JP2017183223A - 多孔質膜及び固体高分子型燃料電池用電解質膜 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】三次元網目構造を形成し、連続孔を有する多孔質膜であって、前記多孔質膜はポリエーテルスルホンを構成要素とし、前記多孔質膜の一方の面における網目を構成する幹の平均の太さをdAとし、他方の面における網目を構成する幹の平均の太さをdBとし、dA≧dBの関係が成立するとしたとき、前記多孔質膜を構成する幹の平均の太さ((dA+dB)/2)が、0.5〜2.5μmであり、比dA/dBが、1以上2未満である、固体高分子型燃料電池用の高分子電解質を補強する多孔質膜。
【選択図】図1
Description
〔1〕
三次元網目構造を形成し、連続孔を有する多孔質膜であって、
前記多孔質膜はポリエーテルスルホンを構成要素とし、
前記多孔質膜の一方の面における網目を構成する幹の平均の太さをdAとし、他方の面における網目を構成する幹の平均の太さをdBとし、dA≧dBの関係が成立するとしたとき、
前記多孔質膜を構成する幹の平均の太さ((dA+dB)/2)が、0.5〜2.5μmであり、
比dA/dBが、1以上2未満である、
固体高分子型燃料電池用の高分子電解質を補強する多孔質膜。
〔2〕
膜厚が、5〜20μmである、
〔1〕記載の多孔質膜。
〔3〕
空隙率が、40〜70%である、
〔1〕又は〔2〕に記載の多孔質膜。
〔4〕
弾性率が、300MPa以上である、
〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の多孔質膜。
〔5〕
〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の多孔質膜と、
高分子電解質と、を含む、
固体高分子型燃料電池用電解質膜。
本実施形態の固体高分子型燃料電池用の高分子電解質を補強する多孔質膜(以下、単に「多孔質膜」ともいう。)は、三次元網目構造を形成し、連続孔を有する多孔質膜であって、前記多孔質膜はポリエーテルスルホンを構成要素とし、前記多孔質膜の一方の面における網目を構成する幹の平均の太さをdAとし、他方の面における網目を構成する幹の平均の太さをdBとし、dA≧dBの関係が成立するとしたとき、前記多孔質膜を構成する幹の平均の太さ((dA+dB)/2)が、0.5〜2.5μmであり、比dA/dBが、1以上2未満である。
ポリエーテルスルホンは下記式(1)で表されるユニットを有するポリマーである。
本実施形態の多孔質膜を製造する方法は特に限定されないが、例えばポリマーの相分離を利用する方法が挙げられる。具体的には、ポリエーテルスルホンと溶媒(a)と含むドープを基材上に塗布する塗布工程と、前記ドープが塗布された前記基材を、前記ポリエーテルスルホンが溶解しない溶液に浸漬する浸漬工程と、を有し、前記浸漬工程において、前記ポリエーテルスルホンと該ポリエーテルスルホン以外の成分の相分離と、前記ポリエーテルスルホンの凝固と、前記ポリエーテルスルホン以外の成分の前記溶液中への抽出とが行われることにより、相分離構造を反映した三次元網目状の多孔構造を形成する方法が挙げられる。
本実施形態においては、多孔質膜の一方の面における網目を構成する幹の平均の太さをdAとし、他方の面における網目を構成する幹の平均の太さをdBとし、dAとdBは、dA≧dBの関係を有するものとする。この場合、多孔質膜の表面及び裏面における幹の平均の太さは、(dA+dB)/2により表すことができる。多孔質膜を構成する幹の平均の太さ((dA+dB)/2)は、0.5〜2.5μmであり、好ましくは0.5〜2μmであり、より好ましくは0.6〜1.5μmであり、さらに好ましくは0.6〜1μmである。多孔質膜を構成する幹の平均の太さが0.5μm以上であることにより、多孔質膜の強度がより向上する。さらに、多孔質膜を構成する幹の平均の太さが0.5μm以上であることにより、網目構造のスケールがより大きくなるため、多孔質膜への電解質埋め込み性がより向上する。また、多孔質膜を構成する幹の平均の太さが2.5μm以下であることにより、多孔質膜と電解質の界面の面積が増大し、電解質の膨潤による寸法変化抑制効果がより向上する。
本実施形態の多孔質膜の膜厚は、好ましくは2.5〜20μmであり、より好ましくは5〜20μmであり、さらに好ましくは5〜17.5μmである。多孔質膜の膜厚が20μm以下であることにより、本実施形態の多孔質膜に電解質を充填して得られる電解質膜を薄くすることができ、低抵抗で高性能な電解質膜を得ることができる。さらに本実施形態のようにイオン伝導性の無い素材を多孔質膜の構成要素とした場合では、電解質膜中の多孔質膜の割合は低い方が抵抗は低くなるため、この点でも多孔質膜の膜厚は20μm以下と、薄い方が好ましい。また、多孔質膜の膜厚が5μm以上であることにより、多孔質膜の強度、電解質膜の寸法変化抑制効果、及び耐久性がより向上する傾向にある。
本実施形態の多孔質膜の空隙率は、好ましくは40〜70%であり、より好ましくは40〜65%であり、さらに好ましくは40〜60%である。多孔質膜の空隙率が40%以上であることにより、多くの電解質を充填することができ、得られる電解質膜の抵抗がより低下する傾向にある。また、空隙率が70%以下であることにより、多孔質膜の強度、電解質膜の寸法変化抑制効果、耐久性がより向上する傾向にある。
ρ=M/(4.0×3.0×t)
M=多孔質膜の質量(g)
t=多孔質膜の膜厚(cm)
空隙率(%)=(1−(ρ/ρ0))×100
本実施形態の多孔質膜の弾性率は、好ましくは300MPa以上であり、より好ましくは350〜900MPaであり、さらに好ましくは400〜800MPaである。多孔質膜の弾性率が上記範囲内であることにより、電解質膜の寸法変化抑制効果及び耐久性がより向上する傾向にある。
本実施形態の固体高分子型燃料電池用電解質膜は、上記多孔質膜と、高分子電解質と、を含む。本実施形態の電解質膜の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記多孔質膜に電解質を充填することで固体高分子型燃料電池用の電解質膜を得ることができる。
EW=(W/M)−22
−[CF2CX1X2]a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF2X3))b−Oc−(CFR1)d−(CFR2)e−(CF2)f−X4)]g− [1]
(式中、X1、X2及びX3は、互いに独立して、ハロゲン元素又は炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基である。a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1である。bは0以上8以下の整数である。cは0又は1である。d及びeは、互いに独立して、0以上6以下の整数である。fは、0以上10以下の整数である。ただし、d+e+fは0に等しくない。R1及びR2は、互いに独立して、ハロゲン元素、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基又はフルオロクロロアルキル基である。X4はCOOZ、SO3Z、PO3Z2又はPO3HZである。ここで、Zは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又はアミン類(NH4、NH3R3、NH2R3R4、NHR3R4R5、NR3R4R5R6)である。またR3、R4、R5及びR6はアルキル基又はアレーン基である。)
−[CF2CF2]a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF3))b−O−(CF2)c−SO3X)]d− [2]
(式中、a及びdは、0≦a<1、0≦d<1、a+d=1である。bは1以上8以下の整数である。cは0以上10以下の整数である。Xは水素原子又はアルカリ金属原子である。)
−[CF2CF2]e−[CF2−CF(−O−(CF2)f−SO3Y)]g− [3]
(式中、e及びgは、0≦e<1、0≦g<1、e+g=1である。fは0以上10以下の整数である。Yは水素原子又はアルカリ金属原子である。)
−[CF2CX1X2]a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF2X3))b−Oc−(CFR1)d−(CFR2)e−(CF2)f−X5)]g− [4]
(式中、X1、X2及びX3は、互いに独立して、ハロゲン元素又は炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基である。a及びgは0≦a<1,0<g≦1,a+g=1である。bは0以上8以下の整数である。cは0又は1である。d及びeは、互いに独立して、0以上6以下の整数である。fは、0以上10以下の整数である。ただし、d+e+fは0に等しくない。R1及びR2は互いに独立して、ハロゲン元素、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基又はフルオロクロロアルキル基である。X5はCOOR7、COR8又はSO2R8である。ここで、R7は炭素数1〜3の炭化水素系アルキル基である。R8はハロゲン元素である。)
CF2=CFZ
(式中、Zは、H、Cl、F、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、又は酸素を含んでいてもよい環状パーフルオロアルキル基を示す。)
CF2=CFO(CF2)z−SO2F,
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)z−SO2F,
CF2=CF(CF2)z−SO2F,
CF2=CF(OCF2CF(CF3))z−(CF2)z-1−SO2F,
CF2=CFO(CF2)z−CO2R,
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)z−CO2R,
CF2=CF(CF2)z−CO2R,
CF2=CF(OCF2CF(CF3))z−(CF2)2−CO2R
(式中、Zは1〜8の整数を示し、Rは炭素数1〜3の炭化水素系アルキル基を表す。)
次に、本実施形態の固体高分子型燃料電池用電解質膜の製造方法について説明する。本実施形態の高分子電解質膜は、多孔質膜の空隙に高分子電解質を充填することで得ることができる。
多孔質膜の一方の面を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ S−4800)にて、1視野中に数十から数百の孔の形状が明確に確認できる程度の倍率(2000〜40000倍)で撮影した。なお、輪郭が明らかにあって周囲よりも暗く映っている部分を孔と認定した。撮影した電子顕微鏡写真の任意の100個の孔に対して、その孔の外縁部と、それと最近接の10個の孔の外縁部の間の最短距離を計測し、その相加平均をその面の幹の平均の太さとした。この操作を膜の両面に関して行い、膜の両面の幹の平均の太さの相加平均を、多孔質膜を構成する幹の平均の太さとした。
接触式の膜厚計(ミツトヨ ABSデジマチックインジケータID−F125)を使用して同一膜内における任意の5点で膜厚を計測し、その相加平均を膜厚とした。
40mm×30mmの長方形に切り出した多孔質膜の質量を精密天秤にて測定し、測定した質量及び上記膜厚から膜密度ρ(g/cm3)を以下の式により計算した。また、得られた膜密度ρ及び構成ポリマーの真密度ρ0(g/cm3)から、以下の式により空隙率(%)を求めた。
ρ=M/(4.0×3.0×t)
M=質量(g)
t=膜厚(cm)
空隙率(%)=(1−(ρ/ρ0))×100
多孔質膜を70mm×10mmの長方形に切り出し、JIS K−7127に準拠して、多孔質膜の弾性率を測定した。測定は50Nロードセルを備える引っ張り試験機を用いる。チャック長さは50mm、クロスヘッド速度300mm/minとして、24℃、相対湿度45%RHの環境下で行った。
多孔質膜への高分子電解質の埋め込み性は以下のようにして評価される。多孔質膜と高分子電解質を含む電解質膜から任意に切り出した断面を、10mmにわたって走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ S−4800)を用いて観察した。観察の倍率は2000倍とした。上記10mmの領域における、電解質で満たされずに空隙となっている部分が観察される領域の割合から電解質の埋め込み性を以下の基準により評価した。
◎:空隙が0〜10%以下
○:空隙が10%超過20%以下
△:空隙が20%超過50%以下
×:空隙が50%超過100%以下
120℃100%RH下における電解質膜の面内寸法変化率は以下のようにして求められる。電解質膜におよそ15mm×20mmの長方形の枠を記入し、各辺の長さを測定顕微鏡(OLYMPUS STM6)で計測した。上記電解質膜を高度加速寿命試験装置(HAST、EHS−211)内に投入し、120℃100%RHの環境に2時間曝したのち、前述の枠の辺の長さを同様に計測した。膨潤前後の寸法の変化率を長方形の短辺、長辺それぞれの方向に関して算出し、その平均値をもって電解質膜の寸法変化率とした。
90℃90%RH下における電解質膜の膜抵抗は以下のようにして求められる。およそ10mm×30mmに切り出した電解質膜を、膜抵抗測定システム(Scribner Associates製 MTS740)にセットし、サンプル室の温湿度を90℃90%RHに制御した。電解質膜の膜厚方向の抵抗R(Ω)をインピーダンスアナライザ(Solartron製 1260型)を用いた交流インピーダンス法により測定した。なお、交流インピーダンス測定は印加電圧3mV、周波数1Hz〜3MHzで行った。
〔多孔質膜の製造方法〕
ポリエーテルスルホン系樹脂(住友化学社製、スミカエクセル4100P、還元粘度:0.41)20質量部をN‐メチルピロリドン80質量部に溶解した。得られた溶液にポリエチレングリコール(キシダ化学社製、ポリエチレングリコール200)を70質量部添加、撹拌してワニスを調製した。上記ワニスを、アプリケータを用いてガラス基板上に塗工し、25℃、相対湿度90%の雰囲気において60秒加湿した後に室温の凝固浴(水)に投入し5分間静置、乾燥することで多孔質膜を得た。得られた多孔質膜に関して幹の平均の太さ、膜厚、空隙率、弾性率を評価した。結果を表1に示す。
まず、高分子電解質の前駆体ポリマーである、テトラフルオロエチレン及びCF2=CFO(CF2)2−SO2Fから得られたパーフルオロスルホン酸樹脂の前駆体(加水分解及び酸処理後のイオン交換容量:1.4ミリ当量/g)ペレットを準備した。次に、その前駆体ペレットを、水酸化カリウム(15質量%)とメチルアルコール(50質量%)とを溶解した水溶液に、80℃で20時間接触させて、加水分解処理を行った。その後、ペレットを60℃の水中に5時間浸漬した。次いで、水中に浸漬した後のペレットを、60℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を、毎回塩酸水溶液を新しいものに代えて、5回繰り返した。そして、塩酸水溶液に繰り返し浸漬させた後のペレットを、イオン交換水で水洗、乾燥した。これにより、高分子電解質であるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(PFSA)を得た。
ポリエーテルスルホン系樹脂(住友化学社製、スミカエクセル4100P)20質量部をN‐メチルピロリドン60質量部に溶解する以外は実施例1と同様の方法で、多孔質膜及び電解質膜を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
ポリエーテルスルホン系樹脂(住友化学社製、スミカエクセル4100P)35質量部をN‐メチルピロリドン65質量部に溶解し、ポリエチレングリコール(キシダ化学社製、ポリエチレングリコール200)を170質量部添加する以外は実施例1と同様の方法で、多孔質膜及び電解質膜を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
ポリエチレングリコール(キシダ化学社製、ポリエチレングリコール200)を50質量部添加する以外は実施例1と同様の方法で、多孔質膜及び電解質膜を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
ポリエーテルスルホン系樹脂(住友化学社製、スミカエクセル4100P)10質量部をN,N‐ジメチルホルムアミド90質量部に溶解し、ワニスを調製した。上記ワニスを、アプリケータを用いてガラス基板上に塗工し、ただちに室温の凝固浴(水)に投入し5分間静置、乾燥することで多孔質膜を得た。多孔質膜を用いて実施例1と同様の方法で電解質膜を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1記載の溶液1を、アプリケータを用いてポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン300H)上に塗工し、120℃にて30分乾燥した。更に得られた膜の上から溶液1を再度塗工し、120℃にて30分乾燥した。こうして得られた積層膜を170℃で20分間熱処理し、多孔質膜を含まない電解質膜を得た。得られた電解質膜に関して実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
Claims (5)
- 三次元網目構造を形成し、連続孔を有する多孔質膜であって、
前記多孔質膜はポリエーテルスルホンを構成要素とし、
前記多孔質膜の一方の面における網目を構成する幹の平均の太さをdAとし、他方の面における網目を構成する幹の平均の太さをdBとし、dA≧dBの関係が成立するとしたとき、
前記多孔質膜を構成する幹の平均の太さ((dA+dB)/2)が、0.5〜2.5μmであり、
比dA/dBが、1以上2未満である、
固体高分子型燃料電池用の高分子電解質を補強する多孔質膜。 - 膜厚が、5〜20μmである、
請求項1記載の多孔質膜。 - 空隙率が、40〜70%である、
請求項1又は2に記載の多孔質膜。 - 弾性率が、300MPa以上である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔質膜。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の多孔質膜と、
高分子電解質と、を含む、
固体高分子型燃料電池用電解質膜。
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