JP2017183463A - Czts系化合物薄膜太陽電池およびその製造方法 - Google Patents

Czts系化合物薄膜太陽電池およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い光電変換効率を実現することが可能なCZTS系化合物薄膜太陽電池を提供する。【解決手段】本発明のCZTS系化合物薄膜太陽電池10は、基板11と、前記基板11上に設けられた第1電極層12と、前記第1電極層12上に設けられ、p型半導体からなる光吸収層13と、前記光吸収層13上に設けられ、n型半導体からなるバッファ層14と、前記バッファ層14上に設けられた第2電極層17とを具備し、前記p型半導体は銅と亜鉛と錫と硫黄とセレンとを含み、前記光吸収層13において、硫黄の原子濃度ASとセレンの原子濃度ASeとの和に対する硫黄の原子濃度ASの比AS/(AS+ASe)は、前記第1電極層12側から前記バッファ層14側へ向けて増加しており、前記第1電極層12側で40原子%以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、CZTS系化合物薄膜太陽電池に関する。
Cuと、Znと、Snと、S及びSeの少なくとも一方の元素とから構成されるp型半導体(以下、この材料、この材料からなる物品、又はこの材料を光吸収層に使用した化合物薄膜太陽電池を、それぞれ、他の材料、物品又は化合物薄膜太陽電池から区別する場合に、用語「CZTS系」を使用することとする)から形成された層を光吸収層として有する化合物薄膜太陽電池が知られている。CZTS系化合物半導体は、直接遷移型の半導体である。そのため、CZTS系化合物薄膜太陽電池は、間接遷移型の半導体であるSiで構成された光吸収層を備えるSi系太陽電池と比べて、光吸収係数が大きく、かつ、単接合太陽電池の光吸収層に適したバンドギャップを有している。
また、CZTS系化合物薄膜太陽電池は、光吸収層がCuInSe(CIS)やCdTeからなる他の薄膜太陽電池と比べて、環境負荷が少ない点、および、Inのような希少金属を含んでいない点で好ましい。こうした理由から、CZTS系化合物薄膜太陽電池は、次世代の太陽電池として注目されている。
CZTS系化合物半導体薄膜太陽電池においては、光吸収層が最も重要な構成要素である。光吸収層の形成方法として、様々な方法が提案されている。なかでも、非真空プロセスを用いた形成方法は、高価な真空装置を必要としないことから、真空プロセスを用いた形成方法と比べて、製造にかかるコストを低く抑えられる。非真空プロセスを用いた形成方法としては、ヒドラジン法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、ヒドラジン法に用いられるヒドラジンは、毒性および爆発性をもつ溶媒である。そのため、ヒドラジン法に代わる方法として、ヒドラジンを用いない方法であるナノ粒子塗布法が提案されている。ナノ粒子塗布法では、基板の一方の主面上に設けられ、Moから構成された裏面電極上に、CZTS系ナノ粒子を含んだ塗工液を塗布し、塗膜に熱処理を施してナノ粒子を焼結させることによって、光吸収層を形成する(例えば、非特許文献1参照)。
ところで、太陽電池は、変換効率が高いことが好ましい。ナノ粒子塗布法を用いたCZTS系化合物薄膜太陽電池については、CZTS系半導体のバンドギャップを最適化することにより、高い変換効率を実現することができる。
CZTS系半導体のバンドギャップは、その組成を変更することにより変化させることが可能である。たとえば、CuZnSnSeのバンドギャップEgは1.04[eV]であり、CuZnSnSのバンドギャップEgは1.53[eV]である。
つまり、CZTS系半導体のバンドギャップは、硫黄の原子濃度Aとセレンの原子濃度ASeとの和に対する硫黄の原子濃度Aの比A/(A+ASe)(以下、カルコゲン比という)を調整することにより、簡単に変化させることができる。従って、カルコゲン比を最適化することにより、太陽電池の光吸収層として適したバンドギャップを有する半導体を得ることが可能である。
また、CZTS系光吸収層において、その厚さ方向にカルコゲン比の勾配を生じさせると、バンド構造が傾斜し、その結果、太陽電池特性が向上する可能性がある。特許文献2には、基板上に、第1電極層、CZTS系光吸収層、バッファ層及び第2電極層を順次形成してなる太陽電池において、光吸収層におけるカルコゲン比をバッファ層側で高めることが記載されている。また、特許文献2には、光吸収層におけるカルコゲン比が20原子%程度で変換効率が最大となることと、光吸収層におけるカルコゲン比を、第1電極層側で約20原子%とし、バッファ層側で約30原子%とした具体例とが記載されている。
米国特許出願公開第2011/0097496号明細書 特開2014−209513号公報
Progress in Photovoltaics: Research and Applications 10, 1002/pip. 2472 (2014)
本発明者らは、CZTS系化合物薄膜太陽電池には、変換効率に関して改善の余地があると考えている。
そこで、本発明は、高い光電変換効率を実現することが可能なCZTS系化合物薄膜太陽電池を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためのCZTS系化合物薄膜太陽電池は、基板と、前記基板上に設けられた第1電極層と、前記第1電極層上に設けられ、p型半導体からなる光吸収層と、前記光吸収層上に設けられ、n型半導体からなるバッファ層と、前記バッファ層上に設けられた第2電極層とを具備し、前記p型半導体は銅と亜鉛と錫と硫黄とセレンとを含み、前記光吸収層において、硫黄の原子濃度Aとセレンの原子濃度ASeとの和に対する硫黄の原子濃度Aの比A/(A+ASe)は、前記第1電極層側から前記バッファ層側へ向けて増加しており、前記第1電極層側で40原子%以上であるCZTS系化合物薄膜太陽電池である。
上記CZTS系化合物薄膜太陽電池の光吸収層は、ナノ粒子塗布法によって形成することが望ましいが、スパッタ法など他の方法で形成することも可能である。
本発明によれば、高い光電変換効率を実現することができる。
CZTS系化合物薄膜太陽電池のセル構造を概略的に示す断面図。
[CZTS系化合物薄膜太陽電池の構成]
図1に示すように、CZTS系化合物薄膜太陽電池10は、基板11、裏面電極12、光吸収層13、バッファ層14、半絶縁層15、窓層16、および、表面電極17を含んでいる。裏面電極12、光吸収層13、バッファ層14、半絶縁層15、窓層16、および、表面電極17は、基板11上に順次積層されている。
基板11は、例えば、ガラス基板、金属板、および、プラスチックフィルムなどのいずれかである。
裏面電極12は、第1電極層の一例である。裏面電極12は、例えば、モリブデン(Mo)から形成される。
光吸収層13は、p型半導体からなる層である。このp型半導体は、CuとZnとSnとSとSeとを含んでいる。即ち、このp型半導体は、CZTS系半導体である。
光吸収層13において、硫黄の原子濃度Aとセレンの原子濃度ASeとの和に対する硫黄の原子濃度Aの比A/(A+ASe)は、裏面電極12側からバッファ層14側へ向けて増加している。そして、この比A/(A+ASe)は、裏面電極12側で40原子%以上である。
バッファ層14は、n型化合物半導体から形成されている。バッファ層14の材料は、例えば、CdS、Zn(S,O,OH)、ZnS、ZnSe、および、Inなどである。
半絶縁層15は、i型化合物半導体から形成されている。半絶縁層15の材料は、例えば、ZnOなどの金属酸化物である。
窓層16は、n型化合物半導体から形成されている。窓層16の材料は、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、および、ホウ素(B)などの不純物が添加されたZnO又はITOなどである。
表面電極17は、第2電極層の一例である。表面電極17は、窓層16の上面の一部の領域上に位置している。表面電極17の材料は、例えば、Al、および、Ag(銀)などの金属である。表面電極17の材料は、カーボンおよびグラフェンなどの炭素から構成される材料であってもよいし、インジウム錫酸化物(ITO)およびZnOなどの導電性を有する透明な金属酸化物であってもよい。
なお、CZTS系化合物薄膜太陽電池10は、上述した各層以外の他の層を更に含んでいてもよい。
そのような追加の層は、例えば、窓層16の上に位置する反射防止膜である。反射防止膜の材料は、例えば、MgFである。反射防止膜の厚さは、100nm程度であることが好ましい。反射防止膜は、CZTS系化合物薄膜太陽電池10に入射した光の反射を抑えるため、これをCZTS系化合物薄膜太陽電池10に設けることによって、光吸収層13が、より多くの光を吸収することが可能となる。
また、追加の層は、裏面電極12と光吸収層13との間に位置する中間層であって、CZTS系化合物薄膜太陽電池10の光電変換効率を高めるための組成を有する層であってもよい。
[CZTS系化合物薄膜太陽電池の製造方法]
図1を参照して、CZTS系化合物薄膜太陽電池の製造方法を説明する。
以下に説明する方法では、基板11の上に、裏面電極12、光吸収層13、バッファ層14、半絶縁層15、窓層16、および、表面電極17を、この順番に沿って形成することにより、CZTS系化合物薄膜太陽電池10を製造する。
CZTS系化合物薄膜太陽電池10を製造するに際しては、まず、基板11の一方の主面上に、裏面電極12を形成する。裏面電極12は、例えば、スパッタ法、蒸着法、または、CVD法を用いて基板11の上面に形成する。
次に、裏面電極12上に、微粒子と分散媒とを含んだ光吸収層形成用インクを塗工して、塗膜を形成する。そして、この塗膜を乾燥させて、塗膜に含まれる分散媒を除去する。これにより、微粒子からなる前駆体層を得る。その後、この前駆体層に熱処理を施して、微粒子を焼結させる。以上のようにして、光吸収層13を得る。
微粒子は、例えば、ナノサイズの粒子である。微粒子は、例えば、金属塩または金属錯体を含む溶液と、カルコゲニド塩とを含む溶液とを混合し、それらが含む化合物を反応させることによって製造する。
微粒子は、非晶質の微粒子であることが好ましい。結晶性粒子は、エネルギー的に安定であるため、熱処理の際に物質移動を生じ難い。これに対し、非晶質の微粒子は、微粒子を構成している成分が熱処理の際に移動しやすいため、光吸収層13の緻密性が高まる。なお、本実施形態における非晶質とはアモルファスを含む。また、微粒子が非晶質である場合、前駆体層の熱処理により、微粒子の焼結に加え、微粒子の結晶化を生じる。
光吸収層形成用インクにおいて、微粒子を分散させる分散媒は、有機溶剤であればよく、有機溶剤の種類は特に制限されない。有機溶剤は、例えば、アルコール、エーテル、エステル、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、および、芳香族炭化水素などのいずれかである。有機溶剤は、メタノール、エタノール、および、ブタノールなどの炭素数が10未満である、アルコール、ジエチルエーテル、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、および、トルエンのいずれかであることが好ましく、メタノール、ピリジン、トルエン、および、ヘキサンのいずれかであることがより好ましい。
光吸収層形成用インクは、塗膜のレベリング性を高めるために、バインダを含むことが好ましい。光吸収層形成用インクにおけるバインダの含有量は、光吸収層形成用インクが含む微粒子の質量に対して5質量%以上70質量%以下であることが好ましく、20質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。インクにおけるバインダの含有量を十分に多くすると、光吸収層13に空洞を生じ難くなる。また、バインダが過剰量でなければ、光吸収層13の表面粗さが過剰に大きな値となることはない。
バインダは、例えば、チオール有機物、セレノール有機物、および、炭素数が10以上であるアルコール類などである。また、バインダは、Se粒子、S粒子、Se化合物、および、S化合物などであってもよいし、硫化ナトリウム、セレン化ナトリウム、セレン化カリウム、セレン酸ナトリウム、および、チオ硫酸塩などであってもよい。これらのうち、バインダは、チオール有機物であることが好ましく、チオ尿素であることがより好ましい。
光吸収層形成用インクの塗工方法は、塗布法あるいは印刷法であればよい。塗布法は、例えば、ドクター法、スピンコーティング法、スリットコーティング法、および、スプレー法などである。印刷法は、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、反転オフセット印刷法、および、凸版印刷法などである。
前駆体層の熱処理は、例えば、加熱炉を用いたアニールや、ラピッドサーマルアニール(RTA)を含む。熱処理の雰囲気は、HSガス、HSeガス、Nガス、Se蒸気、S蒸気、水素ガス、および、水素と例えばNガスなどの不活性ガスとの混合ガスから構成される群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。水素ガスの爆発下限値は4.1体積%であるため、前駆体層を、水素と不活性ガスとを含む雰囲気中で熱処理するときには、雰囲気中に含まれる水素の割合は4%体積以下であることが好ましい。雰囲気中に含まれる水素の割合が4体積%以下であるとき、引火や爆発などの危機を避けることができる。
また、前駆体層の熱処理は、固体状の硫黄および固体状のセレンのいずれかと、焼結助剤としての粉末状のスズ、SnSe及び/またはSnSとを収容した容器内で行ってもよい。
熱処理の温度は480℃以上600℃以下の範囲に含まれる所定の温度であることが好ましく、この所定の温度までの昇温レートは約10℃/分であることが好ましい。また、熱処理の時間は、5分以上180分以下であることが好ましい。
光吸収層13は、膜厚が0.6μm以上3μm以下となるように形成することが好ましい。
この段階の光吸収層13では、上述した比A/(A+ASe)は、層の全体に亘ってほぼ一定の値である。この段階の光吸収層13における比A/(A+ASe)は、例えば40原子%以上であるが、40原子%未満であってもよい。
なお、光吸収層13は、他の方法で形成してもよい。例えば、光吸収層13は、スパッタ法を用いて前駆体層を形成し、この前駆体層に上述した熱処理を施すことにより形成してもよい。あるいは、光吸収層13は、蒸着法を用いて前駆体層を形成し、この前駆体層に上述した熱処理を施すことにより形成してもよい。
次に、上述した比A/(A+ASe)を、裏面電極12側から光吸収層13の表面側へ向けて増加させる。例えば、光吸収層13に表面領域に、チオ尿素などの硫黄含有化合物を含んだ液を含浸させ、その後、光吸収層13を乾燥させる。裏面電極12側における比A/(A+ASe)や光吸収層13の表面における比A/(A+ASe)は、前駆体層における硫黄及びセレンの含有量、上記液における硫黄含有化合物の濃度、上記液の含浸量などに応じて、所望の値とすることができる。
次に、光吸収層13上に、バッファ層14を形成する。バッファ層14は、例えば、CBD(chemical bath deposition)法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、および、ALD(Atomic Layer Deposition)法などを用いて形成することができる。
次いで、バッファ層14上に、半絶縁層15を形成する。半絶縁層15は、例えば、MOCVD法やスパッタ法を用いて形成することができる。
更に、半絶縁層15上に、窓層16を形成する。窓層16は、例えば、MOCVD法やスパッタ法を用いて形成する。
その後、窓層16上に、表面電極17を形成する。表面電極17は、例えば、スパッタ法、蒸着法、および、CVD(chemical vapor deposition)法などを用いて形成する。
以上のようにして、図1に示すCZTS系化合物薄膜太陽電池10を得る。
上述したCZTS系化合物薄膜太陽電池10は、光吸収層13において、比A/(A+ASe)が、裏面電極12からバッファ層14側へ向けて増加しており、裏面電極12側で十分に大きい。このような構造を採用すると、高い変換効率を実現することが可能となる。
以下に、実施例および比較例を説明する。
<実施例1>
[裏面電極の形成]
厚さが2.0mmのソーダライムガラス基板の一方の主面上に、RF(Radio-Frequency)マグネトロンスパッタ法を用いて、Moからなり、600nmの厚さを有する裏面電極を形成した。
[光吸収層形成用インクの調製]
CuI、ZnI、および、SnIを、CuとZnとSnとのモル比が1.74:1.05:1となるようにピリジンに溶解させて、第1溶液を調製した。また、NaSeをメタノールに溶解させて、第2溶液を調製した。
第1溶液と第2溶液とを混合して、CuとZnとSnとSeとのモル比が、1.74:1.05:1:3.92である混合液を得た。この混合液を、不活性ガス雰囲気中、0℃にて反応させることで、Cu−Zn−Sn−Se微粒子を生成した。
反応後の混合液を濾過してCu−Zn−Sn−Se微粒子を取り出した。更に、Cu−Zn−Sn−Se微粒子とメタノールと混合し、これを遠心分離機にかけることにより、Cu−Zn−Sn−Se微粒子を洗浄した。
洗浄後のCu−Zn−Sn−Se微粒子とチオ尿素とを、Cu−Zn−Sn−Se微粒子とチオ尿素との質量比が3:2になるように混合した。そして、この混合物にピリジンとメタノールとを加えて、Cu−Zn−Sn−Se微粒子を含む光吸収層形成用インクを調製した。なお、光吸収層形成用インクに含まれる固形分は6.5質量%であった。
[光吸収層の形成]
裏面電極上に、スプレー法を用いて光吸収層形成用インクを塗布した。次いで、裏面電極及び塗膜を形成した基板をオーブンへ投入し、塗膜を260℃に加熱した。これにより、塗膜に含まれる分散媒を蒸発させて、前駆体層を得た。そして、裏面電極及び前駆体層を形成した基板を、1molのセレン及び1molの硫黄を収容した石英ケースに入れ、窒素雰囲気中、600℃で20分間にわたり加熱した。これにより、光吸収層を得た。
[S濃度増加処理]
光吸収層の表面を、80℃に加熱した1Mのチオ尿素溶液に30分ほど浸した。その後、光吸収層を乾燥させた。
[バッファ層の形成]
光吸収層上に、CBD法を用いてバッファ層としてのCdS層を形成した。具体的には、0.0015Mの硫酸カドミウム(CdSO)、0.0075Mのチオ尿素(NHCSNH)、および、1.5Mの水酸化アンモニウム(NHOH)を含む混合液を、65℃に加熱した。そして、裏面電極及び光吸収層を形成した基板を、混合液中に浸漬させた。これにより、光吸収層上に、100nmの膜厚を有するCdS層を形成した。
[半絶縁層の形成]
バッファ層上に、MOCVD法を用いて、ZnOからなり、50nmの厚さを有するi型半絶縁層を形成した。
[窓層の形成]
半絶縁層上に、MOCVD法を用いて、B−ZnO(ホウ素添加酸化亜鉛)からなり、1μmの厚さを有する窓層を形成した。
[表面電極の形成]
窓層の表面の一部の領域上に、真空蒸着法を用いて、Alからなる表面電極を形成した。
以上のようにして、実施例1のCZTS系化合物薄膜太陽電池を得た。
<比較例1>
S濃度増加処理を施さなかったこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて、比較例1のCZTS系化合物薄膜太陽電池を得た。
<CZTS系化合物薄膜太陽電池の光電変換効率>
実施例1および比較例1の各々について、標準太陽光シミュレータ(光強度:100mW/cm、エアマス:1.5)を用いてI−V特性を測定し、光電変換効率を算出した。
以下の表1に、実施例1及び比較例1のCZTS系化合物薄膜太陽電池について得られた光電変換効率の結果を示す。
表1において、「膜中(EDS)」と表記した列には、光吸収層に対するエネルギー分散型X線分析によって得られた、裏面電極側における比A/(A+ASe)を記載している。また、「表面(XPS)と表記した列には、光吸収層に対するX線光電子分光によって得られた、バッファ側における比A/(A+ASe)を記載している。
表1から、光吸収層において、比A/(A+ASe)が、裏面電極からバッファ層側へ向けて増加しており、裏面電極側で十分に大きい構造を採用すると、高い光電変換効率を実現できることが分かる。
10…CZTS系化合物薄膜太陽電池、11…基板、12…裏面電極、13…光吸収層、14…バッファ層、15…半絶縁層、16…窓層、17…表面電極。

Claims (4)

  1. 基板と、
    前記基板上に設けられた第1電極層と、
    前記第1電極層上に設けられ、p型半導体からなる光吸収層と、
    前記光吸収層上に設けられ、n型半導体からなるバッファ層と、
    前記バッファ層上に設けられた第2電極層と
    を具備し、
    前記p型半導体は銅と亜鉛と錫と硫黄とセレンとを含み、前記光吸収層において、硫黄の原子濃度Aとセレンの原子濃度ASeとの和に対する硫黄の原子濃度Aの比A/(A+ASe)は、前記第1電極層側から前記バッファ層側へ向けて増加しており、前記第1電極層側で40原子%以上であるCZTS系化合物薄膜太陽電池。
  2. 前記基板上に設けられた第1電極層上に、p型半導体からなる光吸収層を形成する工程と、
    前記光吸収層上に、n型半導体からなるバッファ層を形成する工程と、
    前記バッファ層上に第2電極層を形成する工程と
    を含み、
    前記p型半導体は銅と亜鉛と錫と硫黄とセレンとを含み、前記光吸収層は、硫黄の原子濃度Aとセレンの原子濃度ASeとの和に対する硫黄の原子濃度Aの比A/(A+ASe)が、前記第1電極層側から前記バッファ層側へ向けて増加し、前記第1電極層側で40原子%以上となるように形成するCZTS系化合物薄膜太陽電池の製造方法。
  3. 前記光吸収層を形成する工程は、
    前記第1電極層上に、銅と亜鉛と錫と硫黄とセレンとを含む粒子を含んだインクを塗工して前駆体層を形成することと、
    前記前駆体層を熱処理することと
    を含んだ請求項2に記載のCZTS系化合物薄膜太陽電池の製造方法。
  4. 前記熱処理は、前記前駆体層を、硫黄およびセレンの双方が存在する雰囲気中、550℃〜650℃で焼結させることを含んだ請求項3に記載のCZTS系化合物薄膜太陽電池の製造方法。
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