以下、本発明の実施形態1,2に係る光モジュール及び光伝送システムについて説明する。ただし、以下に説明する構成は、本発明の一例に過ぎず、本発明は下記の実施形態に限定されることはなく、これらの実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
また、以下では、後述する複数の発光素子21,22,…をとくに区別しない場合、複数の発光素子21,22,…の各々を「発光素子2」という。また、以下では、後述する複数の伝送損失部301,302,…をとくに区別しない場合、複数の伝送損失部301,302,…の各々を「伝送損失部30」という。また、以下では、後述する複数の光導波路311,312,…をとくに区別しない場合、複数の光導波路311,312,…の各々を「光導波路31」という。また、以下では、後述する複数の光結合部321,322,323をとくに区別しない場合、複数の光結合部321,322,323の各々を「光結合部32」という。さらに、以下では、後述する複数の駆動回路41,42をとくに区別しない場合、複数の駆動回路41,42の各々を「駆動回路4」という。
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る光モジュール1は、図1に示すように、複数の発光素子2と、複数の光導波路31と、光結合部32とを備えている。複数の発光素子2は、電気信号を入力されることにより、複数の光信号を個別に出力する。複数の光導波路31は、複数の発光素子2と個々に光学的に結合する。光結合部32は、複数の光導波路31を1つの光伝送路33に光学的に結合し、光伝送路33に複数の光信号を重ね合わせた伝送信号を出力する。そして、複数の光導波路31は、複数の光導波路31を個々に伝搬した複数の光信号が各々互いに異なる振幅を有するように、互いに異なる伝送損失を有して構成されている。
また、本実施形態の光伝送システム100は、図1に示すように、光モジュール1と、光モジュール1の出力する伝送信号を受光して電気信号に変換する受光素子81とを備えている。
以下、本実施形態の光モジュール1及び光伝送システム100について詳細に説明する。以下では、図1において、駆動回路41,42が並ぶ方向を上下方向とし、駆動回路42から見て駆動回路41側を上方、その逆を下方として説明する。また、以下では、図1において、駆動回路41と後述する光学部材3とが並ぶ方向を左右方向とし、駆動回路41から見て光学部材3側を右方、その逆を左方として説明する。さらに、以下では、図2において、駆動回路41と後述するマウント基板5とが並ぶ方向を前後方向とし、マウント基板5から見て駆動回路41側を前方、その逆を後方として説明する。
なお、図1、図2、及び図3Aには、これらの方向(上、下、左、右、前、後)を表す矢印を示すが、これらの矢印は、単に説明を補助する目的で記載しているに過ぎず、実体を伴わない。また、上記の方向の規定は、本実施形態の光モジュール1及び光伝送システム100の使用形態を限定する趣旨ではない。
本実施形態の光伝送システム100は、図1に示すように、複数(ここでは、4つ)の送信系統A11〜A14を有する光モジュール1と、複数(ここでは、4つ)の受信系統B11〜B14を有する受光モジュール8とを備えている。複数の送信系統A11〜A14と複数の受信系統B11〜B14とは、1対1に対応している。たとえば、送信系統A11から伝送される信号は、受信系統B11で受信される。つまり、本実施形態の光伝送システム100は、多チャンネル(ここでは、4チャンネル)の信号の伝送が可能である。伝送する信号は、たとえば映像信号である。
ここで、複数の送信系統A11〜A14は、いずれも同じ構成である。また、複数の受信系統B11〜B14は、いずれも同じ構成である。したがって、以下では、複数の送信系統A11〜A14をとくに区別しない場合、複数の送信系統A11〜A14の各々を「送信系統A1」という。また、以下では、複数の受信系統B11〜B14をとくに区別しない場合、複数の受信系統B11〜B14の各々を「受信系統B1」という。
本実施形態の光伝送システム100では、光モジュール1は、送信系統A1において、入力された電気信号を光信号に変換し、光ケーブル7を介して光信号を受光モジュール8に伝送する。以下では、光ケーブル7を伝搬する光信号を「伝送信号」という。そして、受光モジュール8は、送信系統A1に対応する受信系統B1において、光ケーブル7を伝搬してきた伝送信号を受光し、受光した伝送信号を電気信号に変換する。このように、本実施形態の光伝送システム100は、光モジュール1に電気信号として入力された信号を、伝送信号(光信号)を利用して受光モジュール8に伝送し、受光モジュール8から電気信号として出力することができる。
以下、本実施形態の光伝送システム100の各部について詳細に説明する。本実施形態の光モジュール1は、図1に示すように、複数の送信系統A1と、2つの駆動回路41,42と、マウント基板5と、サブマウント基板6とを備えている。複数の送信系統A1は、それぞれ複数(ここでは、2つ)の発光素子21,22と、光学部材3とを備えている。
発光素子2は、半導体レーザ(レーザダイオード)である垂直共振器面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)で構成されている。もちろん、発光素子2は、VCSEL以外の半導体レーザや、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)などで構成されていてもよい。
発光素子2は、駆動回路4から与えられる電気信号を光信号に変換して出力するように構成されている。本実施形態では、発光素子2の後面が発光面20となっている(図4参照)。そして、複数の発光素子2は、複数の光信号を個別に出力するように構成されている。本実施形態では、発光素子21の出力する光信号の振幅と、発光素子22の出力する光信号の振幅とは、互いに同じである。
光学部材3は、図2、図3A、及び図3Bに示すように、複数(ここでは、4つ)のコア34と、クラッド35とを備えている。なお、図3A及び図3Bでは、後述する押さえ部材66等の図示を省略し、光学部材3を簡略化して図示している。コア34は、たとえば完全フッ素系ポリマーやエポキシ樹脂などの樹脂材料により、Y字状に形成されている。クラッド35は、たとえばフッ素系ポリマーなどの樹脂材料により、複数のコア34を覆うように形成されている。コア34は、その屈折率がクラッド35の屈折率よりも大きくなるように構成されている。このため、光信号は、コア34とクラッド35との境界面で全反射しながら伝搬する。
本実施形態では、コア34は、後述するサブマウント基板6の第1凹部61に設けられている。また、クラッド35は、第1凹部61を埋めるように設けられることで、複数のコア34を封止している。そして、サブマウント基板6の前面には、シリコン酸化膜が形成されている。したがって、サブマウント基板6のシリコン酸化膜がコア34の後側においてクラッド35と同等の機能を果たすように、コア34の屈折率は、シリコン酸化膜を構成する二酸化ケイ素(SiO2)の屈折率よりも大きくなっている。また、クラッド35の屈折率は、二酸化ケイ素の屈折率と略同じになっている。つまり、本実施形態では、サブマウント基板6の一部も光学部材3に含まれている。
複数の送信系統A1の各々において、1つのコア34とクラッド35とは、複数(ここでは、2つ)の光導波路311,312と、光結合部32と、光伝送路33とを構成している(図1参照)。たとえば、複数のコア34のうち最も上側に位置するコア34とクラッド35とは、送信系統A11の光導波路311,312と、光結合部32と、光伝送路33とを構成している。
光導波路311の第1端(左端)は、発光素子21の発光面20と光学的に結合している。光導波路311は、発光素子21の出力する光信号を導波する。光導波路312の第1端(左端)は、発光素子22の発光面20と光学的に結合している。光導波路312は、発光素子22の出力する光信号を導波する。
また、光導波路312は、伝送損失部302(30)を有している。伝送損失部30は、たとえば光導波路31の一部において光の全反射の条件を崩すことにより、伝送損失を生じさせるように構成されている。本実施形態では、伝送損失部302は、光導波路312の途中で光結合部32に向かって折れ曲がる部位である。つまり、伝送損失部302は、光導波路312の折れ曲がる部位において光の全反射の条件を崩すことにより、伝送損失を生じさせている。なお、本実施形態では、光導波路311は、折れ曲がる部位を有さず直線状に形成されており、伝送損失部30を有していない。
光結合部32は、光導波路311の第2端(右端)と、光導波路312の第2端(右端)と光学的に結合している。また、光結合部32は、光伝送路33の第1端(左端)と光学的に結合している。したがって、光導波路311を伝搬してきた光信号と、光導波路312を伝搬してきた光信号とは、光結合部32にて重なり合う。言い換えれば、光導波路311,312の各々を伝搬してきた光信号が、光結合部32にて足し合わされる。つまり、光結合部32は、複数の光信号が重なり合うように、複数の光導波路31を結合している。そして、光結合部32にて重なり合った光信号(伝送信号)は、光伝送路33を伝搬する。
ここで、上述のように、光導波路311は伝送損失部30を有していないが、光導波路312は伝送損失部302(30)を有している。つまり、複数の光導波路311,312は、互いに異なる伝送損失を有している。とくに、複数の光導波路311,312は、複数の光導波路311,312を個々に伝搬した複数の光信号が各々互いに異なる振幅を有するように、互いに異なる伝送損失を有して構成されている。
このため、本実施形態では、発光素子21,22の各々が出力する光信号は互いに同じ振幅を有しているが、光結合部32に入力される第1入力信号と第2入力信号とは互いに異なる振幅を有している。第1入力信号は、発光素子21が出力する光信号であって、光導波路311を伝搬して光結合部32に入力される信号である。第2入力信号は、発光素子22が出力する光信号であって、光導波路312を伝搬して光結合部32に入力される信号である。
光伝送路33の第2端(右端)は、後述する光ケーブル7の光ファイバ71の第1端(左端)と光学的に結合している。したがって、光伝送路33を伝搬してきた伝送信号は、光ケーブル7を伝搬し、受光モジュール8へと伝送される。
駆動回路4は、2値伝送に対応するドライバIC(Integrated Circuit)である。つまり、駆動回路4は、発光素子2に電気信号を与えることで発光素子2を駆動し、発光素子2の出力する光信号の光強度を2段階に変化させるように構成されている。本実施形態では、駆動回路4は、VCSELドライバ(レーザダイオードドライバ)である。もちろん、駆動回路4をVCSELドライバに限る趣旨ではない。本実施形態では、駆動回路41は、4つの送信系統A11〜A14のうちの2つの送信系統A11,A12の各々の発光素子21,22に電気信号を与えるように構成されている。また、駆動回路42は、残りの2つの送信系統A13,A14の各々の発光素子21,22に電気信号を与えるように構成されている。
駆動回路4は、外部から入力される2値信号に応じた電気信号を、複数の発光素子2に与えるように構成されている。本実施形態では、2ビットの「00」相当を表す2種の2値信号が駆動回路4に入力されると、駆動回路4は、発光素子21,22の各々に電気信号を与えることにより、発光素子21,22の各々から第1光強度の光信号を出力させる。ここで、第1光強度は、たとえば発光素子2の出力の最低値を表している。また、2ビットの「11」相当を表す2種の2値信号が駆動回路4に入力されると、駆動回路4は、発光素子21,22の各々に電気信号を与えることにより、発光素子21,22の各々から第2光強度の光信号を出力させる。ここで、第2光強度は、第1光強度よりも大きい。
つまり、本実施形態では、発光素子21,22は、いずれも光強度を第1光強度と第2光強度との2段階に変化可能な光信号を出力するように構成されている。このため、発光素子21の光信号の振幅と、発光素子22の光信号の振幅とは、互いに同じである。
マウント基板5は、たとえばガラスエポキシ基板や紙フェノール基板などのプリント基板で構成されている。なお、マウント基板5は、上記のようなリジッド基板に限らない。たとえばマウント基板5の少なくとも一部は、フレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuits:FPC)を用いて構成されていてもよい。マウント基板5の前面には、2つの駆動回路41,42と、サブマウント基板6とが搭載されている。
サブマウント基板6は、たとえばシリコン基板で構成されている。サブマウント基板6の前面には、図2及び図3Aに示すように、発光体2Aが実装されている。発光体2Aは、複数の発光素子2を上下方向に並べて1つのパッケージに収めて構成されている。具体的には、発光体2Aは、発光素子2の発光面20を後方(サブマウント基板6側)に向け、バンプ60を介してサブマウント基板6及び光学部材3に跨る形でフリップチップ実装されている(図4参照)。
サブマウント基板6には、図3Aに示すように、たとえばエッチング等の加工により、第1凹部61と、第2凹部62とが形成されている。第1凹部61の底面(前面)には、複数のコア34が上下方向に並んで配置されている。また、第1凹部61は、クラッド35で埋められている。
図4に示すように、第1凹部61の内側面のうちの発光素子2の発光面20と対向する部位は、ミラー611を構成している。ミラー611は、発光面20から出力される光(光信号)をコア34の一端(左端)に向けて反射するように、サブマウント基板6の前面に対して45度の角度で傾斜している。ミラー611は、たとえば金属メッキ(ここでは、金(Au)メッキ)により形成されている。また、ミラー611は、サブマウント基板6がシリコン基板で構成されている場合には、サブマウント基板6の表面を鏡面加工することにより形成されていてもよい。
サブマウント基板6の前面において、第1凹部61の左側には、複数対(ここでは、8対)のパッド電極63が上下方向に並んで設けられている。複数対のパッド電極63は、それぞれ対応する発光素子2の1対の入力電極に電気的に接続されている。たとえば、複数対のパッド電極63のうちの最も上側に位置する1対のパッド電極63は、発光素子21の1対の入力電極に電気的に接続されている。また、複数対のパッド電極63は、複数対(ここでは、8対)のワイヤ64により、それぞれ対応する駆動回路4に電気的に接続されている。たとえば、複数対のパッド電極63のうちの最も上側に位置する1対のパッド電極63は、1対のワイヤ64により、駆動回路41に電気的に接続されている。
第2凹部62は、サブマウント基板6の前面において、第1凹部61の右側に設けられている。第2凹部62には、複数(ここでは、4本)の光ケーブル7の一端(左端)が上下方向に並んで収められている。複数の光ケーブル7は、第2凹部62に収められた状態で、それぞれ光ファイバ71の一端(左端)が対応するコア34の一端(右端)と光学的に結合する位置に配置される。また、第2凹部62の底面(前面)には、1対の位置決め部材65が形成されている。1対の位置決め部材65は、複数の光ケーブル7を挟んだ上下両側に形成されている。複数の光ケーブル7は、1対の位置決め部材65に挟まれることにより、位置決めされる。
サブマウント基板6の前面には、第2凹部62の上下両側に跨るように、押さえ部材66が接着剤661により固定されている。押さえ部材66は、たとえばガラス製であって板状に形成されている。複数の光ケーブル7の一端(左端)は、押さえ部材66とサブマウント基板6とに挟まれることにより、第2凹部62内で固定されている。
光ケーブル7は、光ファイバ71と、光ファイバ71を覆う被覆72とで構成されている。光ケーブル7は、光モジュール1の送信系統A1と、受光モジュール8の受信系統B1とを光学的に結合する。具体的には、光ケーブル7は、送信系統A1の複数の発光素子2と、受信系統B1の受光素子81とを光学的に結合する。本実施形態では、複数(ここでは、4本)の光ケーブル7が、それぞれ対応する送信系統A1と受信系統B1とを光学的に結合している。たとえば、複数の光ケーブル7のうちの最も上側に位置する光ケーブル7は、送信系統A11と受信系統B11とを光学的に結合している。
受光モジュール8は、図1に示すように、複数の受信系統B1と、増幅回路83と、マウント基板84と、サブマウント基板85とを備えている。複数の受信系統B1は、それぞれ受光素子81と、光導波路82とを備えている。
受光素子81は、たとえばフォトダイオード(Photo Diode)などの光検出器(Photo Detector:PD)で構成されている。受光素子81は、受光した伝送信号(光信号)を電気信号に変換し、増幅回路83に出力するように構成されている。
光導波路82は、サブマウント基板85にコア及びクラッドを設けることにより構成されている。光導波路82は、光モジュール1の光導波路31とは異なり、分岐していない。つまり、光ケーブル7を伝搬してきた伝送信号は、分岐せずに光導波路82を介して受光素子81に入射する。
増幅回路83は、受光素子81から出力される電気信号(電流信号)を電圧信号に変換し、電圧信号を増幅して出力するように構成されている。本実施形態では、増幅回路83は、トランスインピーダンスアンプ(Trans-Impedance Amplifier:TIA)を有するICで構成されている。トランスインピーダンスアンプは、受光素子81から出力されるノイズ電流を低減し、受信感度を高めるためにローパスフィルタを内蔵しているのが好ましい。
マウント基板84は、光モジュール1のマウント基板5と同様に、たとえばガラスエポキシ基板や紙フェノール基板などのプリント基板で構成されている。マウント基板84の前面には、増幅回路83と、サブマウント基板85とが搭載されている。サブマウント基板85は、光モジュール1のサブマウント基板6と同様に、たとえばシリコン基板で構成されている。
以下、本実施形態の光モジュール1及び光伝送システム100の動作について説明する。なお、以下では、4チャンネルのうちの1チャンネルの信号の伝送について説明する。具体的には、以下では、送信系統A11から出力される伝送信号を受信系統B11で受光する場合について説明する。
本実施形態の光モジュール1は、外部から入力される2ビットの情報を表す2種の2値信号に応じて、以下の表1に示すような伝送信号を出力する。なお、表1において、「情報」は、外部から入力される2ビットの情報である。また、光強度「α1」、「α2」、「α3」、「α4」は、「α1<α2<α3<α4」の大小関係にある。
たとえば、光モジュール1において、2ビットの「01」相当を表す2種の2値信号が駆動回路41に入力されると仮定する。この場合、駆動回路41は、発光素子21を駆動することで、発光素子21から第2光強度の光信号を出力させる。また、駆動回路41は、発光素子22を駆動することで、発光素子22から第1光強度の第2光信号を出力させる。すると、光導波路311を伝搬した光信号(第1入力信号)と、光導波路312を伝搬した光信号(第2入力信号)とが光結合部32で重なり合うことで、光強度「α2」の伝送信号が、光伝送路33及び光ケーブル7を介して受光モジュール8に伝送される。
受光モジュール8において、受光素子81は、光ケーブル7を介して伝送される伝送信号を受光し、電気信号(電流信号)に変換する。そして、受光素子81からの電気信号は、増幅回路83にて電圧信号に変換され、かつ増幅される。このようにして、増幅回路83は、光モジュール1に入力される2値信号に応じた電気信号(電圧信号)を出力する。
つまり、本実施形態では、光モジュール1は、2ビットの情報を表す2種の2値信号に応じて、光強度が「α1」、「α2」,「α3」、「α4」の4段階で変化可能な伝送信号を出力する。そして、受光モジュール8は、伝送信号の4段階の光強度に応じて、電圧値が4段階に変化可能な電気信号(電圧信号)を出力する。したがって、たとえば受光モジュール8とは別に設けられた判別回路により、増幅回路83の出力信号の電圧値を判別することで、2ビットの情報が取り出される。このように、本実施形態の光モジュール1は、入力される複数ビット(ここでは、2ビット)の情報を、伝送信号の1パルスにより受光モジュール8に伝送することができる。
ここで、本実施形態の光モジュール1の比較対象として、比較例の光モジュール101について説明する。まず、比較例の光モジュール101と本実施形態の光モジュール1との相違点について説明する。比較例の光モジュール101は、図5Aに示すように、駆動回路41,42を備える代わりに、駆動回路400を備えている。また、比較例の光モジュール101は、送信系統A11〜A14の各々において、2つの発光素子21,22を備える代わりに、1つの発光素子200を備えている。さらに、比較例の光モジュール101では、送信系統A11〜A14の各々において、発光素子200と光ケーブル7とが1本の光導波路300により光学的に結合されている。
複数の送信系統A1の各々において、駆動回路400は、図5Bに示すように、発光素子200に「I1」〜「I4」(I1<I4)の4段階に変化可能な駆動電流を供給するように構成されている。これにより、発光素子200は、光強度が「LI1」〜「LI4」(LI1<LI4)の4段階に変化可能な光信号を出力する。そして、発光素子200から出力される光信号は、分岐することなく光導波路300を伝搬し、伝送信号として光ケーブル7を伝搬する。つまり、比較例の光モジュール101は、発光素子200の出力する光信号の光強度を4段階に変化させることで、伝送信号の光強度を4段階に変化させることが可能である。
比較例の光モジュール101は、以下の問題点を有している。第1に、比較例の光モジュール101は、駆動回路400をディスクリート部品で構成する必要があるという問題点を有する。というのも、光信号の光強度を多段階(4段階以上)に変化させるように発光素子200を駆動するための汎用ICが、現状存在しないと考えられるからである。このため、比較例の光モジュール101では、駆動回路400を搭載するためにマウント基板5を大きくしなければならず、小型化を実現し難い。
第2に、比較例の光モジュール101は、発光素子200の出力する光信号の光強度が大きくなる程、光信号のSN比が低下するという問題点を有する。このため、比較例の光モジュール101は、受光モジュール8との通信の品質が悪くなる可能性がある。
図5Cに、比較例の光モジュール101と受光モジュール8との通信の品質を表すアイパターン(eye pattern)の一例を示す。このアイパターンは、受光モジュール8の出力する電気信号(電圧信号)を一定期間、多数サンプリングして重ね合わせることで得られる。また、図5Cに示すアイパターンは、受光モジュール8の出力する電気信号の電圧値のうち、伝送信号の光強度「LI3」、「LI4」に対応する電圧値を示している。
比較例の光モジュール101では、伝送信号の光強度が大きくなる程SN比が低下するため、図5Cに示すように、アイパターンの目(eye)が閉じている、つまりジッタ(Jitter)が大きくなっている。このため、比較例の光モジュール101を用いた通信では、受光モジュール8の出力する電気信号の電圧値を判別することが困難となる。つまり、比較例の光モジュール101を用いた通信では、伝送信号の光強度の多値化を図ると、受光モジュール8における伝送信号の受信感度が悪くなる可能性が高い。とくに、比較例の光モジュール101を用いた通信において、たとえば8値や16値等の4値以上の伝送信号の光強度の多値化を図ると、受光モジュール8における伝送信号の受信感度が一層悪くなる可能性がある。
これに対して、本実施形態の光モジュール1は、各々固有の振幅を有する複数の光信号を重ね合わせることで、伝送信号の光強度の多値化を実現している。このため、本実施形態の光モジュール1では、複数の発光素子2の各々が出力する光信号の光強度を大きくすることなく、伝送信号の光強度を大きくすることができる。したがって、本実施形態の光モジュール1では、複数の発光素子2の各々が出力する光信号のSN比が低下し難く、これら光信号を重ね合わせた伝送信号のSN比も低下し難い。
図6に、実施形態の光モジュール1と受光モジュール8との通信の品質を表すアイパターンの一例を示す。図6に示すように、本実施形態の光モジュール1を用いた通信では、受光モジュール8の出力する電気信号の電圧値(つまり、伝送信号の光強度)が大きくなっても、アイパターンの目が閉じ難い、つまりジッタが大きくなり難い。このため、本実施形態の光モジュール1を用いた通信では、比較例の光モジュール101を用いた通信と比べて、受光モジュール8の出力する電気信号の電圧値を判別し易い。つまり、本実施形態の光モジュール1を用いた通信では、たとえば8値や16値等の4値以上の伝送信号の光強度の多値化を図っても、受光モジュール8における伝送信号の受信感度が悪くなり難い。
また、本実施形態の光モジュール1では、発光素子2の出力する光信号は、光強度が2段階に変化可能な信号である。つまり、本実施形態の光モジュール1では、汎用ICを駆動回路4として用いることが可能である。このため、本実施形態の光モジュール1では、駆動回路4をディスクリート部品で構成する必要がないため、マウント基板5の大型化を抑えることができ、小型化を図り易い。また、本実施形態の光モジュール1では、専用の駆動回路を設計する必要がないことから、製造コストの低減も図り易い。
さらに、本実施形態の光モジュール1は、特許文献1に記載の多値光強度変調器(光モジュール)と比較して、以下の利点を有している。特許文献1に記載の光モジュールは、各アーム導波路(光導波路)を伝搬する伝送信号の位相がずれないように、光導波路の各々において、伝送信号を単一の伝搬モードで伝送する必要がある。つまり、特許文献1に記載の光モジュールは、光導波路をシングルモード導波路で設計する必要があるので、設計が困難であり製造が容易ではなく、また、設計の困難さに伴って製造コストも増大するという問題がある。
これに対して、本実施形態の光モジュール1では、光導波路31、光結合部32、及び光伝送路33を複数の伝搬モードを有するマルチモード導波路で設計することが可能であり、シングルモード導波路で設計する必要がない。つまり、本実施形態の光モジュール1は、特許文献1に記載の光モジュールと比較して、製造し易く、製造コストを低減することができる。
また、本実施形態の光モジュール1では、複数の発光素子2は、互いに同じ振幅を有する複数の光信号を個別に出力するように構成されている。この構成では、複数の発光素子2ごとに異なる光出力の設定を行う必要がないので、設計が容易である。また、この構成では、複数の発光素子2の各々の光出力が互いに同じであるので、複数の発光素子2に加わる負荷が均一になる。つまり、この構成では、複数の発光素子2の経時劣化が均一になり易いため、光モジュール1の長寿命化を図ることができる。とくに、複数の発光素子2は、各々の個体差を含めて、互いに略同じ振幅を有する複数の光信号を個別に出力するように構成されているのが好ましい。なお、複数の発光素子2は、互いに異なる振幅を有する複数の光信号を個別に出力するように構成されていてもよい。
また、本実施形態の光モジュール1では、複数の光導波路31、光結合部32、及び光伝送路33を構成するコア34及びクラッド35が、サブマウント基板6に形成されている。そして、サブマウント基板6は、シリコン基板で構成されている。このため、本実施形態の光モジュール1では、半導体プロセスを用いることで、高精度なコア34及びクラッド35を形成することが可能である。また、コア34及びクラッド35をサブマウント基板6の凹部(第1凹部61)に形成することができるので、光モジュール1の薄型化を図ることが可能である。なお、コア34及びクラッド35をサブマウント基板6に形成するか否かは任意である。
また、本実施形態の光モジュール1では、サブマウント基板6は、発光素子2の発光面20から出力される光(光信号)をコア34の一端(左端)に向けて反射するように構成されたミラー611を備えている。このため、本実施形態の光モジュール1では、フリップチップ実装により発光素子2をサブマウント基板6に実装することができるので、光モジュール1の小型化や集積化を図ることが可能である。また、本実施形態の光モジュール1では、ミラー611を用いることにより、コア34と、光ケーブル7の光ファイバ71との光学的な結合を高精度に調整することが可能である。なお、ミラー611を用いて発光素子2とコア34とを光学的に結合するか否かは任意である。たとえば、発光素子2及びコア34は、ミラー611を介さずに光学的に結合されていてもよい。
ところで、本実施形態の光モジュール1において、伝送信号の光強度は、等間隔に変化可能でなくてもよい。たとえば、伝送信号の光強度が4段階に変化可能である場合、伝送信号の光強度は、不均一な間隔で変化可能であってもよい。
また、本実施形態の光モジュール1では、光導波路31の一部が発光素子2と一体に構成されていてもよい。この構成では、サブマウント基板6にミラー611を設ける必要はない。
また、本実施形態の光モジュール1は、4つの送信系統A11〜A14を備えており、4チャンネルの伝送信号を送信する構成であるが、この構成に限定する趣旨ではない。たとえば、光モジュール1は、1つの送信系統A1のみを備えて、1チャンネルの伝送信号を送信する構成であってもよい。また、光モジュール1は、2つ又は3つの送信系統A1を備えて、2チャンネル又は3チャンネルの伝送信号を送信する構成であってもよい。さらに、光モジュール1は、5つ以上の送信系統A1を備えて、5チャンネル以上の伝送信号を送信する構成であってもよい。
また、本実施形態の光モジュール1において、伝送損失部30は、光導波路31を折り曲げることにより構成されているが、他の構成であってもよい。たとえば図7Aに示すように、伝送損失部302(30)は、光導波路312(31)を複数回(ここでは、2回)曲げることにより、伝送損失を生じさせるように構成されていてもよい。ここで、伝送損失部302(30)での伝送損失は、光導波路312(31)の曲げ角度の大小により変化する。つまり、伝送損失部302(30)での伝送損失は、光導波路312(31)の曲げ角度が大きい程、大きくなる。
また、たとえば図7Bに示すように、伝送損失部301(30)は、光導波路311(31)の光軸方向と直交する幅が、発光素子21(2)から光結合部32に近づくにつれて細くなるように、光導波路311(31)を形成することで構成されていてもよい。その他、たとえば図7Cに示すように、光導波路311(31)の光軸方向と直交する幅が階段状に変化するように、光導波路311(31)を形成することで構成されていてもよい。図7B及び図7Cに示す構成では、光導波路31の光軸方向の線路長を変更することなく、伝送損失を生じさせることができるので、光導波路31が設けられるサブマウント基板6の小型化を図ることが可能である。
つまり、伝送損失部30は、光導波路31の光軸方向の線路長や、光導波路31の断面積を変更したり、光導波路31の途中の部位を折り曲げたりすることで、伝送損失を生じさせるように構成されていればよい。もちろん、伝送損失部30は、伝送損失を生じさせる構成であれば、他の構成であってもよい。
<変形例1>
以下、実施形態1の変形例1の光モジュール11について図8を用いて説明する。ただし、以下では、実施形態1の光モジュール1と共通する構成については説明を省略する。また、図8では、駆動回路4の図示を省略している。
本変形例の光モジュール11は、図8に示すように、1つの送信系統A1を備えている。そして、送信系統A1は、3つの発光素子21,22,23と、3つの光導波路311,312,313と、光結合部32と、光伝送路33とを備えている。3つの光導波路311,312,313は、それぞれ3つの発光素子21,22,23の発光面20と光学的に結合している。また、光結合部32は、3つの光導波路311,312,313を結合している。
また、本変形例では、光導波路312,313は、それぞれ伝送損失部302,303を有している。つまり、複数の光導波路311,312,313は、複数の光導波路311,312,313を個々に伝搬した複数の光信号が各々互いに異なる振幅を有するように、互いに異なる伝送損失を有している。
以下、本変形例の光モジュール11の動作について説明する。本変形例の光モジュール11は、外部から入力される3ビットの情報を表す3種の2値信号に応じて、以下の表2に示すような伝送信号を出力する。なお、表2において、「情報」は、外部から入力される3ビットの情報である。また、光強度「β11」、…、「β18」は、「β11<β12<…<β18」の大小関係にある。
つまり、本変形例の光モジュール11は、3ビットの情報を表す3種の2値信号に応じて、光強度が「β11」、…、「β18」の8段階で変化可能な伝送信号を出力する。このように、本変形例の光モジュール11は、入力される複数ビット(ここでは、3ビット)の情報を、伝送信号の1パルスにより受光モジュール8に伝送することができる。
ところで、本変形例の光モジュール11は、たとえば第1入力信号と第2入力信号とが互いに同じ振幅を有するように光導波路311,312を構成した場合、以下の表3に示すような伝送信号を出力する。なお、表3において、「情報」は、外部から入力される3ビットの情報である。また、光強度「β21」、…、「β26」は、「β21<β22<…<β26」の大小関係にある。
この場合、本変形例の光モジュール11は、3ビットの情報を表す3種の2値信号に応じて、光強度が「β21」、…、「β26」の6段階で変化可能な伝送信号を出力する。つまり、この場合、光モジュール11は、入力される6値の情報を、伝送信号の1パルスにより受光モジュール8に伝送することができる。
<変形例2>
以下、実施形態1の変形例2の光モジュール12について図9Aを用いて説明する。ただし、以下では、変形例1の光モジュール11と共通する構成については説明を省略する。また、図9Aでは、駆動回路4の図示を省略している。
本変形例の光モジュール12は、図9Aに示すように、発光素子24と、発光素子24の発光面20と光学的に結合する光導波路314とをさらに備えている。したがって、本変形例では、光結合部32は、4つの光導波路311,312,313,314を結合している。
また、本変形例では、光導波路314は、伝送損失部304を有している。つまり、複数の光導波路311,…314は、複数の光導波路311,…,314を個々に伝搬した複数の光信号が各々互いに異なる振幅を有するように、互いに異なる伝送損失を有している。
以下、本変形例の光モジュール12の動作について説明する。本変形例の光モジュール12は、外部から入力される4ビットの情報を表す4種の2値信号に応じて、以下の表4及び表5に示すような伝送信号を出力する。なお、表4及び表5において、「情報」は、外部から入力される4ビットの情報である。また、光強度「γ1」、…、「γ16」は、「γ1<γ2<…<γ16」の大小関係にある。
つまり、本変形例の光モジュール12は、4ビットの情報を表す4種の2値信号に応じて、光強度が「γ1」、…、「γ16」の16段階で変化可能な伝送信号を出力する。このように、本変形例の光モジュール12は、入力される複数ビット(ここでは、4ビット)の情報を、伝送信号の1パルスにより受光モジュール8に伝送することができる。
ところで、本変形例の光モジュール12では、光結合部32は1つであるが、複数あってもよい。以下、本変形例の光モジュール12の他の構成として、複数の光結合部32を備えた光モジュール13について図9Bを用いて説明する。
図8Bに示すように、光モジュール13は、複数(ここでは、3つ)の光結合部321,322,323を備えている。光結合部321は、光導波路311を伝搬してきた光信号と、光導波路312を伝搬してきた光信号とを重ね合わせて、重ね合わせた光信号を1本の光結合路361に出力するように構成されている。また、光結合部322は、光導波路313を伝搬してきた光信号と、光導波路314を伝搬してきた光信号とを重ね合わせて、重ね合わせた光信号を1本の光結合路362に出力するように構成されている。そして、光結合部323は、光結合路361を伝搬してきた光信号と、光結合路362を伝搬してきた光信号とを重ね合わせて、重ね合わせた光信号を伝送信号として光伝送路33に出力するように構成されている。このように、光モジュール13は、複数の光結合部32により、段階的に光信号を重ね合わせて伝送信号を出力する構成であってもよい。
<変形例3>
以下、実施形態1の変形例3の光モジュール14について図10を用いて説明する。ただし、以下では、変形例1の光モジュール11と共通する構成については説明を省略する。また、図10では、駆動回路4の図示を省略している。
本変形例の光モジュール14は、図10に示すように、発光素子21,…,2nと、発光素子21,…,2nの発光面20とそれぞれ光学的に結合する光導波路311,…,31nとをさらに備えている。したがって、本変形例では、光結合部32は、n個の光導波路311,…,31nを結合している。
また、本変形例では、光導波路312,…,31nは、それぞれ伝送損失部302,…,30nを有している。つまり、複数の光導波路311,…,31nは、複数の光導波路311,…,31nを個々に伝搬した複数の光信号が各々互いに異なる振幅を有するように、互いに異なる伝送損失を有している。
このため、本変形例の光モジュール14は、理論上、入力される複数ビット(ここでは、2nビット)の情報を、伝送信号の1パルスにより受光モジュール8に伝送することができる。
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係る光モジュール1A及び光伝送システム100Aについて説明する。ただし、本実施形態の光モジュール1A及び光伝送システム100Aの基本的な構成は実施形態1の光モジュール1及び光伝送システム100と共通しているので、共通する点については説明を省略する。
本実施形態の光モジュール1Aは、図11A及び図11Bに示すように、複数(ここでは、2つ)の調整部9と、監視回路90とを備えている。
複数の調整部9は、それぞれ複数の光信号の各々の基準値に対する振幅の比を一定に維持するように構成されている。たとえば、発光素子21の出力する光信号の振幅を「0.5」、発光素子22の出力する光信号の振幅を「1.0」、基準値を「0.5」とする。この場合、複数の調整部9のうちの一方の調整部9は、発光素子21の出力する光信号の振幅「0.5」の基準値「0.5」に対する比(1:1)を一定に維持する。また、他方の調整部9は、発光素子22の出力する光信号の振幅「1.0」の基準値「0.5」に対する比(2:1)を一定に維持する。ここでは、複数の調整部9は、いずれも温度調整部91である。
温度調整部91は、ヒータ911と、駆動回路912とを備えている。ヒータ911は、たとえば薄膜状に形成されたヒータである。本実施形態では、複数(ここでは、2つ)のヒータ911は、それぞれ複数(ここでは、2つ)の光導波路311,312に設けられている。つまり、ヒータ911は、図11Bに示すように、光導波路31を構成するクラッド35の前面に載せられている。駆動回路912は、監視回路90から送信される帰還信号に応じてヒータ911を駆動させ、ヒータ911の発熱量を変化させように構成されている。
そして、光導波路31は、ヒータ911の発熱により温度が変化することで、コア34及びクラッド35の屈折率が変化し、伝送損失が変化する。つまり、本実施形態の光モジュール1Aにおいて、温度調整部91は、複数の光導波路31のうちの少なくとも1つの伝送損失を調整する導波路調整機構である。
ここで、温度調整部91は、ペルチェ素子と、ペルチェ素子の駆動回路とで構成されていてもよい。この構成では、光導波路31は、ペルチェ素子により冷却されることで、コア34及びクラッド35の屈折率が変化し、伝送損失が変化する。
監視回路90は、たとえばマウント基板5に設けられ、光伝送路33から分岐させた光分岐路に光学的に結合されている。監視回路90は、光伝送路33を伝搬する伝送信号の光強度をモニタリングする機能を有している。つまり、監視回路90は、光伝送路33を介して光分岐路に分岐する伝送信号を光電変換し、伝送信号の光強度に対応する電圧値と、基準となる電圧値とを比較する機能を有している。そして、監視回路90は、比較結果(差分)に応じた帰還信号を、帰還用の配線を介して対応する温度調整部91に送信するように構成されている。
以下、本実施形態の光伝送システム100Aにおける調整方法の一例について説明する。まず、施工者(又はユーザ)は、複数の発光素子2のうち1つの発光素子2(ここでは、発光素子21)を発光させる。すると、監視回路90は、受光した伝送信号の光強度に対応する電圧値と、基準となる電圧値の基準値とを比較する。そして、監視回路90は、比較結果を帰還信号として発光素子21側の温度調整部91に与える。温度調整部91の駆動回路912は、帰還信号に応じてヒータ911を駆動することで、光導波路311の伝送損失を調整する。
このようにして、発光素子21の出力する光信号の基準値に対する振幅の比が一定に維持される。以下、施工者(又はユーザ)は、複数の発光素子2の全てについて上記の調整を行う。
ここで、上述の光モジュール1,11〜14では、発光素子2の個体差や光導波路31での伝送損失などにより、光結合部32から出力される伝送信号の2値信号に対応する光強度が、設計時の光強度からずれる可能性がある。
そこで、本実施形態の光モジュール1Aは、複数の光信号の各々の基準値に対する振幅の比を一定に維持する調整部9をさらに備えている。このため、本実施形態の光モジュール1Aでは、調整部9により、基準値に対する個々の光信号の振幅の比を調整することができるので、個々の光信号の振幅のずれを調整することができる。つまり、本実施形態の光モジュール1Aは、伝送信号の2値信号に対応する光強度を、設計時の光強度に等しくなるように維持し易い。なお、調整部9による調整は、光モジュール1Aの初期設定時に行ってもよいし、光モジュール1Aの使用中において行ってもよい。
また、本実施形態の光伝送システム100Aでは、監視回路90で、つまり光モジュール1Aで伝送信号の光強度をモニタリングしているが、受光モジュール8でモニタリングしてもよい。たとえば、受光モジュール8の増幅回路83は、光伝送路33を伝搬する伝送信号の光強度をモニタリングする機能を有していてもよい。
この場合、増幅回路83は、受光した伝送信号の光強度に対応する電圧値と、基準となる電圧値の基準値とを比較するように構成されていればよい。そして、増幅回路83は、比較結果に応じた帰還信号を、帰還用の配線を介して光モジュール1Aの対応する温度調整部91に送信するように構成されていればよい。帰還用の配線は、光ケーブルであってもよいし、電気配線であってもよい。その他、増幅回路83は、無線により帰還信号を光モジュール1Aの対応する温度調整部91に送信する構成であってもよい。なお、光モジュール1Aに監視回路90を設けた場合、光モジュール1Aのみで伝送信号の光強度の調整を行えるので、好ましい。
また、本実施形態の光モジュール1Aでは、調整部9は、複数の光導波路31のうちの少なくとも1つの伝送損失を調整する温度調整部(導波路調整機構)91を含んでいる。このため、本実施形態の光モジュール1Aは、発光素子2の光出力を変更することなく、伝送信号の光強度の調整が可能である。なお、調整部9が導波路調整機構を含むか否かは任意である。
ここで、図12に示すように、複数の温度調整部91は、それぞれ複数の発光素子2の近傍に設けられていてもよい。この構成では、温度調整部91は、光導波路31の温度を変化させる代わりに、発光素子2の温度を変化させる。つまり、この構成では、温度調整部91は、複数の発光素子2のうちの少なくとも1つの出力特性を調整する素子調整機構である。この構成では、調整部9は、光導波路31の伝送損失を調整する代わりに、発光素子2の光出力を調整することで、伝送信号の光強度を調整する。
つまり、本実施形態の光モジュール1Aでは、複数の発光素子2のうちの少なくとも1つの出力特性を調整する温度調整部(素子調整機構)91を含んでいることが好ましい。この構成では、光導波路31の伝送損失を変更することなく、伝送信号の光強度の調整が可能である。
その他、調整部9は、たとえば図13に示すように、光導波路31のコア34及びクラッド35に設けられた1乃至複数の溝92を含んでいてもよい。この構成では、溝92は、コア34及びクラッド35の屈折率を変化させることで、光導波路31の伝送損失を変化させる。つまり、溝92は、複数の光導波路31のうちの少なくとも1つの伝送損失を調整する導波路調整機構に相当する。溝92は、たとえば光モジュール1Aの初期設定時に設けるのが好ましい。
また、本実施形態の光モジュール1Aでは、調整部9は、複数の発光素子2を駆動する駆動回路4を含んでいることが好ましい。つまり、駆動回路4が、帰還信号に応じて複数の発光素子2の各々の光出力を調整するように構成されていてもよい。この構成では、温度調整部91や溝92を設けることなく、調整部9の機能を実現することができる。
ところで、本実施形態の光伝送システム100Aにおける調整は、上述のように施工者(又はユーザ)が行ってもよいが、定期的に自動で行われてもよい。たとえば、駆動回路4及び監視回路90(又は増幅回路83)は、定期的に調整モードに切り替わるように構成されていてもよい。そして、調整モードにおいて、駆動回路4は、複数の発光素子2を1つずつ発光させ、監視回路90(又は増幅回路83)に伝送信号の光強度をモニタリングさせてもよい。この構成では、施工者(又はユーザ)が調整作業を行わずに済むため、好ましい。