JP2017193791A - 炭素繊維およびその製造方法 - Google Patents

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美佳子 加藤
周平 吉田
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周平 吉田
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Abstract

【課題】本発明の目的は、接着性・靱性に優れた複合材料を得ることができる炭素繊維を提供することにある。【解決手段】本発明の炭素繊維は、表面酸素濃度比O/Cが20〜40%であり、TEM観察で測定される最大高さRzが20〜250nmである炭素繊維である。本発明の炭素繊維の製造方法は、前駆体繊維を炭素化して得られた未表面処理炭素繊維を、電解溶液中で電解酸化処理する炭素繊維の製造方法であって、前記電解酸化処理において、総電気量が、炭素繊維1gに対して40〜150クーロンであり、かつ、最大電圧が20V以下である炭素繊維の製造方法である。電極間の距離は1〜20cmであることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、マトリクス樹脂との接着性に優れた炭素繊維およびその製造方法に関する。
炭素繊維は、比強度・比弾性率に優れ、軽量であるため、熱硬化性及び熱可塑性樹脂の強化繊維として、従来のスポーツ・一般産業用途だけでなく、航空・宇宙用途、自動車用途など、幅広い用途に利用されるようになってきている。利用用途が拡大されるにつれ、炭素繊維強化樹脂複合材料(以下、複合材料と称する)には、さらに高い性能が求められている。
複合材料の性能は、使用する炭素繊維とマトリクス樹脂の力学的特性の違いだけでなく、炭素繊維と樹脂の接着性など界面特性の違いによっても異なる。一般的に、グラファイト構造を持つ炭素繊維の表面は、マトリクス樹脂に対する濡れ性が低いため、マトリクス樹脂との接着性が低い。そのため、界面特性の向上を目的とし、電解酸化処理などの表面処理により、繊維表面に水酸基やカルボキシル基などの官能基を導入し、炭素繊維とマトリクス樹脂との接着性を改善している。
しかし、表面処理により繊維表面により多くの官能基を導入しようとする場合、より強い酸化条件で繊維を処理する必要がある。具体的には、電解酸化処理により表面処理を行う場合、繊維表面の官能基の導入量を増やすためには、高い電気量で炭素繊維を処理する必要があった。(例えば、特許文献1)しかし、このような条件で炭素繊維の表面処理を行うと、繊維表面に多くの官能基が導入される代わりに、炭素繊維表面がエッチングされ、凹凸が生じてしまうという問題がある。炭素繊維表面に大きな凹凸が存在すると、凹部にマトリクス樹脂が侵入しにくくなり、炭素繊維とマトリクス樹脂との接着性がかえって低下してしまう。そのため、繊維表面の凹凸が小さく、なおかつ十分な量の官能基が導入された、マトリクス樹脂との接着性に優れた炭素繊維が求められている。
特開2008−248427号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、接着性・靱性に優れた複合材料を得ることができる炭素繊維を提供することにある。
上記課題を解決する本発明の炭素繊維は、表面酸素濃度比(O/C)が20〜40%であり、透過電子顕微鏡観察で測定される最大高さ(Rz)が20〜250nmである炭素繊維である。
本発明の炭素繊維の製造方法は、前駆体繊維を炭素化して得られた未表面処理炭素繊維を、電解溶液中で電解酸化処理する炭素繊維の製造方法であって、前記電解酸化処理において、総電気量が、炭素繊維1gに対して40〜150クーロンであり、かつ、最大電圧が20V以下である炭素繊維の製造方法である。本発明において、電極間の距離は1〜20cmであることが好ましい。
本発明の炭素繊維は、マトリクス樹脂との接着性に優れるため、靱性に優れた複合材料を与えることができる。
本発明の炭素繊維の製造方法によれば、繊維表面の凹凸が小さく、なおかつ十分な量の官能基が導入された、マトリクス樹脂との接着性に優れた炭素繊維を得ることができる。
本発明の炭素繊維は、表面酸素濃度比(O/C)が20〜40%の炭素繊維である。表面酸素濃度比(O/C)とは、X線光電子分光法(XPS)により炭素繊維表面を測定して検出される酸素原子の存在量と炭素原子の存在量の比であり、かかる値が大きくなるほど、炭素繊維表面に多くの官能基が導入されている。
O/Cがこの範囲にあると、炭素繊維とマトリクス樹脂が適度に接着し、靭性に優れた複合材料を得ることができる。O/Cが低すぎる場合は、炭素繊維とマトリクス樹脂との接着性が劣り、得られる複合材料の物性低下しやすくなる。一方、O/Cが高すぎる場合は、接着性が強すぎるために得られる複合材料の引張強度などの性能が低下しやすくなる。
さらに、本発明の炭素繊維は、透過電子顕微鏡(TEM)で炭素繊維の繊維軸に垂直な断面を観察した際の、断面円周の凹凸の最大高さ(Rz)が20〜250nmである炭素繊維である。Rzがこの範囲にあると、炭素繊維とマトリクス樹脂が適度に接着し、靭性に優れた複合材料を得ることができる。最大高さ(Rz)が大きすぎる場合、マトリクス樹脂が炭素繊維表面の凹部に侵入しにくくなり、炭素繊維とマトリクス樹脂との接着性が低下する。
本発明の炭素繊維は、O/CとRzが同時にこの範囲を満たすため、炭素繊維とマトリクス樹脂の接着性に優れ、靭性に優れた複合材料を得ることができる。
本発明の炭素繊維は、BET法を用いてガス吸着(クリプトン吸着)により測定される比表面積(SA1)と、炭素繊維の単繊維直径と繊度から計算によって求められる仮想の表面積(SA2)の比である表面積比が1.2〜1.8であることが好ましい。
表面積比は、表面処理工程において炭素繊維が受けたエッチング作用の程度を示す。炭素繊維の表面積比が増加するにつれ、炭素繊維の表面に存在する凹凸が増加する。
仮想の表面積(SA2)は下記の式(1)に従って算出される。
SA2=(π×r×K)÷Y ・・・・・(1)
(Y:炭素繊維繊度(g/m)、r:炭素繊維の単繊維直径(m)、K:繊維束1本当たりのフィラメント数)
表面積比が1.2〜1.8であると、炭素繊維とマトリクス樹脂との接着性をより高めることができる。表面積比が低すぎる場合、炭素繊維表面の凹凸が少なく、アンカー効果が減少し、接着性が低下しやすい傾向がある。表面積比が高すぎる場合は、マトリクス樹脂が炭素繊維表面の凹部に侵入しにくくなり、炭素繊維とマトリクス樹脂との接着性が低下する。
上記のような本発明の炭素繊維は、マトリクス樹脂との接着性に優れるため、靱性に優れた複合材料を与えることができる。
本発明の炭素繊維は、例えば以下のような本発明の炭素繊維の製造方法により得ることができる。
本発明の炭素繊維の製造方法は、前駆体繊維を炭素化して得られた未表面処理炭素繊維を、電解溶液中で電解酸化処理する炭素繊維の製造方法であって、前記電解酸化処理において、総電気量を、炭素繊維1gに対して40〜150クーロンとする炭素繊維の製造方法である。
電気量をこの範囲で調節すると、炭素繊維のO/Cを目的の範囲としやすい。炭素繊維1gに対する電気量は、より好ましくは、60〜100クローンである。
さらに本発明の製造方法においては、最大電圧を20V以下とする。炭素繊維に係る最大電圧が、20V以下であると、炭素繊維への過剰なエッチングを抑制しRzを目的の範囲とすることができる。炭素繊維に係る最大電圧は、1〜20Vであることがより好ましく、3〜15Vであることがさらに好ましい。最大電圧の下限は特に限定されないが、処理効率の観点から1V以上であることが好ましい。
本発明の製造方法においては、電解表面処理装置の電解液と炭素繊維を介して回路を形成する+電極と−電極の電極間の距離が1〜20cmであることが望ましい。電極間の距離を調整することで、電解酸化処理の通電時の抵抗を調整し、電気量と電圧を好ましい範囲に調整することができる。
炭素繊維の電解酸化処理は、一段の処理で行ってもよく、総電気量が、炭素繊維1gに対して40〜150クーロンとなる範囲で繰り返し行っても良い。酸化電解処理での処理段数(処理回数)は4段以上が望ましい。処理段数が多いほうが、1段あたりに必要な電気量が減少し、炭素繊維に負荷される電圧を低くすることができるため、過度なエッチングを抑制することができる。なお、本発明において1段の電解酸化処理とは、電解液と炭素繊維を介して一組の+電極と−電極の間を通電して行われた処理を言う。複数段で処理を行う場合、一組の電極からなる表面処理装置で炭素繊維に複数回通電して電解処理を行ってもよく、+電極と−電極が交互に複数配列された表面処理装置で炭素繊維を連続的に処理しても良い。
電解液としては、無機塩類の水溶液を用いる。電解質として用いる無機塩類としては、例えば、硫酸アンモニウムや炭酸水素ナトリウムなどが上げられる。電解質として無機塩類を用いると、無機酸や無機塩基を用いる場合と比較して、電解液の酸化性が低く、過度なエッチングを抑制できる。
電解液の電解質濃度は0.1規定以上が好ましく、0.1〜1規定がより好ましい。電解質濃度が高い方が、電気伝導度が高く、処理効率が向上しやすい。一方で、電解質濃度が高すぎる場合は、電解質が析出し、濃度の安定性が低くなる傾向がある。
電解液の温度は、高いほど電気伝導性を向上させるため、処理を促進させることができる。一方で、電解液の温度が高すぎると、水分の蒸発による濃度の変動等により、時間変動なく均一な条件を提供するのが難しくなるため、15〜40℃の間が好ましい。
表面処理後の炭素繊維をサイズ剤付与前に乾燥させる場合、乾燥機の温度は100〜150℃であることが望ましい。乾燥温度が低すぎる場合、炭素繊維に付与された水分が乾燥しにくい。乾燥温度が高すぎる場合は、炭素繊維表面の酸素含有官能基が脱離しやすくなり、O/Cが低下しやすくなる傾向がある。
上記のような本発明の炭素繊維の製造方法によれば、マトリクス樹脂との接着性に優れた炭素繊維を得ることができる。
以下本発明の炭素繊維をより詳しく説明する。本発明の炭素繊維束を構成する炭素繊維は特に制限が無く、ピッチ系、レーヨン系、PAN系等何れの炭素繊維も使用できるが、操作性、工程通過性、及び機械強度等を鑑みるとアクリロニトリル系が好ましい。炭素繊維の繊度、強度等の特性も特に制限が無く、公知の何れの炭素繊維も制限無く使用できる。PAN系の炭素繊維は、例えば、以下の方法により製造することができる。
<前駆体繊維>
本発明の炭素繊維に用いる前駆体繊維は、アクリロニトリルを好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上含有し、その他の単量体を10質量%以下含有する単量体を単独又は共重合した紡糸溶液を紡糸して製造するアクリル系前駆体繊維が好ましい。その他の単量体としてはイタコン酸、(メタ)アクリル酸エステル等が例示される。紡糸後の原料繊維を、水洗、乾燥、延伸、オイリング処理することにより、前駆体繊維が得られる。このとき、トータル延伸倍率が5〜15倍になるようスチーム延伸する。前駆体繊維のフィラメント数は、製造効率の面では1000フィラメント以上が好ましく、12000フィラメント以上がより好ましい。
<耐炎化処理>
前駆体繊維は、好ましくは、200〜260℃、延伸比0.90〜1.00で耐炎化前に予備熱処理され、引き続き加熱空気中200〜260℃で10〜100分間耐炎化処理される。この時の処理は、一般的に、延伸倍率0.85〜1.15の範囲で処理されるが、高強度・高弾性率の炭素繊維を得るためには、0.95以上がより好ましい。この耐炎化処理は、前駆体繊維を繊維密度1.34〜1.38g/cmの酸化された繊維とするものであり、耐炎化時の張力(延伸配分)は特に限定されるものでは無い。
<第一炭素化処理>
上記耐炎化繊維は、従来の公知の方法を採用して炭素化することができる。例えば、窒素雰囲気下300〜800℃で第一炭素化炉で徐々に温度を高めると共に、耐炎化繊維の張力を制御して緊張下で1段目の第一炭素化をする。
<第二炭素化処理>
より炭素化を進め且つグラファイト化(炭素の高結晶化)を進める為に、窒素等の不活性ガス雰囲気下800〜1600℃で第二炭素化炉で徐々に温度を高めると共に、第一炭素化繊維の張力を制御して焼成する。
なお、各炭素化炉において、炉の入り口付近からに急激な温度変化、例えば最高温度に急激に繊維を導入することは、表面欠陥、内部欠陥を多く発生させるため好ましくない。また、炉内の高温部で必要以上に滞留時間が長くなると、グラファイト化が進み過ぎ、脆性化した炭素繊維が得られることになるので好ましくない。上記第一炭素化処理〜第二炭素化工程は、張力をコントロールすると共に、必要に応じて、複数の炉で所定の物性となるように処理を行っても良い。
より高い弾性率が求められる場合は、さらに2000〜3000℃の高温で黒鉛化処理を行ってもよい。
<表面酸化処理>
上記炭素繊維ストランドは、上記のように、電解液中で表面酸化処理を施す。表面処理の電気量は、炭素繊維1gに対して40〜150クーロンになる範囲とする。電気量をこの範囲で調節すると、繊維としての力学的特性に優れ、かつ、樹脂との接着性の向上した炭素繊維を得ることができる。一方、電気量が低すぎる場合は、樹脂との接着性が低下しやすい傾向にあり、電気量が高すぎると、過剰な処理によりRzが増加し、炭素繊維とマトリクス樹脂の十分な接着が得られない。
また、かかる表面処理においては炭素繊維に負荷する最大電圧を1〜20V、より好ましくは1〜15Vとして処理を行う。電圧が低すぎる場合、目的のO/Cを得るために複数回の処理が必要になり、工程が長くなる。最大電圧が高すぎる場合、炭素繊維表面のRzが増大し、炭素繊維とマトリクス樹脂の接着性が低下するため、望ましくない。
炭素繊維の電解酸化処理は、一段の処理で行ってもよく、総電気量が、炭素繊維1gに対して40〜150クーロンとなる範囲で繰り返し行っても良い。酸化電解処理での処理段数(処理回数)は4段以上が望ましい。処理段数が多いほうが、1段あたりに必要な電気量が減少し、電圧を低くすることができるため、過度なエッチングを抑制することができる。
複数段で表面酸化処理を施す場合、後段で施す処理の電圧が、前段で施す処理の電圧よりも大きい方が望ましい。後段の電圧が高くなるように設定すると、効率よくO/Cを上げることが出来る。
電解液としては、無機塩類の水溶液を用いる。無機塩類の電解質としては、例えば、硫酸アンモニウムや炭酸水素ナトリウムなどが上げられる。電解液の電解質濃度は0.1規定以上が好ましく、0.1〜1規定がより好ましい。電解質濃度が0.1未満であると、電気伝導度が低いために、電解に適さない傾向があり、一方で、電解質濃度が高すぎる場合は、電解質が析出し、濃度の安定性が低くなる傾向がある。
電解液の温度は、高いほど電気伝導性を向上させるため、処理を促進させることができる。一方で、電解液の温度が40℃を超えると、水分の蒸発による濃度の変動等により、時間変動なく均一な条件を提供するのが難しくなるため、15〜40℃の間が好ましい。
本発明の製造方法においては、電解表面処理装置の電解液と炭素繊維を介して回路を形成する+電極と−電極の電極間の距離が1〜20cmであることが望ましい。電極間の距離を調整することで、電解酸化処理の通電時の抵抗を調整し、電気量と電圧を好ましい範囲に調整することができる。
表面処理後の炭素繊維をサイズ剤付与前に乾燥させる場合、乾燥機の温度は100〜150℃であることが望ましい。乾燥温度が低すぎる場合、炭素繊維に付与された水分が乾燥しない。乾燥温度が高すぎる場合、炭素繊維表面のO/Cが低下しやすくなる傾向がある。
<サイジング処理>
表面処理された炭素繊維ストランドは、サイジング液に通され、サイズ剤が付与される。サイジング液におけるサイズ剤の濃度は、10〜25質量%が好ましく、サイズ剤の付着量は、0.4〜1.7質量%が好ましい。炭素繊維ストランドに付与されるサイズ剤は、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂やその変性物が挙げられる。なお、複合材料のマトリクス樹脂に応じ、適したサイズ剤を適宜選択することができる。また、このサイズ剤は二種類以上を組み合わせて使用することも可能である。サイズ剤付与処理は、通常、乳化剤等を用いて得られる水系エマルジョン中に炭素繊維ストランドを浸漬するエマルジョン法が用いられる。また、炭素繊維の取扱性や、耐擦過性、耐毛羽性、含浸性を向上させるため、分散剤、界面活性剤等の補助成分をサイズ剤に添加しても良い。
<乾燥処理>
サイジング処理後の炭素繊維ストランドは、サイジング処理時の分散媒であった水等を蒸散させるため乾燥処理が施され、複合材料製造用炭素繊維ストランドが得られる。乾燥にはエアドライヤーを用いることが好ましい。乾燥温度は特に限定されるものではないが、汎用的な水系エマルジョンの場合は通常100〜180℃に設定される。また、本発明においては、乾燥工程の後、200℃以上の熱処理工程を経ることも可能である。
上記のようにして得られる本発明の炭素繊維は、マトリクス樹脂との接着性に優れるため、靱性に優れた複合材料を与えることができる。
このようにして得られた炭素繊維を用い、マトリクス樹脂と組み合わせ、例えば、オートクレーブ成形、プレス成形、樹脂トランスファー成形、フィラメントワインディング成形など、公知の手段・方法により複合材料が得られる。
炭素繊維は、通常、シート状の強化繊維材料として用いられる。シート状の材料とは、繊維材料を一方向にシート状に引き揃えたもの、繊維材料を織編物や不織布等の布帛に成形したもの、多軸織物等が挙げられる。
マトリクス樹脂としては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が用いられる。熱硬化性樹脂の具体例として、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂の予備重合樹脂、ビスマレイミド樹脂、アセチレン末端を有するポリイミド樹脂及びポリイソイミド樹脂、ナジック酸末端を有するポリイミド樹脂等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上の混合物として用いることもできる。中でも、耐熱性、弾性率、耐薬品性に優れたエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂が、特に好ましい。これらの熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤以外に、通常用いられる着色剤や各種添加剤等が含まれていてもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンオキシド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド、ポリベンズイミダゾール等が挙げられる。
複合材料中に占める樹脂組成物の含有率は、10〜90重量%、好ましくは20〜60重量%、更に好ましくは25〜45重量%である。
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。また、各実施例及び比較例における繊維の物性についての評価方法は以下の方法により実施した。
<ストランド弾性率>
JIS R−7608に準じてエポキシ樹脂含浸ストランドの引張強度および引張弾性率を測定した。
<表面官能基量O/C>
炭素繊維の表面酸素濃度(O/C)は、次の手順に従ってXPS(ESCA)によって求めることができる。測定には、JEOL社製ESCA JPS−9000MXを使用した。炭素繊維をカットしてステンレス製の試料支持台上に拡げて並べた後、光電子脱出角度を90度に設定し、X線源としてMgKαを用い、試料チャンバー内を1×10−6Paの真空度に保った。測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値B.E.を284.6eVに合わせる。O1sピーク面積は、528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、C1sピーク面積は、282〜292eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。炭素繊維表面の表面酸素濃度O/Cは、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比で計算して求められる。
<最大溝深さRz>
炭素繊維の繊維軸と垂直な断面の最大溝深さRzは次の手順によってTEMによって求めることが出来る。炭素繊維を樹脂に埋包し、炭素繊維の繊維軸と垂直方向に、集束イオンビーム(FIB)により厚さ100nmの薄片を作製し、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JEM−2100F)用いて加速電圧200kV、観察倍率1万で観察した。
TEMの観察画像をネクサス社製の画像処理ソフトウェアNexusNewQubeにて繊維断面部分を二値化した後、画像をつなぎ合わせ繊維断面全体を画素数3072×3072のサイズで作成し、画像処理ソフトウェアImageJで線維断面の重心を求め、繊維断面の輪郭を抽出し、輪郭までの距離を求めた。この作業を繊維重心から時計まわりに0.03°ずつ、360°にわたって実施した。Rzは以下の式で求められる。
Rz=max(Z(i))−min(Z(i)
(i):i°における重心から輪郭までの距離
この際、表層の凹凸のみの影響を調査するため、ヒューリンクス社製のデータ解析ソフトウェア Igor Proを用いて、直径から求められる周長から、角度を長さに変換した際に2μm以上の周期で現れる凹凸を排除するように補正を行った。
<比表面積(SA1)>
Quantachrome社製ガス吸着装置AUTOSORB−1を使用し、クリプトンガス吸着によるBET法により表面積を測定した。すなわち、長さ1m程度に切り出した炭素繊維を試料とし、BET理論に従ってBETプロットの約0.1〜0.25の相対圧域を解析し比表面積を算出した。測定は下記条件により行った。
吸着ガス:Kr
死容積:He
吸着温度:77K(液体窒素温度)
測定範囲:相対圧(P/Po)=0.05−0.3
ここで、Pは測定圧、PoはKrの飽和蒸気圧である。
<表面積比>
クリプトン吸着による比表面積(SA1)と仮想表面積(SA2)の比である表面積比(SA1/SA2)は仮想の表面積(SA2)に対する比表面積(SA1)の割合である。SA2は糸直径から算出され、以下の式(1)で求められる。
SA2=(π×r×K)÷Y ・・・・・(1)
(Y:炭素繊維繊度(g/m)、r:炭素繊維の単繊維直径(m)、K:繊維束1本当たりのフィラメント数)
上式から得られる仮想の表面積(SA2)に対するクリプトンガス吸着によるBET法により得られる実測比表面積SA1の割合を表面積比とした。
<プリプレグの製造方法>
炭素繊維束を一方向に引き揃えて並べ、炭素繊維シート(目付け190g/m)を得た。液状ビスフェノール型エポキシ樹脂“jER 828”(三菱化学社製)、多官能エポキシ樹脂“jER 604”(三菱化学社製)と、芳香族アミン系硬化剤である4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化社製)を混練し、プリプレグ用エポキシ樹脂組成物を作成した。得られたエポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布し、樹脂フィルムを作成した。次に前記炭素繊維シートに樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね、90度で加熱加圧して樹脂組成物を含浸させ、一方向プリプレグ(硬化温度180℃、樹脂含有率33%)を作製した。
<層間破壊靭性試験>
作製した一方向プリプレグを成形後の厚みが3mmとなるように積層し、金型に入れ、180℃で2時間、686kPaの圧力で成形し一方向の炭素繊維強化成形板(CFRP板)を作製した。このCFRP板のGIC(層間破壊靭性)をK−7086に準拠して室温にて測定を行った。
[実施例1〜5]
前駆体繊維であるPAN繊維ストランド(単繊維繊度0.7dtex、フィラメント数12000)を、空気中250℃で、繊維比重1.35になるまで耐炎化処理を行い、次いで窒素ガス雰囲気下、最高温度650℃で低温炭素化させた。その後、窒素雰囲気下1500℃で高温炭素化させて炭素繊維(単繊維径:5μm、SA2:0.47m/g)を製造した。得られた未表面処理炭素繊維を、電解質溶液として10質量%の硫酸アンモニウム水溶液を用い、表1に記載の間隔で電極が配置された4ユニットの表面処理装置を用いて(4段処理)、表1に記載の総電気量(C/g)、最大電圧(V)の条件で電解表面処理を行った。次いで、サイジング処理を行い得られた炭素繊維の物性を表1に示した。
[実施例6]
表面処理装置を6ユニットの表面処理装置(6段処理)に変更し、電解表面処理条件を表1に記載の総電気量(C/g)、最大電圧(V)とした以外は実施例1と同様にして表面処理炭素繊維を得た。次いで、サイジング処理を行い得られた炭素繊維の物性を表1に示した。
[比較例1]
表面処理装置を2ユニットの表面処理装置(2段処理)に変更し、電解表面処理条件を表1に記載の総電気量(C/g)、最大電圧(V)とした以外は実施例2と同様にして表面処理炭素繊維を得た。次いで、サイジング処理を行い得られた炭素繊維の物性を表1に示した。
処理段数の少ない比較例1では、最大電圧が25Vと高くなった。そのため得られた炭素繊維のRzは388nmと大きくなり、GIcは2.0in−lb/inと不十分な値だった。
[比較例2]
表面処理装置の電極間距離を30cmに変更した以外は実施例1と同様にして表面処理炭素繊維を得た。次いで、サイジング処理を行い得られた炭素繊維の物性を表1に示した。
電極間距離を広くした比較例1では、最大電圧が30Vと高くなった。そのため得られた炭素繊維のRzは430nmと大きくなり、GIcは1.9in−lb/inと不十分な値だった。
[比較例3]
電解表面処理条件を総電気量30C/g、最大電圧7Vとした以外は実施例1と同様にして表面処理炭素繊維を得た。次いで、サイジング処理を行い得られた炭素繊維の物性を表1に示した。
総電気量の低い比較例1では、O/Cが14%と低くなった。そのため得られた複合材料のGIcは2.5in−lb/inと不十分な値だった。
[比較例4]
電解表面処理条件を総電気量200C/g、最大電圧35Vとした以外は実施例1と同様にして表面処理炭素繊維を得た。次いで、サイジング処理を行い得られた炭素繊維の物性を表1に示した。
最大電圧が35Vと高い比較例4では、得られた炭素繊維のRzは482nmと大きくなり、GIcは2.4in−lb/inと不十分な値だった。
[比較例5]
電解質溶液として1N硝酸を用いた以外は実施例1と同様にして表面処理炭素繊維を得た。次いで、サイジング処理を行い得られた炭素繊維の物性を表1に示した。
無機塩類である硫酸アンモニウムの代わりに、無機酸の硝酸を用いた比較例5では、溶液の電気伝導度の高さから最大電圧が7Vと実施例1に比べ低くなったにもかかわらず、電解液のエッチング効果が高すぎるために、得られた炭素繊維のRzが522nmと大きくなった。そのため、GIcは2.0in−lb/inと不十分な値だった。
Figure 2017193791

Claims (3)

  1. 表面酸素濃度比O/Cが20〜40%であり、TEM観察で測定される最大高さRzが20〜250nmであることを特徴とする炭素繊維。
  2. 前駆体繊維を炭素化して得られた未表面処理炭素繊維を、電解溶液中で電解酸化処理する炭素繊維の製造方法であって、
    前記電解酸化処理において、電解溶液として電解質が無機塩類である電解溶液を用い、総電気量を、炭素繊維1gに対して40〜150クーロンとし、かつ、最大電圧を20V以下として電解酸化処理を行うことを特徴とする炭素繊維の製造方法。
  3. 前記電解酸化処理において、電極間の距離が1〜20cmである請求項2に記載の炭素繊維の製造方法。
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