第1の実施形態
本実施形態にかかる光音響装置は、光音響波の受信信号に基づいて対象物情報を取得する装置である。
本発明にかかる光音響装置は、光音響波を生成するための光を放出する光源を含む。本発明にかかる光音響装置は、また、複数の変換器を支持して、指向軸を集め、光を利用することによって特定の領域で生成された光音響波を高感度に受信することができる支持部材を含む。本発明にかかる光音響装置はまた、対象物に対して支持部材を動かす移動部を含む。本発明にかかる光音響装置はまた、対象物の表面についての座標情報を取得して、対象物の表面についての座標情報に基づいて支持部材の移動領域を設定する移動領域設定部を含む。すなわち、本実施形態にかかる移動領域設定部は、支持部材の移動領域を変更することが可能である。本実施形態にかかる光源は、支持部材が移動領域内に位置付けられた場合に光を放出する。
本実施形態にかかる光音響装置は、対象物の内部から生成された光音響波を優先的に高感度に受信することができる。すなわち、本実施形態にかかる光音響装置は、対象物の内部についての対象物情報の解像度を向上するために、受信信号を効率的に取得することを可能にする。
本記述における「測定する」という用語は、光の利用および光の利用により生成された光音響波の受信に関する。「測定位置」という用語は、光が照射された場合の検索部の位置、すなわち、支持部材の位置に関する。「測定タイミング」という用語は、対象物が光で照射された場合のタイミングに関する。
本発明にかかる本実施形態を、図面を参照して、以下で説明する。しかしながら、例えば、以下で説明する構造部品の寸法、材料、形状、および相対配置は、必要に応じて、本発明が適用される装置のさまざまな条件および構造により変更される。本発明の範囲は、以下の説明に限定されない。
第1の実施形態にかかる光音響装置を以下で説明する。図1は、本実施形態にかかる光音響装置の構造の模式図である。本実施形態にかかる光音響装置は、対象物の表面についての座標情報に基づいて、支持部材の移動領域を設定する。
図1に示した光音響装置は、光音響効果に基づいて生成された光音響波の受信信号に基づいて、対象物Eの光学特性などの、情報(対象物情報)を取得する装置である。
本実施形態にかかる光音響装置によって取得することができる対象物情報の例としては、光音響波の初期音圧の分布、光エネルギー吸収密度の分布、吸収係数の分布、および対象物を形成する材料の濃度の分布等がある。材料の濃度は、例えば、酸素飽和度、オキシヘモグロビン濃度、デオキシヘモグロビン濃度、および総ヘモグロビン濃度を含む。総ヘモグロビン濃度は、オキシヘモグロビンおよびデオキシヘモグロビンの濃度の合計である。
基本構造
本実施形態にかかる光音響装置は、光源100、光学系200、複数の変換器300、支持部材400、スキャナ500、撮像装置600、コンピュータ700、表示部900、入力部1000、および形状維持部1100を含む。
光音響装置の各構造部品および測定で使用される構造を以下で説明する。
対象物
対象物Eは、測定対象の対象物である。その具体例としては、胸部などの生体や、生体の音響特性および光学特性が、例えば、装置を調整する際にシミュレーションされる模型がある。「音響特性」という用語は、音波の伝搬速度および減衰率に特に関する。「光学特性」という用語は、光吸収係数および光散乱係数に特に関する。大きな光吸収係数を有する光吸収材が対象物の内部に存在することが必要である。生体では、例えば、ヘモグロビン、水、メラニン、コラーゲン、および脂肪が光吸収材になる。模型では、光学特性がシミュレーションされる対象物が、光吸収材として、内部に密封される。便宜上、対象物Eは、図1において、点線で示される。
光源
光源100は、パルス光を発生する装置である。大きな出力をもたらすために、光源は、レーザであることが望ましい。しかしながら、発光ダイオードなどを使用してもよい。光音響波を効率的に発生するために、対象物の熱特性により充分短い時間、対象物を光で照射する必要がある。対象物が生体である場合、光源100から発生するパルス光のパルス幅は、数十ミリ秒以下であることが望ましい。パルス光の波長は、近赤外領域であり、生体の窓と呼ばれ、700nmから1200nmのオーダであることが望ましい。この領域の光は、生体の比較的深い部分に到達することができ、その深い部分についての情報を取得することができる。測定が生体の表面部分のものに限定される場合、約500から700nmの可視光領域から近赤外領域への光を使用することができる。さらに、パルス光の波長が、観測されるべき対象物に対して大きな吸収率を有することが望ましい。
光学系
光学系200は、光源100によって発生したパルス光を対象物Eに誘導する装置である。すなわち、光学系200は、レンズ、鏡、プリズム、光ファイバ、および拡散板などの光学装置を含む。光が誘導される場合、これらの光学装置部品を使用して、形状および光学的濃度を変化させることができ、所望の光分布が設定される。光学装置部品の例は、ここに挙げたものに限定されない。そのような機能を満たす限り、どんな光学装置部品を使用してもよい。本実施形態にかかる光学系200は、半球の曲率中心の領域を照らすように形成される。
生体の組織の照射を可能にする光の強度は、最大許容露光量(MPE)が、以下に示す安全規格によって定められるようなものである(IEC 60825−1:Safety of laser products, JIS C 6802:Safety standards of laser products,FDA:21CFR Part 1040.10,ANSI Z136.1:Laser Safety Standardsなど)。最大許容露光量は、単位領域ごとに適用することができる光の強度を定める。したがって、広領域を用いて対象物Eの表面に一斉に光を適用することによって、大量の光を対象物Eに誘導することができる。したがって、高いSN比で光音響波を受信することが可能である。結果的に、図1に示した破線により示すように、レンズで光を集めることによって、領域を特定の領域に増加させることが望ましい。
変換器
各変換器300は、光音響波を受信し、それを電気信号に変換する素子である。対象物Eからの光音響波に対して、周波帯幅は広く、受信感度は高いことが望ましい。
使用することができる変換器300の材料の例としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)に代表される圧電セラミック材料、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)に代表される圧電ポリマー膜材料等がある。圧電要素以外の要素を使用してもよい。例えば、cMUT(静電容量型マイクロマシン超音波変換器)およびファブリ・ペロー干渉計を使用する変換器などの静電容量性要素を使用することができる。
図2は、変換器300の受信感度特性を示すグラフである。図2に示した受信感度特性は、変換器300の受信面に垂直な方向と、光音響波の入射の方向との間の入射角に基づく受信感度特性に対応する。図2に示した例において、光が受信面に垂直な方向から入射した場合の受信感度が最も高い。受信感度は、入射角が増加するにつれて低くなる。本実施形態にかかる各変換器300は、円形面受信面を有すると仮定する。
受信感度が受信感度の最大値Sの半分S/2になる場合の入射角をαとする。本実施形態において、光音響波が入射角α以下の角度で入射する変換器300の受信面の領域は、高感度に光音響波を受信することが可能な受信領域として定義される。
図1において、各変換器300の最高受信感度方向は、一点鎖線で示されている。各変換器300の最高受信感度方向に沿う軸は、指向軸と呼ばれる。
支持部材
支持部材400は、球を半分に切断することにより形成された実質的に半球形状を有する容器である。複数の変換器300が、半球状支持部材400の内側の面に配置される。光学系200が、支持部材400の底部(極)に配置される。支持部材400の内側が、音響整合材800(以下で説明する)で満たされる。
支持部材400が、例えば、これらの部材を支持するために高い機械的強度を有する金属材料で形成されることが望ましい。
複数の変換器300が、支持部材400に設けられ、半球面に配置され、複数の変換器300の受信方向は、互いに異なり、半球の曲率中心に向かう。図1は、半球状支持部材400が中心軸で切断された断面図であり、対象物Eの内側の一部の領域で集束する一点鎖線が、変換器300の受信方向を示す。
複数の変換器300の指向軸をこのように集めることにより、複数の変換器300の指向軸を互いに平行にした場合に比べ、(支持部材400の曲率中心付近の)特定の領域で発生した光音響波をより高い感度で受信することが出来る。本実施形態において、この特定の領域は、高感度領域と呼ばれる。
そのような複数の変換器300が配置された場合、以下で説明する方法を使用した受信信号を使用して取得した対象物情報は、半球の曲率中心での解像度が高く、その解像度が中心からの距離が増すと下がるというようなことである。本実施形態における高感度領域は、解像度が最も高くなる点から、解像度が最高解像度の半分になる点までの領域を意味し、図1において二点鎖線で囲まれた領域Gに対応する。
例えば、高感度領域Gは、最高解像度R
Hが得られる点が中心となる場合に数式(1)で示された半径rを有する実質的に球状の領域として設定することができる。
ここで、Rは、高感度領域Gの低限界解像度であり、R
Hは、最高解像度であり、r
0は、半球状支持部材400の半径であり、φ
dは、変換器の直径である。例えば、低限界解像度は、最高解像度の半分の解像度である。支持部材400が半球形状を有する場合、支持部材400の曲率中心では、一般的には、解像度が最高になる。
高感度領域Gが、支持部材400の曲率中心の点が中心である実質的に球状である場合を考える。この場合、各測定タイミングでの高感度領域Gの範囲は、支持部材400の位置、すなわち、曲率中心の位置および数式1から推定することができる。
所望の高感度領域を形成することができる限り、複数の変換器300をどのように配置してもよい。複数の変換器300の最高感度方向が1点で交差する必要はない。
特定の領域で発生した光音響波を高感度で受信するために、必要なことは、支持部材400によって支持される複数の変換器300の少なくとも幾つかの最高受信感度方向が特定の領域に向かうことである。すなわち、必要なことは、複数の変換器300が支持部材400に配置され、複数の変換器300の少なくとも一部が、高感度領域で発生した光音響波を高感度で受信することが可能であることである。
必要なことは、複数の変換器300の指向軸が、複数の変換器300の最高受信感度方向が互いに平行である場合と比較して収束するように、複数の変換器300が支持部材400に配置されることである。
複数の変換器300は、複数の変換器300の受信面が支持部材400に沿って設けられるように配置しても良い。ここで、支持部材400の形状は、本実施形態におけるような半球状に限定されない。複数の変換器300が上記のように配置される限り、支持部材400は、任意の湾曲面を含む形状を有していても良い。本実施形態における「湾曲面」という用語はまた、球面以外の湾曲面
も意味する。すなわち、本実施形態における「湾曲面」という用語はまた、湾曲面と考えることが可能な程度に一様ではない不均一面、および湾曲面と考えることが可能な程度に楕円形状である(楕円の3次元類似体であり、2次元湾曲面を有する)楕円の表面も意味する。さらに、本実施形態における「湾曲面」という用語は、複数の平面を連結することによって形成される面を意味する。本実施形態における「受信面」という用語は、最高受信感度方向に垂直な方向に設けられる面を意味する。
複数の変換器300の受信面が支持部材400の内側で向かい合うように、複数の変換器300が支持部材400に配置されることが望ましい。本実施形態において、支持部材400の曲率中心の側は、支持部材400の内側に対応する。
複数の変換器300の配置によって判断される高感度領域が、対象物Eが位置付けられると仮定される位置で形成されるように、複数の変換器300が配置されることが望ましい。対象物Eの形状を維持する形状維持部1100が本実施形態でのように設けられる場合、複数の変換器300は、形状維持部1100付近に高感度領域を形成するように配置される。
スキャナ
移動部としてのスキャナ500は、図1における方向X、Y、およびZに支持部材400の位置を移動することによって対象物Eに対する支持部材400の位置を変更する装置である。したがって、スキャナ500は、方向X、Y、およびZへの誘導を実行するためのガイド機構(図示せず)、方向X、Y、およびZへの駆動を実行するための駆動機構、ならびに方向X、Y、およびZでの支持部材400の位置を得る位置センサを含む。図1に示すように、支持部材400は、スキャナ500の上方に位置付けられる。したがって、ガイド機構は、例えば、大きな負荷に耐えることが可能なリニアガイドであることが望ましい。使用することができる駆動機構の例としては、リードスクリュー機構、リンク機構、ギヤ機構、および油圧機構等がある。駆動力は、例えば、モータにより生成することができる。位置センサは、例えば、エンコーダまたは可変抵抗器を使用する、例えば、ポテンショメータとすることができる。
本発明において、必要とされることは、対象物Eと支持部材400との間の相対位置が変更されることであるため、支持部材400を固定し、対象物Eを移動することが可能である。対象物Eが移動する場合、対象物Eを支持する支持部(図示せず)を動かすことによって対象物Eを移動する構造も考えることができる。さらに、対象物Eと支持部材400との両方を移動することが可能である。
移動は連続的であることが望ましい。しかしながら、移動は、一定のステップを繰り返してもよい。スキャナ500は電動ステージであることが望ましいが、手動ステージであってもよい。しかしながら、スキャナ500は、上記したものに限定されない。対象物Eと支持部材400との少なくとも一方が移動可能である限り、どんな構造を使用してもよい。
撮像装置
撮像装置600は、対象物Eの画像データを生成し、生成した画像データをコンピュータ700に出力する。撮像装置600は、撮像素子610と画像生成部620とを含む。画像生成部620は、撮像素子610から出力された信号を解析することによって対象物Eの画像データを生成し、生成された画像データを、コンピュータ700内の記憶部720に格納する。
例えば、電荷結合素子(CCD)センサまたは相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサなどの光学撮像素子を、撮像素子610として使用することができる。例えば、圧電要素または静電容量型マイクロマシン超音波変換器(CMUT)などの、光音響波を送受信する変換器を、撮像素子610として使用してもよい。複数の変換器300のいくつかを、撮像素子610に使用してもよい。画像生成部620が撮像素子610から出力された信号に基づいて対象物の画像を生成することが可能である限り、どのような素子を撮像素子として使用してもよい。
画像生成部620は、中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)、もしくはアナログ−デジタル(A/D)変換器などの素子、またはフィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)もしくは特定用途向け集積回路(ASIC)などの回路を含むことができる。コンピュータ700はまた、画像生成部620として機能しても良い。すなわち、コンピュータ700における演算部を、画像生成部620として使用しても良い。
撮像装置600は、光音響装置とは別に設けてもよい。
コンピュータ
コンピュータ700は、演算部710および記憶部720を含む。
演算部710は、一般的には、中央処理部(CPU)、グラフィック処理部(GPU)、もしくはアナログ−デジタル(A/D)変換器などの素子、またはフィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)もしくは特定用途向け集積回路(ASIC)などの回路を含む。演算部は、単一素子または回路によるだけでなく、複数の素子または回路によって形成しても良い。また、コンピュータ700によって実行された各処理動作は、素子または回路のいずれかによって実行しても良い。
記憶部720は、一般的には、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、またはハードディスクなどの、記憶媒体を含む。記憶部は、単一の記憶媒体によるだけでなく、複数の記憶媒体によって形成しても良い。
演算部710は、複数の変換器300から出力された電気信号を処理することが可能である。図3に示すように、制御部としての演算部710は、バス2000を介して光音響装置の各構造部品の動作を制御することが可能である。
コンピュータ700は、同時に複数の信号のパイプライン処理を実行するよう構成されることが望ましい。これにより、対象物情報を取得するのに必要な時間を短縮することができる。
コンピュータ700によって実行される各処理動作は、演算部710によって実行されるべきプログラムとして記憶部720に格納することができる。プログラムを格納する記憶部720は、非一時的記録媒体であることに留意されたい。
音響整合材
音響整合材800は、対象物Eと変換器300との間の空間を埋め、対象物Eと変換器300とを音響的に結合する。本実施形態において、音響整合材800は、形状維持部1100と対象物Eとの間に配置される。
音響整合材800はまた、変換器300と形状維持部1100との間に設けてもよい。変換器300と形状維持部1100との間と、形状維持部1100と対象物Eとの間で、異なる音響整合材を設けてもよい。
音響整合材800は、光音響波が音響整合材800の内部で減衰しにくい材料であることが望ましい。音響整合材800は、音響インピーダンスが対象物Eおよび変換器300のものに近い材料であることが望ましい。さらに、音響整合材800は、対象物Eおよび変換器300の中間の音響インピーダンスを有する材料であることが望ましい。さらに、音響整合材800は、光源100によって発生したパルス光が、通過する材料であることが望ましい。またさらに、音響整合材800は液体であることが望ましい。すなわち、音響整合材800は、例えば、水、ヒマシ油、またはゲルとすることができる。
音響整合材800は、本発明にかかる光音響装置とは別に設けてもよい。
表示部
例えば、分布画像および数値データを使用して、表示部である表示部900は、コンピュータ700から出力された対象物情報を表示する。一般的には、液晶ディスプレイなどが表示部900として使用されるが、プラズマディスプレイ、有機エレクトロルミネセント(EL)ディスプレイ、または電界放出型ディスプレイ(FED)を使用してもよい。表示部900は、光音響装置とは別に設けてもよい。
入力部
入力部1000は、所望の情報をユーザがコンピュータ700に入力するために所望の情報を指定することを可能にするよう構成された部材である。入力部1000の例には、キーボード、マウス、タッチパネル、ダイアル、およびボタンがある。タッチパネルが入力部1000として使用される場合、タッチパネルは、表示部900が入力部1000としても機能するものとしても良い。入力部1000は、本実施形態にかかる光音響装置とは別に設けてもよい。
形状維持部
形状維持部1100は、対象物Eの形状を、ある形状に維持するための部材である。形状維持部1100は、取付部1200に取り付けられる。対象物Eの複数の形状を維持するために複数の形状維持部を使用する場合、取付部1200は、複数の形状維持部がそこに取り付けられるか、または取り外されることを可能にするよう構成されることが望ましい。
光が形状維持部1100を介して対象物Eに照射された場合、形状維持部1100は、照射された光に対して透明であることが望ましい。例えば、形状維持部1100は、ポリメチルペンテンまたはポリエチレンテレフタレートで形成することができる。
対象物Eが胸部である場合、その歪みを減らすことによって、ある形状に胸部の形状を維持するために、形状維持部1100は、ある断面で球を分断することによって形成される形状を有することが望ましい。対象物の容量および維持された所望の形状により、必要に応じて、形状維持部1100の形状を形成することが可能である。形状維持部1100は、対象物の外部形状に適合し、対象物Eの形状が形状維持部1100と実質的に同じ形状を有することが望ましい。光音響装置は、形状維持部1100を使用することなく、測定を実行しても良い。
光音響装置の動作
次に、図4のフローチャートを使用して、対象物の表面についての座標情報に基づいて対象物で発生した光音響波を効率的に受信する方法を説明する。
S100:対象物の表面についての座標情報を取得するステップ
まず、対象物Eが、形状維持部1100に挿入され、支持部材400と形状維持部1100との間の空間、および形状維持部1100と対象物Eとの間の空間が、音響整合材800で満たされる。
次に、演算部710が、対象物Eの表面についての座標情報を取得する。演算部710を使用して対象物Eの表面についての座標情報を取得するための方法を、以下に説明する。
まず、演算部710が、撮像装置600によって取得された対象物Eの画像データを、記憶部720から読み出す。次に、対象物Eの画像データに基づいて、演算部710は、対象物Eの表面についての座標情報を計算する。例えば、複数の画像データに基づいて、ステレオ法などの、3次元測定技術を使用して対象物Eの表面についての座標情報を計算することが可能である。演算部710が、対象物Eの表面の位置座標についての情報に基づいて、対象物の表面についての座標情報を取得することが可能である。
あるいは、形状維持部1100の表面についての既知の座標情報を、記憶部720に記憶しても良い。演算部710は、記憶部720から形状維持部1100の表面についての座標情報を読み取ることによって、対象物Eの表面についての座標情報を取得することができる。取付部1200に取り付けられた形状維持部の種類を検出し、形状維持部の種類についての情報をコンピュータ700に出力する検出部1400を備えることが可能である。演算部710は、検出部1400から出力された形状維持部の種類についての情報を受け取り、対象物の表面についての座標情報として、形状維持部の種類についての受信情報に対応する形状維持部の表面についての座標情報を取得することができる。例えば、検出部1400は、形状維持部に取り付けられて、取り付けられた形状維持部の種類を示すIDチップを読み取るリーダとすることができる。これにより、計算を行うことなく対象物の表面についての座標情報を取得することが可能になる。
あるいは、ユーザは、入力部1000を使用して、使用される形状維持部の種類についての情報を入力することができ、その結果、入力部1000は、入力情報をコンピュータ700に出力する。演算部710は、入力部1000から出力された形状維持部の種類についての情報を受け取り、対象物の表面についての座標情報として、形状維持部の種類についての受けとった情報に対応する形状維持部の表面についての座標情報を取得することができる。これにより、計算を行うことなく対象物の表面についての座標情報を取得することが可能になる。
形状維持部の種類が変化しないと仮定した場合、形状維持部のサイズが本明細書の観点から変化するとは想定されず、演算部710によって使用される対象物の表面についての座標情報を固定することが可能である。
接触プローブを使用して、対象物Eの表面についての座標情報を取得することが可能である。
光音響装置が複数の測定を実行する場合、このステップで取得された対象物の表面についての座標情報は、後の測定で使用しても良い。さらに、光音響装置が複数の測定を実行する場合、各測定ごとに、または何回かの測定ごとに、任意のタイミングでこのステップを実行することが可能である。
対象物の形状が、各測定ごとにこのステップを行った結果の測定値間で変化した場合でも、形状が変化する度に対象物の表面についての正確な座標情報に基づいて後のステップを実行することが可能である。
S200:対象物の表面についての座標情報に基づいて、支持部材の移動領域を設定するためのステップ
次に、移動領域設定部としての演算部710は、S100で取得した対象物Eの表面についての座標情報に基づいて支持部材400の移動領域を設定する。
この時、演算部710は、高感度領域Gが、図5Aに示すように、対象物Eの内側に形成されるように、対象物Eの表面についての座標情報に基づいて、支持部材400の方向X、Y、およびZに移動領域を設定する。高感度領域Gの位置およびサイズが、複数の変換器300を配置することによって決定される。対象物Eの表面についての座標情報および支持部材400での複数の変換器300の配置についての情報に基づいて、演算部710は、高感度領域Gが対象物Eの内側に形成された場合に測定を実行するよう移動領域を設定する。複数の変換器300の配置から決定される高感度領域Gのサイズおよび位置についての情報は、記憶部720にあらかじめ格納しても良い。この場合、演算部710は、記憶部720から読み出された高感度領域Gのサイズおよび位置についての情報および対象物Eの表面についての座標情報に基づいて移動領域を設定する。
図5Bに示すように、クロス(+)によって示された各測定位置で高感度領域Gの中心Oが対象物Eの内側に形成される場合に測定を実行するよう支持部材400の移動領域を設定することが望ましい。すなわち、本実施形態において、移動領域は、対象物Eが測定位置で半球状支持部材400の曲率中心に存在する場合に測定を行うよう設定されることが望ましい。
さらに、移動領域の最外周部に対応する高感度領域Gの中心が図5Bで示すように対象物Eの外縁部と整合する場合に測定を実行するよう移動領域を設定することが望ましい。
上記したように移動領域を設定することによって、たとえ移動領域が小さい場合でも、対象物E内の広い範囲で発生した光音響波を高感度に受信することが可能である。その結果、対象物の内側について取得した対象物情報は、広範囲で高い解像度を有する。移動領域が小さいので、測定時間全体を減らすことが可能である。
経路設定部としての演算部710は、移動領域における支持部材400の移動経路を必要に応じて設定することが可能である。
ここで、支持部材400を直線移動させ、図6Aに示すような円錐状対象物での円錐移動領域の方向に変化させる一例を説明する。円錐の断面は、高さ方向(方向Z)が異なる。円錐に於けるように各断面が異なる場合、図6Aに示すように、高感度領域Gのサイズを考慮する複数の層に対象物を分割することによって支持部材400の移動領域を設定することが望ましい。本実施形態において、移動領域は、3つの層L1、L2、およびL3に円錐状対象物を分割することによって設定される。図6Bから図6Dは、X−Y平面において、層L1からL3での支持部材400の移動からもたらされる高感度領域Gの中心の経路(一点鎖線)と、各測定位置での高感度領域G(点線円)とを示す。図6Eは、X−Z平面における、高感度領域Gの中心の経路と、各測定位置での高感度領域Gを示す。
対象物の表面についての座標情報ならびに高感度領域Gのサイズおよび位置に基づいて、演算部710は、図6B、図6C、図6D、および図6Eに示す、方向の変化の位置および移動経路を計算し、支持部材400が円錐状対象物に対して適切に移動する移動領域を設定する。
演算部710は、設定された移動領域内を光音響波の適切な測定位置として設定することができる。設定された移動領域内で、ある間隔で測定位置を設定することが可能である。すなわち、演算部710は、スキャナ500および光源100の駆動を制御することができ、測定位置をある間隔で提供する。
さらに、スキャナ500および光源100の駆動は、測定位置での高感度領域Gが重なるように制御されることが望ましい。すなわち、本実施形態において、高感度領域Gは球状であるので、パルス光は、支持部材400が高感度領域Gの半径と等しい距離だけ移動するまでに少なくとも一度は適用されることが望ましい。これは、支持部材400が高感度領域Gの半径と同等の距離を移動する間、受信信号が、少なくとも一度は取得されることを意味する。
光を照射してから次に光を照射するまで支持部材400が移動する距離が小さくなると、解像度がより均一になる。しかしながら、移動距離が短くなると(すなわち、移動速度が遅くなると)、全体的な測定時間が長くなる。したがって、必要に応じて、所望の解像度および測定時間を考慮して受信信号の取得の間の移動速度および時間間隔を設定することが望ましい。
S300:移動領域内で支持部材を動かし、移動領域における複数の位置で光音響波を受信することによって受信信号を取得するステップ
スキャナ500は、支持部材400を、S200で設定された移動領域内で測定が開始される第1の測定位置に移動する。この時、スキャナ500は、支持部材400についての座標情報を、コンピュータ700に次々に送信する。
スキャナ500から送信された支持部材400についての座標情報に基づいて、支持部材400が第1の測定位置にあると演算部710が決定した場合、演算部710は、光源100に光を発生させるように制御信号を出力する。光は、光学系200に誘導され、音響整合材800を介して対象物Eに照射される。対象物Eに照射された光は、対象物Eの内部によって吸収され、光音響波が生成される。この時点で、光が照射された場合の支持部材400についての座標情報が、スキャナ500からコンピュータ700に送られ、これが、第1の測定位置での支持部材400についての座標情報として、記憶部720に格納される。
複数の変換器300が、対象物Eの内部で発生し、音響整合材800の内側を伝搬する光音響波を受信し、受信信号として働く電気信号に変換する。
変換器300から出力された電気信号は、コンピュータ700に送信され、第1の測定位置情報と関連付けられ、第1の測定位置に対する電気信号として記憶部720に格納される。
次に、スキャナ500は、S200で設定された移動領域内の第1の測定位置とは異なる第2の測定位置に、支持部材400を移動する。その場合、支持部材400が第2の測定位置にある場合、第1の測定位置で実行された測定と同じ動作が実行され、第2の測定位置に対する電気信号が取得される。その後、上記したものと同じ動作を実行することによって、電気信号は、S200で設定された移動領域内に設定された他の全ての測定位置に対して取得される。
このステップでは、光音響波は、高感度領域Gが測定位置で対象物Eと重なる場合に生成される。したがって、これらの測定位置のいずれかで取得された受信信号はまた、高感度に対象物Eの内側で生成された光音響波を複数の変換器300により受信した結果として出力される受信信号である。支持部材400の移動領域が、高感度領域Gが対象物Eに存在しない場合に光音響波を生成および受信しないように設定されるので、対象物Eの内側についての対象物情報の取得に寄与する受信信号を効率的に取得することができる。
S400:受信信号に基づく対象物情報を取得するステップ
情報取得部としての演算部710は、画像再構築アルゴリズムに基づいて、S300で取得した受信信号を処理することによって、対象物情報を取得する。
例えば、対象物情報を取得するための画像再構築アルゴリズムとして、トモグラフィー技術で通常使用されている時間領域法およびフーリエ領域法を含む逆投影法が使用される。再構築時間を長くすることが可能である場合、繰り返し動作に基づく逆問題解析などの画像再構築方法を使用することが可能である。
前述のように、S300で取得した受信信号は、対象物Eの内側で生成された光音響波を高感度に受信することによって取得される受信信号である。したがって、このステップでの対象物Eの内側についての対象物情報を正確に取得することが可能である。すなわち、このステップで取得された対象物Eの内側についての対象物情報の解像度および定量性は高い。
図6Aから図6Eでは、各断面が方向Zで異なる形状を例示しているが、円筒または角柱でのように方向Zで断面が変化しない場合に本実施形態を適用することも可能である。この場合、演算部710は、各段面に対して支持部材400の同じ移動領域を設定することができる。
図7Aから図7Cに示すように、高感度領域Gの中心が対象物Eの外縁部に沿って移動するように、支持部材400の移動領域および移動経路を設定することが可能である。図7Aは、対象物Eが高感度領域Gのサイズを考慮して方向Zに複数の層に分割された場合を例示する。図7Bは、各層での高感度領域Gの中心の経路と、各測定位置での高感度領域Gを示す。図7Cは、XZ平面における、高感度領域Gの中心の経路と、各測定位置での高感度領域Gの位置を示す。この場合でも、光音響波は、対象物が存在しない領域に高感度領域が存在する場合、受信されない。したがって、対象物の内側についての高解像度対象物情報を取得する際に使用された受信信号を効率的に取得することが可能である。
上記のように、対象物の表面についての座標情報に基づいて、本実施形態にかかる光音響装置は、高感度領域が対象物の位置に存在する場合に光音響波を受信するように支持部材が動かされる移動領域を判断する。これにより、対象物が存在する領域から生成された光音響波を優先的に受信することが可能になる。すなわち、対象物が存在する領域に対する対象物情報の解像度を高めるために受信信号を効率的に取得することが可能である。
第2の実施形態
第2の実施形態において、支持部材400の移動領域が対象物情報を取得すべき領域(以下、「関心領域」と称する)についての座標情報から設定される一例を説明する。本実施形態によれば、関心領域で生成された光音響波を優先的に受信することが可能である。すなわち、関心領域に対する対象物情報の解像度を高めるために受信信号を効率的に取得することが可能である。対象物全体が第1の実施形態における関心領域に対応すると考えることが可能である。
図1で示した光音響装置を使用して関心領域についての座標情報に基づいて移動領域を設定することによって関心領域の内側に対する対象物情報を取得する方法を以下に説明する。
まず、関心領域設定部としての演算部710は、関心領域を設定し、関心領域についての座標情報を取得する。
例えば、ユーザは、入力部1000を使用して関心領域についての情報を入力し、入力情報は、コンピュータ700に送信される。次に、演算部710は、関心領域についての入力情報に基づいて関心領域を設定し、関心領域についての座標情報を取得する。つまり、表示部900に表示された対象物の画像の中から、ユーザは、入力部1000を使用して関心領域になる領域を特定する。これにより、入力部1000を使用して特定された領域を、関心領域としてコンピュータ700に送信することが可能となる。ここで、コンピュータ断層撮影(CT)装置および磁気共鳴撮像(MRI)装置などの、光音響装置、超音波診断装置、およびさまざまな画像形成装置で、表示部900に表示された対象物の画像を取得することが可能である。画像形成装置を使用して取得された対象物の画像は、対象物の内側の画像であろう。
しかしながら、画像形成装置は、光音響装置を使用する測定の状態とは異なる(対象物の形状などの)測定状態で測定を実行する可能性がある。この場合、演算部710は、表示部900に表示される対象物の画像の座標を、本実施形態にかかる光音響装置によって取得することができる画像の座標に変換することが望ましく、または演算部710は、画像形成装置によって取得された画像に基づいて特定された関心領域についての座標情報を、本実施形態にかかる光音響装置によって取得することができる画像についての座標情報に変換することが望ましい。
あるいは、演算部710は、画像形成装置によって取得された画像から観測すべき部分の領域を抽出し、この領域を関心領域として設定してもよい。例えば、演算部710は、観測すべき部分の構造に関して高い類似性を有する領域が関心領域であると決定し、この領域を関心領域として設定し、この領域についての座標情報を取得することが可能である。つまり、対象物が胸部である場合、胸部の上方内側部分(領域A)、胸部の下方内側部分(領域B)、胸部の上方外側部分(領域C)、胸部の下方外側部分(領域D)、乳輪の下方部分(領域E)、および胸部の腋窩尾(領域C’)の通常構造についてのデータを使用して関心領域を設定することが可能である。まず、入力部1000を使用して、ユーザは、ユーザが胸部のこれら複数の部分から観測したい部分についての情報を入力する。次に、演算部710が、胸部のその部分についての入力構造データと、画像形成装置によって取得された画像との間の類似性に関する情報を取得し、高い類似領域を関心領域として設定することができる。
例えば、腫瘍が存在する領域または腫瘍が存在する可能性のある領域がすでに分かっている場合、これらの領域は、時間と共に繰り返し測定され、例えば、薬がもたらす変化および時間による変化の観点から、比較評価が通常実行される。そのような変化が比較評価の対象となる部分が関心領域として定義された場合、演算部710は、画像形成装置によって以前に取得された比較評価の対象となる部分についての構造データと、画像形成装置によって取得された画像との間の類似性に関する情報を取得し、高い類似領域を関心領域として設定することができる。このようにして関心領域を設定することにより、同じ関心領域が繰り返し測定される場合の位置の再現性を向上することが可能である。
次に、移動領域設定部としての演算部710は、設定された関心領域についての座標情報に基づいて支持部材400の移動領域を設定する。この時、演算部710は、関心領域についての座標情報に基づいて、高感度領域Gが、関心領域の内側に形成されるように支持部材400の方向X、Y、およびZに移動領域を設定する。高感度領域Gの位置およびサイズが、複数の変換器300の配置によって決定される。そして、関心領域についての座標情報および支持部材での複数の変換器300の配置についての情報に基づいて、演算部710は、高感度領域Gが関心領域の内側に形成されるように移動領域を設定することができる。複数の変換器300の配置から決定される高感度領域Gのサイズおよび位置についての情報は、記憶部720にあらかじめ格納することができる。この場合、演算部710は、記憶部720から読み出された高感度領域Gのサイズおよび位置についての情報および関心領域についての座標情報に基づいて移動領域を設定してもよい。
各測定位置での高感度領域Gの中心Oが関心領域の内側に設けられた場合に測定が実行されるよう支持部材400の移動領域が設定されることが望ましい。すなわち、本実施形態において、移動領域は、関心領域が各測定位置での半球状支持部材400の曲率中心に存在する場合に測定が実行されるよう設定されることが望ましい。
さらに、移動領域の外縁部に対応する高感度領域Gの中心が関心領域の外縁部と一致する場合に測定が実行されるよう移動領域を設定することが望ましい。
上記のように、支持部材が関心領域で発生する光音響波を高感度領域に測定するために動かされる移動領域は、関心領域についての設定された座標情報に基づいて決定される。したがって、関心領域で発生する光音響波を高感度に効率的に取得することが可能である。
第3および第4の実施形態において、設定された移動領域内で支持部材400を適切に移動する例示的方法を以下で説明する。第3および第4の実施形態において、支持部材400を連続的に動かして光を周期的に照射することによって光音響波が等しい間隔で受信される場合を説明する。しかしながら、光音響波を受信するタイミングは、支持部材400の移動速度および光放出タイミングを変えることによって、必要に応じて、設定することができる。便宜上、第3および第4の実施形態で使用する図において、各測定位置での高感度領域Gは示さない。
第3の実施形態
第3の実施形態にかかる光音響装置について、図1に示した第1の実施形態にかかる光音響装置を使用して以下に説明する。
第3の実施形態において、スキャナ500は、支持部材400を円形移動させる。本実施形態における「円形移動」という用語は、円形移動および楕円移動と類似した曲線移動を意味する。
半球面または円錐面などの湾曲面を有する移動領域が設定され、複数の高感度領域が湾曲面に存在するよう支持部材400を移動した場合、円形移動が、第1の実施形態で説明した線形移動よりも適切である。すなわち、胸部などの、形状が円錐形状または半球形状である対象物を測定する場合、複数の高感度領域が対象物の外部形態に沿って設けられるように移動領域が設定される場合に、支持部材400が線形移動より円形移動をすることが望ましい。入力部1000が湾曲面を有する関心領域についての情報を入力することができるように光音響装置を形成した場合、支持部材400が線形移動より円形移動をすることが同様に望ましい。これは、支持部材400を線形移動する際に、高感度領域が湾曲面に存在するよう測定を実行する試みがなされた場合、何度も方向を変えることによって測定が実行される必要があり、その結果、測定時間が長くなるためである。演算部710は、高感度領域のサイズおよび移動領域の外縁部の曲率に基づいて、支持部材400を線形移動させるか、円形移動させるかを決定することができる。しかしながら、移動領域が湾曲面を含むものであっても、測定位置での高感度領域が1回の線形移動で移動領域全体を含む場合、スキャナ500は、支持部材400を線形移動しても良い。
支持部材400の容器を満たす音響整合材800は、支持部材400の移動のため、慣性力を受ける。支持部材400が線形移動する場合、方向が繰り返し変化する場合に、音響整合材800は、慣性力による液体レベルの変化の結果、泡状になる可能性がある。したがって、対象物Eと複数の変換器300との間の位置は、音響整合材800で満たされない可能性がある。対照的に、支持部材400が円形移動する場合、音響整合材800は、常に円形移動の外縁方向に力を受ける。したがって、方向が繰り返し変化する線形移動による形成された移動パターンに比べて、円形移動により、液体レベルを徐々に変化することが可能になる。したがって、対象物Eと複数の変換器300との間の音響整合が容易になる。
支持部材400の円形移動の回転軸は、移動領域により変化する可能性がある。すなわち、移動領域により、演算部710は、支持部材400の円形移動の回転軸が移動領域の中心を通るように移動経路を設定することが望ましい。
支持部材400の特定の円形移動の一例を以下で説明する。
複数の高感度領域が図8に示す円筒形状を有する対象物Eの外部形態に沿って存在するよう移動経路を設定した場合にスキャナ500が支持部材400を円形状に移動する一例を説明する。高さ方向(方向Z)の円筒の断面は同じである。この場合、スキャナ500は、支持部材400が円筒の高さ方向に移動する間、支持部材400が回転軸として定義される円筒の中心を通る方向Zの軸と同じ回転半径で円形移動するらせん移動を支持部材400にさせることが望ましい。図8における点線は、支持部材400が移動する場合の高感度領域Gの中心の経路を示す。対象物Eの表面についての座標情報および高感度領域Gのサイズに基づいて、演算部710は、図8に示す高感度領域Gの移動経路を計算し、円筒状対象物に対して適切な支持部材400の移動領域を設定する。
断面が高さ方向で同じである対象物を測定する際、支持部材400を、対象物の表面についての座標情報に基づいて設定されたらせん移動をさせることによって小さな移動距離で受信信号を取得することが可能である。支持部材400が線形移動し、方向が変化する場合と異なり、移動がらせん移動である限り、円筒状対象物Eに対して支持部材400を連続的に移動させることが可能である。これにより、受信信号を取得するのに必要な時間をさらに減らすことが可能になる。
円筒状の移動領域以外の移動領域に対して支持部材400をらせん状に動かすことが可能である。例えば、支持部材400を、例えば、高さ方向の断面積が同じであるプリズムの形状と同様の形状を有する移動領域に対して、らせん状に動かすことが可能である。
次に、断面が高さ方向で変化する形状を有する移動領域に複数の高感度領域が存在するよう支持部材400を移動する場合に適切な円形移動の一例を説明する。
図9で示す半球状対象物Eの高さ方向(方向Z)の断面は変化する。この場合、高感度領域Gのサイズを考えると、支持部材400を、半球の高さ方向に移動している間、さまざまな回転半径を有する円形移動をさせる3次元スパイラル移動を支持部材400にさせることが望ましい。図9における点線は、支持部材400が移動する場合の高感度領域Gの中心の経路を示す。
ここで、支持部材400が同じ速度でスパイラル移動する場合、支持部材400は半径が大きい外縁部から移動を開始して、円形移動の半径が、支持部材400が移動するにつれて小さくなることが望ましい。そのような移動により、対象物Eの内側で発生した光音響波を高感度に効率的に受信することが可能になる。さらに、音響整合材800が外縁方向で受ける力を徐々に変化することが可能である。前述のように、音響整合材800に印加された力が徐々に変化する場合、音響整合材800の波面の変化は小さく、音響整合が容易になる。
支持部材400に、半球状移動領域以外の移動領域でスパイラル移動させることが可能である。例えば、支持部材400に、例えば、断面が高さ方向に変化する円錐またはピラミッドと同様の形状を有する移動領域でスパイラル移動させることも可能である。
対象物Eの形状および高感度領域Gのサイズにより1つの平面でのみ支持部材400を移動させるために、支持部材400は、2次元スパイラル移動をしてもよい。
第4の実施形態
第4の実施形態にかかる光音響装置について、図1に示した第1の実施形態にかかる光音響装置を使用して以下に説明する。
第4の実施形態において、スキャナ500が支持部材400に複数の円形移動の組み合わせをさせる場合を説明する。本実施形態においても、「円形移動」という用語は、円形移動および楕円移動と類似した曲線移動を意味する。
第3の実施形態で説明したらせん移動およびスパイラル移動では、高感度領域が存在しない領域は、高感度領域Gが移動領域に対してかなり小さくなる場合に大きくなる。したがって、高感度領域が存在しない領域で生成された光音響波の受信信号を高感度に受信することが困難になる。その結果、取得した対象物情報の解像度に不規則性が生じる。例えば、高感度領域Gの中心が対象物の外縁部に沿って動かされた場合、外縁部の内側の高感度領域が存在しない領域は、大きくなるであろう。
したがって、本実施形態において、支持部材400は、高感度領域Gが移動領域の内側の広範囲の領域に存在するよう、複数の円形移動の組み合わせをさせられる。したがって、支持部材400が1つの円形移動をさせられる場合と比較して、移動領域内の広範囲で生成された光音響波を高感度に受信することが可能である。その結果的、取得した対象物情報の解像度に生じる不規則性が低減される。
図10Aおよび図10Bは、支持部材400が円筒状対象物Eで複数のらせん移動をさせられる場合を示す。図10Aおよび図10Bにおける点線は、支持部材400が移動する場合の高感度領域Gの中心の経路を示す。
まず、スキャナ500が、支持部材400に、複数の高感度領域が対象物の外縁部に存在するよう、第1のらせん移動をさせる(図10A)。前述のように、支持部材400が前述のように移動するのみである場合、不規則性が対象物情報の解像度に生じるであろう。
次に、対象物の内側の解像度での不規則性を減らすために、スキャナ500は、支持部材400に、回転半径が第1のらせん移動の回転半径とは異なる第2のらせん移動をさせる(図10B)。これにより、高感度領域も円筒状対象物の内側に存在し、対象物情報の解像度における不規則性を減らすよう、支持部材400を動かすことが可能になる。
図10Aおよび図10Bに示すように、円筒の上面から第1のらせん移動を開始し、第1のらせん移動により支持部材400が円筒の底面にある場合に第2のらせん移動に切り替えることによって、第1のらせん移動と第2のらせん移動との間を円滑に切り替えることが可能である。すなわち、第1のらせん移動と第2のらせん移動とは、連続することができる。これにより、測定時間を減らし、音響整合材800の波面の変化を減らすことが可能となる。
支持部材400に、例え、高さ方向の断面積が同じ角柱と類似した形状を有する移動領域であっても、複数のらせん状移動をさせることが可能である。
図11Aおよび図11Bは、支持部材400に、断面が移動領域の高さ方向(方向Z)に変化する円錐状対象物Eで複数の3次元スパイラル移動をさせた一例を示す。複数の高感度領域Gで円錐内の領域を均一に測定するために、まず、図11Aに示すように、支持部材400の位置を、第1のスパイラル移動で動かす。次に、図11Bに示すように、支持部材400の位置を、第1のスパイラル移動が行われた領域とは異なる領域で第2のスパイラル移動で動かす。図11における点線は、支持部材400が移動するときの高感度領域Gの中心の経路を示す。図示した例において、円錐の内側の外縁部側の領域が、第1のスパイラル移動に基づいて測定され、円錐の内側の中心側の領域が、第2のスパイラル移動に基づいて測定される。図11Aおよび図11Bに示すように、円錐の底部から第1のスパイラル移動を開始して、円錐の頂点で第2のスパイラル移動に切り替えることによって、第1のスパイラル移動と第2のスパイラル移動との間を連続的に円滑に切り替えることが可能である。このようにして、対象物の表面についての座標情報と高感度領域Gのサイズとに基づいて、演算部710は、図11Aおよび図11Bに示した移動経路を計算し、支持部材400が円錐状対象物Eに対して適切に移動する移動領域を設定する。
支持部材400をこのようにして複数のスパイラル移動させることにより、支持部材400が1つのらせん移動をする場合と比較して、対象物の内側の広範囲から生成された光音響波を高感度に受信することが可能となる。
支持部材400に、円錐移動領域以外の移動領域で複数のスパイラル移動をさせることが可能である。
図12Aおよび図12Bは、回転半径が方向Zに向かって「大から小」に変化するスパイラル移動および回転半径が方向Zに向かって「小から大」に変化するスパイラル移動が複数回繰り返されて、支持部材400を動かす場合を説明して示す。図12Aおよび図12Bにおける点線は、支持部材400が移動する場合の高感度領域Gの中心の経路を示す。
支持部材400をそのようにスパイラル移動させることにより、支持部材400が1つのらせん移動をする場合と比較して、対象物の内側の広範囲から生成された光音響波を高感度に受信することが可能となる。例えば、スパイラル移動の回転半径が大きい場合、高感度領域は、スパイラル移動の中心付近に存在しないであろう。したがって、スパイラル移動の回転半径が小さい場合の高感度領域が、回転半径が大きい場合のスパイラル移動の中心付近と重なるよう、支持部材400を動かすことが望ましい。これにより、回転半径が大きい場合のスパイラル移動の中心付近で生成された光音響波を高感度に受信することが可能になる。
スパイラル移動の回転半径を「大から小」に変えたあと、スパイラル移動の回転半径を「小から大」に変えることによって、複数のスパイラル移動の間を連続的に円滑に切り替えることが可能になる。これにより、支持部材400の移動時間および測定時間を減らすことが可能になる。
対象物Eの表面についての座標情報に基づいて各スパイラル移動の回転半径を必要に応じて設定することによって、半球状移動領域以外の移動領域にも各スパイラル移動を適用することも可能になる。
図13Aおよび図13Bは、支持部材400に、回転半径が移動領域の外縁部の半径よりも小さい複数のらせん移動をさせる場合を示す。図13Aおよび図13Bにおける点線は、支持部材400が移動するときの高感度領域Gの中心の経路を示す。図14Aおよび図14Bは、支持部材400に、回転半径が移動領域の外縁部の半径よりも小さい複数のスパイラル移動をさせる場合を示す。図14Aおよび図14Bにおける点線は、それぞれ、支持部材400が移動するときの高感度領域Gの中心の経路を示す。図13Aから図14Bに示した場合では、半球状対象物Eに対して適切な半球状移動領域を想定する。
図13Aから図14Bでは、支持部材400は、複数のらせん移動の組み合わせを、または回転半径が移動領域の外縁部の半径よりも小さいスパイラル移動をさせられる。これらの場合によれば、支持部材400が1つのらせん移動または1つのスパイラル移動をさせられる場合と比較して、対象物の内側の広範囲から生成された光音響波を高感度に受信することが可能となる。
支持部材400に、複数のらせん移動の組み合わせ、または半球状移動領域以外の移動領域に対して回転半径が小さいスパイラル移動をさせることが可能である。
図14Aおよび図14Bでは、らせん移動の各深さに対する回転軸を変えることが可能である。これにより、移動量が小さいことによる複雑な移動領域に本発明を適用することも可能になる。
図15Aから図15Eは、支持部材400に、対象物Eの表面についての座標情報に基づいて、対応する面(XY平面)で異なる最外周径を有するスパイラル移動をさせる場合を示す。図15Aから図15Eにおける点線は、それぞれ、支持部材400が移動するときの高感度領域Gの中心の経路を示す。半球状対象物Eに対して適切な半球状移動領域を仮定する。
図15Aに示すように、対象物Eに対して適切な半球状移動領域は、3つの層、すなわち、層L1、L2、およびL3に分割される。
図15Bは、層L1での高感度領域Gの中心の経路を示す。層L1では、支持部材400は、2次元スパイラル移動の回転半径が半径方向に変化しつつ、移動領域の外側から移動領域の内側に向けて3つのスパイラル移動をさせられる。
図15Cは、層L2での高感度領域Gの中心の経路を示す。層L2では、支持部材400は、2次元スパイラル移動の回転半径が半径方向に変化しつつ、移動領域の内側から移動領域の外側に向けて2つのスパイラル移動をさせられる。このようにして、層L1の内側までの2次元スパイラル移動のあと、層L2の内側から2次元スパイラル移動を開始することによって、各層でのスパイラル移動を円滑に開始することが可能である。これにより、移動時間および測定時間が減る。
図15Dは、層L3での高感度領域Gの中心の経路を示す。層L3では、支持部材400は、2次元スパイラル移動の回転半径が半径方向に変化しつつ、移動領域の外側から移動領域の内側に向けて1つのスパイラル移動をさせられる。
支持部材400を各面で2次元スパイラル移動させることによって、支持部材400が1つの面で2次元スパイラル移動させられる場合と比較して、対象物の内側の広範囲から生成された光音響波を高感度に受信することが可能となる。
複数の2次元スパイラル移動を、半球状移動領域以外の移動領域に適用することも可能である。
上記のように本実施形態にかかる支持部材400を移動することによって、支持部材が移動領域で1つの円形移動をさせられる場合と比較して、対象物の内側の広範囲から生成された光音響波を高感度に受信することが可能となる。その結果、取得した対象物情報の解像度の不規則性が低減する。
スキャナ500が支持部材400を円形に動かすので、音響整合材800は、常に、円形移動の外縁部方向の力を受ける。したがって、音響整合材800の形状の変化は緩やかであり、対象物と変換器300との間の音響整合が容易になる。さらに、支持部材400が複数の円形移動を連続的にさせられる場合、音響整合材800に適用される外縁部方向の力は、さらに緩やかに変化することができる。したがって、対象物と変換器300との間の音響整合がさらに容易になる。
第5の実施形態
第5の実施形態において、支持部材400に配置された複数の変換器300の少なくともいくつかを撮像素子610として使用する一例を説明する。
変換器300は、高感度領域Gの中心に向くように配置される。これは、変換器300の有効な臨界角を制限し、高感度領域Gの光音響波をより効率的に受信することを可能にする。
したがって、本実施形態において、図16で示すように配置された複数の変換器300のいくつかから音波を送信し、変換器300の少なくともいくつかによって送信された音波の反射波(エコー)を受信することが可能である。演算部710は、このようにして取得したエコーの受信信号からBモード画像を取得することができる。前述のように、このようにして取得したBモード画像に基づいて、演算部710は、画像処理によって対象物Eの表面についての座標情報を取得することが可能である。さらに、表示部900にBモード画像を表示させ、ユーザに入力部1000を使用してBモード画像に対象物Eの外部形状を明示させることによって、対象物Eの表面についての座標情報を取得することが可能である。この構造により、ハードウェアを追加することなく、対象物の表面についての座標情報を取得することが可能になる。
複数の変換器300のいくつかを撮像素子610として使用する場合、変換器300の受信方向が高感度領域Gの中心に向かうので、高感度領域以外の領域で生成されたエコーに対する受信感度Gは低くなる。したがって、高感度領域G以外の領域でのBモード画像の品質は低くなる。したがって、Bモード画像に基づいて、対象物E全体の表面についての座標情報を正確に取得することは困難である。
したがって、図16に示すように、複数の変換器300のいくつかを、高感度領域Gの中心の代わりに高感度領域G以外の領域に向くよう配置しても良い。この構成により、対象物E全体の表面についての座標情報を正確に取得することが可能になる。特に、支持部材400が対象物Eより大きい場合(例えば、支持部材400が形状維持部より大きい場合)、Z軸の負側に向くよう複数の変換器300のいくつかを配置することにより、対象物E全体の表面についての座標情報を取得することがより容易になる。
本実施形態において、図16に示すように、対象物である胸部Eを入れる穴のZ軸に沿って存在する変換器300が、Z軸の負側に向くように配置される。図16では、複数の変換器300の中の、あるX−Z平面内の変換器のみがZ軸の負側に向いているとして示され、胸部Eを入れる穴のZ軸に沿って存在する変換器の全てが、Z軸の負側に実際には向いている。これらの変換器は、Bモード画像を取得するために使用される。
しかしながら、一般的には、形状維持部1100での音波速度と音響整合材800での音波速度は互いに異なるので、変換器300から送信された音波は、形状維持部1100と音響整合材800との間の界面で屈折する。
図17は、形状維持部1100と音響整合材800との間の音波の屈折の詳細を示す。本実施形態において、形状維持部1100での音波速度が音響整合材800での音波速度より速い場合を説明する。
形状維持部1100の外側境界面1740の点Dに角度θiで入射する音波1710は、角度θtで、形状維持部1100の内部に屈折する。次に、形状維持部1100の内側境界面1750の点D’に角度(θt+α)で入射する音波1720は、角度θoで、形状維持部1100の内側に向けて屈折する(図17上側)。次に、屈折音波1730は、音響整合材800の内部を通って伝わる。点Dと曲率中心1760を結ぶ直線および点D’と曲率中心1760を結ぶ直線により形成される角度がαである。
これらの関係は、スネルの法則により、数式(2)および数式(3)によって表される。
数式(2)および数式(3)から、数式(4)を導出することができる。
図17では、0<α<90度および0<(α+θ
t)<90度であるので、数式(4)は、数式(5)によって表された以下の関係を有する。
したがって、数式(6)によって表された関係を取得することが可能である。
すなわち、形状維持部1100の内側(図17における上側)で、形状維持部1100の外側(図17における下側)から入射する音波は、入射角より大きい角度で屈折する。したがって、移動領域は、この屈折を考慮することなく取得された受信信号から取得された対象物の表面についての座標情報に基づいて設定される場合、実際の対象物のサイズより大きい領域が移動領域として設定される。
したがって、図17に示すように、受信方向がZ軸の負側に向いている場合、演算部710は、数式(2)および数式(3)でのスネルの法則に基づいてBモード画像を取得する。これにより、演算部710は、実際の対象物の形状に近似するBモード画像を取得することができる。さらに、実際の対象物の形状に近似するBモード画像に基づく画像処理によって対象物の表面についての座標情報を取得することによって、実際の対象物の形状に近似する対象物の表面についての座標情報を取得することが可能である。このようにして取得した対象物の表面についての座標情報に基づき、演算部710は、実際の対象物のものに近似する形状により移動領域を設定することができる。
Bモード画像から対象物の表面についての座標情報を、音波の屈折を考慮せずに取得した場合を考える。この場合、スネルの法則に基づく画像処理によって、演算部710は、対象物領域として設定されているBモードによって指示された対象物より小さい領域で対象物の表面についての座標情報を取得することができる。これによれば、屈折により、たとえ実際の対象物の形状より大きな対象物のBモード画像が得られたとしても、屈折を考慮した実際の対象物の形状による移動領域を設定することが可能である。
本実施形態において、形状維持部1100での音波速度が音響整合材800での音波速度より速い場合を説明する。本実施形態はまた、形状維持部1100での音波速度が音響整合材800での音波速度より遅い場合にも適用可能である。すなわち、形状維持部1100での音波速度が音響整合材800での音波速度より遅い場合、スネルの法則に基づいて上記したものと同様の屈折を考慮した修正を行うことが可能である。
さらに、数式(7)または数式(8)を満たす場合、形状維持部1100の外側境界面1740での、または内側境界面1750での送信音波の総反射が問題になる。
したがって、音波を送受信する変換器300から送信された音波が、形状維持部1100の外側境界面1740で、または内側境界面1750で、全反射されないよう変換器300を配置することが望ましい。この構成によれば、送信された音波が、全反射されることなく対象物の表面に到達することが可能である。したがって、対象物を含むBモード画像を取得することが可能である。
さらに、形状維持部1100の外側境界面1740での全反射を減らすために、音波を送受信する各変換器300の受信方向(指向軸)が、形状維持部1100の湾曲面に垂直な方向に配置されることが望ましい。この場合、形状維持部1100での屈折が低減されるので、たとえ屈折を考慮しない場合でも、演算部710は、実際の対象物の形状に近似するBモード画像を取得することができる。したがって、実際の対象物の形状に応じた移動領域は、追加の処理動作を行うことなく、取得したBモード画像に基づいて設定することができる。
他の実施形態
本発明の実施形態はまた、システムまたは装置のコンピュータが記憶媒体(例えば、非一時的コンピュータ読込み可能記憶媒体)に記録されたコンピュータ実行可能命令を読み出し、実行し、本発明の上記した実施形態の1つまたは複数の機能を行うことによって、および、例えば、システムまたは装置のコンピュータが記憶媒体からコンピュータ読み実行可能命令を読み出し、実行して、上記した実施形態の1つまたは複数の機能を行うことにより実行される方法によって、実現することができる。コンピュータは、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセシング装置(MPU)、または他の回路の1以上を備え、別々のコンピュータまたは別々のコンピュータプロセッサのネットワークを含んでも良い。コンピュータ実行可能命令は、例えば、ネットワークまたは記憶媒体からコンピュータに供給されても良い。記憶媒体は、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、分散演算システムの記憶部、(コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、またはBlu−ray(登録商標)ディスク(BD)(商標)などの)光学ディスク、フラッシュメモリデバイス、およびメモリカードなどの1以上を含んでも良い。
本発明は例示的実施形態を参照して説明したが、本発明は、開示した例示的実施形態に限定されないことが理解されたい。添付の特許請求の範囲の範囲は、全てのそのような変形例ならびに同等の構造および機能を包含するよう広く解釈されるべきである。
本出願は、2013年9月4日に出願された米国仮特許出願第61/873542号および2013年10月31日に出願された米国仮特許出願第61/898025号の利益を請求し、これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。