JP2011064858A - 加熱回転体及び像加熱装置 - Google Patents

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Akito Kanamori
昭人 金森
Satoru Taniguchi
悟 谷口
Toshiya Kaino
俊也 甲斐野
Hisashi Honke
尚志 本家
Hiroto Hasegawa
浩人 長谷川
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Abstract

【課題】本発明は、シートの搬送性を安定させつつ、シートに形成された画像への悪影響を可及的に抑制することを目的とする。
【解決手段】ヒータと加圧ローラとの間に介在し、加圧ローラと接触する定着ニップ部で記録材を挟持搬送しつつヒータの熱を記録材に与える定着スリーブであって、搬送される記録材は、シート幅方向における中央部の画像が形成される領域と、シート幅方向における記録材の縁から画像が形成される領域までの一定幅の画像が形成されない領域と、を有し、定着スリーブは、均一な外径で構成される長手方向中央部Wcと、少なくとも一方の長手方向端部We側に設けられる長手方向中央部Wcの外径に比べて大きな外径の対向部位Wnと、を有し、対向部位Wnは、搬送される記録材が搬送され得る記録材のうち最大幅の記録材の場合に、最大幅の記録材の画像が形成されない領域に接触する部位である。
【選択図】図1

Description

本発明は、画像形成装置の像加熱装置に用いられる画像が形成されたシートと接触する加熱回転体及びその加熱回転体を有する像加熱装置に関する。画像形成装置としては、複写機、レーザビームプリンタ、ファクシミリ等が挙げられる。像加熱装置としては、電子写真方式、静電記録方式、磁気記録方式等の適時の画像形成プロセスに用いられ、トナー画像を定着する定着装置が挙げられる。すなわち、定着装置は、加熱溶融性の樹脂等よりなるトナーを用いて、シートの面に転写方式若しくは直接方式で目的の画像情報に対応して形成された未定着トナー画像を、被加熱材面上に永久固着画像として加熱定着処理する方式の装置である。なお、シートとしては、紙、印刷紙、転写材シート、OHTシート、光沢紙、光沢フィルム、エレクトロファックス紙、静電記録紙等の記録材が挙げられる。ここで、本発明の像加熱装置には、上記定着装置ばかりでなく、未定着画像を記録材上に仮定着させる像加熱装置や、画像を担持した記録材を再加熱してつや等の画像表面性を改質する像加熱装置等も包含される。
従来、電子写真方式の複写機、プリンタ等の画像形成装置に搭載される定着装置(像加熱装置)が知られている。定着装置は、ヒータ(加熱体)と、このヒータに接触しつつ回転する可撓性の定着フィルム(加熱回転体)と、定着フィルムを介してヒータとニップ部を形成する加圧ローラ(加圧部材)と、を有する。ヒータとしては、セラミックス製の基板上に発熱体を有するものが用いられる。特許文献1,2には、このタイプの定着装置が開示されている。未定着トナー像を担持する記録材(シート)は、定着装置のニップ部で挟持搬送されつつ加熱され、これにより記録材上の画像は記録材に加熱定着される。この定着装置は、ヒータへの通電を開始し定着可能温度まで昇温するのに要する時間が短いというメリットを有する。したがって、この定着装置を搭載する画像形成装置は、プリント指令の入力後、一枚目の画像を出力するまでの時間(FPOT:first printout time)を短
く(クイックスタート)できる。さらに、このタイプの定着装置は、プリント指令を待つ待機中の消費電力が少ないというメリットもある。また、加熱回転体としてステンレス等の高熱伝導性を有する薄肉の金属スリーブを採用することで、従来のポリイミド等を基層とする樹脂フィルムよりも定着性能を向上させ、画像形成装置の高速化にも対応が可能な定着装置も提供されている(特許文献3)。一方、市場からは消費電力の低減と共に、画像形成装置の高画質化やカラー化対応も望まれている。定着装置として高画質化やカラー化対応を行うためには、トナーの定着性を充分に満足し、かつ定着ムラも防止することが必要である。そこで、記録材上の未定着トナー像に対し定着スリーブにより熱を包み込むように伝達させるために、定着スリーブを複数の層で構成したサーフ加熱方式の定着装置が提案されている(特許文献4)。この定着装置における定着スリーブは、ポリイミドやステンレス等からなる基層とフッ素樹脂等からなる離型層との間に、シリコーンゴム等からなる弾性層を有している。
特開昭63−313182号公報 特開平4−44075号公報 特開2003−45615号公報 特開2004−70041号公報
定着スリーブを用いた定着装置は、記録材の搬送性を安定化させるために、定着スリーブに記録材搬送方向と直交する長手方向両端部に向かって外径が大きくなるような逆クラウン形状を付与している。これにより、定着スリーブと加圧ローラ間のニップ内での記録材の搬送速度は記録材中央部よりも記録材両端部の方が速くなり、記録材は両端方向に張った状態で搬送されるため、記録材の搬送性を安定化できる。一方、上記シリコーンゴム等からなる弾性層を有する定着スリーブの場合、逆クラウン形状を付与させることは困難である。逆クラウン形状の基層に対し、薄肉でかつ均一な膜厚で弾性層を形成することは、製造面での難易度が高く、弾性層の膜厚ムラ改善のために後工程も必要になる可能性が高いため現実的ではない。また、円筒形状であるストレート形状の基層に対し、長手方向両端に向かって弾性層の膜厚を厚くすることで逆クラウン形状を付与させることは、製造面での難易度が高いと共に、記録材の画像形成領域内で弾性層の膜厚が連続的に変化してしまう。このため、記録材への熱の伝達が長手方向で不均一になり、出力画像として定着ムラが生じてしまう。そのため、弾性層を有する定着スリーブを使用する場合は、定着スリーブは円筒形状であるストレート形状とし、対向する加圧ローラに逆クラウン形状を付与して、記録材の搬送性を安定化させている。しかしながら、近年の画像形成装置の高速化により、定着スリーブと加圧ローラ間の加圧力(ニップ部内圧力)は増大し、かつ記録材に与える単位時間あたりの熱量も増大している。このため、加圧ローラへの逆クラウン形状の付与のみでは記録材の搬送性は安定化できず、特に両面プリントで紙シワ等の搬送不良を引き起こすことがあった。加圧ローラへの逆クラウン形状の付与は、定着スリーブと加圧ローラ間のニップ部形状、すなわち定着性能に大きな影響を与えるため、付与する逆クラウン量にはおのずと限界が生じてしまう。なお、両面プリントは片面プリントでカールした記録材を再度定着スリーブと加圧ローラ間のニップ部に搬送するため、ニップ部への入り方が片面プリント時に比べて非常に不安定になる。ニップ部への記録材の搬送性が安定しないと、ニップ部内での記録材の搬送速度も不安定になるため、両面プリントの方が紙シワ等の搬送不良を引き起こし易い。さらに、高速化による記録材に与える単位時間あたりの熱量の増大は、記録材のカールを悪化させてしまうので、両面プリントでの紙シワ等が発生し易くなる。
本発明は、シートの搬送性を安定させつつ、シートに形成された画像への悪影響を可及的に抑制することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明に係る加熱回転体は、
加熱体と加圧部材との間に介在し、前記加圧部材と接触するニップ部でシートを挟持搬送しつつ前記加熱体の熱をシートに与える加熱回転体であって、
搬送されるシートは、シート幅方向における中央部の画像が形成される領域と、シート幅方向におけるシートの縁から前記画像が形成される領域までの一定幅の画像が形成されない領域と、を有し、
前記加熱回転体は、均一な外径で構成される長手方向中央部と、少なくとも一方の長手方向端部側に設けられる前記長手方向中央部の外径に比べて大きな外径の大径部と、を有し、
前記大径部は、搬送されるシートが搬送され得るシートのうち最大幅のシートの場合に、前記最大幅のシートの前記画像が形成されない領域に接触する部位であることを特徴とする。
また、上記課題を解決するために本発明に係る加熱回転体は、
加熱体と加圧部材との間に介在し、前記加圧部材と接触するニップ部でシートを挟持搬送しつつ前記加熱体の熱をシートに与える加熱回転体であって、
搬送されるシートは、シート幅方向における中央部の画像が形成される領域と、シート幅方向におけるシートの縁から前記画像が形成される領域までの一定幅の画像が形成され
ない領域と、を有し、
前記加熱回転体は、均一な外径で構成される長手方向中央部と、少なくとも一方の長手方向端部側に設けられる前記長手方向中央部の外径に比べて大きな外径の大径部と、を有し、
前記大径部は、搬送されるシートが搬送され得るシートのうち最大幅のシートの場合に、前記最大幅のシートの前記画像が形成されない領域だけでなくその内側の前記画像が形成される領域の端部にまで接触する部位であることを特徴とする。
上記課題を解決するために本発明に係る像加熱装置は、
上記の加熱回転体と、
前記加熱回転体の内側に配置される加熱体と、
前記加熱回転体を介在させて前記加熱体と対向配置される加圧部材と、
を備え、
前記加熱体と前記加圧部材との間に前記加熱回転体を介在させて形成したニップ部でシートを挟持搬送しつつシート上に形成された画像を加熱することを特徴とする。
本発明によれば、シートの搬送性を安定させつつ、シートに形成された画像への悪影響を可及的に抑制することができる。
実施例1に係る定着スリーブを示す断面図 実施例1に係る画像形成装置を示す概略構成図 実施例1に係る定着装置を示す断面図 実施例1に係る定着スリーブの他例を示す断面図 実施例1に係る定着スリーブの他例を示す断面図 実施例1に係る定着スリーブの類似例を示す断面図 実施例1に係る定着スリーブの類似例を示す断面図 実施例2に係る定着スリーブを示す断面図
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
<実施例1>
(1)画像形成装置
図2は一例の画像形成装置を示す概略構成図である。本例の画像形成装置は転写式電子写真プロセス方式のレーザプリンタである。画像形成装置は、像担持体としての感光ドラム1を備えている。感光ドラム1は、OPC、アルミニウムやニッケル等のシリンダ状の基板上をアモルファスSe、アモルファスSi等の感光材料で覆っている。感光ドラム1は矢印の時計回り方向に所定の周速度をもって回転駆動され、まず、その表面は帯電装置としての帯電ローラ2によって所定の極性・電位に一様帯電される。次に、その一様帯電処理面に対して、レーザスキャナ3により画像情報に応じてON/OFF制御されたレーザビームによる走査露光Lが施され、静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置4でトナー像として現像、可視化される。現像方法としては、ジャンピング現像法、2成分現像法などが用いられ、イメージ露光と反転現像とを組み合わせて用いられることが多い。可視化されたトナー像は、転写装置としての転写ローラ5により所定のタイミングで搬送されたシートとしての記録材P上に感光ドラム1上から転写される。ここで、感光ド
ラム1上のトナー像の画像形成位置と記録材Pの先端の書き出し位置が合致するようにセンサ8にて記録材Pの先端を検知し、タイミングを合わせている。所定のタイミングで搬送された記録材Pは感光ドラム1と転写ローラ5間で挟持搬送される。なお、本例における記録材Pの搬送基準は、記録材Pの最大搬送幅のほぼ中心を基準とする中央基準を採用している。ここで、最大搬送幅とは、画像形成装置に使用される記録材Pのシート幅が最大幅の記録材Pの幅であり、シート幅方向とは、記録材Pの搬送方向(シート搬送方向)と直交する方向である。このトナー像が転写された記録材Pは定着装置6へと搬送され、トナー像は永久画像として記録材P上に加熱定着される。一方、転写後に感光ドラム1上に残存する転写残りの残留トナーは、クリーニング装置7により感光ドラム1表面から除去される。これにより感光ドラム1は再度の画像形成に供される。
(2)定着装置
図3は像加熱装置としての定着装置6を示す断面図である。なお、図3は記録材Pの搬送方向に沿った断面図である。定着装置6は、加熱部材としての定着部材(加熱アセンブリ)10と、加圧部材としての加圧ローラ20と、を備える。この定着部材10と加圧ローラ20とを加圧した状態に接触(圧接)させることによりニップ部としての定着ニップ部Nを形成させている。定着部材10は、加熱体としてのヒータ11と、保持部材としてのガイド12と、加熱回転体としての定着スリーブ13と、規制部材としての不図示の端部フランジ(以下、定着フランジと記す)と、を有する。ヒータ11は、ガイド12の下面に固定して配置してある。定着スリーブ13は、ガイド12に対して外嵌させて配置してある。不図示の定着フランジは、ガイド12の長手方向両端部側に装着されて、定着スリーブ13の両端部を規制する役目をする。ここで、定着装置6や定着部材10等における長手方向とは、定着スリーブ13が回転する際に想定される回転軸が伸びる方向をいい、記録材Pの搬送方向と直交する記録材Pのシート幅方向でもある。そして、定着部材10の長手方向両端部において、不図示の定着フランジに不図示の加圧バネを縮設させている。この不図示の加圧バネにより定着部材10を所定の加圧力をもって加圧ローラ20の上面に対して、定着スリーブ13の有する後述の弾性層132の弾性と加圧ローラ20の有する弾性層202の弾性に抗して押圧させて、所定幅の定着ニップ部Nを形成させている。定着ニップ部Nでは、定着部材10の加圧ローラ20に対する加圧により、定着スリーブ13がヒータ11と加圧ローラ20との間に挟まれてヒータ11の下面の扁平面に倣って撓む。これにより定着スリーブ13の内面がヒータ11の下面の扁平面に密着した状態になる。この加圧ローラ20の回転駆動に伴って、定着ニップ部Nにおける加圧ローラ20と定着部材10側の定着スリーブ13との摩擦力で定着スリーブ13に回転力が作用する。そして、定着スリーブ13がその内側にあるヒータ11の下面と密着し、そして摺動しながら、ガイド12の外回りを時計回り方向に、加圧ローラ20の回転に従動することで回転状態になる(加圧ローラ駆動式)。定着スリーブ13は、内部のヒータ11及びガイド12と摺擦しながら回転するため、ヒータ11及びガイド12と定着スリーブ13との間の摩擦抵抗を小さく抑える必要がある。このため、ヒータ11及びガイド12の表面に耐熱性グリース等の潤滑剤を少量介在させてある。ヒータ11は、記録材P上のトナー像Tを溶融定着させる定着ニップ部Nの加熱を行う。加圧ローラ20の回転により定着スリーブ13が回転し、ヒータ11に対する通電によりヒータ11の温度が所定の温度に立ち上がって温調される。この状態において、未定着トナー像Tを担持した記録材Pが、不図示の定着入口ガイドに沿って定着ニップ部Nの定着スリーブ13と加圧ローラ20との間に搬送される。そして、その記録材Pが定着ニップ部Nを挟持搬送されることで、記録材P上(被加熱材上)の未定着トナー像Tが定着スリーブ13を介してヒータ11の熱で加熱されて記録材P上(シート上)に熱定着される。定着ニップ部Nを通過した記録材Pは、定着スリーブ13の外面から分離して、不図示の耐熱性の定着排紙ガイドに案内されて、不図示の排出トレイ上に排出される。
(2a)ヒータ
ヒータ11は、定着スリーブ13の内側に配置される加熱体である。ヒータ11は、例えば、アルミナ(酸化アルミ)、AlN(窒化アルミ)等の高絶縁性の細長いセラミックス基板や、ポリイミド、PPS、液晶ポリマ等の耐熱性樹脂基板を有する。そしてこの基板の表面に、例えばAg/Pd(銀パラジウム)、RuO、TaN等の発熱ペースト層を印刷した発熱体と、この発熱体の保護と絶縁性を確保するためのガラスコート層等を順次形成したものである。本例では、基板として熱伝導性の良好なAlNを用いているため、発熱ペースト層とガラスコート層を基板に対して、定着ニップ部Nと反対側に形成している。ヒータ11上の発熱ペーストへの給電は、不図示の給電部から不図示のコネクタを介してなされる。ヒータ11の背面には、発熱ペーストの発熱に応じて昇温したヒータ11の温度を検知するためのサーミスタ等の温度検知素子14が配置されている。この温度検知素子14の信号に応じて、ヒータ11の長手方向端部にある不図示の電極部から発熱ペーストに印加される電圧のデューティー比や波数等を適切に制御することで、定着ニップ部N内での温調温度を略一定に保つ。これにより、ヒータ11は定着スリーブ13を介して記録材P上の未定着トナー像Tを定着するのに必要な加熱を行う。温度検知素子14から不図示の温度制御部へのDC通電は、不図示のDC通電部及びDC電極部を介して不図示のコネクタによりなされる。ヒータ11の定着ニップ部N側の表面には、定着スリーブ13の内周面(表面)との摺擦に耐えることが可能な薄層のガラスコート、フッ素樹脂層、ポリイミド層等の保護層を設けている。本例では保護層としてポリイミド層を使用している。
(2b)ガイド
ガイド12は、ヒータ11を支持する役目、加圧部材の役目、定着ニップ部Nと反対方向への放熱を防ぐための断熱部材の役目等をしている。このガイド12は、剛性・耐熱性・断熱性の部材であり、液晶ポリマ、フェノール樹脂、PPS、PEEK等により形成されている。本例ではガイド12の素材として液晶ポリマを使用している。
(2c)加圧ローラ
加圧ローラ20は、定着スリーブ13を介在させてヒータ11と対向配置される加圧部材である。加圧ローラ20は、図3に示すように、ステンレス、SUM、Al等の金属製の芯金201と、芯金201の外側にシリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱ゴムあるいはシリコーンゴムを発泡して形成された弾性層202と、を有する。さらに、離型性と耐磨耗性を向上させるため、弾性層202を覆うようにPFA、PTFE、FEP等の離型層203を形成してあってもよい。本例では、芯金201としてAl、弾性層202としてシリコーンゴム、離型層203としてPFA、からなる外径φ30の加圧ローラ20を使用している。また、記録材Pの搬送性を安定化させるために、70μmの逆クラウン形状を付与している。逆クラウン形状とは、加圧ローラ20の長手方向中央部から長手方向の端に向かって外径が大きくなるような形状である。
(2d)定着スリーブ
定着スリーブ13は、ヒータ11と加圧ローラ20との間に介在し、加圧ローラ20と接触する定着ニップ部Nで記録材Pを挟持搬送しつつヒータ11の熱を記録材Pに与える加熱回転体である。定着スリーブ13は、図1に示すように、小熱容量で可撓性を有するエンドレスベルトからなる基層131と、この基層131を覆うように基層131の外周に設けられた弾性を有する弾性層132と、を有し、少なくともこの2つの層から構成される。基層131は、クイックスタートを可能にするために膜厚は200μm以下の厚みで耐熱性、高熱伝導性を有するステンレス、Al、Ni、Cu、Zn等の金属部材を単独、あるいは合金部材からなり、可撓性を有している。一方で、長寿命の定着スリーブ13を構成するために充分な強度を持ち、耐久性に優れた基層131として、膜厚は20μm以上の厚みが必要である。ヒータ11と接触する基層131の内面に、潤滑性の高いフッ素樹脂層、ポリイミド層、ポリアミドイミド層等を形成してあっても良い。また、基層1
31は、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES等の可撓性を有する耐熱性樹脂であっても良い。樹脂製の基層131の場合には、BN、アルミナ、Al等の高熱伝導性粉末を混入してあっても良い。膜厚は金属製の場合と同様に、20μm以上200μm以下の厚みが必要である。弾性層132は、高画質化やカラー化対応として、トナーの定着性を充分に満足し、かつ定着ムラも防止するよう、記録材P上の未定着トナー像Tに対し、熱を包み込むように伝達させるため、シリコーンゴム等の耐熱性の弾性体からなる。熱の包み込み効果による高画質化やカラー化対応のために、膜厚は50μm以上の厚みが必要である。一方で、クイックスタートを可能にするために、膜厚は500μm以下の厚みが必要である。また、熱伝導率を向上させるために、熱伝導性フィラー等の添加材を含有している。さらに、離型性と耐磨耗性を向上させるため、弾性層132を覆うようにPFA、PTFE、FEP、ETFE、CTFE、PVDF等の離型層を形成してあってもよい。本例では、基層131として厚さ35μmでストレート形状のステンレスを使用している。また本例では、弾性層132として長手方向中央付近の厚さ200μmの良熱伝導性シリコーンゴムを使用している。また本例では、不図示の離型層として厚さ14μmのPFA樹脂を使用している。本例では、以上の基層131と弾性層132と離型層とからなる外径φ30の定着スリーブ13を使用している。
ここで、定着スリーブ13は、図1に示すように、長手方向中央部Wcの外径Dcに比べて、長手方向端部Weの外径Deが大きくなるように、Weの弾性層132の膜厚をWcよりも厚くしている。つまり、Weは、Wcにおける弾性層132の厚みに比べて、弾性層132を厚くして形成される。本例では、弾性層132の膜厚は、長手方向中央部Wcは200μm、長手方向端部Weは230μmとし、各々の領域内では略均一な膜厚を有している。また、定着スリーブ13の長手方向端部Weは、大径部として、定着装置6に使用できる複数サイズの記録材Pのうちの最大搬送幅Wpと略同等の幅を有する大サイズの記録材P(最大幅のシート)と接触する対向部位Wnを有している。つまり、定着スリーブ13の長手方向端部側には、大径部としての対向部位Wnが設けられている。本例では、大サイズの記録材PとしてLTRサイズ(幅216mm)とA4サイズ(幅210mm)を設定している。また、本例では、定着スリーブ13の長手方向中央部Wcを196mmとしているため、大サイズの記録材Pと定着スリーブ13の長手方向端部Weが対向する対向部位Wnは、LTRサイズでは10mm、A4サイズでは7mmとなる。記録材P上への画像形成においては、一般的に記録材(シート)の縁からシート幅方向に記録材端部5mm程度の一定幅の画像が形成されない領域であるマスク領域(画像形成不可領域)がある。マスク領域のシート幅方向における内側の中央部が、画像が形成される領域(画像形成領域)である。そして、実際の画像も画像形成領域中の5mm以上画像形成不可領域の縁からさらに内側に形成される場合がほとんどである。このため、搬送される記録材P中の記録材Pの縁からマスク領域を加えると10mm以上内側に画像が形成されることになり、上述したような本例の設定であれば出力画像への影響は実質的に無い。なお、定着スリーブ13における大サイズ記録材Pとの対向部位Wn以外の長手方向端部Weは、図1に示すように、対向部位Wnと同等の膜厚の弾性層132を有しても良い。また、図4に示すように、長手方向中央部Wcと同等の膜厚の弾性層132を有しても良い。さらに、図5に示すように、弾性層132を有さなくても良い。少なくとも、大サイズ記録材Pと定着スリーブ13の長手方向端部Weが対向する対向部位Wnにおける弾性層132の膜厚が、長手方向中央部Wcの弾性層よりも厚く設定されていれば良い。このような定着スリーブ13は、基層131上に弾性層132をスプレー塗布、あるいは複数回のリングコートによる形成により容易に製造することができる。
(3)定着スリーブの長手方向中央部Wcと端部Weにおける弾性層膜厚の検討
定着スリーブ13の弾性層132の膜厚について、以下の検討を行った。検討方法としては、定着スリーブ13の長手方向中央部Wcの弾性層132の膜厚を200μmに固定し、端部Weの弾性層132の膜厚を中央部Wcよりも厚くなる方向に振る。これにより
、記録材の搬送性と、出力画像品質への影響(シートに形成された画像への悪影響)と、を確認した。なお、定着スリーブ13の長手方向中央部Wcの幅は196mmに固定した。また、本例では、画像形成装置として、最大通紙幅はA4/LTRサイズで、プリント速度が55ppm(LTRサイズ)であるプリンタを使用した。
(3a)記録材の搬送性
温度32.5℃、湿度80%RHの環境下で、坪量68gのA4サイズ紙を両面で100枚(200イメージ)連続プリントを行い、紙シワ等の記録材の搬送性を確認した。プリントパターンは横線のハーフトーンパターンを使用した。結果を表1に示す。なお、表中の記録材の搬送性を表す記号として、○は紙シワの発生は無くOK、×は1面2面問わず紙シワが発生したためNG、を示す。
Figure 2011064858

表1に示すように、定着スリーブ13の長手方向端部Weの弾性層132の膜厚を210μm以上、すなわち長手方向中央部Wcよりも10μm以上厚くすれば記録材の搬送性を安定化できることが分かった。
(3b)出力画像品質への影響
温度23℃、湿度50%RHの環境下で、坪量75gのLTRサイズ紙を片面で10枚プリントを行い、定着スリーブ13における弾性層132の膜厚差起因で発生する定着ムラ等の出力画像品質への影響を確認した。プリントパターンは横線のハーフトーンパターンを使用した。結果を表2に示す。なお、表中の出力画像品質の影響を表す記号は以下のように分けた。○は定着ムラは目立たなくOK、△は横線のハーフトーンパターンのように濃度が均一な画像では濃度ムラが若干見えるが、写真画像や文字画像等の一般的に使用されるパターンでは濃度ムラは目立たないため許容レベル、×は定着ムラが目立つためNG。
Figure 2011064858

表2に示すように、定着スリーブ13の長手方向端部Weの弾性層132の膜厚を255μm以上、すなわち長手方向中央部Wcよりも55μm以上厚くすると出力画像への影響が発生してしまうことが分かった。
以上のことから、定着スリーブ13の長手方向中央部Wcの弾性層132の膜厚が200μmの場合、長手方向端部Weの弾性層132の膜厚を210〜250μmにすれば記録材の搬送性の安定化と出力画像品質への影響を両立できることが分かった。よって、上述したように、本例では定着スリーブ13の長手方向端部Weの弾性層132の膜厚は230μmとした。
(4)大サイズ記録材と定着スリーブの長手方向端部Weが対向する対向部位Wnの検討
大サイズ記録材Pと定着スリーブ13の長手方向端部Weが対向する対向部位Wnについて、以下の検討を行った。検討方法としては、定着スリーブ13の長手方向中央部Wcの幅を変えることで、大サイズ記録材Pと定着スリーブ13の長手方向端部Weが対向する対向部位Wnを振って、記録材の搬送性と出力画像品質への影響を確認した。なお、定着スリーブ13の弾性層132の膜厚は、長手方向中央部Wcは200μm、端部Weは230μmに固定した。また、本例では、画像形成装置として、最大通紙幅はA4/LTRサイズで、プリント速度が55ppm(LTRサイズ)であるプリンタを使用した。
(4a)記録材の搬送性
温度32.5℃、湿度80%RHの環境下で、坪量68gのA4サイズ紙を両面で100枚(200イメージ)連続プリントを行い、紙シワ等の記録材の搬送性を確認した。プリントパターンは横線のハーフトーンパターンを使用した。結果を表3に示す。なお、表中の記録材の搬送性を表す記号として、○は紙シワの発生は無くOK、×は1面2面問わず紙シワが発生したためNG、を示す。
Figure 2011064858

表3に示すように、A4サイズ紙と定着スリーブ13の長手方向端部Weが対向する対向部位Wnが4mm以上、すなわち定着スリーブ13の長手方向中央部Wcの幅が202mm以内であればA4サイズ紙の搬送性を安定化できることが分かった。一方、LTRサイズ紙の搬送性の安定化に必要なのは、対向部位WnはA4サイズ紙と同等の4mm以上だが、紙幅がA4サイズよりも6mm大きいため、定着スリーブ13の長手方向中央部Wcの幅は208mm以内となる。
(4b)出力画像品質への影響
温度23℃、湿度50%RHの環境下で、坪量75gのLTRサイズ紙を片面で10枚プリントを行い、定着スリーブ13における弾性層132の膜厚差起因で発生する定着ムラ等の出力画像品質への影響を確認した。プリントパターンは横線のハーフトーンパターンを使用した。結果を表4に示す。なお、表中の出力画像品質の影響を表す記号を以下のように分けた。○は定着ムラは目立たなくOK、△は横線のハーフトーンパターンのように濃度が均一な画像では濃度ムラが若干見えるが、写真画像や文字画像等の一般的に使用されるパターンでは濃度ムラは目立たないため許容レベル、×は定着ムラが目立つためNG。
Figure 2011064858

表4に示すように、LTRサイズ紙と定着スリーブ13の長手方向端部Weが対向する対向部位Wnが16mm以上、すなわち長手方向中央部Wcの幅を184mm以内とすると、LTRサイズ紙の出力画像品質への影響が発生してしまうことが分かった。一方、A4サイズ紙の出力画像品質に影響が発生してしまうのは、対向部位WnはLTRサイズ紙と同等の16mm以上だが、紙幅がLTRサイズよりも6mm小さいため、定着スリーブ13の長手方向中央部Wcの幅は192mm以内となる。
以上のことから、大サイズ記録材Pと定着スリーブ13の長手方向端部Weが対向する対向部位Wnを4〜15mmにすれば記録材の搬送性の安定化と出力画像品質への影響を両立できることが分かった。本例の画像形成装置では、大サイズの記録材PとしてLTRサイズとA4サイズを設定しているため、両方の紙サイズでも所望の対向部位Wnを維持できるように、定着スリーブ13の長手方向中央部Wcの幅を上述したように196mmとした。
(5)比較実験
上述した本例の定着スリーブ13を用意した。また、比較例として円筒形状であるストレート形状のステンレスの基層に対し長手方向両端に向かって弾性層の膜厚を厚くすることで逆クラウン形状を付与させた定着スリーブを用意した。また、従来例としてストレート形状のステンレスの基層に対し均一な膜厚で弾性層を形成した定着スリーブを用意した。そして、これらの定着スリーブを本例の定着装置6に組み込み、記録材の搬送性と出力画像品質への影響の比較実験を行った。記録材の搬送性は、上述した方法と同様に、温度32.5℃、湿度80%RHの環境下で、坪量68gのA4サイズ紙を両面で100枚(200イメージ)連続プリントを行い、紙シワ等の有無を確認した。プリントパターンは横線のハーフトーンパターンを使用した。出力画像品質への影響も、上述した方法と同様に、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、坪量75gのLTRサイズ紙を片面で10枚プリントを行い、定着スリーブ13における弾性層132の膜厚差起因で発生する定着ムラ等の発生の有無を確認した。プリントパターンは横線のハーフトーンパターンを使用した。なお、画像形成装置としては、最大通紙幅はA4/LTRサイズで、プリント速度が45ppm、55ppm(LTRサイズ)の2種類のプリンタを使用した。その結果を表5に示す。
Figure 2011064858

表5に示すように、比較例の定着スリーブは、弾性層が逆クラウン状に形成されているため、紙シワ等の記録材の搬送性に関係する問題は発生しなかった。しかし、記録材の画像形成可能領域内で弾性層の膜厚が連続的に変化し、記録材への熱の伝達が長手方向で不均一になるため、定着ムラ等の出力画像品質に関係する問題が発生した。従来例の定着スリーブは、プリント速度が45ppmの時は記録材の搬送性と出力画像品質を両立できていた。しかし、55ppmに高速化することにより、定着ムラ等の出力画像品質は問題無かったが、記録材に与える単位時間あたりの熱量が増大したため、紙シワ等の記録材の搬送不良が発生してしまった。
一方、本例の定着スリーブ13は、プリント速度が高速化しても記録材の搬送性の安定化と出力画像品質への影響を両立させることができた。本例では、定着スリーブ13の少なくとも記録材Pの両端部と対向する対向部位Wnの外径を中央部Wcよりも大きくしている。これにより、定着スリーブ13と加圧ローラ20間のニップ部内での記録材Pの搬送速度は記録材中央部よりも記録材両端部の方が速くなり、記録材は両端に張った状態で搬送されるため、記録材の搬送性を向上(安定)できた。さらに、定着スリーブ13の弾性層132は、少なくとも長手方向中央部Wcの196mmの範囲では略均一の膜厚を有しているため、出力画像品質への影響も最小限にできた(記録材に形成された画像への悪影響を可及的に抑制することができた)。
また本例では、記録材Pとして大サイズのLTRサイズとA4サイズのみについて説明してきた。これらサイズよりも幅の狭いA5サイズやB5サイズ等の小サイズの記録材Pは、定着スリーブ13の長手方向中央部Wcの196mmよりも幅が狭いため、長手方向端部Weと対向する対向部位Wnが無く、記録材を両端に引っ張る力が生じない。しかしながら、小サイズの記録材Pは、55ppmのようにプリント速度が高速の場合、定着装置6の非通紙部昇温対策としてプロセススピードをダウンさせてプリントしている。そのため、小サイズの記録材Pに与える単位時間あたりの熱量は大サイズに比べて減少し、搬送性に対しては大サイズよりも安定する方向であるため、紙シワ等の記録材の搬送不良は発生しない。
なお、本実施例では、弾性層132の膜厚を、長手方向中央部Wcは200μm、端部Weは230μm、長手方向中央部Wcの幅は196mmと設定した定着スリーブ13を用いて説明したが、これは一例にすぎない。本発明の定着スリーブ13としては、少なくとも記録材Pのシート幅方向両端部と対向する対向部位Wnの外径を中央部Wcよりも大きくしていれば良い。そのため、本例で説明したような、定着スリーブ13の長手方向中央部Wcと端部Weにおける弾性層132の膜厚の差や、大サイズ記録材と定着スリーブ13の長手方向端部Weが対向する対向部位Wnの幅は、あくまでも一例である。よって、対向部位Wnは、定着スリーブ13の長手方向端部Weにおける、記録材Pの縁から一定幅の画像形成不可領域に接触する4mm以上の部位であってもよい。また、記録材Pの縁から一定幅の画像形成不可領域だけでなく、その内側の画像形成領域の端部にまで接触する15mm以内の部位であってもよい。
(6)実施例1の類似例
ここで、プリント速度を高速化しても記録材の搬送性の安定化と出力画像品質への影響を両立できる定着スリーブ13の類似例を説明する。実施例1の類似例としての定着スリーブ13は、対向部位Wnにおける弾性層132の膜厚を、実施例1では略均一だったのに対し、長手方向端部に向かって厚くするようにしている。つまり、対向部位Wnは、長手方向の端から長手方向中央部Wcに向かって径が小さくなる外径である。例えば、図6のA部に示すように、対向部位Wnにおける定着スリーブ13の外径がDe1、De2の2水準になるように、弾性層132の膜厚を階段的に変更する。外径De1、De2は、Dc<De1<De2の関係を有する。これにより対向部位Wnは、長手方向の端から長
手方向中央部Wcに向かって段階的に径が小さくなる。また、図7のB部に示すように、対向部位Wnにおける定着スリーブ13の外径がDc〜De間で徐々に大きくなるように、弾性層132の膜厚を連続的に変更している。これにより対向部位Wnは、長手方向の端から長手方向中央部Wcに向かって徐々に径が小さくなる。もちろん、対向部位Wnにおける弾性層132の膜厚が長手方向の端に向かって厚くなっていれば、弾性層132の膜厚の変更方法は問わない。これら定着スリーブ13は、実施例1と同様に、定着スリーブ13の少なくとも記録材Pの両端部と対向する対向部位Wnの外径を長手方向中央部Wcよりも大きくしている。これにより、定着スリーブ13と加圧ローラ20間のニップ部内での記録材Pの搬送速度は記録材中央部よりも記録材両端部の方が速くなり、記録材は両端に張った状態で搬送されるため、記録材の搬送性は安定できる。さらに、定着スリーブ13の弾性層132は、少なくとも長手方向中央部Wcの196mmの範囲では略均一の膜厚を有しているため、出力画像品質への影響も最小限にできる(記録材に形成された画像への悪影響を可及的に抑制することができる)。
<実施例2>
本例では、実施例1のように、記録材Pの搬送基準が最大搬送幅の中心とする中央基準ではなく、一方の端部近傍に寄せた片側基準である画像形成装置に使用する定着装置6における定着スリーブ13の他の実施例を説明する。実施例1と共通する箇所については同一部号を付して再度の説明を省略する。本例の画像形成装置は、図8に示すように、定着スリーブ13の長手方向端部近傍のS部を基準として、各サイズの記録材PをS部に片寄せさせた状態で搬送させる。定着スリーブ13は、図8に示すように、基層131として厚さ35μmでストレート形状のステンレスを使用している。また、弾性層132として厚さ200μm(長手方向中央付近の厚さ)の良熱伝導性シリコーンゴムを使用している。また、不図示の離型層として厚さ14μmのPFA樹脂を使用している。これら基層131と弾性層132と離型層とからなる外径φ30の定着スリーブ13を使用している。
ここで、定着スリーブ13は、図8に示すように、長手方向中央部Wcの外径Dcに比べて、S部側の長手方向端部Weの外径Deが大きくなるように、Weの弾性層132の膜厚をWcよりも厚くしている。本例では、弾性層132の膜厚は、長手方向中央部Wcは200μm、長手方向端部Weは230μmとし、各々の領域内では略均一な膜厚を有している。また、定着スリーブ13のS部側の長手方向端部Weは、大径部として、記録材Pと対向する対向部位Wnを有している。本例は、搬送基準が片側基準であるため、紙サイズによらず記録材Pと定着スリーブ13の長手方向端部Weが対向する対向部位Wnは10mmとしている。
(7)記録材と定着スリーブのS部側の長手方向端部Weが対向する対向部位Wnの検討
記録材Pと定着スリーブ13のS部側の長手方向端部Weが対向する対向部位Wnについて、以下の検討を行った。検討方法としては、記録材Pと定着スリーブ13のS部側の長手方向端部Weが対向する対向部位Wnを振って、記録材の搬送性と出力画像品質への影響を確認した。なお、定着スリーブ13の弾性層132の膜厚は、長手方向中央部Wcは200μm、S部側の端部Weは230μmに固定した。また、本例では、画像形成装置として、最大通紙幅はA4/LTRサイズで、プリント速度が55ppm(LTRサイズ)であるプリンタを使用した。
(7a)記録材の搬送性
上述した方法と同様に、温度32.5℃、湿度80%RHの環境下で、坪量68gのA4サイズ紙を両面で100枚(200イメージ)連続プリントを行い、紙シワ等の記録材の搬送性を確認した。プリントパターンは横線のハーフトーンパターンを使用した。結果を表6に示す。
Figure 2011064858

表6に示すように、記録材と定着スリーブ13のS部側の長手方向端部Weが対向する対向部位Wnが6mm以上であれば記録材の搬送性を安定化できることが分かった。
(7b)出力画像品質への影響
上述した方法と同様に、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、坪量75gのLTRサイズ紙を片面で10枚プリントを行い、定着スリーブ13における弾性層132の膜厚差起因で発生する定着ムラ等の出力画像品質への影響を確認した。プリントパターンは横線のハーフトーンパターンを使用した。結果を表7に示す。
Figure 2011064858

表7に示すように、記録材と定着スリーブ13のS部側の長手方向端部Weが対向する対向部位Wnを16mm以上とすると記録材の出力画像品質への影響が発生してしまうことが分かった。
以上のことから、記録材Pと定着スリーブ13のS部側の長手方向端部Weが対向する対向部位Wnを6〜15mmにすれば記録材の搬送性の安定化と出力画像品質への影響を両立できることが分かった。本例の画像形成装置は、搬送基準が片側基準であるため、紙サイズによらず記録材Pと定着スリーブ13の長手方向端部Weが対向する対向部位Wnは10mmとした。なお、実施例1と比べて、記録材の搬送性の安定化に必要な対向部位Wnの最小幅が4mmから6mmに増加したが、出力画像品質への影響が無い対向部位Wnの最大幅が15mmで変わらなかった。これは、搬送基準の片側基準化に伴う対向部位Wnの片側化により、記録材Pを両端に引っ張る力が半減した一方で、弾性層132の膜厚差が30μmで同じだったことが原因として考えられる。
上述したような本例の定着スリーブ13を使用することにより、一方の長手方向端部近傍に寄せた片側基準である定着装置6においても、実施例1と同様に、プリント速度を高速化しても記録材の搬送性の安定化と出力画像品質への影響を両立できた。すなわち、記録材の搬送性を安定させつつ、記録材に形成された画像への悪影響を可及的に抑制するこ
とができる。
なお、本例の定着スリーブ13は、少なくとも記録材Pの一端と対向する対向部位Wnの外径を長手方向中央部Wcよりも大きくしていれば良い。このため、本例で説明したような、定着スリーブ13の長手方向中央部Wcと端部Weにおける弾性層132の膜厚の差や、記録材と定着スリーブ13の長手方向端部Weが対向する対向部位Wnの幅は、あくまでも一例である。よって、対向部位Wnは、定着スリーブ13の長手方向端部Weにおける、記録材Pの縁から一定幅の画像形成不可領域に接触する6mm以上の部位であってもよい。また、記録材Pの縁から一定幅の画像形成不可領域だけでなく、その内側の画像形成領域の端部にまで接触する15mm以内の部位であってもよい。また、本例では、片側基準の画像形成装置に使用した場合について説明したが、中央基準の画像形成装置に使用しても良い。中央基準の画像形成装置に使用する場合は、最大搬送幅Wpと略同等の幅を有する大サイズの記録材Pの一端と対向する位置に、長手方向中央部Wcよりも外径の大きい対向部位Wnを設けていれば良い。
なお、加熱体であるヒータ11はセラミックヒータに限られるものではなく、例えば鉄板等の電磁誘導発熱部材等を採用することもできる。加圧部材の形態としては、上記例における加圧ローラ20以外に、回動ベルト等の形態でも構わない。
11…ヒータ、13…定着スリーブ、20…加圧ローラ、Wc…定着スリーブの長手方向中央部、We…定着スリーブの長手方向端部、Wn…記録材と定着スリーブの長手方向端部が対向する対向部位(大径部)、Dc…定着スリーブの長手方向中央部の外径、De…定着スリーブの長手方向端部の外径

Claims (6)

  1. 加熱体と加圧部材との間に介在し、前記加圧部材と接触するニップ部でシートを挟持搬送しつつ前記加熱体の熱をシートに与える加熱回転体であって、
    搬送されるシートは、シート幅方向における中央部の画像が形成される領域と、シート幅方向におけるシートの縁から前記画像が形成される領域までの一定幅の画像が形成されない領域と、を有し、
    前記加熱回転体は、均一な外径で構成される長手方向中央部と、少なくとも一方の長手方向端部側に設けられる前記長手方向中央部の外径に比べて大きな外径の大径部と、を有し、
    前記大径部は、搬送されるシートが搬送され得るシートのうち最大幅のシートの場合に、前記最大幅のシートの前記画像が形成されない領域に接触する部位であることを特徴とする加熱回転体。
  2. 加熱体と加圧部材との間に介在し、前記加圧部材と接触するニップ部でシートを挟持搬送しつつ前記加熱体の熱をシートに与える加熱回転体であって、
    搬送されるシートは、シート幅方向における中央部の画像が形成される領域と、シート幅方向におけるシートの縁から前記画像が形成される領域までの一定幅の画像が形成されない領域と、を有し、
    前記加熱回転体は、均一な外径で構成される長手方向中央部と、少なくとも一方の長手方向端部側に設けられる前記長手方向中央部の外径に比べて大きな外径の大径部と、を有し、
    前記大径部は、搬送されるシートが搬送され得るシートのうち最大幅のシートの場合に、前記最大幅のシートの前記画像が形成されない領域だけでなくその内側の前記画像が形成される領域の端部にまで接触する部位であることを特徴とする加熱回転体。
  3. 可撓性を有する基層と、前記基層の外周に設けられた弾性層と、を有し、
    前記大径部は、前記長手方向中央部における前記弾性層の厚みに比べて、前記弾性層を厚くして形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱回転体。
  4. 前記大径部は、長手方向の端から前記長手方向中央部に向かって段階的に径が小さくなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱回転体。
  5. 前記大径部は、長手方向の端から前記長手方向中央部に向かって徐々に径が小さくなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱回転体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱回転体と、
    前記加熱回転体の内側に配置される加熱体と、
    前記加熱回転体を介在させて前記加熱体と対向配置される加圧部材と、
    を備え、
    前記加熱体と前記加圧部材との間に前記加熱回転体を介在させて形成したニップ部でシートを挟持搬送しつつシート上に形成された画像を加熱することを特徴とする像加熱装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017173796A (ja) * 2016-03-18 2017-09-28 株式会社リコー 無端ベルト、定着装置、画像形成装置、及び、無端ベルトの製造方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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