以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下、各図に示す方向を基準に説明する。
図1を参照して、第1実施形態に係る画像形成装置としてのプリンター1について説明する。図1はプリンター1の内部構造を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明において、「搬送方向」とは、シートSが搬送される方向を指す。また、「上流」および「下流」並びにこれらに類する用語は、シートSの搬送方向における「上流」および「下流」並びにこれらに類する概念を指す。
プリンター1は、装置本体2と、給紙カセット3と、排紙トレイ4と、を備えている。給紙カセット3は、装置本体2の下部に設けられ、枚葉のシートS(の束)を収容している。排紙トレイ4は、装置本体2の上面に設けられている。
また、プリンター1は、給紙部10と、画像形成部11と、定着装置12と、排紙部13と、制御装置14と、を備えている。給紙部10は、給紙カセット3から排紙トレイ4まで延びる搬送路15の上流端部に設けられている。給紙部10は、給紙カセット3内のシートSを1枚ずつ搬送路15に送り出す。画像形成部11は、搬送路15の中間部に設けられ、定着装置12は、画像形成部11よりも搬送路15の下流側に設けられている。排紙部13は、搬送路15の下流端部に設けられている。制御装置14(制御部)は、プリンター1を統括制御する。
画像形成部11は、トナーコンテナ20から供給されたトナー(現像剤)を用いてトナー像を形成するドラムユニット21を含んでいる。ドラムユニット21は、光走査装置22に露光されることで形成された静電潜像をトナー像に現像する。画像形成部11(ドラムユニット21)は、搬送路15を搬送されるシートSにトナー像を転写させる。定着装置12は、シートSにトナー像を定着させる。画像形成されたシートSは、排紙部13によって排紙トレイ4に排出される。
次に、図2ないし図8を参照して、定着装置12について説明する。図2は、図1のII−II断面図である。図3は、図2のIII−III断面図である。図4はプリンター1の制御系を示すブロック図である。図5ないし図8は、圧力形成部34の一部(第1〜第4の状態)の平面および側面を模式的に示す説明図である。
図2および図3に示すように、定着装置12は、定着ベルト30と、加圧ローラー31と、定着駆動部32と、IHヒーター33と、圧力形成部34と、を含んでいる。定着装置12は、いわゆる摺動ベルト方式を採用している。
定着部材としての定着ベルト30は、可撓性を有し無端状に形成されている。定着ベルト30は、左右方向(回転軸方向)に長い円筒状に形成されている。定着ベルト30は、定着フレーム(図示せず)に回転(周回走行)可能に設けられている。なお、図示は省略するが、定着ベルト30は、内側から基材層、弾性層、離型層を積層して形成されている。基材層は、金属粉末等を混合したポリイミド樹脂で形成されている。弾性層は、例えば、シリコンゴムで形成され、離型層は、例えば、フッ素系樹脂で形成されている。
図2に示すように、定着ベルト30の左右方向両端部には、一対のキャップ35が装着されている。各キャップ35は、有底円筒状に形成されている。各キャップ35の内周面と定着ベルト30の外周面との間には、円環状の弾性部材35aが介設されている。各キャップ35の外周面には、接続ギア35bが形成されている。各キャップ35の底面(左右端面)の中央には、円形の挿通穴35cが穿設されている。
定着ベルト30の右側には、回転検知機構36が設けられている。回転検知機構36は、伝達ギア36aと、回転パルス板36bと、回転検知センサー36cと、を含んでいる。伝達ギア36aは、右側のキャップ35の接続ギア35bに噛み合って、定着ベルト30の回転を回転パルス板36bに伝達する。回転パルス板36bは、周方向に等間隔に並ぶ複数の遮光片(図示せず)を有している。回転検知センサー36cは、回転パルス板36bを挟んで発光部と受光部とが対向するフォトインタラプターである。回転検知センサー36cは、回転パルス板36bの回転に伴って変化する受光情報を制御装置14に送信する。なお、回転検知センサー36cは、1つ以上設けられ、左右一対のキャップ35の少なくとも一方の回転を検知すればよい。
図2および図3に示すように、加圧部材としての加圧ローラー31は、左右方向に長い円筒状に形成されている。加圧ローラー31は、定着フレームに回転可能に設けられている。加圧ローラー31は、定着ベルト30の下側から定着ベルト30に圧接している。定着ベルト30と加圧ローラー31との間には、定着ニップNが形成されている。加圧ローラー31は、円筒形の芯材31aの周面に弾性層31b等を積層して形成されている。芯材31aは、例えば、ステンレスやアルミニウム等の金属で形成されている。芯材31aの右端部には、駆動ギア31cが固定されている。弾性層31bは、例えば、シリコンゴムやシリコンスポンジで形成されている。なお、図示は省略するが、弾性層31bの表面には、離型層(フッ素系樹脂等)が積層されている。
図2に示すように、定着駆動部32は、定着駆動モーター32aと、駆動中間ギア32bと、を含んでいる。定着駆動モーター32aは、駆動中間ギア32bを介して駆動ギア31cに接続されている。定着駆動モーター32aは、加圧ローラー31を軸周りに回転駆動させる。
図2および図3に示すように、熱源としてのIHヒーター33は、定着ベルト30の上側(定着ニップNの反対側)に配置されている。IHヒーター33は、磁界を発生させて、定着ベルト30を加熱する。
圧力形成部34は、定着ベルト30を加圧ローラー31に押し付けるために設けられている。圧力形成部34は、保持ステー40と、押圧部材41と、押圧調整部42と、角度検知機構43と、を含んでいる。
保持ステー40は、定着ベルト30内で左右方向に延設されている。保持ステー40の左右両端部は、左右一対のキャップ35の挿通穴35cに遊挿されている。保持ステー40の左右両端部は、定着ベルト30内から外側に延出し、定着フレームに支持されている。保持ステー40の上方には、円弧状のベルトガイド44が固定されている(図3参照)。ベルトガイド44の外周面は、定着ベルト30の内周面に接触している。保持ステー40とベルトガイド44との間には、回転空間SPが形成されている。
押圧部材41は、定着ベルト30の内部で左右方向に延設されている。押圧部材41は、押圧パッド45と、基材46と、を含んでいる。押圧パッド45および基材46は、例えば、液晶ポリマー等の耐熱性樹脂で形成されている。
押圧パッド45は、左右方向に長い略直方体状に形成されている。基材46は、左右方向に長い略板状に形成されている。押圧パッド45の上面は基材46の下面に固定され、基材46の上面は保持ステー40の下面に固定されている。つまり、押圧パッド45は、基材46を介して保持ステー40に固定されている。押圧パッド45は、定着ベルト30の内周面30aに圧接する圧接面47を有している。圧接面47は、押圧パッド45の下面として形成されている。押圧パッド45は、定着ベルト30を挟んで加圧ローラー31に押し付けられている。これにより、定着ベルト30と加圧ローラー31との間に定着ニップNが形成される。
なお、フッ素系樹脂から成る摺接シート(図示せず)が、圧接面47に固定されていてもよい。また、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、PTFE等から成るコーティングが、定着ベルト30の内周面30aに施されていてもよい。
ここで、図2に示すように、押圧パッド45の圧接面47には、左右方向(回転軸方向)の一部(部分的な領域)に3つの変圧面48が形成されている。3つの変圧面48は、左右方向に等間隔に設定されている。詳細には、3つの変圧面48は、圧接面47の左右方向中央部と両端部とに設定されている。以下に説明する押圧調整部42は、各変圧面48に作用する押圧力を変更可能に構成されている。
図2および図3に示すように、押圧調整部42は、偏心軸50と、3つの偏心カム51と、駆動部52と、を含んでいる。
偏心軸50は、定着ベルト30の内部で回転中心付近において左右方向に延設されている。保持ステー40の左右両端部(各キャップ35の外側)には、一対の軸受部50aが設けられている。偏心軸50は、左右一対の軸受部50aの間に架設されている。これにより、偏心軸50は、回転空間SP内で軸周りに回転可能に支持される。偏心軸50の右端部は、軸受部50aを挿通し、保持ステー40よりも右側に延出している。偏心軸50の右端部には、調整駆動ギア50bが固定されている。
各偏心カム51は、偏心軸50から外周面(カム面55)までの距離を一定としない円板カムである(図3参照)。3つの偏心カム51は、左右方向(回転軸方向)に等間隔に配置され、偏心軸50に固定されている。また、3つの偏心カム51は、押圧部材41の3つの変圧面48に対応して配置されている。なお、保持ステー40には、偏心カム51(変圧面48)に対応する位置に貫通穴40aが開口している。3つの偏心カム51は、それぞれ、貫通穴40aを貫通し、押圧部材41の各変圧面48の反対側に圧接(当接)した状態で回転可能に設けられている。つまり、各偏心カム51のカム面55は、基材46の上面としての摺接面49に対して摺動可能に当接している。
図3に示すように、各偏心カム51のカム面55には、第1低点部551と、第2低点部552と、第1高点部553と、第2高点部554と、が設定されている。第1低点部551は、第2低点部552から90°回転した位置に設定されている。同様に、第1高点部553は、第2高点部554から90°回転した位置に設定されている。また、第1高点部553は、第1低点部551から180°回転した位置に設定されている。第2高点部554は、第2低点部552から180°回転した位置に設定されている。第1低点部551と偏心軸50との間の距離D1は、第2低点部552と偏心軸50との間の距離D2と同一の長さである。第1高点部553と偏心軸50との間の距離D3は、第2高点部554と偏心軸50との間の距離D4と同一の長さである。距離D3,D4は、距離D1,D2よりも長くなっている。なお、距離D1,D2(距離D3,D4)は異なる長さであってもよい。
左右方向両端部の偏心カム51は、同位相となる姿勢で偏心軸50に固定されている(図5参照)。左右方向中央部の偏心カム51は、左右方向両端部の偏心カム51に対して90°位相をずらした姿勢で偏心軸50に固定されている(図5参照)。なお、以下、説明の便宜上、左右方向両端部の偏心カム51を「端部カム51a」とも呼び、左右方向中央部の偏心カム51を「中央カム51b」とも呼ぶこととする。また、2つのカム51a,51bに共通する説明では、符号「51」のみを付す。なお、各端部カム51aに対応する変圧面48を「端部変圧面48a」とも呼び、中央カム51bに対応する変圧面48を「中央変圧面48b」とも呼ぶこととする。また、2つの変圧面48a,48bに共通する説明では、符号「48」のみを付す。
図2に示すように、駆動部52は、調整モーター52aと、調整ギア列52bと、を含んでいる。調整モーター52aは、調整ギア列52bを介して調整駆動ギア50bに接続されている。調整モーター52aは、各偏心カム51を偏心軸50周りに回転駆動させる(図3の破線矢印参照)。調整モーター52aは、例えば、ギヤードモーター等であって、各偏心カム51の回転位置(姿勢)を保持可能に構成されている。
検知部としての角度検知機構43は、角度パルス板43aと、角度検知センサー43bと、を含んでいる。角度パルス板43aは、偏心軸50の右端部に固定され、偏心軸50と一体に回転する。角度パルス板43aは、周方向に並ぶ複数の遮光片(図示せず)を有している。角度検知センサー43bは、角度パルス板43aを挟んで発光部と受光部とが対向するフォトインタラプターである。角度検知センサー43bは、角度パルス板43aの回転に伴って変化する受光情報を制御装置14に送信する。角度検知機構43は、各偏心カム51の回転角度を検知する。
ところで、プリンター1は、ユーザーが入力操作を行うための操作パネル60(図4参照)を備えている。ユーザーは、操作パネル60またはプリンター1に接続された外部端末(図示せず)を操作して、シートSの大きさや種類を入力する。また、プリンター1は、各種装置等に電力を供給する電源(図示せず)と、装置本体2内に外気を取り込む冷却ファン(図示せず)と、を含んでいる。この電源や冷却ファンには、環境温度や環境湿度を検知する温湿度センサー61(図4参照)が設けられている。
ここで、上記した制御装置14は、記憶部(図示せず)に記憶されたプログラム等に基づいて演算処理を実行する演算処理部(図示せず)を含んでいる。図4に示すように、定着駆動モーター32a、IHヒーター33、回転検知センサー36c、調整モーター52a、角度検知センサー43b、操作パネル60および温湿度センサー61等(各装置等)は、制御装置14に電気的に接続されている。各装置等は、制御装置14によって適宜制御される。なお、図示は省略するが、画像形成処理に必要な他の装置等も、制御装置14に接続され制御される。
次に、圧力形成部34の作用について説明する。調整モーター52aは、制御装置14に制御されて、偏心軸50(各偏心カム51)を回転させる。各偏心カム51は、カム面55を押圧部材41の摺接面49に当接させた状態で回転されることで、各変圧面48に作用する押圧力を変更する。各偏心カム51は、各点部551〜554のいずれか1つを押圧部材41の摺接面49の幅方向中央部(ニップ幅の中央部)に当接させるように配置されている。なお、「幅」および「ニップ幅」並びにこれらに類する用語は、定着ニップNにおける定着ベルト30の回転方向(または搬送方向)の長さを指す。
例えば、図5に示すように、各端部カム51aの第1低点部551と、中央カム51bの第2低点部552とが、押圧部材41(基材46)の摺接面49に当接した状態を考える。この状態を「第1の状態」と呼ぶ。このとき、3つの変圧面48には、第1の押圧力が作用する。すると、押圧部材41(圧接面47)は、左右方向に亘って略一定の圧力で定着ベルト30の内周面30aに押し付けられる。なお、この状態で形成される定着ニップNを第1定着ニップN1とも呼ぶ。
続いて、図6に示すように、第1の状態から偏心軸50を時計回りに90°回転させると、各端部カム51aの第2低点部552と、中央カム51bの第1高点部553とが、摺接面49に当接した状態になる。この状態を「第2の状態」と呼ぶ。このとき、各端部変圧面48aには第1の押圧力が作用し、中央変圧面48bには第1の押圧力よりも大きな第2の押圧力が作用する。すると、押圧部材41の左右方向中央部は、左右両端部よりも、定着ベルト30の内周面30aに強い力で押し付けられる。なお、この状態で形成される定着ニップNを第2定着ニップN2とも呼ぶ。
続いて、図7に示すように、第2の状態から偏心軸50を時計回りに90°回転させると、各端部カム51aの第1高点部553と、中央カム51bの第2高点部554とが、摺接面49に当接した状態になる。なお、この状態を「第3の状態」と呼ぶ。このとき、3つの変圧面48には、第2の押圧力が作用する。すると、押圧部材41は、左右方向に亘って略一定の圧力(第1の状態時よりも強い圧力)で定着ベルト30の内周面30aに押し付けられる。なお、この状態で形成される定着ニップNを第3定着ニップN3とも呼ぶ。
続いて、図8に示すように、第3の状態から偏心軸50を時計回りに90°回転させると、各端部カム51aの第2高点部554と、中央カム51bの第1低点部551とが、摺接面49に当接した状態になる。なお、この状態を「第4の状態」と呼ぶ。このとき、各端部変圧面48aには第2の押圧力が作用し、中央変圧面48bには第1の押圧力が作用する。すると、押圧部材41の左右方向中央部は、左右両端部よりも、定着ベルト30の内周面30aに弱い力で押し付けられる。なお、この状態で形成される定着ニップNを第4定着ニップN4とも呼ぶ。
ここで、押圧部材41は、定着ベルト30の内周面30aに押し付けられる力の大きさによって幅方向に弾性変形する。したがって、図5および図7に示すように、第1の状態および第3の状態では、押圧パッド45の圧接面47は、左右方向(回転軸方向)に亘って略一定の幅に形成される。このとき、第1定着ニップN1および第3定着ニップN3も、左右方向に亘って略一定のニップ幅に形成される。図6に示すように、第2の状態では、圧接面47と第2定着ニップN2とは、左右方向中央部から両端部に向けて次第に幅狭くなるように形成される。つまり、第2定着ニップN2等は、左右方向中央部で膨れている。図8に示すように、第4の状態では、圧接面47と第4定着ニップN4とは、左右方向中央部から両端部に向けて次第に幅広くなるように形成される。つまり、第2定着ニップN2等は、左右方向中央部でくびれている。なお、4つの定着ニップN1〜N4に共通する説明では、符号「N」のみを付す。
次に、圧力形成部34による変圧制御について説明する。なお、各偏心カム51は第1の状態であるものとする。なお、制御装置14の記憶部には、摺接面49に対する各カム面55(各点部551〜554)の当接位置を認識するために必要な回転角度を示す情報等が予め記憶(設定)されている。制御装置14は、角度検知センサー43bの検知結果に基づいて偏心軸50(各偏心カム51)の回転角度(各偏心カム51の状態)を認識する。制御装置14は、記憶部に記憶された情報と角度検知センサー43bの検知結果とから調整モーター52aの回転角度を算出する。
ユーザーが操作パネル60または外部端末から入力したシートSの大きさや種類を示す情報は、制御装置14に送信される。制御装置14は、定着ニップNを通過するシートSの種類に基づいて押圧調整部42を制御する(変圧制御)。制御装置14は、角度検知センサー43bの検知結果に基づいて各偏心カム51の回転角度(各偏心カム51の状態)を認識し、調整モーター52aを制御する。押圧調整部42は、押圧部材41の摺接面49に対する各偏心カム51のカム面55の当接位置を変更する。
例えば、普通紙や厚紙等のシワが入り難いシートSに定着処理を行う場合、制御装置14は、各偏心カム51を第1の状態に移行する(切り替える)制御を行う。つまり、制御装置14は、第1定着ニップN1を形成する制御を行う(図5参照)。ここでは、各偏心カム51は既に第1の状態に移行しているため、制御装置14は、その状態を維持する制御を行う。つまり、調整モーター52aは駆動されない。
次に、例えば、封筒や薄紙等のシワが入り易いシートSに定着処理を行う場合、制御装置14は、各偏心カム51を第4の状態に移行し、第4定着ニップN4を形成する制御を行う(図8参照)。調整モーター52aは、制御装置14に制御されて、図5で時計回りに偏心軸50を270°回転させる。これにより、各偏心カム51は、第1の状態から第4の状態に移行し、第4定着ニップN4が形成される(図8参照)。なお、各偏心カム51の回転方向は、図3等で、時計回りでもよいし、反時計回りでもよい。
その後、制御装置14は、画像形成部11等による画像形成処理を実行する。定着駆動モーター32aは、制御装置14に制御され、加圧ローラー31を回転させる。定着ベルト30は、加圧ローラー31に従動して回転し、回転検知センサー36cは、回転パルス板36bの回転を検知する(図2参照)。制御装置14は、回転検知センサー36cの検知結果を受信し、IHヒーター33を作動させる。IHヒーター33は、定着ベルト30を加熱する。定着装置12は、定着ニップNを通過するシートSを加圧且つ加熱して、シートSにトナー像を定着させる(定着処理)。なお、回転検知センサー36cが回転パルス板36b(定着ベルト30)の回転を検知できない場合、制御装置14は、IHヒーター33を作動させず、操作パネル60等にエラーメッセージ等を表示させる。
以上のように、シートSの種類に応じてニップ幅(第1〜第4定着ニップN1〜N4の何れかに)を変更することができる。これにより、例えば、封筒や薄紙等のシワを発生させ易いシートSに対して定着処理を行う場合であっても、シワの発生を抑制することができる。
なお、上記の変圧制御の説明では、一例として、普通紙や厚紙等に定着処理を行う場合、第1定着ニップN1を形成していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御装置14は、厚紙と普通紙(厚紙よりも薄く、薄紙よりも厚い)とで異なる変圧制御を行ってもよい。すなわち、制御装置14は、厚紙に定着処理を行う場合に第1定着ニップN1(図5参照)を形成する変圧制御を行い、普通紙に定着処理を行う場合に第3定着ニップN3(図7参照)を形成する(各偏心カム51を第3の状態に切り替える)変圧制御を行ってもよい。変圧制御の手順は、上記の薄紙等の場合と同様であるため、その説明は省略する。なお、シートSの種類によっては、制御装置14は、第2定着ニップN2(図6参照)を形成する(各偏心カム51を第2の状態に切り替える)変圧制御を行ってもよい。
以上説明した第1実施形態に係る定着装置12によれば、押圧調整部42は、圧接面47の左右方向一部(各変圧面48)から定着ベルト30の内周面30aに与えられる押圧力を調整(増減)する。当該押圧力を増減させることで、定着ニップNのニップ幅が変更(増減)される。これにより、適切なシートSの搬送と適切なトナー像の定着処理とを担保することができ、且つ、シートSにシワが発生し難い定着ニップNを形成することができる。
また、第1実施形態に係る定着装置12によれば、3つの変圧面48が左右方向(回転軸方向)に並設され、押圧調整部42が各変圧面48に作用する押圧力を増減する。例えば、中央変圧面48bの押圧力よりも各端部変圧面48aの押圧力を増加させると、押圧部材41の圧接面47は、左右方向中央部よりも両端部で幅広くなる。したがって、定着ニップNのニップ幅も、左右方向中央部よりも両端部で幅広く形成される。この場合、定着ニップNでのシートSを搬送する力(搬送力)は、左右方向中央部よりも両端部で大きくなっている。これにより、シートSは左右方向両側に広げられながら搬送されるため、シワの発生を抑制することができる。
また、第1実施形態に係る定着装置12によれば、押圧部材41が各偏心カム51の外周面(カム面55)上を相対的に摺動することで、各変圧面48に作用する押圧力が調整(増減)される。このように、押圧調整部42としてカム機構を採用することで、安定した押圧力の調整を行うことができる。さらに、制御装置14は、角度検知機構43の検知結果に基づいて、各変圧面48から定着ベルト30の内周面30aに付与される押圧力を制御することができる。これにより、所望の定着ニップN(第1〜第4定着ニップN1〜N4)を形成することができる。
次に、第1実施形態の変形例に係る定着装置12について説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態に係る定着装置12と同様の構成については、同一の符号を付し、同様の説明は省略する。
高温多湿の環境下では、シートSに含まれる水分が増加するため、シートの搬送不良やシワが入り易くなる。そこで、変形例に係る定着装置12は、環境条件に応じて各偏心カム51の状態(ニップ幅)を変更するように構成されている。
制御装置14は、電源や冷却ファンに設けた温湿度センサー61(図6参照)の検知結果に基づいて押圧調整部42(調整モーター52a)を制御する。詳細には、温湿度センサー61の検知結果が所定の湿度を越えると、制御装置14は、各偏心カム51を第4の状態に移行する(第4定着ニップN4を形成する)制御を行う。これにより、水分を多く含んでシワを発生させ易いシートSに対して定着処理を行う場合であっても、シワの発生を抑制することができる。なお、変圧制御の基準となる所定の湿度(温度)は、制御装置14の記憶部に予め記憶(設定)されている。
なお、制御装置14は、湿度に代えて、温湿度センサー61に検知される温度に基づいて、切替制御を実行してもよい。すなわち、制御装置14は、環境温度と環境湿度の少なくとも一方に基づいて押圧調整部42を制御するように設定されている。
次に、図9を参照して、第2実施形態に係る定着装置12について説明する。図9は第2実施形態に係る定着装置12を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明では、第1実施形態に係る定着装置12(変形例含む。以下同じ。)と同様の構成については、同一の符号を付し、同様の説明は省略する。
定着装置12の押圧調整部42は、定着ベルト30の回転方向上流側(前側)よりも下流側(後側)において各変圧面48に作用する押圧力を大きく(強く)するように構成されている。具体的には、各偏心カム70は、押圧部材41の摺接面49において、定着ベルト30の回転方向下流側を押圧するように偏った形状を成している(図9の実線参照)。各偏心カム70は、各変圧面48の前側に当接した姿勢で保持される。これにより、各変圧面48に作用する押圧力に偏りが生じ、押圧部材41(定着ベルト30)は、定着ニップNにおいて搬送方向下流側を加圧ローラー31側に食い込む。
以上説明した第2実施形態に係る定着装置12によれば、押圧パッド45の各変圧面48(圧接面47)には、定着ベルト30の回転方向上流側と下流側とで異なる押圧力が作用する。これにより、ニップ幅の調整が可能になるため、定着ニップNの通過前後におけるシートSの搬送を円滑にすることができる。そして、シートSのカール(巻き癖)の強さを調整することができる。また、定着ベルト30の回転方向上流側よりも下流側において各変圧面48(圧接面47)の押圧力を強くすることで、定着ニップNを通過後のシートSを定着ベルト30から引き離すことができる。つまり、シートSの剥離性を向上させることができる。なお、押圧調整部42は、定着ベルト30の回転方向下流側(後側)よりも上流側(前側)において各変圧面48に作用する押圧力を大きく(強く)するように構成してもよい(図9の二点鎖線参照)。
なお、第1および第2実施形態に係る定着装置12は、3つの偏心カム51,70(以下、偏心カム51等という。)を設けていたが、本発明はこれに限定されない。偏心カム51等は、1つ以上設けられていればよい。例えば、単一の偏心カム51等を押圧部材41の左右方向中央部に当接させてもよいし、4つ以上の偏心カム51等を押圧部材41に当接させてもよい。なお、第1および第2実施形態では、3つの偏心カム51等が同一形状であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、各端部カム51aが変圧面48に付与する押圧力を大きくなるように形成されていてもよい。この場合、第1,第3の定着ニップN1,N3は、左右方向中央部でくびれることになる。また、この場合、第4定着ニップN4は、第1,第3の定着ニップN1,N3よりも、左右方向中央部で大きくくびれることになる。
なお、第1および第2実施形態では、制御装置14は、プリンター1を統括制御するものであったが、これに限らず、定着装置12を制御する専用の制御部を設けてもよい。また、第1および第2実施形態では、熱源としてIHヒーター33を採用していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、定着ベルト30の内部にハロゲンヒーター等の熱源を設けてもよい。
なお、第1および第2実施形態の説明では、一例として、本発明をモノクロのプリンター1に適用した場合を示したが、これに限らず、例えば、カラープリンター、複写機、ファクシミリまたは複合機等に本発明を適用してもよい。
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る定着装置およびこれを備える画像形成装置における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態における構成要素は、適宜、既存の構成要素等との置き換えや組み合わせが可能であって、上記実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。