JP2017184972A - 処理システム、情報取得装置、信号処理方法、プログラム - Google Patents

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隆一 七海
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Abstract

【課題】 本発明は、音響波が固体を透過する際の波形の歪みに起因する、音響波の受信信号の歪みを補正することができる処理システムを提供することを目的とする。【解決手段】 本発明に係る処理システムは、音響波が第1の媒質を透過するときの、複数の周波数に対応する複素透過率を表す透過率フィルタを取得する透過率フィルタ取得手段と、透過率フィルタを用いて電気信号を補正することにより、補正された電気信号を取得する補正手段と、を有する。【選択図】 図1

Description

本発明は、音響波に由来する電気信号を処理する処理システムに関する。
音響波を受信することにより得られた受信信号を用いて画像化する手法として、光音響トモグラフィ(PAT:Photoacoustic Tomography)や超音波エコートモグラフィなどが提案されている。
特許文献1では、被検体と音響波の探触子との間に配置された圧迫板に起因する音線の屈折を考慮して超音波画像を取得する超音波エコー装置が開示されている。
米国特許第6607489号明細書
一般に、乳房などの生体中あるいは液体中では、音響波は縦波として伝搬する。一方、固体中では、音響波は縦波だけでなく横波でも伝搬可能である。生体中あるいは液体中を伝搬した音響波(縦波)は、固体中を、縦波および横波が共存した状態で伝搬する。さらに、固体中を伝搬し、探触子がある側の液体の媒質へ到達すると、音響波は再び縦波となって媒質中を伝搬する。縦波と横波とでは固体中を伝搬する際の音速が異なっている。
そのため、液体、固体、液体を縦波−縦波−縦波で伝搬した音響波(音響波1)と、縦波−横波−縦波で伝搬した音響波(音響波2)では位相や強度が異なる。媒質中の音響波は音響波1と音響波2とが干渉した状態で伝搬するが、干渉の程度は固体に入射する音響波の角度に依存する。また、固体の厚さが音響波の波長と同程度、あるいはそれ以下の場合は、スネルの法則で規定される臨界角以上で音響波が入射した場合でもその一部は固体(保持手段)を透過することができる。臨界角は、スネルの法則により出射角が90度となる入射角のことであり、全反射角とも呼ぶ。
これらの現象などに起因して、音響波は、固体に入射する音響波の角度に依存して、波形が歪んだ状態で探触子に到達する。
特許文献1の方法では、圧迫板に入射する音響波の角度に依存した音響波の波形の変化を考慮していない。このため、特許文献1の方法を用いた場合、音響波の波形の変化に伴う受信信号の歪みによって、得られる情報の精度が低下する。
そこで、本発明は、音響波が固体を透過する際の波形の歪みに起因する、音響波の受信信号の歪みを補正することができる処理システムを提供することを目的とする。
本発明に係る処理システムは、音響波が第1の媒質を透過するときの、複数の周波数に対応する複素透過率を表す透過率フィルタを取得する透過率フィルタ取得手段と、透過率フィルタを用いて電気信号を補正することにより、補正された電気信号を取得する補正手段と、を有する。
本発明に係る処理システムによれば、音響波が固体を透過する際の波形の歪みに起因する、音響波の受信信号の歪みを補正することができる。
実施例1に係る光音響装置の模式図 実施例1に係るコンピュータ周辺の構成の模式図 実施例1に係る被検体情報取得フローを示す図 実施例1に係る音線の計算方法を説明するための図 実施例1に係る受信信号に対するデコンボリューション処理を説明するための図 実施例1に係る伝搬時間の計算方法を説明するための図 実施例1に係る光音響画像情報を示す図 実施例2に係る光音響装置の模式図 実施例3に係る超音波エコー装置の模式図 実施例3に係る超音波の伝搬を示す模式図 実施例3に係る被検体情報取得フローを示す図 実施例3に係る超音波の入射角度を示す模式図 実施例4に係る光音響装置の模式図 実施例4に係る被検体情報取得フローを示す図 実施例4に係る補正された受信信号の例 実施例4に係る別の被検体情報取得フローを示す図 実施例4によって得られた位置補正量を示す図 実施例5によって得られた保持カップの厚さを示す図 実施例5における保持カップの幾何学情報を示す図
以下、図面を参照しつつ本発明をより詳細に説明する。なお、同一の構成要素には原則として同一の参照番号を付して、説明を省略する。
<光音響装置>
図1は、本実施形態にかかる光音響装置の模式図である。以下、装置の各構成要素について説明する。図1に示す装置は、光照射部110、保持カップ120、探触子130、信号データ収集部140、コンピュータ150、表示部160、入力部170を有する。測定対象は、被検体100である。
光照射部110がパルス光113を被検体100に照射し、被検体100内で音響波が発生する。光に起因して光音響効果により発生する音響波を光音響波とも呼ぶ。探触子130は、光音響波を受信することによりアナログ信号としての電気信号を出力する。信号データ収集部140は、探触子130から出力されたアナログ信号としての電気信号をデジタル信号に変換し、コンピュータ150に出力する。コンピュータ150は、信号データ収集部140から出力されたデジタル信号を、光音響波に由来する信号データとして記憶する。
コンピュータ150は、記憶されたデジタル信号に対して信号処理を行うことにより、被検体100に関する情報(被検体情報)を表す画像データを生成する。また、コンピュータ150は、得られた画像データに対して画像処理を施した後に、画像データを表示部160に出力する。表示部160は、被検体100に関する情報の画像を表示する。ユーザーとしての医師は、表示部160に表示された被検体に関する情報の画像を確認することにより、診断を行うことができる。
本実施形態に係る光音響装置により得られる被検体情報は、光音響波の発生音圧(初期音圧)、光エネルギー吸収密度、光吸収係数、及び被検体を構成する物質の濃度に関する情報などの少なくとも1つである。物質の濃度に関する情報とは、オキシヘモグロビン濃度、デオキシヘモグロビン濃度、総ヘモグロビン濃度、または酸素飽和度等である。総ヘモグロビン濃度とは、オキシヘモグロビン濃度およびデオキシヘモグロビン濃度の和のことである。酸素飽和度とは、全ヘモグロビンに対するオキシヘモグロビンの割合のことである。本実施形態に係る光音響装置は、被検体内の各位置(2次元または3次元の空間の各位置)における上記情報の値を表す画像データを取得する。すなわち、本実施形態に係る光音響装置は、被検体情報を取得する被検体情報取得装置ともいえる。
以下、本実施形態に係る光音響装置の各構成の詳細を説明する。
(光照射部110)
光照射部110は、パルス光113を発する光源111と、光源111から射出されたパルス光113を被検体100へ導く光学系112とを含む。
光源111が発する光のパルス幅としては、1ns以上、100ns以下のパルス幅であってもよい。また、光の波長としては400nmから1600nm程度の範囲の波長であってもよい。生体表面近傍の血管を高解像度でイメージングする場合は、血管での吸収が大きい波長(400nm以上、700nm以下)としてもよい。一方、生体の深部をイメージングする場合には、生体の背景組織(水や脂肪など)において典型的に吸収が少ない波長(700nm以上、1100nm以下)の光を用いてもよい。
光源111としては、レーザーや発光ダイオードを用いることができる。また、複数波長の光を用いて測定する際には、波長の変換が可能な光源であってもよい。なお、複数波長を被検体に照射する場合、互いに異なる波長の光を発生する複数台の光源を用意し、それぞれの光源から交互に照射することも可能である。複数台の光源を用いた場合もそれらをまとめて光源として表現する。レーザーとしては、固体レーザー、ガスレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなど様々なレーザーを使用することができる。例えば、Nd:YAGレーザーやアレキサンドライトレーザーなどのパルスレーザーを光源111として用いてもよい。また、Nd:YAGレーザー光を励起光とするTi:saレーザーやOPO(Optical Parametric Oscillators)レーザーを光源111として用いてもよい。また、光源111としてマイクロウェーブ源を用いてもよい。
光学系112には、レンズ、ミラー、光ファイバ等の光学素子を用いることができる。乳房等を被検体100とする場合、パルス光のビーム径を広げて照射することが好ましいため、光学系112の光出射部は光を拡散させる拡散板等で構成されていてもよい。一方、光音響顕微鏡においては、解像度を上げるために、光学系112の光出射部はレンズ等で構成し、ビームをフォーカスして照射してもよい。また、光伝送手段としての光学系112に複数の光ファイバを束ねたファイバーバンドルを採用してもよい。また、光伝送手段としての光学系112に、ミラーを内包した関節によって複数の中空の導波管を接続した光学系(多関節アームとも呼ぶ)を採用してもよい。
なお、光照射部110が光学系112を備えずに、光源111から直接被検体100にパルス光113を照射してもよい。
(保持カップ120)
第1の媒質である保持手段としての保持カップ120は被検体100の形状を測定中に保持するために使用される。保持カップ120により被検体100を保持することによって、被検体100の動きの抑制および被検体100の位置を保持カップ120内に留めることができる。保持カップ120の材料には、ポリカーボネートやポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等、樹脂材料を用いることができる。
保持カップ120は、被検体100を保持できる硬度を有する材料であることが好ましい。保持カップ120は、測定に用いる光を透過する材料であってもよい。保持カップ120は、インピーダンスが被検体100と同程度の材料で構成されていてもよい。乳房等の曲面を有するものを被検体100とする場合、凹型に成型した保持カップ120であってもよい。この場合、保持カップ120の凹部分に被検体100を挿入することができる。
保持カップ120は、取り付け部121に取り付けられている。取り付け部121は、被検体の大きさに合わせて複数種類の保持カップ120を交換可能に構成されていてもよい。例えば、取り付け部121は、曲率半径や曲率中心などの異なる保持カップに交換できるように構成されていてもよい。
また、保持カップ120には保持カップ120の緒元が登録されたタグ122が設置されていてもよい。例えば、タグ122には、保持カップ120の曲率半径、曲率中心、縦波音速、横波音速、識別ID等の緒元を登録することができる。タグ122に登録された緒元は、読み取り部123により読み出され、コンピュータ150に転送される。保持カップ120が取り付け部121に取り付けられたときに容易にタグ122を読み取るために、読み取り部123は取り付け部121に設置されていてもよい。例えば、タグ122はバーコードであり、読み取り部123はバーコードリーダである。
(探触子130)
受信手段としての探触子130は、音響波を受信することにより電気信号を出力するトランスデューサ131と、トランスデューサ131を支持する支持体132とを含む。
トランスデューサ131を構成する部材としては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミック材料や、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電膜材料などを用いることができる。また、圧電素子以外の素子を用いてもよい。例えば、静電容量型トランスデューサ(CMUT:Capacitive Micro−machined Ultrasonic Transducers)、ファブリペロー干渉計を用いたトランスデューサなどを用いることができる。なお、音響波を受信することにより電気信号を出力できる限り、いかなるトランスデューサを採用してもよい。また、トランスデューサにより得られる信号は時間分解信号である。つまり、受信素子により得られる信号の振幅は、各時刻にトランスデューサで受信される音圧に基づく値(例えば、音圧に比例した値)を表したものである。
光音響波を構成する周波数成分は、典型的には100KHzから100MHzであるので、トランスデューサ131として、これらの周波数を検出することのできるものを採用してもよい。
支持体132は、機械的強度が高い金属材料やプラスチック材料などから構成されていてもよい。本実施例において支持体132は半球殻形状であり、半球殻上に複数のトランスデューサ131を支持できるように構成されている。この場合、支持体132に配置されたトランスデューサ131の指向軸は半球の曲率中心付近に集まる。そして、複数のトランスデューサ131から出力された電気信号群を用いて画像化したときに曲率中心付近の画質が高くなる。なお、支持体132はトランスデューサ131を支持できる限り、いかなる構成であってもよい。支持体132は、1Dアレイ、1.5Dアレイ、1.75Dアレイ、2Dアレイと呼ばれるような平面又は曲面内に、複数のトランスデューサを並べて配置してもよい。
また、支持体132は音響マッチング材190を貯留する容器としても機能してもよい。すなわち、支持体132をトランスデューサ131と被検体100との間に音響マッチング材190を配置するための容器としてもよい。
また、探触子130が、トランスデューサ131から出力される時系列のアナログ信号を増幅する増幅器を備えてもよい。また、探触子130が、トランスデューサ131から出力される時系列のアナログ信号を時系列のデジタル信号に変換するA/D変換器を備えてもよい。すなわち、探触子130が後述する信号データ収集部140を備えてもよい。
なお、音響波を様々な角度で検出できるようにするために、理想的には被検体100を全周囲から囲むようにトランスデューサ131を配置することが好ましい。ただし、被検体100が大きく全周囲を囲むようにトランスデューサを配置できない場合は、図1に示したように半球状の支持体上にトランスデューサを配置して全周囲を囲む状態に近づけてもよい。なお、トランスデューサの配置や数及び支持体の形状は被検体に応じて最適化すればよく、本発明に関してはどのような探触子130を採用してもよい。
(信号データ収集部140)
信号データ収集部140は、トランスデューサ131から出力されたアナログ信号である電気信号を増幅するアンプと、アンプから出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを含む。信号データ収集部140は、FPGA(Field Programmable Gate Array)チップなどで構成されてもよい。信号データ収集部140から出力されるデジタル信号は、コンピュータ150内の記憶手段に記憶される。信号データ収集部140は、Data Acquisition System(DAS)とも呼ばれる。本明細書において電気信号は、アナログ信号もデジタル信号も含む概念である。なお、信号データ収集部140は、光照射部110の光射出部に取り付けられた光検出センサと接続されており、パルス光113が光照射部110から射出されたことをトリガーに、同期して処理を開始してもよい。
(コンピュータ150)
コンピュータ150は、処理手段、記憶手段、制御手段を含む。各構成の機能については処理フローの説明の際に説明する。
記憶手段は、ROM(Read only memory)、磁気ディスクやフラッシュメモリなどの非一時記憶媒体で構成することができる。また、記憶手段は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性の媒体であってもよい。なお、プログラムが格納される記憶媒体は、非一時記憶媒体である。
処理手段としての演算機能を担うユニットは、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、FPGA(Field Programmable Gate Array)チップ等の演算回路で構成されることができる。これらのユニットは、単一のプロセッサや演算回路から構成されるだけでなく、複数のプロセッサや演算回路から構成されていてもよい。
制御手段は、CPUなどの演算素子で構成される。制御手段は、光音響装置の各構成の動作を制御する。制御手段は、入力部170からの測定開始などの各種操作による指示信号を受けて、光音響装置の各構成を制御してもよい。また、制御手段は、記憶手段に格納されたプログラムコードを読み出し、光音響装置の各構成の作動を制御する。
コンピュータ150は専用に設計されたワークステーションであってもよい。また、コンピュータ150の各構成は異なるハードウェアによって構成されてもよい。また、コンピュータ150の少なくとも一部の構成は単一のハードウェアで構成されてもよい。
図2は、本実施例に係るコンピュータ150の具体的な構成を示す。本実施例に係るコンピュータ150は、CPU151、GPU152、RAM153、ROM154、外部記憶装置155から構成される。また、コンピュータ150には、表示部160としての液晶ディスプレイ161、入力部170としてのマウス171、キーボード172が接続されている。
また、コンピュータ150および複数のトランスデューサ131は、共通の筺体に収められた構成で提供されてもよい。ただし、筺体に収められたコンピュータで一部の信号処理を行い、残りの信号処理を筺体の外部に設けられたコンピュータで行ってもよい。この場合、筺体の内部および外部に設けられたコンピュータを総称して、本実施形態に係るコンピュータとすることができる。
トランスデューサから出力された信号を処理するシステムをまとめて処理システムと称する。処理システムは複数の処理装置から構成されていてもよい。
(表示部160)
表示部160は、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)などのディスプレイである。コンピュータ150により得られた被検体情報等に基づく画像や特定位置の数値等を表示する装置である。表示部160は、画像や装置を操作するためのGUIを表示してもよい。なお、被検体情報の表示にあたっては、表示部160またはコンピュータ150において画像処理(輝度値の調整等)を行った上で表示することもできる。
(入力部170)
入力部170は、ユーザーが操作可能な、マウスやキーボードなどで構成されることができる。また、表示部160をタッチパネルで構成し、表示部160を入力部170としてもよい。
なお、光音響装置の各構成はそれぞれ別の装置として構成されてもよいし、一体となった1つの装置として構成されてもよい。また、光音響装置の少なくとも一部の構成が一体となった1つの装置として構成されてもよい。
(音響マッチング材190)
第2の媒質である音響マッチング材190は光音響装置の構成ではないが説明する。音響マッチング材190は、被検体100とトランスデューサ131との間を音響波伝搬させるためのものである。音響マッチング材190は、変形可能な部材から構成され、被検体100と接触したときに変形してもよい。すなわち、音響マッチング材190は、被検体100とトランスデューサ131との間の隙間をできるだけ低減するために、被検体に合わせて変形することができる材料から構成されていてもよい。音響マッチング材190は音響波減衰が少ないものであってもよい。音響マッチング材190には、被検体100の音響インピーダンスとトランスデューサ131の音響インピーダンスとの間の音響インピーダンスを有する部材を採用してもよい。特に、被検体の音響インピーダンスに近い材料を選択してもよい。照射光が音響マッチング材190を透過する場合、照射光に対して透明であってもよい。音響マッチング材190には、水、超音波ジェルなどを用いてもよい。
本実施形態においては、支持体132が音響マッチング材190を貯留する容器として機能する。なお、光音響装置は、支持体132とは別に、トランスデューサ131と被検体100との間に音響マッチング材190を貯留することができる容器を備えていてもよい。容器としては、プラスチック容器や金属容器などを採用してもよい。
(被検体100)
被検体100は光音響装置を構成するものではないが、以下に説明する。本実施例に係る光音響装置は、人や動物の悪性腫瘍や血管疾患などの診断や化学治療の経過観察などを目的としてもよい。よって、被検体100としては生体、具体的には人体や動物の乳房や頸部、腹部などの診断の対象部位が想定される。例えば、人体が測定対象であれば、オキシヘモグロビンあるいはデオキシヘモグロビンやそれらを含む多く含む血管あるいは腫瘍の近傍に形成される新生血管などを光吸収体の対象としてもよい。また、頸動脈壁のプラークなどを光吸収体の対象としてもよい。また、メチレンブルー(MB)、インドシニアングリーン(ICG)などの色素、金微粒子、またはそれらを集積あるいは化学的に修飾した外部から導入した物質を光吸収体としてもよい。
図1に示す光音響装置を用いて本実施例を説明する。光源111は、波長800nm、パルス幅20nsec、繰り返し周波数10Hz、パルスエネルギー150mJのパルス光を発生するチタンサファイアレーザである。光学系112は、光伝送手段としてのファイバーバンドルと、光照射手段として光ビームを拡大するための凹レンズを内包している。ファイバーバンドルの終端部は凸レンズに接続されている。
支持体132は、光照射手段としての凸レンズとトランスデューサ131とを支持している。支持体132において、トランスデューサ131を支持している部分の内面が半径127mmの半球状となっており、半球面に沿って512個のトランスデューサ131が配置されている。支持体132の内側には、音響マッチング材190としての水が貯留されている。
保持カップ120は、0.5mmのポリエチレンテレフタレート樹脂で構成されている。被検体100としては例えば人の乳房などが用いられる。保持カップ120において、被検体100と接する部分は半径230mmの球面となっている。被検体100と保持カップ120との間は音響マッチングのため音響マッチング材としての超音波ジェル(図中不指示)で埋められている。
本実施例では、素子サイズ3mm角、中心検出周波数2MHzの圧電素子からなるトランスデューサ131を512個、半球面上に並べている。
以下、図3に示すフロー図に沿って、本実施例に係る被検体情報の取得方法を説明する。
(S110:光を照射する工程)
光源111で発生させた光は、光学系112を介してパルス光113として被検体100に照射される。そして、被検体100内部でパルス光113が吸収され、光音響効果により光音響波が生じる。
(S120:光音響波を受信する工程)
本工程では、探触子130が光音響波を受信して、トランスデューサ131から電気信号を出力する。出力された受信信号は、コンピュータ150に渡される。本実施例において信号データ収集部140は、トランスデューサ131から出力されたアナログ信号をサンプリングレート20MHzでAD変換し、信号データを取得する。また、信号データ収集部140は、冗長な情報を除くため、被検体100にパルス光を照射した瞬間の信号をサンプル0番として、サンプル0〜999番の信号を除いて保存する。すなわち、信号データ収集部140は、サンプル1000番から3047番まで2048サンプルの信号データを取得する。
なお、光音響装置は、光音響波を受信したときの探触子130の位置を測定する位置測定部を備えていてもよい。例えば、位置測定部としては、探触子130に搭載された磁気センサや、探触子130を機械的に走査するステージのエンコーダなどを用いることができる。例えば、光照射部110から光が射出されたことをトリガーとして、位置測定部がそのときの探触子130の位置情報をコンピュータ150に出力してもよい。コンピュータ150は、このようにして得られた探触子130の位置情報を後述するS140−170での処理に用いてもよい。
(S130:音速情報を取得する工程)
音速取得手段としてのコンピュータ150は、被検体100内での縦波音速c1、保持カップ120内(第1の媒質内)での縦波音速c2l、保持カップ120内での横波音速c2t、音響マッチング材190内(第2の媒質内)での縦波音速c3を取得する。
保持カップ120内での縦波音速及び横波音速については予め測定したデータを記憶手段に保存しておき、本工程においてコンピュータ150が記憶手段から読み出すことにより取得してもよい。また、保持カップ120の温度に対する保持カップ120内での縦波音速及び横波音速の関係式または関係テーブルが記憶手段に予め保存されていてもよい。そして、本工程において温度測定部が保持カップ120の温度を測定し、コンピュータ150が測定された温度に対応する音速を関係式または関係テーブルに従って取得してもよい。
また、ユーザーが入力部170により保持カップ120内での音速を入力し、コンピュータ150がその情報を受け取ることにより取得してもよい。
また、コンピュータ150は、取り付け部121に取り付けられた保持カップ120に対応する保持カップ120内での音速を取得してもよい。例えば、読み取り部123が保持カップ120に付されたタグ122に登録された保持カップ120内での音速の情報を読み取り、コンピュータ150に転送してもよい。コンピュータ150は、読み取り部123により読み出された保持カップ120内での音速の情報を取得してもよい。また、ユーザーが入力部170により保持カップ120に付された識別IDを入力し、コンピュータ150が入力された識別IDに対応する保持カップ120内の音速を記憶手段から読み出すことにより取得してもよい。
被検体100内での縦波音速についても保持カップ120内での縦波音速及び横波音速と同様の方法で取得してもよい。ただし、被検体100内での縦波音速は被検体100毎に異なるため、被検体100毎に新たなデータを取得することが好ましい。コンピュータ150は、被検体100から発生した音響波に由来する信号を用いて被検体100内での音速を取得してもよい。例えば、コンピュータ150は、仮の音速を設定し、仮の音速を用いて信号から再構成画像を生成し、再構成画像の画質(コントラストや解像度など)を評価する。コンピュータ150はこの処理を異なる仮の音速に繰り返し適用し、再構成画像の画質が所定の閾値より高くなったときの仮の音速を被検体100の音速として設定する。この方法以外にも、コンピュータ150は、仮の音速を用いて特定の位置で発生した音響波に由来する、複数のトランスデューサから出力された信号のばらつきを評価することにより被検体100の音速を取得してもよい。この場合、コンピュータ150は、信号のばらつきが所定の閾値よりも小さくなるときの仮の音速を被検体100の音速として取得する。なお、被検体100から発生した音響波に由来する信号を用いて被検体100の音速を取得できる上記以外の方法を採用してもよい。また、被検体100以外の構成の音速については記憶手段に保存された既知の値を用いてもよい。また、保持カップ120が十分に薄い場合(音響波の波長よりも小さい場合)、保持カップ120を無視し、音響マッチング材190の音速を既知として被検体100の音速を取得してもよい。この方法によれば、装置規模を大きくすることなく、被検体100毎の固有の音速を取得することができる。コンピュータ150は、その他公知の手法により被検体100内での音速を取得してもよい。
音響マッチング材190内での縦波音速についても保持カップ120内での縦波音速及び横波音速と同様の方法で取得してもよい。コンピュータ150は、被検体100から発生した音響波に由来する信号を用いて音響マッチング材190内での音速を取得してもよい。また、温度測定部が音響マッチング材190の温度を測定し、コンピュータ150が測定された温度に対応する音速を関係式または関係テーブルに従って取得してもよい。コンピュータ150は、その他公知の手法により音響マッチング材190内での音速を取得してもよい。
上記ではコンピュータ150が音速そのものを取得する例を説明したが、本工程では音速を推定することのできるパラメータであればいかなるパラメータを取得してもよい。例えば、密度ρと体積弾性率Kとから音速は求められるため、本工程において密度ρと体積弾性率Kとを取得し、それらのパラメータから音速を推定してもよい。本明細書では、縦波または横波の伝搬速度(音速)の他に、これらの音速を推定することのできるパラメータも音速情報に含む。
(S140:入射角度情報を取得する工程)
角度取得手段としてのコンピュータ150は、図4(a)に示すように保持カップ120、トランスデューサ131を配置したときに、トランスデューサ131に到達する音響波が保持カップ120に入射したときの入射角度情報を取得する。本実施例では、コンピュータ150が、後に画像化されるボクセル101で発生した音響波が保持カップ120に入射するときの入射角度情報を取得する例を説明する。
本工程において、コンピュータ150は、保持カップ120が存在しないものとして音響波の音線を算出する。そして、コンピュータ150は、算出された音線が保持カップ120に入射する角度を入射角度情報として取得する。
図4(b)に示すようにボクセル101で発生した音響波の音線を直線近似した場合の例を説明する。被検体100と音響マッチング材190との音速差が小さい場合や、ボクセル101のサイズが比較的大きい場合は、図4(b)に示すように音線を直線で近似してもよい。コンピュータ150は、屈折を考慮した場合と直線近似した場合の到達時間の差に相当する距離(到達時間の差×音速)が、ボクセルサイズよりも十分小さいときに直線近似を採用してもよい。例えば、その値がボクセルサイズの1/10よりも小さいときに、到達時間の差に相当する距離が十分小さいといえる。
例えば、被検体100の音速が1460m/s、音響マッチング材190の音速が1480m/s、ボクセルサイズが0.25mmであるとする。この場合、入射角50度において、屈折を考慮した場合と直線近似した場合の到達時間の差は2.8ns、距離に換算して4.2μm程度である。この値はボクセルサイズの1/10(25μm)よりも小さいので、この例では直線近似してもよい。なお、到達時間の差は、音速差の二乗に比例し、tan(入射角)の二乗に比例するので、これを考慮して、屈折を考慮するか直進近似とするかを選択すればよい。
コンピュータ150は、ボクセル101とトランスデューサ131とを直線で結び、この直線と保持カップ120とのなす角度θ1を入射角度情報として取得する。このとき、位置取得部としてのコンピュータ150は、トランスデューサ131の位置および保持カップ120の形状情報はコンピュータ150の記憶手段に予め保存されたものを読み出して取得してもよい。また、コンピュータ150は、保持カップ120の形状情報を取得する形状取得手段を用いて得られた形状情報を使用してもよい。
一方、被検体100と音響マッチング材190との音速差が大きい場合や、ボクセル101のサイズが比較的小さい場合は、図4(c)に示すように屈折を考慮した音線を算出する。コンピュータ150は、屈折を考慮した場合と直線近似した場合の到達時間の差に相当する距離(到達時間の差×音速)が、ボクセルサイズよりも十分大きいときに屈折を考慮した計算を採用してもよい。例えば、その値がボクセルサイズの1/10よりも大きいときに、到達時間の差に相当する距離が十分大きいといえる。
例えば、被検体100の音速が1400m/s、音響マッチング材190の音速が1480m/s、ボクセルサイズが0.25mmであるとする。この場合、入射角50度において、屈折を考慮した場合と直線近似した場合の到達時間の差は48ns、距離に換算して70μm程度である。この値はボクセルサイズの1/10(25μm)よりも大きいので、この例では屈折を考慮してもよい。
コンピュータ150は、式(1)で表すスネルの法則にしたがってボクセル101とトランスデューサ131とを結ぶ音線を算出し、音線と保持カップ120とのなす角度θ1を入射角度情報として取得する。

ここで、θ3は、音響マッチング材190中の音線と保持カップ120とのなす角度であり、以下、伝搬角と表す場合もある。
コンピュータ150は、本工程の処理を処理対象とする全ボクセルおよび全トランスデューサに対して実行する。
なお、位置取得部としてのコンピュータ150は、あるボクセルとあるトランスデューサとの位置関係を取得し、この位置関係により決定された入射角度情報を、近接するボクセルまたはトランスデューサに対応づけてもよい。また、コンピュータ150は、あるボクセルとあるトランスデューサとの位置関係により決定された入射角度情報に対して補間処理を行うことにより、その他のボクセルとトランスデューサとの組み合わせに対応する入射角度情報を取得してもよい。これらの場合、コンピュータ150は、全てのボクセルとトランスデューサとの組み合わせについて音線を算出しなくてもよい。
(S150:入射角度情報に基づいた透過率フィルタを取得する工程)
透過率フィルタ取得手段としてのコンピュータ150は、S140で取得した入射角度情報に基づいて、受信信号に対する透過率フィルタを取得する。本実施例において、透過率フィルタは、音響波が保持カップ120の被検体側からトランスデューサ側に透過する際の透過率を表す。透過率は、音響波の周波数に依存するため、周波数ごとに取得される。また、透過率は位相情報を持つため、複素数で表現される。以下、複数の周波数に対応する複素透過率をまとめて透過率フィルタと呼ぶ。なお、本発明で取り扱う音響波に含まれる周波数成分に応じて、透過率フィルタの周波数帯域を決定してもよい。
音響波が保持カップ120を透過する際、保持カップ120の第1面(被検体側の面)と第2面(探触子側の面)による多重反射に起因する透過波の歪みが発生する。本実施例のように保持カップ120が曲面の場合、この多重反射の影響が小さいことを本発明者は実験的に見出した。この場合、多重反射を考慮せずに透過率フィルタの計算を行ってもよい。
コンピュータ150は、保持カップの曲率半径に基づいて多重反射を考慮した透過率フィルタを適用するのか、多重反射を考慮しない透過率フィルタを適用するのかを選択してもよい。例えば、保持カップ120の曲率半径が300mmより小さい場合は、多重反射を考慮しない透過率フィルタを適用してもよい。一方、コンピュータ150は、保持カップ120の曲率半径が300mmより大きい場合は、多重反射を考慮した透過率フィルタを適用してもよい。また、コンピュータ150は、保持カップ120の曲率半径が100mmより小さい場合に、多重反射を考慮しない透過率フィルタを適用するようにしてもよい。また、コンピュータ150は、保持カップ120の曲率半径が100mmより大きい場合に、多重反射を考慮した透過率フィルタを適用するようにしてもよい。
また、コンピュータ150は、入射角度情報に基づいて多重反射を考慮した透過率フィルタを適用するのか、多重反射を考慮しない透過率フィルタを適用するのかを選択してもよい。例えば、入射角度が臨界角付近(例えば、臨界角の±5度)である場合、多重反射を考慮した透過率フィルタを適用し、それ以外の場合、多重反射を考慮しない透過率フィルタを適用してもよい。
また、コンピュータ150は、保持カップ120の厚さに基づいて多重反射を考慮した透過率フィルタを適用するのか、多重反射を考慮しない透過率フィルタを適用するのかを選択してもよい。
すなわち、コンピュータ150は、多重反射を考慮した透過率フィルタと、多重反射を考慮しない透過率フィルタという互いに異なる透過率フィルタを選択できるように構成されていてもよい。
本実施例では多重反射を考慮しない場合の透過率フィルタの計算について説明する。多重反射を考慮した場合の透過率フィルタの計算については実施例2で述べる。
被検体100の音速(縦波)をc、保持カップ120の縦波、横波に対する音速をそれぞれc2L、c2T、音響マッチング材190の音速(縦波)をc、入射角をθ、保持カップ120の厚さをTとする。また、被検体100の音響インピーダンスをZ、保持カップ120の縦波、横波に対する音響インピーダンスをそれぞれZ2L、Z2T、音響マッチング材190の音響インピーダンスをZとする。入射角θはS140計算されたものである。
保持カップ120中の縦波、横波に対する伝搬角θ2L、θ2T、および音響マッチング材190中の伝搬角θは、スネルの法則により以下の関係がある。

例えば、c2Lがcより大きい場合、sinθ2L>1となる場合がある。このとき、cosθ2Lは虚数となる。ここで、保持カップ120の面に垂直な方向への伝搬に伴って減衰するように符号を決める。すなわち、

とする。cosq2Tについても同様に、虚数となる場合は、

とする。
入射角θで保持カップ120の第1面に被検体100側から入射した音響波(縦波)が縦波として保持カップ120側に透過する波の複素振幅透過率をt12Lとする。また、このときに横波として透過する波の複素振幅透過率をt12Tとする。この場合、t12L、t12Tは以下のように求められる。

保持カップ120中を第1面から第2面まで音響波が伝搬する際、伝搬に伴って音響波の位相がシフトする。位相シフトは音響波の周波数に依存する。また、cosθ2Lあるいはcosθ2Tが虚数となる場合は減衰となる。音響波の角周波数をω、横波、縦波に対する位相シフト量(あるいは減衰量)をそれぞれφ2L、φ2Tとすると、φ2L、φ2Tは以下のように求められる。

保持カップ120の第2面に入射した縦波の音響波または横波の音響波が縦波として音響マッチング材190側に透過する波の複素振幅透過率をそれぞれt23L、t23Tとすると、t23L、t23Tは以下のように求められる。

角周波数ωに対する保持カップ120の透過率フィルタf(ω)は次のように表すことができる。

ここで、後段のexp項は、保持カップ120の領域に音響マッチング材190が存在した場合に発生する位相シフト量を補正するために設けている。このexp項があることにより、S160で説明する受信信号補正を行ったときに、保持カップ120の領域を音響マッチング材190で置き換えた場合と等価な受信信号を得ることができる。
以上、コンピュータ150は、S140で取得した入射角度情報を用いて、透過率フィルタを取得できる。本実施例のおけるコンピュータ150は、さらに保持カップ120の厚さ、保持カップ120の縦波音速及び横波音速、被検体の縦波音速、音響マッチング材の縦波音速を用いて透過率フィルタを取得できる。
後述するS160でのデコンボリューションでは、受信信号を離散フーリエ変換して得た周波数空間での受信信号に対して処理を行う。本実施例の場合、受信信号を離散フーリエ変換すると、−9990234.375Hzから9765.625Hzごとに10000000Hzまで2048点の周波数情報が得られる。したがって、本工程では、後述するS160での処理に必要な2048点の角周波数に対応して、式11で示された透過率フィルタは計算される。
以上、コンピュータ150が、すべての音響波の伝搬経路における透過率フィルタを毎回計算する例を示したが、透過率フィルタの取得方法はこれに限ったものではない。例えば、コンピュータ150内の記憶手段に入射角度と透過率フィルタとの関係を表す関係式または関係テーブルを記憶しておいてもよい。そして、コンピュータ150が、S140で取得された入射角度情報をもとに記憶手段に保存された関係式または関係テーブルを参照して、その入射角度に対する透過率フィルタを求めてもよい。なお、関係テーブルに含まれない入射角度に対する透過率フィルタは、前後のデータから補間することで生成してもよい。このような構成をとれば、透過率フィルタを取得するための計算時間を短縮できる。
なお、すべてのトランスデューサ131に対して本工程を実施する。本工程の処理を、各トランスデューサに対して時系列に適用してもよいし、並列処理で複数のトランスデューサ131に対して同時に行ってもよい。
(S160:信号データに透過率フィルタをデコンボリューションする工程)
補正手段としてのコンピュータ150は、S150により得られた透過率フィルタを応答関数として、S120で得られた信号データをデコンボリューションすることで補正された信号データを取得する。この処理は、透過率フィルタから求めたデコンボリューションフィルタを信号データに重畳することで補正された信号データを得る処理、と言い換えることができる。デコンボリューションフィルタによる重畳処理は、保持カップ120を透過する際の音響波の変化を補正する、という効果がある。すなわち、このデコンボリューション処理により、トランスデューサが保持カップなしで音響波を受信した場合と等価な信号データを得ることができる。受信信号補正手段は、保持カップを透過することによって発生する信号データの歪みをなくすことができる。
さらに、コンピュータ150は、トランスデューサの受信特性(インパルス応答)をあらかじめ取得しておき、それを応答関数としてデコンボリューションする機能を設けてもよい。この処理により、インパルス応答による信号データの劣化を補正することができる。なお、インパルス応答を応答関数としたデコンボリューションと透過率フィルタを応答関数としたデコンボリューションとはどちらが先でもよく、また、同時であってもよい。
コンピュータ150の行うこの計算を以下で説明する。
あるトランスデューサ131における受信信号をS(t)、そのフーリエ変換信号をF[S](ω)、透過率フィルタをf(ω)とする。また、逆フーリエ変換をF−−1[]で表す。
ノイズがなく設計からのずれがない理想的な状態では、補正された受信信号S(t)は以下のように表すことができる。

ここで、realは実部のみを抽出する関数である。
実際には、ノイズがあったり、計算上f(ω)が0となる入射角においてはゼロ割が発生するなど、式12は現実的でない。したがって、一般的に知られるウィナーフィルターをデコンボリューションフィルタとして用いる。
デコンボリューションフィルタをD(ω)として、D(ω)を以下のように求める。

ここで、conjは複素共役、Cは定数である。Cについては信号を著しく劣化させないように経験的に設定するものである。一般的には|f(ω)|の最大値の数%に設定するとよい。
デコンボリューションフィルタD(ω)を用いて、以下のような計算で補正された受信信号S(t)を求める。

このようにして得られた補正された受信信号S(t)は保持カップ120の領域を音響マッチング材190で置き換えた場合とほぼ等価な受信信号となっている。
実測された受信信号を用いて信号の補正を行った場合の例を図5に示す。ここでは、音源(光吸収体)として0.3mmのゴム球をトランスデューサ131が配置された球面の中心近傍に置いている。音源の周りは水を満たしている。音速は、c=1486m/s、c=1486m/s、c2L=2340m/s、c2T=912m/sを用いた。また、音響インピーダンスは、Z=1485600kg/ms、Z=1485600kg/ms、Z2L=2971800kg/ms、Z2T=1158240kg/msを用いた。
図5(a)は、保持カップ120への入射角が47度となる位置のトランスデューサで受信された受信信号、図5(b)は式14を用いて補正された受信信号である。また、図5(c)は比較例であり、保持カップ120をはずした状態で、同じ音源からの信号を図5(a)と同じトランスデューサで受信された受信信号である。図5中、横軸はサンプリングナンバー、縦軸は信号強度を示している。図5(c)の波形に比べ、図5(a)では波形が歪んでいるが、図5(b)の補正された受信信号では図5(c)の波形に近くなっており、波形の補正が行われていることがわかる。
また、図5(a)から図5(b)の変換により信号の振幅も増加していることがわかる。これは、式14の処理が保持カップ120の透過の際の損失(反射による損失)を補う効果があることを意味する。
保持カップ120の透過の際の損失を補うことは、通常は画像の質を向上する方向に働く。ただ、信号強度が小さくSN比が小さいといった場合にはノイズを持ち上げてしまい、画像の質を低下させる場合もある。その場合は、位相シフトによる形状の補正は行うが振幅の補正は行わないようにデコンボリューションフィルタを変えてもよい。具体的には、

が一定値となるようにD(ω)を規格化すればよい。
その他、透過率フィルタf(ω)の複素共役をデコンボリューションフィルタD(ω)とする、という方法もある。これも、振幅の補正は行わずに位相シフトによる形状の補正は行う、という効果がある。
コンピュータ150は、信号データのSN比を評価し、信号データのSN比が閾値より小さい場合に振幅の補正は行わずに、位相シフトによる形状補正(位相補正)を行うデコンボリューションを行ってもよい。また、コンピュータ150は、信号データのSN比が閾値より大きい場合に位相補正も振幅補正も含めた、式14に記載されたようなデコンボリューションを行ってもよい。
保持カップ120の前後の音速を一定とみなしてよい場合、補正された受信信号S(t)は、図6(a)のように、指定されたボクセル101から発生した音響波が境界のない空間を伝搬してトランスデューサ131で受信された信号とみなすことができる。また、保持カップ120の前後の音速差を考慮する場合、補正された受信信号S(t)は、図6(b)に示すように伝搬した音響波の受信信号とみなすことができる。すなわち、補正された受信信号S(t)は、指定されたボクセル101から発生した音響波が、保持カップ120の第1面(被検体側の面)で1回の屈折を伴って伝搬してトランスデューサ131で受信された信号とみなすことができる。図6(b)において保持カップ120を点線で示した。
なお、保持カップ120の厚さが十分小さい場合、本実施例のように保持カップの一面を音速の境界として透過率フィルタを取得しても誤差が小さい。この場合、計算が簡易であるため、計算量が少ない。一方、保持カップ120の厚さが大きくなると、実際の伝搬経路との計算上の伝搬経路との差が大きくなる。そこで、コンピュータ150は、保持カップ120の厚さが閾値より大きい場合、図6(c)に示すように、保持カップ120の内部を音速の境界として透過率フィルタを取得してもよい。特に保持カップ120の中心を音速の境界とすることで誤差を小さくすることができる。図6(c)において、保持カップ120を点線で表し、音速の境界面を実線で表した。コンピュータ150は、保持カップの厚さに基づいてどの面を音速の境界とするのかを決定してもよい。例えば、コンピュータ150は、保持カップ120の厚さが1mmより大きい場合に、保持カップ120の内部を音速の境界として計算するようにしてもよい。一方、コンピュータ150は、保持カップ120の厚さが1mmより小さい場合に、保持カップ120の表面を音速の境界として計算するようにしてもよい。図6(c)のように保持カップ120の内部(例えば中央)を音速の境界として計算する場合、(11)の後段のexp項は、保持カップ120の領域の半分に被検体100が存在するものとして計算すべきである。また、保持カップ120の領域のもう半分に音響マッチング材190が存在するものとして計算すべきである。
なお、すべてのトランスデューサ131に対して本工程を実施する。本工程の処理を、各トランスデューサに対して時系列に適用してもよいし、並列処理で複数のトランスデューサ131に対して同時に行ってもよい。
(S170:補正された信号データを用いて被検体情報を取得する工程)
画像再構成手段としてのコンピュータ150は、S160で得られた補正された受信信号S(t)を再構成処理して指定されたボクセル101の被検体情報を得る。再構成アルゴリズムはユニバーサルバックプロジェクション(Universal Back−projection、以下UBP)アルゴリズムを用いる。S160で説明した受信信号の補正により、保持カップ120を透過することに伴う波形の歪みは補正されている。そのため、本工程では、図6(a)、図6(b)、または図6(c)で表された系で受信されたものとして再構成処理を行えばよい。なお、補正された信号データから被検体情報を得られる限り、いかなる再構成処理を適用してもよい。
図6(a)のように保持カップ120の前後の音速を一定とみなしてよい場合、指定されたボクセル101とトランスデューサ131の距離を、被検体100または音響マッチング材190の縦波音速で割った時間が到達時間となる。補正された受信信号S(t)中のその到達時間に相当する情報(振幅)が指定されたボクセル101の被検体情報のもととなる情報となる。
また、保持カップ120の前後の音速差を考慮する場合の到達時間は以下のようになる。すなわち、図6(b)において、指定されたボクセル101と屈折する境界までの距離を被検体100の音速で割った時間と、屈折する境界からトランスデューサ131−iまでの距離を音響マッチング材190の音速で割った時間との和が到達時間となる。補正された受信信号S(t)中のその到達時間に相当する情報(振幅)が指定されたボクセル101の被検体情報のもととなる情報となる。これは図6(c)においても同様である。
なお、コンピュータ150は、被検体情報を取得した全てのボクセルに対して、S140〜S170の処理を行うことにより、二次元あるいは三次元の被検体情報の空間分布を取得することができる。
コンピュータ150は上記処理により、被検体情報として二次元あるいは三次元の初期音圧分布を取得してもよい。また、コンピュータ150は、被検体100に照射された光の被検体100内の光フルエンス分布を取得し、初期音圧分布と光フルエンス分布とを用いて光吸収係数分布を取得してもよい。また、コンピュータ150は、光吸収係数分布を用いて酸素飽和度分布等の濃度分布を取得してもよい。例えば、複数の波長の光に対応する光吸収係数分布を用いて濃度分布を取得することができる。コンピュータ150は、本工程で得られた初期音圧分布、光吸収係数分布、または濃度分布等の被検体情報を表示部160に出力する。
(S180:被検体情報を取得する工程)
コンピュータ150は、S170で得られた被検体情報を用いて、画像化領域の被検体情報を表示部160に表示させる。表示部160は、被検体情報として、初期音圧分布、吸収係数分布、または濃度分布(酸素飽和度分布)等を表示することができる。表示部160に表示された被検体情報は、音響波が保持カップ120を透過することに伴う波形の歪みが抑制された情報であるため、医師等の作業者が診断等に用いる上で好適な情報となっている。
ここで、実測された受信信号を用いて光音響画像情報(三次元の被検体情報)を得た場合の例を図7に示す。ここでは、音源(光吸収体)として0.3mmのゴム球をトランスデューサ131が配置された球面の中心近傍に置いている。音源の周りは水を満たしている。
図7(a)、(b)は、補正された受信信号を用いた場合に得られた光音響画像情報である。ここで、図1において、光照射部110から被検体100の方向(紙面上方向)を+Z方向とし、それに垂直な面をXY面としている。図7(a)はXY断面、図7(b)はYZ断面を示している。図7(c)、(d)は、受信信号を補正しないでそのまま用いた場合に得られる光音響画像情報である。図7(c)はXY断面、図7(d)はYZ断面を示している。
図7からわかるように、補正された受信信号を用いた場合は、点像として再現できている。一方、受信信号をそのまま用いた場合は音響波が保持カップ120を透過することに伴う波形の歪みにより、点がz方向に2つに分離してしまっていることがわかる。
以上説明したように、本実施例の光音響装置によれば、音響波が保持カップを透過する際の波形の歪み(振幅、位相)を補正することで、被検体情報を高精度に得ることが可能となる。
なお、図には示していないが、支持体132が走査手段としてのステージに接続されており走査可能な構成となっていてもよい。この場合、より体積の大きい被検体情報を取得することができる。
図8は、実施例2に係る光音響装置を示す模式図である。なお、同一の構成要素には原則として同一の参照番号を付して、説明を省略する。実施例1では、乳房のような形状の被検体を測定対象として想定していたため保持カップ120を球面状としていた。本実施例では、手や足など比較的平たい形状の被検体を測定対象として想定し、保持面が平坦な保持カップ120を用いる。
探触子130は、トランスデューサを2次元アレイ状に配置した受信手段である。支持体132は、光学系112、探触子130を支持している。また、支持体132は、音響マッチング材190である水を貯留する貯留手段としても機能する。
保持手段としての保持板120は、0.5mmのポリエチレンテレフタレート樹脂からなる。保持板120において、被検体100と接する部分は平面となっている。被検体100と保持板120との間は音響マッチングのため超音波ジェル(図中不指示)で埋められている。保持板120と探触子130との間隔は30mmになるように設定されている。
本実施例では、探触子130として、素子サイズ2mm角、中心検出周波数1MHzの圧電素子からなるトランスデューサを2次元アレイ状に10×20個並べたものを用いている。
本実施例では、信号データ収集部140が、被検体100にパルス光を照射した瞬間の信号をサンプル0番として、サンプル0番から2047番までの2048サンプルの信号を取得する。
本実施例のように保持板120の保持面が平面の場合、多重反射を考慮した透過率フィルタを用いたほうがよいことを本発明者は実験的に見出した。すなわち、本実施例においては、音響波が保持板120を透過する際、保持板120の第1面(被検体側の面)と第2面(探触子130側の面)による多重反射に起因した透過波の歪みが発生する。
被検体100の音速(縦波)をc、保持板120の縦波、横波に対する音速をそれぞれc2L、c2T、音響マッチング材190の音速(縦波)をc、入射角をθ、保持板120の厚さをTとする。また、被検体100の音響インピーダンスをZ、保持板120の縦波、横波に対する音響インピーダンスをそれぞれZ2L、Z2T、音響マッチング材190の音響インピーダンスをZとする。入射角θはコンピュータ150によって計算されたものである。
保持板120中の縦波、横波に対する伝搬角をθ2L、θ2T、および音響マッチング材190中の伝搬角をθとする。これらの関係は式1―4で説明したとおりである。
入射角θで保持板120の第1面に被検体100側から入射した音響波(縦波)が保持板120を透過して音響マッチング材190側に縦波として伝搬する波の透過率フィルタf(ω)は以下のように求められる。これは、保持板120中をある方向に伝搬する縦波、横波と逆方向に伝搬する縦波、横波を仮定し、保持板120の第1面と第2面での波の連続性を考慮して方程式を解くことで導くことができる。
式16―19で表すように、F,G,N,Mを定義すると、多重反射を考慮した透過率フィルタf(ω)は式20で表すことができる。

ここで、式16−19のF、G、M、Nは、式20を簡略に表現するため便宜上導入した関数であり、角周波数ωの関数である。また、式20の後段のexp項は、保持板120の領域に音響マッチング材190が存在した場合に発生する位相シフト量を補正するために設けている。このexp項があることにより、S160で説明するデコンボリューション処理を行ったときに、保持板120の領域を音響マッチング材190で置き換えた場合と等価な受信信号を得ることができる。
本実施例においても、音響波が保持手段を透過する際の波形の歪み(位相、時間)を補正することで、高精細な光音響画像(被検体情報の空間分布)を得ることが可能となる。
実施例1での透過率フィルタ(式11に相当)は保持手段内(第1の媒質内)の多重反射がないものとして導いたフィルタである。一方、実施例2での透過率フィルタ(式20に相当)は保持手段内の多重反射が理想的に発生するものとして導いたフィルタである。保持手段の形状によっては不完全な多重反射を考慮したほうが良い場合もある。その場合は、例えば、式11と式20の平均値を透過率フィルタとして用いたり、重みを付けた平均値を周波数フィルタとして用いたりしてもよい。重みについては、光音響画像の画質(例えばコントラスト)が最良になるように調整すればよい。なお、ユーザーが入力部170を用いて多重反射を考慮したフィルタと多重反射を考慮しないフィルタの重みを変更してもよい。
図9は、本実施例に係る被検体情報取得装置としての超音波エコー装置の模式図である。本実施例において探触子130は、被検体100に超音波を送信し、被検体100の内部で反射した超音波(エコー)を受信する。すなわち、本実施例において探触子130は、超音波を送受信する送受信手段として機能する。
保持カップ120は、0.5mmのポリエチレンテレフタレート樹脂からなる。保持カップ120において、被検体100と接する部分は半径230mmの球面となっている。被検体100と保持カップ120との間は音響マッチングのため超音波ジェル(図中不指示)で埋められている。
本実施例では、探触子130は、焦点距離30mm、中心検出周波数6MHzの圧電素子のトランスデューサ131を備えている。
送信制御手段としてのコンピュータ150は、トランスデューサ131にパルス信号を送って所望のパルス形状の超音波を送信させる。送信制御手段は一般にはパルサーとも呼ばれる。信号データ収集部140は、トランスデューサ131で受信された電気信号をサンプリングレート50MHzでサンプリングする。信号データ収集部140は、被検体100にパルス光を照射した瞬間の信号をサンプル0番として、サンプル100番から2147番まで2048サンプルの信号を取得する。
図10(a)はトランスデューサ131から被検体100側に超音波を送信している状態を示している。被検体100中に存在する反射体である。これまで説明したように、送信された超音波には、保持カップ120を透過する際に形状の変化や時間ずれといった歪み(振幅および位相の変化)が発生する。そのように歪んだ超音波の一部は、被検体100内に存在する反射体102にぶつかり反射する。
図10(b)は反射体102で反射した歪みを伴った超音波がトランスデューサ131に到達して受信される状態を示している。図10(a)と同様、反射された超音波には、保持カップ120を透過する際に再度波形の歪みや時間ずれが発生する。そのようにしてさらに歪んだ超音波がトランスデューサ131によって受信される。このようにして得られた受信信号から超音波エコー像を得た場合、歪みを伴った画像となる。
本実施例は、そのような受信信号の歪みを補正することが可能な超音波エコー装置を提供するものである。本実施例において得られる被検体情報とは、Bモード画像データ、ドップラー画像データ(血流速度分布)、エラストグラフィ画像データ(歪み分布)などである。
以下、図11に示す本実施例に係る超音波エコー画像を得るためのフローチャートを用いて本実施例を説明する。
(S210:超音波を送信する工程)
送信制御手段としてのコンピュータ150が、トランスデューサ131にパルス信号を送って所望のパルス形状の超音波を送信させる。なお、送信手段としての探触子130は、送信された超音波が保持カップ120を透過して被検体100に照射されるように配置されている。
(S220:超音波の反射波(エコー)を受信する工程)
探触子130は、S210で送信された超音波が反射体102で反射されることにより発生した超音波エコーを受信することにより電気信号を出力する。信号データ収集部140は、探触子130から出力されたアナログ信号としての電気信号をデジタル信号に変換し、コンピュータ150に出力する。
(S230:音速情報を取得する工程)
音速取得手段としてのコンピュータ150は、S130と同様の方法で、被検体100内での縦波音速c1、保持カップ120内での縦波音速c2l、保持カップ120内での横波音速c2t、音響マッチング材190内での縦波音速c3を取得する。
(S240:入射角度情報を取得する工程)
角度取得手段としてのコンピュータ150は、図12(a)、(b)に示すように保持カップ120、トランスデューサ131を配置したときに、トランスデューサ131に到達する音響波が保持カップ120に入射したときの入射角度情報を取得する。本実施例では、コンピュータ150が、後に画像化されるボクセル101で発生した音響波が保持カップ120に入射するときの入射角度情報を取得する例を説明する。本実施例では、反射体102の存在する位置を、ボクセル101の位置(関心位置)として説明する。
本実施例では、トランスデューサ131はフォーカス型であるため実際には球面波が送信されるが、計算上は、その主軸の方向にトランスデューサ131の中央から超音波が送信されたものと仮定する。図12はこの状態を示したものである。図12(a)は超音波の送信時を表し、図12(b)は関心位置で発生した超音波エコーの受信時を表す。この仮定は、トランスデューサの焦点距離が極端に小さいものでなければ実質的に問題ない。
コンピュータ150は、図12(a)に示す送信時について、式1で表されるスネルの法則を満たすような保持カップ120の第1面(被検体側の面)への入射角度θ3を取得する。図12(a)では、図4(c)の場合とは音響波の伝搬方向が逆であるため、入射角度はθ3となり、伝搬角はθ1となる。
また、コンピュータ150は、図12(b)に示す受信時について、式1で示されたスネルの法則を満たすような保持カップの第1面への入射角度θ1を取得する。図12(b)では、図4(c)の場合と音響波の伝搬方向が同じであるため、入射角度も同様にθ1となる。
(S250:入射角度情報を用いて透過率フィルタを取得する工程)
透過率フィルタ取得手段としてのコンピュータ150は、S240で取得した送信時及び受信時の入射角度情報に基づいて透過率フィルタを取得する。
まずコンピュータ150は、送信時の入射角度θ3に基づいて、送信時に対応する透過率フィルタを取得する。被検体100の音速(縦波)をc、保持カップ120の縦波、横波に対する音速をそれぞれc2L、c2T、音響マッチング材190の音速(縦波)をc、保持カップ120の厚さをTとする。また、被検体100の音響インピーダンスをZ、保持カップ120の縦波、横波に対する音響インピーダンスをそれぞれZ2L、Z2T、音響マッチング材190の音響インピーダンスをZとする。ここで、添え字1、2、3は実施例1と同様、被検体を1、保持カップを2、音響マッチング材を3としている。
保持カップ120中の縦波、横波に対する伝搬角をθ2L、θ2Tとする。これらの関係は式1−4で説明したとおりである。
多重反射を考慮しない場合、角周波数ωに対する保持カップ120の送信方向の透過率フィルタf(ω)は次のように表すことができる。ここでφ2L、φ2Tは式7,8と同一である。
ここで、式25後段のexp項は、保持カップ120の領域に音響マッチング材190が存在した場合に発生する位相シフト量を補正するために設けている。
多重反射を考慮する場合、角周波数ωに対する保持カップ120の送信方向の透過率フィルタf(ω)は次のように表すことができる。ここで、N、Mは式18、19と同一である。

次に、コンピュータ150は、受信時の入射角度情報を用いて、受信時に対応する透過率フィルタを取得する。受信時における音響波の伝搬方向は実施例1あるいは実施例2と同じ方向である。したがって、多重反射を考慮しない場合、角周波数ωに対する保持カップ120の受信方向の透過率フィルタf(ω)は式11のf(ω)と同一である。また、多重反射を考慮する場合、角周波数ωに対する保持カップ120の受信方向の透過率フィルタf(ω)は式20のf(ω)と同一である。
後述するS260でのデコンボリューション処理では、受信信号を離散フーリエ変換して得た周波数空間での受信信号に対して処理を行う。本実施例の場合、受信信号を離散フーリエ変換すると、−9990234.375Hzから9765.625Hzごとに10000000Hzまで2048点の周波数情報が得られる。したがって、S260での処理に必要な2048点の角周波数に対応して透過率フィルタは計算されている。
なお、本実施例では、送信時と受信時とで音速の境界が同じであると仮定して透過率フィルタを取得したが、送信時と受信時とで音速の境界を変更して透過率フィルタを取得してもよい。これにより、透過率フィルタの精度を高くすることができる。ただし、送信時と受信時とで音速の境界を同じとする場合、計算コストを小さくすることができる。
(S260:信号データに透過率フィルタをデコンボリューションする工程)
補正手段としてのコンピュータ150は、S250で得られた送信時および受信時の透過率フィルタf(ω)、f(ω)を応答関数として、S220で得られた信号データをデコンボリューションする。これにより補正された信号データが得られる。この計算を以下で説明する。
まず、デコンボリューションフィルタD(ω)、 D(ω)を以下のように求める。

ここで、Cは定数であり、信号を著しく劣化させないように経験的に設定するものである。ユーザーが入力部170を用いて定数Cの値を入力してもよい。
受信信号をS(t)として、補正された受信信号S(t)は以下のように求めることができる。

このようにして得られた補正された受信信号S(t)は保持カップ120の領域を音響マッチング材190で置き換えた場合とほぼ等価な受信信号となっている。
(S270:補正された信号データを用いて被検体情報を取得する工程)
画像再構成手段としてのコンピュータ150は、S260で得られた補正された受信信号S(t)を再構成処理して指定されたボクセル101の被検体情報を得る。本工程では、コンピュータ150が補正された受信信号を包絡線処理して1次元の超音波エコー画像情報を得る。なお、補正された信号データから被検体情報を得られる限り、いかなる再構成処理を適用してもよい。
また、探触子130を機械的または電子的に走査し、S210−S270の工程を繰り返し実行することにより2次元あるいは3次元の超音波エコー画像情報を得る。
コンピュータ150は、本工程で得られたBモード画像データ、ドップラー画像データ、またはエラストグラフィ画像データ等の被検体情報を表示部160に出力する。
(S280:被検体情報を取得する工程)
コンピュータ150は、S270で得られた被検体情報を用いて、画像化領域の被検体情報を表示部160に表示させる。表示部160は、被検体情報として、Bモード画像データ、ドップラー画像データ、またはエラストグラフィ画像データ等を表示することができる。表示部160に表示された被検体情報は、音響波が保持カップ120を透過することに伴う波形の歪みが抑制された情報であるため、医師等の作業者が診断等に用いる上で好適な情報となっている。
本実施例では、超音波が保持カップを透過する際の波形の歪み(振幅、位相)を補正することで、高精細な超音波エコー画像を得ることが可能となる。
図13に示す光音響装置を用いて本実施例を説明する。図13において既出の構成と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。被検体情報取得装置において、被検体情報を高精度に得るためにはトランスデューサ131の取り付け位置を正確に把握しておくことが重要である。本実施例では、上述のS160で取得した補正された電気信号を用いて、トランスデューサ131の取り付け位置の情報を取得する方法について説明する。
本実施例では、音源513を保持カップ120中の所定の位置に配置する。音源513には0.3mmのゴム球を用いた。音源513は、トランスデューサ131が配置された球面状の支持体132の球面中心に配置されることが望ましい。また、音源513の位置は、球面中心でなくてもよいがその座標が既知であることが望ましい。音源513の周りは水514で満たしておく。音源513の材質はレーザー光の波長に対して吸収するものであれば何でもよい。また、音源513は理想的には球体であることが望ましい。球体でなくても、その大きさ(縦幅、横幅、高さの最大値)がトランスデューサ131の検出帯域の中心周波数を有する音響波の水中での波長以下であればよい。この場合、音源から発生する音響波の波形は球体から発生する音響波の波形とほぼ等しくなるため、実質的には音源を球体とみなすことができる。すなわち、トランスデューサ131の受信帯域の中心周波数は、当該中心周波数を有する音響波の水中での波長が音源513のサイズの最大値よりも大きくなるような中心周波数としてもよい。
ところで、音源が大きい場合、照射された光は音源の表面で吸収され、音源の内部には届かない場合がある。したがって、音源は、その表面だけ光吸収作用を有する中空の光吸収体として扱うことができる。音源から発生した音響波はインパルス関数に近い形状を有する。例えば、鉄球などの金属球を用いた場合がこの場合に相当する。このとき、音源から発生して所望の方向に伝搬する音響波と、それとは逆方向に伝搬して音源の裏面で反射した音響波とが干渉して探触子で検出された場合、時間的な誤差が生じる。したがって、音源の裏面で反射した音響波を時間的に分離できるよう、音源の直径は、トランスデューサの受信帯域の中心周波数を有する音響波の水中での波長の5倍以上であることが望ましい。トランスデューサ131の受信帯域の中心周波数は、当該中心周波数を有する音響波の水中での波長が音源513のサイズの最大値の1/5となるような中心周波数としてもよい。
図14は、配置位置が既知である音源513からの音響波を利用して、トランスデューサ131の取り付け位置情報を取得するフローチャートである。図14は、上述したS160で補正された電気信号を取得した後の処理フローを示したものである。
(S171:補正された電気信号を用いて音響波の到達時間を取得する工程)
コンピュータ150は、S160で得られた補正された電気信号を用いて、音源513から発生した音響波がトランスデューサ131に到達した到達時間を計算する。この計算を以下で説明する。
図15は、S160で得られる、補正された受信信号の例である。横軸はサンプリングナンバー、縦軸は信号強度を表す。図15のように、補正された受信信号は、信号強度の最大点と最小点の中心位置を中心として点対称な形状をしている。そこで、最大点と最小点の間で値がゼロとなるサンプリングナンバーを到達時間の基準とする。サンプリングナンバーは離散的な整数であるが、より精度を高めるため、X軸と交わる前後の値から線形補間して小数点以下の数値も算出している。もちろん、補間の方法はこれに限ったものではない。ここで求めたサンプリングナンバーをNとする。ここで、iはトランスデューサ131の素子ナンバーである。
実施例1で述べたように、信号データ収集部140では、音源513にパルス光を照射した瞬間の信号をサンプル0番として、サンプル1000番から3047番まで2048サンプルの信号を取得している。サンプリング周波数をfsampとすると、音響波の到達時間tは次式で表すことができる。

(S172:音響波の到達時間に基づいてトランスデューサの位置補正量を取得する工程)
ずれ量推定部としてのコンピュータ150は、S171で取得した音響波の到達時間tに基づいてトランスデューサ131の位置補正量を計算する。すなわち、コンピュータ150は、トランスデューサ131の設計位置(所定の位置)からのずれ量を位置補正量として計算する。この計算を以下で説明する。
音源513の位置を(X,Y,Z)とし、トランスデューサ131−iの設計上の位置を(x,y,z)とする。位置補正量ΔRは次式で表すことができる。

ここで、cは水の音速である。位置補正量ΔRは設計上の距離と実際の距離との差を意味する。位置補正量ΔRはコンピュータ150の記憶手段に記憶しておき、後述する画像再構成を実行するときに用いる。
(S173:トランスデューサの位置補正量を用いて被検体情報を取得する工程)
コンピュータ150は、S172で取得したトランスデューサ131の位置補正量を用いてトランスデューサ131の位置情報を取得する。実際に、画像再構成によって画像を生成するとき、位置補正量ΔRは次のように用いられる。
トランスデューサ131が配置されている半球面の支持体132の設計上の半径(実施例1では127mm)をRとし、トランスデューサ131−iの設計上の位置は、半球面の中心を原点として、球座標系で、

で表されているものとする。このとき、コンピュータ150は、トランスデューサ131−iの実際の位置を、

であるとして置き換える。すなわち、距離の誤差を半径方向のずれとして補正を行う。本実施例では、支持体132にトランスデューサ131を取り付ける穴をあけてそこにトランスデューサ131を差し込んで固定する、といった作製工程を考慮している。式33が表す誤差補正は、この作製工程において、半径方向が最も発生しやすいずれの方向であることに対応させたものである。
以上が音源513の位置が既知の場合のトランスデューサ131の位置情報を取得する方法である。また、上記方法によれば、保持カップと透過する際に発生する音響波の歪みが補正された信号を用いてトランスデューサの位置情報を精度よく取得することができる。
ところで、上記方法によれば、音源513の位置決めの精度がトランスデューサ131の位置情報の精度に依存する。そこで、音源513の位置が正確に把握できていない場合のトランスデューサ131の位置情報を取得する方法について以下に説明する。すなわち、音源513の位置が既知ではなく、未知である場合にトランスデューサ131の位置情報を取得する方法を説明する。図16は、音源513の位置が未知である場合のトランスデューサ131の位置情報取得のフローを示す。
(S410:音源の位置を仮設定する工程)
コンピュータ150は、音源513の位置を仮に定める。コンピュータ150は、(x、y、z)を音源513の位置として仮設定する。S140、S150、S160、S171では、本工程で仮設定された位置(x、y、z)に音源513が配置されていると仮定して処理が実行される。
(S175:補正された信号から求められる距離と、幾何学的に求められる距離との差を表すエラー関数を取得する工程)
コンピュータ150は、S171で得られた到達時間に基づいて、音源513とトランスデューサ131との距離を取得する。また、コンピュータ150は、S410で仮設定された音源513の位置とトランスデューサ131の位置の設計値とに基づいて、音源513とトランスデューサ131との距離を取得する。そして、コンピュータ150は、これらの距離の差を表すエラー関数を取得する。具体的には、次式によってエラー関数E(v,x,y,z)を定義する。
ここで、vは水の音速を示す変数であり、定数cと区別するため文字を変えている。tは式30で表される音響波の到達時間である。また、x、y、zは音源513の位置を示す変数である。
(S176:エラー関数を最小とする音源の位置を取得する工程)
式34のエラー関数Eを最小にするv、x、y、zの値を求める。これは、

を満たすv、x、y、zを求めればよい。このとき得られた解を、v、x、y、zとする。
(S177:収束したか否かを判定する工程)
コンピュータ150は、S175で得られた音源513の位置(x、y、z)が収束値であるか否かを判定する。
収束したと判定された場合はS172に進む。収束したと判定されたときの解を、V、X、Y、Zとする。S172において、コンピュータ150は、収束したときにS171で取得した音響波の到達時間tに基づいてトランスデューサ131の位置補正量を計算する。位置補正量ΔRは次式で表すことができる。

ここで、音源513の位置を(X,Y,Z)とし、トランスデューサ131−iの設計上の位置を(x,y,z)とする。
収束していないと判定された場合は、S410に進む。2回目以降のS410では、S176で取得された音源513の位置(x、y、z)を音源の位置として仮設定する。そして、S140、S150、S160、S171では、仮設定された位置(x、y、z)に音源513が配置されていると仮定して処理が実行される。
例えば、コンピュータ150は、S176で得られた音源513の位置(x、y、z)と、S410で仮設定された位置(x、y、z)との距離が閾値以下となるときに収束したと判定してもよい。また、コンピュータ150は、S176で得られた音源513の位置(x、y、z)と、ひとつ前のループで得られた音源513の位置(x、y、z)との距離が閾値以下となるときに収束したと判定してもよい。また、コンピュータ150は、S410〜S176の工程を所定の回数繰り返したときに収束したと判定してもよい。距離に対する閾値や繰り返し回数については、ユーザーが入力部170を用いて指定してもよい。
なお、本実施例においては、音速vを変数としたが、変数ではなく、一定としてもよい。また、発光タイミング(音響波の発生タイミング)とサンプリング開始タイミングとの時間的なずれを調整するために、Tを変数とした次式のエラー関数を定義してもよい。

また、球体の比較的大きな音源513を用いた場合、音源513の中央ではなく表面から音響波は発生する。よって、位置補正量ΔRの算出の際は、その半径分の伝搬時間を考慮する必要がある。音源513の半径をr、音源513の中心位置を(X,Y,Z)とすると、位置補正量ΔRは次式で表すことができる。

以上が、音源513の位置が未知である場合のトランスデューサ131の位置情報を取得する方法である。本実施例によれば、保持カップと透過する際に発生する音響波の歪みが補正された信号を用いてトランスデューサの位置情報を精度よく取得することができる。
実際に本実施例の方法により位置補正量を取得した例を図17に示す。図17は、音源513として直径0.3mmのゴム球を用いた場合に算出された位置補正量を示している。横軸は、トランスデューサ131の素子番号であり、512個あるうちの100番から200番までを示している。縦軸は、その素子番号での位置補正量を示している。
本実施例では、音源513として0.3mmのゴム球を用いた場合を示したがそれに限ったものではない。例えば、音源としては鉄球などの金属球を用いることもできる。
実施例1〜4で説明した情報取得装置において、高精細な被検体情報を得るためには保持カップ120の厚さを正確に把握しておくことが重要である。例えば、樹脂材料を保持カップに適した形状に成形する方法として、真空成形や圧空成形がある。どちらもシート状の樹脂材料を加熱して柔らかくして型に当てて冷却する、という方法である。このような成形プロセスによって保持カップの膜厚に分布ができる場合がある。これは、加熱温度、型に当てる速度など様々な条件に依存し、周辺よりも中央が厚くなるケースも、逆に周辺よりも中央が薄くなるケースもある。均一な膜厚分布とするには成形方法の条件の最適化が必要でありコストが高くなる要因となる。不均一な膜厚分布を有する保持カップを用いた場合でも、予めその膜厚分布を把握しておけば、実施例1から4で述べた受信信号の補正を精度よく実施することが可能となる。しかし、保持カップ120のような曲面の厚さを非破壊で測定するには特殊な装置が必要となる。
そこで、本実施例では、図13に示す光音響装置を用いて、破壊することなく保持カップ120の厚さに関する情報を取得する方法について説明する。
まず、図13に示すように保持カップ120が設置された状態でS110、S120の工程を実行し、受信信号データをコンピュータ150に保存する。保持カップ120を設置した状態で得られた受信信号データを第1の受信信号データと呼ぶ。
続いて、保持カップ120を外した状態でS110、S120の工程を実行し、受信信号データをコンピュータ150に保存する。保持カップ120を外した状態で得られた受信信号データを第2の受信信号データと呼ぶ。なお、保持カップ120を外した測定を先に行ってもよい。
続いて、コンピュータ150は、保持カップ120の厚さに関するデータを仮で設定する。厚さに関するデータは均一の厚さを示すデータでもよいし、厚さに分布を持たせたデータであってもよい。
続いて、コンピュータ150は、仮設定された保持カップ120の厚さに関するデータを用いて、式11や式20にしたがって透過率フィルタを取得する。そして、コンピュータ150は、S160で説明した方法と同様に、第1の受信信号データに対して、得られた透過率フィルタをデコンボリューションすることにより、補正された受信信号データを取得する。ここで補正された受信信号データを第3の受信信号データと呼ぶ。
続いて、コンピュータ150は、S171で説明した方法と同様に、第2の受信信号データを用いて保持カップ120を外したときの音響波の到達時刻tを取得する。また、コンピュータ150は、同様に、第3の受信信号データを用いて保持カップ120を外したと仮定したときの音響波の到達時刻tを取得する。
続いて、コンピュータ150は、第2の受信信号データに基づいて得られた到達時刻tと第3の受信信号データに基づいて得られた到達時刻tとの差Δtを算出する。そして、コンピュータ150は、保持カップ120の厚さに関するデータをアップデートし、上記の処理を再度行い、Δtが0または閾値よりも小さくなるまで繰り返す。コンピュータ150は、Δtが0または閾値よりも小さくなったときの保持カップ120の厚さに関するデータを真値として取得する。なお、保持カップ120の厚さに関するデータのアップデートを所定の回数行って得られたデータを真値としてもよい。
実際に本実施例の方法により保持カップ120の測定した結果を図18に示す。横軸は保持カップ120の中心からの距離、縦軸は保持カップ120の厚さである。本実施例では、保持カップ120として、厚さが中心からの距離に依存して分布があるような保持カップを用いている。図中、○は実測点、実線はフィッティングカーブである。ここで、図19に示す保持カップ120の底部OからR方向(R=√(X+Y))の距離dを、保持カップ120の中心からの距離としている。また、保持カップ120の表面に対する法線方向への厚さを、当該距離dにおける保持カップ120の厚さT(d)としている。なお、本実施例において保持カップ120の位置については既知であるとして計算している。すなわち、本実施例においては保持カップ120の音源513側の面の位置が既知であるとして計算している。
この実施例では、保持カップ120の中心からの距離をd(単位mm)として、厚さT(d)(単位mm)は、下記のようになった。

この厚さに関する情報をコンピュータ150内の記憶手段に記憶する。なお、本実施例ではXY方向に向かうにつれて保持カップの厚さが変化する場合を想定して計算したが、いかなる保持カップの厚さの変化に対応してもよい。
本実施例によれば、保持カップと透過する際に音響波の歪みが発生する場合であっても、保持カップの厚さに関する情報を精度良く取得することができる。また、本実施例によれば、保持カップの厚さが未知である場合でも、精度良く透過率フィルタを取得することができる。
120 保持カップ
130 探触子
150 コンピュータ

Claims (20)

  1. 被検体で発生し、第1の媒質を透過した音響波を受信手段が受信することにより得られた電気信号を処理するための処理システムであって、
    音響波が前記第1の媒質を透過するときの、複数の周波数に対応する複素透過率を表す透過率フィルタを取得する透過率フィルタ取得手段と、
    前記透過率フィルタを用いて前記電気信号を補正することにより、補正された電気信号を取得する補正手段と、を有する
    ことを特徴とする処理システム。
  2. 前記補正手段は、
    前記電気信号を前記透過率フィルタでデコンボリューションすることにより、前記補正された電気信号を取得する
    ことを特徴とする請求項1に記載の処理システム。
  3. 前記被検体内の関心位置で発生し、前記受信手段に到達する音響波の前記第1の媒質への入射角度情報を取得する角度取得手段を有し、
    前記透過率フィルタ取得手段は、前記入射角度情報に基づいて前記透過率フィルタを取得する
    ことを特徴とする請求項2に記載の処理システム。
  4. 前記透過率フィルタ取得手段は、前記入射角度情報に基づいて前記透過率フィルタを計算する
    ことを特徴とする請求項3に記載の処理システム。
  5. 入射角度情報と透過率フィルタとの関係を表す関係テーブルまたは関係式が保存された記憶手段を更に有し、
    前記透過率フィルタ取得手段は、前記入射角度情報に基づいて前記関係テーブルまたは前記関係式を参照することにより前記入射角度に対応する前記透過率フィルタを取得する
    ことを特徴とする請求項4に記載の処理システム。
  6. 前記被検体内での音速と、前記第1の媒質と前記被検体との間に配置された第2の媒質内での音速とを取得する音速取得手段を有し、
    前記角度取得手段は、前記被検体内での音速と前記第2の媒質内での音速とを用いて、前記入射角度情報を取得する
    ことを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の処理システム。
  7. 前記第2の媒質内での音速が保存された記憶手段を更に有し、
    前記音速取得手段は、
    前記第2の媒質内での音速を前記記憶手段から読み出すことにより取得し、
    前記電気信号と前記第2の媒質内での音速とを用いて、前記被検体内での音速を取得する
    ことを特徴とする請求項6に記載の処理システム。
  8. 前記被検体内の関心位置と前記受信手段との位置関係及び前記透過率フィルタの関係を表す関係テーブルまたは関係式が保存された記憶手段と、
    前記関心位置と前記受信手段との位置関係に関する情報を取得する位置取得手段と、を有し、
    前記透過率フィルタ取得手段は、前記位置関係に関する情報に基づいて前記関係テーブルまたは前記関係式を参照することにより、前記位置関係に対応する前記透過率フィルタを取得する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の処理システム。
  9. 前記受信手段の位置情報を測定する位置測定手段を更に有し、
    前記位置取得手段は、前記測定手段により測定された前記受信手段の位置情報を用いて、前記位置関係を取得する
    ことを特徴とする請求項8に記載の処理システム。
  10. 前記位置取得手段は、
    前記補正された電気信号を用いて前記関心位置の被検体情報を取得する
    ことを特徴とする請求項3から9のいずれか1項に記載の処理システム。
  11. 前記受信手段の位置情報を測定する位置測定手段と、
    ずれ量推定手段と、を更に有し、
    前記受信手段は、少なくとも1つの受信素子を含み、
    前記少なくとも1つの受信素子は、所定の音源を含む前記被検体で発生した音響波を受信することにより前記電気信号を出力し、
    前記位置取得手段は、
    前記位置測定手段により測定された前記受信手段の位置情報を用いて、前記少なくとも1つの受信素子が所定の位置に配置されていると仮定したときの、前記少なくとも1つの受信素子と前記所定の音源との距離を取得し、
    前記補正された電気信号に基づいて、前記所定の音源と前記少なくとも1つの受信素子との距離を推定し、
    前記ずれ量推定手段は、前記少なくとも1つの受信素子が前記所定の位置に配置されていると仮定したときの前記距離と、前記補正された電気信号に基づいて推定された前記距離とに基づいて、前記少なくとも1つの受信素子の、前記所定の位置からのずれ量を推定する
    ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の処理システム。
  12. 前記補正手段は、
    前記電気信号のSN比を評価し、
    前記SN比が閾値よりも小さいときに前記透過率フィルタに基づいて前記電気信号に対する位相補正を行い、振幅補正を行わないデコンボリューションを行うことにより前記補正された電気信号を取得し、
    前記SN比が閾値よりも大きいときに前記透過率フィルタに基づいて前記電気信号に対する位相補正も振幅補正も行うデコンボリューションを行うことにより前記補正された電気信号を取得する
    ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の処理システム。
  13. 前記透過率フィルタ取得手段は、
    前記第1の媒質の厚み情報に基づいて前記透過率フィルタを変更する
    ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の処理システム。
  14. 請求項1から13のいずれか1項に記載の処理システムと、
    光を前記被検体に照射する光照射手段と、
    前記光照射手段からの光が前記被検体に照射されることにより発生する音響波を受信することにより前記電気信号を出力する前記受信手段と、を有する
    ことを特徴とする情報取得装置。
  15. 請求項1から13のいずれか1項に記載の処理システムと、
    前記第1の媒質を介して超音波を前記被検体に送受信する送受信手段を更に有し、
    前記送受信手段は、前記被検体内で反射した前記超音波を前記音響波として受信することにより前記電気信号を出力し、
    前記処理手段は、
    超音波の送信時および受信時における、超音波が前記第1の媒質を透過するときの前記透過率フィルタを取得する
    ことを特徴とする情報取得装置。
  16. 前記受信手段の受信帯域の中心周波数は、
    当該中心周波数を有する音響波の水中での波長が前記所定の音源のサイズよりも大きくなるような中心周波数である
    ことを特徴とする請求項14または15に記載の情報取得装置。
  17. 前記受信手段の受信帯域の中心周波数は、
    当該中心周波数を有する音響波の水中での波長が前記所定の音源のサイズの1/5となるような中心周波数である
    ことを特徴とする請求項14または15に記載の情報取得装置。
  18. 前記第1の媒質は、前記被検体を保持する保持手段である
    ことを特徴とする請求項14から17のいずれか1項に記載の情報取得装置。
  19. 被検体で発生し、第1の媒質を透過した音響波に由来する電気信号を処理する信号処理方法であって、
    音響波が前記第1の媒質を透過するときの、複数の周波数に対応する複素透過率を表す透過率フィルタを取得する工程と、
    前記透過率フィルタを用いて前記電気信号を補正することにより、補正された電気信号を取得する工程と、
    を有する
    ことを特徴とする信号処理方法。
  20. 請求項19に記載の信号処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
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