JP2017195248A - 塗布方法 - Google Patents

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省吾 吉田
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省吾 吉田
小椋 浩之
Hiroyuki Ogura
浩之 小椋
保夫 ▲高▼橋
保夫 ▲高▼橋
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拓也 黒田
Takuya Kuroda
拓也 黒田
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Abstract

【課題】円形基板上に薬液膜を均一に形成できる塗布方法を提供する。
【解決手段】スリットノズル3の退避移動は、スリットノズル3の下面3dが円形基板W上に形成された薬液膜Fの目標膜厚と同じ高さで、かつ半径方向RD外側に向けて行われる。これにより、例えば薬液が垂れ落ちることが防止されると共に、退避移動するスリットノズル3の下面3dで薬液膜が平坦化されるので、塗布ムラを抑制できる。そのため、円形基板W上に薬液膜Fを均一に形成できる。
【選択図】図17

Description

本発明は、半導体基板、液晶表示用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等の基板に対して薬液を塗布する塗布方法に関する。
従来、塗布装置は、基板を略水平姿勢で保持して回転させる回転保持部と、レジスト等の薬液を基板に吐出するノズルとを備えている(例えば、特許文献1参照)。塗布装置は、ノズルから基板の中心部に薬液を供給し、基板保持部で基板を高速回転させる。これにより、基板全面に薬液が広がり、薬液膜が形成される。
特開平11−162808号公報
しかしながら、従来装置の場合には、次のような問題がある。すなわち、スピン塗布方式の場合、回転により薬液を基板全面に広げるため、薬液を基板外へ無駄に捨ててしまう。特に、粘度が高くなるほど薬液を基板全面に広げにくく、多量の薬液が必要になり、多量の薬液を基板外へ無駄に捨ててしまう。その結果、高価な薬液を使用する際など、コスト的に不利となる。
また、スピン塗布方式では、厚膜を形成する際に、回転により成膜する性質上、厚膜の目標値よりも薄くなる。この場合、例えば、2回塗布して2層の膜を形成する。そのため、薬液を更に無駄に捨ててしまい、また、処理時間が長くなってしまう。
一方、スピン塗布しない方式として、図23のように、角基板(矩形状基板)の上方をスリットノズル103で一方向に移動させつつ、薬液を塗布するスキャン塗布方式がある。この方式で円形基板Wに塗布する場合、図23の斜線のように、無駄に薬液を捨てる領域SHが発生する。
また、スキャン塗布方式では、スリットノズル103の吐出口と円形の基板Wとの隙間が均一に保てないことにより、特に、高粘度の薬液を基板Wに均一な厚みで塗布できない。すなわち、角基板Wの場合、図24のように、吐出開始時にカーテン状に良好な液柱が形成され、また、それが維持されるので、均一な厚みで塗布できる。これに対し、円形の基板Wの場合は、図25のように、吐出開始時に、円形の基板Wの外縁部Eの1点でしか接液しないので、カーテン状に良好な液柱が形成されない。そのため、均一な厚みの膜が形成されず、塗布ムラが発生する。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、円形基板上に薬液膜を均一に形成できる塗布方法を提供することを目的とする。
発明者は、上記の問題を解決するために鋭意研究した結果、次のような知見を得た。すなわち、スリットノズルを円形基板の半径方向に沿って配置し、このスリットノズルから円形基板上に薬液を吐出する。そして、円形基板の中心部周りに円形基板を回転させる。これにより、スリットノズルから吐出された薬液が全て円形基板上に着液して良好な液柱が形成される。また、円形基板の外縁部に沿って円形基板の略全面に薬液膜が形成される。そのため、無駄な薬液を抑えつつ、基板上に良好に薬液を塗布することができる。しかしながら、更に、塗布ムラを抑え、円形基板上に薬液膜を均一に形成することが望まれる。
このような知見に基づく本発明は、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る塗布方法は、円形基板上に薬液を塗布する塗布方法において、前記円形基板の半径に沿って配置されたスリットノズルから前記円形基板上に薬液を吐出する吐出工程と、前記円形基板の中心周りに前記円形基板を少なくとも1回転させる回転工程と、前記薬液の吐出および前記円形基板の回転をそれぞれ停止する吐出回転停止工程と、前記吐出回転停止工程の後、前記スリットノズルの下面を前記円形基板上に形成された薬液膜の目標膜厚と同じ高さに維持し、かつ前記スリットノズルと前記円形基板との間に薬液を満たした状態で、前記スリットノズルを前記円形基板の半径方向外側へ退避移動させるノズル退避工程と、を備えていることを特徴とするものである。
本発明に係る塗布方法によれば、薬液の吐出および円形基板の回転をそれぞれ停止した後、スリットノズルと円形基板との間に薬液を満たした状態で、スリットノズルを円形基板の半径方向外側へ退避移動させる。例えば、スリットノズルの下面を目標膜厚よりも高い位置に配置して、スリットノズルからの薬液の吐出を停止したとする。このときスリット開口部の全長に亘って同時に薬液の吐出を停止させることは困難である。つまり、スリット開口部の一部から薬液が垂れ落ちる現象が生じる。その結果、スリットノズルを円形基板の外側へ退避移動させるときに、垂れ落ちた部分で薬液膜が盛り上がり、塗布ムラが生じる。しかしながら、本発明において、スリットノズルの退避移動は、スリットノズルの下面が円形基板上に形成された薬液膜の目標膜厚と同じ高さで行われる。これにより、スリットノズルから薬液が垂れ落ちることが防止される。しかも、本発明において、円形基板の半径に沿って配置されたスリットノズルを半径方向に退避移動させているので、吐出停止位置における薬液膜が退避移動中のスリットノズルの下面で平坦化される。仮にスリットノズルの下面の薬液膜厚に僅かのばらつきが生じても、その影響は半径方向の直線状のスリット移動軌跡上に限定される。そのため、円形基板上に薬液膜を均一に形成できる。
また、上述の塗布方法の一例は、前記吐出工程において、前記スリットノズルの下面を前記薬液膜の目標膜厚よりも高い高さ位置に設定し、前記ノズル退避工程において、前記スリットノズルの退避移動の前に、前記スリットノズルの下面を前記薬液膜の目標膜厚と同じとなるように、前記スリットノズルを下降させ、その後、前記スリットノズルを退避移動させることである。これにより、スリットノズルの下面を薬液膜の目標膜厚よりも高い高さ位置に設定した場合であっても、スリットノズルの退避移動は、スリットノズルの下面が目標膜厚と同じ高さで行われる。そのため、スリットノズルから薬液が垂れ落ちることが防止できる。
また、上述の塗布方法の一例は、前記吐出工程において、前記スリットノズルの下面を前記薬液膜の目標膜厚よりも低い高さ位置に設定し、前記ノズル退避工程において、前記スリットノズルの退避移動の前に、前記スリットノズルの下面を前記薬液膜の目標膜厚と同じとなるように、前記スリットノズルを上昇させ、その後、前記スリットノズルを退避移動させることである。
この塗布方法では、スリットノズルの下面は、薬液膜の目標膜厚よりも低い高さ位置に設定される。そして、スリットノズルから薬液を吐出して、円形基板に薬液を押し付けて広げながら薬液膜を形成する。そのため、薬液の吐出および円形基板の回転をそれぞれ停止した際に、スリットノズルは薬液膜に埋まるので、このまま、スリットノズルを退避移動させると、形成された薬液膜の薬液を引き連れてしまうおそれがある。そうすると、塗布ムラが生じる。しかしながら、スリットノズルの下面を薬液膜の目標膜厚と同じ高さ位置に、スリットノズルを上昇させるので、薬液を引き連れてしまうことを防止できる。
また、上述の塗布方法の一例は、前記吐出工程において、前記スリットノズルの下面を前記薬液膜の目標膜厚と同じ高さ位置に設定し、前記ノズル退避工程において、前記スリットノズルの下面を前記薬液膜の目標膜厚と同じ高さ位置に維持した状態で、前記スリットノズルを退避移動させることである。これにより、薬液の吐出からスリットノズルの退避移動の前までに、スリットノズルを下降または上昇させる必要がない。そのため、薬液塗布を効率よく行うことができる。
また、上述の塗布方法は、前記吐出工程において、単位時間当たりの薬液の吐出量である吐出レートを変化させることが好ましい。吐出レートを変化させることで、薬液吐出の開始時における薬液の流動性の悪さに起因した塗布ムラを抑制できる。
また、上述の塗布方法の一例は、前記吐出工程は、それぞれに異なる吐出レートに設定された第1吐出工程と第2吐出工程とを備え、前記第1吐出工程は、前記円形基板の回転が停止しているときに、前記第2吐出工程の吐出レートよりも大きく設定された第1吐出レートで前記スリットノズルから前記円形基板上に前記薬液を吐出し、前記第2吐出工程は、前記第1吐出工程の後、形成される薬液膜の目標膜厚になるように予め設定された第2吐出レートで前記スリットノズルから前記円形基板上に前記薬液を吐出し、前記回転工程は、前記第1吐出工程の後に前記円形基板を回転させることである。
第2吐出工程の第2吐出レートは、形成される薬液膜が目標膜厚になるように予め設定されたものである。一方、第1吐出工程の第1吐出レートは、この第2吐出レートよりも大きく設定されている。つまり、吐出開始時に第1吐出レートを高めに設定している。そのため、スリットノズルの一部から偏って薬液が吐出されるのを抑え、薬液をスリットノズルの全体から吐出できる。これにより、安定した吐出状態で基板上に着液できる。そして、その後の第2吐出工程においても安定した吐出状態を維持することができる。よって、薬液吐出による塗布ムラを抑制できる。
また、上述の塗布方法の一例は、前記回転工程において、前記円形基板の回転速度を変化させることである。これにより、例えば、回転速度を小さくすれば、薬液膜が厚くなり、回転速度を大きくすれば、薬液膜は薄くなる。そのため、円形基板上に薬液膜を形成する過程で塗布ムラがある場合に薬液膜を均一に調整することができる。
また、上述の塗布方法の一例は、前記回転工程において、前記薬液の吐出レートに応じて前記円形基板の回転速度を変化させることである。これにより、例えば異なる2以上の吐出レートが設定されている場合等、吐出レートに最適な回転速度で薬液膜を均一に調整することができる。
また、上述の塗布方法の一例は、前記吐出回転停止工程において、前記円形基板が1回転する直前に薬液の吐出を停止させ、前記円形基板が1回転したときに前記円形基板の回転を停止することである。これにより、塗布終了時点での薬液膜の形成状態を比較的良好にすることができる。
また、上述の塗布方法の一例は、前記薬液の吐出開始時に、前記スリットノズルのスリット開口部における前記円形基板の中心部側の端部が前記円形基板の中心部よりも基板半径方向の外側に位置するように、前記スリットノズルを配置させ、その後、前記薬液を吐出しつつ前記円形基板を回転している間、前記スリットノズルを前記円形基板の半径方向に沿って前記円形基板の中心部方向に移動させ、前記薬液の吐出停止時に、前記スリット開口部の端部が前記円形基板の中心部に位置するように前記スリットノズルを移動させるノズル移動工程を更に備えていることである。これにより、円形基板の中心部付近で生じる塗布ムラを抑制できる。
また、上述の塗布方法の一例は、前記ノズル退避工程の後に、前記円形基板上の薬液膜を平坦にする平坦化工程を更に備えることである。これにより、円形基板上に薬液膜を均一に形成した後、平坦化工程により薬液膜を、更に均一にすることができる。
また、上述の塗布方法において、前記平坦化工程は、前記円形基板上の薬液がこぼれない程度の回転速度で前記円形基板を回転させることが好ましい。これにより、円形基板外に薬液を排出させずに、薬液膜の面内均一性を向上できる。
また、上述の塗布方法において、前記平坦化工程の一例は、塗布開始時点での薬液膜の膜厚が塗布終了時点での薬液膜の膜厚よりも厚い場合に、前記回転工程における前記円形基板の回転方向と逆方向に前記円形基板を回転させることである。これにより、膜厚が厚い塗布開始地点から膜厚が薄い塗布終了地点に向けて、円形基板上に形成された薬液膜が流動される。そのため、塗布開始地点と塗布終了地点との継ぎ目部分においても薬液膜の面内均一性を向上できる。
また、上述の塗布方法において、前記薬液の粘度は、300cP以上10000cP以下であることが好ましい。これにより、高粘度の薬液について、円形基板上に薬液を均一に塗布できる。
なお、本明細書は、次のような塗布方法に係る発明も開示している。
(1)円形基板上に薬液を塗布する塗布方法は、前記円形基板上に形成された前記薬液膜の目標膜厚よりも高い高さ位置にスリットノズルの下面を設定し、前記円形基板の半径に沿って配置された前記スリットノズルから前記円形基板上に薬液を吐出する吐出工程と、前記円形基板の中心周りに前記円形基板を少なくとも1回転させる回転工程と、を備えていることを特徴とするものである。
この塗布方法によれば、薬液膜の目標膜厚よりも高い高さ位置にスリットノズルの下面が設定されているので、スリットノズルに薬液が付着することを抑制できる。例えば付着した薬液が乾燥すると、パーティクルの原因になるので、スリットノズルの洗浄が必要になる。しかしながら、薬液の付着が抑制されるので、洗浄が容易になる。
(2)円形基板上に薬液を塗布する塗布方法は、前記円形基板の半径に沿って配置された前記スリットノズルから前記円形基板上に、単位時間当たりの薬液の吐出量である吐出レートを変化させて薬液を吐出する吐出工程と、前記円形基板の中心周りに前記円形基板を少なくとも1回転させる回転工程と、を備えていることを特徴とするものである。
この塗布方法によれば、吐出レートを変化させることで、薬液吐出の開始時における薬液の流動性の悪さに起因した塗布ムラを抑制できる。そのため、円形基板上に薬液膜を均一に形成できる。
(3)円形基板上に薬液を塗布する塗布方法は、前記円形基板の半径に沿って配置されたスリットノズルから前記円形基板上に薬液を吐出する吐出工程と、前記円形基板の中心周りに前記円形基板を少なくとも1回転させる回転工程と、薬液の吐出開始時に、前記スリットノズルのスリット開口部における前記円形基板の中心部側の端部が前記円形基板の中心部よりも基板半径方向の外側に位置するように、前記スリットノズルを配置させ、その後、前記薬液を吐出しつつ基板を回転している間、前記スリットノズルを基板半径方向に沿って前記円形基板の中心部方向に移動させ、前記薬液の吐出停止時に、前記スリット開口部の端部が前記円形基板の中心部に位置するように前記スリットノズルを移動させるノズル移動工程と、を備えていることを特徴とするものである。
この塗布方法によれば、薬液を吐出しつつ基板を回転している間、スリットノズルが基板半径方向に沿って円形基板の中心方向に移動される。円形基板の中心部からスリットノズルが離れた状態を維持すると、中心部に薬液膜が形成されず、一方、円形基板の中心部にスリットノズルが近づいた状態を維持すると、中心部に形成される薬液膜が盛り上がる。そのため、塗布ムラが生じる。しかしながら、スリットノズルが移動されるので、円形基板の中心部付近で生じる塗布ムラを抑制できる。そのため、円形基板上に薬液膜を均一に形成できる。
(4)円形基板上に薬液を塗布する塗布方法において、前記円形基板の半径に沿って配置されたスリットノズルから前記円形基板上に薬液を吐出する吐出工程と、前記円形基板の中心周りに前記円形基板を少なくとも1回転させる回転工程と、前記薬液の吐出および前記円形基板の回転をそれぞれ停止する吐出回転停止工程と、前記円形基板上の薬液膜を平坦にする平坦化工程とを備えていることを特徴とするものである。
この塗布方法によれば、円形基板上に薬液膜を均一に形成した後、更に、平坦化工程により薬液膜を均一にすることができる。
本発明に係る塗布方法によれば、スリットノズルの退避移動は、スリットノズルの下面が円形基板上に形成された薬液膜の目標膜厚と同じ高さで、かつ半径方向外側に向けて行われる。これにより、例えば薬液が垂れ落ちることが防止されると共に、退避移動するスリットの下面で薬液膜が平坦化されるので、塗布ムラを抑制できる。そのため、円形基板上に薬液膜を均一に形成できる。
実施例に係る塗布装置の概略構成図である。 スリットノズルの長手方向における縦断面図である。 図2のスリットノズルを矢印A−Aから見た縦断面図である。 図2のスリットノズルを矢印Bから見たスリット開口部を示す図である。 ノズル移動機構を示す平面図である。 塗布装置の動作を説明するためのフローチャートである。 スリットノズルの準備動作を説明するための側面図である。 スリットノズルの準備動作を説明するための側面図である。 スリットノズルを基板上方に移動させる動作を説明するための側面図である。 スリットノズルを下降させる動作を説明するための側面図である。 2つの吐出工程を有する塗布条件の一例を示す図である。 4つの吐出工程を有する塗布条件の一例を示す図である。 薬液吐出および基板回転のタイミング図の一例である。 薬液吐出および基板回転の停止動作を説明するための側面図である。 薬液吐出および基板回転の停止動作の一例を説明するための部分拡大図である。 スリットノズルを下降させる動作を説明するための側面図である。 スリットノズルを円形基板外に移動させる動作を説明するための側面図である。 スリットノズルを円形基板外に移動させる動作を説明するための平面図である。 スリットノズルを円形基板外に移動させた後の動作を説明するための側面図である。 平坦化処理を説明するための図である。 平坦化処理を説明するための図である。 薬液吐出時および基板回転時におけるスリットノズルの移動を説明するための図である。 基板を一方向に横切るスキャン方式の課題を説明するための図である。 基板を一方向に横切るスキャン方式の課題を説明するための図である。 基板を一方向に横切るスキャン方式の課題を説明するための図である。
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。図1は、塗布装置の概略構成図である。図2は、スリットノズルの長手方向における縦断面図である。図3は、図2のスリットノズルを矢印A−Aから見た縦断面図である。図4は、図2のスリットノズルを矢印Bから見たスリット開口部を示す図である。図5は、ノズル移動機構を示す図である。
<塗布装置1の構成>
図1を参照する。塗布装置1は、保持回転部2とスリットノズル3とを備えている。保持回転部2は、円形基板(以下「基板」と呼ぶ)Wを略水平姿勢で保持して回転させる。保持回転部2は、時計回り、反時計回りで基板Wを回転させることが可能である。スリットノズル3は、基板W上に薬液を吐出する。薬液は、接着剤や、SOG(Spin on Glass)等の平坦化膜形成用薬液、フォトレジストなどの高粘度の薬液が用いられる。薬液の粘度は、例えば、300cP(centipoise)以上10000cP以下である。
保持回転部2は、スピンチャック4と回転駆動部5とを備えている。スピンチャック4は、回転軸AX周りに回転可能に基板Wを保持する。スピンチャック4は、例えば、基板Wの裏面を真空吸着することにより基板Wを略水平姿勢で保持する。一方、回転駆動部5は、スピンチャック4を回転軸AX周りに回転させる駆動を行う。回転駆動部5は、電動モータ等で構成されている。なお、回転軸AXと基板Wの中心部CTは、略一致する。
図2〜図4は、スリットノズル3の構造を示す図である。スリットノズル3は、複数の供給口3a、内部流路3bおよびスリット開口部3cを備えている。図3のように、供給口3aは、後述する薬液配管13と連通接続されている。薬液配管13から供給口3aを通じて送られた薬液は、内部流路3bに更に送られる。内部流路3bに送られた薬液は、スリット開口部3cから吐出される。なお、複数の供給口3aの開口径(開口面積)の大きさは、同じである。この点、例えば、基板Wの中心部CTから基板Wの外縁部Eに向かうにつれて、供給口3aの開口径を大きくして、薬液の供給量を多くしてもよい。
スリットノズル3は、薬液の吐出時に、基板W上方の予め設定された吐出位置に配置される。この時、スリット開口部3cは、図2、図4のように、基板Wの中心部CTから基板Wの外縁部Eに向かうにつれて、幅WDが大きくなるように構成されている。これにより、基板Wの中心部CTから基板Wの外縁部Eに向かうにつれて、スリット開口部3cから基板Wに吐出する薬液の吐出量が多くすることができる。すなわち、スリット開口部3cの幅WDを変えることにより、単位面積当たりの薬液の吐出量を揃えることができる。そのため、基板Wの半径方向RDにおける塗布ムラを抑えることができる。
また、図2に示すように、スリット開口部3cの長手方向の長さは、基板Wの半径と同じまたはそれ未満である。スリット開口部3cおよび下面3dと、基板Wの表面との隙間Gは、一定に設定される。すなわち、基板Wの中心部CTから外縁部Eまで、隙間Gは同じ長さである。
また、図1の塗布装置1は、カップ7と待機ポット9とを備えている。カップ7は、保持回転部2を囲うように、保持回転部2の側方に設けられている。カップ7は、図示しない駆動部により、上下方向に移動するように構成されている。一方、待機ポット9は、不使用のスリットノズル3を待機させるものである。待機ポット9は、カップ7の側方に設けられている。
待機ポット9は、スリットノズル3から吐出された薬液を回収できるように構成されている。また、待機ポット9には、スリットノズル3の下面3dを接触または近接し、スリット開口部3cから外にはみ出す薬液を削ぎ落とすためのカッタ(またはスキージ)9aが設けられている(後述する図7,図8参照)。カッタ9aは、電動モータ等で構成されるカッタ移動機構9bにより移動される。これにより、スリットノズル3の下面3dおよびスリット開口部3cに沿うように、薬液の面を揃えることができる。
待機ポット9は、スリットノズル3の先端部を溶剤に浸して洗浄できるように溶剤貯留槽を備えていてもよい。また、待機ポット9は、スリットノズル3の先端部を溶剤雰囲気で包み込めるように構成されていてもよい。これにより、スリットノズル3内の薬液の乾燥等を防止できる。
また、図1の塗布装置1は、薬液供給源11、薬液配管13、ポンプPおよび開閉弁Vを備えている。薬液供給源11からの薬液は、薬液配管13を通じてスリットノズル3に供給される。薬液配管13には、ポンプPおよび開閉弁V等が介在して設けられている。ポンプPは、スリットノズル3に薬液を送る。開閉弁Vは、薬液の供給およびその停止を行う。
また、図1の塗布装置1は、ノズル移動機構15を備えている。ノズル移動機構15は、上下方向(Z方向)および基板Wの表面に沿った所定の方向(X方向)に、スリットノズル3を移動させる。ノズル移動機構15は、図5のように、アーム17、上下移動部19および平面移動部21を備えている。アーム17は、スリットノズル3を支持する。上下移動部19は、スリットノズル3およびアーム17を上下方向(Z方向)に移動させる。平面移動部21は、スリットノズル3、アーム17および上下移動部19を第1方向(X方向)に移動させる。
上下移動部19および平面移動部21は、例えば電動モータ、ネジ軸およびガイドレール等で構成される。なお、平面移動部21は、スリットノズル3等を第1方向に移動させるだけでなく、第1方向と直交する第2方向(Y方向)に移動させるように構成されてもよい。また、ノズル移動機構15は、多関節アームで構成されてもよい。
図1の塗布装置1は、制御部23と操作部25とを備えている。制御部23は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。制御部23は、塗布装置1の各構成を制御する。操作部25は、表示部、記憶部および入力部等で構成されている。表示部は、液晶モニタなどで構成されている。記憶部は、ROM(Read-only Memory)、RAM(Random-Access Memory)、およびハードディスク等で構成されている。入力部は、キーボード、マウス、および各種ボタン等で構成されている。記憶部には、塗布処理の各種条件等が記憶されている。
<塗布装置の動作>
次に、図6のフローチャートを参照して、塗布装置1の動作について説明する。図1において、図示しない搬送機構は、保持回転部2上に基板Wを搬送する。回転保持部2は、基板Wの裏面を吸着などして保持する。
〔ステップS01〕スリットノズルにおける準備動作(液面の調整)
スリットノズル3は、待機ポット9に待機されている。待機ポット9において、スリットノズル3から所定量の薬液CMを吐出する。すると、図7のように、スリット開口部3cからはみ出した薬液CMがカーテン状にぶら下がる。そして、カッタ移動機構9bは、スリットノズル3の下面3dにカッタ9aを接触または近接させつつ、スリット開口部3cの長手方向に沿ってカッタ9aを移動させる。カッタ9aの移動により、図8のように、スリット開口部3cからはみ出した薬液CMが削ぎ落とされる。そのため、スリット開口部3c付近において、薬液CMの液面(液の下面)が揃えられる。なお、薬液CMの液面は、スリット開口部3cおよび下面3dよりも全体的に微小に突出している。カッタ9aの移動により薬液CMの液面を揃えた後、途中で薬液CMを吐出せずに、スリットノズル3は、基板W上方の予め設定された吐出位置に移動される。
〔ステップS02〕薬液吐出および基板回転
ノズル移動機構15は、待機ポット9から基板W上方の予め設定された吐出位置にスリットノズル3を移動させる。すなわち、ノズル移動機構15は、図9のように、スリットノズル3をマイナスX方向に移動させる。これにより、スリットノズル3は、予め設定された吐出位置の上方に配置される。そして、ノズル移動機構15は、図10において、基板W上方において、スリットノズル3を下降させる。なお、スリットノズル3を上昇させてもよい。下降または上昇により、スリットノズル3の下面3dと基板Wの表面との間を予め設定された隙間Gにする。
隙間Gは、基板W上に形成される薬液膜Fの表面よりも低い高さにしないように、スリットノズル3の下面3dを薬液膜Fの目標膜厚よりも高い高さ位置に設定する。例えば、目標膜厚が0.07mmの場合、スリットノズル3の下面3dと基板Wの表面との間の隙間Gを0.10mmに設定する。なお、本実施例の塗布方法は、従来のスピン塗布と異なり、回転により薬液CMを基板W外に排出しない。そのため、目標膜厚は、形成したい薬液膜Fの膜厚である。目標膜厚が焼成(または乾燥)後の膜厚であるとき、溶剤などの揮発成分を考慮して設定される。また、スリットノズル3の吐出位置の高さの上限は、吐出する薬液CMの一部が途切れないような高さである。
吐出位置に配置されたスリットノズル3は、基板Wの半径方向RDに沿って長手に配置される。すなわち、スリット開口部3cは、図2および図5の一点鎖線のように、基板Wの中心部CTよりも外側でかつ基板Wの半径方向RDに沿って長手に配置される。
スリットノズル3を吐出位置に移動させた後、スリットノズル3の位置を固定してスリットノズル3から基板W上に薬液CMを吐出する。また、これと共に、基板Wの中心部CT周りに基板Wを略1回転させる。これにより、基板W上に薬液膜Fを形成する。塗布条件は、例えば、吐出レート、吐出量、回転速度(回転数)がある。また、これらの条件は、基板W毎の1回の吐出に対して、2回以上に段階的に変更可能である。
図11は、2つの吐出工程D1,D2を有する塗布条件の一例を示す図である。すなわち、薬液CMを吐出する際に、単位時間当たりの薬液CMの吐出量である吐出レートを変化させている。吐出レートを変化させることで、薬液CMの吐出の開始時における薬液CMの流動性の悪さに起因した塗布ムラを抑制できる。図11において、吐出工程は、それぞれ異なる吐出レートに設定された吐出工程D1と吐出工程D2とを備えている。なお、吐出工程D1は、本発明の第1吐出工程に相当する。吐出工程D2は、本発明の第2吐出工程に相当する。
吐出工程D1は、基板Wの回転が停止しているときに、吐出工程D2の第2吐出レートよりも大きく設定された第1吐出レートでスリットノズル3から基板W上に薬液CMを吐出する。
吐出工程D1では、高粘度の薬液CMを強めに吐出する。吐出工程D1は、基板W上で安定な吐出状態を形成するための工程である。吐出工程D1は、基板Wの回転が停止しているときに、第1吐出レートでスリットノズル3から基板W上に薬液CMを吐出する。吐出工程D2の第2吐出レートは、形成される薬液膜Fが目標膜厚なるように予め設定されている。吐出工程D1の第1吐出レート(例えば1.0ml/s)は、吐出工程D2の第2吐出レート(例えば0.1ml/s)よりも大きく設定されている。これにより、安定な吐出状態を形成できる。吐出レートは、例えば、ポンプPの出力を調整することにより変更される。
吐出工程D1の後に、基板Wは回転され、吐出工程D2が行われる。吐出工程D2は、吐出工程D1で形成された安定した吐出状態を維持しつつ、その後の薬液膜Fの形成を行う工程である。吐出工程D2では、形成される薬液膜Fが目標膜厚になるように、第2吐出レートで、スリットノズル3から基板W上に薬液CMを吐出する。
例えば、吐出工程D1において、第1吐出レートが低めに設定されているとする。この場合、薬液CMを吐出開始する際に、カッタ9aで液面を揃えたにも拘わらず、薬液CMの面が揃わなくなる。これにより、スリットノズル3の一部から偏って薬液CMが吐出される。そのため、塗布ムラの原因になる。しかしながら、薬液CMを吐出開始する際に、第1吐出レートを高めに設定している。そのため、スリットノズル3の一部から偏って薬液CMが吐出されることを防止し、高粘度の薬液CMをスリットノズル3の全体から吐出できる。これにより、安定した吐出状態で基板W上に着液できる。そして、その後の吐出工程D2においても安定した吐出状態を維持することができる。その結果、薬液CMの吐出による薬液膜Fの塗布ムラを抑制できる。
また、図12は、4つの吐出工程D11〜D14を有する塗布条件の一例を示す図である。吐出工程D11〜D14は、吐出工程D11,吐出工程D12,吐出工程D13,吐出工程D14の順番で行われる。吐出工程D11,D12は、基板Wの停止状態で行われる。吐出工程D11,D12は、図11の吐出工程D1を更に複数の吐出工程に設定したものである。その後、吐出工程D13,D14は、基板Wの回転状態で行われる。吐出工程D13,D14は、図11の吐出工程D2を更に複数の吐出工程に設定したものである。
図11の吐出工程D2、および図12の吐出工程D13,D14において、吐出量は、目標膜厚に必要な量が設定される。また、吐出工程D2および吐出工程D13,D14において、基板Wを回転させる際に、回転速度は固定されるが、基板Wの回転速度を変化させてもよい。基板Wの回転速度を変化させる場合、例えば、回転速度を小さくすれば、薬液膜Fが厚くなり、回転速度を大きくすれば、薬液膜Fは薄くなる。そのため、基板W上に薬液膜Fを形成する過程で塗布ムラがある場合に薬液膜Fを均一に調整することができる。例えば、実際の吐出レートが、薬液CMの粘度による抵抗により、設定値に満たない場合は、回転速度を低めに設定し、途中で上げるように設定してもよい。
また、基板Wを回転させる際に、薬液CMの吐出レートに応じて基板Wの回転速度を変化させてもよい。これにより、例えば異なる2以上の吐出レートが設定されている場合等、吐出レートに最適な回転速度で薬液膜Fを均一に調整することができる。例えば、図12の吐出工程D13,D14の吐出レートに応じて、最適な回転速度を変更してもよい。このとき、吐出工程D14は、吐出工程D13よりも回転速度が大きくてもよい。なお、基板Wを1回転させる回転方向はどちらでもよい。
〔ステップS03〕薬液吐出および基板回転の停止
図13は、薬液吐出および基板W回転のタイミング図の一例である。なお、図13では、図11のような、2つの吐出工程D1,D2が行われるとする。また、図13において、時間t1は、吐出工程D1の開始を示し、時間t2は、吐出工程D1から吐出工程D2への切替と、基板Wの回転の開始を示す。
時間t3において、基板Wが1回転(360°)する直前に、開閉弁Vを閉じることで薬液CMの吐出を停止させる。その後、時間t4において、基板Wが略1回転した時に、保持回転部2は基板Wの回転を停止する(図14参照)。基板W上には、基板Wの外縁部Eに沿って円形に薬液膜Fが形成される。また、図15の破線の位置で薬液吐出を停止した後、図15の実線のように基板Wを少し回転させている。これにより、基板W上に形成された薬液膜Fとスリット開口部3cとの間の薬液CMが引っ張られた状態になる。
〔ステップS04〕スリットノズルの退避移動
基板Wの回転の停止直後、ノズル移動機構15は、スリットノズル3を下降させる(図16参照)。例えば、直前に形成された薬液膜Fの目標膜厚が0.07mmであるとする。基板Wの回転を停止した直後、スリットノズル3を下降させる。この時、スリットノズル3の下面3dが薬液膜Fの目標膜厚0.07mmと同じになるようにスリットノズル3を下降させる。すなわち、下降後のスリットノズル3の下面3dと基板Wの表面との隙間Gを0.07mmとして、スリットノズル3の下面3dを薬液CMの表面と接する高さに移動させる。なお、図15の薬液CMは、引っ張られているので、スリットノズル3を下降させた際に、下降部分の薬液膜Fが厚くならず、塗布終了時点での薬液膜Fの形成状態を比較的良好にすることができる。また、スリットノズル3の下面3dを薬液膜Fの目標膜厚に下降させることで、スリットノズル3と基板Wとの間に薬液CMで満たされる。すなわち、スリット開口部3cは、薬液膜Fで塞がれるので、スリットノズル3からの薬液CMの垂れ落ちが防止される。
スリットノズル3の下降後、ノズル移動機構15は、スリットノズル3の下面3dを基板W上に形成された薬液膜Fの目標膜厚と同じ高さに維持し、かつスリットノズル3と基板Wとの間に薬液CMを満たした状態で、スリットノズル3を基板Wの半径方向RD外側へ退避移動させる。(図17,図18参照)。このスリットノズル3の退避移動の速度は、予め設定された値に固定して行ってもよいし、退避移動の途中で変えてもよい。
例えば、スリットノズル3の下面3dを薬液膜Fの目標膜厚よりも高い高さ位置を維持して、スリットノズル3を基板W表面に沿って基板外に移動させたとする。この場合、スリットノズル3から薬液CMが垂れ落ちるおそれがある。スリットノズル3の下面3dを薬液膜Fの目標膜厚よりも高い位置で、薬液CMの吐出を停止すると、このときスリット開口部3cの全長に亘って同時に薬液CMの吐出を停止させることは困難である。つまり、スリット開口部3cの一部から薬液CMが垂れ落ちる現象が生じる。また、スリット開口部3cと薬液膜Fとの間にカーテン状の薬液CMが存在する場合があるとする。この場合、スリットノズル3の下面3dを薬液膜Fの目標膜厚よりも高い高さ位置を維持すると、自重によりカーテン状の薬液CMが崩れる(垂れ落ちる)。そのため、垂れ落ちた薬液CMで膜厚にムラが生じる。しかしながら、基板Wの回転停止直後に、スリットノズル3の下面3dを薬液CMの表面と接する高さに下降させることで、スリットノズル3の下面3dと基板Wとの間は、薬液CMで満たされる。すなわち、スリット開口部3cは、薬液膜Fで塞がれるので、スリットノズル3からの薬液CMの垂れ落ちが防止される。その結果、垂れ落ちた薬液CMで膜厚にムラが生じることを抑制できる。なお、図18において、塗布開始時点SPと塗布終了時点EPとの間が開いているが、時点SPでの薬液膜Fと時点EPでの薬液膜Fとが接していることが好ましい。
基板Wの表面に沿って基板W外にスリットノズル3を移動させた後、ノズル移動機構15は、スリットノズル3を適宜上昇させつつ、スリットノズル3を待機ポット9に移動させる(図19参照)。待機ポット9では、スリットノズル3の先端を貯留槽の溶剤に浸けたり、スリットノズル3を溶剤雰囲気中に配置させたりする。
〔ステップS05〕薬液膜の平坦化処理
スリットノズル3の基板W外への退避後、基板W上の薬液膜Fを平坦にする平坦化処理を行う。これにより、基板W上に薬液膜Fを均一に形成した後、平坦化工程により薬液膜Fを、更に均一にすることができる。保持回転部2は、基板W上の薬液CMがこぼれない程度の回転速度で短時間、回転させる。基板Wを回転させると、塗布開始時点SPと塗布終了時点EPの薬液膜Fの間の隙間を埋めつつ、薬液CMが基板Wの中心部CTから基板Wの外縁部Eに移動する。これにより、スリットノズル3を基板W外に移動させた後に、基板W外に薬液CMを排出させずに、薬液膜Fの面内均一性を向上できる。
なお、回転させて基板W上で薬液CMを流動させることにより、中心部CT側よりも外縁部E側の膜厚が厚くなる可能性がある。この場合、外縁部Eの薬液膜Fを溶剤でリング状に処理する(すなわちエッジリンス処理)ことにより、外縁部Eの厚めの薬液膜Fを除去することができる。
また、図20のように、塗布開始時点SPでの薬液膜Fの膜厚が塗布終了時点EPでの薬液膜Fの膜厚よりも厚い場合があるとする。この場合に、ステップS02における、スリットノズル3に対する基板Wの回転方向と、逆方向に基板Wを回転させる。これにより、膜厚が厚い塗布開始地点SPから膜厚が薄い塗布終了地点EPに向けて、基板W上に形成された薬液膜Fが流動される。そのため、塗布開始地点SPと塗布終了地点EPとの継ぎ目部分においても薬液膜Fの面内均一性を向上できる(図21参照)。
以上により、基板W上に薬液膜Fを形成する。この後、保持回転部2は、基板Wの保持を解除する。この時、基板Wの回転は停止している。基板Wの保持解除後、図示しない搬送機構は、保持回転部2上の基板Wを例えば次の工程の基板処理装置に搬送する。
本実施例によれば、薬液CMの吐出および基板Wの回転をそれぞれ停止した後、スリットノズル3と基板Wとの間に薬液CMを満たした状態で、スリットノズル3を基板Wの半径方向RD外側へ退避移動させる。例えば、スリットノズル3の下面3dを目標膜厚よりも高い位置に配置して、スリットノズル3からの薬液CMの吐出を停止したとする。このときスリット開口部3cの全長に亘って同時に薬液CMの吐出を停止させることは困難である。つまり、スリット開口部3cの一部から薬液が垂れ落ちる現象が生じる。その結果、スリットノズル3を基板Wの外側へ退避移動させるときに、垂れ落ちた部分で薬液膜Fが盛り上がり、塗布ムラが生じる。しかしながら、本実施例において、スリットノズル3の退避移動は、スリットノズル3の下面3dが基板W上に形成された薬液膜Fの目標膜厚と同じ高さで行われる。これにより、スリットノズル3から薬液CMが垂れ落ちることが防止される。しかも、本実施例において、基板Wの半径に沿って配置されたスリットノズル3を半径方向RDに退避移動させているので、吐出停止位置における薬液膜Fが退避移動中のスリットノズル3の下面3dで平坦化される。仮にスリットノズル3の下面3dの薬液膜厚に僅かのばらつきが生じても、その影響は半径方向RDの直線状のスリット移動軌跡上に限定される。すなわち、退避移動の軌跡の影響は、最小限に抑えられる。そのため、基板W上に薬液膜Fを均一に形成できる。
また、スリットノズル3を基板Wの半径方向RDに沿って配置し、このスリットノズル3から基板W上に薬液CMを吐出する。そして、基板Wの中心部CT周りに、スリットノズル3に対して基板Wを回転させる。これにより、スリットノズル3から吐出された薬液CMが全て基板W上に着液して良好な液柱が形成される。そして、基板Wの外縁部Eに沿って基板Wの略全面に薬液膜Fが形成される。そのため、無駄な薬液CMを抑えつつ、基板W上に良好に薬液CMを塗布することができる。
また、薬液CMを吐出する際に、スリットノズル3の下面3dを薬液膜Fの目標膜厚よりも高い高さ位置に設定している。この場合、更に、スリットノズル3の退避移動の前に、スリットノズル3の下面3dを薬液膜Fの目標膜厚と同じとなるように、スリットノズル3を下降させ、その後、スリットノズル3を退避移動させている。これにより、スリットノズル3の下面3dを薬液膜Fの目標膜厚よりも高い高さ位置に設定した場合であっても、スリットノズル3の退避移動は、スリットノズル3の下面3dが目標膜厚と同じ高さで行われる。そのため、スリットノズル3から薬液CMが垂れ落ちることが防止できる。
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)上述した実施例では、基板W表面に沿った方向におけるスリットノズル3の位置を固定して薬液CMを吐出している。基板Wの中心部CTからスリットノズル3が離れた状態を維持すると、中心部CTに薬液膜Fが形成されず、一方、基板Wの中心部CTにスリットノズル3が近づいた状態を維持すると、中心部CTに形成される薬液膜Fが盛り上がる。そのため、基板Wの中心部CT付近で塗布ムラが生じる。したがって、次のように、塗布してもよい。
ノズル移動機構15は、薬液CMの吐出開始前に、スリットノズル3のスリット開口部3cにおける基板Wの中心部CT側の端部31が基板Wの中心部CTよりも外側に位置するように、スリットノズル3を配置させる。その後、薬液CMを吐出しつつ基板Wを回転している間、ノズル移動機構15は、スリットノズル3を基板Wの半径方向RDに沿って基板Wの中心部CT方向に移動させる(図22参照)。そして、薬液CMの吐出停止時(例えば基板Wが略1回転されたとき)に、スリット開口部3cの端部31が基板Wのほぼ中心部CTに位置するように、スリットノズル3を移動させる。これにより、基板W上に薬液膜Fが渦状に塗布される。そのため、基板Wの中心部CT付近で生じる塗布ムラが抑制できる。したがって、基板W上に薬液膜Fを均一に形成できる。
(2)上述した実施例および変形例(1)では、基板W上に薬液膜Fを形成するときに、保持回転部2により基板Wを回転させていた。この点、基板Wの中心部CT周りに、スリットノズル3を回転させて、基板W上に薬液膜Fを形成してもよい。この場合、ノズル移動機構15は、電動モータなどを更に備え、基板Wの中心部CT周りに、基板Wに対してスリットノズル3を回転させてもよい。
(3)上述した実施例および各変形例では、図11では2つの吐出レートで、図12では4つの吐出レートで、順番に薬液CMを吐出している。この点、その他の2つ以上の吐出レートで順番に薬液CMを吐出してもよい。2つ以上の吐出レートにより、薬液吐出による塗布ムラを抑制できる。
(4)上述した実施例および各変形例では、ステップS03において、基板Wが1回転する直前に薬液CMの吐出を停止させ、その後、基板Wが略1回転した時に基板Wの回転を停止した。すなわち、薬液CMの吐出停止に対して基板Wの回転が遅れて停止した。この点、例えば、薬液CMの吐出と基板Wの回転を同時に停止させてもよい。
(5)上述した実施例および各変形例では、薬液CMの吐出および基板W回転の停止後に、薬液膜Fの目標膜厚と同じとなるように、スリットノズル3を下降させている。このスリットノズル3の下降は、基板Wの回転を停止する前から行われていてもよい。この時、スリットノズル3の下降は、回転停止の前後、または回転停止の同時に終了してもよい。
(6)上述した実施例および各変形例では、図6において、スリットノズル3を退避させるステップS04の後、薬液膜Fの平坦化処理のステップS05を行っている。ステップS04の終了後に薬液膜Fが十分に平坦であれば、ステップS05を省略してもよい。
(7)上述した実施例および各変形例では、薬液CMを吐出するステップS02において、スリットノズル3の下面3dは、薬液膜Fの目標膜厚よりも高い高さ位置に設定されていた(図14の隙間G参照)。この点、下面3dは、薬液膜Fの目標膜厚よりも低い高さ位置に設定されてもよい。この場合、スリットノズル3を退避移動させるステップS04において、スリットノズル3の退避移動の前に、スリットノズル3の下面3dを薬液膜Fの目標膜厚となるように、スリットノズル3を上昇させる。すなわち、スリットノズル3の下面3dを薬液膜Fの略表面と同じ高さ位置にする。その後、スリットノズル3を退避移動させる。
本変形例の塗布方法では、スリットノズル3の下面3dは、薬液膜Fの目標膜厚よりも低い高さ位置に設定される。そして、スリットノズル3から薬液CMを吐出して、基板Wに薬液CMを押し付けて広げながら薬液膜Fを形成する。そのため、スリットノズル3は薬液膜Fに埋まるので、このまま、スリットノズル3を退避移動させると、形成された薬液膜Fの薬液CMを引き連れてしまうおそれがある。そうすると、塗布ムラが生じる。しかしながら、スリットノズル3の下面3dを薬液膜Fの目標膜厚と同じ高さ位置に、スリットノズル3を上昇させるので、薬液CMを引き連れてしまうことを防止できる。
また、その他の例として、薬液CMを吐出するステップS02において、スリットノズル3の下面3dは、薬液膜Fの目標膜厚と同じ高さ位置に設定されてもよい。この場合、スリットノズル3を退避移動させるステップS04において、スリットノズル3の下面3dを薬液膜Fの目標膜厚と同じ高さに維持した状態で、スリットノズル3を退避させる。これにより、薬液CMの吐出からスリットノズル3の退避移動の前までに、スリットノズル3を下降または上昇させる必要がない。そのため、薬液CMの塗布を効率よく行うことができる。
なお、薬液膜Fの目標膜厚と同じ高さ位置または、薬液膜Fの目標膜厚よりも高い高さ位置にスリットノズル3の下面3dが設定されると、スリットノズル3に薬液CMが付着することを抑制できる。例えば付着した薬液CMが乾燥すると、パーティクルの原因になるので、スリットノズル3の洗浄が必要になる。しかしながら、薬液CMの付着が抑制されるので、洗浄が容易になる。
(8)上述した実施例および各変形例では、図4のように、スリット開口部3cは、中心部CTから外縁部Eに向かうにつれて、幅WDが大きくなっている。この点、中心部CT側よりも外縁部E側の方が、薬液の吐出量が多ければ、幅WDは同じであってもよい。
(9)上述した実施例および各変形例では、図2のように、基板Wの中心部CTから外縁部Eにかけて、スリット開口部3cおよび下面3dと、基板Wの表面との間の隙間Gは同じに設定されている。この点、基板Wの中心部CTから外縁部Eに向かうにつれて、隙間Gは大きくなるように設定されていてもよい。
(10)上述した実施例および各変形例では、図13において、基板Wの回転開始は、吐出工程D2の開始(時間t2)と同時である。この点、基板Wの回転開始は、薬液CMの吐出開始(時間t1)後から吐出工程D2の開始(時間t2)前までに行ってもよいし、吐出工程D2の開始(時間t2)後に行ってもよい。
(11)上述した実施例および各変形例では、サックバック弁がスリットノズル3と開閉弁Vとの間の薬液配管13に介在して設けられていてもよい。
(12)上述した実施例および各変形例では、基板W上に薬液CMを吐出しつつ基板Wを略1回転させた。必要により、基板Wの回転は、1回転よりも大きくてもよい。
1 … 塗布装置
2 … 保持回転部
3 … スリットノズル
3c … スリット開口部
3d … 下面
11 … 薬液供給源
15 … ノズル移動機構
23 … 制御部
CT … 中心部
E … 外縁部
G … 隙間

Claims (14)

  1. 円形基板上に薬液を塗布する塗布方法において、
    前記円形基板の半径に沿って配置されたスリットノズルから前記円形基板上に薬液を吐出する吐出工程と、
    前記円形基板の中心部周りに前記円形基板を少なくとも1回転させる回転工程と、
    前記薬液の吐出および前記円形基板の回転をそれぞれ停止する吐出回転停止工程と、
    前記吐出回転停止工程の後、前記スリットノズルの下面を前記円形基板上に形成された薬液膜の目標膜厚と同じ高さに維持し、かつ前記スリットノズルと前記円形基板との間に薬液を満たした状態で、前記スリットノズルを前記円形基板の半径方向外側へ退避移動させるノズル退避工程と、
    を備えていることを特徴とする塗布方法。
  2. 請求項1に記載の塗布方法において、
    前記吐出工程において、前記スリットノズルの下面を前記薬液膜の目標膜厚よりも高い高さ位置に設定し、
    前記ノズル退避工程において、前記スリットノズルの退避移動の前に、前記スリットノズルの下面を前記薬液膜の目標膜厚と同じとなるように、前記スリットノズルを下降させ、その後、前記スリットノズルを退避移動させることを特徴とする塗布方法。
  3. 請求項1に記載の塗布方法において、
    前記吐出工程において、前記スリットノズルの下面を前記薬液膜の目標膜厚よりも低い高さ位置に設定し、
    前記ノズル退避工程において、前記スリットノズルの退避移動の前に、前記スリットノズルの下面を前記薬液膜の目標膜厚と同じとなるように、前記スリットノズルを上昇させ、その後、前記スリットノズルを退避移動させることを特徴とする塗布方法。
  4. 請求項1に記載の塗布方法において、
    前記吐出工程において、前記スリットノズルの下面を前記薬液膜の目標膜厚と同じ高さ位置に設定し、
    前記ノズル退避工程において、前記スリットノズルの下面を前記薬液膜の目標膜厚と同じ高さ位置に維持した状態で、前記スリットノズルを退避移動させることを特徴とする塗布方法。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の塗布方法において、
    前記吐出工程において、単位時間当たりの薬液の吐出量である吐出レートを変化させることを特徴とする塗布方法。
  6. 請求項5に記載の塗布方法において、
    前記吐出工程は、それぞれに異なる吐出レートに設定された第1吐出工程と第2吐出工程とを備え、
    前記第1吐出工程は、前記円形基板の回転が停止しているときに、前記第2吐出工程の吐出レートよりも大きく設定された第1吐出レートで前記スリットノズルから前記円形基板上に前記薬液を吐出し、
    前記第2吐出工程は、前記第1吐出工程の後、形成される薬液膜の目標膜厚になるように予め設定された第2吐出レートで前記スリットノズルから前記円形基板上に前記薬液を吐出し、
    前記回転工程は、前記第1吐出工程の後に前記円形基板を回転させることを特徴とする塗布方法。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の塗布方法において、
    前記回転工程において、前記円形基板の回転速度を変化させることを特徴とする塗布方法。
  8. 請求項7に記載の塗布方法において、
    前記回転工程において、前記薬液の吐出レートに応じて前記円形基板の回転速度を変化させることを特徴とする塗布方法。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の塗布方法において、
    前記吐出回転停止工程において、前記円形基板が1回転する直前に薬液の吐出を停止させ、前記円形基板が1回転したときに前記円形基板の回転を停止することを特徴とする塗布方法。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載の塗布方法において、
    前記薬液の吐出開始時に、前記スリットノズルのスリット開口部における前記円形基板の中心部側の端部が前記円形基板の中心部よりも基板半径方向の外側に位置するように、前記スリットノズルを配置させ、その後、前記薬液を吐出しつつ前記円形基板を回転している間、前記スリットノズルを前記円形基板の半径方向に沿って前記円形基板の中心部方向に移動させ、前記薬液の吐出停止時に、前記スリット開口部の端部が前記円形基板の中心部に位置するように前記スリットノズルを移動させるノズル移動工程を更に備えていることを特徴とする塗布方法。
  11. 請求項1から10のいずれかに記載の塗布方法において、
    前記ノズル退避工程の後に、前記円形基板上の前記薬液膜を平坦にする平坦化工程を更に備えることを特徴とする塗布方法。
  12. 請求項11に記載の塗布方法において、
    前記平坦化工程は、前記円形基板上の薬液がこぼれない程度の回転速度で前記円形基板を回転させることを特徴とする塗布方法。
  13. 請求項11に記載の塗布方法において、
    前記平坦化工程は、塗布開始時点での薬液膜の膜厚が塗布終了時点での薬液膜の膜厚よりも厚い場合に、前記回転工程における前記円形基板の回転方向と逆方向に前記円形基板を回転させることを特徴とする塗布方法。
  14. 請求項1から13のいずれかに記載の塗布方法において、
    前記薬液の粘度は、300cP以上10000cP以下であることを特徴とする塗布方法。
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