JP2017193771A - 高炉休風方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そして、休風状態の高炉を通常操業に移行するにあたっては、休風中の高炉に熱風を吹き込んで、炉内温度を短期間で上昇させて通常操業状態に復帰させる、高炉の休風立ち上げが実施される。
特許文献1は、休風立ち上げ初期(低温時)のスラグの排出不良を防止することを目的としている。
具体的には、高炉休風入り直前の溶銑温度を予測し、溶銑温度から溶銑Siを推定し、それに応じた硅石(SiO2)量の調整により、スラグ塩基度の上昇を抑制して、休風立ち上げ初期(低温時)のスラグの排出不良を防止することを目的としている。
具体的には、休風入り前の微粉炭吹込み量を低減しその減少分に応じて炉頂装入コークス量を増加し、それにより休風時の熱流比を適正に制御することによって、送風再開立ち上げ時における好ましくない軟化融着帯の上昇を抑えることができ、その結果として、スリップ、棚吊り、吹き抜け等の炉況悪化現象を生じることなく、短時間のうちに正常な操業状態に回復させることを目的としている。
具体的には、高炉減尺操業を行った後、長時間の休風で炉内温度が大きく低下した高炉を、炉床部の銑滓の流れを良好に保持して、支障なく円滑に再立上げすることを目的としている。
しかしながら、特許文献1は、スラグ成分の塩基度の調整についてのみ着目した技術であり、凝固を抑制するために必要とされるスラグ中(Al2O3)%の調整については明記されていないため、必ずしも溶銑滓の排出が良好となるスラグを得られないと考えられる。
特許文献3は、溶銑中Si濃度の推定を行っていないため、目的のスラグ成分に調整することができないと考えられる。それ故、溶銑中Si濃度が上昇することとなり、スラグ塩基度が上昇して、スラグ粘性等が上昇し、休風立ち上げ初期(低温時)のスラグ排出不良が発生する虞がある。
本発明の高炉休風方法は、休風前の溶銑温度と、前記休風立ち上げ後の溶銑温度と、休風時間より、前記休風前から休風立ち上げの間における溶銑温度低下の傾きを予め求めておき、前記休風前における還元材比増加量と、求められた前記休風前から前記休風立ち上げの間における溶銑温度低下の傾きとの関係を予め求めておき、前記休風立ち上げにおける前記溶銑滓の排出状況を、当該溶銑滓の排出良好データと、当該溶銑滓の排出不良データとに層別し、層別された前記溶銑滓の排出データより、前記休風立ち上げにおける前記溶銑滓の排出状況が、良好となる前記溶銑の下限温度を予め求めておき、前記休風前における還元材比増加量と、前記休風立ち上げ後における前記溶銑中の[Si](質量%濃度)の最大値との関係を予め求めておき、前記休風立ち上げにおいて前記溶銑滓の排出状況が良好となる前記スラグの塩基度(CaO(質量%濃度)/SiO2(質量%濃度))、及びスラグ中(Al2O3)(質量%濃度)の適正条件を予め求めておき、その上で、前記還元材比増加量と前記溶銑温度低下の傾きとの関係と、前記休風時間と、前記休風前の溶銑温度とから、休風立ち上げ時における溶銑温度が、予め求めた前記溶銑の下限温度を下回らないように、前記還元材比増加量を決定し、前記休風立ち上げ時における溶銑温度が前記溶銑の下限温度を下回らないように決定した前記還元材比増加量から、前記休風立ち上げ後における前記溶銑中の[Si](質量%濃度)の最大値を推定し、推定した前記溶銑中の[Si](質量%濃度)の最大値から、前記スラグの塩基度(CaO(質量%濃度)/SiO2(質量%濃度))、及びスラグ中(Al2O3)(質量%濃度)の推定値を求め、前記休風立ち上げ後における前記溶銑中の[Si](質量%濃度)の最大値での、前記スラグの塩基度(CaO(質量%濃度)/SiO2(質量%濃度))、及びスラグ中(Al2O3)(質量%濃度)が前記適正条件を満たすように、高炉に投入する副原料を決定し、決定した前記還元材比増加量及び前記副原料を、前記休風前の高炉に投入した後、前記休風を行い、その後、前記休風立ち上げを行って当該高炉の操業を再開することを特徴とする。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。従って、本発明の技術的範囲は、本実施形態に開示内容だけに限定されるものではない。
また、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。従って、それらについての詳細な説明は繰返さない。
本実施形態の高炉休風方法は、予め休風の過去実績から、以下に示す3つの関係((i)〜(iii))を整理して準備しておく。
(i) 休風前に高炉1内の溶銑滓に投入する還元材に関する還元材比増加量と、休風中の溶銑温度低下の傾きの関係を求めておく。
(iii) 休風前の還元材比増加量と、休風立ち上げ時における溶銑中[Si]濃度の最大値との関係を求めておく。
(iv) 予め事前準備しておいた上記関係を用いて、以下に示す休風前から休風立ち上げ間のパラメータを求める。
(vi) 決定した休風前の還元材比増加量に対応する、休風立ち上げ時における溶銑中[Si]%の増加量を推定する。
(vii) 推定した溶銑中[Si]%の増加量に対応するスラグ成分の変化量を推定する。
このように、決定した還元材比増加量((v)で決定)、及び副原料((viii)で決定)を、休風前の高炉1に投入した後、休風を行い、その後、休風立ち上げを行って高炉1の操業を再開する。
(A1)
具体的には、休風前の溶銑温度と、休風立ち上げ後の溶銑温度と、休風時間より、休風前から休風立ち上げの間における溶銑温度低下の傾きを予め求めておく。なお、この事前準備手順は、図32中の手順(1)に該当する。
図1に、休風前から休風立ち上げ後にかけての熱風の送風流量の推移を示す。
熱風の送風流量は、高炉1に備えられている、すべての羽口から吹き込む熱風の合計であり、1分間あたりに、何ノルマル立米(Nm3/min)高温空気を、高炉1内に吹き込むかを指す。
図2に、休風前から休風立ち上げ後にかけての溶銑温度の推移を示す。
しかし、休風中にはコークス、微粉炭の燃焼が止まるため、休風時間に応じた放散熱が失われ、炉内の溶銑温度が低下することとなる。
(A2)
続いて、休風前における還元材比増加量と、手順(1)で求めた休風前から休風立ち上げの間における炉内の溶銑温度低下の傾きとの関係を予め求めておく。なお、この事前準備手順は、図32中の手順(2)に該当する。
本実施形態においては、休風中の溶銑温度低下を抑制し、休風立上げ後に炉熱を早期回復させるために、休風前に炉内に投入する還元材の量を増やし、還元材比を増加させることとしている。
休風前においては、通常操業時の還元材比に対して、高い還元材比で操業している。
図3に示すように、休風前における還元材比の最大値と、通常操業時における還元材比の値との差を、休風前の還元材比増加量(kg/tp)と呼ぶこととする。なお、通常操業時の還元材比は、休風48時間前から、休風36時間前の平均の還元材比とした。
図4に示すように、休風前の還元材比増加量(kg/tp)が多いほど、溶銑温度低下の傾き(℃/h)が小さくなることがわかる。
この図4中の実線を、休風前の還元材比増加量と、炉内の溶銑温度低下の傾きの関係式とした。その関係式を式(1)に示す。
(A3)
休風立ち上げ時における溶銑滓の排出状況を、溶銑滓の排出良好データと、溶銑滓の排出不良データとに層別し、層別された溶銑滓の排出データより、休風立ち上げ時における溶銑滓の排出状況が、良好となる溶銑の下限温度を予め求めておく。なお、この事前準備手順は、図32中の手順(3)に該当する。
このように、溶銑・スラグの流動性が低下すると、粘性が高く出銑樋を流れなかったり、凝固してしまったりといったことが発生し、炉内から溶銑滓を排出することが困難となり、出銑不能などの大きなトラブルに至ってしまう虞がある。
この過去実績データのうち、休風立ち上げ時の溶銑滓の排出状況が良好であるものを、溶銑滓の排出良好データとし、排出状況が不良であるものを、溶銑滓の排出不良データとして、層別した。
休風立ち上げの溶銑滓の排出状況を、排出良好データと排出不良データに層別するにあたっては、以下の2点を基準にして行った。
・炉外に排出させた溶銑滓が凝固し、出銑不可能となった例。
図5に、出銑口2から出た溶銑滓の流れの概略図を示す。図5に示すように、例えば、出銑口2から排出されたスラグが、スラグ処理設備(ドライピット3、水砕設備4)に流れるまでの間に凝固する場合、又はスラグの粘性が高く出銑樋を流れない場合、出銑が継続できなくなる、すなわち出銑不可能となる。
溶銑滓の排出状況を層別したデータ(排出良好データ及び排出不良データ)について、横軸を休風時間とし、縦軸を休風立ち上げの溶銑温度とした上で、集めた10点以上の過去実績をプロットして関係を求めた。その求めた関係を、図6に示す。
(A4)
休風前における還元材比増加量と、休風立ち上げ後における溶銑中[Si]%の最大値との関係を予め求めておく。なお、この事前準備手順は、図32中の手順(4)に該当する。
図7に示すように、溶銑中[Si]%は、休風立ち上げ時に最大値となり、以降は減少し、通常操業時の溶銑[Si]%へと戻ることがわかる。
図8中の実線は、最小二乗法で求めた近似直線である。この図8中の直線を、休風前の還元材比増加量と、休風立ち上げ後の溶銑中[Si]%の最大値の関係式とした。その関係式を式(2)に示す。
(A5)
休風立ち上げにおいて、溶銑滓の排出状況が良好となるスラグの塩基度(CaO)%/(SiO2)%、及びスラグ中(Al2O3)%の適正条件を予め求めておく。なお、この事前準備手順は、図32中の手順(5)に該当する。
スラグの塩基度=(C/S)=(CaO)%÷(SiO2)%
溶銑滓の排出が良好となるように以下に示す2つの条件を満足するスラグ成分を、適正値とする。
・スラグの粘度が、できる限り低位であること。
本実施形態においては、スラグの塩基度及びスラグ中の(Al2O3)%の適正値については、以下に示す公知の文献等をもとに設定した。
参考文献の(星ら:CAMP-ISIJ,12(1999),709,10)によれば、スラグの温度が低下して固相が析出し、且つスラグの粘度が急上昇する温度を結晶化温度とし、スラグの成分と結晶化温度について、以下の関係式を求めている。
通常、スラグ中の(MgO)%,(Al2O3)%,(TiO2)%は、(MgO)%:5〜8(%),(Al2O3)%:13.5〜16(%),(TiO2)%:1〜2(%)程度で操業をしている。なお、(MgO)%は(MgO)の質量%で示した濃度であり、(Al2O3)%は(Al2O3)の質量%で示した濃度であり、(TiO2)%は(TiO2)の質量%で示した濃度である。
また、参考文献の(星ら:CAMP-ISIJ,12(1999),709,10)によれば、1400℃におけるスラグの粘度について、以下の関係式を求めている。
粘度=0.3×{12.6×(C/S)2−33.1×(C/S)−0.52×(MgO)%+0.42×(Al2O3)%−0.29×(TiO2)%+21.72}
また、(MgO)%=6.8%,(Al2O3)%=14.0%,(TiO2)%=1.6%として、上記式に従い、塩基度と粘度の関係を求めた。その求めた関係を、図10に示す。
1.0<(CaO)%/(SiO2)%<1.4
4.5%<(MgO)%<8.5%
14%<(Al2O3)%<18%
図11に、出銑口2から排出された溶銑滓の流れの概略図を示す。
ここで、各溶銑温度を測定したところ、溶銑とスラグを分離する主樋スキンマー部5で測定した溶銑温度と、スラグの徐冷設備であるドライピット3入口におけるスラグの温度には、30℃〜40℃の差があることを確認した。
図12に示すように、スラグの塩基度と結晶化温度の関係より、スラグの塩基度が1.22以上であり、且つスラグの温度が1320℃となった場合には、結晶化温度を下回り、急激にスラグの粘度が上昇することとなる。
また、図13に示すように、スラグの塩基度と粘度の関係より、スラグの塩基度が1.0〜1.3の範囲では、スラグの塩基度が高い方がスラグの粘度が低い。よって、スラグの粘度の観点からは、スラグの塩基度は高い方が望ましいといえる。
図14に、休風における還元材比増加量と、溶銑中[Si]%の最大値の関係を示す。
図14に、最小二乗法で求めた近似直線の式を実線で示す。この近似直線の式を使用して、推定した溶銑中[Si]%の推定値と、過去実績の溶銑中[Si]%の差を計算して、もっとも差が大きい例を、図14中の点線で示す。図14中の2本の点線のように、最大で±0.27程度の差があることがわかる。
表1に、各原料毎の装入量(t/ch)を示す。表2に、各原料毎の各成分(%)を示す。
各原料毎の各成分の装入量(t/ch)=各原料中の各成分(%)×各原料の装入量(t/ch)
表3に、各原料毎の各成分の装入量(t/ch)を示す。
表4に、各原料毎の各成分の装入量の合計(表3の合計)を示す。
装入物中のFeは、すべて溶銑になるとして、下式で溶銑中Fe(t/ch)を求める。
溶銑中Fe(t/ch)=装入物中T.Fe(t/ch)
また、溶銑中Mn量、溶銑中Ti量は、簡易的に以下のように計算する。
溶銑中Ti(t/ch)=装入TiO2(t/ch)×Ti分配率(%)×48÷(48+16×2)
ただし、Mn分配率(溶銑へ入る割合)を85%とし、Ti分配率を50%とした。
表5に既知の部分のみの溶銑成分(t/ch)を示し、表6に既知の部分のみの溶銑成分(%)を示す。
表5、表6に示す既知の成分から、下記3つの式を用いて解くと、表7、表8になる。
つまり、溶銑中[Si]%の値を与えると、下記3つの式を用いて解くと、溶銑中[Si](t/ch)を得られる。
すなわち、z=x+89.25+y+0.16+0.17
Si(t/ch)=溶銑成分合計(t/ch)×[Si]%
すなわち、y=z×0.4(%)
C(t/ch)=溶銑成分合計(t/ch)×[C]%
すなわち、x=z×4.8(%)
スラグの塩基度=(C/S)=(CaO)%÷(SiO2)%
表12に、スラグ塩基度を示す。
上で述べた塩基度の計算方法に従って、溶銑中[Si]%が変化した際におけるスラグの塩基度(CaO)%/(SiO2)%の推定値の変化を、図15に示す。
図15に示すように、例えば、溶銑中[Si]%が0.27変化すると、スラグの塩基度が0.11程度変化することが推定される。
また、CaO,SiO2,Al2O3から成るスラグの状態図から、最も凝固点が低くなるよう、(Al2O3)%の目標値を13%とした。
(B1)
(A2)で求めた休風前の還元材比増加量と溶銑温度低下の傾きとの関係と、予め設定されている休風時間と、休風前の溶銑温度とから、休風立ち上げ時における溶銑温度が、予め(A3)で求めた溶銑の下限温度を下回らないように、休風前の還元材比増加量を決定する。なお、この決定手順は、図32中の手順(6)に該当する。
休風前の溶銑温度1520℃から、休風立ち上げまでの間に、溶銑温度が下限温度を下回らないような溶銑温度低下の傾きを求める。
例えば、30時間の休風で1520℃から1360℃(下限温度)まで低下するとした場合、図17に示すように、溶銑温度低下の傾きは5.3(℃/h)となり、休風前の還元材比増加量は83(kg/tp)必要になることがわかる。
(B2)
休風立ち上げ時における溶銑温度が溶銑の下限温度を下回らないように決定した休風前の還元材比増加量から、休風立ち上げ後における溶銑中[Si]%の最大値を推定する。なお、この推定手順は、図32中の手順(7)に該当する。
(B3)
推定した溶銑中[Si](%)の最大値から、スラグの塩基度(C/S)、及び(Al2O3)%の推定値を求める。なお、この推定手順は、図32中の手順(8)に該当する。
(B4)
休風立ち上げ後における溶銑中[Si]%の最大値での、スラグの塩基度(CaO)%/(SiO2)%、及び(Al2O3)%が適正条件を満たすように、副原料を決定する。なお、この決定手順は、図32中の手順(9)に該当する。
このように、決定した還元材比増加量及び副原料を、休風前の高炉1に投入した後、休風を行い、その後、休風立ち上げを行って当該高炉1の操業を再開する。
[実施例]
以下に、本発明の高炉休風方法の実施例について、図を基に説明する。
高炉1について、内容積が4500m3で、出銑口数が4個のベル・アーマー高炉を用いた。通常操業時の操業条件については、出銑量を8000〜8500(t/D)とし、溶銑温度を1480℃〜1540℃とした。また、還元材比を500〜530(kg/tp)とした。還元材には、コークス及び微粉炭を用いた。原料には、焼結鉱、ペレット、塊鉱石を用いた。休風の条件については、休風時間を24時間〜40時間とした。
図19に、休風前から休風立ち上げ後にかけての溶銑温度の推移を示す。
溶銑温度は、出銑口2から排出された溶銑滓が溶銑とスラグに分離される主樋スキンマー部5で測定した。出銑開始後、約300tの溶銑が排出されたタイミングから測定を開始し、30分〜1時間おきに測定した。
また、休風時間が30.2時間であることから、休風前から休風立ち上げの間の溶銑温度低下の傾きは、157÷30.2=−5.2(℃/h)と求まる。
(A2)
休風前の還元材比増加量と、炉内の溶銑温度低下の傾きの過去実績を、10点以上集めて、横軸を休風前の還元材比増加量とし、縦軸を溶銑温度低下の傾きとした上で、その過去実績をプロットして関係を求めた。その求めた関係を、図20に示す。
この図20中の実線を、休風前の還元材比増加量と、炉内の溶銑温度低下の傾きの関係式とした。その関係式を式(1)に示す。
ところで、(A2)を実施しないことで起こる不具合について、休風前の還元材比増加量と、休風前から休風立ち上げの間における炉内の溶銑温度低下の傾きの関係を求めなければ、高炉1内に投入する休風前の還元材比増加量を決定することができない。
10回以上の休風の過去実績データついて、休風立ち上げ時の溶銑滓の排出状況が良好なデータと、不良なデータに層別した。なお、休風立ち上げ時の溶銑滓の排出状況の層別については、以下の2点を基準で行った。
・炉内に残留する溶銑滓の増加により、炉内通気性に問題が生じ、通気不良となって減風に至った例。
図21に、出銑口2から出た溶銑滓の流れの概略図を示す。図21に示すように、例えば、出銑口2から排出されたスラグが、スラグ処理設備(ドライピット3、水砕設備4)に流れるまでの間に凝固する場合、又はスラグの粘性が高く出銑樋を流れない場合、出銑が継続できなくなる、すなわち出銑不可能となる。
溶銑滓の排出状況を層別したデータ(排出良好データ及び排出不良データ)について、横軸を休風時間とし、縦軸を休風立ち上げの溶銑温度とした上で、過去実績をプロットして関係を求めた。その求めた関係を、図22に示す。
ところで、(A3)を実施しないことで起こる不具合について、溶銑滓の排出不良となってしまう、休風立ち上げ時の溶銑の下限温度が分からなければ、高炉1内に投入する休風前の還元材比増加量を決定することができない。
図23に、休風前から休風立ち上げ後にかけての溶銑中[Si]%の推移を示す。なお、溶銑中[Si]%は、溶銑に含まれる[Si]の質量%濃度である。
サンプリングは、250t〜280t毎に1回実施し、X線回折で分析した。図23に示すように、溶銑中[Si]%は、休風立ち上げ時に最大値となり、以降は減少し、通常操業時の溶銑中[Si]%へと戻る。
図24中の実線は、最小二乗法で求めた近似直線である。この近似直線を、休風前の還元材比増加量と、休風立ち上げ後の溶銑中[Si]%の最大値の関係式とした。その関係式を式(2)に示す。
ところで、(A4)を実施しないことで起こる不具合について、休風前の還元材比増加量と、休風立ち上げ後の溶銑中[Si]%の最大値の関係を求めなければ、スラグの塩基度、(Al2O3)%の推定値を求めることができない。
(A5)
ところで、結晶化温度を求めるにあたっては、下式を用いることとする。
ただし、(MgO)%=6.8%、(Al2O3)%=14.0%、(TiO2)%=1.6%とした。
上式に従い、塩基度と結晶化温度の関係を求める。その関係を図25に示す。
また、粘度を求めるにあたっては、下式を用いることとする。
粘度={1+0.007×(1500−T)}×{12.6×(C/S)2−33.1×(C/S)−0.52×(MgO)%+0.42× (Al2O3)%−0.29×(TiO2)%+21.72}
ただし、(MgO)%=6.8%、(Al2O3)%=14.0%、(TiO2)%=1.6%とした。
ここで、各溶銑温度を測定したところ、溶銑とスラグを分離する主樋スキンマー部5で測定した溶銑温度と、スラグ徐冷設備であるドライピット3入口におけるスラグの温度には、30℃〜40℃の差があることを確認した。
そして、(A3)で設定した溶銑の下限温度1360℃から、スラグの温度低下40℃を差し引くと、推定されるスラグの最低温度は1320℃となる。
そこで、スラグの塩基度は1.22未満に設定する必要がある。
また、図28に示すように、スラグの塩基度と粘度の関係より、スラグの塩基度が1.0〜1.3の範囲では、スラグの塩基度が高い方がスラグの粘度が低い。よって、スラグの粘度の観点からは、スラグの塩基度は高い方が望ましいといえる。
図29を参照すると、還元材比の増加に伴い、溶銑中[Si]%の最大値は上昇するが、バラつきがあることがわかる。
図29に、最小二乗法で求めた近似直線の式を実線で示す。この近似直線の式を使用して、推定した溶銑中[Si]%の推定値と、過去実績の溶銑中[Si]%の差を計算して、もっとも差が大きい例を、図29中の点線で示す。図29中の2本の点線のように、最大で±0.27程度の差があることがわかる。
すべての原料の装入量(t/ch)及び、鉱石、コークス、微粉炭や副原料などの高炉1に投入する各原料の成分(質量%濃度)から、T.Fe(鉄分),SiO2,MnO,TiO2,CaO,Al2O3,MgO各成分の装入量(t/ch)を求める(表1〜3参照)。
上記の各成分(表4参照)のうち、CaO,Al2O3,MgOは、すべてスラグになることとなる。対して、SiO2,MnO,TiO2の各成分の一部は溶銑になり、また各成分の残りはスラグになることとなる。
溶銑中Fe(t/ch)=装入物中T.Fe(t/ch)
また、溶銑中Mn量、溶銑中Ti量は、簡易的に以下のように計算する。
溶銑中Mn(t/ch)=装入MnO(t/ch)×Mn分配率(%)×55÷71
溶銑中Ti(t/ch)=装入TiO2(t/ch)×Ti分配率(%)×48÷80
ただし、Mn分配率を85%とし、Ti分配率を50%とした。
また、溶銑中[Si]%の値を与え、以下に示す3つの式より方程式を解くと、溶銑中Si(t/ch)を得られる(表5〜8参照)。
溶銑成分合計(t/ch)=C(t/ch)+Fe(t/ch)+Si(t/ch)+Mn(t/ch)+Ti(t/ch)
Si(t/ch)=溶銑成分合計(t/ch)×[Si]%
C(t/ch)=溶銑成分合計(t/ch)×[C]%
各成分の装入量合計(表4参照)から、各成分の溶銑に分配される量(表5参照)を差し引いて、スラグに分配される量(表9参照)を求める。
装入CaO量、装入Al2O3量、スラグ中SiO2量を、計算スラグ量で割り、スラグ中の(SiO2)%,(CaO)%,(Al2O3)%を計算した(表11参照)。
スラグの塩基度は、スラグ中の(CaO)%,(SiO2)%を用いて下式で計算する(表12参照)。
上で述べたスラグ中の塩基度の計算方法に従って、溶銑中[Si]%が変化した際におけるスラグの塩基度(CaO)%/(SiO2)%の推定値の変化を、図30に示す。
図30に示すように、溶銑中[Si]%が0.27変化すると、スラグの塩基度が0.11程度変化することが推定される。
また、CaO,SiO2,Al2O3から成るスラグの状態図から、最も凝固点が低くなるよう、(Al2O3)%の目標値を13%とした。
ところで、(A5)を実施しないことで起こる不具合について、休風立ち上時の溶銑滓の排出良好となるスラグの塩基度、(Al2O3)%の適正条件を求めなければ、副原料の添加量を決定することができない。
(B1)
まず、溶銑温度低下の傾きを求める。式(1)及び、休風時間:36時間、休風前の溶銑温度:1520℃、溶銑の下限温度:1360℃、として計算すると、
溶銑温度低下の傾き(℃/h)=−(下限温度(℃)−休風前の溶銑温度(℃))/休風時間(h)
=−(1360−1520)/36=4.44
このように得られた、溶銑温度低下の傾き=4.44を、式(1)に代入することで、休風前の還元材比増加量を求めることができる。
この結果より、休風前の還元材比増加量を110(kg/tp)とした。
ところで、(B1)を実施しないことで起こる不具合について、休風前の還元材比増加量を決定しないと、休風立ち上げ後の溶銑中[Si]%を推定することができない。
(B2)
次いで、上記の(B1)で求めた、休風前の還元材比増加量=110(kg/tp)を、式(2)に代入して、休風立ち上げ後の溶銑中[Si]%の最大値を推定した。
=0.0104×110+0.5695=1.7
休風立ち上げ後の溶銑中[Si]%の最大値は、1.7(%)と推定される。
ところで、(B2)を実施しないことで起こる不具合について、休風立ち上げ後の溶銑中[Si]%の最大値を推定しなければ、スラグの塩基度、及び(Al2O3)%を推定することができない。
(B3)
ここでまず、表13〜24を参照しながら、通常操業時のスラグの塩基度、及び(Al2O3
)%を推定する手順ついて、説明する。なお、表13〜24に示すデータは通常操業時の一例である。
各原料毎の各成分の装入量(t/ch)=各原料中の各成分(%)×各原料の装入量(t/ch)
溶銑中Fe(t/ch)=装入物中T.Fe(t/ch)
溶銑中Mn(t/ch)=装入MnO(t/ch)×Mn分配率(%)×55÷71
溶銑中Ti(t/ch)=装入Ti(t/ch)×Ti分配率(%)×48÷(48+16×2)
ただし、Mn分配率を85%とし、Ti分配率を50%とした。
溶銑成分合計(t/ch)=C(t/ch)+Fe(t/ch)+Si(t/ch)+Mn(t/ch)+Ti(t/ch)
すなわち、z=x+96.38+y+0.18+0.18
Si(t/ch)=溶銑成分合計(t/ch)×[Si]%
すなわち、y=z×0.4(%)
C(t/ch)=溶銑成分合計(t/ch)×[C]%
すなわち、x=z×4.8(%)
続いて、表25〜36を参照しながら、推定した溶銑中[Si]%の最大値における、スラグの塩基度、及び(Al2O3)%を推定する手順の比較例について、説明する。表25〜36に示すデータは、本発明の高炉休風方法と比較するために挙げた一例である。
各原料毎の各成分の装入量(t/ch)=各原料中の各成分(%)×各原料の装入量(t/ch)
溶銑中Fe(t/ch)=装入物中T.Fe(t/ch)
溶銑中Mn(t/ch)=装入MnO(t/ch)×Mn分配率(%)×55÷71
溶銑中Ti(t/ch)=装入Ti(t/ch)×Ti分配率(%)×48÷(48+16×2)
ただし、Mn分配率(%)を85%とし、Ti分配率(%)を50%とした。
溶銑成分合計(t/ch)=C(t/ch)+Fe(t/ch)+Si(t/ch)+Mn(t/ch)+Ti(t/ch)
すなわち、z=x+78.21+y+0.14+0.16
Si(t/ch)=溶銑成分合計(t/ch)×[Si]%
すなわち、y=z×1.7(%)
C(t/ch)=溶銑成分合計(t/ch)×[C]%
すなわち、x=z×4.8(%)
このように、スラグの塩基度は1.22を超え、(Al2O3)%は13%を超えているので、溶銑・スラグの流動性が低下することとなり、炉内から溶銑滓を排出することが困難(出銑不能)となる虞がある。
(B4)
ここで、表37〜50を参照しながら、推定した溶銑中[Si]%の最大値における、スラグの塩基度、及び(Al2O3)%を推定する手順ついて、説明する。なお、表37〜50に示すデータは本実施例を示す一例である。
すべての原料の装入量(t/ch)及び、鉱石、コークス、微粉炭や副原料などの高炉1に投入する各原料の成分(質量%濃度)から、T.Fe(鉄分),SiO2,MnO,TiO2,CaO,Al2O3,MgO各成分の装入量(t/ch)を、下式より求める(表37〜39参照)。
溶銑中Fe(t/ch)=装入物中T.Fe(t/ch)
溶銑中Mn(t/ch)-=装入MnO(t/ch)×Mn分配率(%)×55÷71
溶銑中Ti(t/ch)=装入Ti(t/ch)×Ti分配率(%)×48÷(48+16×2)
ただし、Mn分配率(%)を85%とし、Ti分配率(%)を50%とした。
溶銑成分合計(t/ch)=C(t/ch)+Fe(t/ch)+Si(t/ch)+Mn(t/ch)+Ti(t/ch)
すなわち、z=x+78.29+y+0.14+0.16
Si(t/ch)=溶銑成分合計(t/ch)×[Si]%
すなわち、y=z×1.7(%)
C(t/ch)=溶銑成分合計(t/ch)×[C]%
すなわち、x=z×4.8(%)
以上の結果より、炉内からの溶銑滓の排出が悪化することなく、高炉1の休風立ち上げを行うことができた。
ところで、(B4)を実施しないことで起こる不具合について、副原料を添加し、適正条件を満たすようなスラグ塩基度、(Al2O3)%にしなければ、スラグの流動性が低下してしまう。このように、スラグの流動性が低下すると、炉内からの溶銑滓排出が困難となり、出銑不能などの大きなトラブルに至ってしまう虞がある。
表49、50に示すように、他の実施条件における休風についても、本発明の手法を実施することで、溶銑滓の排出を悪化させることなく、休風を立ち上げることができた。
また、図32の手順(3)に示すように、休風立ち上げの溶銑滓の排出を良好、不良に層別することで、目標とする溶銑の下限温度を決めることができる。
本発明を実施することで、高炉1の休風(休止)、休風立ち上げ(稼働再開)に関して、トラブル無く、且つ円滑に立ち上げることができるので、休風立ち上げでの溶銑滓の排出不良に起因する炉内通気性の悪化や、それに伴う送風量の低減をさせることなく、通常操業へ移行することができる。
2 出銑口
3 ドライピット
4 水砕設備
5 主樋スキンマー部
Claims (1)
- 休風前の溶銑温度と、前記休風立ち上げ後の溶銑温度と、休風時間より、前記休風前から休風立ち上げの間における溶銑温度低下の傾きを予め求めておき、
前記休風前における還元材比増加量と、求められた前記休風前から前記休風立ち上げの間における溶銑温度低下の傾きとの関係を予め求めておき、
前記休風立ち上げにおける前記溶銑滓の排出状況を、当該溶銑滓の排出良好データと、当該溶銑滓の排出不良データとに層別し、層別された前記溶銑滓の排出データより、前記休風立ち上げにおける前記溶銑滓の排出状況が、良好となる前記溶銑の下限温度を予め求めておき、
前記休風前における還元材比増加量と、前記休風立ち上げ後における前記溶銑中の[Si](質量%濃度)の最大値との関係を予め求めておき、
前記休風立ち上げにおいて前記溶銑滓の排出状況が良好となる前記スラグの塩基度(CaO(質量%濃度)/SiO2(質量%濃度))、及びスラグ中(Al2O3)(質量%濃度)の適正条件を予め求めておき、
その上で、
前記還元材比増加量と前記溶銑温度低下の傾きとの関係と、前記休風時間と、前記休風前の溶銑温度とから、休風立ち上げ時における溶銑温度が、予め求めた前記溶銑の下限温度を下回らないように、前記還元材比増加量を決定し、
前記休風立ち上げ時における溶銑温度が前記溶銑の下限温度を下回らないように決定した前記還元材比増加量から、前記休風立ち上げ後における前記溶銑中の[Si](質量%濃度)の最大値を推定し、
推定した前記溶銑中の[Si](質量%濃度)の最大値から、前記スラグの塩基度(CaO(質量%濃度)/SiO2(質量%濃度))、及びスラグ中(Al2O3)(質量%濃度)の推定値を求め、
前記休風立ち上げ後における前記溶銑中の[Si](質量%濃度)の最大値での、前記スラグの塩基度(CaO(質量%濃度)/SiO2(質量%濃度))、及びスラグ中(Al2O3)(質量%濃度)が前記適正条件を満たすように、高炉に投入する副原料を決定し、
決定した前記還元材比増加量及び前記副原料を、前記休風前の高炉に投入した後、前記休風を行い、その後、前記休風立ち上げを行って当該高炉の操業を再開する
ことを特徴とする高炉休風方法。
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