JP2017189158A - 細胞・組織への目的分子導入方法およびそれに用いる目的分子導入装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】さまざまな種類の目的分子を標的細胞または標的組織内へ高効率で導入が可能である目的分子の導入方法、及び、それに用いる導入装置の提供。
【解決手段】標的細胞または標的組織内へ目的分子を導入する方法であって、前記目的分子を含む液体と前記標的細胞または標的組織とを接触させ、前記液体を含む細胞を加熱冷却することで、標的細胞または標的組織内への目的分子の導入を効率的に行う方法。更に前記液体から離間して設けられた単一又は複数の電極1より放電させ、液体中に生成する化学分物3等により刺激となり、目的分子の標的細胞又は標的組織内への導入の効率化を企る方法。
【選択図】図2
【解決手段】標的細胞または標的組織内へ目的分子を導入する方法であって、前記目的分子を含む液体と前記標的細胞または標的組織とを接触させ、前記液体を含む細胞を加熱冷却することで、標的細胞または標的組織内への目的分子の導入を効率的に行う方法。更に前記液体から離間して設けられた単一又は複数の電極1より放電させ、液体中に生成する化学分物3等により刺激となり、目的分子の標的細胞又は標的組織内への導入の効率化を企る方法。
【選択図】図2
Description
本発明は、標的細胞や組織へポリヌクレオチド、タンパク質またはペプチド、低吸収性医薬品などの目的分子を導入する方法、および、それに用いる目的分子導入装置に関する。
近年、種々の医薬品が開発されているが、これらの医薬品の中でも細胞や生体に取り込みづらいものが多々現れてきている。その例としては抗体やホルモンなどのタンパク質医薬品がある。また、遺伝病や癌などの難治療性疾患に対する治療法として遺伝子治療や細胞医療の開発が進められているが、そのためには蛋白や遺伝子などの生体高分子を細胞内に効率よく導入する技術が求められている。このように、医学、薬学、さらには農業などの分野において、DNA、RNAなどのポリヌクレオチドまたはその誘導体、シグナル伝達タンパク質や転写調節因子などのタンパク質やその誘導体などの高分子化合物、低分子生理活性物質、医薬品、薬剤候補品など種々の分子を標的細胞内に導入し、疾患の治癒、医薬品開発、動植物の育種・品種改良を的確に行える技術の開発の要請が増している。
現在までに、標的細胞への効率的な分子の導入方法としては、電気的な方法、化学的な方法、超音波や光を用いるなどの方法が用いられているが、分子量が10000以下の分子については分子の導入は比較的容易であるが、合成高分子や核酸やタンパク質のような高分子物質は必ずしも十分に細胞内に導入できるものではないという問題がある。たとえば、エレクトロポレーション法、ジーンガン法、リポソーム法、細胞融合法、ウイルスペククー法などの方法が用いられており、多くの細胞に応用できているが、必ずしも十分に高い効率で目的分子を細胞内に導入できない場合もある。
上記のような問題を改善するための技術として、上記技術を用い、更に効率的な目的分子の導入を得られるための方法の開発が求められていた。
上記より、本発明の目的は、従来の分子導入方法に比較し、さらに効率的に目的分子を導入することができる分子の導入方法、およびそれに用いる目的分子の導入装置を提供することである。
本発明は、標的細胞または標的組織への目的分子の導入方法であって、前記目的分子を含む液体である導入液と、前記標的細胞または標的組織とを接触させるステップと、前記液体と標的細胞または標的組織を加熱冷却するステップを備え、適切な温度に維持した後に分子導入を進めることで従来の方法に比較して格段に高い効率で目的分子を標的細胞または標的組織導入することを可能とする目的分子導入方法である。
これまで実用化されているエレクトロポレーション、リポフェクション、プラズマ分子導入法などの分子導入方法では多くの細胞にて高い効率で分子の導入が可能であることが知られているが、生体から採取した細胞や組織に対して、遺伝子などの生体高分子(巨大分子)の導入効率が低いあるいは導入できないなどの難点があった。実際に遺伝子治療や再生医療などの先端医療用途では、巨大分子である遺伝子やタンパク質を生体から採取した種々の細胞や組織などに分子を導入する必要があり、これらの標的細胞や標的組織に高効率で分子を導入できる方法の開発が望まれていた。
そこで、上記の分子導入方法を用い、遺伝子などの巨大分子を更に高い効率で導入できる方法の検討を行った。上記の分子導入方法などで細胞や組織に遺伝子などの巨大分子が導入される機序は、エレクトロポレーションでは細胞膜に穿孔が起こることが知られている。また、リポフェクション法では陽イオン性脂質と遺伝子が絡みあい、その混合体が細胞膜と融合しエンドサイトーシス(飲作用)により導入されることが知られている。更にプラズマ法では、エンドサイトーシスと膜穿孔が同時に生じている可能性が示唆されている。
上記より現在実用化している物理的・電気的な分子導入法は放電により発生する電流や生化学的因子が膜に変化を起こし、穿孔やエンドサイトーシスが起こることで分子の導入がなされていることから、種々の電気的な条件(周波数、電圧、電流、電界、放電時間、など)の検討が行われ、高い導入効率の手法も導き出されている。しかしながら、細胞膜の流動性やエンドサイトーシスを引き起こす生物学的な要因についての検討はほとんどなされてない。細胞膜は脂質二重膜の構造からなり、それぞれの脂質分子が疎水結合でタイトに整列することで膜構造を構成している。そのため、膜は周辺温度を単純に上昇させることで膜の流動性が増すことが知られている。そこで、細胞の温度を上昇させることで細胞膜の流動性が増大し、穿孔やエンドサイトーシスが生じやすくなり、遺伝子などの巨大分子が細胞内に効率よく導入されるのではないかとの推論を立てた。細胞の温度変化による導入効果に及ぼす影響の検証をおこない、遺伝子などの巨大分子が細胞に導入される時に温度の関与が大きいことを見いだした。
以下に実施形態を詳述する。
<標的細胞または標的組織内への目的分子の導入方法>
図1は、本発明の標的細胞または標的組織内への目的分子の導入方法を説明するフローチャートである。また図2は、導入装置の概念図である。
<標的細胞または標的組織内への目的分子の導入方法>
図1は、本発明の標的細胞または標的組織内への目的分子の導入方法を説明するフローチャートである。また図2は、導入装置の概念図である。
本発明の標的細胞または標的組織内への目的分子の導入方法は、前記目的分子を含む液体と前記標的細胞または標的組織とを接触させるステップ(例えば、図1のステップ1〜2)と、前記液体と標的細胞または標的組織を含む容器を装置に設置し、加熱冷却するステップと、単一または複数の電極に電気エネルギーを供給し前記液体に放電するステップ(例えば、図1のステップ3〜4)と、を順に備える標的細胞または標的組織内への目的分子の導入方法である。
図1を用いて、本発明の標的細胞または標的組織内への目的分子の導入方法の一例を説明する。まず、標的細胞または標的組織を前培養後(ステップ1)、培養液を完全に除去し、標的細胞または標的組織上に目的分子を含む微量の水溶液を添加する(ステップ2)ことが好ましい。あるいは切除してきた組織切片あるいは直接組織上に目的分子を含む微量の水溶液を添加することが望ましい。
次に、目的分子の標的細胞への導入を最適化するために、目的分子を含む微量の水溶液を含んだ標的細胞を加温することが好ましい(ステップ3)。その後、電極に電気エネルギーを供給して放電を行い(ステップ4)、その後標的細胞を後培養する(ステップ5)ことが望ましい。
さらに、他の付加的なステップが備わっていてもよく、たとえば、標的細胞を後培養(ステップ5)することの後に、さらに目的分子の導入された標的細胞をスクリーニングしてもよい。
<標的細胞>
本発明の目的分子の導入方法において用いる標的細胞とは、目的分子を導入する標的となる細胞のことを示し、特に特定の種類の細胞に限定されるものではない。このような標的細胞の具体例としては、ヒト以外の動物および植物細胞、ヒト以外の動物および植物個体、ヒトの個体から採取された細胞、ヒトの個体内の細胞、ヒトの個体、微生物細胞などが挙げられる。これらの標的細胞は、単一の種類を用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
本発明の目的分子の導入方法において用いる標的細胞とは、目的分子を導入する標的となる細胞のことを示し、特に特定の種類の細胞に限定されるものではない。このような標的細胞の具体例としては、ヒト以外の動物および植物細胞、ヒト以外の動物および植物個体、ヒトの個体から採取された細胞、ヒトの個体内の細胞、ヒトの個体、微生物細胞などが挙げられる。これらの標的細胞は、単一の種類を用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
なお、上記のヒトの個体から採取された細胞には、医薬品の研究開発などに用いられるヒトの個体に戻すことを前提としない細胞と、再生医療などに用いられるヒトの個体に戻すことを前提とする細胞とが含まれる。また、上記のヒトの個体から採取された細胞には、ヒトの個体から採取された細胞から培養された細胞も含まれる。
さらに、上記のヒト以外の動物および植物細胞には、個体内に存在する細胞と、組織内に存在する細胞と、個体や組織から採取された細胞と、個体や組織から採取された細胞から培養された細胞とが含まれる。
ここで、上記とは別の側面から捉えれば、本発明に用いる標的細胞には、大腸菌、放線菌、枯草菌などの原核細胞や、酵母、ヒト以外の勤物細胞、ヒトの個体から採取された細胞、ヒトの個体に含まれる細胞、植物細胞などの真核細胞が含まれる。
さらに、本発明に用いる標的細胞には、赤血球やリポソームなどの脂質二重膜構造をもつものも含まれる。
<標的組織>
一方、本発明に用いられる標的組織とは、目的分子を導入する標的となる組織のことを示し、特に特定の種類の組織に限定されるものではない。このような標的組織の具体例としては、移植に用いられるドナーからの臓器、再生医療の方法を用いて再構成された皮膚や歯根などの組織、カルス培養で構築された植物に分化前の組織、などが挙げられる。
一方、本発明に用いられる標的組織とは、目的分子を導入する標的となる組織のことを示し、特に特定の種類の組織に限定されるものではない。このような標的組織の具体例としては、移植に用いられるドナーからの臓器、再生医療の方法を用いて再構成された皮膚や歯根などの組織、カルス培養で構築された植物に分化前の組織、などが挙げられる。
<導入される目的分子>
本発明の標的細胞または標的組織内への目的分子の導入方法において用いる目的分子とは、標的細胞または標的組織に導入するために選定した分子のことを示し、特に特定の種類の分子に限定されるものではない。このような目的分子の具体例としては、DNA、RNAなどのポリヌクレオチドまたはその誘導体、シグナル伝達タンパク質や転写調節因子などのタンパク質やペプチドとその誘導体などの高分子化合物があげられ、これらの中でも、分子量が10000Da以上の生体高分子であることが好ましい。
本発明の標的細胞または標的組織内への目的分子の導入方法において用いる目的分子とは、標的細胞または標的組織に導入するために選定した分子のことを示し、特に特定の種類の分子に限定されるものではない。このような目的分子の具体例としては、DNA、RNAなどのポリヌクレオチドまたはその誘導体、シグナル伝達タンパク質や転写調節因子などのタンパク質やペプチドとその誘導体などの高分子化合物があげられ、これらの中でも、分子量が10000Da以上の生体高分子であることが好ましい。
また、上記のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの誘導体には、ベククー、アンチセンスポリヌクレオチド、デコイポリヌクレオチド、リボザイム、RNAi、siRNAなどが含まれる。ポリヌクレオチドの分子量の上限は特に限定されない。
さらに、上記のタンパク質分子、タンパク質分子誘導体には、シグナル伝達因子や、転写調節因子、各種酵素、各種受容体、抗体あるいは抗体のFab部分などが含まれるが、タンパク質分子としてその種類や分子のサイズは特に上記に限定されない。
他の目的分子としては、低分子生理活性物質、薬剤候補品などが挙げられ、これらの中でも医薬品などの生理活性な低分子化合物であって、他の導入方法では組織内あるいは細胞内に導入されづらい低分子化合物が好ましい。他の導入方法では組織内あるいは細胞内に導入されづらい低分子化合物とは、分子量が10000Da以上の分子、膜透過性の低い分子、などである。
なお、上述の各種目的分子は、単一の種類を用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
<目的分子を含む液体と前記標的細胞または標的組織とを接触させるステップ>
本発明の目的分子の導入方法において、目的分子を含む液体と前記標的細胞または標的組織とを接触させるステップについて、標的として細胞を用いる揚合をより詳細に説明する。
本発明の目的分子の導入方法において、目的分子を含む液体と前記標的細胞または標的組織とを接触させるステップについて、標的として細胞を用いる揚合をより詳細に説明する。
本発明の目的分子の導入方法において、目的分子を含む液体と前記標的細胞とを接触させるステップは、標的細胞を前培養するステップ(図1のステップ1)および目的分子を含む液体を添加するステップ(図1のステップ2)を含むことが好ましい。
標的細胞の前培養(ステップ1)の方法は、特に限定されないが、プレートなどの細胞培養容器上で培養した培養接着細胞や、培養液中に懸濁した状態で標的細胞を培養する方法が挙げられる。前培養に用いる培地は、標的細胞を培養することのできる組成の培地であれば特に限定されるものではないが、たとえば寒天培地をはじめとする固体培地や試験管やフラスコ内の液体培地などが挙げられる。
次に、前培養された標的細胞、たとえば、プレートなどの細胞培養容器上で培養した培養接着細胞や、培養液中に懸濁している標的細胞を遠心分離または濾過などの操作により分離して、培養液を除去する。
次に、目的分子を含む液体を添加する際(ステップ2)には、たとえば目的分子を含む液体を標的細胞を薄く覆うように添加することが好ましい。目的分子を含む液体は、特に限定されるものではないが、たとえば目的分子を含む水溶液または懸濁液であることが好ましい。また、該水溶液または懸濁液の溶媒または分散媒としては、たとえば生理食塩水やpH緩衝溶液などが挙げられる。
なお、標的細胞に目的分子を含む液体を接触させる際には、たとえば標的細胞または標的細胞に目的分子を含む液体を滴下する方法、標的細胞または標的組織と、目的分子を含む液体とを混合する方法などを用いることができる。また、目的分子を含む液体と標的細胞または標的組織とを接触させる別の方法としては、標的細胞または標的組織を含む分散液または懸濁液等に目的分子を含む液体を添加する方法も用いることができる。
<選定分子を含む液体と前記標的細胞または標的組織とを加熱冷却させるステップ>
本発明の目的分子の導人方法において、目的分子を含む液体と前記標的細胞または標的組織とを加熱冷却させるステップについて、標的として細胞を用いる揚合をより詳細に説明する。
本発明の目的分子の導人方法において、目的分子を含む液体と前記標的細胞または標的組織とを加熱冷却させるステップについて、標的として細胞を用いる揚合をより詳細に説明する。
本発明の選定分子の導入方法において、選定分子を含む液体と前記標的細胞とを加熱冷却させるステップは、標的細胞を前培養するステップ(図1のステップ1)および選定分子を含む液体を添加するステップ(図1のステップ2)を含むことが好ましい。
標的細胞と目的分子の加熱冷却(ステップ3)の方法としては、特に限定されないが、標的細胞と目的分子が入れられた細胞培養容器が急速に加温・冷却でき、その温度変化のスピードが0.5秒/℃以内の方法が好ましい。
加熱する装置は+3℃〜−3℃の精度で目的の温度に制御できる装置が好ましく、+1℃〜−1℃の精度で目的の温度に制御でき装置がより好ましい。その制御方法についてはその例として図3から図5のような方法があるが、特に限定されるものではない
<目的分子を含む液体中に放電するステップ>
本発明の目的分子の導入方法における、目的分子を含む液体から離間して設けられた電極から目的分子を含む液体に放電することにより目的分子を含む液体中に放電によって生じた電流あるいは放電により生じる化学的要因を生じるステップについて、より詳細に説明する。
本発明の目的分子の導入方法における、目的分子を含む液体から離間して設けられた電極から目的分子を含む液体に放電することにより目的分子を含む液体中に放電によって生じた電流あるいは放電により生じる化学的要因を生じるステップについて、より詳細に説明する。
本発明において、目的分子を含む液体から離間して設けられた電極から液体に放電することにより目的分子を含む液体中に電流を流すステップは、特に限定されるものではないが、標的細胞または標的組織と接した目的分子を含む液体中に放電によって生じる電流あるいは化学的要因生成のステップ(図1のステップ4)を含むことが好ましい。このステップにより標的細胞または標的組織に目的分子が導入される。
装置を加熱するステップ(ステップ3)においては、シヤーレ等の容器中に標的細胞または標的組織と目的分子を含む液体とが保持された状態で、目的分子を含む液体に放電することのできる領域に電極が設置されることが好ましい。
ここで、上記容器は、標的細胞または標的組織と目的分子を含む液体を保持することのできる構造であれば特に限定されるものではないが、たとえばプレート、シヤーレ、チュ−ブ、試験管、フラスコなどが挙げられる。
単一または複数の電極に電気エネルギーを供給し放電するステップ(ステップ4)においては、電極の間に数kV〜数十kV程度の電圧を印加することが好ましく、さらに好ましくは2kV〜30kVであり、最も好ましくは5〜20kVである。数十kVよりも高い電圧で放電すると、標的細胞または標的組織の死滅率が高くなってしまい、目的分子の導入率を向上させる効果を得ることができない。
目的分子を含む液体に放電する時間は、1〜100msであることが好ましく、さらに好ましくは3〜20msである。
このようにして、目的分子を含む液体に放電することにより、目的分子の導入をすることが可能となる。
<導入装置>
図2は、図1に示す本発明の目的分子の導入方法に用いられる本発明の導入装置を説明する概略図である。なお、本発明の導入装置の構造は、図2に示す構造に限定されるものではない。
図2は、図1に示す本発明の目的分子の導入方法に用いられる本発明の導入装置を説明する概略図である。なお、本発明の導入装置の構造は、図2に示す構造に限定されるものではない。
ここで、図2に記載される本発明の導入装置は、上述した本発明の目的分子導入方法に好適に用いられる構造および機能を有している。図2(a)あるいは(b)に示す本発明の導入装置は、1本あるいは複数の針状の電極と電源(電圧・電流供給手段)と、容器とを備えている。該電源により、電極間に電圧・電流を供給することができる。
特に、図2に記載される本発明の導入装置に備えられた電極は、上記目的分子を含む液体に離間して設けられており、単一または複数の電極に電気エネルギーを供給することにより該電極と上記目的分子を含む液体との間で放電を行わせることで、上記目的分子を含む液体に電流を流すことを特徴とするものである。
なお、本発明の導入装置は、本発明の目的分子の導入方法において、標的細胞または標的組織と接触した目的分子を含む液体に電極からの放電により電流を流すことのできる領域に電極が設置されていることを特徴としている。図2に図示したように、電極は目的分子を含む液体と離間して設けられており、電極は目的分子を含む液体との間に放電を生じさせることにより、目的分子を含む液体に電極からの電流を流すことができる位置に電極が設置されている。電極と目的分子を含む液体とは、両者の間の最短距離が10mm以下であり、かつ両者が接触しないように設置されている。電極と目的分子を含む液体との間の最短距離は、0.1〜10mmであることが好ましく、さらに好ましくは0.1mm〜3mmである。このように、電極と目的分子を含む液体とを互いに接触しないように設置することにより、電極を使用毎に清掃する必要がなく、電極の腐食を防止することができる。
また、本発明においては、電極間の距離や電極間に印加される電圧の好適な範囲は、目的分子を含む液体の電気抵抗などに影響されるものであり一概に決定することはできないが、通常の目的分子を含む水溶液を用いる場合、任意の2対の電極間の距離が0.3〜60mmであることが好ましく、任意の2対の電極間に印加される電圧は2〜30kVであることが好ましい。
また、本発明において、上記電極から上記目的分子を含む液体に電流を流すための電気エネルギーを上記電極に供給する電気エネルギー供給手段は、特に限定されるものではないが、たとえば高圧電源FP1000(パールエ業株式会社製)などの電源供給装置が挙げられる。電源が交流電源である場合の交流波の波形は、正弦波、半波整流、全波整流、パルスのいずれも用いることができる。
本発明の導入装置に用いられる電極の形状は、特に限定されるものではないが、電極から目的分子を含む液体に放電するために必要以上の電圧を印加する必要がないようにするために、目的分子を含む液体側を先端とする針形状等の形状であることが好ましい。また、電極の材質は、特に限定されるものではないが、タングステン、モリブデンなどが挙げられ、腐食しにくい材質や、金、銀、プラチナ等の殺菌効果のある材質であることが好ましい。
本発明を以下の実施例によってさらに説明する。
第1図に従い、本発明の装置を作成した。本装置は、プラズマ照射機の条件として、電極間電圧数kV〜十数kV、電極間距離10〜15mm、周波数20〜40kHz、パルス周期30〜90Hz、Duty 25〜100%、などの条件でそれぞれ5〜20ミリ秒間照射した。電極から試料までの距離はおよそ1mmで適正な条件を選択した。導入する巨大分子としてはGFP(緑色蛍光蛋白質)発現プラスミドpCX−EGFP(分子量約360万)を、標的細胞としてアフリカミドリザル腎臓由来線維芽細胞COS‐7細胞を用いた。
アフリカミドリザル腎臓由来線維芽細胞COS‐7細胞を96穴の細胞培養用プレートに播種し、37℃,二酸化炭素5%の条件下で一晩培養した。培養細胞数は1ウエルあたり5x103個で培養を開始した。細胞がプレート上に接着していることを確認後、培養プレートから培地を除去して、細胞表面に6μLのGFP発現プラスミド液(1μg/μL)を加え、室温(約20℃)にて電気刺激を行なった。その後直ちに培地を加えて一晩培養し、蛍光顕微鏡を用いてGFPの発現を観察し、視野あたりの発現細胞数を定量化した。その結果、GFPの発現が観察された。導入効率としては顕微鏡による目視で最大約20%であった。
実施例1と同様な条件でCOS‐7細胞を96穴の細胞培養用プレートで調製した。培養プレートから培地を除去して、細胞表面に6μLのGFP発現プラスミド液(1μg/μL)を加え本願の加熱冷却装置でプレートを8℃〜48℃まで加熱した後、電気刺激を行なった。その後直ちに培地を加えて一晩培養し、蛍光顕微鏡を用いてGFPの発現を観察し、視野あたりの発現細胞数を定量化した。その結果、いずれの条件においてもGFPの発現が観察された(図6)。
これらの結果を表1に示す。
実施例1と同様な条件でマウスの線維芽細胞であるL−929細胞を96穴の細胞培養用プレートで調製した。培養プレートから培地を除去して、細胞表面に6μLのGFP発現プラスミド液(1μg/μ L) を加え本願の加熱冷却装置でプレートを6℃〜55℃まで加熱した後、電気刺激を行なった。その後直ちに培地を加えて一晩培養し、蛍光顕微鏡を用いてGFPの発現を観察し、視野あたりの発現細胞数を定量化した。その結果、いずれの条件においてもGFPの発現が観察された。
これらの結果を表1に示す。
巨大分子であるプラスミドは、室温より低い温度の場合には細胞への導入効率が低下した。一方で細胞を加温し、室温より高い温度に保った場合には、細胞への巨大分子の導入率が顕著に増大し、45℃の時に最大の導入効率を示した。一方で、温度が50℃以上になることで細胞は障害を起こし、死滅するとともにその導入効率は低下した(図7)。
一般的に酵素活性など生体反応の至適温度は生物の体温であり、加温による導入効率の増加は37℃で最大値を示すものと想定されたが、本結果はその予測を遙かに越える45℃で最大効率が得られた。この結果は、加温による分子導入率の増加効果は単なる生体の酵素反応の活性化によるものではなく、何らかの物理的および生化学的要因に起因することが示唆された。詳細な作用機序については不明であるが、本結果はこれまで誰も予想し得なかった新規の事実であった。
以上説明したように、本発明における加温による高効率な目的分子導入法およびその装置は医学領域では遺伝病や難治療性疾患の予防および改善に有用な方法であり、農林水産業においては栽培植物や養殖用魚類・畜産用動物の育種・品種改良に有用な方法である。また、遺伝子、タンパク質、多糖類をはじめとする巨大分子が導入できない生物種への分子導入にも有用な方法である。
Claims (7)
- 標的細胞または標的組織内へ目的分子を導入する方法であって、前記目的分子を含む液体と前記標的細胞または標的組織とを接触させ、前記液体を加熱冷却するステップと、前記液体から離間して設けられた単一または複数の電極に電気エネルギーを供給し放電させることにより前記液体中に電流・電界・電荷、および放電により生成される化学物質を発生させるステップとを順に備える、標的細胞または標的組織内への目的分子導入方法。
- 前記液体を加熱冷却する装置が30℃〜50℃の温度に維持できる、請求項1に記載の目的分子導入方法。
- 前記加熱冷却装置が好ましくは37℃〜45℃の温度に維持できる、請求項1に記載の目的分子導入方法。
- 前記目的分子の分子量が10000Da以上の生体高分子である、請求項1に記載の目的分子導入方法。
- 前記生体高分子が、ポリヌクレオチド、タンパク質またはペプチドである、請求項4に記載の目的分子導入方法。
- 標的細胞または標的組織内への目的分子の導入装置であって、前記目的分子含む液体および前記標的細胞または標的組織を収容するための容器と、その容器を加温するため加熱冷却装置と、前記目的分子を含む液体に放電するための電気エネルギーを供給する電気エネルギー供給手段とを備えた、標的細胞または標的組織内への目的分子導入装置。
- 前記加熱冷却装置が0.5秒/℃以内で温度を変化させることができる、請求項6に記載の目的分子導入装置。
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