JP2017183080A - 非水電解質二次電池負極用炭素質材料およびその製造方法 - Google Patents

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勇樹 横尾
誠 今治
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誠 今治
靖浩 多田
Yasuhiro Tada
靖浩 多田
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Abstract

【課題】高効率および高放電容量を有する非水電解質二次電池の負極活物質として用いられる炭素質材料を提供することである。【解決手段】負極活物質として使用される炭素質材料であって、アルカリ金属元素の含有量が0.05重量%未満であり、細孔径0.4nm以上の細孔容積が0.02cm3/g以下であり、ブタノール真密度が1.15g/cm3以上、1.51g/cm3以下である、非水電解質二次電池負極用炭素質材料である。【選択図】なし

Description

本発明は、非水電解質二次電池負極用炭素質材料およびその製造方法に関する。さらに、当該炭素質材料を含む非水電解質二次電池用の負極合剤または負極、非水電解質二次電池に関する。
携帯電話やノートパソコンなどの小型携帯機器は、高機能化が進み、その電源である二次電池の高エネルギー密度化が期待されている。高エネルギー密度の二次電池として、炭素質材料を負極として用いる非水溶媒系リチウム二次電池が実用化されている。非水溶媒系リチウム二次電池であるリチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を有する二次電池として広く使用されており、EV用途において一回の充電での航続距離を延ばすため、一層の高エネルギー密度化が期待されている。
このような非水電解質二次電池の負極には、黒鉛質材料や非黒鉛質材料の炭素質材料が使用される。非黒鉛質炭素材料は、耐久性に優れ、重量当たりでは黒鉛質材料のリチウム格納可能な理論容量を超える高い容量を有している。従来、非水電解質二次電池負極用炭素質材料に関して、炭素質前駆体にアルカリ金属元素を含む化合物を添着し、その炭素質前駆体を焼成する(アルカリ賦活)ことによって得られた炭素質材料は、充放電効率の向上が得られることが報告されている。例えば、特許文献1には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びリンの少なくとも一種を、元素換算で0.1〜5.0重量%含有する炭素質材料が開示されている。また、特許文献2及び3には、樹脂組成物等の表面にアルカリ金属含有化合物を担持させて、炭化処理することにより得られる炭素材が開示されている。
特開平9−204918号公報 特開2006−264991号公報 特開2006−264993号公報 国際公開第2016/021736号 国際公開第2016/021737号
上記のように、非電解質二次電池の特性を向上させるため、負極材として、アルカリ賦活された炭素質材料の適用が提案されている。しかし、これらの炭素質材料を用いた二次電池では、高い放電容量と充放電効率が得られなかった。
それに対し、例えば、特許文献4、5の炭素質材料が提案された。特許文献4は、アルカリ賦活により特定の物性を有する炭素質材料が開示されており、高い充放電容量と充放電効率が得られている。また、特許文献5は、アルカリ賦活に加えて、炭素質材料を熱分解炭素で被覆することが高容量化にとって有効であることを開示している。高容量化および高効率化を実現する上で、アルカリ賦活および熱分解炭素による被覆が有効な手法といえる。リチウムイオン二次電池の適用範囲が拡大する状況下では、高容量化および高効率化の要望があり、上記のアルカリ賦活および炭素被覆を用いて得られる炭素質材料についても改良が求められている。また、特許文献4、5では、炭素質材料のアルカリ金属元素含有量に関して0.05〜5重量%を開示している。このアルカリ金属元素含有量を低減する余地があるといえる。
本発明の目的は、高効率で高放電容量を有する非水電解質二次電池の負極活物質として用いられる炭素質材料を提供することである。
本発明者らは、上記の事情に鑑みて、鋭意研究した結果、炭素質前駆体のアルカリ賦活のため添着されたアルカリ金属元素が炭素質材料内に残存すると、負極合剤を集電体の表面に塗布し乾燥させて負極活物質層を有する電極を作製する際、活物質層が集電体表面から剥離しやすく、電極を安定して生産することが困難であることを見出した。
さらに、アルカリ金属元素を除去する方法としては、従来、水洗による処理(特許文献2及び3参照)、塩酸等の酸類に浸漬する処理や本焼成時の加熱により揮発除去する処理(特許文献4及び5参照)が提案されている。そこで、アルカリ金属元素の除去について鋭意研究したところ、従来の処理方法ではアルカリ金属元素が残存して低いレベルまで除去できないこと、ハロゲン元素を含むガスで処理することによりアルカリ金属元素を十分に除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、以下のものを提供する。
(1) 負極活物質として使用される炭素質材料であって、アルカリ金属元素の含有量が0.05重量%未満であり、細孔径0.4nm以上の細孔容積が0.02cm/g以下であり、ブタノール真密度が1.15g/cm以上、1.51g/cm以下である、非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
(2) 前記炭素質材料の炭素源が石油ピッチまたは石炭ピッチ由来である、(1)に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
(3) (1)または(2)に記載の炭素質材料を含み、さらに結着材及び溶媒を含む非水電解質二次電池用負極合剤。
(4) 前記溶媒は、水または有機溶媒である、(3)に記載の非水電解質二次電池用負極合剤。
(5) (1)または(2)に記載の炭素質材料を含む、非水電解質二次電池用負極。
(6) (5)に記載の負極を備える非水電解質二次電池。
(7) 炭素質前駆体に、アルカリ金属元素又はアルカリ金属元素を含む化合物を添着し、アルカリ添着炭素質前駆体を得るアルカリ添着工程、
前記アルカリ添着炭素質前駆体を非酸化性ガス雰囲気中において400℃〜1200℃で賦活してアルカリ賦活炭素質前駆体を得る工程、
前記アルカリ賦活炭素質前駆体に、ハロゲン元素を含むガス雰囲気中において400〜1200℃で第1の熱処理を施す工程、
前記第1の熱処理が施された炭化質前駆体に、非酸化性ガス雰囲気中において600〜1500℃で第2の熱処理を施す工程、
前記第2の熱処理が施された炭素質前駆体を、非酸化性ガス雰囲気中において800〜1600℃で本焼成する工程、
前記本焼成された炭素質材料に、熱分解炭素で被覆する工程、
を含む、非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法。
(8) 前記熱分解炭素で被覆された炭素質材料に、非酸化性ガス雰囲気中において800〜1500℃で再熱処理する工程を、さらに含む、(7)に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法。
(9) (7)または(8)に記載の製造方法により得られた非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
本発明によれば、アルカリ金属元素を含む不純物が少なく、かつ高効率で高放電容量を有する非水電解質二次電池用負極炭素質材料を提供できる。また、本発明によれば、アルカリ金属元素の含有量が少ないため、電極を製造する際に、集電体表面からの剥離が抑制され、電極を安定して生産することができる。
以下、本発明の実施形態について
[1]非水電解質二次電池負極用炭素質材料
本発明に係る非水電解質二次電池負極用炭素質材料は、負極活物質として使用される炭素質材料であって、アルカリ金属元素の含有量が0.05重量%未満であり、細孔径0.4nm以上の細孔容積が0.02cm/g以下であり、ブタノール真密度が1.15g/cm以上、1.51g/cm以下である。
(アルカリ金属元素含有量)
本実施形態に係る炭素質材料は、そのアルカリ金属元素含有量が0.05重量%未満である。アルカリ金属元素含有量が高いと、負極合剤を集電体の表面に塗布し乾燥させて負極活物質層を有する電極を作製する際、活物質層が集電体表面から剥離しやすく、電極を安定して生産することが困難である。そのため、アルカリ賦活炭素前駆体からアルカリ金属元素を除去する必要がある。その一方で、アルカリ金属元素を完全に除去する場合、処理時間が長くなり、処理条件によっては装置に過度の負担が掛かるなど経済的にメリットが少なくなる。そのため、アルカリ賦活処理が施された炭素質材料において、残存するアルカリ金属元素の含有量は、0.05重量%未満であることが好ましい。より好ましくは0.04重量%未満である。さらに好ましくは、0.03重量%、0.02重量%、0.01重量%、0.0005重量%である。
(細孔容積)
本実施形態に係る炭素質材料は、細孔径0.4nm以上の細孔容積が0.02cm/g以下であることが好ましい。炭素質材料の空隙には、幅広い細孔径を有する細孔構造がある。しかし、電解液の構成分子が侵入可能な程度に大きい径の細孔は、電気化学的に外表面と見なされるため、リチウムの安定な格納サイトにならない。そのような細孔の表面においては、充電時にリチウムイオンが反応するため、充放電効率の低下を招く。リチウムの格納サイトとしては、電解液の構成分子が侵入困難な細孔であって、且つリチウムイオンが侵入可能な程度の小さい径の細孔が望まれる。その観点から、細孔径0.4nm以上の細孔容積が0.02cm/g以下であると、炭素質材料内に電気化学的な外表面積が小さくなるので、充放電効率の向上に寄与する点で好ましい。
(真密度)
理想的な構造を有する黒鉛質材料の真密度は、2.27g/cmであり、結晶構造が乱れるに従い真密度が小さくなる傾向がある。そのため、真密度は、炭素の構造を表す指標として用いることができる。本明細書における真密度は、ブタノール法により測定されたものである。
本実施形態に係る炭素質材料の真密度は、1.15g/cm以上、1.51g/cm以下であると好ましい。真密度の上限は、より好ましくは1.48g/cm以下である。真密度の下限は、より好ましくは1.20g/cm以上であり、さらに好ましくは1.30g/cm以上である。真密度が1.51g/cmを超える炭素質材料は、リチウムを格納できるサイズの細孔が少なく、ドープ及び脱ドープ容量が小さくなることがある。また、真密度の増加は、炭素六角平面の選択的配向性を伴うため、リチウムのドープ及び脱ドープ時に炭素質材料が膨張収縮を伴う場合が多いため、好ましくない。一方、1.15g/cm未満の炭素質材料は、電極密度が低下するため、エネルギー密度の低下をもたらすことがあり、好ましくない。
(水素原子と炭素原子の原子比(H/C))
H/Cは、水素原子及び炭素原子を元素分析により測定されたものであり、炭素化度が高くなるほど炭素質材料の水素含有率が小さくなるため、H/Cが小さくなる傾向にある。そのため、H/Cは、炭素化度を表す指標として有効である。本実施形態に係る炭素質材料のH/Cは、0.10以下が好ましく、より好ましくは0.08以下、さらに好ましくは0.05以下である。水素原子と炭素原子の比H/Cが0.10を超えると、炭素質材料に官能基が多く存在し、リチウムとの反応により不可逆容量が増加することがあり、好ましくない。
(負極材料の構造)
非水電解質二次電池用負極材料として最適な構造とは、第1に、負極材料中に多くのリチウムをドープ及び脱ドープすることを可能とする空隙を有していることである。炭素質材料の空隙には、幅広い細孔径を有する細孔構造がある。しかし、電解液の侵入可能な細孔は、電気化学的に外表面と見なされるため、リチウムの安定な格納サイトにはならない。リチウムの格納サイトとしては、電解液が侵入困難な細孔であり、且つリチウムドープ時にその細孔の隅々までリチウムが到達可能な細孔である。隅々までリチウムが到達可能とは、炭素骨格をリチウムが拡散することを意味する。さらに、その過程で炭素六角網平面を広げながらリチウムが炭素内部まで拡散することが可能な細孔であってもよい。
非水電解質二次電池用負極材料として最適な構造とは、第2に、ドープ及び脱ドープ反応の初期により観測されるドープ容量と脱ドープ容量の差である不可逆容量が小さいことを可能とする構造、すなわち炭素表面での電解液の分解反応が少ない構造であることが挙げられる。炭素質材料表面に官能基が多く存在すると、反応の活性点となりうるため、官能基量は少ないことが好ましい。また、電解液と炭素質材料の接触面積が大きいと反応点が多くなるため、炭素質材料と電解液の接触面積は小さいことが好ましい。
電解液は炭素質材料の外表面から炭素質材料の細孔内へ拡散して接触する。そのため外表面に露出している細孔の容積を、炭素質材料と電解液の接触面積の大きさのひとつの指標として用いることができる。
本発明の非水電解質二次電池用負極材料は、アルカリ添着炭素質前駆体を所定雰囲気での熱処理を行うことによって、アルカリ金属元素が除去されて、炭素質材料内のアルカリ金属元素含有量を0.05重量%未満に低減させたものである。アルカリ金属元素含有量の低減により、活物質として当該炭素質材料を含む負極合剤を、集電体表面に塗布および乾燥させて、電極を作製する際、負極活物質層の剥離が抑制され、電極を安定して作成できるようになると考えられる。
それに加えて、炭素質材料における細孔径0.4nm以上の細孔容積が0.02cm/g以下であり、ブタノール真密度が1.15g/cm以上、1.51g/cm以下であることにより、負極材料中に多くのリチウムをドープ及び脱ドープすることを可能とする空隙が得られ、さらに炭素表面での電解液の分解反応が少ない構造であると考えられる。
[2]非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法
(アルカリ添着工程)
アルカリ添着工程においては、炭素質前駆体に、アルカリ金属元素を含む化合物を添着する。
(炭素質前駆体)
本実施形態における炭素質前駆体は、水素原子と炭素原子との原子比(H/C)が、0.05以上、さらに好ましくは0.15以上、とくに好ましくは0.30以上のものが好ましい。H/Cが0.05未満の炭素前駆体は、アルカリ添着の前に焼成されていることが考えられる。このような炭素質前駆体は、アルカリ添着を行っても、十分にアルカリ金属元素等が炭素前駆体の内部に含浸することができない。従って、アルカリ添着後に焼成を行っても、多くのリチウムをドープ及び脱ドープすることを可能とする十分な空隙を形成することが、困難となることがある。
炭素質前駆体の炭素源は、特に限定されるものではない。例えば、石油系ピッチ若しくはタール、石炭系ピッチ若しくはタール、又は熱可塑性樹脂(例えば、ケトン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体、ポリイミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリアミドイミド、アラミド樹脂、又はポリエーテルエーテルケトン)、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂、ポリアセタール樹脂、ナイロン樹脂、フラン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂及びアミド樹脂)を挙げることができる。
炭素質前駆体としては、石油系ピッチ若しくはタール、石炭系ピッチ若しくはタール、又は熱可塑性樹脂を炭素源として用いる場合、酸化処理などの架橋(不融化)処理により、難黒鉛化性炭素質前駆体とすることができる。従って、不融化することが好ましいが、不融化なしで、本発明の炭素質材料を得ることもできる。難黒鉛化性炭素前駆体は易黒鉛化性炭素前駆体と比べ、少量のアルカリ添加により高容量が得られるので好ましい。タール又はピッチに対する架橋処理は、架橋処理を行ったタール又はピッチを易黒鉛化性炭素前駆体から難黒鉛化性炭素前駆体に連続的に構造制御することを目的とするものである。タール又はピッチとしては、エチレン製造時に副生する石油系のタール又はピッチ、石炭乾留時に生成するコールタール、コールタールの低沸点成分を蒸留除去した重質成分又はピッチ、石炭の液化により得られるタール及びピッチを挙げることができる。また、これらのタール又はピッチの2種以上を混合して使用してもよい。
(不融化処理)
石油系ピッチ若しくはタール、石炭系ピッチ若しくはタール、又は熱可塑性樹脂などの架橋処理の方法としては、例えば架橋剤を使用する方法、又は空気などの酸化剤で処理する方法を挙げることができる。
架橋剤を用いる場合は、石油ピッチ若しくはタール、又は石炭ピッチ若しくはタールなどに対し、架橋剤を加えて加熱混合し、架橋反応を進め、炭素前駆体を得る。例えば、架橋剤としては、ラジカル反応により架橋反応が進行するジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジメタクリレート、又はN,N−メチレンビスアクリルアミド等の多官能ビニルモノマーが使用できる。多官能ビニルモノマーによる架橋反応は、ラジカル開始剤を添加することにより反応が開始する。ラジカル開始剤としては、α,α’アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル(BPO)、過酸化ラウロイル、クメンヒドロベルオキシド、ジクミルペルオキシド、1−ブチルヒドロペルオキシド、又は過酸化水素などが使用できる。
また、空気などの酸化剤で処理して架橋反応を進める場合は、以下のような方法で炭素前駆体を得ることが好ましい。すなわち石油系又は石炭系のピッチ等に対し、添加剤として沸点200℃以上の2乃至3環の芳香族化合物又はその混合物を加えて加熱混合した後、成形しピッチ成形体を得る。次にピッチに対し低溶解度を有し、且つ添加剤に対して高溶解度を有する溶剤で、ピッチ成形体から添加剤を抽出除去し、多孔性ピッチとした後、酸化剤を用いて酸化し、炭素前駆体を得る。前記の芳香族添加剤の目的は、成形後のピッチ成形体から前記添加剤を抽出除去して成形体を多孔質とし、酸化による架橋処理を容易にし、また炭素化後に得られる炭素質材料を多孔質にすることにある。このような添加剤は、例えばナフタレン、メチルナフタレン、フェニルナフタレン、ベンジルナフタレン、メチルアントラセン、フェナンスレン、又はビフェニル等の1種又は2種以上の混合物から選択することができる。ピッチに対する添加量は、ピッチ100重量部に対し、30〜70重量部の範囲が好ましい。ピッチと添加剤の混合は、均一な混合を達成するため、加熱し溶融状態で行う。ピッチと添加剤の混合物は、添加剤を混合物から容易に抽出できるようにするため、粒径1mm以下の粒子に成形することが好ましい。成形は溶融状態で行ってもよく、また混合物を冷却後粉砕することにより行ってもよい。ピッチと添加剤の混合物から添加剤を抽出除去するための溶剤としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、又はヘプタン等の脂肪族炭化水素、ナフサ、又はケロシン等の脂肪族炭化水素主体の混合物、メタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノール等の脂肪族アルコール類が好適である。このような溶剤でピッチと添加剤の混合物成形体から添加剤を抽出することによって、成形体の形状を維持したまま添加剤を成形体から除去することができる。この際に成形体中に添加剤の抜け穴が形成され、均一な多孔性を有するピッチ成形体が得られるものと推定される。
また、多孔性ピッチ成形体の調製方法としては、上記の方法以外に以下の方法も用いることができる。石油系又は石炭系のピッチ等を平均粒径(メディアン径)60μm以下に粉砕して微粉状ピッチを形成し、次いで前記微粉状ピッチ、好ましくは平均粒径(メディアン径)5μm以上40μm以下の微粉状ピッチを圧縮成形して多孔性圧縮成形体を形成することができる。圧縮成形は既存の成形機が使用でき、具体的には単発式の竪型成型機、連続式のロータリー式成型機やロール圧縮成形機が挙げられるが、それらに限定されるものではない。上記圧縮成形時の圧力は、好ましくは、面圧で20〜100MPaまたは線圧で0.1〜6MN/mであり、より好ましくは面圧で23〜86MPaまたは線圧で0.2〜3MN/mである。前記圧縮成形時の圧力の保持時間は、成形機の種類や微粉状ピッチの性状及び処理量に応じて、適宜定めることが出来るが、概ね0.1秒〜1分の範囲内である。微粉状ピッチを圧縮成形する時には必要に応じてバインダー(結合剤)を配合してもよい。バインダーの具体例としては、水、澱粉、メチルセルロース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、又はフェノール樹脂などが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。圧縮成形により得られる多孔性ピッチ成形体の形状については特に限定はなく、粒状、円柱状、球状、ペレット状、板状、ハニカム状、ブロック状、ラシヒリング状などが例示される。
得られた多孔性ピッチを架橋するため、次に酸化剤を用いて、好ましくは120〜400℃の温度で酸化する。酸化剤としては、O、O、NO、それらを空気若しくは窒素等で希釈した混合ガス、又は空気等の酸化性気体、あるいは硫酸、硝酸、過酸化水素水等の酸化性液体を用いることができる。酸化剤として、空気又は空気と他のガス例えば燃焼ガス等との混合ガスのような酸素を含むガスを用いて、120〜400℃で酸化して架橋処理を行うことが簡便であり、経済的にも有利である。この場合、ピッチ等の軟化点が低いと、酸化時にピッチが溶融して酸化が困難となるので、使用するピッチ等は軟化点が150℃以上であることが好ましい。
炭素質前駆体は、粉砕しなくてもよいが、粒子径を小さくするために、粉砕することができる。アルカリ添着工程において、アルカリ金属元素又はアルカリ金属化合物の添着量が均一、且つ炭素質前駆体への浸透が容易になるため、粒子径の小さな炭素質前駆体へ添着することが好ましい。粉砕は、不融化の前、不融化の後(アルカリ添着の前)、アルカリ添着の後、賦活の後、第1または第2の熱処理の後、本焼成の後などに粉砕することができる。粉砕に用いる粉砕機は、特に限定されるものではなく、例えばジェットミル、ロッドミル、ボールミル、又はハンマーミルを用いることができる。
前記のとおり、粉砕の順番は限定されるものではない。しかしながら、本発明の効果である高い充放電容量を得るためには、炭素質前駆体にアルカリを均一に添着し、そして焼成を行うことが好ましい。従って、アルカリ添着前に粉砕することが好ましい。最終的に得られる炭素質材料の粒子径とするためには、粉砕工程において平均粒子径1〜50μmに粉砕することが、好ましい。
(アルカリ金属元素又はアルカリ金属元素を含む化合物)
炭素質前駆体に添着するアルカリ金属元素又はアルカリ金属化合物に含まれるアルカリ金属元素としては、リチウム、ナトリウム、又はカリウムなどのアルカリ金属元素を用いることができる。リチウム化合物は、他のアルカリ金属化合物と比べ空間を広げる効果が低く、また他のアルカリ金属元素と比べ埋蔵量が少ないという問題がある。一方、カリウム化合物は、炭素共存下、還元雰囲気で熱処理を行うと、金属カリウムが生成される。金属カリウムは、他のアルカリ金属元素と比べ水分との反応性が高く、特に危険性が高いという問題点かある。そのような観点から、アルカリ金属元素としては、ナトリウムが好ましい。ナトリウムを用いることによって、特に高い充放電容量を示す炭素質材料を得ることができる。
アルカリ金属元素は、金属の状態で炭素質前駆体に添着してもよい。水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、又はハロゲン化合物などアルカリ金属元素を含む化合物(以下、「アルカリ金属化合物」と称することがある)として添着してもよい。アルカリ金属化合物としては、限定されるものではない。例えば、アルカリ金属の水酸化物、又は炭酸塩は、浸透性が高く、炭素質前駆体に均一に含浸できるので好ましく、特に水酸化物が好ましい。
(アルカリ添着炭素質前駆体)
前記炭素質前駆体にアルカリ金属元素又はアルカリ金属化合物を添着することによって、アルカリ添着炭素質前駆体が得られる。アルカリ金属元素又はアルカリ金属化合物の添着方法は、限定されるものでない。例えば、炭素質前駆体に対し、所定量のアルカリ金属元素又はアルカリ金属化合物を粉末状で混合してもよい。また、アルカリ金属化合物を適切な溶媒に溶解し、アルカリ金属化合物溶液を調製する。このアルカリ金属化合物溶液を炭素質前駆体と混合した後、溶媒を揮発させ、アルカリ金属化合物が添着した炭素質前駆体を調製してもよい。
具体的には、限定されるものではないが、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物を良溶媒である水に溶解し、水溶液とした後、これを炭素質前駆体に添加する。50℃以上に加熱した後、常圧或いは減圧で水分を除去することにより炭素質前駆体にアルカリ金属化合物を添加することができる。
炭素前駆体は、疎水性であることが多く、アルカリ水溶液の親和性が低い場合には、アルコールを適宜添加することにより、炭素質前駆体へのアルカリ水溶液の親和性を改善することができる。アルカリ金属水酸化物を使用する場合、空気中で添着処理を行うとアルカリ金属水酸化物が二酸化炭素を吸収して、アルカリ金属水酸化物がアルカリ金属炭酸塩と変化し、炭素質前駆体へのアルカリ金属化合物の浸透力が低下するので、雰囲気中の二酸化炭素濃度を低減することが好ましい。
炭素質前駆体に添着するアルカリ金属化合物の添着量は、特に限定されるものではない。添着量の上限は、好ましくは、40.0重量%以下であり、より好ましくは30.0重量%以下であり、さらに好ましくは20.0重量%以下である。アルカリ金属化合物の添着量が多すぎる場合、過剰にアルカリ賦活が生じる。そのため、真密度が大きく低下し、電極密度が低下するので、好ましくない。また、添着量の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.5重量%以上であり、より好ましくは1.0重量%以上であり、さらに好ましくは3.5重量%以上であり、最も好ましくは4重量%以上である。アルカリ金属化合物の添着量が少なすぎると、ドープ及び脱ドープのための細孔構造を形成することが困難となり、好ましくない。
(アルカリ金属元素及びアルカリ金属化合物の除去)
本実施形態では、後記する第1の熱処理および第2の熱処理を行うことにより、アルカリ金属元素を効率よく、低レベルまで除去することができる。
アルカリ賦活炭素質前駆体からのアルカリ金属元素及びアルカリ金属化合物の除去は、本焼成の前、または本焼成の後に行うことができる。本焼成した炭素質材料は、炭素化反応が進行し、含有されるアルカリ金属元素とハロゲン元素との結合が強固であるから、本焼成前にアルカリ金属元素等の除去を行うことが好ましい。アルカリ金属元素及びアルカリ金属化合物の除去は、アルカリ賦活炭素質前駆体をそのままの形態で、あるいは、粉砕して微粒子とした形態で、所定の熱処理を行うことが好ましい。熱処理時の被処理物の粒径が大きいと、除去率が低下することがある。被処理物の平均粒子径は、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
(第1の熱処理工程)
アルカリ賦活炭素質前駆体は、ハロゲン元素を含むガス雰囲気中において400〜1200℃で第1の熱処理を施される。第1の熱処理により、炭素質前駆体に含まれるアルカリ金属元素は、当該雰囲気中のハロゲン元素と結合した化合物(反応生成物)を形成する。
第1の熱処理における雰囲気に含まれるハロゲン元素を含むガスとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、臭化ヨウ素、フッ化塩素(ClF)、塩化ヨウ素(ICl)、臭化ヨウ素(IBr)、塩化臭素(BrCl)など、若しくは熱分解によりこれらのハロゲン化合物を発生する化合物、例えばCCl、Cl、又はそれらの混合物を挙げることができる。好ましくは塩素または塩化水素である。炭素質前駆体へ供給するときは、不活性ガスなどの非酸化性ガスとともに使用されることが好ましく、例えば、ヘリウム、窒素、アルゴン、クリプトンまたはそれらの混合ガスなどの非酸化性ガスを使用できる。
第1の熱処理温度が低すぎると、アルカリ金属元素とハロゲン元素との結合する反応が遅くなり、第2の熱処理時にアルカリ金属元素の除去が不十分となる。他方、第1の熱処理温度が高すぎると、ハロゲン元素がアルカリ金属以外とも反応し、その生成物が炭素前駆体に付着することで、性能低下を招くことがある。第1の熱処理温度は、好ましくは400以上1200℃以下であり、より好ましくは600℃以上1000℃以下である。
(第2の熱処理工程)
前記第1の熱処理が施された炭素前駆体は、非酸化性ガス雰囲気中において600〜1500℃で第2の熱処理を施される。第1の熱処理によって形成されたアルカリ金属元素とハロゲン元素との化合物は、第2の熱処理により除去されて、アルカリ金属元素含有量を低減させる。その結果、本焼成後の炭素質材料におけるアルカリ金属元素含有量が0.05重量%以下の低レベルとなる。
本発明に係る製造方法は、第1の熱処理ではハロゲン元素を含むガス雰囲気を使用し、第2の熱処理では非酸化性ガス雰囲気を使用し、アルカリ金属元素とハロゲン元素との反応生成物を揮発除去する。ガス状の分子は、炭素前駆体の空隙内に進入し、細孔に含まれるアルカリ金属元素と反応することができる。従来の水洗や酸洗浄のように液体を使用する除去法は、空隙の奥まで進入することが困難であるため、本発明のように十分にアルカリ金属元素を除去できないと考えられる。
第2の熱処理を省略して本焼成に移行すると、本焼成後の炭素質材料におけるアルカリ金属含有量を十分に低減できない。また、第2の熱処理では、アルカリ金属元素以外の揮発分、例えばCO、CO、CH、及びH、タール分なども除去される。第2の熱処理を省略して本焼成すると、アルカリ添着炭素質前駆体から多量の分解生成物が発生する。これらの分解生成物は、高温で二次分解反応を生じ、炭素材料の表面に付着して電池性能の低下の原因となる可能性があり、また、焼成炉内に付着して炉内の閉塞を引き起こす可能性がある。その点でも、本焼成を行う前に第2の熱処理を行い、本焼成時の分解生成物を低減させることが好ましい。
第2の熱処理温度が低すぎると、アルカリ金属元素とハロゲン元素との化合物を含む分解生成物の揮発による除去が不十分である。他方、第2の熱処理温度が高すぎると、当該分解生成物に起因する二次分解反応などの反応を生じて炭素前駆体に付着することで、性能低下を招くことがある。また、炭素前駆体が過剰に焼き縮み、リチウム格納サイトが減少することがある。そのため、第2の熱処理温度は、好ましくは600℃以上1500℃以下であり、より好ましくは800℃以上1300℃以下である。
第2の熱処理は、非酸化性ガス雰囲気中で行い、非酸化性ガスとしては、ヘリウム、窒素、又はアルゴンなどを使用できる。第2の熱処理工程では、アルカリ炭素賦活炭素前駆体からアルカリ金属元素とハロゲン元素との反応生成物等が揮発放出されるので、非酸化性ガス雰囲気中にはハロゲン元素等が含まれることがある。また、第2の熱処理は、減圧下、例えば10kPa以下で行うことができる。第2の熱処理の時間は、特に限定されるものではない。例えば0.5〜10時間で行うことができ、1〜5時間がより好ましい。
炭素質前駆体を第2の熱処理を施した後に、粉砕することにより、粒度調整を行ってもよい。粉砕は、本焼成の炭素化した後に行うこともできる。炭素化反応が進行すると、炭素前駆体が硬くなり、粉砕による粒子径分布の制御が困難になるため、粉砕工程は、第2の熱処理の後で、本焼成の前が好ましい。粉砕によって、本発明に係る炭素質材料の平均粒子径を1〜50μmにすることができる。粉砕に用いる粉砕機は、特に限定されるものではなく、例えば、ジェットミル、ロッドミル、ボールミル、又はハンマーミルを用いることができる。分級機を備えたジェットミルが好ましい。
(本焼成工程)
本発明の製造方法における本焼成は、通常の本焼成の手順にしたがって実施できる。本焼成を行うことにより、非水電解質二次電池負極用炭素質材料を得ることができる。本焼成の温度は、800〜1600℃である。本焼成温度の下限は、800℃以上であり、より好ましくは1100℃以上であり、特に好ましくは、1150℃以上である。本焼成温度が低すぎると、炭素化が不十分で不可逆容量が増加することがある。また、炭素質材料に官能基が多く残存してH/Cの値が高くなり、リチウムとの反応により不可逆容量が増加することがある。一方、本焼成温度の上限は、1600℃以下であり、より好ましくは1450℃以下であり、特に好ましくは1350℃以下である。本焼成温度が1600℃を超えると、リチウムの格納サイトとして形成された空隙が減少し、ドープ及び脱ドープ容量が減少することがある。すなわち、炭素六角平面の選択的配向性が高まり放電容量が低下することがある。また、本焼成温度は、炭素化反応を進行させるため、第1の熱処理および第2の熱処理で用いられる加熱温度よりも高い温度範囲とすることが好ましい。
本焼成は、非酸化性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。非酸化性ガスとしては、ヘリウム、窒素又はアルゴンなどを挙げることができる。これらを単独或いは混合して用いることができる。また、本焼成は、減圧下で行うこともでき、例えば、10kPa以下で行うことも可能である。本焼成の時間も特に限定されるものではない。例えば、0.1〜10時間で行うことができ、0.3〜8時間が好ましく、0.4〜6時間がより好ましい。
第2の熱処理工程では、炭素前駆体からアルカリ金属元素とハロゲン元素との化合物を含む反応生成物が揮発放出し、処理装置の内壁に当該反応生成物が付着する。本焼成工程では、炭素質材料が当該反応生成物により汚染されるのを防止するため、第2の熱処理が施された炭素前駆体は、別の処理装置に移し替えた後、焼成処理を行うことが好ましい。
(被覆工程)
本発明の製造方法は、焼成物を熱分解炭素で被覆する工程を含む。熱分解炭素での被覆は、CVD法を用いることができる。具体的には、焼成物を、直鎖状又は環状の炭化水素ガスと接触させ、熱分解により精製された炭素を、焼成物に蒸着する。この方法はいわゆる化学蒸着法(CVD法)として、よく知られている方法である。熱分解炭素による被覆工程によって、得られる炭素質材料の細孔の径や容積を制御することができる。
本発明に用いる熱分解炭素は、炭化水素ガスとして添加できるものであればよい。前記炭化水素ガスを、好ましくは非酸化性ガスに混合し、炭素質材料と接触させる。
炭化水素ガスの炭素数は、限定されるものではない。好ましくは炭素数1〜25であり、より好ましくは1〜20であり、さらに好ましくは1〜15であり、最も好ましくは1〜10である。
炭化水素ガスの炭素原は、限定されるものではない。例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、アセチレン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロプロペン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、デカリン、ノルボルネン、メチルシクロヘキサン、ノルボルナジエン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、ブチルベンゼン又はスチレンを挙げることができる。また、炭化水素ガスの炭素源として、気体の有機物質及び、固体や液体の有機物質を加熱し、発生した炭化水素ガスを用いることもできる。固体や液体の有機物質は、ガス化してから焼成物に接触させても良いし、焼成物と混合して加熱してもよい。また、被覆工程は本焼成工程と同時に行ってもよい。
接触の温度は、限定されるものではない。600〜1000℃が好ましく、650〜1000℃がより好ましく、700〜950℃がさらに好ましい。
接触の時間は、限定されるものではない。例えば、好ましくは10分〜5.0時間、より好ましくは15分〜3時間で行うことができる。
また、被覆に用いる装置も、限定されるものではない。例えば、流動炉を用いて、流動床等による連続式又はバッチ式の層内流通方式で行うことができる。ガスの供給量(流通量)も、限定されるものではない。
非酸化性ガスとしては、窒素、又はアルゴンを用いることができる。非酸化性ガスに対する炭化水素ガスの添加量は、例えば0.1〜50体積%が好ましく、0.5〜25体積%がより好ましく、1〜15体積%がさらに好ましい。
(再熱処理工程)
本発明の製造方法は、前記熱分解炭素で被覆された炭素質材料を再熱処理する工程を含むことができる。この再熱処理を行うことにより、被覆された炭素質材料の細孔は、充放電効率の向上に適した大きさに制御可能である。熱処理の温度は、800〜1500℃が好ましい。800℃未満あるいは1500℃超では、上記の効果を十分に発揮できない。熱処理温度の下限は、より好ましくは1000℃以上であり、特に好ましくは1050℃以上である。また、熱処理温度の上限は、より好ましくは1400℃以下であり、特に好ましくは1300℃以下である。
上記の再熱処理は、非酸化性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。非酸化性ガスとしては、ヘリウム、窒素又はアルゴンなどを挙げることができる。これらを単独或いは混合して用いることができる。また、減圧下で行うこともでき、例えば、10kPa以下で行うことも可能である。熱処理の時間は、特に限定されるものではない。例えば、0.1〜10時間で行うことができ、0.3〜8時間が好ましく、0.4〜6時間がより好ましい。
本発明においては、炭素質前駆体にアルカリ金属元素又はアルカリ金属元素を含む化合物を添着し、熱処理することにより、炭素質前駆体において炭素化反応とアルカリ賦活反応により空隙が形成される。その後の本焼成によって得られる炭素質材料において、上記の空隙は、リチウムを格納するための好適な細孔となり得る。しかし、この細孔の径が大きくなると、電解液の構成分子が侵入しうる細孔となり、ドープ・脱ドープ時に電解液の分解などの反応を生じて、不可逆容量が増加するなどリチウムの格納に適さない細孔となる可能性がある。そこで、本焼成後の炭素質材料について、熱分解炭素の被覆処理を施すことにより、細孔径を適切に制御し、不可逆容量の低減が可能となるとともに、リチウムを格納するために好適な細孔が形成される。
[3]非水電解質二次電池用負極
(負極合剤)
本発明の炭素質材料を含む負極電極は、炭素質材料に結着材(バインダー)を添加し適当な溶媒を適量添加、混練し、負極合剤とした後に、金属板等からなる集電板に塗布・乾燥後、加圧成形することにより製造することができる。本発明の炭素質材料を用いることにより、特に導電助剤を添加しなくとも、高い導電性を有する電極を製造することができる。また、負極合剤を集電体に塗工すると、電極活物質層が剥離することがある。本発明に係る炭素質材料を含む負極合剤は、アルカリ賦活処理が施された後、アルカリ金属元素が除去されてアルカリ金属元素の残存量が少ないので、集電体からの剥離を抑制する効果が得られる。剥離強度としては、1.60gf/mm以上であると好ましく、よりこの好ましくは、1.80gf/mm、2.00gf/mm以上、2.10gf/mm以上である。
さらに高い導電性を賦与することを目的として、必要に応じて電極合剤の調製時に導電助剤を添加することができる。導電助剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、又はカーボンファイバーなどを用いることができる。その添加量は、使用する導電助剤の種類によっても異なる。添加する量が少なすぎると、期待する導電性が得られないので好ましくない。他方、多すぎると、電極合剤中の分散が悪くなるので好ましくない。このような観点から、添加する導電助剤の好ましい割合は、0.5〜15重量%(ここで、活物質(炭素質材料)量+バインダー量+導電助剤量=100重量%とする)であり、さら好ましくは0.5〜7.0重量%、特に好ましくは0.5〜5.0重量%である。
結着材としては、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、およびSBR(スチレン・ブタジエン・ラバー)とCMC(カルボキシメチルセルロース)との混合物等の電解液と反応しないものであれば特に限定されない。PVDFは、活物質表面に付着したPVDFがリチウムイオン移動を阻害することが少なく、良好な入出力特性を得るために好ましい。PVDFを溶解しスラリーを形成するために、N−メチルピロリドン(NMP)などの極性溶媒が好ましく用いられる。SBRなどの水性エマルジョンやCMCを水に溶解して用いることもできる。結合剤の添加量が多すぎると、得られる電極の抵抗が大きくなるため、電池の内部抵抗が大きくなり電池特性を低下させるので好ましくない。また、結合剤の添加量が少なすぎると、負極材料粒子相互および集電材との結合が不十分となり好ましくない。結合剤の好ましい添加量は、使用するバインダーの種類によっても異なるが、PVDF系のバインダーでは、好ましくは3.0〜13.0重量%であり、さらに好ましくは3.0〜10.0重量%である。一方、溶媒に水を使用するバインダーでは、SBRとCMCとの混合物など、複数のバインダーを混合して使用することが多く、使用する全バインダーの総量として0.5〜5.0重量%が好ましく、さらに好ましくは1.0〜4.0重量%である。
(負極電極)
負極電極は、通常、集電体を有する。負極集電体としては、例えば、SUS、銅、ニッケル又はカーボンを用いることができる。このうち、銅又はSUSが好ましい。
電極活物質層は、集電板の両面に形成するのが基本である。必要に応じて片面でもよい。電極活物質層が厚いほど、集電板やセパレータなどが少なくて済むため高容量化には好ましい。一方で、対極と対向する電極面積が広いほど入出力特性の向上に有利であることから、電極活物質層の厚みが過剰になると、入出力特性の低下を招くので好ましくない。好ましい活物質層(片面当たり)の厚みは、限定されるものではなく、10μm〜1000μmの範囲内である。より好ましくは10〜80μmであり、さらに好ましくは20〜75μm、特に好ましくは20〜60μmである。
[4]非水電解質二次電池
本発明の負極材料を用いて、非水電解質二次電池の負極を形成した場合、正極材料、セパレータ、電解液など電池を構成する他の材料は特に限定されることなく、非水溶媒二次電池として従来使用され、あるいは提案されている種々の材料を使用することが可能である。
(正極電極)
正極電極は、正極活物質を含み、さらに導電助剤、バインダー、又はその両方を含んでもよい。正極活物質層における正極活物質と、他の材料との混合比は、本発明の効果が得られる限りにおいて、限定されるものではなく、適宜決定することができる。
正極活物質は、正極活物質を限定せずに用いることができる。例えば、層状酸化物系(LiMOと表されるもので、Mは金属:例えばLiCoO、LiNiO、LiMnO、又はLiNiCoMn(ここでx、y、zは組成比を表す))、オリビン系(LiMPOで表され、Mは金属:例えばLiFePOなど)、スピネル系(LiMで表され、Mは金属:例えばLiMnなど)の複合金属カルコゲン化合物を挙げることができ、これらのカルコゲン化合物を必要に応じて混合してもよい。また、コバルト酸リチウムのコバルトの一部をニッケルとマンガンで置換し、コバルト、ニッケル、マンガンの3つを使用することで材料の安定性を高めた三元系〔Li(Ni−Mn−Co)O〕や前記三元系のマンガンの代わりにアルミニウムを使用するNCA系材料〔Li(Ni−Co−Al)O〕が知られており、これらの材料を使用することができる。
正極電極は、さらに導電助剤及び/又は結着材を含むことができる。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、又はカーボンファイバーを挙げることができる。導電助剤の含有量は、限定されるものではないが、例えば0.5〜15重量%である。また、バインダーとしては、例えば、PTFE又はPVDF等のフッ素含有バインダーを挙げることができる。導電助剤の含有量は、限定されるものではないが、例えば0.5〜15重量%である。また、正極活物質層の厚さは、限定されないが、例えば10μm〜1000μmの範囲内である。
正極活物質層は、通常集電体を有する。負極集電体としては、例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボンを用いることができる。このうち、アルミニウム又はSUSが好ましい。
(電解液)
これら正極と負極との組み合わせで用いられる非水溶媒型電解液は、一般に非水溶媒に電解質を溶解することにより形成される。非水溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、γ−ブチルラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、又は1,3−ジオキソランなどの有機溶媒の一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、電解質としては、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiAsF、LiCl、LiBr、LiB(C、又はLiN(SOCFなどが用いられる。二次電池は、一般に上記のようにして形成した正極層と負極層とを必要に応じて不織布、その他の多孔質材料などからなる透液性セパレータを介して対向させ、電解液中に浸漬させることにより形成される。セパレータとしては、二次電池に通常用いられる不織布、その他の多孔質材料からなる透過性セパレータを用いることができる。あるいはセパレータの代わりに、もしくはセパレータと一緒に、電解液を含浸させたポリマーゲルからなる固体電解質を用いることもできる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
本実施形態の非水電解質二次電池用炭素質材料に関する物性値である「アルカリ金属元素含有量」、「細孔径0.4nm以上の細孔容積」、「ブタノール法により求めた真密度(ブタノール真密度)」、「水素/炭素の原子比(H/C)」の測定法を以下に記載する。実施例を含めて、本明細書中に記載する物性値は、以下の方法により求めた値に基づくものである。
(アルカリ金属元素含有量)
アルカリ金属元素含有量は、(株)日立ハイテクノロジーズ製のICP発光分光分析装置SPS3520UV−DDを用いて測定した。まず、既定のアルカリ金属元素量を含む標準溶液から、アルカリ金属元素量に対応するスペクトル線を得て、検量線を作成した。次いで、測定対象の試料について、同様に、上記ICP発光分光分析装置を用いて、スペクトル線を得た。得られたスペクトル線と上記検量線により、アルカリ金属元素の含有量を求めた。
(細孔径0.4nm以上の細孔容積)
MICROMERITICS社製「ASAP 2010」を用いて細孔容積を測定した。まず、試料を試料管内に充填し、200℃で12時間減圧加熱乾燥を行って、試料における細孔内の水分などの不純物を除去する前処理を行った。次いで、減圧しながら、ドライアイスエタノールを用いて、試料温度を−78℃に低下させた。ここで、二酸化炭素を0.01mmHgの圧力から800mmHgの圧力まで段階的に導入し、各圧力における試料の二酸化炭素の吸着量を測定した。得られた圧力と二酸化炭素吸着量との関係から、JISZ8831−3に基づいて、Horvath−Kawazoe法を用いて細孔径0.4nm以上の細孔の容積(cm/g)を測定した。
(ブタノール法による真密度(ρBt))
JIS R7212に定められた方法に準拠し、ブタノールを用いて真密度(g/cm)を測定した。概要を以下に記す。
内容積約40mLの側管付比重びんの質量(m)を正確に量る。次に、その底部に試料を約10mmの厚さになるように平らに入れた後、その質量(m)を正確に量る。これに1−ブタノールを静かに加えて、底から20mm程度の深さにする。次に比重びんに軽い振動を加えて、大きな気泡の発生がなくなったのを確かめた後、真空デシケーター中に入れ、徐々に排気して2.0〜2.7kPaとする。その圧力に20分間以上保ち、気泡の発生が止まった後取り出して、さらに1−ブタノールで満たし、栓をして恒温水槽(30±0.03℃に調節してあるもの)に15分間以上浸し、1−ブタノールの液面を標線に合わせる。次に、これを取り出して外部をよくぬぐって室温まで冷却した後、質量(m)を正確に量る。次に同じ比重びんに1−ブタノールだけを満たし、前記と同じようにして恒温水槽に浸し、標線を合わせた後、質量(m)を量る。また、使用直前に沸騰させて溶解した気体を除いた蒸留水を比重びんにとり、前と同様に恒温水槽に浸し、標線を合わせた後、質量(m)を量る。真密度(ρBt)は、次の式により計算する。
Figure 2017183080
(ここでdは水の30℃における比重(0.9946)である。)
(水素/炭素の原子比(H/C))
JIS M8819に定められた方法に準拠し測定した。CHNアナライザーによる元素分析により得られる試料中の水素及び炭素の質量割合から、水素/炭素の原子数の比として求めた。
(実施例1)
軟化点205℃、H/C原子比0.65、キノリン不溶分0.4重量%の石油系ピッチ70kgと、ナフタレン30kgとを、撹拌翼および出口ノズルを有する内容積300リットルの耐圧容器に仕込み、加熱溶融混合を行った。加熱溶融混合した石油系ピッチを冷却した後、粉砕した。得られた粉砕物を90〜100℃の水中に投入し、冷却して球状ピッチ成型体を得た。大部分の水をろ過により取り除いた後、n−ヘキサンでピッチ成型体中のナフタレンを抽出除去した。このようにして得られた多孔性球状ピッチを、加熱空気を通じながら酸化し、熱に対して不融性の多孔性球状酸化ピッチを得た。多孔性球状酸化ピッチの酸素含有量は、13重量%であった。
次に、不融性の多孔性球状酸化ピッチを、ジェットミル(ホソカワミクロン社AIR JET MILL;MODEL 100AFG)により粉砕し、平均粒子径が10〜25μmの粉砕炭素質前駆体を得た。得られた粉砕炭素質前駆体に窒素雰囲気中で水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を加え含浸させた後、減圧加熱脱水処理を行い、粉砕炭素質前駆体に対して7重量%のNaOHを添着した粉砕炭素質前駆体を得た。
次に、NaOHを添着した粉砕炭素質前駆体25gを横型管状炉に入れ、250℃/hの昇温速度で昇温し、窒素雰囲気中600℃で1時間保持して予備焼成を行った。続いてさらに800℃まで昇温し、1時間保持して、アルカリ賦活を行った。なお、予備焼成とアルカリ賦活は、流量10L/minの窒素雰囲気下で行った。
アルカリ賦活後の試料は、石英製の反応管に挿入され、窒素ガス気流下で800℃に加熱保持した。その後、反応管に流通している窒素ガスを、窒素ガスと塩素ガスの混合ガスに変えて1時間の熱処理を行い、粉砕炭素質前駆体に塩素ガスを接触させた。このときの窒素ガスと塩素ガスの流量は、0.1L/minとした。
次に、上記の熱処理が施された試料を、横型管状炉に挿入し、250℃/hの昇温速度で昇温し、窒素雰囲気中800℃で1時間の熱処理を行った。このときの窒素の流量は、10L/minとした。
次に、上記の熱処理が施された試料を、別の横型管状炉に挿入し、1200℃まで昇温し、1時間保持して本焼成を行った。このとき窒素の流量は、10L/minとした。
次に、上記の本焼成が行われた試料5gを、石英製反応管に入れ、窒素ガス気流下で780℃に加熱保持した。その後、反応管中に流通している窒素ガスを、窒素ガスとヘキサンの混合ガスに代えて、上記試料の炭素材において熱分解炭素の被覆(ヘキサンCVD処理)を行った。ヘキサンの注入速度は、0.3g/分であり、ヘキサンを50分間注入した後、ヘキサンの供給を停止した。次いで、反応管中のガスを窒素で置換して、780℃で50分間保持した。その後、放冷して炭素質材料1を得た。
(実施例2)
NaOHの添着量を18重量%にしたこと以外は、実施例1と同様にして炭素質材料2を得た。
(実施例3)
NaOHの添着量を30重量%にしたこと以外は、実施例1と同様にして炭素質材料3を得た。
(実施例4)
ヘキサンCVD処理に代えて、本焼成後の試料5gと、ポリスチレン0.55gを混合して石英製の反応管に入れ、窒素ガス気流の下で、26℃/分の昇温速度で780℃まで昇温し、1時間で加熱保持するポリスチレンCVD処理を行ったこと以外は、実施例2と同様にして炭素質材料4を得た。
(実施例5)
石炭系ピッチをジェットミル(ホソカワミクロン社AIR JET MILL;MODEL 100AFG)により粉砕し、平均粒子径が10〜25μmの粉砕炭素質前駆体を得た。次に、加熱空気を通じながら酸化し、熱に対して不融性の酸化ピッチを得た。酸化石炭系ピッチの酸素含有量は、13重量%であった。得られた酸化石炭系ピッチにNaOHを添着したこと以外は、実施例2と同様にして炭素質材料5を得た。
(比較例1)
窒素ガスと塩素ガスの混合ガスによる熱処理を行わないこと以外は、実施例1と同様にして炭素質材料6を得た。
(比較例2)
窒素ガスと塩素ガスの混合ガスによる熱処理に代えて、炭素試料に対して10倍重量の水を用いて30分間の撹拌および洗浄をした後に、ろ過および乾燥をする水洗処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして炭素質材料7を得た。
(比較例3)
窒素ガスと塩素ガスの混合ガスによる熱処理に代えて、10倍重量の5mol/L塩酸を用いて30分間撹拌および洗浄をした後に、ろ液が中性を示すまで十分量の水を用いてろ過および乾燥をする酸洗処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして炭素質材料8を得た。
(比較例4)
NaOHを添着せず、さらに窒素ガスと塩素ガスの混合ガスによる熱処理およびヘキサンCVD処理を行わないこと以外は、実施例1と同様にして炭素質材料9を得た。
(比較例5)
窒素ガスと塩素ガスの混合ガスによる熱処理、およびヘキサンCVD処理を行わないこと以外は、実施例2と同様にして炭素質材料10を得た。
(比較例6)
NaOHを添着せず、さらに窒素ガスと塩素ガスの混合ガスによる熱処理を行わないこと以外は、実施例1と同様にして炭素質材料11を得た。
実施例1〜5及び比較例1〜6で得られた電極を用いて、以下の(a)の操作により非水電解質二次電池を作成し、以下(b)および(c)の手順により電極及び電池性能の評価を行った。試験結果を表1に示す。
(a)試験電池の作製
本発明の炭素材は、非水電解質二次電池の負極電極を構成するのに適しているが、電池活物質の放電容量(脱ドープ量)及び不可逆容量(非脱ドープ量)を、対極の性能のバラツキに影響されることなく、精度良く評価するために、特性の安定したリチウム金属を対極として、上記で得られた電極を用いてリチウム二次電池を構成し、その特性を評価した。
リチウム極の調製は、Ar雰囲気中のグローブボックス内で行った。予め2016サイズのコイン型電池用缶の外蓋に直径16mmのステンレススチール網円盤をスポット溶接した後、厚さ0.8mmの金属リチウム薄板を直径15mmの円盤状に打ち抜いたものをステンレススチール網円盤に圧着し、電極(対極)とした。
このようにして製造した電極の対を用い、電解液としてはエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートを容量比1:2:2で混合した混合溶媒に1.4mol/Lの割合でLiPFを加えたものを使用し、直径19mmの硼珪酸塩ガラス繊維製微細細孔膜のセパレータとして、ポリエチレン製のガスケットを用いて、Arグローブボックス中で、2016サイズのコイン型非水電解質系リチウム二次電池を組み立てた。
(b)電池容量の測定
上記構成のリチウム二次電池について、充放電試験装置(東洋システム製「TOSCAT」)を用いて充放電試験を行った。ここで、正極にリチウムカルコゲン化合物を使用した電池では、炭素極へのリチウムのドープ反応が「充電」であり、本発明の試験電池のように対極にリチウム金属を使用した電池では、炭素極へのドープ反応が「放電」と呼ぶことになり、用いる対極により同じ炭素極へのリチウムのドープ反応の呼び方が異なる。ここでは、便宜上、炭素極へのリチウムのドープ反応を「充電」と記述することにする。逆に、「放電」とは、試験電池では充電反応であるけれども、素材からのリチウムの脱ドープ反応であるため、便宜上、「放電」と記述することにする。
ドープ反応は、0.5mA/cmの定電流密度で通電し、端子間の平衡電位が0mVに達するまで行い、その後定電位で電流値を徐々に低下させながら20μAに達するまで通電することで行った。このときの電気量を使用した炭素質材料の重量で除した値を充電容量と定義し、mAh/gの単位で表した。充電終了後、30分間電池回路を開放し、その後逆方向に電流を流し、脱ドープを行った。脱ドープは、0.5mA/cmの電流密度で、平衡電位が1.5Vとなるまで通電することで行った。このとき放電した電気量を電極の炭素材の重量で除した値を、放電容量(mAh/g)と定義する。また、充電容量と放電容量の差を不可逆容量として求め、さらに、放電容量を充電容量で除し、充放電効率を求めた。充放電効率は、百分率(%)で表記した。同一試料を用いて作製した試験電池についてのn=3の測定値を平均して充放電容量及び不可逆容量、充放電効率を計算した。
(c)剥離強度の測定
ORIENTEC社製「STA−1150」を用いて剥離強度を測定した。まず、炭素質材料(活物質)とPVDFのNMP溶液を、炭素質材料/PVDF=94/6の重量比となるよう混合し、スラリーにした。スラリーを銅箔に塗布し、乾燥させて電極とした後5cm×5cm角に切りだした。このときの活物質重量は、50g/mであった。次に、切り出した電極を4MPaのプレス圧でプレスした。プレス後の電極をさらに5cm×2cmに切りだして試験片とし、JIS K 6854−2に基づいて180度剥離試験を行った。測定は4つの試験片について行い、その平均値を剥離強度(gf/mm)とした。
Figure 2017183080
表1に示すように、アルカリ賦活および炭素被覆を行った実施例1〜5の炭素質材料を用いた二次電池は、優れた放電容量及び充放電効率を示した。実施例1〜5は、アルカリ金属元素の含有量が0.05重量%未満である。加えて、0.4nm以上の細孔容積が0.02cm/g以下であり、ブタノール真密度が1.15〜1.51g/cmの範囲内にある。
それに対し、比較例1は、アルカリ賦活した後、窒素ガス中で熱処理を行った。アルカリ金属元素を十分に除去できず、0.05重量%超のアルカリ金属元素が残存した。比較例2は、アルカリ賦活した後、水洗処理を行った。アルカリ金属元素を十分に除去できず、0.05重量%超のアルカリ金属元素が残存した。比較例3は、アルカリ賦活した後、塩酸による酸洗処理を行った。アルカリ金属元素を十分に除去できず、0.05重量%超のアルカリ金属元素が残存した。比較例4は、アルカリ賦活および炭素被覆を行わなかった。0.4nm以上の細孔容積が0.02cm/gを超えており、ブタノール真密度が1.51g/cmを超えていた。そのため、高い放電容量および高い充放電効率が得られなかった。比較例5は、アルカリ賦活した後、熱処理を行わずに本焼成を行い、アルカリ金属元素を除去できなかったので、0.05重量%超のアルカリ金属元素が残存し、0.4nm以上の細孔容積が0.02cm/gを超えていた。そのため、高い放電容量と高い充放電効率が得られなかった。比較例6は、アルカリ賦活および熱処理を行わずに本焼成を行った。ブタノール真密度が1.51g/cmを超えており、そのため、高い放電容量および高い充放電効率が得られなかった。
剥離抑制に関しては、アルカリ賦活された実施例1と比較例2、3の各炭素質材料を用いて剥離強度を測定した。表1に示すように、アルカリ金属元素含有量が0.05重量%未満である実施例1は、高い剥離強度を有しており、電極作製時の剥離が十分に抑制される特性を示した。それに対し、0.05重量%を超えるアルカリ金属元素を含有する比較例2、3は、剥離強度が実施例1よりも低く、電極作製時の剥離抑制が十分でなく、剥離し易いと予想される。
次に、第2の熱処理で揮発除去されるガスの反応生成物を分析した。実施例1における第2の熱処理時に処理装置内のガスを採取し、冷却後のガスからは白色の析出物が採取された。この白色析出物の熱重量分析と示差熱分析を行った。照合物質としてNaClを用いて、白色析出物を昇温速度10℃/minで昇温し、重量変化と発熱量変化を測定した。その結果、白色析出物は、NaClの融点(804℃)付近でNaClと同様の熱的変化を示した。さらに、白色析出物のSEM−EDX(走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法)により元素分析を行った。特性X線強度スペクトルによると、白色析出物は、NaとClを含むことを確認できた。これらの分析結果によると、アルカリ賦活された炭素前駆体は、第1の熱処理により、炭素前駆体に含まれるアルカリ金属元素とハロゲン元素との反応生成物が生成され、第2の熱処理により、当該反応生成物が揮発除去されていると推察される。本発明で用いられたハロゲン元素と反応させる手法は、アルカリ金属元素の効果的な除去に寄与していると考えられる。

Claims (9)

  1. 負極活物質として使用される炭素質材料であって、アルカリ金属元素の含有量が0.05重量%未満であり、細孔径0.4nm以上の細孔容積が0.02cm/g以下であり、ブタノール真密度が1.15g/cm以上、1.51g/cm以下である、非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
  2. 前記炭素質材料の炭素源が石油ピッチまたは石炭ピッチ由来である、請求項1に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
  3. 請求項1または2に記載の炭素質材料を含み、さらに結着材及び溶媒を含む非水電解質二次電池用負極合剤。
  4. 前記溶媒は、水または有機溶媒である、請求項3に記載の非水電解質二次電池用負極合剤。
  5. 請求項1または2に記載の炭素質材料を含む、非水電解質二次電池用負極。
  6. 請求項5に記載の負極を備える非水電解質二次電池。
  7. 炭素質前駆体に、アルカリ金属元素又はアルカリ金属元素を含む化合物を添着し、アルカリ添着炭素質前駆体を得るアルカリ添着工程、
    前記アルカリ添着炭素質前駆体を非酸化性ガス雰囲気中において400℃〜1200℃で賦活してアルカリ賦活炭素質前駆体を得る工程、
    前記アルカリ賦活炭素質前駆体に、ハロゲン元素を含むガス雰囲気中において400〜1200℃で第1の熱処理を施す工程、
    前記第1の熱処理が施された炭化質前駆体に、非酸化性ガス雰囲気中において600〜1500℃で第2の熱処理を施す工程、
    前記第2の熱処理が施された炭素質前駆体を、非酸化性ガス雰囲気中において800〜1600℃で本焼成する工程、
    前記本焼成された炭素質材料に、熱分解炭素で被覆する工程、
    を含む、非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法。
  8. 前記熱分解炭素で被覆された炭素質材料に、非酸化性ガス雰囲気中において800〜1500℃で再熱処理する工程を、さらに含む、請求項7に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法。
  9. 請求項7または8に記載の製造方法により得られた非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
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