JP2017183466A - Czts化合物薄膜太陽電池用部材及びczts化合物薄膜太陽電池並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光吸収層を構成している半導体の結晶粒が大きく、かつ、高い光電変換効率を有するCZTS化合物薄膜太陽電池を、低コストで製造可能とする。
【解決手段】本発明のCZTS化合物薄膜太陽電池用部材の製造方法は、基板上に設けられた電極層上に、銅と、亜鉛と、錫と、硫黄及びセレンの少なくとも一方とを含む非晶質粒子を含んだ分散液を塗工して、前記非晶質粒子からなる前駆体層を形成する工程と、焼結炉内で、前記電極層上に形成した前記前駆体層と、固体硫黄と、固体セレンとを、400乃至650℃の範囲内の熱処理に供して、前記前駆体層の反応生成物として光吸収層を得る工程とを含み、前記熱処理は、第1期間において硫黄蒸気を発生させ、前記第1期間に続く第2期間において、前記第1期間と比較してより高い昇温レートで前記焼結炉内の温度を昇温させ、前記第2期間に続く第3期間において、前記第2期間と比較して昇温レートを低め、この状態でセレン蒸気を発生させることを含む。
【選択図】図4
【解決手段】本発明のCZTS化合物薄膜太陽電池用部材の製造方法は、基板上に設けられた電極層上に、銅と、亜鉛と、錫と、硫黄及びセレンの少なくとも一方とを含む非晶質粒子を含んだ分散液を塗工して、前記非晶質粒子からなる前駆体層を形成する工程と、焼結炉内で、前記電極層上に形成した前記前駆体層と、固体硫黄と、固体セレンとを、400乃至650℃の範囲内の熱処理に供して、前記前駆体層の反応生成物として光吸収層を得る工程とを含み、前記熱処理は、第1期間において硫黄蒸気を発生させ、前記第1期間に続く第2期間において、前記第1期間と比較してより高い昇温レートで前記焼結炉内の温度を昇温させ、前記第2期間に続く第3期間において、前記第2期間と比較して昇温レートを低め、この状態でセレン蒸気を発生させることを含む。
【選択図】図4
Description
本発明は、CZTS化合物薄膜太陽電池用部材及びCZTS化合物薄膜太陽電池並びにそれらの製造方法に関する。
CZTS系のp型半導体(Cu2ZnSnS4、Cu2ZnSnSe4、Cu2ZnSn(S,Se)4等)から構成される層を光吸収層として有する化合物薄膜太陽電池が知られている(例えば、特許文献1参照)。CZTS系の化合物半導体は、直接遷移型の半導体である。そのため、CZTS化合物薄膜太陽電池、即ち、光吸収層がCZTS系の化合物半導体からなる化合物薄膜太陽電池は、間接遷移型の半導体であるSiで構成された光吸収層を備えるSi系太陽電池と比べて、光吸収係数が大きい。
更に、CZTS化合物薄膜太陽電池においては、光吸収層を構成する元素の組成を変更することによって、光吸収層を構成する化合物半導体のバンドギャップを変化させることができる。例えば、Cu2ZnSnSe4のバンドギャップは1.04eVであり、Cu2ZnSnS4のバンドギャップ1.53eVである。
つまり、CZTS化合物系半導体のバンドギャップは、硫黄の原子濃度ASとセレンの原子濃度ASeとの和に対する硫黄の原子濃度ASの比AS/(AS+ASe)(以下、カルコゲン比という)を調整することにより、簡単に変化させることができる。従って、カルコゲン比を最適化することにより、単接合太陽電池の光吸収層として適したバンドギャップを有する半導体を得ることが可能である。これについて、更に詳しく説明する。
単接合太陽電池の理論限界変換効率曲線は、バンドギャップが1.4eV付近であるときに光電変換効率の最大値(限界変換効率;約30%)を有していることが知られている。CZTS化合物薄膜太陽電池においては、Se原子の濃度が増加すると、すなわち、バンドギャップが小さくなる(カルコゲン比が0に近づく)と、欠陥が増加するため開放電圧VOCが低下する。そして、S原子の濃度が増加すると、すなわち、バンドギャップが大きくなる(カルコゲン比が1に近づく)と、光電変換に利用可能な波長域が減少するため短絡電流ISCが低下する。このため、CZTS化合物薄膜太陽電池においては、光吸収層を構成する半導体のカルコゲン比を0より大きく且つ1未満の範囲内で最適化することにより、そのバンドギャップを、高い光電変換効率を実現するのに適した値とすることができる。
このように、CZTS化合物薄膜太陽電池には、光吸収係数が大きい、及び、バンドギャップの調整が容易であるという特徴がある。
また、CZTS化合物薄膜太陽電池は、光吸収層がCuInSe2(CIS)やCdTeからなる他の化合物薄膜太陽電池と比べて、環境負荷が少ない点、及び、インジウムのような希少金属を含んでいない点で好ましい。
以上のような理由から、CZTS化合物薄膜太陽電池は、次世代の太陽電池として注目されている。
ところで、化合物薄膜太陽電池の光電変換効率には、光吸収層のバンドギャップだけでなく、その結晶性も影響を与える。非特許文献1には、真空プロセスである電子銃蒸着によって、亜鉛層と錫層と銅層との積層体からなる前駆体層を形成し、この前駆体層に対して硫化水素雰囲気中で熱処理を行うことによって、前駆体を硫化するとともに、CZTS系半導体の結晶性を改善することが記載されている。しかしながら、真空プロセスは、製造設備などの観点で、CZTS化合物薄膜太陽電池の低コスト化を妨げる。
真空プロセスに代えて、非真空プロセスを用いて光吸収層を形成する方法が提案されている。非真空プロセスを用いた形成方法は、高価な真空装置を必要としない製法であるため、真空プロセスを用いた形成方法と比べて、製造にかかるコストを低く抑えられる。なかでも、非特許文献2のようにCZTS系の化合物半導体からなるナノサイズの微粒子を用いるナノ粒子塗布法は、ヒドラジン等の危険性の高い物質を用いることなく光吸収層を形成することが可能であるため好ましい。ここで、ナノ粒子塗布法は、微粒子分散液の塗工によって前駆体層を形成し、前駆体層に対して熱処理を行って微粒子を焼結させることによって、光吸収層を形成する方法である。
H.Katagiri, J.Vac.Soc.Jpn., Vol.55,No.12(2012),548-555
Miskin, Prog. Photovolt: Res. Appl. 2015; 23:654-659
ナノ粒子塗布法により光吸収層を形成したCZTS化合物薄膜太陽電池は、光吸収層を構成している半導体の結晶成長が十分ではなく、光電変換効率が低い。
そこで、本発明は、光吸収層を構成している半導体の結晶粒が大きく、かつ、高い光電変換効率を有するCZTS化合物薄膜太陽電池を、低コストで製造可能とすることを目的とする。
本発明の第1側面によると、基板上に設けられた電極層上に、銅と、亜鉛と、錫と、硫黄及びセレンの少なくとも一方とを含む非晶質粒子を含んだ分散液を塗工して、前記非晶質粒子からなる前駆体層を形成する工程と、焼結炉内で、前記電極層上に形成した前記前駆体層と、固体硫黄と、固体セレンとを、400乃至650℃の範囲内の熱処理に供して、前記前駆体層の反応生成物として光吸収層を得る工程とを含み、前記熱処理は、第1期間において硫黄蒸気を発生させ、前記第1期間に続く第2期間において、前記第1期間と比較してより高い昇温レートで前記焼結炉内の温度を昇温させ、前記第2期間に続く第3期間において、前記第2期間と比較して昇温レートを低め、この状態でセレン蒸気を発生させることを含んだCZTS化合物薄膜太陽電池用部材の製造方法が提供される。
本発明の第2側面によると、第1側面に係る方法によりCZTS化合物薄膜太陽電池用部材を製造する工程と、前記光吸収層上にn型半導体からなるバッファ層を形成する工程と、前記バッファ層上に電極層を形成する工程とを含んだCZTS化合物薄膜太陽電池の製造方法が提供される。
本発明の第3側面によると、基板と、前記基板上に設けられた電極層と、前記電極層上に設けられた光吸収層とを備え、前記光吸収層は、銅と亜鉛と錫と硫黄とセレンとを含み、1.5μm以上の粒径を有する結晶粒を含有したCZTS化合物薄膜太陽電池用部材が提供される。
本発明の第4側面によると、第3側面に係るCZTS化合物薄膜太陽電池用部材と、前記光吸収層上に設けられ、n型半導体からなるバッファ層と、前記バッファ層上に設けられた電極層とを備えたCZTS化合物薄膜太陽電池が提供される。
本発明によれば、光吸収層を構成している半導体の結晶粒が大きく、かつ、高い光電変換効率を有するCZTS化合物薄膜太陽電池を、低コストで製造することが可能となる。
本発明の一実施形態に係る方法では、先ず、銅と、亜鉛と、錫と、硫黄及びセレンの少なくとも一方とを含んだ非晶質粒子を準備する。非晶質粒子は、好ましくはナノ粒子である。また、好ましくは、非晶質粒子はセレンを含む。
次に、この非晶質粒子を含んだ分散液を調製し、この分散液を、基板上に設けられた電極層上に塗工する。これにより、非晶質粒子からなる前駆体層を形成する。
その後、焼結炉内で、電極層上に形成した前駆体層と、固体硫黄と、固体セレンとを、400乃至650℃の範囲内の熱処理に供して、前駆体層の反応生成物として光吸収層を得る。この熱処理では、第1期間において硫黄蒸気を発生させ、第1期間に続く第2期間において、第1期間と比較してより高い昇温レートで焼結炉内の温度を昇温させ、第2期間に続く第3期間において、第2期間と比較して昇温レートを低め、この状態でセレン蒸気を発生させる。
この方法によると、銅と亜鉛と錫と硫黄とセレンとを含み、1.5μm以上の粒径を有する結晶粒を含有した光吸収層、例えば、結晶粒の平均粒径が1μm以上であり且つ1.5μm以上の粒径を有する結晶粒を含有した光吸収層が得られる。そのような光吸収層を備えた太陽電池は、高い光電変換効率を有し、スパッタ法や蒸着法などの真空プロセスにより製造された太陽電池と比較して、より低いコストで製造することができる。
本発明者らは、上述した方法によって結晶粒の大きな光吸収層が得られるのは、以下の理由によると考えている。
ナノ粒子塗布法における結晶成長は、液相成長ではなく、固体架橋と、その後の固体拡散とによって進行する。そして、硫黄雰囲気における加熱処理とセレン雰囲気における加熱処理とでは、前駆体の結晶化機構が異なることが知られている。
即ち、硫黄雰囲気中での熱処理では、核生成が進行しやすい一方で、結晶は大きくなり難い。具体的には、硫黄雰囲気中で熱処理を行った場合、前駆体が含んでいるCZTSeのセレンが、雰囲気中の硫黄で置換される。それと同時に、CZTSeの一部が分解し、ZnSの生成と、一部の錫の揮発とを生じる。
なお、セレンを含まず、硫黄を含んだ雰囲気中での熱処理によると、CZTSeが含んでいるセレンのほぼ100%が雰囲気中の硫黄で置換され得る。CZTSeが含んでいるセレンのほぼ100%が硫黄で置換されると、光吸収層の組成はCu2ZnSnS4に近づき(カルコゲン比が1に近づき)、バンドギャップは1.53eV程度となる。その結果、光電変換に利用可能な波長域が減少し、短絡電流Iscが低下する。
これに対し、セレン雰囲気中で熱処理を行った場合、セレンがフラックスとしてはたらき、結晶粒間で固体架橋することにより結晶成長が進む。従って、この場合、硫黄雰囲気中で熱処理を行った場合と比較して、結晶はより大きく成長する。特に、550℃以上の温度で熱処理を行うと、結晶が大きくなり易い。但し、セレン雰囲気中での熱処理では、光吸収層表面へのセレン化物の偏析や、雰囲気中及び膜内のSeが拡散(移動)して裏面電極と反応することによる高抵抗層の生成を生じ易い。
なお、Cu2ZnSnSe4のバンドギャップは1.04eVであるため、光吸収層がCu2ZnSnSe4からなる場合、高い開放電圧VOCは得られない。また、硫黄を含まず、セレンを含んだ雰囲気中での熱処理によると、CZTSeのセレンが雰囲気中の硫黄で置換されることは無いので、カルコゲン比の変化は生じない。
本実施形態では、上記の通り、焼結炉内に、前駆体層を形成した基板に加え、固体硫黄及び固体セレンを設置した状態で熱処理を行う。硫黄は、セレンと比較して低温で蒸発し易い。例えば、硫黄の蒸気圧は、約400℃で10Pa、約450℃で100Pa、約500℃で1kPa、約600℃で10kPaである。これに対し、セレンの蒸気圧は、約500℃で1Pa、約550℃で10Pa、約600℃で100Paである。そのため、昇温過程では、先ず、主に硫黄を含んだ雰囲気のもとで結晶が成長し、その後、セレンを含んだ雰囲気のもとで結晶が成長する。
但し、上記の通り、セレン雰囲気のもとでは、結晶成長を生じ易い反面で、セレン化物の偏析や高抵抗層の生成を生じ易い。それ故、硫黄とセレンとの双方を含んだ雰囲気中で長時間の熱処理を行った場合、セレン化物の偏析や高抵抗層の生成が顕著になる。このセレン化物は、結晶成長を妨げる。
また、上記の通り、硫黄雰囲気中で熱処理を行うと、錫の一部が揮発する。錫が活発に揮発している状況では、セレン蒸気の存在下で結晶を成長させようとしても、錫が揮発することによって生じる空洞が、結晶成長を妨げる。
それ故、例えば、一定の昇温レートで加熱を行った場合、所望の結晶成長を達成できない。
それ故、例えば、一定の昇温レートで加熱を行った場合、所望の結晶成長を達成できない。
これに対し、本実施形態では、上記の通り、第1期間において硫黄蒸気を発生させ、第1期間に続く第2期間において、第1期間と比較してより高い昇温レートで焼結炉内の温度を昇温させ、第2期間に続く第3期間において、第2期間と比較して昇温レートを低め、この状態でセレン蒸気を発生させる。
第1期間では、核生成を進行させる。また、第1期間では、CZTSeが含んでいるセレンの少なくとも一部を、雰囲気中の硫黄で置換する。硫黄によるセレンの置換の程度は、第1期間の長さ、第1期間における昇温カーブ、及び固体硫黄の量などに応じて、適宜設定可能である。従って、これを利用することにより、バンドギャップを所望の値に調整することができる。更に、第1期間では、一部の錫を揮発させる。これにより、第3期間における錫の揮発を低減する。なお、第1期間では、雰囲気はセレンを含んでいないか、又は、含んでいたとしてもその濃度は極めて低い。従って、セレン化物の偏析や高抵抗層の生成は殆ど生じない。
第2期間では、雰囲気中のセレン濃度が十分に高くなる温度にまで、短時間で昇温する。これにより、セレン化物の偏析や高抵抗層の生成を生じ得る期間を短くする。
なお、第1期間において、硫黄によるセレンの置換にほぼ全ての固体硫黄が消費された場合には、第2期間では、硫黄によるセレンの更なる置換は生じない。第1期間において、硫黄によるセレンの置換に一部の固体硫黄のみが消費された場合には、第2期間では、硫黄によるセレンの更なる置換を生じ得る。
第3期間では、結晶粒間で固体架橋を生じさせることにより結晶を成長させる。上記の通り、第1期間において、核生成が行われている。また、結晶成長を妨げるセレン化物は十分に少ない量に抑えられており、錫が活発に揮発することもない。それ故、第3期間では、短い時間で、結晶成長が効率的に進行する。
なお、第2期間を終了するまでに、硫黄によるセレンの置換にほぼ全ての固体硫黄が消費された場合には、第3期間では、硫黄によるセレンの更なる置換は生じない。また、第2期間を終了した時点において、硫黄によるセレンの置換に一部の固体硫黄のみが消費された場合には、第3期間では、硫黄によるセレンの更なる置換を生じ得る。但し、この場合、雰囲気は、硫黄蒸気だけでなく、セレン蒸気も含んでいるため、カルコゲン比の変化は穏やかである。
従って、この方法によると、結晶粒が大きな光吸収層が得られる。また、この方法では、第1乃至第3期間の長さ、昇温カーブ、並びに、固体硫黄及び固体セレンの量などに応じて、カルコゲン比を所望の値に設定可能することができる。
従って、この方法によると、結晶粒が大きな光吸収層が得られる。また、この方法では、第1乃至第3期間の長さ、昇温カーブ、並びに、固体硫黄及び固体セレンの量などに応じて、カルコゲン比を所望の値に設定可能することができる。
更に、この方法では、錫の揮発が活発に行われない状況下で結晶成長が進行するため、得られる光吸収層は緻密である。加えて、この方法では、セレン化物の偏析や高抵抗層の生成を生じ得る期間を短くすることができるため、これに基づく性能の低下も最小限とすることができる。
それ故、この方法を利用して得られるCZTS化合物薄膜太陽電池は、高い光電変換効率を有し得る。また、この方法は、非真空プロセスで光吸収層を形成できるため、低コストである。
即ち、この方法によると、光吸収層を構成している半導体の結晶粒が大きく、且つ、高い光電変換効率を有するCZTS化合物薄膜太陽電池を、低コストで製造することが可能となる。
次に、図面を参照して、CZTS化合物薄膜太陽電池用部材及びCZTS化合物薄膜太陽電池並びにそれらの製造方法の一実施形態を説明する。
[CZTS化合物薄膜太陽電池用部材の構成]
図1は、一実施形態に係るCZTS化合物薄膜太陽電池用部材を概略的に示す断面図である。
図1は、一実施形態に係るCZTS化合物薄膜太陽電池用部材を概略的に示す断面図である。
図1に示すCZTS化合物薄膜太陽電池用部材1は、基板11と、裏面電極12と、光吸収層13とを含んでいる。裏面電極12及び光吸収層13は、この順に、基板11上に設けられている。
基板11は、例えば、ガラス基板、金属板、及び、プラスチックフィルムなどの何れかである。
裏面電極12は、電極層の一例である。裏面電極12の材料は、例えば、Mo(モリブデン)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Ti(チタン)、Fe(鉄)、Al(アルミニウム)、チタニア、及び、ステンレスの何れかである。或いは、裏面電極12の材料は、グラファイト及びグラフェンなどの炭素から構成される材料であってもよいし、ITO(Indium Tin Oxide)及びZnOなどの導電性を有する透明な金属酸化物であってもよい。
光吸収層13は、p型化合物半導体の1つであるCZTS系の化合物半導体、すなわちCZTS半導体からなる。CZTS化合物半導体は、VIB族(16族)のS(硫黄)及びSe(セレン)の少なくとも1つの元素と、IB族(11族)のCu、IIB族(12族)のZn(亜鉛)、及び、IVB族(14族)のSn(スズ)の3つの元素とを含む化合物半導体である。すなわち、CZTS半導体は、IB2−(IIB−IVB)−VIB4で表される化合物半導体である。なお、ローマ数字とアルファベットとの組み合わせで表記した「族」は、短周期表型周期表における「族」である。また、アラビア数字で表記した「族」は、長周期表型周期表における「族」である。
光吸収層13は、不等式0.80≦ACu/(AZn+ASn)≦0.88、及び、不等式0.95≦AZn/ASn≦1.05で表される関係を満たす組成を有することが好ましい。光吸収層13は、不等式0.85≦ACu/(AZn+ASn)≦0.88、及び、不等式1.01≦AZn/ASn≦1.05で表される関係を満たす組成を有することがより好ましい。光吸収層13の組成比が上記範囲内であれば、光電変換効率が高められる。なお、ACu/(AZn+ASn)は、ZnとSnとの合計量に対するCuの量の原子比である。また、AZn/ASnは、Snの量に対するZnの量の原子比である。
光吸収層13の膜厚は、0.6乃至3μmの範囲内にあることが好ましい。
光吸収層13の膜厚は、0.6乃至3μmの範囲内にあることが好ましい。
[CZTS化合物薄膜太陽電池の構成]
図2は、一実施形態に係るCZTS化合物薄膜太陽電池を概略的に示す断面図である。
図2は、一実施形態に係るCZTS化合物薄膜太陽電池を概略的に示す断面図である。
図2に示すCZTS化合物薄膜太陽電池10は、図1に示すCZTS化合物薄膜太陽電池用部材1と、バッファ層14と、半絶縁層15と、窓層16と、表面電極17とを含んでいる。バッファ層14、半絶縁層15、窓層16、及び表面電極17は、この順に、CZTS化合物薄膜太陽電池用部材1上に設けられている。
バッファ層14は、n型化合物半導体からなる。バッファ層14の材料は、例えば、CdS、Zn(S,O,OH)、ZnS、ZnSe、及び、In2S3の何れかである。
半絶縁層15は、i型化合物半導体からなる。半絶縁層15の材料は、例えば、ZnOなどの金属酸化物である。
窓層16は、n型化合物半導体からなる。窓層16の材料は、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及びホウ素(B)などの不純物が添加されたZnO、並びにITOの何れかである。
表面電極17は、電極層の一例である。表面電極17は、窓層16の上面のうちの一部の上に位置している。表面電極17の材料は、例えば、Al及びAg(銀)などの金属である。或いは、表面電極17の材料は、グラファイト及びグラフェンなどの炭素から構成される材料であってもよいし、ITO及びZnOなどの導電性を有する透明な金属酸化物であってもよい。
なお、CZTS化合物薄膜太陽電池10は、上述した各層以外の他の層を有してもよい。化合物薄膜太陽電池10が他の層を有するとき、他の層は、例えば、窓層16の上に位置する反射防止膜である。反射防止膜の材料は、例えば、MgF2であり、反射防止膜の厚さは、100nm程度であることが好ましい。反射防止膜は、CZTS化合物薄膜太陽電池10に入射した光の反射を抑えるため、CZTS化合物薄膜太陽電池10が反射防止膜を有することによって、光吸収層13が、より多くの光を吸収することができる。また、他の層は、裏面電極12と光吸収層13との間に位置する中間層であって、CZTS化合物薄膜太陽電池10の光電変換効率を高めるための組成を有する層であってもよい。
[CZTS化合物薄膜太陽電池の製造方法]
図1及び図2を参照して、ナノ粒子塗布法によるCZTS化合物薄膜太陽電池の製造方法を説明する。
図1及び図2を参照して、ナノ粒子塗布法によるCZTS化合物薄膜太陽電池の製造方法を説明する。
CZTS化合物薄膜太陽電池用部材1の製造方法は、裏面電極12及び光吸収層13を、この順に、基板11上に形成することを含んでいる。CZTS化合物薄膜太陽電池10の製造方法は、バッファ層14、半絶縁層15、窓層16、及び表面電極17を、この順に、CZTS化合物薄膜太陽電池用部材1上に形成することを含んでいる。なお、以下の説明において、或る層の上面とは、その層の2つの主面のうち、表面電極17により近い面を意味している。
CZTS化合物薄膜太陽電池用部材1及びCZTS化合物薄膜太陽電池10の製造に際しては、先ず、裏面電極12を、例えば、スパッタリング、蒸着、又はCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて基板11の上面に形成する。
次に、裏面電極12の上面に、光吸収層13の前駆体としての非晶質粒子を含んだ分散液を塗工して、塗膜を形成する。続いて、この塗膜を乾燥させることで、塗膜から分散媒を除去する。これにより、非晶質粒子からなる前駆体層を得る。
非晶質粒子は、光吸収層13の構成元素から構成される微粒子である。非晶質粒子は、銅と、亜鉛と、錫と、硫黄及びセレンの少なくとも一方とを含んでいる。非晶質粒子は、セレンを含んでいることが好ましい。一例によれば、非晶質粒子は、銅と亜鉛と錫とセレンとからなる。
非晶質粒子は、例えばナノサイズの粒子である。非晶質粒子は、銅、亜鉛及び錫の各々の金属塩又は金属錯体を含む溶液と、カルコゲニド塩を含む溶液とを反応させることによって生成する。
金属塩又は金属錯体としては、例えば、CuI、CuSO4、Cu(NO3)2、Cu(CH3COO)2、ZnI2、ZnSO4、Zn(NO3)2、Zn(CH3COO)2、SnI2、SnSO4、及びSn(CH3COO)2などを用いることができる。 金属塩は、ハロゲン原子を含むことが好ましく、上記化合物のなかでも、CuI、ZnI2、及びSnI2から構成される群から選択される少なくとも1つを用いることが好ましい。
カルコゲニド塩としては、K2Se、Na2Se、K2S、Na2S、及び、これらの混合物などを用いることができる。なかでも、Na2Se及びNa2Sの少なくとも一方を用いることが好ましい。これらの化合物とヨウ化金属との反応の副生成物であるNaIは、有機溶媒への溶解度が高いため、反応溶液を遠心分離することなどにより、非晶質粒子から容易に分離することができる。
カルコゲニド塩としては、K2Se、Na2Se、K2S、Na2S、及び、これらの混合物などを用いることができる。なかでも、Na2Se及びNa2Sの少なくとも一方を用いることが好ましい。これらの化合物とヨウ化金属との反応の副生成物であるNaIは、有機溶媒への溶解度が高いため、反応溶液を遠心分離することなどにより、非晶質粒子から容易に分離することができる。
非晶質粒子を生成するための反応は、−67℃乃至25℃の温度で行うことが好ましく、−5℃乃至5℃の温度で行うことが更に好ましい。温度が上記範囲の下限値以上であれば、反応速度が遅くなりすぎないため、非晶質粒子の生成に要する時間を短縮できる。また、温度が上記範囲の上限値以下であれば、反応速度が速くなりすぎないため、生成される非晶質粒子の粒径を制御しやすい。
このように生成される非晶質粒子は、例えば、Cu2−xZn1+ySnSzSe4−z(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦4)の組成式で表される化合物からなる粒子である。
上記の分散液は、非晶質粒子として、上述の化合物に加えて、Cu2−xSySe2−y(0≦x≦1、0≦y≦2)、Zn2−xSySe2−y(0≦x≦1、0≦y≦2)、及びSn2−xSySe2−y(0≦x≦1、0≦y≦2)の組成式で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物の非晶質粒子を含んでいてもよい。或いは、上記の分散液は、非晶質粒子として、Cu2−xZn1+ySnSzSe4−z(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦4)の組成式で表される化合物の粒子に代えて、上述した群に含まれる3種類の化合物の粒子を含んでいてもよい。
上述した分散液が含有している粒子の平均粒径は、1乃至200nmであることが好ましく、1乃至100nmであることが更に好ましい。粒子の平均粒径が上記範囲の下限値以上であると、粒子が凝集しにくくなるため、分散液の調製が容易となる。一方、平均粒径が上記範囲の上限値以下であると、加熱によって形成された後の光吸収層13に空洞が形成されることが抑えられる。なお、粒子の平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて前駆体層を撮影し、全体が見えている粒子を選択し、それらの最短径を算術平均することにより得られる値である。
上記の通り、本実施形態では、非晶質粒子を使用する。結晶性粒子は、安定な状態にあるため、熱処理の際に、粒子に含まれる原子の移動を生じ難い。すなわち、熱処理による拡散を生じ難い。これに対し、非晶質粒子は、粒子を構成している成分が、熱処理によって拡散しやすい。そのため、非晶質粒子を用いることによって、光吸収層13の緻密性が高まる。なお、本実施形態における非晶質とはアモルファスを含む。
上記の分散液が含む粒子全体の組成は、不等式0.80≦ACu/(AZn+ASn)≦0.88、及び、不等式0.95≦AZn/ASn≦1.05に示す関係を満たすことが好ましい。この組成は、不等式0.85≦ACu/(AZn+ASn)≦0.88、及び、不等式1.01≦AZn/ASn≦1.05を満たすことがより好ましい。比ACu/(AZn+ASn)や比AZn/ASnは、粒子の生成に用いる、銅、亜鉛及び錫の金属塩又は金属錯体の混合比を調整することによって、所望の値とすることができる。
上記の分散液において、微粒子を分散させるために使用する分散媒は、有機溶剤であればよく、有機溶剤の種類は特に制限されない。微粒子を分散媒に分散(混合)して、分散液を得る。
有機溶剤は、例えば、アルコール、エーテル、エステル、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、及び、芳香族炭化水素などの何れかである。有機溶剤は、メタノール、エタノール、及びブタノールなどの炭素数が10未満であるアルコール;ピリジン;ジエチルエーテル;ペンタン;ヘキサン;シクロヘキサン;及びトルエンの何れかであることが好ましく、メタノール、ピリジン、トルエン、及びヘキサンの何れかであることがより好ましい。
有機溶剤は、例えば、アルコール、エーテル、エステル、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、及び、芳香族炭化水素などの何れかである。有機溶剤は、メタノール、エタノール、及びブタノールなどの炭素数が10未満であるアルコール;ピリジン;ジエチルエーテル;ペンタン;ヘキサン;シクロヘキサン;及びトルエンの何れかであることが好ましく、メタノール、ピリジン、トルエン、及びヘキサンの何れかであることがより好ましい。
分散液には、塗膜のレベリング性を高めるために、バインダを更に含有させることが好ましい。分散液のバインダ含有量は、分散液が含む粒子の質量100質量部に対して5乃至70質量部であることが好ましく、20乃至60質量部であることがより好ましい。分散液のバインダ含有量が上記範囲の下限値以上であることによって、空洞を有する光吸収層13が形成されることが抑えられる。また、分散液のバインダ含有量が上記範囲の上限値以下であることによって、光吸収層13の表面粗さが大きくなることが抑えられる。
バインダは、例えば、チオール有機物、セレノール有機物、及び、炭素数が10以上であるアルコール類などである。また、バインダは、Se粒子、S粒子、Se化合物、及びS化合物などであってもよいし、硫化ナトリウム、セレン化ナトリウム、セレン化カリウム、セレン酸ナトリウム、及びチオ硫酸塩などであってもよい。これらのうち、バインダは、チオール有機物であることが好ましく、チオ尿素であることがより好ましい。バインダとして有機化合物を用いた場合、光吸収層13には、光吸収層13の全体に対して0.3原子%〜0.5原子%程度の微量の炭素が残留する。
分散液の塗工方法は、塗布法又は印刷法であればよい。塗布法は、例えば、ドクター法、スピンコーティング法、スリットコーティング法、及びスプレー法などである。印刷法は、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、反転オフセット印刷法、及び凸版印刷法などである。
上述した前駆体層は、熱処理に供する。前駆体層の熱処理工程では、前駆体層に熱を与えることによって、前駆体層に含まれる多数の非晶質粒子の結晶化を進行させ、粒子を焼結させる。これにより、光吸収層13を形成する。
前駆体層の熱処理は、固体硫黄及び固体セレンを収容した焼結炉内で行う。熱処理は、焼結炉内に、焼結助剤としての粉末状のスズやSnSeやSnSを更に収容させた状態で行ってもよい。
焼結炉内の雰囲気は、水素ガス、N2ガスなどの不活性ガス、又はそれらの混合ガスからなることが好ましい。水素ガスの爆発下限値は4.1体積%であるため、前駆体層を、水素と不活性ガスとを含む雰囲気中で熱処理するときには、雰囲気中に含まれる水素の割合は4体積%以下であることが好ましい。雰囲気中に含まれる水素の割合が4%体積以下であるとき、引火や爆発などの危機を避けることができる。
熱処理は、400乃至650℃の範囲内の温度で、好ましくは480乃至650℃の範囲内の温度で行う。そして、上記の通り、この熱処理は、第1期間において硫黄蒸気を発生させ、第1期間に続く第2期間において、第1期間と比較してより高い昇温レートで焼結炉内の温度を昇温させ、第2期間に続く第3期間において、第2期間と比較して昇温レートを低め、この状態でセレン蒸気を発生させることを含んでいる。
第1期間では、セレン蒸気の発生を抑制しつつ、十分な量の硫黄蒸気を発生させる。第1期間では、例えば、焼結炉内の温度を一定に保つ。一例によれば、第1期間では、焼結炉内の温度を500℃に保つ。第1期間では、焼結炉内の温度を徐々に高めてもよい。但し、この場合、第1期間における昇温レートは、第1期間に先立つ期間における昇温レート、例えば10℃/分よりも低くする。
第2期間では、第1期間と比較してより高い昇温レートで焼結炉内の温度を昇温させる。第2期間における昇温レートは、例えば10℃/分とする。
第3期間では、セレン蒸気を発生させる。第3期間では、例えば、焼結炉内の温度を一定に保つ。一例によれば、第3期間では、焼結炉内の温度を600℃に保つ。第3期間では、焼結炉内の温度を徐々に高めてもよい。但し、この場合、第3期間における昇温レートは、第2期間における昇温レート、例えば10℃/分よりも低くする。
第1期間及び第2期間の各々の長さは、5乃至180分間とすることが好ましい。
このようにして、基板11上に、裏面電極12及び光吸収層13を形成することにより、図1に示すCZTS化合物薄膜太陽電池用部材1を得る。
その後、CZTS化合物薄膜太陽電池用部材1上に、図2に示すバッファ層14を形成する。バッファ層14は、例えば、CBD(chemical bath deposition)法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、及び、ALD(Atomic Layer Deposition)法の何れかの方法を用いて光吸収層13の上面に形成する。
次に、バッファ層14上に、半絶縁層15を形成する。半絶縁層15は、例えば、MOCVD法やスパッタ法を用いてバッファ層14の上面に形成する。
次いで、半絶縁層15上に、窓層16を形成する。窓層16は、例えば、MOCVD法やスパッタ法を用いて半絶縁層15の上面に形成する。
次いで、半絶縁層15上に、窓層16を形成する。窓層16は、例えば、MOCVD法やスパッタ法を用いて半絶縁層15の上面に形成する。
その後、窓層16上に、表面電極17を形成する。表面電極17は、例えば、スパッタ法、蒸着法、及び、CVD(chemical vapor deposition)法の何れかの方法を用いて窓層16の上面に形成する。
以上のようにして、図2に示すCZTS化合物薄膜太陽電池10を得る。
以上のようにして、図2に示すCZTS化合物薄膜太陽電池10を得る。
上述したCZTS化合物薄膜太陽電池の製造方法について、以下に実施例と比較例とを記載する。
<比較例1>
[裏面電極の形成]
厚さが2.0mmのソーダライムガラス基板の上面に、RF(Radio-Frequency)マグネトロンスパッタ法を用いて、Moからなり、600nmの厚さを有する裏面電極を形成した。
[裏面電極の形成]
厚さが2.0mmのソーダライムガラス基板の上面に、RF(Radio-Frequency)マグネトロンスパッタ法を用いて、Moからなり、600nmの厚さを有する裏面電極を形成した。
[分散液の調製]
CuI、ZnI2、及びSnI4をピリジンに溶解させて、第1溶液を調製した。また、Na2Seをメタノールに溶解させて、第2溶液を調製した。第1溶液は、Cuのモル濃度MCuと、Znのモル濃度MZnと、Snのモル濃度MSnとが、以下の関係
MCu:MZn:MSn=1.74:1.05:1.00
を満たすように調製した。
CuI、ZnI2、及びSnI4をピリジンに溶解させて、第1溶液を調製した。また、Na2Seをメタノールに溶解させて、第2溶液を調製した。第1溶液は、Cuのモル濃度MCuと、Znのモル濃度MZnと、Snのモル濃度MSnとが、以下の関係
MCu:MZn:MSn=1.74:1.05:1.00
を満たすように調製した。
次に、第1溶液と第2溶液とを、不活性ガス雰囲気下、0℃にて混合することにより、Cu−Zn−Sn−Se微粒子を生成させた。第1溶液と第2溶液とは、混合液において、Cuのモル濃度MCuと、Znのモル濃度MZnと、Snのモル濃度MSnと、Seのモル濃度MSeとが、以下の関係
MCu:MZn:MSn:MSe=1.74:1.05:1.00:3.92
を満たすように混合した。
MCu:MZn:MSn:MSe=1.74:1.05:1.00:3.92
を満たすように混合した。
次いで、反応後の混合液を濾過して、Cu−Zn−Sn−Se微粒子を取り出した。その後、Cu−Zn−Sn−Se微粒子を、メタノールと混合し、これを遠心分離機にかけることにより洗浄した。以上のようにして、Cu−Zn−Sn−Se微粒子を非晶質粒子として得た。
次に、このCu−Zn−Sn−Se微粒子とチオ尿素とを、Cu−Zn−Sn−Se微粒子とチオ尿素との質量比が3:2になるように混合した。そして、この混合物とピリジンとメタノールとを混合して、Cu−Zn−Sn−Se微粒子を含む分散液を調製した。
なお、この分散液は固形分を6.5質量%の割合で含有していた。また、この分散液において、比ACu/(AZn+ASn)は0.850であり、比AZn/ASnは1.05であった。
[光吸収層の形成]
裏面電極の上面に、スプレー法を用いて上記の分散液を塗布して塗膜を形成した。次いで、260℃のオーブンで塗膜から溶剤を蒸発させて、前駆体層を得た。そして、裏面電極及び前駆体層を形成したガラス基板を、1molの固体硫黄を収容したカーボンケースに入れ、窒素雰囲気下、図3に示す昇温カーブに従って熱処理した。具体的には、10℃/minの昇温レートで室温から600℃まで昇温させ、600℃に20分間保持した。以上のようにして、光吸収層を形成した。
裏面電極の上面に、スプレー法を用いて上記の分散液を塗布して塗膜を形成した。次いで、260℃のオーブンで塗膜から溶剤を蒸発させて、前駆体層を得た。そして、裏面電極及び前駆体層を形成したガラス基板を、1molの固体硫黄を収容したカーボンケースに入れ、窒素雰囲気下、図3に示す昇温カーブに従って熱処理した。具体的には、10℃/minの昇温レートで室温から600℃まで昇温させ、600℃に20分間保持した。以上のようにして、光吸収層を形成した。
[バッファ層の形成]
光吸収層の上面に、CBD法を用いてバッファ層としてのCdS層を形成した。具体的には、0.0015Mの濃度で硫酸カドミウム(CdSO4)を、0.0075Mの濃度でチオ尿素(NH2CSNH2)を、1.5Mの濃度で水酸化アンモニウム(NH4OH)を含んだ水溶液を、65℃に加熱した。そして、裏面電極及び光吸収層を形成したガラス基板を、この水溶液の中に浸けることによって、光吸収層の上面に100nmの膜厚を有するCdS層を形成した。以上のようにして、バッファ層を形成した。
光吸収層の上面に、CBD法を用いてバッファ層としてのCdS層を形成した。具体的には、0.0015Mの濃度で硫酸カドミウム(CdSO4)を、0.0075Mの濃度でチオ尿素(NH2CSNH2)を、1.5Mの濃度で水酸化アンモニウム(NH4OH)を含んだ水溶液を、65℃に加熱した。そして、裏面電極及び光吸収層を形成したガラス基板を、この水溶液の中に浸けることによって、光吸収層の上面に100nmの膜厚を有するCdS層を形成した。以上のようにして、バッファ層を形成した。
[半絶縁層の形成]
バッファ層の上面に、MOCVD法を用いて、ZnOからなるi型半絶縁層として、50nmの厚さを有する半絶縁層を形成した。
バッファ層の上面に、MOCVD法を用いて、ZnOからなるi型半絶縁層として、50nmの厚さを有する半絶縁層を形成した。
[窓層の形成]
半絶縁層の上面に、MOCVD法を用いて、B−ZnO(ホウ素添加酸化亜鉛)からなり、1μmの厚さを有する窓層を形成した。
半絶縁層の上面に、MOCVD法を用いて、B−ZnO(ホウ素添加酸化亜鉛)からなり、1μmの厚さを有する窓層を形成した。
[表面電極の形成]
窓層の上面の一部に、真空蒸着法を用いて、Alからなる表面電極を形成した。
以上にようにして、CZTS化合物薄膜太陽電池を得た。
窓層の上面の一部に、真空蒸着法を用いて、Alからなる表面電極を形成した。
以上にようにして、CZTS化合物薄膜太陽電池を得た。
<比較例2>
前駆体層に対する熱処理の条件を変更したこと以外は、比較例1と同様の方法により、CZTS化合物薄膜太陽電池を得た。即ち、本例では、裏面電極及び前駆体層を形成したガラス基板を、1molの固体セレンを収容したカーボンケースに入れ、窒素雰囲気下、図3に示す昇温カーブに従って熱処理した。
前駆体層に対する熱処理の条件を変更したこと以外は、比較例1と同様の方法により、CZTS化合物薄膜太陽電池を得た。即ち、本例では、裏面電極及び前駆体層を形成したガラス基板を、1molの固体セレンを収容したカーボンケースに入れ、窒素雰囲気下、図3に示す昇温カーブに従って熱処理した。
<比較例3>
前駆体層に対する熱処理の条件を変更したこと以外は、比較例1と同様の方法により、CZTS化合物薄膜太陽電池を得た。即ち、本例では、裏面電極及び前駆体層を形成したガラス基板を、1molの固体硫黄と1molの固体セレンとを収容したカーボンケースに入れ、窒素雰囲気下、図3に示す昇温カーブに従って熱処理した。
前駆体層に対する熱処理の条件を変更したこと以外は、比較例1と同様の方法により、CZTS化合物薄膜太陽電池を得た。即ち、本例では、裏面電極及び前駆体層を形成したガラス基板を、1molの固体硫黄と1molの固体セレンとを収容したカーボンケースに入れ、窒素雰囲気下、図3に示す昇温カーブに従って熱処理した。
<実施例>
前駆体層に対する熱処理の条件を変更したこと以外は、比較例3と同様の方法により、CZTS化合物薄膜太陽電池を得た。即ち、本例では、裏面電極及び前駆体層を形成したガラス基板を、1molの固体硫黄と1molの固体セレンとを収容したカーボンケースに入れ、窒素雰囲気下、図4に示す昇温カーブに従って熱処理した。具体的には、10℃/minの昇温レートで室温から500℃まで昇温させ、500℃に10分間保持し、その後、10℃/minの昇温レートで500℃から600℃まで昇温させ、600℃に10分間保持した。
前駆体層に対する熱処理の条件を変更したこと以外は、比較例3と同様の方法により、CZTS化合物薄膜太陽電池を得た。即ち、本例では、裏面電極及び前駆体層を形成したガラス基板を、1molの固体硫黄と1molの固体セレンとを収容したカーボンケースに入れ、窒素雰囲気下、図4に示す昇温カーブに従って熱処理した。具体的には、10℃/minの昇温レートで室温から500℃まで昇温させ、500℃に10分間保持し、その後、10℃/minの昇温レートで500℃から600℃まで昇温させ、600℃に10分間保持した。
[CZTS化合物薄膜太陽電池用部材の結晶成長観察]
比較例1乃至3及び実施例の方法でCZTS化合物薄膜太陽電池用部材を作製し、光吸収層をSEMで観察した。
図5乃至図7は、それぞれ、比較例1乃至3において形成した光吸収層の断面を示すSEM写真である。図8は、実施例において形成した光吸収層の断面を示すSEM写真である。
比較例1乃至3及び実施例の方法でCZTS化合物薄膜太陽電池用部材を作製し、光吸収層をSEMで観察した。
図5乃至図7は、それぞれ、比較例1乃至3において形成した光吸収層の断面を示すSEM写真である。図8は、実施例において形成した光吸収層の断面を示すSEM写真である。
[CZTS化合物薄膜太陽電池の光電変換効率]
比較例1乃至3及び実施例に係るCZTS化合物薄膜太陽電池の各々について、標準太陽光シミュレータ(光強度:100mW/cm2、エアマス:1.5)を用いてI−V特性を測定し、光電変換効率を算出した。結果を、以下の表1及び図9に纏める。
比較例1乃至3及び実施例に係るCZTS化合物薄膜太陽電池の各々について、標準太陽光シミュレータ(光強度:100mW/cm2、エアマス:1.5)を用いてI−V特性を測定し、光電変換効率を算出した。結果を、以下の表1及び図9に纏める。
図5乃至図9及び表1から、実施例で作製したCZTS化合物薄膜太陽電池は、光吸収層の結晶性が最も良好であり、太陽電池としての性能にも優れていることが分かる。
1…CZTS化合物薄膜太陽電池用部品、10…CZTS化合物薄膜太陽電池、11…基板、12…裏面電極、13…光吸収層、14…バッファ層、15…半絶縁層、16…窓層、17…表面電極。
Claims (7)
- 基板上に設けられた電極層上に、銅と、亜鉛と、錫と、硫黄及びセレンの少なくとも一方とを含む非晶質粒子を含んだ分散液を塗工して、前記非晶質粒子からなる前駆体層を形成する工程と、
焼結炉内で、前記電極層上に形成した前記前駆体層と、固体硫黄と、固体セレンとを、400乃至650℃の範囲内の熱処理に供して、前記前駆体層の反応生成物として光吸収層を得る工程と
を含み、
前記熱処理は、
第1期間において硫黄蒸気を発生させ、
前記第1期間に続く第2期間において、前記第1期間と比較してより高い昇温レートで前記焼結炉内の温度を昇温させ、
前記第2期間に続く第3期間において、前記第2期間と比較して昇温レートを低め、この状態でセレン蒸気を発生させる
ことを含んだCZTS化合物薄膜太陽電池用部材の製造方法。 - 前記第1期間では前記焼結炉内の温度を第1温度に保ち、前記第3期間では、前記焼結炉内の温度を前記第1温度よりも高い第2温度に保つ請求項1に記載のCZTS化合物薄膜太陽電池用部材の製造方法。
- 前記非晶質粒子はセレンを含んだ請求項1又は2に記載のCZTS化合物薄膜太陽電池用部材の製造方法。
- 請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法によりCZTS化合物薄膜太陽電池用部材を製造する工程と、
前記光吸収層上にn型半導体からなるバッファ層を形成する工程と、
前記バッファ層上に電極層を形成する工程と
を含んだCZTS化合物薄膜太陽電池の製造方法。 - 基板と、前記基板上に設けられた電極層と、前記電極層上に設けられた光吸収層とを備え、前記光吸収層は、銅と亜鉛と錫と硫黄とセレンとを含み、1.5μm以上の粒径を有する結晶粒を含有したCZTS化合物薄膜太陽電池用部材。
- 前記光吸収層が含んでいる結晶粒の平均粒径は1μm以上である請求項5に記載のCZTS化合物薄膜太陽電池用部材。
- 請求項5又は6に記載のCZTS化合物薄膜太陽電池用部材と、
前記光吸収層上に設けられ、n型半導体からなるバッファ層と、
前記バッファ層上に設けられた電極層と
を備えたCZTS化合物薄膜太陽電池。
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CN108336177A (zh) * | 2017-12-20 | 2018-07-27 | 深圳先进技术研究院 | 一种铜锌锡硫薄膜太阳能电池及其制备方法 |
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