JP2017186507A - 無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂及び無機微粒子分散ペースト組成物 - Google Patents

無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂及び無機微粒子分散ペースト組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】熱分解性、印刷後の保形性、及び印刷する際の印刷版からの版抜け性に優れた無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂並びに無機微粒子分散ペースト組成物を提供する。【解決手段】ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系ポリマーを含有し、前記(メタ)アクリル系ポリマーにおけるポリアルキレングリコール鎖の含有量が1mol%以上15mol%以下であり、前記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が20万以上90万以下であり、前記(メタ)アクリル系ポリマーの、数平均分子量に対する重量平均分子量の比で表される分子量分布が7以下である無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂、及び前記無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂を含む無機微粒子分散ペースト組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂及び無機微粒子分散ペースト組成物に関する。
ガラス粉末及び導電性粉末の無機微粒子等の無機材料と、バインダー樹脂及び有機溶剤等を含む有機材料と、を混合して調製されたペースト組成物は、様々な形状の焼成体を得るために広く用いられている。
ペースト組成物を用いて焼成体を作製するにあたっては、スクリーン印刷、ドクターブレード等を用いた塗工法、及びシート状に加工するキャスティング法等によりペースト組成物を所定の形状に加工した後、乾燥及び焼成を行なうことで、所望とする焼成体を得ることが可能である。中でも、スクリーン印刷による方法は、大量生産に適した方法であり、各種電子部品等の部材形成に適用されている。
そして、ペースト組成物を用いて焼成体を作製する場合、所望の形状の焼成体を得るためには、ペースト組成物に含有させるバインダー樹脂が重要となる。ペースト組成物中にバインダー樹脂が存在することで、ペースト組成物を印刷又は塗工する際に、ペースト組成物を適切な粘度に調整ができる。しかし、ペースト組成物にバインダー樹脂が存在することで、ペースト組成物を焼成した後に、炭素が残り、絶縁不良等の不具合を発生する場合がある。
従来からバインダー樹脂について種々の検討がされており、例えば、特許文献1には、メチルメタクリレートに由来するセグメント、イソブチルメタクリレートに由来するセグメント、及び、ポリオキシアルキレンエーテルモノメタクリレートに由来するセグメントを有し、ポリオキシアルキレンエーテルモノメタクリレートに由来するセグメントを5質量%以上20質量%以下含有し、重量平均分子量がポリスチレン換算で2万以上7万以下であるバインダー樹脂が提案されている。特許文献1に記載のバインダー樹脂を用いたペースト組成物は、焼結後の残留炭素が少ないとされている。
国際公開第2009/031663号
ところで、ペースト組成物は、PDP(プラズマディスプレイ)の背面ガラス基板上に設けられる隔壁の形成及び太陽電池の電極の形成等に用いられる。隔壁及び電極を形成する際、基板上に、ペースト組成物を印刷(例えば、スクリーン印刷)する工程、乾燥する工程、及び焼成する工程を経る。この印刷工程、乾燥工程、及び焼成工程を多数回繰り返すことで隔壁及び電極を形成する。
上記のような隔壁及び電極を形成する方法は、印刷工程、乾燥工程、及び焼成工程を多数回繰り返しているため、生産性が悪い。そのため、隔壁及び電極を形成する方法において、上記の各工程を繰り返す回数を減らし、生産性を向上させることが求められている。各工程を繰り返す回数を減らす方法としては、例えば、印刷工程における1回の塗布厚みを増加させることが挙げられる。
しかしながら、上記の特許文献1に記載のバインダー樹脂を用いたペースト組成物の印刷工程における1回の塗布厚みを増加させようとした場合、ペースト組成物の粘度が低く、所望の形状に印刷された後のペースト組成物の保形性が不十分であるため、1回の塗布厚みを厚くすることができない。
一方で、ペースト組成物の保形性を高めるために、例えば、バインダー樹脂の分子量を単純に増加させてペースト組成物の粘度を高くすると、ペースト組成物を焼成した際の熱分解性が低下し、かつ、ペースト組成物を印刷する際の印刷版からの版抜け性が低下してしまう。
すなわち、印刷工程における1回の塗布厚みを増加させるために、所望の形状に印刷された後のペースト組成物の保形性が優れ、かつ、ペースト組成物の熱分解性がよく、焼成後に残渣が生じにくいといった、互いに相反する性状を同時に成り立たせることは難しい。更に、印刷時の印刷版からの版抜け性に優れるようなペースト組成物までは、いまだ提供されていない。
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、熱分解性、印刷後の保形性、及び印刷する際の印刷版からの版抜け性に優れた無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂並びに無機微粒子分散ペースト組成物を提供する。
なお、本明細書において「熱分解性」とは、バインダー樹脂を含むペースト組成物を焼成した際、熱による分解のしやすさ、残渣の生じにくさを指す。
「保形性」とは、バインダー樹脂を含むペースト組成物を印刷した後、ペースト組成物が所望の形状を保持する性質を指す。
「版抜け性」とは、印刷に用いた印刷版からペースト組成物が離れやすい性質であり、ペースト組成物が印刷版から離れにくいことに起因して生じるペースト組成物の欠損が発生しにくい性質を指す。
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系ポリマーを含有し、前記(メタ)アクリル系ポリマーにおけるポリアルキレングリコール鎖の含有量が1mol%以上15mol%以下であり、前記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が20万以上90万以下であり、前記(メタ)アクリル系ポリマーの、数平均分子量に対する重量平均分子量の比で表される分子量分布が7以下である無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂。
<2> 前記(メタ)アクリル系ポリマーは、更に、炭素数1〜6のアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含み、前記ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体が、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートである<1>に記載の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂。
<3> 前記炭素数1〜6のアルキル(メタ)アクリレートは、イソブチルメタクリレートである<2>に記載の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂である。
<4> 前記(メタ)アクリル系ポリマーにおける、前記炭素数1〜6のアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量は、ポリマーの全質量に対して、55質量%以上97質量%以下である<2>又は<3>に記載の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂である。
<5> 前記(メタ)アクリル系ポリマーにおけるポリアルキレングリコール鎖の含有量が、2mol%以上5mol%以下であり、前記ポリアルキレングリコール鎖におけるアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が、4以上25以下である<1>〜<4>のいずれか1つに記載の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂。
<6> 前記ポリアルキレングリコール鎖が、ポリエチレングリコール鎖である<1>〜<5>のいずれか1つに記載の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂。
<7> <1>〜<6>のいずれか1つに記載の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂と、無機微粒子と、有機溶媒と、を含む無機微粒子分散ペースト組成物。
本発明によれば、熱分解性、印刷後の保形性、及び印刷する際の印刷版からの版抜け性に優れた無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂並びに無機微粒子分散ペースト組成物が提供される。
実施例における保形性の評価基準を示す図である。 実施例における版抜け性の評価基準を示す図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念である。「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念である。「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を包含する概念である。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書において、各成分の含有量及び添加量は、その成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、当該複数の物質の合計量を意味する。
<無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂>
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂(以下、バインダー樹脂ともいう)は、ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系ポリマーを含有し、前記(メタ)アクリル系ポリマーにおけるポリアルキレングリコール鎖の含有量が1mol%以上15mol%以下であり、前記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)が20万以上90万以下であり、前記(メタ)アクリル系ポリマーの数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)が7以下である。
本発明のバインダー樹脂は、必要に応じて更に(メタ)アクリル系ポリマー以外の成分を含んでいてもよい。
本発明のバインダー樹脂は、(メタ)アクリル系ポリマーにおけるポリアルキレングリコール鎖の含有量を所定の範囲に調整した上で、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量を従来のバインダー樹脂におけるポリマーに対して高い分子量とし、更に分子量分布を特定の範囲にすることで、熱分解性、保形性、及び版抜け性の全ての性状を同時に成り立たせることができる。
すなわち、本発明のバインダー樹脂を用いたペースト組成物は、所望の形状に印刷された後のペースト組成物の保形性が向上しながらも、ペースト組成物の熱分解性及び印刷時の版抜け性にも優れ、印刷工程における1回の塗布厚みを増加できるという特段の効果が得られる。
以下、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂を構成する各成分について詳述する。
[ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系ポリマー]
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーは、ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体に由来する構成単位を含み、ポリマーにおけるポリアルキレングリコール鎖の含有量が1mol%以上15mol%以下であり、重量平均分子量(Mw)が20万以上90万以下であり、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)が7以下である。
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーは、少なくともポリアルキレングリコール鎖を有する単量体に由来する構成単位を有し、更にポリアルキレングリコール鎖を有さない単量体に由来する構成単位を有していてもよい。
本明細書において「(メタ)アクリル系ポリマー」とは、構成単位を形成する単量体のいずれかが(メタ)アクリロイル基を有し、この単量体に由来する構成単位を有するポリマーを指す。
本発明では、ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体が(メタ)アクリロイル基を有していてもよく、ポリアルキレングリコール鎖を有さない単量体が(メタ)アクリロイル基を有していてもよい。
(ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体に由来する構成単位)
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーは、ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体に由来する構成単位の少なくとも1種を含む。
(メタ)アクリル系ポリマー中に複数のポリアルキレングリコール鎖が存在し、この複数のポリアルキレングリコール鎖同士が絡み合うことで、本発明のバインダー樹脂をペースト組成物とした際、ペースト組成物の粘度を上げることができ、ペースト組成物の保形性の向上に寄与することができる。
そして、(メタ)アクリル系ポリマーがポリアルキレングリコール鎖を有することで、本発明のバインダー樹脂をペースト組成物とした際、無機微粒子の分散性を向上させることができるため、版抜け性の向上に寄与することができる。
ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体に由来する構成単位は、ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体を重合することによって(メタ)アクリル系ポリマーに導入できる。
(ポリアルキレングリコール鎖)
本発明におけるポリアルキレングリコール鎖は、例えば、下記式(1)で表される。
式(1)中、ROは、アルキレンオキサイドを表し、nはアルキレンオキサイドの平均繰り返し数(すなわち、アルキレンオキサイドの平均付加モル数)を表し、*は結合位置を表す。
上記式(1)で表されるポリアルキレングリコール鎖としては、例えば、アルキレンオキサイドのアルキレン部分Rの炭素数が1〜4のポリアルキレングリコール鎖が挙げられる。より具体的には、ポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖、ポリテトラメチレングリコール鎖、ポリブチレングリコール鎖等が挙げられる。
これらのポリアルキレングリコール鎖は、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が組み合わされて含まれていてもよい。2種以上のポリアルキレングリコール鎖の組み合わせとしては、例えば、ポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の組み合わせが挙げられる。
これらのポリアルキレングリコール鎖の中でも、熱分解性の観点から、ポリエチレングリコール鎖、又はポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の組み合わせが好ましく、ポリエチレングリコール鎖であることがより好ましい。
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーに含まれるポリアルキレングリコール鎖は、ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体を重合することでポリマー中に導入することができる。
(ポリアルキレングリコール鎖中のアルキレンオキサイドの平均繰り返し数)
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーにおけるポリアルキレングリコール鎖中のアルキレンオキサイドの平均繰り返し数は、特に制限されないが、2以上50以下が好ましく、2以上30以下がより好ましく、4以上25以下が更に好ましく、5以上15以下が特に好ましい。
アルキレンオキサイドの平均繰り返し数が2以上であると、ポリアルキレングリコール鎖が長くなり、ポリアルキレングリコール鎖同士の絡み合いが多くなるため、本発明のバインダー樹脂をペースト組成物とした際、保形性がより向上する。一方、アルキレンオキサイドの平均繰り返し数が50以下であると、熱分解温度を低くすることができ、またペースト組成物とした際の粘度が高くなりすぎず、熱分解性及び版抜け性がより向上する。
(ポリアルキレングリコール鎖の含有量)
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーにおけるポリアルキレングリコール鎖の含有量は、1mol%以上15mol%以下である。すなわち、(メタ)アクリル系ポリマーにおけるポリアルキレングリコール鎖の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマーの全構成単位100molに対して、1mol以上15mol以下である。
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーにおけるポリアルキレングリコール鎖の含有量が1mol%以上であることで、ペースト組成物とした際のバインダー樹脂と無機微粒子との分散性が向上し、版抜け性が良好になる。一方、ポリアルキレングリコール鎖の含有量が15mol%以下であることで、熱分解性が良好になる。
ポリアルキレングリコール鎖の含有量は、上記の観点から、1mol%以上10mol%以下が好ましく、1.5mol%以上7mol%以下がより好ましく、2mol%以上5mol%以下が特に好ましい。
(メタ)アクリル系ポリマーにおけるポリアルキレングリコール鎖の含有量は、ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体に由来する構成単位の量、及び単量体中におけるポリアルキレングリコール鎖の含有量を適宜変更することで調整できる。
本発明において、「(メタ)アクリル系ポリマーにおけるポリアルキレングリコール鎖の含有量」とは、以下の計算式により求められる値である。
下記式中、Pcは、(メタ)アクリル系ポリマーにおけるポリアルキレングリコール鎖の含有量[mol%]を表す。Pwは、ポリアルキレングリコール鎖の平均の式量(質量)を表し、Twは、ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体の平均分子量を表し、Tcは、ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体の含有量[mol%]である。
ポリアルキレングリコール鎖の平均分子量Pw、及びポリアルキレングリコール鎖を有する単量体の平均分子量Twは、それぞれを構成する原子の原子量とアルキレンオキサイドの平均繰り返し数とから計算により求められる。
ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体としては、例えば、ポリアルキレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール鎖を有するアルコール(例えば、ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)等が挙げられる。
中でも、ポリアルキレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
ポリアルキレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレートとしては、特に限定されず、例えば、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリールオキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でもアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルキレン部分の炭素数が1〜4のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。より具体的には、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルコキシ部分の炭素数が1〜6であり、アルキレン部分の炭素数が1〜4のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。より具体的には、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アリールオキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのポリアルキレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレートの中でも、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましく、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートがより好ましく、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体は、複数種用いてもよい。
この場合、「(メタ)アクリル系ポリマーにおけるポリアルキレングリコール鎖の含有量」を表すPcは、以下の計算式により求められる。
下記式中のPc、Pc、・・・、及びPcはそれぞれ、ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体1、単量体2、・・・、及び単量体nの、(メタ)アクリル系ポリマーにおけるポリアルキレングリコール鎖の含有量[mol%]である。
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーにおけるポリアルキレングリコール鎖を有する単量体に由来する構成単位の含有量は、ポリマーの全質量に対して、3質量%以上45質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましく、8質量%以上20質量%以下が更に好ましい。
ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体に由来する構成単位の含有量が3質量%以上であると、ポリアルキレングリコール鎖の数が多くなり、ポリアルキレングリコール鎖同士の絡み合いが多くなるため、本発明のバインダー樹脂をペースト組成物とした際、保形性がより向上する。一方、ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体に由来する構成単位の含有量が、45質量%以下であると、熱分解性が向上する。
(ポリアルキレングリコール鎖を有さない単量体に由来する構成単位)
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーは、上記のポリアルキレングリコール鎖を有する単量体に由来する構成単位のほかに、ポリアルキレングリコール鎖を有さない単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。ポリアルキレングリコール鎖を有さない単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する単量体及び極性基を有する単量体が挙げられる。
−(メタ)アクリロイル基を有する単量体−
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
(メタ)アクリロイル基を有する単量体としては、特に制限されないが、例えば、炭素数1〜10のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ノルマルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルマルオクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノルマルノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ノルマルデシル(メタ)アクリレート、ノルマルドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、バインダー樹脂の熱分解性の観点から、炭素数1〜6のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数2〜5のアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、及びイソブチル(メタ)アクリレートが更に好ましく、イソブチル(メタ)アクリレートが更に好ましく、イソブチルメタクリレートが特に好ましい。
特に、(メタ)アクリル系ポリマーが、イソブチルメタクリレートに由来する構成単位を含む場合、熱分解温度が低いため、バインダー樹脂の熱分解性がより向上する。
(メタ)アクリル系ポリマーにおける(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有量は、ポリマーの全質量に対して、55質量%以上97質量%以下が好ましく、60質量%以上95質量%以下がより好ましく、80質量%以上92質量%以下が更に好ましい。
−極性基を有する単量体−
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーは、その他、極性基を有する単量体に由来の構成単位を含んでもよい。
極性基としては、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、グリシジル基等が挙げられる。
極性基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセロリンモノメタクリレート等が挙げられる。
(重量平均分子量)
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量(Mw)が20万以上90万以下である。
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が20万以上であることで、バインダー樹脂を用いてペースト組成物を調製した際の粘度を上げることができ、ペースト組成物を印刷する場合に所望の形状を形成することができ、かつ、印刷した後のペースト組成物の保形性に優れる。
一方、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が90万以下であることで、バインダー樹脂は熱分解性に優れ、かつ、ペースト組成物を印刷する場合に好適な粘度域にすることができ、版抜け性も良好となる。
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、上記と同様の観点から、25万以上80万以下が好ましく、25万以上70万以下がより好ましく、25万以上65万以下が更に好ましい。
重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)により、TSK−GEL GMHXL(東ソー製 スチレン系ポリマー充填剤)をカラムとして測定し、ポリスチレン換算して得られる値を採用する。
−条件−
GPC :HLC−8220 GPC(東ソー(株)製)
カラム :TSK−GEL GMHXL 4本使用(東ソー(株)製)
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流速 :0.6mL/分
カラム温度:40℃
(分子量分布)
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーの数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、7以下である。
ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)が7以下であることで、オリゴマーのような低分子量のポリマーの数が減少するため保形性が向上する。また、ゲル化するような高分子量のポリマーの数も減少するため粘度が高くなりすぎず、かつ、熱分解性も向上する。更に、高分子量のポリマーの数が減少すると、ペースト組成物を調製した際に、無機微粒子に対するバインダー樹脂の濡れ性が向上するため、ペースト組成物中における無機微粒子の分散性が向上し、版抜け性が良好になる。
ポリマーの分子量分布は、上記と同様の観点から、5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3.5以下が更に好ましい。
ポリマーの数平均分子量(Mn)は、既述の重量平均分子量(Mw)と同様の方法により測定できる。ポリマーの分子量分布は、上記の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)から求めることができる。
((メタ)アクリル系ポリマーの合成方法)
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーの合成方法は、特に限定されず、通常用いられる重合方法から適宜選択できる。重合方法としては、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。これらの中でも、重合方法としては、製造が比較的簡単に行えることから、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法では、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び必要に応じて連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中、有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶媒、単量体、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
重合反応の際に用いられる有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、ノルマルプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、テトラリン、デカリン、芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素類、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、ノルマルデカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、テレピン油等の脂肪系又は脂環族系炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ノルマルブチル、酢酸ノルマルアミル、酢酸2−ヒドロキシエチル、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸3−メトキシブチル、安息香酸メチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−イソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル系ポリマーの溶解性の観点及び重合反応の容易さの観点からは、エステル類、ケトン類等の使用が好ましく、具体的には、酢酸エチル及びメチルエチルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
有機溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤としては、通常の溶液重合法で用いられる有機過酸化物、アゾ化合物等を使用できる。
有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサネート、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ−イソプロピルパーオキシジカルボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカルボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン等が挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス−イソブチルニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス−シクロヘキサン−1−カルボニトリル、2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)等が挙げられる。
重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する単量体の合計量100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下が好ましく、0.1質量部以上2質量部以下がより好ましい。
なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)、並びに分子量分布(Mw/Mn)は、重合温度、重合時間、溶剤量、触媒の種類及び量、並びに重合開始剤の種類及び量によって容易に調節できる。
<無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂の製造方法>
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂の製造方法は、特に限定されない。
バインダー樹脂の製造方法としては、例えば、前述の(メタ)アクリル系ポリマーと必要に応じて配合される(メタ)アクリル系ポリマー以外の成分とを混合する方法が挙げられる。
バインダー樹脂が(メタ)アクリル系ポリマーのみを含む場合、前述の(メタ)アクリル系ポリマーの合成方法と同様の方法でバインダー樹脂を製造することができる。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂は、ポリアルキレングリコール鎖の含有量を特定の範囲にすることでポリアルキレングリコール鎖の絡み合いの頻度を調整することができる。かつ、バインダー樹脂の重量平均分子量を高くすることでペースト組成物とした際の粘度をより上昇させることができる。更に、分子量分布を特定の値以下にすることで目的の分子量帯のみを選択的に得ることができる。そのため、保形性と熱分解性という背反する性状を同時に成り立たせ、かつ、版抜け性にも優れるという、従来にはない優れた無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂を提供することができる。
すなわち、本発明によれば、ポリアルキレングリコール鎖の含有量とバインダー樹脂の重量平均分子量とバインダー樹脂の分子量分布とを、それぞれの所定の範囲に調整することで、本発明のバインダー樹脂を用いたペースト組成物の印刷工程における1回の塗布厚みを増加でき、生産性の向上を図ることができる。
<無機微粒子分散ペースト組成物>
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物(以下、ペースト組成物ともいう)は、既述の本発明の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂(以下、バインダー樹脂ともいう)と、無機微粒子と、有機溶媒と、を含む。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂を含むことで、熱分解性、保形性、及び版抜け性に優れる。
以下、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物の各成分について詳述する。
[バインダー樹脂]
本発明のペースト組成物は、既述の本発明の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂の少なくとも1種を含む。バインダー樹脂の好ましい態様は、既述のとおりである。
ペースト組成物におけるバインダー樹脂の添加量は、無機微粒子100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、0.5質量部以上10質量部以下がより好ましい。バインダー樹脂の添加量が前記範囲内であることで、適切な粘度範囲を有するペースト組成物が得られやすく、ペースト組成物は保形性及び版抜け性に優れる。また、ペースト組成物は熱分解性に優れる。
[無機微粒子]
本発明のペースト組成物は、無機微粒子の少なくとも1種を含む。
本発明のペースト組成物に含有される無機微粒子としては、例えば、銅、銀、ニッケル、パラジウム等の金属、ガラス、珪素化合物(シリカ、ケイ砂、二酸化珪素等)、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク等の微粒子、顔料等の微粒子等が挙げられる。
本発明のペースト組成物における無機微粒子の含有量は、ペースト組成物の全質量に対して、80質量%以上95質量%以下が好ましい。
[有機溶媒]
ペースト組成物は、有機溶媒の少なくとも1種を含有する。
有機溶媒は、その中に分散されるバインダー樹脂の親水性及び疎水性の程度、バインダー樹脂を分散したときの粘度、揮発性、レベリング性等を考慮して選択される。
本発明のペースト組成物が含有する有機溶媒の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、ノルマルヘキシルアルコール、ノルマルオクチルアルコール、イソオクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、2−(4−メチルシクロヘキサ−3−エニル)プロパン−2−オール(ターピネオール(別名:テルピネオール))等のアルコール系有機溶媒;
メチルカルビトール、エチルカルビトール、ノルマルプロピルカルビトール、イソプロピルカルビトール、ノルマルブチルカルビトール、イソブチルカルビトール、イソアミルカルビトール、フェニルカルビトール、ベンジルカルビトールジエチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、酢酸カルビトールエステル等のカルビトール系有機溶媒;
炭酸プロピレン、酢酸2−エチルヘキシル、2−エチルヘキサン酸−エチルヘキシル等のエステル系有機溶媒;
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−イソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン系有機溶媒;
イソパラフィン等の炭化水素系有機溶媒;
ノルマルメチルピロリドン等のアミン系有機溶媒;
等が挙げられる。
上記した有機溶媒の中でも、比較的高沸点で大気中に揮発し難く、粘度を良好に維持しやすい点から、アルコール系有機溶媒、カルビトール系有機溶媒が好ましい。更には、より良好な範囲に粘度を維持しやすい点で、ターピネオール、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、テキサノールがより好ましい。その中でも、沸点247℃のブチルカルビトールアセテートが特に好ましい。
ペースト組成物における有機溶媒の添加量としては、無機微粒子100質量部に対して、1.0質量部以上50質量部以下が好ましく、5.0質量部以上20質量部以上がより好ましい。有機溶媒の含有量が前記範囲内であることで、適切な粘度範囲を有するペースト組成物が得られやすく、ペースト組成物は保形性及び版抜け性に優れる。
(無機微粒子分散ペースト組成物の製造方法)
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物の製造方法は、バインダー樹脂と、無機微粒子と、有機溶媒と、を混合することによりペースト組成物を調製する工程を少なくとも有する。更に、他の工程を有していてもよい。
本発明のペースト組成物は、ニーダー及び三本ロール等の混練機、ホモジナイザー等の分散機、ボールミル等の粉砕機、又は押出機等を用いて製造することができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
なお、表1及び表2において、「−」は該当する成分又は物性値が存在しないことを示す。
実施例において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)により、下記条件にて測定し、ポリスチレン換算して得られる値を採用した。
−条件−
GPC :HLC−8220 GPC(東ソー(株)製)
カラム :TSK−GEL GMHXL 4本使用(東ソー(株)製)
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流速 :0.6mL/分
カラム温度:40℃
(実施例1)
<バインダー樹脂Aの溶液の調製>
撹拌機、還流冷却管、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器に、イソブチルメタクリレート(iBMA)180部、ライトエステル130MA(ポリアルキレングリコール鎖としてポリエチレングリコール(PEG、平均繰り返し数n=9)鎖を有する単量体、表1中E−1と表記)20部、ブチルカルビトールアセテート(BCA、有機溶媒)85部、メタノール(MeOH、有機溶媒)35部、及びt−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサネート(重合開始剤)0.3部(表1中Aで表記)を仕込んだ。
次いで、別の容器に、180部のイソブチルメタクリレート及び20部のライトエステル130MAを混合した単量体混合物と、ブチルカルビトールアセテート(BCA、有機溶媒)85部と、メタノール(MeOH)35部と、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサネート(重合開始剤)0.3部(表1中Bで表記)と、を混合した混合液を調製し、この混合液を上記の反応器内に30分間逐次滴下し、更に120分間還流状態に保った。
さらに、ブチルカルビトールアセテート(BCA、有機溶媒)34部と、メタノール(有機溶媒)14部と、t−ブチルパーオキシピバレート(重合開始剤)0.5部(表1中Cで表記)とを混合した混合液を調製し、この混合液を上記反応器内に30分間逐次滴下し、更に90分間還流状態に保った。
その後、ブチルカルビトールアセテート(BCA、有機溶媒)を用いて固形分が30質量%となるように上記で得られた反応後の混合液を希釈し、冷却して、バインダー樹脂A((メタ)アクリル系ポリマー)の溶液を調製した。
得られたバインダー樹脂Aの重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は表2に示すとおりであった。
また、得られたバインダー樹脂Aのポリアルキレングリコール鎖の含有量(Pc)は、表2に示す通りである。
なお、Pcの値は、上述した計算式を用いることで求めた。
まず、バインダー樹脂Aにおける、ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体とポリアルキレングリコール鎖を有さない単量体とを特定する。ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体はE−1であり、ポリアルキレンオキサイドとしてPEG(平均繰り返し数n=9)を有する。ポリアルキレングリコール鎖を有さない単量体はiBMAである。これより、計算式中のPwの値は、PEGの分子量44に平均繰り返し数9を掛けることで、396と求められる。また、Twの値は、496である。また、Tcの値は、E−1とiBMAの添加比率(E−1:iBMA)40:360と、E−1の平均分子量496(すなわちTw)と、iBMAの平均分子量142と、からE−1とiBMAのそれぞれのモル量(mol)を計算し(E−1のモル量=40/496=0.08mol、iBMAのモル量=360/142=2.54mol)、E−1及びiBMAの合計に対するE−1のモル比率(mol%)(=0.08/(0.08+2.54)×100)を求めることで、3.1と求められる。これらの値を、上述した計算式に当てはめることで、Pcの値は2.47と求まり、小数点以下第2位を四捨五入し、表2に記載の値である2.5が求められる。
<評価用ペースト組成物の調製>
ガラス微粒子(無機微粒子)100部と、上記で調製したバインダー樹脂Aの溶液1.2部と、ブチルカルビトールアセテート(BCA、有機溶媒)10部と、を混合した混合液(不揮発分90質量%)を、公転自動混練機(シンキー社製、ARE310)を用いて、2000rpm、30秒の条件で混練し、ペースト組成物を調製した。
(実施例2〜実施例6)
実施例1において、下記表1及び表2に示すように、重合開始剤の添加量A〜Cを変更し、重量平均分子量及び分子量分布を下記表2に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして、バインダー樹脂B〜バインダー樹脂F及びペースト組成物を調製した。
(実施例7〜実施例10)
実施例1において、下記表1及び表2に示すように、イソブチルメタクリレート(iBMA)の量、及びポリアルキレングリコール鎖としてポリエチレングリコール(PEG)鎖を有する単量体の量を変更した以外は、実施例1と同様にして、バインダー樹脂G〜バインダー樹脂J及びペースト組成物を調製した。
(実施例11〜実施例14)
実施例1において、下記表1及び表2に示すように、イソブチルメタクリレート(iBMA)の量、並びにポリアルキレングリコール鎖としてポリエチレングリコール(PEG)鎖を有する単量体の量及び種類を変更した以外は、実施例1と同様にして、バインダー樹脂K〜バインダー樹脂N及びペースト組成物を調製した。
(実施例15)
実施例1において、イソブチルメタクリレート(iBMA)をノルマルブチルメタクリレート(nBMA)に変更した以外は、実施例1と同様にして、バインダー樹脂O及びペースト組成物を調製した。
(実施例16)
実施例1において、下記表1及び表2に示すように、イソブチルメタクリレート(iBMA)の量を変更し、ポリアルキレングリコール鎖としてポリエチレングリコール(PEG)鎖を有する単量体を、ポリアルキレングリコール鎖としてポリプロピレングリコール(PPG)鎖を有する単量体に変更した以外は、実施例1と同様にして、バインダー樹脂P及びペースト組成物を調製した。
(比較例1〜比較例2)
実施例1において、下記表1及び表2に示すように、イソブチルメタクリレートの量、及びポリアルキレングリコール鎖を有する単量体の量を変更した以外は、実施例1と同様にして、バインダー樹脂Q〜バインダー樹脂R及びペースト組成物を調製した。
(比較例3〜比較例5)
実施例1において、下記表1及び表2に示すように、重合開始剤の添加量A〜Cを変更し、重量平均分子量及び分子量分布を下記表2に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして、バインダー樹脂S〜バインダー樹脂U及びペースト組成物を調製した。
(比較例6)
実施例1において、バインダー樹脂をエチルセルロースに変更した以外は、実施例1と同様にしてペースト組成物を調製した。
<評価>
上記の実施例1〜実施例16及び比較例1〜比較例6で調製した各バインダー樹脂及びペースト組成物について、下記の評価を行なった。評価結果は下記表2に示す。
−熱分解性−
各実施例及び比較例のバインダー樹脂の溶液を取り出し、乾燥させ、試料を得た。試料を約10mg採取してアルミ皿にのせ、熱重量/分析装置(SIIナノテクノロジー社製、EXSTAR6000 TG/DTA6200)を用いて窒素雰囲気下、昇温温度10℃/分で常温から450℃まで昇温した。
その後、試料を冷却し、試料の採取量に対する試料の質量減少量の比率(%)を算出し、熱分解性の指標として下記の評価基準にしたがって評価した。
熱分解性(%)=100−(採取量−質量減少量)/(採取量)×100
<評価基準>
A:熱分解性が95%以上である。
B:熱分解性が95%未満90%以上である。
C:熱分解性が90%未満80%以上である。
D:熱分解性が80%未満である。
−保形性−
各実施例及び比較例のペースト組成物を、メタルスクリーン版(中沼アートスクリーン製、板厚:0.12mm、開口の形状:2.0mm×1.6mm)を用いて印刷し、220℃、3時間の条件で加熱後、印刷されたペースト組成物の輪郭を図1に示す評価基準及び下記評価基準に基づき、目視で評価した。
<評価基準>
A:輪郭が明瞭である(図1のA参照)。
B:輪郭が若干滲んでいる(図1のB参照)。
C:輪郭が滲んでいる(図1のC参照)。
−版抜け性−
各実施例及び比較例のペースト組成物を、上述のメタルスクリーン版を用いて印刷し、220℃、3hrの条件で加熱後、印刷されたペースト組成物の状態を図2に示す評価基準及び下記評価基準に基づき、目視で評価した。
<評価基準>
A:ペースト組成物に欠損がない(図2のA参照)。
B:ペースト組成物の一部に微少の欠損がみられる(図2のB参照)。
C:ペースト組成物に欠損がみられる(図2のC参照)。
表1中の単量体の詳細は、以下の通りである。
・iBMA:イソブチルメタクリレート
・nBMA:ノルマルブチルメタクリレート
・E−1:(商品名)ライトエステル130MA、(化学名)メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、アルキレンオキサイドとしてPEGを有し、その平均繰り返し数n=9、平均分子量496、共栄社化学社製
・E−2:(商品名)ブレンマーPME−100、(化学名)メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、アルキレンオキサイドとしてPEGを有し、その平均繰り返し数n=2、平均分子量188、日油社製
・E−3:(商品名)ブレンマーPME−200、(化学名)メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、アルキレンオキサイドとしてPEGを有し、その平均繰り返し数n=4、平均分子量276、日油社製
・E−4:(商品名)ブレンマーPME−1000、(化学名)メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、アルキレンオキサイドとしてPEGを有し、その平均繰り返し数n=23、平均分子量1112、日油社製
・E−5:(商品名)ライトエステル041MA、(化学名)メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、アルキレンオキサイドとしてPEGを有し、その平均繰り返し数n=30、平均分子量1420、共栄社化学社製
・P−1:(商品名)ブレンマーPP−500、(化学名)ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、アルキレンオキサイドとしてPPGを有し、その平均繰り返し数n=9、平均分子量608、日油社製
また、表1に記載の略称は、以下の通りである。
・PEG:ポリエチレングリコールの略、分子量44
・PPG:ポリプロピレングリコールの略、分子量58
また、重合開始剤A〜Cの詳細は、以下の通りである
・重合開始剤A:(化学名)t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサネート
・重合開始剤B:(化学名)t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサネート
・重合開始剤C:(化学名)t−ブチルパーオキシピバレート
表2より、実施例のペースト組成物は、いずれも熱分解性、保形性、及び版抜け性に優れることがわかる。
比較例1はポリアルキレングリコール鎖の含有量が1mol%未満であり保形性に劣ることがわかる。比較例2はポリアルキレングリコール鎖の含有量が15mol%を超えており熱分解性及び版抜け性に劣ることがわかる。
比較例3は重量平均分子量が20万未満であり保形性に劣ることがわかる。比較例4は重量平均分子量が90万を超えて熱分解性及び版抜け性に劣ることがわかる。
比較例5は分子量分布が7を超えており保形性に劣ることがわかる。
比較例6は、バインダー樹脂がポリアルキレングリコール鎖を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系ポリマーを含有しないため、熱分解性及び版抜け性に劣ることがわかる。

Claims (7)

  1. ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系ポリマーを含有し、
    前記(メタ)アクリル系ポリマーにおけるポリアルキレングリコール鎖の含有量が1mol%以上15mol%以下であり、
    前記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が20万以上90万以下であり、
    前記(メタ)アクリル系ポリマーの、数平均分子量に対する重量平均分子量の比で表される分子量分布が7以下である無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂。
  2. 前記(メタ)アクリル系ポリマーは、更に、炭素数1〜6のアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含み、
    前記ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体が、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートである請求項1に記載の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂。
  3. 前記炭素数1〜6のアルキル(メタ)アクリレートは、イソブチルメタクリレートである請求項2に記載の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂。
  4. 前記(メタ)アクリル系ポリマーにおける、前記炭素数1〜6のアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量は、ポリマーの全質量に対して、55質量%以上97質量%以下である請求項2又は請求項3に記載の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂。
  5. 前記(メタ)アクリル系ポリマーにおけるポリアルキレングリコール鎖の含有量が、2mol%以上5mol%以下であり、
    前記ポリアルキレングリコール鎖におけるアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が、4以上25以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂。
  6. 前記ポリアルキレングリコール鎖が、ポリエチレングリコール鎖である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の無機微粒子分散ペースト組成物用バインダー樹脂と、無機微粒子と、有機溶媒と、を含む無機微粒子分散ペースト組成物。
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