した結果も示している。
<燃焼試験の結果の考察>
実施例2の結果から、クレオソート油を用いたエマルジョン燃料に含まれる水の割合を15〜30重量%にすることにより、排出されるNOの量を、LSA単独を燃料とした場合と同程度にできることがわかる。
また、クレオソート油を用いたエマルジョン燃料では、クレオソート油に含まれる硫黄成分がC重油に含まれる硫黄分よりも少ないため(表2)、C重油を用いたエマルジョン燃料に比べて、排出されるSOの量を抑制することができる。
<実施例3:燃費評価>
実施例2で得た各エマルジョン燃料について、図1に示す生成装置を用い、上記燃焼試験で用いたものと同じ簡易燃焼炉、排ガス分析器を用いて燃費評価を行った。具体的には、簡易燃焼炉の温度を十分に昇温した後、エマルジョン燃料を燃焼させ、簡易燃焼炉の排気煙道から排ガス分析器のプローブで採取した排ガスを排ガス分析器で検出して、排ガスの温度が700℃、酸素濃度が3.5重量%となるように、エマルジョン燃料の燃焼状態を維持して30分間燃焼させた。
この30分間の燃焼の前後において、貯蔵タンクT5のエマルジョン燃料の油量を貯蔵タンク油量計L5で検出して、燃焼の前後における油量の体積差[L]を測定し、この体積差[L]の値とエマルジョン燃料の比重とを用いて、単位時間[h]あたりに消費されるエマルジョン燃料の消費重量[kg/h]を算出した。エマルジョン燃料中のLSAおよびクレオソート油の重量割合(水以外の重量)に基づいて、上記エマルジョン燃料の消費重量[kg/h]に含まれるLSAおよびクレオソート油の重量を、エマルジョン燃料使用時のLSAおよびクレオソート油の消費重量[kg/h]として算出した。
比較のために、燃料としてLSAのみを用いた場合(LSA=100)についても上記と同様の方法で実験を行い、単位時間[h]あたりに消費されるLSAの重量を、LSA単独使用時の消費重量[kg/h]として算出した。
上記で算出されたエマルジョン燃料使用時のLSAおよびクレオソート油の消費重量[kg/h]およびLSA単独使用時の消費重量[kg/h]から、下記の(式1)で燃費改善率を算出した。
(式1):
{1−(エマルジョン燃料使用時のLSAおよびクレオソート油の消費重量[kg/h]/LSAの消費重量[kg/h])}×100[%]
結果を表3に示す。表3には、比較のために、LSAのみを単独で用いた場合(LSA=100)およびLSA98重量%、クレオソート油2重量%を混合した混合油を用いた場合(水の割合:0)について、上記と同様の方法で燃費改善率を算出した結果も示している。なお、表3中の値が大きいほど燃費改善率に優れていることを示している。
<参考例3:燃費評価>
参考例2で得たエマルジョン燃料について、実施例3と同様の方法で燃費評価を行い、燃費改善率を算出した。その結果を表3に示す。表3には、比較のために、LSA95重量%、C重油5重量%を混合した混合油を用いた場合(水の割合:0)について、上記と同様の方法で燃費評価を行って、燃費改善率を算出した結果も示している。
<燃費評価の結果の考察>
表3の結果から、クレオソート油を用いたエマルジョン燃料は、LSAを単独で用いた場合よりも燃費改善効率に優れていることがわかる。また、クレオソート油の総発熱量は、C重油の総発熱量よりも低く(表2)、実施例3および参考例3では、クレオソート油の混合比がC重油の混合比よりも少ないにもかかわらず、水の割合が10重量%以上のエマルジョン燃料において、クレオソート油を用いたエマルジョン燃料は、C重油を用いたエマルジョン燃料よりも燃費改善効率に優れていることがわかる。
Figure 2017197683
<実施例4:水の粒子径>
実施例1で得た試料1−3のエマルジョン燃料をプレパラートに0.1mL採取した状態で顕微鏡(GR−D8T2、松電舎製)にて撮影し、撮影画像を画像分析装置(A像君、旭化成エンジニアリング製)で粒径分析して、エマルジョン燃料中の水の粒子径を算出した。その結果を表4に示す。
<参考例4:水の粒子径>
参考例1で得た試料2−3のエマルジョン燃料について、上記実施例4と同様の方法で粒子径を測定し水の粒子径を算出した。その結果を表4に示す。
<粒子径の測定結果の考察>
実施例4および参考例4の結果から、クレオソート油を用いたエマルジョン燃料油では、C重油を用いた場合に比べて少量の添加量で粒子径を小さくできることがわかる。したがって、クレオソート油を用いたエマルジョン燃料油では、水の粒子径を微細化できるため、C重油を用いたエマルジョン燃料油に比べて、効率的に燃費を改善することができる。
Figure 2017197683
本発明のエマルジョン燃料は、ディーゼルエンジンやボイラ等において好適に用いることができる。
A 製造装置、T1 水タンク、T2 石炭油タンク、T3 燃料油タンク、T4 混合タンク、T5 貯蔵タンク、R1 水流量計、R2 石炭油流量計、R3 燃料油流量計、V1 水投入電磁弁、V2 水流量調整弁、V3 石炭油投入電磁弁、V4 燃料油投入電磁弁、V5 循環電磁弁 V6移送電磁弁、V7 吐出電磁弁、P1 石炭油ポンプ、P2 循環ポンプ、P3 吐出ポンプ、Mx ミキサ、M4 混合タンク撹拌モータ、M5 貯蔵タンク撹拌モータ、J 循環経路、Op 操作部、C コントローラ、L2 石炭油タンク油量計、L4 混合タンク油量計、L5 貯蔵タンク油量計

Claims (8)

  1. 燃料油と、添加剤と、水とを含む油中水滴型のエマルジョン燃料であって、
    前記添加剤は、石炭油を含み、
    前記燃料油は、温度50℃において前記石炭油よりも低い動粘度を有する、エマルジョン燃料。
  2. 前記石炭油は、前記石炭油と前記燃料油との総重量に対して0.5重量%以上10重量%以下である、請求項1に記載のエマルジョン燃料。
  3. 前記水は、粒子径が100nm以上1000nm以下の粒子である、請求項1または請求項2に記載のエマルジョン燃料。
  4. 前記水は、前記エマルジョン燃料の総重量に対して5重量%以上50重量%以下である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のエマルジョン燃料。
  5. 前記石炭油は、クレオソート油、コールタール、無水タールよりなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のエマルジョン燃料。
  6. 前記燃料油は、灯油、軽油、A重油、ガソリン、バイオ燃料、再生油よりなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエマルジョン燃料。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のエマルジョン燃料の製造方法であって、
    前記燃料油と、前記添加剤と、前記水とを混合する混合工程を有する、エマルジョン燃料の製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のエマルジョン燃料の製造装置であって、
    前記燃料油と、前記添加剤と、前記水とを混合する混合タンクを有する、エマルジョン燃料の製造装置。
JP2016091117A 2016-04-28 2016-04-28 エマルジョン燃料、その製造方法およびその製造装置 Pending JP2017197683A (ja)

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