JP2017196841A - レトルト処理用包材として使用するためのレーザ印字用多層積層フィルム、並びにそれよりなる包装体及び印字体 - Google Patents

レトルト処理用包材として使用するためのレーザ印字用多層積層フィルム、並びにそれよりなる包装体及び印字体 Download PDF

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【課題】 レトルト処理用包材として使用するためのレーザ印字用多層積層フィルムであって、安価な材料からなり、製造が容易であり、印字位置の変更が容易であって、視認性を向上させたレーザ印字用多層積層フィルムを提供すること。【解決手段】 少なくとも、基材層、印刷層、及びシーラント層からなる、レトルト処理用包材として使用するためのレーザ印字用多層積層フィルムであって、該基材層は、樹脂フィルムからなる層であり、該印刷層は、レーザ光の照射により発色する発色材料及びバインダ樹脂を含む、レーザ光により印字可能な発色インキと、硬化剤とからなる層であり、レトルト処理後の該基材層と印刷層との間のラミネート強度が1.0N/15mm以上である、レーザ印字用多層積層フィルム。【選択図】 図1

Description

本発明は、飲食品、医薬品、医薬部外品、医療器具等を充填包装するレトルト処理用包材として使用することができ、細密な図形や文字を低出力のレーザにより印字できるレーザ印字用多層積層フィルム、それを用いた包装体、及びそれらにレーザによる印字画像を形成してなる印字体に関する。
従来、缶、瓶、プラスティックボトル、包装袋等の包装容器及びそれら包装体を包装する包装材の表面に、予め文字、記号、図等の絵柄を印刷インキ層で形成する以外に、例えば、製造年月日、メーカー、品名、消費期限等の付加情報を後からインク等で印字する方法が広く知られている。
包装体を構成する包装容器あるいは包装材は、各種用途に用いられ、使用される目的、使用状況等に応じて、多種多様な要求、要望に応えられるように材料の選択、積層構成あるいは構造を変更し、包装体として用いられている。そのため、包装体は包装の形態、利用状況に応じた材料の変更などにより多種多様な積層構造を有する。
このような多種多様な包装材に対して、包装材毎に表記を必要とされる付加情報を適切かつ的確に印字できる技術が求められている。
一方、包装体である包装袋等の包装容器や包装材に対して、付加情報を印字する技術としては、周知の印刷法、インクジェットプリンター、又はレーザ照射などにより、包装袋の表面に、あるいは包装材の積層構造の層間に付加情報を印字することがすでに知られている。包装容器や包装材に前もって決められた絵柄や固定情報を印刷する際には、インクジェット印刷、汎用の印刷法により、層間に印刷層を形成できるが、情報が変更される付加情報は前もって設定できないこともあり、包装体の表面に印字されることがあり、印刷の乾き具合、包装体とインクとの適合性、高速で移動する包装体の印字面の接触などにより印刷がかすれ、判読不明などの状態になるなど適切かつ的確に印字できないことが問題となっている。
特に、多種多様な積層構造を有する包装材料において、加圧下で100℃を越えて湿熱殺菌することを意味するレトルト殺菌処理に耐えられる、耐湿熱性、耐レトルト性を有することを求められる厳しい条件下で使用することを目的とするレトルト処理用包材において、包装しながら付加情報を印刷する上での従来の問題を解決でき、付加情報を適切かつ正確に、自由にかつ鮮明に印字し、視認性を向上させたレトルト処理用包材、及びそれを用いた包装体並びにそれらの印字体を提供することが求められている。
レーザ光により印字する技術として、従来からYAGレーザ、YVO4レーザ、ファイバレーザ等を照射することによりフィルム上へ印字することが知られている。そして、レーザにより印字できる多層積層フィルムとしては、レーザ照射により変色する特殊インキを中間層(発色層)として使用するフィルムが知られている(特許文献1)。
そしてこのような特殊インキは非常に高価であるため、基材上の印字したい部分のみに、該特殊インキ層を予め設けることが行われている。しかしながら、その場合においても位置合わせが難しく、印字位置を容易に変更することもできない。また、印字線が細く、読み取り難いという欠点がある。
通常のインキも、YAG又はYVO4レーザの照射により若干変色する。したがって、このような通常インキを中間層(発色層)として使用することも知られている(特許文献2)。しかしながら、この方法においては強力なレーザ光を照射することによって中間層
に印字部を形成する必要がある。すなわち、十分な視認性を得るために、レーザ照射部分の中間層が、その深さ方向(フィルムの一方の表面から他方の表面に向かう方向)の全厚さにわたって、全て蒸散するまでレーザ出力を高める必要がある。
したがって、強力なレーザ光の照射によって、ベースとなるフィルムに穴があくなどの問題がある。また、強力なレーザ光を照射する必要があることから印字スピードが遅いという問題がある。
特開2007−55110号公報 特開2007−217048号公報
本発明は、多種多様な積層構造を有する包装材料において、特に、レトルト処理用包材として使用するためのレーザ印字用多層積層フィルム、並びにそれよりなる包装体及び印字体において、包装時、付加情報を印刷する上での従来の問題を解決するため、安価な材料からなり、製造が容易であり、印字位置の変更が容易であって、かつベースとなるフィルムにダメージを与えない程度の低出力のレーザを照射することにより適当な太さを有し読み取り易い印字線が得られる、付加情報を適切かつ正確に、任意の位置にかつ鮮明に印字し、視認性を向上させたレーザ印字用多層積層フィルム、並びにそれよりなる包装体及び印字体を提供することを目的とする。
本発明者らは、種々研究の結果、少なくとも、基材層、印刷層、及びシーラント層からなる、レトルト処理用包材として使用するためのレーザ印字用多層積層フィルムであって、該基材層は、樹脂フィルムからなる層であり、該印刷層は、レーザ光の照射により発色する発色材料及びバインダ樹脂を含む、レーザ光により印字可能な発色インキと、硬化剤とからなる層であり、レトルト処理後の該基材層と印刷層との間のラミネート強度が1.0N/15mm以上である、レーザ印字用多層積層フィルムが、上記の目的を達成することを見出した。
そして、本発明は、以下の点を特徴とする。
(1)少なくとも、基材層、印刷層、及びシーラント層からなる、レトルト処理用包材として使用するためのレーザ印字用多層積層フィルムであって、該基材層は、樹脂フィルムからなる層であり、該印刷層は、レーザ光の照射により発色する発色材料及びバインダ樹脂を含む、レーザ光により印字可能な発色インキと、硬化剤とからなる層であり、レトルト処理後の該基材層と印刷層との間のラミネート強度が1.0N/15mm以上である、レーザ印字用多層積層フィルム。
(2)レトルト処理後の基材層と印刷層との間のラミネート強度が、2.0N/15mm以上である、上記(1)に記載のレーザ印字用多層積層フィルム。
(3)発色材料がビスマス系化合物である、上記(1)又は(2)に記載のレーザ印字用多層積層フィルム。
(4)ビスマス系化合物が、水酸化ビスマス、酸化ビスマス、次炭酸ビスマス及び硝酸ビスマスからなる群より選択される1種類又はそれ以上の化合物である、上記(3)に記載のレーザ印字用多層積層フィルム。
(5)発色インキが、金属酸化物及び複合酸化物からなる群より選択される1種類又はそれ以上の化合物を含む、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のレーザ印字用多層積層フィルム。
(6)発色インキが、銅系化合物及びモリブデン系化合物からなる群より選択される1種
類又はそれ以上の化合物を含む、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のレーザ印字用多層積層フィルム。
(7)印刷層とシーラント層との間に更に、白色インキからなる印刷用下地層を備える、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のレーザ印字用多層積層フィルム。
(8)更にガスバリア層を備える、上記(1)〜(7)のいずれかに記載のレーザ印字用多層積層フィルム。
(9)ガスバリア層が、アルミニウム金属箔、金属蒸着膜、又はガスバリア性透明蒸着膜である、上記(8)に記載のレーザ印字用多層積層フィルム。
(10)ガスバリア層が、基材層上に設けられたガスバリア性透明蒸着膜である、上記(8)又は(9)に記載のレーザ印字用多層積層フィルム。
(11)上記(1)〜(10)のいずれかに記載のレーザ印字用多層積層フィルムからなる包装体。
(12)上記(1)〜(10)のいずれかに記載のレーザ印字用多層積層フィルム又は上記(11)に記載の包装体に、YAGレーザ、YVO4レーザ又はファイバレーザのレーザ光を基材層側から照射することにより形成された印字画像を有する印字体。
本発明のレトルト処理用包材として使用するためのレーザ印字用多層積層フィルムは、印刷層が、レーザ光の照射により発色する発色材料及びバインダ樹脂を含む、レーザ光により印字可能な発色インキと、硬化剤とからなる層であって、レトルト処理後の該基材層と印刷層との間のラミネート強度が1.0N/15mm以上である。したがって、本発明のレーザ印字用多層積層フィルムは、安価な材料からなり、製造が容易であり、印字位置の変更が容易である。また、基材層をなす樹脂フィルムにダメージを与えない程度の低出力のレーザを照射することにより、鮮明な印字画像を形成することができる。また、レトルト処理後も、層間剥離や印字部の浮きが発生することがなく、美麗な外観が得られる。
またさらに、本発明のレーザ印字用多層積層フィルムに、YAG、YVO4又はファイバレーザを、基材側から照射することにより、印刷層を形成する発色材料を含有するインキ成分が低出力のレーザ照射によって発色し一部炭化し、基材と印刷層との境界に発色域が広がるため弱い出力で、すなわち、印刷層を全層厚にわたって全て蒸散させるまでレーザ出力を高める必要なしに、基材側からの視認性に優れたレーザ印字画像を鮮明に形成することができる。
さらに、本発明の印字体は、レーザ印字画像が、そのフィルム表面ではなく、内部、すなわち基材と印刷層との間に施される。したがって、この画像は、耐摩耗性に優れることから擦れ等による消失を効果的に防止することができ、且つ、その付加情報の変更を防止することができる。
包装体の内容物に接する層以外の少なくとも内層の発色インキの印刷層が、レーザ光の照射により印字可能な印字層となることにより、レーザ印字用多層積層フィルムの表面にインキを接触させることなく印字可能で、また包装体の内容物由来の油脂分により印字されたインキを溶解させることなく、衛生性に優れたものができる。
本発明のレーザ印字用多層積層フィルムの層構成について、その一例を示す概略的断面図である。 本発明のレーザ印字用多層積層フィルムの層構成について、別の一例を示す概略的断面図である。 本発明のレーザ印刷用多層積層フィルムの層構成について、別の一例を示す概略的断面図である。 本発明の図1に示すレーザ印字用多層積層フィルムを使用し、これにレーザ光線を照射してレーザ印字画像を形成した印字体の層構成について、その一例を示す概略的断面図である。
本発明に係るレーザ印字用多層積層フィルム及びそれを用いた包装体、及びそれらの印字体の層構成について例示して、図面を参照しながら、以下に詳しく説明する。
図1は、本発明のレーザ印字用多層積層フィルムの層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
図1に示されるように、本発明のレーザ印字用多層積層フィルムは、基材層1、印刷層2、シーラント層3の順序に積層された構成を基本とし、ここで、印刷層2は、レーザ光の照射により発色し印字可能な発色インキと硬化剤とからなる層である。
別の態様においては、更にガスバリア層を備えてもよく、例えば、図2に示されるように、ガスバリア層が、基材層1上に設けられたガスバリア性透明蒸着膜4であってもよい。
別の態様においては、図3に示されるように、印刷層2とシーラント層3との間に更に、白色インキからなる印刷用下地層5を備えてもよい。
図4に示されるように、本発明の印字体は、本発明のレーザ印字用多層積層フィルムに、YAG、YVO4又はファイバレーザを基材層側から照射することにより製造されるものであって、印刷層2の表面に、炭化したインキ成分が広がった印字部6を有する。
(基材層)
本発明において、基材層は、その使用目的、用途等に応じた樹脂フィルムであって、且つ、印刷層を積層した際に、該印刷層とのラミネート強度が1.0N/15mm以上であり、且つ、レトルト処理後もこれを維持できる任意の樹脂フィルムを使用することができる。
具体的には、基本素材となり、更に、印字後は、表面保護層を構成し、かつ、レーザ印字画像等を透視し得るものであることから、機械的、物理的、化学的等において優れた強度を有し、耐突き刺し性等に優れ、その他、耐熱性、防湿性、透明性等に優れた樹脂フィルムを使用することができる。
本発明において、このような樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂等の各種の樹脂フィルムから選択することができる。
なお、上記各種の樹脂1種ないしそれ以上を使用し、製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離型性、難燃性、抗菌性、電機的特性、強度、ラミネート強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスティック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、その他等を使用することができ、更に、改質用樹脂等も使用することができる。
印刷層と基材とのラミネート強度、密着性を調整してもよい。必要に応じて、基材層の表面に、積層前に所望の表面処理を施すことができる。表面処理としては、例えば、コロ
ナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理等の前処理を施すことができる。
また、印刷層と基材との間に、例えば、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層等を設けてもよい。
上記の樹脂フィルムとしては、未延伸フィルム、あるいは、一軸方向又は二軸方向に延伸した延伸フィルム等のいずれでも使用することができる。
本発明において、上記の各種の樹脂フィルムとしては、例えば、上記の各種の樹脂1種類ないしそれ以上を使用し、押出法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の製膜法を用いて、上記の各種の樹脂を単独で製膜化する方法、更には2種以上の樹脂を使用し、製膜化する前に混合して製膜化する方法により、各種の樹脂のフィルムを製造し、更に、例えば、テンター方式、あるいは、チューブラー方式等を利用して一軸方向又は二軸方向に延伸した延伸フィルム等のいずれのものでも使用することができる。
本発明において、その樹脂フィルムの厚さとしては強度、耐突き刺し性等について、必要最低限に保持され得る厚さであればよく、厚すぎると、コストを上昇するという欠点もあり、逆に、薄すぎると、強度、耐突き刺し性等が抵下して好ましくないものである。
本発明においては、上記のような理由から、10〜100μm、好ましくは10〜50μmが望ましい。
本発明において、基材を形成する樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びPET基材に透明蒸着層を形成したものを特に好適に用いることができる。該ポリエチレンテレフタレートフィルムは、特に包装材料としての用途において、安定性、加工性、コスト、耐熱性及び耐薬品性等の面で優れており、また、後述の印刷層として好適に使用される発色インキを積層する際に、該印刷層との好ましいラミネート強度を得ることができる。基材として透明蒸着層を形成したPETを用いる場合は、ガスバリア層を別に設ける必要はないが、必要に応じてガスバリア層を積層してもよい。
(印刷層)
本発明において、印刷層は、レーザ光により発色し印字可能なレーザ用印字部として機能するものであって、レーザ発色インキと硬化剤とからなる層である。このレーザ発色インキは、低出力のレーザ光により発色する発色材料を少なくとも含む発色インキが好適に用いられる。好ましくは、レーザ発色インキは、白色顔料などの無機化合物をさらに含むものである。レーザ発色インキと硬化剤とからなる印刷層に更に印刷用下地層を設けて多層化することにより、より鮮明な印字画像を得ることもできる。
本発明において、発色インキは、レーザ光の照射により発色する発色材料及びバインダ樹脂を含む。
本発明で用いるレーザ光により発色する発色材料としては、従来公知のものを用いることができる。具体的には、染料・顔料等の着色剤、粘土類等を使用することができ、具体的には、黄色酸化鉄、無機鉛化合物、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、水銀、コバルト、銅、ニッケル等の金属化合物、真珠光沢顔料、珪素化合物、雲母類、カオリン類、珪砂、硅藻土、タルク、酸化チタン被覆雲母類、二酸化錫被覆雲母類、アンチモン被覆雲母類、スズ+アンチモン被覆雲母類、スズ+アンチモン+酸化チタン被覆雲母類等の一種又は二種以上を使用することができる。
本発明では、低出力のレーザにより発色する発色材料として、特に、ビスマス系化合物を少なくとも用いる。ビスマス化合物としては、具体的には、特に限定されないが、例えば、酸化ビスマス、硝酸ビスマス、オキシ硝酸ビスマスなどの硝酸ビスマス系、塩化ビスマスなどのハロゲン化ビスマス系、オキシ塩化ビスマス、硫酸ビスマス、酢酸ビスマス、
クエン酸ビスマス、水酸化ビスマス、チタン酸ビスマス等が挙げられ、なかでも、入手が容易であり、安価であるという観点から、好ましくは、硝酸ビスマス、水酸化ビスマスが望ましい。ビスマス系化合物としては、一種又は二種以上の化合物を含むことができる。また、本発明はビスマス系化合物を少なくとも含む発色材料を用いるものであって、レーザ光により発色する発色材料であればビスマス化合物以外のものを併用することもできる。
本発明では、ビスマス系化合物を少なくとも含む発色材料を用いるものであって、さらにレーザ光により発色する発色材料及び又は発色効率を上げるため無機化合物を用いることができるものである。無機化合物として金属酸化物、複合酸化物又は金属塩あるいはそれらの1種類又は2種類以上の化合物を用いることが、低出力のレーザ光の照射であっても無機化合物が、ある場合は発色材料として機能すること及び又は無機化合物が発熱効率を上げるように機能することで発色材料の発色を助け、あるいは発色インキの白色度をアップするように機能するため好ましい。
このような無機化合物としては、一般に印刷において汎用の印刷用下地層として用いている白色インキに用いられる顔料を用いることができる。好ましくは、金属酸化物として、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ニッケル、酸化スズ、酸化ネオジム、マイカ、ゼオライト、カオリナイト等を1種又はそれ以上含有することができる。
本発明において、このような無機化合物としては、金属酸化物に限ることなく、銅系化合物、モリブデン系化合物、銅・モリブデン複合酸化物、銅・タングステン化合物、金属塩などが発色材料としても機能することから好適に用いることができる。
銅系化合物としては、例えば、銅、酸化銅、ハロゲン化銅、ギ酸、クエン酸、サリチル酸、ラウリル酸、シュウ酸、マレイン酸などの有機酸銅、リン酸銅、ヒドロキシリン酸銅などが好適に用いることができる。
モリブデン系化合物として、モリブデン、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン、塩化モリブデン、モリブデン酸金属(金属:K、Zn、Ca、Ni、ビスマス、Mgなど)が好適に用いることができる。
金属塩として、硫酸、硝酸、シュウ酸、炭酸などの酸とバリウム、コバルト、マグネシウム、ニッケル、鉄などの金属との塩を用いることができる。
本発明では、特に、レーザ発色インキとして、発色材料としてビスマス系化合物を少なくとも含有するものであって、その他に白色顔料として酸化チタンを含有するものが、好適に用いられる。
低出力のレーザ光により発色するビスマス系化合物の発色材料は、インキ組成物に対して固形分換算で0.1〜95.0質量%の範囲で含有される。本発明においては、その発色材料の含有量は、1〜30質量%であることが好ましい。1質量%未満では、発色、印字が不十分、不鮮明となることなどの理由から好ましくなく、含有量が増加するほど印字の発色は濃くなっていくが、30質量%以上にしてもその濃度上昇による視認性の差が顕著に認識できるものではなく、むしろ、コストアップ、印刷層が硬くなり、ひび割れ、強度低下を導き、レーザ光の照射により発色する発色材料自体の顔料色が印刷層に色を付けてしまうこと等の理由から好ましくない。
レーザ発色インキが上記無機化合物を含む場合、その含有量は、インキ組成物に対して固形分換算で1〜99質量%である。含有量が増加するほど印字の発色は濃くなって行くが、その含有量は、5〜65質量%であることが好ましい。5質量%より少ないと発色、印字が不十分、不鮮明となり、65質量%を越えると、無機化合物の増加によりコストアップ、印刷層が脆弱になり、強度低下を導くこと等の理由から好ましくない。
レーザ発色インキからなる印刷層は、膜厚が0.05〜20μmが好ましく、より好ましくは0.1〜7μm程度である。膜厚が0.05μm未満であるとレーザ光線照射により発色する発色材料による発色、印字が不十分、不鮮明となる場合がある。一方、膜厚が増加するほど印字の発色は濃くなっていくが、膜厚20μmを越えると、レーザ光の照射により発色する発色材料による発色、印字は十分ではあるが、発色材料を多量に使用するためのコストアップ、印刷層の強度低下、レーザ光線照射により発色する発色材料自体の顔料色がレーザ発色インキ層に色を付けること等の理由から好ましくない。なお、顔料使用量が同量の場合、添加濃度が高く、膜厚が薄い方が、印字の視認性は若干向上する。
本発明の印刷層の発色インキを、必要に応じて慣用の溶剤で希釈し、硬化剤と混合し、基材上に印刷又は塗布することにより、印刷層を形成することができる。発色インキ成分として金属酸化物が多いと、フィルムがレーザ照射によるダメージを受け易くなる。逆に、金属酸化物が少ないと、印字画像が不鮮明になり易い。
本発明にあっては、印刷層に印字画像を形成した場合に、その画像の視認性を向上させる目的で、印刷層とシーラント層との間に、さらに着色された印刷用下地層を設けることができる。この場合、コントラストが大きく異なる色を配し、さらには画像の背面を遮光することができるため、被包装体の色合いや透明度、照明具合によらず、印字画像の視認性を常時、確保することができる。
印刷用下地層としては、印刷層のレーザ光の照射により発色する色、印刷層自体の色などによって、印字が鮮明に視認できるよう着色の色、顔料の種類を任意に選択する。例えば、印刷層が透明性の高い灰色であり、レーザによる発色が黒色、内容物が黒色である場合は、白色の着色剤を選択することにより、高い視認性が得られる。またさらに、印刷層に隣接して白色インキからなる印刷用下地層を設けることにより、印刷層の発色インキの発色効率が高まり、濃く太い印字線が得られ易い。
白色の着色下地には、例えば、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポン、三酸化アンチモン、アナタス形酸化チタン、ルチル形酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム等の白色顔料の一種又は二種以上を使用することができる。
印刷用下地層は、膜厚が0.05〜20μmが好ましく、より好ましくは0.1〜7μmである。膜厚が0.05μm未満であると着色が不十分となり、視認性も不十分となる。一方、膜厚が増加するほど印字の発色は濃くなり視認性は向上するが、膜厚が20μmを越えると、コストアップ、印刷用下地層の強度低下等の理由から好ましくない。なお、印刷用下地層全体に対する着色成分の含有量が同量の場合、添加濃度を低くして、膜厚を厚くした方が、着色の濃度及び印字の視認性は向上する。
発色インキを構成するバインダ樹脂としては、具体的には、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で、又は2種以上混合して使用される。特に、印刷層として用いられる発色インキにおいて、バインダ樹脂としてポリウレタン樹脂が好適に使用される。該バインダ樹脂は、上述の基材層上に積層する際に、該基材層との好ましいラミネート強度を与え、レーザ光による印字において、発色インキの成分が印刷層と基材層との間に適度に広がり、文字として認識できるようになる。
本発明において、基材層と印刷層との間のラミネート強度は、JIS K7127に準拠して、レトルト処理(121℃で30分間の高圧熱水処理)後に、1.0N/15mm以上であり、より好ましくは1.0〜20N/15mmの範囲であり、さらに好ましくは2.0N/15mm以上、特に2.0〜20N/15mmの範囲である。
レトルト処理後の基材層と印刷層との間のラミネート強度が1.0N/15mm未満であると、レトルト処理後に層間剥離が生じ、また、印字部領域に基材フィルムの浮きが生じ得るため、確実に鮮明な印字画像を得ることができない。
逆に、ラミネート強度が20N/15mmより大きいと、レーザ光の照射により炭化した発色インキが、基材層と印刷層との境界に広がりにくく、十分な発色域を形成しにくい。
基材層と印刷層とのラミネート強度を所望の範囲に調整するために、本発明において、印刷層は、発色インキに加えて更に硬化剤を含有する。
硬化剤としては、発色インキ中に使用されるバインダ樹脂に合わせて、例えばイソシアネート化合物が使用できる。例えば、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、芳香脂肪族イソシアネート、及びこれらのイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物等)等を、単独又は2種以上を混合して用いてもよい。
本発明において、印刷層に用いられる硬化剤の配合量は、発色インキ100質量部に対して、通常は1〜5質量部の範囲であり、好ましくは1〜3質量部である。硬化剤の配合量が1質量部未満であると、硬化が不充分となり、基材層と印刷層とのラミネート強度が不足し、レトルト処理に不適である。また、硬化剤の配合量が5質量部を超えると、硬化剤がブリードアウトし、巻き上げてロール状にした場合に基材層の非印刷面とブロッキングする恐れがある。
硬化剤は、有機溶媒へ溶解され、使用直前に発色インキと混合する。
発色インキには、必要に応じて任意の添加剤を添加してもよい。この例としては、滑材、ブロッキング防止剤、充填剤等を添加することが挙げられる。その他、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、ワックス、シランカップリング剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防錆剤、可塑剤、難燃剤、顕色剤等の各種添加剤を添加することもできる。これら添加剤は、特に印刷適性、印刷効果等の改善を目的に使用され、その種類、使用量は、印刷方法、印刷基材、印刷条件により適宜選択できる。
また、基材の積層面にコロナ処理等の表面処理を施したり、又は無処理の面上に印刷層を積層したりすること等により、該ラミネート強度を調整してもよい。
印刷層の積層方法は、グラビアロールコート、リバースロールコート法、ナイフコート法、キスコート法、その他等の公知の方法で印刷する他、インクジェット、浸漬、スピンコーティングなどの方法を用いることができるが、本発明においては印刷により積層する方法が好ましい。グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷のいずれの方式でもかまわない。特に、印刷下地として全面又は一部にベタ印刷することにより、製造工程を簡略化することができる。
これらの印刷又はコーティング法で、発色インキを印刷又は塗布し乾燥して、印刷層を形成することができる。該印刷層を形成したら、印刷機またはコーティング機の機内で加熱ゾーンを設けてエージングするか、又は、一旦巻き上げて、別途、30〜120℃で数時間〜数日間エージングすることで、バインダ樹脂と硬化剤とを硬化(反応)させることが好ましい。
(シーラント層)
本発明において、シーラント層は、レーザ印字用多層積層フィルムの最内層に設けられるもので、シーラント層として慣用の熱可塑性樹脂からなる層、又は該樹脂のフィルムからなる層である。
シーラント層は、ヒートシール性樹脂からなり、具体的には、熱によって溶融し相互に
融着し得る樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。
このようなヒートシール性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセン系触媒を使用して重合した直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン系触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂を、単独で、又は2種又はそれ以上を混合して使用することができる。
包装材料としての用途において、内容物と接する最内層となる場合、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好適に使用される。特に、本発明の多層積層フィルムにおいては、シーラント層として無延伸ポリプロピレンが好適に用いられる。
シーラント層の積層方法は、特に限定されないが、シーラント層を形成する熱可塑性樹脂を、上記印刷層又は後述のガスバリア層や機能層上に押出コーティングすることにより積層することができる。また、該熱可塑性樹脂からなるフィルムを、ドライラミネート法又はサンドイッチラミネート法等により積層してもよい。
ドライラミネート用接着剤としては、ウレタン系接着剤、ポリエステルポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、ビニル系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤等を用いることができる。また、サンドイッチラミネート用接着性樹脂としては、任意の熱可塑性樹脂を用いることができる。
本発明において、上記シーラント層の厚さとしては、レーザ印字用多層積層フィルムに充填する内容物に応じて適宜に設定することができるが、20〜200μm程度であり、より好ましくは50〜100μm程度である。
(ガスバリア層)
本発明のレーザ印字用多層積層フィルムは、さらにガスバリア層を備えてもよい。
ガスバリア層としては、アルミニウム箔等の金属箔、アルミニウム等の金属蒸着膜、ガスバリア性透明蒸着膜、塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物などのバリア性樹脂のフィルム又はコーティング膜等を用いることができる。
ガスバリア層の機能を付与する手段としては、基材層として、樹脂フィルム上に無機酸化物のガスバリア性透明蒸着膜を積層した透明蒸着膜付き樹脂フィルムを用いることもできる。または、例えば、印刷層とシーラント層との間に、金属箔や蒸着膜及び蒸着フィルム等のガスバリア性を有する層を設けてもよい。
前記無機酸化物のガスバリア性透明蒸着膜としては、基本的に金属の酸化物をアモルファス(非晶質)化した透明薄膜であれば使用可能である。例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物をアモルファス(非晶質)化した透明蒸着膜を使用することができる。
そして、包装用材料等に適するものとしては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属の酸化物をアモルファス(非晶質)化した薄膜を挙げることができる。
上記蒸着膜は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イ
オンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を用いて形成することができる。
本発明において、金属又は金属酸化物の薄膜の厚さとしては、使用する金属、又は金属酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜3000Å位、好ましくは、100〜1000Å位の範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。また、本発明においては、金属又は金属酸化物の薄膜は、1層だけではなく、2層あるいはそれ以上を積層した状態でもよく、また、使用する金属、又は、金属酸化物としては、1種又は2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した材料による薄膜を構成することもできる。
本発明の多層積層フィルムは、ガスバリア層の他に、さらなる機能層を含んでもよい。このような機能層としては、例えば、フィルムの柔軟性、強靭性、屈曲性および耐突き刺し性を向上させるために、2軸延伸ナイロンフィルムやポリアミド系樹脂からなる層を、印刷層とシーラント層との間に任意の積層方法によって設けることができる。
(レーザ光による印字)
本発明において、印字は、YAG(イットリウム(Y)・アルミニウム(A)・ガーネット(G))レーザ光線(波長=1.064μm)、YVO4(イットリウム・バナデート)レーザ光線(波長=1.064μm)、又はファイバレーザ光線(例えば、波長=1090nm)を用いて行うことが好ましい。これらのレーザは、透明体を透過する性質を有し、その性質を利用し、さらに、印字時の煙等の発生が抑えられ、また、発色濃度やフィルムに与える影響等を調整することができる。その結果、レーザ印字画像を形成しても穴あき等がない極めて鮮明なレーザ印字画像を形成することができる。
これらのレーザを、基材層側から照射することにより、低出力で、フィルムに与えるダメージを最小限に抑えつつ、印刷層のインキ組成物をガス化及び炭化させて、基材層と印刷層との間に空隙を形成し、印刷層表面に、レーザ印字画像を効率よく形成することができる。
本発明において、このような印字を行うパルス条件としては、例えば、YVO4レーザ機(キーエンス MD−V9600)にて平均出力0.8〜5W、より好ましくは1.2〜2W、Qスイッチ周波数10〜30KHz、スキャンスピード300〜4000mm/s、より好ましくは1500〜4000mm/sのパルス条件が使用される。この条件下で印字を行うことにより、レーザ印字用多層積層フィルムに穴をあけることなく、高速印字が可能であり、且つ、明瞭な印字画像が得られる。
(レーザ光による印字体)
本発明のレーザ印字用多層積層フィルムへの印字工程において、レーザの平均出力を低く設定しても、または、スキャンスピードを速く設定しても、鮮明な印字画像、例えば太くて明瞭な文字を印字することができる。
本発明の印字体において、レーザのスポット照射により、基材層と印刷層との間に形成される変色域の直径は、望ましくは100μm〜1mm、より好ましくは500μm超〜1mmである。この変色域に炭化したインキ成分が広がって、明瞭な印字画像が得られる。変色域の直径がこれよりも小さいと、印字画像の欠損や、線幅の細りが発生し、視認性を欠く。逆にこれよりも大きいと、画像がつぶれる等のため好ましくない。
本発明において、レーザ印字画像は、文字、数字、記号、図柄等を含むが、これらに限定されない。
また、本発明のレーザ印字用多層積層フィルムに印字して得られる印字体は、優れたレ
ーザ印字適性だけでなく、良好な層間ラミネート強度を有するため、高温高圧処理に付されるレトルト処理用包装材料として好適に使用することができる。
本発明のレーザ印字用多層積層フィルムにおいて、印刷層は、印刷下地としても機能し得るため、該印刷層を下地として、レーザ印字を施さない部分に、所望のカラー印刷層を設けることもできる。
(包装体)
上記のレーザ印字用多層積層フィルムを用いた包装体について説明する。包装体からなる袋状容器本体は、上記レーザ印字用多層積層フィルムからなる積層材を使用して、この積層材を二つ折にし、そのシーラント層の面を対向させて重ね合わせ、その端部をヒートシールして筒状の包装体を形成し、次いで底部をシールして内容物を充填し、さらに天部をシールすることにより、包装体を製造することができる。
その製袋方法としては、上記のような積層材を、折り曲げるかあるいは重ね合わせて、その内層の面を対向させ、さらにその周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型等のヒートシール形態によりヒートシールして、種々の形態の包装用レトルトを製造することができる。上記において、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を制限するものではない。
本実施例及び比較例においては、以下に示す配合の発色インキ、白インキ、及び接着剤を使用した。
<発色インキ>
● 発色インキA(実施例):酸化ビスマス5質量%、二酸化チタン15質量%、ポリウレタン樹脂20質量%、混合溶剤60質量%
● 発色インキB(実施例):酸化ビスマス5質量%、銅・モリブデン複合酸化物3質量%、二酸化チタン15質量%、ポリウレタン樹脂17質量%、混合溶剤60質量%
なお、混合溶剤としては、メチルエチルケトン:酢酸n−プロピル:イソプロピルアルコール=3:5:2(質量比)を用いた。
<硬化剤>
● 硬化剤:脂肪族系イソシアネート硬化剤
<白インキ(印刷用下地層用)>
● ウレタン系白インキ
<接着剤>
● 2液硬化型ウレタン系接着剤
[実施例1]
厚さ12μmのPETフィルムの一方の面に、グラビアロールコート法により、インキ組成物として、発色インキAを100質量部に対し、硬化剤3質量部をブレンドしたものを、塗布厚み3μm(乾燥時)となるように塗布し、印刷層を設けた。
次いで、該印刷層上に、2液硬化型ウレタン接着剤(塗布量3g/m2(乾燥時))を介して、厚さ7μmのアルミニウム箔(ガスバリア層)及び厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(シーラント層)を順次ドライラミネートし、本発明のレーザ印字用多層積層フィルムを得た。
この積層フィルムの層構成は、基材層/印刷層/接着剤/ガスバリア層/接着剤/シー
ラント層である。
[実施例2]
厚さ12μmのPETフィルムの一方の面に、グラビアロールコート法により、インキ組成物として、発色インキAを100質量部に対し、硬化剤3質量部をブレンドしたものを、塗布厚み1.5μm(乾燥時)となるように塗布して印刷層を設けた後、さらに、白インキ100質量部に対し、硬化剤を3質量部ブレンドしたものを塗布厚み1.5μm(乾燥時)となるように塗布して印刷用下地層を設けた。
次いで、該印刷用下地層上に、2液硬化型ウレタン接着剤(塗布量3g/m2(乾燥時))を介して、厚さ7μmのアルミニウム箔(ガスバリア層)及び厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(シーラント層)を順次ドライラミネートし、本発明のレーザ印字用多層積層フィルムを得た。
この積層フィルムの層構成は、基材層/印刷層/印刷用下地層/接着剤/ガスバリア層/接着剤/シーラント層である。
[実施例3]
インキ組成物として発色インキBを用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明のレーザ印字用多層積層フィルムを得た。
[実施例4]
インキ組成物として発色インキBを用いた以外は、実施例2と同様にして、本発明のレーザ印字用多層積層フィルムを得た。
[実施例5]
印刷層とガスバリア層(アルミニウム箔)との間に、さらに、厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルムを、2液硬化型ウレタン接着剤(塗布量3g/m2(乾燥時))を介してドライラミネートした以外は、実施例1と同様にして、本発明のレーザ印字用多層積層フィルムを得た。
この積層フィルムの層構成は、基材層/印刷層/接着剤/2軸延伸ナイロンフィルム/接着剤/ガスバリア層/接着剤/シーラント層である。
[実施例6]
印刷用下地層とガスバリア層(アルミニウム箔)との間に、さらに、厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルムを、2液硬化型ウレタン接着剤(塗布量3g/m2(乾燥時))を介してドライラミネートした以外は、実施例2と同様にして、本発明のレーザ印字用多層積層フィルムを得た。
この積層フィルムの層構成は、基材層/印刷層/印刷用下地層/接着剤/2軸延伸ナイロンフィルム/接着剤/ガスバリア層/接着剤/シーラント層である。
[実施例7]
基材層として、厚さ12μmのPETフィルムの一方の面に酸化珪素を蒸着してなる透明蒸着PETフィルムを使用し、その蒸着面上に印刷層を設け、また、アルミニウム箔の代わりに厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルムをドライラミネートした以外は、実施例2と同様にして、本発明のレーザ印字用多層積層フィルムを得た。
この積層フィルムの層構成は、透明蒸着PETフィルム/印刷層/印刷用下地層/接着剤/2軸延伸ナイロンフィルム/接着剤/シーラント層である。
[比較例1]
インキ組成物として発色インキAのみを用い、印刷用下地層として、白インキのみを用いた以外は、実施例2と同様にして、レーザ印字用多層積層フィルムを得た。
[評価]
上記実施例1〜7及び比較例1で得られた多層積層フィルムについて、下記試験により、印字線の視認性、レトルト処理前後のラミネート強度、及びレトルト適性を評価した。<印字線の視認性>
各多層積層フィルムに、下記条件下で、基材層側からファイバレーザ光(レーザパワー30%)を照射し、レーザ印字線を形成して印字体を得た。得られた印字線について、着色線幅及び着色濃度を観察した。
(ファイバレーザ照射条件)
ファイバレーザ機(パナソニックデバイスSUNX(株)製 LP−Z250、波長1060nm)、スキャンスピード9000mm/分、印字パルス周期20μs
<ラミネート強度>
レトルト処理前の基材層と印刷層との間のラミネート強度を、JIS K 6854に従って、引張試験装置(テンシロン)を用いて引張速度50mm/分、90度方向、試料幅15mmで測定した。
<レトルト適性>
多層積層フィルムをそれぞれ2枚用意し、シーラント層同士を重ね合せて製袋後、このパウチ表面に、ファイバレーザで、上記条件下でレーザ光を照射し、レーザ印字線を形成した。水を封入後、このパウチを、121℃で30分間のレトルト加熱処理に付した。加熱処理後のパウチの外観について、印字部及びその周辺において、層間剥離によるフィルムの浮きが生じていないかを観察した。また、加熱処理後のパウチから幅15mmの短冊状の試験片を切り出し、上記と同様にして、基材層と印刷層との間のラミネート強度をした。
結果を以下の表1に示す。
Figure 2017196841
実施例1〜7の多層積層フィルムは、濃くくっきりとした印字画像が形成された。特に、実施例3及び4の銅・モリブデン複合酸化物を添加した系は、より優れた発色を示し、識別性がよく視認性のよいレーザ印字が得られた。また、いずれの実施例のフィルムも、レトルト処理後も十分なラミネート強度を維持しており、印字部及びその周辺部において、フィルムの浮きや層間剥離は見られなかった。
これに対し、比較例の多層積層フィルムは、レトルト処理後にラミネート強度が大幅に低下し、印字部周辺に浮きが発生し、基材層とアルミニウム箔との間で層間剥離が観察された。
1.基材層
2.印刷層
3.シーラント層
4.ガスバリア性透明蒸着膜
5.印刷用下地層
6.印字部
A.変色域の直径

Claims (12)

  1. 少なくとも、基材層、印刷層、及びシーラント層からなる、レトルト処理用包材として使用するためのレーザ印字用多層積層フィルムであって、
    該基材層は、樹脂フィルムからなる層であり、
    該印刷層は、レーザ光の照射により発色する発色材料及びバインダ樹脂を含む、レーザ光により印字可能な発色インキと、硬化剤とからなる層であり、
    レトルト処理後の該基材層と印刷層との間のラミネート強度が1.0N/15mm以上である、レーザ印字用多層積層フィルム。
  2. レトルト処理後の基材層と印刷層との間のラミネート強度が、2.0N/15mm以上である、請求項1に記載のレーザ印字用多層積層フィルム。
  3. 発色材料がビスマス系化合物である、請求項1又は2に記載のレーザ印字用多層積層フィルム。
  4. ビスマス系化合物が、水酸化ビスマス、酸化ビスマス、次炭酸ビスマス及び硝酸ビスマスからなる群より選択される1種類又はそれ以上の化合物である、請求項3に記載のレーザ印字用多層積層フィルム。
  5. 発色インキが、金属酸化物及び複合酸化物からなる群より選択される1種類又はそれ以上の化合物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザ印字用多層積層フィルム。
  6. 発色インキが、銅系化合物及びモリブデン系化合物からなる群より選択される1種類又はそれ以上の化合物を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザ印字用多層積層フィルム。
  7. 印刷層とシーラント層との間に更に、白色インキからなる印刷用下地層を備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザ印字用多層積層フィルム。
  8. 更にガスバリア層を備える、請求項1〜7のいずれか1項に記載のレーザ印字用多層積層フィルム。
  9. ガスバリア層が、アルミニウム金属箔、金属蒸着膜、又はガスバリア性透明蒸着膜である、請求項8に記載のレーザ印字用多層積層フィルム。
  10. ガスバリア層が、基材層上に設けられたガスバリア性透明蒸着膜である、請求項8又は9に記載のレーザ印字用多層積層フィルム。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載のレーザ印字用多層積層フィルムからなる包装体。
  12. 請求項1〜10のいずれか1項に記載のレーザ印字用多層積層フィルム又は請求項11に記載の包装体に、YAGレーザ、YVO4レーザ又はファイバレーザのレーザ光を基材層側から照射することにより形成された印字画像を有する印字体。
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