JP2017202312A - 音響波受信装置 - Google Patents

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裕 西原
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Abstract

【課題】光音響撮像および超音波エコー撮像を行う音響波受信装置において、良好な撮像を行うための技術を提供する。【解決手段】被検部に光を照射する光照射部と、光照射により発生する光音響波を受信して、光音響信号を出力する複数の受信素子が配列された受信アレイと、超音波を被検部に送信し、超音波が被検部で反射されたエコーを受信して超音波信号を出力する複数の送受信素子が配列された送受信アレイと、受信アレイを、複数の受信素子の指向軸が有効受信領域と送受信アレイに向かうように支持される支持領域を有するアレイ支持部とを有し、送受信アレイにより形成される集束領域と有効受信領域が重なる音響波受信装置を用いる。【選択図】図1

Description

本発明は、音響波受信装置に関する。
レーザーなどの光源から生体などの被検部に光を照射し、入射した光に基づいて得られる被検部内の情報を画像化する光イメージング装置の研究が医療分野で積極的に進められている。この光イメージング技術の一つとして、Photoacoustic Imaging(PAI:光音響イメージング)がある。光音響イメージングでは、光源から発生したパルス光を被検部に照射し、被検部内で伝搬・拡散したパルス光のエネルギーを吸収した被検部組織から発生した音響波(典型的には超音波)を受信し、その受信信号に基づき被検部情報をイメージング(画像化)する。なお、光照射に伴い吸収体の熱膨張収縮で発生する音響波を特に光音響波と呼ぶ。
被検部に光が照射されると、腫瘍などの対象部位とそれ以外の組織との光エネルギーの吸収率の差に起因して、光エネルギーを吸収した被検部位が瞬間的に膨張し音響波が発生する。光音響イメージングでは、この光音響効果により発生した光音響波を、受信素子を利用して受信する。
この受信信号を数学的に解析処理することにより、被検部内の情報、特に、初期音圧分布、光エネルギー吸収密度分布あるいは吸収係数分布などが取得できる。これらの情報は、被検部内の特定物質、例えば、血液中の酸素飽和度などの定量的計測にも利用できる。近年、この光音響イメージングを用いて、小動物の血管像をイメージングする前臨床研究や、この原理を乳がんなどの診断に応用する臨床研究が積極的に進められている。
非特許文献1には、回転二次曲面形状のアレイ支持部の内面に複数の受信素子の受信面を配置した受信素子アレイを用いて、被検部の情報を取得する音響波受信装置が記載されている。この受信素子アレイによれば、特定の領域で発生した光音響波を高感度に受信できるため、特定の領域における被検部情報の分解能が高くなる。
また、非特許文献1に記載された音響波受信装置では、被検部と受信素子アレイとの間を音響波が伝搬するように音響マッチング流体が回転二次曲面形状のアレイ支持部の内側に受信素子との間において満たされている。被検部に対して受信素子アレイの位置を相対的に移動させることにより、広い範囲で分解能の高い被検部の特性情報を取得することが記載されている。
なお、内部に液体の音響マッチング流体が貯留された容器状の受信素子アレイは、光音響イメージングだけでなく、超音波エコー診断にも利用できる。このような受信素子アレイを用いる場合、被検部と受信素子アレイの間に音響マッチング流体が満たされ、受信素子アレイと被検部が音響的に結合されていることが好ましい。
また、光音響画像と超音波エコー画像の両方を撮像する装置が特許文献1に開示されている。
特開2005−021380号公報
"Dedicated 3D Photoacoustic Breast Imaging", Rober, Cherie M. Kuzmiak, Richard B. Lam, Daniel R. Reinecke, Stephen P. Del Rio, and Doreen Steed, Medical Physics 40, 113301 (2013)
特許文献1に記載された装置は光音響撮像と超音波エコー撮像の両方が可能だが、光音響撮像においては非特許文献1に記載された装置に比べて音波を広い視野角で受信することができないので撮像画質が良くないという課題がある。
光音響撮像と超音波エコー撮像を共に高画質化するためには、回転二次曲面形状のアレイ支持部の内面に、光音響撮像用の複数の受信素子を配置した受信素子アレイと、超音波エコー撮像用の送受信素子アレイをそれぞれ独立して設けることが好ましい。しかし、これら2種類のセンサアレイの配置方法に関しては、これまでに十分な検討がなされていない。さらに、2種類のセンサアレイを併用する場合、光音響撮像用の受信素子アレイだけを用いる場合に比べて、これらセンサアレイを支持するアレイ支持部が大型化しやすい。そして、非特許文献1に記載された装置のように、被検者が横たわる寝台にアレイ支持部が収納される場合、寝台を含む装置全体が大型化してしまう。この場合、装置の形状や大きさにより検査中の被検者の姿勢が制限されるなど、被検者の安楽性を損なう可能性がある。また、介助者と被検者との間に必要以上の距離が生じてしまうことにより、介助者の補助作業の作業性を損なう可能性がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、光音響撮像および超音波エコー撮像を行う音響波受信装置において、良好な撮像を行うための技術を提供することである。
本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
光源と光学的に接続され、被検者の被検部に光を照射する光照射部と、
前記光照射部から照射された光が前記被検部に照射されることにより発生する光音響波を受信して、光音響信号を出力する複数の受信素子が配列された受信アレイと、
超音波を前記被検部に送信し、前記超音波が前記被検部で反射されたエコーを受信して超音波信号を出力する複数の送受信素子が配列された送受信アレイと、
前記受信アレイを、前記複数の受信素子の指向軸が有効受信領域と前記送受信アレイに向かうように支持される支持領域を有するアレイ支持部と、
前記アレイ支持部を前記被検部に対して移動させることにより、受信アレイと送受信アレイを前記被検部に対して一体に移動させる走査部と、を有し、
前記送受信アレイにより形成される集束領域と前記有効受信領域が重なる
ことを特徴とする音響波受信装置である。
本発明によれば、光音響撮像および超音波エコー撮像を行う音響波受信装置において、良好な撮像を行うための技術を提供できる。
本発明の実施形態の装置を表す図である。 送受信素子の相対位置を変更した場合を表す図である。 受信素子の感度特性を表す図である。 超音波エコー用リニアアレイの構造を示す図である。 電子フォーカスについて説明する図である。 コンピュータとその周辺機器との接続を示す図である。
以下に図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態について説明する。ただし、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状およびそれらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。よって、この発明の範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
本発明は、被検部から伝播する音響波を検出し、被検部内部の特性情報を生成し、取得する技術に関する。よって本発明は、被検部情報取得装置またはその制御方法、あるいは被検部情報取得方法や信号処理方法として捉えられる。本発明はまた、これらの方法をCPU等のハードウェア資源を備える情報処理装置に実行させるプログラムや、そのプログラムを格納した記憶媒体としても捉えられる。本発明はまた、音響波測定装置やその制御方法としても捉えられる。
本発明は、被検部に光(電磁波)を照射し、光音響効果に従って被検部内または被検部表面の特定位置で発生して伝播した音響波を受信(検出)する、光音響トモグラフィー技術を利用した被検部情報取得装置に適用できる。このような装置は、光音響測定に基づき被検部内部の特性情報を画像データや特性分布情報などの形式で得ることから、光音響撮像装置、光音響画像形成装置、あるいは単に光音響装置とも呼べる。あるいは、本発明の装置は被検部内部を検査するので、音響波受信装置と呼んでも構わない。
光音響装置における特性情報は、光照射によって生じた音響波の発生源分布、被検部内の初期音圧分布、あるいは初期音圧分布から導かれる光エネルギー吸収密度分布や吸収係数分布、組織を構成する物質の濃度分布などである。物質の濃度とは、酸素飽和度、オキシヘモグロビン濃度、デオキシヘモグロビン濃度、および総ヘモグロビン濃度などである。総ヘモグロビン濃度とは、オキシヘモグロビン濃度およびデオキシヘモグロビン濃度の和である。また、脂肪、コラーゲン、水分の分布なども対象となる。また、特性情報は、数値データとしてではなく、被検部内の各位置の分布情報として求めてもよい。すなわち、吸収係数分布や酸素飽和度分布などの分布情報を被検部情報としてもよい。
本発明は、被検部に超音波を送信し、被検部内部で反射した反射波(エコー)を受信して、被検部情報を画像データとして取得する超音波エコー技術を利用した装置にも適用できる。超音波エコー技術を利用した装置の場合、取得される被検部情報とは、被検部内部の組織の音響インピーダンスの違いを反映した情報である。
本発明でいう音響波とは、典型的には超音波であり、音波、音響波と呼ばれる弾性波を含む。光音響効果により発生した音響波のことを、光音響波または光超音波と呼び、上述の超音波エコー技術における反射波(エコー)も音響波に含む。受信素子により音響波から変換された電気信号を音響信号とも呼び、光音響波に由来する音響信号を特に光音響信号と呼び、超音波エコー技術における反射波に出来する音響信号を特に超音波信号と呼ぶ。なお、本明細書における超音波または音響波という記載は、それらの弾性波の波長を限定する意図ではない。
本発明における被検部としては、生体の乳房が想定できる。ただし被検部はこれに限られず、生体の他の部位や、非生体材料の検査も可能である。したがって本発明は、被検部情報取得装置もしくはその制御方法、または、音響波受信装置もしくはその制御方法とし
ても捉えられる。
音響波受信装置において、光音響用の回転二次曲面形状のアレイ支持部の内面に複数の受信素子を配置した受信アレイと、超音波エコー診断に用いられている送受信アレイを併用すれば、両方のモダリティでの撮像が可能になる。しかし、双方のセンサアレイをそれぞれの受信領域が重ならないように配置すると、アレイ支持部の部材が大きくなる。また、広範囲を撮像する場合、走査部を用いてセンサアレイを搭載したアレイ支持部と被検部との相対的な位置関係を変化させる。しかし、双方のセンサアレイを別々に配置し、その両方に走査部を設けると、走査部の部材が大きくなり、構造が複雑になる。さらに、アレイ支持部の移動距離が増える。その結果、コスト増加や撮像時間の長期化につながる。
さらに、音響波受信装置に被検者を支持する支持部材を設ける場合がある。しかしアレイ支持部の部材が大きくなると、この支持部材も大きくなる。その結果、被検者を補助する介助者の作業性が低下する。また、被検者が安楽な姿勢をとりにくくなる。従って、光音響撮像用の受信素子アレイと超音波エコー撮像用の送受信素子アレイの両方を備える音響波受信装置において、部材サイズを抑制し、介助者の作業性や被検者の快適性を高める必要がある。
[実施形態]
図1A、図1B、図1Cは、本実施形態に係る音響波受信装置の構成と動作を示す概略図である。音響波受信装置は、光音響効果と超音波エコー技術によりに被検部Eの特性情報を取得する。図1Aは第1の音響波受信装置の上面図、図1Bは側面の断面図、図1Cは図1Bの破線で囲った部分の詳細図である。
<基本構成>
図1Cを用いて、本実施形態の音響波受信装置である、被検部情報取得装置の基本構成を説明する。本実施形態における被検部情報取得装置は、光源100、光学系200、複数の受信素子310を備える受信アレイ300、 複数の送受信素子を備える送受信アレ
イ1300、アレイ支持部400、スキャナー500を備える。さらに被検部情報取得装置は、被検部外観情報取得部600、コンピュータ700、ディスプレイ900、入力部1000、形状保持部1100、支持部材1200を備える。
(被検部)
被検部Eは測定の対象である。具体例としては、乳房等の生体や、装置の調整や校正の場面で用いる、生体の音響特性と光学特性を模擬したファントムが挙げられる。音響特性とは具体的には音響波の伝搬速度および減衰率である。光学特性とは具体的には光の吸収係数および散乱係数である。被検部の内部や表面には、光吸収係数の大きい光吸収体が存在する。生体では、ヘモグロビン、水、メラニン、コラーゲン、脂質などが光吸収体となる。ファントムでは、光学特性を模擬した物質を光吸収体として内部に封入する。なお、便宜上、図1Cにおいて被検部Eは破線で示している。
(光源)
光源100はパルス光を発生させる。光源としては大出力を得るため、レーザーが望ましいが、発光ダイオードなどでもよい。光音響波を効果的に発生させるためには、被検部の熱特性に応じて十分短い時間に光を照射させなければならない。被検部が生体の場合、光源100から発生するパルス光のパルス幅は数十ナノ秒以下にすることが望ましい。また、パルス光の波長は生体の窓と呼ばれる近赤外領域であり、700nm〜1200nm程度が望ましい。この領域の光は比較的生体深部まで到達することができ、深部の情報を得ることができる。生体表面部の測定に限定すれば、500〜700nm程度の可視光から近赤外領域も使用してもよい。さらに、パルス光の波長は観測対象に対して吸収係数が
高いことが望ましい。
(光学系)
光学系200は、光源100と光学的に接続され、光源100で発生させたパルス光を被検部Eへ導く。具体的にはレンズ、ミラー、プリズム、光ファイバー、拡散板などの光学機器や、これらの組み合わせである。また光を導く際に、これらの光学機器を用いて、照射光が所望の光分布となるように、光の形状や密度を変更することも好ましい。本実施形態において光学系200は、半球の曲率中心の領域を照明するように構成されている。光学系200は、本発明の光照射部に対応する。
また、生体組織に照射することが許される光の強度は、安全規格によって最大許容露光量(MPE:maximum permissible exposure)が定められている。安全規格として例えば、“IEC 60825−1:Safety of laser products”がある。また、“JIS C 6802:レーザー製品の安全基準”、“FDA:21CFR Part 1040.10”、“ANSI Z136.1:Laser Safety Standards”、などの安全規格もある。最大許容露光量は、単位面積あたりに照射することができる光の強度を規定している。このため被検部Eの表面を広い面積で一括して光を照射することにより、多くの光を被検部Eに導くことができる。その結果、光音響波を高いSN比で受信できる。このため光をレンズで集光させるより、図1Cの二点鎖線で示す様に、ある程度の面積に広げる方が好ましい。
(受信素子)
受信素子310は、光音響波を受信して電気信号に変換する素子である。受信アレイ300は、複数の受信素子310を備えている。被検部Eからの光音響波に対して、受信感度が高く、周波数帯域が広いものが望ましい。なお、「受信素子」という名称は、素子の材料等を限定するものではない。受信素子310としては、音響波(超音波)を受信するために一般的に用いられる各種の素子を利用できる。音響波受信装置は、受信素子310により変換された電気信号に対して増幅処理やデジタル変換処理を施す信号処理回路を備える。
受信素子310の材料としては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミック材料や、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電膜材料などを使用できる。また、cMUT(Capacitive Micro−machined
Ultrasonic Transducers)などの静電容量型の素子、ファブリペロー干渉計を用いた音響波素子など、圧電材料以外の部材を用いても良い。また、cMUTは、圧電材料の厚さで周波数帯域が決まる圧電素子と比較して周波数帯域が広いので、被検部から発生する周波数帯域が未知の光音響波を受信するのに適している。
図3は、受信素子310の受信感度特性の一例を示したものである。図3の横軸に示す「角度」とは、受信素子310の受信面の法線方向と、光音響波の入射方向とがなす入射角度である。縦軸は、各入射角度における受信感度の相対的な値を示す。図3では、音響波が受信面の法線方向から入射する場合の受信感度が最も高い。すなわち、入射角度=0のとき、感度=S(最大値)となる。そして、入射角度が大きくなるほど受信感度が低くなる。なお、本実施形態に係る受信素子310は、円形の平面形状の受信面を有しているものとする。
また、受信感度が最大値の50%(S/2)になるときの入射角度を、αとする。本発明及び本明細書においては、音響波素子300の受信面に入射角度α以下で光音響波が入射する領域を、当該素子の受信領域とし、受信面の法線方向となす角度の絶対値がα以下
の方向(受信感度が最大値の50%以上である方向)を受信方向と呼ぶものとする。ただし受信領域はこのような半値幅に限られず、素子特性や測定に求める精度などに応じて定めれば良い。図1Cにおいては、受信素子310の最も受信感度の高い方向を一点鎖線で示した。
(送受信素子)
送受信素子は、送信超音波を送信するとともに反射波を受信して電気信号に変換する素子である。送受信アレイ1300は、複数の送受信素子を備えている。なお、「送受信素子」という名称は、送信波やエコーの波長を限定する意図ではない。図4に、本実施形態における音響波受信装置を構成する複数の送受信素子を備える送受信アレイの一例として、リニアセンサアレイの構造を示す。符号1301は圧電素子アレイ、符号1302は音響整合層、符号1303は音響レンズ、符号1304はバッキング材、符号1305はリード線である。音響波受信装置は、送受信素子により変換された電気信号に対して増幅処理やデジタル変換処理を施す信号処理回路を備える。これらの信号処理回路を受信素子310と共用してもよい。本装置のように受信素子群を半球型アレイ支持部に配置し、送受信素子群をリニアアレイ状に配置する構成は、例えば光音響撮像を主目的として超音波エコー撮像を補助的に用いる音響波受信装置に好適である。
圧電素子アレイ1301は、短冊形状の複数個の圧電素子アレイ1301a〜1301gを直線状に配列したものである。この構造により、本発明の送受信素子は、リニアアレイ状に構成される。各圧電素子にはリード線1305a〜1305gが接続されている。また、圧電素子アレイ1301の超音波を送信する方向の面に音響整合層1302が設けられ、その対向側にバッキング材1304が設けられている。さらに、音響整合層1302の圧電素子アレイ1301の対向面に音響レンズ1303(音響波集束手段)が設けられている。
圧電素子アレイ1301を構成する圧電素子アレイ1301a〜1301gは、前述の受信素子310と同じ種類の圧電素子を利用できる。なお、圧電セラミック材料や高分子圧電膜材料から成る圧電素子は、超音波の送信に適しているため、送受信素子に特に好ましい。
音響レンズ1303は、圧電素子アレイ1301の配列方向と直角方向に超音波を集束するシリンドリカルレンズを用いている。このシリンドリカルレンズが超音波を集束させる領域を被検部の関心領域に設定することにより、被検部の関心領域に選択的に超音波を送信するとともに、被検部Eの関心領域から発生する反射波を選択的に受信できる。音響レンズを構成する材料は、生体組織に類似した音響特性を有する材料が好ましく、例としてシリコーンゴムなどがある。生体組織内部の音速よりも遅い音速の材料で構成すると形状は凸レンズとなり、凸面の曲率によって焦点位置が決まり、焦点距離とシリンドリカルレンズの幅によって集束サイズが決まる。一方、圧電素子アレイ1301の配列方向にフォーカスする方法としては、電子フォーカスを用いている。電子フォーカス (音響波集
束手段)については後述する。
音響整合層1302は、音響信号を効率よく伝達するために設けられている。一般に圧電素子材料と生体や音響マッチング流体では音響インピーダンスが大きく異なるため、圧電素子材料と音響マッチング流体が直に接した場合は、界面での反射が大きくなり音響信号を効率よく伝達できない。このため、圧電素子材料と生体や音響マッチング流体の間に中間的な音響インピーダンスを有する物質で構成した音響整合層1302を挿入して音響信号を効率よく伝達している。音響整合層1302を構成する材料の例としては、エポキシ樹脂や石英ガラスなどがある。
次に、図5を用いて、リニア受信素子アレイを用いた電子フォーカスについて説明する。符号1306は可変遅延素子、符号1307はパルサーレシーバーである。複数個配列されたそれぞれの圧電素子アレイ1301a〜1301gには、可変遅延素子1306a〜1306gがリード線1305を介して接続されている。可変遅延素子1306a〜1306gは、パルサーレシーバー1307と接続されている。
可変遅延素子1306は、細長い電線をコイル状に巻いたものなどで構成され、電線を伝わる電気信号の伝導を遅らせる。また、コイルの途中に複数個設けたタップを切り替えることにより、電気信号の遅延時間を調節できる。パルサーレシーバー1307は、圧電素子アレイ1301によって電圧に変換された音響信号を受信する装置である。音響波発生源の位置Xから発生した音響波は、それぞれ時間差τa、τb、τc、τd、τe、τf、τgで圧電素子アレイ1301に到達する。なお、時間差とは、音響波が発生した瞬間との時間差でも良いし、圧電素子アレイ1301に含まれるいずれかの圧電素子に音響波が発生した瞬間との時間差でも良いし、それらとは別に設定した基準タイミングとの時間差でも良い。
圧電素子アレイ1301に到達した音響信号は電圧(電気信号)に変換される。電気信号は、可変遅延素子1306を通ってパルサーレシーバー1307に受信される。この時、可変遅延素子1306が、音響波発生源の位置Xと各圧電素子1301までの距離の差を可変補正することで、各電気信号の位相が揃う。図示の例では、位置Xとの距離が短い圧電素子ほど、可変遅延素子1306で与える遅延時間を長くする。また、位置Xから等距離にある圧電素子は可変遅延素子1306で与える遅延時間を同じにする(τa=τg<τb=τf<τc=τe<τd)と、パルサーレシーバー1307が受信する時の位相が一致する。このように、可変遅延素子1306によって与える遅延時間を制御することにより、リニア受信素子アレイの電子フォーカスが行われる。その結果、焦点距離や圧電素子アレイ1301の配列方向の焦点位置をコントロールできる。
パルサーレシーバー1307から被検部Eの関心領域に超音波を送信するための指令パルスが発信されると、当該パルスが圧電素子1301a〜1301gに到達する。その際、可変遅延素子1306a〜1306gにより、各素子への到達時間が遅延する。具体的には、圧電素子1301a〜1301gに、それぞれ時間差τPa、τPb、τPc、τPd、τPe、τPf、τPgで到達する。このように被検部Eの関心領域と各圧電素子1301a〜1301gの距離に応じて、各素子による超音波の発生タイミングを調節することにより、送信された超音波が被検部Eの関心領域に集束する。
被検部Eの関心領域から発生した反射波を受信する場合も同様に、関心領域と各素子の距離に応じた信号遅延処理を行う。被検部Eの関心領域から発生した反射波は、圧電素子1301a〜1301gに、それぞれ時間差τRa、τRb、τRc、τRd、τRe、τRf、τRgで到達し、電気信号に変換される。各電気信号は、対応する可変遅延素子1306a〜1306gによって、時間τRa〜τRg遅延されてパルサーレシーバー1307に受信される。
このとき、被検部Eの関心領域と各圧電素子の距離に応じて、各可変遅延素子1306が時間を補正することにより、パルサーレシーバー1307が電気信号を受信する位相が揃う。その結果、被検部Eの関心領域に集束領域(有効受信領域とも呼称する)ができ、この集束領域から発生した反射波が選択的に受信される。図示の例では、関心領域と圧電素子の距離が短いほど、遅延時間を長くする。
このように、電気的に送受信する超音波の集束領域を形成するものを電子フォーカスと呼ぶ。本発明の音響波受信装置は、電子フォーカスによって被検部Eの関心領域に形成す
る集束領域の深さと、前述の音響レンズ1303で形成する集束領域の深さが同じになるようにしている。なお、ここで「深さ」とは、被検部に対してリニアアレイ状の送受信素子群や半球状に配置された受信素子群の相対位置が変化する面からの距離や、支持部材の支持面からの距離を言い、図中のz軸方向における位置が同じであるとき、深さが同じであるとする。
(アレイ支持部)
アレイ支持部400は、半球状の部分と、略有底円筒状の部分を組み合わせた形状の容器である。略有底円筒状の部分を形成する円筒の底面から突出するように、半球状の部分が配置されている。半球状および略有底円筒状の部分を合わせて、全体として音響マッチング流体800を貯留可能な容器となっている。半球内面には、少なくとも一部の受信素子の指向軸が集まる高感度領域(後述、有効受信領域とも呼称する)が形成されるように前記複数の受信素子310が配置される。受信素子310が配置され、アレイ支持部によって支持される領域を支持領域と呼ぶ。そして、支持領域の一部に複数の送受信素子がリニアアレイ状に整列する。つまり、複数の送受信素子は、アレイ支持部400において、複数の受信素子310が配置された領域の一部に重なる。また、半球の底部(極)に光学系200が設置される。アレイ支持部400の内側には音響マッチング流体800が充填される。アレイ支持部400は、これらの部材を支持するために機械的強度が高い金属材料などを用いて構成することが好ましい。
図1Cは半球状のアレイ支持部400の中心軸で切断した断面図である。アレイ支持部400に設けられた複数の受信素子310の受信方向の中心(最も感度が高い方向)は、それぞれ半球の曲率中心に向かう。この受信方向の中心は、被検部E内の一部の領域に集束する一点鎖線で示される。このように、複数の受信素子310のそれぞれの素子は、特定の領域で発生する光音響波を高感度に受信できるようにアレイ支持部400上に配置されている。本実施形態においては、この特定の領域を高感度領域と呼ぶ。
前述の有効受信領域は、複数の受信素子のそれぞれが有する複数の受信指向軸が互いに交差するアイソセンター(ISOCENTER)であると換言できる。
このような複数の受信素子310の配置の場合、後述する方法で受信信号を用いて得られる被検部情報は、半球の曲率中心の分解能が高く、中心から離れるほど分解能が低くなる。本実施形態において高感度領域は、最も分解能の高い点(半球の曲率中心)から最も高い分解能の50%の分解能となるまでの領域のことを指し、図1Cの点線で囲まれた領域Gがこれに相当する。
本発明の音響波受信装置は、超音波エコー画像を取得する送受信素子が被検部の関心領域に形成する集束領域の深さが、光音響画像を高感度に取得する領域Gの深さ方向における範囲内に位置するようにしている。ここで、光音響画像を高感度に取得する領域Gの深さ方向における範囲内とは、z軸方向において、符号Gの示す領域の上端以下、下端以上である。これにより被検部の同じ深さの光音響画像と超音波エコー画像を撮像できる。また、本発明の音響波受信装置は、アレイ支持部400の半球内面の広範囲に複数の受信素子310を配置し、アレイ支持部400の半球内面の小範囲に複数の送受信素子を配置している。また、本実施形態では、アレイ支持部400は、前記複数の受信素子が形成する高感度領域と、前記複数の送受信素子の集束領域(後述)とが重なるように構成される。これによって、同一部位を高分解能で、かつ略同時に撮影された光音響画像と超音波エコー画像を取得できる。なお、高感度領域と集束領域は完全に重ならなくともよい。
図4、図5に示すように、かかる複数の送受信探触子1310(送受信アレイ)は共通の受信面を有している。複数の送受信探触子1310の集束領域は、典型的には、かかる共通の受信面の中心法線NLにより代替され得る。従って、図1Cに示すように、本願発明に係る音響波受信装置は、「複数の受信素子310により形成される有効受信領域と複
数の送受信素子1310の共通の受信面の中心法線NLとが互いに重なる(オーバーラップする)ように配置されている」と換言される。
光音響測定においては、被検体内の光音響波の発生位置が未知のため、多数の受信素子310を広視野角に配置して受信することが好ましい。一方、超音波エコーは音響レンズと電子フォーカスにより超音波を送信する領域と反射波を受信する領域が特定されるので、複数の送受信素子を配置する範囲は小さくできる。
アレイ支持部400の半球内面において送受信素子を配置した範囲では、光音響波を受信できないので、この範囲の光音響信号が欠如してしまう。しかし、光音響の画質に与える影響が僅かな程度であれば、アレイ支持部400の半球内面の一部に送受信素子を配置できる。また、送受信素子を光音響波の受信にも兼用するようにすると、送受信素子を配置した範囲の光音響信号が欠如してしまうことを回避できる。また、複数の送受信素子を複数の受信素子310の受信領域外に配置するのであれば、複数の送受信素子の受信面は、光受信素子310の受信面よりも凸に設けることができる。さらに、アレイ支持部400における複数の受信素子310の形成する高感度領域Gの垂直方向の中心軸を基準軸として、複数の送受信素子を基準軸からずらして配置している。また、アレイ支持部400の構造が半球面のように対称的な構造の場合、アレイ支持部の中心とは異なる位置に複数の送受信素子を配置することにしてもよい。
なお、複数の受信素子310の配置については、所望の高感度領域を形成できる限り、必ずしも各受信素子310の最も感度の高い方向が交わらなくてもよい。また、特定の領域で発生した光音響波を高感度に受信できるように、アレイ支持部400により支持された複数の受信素子310の少なくとも一部の素子の最も受信感度の高い方向が特定の領域に向いていればよい。この条件を満たすのであれば、アレイ支持部400の形状は半球に限られない。例えば、球冠形状、楕円体の一部分を切り取った形状、複数の平面または曲面を組み合わせた形状でもよい。
(スキャナー)
スキャナー500は、アレイ支持部400の位置を図1CのX,Y方向に移動することにより、被検部Eに対するアレイ支持部400の相対位置を変更する装置である。このためスキャナー500は、不図示のX,Y方向のガイド機構と、X,Y方向の駆動機構と、アレイ支持部400のX,Y方向の位置を検出する位置センサを備えている。スキャナー500の上にアレイ支持部400が積載されるため、ガイド機構は大きな荷重に耐え得るリニアガイドなどを用いることが好ましい。また、駆動機構としては、リードスクリュー機構、リンク機構、ギア機構、油圧機構、などを利用できる。駆動力はモーターなどを利用できる。また、位置センサとしては、エンコーダー、可変抵抗器、などを用いたポテンショメータなどを利用できる。なお、被検部Eに対してアレイ支持部400を移動可能な部材であれば、どのようなものでもスキャナー500として利用できる。なお、スキャナー500の移動方向は回転方向にも移動可能であり、アレイ支持部400と被検部を回転方向の相対位置を変化させることもできる。スキャナー500は本発明の走査部に相当する。スキャナー500はアレイ支持部400を移動させることにより、受信アレイと送受信アレイを一体に移動させる。
本実施形態の音響波受信装置は、複数の受信素子310の形成する高感度領域Gの垂直方向の中心軸を基準軸として、複数の送受信素子を基準軸からずらして配置している。スキャナー500によって、基準軸に対する複数の送受信素子の相対位置が変更されるようにしても良い。
スキャナー500の移動および/または回転によって複数の位置で光音響信号が取得さ
れ、取得された複数の光音響信号から一枚の画像を生成してもよい。図2Aおよび図2Bは複数の送受信素子の相対位置を変更した場合を示している。図2Aは複数の送受信素子が第一位置に配置され、図2Bは複数の送受信素子が第二位置に配置されている場合を示している。送受信素子が第一位置に配置されている時の光音響信号を第一光音響信号と呼ぶ。スキャナー500により、送受信素子を前述の基準軸に対して移動させた第二位置に配置されている時の光音響信号を第二光音響信号と呼ぶ。複数の送受信素子を配置した範囲では光音響信号が欠如するが、欠如した光音響信号は第一光音響信号及び第二光音響信号から補完できる。補間処理は、後述するコンピュータ700の演算部710によって実行される。送受信素子を基準軸に対して移動させるときの移動量は、第一位置において送受信素子が存在する範囲と、第二位置の送受信素子が存在する範囲とが重ならないように設定すると良い。回転移動の場合は、半回転させると良い。なお、光音響信号の取得は複数位置で行ってもよい。
(被検部外観情報取得部)
被検部外観情報取得部600は、被検部Eの外観情報を取得する装置である。被検部外観情報取得部600として例えば、カメラなどの被検部Eを撮像する撮像装置を利用できる。撮像した被検部Eの画像を後述するディスプレイ900に表示しても良い。また、音響波受信装置の操作者が、ディスプレイ900に表示された撮像画像を見て後述する入力部1000により、検査する被検体Eの関心領域を指定しても良い。また、画像再構成のときに、得られた外観情報を、被検部E内での光量分布取得や音響波減衰度合いの取得に利用してもよい。
(コンピュータ)
コンピュータ700は、演算部710および記憶部720を有している。演算部710は、典型的にはCPU、GPU、A/D変換器、アンプなどの素子や、FPGA、ASICなどの回路から構成される。なお、演算部は、1つの素子や回路から構成されるだけではなく、複数の素子や回路から構成されていてもよい。また、コンピュータ700が行う各処理をいずれの素子や回路が実行してもよい。記憶部720は、典型的にはROM、RAM、およびハードディスクなどの記憶媒体から構成される。なお、記憶部は、1つの記憶媒体から構成されるだけでなく、複数の記憶媒体から構成されていてもよい。なお、コンピュータ700は本発明の情報処理手段に相当する。
演算部710は、複数の受信素子310及び送受信素子から出力された電気信号に対して信号処理を施す。また、制御部としての演算部710は、図6に示すようにバス2000を介して被検部情報取得装置を構成する各構成の動作を制御する。演算部710により制御する動作としては、光音響と超音波エコーの撮像モードの切り替え、撮像領域の指定と変更、などがある。また、コンピュータ700は、同時に複数の信号をパイプライン処理できるように構成されていることが好ましい。これにより、被検部情報を取得するまでの時間を短縮できる。コンピュータ700が行うそれぞれの処理を、演算部710に実行させるプログラムとして記憶部720に保存しておくことができる。
前述の撮像モードの切り替えは、光音響の撮像後に超音波エコーを撮像しても良いし、その逆でも良い。また、光音響と超音波エコーを交互に撮像しても良い。被検部Eの同一部位を光音響と超音波エコーで撮像し、画像を重ね合わせ表示する場合には、光音響と超音波エコーを交互に撮像すると、両方の撮像における位置ずれが少ないので好適である。また、被検部Eの全体を光音響(または超音波エコー)で撮像後、光音響画像をディスプレイ900に表示して、表示画像に入力部1000によって関心領域を指定し、関心領域の超音波エコー(または光音響)を撮像しても良い。光音響(または超音波エコー)で被検部Eの全体をスクリーニングし、関心領域を決めて超音波エコー(または光音響)を撮像すると、両方の撮像を被検部Eの全体で行わずに済むので検査時間を短縮できる。
演算部710は、受信素子310が出力した電気信号(光音響信号)に由来する光音響画像データと、送受信素子が出力した電気信号(超音波信号)に由来する超音波画像データを生成可能である。画像データの生成には、既知の任意の画像再構成手法(例えば整相加算法、フィルタードバックプロジェクション法、ユニバーサルバックプロジェックション法、フーリエ変換法、逆問題解析など)を利用できる。このときコンピュータ700は、本発明の情報処理部として機能する。光音響画像データと超音波画像データで別の手法を用いても構わない。生成された光音響画像データや超音波画像データは、ディスプレイ900に表示させてもよく、メモリに記憶させてもよい。
(音響マッチング流体)
音響マッチング流体800は、被検部Eと受信素子310との間の空間を満たし、被検部Eと受信素子310を音響的に結合させる。そのために、受信素子310と形状保持部1100との間、および形状保持部1100と被検部Eとの間に音響マッチング流体800を配置することが好ましい。また、受信素子310と形状保持部1100との間、および形状保持部1100と被検部Eとの間にそれぞれ異なる音響マッチング流体800を配置してもよい。
音響マッチング流体800は、被検部Eおよび受信素子310に音響インピーダンスが近い材料であることが好ましい。さらに、音響マッチング流体800は、被検部Eおよび受信素子310の中間の音響インピーダンスを有する材料であることがより好ましい。また、音響マッチング流体800は、光源100で発生するパルス光を透過する材料であることが好ましい。また、音響マッチング流体800は液体であることが好ましい。具体的に音響マッチング流体800としては、水、ひまし油などの液体のほか、ジェル、ゾルなどを用いることができる。
(ディスプレイ)
ディスプレイ900(表示部)は、コンピュータ700から出力される被検部情報を、分布画像や特定の関心領域の数値データなどで表示する。ディスプレイとしては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、など、どの方式のディスプレイでも良い。なお、ディスプレイ900は、本発明の音響波受信装置とは別に提供されていても良い。
(入力部)
入力部1000は、ユーザーがコンピュータ700に所望の情報を入力・指定するためのユーザインタフェースである。入力部1000としては、キーボード、マウス、タッチパネル、ダイヤル、およびボタンなどを利用できる。入力部1000としてタッチパネルを採用する場合、ディスプレイ900が入力部1000を兼ねるタッチパネルであってもよい。
(形状保持部)
形状保持部1100は、被検部Eの形状を一定に保つための部材である。形状保持部1100は、取り付け部1200に取り付けられている。被検部Eの保持形状を変化させたり、被検部Eの大きさの個人差に対応したりするために、形状や大きさの異なる複数の形状保持部を交換可能な構成が好ましい。
被検部Eが乳房である場合、乳房形状の変形を少なくするために、形状保持部1100を球冠形状やお椀状とすることが好ましい。なお、被検部の体積や保持後の所望の形状に応じて、形状保持部1100の形状を適宜設計できる。形状保持部1100を介して被検部Eに光を照射する場合、形状保持部1100は照射光を透過させることが好ましい。そのために、形状保持部1100の材料としてポリメチルペンテンやポリエチレンテレフタ
ラートなどが好適である。
また、形状保持部1100のその他の材料として、被検部Eの形状に適応して変形可能なゴムなどの可とう性を有する材料を使用できる。可とう性を有する材料は、被検部Eを保持する時にしわができにくいという利点がある。また、光源100の光の透過率が高い(好ましくは90%以上)部材を用いることが好ましい。具体的には、シリコーンゴム、ウレタンゴム、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、アクリル系エラストマーなどが好適である。
(支持部材)
支持部材1200は、被検者を支持するとともに、被検者の被検部を挿入する挿入口1500を備えている。また、図1Cに示すように、支持部材1200の下側にアレイ支持部400とスキャナー500などが収納されている。図示の支持部材1200は、伏臥位の被検者を支持するのに適している。被検部としては乳房が想定される。本発明の音響波受信装置のスキャナー500が移動させるアレイ支持部400は、半球状の部分を有する、比較的大型の部材である。そのため、支持部材1200のサイズも比較的大きくなる。その結果、介助者の作業性や、被検者の快適性に影響する可能性がある。
発明者らの検討によれば、被検者が不安感無く支持部材に載ることができ、且つ、介助者が被検者を補助する作業が良好に行える支持部材の幅の範囲があることが分かった。また、図1Bに示すように、被検者の股関節から脚部を緩やかに下げて全身を支える姿勢が、被検者に安楽であることが分かった。さらに、被検者の体格には個人差があるので、股関節を下げる位置を調整するため部材を支持部材1200上に設けると良いことが分かった。
(送受信素子の配置と構成)
以下、介助者が良好に作業でき、被検者の安楽な姿勢を可能にする送受信素子の配置と構成について説明する。図1A〜図1Cの実施形態の音響波受信装置は、アレイ支持部400における複数の受信素子310の受信方向が集まるように配置するための領域の一部である半球内面に複数の送受信素子を配置している。このように送受信素子をアレイ支持部400の半球内面の一部に配置する構成は、支持部材1200の頭尾側及び左右側の長さが長くなりすぎることを抑制する。このため介助者は、支持部材1200の左右側から被検者を補助する作業を良好に行うことができる。また、被検者の頭側よりも尾側の支持部材1200の高さを低くできるので、被検者は安楽な姿勢を取ることができる。
以上説明したように、光音響撮像と超音波エコー撮像の両方が可能な音響波受信装置において、介助者による補助作業の作業性を良好にしつつ、被検者の姿勢の快適性を高めることができる。
<その他の実施形態>
記憶装置に記録されたプログラムを読み込み実行することで前述した実施形態の機能を実現するシステムや装置のコンピュータ(又はCPU、MPU等のデバイス)によっても、本発明を実施することができる。また、例えば、記憶装置に記録されたプログラムを読み込み実行することで前述した実施形態の機能を実現するシステムや装置のコンピュータによって実行されるステップからなる方法によっても、本発明を実施することができる。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。この目的のために、上記プログラムは、例えば、ネットワークを通じて、又は、上記記憶装置となり得る様々なタイプの記録媒体(つまり、非一時的にデータを保持するコンピュータ読取可能な記録媒体)から、上記コンピュータに提供される。したがって、上記コンピュータ(CPU、MPU等のデバイスを含む)、上記方法、上記プログラム(プログラム
コード、プログラムプロダクトを含む)、上記プログラムを非一時的に保持するコンピュータ読取可能な記録媒体は、いずれも本発明の範疇に含まれる。
100:光源,300:受信アレイ,310:受信素子,1300:送受信アレイ,1310:送受信素子,400:アレイ支持部,500:スキャナー,700:コンピュータ

Claims (13)

  1. 光源と光学的に接続され、被検者の被検部に光を照射する光照射部と、
    前記光照射部から照射された光が前記被検部に照射されることにより発生する光音響波を受信して、光音響信号を出力する複数の受信素子が配列された受信アレイと、
    超音波を前記被検部に送信し、前記超音波が前記被検部で反射されたエコーを受信して超音波信号を出力する複数の送受信素子が配列された送受信アレイと、
    前記受信アレイを、前記複数の受信素子の指向軸が有効受信領域と前記送受信アレイに向かうように支持される支持領域を有するアレイ支持部と、
    前記アレイ支持部を前記被検部に対して移動させることにより、受信アレイと送受信アレイを前記被検部に対して一体に移動させる走査部と、を有し、
    前記送受信アレイにより形成される集束領域と前記有効受信領域が重なる
    ことを特徴とする音響波受信装置。
  2. 前記アレイ支持部は、前記複数の受信素子の少なくとも一部の指向軸が集まる前記有効受信領域が形成されるように、前記受信アレイを支持する
    ことを特徴とする請求項1に記載の音響波受信装置。
  3. 前記アレイ支持部は、前記支持領域の一部において前記送受信アレイをリニアアレイ状に支持する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の音響波受信装置。
  4. 前記アレイ支持部は、前記受信アレイが形成する前記有効受信領域と、前記送受信アレイが形成する前記有効受信領域と、が重なるように構成される
    ことを特徴とする請求項1に記載の音響波受信装置。
  5. 前記走査部は、前記アレイ支持部と前記被検部の回転方向の相対位置を変化させる
    ことを特徴とする請求項1に記載の音響波受信装置。
  6. 前記走査部の回転によって複数の位置で前記光音響波が取得され、
    前記光音響波に基づいて画像を生成する情報処理手段をさらに有する
    ことを特徴とする請求項5に記載の音響波受信装置。
  7. 前記送受信アレイが送信する前記超音波を、前記有効受信領域と同じ深さに集束させる音響波集束手段をさらに有する
    ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の音響波受信装置。
  8. 前記アレイ支持部は、前記被検部、前記受信アレイおよび前記送受信アレイを音響的に結合させる音響マッチング流体を貯留する
    ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の音響波受信装置。
  9. 前記送受信アレイは、前記アレイ支持部において前記支持領域の中心とは異なる位置で支持される
    ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の音響波受信装置。
  10. 前記被検者を支持するとともに、前記被検者の前記被検部が挿入される挿入口が設けられた支持部材をさらに有し、
    前記支持部材の前記被検者の尾側における高さは、前記支持部材の前記被検者の頭側における高さよりも低い
    ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の音響波受信装置。
  11. 前記被検部を保持する形状保持部をさらに有する
    ことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の音響波受信装置。
  12. 前記有効受信領域は、複数の前記受信素子の指向軸が互いに交差するアイソセンターである
    ことを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の音響波受信装置。
  13. 前記複数の受信素子により形成される前記有効受信領域と、前記送受信素子の受信面の中心法線は互いに重なる
    ことを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の音響波受信装置。
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